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特表2024-528668ポリアミック酸組成物及びそれを含むポリイミド被覆物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ポリアミック酸組成物及びそれを含むポリイミド被覆物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240723BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08G73/10
H01B7/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503457
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 KR2022010634
(87)【国際公開番号】W WO2023003362
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094985
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ヒョン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ミン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【テーマコード(参考)】
4J043
5G309
【Fターム(参考)】
4J043PA04
4J043PA15
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA42
4J043SA47
4J043SA52
4J043SA54
4J043SA72
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA32
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA142
4J043UA151
4J043UA152
4J043UA262
4J043UA672
4J043UB011
4J043UB021
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB132
4J043UB151
4J043UB152
4J043UB161
4J043UB281
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA031
4J043VA032
4J043VA041
4J043VA062
4J043XA16
4J043YB08
4J043YB40
4J043ZA02
4J043ZA33
4J043ZA34
4J043ZA43
4J043ZA46
4J043ZB48
5G309MA02
(57)【要約】
本発明は、導体被覆用ポリアミック酸組成物であって、硬化物に対する絶縁破壊及び部分放電を防止するとともに、導体と被覆物間の密着性及び被覆物の柔軟性が向上した導体被覆用ポリアミック酸組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアンヒドリドモノマー成分とジアミンモノマー成分を重合単位として有するポリアミック酸を含み、
前記ジアミンモノマー成分は、下記化1の化合物を含む、導体被覆用ポリアミック酸組成物:
【化1】
前記化1において、A及びAは、それぞれ独立してエーテル基、エステル基またはアミド基であり、Xは、単結合、アルキレン基、アルキリデン基、アリール基または下記化2を表し、
【化2】
前記化2において、Qは、酸素、カルボニル基、アルキルカルボニル基、単結合、アルキレン基、アルキリデン基またはスルホン基である。
【請求項2】
化1の化合物は、ジアミンモノマー成分のうち99モル%以下の割合で含まれる、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項3】
ジアミンモノマー成分が、下記化3の化合物をさらに含むポリアミック酸を含む、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物:
【化3】
前記化3において、Rは単結合、エーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキレン基、アルキリデン基またはアリール基を表す。
【請求項4】
化3の化合物は、ジアミンモノマー成分のうち5モル%以上の割合で含まれる、請求項3に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項5】
化1の化合物は、化3の化合物100重量部に対して5~150重量部の範囲内である、請求項3に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項6】
ジアンヒドリドモノマー成分は、芳香族環が1個または2個以上である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項7】
シラン化合物をさらに含む、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項8】
シラン化合物は、ポリアミック酸100重量部に対して0.01~1重量部の範囲内で含まれる、請求項7に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項9】
固形分が10~50重量%の範囲内である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項10】
有機溶媒である第1の溶媒をさらに含む、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項11】
硬化後の10GHzの周波数帯域における比誘電率(Dk)が3.6未満である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項12】
硬化後に測定される伸びが70%以上である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項13】
硬化後の銅に対する接着力が0.65N/cm以上である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項14】
硬化後のASTM2275-01標準規格に従って測定される部分放電開始電圧(PDIV)が800Vp以上である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項15】
