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特表2024-528602イメージングの為の、標識化された化合物カルシウム感知受容体リガンド、並びにそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】イメージングの為の、標識化された化合物カルシウム感知受容体リガンド、並びにそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20240723BHJP
   C07D 207/08 20060101ALI20240723BHJP
   C07D 209/08 20060101ALI20240723BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 101/02 20060101ALN20240723BHJP
   A61K 101/00 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
A61K51/04 200
C07D207/08
C07D209/08
G01T1/161 Z
A61K51/10 200
A61K101:02
A61K101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501253
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022036645
(87)【国際公開番号】W WO2023287686
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,737
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518296447
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティー オブ ノース カロライナ アト チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジボ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジャンホン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C188
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085HH11
4C085KA04
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB39
4C085KB44
4C085KB45
4C085KB56
4C085LL05
4C085LL07
4C085LL12
4C085LL13
4C085LL15
4C085LL18
4C188EE02
4C188FF07
(57)【要約】
本発明は、陽電子放射断層撮影(PET)イメージング及び/又は蛍光イメージング、例えば近赤外蛍光イメージング(NIRF)、の為に適した標識化された化合物に関する。本発明は更に、PETスキャンを実施すること、カルシウム感知受容体(CSR:calcium sensing receptor)陽性臓器をイメージ化すること、副甲状腺組織を切除すること、甲状腺手術の間の副甲状腺組織を保護すること、並びに対象におけるCSR陽性組織の1以上の障害を処置することの為にこれらの化合物を使用する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素で標識化されたカルシウム感知受容体(CSR)リガンドであって、前記CSRリガンドが芳香族環を含み、前記放射性同位元素が、前記芳香族環の1以上の位置で該芳香族環に直接的に結合されている、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項2】
前記放射性同位元素が18F及び/又は11Cである、請求項1に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項3】
前記11Cが、11CN、11COOH及び/又は11CH3である、請求項2に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項4】
前記芳香族環がアレーン環である、請求項1~3のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項5】
前記アレーン環がナフタレン環及び/又はフェニル環である、請求項4に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項6】
前記リガンドが、2位及び/又は4位で前記前記ナフタレン環に直接的に結合された18Fを含む、請求項5に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項7】
前記リガンドが、2位及び/又は4位で前記フェニル環に直接的に結合された18Fを含む、請求項5に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項8】
前記リガンドが、2位及び/又は4位で前記ナフタレン環に直接的に結合された11Cを含む、請求項5に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項9】
前記リガンドが、2位及び/又は4位で前記フェニル環に直接的に結合された11Cを含む、請求項5に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項10】
前記リガンドが、4位で前記ナフタレン環に直接的に結合された18Fを含む、請求項6に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項11】
下記の式II:
【化1】
ここで、Arは置換されたアリールであり、及びYはアルキルである、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項12】
Arが、下記:
【化2】
ここで、Xは、O、S、NH又はCH2であり、及びRは、アリール、アルキル、ハロゲン原子、CF3、NO2、COOMe、OH、OMe、アルケン又はアルキンである、
の群から選択される、請求項11に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項13】
下記の式III:
【化3】
を含む、請求項12に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項14】
下記:
【化4】
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項15】
下記の式I(18F-シナカルセト):
【化5】
を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項16】
下記:
【化6】
からなる群から選択される式を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項17】
下記:
【化7】
からなる群から選択される式を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項18】
下記の式XI(エボカルセト):
【化8】
ここで、放射性同位元素が、4位でナフタレンに直接的に結合されている、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項19】
下記:
【化9】
からなる群から選択される、請求項18に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項20】
下記:
【化10】
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の、前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド。
【請求項21】
18Fに直接的に結合された下記の式XX(エテルカルセチド塩酸塩):
【化11】
を含む、放射性同位元素で標識化されたカルシウム感知受容体(CSR)リガンド。
【請求項22】
陽電子放射断層撮影(PET)、蛍光イメージング(例えば、NIRF)プローブ及び/又は光学プローブとして使用する為に適した、CSR結合性部分を含む標識化されたカルシウム感知受容体(CSR)リガンド。
【請求項23】
前記リガンドが、抗体又はその抗原結合性フラグメントである、請求項22に記載の前記標識化されたCSRリガンド。
【請求項24】
前記抗体又は抗体フラグメントが、モノクロナール抗体又はそのフラグメント、キメラ抗体又はそのフラグメント、CDRでグラフト化された抗体又はそのフラグメント、ヒト化抗体又はそのフラグメント、Fc、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合されたFv、一本鎖抗体(scFv)、シングルドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)又はそのフラグメント、抗イディオタイプ抗体又はそのフラグメント、二機能性ハイブリッド抗体抗体又はそのフラグメント、機能的に活性なエピトープ結合性抗体フラグメント、アフィボディ、ナノボディ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の前記標識化されたCSRリガンド。
【請求項25】
前記標識が蛍光色素(例えば、近赤外(NIR)色素又はNIR-II色素)及び/又は放射性標識(例えば、18F、11C、68Ga、89Zr、64Cu、87Y、124I、44Sc、又はそれらの任意の組み合わせ)である、請求項22~24のいずれか1項に記載の前記標識化されたCSRリガンド。
【請求項26】
前記抗体がデ・ノボ(de novo)で生成される、請求項23~25のいずれか1項に記載の前記標識化されたCSRリガンド。
【請求項27】
前記抗体が、モノクロナール抗CSR抗体(例えば、クローン5C10、ADD、3F12、611825、EPR24050-59、6D4、及び/又はHL1499)である、請求項23~25のいずれか1項に記載の前記標識化されたCSRリガンド。
【請求項28】
ハロゲン化されたフルオロフォアであって、放射性同位元素を含み、甲状腺及び/又は副甲状腺組織内に優先的に取り込まれることができる前記ハロゲン化されたフルオロフォア。
【請求項29】
前記放射性同位元素が18Fである、請求項28に記載の前記ハロゲン化されたフルオロフォア。
【請求項30】
下記の式XXII(18F-T700):
【化12】
を含む、請求項28又は29に記載の前記ハロゲン化されたフルオロフォア。
【請求項31】
下記の式XXIII(18F-T800):
【化13】
を含む、請求項28又は29に記載の前記ハロゲン化されたフルオロフォア。
【請求項32】
少なくとも70%以上(例えば、少なくとも70%以上、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも85%以上、少なくとも90%以上)の血清安定性を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド又は請求項28~31のいずれか1項に記載の前記ハロゲン化されたフルオロフォア。
【請求項33】
少なくとも50%以上(例えば、少なくとも50%以上、少なくとも55%以上、少なくとも60%以上、少なくとも65%以上、少なくとも70%以上、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも85%以上、少なくとも90%以上、少なくとも95%以上)の代謝安定性を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の前記放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド又は請求項28~31のいずれか1項に記載の前記ハロゲン化されたフルオロフォア。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載のリガンド又はフルオロフォアを含む陽電子放射断層撮影(PET)プローブ。
【請求項35】
請求項1~33のいずれか1項に記載のリガンド又はフルオロフォアを含む蛍光イメージングプローブ(例えば、NIRFプローブ)。
【請求項36】
前記プローブが、デュアルトレーサ(例えば、光学プローブ、蛍光イメージングプローブ、例えばNIRFプローブ、でもある)である、請求項34に記載のPETプローブ。
【請求項37】
前記プローブが、デュアルトレーサ(例えば、PETプローブでもある)である、請求項35に記載の蛍光イメージングプローブ。
【請求項38】
請求項1~37のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア及び/又はプローブと医薬的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項39】
少なくとも95%(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の放射性純度を有する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
副甲状腺障害(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、三次性甲状腺機能亢進症)、甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫(goiter)、甲状腺結節、バセドウ病)、心臓障害(例えば、高血圧)、腎臓障害(例えば、腎石灰沈着症、くる病、タンパク尿症)、生殖障害(例えば、不妊症、胚又は胎児の発育障害)、授乳障害(例えば、乳生産量の低下)、胃腸障害(例えば、膵炎、糖尿病、下痢、消化器官内分泌障害)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)、がん(例えば、結腸がん)、神経障害(例えば、アルツハイマー病、てんかん)及び/又は肺障害(例えば、肺低形成、肺過形成)のイメージング、診断、及び/又は処置の指導において使用する為の、請求項34~37のいずれか1項に記載のプローブ及び/又は請求項38若しくは39に記載の組成物。
【請求項41】
対象に対してPETスキャンを実施する方法であって、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を前記対象に投与することを含む前記方法。
【請求項42】
対象においてカルシウム感知受容体(CSR)を含む組織をイメージングする方法であって、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を前記対象に投与することを含む前記方法。
【請求項43】
対象における甲状腺及び/又は副甲状腺組織をイメージングする方法であって、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を前記対象に投与することを含む前記方法。
【請求項44】
対象に対してPETスキャン及び蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を同時に実施する方法であって、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項45】
対象において副甲状腺組織を同定する方法であって、該方法は、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、前記対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、前記PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、前記方法。
【請求項46】
前記対象が副甲状腺機能亢進症を有するか、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が術前対象である、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が術中対象である(例えば、前記対象が手術中(例えば、診査手術)である)、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項49】
前記同定された副甲状腺組織が、正常な(例えば、健常な)副甲状腺組織、悪性副甲状腺組織、異所性副甲状腺組織、腺腫性副甲状腺組織及び/又は過形成副甲状腺組織である、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、前記対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含み、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性)副甲状腺組織が同定され、ここで、(例えば、対照と比較して)正常なサイズの同定された副甲状腺組織により、正常な副甲状腺組織が同定される、請求項45~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
異常な(例えば、悪性、過形成、異所性及び/又は腺腫性の)副甲状腺組織を切除することを更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が甲状腺障害を有するか、又は甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節、バセドウ病)を有する危険性若しくは発症する危険性のある対象若しくはその疑いがある対象である、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が術前対象である、請求項45又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が術中対象である(例えば、前記対象が、手術中(例えば診査手術)である)、請求項45又は52に記載の方法。
【請求項55】
前記同定された副甲状腺組織が正常な副甲状腺組織である、請求項45又は52~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、前記対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含み、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性の)副甲状腺組織が同定され、ここで、(例えば、対照と比較して)正常なサイズの同定された副甲状腺組織により正常な副甲状腺組織が同定される、請求項45又は52~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
甲状腺及び/又は他の頸部の手術の間に、同定された正常な副甲状腺組織を切除から保護することを更に含む、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
対象における異常(例えば、腺腫様、過形成、悪性及び/又は異所性の副甲状腺)組織を除去する方法であって、
(a)請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、前記対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施すること、ここで、前記PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される;
(b)異常な(例えば、腺腫様、過形成、悪性及び/又は異所性)副甲状腺組織の存在を同定すること;並びに、
(c)前記同定された異常な(例えば、腺腫様、過形成、悪性及び/又は異所性の)副甲状腺組織を外科的に切除し、それによって、異常な(例えば、腺腫様、過形成、悪性及び/又は異所性の)副甲状腺組織を除去すること
を含む、前記方法。
【請求項59】
前記対象が、副甲状腺機能亢進症を有するか、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
対象において副甲状腺組織を除去する為の手術をガイドする方法であって、該方法は、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、前記対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、前記PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、前記方法。
【請求項61】
