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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】二次電池のためのバインダー組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240723BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240723BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
H01G11/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501731
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022069558
(87)【国際公開番号】W WO2023285511
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21186199.2
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リベラーレ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ビーソ, マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ, リッカルド リーノ
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】フィンシー, フィンセント
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078BA18
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA53
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA01
5H050EA24
5H050EA28
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
本発明は、改善された溶解度を有する特定のアモルファス(パー)フッ素化ポリマー粉末を含むバインダー組成物並びに二次電池及び固体電池のコンポーネントを調製するためのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置のためのコンポーネントの調製で使用するためのバインダー組成物[バインダー(B)]であって、
a)(パー)フルオロエラストマー組成物[組成物(E)]の微粉化ペレットであって、組成物(E)は、本明細書で報告された方法により、500μm未満の重量平均粒径(D50)を有する少なくとも1つの(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]及び少なくとも1つの熱可塑性半結晶質フッ化ビニリデンポリマー[ポリマー(F)]を含む、微粉化ペレット;
b)ニトリル含有溶媒、エーテル、エステル、チオール及びチオエーテル、ケトン、第三級アミン並びに環状カーボネートエステルからなる群から選択される少なくとも1つの非水性溶媒(S)
を含むことによって特徴付けられるバインダー組成物[バインダー(B)]。
【請求項2】
前記フルオロエラストマー(A)は、フッ化ビニリデン(VDF)をベースとするコポリマーであり、VDFは、以下のクラス:
(a)C~Cパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン;
(b)水素含有C~Cオレフィン、例えばフッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)C~Cクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード-フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基、例えばCF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
【化1】
(式中、互いに等しいか又は異なるRf3、Rf4、Rf5、Rf6は、フッ素原子及び1つ又は複数の酸素原子を任意選択で含むC~C(パー)フルオロアルキル基、例えば特に-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCF;好ましくはパーフルオロジオキソールの中で独立に選択される)
を有する(パー)フルオロジオキソール;
(g)式:
CFX=CXOCFOR’’
(式中、R’’は、1~3つのカテナリー酸素原子を含む直鎖状又は分岐状C~C(パー)フルオロアルキル;C~C環状(パー)フルオロアルキル;及び直鎖状又は分岐状C~C(パー)フルオロオキシアルキルの中で選択され、及びX=F、Hであり;好ましくは、Xは、Fであり、及びR’’は、-CFCF(MOVE1);-CFCFOCF(MOVE2);又は-CF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(以下ではMOVE);
(h)C~C非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合される、請求項1に記載のバインダー(B)。
【請求項3】
ポリマー(F)は、VDFホモポリマー並びに1つ以上のフッ素化モノマー及び/又は水素化モノマーを有するVDFのコポリマーから選択される、請求項1又は2に記載のバインダー(B)。
【請求項4】
ポリマー(F)は、
(I)VDFに由来する繰り返し単位、及び
(II)少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの水素化モノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位
を含み、より好ましくはそれらからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のバインダー(B)。
【請求項5】
前記組成物中のポリマー(F)の量は、前記(パー)フルオロエラストマー(A)及び前記ポリマー(F)の総重量に対して重量によって2重量%~50重量%、より好ましくは2重量%~20重量%、さらにより好ましくは2重量%~15重量%に含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載のバインダー(B)。
【請求項6】
組成物(E)の微粉化ペレットであって、少なくとも1つの(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]及び少なくとも1つの熱可塑性フッ化ビニリデンポリマー[ポリマー(F)]を含み、
前記組成物(E)中のポリマー(F)は、前記(パー)フルオロエラストマー(A)及び前記ポリマー(F)の総重量に対して少なくとも2重量%及び5重量%未満の量で存在する、微粉化ペレット。
【請求項7】
電気化学装置のための電極の調製における使用のための電極形成組成物[組成物(C)]であって、
a)少なくとも1つの電極活物質(AM);
b)請求項1~6のいずれか一項に記載のバインダー(B);及び
c)任意選択で、少なくとも1つの導電剤
を含むことによって特徴付けられる電極形成組成物[組成物(C)]。
【請求項8】
d)少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質
をさらに含む、請求項7に記載の電極形成組成物(C)。
【請求項9】
二次電池のための電極を製造するためのプロセスであって、
A)請求項7又は8に記載の電極形成組成物(C)を提供するステップ;
B)少なくとも1つの表面を有する金属基板を提供するステップ;
C)ステップA)で提供された前記電極形成組成物(C)を、ステップB)で提供された前記金属基板の前記少なくとも1つの表面上に塗布し、それにより前記少なくとも1つの表面上において前記組成物(C)でコーティングされた金属基板を含むアセンブリを提供するステップ;
D)ステップC)で提供された前記アセンブリを乾燥させるステップ
を含むプロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスによって得ることができる、二次電池のための電極。
【請求項11】
複合固体電解質膜を調製するのに適した組成物(CC)であって、
i)少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質;
ii)請求項1~6のいずれか一項に記載のバインダー(B)
を含む組成物(CC)。
【請求項12】
前記硫化物をベースとする固体電解質は、
- リチウムスズリン硫化物(「LSPS」)材料、例えばLi10SnP12
- リチウムリン硫化物(「LPS」)材料、例えば式(LiS)-(P(式中、x+y=1及び0≦x≦1である)のもの、Li11、LiPS、Li、Li9.612及びLiPSのガラス、結晶質又はガラスセラミック;
- ドープされたLPS、例えばLiCuPS、LiLi1+2xZn1-xPS(式中、0≦x≦1である)、Li3.33Mg0.33及びLi4-3xSc(式中、0≦x≦1である);
