IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィクの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ コート ダジュールの特許一覧

特表2024-528594透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器
<>
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図1
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図2
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図3
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図4
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図5
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図6
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図7A
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図7B
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図8
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図9
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図10
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図11
  • 特表-透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】透過モードで作動する高速アクティブビームステアリング装置及び機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240723BHJP
   G02F 1/29 20060101ALI20240723BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20240723BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20240723BHJP
   G02F 1/1345 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/29
G02F1/1343
G02F1/1347
G02F1/1345
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500638
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022068685
(87)【国際公開番号】W WO2023280899
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21305949.6
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】524008465
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ コート ダジュール
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】キロウ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ジュヌヴェット,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ケハディ,サミラ
(72)【発明者】
【氏名】マーティンス,レナート ジュリアーノ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H189
2K102
【Fターム(参考)】
2H088EA45
2H088GA02
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA05
2H092GA03
2H092GA13
2H092GA33
2H092HA03
2H092HA04
2H092KA18
2H092MA04
2H092MA13
2H092MA19
2H092PA01
2H092PA02
2H092RA10
2H189AA29
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA08
2H189MA15
2K102AA21
2K102BA05
2K102BA07
2K102BC04
2K102CA18
2K102DC09
2K102DD02
2K102EA02
2K102EA08
2K102EA18
(57)【要約】