前記対象が副甲状腺機能亢進症を有するか、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記同定された副甲状腺組織が、腺腫性副甲状腺組織、悪性副甲状腺組織、異所性副甲状腺組織及び/又は過形成副甲状腺組織である、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記方法が、前記対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含み、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性)副甲状腺組織が同定され、ここで、(例えば、対照と比較して)正常なサイズの同定された副甲状腺組織により、正常な副甲状腺組織が同定される、請求項60~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記副甲状腺組織(例えば、悪性、異所性、腺腫性及び/又は過形成の副甲状腺組織)を切除することを更に含む、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
対象における甲状腺手術の間に副甲状腺組織を保護する為の手術をガイドする方法であって、該方法は、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、前記対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、前記PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、前記方法。
【請求項66】
前記対象が甲状腺障害を有するか、又は甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節、バセドウ病)の危険性を有する対象若しくは甲状腺障害を有する疑い或いは発症する疑いがある対象である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記同定された副甲状腺組織が、健康な副甲状腺組織である、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
前記方法が、前記対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含み、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性の)副甲状腺組織が同定され、ここで、(例えば、対照と比較して)正常なサイズの同定された副甲状腺組織により、正常な副甲状腺組織が同定される、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
甲状腺手術の間に、同定された正常副甲状腺組織を切除から保護することを更に含む、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
副甲状腺組織の存在について切除された甲状腺組織をスキャンすることを更に含む、請求項67~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象の副甲状腺組織の外科的除去の為の標的部位を決定する方法であって、
(a)請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、前記対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施すること、ここで、前記PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される;及び、
(b)腺腫性、過形成、悪性及び/又は異所性の副甲状腺組織の存在を含む前記対象の1以上の領域を同定すること、ここで、前記1以上の領域における副甲状腺組織の存在により、副甲状腺組織の外科的除去の為の前記対象の標的領域としての1以上の領域が示される
を含む、前記方法。
【請求項72】
前記対象が術前対象である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記対象が術中対象である(例えば、前記対象が、手術中(例えば診査手術)である)、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記方法が、前記対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含み、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性の)副甲状腺組織が同定され、ここで、(例えば、対照と比較して)正常なサイズの同定された副甲状腺組織により、正常な副甲状腺組織が同定される、請求項71~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記同定された副甲状腺組織が、腺腫性、過形成、悪性及び/又は異所性の副甲状腺組織である、請求項71~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
同定された腺腫様、過形成、悪性及び/又は異所性の副甲状腺組織のうちの少なくとも一部を切除することを更に含む、請求項74又は75に記載の方法。
【請求項77】
対象における副甲状腺機能亢進症を処置する方法であって、該方法は、副甲状腺機能亢進症を有する対象、副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象に対して、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いてPETスキャンを実施することによって、副甲状腺組織の外科的除去に対する前記対象の適合性を決定すること、ここで、前記PETスキャンにより副甲状腺組織の存在が同定される;並びに、前記PETスキャンの結果に基づいて副甲状腺機能亢進症を処置することを含む、前記方法。
【請求項78】
前記処置することが、前記同定された副甲状腺組織の少なくとも一部を外科的に切除することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記同定された副甲状腺組織の前記少なくとも一部が、腺腫性、悪性、異所性及び/又は過形成の副甲状腺組織である、請求項77又は78に記載の方法。
【請求項80】
前記方法が、前記対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含み、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性)副甲状腺組織が同定され、ここで、(例えば、対照と比較して)正常なサイズの同定された副甲状腺組織により、正常な副甲状腺組織が同定される、請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
対象におけるカルシウム感知受容体(CSR)陽性組織の障害を処置する方法であって、該方法は、障害を有する対象、又は該障害の危険性を有する対象若しくは該障害を有する疑い或いは発症する疑いがある対象に対して、請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いてPETスキャンを実施することによって、前記処置に対する前記対象の適合性を決定すること、ここで、前記PETスキャンが、CSR陽性組織の存在を同定する;並びに、前記PETスキャンの結果に基づいて前記障害を処置することを含む、前記方法。
【請求項82】
前記障害が、副甲状腺障害(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症)、甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節、バセドウ病)、心臓障害(例えば、高血圧)、腎臓障害(例えば、腎石灰沈着症、くる病、タンパク尿症)、生殖障害(例えば、不妊症、胚又は胎児の発育障害)、授乳障害(例えば、乳生産量の低下)、胃腸障害(例えば、膵炎、糖尿病、下痢、消化器官内分泌障害)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)、がん(例えば、結腸がん)、神経障害(例えば、アルツハイマー病、てんかん)及び/又は肺障害(例えば、肺低形成、肺過形成)である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記処置することが、前記同定された組織の少なくとも一部を外科的に切除することを含む、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
請求項1~39のいずれか1項に記載のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を使用して前記対象に対してPETスキャンを実施することが、約1~約15mCiのリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を投与することを含む、請求項41又は44~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記投与することが静脈内注射を介してである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記リガンド、フルオロフォア及び/又は組成物が、少なくとも70%以上(例えば、少なくとも70%以上、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも85%以上、少なくとも90%以上)の血清安定性を少なくとも30分以上有する、請求項41~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記リガンド、フルオロフォア及び/又は組成物が、少なくとも50%以上(例えば、少なくとも50%以上、少なくとも55%以上、少なくとも60%以上、少なくとも65%以上、少なくとも70%以上、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも85%以上、少なくとも90%以上)の代謝安定性を少なくとも30分以上有する、請求項41~86のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の宣言
本出願は、2021年7月12日に出願された米国仮出願シリアル番号63/220,737号の利益を主張するものであり、その全内容は参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポジトロン断層撮影(PET:positron emission tomography)イメージング及び/又は蛍光イメージング、例えば近赤外蛍光イメージング(NIRF:near-infrared fluorescence imaging)、の為に適した標識化された化合物(labeled compound)に関する。本発明は更に、PETスキャンを実施すること、カルシウム感知受容体(CSR:calcium sensing receptor)陽性臓器をイメージ化すること、副甲状腺組織を切除すること、甲状腺手術の間の副甲状腺組織を保護すること、並びに対象におけるCSR陽性組織の1以上の障害を処置することの為にこれらの化合物を使用する方法に関する。
【0003】
米国政府支援の言及
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)より授与された助成金番号DK128447の下で政府支援を受けて行われたものである。米国政府は本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT:Primary hyperparathyroidism)は、重大な罹患率をもたらす一般的な障害であり、米国において毎年10万人以上が罹患している。副甲状腺は、正常な状態では循環中のカルシウムレベルを制御するところの小さな内分泌腺である。PHPTは、副甲状腺の内因性異常によって引き起こされ、副甲状腺ホルモン(PTH:parathyroid hormone)を過剰に分泌し、血清カルシウムレベルの上昇を引き起こす。過剰なホルモンはまた、骨からのカルシウム再吸収を促進し、それによって、時間の経過と共に骨塩量の損失がもたらされ、そして骨粗鬆症をもたらす可能性がある。加えて、上昇したカルシウムは腎臓によって排泄され、それによって、腎臓に損傷を生じる可能性があり(腎石灰沈着症)、そして、腎結石の形成をもたらす。高い循環カルシウムはまた、血管にダメージを与え、そして、動脈硬化性疾病にかかりやすくなる。この疾病によって引き起こされる多くの精神神経症状、例えば、疲労、うつ病、意識「混濁」(mental "fog")を包含する上記の精神神経症状、がまたある。
【0005】
現在、PHPTの為の唯一の治療法は、罹患した1以上の副甲状腺を手術で取り除くことである。ほとんどの人は、より大きな甲状腺に隣接して配置される4つの副甲状腺を有している。正常な状態下では、これらの副甲状腺は非常に小さく(レンズ豆(lentil)の大きさ、すなわち3~5mm)、それは、現在の画像検査上で容易に見ることができない。PHPTの最も一般的な原因は、副甲状腺腺腫の発生(約85%の症例で生じる)であり、それによって、影響を受けた1つ、2つ又は3つの腺の腫大を生じる。PHPT患者の5~10%において、全ての副甲状腺が過形成により影響を受ける。多発性腺腫又は副甲状腺過形成が総称して「多腺疾病」(multi-gland disease)と呼ばれ、なぜならば、病理学的分析は多発性腺腫と過形成とを確実に区別できないからである。副甲状腺の正確な検出及び同定は、PHPT患者の管理の為に重要である。副甲状腺は通常、甲状腺に近い頸部に存在するが、ある場合には、胚発生の間の異常移動により、頭蓋底部から心臓までのどこにでも存在する。
【0006】
慣用的に、副甲状腺機能亢進症の処置は、イメージングを使用して術前に副甲状腺の位置を特定して、外科医に異常な副甲状腺を指示する。最もよく使われるモダリティはコンピュータ化された断層撮影(CT:computerized tomography)、超音波検査、及び核医学検査であるセスタミビスキャン(sestamibi scan)である。超音波は、経験豊富な施設で大量に実施された場合に、約75~約80%の感度、90~95%の陽性的中率(PPV:positive predictive value)である。超音波は、後方に位置する腺腫を検出する能力が低く、異所性腺を検出できない故に、解剖学的な考慮によって制限される。99mTc-セスタミビ核医学検査(99mTc-sestamibi nuclear medicine study)では、テクネチウム標識セスタミビをトレーサーとして使用する。99mTc-セスタミビは甲状腺と副甲状腺との両方に最初に集積するが、副甲状腺よりも甲状腺から急速に洗い流される。該トレーサーが甲状腺から洗い流された後に、遅延した画像(Delayed images)が得られる。以前の技術では単純な平面シンチグラフィーイメージング(planar scintigraphic imaging)を使用していたが、現在の技術の1つは、解剖学的解像度を向上させる為に、単一光子放出コンピュータ断層撮影スキャン(single photon emission computed tomography scan)とコンピュータ断層撮影スキャン(SPECT-CT:single photon emission computed tomography scan with a computed tomography scan)とを組み合わせている。Sestamibi/SPECT-CTは、80~86%の感度、及び90~95%の陽性適中率を有する。4D CT(ダイナミックCT)の使用も近年普及している。4D CT、すなわちダイナミックCT(dynamic CT)の使用がまた、近年、より一般的になってきている。前段階、初期段階、後期段階のコントラストが高められた画像が得られる。次に、副甲状腺組織を同定する為に、甲状腺の領域で迅速なウォッシュアウト(washout)を示すところの小さな病変を調べる。4D CTの全体的な感度は62%~88%の範囲であり、PPVは84%~90%の範囲である。複数のイメージング診断法(imaging modalities)が利用可能であるにもかかわらず、約20%の症例において異常腺が、現在の技術では特定できない。加えて、現在のイメージング検査(imaging studies)は「多腺疾病」(multi-gland disease)を検出することが苦手であり、通常1cm未満の小さな腺腫がまたしばしば可視化されない。これらの弱点は、最初の手術が失敗した症例において特に問題となる。未知の場所にある副甲状腺を探す為の再手術は困難で且つ危険であり、しばしば失敗することがある。副甲状腺はまた、異所性の場所、しばしば頸部の外側、に見つかることがある。これらの場合に、頸部の無駄な探索を防ぎ、異常な位置にある副甲状腺の切除を導く為に、イメージングが不可欠である。
【0007】
ほとんどの外科医は目視による同定に依存しており、これを適切に行うには長年の集中した経験が必要である。副甲状腺の視覚的同定はまた、正常な副甲状腺の不用意な切除を防ぐ為に甲状腺切除術において重要であり、それは、罹患者にとって極めて病的な状態である副甲状腺機能低下症を結果として生じる可能性がある。
【0008】
副甲状腺の正確な検出及び同定は、PHPT患者の管理の為に非常に重要である。本発明は、副甲状腺組織及び/又はカルシウム感受性レセプター(CSR:calcium-sensing receptor)陽性組織の検出の為に適したリガンド、フルオロフォア、プローブ及び組成物、並びに手術の間に、それらの使用方法、例えば手術の間の探索をガイドしたり又は正常な腺を保存したりする為に術前及び/又は術中に使用する方法、を提供することにより、当技術分野における欠点を克服する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点は、放射性同位元素で標識されたカルシウム感知受容体(CSR:calcium sensing receptor)リガンドであって、芳香族環を含む該CSRリガンドを提供し、ここで、該放射性同位元素は、該環の1以上の位置で芳香族環に直接的に結合される。
【0010】
本発明の別の観点は、18Fに直接的に結合された式XX(エテルカルセチド塩酸塩)を含む放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドを提供する。
【0011】
本発明の別の観点は、CSR結合性部分を含む、陽電子放射断層撮影(PET:positron emission tomography)プローブ、蛍光イメージング(例えば、NIRF)プローブ及び/又は光学プローブとしての使用の為に適した標識化されたCSRリガンドを提供する。幾つかの実施態様において、該リガンドは、抗体又はその抗原結合性フラグメントでありうる。
【0012】
本発明の別の観点は、甲状腺組織及び/又は副甲状腺組織中に優先的に取り込まれることが可能な、放射性同位元素を含むハロゲン化されたフルオロフォアを提供する。
【0013】
また、本発明のリガンド及び/又はフルオロフォアを含むPETプローブ、蛍光イメージングプローブ(例えば、NIRFプローブ)、組成物、及び医薬組成物がまた提供される。
【0014】
加えて、副甲状腺障害(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、三次性副甲状腺機能亢進症)、甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節、バセドウ病)、心臓障害(例えば、高血圧)、腎臓障害(例えば、腎石灰沈着症、くる病、タンパク尿症)、生殖障害(例えば、不妊症、胚又は胎児の発育障害)、授乳障害(例えば、乳生産量の低下)、胃腸障害(例えば、膵炎、糖尿病、下痢、消化器官内分泌障害)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)、がん(例えば、結腸がん)、神経障害(例えば、アルツハイマー病、てんかん)及び/又は肺障害(例えば、肺低形成、肺過形成)のイメージング、診断、及び/又は処置の指導において使用する為の、本発明のプローブ及び/又は組成物が提供される。
【0015】
本発明の更なる観点は、対象に対してPETスキャンを実施する方法であって、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を該対象に投与することを含む上記の方法を提供する。
【0016】
本発明の別の観点は、対象におけるCSRを含む組織をイメージングする方法であって、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を該対象に投与することを含む上記の方法を提供する。
【0017】