- 式LixPySzO(式中、0.33≦x≦0.67、0.07≦y≦0.2、0.4≦z≦0.55、0≦w≦0.15である)のリチウムリン硫化物酸素(「LPSO」)材料;
- Xを含むリチウムリン硫化物材料(「LXPS」)(ここで、Xは、Si、Ge、Sn、As、Alである)、例えばLi10GeP12及びLi10SiP12
- Xを含むリチウムリン硫化物酸素(「LXPSO」)(ここで、Xは、Si、Ge、Sn、As、Alである);
- 硫化リチウムケイ素(「LSS」)材料;
- 硫化リチウムホウ素材料、例えばLiBS及びLiS-B-LiI;
- 硫化リチウムスズ材料及びヒ化リチウム材料、例えばLi0.8Sn0.8、LiSnS、Li3.833Sn0.833As0.166、LiAsS-LiSnS、Ge置換LiAsS;及び
- 一般式Li7-xPS6-xの硫銀ゲルマニウム鉱タイプの硫化物材料
からなる群から選択され、
- Yは、Cl、Br及びI又はこれらの組合せの群において選択される少なくとも1つのハロゲン元素を表し;及びxは、0.8~2.0の正の数を表す、請求項11に記載の組成物(CC)。
【請求項13】
固体電池のための複合固体電解質膜を製造するためのプロセスであって、
I)請求項11又は12に記載の組成物(CC)を加工して、固体複合電解質の湿式膜を形成するステップと;
II)ステップ(I)で提供された前記湿式膜を乾燥させるステップと
を含むプロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスによって得ることができる、固体電池のための複合固体電解質膜。
【請求項15】
請求項14に記載の複合固体電解質膜及び/又は請求項10に記載の少なくとも1つの電極を含む固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月16日に出願された欧州特許出願公開第21186199.2号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容があらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、溶媒中における改善された溶解度を有する特定のアモルファス(パー)フッ素化ポリマー粉末を含むバインダー組成物並びに二次電池及び固体電池のコンポーネントを調製するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を有するリチウムイオン電池は、いくつかの固有の制限にも関わらず、現在、再充電可能なエネルギー蓄積装置の市場で支配的である。制限の中でも、高出力用途のための難しい安全性の懸念及び固有の低エネルギー密度がある。通常のLi-イオン電池液体電解質は、実際に有機カーボネートをベースとし、これは、漏れを起こし、揮発性のガス種を生じさせ、可燃性である。
【0004】
固体電池(SSB)は、より高いエネルギー密度、より長いサイクル寿命、改善された安全性及びより低い費用を実現するため、次世代のエネルギー蓄積装置となる見込みがある。SSBにおいて、高度に可燃性の液体電解質は、固体電解質によって置き換えられ、発火及び/又は爆発の実質的に全ての危険性が取り除かれる。通常の電池を超えるこれらの固有の理論的な利点にも関わらず、操作が容易であること及び拡張性のある加工もその商品化の成功のために必要とされる。
【0005】
固体電解質の中でも、ポリマーバインダーに分散された固体イオン(Li)導電体無機材料から構成される複合電解質は、高いイオン伝導率と良好な機械的特性とを合わせる可能性を提供する。
【0006】
従来技術の複合電解質は、通常、ウェットキャスティング法によって生成される。この方法では、無機材料粉末が溶媒中のバインダーの溶液に分散され、スラリーが形成され、これを支持体上にキャストし、それに続いて乾燥させ、使用された溶媒を除去する。
【0007】
固体電池中のポリマーバインダーの使用は、活性材料、導電剤及び無機固体電解質(例えば、硫化物)がバインダー自体のために連続するマトリックス中で一緒に保持されているカソード側でも興味深い。
【0008】
加工経路の中でも、電極及び固体電解質の両方のために、テープキャスティングは、通常の電池コンポーネント加工との類似性及びその固有の多用途性(厚さ及び他の加工パラメーターを細かく調整することを可能とする)の両方によって最も広範に採用されているものである。この方法では、スラリーは、無機導電体粒子をポリマー溶液に分散させ、得られた分散物を望ましい層上にキャストすることによって調製される。
【0009】
複合電解質及び電極における特定の無機材料の使用は、溶媒の選択及びバインダーの選択において制限をもたらす。高度に導電性の硫化物は、特に、利用可能な適合性の溶媒(高度に導電性の硫化物と反応せず、それらのイオン伝導率を低減させず、電池作動を妨げ得る副生成物を生じさせるべきではない)の範囲を制限する。バインダーは、硫化物とも適合性であり、利用可能な溶媒に可溶性又は分散性でなければならない。
【0010】
いくつかの報告は、硫化物複合物のためのフッ素化バインダーの使用を示唆している。しかし、商業的に採用された結晶性フッ素化バインダーの使用は、無機物と適合性である少ない溶媒に対する溶解度の問題によって制限される。
【0011】
一例として、米国特許出願公開第2019/296393号明細書は、硫化物固体電解質、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチルセルロース(EC)及び溶媒として酪酸ブチルを含有する、SSBのための固体電解質層の調製について開示している。
【0012】
それに対して、アモルファスフッ素化ポリマー(例えば、Tecnoflon(登録商標)FKM)は、いくつかの適合性の溶媒に可溶化され得る。しかし、バインダーとしてのこれらのポリマーの使用は、固有の欠点を有し、これは、固体電池コンポーネントにおけるそれらの現実の適用を制限し得、新規で代替の生成物の開発及び使用に道を開く。特に、アモルファスフッ素化ポリマーは、スラブの形態で主に生成され、これは、溶解プロセスが起こる前に小片に切断しなければならない。これは、時間の損失及びさらなる加工の運用コスト並びにまた選択された適合性の溶媒中でポリマー微細分散物を得ることにおける問題をもたらす。
【0013】
粉末形態のいくつかのアモルファスフッ素化ポリマーが現在市場に存在し、例えばTecnoflon(登録商標)NM粉末である。それにも関わらず、前記粉末中に存在する通常の添加物、例えば有機固着防止剤は、電池が作動する電圧で安定ではなく、副生成物及び悪影響を与える電池操作を生じさせる。
【0014】
文献米国特許出願公開第2010/174011号明細書、特にセクション[0042]~[0047]において、フルオロエラストマーの断片又はペレットを小型化するための技術として低温細砕について記述されている。この場合、塊状化を防止するための互着防止剤の添加は、易流動性化合物を得るための必須の条件としても教示されている。しかし、前記互着防止剤は、電池が作動する電圧範囲で安定ではない。
【0015】
米国特許第9518178号明細書は、易流動性挙動を有し、室温で長期貯蔵後でもこれらの有利な流れ特性を維持し、且つそれに由来する硬化した化合物における優れた機械的特性を実現する微粉化ペレットを有利に提供するための、低温粉砕中の(パー)フルオロエラストマー組成物中の熱可塑性フッ化ビニリデンポリマーの添加について開示している。
【0016】
したがって、効率的な製作プロセスによって電池コンポーネント、例えば電極及び固体電解質層の製造で使用するのに適した無機材料と適合性である非導電性バインダーが大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
特定のフッ素化ポリマーの存在下でスラブの形態のアモルファス(パー)フッ素化ポリマーを低温細砕することによって得られるアモルファス(パー)フッ素化ポリマー粉末は、これらがスラブ形態の同じポリマーより無機材料と適合性である溶媒により容易に溶解するため、電池コンポーネントの調製、特に固体電池のためのコンポーネントに特に適していることを本出願人はここで驚くべきことに見出した。
【0018】
したがって、本発明の目的は、電気化学装置のためのコンポーネントの調製で使用するためのバインダー組成物[バインダー(B)]であって、
a)(パー)フルオロエラストマー組成物[組成物(E)]の微粉化ペレットであって、組成物(E)は、500μm未満の重量平均粒径(D50)を有する少なくとも1つの(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]及び少なくとも1つの熱可塑性半結晶質フッ化ビニリデンポリマー[ポリマー(F)]を含む、微粉化ペレット;
b)ニトリル含有溶媒、エーテル、エステル、チオール及びチオエーテル、ケトン、第三級アミン並びに環状カーボネートエステルからなる群から選択される少なくとも1つの非水性溶媒(S)
を含むことによって特徴付けられるバインダー組成物[バインダー(B)]である。
【0019】
バインダー(B)は、二次電池のための電極及び固体電解質の調製における使用に特に適してる。
【0020】
したがって、本発明の別の目的は、電気化学装置のための電極の調製における使用のための電極形成組成物[組成物(C)]であって、
a)少なくとも1つの電極活物質(AM);
b)上で定義したようなバインダー(B);及び
c)任意選択で、少なくとも1つの導電剤
を含むことによって特徴付けられる電極形成組成物[組成物(C)]である。
【0021】
