(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】レーザ切断方法のための品質推定器の校正
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240723BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20240723BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/38 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024501103
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022064584
(87)【国際公開番号】W WO2023285018
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーディ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バデル ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ジャコビ ステファン アルフォンソ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA06
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA28
(57)【要約】
一態様では、本発明は、レーザ切断機Lを使用する切断方法の品質推定を目的としたリアルタイム推定器ESを校正するための校正モジュールKMに関し、校正モジュールKMは、 - リアルタイム推定器ESの品質推定結果q’をロードするためのロードインターフェースEと、 - ワークピースの切断エッジの品質測定結果qを提供することを目的とした第1のプロセッサP1であって、特に、完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号を測定デバイスKによって検出することS21によって品質測定結果qが提供され得る、第1のプロセッサP1とを備え、 - 第2のプロセッサP2は、ロードされた品質推定結果q’を品質測定結果qと比較することを目的とし、その結果に基づいて、リアルタイム推定器ESを校正するための校正データセットkを算出することを目的とし、校正モジュールKMは、 - 算出された校正データセットkを出力することを目的とした出力インターフェースAを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ切断機(L)を使用する切断方法のための品質推定を目的としたリアルタイム推定器(ES)を校正するための方法であって、
- 前記リアルタイム推定器(ES)の品質推定結果(q’)をロードするステップ(S1)であって、前記品質推定結果(q’)が少なくとも1つのセンサ(D)からの少なくとも1つのセンサ信号に基づいて判定される、ステップと、
- ワークピースの切断エッジの品質測定結果(q)を提供するステップ(S2)であって、完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号を測定デバイス(K)によって検出すること(S21)によって前記品質測定結果(q)が提供され得る、ステップと、
- ロードされた前記品質推定結果(q’)を、提供された前記品質測定結果(q)と比較するステップ(S3)と、その結果に基づいて、
- 前記リアルタイム推定器(ES)を校正する(S5)ための校正データセット(k)を算出するステップ(S4)と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記リアルタイム推定器(ES)が、推定アルゴリズム(S22)を実行するように設計され、前記推定アルゴリズム(S22)が、少なくとも、少なくとも1つのセンサ(D)から検出されたセンサ信号から前記品質推定結果(q’)を算出することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記リアルタイム推定器(ES)の前記推定アルゴリズム(S22)が機械学習方法、特に深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサ(D)が光学センサとして、特にインプロセスカメラおよび/もしくはフォトダイオードユニットとして設計され、ならびに/または、前記測定デバイス(K)が、カメラ、特にモバイル端末内のカメラおよび/もしくは自動化システムに取り付けられるかもしくは割り当てられたカメラであり、ならびに/または、前記測定デバイス(K)が光学測定デバイスとして、特にポストプロセスカメラとして設計されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、前記センサ信号および/または前記測定信号の前記検出が、特に実行時間および/または実行タイプに関して構成可能であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、校正データセット(k)を前記算出するステップ(S4)が、判定された偏差が事前構成可能な閾値を超えた場合にのみ行われることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、位置識別子が、検出された前記センサ信号および検出された前記測定信号について割り当てられ、および/または記憶され、検出された前記信号が、前記位置識別子を介して明確に識別可能であり、特に前記比較するステップ(S3)のために互いに割り当てられ得ることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法であって、メタデータが、検出された前記センサ信号および/または検出された前記測定信号に割り当てられ、および/または記憶されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記校正データセット(k)が、前記リアルタイム推定器(ES)の前記品質推定結果(q’)に適用されるオフセットを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、前記校正データセット(k)が、特に材料および/または切断プロセスに関して算出されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法であって、前記校正データセット(k)が、互いに割り当てられた品質推定結果(q’)および品質測定結果(q)を用いて訓練された校正モデルの訓練済みパラメータを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法であって、前記校正モデルが、回帰モデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースト木、人工ニューラルネットワークから選択されるか、もしくは回帰モデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースト木、人工ニューラルネットワークから選択もしくは組み合わされ、および/または、異なるモデルを組み合わせたアンサンブル学習手法が使用されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法であって、前記校正モデルが、前記リアルタイム推定器の追加の記憶された中間結果、特に、出力層の前に配置された、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)のニューロンの活性化値の形式での前記リアルタイム推定器の中間結果を訓練データとして使用することによって訓練されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記校正モデルが、前記リアルタイム推定器の記憶された入力データおよび割り当てられた品質測定結果(q)を訓練データとして使用することによって訓練されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか1項に記載の方法であって、前記校正モデルおよび/または前記リアルタイム推定器(ES)が、行動報酬学習アルゴリズムを使用して、特に強化学習アルゴリズムを使用して適応されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11から14のいずれか1項に記載の方法であって、前記校正モデルおよび/または前記リアルタイム推定器(ES)が転移学習方法によって新しい材料に適応されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の方法であって、切断エッジのセンサ信号を前記検出するステップ(S21)が校正切断部上でまたは校正切断部なしで実施されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の方法であって、前記センサ(D)による測定信号を前記検出するステップ(S21)が偏向ミラー(U)を介して行われることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記品質測定結果(q)が、ユーザインターフェース(UI)を介して入力データセットによって提供されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の方法であって、前記リアルタイム推定器(ES)および前記方法ステップ、特に前記ロードするステップ(S1)、前記提供するステップ(S2)および前記比較するステップ(S3)が、校正切断が実行された後に実施されることを特徴とする方法。
【請求項21】
レーザ切断機(L)を使用する切断方法のための品質推定を目的としたリアルタイム推定器(ES)を校正するための校正モジュール(KM)であって、前記校正モジュール(KM)が、
- 前記リアルタイム推定器(ES)の品質推定結果(q’)をロードするためのロードインターフェース(E)と、
- ワークピースの切断エッジの品質測定結果(q)を提供することを目的とした第1のプロセッサ(P1)であって、特に、完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号を測定デバイス(K)によって検出すること(S21)によって前記品質測定結果(q)が提供され得る、第1のプロセッサ(P1)と
を備え、
- 第2のプロセッサ(P2)が、ロードされた前記品質推定結果(q’)を前記品質測定結果(q)と比較することを目的とし、その結果に基づいて、
前記リアルタイム推定器(ES)を校正するための校正データセット(k)を算出することを目的とし、
前記校正モジュール(KM)が、
- 算出された前記校正データセット(k)を出力することを目的とした出力インターフェース(A)
を備えることを特徴とする校正モジュール(KM)。
【請求項22】
レーザ切断機(L)に使用される、リアルタイム推定器(ES)および請求項21に記載の校正モジュール(KM)を有することを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムであって、前記システムが、センサ(D)を備えるか、またはセンサ(D)とデータ通信状態にあることを特徴とするシステム。
【請求項24】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、処理ユニットのメモリユニットにロードされ得、前記処理ユニットにおいて前記コンピュータプログラムが実行されたときに請求項1から20のいずれか1項に記載の校正方法を前記処理ユニットに実施させるためのプログラムコードセグメントを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用レーザ加工の分野に関し、詳細には、例えばレーザ切断機の作業テーブル上に金属板として供給される、金属または他の材料で作られたワークピースの切断に関する。本発明は、レーザ切断方法の切断品質を推定するための品質推定器の校正に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ切断機の重要な態様は、その切断品質、切断速度、および機械の自律性である。切断プロセスが効果的に監視され得る場合、機械は3つの必須基準すべてにおいて改善され得る。したがって、近年、切断プロセスを監視することがますます重要になっている。今日の機械には、フォトダイオード、および場合によってはカメラも装備されることが増えており、機械加工プロセスのリアルタイム監視が可能になっている。
