(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】抗TROP2抗体を含む薬物複合体の医薬組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240723BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240723BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240723BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/18
A61K39/395 T
A61K31/4745
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502665
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2022107134
(87)【国際公開番号】W WO2023001248
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110823295.2
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】莫 希叶▲楽▼
(72)【発明者】
【氏名】田 晨▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 洵
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD09F
4C076DD51
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
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4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
抗TROP2抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその用途である。具体的に、緩衝液における抗体薬物複合体を含む医薬組成物に関する。本開示の医薬組成物は良好な安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体薬物複合体及び緩衝剤を含む医薬組成物であって、前記抗体薬物複合体は下記に示される構造を有し、即ち、
【化1】
そのうち、
PD3は、配列番号1に示される重鎖と、配列番号2に示される軽鎖とを含む抗TROP2抗体であり、
nは1~10、好ましくは1~8であり、
前記医薬組成物の緩衝剤はヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤であり、pHが約5.0~約6.5であり、好ましくはpHが約5.5~約6.5、より好ましくはpHが約5.9~約6.2である、
医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝剤の濃度は約10~約50mM、好ましくは約20~約40mM、より好ましくは約30mMである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、界面活性剤をさらに含み、前記界面活性剤は好ましくはポリソルベート、より好ましくはポリソルベート80又はポリソルベート20、最も好ましくはポリソルベート80である、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤の濃度は約0.01~約1.0mg/mL、好ましくは約0.1~約0.3mg/mL、より好ましくは約0.2mg/mLである、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物は、糖をさらに含み、前記糖は、好ましくはスクロースとトレハロース二水和物から選ばれ、最も好ましくはスクロースである、
請求項1~4の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記糖の濃度は約25~約80mg/mL、好ましくは約30~約50mg/mL、より好ましくは約40mg/mLである、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、アミノ酸又はアミノ酸塩をさらに含み、前記アミノ酸又はアミノ酸塩は、好ましくはグリシンとアルギニン塩酸塩から選ばれ、より好ましくはグリシンである、
請求項1~6の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記グリシンの濃度は約6~約15mg/mL、好ましくは約7~約11mg/mL、より好ましくは約9mg/mLである、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体薬物複合体の濃度はタンパク質の濃度で、約1~約100mg/mL、約10~約30mg/mL、約18~約22mg/mLである、
請求項1~8の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
下記の成分、即ち、
(a)タンパク質の濃度で、約10~約30mg/mLの前記抗体薬物複合体と、(b)約0.1~約0.3mg/mLのポリソルベートと、(c)約30~約50mg/mLのスクロースと、(d)約7~約11mg/mLのグリシンと、(e)約20~約40mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤とを含み、前記組成物のpHは約5.5~6.5であり、
好ましくは、前記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)タンパク質の濃度で、約18~約22mg/mLの前記抗体薬物複合体と、(b)約0.2mg/mLのポリソルベート80と、(c)約40mg/mLのスクロースと、(d)約9mg/mLのグリシンと、(e)約30mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤とを含み、前記組成物のpHは約5.9~6.2である、
請求項1~9の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
再溶解した後、請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物を形成することができる、
ことを特徴とする抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤。
【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む、
抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法。
【請求項13】
請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥して得られる、
抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤。
【請求項14】
請求項11又は13に記載の凍結乾燥製剤を再溶解して調製して得られる、
ことを特徴とする抗体薬物複合体を含む再溶解溶液。
【請求項15】
請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項11又は13に記載の凍結乾燥製剤或いは請求項14に記載の再溶解溶液が入った容器を含む、
製品。
【請求項16】
請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項11又は13に記載の凍結乾燥製剤、請求項14に記載の再溶解溶液或いは請求項15に記載の製品のTROP-2仲介性の疾患又は病状を治療するための薬剤の調製における用途。
【請求項17】
請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項11又は13に記載の凍結乾燥製剤、請求項14に記載の再溶解溶液或いは請求項15に記載の製品の腫瘍とがんを治療及び/又は予防する薬剤の調製における用途であって、そのうち、前記腫瘍とがんは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、尿路上皮がんとメルケル細胞がんが好ましく、より好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫とリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病と骨髄細胞白血病から選ばれる、
用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物製剤分野に属し、具体的に、抗TROP2抗体を含む薬物複合体の医薬組成物、及びその抗がん剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0003】
抗体薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)は、モノクローナル抗体又は抗体断片を、安定した化学リンカー化合物により生物活性を有する細胞毒素に連結し、抗体の腫瘍細胞表面抗原への結合の特異性及び細胞毒素の高い有効性を活用すると共に、前者の治療効果が比較的低く、及び後者の毒性と副作用が大きすぎるといった欠陥を回避している。これはつまり、従来の化学療法薬と比べ、抗体薬物複合体が腫瘍細胞と正確に結合すると共に、正常な細胞への影響を低減することができることを意味する(Mullard A,(2013) Nature Reviews Drug Discovery, 12:329-332; DiJoseph JF, Armellino DC,(2004) Blood, 103:1807-1814)。
【0004】
抗体薬物複合体に用いられる細胞毒性を有する低分子は、幾つかの種類があるが、そのうちの一つは、トポイソメラーゼIを阻害することにより抗腫瘍作用を有するカンプトセシン誘導体である。カンプトセシン誘導体であるエキサテカン(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3,,4,:6,7]イミダゾ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)を抗体薬物複合体(ADC)に適用することを報告した文献には、WO2014057687、Clinical Cancer Research(2016)22(20):5097-5108、Cancer Sci(2016) 107:1039-1046がある。ところが、依然として治療効果のより良いADC薬剤をさらに開発しなければならない。
【0005】
しかし、ADCは、抗体よりも複雑なヘテロ構造を有するため、治療用のADC製剤にさらに大きな挑戦をもたらしている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、抗体薬物複合体及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供し、そのうち、上記抗体薬物複合体は下記に示される構造を有し、即ち、
【0007】
【0008】
上記のような抗体薬物複合体は、PCT/CN2021/073279の明細書の第41ページの抗体複合体実施例3-1 ADC-1を参照して調製され、
そのうち、
PD3は、抗TROP2抗体であり、その供給源は、PCT/CN2021/073279中の第41ページの抗体PD3を参照し、配列番号1に示される重鎖(PCT/CN2021/073279中の配列番号13)と、配列番号2(PCT/CN2021/073279中の配列番号14)に示される軽鎖とを含む、
