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▶ ポリペプチド ラボラトリーズ ホールディング (ピーピーエル) アクチエボラグの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】水性固相ペプチド合成
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/04 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
C07K1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502430
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 SE2022050713
(87)【国際公開番号】W WO2023287345
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2130202-1
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】524018213
【氏名又は名称】ポリペプチド ラボラトリーズ ホールディング (ピーピーエル) アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウラス、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルードマン - オンブールジェ、オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸のカップリングが水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われる固相ペプチド合成(SPPS)に関する。水溶液は、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸または活性化Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片を十分に可溶化することができ、樹脂は、水溶液の存在下で約4mLg-1を超えて膨潤することができる。本発明はまた、SPPSから使用済み水溶液を再生するための方法も包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分および樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を提供することと、
前記樹脂に結合した前記Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片を脱保護することと、
前記活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を、前記樹脂に結合した前記脱保護Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片とカップリングさせ、それによってペプチド結合を形成することと
を含み、
前記アミド(ペプチド)カップリングが、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われ、前記水溶液が、前記活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を十分に可溶化することができ、前記樹脂が、前記水溶液の存在下で(樹脂の重量に対して)約4mLg-1を超えて膨潤することができ、それによって、前記樹脂に結合した前記アミノ酸断片を伸長する、固相ペプチド合成方法。
【請求項2】
共溶媒が極性非プロトン性共溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分が、前記カップリングに先行する別個の工程で活性化されるか、または前記活性化がインサイチュで形成され、少なくとも1つのカップリング剤(CA)の存在下で前記アミドカップリングを行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミドカップリングが、塩基、適切にはピリジンのアルキル誘導体から選択される塩基、例えばピコリン、ルチジンおよびコリジンから選択されるピリジンのアルキル誘導体ならびにそれらの任意の位置異性体から選択される塩基、具体的にはピリジンのメチル誘導体の存在下で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機共溶媒溶媒が、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N-プロピルピロリドン(NPP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-ペンチルピロリドン(NPeP)、N-ヘキシルピロリドン(NHP)、N-ヘプチルピロリドン(NHeP)、N-オクチルピロリドン(NOP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジプロピルホルムアミド(DPF)、N-ホルミルピロリジン(NFP)、N-ホルミルモルホリン(NFM)、N-メチルカプロラクタム(MCL)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-ピリミジノン(DMPU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド(DESO)、スルホラン、(1R)-7,8-ジオキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2-オン(ジヒドロレボグルコセノン、[cyrene(登録商標)]、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N,N’,N’-テトラエチルスルファミド(TES)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCl)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(BMIMBr)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(BMIMI)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(BMIMBF4)、および化学構造(1)の共溶媒
【化1】

(式中、R、RおよびRは、1~3個の炭素原子を有するアルキルから独立して選択され、Xが酸素原子である場合、1~3個の炭素原子を含む1つのアルキル基が酸素原子に結合しており、Xが窒素原子である場合、2つのアルキル基が窒素原子に結合している、またはそれらの混合物、アルキル基は1~3個の炭素原子から独立して選択される)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記極性非プロトン性共溶媒が、化学構造(1)の共溶媒
【化2】

(式中、R、RおよびRは、1~3個の炭素原子を有するアルキルから独立して選択され、Xが酸素原子である場合、1~3個の炭素原子を含む1つのアルキル基が酸素原子に結合しており、Xが窒素原子である場合、2つのアルキル基が窒素原子に結合しており、アルキル基は1~3個の炭素原子から独立して選択される)
から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
、RおよびRがすべてメチル基であり、前記酸素または窒素に結合した前記アルキル基がメチル基である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記共溶媒が、メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂がポリエチレングリコールを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記樹脂がポリスチレンおよびポリエチレングリコールを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記樹脂がポリスチレン-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂が、架橋ポリスチレンと、前記架橋ポリスチレンにエーテル結合を介して結合したポリエチレングリコールとを含むポリスチレン-ポリエチレングラフトコポリマーである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコールが、1000Da~5000Daの範囲のMWを有する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリエチレングリコールと樹脂の総重量との比が約50重量%超である、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記CAが、カルボジイミド、N-ヒドロキシルアミン系CA、ウロニウム(アミジウム)系CA、ホスホニウム系CA、酸を酸塩化物に変換する化合物、カルボン酸を対応するアシルフッ化物に変換する化合物、およびトリアジン系CAからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記CAが、DIC、DCC、EDCxHCl、HOBt、Cl-HOBt、HOAt、HOPO、Oxyma、Oxyma-B、HOSu、HBTU、TBTU、HOTU、TOTU、HCTU、TCTU、HATU、TATU、COMU、HDMA、HDMB、HDMC、BOP、PyBOP、PyOxim、PyClock、TCFH、DMCH、Pyclop、TFFH、テトラメチルアンモニウムトリフルオロメタンチオラート((MeN)SCF)、CDMT、DMTMMCl、DMTMMBF4およびDMT-Amsからなる群から選択される、請求項3または15に記載の方法。
【請求項17】
前記CAが、化合物COMU、HDCM、DMCH、TCFHおよびTFFHから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記CAが、
【化3-1】

【化3-2】

からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記CAが、
【化4】

から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基が、脂肪族アミン、芳香族アミン、ピリジンのトリメチル誘導体、イミダゾール、N-メチルイミダゾール(NMI)および無機塩基からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基が、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、N-メチルモルホリン(NMM)、ピリジンのトリメチル誘導体、ピリジン、ルチジン、およびリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはテトラアルキルアンモニウム形態のリン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩を含む無機塩基からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項22】
前記塩基が、ピコリン、ルチジンおよびコリジンなどのピリジンのトリメチル誘導体である、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分および樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を提供することと、
前記樹脂に結合した前記Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片を脱保護することと、
前記活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を、前記樹脂に結合した前記脱保護Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片とカップリングさせ、それによってペプチド結合を形成することと
を含み、
前記アミド(ペプチド)カップリングが、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われ、前記水溶液が、前記Fmoc-α-アミン保護アミノ酸またはFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を十分に可溶化することができ、前記樹脂が、前記水溶液の存在下で(樹脂の重量に対して)約4mLg-1を超えて膨潤することができ、それによって、前記樹脂に結合した伸長されたペプチド断片を形成し、前記保護アミノ酸の前記活性化が、カップリング剤および塩基の存在下で行われ、前記有機共溶媒が、構造式:
【化5】

(式中、R、R、RおよびRは、1~3個の炭素を有するアルキルから独立して選択される)を有し、
前記カップリング剤が、
【化6-1】

【化6-2】

から選択され、
前記塩基が、ピリジンのトリメチル誘導体から選択され、
前記樹脂が、スチレンとエチレングリコールとのコポリマーから選択される、固相ペプチド合成方法。
【請求項24】
前記水溶液が、約2:1~約8:1(約3:1~約6:1、約3:1~約5:1)の範囲の水と有機共溶媒との比を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
カップリング剤とFmoc-α-アミン保護アミノ酸との比、またはカップリング剤とFmoc-α-アミン保護ペプチド断片との比が、0.5から1.5までの範囲である、請求項3または23に記載の方法。
【請求項26】
塩基とカップリング剤とのモル比、または塩基とFmoc-α-アミン保護アミノ酸とのモル比、または塩基とFmoc-α-アミン保護ペプチド断片とのモル比が少なくとも約2.0である、請求項4および23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記樹脂に結合した全ペプチド断片の量に対するFmoc-α-アミン保護アミノ酸またはFmoc-α-アミン保護ペプチド断片の量が、約5.0未満、適切には約3.0未満、好ましくは約2.0未満、約1.7未満である、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
XがFまたはClから選択される、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
カップリング剤が
【化7】