本発明の別の観点は、対象における甲状腺及び/又は副甲状腺組織をイメージングする方法であって、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を該対象に投与することを含む上記の方法を提供する。
【0018】
本発明の別の観点は、対象に対してPETスキャン及び蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を同時に実施する方法であって、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を該対象に投与することを含む上記の方法を提供する。
【0019】
本発明の別の観点は、対象において副甲状腺組織を同定する方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、上記の方法を提供する。
【0020】
本発明の別の観点は、対象において過形成及び/又は異所性の副甲状腺組織を除去する方法であって、(a)本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される;(b)過形成及び/又は異所性である副甲状腺組織の存在を同定すること;並びに、(c)該同定された過形成及び/又は異所性の副甲状腺組織を外科的に切除し、それによって、過形成及び/又は異所性の副甲状腺組織を除去することを含む上記の方法を提供する。
【0021】
本発明の別の観点は、対象における副甲状腺組織を除去する為の手術をガイドする方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、上記の方法を提供する。
【0022】
本発明の別の観点は、対象における甲状腺及び/又は他の頸部手術の間に副甲状腺組織を保護する為の手術をガイドする方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより、副甲状腺組織の存在が同定される、上記の方法を提供する。
【0023】
本発明の別の観点は、対象(例えば、副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象)の副甲状腺組織を外科的に切除する為の標的部位を決定する方法であって、該方法が、(a)本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより、副甲状腺組織の存在が同定される;並びに、(b)異所性及び/又は過形成性の副甲状腺組織の存在を含む対象の1以上の領域を同定すること、ここで、該1以上の領域における異所性及び/又は過形成性の副甲状腺組織の存在により、副甲状腺組織の外科的除去の為の該対象の標的部位としての1以上の領域が示される、を含む、上記の方法に関する。
【0024】
本発明の別の観点は、対象における副甲状腺機能亢進症(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症及び/又は三次性甲状腺機能亢進症)を処置する方法であって、該方法は、副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象に対して、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することによって、副甲状腺組織の外科的除去に対する該対象の適合性を決定すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより、副甲状腺組織の存在が同定される;並びに、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングの結果に基づいて該副甲状腺機能亢進症を処置することを含む、上記の方法を提供する。
【0025】
本発明の別の観点は、対象におけるCSR陽性組織の障害を処置する方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象に対して、PETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することによって、それらの処置に対する該対象の適合性を決定すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングによりCSR陽性組織の存在が同定される;並びに、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングの結果に基づいて障害を処置することを含む、上記の方法を提供する。
【0026】
幾つかの実施態様において、該対象は、術前対象であってもよい。幾つかの実施態様において、該対象は、術中対象であってもよい(例えば、該対象が手術中(例えば、診査手術(explorative surgery))である)。
【0027】
本発明のこれら及び他の観点は、以下の発明の説明でより詳細に述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、副甲状腺機能亢進症と副甲状腺におけるCSR発現の患者組織染色の表及び組織画像を示す(各タイプの患者標本についてn=10)。
図2図2は、合成18F-シナカルセトを生成する為の代表的な経路の2つの概略図を示す。経路A(上)は、直接的なC-H放射性フッ素化(radiofluorination)を通じて18F-シナカルセトを合成する代表的な経路を示す。経路B(下)は、CF3基で[18F]-CF3-シナカルセトを標識化する為の2つの合成経路(パスA及びパスB)を示す。
図3図3は、18Fをboc保護されたシナカルセト内に効率的に導入することができた光レドックス(photoredox)放射性フッ素化の概略図(図3のパネルA)を示し、それは、経路を通して調製された標準品(図3のパネルB)とよく相関している。図3のパネルCは、18Fで標識化されたbocシナカルセトの品質管理のグラフを示す。未反応のbocシナカルセトは、18Fで標識化された生成物から十分に分離されることができた。
図4A図4Aは、18F-シナカルセトのイン・ビトロ(in vitro)における安定性を実証したグラフを示す。
図4B図4Bは、18F-シナカルセトの非霊長類におけるイン・ビボ(in vivo)での安定性のグラフを示す。
図5図5は、(図5のパネルA)副甲状腺領域における18F-シナカルセトの蓄積を実証する、小動物のPET/CTスキャンの画像;及び(図5のパネルB)18F-シナカルセトが甲状腺の代わりにCSR陽性の副甲状腺に局在化していることを実証する、隣接スライドのオートラジオグラフィー及び病理学的染色を示す。
図6図6は、2つの模式図を示し、ここで、上のボックス「A」はT700についての前駆体及び標準調製についての代表的な合成経路を示し、下のボックス「B」はT800色素及び複数の関連前駆体の構造を示す。
図7図7は、C-H放射性フッ素化を通じて[18F]T700色素を合成する代表的な経路(経路「A」)と、デオキシ放射性フッ素化を通じて[18F]T800色素を合成する代表的な経路(経路「B」)とを示す。T700はまた、デオキシラジオフルオロ化を通じて合成されることができ;T800はまた、CHフッ素化を通じて製造されることができる。
図8図8は、(図8のパネルA)T700及びT800デュアルチャンネルイメージングの蛍光イメージングの画像を示し;(図8のパネルB)T700が甲状腺において局在化され且つT800が副甲状腺内に局在化されたことを示すところのデュアルチャンネルイメージングを示し;並びに、(図8のパネルC)マウス1~3からの自家蛍光が、T800チャンネルでイメージングされたマウス3(T800を注射)と比較して無視できることを示すところの蛍光画像を示す。マウス2にはT700が注射され、及びマウス1には生理食塩水が注射された。
図9図9は、光レドックス標識法(photoredox labeling method)を用いて合成された18F-T800(図9のパネルA)と18F-T700(図9のパネルB)とを示す。生成物はコールドスタンダード(cold standard)と十分に相関する。
図10図10は、T800によって可視化されることができた移植されたPHPTモデルの画像を示す(左パネル)。画像誘導手術(Image guided surgery)により、PHPTと近傍組織(nearby tissue)との間に高いコントラストが示された(右パネル)。
図11図11は、アカゲザル(Rhesus Macaque)の天然の副甲状腺の18F-シナカルセトPETのPET画像を示す。
図12図12は、(図12のパネルA)従来のPET/NIRFプローブ構造(図12のパネルB)及びツーインワン(2-in-1)放射性蛍光色素PET/NIRFプローブ構造の概略図を示す。
図13図13は、[19F]F-ZW-シナカルセト及び光レドックス反応についての前駆体の化学合成(図13のパネルA)及び直接C-Hフッ素化を通じてBoc-シナカルセトの光レドックス放射性標識(図13のパネルB)についての概略的な代表的な経路を示す。
図14図14は、様々な細胞株におけるウェスタンブロットによるCSR発現の結果を示す(図14のパネルA)。[18F]F-ZW-シナカルセトの細胞取り込み及び特異的なブロッキングアッセイが図14のパネルBにおいて示されている。
図15図15は、0.5時間、1時間及び2時間、p.i.で[18F]F-シナカルセトを注射したラットにおける代表的な冠状(coronal)PET画像(図15パネルA)及び定量分析(図15のパネルB)を示す。矢印は副甲状腺を示す。
図16図16は、0.5時間で[18F]F-シナカルセトを注射したラットにおける代表的な冠状(coronal)、矢状(sagittal)、横断(transverse)PET/CT画像(図16のパネルA)及び3Dボリュームレンダリング(volume-rendered)PET/CT画像(図16のパネルB)を示す。位置線(position line)及び塗りつぶされた矢印(filled arrows)は副甲状腺を示し、開いた矢印(open arrows)は気管を示す。
図17図17は、[18F]F-シナカルセトを0~60分間注射したラットにおける代表的な冠動脈PET画像及び定量分析である。矢印は副甲状腺を示す。
図18図18は、[18F]F-ZW-シナカルセトを0~60分間注射したラットにおける代表的な横方向の動的(dynamic)PET画像(図18パネルA)、統合された(merged)PET/CT画像(図18のパネルB)及び定量分析(図18のパネルC)を示す。塗りつぶされた矢印は心臓を示し、及び開いた矢印は肺を示す。
図19図19は、甲状腺及び副甲状腺を含む局部喉頭及び気管組織の解剖図及び切除された組織(図19のパネルA)、[18F]F-シナカルセトを注射したラットにおけるCSRの一致したオートラジオグラフィー(図19のパネルB)及びIHC染色(図19のパネルC)、並びに定量分析(図19のパネルD)を示す。丸は副甲状腺を含む甲状腺を示し、及び矢印は副甲状腺を示す、**P<0.01。
図20図20は、パラフィン包埋(paraffin embedded)組織切片におけるCSRのIHC染色を示す。丸は副甲状腺を含む甲状腺を示し、及び矢印は副甲状腺を示す。
図21図21は、パラフィン包埋組織切片におけるCSRのIHC染色及びHE染色を合わせたオートラジオグラフィーを示す。
図22図22は、非ヒト霊長類(non-human primates)における副甲状腺の臨床PET/MRIイメージングを示し、矢印は副甲状腺を示す。
図23図23は、異なる時点で[19F]F-シナカルセトの過剰投与したマウスの腎臓、肝臓及び心臓のHE染色である。糸球体、尿細管、肝小葉中心静脈及び心筋線維の基本構造は無傷である。スケールバー=200μm。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本発明が、本明細書の以下において、本発明の実施態様が示されている添付の図面及び実施例を参照して説明されるであろう。この説明は、本発明が実施されうる全ての異なる方法又は本発明に追加されうる全ての特徴の詳細なカタログであることが意図されるものでない。例えば、1つの実施態様に関して図示された特徴は、他の実施態様内に組み込まれてもよく、特定の実施態様に関して図示された特徴は、その実施態様から削除されていてもよい。従って、本発明は、本発明の幾つかの実施態様において、本明細書において規定される任意の特徴又は複数の特徴の組み合わせが除外又は省略されることができることを企図する。加えて、本明細書において示唆される様々な実施態様に対する多数の変形及び追加が、本開示に照らして当業者に明らかであろうが、それらは本発明から逸脱するものでない。従って、下記の記載は、本発明の幾つかの特定の実施態様を例示することが意図されており、それらの全ての順列、組み合わせ及び変形を網羅的に特定するものでない。
【0030】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明において使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的のみのものであり、本発明を限定することを意図するものでない。
【0031】
本明細書において引用されている全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照が示されている文章及び/又は段落に関連する教示について、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【0032】
文脈が別段のことを指示しない限り、本明細書おいて記載されている本発明の様々な特徴は任意の組み合わせにおいて使用されることができることが特に意図される。その上、本発明はまた、本発明の幾つかの実施態様において本明細書に記載された任意の特徴又は複数の特徴の組み合わせが排除又は省略されることができることを企図する。例示すると、本明細書は、組成物が成分A、成分B及び成分Cを含むことを述べている場合に、A、B若しくはCのいずれか、又はそれらの組み合わせが省略され且つ除かれることができることが特に意図されている。
【0033】
本発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲において使用される場合に、単数形「1つの」(a)、「1つの」(an)及び「該」(the)は、文脈が別段のことを明らかに示さない限り、複数形も包含することが意図される。例えば、「1つの」(a)細胞は、単一細胞又は複数の細胞を意味する。
【0034】
また、本明細書において使用される場合に、「及び/又は」は、列挙された1以上の関連項目の任意の及び全てのありうる組み合わせ、並びに選択肢(「又は」)で解釈される場合は組み合わせの欠如を云い且つ包含する。
【0035】
本明細書において使用される場合に、測定可能な値、例えば量又は濃度等、を云う場合に使用される語「約」は、規定値だけでなく、規定値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、更には±0.1%の変動値を包含することが意味される。例えば、「約X」は、Xが測定可能な値である場合に、X、並びにXの±10%、±5%、±1%、±0.5%、あるいは±0.1%の変動を包含することが意味される。本明細書において提供される測定可能な値の範囲は、任意の他の範囲及び/又はその範囲内の個々の値を包含しうる。
【0036】
本明細書において使用される場合に、「XとYとの間」及び「約XとYとの間」等の句は、X及びYを含むと解釈されるべきである。本明細書において使用される場合に、「約XとYとの間」等の句は「約Xと約Yとの間」を意味し、及び「約X~Y」等の句は「約X~約Y」を意味する。
【0037】
本明細書において使用される場合に、語「含む」(comprises)及び「含んでいる」(comprising)は、述べられた特徴、整数、工程、操作、要素及び/又は成分の存在を特定するものであるが、1以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものでない。
【0038】
本明細書において使用される場合に、本発明の組成物に適用される経過的句「実質的になる」(及び文法的変形)は特許請求の範囲の範囲が、特許請求の範囲に記載された特定の材料又は工程、及び請求された発明の基本的且つ新規な1以上の特徴に実質的に影響を与えないものを包含すると解釈されるべきであることを意味する。従って、本発明の特許請求の範囲において使用される語「実質的になる」は、「含む」と同等に解釈されるべきであることが意図されていない。
【0039】
組成物に適用される語「実質的に変化した」は、言及された成分からなる組成物の有効性と比較して、該組成物の治療効果が少なくとも約20%以上増加又は減少することを云う。
【0040】
化合物の特性(例えば、構造、機能又は他の測定可能な特徴)に関して本明細書において使用される場合に、語「実質的に保持する」及び/又は「実質的に変化しない」は、該特性を比較対象(例えば、対照)と「実質的に同じ」に維持することを云い、ここで、該特性(例えば、構造、機能及び/又は他の測定可能な特徴)の少なくとも約75%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%が保持される。
【0041】
語「処置する」又は「処置している」又は「処置」は、例えば、有益な効果であることができるところの調節効果を、障害、疾病又は又は疾患に罹患している対象に付与するところの任意のタイプの作用を云い、これは、当技術分野において周知であるように、(例えば、1以上の症状における)該対象の状態における改善、状態の進行における遅延若しくは軽減、及び/又は臨床パラメータ、疾病若しくは疾患における変化等を包含する。
【0042】
本明細書において使用される場合に、語「治療上有効な量」又は「有効量」は、例えば、有益な効果であることができるところの調節効果を、障害、疾病又は又は疾患に罹患している対象に付与するところの本発明の組成物、化合物若しくは薬剤の量を云い、これは、当技術分野において周知であるように、(例えば、1以上の症状における)該対象の状態における改善、状態の進行における遅延若しくは軽減、障害の発症の予防若しくは遅延、及び/又は臨床パラメータ、疾患若しくは疾病における変化等を包含する。例えば、治療上有効な量又は有効量は、対象における状態を少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%、改善するところの、組成物、化合物又は薬剤の量を云うことができる。
【0043】
本明細書において使用される場合に、語「治療有効量」、「有効量」又は「治療量」は、対象に何らかの改善又は利益を提供する為に十分である量である。代替的には、「治療有効量」、「有効量」又は「治療量」は、該対象における少なくとも1つの臨床症状において、何らかの緩和、軽減、減少又は安定化を提供するであろう量である。当業者は、該対象に何らかの利益が提供される限り、治療効果が完全である必要も治癒的である必要もないことを理解するであろう。該有効量は、該対象の年齢、一般的な状態、処置される状態の重症度、投与される特定の薬剤、処置の期間、何らかの同時処置の性質、使用される医薬的に許容される担体、並びに当業者の知識及び専門知識の範囲内の同様の因子によって変化しうる。適切なように、個々の場合における有効量又は治療量は、関連するテキスト及び文献を参照することによって及び/又は日常的な実験を用いることによって当業者によって決定されることができる。(例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.2000)を参照)。
【0044】
本明細書において使用される場合に、語「医薬的に許容される」は、生物学的又は他の点で望ましくない材料、すなわち、実質的に有害な生物学的影響を引き起こすこと無しに、又はそれが含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用すること無しに、その材料が本発明の組成物と共に個体に投与されることができるところの材料を意味する。該材料は当然に、当業者には周知であるように、活性成分の何らかの分解を最小限に抑えるように且つ対象における何らかの副作用を最小限に抑えるように選択されるであろう(例えば、Remington's Pharmaceutical Science;21st ed.2005を参照)。本発明の組成物の為の例示的な医薬的に許容される担体は、滅菌したパイロジェンフリーの水及び滅菌したパイロジェンフリーの生理的食塩水を包含するが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の組成物の対象への「投与する」又は「投与している」という語は、その意図される機能(例えば、PET及び/又は蛍光イメージングにおける使用の為の、例えば、手術の指導の為の、意図される機能)を実行する為に化合物を対象に導入又は送達する任意の経路を包含する。
【0046】