【0003】
切断プロセスを監視することにより、割れ目、すなわち材料の切断の失敗、を検出すること、または防止することも可能になる。この目的のために、通常、プロセスを監視するフォトダイオードが切断ヘッドに取り付けられる。しかしながら、依然として課題であることは、信頼性の高い切断品質の検出である。先行技術により知られている方法の場合、例えば、切断済み部品があまりにも粗くバリおよび/またはスラグが付着した状態で切断されていないかどうかを識別することができない。
【0004】
これに続く切断済み部品の切断エッジの測定法も確立されており、現在は主に、切断品質に焦点が当てられている。この目的のために、多くの場合、カメラなどの撮像デバイスが使用される。好適な方法およびアルゴリズムを用いることにより、粗さ、バリまたはスラグの付着の有無、および他の品質基準などの多くの品質パラメータに基づいて、捕捉された切断エッジの画像から切断品質が抽出され得る。この情報は、将来の切断動作の切断パラメータを最適に設定するためにも使用され得る。
【0005】
独国特許出願公開第102019209088(A1)号も、携帯電話の写真を使用して切断エッジを査定することを提案している。
【0006】
米国特許第9529343(B2)号も、現在確立されている先行技術について言及している。当該文献では、切断中に生成されるセンサデータと切断後に記録される切断エッジの画像データとの両方を収集し、これらを組み合わせて切断性能の判定を共同で導出し、必要に応じて上記の切断性能を改善するための提言を行うことが提案されている。
【0007】
出願人は、国際公開第2020127004(A1)号によっても知られており、当該文献は、校正プロセスにおいて決定論的切断モデルを使用して切断プロセス自体を最適化することを提案している。切断モデルを調整する/適応させるために、カメラからの切断エッジの画像が使用され得る。さらに、モデルに基づいて判定された切断エッジの品質が、カメラを使用して判定された切断エッジの品質と比較され得る。
【0008】
国際公開第2020069889(A1)号も、同様のことを提案している。材料および機械のパラメータならびに所望の切断エッジ品質に基づいて切断プロセスのための最適化された方法パラメータを提供する、方法パラメータアルゴリズムが提示されている。加えて、達成されたエッジ品質は、カメラによって記録され、また方法パラメータをさらに最適化するためにアルゴリズムによって利用可能となり得る。
【0009】
国際公開第2021073946(A1)号は、例えば、最初に構成段階において監視条件が定義され得ることを示しており、その結果、いわば、最初に監視条件を設定するための処理ステップが行われ、次いで、監視が作動された状態で処理ステップが行われ、プロセス信号を介して新しい監視条件を決定するための設定ステップに再び入る。
【0010】
最後に、欧州特許第3159093(B1)号について言及されるべきであり、当該文献は、エラーメッセージを用いて切断プロセスを中断するか、もしくは(変更された切断パラメータを用いて)修正された方法で切断プロセスを続行すること、または欠陥の後処理を開始することを可能にするために、切断中に加工用レーザに沿って同軸上でリアルタイムにプロセスを観察することを可能にするために、切断ヘッド上にカメラを配置することを説明している。
【0011】
上記の文献は、切断パラメータを調整することによって品質を向上させる方法を開示している。この事例では、例えば、推定結果があまりにも低い品質を出力する場合に切断パラメータを適応させることを可能にするために、切断プロセスに先立って切断プロセスの品質を推定するための推定方法が使用され得る。
【0012】
しかしながら、先行技術により知られている品質を推定するための推定方法は干渉を受けやすく、これは、推定結果の信頼性を低下させ、ひいては後続の切断プロセスおよびその品質に悪影響を及ぼす。具体的には、推定方法は、場合によってはセンサおよび光学部品の経年劣化、摩耗、ならびに割れ目などに起因して、長期的な挙動において経時的なドリフト(偏移)の影響を受けやすい。このように、推定方法は特に欠陥があることが判明しており、そのデータ基盤は静的である。さらなる欠点は、それぞれのレーザ切断機、切断対象のワークピース、および/または切断環境に合わせて品質推定が個別に調整されないという点に見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第102019209088(A1)号明細書
【特許文献2】米国特許第9529343(B2)号明細書
【特許文献3】国際公開第2020127004(A1)号
【特許文献4】国際公開第2020069889(A1)号
【特許文献5】国際公開第2021073946(A1)号
【特許文献6】欧州特許第3159093(B1)号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2357057(A1)号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】サントリニ,G.(Santolini,G.)ら, “Cut Quality Estimation in Industrial Laser Cutting Machines:A Machine Learning Approach”, 2019 IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition Workshops (CVPRW), IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers), 2019年6月16日
【非特許文献2】タッツェルL.(Tatzel L.)、レオンF.(Leon F.), “Image-based roughness estimation of laser cutting edges with a convolutional neural network”, 11th CIRP Conference on Photonic Technologies [LANE 2020], Procedia CIRP, 2020年9月7日, Vol. 94, p469-473
【非特許文献3】ジュスティA.(Giusti A.)ら, ”Image-based Measurement of Material Roughness using Machine Learning Techniques”, 20th CIRP CONFERENCE ON ELECTRO PHYSICAL AND CHEMICAL MACHINING,Procedia CIRP,2021年2月2日, Vol. 95, p377-382
【非特許文献4】デミトリO.(De Mitri O.)ら, “Image acquisition, evaluation and segmentation of thermal cutting edges using a mobile device”, SPIE Photonics, 2019年6月21日
【非特許文献5】ソウクップD(Soukup D)、フーバ-モルクR(Huber-Mork R), “Convolutional Neural Networks for Steel Surface Defect Detection from Photometric Stereo Images”, International Symposium on Visual Computing(ISVC) 2014: Advances in Visual Computing,Springer,pp 668-677, (https://pdfs.semanticscholar.org/b2b8/ab163fb0183325dd3458e3cbaad2f8bf265e.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の先行技術に基づけば、本発明の目的は、(オンラインで)品質推定を改善すること、特に、干渉および動的に変化するパラメータに対して品質推定をより堅牢にすることである。具体的には、品質推定は、現在切断されるワークピース材料、その合金および/もしくは表面、ならびに/またはその厚さに基づいて構成可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的は、添付の特許請求の範囲に記載の方法、校正モジュール、システム、およびコンピュータプログラムによって達成される。有利な実施形態、代替特徴、およびそれらに関連する利点は、従属請求項において見出すことができる。
【0017】
第1の態様によれば、レーザ切断機を使用する切断方法の品質推定を目的としたリアルタイム推定器を校正するための方法によって、上記の目的が達成される。方法は、次の方法ステップ、すなわち、
- 第1のセンサシステム、特に(オンライン)センサに基づくリアルタイム推定器の品質推定結果をロードするステップと、
- ワークピースの切断エッジの品質測定結果を提供するステップであって、特に、第2のセンサシステム、特に測定デバイス(例えば、オフラインカメラ)によって、完成した切断済みワークピースの測定信号を検出することによって品質測定結果が提供され得る、ステップと、
- ロードされた品質推定結果を、提供された品質測定結果と比較するステップと、その結果に基づいて、
- リアルタイム推定器を校正するための校正データセットを算出するステップと
を含んでもよい。
【0018】
本出願において使用される用語は以下のように定義される。
【0019】
本明細書における校正とは、具体的には、実際に測定された品質値のフィードバックを用いて、事前構成可能なスキームに従って定期的または反復的に推定器を調整することを意味する。したがって、校正は、切断プロセスについて言及しているのではなく、リアルタイム推定器についてのみ言及している。校正は、規制としても理解され得る。
【0020】
品質推定は、好ましくは、リアルタイムで、すなわち切断プロセス中に、したがってオンラインで行われる。品質推定は、いわば、切断対象のシート金属または材料上でのレーザ切断ヘッドの動きと並行して実施される。しかしながら、変形例では、品質は、テスト切断において推定され、したがって生産バッチの部品上では推定されない可能性もある。しかしながら、本明細書で提案される品質推定の利点の1つは、校正もテスト切断もなしに、進行中の切断プロセスにおいて継続的に品質推定が提供されることである。品質測定は、オフラインで、すなわち通常は切断後に実施される。本明細書における「品質測定」とは、測定された信号、特に光信号(例えば、カメラ画像)に基づいて現実の現在の切断エッジの品質を算出することを意味する。
【0021】
好ましい実施形態では、リアルタイム推定器は、推定アルゴリズムを実行するように設計される。推定アルゴリズムは、少なくとも、少なくとも1つのセンサの検出されたセンサ信号から、品質推定結果を算出する。推定アルゴリズム自体は、先行技術により知られている。例えば、ここで欧州特許第2357057(A1)号を参照する。当該文献では、フォトダイオードなどの光センサを介して信号を検出することによってレーザ機械加工プロセスの品質を監視するための方法が記載されている。品質を推定するために、画像処理方法を使用して信号から特性パラメータが算出され、対応するパラメータについて、標準切断品質に対する基準が算出される。サントリニ,G.(Santolini,G.)らの著書:Cut Quality Estimation in Industrial Laser Cutting Machines:A Machine Learning Approach,CVPR2019では、別の方法が概説されている。ここでは、切断品質に関する結論を導き出すために、センサおよびDNN(深層ニューラルネットワーク)が使用される。
【0022】
推定アルゴリズムは、欧州特許出願第20165589.1号に記載されている仕様に従って設計されることも可能であり、本明細書では、その内容について参照する。
【0023】
リアルタイム推定器の推定アルゴリズムは、機械学習方法を使用して設計され得る。具体的には、リアルタイム推定器は、モデル、好ましくは、ネットワーク層としていくつかの隠れ層、具体的には、畳み込み層(CONV)と、これに続く活性化層(ACT)と、これに続くプーリング層(POOL)とを有する、畳み込みネットワーク(CNN)を含むことができる。このシーケンス(CONV、ACT、POOL)は、1つまたは複数の全結合層および出力層が相互接続される前に、数回カスケードされ得る。
【0024】