から選択される、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記塩基が、メチルピリジン(ピコリン)、ジメチルピリジン(ルチジン)、トリメチルピリジン(コリジン)およびそれらの任意の位置異性体から選択される、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチド断片が、最終粗標的ペプチドのデカップリングを促進する有機リンカーによって前記樹脂に結合する、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記リンカーが芳香族有機リンカーである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記樹脂に結合した前記ペプチド断片の前記Fmoc基を、ピペリジン、4-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、2-メチルピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の第二級アミンから選択される化合物を含む水溶液の添加により除去する、請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記水溶液を前記樹脂から分離し、前記水溶液を再生操作に供して、アミド結合の形成、Fmoc除去工程および間欠的洗浄工程で再使用することができる再生水溶液を形成することをさらに含む、請求項1または23に記載の方法。
【請求項35】
前記再生が、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法の様々な工程を妨害し得る本質的にすべての塩基性および酸性化合物を除去することができる少なくとも1つの単位操作を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記単位操作が、
a)アニオン性およびカチオン性官能基を含む少なくとも1つのイオン交換樹脂、または
b)1つの第1の樹脂がアニオン性官能基を含み、第2の樹脂がカチオン性官能基を含む、少なくとも2つのイオン交換樹脂
のいずれかを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載の前記アミド結合の連続形成および一時的なα-アミノ保護Fmoc基の除去を含む、ペプチドの合成方法。
【請求項38】
前記水溶液を分離し、それによって使用済み水溶液を得ることをさらに含む、請求項1または23に記載の方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法によって得られた使用済み水溶液。
【請求項40】
請求項1から38のいずれか一項に記載の方法の様々な工程を妨害し得る本質的にすべての塩基性および酸性化合物を除去することができる少なくとも1つの単位操作を含む、請求項39に記載の使用済み水溶液の再生方法。
【請求項41】
前記単位操作が、
a)アニオン性およびカチオン性官能基を含む少なくとも1つのイオン交換樹脂、または
b)1つの第1の樹脂がアニオン性官能基を含み、第2の樹脂がカチオン性官能基を含む、少なくとも2つのイオン交換樹脂
のいずれかを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記カチオン性官能基がスルホン酸基であり、前記アニオン性官能基がトリメチルアンモニウム基である、請求項36および41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
請求項40に記載の使用済み水溶液を使用することを含む、固相ペプチド合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドカップリング中の水溶液の使用および一時的なα-アミン保護基の除去を含む固相ペプチド合成(SPPS)方法に関する。共溶媒を含む水溶液は、適切に活性化されたFmoc保護アミノ酸およびペプチド断片を可溶化することができる。さらに、ベース樹脂は、水溶液中で少なくとも4mLg-1膨潤する特性を有する。水溶液は再生にも適しているため、本発明はまた、SPPSで使用するための使用済み水溶液および使用済み溶液を再生する方法も包含する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、数アミノ酸から約60アミノ酸までを含む、天然に存在するアミノ酸および修飾アミノ酸を含む有機分子である。ペプチドとしてのタンパク質は、アミノ酸も含む。ペプチドからタンパク質を画定するために使用される1つの測定基準は、アミノ酸の数である。境界に関するコンセンサスはないが、60個を超えるアミノ酸を有する分子は通常タンパク質と呼ばれるのに対して、最大約60個のアミノ酸を有する分子はペプチドとして示される。本明細書に開示される方法および再生は、最大約60個のアミノ酸を含むペプチドに関する。
【0003】
ペプチドのアミノ酸は、しばしばペプチド結合と称されるアミド結合を介して連結される。アミド結合は、典型的には、あるアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基との縮合反応によって形成されるが、さらに他の化学反応機構もアミド結合を形成することができる。ペプチドを合成するための有用な方法としては、液相ペプチド合成(LPPS)および固相ペプチド合成(SPPS)ならびにLPPSとSPPSとの組み合わせが挙げられる。SPPS法は、1960年にBruce Merrifieldによって開拓された。SPPSは、不溶性支持体上でのアミノ酸誘導体の連続反応によりペプチド鎖を好都合に集合させることができる。
【0004】
ペプチド残基の不溶性支持体へのカップリングは、アミド結合を形成するための反応工程の間に、濾過工程および洗浄工程などのいくつかの重要な物理的および化学的プロセス操作の導入を可能にする。
【0005】
アミンとカルボン酸との間のアミド結合の形成は、熱力学的に好ましくない。カップリングされるアミノ酸のα-カルボキシル基の反応性に影響を及ぼす化合物(カップリング剤、CAなど)の存在がなければ、アミド結合形成は、商業的用途には遅すぎることが多い。反応(ペプチド結合形成)を推進するためのさらに重要な方法論は、過剰の反応物および試薬を適用することによって反応を生成物側に押し進めることであり、依然としてそうである。成長中のペプチドが不溶性の支持体/樹脂に結合し、過剰の反応物および試薬を例えば濾過によって容易に除去することを可能にするので、過剰の反応物および試薬の使用が実現可能になる。
【0006】
SPPSによって、収率を高めるための熱力学的に好ましい条件を作り出す過剰な反応物の適用が可能となるが、この戦略は同時に、反応物の過剰な消費にも関与する。各サイクルが少なくとも1つの洗浄単位操作(unit operation)を含む一連のサイクルによる支持体に結合したペプチドの連続的な伸長、および反応溶液の除去は、かなりの量の使用済み反応溶液を生成する。
【0007】
SPPSでは、アミノ酸のα-アミンは、支持体に結合したペプチド断片へのアミドカップリングの形成前に保護されなければならず、さもなければ、制御されない自己重合のために標的ペプチドの形成を制御することが不可能であろう。さらに、アミノ酸の反応性側鎖、特にアミン基を含む側鎖も慣習的に保護される。
【0008】
SPPSにおける数年以来の主要な戦略は、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基でアミノ酸のα-アミンをブロックすることであった(J.Pept.Sci.2003年9月、9巻(9号):545~52頁)。Fmoc基は、除去のために弱/中程度の塩基しか必要としない。官能基化側鎖などのアミノ酸の他の反応性基は、典型的には、トリチル(Trt)およびtert-ブチル(tBu)などの酸不安定性保護基によって保護される。Fmoc戦略は、酸条件、通常は好ましくはトリフルオロ酢酸(TFA)を用いた強い酸分解を用いて粗標的ペプチドを樹脂から切断するときに、側鎖保護基が同時に切断されることを可能にする。
【0009】
アミノ酸のα-アミンへのFmocの共有結合は、Fmoc保護アミノ酸の溶解度に影響を有する。Fmocは、疎水性芳香族フルオレン部分を含む。したがって、Fmoc保護アミノ酸は、非保護アミノ酸よりも疎水性にされる。反応溶液は、活性化Fmoc保護アミノ酸を可溶化することができなければならない。
【0010】
SPPSのさらなる重要な態様は、ペプチド樹脂の適切な膨潤である。溶媒は、樹脂の溶媒和に大きな影響を有する。したがって、膨潤に関して溶媒および樹脂の選択に注意を払わなければならない。さらに、溶媒(反応溶液)はまた、保護アミノ酸自体またはそれらの活性化形態のいずれかの可溶化など、いくつかの他の基準/特質を満たさなければならない。SPPSを首尾よく実施するためには、反応溶液および樹脂(ほんの数例を挙げると)は、いくつかの因子に関して複数の基準を満たす必要があり、そのうちのいくつかが本明細書において明確に示されている。課題は、1つの特質(例えば可溶化)の改善が他の重要な特質(例えば、樹脂膨潤特性)の悪化を示し得ることである。反応溶液の適切な組み合わせを見出すためには、α-アミド保護基および樹脂は単純なものではない(J.Pept.Sci.2016年;22巻、4~27頁)。
【0011】
Fmoc保護アミノ酸の可溶化は説明される理由から重要であるので、Fmoc SPPS中の溶媒は、Fmoc保護アミノ酸を適切に可溶化するそれらの能力に対してある程度選択されている。提示されるように、Fmoc基は疎水性であり、Fmoc保護アミノ酸をますます疎水性にする。選択される溶媒は、有機極性非プロトン性溶媒、主に塩化メチレン(DCM)N-メチルピロリドン(NMP)、NN-ジメチルホルムアミド(DMF)およびNN-ジメチルアセトアミド(DMA)から選択される。SPPSに一般的に適用される有機極性非プロトン性溶媒はすべて、ある程度発癌性、変異原性であるか、または生殖を妨害する(CMR物質)。
【0012】
提示された理由から、SPPSのための有機溶媒の体積を水で部分的に置き換えることによって減少させることが望ましいであろう。使用される任意の有機共溶媒が、例えばDMF、NMP、DCMまたはDMAなどの前述のCMR物質に属する、ヒトの健康に有害なものでないことも望ましいであろう。さらに、Fmoc-アミノ酸戦略を適用しながら、有機溶媒の一部を水で置き換えることが望ましいであろう。
【0013】
米国特許出願公開第2017/0218010号明細書は、水もしくはアルコールの溶媒または水もしくはアルコールの混合物を使用するSPPSプロセスを開示している。FmocおよびBocアミノ酸保護基は疎水性であり、水に可溶性ではない。α-アミノ保護基としてのFmocおよびBocの導入はアミノ酸をより疎水性にし、これは反応性側基が疎水性の特性を有する基で保護されている場合でさえもさらに度を増す。米国特許出願公開第2017/0218010号明細書の提案は、保護基の疎水性を低下させる親水性部分を導入することによるα-アミン保護基の修飾である。米国特許出願公開第2017/0218010号明細書は、溶媒組成物または樹脂を詳述する道をあえて採用していない。
【0014】
同様に、Hojoら(2003)は、水溶液中での固相ペプチド合成のための新しい水溶性保護剤、2-[フェニル(メチル)スルホニオ]エチル-4-ニトロ-フェニルカルボナートテトラフルオロボラート(Pms-ONp)を提供することを検討している。アミン保護アミノ酸は、Met-エンケファリンの合成において、水膨潤性架橋エトキシラート樹脂(CLEAR(登録商標))を含むSPPSにおいて使用される。Hojoらは、水と混和性の有機共溶媒を含む水溶液を示唆していない。焦点は、水溶性2-[フェニル(メチル)スルホニオ]エチル-4-ニトロ-フェニルカルボナートテトラフルオロボラートでアミノ酸を保護することによって、溶媒として水と共に使用することができる水溶性保護アミノ酸を提供することにある。
【0015】
さらに、Hojoら(2007)は、Fmoc保護アミノ酸を使用して有機溶媒を省いた水性SPPSを開示している。Fmocは疎水性であり、Fmocで保護されたアミノ酸を水溶液に難溶性にする。Fmoc保護アミノ酸をポリエチレングリコール(PEG)を含む分散液に変換することによって、Fmoc保護アミノ酸は樹脂結合ペプチド断片と反応しやすくなる。Fmoc保護アミノ酸の分散液は、酸化ジルコニウムビーズを含む遊星ボールミルを用いてPEGおよびFmoc保護アミノ酸の水溶液を激しく混合することによって形成される。高度の粉砕(495rpm、2時間)後、ビーズを除去し、265+/-10nmの粒径を有する分散液を提供する。Fmoc保護アミノ酸を分散液の形態で提供する代わりに、本発明は、アミノ酸のカップリングが、少なくとも1つの共溶媒および4mL/g-1を超えて膨潤することができる樹脂を含む水溶液中で行われ、水溶液がFmoc保護アミノ酸を可溶化することができる、SPPS方法を提案する。
【0016】
米国特許出願公開第2012/0157563号明細書はまた、Bsmoc(例えば、1,1-ジオキソベンゾ[b]チフェン-2イルメチルオキシカルボニル)およびNsmoc(例えば、1,1-ジオキソナフト[l,2-b]チオフェン-2-メチルオキシカルボニル)などのβ不飽和スルホンを含むアミノ酸保護基、ならびに前記保護基を含むアミノ酸の脱保護、およびその後の水、エタノールまたはエタノール水溶液による固体支持体に結合した脱保護ペプチドの洗浄を検討している。極めて重要な態様は、水溶性保護基を提供することである。
【0017】
特開2008-056577号明細書は、アミドカップリングの形成下で水性溶媒を使用することを含む固相ペプチド合成プロトコルを開示している。さらに詳述すると、従来のアミノ保護基は難水溶性であり、それによってアミド形成が妨げられる。水性溶媒中でのアミド形成の速度を高めるための解決法は、N末端保護アミノ酸を水性溶媒中に分散させることである。保護アミノ酸の水性分散液は、分散剤の存在下で保護アミノ酸を最大750nmの範囲の平均粒径に湿式粉砕することによって形成される。分散剤としては、PEGが例示される。メタノールおよびエタノールなどの低級アルコールが有用な非水性溶媒として挙げられる。
【0018】
本発明の1つの重要な態様は、ペプチドが水溶液中で形成されるが、標準的なFmoc α-アミン保護戦略を使用する、SPPSを提供することである。Fmocは、1990年半ば以降、SPPSを使用したペプチドの合成生産のための主要な戦略である(Curr Protoc Protein Sci.2002年2月;章:単元-18.1、doi:10.1002/0471140864.ps1801s26)。高品質のFmoc構成要素(アミノ酸および断片)は、商業的に妥当な価格で容易に入手可能である。多くの修飾誘導体がFmoc構成要素として市販されており、広範囲のペプチド誘導体への合成的アクセスを簡単に商業的に実行可能にする。
【0019】
本発明の1つの目的は、SPPS、具体的にはFmoc SPPSにおける有害な有機溶媒の減少である。
【0020】
さらなる目的は、SPPSから生じる使用済み溶媒の再生である。
【0021】
さらに別の目的は、SPPS中の溶媒の消費を減少させることである。
【0022】
さらなる目的は、商業的に有用な一次収率を依然として維持しながら、具体的にはFmoc SPPS中の過剰のα-アミン保護アミノ酸および断片の減少をもたらすことである。
【0023】
さらなる目的は、アルカリ条件下でのα-アミンの切断を含むアミン保護戦略を適用しながら、水系SPPSを提供することである。
【0024】
またさらなる目的は、容易に入手可能で商業的に妥当なα-アミン保護基、具体的にはFmoc α-アミン保護基の実施を含むアミンプロセプション(proception)戦略を適用しながら、水系SPPSを提供することである。
【発明の概要】
【0025】
本発明は、一時的なα-アミノ保護基の除去およびその後のペプチド結合の形成中に少なくとも1つの共溶媒を含む水溶液の使用を含む固相ペプチド合成(SPPS)に関する。本発明はまた、SPPS中に使用される水溶液の再生のための方法も包含する。
【0026】
より具体的には、本発明は、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分および樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を提供することと、樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を脱保護することと、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を、樹脂に結合した脱保護Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片とカップリングさせ、それによってペプチド結合を形成することとを含み、アミド(ペプチド)カップリングが、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われ、水溶液が、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を十分に可溶化することができ、樹脂が、水溶液の存在下で(ベース樹脂の重量に対して)約4mLg-1を超えて膨潤することができる樹脂から選択され、それによって、樹脂に結合した伸長されたペプチド断片を形成する、固相ペプチド合成(SPPS)方法に関する。
【0027】
一実施形態によれば、本発明は、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分および樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を提供することと、樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を脱保護することと、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を、樹脂に結合した脱保護Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片とカップリングさせ、それによってペプチド結合を形成することと
を含み、
アミド(ペプチド)カップリングが、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われ、水溶液が、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を十分に可溶化することができ、樹脂が、水溶液の存在下で(樹脂の重量に対して)約4mL/g-1を超えて膨潤することができる樹脂から選択され、それによって、樹脂に結合した伸長されたペプチド断片を形成し、保護アミノ酸の活性化が、カップリング剤および塩基の存在下で行われ、有機共溶媒が、構造式:
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、1~3個の炭素を有するアルキルから独立して選択される)
を有し、
カップリング剤が、以下の構造式
【化2-1】