本発明の「対象」は、それを必要とするあらゆる動物を包含しうる。幾つかの実施態様において、対象は例えば、哺乳動物、爬虫類、鳥類、両生類又は魚類でありうる。哺乳類の対象は、実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、霊長類等)、農場動物若しくは商業動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ロバ、ヒツジ等)、又は家畜(例えば、ネコ、イヌ、フェレット、スナネズミ、ハムスター等)を包含するが、これらに限定されない。幾つかの実施態様において、哺乳動物対象は、霊長類、又は非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マカク(macaque)(例えば、アカゲザル、カニクイザル、ベニガオザル、ブタオザル)、サル(例えば、リスザル、ヨザル等)、マーモセット、ゴリラ等であってもよい。幾つかの実施態様において、哺乳動物対象はヒトであってもよい。
【0047】
本発明の方法の「必要とする対象」は、甲状腺障害、及び/又は副甲状腺障害、及び/又は何らかのCSR発現組織障害、及び/又はイメージング及び/又は手術が有益な健康効果を提供する可能性がありうる疾患、又は該疾患を発症の増大したリスクを有する対象を有することが知られているか、又は疑われている任意の対象であることができる。
【0048】
本発明の「サンプル」、「生物学的サンプル」、及び/又は「エクス・ビボ(ex vivo)サンプル」は、任意の生物学的物質、例えば、生物学的流体、細胞からの抽出物、細胞から単離された細胞外マトリックス、(溶液中又は固体支持体に結合された)細胞、組織、組織ホモジネート等、であることができ、当技術分野において周知である。
【0049】
語「アミノ酸配列」、「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを云う為に互換的に使用されうる。語「核酸」、「核酸配列」及び「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを云う為に互換的に使用されうる。本明細書において使用される場合に、語「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「核酸分子」及び「核酸断フラグメント」は、一本鎖又は二本鎖であり、任意に合成、非天然及び/又は改変されたヌクレオチド塩基を含むところの、RNA、DNA、又はRNA及びDNAのポリマーを云う場合がある。
【0050】
本明細書において使用される場合に、語「結合性部分」は、別の分子(例えば、標的)に結合する分子の部分(例えば、フラグメント)を云う。例えば、本明細書において使用される場合に、「CSR結合性部分」は、CSRに結合可能である分子(例えばリガンド、例えばフルオロフォア)の部分を云う。該結合性部分は、例えば、分子又は化合物から単離され、合成的にデ・ノボ(de novo)で生成され、及び/又はより大きな分子(例えば、リガンド、フルオロフォア、抗体等)内に含まれている。
【0051】
本明細書において使用される場合に、語「抗原」は、免疫グロブリン(例えば、抗体)の産生を誘発することができる分子を云う。抗体及び/又は免疫応答を刺激することができる分子は、抗原性及び/又は免疫原性と言及されることがあり、並びに抗原性/免疫原性の能力を有すると言われることができる。抗体中の抗原の為の結合性部位は、抗原結合部として言及されることがある。抗原結合性部分は例えば、抗体から単離されたもの、デ・ノボ(de novo)で合成的に生成されたもの、及び/又はより大きな分子(例えば、抗体又はそのフラグメント)内に含まれるものであってもよい。
【0052】
本明細書において使用される場合に、語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン分子、並びに抗原のエピトープ決定基(すなわち、抗原性決定基)を結合することができるところの、該免疫グロブリンの活性フラグメント、例えばFab、F(ab´)2及びFc、を包含する。本発明のポリペプチドに結合する抗体は、インタクトなポリペプチド及び/又は免疫性抗原として関心のある小さなペプチドを含むフラグメントを用いて調製される。動物を免疫する為に使用されるポリペプチド又はフラグメントは、酵素的切断、組換え発現、生物学的材料からの単離、合成等に由来することができ、並びに所望によりキャリアタンパク質に抱合させることができる。抗体の産生の為にペプチド及びタンパク質と化学的に結合される担体としては、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン(thyroglobulin)及びキーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)等が一般的に用いられるが、これらに限定されるものではない。次に、該結合されたペプチド又はタンパク質は、宿主動物(例えば、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ヒト又はウサギ)を免疫する為に使用される。ポリペプチド又はペプチド抗原はまた、本明細書において記載されているように、そして他の当技術分野で知られているように、免疫刺激剤と共に投与されることができる。
【0053】
本明細書において使用される場合に、語「1つの抗体」又は「複数の抗体」は、全てのタイプの免疫グロブリン、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを包含する上記の全てのタイプの免疫グロブリン、を云う。該抗体はモノクロナールであってもよく又はポリクローナルであってもよく、あらゆる種の起源、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ヒトを包含する上記のあらゆる種の起源、であることができ、及び/又はキメラ抗体若しくはヒト化抗体であることができる。例えば、Walker等,Molec.Immunol.26:403-11(1989)を参照。該抗体は、米国特許第4,474,893号明細書又は米国特許第4,816,567号明細書において開示された方法に従って産生される組換えモノクロナール抗体であることができる。該抗体はまた、米国特許第4,676,980号明細書おいて開示されている方法に従って化学的に構築されることができる。該抗体は更に、一本鎖抗体(scFv)又は二重特異性抗体であることができる。
【0054】
適切な抗原特異性と生物学的活性とを有する分子を得る為に、マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングすることによって、キメラ抗体又はヒト化抗体を産生する為の技術が用いられることができる(Morrison et al.1984.Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851-6855;Neuberger et al.1984.Nature 312:604-608;Takeda et al.1985.Nature 314:452~454)。代替的には、一本鎖抗体の産生について記載された技術は、当技術分野において既知の方法を用いて、本発明のポリペプチド及び/又はフラグメント及び/又はエピトープに特異的な一本鎖抗体を産生する為に適合されることができる。関連する特異性を有するが、異なるイディオタイプ組成(idiotypic composition)を有する抗体は、ランダムコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(random combinatorial immunoglobulin libraries)から鎖シャッフリングによって作成されることができる(Burton 1991.Proc.Natl.Acad.Sci.88:11120~3)。
【0055】
タンパク質に関して本明細書において使用される場合に、語「フラグメント」は、参照ポリペプチドに対して相対的に長さにおいて短くされているポリペプチドであって、該参照ポリペプチドの対応する部分と同一又はほぼ同一(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一)の連続するアミノ酸配列を含む、該連続するアミノ酸配列から本質的になる、及び/又は該連続するアミノ酸配列から構成されているところの上記ポリペプチドを云う。そのようなポリペプチドフラグメントは、適切な場合には、それが構成要素であるより大きなポリペプチド内に含まれうる。幾つかの実施態様において、該ポリペプチドフラグメントは、少なくとも、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約125、約150、約175、約200、約225、約250、約300、約350、約400、約450、約500、若しくはそれ以上の連続したアミノ酸を含むか、該連続したアミノ酸から本質的になるか、又は該連続したアミノ酸からなる。幾つかの実施態様において、該ポリペプチドフラグメントは、約2未満、約3未満、約4未満、約5未満、約6未満、約7未満、約8未満、約9未満、約10未満、約11未満、約12未満、約13未満、約14未満、約15未満、約20未満、約25未満、約30未満、約35未満、約40未満、約45未満、約50未満、約55未満、約60未満、約65未満、約70未満、約75未満、約80未満、約85未満、約90未満、約95未満、約100未満、約125未満、約150未満、約175未満、約200未満、約225未満、約250未満、約300未満、約350未満、約400未満、約450未満、約500未満以下の連続するアミノ酸を含むか、該連続したアミノ酸から本質的になるか、又は該連続したアミノ酸からなる。
【0056】
タンパク質に関して本明細書において使用される場合に、語「機能的フラグメント」又は「活性フラグメント」は、全長ポリペプチド(例えば、抗原結合性抗体)の少なくとも1つの生物学的活性の少なくとも、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、又はそれ以上、を保持するところのポリペプチドフラグメントを云う。
【0057】
本明細書において使用される場合に、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に適用される「改変された」(modified)という語は、1以上の欠失、付加、置換、又はそれらの任意の組み合わせにより野生型配列と異なる配列を云う。改変された配列(modified sequences)はまた、(1以上の)「改変された変異体」(modified variant)として言及される。
【0058】
本明細書において使用される場合に、フラグメントを「単離する」若しくは「精製する」(又は、文法的に同等なもの)とは、該フラグメントが出発物質中の他の成分の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されることを意味する。
【0059】
抗体又は活性抗体フラグメントの非限定的な例は、モノクロナール抗体又はそのフラグメント、キメラ抗体又はそのフラグメント、CDRでグラフト化された抗体又はそのフラグメント、ヒト化抗体又はそのフラグメント、Fc、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合されたFv、一本鎖抗体(scFv)、シングルドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)又はそのフラグメント、抗イディオタイプ抗体又はそのフラグメント、二機能性ハイブリッド抗体抗体又はそのフラグメント、機能的に活性なエピトープ結合性抗体フラグメント、アフィボディ、ナノボディ、及びそれらの任意の組み合わせを包含する。
【0060】
本発明の範囲に含まれている活性抗体フラグメントは例えば、Fab、F(ab')2、Fcフラグメント、及びIgG以外の抗体から得られる対応するフラグメントを包含する。そのようなフラグメントは、既知の技術によって製造されることができる。例えば、F(ab´)2フラグメントは抗体分子のペプシン消化によって産生することができ、FabフラグメントはF(ab´)2フラグメントのジスルフィド結合を還元することによって生成されることができる。代替的には、所望の特異性を有するモノクロナールFabフラグメントを迅速かつ容易に同定することを可能にするようにFab発現ライブラリーが構築されることができる(Huse et al.,(1989) Science 254:1275~1281)。
【0061】
モノクロナール抗体は、Kohler及びMilsteinの技術(Nature 265:495-97(1975))に従ってハイブリドーマ細胞株において産生することができる。例えば、適切な抗原を含む溶液がマウス内に注射され、そして、十分な時間後に、マウスが犠牲にされ、そして脾臓細胞が得られる。次に、該脾臓細胞が、典型的にポリエチレングリコールの存在下、骨髄腫細胞と又はリンパ腫細胞と融合されることによって不死化されて、ハイブリドーマ細胞が作成される。次に、該ハイブリドーマ細胞が適当な培地中で増殖され、そして、上清が、所望の特異性を有するモノクロナール抗体の為にスクリーニングされる。モノクロナールFabフラグメントは、当業者に既知の組み換え技術によって、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、内で生成されることができる。例えば、W.Huse,(1989) Science 246:1275~81を参照。
【0062】
化合物及び組成物
【0063】
陽電子放射断層撮影(PET)は、部位特異的な化学反応、それらの空間分布、及び代謝撹乱(metabolic perturbations)、及び生物学的プロセスを高い精度と感度でイン・ビボ(in vivo)で定量的に測定する為に使用されるところの強力且つ迅速に発展している技術である。
【0064】
蛍光イメージングは、組織への浸透性に限界があるが、術中の病変検出(侵襲的手術)についての感度を高める為の貴重なツールであることが実証されている。
【0065】
本発明は、新規なPETプローブを提供し、並びに術前に副甲状腺を効率的に検出し、そしてまた、手術の間にその後の局在化をガイドしうるところの高感度且つ特異的なPET/NIRFイメージング技術を提供する。理論に束縛されることを望むものではないが、この組み合わせ技術は手術時間を有意に減少させ、且つ手術収率を向上させうる。
【0066】
本発明が解決しようとする問題の一つは、(PHPTを正常な副甲状腺から区別するのではなく)疑わしい組織の同一性と副甲状腺の位置とを決定することである。事実、正常な副甲状腺は非常に小さく(3~5mm)、それは、現在のイメージング試験では容易に見ることができない。PHPTにおいて、副甲状腺ホルモン分泌における自律性に伴って1以上の副甲状腺が肥大する。正常な副甲状腺機能亢進症と正常な副甲状腺機能亢進症とは、それらの大きさの違いによって容易に区別されることができるが、難しい問題は、それらの場所を識別することである。複数のイメージングモダリティが利用可能であるにもかかわらず、約20%の症例において、現在の技術、例えば、超音波、99mTc-セスタミビ又は4D CTを包含する上記の現在の技術、では、異常な甲状腺の位置が特定されることができない。このことは、特には多腺疾病及び小さな腺腫の場合に現実的な問題となり、それにより、再手術及び実りのない頸部探索(neck exploration)につながる可能性がある。ここで、副甲状腺イメージングの為の新規なPET薬剤として、CSR特異的な放射性医薬品[18F]F-ZW-シナカルセトが開発された。このイメージング薬剤は、げっ歯類と非ヒト霊長類との両方において実証されているように、副甲状腺について高感度である。このイメージングアプローチは、特には副甲状腺が正常な位置にないときに、手術を行う外科医のガイドであることができる。別の状況において、1つの小結節(又は複数の小結節)が超音波検査で甲状腺の近くに見られる場合があるが、リンパ節、又は異所性甲状腺組織の病巣とは対照的に、副甲状腺腺腫としてのその正体がすぐには明らかでない場合がある。[18F]F-ZW-シナカルセトは、疑わしい組織の起源を識別する為に役立ち、それにより、不必要な手術を避けることができる。[18F]F-ZW-シナカルセトの開発はまた、PETプローブ開発における光レドックスラベル付けの成功裡の応用である。
【0067】
CSRは、循環中のカルシウム濃度に応答する膜貫通Gタンパク質共役型受容体(transmembrane G-protein coupled receptor)である。CSRは主に副甲状腺と腎臓中に発現しているが、様々な組織がこの受容体を発現している(Brown,E.M.and MacLeod,R.J.,2001 Physiol.Rev.81:239~297)。CSRと結合する下記の2種類のカルシウム模倣薬(calcimimetic drug)、すなわち、シナカルセト(経口投与の低分子化合物)及びエテルカルセチド(静脈内投与の合成ペプチド)、が臨床的に利用可能である。加えて更に、CSRに対する抗体がまた利用可能である。
【0068】
本発明の化合物の合成は、当技術分野において既知の方法及び本明細書において記載された方法によって実施されうる。幾つかの実施態様において、合成経路は、放射性フッ素化(例えば、SNAr放射性フッ素化、金属触媒化された放射性フッ素化、ヨードニウム放射性フッ素化、レーザー誘発化された放射性フッ素化、アレーンC-H放射性標識)、例えば、参照によって本明細書内に組み込まれる、Chen et al.2019 Science 364(6446):1170~1174において記載されているようなもの、を含む。幾つかの実施態様において、該合成経路は、本明細書において記載されており、例えば図2図3図6及び図7において示されているような任意の経路を含んでいてもよい。
【0069】
従って、本発明の1つの観点は、放射性同位元素で標識化されたカルシウム感知受容体(CSR:calcium sensing receptor)リガンドであって、該CSRリガンドが芳香族環を含み、該放射性同位元素が、該芳香族環の1以上の位置で該芳香族環に直接的に結合されている、上記のCSRリガンドに関する。
【0070】
該放射性同位元素は、リガンドの生物学的活性(例えば、CSR結合)を実質的に変化させないところの任意の放射性同位体標識であってもよい。幾つかの実施態様において、該放射性同位体は、18F及び/又は11Cであってもよい。幾つかの実施態様において、11Cは、11CN、11COOH及び/又は11CH3であってもよい。
【0071】
本発明の、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、任意のタイプの芳香族環、例えば、ヘテロ芳香族環、アレーン環、フェニル環等、を包含するが、これらに限定されない上記の任意のタイプの芳香族環、を含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、該芳香族環はアレーン環であってもよい。幾つかの実施態様において、該アレーン環は、ナフタレン環及び/又はフェニル環であってもよい。
【0072】
本発明の、放射性同位体で標識されたCSRリガンドの放射性同位体は、CHフッ素化を介して及び/又は求核芳香族SNAr(付加-脱離)機構を含むが、これらに限定されない機構を介して、任意のプロセスを通じて、該環の任意の位置で該リガンドの芳香族環に直接的に結合されうる。幾つかの実施態様において、該リガンドは、1位、2位、3位、4位、5位等でアレーン環に直接的に結合された18F及び/又は11Cを含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、該リガンドは、1位、2位、3位、4位、5位又はその他でナフタレン環に直接連結した18F及び/又は11Cを含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、該リガンドは、2位及び/又は4位でナフタレン環に直接的に結合された18F及び/又は11Cを含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、該リガンドは、2位及び/又は4位でナフタレン環に直接的に結合された18Fを含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、該リガンドは、2位及び/又は4位でナフタレン環に直接的に結合された11Cを含んでいてもよい。
【0073】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、下記の式IIを含んでいてもよく、ここで、Arは、置換されたアリールであり、及びYはアルキルである。
【0074】
【化1】
【0075】
Arは、下記に示されている基を包含するがこれらに限定されない任意のアリールであってもよく、ここで、XはO、S、NH、又はCH2であり、及びRはアリール、アルキル、ハロ、CF3、NO2、COOMe、OH、OMe、アルケン、又はアルキンである。
【0076】
【化2】
【0077】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、下記の式IIIを含みうる。
【0078】
【化3】