【要約】 共に透過性である誘電体基板(DS)及びカバーウィンドウ(DCW)と、誘電体表面の間で互いに平行に延在して、基板の間の空間を複数の長形セル(LC‐LC)に分割する複数の透過性導電レール(VEL)と、長形セルに装填されるネマチック液晶(LC)と、導電レールの各々に電位(V‐V)を印加するのに適した複数の電気配線(ELI)と、を具備し、導電レールのピッチPが光学波長λより小さく、導電レールの高さHが少なくともλ/Δnに等しく、Δnは光学波長の液晶の複屈折率である、ビームステアリング装置(BSD)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブなビームステアリング装置(BSD)であって、
一つの光学波長λに対して透過性の誘電体基板(DS)及び誘電体カバーウィンドウ(DCW)であって、これらの間に空間を画定する誘電体基板(DS)及び誘電体カバーウィンドウ(DCW)と、
前記空間を複数の長形セル(LCC)に分割するように、前記光学波長に対して透過性であり、前記誘電体表面の間で互いに平行に延在する複数の導電レール(V‐V)と、
前記長形セルに充填されるネマチック液晶(LC)と、
前記導電レールの各々に電位(V‐V)を印加するのに適した複数の電気配線(ELI)と、
を備え、
前記導電レールのピッチPが前記光学波長λより小さく、
前記導電レールの高さHが少なくともλ/Δnに等しく、Δnは前記光学波長での前記液晶の複屈折率である、ビームステアリング装置。
【請求項2】
前記導電レールの幅Wが前記ピッチPと比較して充分に小さく、前記長形セルに充填された前記液晶に前記波長λの光を閉じ込めることができる、請求項1のビームステアリング装置。
【請求項3】
P=λ/2±λXであって、Pは画素サイズ、λは光学波長、Xは0~40%で構成される、請求項1または請求項2に記載のビームステアリング装置。
【請求項4】
ピッチPはサブマイクロメータ範囲である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のビームステアリング装置。
【請求項5】
前記導電レールはSiドープGaNで作製される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のビームステアリング装置。
【請求項6】
前記電気配線を通して前記導電レールに可変電位値を印加する為に構成されている電子駆動回路基板(DCB)をさらに備え、二つの隣接する導電レール間の電位差が、前記レールにより画定される前記セルにより導入される波長λの光の位相シフトを決定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のビームステアリング装置。
【請求項7】
電子制御器は、二つの隣接するレールの間の前記電位差がゼロと最大値との間で単調に変化するように空間周期パターンの電位を前記レールに印加するように構成され、前記最大値は、前記対応セルにより導入される波長λの光の位相シフトが2πに等しくなる、請求項6のビームステアリング装置。
【請求項8】
前記電子制御器は、前記パターンの空間周期を変化させることにより波長λの光ビームの偏向角度を変化させるように構成されている、請求項7のビームステアリング装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置による第1(BSD1)及び第2(BSD2)ビームステアリング装置を備えた、二次元ビームステアリング機器(BSA)であって、
前記第1及び第2ビームステアリング装置は、前記第1ビームステアリング装置(BSD1)を横断する光ビーム(LB)が前記第2ビームステアリング装置(BSD2)に衝突するように配置されて同じ光学波長λで作動するのに適しており、
前記第1及び第2ビームステアリング装置は、非平行、好ましくは垂直の方向に延在する導電レールを有する、二次元ビームステアリング機器(BSA)。
【請求項10】
光源(LS)と、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のビームステアリング装置(BSD)あるいは請求項9に記載のビームステアリング機器(BSA)とを備えた、光学システムであって、前記光源は、光学波長λの光ビーム(LB)を前記ビームステアリング装置又は機器の方に向ける為に構成されている、光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速(100kHzと数MHzの間の範囲)の透過モードで作動するビームステアリング機器に関する。排他的ではないが、LiDAR(光検出測距)の分野に特に適用される。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(光検出測距)技術に基づくイメージングシステムは、高速移動物体の測距距離の動的検知を可能にし、自律車両の為の主要な技術と考えられ得る。LiDARは通常、光ビームを任意の方向へ送出して高速かつ高効率での広角視野(FoV)の空間スキャンを可能にするビームステアリング装置を採用する。反射又は透過モードで作動する現行のビームステアリング装置は、とりわけ、機械的レーザスキャナ、統合型光フェーズドアレイ(OPA)、微小電気機械システム(MEMS)偏向器、音響光学(AO)及び液晶(LC)変調器を包含する。これらの技術の各々は、独自の利点及び制限を有する。例を挙げると、
‐機械的レーザスキャナは広いFoVを有するが、機械的可動部品の使用により、低速で大型かつ複雑で機械的不具合に対して脆弱なものになる。
