(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】核酸トランスフェクション用シクロヘキサンリピドイドおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 233/62 20060101AFI20240723BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240723BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240723BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240723BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240723BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C07C233/62 CSP
A61P35/00 ZNA
A61P31/00
A61P37/04
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K39/00 G
A61K31/7088
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/24
A61K9/16
A61K8/41
A61K8/63
A61K8/55
A61Q1/00
A61Q5/00
A61K8/86
C12N15/88 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503626
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CZ2022050065
(87)【国際公開番号】W WO2023001323
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516213013
【氏名又は名称】ウスタフ オルガニッケ ヘミエ アー ビオヘミエ アカデミエ ヴェド ツェーエル,ヴェー.ヴェー.イー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ツィグラー,ペトル
(72)【発明者】
【氏名】グランツ サスコヴァ,クララ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネク,ヴァーツラフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイダンコヴァ,ズザナ
(72)【発明者】
【氏名】ロウコトヴァ,レンカ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェック,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】プリス,アナスタシア
(72)【発明者】
【氏名】ペトレセルヨヴァ,シルヴィア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C085
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF70
4C083AC521
4C083AC522
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083CC01
4C083CC11
4C083CC31
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083FF01
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA13
4C084ZB09
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB32
4C085AA03
4C085BA01
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB22
4C086ZB26
4C086ZB32
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
(57)【要約】
本発明は、一般式Iのリピドイドに関し、
【化1】
ここでXは、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=S)O-、-C(=O)S-、-C(=S)S-、-C(=O)NHNH-、-CH
2-、
-O-、-OC(=O)-、-S-、-SC(=O)-、-NH-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、-C≡C-、-CH=CH-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、-CH
2C(=O)NH-、-CH
2C(=S)O-、
-CH
2C(=S)S-、-CH
2C(=O)NHNH-、-N=CH-、-CH=N-、-NH-N=CH-、および-CH=N-NH-から選択され;Yは、アルキレンC
2-C
10鎖であり;R
1はアルキルC
1-C
46、アルケニルC
2-C
46、アルキニルC
2-C
46から選択され;ZはH、-OH、-CH
3、-CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、-CON[(CH
2)
2OH]
2、
-CONHCH(CH
2OH)
2、-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化2】
および
【化3】
から選択され、
ここでR
2は、水素および-CH
3から独立して選択され;Eは、OおよびS原子から独立して選択され;nは1~5の範囲の整数であり;およびTは、-X-Y-N(R
1)
2、
-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、-C(=O)OCH
2CH
2OH、
【化4】
【化5】
【化6】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH,-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、
-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-C(=O)NH
2、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、-NH
2、-NHC(=O)CH
3、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、-OH、-O(C
1-C
3アルキル)、-NHC(=O)NH(CH
3)、
-NHC(=S)N(CH
3)
2、-NHC(=S)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)NH
2、-NHC(=N-CN)NH(CH
3)、
-NHC(=N-CN)N(CH
3)
2、-NHC[=N-S(=O)
2NH
2]NH
2、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-から選択され、ここで、R
2、Eおよびnは上記で定義した通りであり;および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成し得る、リピドイド;およびその薬学的に許容される塩、付加塩および溶媒和物である。このリピドイドはトランスフェクション剤として有用である。本発明はさらに、トランスフェクション試薬、このリピドイドを含むトランスフェクション粒子、およびそれらの使用方法について記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のリピドイドであって、
【化1】
ここで
Xは、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=S)O-、-C(=O)S-、-C(=S)S-、-C(=O)NHNH-、-CH
2-、-O-、-OC(=O)-、-S-、-SC(=O)-、-NH-、-NHNH-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、-C≡C-、-CH=CH-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、-CH
2C(=O)NH-、-CH
2C(=O)O-、-CH
2C(=S)O-、-CH
2C(=S)S-、-CH
2C(=O)NHNH-、-N=CH-、-CH=N-、-NH-N=CH-、および-CH=N-NH-を含む群から選択され;
Yは、アルキレンC
2-C
10鎖を含む群から選択され、前記アルキレン鎖において、1つ以上の-CH
2-基は、任意に、1つ以上のOおよび/またはS原子で置換されていてもよく;
R
1は、同一または互いに異なり、各R
1は、独立して、アルキルC
1-C
46、アルケニルC
2-C
46、アルキニルC
2-C
46を含む群から選択され、ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖であっても分岐であってもよく、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルにおいて、1つ以上の-CH
2-基は任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-S-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、および-S-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよく;
ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルが分岐である場合、1つ以上の>CH-基は任意に、>C(OH)-で置換されていてもよく;
ここで、R
1がアルキルC
1-C
4である場合、末端-CH
3基の水素1個はZで置換されていてもよく;
ただし、少なくとも1つのR
1、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含み;
Zは互いに同一または異なり、各Zは独立して、水素、-OH、-CH
3-、CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、
-CON[(CH
2)
2OH]
2,-CONHCH(CH
2OH)
2,-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、
-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2,-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2,-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2,-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化2】
および
【化3】
から選択され、
ここで
R
2は、水素および-CH
3から独立して選択され;
Eは、OおよびS原子から独立して選択され;
nは1~5の範囲の整数であり;
およびTは、互いに同一であるかまたは異なり、各Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、-C(=O)OCH
2CH
2OH、-C(=O)NH
2、
【化4】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH,-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、
-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH,-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、
-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-,-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
【化5】
-OH、-O(C
1-C
3アルキル)、-NH
2、-NHC(=O)CH
3、-NHS(=O)
2CH
3、-NHC(=O)N(CH
3)
2、
-NHC(=O)NH(CH
3)、-NHC(=S)N(CH
3)
2、-NHC(=S)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)NH
2、
-NHC(=N-CN)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)N(CH
3)
2、-NHC[=N-S(=O)
2NH
2]NH
2、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化6】
を含む群から独立して選択され、
ここで、R
2、Eおよびnは上記で定義した通りであり;
および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成することができる;
リピドイド、ならびにその薬学的に許容される塩、付加塩および溶媒和物。
【請求項2】
Xが、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=O)NHNH-、-OC(=O)-、-O-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、からなる群から選択される、請求項1に記載のリピドイド。
【請求項3】
R
1が、独立して、アルキルC
1-C
46、およびアルケニルC
2-C
46からなる群から選択され、前記アルキルまたはアルケニルにおいて、1つ以上の-CH
2-基が任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、請求項1または2に記載のリピドイド。
【請求項4】
分子中の全てのR
1が同一であるか、またはR
1基を有する分子中の全ての窒素原子が、2つの同一のR
1、または2つの異なるR
1のいずれかによって同一に置換されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項5】
Zが、水素、-OH、-CH
3、-CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、
-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、
-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2,-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化7】
および
【化8】
からなる群から選択され、ここで、R
2、Eおよびnは請求項1で定義した通りである、請求項1~4のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項6】
Tが、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、-C(=O)OCH
2CH
2OH、-C(=O)NH
2、
【化9】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH、-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、
-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH,-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、
-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
【化10】
からなる群から選択され、R
2、Eおよびnは請求項1で定義した通りである、請求項1~5のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項7】
少なくとも1つの置換基Tが、X-Y-N(R
1)
2であり;好ましくは両方の置換基Tが-X-Y-N(R
1)
2である、請求項1~6のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項8】
Zは、水素、-OH、-CH
3、-CH
2OHからなる群から選択され;
およびTは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、
【化11】
-C(=O)OHからなる群から選択され;
および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成してもよい、請求項1~7のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項9】
Xは-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり;
Yは、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、および-(CH
2)
6-から選択され;
R
1は、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキルC
10-C
15、および-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい、直鎖または分岐鎖アルケニルC
12-C
18、から選択され;
Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)OCH
3、
【化12】
および-C(=O)OHから選択され;
Zは、H、-CH
3、および-CH
2OHから選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項10】
一般式(I)のリピドイドが少なくとも2つのR
1置換基を含み、それらの各置換基が少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のリピドイド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1種のリピドイドと、少なくとも1種のヘルパー脂質とを含み;好ましくは、前記ヘルパー脂質は、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)-2000、1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000、および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000を含む群から選択される、トランスフェクション剤。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1種のリピドイドを10~50モル%の量で含み、少なくとも1種のヘルパー脂質を50~90モル%の量で含む、請求項11に記載のトランスフェクション剤。
【請求項13】
15~40モル%の量の請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1つのリピドイド、30~55モル%の量のコレステロール、および20~50モル%の量の少なくとも1つのヘルパー脂質を含み;好ましくは、前記ヘルパー脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)-2000、1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000、および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000を含む群から選択される、請求項11または12に記載のトランスフェクション剤。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)の少なくとも1種のリピドイド、少なくとも1種の核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体;ならびに好ましくはさらに少なくとも1種のヘルパー脂質を含む、トランスフェクション粒子。
【請求項15】
核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体による細胞または組織のインビトロトランスフェクションのための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子の、使用方法。
【請求項16】
染色体遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、免疫遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、シグナル伝達経路の阻害もしくは活性化、ゲノムもしくはトランスクリプトームの編集、または核酸によりコードされるタンパク質の発現可能化のための、請求項15に記載の使用方法。
【請求項17】
インビボでの核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体による細胞または組織のトランスフェクションに使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子であって、産業目的または商業目的で使用するためのヒト胚のトランスフェクションを除き、かつヒト生殖系列の改変を除く、トランスフェクション粒子。
【請求項18】
染色体遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、免疫遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、シグナル伝達経路の阻害もしくは活性化、ゲノムもしくはトランスクリプトームの編集、または核酸によってコードされるタンパク質(複数可)の発現を可能にする、請求項16に記載の使用方法のための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子。
【請求項19】
医薬品として、特に遺伝子治療のために、好ましくは悪性腫瘍および/または遺伝性疾患の治療のために使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子。
【請求項20】
予防ワクチンとして、好ましくは感染症の予防のために使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子。
【請求項21】
有効成分を作用部位に送達するための化粧品製剤における、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子の、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なイオン化可能なリピドイド、ならびにヌクレオチドおよび核酸、ならびにそれらの合成類似体を細胞および組織にトランスフェクションおよび投与するためのこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸(NA)ベースの治療の開発は、近年かつてないルネッサンスを経験している。これまでに試験されてきた治療用デオキシリボ核酸(DNA)に比べ、有効性が高く、同時に副作用のリスクも低いことから、リボ核酸(RNA)治療が台頭してきている。いくつかのこのような薬剤は既に臨床使用まで到達しており、例えば、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスに対するパティシラン、ある種のデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエテプリルセン、脊髄性筋萎縮症に対するヌシネルセンなどである。これらの疾患はすべて生命を脅かすものであり、代替治療はない。リボ核酸(RNA)またはその使用を標的とする可能性のある薬剤は、NAまたはタンパク質を標的とするか、タンパク質をコードするかによって3つのカテゴリーに分けられる。最初のカテゴリーには、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳やRNAスプライシングを阻害する、13-25ヌクレオチド(nt)の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ヌシネルセン、エテプリルセン);およびmRNAを分解する短鎖干渉RNA(siRNA、21-23nt)(パティシラン)が含まれる。タンパク質を標的とする治療用RNA分子は、RNAアプタマーとして知られるタイプの分子を用いる。これは特定のタンパク質の機能を調節するように設計されている。このような薬剤の例としては、新生血管性加齢黄斑変性の治療に使われるペガプタニブがあり、2004年にこの種の薬剤として初めて承認された。mRNAを利用した治療法は、主にがんに対するいわゆる個別化ワクチンや、感染症(例えば、ジカウイルス)に対するワクチンの調製に用いられている。ウイルス性疾患では、狂犬病や新型インフルエンザに対するmRNAに基づく予防ワクチンの候補が、健康なボランティアにおいて安全な抗体生産を誘導することが示されている。タンパク質を置換するmRNA治療薬も、例えば血友病の治療として前臨床開発段階にある。
