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特表2024-528610コンポジットフルオロポリマーバインダー及びその製造方法、コンポジットバインダー材料及びその製造方法、電極、エネルギー貯蔵デバイス、電気化学デバイス用バインダー粉体及びその製造方法、電気化学デバイス用バインダー、電極合剤、二次電池用電極、並びに、二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】コンポジットフルオロポリマーバインダー及びその製造方法、コンポジットバインダー材料及びその製造方法、電極、エネルギー貯蔵デバイス、電気化学デバイス用バインダー粉体及びその製造方法、電気化学デバイス用バインダー、電極合剤、二次電池用電極、並びに、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240723BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240723BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240723BHJP
   C08F 6/22 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240723BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20240723BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C08L27/18
C08K3/04
C08L101/12
C08F6/22
H01M4/13
H01G11/38
H01G11/84
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501631
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2022027467
(87)【国際公開番号】W WO2023286787
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,687
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510222590
【氏名又は名称】ダイキン アメリカ インコーポレイティッド
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】20 Olympic Drive,Orangeburg,New York 10962,U.S.A
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ファルゾーン, アレック
(72)【発明者】
【氏名】グランブルズ, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン, ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】サンストーム, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーショット, ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】寺田 純平
(72)【発明者】
【氏名】得田 大翔
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4J002AA012
4J002AA01X
4J002BD151
4J002BD15W
4J002DA016
4J002DA036
4J002FA082
4J002FA08X
4J002FD022
4J002FD02X
4J002GQ00
4J002HA09
4J100AC26P
4J100EA05
4J100EA09
4J100JA43
5E078AA10
5E078AB01
5E078BA44
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050EA24
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】引張強度の均一性に優れた電極合剤シートが得られる電気化学デバイス用バインダー粉体を提供する。
【解決手段】エネルギー貯蔵用途に用いるコンポジットバインダー材料を開示する。コンポジットバインダー材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフルオロポリマーと、導電性助剤及び低融点熱可塑性樹脂が一体化してなる。上記コンポジットバインダー材料の製造方法も開示する。上記方法は、上記フルオロポリマーのエマルジョンを得る工程、上記フルオロポリマーのエマルジョンに、上記低融点熱可塑性樹脂及び上記導電性助剤粒子を混合して、混合物を形成する工程、上記混合物を凝析させて、上記コンポジットバインダー材料からなる凝析物を製造する工程を含む。本開示はまた、引張強度の均一性に優れた電極合剤シートを提供することができる電気化学デバイス用結着材粉体を提供する。本開示は、フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂、及び、熱可塑性ポリマーを含む電気化学デバイス用バインダー粉体に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、(b)低融点熱可塑性樹脂、及び、(c)導電助剤を含むコンポジットバインダー材料。
【請求項2】
前記コンポジットバインダー材料は粒子である、請求項1記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項3】
前記コンポジットバインダー材料は、凝析物である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項4】
前記導電助剤は、約20質量%以下で存在する請求項1~3のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項5】
前記導電助剤は、約0.01質量%以上で存在する請求項1~4のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項6】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約0.01~約50質量%で存在する請求項1~5のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項7】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約5~約20質量%で存在する請求項1~6のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項8】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーである請求項1~7のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項9】
前記PTFEは、約25~約99質量%で存在する請求項1~8のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項10】
前記PTFEは、ホモポリマー、又は、パーフルオロコポリマーからなる請求項1~9のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項11】
前記PTFEは、TFE、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーからなる変性PTFEである請求項1~10のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項12】
前記PTFEは、標準比重が2.20以下の高分子量PTFEである請求項1~11のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項13】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が375℃未満である請求項1~12のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項14】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が200℃未満である請求項1~13のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項15】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーであり、
前記低融点フルオロポリマーは、PVdF、FEP、EFEP、ETFE、THV、FKM、FFKM、PFA、PVF、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項1~14のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項16】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点非フッ素化ポリマーである請求項1~15のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項17】
前記低融点非フッ素化ポリマーは、ポリオレフィン、PE、PP、PA、ナイロン、PS、TPU、PI、PA、PC、PLA、PEEK、PEG/PEO、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項16記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項18】
前記低融点熱可塑性樹脂は、粒子状である請求項1~17のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項19】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均粒子径が約700μm以下の粉体である請求項1~18のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項20】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均一次粒子径が約500nm以下のエマルジョンである請求項1~19のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項21】
前記導電助剤は、導電性カーボンである請求項1~20のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項22】
前記導電助剤は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項1~21のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項23】
前記コンポジットバインダー材料は、両面に高純度アルミニウムを有する25mm幅フィルムを用いた接着力試験で測定される高純度アルミニウムとの接着強度が1Nmm超である請求項1~22のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項24】
前記コンポジットバインダー材料は、導電性を有する請求項1~23のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項25】
PTFEエマルジョンを得る工程(a)、
前記PTFEエマルジョンに、低融点熱可塑性樹脂及び導電助剤粒子を混合して、第1の混合物を形成する工程(b)、及び、
前記第1の混合物を凝析させて、コンポジットバインダー材料からなる凝析物を製造する工程(c)を含むコンポジットバインダー材料の製造方法。
【請求項26】
前記凝析物を乾燥させる工程を更に含む請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記凝析物を約375℃未満で乾燥させる工程を更に含む請求項25又は26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記凝析工程を約90℃以下で実施する請求項25~27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
前記コンポジットバインダー材料は、粒子である請求項25~28のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項30】
前記コンポジットバインダー材料は、凝析物である請求項25~29のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項31】
前記導電助剤は、約20質量%以下で存在する請求項25~30のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項32】
前記導電助剤は、約0.01質量%以上で存在する請求項25~31のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項33】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約0.01~約50質量%で存在する請求項25~32のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項34】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約5~約20質量%で存在する請求項25~33のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項35】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーである請求項25~34のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項36】
前記PTFEは、約25~約99質量%で存在する請求項25~35のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項37】
前記PTFEは、ホモポリマー、又は、パーフルオロコポリマーからなる請求項25~36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項38】
前記PTFEは、TFE、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーからなる変性PTFEである請求項25~37のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項39】
前記PTFEは、標準比重が2.20以下の高分子量PTFEである請求項25~38のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項40】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が375℃未満である請求項25~39のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項41】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が200℃未満である請求項25~40のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項42】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーであり、
前記低融点フルオロポリマーは、PVdF、FEP、EFEP、ETFE、THV、FKM、FFKM、PFA、PVF、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項25~41のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項43】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点非フッ素化ポリマーである請求項25~42のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項44】
前記低融点非フッ素化ポリマーは、ポリオレフィン、PE、PP、PA、Nylon、PS、TPU、PI、PA、PC、PLA、PEEK、PEG/PEO、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項43に記載の製造方法。
【請求項45】
前記低融点熱可塑性樹脂は、粒子状である請求項25~44のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項46】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均粒子径が約700μm以下の粉体である請求項25~45のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項47】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均一次粒子径が約500nm以下のエマルジョンである請求項25~46のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項48】
前記導電助剤は、導電性カーボンである請求項25~47のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項49】
前記導電助剤は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項25~48のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項50】
前記コンポジットバインダー材料は、両面に高純度アルミニウムを有する25mm幅フィルムを用いた接着力試験で測定される高純度アルミニウムとの接着強度が1Nmm超である請求項25~49のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項51】
前記コンポジットバインダー材料は、導電性を有する請求項25~50のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項52】
請求項25~51のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたコンポジットバインダー材料。
【請求項53】
請求項1~24及び52のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料からなる電極。
【請求項54】
電極を備え、
前記電極は、請求項1~24及び52のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料からなるエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項55】
請求項1~24及び52のいずれか1項に記載のコンポジットバインダー材料を含む第2の電極を更に備える請求項54記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項56】
前記電極はカソードである、請求項54又は55に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項57】
電池である請求項54~56のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項58】
スーパーキャパシタである請求項54~56のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項59】
フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂、及び、熱可塑性ポリマーを含む電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項60】
前記熱可塑性ポリマーは、熱可塑性樹脂である請求項59に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項61】
前記熱可塑性樹脂は、融点が100~310℃である請求項59又は60に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項62】
前記熱可塑性樹脂は、フルオロポリマーである請求項59~61のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項63】
前記熱可塑性樹脂は、メルトフローレートが0.01~500g/10分である請求項59~62のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項64】
前記熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーである請求項59に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項65】
前記エラストマーは、フルオロエラストマーである請求項64に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項66】
前記フルオロエラストマーは、ビニリデンフルオライド単位、及び、ビニリデンフルオライドと共重合可能な他の単量体単位を含む請求項65に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項67】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃である請求項59~66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項68】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである請求項59~67のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項69】
前記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含む請求項68に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項70】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃である請求項68又は69に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項71】
水分含有量が1000質量ppm以下である請求項59~70のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項72】
平均一次粒子径が10~500nmである請求項59~71のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項73】
前記フィブリル化性を有する樹脂は粒子状であり、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下である請求項59~72のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項74】
平均粒子径が1000μm以下である請求項59~73のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項75】
二次電池用である請求項59~74のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項76】
カーボン系導電助剤を更に含む請求項59~75のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項77】
請求項59~76のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる電極合剤。
【請求項78】
更に、活物質を用いて得られる請求項77に記載の電極合剤。
【請求項79】
正極合剤である請求項77又は78に記載の電極合剤。
【請求項80】
請求項59~76のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる二次電池用電極。
【請求項81】
請求項80に記載の二次電池用電極を備える二次電池。
【請求項82】
フィブリル化性を有する樹脂、熱可塑性ポリマー、及び、水を含む混合物を作製する工程(1)、及び、
前記混合物から粉体を製造する工程(2)を含む電気化学デバイス用バインダー粉体の製造方法。
【請求項83】
前記工程(2)は、前記混合物から、前記フィブリル化性を有する樹脂、及び、前記熱可塑性ポリマーを含む組成物を凝集させて凝集物を得る工程(2-1)、及び、
前記凝集物を熱処理する工程(2-2)を含む請求項82に記載の製造方法。
【請求項84】
前記工程(1)では、平均一次粒子径が50μm以下の前記熱可塑性ポリマーを含む分散液を、前記フィブリル化性を有する樹脂、及び、水と混合する請求項82又は83に記載の製造方法。
【請求項85】
フィブリル化性を有する樹脂、及び、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を含む電気化学デバイス用バインダー。
【請求項86】
フィブリル化性を有する樹脂、及び、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーを含む電気化学デバイス用バインダー。
【請求項87】
前記電気化学デバイス用バインダーは、粉体である請求項85又は86に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項88】
前記エラストマーは、フルオロエラストマーである請求項86に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項89】
前記フルオロエラストマーは、ビニリデンフルオライド単位、及び、ビニリデンフルオライドと共重合可能な他の単量体単位を含む請求項88に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項90】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃である請求項85~89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項91】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである請求項85~90のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項92】
前記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含む請求項91に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項93】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃である請求項91又は92に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項94】
水分含有量が1000質量ppm以下である請求項85~93のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項95】
平均一次粒子径が10~500nmである請求項85~94のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項96】
二次電池用である請求項85~95のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項97】
更に、カーボン系導電助剤を含む請求項85~96のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項98】
請求項85~97のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダーを用いて得られる電極合剤。
【請求項99】
更に、活物質を含む請求項98に記載の電極合剤。
【請求項100】
正極合剤である請求項99に記載の電極合剤。
【請求項101】
