(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】能動冷却型端面励起固体レーザ利得媒質
(51)【国際特許分類】
H01S 3/042 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H01S3/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502039
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022036514
(87)【国際公開番号】W WO2023003705
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512095392
【氏名又は名称】コヒレント, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュー, チーゼ
(72)【発明者】
【氏名】シマノフスキー, ドミトリー
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AL01
5F172AL04
5F172EE15
5F172NS01
5F172NS18
(57)【要約】
能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイスは、バルク固体利得媒体を含む。利得媒体の入力端部が、その上に入射し、対向する出力端部に向かう方向において伝搬する、励起レーザビームを受光する。金属箔は、入力端部と出力端部との間に延在する、利得媒体の面にわたって配置される。筐体が、利得媒体の面上に冷却体チャネルを形成するように、金属箔と協働する。冷却体チャネルは、入力端部から出力端部に向かって金属箔に沿って冷却体の流動を伝導するように構成される、入口および出口を有する。金属箔は、利得媒体と、冷却体チャネルに隣接して延設される、筐体の一部との間に固着される。金属箔は、確実な熱接触を提供し、バルク利得媒体上に殆どまたは全く応力を付与しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイスであって、
対向する第1の端部および第2の端部と、前記第1の端部と第2の端部との間に延在する、第1の面とを有する、固体利得媒体であって、前記第1の端部は、その上に入射し、前記第2の端部に向かう方向において伝搬する、励起レーザビームを受光するように構成される、固体利得媒体と、
前記利得媒体の前記第1の面にわたって配置される、金属箔と、
前記利得媒体の前記第1の端部から前記利得媒体の前記第2の端部に向かって冷却体チャネルを形成するように前記金属箔と協働する、筐体であって、前記冷却体チャネルは、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって前記金属箔に沿って冷却体の流動を伝導するように構成される、入口および出口を有する、筐体と
を備え、
前記金属箔は、前記利得媒体と、前記第1の端部と第2の端部との間にある方向において前記冷却体チャネルに隣接して延設される、前記筐体の一部との間に固着される、デバイス。
【請求項2】
前記金属箔は、前記筐体の上に、それとともに冷却要素を形成するように圧着され、
前記レーザはさらに、前記第1の面に対向する、前記利得媒体の第2の面上に配置される、固定具を備え、前記利得媒体は、前記冷却要素と前記固定具との間に圧着される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記固定具は、前記第2の面を介して前記利得媒体の冷却を提供するために、その金属箔が前記利得媒体の第2の面にわたって配置される、前記冷却要素の第2の実例である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記金属箔と前記利得媒体の前記第1の面との間にインジウム層をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記インジウム層は、前記金属箔と前記利得媒体の前記第1の面との間にはんだ付けされる、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記インジウム層の厚さは、50~500マイクロメートルの範囲内である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記金属箔は、前記利得媒体の前記第1の面と前記筐体の2つの壁との間に固着され、前記2つの壁のそれぞれは、前記冷却体チャネルの個別の側上の前記利得媒体の前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記金属箔は、応柔性シールを介して前記筐体の一部に結合される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記金属箔は、前記筐体にはんだ付けまたは鑞着される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記金属箔は、銅を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記金属箔の厚さは、50~200マイクロメートルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記金属箔の上方の前記冷却体チャネルの高さは、前記冷却体の流動の速度が、前記第1の端部において、前記第2の端部により近接する場所におけるものを上回るように、前記第1の端部において