【0003】
直接的なゲノム編集を可能にする分子技術、特にCRISPR-Cas9システムに基づく技術が、現在ブームとなっている。CRISPR技術は、DNA配列を変化させ、遺伝子の機能を改変することを可能にするツールである。遺伝子異常の修復、病気の治療や蔓延防止、農作物の改良などに応用される可能性がある。CRISPR-Cas9システムは、HIV治療、血液学的悪性腫瘍の治療、鎌状赤血球症やβ-サラセミアなどの遺伝性疾患などを含む、多くの前臨床試験や臨床試験で検証されている。その後、ADARシステム(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ)によってRNA編集が可能になるが、これまでのところ、臨床的見地からはADARシステムの方が安全であるように思われる。ゲノムを直接編集する分子技術は、編集を担う適切な酵素をコードするmRNAの形で作用部位に送達することができる。
【0004】
これらすべての技術(またはNAに基づく他の技術)の安全な使用を可能にする重要な要因は、作用部位への安全かつ効率的な輸送である。重要な工程は、負に帯電したNAを細胞のリン脂質膜に浸透させることである;真核細胞にNAを意図的に導入するプロセスはトランスフェクションと呼ばれる。直近の数十年、NAをin vivoでの分解から保護しながら細胞膜を渡って効率的に輸送するための担体(いわゆるベクター)の開発が精力的に行われている(Stewart, M. P.:Chem. Rev. 2018, 118, 7409-7531)。
【0005】
NAのトランスフェクションには、ウイルス性ベクターと非ウイルス性(物理的、化学的)ベクターの両方が用いられる。遺伝子治療分野の臨床試験の約70%は、今のところウイルスベクターを用いて行われているが、このアプローチには多くのリスク(発がん性、免疫反応の誘導、組織の非特異性、NA取り込み能力の制限、製造の複雑さ)を抱えている。物理的な方法(例えば、エレクトロポレーション)は、ヒトの医療で全身的に使用するのは困難である。
【0006】
対照的に、合成化学ベクターは通常、免疫原性が低く、より大量の遺伝物質を輸送することができ、またよく定義された分子で構成されているため、必要に応じて構造を調整し、効率を高め、毒性を抑制することができる。カチオン性ポリマーまたはカチオン性脂質が化学ベクターとして使用され、負に帯電したNAと複合体を形成する。この複合体は細胞膜を貫通すると同時に、細胞外環境での分解からNAを保護する。
【0007】
構造的見地から、いわゆる脂質ナノ粒子(LNP)は現在、これらの複合体の中で最も有望で臨床的に進んだ形態である。そこでは、カチオン性脂質は通常、例えばsiRNAトランスフェクションシステムで示されているように(Kulkarni, J.: Nanoscale, 2019, 11, 21733-21739)、安定したNAのカプセル化に必要なヘルパー脂質およびコレステロールとともに、凝集を防ぎ、粒子サイズおよびトランスフェクション効率に影響を及ぼす、PEG化脂質とともに形成される。LNPは、数ヌクレオチド単位から数百万までのサイズのNA分子を収容することができる。
【0008】
合成カチオン性脂質およびリピドイド(疎水性鎖の数が多い点が異なる、脂質に類似した合成分子)は、カチオン性ドメインと疎水性ドメインによって形成される。現在までに、これらの物質の多くは、標的設計とコンビナトリアルに生成されたライブラリーのテストの両方によって、両方のドメインにおいて高い構造可変性を持って開発されてきた。
【0009】
D-Lin-MC3-DMA、C12-200、cKK-E12、SA2-SC8などの脂質およびリピドイドは、siRNAトランスフェクション用に特別に開発されている(Dong, Y.: Adv. Drug Deliv. Rev. 2019, 144, 133-147)。D-Lin-MC3-DMAを含む製剤は最近(2018年8月)、オンパトロ(旧パティシラン)の名称で臨床に導入され、史上初の承認されたsiRNA医薬品となった(Zhang, X.:J. Clin.Pharmacol. 2020, 60 (1), 37-49)。しかし、siRNA用に開発された製剤がmRNAに有効とは限らないため、標的を絞った最適化が必要である(Cullis, P...:Mol.Ther. 2017, 25 (7), 1467-1475)。
【0010】
D-Lin-MC3-DMA、C12-200、cKK-E12、TT3などのイオン化可能な脂質およびリピドイドは、mRNAをトランスフェクトするために使用される(Zhong,Z.Nano Today 2018,23,16-39;Kowalski,P.Mol.Ther. 2019, 27 (4), 1-19; Li, B.: Nano Lett. 2015, 15, 8099-8107)。イオン化可能な脂質もDNAトランスフェクションに用いられる。ここでも、低分子(siRNA)トランスフェクション用に最適化されたトランスフェクション系が必ずしもDNAトランスフェクションに適しているとは限らず、mRNA用に開発された製剤であってもDNAには有効でない場合があることは強調されるべきである(Buck, J.: ACS Nano 2019, 13, 3754-3782)。
【0011】
膨大な治療の可能性があるにもかかわらず、イオン化可能な脂質をベースにした合成ベクターは、これまでほとんど臨床使用されていないため、より効率が高く、in vivo毒性が非常に低い新しいシステムを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、イオン化可能な(カチオン性)脂質を用いたヌクレオチドおよび核酸ならびにそれらの合成アナログのトランスフェクションおよび標的化送達の効率の問題、ならびに標的生物または細胞に対するこれらの脂質の毒性の問題に対する解決策を提供する。我々は、シクロヘキサンをイオン化可能なリピドイドの中心核として用いると、このようなリピドイドのトランスフェクション効率が、従来知られていた溶液に比べて著しく向上することを見出した。同時に、これらのシクロヘキサン含有リピドイドは、適切な投与量で極めて低い細胞毒性を示す。新しいイオン化可能なリピドイドの中心構造モチーフとして用いられているシクロヘキサンコアの特異的な性質は、その近傍の立体的な複雑さと、これまでに知られているイオン化可能な脂質やリピドイドと比較した場合の置換範囲の広さである。
【0013】
本発明の目的は、一般式(I)のイオン化可能なリピドイドであって、
【化1】
ここで
Xは、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=S)O-、-C(=O)S-、-C(=S)S-、-C(=O)NHNH-、-CH
2-、-O-、-OC(=O)-、-S-、-SC(=O)-、-NH-、-NHNH-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、-C≡C-、-CH=CH-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、-CH
2C(=O)NH-、-CH
2C(=O)O-、-CH
2C(=S)O-、-CH
2C(=S)S-、-CH
2C(=O)NHNH-、-N=CH-、-CH=N-、-NH-N=CH-、および-CH=N-NH-を含む群から選択され;
Yは、アルキレンC
2-C
10鎖を含む群から選択され、前記アルキレン鎖において、1つ以上の-CH
2-基は、任意に、1つ以上のOおよび/またはS原子で置換されていてもよく;好ましくは、Yは、アルキレンC
2-C
10鎖を含む群、特にアルキレンC
3-C
6鎖、好ましくはプロピレン(-(CH
2)
3-)、ペンチレン(-(CH
2)
5-)、へキシレン(-(CH
2)
6-)から選択され;
R
1は、同一または互いに異なり、各R
1は、独立して、アルキルC
1-C
46、アルケニルC
2-C
46、アルキニルC
2-C
46を含む群から選択され、ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖であっても分岐であってもよく、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルにおいて、1つ以上の-CH
2-基は任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-S-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、および-S-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよく;
ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルが分岐である場合、1つ以上の>CH-基は任意に、>C(OH)-で置換されていてもよく;
ここで、R
1がアルキルC
1-C
4である場合、末端-CH
3基の水素1個はZで置換されていてもよく;
ただし、少なくとも1つのR
1は、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含み;より好ましくは、少なくとも2つのR
1は、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含み
Zは互いに同一または異なり、各Zは独立して、水素、-OH、-CH
3-、CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、
-CON[(CH
2)
2OH]
2,-CONHCH(CH
2OH)
2,-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、
-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2,-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2,-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2,-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化2】
および
【化3】
を含む群から選択され、
ここで
R
2は、水素および-CH
3から独立して選択され;
Eは、OおよびS原子から独立して選択され;
nは1~5の範囲の整数であり;
およびTは、互いに同一であるかまたは異なり、各Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、-C(=O)OCH
2CH
2OH、-C(=O)NH
2、
【化4】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH,-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、
-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH,-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、
-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-,-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
【化5】
-OH、-O(C
1-C
3アルキル)、-NH
2、-NHC(=O)CH
3、-NHS(=O)
2CH
3、NHC(=O)N(CH
3)
2、
-NHC(=O)NH(CH
3)、-NHC(=S)N(CH
3)
2、-NHC(=S)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)NH
2、
-NHC(=N-CN)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)N(CH
3)
2、-NHC[=N-S(=O)
2NH
2]NH
2、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化6】
を含む群から独立して選択され、
ここで、R
2、Eおよびnは上記で定義した通りであり;
および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成することができる、リピドイドである。本発明は、上記で定義したリピドイドの薬学的に許容される塩、付加塩および溶媒和物も包含する。
【0014】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素鎖を意味し、直鎖、分岐、環状またはサイクル含有であってもよく、1個の水素原子を除去することによりアルカンから誘導される。
【0015】
用語「アルケニル」は、炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含む炭化水素鎖であって、1つの水素原子を除去することによりアルケンから誘導されるものを意味する。炭化水素鎖は、直鎖、分岐鎖、環状鎖または環含有鎖であってもよい。
【0016】
用語「アルキニル」は、炭素原子間に少なくとも1つの三重結合を含み、任意に炭素原子間に1つ以上の二重結合も含む炭化水素鎖であって、1つの水素原子を除去することによりアルキンから誘導されるものを意味する。炭化水素鎖は、直鎖、分岐鎖、環状鎖または環含有鎖であってもよい。
【0017】
用語「アルキレン」は、二価の飽和炭化水素鎖を意味し、直鎖、分岐鎖、環状鎖または環含有鎖であってもよく、好ましくは直鎖である。この鎖は2の価数を有し、すなわち、異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによってアルカンから誘導され、2つの単結合を介してリンカーまたは架橋として結合する。
【0018】
用語「分岐鎖アルキル」、「分岐鎖アルケニル」、「分岐鎖アルキニル」は、主炭化水素鎖に結合した1~5個の分岐(炭化水素鎖)を含むアルキル、アルケニルまたはアルキニルを意味する。
【0019】
一般式Iの分子が正の電荷を有する場合、化合物は対イオンを含み、これは有機酸または無機酸の薬学的に許容されるアニオンであり得、薬学的に許容される塩を形成する。このようなアニオンは、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩、酒石酸水素塩、臭化物、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、デカン酸塩、エデト酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ素酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、パルモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、およびトシル酸塩を含む群から選択され得る。
【0020】
式Iの化合物がキラル中心を含む場合、式Iには純粋なエナンチオマーだけでなく、ラセミ体を含むエナンチオマーの混合物も含まれる。
【0021】
式Iには、遊離形態の式Iの化合物、ならびに塩、(酸または塩基との)付加塩、および/または水和物またはアルコール溶媒和物を含む溶媒和物の形態の化合物が含まれる。
【0022】
一実施形態において、Xは、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=O)NHNH-、-OC(=O)-、-O-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、および少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環からなる群から選択される。好ましくは、Xは、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-である。
【0023】
R1鎖は、分子全体で同じであっても、もしくは互いに異なっていてもよいし、またはR1鎖は、1つの窒素原子については同じであるが、分子全体では同じでなくてもよい。好ましくは、R1鎖は分子全体で同じであるか、または合成の簡単のために、すべての窒素原子が同一に置換されている(2つの同一のR1、または2つの異なるR1のいずれか)。少なくとも1つのR1置換基は、少なくとも8個の炭素原子の脂肪鎖であり、R1は、アルキルC1-C46、アルケニルC2-C46、アルキニルC2-C46を含む群から選択され、ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、そしてここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルにおいて、1つ以上の-CH2-基は任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-S-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、および-S-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよく;
ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルが分岐鎖である場合、1つ以上の>CH-基は任意に、>C(OH)-で置換されていてもよく;
ここで、R1がアルキルC1-C4である場合、末端-CH3基の水素1個はZで置換されていてもよい。
【0024】
一実施形態において、R1は、アルキルC1-C46、およびアルケニルC2-C46を含む群から独立して選択され、ここで、前記アルキルまたはアルケニルにおいて、1つ以上の-CH2-基は任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0025】
好ましくは、R1は、直鎖または分岐鎖アルキルC8-C20、および直鎖または分岐鎖アルケニルC8-C20を含む群から独立して選択され、前記アルキルまたはアルケニルにおいて、1つ以上の-CH2-基は任意に、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。より好ましくは、R1は、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキルC10-C15、および-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルケニルC12-C18を含む群から選択される。
【0026】
好ましくは、アルケニル鎖は1個から5個の炭素-炭素二重結合を含む。
【0027】
一実施形態では、分子内のすべてのR1は同じである。
【0028】
一実施形態では、R1基を有する分子内の各窒素原子は、2つの同一のR1によって同一に置換される(ただし、同一のリピドイド構造内の異なる窒素原子に結合したR1は同一でなくてもよい)。
【0029】
一実施形態では、2つの異なるR1が、1つの窒素原子に結合している。
【0030】
分子の脂質様特性を可能にするために、リピドイド構造中の少なくとも1つのR1が、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含まなければならない。好ましくは、リピドイド構造中の2つのR1が、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む。
【0031】
一実施形態において、1つの置換基Tは、-X-Y-N(R1)2である。
【0032】
別の実施形態では、両方の置換基Tが-X-Y-N(R1)2である。
【0033】
後者の場合、得られるリピドイドの分子は、一般式IIを有し、
【化7】
ここで、X、Y、ZおよびR
1は上記で定義した通りである。
【0034】
一般式IIの構造は、好ましくは以下の置換基を有する:
Xは、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=S)O-、-C(=O)S-、
-C(=S)S-、-C(=O)NHNH-、-CH
2-、-O-、-OC(=O)-、-S-、-SC(=O)-、-NH-、-NHNH-、
-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、-C≡C-、-CH=CH-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、-CH
2C(=O)NH-、-CH
2C(=O)O-、-CH
2C(=S)O-、-CH
2C(=S)S-、
-CH
2C(=O)NHNH-、-N=CH-、-CH=N-を含む群から選択され;
Yは、アルキレン鎖C
2-C
10であり、ここで、1つ以上の-CH
2-基は任意に、1つ以上のOおよび/またはS原子で置換されていてもよく;
Zは互いに同一または異なり、各Zは水素原子、-OH、-CH
3-、CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、-CON[(CH
2)
2OH]
2,
-CONHCH(CH
2OH)
2,-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2,
-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2,-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化8】
【化9】
からなる群から選択され;
およびR
1は、互いに同一または異なり、各R
1は、アルキルC
8-C
20、アルケニルC
8-C
20、アルキニルC
8-C
20からなる群から選択され、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルにおいて、1つ以上の-CH
2-基は任意に、-CH(OH)-、
-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-S-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-S-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0035】
リンカーXは、分子のアミン部分の、中心シクロヘキサンコアへの付着反応によって形成される。したがってこれらは、例えばエステル、アミドおよびそれらの類似体の形成などの、クリック反応(例えば、アジド-アルキン環化付加反応)を介して選択される反応に依拠する異なるリンカーであってもよい。
【0036】
Xはそれゆえ、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=S)O-、-C(=O)S-、-C(=S)S-、
-C(=O)NHNH-、-CH2-、-O-、-OC(=O)-、-S-、-SC(=O)-、-NH-、-NHNH-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、
-C≡C-、-CH=CH-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、
-CH2C(=O)NH-、-CH2C(=O)O-、-CH2C(=S)O-、-CH2C(=S)S-、-CH2C(=O)NHNH-、-N=CH-、