請求項85~97のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダーを用いて得られる二次電池用電極。
【請求項102】
請求項101に記載の二次電池用電極を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、エネルギー貯蔵デバイス用コンポジットフルオロポリマーバインダー材料及びその製造方法に関する。
【0002】
本開示は、コンポジットバインダー材料及びその製造方法、電極、エネルギー貯蔵デバイス、電気化学デバイス用バインダー粉体及びその製造方法、電気化学デバイス用バインダー、電極合剤、二次電池用電極、並びに、二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、バインダー材料は電極活物質やその他の添加剤と組み合わされ、電極膜を形成するように加工される。カソードを形成するための現在の方法では、ポリビニリデンジフルオリド(PVdF)をN-メチルピロリドン(NMP)などの溶媒と混合し、さらに、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブなどの導電助剤、並びに、電極材料と混合してスラリーを作成する。アノードは一般に水溶液法で作成され、該方法において最も一般的に使用されるバインダーは、スチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR-CMC)である。得られた懸濁液を、アルミニウムカソード又は銅アノードの集電体、あるいは、電池で使用するその他の金属合金上に流延する。現在の製造工程は周知であるが、誘電率が高い(3.0超)PVdFの使用、NMPの安全性、環境、コスト面への配慮など、いくつかの欠点がある。
【0004】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はPVdFの代替品として知られている。しかし、PTFEはNMPに不溶なため、現在の方法では使用できない。PTFEとPVdFに関するもう一つの問題として、これらのフルオロポリマーが両方とも絶縁体であることがあげられる。カソードに電流を流す必要がある場合、PTFE又はPVdFに導電助剤を添加する必要がある。PTFEと乾式混合されたカーボンブラックなどの導電助剤は、PTFEマトリックス中に良好に分散せず、導通が悪くなる。さらに、PTFEは融点が高いため、溶融してもその形状を保持する。つまり、PTFEはいかなる表面をも流れず、機械的結合を形成しない。さらに、仮にPTFEを流動させることができたとしても、PTFEを溶融するのに必要な温度は、製造工程で一般に使用される加熱機器の多くで上限温度を超える。
【0005】
したがって、当該技術分野においては、PTFEと導電助剤との均質な混合物を得るという技術的課題を克服できるエネルギー貯蔵用途のバインダー材料にたいするニーズが依然として存在する。
【0006】
特許文献1には、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムであって、乾式活性材料と、フィブリル化バインダー及び約0.5~40μmのD50粒径を有する微粒子状非フィブリル化バインダーを含む乾式バインダーと、を含む、自立型の乾式電極フィルムが記載されている。
【0007】
特許文献2には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とポリエチレンオキシド(PEO)とを有する、混合バインダー材を備え、独立した乾式電極フィルムであり、溶媒残渣を含まない、電極フィルムが記載されている。
【0008】
特許文献3には、少なくとも正極活物質と導電剤と結着剤とからなる正極活物質合剤を備えた非水電解液電池であって、上記結着剤は繊維化することにより上記正極活物質合剤を結着させる第1の結着剤と、溶融することにより上記正極活物質合剤を結着させる第2の結着剤とからなる混合結着剤であることを特徴とする非水電解液電池が記載されている。
【0009】
特許文献4には、少なくとも1種のバインダーと少なくとも1種の粒子状フィブリル化助剤を高せん断混合し、上記バインダーをフィブリル化させる工程、並びに、少なくとも1種の電極成分を少なくとも1種のフィブリル化されたバインダーとを低せん断混合する工程を含む、電気化学セル、特に、リチウムセル等のバッテリーセル用の電極の製造方法造が記載されている。
【0010】
特許文献5には、カソードと、アノードと、上記カソード及びアノードの間に配設されたセパレータとを備え、上記カソード及びアノードのうち少なくとも一方は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)混合バインダー材を含み、上記PTFE混合バインダー材は、 ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、PVDF共重合体、及びポリエチレンオキシド(PEO)のうちの少なくとも1つと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを 有する、エネルギー貯蔵装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-519495号公報
【特許文献2】特開2019-216101号公報
【特許文献3】特開2000-149954号公報
【特許文献4】米国特許第11183675号明細書
【特許文献5】特開2017-517862号公報
【発明の概要】
【0012】
上述の問題やその他の問題は以下の発明によって対処されるが、本明細書に記載された発明のすべての実施形態が、上述の各問題に対処するわけではないことを理解されたい。本開示は、PTFE等のフルオロポリマーを、低融点フルオロポリマー等の低融点熱可塑性樹脂及び導電助剤と一体化したコンポジットバインダー材料を提供する。上記コンポジットバインダー材料は、例えば、カソード中やアノード中などのエネルギー貯蔵用途のバインダーとして使用できる。また、溶融加工可能なフルオロポリマーを添加することで、電池に使用する集電体へコンポジットバインダー材料を接着しやすくなる。
【0013】
第1の態様においては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、低融点熱可塑性樹脂、及び、導電助剤を含む、コンポジットバインダー材料が提供される。
【0014】
第2の態様においては、PTFEエマルジョンを得る工程、上記PTFEエマルジョンに、低融点熱可塑性樹脂及び導電助剤粒子を混合して、第1の混合物を形成する工程、及び、上記第1の混合物を凝析させて、コンポジットバインダー材料からなる凝析物を製造する工程を含む、コンポジットバインダー材料の製造方法が提供される。
【0015】
第3の態様においては、第2の態様の製造方法により製造されたコンポジットバインダーが提供される。
【0016】
第4の態様においては、第1の態様又は第3の態様のコンポジットバインダー材料を含む、電極が提供される。
【0017】
第5の態様においては、第4の態様の電極を含む、エネルギー貯蔵デバイスが提供される。
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本開示は、引張強度の均一性に優れた電極合剤シートが得られる電気化学デバイス用バインダー粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示は、フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂、及び、熱可塑性ポリマーを含む電気化学デバイス用バインダー粉体に関する。
【0020】
上記熱可塑性ポリマーは、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0021】
上記熱可塑性樹脂は、融点が100~310℃であることが好ましい。
【0022】
上記熱可塑性樹脂は、フルオロポリマーであることが好ましい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂は、メルトフローレートが0.01~500g/10分であることが好ましい。
【0024】
上記熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーであることが好ましい。
【0025】
上記エラストマーは、フルオロエラストマーであることが好ましい。
【0026】
上記フルオロエラストマーは、ビニリデンフルオライド単位、及び、ビニリデンフルオライドと共重合可能な他の単量体単位を含むことが好ましい。
【0027】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃であることが好ましい。
【0028】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0029】
上記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含むことが好ましい。
【0030】
上記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましい。
【0031】
上記バインダー粉体は、水分含有量が1000質量ppm以下であることが好ましい。
【0032】
上記バインダー粉体は、平均一次粒子径が10~500nmであることが好ましい。
【0033】
上記フィブリル化性を有する樹脂は粒子状であり、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。
【0034】
上記バインダー粉末は、平均粒子径が1000μm以下であることが好ましい。
【0035】
上記バインダー粉末は二次電池用であることが好ましい。
【0036】
上記バインダー粉末は更に、カーボン系導電助剤を含むことが好ましい。
【0037】
本開示は、上記電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる電極合剤にも関する。
【0038】
上記電極合剤は活物質を用いて得られることが好ましい。
【0039】
上記電極合剤は正極合剤であることが好ましい。
【0040】
本開示は、上記電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる二次電池用電極にも関する。
【0041】
本開示は、上記二次電池用電極を備える二次電池にも関する。
【0042】
本開示は、フィブリル化性を有する樹脂、熱可塑性ポリマー、及び、水を含む混合物を作製する工程(1)、及び、上記混合物から粉体を製造する工程(2)を含む電気化学デバイス用バインダー粉体の製造方法にも関する。
【0043】
上記工程(2)は、上記混合物から、上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、上記熱可塑性ポリマーを含む組成物を凝集させて凝集物を得る工程(2-1)、及び、上記凝集物を熱処理する工程(2-2)を含むことが好ましい。
【0044】
上記工程(1)では、平均一次粒子径が50μm以下の上記熱可塑性ポリマーを含む分散液を、上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、水と混合することが好ましい。
【0045】
本開示は、フィブリル化性を有する樹脂、及び、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を含む電気化学デバイス用バインダーにも関する。
【0046】
本開示は、フィブリル化性を有する樹脂、及び、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーを含む電気化学デバイス用バインダーにも関する。
【0047】
上記電気化学デバイス用バインダーは、粉体であることが好ましい。
【0048】
上記エラストマーは、フルオロエラストマーであることが好ましい。
【0049】
上記フルオロエラストマーは、ビニリデンフルオライド単位、及び、ビニリデンフルオライドと共重合可能な他の単量体単位を含むことが好ましい。
【0050】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃であることが好ましい。
【0051】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0052】
上記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含むことが好ましい。
【0053】
上記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましい。
【0054】
上記バインダーは、水分含有量が1000質量ppm以下であることが好ましい。
【0055】
上記バインダーは、平均一次粒子径が10~500nmであることが好ましい。
【0056】
上記バインダーは、二次電池用であることが好ましい。
【0057】
上記バインダーは、カーボン系導電助剤を含むことが好ましい。
【0058】
本開示は、上記電気化学デバイス用バインダー用いて得られる電極合剤にも関する。
【0059】
上記電極合剤は、更に、活物質を含むことが好ましい。
【0060】
上記電極合剤は、正極合剤であることが好ましい。
【0061】
本開示は、上記電気化学デバイス用バインダーを用いて得られる二次電池用電極にも関する。
【0062】
本開示は、上記二次電池用電極を備える二次電池にも関する。
【発明の効果】
【0063】
本開示によれば、引張強度の均一性に優れた電極合剤シートが得られる電気化学デバイス用バインダー粉体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
以下で説明する図面に関連して提供される後述の詳細な説明から、さらなる特徴及び利点を把握することができる。
【0065】
図1図1A及び1Bは、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及び5質量%のエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー(EFEP)と一体化したPTFE粒子のバルク画像である。図1C、1D、及び、1Eは、図1A及び1Bに示したPTFE粒子の高解像度画像である。
【0066】
図2図2A及び2Bは、本開示の別の実施形態に係る、導電性カーボン及び7.5質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子のバルク画像である。図2C、2D、及び、2Eは、図2A及び2Bに示したPTFE粒子の高解像度画像である。
【0067】
図3図3A及び3Bは、本開示のさらに別の実施形態に係る、導電性カーボン及び10質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子のバルク画像である。図3C、3D、及び、3Eは、図3A及び3Bに示したPTFE粒子の高解像度画像である。
【0068】
図4図4A及び4Bは、本開示のさらに別の実施形態に係る、導電性カーボン及び20質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子のバルク画像である。図4C、4D、及び、4Eは、図4A及び4Bに示したPTFE粒子の高解像度画像である。
【0069】
図5図5は、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及び様々な量のEFEPと一体化したPTFE粒子の接着力を示すグラフである。
【0070】
図6図6は、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及び様々な量のEFEPと一体化した高分子量PTFE粒子の接着力を示すグラフである。
【0071】
図7図7は、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及び様々な量のEFEPと一体化した変性PTFE粒子の接着力を示すグラフである。
【0072】
図8図8は、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及び様々な量のEFEPと一体化したPTFE粒子と比較した、添加剤を含まないPTFE粒子の接着力を示すグラフである。
【0073】
図9図9A及び9Bは、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及びEFEPと一体化したPTFE粒子の官能基を示すATR-FTIRスペクトルである。
【0074】
図10-1】図10Aは、本開示の一実施形態に係る、導電性カーボン及び5質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子の熱重量分析(TGA)スキャンである。図10Bは、本開示の別の実施形態の、導電性カーボン及び7.5質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子のTGAスキャンである。
図10-2】図10Cは、本開示のさらに別の実施形態に係る、導電性カーボン及び10質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子のTGAスキャンである。図10Dは、本開示のさらに別の実施形態の、導電性カーボン及び20質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子のTGAスキャンである。
【0075】
図11図11は、製造例1で得られた粉末の顕微鏡写真(拡大倍率:150倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示の技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用されている辞書で定義されているような用語は、本明細書の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。周知の機能や構造については、簡潔さや明瞭さのために詳述しない場合がある。
【0077】
用語「約」及び「およそ」は、一般的に,測定の性質又は精度を考慮した測定量の許容可能な程度の誤差又はばらつきを意味する。典型的で例示的な誤差やばらつきの程度は、所定の値又は値の範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、さらに好ましくは1%以内である。本説明書に記載されている数値量は、特に断りのない限り概算値である。これは、明示的に記載されていない場合、「約」又は「およそ」という用語が推測できることを意味する。
【0078】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図するものではない。本明細書において、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形(すなわち「少なくとも1つ」)も含むことを意図している。
【0079】
本明細書では、「第1」、「第2」などの用語を用いて様々な特徴や要素を説明するが、これらの特徴や要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴又は要素を、別の特徴又は要素と区別するためにのみ使用される。したがって、本開示の教示から逸脱することなく、後述する第1の特徴又は要素は、第2の特徴又は要素と称され得るし、同様に、後述する第2の特徴又は要素は、第1の特徴又は要素と称され得る。
【0080】
「A及びBの少なくとも1つ」のような用語は、「Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方」を意味すると理解すべきである。より長いリスト(例えば「AとBとCとのうち少なくとも1つ」)にも同じ構文が適用されるべきである。
【0081】
「本質的に以下からなる」という用語は、本開示に記載されている意図された目的のために特許請求されるものの操作性に悪影響を与えない限り、特許請求されるものが、記載された要素に加えて、他の要素(工程、構造、成分、部材など)を含んでもよいことを意味する。この用語は、本開示に記載されている意図された目的のために請求されるものの操作性に悪影響を及ぼすような他の要素が、他の目的のために特許請求されるものの操作性を向上させる可能性があるとしても、このような他の要素を除外するものである。
【0082】
本明細書で使用される「してもよい」という用語は、任意である(すなわち、「してもよいし、しなくてもよい」)特徴を指し、記載される内容を限定するものと解釈されるべきではない。
【0083】
本発明の開示された実施形態の所定の要素はいずれも、単一の構造、単一の工程、単一の物質などで具体化されてもよいことを理解されたい。同様に、開示された実施形態の所定の要素は、複数の構造、工程、物質などで具体化されてもよい。
【0084】
コンポジットバインダー材料
【0085】
本開示は、エネルギー貯蔵用途のコンポジットバインダー材料を提供する。本明細書に記載の上記コンポジットバインダー材料の様々な実施形態は、以下の利点:「導電性助剤及び低融点熱可塑性プラスチックと一体化されたPTFEなどのフルオロポリマーが均質かつ良好に分散された混合物を提供する。」「導電性である。」「電極上の集電体などの金属に接着できる。」のうち1つ以上を有する。
【0086】
一実施形態において、上記コンポジットバインダー材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーを含む。一実施形態において、上記PTFEはPTFEホモポリマーであってもよく、又は全フッ素化コポリマーを含んでもよい。別の実施形態において、上記PTFEは変性PTFEであってもよい。「変性PTFE」とは、他のフルオロモノマーを1重量%以下しか含まないテトラフルオロエチレンのホモポリマーを指す(ASTM D4895-15を参照)。上記変性PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位と、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含んでもよい。上記変性モノマーは、TFEと共重合可能なモノマーであれば特に限定されない。いくつかの実施形態において、上記変性モノマーは部分的にフッ素化されていても全フッ素化されていてもよい。部分的にフッ素化又は全フッ素化された変性モノマーの例としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのパーフルオロオレフィン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのクロロフルオロオレフィン、トリフルオロエチレン及びフッ化ビニリデン(VDF)などの水素含有フルオロオレフィン、炭素数1、2、3、4、5、6、7、又は、8のアルキル鎖を有するパーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルキルエチレン、エチレン、並びに、ニトリル基含有フッ素化ビニルエーテルが挙げられる。他の実施形態においては、上記変性モノマーはフッ素を含まなくてもよい。
【0087】
PTFEなどの上記フルオロポリマーの分子量は、PTFEの分子量の基準として従来使用されている標準比重(SSG)で表すことができる(ASTM D-4441-15、ASTM D-4894-19、又は、ASTM D-4895-18を参照)。SSGと分子量数(Mn)の関係は、以下の式1で示される。
SSG=-0.0579(ln(Mn))+2.6113 (1)
【0088】
いくつかの実施形態においては、上記PTFEは、標準比重が少なくとも2.150の高分子量PTFEであってもよい。さらに別の実施形態においては、上記PTFEは、標準比重が少なくとも2.160の高分子量PTFEであってもよい。さらに別の実施形態においては、上記PTFEは、標準比重が少なくとも2.170の高分子量PTFEであってもよい。上記PTFEは、標準比重が2.20以下の高分子量PTFEであってもよい。
【0089】
上記PTFEは、上記コンポジットバインダー材料中に約25~約99質量%で存在してもよい。別の実施形態では、上記PTFEは、上記コンポジットバインダー材料中に約40~約99質量%の量で存在してもよい。さらに別の実施形態では、上記PTFEは、上記コンポジットバインダー材料中に約60~約99質量%の量で存在してもよい。
【0090】
本開示のコンポジットバインダー材料はまた、低融点熱可塑性樹脂を含んでもよい。本明細書で使用される「低融点熱可塑性樹脂」とは、融点が375℃以下、好ましくは200℃以下のポリマーを指し、その結果、上記ポリマーは本明細書に開示される加工温度で溶融加工可能である。例えば、上記低融点熱可塑性樹脂は、加工温度が上記ポリマーの融点を超えるときにスクリューで上記ポリマーをダイに押し通すことができるように、スクリュー型押出機で加工できなければならない。特定の理論に束縛されるものではないが、上記低融点熱可塑性樹脂は、カソード及びアノード用の集電体などの基板へバインダー材料が接着しやすくすると考えられている。
【0091】
一実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂は低融点フルオロポリマーである。適切な低融点フルオロポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフルオロエチレン-プロピレン(FEP)、ポリエチレンフルオロエチレン-プロピレン(EFEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン(THV)、フルオロエラストマー(例えば、FKM、FFKMなど)、ポリパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、並びに、これらの合金及びブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、上記低融点フルオロポリマーはEFEPである。
【0092】
他の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂は、低融点非フッ素化ポリマーであってもよい。低融点の非フッ素化ポリマーの例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(PA、ナイロンなど)、ポリスチレン(PS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリイミド(PI)、ポリアクリレート(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレングリコール(PEG/PEO)、並びに、これらを含む合金及びブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
上記低融点熱可塑性樹脂は粒子状で使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂は粉末状で使用される。一実施形態においては、粉末状の上記低融点熱可塑性樹脂は、走査型電子顕微鏡法(SEM)で測定した平均粒子径が約700μm以下である。別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均粒径は、約500μm以下である。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均粒径は、約300μm以下である。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均粒径は、約100μm以下である。別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均粒径は、約50μm以下である。
【0094】
いくつかの実施形態の上記低融点熱可塑性樹脂は、エマルジョンの形態で使用される。この実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、約500nm以下であってもよい。さらなる実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、約450nm以下であってもよい。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、約400nm以下であってもよい。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、約350nm以下であってもよい。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、約300nm以下であってもよい。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、約250nm以下であってもよい。例えば、上記低融点熱可塑性樹脂の平均一次粒子径は、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は、100nmであってもよい。
