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特表2024-528652自動車用の駆動バッテリおよびそのような駆動バッテリを備えた自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】自動車用の駆動バッテリおよびそのような駆動バッテリを備えた自動車
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20240723BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240723BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240723BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240723BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M50/249
B62D25/20 G
B60K1/04 Z
H01M50/291
H01M50/342 201
H01M50/227
H01M10/613
H01M10/6551
H01M10/625
H01M10/6555
H01M10/658
H01M50/213
H01M50/209
H01M50/224
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502697
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2022070695
(87)【国際公開番号】W WO2023002047
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021119168.8
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クローマー・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カルゲス・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハルシュ・トーマス
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
5H012
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB06
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB17
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB17
3D235BB25
3D235CC14
3D235DD35
3D235FF06
3D235FF09
3D235FF10
3D235FF12
3D235HH44
5H012BB01
5H031KK01
5H031KK02
5H040AA01
5H040AA14
5H040AS07
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
本発明により、自動車用の駆動バッテリは、蓋壁および底壁を備えた駆動バッテリハウジングを有している。この駆動バッテリハウジング内には、垂直且つ隣り合わせに配置された複数のバッテリセルを備えたバッテリセル層と、ガス抜き層、スペーサ層または変形層とも呼ぶことのできる支持層とが配置されている。バッテリセル層は、特に大面積で、つまり、その全表面に亘って、上接着層を介して蓋壁に接着されているとともに、下接着層を介して支持層に接着されている。支持層はまた、さらに他の接着層を介して底壁に接着されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動バッテリハウジング(3)を備えた自動車用の駆動バッテリ(1)であって、当該駆動バッテリハウジングは、蓋壁(35)および底壁(33)を備え、前記駆動バッテリハウジング(3)内には、垂直且つ隣り合わせに配置された複数のバッテリセル(51)を備えたバッテリセル層(5)と、支持層(7)とが配置され、前記バッテリセル層(5)は、特に大面積で、上接着層(9)を介して前記蓋壁(35)に接着されているとともに、下接着層(11)を介して前記支持層(7)に接着され、
前記支持層(7)はまた、さらに他の接着層(13)を介して底壁(33)に接着されている駆動バッテリ。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動バッテリであって、前記バッテリセル層(5)は、複数のバッテリセル(51)から形成され、各バッテリセル(51)は、セル捲回体(55)が内部に収容されているバッテリセルケース(53)からなり、前記バッテリセルケース(53)の上端面(57)は、それぞれ前記蓋壁(35)に接着され、前記バッテリセルケース(53)の下端面(58)は、それぞれ前記支持層(7)に接着されている駆動バッテリ。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動バッテリであって、前記バッテリセル層は、内部にそれぞれ一つ又は複数のセル捲回体が収容されている複数の垂直な部屋を備えた多室構造からなり、前記多室構造の上端面は、前記蓋壁に接着され、前記多室構造の下端面は、前記支持層に接着されている駆動バッテリ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記上接着層(9)および/または前記下接着層(11)に埋設されているバッテリセル接触システムをさらに備えた駆動バッテリ。