【0079】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、下記の式Ia~式Ihを含みうる。
【0080】
【化4】
【0081】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、下記の式Iを含みうる。
【0082】
【化5】
【0083】
幾つかの実施態様において、Ar基は、脂肪族鎖リンカーによって又はヘテロ原子を含む鎖によって化合物に結合されていてもよい。幾つかの実施態様において、該リンカーは脂肪族鎖であってもよい。幾つかの実施態様において、該リンカーは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等の追加の原子を更に含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0084】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、下記の式VIII、式IX及び/又は式Xのいずれか1つを含みうる。
【0085】
【化6】
【0086】
幾つかの実施態様において、本発明のリガンドは、放射性同位元素で標識化されたカルシウム感知受容体(CSR)リガンドであって、芳香族環を含む上記のCSRリガンドを含んでいてもよく、ここで、該リガンドは下記の式XXIを含まない。
【0087】
【化7】
【0088】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、薬剤NPS-2143(SB-262470A)の放射性同位元素で標識化された任意の誘導体を含んでいてもよい。薬剤NPS-2143に由来する本発明の、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドの非限定的な例は、下記の式IV、式V、式VI、及び/又は式VII(NPS-2143誘導体)のいずれか1つを包含する。
【0089】
【化8】
【0090】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、薬剤エボカルセト(CAS番号第870964-67-3)の放射性同位元素で標識化された任意の誘導体を含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは下記の式XIを含んでいてもよく、ここで、該放射性同位元素は、4位でナフタレンに直接的に結合されていてもよい。
【0091】
【化9】
【0092】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、下記の式XII、式XIII及び/又は式XIVのいずれか1つを含みうる。
【0093】
【化10】
【0094】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、薬剤SB-423562(CAS番号第351490-27-2;式XV)の放射性同位元素で標識化された任意の誘導体を含んでいてもよい。
【0095】
【化11】
【0096】
薬剤SB-423562に由来する、本発明の、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドの非限定的な例は、下記の式XVI、式XVII、式XVIII及び式XIXのいずれか1つを包含する。
【0097】
【化12】
【0098】
幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、薬剤エテルカルセチド塩酸塩(CAS番号第1334237-71-6;式XX)の放射性同位元素で標識化された任意の誘導体を含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、本発明の、該放射性同位元素で標識化されたCSRリガンドは、18Fに直接的に結合された下記の式XX(エテルカルセチド塩酸塩)を含みうる。
【0099】
【化13】
【0100】
標識化されたシナカルセト、NPS-2143、SB-423562、エボカルセット、エテルカルセチド塩酸塩、及びそれらの誘導体の本明細書において提供される構造は、本発明のリガンドの例であり、しかし、限定が意図されるものでない。他の放放射性同位元素標識及び該標識の直接結合の他の位置がまた企図される。例えば、幾つかの実施態様において、エテルカルセチド塩酸塩はまた、例えば、キレート化を通じて、図12において図示されているように、64Cu、68Ga及び/又は89Zr標識を含んでいてもよい。
【0101】
本発明の別の観点は、標識化されたカルシウム感知受容体(CSR)結合性部分を含む、陽電子放射断層撮影(PET)プローブ、蛍光イメージング(例えば、NIRF)プローブ及び/又は光学プローブとしての使用の為に適した、標識化されたカルシウム感知受容体(CSR)リガンドを提供する。
【0102】
PETプローブ、蛍光学プローブ、及び/又は光学プローブとして使用する為に適したCSRリガンドは、CSRに選択的に結合する(例えば、CSR結合性部分を含む)ところの任意のタイプのリガンドでありうる。
【0103】
本発明の標識化されたCSRリガンドの標識は、該リガンドの生物学的活性(例えば、CSR結合性)を実質的に変化させないところの任意の標識でありうる。幾つかの実施態様において、該標識は、蛍光色素(例えば、近赤外(NIR)色素又はNIR-II色素)であってもよい。幾つかの実施態様において、該標識は放射性同位元素であってもよい。例えば、幾つかの実施態様において、該標識は、18F、11C、68Ga、89Zr、64Cu、87Y、124I、44Sc等、又はそれらの任意の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施態様において、該標識は18F及び/又は11Cであってもよい。幾つかの実施態様において、11Cは、11CN、11COOH、及び/又は11CH3であってもよい。
【0104】
幾つかの実施態様において、該リガンドは抗体又はその抗原結合性フラグメントであってもよい。例えば、幾つかの実施態様において、該抗体又は抗体フラグメントは、モノクロナール抗体又はそのフラグメント、キメラ抗体又はそのフラグメント、CDRでグラフト化された抗体又はそのフラグメント、ヒト化抗体又はそのフラグメント、Fc、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合されたFv、一本鎖抗体(scFv)、シングルドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)又はそのフラグメント、抗イディオタイプ抗体又はそのフラグメント、二機能性ハイブリッド抗体抗体又はそのフラグメント、機能的に活性なエピトープ結合性抗体フラグメント、アフィボディ、ナノボディ、及びそれらの任意の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0105】
幾つかの実施態様において、該抗体は、CSRに対する抗原特異性を有する既知の抗体(例えば、抗CSR抗体、抗CaSR抗体とも呼ばれる)であってもよい。幾つかの実施態様において、該抗体は、モノクロナール抗CSR抗体クローン5C10、ADD、3F12、611825、EPR24050-59、6D4、及び/又はHL1499であってもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施態様において、該抗体はデ・ノボ(de novo)で作成されてもよい。
【0106】
本発明の別の観点は、甲状腺組織及び/又は副甲状腺組織内に優先的に取り込まれることが可能な、放射性同位元素を含むハロゲン化されたフルオロフォアを提供する。
【0107】
該放射性同位元素は、該リガンドの生物学的活性(例えば、甲状腺及び/又は副甲状腺の取り込み)を実質的に変化させないところの任意の放射性同位元素標識であってもよい。幾つかの実施態様において、該放射性同位元素は18F及び/又は11Cであってもよい。幾つかの実施態様において、該放射性同位元素は18Fである。
【0108】
幾つかの実施態様において、該ハロゲン化されたフルオロフォアは、下記の式XXII(18F-T700)を含んでいてもよい。
【0109】
【化14】
【0110】
幾つかの実施態様において、該ハロゲン化されたフルオロフォアは、下記の式XXIII(18F-T800)を含んでいてもよい。
【0111】
【化15】
【0112】
幾つかの実施態様において、本発明の該標識化されたリガンド及び/又はフルオロフォアは、少なくとも70%以上(例えば、少なくとも70%以上、少なくとも71%以上、少なくとも72%以上、少なくとも73%以上、少なくとも74%以上、少なくとも75%以上、少なくとも76%以上、少なくとも77%以上、少なくとも78%以上、少なくとも79%以上、少なくとも80%以上、少なくとも81%以上、少なくとも82%以上、少なくとも83%以上、少なくとも84%以上、少なくとも85%以上、少なくとも86%以上、少なくとも87%以上、少なくとも88%以上、少なくとも89%以上、少なくとも90%以上、少なくとも91%以上、少なくとも92%以上、少なくとも93%以上、少なくとも94%以上、少なくとも95%以上、少なくとも96%以上、少なくとも97%以上、少なくとも98%以上、少なくとも99%以上、又はそれらの任意の値若しくは範囲)の血清安定性を有しうる。例えば、幾つかの実施態様において、本発明の標識化されたCSRリガンド(例えば、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド)、及び/又は本発明のハロゲン化されたフルオロフォアは、少なくとも70%、少なくとも85%、又は少なくとも90%の血清安定性を有しうる。本発明のリガンド及び/又はフルオロフォアの血清安定性は、当技術分野において知られている任意の標準的な方法、例えば、血清タンパク質を含む溶液との同時インキュベーションによるものを包含するがこれらに限定されない上記の標準的な方法、によって、例えば、Qu et al.2019 Anim.Cells Syst.(Seoul) 23:155~163において記載されている方法(該文献は参照によって本明細書内に組み込まれる)によって、測定されてもよい。
【0113】
幾つかの実施態様において、本発明の該標識化されたリガンド及び/又はフルオロフォアは、少なくとも50%以上(例えば、少なくとも50%以上、少なくとも51%以上、少なくとも52%以上、少なくとも53%以上、少なくとも54%以上、少なくとも55%以上、少なくとも56%以上、少なくとも57%以上、少なくとも58%以上、少なくとも59%以上、少なくとも60%以上、少なくとも61%以上、少なくとも62%以上、少なくとも63%以上、少なくとも64%以上、少なくとも65%以上、少なくとも66%以上、少なくとも67%以上、少なくとも68%以上、少なくとも69%以上、少なくとも70%以上、少なくとも71%以上、少なくとも72%以上、少なくとも73%以上、少なくとも74%以上、少なくとも75%以上、少なくとも76%以上、少なくとも77%以上、少なくとも78%以上、少なくとも79%以上、少なくとも80%以上、少なくとも81%以上、少なくとも82%以上、少なくとも83%以上、少なくとも84%以上、少なくとも85%以上、少なくとも86%以上、少なくとも87%以上、少なくとも88%以上、少なくとも89%以上、少なくとも90%以上、少なくとも91%以上、少なくとも92%以上、少なくとも93%以上、少なくとも94%以上、少なくとも95%以上、少なくとも96%以上、少なくとも97%以上、少なくとも98%以上、少なくとも99%以上、又はそれらの任意の値若しくは範囲)の代謝安定性を有しうる。例えば、幾つかの実施態様において、本発明の標識化されたCSRリガンド(例えば、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド)、及び/又は本発明のハロゲン化されたフルオロフォアは、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%の代謝安定性を有しうる。本発明のリガンド及び/又はフルオロフォアの代謝安定性は、当技術分野において知られている任意の標準的な方法、例えば、HPLC分析によるものを包含するがこれに限定されない上記の任意の標準的な方法、によって、例えば、Qu et al.2019 Anim.Cells Syst.(Seoul) 23:155~163において記載されている方法(該文献は参照によって本明細書内に組み込まれる)によって、測定されてもよい。
【0114】
本発明の別の観点は、本発明のリガンド又はフルオロフォアを含むところのPETプローブに関する。
【0115】
本発明の別の観点は、本発明のリガンド又はフルオロフォアを含むところの光学プローブに関する。幾つかの実施態様において、該光学プローブは蛍光学プローブであってもよい。幾つかの実施態様において、該プローブはデュアルトレーサ(dual tracer)(例えば、光学プローブとPETプローブ、例えば、蛍光学プローブとPETプローブ)であってもよい。
【0116】
本発明の別の観点は、本発明のリガンド又はフルオロフォアを含む蛍光イメージングプローブ(例えば、NIRF(near-infrared fluorescence)プローブ)に関する。幾つかの実施態様において、本発明の蛍光イメージングプローブは、近赤外蛍光(NIRF)プローブであってもよい。幾つかの実施態様において、本発明の蛍光イメージングプローブは、慣用的な(可視光)蛍光学プローブ(例えば、波長約300ナノメートル(nm)~約850nmで励起)であってもよい。幾つかの実施態様において、本発明の蛍光イメージングプローブは、短波長赤外(SWIR:shortwave infrared)蛍光学プローブであってもよい。幾つかの実施態様において、該プローブはデュアルトレーサ(例えば、光学プローブとPETプローブ、蛍光学プローブとPETプローブ、NIRFプローブとPETプローブ)であってもよい。
【0117】
本発明の別の観点は、本発明のリガンド、フルオロフォア、及び/又はプローブと、医薬的に許容される担体とを含む組成物に関する。
【0118】
幾つかの実施態様において、本発明は、医薬的に許容される担体中の本発明のリガンド、フルオロフォア及び/又はプローブと、任意的に、他の薬剤、医薬剤、安定化剤、緩衝剤、担体、アジュバント、希釈剤等とを含む医薬組成物を提供する。注射剤の場合に、担体は典型的に液体である。他の投与方法の場合、該担体は固体であってもよく又は液体であってもよい。吸入投与の場合に、該担体は呼吸に適するものであり、好ましくは固体又は液体の粒子形態である。
【0119】
「医薬的に許容される」とは、毒性である又はその他の望ましくない物質ではない、すなわち、該物質が、望ましくない生物学的効果を引き起こすこと無しに対象に投与されうるうること、を意味する。
【0120】
幾つかの実施態様において、本発明の、放射性同位元素で標識化されたリガンド及び/又はフルオロフォアを含む本発明の組成物は、少なくとも70%以上(例えば、少なくとも70%以上、少なくとも71%以上、少なくとも72%以上、少なくとも73%以上、少なくとも74%以上、少なくとも75%以上、少なくとも76%以上、少なくとも77%以上、少なくとも78%以上、少なくとも79%以上、少なくとも80%以上、少なくとも81%以上、少なくとも82%以上、少なくとも83%以上、少なくとも84%以上、少なくとも85%以上、少なくとも86%以上、少なくとも87%以上、少なくとも88%以上、少なくとも89%以上、少なくとも90%以上、少なくとも91%以上、少なくとも92%以上、少なくとも93%以上、少なくとも94%以上、少なくとも95%以上、少なくとも96%以上、少なくとも97%以上、少なくとも98%以上、少なくとも99%以上、又はそれらの任意の値若しくは範囲)の放射性純度を有しうる。例えば、幾つかの実施態様において、本発明の、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド及び/又はハロゲン化されたフルオロフォアを含む組成物は、少なくとも70%以上、少なくとも75%以上、少なくとも80%以上、少なくとも85%以上、少なくとも90%以上、少なくとも95%以上、又は少なくとも98%以上の放射性純度を有しうる。
【0121】
幾つかの実施態様において、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物は、障害のイメージング、診断、及び/又は処置の指導において使用する為のものであってもよい。本発明において使用する障害の非限定的な例は、副甲状腺障害(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、三次性甲状腺機能亢進症)、甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節、バセドウ病)、心臓障害(例えば、高血圧)、腎臓障害(例えば、腎石灰沈着症、くる病、タンパク尿症)、生殖障害(例えば、不妊症、胚又は胎児の発育障害)、授乳障害(例えば、乳生産量の低下)、胃腸障害(例えば、膵炎、糖尿病、下痢、消化器官内分泌障害)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)、がん(例えば、結腸がん)、神経障害(例えば、アルツハイマー病、てんかん)、及び/又は肺障害(例えば、肺低形成、肺過形成)を包含する。幾つかの実施態様において、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物は、副甲状腺障害のイメージング、診断及び/又は処置の指導における使用の為のものであってもよい。。幾つかの実施態様において、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物は、甲状腺障害のイメージング、診断、及び/又は処置の指導における使用の為のものであってもよい。
【0122】
方法
【0123】
本発明の更なる観点は、イメージング又は治療の為に本発明の化合物を使用する方法に関する。
【0124】
本発明の1つの観点は、対象に対してPETスキャンを実施する方法であって、該対象に本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を投与することを含む上記の方法に関する。
【0125】
本発明の別の観点は、対象においてカルシウム感知受容体(CSR)を含む組織をイメージングする方法であって、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を該対象に投与することを含む上記の方法に関する。
【0126】
本発明の別の観点は、対象における甲状腺及び/又は副甲状腺組織をイメージングする方法であって、該対象に本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を投与することを含む上記の方法に関する。
【0127】
本発明の別の観点は、対象に対してPETスキャン及び蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を同時に実施する方法であって、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を該対象に投与することを含む上記の方法に関する。
【0128】
本発明の別の観点は、対象において副甲状腺組織を同定する方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、上記の方法に関する。
【0129】
本発明の別の観点は、対象において過形成及び/又は異所性の副甲状腺組織を除去する方法であって:(a)本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される;(b)過形成及び/又は異所性である副甲状腺組織の存在を同定すること;並びに、(c)該同定された過形成及び/又は異所性の副甲状腺組織を外科的に切除し、それによって、過形成及び/又は異所性の副甲状腺組織を除去することを含む上記の方法を提供する。
【0130】
本発明の別の観点は、対象における副甲状腺組織を除去する為の手術をガイドする方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、上記の方法を提供する。
【0131】
本発明の別の観点は、対象における甲状腺及び/又は他の頸部手術の間に副甲状腺組織を保護する為の手術をガイドする方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象にPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することを含み、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される、上記の方法に関する。
【0132】
