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特表2024-528643粒子ビーム発生装置に用いられるターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】粒子ビーム発生装置に用いられるターゲット
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240723BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20240723BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240723BHJP
   G21G 4/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61N5/10 H
G21K1/00 N
G21K5/08 N
G21G4/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502471
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2022105408
(87)【国際公開番号】W WO2023284772
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110807267.1
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼渊豪
(72)【発明者】
【氏名】林峻霆
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC07
4C082AE01
4C082AG01
(57)【要約】
本発明は、中性子捕捉療法システム及び粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットを提供し、ターゲットの放熱性能を向上させ、発泡を減少させ、ターゲットの耐用年数を延長することができる。本発明の中性子捕捉療法システムは、中性子発生装置及びビーム整形体を含み、中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、加速器により加速して発生した荷電粒子ビームは、ターゲットと作用して中性子ビームを発生させ、ターゲットは、荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させる作用層と、前記荷電粒子ビームによる発泡を抑制する発泡抑制層と、第1放熱層及び第2放熱層とを含み、第1放熱層は、作用層に蓄積された熱量を第2放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ第2放熱層で冷却媒体により熱量を排出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させる作用層と、荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の後に位置し、かつ前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記作用層に蓄積された熱量を放熱層に伝導する熱伝導層と、熱量を排出する前記放熱層とを含む、ことを特徴とする粒子ビーム発生装置に用いられるターゲット。
【請求項2】
前記熱伝導層は、前記作用層と前記発泡抑制層との間に位置し、前記放熱層に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項3】
前記熱伝導層及び前記放熱層は、前記発泡抑制層を囲み、前記熱伝導層又は前記放熱層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される、ことを特徴とする請求項2に記載のターゲット。
【請求項4】
前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する、ことを特徴とする請求項3に記載のターゲット。
【請求項5】
前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金である、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項6】
荷電粒子ビームのエネルギーは、2.2MeV~3MeVであり、前記作用層の厚さは、49μm~189μmである、ことを特徴とする請求項5に記載のターゲット。
【請求項7】
前記発泡抑制層の材料は、Nb、Ta、Pd、V、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項8】
前記熱伝導層及び前記放熱層の材料は、Cu、Fe、Al、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項9】
前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記酸化防止層、作用層、熱伝導層、発泡抑制層及び放熱層は、荷電粒子ビームの入射方向に沿って順に設置される、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項10】
前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心垂線を有し、中心垂線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離及び前記酸化防止層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離及び前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい、ことを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項11】
前記発泡抑制層の厚さは、5μm~50μmであり、前記熱伝導層及び前記放熱層の厚さは、5μm~50μmであり、前記酸化防止層の厚さは、5nmよりも大きい、ことを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項12】
前記酸化防止層の材料は、Al、Ti、それらの合金及び化合物又はステンレス鋼のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項9に記載のターゲット。
【請求項13】
前記酸化防止層、前記作用層、前記熱伝導層及び前記発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工される、ことを特徴とする請求項12に記載のターゲット。
【請求項14】
前記酸化防止層は、高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される、ことを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項15】
前記高分子フィルムは、以下の分子構造を有するポリイミドである、ことを特徴とする請求項14に記載のターゲット。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射システムに用いられるターゲットに関し、特に、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、例えば、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかしながら、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路での数多くの正常組織に損傷を与え、また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法は、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が高くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を軽減するすために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の概念が、放射線療法に適用され、また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などの、生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている。このうち、中性子捕捉療法は、上記2つの概念を組み合わせたものであり、例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線に比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
加速器を用いるホウ素中性子捕捉療法では、加速器を用いるホウ素中性子捕捉療法は、加速器により陽子ビームを、ターゲットの原子核間クーロン斥力を克服するのに十分なエネルギーまで加速し、ターゲットと核反応を発せさせて中性子を発生させるため、中性子を発生させる過程においてターゲットは、非常に高いエネルギーレベルの加速陽子ビームにより照射され、温度が大幅に上昇するとともに、金属部分が発泡しやすいことで、ターゲットの耐用年数に影響を与える。
【0005】
したがって、上記技術的課題を解決するために、新たな技術手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係る、中性子ビーム発生装置に用いられるターゲットは、荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させる作用層と、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の後に位置し、かつ前記荷電粒子ビームによる発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する放熱層と、前記作用層における熱量を前記放熱層に伝導する熱伝導層とを含む。