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動バッテリであって、前記バッテリセル接触システムは、両極の接点電極とともに前記上接着層(9)に埋設されている駆動バッテリ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、各バッテリセル(51)には、前記支持層(7)に面した側にガス抜き口が形成されている駆動バッテリ。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動バッテリであって、前記支持層(7)には、前記バッテリセル(51)の前記ガス抜き口の部分にそれぞれ切除部が設けられ、特に隣接する切除部がガス抜き路を介して互いに連通している駆動バッテリ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記支持層(7)は、発泡した物質、特に発泡プラスチック、例えば発泡ポリウレタンから形成されている駆動バッテリ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記蓋壁(35)は、前記バッテリセル層(5)を調温するための熱交換器として形成されている駆動バッテリ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記支持層(7)は、前記バッテリセル層(5)を調温するための熱交換器として形成されている駆動バッテリ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記バッテリセル(51)同士の間に熱交換装置が設けられているか或いは前記バッテリセル(51)の外周面上に熱交換装置が設けられている駆動バッテリ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記蓋壁(35)および前記底壁(33)は、フランジ接続(34,36)により互いに接続され、それにより、特に流体密な駆動バッテリハウジング(3)を形成している駆動バッテリ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記底壁(33)は、特に内側に、熱保護層、特に雲母板が設けられている駆動バッテリ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記底壁(33)および/または前記蓋壁(35)は、特に内側に、電気絶縁層が設けられている駆動バッテリ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記底壁(33)および/また前記蓋壁(35)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金または鋼材または繊維強化プラスチックから形成されている駆動バッテリ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の駆動バッテリであって、前記自動車のボディのフロアアセンブリ(105)に取り付けられるように形成された駆動バッテリ(1)において、前記フロアアセンブリ(105)は、左サイドメンバ(107)および右サイドメンバ(108)を備え、駆動バッテリ(1)若しくは前記駆動バッテリハウジング(3)が下から前記フロアアセンブリ(105)に取り付けられ、前記蓋壁(35)は、少なくとも部分的に前記フロアアセンブリ(105)のフロアを形成している駆動バッテリ。
【請求項17】
ボディを備えるとともに、請求項1から16のいずれか一項に記載の駆動バッテリを備えた自動車。
【請求項18】
請求項17に記載の自動車であって、前記ボディは、左サイドメンバ(107)および右サイドメンバ(108)を備えたフロアアセンブリ(105)を備え、前記駆動バッテリ(1)は、下から前記フロアアセンブリ(5)に取り付けられ、この取り付けられた前記駆動バッテリ(1)は、少なくとも部分的に前記フロアアセンブリ(105)のフロアを形成する自動車。
【請求項19】
請求項17または18に記載の自動車であって、前記駆動バッテリ(1)および前記フロアアセンブリ(105)は、協働して、当該自動車のキャビン(109)の流体密なフロアを形成し、特に、前記駆動バッテリ(1)と前記フロアアセンブリ(105)とが協働することによってのみ前記キャビン(109)の流体密性が保たれている自動車。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項に記載の自動車であって、前記駆動バッテリ(1)は、前記駆動バッテリ(1)が当該自動車を走行運転させるためのボディ剛性を高めるとともに、前記駆動バッテリ(1)が当該自動車の衝撃荷重に対する車体強度を高めるように構成され且つ前記フロアアセンブリ(105)に接続されている自動車。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載の自動車用の駆動バッテリを製造する方法であって、
前記蓋壁と、場合によりバッテリセル接触システムと、前記バッテリセル層とを互いに重ねて配置するステップ、
個々の前記層と前記バッテリセルの間の中間スペースを液状の泡前駆体、特に二成分混合物または多成分混合物で充填するステップ、
充填の工程の後、前記泡前駆体の反応により発泡させ、これにより、前記蓋壁と、場合により前記バッテリセル接触システムと、前記バッテリセル層とを互いに接着する発泡した物質を形成させるステップ
を備えた方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、配置するステップにおいて、さらに支持層を配置するか、または、発泡させるステップの後に、前記支持層を前記バッテリセル層に接着させる方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の方法であって、配置するステップにおいて、さらに前記底壁を配置するか、または、発泡させるステップの後に、前記底壁を前記支持層に接着させる方法。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の自動車用の駆動バッテリを製造する方法であって、