PD3の重鎖アミノ酸配列:
【0009】
【0010】
PD3の軽鎖アミノ酸配列:
【0011】
【0012】
nは1~10、好ましくは1~8、より好ましくは3~5、最も好ましくは約4であり、
上記医薬組成物の緩衝剤はヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤であり、pHが約5.0~約6.5であり、好ましくはpHが約5.5~約6.5、より好ましくはpHが約5.9~約6.2である。
【0013】
選択的な実施形態において、医薬組成物における上記緩衝剤のpH値は約5.0~約6.5であり、非限定的な実施例は、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含み、好ましくはpHが約5.5~約6.5、より好ましくはpHが約5.9~約6.2である。
【0014】
選択的な実施形態において、医薬組成物における緩衝剤の濃度は約5~約50mMであり、非限定的な実施例は、10mM、12mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、30mM、40mM、50mM及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含み、好ましくは約10~約50mM、より好ましくは約20~約40mM、最も好ましくは約30mMである。
【0015】
選択的な実施形態において、医薬組成物は界面活性剤をさらに含む。ポリソルベート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノール-スルホベタイン、ステアリン-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノール-サルコシン、ステアリン-サルコシン、リノール-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミタミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、メチルオレイルタウリンナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びエチレンとプロピレングリコールの共重合体などから選ばれてもよい。好ましい界面活性剤はポリソルベート80又はポリソルベート20、より好ましくはポリソルベート80である。
【0016】
選択的な実施形態において、医薬組成物における界面活性剤の濃度は約0.01~約1.0mg/mL、好ましくは約0.05~約0.5mg/mL、より好ましくは約0.1~約0.3mg/mL又は約0.2~約0.6mg/mL、最も好ましくは約0.2mg/mLであり、非限定的な実施例は、約0.02mg/mL、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.15mg/mL、0.2mg/mL、0.25mg/mL、0.3mg/mL、0.35mg/mL、0.4mg/mL、0.45mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含む。
【0017】
選択的な実施形態において、上記医薬組成物は糖をさらに含む。本開示の「糖」は、通常の組成物(CH2O)n及びその誘導体を含み、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む。上記糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、sylitol、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルトースアルコール、ラクトースアルコール、イソ-マルツロースなどから選ばれてもよい。好ましい糖は非還元二糖であり、より好ましくはトレハロース二水和物又はスクロースであり、最も好ましくはスクロースである。
【0018】
選択的な実施形態において、上記医薬組成物における糖の濃度は約25~約80mg/mL、好ましくは約30~約50mg/mL、非限定的な実施例は、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含み、好ましくは40mg/mLである。
【0019】
選択的な実施形態において、上記医薬組成物はアミノ酸及びその塩をさらに含み、上記アミノ酸及びその塩は、グリシンとアルギニン塩酸塩から選ばれることが好ましく、グリシンがより好ましい。
【0020】
選択的な実施形態において、上記医薬組成物における上記グリシンの濃度は約6~約15mg/mL、約7~約11mg/mL、好ましくは約7~約10mg/mL、より好ましくは約7~約9mg/mL、約8~約9mg/mLであり、非限定的な実施例は、約6mg/mL、6.5mg/mL、7mg/mL、7.2mg/mL、7.6mg/mL、7.8mg/mL、8mg/mL、8.5mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、10.2mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含み、最も好ましくは約9mg/mLである。
【0021】
選択的な実施形態において、医薬組成物における上記抗体薬物複合体の濃度はタンパク質の濃度で、約1~約100mg/mLであり、非限定的な実施例は、1mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含み、好ましくは約10~約30mg/mL、より好ましくは約18~約22mg/mL、最も好ましくは約20mg/mLである。具体的に、非限定的な実施例は、20.1mg/mL、20.2mg/mL、20.3mg/mL、20.4mg/mL、20.5mg/mL、20.6mg/mL、20.7mg/mL、20.8mg/mL、20.81mg/mL、20.82mg/mL、20.83mg/mL、20.84mg/mL、20.85mg/mL、20.86mg/mL、20.87mg/mL、20.88mg/mL、20.89mg/mL、20.9mg/mL、20.9mg/mL、20.91mg/mL、20.92mg/mL、20.93mg/mL、20.94mg/mL、20.95mg/mL、20.96mg/mL、20.97mg/mL、20.98mg/mL、20.99mg/mL、21mg/mL及びこれらのポイント値の間の任意の範囲を含む。上記の「タンパク質の濃度で」とは、抗体薬物複合体中の抗体部分の濃度で計量することを意味する。
【0022】
選択的な実施形態において、薬剤担持量(n)の範囲は、各抗Trop2抗体の結合する細胞毒性薬物の平均数であってもよく、非限定的な実施例は、各抗体の結合する細胞毒性薬物の平均個数が約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12及びこれらのポイント値の間の任意の範囲であることを含む。好ましくは、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~4、3~5、5~6、5~7、5~8及び6~8の範囲から選ばれる。例示的に、薬剤担持量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均値であってもよい。nは小数又は整数である。
【0023】
選択的な実施形態において、薬剤担持量(n)は約4である。
【0024】
選択的な実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)タンパク質の濃度で、約10~約30mg/mLの上記抗体薬物複合体と、(b)約0.1~約0.3mg/mLのポリソルベートと、(c)約30~約50mg/mLの糖と、(d)約7~11mg/mLのグリシンと、(e)約20~約40mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤とを含み、上記組成物のpHは約5.5~6.5であり、
好ましくは、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)タンパク質の濃度で、約18~約22mg/mLの上記抗体薬物複合体と、(b)約0.2mg/mLのポリソルベート80と、(c)約40mg/mLのスクロースと、(d)約9mg/mLのグリシンと、(e)約30mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤とを含み、上記組成物のpHは約5.9~6.2であり、
より好ましくは、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)タンパク質の濃度で、約20mg/mLの上記抗体薬物複合体と、(b)約0.2mg/mLのポリソルベート80と、(c)約40mg/mLのスクロースと、(d)約9mg/mLのグリシンと、(e)約30mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤とを含み、上記組成物のpHは約6.0である。
【0025】
選択的な実施形態において、上記何れか一項の医薬組成物は液体製剤である。本発明の液体製剤又は再溶解した後の製剤は、比較的良い安定性を有し、冷蔵温度(4℃)で少なくとも3ヶ月間保存される。また、安定した液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。さらに、安定した液体製剤は、40℃を含む温度で1ヶ月間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。
【0026】
本開示は、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤であって、上記製剤を再溶解した後、上記のような医薬組成物を形成することができることを特徴とする凍結乾燥製剤をさらに提供する。
【0027】
本開示は、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法であって、上記のような医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む方法をさらに提供する。
【0028】
選択的な実施形態において、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法における上記凍結乾燥は、順に予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥というステップを含む。製剤の凍結及びその後の一次乾燥に適する温度での水の昇華により、凍結乾燥を行う。この条件で、生成物の温度は製剤の低共融点又は崩壊温度よりも低い。通常、一次乾燥の温度範囲は、約-30~25℃である(生成物が一次乾燥過程中に凍結されたままと仮定する)。乾燥に必要な時間は、製剤、サンプルを収容する容器(例えば、ガラスバイアル)の大きさと種類及び液体の体積によって決められ、上記時間の範囲は、数時間から数日間(例えば、40~60時間)であってもよい。二次乾燥段階は約0~40℃で行われてもよく、これは、主に容器の種類と大きさ及び使用されるタンパク質の種類によって決められる。二次乾燥の時間は、生成物における所望の残りの水分のレベルによって決められ、通常、少なくとも約5時間が必要である。通常、低圧で凍結乾燥された製剤の含水量は約5%よりも低く、好ましくは約3%よりも低い。圧力は、一次乾燥ステップに適用される圧力と同じであってもよく、好ましくは、二次乾燥の圧力が一次乾燥よりも低い。凍結乾燥の条件は、製剤及びバイアルの大きさによって変えてもよい。
【0029】
