(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】改良型ビーム電流制御を備えたマルチビーム粒子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
H01J 37/04 20060101AFI20240723BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240723BHJP
H01J 37/10 20060101ALI20240723BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20240723BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01J37/04 A
H01J37/09 Z
H01J37/10
H01J37/147 B
H01J37/28 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503586
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022025309
(87)【国際公開番号】W WO2023001401
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021118561.0
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】シュトレック ゲロ
(72)【発明者】
【氏名】キーライ ホルガー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE13
5C101EE14
5C101EE22
5C101EE33
5C101EE47
5C101EE53
5C101EE69
5C101GG15
5C101GG37
5C101GG49
(57)【要約】
改良型ビーム電流制御を備えたマルチビーム粒子顕微鏡が開示される。マルチアパーチャアレイ上に設けられた吸収層の1つの領域または少数のみの領域から放電された過剰電子が、電流計を用いて測定される。測定された電流は閉ループ制御において被制御変数として使用される。測定は、広面積かつ低ノイズである。マルチアパーチャアレイは、たとえば象限検出器または三分割検出器を用いて方向感受性検出も実現するように特別に構造化可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有するマルチビーム発生器であって、前記マルチビーム発生器は、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、前記マルチアパーチャアレイは、その上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、前記吸収層は、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
前記マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域において前記マルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段と、
前記ビーム発生システムと前記マルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムと、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の個別粒子ビームの両方が通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム発生器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記集光レンズシステムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記ビーム発生システムを制御するために構成され、および/または、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記集光レンズシステムを制御するために構成されている、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項2】
前記第1のビーム電流測定手段は、前記マルチアパーチャアレイにおける開口を含む内側領域において前記マルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した前記放電過剰電子も測定するように構成されている、請求項1に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項3】
前記マルチアパーチャアレイ上の前記吸収層は、互いに分離された厳密に2つの別々の領域に構造化され、各領域が接地に接続され、
第1の領域が前記マルチアパーチャアレイの開口を含む内側領域であり、第2の領域が前記マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の前記外側領域であり、
前記第1のビーム電流測定手段は、前記外側領域から放電された前記過剰荷電粒子のみを測定するように構成されている、請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項4】
前記マルチアパーチャアレイ上の前記吸収層は、互いに分離された少なくとも2つの別々の領域に構造化され、各領域が接地に接続され、
前記第1のビーム電流測定手段は、各領域から別々に放電された前記過剰電子を広い面積にわたって測定するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項5】
前記吸収層は、前記マルチアパーチャアレイの開口を含む内側領域と、前記マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の前記外側領域とに構造化され、
前記外側領域は、方向表示象限検出器を形成するように配置された4つの別々の領域にさらに構造化され、
前記第1のビーム電流測定手段は、各象限から別々に放電された前記過剰電子を広い面積にわたって測定するように構成されている、請求項4に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項6】
前記吸収層は前記内側領域と前記外側領域とに構造化され、前記外側領域は方向表示三分割検出器を形成するように配置された3つの別々の領域にさらに構造化され、
前記第1のビーム電流測定手段は、各三分割領域から別々に放電された前記過剰電子を測定するように構成されている、請求項4に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項7】
前記集光レンズシステムの領域内に双偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記双偏向器を制御するようにさらに構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項8】
前記第1のビーム電流測定手段は、少なくとも1つの電流計、特にピコ電流計を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項9】
前記マルチアパーチャアレイに達する前記ビーム電流の少なくとも60%が前記ビーム電流測定に使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項10】
前記マルチアパーチャアレイに達する前記ビーム電流の少なくとも90%、特に少なくとも95%が前記ビーム電流測定に使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項11】
荷電粒子を吸収し、前記ビーム電流測定のためにそこから電子を放出する前記吸収層の活性ビーム測定表面が、前記マルチアパーチャアレイの全表面の少なくとも60%である、請求項1~10のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項12】
荷電粒子を吸収し、前記ビーム電流測定のためにそこから電子を放出する前記吸収層の活性ビーム測定表面が、前記マルチアパーチャアレイの全表面の少なくとも90%、特に95%である、請求項1~11のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項13】
前記複数の第1の個別粒子ビームの平均単一ビーム電流が、前記第1のビーム電流測定手段によって測定されるビーム電流全体の少なくとも1/100以下、特に1/500または1/1000以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項14】
前記吸収層は、吸収剤コーティングであり、および/または
前記吸収層は、金、銀、チタン、プラチナのうちのいずれか1つを含むかこれらのうちのいずれか1つからなる、請求項1~13のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項15】
前記マルチアパーチャアレイは、前記集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置され、前記第1の荷電粒子ビームを前記複数の第1の個別粒子ビームに分割する前記アレイである、請求項1~14のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項16】
前記マルチアパーチャアレイは、前記集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置されていない、請求項1~14のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項17】
前記コントローラは、前記エクストラクタ電極に供給される電圧を設定することによって前記ビーム発生デバイスを制御するために構成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項18】
前記コントローラは、前記粒子源の温度を設定することによって、特に加熱電流または加熱電圧を設定することによって、前記ビーム発生デバイスを制御するために構成されている、請求項1~17のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項19】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
プレアパーチャプレートとマルチアパーチャアレイとを有するマルチビーム発生器であって、前記マルチビーム発生器は、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、前記マルチアパーチャアレイは前記プレアパーチャプレートの下流かつ近傍に配置され、前記マルチアパーチャアレイは、その上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、前記吸収層は、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続され、前記プレアパーチャプレートは、その上側に、荷電粒子を吸収するプレアパーチャプレート吸収層を含み、前記プレアパーチャプレート吸収層は、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
前記プレアパーチャプレートに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段と、
前記ビーム発生システムと前記マルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムと、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の個別粒子ビームの両方が通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム粒子源と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記ビーム発生システムを駆動するために構成され、および/または、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記集光レンズシステムを制御するために構成されている、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項20】
前記集光レンズシステムの領域内に双偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記双偏向器を制御するようにさらに構成されている、請求項19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般には、本発明は、複数の個別粒子ビームを使用して動作するマルチビーム粒子顕微鏡に関する。具体的には、本発明は、改良型ビーム電流制御を備えたマルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体コンポーネントなど、ますます微細化し、複雑化する微細構造体の絶え間ない進歩に伴い、微細構造体を製造するための平面製造技術、および微細寸法を検査するための検査システムを、開発し、最適化する必要が生じている。たとえば、半導体コンポーネントの開発および製造は、テストウエハの設計のモニタリングを必要とし、平面製造技術は、高いスループットを有する信頼性のある製造のためのプロセス最適化を必要とする。また、リバースエンジニアリングのためと、半導体コンポーネントの顧客固有の個別構成のための、半導体ウエハの分析の最近の需要がある。したがって、ウエハ上の微細構造体を高い精度で調べるために高スループットで使用することができる検査手段が必要である。