、前記第2の端部により近接する場所におけるものを下回る、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記冷却体チャネルの高さは、前記第1の端部の最近傍の前記冷却体チャネルの第1の区画を通して1ミリメートル未満である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1の区画は、前記第1の端部から、前記利得媒体内の前記励起レーザビームの少なくとも1/eの吸光長だけ前記第1の端部から離間される場所まで跨架する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1の区画から前記第2の端部まで少なくともある程度延在する、第2の区画内の前記冷却体チャネルの高さは、前記第1の端部からの距離の関数として増加する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記金属箔に面し、前記冷却体チャネルの前記第1の区画の天井を形成する、前記筐体の表面は、前記冷却体の流動内に乱流を誘発するための陥凹または突出特徴を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記冷却体チャネルは、前記第1の端部から前記第2の端部まで少なくとも前記利得媒体の長さに延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記金属箔および前記冷却体チャネルは、前記利得媒体の前記第1の面に対して平行に、ある寸法において前記第1および第2の端部を越えて延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記利得媒体は、前記第1の端部から前記第2の端部までの長さLを有し、前記利得媒体と前記冷却体チャネルとの間に狭入される前記金属箔の一部は、前記第1の端部の1ミリメートルにある場所から前記第2の端部の0.25L内にある場所まで延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
レーザ利得システムであって、
請求項1に記載のデバイスと、
前記励起レーザビームを発生させるための励起レーザと、
前記入口を介して前記冷却体を前記冷却体チャネルの中に圧送するための冷却体送達システムと
を備える、レーザ利得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本願は、その開示が参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、2021年7月22日に出願された、米国仮出願第63/203,438号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、レーザおよびレーザ増幅器内の固体レーザ利得媒体の能動液体冷却に関する。具体的には、本発明は、励起レーザビームから有意かつ不均一な熱負荷を受ける、バルク固体レーザ利得媒質の能動液体冷却に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術の議論)
固体レーザまたはレーザ増幅器の利得媒体は、励発されるとレーザ放射を発生または増幅させることが可能である、光学活性イオンでドープされた中実ホスト材料である。ホスト材料は、概して、ガラスまたは結晶性であり、光学活性イオンは、典型的には、ネオジム、エルビウム、イッテルビウム、またはチタン等の希土類または遷移金属イオンである。利得媒体は、光ファイバまたはバルク結晶/ガラスの形態にあってもよい。大半のバルク利得媒体は、ロッドまたはスラブとして成形される。
【0004】
一般的には、固体レーザ利得媒体は、光学的に励起され、すなわち、光学活性イオンが、発振作用のための必要とされる反転分布を提供するために光学的に励発される。従来的には、光学励起源は、閃光ランプであった。しかしながら、現在のところ、多くの固体レーザ利得媒体は、レーザ励起がランプ励起より効率的である傾向にあるため、レーザ放射によって励起される。ダイオードレーザは、特に、それらの多くの利点、例えば、効率、小型性、長寿命、および低コストに起因して、励起レーザ源のための人気を博している選択肢である。ダイオードレーザは、数百ワットまたはさらに数キロワットと同程度に高い励起電力を提供し得る。いくつかのシステムは、必要とされる励起電力を提供するために、レーザダイオードのアレイを利用する。
【0005】
ダイオードレーザ励起型バルク利得媒体の場合には、いくつかの異なる励起幾何学形状が、可能性として考えられる。端面励起では、励起レーザ放射は、出力レーザ放射とともに共伝搬している(または、あまり一般的ではないが、反対方向に伝搬している)。側方励起は、励起レーザ放射の伝搬方向が、出力レーザ放射のものに対して略直角であるように、出力レーザビームの伝搬方向に対して平行である面を通して、利得媒体、例えば、スラブまたはロッドの中に励起レーザ放射を指向することを伴う。
【0006】
励起レーザ電力が、高いとき、バルク利得媒体の冷却が、励起レーザ放射の吸光から結果として生じる有害な熱効果を限定するために必要である。冷却を伴わない場合、バルク利得媒体の温度は、有意かつ空間的に不均一な方式において上昇するであろう。本温度上昇および不均一な温度分布は、そのシステムの性能を妨げ得る、望ましくない効果と関連付けられる。これらの望ましくない効果のうちのいくつかは、熱レンズ効果に関連する。熱レンズは、主として、利得媒体の屈折率ならびに利得媒体の熱膨張の温度依存である、熱光学効果に起因する。熱レンズは、レーザの光学設計において適応されることができる。しかしながら、熱光学定数および熱伝導率の温度依存は、熱レンズの収差を引き起こし、これは、最終的には、出力電力を限定し、レーザのビーム品質を劣化させるであろう。これらの収差は、利得媒体の内側の最高温度を最小限化することによって軽減される。加えて、不均一な温度分布は、バルク利得媒体上の外部機械圧力と組み合わせられると、利得媒体内の機械応力につながる、不均一な熱膨張を引き起こす。最悪の場合には、バルク利得媒体は、亀裂し得る。