前記底壁と、前記支持層と、前記バッテリセル層と、場合によりバッテリセル接触システムとを互いに重ねて配置するステップ、
個々の前記層と前記バッテリセルの間の中間スペースを液状の泡前駆体、特に二成分混合物または多成分混合物で充填するステップ、
充填のステップの後、前記泡前駆体の反応により発泡させ、これにより、前記底壁と、前記支持層と、場合により前記バッテリセル接触システムと、前記バッテリセル層とを互いに接着する発泡した物質を形成させるステップ
を備えた方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、配置するステップにおいて、さらに蓋壁を配置するか、または、発泡させるステップの後に、前記底壁を前記支持層に接着させる方法。
【請求項26】
請求項21から25のいずれか一項に記載の方法であって、発泡させるステップ中に、関与する前記層を互いに、特に適切な工具により、プレス若しくはクランプする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動バッテリハウジングを備えた自動車用の駆動バッテリおよびそのような駆動バッテリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動部を備えた自動車は、通常、駆動バッテリハウジングを備えた駆動バッテリを有し、そのハウジング内には、複数バッテリセルを備えた複数のバッテリモジュール、電気・電子機器および冷却装置が組み込まれている。駆動バッテリハウジングはまた、フロアアセンブリの下側で車両のボディに取り付けられている。周知の駆動バッテリハウジングは、例えばアルミニウムからなり、側方のメンバ(支持体)、蓋および底を備えている。側方のメンバは、例えば押出成形部品または鋳造部品として形成されている。必要に応じて、一定の剛性と耐衝突性能を駆動バッテリに付与するために、さらに他の縦方向のメンバおよび横方向のメンバ(クロスメンバ)もバッテリハウジング内に設けられている。
【0003】
特許文献1に示されているように、公知の駆動バッテリハウジングは、縦方向(車両長手方向)のメンバと、縦方向のメンバ間に延びる複数の横方向(車両横手方向)のメンバ(クロスメンバ)とを有する。さらに、駆動バッテリハウジングは、上壁と下壁とを有し、これらがそれぞれ、少なくとも外側のメンバ構造、すなわち、外側の縦方向メンバと外側の横方向メンバに接続されている。縦方向メンバは、押出成形部品から形成され、横方向メンバもまた押出成形部品から形成されている。駆動バッテリハウジングは、ボディフロアの下側に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願第102017223407号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、組み立てスペース当たりの出力密度がより高く且つ同時に剛性と強度がより優れた駆動バッテリ若しくはそのような駆動バッテリを備えた自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1または12の特徴部を有する駆動バッテリ若しくはそのような駆動バッテリを備えた自動車により解決される。本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によれば、自動車用の駆動バッテリは、駆動バッテリハウジングを有し、この駆動バッテリハウジングは、蓋壁および底壁を備えている。駆動バッテリハウジング内には、垂直且つ隣り合わせに配置された複数のバッテリセルを備えたバッテリセル層と、ガス抜き層、スペーサ層または変形層とも呼ぶことのできる支持層とが配置されている。バッテリセル層は、特に大面積で、つまり、その全表面に亘って、上接着層を介して蓋壁に接着されているとともに、下接着層を介して支持層に接着されている。支持層はまた、さらに他の接着層を介して底壁に接着されている。
【0008】
これにより、高さ方向、つまり車両座標系のZ方向に非常にコンパクトで組み立てスペースを節約した駆動バッテリが実現されている。駆動バッテリの全高に比して、バッテリセルは、比較的高く形成することができ、それにより、駆動バッテリの蓄電容量が高められている。蓋壁、バッテリセル層、支持層および底壁を互いにサンドイッチ状に接着することで、駆動バッテリは、全体的に高いねじり剛性と曲げ剛性を有しており、その結果、駆動バッテリの内側にさらに他の支持構造が要らなくなる。駆動バッテリの全ての層が、駆動バッテリの剛性と強度に寄与する。駆動バッテリは、自動車に組み込むために、蓋壁が上に、底壁が下になるように形成されている。底壁はここで、組み込んだ状態で、自動車のアンダーボディを形成することが好ましい。
【0009】
支持層は、スペーサ層の機能を有しており、その結果、バッテリセル層と底壁との間に一定の間隔が存在することになり、車止めを乗り越えたときなど、下から物が当たったときに、十分な変形のスペースが提供されるようになっている。この目的のために、支持層は、変形を通じて衝突エネルギーを十分に散逸させるように設けられている。支持層を接着することで、支持層は、その変形のし易さにもかかわらず、駆動バッテリの剛性と強度に寄与している。
【0010】
上接着層および/または下接着層および/またはさらに他の接着層は、発泡した物質により形成されていてもよい。このような発泡した物質は、発泡射出成形体(Strukturschaum)とも呼ばれる。発泡した物質は、ポリウレタンであってもよい。さらなる発展形態によれば、バッテリセル層は、複数のバッテリセルから形成され、各バッテリセルは、バッテリセルケースとセル捲回体とからなり、セル捲回体は、バッテリセルケース内に収容されている。バッテリセルケースの上端面は、それぞれ蓋壁に接着され、バッテリセルケースの下端面は、それぞれ支持層に接着されている。