硬化後のASTMD149標準規格に従って測定される絶縁破壊電圧(BDV)が230kV/mm以上である、請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の導体被覆用ポリアミック酸組成物の硬化物を含む、ポリイミド被覆物。
【請求項17】
請求項16に記載のポリイミド被覆物を含む、電線。
【請求項18】
請求項17に記載の電線を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸組成物、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
導体を被覆する絶縁層(被覆)には優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性及び機械的強度などが求められている。
【0003】
また、適用電圧の高い電気機器、例えば、高電圧で使用されるモータなどでは、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その被覆表面で部分放電(コロナ放電)が発生しやすい。
【0004】
コロナ放電の発生により局所的な温度上昇やオゾンまたはイオンの発生が引き起こされ、その結果、絶縁電線の被覆に劣化が生じることにより早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなることがある。
【0005】
高電圧で使用される絶縁電線には前記の理由によりコロナ放電開始電圧の向上が求められており、そのためには絶縁層の誘電率を下げることが有効であることが知られている。
【0006】
前記絶縁層を形成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリエステルイミド樹脂などがある。
【0007】
一般に、ポリイミド樹脂とは、芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化して製造される高耐熱樹脂を指す。
【0008】
ポリイミド樹脂は耐熱性に優れ、かつ誘電率も比較的低い材料として導体の被覆用物質として使用するのに優れた性質を有している。
【0009】
しかし、一方でポリイミド樹脂は剛直な構造をしているため、引張破断伸び及び柔軟性が低く、導体用被覆物として使用されるには不利な性質を有しているのも事実である。
【0010】
例えば、モータに使用されるコイルでは、占積率を高めるために絶縁電線を巻線してコイルを形成した後にコイルをスロット内に挿入するなど、絶縁電線を大きく変形させる加工をする場合がある。
【0011】
このとき、絶縁層の柔軟性が低いと加工時に被覆物が損傷するか、または被覆物に割れが発生するおそれがある。
【0012】
柔軟性を向上させるために、柔軟な構造を有するジアミン類及びジアンヒドリドを反応させてポリイミド樹脂を製造する場合、柔軟な構造を有するジアミン類またはジアンヒドリドを含まないポリイミド樹脂に比べて耐熱性が低下するという問題がある。
【0013】
したがって、耐コロナ性は向上しつつも、導体と被覆物間の密着性、被覆物の柔軟性が維持される技術に対する開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記のような従来技術の問題点と技術的課題を解決することを目的とする。本出願は、絶縁破壊及び部分放電を防止しながらも、導体と被覆物間の密着性及び被覆物の柔軟性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願は、ポリアミック酸組成物に関する。前記ポリアミック酸組成物は、導体被覆用に適用されてもよい。前記導体被覆用ポリアミック酸組成物は、ジアンヒドリドモノマー成分とジアミンモノマー成分を重合単位として有するポリアミック酸を含んでもよい。また、前記ジアミンモノマー成分は、下記化1の化合物を含んでもよい。本出願は、特定構造のジアミンモノマーを含むことにより、絶縁破壊及び部分放電を防止しながらも、被覆対象に対する密着性と柔軟性を同時に具現しうる。
【0016】
【化1】
【0017】
前記化1において、A及びAは、それぞれ独立してエーテル基、エステル基またはアミド基であってもよい。前記A及びAは、芳香族環の水素のいずれかが脱離して前記芳香族環に連結されてもよい。前記AまたはAは、立体構造を考慮してアミン基を基準にメタまたはパラ位置に連結されてもよい。前記Xは、単結合、アルキレン基、アルキリデン基、アリール基または下記化2を表すことができる。
【0018】
【化2】
【0019】
前記化2において、Qは、酸素、カルボニル基、アルキルカルボニル基、単結合、アルキレン基、アルキリデン基またはスルホン基であってもよい。前記化2において芳香族環に連結された「*」は、前記芳香族環の水素のいずれかが脱離し、前記化2の構造を前記化1のAまたはAと連結するリンカーを表示する。前記リンカーは、立体構造を考慮すると、Qを基準にメタまたはパラ位置に連結されてもよい。前記Qは、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を置換基として有してもよい。または前記Qは、フッ素置換アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を置換基として有してもよい。一例において、Qがアルキレン基の場合、1個または2個のアルキル基、または2個以上、5個以下のアルキル基を有してもよい。
【0020】
本明細書において用語の「単結合」とは、任意の原子なしに両方の原子をつなぐ結合を意味する。例えば、前記化1において、Xが単結合の場合、A及びAが互いに直接連結されてもよい。
【0021】
本明細書において用語の「アルキル基」とは、特に断りのない限り、炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。前記アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、極性官能基などが挙げられる。
【0022】
本明細書において用語の「アルケニル基」とは、特に断りのない限り、炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、
または炭素数1~4のアルケニル基を意味する。前記アルケニル基は、直鎖状、分岐状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、極性官能基などが挙げられる。
【0023】
本明細書において用語の「アルキニル基」とは、特に断りのない限り、炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキニル基を意味する。前記アルキニル基は、直鎖状、分岐状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、極性官能基などが挙げられる。