【0007】
端面励起は、バルク利得媒体の側表面が、励起レーザ放射および出力レーザ放射のうちのいずれのものの伝搬経路にも干渉することなく、冷却要素と接触し得るため、冷却の観点から有利な幾何学形状である。しかしながら、高励起電力において、端面励起は、レーザ放射の経路内に熱レンズを発生させる。本熱レンズは、増加する温度に伴ってますます収差した状態になる傾向にある。利得媒体内にある程度の熱レンズ効果を伴って、レーザまたはレーザ増幅器を動作させることが、可能であるが、熱レンズを比較的に弱く保ち、特に、熱レンズのいかなる有意な収差も防止することが、好ましい。
【0008】
能動水冷却は、バルク利得媒体の側面を冷却するための効果的な方法である。1つの方式では、水が、それと直接接触するバルク利得媒体の側面に沿って流動される。別の方式では、銅ブロックが、バルク利得媒体の側面と熱接触するように設置され、銅ブロックが水を流動させることによって冷却される間に、それから熱を吸熱する。インジウムが、時として、銅ブロックとバルク利得媒体との間に差し込まれる。インジウムは、金属であり、したがって、熱導体であるが、比較的に軟質である。銅と比較して、本軟質性は、インジウムが、概して完全には平滑ではない、利得媒体の表面により良好に共形化することを可能にする。インジウムの軟質性はまた、非類似の熱膨張の存在下で利得媒体と銅ブロックとの間の熱接触をより良好に維持するための共形性も提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要約)
本明細書に開示されるものは、能動的に冷却され、端面励起のために構成される、固体バルク利得媒体に基づく、固体レーザ利得デバイスである。開示されるレーザ利得デバイスは、固体レーザ内ならびに固体レーザ増幅器内での使用のために好適である。バルク利得媒体の少なくとも1つの側表面は、水流動等の液体冷却体流動によって能動的に冷却される、金属箔と熱接触する。金属箔は、銅箔であってもよい。中実金属ブロック、例えば、銅ブロックと比較して、本金属箔の可撓性は、金属箔が、冷却体とバルク利得媒体との間の優れた熱接触を達成するように、バルク利得媒体に共形化することを可能にする。特に、金属箔は、(a)バルク利得媒体の不均一な熱膨張に起因する機械応力、および(b)組立プロセスの変動の両方を受けにくい、より確実な熱接触を提供する。さらに、中実金属ブロックと比較して、金属箔は、バルク利得媒体上に応力を殆ど付与しない。
【0010】
動作時、バルク利得媒体は、端面励起幾何学形状においてレーザ励起され、すなわち、励起ビームが、バルク利得媒体の入力端部上に入射し、バルク利得媒体の対向する出力端部に向かう方向において伝搬する。冷却体は、同一の方向、すなわち、入力端部から出力端部に向かう方向において金属箔上で流動する。冷却体流動方向と励起ビーム伝搬方向の本連携は、入力端部の最近傍の利得媒体の一部の最適な冷却を促進し、したがって、励起ビームから最大熱負荷を受ける。
【0011】
一側面では、能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイスは、固体利得媒体と、金属箔と、筐体とを含む。固体利得媒体は、対向する第1の端部および第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に延在する、第1の面とを有する。第1の端部は、その上に入射し、第2の端部に向かう方向において伝搬する、励起レーザビームを受光するように構成される。金属箔は、利得媒体の第1の面にわたって配置される。筐体は、利得媒体の第1の端部から、利得媒体の第2の端部に向かって冷却体チャネルを形成するように、金属箔と協働する。冷却体チャネルは、第1の端部から第2の端部に向かって金属箔に沿って冷却体の流動を伝導するように構成される、入口および出口を有する。金属箔は、利得媒体と、第1の端部と第2の端部との間にある方向において冷却体チャネルに隣接して延設される、筐体の一部との間に固着される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書に組み込まれ、その一部を成す、付随の図面は、本発明の好ましい実施形態を図式的に図示し、上記に与えられる一般的な説明および下記に与えられる好ましい実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を解説する役割を果たす。
【0013】
【
図1】
図1は、ある実施形態による、スラブ形状のバルク固体利得媒体と、それぞれが液体冷却される金属箔を用いて利得媒体を能動的に冷却するように構成される、2つの能動冷却要素とを伴う、能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイスを断面側面図において図示する。
【0014】
【
図2】
図2A-Cは、
図1の本デバイスの利得媒体とその冷却要素のうちのいずれか一方との間の例示的空間関係を図示する。
【0015】
【
図3】
図3は、各冷却要素の冷却体チャネルが利得媒体の端部を越えて延在する方法を示す、
図1のデバイスの一部の断面側面図である。
【0016】