本発明の他の目的は、したがって、二次電池のための電極を製造するためのプロセスであって、
A)上で定義したような電極形成組成物(C)を提供するステップ;
B)少なくとも1つの表面を有する金属基板を提供するステップ;
C)ステップA)で提供された電極形成組成物(C)を、ステップB)で提供された金属基板の少なくとも1つの表面上に塗布し、それにより少なくとも1つの表面上において前記組成物(C)でコーティングされた金属基板を含むアセンブリを提供するステップ;
D)ステップC)で提供されたアセンブリを乾燥させるステップ
を含むプロセスである。
【0022】
別の目的において、本発明は、上で定義したようなプロセスによって得ることができる、二次電池のための電極を提供する。
【0023】
別の目的において、本発明は、複合固体電解質膜を調製するのに適した組成物(CC)を提供し、前記組成物は、
i)少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質;
ii)上で定義したようなバインダー(B)
を含む。
【0024】
本発明の他の目的は、したがって、固体電池のための複合固体電解質膜を製造するためのプロセスであって、
I)上で定義したような組成物(CC)を加工して、固体複合電解質の湿式膜を形成するステップと;
II)ステップ(I)で提供された湿式膜を乾燥させるステップと
を含むプロセスである。
【0025】
別の目的において、本発明は、前記プロセスによって得られる複合固体電解質膜を提供する。
【0026】
またさらなる目的において、本発明は、複合固体電解質膜及び/又は本発明の少なくとも1つの電極を含む固体電池を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に関連して、用語「重量パーセント」(重量%)は、コンポーネントの重量及び混合物の総重量間の比として計算した混合物中の特定のコンポーネントの含量を示す。液体組成物の総固体含量(TSC)に言及するとき、重量パーセント(重量%)は、液体中の全ての不揮発性成分の重量間の比を示す。
【0028】
用語「電気化学セル」とは、正極、負極及び電解質を含む電気化学セルをこれにより示すことを意図し、単層又は多層セパレータは、前記電極の1つの少なくとも1つの表面に接着している。
【0029】
電気化学セルの非限定的な例は、特に、電池、好ましくは二次電池及び電気二重層コンデンサを含む。
【0030】
本発明の目的のために、「二次電池」とは、充電式電池を示すことを意図する。二次電池の非限定的な例は、特に、アルカリ又はアルカリ土類二次電池を含む。
【0031】
バインダー(B)中で使用される組成物(E)は、(パー)フルオロエラストマー組成物の微粉化ペレットを含む。前記組成物(E)は、少なくとも(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]及び少なくとも1つの熱可塑性半結晶質フッ化ビニリデンポリマー[ポリマー(F)]を含む。
【0032】
本発明の目的のために、用語「(パー)フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るためのベース構成物としての役割を果たすフルオロポリマー樹脂を示すことを意図し、前記フルオロポリマー樹脂は、10重量%超、好ましくは30重量%超の、少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以下では(パー)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位及び任意選択でフッ素原子を含有しない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以下では水素化モノマー)に由来する繰り返し単位を含む。
【0033】
真のエラストマーは、ASTM、Special Technical Bulletin、No.184スタンダードによって室温でそれらの固有の長さの2倍に引き伸ばすことができ、それらを、5分間張力をかけて保持した後に解放すると、それらの最初の長さの10%以内に同じ時間で戻る材料として定義される。
【0034】
適切な(パー)フッ素化モノマーの非限定的な例は、特に、
- C~Cフルオロ及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレン;
- C~C水素化モノフルオロオレフィン、例えばフッ化ビニル;1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)及びトリフルオロエチレン(TrFE);
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、1つ以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロアルキル又はC~C(パー)フルオロオキシアルキルである)に従う(パー)フルオロアルキルエチレン;
- クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE);
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ又はパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ又はパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-Cである)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOX(式中、Xは、1つ以上のエーテル基を有するC~C12オキシアルキル又はC~C12(パー)フルオロオキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ又はパーフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C又は1つ以上のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル、例えば-C-O-CFである)に従うフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル又はC~C12オキシアルキル又はC~C12(パー)フルオロオキシアルキルであり、前記Y基は、その酸、酸ハロゲン化物又は塩の形態のカルボン酸又はスルホン酸基を含む)に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
【化1】
(式中、互いに等しいか又は異なるRf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、独立に、フッ素原子、1つ又は複数の酸素原子を任意選択で含むC~Cフルオロ若しくはパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)
のフルオロジオキソール
である。
【0035】
水素化モノマーの例は、特に、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ジエンモノマー、スチレンモノマーを含めた水素化アルファ-オレフィンであり、アルファ-オレフィンが典型的には使用される。
【0036】
(パー)フルオロエラストマー(A)は、アモルファス生成物又は非常に低い程度の結晶化度(ASTM D3418によって測定したとき、4J/g未満、好ましくは3J/g未満の融解熱)及び室温未満のガラス転移温度(T)を有する生成物である。殆どの場合、フルオロエラストマー(A)は、有利には、10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃未満のTを有する。
【0037】
(パー)フルオロエラストマー(A)は、好ましくは、フルオロエラストマーである。
【0038】
好ましい実施形態では、フルオロエラストマー(A)は、VDFをベースとするコポリマーであり、VDFは、以下のクラス:
(a)C~Cパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン;
(b)水素含有C~Cオレフィン、例えばフッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(c)C~Cクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード-フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基、例えばCF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((パー)フルオロ)-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(パー)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f)式:
【化2】
(式中、互いに等しいか又は異なるRf3、Rf4、Rf5、Rf6は、フッ素原子及び1つ又は複数の酸素原子を任意選択で含むC~C(パー)フルオロアルキル基、例えば特に-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCF;好ましくはパーフルオロジオキソールの中で独立に選択される)
を有する(パー)フルオロジオキソール;