‐導波路アレイに基づく統合型OPAでは、(MHz程度の)高いスキャン周波数と(20から50度以内の)妥当なFoVとが得られるが、複雑であって、挿入損失により低出力の光学パワーに制限される。
‐AO偏向器でもMHz程度の高い変調周波数が得られるが、小さい偏向角度(通常は<2度)に制限されるとともにおよそ70%の効率に制限される。
‐MEMS変調器は(20‐60度以内の)許容FoVを有するが、LiDAR用途(kHz範囲のスキャン周波数)についてはかなり低速であり、反射モードでのみ作動し、装置統合化における柔軟性が低い。
【0003】
位相又は振幅LC変調器は、透過モードで作動できるので特に有望である。そのうえ、これらは軽量であり、低い制御電圧(数ボルト)で作動し、オンチップ集積化が可能である。しかしながら、市販のLC変調器は、kHz領域の範囲での低スキャン周波数ゆえに、そして高次回折効果と比較的低いFoVによる広い偏向角度について完全に満足できる光学効率ではないことから、LiDAR用途についての潜在的可能性が制限される。非特許文献1には、透過モードで作動する最新式のLCビームステアリング装置が記載されている。
【0004】
ネマチックLC(又はNLC)に基づく現行の光偏向器は、温度、電磁場、機械的応力を含む外部刺激にその光学特性を適応させるというこれらの材料の能力を利用する。特に、電圧の印加は、光をその初期方向から偏向させるのに必要な、透過ビームに対する制御可能な位相遅延を誘起し得る。NLCは、共通の巨視的対称軸(つまりN方向)に沿って静的配向される位置無秩序の長形分子から成る。NLCは、配向に依存する物理的特性を呈するが、通常の液体として高粘度のままである。正(負)の誘電異方性のNLCが二つの電極の間に閉じ込められる時には、電圧印加により電場方向に沿った(垂直な)LC分子の集団回転につながるバルク弾性変形が生じる。均一なNLC再配向は、電圧印加に先立って完全に整列されたLCを必要とする。このことは、機械的又は(光)化学的処理を受けた固体表面の近傍にLCが置かれていわゆる「アンカー効果」を介して界面でのその配向を制御する時に、達成される。LC再配向が起きると、電気力とアンカー力との間の拮抗の結果生じるLC自由エネルギーを最小化する。LC分子は、0.05‐0.45の範囲の一軸複屈折率を呈し、光軸は分子の縦軸と整列されている。
【0005】
図1に示されているように、従来のLC変調器は、平面透過電極の間に閉じ込められたマイクロメータNLC層(基準LC変調器)を使用する。誘電体底部基板BSに支持された底部電極は通常、マイクロメータピッチで画素化される(画素PV,PV,PV,PVが「x」方向に整列される)のに対して、上部電極RV0は基準電圧Vに維持される。上部電極の上には保護ガラスPGも存在する。図1の例で、画素PVは電圧Vに維持され、それゆえLC分子に作用する電場はなく、平面電極に平行な「x」方向における初期(無電圧)整列を誘起する整列層の存在ゆえに、LC分子はx方向に整列されたままであり、画素PV,PV,PVは上昇する電圧V,V,Vに維持され、結果として電場の強度が上昇し、画素に応じたLC分子の漸次回転を誘起する。高電圧については、画素PVのように、正の誘電異方性を持つLCは平面電極に垂直な「z」方向に整列される。「z」方向に伝搬して「x」方向に偏光される光ビームLBは、底部電極に衝突して、PVでのn(異常屈折率)からPVでのn(通常屈折率)まで段階的に減少する屈折率が生じ、その結果、ビームの偏向が生じる。
【0006】
高速の磁場誘起再配向に最適な誘電特性及び粘弾特性を持つNLC化合物を検討することによって、電場に対するLC変調器の反応時間τは、二つの電極の間に閉じ込められたLC層の厚さ(H)により主に決定される。全波面操作に必要な2πの位相シフトに対処するように、LC厚さHはλ/Δnより小さくてはならず、Δn=n-nはLC複屈折率である。その結果、このような従来のNCLについては、τは数ミリ秒程度である。また、可視範囲で作動するLC変調器については、入射波長よりはるかに大きい間隔による画素化電極の分離は、狭い偏向角度ばかりでなく高い回折次数も招き、これは装置効率に負の影響を与える。隣接画素の境界でのフリンジ効果は、高い回折次数が生じる光の量をさらに増加させる。
【0007】
伝搬モードをサポートするのに必要とされるので、横寸法が一方向に徐々に変化するが厚さは充分に大きい(~1μm)サブ波長のサイズ及び間隔を持つ高屈折率の誘電体光学素子を採用することにより、メタ表面に基づく透過型光偏向器は屈折率勾配を生じる。こうして一般的な屈折の法則が求められ、各メタ表面反復ユニットにより提供される位相離散化レベルを適切に調節することにより任意の偏向角度が達成され得る(非特許文献2)。メタ表面のサブ波長トポロジーにより、高い回折次数が抑制されて高い偏向効率と(60度を超える)大きい偏向角度とが得られる。メタ表面に基づく偏向器の主な制限は、予め決定された一定の角度で偏向させるように設計され、最終的には製造されて、本質的には受動的光学素子として機能することである。LCと併せてこれらを使用することにより調節可能なメタ表面を作製することが提案されている。例を挙げると、特許文献1は、サブ波長の幅及び間隔を持つ直線ナノアンテナの導通により形成されるメタ表面に基づいて反射モードで作動する光偏向器を開示している。LCは、ナノアンテナ間の空間に充填される。隣接するナノアンテナの間に印加される電圧はLC分子の配向、それゆえナノアンテナの電磁環境を制御する。こうして偏向角度の制御を可能にすることが実証されている。このアプローチの欠点は、反射モード動作のみが可能であって、時として集積化の点から非実用的であり、達成可能な最大光学効率が制限されることである。