【0011】
従って、複数のバッテリセルケースは、ハニカム状の構造に似た多室構造を形成し、この構造が、駆動バッテリの他の層に接着することで、曲げ剛性とねじれ剛性を大幅に高めている。
【0012】
バッテリセルケースは、薄肉で、例えばアルミニウムやスチールなどの金属から形成されている。
【0013】
隣接するバッテリセルケースは、互いに外周面同士が接着されていてもよい。
【0014】
特に、隣接するバッテリセルケースは、発泡した物質により外周面上で互いに接着させることができる。発泡した物質は、ポリウレタンフォームでもよい。
【0015】
バッテリセルは、いわゆる円形セル、つまり円筒形とされていてもよいし、或いはまた、いわゆる角柱セル、つまり略直方体状とされていてもよい。
【0016】
互いに分離されたバッテリセルケースを備えた実施形態に代えて、バッテリセル層は、複数の垂直な部屋を備え、一体に形成された(蓋壁若しくは底壁の面に交差するように、特には垂直に延びる)多室構造からなり、それらの中にそれぞれ一つのセル捲回体または複数のセル捲回体が収容されているのでもよい。ここで、多室構造の上端面は、蓋壁に接着され、多室構造の下端面は、支持層に接着される。多室構造は、例えば押出成形によって製造することができる。個々の部屋は、正方形または他の、例えばハニカムのような多角形の断面を有していてもよい。
【0017】
一体に形成された多室構造は、駆動バッテリに、重量を減らしながら、さらに高い剛性を付与することができる。これによりさらに、同じ面積の上に、より多くのセル捲回体を収納することができる。
【0018】
さらなる発展態様によれば、駆動バッテリは、上接着層および/または下接着層内に埋設されているバッテリセル接触システムを有する。
【0019】
接着層内において、バッテリセル接触システムは、保護され、例えば腐食から保護された状態で収納されている。これにより、バッテリセル接触システムは、同時に、上述した駆動バッテリの剛性と強度に寄与することができる。
【0020】
バッテリセル接触システムは、両極の接点電極とともに上接着層に埋設されていることが好ましい。これにより、バッテリセル接触システムは、特に十分に保護されながら収納されている。特に、システムはここで、底壁が衝突した際、より良好に保護されている。
【0021】
さらに、各バッテリセルには、支持層に面した側にガス抜き口が形成されていることが有利である。
【0022】
従って、バッテリセルのガス抜き口は、下に向けられているとともに、蓋壁の方へは向けられておらず、その結果、駆動バッテリを組み込んだ状態では、キャビンの方には向けられていない。下に向かっては、ガスを排出するためのより多くのスペースがあり、ガスがキャビンに向かって流れるのをより良好に防ぐことができる。
【0023】
バッテリセルのガス抜き口がセルの下側に形成されている場合、つまり、支持層に面している場合、支持層には、好ましくはガス抜き口の部分にそれぞれ切除部が設けられ、つまり、ガス抜きスペース若しくは空きスペースが設けられている。隣接する切除部は、適切にガス抜き路を介して互いに連通していてもよく、それにより、バッテリセルから逃げたガスを容易にさらに下流に送ることができ、十分なスペースが利用可能となる。
【0024】
支持層は、発泡した物質、特に発泡プラスチック、例えば発泡ポリウレタンから形成されていてもよい。
【0025】
発泡した物質は軽いが、それでも隣接する層と全面で接着すると、駆動バッテリの剛性と強度に十分寄与できる。さらに、発泡した物質は、変形することによって衝突エネルギーを散逸させるのに非常に良好に利用できる。
【0026】
さらなる発展態様によれば、蓋壁は、バッテリセル層を調温するための熱交換器として形成されていてもよい。
【0027】
ここで、蓋壁は、駆動バッテリが取り付けられているときには、キャビン用の温度調節面として使用することができる。
【0028】
好ましい発展形態によれば、支持層は、バッテリセル層を調温するための熱交換器として形成されている。
【0029】
さらに、バッテリセル同士の間に熱交換装置が設けられていてもよい。熱交換装置は、バッテリセルの外周面上、つまり、端面上でないところに熱交換装置が設けられていてもよい。これは、セル間調温とも呼ばれる。
【0030】
外周面を介した調温により、より高い調温性能を得ることができ、それにより、駆動バッテリは、より迅速に所望の目標動作温度に到達するようになり、さらに、電力消費が高まった場合には、それに応じて急速に冷却することで、目標動作温度を超えないようにできる。
【0031】
蓋壁および底壁は、フランジ接続により互いに接続されていることが好ましい。このとき、例えばフランジ接続における然るべきシーリングにより、流体密な駆動バッテリハウジングを形成することができる。この目的のために、蓋壁および/または底壁は、たらい形に形成されているか若しくはたらいを構成する一部とされていてもよい。
【0032】
底壁の内側には、熱保護層、例えば雲母板が配設されていてもよい。底壁は、熱保護層に接着されているか或いはほかにも熱保護層と統合されていてもよい。熱保護層は、この場合も支持層と接着されていることが好ましい。
【0033】
熱保護層は、特に、高温のガスがバッテリセルから流出する場合に、底壁の熱保護として機能する。これは特に、底壁がアルミニウム、アルミニウム合金または繊維強化プラスチックからなる場合に特に有利である。さらにこれは、バッテリセルのガス抜き口が下面、例えばバッテリセルの下端面に配置されている場合に有利となり得る。
【0034】
蓋壁および/または底壁は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金または鋼材からなるのでもよい。しかしながら、蓋壁および/または底壁は、繊維強化プラスチック、例えば炭素繊維強化プラスチックからなるのでもよい。
【0035】
