(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】医療施設に入院した患者の合併症のリスクを決定するためのマーカーとしてのトルクテノウイルス(TTV)の使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20240723BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/34 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/70
C12N15/38
C12N15/11 Z
C12N15/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503397
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 FR2022051436
(87)【国際公開番号】W WO2023002120
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(71)【出願人】
【識別番号】518294579
【氏名又は名称】ビオアステル
【氏名又は名称原語表記】BIOASTER
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】マレット,フランソワ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ10
4B063QQ42
(57)【要約】
本発明は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法に関し、当該方法は、前記患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定すること、を含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、以下の:
a)前記患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定すること、
b)前記生体試料について決定された前記ウイルス量を所定の参照値と比較すること、かつ、
c)前記生体試料について決定された前記ウイルス量が前記所定の参照値よりも大きいか又は小さい場合に合併症のリスクを確立すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記所定の参照値が10000コピー/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体試料について決定された前記ウイルス量が前記所定の参照値よりも大きい場合、合併症のリスクの増大の存在が確立される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、DNAemiaを測定することによって、少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在を検出することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記生体試料について決定された少なくとも1つのTTVのウイルス量が10000コピー/mlよりも多く、かつ少なくとも1つのヘルペスウイルスが存在する場合に、合併症のリスクの増大の存在が確立される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)時間T1に採取された第1の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第1のウイルス量を測定すること、
b)前記時間T2に採取された第2の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第2のウイルス量を測定すること、
c)T2でのウイルス量とT1でのウイルス量との間の変動を計算してΔTTV値を得ること、かつ、
d)比較の結果から合併症のリスクに関する結論を確立すること、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ΔTTV値が、-1.25~+1.25、-1.20~+1.20、又は、-1.10~+1.10の範囲内である場合、合併症のリスクが増大しないという結論を導き出す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
合併症のリスクが、医療関連感染(HAI)が発生するリスクである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生体試料が、病院、救急科、蘇生科、集中治療室又は高依存性施設に入院した患者に由来する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生体試料が、敗血症状態の患者、敗血症性ショックの患者、熱傷がある患者、重度の熱傷がある患者、外傷がある患者、重度の外傷がある患者、外科手術を受けた患者、又は大手術を受けた患者に由来する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料が、敗血症状態の患者、熱傷がある患者、外傷がある患者、又は外科手術を受けた患者、及び、集中治療室に入院した患者に由来する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのヘルペスウイルスが、CMV、EBV、HHV6及びHSV-1からなる群から選択されるか、又はEBVである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項13】
前記生体試料が、血液又は又はその派生物、血漿及び/若しくは血清、脳脊髄液、尿、並びに気管支肺胞洗浄液からなる群から選択される、患者由来の生体液である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設に入院した患者の合併症のリスクを決定するためのマーカーとしてのトルクテノウイルス(TTV)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二次感染(又は医療関連感染、HAI)は、特に病院等の医療施設における医療処置の主要な合併症であり、院内感染という。院内感染は、集中治療室に入院した患者の20~40%で起こり、しばしば侵襲的医療装置の使用及びより大量の抗生物質の投与と併用して、病院での治療が長引く結果となる。最終的に、罹患率及び死亡率もまたより高い。
医療関連感染の発生は、多剤耐性病原体の増加のために、ここ数年で特に悪化している。世界保健機関(WHO)は、欧州の病院における院内感染の数は約500万であり、約50000人の死亡及び13~240億ユーロの年間追加費用につながると推定している。特に、医療関連感染を予防及び低減することが最優先事項である米国保健福祉省、欧州疾病予防管理センター、WHO及び国立機関によって、推奨が公表され、感染管理プログラムの設定が奨励されている。あるモデルでは、医療関連感染症に罹患するリスクが高い患者を特定するのに要する時間を短縮する試験により、これらの患者の死亡率が低減され、費用対効果も良好である。
したがって、特にリスクが検出されるとすぐに適当な治療応答を提供するために、HAIリスク、より一般的には医療処置中に合併症を発症するリスクに関連する早期マーカーを同定できることが重要である。
【0003】
患者の治療に関連する要因だけでなく、患者の一般的な健康状態に関連する要因等の多数の要因が、医療関連感染の発生及び進行に影響を及ぼす。ある研究は、易感染性免疫系と二次感染の発生率の増加との間の関係の存在を実証している(非特許文献1)、これらの結果は議論の余地があり、より最近の研究は、関連性の存在に疑問を抱いている(非特許文献2)。
ある研究はまた、ウイルス再活性化の現象(特に、ヘルペスウイルス(HPV)及びトルクテノウイルス(TTV))と、医療関連合併症の発生との間の関連を確立することを試みている。ウイルス再活性化の現象は、特に、免疫抑制されていない患者、重篤な病気(敗血症)又は創傷(外傷、火傷、手術)を負った患者、免疫麻痺(初期の過剰炎症状態に応答した適応免疫系及び先天性免疫系の機能不全によって特徴付けられる)を有する患者に存在する。
【0004】
現在、ウイルス再活性化の臨床的意味は、明確に確立されていない。特に、再活性化するウイルスが、免疫系の変化を反映する単純なマーカーとみなされるべきか、又は反対に二次感染を促進し、予防処置を実施する必要がある病原体とみなされるべきかは不明である(非特許文献3)。
最近、非特許文献4にて、EBV(エプスタイン・バーウイルス)とTTVウイルスの共再活性化と死亡率の有意でない低下との間の関連の存在を示唆する研究の結果が公表された。
腎臓移植を受けた患者において行われた他の最近の研究は、TTVウイルス量を測定することにより、二次感染のリスクが低い患者を同定しうることを確立した。(非特許文献5)。それにもかかわらず、この研究の範囲は、限定されたままであり、関与する患者は全て免疫抑制治療を受けており、つまり、感染性疾患を発症するリスクがより高いため、なおさら限定されている。したがって、これでは、TTVウイルス量と二次感染(又は医療関連感染)のリスクとの間の信頼できる関連を確立することも、どの患者に二次感染を発症する高いリスクがあるかを同定することもできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Focosi D,Antonelli G,Pistello M,Maggi F.Torquetenovirus:the human virome from bench to bedside.Clin Microbiol Infect.July 2016;22(7):589-93.
【非特許文献2】J.Venet et al.,2021
【非特許文献3】J.Limaye et al.,2010
【非特許文献4】Mallet et al.,2019-Intensive Care Medicine Exp.7:28
【非特許文献5】Strassl et al.,The Journal of Infectious Diseases,2018;218:1191-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、医療施設で医療処置を受けている際に、合併症、特に医療関連感染を発症するリスクのある患者を特定することができる、簡便かつ信頼できる診断方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の主題は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、前記患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定することを含む方法に関する。
好ましい実施形態では、前記方法は、病院、好ましくは救急科、蘇生科、集中治療室又は高依存性施設に入院した患者である。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、前記患者が、敗血症状態、より具体的には敗血症性ショックの患者、火傷、より具体的には重度の火傷を患っている患者、外傷、より具体的には重度の外傷を患っている患者、又は外科手術、より具体的には大手術を受けた患者である。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、生体試料が、敗血症状態にある、火傷を患っている、外傷を患っている、又は外科手術を受けた、及び集中治療室に入院した患者に由来する。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、合併症が医療関連感染(HAI)の発生である。
【0008】
他の好ましい実施形態では、前記方法は、以下の:
a)前記患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定すること、
b)前記生体試料について決定された前記ウイルス量を所定の参照値と比較すること、かつ、
c)前記生体試料について決定された前記ウイルス量が前記所定の参照値よりも大きいか又は小さい場合に合併症のリスクを確立すること、
を実行することを含む。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、所定の参照値が10000コピー/mlである。
【0009】
他の好ましい実施形態では、前記方法は、以下の:
a)時間T1に採取された第1の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第1のウイルス量を測定すること、
b)前記時間T2に採取された第2の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第2のウイルス量を測定すること、
c)T2でのウイルス量とT1でのウイルス量との間の変動を計算してΔTTV値を得ること、かつ、
