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特表2024-528627複数の個別バッテリセルを備えたバッテリモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】複数の個別バッテリセルを備えたバッテリモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20240723BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/213
H01M50/505
H01M50/204 401D
H01M10/613
H01M50/583
H01M50/367
H01M10/643
H01M10/6556
H01M50/204 401H
H01M10/625
H01M50/35 101
H01M50/342 201
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501996
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2023052600
(87)【国際公開番号】W WO2023152028
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】102022000513.1
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】マリウス イヴ・クーン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・フーバー
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H012AA01
5H012CC10
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT01
5H040AY06
5H040DD03
5H040NN03
5H043AA04
5H043BA17
5H043CA03
5H043CA21
5H043FA04
5H043GA03
5H043GA12
(57)【要約】
本発明は、円形セルとして形成されている複数の個別バッテリセル(3)を備えたバッテリモジュール(2)に関し、個別バッテリセルは、複数の列の中に相前後して配置され、且つそれぞれの列の中で電気的に直列に接続されている。本発明によるバッテリモジュールは、それぞれの列が、閉鎖された管状容積部(1)内に配置されており、個別バッテリセル(3)の内の少なくとも1つにおいて許容できない圧力上昇が発生した場合に、少なくとも1つの列の電気接触を切断する装置が、前記列の管状容積部(1)に設けられることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形セルとして形成されている複数の個別バッテリセル(3)を備えたバッテリモジュール(2)であって、前記個別バッテリセル(3)が、複数の列の中に相前後して配置され、且つそれぞれの前記列の中で電気的に直列に接続されている、前記バッテリモジュール(2)において、
それぞれの前記列は、閉鎖された管状容積部(1)内に配置されており、前記個別バッテリセル(3)の内の少なくとも1つにおいて許容できない圧力上昇が発生した場合に、少なくとも1つの列の電気接触を切断する装置が、前記列の前記管状容積部(1)に設けられるものであり、そのために前記列の少なくとも2つと電気接触している少なくとも1つの電気接触板(5、7)が形成されており、前記電気接触板(7)が破裂部材として構成されていること、又は作動時に前記電気接触板(7)を前記列から切り離すように構成されたアクチュエータ(15)が設けられていることを特徴とする、前記バッテリモジュール(2)。
【請求項2】
前記装置は、圧力上昇を少なくとも間接的に検出する検出装置(14)と、前記検出によってトリガされる少なくとも1つのアクチュエータ(15)とを有することを特徴とする、請求項1記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項3】
前記装置は、破裂部材(18)を有するものであり、前記破裂部材(18)が前記電気接触を形成すること、又は前記電気接触を形成する導体(20)が前記破裂部材(18)上に延在していることを特徴とする、請求項1又は2記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項4】
少なくとも1つの流路が、それぞれの列の個別バッテリセル(3)と、前記管状容積部(1)を包囲する材料(12)との間に形成されており、前記流路は、好ましくは前記個別バッテリセル(3)を前記管状容積部(1)に導入する前に、前記個別バッテリセル(3)に可撓性の材料(8)を螺線状に巻き付けることによって提供されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項5】