リアルタイム推定器は、好ましくは、プロセス信号の時間次元にある情報内容を処理および抽出し、それにより経時的な信号プロファイルに関するステートメントの作成を可能にするために、時間アーキテクチャも有することができる。この事例ではDNNにおいて信号シーケンスをマッピングし、それにより時間依存の特徴を学習することを可能にするために、いわゆるゲート付き回帰ユニット(GRU:gated recurrent unit)または長短期記憶ネットワーク(LSTM:long short-term memory network)が、CNNと組み合わせて使用され得る。
【0025】
原則として、多数のネットワーク構造が存在するが、その中でも、カメラ画像を用いる目下のタスクには、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)および残差ニューラルネットワーク(RNN)が使用されることが好ましい。画像シーケンスまたは時間信号については、時間的関係または時間的特徴が学習され得る。これには、ゲート付き回帰ユニット(GRU)および長短期記憶(LSTM)ネットワークが好適である。上記のネットワーク構造を異なる層で組み合わせた複合ネットワークを使用することが有利である。
【0026】
本発明による方法、特に校正データセットの算出を含む校正方法は、機械学習モデルを使用することができる。例えば、行動報酬学習アルゴリズムを使用して、特に強化学習アルゴリズムを使用して、校正モデルおよび/またはリアルタイム推定器を適応させるための提供が行われ得る。特に好ましい代替実施形態は、タイプAの材料用に訓練されたリアルタイム推定器および/またはモデルをタイプBの材料用に転移させるための転移学習方法によって、校正モデルおよび/またはリアルタイム推定器が新しい材料(例えば、新しい合金または他の材料の厚さ)に適応されるという事実に基づいている。リアルタイム推定器がDNNのどの層でネットワークを再訓練するかに応じて、様々な抽象特徴を再利用することができる。さらなる発展形態では、転移学習方法を使用して、算出または学習された知識を他のタイプのプロセス、特にレーザ溶融切断、レーザ火炎切断、レーザ誘起プラズマ切断、プラズマ支援溶融切断、またはプラズマ支援火炎切断などの切断プロセスタイプに転移させることもできる。
【0027】
有利な拡張として、教師なし学習方法を使用してセンサデータから直接得られる特性値によって、モデルがサポートされ得る。これらのサポート用パラメータを算出するために、品質測定値は必要ない。その結果、品質測定値がわずかしかない場合でも、センサ信号またはデータにおける重要なプロセス変動が認識され得る。クラスタリング、オートエンコーダ、k-NN/k最近傍法などの次元削減技法、PCA/主成分分析などの方法が使用され得る。
【0028】
センサデータは、以下「センサ」(例えば、フォトダイオード、カメラ、OCT、音響センサ)と呼ばれる好適な第1のセンサシステムによって切断中に(オンラインで)、すなわちオンラインプロセス監視中に記録される、光学センサデータであることが好ましい。このセンサデータは、入力データとして推定アルゴリズムに転送される。本明細書で使用される「センサ」という用語は、センサユニットであると理解され、同じまたは異なるタイプの複数の別個のセンサを含むことがある。この方法で記録されたセンサデータ(デジタル)またはセンサ信号(アナログ)を、センサフュージョン技法を使用して組み合わせることができる。任意選択的な入力データ(利用可能な場合)は、材料のタイプ、厚さ、切断プロセス、レーザ出力、切断ガス圧力、ガスのタイプ、ノズルのタイプ/サイズ、送り量、ノズル間隔、焦点位置である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、データセットを一意にアドレス指定および識別することを可能にするために、また空間解像度を提供することを可能にするために、検出されたセンサデータおよび/または測定信号に、位置識別データ(位置識別子)が割り当てられる。これは、部品、特に切断エッジの同じ位置で取得されたそのデータセットに関する比較を後で実施するために重要である。したがって、これは、比較ステップのために同じ位置での測定値と推定値とを整合させる(対にする、または割り当てる)ことを可能にするために重要である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、第1のセンサシステムは、光学センサとして、特に切断ヘッド内に同軸に配置されたカメラとして実装される。代替的または累積的に、第1のセンサシステムまたはセンサは、音響センサ、または高温測定カメラを有する熱センサシステムなどの他の信号タイプを検出するためのセンサとすることもできる。第1のセンサシステムまたはセンサはセンサ信号を送信する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、第2のセンサシステムは、測定デバイスとして、特に光学測定デバイスとして(例えば、カメラとして)実装され、ワークピースの切断エッジでのオフライン測定信号を記録するために使用され得る。本明細書における「オフライン」とは、ワークピースが切断された後または部分的な切断プロセス後の感知検出を意味し、切断プロセスは、測定のために中断され、切断エッジの光学的検出を可能にする。第2のセンサシステムまたは測定デバイスは、仕分けシステム、搬送システム、および/または曲げシステムなど、レーザ切断機の下流システム内に配置され得る。しかしながら、測定デバイスは、例えば、製造部品を切断するために、好ましくは断続的に切断エッジを測定するために、レーザ切断機自体にも収容され得る。測定デバイスは、後で説明するように、品質信号の直接的な測定用にも設計され得る(例えば、粗面計)。測定デバイスは、マルチモジュールデバイスであってもよく、同じまたは異なるタイプの複数の別個のセンサ、検出器、測定モジュールを備えてもよい。第2のセンサシステムまたは測定デバイスは、測定信号を配信する。
【0032】
推定アルゴリズムの出力データは、切断プロセスにおいて現在達成されている切断品質に関する情報を含む。切断品質には、次の特性(網羅的ではない)、すなわち、粗さ、クレータ、バリ、スラグ残留物、溶接が含まれ、いくつかの特性は品質欠陥とも呼ばれる。特徴は、品質クラスで出力されることが好ましい。例えば、3つから6つの品質クラス、すなわち「非常に良好」、「良好」、「中程度」、「並」、「不良」が出力され得る。クラスのタイプおよび数は構成段階において構成され得る。したがって、出力データはカテゴリ別であり得る。しかしながら、より詳細な推定結果を提供するために、代替的または累積的に、数値を用いてバリ高さと粗さとの両方を0から1の間の連続した推定番号で指定することが可能である。しかしながら、現在は品質クラスの出力が好まれている。
【0033】
代替的または累積的に、品質推定器の推定アルゴリズムが、直接的な定量的特性、すなわち、例えばμmなどの測定単位でのバリ高さおよび/または測定単位での粗さを提供することが可能である。これは、その後の品質測定とのデジタル比較を簡素化する。
【0034】
代替的または累積的に、品質測定後にワークピースの切断エッジの品質測定結果を提供することが可能であり、それぞれの品質測定結果は、追加の方法ステップ、すなわち、推定器の定性的特性に従って品質測定結果を適切なクラスに分類するビニング法の対象となる。これは、カテゴリ値についての測定と推定との間の比較を簡素化する。
【0035】
ロード、提供、および比較の方法のステップは、記載された順序で実施されることが好ましい。センサによるロードおよびセンサ信号検出は、オンラインで、すなわち、生産的切断プロセス中または生産バッチの一部において行われ、一方、測定信号、特に完成した切断済み部品の切断エッジ画像の提供および検出は、1つ後の時間段階において、特に切断プロセスの完了後に測定デバイスを用いて行われることが特に好ましい。代替的に、測定信号の検出は、上記で説明したように切断プロセスに組み込まれことも可能である(切断エッジが部分的に露出したときの切断プロセスの中断)。
【0036】
推定アルゴリズムは、センサから好ましくは継続的に供給される入力データに基づいている。品質測定結果の提供は、測定デバイスによって供給される他の入力データに基づいている。
【0037】
測定デバイスの作動は、校正モジュールからの作動信号によって自動的に、または手動介入によってトリガされ得る。
【0038】
推定値と測定値(両方とも品質に関する)との比較および/または校正データセットの算出は、イベントベースであることが好ましい。第1の変形例では、比較および/または(校正データセットの)算出は、連続的に実施される。第2の変形例では、比較/算出は、常に実施されるのではなく、必要な場合に、特に事前構成されたイベントが発生した場合にのみ実施される。イベントは時間ベースまたは状況ベースとすることができる。具体的には、閾値が構成され得る。比較結果が構成済みの閾値を上回る偏差を示すとすぐに、校正データセットの算出が即座にトリガされ、リアルタイム推定器の校正もトリガされることが好ましい。しかしながら、特定の時間段階の間、すなわち、好ましくは偏差が閾値を下回るとき、したがって、推定値および測定値が同様に事前構成可能な公差範囲までに準拠しており、推定器の調整が必要ないことを偏差が示しているとき、算出が一時停止されるようにも構成され得る。
【0039】
校正データセットの算出は、新しい測定値の提供、切断プロセスの完了、時限イベント後、または事前定義されたイベント後(例えば、ワークピースシートの特定の領域が切断された場合もしくは偏差が閾値を超える場合、または他の構成可能なイベント)など、様々なイベントによって初期化またはトリガされ得る。これはトリガ構成要素において実装され得る。これにより、必要な場合にのみ比較が実行されるので計算能力が節約される。本発明の一実施形態では、リアルタイム推定器が校正を要求した場合にのみ、校正データセットの算出が実施され得る。
【0040】
リアルタイム推定器の校正はまた、イベントベースであり得、および/または、校正データの変更が発生したときにトリガされ得る。
【0041】
完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号の検出は、構成可能であり得る。したがって、画像の捕捉は、特定の時間間隔の後など、時間またはイベントのパターンに従って開始され得る。代替的または累積的に、センサ(フォトダイオードまたはカメラ)の読み取りは、特定のタイムスケジュールに従って構成および実施され得る。
【0042】
算出された校正データセットは、リアルタイム推定器および/または品質推定結果を再校正するために、リアルタイム推定器および/またはリアルタイム推定器の下流に接続された別個のリアルタイムモジュールに直接転送されることが好ましい。本発明の有利な実施形態では、校正データセットは、リアルタイム推定器の品質推定結果に適用されるオフセットを含む。最も単純な事例では、校正データセットは、リアルタイム推定器を適応させるための新しい設定値を含む。したがって、リアルタイム推定器を動的に連続的な再調整の対象とし、また切断プロセス中にも連続的な再調整の対象とすることが可能である。
【0043】
本発明のさらに好ましい実施形態では、校正データセットは、互いに割り当てられた品質推定結果および品質測定結果を用いて訓練された校正モデルの訓練済みパラメータを含む。
【0044】
品質測定結果は、測定デバイスによって切断後の部品の切断エッジの画像を捕捉することによって評価されることが好ましい。査定は、画像処理方法を使用して自動的に実行され得る。代替的または累積的に、記録された切断エッジの画像に、機械学習方法が適用され得る。代替的または累積的に、切断エッジがユーザによって調査されるという点において、捕捉された画像は、構成可能な品質基準に関して手動でも評価され得る。次いで、オペレータは、ユーザインターフェースを介してデジタル処理ユニットに自分の査定結果を提供することができる。この目的のために、ユーザに特定のボタンが提供され得る。この場合、品質測定結果は、ユーザインターフェースを介して入力データセットによって提供され得る。これは、特に、画像検出および自動アルゴリズム画像査定がエラーにより失敗した場合に実施され得る。
【0045】
代替的または累積的に、溝の深さ、溝の周波数、粗さ、および/またはバリの高さなどの光学的に検出可能な品質パラメータを直接測定するために、切断エッジを測定することによる自動化された方法での測定を用いることによって、撮像することなく品質測定結果が同様にもたらされ得る。この目的のために、光学的および/または機械的測定デバイスを使用して、粗さを測定すること(粗面計)および/またはバリを測定すること(グラジオメータ)ができる。具体的には、特に焦点移動法の原理に従って機能する光学3D測定システムを使用することができる。焦点移動法は、マイクロおよびナノ範囲の光学的高解像度3D表面測定のための領域ベースの方法である。本技術は、粗さ測定デバイスの機能と座標測定システムの機能とを組み合わせている。粗さは、DIN EN ISO4287規格に従って測定される。異なる粗さパラメータが区別される。レーザ切断面には、Ra平均輪郭粗さ、Rz平均輪郭粗さ、Sa平均表面粗さが好適である。