d)比較の結果から合併症のリスクに関する結論を導き出すこと、
を実行することを含む。
好ましい実施形態では、前記方法は、以下の:
a)時間T1に採取された第1の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第1のウイルス量を測定すること、
b)前記時間T2に採取された第2の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第2のウイルス量を測定すること、
c)T2でのウイルス量とT1でのウイルス量との間の変動を計算してΔTTV値を得ること、かつ、
d)ΔTTV値が、-1.25~+1.25、-1.20~+1.20、又は、-1.10~+1.10の範囲内である場合、合併症のリスクが増大しないという結論を導き出すこと、
を実行することを含む。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、さらに、少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在を検出することを含む。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、少なくとも1つのヘルペスウイルス(HPV)のウイルス量を測定することも含む。
他の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのヘルペスウイルス(HPV)は、CMV、EBV、HHV6及びHSV-1からなる群から選択され、好ましくはEBVである。
他の好ましい実施形態では、前記方法は、少なくとも1つのTTV配列、及び適当な場合には少なくとも1つのヘルペスウイルスの増幅、配列決定又はハイブリダイゼーションによって、好ましくは増幅によって、より優先的にはリアルタイムPCRによって、ウイルス量を測定する。
【0010】
他の好ましい実施形態では、前記方法は、生体試料が患者由来の生体液であり、前記生体液は、血液又は又はその派生物、血漿及び/若しくは血清、脳脊髄液、尿、並びに気管支肺胞洗浄液からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】入院時のコホートからの患者の特徴、並びにTTVウイルス力価、ウイルス血症の動態及びヘルペスウイルスによる随伴感染に基づく結果(
図2A及び2B)。カテゴリー変数はn(%)として表され、連続変数は中央値[Q1-Q3]として表される。力価又はウイルス血症動態又はヘルペスウイルスとの同時感染に関するTTV条件間の比較は、場合に応じて、定性変数についてはカイ二乗検定を、定量変数についてはウィルコクソン検定を用いて行った。星印付きの太字のP値は、p<0.05で有意性を表す。ICU=集中治療室、HAI=ICUで獲得された感染、HPV=ヘルペスウイルス、SOFA=連続臓器不全評価、SAPS=簡易急性生理機能スコア。a 10000コピー/ml未満のTTV DNAemia、b 10000コピー/mlを超えるTTV DNAemia、c-1.25/+1.25の範囲内の勾配に対応するTTV力価の安定性(D1~D7)及び(D14~D28)におけるウイルス力価の中央値の間で測定)、d勾配>+1.5に対応するTTV力価の増加、e勾配<-1.5に対応するTTV力価の減少、f 10000コピー/mlを超えるTTV DNAemia及び少なくとも1つのヘルペスウイルス、g 10000コピー/mlを超えるTTV DNAemiaのみ、hヘルペスウイルス(HPV)のみ。
【
図3】入院月中のHAIの発生とウイルス血症の存在との間の関連。
【
図4】入院時のコホートの患者の特徴、並びに入院後の最初の1ヶ月(D1~D28)の間の167コピー(cp)/ml(LOD)、7000コピー/ml、10000コピー/ml及び40000コピー/mlを超えるTTV DNAemiaに基づく結果。
【
図5】バイナリー臨床結果とTTV発現の動態との間の関連。
【
図7】ウイルスのLODを決定するためのPCR条件の参照表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、詳細に説明する。
本発明の主題は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症、例えば医療関連感染(HAI)のリスクを評価する方法である。
実際に、本発明者らは、トルクテノウイルス(TTV)ウイルス量が、免疫抑制治療を受けておらず、医療施設に入院している患者、より具体的には集中治療室で処置されている患者の合併症のリスクの指標であることを示した。
特に、驚くべきことに、集中治療に入った後の最初の1週間後のTTVウイルス量の増加は、このユニットにおけるより長い滞在と有意に相関するようである。
さらに、TTVウイルス量の増加及び減少はともに、入院後の最初の1ヶ月間のHAIの発生と有意に関連する。
最後に、患者の入院中、特に集中治療室での入院の第1週からの、少なくとも1種のヘルペスウイルスの存在に関連する高いTTVウイルス量の同時検出は、医療関連感染(HAI)の発生のリスクと相関する。したがって、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症の発生のリスク、特に医療関連感染(HAI)の発生のリスクの早期評価を行うことができる。
本明細書では、各実施形態は、単独で実施されてよく、適宜組み合わせて実施されてよい。
【0013】
患者の合併症のリスクを評価するための方法
本明細書の主題は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量に基づいて、当該患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法である。
第1の態様では、医療施設に入院した患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法が本明細書に記載され、当該患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定することを含み、当該患者が免疫抑制治療を受けていないことを特徴とする。
驚くべきことに、医療施設の患者におけるウイルス再活性化現象を研究することによって、本発明者らは、免疫抑制治療を受けていない患者の医療施設に滞在中のTTVウイルス量の変化と合併症の発生、すなわち、患者の状態の好ましくない変化、すなわち、特に医療関連感染の発生との間の相関の存在を同定した。
好ましい実施形態では、医療施設への入院後の最初の1ヶ月間のTTVウイルス量の変動は、HAIを発症するリスクを示す。
【0014】
本明細書の用語「患者の合併症のリスクを評価する」又は「患者の合併症のリスクを決定する」は、被験体又は患者が、将来、以下に定義される合併症を発症する確率の決定を意味する。
本明細書に開示される方法は、当該リスクを評価するためのツールを表し、臨床検査、当該患者からの生体試料の採取、並びに1つ以上のバイオマーカー及び/又は1つ以上の感染因子、特に細菌、ウイルス、寄生虫、酵母若しくは糸状菌の検出等の他のプロセス、方法又は指標と組み合わせることができる。
本明細書の「合併症」は、疾患、健康状態又は医学的処置における好ましくない変化を意味する。ここで「合併症」は、特に、1つ以上の侵襲的医療装置の実施、例えば気管挿管、尿カテーテル、カテーテル又は中心線の挿入が必要となりうる疾患の好ましくない変化を意味する場合がある。
「合併症」はまた、当該医療施設、特に集中治療室における長期の治療をもたらしうる疾患の好ましくない変化を意味する。
「合併症」はまた、当該患者の死亡を意味する。
「合併症」は、好ましくは、実施される特定の医学的処置を必要とし得る疾患における好ましくない変化を意味する。そのような合併症の例として、二次感染又は日和見感染、特に、1つ以上の感染病原体、例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、酵母又は糸状菌による感染等の「医療関連感染」又は「HAI」の発症があげられる。
【0015】
本明細書の文脈では、感染は、医療専門家による患者の処置(診断、治療、緩和、予防、教育又は外科的)中に発生した場合、及び処置の開始時に存在しなかった場合、「医療関連感染」であるという。医療関連感染は、医療施設で罹患した感染(院内感染という)だけでなく、この状況以外で受けたケアの間に罹患した感染も包含する。感染の状態が治療開始時に正確に知られていない場合、HAIを定義するために、少なくとも48時間の遅延又は潜伏期間よりも長い遅延が一般に許容される。
手術部位の感染については、手術後30日以内に起こる感染、又はインプラント、プロテーゼ若しくはプロテーゼ材料が適所に配置された場合には、手術後1年以内に起こる感染が、医療関連感染であると考えられる。医療関連感染としては、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌又は緑膿菌等の細菌による細菌起源があげられる。感染としてはまた、真菌起源、特にカンジダ属の酵母、又はアスペルギルス属の糸状菌、特にアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)によるものがあげられる。感染はまた、ウイルス性、特にアデノウイルス、ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、ロタウイルス又はHIV型のウイルスによるものであってよい。これはまた、ヘルペスウイルス、例えばウイルスCMV、EBV、HHV6及びHSV-1等の潜在的に病原性の潜伏性ウイルスの再活性化であってよい。
【0016】
好ましい実施形態では、本明細書は、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法に関し、当該合併症は、医療関連感染(HAI)の発生である。
特に、HAIは院内感染であり得る。この場合、本明細書に記載の方法により、当該患者における院内感染の発生のリスクを決定することができる。敗血症状態にある患者、したがって既に一次感染を患っている患者の場合、本明細書に記載の方法により、二次感染の発生のリスクを決定することができる。
【0017】
本明細書に記載の方法は、特に、当該患者からの生体試料中の少なくとも1つのTTVのウイルス量を測定することに基づく。
「生体試料」は、被験体から採取することができるいかなる試料をも意味する。
一般に、生体試料により、TTV及び/又はヘルペスウイルス(HPV)量を決定できなければならない。ここで、生体試料は、とりわけ、全血、血清、血漿、喀痰、鼻咽頭試料、尿、便、皮膚、脳脊髄液、唾液、胃分泌物、精子、精液、涙、脊髄組織又は流体、脳脊髄液、三叉神経節試料、仙骨神経節試料、脂肪組織、リンパ組織、胎盤組織、上部生殖管組織、胃腸管組織、生殖器組織及び神経系組織を意味するが、これらに限定されない。
特に、この試料は、血液試料又は血液由来試料等の生体液であってよく、特に、全血(静脈から採取されたもの、すなわち白血球及び赤血球、血小板及び血漿を含む)、血漿、血清、並びに血液から抽出された全てのタイプの細胞、例えば末梢血単核細胞(リンパ球(B、T及びNK細胞)、樹状細胞及び単球を含むPBMC)、B細胞亜集団、精製単球又は好中球から選択されてよい。試験試料は、生物学的供給源から直接、又は試料の性質を改変できる前処理後に用いることができる。例えば、当該前処理は、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈等を含み得る。
前処理方法はまた、濾過、沈殿、希釈、蒸留、混合、濃縮、破壊成分の不活性化、試薬の添加、溶解などを含み得る。さらに、固体試験試料を改変して液体媒体を形成するか、又は分析物を放出することが有益であり得る。
好ましくは-生体試料は、患者の生液であり、当該流体は、血液又はその派生物、例えば血漿及び/又は血清、脳脊髄液、尿及び気管支肺胞洗浄液からなる群から選択される。さらにより好ましくは、生体試料は、血液又はその誘導体、例えば血漿及び/又は血清の試料である。
【0018】
ここで、用語「被験体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくは全てのヒトをいう。ヒト被験体は、「患者」であってよい。
「患者」は、より具体的には、本明細書では、医師(例えば、一般開業医)又は医療施設若しくは健康施設(例えば、病院、より具体的には、救急科、蘇生科、集中治療室若しくは高依存性施設、又は介護付き生活タイプの高齢者用医療施設)等の医療専門家と連絡を取ったヒト被験体をいう。ある実施形態では、患者は、ワクチン接種プロトコルの状況において(特に、介護施設又は一般医において)高齢者であってもよい。
本明細書に記載されるように、当該評価方法により、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクが決定される。
「免疫抑制治療を受けていない患者」とは、当該患者が、いかなる免疫抑制剤も、又は免疫抑制副作用がある薬剤も服用しておらず、免疫抑制を誘導し得るいかなる治療も受けていないことを意味する。