【
図4】
図4は、ある実施形態による、切り詰められた冷却体チャネルを伴う代替レーザ利得デバイスの一部の断面側面図である。
【0017】
【
図5】
図5は、
図1および4のレーザ利得デバイスの断面端面図である。
【0018】
【
図6】
図6は、ある実施形態による、ロッド形状の利得媒体に基づく能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイスの断面端面図である。
【0019】
【
図7】
図7は、ある実施形態による、金属箔が冷却体チャネルを封入およびシールするように筐体に対して圧着される、冷却要素を図示する。
【0020】
【
図8】
図8は、ある実施形態による、利得媒体のレーザ励起される端部における、強化された冷却効率を伴う、
図1および4のレーザ利得デバイスのうちのいずれか一方の利得媒体を冷却するための冷却要素を断面側面図において図示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
ここで、同様の構成要素が同様の番号によって指定される、図面を参照すると、
図1は、1つの能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイス100の断面側面図である。デバイス100は、バルク固体利得媒体110と、利得媒体110を冷却するための2つの能動冷却要素120(1、2)とを含む。デバイス100は、励起レーザビーム162による端面励起のために構成される。動作時、励起ビーム162は、利得媒体110の入力端部114(1)上に入射し、利得媒体110の対向する出力端部114(2)に向かう方向において伝搬する。
【0022】
1つの使用シナリオでは、デバイス100は、固体レーザの利得媒体として機能し、その場合には、励起ビーム162によって発生される、利得媒体110内での反転分布が、出力レーザビーム164の発生につながる。出力ビーム164は、励起ビーム162と同一の方向または反対方向のいずれかにおいて励起ビーム162と共線的に伝搬する。別の使用シナリオでは、デバイス100は、固体レーザ増幅器の利得媒体として機能し、反転分布は、代わりに、励起ビーム162と共線的に利得媒体110を通して伝搬する、レーザビームの増幅につながる。本シナリオでは、出力ビーム164は、端部114のうちの一方の上に入射する入力レーザビームの増幅されたバージョンである。
【0023】
利得媒体110は、光学活性イオンでドープされる、結晶またはガラスから作製される。利得媒体110は、2つの対向する面112(1)および112(2)を伴う、スラブである。
図1に描写されないが、利得媒体110は、面112(1)および112(2)のうちのいずれか一方の上にコーティングを含んでもよい。本コーティングは、金属コーティングであり、例えば、クロム、ニッケル、および/または金を含んでもよい。冷却要素120(1)は、面112(1)上に配置され、冷却要素120(2)は、面112(2)上に配置される。各冷却要素120は、利得媒体110と熱的に結合され、そこから熱を除去する役割を果たす。いくつかの事例では、利得媒体110内の出力ビーム164の吸光は、無視できない熱負荷を発生させる。しかしながら、熱負荷は、典型的には、主として、励起ビーム162の吸光、具体的には、光学活性イオンの発振における量子欠損およびその任意の非放射損失から生じる。励起ビーム162が、利得媒体110の入力端部114(1)から出力端部114(2)に向かって伝搬するにつれて、吸光は、励起ビーム162の漸進的な減衰につながる。したがって、励起ビーム162からの熱負荷は、入力端部114(1)の近傍において最大になる。利得媒体110内の結果として生じる温度分布は、励起ビーム162の伝搬方向に対して横方向の寸法においてだけではなく、入力端部114(1)から出力端部114(2)までの利得媒体110に沿った寸法においても不均一である。
【0024】
各冷却要素120は、金属箔130と、筐体122とを含む。金属箔130は、利得媒体110の個別の面112にわたって配置される。筐体122の表面126が、筐体122が金属箔130上に冷却体チャネル140を形成するように、金属箔130に結合される。冷却体チャネル140は、入口142と、出口144とを有し、入口142から出口144への冷却体流動172を収容する。冷却体流動172は、入力端部114(1)から出力端部114(2)まで少なくともある程度金属箔130に沿って延設される。冷却体流動172の本方向は、出力端部114(2)と比較して入力端部114(1)に近接する、励起ビーム162からのより多くの熱負荷に起因して、好ましい。冷却体は、純水、水性混合物、水溶液、または非水性液体であってもよい。
【0025】
金属箔130の厚さは、200マイクロメートル(μm)未満、例えば、50~100μmの範囲内であってもよい。一実施形態では、金属箔130は、高効率を伴って利得媒体110から冷却体流動172に熱を伝導するために、銅または銅合金から作製される。銅(または銅合金)箔は、ニッケルおよび/または金で鍍着されてもよい。別の実施形態では、金属箔130は、高熱伝導率を伴う別の金属から作製される。例えば、金属箔130は、ニッケル、銀、モリブデン、タンタル、および/またはタングステンから作製される、またはそれを含んでもよい。中実金属ブロックと比較して、金属箔130は、可撓性であり、したがって、利得媒体110の表面により良好に共形化する。加えて、利得媒体110および金属箔130が、非類似の熱膨張を被ると、または利得媒体110が、不均一に膨張すると、金属箔130は、該当する場合でも、利得媒体110上に機械応力を殆ど付与しない。対照的に、中実金属ブロックは、そのようなシナリオでは、利得媒体110上に応力を付与する可能性が高い。利得媒体110上の応力は、利得媒体110の複屈折性、結果として、出力ビーム164の偏光回転または偏光解消につながり得る。偏光の変化は、典型的には、損失を引き起こし、望ましくない。