【0008】
非特許文献3は、上部及び底部電極の間に印加される電圧により配向が制御される液晶に囲繞された誘電体ナノピラーを具備する調節可能なメタ表面の為の別のアーキテクチャを記載している。このアーキテクチャは透過モードでのビームステアリングを可能にするが、その性能は完全に満足できるものというわけではない。FoVは±11°を超えず、光学効率は35%程度であり、スキャン周波数は従来のLC変調器用よりも若干大きいに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0303827号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Y.キム他(Y. Kim et al.) 「ステアリング角度の広い大面積液晶ビーム偏向器(Large-area liquid crystal beam deflector with wide steering angle)」 応用光学(Appl. Opt.)59,24,7462‐7468(2020年)
【非特許文献2】N.ユー他(N Yu,& al.) 「位相不連続性による光伝搬:一般的反射屈折法則(Light Propagation with Phase Discontinuities: Generalized Laws of Reflection and Refraction)」 サイエンス 334(6054),333‐337(2011年)
【非特許文献3】S‐Q。リー他(S-Q Li et al.) 「調節可能な誘電体メタ表面に基づく位相限定の透過型空間光変調器(Phase-only transmissive spatial light modulator based on tunable dielectric metasurface)」 サイエンス 364,6445,1087‐1090(2019年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、先行技術のこれら欠点を全て又は一部克服することを目的とする。特に、高速の透過モードにおいて高い光学効率で作動して広いFoV(数度又は数十度)を達成する統合型ビームステアリング機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、長形の透過電極を一つずつサブ波長距離で隣接して配置することにより、これらの目的が達成される。その結果、NLCが浸透し、電位差を印加してNLC再配向を間隙内に誘起することにより個別に起動されるサブ波長間隙又は「溝」の集合体が得られる。このアプローチはいくつかの利点を有する。結果的に得られるメタ表面のサブ波長トポロジーがNLCサブ波長ナノ構造化を起こして高い回折次数を抑制し、こうして高い偏向効率を生じる。セルを分離する垂直電極は、フリンジ効果を回避する。電極間の距離が小さいのでLCの反応時間を短縮する。
【0013】
本発明と特許文献1との相違を強調することは、有意義である。特許文献1の装置では、垂直電極が共振ナノアンテナとして作用して、LCはその―調節可能な―誘電環境を構成し、ナノアンテナとの相互作用により反射光の位相シフトが決定される。本発明では、垂直電極は光学放射に対する単純な透過型誘電体スラブとして作用し、従来のLC変調器の作用原理を利用することにより、LCに閉じ込められた時にのみ位相シフトを受ける。
【0014】
本発明の対象は、請求項1によるビームステアリング装置である。
【0015】
本発明の別の対象は、請求項9によるビームステアリング機器である。
【0016】
本発明のさらなる対象は、請求項10による光学システムである。
【0017】
本発明の特定実施形態は、従属請求項の主題を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の追加の特徴及び利点は、添付図面と併せて解釈されると後続の記載から明白になるだろう。
図1図1は、すでに考察された先行技術によるLCビームステアリング装置の構造及び動作原理を示す図である。
図2図2は、LC分子の垂直な初期(電圧オフ)整列について電場の影響下でのLCの再配向を示す図である。
図3図3は、完全90°再配向の結果としてx偏光により生じるNLC屈折率の変化を示す図である。
図4図4は、「スーパーセル」を形成して入射光ビームの効率的偏向を可能にする2π位相シフト要素の周期的パターンを示す図である。
図5図5は、連続する透過垂直電極の間に所在する4個のNLCセルの屈折率を調節して入射ビームIBを偏向ビームDBに変換することにより四つ(4個)の位相離散化レベルを提供する隔離2πスーパーセルを示す側面図である。
図6図6は、周期的に交互反復する透過電極及びLCセルとプリント抵抗接点と駆動回路基板とから成る装置アクティブエリアを含む装置の概略を表現する上面図である。
図7A図7Aは、電圧印加前の、そして最大電圧誘起再配向について、画素ごとの電極充填率(ff)に応じた単一ハイブリッド電極とNLC画素との効果的屈折率の差を示す図である。
図7B図7Bは、総ピッチPごとの電極ff5%及び50%について異なる画素分担(つまりそれぞれNLC及び高屈折率電極)への光学的閉じ込めモードを示す近傍電場分布を表すグレースケールカラーマップを示す図である。