【0024】
本明細書において用語の「アルキレン基」とは、特に断りのない限り、炭素数2~30、炭素数、2~25、炭素数、2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~10または炭素数2~8のアルキレン基を意味する。前記アルキレン基は、直鎖状、分岐状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、極性官能基などが挙げられる。
【0025】
本明細書において用語の「アルキリデン基」とは、特に断りのない限り、炭素数2~30、炭素数2~25、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~10または炭素数2~8のアルキリデン基を意味する。前記アルキリデン基は、直鎖状、分岐状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、例えば、極性官能基などが挙げられる。
【0026】
一例において、前記化1の化合物は、ジアミンモノマー成分のうち99モル%以下の割合で含まれてもよい。具体例において、前記化1の化合物は、組成物内の全ジアミンモノマー成分のうち95モル%以下、90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、55モル%以下、50モル%以下、45モル%以下、40モル%以下、38モル%以下、35モル%以下、33モル%以下、31モル%以下、25モル%以下、20モル%以下または14モル%以下で含まれてもよく、下限は、例えば、5モル%以上、8モル%以上、9モル%以上、10モル%以上、12モル%以上、15モル%以上、18モル%以上、20モル%以上、23モル%以上、25モル%以上、28モル%以上、33モル%以上、38モル%以上、43モル%以上、48モル%以上、53モル%以上、58モル%以上、63モル%以上または68モル%以上であってもよい。本出願は、前記化1の構造を有する化合物の含量範囲を調節することにより、重合後のポリイミド樹脂の耐熱性、電気的特性、柔軟性及び被着剤に対する密着性を優秀に具現する。
【0027】
本出願の具体例において、前記ジアミンモノマー成分は、下記化3の化合物をさらに含んでもよい。
【0028】
【化3】
【0029】
前記化3において、Rは、単結合、エーテル基、エステル基、アミド基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキレン基、アルキリデン基またはアリール基を示す。前記化3の構造は、前述した化1の構造の化合物を除いた構造を有する。
【0030】
前記化3の化合物は、ジアミンモノマー成分のうち5モル%以上の割合で含まれてもよい。具体例において、前記化3の化合物は、組成物内の全ジアミンモノマー成分のうち10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、63モル%以上、65モル%以上、68モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上または88モル%以上含まれてもよく、上限は、例えば、95モル%以下、93モル%以下、91モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、78モル%以下、75モル%以下、73モル%以下、71モル%以下、68モル%以下、63モル%以下、58モル%以下、53モル%以下、48モル%以下、43モル%以下、38モル%以下、33モル%以下または28モル%以下であってもよい。また、化3の化合物100重量部を基準とするとき、前記化1の化合物は、前記化3の化合物100重量部に対して5~150重量部の範囲内であってもよく、前記範囲において下限は7重量部以上、9重量部以上、10重量部以上、11重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、33重量部以上、35重量部以上、38重量部以上、40重量部以上、42重量部以上、45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上、75重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、90重量部以上、95重量部以上、100重量部以上または105重量部以上であってもよく、上限は、例えば、145重量部以下、140重量部以下、135重量部以下、130重量部以下、125重量部以下、120重量部以下、115重量部以下、110重量部以下、108重量部以下、103重量部以下、98重量部以下、93重量部以下、88重量部以下、83重量部以下、78重量部以下、73重量部以下、68重量部以下、63重量部以下、58重量部以下、53重量部以下、50重量部以下、48重量部以下、45重量部以下、43重量部以下、40重量部以下、37重量部以下、34重量部以下、31重量部以下、28重量部以下、23重量部以下、18重量部以下または13重量部以下であってもよい。本出願によるポリアミック酸樹脂は、2種類以上のジアミンを使用するが、各ジアミンの含量比率を調節することにより、耐コロナ性を付与するとともに、導体と被覆物間の密着性及び被覆物の柔軟性を向上させることができる。
【0031】
本出願によるジアミンモノマーは、例えば、芳香族ジアミンとして、以下のように分類して例を挙げることができる。
【0032】
1)1,4-ジアミノベンゼン(またはパラフェニレンジアミン,PDA)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、または3,5-ジアミノ安息香酸などのように、構造上1つのベンゼン核を有するジアミンであって、相対的に剛直な構造のジアミン、
2)4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン(またはo-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(またはm-トリジン)、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、(またはオキシジアニリン、ODA)、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロペン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、または4,4’-(1,3-プロパンジイル)ジオキシジアニリン(PDDA)などのように、構造上2つのベンゼン核を有するジアミン、