【0026】
筐体122は、冷却体チャネル140を通して流動する冷却体に対して比較的に不活性である、ステンレス鋼または別の材料、例えば、プラスチックから作製されてもよい。代替として、筐体122は、不活性材料でコーティングされてもよい。
【0027】
図2A-Cは、利得媒体110と冷却要素120のうちのいずれか一方との間の1つの例示的空間関係を図示する、一連の斜視図である。
図2Aは、上方に面する表面126を伴う、筐体122を示す。表面126は、陥凹表面124、ならびに入口142および出口144を形成する、チャネルを囲繞する。表面124はまた、
図1にも示され、利得媒体110の面112から冷却体チャネル140の反対側に存在する。
図2Bに示されるように、金属箔130は、表面126上に位置し、金属箔130と、陥凹表面124、入口142、および出口144を囲繞する、表面126との間に接触界面を伴う。金属箔130は、冷却体チャネル140が、入口142および出口144によって提供される開口部から離れて封入されるように、表面126にシールされる。表面124および金属箔130は、それぞれ、冷却体チャネル140の床および天井(または逆もまた同様)と見なされ得る。金属箔130は、随意に、それらの間で応柔性シールを用いて、表面126に対して完全にシールするために、筐体122に圧着および/または螺入されてもよい。代替として、金属箔130は、表面126にはんだ付けまたは鑞着されてもよい。
【0028】
図2Aに示される、表面126の2つの部分226P(1)および226P(2)が、冷却体チャネル140に隣接して入口142から出口144まで延設される。筐体122の関連付けられる部分は、冷却体チャネル140の両側に2つの個別の壁を形成する。利得媒体110の幅210Wは、冷却体チャネル140の幅240Wを超過する。利得媒体110は、
図2Cに示されるように、金属箔130に接触され、利得媒体110と、表面部分226P(1)および226P(2)のそれぞれの上に延在する、金属箔130との間に接触界面を伴う。金属箔130は、それによって、(a)利得媒体110の対応する面112と(b)表面部分226P(1)および226P(2)との間に固着される。利得媒体110と金属箔130との間の接触は、直接的である、またはそれらの間に配置される、1つ以上の介在層を伴って間接的であってもよい。利得媒体110と表面126との間の結合は、デバイス100内に、そうでない場合には浮動する利得媒体110の位置を係止する。
【0029】
ここで
図1および2A-Cを組み合わせて参照すると、利得媒体110が、デバイス100内の冷却要素120(1)と120(2)との間に位置付けられる。ある実施形態では、利得媒体110は、冷却要素120(1)と120(2)との間の定位置に圧着される。そのような実施形態では、各冷却要素120の表面126が、表面126上の利得媒体110の占有面積内の利得媒体110の一部の上に圧力を付与する。
【0030】
図1および2A-Cに図示される実施形態では、利得媒体110の長さ210Lは、金属箔130および表面126に沿った、冷却体チャネル140の長さ240L未満である。表面126および金属箔130上の利得媒体110の関連付けられる占有面積232が、
図2Bに示される。利得媒体110および冷却体チャネル140の長さ間の本関係は、
図3にさらに詳細に図示される。
【0031】
図3は、冷却要素120(1)のみを示し、冷却要素120(2)を示さない、デバイス100の一部の部分断面側面図である。冷却要素120(2)は、利得媒体110に関連して冷却要素120(1)に類似の性質を有するが、図示の明確化のために
図3から省略される。金属箔130および表面126に沿って延設される冷却体チャネル140の区画の長さ240Lは、利得媒体110の長さ210Lを超過する。冷却体チャネル140は、距離360(1)だけ入力端部114(1)を越えて、および距離360(2)だけ出力端部114(2)を越えて延在する。距離360のそれぞれは、1~5ミリメートル(mm)の範囲内であってもよい。本構成は、端部114(1)と114(2)との間の利得媒体110の全長の能動液体冷却を確実にする。加えて、利得媒体110が冷却要素120(1)と120(2)との間に圧着される実施形態では、本構成は、利得媒体110上の圧着圧力をその幅方向極端部分に限定する。具体的には、冷却要素120(1)および120(2)は、表面部分226P(1)および226P(2)と重複する利得媒体110の幅方向極端部分上のみに圧力を付与する。励起ビーム162が、表面部分226P(1)および226P(2)と重複しない、利得媒体110の部分に制限される限り、冷却要素120は、励起ビーム162および/または出力ビーム164を伝達する、利得媒体110の領域上に直接、外部応力を付与しないように防止される。そのようなシナリオは、例示的励起ビーム162の横方向の1/e
2強度プロファイルの幅262Wが、冷却体チャネル140の幅240W内である、
図2Cに描写される。
【0032】