本発明の更なる観点は、対象、例えば、副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象、の副甲状腺組織を外科的に除去する為の標的領域を決定する方法であって、該方法が、(a)本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより副甲状腺組織の存在が同定される;並びに、(b)異所性及び/又は過形成性の副甲状腺組織の存在を含む対象の1以上の領域を同定すること、ここで、該1以上の領域における異所性及び/又は過形成性の副甲状腺組織の存在により、副甲状腺組織の外科的除去の為の該対象の標的領域としての1以上の領域が示される、を含む、上記の方法を提供する。
【0133】
本発明の別の観点は、対象における副甲状腺機能亢進症(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症及び/又は三次性甲状腺機能亢進症)を処置する方法であって、該方法は、副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象に対して、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、該対象に対してPETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することによって、副甲状腺組織の外科的除去に対する該対象の適合性を決定すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングにより、副甲状腺組織の存在が同定される;並びに、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングの結果に基づいて該副甲状腺機能亢進症を処置することを含む、上記の方法を提供する。
【0134】
本発明の追加の観点は、対象におけるカルシウム感知受容体(CSR)陽性組織の障害を処置する方法であって、該方法は、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を用いて、副甲状腺機能亢進症を有する対象、又は副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象に対して、PETスキャン及び/又は蛍光イメージング(例えば、NIRFイメージング)を実施することによって、それらの処置に対する該対象の適合性を決定すること、ここで、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングによりCSR陽性組織の存在が同定される;並びに、該PETスキャン及び/又は蛍光イメージングの結果に基づいて障害を処置することを含む、上記の方法を提供する。
【0135】
本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ、組成物及び方法に関連する障害の非限定的な例は、副甲状腺障害(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、三次性甲状腺機能亢進症)、甲状腺障害(例えば、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節、バセドウ病)、心臓障害(例えば、高血圧)、腎臓障害(例えば、腎石灰沈着症、くる病、タンパク尿症)、生殖障害(例えば、不妊症、胚又は胎児の発育障害)、授乳障害(例えば、乳生産量の低下)、胃腸障害(例えば、膵炎、糖尿病、下痢、消化器官内分泌障害)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)、がん(例えば、結腸がん)、神経障害(例えば、アルツハイマー病、てんかん)及び/又は肺障害(例えば、肺低形成、肺過形成)を包含する。
【0136】
幾つかの実施態様において、該対象は、副甲状腺機能亢進症(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、三次性甲状腺機能亢進症)を有していてもよく、又は副甲状腺機能亢進症(例えば、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、三次性甲状腺機能亢進症)の危険性を有する対象若しくは該副甲状腺機能亢進症を有する疑い又は発症する疑いがある対象であってもよい。例えば、幾つかの実施態様において、該対象は、原発性副甲状腺機能亢進症を有していてもよく、又は原発性副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは原発性副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象であってもよい。幾つかの実施態様において、該対象は、二次性副甲状腺機能亢進症を有していてもよく、又は二次性副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは二次性副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象であってもよい。幾つかの実施態様において、該対象は、三次性副甲状腺機能亢進症を有していてもよく、又は三次性副甲状腺機能亢進症の危険性を有する対象若しくは三次性副甲状腺機能亢進症を有する疑い或いは発症する疑いがある対象であってもよい。
【0137】
幾つかの実施態様において、対象は、甲状腺障害を有していてもよく、又は甲状腺障害の危険性を有する対象若しくは甲状腺障害を有する疑い或いは発症する疑いがある対象であってもよく、ここで、該甲状腺障害は、甲状腺がん、甲状腺腫、甲状腺結節及び/又はバセドウ病を包含するがこれらに限定されない。
【0138】
幾つかの実施態様において、該対象は、術前対象(pre-operative subject)であってもよい。
【0139】
幾つかの実施態様において、該対象は、術中対象(intra-operative subject)であってもよい。(例えば、該対象が手術中(例えば、診査手術(explorative surgery))である)。
【0140】
幾つかの実施態様において、該同定された副甲状腺組織が、異所性副甲状腺組織及び/又は過形成副甲状腺組織であってもよい。幾つかの実施態様において、該同定された副甲状腺組織が、健康な及び/又は正常な(すなわち、非悪性の)副甲状腺組織であってもよい。
【0141】
幾つかの実施態様において、本発明の方法は、対象における同定された副甲状腺組織のサイズを定量化することを更に含んでいてもよく、ここで、正常よりも大きい(例えば、対象と比較して、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、又は例えば、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上)同定された副甲状腺組織により、異常な(例えば、悪性、異所性、過形成及び/又は腺腫性)副甲状腺組織が同定される。副甲状腺組織のサイズの定量化は、当技術分野において既知の任意の方法を介して、例えば下記に限定されるものではないが、該組織におけるPET及び/又はデュアルトレーサープローブの放射性標識蓄積の定量化(例えば、サイズの間接的な推定として)を介して、視覚的強度を介して、及び/又は計算方法(例えば、結果イメージングモダリティ(results imaging modalities)に基づく計算方法、例えば下記に限定されるものではないが、PET、コンピュータ断層撮影(CT:computer tomography)及び/又は蛍光イメージング、に基づく計算方法)を介して、行われてもよい。
【0142】
幾つかの実施態様において、本発明の方法は、同定された悪性副甲状腺組織の少なくとも一部を切除することを更に含みうる。幾つかの実施態様において、本発明の方法は、悪性副甲状腺組織(の全て)、すなわち、同定された悪性副甲状腺組織の全体、を切除することを更に含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、本発明の方法は、副甲状腺手術、甲状腺手術、及び/又は他の頸部手術の間の切除から、同定された健康な副甲状腺組織の少なくとも一部を保護することを更に含んでいてもよい。幾つかの実施態様において、本発明の方法は、副甲状腺手術、甲状腺手術、及び/又は他の頸部手術の間の切除から、同定された健康な副甲状腺組織(の全て)、すなわち、同定された健康な副甲状腺組織の全体、を保護することを更に含んでいてもよい。
【0143】
幾つかの実施態様において、本発明の方法は、副甲状腺組織の存在について切除された甲状腺組織をスキャンすることを更に含んでいてもよい。
【0144】
本発明の方法の幾つかの実施態様において、本発明のリガンド、フルオロフォア、プローブ又は組成物を使用して対象に対してPETスキャンを実施することは、約1~約15mCiのリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15mCi、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15mCiのリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物、又はそれらの任意の値若しくは範囲、のリガンド、フルオロフォア、プローブ及び/又は組成物を投与することを含んでいてもよい。
【0145】
例示的な投与様式は、経口、直腸、経粘膜、局所、経鼻、吸入(例えば、エアロゾルを介して)、頬(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、子宮内(又は胎内(in ovo))、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内[骨格筋、横隔膜筋及び/又は心筋への投与を包含する]、皮内、胸腔内、脳内、及び関節内)、局所(例えば、皮膚表面及び粘膜表面(気道表面を包含する)の両方、並びに経皮投与)、リンパ管内等、並びに組織又は臓器への直接注射(例えば、肝臓、骨格筋、心筋、横隔膜筋又は脳への注射)を包含する。投与はまた、腫瘍(例えば、腫瘍又はリンパ節内又はそれらの近傍)への投与であることができる。幾つかの実施態様において、該投与は静脈内注射を介するものでありうる。任意の所与の場合に最も適した経路は、イメージングされる及び/又は処置される状態の性質及び重症度、並びに投与されている特定の組成物の性質に依存するであろう。
【0146】
本発明の方法の幾つかの実施態様において、本発明の該標識化されたリガンド及び/又はフルオロフォアは、少なくとも70%以上(例えば、少なくとも70%以上、少なくとも71%以上、少なくとも72%以上、少なくとも73%以上、少なくとも74%以上、少なくとも75%以上、少なくとも76%以上、少なくとも77%以上、少なくとも78%以上、少なくとも79%以上、少なくとも80%以上、少なくとも81%以上、少なくとも82%以上、少なくとも83%以上、少なくとも84%以上、少なくとも85%以上、少なくとも86%以上、少なくとも87%以上、少なくとも88%以上、少なくとも89%以上、少なくとも90%以上、少なくとも91%以上、少なくとも92%以上、少なくとも93%以上、少なくとも94%以上、少なくとも95%以上、少なくとも96%以上、少なくとも97%以上、少なくとも98%以上、少なくとも99%以上、又はそれらの任意の値若しくは範囲)の血清安定性を、少なくとも30分以上(例えば、投与後のイン・ビボ(in vivo)で)有しうる。例えば、幾つかの実施態様において、本発明の標識化されたリガンド(例えば、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド)及び/又は本発明のハロゲン化されたフルオロフォアは、少なくとも70%、少なくとも85%、又は少なくとも90%の血清安定性を、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも90分間、少なくとも2時間、又は少なくとも3時間、投与後に有しうる。
【0147】
本発明の方法の幾つかの実施態様において、本発明の該標識化されたリガンド及び/又はフルオロフォアは、少なくとも50%以上(例えば、少なくとも50%以上、少なくとも51%以上、少なくとも52%以上、少なくとも53%以上、少なくとも54%以上、少なくとも55%以上、少なくとも56%以上、少なくとも57%以上、少なくとも58%以上、少なくとも59%以上、少なくとも60%以上、少なくとも61%以上、少なくとも62%以上、少なくとも63%以上、少なくとも64%以上、少なくとも65%以上、少なくとも66%以上、少なくとも67%以上、少なくとも68%以上、少なくとも69%以上、少なくとも70%以上、少なくとも71%以上、少なくとも72%以上、少なくとも73%以上、少なくとも74%以上、少なくとも75%以上、少なくとも76%以上、少なくとも77%以上、少なくとも78%以上、少なくとも79%以上、少なくとも80%以上、少なくとも81%以上、少なくとも82%以上、少なくとも83%以上、少なくとも84%以上、少なくとも85%以上、少なくとも86%以上、少なくとも87%以上、少なくとも88%以上、少なくとも89%以上、少なくとも90%以上、少なくとも91%以上、少なくとも92%以上、少なくとも93%以上、少なくとも94%以上、少なくとも95%以上、少なくとも96%以上、少なくとも97%以上、少なくとも98%以上、少なくとも99%以上、又はそれらの任意の値若しくは範囲)の代謝安定性を、少なくとも30分以上(例えば、投与後のイン・ビボ(in vivo)で)有しうる。例えば、幾つかの実施態様において、本発明の標識化されたリガンド(例えば、放射性同位元素で標識化されたCSRリガンド)及び/又は本発明のハロゲン化されたフルオロフォアは、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%の代謝安定性を、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも90分間、少なくとも2時間、又は少なくとも3時間、投与後に有しうる。
【0148】
ここで、本発明は、下記の実施例を参照して説明されるであろう。これらの実施例は、本発明の特許請求の範囲を限定することが意図されたものでなく、寧ろ、特定の実施態様を例示することが意図されたものであることが理解されるべきである。当業者に生じる例示された方法におけるいかなる変形も、本発明の範囲内に入ることが意図される。
【0149】
実施例
【0150】
上記は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきものではない。本発明は下記の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物はその中に含まれるべきである。
【0151】
実施例1:石灰化薬剤及びペプチドをベースとしたCSRを標的とする新規なPET剤の開発
【0152】
本研究では、相対的に簡単な方法で、温和且つ迅速な条件下で、広範な有機薬剤をPET分子プローブへと変換する為に、アレーンC-H放射性標識アプローチ(Chen et al.2019 Science 364:1170~1174)が用いられた。NIRF色素とアレーンを含む薬剤分子とに基づく幾つかの新規な芳香族18FベースPETトレーサーが本明細書において記載されており、該トレーサーは、副甲状腺検出の為の成功裏に生成された18Fで標識化されたシナカルセト(カルシウム感知受容体(CSR)を標的とする低分子)、及び特異的な副甲状腺及び甲状腺標的化の為の18Fで標識化されたNIRF色素を含む。
【0153】
ほとんどのイメージング技術(超音波、CT、MRI等)は構造に基づいており、すなわち、それらは内部構造の形状を示すことができる。該構造の同定には放射線科医の解剖学的知識を必要とする。多くの場合、構造は同定されることができるが、その同一性は不明のままである。所与の組織の為に特異的な分子又は機能を標的とする技術は、未知の腫瘤を同定する為に非常に有用であることができる。組織特異的分子を標的とするマーカーは、構造イメージングでは得られない方法で、該組織の同一性に関する情報を提供することができる。例えば、超音波検査で甲状腺の近くに小さな結節が見られる場合があるが、リンパ節又は異所性甲状腺組織の病巣とは対照的に、副甲状腺腺腫としてのその正体はすぐにはわからない場合がある。該結節を「照らす」(lights up)ところの"副甲状腺特異的トレーサーは、該結節の同一性を明らかにする可能性がある。そのようなアプローチは構造的イメージングを補完するものであり、他のイメージング技術と組み合わせて使用される可能性がある。事実、正常な副甲状腺は3~5mmの組織であり、該組織は、従来の方法を使用して検出することが困難である。1以上の該副甲状腺が副甲状腺機能亢進症に一旦なると、そのサイズは約10mm以上に成長する。残念なことに、現在のイメージングは複数の病変を識別する場合があり(一部の病変は副甲状腺に関連しないものがある場合が、不必要な手術につながる可能性がある)、それにより、どの病変が副甲状腺に関係しているかを判断することが(手術計画の為に)重要になる。その上、現在のイメージングは小さな病変を検出することが苦手である。
【0154】
本研究において、CSR結合性分子に基づいて、PETプローブ及びPET/NIRFプローブの幾つかの例が開発された。
【0155】
既存のアーカイブ臨床標本(archival clinical specimens)が、免疫組織化学(IHC:immunohistochemistry)を用いてCSRの存在量について検査する為に使用された。正常な副甲状腺は、甲状腺切除の間に誤って除去されることがある。既存の臨床標本が、適切な組織ブロックを決定する為に検討された。標準的なIHC法を用いて、組織がCSRの発現の為に染色された。発現は「H」スコアを用いてスコア化され、該「H」スコアは、染色の強度(0~3)と各強度で染色される細胞の割合とを考慮したものである。例えば、細胞の30%が1+、20%が2+、及び40%が3+に染色する場合、該Hスコアは30+40+120=190になる。Hスコアの範囲は0~300である。加えて、副甲状腺腺腫と副甲状腺過形成が既存の臨床検体から見つけられた。それらはまた、CSRについて染色され、そして正常な副甲状腺と比較された。甲状腺に隣接する正常な副甲状腺30個、副甲状腺腺腫30個、原発性副甲状腺機能亢進症を有する患者からの過形成副甲状腺30個、及び二次性(腎性)副甲状腺機能亢進症を有する患者からの副甲状腺30個がこの研究において用いられた。過形成を有する患者は、日常的な組織学では腺腫と過形成を確実に区別できない故に、臨床記録全体の検討に基づいて同定された。3~4倍の染色における差は、イメージング上で組織を区別する為に十分であると予想された。
【0156】
図1は、正常な甲状腺、副甲状腺、及び副甲状腺機能亢進症におけるCSR染色結果を示し、且つ副甲状腺機能亢進症及び副甲状腺におけるCSR発現が、近傍の甲状腺組織におけるその発現の6~7倍高いことを実証する。この差は、PETイメージングにおいて十分なコントラストを提供し、且つ下記のラット及びNHPの研究において高いコントラストが観察された。これらの染色結果は、CSRが副甲状腺イメージングの為の有効なターゲットであることを明確に実証した。
【0157】
シナカルセトが、カルシウム模倣薬(calcimimetic drugs)をベースとした新規な副甲状腺標的化PET剤(parathyroid targeted PET agents)を開発する為の出発例として用いられた。シナカルセトは、CSRに高い親和性及び選択性で結合する治療薬である。シナカルセトをイメージング剤へと成功裡に変換する為に、親化合物のCSR結合性親和性を維持することを目的として、シナカルセトの芳香環上の水素がフッ素に置換され、それは、化学構造上の最小限の変化を表す(図2,上部の模式図「A」)。従来、電子が豊富な芳香族系内に18Fを導入することは容易ではなかった。本発明の発明者等による光レドックス放射性標識に関する最近の研究は、C-H結合をC-F結合に直接的に変換する革新的な方法を提供した。Hを同様のサイズのFで置換することにより、CSRに対する結合性親和性を維持することを目的とし、それは結合性アッセイによって確認された。光学的に純粋なシナカルセトの合成は、1段階のBoc保護によって行われた。他の18Fで標識化されたシナカルセトアナログがまた同様の戦略を使用して調製された。直接的なC-Hフッ素化に加えて、シナカルセトにおけるCF3基の放射性フッ素化がまた検討された(図2,下部の模式図「B」)。フラストレイティド・ルイスペア(Frustrated Lewis Pair)を介した方法を通じて、FLPの直接の放射性フッ素化又は相対的に安定なBr中間体のいずれかを通じて、Boc保護されたシナカルセトが調製された。一段階の脱保護後、親シナカルセト剤と同じ化学構造を持つ放射性分子が得られた。前駆体が得られた後、光源、温度、フッ化物源、反応比等を変化させることによって、放射性標識条件が検討された。選択された剤の単離収率は5%超であった。
【0158】