【0046】
一変形例では、方法または校正モジュールは、切断エッジの変色(例えば、酸化物層)を検出するように設計され、この変色も光学画像検出によって検出される。
【0047】
レーザ切断機は、工業生産の分野において使用されるシステムであることが好ましい。レーザ切断機は、例えば、適切な波長を有するファイバレーザまたはCO2レーザを含むことができる。ファイバレーザは通常、近赤外線波長、典型的には1070nmで動作する。現在のそれらの電力は少なくとも2kWである。現在、工業用に使用されている最大出力は約30kWであり、この傾向は増加している。ビームパラメータ積(BPP)は、典型的には約3~4mm mradであり、最大出力ではそれより若干高くなる。CO2レーザは、2~10kWの出力で10.6μmの波長および約10mm mradのビームパラメータ積で動作することができる。
【0048】
好ましい実施形態では、センサの作動および測定デバイスの作動は、同期的に行われず、特に異なるスキームに従って行われない。具体的には、センサは、継続的に作動しており、測定デバイスは、必要なときにのみ散発的にオンに切り替えられ、および/または作動され得る。さらに、2つの画像検出デバイス(センサ、測定デバイス)は、別個のデバイスであることが好ましい。言及した画像捕捉デバイスは、異なる位置および/または異なるデバイスもしくは構成要素上に配置され得る。センサは、典型的には、レーザ機械内、好ましくはレーザ切断ヘッド内に配置され、測定デバイスは、別個に、好ましくはモバイル端末デバイス内および/または仕分けシステムなどのハンドリングシステム上に配置される。どちらの画像検出デバイスも、校正モジュールおよびリアルタイム推定器への好適なデータインターフェースを有するように設計される。
【0049】
好ましい実施形態では、センサは、光センサとして、特にインプロセスカメラとして、および/またはフォトダイオードユニットとして、および/または音響センサとして設計され得る。センサは、基礎であり、リアルタイム推定器(以下では「推定器」とも呼ばれる)に入力信号を、例えばフォトダイオード信号の形式で提供する。
【0050】
測定デバイスは、1つまたは複数のセンサ、好ましくは光センサを含むことができる。測定デバイスは、少なくとも1つのカメラ、例えば、特にモバイル端末デバイスおよび/または自動化システム(仕分けシステム)に取り付けられるまたは割り当てられるカメラであり得る。測定デバイスは、品質測定に使用され、品質測定結果を提供する役割を果たすデバイスである。
【0051】
上記で説明したように、センサおよび測定デバイスは、2つの別個の区別可能なユニットであることが好ましい。具体的には、測定デバイスは、ユーザが携帯するカメラ付きスマートフォンなどのモバイルデバイス内の光学検出デバイスであり得る。スマートフォンまたは同等のモバイル端末(例えば、タブレット)には、捕捉された画像に基づいて品質査定を自動的に実施するアプリがインストールされ得る。
【0052】
代替実施形態では、切断プロセスについて、測定デバイスの測定信号も断続的に記録され得る。この目的のために、切断プロセス、または切断エッジを少なくとも部分的に露出させる部分切断プロセスの後、露出した切断エッジを上から見たときにその切断エッジを側面から捕捉するために、ノズル上に配置された偏向ミラーを含む(好ましくは自動の)ノズル交換が実施され得る。この場合、測定信号は、レーザ切断機上、特に切断ヘッド上に構成された測定デバイスを使用して記録される。後者の場合、切断中に加工ゾーンを観察してセンサ信号を検出するデバイス(センサ)は、切断済みワークピースの切断エッジを後で検出するデバイス(測定デバイス)と同じであり得る。センサは、画像信号検出を目的とすることが好ましい。この目的のために、画像信号は、生産的切断部または校正切断部のいずれかにおいて捕捉され得る。
【0053】
さらに好ましい実施形態では、測定信号、すなわち切断エッジの品質測定信号の検出は、実行時間および/または実行タイプに関して構成され得る。具体的には、モバイル端末(例えば、携帯電話のカメラ)による記録の時点、頻度、または回数は、それぞれのアプリケーションに応じて構成され得る。例えば、エラーが発生しやすい構成要素を切断する必要がある場合、より頻繁に測定および記録する必要がある可能性があり、その逆も同様である。さらに、必要に応じて、露光時間、焦点などの検出パラメータも変更され得る。例えば少なくとも1つの画像からの信号の検出、および/または品質測定結果の提供は、構成可能な間隔で、または構成可能なパターンに従って、または(例えば、仕分けまたは機械ハンドリングシステムのステータスからの)イベントに基づいて、散発的に制御され得る。
【0054】
別の好ましい実施形態では、事前構成可能な閾値を超える偏差が検出されたときにのみ、校正データセットが算出される。これは、校正データを不必要に送信する必要がなく、推定器上で校正手順を実行する必要がないという利点を有する。
【0055】
別の有利な実施形態では、メタデータが、検出されたセンサ信号および/もしくは測定信号に割り当てられ、ならびに/または割り当てられた方法で記憶される。メタデータは、例えば、検出時間、部品番号だけでなく、ワークピース材料(合金、厚さなど)に関係し得る。記録されたセンサ信号のメタデータから有益な情報が導出され得る。例えば、パターンが認識され、切断計画と比較され得る。例えば、推定する際、切断パラメータを変更することなく品質が軌道上で変化し、例えば半径が狭い場合は直線切断よりも品質が低下することが自動的に考慮され得る。これにより、例えば、これらの領域においてセンサをより頻繁に作動させることができる。代替的または累積的に、校正データセットを算出するとき、測定デバイスの記録された測定信号に関連するメタデータ(例えば、部品、ワークピースの識別情報、および/または時間情報など)も考慮され得る。
【0056】
原則として、メタデータは、他のソースから(例えば、切断計画から)からもロードされ、入力データとして校正モジュールが利用できるようになり、校正データセットの算出に含まれ得る。最も単純な事例では、様々な材料合金に対して算出されたすべての校正データセットを有するテーブルが作成され得る。同じ材料合金が後で再度切断される場合、切断の開始前に対応する校正データセットがロードされ得、これは、リアルタイム推定器が切断開始直後から可能な限り最良に校正されることを意味する。
【0057】
さらなる発展形態および有利な実施形態では、校正データセットは、特に材料および/または切断プロセスに対して算出される。材料固有の情報は、材料のタイプ(例えば、安価な鋼板としてのSt37もしくはS235などの合金、または高品質レーザシートとしてのRuukkiレーザ)、材料の厚さ、および/または表面特性(例えば、コーティングされていないもしくは着色されている、またはサンドブラストされているもしくはスケーリングされている)に関する情報を含み得る。切断プロセス固有の情報は、溶融切断、火炎切断、レーザ誘起プラズマ切断、プラズマ支援溶融切断またはプラズマ支援火炎切断などの切断プロセスに関する情報を含み得る。しかしながら、切断プロセス固有とは、切断機の重要なプロセスパラメータが校正データセットの算出に含まれていることも意味する。プロセスパラメータを含めることは、校正モデルが使用されるとき、具体的には、校正モデルを訓練するときと、リアルタイム品質推定器の下流でのそのリアルタイムアプリケーションを訓練するときとの両方で追加の入力として直接使用され得るときに特に有利である。重要なプロセスパラメータは、レーザ出力、送り量、焦点位置、切断ガス圧力、およびノズル間隔である。
【0058】
別の有利な実施形態では、校正データセットを算出するために校正モデルが使用され、最も単純な事例では、校正モデルは、現在の品質推定結果に対する校正された品質推定結果を算出するために、互いに割り当てられた品質推定結果および品質測定結果を用いて訓練されていることが好ましい。
【0059】
教師あり学習の方法を使用して訓練されたモデル(本明細書における「校正モデル」)として、人工知能または機械学習において一般的なモデルが使用されることが好ましい。校正モデルは、記憶されているリアルタイム推定器の中間結果、特に、出力層の前に配置された、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)のニューロンの活性化値の形式でのリアルタイム推定器の中間結果を訓練データとして追加で使用することによって訓練され得る。
【0060】
モデルは、人工ニューラルネットワーク(ANN)、MLP(多層パーセプトロン)、回帰モデル、回帰木または分類木、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト、勾配ブースト木を含むか、または前述のモデルから組み合わされ得る(アンサンブル学習法を使用したもの)。入力データおよび学習データは画像データではなく、2つの独立変数、すなわち推定値および測定値である。出力データは、校正された推定値および/または校正データセットを含む。基本的に、様々な実装オプションがある。MLP(全結合)は回帰モデルと同等に使用され得るが、後者は、より単純であるので、実装の観点から利点を有する。校正モデルの変形も使用され得ることが留意されるべきである。変形例では、リアルタイム推定器の中間結果(CNN層による活性化値)も使用される。本明細書では、MLPおよび/または柔軟なモデル(SVM、ランダムフォレストなど)が使用されるべきである。
【0061】
モデルは、回帰モデル、有利には2次線形回帰モデルを含むことができる。これは、少数の入力変数(最大約10個)を用いて非常に使いやすく、2つのパラメータ間の非線形性および相互作用をマッピングすることもできる。本明細書では、反復を必要としない最小2乗法(OLS:通常の最小2乗)を使用するので、訓練はわずかな計算能力しか必要としない。
【0062】
サポートベクターマシン(SVM)などの柔軟な校正モデルが好ましい。代替的に、ランダムフォレスト(複数決定木)、またはXGboost(勾配ブースト木)を使用して適合されたモデルも使用され得る。
【0063】
アンサンブル学習手法が実装され得ることが好ましい。アンサンブルでは、正確度の向上または予測の改善を実現するために、出力値を平均化することによって(回帰の場合)または多数決をとることによって(分類の場合)、いくつかのモデルが実行時に同時に訓練および評価される。
【0064】
モデルはまた、統計モデルの形式であるか、または統計モデルを含み得る。
【0065】
校正モデルは、リアルタイム推定器によって最初に提供された品質推定値から校正された品質推定値を算出するように訓練されることが好ましい。校正モデルは、訓練データまたは入力データが使用されるときに、割り当てられた品質測定結果データとともにリアルタイム推定器の中間結果を記憶することによって訓練され得る。リアルタイム推定器の中間結果は、特に、学習された、すなわちパラメータ化されたフィルタ(カーネル)によって抽出されたCNNの特徴、すなわち、分類器の層(全結合出力層)が配置される前の畳み込みニューラルネットワーク層(CONV層)以降のニューロンの活性化値を含む。フィルタカーネルは、CNNのパラメータ化されたカーネルであり、通常、実行時またはオンライン動作中、すなわち、切断動作中に第1のセンサ技術がリアルタイムデータを継続的に供給して、リアルタイム推定器がこのリアルタイムデータから品質を推定している間は、変更不能であり、一方、(対応するCONV層の)活性化値は、(対応するCONV層の)フィルタカーネルを用いて現在のリアルタイム画像データからオンラインモードで算出された値を表す。しかしながら、フィルタカーネルは、リアルタイム推定器を再訓練することによって、例えば転移学習によって、または行動報酬学習によって、特に強化学習によって適応され得る。新しい材料、シートの厚さ、および/または新しい切断プロセスを用いることで、より複雑な転移学習方法により、進行中の生産中でもプロセスセンサの信号と生産に重要な品質特性との新しい相関関係の学習が可能になり、したがって、オンライン品質推定手段の認知力および性能が向上する。
【0066】
リアルタイム推定器の入力データは、センサ信号、特にプロセスセンサ、すなわち主にインプロセスカメラおよび/またはフォトダイオードの信号である。代替的または累積的に、ライトフィールドカメラおよび/または音響センサなどの他のセンサが使用され得る。リアルタイム推定器の出力は、算出された品質推定結果である。
【0067】