-CH=N-、-NH-N=CH-、および-CH=N-NH-を含む群から選択される。好ましくは、Xは、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、-OC(=O)-、および-C(=O)O-から選択される。
【0037】
リンカーYは、リンカーXおよびシクロヘキサンコアから少なくともアミンの最小距離を提供するアルキレン鎖である。Yは、C2~C10アルキレン鎖、好ましくはC2~C8 アルキレン鎖であり、ここで1つ以上の-CH2-基は、任意に1つ以上のOおよび/またはS原子で置換されていてもよい。
【0038】
置換基Zは、式IおよびIIの化合物の特性をさらに修飾することができる。
【0039】
一実施形態において、Zは、水素、-OH、-CH
3、-CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、-CON[(CH
2)
2OH]
2、
-CONHCH(CH
2OH)
2、-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、
-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化10】
および
【化11】
からなる群から選択され、
ここで、R
2、Eおよびnは上記で定義した通りである。好ましくは、Zは、H、-CH
3、-CH
2OHであるか、またはZが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、Zは、Tおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成し得る。
【0040】
置換基Tは、式IおよびIIの化合物の特性をさらに修飾し得る。一実施形態において、Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、
-C(=O)OCH
2CH
2OH、-C(=O)NH
2、
【化12】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH、
-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、
-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
【化13】
からなる群から選択され、
ここで、R
2、Eおよびnは、上記で定義したとおりである。より好ましくは、Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、
【化14】
-C(=O)OHからなる群から選択される。最も好ましくは、Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)OCH
3、
【化15】
-C(=O)OHからなる群から選択される。
【0041】
具体的な一実施形態では、式Iのリピドイドは、水素、-OH、-CH
3、-CH
2OHからなる群から選択されるZ;
および-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1~C
3アルキル)、
【化16】
-C(=O)OHからなる群より選択されるT、を有し;
および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成し得る。好ましくは、式Iのリピドイドは以下の置換基を有する:
Xは、-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり;
Yは、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、および-(CH
2)
6-から選択され;
R
1は、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキルC
10-C
15、および-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルケニルC
12-C
18を含む群から選択され;
Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)OCH
3、
【化17】
および-C(=O)OHから選択され;
Zは、H、-CH
3、および-CH
2OHから選択される。
【0042】
具体的には、以下のリピドイドが好ましい:
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキシル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド(3);
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジ((ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)アミノ)ヘキシル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド(7);
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキシル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド(8);
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド(11);
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)アミノ)ヘキシル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド(15);
ヘキサ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’,6’’’’,6’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘキサノエート(19);
ヘキサキス(3-メチルヘキシル)cis,cis-7,7’,7’’,7’’’,7’’’’,7’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘプタノエート(23);
ヘキサキス((E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)cis,cis-5,5’,5’’,5’’’,5’’’’,5’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサペンタノエート(27);
ヘキサキス((Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)cis,cis-5,5’,5’’,5’’’,5’’’’,5’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサペンタノエート(31);
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((5-(メトキシカルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート(32);
テトラキス(3-メチルヘキシル)cis,cis-7,7’,7’’,7’’’-((((5-(メトキシカルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラヘプタノエート(33);
cis,cis-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(35);
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((5-(ピロリジン-1-カルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート(36);
ヘキサキス(3-メチルヘキシル)cis,cis-7,7’,7’’,7’’’,7’’’’,7’’’’’-((((1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘプタノエート(40);
cis,cis-6,6’,6’’,6’’’’,6’’’’’-((((1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘキサノエート(41);
cis,cis-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸(42);
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)-5-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)カルバモイル)シクロヘキサン-1.3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート(45);
cis,cis-1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(46);
ヘキサ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’,6’’’’,6’’’’-((((1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘキサノエート(47);
cis,cis-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)-1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(48);
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)-5-(ピロリジン-1-カルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート(49);
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)-5-(ピロリジン-1-カルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート(50);
cis,cis-N1,N7-ビス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキシル)-5,7-ビス(ヒドロキシメチル)-4-オキソ-3-オキサビシクロ[3.3.1]ノナン-1,7-ジカルボキシアミド(52);
cis,cis-N,N’,N’’-(シクロヘキサン-1,3,5-トリイル)トリス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキサンアミド)(56)。
【0043】
式IおよびIIの化合物は、1位、3位、5位の基Zおよび1位;1位および3位;または1位、3位および5位のリンカーXの前駆基で置換されたシクロヘキサン前駆体と、一般式X’-Y-N(R1)2の三級アミンとの対応する反応によって調製され、ここでX’はリンカーXの前駆基である。好ましくは、X’は-NH2または活性化カルボキシル基である。一般式X’-Y-N(R1)2の三級アミンは、当業者にとって既知の反応および手順によって調製でき、いくつかの適したアミンは市販されてもいる。
【0044】
一実施形態では、式Iの化合物は、好ましくは式IIIの化合物を式IVのジアミンと反応させることによって調製され、
【化18】
ここで、AはH、ハロゲンまたはベンジルであり、
【化19】
任意に、MeOH、BnOHから選択されるアルコールの存在下で反応させ、また、任意にピロリジン、縮合剤および/または塩基の存在下で反応させ、任意に水素化分解が続くか、または水素化分解が先行する。式IIIおよびIVにおいて、R
1、YおよびZは、式Iについて上述した通りである。
【0045】
より具体的な例では、式IIの化合物は、好ましくは、Aが水素である式IIIの化合物を、縮合剤および塩基の存在下で式IVのジアミンと反応させることによって、またはAがハロゲンである式IIIの化合物を、塩基の存在下で式IVのジアミンと反応させることによって調製される。式IIIおよびIVにおいて、R1、YおよびZは、式IIについて上述した通りである。
【0046】
本発明の別の目的は、一般式IまたはIIの少なくとも1種のリピドイドと、少なくとも1種のヘルパー脂質とを含むトランスフェクション剤である。トランスフェクション剤は、成分を溶解および混合することにより溶液の形態で調製することができ、またはマイクロ流体混合などの従来のナノ粒子技術で使用される技術により粒子の形態で調製することができる。粒子は一般に、1~500nmの範囲の寸法を有するナノ粒子を意味すると理解される。好ましくは、ナノ粒子の寸法は30から250nmの範囲、さらに好ましくは40から150nmの範囲である。
【0047】
一実施形態では、トランスフェクション剤は、少なくとも1種の一般式Iのリピドイドを10~50モル%の量で含有し、少なくとも1種のヘルパー脂質を50~90モル%の量で含有する。好ましくは、トランスフェクション剤は、少なくとも1種の一般式Iのリピドイドを15~40モル%の量で含有し、少なくとも1種のヘルパー脂質を60~85モル%の量で含有する。いくつかの好ましい実施形態では、トランスフェクション剤は、15~40モル%の量の少なくとも1種の一般式Iのリピドイド、30~55モル%量のコレステロール、および20~50モル%の量の少なくとも1つの他のヘルパー脂質を含む。
【0048】
特に好ましい実施形態において、トランスフェクション剤は、15~40モル%の量の少なくとも1種の一般式Iのリピドイド、30~55モル%の量のコレステロール、20~45モル%の量の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、および0.5~5モル%の量の1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000を含有する。
【0049】
本発明はまた、少なくとも1種の一般式Iのリピドイド、少なくとも1種の核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体、ならびに好ましくはさらに少なくとも1種のヘルパー脂質を含むトランスフェクション粒子に関する。トランスフェクション粒子は、例えば、任意にヘルパー脂質を含む一般式Iのリピドイドの溶液と、核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体の溶液とを混合することによって、調製することができる。混合は、従来のナノ粒子技術で用いられている技術、例えばマイクロ流体混合によって行うことができる。
【0050】
トランスフェクション粒子中の、一般式Iのリピドイドおよびヘルパー脂質の総量に対する、核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体の総量の重量比は、好ましくは1:2から1:500の範囲、より好ましくは1:5から1:100の範囲である。具体的に例示すると、以下の実施例で調製した粒子では、この比率はmRNAに対して約1:9、siRNAに対して約1:68であった。
【0051】
トランスフェクション粒子は通常ナノ粒子であり、これは一般に1~500nmの範囲の寸法を有する粒子を意味すると理解される。典型的には、トランスフェクション・ナノ粒子の寸法は50から250nmの範囲であり、より好ましくは40から150nmである。
【0052】
トランスフェクション粒子の構造を低温透過型電子顕微鏡で観察したところ、トランスフェクション粒子は内部に核酸を含むコンパクトな層状の脂質ナノ粒子であった。
【0053】
トランスフェクション試薬およびトランスフェクション粒子に含まれるヘルパー脂質は、主に中性脂質、ステロール、または脂質と親水性ポリマーとの脂質コンジュゲートである。
【0054】
中性脂質は、生理的条件下で正味の電荷がゼロであり、非荷電形態または電気的に中性な双性イオン形態で存在することができる。中性脂質は、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(Cyanine 5)から選択することができる。
【0055】
ステロールは、例えば、コレステロール、β-シトステロール、スチグマスタノール、カンペステロール、フコステロール、アベナステロール、フェコステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、および9,11-デヒドロエルゴステロールから選択することができる。好ましくは、ステロールはコレステロールである。
【0056】
親水性ポリマーを有する脂質コンジュゲートは、脂質部分と、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、ポリ(グリセロール)、ポリ(サルコシン)などのポリマー部分とを含む。好ましくは、ポリマー部分は、約500~約10,000Da、より好ましくは約1,000~約5,000Daの範囲の分子量を有するポリ(エチレングリコール)からなる。親水性ポリマーとの脂質コンジュゲートは、例えば、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000、および類似のコンジュゲートから選択してもよい。親水性ポリマーとの脂質コンジュゲートは、好ましくは、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)-2000であてもよい。
【0057】
核酸またはその一部は、1つ以上のヌクレオチドおよび/またはデオキシヌクレオチドを含む。核酸またはその一部は、治療剤、診断剤または予防剤であってもよく、またはそれらがトランスフェクトされる細胞または組織に標識を提供してもよい。式Iの化合物はそれゆえ、主に治療的またはバイオテクノロジー的用途を有する。
【0058】
用語「核酸またはその一部」は、好ましくはオリゴヌクレオチド(1~100ヌクレオチド、例えばアプタマー)、環状ジヌクレオチド(例えば2’、3’-cGAMP)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、デオキシリボ核酸(一本鎖DNA、二本鎖DNA、cDNA、遺伝子または遺伝子をコードするプラスミドDNA)、リボ核酸、典型的にはメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA、マイクロRNA(miRNA)、PiwiRNA(piRNA)、アンチセンスRNA(asRNA)、CRISPRシステムのためのガイドRNA(gRNA)、およびそれらの組み合わせ(典型的には、例えばCas9ヌクレアーゼをコードするgRNAとmRNA、Cas13a/C2c2およびCas13b、または類似のヌクレアーゼであって、CRISPR、CRISPRiおよび他のバリエーションおよびその後の宿主細胞または組織のゲノムの改変または宿主細胞または組織のトランスクリプトームの改変における使用に適したもの)から選択される、1つ以上の核酸のタイプを意味すると理解される。さらに、本明細書に開示されるすべての核酸(NA)は、例えば、生物学的系における安定性を高めるために、合成塩基アナログにより形成または修飾され得る。合成NAアナログは、特に、以下の置換を含む:2’-O-メチル、2’-O-メトキシ-エチル、2’-フルオロ、ペントース環の2’-酸素と4’-炭素との間のメチレン架橋(いわゆるロックされた核酸)、ストランドの5’末端および/または3’末端でのリン酸化、ボランホスホネート、またはホスホロチオエート。
【0059】
本発明はさらに、in vitroで細胞または組織を核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体でトランスフェクトするための式Iのリピドイドまたはトランスフェクション剤またはトランスフェクション粒子の使用を含む。さらに、本発明は、in vivoでの核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体による細胞または組織のトランスフェクション(工業的または商業的使用のためのヒト胚のトランスフェクションを除き、ヒト生殖系列の改変を除く)に使用するための式Iのリピドイドまたはトランスフェクション粒子を含む。
【0060】
一般式Iのリピドイドを含むトランスフェクション粒子は、基礎研究における多くの生物学的用途、特に、活性核酸を送達するための細胞培養物または動物のトランスフェクション、およびそれに続く染色体遺伝子または遺伝子のサイレンシングまたは活性化、ゲノム編集(遺伝子切除、遺伝子挿入または突然変異導入)またはトランスクリプトーム編集、あるいはトランスフェクション粒子によって挿入された核酸によってコードされる所定のタンパク質の発現を可能にする、いわゆる「in trans」に有用である。
【0061】
獣医学およびヒト医学において、一般式Iのリピドイドを含むトランスフェクション粒子は、好ましくは、治療目的または予防目的で使用することができる。治療用核酸を含む粒子を動物またはヒトに投与して、染色体遺伝子をサイレンシングさせるか活性化させるか、免疫原をサイレンシングさせるか活性化させるか、シグナル伝達経路を阻害するか活性化させるか、ゲノムを編集(遺伝子切除、遺伝子挿入または突然変異導入)するかトランスクリプトームを編集するか、または核酸によってコードされるタンパク質の発現を可能にすることができる。
【0062】
本発明はまた、医薬品として、特に遺伝子治療のために使用するための、一般式Iのリピドイドまたはトランスフェクション剤またはトランスフェクション粒子を提供する。特に、これらは、悪性腫瘍および/または遺伝性疾患の治療における使用に適している。
【0063】
一般式(I)のリピドイドまたは本発明によるトランスフェクション剤またはトランスフェクション粒子は、予防ワクチン、好ましくは感染症の予防のためのワクチンとしての使用にも適している。
【0064】
一般式Iのリピドイドまたはトランスフェクション粒子は、薬学的に許容される賦形剤との製剤の形態で、治療用、化粧用またはバイオテクノロジー用に製剤化することができる。製剤は液体または固体の形態であり得る。液体形態には、例えば注射または経口投与に適合した溶液、懸濁液、分散液、ゲル、軟膏が含まれる。固体形態としては、例えば、カプセル剤、錠剤、コーティング錠剤、粉末剤、坐剤などが挙げられる。
【0065】
液体製剤は、不活性ガスによってネブライジングすることができる。ネブライジングされた懸濁液は、直接、またはネブライジングデバイスから吸入することができ、ネブライジングデバイスはフェイスマスクまたは呼吸器に取り付けることができる。固形製剤は、乾燥粉末吸入器を用いて投与することができる。懸濁液または乾燥粉末製剤は、適切なデバイスから経口または経鼻投与することができる。
【0066】
皮膚または粘膜に適用するために、製剤は、クリーム、ゲル、軟膏、ペースト、バーム、液体等の形態で調製することもでき、作用部位に直接適用することができる。
【0067】
薬学的に許容される賦形剤としては、溶媒、溶解度調整剤、pH調整剤、担体、充填剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、保存剤、吸着剤、粘度調整剤、製剤の味、匂い、色などの官能特性に影響を与える薬剤などが挙げられる。
【0068】
さらに、一般式Iのリピドイドまたはトランスフェクション剤もしくはトランスフェクション粒子は、活性物質を作用部位に送達するために、好ましくは化粧品産業の目的に使用することができる。活性物質を有するトランスフェクション粒子は、クリーム、ゲル、軟膏、ペースト、バーム、液体などの形態で調製することができ、メークアップ、毛髪化粧品または個人衛生製品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図6】リピドイド32、33、35、および36の合成スキーム。
【
図7】前駆体39および44ならびにリピドイド40-42の合成スキーム。
【
図8】リピドイド47、48、50、および52の合成スキーム。
【
図10】組織学的に分析したベンチマークLNP(B45)と比較した、マウス肝臓におけるmRNA-LNP(B40)の機能的送達。
【
図11】ゲノムDNAのPCR増幅によって解析したベンチマークLNP(B45)と比較した、マウス肝臓におけるmRNA-LNP(B40)の機能的送達。1から4までのレーンはB40に関する。5から8までのレーンはB45に関する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
(実施例)
略語のリスト:
eq. 等価
Rf リテンション・ファクター
TLC 薄層クロマトグラフィー