【化2-2】

を有する化合物から選択され、
塩基が、ピリジンのトリメチル誘導体から選択され、
樹脂が、スチレンとエチレングリコールとのコポリマーから選択される、固相ペプチド合成方法に関する。
【0028】
本発明のなおさらなる実施形態は、反復サイクルを含む固相ペプチド合成方法であって、各サイクルが、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分および樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片と、樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を脱保護することとを含み、
アミド(ペプチド)カップリングが、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われ、水溶液が、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分を十分に可溶化することができ、樹脂が、水溶液の存在下で(樹脂の重量に対して)約4mLg-1を超えて膨潤する樹脂から選択され、それによって樹脂に結合したアミノ酸断片を伸長することができる、固相ペプチド合成方法として構成される。
【0029】
さらに、反応水溶液を首尾よく再生することができる。したがって、本発明は、SPPSプロセスからの水溶液の再生のための方法も包含する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般的なコメント
本発明では、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分が使用される。Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分という用語は、Fmoc-α-アミン保護天然アミノ酸、Fmoc-α-アミン保護修飾天然アミノ酸、Fmoc-α-アミン保護合成アミノ酸および任意のFmoc-α-アミン保護アミノ酸断片を含む。Fmoc-α-アミン保護された個々のアミノ酸に加えて、断片を成長中のペプチド残基に挿入することもできる。アミノ酸ペプチド断片は、2つ以上の個々のアミノ酸の化合物(ペプチド)を意味する。Fmoc-α-アミン保護アミノ酸、Fmoc保護アミノ酸またはFmocアミノ酸という用語が使用される場合、特に明記しない限り、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分も企図される。
【0031】
本発明の1つの特徴は、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液を提供することであり、水溶液は、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸を、それ自体で、または様々なカップリング剤の作用によって達成されるそれらの活性化形態で、十分に可溶化する。アミド(ペプチド)結合形成は熱力学的に好ましくないので、支持体に結合したアミノ酸または断片へのアミノ酸のカップリングは、通常、より熱力学的に好ましい反応条件を作り出し、収率の増加に寄与する化合物の存在下で行う必要がある。熱力学的に好ましい反応条件を提供することができる化合物は、ここではカップリング剤と呼ばれる。カップリング剤は、Fmoc保護α-アミンアミノ酸のカルボン酸官能基に影響を及ぼす。pHなどの条件に応じて、カルボン酸官能基を脱プロトン化カルボキシラートとして提供することもできる。カップリング剤は、熱力学的に好ましい反応条件を提供することに関与する唯一の化合物であり得る。しかし、カップリング剤は、本明細書ではカップリング添加剤と呼ばれる少なくとも1つのさらなる化合物と相互作用することが多い。カップリング剤および特定のアミノ酸に関与するいくつかの化学には、ラセミ化の傾向がある。ラセミ化のリスクは、ラセミ化抑制添加剤(カップリング添加剤)の導入によって減少させるかまたは排除することができる。トリアゾール1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール(HOBt)および1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール(HOAt)は、特にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカルボジイミドと組み合わせて、一般的に用いられるラセミ化抑制添加剤である。詳述したように、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸またはFmoc-α-アミン保護アミノ酸断片のカルボン酸官能基は、通常、有用なペプチド結合形成の速度を提供するために活性化される必要がある。活性化化学に依存して、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸は、多かれ少なかれ安定であり得る。活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸が十分な安定性を示す場合、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸の活性化は、別個の活性化段階において適切なカップリング剤の存在下で行うことができる。そうである場合、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸を、少なくとも1つの有機共溶媒を含む水溶液に移す。
【0032】
Fmoc-α-アミン保護アミノ酸の活性化には、いくつかのプロセスの選択肢がある。1つの可能性は、既に活性化されたFmoc-α-アミン保護アミノ酸の水溶液への添加およびその後の可溶化である。別の可能性は、本発明の水溶液などの適切な溶液中のFmoc-α-アミン保護アミノ酸の活性化、および脱保護された伸長されたペプチド断片を有する樹脂への、溶液の形態の活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸の添加である。活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸の安定性が限られている場合に有用であり得るさらなる代替法は、少なくとも1つの有機共溶媒および妥当なカップリング剤を含む水溶液中で、脱保護された伸長されたペプチド断片を有する樹脂を用いてFmoc-α保護アミノ酸をインサイチュで活性化することである。2つのアミノ酸からペプチド結合への反応機構は、通常、中間体の形成を含む。本発明の文脈において、中間体は、Fmoc-α保護アミノ酸と樹脂に結合した伸長されたペプチド断片との間の反応手順で形成される任意の化合物または一過性(擬似)化合物である。本発明の文脈において、活性化Fmoc-α保護アミノ酸は、中間体のいずれか1つであり得る。「Fmoc-α-アミン保護アミノ酸および断片を十分に可溶化することができる」という用語は、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸および/または任意の中間体の可溶化を包含する。本明細書に開示される水溶液は、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸および/または適切なタイプの活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸を可溶化する。
【0033】
Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分は、非活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸またはFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を示す。
【0034】
ブラウン運動によって樹脂に結合したアミノ酸断片を見出すために、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸は、個々のFmoc-α-アミン保護アミノ酸について適切に可溶化されなければならない。本発明の文脈における可溶化によって、ペプチド結合の形成を助長する任意の現象が理解される。1つの現象は、有用な数の個々の活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸が樹脂結合ペプチド断片の反応部位に十分に接近することを可能にする条件を提供する水溶液の能力である。
【0035】
首尾よいSPPSはまた、成長中の樹脂結合ペプチド断片の反応物への接近可能性に依存する。溶媒和は、溶媒、樹脂および標的ペプチドの種類などの様々なパラメータに依存する複雑な概念である。ベース樹脂の膨潤は、樹脂上のアミノ基に対する活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸の接近可能性および反応性の予測、ならびに樹脂結合Fmoc基の効率的な脱保護に有用である。ベース樹脂とは、結合ペプチド(断片)または任意のリンカーを含まない樹脂と理解されるべきである。ベース樹脂は、アミノ酸またはリンカーの結合を促進する化学修飾を含み得る。本発明の文脈において、膨潤は、樹脂の重量当たりの膨潤した樹脂の体積として示される。樹脂の重量当たりの膨潤した樹脂の体積は、決定した重量の樹脂を溶媒と混合することと、樹脂/溶媒混合物を室温(rt)で1時間振盪することと、その後、樹脂/溶媒混合物を1時間放置し、次に膨潤した樹脂の体積を測定することを含む手順によって生成される。
【0036】
SPPSにおいて、標的ペプチドは、樹脂に結合したペプチド断片へのアミン保護アミノ酸/断片の段階的カップリングによって形成される。(本明細書で使用される)樹脂に結合したペプチド断片という用語は、樹脂に結合した1つのアミノ酸も含む。したがって、1つの単一のFmoc-α保護アミノ酸(1番目のアミノ酸)が、おそらくはFmoc-α保護アミノ酸と樹脂との間のリンカーを用いて樹脂に結合している場合、樹脂に結合した(連結した)単一アミノ酸も、樹脂に結合したペプチド断片という用語に包含される。
【0037】
SPPSは、各サイクルが少なくともFmoc-α保護アミノ酸または断片のカップリング、および樹脂からの少なくとも過剰の反応物の分離を含む反復サイクルを含む方法論である。非標的ペプチド変異体の形成を最小限にし、それによって一次収率(分離などの反応後収率増加操作の前の収率)を増加させるために、次のアミン保護アミノ酸または断片の添加を含む次のサイクルが開始する前に、ペプチド結合形成に関与する傾向がある前のサイクルの断片のアミノ酸含有量(残留アミノ酸)を可能な限り減少させなければならない。前のサイクルからの残留アミノ酸は、残留アミノ酸をペプチド鎖伸長が不可能な修飾化合物に変換する化学修飾(例えば、カルボン酸のカルボン酸エステルへのアセチル化)によって中和することができ、化学修飾を含まないプロセス(例えば、錯化などのさらなる化学化合物との会合)によって中和することができる。さらに、残留アミノ酸は、濾過、排水などの除去によって中和されてもよく、排水後、排水液は、不要な化合物、具体的にはアミノ酸を含まない置換液で置き換えられる。多くの場合、サイクルの後に排水および/または洗浄が続く。SPPSの分野における排水および洗浄は、明確な意味を持たない。本明細書で使用される場合、排水することは、水溶液および溶質を非溶解性微粒子、具体的には樹脂粒子から分離する操作を指す。洗浄操作は、少なくとも排水およびその後の水溶液の添加を含む操作として理解される。本発明の方法(またはサイクル)は、樹脂を排水することを含んでもよい。排水した後、本発明の方法の水溶液または代替溶液を添加することができる。排水された樹脂に代替溶液を添加する場合、代替溶液は樹脂から排水される。各サイクルは、代替溶液または本発明の水溶液の複数回の添加を推測する反復的な排水を含み得る。サイクルは、(過剰な反応物が除去される)排水段階と、それに続く本発明の水溶液の添加および新しい反応物の添加を含み得る。
【0038】
本発明の一態様によれば、この方法は、反復サイクルを含む固相ペプチド合成方法であって、各サイクルが、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸または活性化Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片および樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片と、樹脂に結合したFmoc-α-アミン保護ペプチド断片を脱保護することとを含み、
アミド(ペプチド)カップリングが、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液中で行われ、水溶液が、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸または活性化Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片を十分に可溶化することができ、樹脂が、水溶液の存在下で(樹脂の重量に対して)約4mLg-1を超えて膨潤する樹脂から選択され、それによって樹脂に結合したアミノ酸断片を伸長することができる、固相ペプチド合成方法として構成され得る。
【0039】
反復サイクルは、標的ペプチドの提供に必要な任意のサイクル数までの少なくとも2サイクルを含む。
【0040】
本開示の文脈では、反応物には、樹脂に結合したペプチド断片に結合されるアミノ酸、アミノ酸断片が企図される。試薬には、反応物および反応溶液自体として定義されていない任意の他の化合物が企図され、試薬の例としては、カップリング剤、カップリング添加剤、塩基が挙げられるが、界面活性剤は含まれない。樹脂に結合したペプチド断片という用語は、樹脂に直接共有結合したペプチド断片、およびペプチド断片と樹脂との間の任意の種類のリンカーによって樹脂に結合したペプチド断片も含む。
【0041】
酸性条件は、7未満のpHを有する溶液である。塩基性条件は、7を超えるpHを有する溶液である。
【0042】
本発明の実施形態
アミド結合(ペプチド結合)が形成された反応溶液は、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液である。水溶液は水を含む溶液であると理解される。好ましくは、水溶液は、少なくとも50重量%の水、少なくとも55重量%の水、少なくとも60重量%の水、少なくとも65重量%の水、少なくとも70重量%の水、少なくとも75重量%の水、少なくとも80%重量の水を含む。「水」という用語は、飲用可能な水道水から様々な品質の精製水に及ぶ任意の品質を包含する。水溶液は、水に混和性であり、少なくとも意図された共溶媒と水との比で混和性である少なくとも1種の有機共溶媒を含むことがさらに不可欠である。本明細書における水混和性とは、2つ以上の液体(溶媒)が互いに混合して均一な溶液を形成する能力を意味する。有機共溶媒は、水と十分に(または完全に)混和性であってもよく、すなわち、有機共溶媒は、任意の共溶媒/水の比(最終溶液の重量に対する共溶媒の重量)で混和性である。有機共溶媒が水と完全に混和性である場合、共溶媒の混和性は100%(最終溶液の重量に対する共溶媒の重量)である。共溶媒は、水と完全に混和性でなくてもよい。共溶媒が水と完全に混和性でない場合、共溶媒と水の比は、共溶媒が水に十分に混和性であるように適用される。有機共溶媒は、共溶媒が水と100%の混和性を示さなくても、均一な溶液を形成することができる程度に水と混和性であれば十分である。
【0043】
一態様によれば、アミドカップリングは、分散剤の非存在下で行われる。
【0044】
さらなる態様によれば、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分は分散されていないか、または分散物の形態で提供されない。より具体的には、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分は、粉砕などの粒子化に供されない。
【0045】
さらなる態様によれば、(活性化)Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分は、少なくとも1種の有機共溶媒を含む水溶液に可溶化され、これは個々の(活性化)Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分が溶解していること、すなわち、個々の(活性化)Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分が溶媒和されているか、または溶媒分子(水および共溶媒)の層によって包囲されていることを意味する。個々の(活性化)Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分のサイズは、Fmoc基のサイズと組み合わせたそれぞれのアミノ酸部分のサイズによって支配される。個々の(活性化)Fmoc-α-アミン保護アミノ酸部分のサイズは、一般に約5nm未満である。大半の保護されていない天然に存在するアミノ酸は、1nm未満のサイズを有する。
【0046】
本発明の一態様によれば、反応物(Fmoc-α保護アミノ酸および断片)の溶解度は、表面活性化合物(界面活性剤)の存在によって増強され得る。
【0047】
SPPSの首尾よい商業的適用のためには、いくつかのパラメータが微妙に相互作用する。SPPSの1つの要件は、支持体(樹脂)に結合した成長中のペプチド断片を伸長させるために使用されるアミノ酸またはアミノ酸断片のα-アミン官能基が保護され、さもなければ標的ペプチドを形成することが不可能であることである。本発明において展開されるアミノ酸またはアミノ酸断片のα-アミン官能基は、Fmoc基によって保護される。Fmoc部分(フルオレニルメチルオキシカルボニル)は、Fmoc保護アミノ酸またはアミノ酸断片の疎水性を増加させる三環式芳香族カルバマートである。有用な反応速度を提供するためには、活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸または活性化Fmoc-α-アミン保護ペプチド断片が十分に可溶化されることが重要である。可溶化の状況におけるFmoc-α-アミン保護アミノ酸またはFmoc-α-アミン保護ペプチド断片とは、任意の非活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸、またはFmoc-α-アミン保護アミノ酸と樹脂に結合した成長ペプチド断片との間にペプチド結合が形成されるまでの任意の一過性(活性化)形態のFmoc-α-アミン保護アミノ酸を意味する。
【0048】
通常、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸またはFmoc-α-アミン保護ペプチド断片のカルボン酸官能基またはカルボキシラートアニオンは、1種またはいくつかの活性化化合物(本明細書ではカップリング剤、CAとも呼ばれる)を含む適切な活性化化学によって活性化される。
【0049】
本発明の文脈において、可溶化は、個々の活性化Fmoc-α-アミン保護アミノ酸を、支持体に結合した成長中のペプチド断片の反応部位に十分に近くに首尾よく輸送する水溶液の能力であり、好ましくは(ペプチド結合形成の)速度制限工程は、拡散/ブラウン運動ではなく化学反応の速度によって主に支配される。
【0050】
上記で詳述した理由により、Fmoc保護アミノ酸は水溶液に可溶化することが困難である。有機非プロトン性極性溶媒、具体的にはDMFは、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸を使用するSPPSにおいて選択される溶媒であり、1つの理由は、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸を可溶化する能力である。水溶液中の有機共溶媒の存在により、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸またはそれらの活性化形態の十分な可溶化が得られる。
【0051】
SPPSの商業的に首尾よい適用のためのさらなる重要なパラメータは、樹脂の膨潤である。本発明で適用される樹脂は、水と混和性の少なくとも1種の有機共溶媒を含む選択された水溶液中、少なくとも4mLg-1で膨潤するベース樹脂から選択される。膨潤参照を定量化するためのより詳細な開示は、実験部においてなされる。一態様によれば、樹脂は、約4mLg-1から約8mLg-1までの範囲の膨潤を示す能力を有する。
【0052】
保護的Fmoc基は塩基に不安定であり、したがってFmoc基は塩基性条件下で切断可能である。Fmocは塩基に不安定であるので、反応性アミノ酸側鎖は、典型的には酸に不安定な保護基(tert-ブチルなど)によって保護される。したがって、鎖伸長は、通常、中性~アルカリ条件下で行われる。樹脂に結合した標的ペプチドが形成されると、標的ペプチドは樹脂から切断される。典型的には、ペプチドの切断は酸性条件下で行われる。さらなる態様によれば、樹脂はまた、樹脂からの粗標的ペプチドの切断中に過度に膨潤しないという特性を有する。したがって、この方法で使用されるベース樹脂は、典型的には、樹脂からの切断中の酸条件の間に過度に膨潤しないが、少なくとも約4mLg-1膨潤する能力を有するべきである。膨潤は、切断に使用される溶媒とある程度相関する。通常、切断にはかなり強い酸が使用される。
【0053】
一態様によれば、ベース樹脂は、水溶液の存在下で、ペプチド樹脂切断のための条件下で、約4mLg-1超および約12mLg-1未満、適切には約10mLg-1未満で膨潤することができることを特徴とする。
【0054】
本発明の一実施形態は、アミドカップリングが少なくとも1つの活性化/カップリング剤(CA)の存在下で行われることである。本発明の一態様によれば、カップリング剤は、場合によりN-ヒドロキシルアミン系カップリング添加剤の存在下で、カルボジイミド、ウロニウム(アミジウム)系CA、ホスホニウム系CA、酸を酸塩化物に変換する化合物、カルボン酸を対応するアシルフッ化物に変換する化合物、およびトリアジン系化合物からなる群から選択される。
【0055】
本発明のさらなる態様によれば、カップリング剤は、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCxHCl)(場合により、カップリング添加剤、例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(Cl-HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール(HOAt)、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HOPO)、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル(Oxyma)、Oxyma-B、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート[O-[N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート](TBTU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HOTU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TOTU)、O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HCTU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TCTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロホスファートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’、N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TATU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)、1-[(ジメチルアミノ)(モルホリノ)メチレン]-1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-イウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HDMA)、HDMB、6-クロロ-1-((ジメチルアミノ)(モルホリノ)メチレン)-1H-ベンゾトリアゾリウム(HDMC)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファートC(BOP)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、[エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O]トリ-1-ピロリジニルホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyOxim)、6-クロロ-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス-ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyClock)、N,N,N’,N’-テトラメチルクロロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TCFH)、N-(クロロ(モルホリノ)メチレン)-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファート(DMCH)、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(Pyclop)、テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TFFH)、テトラメチルアンモニウムトリフルオロメタンチオラート((MeN)SCF)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、2,4-ジクロロ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン(DCMT)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMMCl)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムテトラフルオロボラート(DMTMMBF)および2-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジニル)トリアルキルアンモニウム塩(DMT-Ams)の存在下)からなる群から選択される。
【0056】
なおさらなる態様によれば、カップリング剤は、COMU、HDCM、6-クロロ-1-((ジメチルアミノ)(モルホリノ)メチレン)-1H-ベンゾトリアゾリウムヘキサフルオロホスファート3-オキシド(HDMC)、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TCFH)およびテトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TFFH)からなる群からの化合物から選択される。
【0057】
さらに別の態様は、以下の構造式を有する化合物からなる群からカップリング剤を選択することである。
【化3】
【0058】
本発明のさらなる態様は、以下の化合物からカップリング剤を選択することである。
【化4】
【0059】
共溶媒
本方法の基準を満たす水と混和性の任意の有機共溶媒、すなわち、Fmoc-α-アミン保護アミノ酸自体またはそれらの活性化形態を十分に可溶化し、同時に樹脂を少なくとも4mLg-1膨潤させる有機共溶媒は、共溶媒としての使用が想定され得る。水溶液はまた、任意の数および比の共溶媒を含み得る。二極性非プロトン性共溶媒が特に好ましく、具体的にはFmoc置換アミノ酸を良好に可溶化する二極性非プロトン性共溶媒が特に好ましい。
【0060】
一態様によれば、共溶媒は、約0,2から約0,5までの極性を有する。共溶媒の極性の下端は、約0,21、約0,22、約0,23、約0,24、約0,25、約0,26、約0,27、約0.28、約0,29、約0,30であり得る。共溶媒の極性の上端は、約0,49、約0,48、約0,47、約0,46、約0,45、約0,44、約0,43、約0,42、約0,42、約0,40であり得る。極性の任意の下位レベルおよび上位レベルを組み合わせてもよい。
【0061】
一態様によれば、共溶媒は、水に混和性の有機共溶媒、好ましくは有機極性非プロトン性共溶媒であり、本明細書に開示される上限極性値または下限極性値の任意の組み合わせによって与えられる任意の範囲の極性を有することをさらに特徴とする。
【0062】
好ましい二極性非プロトン性共溶媒は以下である:N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N-プロピルピロリドン(NPP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-ペンチルピロリドン(NPeP)、N-ヘキシルピロリドン(NHP)、N-ヘプチルピロリドン(NHeP)、N-オクチルピロリドン(NOP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジプロピルホルムアミド(DPF)、N-ホルミルピロリジン(NFP)、N-ホルミルモルホリン(NFM)、N-メチルカプロラクタム(MCL)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-ピリミジノン(DMPU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド(DESO)、スルホラン、(1R)-7,8-ジオキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2-オン(ジヒドロレボグルコセノン、cyrene(登録商標))、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N,N’,N’-テトラエチルスルファミド(TES)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(BMIMCl)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(BMIMBr)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(BMIMI)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(BMIMBF)、メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートを、そのそのままの(純粋な)形態で、またはRhodiaSolv(登録商標)PolarClean(PC)として公知の化合物の混合物の主要成分として含む。
【0063】
本発明の一態様によれば、有機共溶媒は、化学構造(1)
【化5】