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(3-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、または[3-(4-アミノベンゾイル)オキシフェニル]4-アミノベンゾアート(p-BABB)などのように、構造上3つのベンゼン核を有するジアミン、
3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロペン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロペン、または2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上4つのベンゼン核を有するジアミン。
【0033】
好ましくは、前記化1の化合物は、4,4’-(1,3-プロパンジイル)ジオキシジアニリン(PDDA)、または[3-(4-アミノベンゾイル)オキシフェニル]4-アミノベンゾアート(p-BABB)であってもよく、化3の化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(またはオキシジアニリン,ODA)であってもよい。
【0034】
一方、本出願によるポリアミック樹脂に含まれるジアンヒドリドモノマーは、芳香族テトラカルボン酸ジアンヒドリドであってもよい。前記ジアンヒドリドモノマー成分は、芳香族環が1個または2個以上でもよい。芳香族環の個数の上限は、例えば、5個であってもよい。
【0035】
前記芳香族テトラカルボン酸ジアンヒドリドは、ピロメリティックジアンヒドリド(またはPMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはBPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(a-BPDA)、オキシジフタリックジアンヒドリド(またはODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはDSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンヒドリド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(またはBTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンヒドリド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンヒドリド、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンヒドリド)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンヒドリド)、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸ジアンヒドリド、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸ジアンヒドリド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンヒドリド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンヒドリド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンヒドリド、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンジアンヒドリド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、または4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンヒドリドなどが挙げられる。
【0036】
好ましくは、前記芳香族テトラカルボン酸ジアンヒドリドは、ピロメリティックジアンヒドリド(またはPMDA)であってもよい。
【0037】
本出願の具体例において、導体被覆用ポリアミック酸組成物は、シラン化合物をさらに含んでもよい。前記シラン化合物は、例えば、エポキシ系、アミノ系及びチオール系化合物からなる群から選ばれる1種以上であってもよく、2種以上混合したものであってもよい。詳細には、前記エポキシ系化合物は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glycidoxypropyl trimethoxysilane:GPTMS)を含んでもよく、前記アミノ系化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン(3-Aminopropyl)trimethoxy-silane:APTMS)を含んでもよく、前記チオール系化合物は、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(mercapto-propyl-trimethoxysilane:MPTMS)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。また、前記シラン化合物は、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはテトラエトキシシラン(TEOS)で例示されるアルコキシシラン化合物を含んでもよい。
【0038】
好ましくは、前記シラン化合物は、アミノ系シラン化合物であってもよい。
【0039】
前記シラン化合物は、ポリアミック酸100重量部に対して0.01~1重量部の範囲内で含まれてもよい。具体例において、前記シラン化合物の含量比率は、ポリアミック酸100重量部に対して、0.03重量部以上、0.05重量部以上、0.08重量部以上、0.1重量部以上、0.15重量部以上または0.18重量部以上含まれてもよく、上限は、例えば、0.8重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、0.23重量部以下、または0.15重量部以下であってもよい。本出願は、前記シラン化合物を含むことにより、前述した特定の構造を有するポリアミック樹脂とともに電気的特性を維持しながらも、被着剤に対する密着性を向上させる。
【0040】