前記管状容積部(1)は、冷却媒体チャネル(9)に隣接して配置されており、好ましくは複数の前記管状容積部(1)が、前記冷却媒体チャネル(9)の周りでグループ化されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項6】
前記管状容積部(1)は、前記冷却媒体チャネル(9)の周りで完全な又は部分的な六角形の配置によりグループ化されていることを特徴とする、請求項5記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項7】
前記冷却媒体チャネル(9)は、圧力保護部及び/又はヒューズを介して、前記管状容積部(1)の内の少なくとも1つに接続されていることを特徴とする、請求項5又は6記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項8】
前記バッテリモジュール(2)を包囲するバッテリ(11)のハウジングの中にガス(10)を逃がすための経路は、前記破裂部材を介して開放することができることを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項記載のバッテリモジュール(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念において詳細に定義されているような、複数の個別バッテリセルを備えたバッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の個別バッテリセルを備えた、バッテリモジュールから構成されたバッテリは、従来技術より周知である。個別バッテリセルの典型的な構造様式は、いわゆる円形セルの構成である。これは、種々の配置構成を実現する。特許文献1には、例えば、複数の円形セルそれぞれが自由空間の周りでグループ化されているバッテリモジュールが記載されている。好適には、このグループ化は六角形の配置により行うことができ、その際、自由空間は、熱伝導性が良好な材料の充填剤を有することができるか、又は冷却媒体を通流させるためのチャネルとして形成することもできる。円形セルとしての複数の個別バッテリセルが相前後して配置されており、従って電気的に相互に接続される別の構造も、例えば特許文献2から公知である。
【0003】
ここで、この種のバッテリモジュールが電気的な駆動出力を提供するために車両において使用される場合、それらのバッテリモジュールは、典型的には、比較的高いエネルギー密度を有する。従来技術によれば、このために、リチウムイオンセルが使用されることが多い。複数のセルの内の1つに熱的な問題が生じ、その後、過圧が生じると、いわゆる熱暴走(Thermal Runaway)、即ちバッテリモジュール全体に制御不能な熱が生じる可能性がある。これに対抗するために、個別バッテリセルのハウジングは破裂部材を有しており、それらの破裂部材は、個別バッテリセル内に過圧が生じた場合には、ハウジングを開放し、それによって、その過圧が解消され、個別バッテリセルから電解液が除去される。これによって、理想的には、熱暴走を1つ又は幾つかのセルに限定することができ、このことは、その種のバッテリモジュールから構成されるバッテリの安全性に関して、非常に有利となる。
【0004】
その際に噴き出る、ベントガスとも称される高温のガスは、可燃性又は爆発性である可能性がある。従って、例えば、短絡又は電気アークによるガスの着火は、可能な限り阻止されるべきである。
【0005】
特許文献3には、複数の個別モジュールから成る、車両用のバッテリが記載されている。モジュール内には、個々のバッテリセルが配置されている。それらは、バッテリの熱暴走時に圧力上昇が生じた際に、各個別バッテリセルからの電流の流れを遮断するために、電流遮断装置(CID:Current Interruption Device)をそれぞれ有している。
【0006】
同様のことは、特許文献4にも記載されている。この公報では、別の実施例において、複数の個別セルを接続してまとめ、接続された一連のそれらの個別セルの各個別セルに共通のCIDを設けることも記載されている。
【0007】
特許文献5には、複数の円形の個別バッテリセルが共通の閉鎖された管内に配置されるバッテリが記載されている。
更なる従来技術については、特許文献6、特許文献7並びに特許文献8も参照されたい。これらの文献には、実質的に、圧力上昇が発生した際に開かれる破裂部材等によって過圧を逃す、個別バッテリセル内の圧力低減用の装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE102009000673A1
【特許文献2】DE102016103667A1