【0007】
好ましくは、前記熱伝導層は、前記作用層と前記発泡抑制層との間に設置され、前記放熱層に接続され、発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長し、熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。
【0008】
さらに、前記熱伝導層及び前記放熱層は、前記発泡抑制層を囲み、前記放熱層又は前記熱伝導層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。
【0009】
さらに、前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する。
【0010】
好ましくは、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記放熱層及び熱伝導層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金である。
【0011】
好ましくは、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0012】
好ましくは、前記ターゲットは、作用層の酸化を防止し、前記作用層を空気から隔離する酸化防止層をさらに含み、前記酸化防止層、作用層、熱伝導層、発泡抑制層及び放熱層は、荷電粒子ビームの入射方向に沿って順に設置される。
【0013】
さらに、前記作用層、熱伝導層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工され、前記酸化防止層は、フィルムを形成する方式で前記作用層に加工されるか又は高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。
【0014】
さらに、前記酸化防止層は、Al、Al又はポリイミドで製造され、酸化防止層により、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮される。
【0015】
さらに、前記ポリイミドは、以下の分子構造式を有する。
【化1】
【0016】
本発明の第2態様に係る、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットは、前記粒子ビームを発生させる作用層と、前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する第1放熱層及び第2放熱層とを含み、前記発泡抑制層は、前記第1放熱層と前記第2放熱層との間に設置され、前記第1放熱層は、前記作用層における熱量を前記第2放熱層に伝導する。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、第1放熱層を設置して、作用層に蓄積された熱量を第2放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ第2放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長し、熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。
【0017】
好ましくは、前記第1放熱層は、前記作用層と前記発泡抑制層との間に設置され、かつ前記第2放熱層に接続されることにより、作用層との接触面積が大きく、かつ熱量を第2放熱層に迅速に伝導することができる。
【0018】
さらに、前記第1放熱層及び前記第2放熱層は、前記発泡抑制層を囲み、前記第1放熱層又は前記第2放熱層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。
【0019】
さらに、前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する。
【0020】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記酸化防止層、作用層、第1放熱層、発泡抑制層及び第2放熱層は、順に設置される。酸化防止層により、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮される。
【0021】
さらに、前記作用層、第1放熱層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記第2放熱層に順に加工され、前記酸化防止層は、フィルムを形成する方式で前記作用層に加工されるか又は高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。
【0022】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離及び前記酸化防止層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記第1放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記第2放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0023】
さらに、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記第1放熱層及び第2放熱層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金であり、前記酸化防止層の材料は、Al、Al又はポリイミドである。
【0024】
さらに、前記ポリイミドは、以下の分子構造式を有する。
【化2】
【0025】
本発明の第3態様に係る、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットは、前記粒子ビームを発生させる作用層と、前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する第1放熱層及び第2放熱層とを含み、前記第1放熱層及び第2放熱層は、互いに接続され、前記第1放熱層は、前記作用層と前記発泡抑制層との間に設置される。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、第1放熱層を設置して、作用層に蓄積された熱量を第2放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ第2放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長し、第1放熱層は、作用層との接触面積が大きく、かつ熱量を第2放熱層に迅速に伝導することができる。
【0026】
好ましくは、前記第1放熱層及び前記第2放熱層は、前記発泡抑制層を囲み、前記第1放熱層又は前記第2放熱層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。
【0027】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記酸化防止層、作用層、第1放熱層、発泡抑制層及び第2放熱層は、順に設置される。酸化防止層により、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮される。
【0028】
さらに、前記作用層、第1放熱層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記第2放熱層に順に加工され、前記酸化防止層は、フィルムを形成する方式で前記作用層に加工されるか又は高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。
【0029】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離及び前記酸化防止層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記第1放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記第2放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0030】
さらに、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記第1放熱層及び第2放熱層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金であり、前記酸化防止層の材料は、Al、Al又はポリイミドである。
【0031】
さらに、前記ポリイミドは、以下の分子構造式を有する。
【化3】
【0032】
本発明の第4態様に係る、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットは、高分子フィルムである酸化防止層と、入射された荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させる作用層と、前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、放熱層とを含み、酸化防止層が前記作用層を空気から隔離することにより、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができる。
【0033】
好ましくは、前記高分子フィルムの材料は、以下の分子構造式を有するポリイミドである。
【化4】
【0034】
好ましくは、前記酸化防止層は、フィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。さらに、前記酸化防止層の厚さは、5nmより大きい。
【0035】
好ましくは、前記ターゲットは、熱伝導層をさらに含み、発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長し、前記発泡抑制層は、前記放熱層と前記熱伝導層との間に設置され、前記熱伝導層は、前記放熱層に接続され、前記放熱層又は前記熱伝導層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。