【0095】
上記低融点熱可塑性樹脂は、上記コンポジットバインダー材料中に約0.01~約50質量%で存在してもよい。さらなる実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂は、上記コンポジットバインダー材料中に約1~約35質量%で存在してもよい。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂は、上記コンポジットバインダー材料中に約5~約20質量%で存在してもよい。さらに別の実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂は、上記コンポジットバインダー材料中に約5~約10質量%で存在してもよい。
【0096】
本開示のコンポジットバインダー材料は、導電助剤をさらに含んでいてもよい。上記導電助剤は、上記コンポジットバインダー材料の誘電特性を高める。一実施形態においては、上記導電助剤は導電性カーボンである。例えば、上記導電助剤は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、又は、上記のうち2種以上の組み合わせであってもよい。上記導電助剤は、上記コンポジットバインダー材料中に約0.01~約20質量%で存在してもよい。より具体的には、上記導電助剤は、上記コンポジットバインダー材料中に約1~約15質量%で存在してもよい。より具体的には、上記導電助剤は、上記コンポジットバインダー材料中に約2~約10質量%で存在してもよい。
【0097】
本開示のコンポジットバインダー材料は、優れた接着強度を示す。いくつかの実施形態においては、本開示のコンポジットバインダー材料は、両面に高純度アルミニウムを有する25mm幅フィルムを用いた接着力試験で測定される高純度アルミニウムとの接着強度が1Nmm超である。さらなる実施形態のコンポジットバインダー材料は、同じ測定で1.5、2、又は2.5Nmmを超える接着強度を有する。
【0098】
接着剥離試験について言及する場合、本開示の実施例のセクションに記載されている接着剥離試験方法を指す。
【0099】
コンポジットバインダー材料の製造方法
【0100】
本開示は、上記コンポジットバインダー材料の製造方法を提供する。一実施形態においては、上記方法は、例えばPTFEなどの上記フルオロポリマーのエマルジョンを得る工程を含む。上記フルオロポリマーエマルジョンは、様々な適切な方法によって得ることができる。例えば、PTFEエマルジョンは、乳化剤、パラフィンワックス、及び、開始剤の存在下で、テトラフルオロエチレンを水性重合することによって調製されてもよい。上記ワックスは、上記エマルジョンを軽いワックス相からデカントすることによって、エマルジョンから分離してもよい。いくつかの実施形態においては、上記エマルジョンを凝集させて、PTFEなどの上記フルオロポリマーを水から分離してもよい。この工程により、上記フルオロポリマーからなる二次粒子が形成される。
【0101】
上記フルオロポリマーエマルジョン、例えばPTFEエマルジョンの形成後、上記方法は、上記低融点熱可塑性樹脂と粒子状導電助剤とを、上記フルオロポリマーエマルジョンに混合して混合物を形成する工程を含む。この実施形態においては、上記低融点熱可塑性樹脂及び上記粒子状導電助剤を、上述の量のいずれかでエマルジョンに添加してもよい。上記低融点熱可塑性樹脂は、粉末状などの粒子状で、又は、エマルジョンの形態で添加してもよい。上記低融点熱可塑性物質がエマルジョンの形態で使用される実施形態においては、平均粒径は約500nm以下であってもよい。さらなる実施形態においては、上記エマルジョンの最大平均粒径は、450、400、350、又は、300nmであってもよい。粒子径の目標範囲は、スクリーニング又は濾過を含む様々な適切な手段によって得ることができる。上記低融点熱可塑性樹脂及び上記粒子状導電助剤を上記エマルジョンに添加した後、上記混合物を凝集させてもよい。一実施形態において、凝集は、機械的撹拌などによって上記混合物に十分なエネルギーが加えられたときに起こり、上記フルオロポリマー、上記低融点熱可塑性樹脂、及び、上記粒子状導電助剤からなる凝集した二次粒子が、上記混合物から析出できる。さらなる実施形態においては、凝集は、アルミニウム塩、硝酸カルシウム、塩化ナトリウム、第四級塩、又は、当技術分野で公知の他の凝集塩などの一価、二価、又は三価の塩を使用して、イオン的に達成することができる。
【0102】
上記凝集工程は、約90℃以下の温度で実施してもよい。さらなる実施形態においては、上記凝集工程は、約5~約30℃、又は約5~約15℃の範囲の温度で行われる。凝集前に、上記フルオロポリマーエマルジョンの比重を約1.050~約1.100に調整してもよい。上記凝集工程は、混合及び混合物からの二次粒子の分離を促進するのに十分なエネルギーを加えることができる、任意の機械的撹拌機を用いて実施してよい。例えば、上記機械的撹拌機は、アンカー、インペラー、又は撹拌機内で上記フルオロポリマーエマルジョンの渦を生成できる他の任意の設計であってもよい。さらなる実施形態においては、凝集容器は、凝集を実現できるために、1つ以上のバッフル又は他の設計上の特徴を含んでもよい。
【0103】
本方法の凝集工程は、初期段階、スラリー段階、及び、凝集後段階の3つの段階で起こってもよい。上記初期段階では、上記フルオロポリマー、上記低融点熱可塑性樹脂、及び、上記粒子状導電助剤を低粘度で混合する。撹拌機内の渦がなくなるか、渦の大きさが小さくなるまで混合物の粘度が増加すると、上記スラリー段階に移行する。上記粒子状導電助剤及び上記低融点熱可塑性樹脂と一体化した上記フルオロポリマーからなる、凝集二次粒子が明確に存在するようになると、上記凝集段階に移行する。凝集した物質を、上記凝集段階中に形成された液体からデカントしてもよい。得られた凝集物は上記コンポジットバインダー材料を形成する。いくつかの実施形態においては、上記凝集段階中に形成された液体を除去し、得られたスラリーを上記コンポジットバインダー材料として、いくつかの実施形態では凝集物なしで、使用してもよい。
【0104】
いくつかの実施形態においては、上記方法は、上記凝集物を乾燥させて、毛細管力により粒子間に捕捉され得る液体重合媒体を除去する工程を含む。一実施形態においては、上記凝集物を約375℃以下の温度で乾燥させる。さらなる実施形態においては、上記凝集物は約300℃以下の温度で乾燥される。さらに別の実施形態においては、上記凝集物は約200℃以下の温度で乾燥される。例えば、上記凝集物は約177℃の温度で乾燥されてもよい。乾燥後、上記凝集物を約20℃以下の温度で保管して、上記フルオロポリマー(例えば、PTFE)が過剰にフィブリル化するのを防いでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態においては、本開示の製造方法により形成されたコンポジットバインダー材料を、カーボンブラックなどの追加の粒子状導電性材料と混ぜ合わせてもよい。このような実施形態においては、上記コンポジットバインダー材料と上記追加の粒子状導電性材料は、成分に剪断を加えることができる任意の混合又は粉砕方法を用いて組み合わせてもよい。例えば、混合方法は、高速で回転して上記コンポジットバインダー材料と上記追加の粒子状導電性材料との混合を促進できる任意の機械的撹拌機を用いて実施してもよい。
【0106】
上記コンポジットバインダー材料は、電極活物質と組み合わせてもよい。このような電極は、例えば電池又はスーパーキャパシタの電極として使用される。例えば、上記電極活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウム鉄リン酸塩(LFP)、リチウムニッケルマンガンスピネル(LNMO)、リチウムマンガン酸化物(LMO)などの正極活物質であってもよく、黒鉛、シリコン、シリコン複合材料、パイロカーボン、コークス、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、ピッチコートグラファイトなどの負極活物質であってもよい。上記コンポジットバインダー材料と上記電極活物質を混合して、電極に塗布できる電極合剤を形成してもよい。
【0107】
使用用途
【0108】
本明細書に記載のコンポジットバインダー材料は、エネルギー貯蔵用途に使用してもよい。一実施形態において、本開示は、開示されたコンポジットバインダー材料からなる電極合剤を集電体に塗布することによって製造される、カソード又はアノードなどの電極を提供する。この実施形態においては、上記電極合剤は、電極活物質、追加の導電助剤、及び上記コンポジットバインダー材料を均一に分散させて形成してもよい。上記電池活物質は、上述した正極活物質又は負極活物質のいずれであってもよい。上記電池活物質は、約90~約99質量%で上記電極合剤に添加してもよい。上記コンポジットバインダー材料は、約0.5~約10質量%で上記電極合剤に添加されてもよい。上記追加の導電助剤は、約9.5質量%以下で添加されてもよい。
【0109】
一実施形態においては、上記電池活物質、上記追加の導電助剤、及び、上記コンポジットバインダー材料は、低エネルギーで無溶媒の混合プロセスを使用して分散されてもよい。例えば、上記フルオロポリマーのフィブリル化を制御する前及び/又はその間に、穏やかな機械的混合方法を使用して上記電極合剤の成分を均一に分散させることで、上記コンポジットバインダー材料及び上記追加の導電助剤を上記電池活物質全体で制御可能に一体化させてもよい。上記混合方法は、遊星型の撹拌を使用し、約10~約100rpmの範囲の回転数で行ってもよい。いくつかの実施形態においては、上記混合は約5~約90℃の範囲の温度で行われる。
【0110】
本開示のコンポジットバインダー材料を含む均質な電極合剤は、正極又は負極集電体に塗布してもよい。上記集電体を構成する材料としては、アルミニウム及びその合金、ステンレス鋼、ニッケル及びその合金、チタン及びその合金、カーボン、導電性樹脂並びにアルミニウムやステンレスの表面をカーボンやチタンで処理して生成した材料などが挙げられる。上記電極合剤は、例えばローラー又はプレスシステムを使用するなど、任意の適切なコーティング方法を使用して、上記集電体に塗布できる。上記コーティング方法は、周囲条件下で実施してもよい。他の実施形態においては、上記コーティング方法は、ほぼ室温(例えば、20℃)から約375℃までの高温で実施してもよい。本開示のコンポジットバインダー材料を使用することで、上記電極合剤は、上記集電体への接着性が向上し、上記集電体に塗布したときに電極を形成できる。
【0111】
本開示は、カソード及び/又はアノードなどの少なくとも1つの電極を含み、本明細書に記載のコンポジットバインダー材料を含む電極合剤でコーティングされた集電体を有する、エネルギー貯蔵装置を提供する。いくつかの実施形態においては、上記エネルギー貯蔵装置は、上記コンポジットバインダーを含む少なくとも2つの電極(又はちょうど2つの電極)を含む。上記エネルギー貯蔵装置は、リチウムイオン電池などの電池であってもよい。他の実施形態においては、上記エネルギー貯蔵装置は、スーパーキャパシタ、電気二重層キャパシタ、又は、リチウムイオンキャパシタであってもよい。さらに他の実施形態においては、上記エネルギー貯蔵装置はリチウム二次電池であってもよい。
【0112】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0113】
本開示は、フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂、及び、熱可塑性ポリマーを含む電気化学デバイス用バインダー粉体に関する。
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、上記特徴を有することにより、引張強度の均一性に優れた電極合剤シートを得ることができる。更に、電気化学デバイスを低コストで製造することも可能である。加えて、導電助剤を添加した際に、フィブリル化性樹脂と均一に混ぜることができるため、電気化学デバイスの集電箔と電極合剤シートとの接着性を向上させることができる。
【0114】
上記フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂を含むとは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることを示す。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが更により好ましく、2%以下であることが殊更に好ましく、1%以下であることがより殊更に好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、下記方法により求める。
顕微鏡を用いて、樹脂粉末の拡大写真を撮影し、画像を得る。拡大倍率は、例えば、30~1000倍とすることができる。
得られた画像をコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込む。
カウントする樹脂粒子の個数は200個以上とする。
カウントした樹脂粒子の中で、アスペクト比が30以上となっているフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数を数えて、その百分率を求める。
【0115】
上記フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂を含むとは、好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることを示す。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが更により好ましく、2%以下であることが殊更に好ましく、1%以下であることがより殊更に好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、下記方法により求める。
顕微鏡を用いて、樹脂粉末の拡大写真を撮影し、画像を得る。拡大倍率は、例えば、30~1000倍とすることができる。
得られた画像をコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込む。
カウントする樹脂粒子の個数は200個以上とする。
カウントした樹脂粒子の中で、アスペクト比が20以上となっているフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数を数えて、その百分率を求める。
【0116】
上記フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂を含むとは、より好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることを示す。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが更により好ましく、2%以下であることが殊更に好ましく、1%以下であることがより殊更に好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、下記方法により求める。
顕微鏡を用いて、樹脂粉末の拡大写真を撮影し、画像を得る。拡大倍率は、例えば、30~1000倍とすることができる。
得られた画像をコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込む。
カウントする樹脂粒子の個数は200個以上とする。
カウントした樹脂粒子の中で、アスペクト比が10以上となっているフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数を数えて、その百分率を求める。
【0117】
上記フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂を含むとは、更に好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることを示す。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが更により好ましく、2%以下であることが殊更に好ましく、1%以下であることがより殊更に好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、下記方法により求める。
顕微鏡を用いて、樹脂粉末の拡大写真を撮影し、画像を得る。拡大倍率は、例えば、30~1000倍とすることができる。
得られた画像をコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込む。
カウントする樹脂粒子の個数は200個以上とする。
カウントした樹脂粒子の中で、アスペクト比が5以上となっているフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数を数えて、その百分率を求める。
【0118】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、また、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることが更に好ましい。
【0119】
上記フィブリル化性を有する樹脂としては、分子量が高いほうが、フィブリル化しやすく、例えば、分子量5万以上であり、10万以上がより好ましく、50万以上が更に好ましく、100万以上が更により好ましい。具体的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリエステル、LCP、アクリル樹脂等が挙げられる。上記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、PTFEがより好ましい。
【0120】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、上記フィブリル化性を有する樹脂を、50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましい。また、99質量%以下含むことが好ましく、98質量%以下含むことがより好ましく、95質量%以下含むことが更に好ましい。
【0121】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、上記PTFEを、上記粉体に対して50質量%以上で含むことが好ましく、60質量%以上で含むことがより好ましく、70質量%以上で含むことが更に好ましく、また、99質量%以下含むことが好ましく、98質量%以下で含むことがより好ましく、95質量%以下含むことが更に好ましい。
【0122】
上記PTFEは、結着力、電極強度及び電極の柔軟性が向上する点で、標準比重(SSG)が2.200以下であることが好ましく、2.180以下であることがより好ましく、2.170以下であることが更に好ましく、2.160以下であることが更により好ましく、2.150以下であることが更により好ましく、2.145以下であることが殊更に好ましく、2.140以下であることが特に好ましい。
上記SSGは、また、2.130以上であることが好ましい。
上記SSGは、ASTM D 4895に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
【0123】
上記PTFEは、非溶融二次加工性を有することが好ましい。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、言い換えると、溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0124】
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマーであってもよいし、TFEに基づく重合単位(TFE単位)と、変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、99.0質量%以上のTFE単位と、1.0質量%以下の変性モノマー単位とを含むものであってよい。また、上記変性PTFEは、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記PTFEとしては、結着力、電極強度及び電極の柔軟性が向上する点で、上記変性PTFEが好ましい。
【0125】
上記変性PTFEは、延伸性、結着力、電極強度及び電極の柔軟性が向上する点で、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が更により好ましく、0.15質量%が殊更に好ましく、0.10質量%が特に好ましい。
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0126】
上述した各重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0127】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル:パーフルオロアリルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0128】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0129】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0130】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0131】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0132】
【化1】
【0133】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0134】
【化2】
【0135】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0136】
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0137】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、一般式(B):
CF=CF-CF-ORf (B)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0138】
上記Rfは、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0139】
上記変性モノマーとしては、延伸性、結着力及び電極の柔軟性が向上する点で、PAVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0140】
上記PTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEのシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
【0141】
上記PTFEは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましく、335~345℃であることがより好ましい。上記ピーク温度が複数存在する場合は、その少なくとも1つが340℃以上であることが好ましい。
上記ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0142】
上記PTFEは、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0143】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、上記熱可塑性ポリマーを、上記粉体に対して0.5質量%以上含むことが好ましく、1質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むことが更に好ましく、10質量%以上含むことが更により好ましく、また、50質量%以下含むことが好ましく、40質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以下含むことが更に好ましく、25質量%以下含むことが更により好ましい。
【0144】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、上記熱可塑性ポリマーを、上記フィブリル化性を有する樹脂に対して1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことが更に好ましく、また、100質量%以下含むことが好ましく、75質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以下含むことが更に好ましく、40質量%以下含むことが更により好ましく、30質量%以下含むことが特に好ましい。
【0145】
上記熱可塑性ポリマーは、熱可塑性樹脂であってもよいし、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーであってもよい。
【0146】
上記熱可塑性樹脂は、融点が100℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが更に好ましく、160℃以上であることが更により好ましく、210℃以上であることが殊更に好ましく、250℃以上であることがより殊更に好ましく、255℃以上であることが更に殊更に好ましく、295℃以上であることが特に好ましく、また、324℃未満であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましく、275℃以下であることが更に好ましく、270℃以下であることが更により好ましく、230℃以下であることが殊更に好ましく、225℃以下であることがより殊更に好ましく、200℃以下であることが更に殊更に好ましく、180℃以下であることが更により殊更に好ましく、135℃以下であることが特に好ましい。
本明細書において、融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で2回目の昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0147】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレングリコール等の非フッ素化ポリマー;フルオロポリマー等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、フルオロポリマーが好ましく、フルオロポリマーがより好ましい。
【0148】
上記熱可塑性樹脂は、メルトフローレートが0.01~500g/10分であることが好ましく、0.1~300g/10分であることがより好ましい。
上記メルトフローレートは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、フルオロポリマーの種類によって定められた測定温度(例えば、後述するPFAやFEPの場合は372℃、ETFEの場合は297℃)、荷重(例えば、PFA、FEP及びETFEの場合は49N(5kg))において内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0149】
上記フルオロポリマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕、TFE/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、エチレン〔Et〕/TFE共重合体〔ETFE〕、TFE/HFP/VdF共重合体〔THV〕、VdF/TFE共重合体〔VT〕、Et/TFE/HFP共重合体〔EFEP〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニル〔PVF〕、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕等が挙げられる。
【0150】
PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位とのモル比(TFE単位/PAVE単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下であり、更により好ましいモル比は、90/10以上99.7/0.3以下であり、殊更に好ましいモル比は、97/3以上99/1以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。上記PFAは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、CZ=CZ(CF(式中、Z、Z及びZは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Zは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF=CF-OCH-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0151】