【0003】
半導体コンポーネントの製造で使用される典型的なシリコンウエハは、最大300mmの直径を有する。各ウエハは、最大800mm2のサイズの30~60個の反復領域(「ダイ」)に細分される。半導体装置は、複数の半導体構造体を含み、それらは平面集積技術によってウエハの表面上に層を成して製造される。半導体ウエハは、典型的には製造プロセスに起因する平らな表面を有する。この場合、集積半導体構造体の構造体サイズは、数μmから、限界寸法(critical dimension(CD))である5nmにわたるが、構造体寸法は近い将来にさらに微小化するであろう。将来は、構造体サイズまたは限界寸法(CD)は、3nm未満、たとえば2nm、またはさらに1nm未満にまでになると予想される。上記の微小構造体サイズの場合、限界寸法のサイズの欠陥は、きわめて広い面積において迅速に特定される必要がある。いくつかの用途の場合、検査デバイスによって提供される測定の精度の仕様要件は、たとえば2桁または1桁さらに高い。たとえば、半導体フィーチャの幅は、1nm未満、たとえば0.3nmまたはさらに微細な精度で測定される必要があり、半導体構造体の相対位置は、1nm未満、たとえば0.3nmまたはさらに微細な重ね合わせ精度で決定される必要がある。
【0004】
MSEMすなわちマルチビーム走査電子顕微鏡は、荷電粒子システム(荷電粒子顕微鏡(CPM))の分野における比較的新しい進歩の結果である。たとえば、米国特許公報第7244949B2号および米国特許出願公開第2019/0355544号でマルチビーム走査電子顕微鏡が開示されている。マルチビーム電子顕微鏡またはMSEMの場合、視野またはラスターに配置された複数の個別電子ビームがサンプルに同時に照射される。たとえば、4~10000本の個別電子ビームを一次照射として与えることができ、各個別電子ビームは隣接個別電子ビームから1~200マイクロメートルのピッチで離隔されている。たとえば、MSEMは約100本の分離した個別電子ビーム(「ビームレット(beamlets)」)を有し、これらはたとえば六角形ラスター状に配置され、個別電子ビームは約10μmの距離で離隔されている。検査対象サンプルの表面に複数の荷電個別粒子ビーム(一次ビーム)が共通の広視野光学系、特に共通の対物レンズを用いて、その都度、個別に集束される。たとえば、サンプルは、可動ステージ上で組み立てられるウエハホルダーに固定された半導体ウエハとすることができる。荷電一次個別粒子ビームによるウエハ表面の照射中、相互作用生成物、たとえば二次電子または後方散乱電子が、ウエハの表面から発する。そのそれぞれの出発点が、その都度、複数の一次個別粒子ビームがその上で集束されるサンプル上の場所に対応する。相互作用生成物の量およびエネルギーは、特に、ウエハ表面の材料組成とトポグラフィに依存する。相互作用生成物は、複数の二次個別粒子ビーム(二次ビーム)を形成し、これらが共通の対物レンズによって集められ、マルチビーム検査システムの投影結像システムの結果として、検出面に配置された検出器に入射する。検出器は、それぞれが複数の検出画素を含む複数の検出領域を含み、検出器は二次個別粒子ビームのそれぞれの強度分布を捉える。このプロセスにおいてたとえば100μm×100μmの像視野(image field)が得られる。
【0005】
従来技術のマルチビーム電子顕微鏡は、一連の静電素子と磁気素子とを含む。複数の荷電個別粒子ビームの焦点位置と非点収差を適応化するために、静電素子と磁気素子との少なくとも一部が調整される。従来技術の荷電粒子によるマルチビームシステムは、さらに、一次または二次荷電個別粒子ビームの少なくとも1つのクロスオーバー面を含む。また、従来技術のシステムは、調整をより容易にするための検出システムを含む。従来技術のマルチビーム粒子顕微鏡は、サンプル表面の像視野を取得するために複数の一次個別ビームを用いてサンプル表面の領域を一括走査するための少なくとも1つのビーム偏向器(「偏向スキャナー(deflection scanner)」)を含む。マルチビーム電子顕微鏡とそれを動作させる方法に関するさらなる詳細は、2020年5月28日に出願された出願番号102020206739.2のドイツ国特許出願に記載されており、その開示は全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0006】
結像品質の要求が高まるにつれて、結像(image)のために使用されるマルチビーム粒子顕微鏡(multi-beam particle microscope)に対する要求も高まる。高品質の記録をするために、安定した動作パラメータがきわめて重要である。これらのうちの1つは、サンプル表面を走査するために使用される個別粒子ビームのビーム電流強度である。
【0007】
個別粒子ビームの均一なビーム電流強度のためには、粒子ビーム源の放射特性、より厳密には全使用放射角度にわたる放射特性の均一性が重要である。比較的大きな放射角度を使用する場合、粒子源、たとえば熱電界放出(TFE)源の放射特性は全体にわたって均一ではなくなる。したがって、対応する粒子ビームシステムにおける第1のマルチアパーチャプレートにおける放射照度も全体にわたって均一ではなくなり、異なる個別ビームにおける電流密度に比較的大きなばらつきがある。しかし、マルチ粒子検査システムの場合、多像視野のすべての個別像視野が同等数の粒子または電子で走査されるように、典型的には数パーセント未満、さらには1パーセント未満である様々な個別ビーム間の電流強度のわずかなばらつきしかないことがシステム要件である。たとえば、これは、ほぼ同じ明るさを有する個別像を得るための前提条件である。個別の像の得られる分解能も個別ビーム電流に依存する。
【0008】
個別粒子ビームのビーム電流の個別調整には複数の選択肢がある。これに関する1つの選択肢は、ドイツ国公開特許第102018007652A1号で開示されており、その開示は全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0009】
粒子源の放射特性は時間の経過によっても徐々に変化し、全体としてドリフト挙動を示すことがある。粒子源または先端部は経年劣化する可能性があり、たとえば明るさが低下する可能性がある。像の明るさは、さらに、粒子源の明るさまたは輝度と相関する。粒子源の明るさが低下した場合、これは像の明るさにも当てはまる。また、たとえば、当初粒子源から放出される粒子ビームはその方向を変えることがある。したがって、複数の個別荷電粒子ビームまたはビームレットでサンプルを走査するときに、より安定した均一なビーム電流を提供することを可能にする手段をとることが望ましい。
【0010】
これは、特に、安定したビーム電流に対する要件がさらに高くなると言えることである。通常、マルチビーム粒子顕微鏡のビーム電流安定性は、基準ビーム電流を基準にしたビーム電流の相対的変動が1時間にわたり≦10%または≦5%である場合に十分に安定しているとみなされていた。将来の測定作業では、このような安定度ではもはや十分とはみなされない。より高い要件が満たされる必要があり、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の基準ビーム電流を基準にした相対ビーム電流変動は、少なくとも1か月にわたり1%以下である必要がある。
【0011】
現況技術は、ビーム電流の測定またはモニタリングのため、およびビーム電流をそれぞれ制御するためのいくつかの原理を開示している。しかし、ビーム電流安定性のより高い要件に関しては、すでに存在する解決策は十分ではなく、改良される必要があることがわかっている。
【0012】
米国特許出願公開第2020/0312619号は、マルチビーム粒子顕微鏡とすることができるマルチビーム装置におけるビーム電流を測定するシステムおよび方法を開示している。このマルチビーム粒子顕微鏡は、一次荷電粒子ビームを発生するように構成された荷電粒子ビーム源と、マルチアパーチャアレイとを含む。マルチアパーチャアレイは、一次荷電粒子ビームから複数のビームレットを形成するように構成された複数のアパーチャと、マルチアパーチャアレイを照射する一次荷電粒子ビームの少なくとも一部の電流を検出するための回路を含む検出器とを含む。より詳細には、マルチアパーチャアレイの上側に設けられた微小な追加の穴内に、回路を有する複数の微小検出器が設けられる。これらの穴は、特定のアパーチャと関連付けられ、したがって微小であり、特定のアパーチャの近傍に設けられる。これらの穴は、アパーチャのアレイ内に設けられ、アレイの境界に直接設けられ、アレイの理論上の円周領域に接する。回路を備えた検出器の例は、ファラデーカップ、ダイオード、ダイオードのアレイ、シンチレータ、または光電子増倍管である。回路を備えた検出器は、検出器に入射する電流をモニタリングするために使用され、測定値から総電流を判定することができる。また、ビーム位置、ビーム直径、ビーム電流自体、ビーム電流密度、およびビーム電流密度の均一度など、電流の変化を検出することが可能である。これらの変化は、引き出し電圧の制御、加速電圧の制御、ビーム偏向電圧の制御などによって補正することができる。
【0013】
米国特許出願公開第2020/0312619号にはいくつかの欠点がある。すなわち、ビーム電流検出の全体的感度が、単一の検出に使用される狭い面積に起因して限定されている。検出器の表面積がビームレットを生成するアパーチャの面積に匹敵すると仮定すると、検出器で測定されるビーム電流は、関連付けられたアパーチャを通過する単一のビーム電流と同じオーダーである。典型的には、この単一ビーム電流は、数百ピコアンペアというかなり低いオーダーである。したがって、1%より大幅に小さい変動の検出はさらに困難であり、そのような微小な入口面を有する検出器の信号対ノイズ比は比較的高い。また、マルチアパーチャプレートの穴内に組み込まれた検出器の境界は、ビームレットのビーム方向とビーム品質とに悪影響を及ぼし得る累積変化に起因する問題を生じさせる可能性がある。さらに、微小検出器の製造は複雑である。したがって、全体として、米国特許出願公開第2020/0312619号による検出システムは、1か月またはさらに長期にわたって1%より優れたビーム電流安定性を必要とする測定作業には適さない。
【0014】
米国特許第6,969,862B2号は、リソグラフィシステム用ビーム電流検出器を開示している。この特許は、一次荷電粒子ビームを発生するように構成された荷電粒子源とアパーチャアレイとを含むマルチビーム装置を開示している。アパーチャアレイは、一次荷電粒子ビームから複数のビームレットを形成するように構成された複数のアパーチャと、回路に結合され、アパーチャアレイを照射する一次荷電粒子ビームの少なくとも一部の電流を検出するように構成された検出器とを含み、検出器は一次荷電粒子ビームを基準としてアパーチャアレイのビーム出口側に配置されている。したがって、米国特許第6,969,862B2号によるマルチビーム装置は、上記で引用した、米国特許出願公開第2020/0312619号によるマルチビーム装置ときわめて類似している。これら両方の公開文献の相違は、検出器が、米国特許出願公開第2020/0312619号によるとビーム入口側に位置しているが、米国特許第6,969,862B2号によるとビーム出口側に位置している点である。しかし、検出ビーム電流が両方の場合でマルチアパーチャアレイのビーム入口側に特に設けられた穴に入り、次に、回路を備えた検出器によって直接検出されるため、測定原理は両方の場合で同じである。したがって、米国特許第6,969,862B2号による検出システムも、1か月またはさらに長期にわたって1%より優れたビーム電流安定性を必要とする測定作業には適さない。
【0015】
米国特許第7,388,214B2号は、複数の荷電粒子ビームを使用してウエハを露光するためにアパーチャアレイ状に形成された複数のアパーチャによって、荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを複数の荷電粒子ビームに分割する荷電粒子ビーム露光装置を開示している。この装置は、アパーチャアレイのアパーチャを通過した複数の荷電粒子ビームが照射されるウエハを積載するためのステージと、ウエハを、複数の荷電粒子ビームに露光させるためにアパーチャアレイの複数のアパーチャを通過する複数の荷電粒子ビームの強度を検出する複数の検出電極であって、アパーチャアレイの複数のアパーチャの遮光周辺領域の荷電粒子ビーム源側に形成された検出電極と、複数の検出電極によって得られた検出結果に基づいて複数の荷電粒子ビームの強度を調整するグリッドアレイ(グリッド電極を含む)とを含む。米国特許第7,388,214B2号による検出システムも、1か月またはさらに長期にわたって1%より優れたビーム電流安定性を必要とする測定作業には適さない。電極パッド上に設けられた検出電極が好ましくはそれぞれ1つのアパーチャに割り当てられるため、この場合も検出面積がきわめて小さく、したがってビーム電流測定の信号対ノイズ比が比較的小さい。1つのパッドへのいくつかの検出電極の割り当ても開示されており、これが検出精度を向上させることになると教示されている。しかし、他方では、この割り当てには、パッドの共通配線の結果としてグリッド電極に同じ制御電圧が印加されるため、グリッド電極を使用する特定の制御の精度が低くなるという欠点がある。したがって、検出のために使用される面積が代償として全体的に小さいままとならざるを得ない。また、マルチアパーチャアレイに対する電荷を使用するビームレットへのいかなる能動的影響でもさらにビームレット品質に影響を与えるというリスクがある。製造の観点からは、米国特許第7,388,214B2号もかなり複雑である。