【0036】
さらに、前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する。さらに、前記熱伝導層の厚さは、5μm~50μmである。
【0037】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心垂線を有し、中心垂線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離及び前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0038】
さらに、前記作用層、前記熱伝導層及び前記発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工される。
【0039】
さらに、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記熱伝導層及び前記放熱層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金である。さらに、前記作用層は、厚さが49μm~189μmであり、エネルギーが2.2MeV~3MeVの陽子ビームと十分に反応し、γ線による汚染を低減し、厚すぎることによるエネルギー蓄積を引き起こしてターゲットの放熱性能に影響を与えることがなく、前記発泡抑制層は、前記荷電粒子ビームによる発泡を抑制し、かつ厚さが5μm~50μmであるように構成され、入射された荷電粒子ビームによりターゲット中に生成した水素を迅速に拡散して、水素の集中度を低下させるか又は水素を外部に放出し、入射された荷電粒子ビームによる発泡を効果的に抑制することにより、ターゲットの発泡による変形を回避するか又は減少させ、ターゲットの耐用年数を延長することができる。
【0040】
本発明の第5態様に係る、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットの基材は、前記粒子ビームを発生させる過程における前記ターゲットの発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する第1放熱層及び第2放熱層とを含み、前記発泡抑制層は、前記第1放熱層と第2放熱層の間に設置され、かつ前記第1放熱層は、前記第2放熱層に接続される。
【0041】
好ましくは、前記第1放熱層及び前記第2放熱層は、前記発泡抑制層を囲み、前記第1放熱層又は前記第2放熱層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。さらに、前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する。
【0042】
好ましくは、前記第1放熱層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記第2放熱層に順に加工される。
【0043】
好ましくは、前記基材は、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記第1放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記第2放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0044】
好ましくは、前記第1放熱層及び第2放熱層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金である。
【0045】
本発明の第6態様に係る中性子捕捉療法システムは、中性子発生装置及びビーム整形体を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器により加速して発生した荷電粒子ビームは、前記ターゲットと作用して中性子ビームを発生させ、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射線遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットにより発生した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速し、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に余計な線量を与えることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射線遮蔽体は、前記ビーム出口を囲んで設置され、非照射領域の正常組織への線量を減少させるために、しみ出る中性子及び光子を遮蔽し、前記ターゲットは、荷電粒子ビームと作用して前記中性子ビームを発生させる作用層と、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の後に位置し、かつ前記荷電粒子ビームによる発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記発泡抑制層の後に位置し、かつ前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する放熱層と、前記作用層の熱量を前記放熱層に伝導する熱伝導層とを含む。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長する。
【0046】
好ましくは、前記熱伝導層は、前記作用層と前記発泡抑制層との間に設置され、かつ前記放熱層に接続されることにより、作用層との接触面積が大きく、かつ熱量を放熱層に迅速に伝導することができる。
【0047】
好ましくは、前記放熱層及び前記熱伝導層は、前記発泡抑制層を囲み、かつ前記熱伝導層は、前記放熱層に接続される。熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。さらに、前記放熱層又は前記熱伝導層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。さらに、前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する。
【0048】
好ましくは、前記発泡抑制層は、発泡を抑制する材料、例えば200℃での水素拡散係数が10E-6cm/s以上の材料で製造され、さらに、前記発泡抑制層の材料は、Nb、Ta、Pd、V、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含み、前記放熱層及び熱伝導層は、熱伝導材料で製造され、さらに、前記放熱層及び熱伝導層の材料は、Cu、Fe、Al、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0049】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記酸化防止層は、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の前に位置し、酸化防止層により、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮され、さらに、前記酸化防止層の材料は、Al、Ti、それらの合金及び化合物又はステンレス鋼のうちの少なくとも1種を含む。
【0050】
さらに、前記酸化防止層、前記作用層、前記熱伝導層、前記発泡抑制層及び前記放熱層は、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って順に設置される。
【0051】
さらに、前記作用層、熱伝導層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工され、前記酸化防止層は、フィルムを形成する方式で前記作用層に加工されるか又は高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。さらに、前記酸化防止層、作用層、熱伝導層及び発泡抑制層の材料を真空環境で順にガスに蒸発させて前記放熱層に堆積することにより、ターゲットの各層の厚さを正確に制御することができる。
【0052】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離及び前記酸化防止層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0053】
さらに、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記荷電粒子ビームは、陽子ビームであり、前記放熱層及び熱伝導層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金であり、前記酸化防止層の材料は、Al、Al又はポリイミドである。
【0054】
さらに、前記ポリイミドは、以下の分子構造式を有する。
【化5】
【0055】
さらに、前記陽子ビームは、エネルギーが2.2MeV~3MeVであり、リチウムターゲットと高い作用断面を生成することができるとともに、多すぎる高速中性子を発生させず、より高い品質のビームを得て、前記作用層は、厚さが49μm~189μmであり、陽子と十分に反応することができ、γ線による汚染を低減し、厚すぎることによるエネルギー蓄積を引き起こしてターゲットの放熱性能に影響を与えることがなく、前記発泡抑制層は、厚さが5μm~50μmであり、入射された荷電粒子ビームによりターゲット中に生成した水素を迅速に拡散して、水素の集中度を低下させるか又は水素を外部に放出し、入射された荷電粒子ビームによる発泡を効果的に抑制することにより、ターゲットの発泡による変形を回避するか又は減少させ、ターゲットの耐用年数を延長することができ、前記酸化防止層の厚さは、5nmより大きく、前記熱伝導層の厚さは、5μm~50μmであり、前記ターゲットの耐用年数は、200mA-h以上である。
【0056】