RVE ロータリー真空蒸発器
rt 室温
v/v 体積/体積
br s ブロード信号
s シングル
d ダブレット
t トリプレット
m マルチプレット
dd ダブレットのダブレット
J 相互作用定数
δ 化学シフト
HRMS 高分解能質量分析
EI 電子イオン化
ESI エレクトロスプレーイオン化
MALDI マトリックス支援レーザー脱離イオン化
GC-MS ガスクロマトグラフ-質量分析
IR 赤外分光法
NMR 核磁気共鳴
CE5 95:5(v/v)シクロヘキサン-酢酸エチル混合物
CE20 80:20(v/v)シクロヘキサン-酢酸エチル混合物
CE50 50:50(v/v)シクロヘキサン-酢酸エチル混合物
D1 75:22:3(v/v/v)ジクロロメタン-メタノール-25%水性NH3混合物
D2 175:22:3(v/v/v)ジクロロメタン-メタノール-25%水性NH3混合物
D3 275:22:3(v/v/v)ジクロロメタン-メタノール-25%水性NH3混合物
D4 375:22:3(v/v/v)ジクロロメタン-メタノール-25%水性NH3混合物
TFA トリフルオロ酢酸
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DCM ジクロロメタン
ACN アセトニトリル
DIC ジイソプロピルカルボジイミド
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
PyBroP ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TCE 1,1,2,2-テトラクロロエタン
LNP 脂質ナノ粒子
NA 核酸
DNA デオキシリボ核酸
RNA リボ核酸
mRNA メッセンジャーRNA
siRNA 短鎖干渉RNA
tRNA トランスファーRNA
miRNA マイクロRNA
ssDNA/RNA 一本鎖DNA/RNA
dsDNA/RNA 二本鎖DNA/RNA
DMG-PEG2000 1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000
DOPE 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン
DOPC 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
DSPC 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
DOPE-Cy5 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(Cyanine 5)
Lip2000 Lipofectamine(登録商標)2000 (Invitrogen)
h 時間(hour)
実施例1
N1,N1-ジドデシルエタン-1,6-ジアミン 2
塩化カルシウム乾燥管とマグネチックスターラーを備えた500ml丸底フラスコに、DCM(100ml)中のN1-terc-ブチルオキシカルボニル-1,6-ジアミノヘキサン(5.0g、23.11mmol)の溶液を入れ、氷浴で0℃に冷却した。激しく攪拌しながら、n-ドデシルアルデヒド(15.38ml、69.34mmol、3eq.)を加え、続いてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(14.70g、69.34mmol、3eq.)を10分かけて3回に分けて加えた。冷却浴を除去し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行は、あらかじめアンモニアで飽和させたTLCプレート上で、80:20(v/v)ヘキサン-酢酸エチル移動相を用いたTLCでモニターした(ニンヒドリンで検出)。反応終了後、NaOH水溶液(1M、200ml)を加え、反応混合物を15分間撹拌した後、分液漏斗に注ぎ、水(300ml)で希釈した。生成物をDCM(300ml、2×50ml)で抽出し、合わせた有機相をブライン(50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、S2フリットで濾過し、溶媒をRVEで蒸発させた。暗いオイル状の残渣を、ヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配(10-30%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。アミン1(3.67g,28.7%)を黄色がかったオイルとして得た。
【0071】
DCM(10ml)中の化合物1の溶液にトリフルオロ酢酸(10ml)を加え、氷浴中で撹拌しながら0℃に冷却し、反応混合物を0℃で3時間放置した。次いで、溶液を1lのセパラブルフラスコに注ぎ、20%水性Na2CO3(300ml)で希釈し、生成物をDCM(250ml、2×50ml)で抽出した。合わせた有機相をブライン(100ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、S2フリットで濾過し、溶媒をRVEで蒸発させた。粗生成物を、DCM中のD1の直線勾配(0-70%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ジアミン2(2.17g、収率72.2%;あらかじめアンモニアで飽和させたTLCプレート上の移動相D2でRf 0.31、ニンヒドリンで検出)が黄色がかったオイルの形で得られた。
【0072】
1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=2.73,2.65,2.57,1.56,1.52,1.51,1.36,1.31,1.28,1.25-1.29,1.24,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=53.51,53.20,41.62,32.40,31.89,29.63,29.61,29.57,29.44,29.32,27.39,27.09,26.53,25.65,25.02,22.66,14.10ppm。IR(film):νmax/cm-1=3374wおよび3294w(νNH2),2797m(νsN-CH2),2956s(νasCH3),2924vs(νasCH2),2853s(νsCH2),1467mおよび1455m,sh(βsCH2およびδasCH3),1378wおよび1367w(δsCH3),721m(βasCH2)。HRMS(ESI):C30H65N2[M+H]+に対して計算されたm/zは453.51423であり;実測値は453.51340であった。
【0073】
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキシル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド 3
cis,cis-1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸(17mg,0.079mmol)にDMF(2μl)およびチオニルクロリド(300μl)を加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で30分間撹拌し、反応混合物を徐々に均一な無色溶液に清澄化した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で吹き飛ばし、残渣を真空下で乾燥させ(10分間)、rtまで冷却した。N1,N1-ジドデシルヘキサン-1,6-ジアミン2(142mg,0.315mmol,4eq.)とDIPEA(137μl,0.786mmol,10eq.)の溶液をDCM(1.5ml)とDMF(0.5ml)の混合物中に、注射器を用いて隔壁を介して加え、反応混合物を10分間撹拌した。その後、反応混合物をクロマトグラフィー用シリカゲル(10g)に吸着させ、溶媒をRVEで除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40g)により、DCM中D1の直線勾配(0~55%)を用いて精製した。リピドイド3が黄色がかった半固体の形で得られた(81mg、収率67.7%;移動相D2でRf 0.36、ニンヒドリンで検出)。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=7.80,3.20,3.02-2.96,2.60,2.07,1.81-1.74,1.37,1.325,1.28-1.23,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=175.90,52.85,52.22,42.83,39.42,31.87,31.66,29.58,29.48,29.43,29.30,29.08,26.84,26.18,26.00,23.50,23.16,22.65,14.09ppm。IR(CCl4):νmax/cm-1=3293m(νNH),1640s(アミドI)および1550m(アミドII),2964s,sh(νasCH3),2871m,sh(νsCH3),2927vs(νasCH2)、2856s,sh(νsCH2),1468mおよび1460m,1445w(βsCH2およびδasCH3),1378w(δsCH3),721w(βasCH2およびδasCH2);HRMS(MALDI):C99H199N6O3[M+H]+に対して計算されたm/zは1520.5598であり;実測値は1520.5598を見出した。
【0074】
実施例2
N1,N1-ジ((ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)ヘキサン-1,6-ジアミン 6
1-ヘキサノール(2.48ml,19.89mmol,1.2eq.)、DMAP(61mg,0.50mmol,0.03eq.)およびDIC(3.37ml,21.54mmol,1.3eq.)をDCM(60ml)中の5-ブロモペンタン酸(3.00g,16.57mmol)の溶液に加え、反応混合物をrtで1時間撹拌した。その後、反応混合物をクロマトグラフィー用シリカゲル(16g)に吸着させ、溶媒をRVEで除去し、残渣をシクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配(0~10%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80g)で精製した。5-ブロモペンタン酸ヘキシル 4(3.938g,収率89.6%;移動相CE5でRf 0.31,KMnO4検出)を無色液体として得た。
【0075】
5-ブロモペンタン酸ヘキシル 4(1.53g,5.78mmol,2.5eq.)および無水K2CO3(3.19g,23.11mmol,10eq.)を、N1-tert-ブチルオキシカルボニル-1,6-ジアミノヘキサン(0.50g,2.31mmol)の無水ACN(10ml)中溶液に加え、反応混合物を35℃で2日間激しく撹拌した。その後、反応混合物をクロマトグラフィー用シリカゲル(16g)に吸着させ、溶媒をRVEで除去し、残渣をシクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配(0-100%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40g)で精製した。アミン5がわずかに黄色がかったオイルの形で得られた(1.080g、収率79.9%;アンモニアであらかじめ飽和させたTLCプレート上の移動相CE50でRf 0.31、ニンヒドリンで検出)。
【0076】
トリフルオロ酢酸(4ml)を、氷浴中で撹拌しながら0℃に冷却したDCM(4ml)中の化合物5の溶液に添加し、反応混合物を0℃で1時間放置した。次いで、溶液を500mlのセパラブルフラスコに注ぎ、20%水性NaHCO3(200ml)で希釈し、生成物をDCM(150ml、2×50ml)で抽出した。合わせた有機相をブライン(50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、S2フリットで濾過し、クロマトグラフィシリカゲル(16g)に吸着させ、溶媒をRVEで除去し、残渣をDCM中のD1の直線勾配(0~80%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィ(40g)で精製した。ジアミン6を黄色がかったオイルとして得た(0.788g、収率86.9%;移動相D2でRf 0.14、ニンヒドリンで検出)。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=4.05,3.63,3.21,3.15,2.79,2.68,2.60,2.51,2.42,2.32,1.61,1.50,1.36-1.28,0.88ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=173.62,64.52,53.68,53.29,41.22,40.26,34.03,31.41,28.58,25.75,25.57,22.80,22.51,13.98ppm。HRMS(ESI):C28H57O4N2[M+H]+に対して計算されたm/zは485.43128であり;実測値は485.43052であった。
【0077】
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジ((ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)アミノ)ヘキシル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド 7
実施例1のリピドイド3について記載した手順に従って、cis,cis-1,3,5-シクロヘキサンカルボン酸(21mg,0.097mmol)、N1,N1-ジ((ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)ヘキサン-1,6-ジアミン6(188mg,389mmol,4eq.)およびDIPEA(169μl,0.971mmol,10eq.)からリピドイド7を調製した。リピドイド7(55mg,35%;移動相D2でRf 0.42、ニンヒドリンで検出)を黄色がかった半固形物として得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=6.23,4.05,3.205,2.65,2.34,2.30,2.085,1.63-1.60,1.49,1.33-1.29,0.88ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=174.35,173.37,64.60,53.35,52.88,43.98,39.12,33.79,31.94,31.40,29.21,28.57,26.62,26.33,25.56,22.58,22.51,13.98ppm。IR(CCl4):νmax/cm-1=1736vs(νsC=O),1173m,1075w(νsC-O),3293m(νNH),1640s(アミドI)および1551m(アミドII),2955s(νasCH3)、2933vs(νasCH2),2875m,sh(νsCH3),2860m(νsCH2),1467mおよび1460m(βsCH2およびδasCH3),1379w(δsCH3),724w(βasCH2およびγasCH2)。HRMS(MALDI):C93H175N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1616.3110であり;実測値は1616.3095であった。
【0078】
実施例3
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキシル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド 8
実施例1のリピドイド3について記載した手順に従って、cis,cis-1,3,5-トリメチル-1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸(20mg,0.077mmol)、N1,N1-ジ(ドデシル)ヘキサン-1,6-ジアミン2(140mg,310mmol,4eq.)およびDIPEA(135μl,0.774mmol,10eq.)からリピドイド8を調製した。リピドイド8(64mg,53%;移動相D2でRf 0.43、ニンヒドリンで検出)をわずかに黄色がかった固体オイルの形で得た。IR(CCl4):νmax/cm-1=3288w,br(νNH),1651m(アミドI),1585w,br,shおよび1559m,br(アミドII),2956s(νasCH3),2927vs(νasCH2)、2878m,sh(νsCH3),2855s(νsCH2),1468m,および1459m,sh,1448m,sh(βsCH2およびδasCH3),1378w(δsCH3);721w(βasCH2およびγasCH2)。HRMS(MALDI):C102H205N6O3[M+H]+に対して計算されたm/zは1562.6068であり;実測値は1562.6011であった。
【0079】
実施例4
N1,N1-ジドデシルプロパン-1,3-ジアミン 10
実施例1の化合物1について記載した手順に従って、N1-tert-ブチルオキシカルボニル-1,3-ジアミノプロパン(6.0g,34.43mmol)、n-ドデシルアルデヒド(22.91ml,103.30mmol,3eq.)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(21.89g,103.3mmol,3eq.)からアミン9を調製した。アミン9を黄色がかったオイルとして得た(7.72g,43.9%)。
【0080】
アミン9の脱保護は、実施例1の化合物2について記載した手順に従って行った。ジアミン10(4.26g,68.6%;;あらかじめアンモニアで飽和させたTLCプレート上の移動相D2でRf 0.35,ニンヒドリンで検出)を黄色がかったオイルの形で得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=3.07,2.70,2.50,1.81,1.46,1.28,1.26,1.25-1.29,1.24,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=53.70,53.30,41.18,31.90,29.64,29.62,29.60,29.58,29.48,29.33,27.42,25.71,23.87,22.67,14.10ppm。IR(film):νmax/cm-1=3361wおよび3274w(νNH2),2803m(νsN-CH2),2954s(νasCH3),2924vs(νasCH2),2853s(νsCH2),1467mおよび1456m,sh(βsCH2およびδasCH3),1378wおよび1364w(δsCH3),720m(βasCH2)。HRMS(ESI):C27H59N2[M+H]+に対して計算されたm/zは411.46728であり;実測値は411.46652であった。
【0081】
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボンアミド 11
実施例1のリピドイド3について記載した手順に従って、cis,cis-1,3,5-トリメチル-1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸(20mg,0.077mmol)、N1,N1-ジ(ドデシル)プロパン-1,3-ジアミン10(127mg,310mmol,4eq.)およびDIPEA(135μl,0.774mmol,10eq.)からリピドイド11を調製した。リピドイド11(41mg、収率37%;移動相D2でRf 0.36、ニンヒドリンで検出)をわずかに黄色がかった固体オイルの形で得た。IR(CCl4):νmax/cm-1=330w,vbr(νNH),1679s,sh(アミドI),1513w,br,sh(アミドII),2956s(νasCH3),2927vs(νasCH2),2878m,sh(νsCH3),2855s(νsCH2),1464m,sh(βsCH2およびδasCH3),1380w(δsCH3);721w(βasCH2およびγasCH2)。HRMS(MALDI):C93H187N6O3[M+H]+に対して計算されたm/zは1436.4665であり;実測値は1436.4629であった。
【0082】
実施例5
リノールアルデヒド 12
デス-マーチンペルヨージナン(4.45g,10.49mmol,1.3eq.)を、氷浴で0℃に冷却したDCM(120ml)中のリノレイルアルコール(2.50ml,8.07mmol)の溶液に加え、混合物を0℃で4時間撹拌した。その後、チオ硫酸ナトリウム水溶液(20g Na2S2O3・5H2O/100ml H2O)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、最初は乳白色だった溶液が透明になるまでrtで1時間撹拌した。溶液を1000mlのセパラブルフラスコに注ぎ、水(150ml)で希釈し、生成物をDCM(150ml、2x50ml)で抽出した。合わせた有機相をブライン(150ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、S2フリットで濾過し、溶媒をRVE上で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アイソクラティック条件、シクロヘキサン中酢酸エチル5%)で精製した。アルデヒド12(1.271g,収率59.6%;移動相CE5でRf 0.36,KMnO4で検出)を無色オイルとして得た。
【0083】
N1,N1-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン 14
実施例1の化合物1について記載した手順に従って、N1-tert-ブチルオキシカルボニル-1,6-ジアミノヘキサン(0.345g,1.59mmol)、アルデヒド12(1.27g,4.78mmol,3eq.)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.01g,4.78mmol,3eq.)からアミン13を調製した。アミン13を黄色がかったオイルとして得た(1.08g、収率94.9%;移動相CE20でRf 0.18、ニンヒドリンで検出)。
【0084】
アミン13の脱保護を、TFA(4ml)およびDCM(5ml)の混合物中で、実施例1の化合物2について記載した手順に従って行い、ジアミン14(0.594g、64.0%;移動相D2でRf 0.13、ニンヒドリンで検出)を黄色がかったオイルとして得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.30-5.40,2.765,2.73,2.67,2.59,2.04,1.51,1.385,1.37,1.34,1.295,1.29,1.28-1.34,1.28,0.88ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=130.19,130.06,127.99,127.89,53.49,53.45,41.67,32.52,31.50,29.62,29.46,29.20-29.48,27.37,27.20,27.18,26.52,25.61,22.56,14.06ppm。IR(CCl4):νmax/cm-1=3011s(νas=CH);1646-1673m(νC=C);3455w(νasNH2);3394(νsNH2);1620w(βsNH2);1087m(νC-NH2);2957s,sh(νasCH3);2928vs(νasCH2);2873s,sh(νsCH3);2856vs(νsCH2);2801m(νsN-CH2);1467mおよび1457m,sh(βsCH2およびδasCH3);1378m(δsCH3);721m(βasおよびγasCH2)。HRMS:C42H81N2[M+H]+に対して計算されたm/zは613.63943であり;実測値は613.63899であった。
【0085】
cis,cis-N1,N3,N5-トリス(6-(ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)アミノ)ヘキシル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキサミド 15