本開示の一選択的な実施例において、4.4mLの組成物の原液を凍結乾燥し、凍結乾燥手順は、予備凍結の温度が順に5℃と-45℃、一次乾燥の温度が-20℃、真空度が10Pa、二次乾燥の温度が25℃、真空度が順に10Paと1Paである。
【0030】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥製剤は、2~8℃で少なくとも16日、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月又は少なくとも24ヶ月間安定している。幾つかの実施形態において、当該凍結乾燥製剤は、40℃で少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも28日間又は少なくとも30日間安定している。
【0031】
本開示は、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤であって、上記のような抗体薬物複合体の医薬組成物を凍結乾燥することで得られる凍結乾燥製剤をさらに提供する。
【0032】
本開示は、抗体薬物複合体を含む再溶解溶液であって、上記のような凍結乾燥製剤を再溶解することで調製して得られることを特徴とする再溶解溶液をさらに提供する。
【0033】
本開示は、上記再溶解溶液を調製する方法であって、上記凍結乾燥製剤を再溶解するステップを含む方法をさらに提供し、その再溶解に用いられる溶液は、注射用水、生理食塩水又はグルコース溶液を含むが、これらに限定されない。
【0034】
選択的な実施形態において、上記再溶解溶液は、下記の成分、即ち、
(a)約10~約30mg/mLの上記抗体薬物複合体と、(b)約0.1~約0.3mg/mLのポリソルベートと、(c)約25~約80mg/mLのスクロースと、(d)約7~11mg/mLのグリシンと、(e)約10~約40mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤とを含み、上記組成物のpHは約5.5~6.5であり、
好ましくは、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)約18~約22mg/mLの上記抗体薬物複合体と、(b)約0.2mg/mLのポリソルベート80と、(c)約40mg/mLのスクロースと、(d)約9mg/mLのグリシンと、(e)約30mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンとを含み、上記組成物のpHは約5.9~6.2であり、
より好ましくは、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)約20mg/mLの上記抗体薬物複合体と、(b)約0.2mg/mLのポリソルベート80と、(c)約40mg/mLのスクロースと、(d)約9mg/mLのグリシンと、(e)約30mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンとを含み、上記組成物のpHは約6.0である。
【0035】
本開示は、上記のような医薬組成物、凍結乾燥製剤又は再溶解溶液が入った容器を含む製品をさらに提供する。幾つかの実施形態において、当該容器は、中性ホウケイ酸ガラス管製の注射剤ボトルである。
【0036】
本開示は、上記の医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は再溶解溶液又は製品の腫瘍を治療又は予防する薬剤の調製における応用をさらに提供する。
【0037】
本開示は、疾患を治療する方法であって、上記の医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は再溶解溶液又は製品を提供することを含む方法をさらに提供する。
【0038】
本開示は、疾患を治療するための、薬剤としての上記の医薬組成物、又は凍結乾燥製剤、又は再溶解溶液、又は製品、の用途をさらに提供する。
【0039】
本開示は、薬剤としての上記の医薬組成物、又は凍結乾燥製剤、又は再溶解溶液、又は製品をさらに提供し、好ましくは、上記薬剤は、腫瘍疾患の治療又は予防に用いられる。
【0040】
選択的な実施形態において、上記の疾患又は腫瘍はTROP2仲介性の疾患又は病状である。
【0041】
本開示は、薬剤としての上記の医薬組成物、又は凍結乾燥製剤、又は再溶解溶液、又は製品の、腫瘍とがんを治療及び/又は予防する薬剤の調製における用途をさらに提供し、そのうち、上記腫瘍とがんは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝胆がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、尿路上皮がんとメルケル細胞がんが好ましく、より好ましくは、上記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫とリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、上記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、上記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病と骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0042】
当業者によく知られているように、本開示に記載される各実施形態の1つ、幾つか又は全ての特性は、さらに組み合わせて本開示の他の実施形態を形成することができる。本開示の上記の実施形態及び組み合わせることで得られた他の実施形態は、以下の詳細な記載によってさらに説明する。
【0043】
[発明の詳細な説明]
本開示は、製造及び投与により有利で、性能が安定した医薬組成物を提供する。ここで、望ましくない不安定性は、凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング(clipping)/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、毒素の解離などの何れか1つ又は複数を含んでもよい。具体的に、本開示に記載される医薬組成物は、抗体薬物複合体及び緩衝剤を含む。
用語
【0044】
本開示がさらに容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本願で特に明確な定義のない限り、本願に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に一般的に理解されている意味を持っている。
【0045】
本開示は、出願WO2020063673における内容を全て本発明に組み込んでいる。
【0046】
「抗体薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)」は、リンカーユニットを介して抗体を、生物活性を有する細胞毒素又は細胞殺傷活性を有する低分子薬物に連結するものである。
【0047】
「薬剤担持量」は、薬物抗体比(Drug-to-Antibody Ratio、DAR)とも呼ばれ、即ち、ADC中のそれぞれの抗体に複合された薬物の平均数量である。それは、例えば、それぞれの抗体が約1~約10個の薬物に複合される範囲内であってもよく、また、ある実施例において、それぞれの抗体が約1~約8個の薬物に複合される範囲内であり、好ましくは2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~4、3~5、5~6、5~7、5~8と6~8の範囲から選ばれる。例示的に、薬剤担持量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均値であってもよい。本開示に係るADCの一般式は、上記一定の範囲内での薬物複合体抗体の集合を含む。本開示の実施形態において、薬剤担持量はnで表されてもよい。薬剤担持量は、UV/可視分光法、質量分析、ELISA試験及びHPLCなどの通常の方法により測定することができる。
【0048】
「リンカーユニット」又は「連結断片」又は「連結ユニット」という用語は、一端が抗体又はその抗原結合断片に連結され、他端が薬物に連結された化学構造断片又は結合を指し、他のリンカーに連結された後、薬物に連結されてもよい。
【0049】
リンカーは、伸長体、スペーサー及びアミノ酸ユニットを含み、例えば、US2005-0238649A1に記載された方法のようなこの分野での既知の方法により合成することができる。リンカーは、細胞において薬物を放出しやすくする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.、Cancer Research 52:127-131(1992)、米国特許No.5,208,020)を使用してもよい。
【0050】
細胞毒性薬物の負荷量は、
(1)連結試薬とモノクローナル抗体とのモル比を制御することと、
(2)反応時間と温度を制御することと、
(3)異なる反応試薬を選択することと、を含む非限定的な方法で制御することができる。
【0051】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J. biol. chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0052】
本開示に記載される「抗体」は、所望の抗原結合活性を示せば、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造をカバーしており、全長抗体と抗体断片(又は抗原結合断片、又は抗原結合部分)を含むが、これらに限定されない。通常、天然の完全抗体は、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合で連結してなるテトラペプチド鎖構造である。
【0053】
本開示の工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定的にトランスフェクションすることができる。さらに好ましい従来技術の一つとして、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製が行われる。非特異的に結合した成分を洗い流す。さらに、pH勾配法により、結合した抗体を溶離し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥する。
【0054】
「緩衝剤」は、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化に耐える緩衝剤を指す。pHを適当な範囲に制御する緩衝剤の例は、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン塩、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤を含む。
【0055】
「ヒスチジン緩衝剤」は、ヒスチジンを含む緩衝剤である。ヒスチジン緩衝剤の実例としては、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、ヒスチジン-酢酸ヒスチジン、ヒスチジン-リン酸ヒスチジン、ヒスチジン-硫酸ヒスチジンなどの緩衝剤を含み、好ましくはヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤である。ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジンと塩酸により調製されるか、又はヒスチジンと塩酸ヒスチジンにより調製されてもよい。
【0056】