図8図8は、NLC回転角度θを掃引する際の単一ハイブリッド画素と透過電極幅Wについての二次元有限差分時間領域(2D FDTD)シミュレーションにより得られる位相マップを示す図である(シミュレーションの為にGaNが検討されているが、他の透過性及び導電性材料が検討されてもよい)。W~100nmかそれ以下の時に、~2πの位相シフトが得られる。別の電極材料を使用すると、2πの位相シフトを起こすWの値が変更されるだろう)。
図9図9は、NLC回転角度θを掃引する際の単一ハイブリッド画素と透過電極幅Wについての二次元有限差分時間領域(2D FDTD)シミュレーションにより得られる透過率マップを示す図である(GaNが検討されている)。W~100nm以下の時に、1(unity (1))に近い透過率が得られる。
図10図10は、図4に示されているタイプのパターンを形成する位相レベル数(M)に偏向角度がどのように依存するかを示す図である。
図11図11は、偏向角度に対する装置効率の依存を示す図である。
図12図12は、本発明の実施形態による二次元ビームステアリング機器の一案を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の記載において、「光」は、中赤外(3μm‐50μm)、近赤外(780nm‐3μm)、可視(380nm‐780nm)、又は近紫外(200nm‐380nm)の電磁放射を指す。同様に、「光学波長」は、中赤外(3μm‐50μm)、近赤外(780nm‐3μm)、可視(380nm‐780nm)、及び近紫外(200nm‐380nm)の波長を含む。他に明記されなければ、波長は真空内で測定される。
【0020】
所与の波長の透過係数が0.9を下回らない場合に、物体はこの波長で「透過性」であると考えられるだろう。
【0021】
図2は、溝を形成する二つの垂直な導電性かつ透過性の矩形電極EL(側面図)の間での正の誘電異方性のNLCの完全な電気的再配向を示し、LCI及びLCF構成と記載される。電極の間に電圧が印加されない(VOFF)時には、基板SB上に設計されたサブ波長の溝に対して法線整列されたLCが考えられる(つまりy方向のNLCダイレクタ)。高電場(非ゼロ電圧VON)の印加により、電圧オフ(VOFF)と電圧オン(VON)との間には、その方向に沿った90°面外NLC再配向が結果的に生じる。VON状態は、最大印加電場に対応する。図3は、NLC分子の回転角度が0°(LCI構成)と90°(LCF構成)との間で変化する時に、NLC屈折率がnとnとの間でスムーズに変化することを示している。
【0022】
図5は、本発明の実施形態によるビームステアリング装置BSDのSC(図4を参照して後で説明される理由から「スーパーセル」と呼ばれる)部分が、少なくとも一つの光学波長において透過性である誘電体基板DSと誘電体カバーウィンドウ(DCW)とを具備することを示す。例を挙げると、これらはサファイア(Al)で作製され得る。DS及びDCWは、最小でも透過性垂直電極(VEL)の厚さHに等しい距離で、すなわちマイクロメータ範囲で互いに対向する平面状の平行面を有する。以下、基板の面に平行なx及びz方向は「水平」方向と呼ばれ、基板の面に垂直で電極厚さHに沿った方向yは垂直と呼ばれる。
【0023】
複数(図5では5個)の導電レール―あるいは垂直電極VEL―は、下方の電極DSの上面から上方のDCWの下面まで垂直に延在する。この導電レールはz(又は「縦」)方向において―好ましくは直線状に―延在し、こうして二つの基板の間の空間を、x方向に配置されネマチック液晶が装填されてLC0‐LC3と記された長形セル(又は一次元画素)の一次元アレイに細分する。導電レールは少なくとも光学波長λにおいて透過性であり、例を挙げると、これらは、DS上でエピタキシャルに成長した高Siドープ(~1020cm-3)GaNで作製され得る。レールの長さは、数百ミクロン以上に及び得る。
【0024】
ビームステアリング装置BSDの全体は、一般的に、複数の隣接スーパーセルで構成される。
【0025】
導電レールのピッチP―一つのセルの幅(x方向に測定)と導電レールの幅(やはりx方向に測定)とを加えたものとして定義される―は、波長λより小さいものとする。例を挙げると、可視範囲においてPは200nmと500nmとの間であるのに対して、近赤外ではおよそ2μmにわたって延在し得る。セルのアレイは厳密に周期的である必要はない。そうでないと述べるならば、ピッチはx方向に変化してもよい。
【0026】
NLCの複屈折率と入射光の波長とに応じて、導電レールのアスペクト比H/Wは一般的に10より大きく、例を挙げると約15である。
【0027】
BSD装置の寸法は特に、三つのパラメータH,P,Wにより定義される。
【0028】
図6に示されているように、電気配線ELIは、各透過性導電レールTCRの片側から、そして反対側から、レール電圧入力チャネルVICへ電位V,V,VN-1,Vを印加するように構成されている駆動回路基板DCB(例えば集積回路)のそれぞれのポートまで個別に接続され得、それに応じて装置アクティブエリアDAAに所在する連続LCセルLCCを再配向し得る。電気配線は、抵抗接点に適した任意の導電材料で作製され、例を挙げると、プリント回路基板上の銅又は金の経路がその両端部の一方で導電レールと接触する。最新の電子工学技術は、このような高密度の配線パターンの実現を容易にする。例を挙げると、電子ビームリソグラフィ(あるいは深紫外リソグラフィ又はナノインプリントリソグラフィ)により製造され得る装置のアクティブエリアに適合する特定の配線パターンを設計するのにUVリソグラフィが採用され、その後で、電子ビーム金属蒸着、リフトオフプロセス、およびICP‐RIE(誘導結合プラズマ‐反応性イオンエッチング)エッチングが行われる。正確なELI設計によれば、一以上のDCBが考えられ得る。駆動回路はガラス上に直接プリントされるか、外部パネルとして(ガラス外で)装置に接続され得る。連続電極により提供される所望の電圧パターンを調整するのに、駆動アルゴリズムが使用され得る。