図1、2A-C、および3に描写されない、代替構成では、冷却体チャネル140の長さ240Lは、利得媒体110の長さ210Lに合致する、またはさらに、端部114のうちの一方または両方の内側にあってもよい。特に、利得媒体内に励起ビーム162の強力な減衰が存在するときには、出力端部114(2)まで延々と冷却することは、不必要であり得る。加えて、冷却は、概して、入力端部114(1)に最近傍の領域において最も必要とされるが、金属箔130に沿って延設される冷却体チャネル140の区画が、冷却効率の損失を殆どまたは全く伴うことなく、入力端部114(1)のわずかに内側において開始するという実践的考慮点が、有利に作用し得る。しかしながら、本構成は、利得媒体110の活性領域上に望ましくない圧着圧力をもたらし得る。
【0033】
図4は、切り詰められた冷却体チャネル140を有する、1つのレーザ利得デバイス400の一部の部分断面側面図である。
図4は、
図3と同一の図を利用する。デバイス400は、冷却体チャネル140が入力端部114(1)および出力端部114(2)のそれぞれにおいて短縮されていることを除いては、デバイス100に類似する。金属箔130に沿って延設される冷却体チャネル140の区画の長さ240Lは、利得媒体110の長さ210L未満である。金属箔130に沿って延設される冷却体チャネル140の区画は、利得媒体110の入力端部114(1)の内側において距離460(1)を開始し、利得媒体110の出力端部114(2)の前の非ゼロの距離460(2)で終了する。距離460(1)は、ゼロ~2mmの範囲内であってもよい。距離460(2)は、1mm~利得媒体110の長さ210Lの25%の範囲内であってもよい。
【0034】
デバイス100および400のそれぞれにおいて、利得媒体110の寸法は、必要に応じて調整されてもよい(寸法は、
図2Cに示される)。通常、長さ210Lは、利得媒体110の高さ210Hを超過する。一実施形態では、幅210Wもまた、最高で5、10、またはそれを上回る倍数と同程度、高さ210Hを超過する。そのような実施形態は、
図2Cに図示されるように、例えば、レーザダイオードバーによって発生されるような非常に伸長状の励起ビーム162と互換性がある。そのような実施形態はまた、筐体122からの圧力を受けない利得媒体110の領域内に励起ビーム162と、出力ビーム164とを含有するように、
図2Cに示されるように、幅210W未満である、幅262Wによって特徴付けられる、励起ビーム162を用いて動作されてもよい。一実施例では、高さ210Hは、0.5~5mmの範囲内であり、幅210Wは、2~20mmの範囲内であり、長さ210Lは、5~20mmの範囲内である。
【0035】
図1、3、および4に示されるように、デバイス100および400のそれぞれのある実施形態はさらに、各冷却要素120の金属箔130と利得媒体110の対応する面112との間にインジウム層150を含む。インジウム層150は、金属箔130と利得媒体110の対応する面112との間の熱接触を改良する役割を果たす。インジウム層150は、金属箔130と利得媒体110との間の定位置にはんだ付けされ、インジウム層150を介した利得媒体110と金属箔130との間の良好な接触を確実にし得る。インジウム層150のはんだ付けは、デバイス100をインジウムの157℃の融解温度を超過する温度まで加熱することによって達成され得る。代替として、インジウム層150は、金属箔130と筐体122の表面126との間の定位置に保持されてもよい。本場合には、冷却体流動172の圧力が、インジウム層150を介した利得媒体110と表面126との間の熱接触を補助し得る。インジウム層150は、シートまたは箔の形態においてデバイス100/400に組み込まれてもよい。一実施形態では、インジウム層150の厚さは、50~500μmの範囲内である。
【0036】
デバイス100および400のそれぞれのものが、デバイス100/400に加えて、励起レーザ160と、冷却体送達システム170とを含む、レーザ利得システム内に実装されてもよい。
図1は、デバイス100に基づく、そのようなレーザ利得システム102を図式的に図示する。励起レーザ160が、励起ビーム162を発生させる。励起レーザ160は、様々なレーザ技術に基づき得る。一実施例では、励起レーザ160は、励起ビーム162を発生させるために、1つ以上のレーザダイオードを使用する。それらの効率、価格の手頃さ、信頼性、および使用のし易さに起因して、レーザダイオードは、多くの場合、好ましい励起レーザ源である。冷却体送達システム170は、1つ以上の流体ポンプを含んでもよく、冷却体チャネル140を通して冷却体流動172を発生させるために、各冷却要素120の筐体122に結合される。システム102はさらに、励起レーザ160および/または冷却体送達システム170の動作を統制する、コントローラ180を含んでもよい。
【0037】
デバイス100および400は、冷却要素120のうちの1つのみを含むように修正されてもよい。そのような実施形態では、省略される冷却要素120は、例えば、利得媒体110を支持するために、固定具によって取って代わられてもよい。利得媒体110は、本固定具と残りの冷却要素120との間の定位置に圧着されてもよい。
【0038】
図5は、スラブ形状の利得媒体110と各冷却要素120の冷却体チャネル140とを交差させる断面を伴う、デバイス100/400の断面端面図である。本断面端面図は、
図1および3のデバイス100および
図4のデバイス400の断面側面図に対して直交する。各冷却要素120内において、金属箔130が、冷却体チャネル140を閉鎖するように筐体122にシールされ、利得媒体110の占有面積は、各冷却要素120の表面部分226P(1)および226P(2)と重複する。各冷却要素120の冷却体チャネル140は、利得媒体110の一部を横断して幅240Wに跨架する。
【0039】
利得媒体110は、スラブの形態にあるが、デバイス100および400は、他の形状の端面励起される利得媒体、例えば、ロッド形状の利得媒体を収容するように容易に修正可能である。