好ましくは、中性子捕捉療法システムは、治療台及びコリメータをさらに含み、前記中性子発生装置により発生した中性子ビームは、前記ビーム整形体を通して前記治療台上の患者に照射され、前記患者とビーム出口との間には、前記ビーム出口から出たビームの患者の正常組織への放射を遮蔽する放射遮蔽装置が設置され、前記コリメータは、前記ビーム出口の後に設置され、中性子ビームを集め、前記ビーム整形体内に第1冷却管及び第2冷却管が設置され、前記ターゲットの放熱層に、冷却入口と、冷却出口と、前記冷却入口と冷却出口との間に設置されたジグザグ状の冷却通路とがあり、前記第1冷却管及び第2冷却管は、一端がそれぞれ前記ターゲットの冷却入口及び冷却出口に接続され、他端が外部冷却源に接続され、前記ジグザグ状の冷却通路の湾曲ジオメトリーは、連続的に湾曲した滑らかな曲線又は順にエンドツーエンドで接続された曲線セグメント又は直線セグメントであり、前記連続的に湾曲した滑らかな曲線は、弦波関数である。ジグザグ状の通路は、流れ経路を延長し、熱伝導壁面と冷却媒体との接触面積を増加させて放熱表面を増加させるとともに、二次流れを形成し、混合効果を向上させ、熱伝導能力及び放熱効果を向上させることができ、ターゲットの耐用年数を延長することに役立つ。冷却通路は、連続的に湾曲した滑らかな曲線、例えば弦波関数を用いると、流れ経路による流れ抵抗をさらに低減することができる。
【0057】
さらに、ターゲットは、前記ビーム整形体内に位置し、前記加速器は、荷電粒子ビームを加速する加速管を有し、前記加速管は、荷電粒子ビームの方向に沿って前記ビーム整形体に伸び、かつ順に前記反射体と減速体を貫通し、前記ターゲットは、前記減速体内に設置され、かつ前記加速管の端部に位置し、前記第1冷却管及び第2冷却管は、前記加速管と前記反射体及び減速体との間に設置される。
【0058】
本発明の第7態様に係る中性子捕捉療法システムは、中性子発生装置及びビーム整形体を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器により加速して発生した荷電粒子ビームは、前記ターゲットと作用して中性子ビームを発生させ、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射線遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットにより発生した中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速し、前記反射体は、前記減速体を囲み、かつ逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に余計な線量を与えることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射線遮蔽体は、前記ビーム出口を囲んで設置され、非照射領域の正常組織への線量を減少させるために、しみ出る中性子及び光子を遮蔽し、前記ターゲットは、荷電粒子ビームと作用して前記中性子ビームを発生させる作用層と、中性子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、放熱層とを含み、前記作用層は、厚さが49μm~189μmであり、陽子ビームと十分に反応することができ、γ線による汚染を低減し、厚すぎることによるエネルギー蓄積を引き起こしてターゲットの放熱性能に影響を与えることがない。
【0059】
好ましくは、前記作用層の厚さは、97μmである。
【0060】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層と前記発泡抑制層との間に設置され、かつ前記放熱層に接続され、前記作用層の熱量を前記放熱層に伝導する熱伝導層をさらに含む。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長する。さらに、前記熱伝導層の厚さは、5μm~50μmであり、前記発泡抑制層の厚さは、5μm~50μmであり、発泡抑制層は、入射された荷電粒子ビームによりターゲット中に生成した水素を迅速に拡散して、水素の集中度を低下させるか又は水素を外部に放出し、入射された荷電粒子ビームによる発泡を効果的に抑制することにより、ターゲットの発泡による変形を回避するか又は減少させ、ターゲットの耐用年数を延長することができる。
【0061】
好ましくは、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記荷電粒子ビームは、エネルギーが2.2MeV~3MeVであり、リチウムターゲットと高い作用断面を生成することができるとともに、過剰な高速中性子を発生させず、より高い品質のビームを得る。
【0062】
さらに、前記放熱層及び熱伝導層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金である。
【0063】
さらに、前記作用層、熱伝導層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工される。
【0064】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0065】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層を空気から隔離し、かつ厚さが5nmより大きい酸化防止層をさらに含み、酸化防止層により、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮され、前記酸化防止層は、Al又はポリイミドで製造され、フィルムを形成する方式で前記作用層に加工されるか又は高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。
【0066】
本発明の第8態様に係る、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットは、荷電粒子ビームの入射方向に沿って順に酸化防止層、作用層、発泡抑制層及び放熱層を含み、前記作用層は、荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させ、かつ厚さが49μm~189μmであり、陽子と十分に反応することができ、γ線による汚染を低減し、厚すぎることによるエネルギー蓄積を引き起こしてターゲットの放熱性能に影響を与えることがなく、前記酸化防止層は、前記作用層を空気から隔離し、かつ厚さが5nmより大きく、酸化防止層により、ターゲットを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う場合に非常に便利であり、酸化防止層は、さらに作用層における副生成物がターゲットから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮され、前記発泡抑制層は、前記荷電粒子ビームによる発泡を抑制し、かつ厚さが5μm~50μmであるように構成され、入射された荷電粒子ビームによりターゲット中に生成した水素を迅速に拡散して、水素の集中度を低下させるか又は水素を外部に放出し、入射された荷電粒子ビームによる発泡を効果的に抑制することにより、ターゲットの発泡による変形を回避するか又は減少させ、ターゲットの耐用年数を延長することができる。
【0067】
好ましくは、前記荷電粒子ビームは、エネルギーが2.2MeV~3MeVであり、リチウムターゲットと高い作用断面を生成することができるとともに、過剰な高速中性子を発生させず、より高い品質のビームを得る。
【0068】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の熱量を前記放熱層に伝導し、厚さが5μm~50μmである熱伝導層をさらに含む。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長する。
【0069】
さらに、前記発泡抑制層は、前記放熱層と前記熱伝導層との間に設置され、前記熱伝導層は、前記放熱層に接続され、前記放熱層又は前記熱伝導層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される。熱量が基本的に発泡抑制層により伝導されないため、発泡抑制層について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。
【0070】
さらに、前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金であり、前記放熱層及び熱伝導層の材料は、Cu、その化合物又はその合金であり、前記発泡抑制層の材料は、Ta、その化合物又はその合金であり、前記酸化防止層は、Al又はポリイミドで製造される。
【0071】
さらに、前記作用層、熱伝導層及び発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工され、前記酸化防止層は、フィルムを形成する方式で前記作用層に加工されるか又は高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。
【0072】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線を有し、前記中心軸線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離及び前記酸化防止層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離及び前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。
【0073】