本出願によるポリアミック酸組成物は、固形分が10~50重量%の範囲内であってもよい。前記固形分含量は、13重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、または28重量%以上であってもよく、上限は、例えば、48重量%以下、45重量%以下、43重量%以下、40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、33重量%以下または30重量%以下であってもよい。本出願は、前記範囲内で所望の物性と粘度を具現しうる。
【0041】
本出願は、前記ポリアミック酸組成物が有機溶媒である第1の溶媒を含んでもよい。
【0042】
前記有機溶媒は、ポリアミック酸が溶解され得る有機溶媒であれば特に限定されないが、一例として非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。
【0043】
前記非プロトン性極性溶媒は、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)及びジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0044】
一具体例において、前記ジアンヒドリドモノマーは、重合単位に含まれるモノマーの他に重合されていない開環された構造を有するモノマーを含んでもよい。すなわち、前記ジアンヒドリドモノマーは、一部が重合単位に含まれていてもよく、一部は重合単位に含まれなくてもよく、前記重合単位に含まれないジアンヒドリドモノマーは、本出願による有機溶媒により開環された構造を有してもよい。本出願によるポリアミック酸組成物は、前記ジアンヒドリドモノマーが重合していない状態で、2つ以上のカルボン酸を有する芳香族カルボン酸の形態で存在してもよく、前記芳香族カルボン酸が硬化前のモノマーとして存在して全ポリアミック酸組成物の粘度を下げ、工程性を向上させることができる。前記2つ以上のカルボン酸を有する芳香族カルボン酸は、硬化後に主鎖にジアンヒドリドモノマーで重合されることにより、全高分子鎖の長さを増加させ、このような高分子は被覆物に適用されて優れた耐熱性、寸法安定性及び機械的な物性を具現しうる。
【0045】
具体的には、前記ポリアミック酸組成物からポリイミドにイミド化するための熱処理時、2つ以上のカルボン酸を有する芳香族カルボン酸は、閉環脱水反応によりジアンヒドリドモノマーとなることで、ポリアミック酸鎖またはポリイミド鎖の末端アミン基と反応して高分子鎖の長さが増加し、これにより製造されるポリイミドフィルムの寸法安定性及び高温での熱安定性を改善でき、常温での機械的物性を向上させることができる。
【0046】
一例において、前述したように、本出願のポリアミック酸組成物は、第2の溶媒を含んでもよく、前記第2の溶媒は、全ポリアミック酸組成物内において、0.01~10重量%の範囲内で含まれてもよい。前記第2の溶媒の含量の下限は、例えば、0.015重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.08重量%、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.8重量%、1重量%または2重量%以上であってもよく、上限は、例えば、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5.5重量%、5.3重量%、5重量%、4.8重量%、4.5重量%、4重量%、3重量%、2.5重量%、1.5重量%、1.2重量%、0.95重量%または0.4重量%以下であってもよい。また、前記第1の溶媒は、全ポリアミック酸組成物内において60~95重量%の範囲内で含まれてもよい。前記第1の溶媒の含量の下限は、例えば、65重量%、68重量%、70重量%、73重量%、75重量%、78重量%または80重量%以上であってもよく、上限は、例えば、93重量%、90重量%、88重量%、85重量%、83重量%、81重量%または79重量%以下であってもよい。本出願によるポリアミック酸組成物は、ジアンヒドリドモノマー成分とジアミンモノマー成分を含むが、前記2つのモノマーは、互いに重合単位を構成し、ただし、前記ジアンヒドリドモノマーの一部は、前記有機溶媒により開環することにより、前記重合反応に関与できない。重合せずに開環されたジアンヒドリドモノマーは希釈モノマーとして作用し、全ポリアミック酸組成物の粘度を相対的に低く調節しうる。前記開環された構造を有するジアンヒドリドモノマーは、イミド化反応時に反応に関与して所望の被覆物として耐熱性と柔軟性、低誘電特性と密着性を具現するポリイミドを具現しうる。
【0047】
一例において、前記第2の溶媒は、前記ジアンヒドリドモノマーに対して1.5g/100g未満の溶解度を有してもよい。すなわち、前記第2の溶媒は、前記ジアンヒドリドモノマーに対して1.5g/100g未満の溶解度を有してもよい。前記溶解度範囲の上限は、例えば、1.3g/100g、1.2g/100g、1.1g/100g、1.0g/100g、0.9g/100g、0.8g/100g、0.7g/100g、0.6g/100g、0.5g/100g、0.4g/100g、0.3g/100g、0.25g/100g、0.23g/100g、0.21g/100g、0.2g/100gまたは0.15g/100g以下であってもよく、下限は、例えば、0g/100g、0.01g/100g、0.05g/100g、0.08g/100g、0.09g/100g、または0.15g/100g以上であってもよい。本出願は、重合単位で含まれるジアンヒドリドモノマーまたは重合されていないジアンヒドリドモノマーに対して低い溶解度を有する第2の溶媒を含むことにより、所望の物性のポリアミック酸組成物を提供しうる。本出願で測定する物性が温度に影響を受ける物性の場合、特に規定しない限り、常温23℃で測定したものであってもよい。
【0048】
本出願の具体例において、前記第1の溶媒は、例えば、ジアンヒドリドモノマーに対して1.5g/100g以上の溶解度を有してもよい。前記溶解度の下限は、例えば、1.6g/100g、1.65g/100g、1.7g/100g、2g/100g、2.5g/100g、5g/100g、10g/100g、30g/100g、45g/100g、50g/100gまたは51g/100g以上であってもよく、上限は、例えば、80g/100g、70g/100g、60g/100g、55g/100g、53g/100g、48g/100g、25g/100g、10g/100g、5g/100g、または3g/100g以下であってもよい。第1の溶媒は、第2の溶媒よりも前記溶解度がさらに高くてもよい。
【0049】