「クエン酸塩緩衝剤」は、クエン酸イオンを含む緩衝剤である。クエン酸塩緩衝剤の実例は、クエン酸-クエン酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸カリウム、クエン酸-クエン酸カルシウム、クエン酸-クエン酸マグネシウムなどを含む。好ましいクエン酸塩緩衝剤は、クエン酸-クエン酸ナトリウムである。
【0057】
「コハク酸塩緩衝剤」は、コハク酸イオンを含む緩衝剤である。コハク酸塩緩衝剤の実例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム塩、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩などを含む。好ましいコハク酸塩緩衝剤は、コハク酸-コハク酸ナトリウム塩である。例示的に、上記コハク酸-コハク酸ナトリウムは、コハク酸と水酸化ナトリウムにより調製されるか、又はコハク酸とコハク酸ナトリウム塩により調製されてもよい。
【0058】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の実例は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム-クエン酸などを含む。好ましいリン酸塩緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウムである。
【0059】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム、ヒスチジン-酢酸ヒスチジン、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。好ましい酢酸塩緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウムである。
【0060】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載される抗体薬物複合体又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容されるベクターや賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、抗体の活性成分の安定性を保持し、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。
【0061】
本開示において、「医薬組成物」と「製剤」は相互に排他的ではない。
【0062】
本開示に記載される医薬組成物の溶液形態は、特に説明のない限り、その中の溶媒は何れも水である。
【0063】
「凍結乾燥製剤」は、液体若しくは溶液形態の医薬組成物、又は液体若しくは溶液製剤に対して真空凍結乾燥ステップを行った後に得られた製剤又は医薬組成物を示す。
【0064】
本明細書に使用される「約」、「ほぼ」という用語は、数値が当業者により測定された具体値の許容可能な誤差範囲にあることを意味し、上記数値部分が如何に計測又は測定するか(即ち、計測システムの限度)に依存する。例えば、この分野での各回の実行において「約」は、1以内又は1を超えた標準差を意味してもよい。或いは、「約」又は「基本的に含む」は、多くとも20%の範囲を意味してもよい。さらに、特に生物学的システム又は過程について、当該用語は、多くとも1桁又は数値の多くとも5倍を意味してもよい。特に説明のない限り、具体値が本願及び特許請求の範囲に現れる場合、「約」又は「基本的に含む」の意味は、当該具体値の許容可能な誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0065】
本開示に記載される医薬組成物は、安定的な効果を達成することができ、即ち、そのうちの抗体薬物複合体は貯蔵された後、基本的にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持しており、好ましくは、医薬組成物は貯蔵された後、基本的にその物理的・化学的安定性及びその生物学的活性を保持している。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間によって選択される。現在、タンパク質の安定性を測定する分析技術は複数種あり、所定温度で、所定期間貯蔵した後の安定性を測定することができる。
【0066】
安定した製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、より好ましくは1年間保存された場合に顕著な変化が認められない製剤である。また、安定した液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。さらに、安定した液体製剤は、40℃を含む温度で10日、20日、1ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。安定性の典型的な例としては、SEC-HPLCにより、凝集又は分解を発生した抗体モノマーが通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えないことが測定される。視覚的分析により、製剤は、淡黄色でほぼ無色透明な液体、又は無色、又は清澄からやや乳白色である。上記製剤の濃度、pH及び重量モル浸透圧濃度は、変化が±10%を超えない。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない減少が見られる。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない凝集が形成される。
【0067】
目視で色及び/又は清澄度が検出され、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定されたところ、抗体薬物複合体が顕著な凝集増加、沈殿及び/又は変性を示さないと、上記抗体薬物複合体は、薬物製剤において「その物理的安定性を保持している」とする。タンパク質の配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を確定するもの)により、及びFTIR分光法(タンパク質の二次構造を確定するもの)により評価することができる。
【0068】
抗体薬物複合体が顕著な化学的変化を示さないと、上記抗体は、薬物製剤において「その化学的安定性を保持している」とする。化学的に形態が変化されたタンパク質を検出・定量することにより、化学的安定性を評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解過程は、加水分解又は切断(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーやCE-SDSなどの方法で評価される)、酸化(例えば、質量分析法又はMALDI/TOF/MSと結合するペプチドマッピング法などの方法で評価される)、脱アミド作用(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング法、イソアスパラギン酸の測定などの方法で評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピング法などで評価される)を含む。
【0069】
抗体薬物複合体は、既定の時間での生物活性が薬物製剤の調製時に示される生物活性の所定範囲にある場合、上記抗体薬物複合体は、薬物製剤において「その生物活性を保持している」とする。
【0070】
「任意選択的」又は「任意選択的に」は、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、必ずしも生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしも存在しなくてもよいことを意味する。
【0071】
「置換される」とは、基の中の1つ又は複数の水素原子、好ましくは5個以下、より好ましくは1~3個の水素原子が互いに独立的に対応する数の置換基で置換されることを指す。無論、置換基は、それらの化学的に可能な部位にしか位置せず、当業者はそれほど努力せずに(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基は、不飽和(例えば、オレフィン)結合を有する炭素原子に結合する場合、不安定になる可能性がある。
【0072】
通常の医薬組成物の調製は、中国薬典に示されている。
【0073】
「ベクター」という用語は、本開示の薬物に利用されるものとして、薬物の人体への入り方と体内での分布を変更し、薬物の放出速度を制御し、薬物を標的器官に輸送することができる系を指す。薬物ベクターの放出と標的系により、薬物の分解と損失を低減し、副作用を低下させ、生物学的利用能を向上させることができる。例えば、ベクターとしての高分子界面活性剤は、その独特な両親媒性構造のため、自己集合して様々な形態の凝集体を形成することができ、好ましい実例は、例えば、ミセル、マイクロエマルジョン、ゲル、液晶、ベシクルなどである。これらの凝集体は、薬物分子を封入する能力を有すると共に、膜に対して良好な透過性を有し、良い薬物ベクターとすることができる。
【0074】
「投与」及び「処理」は、動物、ヒト、実験被験者、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物と、動物、ヒト、被験者、細胞、組織、臓器や生物流体との接触を意味する。「投与」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、そのうち、上記流体は細胞と接触する。「投与」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0075】
「治療」は、例えば、本開示の何れか1つの結合化合物の組成物を含む経口又は外用治療剤を患者に与えることを意味し、上記患者は1種又は複数種の疾患症状を有するが、既知の上記治療剤は、これらの症状に対して治療効果を有する。通常、治療を受ける患者又はグループには、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導したり、これらの症状を臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないように抑制したりする。何れかの具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の患者において必要な治療効果を発生させる能力など、種々の要因によって変化することができる。当該症状の重症度や進行状況の評価に医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、各標的疾患症状の緩和において無効である可能性があるが、この分野で既知の任意の統計学的検定方法、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定により、統計学的に有意な数の患者において標的疾患症状を低減するはずであることが確認された。
【0076】
「有効量」は、医学的疾患の症状又は病状の改善又は予防に十分な量を含む。有効量は、さらに、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の患者又は獣医対象に用いられる有効量は、例えば、治療すべき病状、患者の全体的な健康状況、投与の方法経路と用量及び副作用の重症度などの要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を回避する最大用量又は投与計画であってもよい。
【0077】