原則として、本明細書で提示される方法の利点の1つは、校正切断の実行なしに方法を使用できることである。校正切断は任意選択とすることができ、必須ではない。リアルタイム推定器および方法のステップ、特にロード、提供、および比較は、校正セグメントが実施された後に任意選択的に実施され得る。例えば、切断エッジの信号の検出は、校正切断部上でまたは校正切断部なしで切断計画の実行の一部として直接実施され得る。
【0068】
画像生成器の測定信号、好ましくは光学測定信号の検出は、偏向ミラーを介して、および/または特に切断プロセス(オンライン)に対して断続的にも行われ得る。測定信号の検出も、好ましくは断続的に行われ得る。これは、切断プロセス中にエッジがすでに断続的に測定されているので、切断機の外部でエッジを測定する必要がないという利点を有する。この目的のために、例えば、金属シートのエッジに校正切断部が作成され得るか、または偏向ミラーを使用して、内側部分が切断グリッドを通過して落下した区域において、センサ(第1のセンサシステム)によって切断エッジの画像が直接作成され得る。
【0069】
上記では、目的の達成について方法の観点から説明した。このように述べられた特徴、利点、または代替実施形態は、特許請求される他の主題にも適用されることが可能であり、またその逆も同様である。言い換えれば、(例えば、システム、または校正モジュール、またはコンピュータプログラムを対象とする)本特許請求の範囲は、方法に関連して説明および/または特許請求される特徴を用いることによりさらに発展し得る。したがって、方法(例えば、ロード)の対応する機能的特徴は、システムまたは製品(例えば、ロードインターフェース)の対応するモジュールによって、特にハードウェアモジュールまたはマイクロプロセッサモジュールによって形成され、またその逆も同様である。
【0070】
さらなる態様によれば、本発明は、レーザ切断機を使用する切断方法の品質推定を目的としたリアルタイム推定器を校正するための校正モジュールに関し、校正モジュールは、
- リアルタイム推定器の品質推定結果をロードするためのロードインターフェースと、
- ワークピースの切断エッジの品質測定結果を提供することを目的とした第1のプロセッサであって、特に、完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号を測定デバイスによって検出することによって品質測定結果が提供され得る、第1のプロセッサと
を備え、
- 第2のプロセッサは、ロードされた品質推定結果を品質測定結果と比較することを目的とし、その結果に基づいて、特に偏差の検出に基づいて、
リアルタイム推定器を校正するための校正データセットを算出することを目的とし、
校正モジュールは、
- 算出された校正データセット(k)を出力することを目的とした出力インターフェース(A)
を備える。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、レーザ切断機に使用される、上記で説明されたリアルタイム推定器および校正モジュールを有するシステムに関する。リアルタイム推定器および校正モジュールは、分散システムとして設計され得、同じ構造ユニットに実装される必要はない。これにより柔軟性が大幅に向上し、校正データセットの算出および/またはリアルタイム推定器の校正などの計算集約型のプロセスが、強力サーバにアウトソーシングされ得る。具体的には、品質測定結果を配信する第1のプロセッサ、ならびに、校正データセットを比較および算出する第2のプロセッサは、マシン上のコンピュータ上でローカルに実行することができ、または、これらのプロセッサは、ネットワークサービスとして、特にクラウドベースのサービスとして実行することもできる。これは、大規模な校正モデルの訓練またはオンライン品質推定器の完全な再訓練など、計算集約型のステップをマシン上でローカルに行う必要がないことを意味する。クラウドベースの解決策の別の利点は、訓練データが一元的に収集され、切断対象となるより多くの種類の材料を通じて生産システムが潜在的に相互にメリットを享受できることである。
【0072】
好ましい実施形態では、システムは、センサを備えるか、またはセンサとデータ通信状態にある。センサは、インプロセスセンサ、例えばカメラとして設計され得ることが好ましい。
【0073】
校正データセットは、リアルタイム推定器を校正または再調整するために使用される。単純な再調整は、単にリアルタイム品質推定に適切なオフセットを追加することである。測定値または実際に決定された値と推定値との差分は、粗さまたはバリなどの品質パラメータごとに形成される。いくつかの切断エッジが撮影された場合、同じ特性値のすべての差分値が平均化される。次の切断ジョブでは、平均化された差分がリアルタイム品質推定の特性値にオフセットとして追加される。これにより以前の偏差が補正され、切断品質がリアルタイムでより正確に推定され得る。この単純な方法の利点は、撮影される切断エッジごとにリアルタイム推定の特性値のみを記憶するだけでよく、リアルタイム推定を修正するために複雑な算出を実施する必要がないことである。
【0074】
再調整のための別の方法は、校正モデルを訓練するための入力値として全体的に、撮影された切断エッジごとに、すべての決定された品質パラメータまたは測定された品質測定結果がラベル(Y値)として使用され、すべての推定値または以前に記憶されたリアルタイム品質推定の品質推定結果が説明値(X値)として使用されることを実現する。したがって、再調整のために上記のデータを用いて校正モデルが訓練される。訓練の結果は、切断されたシート金属に最適に適応された校正モデルのパラメータ表現である。
【0075】
次の切断ジョブでは、センサのリアルタイム品質推定値が、すでに訓練された校正モデルによってリアルタイムで修正される。このさらなる発展形態の利点は、元のリアルタイム推定値間の非線形関係が校正モデルにマッピングされ、再調整がより正確になることである。
【0076】
再調整のためのさらなる方法は、校正モデルを訓練するための入力変数としてリアルタイム品質推定の記憶された中間結果をさらに使用することにある。深層ニューラルネットワーク(DNN)を切断品質のリアルタイム推定器として使用する場合、リアルタイム品質推定の暫定的な結果は、例えば、利用可能な出力層/分類器の前にある、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の層の後のニューロンの活性化値である。これらの中間結果は、元のセンサデータと比較して、品質パラメータに関する非常に強力に圧縮された情報を含む。可能な分類器として、すべてが結合されている(全結合)層で構成される従来のニューラルネットワークが挙げられる。この方法の利点は、校正モデルを訓練するための入力データが高次元であり、再調整がより精密に実施され得ることである。さらに、リアルタイム品質推定の中間結果にアクセスすることで、材料組成およびシート厚さがわずかに変更された場合でも、再調整のより良い一般化を実現することが可能になる。
【0077】
事後調整のための別の方法は、校正モデルを別途使用せずにリアルタイム品質推定器が直接事後訓練されることである。この目的のために、現場測定で特定された品質特性値、すなわち品質測定結果はラベルとして使用され、割り当てられ記憶された元のセンサデータは事後訓練のための入力データとして全体的に使用される。その結果、新しいデータが比較的少ない状態でDNNをリアルタイム品質推定器として使用する場合でも、良好な校正が達成され得る。
【0078】
最後の2つの方法の別の利点は、それらの方法が転移学習を実装するために使用され得ることである。人工知能において、転移学習とは、学習された知識を特定のドメインから別のドメインに転移させるタスクを指す。学習された知識は、最初はリアルタイム品質推定器において利用可能であり、以前の再訓練によってすでに特殊化されている可能性があり、したがって、十分な新しいデータが利用可能な場合は同じ方法を用いて、新しい材料およびシート厚さ、ならびに切断プロセスのタイプ(レーザ溶融切断、レーザ火炎切断、レーザ誘起プラズマ切断、プラズマ支援溶融切断、プラズマ支援火炎切断)に適用され得る。
【0079】
新しい材料を用いることにより、(測定デバイスを使用する)現場品質測定を状況に応じてオペレータによって再調整することができ、その結果、オペレータによって所望される品質特徴を所望の形式で決定できる場合は特に有利である。
【0080】
再調整のための上記の方法のさらなる発展形態は、切断材料およびシート厚さ、ならびに必要に応じて他の際立った特徴(材料組成または合金、表面、切断プロセス設定)ごとに、補正値、または校正モデルのパラメータ表現、または再訓練済みリアルタイム品質推定器が保存されることである。次の切断ジョブでは、現在ロードされている材料、シート厚さなどに応じて、適切な補正値、校正モデルの適切なパラメータ表現、または適切な事後訓練済みリアルタイム品質推定器が再ロードされる。その結果、リアルタイム品質推定を特定の材料に対して非常に精密に実行することができ、新しい切断ジョブの開始時から品質の損失が確実に検出される。
【0081】
リアルタイム切断品質推定を再調整するための上記の方法のさらなる発展形態は、再調整プロセスを連続的な行動報酬プロセス(行動報酬)として実装することにある。これは、リアルタイム品質推定器全体または校正モデルを完全に再訓練する代わりに、強化学習によって、切断品質の現場測定ごとにリアルタイム品質推定器のモデル適応が実施されることを意味する。このさらなる発展形態では、このモデル適応は、有利なことに、リアルタイム推定器のDNNのパラメータに直接影響を与える。次いで、強化学習アルゴリズムは、より良好に推定できるようにDNNの多くのパラメータを調整することができる。これにより繰り返しの再訓練が不要になり、これは、より複雑な方法を諦める必要なしに、短い間隔での現場測定に有利である。
【0082】
したがって、説明された方法を用いることで、変わりやすい影響要因を伴う不利な生産条件下でも、切断品質をオンラインまたはリアルタイムで信頼性の高い正確度で測定することが可能である。新しい材料、シート厚さ、および切断プロセスを用いることで、より複雑な転移学習方法により、進行中の生産中でもプロセスセンサの信号と生産に重要な品質特性との新しい相関関係の学習が可能になり、したがって、リアルタイム品質推定の認知力および性能が向上する。
【0083】
測定デバイスが実装されていない、または不利な位置に配置されている場合、オペレータがカメラの前、またはさらにはセンサの前で切断済み部品を手で保持することもできる。
【0084】
判定された切断品質が満足できるものでない場合、切断パラメータ(レーザ出力、レーザ光の焦点位置、切断ガス圧力など)を変更して切断品質を向上させることができる。リアルタイム品質推定が実装されている場合、切断パラメータを変更すると、切断品質の変化を即座に判断することができる。リアルタイム品質推定が実装されていない場合、切断パラメータの変更による切断品質の変化は、次の切断計画でのみ確認することができる。判定された切断品質を使用する前述の切断パラメータの(「閉ループ」での)制御には、人間の介入は必要ない。
【0085】
原則として、「オフライン」またはオフライン品質判定という用語は、切断プロセス中に行われるオンライン品質推定とは対照的に、切断中には実施されずに完成した切断済み部品に対して実施される品質測定または判定であると理解されるべきである。
【0086】
変形例では、オフライン品質判定は、ハンドリングシステムを使用する代わりに、次のように切断テーブル上でも実施され得る。校正切断部(矩形の穴)が作成され、切断ヘッドカメラ、すなわちインプロセスカメラを使用して、ノズルチェンジャと併用される(歯医者のミラーに類似した)45°ミラーを有する特殊なノズルを使用して、切断品質が判定される。下方のエッジの領域におけるバリも、ミラーを用いて測定され得る。この変形例の利点は、これを切断プロセスの開始時および/または切断プロセス中に行うことができ、したがって部品品質を即座に最適化できることである。特定の環境下では、ミラーを挿入するために切り欠きが実際に必ず空いているように、デバイスを使用してシート金属から矩形の穴が取り除かれる必要があるか、または廃棄物破砕が使用される。
【0087】
除去ロボットまたは仕分けシステムを用いる代わりに、レーザ切断機の切断テーブル上でオフライン品質判定(測定デバイス)を直接実施することが可能な別の変形例は、シートのエッジに校正切断部を作成するように実施され得る。切り取られた領域は落下する。露出した切断エッジは、測定デバイス、例えば機械に内蔵されたカメラを用いて側面から撮影される。これにより、切断直前または切断中に数回、画像から切断品質を判定することが可能になる。次いで、判定されたオフライン切断品質は、切断品質のリアルタイム推定器を更新するために、または切断パラメータを直接適応させるために、すなわち切断品質を最適化するために使用され得る。この変形例の利点は、画像品質が常に同じであり、特別なノズルおよびノズルチェンジャが必要ないことである。さらに、切断プロセスの開始時および/または切断プロセス中に校正を行うことができ、したがって、部品品質を直接最適化することができる。