(g)式:
CFX=CXOCFOR’’
(式中、R’’は、1~3つのカテナリー酸素原子を含む直鎖状又は分岐状C~C(パー)フルオロアルキル;C~C環状(パー)フルオロアルキル;及び直鎖状又は分岐状C~C(パー)フルオロオキシアルキルの中で選択され、及びX=F、Hであり;好ましくは、Xは、Fであり、及びR’’は、-CFCF(MOVE1);-CFCFOCF(MOVE2);又は-CF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(以下ではMOVE);
(h)C~C非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合される。
【0039】
任意選択で、本発明の(パー)フルオロエラストマー(A)は、一般式:
【化3】
を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位も含み、式中、互いに等しいか又は異なるR、R、R、R、R及びRは、H又はC~Cアルキルであり;Zは、酸素原子を任意選択で含有し、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されている、直鎖状若しくは分岐状C~C18アルキレン若しくはシクロアルキレン基又は例えば欧州特許出願公開第661304A号明細書(AUSIMONT SPA)7/5/1995に記載されているような(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。
【0040】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、(OF-2)及び(OF-3)に従うもの:
(OF-1)
【化4】
(式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、互いに等しいか又は異なるR1、R2、R3、R4は、H、F又はC1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である);
(OF-2)
【化5】
(式中、互いに及び出現する毎に等しいか又は異なるAのそれぞれは、F、Cl及びHから独立に選択され;互いに及び出現する毎に等しいか又は異なるBのそれぞれは、F、Cl、H及びORから独立に選択され、Rは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化し得る分岐鎖若しくは直鎖アルキル基であり;Eは、エーテル連結と共に挿入し得る、任意選択でフッ素化されている2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eは、-(CF-基であり、mは、3~5の整数である);((OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、FC=CF-O-(CF-O-CF=CFである)、
(OF-3)
【化6】
(式中、E、A及びBは、上で定義したのと同じ意味を有し;互いに等しいか又は異なるR5、R6、R7は、H、F又はC1~5アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基である)
からなる群から選択される。
【0041】
本発明の目的に適したフルオロエラストマー(A)の特定の組成物の中でも、以下の組成物(モル%)に言及することができる:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%;
(iv)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5~40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%、ビス-オレフィン(OF)0~5%。
【0042】
(パー)フルオロエラストマー(A)は、任意の公知の方法、例えば乳化重合又はマイクロ乳化重合、懸濁重合又はマイクロ懸濁重合、バルク重合及び溶液重合によって調製することができる。
【0043】
ポリマー(F)は、半結晶質であり、すなわち、これは、少なくとも部分的に結晶構造を有する。半結晶質熱可塑性VDFポリマーは、一般に、ASTMスタンダードD3418によって測定して少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも25J/gの融解熱を有する。
【0044】
ポリマー(F)は、平均粒径500μm未満が半結晶質であるその合わせた性状により、組成物(E)の微粉化ペレットの調製において有利に使用することができる。
【0045】
平均粒径の計算は、当業者に公知の方法により、例えばISO13320によって行うことができる。
【0046】
本発明で使用される半結晶質熱可塑性VDFポリマーは、VDFホモポリマー並びに1つ以上のフッ素化モノマー及び/又は水素化モノマーを有するVDFのコポリマーから有利に選択される。
【0047】
用語「フッ素化モノマー」は、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを示すことを意図する。
【0048】
用語「水素化モノマー」は、少なくとも1つの水素原子を含み、且つフッ素原子を非含有であるエチレン性不飽和モノマーを示すことを意図する。
【0049】
好ましくは、前記ポリマー(F)は、VDFに由来する繰り返し単位及び少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの水素化モノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位及び/又はVDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0050】
好ましい一実施形態によれば、前記ポリマー(F)は、
(I)VDFに由来する繰り返し単位、及び
(II)少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位
を含み、より好ましくはそれらからなる。
【0051】
有利には、前記モノマー(MA)は、以下の化学式:
【化7】
に従い、式中、
- R’、R’及びR’は、水素原子であり、
- R’OHは、水素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である。
【0052】
前記モノマー(MA)の非限定的例は、特に、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート及びこれらの混合物である。
【0053】
ポリマー(F)が、
(I)VDFに由来する繰り返し単位、及び
(II)少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位
からなるとき、組成物(E)の微粉化ペレットは、殆どない凝集物を伴って特に微細であることを本出願人は驚くべきことに見出した。
【0054】
この好ましい実施形態によるポリマー(F)を含むバインダー(B)は、粉末の低レベルの充填及び/又は圧縮性を示し、これは、粉末の貯蔵及び輸送のいくつかの条件において大きい利点を実現し得る。実際に、例えば、粉末を含有するドラムの底上で達する高温及び高圧は、材料の凝集をもたらし得、それによりしたがって粉末のその性質及び得られた利点を喪失する。
【0055】
バインダー粉末の低レベルの充填及び/又は圧縮性は、材料の貯蔵で達し得る圧力をシミュレートすることにより、錠剤を製造するのに適した装置で材料を圧縮することによって適切に示すことができる。
【0056】
(I)VDFに由来する繰り返し単位、及び
(II)少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位
からなるポリマー(F)を含むバインダー(B)は、前記条件において押し固められないが、装置におけるピストン圧力が除去されると、易流動性粉末として残存する。
【0057】
バインダー粉末の低レベルの充填及び/又は圧縮性を示すために使用することができるさらなる試験は、開口部、例えば漏斗中への材料の通過が関与する。この好ましい実施形態によるポリマー(F)を含むバインダー(B)は、有利に滑らかに流れ、漏斗の円錐部を完全に通過する。前記コポリマー中のVDFの量は、繰り返し単位の総量をベースとして好ましくは85モル%超、より好ましくは90モル%超である。
【0058】
エチレンタイプの少なくとも1つの不飽和を含有するフッ素化モノマーは、好ましくは、(パー)フルオロエラストマー(A)と組み合わせた、上で記載したようなクラス(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)からなる群から選択される。
【0059】
組成物中のポリマー(F)の量は、(パー)フルオロエラストマー(A)及びポリマー(F)の総重量に対して2重量%~50重量%、より好ましくは2重量%~20重量%、さらにより好ましくは2重量%~15重量%に含まれる。
【0060】
本発明のバインダー(B)の調製で使用される組成物(E)のいくつかは、新規であり、本発明のさらなる態様を表す。
【0061】