「置換」は、抗体タンパク質を溶解する溶剤系の置換を指し、例えば、抗体タンパク質が安定な製剤に存在するように、製剤を安定化する緩衝系で物理的な操作方式により抗体タンパク質を含む高塩又は高浸透圧の溶剤系を置換する。上記物理的な操作方式は、限外ろ過、透析又は遠心分離後の再溶解を含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】BxPC3細胞及びMiaPaCa2混合細胞に対するADCのバイスタンダー殺傷活性の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、実施例と合わせて本開示をさらに説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は一般的に、冷泉港実験室に出版された『抗体技術実験マニュアル』、『分子クローンマニュアル』のような通常の条件に従い、或いは原料又は商品メーカーにより勧められた条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
調製例1
I. 抗体の調製
本開示に使用される対照分子hRS7は特許WO03074566を参照して構築され、TINA抗体は特許WO2015098099A1を参照して構築され、その配列はそれぞれ下記の通りであり、即ち、
hRS7重鎖:
【0080】
【0081】
hRS7軽鎖:
【0082】
【0083】
TINA重鎖:
【0084】
【0085】
TINA軽鎖:
【0086】
【0087】
II. ADCの調製
ADC原液の薬剤担持量の分析
ADCは抗体架橋体類薬剤であり、その疾患を治療するメカニズムは、抗体の標的指向性により毒素分子を細胞に輸送することで、細胞を死滅させることである。薬物の負荷量は、薬効に決定的な役割を果たしている。
【0088】
一、UV-Visによる算出方法
紫外線法によりADC原液の薬剤担持量を測定した。
【0089】
実験の方法
コハク酸ナトリウム緩衝液が入ったキュベットを、参照吸収セル及びサンプル測定吸収セルにそれぞれ置いてから、溶媒ブランクを差し引いた後、供試品溶液が入ったキュベットをサンプル測定吸収セルに置き、280nm及び370nmでの吸光度を測定した。
【0090】
結果の算出
紫外線分光光度法(使用機器:Thermo nanodrop 2000紫外線分光光度計)によりADC原液負荷量を測定し、その原理は、ある波長でのADC原液の全吸光値が、細胞毒性薬剤とモノクローナル抗体の当該波長での吸光値の累積に等しいことであり、即ち、
(1)A280nm=εmab-280bCmab+εDrug-280bCDrug
εDrug-280:薬物の280nmでの平均モル吸光係数が5100であり、
CDrug:薬物の濃度であり、
εmab-280:モノクローナル抗体原液の280nmでの平均モル吸光係数は214600であり、
Cmab:モノクローナル抗体原液の濃度であり、
b:光路長は1cmである。
【0091】
同様に、サンプルの370nmでの全吸光値方程式を得ることができる:
(2)A370nm=εmab-370bCmab+εDrug-370bCDrug
εDrug-370:薬物の370nmでの平均モル吸光係数が19000であり、
CDrug:薬物の濃度であり、
εmab-370:モノクローナル抗体の370nmでの吸光係数は0であり、
Cmab:モノクローナル抗体原液の濃度であり、
b:光路長は1cmである。
【0092】
(1)と(2)の方程式により、モノクローナル抗体及び薬剤の2つの検出波長での吸光係数と濃度データに合わせて、薬剤の負荷量を算出することができる。
【0093】
薬剤担持量=CDrug/Cmab。
【0094】
二、CE-SDSによる算出方法
試薬及び機器
SDS-Mw Analysis Kit:Beckman製、製品番号390953で、当該試薬キットには、SDS-MW分離ゲル用緩衝液、SDS-MWサンプル緩衝液、酸性洗浄液(0.1mol/Lの塩酸溶液)、塩基性洗浄液(0.1molの水酸化ナトリウム溶液)、内部標準物質(10kDa)が含まれる。北京博思雅生化技術研究院製のSDS試薬キット(製品番号BSYK018)を採用してもよく、当該試薬キットには、CE-SDSゲル緩衝液、CE-SDSサンプル緩衝液が含まれる。
【0095】
アルキル化溶液(0.25molのヨードアセトアミド溶液):約0.046gのヨードアセトアミドを秤量し、1mLの超純水を加えて溶解して均一に混合し、2~8℃、遮光で7日間保存してもよい。
【0096】
キャピラリー電気泳動装置:SCIEX社PA800plus。
【0097】
キャピラリー:コーティング無しの溶融石英キャピラリー(内径50μm)を全長が30.2cmになるように切断し、高分解能方法の有効分離長さが20cmである。
【0098】
供試品溶液の調製
SDSサンプル緩衝液で供試品を1mg/mLまで希釈した。供試品溶液(1mg/mL)95μLを取り、0.8mol/Lのヨードアセトアミド水溶液5μLを加え、旋回により均一に混合した。ブランク対照95μLを取り、0.8mol/Lのヨードアセトアミド水溶液5μLを加え、旋回により均一に混合してから、サンプル管からそれぞれ75μL取り出してサンプル瓶に入れ、直ちに分析を行った。
【0099】
測定方法
1)キャピラリーの前処理:0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液により60psiの圧力で3分間洗浄してから、0.1mol/Lの塩酸溶液により60psiの圧力で2分間洗浄し、最後に純水により70psiの圧力で1分間洗浄した。毎回稼動する前に行うべきである。
【0100】
2)キャピラリーのプレ充填:SDS分離ゲル用緩衝液により50psiの圧力で15分間洗浄した。毎回稼動する前に行うべきである。
【0101】
サンプル注入:10kVの逆極性で電動注入し、サンプルを還元して、20秒注入した。
【0102】
分離:逆極性で、15kVで40分間作動した。
【0103】
サンプル室温度:18~25℃。
【0104】
キャピラリー温度:18~25℃。
結果の分析
抗体における解放されたジスルフィド結合から遊離されたメルカプト基が全て対応する薬剤に複合したことから、Beckmanソフトウェアによりデータを分析し、重鎖、非グリコシル化重鎖及び軽鎖などの補正ピーク面積のそれぞれの、全補正ピーク面積に占める比率から算出した。式:DAR=[4×重鎖(H)ピーク面積+2×ハプテン(H-L)ピーク面積+4×二重鎖(H-H)ピーク面積+2×重重軽鎖(H-H-L)ピーク面積]/[重鎖(H)ピーク面積/2+ハプテン(H-L)ピーク面積/2+二重鎖(H-H)ピーク面積+重重軽鎖(H-H-L)ピーク面積+完全抗体ピーク面積]により、最終的に当該ADCの加重平均値を算出した。
【0105】
三、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)
1、試薬及び機器:
HPLCシステム:Waters H-Class超高速液体クロマトグラフUPLCシステム
検出器:TUV検出器(測定波長:280nm)
BioResolve RP mAb Polyphenyl(2.7μm 4.6×150mM)
2、検出条件:
カラム温度:80℃
流速:1.0mL/分
【0106】
移動相A:0.1%ギ酸+0.025%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液。
【0107】
移動相B:0.1%FA+0.025%トリフルオロ酢酸(TFA)アセトニトリル溶液。
勾配手順:27.0%B~45.0%B(0.00~12.00分間)、45.0%B~80.0%B(12.00~13.00分間)、80.0%B~80.0%B(13.00~15.00分間)、27.0%B~27.0%B(15.04~20.00分間)、
注入サンプル量:5.0μL
3、データの分析
薬物に結合しない抗体軽鎖(L0)及び抗体重鎖(H0)と比較して、薬物に結合する軽鎖(1つの薬物に結合する軽鎖:L1)及び薬物に結合する重鎖(1つの薬物に結合する重鎖:H1、2つの薬物に結合する重鎖:H2、3つの薬物に結合する重鎖:H3、4つの薬物に結合する重鎖:H4)は、疎水性がその薬物結合数に比例して増加したと共に、保持時間が長くなった。従って、L0、L1、H0、H1、H2、H3とH4という順にそれぞれ溶離することができる。L0とH0の保持時間を比較した結果、検出ピークをL0、L1、H0、H1、H2、H3とH4のうちの何れか1つに割り当てた。
【0108】
薬物リンカーがUVを吸収するので、次の式に従って、軽鎖、重鎖と薬物リンカーのモル吸光係数を利用し、結合する薬物の数によって、得られたピーク面積を補正した。計算式は、次の通りである:
軽鎖(εLC-280)/(εLC-280+連結薬物数*εdrug-280)
重鎖(εHC-280)/(εHC-280+連結薬物数*εdrug-280)
備考:εLC-280:軽鎖の280nmでのモル吸光係数、
εHC-28:重鎖の280nmでのモル吸光係数、
εdrug-280:毒素の280nmでのモル吸光係数
【0109】
【0110】
調製例2-1 ADC-1
【0111】
【0112】
37℃の条件で、抗体PD3のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、4.0mL、270nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、67.5μL、675nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0113】
化合物9-A(WO2020063676A1の明細書における実施例9の9-Aを参照して調製、2.9mg、2700nmol)を180μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、0.001MのEDTA含有)、式PD3-9-Aに示される例示的な生成物ADC-1のPBS緩衝液(1.93mg/mL、18.4mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0114】
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.77。
【0115】
調製例2-2 ADC-2
37℃の条件で、抗体PD3のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、4.0mL、270nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、143.1μL、1431nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0116】
化合物9-A(4.35mg、4050nmol)を270μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、0.001MのEDTA含有)、式PD3-9-Aに示される例示的な生成物ADC-2のPBS緩衝液(1.69mg/mL、17.8mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0117】
UV-Visにより平均値を算出した:n=6.59。
【0118】
調製例2-3 ADC-3
12℃の条件で、2.5mMのEDTAを含む10mMのヒスチジン-酢酸-Tris緩衝液(pH7.2)に、145.24gのPD3抗体原液(1.00mMol、10mMのヒスチジン-酢酸で抗体濃度17.5mg/mLに希釈)と0.6308gのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(Sigma、2.20mMol)を恒温水浴で100分間撹拌しながら反応させ、中間体I溶液を生成した。2Mの酢酸を滴下して反応液のpHを5.0に調整した。
【0119】
化合物9-A(4.834g、4.50mMol)を0.456LのDMSOに溶け、化合物9-AのDMSO溶液を生成した。上記中間体I溶液に0.373LのDMSOを予め加え、さらに上記化合物9-AのDMSO溶液をDMSOが予め加えられた中間体I溶液に加え、水浴で12℃で90分間撹拌しながら反応させ、反応を止めた。