蓋壁および/または底壁には、それぞれ内側に例えばコーティングの形で電気絶縁層が設けられていてもよい。これは、蓋壁および/または底壁に対する電気的な絶縁が必要であり、蓋壁および/または底壁が導電性である場合に有利である。
【0036】
バッテリセルとの熱の出し入れのための熱交換の改善が必要な場合、上側および/または下側のさらに他の接着層は、熱伝導性の接着剤からなるのでもよい。
【0037】
好ましくは、駆動バッテリは、自動車のボディのフロアアセンブリに取り付けられるように形成されており、フロアアセンブリは、左サイドメンバ(左方縦方向支持体)および右サイドメンバ(右方縦方向支持体)を備え、駆動バッテリ若しくは駆動バッテリハウジングが下からフロアアセンブリに取り付けられ、蓋壁は、少なくとも部分的にフロアアセンブリのフロアを形成している。底壁は、自動車のアンダーボディを形成していることが好ましい。
【0038】
本発明による駆動バッテリは、駆動バッテリが自動車を走行運転させるためのボディ剛性を高めるとともに、駆動バッテリが自動車の衝突で負荷(衝撃荷重)を受けた時のための車体強度を高めるように構成され且つフロアアセンブリに接続されていてもよい。
【0039】
本発明のさらなる観点は、上述の駆動バッテリを備えた自動車、特に乗用車または商用車に関する。
【0040】
自動車は、電気駆動部を有している。自動車のボディは、左サイドメンバおよび右サイドメンバを備えたフロアアセンブリを備えている。このようなボディサイドメンバは、サイドスカートまたは外側の下方サイドメンバとも呼ばれる。駆動バッテリは、駆動バッテリハウジングを備え、駆動バッテリ若しくは駆動バッテリハウジングは、下からフロアアセンブリに取り付けられている。取り付けられた駆動バッテリ若しくは取り付けられた駆動バッテリハウジングは、少なくとも部分的にフロアアセンブリのフロアを形成する。
【0041】
これにより、駆動バッテリがフロアアセンブリのフロアの代わりとなる。これにより、自動車、つまり、ボディ、特にフロアアセンブリが軽くなり、必要な部品が少なくなる。さらに、これにより車高方向(Z方向)の組み立てスペースを削減したり、或いはより嵩高のバッテリセルを組み込むことができる。
【0042】
有利にも、駆動バッテリは、フロアアセンブリのほぼ全幅に亘って、つまり、左サイドメンバから右サイドメンバにかけてのほぼ全組み立てスペースに亘って延在している。
【0043】
これにより、十分なバッテリセルを駆動バッテリ内に収納でき、フロアアセンブリのフロアの大部分の代わりとすることができる。
【0044】
さらに、駆動バッテリハウジングは、自動車のフロントアクスルからリアアクスルにかけての領域内に若しくはできるだけ大きい領域に亘って延在してもよい。有利には、駆動エネルギーハウジングは、(キャビンの)フロントエンドパネルから若しくはフロントエンドパネルの下側から、左ホイールハウスカバーおよび右ホイールハウスカバーの前端まで延在する。さらに、駆動バッテリハウジングは、自動車の2列目のシート列の下側まで延在してもよい。換言すれば、駆動バッテリハウジングは、少なくともフロントボディピラー(Aピラー)からリアボディピラー(特にCピラー)にかけての領域に延び、配置されていてもよい。
【0045】
本発明の好ましい発展形態によれば、駆動バッテリおよびフロアアセンブリは、協働して、自動車のキャビンの流体密なフロアを形成する。特に、駆動バッテリハウジングとフロアアセンブリとが協働することによってのみ、下方へのキャビンの流体密性が保たれる。つまり、駆動バッテリハウジングがなければ、フロアアセンブリは、流体密なフロアを持つことにならないか、或いは、フロアアセンブリ単体では、下方に対して流体密ではないことになる。
【0046】
駆動バッテリハウジングは、フロアアセンブリの一貫した流体密なフロアの機能の代わりになる。なお、この文脈で“流体密”という用語は、フロアアセンブリまたは駆動バッテリハウジングが、フロアアセンブリと協働しつつ、ケーブルブッシングや排水口などのための閉鎖可能な開口部を備えることを排除するものではない。“流体密”とは、特に“液密”を意味する。
【0047】
駆動バッテリハウジングとフロアアセンブリとの間には、シール部材または密閉性の接着剤が適切に配置可能であることで、取り付けられた駆動バッテリハウジングがフロアアセンブリを下方に対して完全に密閉するようになっている。
【0048】
シール部材は、例えばブチルから形成されていてもよい。シール部材は、フラットシール材、リップシール材またはプロファイル用シール材とされていてもよい。
【0049】
有利には、駆動バッテリハウジングは、同時に取付フランジにすることもできる周回するシールフランジを有しており、このシールフランジは、駆動バッテリハウジングをフロアアセンブリに対して密閉する全周に亘って周回するシール面を備える。
【0050】
周回するシールフランジは、有利には一平面内、すなわち、車両座標系のxy平面に平行な平面内にある。これにより、密閉性が得られやすくなる。
【0051】
本発明による自動車の好ましい発展形態によれば、フロアアセンブリは、フロントクロスメンバ構造とリアクロスメンバ構造を備え、駆動バッテリは、左サイドメンバおよび右サイドメンバに取り付けられているとともに、フロントクロスメンバ構造およびリアクロスメンバ構造にも取り付けられている。この場合、上述のシールフランジは、サイドメンバおよびクロスメンバ構造の対応するフランジシール面上に載っている。
【0052】
フロアアセンブリは、フロントクロスメンバ構造とリアクロスメンバ構造との間に少なくとも一つのさらに他のクロスメンバを有し、このクロスメンバが左サイドメンバと右サイドメンバにそれぞれ接続されているか若しくは左サイドメンバと右サイドメンバの間に延びていることが有利である。このさらに他のクロスメンバは、シートクロスメンバまたはヒールプレートクロスメンバとすることができる。フロアアセンブリは、さらに他の複数のクロスメンバを有し、それらの間に、それぞれ空きスペースが形成され、それにより、フロアアセンブリが下に向かって解放されていることが有利である。シートクロスメンバは、有利には、Bピラーまでのエンドパネルの後方の領域に配置され、前方シート列、つまり、前列シートを固定し、横方向においてフロアアセンブリを衝突に耐えるようにするのに用いられる。ヒールプレートクロスメンバは、通常、2列目のシート列の前端の領域に配置され、2列目シートを固定し、同じく横方向においてフロアアセンブリを衝突に耐えるようにするのに用いられる。