【特許文献3】EP2557615A1
【特許文献4】JP2011-135657A
【特許文献5】JP2019-145490A
【特許文献6】US2013/0280559A1
【特許文献7】DE102017212223A1
【特許文献8】DE102008013188A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、本発明の課題は、円形セルとして形成されている複数の個別バッテリセルを備えた、改善されたバッテリモジュールを提供し、その種のバッテリモジュールの安全な動作を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴、ここでは特に請求項1の特徴部分に記載の特徴を備えたバッテリモジュールによって解決される。有利な構成及び発展形態は、独立請求項に従属する請求項から明らかになる。
【0011】
本発明によるバッテリモジュールは、円形セルとして形成されている複数の個別バッテリセルを含み、それら複数の個別バッテリセルは、複数の列の中に相前後して配置されている。それぞれの列の円形セルは、相互に電気的に直列に接続されており、このことは、例えば、個別バッテリセルそれぞれのカップ状のハウジングを負極として形成し、且つ前方に突出した正極を形成し、小型機器において用いるためのバッテリと同様に、相前後して配置され、それによって直列に接続できることによって行うことができる。本発明によれば、それぞれの列が、閉鎖された管状容積部内に配置されている。ここで、列の管状容積部内の複数の個別バッテリセルのうちの少なくとも1つにおいて許容できない圧力上昇が生じた際に、少なくとも1つの列の電気接触を切断するための装置が設けられている。即ち、複数の個別バッテリセルのうちの1つにおいて熱伝播又は熱暴走が生じると、典型的には、そのセル内に圧力上昇が生じる。続いて、セルのカップにおける破裂部材が、危機的な限界圧力を超えると裂けて、ベントガスが個別バッテリセルから流出する。このベントガスは、該当する列の管状容積部に到達し、そこにおいて圧力上昇をもたらす。
【0012】
本発明によるバッテリモジュールにおいては、その種の許容できない圧力上昇が生じた際には、その列の電気接触を切断するための装置を介して、その列がバッテリモジュールの別の列から電気的に切り離され、また必要に応じて、バッテリを形成するバッテリモジュールが更に切り離される。これによって、その列の中の個別バッテリセルの数によってのみ規定される相対的に低い電圧レベルにおいて、電流経路が遮断される。これによって、ベントガスを着火させる、潜在的な着火電圧が著しく低減され、このことは、安全性に関して決定的な利点となる。
【0013】
本発明によるバッテリモジュールでは、複数の列のうちの少なくとも2つと電気接触している少なくとも1つの電気接触板が形成されている。それらの列は、この場合、モジュール内で、列の数に応じて種々に接続することができる。つまり、それらの列は、例えば、全て並列に接続されてもよいし、全て直列に接続されてもよいし、それらの列をグループで並列に又は直列に接続されてもよく、その場合、それらのグループ自体も相互に直列に又は並列に接続される。これらはいずれも、1つ以上の電気接触板を介して行うことができ、接触板は好ましくは、相応の管状容積部及びその内部に配置されている個別バッテリセルの列の終端部又は始端部に配置されている。
【0014】
本発明によれば、この接触板が破裂部材として形成されている。電気接触板は、つまり、この接触板が過圧の発生時に裂開されるように、バッテリモジュールのハウジングに接続されている。これによって、一方では、管状容積部内の圧力負荷の低減が実現され、他方では、各プレートに接触している全ての列の電気接触がバッテリモジュール内で切り離される。これに補完的に、又は代替的に、センサを介して直接的に又は間接的に圧力上昇が認識された場合に、接触板を除去するために、例えば火口技術的な装薬(Pyroladung)を介してこの接触板が裂開されるようにするために、アクチュエータを設けることができる。
【0015】
本発明の有利な構成においては、前述の装置が、圧力上昇を少なくとも間接的に検出するための検出装置と、それによってトリガされる少なくとも1つのアクチュエータとを有することができる。即ち、直接的又は間接的に圧力を検出することができ、それによって、アクチュエータをトリガすることができる。これは、例えば、電気接触を切り離すための、又は個別バッテリセルの列において接触部材を裂開させるためのパイロヒューズのトリガであってもよい。
【0016】
直接的又は間接的な圧力センサを用いるこの変形形態では、ベントガスが放出される程に圧力が上昇する前であっても、電流経路を既に開くことができるという更なる利点が得られる。ベントガスは、放出後、場合によっては着火する可能性がある。従って、ベントガスの着火の危険は、更に低減される。
【0017】