【0120】
上記反応液を0.22μmのフィルターでろ過した後、まず15倍の体積と等体積の限外ろ過(30kdの限外ろ過膜パッケージ)を行って10%のDMSO-30mMのヒスチジン-酢酸緩衝液(pH=5.0)に交換し、次に18倍の体積と等体積の限外ろ過を行って30mMのヒスチジン-塩酸緩衝液(pH=6.0)に交換し、スクロースを40g/L、グリシンを9g/L、Tween-80を0.2g/Lに加え、式PD3-9-Aに示される例示的な生成物ADC-3(20g/L、132.20g、収率91.0%、逆相クロマトグラフィーにより平均値を算出した:n=4.0)を得て、最後に80mg/瓶で入った凍結乾燥粉を調製した。
【0121】
調製例2-4 ADC-4
【0122】
【0123】
その合成過程はWO2015098099の実施例19を参照する。
【0124】
37℃の条件で、抗体TINAのPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、2.0mL、135.4nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、33.8μL、338nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0125】
化合物58(1.4mg、1354nmol)を70μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、0.001MのEDTA含有)、式TINA-58に示される例示的な表題生成物ADC-4のPBS緩衝液(1.13mg/mL、15.1mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0126】
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.99。
【0127】
調製例2-5 ADC-5
【0128】
【0129】
37℃の条件で、抗体PD3のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、1.5mL、101.4nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、25.3μL、253nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0130】
化合物58(1.05mg、1014nmol、特許「CN104755494A」における第163ページでの実施例58を参照)を60μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液)、式PD3-58に示される例示的な表題生成物ADC-5のPBS緩衝液(0.82mg/mL、13.5mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0131】
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.88。
【0132】
調製例2-6 ADC-6
【0133】
【0134】
37℃の条件で、抗体hRS7のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、1.4mL、94.60nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、50.1μL、501nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0135】
化合物SN38(特許CN105407891Aの第59ページでの実施例1を参照して合成、2.1mg、1419nmol)を50μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液)、式hRS7-SN38に示される例示的な表題生成物ADC-6のPBS緩衝液(1.03mg/mL、11.5mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0136】
CE-SDSにより平均値を算出した:n=7.56。
【0137】
調製例2-7 ADC-7
【0138】
【0139】
37℃の条件で、抗体hRS7のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、2.18mL、147.3nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、36.8μL、368nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0140】
化合物9-A(1.58mg、1471nmol)を100μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液)、式hRS7-9-Aに示される例示的な表題生成物ADC-7のPBS緩衝液(1.10mg/mL、16.4mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0141】
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.72。
【0142】
調製例2-8 ADC-8
【0143】
【0144】
37℃の条件で、抗体hRS7のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、2.18mL、147.3nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、36.8μL、368nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0145】
化合物58(1.52mg、1473nmol、特許「CN104755494A」における第163ページでの実施例58を参照)を100μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液)、式hRS7-58に示される例示的な表題生成物ADC-8のPBS緩衝液(1.02mg/mL、16.8mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0146】
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.93。
【0147】
調製例2-9 ADC-9
【0148】
【0149】
37℃の条件で、抗体TINAのPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、0.95mL、64.2nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10mM、16.0μL、160nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0150】
化合物9-A(0.69mg、642nmol)を30μLのDMSOに溶け、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液)、式TINA-9-Aに示される例示的な表題生成物ADC-9のPBS緩衝液(0.99mg/mL、7.0mL)を得て、4℃で貯蔵した。
【0151】
UV-Visにより平均値を算出した:n=3.99。
【0152】
以下、生化学試験方法により本開示の抗体及び複合体の活性を検証した。
【0153】
試験例1:抗体タンパク質レベル結合実験
pH7.4のPBS(源培生物、B320)緩衝液でhTROP-2タンパク質を1μg/mLまで希釈し、100μL/ウェルの体積で96ウェルマイクロプレートに加え、4℃で一晩インキュベートした。液体を捨てた後、PBSで希釈した5%の脱脂乳(BD、232100)300μLを各ウェルに加えてブロッキングし、37℃で2時間インキュベートした。ブロッキング終了後、ブロッキング液を捨て、PBST緩衝液(pH7.4 PBSに0.1%のtween-20が含まれた)でプレートを3回洗った後、各ウェルに勾配希釈された抗体溶液100μLを加え、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート終了後、PBSTでプレートを3回洗い、各ウェルに100μLのマウス抗-ヒトIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch、209-035-088、1:8000で希釈)を加え、37℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを3回洗った後、各ウェルに100μLのTMB顕色基質(KPL、5120-0077)を加え、室温で10~15分間インキュベートし、各ウェルに50μLの1MのH2SO4を加えて反応を止め、プレートリーダーで450nmでの吸収値を読み取り、ソフトウェアで抗体と抗原との結合曲線をフィッティングし、EC50値を算出した。抗体のタンパク質への結合活性は表2に示されている。
【0154】
【0155】
その結果、本願におけるPD3抗体は、hTROP-2タンパク質に対して比較的高い結合活性を有することが示されている。
【0156】
試験例2:抗体の細胞レベル結合実験
TROP-2を安定トランスフェクションしたCHOK1細胞をFACS緩衝液(2%のウシ胎児血清(Gibco、10099141)pH7.4 PBS(Sigma、P4417-100TAB))で1×106/mLの細胞懸濁液に調製し、100μL/ウェルで96ウェル円底プレートに加えた。上清を遠心分離して除去した後、FACS緩衝液で希釈された異なる濃度の測定待ちの抗体を50μL/ウェルで加え、4℃の冷蔵庫に置いて遮光で1時間インキュベートした。FACS緩衝液300 gで3回遠心分離して洗浄した後、作業濃度のAlexa Fluor 488ヒツジ抗-ヒトIgG(H+L)(invitrogen、A-11013)を加え、4℃の冷蔵庫に置いて遮光で40分間インキュベートした。FACS緩衝液300gで3回遠心分離して洗浄した後、BD FACSCantoIIフローサイトメーターで幾何平均蛍光強度(MFI)を検出し、TROP-2を安定トランスフェクションして発現した細胞に対する抗体の結合EC50値を算出した。抗体の細胞への結合活性は表3に示されている。
【0157】
【0158】
その結果、本願におけるPD3抗体は、TROP-2タンパク質を発現した細胞に対して比較的高い結合活性を有することが示されている。
【0159】
試験例3:抗体のエンドサイトーシス実験
本実験の目的は、DT3Cタンパク質が細胞に侵入した後、活性化されたDTが細胞を殺傷することによって、抗TROP-2抗体のエンドサイトーシス状況を間接的に反映することである。EC50及びEmaxによって抗体の体外エンドサイトーシス活性を評価した。
【0160】
DT3Cは組換え発現の融合タンパク質であり、ジフテリア毒素の断片A(毒素部分のみ)とG群連鎖球菌の3C断片(IgG結合部分)が融合してなるものであり、当該タンパク質は抗体のIgG部分によく親和することができ、抗体においてエンドサイトーシスが生じた場合に一緒に細胞に侵入し、細胞内フーリンの作用下で、毒性を有するDTを放出し、DTはEF2-ADPリボース化の活性を抑制し、タンパク質の翻訳過程を遮断して、最終的に細胞の死亡を引き起こすことができる。細胞に侵入していないDT3Cは、細胞を殺傷する活性を有しない。細胞殺傷状況によって抗体のエンドサイトーシス活性を評価した。
【0161】