(式中、R1、R2およびR3は、1~3個の炭素原子を有するアルキルから独立して選択され、但し、Xが酸素原子である場合、1~3個の炭素原子を含む1つのアルキル基が酸素原子に結合していることを条件とするか、もしくは、Xが窒素原子である場合、2つのアルキル基が窒素原子に結合していることを条件とする、またはそれらの混合物、アルキル基は1~3個の炭素原子から独立して選択される)を有する共溶媒から選択される。
【0064】
さらなる態様によれば、有機共溶媒は、化学構造(2)
【化6】

(式中、R、R、RおよびRは、1~3個の炭素原子を有するアルキルから独立して選択される)
を有する共溶媒から選択される。一態様によれば、構造(2)のR、R、RおよびRはメチルである。
【0065】
共溶媒は、水溶液中に任意の比で、好ましくは溶液の総体積に対して10から90% v/vの間、好ましくは20から50% v/vの間で存在し得る。
【0066】
一態様によれば、共溶媒はメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートを含む。メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートは、市販の溶媒PolarClean(登録商標)またはRhodiasolv PolarClean(登録商標)の主成分である。メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートを含む共溶媒は、2-メチルグルタロニトリル(ブタジエンのヒドロシアン化中の副生成物である)から出発するプロセスによって形成され得る。2-メチルグルタロニトリルは加水分解を受けて2-メチルグルタル酸を生成し、これが環化して2-メチルグルタル酸無水物を形成する。異なる順序での2つのカルボニル基のエステル化およびアミド化は、最終的に主にメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートの形成をもたらすが、メチル4-(ジメチルアミノ)-2-エチル-4-オキソブタノアートの位置異性体、ならびに程度は低いが2-N,N,N’,N’-ペンタメチルグルタルアミドおよびジメチル2-メチルグルタラートの形成ももたらす。
【0067】
PolarClean(登録商標)は、約80~90重量%のメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート、6~12重量%のメチル4-(ジメチルアミノ)-2-エチル-4-オキソブタノアートの位置異性体、3~7重量%の2-N,N,N’,N’-ペンタメチルグルタルアミドおよび0.5~3重量%のジメチル2-メチルグルタラートを含有する。
【0068】
さらなる態様によれば、共溶媒は、80~90重量%のメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート、6~12重量%のメチル4-(ジメチルアミノ)-2-エチル-4-オキソブタノアートの位置異性体、3~7重量%の2-N,N,N’,N’-ペンタメチルグルタルアミドおよび0.5~3重量%のジメチル2-メチルグルタラートを含む。
【0069】
カップリング剤
アミド結合形成反応のためのカップリング剤と見なされる加工助剤(例えば、Chem.Rev.2011年、111巻、6557~6602頁)は、いずれも本発明の水性SPPSでの使用を想定することができる。より具体的には、大規模でのペプチドの製造に関して、大規模用途に適し(例えば、Org.Process Res.Dev.2016年、20巻、140~177頁)、適切な熱安定性プロファイルを有する(例えば、Org.Process Res.Dev.2018年、22巻、1262~1275頁)ペプチドカップリング試薬の使用が特に有利である。さらに、水溶液中で十分に機能することが示されているペプチドカップリング試薬(例えば、Tetrahedron Lett.2017年、58巻、4391~4394頁を参照されたい。)は、本発明の水性SPPSでの使用に特に有利である。前記ペプチドカップリング剤としては、カルボジイミド、例えばジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)xHClなどが、それ自体で、または例えばN-ヒドロキシルアミン系化合物、例えばトリアゾール1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール(HOBt)、Cl-HOBt、1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール(HOAt)、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HOPO)、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル(Oxyma)、5-(ヒドロキシイミノ)1,3-ジメチルピリミジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン(Oxyma-B)、HOSuおよびN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)をベースとするいわゆるカップリング添加剤の存在下で挙げられ得るが、これらに限定されない。さらに、いわゆるウロニウム(アミジニウム)カップリング剤のいずれか、例えばHBTU、TBTU、HOTU、TOTU、HCTU、TCTU、HATU、TATU、COMU、HDMA、HDMB、HDMCも水性SPPSで使用することができる。さらに、BOP、PyBOP、PyOximおよびPyClockなどのホスホニウム試薬も同様に使用することができる。さらに、酸を酸塩化物に変換する試薬(例えば、Tetrahedron 2015年、71巻、2785~2832頁を参照されたい)のいずれか、例えばTCFH、DMCHおよびPyCloPも同様に利用することができる。さらに、カルボン酸を対応するアシルフッ化物、例えばTFFHおよびテトラメチルアンモニウムトリフルオロメタンチオラート((MeN)SCF)に変換する加工助剤(Org.Lett.2017年、19巻、5740~5743頁)も、本発明の水性SPPSにおいて同様に使用することができる。さらに、トリアジン系カップリング試薬、例えばCDMT、DMTMMCl、DMTMMBFおよびDMT-Ams(Molecules、2021年、26巻、191頁)も同様に使用することができる。当業者は、前記カップリング剤を任意の他のカップリング剤と組み合わせて使用して、本発明の水性SPPSの状況においてペプチド結合形成の速度または化学選択性を高めることができることを知っているであろう。さらに当業者は、前記カップリング剤を、Fmoc α-アミノ置換アミノ酸がインサイチュで成長中のペプチド鎖のアミノ末端と反応することができるそれらの活性化対応物に変換されることによって(すなわち、SPPSで)だけでなく、別個の容器中でも水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況において使用することができ、別個の容器中、活性化種が適切な溶液中で予め調製され、水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況においてそれ自体で使用でき、または活性化α-アミノ置換種が単離され、次に前記活性化種をそれ自体でまたは適切な共溶媒を含む適切な水溶液中でSPPS反応器に添加することができることを知っているであろう。
【0070】
カップリング添加剤
カップリング添加剤は、アミド結合形成の速度、アミド結合形成の化学選択性、またはその両方を高める目的でカップリング剤と共に使用される任意の試薬である。多数の標準的なカップリング添加剤が本発明において想定され得(例えば、Chem.Rev.2011年、111巻、6557~6602頁を参照されたい)、具体的には、ヒドロキシルアミン系のカップリング添加剤、例えば、HOBt、Cl-HOBt、HOAt、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HOPO)、Oxyma、Oxyma-B、HOSuおよびHONBまたは2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)を使用することができる。
【0071】
カップリング塩基
さらに、当業者は、Fmoc-α-アミノ置換アミノ酸をそれらの活性化された対応物に変換する上記の手段が、任意の塩基の非存在下、または任意の有機もしくは無機塩基もしくはそれらの組み合わせの存在下のいずれかで行われ得、これが、水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況においてアミド結合形成反応の速度および/または化学選択性に有益な効果を有し得ることを知っているであろう。
【0072】
したがって、さらなる実施形態によれば、アミドカップリングは塩基の存在下で行われる。
【0073】
一態様によれば、塩基(カップリング塩基)は、ピリジンのアルキル誘導体から選択される。より具体的には、塩基はピリジンのアルキル、ジアルキルおよびトリアルキル誘導体から選択され、アルキルは1~3個の炭素原子を含み、好ましくはアルキルは1または2個の炭素原子を含む。好ましくは、アルキルはメチルである。塩基は、ピリジンのメチル誘導体から選択され得る。塩基は、ピコリン、ルチジンおよびコリジンならびにそれらの任意の位置異性体から選択され得る。
【0074】
さらなる態様によれば、塩基は、コリジンおよびその任意の位置異性体から選択される。
【0075】
前記塩基としては、脂肪族アミン、例えばジイソプロピルエチルアミン(DIEA)およびN-メチルモルホリン(NMM)、芳香族アミン、例えばピリジン、ピコリン(2-メチルピリジンまたはその任意の位置異性体)ルチジン(2,6-ジメチルピリジンまたはその任意の位置異性体)、コリジン(2,4,6トリメチルピリジンまたはその任意の位置異性体)、イミダゾールまたはN-メチルイミダゾール(NMI)、および無機塩基、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはテトラアルキルアンモニウム形態の任意のリン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩が挙げられ得るが、これらに限定されない。当業者は、上述のカップリング剤および塩基を、水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況において適切な速度および化学選択性を達成することを考慮して、任意の比および等価性で、かつ任意の温度でFmoc α-アミノ置換アミノ酸と組み合わせることができることを知っている。前記アミド結合形成プロセスの反応時間は、数秒~16時間、より好ましくは10分~2時間であり得る。必要に応じて、アミド結合形成工程を繰り返すことができ(いわゆる再カップリング)、適切であると考えられる場合、アミド結合形成反応は、不溶性ポリマーが結合したペプチド樹脂上の任意の残りの遊離アミノ基が、例えば、任意の適切なカップリング剤の存在下で、無水酢酸などの適切な有機酸無水物または酢酸もしくはフェニル酢酸などの適切な有機酸の形態の適切なキャッピング剤によってキャッピングされる、いわゆるキャッピング反応を実施することによって終了させることができる。
【0076】
表面活性剤、界面活性剤
本発明の一実施形態によれば、表面活性化合物(界面活性剤)は、ペプチド結合の形成中または一時的なα-アミノ保護基の除去中に水溶液中に存在し得る。有用な界面活性剤としては、PEGを含む非イオン性界面活性化合物、例えば、(2R)-2,5,7,8-テトラメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-オール(α-トコフェロール)またはポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)に由来するポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(triton-x)、α-[[(2S)-1-(1-オキソドデシル)-2-ピロリジニル]カルボニル]-ω-メトキシ-(PS-750-M)をベースとする界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、使用される水の量に対して10% v/v未満の量で水溶液中に存在し得る。好ましくは、使用される水の量に対して<5% v/vである。
【0077】
樹脂
本発明の1つの目的は、有機溶媒、特に有害な有機溶媒の減少である。有機溶媒を減少させるための手段は、有機共溶媒を含む水溶液の導入である。本発明によれば、選択された樹脂は、水溶液中で少なくとも4mLg-1の膨潤を有する。一態様によれば、樹脂は、例えばペプチドを樹脂から切断するために使用される水溶液中で少なくとも4mLg-1であるが10mLg-1未満の膨潤を有する。
【0078】
本明細書に開示される膨潤特性、すなわち選択された水溶液中で約4ml/gを超える膨潤特性を提供する限り、多種多様な樹脂を用いることができる。
【0079】
一態様によれば、樹脂は、スチレン系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂(すなわち、アミド基を含むポリマー)などのアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリラート系樹脂、アクリラートエトキシラート系樹脂、アミノ酸系樹脂およびエチレンアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリルアミド系樹脂から選択される。
【0080】
ポリアクリルアミド系樹脂には、少なくとも3つの結合部位を含む重合アミノ酸を含む樹脂も含まれる。そのようなアミノ酸系樹脂は、ジアミノプロピオン酸、ジアミノ酪酸およびジアミノペンタン酸、ジアミノヘキサン酸のいずれか1つなどのリジン類似体を含み得る。
【0081】
さらに別の態様によれば、樹脂は親水性残基を含み、適切には、樹脂は、樹脂が本明細書に開示される水溶液中で約4ml/gを超えて膨潤することを可能にする比で親水性残基を含む。適切な疎水性モノマーまたはオリゴマーは、アルキレングリコールならびにポリアルキレングリコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコールならびにポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールである。親水性残基(モノマー(オリゴマー)は、樹脂の総重量に対して約30%超、約40超、約45%超、約50%超、約60%超、約65%超の比で親水性残基を含む樹脂中に存在する。いくつかの樹脂は、約95重量%超、約99重量%超の比で親水性残基を含む。ChemMatrix(登録商標)は、99重量%超のPEGを含むポリエチレングリコール樹脂の例である。
【0082】
多くの場合、樹脂は、適切なオリゴマーおよび/またはポリマー(例えば、PEG)ならびにリンカーによって化学的に修飾され得るコアポリマーマトリックスを含む。例えば、ポリスチレン系樹脂(および言及されたタイプの任意の他の樹脂)は、ポリスチレンを本質的に含むコアポリマーマトリックスを含む樹脂として解釈されるべきである。
【0083】
さらなる態様によれば、本明細書に開示される樹脂タイプのいずれかのコアまたは樹脂マトリックスは、親水性モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーなどの疎水性部分によって修飾される。例示的な親水性部分としては、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0084】
なおさらなる態様によれば、本明細書に開示される樹脂タイプのいずれかのポリマーマトリックスは架橋されている。例えば、ポリスチレン系樹脂は、好ましくは、0.2から5mol%までのDVBの量でジビニルベンゼン(DVB)と架橋される。
【0085】
なおさらなる態様によれば、樹脂はPEGを含む。オリゴマーおよび/またはポリマーとして存在するPEGは、ポリマーマトリックス上にグラフトされてもよい。PEG部分は、分子量が約250g/molから約1万g/molまでの形態、典型的には約300g/molから約5000g/molまでの形態を有する、数個のPEGモノマー/単位から数百個までのモノマーを含み得る。
【0086】
さらなる態様によれば、樹脂は、架橋ポリスチレンマトリックスおよびポリエチレングリコールを含むコポリマーから選択される。適切には、PEGは、好ましくはエチルエーテル基を介してマトリックスにグラフトされる。
【0087】
アミノ酸系樹脂としては、ジカルボン酸、例えばセバシン酸で適切に架橋されたポリ-3-リジン系樹脂が挙げられる。
【0088】
ポリエチレン系樹脂としては、ChemMatrix(登録商標)およびNovaPEGなどのPEG(PEG単位/モノマー)から本質的になるポリマーマトリックスを含む樹脂が挙げられる。
【0089】
PEGを含む樹脂は、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、またはエチレンアミドをベースとするポリマーマトリックスを含み得る。PEGを含む例示的な樹脂は、NovaSyn(登録商標)TG樹脂、PEGA樹脂、および架橋エトキシラートアクリラート樹脂(CLEAR)樹脂である。一態様によれば、樹脂は、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマーおよびトリメチロールプロパンエトキシラートトリアクリラートの重合によって得られるポリマーから選択される。
【0090】
なおさらなる態様によれば、樹脂は、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマーから選択される。樹脂は、適切には、ポリエチレングリコール(PEG)を含むコポリマーである。
【0091】
さらなる態様によれば、樹脂は、ポリスチレン(PS)およびポリエチレングリコール(PEG)を含むコポリマーから選択される。適切な樹脂はまた、ポリスチレンおよびポリエチレングリコールを含む粒子形態のポリマーとして定義され得る。
【0092】
一態様によれば、樹脂は、ポリスチレンおよびPEGを含む樹脂であり、PEGは、樹脂の総重量に対して約40%超、約45%超、約50%超、約60%超、約65%超の比で存在する。ポリスチレンおよびPEGを含む樹脂は、樹脂の総重量に対して約95%未満、適切には樹脂の総重量に対して約90%未満、約85%未満のPEG比を有する。
【0093】
さらなる態様によれば、樹脂は、ポリスチレンにグラフトされたポリエチレングリコール(PEG)を含む架橋ポリスチレンから選択される。これらの樹脂は、ポリスチレン(PS)ポリエチレングリコール(PEG)グラフトコポリマーとも呼ばれ得る。
【0094】
ポリスチレン(PS)ポリエチレングリコール(PEG)グラフトコポリマーは、典型的には、架橋ポリスチレンのマトリックスまたはコアを有する。PSマトリックスは、POE-PSと呼ばれるテトラエチレングリコールへのエチレンオキシドのアニオン性グラフト重合などのアニオン性グラフト共重合によって、またはNω-BocもしくはFmoc-ポリエチレングリコール酸もしくはポリエチレングリコール二酸をアミノ官能化ポリスチレンにカップリングすること(PEG:PS)によって修飾され得、それによってPEG部分が導入され、例えば、PEGがPSマトリックスへグラフトされ得る。得られたPS-PEGコポリマーは、PEGがグラフト/連結されたPSマトリックスを含む。
【0095】
PEGは、リンカーを介してポリスチレン骨格に適切に結合している。そのようなリンカーは、アルキルおよび/またはベンジルエーテルから選択され得る。
【0096】
PSなどの樹脂マトリックスは、約1000~約5000ダルトン、約1500~約4500ダルトンまで、約2000~約4000ダルトンまでの範囲の平均分子量を有するPEGで適切にグラフトされる。PS-PGグラフトコポリマーなどの樹脂マトリックスは、40~80%(w/w)、適切には50~70%の量のPEGを含み得る。
【0097】
樹脂に結合したペプチド断片は、リンカーによって樹脂に共有結合したペプチド断片を包含していた。リンカーは酸に不安定であり、リンカーが酸性条件下でペプチド断片の切断を促進すると推測されることが好ましい。
【0098】
Rink、Rinkアミド、Ramage、Sieber、2-クロロトリチルクロリド、4-メチルベンズヒドリル、Wang、ヒドロキシメチルベンゾイル(HMBA)、ヒドロキシルメチルフェノキシアセチル(HMPA)およびヒドラジノベンゾイル(HZB)などの最も一般的に使用されるリンカーを含む多種多様なリンカーを水性Fmoc(t-Bu)SPPSに使用することができる。当業者は、Fmoc/t-Bu SPPSに日常的に使用される任意のリンカー(例えば、Chem.Rev.2000年、100巻、2091~2158頁を参照されたい)を本明細書に開示される水性Fmoc/SPPSに使用できることを知っているであろう。
【0099】
樹脂からの粗ペプチドの切断
Fmoc/t-Bu SPPSの一態様は、不溶性ポリマー支持体からの標的ペプチドの脱離である。所与の標的分子の合成の状況において使用される合成戦略に応じて、支持体からのペプチドの脱離は、アミノ酸側鎖保護基の除去を伴っても伴わなくてもよい。従来のFmoc/t-Bu SPPSおよび水性Fmoc/t-Bu SPPSからそれぞれ得られる最終ペプチド樹脂は、同等の属性であるため、標準的なFmoc/t-Bu SPPS中で不溶性支持体からペプチドを脱離するために使用される任意の方法またはプロトコル(J.Pept.Sci.2016年、22巻、4頁)を、本明細書に開示される水性SPPSの文脈で使用することができる。典型的には、合成シーケンスの完了時に水性Fmoc/t-Bu SPPSからのペプチド樹脂を無害な有機溶媒(例えば、アルコール、例えばi-PrOH、エーテル、例えばジエチルエーテル、またはアルカン、例えばヘプタン、または石油エーテル)を用いて十分に洗浄し、真空中で一定重量になるまで乾燥させ、その上でこのようにして得られたペプチド樹脂を、切断の間に形成される任意の反応種を捕捉するために使用される様々な加工助剤(いわゆるスカベンジャー)の存在下でトリフルオロ酢酸(TFA)などの適切な有機酸で切断する。その後、標的粗ペプチドを、例えばEtO、i-PrO、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、4-メチルテトラヒドロピラン(4-MeTHP)、EtOAc、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルまたはそれらの任意の組み合わせなどの適切な貧溶媒を使用した沈殿によって単離する。あるいは、標的粗ペプチドは、酸切断溶液を含有する標的ペプチドを適切に中和することによって、例えば、適切な強度の適切な塩、例えば酢酸アンモニウムまたはギ酸アンモニウムの水溶液を使用して単離することができ、そこへアセトニトリル(MeCN)、EtOHまたはイソプロピルアルコール(i-PrOH)などの適切な水混和性の有機共溶媒が、所与の標的ペプチドの物理化学的属性の観点から適切であると考えられる場合に添加され得る。
【0100】
Fmoc脱保護
Fmoc α-アミノ保護基の反復的で高収率かつ高度に化学選択的な除去は、任意の首尾よいFmoc/t-Bu SPPS方法論の重要な態様である(J.Pept.Sci.2016年、22巻、4頁)。前記Fmoc除去は、多種多様な、典型的には塩基性の加工助剤によって達成することができ、水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況において、これらの加工助剤のいずれかまたはそれらの組み合わせを使用することができる。
【0101】
一態様によれば、Fmoc基は、第二級環状アミンおよび第二級非環状アミンから選択されるFmoc除去化合物の適用によって切断される。
【0102】
Fmoc除去化合物はまた、単環式第二級アミンから、より特には、窒素原子がサイクリング環構造(cycling ring structure)の一部を形成する単環式第二級アミンから選択されてもよい。
【0103】
Fmoc除去化合物はまた、ピペリジン、4-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、2-メチルピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジンから選択され得る。
【0104】