フッ素18(18F)は、相対的に長い半減期(t1/2=110分)を有し且つ陽電子放出により高い効率(97%)で崩壊する故に、放射性医薬品産業において最も重要な放射性同位元素のうちの一つである。芳香族系又はヘテロ芳香族系は低分子の医薬品及び治療薬においてよく見られ、芳香族C-H結合が多く且つ低分子の治療薬及びプローブにおいてC(sp2)-F結合の重要性が高まっていることから、アレーンC-HをC-18F結合へと直接変換することが理想的である。[18F]TBAFを[18F]フッ化物の供給源として利用するところの芳香族の直接C-H[18F]フッ素化に関する以前の研究により、モデル化合物のリストが公表された(Chen et al.2019 Science 364:1170~1174;参照によって本明細書内に組み込まれる)。この報告に加え、最近、氷冷温度で青色レーザーを用いて18Fを芳香族系に部位特異的に導入することを可能にするデオキシ放射性フッ素化が発見された(Tay et al.2020 Nature Catalysis,2020,3:734~742;参照によって本明細書内に組み込まれる)。
【0159】
本研究において、Boc保護されたシナカルセトのアレーンC-H結合の直接[18F]放射性フッ素化が行われた(図3)。光レドックス標識化は、19%の単離収率で所望の生成物を生成した。18Fで標識化されたBoc-シナカルセトは、HPLC分離を用いてBocシナカルセトから完全に分離されることができた。該標識化はナフタレン環の4位で主に生じ、4F-Boc-シナカルセト標準物質との共注入によって同一性が確認された。他の位置で標識化された化合物であると思われる小さな放射性ピークが見られたが、それらの全ては4-[18F]F-Bocシナカルセトから完全に分離されることができた。Boc基を除去した後に、4-[18F]Fシナカルセトは、98%超の放射化学的純度、2.1Ci/μmolのモル活性で得られることができ、それは次に、初期評価の為に正常な動物に注射された。
【0160】
CSRを標的とする所望の剤を得た後に、それらの解離定数(Kd)が飽和アッセイを用いて決定された。簡単に言うと、O細胞(CSR発現陽性)が2枚の24ウェルプレートに0.2×106細胞/ウェルで播種され、37℃、5%のCO2で一晩インキュベーションされた。次に、FBSを含まない培地中の放射性トレーサーの貯蔵溶液が、0.1nM~100μMの濃度で、コールドスタンダード(cold standard)の添加を通じて調製された。細胞結合性を測定する為に、濃度を増加させた放射性トレーサー溶液が1つのプレートの関連付けられたウェル内に順次添加され、そして、トレーサーの非特異的結合が、大過剰の放射性標識化されていない化合物(500μM)の存在下、別のプレートにおいて評価された。氷上で1時間インキュベートされた後、結合していないトレーサーが除去され、そして、氷冷PBSで3回、優しく洗浄され、そして、細胞が0.2NのNaOHで収穫され、ガンマカウンターで放射能が測定された。特異的結合が、細胞結合活性から非特異的結合を差し引くことによって決定され、そして、Kd値が非線形回帰曲線フィット(nonlinear regression curve fits)(GraphPad Prism)を用いて特異的結合曲線を通じて算出された。望ましい剤は、シナカルセト及びエテルカルセチドと比較して同等のKdを有するべきである。Kd値に加えて、血清安定性と代謝安定性とがまた行われた。選択された剤は、インキュベーション/注射後1時間で、90%超の血清安定性を有し、及び80%超の代謝安定性を有するべきである。
【0161】
18F-シナカルセトのイン・ビトロ(in vitro)安定性が実行され、6時間の時点で90%超の純度を実証した(図4A)。非ヒト霊長類のイメージング実験において、血液サンプルが、注射後1時間及び3時間に静脈から採取された。図4Bにおいて示されているように、該剤は1時間の時点ではかなり安定であり、及び3時間の時点では有意な代謝物が観察された。PETイメージングが注射後1時間で終了するので、18F-シナカレクトはPET剤として妥当な安定性を有することが示唆された。
【0162】
正常なラットが、初期のCSR剤イメージングの為の動物モデルとして使用された。マウスの約10倍の体重を持つラットとは対照的に、マウスの副甲状腺の外科的解剖は技術的に難しすぎる。解析は、病理学、オートラジオグラフィー及び顕微鏡研究の為に、副甲状腺の同定に関して豊富な経験を持つ個人によって行われた。簡単に説明すると、動物はイソフルランで麻酔された。PETプローブについては、1~2mCiのトレーサーの投与後にダイナミックPETイメージングが行われ、そして、動物は2時間のダイナミックスキャン(dynamic scan)でイメージ化された。CTスキャンがまた、解剖学的レジストレーションと減弱補正の為に取得された。画像が再構成され、研究の為に代表的なダイナミック画像が作成された(10分のエポック)。これらの画像は、背景組織に対する副甲状腺の可視性を評価する為に定性的に評定された。甲状腺及び他の組織と比較した副甲状腺の取り込みの相対的動態を評価する為に、PET動態モデリングがまた行われた。
【0163】
各動物のイメージング後、副甲状腺が注意深く解剖され、そして、副甲状腺における取り込みが測定され、引き続き、その後病理学的に評価されて、組織像が確認された。オートラジオグラフィーが、副甲状腺領域におけるその分布を調べる為に行われた。外科手術の間の光学イメージングガイダンスがまた、開発されたCSR PET蛍光学プローブを用いて行われた。切除の際、外科医はまた、蛍光を使用した場合と使用しなかった場合と病変の可視性を評価した。他の重要臓器、例えば、甲状腺、近傍組織及び主要臓器を包含する上記の他の重要臓器、がまた、これらの臓器内の相対的取り込みを評価する為に解剖された。甲状腺組織における放射能の局在化は、隣接するスライドの病理学的染色と組み合わせたオートラジオグラフィーによって確認された。
【0164】
18F-シナカルセトは、CSRを標的とすることによって、ラットにおける副甲状腺を検出することができた。副甲状腺は非常に小さく(ヒトにおいて3~5mm)、及び一般的に、多くのイメージング方法では検出限界未満である。新規なCSR PET剤である18F-シナカルセトがラットにおいて注射され、そして、小動物PETイメージングが実施された。図5のパネルAにおいて示されているように、ラット頸部の副甲状腺領域には、2つのホットスポットが明瞭に実証された。観察されたシグナルが甲状腺又は他の組織ではなく、非常に小さな副甲状腺に由来するものであることを確認する為に、ラットが犠牲にされ、そして、該腺組織における放射能の局在化が、隣接するスライドの病理学的染色と組み合わせたオートラジオグラフィーによって評価された。図5のパネルBにおいて示されているように、18F-シナカルセトの局在化は、CSR陽性である副甲状腺とよく相関していた。これらの結果は、副甲状腺イメージングの為にCSRを用いるアプローチを強く支持した。
【0165】
シナカルセトに加えて、エテルカルセチドが二次性副甲状腺機能亢進症の処置の為の為のカルシウム模倣薬である。このペプチドはPET及びPET蛍光学プローブを構築する為に修飾されることもできる。
【0166】
実施例2:副甲状腺を標的とする18Fで標識化されたNIRF色素の展開
【0167】
これまでに、何らかのターゲティングモチーフ(targeting motif)無しに甲状腺(T700)及び副甲状腺(T800)蛍光イメージングの為の新規なハロゲン化されたフルオロフォアが発見されている(Wizenty et al.2020 Molecules 25;Kim et al.2017 Gland Surg.6:516~524;Wada et al.2017 Ann.Thorac.Surg.103:1132-1141;Hyun et al.2015 Nat.Med.21:192~197)。リアルタイムの高感度NIRFイメージングにより、副甲状腺を甲状腺及び周囲の軟部組織とから区別することを可能にする。副甲状腺の明瞭な可視化は、副甲状腺手術の助けとなり、及びまた、甲状腺の損傷又は正常な組織の除去を最小限に抑える。しかしながら、NIRフルオロフォアは組織への透過性に依然として限界がある。このことは、異所性にある副甲状腺、又は隠れた場所内、例えば甲状腺内、にあるときに、副甲状腺を検出する際に特に問題となる可能性がある。この制限を解決する為に、本研究は、NIRF色素内の19F元素をPET同位体18Fに置き換え、画像ガイドされた手術(image-guided surgery)の為にNIRF特性を維持したまま、副甲状腺についての位置をPETによって検出されることができることを可能にする。放射性化合物は親色素と全く同じ構造を有する為に、該色素の副甲状腺又は甲状腺ホーミング能力(homing capability)は変化しないであろう。本明細書において該データは、18Fで標識化されたT700及びT800の成功裡の生成を記載し、それは夫々、甲状腺及び副甲状腺内に優先的に取り込まれたことを実証した。これらの放射性薬剤及び蛍光薬剤は、PETによる副甲状腺の検出と、それに続く画像ガイドされた手術の為に使用されることができる。
【0168】
ハロゲン化されたシアニン色素T700(甲状腺内に取り込まれる)及びT800(副甲状腺内に取り込まれる)の光学シグナル(optical signal)は、限られた組織にしか浸透しない。図6において示されているように、T700及びT800の標準化合物及び非対称前駆体が調製された。非対称前駆体T700-前駆体-H及びT800-前駆体-Hから出発して、直接的なC-H放射性フッ素化は、対称生成物18F-T700及び18F-T800をもたらす(図7)。T700-前駆体-H及びT800-前駆体-HのC-Hフッ素化は、複数のアレーンC-H部位を放射性フッ素化しうる為に、18F-T700及び18F-T800がまた、新しく開発されたデオキシ放射性フッ素化方法を通じて合成された(Tay et al.2020 Nature Catalysis 3:734~742)。簡単に説明すると、図6において示されているように、非対称前駆体T800-前駆体-ORが調製された。放射性フッ素化は、「OR」基を有する位置で行われた。デオキシ放射性フッ素化の為のヌクレオフュージの範囲には、図6において示されているように、4-クロロフェノキシエーテル及び他の電子に乏しいアリールオキシ基を含む。更に使用する為の選択された18F-T800は、励起>700nm及び発光>720nmで量子収率>5%を維持し(標識化プロセスがその光学シグナルに悪影響を与えないようにする)、イン・ビボ(in vivo)研究の為に1時間のインキュベーションで血清安定性>90%を維持する必要がある。
【0169】
[18F]-放射性標識は、図7において示されている一般的な標識化スキームに従って、直接C-Hフッ素化法又はデオキシフッ素化法を用いて、安定なC-[18F]F結合を形成することを通じて行われた。これらの新規なPET/蛍光色素のイン・ビトロ(in vitro)安定性が、PBS及びウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin)中でインキュベーションされた後に、異なる時点(0.5時間、1時間、2時間、4時間、及び6時間)でHPLCによって評価された。特に高活性濃度での放射線分解に対するそれらの耐性(又は感受性)がまた調べられた。該情報が、上記されているようにしてこれらのフッ素化された色素の得られた蛍光特性(励起/発光波長、量子収率、及び光安定性)と組み合わせて、[18F]-T700/T800色素がイン・ビトロ(in vitro)で妥当な安定性(1時間のインキュベーションで90%超、脱フッ素化なし)を示すかどうかが決定された。これらの基準を満たした選択された剤は、イン・ビボ(in vivo)安定性評価の為に正常マウス内に注射された。
【0170】
現在のところ、なぜT800とT700とが異なる腺によって取り込まれるかは依然として未知である。しかしながら、ハロゲン化とポリメチンの長さとが重要であるように思われる。理論に縛られることは望まないが、T700の甲状腺への取り込みがNISタンパク質によって介在される能動輸送機構(active transport mechanism)の結果でありうるという仮説が立てられた。それ故に、I-の存在下でのブロッキング試験により、その取り込みが減少されることができるかどうかが評価されるであろう。同様に、T800は石灰化剤である可能性があり、カルシウムイオン存在下でのブロッキング試験により、そのブロッキング効果が評価されるであろう。
【0171】
T700色素及びT800色素の局在プロファイル(localization profile)を確認し、そして、新たに作成されたT800アナログを評価する為に、イン・ビボ(in vivo)試験が正常ラットで実施された。ラットにおける正常な副甲状腺のサイズが小さいことを考慮して、蛍光顕微鏡及び病理検査が、PET/NIFRイメージング後の副甲状腺の取り込みとコントラストとを確認する為に用いられた。簡単に説明すると、イメージング剤が静脈(i.v.)注射され、そして、注射後1時間と4時間にIVISとPET/CTでイメージング化された。イメージング剤の投与量を決定する為に、2nmol~100nmolの範囲でイメージング剤が注入されて、バックグラウンドシグナルをあまり誘発すること無しに、高い副甲状腺シグナルを有するところの最適な投与量が選択された。イメージング実験が終了した後に、副甲状腺が除去され、蛍光顕微鏡検査、オートラジオグラフィー(隣接スライド)及び病理検査により、シグナル(signal)対雑音コントラスト(noise contrast)が更に評価された。シグナル対バックグラウンド比は、副甲状腺と甲状腺又は隣接する組織との間の蛍光強度及び/又はオートラジオグラフィーのシグナルを用いて計算された。選択された剤はシグナル対バックグラウンド比が2超でなければならない。
【0172】
T700とT800との両方が合成され、そして次に、デュアルチャンネルイメージングを用いてIVISでスキャンした。図8のパネルAにおいて示されているように、675nm励起及び720nm発光チャンネルは、T700からの優勢な蛍光シグナル(predominant fluorescent signal)をもたらす。対照的に、745nm励起及び780nm発光チャンネルは、T800からの優勢な蛍光シグナル(predominant fluorescent signal)をもたらす。明らかに、これらのパラメータは、本発明者等のデュアルチャンネルイメージングにおいて使用されることができる。T700及びT800の該腺(gland)の特異的イメージング能力を確認する為に、それぞれの剤の0.2μmolがウィスター(Wistar)ラットに注射され、次に、エクス・ビボ(ex vivo)イメージングが行われた。図8のパネルBにおいて示されているように、副甲状腺において顕著な蛍光シグナル(prominent fluorescent signal)がT700シグナルから観察された。エクス・ビボ(ex vivo)スキャンにより、T700シグナルは甲状腺に及びT800シグナルは副甲状腺に位置していることが更に確認された。明らかに、デュアルチャンネルオーバーレイ(dual channel overlay)は、外科医が背景の甲状腺とその近傍組織とに関して副甲状腺を同定するのに役立つであろう。
【0173】
ラットの副甲状腺はマウスの副甲状腺よりはるかに大きいが、エクス・ビボ(ex vivo)イメージングで該副甲状腺の全体的に小さいサイズの故に、必要な解像度を依然として欠いている場合がある。副甲状腺を正確に同定する為の能力は、初期スクリーニング研究において蛍光顕微鏡又はオートラジオグラフィーを通じて、副甲状腺の取り込み、及び副甲状腺と背景のコントラストを評価する為に重要な技術である。副甲状腺からの自家蛍光がまた調べられた(図8のパネルC)。マウス1、2及び3に夫々生理食塩水、T700及びT800色素が注射された。副甲状腺を含む組織が自家蛍光で、T700及びT800チャンネルでイメージ化された。予想通り、自家蛍光は、副甲状腺の位置においてほぼバックグラウンドレベルであった。
【0174】
合成された[18F]-T800及び[18F]-T700は、放射-HPLCで標準品と十分に相関することが確認された(図9)。ニトロを脱離基として用いる従来の標識化方法は、所望の生成物をもたらさなかった。方法論の重要な工程は、シアニン色素(T700及びT800)の芳香族環に18Fを導入することであった。この最初の成功により、本明細書において提案された方法の実現可能性が確認された。他の標識化方法は、放射デオキシフッ素化(radio-deoxyfluorination)(Neumann et al.2016 Nature 538:274)、N-アリルシドノンのフッ素化(Narayanam et al.017 Angew Chem.Int.Ed.Engl.56:1306~13010)、スルホニウム塩(Gendron et al 2018 J.Am.Chem.Soc.140:11125~11132)及びヨードニウム塩(Ichiishi et al.2014 Org.Lett.16:3224~3227; McCammant et al.2017 Org.Lett.19:3939~3942; Rotstein et al.2014 Nat.Commun.5:4365)、フルオロデメタレーション(fluorodemetalation)(Lee et al.2011 Science 334:639~642; Lee et al.2012 J.Am.Chem.Soc.134:17456~17458)、ボロン酸(Mossine et al.2015 Org.Lett.17:5780~5783)及びエステル(Tredwell et al.2014 Angew Chem.Int.Ed.Engl.53:7751~7755)を包含することができる。該色素の疎水性によりバックグラウンドシグナルが高くなる懸念がありうる。本明細書におけるデータは、副甲状腺におけるT800のコントラストが近傍組織と比較して良好であることを実証した。光レドックス放射性フッ素化の場合に、複数の潜在的反応部位が存在し、そして、前駆体から分離されることができる能力があってもよい。CHフッ素化反応の場合に、2つ又は場合によっては3つの主要な生成物が存在しうる。SNAr光レドックスデオキシ放射性フッ素化は、主に1つの生成物をもたらす。標識化剤は、F5カラム上で前駆体から十分に分離されることができる。
【0175】
リード剤(Lead agents)は、移植されたヒト副甲状腺組織を有するヌードマウスにおいて更に評価された。これらの実験により、開発された剤がネズミ副甲状腺に加えてヒト副甲状腺組織を効率的にターゲットにすることができることが確認された。
【0176】
新しく開発された剤を臨床的に関連したモデルにおいて評価する為に、ヒト副甲状腺組織の異種移植(xenografting)が用いられた。ヒト副甲状腺をヌードマウス内に移植することによって、15以上のモデルマウスが確立された。確立されたT800をプローブとして用いると、血管が移植部位に確立された後、移植されたPHPT組織がはっきりと可視化されることができた(図10)。該移植はまた、近傍組織と共に外科的に除去された。エクス・ビボ(ex vivo)イメージングにより、副甲状腺とその近傍組織との間に良好なコントラストが実証された。
【0177】
更なる実験には、げっ歯類における14日間の毒性試験の実施が含まれる。単回高用量(選択された剤についてのヒトへの投与予定量よりも100倍超高い)が、急性毒性試験の為に用いられる。該試験はグッド・ラボラトリ・プラクティス(GLP:Good Laboratory Practice)の条件下で実施される。雌及び雄のラットにリード剤が単回静脈(i.v.)内投与される(イメージング投与量の100倍超)。該動物は罹患率/死亡率、及び毒性の徴候について、1日2回チェックされる。動物には注射前、並びに1日目、2日目、4日目、8日目及び14日目に、体重、血液化学及び手の観察データが収集された。下記の4つのグループの動物が試験される。グループ1:絶食なし 対照;グループ2:絶食なし+リード剤;グループ3:12時間絶食;及び、グループ4:12時間絶食後、リード剤を注射。15日目に残りの全ての動物が安楽死され、そして、採血及び採尿、そして、分析、臨床化学、血液学、及び凝固因子が行われる。主な臓器は収集され、そして重量が測定され、H&E染色及び検査の為に処理される。異なるグループ間での統計的分析が、体重、臓器重量、臨床病理学的データ及び尿検査データ等の観点で行われた。
【0178】
実施例3:非ヒト霊長類におけるリード剤の使用
【0179】
非ヒト霊長類、例えばアカゲザル、において、更なる特性評価をする為に選択される。
【0180】
18Fで標識化された剤が静脈(i.v.)注射後、2時間のダイナミックスキャン(dynamic scan)が行われる。スタティックスキャン(static scan)がまた、甲状腺と副甲状腺とを中心に行われる。この実験の目的は、(1)18Fで標識化されたPET剤を短時間静脈(i.v.)注入した後の最初の2時間の間に、18Fで標識化されたPET剤の薬剤動態、生体内分布、及び代謝安定性の特徴を明らかにすること;(2)将来提案される臨床手技による線量測定データ(dosimetry data)を推定すること;(3)臨床PET/CTスキャンプロトコル、例えば、注入線量及びスキャン時間点を包含する上記の臨床PET/CTスキャンプロトコル、を設計し、そこから最大イメージング及び副甲状腺対背景コントラストの為の最適時間が決定されるであろう。