【0029】
単一のNLCセルを閉じ込める二つの導電レールが異なる電位に維持される時に、液晶分子の配向を変更する電場がセルに発生し、NLC再配向により、装置を介してy軸と正確又は近似的に整列された伝搬方向に伝搬されてx方向に直線偏光される光ビームIBが直面する異常な有効屈折率が変化する。しかしながら、通常の屈折率は再配向に影響されない。この構成は、図1に示されている従来のものと比較して幾つかの利点を有する。
‐特定のNLC化合物を検討すると、所与の電位差及びアンカー強度について、LCスイッチング時間はG=(P-W)に比例し、これはHよりはるかに小さく結果的に高速動作となる―一般的には1桁又は2桁分であっておよそ100kHz‐1MHzのLC再配向周波数を招く。
‐隣接セルが硬質壁部により分離され、損失を誘起するフリンジ効果を回避する。
‐x方向におけるセルのサブ波長幾何学形状は、高い偏向効率を付与する高屈折次数を抑制する。実際に、発明に関する装置では電気的に調節可能なメタ表面が考えられ得る。
‐可視光学波長について、LC分子のナノスケール閉じ込めは、電場印加前の高品質かつ均質な整列を保証する。関連する欠点は、このナノスケール閉じ込めにより強いアンカー力が誘起されてこれを克服するのに広い電場を必要とするが、所与の電位差の為にはピッチが小さくなるほど電場が大きくなることである。透過性の導電性メタ表面の幾何学的パラメータに応じて、LCの物理的特性(誘電性、粘弾性)と、LCと下部のメタ表面との間の界面相互作用の強度、1V‐10Vの範囲の電圧値が、LC活性化には適切である。
【0030】
「電場―オフ状態」について、液晶分子はy方向に配向され得る。溝平面に対する法線に沿ったこの初期(VOFF)整列条件は、LC分子と透過電極との間の界面相互作用とともに、導電性かつ透過性のメタ表面の幾何学的パラメータ(例を挙げると、電極のアスペクト比)を制御することにより達成され得る。整列層は、DS及びDCWの上下表面をそれぞれ被覆して垂直又は他の整列を強制し得る。これは、光整列及び/又は化学的整列など従来の整列技術を採用することにより実現され得る。二つの隣接する導電レールの間の電圧差、それゆえx方向での電場の強度を徐々に上昇させることにより、正の誘電異方性を持つNLCを検討することでLC光軸の制御可能な面外(つまりyx平面)再配向が誘起され得る。これは、y方向に伝搬してx方向に偏光される光に生じる屈折率nLCの漸次変化を起こす。より正確に記すと、屈折率nLCはn(通常屈折率)からn(異常屈折率)まで漸次的に上昇し:
【0031】
【数1】
【0032】
式中、θはLC分子の光軸と入射光の波動ベクトルとにより形成される角度であり、これはx方向での電場強度の絶対値の増加関数である。nLC(0°)=nかつnLC(90°)=nであることが容易に分かる。
【0033】
図3は、ビームステアリング装置のセルを画定する二つの導電レールの間で外部電圧(つまり電位差)により誘起されるLC面外回転角度の関数としてx偏光が直面する(正の誘電異方性を持つ)LC屈折率の変化の図である。電圧印加に先立つNLC電極界面でのアンカー条件とNLCの誘電異方性の符号とに応じて、異なる面内又は面外の再配向構成が考えられ得る。例を挙げると、初期整列がz方向沿いならば、負の誘電異方性を持つLCが調節可能な材料として選択され得る。別の例は、電圧印加に先立って溝軸に沿って(つまりz方向に)整列された正の誘電異方性を持つ分子の面内再配向を検討することである。初期(VOFF)整列条件とNLC再配向メカニズムとNLC誘電異方性の符号とは、位相限定及び/又は振幅変調について適宜考慮されなければならない。概して、負の誘電異方性を持つNLCは、正の誘電異方性を持つNLC分子と比較すると、低い誘電異方性の値ゆえに位相限定変調についてのそれほど好適なオプションではない。誘電異方性が低いと、印加される電圧に対するLC反応時間を増加させるだろう。
【0034】
導電レールが無視可能な幅(W→0)を有しているとすると、セルの最小厚さHはλ/Δnにより求められ、最も一般的なLCについてはΔn=n‐n~0.2-0.4であり、完全2πの位相遅延を可能にする。事実、例を挙げると電子ビームとナノインプリントリソグラフィとを含む従来のナノファブリケーション方法により誘起される制限ゆえに、通常、Wは無視可能でない。したがって、装置を形成するハイブリットメタ表面の有効屈折率neffは、nLC(θ)と導電レールの屈折率との加重平均と考えられ、これは印加される電位と無関係である。結果として、有効屈折率Δneffの達成可能な最大変化量はΔnより小さい。透過電極での電磁閉じ込めを先験的に回避することは自明ではないので、この見解は発明にとって重要である。電磁シミュレーションにより、セルのレール充填率に対するΔneffの依存関係W/Pの計算が可能である。図7及び図8は、Δn=0.23(650nmでn=1.51かつn=1.74)のネマチックLCと、サファイア基板で成長したGaN(650nmでnGAN=2.38)の導電レールについてのこのような計算の結果を示し、λ=650nmかつP=380nmである。25%(つまりW=95nm)以下のGaN充填率についてLC画素の寄与によりビームステアリングが可能となることが分かる。
