IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-528675炎症性障害を処置するためのブチロフィリン様2作用物質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】炎症性障害を処置するためのブチロフィリン様2作用物質
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240723BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240723BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P29/00 ZNA
A61P1/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P21/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K38/16
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K31/7105
C07K14/47
C07K19/00
C07K16/18
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503554
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022073936
(87)【国際公開番号】W WO2023004344
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,644
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
3.Alexa Flour
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】カサンドラ・エム・パネア
(72)【発明者】
【氏名】ソコル・ハジナスト
(72)【発明者】
【氏名】ザルヒ・ホバニシャン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・ホロヴィッツ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA20
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA68
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB15
4C084ZC35
4C084ZC54
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZC35
4C086ZC54
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、T細胞駆動型炎症障害を処置するための方法を提供する。本方法は、ブチロフィリン様2(Btnl2)のレベルまたは活性を上昇させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与して、それによって対象におけるリンパ球の頻度または機能を変化させることを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性障害を有する対象を処置する方法であって、
(a)炎症性障害を有し、かつ所定の基準値と比較して上皮内リンパ球(IEL)のレベルが上昇している対象を選択すること;および
(b)対象におけるブチロフィリン様2(Btnl2)のレベルまたは活性を上昇させることによって対象におけるIELの増殖を減少させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与して、それによって炎症性障害を処置すること
を含む方法。
【請求項2】
対象は、少なくとも1つの機能喪失型一塩基多型(SNP)を、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象は、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらす少なくとも1つの機能喪失型SNPを、rs28362675に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
IELはγδT細胞を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
IELは腸γδIELを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
腸γδIELは回腸γδIELを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
腸γδIELは回腸CD8αα γδIELを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
炎症性障害は、腸の炎症性障害である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
炎症性障害は免疫媒介性疾患である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
炎症性障害は自己免疫疾患である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
炎症性障害は、腸管関連の免疫媒介性疾患である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
免疫媒介性疾患は、移植片対宿主病(GVHD)、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、筋炎、炎症性腸疾患、胃腸炎、またはI型糖尿病を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
MADCAM1阻害剤は、抗MADCAM1抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
融合タンパク質は、Btnl2タンパク質またはその変異体、および抗MADCAM1抗体を含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ポリヌクレオチド配列はRNAである、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
対象はヒトである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
Btnl2作用物質は、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮、坐薬として、または舌下に投与される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
Btnl2作用物質は、徐放性、制御放出性、または遅延放出性の剤形で投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第2の治療剤または療法を対象に投与することをさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
第2の治療剤は抗炎症剤を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
炎症性腸疾患(IBD)を有する対象を処置する方法であって、
(a)IBDを有し、かつ少なくとも1つの機能喪失型SNPを、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に含む対象を同定すること;および
(b)対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与して、それによってIBDを処置すること
を含む方法。
【請求項29】
対象は、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらす少なくとも1つの機能喪失型SNPをrs28362675に有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ポリヌクレオチド配列はRNAである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
選択の工程は、核酸を含む試料を対象から得ること、および試料に対して遺伝子型判定アッセイを行うことを含む、請求項28~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
対象におけるIELの数を減少させる方法であって、Btnl2作用物質の有効量をそれを必要とする対象に投与することを含み、Btnl2作用物質は、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができる、方法。
【請求項36】
IELはγδT細胞を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
IELは腸γδIELを含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
腸γδIELは回腸γδIELを含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
腸γδIELは回腸CD8αα γδIELを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む、請求項41~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
MADCAM1阻害剤は、抗MADCAM1抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む、請求項35~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む、請求項35~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
ポリヌクレオチド配列はRNAである、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
対象において抗菌応答を誘発させる方法であって、Btnl2作用物質の有効量を対象に投与することを含み、Btnl2作用物質は、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができる、方法。
【請求項50】
IELはγδT細胞を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
IELは腸γδ上皮内リンパ球(IEL)を含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
腸γδIELは回腸γδIELを含む、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
腸γδIELは回腸CD8αα γδIELを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む、請求項49~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
MADCAM1阻害剤は、抗MADCAM1抗体である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む、請求項49~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む、請求項49~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
ポリヌクレオチド配列はRNAである、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
対象におけるIELを減少させることができるBtnl2作用物質を同定するための方法であって、
(a)Btnl2のレベルもしくは活性を上昇させることができるかまたはBtnl2アゴニスト活性を有するBtnl2作用物質のある量を対象に投与すること;
(b)対象から得られた試料に対してアッセイを行って、試料中のIELの数を決定すること;および
(c)対象において所定の基準値と比較してIELの数が増加している場合に、Btnl2作用物質を、対象におけるIELを減少させる能力があるものとして同定すること
を含む方法。
【請求項64】
IELは腸γδIELを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
腸γδIELは、十二指腸γδIEL、空腸γδIEL、回腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
炎症性障害の処置におけるブチロフィリン様2(Btnl2)作用物質の使用であって、Btnl2作用物質は、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることによって対象における上皮内リンパ球(IEL)の増殖を減少させることができ、対象は炎症性障害を有し、かつ所定の基準値と比較してIELのレベルが上昇している、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、T細胞の発生、維持、および機能のBtnl2媒介性標的化を介して炎症性障害を処置するための方法および試薬を含む、炎症性障害を処置するための方法および試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、病原体、アレルゲンまたは刺激物などの物理的、化学的または生物的因子によって引き起こされる損傷または異常刺激に応答して、冒された血管および隣接組織で生じる複雑な細胞的および生化学的プロセスである。炎症性腸疾患(IBD)は、年間50,000人以上の死亡を引き起こす、結腸および小腸の炎症性状態の一群である。IBDの原因は複雑であり、寄与因子には食事、遺伝、および個人の腸管細菌叢の組成が含まれる。医学的処置は、主として個人に特有の因子に基づく。
【0003】
組織常在性の上皮内リンパ球(IEL)は、腸管ホメオスタシスの維持に関与する、腸上皮における抗原経験免疫細胞の不均一な集団を表す。特に、α-β(αβ)T細胞受容体(TCR)を発現するIELは、病原体特異的な記憶応答を開始する体勢を整えており、一方、γδ(γδ)TCRを保有するIELは、密着結合を強化し、ホメオスタシス、炎症および感染の際に自然免疫および適応免疫を調整する。腸上皮細胞(IEC)とγδIELとの間の相互作用は、IELの発生および機能に影響する。注目されることに、最近の研究により、解剖学的な分離が、化学的に誘導されるかまたは病原体によって誘導される上皮損傷に対する機能的に異なるγδIEL免疫応答を含む、腸管セグメント特異的な免疫を推進する可能性があることが強く示されている。しかし、局所的な抗原環境に応答してγδIELの発生および維持を調節する機序は、ほとんど解明されていない。
【0004】
最近の研究により、IEC特異的なブチロフィリン様(Btnl)分子は、異なる複数のVγTCR IELの周産期増大および成熟を誘導するといういくつかの証拠が得られている。実際、腸γδIELは主としてマウスではVγ7を、ヒトではVγ4を発現し、これは宿主の生涯を通じて持続する。γδIELは、局所環境から自己抗原および細菌抗原の両方を連続的に採取して、TCRの特異性を個別に調整する。さらに、γδTCRレパートリーの多様性を形成し、腸区画にわたるγδIELサブセットの分布および機能を調節することへのBtnl分子の寄与は、まだ解明されておらず、これは腸で観察される区画化された免疫応答の理解に役立つ可能性がある。
【0005】
Btn/Btnlタンパク質は、B7免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、他の共刺激分子および共阻害分子(例えば、CD80、CD86、PDL1、およびPDL2)と類似しており、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン産生の阻害、制御性T(Treg)細胞の誘導、ならびに抗原特異的炎症応答の遮断を含むαβT細胞の免疫機能を調節することが示されている。BtnlファミリーのメンバーであるBtnl2は、インビトロでTregの分化を誘導すること、ならびにT細胞の活性化および増殖を抑制することが示されている。しかし、ホメオスタシスおよび炎症に際しての腸内免疫応答の調節、特に腸γδIELの誘導および維持におけるBtnl2の役割については、まだ検討されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、(a)炎症性障害を有し、かつ所定の基準値と比較して上皮内リンパ球(IEL)のレベルが上昇している対象を選択すること;および(b)対象におけるブチロフィリン様2(Btnl2)のレベルまたは活性を上昇させることによって対象におけるIELの増殖を減少させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与して、それによって炎症性障害を処置することを含む方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも1つの機能喪失型一塩基多型(SNP)を、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらす少なくとも1つの機能喪失型SNPを、rs28362675に有する。
【0008】
一部の実施形態では、IELはγδT細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸CD8αα+ γδIELを含む。
【0009】
一部の実施形態では、炎症性障害は、腸の炎症性障害である。一部の実施形態では、炎症性障害は免疫媒介性疾患である。一部の実施形態では、炎症性障害は自己免疫疾患である。一部の実施形態では、炎症性障害は、腸管関連の免疫媒介性疾患である。一部の実施形態では、免疫媒介性疾患は、移植片対宿主病(GVHD)(腸の症状を伴うかまたは伴わない)、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、筋炎、炎症性腸疾患、胃腸炎、またはI型糖尿病を含む。
【0010】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む。一部の実施形態では、組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤または抗MADCAM1抗体を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、Btnl2タンパク質またはその変異体、および抗MADCAM1抗体を含む。
【0012】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0013】
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮、または舌下に投与される。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、徐放性、制御放出性、または遅延放出性の剤形で投与される。
【0014】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、第2の治療剤または療法を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、第2の治療剤は抗炎症剤を含む。
【0015】
別の態様では、本開示は、炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法であって、(a)IBDを有し、かつ少なくとも1つの機能喪失型SNPを、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に有する対象を選択すること;および(b)対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも1つの機能喪失型SNPをrs28362675に有し、その結果、Glu454Ter(終止コドン)突然変異が生じる。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0018】
一部の実施形態では、本方法は、核酸を含む試料を対象から得ること、および試料に対して遺伝子型判定アッセイを行うことを含む、選択の工程を含む。
【0019】
別の態様では、本開示はまた、対象におけるIELの数を減少させる方法であって、Btnl2作用物質の有効量をそれを必要とする対象に投与することを含み、Btnl2作用物質が、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができる、方法も提供する。一部の実施形態では、IELはγδT細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸CD8αα+ γδIELを含む。
【0020】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む。一部の実施形態では、組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤または抗MADCAM1抗体を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、Btnl2タンパク質またはその変異体、および抗MADCAM1抗体を含む。
【0022】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0023】
別の態様では、本開示は、対象において抗細菌応答を誘発させる方法であって、Btnl2作用物質の有効量を対象に投与することを含み、Btnl2作用物質が、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができる、方法をさらに提供する。
【0024】
一部の実施形態では、IELはγδT細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδ上皮内リンパ球(IEL)を含む。一部の実施形態では、腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸CD8αα+ γδIELを含む。
【0025】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む。
【0026】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む。一部の実施形態では、組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤または抗MADCAM1抗体を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、Btnl2タンパク質またはその変異体、および抗MADCAM1抗体を含む。
【0027】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0028】
別の態様では、本開示は、対象におけるIELを減少させることができるBtnl2作用物質を同定するための方法であって、(a)Btnl2のレベルもしくは活性を上昇させることができるかまたはBtnl2アゴニスト活性を有するBtnl2作用物質のある量を対象に投与すること;(b)対象から得られた試料に対してアッセイを行って、試料中のIELの数を決定すること;および(c)対象において所定の基準値と比較してIELの数が増加している場合に、Btnl2作用物質を、対象におけるIELを減少させる能力があるものとして同定することを含む方法を提供する。
【0029】
一部の実施形態では、IELは腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは十二指腸γδIEL、空腸γδIEL、回腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。
【0030】
前述の概要は、本開示のすべての態様を定義することを意図したものではなく、さらなる態様が、他のセクション、例えば、以下の詳細な説明において記載される。本文書の全体は、統一された開示として関連付けられることを意図しており、本明細書に記載される構成のすべての組合せは、構成の組合せが本文書の同じ文、または段落、またはセクションにおいて一緒に見出されない場合であっても、想定されることが理解されるべきである。本発明の他の構成および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本開示の特定の実施形態を示してはいるが、例示としてのみ与えられることが理解されるべきであり、これは、本開示の趣旨および範囲内のさまざまな変更および修正は、この詳細な説明から当業者には明らかになると考えられるからである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1A、1Bおよび1Cは、Btnl2が小腸上皮細胞において選好的に発現されることを示す。図1Aは、Btnl2-/-マウスのWTおよび標的座位の概略図を示す。hUb、ヒトユビキチンプロモーター。図1Bは、15週齢のBtnl2-KOマウスの小腸(十二指腸、空腸および回腸)および結腸のセグメントの凍結切片におけるβ-ガラクトシダーゼおよびニュートラルレッド対比染色の結果を示す。矢印は、Btnl2-LacZの発現が弱い十二指腸腺、ならびに十二指腸、空腸、回腸および結腸の陰窩および絨毛の領域を示す。倍率は20倍である。図1Cは、同時飼育した7週齢のBtnl2-KOマウスおよびWTマウス(それぞれn=5)の小腸および結腸の異なるセグメントからの腸上皮細胞におけるBtnl2のmRNA発現を、β2mに対して正規化した上で示す。エラーバーは平均±SEMを表す。有意性は、同程度のSDを仮定する多重非対応t検定を使用して測定され、WTマウスとは*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001で有意に異なるとする。
図2-1】図2A、2B、2C、2Dおよび2Eは、Btnl2-KOマウスが、回腸におけるγδIELの頻度の増加を示すことを示す。図2Aは、同時飼育した7~17週齢のBtnl2-KOおよびWTマウス(それぞれn=3~8)から小腸の種々のセグメントを収集し、フローサイトメトリーのために処理したことを示す。左パネル:同時飼育した7週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔の十二指腸、空腸および回腸におけるγδIELの代表的なフローサイトメトリープロット。表示されたプロットは、生きたTCRαβ細胞に対してゲーティングされている。右パネル:7~17週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔からのγδIELおよびCD8αα+ γδIELの頻度。図2Bは、種々の齢数(n=6~23匹/群)での回腸γδIELの頻度を示す。エラーバーは平均±SEMを表す。有意性は、Sidakの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAによって測定され、*p<0.05、**p<0.005である。図2Cは、種々の齢数(n=6~23マウス/群)における回腸αβIELの頻度を示す。エラーバーは平均±SEMを表す。有意性は、二元配置ANOVAによって測定される。図2Dは、同時飼育した種々の齢数のBtnl2-KOおよびWT同腹仔から回腸を収集して、腸上皮内リンパ球(IEL)を単離し、フローサイトメトリーのために処理したことを示す。左パネル:12~17週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔の回腸におけるγδIELの代表的なフローサイトメトリープロット。右パネル:12~17週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔からの回腸γδIELの頻度。データは、3~6匹/群のマウスを用いる3回の独立した実験からプールした。エラーバーは平均±SEMを表す。有意性は、同程度のSDを仮定する多重非対応t検定を使用して測定され、WTマウスとは*p<0.05、**p<0.005で有意に異なるとする。図2Eは、7~17週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(n=3~6匹/群)の粘膜固有層(LP)、腸間膜リンパ節(MLN)、脾臓、およびパイエル板におけるγδT細胞の頻度を示す。
図2-2】図2-1の続き。
図2-3】図2-2の続き。