別の目的において、したがって、本発明は、少なくとも1つの(パー)フルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]及び少なくとも1つの熱可塑性半結晶質フッ化ビニリデンポリマー[ポリマー(F)]を含む組成物(E)の微粉化ペレットを提供し、組成物(E)中のポリマー(F)は、(パー)フルオロエラストマー(A)及びポリマー(F)の総重量に対して少なくとも2重量%及び5重量%未満の量で存在する。
【0062】
バインダー(B)が電極の調製で使用されるとき、少なくとも2重量%及び5重量%未満の量のポリマー(F)を含む組成物(E)は、加工の観点から特に適していることを本出願人は驚くべきことに見出した。実際に、粉末の流れ特性及び速い溶解のため、電池における優れた特性を維持する一方、電極形成組成物を調製することが可能である。
【0063】
組成物(E)は、固体材料をより小さい小片に分解するように設計された任意の粉砕装置において有利に実行することができる粉砕プロセスによって調製することができる。本発明のプロセスにおいて適した粉砕装置の中でも、ボールミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ロッドミル及び振動ミルに言及することができる。
【0064】
一般に、シャフト及び回転ブレードを備えた粉砕装置が好ましい。
【0065】
粉砕は、(パー)フルオロエラストマー(A)のガラス転移温度未満の温度で行われる。これらの条件は(パー)フルオロエラストマー(A)が脆性挙動を有することを有利に確実にし、したがって、塊状化又は固着を伴わずに小型化を有利に受けるために必要とされる。
【0066】
一般に、粉砕は(パー)フルオロエラストマー(A)のガラス転移温度より少なくとも5℃低い、好ましくは少なくとも10℃低い、より好ましくは少なくとも20℃低い温度で行われる。
【0067】
粉砕温度についての下方境界は特に重大でなく、冷却装置の利用可能性及び経済性を考慮に入れて当業者が選択する。-20~-50℃に含まれる粉砕温度が一般に設定される。
【0068】
本発明の目的のために、用語「微粉化ペレット」は、幾何学的な観点から、三次元を特徴とする明確な三次元の容量及び形状を有する材料の塊を示すことを意図し、一般に前記次元のいずれも10倍超の残りの2つの他の次元を超えない。
【0069】
これらの微粉化ペレットは、室温で易流動性挙動を有利に有し、すなわち、各ペレットは、密接でなく提供され、実質的に固着又は塊状化現象を伴わない。
【0070】
電気化学装置コンポーネントのためのバインダーを調製するために一般に使用される溶媒における組成物(E)の微粉化ペレットの容易で速い溶解を本出願人は驚くべきことに観察したが、これは、スラブの形態の(パー)フルオロエラストマー(A)の溶解より非常に速く、同時に一般に使用される固着防止剤、例えばステアリン酸カルシウムを含む(パー)フルオロエラストマー粉末組成物の溶解と匹敵する。
【0071】
本発明のバインダー組成物(B)は、電気化学装置のためのバインダーを調製するために一般に使用される、上で定義したような組成物(E)及び少なくとも1つの非水性溶媒(S)を含む。溶媒(S)は、実質的に水を非含有であり、水含量は、好ましくは、100ppm以下である。
【0072】
i)溶媒がフルオロエラストマー(A)を溶解することができ、及びii)バインダー(B)が複合固体電解質膜を調製するために使用されるとき、溶媒が硫化物をベースとする固体電解質と適合性である(これは、溶媒が固体電解質のイオン伝導率に対して悪影響を有さないことを意味する)限り、非水性溶媒(S)に対して課される特定の制限は、存在しない。
【0073】
溶媒(S)は、適切には、ニトリル含有溶媒、エーテル、エステル、チオール及びチオエーテル、ケトン、第三級アミン並びに環状カーボネートエステルからなる群から選択することができる。
【0074】
適切なニトリル含有溶媒は、R-CNの一般式(式中、Rは、アルキル基を表す)を有する。ニトリル含有溶媒の非限定的例は、アセトニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、イソブチルニトリルなどである。
【0075】
適切なエーテルは、一般式R-O-R(式中、R及びRは、独立に、アルキル基を表す)を有する。エーテル溶媒に含まれるのは、3、5又は6員環をベースとする環状エーテルである。環状エーテルは、アルキル基で置換され得、不飽和を有し得、環内にさらなる機能元素、例えば窒素又は酸素原子を有し得る。(環状)エーテル溶媒の非限定的例は、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどである。
【0076】
適切なエステルは、R-COORの一般式(式中、R及びRは、独立に、アルキル基を表す)を有する。エステル溶媒の非限定的例は、酢酸ブチル、酪酸ブチル、安息香酸エチルなどである。
【0077】
適切なケトンは、RCOの一般式(式中、R及びRは、独立に、アルキル基を表す)を有する。ケトン溶媒の非限定的例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-イソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどである。
【0078】
適切には、チオールは、式R=S-Hを有し、チオエーテルは、R-S-Rの一般式(式中、R、R及びRは、独立に、アルキル基である)を有する。チオエーテル溶媒に含まれるのは、3、5又は6員環をベースとする環状チオエーテルである。環状チオエーテルは、アルキル基で置換され得、不飽和を有し得、環内にさらなる機能元素、例えば窒素又は酸素原子を有し得る。チオール溶媒の非限定的例は、エタンチオール、tert-ドデシルメルカプタン、チオフェノール、t-ブチルメルカプタン、オクタンルチオール、ジメチルスルフィド、エチルメチルスルフィド、メチルベンジルスルフィドなどである。
【0079】
適切な第三級アミンは、R101112Nの一般式(式中、R10、R11及びR12は、独立に、アルキル基を表す)を有する。第三級アミンのN原子は、3、5又は6員環の内側に埋めることができる。第三級アミン溶媒の非限定的例は、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、N-エチルピペリジンなどである。
【0080】
本発明において、R~R12のアルキル基は、上記に定義されているような直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、環状アルキル基(又は「シクロアルキル」、若しくは「脂環式」、若しくは「炭素環式」基)、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル、分岐鎖アルキル基、例えばイソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びイソブチル、及びアルキル置換アルキル基、例えばアルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む「アルキル基」をそれぞれ指す。さらに、アルキル基は、官能基、例えば1つ以上の不飽和、エーテル、カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ、チオール、チオキシ、スルホ、ニトリル、ニトロ、ニトロソ、アゾ、アミド、イミド、アミノ、イミノ又はハロゲンを含み得る。
【0081】
バインダー(B)は、さらなる共溶媒、例えば環状、非環状又は芳香族炭化水素を含み得る。適切には、共溶媒は、ヘプタン、トルエン、キシレン及びメシチレンからなる群から選択することができる。
【0082】
バインダー(B)は、10~100℃の温度、好ましくは約20~80℃に含まれる温度で撹拌しながら組成物(E)を溶媒(S)に溶解することによって調製することができる。
【0083】
組成物(C)が、電極又は固体電解質膜を製造するためのプロセスで使用されるとき、組成物(E)の溶解及びそれの適切な蒸発を達成するために、少なくとも1つの溶媒(S)の沸点により、当業者は、組成物(C)中の前記溶媒(S)の適正な量を選択する。
【0084】
一実施形態では、バインダー(B)は、溶媒(S)中の組成物(E)の溶液であり、組成物(E)は、5~30重量%、好ましくは7~20重量%に含まれる量でバインダー(B)中に存在し、上記の重量による百分率は、バインダー(B)の総重量を参照する。
【0085】
当技術分野で公知のように、電極形成組成物は、組成物、典型的には、液体組成物であり、固体コンポーネントは、液体に溶解又は分散されており、それを金属基板上に付着させ、それに続いて乾燥させ、このように電極を形成することができ、金属基板は、電流コレクタの機能を果たす。電極形成組成物は、典型的には、少なくとも電気活性材料及び少なくともバインダーを含む。
【0086】
本発明の電極形成組成物[組成物(C)]は、バインダーとして機能する(パー)フルオロエラストマー組成物[組成物(E)]の微粉化ペレットを含む。
【0087】
電極形成組成物の調製は、次いで、粉末状電極活物質及び任意選択で少なくとも1つの導電剤と共に加えられるバインダー組成物の調製を含む。
【0088】
本発明の電極形成組成物[組成物(C)]は、
a)少なくとも1つの電極活物質(AM);
b)上で定義したようなバインダー(B);及び
c)任意選択で、少なくとも1つの導電剤
を含む。
【0089】
本発明の目的のために、用語「電極活物質(AM)」は、その構造中に組み込むか又は挿入することができ、電気化学装置の充電相及び放電相中、そこからアルカリ又はアルカリ土類金属イオンを実質的に放出する化合物を示すことを意図する。電極活物質(AM)は、好ましくは、リチウムイオンを組み込むか又は挿入し、放出することができる。