一例において、前記第1の溶媒は沸点が150℃以上であってもよく、前記第2の溶媒は、沸点が前記第1の溶媒よりも低くてもよい。すなわち、第1の溶媒が第2の溶媒よりも沸点が高くてもよい。前記第2の溶媒は沸点が30℃以上、150℃未満の範囲内であってもよい。前記第1の溶媒の沸点の下限は、例えば、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃または201℃以上であってもよく、上限は、例えば、500℃、450℃、300℃、280℃、270℃、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃または205℃以下であってもよい。また、前記第2の溶媒の沸点の下限は、例えば、35℃、40℃、45℃、50℃、53℃、58℃、60℃または63℃以上であってもよく、上限は、例えば、148℃、145℃、130℃、120℃、110℃、105℃、95℃、93℃、88℃、85℃、80℃、75℃、73℃、70℃または68℃以下であってもよい。本出願は、沸点が互いに異なる2つの溶媒を使用することにより、所望の物性のポリイミドを製造しうる。
【0050】
本出願による第1の溶媒は、ポリアミック酸を溶解できる溶媒であれば特に限定されるものではない。前記第1の溶媒の場合も極性溶媒であってもよい。例えば、前記第1の溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド溶媒が挙げられる。例えば、前記第1の溶媒は、アミド基を有するか、またはケトン基を分子構造内に有してもよい。前記第1の溶媒は、第2の溶媒よりも極性がさらに低くてもよい。
【0051】
前記第1の溶媒は、一例として非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。第2の溶媒は、非プロトン性極性溶媒またはプロトン性極性溶媒であってもよい。例えば、第2の溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、ブチルアルコール、イソブチルアルコールまたは2-プロパノールなどのアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、イソプロピルアセテートなどのエステル系溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸などのカルボン酸溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、メチルt-ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジメチルカーボネート、メタルメタクリレート、またはプロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸を含んでもよい。
【0052】
前述したように、本出願は、前記第1の溶媒及び第2の溶媒を併せて含んでもよい。この場合、第1の溶媒は第2の溶媒よりも多くの含量を含んでもよい。また、前記第2の溶媒は、第1の溶媒100重量部に対して0.01~10重量部の割合で含まれてもよい。前記含量比率の下限は、例えば、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.1重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.8重量部、1重量部または2重量部以上であってもよく、上限は、例えば、8重量部、6重量部、5重量部、4.5重量部、4重量部、3重量部、2.5重量部、1.5重量部、1.2重量部、0.95重量部、0.4重量部、0.15重量部または0.09重量部以下であってもよい。
【0053】
本出願のポリアミック酸組成物は、低粘度特性を有する組成物であってもよい。本出願のポリアミック酸組成物は、23℃の温度及び1s-1のせん断速度の条件で測定した粘度が10,000cP以下、9,000cP以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、500cP以上または1,000cP以上でもよい。前記粘度は、例えば、Haake社のRheostress 600を使用して測定したものであってもよく、1/sのせん断速度、23℃の温度及び1mmのプレートギャップ条件で測定したものであってもよい。本出願は、前記粘度範囲を調節することにより、優れた工程性を有する前駆体組成物を提供し、導体電線の被覆時に所望の物性の被覆物を形成しうる。
【0054】
一具体例において、前記ポリアミック酸の分子量が10,000~50,000g/molまたは15,000~30,000g/molの範囲であってもよい。前記重量平均分子量は、GPC(Gel permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)に対する換算値を意味する。
【0055】
一例において、前記ポリアミック酸組成物は、硬化後の10GHzの周波数帯域における比誘電率(Dk)が3.6未満であってもよい。硬化後の誘電率の下限は、特に限定されないが、例えば、1.0以上であってもよく、上限は3.58以下、3.55以下、3.53以下、3.5以下、3.48以下、3.45以下または3.42以下であってもよい。本出願のポリアミック酸組成物が硬化したポリイミド樹脂は、特に高周波帯域で誘電率が低い値を有するので、優れた誘電特性を有することができる。
【0056】
一例において、本出願は、被覆物の特性を間接的に測定するために、ポリアミック酸組成物を15~40μmのいずれかの厚さまたは約25μm厚さのポリイミドフィルムに製造した後に伸びを評価しうる。前記ポリアミック酸組成物の硬化後の伸び(Elongation)が70%以上であってもよく、具体例において、72%以上、73%以上、75%以上、78%以上、80%以上、83%以上、85%以上、87%以上、90%以上、93%以上、100%以上、110%以上、120%以上、130%以上または140%以上であってもよく、上限は、例えば、150%以下、148%以下、145%以下、140%以下、130%以下、120%以下、110%以下、100%以下、98%以下、95%以下、90%以下、85%以下または80%以下であってもよい。このような機械的物性は、前記のような電線に被覆された被覆物においても同様に現れることができる。
【0057】
一例において、前記ポリアミック酸組成物は、硬化後の銅に対する接着力が0.65N/cm以上であってもよい。前記接着力の測定は、ポリアミック酸組成物をフィルム状(横10mm×縦50mm×厚さ20μm)に製造した後に測定してもよい。前記接着力は、23℃温度で、180°剥離角度及び20mm/minの剥離速度で測定したものであってもよい。
【0058】