本発明の第9態様は、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットの加工装置を提供し、前記ターゲットは、前記粒子ビームを発生させる作用層と、前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する放熱層とを含み、前記加工装置は、真空チャンバ、排気装置、蒸発源、支持フレーム及び加熱装置を含み、前記排気装置は、前記真空チャンバに対して排気して真空環境を形成し、前記蒸発源は、前記発泡抑制層及び作用層の材料を前記真空チャンバで順にガスに蒸発させ、前記支持フレームは、前記放熱層を置くために用いられ、前記加熱装置は、前記ガス材料を前記放熱層の前記蒸発源に面する表面に順に堆積するように、前記放熱層を加熱する。該加工装置を用いると、ターゲットの各層の厚さを正確に制御することができる
【0074】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記蒸発源は、前記作用層をガスに蒸発させた後に前記酸化防止層をガスに蒸発させる。
【0075】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の熱量を前記放熱層に伝導する熱伝導層をさらに含み、前記蒸発源は、前記発泡抑制層をガスに蒸発させた後に前記熱伝導層をガスに蒸発させ、次に前記作用層をガスに蒸発させる。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長する。
【0076】
さらに、前記加工装置は、前記作用層及び発泡抑制層の厚さを検出し、かつガス堆積速度を制御するフィルム厚さ検出装置をさらに含む。
【0077】
本発明の第10態様は、粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットの加工方法を提供し、前記ターゲットは、前記粒子ビームを発生させる作用層と、前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する放熱層と、前記作用層の熱量を前記放熱層に伝導する熱伝導層とを含み、前記加工方法は、前記放熱層にフィルムを形成する方式で順に前記発泡抑制層、熱伝導層及び作用層を加工することを含む。発泡抑制層の放熱性能が低く、作用層に蓄積された熱量を放熱層に効果的に伝導することができないため、熱伝導層を設置して、作用層に蓄積された熱量を放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長し、該加工方法を用いると、ターゲットの各層の厚さを正確に制御することができる。
【0078】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記加工方法は、フィルム状の酸化防止層を前記作用層に被覆するか又は前記酸化防止層をフィルムを形成する方式で前記作用層に加工することを含む。
【0079】
好ましくは、前記フィルムを形成する方式は、物理気相成長、スパッタリング、熱溶接又は原子層堆積である。
【0080】
本発明の第11態様は、中性子ビーム発生装置に用いられるターゲットの加工方法を提供し、前記ターゲットは、荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させる作用層と、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の前に位置し、かつ前記作用層の酸化を防止する酸化防止層と、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の後に位置し、かつ前記荷電粒子ビームによる発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記発泡抑制層の後に位置し、かつ前記ターゲットに蓄積された熱量を外へ伝導する放熱層とを含み、前記酸化防止層と前記作用層とは、加工方法が異なる。
【0081】
好ましくは、前記ターゲットは、前記作用層の熱量を前記放熱層に伝導する熱伝導層をさらに含み、前記発泡抑制層、熱伝導層及び作用層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工される。さらに、前記発泡抑制層、熱伝導層及び作用層の材料を真空環境で順にガスに蒸発させて前記放熱層に堆積することにより、ターゲットの各層の厚さを正確に制御することができる。
【0082】
好ましくは、前記酸化防止層は、高分子フィルムであり、フィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される。かつ高分子フィルムを用いると、組み立てやすく、コストが低い。
【0083】
本発明の前記中性子捕捉療法システム及び粒子ビーム発生装置に用いられるターゲットにおいて、第1放熱層を設置して、作用層に蓄積された熱量を第2放熱層に直接的で迅速に伝導し、かつ第2放熱層で冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットの温度を低下させて、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】本発明の実施例における中性子捕捉療法システムの概略図である。
図2】本発明の実施例におけるターゲットの概略図である。
図3図2におけるターゲットの分解図である。
図4図2におけるターゲットの放熱層の第1実施例の概略図である。
図5図4における放熱層の第1板の概略図である。
図6図2におけるターゲットの放熱層の第2実施例の概略図である。
図7図6における放熱層の第1板の概略図である。
図8】本発明の実施例におけるターゲットの加工装置の概略図である。
図9】本発明の実施例におけるターゲットの加工方法のフローチャートである。
図10】本発明の実施例における、シミュレーション計算された2.2MeVの陽子の異なる厚さのリチウムターゲットへの衝撃による中性子収量である。
図11】本発明の実施例における、シミュレーション計算された2.5MeVの陽子の異なる厚さのリチウムターゲットへの衝撃による中性子収量である。
図12】本発明の実施例における、シミュレーション計算された3MeVの陽子の異なる厚さのリチウムターゲットへの衝撃による中性子収量である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を更に詳細に説明することにより、当業者であれば、明細書の文字を参照して実施することができる。
【0086】
図1に示すように、本実施例における中性子捕捉療法システムは、好ましくはホウ素中性子捕捉療法システム100であり、中性子発生装置10、ビーム整形体20、コリメータ30及び治療台40を含む。中性子発生装置10は、加速器11及びターゲットTを含み、加速器11は、荷電粒子(例えば陽子、デューテリウム核など)を加速して、陽子ビームのような荷電粒子ビームCを発生させ、荷電粒子ビームCは、ターゲットTに照射され、かつターゲットTと作用して中性子ビームNを発生させ、ターゲットTは、好ましくは金属ターゲットである。必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流の大きさ、金属ターゲットの物理的・化学的特性などに応じて、適切な核反応を選択し、一般的に検討されている核反応は、Li(p,n)Be及びBe(p,n)Bであり、これらの2種類の反応は、いずれも吸熱反応である。これらの2種類の核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVであり、ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源がkeVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりわずかに高い陽子を金属リチウムターゲットに衝撃させることで、比較的低いエネルギーの中性子を発生させることができ、あまり多くの減速処理を必要とせずに臨床的に使用することができるが、リチウム(Li)及びベリリウム(Be)の2種類のターゲットと閾値エネルギーの陽子との作用断面が高くなく、十分な中性子束を発生させるために、一般的に比較的高いエネルギーを持つ陽子を用いて核反応を引き起こす。理想的なターゲットは、中性子収率が高く、発生した中性子のエネルギー分布が熱外中性子エネルギー領域(以下に詳細に説明する)に近く、強い透過性を有する放射線があまり多く発生せず、安全で、安価で、操作しやすく、かつ耐高温などの特性を有するが、実際には全ての要件を満たす核反応を見つけることは不可能である。当業者に周知のように、ターゲットTは、Li、Beの合金、化合物又は他の材料で製造されてもよく、例えば、Ta又はW及びその合金、化合物などで形成される。加速器11は、線形加速器、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロンであってもよい。
【0087】
中性子発生装置10により発生した中性子ビームNは、順にビーム整形体20とコリメータ30とを通して治療台40上の患者200に照射される。ビーム整形体20は、中性子発生装置10により発生した中性子ビームNのビーム品質を調整することができ、コリメータ30は、中性子ビームNを集めることにより、中性子ビームNは、治療過程において高い標的性を有する。ビーム整形体20は、反射体21、減速体22、熱中性子吸収体23、放射線遮蔽体24及びビーム出口25をさらに含み、中性子発生装置10により発生した中性子のエネルギースペクトルが広いため、治療需要を満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量をできるだけ減少させて、操作者又は患者に損傷を引き起こすことを回避する必要があるため、中性子発生装置10から出た中性子は、減速体22を通して高速中性子のエネルギー(>40keV)が熱外中性子エネルギー領域(0.5eV~40keV)に調整される必要があり、減速体22は、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さい材料で製造され、本実施例において、減速体22は、D2O、AlF3、FluentalTM、CaF2、Li2CO3、MgF2及びAl2O3のうちの少なくとも1種で製造され、反射体21は、減速体22を囲み、かつ減速体22を通過して周囲に拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、本実施例において、反射体21は、Pb又はNiのうちの少なくとも1種で製造され、減速体22は、後部に熱中性子(<0.5eV)吸収体23があり、熱中性子との作用断面が大きい材料で製造され、本実施例において、熱中性子吸収体23は、Li-6で製造され、減速体22を通過した熱中性子を吸収して中性子ビームNにおける熱中性子の含有量を減少させ、治療時に浅層正常組織に余計な線量を与えることを回避し、理解できるように、熱中性子吸収体は、減速体と一体であってもよく、減速体の材料にLi-6が含まれ、放射線遮蔽体24は、ビーム出口25を囲んで設置され、ビーム出口25以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽し、放射線遮蔽体24の材料は、光子遮蔽材料と中性子遮蔽材料のうちの少なくとも1種を含み、本実施例において、放射線遮蔽体24の材料は、光子遮蔽材料の鉛(Pb)と中性子遮蔽材料のポリエチレン(PE)を含む。