上記PFAは、融点が180℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、280℃以上であることが更に好ましく、290℃以上であることが更により好ましく、295℃以上であることが特に好ましく、また、324℃未満であることが好ましく、320℃以下であることがより好ましく、310℃以下であることが更に好ましい。
【0152】
FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。また、FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位との質量比(TFE単位/HFP単位)が60/40以上98/2以下である共重合体が好ましい。より好ましい質量比は、60/40以上95/5以下であり、更に好ましい質量比は、85/15以上92/8以下である。また、上記FEPとしては、また、更に、TFE及びHFPと共重合可能な単量体として、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類を用い、全単量体の0.1~2質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。上記FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0153】
上記FEPは、融点が上記PTFEの融点よりも低く、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることが更に好ましく、250℃以上であることが更により好ましく、また、324℃未満であることが好ましく、320℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることが更に好ましく、280℃以下であることが更により好ましく、275℃以下であることが特に好ましい。
【0154】
ETFEとしては、TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が20/80以上90/10以下である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は37/63以上85/15以下であり、更に好ましいモル比は38/62以上80/20以下である。TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)は、50/50以上99/1以下であってもよい。ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、下記式
CH=CXRf、CF=CFRf、CF=CFORf、CH=C(Rf
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子、Rfはエーテル結合を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)で表される単量体が挙げられ、なかでも、CF=CFRf、CF=CFORf及びCH=CXRfで表される含フッ素ビニルモノマーが好ましく、HFP、CF=CF-ORf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及びRfが炭素数1~8のフルオロアルキル基であるCH=CXRfで表される含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、イタコン酸、無水イタコン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸であってもよい。TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、パーフルオロブチルエチレン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタ-1-エン、2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CH=CFCFCFCFH)、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン((CFC=CH)であってもよい。TFE及びエチレンと共重合可能な単量体は、全重合単位に対して0.1~10モル%が好ましく、0.1~5モル%がより好ましく、0.2~4モル%が特に好ましい。また、上記ETFEとしては、また、更にTFE及びエチレンと共重合可能な単量体を用い、全単量体の0~20質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:TFE及びエチレンと共重合可能な単量体=(63~94):(27~2):(1~10)である。
【0155】
上記ETFEは、TFE単位、エチレン単位及びHFP単位を含む共重合体(EFEP)であってもよい。
上記EFEPとしては、TFE単位とエチレン単位との含有モル比が20:80~90:10であることが好ましく、37:63~85:15であることがより好ましく、38:62~80:20であることが更に好ましい。HFP単位は、全重合単位に対して0.1~30モル%が好ましく、0.1~20モル%がより好ましい。
上記ETFEは、テトラフルオロエチレン単位20~80モル%、エチレン単位10~80モル%、ヘキサフルオロプロピレン単位0~30モル%、その他の単量体単位0~10モル%からなることが好ましい。
【0156】
上記ETFEは、融点が140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、195℃以上であることが更に好ましく、210℃以上であることが更により好ましく、215℃以上であることが特に好ましく、また、324℃未満であることが好ましく、320℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることが更に好ましく、280℃以下であることが更により好ましく、270℃以下であることが特に好ましい。
上記EFEPは、融点が160℃以上であることが好ましく、また、200℃以下であることが好ましい。
【0157】
上記THVは、TFE、HFP及びVdFの共重合割合(モル%比)がTFE/HFP/VdF=75~95/0.1~10/0.1~19である事が好ましく、77~95/1~8/1~17(モル比)であることがより好ましく、77~95/2~8/2~16.5(モル比)であることが更に好ましく、77~90/3~8/5~16(モル比)である事が最も好ましい。また、TFE/HFP/VdF共重合体はその他のモノマーを0~20モル%含んでいてもよい。他のモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、2-クロロペンタフルオロプロペン、全フッ素化されたビニルエーテル(例えばCFOCFCFCFOCF=CFなどのペルフルオロアルコキシビニルエーテル)などのフッ素含有モノマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロ-1,3-ブタジエン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、及び、アルキルビニルエーテル、BTFB(HC=CH-CF-CF-Br)、BDFE(FC=CHBr)、BTFE(FC-CFBr)からなる群より選択される少なくとも一種のモノマー等が挙げられ、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、BTFB(HC=CH-CF-CF-Br)、BDFE(FC=CHBr)、BTFE(FC-CFBr)である事が好ましい。
【0158】
上記THVは、融点が、110℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更により好ましく、220℃以上であることが特に好ましく、また、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが更に好ましく、200℃以下であることが更により好ましく、180℃以下であることが殊更に好ましく、160℃以下であることがより殊更に好ましく、130℃以下であることが特に好ましい。
【0159】
VTは、VdFに基づく重合単位(「VdF単位」ともいう)を、全重合単位に対して80.0~90.0モル%含むことが好ましい。
VdF単位が80.0モル%未満であると電極合剤の粘度の経時変化が大きくなり、90.0モル%より多いと合剤から得られる電極の柔軟性が劣る傾向がある。
上記含フッ素重合体は、VdF単位を全重合単位に対して80.5モル%以上含むことが好ましく、82.0モル%以上含むことがより好ましい。82.0モル%以上含むと、本開示の電極合剤から得られる電極を用いた電池のサイクル特性がより良好となる傾向がある。
また、上記VTは、VdF単位を全重合単位に対して89.0モル%以下含むことがより好ましく、88.9モル%以下含むことが更に好ましく、88.8モル%以下含むことが特に好ましい。
【0160】
上記VTは、VdF単位及びTFEに基づく重合単位(「TFE単位」ともいう)の他に、VdF及びTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。本開示の効果を達成するためには、VdFとTFEとの共重合体で充分であるが、さらに共重合体の優れた非水電解液膨潤性を損なわない程度にそれらと共重合しうる単量体を共重合させて接着性をさらに向上させることができる。
上記VdF及びTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、上記VTの全重合単位に対して3.0モル%未満が好ましい。3.0モル%以上であると、一般的にVdFとTFEの共重合体の結晶性が著しく低下し、その結果非水電解液膨潤性が低下する傾向がある。
【0161】
上記VdF及びTFEと共重合し得る単量体としては、特開平6-172452号公報に記載されているような不飽和二塩基酸モノエステル、たとえばマレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステルやビニレンカーボネートなど、また特開平7-201316号公報に記載されているような、-SOM、-OSOM、-COOM、-OPOM(Mはアルカリ金属を表わす)やアミン系極性基である-NHR、-NR(R、R、Rはアルキル基を表わす)などの親水性極性基を有する化合物、たとえばCH=CH-CH-Y、CH=C(CH)-CH-Y、CH=CH-CH-O-CO-CH(CHCOOR)-Y、CH=CH-CH-O-CH-CH(OH)-CH-Y、CH=C(CH)-CO-O-CH-CH-CH-Y、CH=CH-CO-O-CH-CH-Y、CH=CHCO-NH-C(CH-CH-Y(Yは親水性極性基、またRはアルキル基を表わす)やその他、マレイン酸や無水マレイン酸などがあげられる。さらに、CH=CH-CH-O-(CH-OH(3≦n≦8)、
【0162】
【化3】
【0163】
CH=CH-CH-O-(CH-CH-O)-H(1≦n≦14)、CH=CH-CH-O-(CH-CH(CH)-O)-H(1≦n≦14)などの水酸化アリルエーテルモノマーや、カルボキシル化及び/又は-(CF-CF(3≦n≦8)で置換されるアリルエーテル及びエステルモノマー、たとえばCH=CH-CH-O-CO-C-COOH、CH=CH-CH-O-CO-C10-COOH、CH=CH-CH-O-C-(CFCF、CH=CH-CH-CO-O-C-(CFCF、CH=C(CH)-CO-O-CH-CFなども同様に共重合可能な単量体として使用できる。
ところで、以上のような極性基などを含む化合物以外でもフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体の結晶性を少し低下させ、材料に柔軟性を与えることによりアルミや銅の金属箔からなる集電体との接着性が向上しうることがこれまでの研究より類推できるようになった。これより、たとえばエチレン、プロピレンなどの不飽和炭化水素系モノマー(CH=CHR、Rは水素原子、アルキル基又はClなどのハロゲン)や、フッ素系モノマーである3フッ化塩化エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、CF=CF-O-C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF-C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF-(CFCFH(nは1以上の整数)、さらにCF=CF-O-(CFCF(CF)O)-C2n+1(m、nは1以上の整数)も使用可能である。
そのほか式(1):
【0164】
【化4】
【0165】
(式中、Yは-CHOH、-COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基又はエポキシ基、X及びXは同じか又は異なりいずれも水素原子又はフッ素原子、Rは炭素数1~40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1~40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体も使用可能である。これらの単量体を1種又は2種以上共重合することにより、さらに集電体との接着性が向上し、充放電を繰り返し行なっても集電体より電極活物質が剥がれ落ちることがなく、良好な充放電サイクル特性が得られる。
これら単量体の中でも、柔軟性と耐薬品性の観点から、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが特に好ましい。
【0166】
このように上記VTは、VdF単位及びTFE単位の他に、他の重合単位を含むものであってもよいが、VdF単位及びTFE単位のみからなることがより好ましい。
【0167】
上記VTは、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が50000~2000000であることが好ましい。上記重量平均分子量は、より好ましくは80000以上、更に好ましくは100000以上であり、より好ましくは1950000以下、更に好ましくは1900000以下であり、特に好ましくは1700000以下であり、最も好ましくは1500000以下である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0168】
上記VTは、数平均分子量(ポリスチレン換算)が10000~1400000であることが好ましい。上記数平均分子量は、より好ましくは16000以上、更に好ましくは20000以上であり、より好ましくは1300000以下であり、更に好ましくは1200000以下である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0169】
上記VTは、融点が120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、また、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることが更に好ましい。
【0170】
上記PVdFは、VdFに基づく重合単位のみからなるホモポリマーであってもよいし、VdFに基づく重合単位と、上記VdFに基づく重合単位と共重合可能な単量体(α)に基づく重合単位とからなるものであってもよい。
【0171】
上記単量体(α)としては、例えば、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、プロピレン等が挙げられる。また、特開平6-172452号公報に記載されているような不飽和二塩基酸モノエステル、たとえばマレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステルやビニレンカーボネートなど、また特開平7-201316号公報に記載されているような、-SOM、-OSOM、-COOM、-OPOM(Mはアルカリ金属を表わす)やアミン系極性基である-NHR、-NR(R、R、Rはアルキル基を表わす)などの親水性極性基を有する化合物、たとえばCH=CH-CH-Y、CH=C(CH)-CH-Y、CH=CH-CH-O-CO-CH(CHCOOR)-Y、CH=CH-CH-O-CH-CH(OH)-CH-Y、CH=C(CH)-CO-O-CH-CH-CH-Y、CH=CH-CO-O-CH-CH-Y、CH=CHCO-NH-C(CH-CH-Y(Yは親水性極性基、またRはアルキル基を表わす)やその他、マレイン酸や無水マレイン酸などがあげられる。さらに、CH=CH-CH-O-(CH-OH(3≦n≦8)、
【化5】
CH=CH-CH-O-(CH-CH-O)-H(1≦n≦14)、CH=CH-CH-O-(CH-CH(CH)-O)-H(1≦n≦14)などの水酸化アリルエーテルモノマーや、カルボキシル化及び/又は-(CF-CF(3≦n≦8)で置換されるアリルエーテル及びエステルモノマー、たとえばCH=CH-CH-O-CO-C-COOH、CH=CH-CH-O-CO-C10-COOH、CH=CH-CH-O-C-(CFCF、CH=CH-CH-CO-O-C-(CFCF、CH=C(CH)-CO-O-CH-CFなども同様に共重合可能な単量体として使用できる。ところで、以上のような極性基などを含む化合物以外でもPVdFの結晶性を少し低下させ材料に柔軟性を与えることによりアルミや銅の金属箔からなる集電体との接着性が向上しうることがこれまでの研究より類推できるようになった。これより、たとえばエチレン、プロピレンなどの不飽和炭化水素系モノマー(CH=CHR、Rは水素原子、アルキル基又はClなどのハロゲン)や、フッ素系モノマーである3フッ化塩化エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンやCF=CF-O-C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF-C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF-(CFCFH(nは1以上の整数)、さらにCF=CF-O-(CFCF(CF)O)-C2n+1(m、nは1以上の整数)も使用可能である。
そのほか式(1):
【0172】
【化6】
(式中、Yは-CHOH、-COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基又はエポキシ基、X及びXは同じか又は異なりいずれも水素原子又はフッ素原子、Rは炭素数1~40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1~40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体も使用可能である。これらの単量体を1種又は2種以上共重合することにより、さらに集電体との接着性が向上し、充放電を繰り返し行なっても集電体より電極活物質が剥がれ落ちることがなく、良好な充放電サイクル特性が得られる。
【0173】
上記PVdFは、単量体(α)に基づく重合単位が全重合単位の5モル%以下であることが好ましく、4.5モル%以下であることがより好ましい。
【0174】
上記PVdFは、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が50000~2000000であることが好ましい。上記重量平均分子量は、より好ましくは80000以上、更に好ましくは100000以上であり、より好ましくは1700000以下、更に好ましくは1500000以下である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0175】
上記PVdFは、数平均分子量(ポリスチレン換算)が150000~1400000である。
150000未満であると、得られた電極の接着性が低くなる。1400000を超えると、電極合剤を調製する際にゲル化しやすくなる。
上記数平均分子量は、200000以上が好ましく、250000以上がより好ましく、300000以上が更に好ましく、1300000以下が好ましく、1200000以下がより好ましく、1000000が更に好ましく、800000が特に好ましい。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0176】
上記PVdFは、融点が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、また、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが更に好ましい。
【0177】
上述した共重合体の各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0178】
上記フルオロポリマーとしては、なかでも、THV、VT、PVdF、ETFE、FEP及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、THV、VT、PVdF及びEFEPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、THV及びVTからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0179】
上記ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーとしては、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-α-オレフィンゴム、エチレン-α-オレフィン-非共役ジエンゴム、塩素化ポリオレフィンゴム、クロロスルホン化ポリオレフィンゴム、アクリルゴム、エチレン系アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン-ビニルエステルゴム、エチレン-メタクリレートゴム等の非フッ素エラストマー;フルオロエラストマー等が挙げられる。上記ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーは、フルオロエラストマーが好ましい。上記ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーは、架橋しているものであってもよいし、架橋していないものであってもよい。
【0180】
上記フルオロエラストマーとして具体的には、例えば、ビニリデンフルオライド(VdF)系フルオロエラストマー、TFE/プロピレン(Pr)系フルオロエラストマー、TFE/Pr/VdF系フルオロエラストマー、エチレン(Et)/HFP系フルオロエラストマー、Et/HFP/VdF系フルオロエラストマー、Et/HFP/TFE系含フッ素エラストマー、フルオロシリコーン系含フッ素エラストマー、又はフルオロホスファゼン系含フッ素エラストマーなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は本開示の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらの中でも、VdF系含フッ素エラストマーを使用することが好ましい。
【0181】
上記VdF系含フッ素エラストマーは、VdF単位、及び、VdFと共重合可能な他の単量体単位を含む含フッ素エラストマーである。VdF系含フッ素エラストマーは、VdF単位が、VdF単位と、他の単量体単位との合計モル数の20モル%以上、90モル%以下が好ましく、40モル%以上、85モル%以下がより好ましい。更に好ましい下限は45モル%、特に好ましい下限は50モル%である。更に好ましい上限は80モル%である。
【0182】
そして、上記VdF系エラストマーにおける共単量体としてはVdFと共重合可能であれば特に限定されず、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロ ピレン(HFP)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、クロロトリフル オロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、一般式(1-1)
CH=CFRf (1-1)
(式中、Rfは炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基であり、炭素数が2以上である場合は、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むものであってもよい。)で表される含フッ素単量体、
一般式(2-1)
CHF=CHRf (2-1)
(式中、Rfは、炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基であり、炭素数が2以上である場合は、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むものであってもよい。)で表される含フッ素単量体などのフッ素含有単量体;エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体、架橋性基(キュアサイト)を与える単量体、及び反応性乳化剤などが挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0183】
上記一般式(1-1)で表される化合物としては、
Rfは、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、又は、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルコキシ基である。フッ素化アルキル基及びフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。
Rfのフッ素化アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rfのフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
また、Rfのフッ素化アルコキシ基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルコキシ基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルコキシ基であってもよい。また、Rfのフッ素化アルコキシ基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
Rfの炭素数としては、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1である。
Rfとしては、一般式:
-(Rf11)m-(O)p-(Rf12-O)n-Rf13
(式中、Rf11及びRf12は、独立に、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキレン基、Rf13は、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキル基、pは0又は1、mは0~4の整数、nは0~4の整数である)で表される基が好ましい。
【0184】
Rf11及びRf12のフッ素化アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキレン基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルキレン基であってもよい。また、Rf11及びRf12のフッ素化アルキレン基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。Rf11及びRf12は、各出現において、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0185】
Rf11のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF-、-CH-CF-、-CHF-CF-、-CF-CF-、-CF(CF)-、-CH-CF-CF-、-CHF-CF-CF-、-CF-CF-CF-、-CF(CF)-CF-、-CF-CF(CF)-、-C(CF-、-CH-CF-CF-CF-、-CHF-CF-CF-CF-、-CF-CF-CF-CF-、-CH(CF)-CF-CF-、-CF(CF)-CF-CF-、-C(CF-CF-などが挙げられ、なかでも、炭素数1又は2の全フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF-がより好ましい。
【0186】