本出願の具体例において、前記ポリアミック酸組成物は、硬化後のASTM2275-01標準規格に従って測定される部分放電開始電圧(PDIV)は、800Vp以上であってもよい。具体例において、前記部分放電開始電圧の下限は、800Vp以上、820Vp以上、830Vp以上または850Vp以上であってもよく、上限は1000Vpまたは950Vp以下であってもよい。また、前記ポリアミック酸は、硬化後のASTMD149標準規格に従って測定される絶縁破壊電圧(BDV)が230kV/mm以上であってもよい。前記絶縁破壊電圧の下限は、233kV/mm以上、235kV/mm以上、238kV/mm以上、240kV/mm以上、243kV/mm以上、244kV/mm以上、245kV/mm以上、246kV/mm以上、247kV/mm以上、248kV/mm以上または249kV/mm以上であってもよく、上限は、例えば、300kV/mm以下、290kV/mm以下、280kV/mm以下、270kV/mm以下、265kV/mm以下または260kV/mm以下であってもよい。本出願のポリアミック酸組成物は、前記モノマーを含有することにより、硬化後の低誘電率と耐熱性、絶縁性、密着性及び高温における機械的特性を同時に満たすポリイミドを提供し得、これにより電線被覆に使用される場合、部分放電、局所劣化、絶縁破壊を防止して信頼性の高い被覆物を提供しうる。
【0059】
前記絶縁破壊電圧(BDV)は、当業界の公知の方法で測定されてもよい。一例において、前記絶縁破壊電圧は、ASTMD149標準規格に従って測定してもよい。前記ポリアミック酸組成物がコーティングされた電線を試片として製造し、測定装備PHENIX社(株)TEXNOLOGIES 6CCE50-5を使用してもよい。前記製造された試片を100℃のオーブンで前処理して水分を除去した後、常温の雰囲気に設定された前記測定装備に試片を固定し、下部の上部の電極から10KVAcの電圧を印加して交流電圧を0から一定の速度で増加させてBDVを測定してもよい。
【0060】
また、前記部分放電開始電圧(PDIV)は、当業界の公知の方法で測定されてもよい。前記部分放電開始電圧は、例えば、製造した絶縁電線の試片の一対の末端にASTM2275-01規格に従って荷重及びねじれを印加することにより、2列にねじれたサンプルを作製する。その後、前記サンプルの両末端の裸導体に50~60Hzの周波数の電圧を一定速度で印加して部分放電(100pC以上)が起こる電圧を記録する。
【0061】
本出願は、さらにポリアミック酸組成物の製造方法に関する。前記製造方法は、前述したポリアミック酸組成物を製造する方法であってもよい。
【0062】
前記ポリアミック酸組成物の製造方法は、ジアンヒドリドモノマー及びジアミンモノマーのうち少なくとも1つを2回以上分割投入する段階を含んでもよい。
【0063】
前記ポリアミック酸組成物は、有機溶媒の中でジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーを重合して製造してもよい。
【0064】
また、前記ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーは、粉末(powder)、塊(lump)及び溶液状で投入されてもよく、反応初期には粉末状で投入して反応を行い、重合粘度の調節のために溶液状で投入することが好ましい。
【0065】
例えば、ジアンヒドリドモノマーとジアミンモノマーを粉末状で投入して反応を行ってから、ジアンヒドリドを溶液状で投入して、ポリアミック酸組成物の粘度が所定の範囲になるまで反応させることができる。
【0066】
一方、本発明は、前記ポリアミック酸組成物を製造する方法であって、前記有機溶媒にジアンヒドリドモノマー及びジアミン類モノマーのうち少なくとも1つを投入して溶解させ、前記有機溶媒にジアンヒドリドモノマー及びジアミン類モノマーのうち少なくとも1つを2回以上分割投入してポリアミック酸を重合し攪拌するポリアミック酸組成物の製造方法を提供する。
【0067】
ジアンヒドリドモノマー及びジアミンモノマーを分割投入する過程を通じて、前記ジアンヒドリドモノマーに対するジアミンモノマーの当量比を調節してよい。
【0068】
詳しくは、前記ジアンヒドリドモノマー及びジアミン類モノマーのうち少なくとも1つを少なくとも2回以上~5回以下で分割投入してもよい。
【0069】
本出願は、さらにポリアミック酸組成物の硬化物であるポリイミドに関する。前記ポリイミドは、ポリイミド被覆物であってもよい。一例において、前記ポリイミドは、前述したポリアミック酸組成物またはその製造方法で製造された前駆体組成物の硬化物であってもよい。
【0070】
また、本出願は、被覆物に関する。前記被覆物は、前述したポリアミック酸組成物の硬化物であるポリイミドを含んでもよい。前記被覆物は、例えば、導体の表面にコーティング及び硬化されていてもよい。一例において、前記被覆物は、ポリアミック酸組成物を導体表面にコーティングする段階、及び前記導体表面にコーティングされたポリアミック酸組成物をイミド化する段階を含んでもよい。前記導体は、銅または銅合金からなる銅線であってもよいが、銀線などの他の金属材料からなる導体や、アルミニウム、スズメッキ導線などの各種の金属メッキ線も導体として含まれてもよい。前記導体と被覆物の厚さは、KSC 3107標準に準拠する。前記導体の直径は、0.3~3.2mmの範囲内であってもよく、被覆物の標準被膜厚さ(最大被膜厚さと最小被膜厚さの平均値)は、0種が21~194μm、1種が14~169μm、2種が10~31μmであってもよい。導体の断面形状としては、環線、平角線、六角線などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0071】
本出願は、さらに前記ポリアミック酸組成物を電線の表面にコーティングしてイミド化して製造されたポリイミド被覆物を含む被覆電線を提供しうる。一具体例において、前記被覆電線は、電線、及び前述したポリアミック酸組成物が前記電線の表面にコーティングされてイミド化された被覆物を含んでもよい。
【0072】
また、本出願は、前記被覆電線を含む電子装置を提供しうる。前記電子装置は、例えば、電気モータが挙げられる。
【発明の効果】
【0073】
上述したように、本出願は、絶縁破壊及び部分放電を防止しながらも、導体と被覆物間の密着性及び被覆物の柔軟性を向上させることができる、信頼性の高い絶縁電線を提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0075】
<実施例1>
1L反応器に窒素雰囲気下で溶媒としてジメチルアセトアミドを投入した。
【0076】
温度を23~50℃に設定した後、ジアンヒドリドモノマーとしてピロメリティックジアンヒドリド(PMDA)95重量部を投入し、ジアミンモノマーとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)90重量部及び4,4’-(1,3-propanediyl)dioxydianiline(PDDA)10重量部を投入して溶解させ、前記ピロメリティックジアンヒドリド(PMDA)5重量部を30分間隔で3回分割投入してポリアミック酸を重合した。