理解できるように、ビーム整形体20は、さらに他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを得ればよい。コリメータ30は、ビーム出口25の後部に設置され、コリメータ30から出た熱外中性子ビームは、患者200に照射され、浅層正常組織を通した後に熱中性子に減速されて腫瘍細胞Mに到着し、理解できるように、コリメータ30は、除去されてもよく、他の構造であってもよく、中性子ビームは、ビーム出口25から出て患者200に直接的に照射される。本実施例において、患者200とビーム出口25との間には、さらに、ビーム出口25から出たビームの患者の正常組織への放射を遮蔽する放射遮蔽装置50が設置され、理解できるように、放射遮蔽装置50を設置しなくてもよい。
【0088】
患者200は、ホウ素(B-10)含有薬剤を服用するか又は注射された後、ホウ素含有薬剤が腫瘍細胞Mに選択的に集められ、次にホウ素(B-10)含有薬剤が熱中性子に対して高い捕捉断面を有するという特性を利用して、10B(n,α)7Li中性子捕捉及び核分裂反応により、4He及び7Liという2種類の重荷電粒子を生成する。2種類の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い飛程という特性を有し、α粒子の線エネルギー付与と飛程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、7Li重荷電粒子の線エネルギー付与と飛程は、175keV/μm、5μmであり、2種類の粒子の総飛程は、約1つの細胞の大きさに相当するため、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑えられ、正常組織にあまりにも大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を局所的に殺すという目的を達成することができる。
【0089】
以下、図2及び図3を参照しながらターゲットTの構造を詳細に説明する。
【0090】
ターゲットTは、加速器11とビーム整形体20との間に設置され、加速器11は、荷電粒子ビームCを加速する加速管111を有し、本実施例において、加速管111は、荷電粒子ビームCの方向に沿ってビーム整形体20に伸び込み、かつ順に反射体21と減速体22を貫通し、ターゲットTは、減速体22内に設置され、かつ加速管111の端部に位置して、高い品質の中性子ビームを得る。
【0091】
ターゲットTは、作用層12と、発泡抑制層13と、(第1)放熱層14と、(第2放熱層)熱伝導層15とを含む。作用層12は、荷電粒子ビームCと作用して中性子ビームを発生させ、中性子を発生させる過程においてターゲットは、非常に高いエネルギーレベルの加速荷電粒子ビームCにより照射されるため、ターゲットの発泡及び温度上昇を引き起こして、ターゲットの耐用年数を減少させる。発泡抑制層13は、荷電粒子ビームCの入射方向に沿って作用層12の後に位置し、かつ入射された荷電粒子ビームCによりターゲットT中に生成した水素を迅速に拡散して、水素の集中度を低下させるか又は水素を外部に放出し、入射された荷電粒子ビームCによる発泡を効果的に抑制することにより、ターゲットTの発泡による変形を回避するか又は減少させ、ターゲットの耐用年数を延長することができ、発泡抑制層13は、発泡を抑制する材料、例えば200℃での水素拡散係数が10E-6cm2/s以上の材料で製造され、一実施例において、発泡抑制層13の材料は、Nb、Ta、Pd、V、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む。放熱層14は、荷電粒子ビームCの入射方向に沿って発泡抑制層13の後に位置し、かつターゲットに蓄積された熱量を伝導して冷却媒体により排出することにより、ターゲットの温度を低下させ、ターゲットの温度が高すぎることによる変形を防止し、ターゲットの耐用年数を延長する。発泡抑制層13の放熱性能が低いため、作用層12に蓄積された熱量を放熱層14に効果的に伝導することができないため、熱伝導層15を設置して、作用層12に蓄積された熱量を放熱層14に直接的で迅速に伝導する。放熱層14及び熱伝導層15は、熱伝導材料で製造され、一実施例において、放熱層14及び熱伝導層15の材料は、Cu、Fe、Al、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む。熱伝導層15は、作用層12と発泡抑制層13との間に設置され、かつ放熱層14に接続され、すなわち、発泡抑制層13は、互いに接続された放熱層14と熱伝導層15との間に設置され、このような設置により、熱伝導層15は、作用層12との接触面積が大きく、かつ熱量を放熱層14に迅速に伝導することができ、熱量が基本的に発泡抑制層13により伝導されないため、発泡抑制層13について、その熱伝導性を考慮する必要がなく、発泡防止特性のみを考慮すればよい。図3に示すように、本実施例において、放熱層14及び熱伝導層15は、発泡抑制層13を囲み、熱伝導層15には、発泡抑制層13を収容する収容空間151が形成され、収容空間151は、底面1511と、底面1511に接続された側壁1512とを含み、発泡抑制層13は、底面1511と接触する頂面131と、側壁1512と接触する外壁132を有し、理解できるように、収容空間は、放熱層で形成されてもよく、熱伝導層及び放熱層で共に形成されてもよい。ターゲットTは、作用層12の酸化を防止する酸化防止層16をさらに含んでもよく、酸化防止層16は、荷電粒子ビームCの入射方向に沿って作用層12の前に位置し、酸化防止層16と熱伝導層15は、作用層12を密封し、すなわち、作用層12を空気から隔離することにより、ターゲットTを特に保管する必要がなく、空気に露出させることができ、特にターゲットの取り付け及び交換を行う時に非常に便利であり、かつコストを大幅に低減し、酸化防止層16は、さらに作用層12における副生成物(例えば8Be)がターゲットTから溢れ出すことを防止することができ、酸化防止層16の材料について、作用層により腐食されにくく、かつ入射された陽子ビームの損失及び陽子ビームによる発熱を減少させることができることが同時に考慮され、例えばAl、Ti、それらの合金及び化合物又はステンレス鋼のうちの少なくとも1種を含み、一実施例において、Al2O3を用い、その予備酸化後に、より高い酸化防止作用を有するとともに、Alが中性子により活性化された後の放射性生成物は、半減期がより短く、二次放射を減少させ、他の実施例において、酸化防止層16は、高分子フィルム、例えばポリイミド(PI、polyimide)フィルムであり、ポリイミドは、以下の分子構造を有する。
【化6】
【0092】
ポリイミドは、耐高温で、高い絶縁性能、優れた機械的特性、及び高い耐放射線性能を有し、熱分解温度が400摂氏度以上に達し、高エネルギー中性子を効果的に遮蔽することができ、深部腫瘍に対して正常組織への放射線損傷を軽減することができ、また、高分子フィルムは、フィルム被覆プロセス(例えば熱間プレス、接着など)で作用層12に加工され、組み立てやすく、コストが低い。理解できるように、酸化防止層を設置しなくてもよい。
【0093】
一実施例において、陽子ビームをリチウムターゲットに衝撃させて中性子を発生させ、陽子ビームは、入射方向に沿って順に酸化防止層16、作用層12、熱伝導層15、発泡抑制層13及び放熱層14を通過し、陽子ビームは、エネルギーが2.2MeV~3MeVであり、リチウムターゲットと高い作用断面を生成することができるとともに、過剰な高速中性子を発生させず、より高い品質のビームを得て、作用層12は、厚さが49μm~189μmであり、陽子と十分に反応することができ、γ線による汚染を低減し、厚すぎることによるエネルギー蓄積を引き起こしてターゲットの放熱性能に影響を与えることがない。
【0094】
シミュレーションソフトウェアを用いて、エネルギーが2.2MeV、2.5MeV及び3MeVの陽子ビームが異なる厚さのリチウムターゲットに衝撃することをそれぞれシミュレーションして、異なるリチウムターゲットの厚さでの中性子収量を取得し、図10~12に示すように、陽子ビームのエネルギーが2.2MeVであり、対応するターゲットの作用層の厚さが49μmである場合、中性子収量が最も高く、陽子ビームのエネルギーが2.5MeVであり、対応するターゲットの作用層の厚さが97μmである場合、中性子収量が最も高く、陽子ビームのエネルギーが3MeVであり、対応するターゲットの作用層の厚さが189μmである場合、中性子収量が最も高い。
【0095】
本実施例において、陽子ビームのエネルギーが2.5MeVであり、ターゲット作用層12の厚さが97μmである場合、照射に必要な中性子ビームを得ることができ、また中性子収率が低すぎることがない。
【0096】
Taは、中性子により活性化された後に放射性生成物を生成し、発泡抑制層13は、残された陽子ビームを全て吸収する前提で、厚さができるだけ薄いべきであり、発泡抑制層13の厚さが5μm~50μmであってもよく、陽子ビームのエネルギー損失を低減するために、酸化防止層16は、厚さができるだけ薄いべきであり、厚さが5nmより大きくてもよく、熱伝導層15は、熱量を放熱層14に迅速に伝導することを満たすために、超高純度のCuを用い、厚さが5μm~50μmであり、ターゲットの耐用年数は、200mA-h以上である。