図3-1】図3A、3B、3C、3Dおよび3Eは、Btnl2が空腸/回腸γδIELの増殖を抑制することを示す。IELは、同時飼育した12週齢のBtnl2-KOおよびWTマウス(それぞれn=4~5)の十二指腸および空腸/回腸から単離し、CFSEで標識して、rh IL-2、rm IL7、rm IL15の存在下で、α-CD3および種々のFc融合物で84時間刺激した。細胞培養物からの上清を回収し、細胞をフローサイトメトリーのために処理した。図3Aは、等モル濃度のBtnl2-Fcおよび対照mFc融合タンパク質の存在下で84時間培養した後の十二指腸および空腸/回腸WT CD8αα+ γδIELの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。図3Bおよび3Cは、Fc融合物の非存在下での増殖と比較した、特定のFc融合物の存在下とFc融合物の非存在下との間の増殖の差のパーセントとして計算した増殖の抑制を示す。図3Bは、十二指腸および空腸/回腸WT CD8αα+ γδIEL、ならびにCD8αβ+αβIELの増殖の抑制を示す。図3Cは、十二指腸および空腸/回腸Btnl2-KO CD8αα+ γδIEL、ならびにCD8αβ+ αβIELの増殖の抑制を示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、一元配置ANOVAを使用して測定し、mFc融合タンパク質対照とは*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001で有意に異なるとする。図3Dおよび3Eは、同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWTマウス(それぞれn=4~5)に対して、飲用水中の0.8mg/mL BrdUを3日間自由に摂取させたことを示す。BrdUの取込みを、小腸の異なるセグメント由来のγδIELの核内染色によって経時的に測定した。図3Dは、回腸CD8αα+ γδIELにおけるBrdUの取込みの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。図3Eは、異なるセグメントにわたってのCD8αα+ γδIELおよびCD8αβ+ αβIELにおけるBrdUの取込みを示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、同程度のSDを仮定する非対応t検定を使用して測定され、WTとは*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001で有意に異なるとする。
図3-2】図3-1の続き。
図3-3】図3-2の続き。
図4-1】図4A、4B、4Cおよび4Dは、回腸Btnl2-KO γδIELが、回腸WT γδIELと比較して、変化した抗菌応答モジュールを示すことを示す。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(n=3~4/遺伝子型、それぞれマウス2匹のプール)の十二指腸、空腸および回腸由来のγδIELを、CD45+TCRB-TCRγδ+細胞として選別精製した。RNAシークエンシングを行い、NextBioを使用して遺伝子セットエンリッチメント解析を行った。遺伝子オントロジー(GO)を使用して、Btnl2-KOおよびWT γδIELにおいて差次的にエンリッチされたGO生物学的プロセスを同定した。図4Aは、回腸Btnl2-KOおよびWT γδIEL間で差次的に調節される遺伝子を示すvolcanoプロットを示す。横方向の破線はFDR=0.05を示し、縦方向の破線は変化倍数=1.5を示す。図4Bは、回腸Btnl2-KOとWT γδIELとの間で差次的に発現された上位50種の遺伝子の階層的クラスタリングを示す;十二指腸および空腸Btnl2-KO γδIELならびにWT γδIELも比較として含めた。図4Cは、回腸WT γδIELと比較して、回腸Btnl2-KO γδIELにおいて最も有意に障害された生物学的プロセスの遺伝子オントロジーエンリッチメント解析を示す。図4Dは、組み合わされた上位3種のGOプロセスの内部での回腸Btnl2-KOおよびWT γδIELにおける上位の調節不全抗菌応答遺伝子の階層的クラスタリングを示し、十二指腸および空腸Btnl2-KOならびにWT γδIELも比較として含めた。
図4-2】図4-1の続き。
図4-3】図4-2の続き。
図4-4】図4-3の続き。
図5-1】図5A、5B、5Cおよび5Dは、回腸Btnl2-KO γδIELが、回腸WT γδIELと比較して、より多様なTRGVレパートリーを呈することを示す。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(n=3~4/遺伝子型、それぞれマウス2匹のプール)の十二指腸、空腸および回腸由来のγδIELを、CD45+TCRβ-TCRγδ+細胞として選別精製した。各試料の3分の2を、ディープバルクRNAシークエンシングのために処理し、各試料の3分の1を、セグメント毎に遺伝子型毎にプールして、単細胞選別および単細胞TCRシークエンシングに使用した。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(それぞれマウスn=8匹)の十二指腸、空腸および回腸由来のγδIELを、単細胞選別し、TCR VγおよびTCR Vδ鎖の使用ならびにCDR3アミノ酸配列の単細胞TCRシークエンシング分析を行った。図5Aは、Btnl2-KOおよびWT γδIELにおけるTRGV*JおよびTRDV*J遺伝子の使用を示す。ND-検出されず。図5B(上パネル)は、Btnl2-KOおよびWT γδIELにおけるTRGのみのCDR3アミノ酸配列についての多様度の推定値を示す。網掛け領域は、50回のブートストラップ反復試験による95%信頼区間を示す。図5B(下パネル)は、補間点3500におけるTRG多様度の推定値を示し、p値は50回のブートストラップ反復試験に基づくt検定から導出される。図5Cは、回腸Btnl2-KOおよびWT γδIELにおける、それぞれTRDのみ、および対になったTRGおよびTRD CDR3アミノ酸配列についての多様度の推定値を示す。網掛け領域は、50回のブートストラップ反復試験による95%信頼間隔を示す。図5Dは、十二指腸、空腸および回腸Btnl2-KOおよびWT γδIELの固有のクローンの総数に対して正規化された、それぞれTRGVおよびTRDVレパートリーの50%を構成する上位の固有クローンの数として表される多様度50(D50)指数を示す。
図5-2】図5-1の続き。
図5-3】図5-2の続き。
図5-4】図5-3の続き。
図5-5】図5-4の続き。
図5-6】図5-5の続き。
図6-1】図6A、6B、6C、6Dおよび6Eは、共有されたBtnl2-KOおよびWT CDR3γクローンの回腸γδIELトランスクリプトームが、CDR3δとの対形成によって形作られることを示す。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(それぞれマウス8匹のプール)由来の回腸γδIELを単細胞選別し、単細胞TCRシークエンシングおよび単細胞RNAシークエンシングを行った。図6Aは、回腸Btnl2-KO γδIEL由来であり、回腸WT γδIELにおいて差次的にエンリッチされた上位20種のTRGクローンを示す(CDR3γアミノ酸配列を順位の順に右側に列挙し、以下の通りに提供される:CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29);CSYGLYSSGFHKVF(配列番号30);CASWAYSSGFHKVF(配列番号31);CASWGYSSGFHKVF(配列番号32);CAVWMRYSSGFHKVF(配列番号33);CAVWIGTSWVKIF(配列番号34);CASWAGRSSGFHKVF(配列番号35);CASWAVYSSGFHKVF(配列番号36);CASWAPYSSGFHKVF(配列番号37);CASWVYSSGFHKVF(配列番号38);CASWAGSSGFHKVF(配列番号39);CASWADSSGFHKVF(配列番号40);CASWAGGSSGFHKVF(配列番号41);CASWAGKYSSGFHKVF(配列番号42);CASWAEYSSGFHKVF(配列番号43);CAVWVYSSGFHKVF(配列番号44);CAVWGYSSGFHKVF(配列番号45);CAVWNSSGFHKVF(配列番号46);CASWAGDSSGFHKVF(配列番号47);CASWALYSSGFHKVF(配列番号48))。図6Bは、scTCRseq間で同定された上位の最大のCDR3γクローンが、個々の回腸Btnl2-KO(n=3)および回腸WT(n=4)試料に見出されることを示しており、その中のTCR配列がバルクRNAseqから再構築され、以下のように提供される:CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29);CASWGYSSGFHKVF(配列番号32);CASWAYSSGFHKVF(配列番号31);CASWEYSSGFHKVF(配列番号49);CASSSGFHKVF(配列番号50);CASWAGRSSGFHKVF(配列番号35);CASWAVYSSGFHKVF(配列番号36);CASWAGHSSGFHKVF(配列番号51);CAVWVYSSGFHKVF(配列番号44);CASWAGDSSGFHKVF(配列番号47);CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29);CSYGLYSSGFHKVF(配列番号30);CASWAYSSGFHKVF(配列番号31);CASWGYSSGFHKVF(配列番号32);CAVWMRYSGFHKVFF(配列番号52);CASWAGRSSGFHKVF(配列番号35);CASWAVYSSGFHKVF(配列番号36);CASWAPYSSGFHKVF(配列番号37);CASWVYSSGFHKVF(配列番号38)。共有されるクローンは太字で強調表示している。各切片は異なる試料を表し、白の切片は個々の試料にCDR3γクローンが存在しないことを表す。図6Cは、回腸Btnl2-KOおよび回腸WT γδIELの両方において、複数のVγ7-J1組換えイベントが同じ最上位のCDR3γアミノ酸配列(CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29))に収束することを示す。図6Dは、異なるUMAPクラスター間で回腸Btnl2-KOおよび回腸WT γδIELによって共有される最上位のCDR3γ鎖(TRGV7*02/TRG11*01、CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29);全クローンの約10%)の分布を示す。図6Eは、最上位のCDR3γ(CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29))と、UMAPプロットの上に列挙され、γδIELのトランスクリプトームを形作る、以下の通りに提供される種々のCDR3δ配列との対形成を示す:CALMERGISEGYSTDKLVF(配列番号53);CALWEPIWHIGGIRATDKLVF(配列番号54);CALMERIGLTTDKLVF(配列番号55);AMGTLSEGYELGDKLVF(配列番号56);CASGFLWHLYRRDTSPTDKLVF(配列番号57);CALMELSEGPATDKLVF(配列番号58);CASGYTVWQIGGIRATDKLVF(配列番号59);CALSEPSAVDRRDTKTDKLVF(配列番号60)。対当たりのクローンの数は、CDR3γ配列の下に示される。
図6-2】図6-1の続き。
図6-3】図6-2の続き。
図6-4】図6-3の続き。
図6-5】図6-4の続き。
図7-1】図7A、7B、7C、7D、7E、7Fおよび7Gは、Btnl2-KOマウスが、慢性DSS誘発大腸炎においてより重篤な腸炎を示すことを示す。同時飼育した15週齢のBtnl2-KO(n=11)およびWT(n=8)同腹仔を、3% DSS誘発大腸炎に7日間供し、その後は水を8日間与えた。対照マウス(n=2~4)には水を与えた。図7Aは、上記の日付の初期体重と実際の体重との間の差のパーセントとして計算した、同時飼育したBtnl2-KOおよびWT同腹仔における体重減少を示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、同程度のSDを仮定する非対応t検定を使用して測定され、DSS処置WTマウスとは*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005で有意に異なるとする。図7Bは、第15日に、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの結腸の長さを示す。図7Cは、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウス由来の結腸のH&E組織切片および病理学的スコアを示す。図7Dは、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの結腸ホモジネート中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を示す。図7Eは、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの結腸ホモジネート中の炎症誘発性サイトカインのレベルを示す。図7Fは、β2mに対して正規化した、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの結腸ホモジネート中のグランザイムA mRNAレベルを示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、同程度のSDを仮定する非対応t検定を使用して測定され、*p<0.05とする。図7Gは、β2mに対して正規化した、水およびDSSで処置したWTマウスの結腸におけるBtnl1/2/6 mRNAレベルを示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、一元配置ANOVAを使用して測定され、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005とする。
図7-2】図7-1の続き。
図8-1】図8は、Btnl2隣接遺伝子の発現がBtnl2-LacZ欠失カセットによって有意には影響されないことを示す。上のパネル-USCSゲノムブラウザに基づくマウスChr.17qB1座位の概略図であり、Btnl2座位付近の遺伝子の向きおよび位置を示す。下のパネル:同時飼育した7週齢のBtnl2-KOおよびWTマウス(それぞれn=2~4)の小腸の異なるセグメントから単離した腸上皮細胞におけるBtnl2座位周辺のRNAseqリード値(TPM)。エラーバーは平均±SEMを示す。
図8-2】図8-1の続き。
図9-1】図9A、9Bおよび9Cは、定常状態にあるBtnl2-KOマウスが自発的な腸炎を発症しないことを示す。十二指腸、空腸および回腸を、7週齢および17週齢の同時飼育したBtnl2-KOおよびWTマウス(それぞれn=4~7)から採取し、RNAseqおよび組織学検査のために処理した。図9Aは、17週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔の十二指腸、空腸および回腸の代表的なH&E染色および組織学的分析を示す。図9Bは、17週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔の回腸における炎症誘発性サイトカイン(TPM)を示す。エラーバーは平均±SEMを表す。図9Cは、同時飼育した7週齢のBtnl2-KOおよびWTマウスの空腸/回腸由来の腸上皮細胞(IEC)をRNAseqのために処理したことを示す。プロットは、腸上皮細胞の分化および成熟に関連する遺伝子において、WTリードと比較したBtnl2-KOリードの変化倍数(グレーのバー)およびそれらの対応するp値(黒線)を表す。
図9-2】図9-1の続き。
図9-3】図9-2の続き。
図10-1】図10A、10Bおよび10Cは、定常状態にあるBtnl2-KOマウスが、小腸において同等の免疫表現型を呈することを示す。回腸、パイエル板および腸間膜リンパ節を、同時飼育した7~17週齢のBtnl2-KOマウスおよびWTマウス(各n=3~13、1~3回の別々の実験のプール)から採取し、フローサイトメトリーのために処理した。図10A、10Bおよび10Cは、回腸粘膜固有層(図10A)、腸間膜リンパ節(図10B)およびパイエル板(図10C)の内部での主要なリンパ球サブセットの頻度を示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、同程度のSDを仮定する非対応t検定を使用して測定され、WTとは*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005で有意に異なるとする。Treg、制御性T細胞。DC、樹状細胞。ILC3、自然リンパ球系細胞3型。樹状細胞は、系列(TCRβ、B220およびLy6c)陰性細胞に対してゲーティングされる。ILC3細胞は、系列(CD11b、CD11c、Gr1、B220、TCRβおよびNK1.1)陰性細胞に対してもゲーティングされる。
図10-2】図10-1の続き。
図10-3】図10-2の続き。
図11-1】図11A、11B、11Cおよび11Dは、Btnl2がインビトロで、Pdl1およびPdl2と同程度にCD4+ T細胞の活性化および増殖を抑制することを示す。10~12週齢のWTマウス(各n=5)の脾臓およびリンパ節から全CD4+ T細胞をエンリッチして、CFSEで標識し、種々のFc融合物の存在下でα-CD3またはα-CD3/α-CD28により72時間刺激した。72時間後に培養上清を回収し、細胞をフローサイトメトリーのために処理した。図11Aは、インビトロCD4+ T細胞増殖アッセイの概略図を示す。図11Bは、72時間の培養後のCD4+ T細胞の増殖の活性化および抑制を示す一連のグラフを示す。活性化は、CD44+CD4+ T細胞の頻度として表される。増殖の抑制は、Fc融合物の非存在下での増殖と比較した、特定のFc融合物の存在下とFc融合物の非存在下との間の増殖の差のパーセントとして計算される。図11Cは、α-CD3またはα-CD3/α-CD28および等モル濃度のFc融合タンパク質との72時間のCD4+ T細胞培養物に由来する上清中の炎症誘発性サイトカインのレベルを示す。図11Dは、α-CD3またはα-CD3/α-CD28刺激から72時間後の活性化CD4+ T細胞上のBtnl2受容体と推定されるものの染色および蛍光強度の中央値を示すヒストグラムを示す。右パネル-Fc融合物について染色したCD4+ T細胞の蛍光強度の中央値。エラーバーは平均+/-SEMを表す。多重比較用のTukeyの検定を用いる一元配置ANOVA、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001。
図11-2】図11-1の続き。
図11-3】図11-2の続き。
図12-1】図12A、12Bおよび12Cは、空腸/回腸Btnl2-KOおよびWT γδIELが、共阻害受容体ならびに成熟および活性化のマーカーについて同等の発現レベルを呈することを示す。IELを同時飼育した12~13週齢のBtnl2-KOおよびWT(それぞれマウス6匹のプール)の空腸/回腸から単離し、LEGENDScreenマウス細胞抗体パネル(Biolegend、CA)で染色することによってフローサイトメトリーのために処理した。細胞はCD45+TCRB-TCRγδ+CD8αα+に対してゲーティングされる。図12Aは、インビトロIEL増殖アッセイの概略図を示す。図12Bは、等モル濃度のBtnl2-Fcおよび対照mFc融合タンパク質の存在下で84時間培養した後の十二指腸および空腸/回腸Btnl2-KO CD8αα+ γδIELの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。図12Cは、Btnl2-KOおよびWT CD8αα+ γδIELに対する成熟、活性化および共阻害受容体のヒストグラムを示す。MFI、平均蛍光強度。
図12-2】図12-1の続き。
図12-3】図12-2の続き。
図12-4】図12-3の続き。
図13-1】図13A、13B、13Cおよび13Dは、Btnl2-KO γδIELが、小腸セグメントにわたって多様なTRGVおよびTRDVレパートリーを有することを示す。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(n=3~4/遺伝子型、それぞれマウス2匹のプール)の十二指腸、空腸および回腸由来のγδIELを、CD45+TCRB-TCRγδ+細胞として選別精製した。各試料の3分の2を、ディープバルクRNAシークエンシングのために処置し、各試料の3分の1を、セグメント毎に遺伝子型毎にプールして、単細胞選別および単細胞RNAシークエンシングに使用した。図13Aおよび13Bは、すべての固有のCDR3γ(図13A)またはCDR3δ(図13B)アミノ酸配列/組合せ試料のツリーマップレンダリングを示し、ここでボックスのサイズはCDR3γまたはCDR3δクローンのサイズに対応し、TRGV1_TRGJ4、TRGV2_TRGJ2、TRGV3_TRGJ3、TRGV4_TRGJ1、TRGV5_TRGJ1、TRGV6_TRGJ1、およびTRGV7_TRGJ1(図13A);ならびにTRAV13/DV7_TRDJ1、TRAV13/DV3_TRDJ1、TRAV15/DV5_TRDJ1、TRAV5/DV3_TRDJ2、TRAV16/DV11_TRDJ1、TRAV21/DV12_TRDJ1、TRAV21/DV12_TRDJ2、TRDV1_TRDJ1、TRDV1_TRDJ2、TRDV2_TRDJ1、TRDV2_TRDJ2、TRDV4_TRDJ1、TRDV4_TRDJ2、TRDV5_TRDJ1、およびTRDV5_TRDJ2を含む、使用したTRGV/TRGJまたはTRDV/TRDJ遺伝子が示されている。図13Cは、セグメント毎の重複するCDR3γおよびCDR3δクローンの数を示すベン図を示す。図13Dは、遺伝子型毎の重複するCDR3γおよびCDR3δクローンの数を示すベン図を示す。
図13-2】図13-1の続き。
図13-3】図13-2の続き。
図14-1】図14A、14Bおよび14Cは、CDR3γ/CDR3δクローンレパートリーが、各小腸セグメントおよび遺伝子型に固有であることを示す。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(n=3~4/遺伝子型、それぞれマウス2匹のプール)の十二指腸、空腸および回腸由来のγδIELを、CD45+TCR8-TCRγδ+細胞として選別精製した。各試料の3分の2を、ディープバルクRNAシークエンシングのために処理し、各試料の3分の1を、セグメント毎に遺伝子型毎にプールして、単細胞選別および単細胞RNAシークエンシングに使用した。図14Aは、CDR3γおよびCDR3δアミノ酸配列/組合せ試料のすべての固有の対のツリーマップレンダリングを示し、ここでボックスのサイズは、対になったCDR3γ/CDR3δクローンのサイズに対応し、TRGV1_TRGJ4、TRGV2_TRGJ2、TRGV3_TRGJ3、TRGV4_TRGJ1、TRGV5_TRGJ1、TRGV6_TRGJ1およびTRGV7_TRGJ1を含む、使用したTRGV/TRGJ遺伝子が示されている。図14Bは、セグメント毎の重複する対になったCDR3γ/CDR3δクローンの数を示すベン図を示す。図14Cは、遺伝子型毎の重複する対になったCDR3γ/CDR3δクローンの数を示すベン図を示す。
図14-2】図14-1の続き。
図15-1】図15A、15B、15Cおよび15Dは、γδIELを、発生上の起源、分化段階およびエフェクタープロファイルに基づいて、異なるクラスターに細分し得ることを示す。同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWT同腹仔(それぞれマウス8匹のプール)の十二指腸、空腸および回腸由来のγδIEL(CD45+TCRβ-TCRγδ+)を単細胞選別して、単細胞RNAシークエンシングおよび単細胞TCRシークエンシングを行った。図15Aは、細胞4400個/セグメント/遺伝子型を上回る遺伝子発現の差に基づいて9つの異なるクラスターを表すクラスターを有する組合せUMAPプロットを示す。右パネル-各クラスターに分離される選別されたBtnl2-KOおよびWT γδIEL単細胞の割合。図15Bは、単細胞RNAシークエンシングを行った十二指腸、空腸および回腸のBtnl2-KOおよびWT γδIELの個々のUMAPクラスター化を示す。図15Cは、全単細胞集団における発現と比較した、クラスター0~7における上位20種の遺伝子およびそれらの平均エンリッチメント変化倍数(FC)を示す。図15Dは、回腸Btnl2-KOおよびWT γδIELにおける種々のクラスター中でのTRGV遺伝子使用頻度を示す。
図15-2】図15-1の続き。
図15-3】図15-2の続き。
図15-4】図15-3の続き。
図16-1】図16A、16B、16Cおよび16Dは、Btnl2-KOマウスが、慢性DSS誘発大腸炎においてWTマウスと同等の回腸免疫応答を呈することを示す。同時飼育した15週齢のBtnl2-KO(n=11)およびWT(n=8)同腹仔を、3% DSS誘発大腸炎に7日間供し、その後は水を8日間与えた。対照マウス(n=2~4)には水を与えた。図16Aは、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの回腸ホモジネート中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を示す。図16Bは、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの回腸ホモジネート中の炎症誘発性サイトカインの転写レベルを示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。有意性は、一元配置ANOVAを使用して測定され、*p<0.05、**p<0.005とする。図16Cは、β2mに対して正規化した、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの回腸ホモジネート中のグランザイムA mRNAレベルを示す。図16Dは、β2mに対して正規化した、水およびDSSで処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの回腸ホモジネート中のBtnl1/2/6 mRNAレベルを示す。
図16-2】図16-1の続き。
図17-1】図17A、17B、17Cおよび17Dは、CD4 T細胞活性化のBtnl2媒介性阻害が、α-CD3/α-CD28置換えとは無関係であることを示す。全CD4 T細胞を、10~12週齢のWTマウス(各n=5)の脾臓およびリンパ節からエンリッチし、CFSEで標識して、種々のFc融合物の存在下で、α-CD3またはα-CD3/α-CD28により72時間刺激した。72時間後に培養上清を回収し、細胞をフローサイトメトリーのために処理した。図17Aは、Fc融合タンパク質によるα-CD3またはα-CD3/α-CD28の同時または連続的コーティングを用いたインビトロCD4 T細胞増殖アッセイの概略図を描写している。図17B、17Cおよび17Dは、72時間の培養後のCD4 T細胞の増殖の活性化および抑制を示すグラフを示す。活性化は、CD44CD4 T細胞の頻度として表される。増殖の抑制は、最大の増殖と比較した、特定のFc融合物の存在下とFc融合物の非存在下との間の増殖の差のパーセントとして計算される。図17Bは、等モル数のFc融合タンパク質による同時コーティングを示す。図17Cは、等モル数のFc融合タンパク質による逐次コーティングを示す。図17Dは、最大質量のFc融合タンパク質による同時コーティングを示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。多重比較用のTukey検定を用いる一元配置ANOVA、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001;対照群はFc(IgG2a)である。
図17-2】図17-1の続き。
図18-1】図18A、18B、18Cおよび18Dは、BTNL2がインビトロで、PDL1と同等にデノボCD103FoxP3CD4 T細胞の分化を誘導することを示す。ナイーブCD4 T細胞を、10~12週齢のWTマウス(各n=3~4)の脾臓およびリンパ節からエンリッチし、種々のFc融合物および系列スキューイングサイトカインの存在下で、α-CD3またはα-CD3/α-CD28により5日間刺激した。5日後に培養上清を回収し、細胞をフローサイトメトリーのために処理した。図18Aは、インビトロCD4 Tヘルパー細胞分化アッセイの概略図を示す。図18Bは、IL-2、TGFβ1および種々のFc融合タンパク質の存在下での5日間の分化後のCD103およびCD103FoxP3 制御性T細胞の頻度を示すグラフを示す。図18Cは、IL-2およびTGFβ1、ならびに種々のFc融合タンパク質の存在下における15時間時点での刺激されたCD4 T細胞上のAkt/mTOR経路キナーゼ染色および蛍光強度の中央値を示すヒストグラムを示す。図18Dは、IL-2および種々の濃度のTGFβ1の存在下における20分時点での分化した制御性CD4 T細胞上のSTAT1/5リン酸化および蛍光強度の中央値を示すヒストグラムを示す。エラーバーは平均+/-SEMを表す。多重比較用のTukey検定を用いる一元配置ANOVA、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001;対照群はFc(IgG2a)である。