【0016】
米国特許第9,607,806B2号は、マルチアパーチャアレイの上の特定の位置に設けられたビーム制御のための検出器を有するマルチビームリソグラフィシステムを開示している。検出器は、ビームが偏向またはブランキングされるとビーム電流を測定することができる。
【0017】
米国特許第6,617,587B2号は、マルチビームリソグラフィシステムを開示している。これは、電極銃自体の一部であり、複数のビームのそれぞれについて別個に設けられている、単一アパーチャプレート上の電流収集領域を備えた先端部調節回路を有する。
【0018】
米国特許第5,111,053A号は、アナログフィードバックおよびデジタルCPU制御による液体金属イオン源の制御を開示している。この文献は、単一ビームシステムに関する。ビーム電流を測定するためにモニタリング電極が適用され、粒子源の引き出し電圧が調整される。
【0019】
米国特許第7,091,486B1号は、最初に、単一ビームシステムのビーム電流ゆらぎを補正するための従来の技術について記載している。記載されているビーム電流ゆらぎを補正するための従来技術は、ビーム絞りアパーチャに接続された回路を使用してアパーチャからの電流を測定する。この電流は、電子がアパーチャによって吸収されることによる。測定された電流から、ビーム電流を推定することができる。測定された電流の変化がビーム電流の変化を推定するために使用される。この従来技術は、限定された周波数帯域幅内のみのゆらぎを検出するのに適していると教示されている。特に、高周波(たとえば数キロヘルツを上回る)ゆらぎの検出には問題があると言われている。この帯域幅の限定は、この従来技術における低い電流レベルと高い漂遊容量とに起因すると言われている。したがって、米国特許第7,091,486B1号は、二次および/または後方散乱電子を収集し、測定するために、アパーチャの上方に取り付けられた高速検出器を使用することを教示している。二次および/または後方散乱電子は、アパーチャに対する一次ビームの一部(ブロックされる部分)の衝突に起因して放出される。高速電子検出器には、たとえば、エバーハート-ソーンリー検出器、PINダイオードベースの検出器、およびマイクロチャネルプレート検出器が含まれる。
【発明の概要】
【0020】
したがって、本発明の目的は、向上したビーム電流安定性を有するマルチビーム粒子顕微鏡を提供することである。これは、1か月またはさらにより長期にわたって1%より優れたビーム電流安定性を必要とする測定作業に適することになる。それぞれのフィードバック制御を実施するための機構は、製造および実施が容易となる。
【0021】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0022】
本特許出願は、2021年7月19日に出願されたドイツ国特許出願第102021118561.0号の優先権を主張し、参照によりその開示の全体が本特許出願に組み込まれる。
【0023】
本発明の第1の態様によると、本発明は、マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極(extractor electrode)とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システム(beam generating system)と、
マルチアパーチャアレイを有するマルチビーム発生器(multi-beam generator)であって、第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビーム(first individual charged particle beams)の第1の視野(first field)を生成するように構成され、マルチアパーチャアレイがその上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、吸収層が、過剰電子(excess electrons)を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
マルチアパーチャアレイにおける開口(openings)のすべての周囲の外側領域においてマルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子(discharged excess electrons)を広い面積にわたって少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段と、
ビーム発生システムとマルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステム(condenser lens system)と、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置(incidence locations)においてサンプルに当たるように、第1の個別粒子ビームをサンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
第2の視野内の入射位置から発する第2の個別粒子ビームを検出システム上に結像(image)するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
第1と第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズ(particle optical objective lens)と、
マルチビーム発生器と対物レンズとの間の第1の粒子光学ビーム経路に配置され、対物レンズと検出システムとの間の第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
ビーム発生システムと、集光レンズシステムと、粒子光学対物レンズと、第1の粒子光学ユニットと、第2の粒子光学ユニットと、検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
コントローラが、第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいてビーム発生システムを制御するために構成され、および/または、
コントローラが、第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて集光レンズシステムを制御するために構成されている、マルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【0024】
個別荷電粒子ビームは、たとえば、電子、陽電子、ミューオンもしくはイオン、またはその他の荷電粒子とすることができる。
【0025】
マルチアパーチャアレイは、好ましくは、マルチビーム粒子顕微鏡の粒子光学ビーム経路において集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置されたアレイである。このマルチアパーチャアレイは、好ましくは、第1の荷電粒子ビームを複数の個別荷電粒子ビームに分割するアレイである。この場合、マルチアパーチャアレイは、好ましくは、微小光学系と呼ばれるものの構成要素であり、微小光学系は好ましくは、一連の複数のマルチアパーチャプレートまたはマルチアパーチャアレイ(この2つの表現は本特許出願内では同義語として使用される)からなるか、またはそれを含む。この文脈において、良好な像品質のために、粒子供給源または先端部から発する第1の荷電粒子ビームは、マルチアパーチャアレイ上に均一に、特に、可能な限り垂直に入射する必要があり、マルチアパーチャアレイを可能な限り均一にまたは中心に位置するように照射する必要もある。その場合、マルチアパーチャアレイを通過する個別粒子ビームのビーム電流が、個別粒子ビームにおいて十分に均一であるように保証することが可能である。均一な照射は、マルチアパーチャアレイへの第1の荷電粒子ビームのテレセントリック入射の場合だけでなく、発散入射または収束入射の場合、および中心ビーム軸がマルチアパーチャアレイの表面に対して垂直に位置合わせされる場合はどのような場合であっても実現可能である。ここで、マルチアパーチャアレイにおける開口は好ましくは円形であるが、他の形状を有してもよい。好ましくは、マルチアパーチャアレイにおける開口は規則的配置、たとえば矩形、正方形または六角形の配置を有する。六角形配置の場合、好ましくは3n(n-1)+1個の開口が設けられ、ここでnは任意の自然数である。
【0026】
マルチアパーチャアレイまたはマルチアパーチャプレートは、その上側に、電子を吸収することができる吸収層を含む。好ましくは、吸収層は、マルチアパーチャアレイの実質的に全表面(当然ながらアパーチャを除く)に設けられ、したがって、アパーチャを含む内側領域だけでなく、マルチアパーチャアレイ内の開口のすべての周囲の外側領域にも設けられる。また、現況技術の既存のマルチビーム粒子顕微鏡にもこのような吸収層が設けられる。これは、マルチアパーチャアレイの表面上に、第1の個別粒子ビームのビーム品質を著しく低下させることになる電荷が蓄積しないことを保証する。
【0027】
この測定システムは、たとえば移動可能ステージと、たとえばその上のファラデーカップとを使用して測定される個別粒子ビームに基づいてキャリブレーションすることができる。他の実施形態変形およびキャリブレーション方法も考えられる。
【0028】
本発明によると、広い面積にわたって、マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域においてマルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された、第1のビーム電流測定手段が提供される。マルチビーム粒子装置を対象とする現況技術とは異なり、測定は、広い面積にわたって行われ、マルチアパーチャアレイ上に別々の検出器が配置される場合に典型的に使用される狭い面積内ではない。面積を拡大することにより、検出時の信号対ノイズ比が大幅に向上する。また、驚いたことに、本発明人らの測定で、マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域における広い面積にわたる測定によって得られる信号のいかなる変動も個別粒子ビームのビーム電流変動を反映することがわかった。したがって、広い面積にわたる測定は、個別荷電粒子ビームのビーム電流の大きめのゆらぎをカバーする平均化ではない。この発見は、きわめて重要であり、主要な焦点が各個別粒子ビームについて別々に可能な限り精密にビーム電流を測定することに置かれている現況技術に対する概念の変化である。驚くことに、そのような個別粒子ビームごとの別々の測定は不要である。
【0029】
また、本発明による第1のビーム電流測定手段は、マルチアパーチャアレイ上に組み込まれる必要がある別個の検出デバイスを必要とせず、したがって特定の回路を設ける必要がない。したがって、本発明による解決策は、きわめて簡素であり、したがってマルチアパーチャアレイの製造をきわめて容易にする。任意の検出デバイス、典型的には電流計、特にピコ電流計を、マルチアパーチャアレイから距離をおいて設けることができる。マルチビーム粒子顕微鏡内部に設けられた真空内に電流計を設ける必要はなく、電流計は真空の外部に設けることができる。
【0030】
また、測定原理は、現況技術によるマルチビーム装置に適用される測定原理とは異なる。現況技術によると、マルチアパーチャアレイ上に別々に設けられた検出器によって測定される粒子は、マルチアパーチャアレイに衝突する、またはより正確には、検出器が設けられている位置に衝突する粒子である。それに対して、本発明によると、測定される過剰電子は少なくとも直接には衝突荷電電子ではなく、輸送および「変換」が可能であり、それにもかかわらずそれらの電子は衝突荷電粒子の尺度となる。これは、マルチビーム粒子顕微鏡がイオンを使用して動作し、電子を使用しては動作しない場合に明白になる。イオンは、吸収層に吸収されるには大き過ぎるが、吸収層の表面に付着はする。イオンは、電子を放出し、これらの電子は、輸送し、放電することができるか、または同等数の既存の電子を放電することができる。
【0031】
本発明によると、マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域においてマルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子が少なくとも、より広い面積にわたって測定される。開口の周囲の外側領域全体がそのような広い面積を提供する。外側領域の一部も広い面積を提供することができ、したがって、検出のために向上した信号対ノイズ比を実現することができる。また、外側領域における衝突粒子に基づく測定は、第1の荷電粒子ビームのビームコーン全体の位置シフトを示すことができる。