【0090】
組成物(C)中の電極活物質(AM)の性質は、前記組成物が正極[電極(AMp)]又は負極[電極(AMn)]の製造で使用されるかどうかによって決まる。
【0091】
リチウムイオン二次電池のための正極(AMp)を形成する場合、電極活物質(AM)は、式LiMQ(式中、Mは、遷移金属から選択される少なくとも1つの金属、例えばCo、Ni、Fe、Mn、Cr及びVであり、Qは、カルコゲン、例えばO又はSである)の複合金属カルコゲニドを含み得る。その好ましい例は、
- LiCoO(LCO)、
- LiNiO
- LiNiCo1-x(0<x<1)、
- スピネル構造のLiMn
- 式LiNiMnCo(NMC)、特に概ね1であるx+y+zを有するもの、例えばLiNi0.333Mn0.333Co0.333(NMC111)、LiNi0.6Mn0.2Co0.2(NMC622)及びLiNi0.8Mn0.1Co0.1(NMC811)の酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、及び
- 一般式LiNiCoAl(x+y+z=1)の酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA)
を含み得る。
【0092】
代替形態として、リチウムイオン二次電池のための正極(AMp)も形成する場合、電極活物質(AM)は、式M(JO1-fのリチウム化又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオンをベースとする電気活性材料を含み得、式中、Mは、M金属の20%未満を表す別のアルカリ金属で部分的に置換し得るリチウムであり、Mは、+1~+5の酸化レベルでの、M金属の35%未満(0を含めた)を表す1つ以上のさらなる金属で部分的に置換し得る、Fe、Mn、Ni又はこれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり、JOは、任意のオキシアニオンであり、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo又はこれらの組合せであり、Eは、フッ化物アニオン、水酸化物アニオン又は塩化物アニオンであり、fは、一般に0.75~1に含まれ、JOオキシアニオンのモル分率である。
【0093】
上記に定義されているようなM(JO1-f電気活性材料は、好ましくは、ホスフェートをベースとし、秩序立った又は修飾されたカンラン石構造を有し得る。
【0094】
より好ましくは、電極活物質(AM)は、正極(AMp)を形成する場合、式Li3-xM’M’’2-y(JOを有し、式中、0≦x≦3、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同じ又は異なる金属であり、これらの少なくとも1つは、遷移金属であり、JOは、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換し得るPOであり、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はこれらの組合せである。さらにより好ましくは、電極活物質(AM)は、式Li(FeMn1-x)POのホスフェートをベースとする電気活性材料であり、式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは、1である(すなわち式LiFePOのリン酸鉄リチウム)。
【0095】
リチウムイオン二次電池のための負極(AMn)を形成する場合、電極活物質(AM)は、好ましくは、炭素をベースとする材料及び/又はケイ素をベースとする材料を含み得る。
【0096】
一部の実施形態では、炭素をベースとする材料は、例えば、黒鉛、例えば天然若しくは人工黒鉛、グラフェン又はカーボンブラックであり得る。
【0097】
これらの材料は、単独で又はその2つ以上の混合物として使用され得る。
【0098】
炭素をベースとする材料は、好ましくは、黒鉛である。
【0099】
ケイ素をベースとする化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、フルオロアルキルシラン、ケイ素、塩化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化ケイ素からなる群から選択される1つ以上であり得る。より特定すると、ケイ素をベースとする化合物は、酸化ケイ素又は炭化ケイ素であり得る。
【0100】
電極活物質(AM)中に存在する場合、少なくとも1つのケイ素をベースとする化合物は、電極活物質(AM)中において、電極活物質(AM)の総重量に対して1~70重量%、好ましくは1~50重量%、より好ましくは1~30重量%、さらにより好ましくは5~20重量%の範囲の量で含まれる。
【0101】
結果として生じた電極の導電率を改善するために、任意選択の導電剤を加え得る。
【0102】
その例は、炭素質の材料、例えばカーボンブラック、黒鉛微粉、多層若しくは単層カーボンナノチューブ、グラフェン、気相成長炭素(ナノ)繊維若しくは繊維又は金属、例えばニッケル若しくはアルミニウム、銀の微粉若しくは繊維を含み得る。任意選択の導電剤は、好ましくは、カーボンブラックである。カーボンブラックは、例えば、ブランド名、Super P(登録商標)又はKetjenblack(登録商標)で入手可能である。
【0103】
存在する場合、導電剤は、上で記載した炭素をベースとする材料と異なる。
【0104】
組成物(C)は、少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質をさらに含む固体電池のための電極の調製における使用にも特に適している。少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質をさらに含む組成物(C)は、以下では組成物(C1)と同定される。
【0105】
したがって、本発明のさらなる実施形態では、固体電池のための電極の調製で使用するのに適した電極形成組成物(C1)を提供し、前記組成物(C1)は、
a)少なくとも1つの電極活物質(AM);
b)上で定義したようなバインダー(B);
c)任意選択で、少なくとも1つの導電剤;及び
d)少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質
を含む。
【0106】
本明細書で使用するように、語句「硫化物をベースとする固体電解質」は、Liイオンを伝導するが、実質的に電子的に絶縁された無機固体状態の材料を指す。
【0107】
本発明において、用語「硫化物をベースとする固体イオン導電性無機粒子」は、それが分子構造中に又は組成物中に硫黄原子を含有する固体電解質材料である限り特に限定されない。
【0108】
硫化物をベースとする固体イオン導電性無機粒子は、好ましくは、Li-イオン導電率を増加させるLi、X(Xは、P、Si、Sn、Ge、Al、As又はBである)及びSを含有する。
【0109】
本発明による硫化物をベースとする固体電解質は、より好ましくは、
- リチウムスズリン硫化物(「LSPS」)材料、例えばLi10SnP12
- リチウムリン硫化物(「LPS」)材料、例えば式(LiS)-(P(式中、x+y=1及び0≦x≦1である)、Li11、LiPS、Li、Li9.612及びLiPSのもののガラス、結晶質又はガラスセラミック;
- ドープされたLPS、例えばLiCuPS、LiLi1+2xZn1-xPS(式中、0≦x≦1である)、Li3.33Mg0.33及びLi4-3xSc(式中、0≦x≦1である);
- 式LixPySzO(式中、0.33≦x≦0.67、0.07≦y≦0.2、0.4≦z≦0.55、0≦w≦0.15である)のリチウムリン硫化物酸素(「LPSO」)材料;
- Xを含むリチウムリン硫化物材料(「LXPS」)(ここで、Xは、Si、Ge、Sn、As、Alである)、例えばLi10GeP12及びLi10SiP12
- Xを含むリチウムリン硫化物酸素(「LXPSO」)(ここで、Xは、Si、Ge、Sn、As、Alである);
- 硫化リチウムケイ素(「LSS」)材料;
- 硫化リチウムホウ素材料、例えばLiBS及びLiS-B-LiI;
- 硫化リチウムスズ材料及びヒ化リチウム材料、例えばLi0.8Sn0.8、LiSnS、Li3.833Sn0.833As0.166、LiAsS-LiSnS、Ge置換LiAsS;及び
- 一般式Li7-xPS6-xの硫銀ゲルマニウム鉱タイプの硫化物材料
からなる群から選択され、
- Yは、Cl、Br及びI又はこれらの組合せの群において選択される少なくとも1つのハロゲン元素を表し;及びxは、0.8~2.0の正の数を表し、例えば、化合物は、硫黄、リチウム又はハロゲンが欠けている(例えば、Li6-xPS-xCl1+x(式中0≦x≦0.5である))か、又はヘテロ原子を添加されている。
【0110】
特に好ましい硫化物固体電解質は、LPS材料、LSPS材料及び硫銀ゲルマニウム鉱タイプの硫化物材料である。
【0111】
本発明の他の目的は、したがって、二次電池のための電極を製造するためのプロセスであって、
A)上で定義したような電極形成組成物(C)を提供するステップ;
B)少なくとも1つの表面を有する金属基板を提供するステップ;