図18-2】図18-1の続き。
図18-3】図18-2の続き。
図19-1】図19A、19B、19C、19D、19Eおよび19Fは、Btnl2がインビトロで、PDL1と同様にTh17細胞の分化をFoxP3 制御性T細胞の分化にスキューイングすることを示す。10~12週齢のWTマウス(各n=3~4)の脾臓およびリンパ節からナイーブCD4 T細胞をエンリッチし、種々のFc融合物および系列スキューイングサイトカインの存在下で、α-CD3またはα-CD3/α-CD28により5日間刺激した。5日後に培養上清を回収し、細胞をフローサイトメトリーのために処理した。図19Aおよび19Eは、(図19A)IL-2、TGFβ1、IL-6およびIL-23、または(図19E)IL-2、TGFβ1、IL-6、IL-1βおよびIL-23、ならびに種々のFc融合タンパク質の存在下における5日時点での分化後のTh17細胞およびFoxP3 制御性T細胞サブセットの頻度を示すグラフを示す。図19Bおよび19Fは、(図19B)IL-2、TGFβ1、IL-6およびIL-23、または(図19F)IL-2、TGFβ1、IL-6、IL-1βおよびIL-23、ならびに種々のFc融合タンパク質の存在下における15時間時点での刺激されたCD4 T細胞上のAkt/mTOR経路キナーゼ染色および蛍光強度の中央値を示すヒストグラムを示す。図19Cは、示されたサイトカインの存在下における20分時点での分化したCD4 T細胞上のSTAT1/5リン酸化および蛍光強度の中央値を示すヒストグラムを示す。図19Dは、IL-2、TGFβ1、IL-6およびIL-23、ならびに種々のFc融合タンパク質の存在下での5日間のTh17細胞分化後の炎症性サイトカイン/ケモカインのレベルを示す。エラーバーは平均/-SEMを表す。多重比較用のTukeyの検定を用いる一元配置ANOVA、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001;対照群はFc(IgG2a)である。
図19-2】図19-1の続き。
図19-3】図19-2の続き。
図20A図20Aおよび20Bは、DSS誘発大腸炎を有するWTおよびBtnl2 KOマウスにおけるBtnl2-Fc融合タンパク質による処置の効果を示す、例示的な実施形態を説明している。Btnl2 KOマウスおよび同時飼育したWT同腹仔を、3% DSSを6日間投与することによって慢性DSS誘発大腸炎に供し、その後は水を6日間与えた。対照マウス(n=3)には通常の水を与えた。mBTNL2-FcおよびmFcを、第-1日、第1日、第4日、第7日および第11日に25mg/kgで腹腔内注射した。図20Aおよび20Bは、それぞれWTおよびBtnl2 KOマウスにおける体重減少を示す。データは1回の実験の代表値である。処置群当たりマウスn=8~10匹。エラーバーは平均+/-SEMを表す。Tukeyの多重比較検定を用いる二元配置ANOVAによる決定で*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001;対照群はFcである。
図20B図20Aおよび20Bは、DSS誘発大腸炎を有するWTおよびBtnl2 KOマウスにおけるBtnl2-Fc融合タンパク質による処置の効果を示す、例示的な実施形態を説明している。Btnl2 KOマウスおよび同時飼育したWT同腹仔を、3% DSSを6日間投与することによって慢性DSS誘発大腸炎に供し、その後は水を6日間与えた。対照マウス(n=3)には通常の水を与えた。mBTNL2-FcおよびmFcを、第-1日、第1日、第4日、第7日および第11日に25mg/kgで腹腔内注射した。図20Aおよび20Bは、それぞれWTおよびBtnl2 KOマウスにおける体重減少を示す。データは1回の実験の代表値である。処置群当たりマウスn=8~10匹。エラーバーは平均+/-SEMを表す。Tukeyの多重比較検定を用いる二元配置ANOVAによる決定で*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001;対照群はFcである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、炎症性障害を処置するための方法および試薬を提供し、これは一部には、ブチロフィリン様2(Btnl2)が、上皮内リンパ球(IEL)、例えば、腸γδIELの発生および維持を調節するという予想外の発見に基づく。組織常在性のγδIELは、自然免疫応答および適応免疫応答の両方を調整して、腸上皮バリアの完全性を維持する。上皮特異的なブチロフィリン様(Btnl)分子は、異なる複数のVγTCR IELの周産期発生を誘導する。しかし、個別の腸セグメントの内部でγδIELの維持を制御する機構は不明である。本開示は、Btnl2が、回腸などの小腸セグメントにおいて、γδIELの恒常的な増殖を選好的に抑制することを実証する。小腸の種々のセグメントから単離されたBtnl2-KO γδIELのハイスループット・トランスクリプトーム特徴付けにより、Btnl2が回腸γδIELの抗菌応答モジュールを調節することが明らかになった。Btnl2欠損により、回腸γδIELのTCR特異性およびTCRγ/δレパートリーの多様性が、それらの局所抗原環境に同調するように再形成された。慢性DSS誘発大腸炎の間、Btnl2-KOマウスは、結腸における炎症の増加および粘膜修復の遅延を示した。以上をまとめると、これらのデータにより、Btnl2が、部位特異的なホメオスタシスおよび炎症の手がかりに応答して、γδIELの頻度および機能、ならびにTCRの特異性を微調整することが示された。したがって、IEL(例えば、γδIEL)の発生および維持のBtnl媒介性標的化は、腸管セグメント特異的な症状を伴う腸疾患におけるそれらの免疫機能を分析するのに役立つと考えられる。
【0033】
a.炎症性障害を処置する方法
一態様では、本開示は、炎症性障害を処置する方法であって、炎症性障害を有し、かつ所定の基準値と比較して上皮内リンパ球(IEL)のレベルが上昇している対象を選択すること;および対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることによって対象におけるIELの増殖を減少させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0034】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも1つの機能喪失型一塩基多型(SNP)を、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、機能喪失型SNPを、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、1つの機能喪失型SNPを、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に有する。rs28362675は、位置chr6:32394744(GRCh38.p13)にSNPを含む。一部の実施形態では、対象は、少なくとも1つの機能喪失型SNPを、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらすrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、機能喪失型SNPを、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらすrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、1つの機能喪失型SNPを、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらすrs28362675に有する。
【0035】
一部の実施形態では、本方法は、(a)IELを含む試料を得ること;(b)試料に対してアッセイを行って、試料中のIELの数を決定すること;(c)所定の基準値と比較してIELの数が増加している対象を同定すること;および(d)対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることによって対象におけるIELの数を調節する(例えば、減少させる)ことができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与することを含む。
【0036】
一部の実施形態では、リンパ球は、CD4 T細胞、CD8 T細胞、制御性T細胞(Treg)または組織特異的T細胞を含む。一部の実施形態では、IELはγδT細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸CD8αα+ γδIELを含む。
【0037】
一部の実施形態では、炎症性障害は、腸の炎症性障害である。一部の実施形態では、炎症性障害は、免疫媒介性疾患、例えば、免疫媒介性炎症性障害である。一部の実施形態では、炎症性障害は自己免疫疾患である。一部の実施形態では、炎症性障害は、腸管関連の免疫媒介性疾患または腸管関連の自己免疫疾患である。一部の実施形態では、免疫媒介性疾患または腸管関連の自己免疫疾患は、移植片対宿主病(GVHD)(例えば、腸症状を伴うかまたは伴わないGVHD)、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、筋炎、炎症性腸疾患、胃腸炎、またはI型糖尿病を含む。腸症状の非限定的な例には、悪心、食欲不振、膨満感、消化不良、ガス、腹部膨満、下痢、疼痛、体重減少、および/または腸の苦痛の他の考えられる徴候が含まれる。
【0038】
一部の実施形態では、上記の方法は、対象におけるBtnl2のレベルもしくは活性、または腸γδIELの数を決定することを含む。決定されたBtnl2のレベルもしくは活性、または決定された腸γδIELの数を、Btnl2作用物質もしくはその組成物を対象に投与する前のBtnl2のレベルもしくは活性もしくは腸γδIELの数、または所定の基準値と比較することができる。
【0039】
Btnl2のレベルまたは活性は、タンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定するかまたは推定することによって測定することができる。タンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定するかまたは推定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Btnl2のタンパク質レベル(例えば、タンパク質発現レベル)は、SDS-PAGE、ウエスタンブロット、または免疫アッセイ(例えば、免疫ブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ)によって決定することができる。mRNAレベルは、RT-PCRによって決定することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「所定の基準値」という用語は、以下のいずれかであってよい基準値を指す:(a)Btnl2もしくはその組成物のレベルもしくは活性を上昇させるための作用物質の投与前に対象から得られるもの;(b)炎症性障害(例えば、腸管関連の炎症性障害、例えば、IBD)を有しないか、もしくは炎症性障害と診断されていない対照対象もしくは個人のグループ(この場合、平均値が基準値として使用される)から得られるもの;(c)対照集団、例えば、炎症性障害に罹患していない集団におけるBtnl2のレベルもしくは活性の平均レベルもしくはIEL(例えば、γδIEL、例えば、腸γδIEL)の数に基づいて得られるもの;または(d)炎症性障害を有する患者が含まれる個人のセットの中央値または中央値レベルに基づいて得られるもの。
【0041】
一部の実施形態では、所定の基準値を、Btnl2またはその組成物のレベルまたは活性を上昇させるための作用物質の投与に先立って、対象から得ることができる。一部の実施形態では、所定の基準値を、炎症性障害(例えば、腸管関連の炎症性障害、例えば、IBD)を有しないか、または炎症性障害と診断されていない対照対象または個人のグループから得ることができる。一部の実施形態では、所定の値は、対照集団、例えば、炎症性障害に罹患していない集団におけるBtnl2のレベルもしくは活性またはIEL(例えば、γδIEL、例えば、腸γδIEL)の数の平均レベルに基づいて得られる。一部の実施形態では、所定の値は、炎症性障害を有する患者が含まれる個人のセットの中央値または中央値レベルに基づいて得られる。
【0042】
一部の実施形態では、所定の基準値は、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるWO2013077186A1に記載されているように、フローサイトメトリー(例えば、蛍光標識細胞分取(FACS))、例えば、FACSCalibur(Becton Dickinson)またはLSRFortessa X-20 instrument(BD Biosciences)を使用して、IELの数を分析することによって決定することができる。一部の実施形態では、IEL(例えば、空腸IEL、回腸IEL、結腸IEL)の数は、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、DePaolo et al.Nature.2011 Mar 10;471(7337):220~24に記載されているように、腸上皮細胞100個当たりのIELの数(「IEL/100」)として計数して表現することができる。一部の実施形態では、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Rostami et al.Gut 2017;66:2080~86に記載されているように、腸上皮細胞100個当たりのIELの数(「IEL/100」)として計数して表現される、IELの数の所定の参照値。
【0043】
本明細書で使用される場合、「増加させる」、「上昇させる」、「上昇した」、「強化する」、および「活性化する」という用語はすべて、一般に、参照レベルと比較した、静的に有意な量での増加を指す。
【0044】
不確かさを避けるために、これらの用語は、参照レベルと比較して、少なくとも5%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%)の増加、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%の増加を意味する。一部の実施形態では、これらの用語は、参照レベルと比較して、10~20%、10~30%、10~40%、10~50%、10~60%、10~70%、10~80%、10~90%、10~100%、10~110%、10~120%、10~130%、10~140%、10~150%、10~160%、10~170%、10~180%、10~190%、10~200%、10~210%、10~220%、10~230%、10~240%、10~250%、10~260%、10~270%、10~280%、10~290%、または10~300%の増加を指すことができる。一部の実施形態では、これらの用語は、参照レベルと比較して、10~300%、20~300%、30~300%、40~300%、50~300%、60~300%、70~300%、80~300%、90~300%、100~300%、110~300%、120~300%、130~300%、140~300%、150~300%、160~300%、170~300%、180~300%、190~300%、200~300%、210~300%、220~300%、230~300%、240~300%、250~300%、260~300%、270~300%、280~300%、または290~300%の増加を指すことができる。一部の実施形態では、これらの用語は、参照レベルと比較して、少なくとも2倍への、少なくとも3倍への、少なくとも4倍への、少なくとも5倍への、少なくとも10倍への、またはそれ以上の増加を指すことができる。
【0045】
一部の実施形態では、本方法は、所定の基準値と比較して上昇したレベルのIELを有する対象を同定または選択することを含み得る。「所定の値」および「所定のレベル」という用語は、本明細書で互換的に使用される。同様に、「基準値」および「基準レベル」という用語は、本明細書で互換的に使用される。所定の基準値と比較したIELの上昇したレベルは、所定の基準値と比較して、少なくとも5%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%)の増加、例えば、所定の基準値と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%の増加、もしくは10%~100%の任意の増加;または所定の基準値と比較して、少なくとも2倍への、少なくとも3倍への、少なくとも4倍への、少なくとも5倍への、もしくは少なくとも10倍への増加、もしくは2倍~10倍もしくはそれ以上への任意の増加であり得る。
【0046】
一部の実施形態では、所定の基準値と比較したIELの「上昇した」レベルは、所定の基準値と比較して、10~20%、10~30%、10~40%、10~50%、10~60%、10~70%、10~80%、10~90%、10~100%、10~110%、10~120%、10~130%、10~140%、10~150%、10~160%、10~170%、10~180%、10~190%、10~200%、10~210%、10~220%、10~230%、10~240%、10~250%、10~260%、10~270%、10~280%、10~290%、または10~300%の増加であり得る。一部の実施形態では、所定の基準値と比較したIELの上昇したレベルは、所定の基準値と比較して、10~300%、20~300%、30~300%、40~300%、50~300%、60~300%、70~300%、80~300%、90~300%、100~300%、110~300%、120~300%、130~300%、140~300%、150~300%、160~300%、170~300%、180~300%、190~300%、200~300%、210~300%、220~300%、230~300%、240~300%、250~300%、260~300%、270~300%、280~300%、または290~300%の増加であり得る。一部の実施形態では、所定の基準値と比較したIELの上昇したレベルは、所定の基準値と比較して、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~100%、100~110%、110~120%、120~130%、130~140%、140~150%、150~160%、160~170%、170~180%、180~190%、190~200%、200~210%、210~220%、220~230%、230~240%、240~250%、250~260%、260~270%、270~280%、280~290%、または290~300%の増加であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「減少させる」、「低下させる」、および「阻害する」という用語はすべて、一般に、統計的に有意な量での減少を指す。しかし、不確かさを避けるために、「低下した」、「減少させる」、「低下させる」、または「阻害する」という用語は、参照レベルと比較して、少なくとも5%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%)の減少、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約10%の減少、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または最大で100%(例えば、参照試料と比較して存在しないレベル)を含む減少、または10~100%の任意の減少を意味する。一部の実施形態では、これらの用語は、参照レベルと比較して、10~20%、10~30%、10~40%、10~50%、10~60%、10~70%、10~80%、10~90%、10~100%、10~110%、10~120%、10~130%、10~140%、10~150%、10~160%、10~170%、10~180%、10~190%、10~200%、10~210%、10~220%、10~230%、10~240%、10~250%、10~260%、10~270%、10~280%、10~290%、または10~300%の減少を指す。一部の実施形態では、これらの用語は、10~300%、20~300%、30~300%、40~300%、50~300%、60~300%、70~300%、80~300%、90~300%、100~300%、110~300%、120~300%、130~300%、140~300%、150~300%、160~300%、170~300%、180~300%、190~300%、200~300%、210~300%、220~300%、230~300%、240~300%、250~300%、260~300%、270~300%、280~300%、または290~300%の減少を指す。一部の実施形態では、これらの用語は、参照レベルと比較して、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~100%、100~110%、110~120%、120~130%、130~140%、140~150%、150~160%、160~170%、170~180%、180~190%、190~200%、200~210%、210~220%、220~230%、230~240%、240~250%、250~260%、260~270%、270~280%、280~290%、または290~300%の減少を指す。
【0048】
「対象」および「患者」という用語は、対象が何らかの形態の処置を受けたことがあるか、または現在受けているかにかかわらず、本明細書で互換的に使用することができる。これらの用語は、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)、非ヒト霊長類(例えば、サル、例えば、カニクイザル、チンパンジーなど)、およびヒトを含むが、これらに限定されない任意の脊椎動物を指すことができる。対象は、ヒトまたは非ヒトであり得る。より例示的な態様では、哺乳動物はヒトである。
【0049】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」または「それを必要とする患者」という表現は、炎症性障害(例えば、腸管関連の炎症性障害)の1つまたはそれ以上の症状または徴候を呈する、および/または炎症性障害と診断されたヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味する。一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0050】
「処置」、「処置する」、「緩和する」、または「改善する」という用語は、本明細書で互換的に使用することができる。これらの用語は、限定されるものではないが、治療上の利益および/または予防上の利益を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療上の利益とは、処置下にある1つまたはそれ以上の疾患(例えば、炎症性疾患)、状態、または症状における処置に関連する改善または効果を意味する。予防上の利益について、作用物質またはその組成物は、特定の疾患、状態、もしくは症状を発症するリスクのある対象に、または疾患、状態、もしくは症状がまだ発現していない場合であっても、疾患の1つもしくはそれ以上の生理学的症状を報告している対象に投与することができる。
【0051】
「試料」、「試験試料」、および「患者試料」という用語は、本明細書で互換的に使用することができる。試料は、血清、尿血漿、羊水、脳脊髄液、細胞、または組織の試料であり得る。そのような試料は、患者から得られたまま直接使用することもでき、または、本明細書で考察されるような何らかの様式で、もしくは当技術分野で公知の他の方法で試料の特性を改変するために、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活性化、試薬の添加などによって前処理することもできる。本明細書で使用される「試料」および「生物学的試料」という用語は、一般に、目的の分析物、例えば、抗体を含むことについて試験される、および/またはその疑いのある生物学的材料を指す。試料は、対象からの任意の組織試料であってもよい。試料は、対象由来のタンパク質を含んでもよい。
【0052】
別の態様では、本開示は、炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法であって、(a)IBDを有し、かつ少なくとも1つの機能喪失型SNPを、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に有する対象を選択すること;および(b)対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0053】
一部の実施形態では、対象は、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらす少なくとも1つの機能喪失型SNPをrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、機能喪失型SNPを、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらすrs28362675に有する。一部の実施形態では、対象は、1つの機能喪失型SNPを、Glu454Ter(終止コドン)突然変異をもたらすrs28362675に有する。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。
【0054】
一部の実施形態では、本方法は、(i)核酸を含む試料を対象から得ること;(ii)試料を分析して、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に少なくとも1つの(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つの)機能喪失型SNPの存在を検出すること;(iii)Btnl2遺伝子におけるrs28362675に少なくとも1つの(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つの)機能喪失型SNPを有する対象を、炎症性腸疾患を有するかまたは発症するリスクが高いものとして同定すること;および(iv)対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができるBtnl2作用物質の治療有効量を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、試料を分析する工程は、試料に対して遺伝子型判定アッセイを行うことを含む。
【0055】
別の態様では、本開示は、IBDを有するかまたは発症するリスクが高い対象を同定する方法をさらに提供する。一部の実施形態では、本方法は、(i)核酸を含む試料を対象から得ること;(ii)試料を分析して、Btnl2遺伝子におけるrs28362675に少なくとも1つの(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つの)機能喪失型SNPの存在を検出すること;および(iii)Btnl2遺伝子におけるrs28362675に少なくとも1つの(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つの)機能喪失型SNPを有する対象を、IBDを有するかまたは発症するリスクが高いものとして同定することを含む。
【0056】
一部の実施形態では、試料を分析する工程は、試料に対して遺伝子型判定アッセイを行うことを含む。
【0057】
別の態様では、本開示はまた、対象におけるIELの数を減少させる方法であって、Btnl2作用物質の有効量をそれを必要とする対象に投与することを含み、Btnl2作用物質が、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができる、方法も提供する。
【0058】
一部の実施形態では、リンパ球は、CD4 T細胞、CD8 T細胞、制御性T細胞(Treg)または組織特異的T細胞を含む。一部の実施形態では、IELはγδT細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸CD8αα+ γδIELを含む。