これらの加工助剤としては、ピペリジン、4-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、2-メチルピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、ジエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、エタノールアミン、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられ得るが、これらに限定されない。さらなる有用な塩基としては、4-(アミノメチル)ピペリジン(4-AMP)およびトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)2-(アミノエトキシ)エタノール(AEE)が挙げられる。当業者は、前述のFmoc脱保護剤が、不溶性ポリマー支持体上の成長中のペプチドのモル量と比較して任意の当量で使用または組み合わせられ得ることを知っており、当業者はまた、Fmoc脱保護反応の速度および化学選択性を考慮して適切であると考えられる場合に、Fmoc脱保護剤が最初にまたはFmoc脱保護の過程全体にわたって一度に添加され得ること、ならびに前記Fmoc脱保護が、Fmoc脱保護変換および化学選択性の観点から適切と考えられる任意の温度で行われ得ることも知っているであろう。前記脱保護の反応時間は、数秒~約60分、好ましくは約1分~約30分で変化し得る。さらに特に、前記Fmoc脱保護の化学選択性に関して、Fmoc脱保護反応の過程全体にわたって典型的に生じる副反応を抑制するために一般的に使用される任意の方法またはアプローチを、水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況において使用することができる。例えば、アスパルチミド関連不純物の形成を中心としたFmoc/t-Bu SPPSにおける広く一般的な副反応の発生(例えば、Tetrahedron 2011年、67巻、8595~8606頁を参照されたい)は、例えば、HOBt、Oxymaまたはギ酸などの酸剤の添加によって(Org.Lett.2012年、14巻、5218~5221頁)、Fmoc脱保護のための加工助剤としてのピペラジンなどのより弱い塩基の使用によって(Lett.Pept.Sci.,2000年、7巻、107~112頁、RSC Adv.、2015年、5巻、104417~104425頁)、十分に側鎖保護されたFmoc-Asp(X)-OH誘導体、例えばFmoc-Asp(OBno)-OH(J.Pept.Sci.2015年、21巻、680~687頁)または(S,Z)-4-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-4-カルボキシ-1-シアノ-1-(ジメチルスルホニオ)ブタ-1-エン-2-オラート(Fmoc-Asp(CSY)-OH)(Nature Comm.2020年、11巻、982頁)を使用することによって、または骨格保護ジペプチドを含有する適切なFmoc-Asp(OtBu)-OH、例えば、Fmoc-Asp(OtBu)-(Dmb)AA-OHまたはFmoc-Asp(OtBu)-(Hmb)AA-OHを使用することによって、抑制することができる。さらに、当業者は、Fmoc基の除去が、Fmoc脱保護反応の過程で遊離したジベンゾフルベン(DBF)を捕捉する適切な加工助剤によって補助され得ること、およびFmoc脱保護反応中に遊離したDBFを捕捉するのに有効な有用な薬剤が、典型的にはチオール、例えばDTT、チオフェノール、チオサリチル酸(Tetrahedron Lett.2000年、41巻、5329頁)、1-オクタンチオール(J.Peptide Sci.2002年、8巻、529~542頁)、DODT、N-アセチルシステイン、メルカプトプロピオン酸(Angew.Chem.Int.Ed.2017年、56巻、7803~7807頁)またはチオリンゴ酸(Angew.Chem.Int.Ed.2021年、60巻、7786~7795頁)であることを知っているであろう。
【0105】
洗浄
本明細書で詳述するように、SPPSは反復サイクルを含み、サイクルは洗浄段階を含む。任意のFmoc/t-Bu SPPS方法論の一態様は、Fmoc/t-Bu SPPS中の溶媒消費の大部分が前述の洗浄工程中に起こるので、Fmoc脱保護とカップリング間の洗浄ならびにカップリングとFmoc脱保護間の洗浄がどのように行われるかである。水性Fmoc/t-SPPSの1つの利点は、洗浄媒体として典型的に使用される有害な溶媒(例えば、DMFおよびNMP)が良性で安価な水で置き換えられ、それが上記のような適切な共溶媒と組み合わせて使用されることである。当業者は、洗浄に使用される水/共溶媒比が、洗浄効率を最適化し、洗浄コストを最小化するために、カップリングおよびFmoc除去にそれぞれ使用される水/共溶媒比から変化し得ること、ならびに前記間欠洗浄が、高い洗浄効率および最小化されたコストを達成することを考慮して、任意の温度で行われ得ることを知っているであろう。さらに、当業者は、洗浄の効率を高めるために様々な塩、酸および塩基を洗浄溶液に添加してもよいこと、ならびに最適な洗浄効率を達成するために、前述の洗浄をバッチモード、フローモードまたはそれらの任意の組み合わせで行うことができることを知っているであろう。さらに、当業者は、任意の種類の精製水、蒸留水または通常の水を水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況において使用できることを知っているであろう。さらに、洗浄工程は、予想される純度ならびにカップリングおよび脱保護のために選択された操作条件に応じて、数回のバッチ洗浄の繰り返しから樹脂を単純に排水することまで様々であり、多かれ少なかれ集中的であり得る。カップリング後の洗浄は、好都合には省略され得、例えば、残留する活性化アミノ酸誘導体およびキャッピング剤のクエンチによって置き換えられ得る(Green Chem.2019年、21巻、2594~2600頁)。ワンポットカップリング/脱保護は、当業者に公知の特定の条件下で可能である(国際公開第2017/070512号パンフレット)。
【0106】
再生
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の固相ペプチド合成方法から生じる使用済み溶液の再生のためのプロセスに関する。使用済み反応溶液とは、標的ペプチドを形成する繰り返しサイクルの過程で樹脂から分離された任意の溶液を意味する。
【0107】
より具体的には、再生プロセスは、本明細書に開示されるFmoc SPPS中の様々な工程に悪影響を及ぼし得る本質的にすべての塩基性および酸性化合物を除去することができる単位操作を含む。本質的にすべてとは、Fmoc SPPS中の様々な工程に悪影響を及ぼし得る、少なくとも約80重量%、より具体的には少なくとも約90重量%、適切には少なくとも約95重量%、典型的には少なくとも約99重量%の塩基性および酸性化合物を意味する。
【0108】
単位操作は、蒸留、濾過、膜分離、およびイオン交換のいずれか1つまたは組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
【0109】
適切には、再生プロセスは、イオン交換、すなわち電荷に基づく除去/分離を含む。好ましくは、イオン交換は、アニオン性およびカチオン性官能基を含む樹脂を含む。イオン交換は、アニオン性およびカチオン性官能基を含む少なくとも1つの樹脂を含み得る。しかしながら、イオン交換は、1つの第1の樹脂がアニオン性官能基を有さずにカチオン性官能基を含み、1つの第2の樹脂がカチオン性基を有さずにアニオン性官能基を含む、少なくとも2つの樹脂も含み得る。
【0110】
水性有機合成で生成される廃棄物の管理は困難である(Org.Process Res.Dev.2021年、25巻、900~915頁)。したがって、水性SPPSの状況において形成された廃棄物のリサイクルおよび再利用のための単純、安価かつエネルギー効率の高いプロセスを開発することは、真に環境に優しく費用効率の高い水性ペプチド合成方法論を可能にするために最も重要である。この目的のために、水性Fmoc/t-Bu SPPSの領域内で生成された液体廃棄物が単純な合成後処理方法論によってリサイクルされ、その際、得られた水溶液は、未使用の水性溶媒中で生成された粗ペプチドと比較して、リサイクルされた廃棄物中で生成された粗ペプチドにいかなる悪影響も及ぼすことなく、水性Fmoc/t-Bu SPPS中で再使用されるという概念が考案された(図2)。具体的には、水性SPPS廃棄物が、水性Fmoc/t-Bu SPPSプロセスの様々な工程を妨害し得るすべての酸性および塩基性化合物を除去する処理段階である、適切なイオン交換(IEX)固定相を通過する方法論が開発された。より具体的には、水性廃棄物は、カチオン交換(CEX)およびアニオン交換(AEX)樹脂または混合IEX樹脂のいずれかを通過する。続いて、有機共溶媒の含有量は、廃棄物をIEX樹脂に通過させる際に変更することができるので、水/共溶媒比が水性Fmoc/t-Bu SPPSで使用される未使用の水/共溶媒混合物と同じになるように有機共溶媒の含有量が調整される。このように処理されたSPPS廃棄物流は、その後、さらなる処理または操作なしに合成に再利用される。IEX固定相は、ペプチドおよびタンパク質のIEXで補助される下流処理において慣用的な方法によって再調整され、このように再調整されたIEX固定相は、その後、水性Fmoc/t-Bu SPPSからの廃棄物流をリサイクルするために再び使用される。あるいは、水性Fmoc/t-Bu SPPSで生成された廃棄物流は、水性廃棄物のリサイクルに一般的に使用される他の方法によって、例えば蒸留(例えば、Molecules、2020年、25巻、5264頁を参照されたい)および膜分離(例えば、ACS Macro Lett.2020年、9巻、1709頁を参照されたい)技術に基づく方法論を使用することによってリサイクルすることができる。
【0111】
再生プロセスは、Fmoc SPPSに首尾よく使用され得る再生水溶液を生成することができる。
【0112】
したがって、なおさらなる実施形態によれば、本発明はまた、本発明によって定義されるSPPS方法で使用するための再生水溶液に関する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】水性Fmoc/t-Bu SPPSの概略図である。
図2】水性Fmoc/t-Bu SPPSの状況におけるSPPS廃棄物流のリサイクルおよび再利用の概略図である。
図3】活性化剤/カップリング剤の選択の図である。A:COMU(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスファート);B:HDMC(6-クロロ-1-((ジメチルアミノ)(モルホリノ)メチレン)-1H-ベンゾトリアゾリウムTFFHヘキサフルオロホスファート3-オキシド;C:DMCH(N-(クロロ(モルホリノ)メチレン)-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファート);D:TCFH(N,N,N’,N’-テトラメチルクロロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート);E:TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジウムヘキサフルオロホスファート)。
図4】HO/PC(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのHPLCクロマトグラムである。上:ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下:Leu-エンケファリンアミド。
図5】粗Leu-エンケファリンアミドのLC-HRMS分析からのUVクロマトグラムである。上のトレース、ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下のトレース、Leu-エンケファリンアミド。
図6図5の粗Leu-エンケファリンアミドのメインピーク(Rt 13.87分)のMSスペクトル[M+H]、計算値MS[M+H]555.2926、実測値555.2923。
図7】ブランク溶媒(MeCN)のHPLCクロマトグラムである。
図8】MeCN(1.0mL)中の50μLの未使用のPC/HO(1:4)のHPLCクロマトグラムである。PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート(Rt=10.2分)の積分された面積は156.2mAU×分であった。
図9】MeCN(1.0mL)中の50μLのSPPS廃棄物のHPLCクロマトグラムである。PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート(Rt=10.2分)の積分された面積は123.6mAU×分であった。SPPS廃棄物中のPCの含有量は、約16%(v/v)であると推定された。SPPS廃棄物をそのまま表4のエントリ2 Fmoc-Gly-OH+TentaGel S NH2カップリングに使用した。
図10】MeCN(1.0mL)中のSP-ToyoPearl-650C IEX樹脂で濾過した50μLのSPPS廃棄物のHPLCクロマトグラムである。PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート(Rt=10.2分)の積分された面積は148.0mAU×分であり、このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は約19%(v/v)であると推定された。このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は、表4、エントリ3のFmoc-Gly-OH+TentaGel S NH2カップリングで使用する前に20%(v/v)に調整された。
図11】MeCN(1.0mL)中のQAE-ToyoPearl-550C IEX樹脂で濾過した50μLのSPPS廃棄物のHPLCクロマトグラムである。PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート(Rt=10.2分)の積分された面積は84.6mAU×分であり、このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は約11%(v/v)であると推定された。このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は、表4、エントリ4のFmoc-Gly-OH+TentaGel S NH2カップリングで使用する前に20%(v/v)に調整された。
図12】MeCN(1.0mL)中のSP-ToyoPearl-650CおよびQAE-ToyoPearl-550C IEX樹脂で濾過した50μLのSPPS廃棄物のHPLCクロマトグラムである。PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート(Rt=10.2分)の積分された面積は56.7mAU×分であり、このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は約7%(v/v)であると推定された。このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は、表4、エントリ5のFmoc-Gly-OH+TentaGel S NH2カップリングで使用する前に20%(v/v)に調整された。
図13】MeCN(1.0mL)中のAmberlite MB-6113 IEX樹脂で濾過した50μLのSPPS廃棄物のHPLCクロマトグラムである。PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアート(Rt=10.2分)の積分された面積は106.2mAU×分であり、このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は約14%(v/v)であると推定された。このリサイクルされたSPPS廃棄物中のPCの含有量は、表4、エントリ6のFmoc-Gly-OH+TentaGel S NH2カップリングで使用する前に20%(v/v)に調整された。
図14】リサイクルされたSPPS廃棄物中で合成された粗Leu-enkアミドのHPLCクロマトグラムである。上:ブランク(10% AcOH/40% MeCN);下:Leu-enkアミド。
図15】十分に負荷された参照Fmoc-Gly TentaGel S樹脂上のFmoc含有量の決定からの、DBFピーク(18.25分)の積分された面積(48.4mAu×分)を示す図である。表2に示すカップリング実験の変換は、得られたFmoc-Gly TentaGel S樹脂上のFmoc含有量を参照Fmoc-Gly TentaGel S樹脂上のFmoc含有量と比較することによって計算した。
図16】TG S NH樹脂でHO/NBP(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのHPLCクロマトグラムである。上 ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下、Leu-エンケファリンアミド。
図17】TG S NH樹脂でH2O/MeCN(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのHPLCクロマトグラムである。上、ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下、Leu-エンケファリンアミド。
図18】TG S NH樹脂でHO/DMPU(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのHPLCクロマトグラムである。上、ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下、Leu-エンケファリンアミド。
図19】TG S NH樹脂でHO/DMSO(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのHPLCクロマトグラムである。上、ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下、Leu-エンケファリンアミド。
図20】TG S NH樹脂でHO/NBP(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのLC-MS分析からのUVクロマトグラムである。上の図、ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下の図、Leu-エンケファリンアミド。
図21図20の粗Leu-エンケファリンアミドのメインピーク(Rt 9.74分)のMSスペクトル[M+H]、計算値MS[M+H]555.2926、実測値555.2。
図22】TG S NH樹脂でHO/MeCN(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのLC-MS分析からのUVクロマトグラムである。ブランク(10% AcOH/40% MeCN)については、図20を参照されたい。
図23図22の粗Leu-エンケファリンアミドのメインピーク(Rt 9.75分)のMSスペクトル[M+H]+、計算値MS[M+H]+555.2926、実測値555.2。
図24】TG S NH樹脂でHO/DMPU(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのLC-MS分析からのUVクロマトグラムである。ブランク(10% AcOH/40% MeCN)については、図20を参照されたい。
図25図24の粗Leu-エンケファリンアミドのメインピーク(Rt 9.74分)のMSスペクトル[M+H]+、計算値MS[M+H]+555.2926、実測値555.2。
図26】TG S NH樹脂でHO/DMSO(4:1)中で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのLC-MS分析からのUVクロマトグラムである。ブランク(10% AcOH/40% MeCN)については、図20を参照されたい。
図27図20の粗Leu-エンケファリンアミドのメインピーク(Rt 9.76分)のMSスペクトル[M+H]+、計算値MS[M+H]+555.2926、実測値555.1。
図28】TG S NH樹脂上のHO/PC(4:1)で合成した粗Leu-エンケファリンアミドのLC-HRMS分析からのUVクロマトグラムである。上のトレース、ブランク(10% AcOH/40% MeCN)、下のトレース、Leu-エンケファリンアミド。
図29図28の粗Leu-エンケファリンアミドのメインピーク(Rt 13.87分)のMSスペクトル[M+H]、計算値MS[M+H]555.2926、実測値555.2923。
【実施例
【0114】
実験の項
1.一般情報
すべての試薬、反応物および溶媒は、ペプチド合成のための原材料の標準的な供給元からのものであり、そのまま使用した。PolarClean(商標)はSolvay製であった。使用したさらなる共溶媒は、NBP、MeCN、DMPUおよびDMSOであった。すべてのカップリング試薬は、Luxembourg Bio Technologies製であった。水道水を全体を通して使用した。試験したSPPS樹脂は、以下の供給元からのものであった:Agilent(0.44mmol/gのAM PS/DVB樹脂および0.76mmol/のAmphiSpheres NH樹脂)、Rapp Polymere GmbH(0.27mmol/gのTentaGel S NH樹脂)、Sigma Aldrich(1.00mmol/gのJandaJel NH樹脂)、Hecheng(0.55mmol/gのDEG AM樹脂)、Aapptec(0.34mmol/gのNH OctaGel樹脂)およびPCAS BioMatrix(1.30mmol/gのChemMatrix NH樹脂)。
【0115】
SPPS廃棄物リサイクル実験で調べたIEX樹脂は、Tosoh Bioscience(SP-ToyoPearl-650CおよびQAE-ToyoPearl-550C)およびSuPelco(Amberlite MB-6113)製であった。
【0116】
すべてのカップリングおよびFmoc除去実験ならびにLeu-エンケファリン合成を、温度制御PLS4x6 Activo-PLS並行反応合成装置(Activotec)上の密封されたフリットシリンジ中で行った。すべての実験について、反応物の撹拌を、350rpmで振盪することによって行った。
【0117】
すべてのHPLC分析は、Waters XSelect CSH130 C18 2.5μ 4.6×150mmカラム、緩衝液としてTFA/H2O(0.1:100、A)、TFA/MeCN(0.08:100 B)、15分の勾配で100% B、0.5mL/分の流量、220nmでの検出およびカラム温度30℃を使用して、Waters Alliance装置で行った。
【0118】
LC-MS分析は、Q-Exactive orbitrap質量分析システム(Thermo、Waltham、Massachusetts、US)に接続された可変波長検出器を備えたHorizon高速液体クロマトグラフィーシステム(Thermo、Waltham、Massachusetts、US)で行った。質量分析システムは、シースESI、質量精度5ppm、分解能最大140 000ppmを使用してポジティブモードで操作した。以下の供給源設定を使用した:シースガス流量35、auxガス流量10、スイープガス流量1、スプレー電圧(kV)3.50、キャピラリ温度 250℃、SレンズRFレベル50,0およびAuxガスヒータ温度200℃。
【0119】
実験条件:カラム:Waters CSH 2.5um 4.6×150mm;カラム温度:20℃;注入量:1μL;サンプラ温度:10℃;MSモード:ポジティブ 50-3200;DAD:220nm;データレート:10Hz;検出器セル:標準セル1uL;流量:0.2ml/分;ジェットウィーバー(jet weaver):V150ミキサー;移動相A:90%水/MeCN中0.3%TFA、移動相B:10%水/MeCN中0.30%TFA。勾配(時間(分)、Bの%):0、0;1、0;42、100;47、100;47.1、0;58、0。
【0120】
LC-MS分析は、以下の実験条件を使用して、Dionex UltiMate 3000と連結したポジティブモード(ESI)のThermoscientific MSQ Plusで行った:Waters XSelectペプチドCSH 130 C18 XP 2.5μ 4.6×150mmカラム、緩衝液としてTFA/H2O(0.1:100、A)、TFA/MeCN(0.1:100 B)、10分の勾配での5% B~90% B、2.0mL/分の流量、220nmでの検出およびカラム温度30℃。
【0121】
2.異なる溶媒中でのSPPS樹脂の膨潤
rt(室温)の10mLフリットシリンジ中、1.0gの各樹脂を適切な量の記載した溶媒中で膨潤させた。ChemMatrix樹脂の膨潤の決定については、このポリマー支持体の高い膨潤特性のために0.5gを使用した。シリンジを密封し、rtで1時間振盪した後、膨潤した樹脂を含むシリンジをrtで1時間放置し、膨潤した樹脂が占める体積を決定した。
【0122】
試験した樹脂のリスト:
AM PS/DVB:アミノメチル(AM)PS/ジビニルベンゼン(DVB)
JandaJel NH:ジエチレングリコール(DEG)含有PS樹脂
DEG AM:ジエチレングリコール(DEG)含有PS樹脂
TG S NH:TentaGel S NH樹脂
AmphiSpheres NH
NH-OctaGel
ChemMatrix NH
【0123】
試験した共溶媒のリスト
PolarClean(商標)Solvay
NBP
MeCN
DMPU
DMSO
【表1】
【0124】
3.TentaGel S NH樹脂上のFmoc-Gly-OHのモデルカップリング
一般プロトコル:1.0gの0.27mmol/gのTentaGel S NH樹脂(0.27mmol)をフリットシリンジに秤量した。表2に示す反応溶媒(8mL)を樹脂に添加し、得られたスラリーをrtで1時間振盪し、排水した。次に、Fmoc-Gly-OH、カップリング剤および塩基を表2に示す量で添加し、その後、表2に示す溶媒(5mL)を添加した。シリンジを密封し、得られたスラリーを表2に記載の温度で1時間振盪することによって撹拌した。表2、エントリ5の実験では、記載された量のCOMUおよびコリジンをそれぞれ、記載された間隔でカップリング実験中に添加した。カップリング実験が完了したら、樹脂を排水し、反応溶媒(3×10mL)、NBP(5×10mL)およびi-PrOH(5×10mL)で洗浄し、真空中で一定重量になるまで乾燥させた。表2に示すカップリング変換率は、強塩基1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)の作用によってFmoc含有樹脂から遊離したジベンゾフルベン(DBF)を以前に使用されたプロトコルを用いて定量する、ペプチド樹脂上のFmoc含有量の決定方法を使用して、十分にカップリングされたFmoc-Gly TentaGel S樹脂を参照として使用して計算した。したがって、5mLのDMF中、1.0gの0.27mmol/gのTentaGel S NH樹脂(0.27mmol)を4当量のFmoc-Gly-OHおよび4当量のDIC/Oxyma(1:1)とrtで1時間カップリングさせ、続いてDMF(5×10mL)およびi-PrOH(5×10mL)で洗浄し、真空中で一定重量になるまで乾燥させることによって、十分にカップリングしたFmoc-Gly TentaGel S樹脂の試料を得た。この参照Fmoc-Gly TentaGel S樹脂上のFmoc含有量を、50.0mgの樹脂を秤量し、2%(v/v)のDBU/DMF(2mL)と共に30分間撹拌し、反応混合物をMeCNで10.0mLに希釈することによって決定した。そのように得られた溶液をHPLC法により分析した。ジベンゾフルベン(DBF)のピークを積分し(図15)、表2に示すカップリング実験で得られたFmoc-Gly TentaGel S樹脂の試料のDBFピークの参照標準(100%変換)として使用した。表2に示すカップリング実験の完了も、定性的(ニンヒドリン)色試験を用いて評価した。
表2:Fmoc-Gly-OHとTG S NH樹脂とのカップリングの評価[a]
【化7】