本発明によるバッテリモジュールの別の非常に好適な構成によれば、更に、装置が破裂部材を有することができ、この破裂部材が電気接触を形成するか、又はこの電気接触を形成する導体が破裂部材上に延在している。即ち、該当する列の管状容積部のためのこの破裂部材は、危機的な過圧が生じた際には自動的に裂け、それによって、過圧が周囲に、好ましくは所定の安全なベント経路に沿って放出される。装置のこの構成では、破裂部材が裂けることで、それと同時に、電気接触が破壊され、この破壊は、電気接触が、破裂部材自体によって形成されるか、又は導体が破裂部材の目標破断箇所上に延在し、破裂部材の裂開時に、導体が電流経路を遮断するために破壊されることによって行われる。
【0018】
本発明によるバッテリモジュールの非常に好適な発展形態では、列を成す個別バッテリセルと管状容積部の壁部との間に少なくとも1つの流路が形成されている。その種の流路は、個別バッテリセルの内の1つから流出するガスが管状容積部内で安全且つ確実に誘導され、例えば、事前に管状容積部を変形させる必要はなく、管状容積部の始端部又は終端部において、そこに配置されている破裂部材に到達することができる。この種のチャネルは、例えば、管状容積部の壁部のリブ状の表面によってもたらすことができる。
【0019】
本発明によるバッテリモジュールの非常に好適な発展形態によれば、可撓性の材料、例えばワイヤ又は撚り線又は弾性の円形材料、又はエラストマ、プラスチック等から成るバンドを個別バッテリセルに螺線状に巻き付けることによって、流路を実現することができる。これらが一緒に管状容積部に導入されると、螺線状のチャネルが形成される。例えば、楕円形又は円形の横断面を備えたゴム撚り線のような十分に可撓性の材料では、それと同時に、個別バッテリセルがその直径に関して僅かに大きくなるか、又は僅かに小さくなる、充放電時の潜在的な移動が妨げられることなく、管状容積部内の個別バッテリセルの確実な固定を保証することができる。
【0020】
本発明によるバッテリモジュールの非常に好適な発展形態によれば、少なくとも1つの管状容積部を、冷却媒体が通流するチャネルに隣接して配置することができる。特に、その配置は、冷却媒体チャネルの周りで、複数のその種の管状容積部の完全な又は部分的な六角形の配置であってもよい。
【0021】
冷却媒体チャネルは、熱暴走が発生した際に裂開及び/又は溶融する材料から成る圧力保護部及び/又はヒューズを介して冷却チャネルに接続することができる。これによって、ベントガスは、例えば、複数のその種のバッテリモジュールの周りのハウジングの中に(のみ)排出されるのではなく、冷却媒体チャネルにも排出されるようになり、その結果、ベントガスは、所期のように冷却され、冷却媒体と共に排出することができる。
【0022】
冷却媒体を介した、そのように画定されたベント経路の他に、管状容積部の各端部に、破裂箇所/目標破断箇所が所期のように配置されることによって、ベントチャネルもバッテリモジュールから出て、非常に有利な構成によるバッテリモジュールを包囲するバッテリハウジングに至ることができ、続いてガスを、このバッテリハウジングから公知のやり方で、典型的には別の破裂部材を介して、またベントチャネルを介して、完全に所期のように、バッテリ外部の危機的ではない領域に排出することができる。
【0023】
本発明によるバッテリモジュールの別の有利な構成は、別の従属請求項からも明らかになり、また図面を参照しながら詳細に説明する実施例に基づいて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】通常動作時の本発明によるバッテリモジュールの一部の概略的な配置を示す。
図2】第1の実施例における、熱事象の発生時の図1と同様の図を示す。
図3】第2の実施例における、熱事象の発生時の図1と同様の図を示す。
図4】通常動作時の本発明によるバッテリモジュールにおける破裂部材の概略図を示す。
図5】熱事象の発生時の図4と同様の図を示す。
図6】本発明による複数のバッテリモジュールを備えたバッテリの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1からは、概略的に示唆された、バッテリモジュール2の管状容積部1が見て取れる。この管状容積部1には、ここに図示した実施例では4つの個別バッテリセル3が、相前後して直列に配置されている。例えば、個別バッテリセル3のカップ状のハウジングが、負のバッテリ極を形成し、且つ個別バッテリセル3が、図1においては、その左側において正のバッテリ極4を形成していることによって、それらの個別バッテリセル3が、電気的に相互に直列に接続されている。ここで、個別バッテリセル3が、管状容積部1に相前後して挿入され、右側においては、例えば負の接触板5並びにばね6によって、また左側において正の接触板7によって相互に押し付けられると、個別バッテリセル3が相互に直列に接続され、その数に応じた電圧が2つの接触板5、7間に印加される。