20%の低IgG FBSを含む新鮮な細胞培地で細胞懸濁液を調製し、細胞密度が2×104細胞/mLであり、50μL/ウェルで細胞培養プレートに加え、5%の二酸化炭素及び37℃で16時間培養した。無血清培地で4×濃度のDT3Cを調製し、0.22μmの小型フィルターでろ過して滅菌溶液にした。無血清培地で4×濃度の抗体を調製し、80μLのDT3C及び80μLの抗体を1:1の体積で均一に混合し、室温で静置して30分間インキュベートした。50μLの希釈された抗体-DT3C混合物を取って50μLの細胞に加え、インキュベーターで3日間インキュベートした。各ウェルに50μLのCTGを加え、室温で遮光で10分間インキュベートし、Victor3で化学発光を読み取った。抗体のエンドサイトーシス活性は表4に示されている。
【0162】
【0163】
その結果、本願におけるPD3抗体は、比較的高いエンドサイトーシス効率を有することが示されている。
【0164】
試験例4:抗体の親和性の測定
TROP-2に対する抗体の親和性の検出は、キャプチャー抗体の形態を採用した。抗-ヒトIgG抗体(Cat.#BR-1008-39、Lot.#10260416、GE)が複合されたProtein A(Cat.#29127556、Ge)バイオセンサチップでキャプチャー抗体と親和させてから、チップの表面で抗原hTROP-2を流し、Biacore T200機器によりリアルタイムで反応シグナルを検出することにより、結合と解離曲線を得た。各実験のサイクル解離が完了した後、再生緩衝液Glycine1.5(Cat#BR100354、GE)又は3MのMgCl2(Human antibody capture kit、Cat.#BR100839、GEに由来)でチップを洗浄して再生した。実験終了後、GE Biacore T200 Evaluation version 3.0ソフトウェアにより(1:1)Langmuirモデルでデータをフィッティングし、親和性の数値を得た。抗体のタンパク質への親和性は表5に示されている。
【0165】
【0166】
その結果、本願におけるPD3抗体は、hTROP-2への親和性が比較的高い。
【0167】
試験例5:ADC分子の細胞活性実験
当該実験に使用された細胞は下記の通りである、ATCCから購入され、製品番号HTB-43(TM)のFaDu(++++)、ATCCから購入され、製品番号CRL-2868のHCC827(+++)、中科院細胞バンクから購入され、製品番号TCHu102のColo205(++)、ATCCから購入され、製品番号CRL-2062(TM)のDMS53(++)、ATCCから購入され、製品番号HTB-77のSK-OV-3(+)、ATCCから購入され、製品番号:CCL-61(TM)のCHO-K1(-)。そのうち、「+」は細胞における全TROP-2の発現量を示し、「+」が多いほど、TROP-2の発現量が高くなり、「-」はTROP-2未発現を示す。
【0168】
10%のFBSを含む新鮮な細胞培地で細胞懸濁液を調製し、密度が3703細胞/mLであり、135μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加え、5%の二酸化炭素及び37℃で16時間培養した。ADCサンプルをPBSにより5μmに調製した。これを初期濃度として、PBSで5倍希釈し、合計8つの濃度にした。各ウェルに15μLの上記ADC溶液を加えた。5%の二酸化炭素及び37℃で6日間培養した。各ウェルに70μLのCTGを加え、室温で遮光で10分間インキュベートし、Victor3で化学発光を読み取ってGraphPad Prismソフトウェアによりデータの分析を行った。
【0169】
その結果、ADC-1は比較的強い細胞殺傷効果を有し、且つ殺傷効果が腫瘍細胞表面のTROP-2発現レベルと正相関を有することが示されている。
【0170】
【0171】
上記方法により2回目の並行比較実験を行って、下記の結果を得た。
【0172】
【0173】
試験例6:バイスタンダー殺傷活性実験
BxPC3(ヒト膵臓がん細胞、ATCC、CRL-1687)及びMiaPaCa2細胞(ヒト膵臓がん細胞、biocytogen、B-HCL-014)をそれぞれRPMI1640+10%のFBS及びDMEM/高グルコース+10%のFBSで培養し、細胞をパンクレアチンで消化し、新鮮な培地で中和し、1000rpmで3分間遠心分離し、上清を捨て、細胞をRPMI1640+10%のFBSで再懸濁した。細胞を計数してから、BxPC3の細胞密度を6×104個/mLに調整し、MiaPaCa2-lucの細胞密度を1.5×104個/mLに調整した。12ウェルプレートのプレート1において各ウェルに500μLのBxPC3細胞及び500μLのMiaPaCa2-luc細胞を加えた。12ウェルプレートのプレート2に500μLのMiaPaCa2-luc細胞及び500μLの10%FBS血清含有RPMI1640培養液を加えた。5%の二酸化炭素及び37℃で24時間培養した。
【0174】
ADCサンプルを40×濃度の中間溶液(0.2μm)に調製した。それぞれ25μLの上記サンプルを取って12ウェルプレートの対応するウェルに加えた。溶剤対照群を設けた。5%の二酸化炭素及び37℃で6日間培養した。12ウェルプレートにおける細胞をパンクレアチンで消化し、新鮮な培地で中和し、1000rpmで3分間遠心分離し、上清を捨て、1mLのFACS緩衝液(PBS+2.5%のFBS)で再懸濁し、20μLの細胞を取り、20μLのトリパンブルーを加え、計数した。プレート1の細胞を1000rpmで3分間遠心分離し、上清を捨て、100μLのFACS Bufferで再懸濁し、2μLのTROP-2(EGP-1)モノクローナル抗体(MR54)を加え、氷上で30分間インキュベートした。4℃、2000rpmで1分間遠心分離し、上清を捨て、150μLのFACS緩衝液を加え、細胞を再懸濁した。BD FACSVerseにより検出した。Flowjo 7.6によりデータを分析した。バイスタンダー殺傷活性実験の結果は
図1に示されている。
【0175】
その結果、本開示におけるADC-1は明確なバイスタンダー殺傷効果を有し、ADCはTROP-2陰性のMiaPaCa2細胞を殺傷しないが、TROP-2を発現したBxPC3細胞と陰性細胞MiaPaCa2とを混合した後、ADC-1はTROP-2陰性の細胞に対しても殺傷効果を有することが示されている。
【0176】
体内活性の生物学的評価
試験例7:Fadu細胞のCDXマウスモデル体内薬効評価
Fadu細胞(3×106個)をBalb/cヌードマウスの右脇部皮下に接種し、接種10日後、腫瘍体積が~245mM3に達した後、体重、腫瘍が過大又は過小であるものを除去し、腫瘍体積によってマウスをランダムで5群に分け、1群に8匹であった。
【0177】
ADCを腹腔内に注射し、0日目及び8日目に計2回投与し、各匹に体重に応じて10g/0.1mLで注射し、投与量が1mg/kgであった。腫瘍の体積と体重を週2回計測し、データを計21日記録した。
【0178】
平均値がavgで算出され、SD値がSTDEVで算出され、SEM値がSTDEV/SQRT(各群の動物数)で算出されるように、Excel統計ソフトウェアによりデータを記録し、GraphPad Prismソフトウェアによりプロットし、Two-way ANOVA又はOne-way ANOVAによりデータの統計的分析を行った。
【0179】
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L長×L短
2
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100で、そのうち、T、Cは実験終了時の治療群及び対照群の腫瘍体積であり、T0、C0は実験開始時の腫瘍体積である。
【0180】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0181】
その結果、表8に示されるように、1mpkの用量では、ADC-1はFaDu移植腫瘍に対して比較的強い腫瘍阻害効果を有することが明らかになった。
【0182】
【0183】
試験例8:SKOV3細胞のCDXマウスモデル体内薬効評価
SKOV3細胞(5×106個)をBalb/cヌードマウスの右脇部皮下に接種し、接種23日後、腫瘍体積が約180mM3に達した後、体重、腫瘍が過大又は過小であるものを除去し、腫瘍体積によってマウスをランダムで5群に分け、1群に8匹であった。
【0184】
ADCを腹腔内に注射し、計2回投与し、各匹に体重に応じて10g/0.1mLで注射し、投与量が下表に示されている。腫瘍の体積と体重を週2回測定し、データを記録した。平均値がavgで算出され、SD値がSTDEVで算出され、SEM値がSTDEV/SQRT(各群の動物数)で算出されるように、Excel統計ソフトウェアによりデータを記録し、GraphPad Prismソフトウェアによりプロットし、二元配置ANOVA又は一元配置ANOVAによりデータの統計的分析を行った。
【0185】
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L長×L短
2
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100で、そのうち、T、Cは実験終了時の治療群及び対照群の腫瘍体積であり、T0、C0は実験開始時の腫瘍体積である。
【0186】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0187】
その結果、表9に示されるように、異なる用量では、ADC-1はSKOV3移植腫瘍に対して比較的強い腫瘍阻害効果を有すると共に、腫瘍阻害効果が用量依存効果を有する。
【0188】
効果は用量依存効果を有する。
【0189】
【0190】
試験例9:Colo205細胞のCDXマウスモデル体内薬効評価
Colo205細胞(5×106個)をBalb/cヌードマウスの右脇部皮下に接種し、接種10日後、腫瘍体積が~245mM3に達した後、体重、腫瘍が過大又は過小であるものを除去し、腫瘍体積によってマウスをランダムで6群に分け、1群に8匹であった。
【0191】
ADCを腹腔内に注射し、0日目(D0)及び10日目に計2回投与し、各匹に体重に応じて10g/0.1mLで注射し、投与量が10mg/kgであった。腫瘍の体積と体重を週2回計測し、データを計28日(D28)記録した。
【0192】
平均値がavgで算出され、SD値がSTDEVで算出され、SEM値がSTDEV/SQRT(各群の動物数)で算出されるように、Excel統計ソフトウェアによりデータを記録し、GraphPad Prismソフトウェアによりプロットし、二元配置ANOVAや一元配置ANOVAによりデータの統計的分析を行った。
【0193】
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L長×L短
2
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100で、そのうち、T、Cは実験終了時の治療群及び対照群の腫瘍体積であり、T0、C0は実験開始時の腫瘍体積である。
【0194】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0195】
その結果、表10に示されるように、1mpkの用量では、化合物9-Aが複合されたADC-9及びADC-7は、Colo205移植腫瘍に対して比較的強い腫瘍阻害効果を有することが明らかになった。
【0196】
【0197】
製剤
製剤の調製と検出中に使用された機器及び結果の算出方法は、以下の通りである、
1)SECサイズ排除クロマトグラフィー:
ゲル空孔の孔径の大きさと高分子サンプル分子のコイル寸法との相関関係によって溶質を分離する分析方法である。
【0198】
SEC%(SECモノマーの含有量百分率)=Aモノマー/A全×100%(Aモノマーはサンプル中のメインピークモノマーのピーク面積であり、A全は全てのピーク面積の和である)。
【0199】