【0053】
駆動バッテリは、上記のさらに他のクロスメンバに、特にネジ接続によって取り付けられていることが好ましい。付加的または代替的に、駆動バッテリは、クロスメンバに接着剤接続によって接続されている、つまり、接着されているのでもよい。
【0054】
これにより、駆動バッテリを用いてフロアアセンブリの全体的な剛性をさらに高めることができ、走行運転中の自動車の振動特性にも良い作用を及ぼすことができる。駆動バッテリは、これによりさらに、側方衝突時の屈曲に対してクロスメンバ若しくはクロスメンバ構造をサポートする。
【0055】
さらに他の発展形態によれば、フロアアセンブリは、フロントクロスメンバ構造とリアクロスメンバ構造との間またはフロントクロスメンバ構造とさらに他の一つのクロスメンバとの間にフロアパネルを有していない。言い換えると、フロアアセンブリは、有利には、フロアパネルを用いずに形成されている若しくはフロアパネルフリーである。その結果、フロアアセンブリのより広い領域がオープンに形成されている。
【0056】
「オープンに形成されている」という表現は、貫通開口部を形成する開け放たれた領域が形成されていることで、フロアアセンブリが下に向かって開いて形成されていることを意味する。
【0057】
代替的または追加的に、フロアアセンブリは、左サイドメンバと右サイドメンバとの間に少なくとも一つのさらに他の縦方向メンバを備え、これがフロントクロスメンバ構造および/またはリアクロスメンバ構造に接続されているのでもよい。このさらに他の縦方向メンバは、例えば、中央に配置され、そこに中央のトンネルを形成しているのでもよい。
【0058】
フロアアセンブリに一切のフロアパネルがないことが有利である。
【0059】
フロアパネルは、通常、一枚の部材、特に、平らな部材であり、場合によっては、単層の部材であるが、これは、中空形状などを持たない若しくは形成しないので、ボディ支持体を形成しない。
【0060】
好ましくは、右サイドメンバと左サイドメンバとの間並びにフロントクロスメンバ構造とリアクロスメンバ構造との間の面積の40~85%が開いている、つまり、フロアパネルを用いず且つクロスメンバを用いずに形成されている。
【0061】
自動車用の駆動バッテリを製造する本発明の方法において、蓋壁と、場合により上部および/または下部バッテリセル接触システムと、バッテリセル層と、場合により支持層とを互いに重ねて配置する(配置ステップ)。代替的に、底壁と、支持層と、場合により上部および/または下部バッテリセル接触システムと、バッテリセル層とを互いに重ねて配置する(配置ステップ)。その後、さらに次の工程(充填ステップ)において、個々の層とバッテリセルの間の中間スペースを液状の泡前駆体、特に二成分混合物または多成分混合物で充填する。さらに次の工程(発泡ステップ)において、二成分混合物若しくは多成分混合物、つまり、泡前駆体が、充填プロセスの後に反応し、発泡した物質、特に、ポリウレタンフォームを形成することで、底壁と、場合により上部および/または下部バッテリセル接触システムと、バッテリセル層と、場合により支持層とを互いに接着するか若しくは蓋壁と、支持層と、場合により上部および/または下部バッテリセル接触システムと、バッテリセル層とを互いに接着する。
【0062】
これにより、配置ステップにおいて関わった駆動バッテリの各層の接着をとりわけ容易に且つ一作業工程で行うことができる。
【0063】
液体の泡前駆体を充填する際、好ましくは底壁若しくは蓋壁がそのとき下側にあり、場合によりバッテリセル接触システム、バッテリセル層、および場合により支持層が適切にその上に積層/配置されていることが好ましい。
【0064】
これにより、液体の泡前駆体は、重力により上から下に流れることができ、それによって適切に分散させることができる。
【0065】
上述の方法は、ここで述べる全ての駆動バッテリの製造に同じように適用することができる。言い換えれば、この方法は、バッテリセル接触システムが上部に配置された或いはバッテリセル接触システムが下部に配置された或いはバッテリセル接触システムがバッテリセルの両側に配置された駆動バッテリのいずれにも適用することができる。この方法は、バッテリセルの外周面上および/または端面上に本明細書で述べる種々の熱交換器システムを備える駆動バッテリにも同様に実施することができる。
【0066】
本発明による方法では、発泡ステップ中に、関与する層を互いに、特に適切な工具により、プレスしてもよい。その結果、層が、泡によって圧で互いから引き離されることがなくなり、接着効果が改善される。
【0067】
層同士の間には、各層と一体的に形成されるか或いは層から別体に形成されたスペーサが設けられていてもよい。
【0068】
これにより、駆動バッテリの設定寸法を良好に維持することができる。その結果、上接着層および、場合により下接着層および、場合によりさらに他の接着層は、駆動バッテリの高さ方向(車両座標系におけるz方向)に規定の寸法を有することになる。
【0069】
さらに他の好ましい工程において、発泡ステップの後、底壁若しくは代替的に蓋壁は、例えば、さらに他の接着層(このときには、この接着層は発泡した物質でないことが好ましい。)により取り付けることができる(底壁若しくは蓋壁の取り付け)。同様に、スペーサ層は(スペーサ層が配置ステップでまだ配置されていなかった場合)、下接着層(このときには、この下接着層は発泡した物質でないことが好ましい。)により取り付けることができる。
【0070】