Rf12のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF-、-CH-CF-、-CHF-CF-、-CF-CF-、-CF(CF)-、-CH-CF-CF-、-CHF-CF-CF-、-CF-CF-CF-、-CF(CF)-CF-、-CF-CF(CF)-、-C(CF-、-CH-CF-CF-CF-、-CHF-CF-CF-CF-、-CF-CF-CF-CF-、-CH(CF)-CF-CF-、-CF(CF)-CF-CF-、-C(CF-CF-などが挙げられ、なかでも、炭素数1~3の全フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF-、-CFCF-、-CF-CF-CF-、-CF(CF)-CF-又は-CF-CF(CF)-がより好ましい。
【0187】
Rf13のフッ素化アルキル基としては、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rf13のフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基(たとえば、-CN、-CHI、-CHBrなど)を含まないことが好ましい。
【0188】
Rf13のフッ素化アルキル基としては、-CHF、-CHF、-CF、-CH-CHF、-CH-CHF、-CH-CF、-CHF-CHF、-CHF-CHF、-CHF-CF、-CF-CHF、-CF-CHF、-CF-CF、-CH-CF-CHF、-CHF-CF-CHF、-CF-CF-CHF、-CF(CF)-CHF、-CH-CF-CHF、-CHF-CF-CHF、-CF-CF-CHF、-CF(CF)-CHF、-CH-CF-CF、-CHF-CF-CF、-CF-CF-CF、-CF(CF)-CF、-CH-CF-CF-CF、-CHF-CF-CF-CF、-CF-CF-CF-CF、-CH(CF)-CF-CF、-CF(CF)-CF-CF、-C(CF-CFなどが挙げられ、なかでも、-CF、-CHF-CF、-CF-CHF、-CF-CF、-CF-CF-CF、-CF(CF)-CF、-CF-CF-CF-CF、-CH(CF)-CF-CF又は-CF(CF)-CF-CFが好ましい。
【0189】
pとしては、0が好ましい。
【0190】
mとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。また、pが0であるときはmも0であることが好ましい。
【0191】
nとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0192】
繰り返し単位としては、
-CH-CF[-CF]-、
-CH-CF[-CFCF]-、
-CH-CF[-CFCFCF]-、
-CH-CF[-CFCFCFCF]-、
-CH-CF[-CF-O-CF(CF)-CF-O-CHF-CF]-、
-CH-CF[-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF-CF]-、
-CH-CF[-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF(CF)-CF]-、
-CH-CF[-CF-O-CF(CF)-CF-O-CH(CF)-CF-CF]-、
-CH-CF[-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF(CF)-CF-CF]-、
-CH-CF[-OCFOCF]-、
-CH-CF[-OCFCFCF2OCF]-、
-CH-CF[-CFOCFOCF]-、
-CH-CF[-CFOCFCFCFOCF]-、又は、
-CH-CF[-O-CF-CF]-
が好ましく、
-CH-CF[-CF]-
がより好ましい。
【0193】
上記式(2-1)で表される化合物としては、
Rfは、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基、又は、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルコキシ基である。フッ素化アルキル基及びフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。
Rfのフッ素化アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rfのフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
また、Rfのフッ素化アルコキシ基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルコキシ基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルコキシ基であってもよい。また、Rfのフッ素化アルコキシ基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
Rf2の炭素数としては、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1である。
【0194】
Rfとしては、一般式:
-(Rf21)m-(O)p-(Rf22-O)n-Rf23
(式中、Rf21及びRf22は、独立に、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキレン基、Rf23は、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキル基、pは0又は1、mは0~4の整数、nは0~4の整数である。)で表される基が好ましい。
【0195】
Rf21及びRf22のフッ素化アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキレン基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルキレン基であってもよい。また、Rf21及びRf22のフッ素化アルキレン基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。Rf21及びRf22は、各出現において、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0196】
Rf21のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF-、-CH-CF-、-CHF-CF-、-CF-CF-、-CF(CF)-、-CH-CF-CF-、-CHF-CF-CF-、-CF-CF-CF-、-CF(CF)-CF-、-CF-CF(CF)-、-C(CF-、-CH-CF-CF-CF-、-CHF-CF-CF-CF-、-CF-CF-CF-CF-、-CH(CF)-CF-CF-、-CF(CF)-CF-CF-、-C(CF-CF-などが挙げられ、なかでも、炭素数1又は2の全フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF-がより好ましい。
【0197】
Rf22のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF-、-CH-CF-、-CHF-CF-、-CF-CF-、-CF(CF)-、-CH-CF-CF-、-CHF-CF-CF-、-CF-CF-CF-、-CF(CF)-CF-、-CF-CF(CF)-、-C(CF-、-CH-CF-CF-CF-、-CHF-CF-CF-CF-、-CF-CF-CF-CF-、-CH(CF)-CF-CF-、-CF(CF)-CF-CF-、-C(CF-CF-などが挙げられ、なかでも、炭素数1~3の全フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF-、-CFCF-、-CF-CF-CF-、-CF(CF)-CF-又は-CF-CF(CF)-がより好ましい。
【0198】
Rf23のフッ素化アルキル基としては、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された全フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rf23のフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基(たとえば、-CN、-CHI、-CHBrなど)を含まないことが好ましい。
【0199】
Rf23のフッ素化アルキル基としては、-CHF、-CHF、-CF、-CH-CHF、-CH-CHF、-CH-CF、-CHF-CHF、-CHF-CHF、-CHF-CF、-CF-CHF、-CF-CHF、-CF-CF、-CH-CF-CHF、-CHF-CF-CHF、-CF-CF-CHF、-CF(CF)-CHF、-CH-CF-CHF、-CHF-CF-CHF、-CF-CF-CHF、-CF(CF)-CHF、-CH-CF-CF、-CHF-CF-CF、-CF-CF-CF、-CF(CF)-CF、-CH-CF-CF-CF、-CHF-CF-CF-CF、-CF-CF-CF-CF、-CH(CF)-CF-CF、-CF(CF)-CF-CF、-C(CF)2-CFなどが挙げられ、なかでも、-CF、-CHF-CF、-CF-CHF、-CF-CF、-CF-CF-CF、-CF(CF)-CF、-CF-CF-CF-CF、-CH(CF)-CF-CF又は-CF(CF)-CF-CFが好ましい。
【0200】
pとしては、0が好ましい。
【0201】
mとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。また、pが0であるときはmも0であることが好ましい。
【0202】
nとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0203】
繰り返し単位としては、
-CHF-CH[-CF]-、
-CHF-CH[-CFCF]-、
-CHF-CH[-CFCFCF]-、又は、
-CHF-CH[-CFCFCFCF]-、
が好ましく、
-CHF-CH[-CF]-
がより好ましい。
【0204】
なかでも、共重合単位がヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン (TFE)、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)からなるものであることが好ましい。更には、共重合単位の少なくとも一部がヘキサフルオロプロピレン(HFP)であることがもっとも好ましい。共重合単位の少なくとも一部がヘキサフルオロプロピレン(HFP)であるビニリデンフルオライド系エラストマーとしては、ビニリデンフルオライド及びヘキサフルオロプロピレンからなる2元系エラストマー、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンからなる3元系エラストマー等を挙げることができる。
【0205】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、特にPMVEが好ましい。
また、上記PAVEとしては、式:CF=CFOCFORf
(式中、Rfは、炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、又は、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるパーフルオロビニルエーテルを用いることもできる。例えば、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、又は、CF=CFOCFOCFCFOCFを用いることが好ましい。
【0206】
上記VdF系含フッ素エラストマーとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE /HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/Pr共重合体、VdF/Et/HFP共重合体及びVdF/式(1-1)又は(2-1)で表される含フッ素単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。また、VdF以外の他の共単量体として、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の共単量体を有するものであることがより好ましい。
【0207】
これらのなかでも、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/式(1-1)又は(2-1)で表される含フッ素単量体の共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体及びVdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/式(1-1)又は(2-1)で表される含フッ素単量体の共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体がより好ましく、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体及びVdF/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。
【0208】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、(45~85)/(55~15)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは(50~80)/(50~20)(モル%)であり、更に好ましくは(60~80)/(40~20)(モル%)である。 VdF/HFPの組成は、(50~78)/(50~22)(モル%)であることも好ましい。
【0209】
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が(30~80)/(4~35)/(10~35)(モル%)のものが好ましい。
【0210】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65~90)/(35~10)(モル%)のものが好ましい。 また、VdF/PAVEの組成は、(50~78)/(50~22)(モル%)であることも好ましい形態の一つである。
【0211】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40~80)/(3~40)/(15~35)(モル%)のものが好ましい。
【0212】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65~90)/(3~25)/(3~25)(モル%)のものが好ましい。
【0213】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40~90)/(0~25)/(0~40)/(3~35)(モル%)のものが好ましく、(40~80)/(3~25)/(3~40)/(3~25)(モル%)のものがより好ましい。
【0214】
VdF/式(1-1)又は(2-1)で表される含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)系共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)単位が87/13~ 20/80(モル%)であり、VdF及び含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0~50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素 単量体(1-1)又は(2-1)単位のモル%比が80/20~20/80であることがより好ましい。また、VdF/含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)単位の組成は、78 /22~50/50(モル%)であることも好ましい形態の一つである。 またVdF/含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)単位が87/13~50/50(モ ル%)であり、VdF及び含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)以外他の単量体単位が全単量体単位の1~50モル%であるものも好ましい。VdF及び含フッ素単量体(1-1)又は(2-1)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、Et、Pr、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体、及び反応性乳化剤などの上記VdFの共単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることがより好ましい。
【0215】
TFE/Pr系含フッ素エラストマーは、TFE45~70モル%、Pr55~30モル%からなる含フッ素共重合体をいう。これら2成分に加えて、特定の第3成分(たとえば PAVE)を0~40モル%含んでいてもよい。
【0216】
Et/HFP共重合体としては、Et/HFPの組成が、(35~80)/(65~20)(モル%)であることが好ましく、(40~75)/(60~25)(モル%)がより好ましい。
【0217】
Et/HFP/TFE共重合体は、Et/HFP/TFEの組成が、(35~75)/(25~50)/(0~15)(モル%)であることが好ましく、(45~75)/(25~45)/(0~10)(モル%)がより好ましい。
【0218】
パーフルオロ含フッ素エラストマーとしては、TFE/PAVEからなるものなどが挙げられる。TFE/PAVEの組成は、(50~90)/(50~10)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、(50~80)/(50~20)(モル%)であり、 更に好ましくは、(55~75)/(45~25)(モル%)である。
この場合のPAVEとしては、たとえばPMVE、PPVEなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は任意に組み合わせて用いることができる。
【0219】
フルオロエラストマーは、フッ素含有率が50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。フッ素含有率の上限は、特に限定されるものではないが、71質量%以下であることが好ましい。
フッ素含有率は、19F-NMRにて測定されたフルオロエラストマーの組成から計算によって求めた値である。
組成比から分子量を算出し、その中に含まれるフッ素原子の質量を求め、フッ素含有率を算出した。
【0220】
本開示において、フルオロエラストマーの各繰り返し単位の組成比は、NMR法により測定した値である。具体的には、以下の溶液NMR法により測定した値である。
測定装置:バリアン社製 VNMRS400
共鳴周波数:376.04(Sfrq)
パルス幅:30°(pw=6.8)
【0221】
以上説明した非パーフルオロ含フッ素エラストマー及びパーフルオロ含フッ素エラストマーは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの常法により製造することができる。特にヨウ素(臭素)移動重合として知られるヨウ素(臭素)化合物を使用した重合法によれば、分子量分布が狭いフルオロエラストマーを製造できる。
【0222】
上記重合体は、フッ化ビニリデン単位と共重合単位(A)以外の構成単位を有するものであってもよい。この場合、その他の構成単位の含有量は、50モル%以下であることが好ましい。なお、フッ化ビニリデン単位及び共重合単位(A)のみからなるものであってもよい。その他の構成単位の含有量は、30モル%以下であることがより好ましく、15モル% 以下であることが更に好ましい。
【0223】
上記重合体は、上記他の単量体として、架橋部位を与える単量体を使用するものであってもよい。
【0224】
上記架橋部位を与える単量体としては特に限定されず、たとえば、一般式:
CX =CX-RfCHR
(式中、Xは、水素原子、フッ素原子又は-CH、Rfは、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、Rは、水素原子又は-CH、Xは、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるヨウ素又は臭素含有単量体、一般式:
CF=CFO(CFCF(CF)O)m(CF)n-X (式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、Xは、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、又は臭素原子である。)で表される単量体、一般式 :
CH=CFCFO(CF(CF)CFO)m(CF(CF))n-X
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、Xは、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CHOHである。)で表される単量体を他の単量体として使用するものであってもよい。
【0225】
なかでも、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、及び、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、架橋部位を与える単量体に基づく繰り返し単位を含有してもよいが、本開示の一実施形態においては、架橋剤を含有しない。
【0226】
上記フルオロエラストマーは、接着性、柔軟性を良好なものとし、溶媒への溶解性を良好とするために、数平均分子量(Mn)が7000~5000000であることが好ましく、質量平均分子量(Mw)が10000~10000000であることが好ましく、Mw/Mnが1.0~30.0であることが好ましく、1.5~25.0であることがさらに好ましい。上記数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及び、Mw/Mnは、GPC法により測定する値である。
【0227】
上記フルオロエラストマーの121℃のムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、30以上であることが特に好ましく、200以下であってもよい。フルオロエラストマーの140℃のムーニー粘度(ML1+10(140℃))は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、30以上であることが特に好ましく、200以下であってもよい。ムーニー粘度は、ASTM-D1646-15及びJIS K6300-1:2013に準拠して測定する値である。
【0228】
上記フルオロエラストマーは、末端構造が以下の不等式:
0.01≦([-CHOH]+[-COOH])/([-CH]+[-CFH]+[-CHOH]+[-CHI]+[-OC(O)RH]+[-COOH])≦0.25
(式中、RHは、炭素数1~20のアルキル基である)を満たすことが好ましい。末端官能基が上記式を満たすものとすることで、接着性・柔軟性が良好なものとなり優れた機能を有するものとなる。
【0229】
なお、上記一般式を満たすということは、含フッ素共重合体が、[-CH]、[-CFH]、[-CHOH]、[-CHI]、[-OC(O)RH]、[-COOH]のすべての官能基を有することを意味するものではなく、これらのうち、含フッ素共重合体に存在する末端基について、その個数比を上述した範囲内とすることを意味するものである。
【0230】
含フッ素共重合体の各末端基の存在量の測定は、NMRによる分析によって行うことができる。
【0231】
たとえば、NMRの末端基分析は、プロトンの溶液NMR法により行う。分析サンプルはAcetone-d6を溶媒として、20質量%溶液となるように調整し、測定を行う。
基準ピークはアセトンのピークトップを2.05ppmとする。
測定装置:バリアン社製VNMRS400
共鳴周波数:399.74(Sfrq)
パルス幅:45°
各末端は、以下のピーク位置のものに対応させる。
[-CH]:1.72~1.86ppm
[-CFH]:6.1~6.8ppm
[-CHOH]:3.74~3.80ppm
[-CHI]:3.87~3.92ppm
[-OC(O)RH]:1.09~1.16ppm
[-COOH]:10~15ppm
上述した測定によって特定された各ピークの積分値に基づいて、各ピーク強度から官能基量を算出し、その結果に基づいて下記式にて計算する。
([-CHOH]+[-COOH])/([-CH]+[-CFH]+[-CHOH]+[-CHI]+[-OC(O)RH]+[-COOH])
【0232】
[-CHOH]や[-COOH]を上述した所定の範囲内のものとする方法は、特に限定されず、公知の方法(例えば、重合に使用する開始剤の選択・使用量等)によって制御することができる。
【0233】
フッ素重合体は、一般的なラジカル重合法により製造することができる。重合形態は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合のいずれの形態でもよいが、工業的に実施が容易であることから、乳化重合であることが好ましい。
重合においては、重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
上記共重合体は、水性分散液、粉末等のいかなる形態であってもよい。共重合体の粉末は、乳化重合の場合、重合上がりの分散液を凝析させ、水洗し、脱水し、乾燥することによって得ることができる。凝析は、硫酸アルミニウム等の無機塩又は無機酸を添加するか、機械的な剪断力を与えるか、分散液を凍結させることによって行うことができる。懸濁重合の場合は、重合上がりの分散液から回収し、乾燥することにより得ることができる。溶液重合の場合は、含フッ素ポリマーを含む溶液をそのまま乾燥させて得ることができるし、貧溶媒を滴下して精製することによっても得ることができる。
【0234】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、水分含有量が1000質量ppm以下であることが好ましい。水分含有量は、500質量ppm以下であることがより好ましく、200質量ppm以下であることが更に好ましく、100質量ppm以下であることが更により好ましく、50質量ppm以下であることが殊更に好ましく、10質量ppm以下であることが特に好ましい。
上記水分含有量は、以下の方法により測定する。
電気化学デバイス用バインダー粉体を150℃で2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出する。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用する。
水分含有量(質量ppm)=[(加熱前の電気化学デバイス用バインダー粉体の質量(g))-(加熱後の電気化学デバイス用バインダー粉体の質量(g))]/(加熱前の電気化学デバイス用バインダー粉体の質量(g))×1000000
【0235】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、平均一次粒子径が10~500nmであることが好ましい。平均一次粒子径は、350nm以下であることが好ましく、330nm以下であることがより好ましく、320nm以下であることが更に好ましく、300nm以下であることが更により好ましく、280nm以下であることが殊更に好ましく、250nm以下であることが特に好ましく、また、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることが更に好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。
上記平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定する。
電気化学デバイス用バインダー粉体を100~300kGyの放射線照射を行ない、粉砕機で微粒子にする。水に非イオン性界面活性剤を添加して、微粒子が凝集しないようにして、超音波処理を行ない、分散液を得る。平均一次粒子径は、固形分濃度約1.0質量%に調整した水性分散液を作成し、動的光散乱法を使用して、25℃、溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・s、積算70回にて測定できる。動的光散乱法としては、例えばELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0236】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、最大粒子径が2000μm未満であることが好ましい。最大粒子径は、1500μm以下であることがより好ましく、1300μm以下であることが更に好ましく、1000μm以下であることが更により好ましい。また、最大粒子径は、300μm以上であることが好ましい。