「免疫抑制治療」又は「免疫抑制を誘導すること」は、その効果が免疫系の活性を低減、阻害又は防止することである処置、特に医薬を意味する。非限定的な例として、「免疫抑制治療」は、特に、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、インターフェロン、抗増殖薬及び代謝拮抗剤(ラパマイシン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸)、カルシニューリン阻害剤、特にそれらの抗移植拒絶作用のためのもの(シクロスポリン、タクロリムス(FK506)、ボクロスポリン)、S1P-Rアゴニスト(FTY720)、マロノニトリラミド(FK778)、抗体、例えば、抗胸腺細胞グロブリン、又はムロモナブ-CD3、ダクリズマブ、バシリキシマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、エファリズマブ等の特異的抗原に対するあるモノクローナル抗体を実施する処置であり得る。
「免疫抑制治療」はまた、放射線療法又は化学療法を意味する。
好ましい実施形態では、本明細書は、免疫抑制治療を受けておらず、医療施設、特に救急科、蘇生科、集中治療室又は高依存性施設に入院している患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法に関する。
患者の医療状況に応じて、病院内のある部門の間で区別がなされる。
「救急科」は、自力で到着したか、又は救急車若しくは緊急事態管理組織車両によって運ばれたかのいずれかの病気の人々及び負傷した人々を受け入れる部門を意味する。緊急事態管理組織の機能は、昼夜の全ての時間、及び一年中、精神医学上の緊急事態を含む緊急事態にあるあらゆる人を無差別に受け、特に苦痛及び生命を脅かす緊急事態の場合にその人を治療することである。
「蘇生部門」は、最も重篤な状態の患者が入院する専門部門を意味する。この部門では、患者は、換気、酸素付加、血圧、心臓及び腎臓の機能等の生体機能を絶えず監視することから利益を得る。必要であれば、可能であれば患者が生存しうるために、これらの生体機能を補助することができる。患者は、例えば、重篤な感染症(敗血症性ショック)、薬物中毒、多発外傷、昏睡、急性腎不全、急性呼吸不全の間、心停止後、又は心臓手術若しくは消化管の手術等の大手術後の術後期に、生命機能の不全を示す場合、蘇生部門に入院する。
「集中治療室」、「集中治療室部」又は「ICU」は、危機的な状態にある患者、すなわち、少なくとも1つの生命機能の不全を示す患者、又は重篤な合併症を発症するリスクのある患者を治療する責任を負う部門を意味する。集中治療室は、高度に専門的な技術的手段を有する。これらの手段は、可逆的と考えられ、基礎障害(疾患、手術、外傷、中毒、火傷、敗血症)に関連する急性不均衡を検出、予防及び矯正するために、集学的チームによって継続的に使用されている。
「高依存性ユニット」又は「HDU」は、綿密なモニタリングを必要とする病気の人々を受け入れ、治療するための病院部門を意味する。高依存性ユニットは、その状態及び治療が、生命機能の1つ以上の障害が発生する可能性があることを示唆する患者、及び生命機能の1つ以上の障害から回復した後(例えば、蘇生部門に滞在した後)のその状態が、従来の病院ユニットに戻ることを可能にするには深刻すぎるか又は不安定すぎる患者を治療する。高依存性ユニットは、蘇生部門と従来のケア部門との間の中間レベルである。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明のインビトロ又はエクスビボ評価方法により、集中治療室に入院した患者の合併症のリスクを評価することができる。
本評価方法は、免疫炎症性発作を患った患者の合併症のリスクを評価するのに特に適する。
「免疫炎症性発作」は、外傷又は創傷を意味し、その効果は、患者の体内で過剰炎症性応答を誘導することである。この過剰炎症反応の持続は、抗炎症プロファイルに関連する後天的免疫抑制をもたらし、最終的には感染が止められなくなる。この現象は、免疫麻痺としても知られており、単球の表面ではあるがB細胞の表面ではない主要組織適合性複合体クラスIIの分子の発現の下方制御を特徴とする。単球/マクロファージ機能の抑制により、免疫複合体の放出が減少し、抗原提示能力に悪影響が及ぼされ、ナチュラルキラー(NK)細胞の機能が低下する。このタイプの反応は、集中治療室の非免疫抑制患者に一般的である(C.Hotchkiss et al.,2013)。
「免疫炎症性発作」は、特に、外傷、外傷に罹患している患者のための、火傷、火傷に罹患している患者のための、手術、手術を受けた患者のための、又は敗血症状態の患者のための敗血症を含む。
好ましい実施形態では、本明細書は、免疫抑制治療を受けていない患者、敗血症状態、より具体的には敗血症性ショックにある患者、及び/又は熱傷、より具体的には重度の熱傷に罹患している患者、及び/又は外傷、より具体的には重度の外傷に罹患している患者、及び/又は外科手術、より具体的には大手術を受けた患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法に関する。
「敗血症状態の患者」又は「敗血症に罹患している患者」は、感染に対する不適当な宿主応答によって惹起される少なくとも1つの生命を脅かす臓器不全を示す患者を意味する。
「敗血症性ショック」は、十分な血管充填にもかかわらず低血圧が持続する敗血症のサブタイプを意味する。
「火傷に罹患している患者」は、患者が、熱傷及び/又は電気熱傷及び/又は化学熱傷及び/又は放射線熱傷によって惹起される皮膚細胞及び下層組織が破壊されていることを意味する。熱傷は、表在性、部分的な厚さ又は完全な厚さであり得、一般的に又は具体的に、例えば、首、顔、目、手、足、関節又は身体の他の部分にありうる。
「重度の熱傷」又は「重度の熱傷に罹患している患者」は、身体の総表面積の15%超、好ましくは20%超、好ましくは25%超、最も具体的には身体の総表面積の30%超の体表面積にわたる熱傷に罹患している患者を意味する。
「外傷に罹患している患者」は、集中治療室に直接入院した患者を意味する。「重度の外傷に罹患している患者」は、傷害重症度スコア(ISS、Baker et al.,1974)15超、好ましくは20超、より好ましくは25超である患者を意味する。
「外科手術を受けた患者」は、身体機能、外見を補助若しくは改善するために、又は創傷領域を修復するために、疾患又は創傷等の疾患状態を治療する目的で侵襲的外科手術を受けた患者を意味する。
「大手術」又は「大手術を受けた患者」は、技術的に困難であり、及び/又は出血のリスクがあり、及び/又は死亡のリスクがあり、及び/又は長期にわたり(例えば3時間超、好ましくは4時間超、例えば5時間若しくは6時間、又はさらに長い)、及び/又は著しい術後ケアが必要な外科的処置を意味する。非限定的な例として、大手術は、以下の:食道胃切除術、ブリックヤー膀胱切除術(小腸粘膜からの再建を伴う膀胱全摘)、頭部膵十二指腸切除(ウィップル手技)及び/又は開腹術による腹部大動脈瘤手術の適応症の少なくとも1つを意図した手術を意味する。
【0020】
ある好ましい実施形態を以下に記載する。本明細書は、これらの実施形態に限定されず、上述の特徴のうちの1つ以上を組み合わせることで、他の特定の実施形態を実施することができる。
したがって、本発明者らは、医療施設における患者のウイルス再活性化の現象を研究した。より具体的には、彼らは、医療施設における彼らの治療の異なる時点で、当該患者からの生体試料中のTTVウイルス量の存在及び/又は変動を測定した。
本発明者らは、特に、患者に応じて、ウイルス量が経時的に変化する場合があることを観察した。特に、本発明者らは、驚くべきことに、この変化が、医療関連感染の発生のリスク及び/又は処置の期間を延長するリスクを示すことを観察した。したがって、本発明者らは、医療施設に入院した患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法を開発した。
本明細書に記載される方法は、TTVウイルス量の測定に基づく。「トルクテノウイルス」又は「TTV」は、本明細書では、アネロウイルス科のウイルスを意味する。本明細書で意図されるTTVは、負の極性の環状一本鎖DNAゲノムを有する非エンベロープウイルスである。
「TTVゲノム」は、本明細書では、すべてのアネロウイルス科のすべてのゲノム、特に、ヒトに見出されるトルクテノウイルス(TTV)、ベータトルクウイルス(TTMV)、及びガンマトルクウイルス(TTMDV)属のゲノムをいう。例として、ここでは、トルクテノウイルス原型株TTV-1aのゲノムを参照する。より具体的には、TTVゲノムの例は、例えば配列番号1によって表され、Genbank受託番号がAB017610であるような配列である。
1997年に、遺伝子サブトラクション法を用いて、病因が不確定な輸血後肝炎を呈する日本人患者の血清中に、約500塩基対(bp)のウイルス配列断片が発見された(1-7)。このクローンは、最初にN22と命名され、その時点ではウイルス配列データベースに列挙されていないが、それが発見された患者の頭文字にちなんでTTウイルス(TTV)と改名された(Nishizawaら、1997)。その後のさらなる研究により、TTVゲノムが負の極性の環状一本鎖DNAからなることが示された。これは、ヒトにおいて単離された環状一本鎖DNAの最初のウイルスであった。この非コード領域中の配列を増幅することができるプライマーを用いて、世界人口におけるTTVの高い有病率(約90%)が実証された。
TTVは、明らかに関連する臨床徴候を伴わずに慢性感染症を惹起する。これは、非病原性又はオーファンウイルスという。したがって、多くの研究が、ヒト疾患、特に特定の肝疾患におけるTTVの関与に焦点を当てているが、このウイルスの機能は明確には同定されていない。
優先的に、TTVのゲノムサイズは、約3.8kbである。TTVのゲノム構造及び構成は、当業者に周知であり(例えば、Biagini,Curr Top Microbiol Immunol.331:21-33,2009を参照されたい)、
図1に例示されている。
つまり、TTVゲノムは、約1~1.2kbの非翻訳領域(UTR)と約2.6~2.8kbの潜在的コード領域に分割することができる。コード領域は、特に、2つの大きなオープンリーディングフレーム:ORF1及びORF2を含み、各々770残基及び202残基の2つのタンパク質をコードする。配列番号1で表されるTTVゲノムでは、オープンリーディングフレームORF1及びORF2は、各々ヌクレオチド589~2901及び107~715の間にある。TTVゲノムには、他のオープンリーディングフレームがあってよい。例えば、TTVのゲノムは、2つのさらなるオープンリーディングフレーム、ORF3及びORF4を含んでよい(
図1)。
非翻訳領域UTRは高度に保存されている。それは、特に、二次構造を形成しやすいGCリッチ配列を含む。UTR-5’非翻訳領域で選択された配列の増幅により、ウイルスの蔓延が全世界の集団全体にわたって非常に高いことを実証された(Hu et al.,J Clin Microbiol.43(8):3747-3754,2005)。この領域は、特に128bpの配列を含み、当業者に公知の方法、例えばTTV R-GENE(登録商標)診断キット(bioMerieux、フランス)を用いて増幅することができる。
【0021】
「ウイルス量」は、生体試料中に存在するウイルス粒子の数を意味する。ウイルス量は、ウイルス感染の重篤度を反映する。ウイルス量は、生体試料中のウイルスの成分(ゲノムDNA、mRNA、タンパク質など)の1つの量を測定することによって決定され得る。
したがって、好ましくは、ウイルス量は、生体試料中の当該ウイルスに属する核酸配列の比率をいう。より優先的には、ウイルス量は、生体試料中の当該ウイルスのゲノムのコピー数を表す。
この場合、ウイルス量はTTV量を表す。「TTV量」は、本明細書では、より具体的には、TTVウイルス量、すなわち、生体試料中に存在するTTVウイルスの粒子の数に対応する。患者のTTV量は、当該患者が宿すいかなるTTVのウイルス量を意味する。TTV量は、この生体試料中のTTVの成分の量を測定することによって決定することができる。
好ましくは、TTV量は、生体試料中に存在するTTV核酸配列の量に対応する。したがって、本発明のプロトコルによる患者のTTV量の決定は、当該患者の生体試料中のすべてのTTVの配列の数を推定することを含む。特に、本発明の方法では、当該生体試料中で測定される特定のTTV株は選択しない。実際、高いTTVウイルス量の検出、特にTTV量の変動の検出は、検出される1つ以上のアネロウイルス科株とは無関係に、合併症、特に医療関連感染の発生のリスクの増大と関連する。
好ましくは、TTV量の決定は、活性及び/又は不活性ウイルスコピーの量の決定を含む。それは、循環する、組み込まれた、又は潜伏しているウイルスコピーの量を決定することである。
特に、TTVウイルスコピー数は、TTV検出限界を予め決定することで決定することができる。
【0022】