【0032】
一実施形態によると、第1のビーム電流測定手段は、マルチアパーチャアレイにおける開口を含む内側領域においてマルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子も測定するように構成される。内側領域からと外側領域から発する過剰電子の測定は、1つの電流計によって全体的過剰電子測定として行うことができる。この場合、測定のための相互作用領域は最大化され、信号対ノイズ比が最良である。しかし、この場合、第1の荷電粒子ビーム全体の位置逸脱を別個に検出することができない。しかし、この実施形態は、既存のシステムにおける実施が最も簡単である。
【0033】
本発明による第1のビーム電流測定手段は、この場合、原則として現況技術からすでに知られている制御ループとして実施可能である。コントローラは、たとえば第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいてビーム発生システムを制御するために構成可能である。これに加えて、またはこれに代えて、コントローラは、第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて集光レンズシステムを制御するために構成可能である。他の種類の制御実施形態も可能である。ビーム電流測定手段は、たとえば、移動可能ステージと、たとえばその上のファラデーカップとを使用して測定された個別粒子ビームに基づいてキャリブレーションすることができる。他の実施形態変形およびキャリブレーション方法も考えられる。
【0034】
一実施形態によると、マルチアパーチャアレイ上の吸収層は、各領域が接地に接続された、互いに分離された厳密に2つの別々の領域に構造化され、第1の領域がマルチアパーチャアレイの開口を含む内側領域であり、第2の領域がマルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域であり、第1のビーム電流測定手段が外側領域から放電された過剰電子のみを測定するように構成される。好ましくは、内側領域と外側領域とはマルチアパーチャアレイ上の相補的な領域である。言い換えると、マルチアパーチャアレイの全表面が内側領域と外側領域とからなる。外側領域から放電される過剰電子の測定は、個別荷電粒子ビームのビーム電流におけるゆらぎを測定し、したがって制御するのに十分である。内側領域は、いかなる測定または吸収層のいかなる構造化にもまったく阻害されず、したがって個別粒子ビームのビーム品質をその最良の状態に維持することができる。
【0035】
一実施形態によると、マルチアパーチャアレイ上の吸収層は、各領域が接地に接続された互いに分離された少なくとも2つの別々の領域に構造化され、第1のビーム電流測定手段が、各領域から別々に放電される過剰電子を広い面積にわたって測定するように構成される。したがって、吸収層の構造化は、それでも十分に広い別々の領域が生じるような区分に限定される。これは、測定の良好な信号対ノイズ比を確実にするために必要である。好ましい実施形態によると、構造化全体が吸収層を最大5つまたは6つの別々の領域に分割する。
【0036】
一実施形態によると、吸収層は、マルチアパーチャアレイの開口を含む内側領域と、マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域とに構造化される。外側領域はさらに、方向表示象限検出器(direction indicating quadrant detector)を形成するように配置された4つの別々の領域に構造化され、第1のビーム電流測定手段が各象限から別々に放電される過剰電子を広い面積にわたって測定するように構成される。好ましくは、内側領域はまったく構造化されず、完全にそのままとされる。内側領域から放電される過剰電子を任意により測定することができる。象限検出器という用語は、マルチアパーチャアレイに衝突するビームコーンの移動の方向を示すのに適した、別々の領域からなる機構全体を示す。各象限のサイズはほぼ同じに選定されることが好ましいが、開口の周囲の包絡線の特定の幾何形状を生じさせるマルチアパーチャプレートにおける開口の具体的な配置によっては、特定の逸脱が有利な場合がある。この包絡線は、内側領域と外側領域との間の境界を画定することができ、構造化と分離のために使用することができる。
【0037】
別の実施形態によると、吸収層は、内側領域と外側領域とに構造化され、外側領域はさらに、方向表示三分割検出器(direction indicating tertial detector)を形成するように3つの別々の領域に構造化され、第1のビーム電流測定手段が各3分割領域から別々に放電される過剰電子を測定するように構成されている。三分割検出器の3つの別々の領域の配置は、別々の検出領域の三角形の配置に由来している。キャリブレーションプロセス後、3つの別々の領域のうちの1つを用いて検出された逸脱があればそれはまさに位置逸脱を示している可能性があり、原則的に位置逸脱の種類の分析を可能にする。方向表示三分割検出器の使用は、領域の構造/分離の数がさらに限定されるという点で有利であり、したがってマルチアパーチャアレイの表面上の蓄積電荷によるビーム電流品質への影響をさらに最小限にする。内側領域はまったく構造化されず、完全にそのままにしておくのが好ましい。内側領域から放電された過剰電子を任意により測定することができる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によると、マルチビーム粒子顕微鏡は、さらに、集光レンズシステムの領域に双偏向器(double deflector)を含み、マルチビーム粒子顕微鏡のコントローラがさらに、ビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて双偏向器を制御するように構成される。双偏向器は、好ましくは、磁気双偏向器と比較して高速に動作させることが可能な静電双偏向器である。しかし、磁気双偏向器も実施可能である。双偏向器は、第1の荷電粒子ビーム全体を平行にシフトさせることができ、したがってマルチアパーチャアレイに衝突するビームコーンの位置逸脱を補正することができる。
【0039】
原則として、第1のビーム電流測定手段は、1つまたは複数の構成要素を含むことができる。きわめて明解で単純な実施形態によると、第1のビーム電流測定手段は、1つの構成要素のみを含む。数個の構成要素の場合、それらの構成要素は同一であることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0040】
好ましい一実施形態によると、第1のビーム電流測定手段は、少なくとも1つの電流計、特にピコ電流計を含む。ピコ電流計はきわめて感度が高く、ビーム電流の尺度である提供された過剰電子のすでにきわめて微小な変動も検出することができる。
【0041】
好ましい一実施形態によると、マルチアパーチャアレイに達するビーム電流の少なくとも60%がビーム電流測定に使用される。これにより、広い面積の測定が行われるため、良好な信号対ノイズ比を確実にすることができる。
【0042】
好ましい一実施形態によると、マルチアパーチャアレイに達するビーム電流の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%が、ビーム電流測定に使用される。上記の値は、通常、マルチアパーチャアレイの全表面に吸収層が設けられ、接地電極に輸送される放電されるすべての過剰電子が測定される場合に達成される。これは、ピコ電流計などの1つの測定デバイスを使用して、または、いくつかの測定デバイス、たとえばいくつかのピコ電流計を使用して行うことができる。
【0043】
一実施形態によると、荷電粒子を吸収し、ビーム電流測定のためにそこから電子を放電する吸収層の活性ビーム測定表面(active beam measurement surface)は、マルチアパーチャアレイの全表面の少なくとも60%である。好ましくは、活性ビーム測定表面は、マルチアパーチャアレイの全表面の少なくとも90%、さらに好ましくは95%である。活性ビーム測定表面に言及することと、マルチアパーチャアレイに達するビーム電流に言及することには相違がある。活性ビーム測定表面は、設計により、たとえば、吸収層と、たとえば電流計を介した接地への接続とを設けることにより、固定される。それに対して、マルチアパーチャアレイに達するビーム電流の比率は、マルチビーム粒子顕微鏡の動作設定に依存し、たとえば、第1の荷電粒子ビームの設定ビーム直径に依存する。いずれの場合も、上記の好ましい実施形態は、第1のビーム電流測定手段を用いた測定が、広い面積にわたって行われ、したがって良好な信号対ノイズ比を確実にすることを保証する。
【0044】
好ましい一実施形態によると、複数の第1の個別粒子ビームの平均単一ビーム電流は、第1のビーム電流測定手段によって測定されたビーム電流全体の1/100以下であり、好ましくは、複数の第1の個別粒子ビームの平均単一ビーム電流は第1のビーム電流測定手段によって測定されたビーム電流全体の1/500以下であり、さらにより好ましくは1/1000以下である。したがって、発生する信号は単一ビーム電流よりはるかに大きく、これは、必要なきわめて良好な信号対ノイズ比に寄与する。一例を挙げると、典型的な単一ビーム電流は、数百ピコアンペアのオーダー、たとえば500または600または700ピコアンペアである。過剰電荷を用いて測定されるビーム電流全体は、たとえば500、600または700ナノアンペアの範囲である。しかし、単一ビーム電流と、測定過剰電子によって発生される電流全体は、より大きい場合もより小さい場合もあり得、たとえば、単一ビーム電流の場合わずか数十ピコアンペア、過剰電子の場合、わずか数十ナノアンペアもあり得る。しかし、最大数ナノアンペアのより大きな単一ビーム電流も可能であり、過剰電子を用いて測定される数マイクロアンペアのビーム電流も可能である。
【0045】
一実施形態によると、吸収層は吸収剤コーティングであり、および/または、吸収層は、金、銀、チタン、プラチナのうちのいずれか1つを含むかそれからなる。これらは優れた導体であり、酸化しにくい。原則的に貴金属が好ましい。
【0046】
一実施形態によると、マルチアパーチャアレイは、集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置され、第1の荷電粒子ビームを複数の第1の荷電粒子ビームに分割するアレイである。あるいは、マルチアパーチャアレイは、集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとしては配置されない。この変形は、典型的には、一連のアパーチャプレート、特に一連のマルチアパーチャアレイが設けられる場合に生じ得る。
【0047】
一実施形態によると、コントローラは、エクストラクタ電極に供給される電圧を設定することによってビーム発生デバイスを制御するために構成される。この種の制御は、原則的に当技術分野からすでに知られている。
【0048】
一実施形態によると、コントローラは、粒子源の温度を設定することによって、特に、加熱電流または加熱電圧を設定することによって、ビーム発生デバイスを制御するために構成される。この種の制御は、たとえばエクストラクタ電極に供給される電圧の設定よりわずかに低速であるが、この種の制御は十分でもあり、さらに、スイッチオンおよびオフ手順時に確実に実施することが容易であることがわかっている。
【0049】
本発明の第2の態様によると、本発明はマルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
プレアパーチャプレート(pre-aperture plate)とマルチアパーチャアレイとを有するマルチビーム発生器であって、第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、マルチアパーチャアレイがプレアパーチャプレートの下流かつプレアパーチャプレートの近傍に配置され、マルチアパーチャアレイがその上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、吸収層が、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続され、プレアパーチャプレートがその上側に、荷電粒子を吸収するプレアパーチャプレート吸収層を含み、プレアパーチャプレート吸収層が過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
プレアパーチャプレートに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段と、
ビーム発生システムとマルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムと、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、第1の個別粒子ビームをサンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
第2の視野内の入射位置から発する第2の個別粒子ビームを検出システム上に結像(image)するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
第1と第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