【0059】
b.炎症性障害を処置するためのBtnl2作用物質
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。
【0060】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、Btnl2-Fc融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、またはIgMに由来し得る免疫グロブリンFc断片である。一部の実施形態では、免疫グロブリンFc断片の各ドメインは、ドメインのハイブリッドであることができ、各ドメインは、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンに由来する異なる起源を有し得る。一部の実施形態では、免疫グロブリンFc断片は、同じ起源を有するドメインを含む一本鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体であり得る。IgGは、IgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4サブクラスに分けることができ、それらの組合せまたはハイブリッドを含むことができる。
【0061】
一部の実施形態では、Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む。
【0062】
【表1-1】
【表1-2】
【0063】
本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、第2の分子(「親」分子とも呼ばれる)に関連する第1の分子を指す。変異体分子は、親分子に由来すること、親分子から単離されること、親分子に基づくこと、または親分子と相同であることができる。変異体分子は、親分子の断片を含むことができる。例えば、システイン置換を有するBtnl2突然変異体を含むBtnl2の変異体形態は、野生型Btnl2の変異体である。変異体という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれかを記述するために使用することができる。
【0064】
タンパク質に適用される場合、変異体ポリペプチドは、元の親ポリペプチドと完全なアミノ酸配列同一性を有することもでき、または親タンパク質に対して100%未満のアミノ酸同一性を有することもできる。例えば、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較して、アミノ酸配列が少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。ポリペプチド変異体には、親ポリペプチド全体を含み、追加の融合アミノ酸配列をさらに含むポリペプチドが含まれる。また、ポリペプチド変異体には、親ポリペプチドの部分または部分配列であるポリペプチド、例えば、本明細書に開示されるポリペプチドの特有の部分配列(例えば、標準的な配列比較およびアラインメント手法によって決定されるもの)も、本開示の範囲に含まれる。
【0065】
一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも50%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも60%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも70%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも80%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも90%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも95%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも98%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸配列の変異体は、元のアミノ酸配列と比較してアミノ酸配列が少なくとも99%またはそれ以上同一である第2のアミノ酸配列であり得る。
【0066】
別の態様では、ポリペプチド変異体は、親アミノ酸配列に対して軽微な、些細な、または重要でない変化を含むポリペプチドを含む。例えば、軽微な、些細な、または重要でない変化には、ポリペプチドの生物学的活性にほとんどまたは全く影響を及ぼさず、非機能性ペプチド配列の付加を含む、機能的に同一なポリペプチドを生じるアミノ酸変化(置換、欠失、および挿入を含む)が含まれる。他の態様では、本開示の変異体ポリペプチドは、親分子の生物学的活性を変化させる。当業者は、開示されたポリペプチドの多くの変異体が本開示の範囲に含まれることを理解するであろう。
【0067】
一部の態様では、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置のわずかな比率、例えば、典型的には約10%未満、約5%未満、4%未満、2%未満または1%未満を変化、付加または欠失させる変異体分子を含むことができる。
【0068】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置の約10%未満を変化、付加または欠失させる変異体分子を含むことができる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置の約5%未満を変化、付加または欠失させる変異体分子を含むことができる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置の約4%未満を変化、付加または欠失させる変異体分子を含むことができる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置の約2%未満を変化、付加または欠失させる変異体分子を含むことができる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド変異体は、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置の約1%未満を変化、付加または欠失させる変異体分子を含むことができる。
【0069】
本明細書で使用されるタンパク質の「機能的変異体」は、そのタンパク質の活性を少なくとも部分的に保持する、そのようなタンパク質の変異体を指す。機能的変異体には、多型を含む突然変異体(それは挿入、欠失、または置換突然変異体であり得る)などが含まれる。また、機能的変異体には、そのようなタンパク質と、別の、通常は無関係な核酸、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドとの融合産物も含まれる。機能的変異体は、天然に存在するものでもよく、または人工的なものであってもよい。
【0070】
一部の実施形態では、Btnl2変異体は、1つまたはそれ以上の保存的改変を含むことができる。1つまたはそれ以上の保存的改変を有するBtnl2変異体は、所望の機能的特性を保持し得る可能性があり、これは当技術分野で公知の機能的アッセイを使用して試験することができる。本明細書で使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸改変であって、そのアミノ酸配列を含むタンパク質の結合特性に重大な影響を及ぼさないかまたは変化させないものを指す。そのような保存的改変には、アミノ酸置換、付加、および欠失が含まれる。改変は、当技術分野で公知の標準的な手法、例えば、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発によって導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖を有するもの(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電極性側鎖を有するもの(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン);非極性側鎖を有するもの(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン);β分枝側鎖を有するもの(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン);および芳香族側鎖を有するもの(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。1つまたはそれ以上の保存的改変を有するBtnl2タンパク質は、所望の機能的特性を保持し得る可能性があり、これは当技術分野で公知の機能的アッセイを使用して試験することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸改変であって、そのアミノ酸配列を含むタンパク質の結合特性に重大な影響を及ぼさないかまたは変化させないものを指す。そのような保存的改変には、アミノ酸置換、付加、および欠失が含まれる。改変は、当技術分野で公知の標準的な手法、例えば、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発によって導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖を有するもの(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電極性側鎖を有するもの(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン);非極性側鎖を有するもの(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン);β分枝側鎖を有するもの(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン);および芳香族側鎖を有するもの(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列間のパーセント相同性は、2つの配列間のパーセント同一性と等価である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、以下の非限定的な例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0073】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.4:11~17(1988)、これは参照によってその全体が本明細書に組み入れられる)を使用し、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)内のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch(J.Mol.Biol.48:444~453(1970)、これは参照によってその全体が本明細書に組み入れられる)のアルゴリズムを使用し、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびにギャップ加重16、14、12、10、8、6または4、および長さ加重1、2、3、4、5または6を使用して決定することができる。
【0074】
追加的または代替的に、本開示のタンパク質配列は、例えば、関連する配列を同定するために、公開データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403~10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTタンパク質検索を、スコア=50、ワード長=3のXBLASTプログラムを用いて行って、本開示の抗体分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップありでのアラインメントを得るために、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389~3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照)。
【0075】
一部の実施形態では、Btnl2変異体を、検出タグまたは検出マーカー(例えば、放射性核種、蛍光色素)にコンジュゲートまたは連結させることができる。一部の実施形態では、検出タグは、アフィニティータグであり得る。本明細書で使用される「アフィニティータグ」という用語は、ポリペプチドに結合した部分に関し、これはポリペプチドを生化学的混合物から精製することを可能にする。アフィニティータグは、アミノ酸配列からなることもでき、または翻訳後改変によって化学基が結び付いたアミノ酸配列を含むこともできる。アフィニティータグの非限定的な例としては、His-タグ、CBP-タグ(CBP:カルモジュリン結合タンパク質)、CYD-タグ(CYD:共有結合的であるが解離可能なNorpDペプチド)、Strep-タグ、StrepII-タグ、FLAG-タグ、HPC-タグ(HPC:プロテインCの重鎖)、GST-タグ(GST:グルタチオンSトランスフェラーゼ)、Avi-タグ、ビオチン化タグ、Myc-タグ、3xFLAGタグ、SUMOタグ、およびMBP-タグ(MBP:マルトース結合タンパク質)が挙げられる。アフィニティータグのさらなる例は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Kimple et al.,Curr Protoc Protein Sci.2013 Sep 24;73:Unit 9.9に見出すことができる。
【0076】
一部の実施形態では、検出タグは、Btnl2変異体のN末端および/またはC末端にコンジュゲートまたは連結させることができる。検出タグおよびアフィニティータグを、1つまたはそれ以上のアミノ酸によって隔てることもできる。一部の実施形態では、検出タグを、切断可能な要素を介してBtnl2変異体にコンジュゲートまたは連結させることができる。本開示の文脈において、「切断可能な要素」という用語は、化学薬品または酵素手段、例えば、プロテアーゼによる切断を受けやすいペプチド配列に関する。プロテアーゼは、配列特異的であってもよく(例えば、トロンビン)、または限定的な配列特異性を有してもよい(例えば、トリプシン)。また、切断可能な要素IおよびIIを、検出タグまたはポリペプチドのアミノ酸配列に含めることもでき、特に検出タグまたはポリペプチドの最後のアミノ酸がKまたはRである場合にはそうである。
【0077】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲート」または「コンジュゲーション」または「連結された」という用語は、本明細書で使用される場合、2つまたはそれ以上の実体が結び付いて1つの実体を形成することを指す。コンジュゲートは、ペプチド-小分子コンジュゲート、ならびにペプチド-タンパク質/ペプチドコンジュゲートの両方を範囲に含む。
【0078】
「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」という用語は、2つまたはそれ以上のポリペプチド配列を共に連結することによって作成されるタンパク質を意味する。本開示の範囲に含まれる融合ポリペプチドには、第1のポリペプチドをコードする核酸配列を第2のポリペプチドをコードする核酸配列と連結させて単一のオープンリーディングフレームを形成するキメラ遺伝子構築物の翻訳産物が含まれる。換言すると、「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」は、ペプチド結合によって、またはいくつかのペプチドを介して連結された2つまたはそれ以上のタンパク質による組換えタンパク質である。融合タンパク質はまた、2つのドメイン間にペプチドリンカーを含んでもよい。
【0079】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む。本明細書で使用される場合、「組織特異的シグナル」という用語は、Btnl2作用物質を、特定の組織に標的化することができる分子を指す。例えば、組織特異的シグナルは、特定の組織(例えば、腸)において発現されるタンパク質(例えば、粘膜血管アドレシン細胞接着分子1(MADCAM1))に結合する分子であり得る。組織特異的シグナルは、特定の組織(例えば、腸)において発現される(例えば、粘膜血管アドレシン細胞接着分子1(MADCAM1))に特異的に結合するシグナルペプチドまたは抗体であり得る。
【0080】
一部の実施形態では、組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤または抗MADCAM1抗体を含む。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質またはその断片を含む融合タンパク質、および抗MADCAM1抗体、例えば、抗MAdCAM-1mAbであるMECA-367(ATCC受託番号HB-9478、定期的なGenBank配列アップデートを含む)、またはその関連部分はその全体が参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許出願第20180140601(A1)号に記載されたMECA-367を含む。
【0081】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む。一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸(例えば、DNA、RNA)を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0082】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、「発現構築物」と同義であり、標的細胞において動作可能に関連する特定の遺伝子を導入して、その発現を誘導するために使用されるDNA分子を指す。この用語には、自己複製性核酸構造としてのベクター、ならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。本開示の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、安定なmRNAの大量の転写を可能にする。発現ベクターが標的細胞内に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子またはタンパク質が、細胞の転写および/または翻訳機構によって産生される。一実施形態では、本開示の発現ベクターは、Btnl2またはその変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0083】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、アゴニスト活性を有するBtnl2作用物質である。「アゴニスト」という用語は、Btnl2経路のアゴニズムを引き起こして、細胞における応答、例えば、BTNL2受容体を発現する免疫細胞の抑制を引き起こす化合物を指す。Btnl2アゴニストは、内因性リガンド(Btnl2)の作用を模倣し、その結果、内因性リガンドによってもたらされるものに類似する生理学的応答を生じさせる。この用語は、それを必要とする対象に投与された場合に、Btnl2媒介性シグナル伝達経路の活性のアップレギュレーションおよび/または上昇を引き起こすBtnl2作用物質(例えば、Btnl2変異体/断片、Btnl2を含む融合タンパク質、またはBtnl2模倣物)を含む。一部の実施形態では、この用語は、対象に投与された場合にT細胞の数または活性の減少を導くBtnl2作用物質を含む。
【0084】
一部の実施形態では、Btnl2のレベルまたは活性を上昇させるためのBtnl2作用物質を、組成物、例えば、医薬組成物として提供することができる。組成物は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される、Btnl2タンパク質またはその変異体の1つまたは組合せを含むことができる。一部の実施形態では、そのような組成物は、1つのBtnl2変異体または(例えば、2つまたはそれ以上の異なる)Btnl2変異体の組合せを含むことができる。例えば、組成物は、異なる遺伝子改変を有するBtnl2変異体の組合せを含むことができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「組成物」または「医薬組成物」という用語は、本開示において有用な少なくとも1つの構成成分と、他の構成成分、例えば、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤との混合物を指す。医薬組成物は、本開示の1つまたはそれ以上の構成成分の生物への投与を容易にする。
【0086】
Btnl2(例えば、Btnl2タンパク質またはその変異体、Btnl2アゴニスト)のレベルまたは活性を上昇させるためのBtnl2作用物質の医薬組成物または治療用製剤は、所望の純度を有するBtnl2作用物質を、適宜、生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で混合することによって調製することができる。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して毒性がないものであり、これには、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメソニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジングルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む;単糖類、二糖類、および他の糖質;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN、PLURONIC、もしくはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0087】
製剤はまた、処置される特定の適応症に対して必要な2つまたはそれ以上の活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する活性成分を含んでもよい。例えば、製剤は、別の抗炎症剤をさらに含んでもよい。そのような分子は、意図される目的に対して有効な量で組み合わされて好適に存在する。
【0088】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション手法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル、およびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルの中に、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中で封入することができる。そのような手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0089】
徐放性製剤を調製することもできる。徐放性製剤の好適な例には、Btnl2(例えば、Btnl2タンパク質またはその変異体)のレベルまたは活性を上昇させるためのBtnl2作用物質を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、マトリックスは成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ-d(-)-3-ヒドロキシ酪酸(PHB)が含まれる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸のようなポリマーは、100日間以上にわたる分子の放出を可能にするが、ある種のヒドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。カプセル化された場合、Btnl2作用物質は体内に長期間留まり、37℃で水分に曝露される結果として変性または凝集し、生物学的活性の喪失および免疫原性の変化が生じる可能性がある。関与する機序に応じて、安定化のために合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機序がチオール-ジスルフィド交換による分子間S-S結合形成であることが発見された場合、安定化は、スルフヒドリル残基を改変する、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を制御すること、適切な添加剤を使用すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成することができる。
【0090】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならず、これは滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に達成することができる。滅菌注射用溶液は、必要に応じて、上記に列挙された成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み入れて、その後に滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上記に列挙されたものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製の方法は、真空乾燥および冷凍乾燥(凍結乾燥)であり、これにより、あらかじめ滅菌濾過されたその溶液から、活性成分に任意のさらなる所望の成分が加わった粉末が生成される。
【0091】
単一の剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象および特定の投与の様式に応じて異なると考えられる。単一の剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、この量は、100%のうち、薬学的に許容される担体と組み合わされた上で、活性成分の約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%の範囲である。
【0092】
c.投与および投薬レジメン
Btnl2(例えば、Btnl2タンパク質またはその変異体)のレベルまたは活性を上昇させるためのBtnl2作用物質は、単回用量として投与することができ、またはより一般的には複数回投与することができる。単回投薬間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3か月毎または毎年であり得る。また、患者におけるBtnl2タンパク質またはその変異体の血中濃度を測定することによって指定される通りに間隔が不規則であることもあり得る。
【0093】
Btnl2作用物質またはその医薬組成物は、当技術分野で公知の種々の方法の1つまたはそれ以上を使用して、1つまたはそれ以上の投与の経路を介して投与することができる。当業者には理解されるであろうが、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なると考えられる。例えば、Btnl2タンパク質またはその変異体の投与には、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口的な投与の経路、例えば、注射または注入によるものが含まれる。本明細書で使用される場合、「非経口的投与」という語句は、通常は注射による、腸内および局所への投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。あるいは、Btnl2タンパク質またはその変異体を、非経口的でない経路、例えば、局所的、表皮的または粘膜的な投与の経路、例えば、鼻腔内、経口的、膣内、直腸内、舌下的または局所的に投与することもできる。
【0094】
一部の実施形態では、Btnl2(例えば、Btnl2タンパク質またはその変異体)のレベルまたは活性を上昇させるためのBtnl2作用物質または医薬組成物は、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮に、徐放性に、制御放出性に、遅延放出性に、坐薬として、または舌下に投与することができる。
【0095】