【0088】
特定の材料性質(化学組成、圧延方向、冷間/熱間圧延、表面の構造および質感など)が特徴的なリアルタイム推定値およびオフライン品質測定値につながることが判明した場合、この相関関係を使用して、前述の材料性質を推定することができる。これらは、曲げ機などの後続のシステムに渡されることも可能である。この情報を用いることで、曲げ機は、例えば材料の弾性復元力を算出し、(必要な余分曲げを正しく選択することによって)最初の部品を正しく曲げることができる。
【0089】
この目的を達成する別の方法は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるかまたはコンピュータのプロセッサにロードされたときに、上記でより詳細に説明した方法のすべての方法ステップを実行するためのコンピュータプログラムコードを有する、コンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムがコンピュータ可読媒体に記憶されることも可能である。本発明の好ましい実施形態では、コンピュータプログラムは、上記で説明された方法を実施し、前述のさらなる発展形態を任意選択的に実施することができる。
【0090】
以下の図面の詳細な説明では、図面を参照しながら、非限定的で例示的な実施形態について、それらの特徴およびその利点とともに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】割り当てられたハンドリングシステムを有する切断システムの例示的なスケッチを示す図である。
【
図2】測定デバイスとして機能する統合カメラシステムを有する切断システムのさらなる図である。
【
図3】異なる品質の切断エッジを有する2つの切断サンプルの写真を示す図である。
【
図4】異なる品質の切断サンプルのさらなる図である。
【
図5】プロセス監視ユニットを有するレーザ加工ヘッドの概略図である。
【
図6】本発明の校正システムの好ましい実施形態による構成要素のアーキテクチャの概略図である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態による流れ図である。
【
図9】本発明のさらに好ましい実施形態によるシステムの概要図である。
【
図10】校正モデルとリアルタイム推定器との相互作用の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明は、レーザ切断機Lの切断結果の品質を推定するためのリアルタイム推定器ESを校正するための校正ツールまたは校正モジュールおよび校正方法に関する。
【0093】
図1は、ワークピースをレーザ切断機Lの中に送り、レーザ切断機Lの外へと取り除くことを目的とした、シャトルテーブルWを有するレーザ切断システムを概略的に示す。システムは、除去ロボットRおよび部品仕分け機Tも含む。部品仕分け機Tは、部品認識に加えて切断品質が推定され得るカメラをすでに有している。システムは、2つのコンベヤベルト23、24を備えることができる。シャトルテーブルWは、ワークピースを保持するために使用される。システムは、荷下ろしパレット27を含んでもよい。参照符号21は、少なくとも1つのコンベヤベルトを有する仕分けブリッジを表す。参照符号22は、ユーザインターフェースを含む制御パネルを指す。荷下ろしロボット20は、部品が切断された後に部品をシャトルテーブルWから荷下ろしする役割を果たす。
【0094】
図2は、切断面画像を捕捉するためにも使用されるカメラシステムKを含む除去ロボットRを有する、同様のシステムを示す。荷下ろしロボット20は、測定および仕分けされる切断済み部品33を持ち上げるために、把持アーム、具体的には吸盤を備えることができる。システムは、仕分けブリッジに位置し得る部品シュート31を含んでもよい。
【0095】
典型的なプロセスを以下に説明する。
【0096】
金属シートの切断計画がロードされる。機械制御システムは、切断エッジの現場カメラ記録(測定デバイスからの測定信号)に好適な最初の直線切断を識別する。品質パラメータが適切に平均化され得るように、長さ数cmの直線切断が好適である。切断プロセスも静止しているべきであり、すなわち、切断ヘッドは、選択されたルートに沿って加速するべきではない。この直線切断が実施される場合、センサDによる加工ゾーンのカメラ記録も含むプロセス監視信号、およびそこから推定される切断品質q’(特にバリの高さおよび粗さ)が記憶される。センサ信号に関するメタ情報、すなわち、選択された切断部の座標および時間、および連続する部品番号、ならびに以下で説明するリアルタイムの切断品質推定の暫定的な結果も保存される。
【0097】
切断計画がロードされると、どの部品またはどの切断エッジがオフライン測定に好適であるかが判断され得る。切断エッジは、理想的には以下の基準を満たしている必要があり、それに応じて選択パラメータが設定される。
- 重すぎず容易に交換可能な部品の切断エッジ
- 品質パラメータが適切に平均化され得るように、少なくとも1cmの長さの直線切断エッジ
- 定常的な切断が行われる、すなわち切断ヘッドの加速が発生しない切断エッジ
【0098】
上記の基準を満たす切断計画ごとに、すべての切断エッジ区域から、以下のパラメータが選択され得る。
- オフライン測定(測定デバイスを使用した測定2)によって時間の遅延/生産性の損失が生じないような方法での選択
- オフライン測定によって最大xy%の生産性の損失が生じ、それによってxy値が設定され得るような方法での選択
【0099】
選択されたxy%値に応じて、選択された切断エッジ区域が切断計画全体で均等に分散される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、センサ(オンライン)からの不十分な測定結果も、測定デバイスまたはカメラ(オフライン)からの測定結果を用いて補償され得る。(センサDを使用した)測定1の品質推定が不十分な品質を示す場合、この測定1は保存され、その後、部品/切断部は、センサ2(測定デバイスK)を使用して測定される。これは、不良な切断部から、または測定1の不良な切断部に従ってデータを与え、より広い品質範囲にわたって校正モデルが訓練され得、これにより校正の正確度が向上する。その結果、擬似エラー(誤検知:測定1は不良を示し、測定2は良好を示す)の割合が低減し得る。
【0101】
すべての部品が金属シート全体にわたって切断されると、切断された金属シートは、機械へ搬送され、自動シャトルテーブルを使用して仕分けテーブルへ搬送される。仕分けテーブルにはロボットアームおよびカメラKが存在している。ロボットアームは、切断されたシート金属を仕分け、異なる断片を適切なビン(またはパレット)に積層する。現場測定のために好適な切断エッジが識別され、またその座標が既知である部品が、ロボットアームによってつかまれる場合、選択された切断エッジは、積層前にカメラKに供給される。次いで、切断エッジは、例えば様々な方向からなどの好適な方法で写真撮影される。切断品質は、既知の様式で写真から判定または測定され得る。
【0102】
ここで、検出されたセンサ信号に基づくリアルタイム品質推定と、測定信号に基づく(現場)品質測定とを比較することができる。2つの品質値が、許容公差内、典型的には<10%(閾値はパラメータ化され得る)でのみ互いに乖離している場合、リアルタイム推定は再調整される必要はない。偏差がより大きい場合、リアルタイム推定値は、好適な方法で校正されるべきである。
【0103】
図3および
図4は、異なる切断品質を有する切断エッジを示す。それぞれの品質は、明確に区別され得る。したがって、
図3では、左側の方が右側よりも粗さが明らかに小さい。
図4は、異なる切断品質を有するいくつかの切断サンプルの写真を示している。具体的には、左側では隆起の強い形成が明白であるが、中央の画像にはわずかな隆起しか存在しない。右の画像は下からの切断エッジを示しており、これにより、ここでもバリの形成が明確に見てとれる。側面からの画像(左および中央)ならびに下からの画像(右)は、オフライン品質測定に使用することができる。他の視点も可能である。カメラ画像に基づいてオフライン品質測定を校正するために、既知の品質のサンプル(例えば、左端および/または右端)も使用することができる。
【0104】
図5は、リアルタイム推定器ESの品質推定結果につながる第1の測定を実施するためのまたはセンサ信号を取得するための同軸カメラの形式の例示的なセンサシステム5を有する、例示的な切断ヘッド1を示す。例示的な切断ヘッドは、搬送ファイバ7を介して切断ヘッドへ導かれる作業用レーザビーム6用の集束レンズ2、プロセス観察ユニット/カメラ5を介したプロセス観察のためのプロセス観察ビーム経路4を分離するためのダイクロイック偏向ミラー3、プロセス観察最適化のための絞りおよび/またはフィルタ、ならびに、自動集束レンズ調整を使用する例として示された、切断パラメータが適応され得る際に用いるユニット9も示す。ワークピースには参照符号10が付されている。
【0105】
図6は、好ましい実施形態による校正システムを示す。校正モジュールKMは、本発明の焦点であり、リアルタイム推定器ESを校正するために使用される。
【0106】
図6に示すように、2つの監視プロセスがある。
1.切断中のオンラインプロセス。このプロセスでは、センサまたは検出器Dを有する第1のセンサシステムがアクティブである(
図6の左側)。
2.切断後のオフラインプロセス。このプロセスでは、測定デバイス、特にカメラKを有する第2のセンサシステムがアクティブである(
図6の右側)。
【0107】
センサ(オンライン)からのセンサ信号は、リアルタイム推定器ESが品質推定結果を出力できるように、リアルタイム推定器ESに供給される。測定デバイス、特にカメラKからの測定信号は記録され、品質測定結果qを算出するためにアルゴリズムによって算出される。
【0108】
具体的には、校正モデルは、入力(および任意の中間結果)として品質推定結果q’および校正データセットkを用いて、リアルタイム推定器ESの算出サイクルにおいてオンラインで評価または適用または評価される。校正モデルは校正モジュール内で訓練され、これについては、
図6においてボックス「校正データセットの算出」に記されている。
【0109】
図6に示すように、光学センサシステム(例えば、カメラ)は、必ずしもセンサ(オンライン、第1のセンサシステム)および/または測定デバイス(オフライン、第2のセンサシステム)に使用される必要はない。代替的または累積的に、音響センサ、粗面計など、他のセンサタイプが使用され得る。別の利点は、第1のセンサおよび第2のセンサが必ずしも同一である必要がないという点に見られる。したがって、第1のセンサを、高速オンラインセンサとして使用するために最適化された、様々な光検出器(カメラ、フォトダイオード)で構成されるモジュールにすることが可能である。一方、測定デバイスを有する第2のセンサは、例えば高解像度カメラを使用してオフライン切断品質を記録するために最適化される。第2のセンサとしてのカメラの利点は、切断面を迅速に記録できることであり、これは、例えばロボットによって荷下ろしするときの要件である。それでもなお、表面トポグラフィーを検出するための光学測定デバイス、または粗さを測定するための機械的測定デバイス(粗面計)もしくは別の機械的測定システムを、第2のセンサシステムとして使用することもできる。検出された両方の信号タイプは、アルゴリズムによって、結果、すなわち品質推定結果および品質測定結果に変換され、これらの結果は再度比較され得る。
【0110】
図6に示すように、算出された校正データセットkは、校正モデルを評価するためにも使用され得る。これは、校正された品質推定結果q’’を提供する役割を果たす。
【0111】
図7は、品質推定結果と品質測定結果との間の相互作用を再び概略的に示す。校正モジュールKMは、ロードされた品質推定結果および品質測定結果から校正データセットkを算出する。最も単純な事例では、これは、校正として推定値に適用されるオフセットとすることができる。次の切断では、校正された推定器がすでに適用されて、より正確な推定値を提供することができる。
【0112】