C)ステップA)で提供された電極形成組成物(C)を、ステップB)で提供された金属基板の少なくとも1つの表面上に塗布し、それにより少なくとも1つの表面上において前記組成物(C)でコーティングされた金属基板を含むアセンブリを提供するステップ;
D)ステップC)で提供されたアセンブリを乾燥させるステップ
を含むプロセスである。
【0112】
別の目的において、本発明は、上で定義したようなプロセスによって得ることができる、二次電池のための電極を提供する。
【0113】
電極の製造で使用される組成物(C)が組成物(C1)であるとき、本発明は、上で定義したようなプロセスによって得ることができる、固体電池のための電極を提供する。
【0114】
本発明のバインダー組成物(B)は、少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質と共に加えたとき、複合固体電解質膜を調製するのにも特に適している。
【0115】
別の目的において、本発明は、したがって、複合固体電解質膜を調製するのに適した組成物(CC)を提供し、前記組成物は、
i)少なくとも1つの硫化物をベースとする固体電解質;及び
ii)上で定義したようなバインダー(B)
を含む。
【0116】
本発明において、用語「複合固体電解質膜」は、折り畳める可撓性膜の形態であり得るリチウムイオン伝導率を有する複合膜を指し、一部の実施形態では室温で支持体を伴わずに自立型の形状を有し得る。
【0117】
組成物(CC)は、バインダー(B)と、硫化物をベースとする固体電解質材料とを当業者に公知の任意の方法によって混合することを含むプロセスによって適切に調製することができる。好ましい実施形態では、組成物(CC)は、組成物(E)を溶媒(S)に可溶化してバインダー(B)を提供することと、それに続いて硫化物をベースとする固体電解質材料を加えることと、このように得られた混合物を混合することとを含むプロセスによって調製される。
【0118】
組成物(CC)中の組成物(E)の量は、組成物(E)及び硫化物をベースとする固体電解質材料の総重量に対して好ましくは2~30重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは2~15重量%の範囲の量で組成物(E)を含む複合固体電解質膜を提供するものである。
【0119】
組成物(E)の量が2重量%未満である場合、複合固体電解質膜における硫化物をベースとする固体電解質材料の粘着は、不十分である。他方、組成物(E)の量が30重量%を超える場合、複合固体電解質膜のイオン伝導率が影響を受ける。
【0120】
別の目的において、本発明は、固体電池のための複合固体電解質膜を製造するためのプロセスであって、
I)上で定義したような組成物(CC)を加工して、固体複合電解質の湿式膜を形成するステップと;
II)ステップ(I)で提供された湿式膜を乾燥させるステップと
を含むプロセスを対象とする。
【0121】
本発明のプロセスのステップ(I)において、組成物(CC)は、キャスティング、噴霧コーティング、回転噴霧コーティング、ロール塗布、ドクターブレード法、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェット印刷、スピンコーティング及びスクリーン印刷、ブラシ、スクイジー、フォームアプリケーター、カーテンコーティング、真空コーティングから選択される技術により、不活性な可撓性支持体の少なくとも1つのホイル上又は少なくとも1つの電極の表面上に直接付着させることができ、キャスティングが好ましいものである。
【0122】
このように得られた湿式膜は、典型的には、10μm~400μm、好ましくは50μm~400μmに含まれる厚さを有する。
【0123】
本発明のプロセスのステップ(II)において、組成物(CC)は、好ましくは、10℃~150℃、好ましくは20℃~120℃に含まれる温度で乾燥させる。
【0124】
真空下において、好ましくは20℃~150℃、好ましくは30℃~120℃に含まれる温度でのオーブン中でのさらなる乾燥ステップを適切に実行し、完全な溶媒除去を達成することができる。
【0125】
当業者は、少なくとも1つの溶媒(S)の沸点により、プロセスの乾燥ステップ(II)の適正な持続時間及び温度を選択する。
【0126】
プロセスのステップ(II)において得られる乾燥膜は、典型的には、10μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0127】
複合固体電解質膜を調製するための本発明のプロセスは、ステップ(II)で提供した乾燥膜を圧縮ステップ、例えば圧延又は一軸圧縮プロセスに供し、複合固体電解質膜の多孔度を低下させ、密度を増加させるさらなるステップ(III)をさらに含み得る。
【0128】
さらなる目的において、本発明は、上で定義したような複合固体電解質膜を含む固体電池を提供する。
【0129】
本発明の固体電池は、正極及び負極を含み、好ましくは、負極又は正極の少なくとも1つは、本発明による電極である。
【0130】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願及び公開資料の開示が、ある用語を不明瞭なものとさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先する。
【0131】
本発明を、以下の実施例を参照してより詳細に以下に記載するが、これは、本発明を単に例示する目的を伴って提供し、その範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0132】
材料及び方法
ポリマーA1=66.0%フッ素含量を有するフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー;ASTM D1646によって121℃で測定したムーニー粘度(ML1+10’)=62MU、スラブの形態で入手可能であり、約-18℃のTを有する。
ポリマーA2=66.0%フッ素含量を有するフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー;ASTM D1646によって121℃で測定したムーニー粘度(ML1+10’)=40MU、スラブの形態で入手可能であり、約-18℃のTを有する。
ポリマーA3=66.0%フッ素含量を有するフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/メチルビニルエーテルコポリマー;ASTM D1646によって121℃で測定したムーニー粘度(ML1+10’)=23MU、スラブの形態で入手可能であり、約-32℃のTを有する。
ポリマーF1=フッ化ビニリデン/アクリル酸(0.2重量%)、512キロダルトンのMW、融点(Tm2)=160.4℃及び51.5J/gの融解熱(ASTM D3418によって決定)及び3.4μmの平均粒径(D50)。
ポリマーF2:SOLEF(登録商標)21510VDF/HFP半結晶性ポリマー、ASTMスタンダードD3418によって測定して23J/gの融解熱及び137μmの平均粒径(D50)を有する、Solvayから市販されている。
ポリマーF3:SOLEF(登録商標)6020PVDF半結晶質ホモポリマー、ASTMスタンダードD3418によって測定して50J/gの融解熱及び93μmの平均粒径(D50)を有する、Solvayから市販されている。
ステアリン酸カルシウム(以下ではCaSt)、FACI Asian pacific PTE LTDから市販されている。
酪酸ブチル、Sigma-Aldrichから市販されている。
Solef(登録商標)5130、VDF/AAコポリマー、Solvayから市販されている。
C-NERGY(商標)SUPER C65(SC-65)、Imerys Graphite&Carbonから市販されている。
活性材料LCO:酸化コバルトリチウム(LiCoO)、Umicore SAから市販されている。
【0133】
微粉化ペレットの製造のための一般手順
ポリマーA1、A2又はA3のスラブを中程度の寸法の断片(5mm未満の容量)に切断し、液体窒素に浸し、それらのガラス転移温度未満にこれを冷却した;次いで、冷却されたスラブを一般に-20℃/-50℃の範囲の温度でポリマーF1、ポリマーF2、ポリマーF3の粉末と組み合わせて又はCaSt(比較)と組み合わせて、必要とされる量で細砕機(SPEX Sample Prepからのモデル6870D)のチューブに導入した。異なる実験において粉砕された混合物の組成範囲を表1において詳述する。
【0134】
【表1】
【0135】
得られた微粉化ペレットは、数百μm及びmmの凝集体を含めた微粉から粉末まで変動する。前記凝集体は手動の撹拌で容易に割れた。
【0136】
溶解反応速度試験
実施例1~5及び7並びに比較例1及び2の微粉化ペレットを10重量%の濃度で酪酸ブチルと混合した。
【0137】
試験は室温で開始し、40℃の温度に達するまで1℃/分のT勾配をかけた。
【0138】
酪酸ブチル中の微粉化ペレットの組成物の規格化したトルクを時間の関数として測定した。使用した機器は、円筒型カップ及び専用の幾何学的形状を有するRheolab QCであった(ST24-2D/2V/2V-30/129(s.n.39366)-Anton Paar.)。最初にかけた回転スピードは600RPMであり、これは、40℃で800RPMに達した。規格化したトルクがプラトーに達したとき(ボブの固定した回転スピードを得る応力が一定であったことを意味する)、溶解度を推定した(これはで完了した溶解度による)。
【0139】