上記最大粒子径は、以下の方法により測定する。
JIS Z 8815に準拠して測定した粒度分布の累積の90%重量にあたる粒子径D90を最大粒子径とする。
【0237】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0238】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0239】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、より好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0240】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、更に好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0241】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂と熱可塑性ポリマーが混合されていることが好ましく、均一に混合されていることがより好ましい。均一に混合されていることは例えば下記の平均粒子径により確認することもできる。
【0242】
上記電気化学デバイス用バインダー粉体は、平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、また、200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。
平均粒子径は、JIS Z8815により測定できる。
【0243】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、例えば、上記フィブリル化性を有する樹脂、上記熱可塑性ポリマー、及び、水を含む混合物を作製する工程(1)、及び、上記混合物から粉体を製造する工程(2)を含む製造方法により、製造することができる。
【0244】
上記工程(2)は、上記工程(1)で得られた混合物を、乾燥することで、水等の液体媒体を除去する工程(B)を含むことが好ましい。乾燥方法は、例えば棚型乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機、熱風乾燥機、ドラム乾燥機、噴霧乾燥機などが挙げられる。特に好ましくは噴霧乾燥である。噴霧乾燥は、液体と固体の混合物を気体中に噴霧して急速に乾燥させ、乾燥粉体を製造する手法である。これによって、フィブリル化性を有する樹脂と熱可塑性ポリマーが均一に混合した粉体状態のバインダー粉体を得ることができる。噴霧乾燥は、一般的に広く知られた手法であり、公知の任意の装置によって、一般的な手法で行うことができる。上記工程(B)は、公知の一般的な装置を使用した一般的な方法で行うことができる。乾燥温度は、例えば、100℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、250℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、110℃以上がより好ましく、220℃以下がより好ましい。また、供給液量は、作製する規模にもよるが、例えば、0.1L/h以上2L/h以下の範囲としてもよい。また、調製溶液を噴霧するノズルサイズは、作製する規模にもよるが、例えば、直径0.5mm以上5mm以下の範囲としてもよい。
【0245】
本開示はまた、フィブリル化性を有する樹脂、熱可塑性ポリマー、及び、水を含む混合物を作製する工程(1)、及び、上記混合物から粉体を製造する工程(2)を含む電気化学デバイス用バインダー粉体の製造方法に関する。
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体の製造方法によれば、本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体を好適に製造することができる。
【0246】
上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、上記熱可塑性ポリマーは、本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体について説明したものと同様のものを使用できる。
【0247】
工程(1)では、上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、上記熱可塑性ポリマーの少なくとも一方が分散液の形態で混合されることが好ましく、少なくとも上記熱可塑性ポリマーが分散液の形態で混合されることがより好ましく、上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、上記熱可塑性ポリマーの両方が分散液の形態で混合されることが更に好ましい。上記分散液は、水性分散液であることが好ましい。
上記のように混合することにより、上記フィブリル化性を有する樹脂のフィブリル化を抑制し、上記フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂を含むバインダー粉体を容易に得ることができる。また、上記フィブリル化性を有する樹脂及び上記熱可塑性ポリマーを均一に混合することができる。
工程(1)において、さらにカーボン系導電助剤を添加してもよい。
【0248】
上記分散液は、乳化重合により得られた水性分散液であってもよく、乳化重合又は懸濁重合で得られた粉体を水性媒体に分散させたものであってもよい。
上記フィブリル化性を有する樹脂の分散液は、乳化重合で得られた水性分散液であることが好ましい。
上記熱可塑性ポリマーの分散液は、平均一次粒子径が50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが更により好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、また、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.10μm以上であることが更に好ましい。
【0249】
上記工程(1)では、平均一次粒子径が50μm以下の上記熱可塑性ポリマーを含む分散液を、上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、水と混合することが好ましい。
【0250】
上記工程(2)は、上記混合物から、上記フィブリル化性を有する樹脂、及び、上記熱可塑性ポリマーを含む組成物を凝集させて凝集物を得る工程(2-1)、及び、上記凝集物を熱処理する工程(2-2)を含むことが好ましい。
【0251】
工程(2-1)における凝析は、公知の方法により行うことができる。水性分散液中のポリマーの凝集を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて希釈を行ない、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で撹拌して行う。凝析時の温度、濃度を調整することで平均粒子径を調整することが出来る。
【0252】
工程(2-2)における熱処理温度は、10℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましく、また、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0253】
工程(2-2)における熱処理時間は、10分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、60分以上であることが更に好ましく、また、100時間以下であることが好ましく、50時間以下であることがより好ましい。
【0254】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、二次電池用であることが好ましい。
【0255】
本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体は、更に、カーボン系導電助剤を含んでいてもよい。
【0256】
上記カーボン系導電助剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、フラーレン、VGCF等の無定形炭素等が挙げられる。
【0257】
上記カーボン系導電助剤の含有量は、上記バインダー粉体に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが更により好ましく、また、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0258】
本開示は、フィブリル化性を有する樹脂、及び、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を含む電気化学デバイス用バインダー(以下、電気化学デバイス用バインダー(1)ともいう)に関する。
【0259】
本開示はまた、フィブリル化性を有する樹脂、及び、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーを含む電気化学デバイス用バインダー(以下、電気化学デバイス用バインダー(2)ともいう)に関する。
【0260】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、粉体であることが好ましい。
【0261】
上記フィブリル化性を有する樹脂、上記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、及び、上記ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーは、本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体について説明したものと同様のものを使用できる。
【0262】
上記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体は、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)であることが好ましい。
【0263】
上記エラストマーは、フルオロエラストマーであることが好ましい。
【0264】
上記フルオロエラストマーは、VdF単位、及び、VdFと共重合可能な他の単量体単位を含むことが好ましい。
【0265】
本開示の電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、上記フィブリル化性を有する樹脂を、上記バインダーに対して40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことが更に好ましく、また、99質量%以下含むことが好ましく、95質量%以下含むことがより好ましく、90質量%以下含むことが更に好ましい。
【0266】
本開示の電気化学デバイス用バインダー(1)は、上記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を、上記バインダーに対して0.1質量%以上含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、1.0質量%以上含むことが更に好ましく、5.0質量%以上含むことが更により好ましく、10質量%以上含むことが特に好ましく、また、50質量%以下含むことが好ましく、40質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以下含むことが更に好ましく、25質量%以下含むことが更により好ましい。
【0267】
本開示の電気化学デバイス用バインダー(1)は、上記エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を、上記フィブリル化性を有する樹脂に対して1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことが更に好ましく、また、100質量%以下含むことが好ましく、75質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以下含むことが更に好ましい。
【0268】
本開示の電気化学デバイス用バインダー(2)は、上記ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーを、上記バインダーに対して0.1質量%以上含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10質量%以上含むことが更に好ましく、また、40質量%以下含むことが好ましく、30質量%以下含むことがより好ましく、25質量%以下含むことが更に好ましい。
【0269】
本開示の電気化学デバイス用バインダー(2)は、上記ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーを、上記フィブリル化性を有する樹脂に対して1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことが更に好ましく、また、67質量%以下含むことが好ましく、43質量%以下含むことがより好ましく、33質量%以下含むことが更に好ましい。
【0270】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃であることが好ましい。
【0271】
上記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0272】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、上記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含むことが好ましい。
【0273】
上記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましい。
【0274】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、水分含有量が1000質量ppm以下であることが好ましい。水分含有量は、500質量ppm以下であることがより好ましく、200質量ppm以下であることが更に好ましく、100質量ppm以下であることが更により好ましく、50質量ppm以下であることが殊更に好ましく、10質量ppm以下であることが特に好ましい。上記水分含有量は、以下の方法により測定する。
電気化学デバイス用バインダーを150℃で2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出する。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用する。
水分含有量(質量ppm)=[(加熱前の電気化学デバイス用バインダーの質量(g))-(加熱後の電気化学デバイス用バインダーの質量(g))]/(加熱前の電気化学デバイス用バインダーの質量(g))×1000000
【0275】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、平均一次粒子径が10~500nmであることが好ましい。平均一次粒子径は、350nm以下であることが好ましく、330nm以下であることがより好ましく、320nm以下であることが更に好ましく、300nm以下であることが更により好ましく、280nm以下であることが殊更に好ましく、250nm以下であることが特に好ましく、また、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることが更に好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。
上記平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定する。
電気化学デバイス用バインダーを100~300kGyの放射線照射を行ない、粉砕機で微粒子にする。水と非イオン性界面活性剤とを添加して、微粒子が凝集しないようにして、超音波処理を行ない、分散液を得る。平均一次粒子径は、固形分濃度約1.0質量%に調整した水性分散液を作成し、動的光散乱法を使用して、25℃、溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・s、積算70回にて測定できる。動的光散乱法としては、例えばELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0276】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、最大粒子径が2000μm未満であることが好ましい。最大粒子径は、1500μm以下であることがより好ましく、1300μm以下であることが更に好ましく、1000μm以下であることが更により好ましい。また、最大粒子径は、300μm以上であることが好ましい。
JIS Z 8815に準拠して測定した粒度分布の累積分布の90%重量にあたる粒子径D90を最大粒子径とする。
【0277】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0278】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が20以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0279】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、より好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が10以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0280】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、更に好ましくは、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下であることが好ましい。フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが更により好ましく、3%以下であることが殊更に好ましく、2%以下であることがより殊更に好ましく、1%以下であることが特に好ましく、0.5%以下であることが特に殊更好ましい。
フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が5以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合は、上述した方法により求めることができる。
【0281】
本開示の電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂と熱可塑性ポリマーが混合されていることが好ましく、均一に混合されていることがより好ましい。均一に混合されていることは例えば下記の平均粒子径により確認することもできる。
【0282】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、また、200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。
平均粒子径は、JIS Z8815により測定できる。
【0283】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、二次電池用であることが好ましい。
【0284】
上記電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、更に、カーボン系導電助剤を含むことが好ましい。
【0285】
上記カーボン系導電助剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、フラーレン、VGCF等の無定形炭素等が挙げられる。
【0286】
上記カーボン系導電助剤の含有量は、上記バインダーに対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが更により好ましく、また、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
本開示の電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は、本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体の製造方法に限らず公知の方法で製造できる。
【0287】
本開示は、上述した本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる電極合剤、又は、電気化学デバイス用バインダー(1)若しくは(2)を用いて得られる電極合剤でもある。本開示の電極合剤は、正極合剤であっても負極合剤であってもよいが、正極合剤であることが好ましい。
【0288】
上記電極合剤は、通常、電極活物質を含む。上記電極合剤は、更に導電助剤を含んでもよい。
【0289】
バインダー以外の上記電極合剤の構成としては、例えば、国際公開第2022/050251号に記載されるものを採用することができる。
【0290】
本開示の電極合剤において、バインダーの含有量は、上記電極合剤に対し、0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、50質量%以下であってよく、好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更により好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。バインダーの割合が低すぎると、電極合剤活物質を十分保持できずに電極合剤シートの機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体、並びに、電気化学デバイス用バインダー(1)及び(2)は結着力に優れるので、含有量が少なくても、電極活物質を充分に保持することができる。
【0291】
本開示の電極合剤は、シート状であることが好ましい。
【0292】
本開示の電極合剤は、二次電池用の電極合剤として好適に使用することができる。特に、本開示の電極合剤は、リチウムイオン二次電池に好適である。本開示の電極合剤は、二次電池に使用するにあたっては、通常、シート状の形態で使用される。
【0293】
上記電極合剤シートは、その製造方法を限定されるものではないが、以下に具体的な製造方法の例を示す。
【0294】
工程(a):粉体成分とバインダーを混合して電極合剤を形成するステップと、
工程(b):電極合剤をカレンダリング又は押出成形してシートを製造するステップと
を含み、
工程(a)の混合は、
(a1)粉体成分とバインダーを均質化して粉末にする工程と、
(a2)工程(a1)によって得られた粉末状の原料混合物を混合して電極合剤を調製する工程と
を含むことを特徴とする製造方法であることが好ましい。
【0295】
例えば、PTFEは、約19℃及び約30℃で2つの転移温度を有する。19℃未満では、PTFEは形状を維持した状態で容易に混合することができる。しかし、19℃を超えると、PTFE粒子の構造が緩くなり、機械的せん断に対してより敏感になる。30℃を超える温度では、より高度なフィブリル化が生じるようになる。
【0296】
このため、(a1)の均質化は、19℃以下、好ましくは0℃~19℃の温度で実施することが好ましい。
すなわち、このような(a1)においては、フィブリル化を抑制しながら、混合して均質化することが好ましい。
次いで行う工程である(a2)における混合は、30℃以上の温度で行うことで、フィブリル化を促進させることが好ましい。
【0297】
上記工程(a2)は、好ましくは30℃~150℃、より好ましくは35℃~120℃、さらにより好ましくは40℃~80℃の温度で行われる。
一実施形態では、上記工程(b)のカレンダリング又は押し出しは、30℃から150℃の間、好ましくは35℃から120℃の間、より好ましくは40℃から100℃の間の温度で実行される。
【0298】
上記工程(a)の混合では剪断力を付与しながら行うことが好ましい。
具体的な混合方法としては、W型混合機、V型混合機、ドラム型混合機、リボン混合機、円錐スクリュー型混合機、1軸混練機、2軸混練機、ミックスマラー、撹拌ミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、高速ミキサーなどを用いて混合する方法が挙げられる。
【0299】
混合条件は、回転数と混合時間を適宜設定すればよい。例えば、回転数は、15000rpm以下とすることが好適である。好ましくは10rpm以上、より好ましくは1000rpm以上、更に好ましくは3000rpm以上であり、また、好ましくは12000rpm以下、より好ましくは11000rpm以下、更に好ましくは10000rpmの範囲である。上記の範囲を下回ると、混合に時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。
工程(a1)では工程(a2)よりも弱い剪断力で行うことが好ましい。
【0300】
上記工程(a2)において、原料組成物は液体溶媒を含まないことが好ましいが、少量の潤滑剤を使用してもよい。すなわち、上記工程(a1)によって得られた粉末状の原料混合物に対して、潤滑剤を添加して、ペーストを調製してもよい。
【0301】
上記潤滑剤としては特に限定されず、水、エーテル化合物、アルコール、イオン液体及びカーボネート、脂肪族炭化水素(ヘプタン、キシレンなどの低極性溶剤)、イソパラフィン系炭化水素化合物及び石油留分(ガソリン(C4-C10)、ナフサ(C4-C11)、灯油/パラフィン(C10-C16)、及びそれらの混合物)等を挙げることができる。
【0302】
上記潤滑剤は、水分含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
水分含有量が1000ppm以下であることによって、電気化学デバイスの劣化を低減させるという点で好ましい。上記水分含有量は、500ppm以下であることが更に好ましい。
【0303】
上記潤滑剤を用いる場合は、ヘプタン、キシレンなどの低極性溶剤、イオン液体であることが特に好ましい。
【0304】
上記潤滑剤を用いる場合は、その量は、工程(a1)に供する組成物の総重量に対して、5.0~35.0重量部、好ましくは10.0~30.0重量部、より好ましくは15.0~25.0重量部であってよい。
【0305】
上記原料組成物は、実質的に液体媒体を含有しないことが好ましい。従来の電極合剤形成方法は、バインダーが溶解した溶媒を使用して、電極合剤成分である粉体を分散させたスラリーを調製し、当該スラリーの塗布・乾燥によって電極合剤シートを調製することが一般的であった。この場合、バインダーを溶解する溶媒を使用する。しかし、従来一般に使用されてきたバインダー樹脂を溶解することができる溶媒は酪酸ブチル等の特定の溶媒に限定される。これらは固体電解質と反応して、固体電解質を劣化させるため、電池性能の低下原因となることがある。また、ヘプタンなどの低極性溶媒では溶解するバインダー樹脂が非常に限定されるうえ、引火点が低く、取り扱いが煩雑になることがある。
【0306】
電極合剤シート形成時に溶媒を使用せず、水分の少ない粉体状のバインダーを用いることで、固体電解質の劣化が少ない電池を製造することができる。更に、上記のような製造方法においては、微細な繊維構造を有するバインダーを含有する電極合剤シートを製造することができると共に、また、スラリーを作製しないことで、製造プロセスの負担を軽減することができる。
【0307】
工程(b)は、カレンダリング又は押出しである。カレンダリング、押出しは、周知の方法によって行うことができる。これによって、電極合剤シートの形状に成形することができる。
工程(b)は、(b1)上記工程(a)によって得られた電極合剤をバルク状に成形する工程と、(b2)バルク状の電極合剤をカレンダリング又は押出成形する工程を含むことが好ましい。
【0308】
バルク状に成形するとは、電極合剤を1つの塊とするものである。
バルク状に成形する具体的な方法として、押出成形、プレス成形などが挙げられる。
また、「バルク状」とは、特に形状が特定されるものではなく、1つの塊状になっている状態であればよく、ロッド状、シート状、球状、キューブ状等の形態が含まれる。上記塊の大きさは、その断面の直径又は最小の一辺が10000μm以上であることが好ましい。より好ましくは20000μm以上である。
【0309】
上記工程(b2)におけるカレンダリング又は押出成形の具体的な方法としては、ロールプレス機、カレンダーロール機などを用いて、電極合剤を圧延する方法が挙げられる。
【0310】
上記工程(b)は、30~150℃で行うことが好ましい。上述したように、PTFEは、30℃付近にガラス転移温度を有することから、30℃以上において容易にフィブリル化するものである。よって、工程(b)は、このような温度で行うことが好ましい。