【0077】
製造されたポリアミック酸組成物にシラン化合物として、アミノ系シラン化合物PAPTES(DOW社のZ-6883シラン)0.2重量部を混合してポリアミック酸組成物を製造した。
【0078】
<実施例2>
ジアミンモノマーとして4,4’-ODA70重量部及び4,4’-(1,3-propanediyl)dioxydianiline(PDDA)30重量部を投入したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0079】
<実施例3>
シラン化合物を配合しなかったことを除いては、実施例2と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0080】
<実施例4>
ジアミンモノマーとして4,4’-(1,3-propanediyl)dioxydianiline(PDDA)の代わりに[3-(4-Aminobenzoyl)oxyphenyl]4-aminobenzoate(p-BABB)を30重量部配合させたことを除いては、実施例3と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0081】
<比較例1>
ジアミンモノマーとして4,4’-ODAのみを100重量部投入して溶解させ、ジアンヒドリドモノマーとしてPMDA100重量部を同一に投入したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0082】
<比較例2>
シラン化合物を配合しなかったことを除いては、比較例1と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0083】
<比較例3>
ジアミンモノマーとして4,4’-(1,3-propanediyl)dioxydianiline(PDDA)の代わりに4,4’-Diaminobenzanilide(DABA)を30重量部配合したことを除いては、実施例2と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0084】
<比較例4>
ジアンヒドリドモノマーとしてPMDA100重量部の代わりに、PMDA70重量部と3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)30重量部を投入したことを除いては、比較例2と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0085】
<比較例5>
ジアンヒドリドモノマーとしてPMDA100重量部の代わりに、PMDA70重量部と3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)30重量部を投入したことを除いては、比較例2と同様の方法でポリアミック酸組成物を製造した。
【0086】
ポリイミド被覆物の製造
前記実施例及び比較例で製造したポリアミック酸組成物をコーティング硬化炉内で導体径1mmの銅線に1回当たりコーティングの厚さを5~15μmの間に調節し、コーティング硬化炉の最低温度と最高温度を350~550℃に調節し、銅線の被覆速度を12~32m/分に調節した状態で被覆物の厚さが33~35μmのポリイミド被覆物を含む電線(被覆電線)を製造した。
【0087】
<実験例1:接着力>
銅箔(Cu foil)を一定のサイズにカットした後、ガラス基材上に接着テープで固定させる。実施例及び比較例で製造したポリアミック酸組成物を前記Cu foil上に塗布し、スピンコーティングを通じて一定厚さの薄膜(横10mm×縦50mm×厚さ20μm)を形成する。前記塗布されたポリアミック酸組成物に対して硬化を行い、Cu foil上にポリイミド硬化物をコーティングする。
【0088】
前記銅箔(Cu foil)層とポリイミド硬化物層を剥離してUTM(Peel strength)強度を測定する。上グリップにはポリイミド硬化物層、下グリップには銅箔(Cu foil)層を固定した後、常温23℃温度で180°剥離角度及び20mm/minの剥離速度で力を加えて接着力の強度を測定する。
【0089】
<実験例2:引張試験>
実施例及び比較例で製造されたポリイミド被覆物に対して、導体と被覆物間の密着力を確認するために引張試験を行い、その結果を下記表1に示した。
【0090】
具体的には、200~250mmの自由測定長さを有する真っ直ぐな電線試片に対して中央部にナイフで被覆物のみを切る(銅線を除いて被覆物部分のみ切断)。前記試片の両端を引っ張って15%伸長させる。
【0091】
被覆物の切断された部分が広がって生じた隙間の長さを測定する。
【0092】
<実験例3:伸び>
実施例及び比較例で製造したポリアミック酸組成物をフィルム状に製膜して硬化させる。
【0093】
ポリイミドフィルムを幅10mm、長さ50mmに切った後、インストロン(Instron)社のInstron5564UTM装備を使用してASTM D-882法で伸びを測定した。
【0094】
<実験例4:誘電率測定>
前記実施例及び比較例により製造されたポリイミド被覆物の10GHzにおける比誘電率は、Network analyzer EVA Vector Network Analyzer(E5063A,Keysight社)を用いて23℃、50%RH条件で測定された。
【0095】
<実験例5:絶縁破壊電圧(BDV)評価>
前記実施例及び比較例で製造したポリイミド被覆物についてASTMD149規格でBDV値を測定した。
測定装備:PHENIX社 TECHNOLOGIES 6CCE50-5
【0096】
製造された試片を100℃のオーブンで前処理して水分を除去した後、常温の雰囲気に設定された前記測定装備に試片を固定し、下部の上部の電極で10KVAcの電圧を印加して0から一定の速度で増加させてBDVを測定する。
【0097】
<実験例6:部分放電開始電圧(PDIV)評価>
実施例及び比較例のそれぞれによるポリイミド被覆物に対して室温で60Hz正弦波を有する電圧を印加して部分放電が開始される電圧を測定した。ここで、印加される電圧を上昇させる際に100pC以上の電荷量が検出される電圧を測定した。
【0098】
<実験例6:被膜の損傷評価>
規格JIS C3003、セクション7.1.2に従って実施例及び比較例のそれぞれによるポリイミド被覆物について被膜の損傷評価を行った。具体的には、導体幅(W)の3倍となる直径(3W)のマンドレルで屈曲させた3つの試片と導体高さ(T)の3倍となる直径(3T)のマンドレルで屈曲させた3つの試片のうちクラックが発生すると、規格未達(fail)である。
【0099】
【表1】
【国際調査報告】