【0035】
構造のピッチが波長と比較して小さ過ぎない場合には閉じ込め電磁モードのみが存在し得ることに留意していただきたい。理想的には、固体メタ表面の横寸法の製造実現可能性と、メタ表面との界面におけるLCアンカー強度制御の両方を考慮するように、Pは材料の動作波長の半分程度であるべきであり、公差Xは通常、±0.4λ(つまり40%)、好ましくは±0.2(20%)、そしてさらに好ましくは±0.1(10%)を超えない。可視波長範囲内で装置が作動する場合には、これは慎重に検討されるべきである。
【0036】
ΔneffがGaN充填率ffに直線的に依存しないことが、図7で分かる。実際には、装置の電磁放射のモード分布を検討しなければならない。図7A及び図7Bに見られるように、小さいGaN充填率(図7Aの例の5%)については、電場モードは主にLCに閉じ込められて
【0037】
【数2】
【0038】
であり、大きいGaN充填率(図7Bの例の50%)について、モードは導電レールにほぼ閉じ込められてΔneff<<Δnである。極めて難易度の高いアスペクト比を持つ構造の製造を必要とするので、2πの位相遅延を達成するには後者の状況は回避されるべきである。充填率の閾値はおよそ25%に定義され得る。LCと下部の透過性かつ導電性の構造との間での異なる程度の屈折率コントラストを検討することにより、この値は変化し得る。
【0039】
図4に示されているように、x方向に増加する整数指数jにより指定される位相勾配スーパーセルSC1,SC2,SCNにより、2πに等しい光学位相シフトが導入され得る。各スーパーセルは、図5に示されている構造を有し、やはりx方向に増加する整数指数iにより指定されるM個の画素(この例ではM=4)を包含する。一般的なスーパーセルjの第i画素Piでは、Δφ=(2πi/M)=idφが導入されてdφ=2π/Mであり、その結果、距離P・Mにわたる離散化位相ランプは0から2πまでとなり、Pは一つのハイブリッド画素のピッチである。同一スーパーセルの反復は、周期P・Mによる周期的な「鋸歯」パターンとなる。図10に示されているように、正常な入射光ビームの最大の効率的偏向はM=4の位相レベルで達成され、Mの値の増加に対して減少する。個別アドレス可能で周期的に反復するM個の画素を包含する装置の角分解能―つまり最小の非ゼロ偏向―は、θmin=sin-1(λ/MP)である。最大偏向角度はθmax=sin-1(λ/4P)により求められる。380nmのピッチを有してλ=650nmで作動するセルについて、
【0040】
【数3】
【0041】
であり、結果的にFoVは約50°となる。図7Aから推定され得るように、25%のGaN ffはΔneff~0.17に対応し、したがって検討されたNLC複屈折率Δn~0.23より低く、その場合には少なくとも四つ(4個)の位相離散化レベルを検討することにより、高さH~λ/Δnについて装置の偏向動作が保証され得る。製造利便性の為に、位相離散化は、HからH~λ(2π-dφ)/2πΔneffまでのセル厚さの減少を可能にする。
【0042】
図10において、黒い四角は、x方向における長さ45.6μmの装置と装置周期性方向に偏光された法線入射平面波との2D FDTDシミュレーションの結果に対応する。連続線は、非特許文献2による「一般的なスネルの法則」を使用して実施される理論計算に対応する。結果間の非常に良好な一致から、発明に関する装置が実際にNLCメタ表面として作用することが確認される。
【0043】
図11は、(2D FDTD方法を使用して計算される)光学効率が85%に達して、偏向角度の増加の為に減少するが、
【0044】
【数4】
【0045】
であっても、反射モードで作動する装置により達成される効率より概しておよそ3倍の高さである~65%というかなり満足できる値を保持することを示している。ローカル電圧調節により最高の偏向角度について得られる効率を向上できる最適化アルゴリズムが、偏向器の駆動アルゴリズムに組み込まれ得る。後者は、採用される製造プロセスの結果として生じる設計不完全性を補正するのにも使用され得る。
【0046】
透過モードで作動するそれらの能力とその高効率性(図9及び図11)ゆえに、その導電レールが非平行(そして好ましくは垂直)方向を有する本発明による二つのビームステアリング装置は、二次元ビームステアリングを達成するように結合され得る。図12は、y方向に伝搬しx方向に偏光されて二次元ビームステアリング機器BSAに向けられる入射光ビームILBを発生させる光源LS(例を挙げると、視準光学素子を備える半導体レーザ)を具備する光学システムを示す。二次元ビームステアリング機器BSAは、ビームILBをxy平面で角度θだけ偏向させるようにその導電レールがz方向に整列された第1ビームステアリング装置BSD1と、y方向に距離dだけBSD1から分離されて、ビームDLB1を角度φだけ偏向させて遠方のyz面でのDLB2にするようにその導電レールがx方向に整列された第2ビームステアリング装置BSD2とを具備する。それの特定のアンカー構成に対するLCの偏向依存反応ゆえに、カスケード式の二次元ビームステアリングシステムの設計は簡単ではない。二次元での所定の偏向を達成する為に、ユーザは技術的な選択―例を挙げると、正又は負の異方性を持つLCの使用、LC再配向メカニズムの選択、―ゼロボルトでの初期アンカー方向とBSD1及びBSD2の相対的な溝配向との判断、そして入射偏光の選択を行なわなければならない。