【0181】
詳細には、アカゲザル(NH P)が1.4~4%のイソフルラン吸入麻酔と人工呼吸で維持される。下記の2本の静脈カテーテルが適用される:1つはトレーサー投与用、及び1つは、血中放射能濃度のサンプリング用。CT透過スキャンが得られる。次に、副甲状腺を標的にした18Fで標識化されたPET剤(3から5mCi)が静脈(i.v.)内投与され、そして、120分間のダイナミックPETスキャンが行われる。該スキャンは、取り込みとコントラストとの差を比較する為に、絶食時と絶食無しで行われる。代謝の安定性と血液の取り込みを測定する為に、連続静脈採血(0.2~0.5ml)が、注射(p.i.)の前及び0.5分後、5分後、30分後、60分後、90分後に行われる。体温、心拍数、ECG、pCO2、pO2、SaO2及び血圧が、試験を通じてモニターされる。HPLC代謝物分析の為の尿検体は、全身スキャンの終了時に採取される。PETスキャンデータ、例えば、関心のある体積領域(ROI:volumetric region of interest)解析、組織TAC及び定常状態SUVの抽出;による、循環する18F-PET剤及びその代謝物対時間についてのTACを決定する為の、血漿時間活性曲線(TAC:time-activity-curves)及びHPLCデータの定量分析;並びに、正常臓器/組織についての累積活性の算出を包含する上記のPETスキャンデータ、が解析される。
【0182】
血漿及び尿サンプルが、18Fで標識化された剤及び標識化された代謝物についてアッセイされる。血液サンプルが採取され、そして、直ちに14,000rpmで5分間遠心される。次に、100μLのPBS中の50%TFAが上澄みの血清溶液に添加され、5分間遠心される。上澄みの溶液がHPLC分析の為に注入される。尿がろ過され、そして次に、HPLC分析の為に使用される。
【0183】
吸収された投与量の分布はMIRD方法に従って計算され、それにより、供給臓器(source organs)の各々について積分された放射能が既知であると仮定する。18F-PET剤が濃縮されうる観察された供給臓器は、膀胱、腎臓及び肝臓を包含する。18F-PETスキャン、減弱スキャン(attenuation scan)、及び比較CTスキャンの組合せを用いて、解剖学的境界が同定されることができるところの他の臓器は、補完の為の追加の供給臓器(脳、下部大腸、胃、血液、心臓壁、肺、膵臓、赤骨髄、脾臓)として使用される。バックグラウンドを超える18F-PET取り込みが観察されず、且つ境界が描出されることができない臓器はバックグラウンドとして扱われ、そして、残存レベルの累積された活性が割り当てられる。
【0184】
NHPは毒性の発現について注意深くモニターされるであろう。肝臓と腎臓の潜在的な機能変化を評価する為に、代謝試験、例えば、血液化学的プロファイル(電解質、グルコース、カルシウム、リン、マグネシウム、ビリルビン、アルブミン、総タンパク質、AST、ALT、ALP)を包含する上記の代謝試験、が実施される。
【0185】
原発性副甲状腺機能亢進症は女性に多く、発症率は女性で10万人年当たり66人であり、及び男性で10万人年当たり25人である。従って、男女両方の対象が、本明細書において記載されている前臨床生物学的分布及びイメージング研究の為に使用される。男女間の潜在的な差は統計解析において比較され及び計算される。
【0186】
新しく開発された18F-シナカルセトを用いて、アカゲザルにおける天然の副甲状腺PETイメージングが行われた。重要なことは、図11において示されているように、このCSR剤が副甲状腺領域内で顕著な取り込みを実証し、CSRが副甲状腺イメージングの有効な標的であることを示している。血液代謝安定性は、18F-シナカルセトがイメージング用途の為に許容可能な安定性を有することを実証した(図4のパネルB)。
【0187】
実施例4:副甲状腺イメージングの為のCSR標的化されたPET剤の開発
【0188】
BOCで保護されたSensipar登録商標(シナカルセト,CSRを標的とする低分子化合物)への18F(放射性タグ)の導入は、直接光レドックスC-H放射性フッ素化を用いて効率的に行われた。簡単な脱保護の後、18Fで標識化されたシナカルセト([18F]F-ZW-シナカルセトと命名される)が34%の収率で得られ、その取り込みは競合薬によって効率的にブロックされることができる。該剤はまた、速い血液クリアランスと良好な血漿安定性を実証した。18[F]F-ZW-シナカルセトPETイメージングは、マウスとラットにおいて副甲状腺を非侵襲的に検出し、その局在化はオートラジオグラフと免疫組織化学とによって更に確認された。将来の臨床応用を更に促進する為に、非ヒト霊長類(NHPs:non-human-primates)におけるPET/MRIスキャンが実施された。[18F]F-ZW-シナカルセトは副甲状腺領域において明らかな組織集積を実証した。毒性試験は、[18F]F-ZW-シナカルセトが将来のヒト試験において安全であることを示した。要約すると、[18F]F-ZW-シナカルセトは副甲状腺検出の為の新規なイメージング剤であり、それにより、原発性副甲状腺機能亢進症を有する患者の管理に有益であることが実証された。
【0189】
[19F]F-ZW-ナカルセト、及び光レドックス反応の為の前駆体の合成。F-ZW-シナカルセトの標準化合物が、図13のパネルAにおいて示されているスキームに基づいて合成された。簡単に説明すると、4-フルオロ-1-アセトナフトンが2段階でN-ベンジル-1-(4-フルオロナフタレン-1-イル)エタン-1-アミンに、53%収率で還元された。Bn保護基を除去した後に、3-(トリフルオロメチル)ヒドロケイ皮酸との共役が行われ(収率87%)、引き続き、NaBH4でアミド結合を還元し(収率97%)それにより、F-ZW-シナカルセトの所望の標準物がもたらされた。Boc基がまたF-ZW-シナカルセトに付加されて、標準物質-Boc-F-ZW-シナカルセトが生成された。光レドックス標識化応に適合する前駆体を合成する為に、Boc保護基が、親の剤(parent drug)であるシナカルセトに付加された(図13のパネルB)。第二級アミンを保護することにより、窒素原子での潜在的な酸化が回避され、そして、光レドックス反応を通じて、直接C-H放射性フッ素化が促進された。
【0190】
光レドックス放射性フッ素化。シナカルセトは、CSRに高い親和性及び選択性で結合する治療薬である。18FがシナカルセトのCF3基に導入されることができるが(SP3-18F結合)、結果として得られた剤は低い安定性を有する。シナカルセトをベースにした新しい剤を設計して、親の剤の構造を最小限の変更で該剤の安定性を改善する必要性がある。光レドックス標識化方法により、直接C-H放射性フッ素化を通じてC-F結合の形成が可能となった。ナフタレンにおけるこのSP2-F結合は、SP3結合に比べてより安定であった。該剤は、1つのアレーン-CH結合をアレーン-CF結合に置換しただけであり、それは親の剤の構造の最小限の変化を表した。
【0191】
[18F]F-ZW-シナカルセトの合成が、光レドックス条件下での直接C-Hラジオフッ素化と、それに続くBoc基の脱保護の2段階で行われた。共沸乾燥した[18F]F-TBAFから出発して、Boc保護されたシナカルセトのアレーンC-H結合の直接[18F]放射性フッ素化により、最適化された光レドックス標識化条件下(450nm,3Wレーザー,30分照射)で、Boc-[18F]F-ZW-シナカルセトが42.9±4.3%の収率で得られた。該標識化はナフタレン環の4位で主に生じ、Boc-[19F]-ZW-シナカルセト標品との共注入によって同一性が確認された。溶媒を除去した後に、濃塩酸が加えられ、95℃で10分間加熱されたBoc保護基が除去された(収率80%)。最終剤[18F]F-ZW-シナカルセトが96%超の放射化学的純度及び4.6Ci/μmolの活性で得られた。氷浴が標識化反応の為に用いられたが、放射性フッ素化はまた、冷却装置無しで進行する。溶媒の蒸発が速く、よって、特別な注意が、該反応の完全な乾燥を避ける為に必要とされる。該反応はまた、非ヒト霊長類の研究の為に十分な剤を生産する為にスケールアップされることができる。薬剤の疎水性の故に、50%のEtOHが、最終段階における薬剤の滅菌フィルター吸収を低減する為に使用された。
【0192】
[18F]F-ZW-シナカルセトの安定性。光レドックス標識化方法は、SP2-F結合を有するPET剤の新しいカテゴリーへのアクセスを可能にする。[18F]F-ZW-シナカルセトは、CF3標識方法と比較して改善された安定性を有している。製剤化された[18F]F-ZW-シナカルセトは第一に、PBS(8%のEtOHを含むリン酸緩衝生理食塩水)中でインキュベーションされ、そして、アリコートが異なる時点での分析の為に採取された。インキュベーション後2時間にわずかな親水性不純物のピークが観察されたが、純度はインキュベーション後4時間で95%超を維持した。引き続き、[18F]F-ZW-シナカルセトのイン・ビボ(in vivo)安定性が非ヒト霊長類において試験された。注射後、1時間及び3時間の時点で血液サンプルが採取された。1時間の時点では、該剤の大部分はそのまま残っていた。3時間の時点で親水性の代謝物が観察された。イメージングは最初の1時間以内に終了したので、代謝物はこの研究において決定されなかった。
【0193】
オクタノール/水分配係数(Log P)の決定。[18F]F-ZW-シナカルセトのLog Pが1-オクタノール-水系において決定され、平均値Log P=1.95±0.02であった。結果は、[18F]F-ZW-シナカルセトが脂質溶解性を有することを実証した。
【0194】
細胞取り込み及び特異的なブロッキングアッセイ。CSRに対する[18F]F-ZW-シナカルセトの標的特異性を検証する為に、細胞取り込み実験及びブロッキング実験が行われた。図14のパネルAにおいて示されているように、Hcc827(非小細胞肺がん細胞株)は高いCSR発現を有し、次に、それはイン・ビトロ(in vitro)アッセイの為に選択された。[18F]F-ZW-シナカルセトを用いてインキュベーションされる場合に、Hcc827細胞による放射活性の取り込みは、時間の経過とともに徐々に増加した(図14のパネルB)。結合性特異性を確認する為に、Hcc827細胞が[18F]F-ZW-シナカルセト、並びに過剰量のシナカルセト、CaCl2及びコールドスタンダード(cold standard)[19F]F-ZW-シナカルセト(100μM)を用いて共インキュベーションされた。ブロッキング剤のうち、[19F]F-ZW-シナカルセトは、インキュベーション後20分で、[18F]F-ZW-シナカルセトの取り込みを89.9%効率的にブロッキングすることができた。他の時点では87%超の取り込みが観察された。[18F]F-ZW-シナカルセトの取り込みはまた、シナカルセト(71.3±2.9%~79.0±0.6%の減少)及びCaCl2(71.5±1.2%~82.9±1.7%の減少)によって効率的にブロッキングされた。結果は、[18F]F-ZW-シナカルセトがHcc827を発現するCSRによって取り込まれることができることが示され、そして、標的特異性が競合ブロッキング試験によって確認された。[18F]F-ZW-シナカルセトは、標的とされた分子イメージング(targeted molecular imaging)を通じて、イン・ビボ(in vivo)でのCSR発現の可視化を可能にした。
【0195】
げっ歯類における副甲状腺の小動物PET/CTイメージング。副甲状腺はかなり小さい為に、該剤の評価の為にはマウスの代わりにラットが使用された。スタティックPETスキャンは、[18F]F-ZW-シナカルセトの注射後0.5時間、1時間及び2時間にラットにおいて取得された。代表的な冠状PET画像が図15のパネルAにおいて示されている。副甲状腺は、0.5時間の早い時点で、0.28±0.16%のID/gの放射性トレーサー取り込みと、4.9±0.93の副甲状腺/筋肉比で画像上に可視化されることができた。副甲状腺の放射能は時間とともに減少し、そして、2時間の時点ではバックグラウンドレベルに戻った(図15のパネルB)。唾液腺における取り込みがまた観察され、それは経時的に減少しなかった。興味深いことに、ラットの肺において放射能の高い取り込みが観察され、それは染色により高いCSR発現を有することが確認された。
【0196】
イン・ビボ(in vivo)での[18F]F-ZW-シナカルセトの位置をよりよく示す為に、PET画像及びCT画像が夫々、冠状レベル、矢状レベル及び横断レベルでマージされ(図16のパネルA)、マルチアングルによる3DボリュームレンダリングPET/CT画像がまた再構成された(図16のパネルB)。空間的に配向されたPET/CT画像から、輪状軟骨及び気管に隣接する副甲状腺を識別することは容易であった。副甲状腺の放射性取り込みはバックグラウンド組織よりも有意に高かった。
【0197】
ラットにおける[18F]F-ZW-シナカルセトのダイナミックPET画像が60分間取得された。代表的なPET画像、及び副甲状腺と筋肉の部位別時間放射能曲線が図17において示されている。[18F]F-ZW-シナカルセトは、最も早い時点で副甲状腺内に蓄積され、そして、注入後約7分でピークに達した(0.33±0.05%のID/g)、続いて注入後60分で0.17±0.01%のID/gまで徐々に減少した。[18F]F-ZW-シナカルセトの筋肉への取り込みは、全ての時点で有意に低かった(すなわち、注入後20分では0.06%未満ID/g±0.01))。これらの結果は、副甲状腺における[18F]F-ZW-シナカルセトの優れた特異性と組織動態(「速い取り込み」(fast in)と遅いクリアランス)が示された。
【0198】
CSR陽性腺(positive gland)と同様に、ダイナミックPET画像と、マージされたPET/CT画像(図18のパネルA及びパネルB)から、肺が高レベルの放射性トレーサー取り込みを示したことがわかる。局所的な時間放射能曲線(regional time-radioactivity curves)(図18C)に従うと、肺における放射性トレーサー取り込みは「速い取り込みと速い取り出し」(fast in and fast out)の傾向を示した。取り込みは注射後2分でピークに達し(肺:1.00±0.19%のID/g;心臓:0.95±0.14%のID/g)、注射後10分までは同様の動態を示した。次に、心臓の取り込みは注射後60分で0.15±0.27%のID/gまで急速に低下し、一方、肺の取り込みは注射後60分で0.41±0.07%のID/gと高いレベルを維持した。加えて、放射性トレーサーがまた、脳内への取り込みも観察され、その取り込みレベルは、~0.2%のID/gと安定していた。
【0199】
オートラジオグラフィー及び病理検査。[18F]F-ZW-シナカルセトに基づくPET/CTからの副甲状腺のイメージング結果を更に確認する為に、オートラジオグラフィー及びIHC染色による放射性トレーサーのターゲティングの正確性を検証する為にエクス・ビボ(ex vivo)試験が実施された。まず、甲状腺及び副甲状腺を含む局所喉頭及び気管組織(図19のパネルA)が、[18F]F-ZW-シナカルセトを注射したラットから切除されて、直ちに切片が作成され、それらは夫々CSRのオートラジオグラフィー及びIHC染色の為に使用された。図19のパネルB及びパネルCにおいて示されているように、オートラジオグラフィーはCSRのIHC染色と十分に一致した。オートラジオグラフィーで最も高い放射能取り込み領域は、IHC染色された副甲状腺領域と一致した。オートラジオグラフィー及びIHC染色の定量分析は、平均統合密度(mean integrated density)(Mean IntDen)として表された。副甲状腺における放射性トレーサーの取り込み及びCSRの発現は、甲状腺バックグラウンド組織よりも有意に高く(P<0.01)、ここで、オートラジオグラフィーにおける副甲状腺/甲状腺比は6.60±1.28、IHC染色では3.76±1.13であった(図19のパネルD)。一方、CSR発現レベルは、副甲状腺及び甲状腺における放射性トレーサー取り込み(r=0.93、95%の信頼区間0.46~0.99、R2=0.86)と十分に相関していた(図19のパネルD)。
【0200】
構造的完全性をよりよく保つ為に、一部の組織がまた、ホルマリンで固定され、そして、パラフィン中に包埋されて、CSR-IHC染色の為の切片が作成された。CSRの最高の発現レベルは副甲状腺において観察され(図20)、凍結組織を用いたIHC染色の結果と一致した。PETイメージングにおいて、肺において高い放射能取り込みが観察された。本発明者等はまた、観察結果を検証する為に、肺(心臓と共に)及び筋肉のオートラジオグラフィーとIHC染色とを行った。結果は、肺が心臓及び筋肉に比べてCSRの極めて高い発現を有し(図21)、及びオートラジオグラフィーのデータ(図21)、IHC染色及びH&E染色と十分に一致した。このことにより、PET/CTイメージングを用いて肺において認められた[18F]F-シナカルセトの高い取り込みが説明された。
【0201】
非ヒト霊長類における副甲状腺の臨床PET/MRIイメージング。将来の臨床応用を更に促進する為に、非ヒト霊長類(NHP)におけるPET/MRIスキャンが実施された(図22)。[18F]F-ZW-シナカルセトは、副甲状腺領域において明らかな組織蓄積を実証した。
【0202】
イン・ビボ(in vivo)試験。[19F]F-シナカルセトのイン・ビボ(in vivo)急性毒性試験が、JAX Swiss Outbredマウスを用いて実施された。マウスに、コールドスタンダード(cold standard)[19F]F-シナカルセトの過量投与(57.6μg,放射性トレーサー[18F]F-シナカルセト投与量の~1000倍)が静脈内注射された。血漿サンプルが採取され、そして、様々な時点で分析された。試験期間の間、動物の死亡及び有意な健康変化は観察されなかった。アルカリホスファターゼ(ALP)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)が、肝機能に関連付けられた2つの重要な生物学的指標である。血漿試験の結果は、処置されたマウスにおいてALPレベル及びALTレベルにおいて有意な変化が見られなかった(表1)。ASTにおいて注射1時間後にわずかだが有意な増加が観察され、24時間以内に急速に減少し、そして、2週間後には正常なレベルに戻った。薬剤投与後に血中ASTにおいて一過性な上昇をすることが見られることは非常に一般的であり、それは通常は実際の病理学的な意義はない。血中尿素窒素(BUN)とクレアチニンは腎機能を評価する為の2つの重要な指標である。[19F]F-シナカルセトを注射したマウスにおいて、BUNのレベルとクレアチニンのレベルにおいて、ビヒクル対照と比較して有意な変化は見られなかった。加えて、病理組織学的染色が、異なる時点で採取された腎臓、肝臓及び心臓の組織について行われた。図23において示されているように、[19F]F-シナカルセト投与されたマウスにおいて、明らかな病理学的変化は観察されなかった。糸球体、尿細管、肝小葉中心静脈及び心筋線維の基本構造は無傷のままであった。これらの全ての結果により、冷標準[19F]F-シナカルセトの過剰投与がマウスに対して急性毒性を示さず、放射性プローブ[18F]F-シナカルセトの生物学的安全性が十分に許容範囲内であることが示された。
【0203】
【表1】
【0204】
ALP:アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)(U/L),ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase)(U/L),AST:アミノトランスフェラーゼ(aminotransferase)(U/L),BUN:血中尿素窒素(blood urea nitrogen)(mg/dL),クレアチニン(mg/dL)。
【0205】
要約すると、石灰化剤として作用するシナカルセトは、PHPTを処置する為の治療薬として一般的に使用されている。副甲状腺細胞におけるCSRの高発現を考慮すると、18Fで標識化されたシナカルセトは、副甲状腺検出の為のPET薬剤として作用すると仮定された。シナカルセトに基づいてPET剤を生成する為の試みが以前にも行われてきたが、以前に標識化された剤の速い代謝が、最適以下の結果の主な原因でありうると考えられる。事実、生物学的に活性な低分子/薬剤を修飾する為の効率的で且つ簡単な標識化方法がない故に、新規のPET剤の入手可能性制限されている可能性がある。本明細書において、非常に革新的な光レドックスが用いられ、それにより、アレーンC-Hフッ素化を通じてシナカルセトをPET剤へと直接変換することが可能になった。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】