同様に、底壁若しくは代替的に蓋壁は、予め配置ステップにおいて配置されるのでもよい。言い換えれば、底壁および蓋壁を含む駆動バッテリの全ての層は、配置ステップにおいて互いに重ねて配置される。その後、発泡ステップが実行される。発泡ステップではこのとき、駆動バッテリの全ての層は、発泡時に各層が圧で互いから引き離されないように、互いにクランプ若しくは互いにプレスされることが有利である。こうして駆動バッテリの全ての層が発泡を通じて互いに接着されると、その後は、さらに他の層を取り付けるための後続のステップは必要ない。
【0071】
上に挙げた本発明の発展態様は、可能且つ有意味であれば、互いに自在に組み合わせることができる。
【0072】
以下は図の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明の実施例による駆動バッテリの概略的な断面図である。
図2】本発明の実施例による駆動バッテリをボディに取り付ける前における、駆動バッテリとボディを備えた自動車の概略的な斜視図である。
図3】本発明の実施例による取り付け後の駆動バッテリとボディを備えた自動車の概略的な斜視図である。
図4】駆動バッテリを外したボディを備えた自動車の概略的な下からの斜視図である。
図5】本発明の実施例による取り付け後の駆動バッテリとボディを備えた自動車の概略的な上からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下に、本発明の実施例を図1乃至5を参照しながら説明する。
【0075】
図1には、本発明の実施例による駆動バッテリ1が非常に概略的に断面図で示されている。駆動バッテリ1は、乗用車のボディに取り付けられるように形成されている。駆動バッテリ1は、乗用車の電気駆動モータを駆動するための、いわゆる高電圧蓄電体である。駆動バッテリ1は、サンドイッチ状に複数の層から形成されている。駆動バッテリ1は、上から先ず駆動バッテリハウジング3の一部としての蓋壁35を有している。蓋壁35は、上接着層9を介してバッテリセル層5の上面に平坦に接続されている。さらに、バッテリセル層5の下面は、下接着層11を介して支持層7に平坦に接続されている。支持層7は、その下面でもまた、さらに他の接着層13を介して駆動バッテリハウジング3の底壁33に接続されている。
【0076】
バッテリセル層5は、複数のバッテリセルからなる。各バッテリセル51は、さらにまた、セル捲回体55が中に収容されているアルミニウム製または鋼製のバッテリセルケース53からなる。バッテリセル51は、円筒形状のいわゆる円形セルである。バッテリセル51は、バッテリセル層5内に縦に、つまり垂直に配置されているので、バッテリセルは、それらの外周面で互いに接しつつ隣り合うようになっている。バッテリセル51の上端面は、それぞれ接着層9に接続され、それにより、蓋壁35に接続されている。バッテリセル51の下端面は、それぞれ接着層11に接続され、それにより、支持層7に接続されている。
【0077】
上接着層9内には、これ以上詳細には図示されていないバッテリセル接触システムが埋設され、これがバッテリセル51の電極を互いに適切に接続している。接着剤は、バッテリセル接触システムの導体トラックの周りを包んでいる。バッテリセル51の両極は、バッテリセル51の上端面に位置している。
【0078】
バッテリセル51の下端面には、ガス抜き口が形成されている。バッテリセル51のガス抜き口と相補的に、切除部若しくはガス抜きスペースが支持層7内に形成されている。接着層11も対応して切除部を有している。切除部は、ガス抜き路を介して互いに適切に接続されているので、バッテリセル51から漏れ出すガスを支持層7のガス抜き路を介して排出することができる。
【0079】
支持層7は、発泡ポリウレタンからなり、変形可能である。自動車に組み込まれた駆動バッテリ1の底がぶつかった場合には、ときとして底壁33が支持層7ともども変形することで、衝突エネルギーが変形を通してバッテリセル層5を保護することができる。
【0080】
実施例の接着層9,11,13は、ポリウレタンフォームにより形成することができる。
【0081】
図2には、駆動バッテリ1をボディ100に取り付ける前の状態が示されている。ボディ100は、図1には完全に示されておらず、ほぼボディ100のフロアアセンブリ105だけが図示されている。ボディ100若しくはフロアアセンブリ105は、サイドメンバとしての左サイドスカート107と右サイドスカート108を有している。駆動バッテリ1は、上述したように駆動バッテリハウジング3を有し、この駆動バッテリハウジングは、駆動バッテリ1の後方領域に載置される付加ハウジングを除けば、その全長に亘ってほぼ同じ高さを備えている。駆動バッテリハウジング3内には、バッテリセル層5が収納されている。付加ハウジング内には、例えば、パワーエレクトロニクスが収納されている。駆動バッテリ1は、フロアアセンブリ105に、下からネジ接続121,123と、場合により追加的に接着接続とにより取り付けられる。
【0082】
図3には、ボディ100のy方向およびz方向に沿った非常に概略的な断面図が示されている。断面は、自動車のキャビン109を貫いて延びている。図2の左下および右下に、サイドスカート107,108が図示されており、それらに、駆動バッテリハウジング3がネジ接続121により下から取り付けられている。特に、駆動バッテリハウジング3は、その周りを一周するフランジ部34,36において、シール部材19を介装させてフロアアセンブリ105に取り付けられている。さらに、断面図には、フロアアセンブリ105のクロスメンバ115,116,117,118が概略的に示されている。駆動エネルギー蓄積体ハウジング3は、クロスメンバ115,116,117,118に、ネジ接続123により接続されているとともに、さらに接着もされている。
【0083】
取り付けられた駆動エネルギー蓄積体ハウジング3は、少なくとも部分的にフロアアセンブリ105のフロアを形成し、左サイドスカート107から右サイドスカート108までのフロアアセンブリ105の全幅に亘って延在している。シール部材19によって、キャビン109は、下方に対して密閉されている。