マルチビーム粒子源と対物レンズとの間の第1の粒子光学ビーム経路に配置され、対物レンズと検出システムとの間の第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
ビーム発生システムと粒子光学対物レンズと第1の粒子光学ユニットと第2の粒子光学ユニットと検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
コントローラが、第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいてビーム発生システムを駆動するために構成され、および/または、
コントローラが、第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて集光レンズシステムを制御するように構成されている、マルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【0050】
すでに上記で言及したように、マルチビーム発生器は、いわゆる微小光学系の一部とすることができる、一連のアパーチャプレートとマルチアパーチャプレートとを含むことができる。第1の態様による本発明による1つの特徴は、マルチアパーチャアレイの外側領域における衝突粒子によって発生した過剰電子がビーム電流測定に使用されることである。当然ながら、プレアパーチャプレートを配置することも可能であり、これは、マルチアパーチャアレイの外側領域の真上/上流の、単一の中央開口のみを有するプレートを意味し、このプレアパーチャプレートから放電される過剰電子に基づく測定を行うことが可能である。本発明の第1の態様に関して説明したような実施形態変形を、本発明の第2の態様による実施形態変形に移転することができる。特に、プレアパーチャプレート上に設けられる吸収層を、本発明の第1の態様に関して詳述するような広い面積にわたる測定を可能にする領域に構造化することができる。当然ながら、マルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した過剰電子の測定を追加で行うことも可能である。通常、これは、本発明の第1の態様に関して上述したようなマルチアパーチャアレイの内側領域における測定と一致することになる。技術的矛盾が生じない限り、第1の態様による本発明の実施形態と第2の態様による本発明の実施形態とを全部または一部、互いに組み合わせることができる。
【0051】
この文脈では、本発明は、添付図面を参照すればさらによくわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】マルチビーム粒子顕微鏡(MSEM)を示す概略図である。
【
図3】上側に吸収層を有するマルチアパーチャアレイを概略的に示す図である。
【
図4】単一ビーム電流と、マルチアパーチャアレイの吸収層から放電される過剰電子によって発生した電流との比較を示す図である。
【
図5】別のビーム電流測定を概略的に示す図である。
【
図8】マルチアパーチャアレイへの入射時の照明ビームのビームコーンの調整を示す概略図である。
【
図9】集光レンズシステムの領域における静電双偏向器を示す概略図である。
【
図10】コントローラを用いて制御される閉ループビーム電流制御手段と補償器とを有するマルチビーム粒子顕微鏡を概略的に示す図である。
【
図11】ビーム電流制御に関する詳細を概略的に示す図である。
【
図12】X線の測定に基づく別のビーム電流制御の詳細を概略的に示す図である。
【
図13】NIR放射に変換されるX線を使用するビーム電流測定手段を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、複数の粒子ビームを使用するマルチビーム粒子顕微鏡1の形態の粒子ビームシステム1の概略図である。粒子ビームシステム1は、物体から発し、その後検出される相互作用生成物、たとえば二次電子をそこで発生するために、検査対象物体に当たる複数の粒子ビームを発生する。粒子ビームシステム1は、複数の位置5において物体7の表面に入射し、そこで互いから空間的に分離した複数の電子ビームスポット、またはスポットを発生させる、複数の一次粒子ビーム3を使用する、走査電子顕微鏡(SEM)型である。検査対象物体7は、任意の希望する種類、たとえば半導体ウエハまたは生体サンプルとすることができ、微小要素などの配列を含むことができる。物体7の表面は、対物レンズシステム100の対物レンズ102の第1の面101(対物面)に配置される。
【0054】
図1の拡大抜粋
図I1に、第1の面101に形成された入射位置5の正方形視野103を有する対物面101の平面図を示す。
図1で、入射位置の数は、5×5視野103を形成する25である。入射位置の数25は、簡略化された図のために選択された数である。実際には、ビームの数、したがって入射位置の数は、たとえば20×30、100×100など、それより大幅に大きい数を選択することができる。
【0055】
図の実施形態では、入射位置5の視野103は、隣接する入射位置間の一定したピッチP1を有する実質的に正方形である。ピッチP1の値の例は、1マイクロメートル、10マイクロメートルおよび40マイクロメートルである。しかし、たとえば視野103は六方対称など、他の対称形状を有することも可能である。
【0056】
第1の面101内に成形されるビームスポットの直径は微小とすることができる。この直径の値の例は、1ナノメートル、5ナノメートル、10ナノメートル、100ナノメートルおよび200ナノメートルである。ビームスポット5を成形するための粒子ビーム3の集束は、対物レンズシステム100によって行われる。
【0057】
物体に当たる一次粒子は、物体7の表面から、または第1の面101から発する、相互作用生成物、たとえば二次電子、後方散乱電子、またはその他の理由により動きが逆転した一次粒子を発生する。物体7の表面から発する相互作用生成物は、二次粒子ビーム9を形成するように対物レンズ102によって成形される。粒子ビームシステム1は、複数の二次粒子ビーム9を検出器システム200に誘導するための粒子ビーム経路11を提供する。検出器システム200は、二次粒子ビーム9を粒子マルチ検出器209に向けるための投影レンズ205を備えた粒子光学ユニットを含む。
【0058】
図1の抜粋
図I2に、二次粒子ビーム9が位置213に入射する粒子マルチ検出器209の個別検出領域が位置する面211の平面図を示す。入射位置213は、互いからの規則的なピッチP2を有する視野217内にある。ピッチP2の値の例は、10マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルである。
【0059】
一次粒子ビーム3は、少なくとも1つの粒子源301(たとえば電子源)と、少なくとも1つのコリメーションレンズ303と、マルチアパーチャ配列305と、視野レンズ307とを含むビーム発生装置300で生成される。粒子源301は、発散粒子ビーム309を生成し、これが、マルチアパーチャ配列305を照射するビーム311を成形するためにコリメーションレンズ303によってコリメートされるかまたは少なくとも実質的にコリメートされる。
【0060】
図1の抜粋
図I3に、マルチアパーチャ配列305の平面図を示す。マルチアパーチャ配列305は、中に形成された複数の開口またはアパーチャ315を有するマルチアパーチャプレート313を含む。開口315の中点317が、対物面101においてビームスポット5によって形成される視野103に結像(image)される視野319内に配置される。アパーチャ315の中点318間のピッチP3は、5マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルの値の例を有することができる。アパーチャ315の直径Dは、アパーチャの中点間のピッチP3より小さい。直径Dの値の例は、0.2×P3、0.4×P3および0.8×P3である。
【0061】
照射粒子ビーム311の粒子がアパーチャ315を通過し、粒子ビーム3を形成する。プレート313に当たる照射ビーム311の粒子は、プレート313によって吸収され、粒子ビーム3の形成に寄与しない。
【0062】
印加静電界により、マルチアパーチャ配列305が粒子ビーム3のそれぞれを、面325内にビーム焦点323形成されるように集束させる。あるいは、ビーム焦点323は仮想とすることができる。ビーム焦点323の直径は、たとえば10ナノメートル、100ナノメートルおよび1マイクロメートルとすることができる。
【0063】
視野レンズ307と対物レンズ102は、入射位置5またはビームスポットの視野103がそこで生じるように、ビーム焦点323が形成される面325を第1の面101上に結像(image)するための第1の結像粒子光学ユニットを提供する。物体7の表面が第1の面に配置された場合、ビームスポットがそれに対応して対物表面上に形成される。
【0064】
対物レンズ102および投影レンズ配列205は、第1の面101を検出面211上に結像(image)するための第2の結像粒子光学ユニットを提供する。したがって対物レンズ102は、第1と第2の両方の粒子光学ユニットの一部であるレンズであり、一方、視野レンズ307は第1の粒子光学ユニットにのみ属し、投影レンズ205は第2の粒子光学ユニットにのみ属する。
【0065】
第1の粒子光学ユニットのビーム経路においてマルチアパーチャ配列305と対物レンズシステム100との間にビームスイッチ400が配置されている。ビームスイッチ400は、対物レンズシステム100と検出器システム200との間のビーム経路における第2の光学ユニットの一部でもある。
【0066】
このようなマルチビーム粒子ビームシステムおよびその中で使用される、たとえば粒子源、マルチアパーチャプレートおよびレンズなどのコンポーネントに関するさらなる情報は、国際特許出願WO2005/024881A2、WO2007/028595A2、WO2007/028596A1、WO2011/124352A1ならびにWO2007/060017A2、およびドイツ国特許出願公開第102013016113号ならびに第102013014976号から得ることができ、その開示はその全範囲が参照により本出願に組み込まれる。
【0067】
図2に、ビーム電流測定を概略的に示す。マルチアパーチャアレイ304が断面図で示されている。マルチアパーチャアレイ304は、その上側に、荷電粒子を吸収することができる吸収層341を含む。図の実施形態では、マルチアパーチャアレイ304の上側全体が吸収層341によって被われている。この実施形態では、マルチアパーチャプレートが、集光レンズシステム(
図2では図示せず)の下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置されている。照明粒子ビーム311がマルチアパーチャアレイ304に入射する。照明粒子ビーム311の入射粒子の大部分が吸収層304aに衝突し、すべての粒子のうちのわずかな部分が開口304aを通過し、したがって複数の第1の個別荷電粒子ビーム3を生じさせる。照明粒子ビーム311の一部が、マルチアパーチャアレイ304の外側領域366に衝突し、例として、
図2では粒子ビーム311Bbが示されている。照明粒子ビーム311の他の部分は、内側領域367においてマルチアパーチャアレイ304に衝突する。これらの粒子の一部が
図2では参照符号311aで例として示されている。この実施形態では、マルチアパーチャアレイ304は構造化されていない。したがって吸収層341に衝突するすべての粒子が、吸収層341から放電されて本事例ではピコ電流計として実現される第1のビーム電流測定手段370によって測定される過剰電子を生じさせる。測定値はコントローラ10に伝達され、たとえばビーム発生システム、たとえば、エクストラクタ電極に印加される電圧を制御するために、または粒子源の温度を設定することによる制御のために使用される。他の制御ループも可能である。
【0068】
図の実施例では、吸収層341への接続と接地電極との間に位置づけられた1つのピコ電流計のみが適用されている。したがって、吸収層341の全面積が測定値に寄与し、これには外側領域366と内側領域367とにおいてマルチアパーチャアレイ304に衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子の測定が含まれる。図示されている測定原理は、きわめて良好な信号対ノイズ比を確実にする、広い面積にわたる測定である。図の実施例では、複数の第1の個別粒子ビーム3の平均単一ビーム電流は、第1の電流測定手段370によって測定されるビーム電流全体の1/1000以下である。
図2における寸法は縮尺通りではないことに留意されたい。
【0069】
図3に、上側に吸収層341を有するマルチアパーチャアレイ304を概略的に示す。
図3aには、
図2ですでに図示されているマルチアパーチャアレイ304が上面図で示されている。吸収層341の構造化はなされておらず、吸収層341の表面全体が過剰電子の測定のために使用可能であることに留意されたい。
【0070】
それに対して、
図3bは、互いに分離された2つの別々の領域に構造化されているマルチアパーチャプレート304を示している。第1の領域は、マルチアパーチャアレイ304における開口304aのすべての周囲の領域として画定された外側領域366と同一である。第2の領域は、マルチアパーチャアレイ304におけるすべての開口304aを含む内側領域367である。図の実施例では、複数のアパーチャ304aが六角形状に配置されている。したがって、構造化368または分離368も六角形として設けられる。当然ながら、アパーチャ304aの全体的配置が六角形として選択された場合であっても、分離の他の形状も選定可能である。たとえば、円形を選定すること、またはたとえば矩形を選定することも可能である。