図8は、本発明の好ましい実施形態によるリアルタイム推定器ESを校正するための本発明の好ましい実施形態による流れ図を示す。方法の開始後、ステップS1において、リアルタイム推定器ESの品質推定結果q’がロードされ、この品質推定結果q’は、切断中に、特定の切断部のセンサまたは検出器Dのセンサ信号から、典型的にはインプロセスカメラの映像データから算出および記憶されたものである。この目的のために、センサ信号が記録されており、ステップS11において、推定アルゴリズムを使用してそのセンサ信号から品質推定結果が算出および記憶される。ステップS2において、品質測定結果qが提供される。この目的のために、ステップS21において、校正モジュールによって出力され得るトリガ信号に応答して、(カメラKによって)測定信号、例えばワークピースの切断エッジの画像または画像シーケンスが記録され、これが、品質測定結果qの算出の基礎を提供する。代替的に、
図9に関連して以下でさらに説明するように、ユーザがユーザインターフェース22上に自分の入力を手動で入れる場合、カメラによる記録を省略することもできる。ステップS3において、品質データセットの2つのインスタンス、すなわち、品質推定結果q’および品質測定結果qは、整合性について比較され得る。偏差がある場合、または偏差が特定の公差範囲を超えている場合、ステップS5においてリアルタイム推定器ESを校正または再調整するために、ステップS4において校正データセットkが算出および出力され得る。これは、推定アルゴリズムの適切な設定パラメータを使用することによって行われ得る。方法は、
図7に示すように、矢印がステップS5からステップS1に戻るように分岐して、切断プロセス全体にわたって断続的に適用され得る。しかしながら、校正手順の期間および/または頻度を定義するために、事前に構成が可能であることが好ましい。トリガ信号またはトリガもパラメータ化され得る。切断プロセスの特定の区域(例えば、ワークピース)に対する推定が一定のままである(したがって、この区域についての推定結果が1回だけ提供される必要がある)が、例えば異なる品質パラメータに対するいくつかの測定信号が、ステップS5からステップS2に戻るように分岐されるように提供されることも可能である。
【0113】
図9は、リアルタイム推定器ES用の校正モジュールKMの別の可能な実装の実施形態の変形例による概略図を示しており、リアルタイム推定器ESは、オンラインでの、すなわち切断プロセス中またはリアルタイムでの、好ましくは進行中の連続的な品質推定用に設計されている。信号b
D、好ましくは光信号は、センサD、具体的には、例えば切断ヘッドおよび/もしくはフォトダイオードの側面に、または同軸上に、またはその中に取り付けられ得るインプロセスカメラから、リアルタイム推定器ESに連続的に供給される。信号b
Dは、品質推定結果q’へと処理され、この品質推定結果q’は、その名の通り、現在の切断プロセスの想定される品質を推定することを目的としている。しかしながら、レーザの状態が変化するため(摩耗、経年変化など)、またワークピース材料も異なるため、また他の影響要因に起因して、品質が不正確に推定されることがあり、これが不利な設定につながり、実際に品質が不十分になる可能性がある。これは、実際に測定された切断品質に基づいてリアルタイム推定器ESが校正または再調整の対象となる本発明によって回避され得る。この目的のために、選択された切断済み部品の写真b
Kを撮影する測定デバイスKが設けられる。構成段階において、例えば、切断計画に応じて、いくつの部品およびどの部品が記録の基礎の役割を果たすべきかが設定および構成され得る。測定デバイス、または特にカメラKは、レーザ切断機L上にレーザ切断機とは別に、またはフォローアップシステム(
図2に示す仕分けロボット)上に配置され得る。カメラKは、事前構成可能なイベントに従って写真b
Kを撮影するように制御され得る。これは散発的に発生し得る。カメラKはまた、スマートフォンまたはタブレットなどのモバイルデバイスにも配置され得る。
図9には、リアルタイム推定器ESの品質推定結果q’をロードするための、校正モジュールKMのロードインターフェースEが記されている。任意選択的にレーザヘッド上に配置され得、オンラインプロセス監視に使用される偏向ミラーは、参照記号Uによって識別されている。この目的のために、切断エッジを少なくとも部分的に露出させる部分切断プロセスの後、露出した切断エッジを上から見ながらその切断エッジを側面から検出するために、好ましくはノズル上に配置された偏向ミラーが使用され得る。この場合、測定信号は、レーザ切断機上、特に切断ヘッド上に構成された測定デバイスを使用して記録される。後者の場合、切断中に加工ゾーンを観察してセンサ信号を検出する検出器D(センサ)は、切断済みワークピースの切断エッジを後で検出する構成要素(測定デバイス)と同じ構成要素とすることができる。センサは、画像信号検出を目的とすることが好ましい。この目的のために、画像信号は、生産的切断部または校正切断部のいずれかにおいて捕捉され得る。
【0114】
図9に示すように、カメラKは基本的にセンサDから独立している。したがって、2つの別個の光学検出デバイスが、システムの異なる構成要素および/または位置に設けられる。本発明の変形例では、別個のカメラを必要としないように、機能を1つのデバイス(特にセンサD)に組み合わせることもできる。
【0115】
カメラKは、捕捉された画像データを、
図9においてインターフェースssと表記された有線接続または無線接続を介して校正モジュールKMの第1のプロセッサP1に送信するように設計される。第1のプロセッサP1は、完成した切断済みワークピースの切断エッジの品質測定結果qを提供することを目的としており、品質測定結果qは主に、カメラKによるそれぞれの完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号の検出と、任意選択的にそれに続く人工ニューラルネットワーク(ANN)による好適な画像処理アルゴリズムによる画像分析とに基づいて算出される。「品質測定結果」という用語が使用される理由は、品質が直接的または間接的に(カメラ画像b
Kを通して間接的に)「測定」され、算出が、実際に記録または測定された値に基づいているためである。ANNの使用については、次の出版物、(1)タッツェルL.(Tatzel L.)、レオンF.(Leon F.):Image-based roughness estimation of laser cutting edges with a convolutional neural network、Lane 2020、(2)ジュスティA.(Giusti A.)ら:Image-based Measurement of Material Roughness using Machine Learning Techniques、ISEM 2020、(3)デミトリO.(De Mitri O.)ら:Image acquisition, evaluation and segmentation of thermal cutting edges using a mobile device, SPIE Photonics 2019、(4)ベビスG.(Bebis G.)ら(編)Advances in Visual Computing.ISVC 2014.Lecture Notes in Computer Science,vol 8887.Springer,Chamの中の、ソウクップD(Soukup D)、フーバ-モルクR(Huber-Mork R)(2014)Convolutional Neural Networks for Steel Surface Defect Detection from Photometric Stereo Images.を参照されたい。
【0116】
本発明のさらなる発展形態では、品質測定結果の算出は、捕捉されたカメラ画像データに加えてまたはその代替として、他の測定デバイスからのデータ、および/またはセンサによって捕捉される測定データとともに捕捉されるメタデータ、および/またはレーザのタイプ、レーザ出力、速度などのレーザの切断プロセスを特徴付ける機械データなど、他の測定データを考慮することができる。第1のプロセッサP1は、提供されたデータから、特に切断エッジの画像データBKから品質測定結果qを算出することを目的とする。
【0117】
次いで、校正モジュールKMの第2のプロセッサP2は、リアルタイム推定器ESによって提供されたロードされた品質推定結果q’を、第1のプロセッサP1によって提供された実際のまたは現実の品質測定結果qと比較することを目的とする。これについては、
図9において、校正データセットkが推定値q’と測定値qとの間または手動入力q*との間の偏差からもたらされることを明確にするために、式
「k:=q’-q/q*」
が記されている。事前構成可能なイベントパターンに従って、第2のプロセッサP2は、次いで、リアルタイム推定器ESを校正するための校正データセットkを算出し、結果を校正データセットkとともに出力インターフェースAに転送することを目的とし、出力インターフェースAは、算出された校正データセットkを出力することを目的とする。
【0118】
第1の実施形態では、品質測定結果qは、カメラKから捕捉された画像bKに基づいて、第1のプロセッサP1上でアルゴリズムによって自動的に算出される。
【0119】
第2の実施形態では、切断済みワークピースの切断エッジをユーザが手動で検査および評価することによって、完全にまたは部分的に手動の手法が実施されてもよい。この目的のために、ユーザインターフェースUI上で好適な入力フィールドをユーザが利用できるようにすることができ、ユーザは、粗さ、バリ形成などの選択されたおよび/または事前構成された品質パラメータに対する特定の値wを、その入力フィールドの中に入れることができる。次いで、入れられた値wは第1のプロセッサP1に供給され、次いで、第1のプロセッサP1は、単純なルーチンを実行し、入れられた値から品質測定結果q*を決定する。このルーチンのために、国際公開第2020069889(A1)号に記載されている方法を選択することができる。したがって、部分的に手動の入力も使用することができ、「良好」、「中程度」などの主に定性的な値を入れることができる。(上記で示唆したように)そのような定性的な値にオンライン品質推定値も割り当てることができる場合、オンライン品質およびオフライン品質からの値を容易に、互いに比較または調整することができる。
【0120】
さらなる実施形態では、上述の2つの代替案の組合せも使用することができる。これは、自動的に算出された品質測定結果qが検証の対象となり得るという利点を有する。この目的のために、自動的に算出された品質測定結果qは、ユーザの手動入力に基づいて判定された品質測定結果q*と比較される。(例えば、閾値を超える)偏差が生じた場合、チェックルーチンが再度トリガされ、ユーザは、例えば別のエントリを行うように促され得る。偏差が続く場合、これは品質測定結果の算出におけるエラーを示し、例えば、品質測定結果qを算出するために第1のプロセッサP1上で実行される算出機能の改善を開始するために、エラーメッセージが出力され得る。
【0121】
図10は、リアルタイム推定器ESとのデータ交換における校正モジュールKMの概略図を示す。品質測定結果qと品質推定結果q’との両方が、非常に抽象的な方法で校正モジュールKMに供給される。次いで、これらのデータセットに基づいて校正データセットkが算出され得、これらのデータセットは当然ながら同じ切断エッジに関係する。次いで、校正データセットkは、校正のためにリアルタイム推定器ESに転送される。
【0122】
写真撮影された切断エッジから切断品質を導出するために、様々な方法を使用することができる。例えば、現在の切断品質を査定するために、高品質の切断部の比較画像を記憶して、現在の画像と比較することができる。さらなる詳細については、出版物「ベビスG.(Bebis G.)ら(編)Advances in Visual Computing.ISVC 2014.Lecture Notes in Computer Science,vol 8887.Springer,Chamの中の、ソウクップD.(Soukup D)、フーバ-モルクR.(Huber-Mork R)(2014)Convolutional Neural Networks for Steel Surface Defect Detection from Photometric Stereo Images.」を参照されたい。この出版物は、CNNおよび様々な視点からの画像を使用して金属表面を特徴付けることの実現性を取り上げており、これについては、https://pdfs.semanticscholar.org/b2b8/ab163fb0183325dd3458e3cbaad2f8bf265e.pdfで見出すことができる。
【0123】
深層学習を使用したレーザ切断の粗さの推定に関する詳細については、次の出版物、タッツェルL.(Tatzel L.)、レオンF.(Leon F.):Image-based roughness estimation of laser cutting edges with a convolutional neural network、Lane 2020を参照されたい。