【0311】
そして、カレンダリング又は押出は、剪断力がかかるため、これによってPTFEがフィブリル化して、成形がなされる。
【0312】
工程(b)のあとに、得られた圧延シートに、より大きい荷重を加えて、さらに薄いシート状に圧延する工程(c)を有することも好ましい。工程(c)を繰り返すことも好ましい。このように、圧延シートを一度に薄くするのではなく、段階に分けて少しずつ圧延することで柔軟性がより良好となる。
工程(c)の回数としては、2回以上10回以下が好ましく、3回以上9回以下がより好ましい。
具体的な圧延方法としては、例えば、2つあるいは複数のロールを回転させ、その間に圧延シートを通すことによって、より薄いシート状に加工する方法等が挙げられる。
【0313】
また、シート強度を調整する観点で、工程(b)又は工程(c)のあとに、圧延シートを粗砕したのち再度バルク状に成形し、シート状に圧延する工程(d)を有することも好ましい。工程(d)を繰り返すことも好ましい。工程(d)の回数としては、1回以上12回以下が好ましく、2回以上11回以下がより好ましい。
【0314】
工程(d)において、圧延シートを粗砕してバルク状に成形する具体的な方法として、圧延シートを折りたたむ方法、あるいはロッドもしくは薄膜シート状に成形する方法、チップ化する方法などが挙げられる。本開示において、「粗砕する」とは、次工程でシート状に圧延するために、工程(b)又は工程(c)で得られた圧延シートの形態を別の形態に変化させることを意味するものであり、単に圧延シートを折りたたむような場合も含まれる。
【0315】
また、工程(d)の後に、工程(c)を行うようにしてもよく、繰り返し行ってもよい。
また、工程(a)ないし、(b)、(c)、(d)において1軸延伸もしくは2軸延伸を行っても良い。
また、工程(d)での粗砕程度によってもシート強度を調整することができる。
【0316】
上記工程(b)、(c)又は(d)において、圧延率は、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であり、また、好ましくは80%以下、より好ましくは65%以下、更に好ましくは50%以下の範囲である。上記の範囲を下回ると、圧延回数の増大とともに時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度及び柔軟性の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。
なお、ここでいう圧延率とは、試料の圧延加工前の厚みに対する加工後の厚みの減少率を指す。圧延前の試料は、バルク状の原料組成物であっても、シート状の原料組成物であってもよい。試料の厚みとは、圧延時に荷重をかける方向の厚みを指す。
上記工程(c)~(d)は30℃以上で行うのが好ましく、60℃以上がより好ましい。また、150℃以下で行うのが好ましい。
【0317】
上記電極合剤シートは、二次電池用の電極合剤シートとして使用することができる。負極、正極のいずれとすることもできる。特に、上記電極合剤シートは、リチウムイオン二次電池に好適である。
【0318】
本開示は、上述した本開示の電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる電極、又は、電気化学デバイス用バインダー(1)若しくは(2)を用いて得られる電極でもある。
本開示の電極は、通常、電極活物質及び集電体を含む。本開示の電極は、二次電池用であることが好ましい。
本開示の電極は、上述した本開示の電極合剤(好ましくは電極合剤シート)、及び、集電体を含むものであってもよい。
本開示の電極は、正極であってもよく、負極であってもよいが、正極であることが好ましい。
【0319】
バインダー以外の上記電極の構成としては、例えば、国際公開第2022/050251号に記載されるものを採用することができる。
【0320】
本開示は、上述した本開示の電極を備える二次電池も提供する。
【0321】
本開示の二次電池は、電解液を使用する二次電池であってもよく、固体二次電池であってもよい。
【0322】
上記電解液を使用する二次電池は、公知の二次電池において使用される電解液、セパレータ等を使用することができる。
バインダー以外の上記電解液を使用する二次電池の構成としては、例えば、国際公開第2022/050251号に記載されるものを採用することができる。
【0323】
上記固体二次電池は、全固体二次電池であることが好ましい。上記固体二次電池は、リチウムイオン電池であることが好ましく、硫化物系全固体二次電池であることも好ましい。
上記固体二次電池は、正極、負極、並びに、当該正極及び当該負極の間に介在する固体電解質層を備えることが好ましい。
バインダー以外の上記固体二次電池の構成としては、例えば、国際公開第2022/050252号に記載されるものを採用することができる。
【実施例
【0324】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0325】
本開示に従ってコンポジットバインダー材料を製造した。以下のコンポジットバインダー材料の試料を調製し、テストした。
試料1:一体化した導電性カーボン及び様々な量のEFEP(5質量%、7.5質量%、10質量%、及び、20質量%)を含むPTFE
試料2:一体化した導電性カーボン及び様々な量のEFEP(5質量%、7.5質量%、10質量%、及び、20質量%)を含む高分子量PTFE
試料3:一体化した導電性カーボン及び様々な量のEFEP(10質量%及び20質量%)を含む変性PTFE
【0326】
調製方法
【0327】
コンポジットバインダー材料を以下の方法に従って調製した。乳化剤、パラフィンワックス、及び、開始剤の存在下でテトラフルオロエチレンを水性重合することにより、PTFEエマルジョンを得た。まず、軽いワックス相からエマルジョンをデカントすることによって、ワックスを分離した。ワックス相から分離した後、機械的撹拌を始めて、PTFEエマルションの凝集工程を開始した。撹拌速度は、添加した材料をPTFEエマルジョンに引き込むための渦を発生させる一方、エマルジョンに過剰な剪断力がかかりすぎないような速度に設定した。渦が観察され始めた時に、導電助剤と低融点熱可塑性樹脂(EFEP)とをPTFEエマルジョンに添加した。機械的撹拌によって懸濁液に十分なエネルギーが加えられると、二次粒子が凝集、又は、水相からPTFEが分離した。完了時には、一体化された導電助剤及びEFEPを含有するPTFEの明確な二次粒子が観察された。次いで、凝集した物質を残りの液体からデカントし、高温で乾燥させた。
【0328】
結果
【0329】
コンポジットバインダー材料の画像化
【0330】
図1A~1Eは、導電性カーボン及び5質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子の画像を示す。図2A~2Eは、導電性カーボン及び7.5質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子の画像を示す。図3A~3Eは、導電性カーボン及び10質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子の画像を示す。図4A~4Eは、導電性カーボン及び20質量%のEFEPと一体化したPTFE粒子の画像を示す。図1A~1E、2A~2E、3A~3E、及び、4A~4Eに見られるように、コンポジットバインダー材料の外観は、ふわふわした灰色から黒色の粉末である。導電性カーボンはPTFE内に一体化されているため、取り扱い時に導電性カーボンが容器や手に付着することはほとんど又は全くない。
【0331】
接着力試験
【0332】
コンポジットバインダー材料のサンプル1、2、及び、3について、コンポジットバインダー剥離試験によって接着強度を試験した。剥離試験の目的は、コンポジットバインダーから金属短冊を引き剥がすのに必要な力を測定することである。本開示又は特許請求の範囲において接着剥離試験に言及した場合、ここに記載されるように実施される接着剥離試験を指すものとみなされるべきである。リチウムイオン電池のカソードの集電体として機能するため、アルミニウムを金属として選択した。剥離試験は以下の手順で実施した。
1.ハンドプレスを使用して、「カソードグレード」のアルミニウム箔を2cm×25cmの短冊状にカットした。カットした短冊に折り目や皺はなかった。
2.コンポジットバインダーを1つの短冊上に均一に分散させた。この時、短冊の端の約2cmはコーティングせずに残した。「ドローダウンブレード」を使用して、コンポジットバインダーを短冊上に配置した。
3.第2の短冊をコーティングされた短冊の上に置き、わずかな圧力を加えた。両方の短冊を、(間にカソード合剤を挟んで)ヒートプレス内に置いた。
4.カソードを最低1時間かけて22±3℃の温度まで放冷した。
5.インストロン社製の機械試験機を使用して、短冊の、カソード合剤が含まれていない部分を機械クランプに取り付けた。
6.10インチ/分(25cm/分)で引っ張るように、インストロン社製の機械試験機を設定し、圧力トランスデューサーで荷重を測定した。測定長さは少なくとも2インチ(5cm)とした。報告される負荷は、測定された距離の平均負荷である。
【0333】
図5は、導電性カーボン及び様々な量のEFEP(5質量%、7.5質量%、10質量%、及び、20質量%)と一体化されたPTFE粒子の接着強度を示す。図6は、導電性カーボン及び様々な量のEFEP(5質量%、7.5質量%、10質量%、及び、20質量%)と一体化された高分子量PTFE粒子の接着強度を示す。図7は、導電性カーボン及び様々な量のEFEP(10質量%及び20質量%)と一体化された変性PTFE粒子の接着強度を示す。図8は、導電性カーボン及び様々な量のEFEP(5質量%、7.5質量%、10質量%、及び、20質量%)と一体化されたPTFE粒子と比較した、添加剤を含まないPTFE粒子の接着強度を示す。
【0334】
図5~8に示されるように、本開示に従って製造されたコンポジットバインダー材料は、両面に高純度アルミニウムを有する25mm幅フィルムを用いた接着力試験で測定される、高純度アルミニウムとの接着強度が>1Nmmであった。
【0335】
FTIR 化学官能基
【0336】
コンポジットバインダー材料をFTIR-ATR装置上に配置した。図9Aは、導電性カーボンと一体化されたPTFE粒子のATR-FTIRスペクトルを示す。図9Bは、導電性カーボン及びEFEPと一体化されたPTFE粒子のATR-FTIRスペクトルを示す。図9A及び図9Bによって実証されるように、官能基の同定したところ、コンポジットバインダー材料中にPTFEとEFEPの両方が存在することが示唆された。
【0337】
熱重量分析(TGA) 重量損失試験
【0338】
試料1(一体化した導電性カーボン及び様々な量のEFEP(5質量%、7.5質量%、10質量%、及び、20質量%)を含むPTFE)に対してTGA試験を行った。図10A~10Dは、各バインダー材料の温度上昇に対する重量損失(%)を示す。
【0339】
前述の説明は、本開示のプロセス、生産物、組成物、及び他の教示を例示及び説明するものである。さらに、本開示は、開示されるプロセス、製造物、物質の組成、及び、他の教示の特定の実施形態のみを提示及び説明するが、上述したように、本開示の教示は、他の様々な組み合わせ、修正、及び環境において使用可能であり、関連技術において通常の技術を有する者の技術及び/又は知識に相応して、本明細書で表現される教示の範囲内で、変更又は修正が可能であることを理解されたい。上述の実施形態はさらに、本開示のプロセス、製造物、物質の組成、及び、他の教示を実施する既知の最良の態様を説明し、他の当業者が、そのような、又は、他の実施形態において、特定の用途又は使用によって必要とされる様々な修正を伴って、本開示の教示を利用できるようにすることを目的としている。したがって、本開示のプロセス、製造物、物質の組成、及び、他の教示は、本明細書に開示される正確な実施形態及び実施例を限定することを意図するものではない。ここに記載されているセクションの見出しは、37 C.F.R. § 1.77の提案との整合性を図るため、又は、その他の組織的な順序を示すためにのみ記載されている。これらの見出しは、本明細書に記載の発明を限定したり、特徴付けたりするものではない。
【0340】
平均一次粒子径
動的光散乱法により測定した。フルオロポリマー固形分濃度約1.0質量%に調整したフルオロポリマー水性分散液を作成し、ELSZ-1000S(大塚電子社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとした。
【0341】
固形分濃度(P)
試料約1g(X)を直径5cmのアルミカップにとり、150℃、1時間で乾燥した後、得られる加熱残分(Z)に基づき、式:P=Z/X×100(%)にて決定した。
【0342】
フルオロポリマー組成
H-NMR分析、19F-NMR分析により測定した。
【0343】
標準比重(SSG)
ASTM D 4895に準拠して形成されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0344】
フィブリル化性を有する樹脂のピーク温度
ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度とした。
【0345】
熱可塑性ポリマーの融点
融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で2回目の昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度とした。
【0346】
ガラス転移点(Tg)の測定
示差走査熱量計(セイコー電子社製)を用い、-50℃まで冷却した後、50℃まで10℃/minの速度で昇温したときの融解熱量曲線における極大値に対応する温度をガラス転移点とした。
【0347】
熱可塑性ポリマーのMFR
メルトフローレートは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)社製)を用いて、各種温度、各種荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
【0348】
フルオロエラストマーのムーニー粘度(ML1+10(121℃、140℃)
ASTM D1646-15及びJIS K6300-1:2013に準拠して測定した。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:121℃、140℃
測定時間:予熱1分後、直ちにローターを回転し、10分間後の値を測定した。
【0349】
フルオロエラストマーの融解熱
示差走査熱量計(日立テクノサイエンス社製、X-DSC823e)を用い、試料10mgを20℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさから融解熱を算出した。
【0350】
フルオロエラストマーのガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(日立テクノサイエンス社製、X-DSC823e)を用い、試料10mgを20℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点を示す温度をガラス転移温度とした。
【0351】
フルオロエラストマーの含有極性基の割合
上述した方法によるNMRによる末端基分析を行い、([-CHOH]+[-COOH])/([-CH]+[-CFH]+[-CHOH]+[-CHI]+[-OC(O)RH]+[-COOH])の割合を算出した。
【0352】
フルオロエラストマーの重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。東ソー社製のAS-8010、CO-8020、カラム(GMHHR-Hを3本直列に接続)及び島津製作所社製RID-10Aを用い、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を流速1.0ml/分で流して測定したデータ(リファレンス:ポリスチレン)より算出した。
【0353】
水分含有量
電気化学デバイス用バインダー粉体を150℃で2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出した。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用する。
水分含有量(質量ppm)=[(加熱前の電気化学デバイス用バインダー粉体の質量(g))-(加熱後の電気化学デバイス用バインダー粉体の質量(g))]/(加熱前の電気化学デバイス用バインダー粉体の質量(g))×1000000
【0354】
平均粒子径
JIS Z 8815に準拠して測定した粒度分布の累積分布の50%重量にあたる粒子径D50を平均粒子径とした。
【0355】
最大粒子径
JIS Z 8815に準拠して測定した粒度分布の累積分布の90%重量にあたる粒子径D90を最大粒子径とした。
【0356】
PVDF粉末の平均粒子径
ベックマン・コールター製レーザー回折式粒度分布測定装置(LS13 320)を用いて、乾式で、バキューム圧20mHOで測定を行ない、得られた粒度分布(体積基準)に基づいて求めた。平均粒子径は、粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとした。
【0357】
合成例
国際公開第2021/045228号の合成例1に記載された方法により白色固体Aを得た。
【0358】
製造例1(PTFE-1水性分散液)
攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルの反応容器に、3480gの脱イオン水、100gのパラフィンワックス及び5.25gの含フッ素界面活性剤として白色固体Aを仕込み、70℃に加温しながら反応容器内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。テトラフルオロエチレン(TFE)を圧入して系内圧力を0.78MPaGとし、攪拌しながら容器内温度を70℃に保った。次いで、20gの水に15.0mgの過硫酸アンモニウムを溶解した水溶液を圧入し、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い反応圧力が低下するがTFEを追加して容器内温度を70℃、反応圧力を0.78MPaGに維持した。
重合開始から400gのTFEを供給された時点で、ラジカル捕捉剤として18.0mgのヒドロキノンを20gの水に溶解した水溶液を圧入した。重合はその後も継続し、TFEの供給量が重合開始から1200gになった時点で攪拌及びTFEの供給を止め、直ちに反応容器内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了した。得られた水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は25.3質量%であり、平均一次粒子径は310nmであった。ピーク温度は、344℃であった。
【0359】
製造例2(PTFE-1粉末)
製造例1で得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%まで希釈し、容器内で攪拌しながらPTFEを凝固させた後、水と濾別し、PTFE湿潤粉末を得た。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し、130℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。20時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のSSGは、2.159であった。得られたPTFE粉末のピーク温度は344℃、ガラス転移点は22℃であった。平均粒子径は、540μmであった。
【0360】
製造例3(PTFE-2水性分散液)
攪拌翼と温度調節用ジャケットを備えた内容量6リットルの反応容器に、3600gの脱イオン水、180gのパラフィンワックス、5.4gの含フッ素界面活性剤として白色固体A、及び0.025gのシュウ酸を仕込み、70℃に加温しながら反応容器内を窒素ガスで置換して酸素を除いた。攪拌しながら槽内温度を70℃に保ったのち、TFEガスを導入し、2.7MPaGの圧力とした。
内容物を攪拌しながら、3.5mgの過マンガン酸カリウムを溶解した脱イオン水を一定速度で連続的に添加し、反応容器内の圧力が2.7MPaGに一定になるよう、TFEを連続的に供給した。TFE消費量が184gの時点で、5.3gの白色固体Aを添加し、TFE消費量が900gの時点で上記3.5mgの過マンガン酸カリウムを溶解した脱イオン水全量を添加し終えた。TFE消費量が1540gの時点で、攪拌及びTFE供給を停止して、反応容器内のTFEをパージし、重合反応を終了した。水性分散液を取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は29.7質量%であり、平均一次粒子径は296nmであった。
【0361】
得られたPTFE水性分散液を固形分濃度13質量%まで希釈し、容器内で攪拌しながらPTFEを凝固させた後、水と濾別し、乾燥させてPTFE粉末を得た。
得られたPTFE粉末のSSGは、2.152であった。得られたPTFE粉末のピーク温度は345℃、ガラス転移点は22℃であった。
【0362】
製造例4(PVDF水性分散液)
特開2014-141673号公報の実施例1を参考にしてPVDF水性分散液を得た。即ち、3.0Lステンレス製オートクレーブに純水1700g、界面活性剤として、H-(CFCF-CH-O-CO-CHCH(-SONa)-CO-O-CH-(CFCF-H(表面張力22mN/m)0.85g、パラフィンワックス17gを入れ窒素置換し、フッ化ビニリデン(VdF)150gを加え、槽内を115℃まで昇温した。これに撹拌下、アセトン0.51g、ジ-t-ブチルパーオキシド5.6gを加え 反応を開始した。槽内が4.0MPaGに保たれるようフッ化ビニリデンを9時間かけて427g追加、途中H-(CFCF-CH-O-CO-CHCH(-SONa)-CO-O-CH-(CFCF-Hを1.45g追加し、安定なPVDF水性分散液2112.45g(固形分濃度20.6質量 %)を得た。
得られたPVDFの融点は160.8℃、平均一次粒子径は171nmであった。
【0363】
製造例5(PVDF粉末)
製造例4で得られたPVDF水性分散液を凝析、乾燥、粉砕してPVDF粉末を得た。
得られたPVDFのMFRは、230℃、98N(10kg)の荷重の条件で、1.05g/10分であった。平均粒子径は1.1μmであった。
【0364】
製造例6(VdF/TFE共重合体(フルオロポリマーA)粉末)
国際公開第2013/176093号の調整例8に従って、フルオロポリマーの白色粉末を得た。
得られたフルオロポリマーの組成は、VdF/TFE=82.9/17.1(モル%)であり、融点は131℃であった。得られたフルオロポリマーのMFRは、297℃、212N(21.6kg)の荷重の条件で1g/10分、重量平均分子量は1210000であった。平均粒子径は400μmであった。
【0365】
製造例7(Et/TFE/HFP共重合体(EFEP)粉末)
特開2006-306105号公報の合成例7に従ってフルオロポリマー粉末を得た。即ち、オートクレーブに脱イオン水380Lを投入し、窒素置換を行った後、1-フルオロ-1,1-ジクロロエタン75kg、ヘキサフルオロプロピレン155kg、パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-1-ペンテン)0.5kgを仕込み、系内を35℃、攪拌速度200rpmに保った。その後、テトラフルオロエチレンを0.7MPaGまで圧入し 、更に引き続いてエチレンを1.0MPaGまで圧入し、その後にジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート2.4kgを投入して重合を開始した。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、テトラフルオロエチレン(TFE)/エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)=40.5/44.5/15.0モル%の混合ガスを連続して供給し、系内圧力を1.0MPaGに保った。そして、パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-1-ペンテン)(HF-Pa)についても 合計量1.5kgを連続して仕込み、20時間、攪拌を継続した。そして、脱圧して大気圧に戻した後、反応生成物を水洗、乾燥して200kgの粉末を得た。
得られたフルオロポリマーの組成は、TFE/Et/HFP/HF-Pa=40.8/44.8/13.9/0.5(モル%)であった。得られたフルオロポリマーの融点は、162.5℃、MFRは230℃、49N(5kg)荷重の条件下で、2.6g/10分であった。
【0366】
製造例8(VDF/TFPエラストマー(エラストマーA))
6Lのステンレス製オートクレーブに純水4000mlを入れ窒素置換し、真空下で2-メチルブタン0.09mlを入れ、その後ビニリデンフルオライド(VdF)で微加圧とし、600rpmで攪拌しながら80℃に温調して、VdFを1.62MPaGまで圧入し、さらにVdFと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンのモル比が76.5/23.5の混合液モノマーを2.001MPaGまで圧入した。過硫酸アンモニウム0.952gを純水5mlに溶解したものを窒素で圧入して重合スタートした。圧力が2.0MPaGを維持するように連続モノマーを供給した。重合開始後、3.6時間経過し、連続モノマーを1.0kg仕込んだところで撹拌を止め、オートクレーブ内のガスを放出し、冷却して5.0kgの分散液を回収した。分散液の固形分含有量は20.27wt%であった。
得られたエラストマーはVdFと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンをモル比で77.2/22.8の割合で含んでいた。得られたエラストマーのムーニー粘度(ML1+10(140℃))は135、重量平均分子量は1600000、TgはDSCにより-12℃、含有極性基の割合は0.03であった。また、融解熱はセカンドランでは認められなかった。
【0367】
製造例9(VDF/HFPエラストマー(エラストマーB))
3Lのステンレス製オートクレーブに純水1650mlを入れ窒素置換し、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)で微加圧とし、380rpmで攪拌しながら80℃に温調して、HFPを0.23MPaGまで圧入し、さらにビニリデンフルオライド(VdF)とHFPのモル比が78.2/21.8の混合液モノマーを1.472MPaGまで圧入した。2-メチルブタン0.097mlを窒素で圧入し、過硫酸アンモニウム36.4gを純水80mlに溶解したものを窒素で圧入して重合スタートした。圧力が1.44MPaGまで降下したところで連続モノマーにて1.50MPaGまで昇圧し維持した。重合開始後、約9.3時間経過し、連続モノマーを607g仕込んだところで撹拌を止め、オートクレーブ内のガスを放出し、冷却して2299gの分散液を回収した。分散液の固形分含有量は26.9wt%であった。
得られたエラストマーはVdFとHFPをモル比で77.9/22.1の割合で含んでいた。得られたエラストマーのムーニー粘度(ML1+10(140℃))は77、重量平均分子量は850000、TgはDSCにより-18℃、含有極性基の割合は0.05であった。また、融解熱はセカンドランでは認められなかった。
【0368】
作製例1
692gの製造例1で得られたPTFE-1水性分散液と850gの製造例4で得られたPVDF水性分散液を容器に入れ、高速撹拌しながらPTFE/PVDF混合物を共凝析した後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し、130℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。20時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE/PVDF混合粉末を得た。得られたPTFE/PVDF混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/PVDF=50/50であった。得られた粉末を顕微鏡観察した画像を図1に示す。
得られたPTFE/PVDF混合粉末をバインダー1とした。
【0369】
作製例2
298gの製造例2で得られたPTFE-1粉末、255gの製造例4で得られたPVDF水性分散液と1000gの脱イオン水を容器に入れ、撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/PVDF混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/PVDF=85/15であった。
得られたPTFE/PVDF混合粉末をバインダー2とした。