図3bにおいても、マルチアパーチャアレイ304の全表面に吸収層341が設けられ、参照符号341aが外側領域366における吸収層を示し、参照符号341bが内側領域367における吸収層を示すことに留意されたい。内側領域367および外側領域366における吸収層は、同じ材料からなるように選定することが可能であるが、材料は異なるように選定することもできる。一実施例によると、吸収層は、金、銀、チタン、プラチナのうちのいずれか1つを含むか、それからなることができる。原則として、優れた導電性を有する貴金属が好ましい。
【0071】
図3bに示す実施形態によると、両方の吸収層341aおよび341bをそれぞれ接地電極に接続することができる。吸収層341aから放電された過剰電子は、いずれの場合も電流計370で測定される。それに対して、吸収層341bから放電された過剰電子の別の電流計による測定は任意である。マルチアパーチャアレイ304の内側領域367ではさらなる構造化はないことに留意されたい。したがって、複数の第1の個別粒子ビーム3の形成は、マルチアパーチャアレイ304上のいかなる構造化または電極の存在にもまったく阻害されない。
【0072】
図4で、単一ビーム電流と、マルチアパーチャアレイ304の吸収層341から放電された過剰電子によって発生する電流とを比較する。参照符号C1によって示す曲線は、第1の電流測定手段370によって測定された電流を示す。参照符号C2は、たとえば第2のビーム電流測定手段によって、たとえばマルチビーム粒子顕微鏡全体のキャリブレーション時にステージに一時的に置かれたファラデーカップを用いて測定された、単一ビーム電流(グラフではシフトされている)を示す。この比較の重要な結果は、単一ビーム電流(曲線C2)に発生する変動およびゆらぎが、曲線C1にも、したがって単一ビーム電流の測定をまったく目標としておらず原則としてアンサンブル測定である測定にも、反映されていることである。この結果は、本発明による測定原理の変更を可能にする決定的な根拠である。マルチアパーチャアレイ304におけるそれぞれのアパーチャ近傍に別々に設けられた追加の検出器によって可能な限り多くの単一ビーム電流を別々に測定することがもはや目的ではなくなる。そうではなく、目標は、アンサンブル測定によって、より正確にはマルチアパーチャアレイ304上の広い面積にわたる測定によって実現可能な、きわめて良好な信号対ノイズ比による測定である。付帯的所見として、単一ビーム電流と、測定された全体的「コーティング」電流との必要な比例関係は、システム内の他のアパーチャにおいて実施される広い面積の測定によって自動的に見出すことはできないことに留意されたい。エクストラクタアパーチャにおいて、または粒子源のアノードのアパーチャにおいて行われたアンサンブル測定は、この2つのパラメータ間の必要な比例関係を示さなかった。
【0073】
図5に、本発明の別の実施形態による別のビーム電流測定を概略的に示す。この実施例では、マルチビーム発生器がプレアパーチャプレート380とマルチアパーチャアレイ304とを含む。上記と同様に、マルチアパーチャアレイ304の全表面が、接地に接続された吸収層341によって被覆されている。しかし、アパーチャアレイ304のすぐ上流に、プレアパーチャプレート380が設けられている。基本的に、このプレアパーチャプレート380はマルチアパーチャアレイ304の外側領域366を被覆または遮断し、それ自体の「外側領域」366aを生じさせる。プレアパーチャプレート380に衝突する粒子は、吸収層341aによって吸収されて過剰電子に変換され、それが層341aから放電され、接地電極に輸送される。接地までのこの線内に、単一のピコ電流計として第1のビーム電流測定手段370が設けられている。測定値はコントローラ10に伝達される。この場合も、この測定結果に基づいて、コントローラ10は、たとえばビーム発生システムを駆動するため、または、集光レンズシステムを制御するために構成される。
図5には図示されていないが、任意により、吸収層341から接地に至る線において第1のビーム電流測定手段370のさらなる構成要素を配置することも可能であり、したがって、基本的に、内側領域367におけるマルチアパーチャアレイ304への衝突粒子によって発生する過剰電子も測定することが可能である。
【0074】
図6に、象限検出器を概略的に示す。図の実施形態によると、マルチアパーチャプレート304が、互いに分離された5つの別々の領域351、352、353、354および367に構造化されている。各領域351、352、353、354および367は接地に接続されている。第1のビーム電流測定手段370が、図の実施例では5つの構成要素370a、370b、370c、370dおよび370eを含む。各場合において、過剰電子が測定され、測定結果がコントローラ10に伝達される。内側領域367がマルチアパーチャアレイ304におけるすべての開口を含むことに留意されたい。したがって、内側領域367はいかなる構造化によっても、または別々に設けられた検出器によってもまったく阻害されない。これにより、発生した個別粒子ビーム3のきわめて良好なビーム電流品質が確実にされる。外側領域366は4つの象限351、352、353および354に細分される。象限351および353は同じ大きさの面積を有する。同じことは、領域352および342のより広い面積にも当てはまる。照明粒子ビーム311のビームコーンがマルチアパーチャアレイ304に中心に位置づけられて衝突する場合、領域351および353の測定によって発生する信号は同じ信号強度を示すはずである。同じことは領域352および354での測定によって発生する信号にも当てはまる。照明粒子ビーム311のビームコーンが一方向にシフトされる場合の異なるシナリオでは、各象限351、352、353および354によって発生する信号は、このシフトの方向を特定することを可能にする変動を示す。このシフトは、たとえば、照明ビームコーン311全体の平行シフトを可能にする集光レンズシステムの領域における双偏向器を制御することによって補正することができる。
【0075】
当然ながら、
図6に示す象限検出器は、原則的に異なる方式で実現することができる。象限の形状は変更可能であり、したがって、この実施例では六角形として図示されているアパーチャ自体の配置も変更することができる。
【0076】
原則的に、照明ビームコーン311全体の方向変動が、3つの外側領域のみを含む検出器によってすでに特定可能である。一例は、外側領域366が、好ましくは外側領域の約120度にわたる、3つの異なる領域に細分された方向表示三分割検出器である。
【0077】
当然ながら、外側領域366を4つより多い別々の領域にさらに構造化することも可能である。しかし、マルチアパーチャアレイ304の上に設けられたいずれの構造化または分離も、回避する必要がある複数の第1の個別粒子ビーム3のビーム品質の劣化という潜在的リスクを負うことに留意しなければならない。また、測定のための面積が広くなるほど、この種の測定について達成可能な信号対ノイズ比がよくなる。マルチアパーチャアレイ304上の別々の領域の総数は6領域を超えないことが好ましく、厳密に4つまたは5つの別々の分離した領域のみであることが好ましい。
【0078】
図6では、内側領域367から発する過剰電子が第1のビーム電流測定手段370eによって測定される。しかし、この測定は任意に過ぎず、どのような場合でも第1のビーム電流測定手段370eを設ける必要はない。その代わりに、中央領域367を、さらなる測定を間に挿入することなく接地電極にのみ接続することができる。
【0079】
図7に、領域355、356、357および358を有する別の象限検出器を概略的に示す。この場合も、マルチアパーチャプレート304の表面全体に吸収層341が設けられている。しかし、
図7に示す実施例には、マルチアパーチャアレイ304の内側領域内に、個別荷電粒子ビーム3のビーム品質の望ましくない劣化のリスクを負う構造化/分離も存在するという欠点がある。したがって、図の実施例は、広い面積にわたって測定するという要件は満たすとしても、あまり有利ではない。
【0080】
図8に、マルチアパーチャアレイ313への入射時の照射ビーム311のビームコーンの調整の概略図を示す。ビームコーンを調整することによって個別粒子ビーム3ごとのビーム電流を調整することができる。最初に、供給源301によって粒子または発散粒子ビーム309が放射される。発散粒子ビーム309は、この実施例では2つの集光レンズ303.1および303.2を含むコリメーションレンズシステムまたは集光レンズシステム303を通過する。
図8は、ここでは集光レンズシステム303の2つの異なる設定を示している。第1の設定では、集光レンズ303.1が起動され、集光レンズ303.2が停止される。その結果、発散粒子ビーム309の粒子が集光レンズ303.1においてコリメートされ、直径d1を有する照射粒子ビーム311.1としてマルチアパーチャアレイ313に当たる。第2の場合、集光レンズ303.1が停止され、集光レンズ303.2が起動される。したがって、発散粒子ビーム309は、さらに広がり、直径d2を有する照射粒子ビーム311.2がマルチアパーチャプレート313に入射するように第2の集光レンズ303.1においてのみコリメートされる。マルチアパーチャアレイ313に入射する粒子の数は両方の場合で同じであるが、密度が異なる。したがって、開口315(図示せず)を有するマルチアパーチャアレイ313がトラバースされるときに、照射スポットの直径に依存する異なるビーム電流強度を有する個別粒子ビーム3が形成される。
【0081】
図の実施例では、集光レンズ303.1および303.2はそれぞれの場合において磁気レンズである。しかし、磁気レンズの一方または両方を静電集光レンズに置き換えることも可能である。また、集光レンズシステム303全体における集光レンズの数を変更すること、すなわち、1つのレンズのみを設けること、あるいは3つ以上のレンズを設けることも可能である。また、照射ビーム311の調整のために1つまたは複数の偏向器を設けることができる。これらの調整手段および集光レンズの種類は、照射スポットをどれだけ迅速に調整することができるかに影響を与える。これについては、本特許出願の範囲内において以下で詳述する。まず、ここで例示することは、異なる照射スポットが使用される場合に個別粒子ビームの異なるビーム電流がどのようにして生じるかということである。
【0082】
図9に、閉ループビーム電流制御手段のさらなる設計選択肢を示す。
図9は、光軸105に沿って移動し、ビーム発生システム301を用いて発生させた発散粒子ビーム309の放射線を示す。この放射線は、第1の集光レンズ303.1と第2の集光レンズ303.2とを有する集光レンズシステム33を通過する。図の実施例ではそれぞれの集光レンズは磁気レンズである。構成要素345および346を備えた静電双偏向器が、集光レンズシステム303の領域に配置されている。図の実施例では、粒子光学ビーム経路に対して、構成要素345は第1の集光レンズ303.1の下流にあり、構成要素346は第2の集光レンズ303.2の下流にある。しかし、集光レンズシステム303の領域における双偏向器の他の配置も可能であり、たとえば、粒子光学ビーム経路に対して両方の構成要素345、346を第2の集光レンズ303.2の下流に配置することができる。
【0083】
ビーム311は、双偏向器を用いて平行にオフセットさせることができる。マルチアパーチャアレイ313に入射すると、ビーム311はベクトルVだけ光軸105を基準にして相対的にオフセットされる。この場合、静電双偏向器345、346は、迅速に駆動することができ、マルチアパーチャアレイ313が照射されるときのオフセットの高周波補正に適している。さらに、双偏向器345、346は、第1のビーム電流測定手段を用いて測定された、たとえばマルチアパーチャプレート313の表面においてセンサー370を用いて測定された、電流値に基づいて駆動することができる。このフィードバックループは、像記録手順中に高速閉ループ電流制御のためにも使用することができる。
【0084】
また、集光レンズ303の一方を静電集光レンズ303として形成することができる。この静電集光レンズ303も、結果としてマルチアパーチャプレート313への入射時に照射スポットの直径dを変化させるために、迅速に準瞬時に駆動することができる。この場合も、駆動は、電流測定に基づくフィードバックループの形態で実施可能であり、これは、たとえばマルチアパーチャアレイ313の上側のセンサー370を用いて判定されている。
【0085】
図10に、コントローラ10を用いて駆動される、閉ループビーム電流制御手段と補償器とを有するマルチビーム粒子顕微鏡1を概略的に示す。コントローラ10は、1つの部分または多数の部分で形成可能であり、マルチビーム粒子顕微鏡1全体が原則としてコントローラ10を用いて制御可能である。特に、コントローラ10は、ビーム発生システム301と、第1の粒子光学ユニット、第2の粒子光学ユニットおよび検出システム200のコンポーネントと、明示的に図示されている場合もされていない場合もあるマルチビーム粒子顕微鏡1のさらなるコンポーネントとを制御する。
図10の概略図では、本発明の文脈で最も重要な制御要素および態様のみが、選択された粒子光学コンポーネントへの接続線によって表されている。
【0086】