図6は、ロッド形状の利得媒体を実装するためにスラブ形状の利得媒体を実装することからのデバイス100/400の1つの例示的修正を図示する。
【0040】
図6は、ロッド形状の利得媒体610に基づく、能動冷却型端面励起固体レーザ利得デバイス600の断面端面図である。デバイス600は、ロッド形状の利得媒体610を収容するように適合される、デバイス100および400のうちのいずれか一方の修正物である。ここでは、ロッドは、円形断面形状を有する。しかしながら、ロッドは、正方形形状または他の多角形形状を有し得る。デバイス600は、1つまたは2つの冷却要素620を含む。2つの冷却要素620(1)および620(2)を含むとき、これらの冷却要素は、
図6に示されるように、利得媒体610の対向する面上に配置されてもよい。(利得媒体610が、円形断面形状を伴うロッドであるとき、これらの2つの面は、利得媒体610の円筒形の外側表面の両側にある)。各冷却要素620は、利得媒体610の湾曲面に嵌合する、冷却要素120の適合物である。
【0041】
各冷却要素620は、金属箔130と、筐体622とを含む。金属箔130が、利得媒体610の一部の周囲に巻着される。筐体622および金属箔130は、利得媒体610の円周の周囲に冷却体チャネル140を協働可能に形成する。金属箔130は、利得媒体610と、冷却体チャネル140に隣接して位置する、表面部分626P(1)および626P(2)との間に固着される。デバイス100/400の冷却体チャネル140が、線形の幅240Wに跨架する一方、デバイス600の冷却体チャネル140は、角度付き径間640Aを有する。
図6に描写される実施形態では、角度付き径間640Aは、180度未満、例えば、90~170度の範囲内である。本角度付き径間640Aは、2つの冷却要素620(1)と620(2)との間、または一方の冷却要素620と他方の冷却要素620に取って代わる固定具との間での利得媒体610の圧着を可能にする。
【0042】
冷却要素620(1)および620(2)の両方を含む、デバイス600の実施形態では、冷却要素620(1)および620(2)は、2つの別個の金属箔130ではなく、共通の金属箔130を利用してもよい。デバイス600は、デバイス100に関して上記に議論されるものに類似する様式において、利得媒体610と各冷却要素620の金属箔130との間にインジウム層150を含んでもよい。
【0043】
本開示の残りは、スラブ形状の利得媒体に基づくであろう。しかしながら、
図6の構成に到達するような
図5の構成の適合物に類似する様式において、下記に開示される実施形態は、ロッド形状の利得媒体等の他の利得媒体形状に容易に拡張される。
【0044】
図7は、金属箔130が冷却体チャネル140を(入口142および出口144から離れるように)封入およびシールするように筐体122に対して圧着される、1つの冷却要素720の分解図である。冷却要素720は、冷却要素120のある実施形態であり、デバイス100および400のうちのいずれか一方内に実装されてもよい。
図7は、
図2A-Cにおいて使用されるものに類似する、斜視図において部品を示す。冷却要素720は、筐体122と、金属箔130と、ブラケット770と、随意に、インジウム層150とを含む。
図7の太い破線矢印は、冷却要素720の部品が、組み立てられるときに空間的に一体化する方法を示す。ブラケット770は、ブラケット770と表面126との間に配置される金属箔130を用いて筐体122の表面126に対して圧着される。ブラケット770は、利得媒体110の占有面積232を含有するように定寸される、開口772を形成する。いったん冷却要素720が、組み立てられると、利得媒体110は、開口772の内側の冷却要素720上に配置されてもよい。
【0045】
インジウム層150は、冷却要素720の中に統合されてもよい。1つのそのような実装では、インジウム層150が、金属箔130とブラケット770との間に圧着される。
【0046】
ブラケット770を筐体122に添着するための、多くの異なる選択肢が、存在する。一実施形態では、ブラケット770は、表面126の上に螺着または別様に圧着される。別の実施形態では、ブラケット770は、表面126を越えて延在し、ブラケット770の少なくとも一部が、端部表面722S等の筐体122の他の表面に添着される。例えば、ブラケット770は、長さ240Lに対して平行な冷却体チャネル140の長手方向寸法に沿って延設される、表面126の一部に螺着され、それに添着されるべき端部表面722S(および筐体122の類似の対向する端部表面)に沿って包接される。本実施例は、レーザビームが利得媒体110に入射し、それから出射する場合、利得媒体110の端部114におけるブラケット770のバルクを最小限化するために有利である。筐体122は、
図7に示されていない、付加的な特徴を有し、表面126よりも、筐体122の他の部分に対するブラケット770の搭載を促進してもよい。
【0047】
一実施形態では、冷却要素720は、金属箔130と表面126との間に、ゴムガスケット(例えば、Oリング)等の応柔性シール780を含む。応柔性シール780は、陥凹表面124、入口142、および出口144を囲繞し、金属箔130と表面126との間の密閉を確実にすることに役立ち得る。
図7に示されないが、応柔性シール780は、表面126内の溝内に着座されてもよい。
【0048】
図8は、出力端部114(2)と比較して、入力端部114(1)において向上された冷却効率を伴って利得媒体110を冷却するための1つの冷却要素820を図示する。冷却要素820は、冷却要素120のある実施形態であり、デバイス100および400のうちのいずれか一方の中に実装されてもよく、冷却体チャネル140の長さ240Lは、利得媒体210の長さ210Lより長い、それより短い、またはそれと同一であってもよい。