投薬レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療反応)が得られるように調整される。例えば、単回ボーラスを投与することができ、数回に分割した用量を経時的に投与することができ、または、治療状況の緊急性によって指示される通りに用量を相応に減少もしくは増加させることができる。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口的組成物を単位剤形として製剤化することは特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、処置される対象に対する単位用量として好適な物理的に別個の単位を指す;各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性成分を、必要な医薬担体と共に含む。本開示の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の特有の特性および達成しようとする特定の治療効果、ならびに(b)個体における過敏性の処置のためにそのような活性成分を配合する技術に固有の制限によって規定され、それらに直接依存する。
【0096】
Btnl2のレベルまたは活性を上昇させるためのBtnl2作用物質の投与について、投与量は、約0.0001~100mg/kg宿主体重(例えば、0.001、0.01、0.1、0.5、1、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100mg/kg)、より一般的には0.01~5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重もしくは10mg/kg体重であり得るか、または1~10mg/kg体重の範囲内であり得る。例示的な処置レジメンは、週に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1か月毎に1回、3か月毎に1回、または3~6か月毎に1回の投与を伴う。本開示のBtnl2タンパク質またはその変異体の好ましい投薬レジメンには、静脈内投与を介した1mg/kg体重または3mg/kg体重が含まれ、Btnl2タンパク質またはその変異体は、以下の投薬スケジュールのうちの1つを使用して投与される:(i)4週間毎に6回の投薬、その後は3か月毎;(ii)3週間毎;および(iii)3mg/kg体重を1回、その後は3週間毎に1mg/kg体重。
【0097】
あるいは、Btnl2作用物質を徐放性製剤として投与することもでき、その場合には、より低頻度の投与が必要とされる。投与量および頻度は、患者におけるBtnl2作用物質の半減期に応じて異なる。投与量および投与の頻度は、処置が予防的であるか治療的であるかに応じて異なり得る。予防用途では、比較的低い用量が、比較的まばらな間隔で長期間にわたって投与される。一部の患者は、残りの生涯にわたって処置を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が軽減するかまたは停止するまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされることがある。その後、患者に予防的レジメンを投与することができる。
【0098】
組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与の様式に関して所望の治療反応を達成するために有効な活性成分の量が得られるように変化させることができる。選択される投与量レベルは、使用される本開示の特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の活性成分の排泄速度、処置の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態および以前の治療歴、ならびに医学分野で周知である同様の因子を含む、種々の薬物動態学的因子に依存する。
【0099】
本明細書で使用される場合、「有効量」、「有効用量」、および「有効投与量」という用語は、所望の効果を達成するか、または少なくとも部分的に達成するのに十分な量を指す。薬剤または治療剤の「治療有効量」または「治療有効投与量」は、単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度および期間の増加、または疾患の苦痛による障害もしくは身体障害の予防によって立証される疾患の消退を促進する、薬剤の任意の量である。薬剤/作用物質の「予防有効量」または「予防有効投与量」は、単独で、または別の治療剤と組み合わせて、疾患を発症するリスクまたは疾患の再発を起こすリスクのある対象に投与された場合に、疾患の発症または再発を阻害する薬剤の量である。疾患の消退を促進するか、または疾患の発症もしくは再発を阻害する治療剤または予防剤の能力は、当業者に公知の種々の方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける効能を予測するための動物モデル系において、またはインビトロアッセイで作用物質の活性をアッセイすることによって、評価することができる。
【0100】
本明細書に開示される医薬組成物は、当技術分野で公知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、本開示の治療用医薬組成物は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5399163号、同第5383851号、同第5312335号、同第5064413号、同第4941880号、同第4790824号、および同第4596556号に開示されているデバイスのような無針皮下注射デバイスを使用して投与することができる。本開示に関連して有用な周知のインプラントおよびモジュールの例には、米国特許第4487603号、同第4486194号、同第4447233号、同第4447224号、同第4439196号、および同第4475196号に記載されているものが含まれ、これらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。他の多くのそのようなインプラント、送達システム、およびモジュールが、本開示と共に使用するのに好適であり、当業者に公知である。
【0101】
一部の実施形態では、対象における炎症性障害を処置する方法は、本明細書に記載されるように、第2の治療剤または療法を対象に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗炎症剤である。
【0102】
本明細書で使用される場合、「同時投与」および「同時投与される」という用語は、少なくとも2つの作用物質または療法を対象に投与することを指す。一部の実施形態では、2つまたはそれ以上の作用物質/療法の同時投与は同時である。他の実施形態では、第1の作用物質/療法は、第2の作用物質/療法の前に施される。当業者は、使用されるさまざまな作用物質/療法の製剤化および/または投与の経路が変化し得ることを理解している。
【0103】
一部の実施形態では、第2の治療剤、例えば、抗炎症剤は、第2の治療剤の前、後、または同時に対象に投与される。
【0104】
d.抗菌反応を誘発する方法
別の態様では、本開示は、対象において抗菌反応を誘発する方法であって、Btnl2作用物質の有効量を対象に投与することを含む方法をさらに提供し、Btnl2作用物質は、対象におけるBtnl2のレベルまたは活性を上昇させることができる。抗菌反応は、細菌、ウイルス、原生動物、および真菌のような微生物を死滅させること、または増殖を遅らせることができる。
【0105】
一部の実施形態では、IELはγδT細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδ上皮内リンパ球(IEL)を含む。一部の実施形態では、腸γδIELは、空腸γδIEL、回腸γδIEL、結腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは回腸CD8αα+ γδIELを含む。
【0106】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体、またはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、Btnl2タンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号1~3のアミノ酸配列を含む。
【0107】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、組織特異的シグナルをさらに含む。一部の実施形態では、組織特異的シグナルは、MADCAM1阻害剤または抗MADCAM1抗体を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、Btnl2タンパク質またはその変異体、および抗MADCAM1抗体を含む。
【0108】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを含む。
【0109】
一部の実施形態では、Btnl2作用物質は、Btnl2タンパク質もしくはその変異体をコードするかまたはBtnl2タンパク質もしくはその変異体を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸(例えば、DNAまたはRNA)を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0110】
e.Btnl2アゴニストを同定する方法
さらに別の態様では、本開示は、対象におけるIELを低下させることができるBtnl2作用物質を同定するための方法であって、(a)Btnl2のレベルもしくは活性を上昇させることができるかまたはBtnl2アゴニスト活性を有するBtnl2作用物質のある量を対象に投与すること;(b)対象から得られた試料に対してアッセイを行って、試料中のIELの数を決定すること;および(c)対象において所定の基準値と比較してIELの数が増加している場合に、Btnl2作用物質を、対象におけるIELを減少させる能力があるものとして同定することを含む方法を提供する。
【0111】
一部の実施形態では、リンパ球は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、制御性T細胞(Treg)または組織特異的T細胞を含む。一部の実施形態では、IELは腸γδIELを含む。一部の実施形態では、腸γδIELは十二指腸γδIEL、空腸γδIEL、回腸γδIEL、またはそれらの組合せを含む。
【0112】
Btnl2のレベルまたは活性は、タンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定するかまたは推定することによって測定することができる。タンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定するかまたは推定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Btnl2のタンパク質レベル(例えば、タンパク質発現レベル)は、SDS-PAGE、ウエスタンブロット、または免疫アッセイ(例えば、免疫ブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ)によって決定することができる。mRNAレベルは、RT-PCRによって決定することができる。
【0113】
Btnl2のレベルを測定することは、タンパク質自体をアッセイすることによって(ウエスタンブロット、ELISA、RIA、および当業者に公知の他の手法などによって)、これらのタンパク質をコードするmRNAをアッセイすることによって(定量的PCR、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、RNAドットブロット、および当業者に公知の他の手法などによって)、またはBtnl2の遺伝子の調節エレメントの活性をアッセイすることによって行うことができる。例えば、調節エレメントの活性は、レポーターをコードするcDNA(ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、または容易にアッセイすることができる他のレポーター遺伝子など)に結合されたプロモーター、エンハンサー、および/またはイントロンエレメント由来のDNAセグメントからなるレポーター構築物によって評価することができる。これらのレポーター構築物は、安定にまたは一過性に細胞にトランスフェクトすることができる。
【0114】
一部の実施形態では、本方法は、試験細胞および/または対照細胞を培養するかまたは増大させることを含み得る。「培養すること」または「増大させること」という用語は、細胞が増殖し、老化を回避することができる条件下で細胞を維持または培養することを指す。例えば、細胞を、場合により1つまたはそれ以上の増殖因子を含む培地、すなわち、増殖因子カクテル中で培養することができる。一部の実施形態では、細胞培養培地は、規定された細胞培養培地である。細胞培養培地は、ネオ抗原ペプチドを含むことができる。安定な細胞株を、細胞の継続的な増殖を可能にするように樹立することができる。
【0115】
本開示による組成物および方法の詳細な説明を理解するのを助けるために、本開示のさまざまな態様の明白な開示を容易にする目的で、いくつかの明確な定義が提供される。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0116】
「作用物質」という用語は、本明細書において、生物学的材料、例えば、細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に哺乳動物)の細胞もしくは組織から作製される、化合物、化合物の混合物、生体高分子(例えば、核酸、抗体、タンパク質またはその一部、例えば、ペプチド)、または抽出物を表すために使用される。そのような作用物質の活性は、それを「治療剤」として好適なものにすることができ、それは対象において局所的または全身的に作用する生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質(または複数の物質)である。
【0117】
「治療剤」、「治療能力のある作用物質」または「処置剤」という用語は、本明細書で互換的に使用することができ、対象に投与した場合に何らかの有益な効果を与える分子または化合物を指す。有益な効果には、診断決定を可能にすること;疾患、症状、障害または病的状態の改善;疾患、症状、障害または状態の発症の低下または予防;および疾患、症状、障害または病的状態に全体的に対抗することが含まれる。
【0118】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用することができ、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖状または分枝状であってよく、改変アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸が介在してもよい。この用語はまた、改変されたアミノ酸ポリマー;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、ペグ化、または任意の他の操作、例えば、標識構成成分とのコンジュゲーションを範囲に含む。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣物を含む、天然および/もしくは非天然のアミノ酸または合成アミノ酸を含む。
【0119】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、DNA分子(例えば、限定されないが、cDNAまたはゲノムDNA)またはRNA分子(例えば、限定されないが、mRNA)を指し、DNA類似体またはRNA類似体を含む。DNA類似体またはRNA類似体は、ヌクレオチド類似体から合成することができる。DNA分子またはRNA分子は、天然には存在しない部分、例えば、改変塩基、改変骨格、RNA中のデオキシリボヌクレオチドなどを含むことができる。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。
【0120】
「動作可能に連結された」という用語は、制御配列と異種核酸配列との間の機能的連結であって後者の発現をもたらすものを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と動作可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に動作可能に連結されている。一般に、動作可能に連結されたDNA配列は連続しており、必要な場合には、同じリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を接合する。
【0121】
「リンカー」という用語は、2つまたはそれ以上の実体を接合するために使用される任意の手段、実体、または部分を指す。リンカーは、共有結合リンカーまたは非共有結合リンカーであり得る。共有結合リンカーの例には、共有結合、または連結されるタンパク質もしくはドメインの1つもしくはそれ以上に共有結合性に結び付いたリンカー部分が含まれる。リンカーはまた、非共有結合、例えば、プラチナ原子などの金属中心を介した有機金属結合でもあり得る。共有結合については、炭酸誘導体を含むアミド基、エーテル、有機および無機エステルを含むエステル、アミノ、ウレタン、尿素などのさまざまな官能基を使用することができる。連結をもたらすために、ドメインを酸化、ヒドロキシル化、置換、還元などによって改変して、カップリングのための部位を得ることができる。コンジュゲーションのための方法は当業者に周知であり、本開示における使用のための範囲に含まれる。リンカー部分には、化学的リンカー部分、または例えば、ペプチドリンカー部分(リンカー配列)が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
「単離された」核酸分子またはポリヌクレオチドは、その天然の環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えば、ベクター中に含まれる治療用ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内に維持される組換えポリヌクレオチド、または溶液中の(部分的または実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたポリヌクレオチドには、通常はそのポリヌクレオチドを含む細胞内に含まれるポリヌクレオチド分子が含まれるが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。単離されたRNA分子には、本開示のインビボまたはインビトロRNA転写物、ならびにプラスおよびマイナスの鎖形態ならびに二本鎖形態が含まれる。単離されたポリヌクレオチドまたは核酸には、本開示によれば、合成的に生成されたそのような分子がさらに含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、もしくは転写ターミネーターであってもよく、または調節エレメントを含んでもよい。
【0123】
核酸またはその断片に言及する場合の「実質的同一性」または「実質的に同一な」という用語は、別の核酸(またはその相補鎖)と、適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴って最適にアラインメントされた場合に、以下に考察するように、配列同一性の任意の周知のアルゴリズム、例えば、FASTA、BLASTまたはGAPによる測定で、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%にヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参照核酸分子に対して実質的同一性を有する核酸分子は、特定の例において、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同一であるかまたは実質的に類似するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0124】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ加重を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントされた場合に、少なくとも90%の配列同一性、または少なくとも95%、98%もしくは99%の配列同一性を有することを意味する。一部の実施形態では、この用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ加重を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントされた場合に、少なくとも95%の配列同一性を有することを意味する。一部の実施形態では、この用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ加重を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントされた場合に、少なくとも98%の配列同一性を有することを意味する。一部の実施形態では、この用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップ加重を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントされた場合に、少なくとも99%の配列同一性を有することを意味する。一部の実施形態では、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換による違いである。
【0125】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、類似性のパーセントまたは度合いを、置換の保存的性質を補正するために上方に調整することができる。この調整を行うための手段は当業者に周知である。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307~331を参照されたい。
【0126】
本明細書で使用される場合、「相同性」は、位置的同一性(すなわち、配列類似性または同一性)のパーセントの点からの、2つまたはそれ以上の核酸および/またはアミノ酸配列間の類似性のレベルを指す。相同性はまた、異なる核酸またはタンパク質間の類似した機能的特性という考え方も指す。本明細書で開示されるヌクレオチド配列またはポリペプチドの相同体は、本明細書で開示されるヌクレオチド配列またはポリペプチドに対して実質的な配列同一性(例えば、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%)を有し得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「遺伝子型判定」は、ゲノム内部の1つまたはそれ以上の位置での細胞および/または対象の特定のアレル組成を、例えば、その位置での核酸配列を決定することによって決定するプロセスを指す。遺伝子型判定は、核酸分析および/または核酸レベルでの分析、例えば、シークエンシングを指す。
【0128】
本明細書で使用される場合、「シークエンシング」は、DNA(デオキシリボ核酸)もしくはRNA(リボ核酸)の鎖におけるヌクレオチド塩基の正確な順序、またはタンパク質におけるアミノ酸残基もしくはペプチドの正確な順序の決定を指す。核酸シークエンシングは、サンガーシークエンシングまたは次世代ハイスループットシークエンシングを使用して行うことができる。
【0129】
本明細書で使用される場合、「次世代シークエンシング」は、数千から数百万のシークエンシング反応を並行して行って読み取ることから、従来のシークエンシング方法(例えば、サンガーシークエンシング)で可能な速度を上回る速度でオリゴヌクレオチドをシークエンシングする能力を有するオリゴヌクレオチドシークエンシング技術を指す。次世代シークエンシング方法/プラットフォームの非限定的な例には、超並列シグネチャーシークエンシング(Lynx Therapeutics);454パイロシークエンシング(454 Life Sciences/Roche Diagnostics);固相可逆的ダイターミネーターシークエンシング(Solexa/Illumina):SOLiD技術(Applied Biosystems);Ion半導体シークエンシング(ION Torrent);DNAナノボールシークエンシング(Complete Genomics);ならびにPacific Biosciences、Intelligen Bio-systems、Oxford Nanopore Technologies、およびHelicos Biosciencesから入手可能な技術が含まれる。次世代シークエンシング技術および関連するシークエンシングプライマーの制約および設計パラメーターは、当技術分野で周知である(例えば、Shendure et al.,“Next-generation DNA sequencing,”Nature,2008,vol.26,No.10,1135~1145;Mardis,“The impact of next-generation sequencing technology on genetics,”Trends in Genetics,2007,24(3):133~41;Su et al.,“Next-generation sequencing and its applications in molecular diagnostics”Expert Rev Mol Diagn,2011,11(3):333~43;Zhang et al.,“The impact of next-generation sequencing on genomics,”J Genet Genomics,2011,38(3):95~109;(Nyren et al.Anal Biochem 208:17175(1993);Bentley,D.R.Curr Opin Genet Dev,16:545~52(2006);Strausberg et al.Drug Disc Today,13:569~77(2008);米国特許第7,282,337号;同第7,279,563号;同第7,226,720号;同第7,220,549号;同第7,169,560号;同第6,818,395号;同第6,911,345号;米国特許出願第2006/0252077号;同第2007/0070349号;同第20070070349号を参照されたい)。言及されたすべての参考文献は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0130】
「疾患」、「障害」、および「状態」(医学的状態におけるような)という用語は、本明細書で互換的に使用することができ、正常な機能を損ない、典型的には特徴的な徴候および症状によって顕在化し、ヒトまたは動物の寿命または生活の質を低下させる、ヒトまたは動物の身体またはその一部の異常な状態(例えば、炎症性障害)を指す。
【0131】
本明細書で使用される場合、「炎症性腸疾患」は、腸における炎症の異常に関連する状態を指す。本発明に従って処置することができる炎症性腸疾患には、腸炎、全腸炎、クローン病、肉芽腫性大腸炎、回腸炎または結腸クローン病であり得るクローン病、ならびに潰瘍性大腸炎、S状結腸炎、汎大腸炎、および潰瘍性直腸炎であり得る潰瘍性大腸炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
本明細書で使用される場合、「調節する」は、生物学的状態の任意の変化、すなわち、増加、減少などを指す。
【0133】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」は、組成物の生物学的活性または特性を阻害せず、比較的非毒性である、担体または希釈剤などの材料を指し、すなわち、この材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる組成物の構成成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、個体に投与することができる。