【0047】
設計者は、光ビームの複屈折分離を回避しようとすることがよくある。このことは、各変調器での偏向効率を最大化する為に、各変調器に衝突する光の入力偏光及び入射角度を選択することにより得られる。特に、この場合、BSD1への入射偏光は、LC再配向時の屈折率変化を最大化するように選択しなければならない。例として、電圧オフ状態で溝面に対する法線に沿ってアンカーを行なって正の誘電異方性を有するNLC分子により電気的に調節可能な面外LC再配向が行われる第1変調器BSD1について検討する。この場合に、入射偏光は溝軸に対して垂直でなければならない。BSD1の設計と入射偏光とから、BSD2について選択される設計及びLCタイプの情報が得られる。異常屈折率は電圧印加に影響されるので、BSD2への入射光はBSD2でのNLC光軸と同じ平面で偏光される必要がある。例として、BSD2の溝がこれらのBSD1に対して90°であって初期NLC配向はその軸に対して法線方向又は平行であることを意味していると考える。前に記載したようにBSD2での入射偏光がBSD1後での偏向を最大化するものであると考えると、BSD2での再配向メカニズムは、BSD2後での偏向効率を最大化するように選択しなければならない。例えば、面外再配向がBSD2で行われるならば、これに衝突する非法線入射光には、電気的再配向の間に位相変調が起こる方向でNLCが受ける一つの偏光投射が見られなければならない。このような場合には、負の誘電異方性を持つNLCが必要とされる。BSD2に印加される電圧パターンは、目標とする偏向角度及び効率に応じて適宜増減されなければならない。
【0048】
他の異なる設計戦略は、例えば、BSD1とBSD2のいずれかからの1D偏向のみを維持すること、透過効率を変調させること、あるいは入射光を幾つかの透過及び偏向出力チャネルに分離することと考えられ得る。後者の場合は、回転偏光を検討することにより、あるいは、特定のLCタイプとアンカー条件と再配向メカニズムとに従ったBSD1及びBSD2の相対回転により、実行され得る。
【0049】
特定の実施形態を参照して本発明が記載されたが、幾つかの変形が可能である。例を挙げると、温度変化により一以上のLC位相を呈する(ネマチック、スメクチック等)、あるいは多様な値の弾性定数、回転粘度、誘電異方性、複屈折率等のように多様な物理的特性を備える分子構造を持つ多様な個別LC化合物又は幾つかの化合物の混合物が、調節可能な材料と考えられ得る。等方性液相での毛管作用により、あるいは真空浸透状態において、LCが装置に浸透し得る。また、本発明は位相のみ及び/又は振幅変調についても実行され得る。後者の場合について、装置は偏光器と分析器との間に置かれなければならない。固体メタ表面については、任意の光学透過性かつ導電性の材料が使用され、一例は高ドープのnドープGaNであるが、ドープポリマー、あるいは限定ではなく例としてITOなどの透過性の導電性酸化物も採用され得る。これら具体的に言及されたものと異なる材料が誘電基板に使用されてもよい。同様に、H,P,Wについての寸法と動作波長とは、非限定的な例として提示されたものに過ぎない。また、装置は環境温度又は他の温度で作動し得る。
【0050】
幾つかの用途では、電気基板(electric substrates)DS,DCWが平面状である必要はなく、例を挙げると、DSが凸状の上面を有してDCWが凹状の下面を有し、湾曲したシェル状の空間を画定してもよい。導電レールは完全に直線状で等間隔である必要はないが、電圧印加に先立って高品質なLC整列を確保する必要がある。これを行なう為に、特定の(光)化学的又は機械的処理が、界面でのNLCの整列特性を制御する関連の材料と考えられ得る。
【符号の説明】
【0051】
PG 保護ガラス
RV0 電圧入力V0に対応する基準電極
LC 液晶
BS 底部基板
PV0 電圧入力V0に対応する画素化電極
PV1 電圧入力V1に対応する画素化電極
PV2 電圧入力V2に対応する画素化電極
PV3 電圧入力V3に対応する画素化電極
LB 光ビーム
VOFF 電圧オフ
VON 最大電圧値に対応する電圧オン
EL 電極
SB 基板
LCI LC[液晶]初期状態(電圧オフ)
LCF LC最終状態(最大電圧オン)
VEL 垂直電極
DCW 誘電体カバーウィンドウ
DS 誘電体基板
IB 入射ビーム
DB 偏向ビーム
LC0 衝突する偏光に通常屈折率nが生じる液晶セル
LC1 衝突する偏光に屈折率neff (n<neff <n)が生じる対応の液晶セル
LC2 衝突する偏光に屈折率neff (n<neff <neff <n)が生じる液晶セル
LC3 衝突する偏光に異常屈折率nが生じる液晶セル
DCB 駆動回路基板
VIC 電圧入力チャネル
DAA 装置アクティブエリア
LCC 液晶セル
TCR 透過性導電レール
ELI 電気配線
LS 光源
ILB 入射光ビーム
DLB1 xy平面における偏向光ビーム
DLB2 yz平面における偏向光ビーム
H 高さ(又は厚さ)
W 幅
P ピッチ(又は周期)
G 液晶セルの間隙又は幅
d 距離
SC,SC1,SC2,SCN スーパーセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】