リピドイド15は、cis,cis-1,3,5-トリメチル-1,3,5-シクロヘキサンカルボン酸(17mg,0.066mmol)、N1,N1-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン14(161mg,273mmol,4eq.)およびDIPEA(115μl,0.658mmol,10eq.)から、実施例1のリピドイド3について記載した手順に従って調製した。リピドイド15(86mg、収率64%;移動相D2でRf 0.36、ニンヒドリンで検出)を淡黄色固体として得た。IR(CCl4):νmax/cm-1=3348w,br,shおよび3302w,br(νNH),1656mおよび1635m,sh(アミドI+νC=C),1565w,shおよび1557w,br(アミドII)、3011m(νas=C-H),2956s(νasCH3),2929vs(νasCH2),2875m,sh(νsCH3),2856s(νsCH2),1467mおよび1450m,sh,(βsCH2およびδasCH3),1379w(δsCH3);720w(βasCH2+γasCH2+γ=C-H)。HRMS(MALDI):C138H253N6O3[M+H]+に対して計算されたm/zは2042.9829であり;実測値は2042.9861であった。
【0086】
実施例6
化合物18
DIC(4.41mL、28.7mmol、1.6eq)およびDMAP(88mg、0.72mmol、0.04eq)を、DCM(30mL)中の6-ブロモヘキサン酸(3.50g、17.9mmol)およびオクタン-2-オール(3.51g、26.9mmol,1.5eq.)をDCM(30mL)に溶解し、混合物をrtで一晩撹拌した。次いで、反応混合物をシリカ(16g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(80g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-10%)で精製し、化合物16(4.02g,77%;CE5中でRf 0.41,KMnO4により可視化)を無色オイルとして得た。
【0087】
ブロモエステル16(4.00g,13.1mmol,2.6eq.)および炭酸カリウム(7.23g,52.3mmol,10eq.)を、無水ACN(10mL)中のN-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(1.13g,5.23mmol,1eq.)の溶液に添加し、混合物を40℃で3日間撹拌した。その後、反応混合物をシリカ(16g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(80g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-100%)で精製し、化合物17(2.80g、80%;NH3-前処理TLCプレート上のCE50中でRf 0.58、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0088】
ジオキサン中の塩酸(4mL、4M)を、無水DCM(4mL)中の化合物17(2.75g、4.11mmol)の溶液に添加し、反応混合物をrtで1時間撹拌した。次いで、溶液を500mLの分液漏斗に注ぎ、飽和水性NaHCO3(100mL)で希釈し、生成物をジエチルエーテル(100mL、2×50mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(75mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、S2焼結ガラスでろ過し、溶媒をRVEで蒸発させた。粗生成物を、DCM中のD1の直線勾配(0~70%)を用いたシリカ上のカラムクロマトグラフィーにより精製した。アミン18(1.74g,74%;NH3-前処理TLCプレート上のD2中でRf 0.25,ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=4.90-4.77(m),2.72-2.62(m),2.39-2.29(m),2.21(t,J=7.5Hz),1.64-1.44(m),1.47-1.32(m),1.30-1.17(m),1.15-1.08(m),0.86-0.78(m)ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=173.42,70.83,53.89,41.87,35.98,31.77,29.13,27.41,27.17,26.84,26.69,25.40,25.09,22.60,20.04,14.09ppm。HRMS(ESI):C34H68N2O4[M+H]+に対して計算されたm/zは569.5252であり;実測値は569.5247であった。
【0089】
ヘキサ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’,6’’’’ ,6’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘキサノエート 19
チオニルクロリド(700μL)とDMF(6μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(80mg,370μmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体をアルゴン下、無水TCE(2.5mL)およびDIPEA(645μL,3.70mmol)に溶解した。次いで、無水TCE(2.5mL)中のアミン18(1.05g,1.85mmol,5eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで40分間撹拌した。次いで、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中D1の直線勾配で溶出、5~35%)で精製し、目的化合物19(489mg、71%)を黄色の蝋状の半固形物として得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.75,4.88,3.21,2.42,2.27,2.22,2.11,1.62,1.58,1.56,1.47,1.46,1.30,1.28,1.27,1.26,1.19,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):173.88,173.39,70.82,53.87,53.77,44.10,39.44,35.93,34.67,31.86,31.73,29.51,29.09,27.08,26.74,25.36,25.01,22.56,20.01,14.06ppm。HRMS(MALDI):C111H211N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1868.5927であり;実測値は1868.5906であった。
【0090】
実施例7
化合物22
DIC(3.60mL、23.0mmol、1.6eq)およびDMAP(70mg、0.58mmol、0.04eq)を7-ブロモヘプタン酸(3.00g、14.4mmol)および3-メチルヘキサン-1-オール(2.50g、21.5mmol、1.5eq.)をDCM(30mL)に溶解し、混合物をrtで一晩撹拌した。次いで、反応混合物をシリカ(16g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(80g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-10%)で精製し、化合物20(3.64g,83%;CE5中でRf 0.27,KMnO4により可視化)を無色オイルとして得た。
【0091】
ブロモエステル20(3.63g,11.8mmol,2.6eq.)および炭酸カリウム(6.29g,45.5mmol,10eq.)を、無水ACN(10mL)中のN-Boc-ヘキサン-1,6-ジアミン(0.98g,4.55mmol,1eq.)の溶液に添加し、混合物を40℃で3日間撹拌した。その後、反応混合物をシリカ(16g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(80g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-100%)で精製し、化合物21(2.90g,95%;NH3-前処理TLCプレート上のCE50中でRf 0.54,ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0092】
ジオキサン中の塩酸(4mL、4M)を、無水DCM(4mL)中の化合物21(2.85g、4.26mmol)の溶液に添加し、反応混合物をrtで1時間撹拌した。次いで、溶液を500mLの分液漏斗に注ぎ、飽和水性NaHCO3(100mL)で希釈し、生成物をジエチルエーテル(100mL、2×50mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(75mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、S2焼結ガラスで濾過し、溶媒をRVEで蒸発させた。粗生成物を、DCM中のD1の直線勾配(0~70%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。アミン22(2.38g,96%;NH3-前処理TLCプレート上のD2中でRf 0.48、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0093】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=4.08-3.96(m),2.63-2.58(m),2.33-2.26(m),2.21(t,J=7.5Hz),1.61-1.50(m),1.49-1.40(m),1.40-1.30(m),1.30-1.14(m),1.14-1.00(m),0.85-0.76(m)ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):173.85,62.77,54.13,42.19,38.98,35.55,34.35,33.79,29.56,29.15,27.49,27.29,26.88,25.01,19.95,19.48,14.26ppm。HRMS(ESI):C34H68N2O4[M+H]+に対して計算されたm/zは569.5252であり;実測値は569.5250であった。
【0094】
ヘキサキス(3-メチルヘキシル)cis,cis-7,7’,7’’,7’’’,7’’’’,7’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘプタノエート 23
チオニルクロリド(500μL)およびDMF(4μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(60mg、278μmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した;この間に懸濁液は透明な溶液に変化した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体をアルゴン下、無水TCE(2mL)およびDIPEA(483μL,2.78mmol,10eq.)に溶解した。次に、無水TCE(2mL)中のアミン22(632mg,1.11mmol,4eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで40分間撹拌した。次いで、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中D1の直線勾配で溶出、0~46%)で精製し、目的化合物23(346mg,67%;NH3-前処理したTLCプレート上のD2でRf 0.66,ニンヒドリンにより可視化)を黄色の蝋状の半固形物として得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.75,4.09,3.21,2.41,2.28,2.22,2.11,1.64,1.62,1.61,1.58,1.54,1.48,1.44,1.42,1.33,1.32,1.29,1.28,1.13,0.89,0.88ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=173.92,173.87,62.64,53.90,44.10,39.45,39.14,35.51,34.23,31.86,29.54,29.52,29.09,27.22,27.13,26.77,24.97,19.94,19.47,14.26ppm。HRMS(MALDI):C111H211N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1868.5927であり;実測値は1868.5905であった。
【0095】
実施例8
化合物24
無水DCM(150mL)中の6ブロモペンタン酸(3.00g,16.6mmol)、DMAP(81mg,0.66mmol,0.04eq.)およびゲラニオール(4.36mL,24.9mmol,1.5eq.)を含む溶液に、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(4.07mL,24.9mmol,1.6eq.)を加えた。反応混合物をシリカ(20g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(120g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-10%)で精製し、目的化合物24(4.80g,91%;CE5中でRf 0.39,KMnO4により可視化)を淡黄色オイルとして得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.37-5.30(m,1H),5.11-5.05(m,1H),4.60(d,J=7.1Hz,2H),3.41(t,J=6.6Hz,2H),2.35(t,J=7.2Hz,2H),2.15-2.01(m,4H),1.95-1.86(m,2H),1.83-1.74(m,2H),1.70(s,3H),1.68(s,3H),1.60(s,3H)。
【0096】
化合物26
ブロモエステル24(4.80g,15.1mmol,2.3eq.)および炭酸カリウム(7.27g,52.3mmol,8eq.)を、N-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(1.42g,6.58mmol,1eq.)の無水ACN(30mL)溶液に加えた。その後、反応混合物をシリカ(20g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(120g、ガス状NH3で前処理したカラム、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-100%)で精製し、化合物25(2.80g,54%;NH3-前処理したTLCプレート上のCE50でRf 0.58,KMnO4により可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0097】
マグネチックスターバーを備えたフラスコに化合物25(2.80g,4.06mmol)を入れ、ゴム製セプタムで閉じ、アルゴンで洗浄した。ACN(10mL)とDCM(20mL)を針と注射器でセプタムを通して加え、攪拌をオンにし、ACN(20mL)中の4-トルエンスルホン酸一水和物(2.32g,12.2mmol,3eq.)の溶液を針と注射器で5分かけてセプタムを通してrtで加えた。反応混合物をrtで6時間攪拌し、その後、気体アンモニアを流して中和した。反応混合物をシリカ(20g)に吸着させ、粗生成物をDCM中のD1の直線勾配(10-43%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。アミン26(810mg,34%;NH3-前処理TLCプレート上のD2中でRf 0.45,ニンヒドリンで可視化)を黄色オイルとして得た。HRMS(ESI):C36H64N2O4[M+H]+に対して計算されたm/zは589.4939であり;実測値は589.4936であった。
【0098】
ヘキサキス((E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)cis,cis-5,5’,5’’,5’’’,5’’’’,5’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサペンタノエート 27
チオニルクロリド(700μL)およびDMF(6μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(45mg、208μmol)に添加し、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した;この間に懸濁液は透明な溶液に変化した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体を無水TCE(1.5mL)およびDIPEA(363μL,2.08mmol,10eq.)にアルゴン下で溶解した。次いで、無水TCE(1.0mL)中のアミン26(490mg,833μmol,4eq.)の溶液を添加し、反応混合物をrtで40分間撹拌した。次いで、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中D1の直線勾配で溶出、0-31%)で精製し、目的化合物27(262mg,65%;NH3-前処理TLCプレート上のD2でRf 0.59,ニンヒドリンにより可視化)を黄色のワックス状半固形物として得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.72,5.32,5.08,4.58,3.21,2.44,2.41,2.32,2.22,2.11,2.10,2.09,2.03,1.69,1.68,1.61,1.60,1.59,1.58,1.47,1.45,1.29ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=173.85,173.60,142.16,131.80,123.72,118.32,62.25,53.79,53.45,44.12,39.52,39.42,34.14,31.85,29.48,27.03,26.72,26.29,25.67,22.90,17.68,16.46ppm。HRMS(MALDI):C117H199N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1928.4988であり;実測値は1928.4967であった。
【0099】
実施例9
化合物28
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(4.07mL,24.9mmol,1.6eq.)を、無水DCM(60mL)中の6-ブロモペンタン酸(3.00g,16.6mmol)、DMAP(81mg,0.66mmol,0.04eq.)、およびネロール(4.38mL,24.9mmol,1.5eq.)を含む溶液に添加した。反応混合物をシリカ(20g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(120g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-10%)で精製し、目的化合物28(4.75g,90%;CE5中でRf 0.39,KMnO4により可視化)を淡黄色オイルとして得た。1H NMR(401MHz,CDCl3)δ 5.35(t,J=6.5Hz,1H),5.12-5.06(m,1H),4.57(dd,J=7.2,1.1Hz,2H),3.40(t,J=6.6Hz,2H),2.34(t,J=7.3Hz,2H),2.15-2.03(m,4H),1.94-1.86(m,2H),1.82-1.74(m,5H),1.68(d,J=1.4Hz,3H),1.60(s,3H).
【0100】
化合物30
ブロモエステル28(4.75g,15.0mmol,2.3eq.)および炭酸カリウム(7.20g,52.1mmol,8eq.)を、N-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(1.41g,6.51mmol,1eq.)の無水ACN(45mL)溶液に加えた。その後、反応混合物をシリカ(20g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(120g、ガス状NH3で前処理したカラム、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0-100%)で精製し、化合物29(3.62g、81%;NH3-前処理TLCプレート上のCE50でRf 0.54、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0101】
マグネチックスターバーを備えたフラスコに化合物29(3.62g,5.25mmol)を入れ、ゴム製セプタムで閉じ、アルゴンで洗浄した。DCM(10mL)を針と注射器を用いてセプタムを通して加え、攪拌をオンにし、ACN(25mL)中の4-トルエンスルホン酸一水和物(2.50g、13.1mmol、2.5eq)の溶液を針と注射器を用いて5分間かけてセプタムを通してrtで加えた。反応混合物をrtで5時間攪拌し、その後、気体アンモニアを流して中和した。反応混合物をシリカ(20g)に吸着させ、粗生成物をDCM中のD1の直線勾配(10-43%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。アミン30(1.36g,44%;NH3-前処理TLCプレート上のD2中でRf 0.46,KMnO4により可視化)を黄色オイルとして得た。HRMS(ESI):C36H64N2O4[M+H]+に対して計算されたm/zは589.4939であり;実測値は589.4937であった。
【0102】
ヘキサキス((Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)cis,cis-5,5’,5’’,5’’’,5’’’’,5’’’’’-((((シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサペンタノエート 31
チオニルクロリド(700μL)とDMF(6μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(65mg,301μmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体をアルゴン下、無水TCE(2mL)およびDIPEA(524μL,3.01mmol,10eq.)に溶解した。次いで、無水TCE(2.0mL)中のアミン30(796mg,1.35mmol,4.5eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで30分間撹拌した。次いで、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中D1の直線勾配で溶出、5~29%)で精製し、目的化合物31(351mg、51%)を黄色の蝋状の半固形物として得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.69,5.34,5.08,4.55,3.21,2.41,2.38,2.30,2.22,2.10,2.06,1.75,1.67,1.60,1.59,1.58,1.47,1.28ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=173.81,173.58,142.44,132.12,123.56,119.22,60.96,53.82,53.48,44.12,39.44,34.17,32.15,31.85,29.50,27.07,26.75,26.63,25.68,23.50,22.91,17.65ppm。HRMS(MALDI):C117H199N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1928.4988であり;実測値は1928.4963であった。
【0103】
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((5-(メトキシカルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート 32