【0097】
ターゲットT全体は、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心軸線Aを有し、理解できるように、上記厚さは、ターゲットTの中心軸線Aに沿ったターゲットTの各層の厚さであり、ターゲットTの各層のエッジは、構造需要に応じて厚さが異なる可能性がある。
【0098】
放熱層14は、複数種の構造であってもよく、放熱層14の厚さが冷却構造に応じて需要を満たせばよく、図4及び図5に示す放熱層の第1実施例において、放熱層14は、板状であり、第1板141及び第2板142を含み、第1板141は、作用層12に面する第1側1411と、第1側1411に対向する第2側1412とを有し、第2側1412には、冷却媒体が流れるための冷却通路Pが形成され、第2板142は、第1板141の第2側1412に密着し、理解できるように、冷却通路Pは、第2板142の第1板141に対向する側に設置されてもよい。冷却通路Pは、ジグザグ状であり、ジグザグ状の冷却通路Pは、複数の平行なジグザグ状のサブ通路P1を含み、すなわち複数のジグザグ状の壁Wが平行に配列され、隣接する壁Wの間にジグザグ状の溝S(すなわち平行なジグザグ状のサブ通路P1)が形成される。平行なジグザグ状のサブ通路P1の湾曲幾何は、以下の弦波関数である。
【数1】
ここで、▲Φ▼は、位相角であり、xは、冷却媒体の流れ方向(以下に詳述する)の座標であり、kは、振幅であり、Tは、周期である。
【0099】
理解できるように、冷却通路Pは、さらに他のジグザグ状であってもよく、例えば、連続的に湾曲した滑らかな曲線又は順にエンドツーエンドの曲線セグメント又は直線セグメントであり、ジグザグ状の通路は、流れ経路を延長し、熱伝導壁面と冷却媒体との接触面積を増加させて放熱表面を増加させるとともに、二次流れを形成し、攪拌効果を向上させ、熱伝導能力及び放熱効果を向上させることができ、ターゲットの耐用年数を延長することに役立つ。冷却通路Pは、連続的に湾曲した滑らかな曲線、例えば弦波関数を用いると、流れ経路による流れ抵抗をさらに低減することができる。ジグザグ状の冷却通路Pは、他の配列方式で配列されてもよい。
【0100】
放熱層14は、さらに冷却入口IN及び冷却出口OUTを有し、冷却通路Pは、冷却入口IN及び冷却出口OUTと連通し、冷却媒体は、冷却入口INから入り、冷却通路Pを通した後に、冷却出口OUTから出る。ターゲットTは、高エネルギーレベルの加速陽子ビームにより照射されて、温度が上昇し発熱し、熱伝導層及び放熱層は、熱量を外へ伝導し、かつ冷却通路を流れる冷却媒体により熱量を排出することにより、ターゲットTを冷却する。冷却入口IN及び冷却出口OUTは、それぞれ3つあり、第1板141での冷却通路Pの両端に対称的に設置され、かつ第1側1411から第2側1412への方向に延在して貫通し、第2側1412に入口溝S1及び出口溝S2がさらに形成され、入口溝S1と出口溝S2は、それぞれ冷却入口IN、冷却出口OUT及び各平行なジグザグ状のサブ通路P1と連通することにより、冷却入口INから入った冷却媒体は、入口溝S1からそれぞれ各平行なジグザグ状のサブ通路P1に入り、さらに出口溝S2を通して冷却出口OUTから出る。理解できるように、冷却入口IN及び冷却出口OUTは、他の個数又は他の形式であってもよく、第2板に共に設置されてもよく、第1板上及び第2板にそれぞれ設置されてもよい。冷却入口IN及び冷却出口OUTの外周に周方向壁W1がさらに設置され、第2板142は、周方向壁W1の第2板142に面する表面と密着し、第1板141と第2板142との間に収容キャビティが形成されることにより、冷却入口INから入った冷却媒体は、冷却出口OUTのみを通して出ることができ、第2板142と第1板141との接触面は、平面であり、ジグザグ状の壁Wの高さと周方向壁W1の高さとは、同じであり、理解できるように、階段面又は他の構造であってもよく、この場合、ジグザグ状の壁Wの高さと周方向壁W1の高さとは、異なる可能性があり、各平行なジグザグ状のサブ通路P1を互いに独立させたものであればよい。隣接する平行なジグザグ状のサブ通路P1における冷却媒体の流れ方向D(冷却通路における冷却媒体全体の流れ方向)が異なってもよく、さらに放熱効率を向上させる。入口溝S1及び出口溝S2は、他の設置方式で設置されてもよく、例えば、冷却媒体が各平行なジグザグ状のサブ通路P1を順に流れる。本実施例において、第1板及び第2板の材料は、いずれもCuであり、高い放熱性能を有し、かつコストが低い。冷却通路Pを形成する溝Sの個数及び大きさは、実際のターゲットのサイズに応じて決定され、溝の横断面は、様々な形状、例えば矩形、円形、多角形、楕円形などであってもよく、異なる横断面は、異なる形状を有してもよい。
【0101】
第1板141及び第2板142は、共に、ボルト又はネジなどの接続部材又は溶接などの他の固定構造により、減速体22内又は加速管111の端部に固定され、或いは、第1板141と第2板142は、先に接続されて、そのうちの1つが減速体22内又は加速管111の端部に固定される。理解できるように、放熱層は、さらに他の取り外し可能な接続で固定されるか又は取り付けられてもよく、ターゲットを交換しやすく、放熱層14は、支持部材(図示せず)をさらに有してもよく、第1板141及び/又は第2板142は、支持部材により固定され、冷却入口IN及び冷却出口OUTは、支持部材に設置されてもよい。本実施例において、加速管111と反射体21及び減速体22との間に第1冷却管D1及び第2冷却管D2が設置され、第1冷却管D1及び第2冷却管D2は、一端がそれぞれターゲットTの冷却入口IN及び冷却出口OUTに接続され、他端が外部冷却源に接続される。冷却媒体は、脱イオン水であってもよく、極めて低い導電率を備え、高電圧環境でのリーク電流の発生及び中性子ビームの生成に対する干渉を防止し、理解できるように、第1冷却管及び第2冷却管は、さらに他の方式でビーム整形体内に設置されてもよく、ターゲットがビーム整形体の外に配置される場合、さらに除去されてもよい。
【0102】
図6及び図7に示すように、放熱層の第2実施例であり、以下、第1実施例と異なる部分のみを説明する。放熱層の第2実施例において、ジグザグ状の冷却通路P′は、複数の螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′を含み、すなわち、1つ以上のジグザグ状の壁W′が同一中心の周りに螺旋状で展開し、各壁W′が径方向に複数層を形成し、各壁W′で形成される層は、径方向に交互に配列され、隣接する層の間に溝S′(すなわち螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′)が形成される。螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′の軌跡関数は、以下のとおりである。
【数2】
ここで、Rinは、中心半径であり、Routは、外半径であり、θは、極座標の角度であり、Kは、振幅であり、Tは、周期である。
【0103】
冷却入口IN′は、第2板142′の中心に設置され、各螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′の中心に貫通し、冷却出口OUT′は、4個あり、第1板141′での冷却通路P′の外周に周方向に平均的に設置され、第1側1411′から第2側1412′への方向に延在して貫通し、理解できるように、さらに他の設置方式で設置されてもよい。冷却通路P′の中心、すなわち各螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′の中心は、入口溝S1′として、第1板141′の第2側1412′に出口溝S2′がさらに形成され、出口溝S2′は、冷却出口OUT′と各螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′と連通することにより、冷却入口IN′から入った冷却媒体は、冷却通路P′の中心からそれぞれ各螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′に入り、さらに出口溝S2′を通して冷却出口OUT′から出る。冷却出口OUT′の外周に周方向壁W1′が設置され、第2板142′は、周方向壁W1′の第2板142′に面する表面に密着し、第1板141′と第2板142′との間に収容キャビティが形成されることにより、冷却入口IN′から入った冷却媒体は、冷却出口OUT′のみを通して出ることができ、第2板142′と第1板141′との接触面は、平面であり、ジグザグ状の壁W′の高さと周方向壁W1′の高さとは、同じであり、理解できるように、階段面又は他の構造であってもよく、この場合、ジグザグ状の壁W′の高さと周方向壁W1′の高さとは、異なる可能性があり、各螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′を互いに独立させたものであればよい。隣接する螺旋したジグザグ状のサブ通路P1′における冷却媒体の流れ方向が異なってもよく、さらに放熱効率を向上させる。第1板141′の中心に突出部1413′がさらに設置されてもよく、突出部1413′は、整流し熱伝導面積を増加させて、中心ホットスポットの温度を低下させる。突出部1413′は、高さが壁W′及び周方向壁W1′の高さより高く、かつ第2板での冷却入口IN′に伸び込んでもよく、突出部1413′の形状は、中実円錐体、中空円錐体、シート状などであってもよい。
【0104】
上記ターゲットの構造を実現するために、ターゲットTについて、他の各層(酸化防止層16、作用層12、熱伝導層15及び発泡抑制層13)をフィルムを形成する方式、例えばPVD(Physical Vapor Deposition、物理気相成長)、スパッタリング、熱溶接、原子層堆積などで放熱層14に加工することができる。図8に示すように、ターゲットTの製造プロセスは、以下のステップS10~S50を含む。
【0105】
S10において、放熱層14(銅板で製造される)を置き、放熱層14からターゲットTの中心軸線Aまでの最大距離がR1であり、