【0370】
作製例3
1176gの製造例1で得られたPTFE-1水性分散液、53gの製造例5で得られたPVDF粉末と1113gの脱イオン水を容器に入れ、高速撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/PVDF混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/PVDF=85/15であった。
得られたPTFE/PVDF混合粉末をバインダー3とした。
【0371】
作製例4
1176gの製造例1で得られたPTFE-1水性分散液、53gの製造例6で得られたVdF/TFE共重合体(フルオロポリマーA)粉末と1113gの脱イオン水を容器に入れ、高速撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/フルオロポリマーA混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/フルオロポリマーA=85/15であった。
得られたPTFE/フルオロポリマーA混合粉末をバインダー4とした。
【0372】
作製例5
1176gの製造例1で得られたPTFE-1水性分散液、53gの製造例7で得られたEt/TFE/HFP共重合体(EFEP)粉末と1113gの脱イオン水を容器に入れ、高速撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/EFEP混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/EFEP=85/15であった。
得られたPTFE/EFEP混合粉末をバインダー5とした。
【0373】
作製例6
1002gの製造例3で得られたPTFE-2水性分散液、255gの製造例4で得られたPVDF水性分散液と1032gの脱イオン水を容器に入れ、高速撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/PVDF混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/PVDF=85/15であった。
得られたPTFE/PVDF混合粉末をバインダー6とした。
【0374】
作製例7
1245gの製造例1で得られたPTFE-1水性分散液、173gの製造例8のVDF/TFPエラストマー(エラストマーA)水性分散液と1005gの脱イオン水を容器に入れ、高速撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/エラストマーA混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/エラストマーA=90/10であった。
得られたPTFE/エラストマーA混合粉末をバインダー7とした。
【0375】
作製例8
1107gの製造例1で得られたPTFE-1水性分散液、260gの製造例9のVDF/HFPエラストマー(エラストマーB)水性分散液を容器に入れ、高速撹拌しながら作製例1と同様に共凝析、乾燥し、混合粉体を得た。得られたPTFE/エラストマーB混合粉末の混合比率(質量比率)は、PTFE/エラストマーB=80/20であった。
得られたPTFE/エラストマーB混合粉末をバインダー8とした。
【0376】
作製例9
85gの製造例2で得られたPTFE-1粉末と15gの製造例5で得られたPVDF粉末をハイスピードミキサーに入れ、20000rpmで2分間混合を行なった。得られたPTFE/PVDF混合粉末の混合比率(質量比率)はPTFE/PVDF=85/15であった。平均粒子径が2000μmを超えたため、測定できなかった。
得られたPTFE/PVDF混合粉末をバインダー9とした。
作製例1から9により得られたバインダーの結果を表1に示す。
【0377】
【表1】
【0378】
(実施例1~7、比較例1)
上記で得られた各粉末を用いて下記の方法で正極合剤シート、電極及びリチウムイオン二次電池を作製し、評価した。
各バインダー粉末、電極活物質NMC811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)、導電助剤(イメリス社製SuperP Li)を表2及び4に示す組成(質量比)になるように秤量した。フィブリル化を抑制するため、19℃以下で材料の混合処理を行った。秤量した材料を-25℃に冷却した後、ブレンダーに投入し8000rpmにて計1分間撹拌をおこなった。その後、30℃に加温した加圧ニーダーに投入し、50rpmにて5分混練を行い、電極合剤粉体を得た。並行に配置された金属ロールの間に得られた電極合材粉体を圧延し、電極合剤粉体をバルク状に加工した。同様にバルク状の電極合剤を複数回通して圧延することで、自立性のある電極合材シートを作製した。金属ロールの温度は100℃に設定した。電極合材シートの厚みは約100μmに調整した。この電極合剤シートから試験片を切り出し引張強度ばらつき評価をおこなった。
また、この電極合剤シートを幅40mmに切り出し、表面を粗化処理した電極合剤シート大のアルミ箔の上に置き、100℃に熱したロールプレス機(ロール間ギャップ100μm、プレス圧15KN)にて圧延を行い、電極を作製した。
【0379】
(実施例8、10、比較例2)
各バインダー粉末、正極活物質NMC811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)、硫化物系固体電解質LPS(0.75LiS・0.25P)、導電助剤(イメリス社製SuperP Li)を加え、表3及び4に示す組成(質量比)に調整した。その他の加工手順は実施例1と同様手順にて行った。
【0380】
(実施例9、11、比較例3)
各バインダー粉末、負極活物質グラファイト、硫化物系固体電解質LPS(0.75LiS・0.25P)、導電助剤(イメリス社製SuperP Li)を加え、表3及び4に示す組成(質量比)に調整した。その他の加工手順は実施例1と同様手順にて行った。
【0381】
[引張強度ばらつき評価]
引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS-Xシリーズ AGS-100NX)を使用して、100mm/分の条件下、4mm幅の短冊状の電極合材シート試験片にて測定した。チャック間距離は30mmとした。破断するまで変位を与え、測定した結果の最大応力を各試験片の強度とした。実験毎に平均値を求め、比較例1又は比較例2、比較例3の平均最大応力を100とした。また、標準偏差を求め、変動係数CV(標準偏差÷平均×100)を算出し、ばらつきの評価値とした。引張強度のばらつきを評価した。結果を表2~4に示す。
【0382】
[電極合剤と集電体との剥離強度]
電極を切り取ることにより、1.0cm×5.0cmの試験片を作製した。試験片の電極材料層側を両面テープで可動式治具に固定した後、集電体の表面にテープを張り、100mm/分の速度でテープを90度に引っ張った時の応力(N/cm)をオートグラフにて測定した。応力の安定範囲の値を平均し、剥離強度を測定した。試験はn=5で行い、平均値を評価値とした。オートグラフのロードセルには1Nを用いた。
比較例に対して、
◎:さらに良好(126%以上)
○:良好(106~125%)
△:比較例相当(105~95%)
とした、採点を行った。
【0383】
【表2】
【0384】
【表3】
【0385】
【表4】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、(b)低融点熱可塑性樹脂、及び、(c)導電助剤を含むコンポジットバインダー材料。
【請求項2】
前記コンポジットバインダー材料は粒子である、請求項1記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項3】
前記コンポジットバインダー材料は、凝析物である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項4】
前記導電助剤は、約20質量%以下で存在する請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項5】
前記導電助剤は、約0.01質量%以上で存在する請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項6】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約0.01~約50質量%で存在する請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項7】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約5~約20質量%で存在する請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項8】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項9】
前記PTFEは、約25~約99質量%で存在する請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項10】
前記PTFEは、ホモポリマー、又は、パーフルオロコポリマーからなる請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項11】
前記PTFEは、TFE、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーからなる変性PTFEである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項12】
前記PTFEは、標準比重が2.20以下の高分子量PTFEである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項13】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が375℃未満である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項14】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が200℃未満である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項15】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーであり、
前記低融点フルオロポリマーは、PVdF、FEP、EFEP、ETFE、THV、FKM、FFKM、PFA、PVF、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項16】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点非フッ素化ポリマーである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項17】
前記低融点非フッ素化ポリマーは、ポリオレフィン、PE、PP、PA、ナイロン、PS、TPU、PI、PA、PC、PLA、PEEK、PEG/PEO、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項16記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項18】
前記低融点熱可塑性樹脂は、粒子状である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項19】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均粒子径が約700μm以下の粉体である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項20】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均一次粒子径が約500nm以下のエマルジョンである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項21】
前記導電助剤は、導電性カーボンである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項22】
前記導電助剤は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項23】
前記コンポジットバインダー材料は、両面に高純度アルミニウムを有する25mm幅フィルムを用いた接着力試験で測定される高純度アルミニウムとの接着強度が1Nmm超である請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項24】
前記コンポジットバインダー材料は、導電性を有する請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料。
【請求項25】
PTFEエマルジョンを得る工程(a)、
前記PTFEエマルジョンに、低融点熱可塑性樹脂及び導電助剤粒子を混合して、第1の混合物を形成する工程(b)、及び、
前記第1の混合物を凝析させて、コンポジットバインダー材料からなる凝析物を製造する工程(c)を含むコンポジットバインダー材料の製造方法。
【請求項26】
前記凝析物を乾燥させる工程を更に含む請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記凝析物を約375℃未満で乾燥させる工程を更に含む請求項25又は26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記凝析工程を約90℃以下で実施する請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項29】
前記コンポジットバインダー材料は、粒子である請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項30】
前記コンポジットバインダー材料は、凝析物である請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項31】
前記導電助剤は、約20質量%以下で存在する請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項32】
前記導電助剤は、約0.01質量%以上で存在する請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項33】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約0.01~約50質量%で存在する請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項34】
前記低融点熱可塑性樹脂は、約5~約20質量%で存在する請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項35】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーである請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項36】
前記PTFEは、約25~約99質量%で存在する請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項37】
前記PTFEは、ホモポリマー、又は、パーフルオロコポリマーからなる請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項38】
前記PTFEは、TFE、及び、TFEと共重合可能な変性モノマーからなる変性PTFEである請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項39】
前記PTFEは、標準比重が2.20以下の高分子量PTFEである請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項40】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が375℃未満である請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項41】
前記低融点熱可塑性樹脂は、融点が200℃未満である請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項42】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点フルオロポリマーであり、
前記低融点フルオロポリマーは、PVdF、FEP、EFEP、ETFE、THV、FKM、FFKM、PFA、PVF、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項43】
前記低融点熱可塑性樹脂は、低融点非フッ素化ポリマーである請求項25又は26記載の製造方法。
【請求項44】
前記低融点非フッ素化ポリマーは、ポリオレフィン、PE、PP、PA、Nylon、PS、TPU、PI、PA、PC、PLA、PEEK、PEG/PEO、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項43に記載の製造方法。
【請求項45】
前記低融点熱可塑性樹脂は、粒子状である請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項46】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均粒子径が約700μm以下の粉体である請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項47】
前記低融点熱可塑性樹脂は、平均一次粒子径が約500nm以下のエマルジョンである請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項48】
前記導電助剤は、導電性カーボンである請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項49】
前記導電助剤は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、アセチレンブラック、又は、上記のうち2種以上の組み合わせである請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項50】
前記コンポジットバインダー材料は、両面に高純度アルミニウムを有する25mm幅フィルムを用いた接着力試験で測定される高純度アルミニウムとの接着強度が1Nmm超である請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項51】
前記コンポジットバインダー材料は、導電性を有する請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項52】
請求項25又は26のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたコンポジットバインダー材料。
【請求項53】
請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料からなる電極。
【請求項54】
電極を備え、
前記電極は、請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料からなるエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項55】
請求項1又は2記載のコンポジットバインダー材料を含む第2の電極を更に備える請求項54記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項56】
前記電極はカソードである、請求項54記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項57】
電池である請求項54記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項58】
スーパーキャパシタである請求項54記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項59】
フィブリル化していないフィブリル化性を有する樹脂、及び、熱可塑性ポリマーを含む電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項60】
前記熱可塑性ポリマーは、熱可塑性樹脂である請求項59に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項61】
前記熱可塑性樹脂は、融点が100~310℃である請求項59又は60に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項62】
前記熱可塑性樹脂は、フルオロポリマーである請求項59又は60記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項63】
前記熱可塑性樹脂は、メルトフローレートが0.01~500g/10分である請求項59又は60記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項64】
前記熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーである請求項59に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項65】
前記エラストマーは、フルオロエラストマーである請求項64に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項66】
前記フルオロエラストマーは、ビニリデンフルオライド単位、及び、ビニリデンフルオライドと共重合可能な他の単量体単位を含む請求項65に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項67】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃である請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項68】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項69】
前記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含む請求項68に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項70】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃である請求項68記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項71】
水分含有量が1000質量ppm以下である請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項72】
平均一次粒子径が10~500nmである請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項73】
前記フィブリル化性を有する樹脂は粒子状であり、フィブリル化性を有する樹脂粒子の全個数に対する、アスペクト比が30以上のフィブリル化性を有する樹脂粒子の個数の割合が20%以下である請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項74】
平均粒子径が1000μm以下である請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項75】
二次電池用である請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項76】
カーボン系導電助剤を更に含む請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体。
【請求項77】
請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる電極合剤。
【請求項78】
更に、活物質を用いて得られる請求項77に記載の電極合剤。
【請求項79】
正極合剤である請求項77記載の電極合剤。
【請求項80】
請求項59、60、64、65及び66のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー粉体を用いて得られる二次電池用電極。
【請求項81】
請求項80に記載の二次電池用電極を備える二次電池。
【請求項82】
フィブリル化性を有する樹脂、熱可塑性ポリマー、及び、水を含む混合物を作製する工程(1)、及び、
前記混合物から粉体を製造する工程(2)を含む電気化学デバイス用バインダー粉体の製造方法。
【請求項83】
前記工程(2)は、前記混合物から、前記フィブリル化性を有する樹脂、及び、前記熱可塑性ポリマーを含む組成物を凝集させて凝集物を得る工程(2-1)、及び、
前記凝集物を熱処理する工程(2-2)を含む請求項82に記載の製造方法。
【請求項84】
前記工程(1)では、平均一次粒子径が50μm以下の前記熱可塑性ポリマーを含む分散液を、前記フィブリル化性を有する樹脂、及び、水と混合する請求項82又は83に記載の製造方法。
【請求項85】
フィブリル化性を有する樹脂、及び、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を含む電気化学デバイス用バインダー。
【請求項86】
フィブリル化性を有する樹脂、及び、ガラス転移温度が25℃以下のエラストマーを含む電気化学デバイス用バインダー。
【請求項87】
前記電気化学デバイス用バインダーは、粉体である請求項85又は86に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項88】
前記エラストマーは、フルオロエラストマーである請求項86に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項89】
前記フルオロエラストマーは、ビニリデンフルオライド単位、及び、ビニリデンフルオライドと共重合可能な他の単量体単位を含む請求項88に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項90】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ガラス転移温度が10~30℃である請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項91】
前記フィブリル化性を有する樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項92】
前記ポリテトラフルオロエチレンを、50質量%以上で含む請求項91に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項93】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、ピーク温度が333~347℃である請求項91記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項94】
水分含有量が1000質量ppm以下である請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項95】
平均一次粒子径が10~500nmである請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項96】
二次電池用である請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項97】
更に、カーボン系導電助剤を含む請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダー。
【請求項98】
請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダーを用いて得られる電極合剤。
【請求項99】
更に、活物質を含む請求項98に記載の電極合剤。
【請求項100】
正極合剤である請求項99に記載の電極合剤。
【請求項101】
請求項85、86、88及び89のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用バインダーを用いて得られる二次電池用電極。
【請求項102】
請求項101に記載の二次電池用電極を備える二次電池。
【国際調査報告】