【表2】
【0125】
4.Fmoc-RMG TentaGel S樹脂(RMG:Ramageリンカー)のFmoc脱保護
Fmoc-RMG TentaGel S樹脂を、カップリング剤としてDICおよびOxymaを使用する、以前に報告されたプロトコルに従って、TentaGel S NH樹脂およびRamageリンカー(Fmoc-RMG-OH)から調製した(Green Chem.2019年、21巻、2594頁)。次に、表3に記載のFmoc脱保護実験を以下のように行った:1.0gの0.18mmol/gのFmoc-RMG TentaGel S樹脂(0.18mmol)をフリットシリンジに秤量した。表3に示す反応溶媒(8mL)を樹脂に添加し、得られたスラリーをrtで1時間振盪し、排水した。表3に示す溶媒中の10mLの5%(v/v)4-メチルピペリジン(4-MP)を添加し、シリンジを密封し、得られたスラリーを表3に記載の温度で15分間振盪することによって撹拌した。表3、エントリ5に記載の実験については、Fmoc除去処理を繰り返した。Fmoc除去実験が完了したら、樹脂を排水し、反応溶媒(3×10mL)、NBP(5×10mL)およびi-PrOH(5×10mL)で洗浄し、真空中で一定重量になるまで乾燥させた。表3に記載のFmoc除去変換率を、出発Fmoc-RMG TentaGel S樹脂を参照として使用し、ペプチド樹脂上のFmoc含有量の決定方法を使用して計算した。したがって、参照Fmoc-RMG TentaGel S樹脂上のFmoc含有量を、50mgの樹脂を秤量し、これを2%(v/v)のDBU/DMF(2mL)と共に30分間撹拌し、反応混合物をMeCNで10.0mLに希釈することによって決定した。そのように得られた溶液をHPLC法により分析した。ジベンゾフルベン(DBF)のピークを積分し、表3に示すFmoc除去実験で得られたH-RMG TentaGel S樹脂生成物の試料の参照標準として使用した。Fmoc除去変換率(%)を100×(H-RMG樹脂生成物のDBF面積/Fmoc-RMG樹脂出発材料のDBF面積)として計算した。
表3:Fmoc RMG TG S樹脂からのFmoc除去
【化8】