SEC測定用機器:アジレント1260、カラム:waters、XBrige BEH200Å SEC(300×7.8mM 3.5μm)
2)R-CEキャピラリーゲル電気泳動:
ゲルをキャピラリーに支持媒体として移動して行われる電気泳動であり、一定の電圧でサンプルの分子量の大きさによって分離する方法である。
【0200】
R-CEの純度百分率=Aメインピーク/A全×100%(Aメインピークはサンプル中の軽鎖メインピーク+重鎖メインピークのピーク面積であり、A全は全てのピーク面積の和である)。
【0201】
R-CE測定用機器:Beckman型番plus800
3)濁度の測定:
光線が水層を透過する時に妨げられる程度であり、水層による光線への散乱と吸収の能力を示し、懸濁物質の含有量に関連するだけでなく、粒子の成分、サイズ、形状及びその表面の反射特性にも繋がっている。同一のタンパク質サンプルの同じ濃度及び同じ波長(近紫外・可視光波長領域)での吸収値を比較することにより、吸収値が大きいほど、濁度が大きくなり、サンプル中のタンパク質分子の凝集傾向が明らかになることが示された。測定機器は、多機能プレートリーダー(Molecular Devices M5)であり、同じ体積のサンプルを96ウェルプレートに入れて吸光度値を読み取った。
【0202】
4)浸透圧の測定:
凝固点法で浸透圧を測定し、凝固点降下値が溶液のモル濃度に正比例することを基にして、高感度測温素子を使用し、溶液の凝固点を測定し、電気量で浸透圧に変換した。機器メーカー:ルーザーLoser、型番OM815。
【0203】
5)タンパク質濃度の測定:
本開示における抗体薬物複合体の濃度は、タンパク質の濃度、即ち、抗体薬物複合体中の抗体部分の濃度で計量される。
【0204】
抗体薬物複合体中の毒素はタンパク質特性吸収波長280nmで吸収があると共に、当該毒素は370nmでも吸収があるので、下記の式で上記タンパク質濃度を算出した、
【0205】
【0206】
【0207】
を取り
即ち、
【0208】
【0209】
式中、A280nm:光路長が1cmである場合、供試品溶液の単一サンプルの波長280nmでの吸光度の平均値であり、
A370nm:光路長が1cmである場合、供試品溶液の単一サンプルの波長370nmでの吸光度の平均値であり、
EmAb-280:タンパク質の波長280nmでの質量吸光係数は1.532g-1cm-1Lであり、
Edrug-280:毒素の波長280nmでの質量吸光係数は5.17g-1cm-1Lであり、
Edrug-370:毒素の波長370nmでの質量吸光係数は17.89g-1cm-1Lであり、
R:毒素吸光係数の370nmと280nmでの比率は3.46であり、
CmAb:タンパク質の濃度、mg/mLであり、
l:光路長、cm(ここでは光路長は1cm)である。
【0210】
供試液を希釈すると、タンパク質濃度は
【0211】
【0212】
であり、Nは希釈倍数である。
【0213】
タンパク質濃度測定機器:紫外可視分光光度計、型番:Nano Drop One。
実施例1:抗Trop2-ADC抗体製剤緩衝系及びpHスクリーニング
下記の緩衝液を用いて、ADC-3のタンパク質濃度が10~30mg/mLである抗Trop2-ADC抗体製剤を調製した。具体的には、以下の通りである、
1)10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム塩(略称:CA)、pH5.0、20mg/mLのタンパク質濃度、
2)10mMのCA、pH5.5、20mg/mLのタンパク質濃度、
3)10mMのCA、pH6.0、20mg/mLのタンパク質濃度、
4)10mMのCA、pH6.5、20mg/mLのタンパク質濃度、
5)10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウム塩(略称:SA)、pH5.0、20mg/mLのタンパク質濃度、
6)10mMのSA、pH5.5、20mg/mLのタンパク質濃度、
7)10mMのSA、pH6.0、20mg/mLのタンパク質濃度、
8)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン(略称:His-HCl)、pH5.5、10mg/mLのタンパク質濃度、
9)10mMのHis-HCl、pH5.5、20mg/mLのタンパク質濃度、
10)10mMのHis-HCl、pH5.5、30mg/mLのタンパク質濃度、
11)10mMのHis-HCl、pH6.0、20mg/mLのタンパク質濃度、
12)10mMのHis-HCl、pH6.5、20mg/mLのタンパク質濃度、
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。サンプルは強制分解の40℃高温条件で、外観、SECとR-CEを評価指標として、製剤の安定性を調べた。実験の結果は、表11に示されている。
【0214】
40℃ M1である場合、His-HCl系はCA及びSA系に比べて外観上の粒子数が少なく、同じpH値及び同じタンパク質濃度である場合、His系はCA及びSA系に比べて純度項が高く、同じ緩衝系では、pHの増加につれて、SECモノマーピーク及びR-CEメインピークの低下値が小さくなる。10mMのpH5.5のHis系では、タンパク質濃度の増加につれて、SECポリマーはやや増加し、R-CE純度項に顕著な変化がない。上述したように、緩衝系は好ましくHis-HClであり、pH範囲は好ましく5.5~6.5であり、タンパク質濃度は好ましく10~30mg/mLである。
【0215】
【0216】
【0217】
実施例2:抗Trop2-ADC抗体製剤中の界面活性剤スクリーニング
10mMのpH6.0のHis-HCl緩衝系を用いて、80mg/mLのスクロースを含み、ADC-3のタンパク質濃度が20mg/mLで、異なる濃度のポリソルベート80(略称:PS80)を含む抗Trop2-ADC抗体製剤を調製した。具体的には、以下の通りである、
1)PS80フリー、
2)0.2mg/mL PS80、
3)0.4mg/mL PS80、
4)0.6mg/mL PS80、
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。サンプルを振とう(25℃、300rpm、3日間)及び高温(40℃ M1)の条件で置き、外観、SEC、R-CEを評価指標として、製剤の安定性を調べた。実験の結果は、表12に示されている。
【0218】
実験の結果は、全ての考察条件で、0.2~0.6mg/mLのPS80群の外観が何れもPS80フリー群より優れ、0.2mg/mLのPS80群は、1ヶ月高温後のR-CE純度項のメインピークの低下が0.4mg/mL及び0.6mg/mL群よりも低かったことを示している。上述したように、PS80濃度は好ましく0.2mg/mLである。
【0219】
【0220】
実施例3:抗Trop2-ADC抗体製剤の糖類スクリーニング
10mMのpH6.0のHis-HCl緩衝系を用いて、0.4mg/mLのポリソルベート80、異なる糖類を含み、ADC-3のタンパク質濃度が20mg/mLである抗Trop2-ADC抗体製剤を調製した。そのうち、異なる糖は以下の通りであり、糖の含有量は、溶液浸透圧が等張である場合の濃度である:
1)80mg/mLのスクロース、
2)88mg/mLのトレハロース二水和物、
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。サンプルを振とう(25℃、300rpm、3日間)、FT5C(-35℃と2~8℃の間で5サイクルの凍結融解)及び高温(40℃ M1)の条件で置き、外観、SEC、R-CEを評価指標として、製剤の安定性を調べた。実験の結果は表13に示されている。
【0221】
実験の結果は、異なる条件で、スクロースとトレハロース二水和物は、外観及び純度項に顕著な差がなかったことを示している。
【0222】
【0223】
実施例4:抗Trop2-ADC抗体製剤処方の最適化
pH6.0のHis-HCl緩衝系を用いて、0.2mg/mLのPS80を含み、異なるスクロース濃度とグリシン濃度を有し、ADC-3のタンパク質濃度が20mg/mLである抗Trop2-ADC抗体製剤を調製した。具体的には、以下の通りである、
1)10mMのHis-HCl pH6.0、80mg/mLのスクロース、
2)10mMのHis-HCl pH6.0、40mg/mLのスクロース、10.2mg/mLのグリシン、
3)30mMのHis-HCl pH6.0、70mg/mLのスクロース、
4)30mMのHis-HCl pH6.0、40mg/mLのスクロース、7.6mg/mLのグリシン、
溶液剤と凍結乾燥剤という2つの方法で考察した。
【0224】
溶液剤:調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。溶液剤を高温(40℃ D10)条件で置き、SEC、R-CEを評価指標として、製剤の安定性を調べた。実験の結果は表14に示されている。全ての群も、40℃ D10後に純度項に顕著な差がなかった。
【0225】
【0226】
備考:表中、「D」は日間を示し、例えば、D10は10日間を示す。
【0227】
凍結乾燥剤:調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを半分入れ、凍結乾燥し、プラグを押して、蓋をした。凍結乾燥した製品の外観及び製品の再溶解状況を調べた。凍結乾燥手順は以下の通りである、
【0228】
【0229】
結果:
凍結乾燥した固形粉末の外観から、高スクロース濃度群は底部が僅かに縮んだが、スクロース濃度が40mg/mLに低減され、グリシンが加えた後、同じ凍結乾燥条件で、得られた固形粉末は凹むことなく均質で充実するようになった。スクロース濃度を低減させ、グリシンを加えた後に必要な一次乾燥時間は、高スクロース濃度処方を用いる場合に必要な時間よりも短いことが示される。
【0230】
スクロース濃度が40mg/mLである場合、異なる緩衝液濃度で調製したサンプルは、凍結乾燥手順を経た後、外観が何れも凹むことなく均質で充実している。
【0231】
【0232】
実施例5:抗Trop2-ADC抗体製剤の安定性実験
30mMのpH6.0のHis-HCl緩衝系を使用し、40mg/mLのスクロース、9.0mg/mLのグリシン及び0.2mg/mLのPS80を含む、ADC-3のタンパク質濃度が20mg/mLである抗Trop2-ADC製剤を調製した。
【0233】
調製された製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。振とう(25℃、300rpm、10日間)、FT5C(-35℃と2~8℃の間で5サイクルの凍結融解)と高温(40℃ M1)強制分解、25℃加速(25℃ M3)及び2~8℃長期(4℃ M3)条件で置き、外観、SEC及びR-CEを評価指標として、製剤の安定性を調べた。実験の結果は、表17に示されている。
【0234】
実験の結果は、最終的な処方製剤は、外観が各強制分解条件で何れも透明を維持し、比較的良い安定性を有することを示している。
【0235】
【0236】
実施例6:抗Trop2-ADC抗体製剤の凍結乾燥
30mMのpH6.0のHis-HClの緩衝液において、ADC-3のタンパク質濃度が20mg/mLで、40mg/mLのスクロース、9mg/mLのグリシン及び0.2mg/mLのPS80を含む抗Trop2-ADC抗体製剤を調製し、製剤サンプルを凍結乾燥し、凍結乾燥手順は予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥であり、凍結乾燥手順は表18に示されている。凍結乾燥手順が終了した後、真空引きしてプラグを入れた。凍結乾燥後したサンプルは、外観が白い均質なケーキ状で、水分が標準を満たし、再溶解しやすく、再溶解した後、SEC、NR-CE純度項が標準を満たし、結果が表19に示されている。再溶解後のpHは6.1である。
【0237】
【0238】
【配列表】
【国際調査報告】