固着防止剤を含む全ての微粉化ペレットについて、得られた粉末の容易で速い溶解が観察された。5つの試料の全ては概ね25分後に完全な溶解を示した。
【0140】
比較例1及び比較例2の溶液は、実施例1~5及び7の溶液ほど透明ではなく、僅かに白っぽかった。さらに、1週間静置した後にバイアルの底に薄い堆積物が観察された。
【0141】
得られた溶液の溶解時間及び外観を表2に報告する。
【0142】
比較例2
5gのポリマーA1のスラブを酪酸ブチルと混合し、10重量%の組成物を得て、溶解反応速度試験について上で報告したように処理した。
【0143】
スラブの形態のポリマーA1の溶解時間は、微粉化ペレットの形態の同じポリマーA1より長かった(2倍超)(このようにそれらのガラス転移温度未満の温度で粉砕プロセスに供した)。
【0144】
得られた溶液の溶解時間及び外観を表2に報告する。
【0145】
粒径分布(PSD)
実施例3及び比較例1の微粉化ペレットの粒径分布をISO13320によってBeckman Coulter LS13 320で測定した。
【0146】
結果は、約0.25ccの材料に対する5回の測定の平均として表2に報告する(VDFポリマーについて屈折率1.4)。
【0147】
【表2】
【0148】
電気化学的安定性
本発明の組成物中で固着防止剤として使用されるポリマーの電気化学的安定性を、固着防止剤であるポリマーF1、ポリマーF2、ポリマーF3及びCaSt及び導電性炭素を含有する電極のリニアスイープボルタンメトリー(LSV)によって酸化電位を決定することによって評価した。
【0149】
電極の生成
実施例E1:固着防止ポリマーF3
500mgのポリマーF3を9.5gのn-メチル-2-ピロリドン(NMP)に12時間磁気撹拌しながら溶解し、粘稠溶液(溶液A)を生成した。2gの溶液を43mgの導電性炭素Super C65(Imerys)とspeedmixer(flacktek)において2000RPMで10分間混合し、均質な黒色粘性インクを生成した。インクをAlホイル上に堆積させ、200μmの湿式厚さでナイフコーティングし、電極(電極A)を生成した。電極Aを70℃において2時間換気フード下で乾燥させ、90℃において真空下(20ミリバール)で12時間さらに乾燥させた。
【0150】
実施例E2:固着防止ポリマーF2
1gのポリマーF2を9gのNMPに12時間磁気撹拌しながら溶解し、粘稠溶液(溶液B)を生成した。2gの溶液Bを86mgの導電性炭素Super C65(Imerys)とspeedmixer(flacktek)において2000RPMで10分間混合し、均質な黒色粘性インクを生成した。インクをAlホイル上に堆積させ、200μmの湿式厚さでナイフコーティングし、電極(電極B)を生成した。電極Bを70℃において2時間換気フード下で乾燥させ、90℃において真空下(20ミリバール)で12時間さらに乾燥させた。
【0151】
実施例E3:固着防止ポリマーF1
1gのポリマーF1を9gのNMPに12時間磁気撹拌しながら溶解し、粘稠溶液(溶液C)を生成した。2gの溶液Cを86mgの導電性炭素Super C65(Imerys)とspeedmixer(flacktek)において2000RPMで10分間混合し、均質な黒色粘性インクを生成した。インクをAlホイル上に堆積させ、200μmの湿式厚さでナイフコーティングし、電極(電極C)を生成した。電極Cを70℃において2時間換気フード下で乾燥させ、90℃において真空下(20ミリバール)で12時間さらに乾燥させた。
【0152】
比較例E1:固着防止CaSt
CaStでは、膜を得ることができないため、CaStを安定なバインダー(Solef(登録商標)5130)中に埋め込んだ。3コンポーネント電極は4-3-3の比のCaSt-C65-Solef(登録商標)5130でできていた。
【0153】
500mgのSolef(登録商標)5130を9.5gのNMPに12時間磁気撹拌しながら溶解し、粘稠溶液(溶液D)を生成した。2gの溶液A+100mgのSuper C65+130mgのCaStをspeed mixerにおいて2000RPMで20分間混合し、均質な黒色粘性インクを生成した。インクをAlホイル上に堆積させ、200μmの湿式厚さでナイフコーティングし、電極(電極D)を生成する。電極Dを70℃において2時間換気フード下で乾燥させ、70℃において真空下(20ミリバール)で12時間さらに乾燥させた。
【0154】
比較例E1で使用されるポリマーバインダーの不活性を検証するために、炭素Solef(登録商標)5130電極を調製した。2gの溶液Dを43mgの導電性炭素Super C65(Imerys)とspeedmixer(flacktek)において2000RPMで10分間混合し、均質な黒色粘性インクを生成した。インクをAlホイル上に堆積させ、200μmの湿式厚さでナイフコーティングし、電極(電極E)を生成した。電極Eを70℃において2時間換気フード下で乾燥させ、90℃において真空下(20ミリバール)で12時間さらに乾燥させた。
【0155】
対電極及び参照電極としてリチウム金属並びに電解質として炭酸エチレン/炭酸ジメチル(1/1の容量%)中の1MのLiPF6を使用して電極をセルにアセンブルした。電解質による電極の濡れを可能とする5時間の静止期間後、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行った。LSV中、電位は、徐々に増加し、電位を増加させるのに必要とされる電流をモニターした。電流の増加は、酸化反応の発生に対応する。
【0156】
酸化電位の評価:
セルの生成
アルゴン充填したグローブボックスにおいて、18mm直径のディスクを上記のような電極A~Eのいずれかから打ち抜いた。参照電極/対電極としてリチウム金属ディスク(18mm直径)及びEC-DMC(1-1容量)中の70μlのLiPF6を使用して、電極A~Eの各ディスクでリチウムセルをアセンブルした。
【0157】
試験条件
各セルを制御された温度のチャンバーに20℃において置き、少なくとも5時間静置し、電解質が電極を濡らすことを可能とした。5時間後、以下の条件下でLSV測定を開始した:
開始電位:開路電位
最終電位:参照(Li対電極)に対して6.5V
速度:0.1mV/s。
【0158】
全ての電極A~C及びDのLSVプロファイル(電極Eとの比較)は非常に同様であり、以下を示す:
- Liに対して3.8Vで開始する電流増加;このシグナルは、Al電流コレクタのパシベーションによって生じる;
- 電流は、4.65~5.2Vまで試験した電極の全てについて安定であり、これは導電性炭素super C65及び液体電解質の分解開始に対応する。比較例E1について、4.6~4.7Vでさらなる分解ピークが観察され、これはステアリン酸Ca固着防止剤の酸化に対応する。したがって、ステアリン酸Caは、半結晶性フッ素化ポリマーと対照的に、電池の安定性及び性能に対して悪影響を与え得る。
【0159】
正極の調製
バインダー組成物
小片に手作業で切断したスラブの形態のポリマーA1(バインダー1)及び実施例3のエラストマー組成物の微粉化ペレット(ポリマーA1を含む)(バインダー2)の酪酸ブチル中の10重量%溶液をガラス製フラスコにおいて室温で撹拌しながら調製した。溶液粘度を測定した。
【0160】
スラリーの調製
2重量%のバインダー、2重量%のSC65及び96重量%のLCOを含み80%の総固体含量を伴う配合物をバインダー1(スラリー1)及びバインダー2(スラリー2)の両方と共に調製した。Speedymixerポリマー容器を使用してスラリーを調製した。
【0161】
粘度
スラリーレオロジーをAnton Paarからのレオメーター「Rheolab QC」で測定した。バインダー1及びバインダー2から開始して得たスラリーのレオロジープロファイルは匹敵したが、バインダー2を含有するスラリーについて僅かにより高い粘度を伴った。
【0162】
キャスティング及び乾燥
スラリー1及びスラリー2をAl電流コレクタ(15μm厚さ、エッチング加工なし、アセトンで清浄にしたのみ)上にキャストした。
【0163】
コーティングナイフの高さは、標的添加(30mg/cm2)に達するために選択する。200~300umの湿式厚さを使用する。コーティング機のスピードは30mm/sである。
【0164】
キャストをオーブン(90℃で事前加熱)に移した:概ね500~600ミリバールの動的真空(N雰囲気)下において90℃で25’、それに続いて、静的真空下で25’、再び600ミリバールでの動的真空3’。
【0165】
電極1は、スラリー1から得、電極2は、スラリー2から得た。
【0166】
プルオフ接着
上記の手順によって生成した正極1及び2の接着特性を評価するために、プルオフ試験を行った。試験はアルミニウム電流コレクタから電極コーティングを剥離するのに必要とされる力の測定にあった。試験中、円筒型ピンを用いて電極に対して垂直に圧縮力を加えた。後にピン(末端に両面接着テープを有する)を後退させ、コレクタから電極コーティングを除去するのに必要とされる力を測定した。
【0167】
試験の結果は電極1及び電極2について匹敵し、2つの場合において差異を伴わなかった。本発明による組成物(E)の微粉化ペレットを含む正極は、処理をせず且つ固着防止添加物が存在しないスラブの形態のフルオロエラストマーを使用することによって調製した正極と比較して、接着の減少を示さず、一方、バインダーの調製におけるより速い溶解度の利点を同時に実現することのこれは証明である。結果を表4において要約する。
【0168】
【表3】
【国際調査報告】