【表3】
【0126】
5.HO/共溶媒(4:1)中のLeu-エンケファリンアミドのSPPS
出発樹脂としてRMG TG S、溶媒としてHO/共溶媒(4:1)、カップリングには1.3当量のFmoc-AA-OH/TCFH/コリジン(1:1:3)、Fmoc除去には4-MP(5% v/v)を用いて、古典的なLeu-エンケファリンアミドを基質として使用した(スキーム1)。
【0127】
共溶媒は、NBP、PC、MeCN、DMPUおよびDMSOから選択した。
【0128】
1.0gの0.18 M Fmoc-RMG TentaGel S樹脂(0.18mmol)をフリットシリンジに秤量し、10mLのHO/共溶媒(4:1)を添加した。シリンジを密封し、得られたスラリーをrtで1時間振盪し、排水した。次に、以下のように、スキーム1に概説されているように、4回のアミノ酸(AA)カップリングサイクルを行った:
i)共溶媒/HO(1:4)中の10mLの5% 4-MP(v/v)を用いた、40℃で2×15分間のFmoc脱保護;
ii)4×10mLのHO/共溶媒(4:1)洗浄、それぞれ5分間。最初の3回の洗浄は40℃で行い、4回目の洗浄はrtで行った。
iii)AAカップリングを、1.3当量のFmoc-AA-OH(0.23mmol)およびTCFH(0.23mmol、65.6mg)中で秤量し、続いて3.9当量のコリジン(0.70mmol、92.8μL)および5mLのHO/共溶媒(4:1)を添加することによって行った。シリンジを密封し、得られたスラリーをrtで1時間撹拌し、排水した。使用したAAの量は以下の通りであった:1回目のAAサイクル、Fmoc-Leu-OH、81.3mg;2回目のAAサイクル、Fmoc-Phe-OH、90.7mg;3回目のAAサイクル、Fmoc-Gly-Gly-OH、85.1mg;4回目のAAサイクル、Fmoc-Tyr(t-Bu)-OH、107.5mg;
iv)1×10mLの共溶媒/HO(1:4)で洗浄、rtで5分間。
【0129】
次に、Fmoc脱保護および4×10mLのHO/共溶媒(4:1)洗浄をi)およびii)で上述したように行い、続いて4×10mLのi-PrOH洗浄を行った。最終樹脂を真空中で一定重量まで乾燥させた。
【0130】
O/NBP(4:1)(表4、エントリ1)中で行った合成により、0.96gのLeu-エンケファリンRMG TentaGel Sペプチド樹脂を得た。合成中、すべてのカップリングおよびFmoc脱保護の進行を定性的比色試験(ニンヒドリン)によってモニターし、それによって得られたペプチド樹脂の総量がわずかに減少した。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド10.9mg(88%)を得た。
【0131】
O/PC(4:1)(表4、エントリ2)中で行った合成により、1.06gのLeu-エンケファリンRMG TentaGel Sペプチド樹脂を得た。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド9.7mg(85%)を得た。
【0132】
O/MeCN(4:1)(表4、エントリ3)中で行った合成により、0.98gのLeu-エンケファリンRMG TentaGel Sペプチド樹脂を得た。合成中、すべてのカップリングおよびFmoc脱保護の進行を定性的比色試験(ニンヒドリン)によってモニターし、それによって得られたペプチド樹脂の総量がわずかに減少した。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド10.8mg(88%)を得た。
【0133】
O/DMPU(4:1)(表4、エントリ4)中で行った合成により、0.97gのLeu-エンケファリンRMG TentaGel Sペプチド樹脂を得た。合成中、すべてのカップリングおよびFmoc脱保護の進行を定性的比色試験(ニンヒドリン)によってモニターし、それによって得られたペプチド樹脂の総量がわずかに減少した。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド8.7mg(70%)を得た。
【0134】
O/DMSO(4:1)(表4、エントリ5)中で行った合成により、0.96gのLeu-エンケファリンRMG TentaGel Sペプチド樹脂を得た。合成中、すべてのカップリングおよびFmoc脱保護の進行を定性的比色試験(ニンヒドリン)によってモニターし、それによって得られたペプチド樹脂の総量がわずかに減少した。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド11.1mg(88%)を得た。
【表4】
【0135】
生成したSPPS廃棄物を含むHO/PCの総量は約370mLであった。最終ペプチド樹脂のi-PrOH洗浄からの洗液は、HO/PC含有SPPS廃棄物と共にプールされなかった。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド9.7mg(85%)を得た。粗生成物のHPLC純度は86%であり(図4および表6)、標的ペプチドの同一性はLC-HRMSによって確認した(図5および6ならびに表15)。
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】
【0136】
スキーム1.HO/共溶媒(4:1)中のLeu-エンケファリンアミドのSPPS。試薬および条件:i.5%の4-MP、2×15分、40℃;ii.溶媒洗浄;iii.1.3当量のFmoc-AA-OH/TCFH/コリジン(1:1:3)、1時間、rt;iv.i-PrOH洗浄および真空乾燥;v.a)TFA/TIS/HO(90:5:5)、2時間、rt、b)EtO沈殿
【化9】