チオニルクロリド(700μL)およびDMF(6μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(60mg、278μmol)に添加し、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した;この間に懸濁液は透明な溶液に変化した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体を無水TCE(2mL)およびDIPEA(483μL,2.78mmol,10eq.)にアルゴン下で溶解した。次に、無水TCE(1.0mL)中のアミン18(632mg,1.11mmol,4eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで40分間撹拌した。次に、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中のD1の直線勾配で溶出、5~29%)で精製し、化合物32(242mg、65%;NH3-前処理したTLCプレート上のD2でRf 0.68、ニンヒドリンにより可視化)を黄色オイルとして得た。生成物32は、アミン18からMeOHを不完全に除去した結果である。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.68,5.29,4.88,3.67,3.22,2.43,2.40,2.27,2.20,2.19,2.18,2.09,1.62,1.59,1.57,1.56,1.48,1.47,1.46,1.30,1.28,1.27,1.19,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=174.64,173.75,173.38,70.83,53.82,53.76,51.84,43.99,42.09,39.43,35.93,34.66,31.81,31.73,31.20,29.50,29.09,27.06,26.72,25.36,24.99,22.56,20.00,14.05ppm。HRMS(MALDI):C78H146N4O12[M+H]+に対して計算されたm/zは1332.1010であり;実測値は1332.0987であった。
【0104】
実施例11
テトラキス(3-メチルヘキシル)cis,cis-7,7’,7’’,7’’’-((((5-(メトキシカルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラヘプタノエート33
チオニルクロリド(700μL)とDMF(6μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(55mg,254μmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体をアルゴン下、無水TCE(2mL)およびDIPEA(443μL,2.54mmol,10eq.)に溶解した。次に、TCE(0.5mL)中のMeOH(10.3μL,254μmol,1.0eq.)の溶液を0℃で加えた。反応混合物を室温まで温め、1時間撹拌した後、無水TCE(2.0mL)中のアミン22(376mg,661μmol,2.6eq.)を添加し、反応混合物をrtで40分間撹拌した。次いで、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中D1の直線勾配で溶出、5-29%)で精製し、淡黄色オイルとして目的化合物33(87 mg,26%;NH3-前処理TLCプレート上のD2でRf 0.75、ニンヒドリンにより可視化)を得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=5.68,5.29,4.09,3.67,3.22,2.43,2.40,2.28,2.20,2.18,2.09,1.64,1.61,1.57,1.53,1.48,1.45,1.42,1.34,1.31,1.28,1.13,0.89,0.88ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=174.65,173.91,173.76,62.85,53.85,51.85,43.98,42.09,39.42,39.15,35.52,34.22,31.89,31.19,29.55,29.51,29.06,27.20,27.10,26.72,24.95,19.94,19.47,14.26ppm。HRMS(MALDI):C78H147N4O12[M+H]+に対して計算されたm/zは1332.1010であり;実測値は1332.0984であった。
【0105】
実施例12
化合物34
チオニルクロリド(1.2mL)とDMF(10μL)をcis,cis-シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸(160mg,740μmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で3時間撹拌した。過剰のSOCl2を70℃で乾燥窒素気流で除去し、残渣をrtでin vacuoにて乾燥し(20分)、得られた固体を無水TCE(3mL)およびDIPEA(1.29mL,7.40mmol,10eq.)にアルゴン下で溶解した。次に、TCE(0.5mL)中のBnOH(76μL,740μmol,1.0eq.)の溶液を0℃で加えた。反応混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、無水TCE(3.0mL)中のアミン18(1.09g,1.92mmol,2.6eq.)を加え、反応混合物をrtで40分間撹拌した。次いで、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィーで精製し(DCM中D1の直線勾配で溶出、5-29%)、化合物34(150mg,14%;NH3-前処理したTLCプレート上のD2でRf 0.67、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。HRMS(MALDI):C84H151N4O12[M+H]+に対して計算されたm/zは1408.1323であり;実測値は1408.1283であった。
【0106】
cis,cis-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 35
洋ナシ型フラスコにマグネチックスターバーを取り付け、炭素上のパラジウム(10% Pd/C、25mg)を装填した。フラスコをゴム製セプタムで閉じ、ニードルを介してシュレンクラインに接続し、vac-Arを3サイクル経由してフラスコ内の雰囲気をアルゴンに交換した。その後、MeOH(3mL)中の化合物34(150mg、107μmol)の溶液を、針と注射器を用いてセプタムから加え、攪拌を開始した。フラスコを2本目の注射針で水素の連続流に接続し、シュレンクラインへの主アルゴン注入口を閉じた(過剰の水素はシュレンクラインのバブラーを通してフラスコから連続的に放出される)。反応混合物をrtで4時間激しく撹拌した後、フラスコをアルゴンで十分に洗浄し、PTFEシリンジフィルターでろ過して炭素上のパラジウムを除去した。その後、揮発性物質をin vacuoで除去し、生成物35(110mg,79%,NH3-前処理したTLCプレート上のD2でRf 0.27,ニンヒドリンにより可視化)を無色オイルとして得た。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=6.59,4.88,3.20,3.15,2.71,2.67,2.27,2.24,2.20,2.13,2.02,1.64,1.63,1.60,1.58,1.57,1.56,1.54,1.47,1.45,1.32,1.28,1.27,1.26,1.18,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=180.09,175.19,173.10,70.94,53.01,52.06,44.36,44.32,39.22,35.91,34.43,32.48,32.16,31.72,29.15,29.08,26.72,26.62,26.30 25.36,24.69,24.11,22.55,19.99,14.06ppm。HRMS(MALDI):C77H145N4O12[M+H]+に対して計算されたm/zは1318.0854であり;実測値は1318.0842であった。
【0107】
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((5-(ピロリジン-1-カルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート 36
マグネチックスターバーを備えたバイアルに化合物35(60mg,45.5μmol),NH4Cl(12.2mg,228μmol,5eq.)を入れ、針で隔壁を貫通させてアルゴンで洗浄した。その後、無水DMF(1.5mL)とDIPEA(48μL,273μmol,6eq.)を針と注射器を用いて加えた。得られた懸濁液をrtで10分間撹拌した後、無水DMF(0.5mL)中のPyBroP(53mg,114μmol,2.5eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで90分間撹拌した。その後、反応混合物をin vacuoで蒸発させ、DCMに再溶解し、シリカ(10g)に吸着させ、DCMをin vacuoで除去した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中D1の直線勾配で溶出、5~29%)で精製し、淡黄色オイルの形態の主生成物として化合物36(18mg、29%;NH3-前処理したTLCプレート上のD2でRf 0.42、ニンヒドリンにより可視化)を得た。化合物36は、PyBroPの加水分解により生じたPyBroP中のピロリジン不純物の生成物である。1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=6.08,4.88,3.48,3.43,3.35,3.25,3.26,3.20,3.16,2.72,2.50,2.32,2.28,2.15,1.98,1.95,1.85,1.69,1.68,1.66,1.65,1.60,1.57,1.50,1.46,1.34,1.28,1.26,1.19,0.88ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=174.39,173.14,172.79,70.97,53.37,47.44,47.40,47.22,47.19,46.43,46.30,46.27,45.90,44.03,41.39,39.09,35.92,34.44,32.08,31.73,31.20,29.10,26.70,26.14,25.37,24.69,24.24,22.57,20.00,14.06.HRMS(MALDI):C81H152N5 O11[M+H]+に対して計算されたm/zは1371.1483であり;実測値は1371.1467であった。
【0108】
実施例13
cis,cis-L,3,5-シクロヘキサンカルボン酸トリメチル 37
塩化カルシウム乾燥管およびマグネチックスターラーを備えた丸底フラスコに入れた無水メタノール(150mL)中のcis,cis-l,3,5-シクロヘキサンカルボン酸(9.90g,45.8mmol)の溶液に、シリンジを介してゴム製セプタムを通して塩化チオニル(15.29mL,210.8mmol,4.6eq.)をゆっくりと加えた。激しい発熱反応が停止した後、溶液を室温で12時間撹拌した。その後、溶媒をin vacuoで除去し、オイル状の残渣を500mLのセパラブルフラスコに注ぎ、飽和水性NaHCO3(250mL)で希釈し、生成物をジエチルエーテル(2×100mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、S2焼結ガラスでろ過し、溶媒をRVEで蒸発させて37を淡黄色オイルとして得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=3.68(s,9H),2.44-2.32(m,3H),2.31-2.21(m,3H),1.59-1.45(m,3H)ppm。HRMS(ESI):C12H19O6[M+H]+に対して計算されたm/zは259.11761であり;実測値は259.11766であった。
【0109】
トリメチルcis,cis-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキシレート 38
ジイソプロピルアミンは、使用前に水酸化ナトリウムから蒸留した。無水ジエチルエーテル(10mL)中のジイソプロピルアミン(2.19mL,15.5mmol,4eq.)の溶液を、0℃で2.0M n-ブチルリチウム(7.74mL,15.5mmol,4eq.)の溶液に滴下添加し、in situでリチウムジイソプロピルアミドを生成した。無水ジエチルエーテル(10mL)中の37(1.00g,3.87mmol;1eq.)の溶液を0℃で反応溶液に滴下添加し、混合物を0℃で2時間撹拌した。硫酸ジメチル(2.20mL,23.2mmol,6eq.)を加え、撹拌をrtで一晩続けた。生成物を水、1M塩酸、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、S2焼結ガラスでろ過し、溶媒をRVEで蒸発させた。GC-MS分析の結果、粗生成物中の2つの異性体の比率はcis,cis/cis,trans=7:1であった。ジエチルエーテルとペンタンの混合溶媒で分別結晶化すると、cis,cis異性体38(225mg,19%)が白色結晶として得られた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=3.65(s,9H),2.74(d,J=13.4Hz,3H),1.21(s,9H),0.97(d,J=14.8Hz,3H)ppm。HRMS(EI):C15H24O6[M]+に対して計算されたm/zは300.1567であり;実測値は300.1565であった。
【0110】
cis,cis-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸 39
cis,cis-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸トリメチル38(220mg,0.73mmol,1eq.)をメタノール(3.0mL)に溶解した。水(2.0mL)中の水酸化リチウム一水和物(369mg,6.59mmol,9eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで一晩撹拌した。メタノールをRVEで蒸発させて除去した。溶液を氷浴で冷却し、濃塩酸でpHを1に調整した。白色の沈殿物が直ちに形成され、吸引濾過によって回収され、39(60mg,32%)が得られた。1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ=11.96(br s,3H),2.52(d,3H,溶媒シグナルと一部重複),1.20(d,J=14.7Hz,3H),1.19(s,9H)ppm。
【0111】
ヘキサキス(3-メチルヘキシル)cis,cis-7,7’,7’’,7’’’,7’’’’,7’’’’’-((((1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘプタノエート 40
チオニルクロリド(0.50mL)およびDMF(2μL)をcis,cis-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸39(34mg,0.13mmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で一晩撹拌した。過剰のSOCl2を乾燥窒素気流で吹き飛ばし、残渣をin vacuoで乾燥させ(10分)、rtまで冷却後、残渣を無水TCE(0.5mL)に溶解した。次いで、無水TCE(1.00mL)中のアミン22(337mg,0.59mmol,4.5eq.)およびDIPEA(229μL,1.32mmol,10eq.)の溶液を添加し、反応混合物をrtで15分間撹拌した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(40g、DCM中D1の直線勾配で溶出、0-30%)で精製し、目的化合物40(6mg、5%;D4中でRf 0.26、ニンヒドリンにより可視化)を粘性の淡黄色オイルとして得た。HRMS(MALDI):C114H216N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1910.6396であり;実測値は1910.6368であった。
【0112】
実施例14
ヘキサ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’’,6’’’’’-((((1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘキサノエート 41およびcis,cis-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸 42
チオニルクロリド(0.50mL)およびDMF(2μL)を39(28mg,0.11mmol)に加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で2時間撹拌した。過剰のSOCl2を乾燥窒素気流で吹き飛ばし、残渣をin vacuoで乾燥させ(10分)、rtまで冷却後、残渣を無水TCE(0.25mL)に溶解した。次に、無水TCE(0.75mL)中のアミン18(278mg,0.49mmol,4.5eq.)およびDIPEA(180μL,1.08mmol,10eq.)の溶液を添加し、反応混合物をrtで15分間撹拌した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(40g、DCM中のD1の直線勾配で溶出、0-30%)で精製し、標的化合物41(49mg、24%;D4中でRf 0.30、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色粘性オイルとして、化合物42(52mg、45%;D4中でRf 0.28、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0113】
41 1H NMR(600MHz,CDCl3):δ=7.98,4.88,3.12,2.88,2.75,2.68,2.27,1.64,1.56,1.46,1.45,1.28,1.27,1.26,1.23,1.19,1.12,0.87ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=184.26,177.45,173.06,70.96,52.45,51.68,43.03,43.00,42.38,38.83,35.92,34.43,34.17,33.21,31.72,29.08,28.95,22.56,19.99,14.05ppm。HRMS(MALDI):C114H216N6O15[M+H]+に対して計算されたm/zは1910.6396であり;実測値は1910.6364であった。
【0114】
42 HRMS(MALDI):C80H150N4O12[M+H]+に対して計算されたm/zは1360.1323であり;実測値は1360.1875であった。
【0115】
実施例15
cis,cis-1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸トリメチル 43
ジイソプロピルアミンは、使用前に水酸化ナトリウムから蒸留した。無水ジエチルエーテル(30mL)中のジイソプロピルアミン(6.56mL,46.5mmol,4eq.)の溶液を、0℃で2.0Mn-ブチルリチウム(23.2mL,46.5mmol,4eq.)の溶液に滴下添加し、in situでリチウムジイソプロピルアミドを生成した。無水ジエチルエーテル(30mL)中のトリメチルシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボキシレート37(3.00g,11.6mmol;1equiv.)の溶液を0℃で反応溶液に滴下添加し、混合物を0℃で2時間撹拌した。ベンジルクロロメチルエーテル(9.69mL,69.7mmol,6eq.)を加え、撹拌をrtで一晩続けた。生成物を水、1M塩酸およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、S2焼結ガラスで濾過し、溶媒をRVEで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィーで精製した(200g、シクロヘキサン中の酢酸エチルの直線勾配で溶出、0~20%)。ジエチルエーテル(3.0mL)とペンタン(18.0mL)の混合溶媒で分取したところ、cis,cis異性体43(1.52mg,22%)が白色結晶として得られた。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.36-7.22(m,15H,溶媒シグナルと一部重複),4.46(s,6H),3.69(s,9H),3.39(s,6H),2.68(d,J=14.2Hz,3H),1.18(d,J=14.9Hz,3H)ppm。HRMS(ESI):C36H42O9[M+Na]+に対して計算されたm/zは641.2721であり;実測値は641.2719であった。
【0116】
cis,cis-1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸 44
化合物43(250mg,0.40mmol,1eq.)をメタノール(4.0mL)に溶解した。水(2.0mL)中の水酸化リチウム一水和物(152mg,3.64mmol,9eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで一晩撹拌した。メタノールをRVEで蒸発させて除去した。溶液を氷浴で冷却し、濃塩酸でpHを1に調整した。白色の沈殿物が直ちに形成され、吸引濾過によって回収され、44(200mg,86%)が得られた。1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ=12.12(br s,3H),7.37-7.18(m,15H),4.39(s,6H),3.39(s,6H),2.36(d,J=14.9Hz,3H),ppm。
【0117】
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)-5-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)カルバモイル)シクロヘキサン-1.3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート 45およびcis,cis-1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 46
44(100mg、0.17mmol、1eq.)にチオニルクロリド(0.50mL)およびDMF(2μL)を加え、懸濁液を密閉バイアル中で70℃で一晩撹拌した。過剰のSOCl2を乾燥窒素気流で吹き飛ばし、残渣をin vacuoで乾燥させ(10分)、rtまで冷却後、残渣を無水TCE(0.5mL)に溶解した。次に、無水TCE(1.50mL)中のアミン18(444mg,0.78mmol,4.5eq.)およびDIPEA(302μL,1.73mmol,10eq.)の溶液を加え、反応混合物をrtで15分間撹拌した。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(80g、DCM中のD1の直線勾配で溶出、0-20%)で精製し、目的化合物45(46mg、12%;D4中でRf 0.46、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色粘性オイルとして、化合物46(37mg、13%;D4中でRf 0.39、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。
【0118】
45 HRMS(MALDI):C135H234N6O18[M+H]+に対して計算されたm/zは2228.7652であり;実測値は2228.7702であった。
【0119】
46 HRMS(MALDI):C101H168N4O15[M]+に対して計算されたm/zは1677.2506であり;実測値は1677.2479であった。
【0120】