【0026】
複数の個別バッテリセル3の列の1つの個別バッテリセル3が熱暴走を起こし、ベントガスが環状容積部1の領域に移行する場合、ここに図示した実施例では、生じるベントガスのための螺線状の経路を作るように、個別バッテリセル3には、紐状の部材8が螺線状に巻き付けられている。更に紐8は、例えばゴム紐、ワイヤ、撚り線等として形成されることができ、個別バッテリセル3をその位置に確実に保持し、またそれと同時に、充放電時の容積の拡張及び縮小を示す個別バッテリセル3のある程度の呼吸を許容する。管状容積部1に隣接して、図1には、更に冷却媒体チャネル9が示唆されており、この冷却媒体チャネル9には、矢印に応じて、流体の冷却媒体、また場合によってはガスの冷却媒体が通流し、それによって、個別バッテリセル3の領域において生じた廃熱が確実に排出される。
【0027】
管状容積部1内の複数の個別バッテリセル3の1つにおいて前述の熱事象が発生すると、ベントガスの過圧が発生して容積1内に広がる。管状容積部1は、その正の接触板7の領域において、例えば目標破断箇所又は破裂部材を有し、そのような場合には、この目標破断箇所又は破裂部材が裂けて、ガスのための通気経路を開放する。このことは、図2において、目標破断箇所によってバッテリモジュール2のハウジング12に接続されている接触板7によって示唆されている。この接触板7は、例えば、容積1内に危機的な過圧が発生した場合に外れるようにハウジング12に接着することができる。矢印10によってシンボリックに表されているベントガスは、続いて、例えばここでは図示していないバッテリハウジングへと放出されて、このバッテリハウジングから目標の方法で危機的ではない領域に排出される。
【0028】
正の接触板7が裂開することによって、圧力負荷が低減される。しかしながら、それと同時に、管状容積部1内の個別バッテリセル3の列の電気接触も遮断される。この場合、容積1内に位置する個別バッテリセル3の電圧のみが存在するので、電圧は比較的低いレベルにおいて遮断される。これによって、ベントガスを着火させる潜在的な着火電圧が低減され、このことは、安全性を高める。
【0029】
原理上、熱暴走が生じたセル3を含む、個別バッテリセルの該当する列を、電流経路から取り除けば十分である。しかしながら、個別バッテリセル3の複数の列が存在している場合には、バッテリモジュール2内の全ての電流経路を切断することが好ましい。このことは、理想的には、全ての接触板7の裂開によって実現することができる。
【0030】
図3には、代替的な変形実施形態が図2と同様の図で示されている。一方では、管状容積部1の圧力負荷を低減するための、他方では列の個別バッテリセル3の電気接触を切断するための、接触板7の裂開の代わりに、ここでは、圧力センサ14を見てとることができ、この圧力センサ14は、圧力上昇時に、接触板を裂開させるために、又はその裂開を圧力上昇の力によって支援するために、アクチュエータ15、例えばパイロチャージ(Pyroladung)に接続されている。
【0031】
接触板7が完全に裂開される、図2において説明した変形形態に実質的に類似する別の受動的な可能性は、図4及び図5から見て取れる。図4からは、破壊されていない状態が見て取れる。ここでは、管状容積部1を閉鎖する非導電性の閉鎖板17が、図2に示した電気接触板7の代わりを担っている。この非導電性の閉鎖板17は、18で表された破裂部材を有しており、この破裂部材18は、目標破断箇所19にわたり接続されているディスクとして構成されている。ここでは破裂部材18上に、導電体20が延在しており、この導電体20を介して、個別バッテリセル3の相応に対応付けられた列が電気接触されている。図5には、管状容積部1に既に圧力上昇が起こった場合が示されている。破裂部材18のディスクが、目標破断箇所19に沿って裂けている。ここでもまた10により表されている矢印によって示唆されているように、破裂部材18が裂けることによって生じた開口部からベントガスが流出する。破裂部材18が裂けるのと同時に、導電体20も破壊され、その結果、従前はこの導電体20を介して確立されていた、列の個別バッテリセル3の電気接触が遮断される。センサの使用とは異なり、この構造は、図2において説明した構造と同様に、純粋に受動的に作用する。
【0032】
図6には、複数のその種のバッテリモジュール2から構成されている全体のバッテリ11が見て取れる。ここでは、バッテリモジュール2がそれぞれ冷却チャネル9を含み、この冷却チャネル9は、ここでは、6つの管状容積部1の六角形の配置の中央に配置されており、管状容積部1には、個別バッテリセル3が相応に実装される。この代替として、そのような冷却は不要であり、冷却が容積部1間に配置されているか、又は例えばヘッドプレート5、7のうちの一方を介して行われるという理由で、冷却チャネルを省略できる場合には、個別バッテリセル3を備えた7つの容積部1を設けることも考えられる。バッテリモジュール2はそれぞれ、一方の側に個々の正の接触板7を、また他方の側に負の接触板を有することができ、これらは、管状容積部1の内の1つにおけるバッテリセル3に熱伝播が生じた際に、即ち熱暴走が生じた際に裂開させることができ、これによって、バッテリモジュール2、又はその内部に組み込まれている個別バッテリセル3が、管状容積部1のそれぞれの内部における直列回路の相対的に低い電圧レベルにおいて電気的に切り離される。