「検出限界」又は「LOD」は、ウイルス標準を用いて検出の不在(ブランク値)と区別することができるゲノムのコピーの最小量を意味する。次に、標準曲線からの外挿によって、反応チューブ中の1μlあたりのウイルスDNAのコピーに関し、次いで、当該試料中の1mlあたりのウイルスDNAのコピーに関し、ウイルス量を決定することができる。
本明細書の文脈では、生体試料、例えば血液又は血漿及び/又は血清等のその誘導体1ml当たり7000コピーを超える、好ましくは血漿1ml当たり10000コピーを超える、好ましくは生体試料1ml当たり20000コピーを超える、より好ましくは生体試料1ml当たり40000コピーを超える生体試料中のウイルス量は、高いTTVウイルス量であると考えられる。
TTVレベル、したがってTTV量は、当業者に周知の方法を用いて、TTV DNA、TTV RNA又はTTVタンパク質のレベルを測定することによって決定することができる。したがって、本発明による方法は、患者からの試料の採取と以下に定義される工程a)との間に、生体試料を二本鎖DNA試料、又はmRNA(若しくは対応するcDNA)試料、又はタンパク質試料に変換することに対応する他の予備工程を含んでよく、次いで、以下に定義される工程a)にてTTVウイルス量のインビトロ測定に用いる準備が整う。
細胞試料からのウイルス二本鎖DNA、mRNA(及びcDNAを得るためのその逆転写)又はタンパク質の調製又は抽出は、当業者に公知の単なる常套手順である。
【0023】
二本鎖DNAは、TTVのゲノム全体に対応するか、又は単にその一部に対応することができる。二本鎖DNA、mRNA(又は対応するcDNA)又はすぐに使えるタンパク質試料が利用可能になったら、試料のタイプ又は変換に応じて、ゲノムDNAを用いて(すなわち、TTVゲノムの少なくとも一部からなる少なくとも1つの配列の存在に基づいて)、又はmRNAを用いて(すなわち、試料中のTTV mRNAの含有量に基づいて)、又はタンパク質を用いて(すなわち、試料中のTTVタンパク質の含有量に基づいて)、TTVの検出を行うことができる。
TTVレベルは、好ましくはTTV核酸、より好ましくはTTV DNAのレベルを測定して決定される。
生体試料中の核酸を検出する方法は、当業者に周知であり、とりわけ、増幅、好ましくはPCRによる増幅、より好ましくはリアルタイムPCRによる増幅、配列決定、及び標識プローブとのハイブリダイゼーションを含む。
したがって、有利には、本明細書は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、当該患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定することを含み、当該ウイルス量が、少なくとも1つのTTV配列の増幅、配列決定又はハイブリダイゼーションによって、好ましくは増幅によって、より優先的にはリアルタイムPCRによって測定される方法に関する。
【0024】
第1の実施形態では、TTV量は、TTV配列の増幅によって決定される。
この実施形態では、好ましいアプローチは、TTVのゲノムに特異的であることが公知の配列、特に好ましくは、先に定義されたTTVの非翻訳領域(UTR)由来の少なくとも1つの配列を増幅することにある。
「TTVのゲノムに特異的な配列」は、本明細書では、公知のTTVの大部分に存在するが、他のウイルスの大部分、特に他のアネロウイルスの大部分には存在しない配列を意味する。好ましくは、TTV特異的配列は、既知のTTVゲノムの少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%に存在する。より好ましくは、それは、既知のTTVゲノムの100%に存在する。あるいは、TTV特異的配列は、TTV以外のアネロウイルスの公知のゲノムの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満に存在する。好ましくは、TTV特異的配列は、TTV以外のアネロウイルスのすべての公知のゲノムに存在しない。特に好ましくは、そのような配列は、例えば、あるTTVから他のTTVに高度に保存されている非翻訳領域(UTR)に含まれる配列である。より具体的には、そのような配列は、5’-UTR非翻訳領域の128bp配列に対応し得、これは、当業者に公知の方法により、例えば、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(bioMerieux、フランス)を用いて増幅しうる。
したがって、この実施形態では、本明細書に記載される方法は、TTVのゲノムに特異的であることが公知の配列の増幅用のプライマー及びプローブの使用を含む。この技術分野では通例であるように、当該プライマーは、好ましくはオリゴヌクレオチドである。例えば、当該プライマーは、30ヌクレオチド未満、25ヌクレオチド未満、20ヌクレオチド未満、15ヌクレオチド未満、又は12ヌクレオチド未満を含み得る。あるいは、これらのプライマーは、少なくとも12、15、20、25又は30ヌクレオチドを含む。好ましくは、用いられるプライマーは、12~20ヌクレオチド、12~25ヌクレオチド、15~20ヌクレオチド、又は15~25ヌクレオチドを含む。当業者には、TTV特異的配列の増幅用プライマーの長さ及び配列を決定する方法は公知である。それらは、例えば、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(参照番号423414及び69-030B、bioMerieux、フランス)において提供されるものと同じプライマーを用いてよい。
【0025】
増幅技術としては、特に、等温技術及びPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に基づく技術があげられる。等温増幅法には多数の方法が含まれる。病原体の検出に最も汎用されるのは、LAMP(ループ媒介増幅)及びRPA(リコンビナーゼポリメラーゼ増幅)法である。等温増幅法としてはまた、例えば、NASBA(核酸配列に基づく増幅)、HDA(ヘリカーゼ依存性増幅)、RCA(ローリングサークル増幅)及びSDA(鎖置換増幅)、EXPAR(指数関数的増幅反応)、ICAN(核酸の等温及びキメラプライマー開始増幅)、SMART(RNA技術のシグナル媒介増幅)等の方法があげられる(例えばAsiello et Baeumner,Lab Chip 11(8):1420-1430,2011)。
好ましくは、用いられるPCR技術は、DNA、cDNA又はRNAの初期量を定量的に測定する。本明細書に記載される方法において使用され得るPCRに基づく技術の例は、限定されないが、リアルタイムPCR(Q-PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、多重逆転写PCR、リアルタイム逆転写PCR(QRT-PCR)及びデジタルPCR等の技術を含む。これらの技術は、当業者に周知であり、容易に利用可能な技術である。
好ましくは、TTV量は、リアルタイム定量的PCRを用いて決定される。TTVを検出及び定量するための多数の方法が、当業界で報告されている(例えば、Maggi et al.,J Virol.77(4):2418-2425,2003)。
特に、以下の文献に記載されている方法を参照する。Kulifajら(J Clin Virol.105:118-127,2018)。この方法は、その簡便性及びロバスト性のために特に有利である。これは、非コードUTR領域に含まれる配列の増幅に基づく。この配列は、全ての既知のTTVに存在し、それによって、この方法は非常に高い程度の特異性を備える。さらに、それは特に多用途であり、いかなるタイプのPCRプラットフォームを用いて実施することができる。この方法を実施するために、TTV R-GENE(登録商標)診断キット(参照番号423414及び69-030B bioMerieux、フランス)を用いることが特に有利である。
【0026】
あるいは、ウイルス量は、デジタルPCRを用いて決定される。デジタルPCRは、陽性増幅の大部分が単一の鋳型分子からのシグナルを反映するように、極度に希釈された核酸に対するあるPCR分析を含む。したがって、デジタルPCRにより、個々のモデル分子を計数することができる。分析されたPCRの総数のうちの陽性増幅の比率により、元の、又は希釈されていない試料中の鋳型の濃度が推定されうる。この技術は、種々の遺伝的現象を検出させるために提案された(Vogelstein et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96:9236-924,1999)。デジタルPCRにより、リアルタイムPCRと同様に、潜在的に試料間の標的配列の非常に小さな量的差異を区別することができる。
【0027】
他の実施形態では、TTV DNAレベルは、配列決定によって測定される。本明細書で用いられる用語「配列決定」は、その最も広い許容される意味であり、ポリヌクレオチド分子(DNA又はRNA)の配列を決定すること、すなわち、この分子を構成するヌクレオチドの配列を決定することができる、当業者に公知のいかなる技術をいう。
したがって、TTV DNAは、当技術分野で公知のいかなる技術による配列であり得る。本明細書で意味する配列決定としては、とりわけ、サンガー配列決定、全ゲノム配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定、パイロ配列決定(特に454配列決定、Solexa Genome Analyzer配列決定)、キャピラリー電気泳動を用いる配列決定、サイクル配列決定、一塩基伸長配列決定、固相配列決定、ハイスループット配列決定、超並列シグネチャー配列決定(MPSS)、可逆的色素ターミネーターによる配列決定、メイトペア配列決定、ショートリード配列決定、エキソヌクレアーゼを用いる配列決定、ライゲーションによる配列決定、単一分子配列決定、合成による配列決定、電子顕微鏡による配列決定、リアルタイム配列決定、反転停止配列決定、ナノポア配列決定、可逆的ターミネーター配列決定、半導体による配列決定、SOLiD(R)配列決定、SMRT(単一分子リアルタイム分析)配列決定、MS-PET配列決定、質量分析、及びそれらの組合せがあげられる。特定の実施形態は、例えば、プラットフォームMiSeq、NextSeq 500、及びIllumina(Reuter et al.,Mol Cell,58:586-597,2015;Bentley et al.Nature;456:53-59,2008)、454ゲノムシーケンサー及びRoche(Margulies et al.Nature;437:376-380,2005)、Applied Biosystems(McKernan et al.,Genome Res;19:1527-1541,2009)、Polanatorプラットフォーム(Shendure et al.,Science,309:1728-1732)、又はHelicos単一分子配列決定プラットフォーム(Harris et al.Science;320:106-109,2008)。ハイスループット配列決定はまた、SMRTリアルタイム配列決定(Roads et al.,Genomics,Proteomics&Bioinformatics,13(5):278-289,2015)、Ion Torrent配列決定(WO2010/008480);Rothberg et al.,Nature,475:348-352,2011)及びナノポア配列決定(Clarke J et al.Nat Nanotechnol:4:265-270,2009)があげられる。
配列決定は、生体試料に含まれるDNAの全てに対して、又は生体試料に含まれるDNAの一部に対して行われる。当該試料に少なくともTTV DNAと宿主被験体DNAとの混合物が含まれることは、当業者には直ちに明らかである。さらに、TTV DNAは、おそらく、試料中に存在する全DNAのうちのわずかな画分を表すにすぎない。有利には、DNAは、配列決定の前に、一般に物理的方法を用いて無作為に断片化される。
第1のアプローチは、TTV種のゲノムの特定の配列を配列決定することにある。他のアプローチは、生体試料から得られた核酸の定量的遺伝子型決定を高い精度で行うことができる方法を用いることにある。特定の実施形態では、精度は、標的配列(すなわち、この場合、TTV配列)の事前知識に基づくプロトコルを用いて、増幅をせずに多数(例えば、数百万又は数十億)の核酸分子を分析することによって得られる。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、リードの数を定量することを含む。
特定の実施形態では、生体試料からの核酸分子のランダムサブセットをハイスループット配列決定に供する。好ましくは、TTV配列は、公的に寄託されたTTV配列との比較によって、全体的な配列決定データで同定される。この比較は、有利には、既知のTTV配列との配列同一性のレベルに基づき、はるかに離れた変異体でさえ検出することができる。BLAST等の現在利用可能なソフトウェアを用いて、配列間の同一性のレベルを決定することができる。