ヘキサ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’,6’’’’,6’’’’-((((1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボニル)トリス(アザンジイル))トリス(ヘキサン-6,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサヘキサノエート 47
35について概説した手順に従って、リピドイド45(20mg,0.008mmol,1eq.)、炭素上パラジウム(10%Pd/C,19mg,0.018mmol,2eq.)および酢酸(80μL,1.73mmol)から標的化合物47を調製し、濃厚な淡黄色オイルとしてリピドイド47(5mg,30%)を得た。HRMS(MALDI):C114H216N6O18[M+H]+に対して計算されたm/zは1958.6244であり;実測値は1958.6314であった。
【0121】
cis,cis-3,5-ビス((6-(ビス(6-(オクタン-2-イルオキシ)-6-オキソヘキシル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)-1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 48
35について概説した手順に従って、リピドイド46(15mg,0.009mmol,1eq.)、炭素上パラジウム(19mg,0.018mmol,2eq.)および酢酸(80μL,1.73mmol)から標的化合物48を調製し、濃厚な淡黄色オイルとしてリピドイド48(7mg,59%)を得た。HRMS(MALDI):C80H150N4O15[M]+に対して計算されたm/zは1407.1098であり;実測値は1407.1042であった。
【0122】
実施例16
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((1,3,5-トリス((ベンジルオキシ)メチル)-5-(ピロリジン-1-カルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート 49
化合物44(100mg,0.17mmol,1eq.)を無水DMF(1.0mL)に溶解し、DMAP(3mg,0.02mmol,0.15eq.)およびDIPEA(450μL,2.60mmol,10eq.)を加えた。無水DMF(1.0mL)中のPyBroP(363mg,0.78mmol,4.5eq.)の溶液を滴下し、反応混合物をアルゴン雰囲気下、rtで1.5時間撹拌した。次に、無水DMF(1.0mL)中のアミン18(444mg,0.78mmol,4.5eq.)の溶液を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下、rtで1時間撹拌した。その後、反応混合物をシリカ(4g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィー(80g、DCM中D1の直線勾配で溶出、0~30%)で精製し、目的化合物49(146mg、51%;D3中でRf 0.58、ニンヒドリンにより可視化)を淡黄色オイルとして得た。HRMS(MALDI):C105H175N5O14[M+Na]+に対して計算されたm/zは1753.3028であり;実測値は1753.3044であった。
【0123】
テトラ(オクタン-2-イル)cis,cis-6,6’,6’’,6’’’-((((1,3,5-トリス(ヒドロキシメチル)-5-(ピロリジン-1-カルボニル)シクロヘキサン-1,3-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(ヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラヘキサノエート 50
35について概説した手順に従って、リピドイド49(70mg,0.04mmol,1eq.)、炭素上パラジウム(86mg,0.40mmol,2eq.)および酢酸(80μL,1.73mmol)から標的化合物50を調製し、リピドイド50(57mg,96%)を淡黄色の濃厚なオイルとして得た。HRMS(MALDI):C84H157N5O14[M+Na]+に対して計算されたm/zは1483.1619であり;実測値は1483.1656であった。
【0124】
実施例17
cis,cis-N1,N7-ビス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキシル)-5,7-ビス(ヒドロキシメチル)-4-オキソ-3-オキサビシクロ[3.3.1]ノナン-1,7-ジカルボキサミド 52
PyBroP(0.323g,0.694mmol,5eq.),N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,0.483mL,2.77mmol,20eq.)およびアミン10(0.314g,0.694mmol,5eq.)を三酸44(80mg,0.139mmol)の無水TCE(4mL)溶液に加えた。139mmol)の無水TCE(4mL)中溶液に添加し、反応混合物をrtで12時間撹拌した。次いで、反応混合物をシリカ(10g)に吸着させ、溶媒をin vacuoで蒸発させた。粗生成物を、DCM中のD1の直線勾配(20~80%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ジアミド51(16mg,8.0%;移動相3中でRf 0.56、ニンヒドリンにより検出)が粘稠な黄色がかったオイルの形で得られた。
【0125】
アルゴン雰囲気下、メタノール-酢酸エチル混合溶媒(10+10mL)中のジアミド51の溶液に木炭上のパラジウム(10%)を加えた。懸濁液をセライトのパッドでろ過し、蒸発させて、リピドイド52を無色オイルとして得た(5.5mg,42.9%,移動相D3中でRf 0.61,ニンヒドリンにより検出)。HRMS(MALDI):C72H141N4O6[M+H]+に対して計算されたm/zは1158.0846であり;実測値は1158.0822であった。
【0126】
実施例18
6-(ジドデシルアミノ)ヘキサン酸 53
塩化カルシウム乾燥管およびマグネチックスターラーを備えた500mL丸底フラスコに、ACN(150mL)中の6-アミノヘキサン酸(2.00g,15.2mmol)溶液を入れ、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(12.93g,61.0mmol,4eq.)を加えた。激しく撹拌しながら、n-ドデシルアルデヒド(10.16mL,45.7mmol,3eq.)をゴム製セプタムを通してシリンジでゆっくりと加え、得られた白色懸濁液を室温で5日間撹拌した。粗生成物を、DCM中のD1の直線勾配(0~100%)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。アミノ酸53(3.203g,44.9%)を無色オイルとして得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=2.88-2.84(m,6H),2.24(t,2H),1.62-1.72(m,2H),1.42-1.26(m,44H)0.89(t,6H)ppm。13C NMR(150.9MHz,CDCl3):δ=178.65,51.37,36.22,31.90,29.61-29.20,27.07,26.74,25.45,23.78,23.31,22.67,14.10ppm。HRMS(ESI):C30H60O2N[M-H]-に対して計算されたm/zは466.46295であり;実測値は466.46286であった。
【0127】
cis,cis-1,3,5-トリアミノシクロヘキサントリ臭化水素酸塩 55
合成はBowen, T. et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, Vol. 6, No. 7, 1996, 807-810にしたがって行い、わずかに変形させた。cis,cis-l,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸(2.0g,9.25mmol)をトルエン(75mL)に懸濁し、DIPEA(4.83mL,27.75mmol)を加えた。25mmol)をトルエン(75mL)に懸濁し、DIPEA(4.83mL,27.75mmol,3eq.)を加え、続いてジフェニルホスホリルアジド(5.97mL,27.75mmol,3eq.)を加えた。混合物をrtで0.5時間撹拌した後、90℃に0.5時間加熱した。ベンジルアルコール(3.20mL,30.81mmol,3.33eq.)を加え、溶液を90℃に18時間加熱した。rtまで冷却した後、生成物を真空濾過で回収し、最小限の冷トルエンで洗浄し、真空下で乾燥して、0.386g(7.85%)のcis,cis-1,3,5-トリ(N-ベンジルオキシカルボニル)シクロヘキサン54を得た。
【0128】
化合物54(0.386g,0.726mmol)を酢酸(5mL)中のHBrの33%溶液に懸濁し、rtで12時間攪拌した。次いで、黄色懸濁液をジエチルエーテル(20mL)で希釈し、S2焼結ガラスで濾過して、トリ臭化水素酸塩55を黄色固体(0.248g,91.8%)として得た。
【0129】
cis,cis-N,N’,N’’-(シクロヘキサン-1,3,5-トリイル)トリス(6-(ジドデシルアミノ)ヘキサンアミド) 56
PyBroP(0.752g、1.61mmol、6eq.)、DIPEA(0.937mL、5.38mmol、20eq.)および酸53(0.755g、1.61mmol、6eq.)をトリアミン塩55(0.100g、0.269mmol)の溶液に加えた。269mmol)の無水TCE(3mL)と無水DMF(3mL)の混合溶液に加え、反応混合物をrtで12時間撹拌した。粗生成物を、DCM(20~30%)中のD1の直線勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。リピドイド56(113mg,28.4%;移動相D2中でRf 0.65、ニンヒドリンにより検出)が粘性の黄色がかったオイルの形で得られた。HRMS(ESI):C96H193O6N3[M+H]+に対して計算されたm/zは1478.5134であり;実測値は1478.5162であった。
【0130】
実施例19
トランスフェクション試薬の調製
試薬は表1から表4までの各成分を混合して作製した。すべての表はトランスフェクション試薬中の最終モル濃度を含む。A01からA16、A21、A22、A24、A28およびA29の調製には、99.7%エタノール(v/v)中の各成分のストック5mM溶液を用いた。A17~A20、A23、およびA25~A27の調製には、99.7%エタノール(v/v)中のリピドイド、DOPEおよびDMG-PEG2000のストック5mM溶液、ならびにコレステロールのストック10mM溶液を使用した。DOPE-Cy5ストック溶液の濃度は0.79mMで、クロロホルム中で調製した。TT3は、WO2016/187531による脂質であり、本明細書では比較のために使用した。ベンチマークD-Lin-MC3-DMA脂質(MedChemExpress Europe)も比較のために使用した。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例20
核酸を含む脂質ナノ粒子(LNP)の調製
siRNA含有LNP(siRNA-LNP)は以下のように調製した:実施例19で調製したA01-A06トランスフェクション試薬の各溶液300μlを、サンプリング用に2つの入力と1つの出力を持つ「Y」マイクロ流体デバイスを用いて、300μlの10mMクエン酸緩衝液(pH3.0)中の1.2nmol siRNA(カタログ番号4392420、Ambion)の溶液と混合した。脂質混合液とsiRNA溶液は、リニアポンプにより300μl/分の一定流速でそれぞれの注入口に別々に注入した。こうして、トランスフェクション試薬A01-A06から、B01-B06と名付けられた対応するナノ粒子サンプルが形成された。
【0136】
蛍光タンパク質mKate2をコードするDNAを、プライマー(5’-ATCAACATATGGTGAGCGAGCTG-3’(配列番号1);5’-AAGAATTCCTATCATCTGTGCCAG-3’(配列番号2))を用いてプラスミドpmKate2-C(Evrogen)から増幅し、T7プロモーター下でpET24aベクター(Invitrogen)にクローニングした。mKate2をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を、Ampliscribe T7-Flash転写キット(Lucigen)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってin vitroで転写した。RNA cap analog ARCA(Jena Bioscience)をin vitro転写反応に添加し、ポリ(A)ポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて標準プロトコールに従ってポリ(A)末端を合成した。
【0137】
mRNA含有LNP(mRNA-LNP)を以下のように調製した:実施例19で調製したA07-A29トランスフェクション試薬の各溶液300μlを、10mMクエン酸緩衝液(pH3.0)300μl中のmRNA120μgの溶液と混合し、調製はsiRNA-LNPに類似させた。このようにして、トランスフェクション試薬A07-A29から、B07-B29と命名した対応するナノ粒子サンプルを作製した。B08aおよびB11aと名付けたナノ粒子サンプルは、それぞれトランスフェクション試薬A02およびA05から作製した。
【0138】
各LNPサンプル(B01~B29)を3回に分けて調製した。形成したてのLNPの流体力学的直径は、動的光散乱(NanoZS Zetasizer、Malvern、Worcestershire、英国)を用いて、25℃で173°の散乱角で測定した。siRNA-LNPの流体力学的直径は67~110nm、mRNA-LNPの流体力学的直径は82~288nmであった(表5)。この形状の粒子をその後の生物学的試験に用いた。
【0139】
【0140】
実施例21
脂質ナノ粒子へのsiRNAおよびmRNAの組み込み効率
実施例20で調製したsiRNA(チロシルDNAホスホジエステラーゼ(TDP2)をコードするmRNAの分解を引き起こす)のsiRNA-LNP B01-B06へのパッケージングの効率は、Qubit microRNA Assay Kit(Life Technologies)を用いて、製造業者のプロトコールに従って決定した。実施例20で調製したmRNA-LNP B07-B29へのmRNA(蛍光タンパク質mKate2をコードする)のパッケージングの効率は、Qubit RNA HS Assay Kit(Life Technologies)を用いて、製造業者のプロトコールに従って決定した。組み込み効率は、ナノ粒子溶液中で自由に利用できるsiRNAおよびmRNAの濃度と、分解後にナノ粒子から放出されるsiRNAおよびmRNAの濃度を比較することにより決定した。LNPはTriton X-100を含むバッファー(10 mM Tris-HCl,pH 8.0;0.1mM EDTA,2% TritonX-100)で分解した。siRNAのパッケージング効率は高く、76~91%であった。mRNAのパッケージング効率は60~96%であった(表6)。
【0141】
【0142】
実施例22
LNPの細胞毒性
SV40ラージT抗原を発現する胚性腎臓細胞由来のヒト細胞株(HEK293T)、およびヒト肝細胞癌細胞株(HepG2)を、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変培地(DMEM)中、96ウェルプレート(1ウェルあたり100μlの培養液中5×104細胞)で、37℃、5%CO2で培養した。細胞を、実施例20で3重反復して作製したLNP B07-B12(ウェル中の全脂質成分の最終総濃度は20μM)またはLNP 10μl(ウェル中の全脂質成分の最終総濃度は100μM)で2μlトランスフェクトし、その後24時間インキュベートした。LNPの細胞毒性は、CellTiterGlo 2.0細胞生存率アッセイ(Promega、米国)で分析した。細胞生存率は非導入細胞(コントロール)に対して正規化した。結果を表7と表8にまとめた。
【0143】
使用した両細胞株について、新しいLNPはいずれも、TT3脂質との100μM混合物と比較して有意な毒性を示さず、HEK293T細胞とHepG2細胞の生存率はわずか27%と15%に低下した(表8)。
【0144】
【0145】
【0146】
実施例23
新しいLNPを用いたin vitroでのsiRNAのトランスフェクション
チロシル-DNAホスホジエステラーゼ2(TDP2)をコードするmRNAの分解を引き起こす短鎖干渉RNA(siRNA、カタログ番号4392420、Ambion)を含むsiRNA-LNP粒子を、実施例20に従って調製した。siRNAトランスフェクション専用のコントロールトランスフェクション試薬として、Lipofectamine RNAiMax(Invitrogen社製)を用いた。siRNA-LNPノックダウンには、ヒト細胞株HEK293Tと、入手可能なトランスフェクション試薬ではトランスフェクションが非常に困難なヒト多発性骨髄腫由来の細胞株を用いた(Brito J.L.R., Brown N., Morgan G.J. (2010) The transfection of siRNAs in Multiple Myeloma Cell Lines.In:Min WP., Ichim T. (eds) RNA Interference.Methods in Molecular Biology (Methods and Protocols), vol 623.Humana Press)。細胞は96ウェルプレート(1ウェルあたり100μlの培養液に5×104細胞)で、10%FBS添加DMEM培地中、37℃、5% CO2 で培養した。細胞を2μlのsiRNA-LNP(全脂質成分の最終総濃度は20μM、最終siRNA濃度は16nM)でトランスフェクトし、その後24時間インキュベートした。トランスフェクションは生物学的3重反復で行った。RNAはRNAeasy Plus Micro Kit(Qiagen)を用いて単離した。cDNAはTATAA GrandScript cDNA Supermix(TATAAbiocenter)を用いて、製造元の推奨に従って調製した。定量的RT-PCRは、LightCycler 480(Roche Life Science)を用いて行った。TDP2をコードするmRNAを増幅するためのプライマーは以下の通りであった:GAPDHをコードするmRNAは、データの標準化に使用した(プライマー:5’-AATCCCATCACCATCTTCCA-3’(配列番号5)および5’-TGGACTCCACGACGTACTCA-3’(配列番号6))。
【0147】
これらすべての場合において、新しいsiRNA-LNPは、市販のトランスフェクション試薬RNAiMaxと比較して、細胞内のTDP2 mRNAのレベルを有意に減少させた。HEK293T細胞株では、新規LNP B02-B05は、RNAiMaxよりもほぼ3倍高い効率を示した。OPM-2骨髄腫株では、B03は市販のsiRNAトランスフェクション試薬よりも13倍もmRNA発現を低下させた(表9)。
【0148】
【0149】
実施例24
新規LNPを用いたin vitroでのmRNAトランスフェクション
大型SV40 T抗原を発現する胚性腎臓細胞由来のヒト細胞株(HEK293T)、肝癌細胞(HepG2)およびヒト骨肉腫由来細胞株(U2OS)を、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変培地(DMEM)中、96ウェルプレート(1ウェルあたり100μl培養液中5×104細胞)で、37℃、5%CO2細胞を、実施例20で調製したmRNA-LNP B07~B12で2μlトランスフェクトし、その後24時間インキュベートした。ウェル中の脂質成分の最終総濃度は20μMで、蛍光タンパク質mKate2をコードするmRNAの量は100ngであった。コントロールのトランスフェクション試薬としてLipofectamine(登録商標)2000を用いた。トランスフェクションは3つの生物学的反復で行い、各生物学的反復は3つの技術的反復を有していた。Cy5およびmKate2の蛍光は、BD LSR Fortessaサイトメーターを用いて検出し、LNPの細胞内への侵入を示すCy5蛍光陽性細胞の割合(表10)、蛍光タンパク質mKate2を発現する細胞の割合、およびmKate2の蛍光強度(表11)を算出した。蛍光強度については、市販のトランスフェクション試薬Lipofectamine(登録商標)2000に対してデータを正規化した。Cy5蛍光によると、すべてのLNPが90%を超える効率で細胞に導入されていることがわかる(表10)。さらに、新しいLNP B11は、Lipofectamine(登録商標)2000トランスフェクション・コントロールでトランスフェクションした細胞に比べて、トランスフェクションしたmRNAから2.13倍の蛍光mKate2タンパク質を産生した(表11)。
【0150】
【0151】
【0152】
実施例25
新規LNPを用いたin vitroでのmRNAトランスフェクション
大型SV40T抗原を発現する胚性腎臓細胞由来のヒト細胞株(HEK293T)を、10%ウシ胎児血清(FBS)添加ダルベッコ改変培地(DMEM)中、96ウェルプレート(1ウェル当たり100μl培養液中2.5×104細胞)で、37℃、5%CO2で培養した。細胞を、実施例20で調製したmRNA-LNP B08a、B11a、B13~B18、B20~B25およびB29でトランスフェクトし、24時間インキュベートした。ウェル中の全脂質成分の最終総濃度は20μMであり、蛍光タンパク質mKate2をコードするmRNAの量は100ngであった。ベンチマークD-Lin-MC3-DMA脂質を含むB29 LNPをコントロールとして用いた。トランスフェクションは3重反復で行った。蛍光タンパク質mKate2を発現する細胞のパーセンテージとmKate2の蛍光強度(表12)を、BD LSR Fortessaサイトメーターで561-610/20 nmの波長で分析した。蛍光強度については、ベンチマークであるD-Lin-MC3-DMA含有LNP(B29)に対してデータを正規化した。ベンチマークであるD-Lin-MC3-DMA LNPと比較して、トランスフェクトされた細胞の割合が有意に高く、蛍光強度が有意に増加したことから明らかなように、すべての新しいLNPはHEK293T細胞をより効率的にトランスフェクトした。特に、新しいLNP B22は、ベンチマークであるD-Lin-MC3-DMA脂質を含むB29 LNPでトランスフェクトした細胞に比べ、トランスフェクトしたmRNAから13.66倍の蛍光mKate2タンパク質を生成した(表12)。
【0153】
【0154】
実施例26
Creベースの組換えによってモニターされる新規mRNA-LNPのトランスフェクション効果
グローバルデュアルCreレポーターを有するマウスモデル(Mazumdar, M.D.: Genesis 2007, 45:593-605)に由来するマウス胚線維芽細胞(MEF)を、96ウェルプレートに播種し(1ウェルあたり100μlの培養液中2.5×104細胞)、10%FBSを添加したDMEM中、37℃、5%CO2で24時間培養した。CreリコンビナーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を、直鎖化プラスミドから実施例20と同様にin vitroで調製し、以下のようにLNPにパッケージした:300μlのトランスフェクション試薬A13~A25、A02およびA27、ならびにベンチマークD-Lin-MC3-DMA脂質を含む対照トランスフェクション試薬A29のサンプル、ならびに300μlの10mMクエン酸緩衝液(pH3.0)中の120μgのmRNAを、実施例20に類似したマイクロ流体デバイスを用いてLNPに組み込んだ。得られたmRNA-LNPを直ちに600μlのPBSで希釈した;B31~B43と標識された対応するナノ粒子(トランスフェクション試薬A13~A25から形成)、ナノ粒子B30(トランスフェクション試薬A02から形成)、ナノ粒子B44(トランスフェクション試薬A27から形成)、および同様に、B45と標識されたベンチマークナノ粒子は、こうしてトランスフェクション試薬A29から形成された。
【0155】