【表15】
【0137】
6.リサイクルされたSPPS廃棄物中のFmoc-Gly-OHとTentaGel S NH樹脂とのカップリング
実験の項の項5に記載されているLeu-エンケファリンアミド合成からのSPPS廃棄物のリサイクル:
存在する不溶物を除去するために、SPPS廃棄物を真空吸引下でセライトパッドで濾過した。次に、5.0gのIEX樹脂をブフナー漏斗に入れ、水(3×50mL)で洗浄した。次に、SPPS廃棄物の20mLのアリコートを洗浄したIEX樹脂に適用し、真空吸引下で濾過した。4つの実験を行った:
i)SPPS廃棄物をSP-ToyoPearl-650C IEX樹脂で濾過した(表16、エントリ3)。
ii)SPPS廃棄物をQAE-ToyoPearl-550C IEX樹脂で濾過した(表16、エントリ4)。
iii)SPPS廃棄物をSP-ToyoPearl-650CおよびQAE-ToyoPearl-550C IEX樹脂で濾過した(表4、エントリ5)。
iv)SPPS廃棄物をAmberlite MB-6113 IEX樹脂で濾過した(表16、エントリ6)。
【0138】
実験i)~iv)から得られた濾液をHPLCによって分析し、こうして得られたクロマトグラム(図10~13)を、未使用のHO/PC(図8)およびSPPS廃棄物(図9)のクロマトグラムとそれぞれ比較した。IEX樹脂で濾過したSPPS廃棄物の試料中のPCの含有量を、PCの主成分であるメチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノアートの量を、参照標準として未使用のPC/HOの試料(図8)を使用して定量することによって決定した。Fmoc-Gly-OHとTentaGel S NH樹脂との試験カップリングにおいてSPPS廃棄物のリサイクルされた試料を使用する前に、PCの含有量を未使用のHO/PC(4:1)と同じ含有量に調整した。
表16:リサイクル廃棄物中のFmoc-Gly-OHとTG S NH樹脂とのカップリング[a]
【化10】

【表16】
【0139】
7.リサイクルされたSPPS廃棄物中のLeu-エンケファリンアミドのSPPS
合成は、項5に記載したのと同じ方法で行った。使用したスケールは元のスケールの50%であった、すなわち、0.5gの0.18M Fmoc-RMG TentaGel S出発樹脂(0.09mmol)を使用した。反応時間および温度を同じに保ちながら、試薬、反応物および溶媒のすべての量をそれに応じてスケールダウンした。必要なPC/HO(1:4)を、項6に記載される手順に従って得た。合成が完了したら、最終樹脂をi-PrOHで洗浄し、真空中で一定重量まで乾燥させて、0.53gのLeu-エンケファリンアミドRMG TentaGel Sペプチド樹脂を得た。SPPS廃棄物を含むHO/PCの総量は約185mLであった。100mgのLeu-エンケファリンアミド樹脂をフリットシリンジに秤量し、1.0mLのTFA/TIS/HO(90:5:5)を添加し、得られたスラリーをrtで2時間振盪した。使用済み樹脂を濾別し、2×0.5mLのTFAで洗浄した。合わせた揮発性物質を真空中で除去し、粗ペプチドを2×20mLのジエチルエーテル(EtO)によって沈殿させ、粗Leu-エンケファリンアミド9.6mg(84%)を得た。粗生成物のHPLC純度は86%(図13および表17)であった。
【表17】

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【国際調査報告】