したがって、既知のTTV配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性がある配列は、TTV配列であると同定される。この実施形態では、TTV量の決定は、したがって、被験体からの生体試料中の配列決定によって同定されたTTV配列に番号付けをすることを含む。
【0029】
他の実施形態では、TTV量は、生体試料中のウイルスタンパク質の量を測定することによって決定される。したがって、特に、免疫沈降、免疫組織学、ウェスタンブロット、ドット・ブロット、ELISA又はELISPOR、電気化学発光(ECLIA)、プロテイン・チップ、抗体チップ、又は免疫組織化学と組み合わせた組織チップ等の周知の技術において、特異的抗体を用いることができる。用いられうる他の技術としては、FRET又はBRET技術、特に共焦点顕微鏡法及び電子顕微鏡法を含む顕微鏡法又は組織化学法、1つ以上の励起波長及び適当な光学的方法の使用に基づく方法(例えば、電気化学的方法(ボルタンメトリー及びアンペロメトリー技術)、原子間力顕微鏡法、及び高周波法(例えば、多極共鳴分光法、共焦点及び非共焦点)、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率及び複屈折又は屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共鳴ミラー法など)、フローサイトメトリー、放射性同位体又は磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による分析、質量分析及び質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)による分析が挙げられる。これらの技術はすべて当業者には周知であり、ここで詳細に説明する必要はない。さらに、TTVタンパク質特異的抗体はすでに利用可能である。
【0030】
好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法は、測定されるウイルス核酸又はタンパク質の量を標準化するさらなる工程を包含する。
好ましい実施形態では、TTVレベル、すなわち、生体試料中に存在するTTV DNA、TTV RNA又はTTVタンパク質の量を、この試料に特異的なパラメータに標準化することが有利であり得る。
測定されたTTV量を特定のパラメータに標準化することで、2つの異なる生体試料のウイルス量間の比較の際のエラー率を低減することができる。この標準化に有用であり得るパラメータの例は、試料の内容物、例えば当該試料の体積とは無関係の物理的パラメータであり得る。また、TTV DNA、TTV RNA又はTTVタンパク質の量を、試料中に存在するDNA、RNA又はタンパク質の総量に対して標準化することもできる。あるいは、標準化ツールとして特定のDNA若しくはRNA配列又は特定のタンパク質を用いることができる。例えば、この配列又はこのタンパク質は、ヒト配列又はタンパク質であり得る。
あるいは、所与の試料中のTTV DNA若しくはRNA又はTTVタンパク質の量を内部対照と比較する。
この目的のために、生体試料中で測定されたTTV核酸又はタンパク質の量を、同定及び定量することができる適当な核酸又はタンパク質、例えば宿主又は外因性核酸又はタンパク質の規定量と相関させることができる。好ましくは、この同定可能で定量可能な核酸又はタンパク質は、標的核酸又はタンパク質と同様に処理される(例えば、増幅される、配列決定されるなど)。
したがって、開始時から、この識別可能かつ定量可能な核酸又はタンパク質の既知量を試料に添加することができ、これを、その後、標的核酸又はタンパク質のように処理し、当該ウイルス核酸又はタンパク質の量が測定される前に、全ての試料調製工程を通過させる。調製工程は、ウイルス核酸を保護し、例えば、異なるヌクレアーゼを用いて宿主核酸を破壊する手段を含んでよい。
あるいは、これらの工程は、例えば、異なるプロテアーゼを用いて、ウイルスタンパク質を保護し、宿主タンパク質を破壊する手段を含み得る。内部対照により、試料中の問題の分子(核酸又はタンパク質)の処理(例えば、増幅又は配列決定)の質及び程度を評価することができる。好ましくは、当該内部対照は、既知の配列がある核酸分子であり、この核酸分子は、既知の濃度で試料中に存在する。より好ましくは、この核酸分子は、試料中の既知の配列及び濃度のウイルスの環状一本鎖ゲノムDNA分子である。このような既知のウイルスは、例えば、サーコウイルス科のウイルスであり得る。対照に対する試料中の配列の数の比から既知の配列及び濃度のTTVゲノムの絶対数を推定することができる。あるいは、この内部対照は、既知の濃度で試料中に存在する既知の配列のタンパク質である。
【0031】
決定されたTTV核酸又はタンパク質の量を測定することによってTTV量が決定されたら(後者は場合によっては標準化されている)、それを所定の基準TTV量と比較することが有利であり得る。
この好ましい実施形態では、本明細書は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、以下の:
a)前記患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定すること、
b)前記生体試料について決定された前記ウイルス量を所定の参照値と比較すること、かつ、
c)前記生体試料について決定された前記ウイルス量が前記所定の参照値よりも大きいか又は小さい場合に合併症のリスクを確立すること、
を含む。
本出願の目的のために、「参照TTV量」又は「参照ウイルス量」は、参照として用いられるいかなるTTV量を意味する。
これは、参照TTV量が、「TTV核酸(又はタンパク質)の参照レベル」又は「TTV核酸(又はタンパク質)の対照レベル」、すなわち、基準として用いられるTTV核酸(又はタンパク質)の濃度に対応することを意味する。
「TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度」は、本明細書では、試験試料と比較でき、特定の外傷及び/又は感染状態を示す被験体又は被験体群から得られる対照試料において測定される基準レベルを意味することが意図される。これは、例えば、健康であるか、又は特定の外傷及び/若しくは感染を示さない被験体又は被験体群であり得る。これはまた、医療施設、特に集中治療室に入院した患者又は患者群、特に免疫炎症性発作を患った患者又は患者群、例えば敗血症を患っている、熱傷(複数可)、外傷に罹患した、及び/又は手術を受けた患者又は患者群であってもよい。最後に、これは、例えば、当該手術の前又は直後に、手術を受けた同じ個体であってもよい。基準レベルは、複数の方法によって決定されてよい。例えば、制御は、様々な形態であり得る所定の値であり得る。それは、中央値又は平均値等の単一の閾値であってもよい。「参照レベル」は、各患者に個々に適用可能な単一の値であってよい。あるいは、参照レベルは、患者の特定の亜集団に基づいて変動してよい。したがって、例えば、高齢の男性のTTV量は、より若い男性の基準レベルとは異なる基準レベルであってよく、女性のウイルス量は、男性の参照レベルとは異なる参照レベルであってよい。さらに、「参照レベル」は、高レベルのTTV核酸(又はタンパク質)がない群及び高レベルのTTV核酸(又はタンパク質)がある群等の比較群に基づいて確立することができる。比較群の他の例は、特定の疾患、状態又は症状に罹患している群及び疾患がない群である。所定の値は、例えば、試験集団が、低リスク群、中リスク群、及び高リスク群等の群に均等に(又は不均等に)分割される場合に定義され得る。
参照レベルはまた、疾患に罹患しているか、又は免疫抑制状態をもたらす治療を受けている患者の集団におけるTTV核酸(又はタンパク質)のレベルを比較することで決定することもできる。これは、例えば、ヒストグラムによる分析によって達成することができ、ここで、被験体のコホート全体がグラフの形態で提示され、第1の軸は、当該TTV核酸(又はタンパク質)のレベルを表し、第2の軸は、所与のレベルでTTV核酸(又はタンパク質)を発現する患者群における患者の数を表す。2つ以上の別個の被験体群は、同一又は類似のTTV核酸(又はタンパク質)レベルを有するコホートの亜集団を同定することによって決定することができる。次いで、これらの別個の群を最もよく区別するレベルに基づいて、参照レベルを決定することができる。参照レベルはまた、存在する2つ以上のTTV核酸(又はタンパク質)のレベルを表すこともできる。2つ以上のマーカーは、例えば、各マーカーのレベルの値の比によって表され得る。
【0032】
同様に、健康状態が良好であると思われる集団は、当該TTV核酸(又はタンパク質)の高濃度に関連する状態であることが知られている集団の範囲とは異なる「正常な」範囲であろう。したがって、選択される所定の値は、個人が属するカテゴリーを考慮に入れることができる。適当な範囲及びカテゴリーは、当業者による常套実験によって簡単に選択され得る。「高い」及び「増加した」は、選択された対照よりも高いことを意味する。一般に、対照は、健康状態が良好であり、適当な年齢範囲内にあるように見える正常な個体に基づく。
好ましい実施形態では、参照濃度は、一般集団におけるTTV核酸(若しくはタンパク質)又はTTV核酸(若しくはタンパク質)の組合せの濃度に対応する。
本明細書に記載される方法における対照は、所定の値とは別に、試験される試料と並行して測定される生体試料であり得ることも理解されるであろう。この実施形態では、参照レベルは、健康状態が良好である被験体からの試料中のTTV核酸(又はタンパク質)のレベルである。
好ましくは、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、健康状態が良好である被験体又は健康状態が良好である被験体の集団におけるこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
他の好ましい実施形態では、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、免疫炎症性発作に罹患した患者又は免疫炎症性発作に罹患した患者群でのこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
他の好ましい実施形態では、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、敗血症に罹患した患者又は敗血症に罹患している患者群におけるこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
他の好ましい実施形態では、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、熱傷に罹患した患者又は熱傷に罹患している患者群におけるこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
他の好ましい実施形態では、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、外傷に罹患した患者又は外傷に罹患している患者群におけるこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
他の好ましい実施形態では、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、手術を受けた患者又は手術を受けた患者群におけるこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
他の好ましい実施形態では、TTV核酸(又はタンパク質)の参照濃度は、特定の時点、例えば、当該手術の前又は直後に手術を受けた同じ個体通中のこのTTV核酸(又はタンパク質)の濃度である。
当該患者からの生体試料中のTTVウイルス量を所定の参照値と比較することで、当該患者の合併症のリスクを確立することができる。
【0033】
特定の実施形態では、所定の参照値は、患者からの生体試料、例えば血液又は血漿及び/若しくは血清等のその誘導体中の、生体試料1ml当たり7000コピー超、例えば生体試料1ml当たり10000コピー超、20000コピー超、又は40000コピー超のウイルス量に対応する。この特定の実施形態では、所定の参照値よりも大きい患者のTTVウイルス量は、患者の状態の重症度と相関し、合併症、特に医療関連感染の発生のリスクの増加とも相関し得る。
この特定の実施形態の変形によれば、所定の参照値は、生体試料1ml当たり10000コピーのTTVウイルス量に対応する。したがって、この変形形態によれば、患者からの生体試料において決定されたTTVウイルス量が当該所定の参照値よりも大きい場合に、合併症のリスクの増大の存在が確立される。逆に、患者からの生体試料において決定されたTTVウイルス量が当該所定の参照値未満である場合、合併症のリスクの増大がないことが確立される。
健康状態が良好である個体又は個体群のTTV量と比較して、患者のTTV量がより大きい場合は、当該患者の合併症のリスクが増大していることの指標であり得る。
【0034】