【0134】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、本開示の化合物を、その意図された機能を遂行することができるように対象内部または対象に運ぶかまたは輸送することに関与する、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物または担体、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を含む。典型的には、そのような化合物は、1つの臓器または身体の一部分から、別の臓器または身体の一部に運ばれるかまたは輸送される。各塩または担体は、製剤の他の成分と適合性であって対象に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、以下が含まれる:糖、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;トラガカントゴム粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂および坐剤ワックス;油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンを含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;希釈剤;造粒剤;潤滑剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;香料;芳香剤;保存料;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;凝結剤;懸濁剤;界面活性剤;湿潤剤;担体;安定剤;ならびに医薬製剤中に使用される他の非毒性適合性物質、またはそれらの任意の組合せが含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、本開示の1つまたはそれ以上の構成成分の活性と適合し、対象に生理学的に許容される、任意およびすべてのコーティング、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤などを含む。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み入れることができる。
【0135】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、多細胞生物の内部ではなく、人工的環境、例えば、試験管内または反応容器内、細胞培養下などにおいて起こる事象を指す。
【0136】
本明細書で使用される場合、「インビボ」は、多細胞生物、例えば、非ヒト動物の内部で起こる事象を指す。
【0137】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形を含むことに留意されたい。
【0138】
本明細書で使用される場合、「含むこと(including)」、「含むこと(comprising)」、「含むこと(containing)」または「有すること」およびそれらの変形物は、特に記載されない限り、その後に列挙される項目およびそれらの均等物、ならびに追加の主題を範囲に含むことを意味する。
【0139】
本明細書で使用される場合、「一実施形態では」、「さまざまな実施形態では」、「一部の実施形態では」などの語句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、文脈が他のことを指示しない限り、同じ実施形態を指すことができる。
【0140】
本明細書で使用される場合、「および/または」または「/」という用語は、この用語に関連する項目のいずれか1つ、項目のいずれかの組合せ、または項目のすべてを意味する。
【0141】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、「完全に」を排除するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであってもよい。必要な場合には、「実質的に」という語を、本開示の定義から省略することができる。
【0142】
本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、目的の1つまたはそれ以上の値に適用される場合、記載された基準値に類似する値を指す。一部の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に記載されない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)、記載された基準値のいずれかの方向(より大きいかまたはより小さい)に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下の範囲内にある値の範囲を指す。本明細書で特に指示されない限り、「約」という用語は、個々の成分、組成、または実施形態の機能性の点で同等である、列挙された範囲に近い値、例えば、重量%を含むことを意図する。
【0143】
本明細書で使用される場合、「各」という用語は、項目の集合に関して使用される場合、集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内のすべての項目を指すわけではない。明示的な開示または文脈により、そうでないことが明確に示される場合には、例外が発生する可能性がある。
【0144】
本明細書で開示される場合、値のいくつかの範囲が提供される。その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値も、文脈が明らかに他のことを示さない限り、具体的に開示されることが理解される。記載された任意の値または記載された範囲内の中間値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または中間値との間のより小さな各範囲は、本開示の範囲内に含まれる。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立にその範囲に含まれるかまたは除外されてもよく、また、限界のいずれか一方、いずれでもない、または両方がより小さな範囲に含まれる各範囲も、記載された範囲内のいずれかの特に除外された限界を条件として、本開示の範囲内に含まれる。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれた限界のいずれか一方または両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0145】
本明細書で提供される任意およびすべての例、または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図したものであり、特に主張されない限り、本開示の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本開示の実施に不可欠なものとして、請求されていない要素を指示するものとは解釈されるべきではない。
【0146】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行われる。提供される方法の任意のものに関して、本方法の工程は、同時にまたは逐次的に起こり得る。本方法の工程が逐次的に起こる場合、工程は、特に記載されない限り、任意の順序で起こり得る。方法が工程の組合せを含む場合、工程のそれぞれおよびすべての組合せまたは部分組合せは、本明細書中に特に記載されない限り、本開示の範囲内に含まれる。
【0147】
本明細書に引用される各刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示と矛盾しない範囲で、その全体が参照によって組み込まれる。本明細書に開示される刊行物は、本開示の出願日以前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のいずれのものも、本開示が事前の開示によってそのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行物の日付とは異なる場合があり、それは独立に確認される必要がある場合がある。
【0148】
本明細書に記載された例および実施形態は、例示のみを目的としていること、およびそれらを考慮してさまざまな修正または変更が当業者に示唆され、それらも本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解される。
【実施例
【0149】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物をどのように作製して使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが自らの発明とみなすものの範囲を制限することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はなされているが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。特に指示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【実施例1】
【0150】
本実施例は、実施例2~12に使用される材料および方法について記載する。
【0151】
マウス
8~12週齢の雌性C57BL/6マウスを、Jackson Laboratoryから入手した。Regeneron Pharmaceuticals Inc.において、VelociGene技術(Poueymirou et al.,Nat Biotechnol,2007,25(1):91~99;Valenzuela et al.,Nat Biotechnol,2003,21(6):652~59)を使用して、C57BL/6バックグラウンドのBtnl2-KOマウスを作製し、維持した。LacZカセットを、開始コドンにインフレームに挿入し、その後ろにBtnl2遺伝子の転写を破壊してヌルアレルをもたらす選択カセットが続いた。ヘテロ接合マウスを交配して、ホモ接合型KOおよびWT同腹仔を作製した。Btnl2発現パターンをβ-ガラクトシダーゼ染色によって確認し、Btnl2標的化欠失を小腸の定量的RT-PCRおよびRNAシークエンシングによって測定した。Btnl2-KOおよびWT雌性マウスを、特に指定のない限り、すべての実験に10~17週齢で使用した。雌の同腹仔を離乳後数週間にわたり同時飼育し、疾患の設定でランダムに実験群に割り付けた。すべての動物を病原体を含まない条件下で維持し、実験はRegeneron Pharmaceuticals Inc.の施設内実験動物委員会によって承認されたプロトコールに従って実施した。
【0152】
腸上皮細胞(IEC)、上皮内リンパ球(IEL)、および粘膜固有層リンパ球(LPL)の単離
小腸を3つの均等なセグメントに分け、リンパ球の単離を以前に記載された通りに進めた(Ivanov et al.,Cell,2006.126(6):1121~33)。IECおよびIEL画分を単離するために、小腸を切断して2cmの小片にし、5mM EDTA、10mM HEPES、および2%ウシ胎児血清(FCS)を含むHBSS中で、37℃で15分間、150rpmで振盪しながら2回インキュベートした。激しくボルテックス処理した後、腸小片を100μmの細胞濾過器に通して洗浄し、40%/80% Percoll勾配(GE Healthcare)上で、20℃、2500rpmで20分間遠心単離した。IECを含む上部層を回収して洗浄し、RNA抽出のためにTrizol中に再懸濁させた。IEL画分を界面から回収して洗浄し、Miltenyi MACS緩衝液中に再懸濁させた。IEL単離後、50U/mLコラゲナーゼD(Roche)、0.25mg/mL DNアーゼI(Sigma-Aldrich)、50U/mLディスパーゼ(Corning)、および5% FCSを添加したCa2+/Mg2+を含まないHBSS中で、37℃で25分間、150rpmで振盪しながら2回インキュベートすることにより、腸小片からLPLを単離した。細胞を40%/80% Percoll勾配(GE Healthcare)で遠心単離し、LPLを界面から回収して洗浄し、MACS緩衝液中に再懸濁させて、直ちに表面細胞染色を行った。
【0153】
腸間膜リンパ節およびパイエル板の免疫表現型判定
パイエル板を全小腸から採取して、氷冷DPBSで洗浄し、50U/mLコラゲナーゼD(Roche)、0.25mg/mL DNアーゼI(Sigma-Aldrich)、50U/mLディスパーゼ(Corning)、および5% FCSと共に、37℃で25分間、150rpmで振盪しながらインキュベートした。腸間膜リンパ節を、15U/mLコラゲナーゼD(Roche)および50μg/mL DNアーゼI(Sigma-Aldrich)を含む、Ca2+/Mg2+を有するHBSS中で細断し、振盪せずに37℃で20分間インキュベートした。細胞をMACS緩衝液中に再懸濁させ、直ちに表面染色した。
【0154】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー用抗体は、Biolegend(US)、BD Biosciences(US)、TONBO Biosciences(US)、eBioscience(US)およびThermoFischer(US)から購入した。死細胞は、LIVE/DEAD fixable blue dead cell stain(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号L23105)を使用して除外した。Fc受容体は、精製抗マウスCD16/32(BD Pharmigen、クローン2.4G2、カタログ番号553142)ならびに各2%の正常マウス血清(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号015-000-120)、ラット血清(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号012-000-120)およびハムスター血清(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号007-000-120)を使用してブロックした。以下の抗体を、製造元の指示に従って染色に使用した:CD45-BV510(Biolegend、クローン番号30-F11、カタログ番号103138)、CD8α-AF700(Biolegend、クローン番号53-6.7、カタログ番号100730)、CD8β-PerCP/Cy5.5(Biolegend、クローン番号YTS156.7.7、カタログ番号126610)、TCRβ-BV711(Biolegend、クローン番号H57-597、カタログ番号109243)、TCRβ-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号H57-597、カタログ番号109220)、TCRγ/δ-PE/Cy7(Biolegend、クローン番号GL3、カタログ番号118124)、CD11b-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号M1/70、カタログ番号101226)、CD11c-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号N418、カタログ番号117324)、CD11c-AF700(Biolegend、クローン番号N418、カタログ番号117320)、CD11c-PE/Cy7(Biolegend、クローン番号N418、カタログ番号117318)、Gr1-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号RB6-8C5、カタログ番号108424)、B220-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号RA3-6B2、カタログ番号103224)、B220-AF700(Biolegend、クローン番号RA3-6B2、カタログ番号103232)、B220-BV650(Biolegend、クローン番号RA3-6B2、カタログ番号103241)、NK1.1-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号PK136、カタログ番号108724)、MHCII-BV421(Biolegend、クローン番号M5/114.15.2、カタログ番号107632)、Ly6C-PerCP/Cy5.5(Biolegend、クローン番号HK1.4、カタログ番号128012)、CD64-PE(Biolegend、クローン番号X54-5/7.1、カタログ番号139304)、CD103-FITC(Biolegend、クローン番号2E7、カタログ番号121420)、CX3CR1-ビオチン(Biolegend、クローン番号SA011F11、カタログ番号149018)、ストレプトアビジン-PE/Dazzle 594(Biolegend、カタログ番号405248)、NKp46-PE/Dazzle594(Biolegend、クローン番号29A1.4、カタログ番号137630)、CD4-PerCP/Cy5.5(Biolegend、クローン番号GK1.5、カタログ番号100434)、CD4-VF450(Tonbo Biosciences、クローン番号GK1.5、カタログ番号75-0041-U100)、c-KIT-PE-Cy7(Biolegend、クローン番号ACK2、カタログ番号135112)、CD44-APC/Cy7(Biolegend、クローン番号IM7、カタログ番号103028)、CD44-BV650(Biolegend、クローン番号IM7、カタログ番号103049)、RORγt-APC(eBiosciences、クローン番号AFKJS-9、カタログ番号17-6988-82)、FoxP3-AF700(eBioscience、クローン番号FJK-16s、カタログ番号56-5773-82)、FoxP3-eF450(eBioscience、クローン番号FJK-16s、カタログ番号48-5773-82)、LegendScreenマウスPEキット(Biolegend、カタログ番号700005)。核内染色のためには、細胞をfixable viability dyeおよび表面マーカーと共にインキュベートした後に、FoxP3/転写因子固定および透過化キット(eBioscience)を使用して、製造元の指示に従って固定および透過化を行った。
【0155】
BrdU(Sigma-Aldrich)の取込みは、3%スクロース中に0.8mg mL-1で溶解させた飲用水による連続投与の3日後に評価した。手短に述べると、IELをBD Cytofix/Cytopermaにより20℃で20分間かけて固定して洗浄し、Ca2+/Mg2+、10% FCS、および10% DMSOを添加した1×DPBSと共に20℃で10分間インキュベートした。細胞をBD Cytofix/Cytopermaにより20℃で5分間かけて再固定して洗浄し、0.5mg mL-1のDNアーゼI(Sigma-Aldrich)と共に37℃で1時間インキュベートした。細胞を、BrdU-AF647(MoBU-1)(Thermo Fisher Scientific、クローン番号MoBU-1、カタログ番号B35133)により20℃で染色して洗浄し、取得のために再懸濁させた。
【0156】
フローサイトメトリーは、LSRFortessa X-20装置(BD Biosciences)で行い、データをFlowJoソフトウェア(BD Biosciences)を使用して解析し、GraphPad Prism(商標)(GraphPad Software,Inc.)を使用してプロットした。
【0157】
インビトロIEL増殖アッセイ
96ウェル平底プレートを、1mg mL-1の精製抗マウスCD3e(Tonbo Biosciences、145-2C11、カタログ番号70-0031-M001)および60pmoleのマウスBtnl2-Fc、PDL1-FcまたはmFc(Adipogen Life Sciences)を使用して4℃で一晩コーティングし、DPBSで2回洗浄した後に、培養物にIELを添加した。新たに単離したIELを、製造元(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号C34554)の指示に従って、CellTrace CFSE Cell Proliferation色素で標識した。CFSE標識IELを、10% FCS、1% Pen/Strep、2% HEPES、1%グルタミン、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム、0.1% b-メルカプト-エタノール(Gibco)、組換えマウスIL-7(10ng mL-1、R&D)、組換えマウスIL-15(10ng mL-1、R&D)および組換えヒトIL-2(10ng mL-1、Peprotech)を添加したRPMI 1640中で、ウェル当たり細胞200,000個にて平板培養した。分析前に細胞を5% CO中にて、37℃で72~96時間インキュベートした。
【0158】
インビトロCD4 T細胞増殖アッセイ
96ウェル平底プレートを、1mg mL-1の精製抗マウスCD3e(Tonbo Biosciences、145-2C11、カタログ番号70-0031-M001)、1mg mL-1の精製抗マウスCD28(Tonbo Biosciences、37.51、カタログ番号70-0281-U500)および60pmoleのマウスBtnl2-Fc、PDL1-Fc、PDL2-FcまたはmFc(Adipogen Life Sciences)により4℃で一晩コーティングし、DPBSで2回洗浄した後に、CD4 T細胞を培養物に添加した。CD4 T細胞を、プールした脾臓およびリンパ節から、マウスCD4(L3T4)マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用してエンリッチし、CellTrace CFSE Cell Proliferation色素(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号C34554)で標識した。CFSE標識したCD4 T細胞を、10% FCS、Pen/Strep、2% HEPES、1%グルタミン、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウムおよび0.1% b-メルカプト-エタノール(Gibco)を添加したRPMI 1640中で、ウェル当たり細胞80,000~100,000にて平板培養した。分析前に細胞を5% CO中にて、37℃で72時間インキュベートした。
【0159】
インビトロCD4 Tヘルパー細胞分化アッセイ
96ウェル平底プレートを、1μg/mLの精製抗マウスCD3ε(145-2C11、TONBO BIOSCIENCES)、1μg/mLの精製抗マウスCD28(37.51、TONBO BIOSCIENCES)および60pmoleのマウスBtnl2-Fc、PDL1-Fc、CD86-Fc、CTLA4-FcまたはmFc(Adipogen Life Sciences)により4℃で一晩コーティングし、DPBSで2回洗浄した後、培養物にナイーブCD4 T細胞を添加した。ナイーブCD4 T細胞を、プールした脾臓およびリンパ節から、マウスナイーブCD4 T細胞単離キット(MILTENYI BIOTEC)を使用してエンリッチした。エンリッチされたナイーブCD4 T細胞を、30U/mLの組換えマウスIL-2(PEPROTECH)、10% FCS、Pen/Strep、2% HEPES、1%グルタミン、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム、および0.1% β-メルカプト-エタノール(GIBCO)を添加したRPMI 1640中で、ウェル当たり細胞80,000~100,000個にて平板培養した。制御性T細胞の分化のためには、ナイーブCD4 T細胞培養物に、10ng/mLの組換えマウスTGFβ1(BIOLEGEND)、10μg/mLの抗マウスIL-4(11B11、BIOLEGEND)、および10μg/mLの抗マウスIFNγ(XMG1.2、BIOLEGEND)をさらに添加した。Th17細胞の分化のためには、ナイーブCD4 T細胞培養物に、0.5ng/mLの組換えマウスTGFβ1(BIOLEGEND)、50ng/mLの組換えマウスIL-6(BIOLEGEND)、20ng/mLの組換えマウスIL-23(BIOLEGEND)、10μg/mLの抗マウスIL-4(11B11、BIOLEGEND)、10μg/mLの抗マウスIFNγ(XMG1.2、BIOLEGEND)、および場合によっては20ng/mLの組換えマウスIL-1β(R&D)をさらに添加した。細胞を分析前に5% CO中にて、37℃で5日間インキュベートした。
【0160】
ホスホフローサイトメトリー
リン酸化された細胞シグナル伝達分子を染色するためのフローサイトメトリー用抗体は、CELL SIGNALING TECHNOLOGY(US)およびBD BIOSCIENCES(US)から購入した。死細胞は、LIVE/DEAD fixable blue dead cell stain(THERMO FISCHER SCIENTIFIC)を使用して除外した。Fc受容体は、精製抗マウスCD16/32(93)ならびに各2%の正常マウス、ラットおよびハムスターの各血清(JACKSON IMMUNORESEARCH)を使用してブロックした。以下の抗体を、製造元の指示に従って染色に使用した:ホスホ-Akt-Alexa Flour 647(Ser473、D9E)、ホスホ-S6-Alexa Fluor 647(Ser235/236、D57.2.2E)、ホスホ-FoxO1(Thr24)/FoxO3a(Thr32)/FoxO4(Th28)(4G6)、FoxO1-PE(C29H4)、STAT5-PE-Cy7(pY694、47)、STAT1-BV421(pY701、4a)、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)、F(ab’)断片-Alexa Fluor 647。
【0161】
Akt/S6/FoxO染色のためには、Fc融合タンパク質の存在下でTh17および制御性T細胞の分化条件下で15時間培養した後、CD4 T細胞をfixable viability dyeと共に室温で10分間インキュベートし、2%パラホルムアルデヒド(ELECTRON MICROSCOPY SCIENCES)中で20分間かけて氷上で固定し、続いて90%メタノール中にて-20℃で一晩かけて透過処理した。氷冷1×DPBSで洗浄した後、細胞をFc受容体遮断薬と共に10分間インキュベートし、Akt/S6/FoxO抗体により4℃で5時間かけて染色して洗浄し、取得のために再懸濁させた。
【0162】
STAT染色のためには、Fc融合タンパク質の存在下で制御性T細胞の分化条件下で5日間培養した後、CD4 T細胞を数回洗浄し、0.5%ウシ血清アルブミン(VWR)を添加したRPMI 1640中に再懸濁させて、3時間氷上でインキュベートした。次に、fixable viability dyeおよび系列スキューイングサイトカインを含む等容量の培地を添加して、細胞を37℃で20分間インキュベートした。直ちに細胞を氷上に置き、等容量の氷冷4%パラホルムアルデヒド中で20分間固定した。続いて細胞を氷冷1×DPBSで洗浄し、90%メタノール中にて-20℃で一晩かけて透過処理した。氷冷1×DPBSで洗浄した後、細胞をFc受容体遮断薬と共に10分間インキュベートし、4℃で一晩かけてSTAT1/5抗体で染色して洗浄し、取得のために再懸濁させた。
【0163】
慢性大腸炎のDSS誘発モデル
平均体重が23gを上回る14~20週齢の雌性Btnl2-KOおよびWTマウスに、3% DSS(Sigma-Aldrich)を6~7日間飲用水にて投与した後、最大10日間にわたり蒸留水を投与した。対照群には試験期間中、蒸留水のみを投与した。マウスの体重を測定し、大腸炎の臨床徴候(例えば、便の硬さ、糞便中の血液)について毎日モニターした。第15日にマウスを安楽死させて、結腸の長さを測定した。
【0164】
結腸ホモジネートの作製ならびにサイトカインおよびミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の測定
遠位結腸または回腸終末部の6mm小片を、1×Halt Protease Inhibitor Cocktail(Thermo Fisher Scientific)、0.5M EDTA溶液(Thermo Fisher Scientific)、および3mmタングステンカーバイドビーズ(Qiagen)2個を含むT-per緩衝液(Thermo Fisher Scientific)中に入れた。組織をTissueLyser II(Qiagen)中にて27.5Hzの発振周波数で10分間かけて破壊した。生成された組織ホモジネートを、4℃にて15000rcfで10分間遠心単離して、上清をディープ96ウェルプレート中に回収した。タンパク質アッセイ色素(BioRad)を使用し、Bradfordタンパク質アッセイを製造元の指示に従って使用して、総タンパク質含有量を定量した。サイトカイン濃度は、V-PLEX Plus Proinflammatory Panel 1マウスキットを、製造元の指示(Meso Scale Diagnostics)に従って使用して測定した。吸光度は、Meso SECTOR S600装置(Meso Scale Diagnostics)で測定した。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性は、マウスMPO ELISAキットを、製造元の指示(Hycult Biotech)に従って使用して測定した。吸光度は、SpectraMax i3x装置(Molecular Devices)で測定した。データ解析は、GraphPad Prisma(GraphPad Software,Inc.)を使用して行った。サイトカインおよびMPOレベルを、総タンパク質含有量に対して正規化した。
【0165】
組織学検査