最初に、様々なビーム電流測定手段を用いてビーム電流が測定され、測定値がコントローラ10に送信される。図の実施例では、マルチアパーチャアレイ内の開口のすべての周囲の外側領域においてマルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段を、マルチアパーチャアレイ313を含む微小光学系306に接続することができる。この場合、これは、たとえば
図2、
図3、
図5、
図6または
図7に示すような検出機構とすることができる。さらに、図の実施例では、ビームストップ111に配置されるかまたはそれに関連付けられたセンサーシステムを用いて全ビーム電流が測定される。この場合、ビームストップ111上に個別粒子ビーム3をステアリングするために、第1の粒子光学ビーム経路において対物レンズ102の上流でクロスオーバー面と同じ高さに配置されたマルチビーム偏向器390が使用される。特に、コントローラ10は、サンプル表面上を走査するときのラインジャンプ時または像ジャンプ時に第1の個別粒子ビーム3をビームストップ111内に向けるように構成することができる。したがって、像記録手順時に全体ビーム電流を測定することができる。これに代えて、またはこれに加えて、個別粒子ビームのビーム電流を、キャリブレーションプロセスのためにサンプルステージ503に設けられたファラデーカップまたはファラデーカップのアレイを使用して測定することができる。
【0087】
マルチビーム粒子顕微鏡1のコンポーネントは、それ自体が知られている方式で駆動される。これには、ビーム発生システム301におけるエクストラクタ電圧の調整と、集光レンズシステム303の駆動も含まれる。
図10に追加で図示されている偏向器330が、微小光学系306への入射時の照明ビーム311の静的調整を行う機能を果たす。しかし、マルチビーム粒子顕微鏡1は、ビーム電流の制御を目的とした低周波または高周波駆動のためのさらなるコンポーネントおよび制御要素を含むことができる。
【0088】
上記に加えて、または上記に代えて、集光レンズシステム303の集光レンズを、高速静電集光レンズとして設計することができ、同様に迅速に駆動することができる。その結果、微小光学系306に入射するビームの直径を迅速に補正することができる。
【0089】
照明スポットの横方向オフセットの高速補正のために、1つまたは複数の静電偏向器、特に、たとえば
図8に示すような静電双偏向器を、集光レンズシステム303に追加または代替として設けてもよい。これらの偏向器も、第1のビーム電流測定手段を用いて測定された電流値に基づくフィードバック信号を用いて駆動することができる。
【0090】
図11に、ビーム電流制御に関する詳細を示す。より具体的には、粒子源制御ループの詳細が示されている。電流モニタリングプロセッサ840が制御ループのために構成される。制御ループの入力信号は、マルチアパーチャアレイ304における開口のすべての周囲の外側領域においてマルチアパーチャアレイ304に衝突する荷電粒子によって発生した、放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段によって行われた測定である。電流計、特にピコ電流計によって実現可能な第1のビーム電流測定手段は
図11には示されていない。しかし、マルチアパーチャアレイ304の上側に設けられた吸収層341が概略的に示されている。マルチアパーチャアレイ304は、マルチアパーチャ配列305の一部であり、マルチアパーチャ配列305はさらに、たとえばレンズアレイ、偏向器アレイおよび/または非点収差補正装置アレイを含むことができる第2のマルチアパーチャ306プレートと、最終マルチアパーチャプレート310とを含む。他の構成も可能である。
【0091】
電流モニタリングプロセッサ840は、マルチビーム粒子顕微鏡1のコントローラ10全体のうちの一部である。電流モニタリングプロセッサ840は、第1のビーム電流測定手段370を用いた測定に基づいて、ビーム発生システム301および/または集光レンズシステム303を制御するために構成されている。他の粒子光学コンポーネントも制御可能である。
【0092】
ビーム発生システム301はいくつかの部分を含む。図の実施例では、ビーム発生システム301は、粒子源先端部301.1とサプレッサ電極301.2とエクストラクタ電極301.3とを含む。電流モニタリングプロセッサ840は、たとえば、エクストラクタ電極301.3に供給される電圧を設定することによってビーム発生デバイス301を制御するために構成することができる。これに加えて、またはこれに加えて、コントローラ840は、粒子源301.1の温度を設定することによって、特に加熱電流または加熱電圧を設定することによって、ビーム発生デバイス301を制御するために構成することができる。これに加えて、またはこれに代えて、サプレッサ電極301.2に供給される電圧を設定することができる。
【0093】
上記に加えて、または上記に代えて、コントローラ840は、この場合、3つの集光レンズ303.a、303.bおよび303.cを含む集光レンズシステム303を制御することができる。これらは、焦点距離を設定するためと、マルチアパーチャアレイ304に衝突する、より正確には図の実施例における第1のマルチアパーチャアレイ304に衝突する、照明粒子ビーム311の直径を設定するためにも制御可能である。
【0094】
図の実施例では、双偏向器303.d、特に静電双偏向器303.dが、集光レンズシステム303の領域に設けられる。コントローラ840は、第1のビーム電流測定手段370を用いた測定に基づいて双偏向器303.dを制御するように構成されている。
【0095】
任意により、コントローラ840は、第1のマルチアパーチャアレイ304においてイマージョンフィールドを生じさせる電極307.1も制御することができる。任意により、傾斜補正のための被制御多極電極も設けることができ、コントローラ840によって制御可能である。
【0096】
上述の実施形態によると、それぞれの場合における被制御変数は、放電過剰電子によって発生する電流であり、放電過剰電子は、マルチアパーチャアレイ304における開口のすべての周囲の外側領域366においてマルチアパーチャアレイ304に衝突する荷電粒子によって発生する。しかし、放電過剰電子によって発生する電流ではない別の被制御変数を使用することも可能であり、代替解決策によると、被制御変数はX線検出である。
【0097】
図12に、X線900の測定に基づく別のビーム電流制御の詳細を概略的に示す。図示された実施形態では、放電過剰電子を測定する電流計の代わりにX線検出器950が設けられる。X線900は、マルチアパーチャアレイ304の上側の吸収層341に衝突する荷電粒子によって発生する。本発明人らによって行われた実験は、X線検出器950によって測定されたX線の量またはX線光子の数が、入射位置においてサンプルに当たる第1の個別粒子ビームのビーム電流に比例することを示した。この場合、X線検出器950はマルチアパーチャアレイ304の外周にリング状のシンチレータ要素として設けられている。この構成により、良好な信号対ノイズ比を達成することができる。コントローラ840は、この場合、X線検出器950を用いた測定に基づいてビーム発生システム301を制御するように構成される。X線検出による電流制御の残りの要素は、
図11ですでに図示し、詳しく記載している要素と同じであり、同じ参照符号は同じ要素を示す。無用な繰り返しを避けるため、さらなる説明については
図11参照されたい。
【0098】
図13に、NIR(近赤外)放射に変換されるX線900を使用するビーム電流測定手段の別の実現形態を概略的に示す。図の実施例では、マルチアパーチャアレイ304が、吸収層341でコーティングされた水晶板905を含む。水晶板905の代わりに、たとえばPMMAなどの透明材料からなる他のプレートを使用することができる。水晶板は、シンチレータの役割を果たす蛍光剤でドーピングされる。吸収層341に衝突する電子などの荷電粒子が、まずX線900に変換される。水晶板905内で、X線900が光子または近赤外放射901に変換される。光子901は水晶板905内で内部反射によって誘導され、最終的に、水晶板905の外周に配置された1つまたは複数の光検出器910によって検出される。例として、光子901の全反射が起こる点Tが
図13に図示されている。1つまたは複数の光検出器910によって測定された信号が、コントローラ10(またはたとえばそのコンポーネント840)に伝達され、ビーム発生システム301および/または集光レンズシステム303を制御するために使用される。
図12に概略的に示されている他の種類の制御も行うことができる。これに関しては
図12と、さらに
図11も参照されたい。
【0099】
また、この実施形態によると、サンプルに当たる個別粒子ビームのビーム電流と、光検出器910を用いて検出される近赤外放射との要求される比例関係が、必要な比例関係を示す。
【0100】
改良型ビーム電流制御を備えたマルチビーム粒子顕微鏡が開示される。マルチアパーチャアレイ上に設けられた吸収層の1つの領域または少数のみの領域から放電された過剰電子が、電流計を用いて測定される。測定された電流は閉ループ制御において被制御変数として使用される。測定は、広面積かつ低ノイズである。マルチアパーチャアレイは、たとえば象限検出器または三分割検出器を用いて方向感受性検出も実現するように特別に構造化可能である。
【0101】
(実施例1)
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有するマルチビーム発生器であって、第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、マルチアパーチャアレイがその上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、吸収層が、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
マルチアパーチャアレイの吸収層に衝突する荷電粒子によって発生するX線を検出するように構成されたX線検出器と、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、第1の個別粒子ビームをサンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
第2の視野内の入射位置から発する第2の個別粒子ビームを検出システム上に結像(image)するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
第1と第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
マルチビーム粒子源と対物レンズとの間の第1の粒子光学ビーム経路に配置され、対物レンズと検出システムとの間の第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
ビーム発生システムと、粒子光学対物レンズと、第1の粒子光学ユニットと、第2の粒子光学ユニットと、検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
コントローラが、X線検出器を用いた測定に基づいてビーム発生システムを駆動するために構成され、および/または、
コントローラが、X線検出器を用いた測定に基づいて集光レンズシステムを制御するために構成されている、マルチビーム粒子顕微鏡。
【0102】
(実施例2)
X線検出器が、マルチアパーチャアレイの上流かつマルチアパーチャアレイの外周にリング状シンチレータ要素として設けられている、実施例1に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【0103】
(実施例3)
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有するマルチビーム発生器であって、第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、マルチアパーチャアレイがその上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、吸収層が、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
マルチアパーチャアレイの吸収層に衝突する荷電粒子によって発生したX線をNIR放射に変換するX線変換手段と、
光検出器までNIR放射を誘導するためのライトガイドと、
NIR放射を検出するために構成された光検出器と、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、第1の個別粒子ビームをサンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
第2の視野内の入射位置から発する第2の個別粒子ビームを検出システム上に結像(image)するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
第1と第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
マルチビーム粒子源と対物レンズとの間の第1の粒子光学ビーム経路に配置され、対物レンズと検出システムとの間の第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