本明細書で用いられる用語「より大きい」は、ある実施形態では、より大きい量、例えば、元の量若しくは基準量よりわずかに大きい量、又は例えば、元の量若しくは基準量を大幅に超える量、特に、範囲内の全ての量を意味する。変形として、「増加する」は、増加した量又は活性が比較される量又は活性よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%多い量又は活性であってよい。
【0035】
本明細書で用いられる用語「未満」という用語は、ある実施形態では、より少ない量、例えば、元の量若しくは基準量よりもわずかに少ない量、又は例えば、元の量若しくは基準量よりも非常に少ない量、特に、範囲内の全ての量を意味する。変形として、「減少させる」は、減少した量又は活性が比較される量又は活性よりも少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%少ない量又は活性を指し得る。
有利には、参照TTVウイルス量として、第2の時点での同じ患者における少なくとも1つのTTVのウイルス量を用いてよい。
【0036】
好ましい実施形態では、本明細書は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、以下の:
a)時間T1に採取された第1の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第1のウイルス量を測定すること、
b)前記時間T2に採取された第2の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第2のウイルス量を測定すること、
c)T2でのウイルス量とT1でのウイルス量との間の変動を計算して、ΔTTV値を得ること、かつ、
d)比較の結果から合併症のリスクに関する結論を確立すること、
を含む。
驚くべきことに、本発明者らは、医療施設に滞在中の患者におけるTTVウイルス量の変動、すなわち、以下に定義される値に従ったTTVウイルス量の増加又は減少が、当該患者の合併症のリスクの増加、特に医療関連感染を発症するリスクの増加と相関することを決定した。
したがって、この方法は、医療施設に入院した患者の合併症のリスクを経時的に評価及び監視するのに特に有用である。好ましい実施形態では、工程a)における第1の試料は、入院日、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目及び7日目から選択される時間T1に採取され、第1日は、入院の翌日及び/又は当該患者が免疫炎症性発作を患った日の翌日に対応することが理解される。
特定の実施形態では、当該患者が、手術、より具体的には大手術のために医療施設に入院した患者である場合、工程a)における第1の試料は、手術時に、すなわち、外科的処置の直前、直後及び/又は最中に採取することができる。
好ましい実施形態では、工程b)の第2の試料は、時間T2で採取され、この第2の時間は、工程a)の第1の時間T1よりも後である。好ましくは、第2の試料は、8日目と31日目との間、より好ましくは14日目と31日目との間に採取される。したがって、時間T2は、好ましくは、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、及び31日目から選択される。
他の実施形態では、第2の試料は、当該患者の医療施設への入院の31日後、例えば、少なくとも40日後、60日後、90日後、100日後、120日後、150日後、180日後、210日後、240日後、270日後、300日後、330日後、360日後に採取される。
【0037】
ある実施形態では、TTVウイルス量はまた、時間T1とT2との間の異なる時間に採取された複数の試料について測定される。特に、TTVウイルス量はまた、少なくとも1つの試料、好ましくは少なくとも2つの試料、好ましくは少なくとも3つの試料、好ましくは少なくとも4つの試料、好ましくは少なくとも5つの試料、例えば6、7又は8つの試料について、時間T1とT2との間の異なる時間で測定される。
ある実施形態では、時間T1におけるTTVウイルス量は、入院日及び/又は免疫炎症性発作の日と7日目との間に採取された当該患者からの複数の生体試料において測定されたウイルス量の平均又は中央値に相当する。好ましくは、時間T1におけるTTVウイルス量は、入院日及び/又は免疫炎症性発作の日と7日目との間に採取された当該患者からの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの生体試料において測定されたウイルス量の平均又は中央値に相当する。非限定的な例として、時間T1におけるTTVウイルス量は、1日目又は2日目、3日目又は4日目、及び5日目、6日目又は7日目に採取された当該患者からの生体試料において測定されたウイルス量の平均又は中央値に相当し得る。
ある実施形態では、時間T2におけるTTVウイルス量は、入院後及び/又は免疫炎症性攻撃後8日目と31日目との間に採取された当該患者からの複数の生体試料において測定されたウイルス量の平均又は中央値に相当する。好ましくは、時間T2におけるTTVウイルス量は、入院後及び/又は免疫炎症性攻撃後8日目と31日目との間に採取された当該患者からの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの生体試料において測定されたウイルス量の平均又は中央値に相当する。非限定的な例として、時間T2におけるTTVウイルス量は、14日目、又は13日目~18日目の間のいかなる日、及び28日目、又は26日目~36日目の間のいかなる日に採取された当該患者からの生体試料において測定されたウイルス量の平均又は中央値に対応し得る。
【0038】
有利には、工程c)においてΔTTV値は、時間T2におけるTTVウイルス量と時間T1におけるウイルス量との間の変動:
ΔTTV=(時間T2におけるTTVウイルス量)-(時間T1におけるTTVウイルス量)
に対応する。
時間T1におけるTTVウイルス量及び時間T2におけるTTVウイルス量に基づいて、当業者は、これらの2つの測定によって定義される線の勾配を計算することができる。したがって、ΔTTVは、時間T1とT2との間の勾配の値に対応する。
本明細書によれば、時間T1とT2との間のTTVウイルス量は、好ましくは、以下の場合、すなわち、ΔTTV値が、-1.25~+1.25の範囲内、好ましくは-1.20~+1.20の範囲内、好ましくは-1.15~+1.15の範囲内、好ましくは-1.10~+1.10の範囲内、で安定であると考えられる。例えば、ウイルス量の安定性は、T1及びT2における複数の試料についてのウイルス量の中央値の間で測定される、-1.25~+1.25の範囲内の勾配に対応し得る。
さらに、時間T1とT2との間のTTVウイルス量は、好ましくはΔTTV値が、+1.25より大きく、好ましくは+1.35より大きく、好ましくは+1.40より大きく、好ましくは+1.45より大きく、より好ましくは+1.50より大きい。
さらに、時間T1とT2との間のTTVウイルス量は、好ましくは、以下の場合:DTTV値が、-1.25未満、好ましくは-1.35未満、好ましくは-1.40未満、好ましくは-1.45未満、より好ましくは-1.50未満である場合に減少したと考えられる。
したがって、時間T1とT2との間のTTVウイルス量の変動(DTTV)が-1.25~+1.25の範囲内にある場合、工程d)において、患者が医療関連感染の発生のリスクが増大していないと結論付けることができる。
その一方で、時間T1とT2との間のTTVウイルス量の変動(DTTV)が-1.25~+1.25の範囲内にない場合、工程d)において、患者が医療関連感染の発生のリスクが高いと結論付けることができる。
【0039】
したがって、好ましい実施形態では、本明細書による方法は、以下の:
a)時間T1に採取された第1の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第1のウイルス量を測定すること、
b)前記時間T2に採取された第2の試料に由来する前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVの第2のウイルス量を測定すること、
c)T2でのウイルス量とT1でのウイルス量との間の変動を計算してΔTTV値を得ること、かつ、
d)DTTVが-1.25~+1.25、好ましくは-1.20~+1.20、より好ましくは-1.10~+1.10の範囲内にある場合、合併症のリスクが増大していないと結論付けること;
を実行することを含む。
【0040】
特に有利な実施形態では、本明細書は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、当該患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定すること、さらに、当該患者の当該生体試料中の少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在を検出することを含む、方法に関する。
【0041】
実際、本発明者らが、特に集中治療室に入院した後の最初の1週間の間に、患者の生体試料中のTTV及び少なくとも1つのHPVの高ウイルス量の同時検出が、当該患者の合併症のリスクの増加、特に医療関連感染を発症するリスクの増加を示すことを決定したことは、本発明者らの功績である。特に驚くべきことは、TTV/HPVの早期ウイルス血症(入院後の最初の1週間という早期)と最初の1ヶ月間にHAIを発症するリスクの増加の存在との間に関連があることである。
【0042】
本明細書で用いられる用語「少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在を検出する」又は「少なくとも1つのヘルペスウイルスを検出する」には、定性的及び/又は定量的検出が含まれる。様々な実施形態では、HPVは、HPV核酸、より好ましくはHPV DNAのレベルを検出することで検出される。
本明細書によれば、少なくとも1つのHPV株由来の少なくとも1つのタンパク質、より好ましくは少なくとも1つのHPV株由来の少なくとも1つの抗原が、当該患者由来の少なくとも1つの生体試料中で検出される場合、ヘルペスウイルスが存在するか又は検出されると決定される。
好ましくは、少なくとも1つのHPV株由来の少なくとも1つの核酸、より好ましくは少なくとも1つのHPV株由来の少なくとも1つのDNAが、当該患者由来の少なくとも1つの生体試料中で検出される場合、ヘルペスウイルスが存在すると決定されるか、又は検出される。この場合、陽性ウイルス血症又は陽性DNAemiaという。
【0043】
本明細書では「ウイルス血症」は、所与のウイルスについての生体試料中のウイルス粒子の含有量、又はウイルス量を意味する。ウイルス血症は、検出されたウイルス粒子の数が、所与のウイルスについての当該生体試料中の所定の閾値(LOD)よりも大きい場合に陽性である。逆に、当該ウイルス粒子が当該生体試料中で検出されない場合、ウイルス血症は陰性である。
【0044】
「DNAemia」とは、生体試料、特に血漿、全血及び/又は末梢血から単離された白血球の試料及び/又はバフィーコート試料(白血球及び血小板のほとんどを含む、遠心分離後に凝固していない血液試料の画分)中のウイルスDNAの検出を意味する。DNA血症を検出するためにある技術、特にPCR、ハイブリッド捕捉及び分枝鎖DNAの分析に基づく技術が利用できる。試験されるウイルス由来のDNAが当該生体試料中で検出された場合、DNAemiaは陽性である。逆に、当該ウイルスDNAが当該生体試料中で検出されない場合、DNA血症は陰性である。「ウイルス血症事象」は、所与のウイルスが試験中に少なくとも1回検出されたこと、特に、所与のウイルスについての陽性DNAemiaが試験中に患者からの少なくとも1つの生体試料中で検出されたことを意味する。
この好ましい実施形態では、免疫抑制治療を受けていない患者は、当該患者からの生体試料、例えば血液又は血漿及び/若しくは血清等のその派生物中のTTVウイルス量が生体試料1ml当たり7000コピー超、好ましくは生体試料1ml当たり10000コピー超であり、ヘルペスウイルスの存在も検出される場合、合併症のリスクが増大している。
【0045】
この好ましい実施形態では、本方法は、以下の:
a)前記患者の生体試料中の少なくとも1つのTTVのウイルス量を測定すること、
b)前記生体試料について決定された前記ウイルス量を10000コピー/mlの所定の参照値と比較すること、
c)好ましくはDNAemiaを測定することによって、少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在を検出すること、かつ、
d)前記生体試料について決定された前記ウイルス量が前記所定の参照値よりも大きい場合、及び少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在する場合、合併症のリスクの増大の存在を確立すること、
を実行することを含んでよい。
【0046】
他の好ましい実施形態では、本明細書は、医療施設に入院し、免疫抑制治療を受けていない患者の合併症のリスクをインビトロ又はエクスビボで評価するための方法であって、前記患者の生体試料中の少なくとも1つのトルクテノウイルス(TTV)のウイルス量を測定すること、かつ、さらに、前記患者の生体試料中の少なくとも1つのヘルペスウイルスの存在を検出すること、を含む方法に関する。