【0124】
オンライン品質推定を校正する目的で選択された部品の選択された切断エッジのオフライン品質測定は、特に、機械ハンドリングシステムを有するまたは機械ハンドリングシステムに接続されているレーザ機械に対して有用である。切断済み部品は、ロボット(または同様のもの)によって切断テーブルから取り除かれ、除去され、積層および/または再積層される。除去または仕分け中にすでにカメラ接続を有するシステムは特に好適である。仕分けまたは除去ロボットが選択された部品の切断エッジをカメラに提示することは容易である。別個のカメラもまた有益であり得る。切断エッジの画像が利用可能である場合、現実の切断品質(粗さ、バリなど)が判定され、再び機械に供給され得る。切断品質には、次の特徴(網羅的ではない)、すなわち、粗さ、クレータ、バリ、スラグ残留物、溶接が含まれ、いくつかの特徴は品質欠陥とも呼ばれる。機械は、切断エッジの(例えば、第2のカメラを介して散発的に)測定された品質を、第1のセンサ(例えば、プロセス光などのプロセス信号)を介してオンラインで推定された品質と比較(すなわち、校正)し、必要な場合、特に必ずしも必要ではないが、ある特定の閾値を超える偏差がある場合は、推定された品質を再校正または調整することができる。
【0125】
提示された解決策により完全自動切断システムが可能になり、完全自動切断システムは、定期的なチェック(校正)により、必要とされる/所望の切断品質を維持させることができる。
【0126】
上述したハンドリングシステム(ロボット)がない場合でも、この着想は、少なくともオンランでは、プロセス信号を監視するための切断ヘッド内/上の第1のセンサ、および少なくとも、切断エッジの品質を判断することができる位置にある第2のセンサまたはカメラといった、任意の自動化システムに組み込まれ得る。
【0127】
最後に、本発明の説明および例示的な実施形態は、本発明の特定の物理的実現に関して限定するものとして理解されるべきではないことに留意されたい。本発明の個々の実施形態に関連して説明され示されたすべての特徴は、組合せが明示的に言及されていない場合でも、本発明による主題において異なる組合せで提供されて、その有利な効果を同時に実現することができる。
【0128】
本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって与えられ、説明で例示されたまたは図面に示された特徴によって限定されない。
【0129】
本発明がシート金属切断システムだけでなく高度の品質を必要とするレーザを伴う他のシステムにも使用できることは、当業者には特に明らかである。さらに、校正モジュールの構成要素またはシステムの構成要素は、好適なデータ接続を用いて複数の物理的製品に分散され得る(分散システム)。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム推定器(ES)を
校正モジュールを使用して校正するための方法であって、
前記リアルタイム推定器(ES)は、レーザ切断機(L)を使用する切断方法のための品質推定を目的として構成され、
- 前記リアルタイム推定器(ES)の品質推定結果(q’)をロードするステップ(S1)であって、前記品質推定結果(q’)が少なくとも1つのセンサ(D)からの少なくとも1つのセンサ信号に基づいて判定される、ステップと、
- ワークピースの切断エッジの品質測定結果(q)を提供するステップ(S2)であって、完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号を測定デバイス(K)によって検出すること(S21)によって前記品質測定結果(q)が提供される、ステップと、
- ロードされた前記品質推定結果(q’)を、提供された前記品質測定結果(q)と比較するステップ(S3)
であって、位置識別子が、検出された前記センサ信号および検出された前記測定信号について割り当てられ、および/または記憶され、検出された前記信号が、前記位置識別子を介して明確に識別可能であり、前記比較するステップ(S3)のためにお互いに割り当てられるステップ(S3)と、
を含み、その結果に基づいて、
判定された偏差が事前構成可能な閾値を越えた場合にのみ、
- 前記リアルタイム推定器(ES)を校正する(S5)ための校正データセット(k)を算出するステップ(S4)と
、
- 前記校正データセット(k)を使用して前記リアルタイム推定器(ES)を校正する(S5)か、または再調整するスッテプと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記リアルタイム推定器(ES)が、推定アルゴリズム(S22)を実行するように設計され、前記推定アルゴリズム(S22)が、少なくとも、少なくとも1つのセンサ(D)から検出されたセンサ信号から前記品質推定結果(q’)を算出することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記リアルタイム推定器(ES)の前記推定アルゴリズム(S22)が機械学習方法、特に深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサ(D)が光学センサとして、特にインプロセスカメラおよび/もしくはフォトダイオードユニットとして設計され、ならびに/または、前記測定デバイス(K)が、カメラ、特にモバイル端末内のカメラおよび/もしくは自動化システムに取り付けられるかもしくは割り当てられたカメラであり、ならびに/または、前記測定デバイス(K)が光学測定デバイスとして、特にポストプロセスカメラとして設計されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項
1に記載の方法であって、前記センサ信号および/または前記測定信号の前記検出が、特に実行時間および/または実行タイプに関して構成可能であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項
1に記載の方法であって、メタデータが、検出された前記センサ信号および/または検出された前記測定信号に割り当てられ、および/または記憶されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項
1に記載の方法であって、前記校正データセット(k)が、前記リアルタイム推定器(ES)の前記品質推定結果(q’)に適用されるオフセットを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項
1に記載の方法であって、前記校正データセット(k)が、特に材料および/または切断プロセスに関して算出されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項
1に記載の方法であって、前記校正データセット(k)が、互いに割り当てられた品質推定結果(q’)および品質測定結果(q)を用いて訓練された校正モデルの訓練済みパラメータを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法であって、前記校正モデルが、回帰モデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースト木、人工ニューラルネットワークから選択されるか、もしくは回帰モデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースト木、人工ニューラルネットワークから選択もしくは組み合わされ、および/または、異なるモデルを組み合わせたアンサンブル学習手法が使用されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の方法であって、前記校正モデルが、前記リアルタイム推定器の追加の記憶された中間結果、特に、出力層の前に配置された、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)のニューロンの活性化値の形式での前記リアルタイム推定器の中間結果を訓練データとして使用することによって訓練されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の方法であって、前記校正モデルが、前記リアルタイム推定器の記憶された入力データおよび割り当てられた品質測定結果(q)を訓練データとして使用することによって訓練されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項
9に記載の方法であって、前記校正モデルおよび/または前記リアルタイム推定器(ES)が、行動報酬学習アルゴリズムを使用して、特に強化学習アルゴリズムを使用して適応されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項
9に記載の方法であって、前記校正モデルおよび/または前記リアルタイム推定器(ES)が転移学習方法によって新しい材料に適応されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項
1に記載の方法であって、切断エッジのセンサ信号を前記検出するステップ(S21)が校正切断部上でまたは校正切断部なしで実施されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項
1に記載の方法であって、前記センサ(D)による測定信号を前記検出するステップ(S21)が偏向ミラー(U)を介して行われることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項
1に記載の方法であって、前記品質測定結果(q)が、ユーザインターフェース(UI)を介して入力データセットによって提供されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項
1に記載の方法であって、前記リアルタイム推定器(ES)および前記方法ステップ、特に前記ロードするステップ(S1)、前記提供するステップ(S2)および前記比較するステップ(S3)が、校正切断が実行された後に実施されることを特徴とする方法。
【請求項19】
レーザ切断機(L)を使用する切断方法のための品質推定を目的としたリアルタイム推定器(ES)を校正するための校正モジュール(KM)であって、前記校正モジュール(KM)が、
- 前記リアルタイム推定器(ES)の品質推定結果(q’)をロードするためのロードインターフェース(E)と、
- ワークピースの切断エッジの品質測定結果(q)を提供することを目的とした第1のプロセッサ(P1)であって、完成した切断済みワークピースの切断エッジの測定信号を測定デバイス(K)によって検出すること(S21)によって前記品質測定結果(q)が提供される、第1のプロセッサ(P1)と
を備え、
- 第2のプロセッサ(P2)が、ロードされた前記品質推定結果(q’)を前記品質測定結果(q)と比較することを目的とし、
位置識別子が、検出された前記センサ信号および検出された前記測定信号について割り当てられ、および/または記憶され、検出された信号が、前記位置識別子を介して明確に識別可能であり、前記比較するステップ(S3)のためにお互いに割り当てられるステップ(S3)と、を含み、その結果に基づいて、
判定された偏差が事前構成可能な閾値を越えた場合にのみ、
前記リアルタイム推定器(ES)を校正するための校正データセット(k)を算出する
ように構成され、
前記校正モジュール(KM)が、
- 算出された前記校正データセット(k)を出力
し、前記校正データセット(k)を使用して前記リアルタイム推定器(ES)を校正するか、または再調整するように構成された出力インターフェース(A)を備えることを特徴とする校正モジュール(KM)。
【請求項20】
レーザ切断機(L)に使用される、リアルタイム推定器(ES)および請求項
19に記載の校正モジュール(KM)を有することを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項
20に記載のシステムであって、前記システムが、センサ(D)を備えるか、またはセンサ(D)とデータ通信状態にあることを特徴とするシステム。
【請求項22】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、処理ユニットのメモリユニットにロードされ得、前記処理ユニットにおいて前記コンピュータプログラムが実行されたときに請求項1から
21のいずれか1項に記載の校正方法を前記処理ユニットに実施させるためのプログラムコードセグメントを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【国際調査報告】