十二指腸、空腸、回腸、および結腸の3cm小片をスイスロール状に調製し、10%緩衝ホルマリンで固定してパラフィンに包埋し、5mm切片を作製して、H&E染色した。組織学検査は、HistoWiz Inc.(histowiz.com)により、標準操作手順および完全に自動化されたワークフローを使用して行われた。染色後に切片を脱水し、TissueTek-PrismaおよびCoverslipper(Sakura)を使用してカバーグラスフィルムにした。全スライドスキャン(40倍)をAperio AT2(Leica Biosystems)で行った。病理組織学的スコア化は、遺伝子型、群の割り付け、および実験結果を知らされていない評価者によって行われた。以下の構成をDSS誘発損傷について評価し、以前に刊行された基準(Izcue et al.,Immunity,2008.28(4):p.559~70)に基づいてスコア化した:粘膜固有層における炎症の度合い、杯細胞の喪失、異常な陰窩、陰窩膿瘍の存在、粘膜のびらんおよび潰瘍形成、粘膜下から経壁性病変への進展、好中球数。各パラメーターは0から4までのスコアとされ、最大累積スコアは17であった。未処置マウスの粘膜病変を、以前に記載された通りにスコア化した(Xiao et al.,Sci Rep,2017.7:p.40317):0、正常;1、上皮細胞の軽度の脱落;2、上皮細胞の中等度の脱落;3、重度の粘膜浮腫;4、広範な粘膜損傷。データ解析は、GraphPad Prism(商標)を使用して行った。
【0166】
定量的PCR
RNAを、同時飼育した未処置Btnl2-KOおよびWTマウスの十二指腸、空腸、回腸、および結腸に由来するIECから単離した。RNAを、同時飼育し、水およびDSSにより処置したBtnl2-KOおよびWTマウスの遠位結腸および回腸終末部から抽出した。RNAを、MagMAX-96 for Microarrays Total RNA isolation kit(Thermo Fisher Scientific)を使用してKingfisher flex(Thermo Fisher Scientific)上で精製し、1回目と2回目の洗浄の間に追加のDNアーゼI(Sigma-Aldrich)工程を加えた。cDNA合成は、SuperScript VILO Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を、製造元の指示に従って使用して行った。qPCRは、MyTaq Mix(Bioline)およびアッセイミックス(Thermo Fisher ScientificまたはLGC BioSearch)を使用して行った。qPCRは、384ウェルブロックモジュールおよび自動化アクセサリー(Thermo Fisher Scientific)を備えたABI 7900HT Fast Real-Time PCR Systemで行った。遺伝子発現をβ2mに対して正規化し、2ΔC(t)計算を使用して差を決定した。
【0167】
【表2】
【0168】
γδIELの単細胞RNAシークエンシング
IELを単離した後に、細胞を、製造元(THERMO FISHER SCIENTIFIC)の指示に従って、LIVE/DEAD fixable blue dead cell stainで染色した。精製抗マウスCD16/32(93)ならびに各2%の正常マウス血清、ラット血清、およびハムスター血清(JACKSON IMMUNO RESEARCH)を使用してFc受容体をブロックし、以下の抗体を使用して細胞を染色した:CD45-BV510(30-F11)、CD8α-AF700(53-6.7)、CD8β-PerCP/Cy5.5(YTS156.7.7)、TCRβ-BV711(H57-597)、TCRγδ-PE/Cy7(GL3)。各試料についてマウス2匹をプールした。
【0169】
γδIELを、MoFlo Astrios EQ(BECKMAN COULTER)を使用して各試料から選別した。各試料の3分の2を、RNA Lysis Buffer(ZYMO RESEARCH)中に再懸濁させて、バルクRNAシークエンシングのために処理した。各試料の3分の1は、遺伝子型毎に小腸のセグメント毎にプールし、0.04% BSAを含むPBS中に再懸濁させて、Chromium Single Cell Instrument(10X Genomics)にローディングした。RNAseqおよびV(D)Jライブラリーを、Chromium Single Cell 5’Library、Gel Beads&Multiplex Kit(10X Genomics)を使用して調製した。増幅後、cDNAをRNAseqおよびV(D)Jライブラリーのアリコートに分割した。V(D)JライブラリーのアリコートをγδTCRに関してエンリッチするために、cDNAを2つの10ngアリコートに分割し、施設内で設計されたプライマーを使用して2回のラウンドで増幅した。特に、以下のプライマーを増幅の第1ラウンドに使用した:short R1にはMP147(ACACTCTTTCCCTACACGACGC)(配列番号22)、マウスTRGC1-3にはMP371(/5Biosg/TTCCTGGGAGTCCAGGATRGTATTG)(配列番号23)、マウスTRGC4にはMP372(/5Biosg/CACCCTTATGACTTCAGGAAAGAACTTT)(配列番号24)およびマウスTRDCにはMP369(/5Biosg/TTCCACAATCTTCTTGGATGATCTGAG)(配列番号25)。第2ラウンドの増幅のためには、第1ラウンドからの20ngアリコートを、short R1にはMP147(ACACTCTTTCCTACCACGACGC)(配列番号26)、nested R2+マウスTRGCにはMP373(GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTGTCCCAGYCTTATGGAGATTTGT)(配列番号27)、およびnested R2+マウスTRDCにはMP370(GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTTAGTCACCTCTTTAGGGTAGAAATCTT)(配列番号28)を使用して、さらに増幅した。
【0170】
V(D)Jライブラリーを、25ngのそれぞれmTRGCおよびmTRDC増幅cDNAから調製した。RNAseqライブラリー(リード1:ユニーク分子識別子(UMI)および細胞バーコード用の26bp、8bp i7試料インデックス、0bp i5、ならびにリード2:55bp転写物リード)およびV(D)Jライブラリー(リード1:150bp、8bp i7試料インデックス、0bp i5、およびリード2:150bpリード)について、Illumina NextSeq500でペアエンドシークエンシングを行った。RNAseqライブラリーについては、Cell Ranger Single-Cell Software Suite(10X Genomics、v2.2.0)を使用して、試料の多重分離、アラインメント、フィルタリング、およびUMI計数を行った。アラインメントには、マウスmm 10ゲノムアセンブリおよびマウスのRefSeq遺伝子モデルを使用した。V(D)Jライブラリーについては、Cell Ranger Single-Cell Software Suite(10X Genomics、v2.2.0)を使用して、試料の多重分離、リードペアのコンティグへのデノボアセンブリ、IMGTからのすべての生殖系列セグメントV(D)J参照配列に対するコンティグのアラインメントおよびアノテーション、CDR3領域の標識および位置決定、クローン型のグループ分けを行った。
【0171】
単細胞RNAシークエンシングデータ解析
scRNAseqデータを、Seurat Rパッケージ(Butler et al.,Nature Biotechnology,2018.36:411)を使用して解析した。500個未満の遺伝子を有するかまたはミトコンドリアRNA含有量の10%超を有する細胞は、品質管理(QC)工程において除外した。残りの細胞は、高度に可変的な遺伝子に対してPCAによる次元削減を受けた。データをさらに、一様多様体近似および射影(UMAP)を使用して、最初の20個のPC上の2D空間に削減した。細胞クラスターは、Seuratに実装されたグラフベースの不偏クラスタリングアプローチを使用して決定された。各クラスターを規定する陽性マーカーは、ウィルコクソン順位和検定を使用して同定した。各クラスターに対して6つの代表的マーカーを選択し、ヒートマップで可視化した。
【0172】
単細胞TCRシークエンシングデータ解析
V(D)J配列をアセンブリしてアノテーションを行った後、有効なγおよびδTCR配列のみを保った。iNEXT Rパッケージ(Hsieh et al. Methods in Ecology and Evolution,2016.7(12):1451~56;Chao et al.,Ecological Monographs,2014.84(1):45~67)を使用して、各試料について2つのTCR多様度指標(すなわち、種の豊富さおよびシャノンエントロピー指数)を推定した。種の豊富さは固有クローンの総数を測定し、シャノン指数はデータセットからランダムに抽出された配列の同一性を予測する際に不確定度を計算した。補間および外挿された多様度の両方を推定し、95%信頼間隔は50回のブートストラップに基づいた。TCRレパートリーを、Treemap Rパッケージ(https://CRAN.R-project.org/package=treemap)を使用して可視化した。下流TCR解析、例えば、V(D)Jの使用、共通のTCR、およびTCRとRNA-seqとの統合は、カスタマイズされたRスクリプトを使用して行った。
【0173】
バルクRNAシークエンシングおよびデータ解析
cDNAを合成し、SMARTer(登録商標)Ultra(登録商標)Low RNA Kit(Clontech)を使用して5ngの全RNAから増幅させた(16サイクルのPCR)。Nextera XT library prep kit(Illumina)を使用して、1ngのcDNAを入力として使用して、最終的なシークエンシングライブラリーを作製した(ライブラリーを増幅するために12回のPCRサイクルを実施)。増幅されたライブラリーを400~600bpでサイズ選択した。シークエンシングは、Illumina HiSeq(登録商標)2500(Illumina)上で、2×100サイクルでの多重化ペアリードランによって行った。シークエンシングリードを、ArrayStudio(OmicSoft)を使用して、カスタマイズされたマウスゲノムに対してマッピングした。センス鎖エクソンリードを使用して、ArrayStudioに実装されたRSEMアルゴリズムによって遺伝子の発現レベルを定量した。遺伝子には、最小限で10個のリードで検出できるものとしてフラグを付した。Deseq2(Love et al.Genome Biology,2014.15(12):550)を使用して、差次的発現遺伝子解析を行った。変化倍数の絶対値が1.5を上回り、かつFDRが0.05未満である遺伝子を、有意に差次的に発現しているとみなした。差次的発現遺伝子を、NextBio(www.nextbio.com)のRunning Fish直接検定を使用する経路エンリッチメント解析に供した。TCR超可変領域配列を、TRUST(Li et al.,Nature Genetics,2017.49(4):482~83)を使用して再構成した。
【0174】
統計
群内の統計的有意性(p値)は、以下の統計検定のうちのいずれか1つを使用して決定した:同程度のSDを仮定した非対応t検定;Tukeyの多重比較事後検定による一元配置ANOVA;またはSidakの多重比較事後検定による通常の二元配置ANOVA、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005。0.05未満のP値を有意とみなした。統計分析は、Graphpad Prism 8を使用して行った。試料は生物学的反復試験として定義され、グラフを作成するために技術的反復試験は使用されなかった。各実験を少なくとも3回繰り返した。試料のサイズおよび数、ならびに使用した統計検定は、それぞれの図の凡例に示されている。
【実施例2】
【0175】
Btnl2は小腸上皮細胞において選好的に発現される
ホメオスタシスの際に腸におけるBtnl2の発現パターンを決定するために、Btnl2-LacZノックインマウスを作製し、これを以下ではBtnl2-KOマウスと称する(図1A)。図1Bに示されるように、Btnl2は主に小腸の最終分化したIECにおいて発現された。重要なことに、Btnl1、Btnl4、およびBtnl6(Di Marco Barros et al.,Cell,2016.167(1):203~218)とは異なり、Btnl2発現は十二指腸ブルンネル腺ならびに十二指腸、空腸、回腸および結腸の腺窩で検出され、これにより、それらの領域特異的発現パターンによって規定される異なるBtnlについて考えられる多様な役割が示された(図1B)。この観察をさらに検証するために、十二指腸、空腸、回腸および遠位結腸から単離された最終分化した腸細胞に由来するIECにおけるBtnl2 mRNAレベルを測定した。Btnl2は十二指腸IECにおいて高度にエンリッチしており、近位から遠位に向かうにつれて減少する勾配を有し、その結果、WTマウスの結腸から単離されたIECにおけるBtnl2発現は、回腸における発現よりも約5分の1の低さであった(図1C)。同様に、BTNL2転写物は小腸では検出されたが、健康なヒト組織からプールされた結腸試料では検出されなかった。
【0176】
Btnl2遺伝子がH2座位および他のBtnlに近接していることを考慮して、Btnl2-KOおよびWTマウスの十二指腸、空腸および回腸から単離したIEC画分におけるいくつかの隣接遺伝子の発現レベルを、バルクRNAシークエンシングによって調べた。H2-Aa、H2-Ab1、H2-Eb1、Tap1/2、BC051142、Btnl4、Btnl5、Btnl6、Notch4およびPpt2遺伝子の発現レベルについて、小腸の異なるセグメントにわたっての有意な変化は観察されなかったが、Btnl2-KOマウスはBtnl1のレベルが低い傾向を示し(図8)、これにより、Btnl2とH2座位付近の隣接遺伝子との有意な共調節がないことが示された。以上を総合すると、このデータにより、小腸の異なるセグメントにわたっての最終分化した腸細胞におけるBtnl2の選好的な発現が確認され、これにより、Btnl2の区画特異的な機能が示された。
【実施例3】
【0177】
Btnl2-KOマウスは回腸において選好的にγδIELの頻度の増加を示す
ホメオスタシス条件下において、Btnl2-KOマウスは、体重減少、上皮脱落の増加、および炎症誘発性サイトカインによって決定されるようないかなる有害な腸病変も示さなかった(図9A~B)。加えて、IECの分化および成熟に関連する遺伝子の有意な変化は観察されず、これにより、IECの発生および維持が未処置Btnl2-KOマウスにおいて変化しないことが示された(図9C)。
【0178】
Btnl/BTN/BTNLファミリーのメンバーがγδT細胞区画の形成に関与しているという進展中のパラダイムを考慮し、小腸の異なるセグメントにおけるBtnl2の選択的発現パターンへの関心を受けて、Btnl2の欠損は小腸の異なるセグメントにおけるγδIELサブセットの維持に影響を及ぼす可能性があるとの仮説を立てた。これを目的として、成体Btnl2-KOおよびWTマウスの十二指腸、空腸および回腸からIELを単離した。γδIELは、WTマウスの回腸と比較して十二指腸において約3倍の高さの頻度で見出された(全細胞中の30.7%対8.62%、図2Aの右パネル)。しかし、WT同腹仔と比較して、Btnl2-KOマウスは空腸(27.1%対20.1%)および回腸(12.8%対8.6%)においてγδIELの頻度の30~40%の増加を示すが、十二指腸(29.4%対30.7%)では示さないことが観察された(図2A)。注目すべきことに、この増加は主に回腸CD8αα γδIELで観察され、これにより、Btnl2がインサイチューでそれらの増殖能力を抑制する可能性が示された(図2A)。Vγ7 IELの数は11~16週齢の若年成体においてプラトーに達することが報告されているため(Di Marco Barros et al.,Cell,2016.167(1):203~218)、回腸γδIELのパーセンテージに対するBtnl2の観察された効果が、マウスが成体中期に近づくにつれて変化するか否かを調べた。以前の研究で、WTマウスでは、CD8αα γδIELを含む回腸γδIELの頻度が、生後6か月を過ぎても一定に保たれることが示唆されている。これに対して、γδIELの頻度は施設内のWTマウスでは生後6か月で50%減少することが観察された(全γδIEL中の39.5%対17.1%)(図2B)。その反対に、αβIELの頻度は6か月齢では比較的変化しないままに保たれ、これにより、αβIELがおそらくはインサイチュー増大を通してそのレベルを能動的に維持することが示された(図2C)。γδIELはWTマウスと比較して若年成体(4か月齢までの)Btnl2-KOの回腸において有意に増加するが(CD8αα γδIEL中の36.9%対22.3%)、成熟成体マウスは同程度のレベルのγδIELを示すことが見出された(図2Bおよび2D)。Btnl2-KOマウスでは、この期間中にαβIELは有意に変化しなかった(図2C)。このため、若年成体マウスにおけるBtnl2の効果から、これがホメオスタシス条件下でのγδIELの維持に役割を果たすことが示された。注目すべきことに、γδT細胞は、Btnl2-KOおよびWTマウスの十二指腸、空腸および回腸の粘膜固有層(LP)、腸間膜リンパ節(mLN)ならびにパイエル板(PP)において同程度の頻度で観察され、これにより、Btnl2がγδCD8ααIELに対して特異的にその機能を発揮することが示された(図2E)。
【0179】
以前の研究で、組換えBtnl2が、インビトロで特定の活性化条件下でmLN CD4 T細胞の増殖を阻害し、Treg細胞の分化を促進することが示されている(Nguyen et al.,J Immunol,2006.176(12):7354~60)。ところが、Btnl2-KOマウスの回腸LP、mLN、およびPPにおいて、CD4 T細胞およびFoxP3 Tregの同程度の頻度が観察された。さらに、Btnl2-KOマウスは、異なる組織にわたって同等の免疫細胞プロファイルを示し、これにより、空腸および回腸のγδIELに対する腸におけるBtnl2の効果の特異性および局在的効果が強く示された(図10A~C)。
【実施例4】
【0180】
Btnl2は空腸/回腸γδIELの増殖を抑制する
Btnl2が空腸および回腸γδIELに及ぼす効果を調べるために、T細胞増殖の抑制するその能力を調べた。Btnl2の阻害機能は、インビトロでは、同時に起きるTCR刺激、およびCD4 T細胞上のBtnl2受容体と推定されるものとのライゲーションに依存することから、CFSEで標識したCD4 T細胞を、等モル濃度のプレート結合Btnl2-mFc、Pdl1-mFc、Pdl2-mFcまたはmFcの存在下で活性化させた(図11A)。72時間の培養後に、組換えBtnl2は、CFSE希釈およびサイトカイン産生の40%を上回る減少によって立証されるように、Pdl1およびPdl2と同様にCD4 T細胞の増殖および活性化を強力に抑制することが見出された(図11B~C)。CD28共刺激により、TNFaおよびIFNgの産生がレスキューされたが、IL-2の産生はレスキューされず(図11C)、これは、活性化されたCD4 T細胞上のその受容体と推定されるものへのBtnl2結合の約50%の減少とも一致した(図11D)。
【0181】
次に、Btnl2がインビトロでγδIELの増殖を抑制するか否かを調べた(図12A)。十二指腸由来のものと同等の数を得るために、IELを空腸および回腸からプールした。図3Aに示されるように、十二指腸CD8αα γδIELはそれらの空腸/回腸対応物と比較してより大きな増殖能力を示し、これにより、十二指腸および空腸/回腸γδIELが異なるTCRおよび/またはサイトカイン刺激を必要とする可能性が示された。組換えBtnl2およびPdl1は、十二指腸および空腸/回腸CD8αα γδIELの両方の増殖を強力に阻害した(図3A~B)。しかし、Btnl2の抑制効果は、十二指腸CD8αα γδIELで観察されたものと比較して、空腸/回腸CD8αα γδIEL増殖に対して2倍の高さであった(図3B)。重要なことに、組換えBtnl2は、十二指腸または空腸/回腸CD8abおよびCD8αααβIELの増殖を阻害することができず、これにより、Btnl2受容体と推定されるものがこれらの細胞上には存在しない可能性が示された(図3B)。α-CD3刺激に対するBtnl1-KO γδIELのより強い反応性を示す以前の報告(Di Marco Barros et al.,Cell,2016.167(1):203~218)に反して、十二指腸および空腸/回腸Btnl2-KO γδおよびαβIELは、それらのWT対応物と比較して等しい増殖能力を示すことが見出され、これにより、Btnl2欠損は、TCRおよびサイトカイン刺激に反応するIELの能力を損なわないことが示された(図12B)。さらに、組換えBtnl2は、インビトロでのBtnl2-KOおよびWT空腸/回腸γδIELの増殖を同程度に阻害した(図3C)。Btnl2-KOおよびWT空腸/回腸γδIELはまた、共阻害受容体(例えば、PD1)ならびに組織常在、成熟および活性化に関連するマーカー(例えば、CD69、CD44、CD27、CD122)についても同等の発現プロファイルを示した(図12C)。以上を総合すると、これらのデータは、Btnl2が空腸/回腸CD8αα γδIEL増殖を選好的に抑制することを示す。
【0182】
インビボでのBtnl2-KO γδIELの増殖能力を決定するために、γδIELへのBrdUの取込みを測定した。図3D~Eに示されるように、高度のBrdU取込みが、第3日までにWT CD8αα γδIELにおいて観察された。注目すべきことに、回腸Btnl2-KO γδIELはそれらのWT対応物よりも約2倍の多さでBrdUを取込み(9.86±1.52対5.87±1.18)、これにより、Btnl2の非存在下でのγδIELの増殖能力の強化が強く示された(図3D、E)。以上を総合すると、これらの観察は、Btnl2が、回腸における成熟γδIELの増殖を制限することによってγδ免疫チェックポイント分子として働き、可能性としては、正常な上皮寿命の間にそれらのエフェクター応答を調節することを示している。
【実施例5】
【0183】
回腸Btnl2-KO γδIELは抗菌応答モジュールの抑制を示す
Btnl2欠損がγδIELの細胞溶解能に及ぼす影響について洞察を得るために、定常状態にある同時飼育した11週齢のBtnl2-KOおよびWTマウスの十二指腸、空腸および回腸からエンリッチされたγδIELのトランスクリプトーム解析を行った。回腸Btnl2-KO γδIELではWT対応物と比較して、200種を上回る遺伝子が有意にダウンレギュレートされており(FDR<0.05および変化倍数>1.5)(図4A)、一方、十二指腸および空腸Btnl2-KO γδIELではBtnl2のみが有意に減少した(図4B)。ダウンレギュレートされた上位50種の遺伝子には、シグナル伝達分子(例えば、Raph1、Cyr61、Tspan8)、細胞増殖およびアポトーシスの転写調節因子(例えば、Id1、Pbx1、Nupr1、Hoxb7)、増殖因子(例えば、Kitl、Wnt3、Fgfbp1)、抗菌分子(例えば、Ifi27l2b、Ccl25、Gsdmc3/4)、ならびに種々のクラスの代謝分子(例えば、アミノ酸-Mgst1、脂質-Fabp6、Pnliprp2、イオウ-Sult1c2、Cth、炭酸脱水酵素-Car8)(図4A~B)が含まれた。まとめると、これらの観察は、回腸Btnl2-KO γδIELの代謝機能が、回腸WT γδIELと比較してある程度低下していることを示唆する。
【0184】
これらの知見と一致して、遺伝子オントロジーエンリッチメント解析から、最も有意に調節不全となる生物学的プロセスは細菌耐性および排除を中心とすることが明らかになり、これにより、回腸Btnl2-KO γδIELは、定常状態で抗菌分子を分泌する能力の障害を示すことが強く示された(図4C)。インターフェロン誘導型分子、およびα-ディフェンシン抗菌ペプチドファミリーのいくつかのメンバーは、回腸Btnl2-KO γδIELにおいて、それらのWT対応物と比較して有意にダウンレギュレートされている遺伝子の中に見出された(図4D)。それ故に、これらの知見は、回腸におけるγδIELは、十二指腸または空腸におけるものとは異なり、局所微生物抗原に反応して抗菌分子を分泌することに特化している可能性を示す。
【実施例6】
【0185】
単細胞TCRシークエンシングにより、Btnl2-KO γδIELにおいてレパートリー多様度がより大きいことが強く示される
回腸Btnl2-KO γδIELで観察された抗菌応答モジュールのダウンレギュレーションが、γ/δTCRレパートリーの変化に関連するか否かを明らかにするために、Btnl2-KOおよびWTマウス由来の十二指腸、空腸、および回腸γδIELに対して、偏りのない単細胞TCRシークエンシングを行った。合計28,679個の細胞をシークエンシングし、24,961種の有効なγ鎖および24,515種の有効なδ鎖を再構成した。シークエンシングを行ったすべての細胞のうち、17,260個の細胞(60.2%)は対になったγ鎖とδ鎖を有した。TRGVおよびTRDV遺伝子の使用は、十二指腸、空腸および回腸においてBtnl2-KO γδIELとWT γδIELとの間で同等であることが見出された(図5A)。TRGV7遺伝子の使用はTCRγ鎖の平均50%であったが、一方、TRDV2-2、TRDV5、TRDV6D-1およびTRDV6D-2遺伝子は等しく表しており、それらを合わせた遺伝子使用はTCRδ鎖の80%を上回った。回腸Btnl2-KO γδIELは、WT対応物よりもTRGV7遺伝子の使用頻度が低かった(51.0%対53.2%)。しかし、それらはより頻度の低いTRGV4遺伝子の使用頻度が高かった(11.5%対8.6%、Pearsonカイ二乗検定、p=1.78×10-7)。同様に、回腸Btnl2-KO γδIELでは、WT対応物と比較して、TRDV2-2およびTRDV6D-2遺伝子の使用が減少しており(それぞれ23.2%対25.3%、21.9%対26.2%)、一方、TRDV6D-1遺伝子(18.6%対13.4%)および使用頻度の低いTRDV12遺伝子(1.52%対0.87%)の使用は増加していることが示された。
【0186】
TCRγ鎖およびδ鎖のクローン型を確立するために、第3の相補性決定領域(CDR3)において同一のアミノ酸配列を有する同一のV遺伝子およびJ遺伝子セグメントによってコードされるTCRγおよびδ配列を同定した。R iNextパッケージ(Hsieh et al.Methods in Ecology and Evolution,2016.7(12):1451~56)を使用して、2つの測定基準(種の豊富さおよびシャノン多様度)を計算し、各試料のTCR多様度を推定した。全体として、回腸Btnl2-KO γδIELは、補間および外挿データの両方の測定で、WT γδIELよりも一貫して高いTCRγ鎖の多様度を有した。例えば、50回のブートストラップ反復試験によって各試料から3500種のγ鎖をランダムにサンプリングしたところ、回腸Btnl2-KOγ鎖の平均シャノン多様度は255.6であり、WTにおける226.8よりも有意に高いことが観察された(p=0.0019、T検定)(図5B)。十二指腸および空腸Btnl2-KO γδIELもまた、WT γδIELと比較してTCRγ鎖において多様度がより高い傾向を示したが、それらの回腸対応物と比較した場合、その差はわずかであった(3500種のγ鎖をサンプリングした場合、シャノン多様度についてそれぞれp=0.0616および0.2429、図5B)。回腸Btnl2-KO γδIELでは、TCRδ鎖の多様度が増加していたが(図5C)、3つのセグメントすべてから単離したBtnl2-KO γδIELは、TRDVレパートリーの50%を構成する固有のクローン型の頻度の増加を示した(十二指腸:19.0%対17.6%;空腸:20.2%対18.6%;および回腸:18.5%対18%)(図5D)。対照的に、対になったγ/δ鎖の全体的なレパートリーの多様度は、回腸Btnl2-KO γδIEL(図5C)ではわずかに変化した。まとめると、これらの結果から、回腸TCRγδレパートリーの多様度が、宿主および微生物の抗原および代謝産物の両方によって連続的に形作られ、その結果、回腸γδIELの頻度の変動、ならびに抗菌応答モジュールの摂動が、有意なクローン修正を導いた可能性があることが示された。
【実施例7】
【0187】
共有されるTCRクローン型は回腸Btnl2-KOおよびWT γδIELにおいて異なる頻度を示す