本発明の場合、「少なくとも1つのヘルペスウイルス(HPV)のウイルス量」又は「少なくとも1つのHPVの量」は、少なくとも1つのHPV株のウイルス量、すなわち、生体試料中に存在する少なくとも1つのHPV株のウイルス粒子の数に対応する。
患者における少なくとも1つのHPVの量は、当該患者における少なくとも1つのHPV株のウイルス量を意味する。HPV量は、この生体試料中の少なくとも1つのHPV株の成分、例えば核酸又はタンパク質の量を測定することによって決定することができる。好ましくは、HPV量は、生体試料中に存在する所与のHPV株の核酸配列の量に対応する。
したがって、本発明によれば、当該生体試料中の測定される異なる特異的HPV株間を区別することができる。好ましくは、HPV量の決定は、活性及び/又は不活性ウイルスコピーの量の決定を含む。それは、循環する、組み込まれた、又は潜伏しているウイルスコピーの量を決定することにある。
生体試料中のHPV核酸のウイルス量を検出及び/又は測定するための方法は、TTVについて以前に記載されたものと同じであり、とりわけ、増幅、好ましくはPCRによる増幅、より好ましくはリアルタイムPCRによる増幅、配列決定、標識プローブとのハイブリダイゼーション、及び当業者に公知の他のすべての方法を含む。
【0047】
ヘルペスウイルス(Herpesviridae又はHPV)は、当業者に周知である。それらは、鳥類、魚類、爬虫類、両生類、及びヒトを含む哺乳動物を含む様々な動物種に影響を及ぼすDNAウイルスのファミリーである。HPVファミリーの全てのメンバーは、共通の構造を共有する:カプシドという正二十面体のタンパク質ケージ内に包まれた100~200個の遺伝子をコードする比較的大きな、一分節の、二本鎖の、直鎖状のDNAであり、これは、それ自体、ウイルスタンパク質及びウイルスmRNAの両方を含む外被というタンパク質層、並びにエンベロープという脂質二重層膜に包まれている。全てのHPVは核複製性であり、ウイルスDNAは感染細胞の核内でmRNAに転写され、そこではウイルスDNAは無期限に潜伏形態のままであり得る。
9つのタイプのHPVが、主にヒトに感染することが知られている。少なくとも以下の5つ:単純ヘルペス1及び2(HSV-1及びHSV-2、HHV-1及びHHV-2としても知られる)(これらはともに、口唇及び陰部ヘルペスを惹起しうる);水痘及び帯状疱疹の原因である水痘帯状疱疹(又はHHV-3);単核球症及びある癌を含むある疾患に関与するエプスタイン・バール・ウイルス(EBV又はHHV-4);並びにヒトサイトメガロウィルス(HCMV又はCMV又はHHV-5)はヒトにおいて極めて広範に存在する。
成人の90%以上がこれらのウイルスの少なくとも1つに感染しており、感染したほとんどすべてのヒトには潜伏性のウイルスが残存する。あまり一般的でないヒトヘルペスウイルスは、ヒトヘルペスウイルス6A及び6B(HHV-6A及びHHV-6B、ともにHHV-6という)、ヒトヘルペスウイルス-7(HHV-7)、及びカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8としても知られる)である。
本明細書の「ヘルペスウイルス」又は「HPV」又は「HHV」(ヒトヘルペスウイルス)は、ヘルペスウイルス科のウイルスを意味する。本明細書の「HPVゲノム」は、HSV-1、HSV-2、HHV-3、EBV、CMV、HHV-6、HHV-7及びKSHV型のもの、より具体的にはCMV、EBV、HHV6及びHSV-1型のものを含む、すべてのヘルペスウイルス科のゲノムをいう。
好ましい実施形態では、当該少なくとも1つのヘルペスウイルスは、CMV、EBV、HHV6及びHSV-1からなる群から選択される。好ましくは、ヘルペスウイルスはEBVである。例として、ここでは、CMV AD169、EBV B-95、HSV1 95及びHHV6 Z29型のヘルペスウイルス株のゲノムを参照する。非限定的な例として、CMV AD169のゲノムは、その配列がGenbank受託番号X17403.1で参照されるものであり得る。同様に、EBV B-95のゲノムは、その配列がGenbank受託番号V01555.2で参照されるものであり得る。の例示的ゲノム。HHV6 Z29は、配列がGenbank受託番号X83413.2で参照されるものであり得る。
【0048】
優先的には、リアルタイム定量的PCRを用いて、少なくとも1つのHPVの存在が決定され、及び/又はHPVウイルス量が測定される。HPVを検出及び定量するための多数の方法が、当該技術分野において記載されている(例えば、Walton et al.,Plos ONE 9(6):e98819、2014)。特に、以下の文献に記載されている方法を参照する。より具体的には、非特許文献4の表S1に記載されており、ここでは
図6及び
図7に再現されている。この方法は、その単純性及び頑健性のために特に有利であり;それはまた、いかなるタイプのPCRプラットフォームを用いて実行され得る。これは、これらのヘルペスウイルス各々に特異的な遺伝子、すなわちCMVの構造タンパク質をコードするppUL83、EBVのチミジンキナーゼをコードする遺伝子BXLF1、HSV-1の糖タンパク質をコードする遺伝子US7、及びHHV6のカプシドタンパク質をコードする遺伝子U57の増幅に基づく。この方法を実施するために、R-GENE(登録商標)診断キット(CMV R-GENE(登録商標)参照番号69-003B、EBV R-GENE(登録商標)参照番号69-002B、HSV1 HSV2 VZV R-GENE(登録商標)参照番号69-004B及びHVV6 R-GENE(登録商標)参照番号69-100B、bioMerieux、フランス)を用いることが特に有利である。
好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法は、測定されたHPV核酸の量を標準化するさらなる工程を含む。この目的のために、当業者は、TTVレベルの標準化に関して上述した方法及び実施形態を参照することができる。これらの方法は、HPV核酸の量の標準化に容易に適合させることができる。
HPV核酸の量を測定することで少なくとも1つのHPVの量が決定された場合(後者は場合によっては標準化されている)、それを参照HPV量と比較することが有利であり得る。この目的のために、当業者は、TTV参照レベルとの比較に関して、上記の方法及び実施形態を参照することができる。これらの方法は、参照HPVレベルとの比較に容易に適合させることができる。
【0049】
合併症のリスクを有する疑いのある患者を治療する方法
したがって、合併症、特に感染症のリスクに対する患者の感受性は、本明細書に記載の方法を用いて決定することができ、これにより、患者の必要性に特異的な治療を開発し、適合させることができる。
したがって、有利には、上記方法は、そのすべての実施形態では、特に合併症のリスク、特に医療関連感染の発生のリスクを低減するために、医療を管理することを含んでよい。
医療関連感染の発生のリスクが高いと同定された患者は、当該医療関連感染の発生のリスクを低減することを目的として、例えば、敗血症、敗血症性ショックを発症するリスク、又は死亡のリスクを低減するために、適当な管理医療を受けていてよい。
したがって、他の態様では、本発明はまた、合併症のリスクを有する疑いのある患者を治療するための方法であって
―上記の実施形態のいずれか1つを実施することによって合併症のリスクがある患者を特定すること、かつ、
―悪化のリスクを低減するために、先行することにおいて識別された当該患者のヘルスケアの管理を適合させること、を含む。
ヘルスケアを管理する例として、患者に適合させた免疫調節治療、又は予防的抗生物質治療を挙げることができ、両治療の併用、及び/又はバイオマーカーの発現の測定後の日に、ヘルスケア関連感染の発生のリスクを低減するために、例えば敗血症、敗血症性ショックを発症するリスク又はさらには死亡のリスクを低減するために、高依存性ユニット又は蘇生部門を指向してよい。好ましくは、免疫調節処置は、個体が免疫抑制状態であると決定された場合、免疫刺激治療であり、又は個体が炎症状態であると決定された場合は、抗炎症治療である。
選択され得る免疫刺激性治療中、例として、インターロイキン群、特にIL-7、IL-15又はIL-3、増殖因子、特にGM-CSF、インターフェロン、特にIFN-γが言及され得る。g抗体、例えば、抗PD 1抗体、抗PDL 1抗体、抗LAG 3抗体、抗TIM 3抗体、抗IL-10抗体、又は抗CT LA 4抗体)、トランスフェリン及びアポトーシス阻害分子、FLT3L、チモシンα1、並びにアドレナリン作動性アンタゴニストが挙げられる。
抗炎症治療中、グルココルチコイド群、細胞増殖抑制剤、イムノフィリン及びサイトカインに作用する分子、IL-1受容体を遮断する分子、並びに抗TNF治療を特に挙げることができる。肺炎を予防するための適当な予防的抗生物質治療の例は、特にAnnales Francaises d’Anesthesie et de Reanimation(30;2011;168-190)に記載される。換言すれば、患者に必要ない綿密なモニタリングがある部門にいるよりもむしろ、外来患者部門、例えば感染症部門に、医療関連感染の発生のリスクなしに患者を迅速に送ることができる。
本発明は、以下の実施例によってより正確に記載される。
【実施例】
【0050】
集中治療室に入院した患者におけるウイルス再活性化現象の根底にある生理病理をよりよく理解するために、REALISM臨床試験(NCT01931956)に関与する患者のコホートにおいて試験を行った。当該患者各々の、TTVアネロウイルス及びヘルペスウイルスCMV、EBV、HHV6、HSV-1の血中DNA血症を、集中治療に入ってから1ヶ月間にわたって測定した。予想された結果の目的は、これらの患者におけるウイルス再活性化現象に関連する一般的な合併症を同定すること、及び1つ以上のウイルスが特定の合併症の発生に関連し得るかどうかを同定できるようにすることであった。
【0051】
材料及び方法
試験集団
観察試験は、セプシス、重度のトラウマ、重度の火傷を示すか、又はエドゥアール・エリオ病院(Hospits Cials de Lyon,France)の麻酔及び集中医学部門において計画された手術を受けた重篤な病気の患者の予想されるコホートに対して実施された。包含期間は28ヶ月(2015年12月~2018年3月)であった。試験プロトコルは、施設倫理委員会(Comite de Protection des Personnes Sud-Est II)によって番号2015-42-2の下で承認された。この臨床試験はclinicaltrials.gov(NCT02638779)にも登録された。組み入れ時に、書面によるインフォームドコンセントを各健常ボランティア及び各患者から得た。患者が直接同意できなかった場合、患者の法定代理人からインフォームドコンセントを得て、可能な限り早い機会に患者に再確認した。
包含基準は以下の通りであった。・18歳以上の患者、2016年のSEPSIS-3コンセンサス定義によって定義される敗血症の臨床診断(Singer et al.,2016)、損傷重篤度スコア(ISS)>15の重度の外傷、30%を超える総火傷表面積の重度の火傷、又は、食道胃切除術、ブリックヤー膀胱切除術、頭部膵十二指腸切除術及び/又は開腹術による腹部大動脈瘤手術等の大手術を受けなければならない手術患者が挙げられる。
除外基準は以下の通りである。・患者の免疫状態に影響を及ぼし得る既存の障害又は処置の存在;特に、免疫抑制治療下の患者、妊娠患者、施設収容患者及びインフォームドコンセントを得ることができなかった患者を除外した。
並行して、18歳から82歳までの175人の健康なボランティア(81人の男性及び94人の女性)のコホートを前向きに募集した。免疫パラメータに対する年齢及び性他の影響の可能性を考慮するために、健康なボランティアの分布は、2016年のフランスの人口の年齢及び性別に関する人口統計データに基づいた。
【0052】
サンプリング及びデータ収集
各患者について、試料及び臨床データを、入院後の最初の週の間に3回収集した:(1)1日目又は2日目(D1~2)、(2)D3又は4日目(D3~4)及び(3)D5、D6又はD7(D5~7)、次いで、入院後の月の間にさらに2回、(4)D14及び(5)D28。健康なボランティアについては、試験来院中に試料を採取し、臨床データを記録した。データ収集は、他の箇所(Venet et al.,2021)。
患者の人口統計データ、併存疾患、診断、重症度及び臨床結果を、手動で前向きに記録した。長期的なモニタリングを30日間実施した。各場合において、各患者及び各健康なボランティアから採取した全末梢血を、試料を採取した後3時間以内に処理した。
血液は、血漿ウイルスDNA血症、フローサイトメトリーによる免疫表現型決定及び血漿サイトカインレベルの測定のためにEDTAチューブに、機能試験(増殖、サイトカイン産生実験)のために2つのヘパリンチューブに、そして最後に、EvaGreen又はTaqManプローブ方法論を用いるリアルタイムPCRによる全血中のバイオマーカーmRNA濃度の測定のために血液RNA PAXgeneチューブ(PreAnalytix,Hilden,Germany)に収集した。