【0033】
ここで、左端に示されているバッテリモジュール2においては、単に一例としてリング状の接触板7が示されているが、この接触板7を介して、管状容積部1内の個別バッテリセル3の全ての列を電気的に並列に接続することができる。管状容積部1の1つ以上に過圧が発生した際にこの接触板が裂開されると、個別バッテリセル3の全ての列が電気的に切り離され、その結果、バッテリモジュール2全体が電気的に遮断される。
【0034】
この構造を、ここでは図示していない個々のバッテリモジュール2を包囲するバッテリハウジングに適応させるために、例えば、図示しない、容積部1を3つだけ備えた半分のバッテリモジュールと、半分の冷却チャネル9とによって満たすことができるか、又は例えばここでは13によって表されている空間によって示唆されているような中空部を設けることができ、またこの中空部が、電子コンポーネント、例えばバッテリ管理システム又は電気コンポーネント、例えば全体のバッテリ11のための電気端子を有することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形セルとして形成されている複数の個別バッテリセル(3)を備えたバッテリモジュール(2)であって、前記個別バッテリセル(3)が、複数の列の中に相前後して配置され、且つそれぞれの前記列の中で電気的に直列に接続されている、前記バッテリモジュール(2)において、
それぞれの前記列は、閉鎖された管状容積部(1)内に配置されており、前記個別バッテリセル(3)の内の少なくとも1つにおいて許容できない圧力上昇が発生した場合に、少なくとも1つの列の電気接触を切断する装置が、前記列の前記管状容積部(1)に設けられるものであり、そのために前記列の少なくとも2つと電気接触している少なくとも1つの電気接触板(5、7)が形成されており、前記電気接触板(7)が破裂部材として構成されていること、又は作動時に前記電気接触板(7)を前記列から切り離すように構成されたアクチュエータ(15)が設けられていることを特徴とする、前記バッテリモジュール(2)。
【請求項2】
前記装置は、圧力上昇を少なくとも間接的に検出する検出装置(14)と、前記検出によってトリガされる少なくとも1つのアクチュエータ(15)とを有することを特徴とする、請求項1記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項3】
前記装置は、破裂部材(18)を有するものであり、前記破裂部材(18)が前記電気接触を形成すること、又は前記電気接触を形成する導体(20)が前記破裂部材(18)上に延在していることを特徴とする、請求項1又は2記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項4】
少なくとも1つの流路が、それぞれの列の個別バッテリセル(3)と、前記管状容積部(1)を包囲する材料(12)との間に形成されており、前記流路は、好ましくは前記個別バッテリセル(3)を前記管状容積部(1)に導入する前に、前記個別バッテリセル(3)に可撓性の材料(8)を螺線状に巻き付けることによって提供されることを特徴とする、請求項1又は2記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項5】
前記管状容積部(1)は、冷却媒体チャネル(9)に隣接して配置されており、好ましくは複数の前記管状容積部(1)が、前記冷却媒体チャネル(9)の周りでグループ化されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項6】
前記管状容積部(1)は、前記冷却媒体チャネル(9)の周りで完全な又は部分的な六角形の配置によりグループ化されていることを特徴とする、請求項5記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項7】
前記冷却媒体チャネル(9)は、圧力保護部及び/又はヒューズを介して、前記管状容積部(1)の内の少なくとも1つに接続されていることを特徴とする、請求項記載のバッテリモジュール(2)。
【請求項8】
前記バッテリモジュール(2)を包囲するバッテリ(11)のハウジングの中にガス(10)を逃がすための経路は、前記破裂部材を介して開放することができることを特徴とする、請求項記載のバッテリモジュール(2)。
【国際調査報告】