S20において、放熱層14の表面にスパッタリングなどのフィルムを形成する方式で発泡抑制層13(Ta)を加工し、発泡抑制層13から中心軸線Aまでの最大距離がR2であり、R2をR1より小さくし、放熱層14における、フィルム(発泡抑制層13)を形成する必要がない領域を遮蔽する必要があり、例えば、金属板を用いて放熱層14の表面から中心軸線Aまでの距離がR2~R1の区間を遮蔽し、
S30において、発泡抑制層13の表面にスパッタリングなどのフィルムを形成する方式で熱伝導層15(Cu)を加工し、熱伝導層15から中心軸線Aまでの最大距離がR3であり、R3をR2より大きくし、すなわち、ステップS32を行う前にステップS31において遮蔽用の金属板を除去し、
S40において、熱伝導層15の表面に熱溶接又はPVDなどのフィルムを形成する方式で作用層12(Li)を加工し、作用層12から中心軸線Aまでの最大距離がR4であり、R4をR3よりも小さくし、ステップS32で得られたワークの表面における、フィルム(作用層12)を形成する必要がない領域を遮蔽する必要があり、例えば、金属板を用いてステップS32で得られたワークの表面から中心軸線Aまでの距離がR4-R3の区間を遮蔽し、本実施例において、R4をR2より小さくすることにより、発泡抑制層が残された陽子を完全に吸収することができ、
S50において、作用層12の表面に原子層堆積などのフィルムを形成する方式で酸化防止層16(Al2O3)を加工し、酸化防止層16から中心軸線Aまでの最大距離がR5であり、R5をR4より大きくし、すなわち、ステップS34を行う前にステップS33において遮蔽用の金属板を除去する。
【0106】
本実施例において、R5及びR3は、R1に等しく、理解できるように、他の設定であってもよい。
【0107】
酸化防止層16が高分子フィルム(例えばPIフィルム)である場合、ステップS50は、高分子フィルム製品の酸化防止層16を熱間プレス、接着プロセスなどのフィルム被覆プロセスにより作用層12に加工することであってもよく、水を含まないシリコーン感圧接着剤を用いることができ、金属層と反応せず、組み立てやすく、コストが低く、また液状の高分子フィルム材料を作用層12に塗布した後に硬化させることであってもよく(フィルムを形成する方式で加工することと見なされてもよい)、例えば、回転塗布し、より均一である。
【0108】
一実施例において、ターゲットTについて、各層(酸化防止層16、作用層12、熱伝導層15、発泡抑制層13)材料を真空環境で順にガスに形成して放熱層14に堆積し(PVD)、図9に示すように、該実施例において、ターゲットTの加工装置300は、真空チャンバ310、排気装置320、蒸発源330、支持フレーム340及び加熱装置350を含む。排気装置320は、真空チャンバ310に対して排気して真空環境を形成する。蒸発源330は、各層の材料を真空チャンバ310で順にガスに蒸発させ、本実施例において、蒸発源330は、電子ビーム又はイオンビーム蒸発を用い、真空チャンバの底部に設置される。支持フレーム340は、放熱層14を置くために用いられ、本実施例において、支持フレーム340は、真空チャンバ310の頂部に設置され、加熱装置350が放熱層14を加熱した後、ガス材料が放熱層14の蒸発源330に面する表面に堆積される。加工装置300は、各層の材料の厚さを検出し、かつガス堆積速度を制御するフィルム厚さ検出装置360をさらに含む。
【0109】
上記加工装置及びプロセスを用いて、ターゲットの各層の厚さを正確に制御することができ、支持フレーム340は、複数の放熱層が固定され、順にフィルム形成加工が行われた回転構造であってもよく、加工効率を向上させ、さらに複数のターゲットを同時に加工することができ、理解できるように、加工装置300は、さらに他の構造方式であってもよい。
【0110】
本実施例のターゲットは、その構造及び加工プロセスにより、高い発泡防止及び放熱性能を有し、耐用年数が400mA-h以上である。理解できるように、本実施例の加工装置及び加工方法は、酸化防止層又は熱伝導層を有さないターゲットに用いられてもよく、ターゲットTは、他の製造方式で製造されてもよい。
【0111】
本実施例において、ターゲットTは、円板状であり、理解できるように、ターゲットTは、さらに矩形又は他の形状の平板状であってもよく、ターゲットTは、他の固体形状であってもよく、ターゲットTは、さらに、ターゲットを交換しやすくするか又は粒子ビームをターゲットに均一に作用させるために、加速器又はビーム整形体に対して移動可能であってもよい。発泡抑制層13、放熱層14及び熱伝導層15は、さらにターゲットTの基材T1を構成することができ、それに異なる作用層12を加工することにより異なるターゲットTを形成する。ターゲットTは、さらにターゲットを支持するか又は取り付けるための支持部(図示せず)を含んでもよく、支持部は、さらに第1冷却管D1及び第2冷却管D2の少なくとも一部を取り付けるために用いられ、アルミニウム合金材料で製造されてもよく、Alが中性子により活性化された後の放射性生成物は、半減期が短く、二次放射を減少させる。
【0112】
理解できるように、本発明のターゲットは、さらに他の医療及び非医療分野の中性子発生装置に適用することができ、その中性子の発生が粒子ビームとターゲットとの核反応に基づくものであれば、ターゲットの材料も異なる核反応に応じて区別され、さらに他の粒子ビーム発生装置に適用することができる。
【0113】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は、具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定及び決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された荷電粒子ビームと作用して中性子ビームを発生させる作用層と、荷電粒子ビームの入射方向に沿って前記作用層の後に位置し、かつ前記粒子ビームを発生させる過程における前記作用層の発泡を抑制できる発泡抑制層と、前記作用層に蓄積された熱量を放熱層に伝導する熱伝導層と、熱量を排出する前記放熱層とを含む、ことを特徴とする粒子ビーム発生装置に用いられるターゲット。
【請求項2】
前記熱伝導層は、前記作用層と前記発泡抑制層との間に位置し、前記放熱層に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項3】
前記熱伝導層及び前記放熱層は、前記発泡抑制層を囲み、前記熱伝導層又は前記放熱層には、前記発泡抑制層を収容する収容空間が形成される、ことを特徴とする請求項2に記載のターゲット。
【請求項4】
前記収容空間は、底面と、前記底面に接続された側壁とを含み、前記発泡抑制層は、前記底面と接触する頂面と、前記側壁と接触する外壁とを有する、ことを特徴とする請求項3に記載のターゲット。
【請求項5】
前記作用層の材料は、Li、その化合物又はその合金である、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項6】
荷電粒子ビームのエネルギーは、2.2MeV~3MeVであり、前記作用層の厚さは、49μm~189μmである、ことを特徴とする請求項5に記載のターゲット。
【請求項7】
前記発泡抑制層の材料は、Nb、Ta、Pd、V、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項8】
前記熱伝導層及び前記放熱層の材料は、Cu、Fe、Al、それらの合金及び化合物のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項9】
前記作用層の酸化を防止する酸化防止層をさらに含み、前記酸化防止層、作用層、熱伝導層、発泡抑制層及び放熱層は、荷電粒子ビームの入射方向に沿って順に設置される、ことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項10】
前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心線を有し、中心線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離及び前記酸化防止層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離及び前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい、ことを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項11】
前記発泡抑制層の厚さは、5μm~50μmであり、前記熱伝導層及び前記放熱層の厚さは、5μm~50μmであり、前記酸化防止層の厚さは、5nmよりも大きい、ことを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項12】
前記酸化防止層の材料は、Al、Ti、それらの合金及び化合物又はステンレス鋼のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項9に記載のターゲット。
【請求項13】
前記酸化防止層、前記作用層、前記熱伝導層及び前記発泡抑制層は、フィルムを形成する方式で前記放熱層に順に加工される、ことを特徴とする請求項12に記載のターゲット。
【請求項14】
前記酸化防止層は、高分子フィルムであり、かつフィルム被覆プロセスにより前記作用層に加工される、ことを特徴とする請求項9に記載のターゲット。
【請求項15】
前記高分子フィルムは、以下の分子構造を有するポリイミドである、ことを特徴とする請求項14に記載のターゲット。
【化1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
さらに、前記ターゲットは、平板状であり、かつ板表面に垂直な中心線を有し、中心線に垂直な同一径方向において、前記作用層から前記中心軸線までの最大距離は、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離より小さく、前記発泡抑制層から前記中心軸線までの最大距離は、前記熱伝導層から前記中心軸線までの最大距離及び前記放熱層から前記中心軸線までの最大距離より小さい。


【国際調査報告】