PAXgene試料を、試料採取後に周囲温度で少なくとも2時間安定化させ、次いで、製造業者の推奨に従って-80℃で凍結させた。
【0053】
合併症の定義
この試験の文脈において評価された主な合併症は、28日目(D28)の二次感染(医療関連感染-HAI)及びD28の死亡率であった。評価した他の合併症には、集中治療室(ICU)での滞在期間及び入院期間の合計、侵襲的医療装置(気管挿管、留置尿道カテーテル及び中心静脈ライン)の毎日の使用が含まれた。感染に関して収集された情報は、試験において患者の募集又はケアに関与していない3人の臨床医からなる独立した意思決定委員会によって調べられた。
この委員会による二次感染(医療関連感染、HAI)の診断の確認は、European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases及びInfectious DiseaseS Society of Americaのガイドラインに基づく。二次感染の最初のエピソードのみを分析に考慮した。
【0054】
ウイルス性DNAemiaの決定
TTV及び4つのヘルペスウイルスのウイルスDNA血症を決定するための半自動プロセスは、試料の処理及びリアルタイム定量的PCRのための標準化された手順を統合しており、以前に詳細に記載されている(非特許文献4)。
簡潔には、常磁性シリカ粒子から構成されるMaxwell(登録商標)HT Viral TNA chemistry kit(Promega)及びFreedom EVO(登録商標)liquid handling robot(TECAN)を用いて、製造業者の指示に従って、血漿試料からウイルスDNAを抽出した。PCR対照を抽出前に各血漿試料に添加した。半自動プロセスの検出限界(LOD)は、ウイルス標準を用いて検出の欠如(ブランク値)と区別することができる最小量であると予め決定された(非特許文献4)。
TTVの検出限界は、所定量のTTVを含む血漿試料を用いて決定した。まず、対照血漿試料を10-1から10-4まで段階希釈し、各希釈試料を独立して3回抽出し、次いで、定量的PCRを用いて増幅して、およその検出限界を決定する。第2に、陽性シグナルを与える最大希釈を再び1/2及び1/4に希釈し、次いで、各希釈試料を独立して20回抽出し、増幅する。100%検出を有する最も希釈された陽性複製物を検出限界として用いる。
血漿1mlあたりのコピー数として表されるLODは、TTVについて167、CMVについて100、EBVについて33、HHV6について166、及びHSV1について33である。ウイルスDNAを、CMV、EBV、HSV1、HHV6及びTTV(bioMerieux SA)のためのTaqManプローブを用いるR-GENE(登録商標)アッセイキットによって、StepOnePlus(商標)リアルタイムPCRシステム(ThermoFisher SCIENTIFIC)上でリアルタイムPCRを用いて増幅した。
プレートにランダムに分配された全ての核酸試料を、製造業者の指示に従って、定量標準、感度コントロール及びネガティブコントロールと同時に増幅した。
最後に、標準曲線を用いて、各試料のCt(「サイクル閾値」)値をPCR反応チューブ中のウイルスDNAのコピー/μlに変換し、次いで血漿試料中のウイルスDNAのコピー/mlに変換した。
【0055】
統計分析
ウイルス血症は、各ウイルスについてDNAemiaを測定することによって測定し、ウイルス血症事象、すなわち陽性DNAemiaは、所定の閾値より大きい(LODより大きい)マイクロリットル当たりのウイルスのコピー数によって特徴付けられる。患者が集中治療に入院した後の最初の週(1/2日目、3/4日目又は5/7日目)の間に患者からの試料の少なくとも1つについて陽性DNAemiaが検出された場合、陽性DNAemiaは早期であると考えられる。DNA血症はまた、D14及びD28に評価した。データは、数及び比率(定性変数)、並びに中央値及び25/75パーセンタイル(定量変数)の形態で提示される。
【0056】
ウイルス血症事象と臨床的合併症(上記(非特許文献4)、集中的なケアにおいて獲得された生存又は細菌の感染)との間の関連を、適当な場合には、カイ二乗検定又はフィッシャーの正確確率検定を用いて評価した(非特許文献4)。
DNA血症/ウイルス血症事象と定量的免疫マーカー(細胞、サイトカイン、mRNA)との間の二元的関連をウィルコクソン符号順位検定最後に、Rソフトウェア、バージョン3.4.4を用いて分析を実施し、5%の帰無仮説を不正確に棄却するアルファリスクとして統計的有意性を定義した(p<0.05は有意な関連を示す)。
【0057】
結果
コホートの説明
377人の重篤な病気の患者のREALISMコホートは、107症例の敗血症、137症例の重篤な外傷、24症例の重篤な火傷及び109症例の大手術から構成される。
定性的データ(DNAemia)よりもむしろ定量的データ(ウイルス量)の方が、(1)有意でないウイルス量、(2)免疫抑制の推定マーカーとしてのウイルス「再活性化」、及び(3)処置を必要とする実際のウイルス感染の存在を支持する高いウイルス量(<1%)をより良好に区別しうる(Textoris et al.,2017)。
高TTV DNAemia(ウイルス量が10000コピー/mlより大きい)である患者は、より重篤な疾患であり、重症度スコアがより高く、治療の必要性が高かった(
図3)。
TTVウイルス量の増加(p=0.025)は、集中治療におけるより長い滞在と有意に相関したが、TTVウイルス量の増加(p=0.048)及び減少(p=0.048)の両方、換言すれば、TTVウイルス量の変動は、最初の1ヶ月間に集中治療で獲得された医療関連感染の発生と有意に関連していた(
図2A及び2B)。
【0058】
さらに、驚くべきことに、HAIsの症例が、陽性ヘルペスDNA血症のみである患者よりも、TTV及び少なくとも1つのヘルペスウイルスについて陽性DNA血症である患者においてより一般的である傾向があることを見出した(
図2A及び2B)。
【0059】
入院の第1週及び第1月の間の集中治療室の患者におけるDNAemia
第1週
TTVは、コホートの患者の217人(58%)において検出され(陽性DNAemia)、すなわち、健常対照(51%)よりもわずかに多かった。TTVは、160人(42%)の患者において単独で検出され、患者においては、1人(n=48、13%)又は2人(n=6、2%)、又は3人以上(n=3、1%)のヘルペスウイルスと同時に検出された。
TTVと同時に検出された最も一般的なヘルペスウイルスはEBV(n=29、8%)であり、HHV6(n=18、5%)、HSV1(n=12、3%)及びCMV(n=12、3%)が続いた。
全体として、単一のウイルス(ヘルペスウイルス又はTTVのいずれであっても)について陽性のDNA血症である患者の数(n=189)は、少なくとも2つのウイルスの存在について陽性のDNA血症である患者の数(n=188)と同様であった。
【0060】
最初の月
TTVは、コホートの228人(60%)の患者において検出された。151人(40%)の患者がTTVのみの陽性DNA血症であったが、TTVは、1人(n=59、16%)、2人(n=11、3%)又は3人以上(n=7、2%)のヘルペスウイルスがある患者において同時に検出された(陽性DNA血症)。全てのヘルペスウイルスはTTVと同時に検出され、最も一般的な同時検出はEBV(n=36、10%)、次いでHSV1(n=28、7%)、CMV(n=23、6%)及びHHV6(n=19、5%)であった。全体として、コホートは、単一ウイルス感染(陽性DNAemia)の患者(n=187)を、随伴感染がある患者(n=190)と同数含んだ。
【0061】
TTVがある患者の比率は、健康なボランティアで観察された51%と比較して、敗血症、重度の外傷及び大手術を患っている患者では同様であり(56~64%)、火傷被害者ではわずかに低かった(46%)。
傾向として、TTV力価が高い患者の比率は、手術を受けた患者群でより大きいようであり、重症度基準は、高いTTVウイルス量(特に、7000コピー/ml超)と相関する(
図4)。
【0062】
DNA血症と臨床的合併症との関連
28日の観察期間の終期に、二次的な医療関連感染の少なくとも1つのエピソードの発生を考慮する。
入院の第1週での各ヘルペスウイルスの個々の検出は、最初の1ヶ月とは異なり、医療関連感染(HAI)のリスクと有意に関連しない。TTVについての陽性DNA血症の非存在下で、個々に考慮されるいかなるヘルペスウイルスについて、最初の1ヶ月間に少なくとも1回のウイルス血症エピソード(陽性DNA血症)があった患者では、HAIの比率の有意な増加が観察される。
さらに、TTV単独(ヘルペスウイルスの検出なし)についての陽性DNAemiaは、HAIの発生の減少と関連する(
図3)。
最初の1ヶ月でTTVウイルス量が安定している場合は、HAIの発生の減少と関連することも観察された(
図5)。
最初の1ヶ月でのコホートからの患者のウイルスDNA血症を考慮する場合、あるウイルス血症事象(2つ以上のヘルペスウイルスについて、又はTTV及び少なくとも1つのヘルペスウイルスについて陽性DNA血症)があった患者では、単一のウイルスの陽性DNA血症があった患者(22%)又は検出されたDNA血症がない患者(19%)よりも高いHAIの比率(44%)が観察される(カイ二乗検定、p<0.001)。
第1週での陽性ウイルスDNA血症の事象を考慮すると、あるウイルス血症事象があった患者は、単一ウイルスの陽性DNA血症があった患者(9%)又はいかなる検出されたDNA血症もない患者(9%)と同様のHAI率(11%)であった(カイ二乗検定、P=0.8)。
驚くべきことに、結果は、早期に、患者の入院後の最初の1週間という早期において、高いTTVウイルス量(特に、試料1ml当たりのコピー数が10 000超)及びヘルペスウイルスについての陽性DNA血症の同時検出が、医療関連感染の発生のリスクと有意に関連することを示す(
図3)。
【0063】
要約すると、ウイルス血症、疾患群及び入院基準に関して、(i)変動する(増加又は減少する)患者の比率は、以下のように定義される。経時的なTTVウイルス量は、敗血症に罹患している患者では他の群よりも高い傾向があり、(ii)ヘルペスについての陽性DNA血症並びに高いTTVウイルス量は、入院時の患者の状態の重症度と関連するようである。
HAIに関して、(i)好ましくは入院の第1週という早期における、高TTVウイルス量及びヘルペスについての陽性DNA血症の同時検出は、HAIのより頻繁な発生のリスクと相関し、(ii)安定なTTVウイルス量は、患者におけるHAIの発生のリスクとも相関するTTVウイルス量の変動とは異なり、HAIの比較的低い発生と関連する。
【0064】
考察
結果は、有意でないTTV量を高いTTV量から区別することができることを実証する。したがって、集中治療中の患者における生理病理学的特徴に関連するTTV発現閾値を同定したことは、特に本発明者らの功績である。
要するに、上記で示された結果は、(i)集中治療への入院の第1週という早期における、ヘルペスウイルス再活性化に関連する高いTTV量の患者における検出が、HAIのリスクの増加に関連していたこと、及び(ii)早期及び高いTTVウイルス血症が、免疫系の障害に関連していたことを実証した。
【0065】
経時的なウイルス血症の変化は、TTVについてはあまり認識できず(最初の週の58%から1ヶ月間で60%)、TTVについての陽性ウイルス血症は、TTV及びヘルペスウイルスの同時検出よりもTTV単独についてより頻繁であった(最初の週の間に測定された42%対15%、最初の1ヶ月間に測定された40%対20%)。
TTVの有病率は、本明細書では状態の個体のコホートの男性においてより高い(Focosi et al.,2020)及び移植レシピエント(Bal et al.,2018)、この試験の集団では、性他の偏りは観察されなかったが、TTVウイルス量が10000コピー/mlを超えるサブグループでは男性が優勢であった。
TTV及びEBVは各々、最初の週及び最初の月の間に8%~10%、同時に最も頻繁に検出されたウイルスであった。
【0066】
同期間中、TTV量の変動のみが、HAI発生のリスクの増加と有意に関連している。実際、TTVの存在だけでは、高量であっても、HAIのリスクの増加を判定するには不十分である。
それにもかかわらず、入院後の最初の1ヶ月の間、TTVの陽性のDNA血症がある患者を含む、複数のウイルス血症事象がある患者には、単一ウイルスの血症事象があったか、又はウイルス血症事象がなかった患者(各々22%及び19%)よりも高い頻度のHAI(44%)がある。したがって、全く驚くべきことに、かつ予想外に、入院第1週目のにおける高いTTV量及びヘルペスウイルスの同時検出は、最初の1ヶ月の間のHAI事象の発生と有意に関連する。
結論として、結果は、集中治療室に入院した患者において、HPVと組み合わされた、又は組み合わされていないウイルス再活性化、特にTTVと、医療関連感染を発症するリスクとの間に相関関係が存在することを実証する。
【0067】
参考文献
【0068】
【配列表】
【国際調査報告】