固有のBtnl2-KO CDR3γクローンに加えて、回腸Btnl2-KO CDR3γクローンの上位20種のうち19種は、縮小または増大クローンとして回腸WT γδIELによって共有されており、これはWT γδIELと比較してBtnl2-KOにおけるTRGVレパートリーの多様度に寄与する可能性がある(図6A)。全体として、CDR3γクローンの約40%は、各セグメントにおいてBtnl2-KOおよびWT γδIELによって共有された(図13A~C)。TCRδ鎖において、各セグメントは、多数の固有のCDR3δクローン、およびBtnl2-KOマウスとWTマウスとの間で共有される3%未満のクローンによって特徴付けられた(図13B~C)。Btnl2-KOマウスでは、WTマウスと比較して、より多くのCDR3δおよびCDR3γクローンが空腸および回腸γδIELによって共有され(それぞれ131対72および270対179)、これにより、小腸における移行セグメントとしての空腸が強く示された(図13D)。1つのCDR3γ/δ対を有するBtnl2-KOおよびWT γδIELは、それらのCDR3γ/δクローンレパートリーの重複を事実上示さず(0.4%未満)、これにより、個々のマウスが固有のγ鎖-δ鎖対形成を有することが強く示された(図14A~B)。それにもかかわらず、CDR3γ/δ対クローンの最大13%は、2つのセグメントまたは3つのセグメントすべての間で重複しており、これにより、個々のマウスにおいてすべてのセグメントに存在する優性CDR3γ/δ対の存在が示された(図13C)。
【0188】
次に、CDR3γ配列を、個々の各マウスからのバルクRNA-seqデータを使用して再構築した。単細胞TCRシークエンシングデータによって明らかになった最も頻度の高い回腸CDR3γクローンは、異なる個々のマウスでも見出され、これにより、単細胞TCRレパートリーが個々のBtnl2-KOおよびWT CDR3γの多様度の正確な表現であることが示された(図6B)。上位の回腸Btnl2-KO CDR3γクローンは、TRGV4、TRGV1およびTRGV7遺伝子も含んでおり、一方、回腸WT CDR3γクローンはほぼ例外なくTRGV7を保有していた(図6C)。最も頻度の高いCDR3γ鎖(Vγ7-J1、CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29))については、このCDR3γアミノ酸配列を有するIELの約70%が同じDNA配列から翻訳されており、これは1つの前駆体のクローン増大、または各クローンにおいて別個のVδ配列と対をなす反復的で独立した組換えに起因しており、一方、IELの残りは、異なるDNA配列を有するより小さなクローンに由来した可能性がある(図6D)。同様の収束性Vγ組換えは、頻度の高いヒトVγ9クローン型で観察されており、それらの豊富さは出生時からあらかじめ設定されていると提唱されている。同様に、最も頻度の高いVγ7クローン型は、1つの主要な収束性組換えイベントおよびいくつかの少数の独立した収束性組換えイベントに由来していた。これらの知見により、γδIELの一般的なTRGVクローン型の存在が強く示され、対になったTRGV/TRDVレパートリーの多様度がCDR3δ配列によって推進される可能性が示された。
【実施例8】
【0189】
共有されるCDR3γのγδIELトランスクリプトームはCDR3δとの対形成によって形成される
TCRとγδIELトランスクリプトームとの間の関係をさらに調べるために、scRNA-seqを、TCRシークエンシングのためにプロファイリングしたのと同じ十二指腸、空腸および回腸のγδIELに対して行った。各試料中に9つのクラスターが同定され(図15A)、クラスター0、1および3における単一のγδIELのトランスクリプトームは十二指腸起源と回腸起源との間で区別され、空腸γδIELは中間のトランスクリプトームプロファイルを示した(図15A~B)。
【0190】
各単細胞クラスターで検出された上位20種のマーカーを、最近のscRNA-seqおよびバルクRNAseqの報告(Mayassi et al.,Cell,2019.176(5):967~981.e19;Crinier et al.,Immunity,2018.49(5):971~986.e5.)に記載された分子シグネチャーと共に使用したところ、γδIELクラスターを識別するためのγδIEL属性、例えば、分化段階、成熟、およびエフェクタープロファイルが提唱された(図15C)。クラスター0および1は、成熟した細胞溶解性の高いIELを含み、クラスター2および3は未熟IELを含み、一方、クラスター4は、抗原媒介性分化などの転写変化を受ける新たに活性化されたIELからなる(図15C)。残りのIELは、クラスター5(Isg15、Irf7、Stat1)におけるI/III型インターフェロン応答などの特化したエフェクタープロファイルを有するより小さなクラスターと、クラスター6(Klf2、Thy1、S1pr1、CD8b1、Sell)における最近遊出したCD8βIEL前駆体などのサブセット特異的分化段階に細分された(図15C)。TRGV分布に関しては、TRGV7遺伝子の使用はクラスター0~4で優勢であったが、回腸Btnl2-KO γδIELでは、WTの対応物と比較してクラスター1におけるTRGV7の頻度が低下しており、TRGV1およびTRGV4の頻度が高かった(それぞれ40.4%対45.9%、15.2%対10.3%、および13.1%対9.5%;図15D)。
【0191】
次に、最も一般的な回腸CDR3γを使用して、異なるセグメントおよび遺伝子型(Vγ7-J1、CASWAGYSSGFHKVF(配列番号29))にわたる全CDR3γクローンの約10%を範囲に含む、CDR3γ/δ対形成の分布を検討した。最上位のCDR3γ鎖は、回腸Btnl2-KO γδIELのクラスター0において選好的にエンリッチされており(51.3%対37.2%)、これは最大数の成熟および細胞溶解性分子によって規定され(図14C)、WT γδIELのクラスター1において優勢であることが見出された(47.4%対31.5%)(図6C)。同じヌクレオチド配列を有する上位のγ鎖と異なるCDR3δ配列との対形成により、対のトランスクリプトームが形成されたが、これはそれらが特定のクラスターと選好的に関連するためである(図6D)。
【0192】
まとめると、これらのRNA-seqおよびscTCR-seqの観察は、Btnl2欠損が回腸γδIELのトランスクリプトームならびにTRGV/TRDVレパートリーを変化させ、その結果、それらの抗原特異的および抗菌応答が変化することを示す。本開示は、腸γδIELトランスクリプトームおよびTCRレパートリーの多様度を単細胞分解能で同時に記述した最初のものであり、免疫調節性分子の組織特異的発現によって推進される区画特異的免疫応答の説明となり得る、十二指腸、空腸および回腸γδIELにおけるこれまで特徴付けられていなかった不均一性を明らかにした。
【実施例9】
【0193】
Btnl2-KOマウスは慢性DSS誘発大腸炎においてより重篤な腸炎を呈する
Btnl2発現は、小腸と比較して結腸で減少している(図1C)。しかし、結腸Btnl2レベルの顕著なアップレギュレーションが、大腸炎のWTマウスで観察された。次に、その欠損の影響を、DSS誘発上皮傷害の状況における粘膜免疫応答について評価した。同時飼育したBtnl2-KOおよびWT同腹仔を、DSSを7日間投与した後に水を8日間与えることによって、DSS誘発大腸炎に供した。Btnl2-KOおよびWTマウスは、同等の体重減少、ならびに腸傷害および好中球増加のバイオマーカーであるミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)レベルの上昇によって示されるように、疾患の初期相(第7日)において同等の腸損傷を示したが(図7A~D)、Btnl2-KOマウスは、腸炎の修復相において、WT同腹仔と比較して体重回復の有意な遅延を示すことが観察された(図7A)。観察された回復遅延は、WT同腹仔と比較して、有意に短い結腸、グランザイムAレベルの上昇、ならびに結腸におけるより大きな病理組織学的損傷およびMPO活性を伴った(図7B~Dおよび7F)。注目すべきことに、DSS処置したBtnl2-KOマウスでは、結腸において炎症誘発性サイトカイン、例えば、IFNγ、IL-6、KC-GRO、TNFαおよびIL-1βのレベルが約2倍の高さであった(図7E)。対照的に、MPO活性、炎症誘発性サイトカインおよびグランザイムAのレベルは、DSS処置したBtnl2-KOマウスの回腸において、WT同腹仔と比較して有意に変化しなかった(図16A~C)。これらの結果を裏付けるように、Btnl2転写物は、DSS処置したWTマウスの結腸では増加したが、他のファミリーメンバー、例えば、Btnl1およびBtnl6のレベルは、DSS処理によって低下した(図7G)。Btnl2転写物はDSS処置した回腸では変化せず、これにより、結腸におけるBtnl2発現は、損傷部位でのフィードバック調節機構として誘導されて、DSS誘発炎症を減弱させて回復プロセスを促進する可能性が示された(図16D)。
【実施例10】
【0194】
進展しつつある研究では、Btn/Btnlファミリーの分子を、γδT細胞の開発の中心に位置付けている。本開示は、回腸γδIEL維持の調節因子としてのBtnl2に光を当てる。特に、Btnl2は、γδIEL上の未同定の受容体に対する共阻害リガンドとして作用し、ホメオスタシス条件下で回腸γδIELの増殖およびセグメント特異的エフェクタープロファイルの両方を調節する。
【0195】
セグメントに焦点を当てたアプローチにより、時間的および空間的ウィンドウが観察され、その間、Btnl2は腸γδIELに対してその機能を発揮した。ScTCRseqにより、Vγ7 IELが11週齢のBtnl2-KOおよびWTマウスの小腸で優勢であることが明らかになり、これにより、それらの発生が影響を受けないことが示された。Btnl2は回腸においてγδIELの増殖に選好的に影響したが、その欠損は小腸の異なるセグメントに影響を及ぼした。特に、Btnl2はインビトロでは十二指腸および空腸/回腸の両方でγδIEL増殖を抑制する能力があったにもかかわらず、インビボでは回腸γδIELの増大のみに限られた。しかし、分子レベルでは、Btnl2欠損はVγ7 IELの中でのVγ使用の変化を導き、小腸の3つのセグメントすべてでVδ使用を同様に変化させたことから、これにより、小腸の異なるセグメントにわたってのBtnl2の重複的であると共に特有の役割が示された。これは続いて回腸Btnl2-KO γδIELにおける調節不全の抗菌モジュールを伴い、このことは粘膜修復およびセグメント指向性病原微生物の排除に関連する可能性がある。
【0196】
領域特異的な効果と一致して、十二指腸Btnl2-KO CDR3γおよびCDR3γ/δクローンレパートリーは、同時飼育したWT同腹仔で同定されたものと著しい違いはなく、これは回腸が定常状態でのBtnl2媒介性調節の主要部位であることを強く示す。重要なこととして、個々のBtnl2-KOマウスの回腸区画に最も豊富に存在するVγクローンには、WTマウスにのみ豊富に存在するVγ7クローンとは対照的に、Vγ1およびVγ4クローンが含まれた。Btnl2は、成体初期におけるVγ7TCRのリガンド(すなわち、Btnl1、Btnl6)の共調節に重要であると考えられる。γδTCRのこの動的リモデリングを裏付けるように、Btnl2の欠損は、種々の収束性組換えイベントを導き、その結果、最も頻度の高いVγ7クローン型と別個のVδ配列との対形成が、回腸γδIELのトランスクリプトームプロファイルを規定した。部位特異的な代謝産物レベルおよび/または抗原圧が、複数の独立したインサイチュー組換えイベントを導いた可能性があり、これはγδIELの局所環境抗原に対する適応挙動を示す。絨毛-陰窩軸方向に沿った回腸γδIELの運動性は微生物叢の存在に厳密に依存するため、抗菌プロファイルの障害は、回腸Btnl2-KO γδIELの不適切な局在または無効なサーベイランスの結果である可能性もある。その反対に、上皮で発現されるBtnl2の喪失は、局所微生物叢の変化を招き、それが続いて回腸Btnl2-KO γδIELのTCRレパートリーおよび抗菌応答モジュールの再形成を推進する可能性もある。抗菌応答モジュールの欠損を伴う再形成されたVγ-Vδレパートリーが、小腸感染病原体に対するBtnl2-KOマウスの感受性にどのように影響するかを理解するためには、さらなる研究が必要である。
【0197】
マウスVγ7 IELの発生およびヒトVγ4/Vδ1 IEL維持の両方について、所定の時点でのBtnl発現への急性依存が提唱されている。特に、成体Btnl1-KOマウスにおけるBtnl1発現は、Vγ7発生をレスキューすることができず(Di Marco Barros et al.,Cell,2016.167(1):203~218)、一方、グルテンフリー食を遵守した後の粘膜修復およびBtnl8発現回復は、セリアック病患者におけるVγ4/Vδ1 IELサブセットを再構成することができなかった。これらの観察を考慮することにより、Btnl分子は、新生仔における組織特異的Vγ鎖の選好的増大だけでなく、若年成体における異なる組織区画にわたってのTCR特異性も調節している可能性があることが推測された。このため、セグメントに偏りのあるγδTCRの特異性は、Btnl分子間の二量体化パートナーの選択、ならびに腸におけるそれらの微妙な空間的および時間的発現によって決定される可能性がある。Btnl1およびBtnl6は共同してVγ7の選択および成熟に影響するが、Btnl2の結合パートナーは不明である。加えて、Btnl2の喪失を補うために腸で誘導された他のBtnl分子はなく、このことは、それらは同じ座位にコードされているにもかかわらず、それらの発現パターンが共調節されないことを示す。
【0198】
さまざまなファミリーメンバーのうち、構造的には、Btnl2は、Btn/Btnlスーパーファミリーメンバーのほとんどが共有する抗原結合性B30.2ドメインを欠く点で独特であり、このことは、Btnl2の阻害効果が、γδIELに対するその受容体と推定されるものの関与の下流で誘発されるシグナル伝達経路に依存する可能性を示す。Btnl2は、B30.2ドメインとは独立したIgC相互作用を介して、他の腸特異的Btnlとホモ二量体化またはヘテロ二量体化することが可能であった。ヘテロ二量体として、Btnl2と相互作用するパートナーは、B30.2により推進されるヘテロ二量体の活性化および受容体と推定されるものへの結合に寄与し、それによってBtnl2のライゲーションは下流で増殖阻害を誘導すると考えられる。Btnl1、Btnl4およびBtnl6は、それらの類似した腸発現のために、Btnl2の結合パートナーの候補となり得る。したがって、十二指腸IEC上でのより高い発現にもかかわらず、Btnl2は、IEC上のその結合パートナーおよびγδIEL上の受容体と推定されるものの局所的発現の増加により、回腸γδIELに対してより顕著な阻害を発揮する可能性がある。このため、この領域特異的な相互作用は、細菌代謝産物のような局所の可溶性抗原によって促進される可能性がある。Btnl2はまた、別のBtnlヘテロ二量体のγδTCRへの結合を阻害してγδIELの増殖を抑制する受容体アンタゴニストとしても機能する可能性がある。あるいは、この抑制は部分的なものにすぎないことから、Btnl2は、Vγリガンド(すなわち、Vγ7 TCRに対するBtnl6)の表面発現の調節を介して、特定のVγTCRまたはTCR特異性を間接的に標的とする可能性もある。Btnl2がセグメント特異的炎症の際にすべての腸区画にわたってγδIELに対する阻害効果を発揮し得るか否かに取り組むためには、さらなる研究が必要である。
【0199】
以前の研究により、γδT細胞の枯渇は、DSS誘発大腸炎の際により大きな結腸損傷を誘導し、KGF分泌を減少させ、γδT細胞によるIFNγ産生を増加させ、IEC増殖を低下させることが示されており、これはγδIELが上皮傷害後の粘膜修復を促進し得ることを示す。その反対に、TregによるIL-10産生の障害は、Pdk1f/f;CD4creマウスにおいて、制御されないγδIEL増殖および自然発生的な腸炎を引き起こし、このことは結腸におけるγδIELの炎症誘発性の役割を裏付ける。Btnl2の発現は、DSS誘発大腸炎の際に遠位結腸でアップレギュレートされており、Btnl2-KO大腸炎マウスは、疾患の粘膜修復相において回復の遅延を示すが、これはおそらくは上皮傷害によって引き起こされる損傷を制御するγδIEL依存性および非依存性(すなわち、Treg、炎症性ヘルパーT細胞)の機序による。興味深いことに、Btnl1およびBtnl6の転写物はBtnl2-KO大腸炎マウスではダウンレギュレートされており、これは、Btnl1/6の転写物がMuc2-KOマウスの遠位結腸で有意に減少し、BTNL8の発現が潰瘍性大腸炎患者およびセリアック病患者の結腸および十二指腸の生検試料でそれぞれ減少しているかまたは消失しているという以前の報告を裏付けるものである。したがって、IECは環境ストレス因子に応答してBtnl2の発現をアップレギュレートして、γδIELの損傷誘導性増大を制限し、抗菌分子の放出を誘導する。このため、これらの知見は、小腸および大腸全体にわたるγδIELと上皮特異的Btnl分子との間の密接な相互作用が、ホメオスタシスおよび炎症状態においてそれらの増殖および機能を推進するという考えを支持する。
【0200】
結論として、本開示は、回腸γδIELの増大の調節、それらのVγおよびVγ-Vδ TCR特異性の形成、ならびにそれらの抗菌応答モジュールの変化におけるBtnl2の新規な役割を実証する。scRNAseqおよびscTCRseqの調査から、高度に動的なγδIEL区画は、成体期における小腸の各セグメントの環境的手がかりに細かく適応していることが明らかになった。
【実施例11】
【0201】
ホメオスタシスおよび疾患の際の免疫機能におけるBtnl2の役割
Btnl2がCD4 T細胞の機能をどのように調節するかを理解するために、上記のインビトロ増殖アッセイを行った。組換えBtnl2は、CD4 T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン分泌の両方を阻害することが確認された(図11A~C)。CD28シグナルの添加により、Btnl2媒介性の増殖阻害は部分的にレスキューされ、これはまたサイトカイン産生(例えば、TNFα、IL-6、およびIFNγ)の部分的なレスキューにもつながったが、IL-2は組換えBtnl2の存在下でも依然として有意に低いレベルであった(図11B~C)。組換えBtnl2は、PDL1と同様に、CD4 T細胞の増殖を、α-CD3、α-CD28、およびFc融合タンパク質の逐次コーティング中に、またはFc融合物の等モルではなく等質量での同時コーティング中に阻害した(図17A~D)。これらの結果は、Btnl2による増殖阻害が、プレートに結合したα-CD3/α-CD28の置換えではなく、Btnl2と活性化CD4 T細胞上のその受容体と推定されるものとのライゲーションの結果であることを示す(図6D)。
【0202】
次に、Btnl2が系統特異的サイトカインの存在下でTヘルパーの分化に影響するか否かを検討した(図18A)。組換えBtnl2は、インビトロでIL-2およびTGFβ1の存在下で、PDL1と同様に、組織常在様のCD103制御性T細胞のデノボ分化を支え、CD103/CD103の比をほぼ1にすることが見出された(図18B)。FoxO1の発現レベルが低いことから、活性化された(リンパ組織に常在しない)制御性T細胞と休止中の(脾、リンパ節)制御性T細胞が区別される。組換えBtnl2の存在下で、制御性T細胞はAktおよびS6のリン酸化ならびにFoxO1の発現低下を示し、これにより、Btnl2が活性化された制御性T細胞の分化を促進することができることが示された(図18C)。加えて、組換えBtnl2は、STAT5のリン酸化を、TGFβ1用量依存的な様式で推進した(図18D)。全体として、これらの結果から、Btnl2がインビトロで、PDL1と同様に組織常在様の制御性T細胞を選好的に誘導することが示された。
【0203】
非リンパ組織の内部では、炎症誘発性Tヘルパー系列、例えば、Th1、Th2およびTh17細胞と、免疫寛容原性制御性T細胞との間の微妙なバランスが、状況に適した免疫応答を確実に行わせる。Th17および制御性T細胞系列の可塑性とそれらの相互に関連する発生経路を考慮して、Btnl2がTh17細胞の分化に影響するか否かを検討した。図19Aに示されるように、組換えBtnl2は、インビトロでTh17スキューイングサイトカインが存在する場合でも、PDL1と同様に、Th17細胞のFoxP3 制御性T細胞誘導への分化を有意に推進した。注目すべきことに、組換えBtnl2は、制御性T細胞スキューイング条件下で使用されるのと同様の機序、例えば、AktおよびS6リン酸化のダウンレギュレーション、FoxO1発現レベルの低下(図19B)、ならびにSTAT5リン酸化のアップレギュレーション(図19C)を介して、CD103FoxP3 制御性T細胞の分化を促進した(図19A)。
【0204】
加えて、IL17AおよびVEGFなどの炎症性サイトカインのレベルは低下したが、CCL3およびIL3のレベルは、Th17細胞誘導条件下でのBtnl2およびPDL1の存在下で有意に上昇し、これにより、制御性T細胞表現型への推移が示された(図19D)。Th17細胞誘導性サイトカインカクテル中の1つのサイトカインを一度に変化させることにより、Btnl2媒介性のCD103FoxP3 制御性T細胞へのスキューイングは、TGFβ1レベルに厳密に依存し、IL-6シグナル伝達の遮断によって強化され、IL-23とは独立して起こり、IL-1βによって強く阻害されることが示された(図19E)。特に、IL17ARORγt Th17細胞の頻度は、すべてのFc融合条件を通じて同等であり、Btnl2により推進されるCD103FoxP3 制御性T細胞の誘導は、TGFβ1、IL-6およびIL-23のTh17系統スキューイングカクテルにIL-1βを添加すると10分の1に低下した(図19E)。さらに、IL-1βは、AktおよびS6のリン酸化ならびにFoxO1の発現をレスキューしなかったことから(図19F)、Btnl2により推進される制御性T細胞誘導の後期段階を阻害することができる。これらの結果を裏付けるように、Btnl2は、インビトロでPDL1と同様に、組織常在様の制御性T細胞に対する従来のTh17プログラム(例えば、TGFβ1、IL-6およびIL-23)を無効にすることができる。
【実施例12】
【0205】
BTNL2の機能喪失型(pLoF)変異体と推定されるものは炎症性腸疾患のオッズ増加と関連する
症例14,274人および対照439,809人を含むゲノムシークエンシングコホートに対してゲノムワイド関連研究を実施したところ、稀なpLoF変異体(p.Glu454*/rs28362675)とIBDリスク増加との有意な関連が同定された。Btnl2座位に近接するHLAクラスIまたはクラスII領域における既知の一般的リスク変異体のデータについて対照を設定したところ、Btnl2 Glu454*とIBDとの関連は、Btnl2における近接するIBD関連HLA変異体とは独立していることが明らかになった(表3)。GWASのFineMap解析により、p.Glu454*/rs28362675はこの領域の他のHLAシグナルとは独立していることが確認された。
【0206】
【表3】
【実施例13】
【0207】
DSS誘発大腸炎を有するWTおよびBtnl2 KOマウスにおけるBtnl2-Fc融合タンパク質による処置の効果
慢性DSS誘発大腸炎を誘導するために、平均で23gを上回る15週齢の雌性Btnl2 KOおよびWTマウスに、3% DSS(Sigma-Aldrich)を含む飲用水を6日間与えた後、さらに6日間水を与えた。対照群には試験期間中に蒸留水を投与した。mBTNL2-Fcおよび対照としてのmFcを、第-1日から25mg/kgの用量で隔週で腹腔内投与した。マウスの体重を測定し、大腸炎の臨床徴候(例えば、便の硬さおよび糞便中の血液)について毎日モニターした。体重減少は、元の体重と任意の特定の日の実際の体重との間の差のパーセントとして計算した。すべての棒グラフは平均値±SEMを表す。mBTNL2-Fc処置群とmFc処置群との間の統計的有意性は、Tukeyの多重比較事後検定(*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001、****p<0.0001)を用いた二元配置分散分析(ANOVA)によって決定した。データ解析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して行った。その結果、mBTNL2-Fcによる予防的処置は、mFc対照処置群と比較した体重増加に反映されるように、WTおよびBtnl2 KOマウスにおいてDSS誘発粘膜損傷からの上皮障壁修復を促進し、疾患の重篤度を低下させた。重要なことに、mBtnl2-Fc処置は、マウスにおけるBtnl2欠損に関連する発生上の変化を強力に無効化することができ、これにより、Btnl2作用物質の投与がBtnl2遺伝子突然変異を保有する患者の大腸炎の改善に有益である可能性があることが示された。
【実施例14】
【0208】
多発性硬化症のマウスモデル(実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE))および移植片対宿主病(GvHD)のマウスモデルにおけるBtnl2作用物質の効果
本研究の目的は、Btnl2作用物質による処置が、アミノ酸35~55を含むミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチドによって誘導されるEAEのような多発性硬化症のT細胞推進性マウスモデルにおいて、症状を緩和し、疾患の進行を停止させることができるか否かを確立することである。本開示(例えば、実施例4を参照)で実証されているように、Btnl2-Fcは、インビトロでT細胞の増殖および活性化を阻害する。EAEは、中枢神経系組織、例えば、脳および脊髄における活性化T細胞の高度の浸潤に依存するため、MOG35-55誘導性EAEは、EAE重症度の調節におけるこの遺伝子の役割について検証するための優れた疾患モデルである可能性が高い。
【0209】
10~12週齢のWTマウスに対して、系を飽和させることなくEAEを誘導するために、完全フロイントアジュバント(CFA)中にある至適用量以下のMOG35-55で免疫処置する(通常の投薬での200ug/匹に対して50ug/匹)。至適用量以下のMOG35-55を使用することにより、BTNL2-Fcの有無におけるEAEの誘導および進行の比較が可能となる。WTマウス10匹の4つの群に対して、それぞれCFAのみ(1群)またはCFA中にあるMOG35-55(3群)による免疫処置を行う。
【0210】
免疫処置から7~8日後のMOG35-55群における麻痺の発症前に、1つの群(Fc融合物なし)にはPBSを投与し、1つの群(アイソタイプ対照)には陰性対照-Fc融合物を投与し、1つの群(実験的Fc)にはBtnl2-Fc融合物を週2回、3週間にわたり投与する。本発明者らの予想では、CFAのみの群ではEAEが観察されず、Fc融合物のないMOG35-55群またはアイソタイプ対照を用いるMOG35-55群では、EAEの定型的な発症および疾患の進行が観察されるはずである。本発明者らの予想では、BTNL2-Fcを用いたMOG35-55群において、EAE発症の遅延、より軽度の疾患経過、およびより迅速な回復が観察されるはずである。
【0211】
次に、免疫処置から10~14日後のMOG35-55群における麻痺の発症時点で、1つの群(Fc融合物なし)にはPBSを投与し、1つの群(アイソタイプ対照)には陰性対照-Fc融合物を投与し、1つの群(実験的Fc)にはBtnl2-Fc融合物を週2回、3週間にわたり投与する。本発明者らの予想では、CFAのみの群ではEAEが観察されず、Fc融合物のないMOG35-55群またはアイソタイプ対照を用いるMOG35-55群では、EAEの定型的な発症および疾患の進行が観察されるはずである。本発明者らの予想では、BTNL2-Fcを用いたMOG35-55群において、疾患のEAEのピークの遅延、より軽度の疾患経過、およびより迅速な回復が観察されるはずである。
【0212】
別の例は、移植片対宿主病(GvHD)のマウスモデルであり、これは、Btnl2作用物質のインビボ投与が、T細胞の増殖、Th1/Th17細胞の活性化を阻害し、インビボで制御性T細胞の産生を増加させ、それ故にGvHDの発症を予防するか否かを明らかにすることを目的とする。手短に述べると、大腿骨および脛骨からの骨髄のフラッシングによってC57BL/6マウスから骨髄(BM)懸濁液を採取し、致死量の照射を受けたBALB/cマウスに移植する。mBtnl2-Fc融合タンパク質を第0日に静脈内投与し、第2日に腹腔内投与する。対照群はmFc注射を受ける。GvHDの重篤度は、臨床的GvHDスコア化システムで評価する。マウスを移植14日後に安楽死させ、GvHD標的臓器、例えば、肝臓および腸を、病理組織学的、サイトカインおよびフローサイトメトリー分析のために採取する。本発明者らの予想では、Btnl2-Fc処置によるT細胞の増殖、Th1/Th17サイトカインの減少、および制御性T細胞の頻度の増加に関連する、生存の増加および腸管GvHDの軽減が観察されるはずである。
【0213】
本開示は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって、その範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明のさまざまな変更が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図18-3】
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図20A
図20B
【配列表】
2024528675000001.xml
【国際調査報告】