【0084】
駆動バッテリ1のサンドイッチ状の構造と、複数層の互いの接着とにより、駆動バッテリ1は、高い曲げ剛性とねじれ剛性を有している。これにより、取り付けられた駆動バッテリ1は、フロアアセンブリ105と然るべく協働して、自動車が全体としてより高い曲げ剛性とねじれ剛性を有することができるようになっている。言い換えれば、駆動バッテリ1は、上述した構造により、特に優れたボディ構造の機能を担っている。
【0085】
図4には、駆動バッテリ1を省いて、フロアアセンブリ105のみを下から斜めに視た図が示されている。図4に示されているように、フロアアセンブリ105は、フロントホイールハウスカバーの後方に若しくはフロントアクスルの後方に、車両フロントエンドに向かってキャビンを前方に対して仕切り且つサイドスカート107,108の前端を互いに接続するいわゆるフロントエンドパネルを備えたフロントクロスメンバ構造111を有している。さらに、フロアアセンブリ105は、リアホイールハウスカバーの前方に若しくはリアアクスルの前方に、サイドスカート107,108の後端を互いに接続し且つ自動車の2列目のシート列をなす不図示の後方リアシートの辺りに配置されているリアクロスメンバ構造113を有している。フロアアセンブリ105はさらに、フロントクロスメンバ構造111とリアクロスメンバ構造113の間に、シートクロスメンバ115,116,117など、さらに他のクロスメンバを前方シート列とボディ100のBピラーの領域に備えている。後方シート列の領域には、同じくさらに他のクロスメンバを形成するヒールプレートクロスメンバ118が配置されている。全てのクロスメンバ115,116,117,118は、左サイドスカート107と右サイドスカート108の間に延びており、これらサイドスカートに接続されている。サイドスカート107とサイドスカート108の間の領域並びに各クロスメンバ構造111,113若しくはさらに他のクロスメンバ115,116,117,118の間の領域は、開いている。フロアアセンブリ105は、フロアパネルを設けることなく、これらのメンバ間に形成されている。
【0086】
図5には、駆動バッテリ1が取り付けられたフロアアセンブリ105が、斜め上からの斜視図で示されている。フロアアセンブリ105のフロントクロスメンバ構造111とリアクロスメンバ構造113の間並びにサイドスカート107とサイドスカート108の間のハッチングされた面は、フロアアセンブリ105のメンバ間の開放された領域における、駆動バッテリ1の上面、特に駆動バッテリハウジング3の上面と付加ハウジング37の上面を示す。駆動バッテリ1の上面は、ハッチングされた領域において、キャビン109のフロアを形成し、従来のフロアパネルの代わりになっている。さらに図5に看取できるように、駆動バッテリ1は、エンドパネルを備えたフロントクロスメンバ構造111から、サイドスカート107,108の後端を互いに接続するリアクロスメンバ構造113まで、つまり、2列目のシート列をなす後方リアシートの下側の、フロアアセンブリ105のリアホイールハウスカバーまで延在している。
【0087】
全体的に、駆動バッテリハウジング3の取り付け用シールフランジ36は、全周に亘って密閉状態でフロアアセンブリ105の対応する部材の上に載っているので、駆動バッテリハウジング3とフロアアセンブリ105は、自動車のキャビン109の流体密なフロアを協働して形成している。一周する取り付け用シールフランジ36は、本実施例では、シール面に位置する。
【0088】
フロアアセンブリ105は、従来のボディのフロアアセンブリと比較して、フロアパネルを有しておらず、その結果、隣接するクロスメンバ/クロスメンバ構造間に複数の空きスペースがある。これらの空きスペースは、駆動バッテリハウジング3若しくは付加ハウジング37により閉鎖されている。本実施例では、サイドスカート107,108の間およびクロスメンバ構造111,113間に駆動バッテリハウジング3が存在しない場合、フロントクロスメンバ構造111とヒールプレートメンバ118の間のフロアアセンブリ105の65%が下に向かって開いている。
【0089】
駆動バッテリ1は、駆動バッテリハウジング3に加えて、駆動バッテリハウジング3の後ろ、つまり、ヒールプレートクロスメンバ118の後ろの部分において駆動バッテリハウジング3上に載置されている付加ハウジング37を備えている。この付加ハウジング37には、例えばパワーエレクトロニクスといった、駆動バッテリ1の電気・電子部品が収納されている。この付加ハウジング37は、ヒールプレートクロスメンバ118と、リアクロスメンバ構造113の間の空きスペース内に突き出ている。駆動バッテリハウジング3の上面は、略平らである。図3から分かるように、それは下部ハウジング33と上部ハウジング35から形成され、下部ハウジング33は、下部ハウジングフランジ34を備え、上部ハウジング35は、上部ハウジングフランジ36を備え、下部ハウジング33と上部ハウジング35は、下部ハウジングフランジ34と上部ハウジングフランジ36を介して接続され、上部ハウジングフランジ36は、駆動バッテリハウジング33をフロアアセンブリ105に取り付けるように形成されている。上部ハウジングフランジ36と下部ハウジングフランジ34の間には、シール部材37が配置されている。さらに、上部ハウジングフランジ36とフロアアセンブリ105の間には、シール部材19が配置されている。
【0090】
駆動バッテリハウジング3は、取り付け用シールフランジ34,36を介してネジ接続21によりフロアアセンブリ105に接続されている。さらに、駆動エネルギー蓄積体ハウジング3若しくは上部ハウジング35は、クロスメンバ115,116,117,118にネジ接続23により接続されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】