ビーム発生システムと粒子光学対物レンズと第1の粒子光学ユニットと第2の粒子光学ユニットと検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
コントローラが、光検出器を用いた測定に基づいてビーム発生システムを駆動するために構成され、および/または、
コントローラが、光検出器を用いた測定に基づいて集光レンズシステムを制御するように構成されている、マルチビーム粒子顕微鏡。
【0104】
(実施例4)
ライトガイドが、X線をNIR放射に変換するためのシンチレーティング材料でドープされた水晶ガラスプレートを含み、
光検出器が水晶ガラスプレートの周囲に配置されている、実施例3に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【符号の説明】
【0105】
1 マルチビーム粒子顕微鏡
3 一次粒子ビーム(個別粒子ビーム)
5 ビームスポット、入射位置
7 物体
9 二次粒子ビーム
10 コンピュータシステム、コントローラ
11 二次粒子ビーム経路
13 一次粒子ビーム経路
25 サンプル表面、ウエハ表面
100 対物レンズシステム
101 対物面
102 対物レンズ
103 視野
105 マルチビーム粒子顕微鏡の光軸
108 クロスオーバー
110 一括走査偏向器
111 第2の電流測定手段を備えたビームストップ
200 検出器システム
205 投影レンズ
207 検出領域
208 調整用の偏向器
209 粒子マルチ検出器
211 検出面
212 クロスオーバー
213 入射位置
214 アパーチャフィルタ
215 検出領域
216 能動要素
217 視野
218 偏向器システム
220 マルチアパーチャ補正器、個別偏向器アレイ
222 一括偏向システム、アンチスキャン
300 ビーム発生装置
301 粒子源、ビーム発生システム
303 コリメーションレンズシステム
304 マルチアパーチャアレイ
304a 開口
305 マルチアパーチャ配列
306 微小光学系
307 視野レンズ
308 視野レンズ
309 発散粒子ビーム
311 照射粒子ビーム
313 マルチアパーチャプレート、マルチアパーチャアレイ
315 マルチアパーチャプレートの開口
316 六角形
317 開口の中点
319 視野
323 ビーム焦点
325 中間像面
326 視野レンズシステム
330 偏向器
340 先端部
341 吸収層
342 エクストラクタ電極
343 アノード
345 偏向器
346 偏向器
351 領域
352 領域
353 領域
354 領域
360 ビーム電流強度図
366 外側領域
367 内側領域
368 構造化、分離
370 第1のビーム電流測定手段、電流計、ピコ電流計
380 プレアパーチャプレート
390 マルチビーム偏向器
400 ビームスイッチ
420 磁気要素
500 サンプルステージ
503 サンプル用電圧源
900 X線
901 光子、NIR放射
905 水晶板
910 光検出器
950 X線検出器
d1 ビームコーン直径
d2 ビームコーン直径
V ビームコーン中点とマルチアパーチャアレイ中点との位置ずれ
T 全反射点
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有するマルチビーム発生器であって、前記マルチビーム発生器は、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、前記マルチアパーチャアレイは、その上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、前記吸収層は、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
前記マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の外側領域において前記マルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段と、
前記ビーム発生システムと前記マルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムと、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の個別粒子ビームの両方が通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム発生器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記集光レンズシステムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記ビーム発生システムを制御するために構成され、および/または、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記集光レンズシステムを制御するために構成されている、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項2】
前記第1のビーム電流測定手段は、前記マルチアパーチャアレイにおける開口を含む内側領域において前記マルチアパーチャアレイに衝突する荷電粒子によって発生した前記放電過剰電子も測定するように構成されている、請求項1に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項3】
前記マルチアパーチャアレイ上の前記吸収層は、互いに分離された厳密に2つの別々の領域に構造化され、各領域が接地に接続され、
第1の領域が前記マルチアパーチャアレイの開口を含む内側領域であり、第2の領域が前記マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の前記外側領域であり、
前記第1のビーム電流測定手段は、前記外側領域から放電された前記過剰荷電粒子のみを測定するように構成されている、請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項4】
前記マルチアパーチャアレイ上の前記吸収層は、互いに分離された少なくとも2つの別々の領域に構造化され、各領域が接地に接続され、
前記第1のビーム電流測定手段は、各領域から別々に放電された前記過剰電子を広い面積にわたって測定するように構成されている、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項5】
前記吸収層は、前記マルチアパーチャアレイの開口を含む内側領域と、前記マルチアパーチャアレイにおける開口のすべての周囲の前記外側領域とに構造化され、
前記外側領域は、方向表示象限検出器を形成するように配置された4つの別々の領域にさらに構造化され、
前記第1のビーム電流測定手段は、各象限から別々に放電された前記過剰電子を広い面積にわたって測定するように構成されている、請求項4に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項6】
前記吸収層は前記内側領域と前記外側領域とに構造化され、前記外側領域は方向表示三分割検出器を形成するように配置された3つの別々の領域にさらに構造化され、
前記第1のビーム電流測定手段は、各三分割領域から別々に放電された前記過剰電子を測定するように構成されている、請求項4に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項7】
前記集光レンズシステムの領域内に双偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記双偏向器を制御するようにさらに構成されている、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項8】
前記第1のビーム電流測定手段は、少なくとも1つの電流計、特にピコ電流計を含む、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項9】
前記マルチアパーチャアレイに達する前記ビーム電流の少なくとも60%が前記ビーム電流測定に使用される、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項10】
前記マルチアパーチャアレイに達する前記ビーム電流の少なくとも90%、特に少なくとも95%が前記ビーム電流測定に使用される、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項11】
荷電粒子を吸収し、前記ビーム電流測定のためにそこから電子を放出する前記吸収層の活性ビーム測定表面が、前記マルチアパーチャアレイの全表面の少なくとも60%である、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項12】
荷電粒子を吸収し、前記ビーム電流測定のためにそこから電子を放出する前記吸収層の活性ビーム測定表面が、前記マルチアパーチャアレイの全表面の少なくとも90%、特に95%である、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項13】
前記複数の第1の個別粒子ビームの平均単一ビーム電流が、前記第1のビーム電流測定手段によって測定されるビーム電流全体の少なくとも1/100以下、特に1/500または1/1000以下である、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項14】
前記吸収層は、吸収剤コーティングであり、および/または
前記吸収層は、金、銀、チタン、プラチナのうちのいずれか1つを含むかこれらのうちのいずれか1つからなる、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項15】
前記マルチアパーチャアレイは、前記集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置され、前記第1の荷電粒子ビームを前記複数の第1の個別粒子ビームに分割する前記アレイである、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項16】
前記マルチアパーチャアレイは、前記集光レンズシステムの下流の第1のマルチアパーチャアレイとして配置されていない、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項17】
前記コントローラは、前記エクストラクタ電極に供給される電圧を設定することによって前記ビーム発生デバイスを制御するために構成されている、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項18】
前記コントローラは、前記粒子源の温度を設定することによって、特に加熱電流または加熱電圧を設定することによって、前記ビーム発生デバイスを制御するために構成されている、
請求項1または2に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項19】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムと、
プレアパーチャプレートとマルチアパーチャアレイとを有するマルチビーム発生器であって、前記マルチビーム発生器は、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成され、前記マルチアパーチャアレイは前記プレアパーチャプレートの下流かつ近傍に配置され、前記マルチアパーチャアレイは、その上側に、荷電粒子を吸収する吸収層を含み、前記吸収層は、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続され、前記プレアパーチャプレートは、その上側に、荷電粒子を吸収するプレアパーチャプレート吸収層を含み、前記プレアパーチャプレート吸収層は、過剰電子を放電するために少なくとも1つの接地電極に接続されている、マルチビーム発生器と、
前記プレアパーチャプレートに衝突する荷電粒子によって発生した放電過剰電子を少なくとも測定するように構成された第1のビーム電流測定手段と、
前記ビーム発生システムと前記マルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムと、
発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の個別粒子ビームの両方が通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム粒子源と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記ビーム発生システムを駆動するために構成され、および/または、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記集光レンズシステムを制御するために構成されている、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項20】
前記集光レンズシステムの領域内に双偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段を用いた測定に基づいて前記双偏向器を制御するようにさらに構成されている、請求項19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【国際調査報告】