【0049】
冷却要素820の冷却体チャネル140は、利得媒体110の長手方向寸法に沿って不均一な冷却体流動速度を課すような不均一な高さ840Hを有する。具体的には、入力端部114(1)の近傍の冷却体チャネル140の高さは、冷却体流動172(
図1参照)の速度が、入力端部114(1)において、出力端部114(2)におけるものより高くなるように、出力端部114(2)の近傍の冷却体チャネル140の高さ未満である。冷却体チャネル140の本高さ変動は、励起ビーム162から最大熱負荷を受ける、入力端部114(1)の最近傍の利得媒体110の領域において冷却効率を最大限化しながら、励起ビーム162からより少ない熱負荷を受ける、利得媒体110の一部に隣接する冷却体チャネル140の下流部分内の冷却体流動インピーダンスを低減させる役割を果たす。冷却要素820は、それによって、最も必要とされる場所に効率的な冷却を提供しながら、入口142と出口144との間の冷却体圧力降下を低減させる。圧力降下は、特定の流率を達成するために使用される流体ポンプのサイズ、電力、およびコストを判定し、したがって、非常に大きい圧力降下を回避することが、有利である。
図8に描写される実施形態では、冷却体チャネル140は、入力端部114(1)から長さ840(1)の第1の区画を通して比較的に浅い高さ840H(1)を有し、次いで、出口144において高さ840H(2)に到達するまで、長さ840(2)の後続の区画内で増加する高さを有する。冷却体チャネル140の本後続の区画を通した高さの増加は、
図8に示されるように漸進的である、または段階的であってもよい。長さ840(1)は、利得媒体110内の励起ビーム162の1/eの吸光長と同等である、またはそれを超過してもよい。
【0050】
代替実施形態では、入力端部114(1)の近傍において十分な冷却を達成するために必要とされる、比較的に浅い高さ840H(1)が、冷却体チャネル140の全長に沿って維持される。本実施形態では、冷却体チャネルに沿った圧力降下は、大きすぎて、入力端部114(1)の近傍において所望の冷却体流動速度を維持することができない場合がある。本潜在的課題は、冷却要素820内で、入力端部114(1)の近傍の初期の浅い区画の後の冷却体チャネル140の高さを増加させることによって、防止される。
【0051】
一実施例では、高さ840H(1)は、1mm未満、例えば、0.1~1mmの範囲内である。高さ840H(2)は、1~5mmの範囲内であってもよい。1つの実装では、長さ840(2)に沿った冷却体チャネル140の高さは、利得媒体110内の局所的熱負荷に反比例する。
【0052】
高さ840H(1)が比較的に浅いことに起因して、高さ840H(1)を有することによって特徴付けられる、冷却体チャネル140の本第1の区画を通した冷却体流動172は、層状であってもよい。冷却体チャネル140の本第1の区画を通した冷却効率は、乱流をもたらすために突出および/または陥凹特徴848を組み込むことによって改良され得る。1つの実装では、突出特徴848が、
図8に示されるように、利得媒体110に面する筐体122の表面内に実装される。筐体122上への特徴848の位置付けは、典型的には、少なくとも、(a)金属箔130内にではなく、筐体122の材料内にそのような特徴を製造することが、より実践的であり、(b)金属箔130の均一な厚さが、利得媒体110と冷却体流動172との間のより一貫した熱伝導率を確実にする可能性が高いため、金属箔130上への特徴848の位置付けに優って好ましい。
【0053】
インジウム層150を用いた冷却要素820の性能が、実験的に評価され、インジウム層も実装する、従来の中実銅ブロックの性能と比較された。端面励起されるスラブ形状の利得媒体が、2つの個別の従来の水冷却される中実銅ブロックによって、2つの側面から冷却された。約220ワットの光学励起電力を伴って、従来の中実銅ブロックは、約100℃の利得媒体温度を維持した。同一の利得媒体が、デバイス100内に実装され、2つの冷却要素820によって冷却されたとき、より高い励起電力、すなわち、約250ワットを伴って利得媒体を励起し、さらに、約70℃のより低い利得媒体温度を維持することが、可能であった。
【0054】
本明細書の範囲から逸脱することなく、上記に開示されるレーザ利得デバイスのうちのいずれかのものが、励起ビーム162の伝搬方向に対向する方向において伝搬する冷却体流動を用いて、すなわち、出口144を介して冷却体チャネル140に進入し、入口142を介してそれから退出する冷却体を用いて動作され得る。少なくとも利得媒体110内の励起ビーム162の1/eの吸光長が、利得媒体110の長さ210L未満であるとき、本反対方向に伝搬する冷却体流動の冷却性能は、上記に議論される、共伝搬する冷却体流動のものより劣る可能性が高い。しかしながら、反対方向に伝搬する冷却体流動を用いても、レーザ利得デバイスは、依然として、利得媒体110と冷却体との間の優れた確実な熱接触、ならびに利得媒体110上の最小機械応力等の他の利点から恩恵を享受する。
【0055】
本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態の観点から上記に説明される。しかしながら、本発明は、本明細書に説明および描写される実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は、本明細書に添付される請求項のみによって限定される。
【国際調査報告】