細胞を、CreリコンビナーゼをコードするmRNAを100ng含有するそれぞれのmRNA-LNP(ウェル中の全脂質成分の最終総濃度は20μM)でトランスフェクトし、その後48時間インキュベートした。ベンチマークD-Lin-MC3-DMA脂質を含むB45 LNPをコントロールとして用いた。トランスフェクションは四重反復で行った。GFPを発現する細胞の割合は、BD LSR Fortessaサイトメーターを用いて分析した(波長488~530/30nm)。ベンチマークであるD-Lin-MC3-DMA LNPでトランスフェクトした細胞と比較して、GFPを発現している細胞の割合が有意に高いことから明らかなように、すべての新しいLNPはmT/mG細胞をより効率的にトランスフェクトした(B45)。興味深いことに、GFPを発現する細胞のパーセンテージは、テストしたすべての新しいLNP(B44を除く)で常に95%以上であったのに対し、ベンチマークのD-Lin-MC3-DMA脂質を含むLNPでは、組換え細胞のパーセンテージはわずか21%であった(表13)。
【0156】
【0157】
実施例27
新規mRNA-LNPの生体内分布
CreリコンビナーゼをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を、直鎖化プラスミドから実施例20と同様にin vitroで調製し、以下のようにLNPにパッケージした:トランスフェクション試薬A22の300μlサンプルと、ベンチマーク脂質D-Lin-MC3-DMAを含む対照トランスフェクション試薬A29と、10mMクエン酸緩衝液(pH3.0)300μl中のmRNA120μgとを、実施例20に類似したマイクロ流体デバイスを用いてLNPに組み込んだ。得られたmRNA-LNPを直ちに600μlのPBSで希釈し、トランスフェクション試薬A22から対応するB40標識ナノ粒子を形成させた。同様に、B45標識ナノ粒子はトランスフェクション試薬A29から形成された。mRNA-LNPをPBSで透析し、ろ過した。エンドトキシンレベルは2EU/ml未満であった。mRNA-LNP(B40およびB45)を、グローバルデュアルCreレポーター(Mazumdar, M.D.: Genesis 2007, 45:593-605)を有する4匹のマウス(繁殖BIOCEV,Vestec)に、それぞれ2.0mg mRNA/kgの濃度で静脈内投与し、組換えが成功したことを分析できるようにした。CreリコンビナーゼmRNAを搭載したmRNA-LNPが正常に送達された細胞では、染色体組み換えとそれに続く膜赤タンパク質遺伝子(いわゆる赤いトマト)の切除、膜緑タンパク質(GFP)遺伝子の転写の「オン」が起こった。非微粒子化対照マウスを含むマウスは、微粒子投与5日後に犠牲にされ、標準化されたプロトコールに従って特定の臓器(肝臓、心臓、腎臓、肺、および脾臓)の組織学的分析が行われた。組織学的画像の分析から、B40ナノ粒子が肝臓に完全に分布し、塗布5日後に赤色膜タンパク質を発現する細胞が緑色膜タンパク質を発現する細胞に50~80%転換したことが明らかになった。D-Lin-MC3-DMA脂質を含むLNPs B45の場合、転換率は約20%であった(
図10)。
【0158】
組織学的分析は、ゲノムDNA(gDNA)PCR分析によるmT/mGマウスの肝臓におけるtdTomato/GFP転換の評価によってさらに補完された。簡単に述べると、それぞれの肝臓サンプルから単離したgDNA鋳型50ngを、後続のプライマー:(5’-AACGTGCTGGTTATTGCTG-’3(配列番号7);5’-AAGTCGTGCTGCTTCATGTG-’3(配列番号8))を用いたPCR反応に用いた。
図11において、得られた肝臓サンプルのgDNA PCR増幅の電気泳動解析は、tdTomato/tGFP遺伝子座において活性なCre組換えが起こった場合には530bpのPCR産物を示し、Cre組換えが起こらなかった場合には2943bpのPCR産物(上部バンド)を示す。指定されたB40 mRNA-LNPは、試験した4匹のマウスすべてで完全なCre組換えを示したが、ベンチマークLNP(B45)の場合、組換えは試験したマウスの50%でのみ完全であった。
【0159】
実施例28
新規mRNA-LNPの生体内における有効性
hEPO(ヒトエリスロポエチン)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を、直鎖化プラスミドから実施例20に類似してin vitroで調製し、以下のようにLNPにパッケージした:300μlのトランスフェクション試薬A23、またはベンチマーク脂質D-Lin-MC3-DMAを含む対照トランスフェクション試薬A29、および300μlの10mMクエン酸緩衝液(pH3.0)中の120μgのmRNAを、実施例20に類似したマイクロ流体装置を用いてLNPに組み込んだ。こうしてトランスフェクション試薬A23から、対応するB46標識ナノ粒子が形成された。同様に、B47標識ナノ粒子はトランスフェクション試薬A29から形成された。mRNA-LNPをPBSで透析し、ろ過した。エンドトキシンレベルは0.3EU/ml未満であった。mRNA-LNP(B46およびB47)を、それぞれ0.5mg mRNA/kgの濃度で3匹のC57B1/6マウス(BIOCEV、Vestec)に静脈内投与し、対照の3匹のC57B1/6マウスにはPBSを投与した。投与6時間後、マウスから尾静脈経由で血液を採取し、血清分離チューブに入れて室温で凝固させた。その後、チューブを7000rpmで7分間遠心分離し、血清サンプルを分注し、分析まで-80℃で保存した。hEPO濃度は、hEPO ELISAアッセイ(カタログ番号DEP00;R&Dシステムズ、ミネアポリス、MN、USA)を用いて、製造業者の説明書に従って決定した。血液学プロファイルは、標準化されたプロトコールを用いて決定した。
【0160】
B46と命名されたナノ粒子は、対照のB47 LNPと比較して、投与6時間後にヒトEPOタンパク質の高い産生を示したが、統計的には有意ではなかった。重要なことは、新しいリピドイド(B46)を含むLNPは、対照のB47 LNPとは対照的に、血液学的プロフィールを変化させなかったことである。新しいLNP投与後の血液検査は、PBS対照と同等であった(表14)。
【0161】
【0162】
実施例29
新規siRNA-LNPの生体内における有効性
実施例19のトランスフェクション試薬A02、A14、A16、A17、A22、A23およびA29を使用して、コレステロール輸送に関与する肝細胞発現遺伝子であるマウスアポリポタンパク質B(ApoB)遺伝子を標的とするsiRNAで、それぞれB48~B54と指定されるsiRNA-LNPを形成した(カタログ番号238055 Apob mouse siPOOL-40 kit、siTOOLs Biotech GmbH)、および対照の非標的siRNA-LNP(238055 Apob mouse siPOOL-40 kit,siTOOLs Biotech GmbHに同封)と交互にsiRNA-LNP(B55からB60)を、実施例20に記載されるように組み立てた。動的光散乱によって測定された流体力学的直径は103nmから154nmの範囲であり、siRNAプールのパッケージング効率は59%から99%の範囲であった。siRNA-LNPはPBSに透析された。エンドトキシンレベルは2EU/ml未満であった。マウスは、後眼窩出血による血漿採取の前に4時間絶食させた。ApoBを標的とするsiRNA-LNPを、16μgのsiRNA濃度で3匹のC57B1/6マウス(BIOCEV、Czech Center of Phenogenomics, Vestec)に静脈内投与し、対照の3匹には16μgの非標的siRNA-LNPを投与し、別の3匹にはPBS対照を投与した。すべてのマウスはLNP塗布の2日後に犠牲にした。コレステロール、トリグリセリド、LDL-Cの血漿レベルは、標準化されたプロトコールに従って、チェコ・フェノゲノミクス・センターの自動システムを用いて測定した。
【0163】
ApoBノックダウンによって影響を受けた総コレステロール、トリグリセリド、LDL-Cのような血漿マーカーの臨床生化学は、対照動物と比較して有意に低下しており、新規LNPによるApoB siRNAの肝臓への効率的な送達が実証された(表15)。
【0164】
【表15】
新しいsiRNA-LNPの毒性は、生理食塩水を注射したコントロール(PBS)および脂質D-Lin-MC3-DMAを含むコントロールLNP(B54)と比較して、臓器不全を示す血漿マーカーおよび血液学的プロファイルの臨床生化学を分析することによってさらに評価された。特に、B49と名付けられた新しいsiRNA-LNPは、コントロールのB54 LNPと比較して、より優れた毒性プロファイルを示した(表16)。
【0165】
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明のリピドイドを含むトランスフェクション粒子は、基礎研究における様々な生物学的用途、特に活性NAを送達し、その後染色体遺伝子もしくは遺伝子をサイレンシングもしくは活性化し、ゲノムもしくはトランスクリプトームを編集し、またはトランスフェクション粒子を用いて挿入されたNAにコードされるタンパク質の発現を可能にするための細胞培養もしくは動物トランスフェクションに有用である。
【0167】
獣医学およびヒト医学において、一般式Iのリピドイドを含有するトランスフェクション粒子は、好ましくは治療目的または予防目的で使用することができる。治療用NA含有粒子は、染色体遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、免疫原のサイレンシングもしくは活性化、シグナル伝達経路の阻害もしくは活性化、ゲノムもしくはトランスクリプトームの編集、またはNAコード化タンパク質の発現を可能にするために、動物またはヒトに投与することができる。
【0168】
式Iのリピドイドまたはトランスフェクション剤またはトランスフェクション粒子は、医薬品として、特に遺伝子治療に使用することもでき、悪性腫瘍および/または遺伝性疾患の治療に使用するのに適している。これらはまた、化粧品またはバイオテクノロジー用途に処方することもできる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のリピドイドであって、
【化1】
ここで
Xは、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=S)O-、-C(=O)S-、-C(=S)S-、-C(=O)NHNH-、-CH
2-、-O-、-OC(=O)-、-S-、-SC(=O)-、-NH-、-NHNH-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、-C≡C-、-CH=CH-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、-CH
2C(=O)NH-、-CH
2C(=O)O-、-CH
2C(=S)O-、-CH
2C(=S)S-、-CH
2C(=O)NHNH-、-N=CH-、-CH=N-、-NH-N=CH-、および-CH=N-NH-を含む群から選択され;
Yは、アルキレンC
2-C
10鎖を含む群から選択され、前記アルキレン鎖において、1つ以上の-CH
2-基は、任意に、1つ以上のOおよび/またはS原子で置換されていてもよく;
R
1は、同一または互いに異なり、各R
1は、独立して、アルキルC
1-C
46、アルケニルC
2-C
46、アルキニルC
2-C
46を含む群から選択され、ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖であっても分岐であってもよく、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルにおいて、1つ以上の-CH
2-基は任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-S-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、および-S-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよく;
ここで、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニルが分岐である場合、1つ以上の>CH-基は任意に、>C(OH)-で置換されていてもよく;
ここで、R
1がアルキルC
1-C
4である場合、末端-CH
3基の水素1個はZで置換されていてもよく;
ただし、少なくとも1つのR
1、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含み;
Zは互いに同一または異なり、各Zは独立して、水素、-OH、-CH
3-、CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、
-CON[(CH
2)
2OH]
2,-CONHCH(CH
2OH)
2,-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、
-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2,-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2,-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2,-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化2】
および
【化3】
から選択され、
ここで
R
2は、水素および-CH
3から独立して選択され;
Eは、OおよびS原子から独立して選択され;
nは1~5の範囲の整数であり;
およびTは、互いに同一であるかまたは異なり、各Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、-C(=O)OCH
2CH
2OH、-C(=O)NH
2、
【化4】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH,-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、
-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH,-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、
-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-,-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
【化5】
-OH、-O(C
1-C
3アルキル)、-NH
2、-NHC(=O)CH
3、-NHS(=O)
2CH
3、-NHC(=O)N(CH
3)
2、
-NHC(=O)NH(CH
3)、-NHC(=S)N(CH
3)
2、-NHC(=S)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)NH
2、
-NHC(=N-CN)NH(CH
3)、-NHC(=N-CN)N(CH
3)
2、-NHC[=N-S(=O)
2NH
2]NH
2、
-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化6】
を含む群から独立して選択され、
ここで、R
2、Eおよびnは上記で定義した通りであり;
および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成することができる;
リピドイド、ならびにその薬学的に許容される塩、付加塩および溶媒和物。
【請求項2】
Xが、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=O)NHNH-、-OC(=O)-、-O-、-NHC(=O)-、-NHNHC(=O)-、少なくとも2個の窒素原子を含む5員複素環、からなる群から選択される、請求項1に記載のリピドイド。
【請求項3】
R
1が、独立して、アルキルC
1-C
46、およびアルケニルC
2-C
46からなる群から選択され、前記アルキルまたはアルケニルにおいて、1つ以上の-CH
2-基が任意に、-CH(OH)-、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項4】
分子中の全てのR
1が同一であるか、またはR
1基を有する分子中の全ての窒素原子が、2つの同一のR
1、または2つの異なるR
1のいずれかによって同一に置換されている、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項5】
Zが、水素、-OH、-CH
3、-CH
2OH、-NH
2、-C(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
2OH、
-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH、
-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2,-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、
-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
【化7】
および
【化8】
からなる群から選択され、ここで、R
2、Eおよびnは請求項1で定義した通りである、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項6】
Tが、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、-C(=O)OCH
2CH
2OH、-C(=O)NH
2、
【化9】
-C(=O)OH、-CONH(CH
2)
2OH、-CON[(CH
2)
2OH]
2、-CONHCH(CH
2OH)
2、
-CONHCH
2CH(-OH)CH
2OH,-CONH(CH
2)
2C(=O)NH
2、-CON[CH
2C(=O)NH
2]
2、
-CONHCH[C(=O)NH
2]
2、-CONH(CH
2)
2NHC(=O)NH
2、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-SO
3
-、
-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
3-SO
3
-、-CONH(CH
2)
3-N
+(CH
3)
2-(CH
2)
2-COO
-、
-COO(CH
2)
2-O-P(=O)(O
-)-O(CH
2)
2-N
+(CH
3)
3、
【化10】
からなる群から選択され、R
2、Eおよびnは請求項1で定義した通りである、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項7】
少なくとも1つの置換基Tが、X-Y-N(R
1)
2であり;好ましくは両方の置換基Tが-X-Y-N(R
1)
2である、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項8】
Zは、水素、-OH、-CH
3、-CH
2OHからなる群から選択され;
およびTは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)O(C
1-C
3アルキル)、
【化11】
-C(=O)OHからなる群から選択され;
および/または、Zが-OHまたは-CH
2OHであり、かつTが-C(=O)OHである場合、ZはTおよびそれらの間の3個の炭素原子とともに、4~5個の炭素原子を含む環状ラクトンを形成してもよい、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項9】
Xは-C(=O)NH-または-NHC(=O)-であり;
Yは、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、および-(CH
2)
6-から選択され;
R
1は、-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖アルキルC
10-C
15、および-OC(=O)-、-C(=O)O-から選択される1つ以上の基で任意に置換されていてもよい、直鎖または分岐鎖アルケニルC
12-C
18、から選択され;
Tは、-X-Y-N(R
1)
2、-C(=O)OCH
3、
【化12】
および-C(=O)OHから選択され;
Zは、H、-CH
3、および-CH
2OHから選択される、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項10】
一般式(I)のリピドイドが少なくとも2つのR
1置換基を含み、それらの各置換基が少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む、請求項
1に記載のリピドイド。
【請求項11】
請求項
1に記載の一般式(I)の少なくとも1種のリピドイドと、少なくとも1種のヘルパー脂質とを含み;好ましくは、前記ヘルパー脂質は、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)-2000、1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000、および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000を含む群から選択される、トランスフェクション剤。
【請求項12】
請求項
1に記載の一般式(I)の少なくとも1種のリピドイドを10~50モル%の量で含み、少なくとも1種のヘルパー脂質を50~90モル%の量で含む、請求項11に記載のトランスフェクション剤。
【請求項13】
15~40モル%の量の請求項
1に記載の一般式(I)の少なくとも1つのリピドイド、30~55モル%の量のコレステロール、および20~50モル%の量の少なくとも1つのヘルパー脂質を含み;好ましくは、前記ヘルパー脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)-2000、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)-2000、1、2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000、および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンポリ(エチレングリコール)-2000を含む群から選択される、請求項
11に記載のトランスフェクション剤。
【請求項14】
請求項
1に記載の一般式(I)の少なくとも1種のリピドイド、少なくとも1種の核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体;ならびに好ましくはさらに少なくとも1種のヘルパー脂質を含む、トランスフェクション粒子。
【請求項15】
核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体による細胞または組織のインビトロトランスフェクションのための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子の、使用方法。
【請求項16】
染色体遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、免疫遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、シグナル伝達経路の阻害もしくは活性化、ゲノムもしくはトランスクリプトームの編集、または核酸によりコードされるタンパク質の発現可能化のための、請求項15に記載の使用方法。
【請求項17】
インビボでの核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体による細胞または組織のトランスフェクションに使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子であって、産業目的または商業目的で使用するためのヒト胚のトランスフェクションを除き、かつヒト生殖系列の改変を除く、トランスフェクション粒子。
【請求項18】
染色体遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、免疫遺伝子のサイレンシングもしくは活性化、シグナル伝達経路の阻害もしくは活性化、ゲノムもしくはトランスクリプトームの編集、または核酸によってコードされるタンパク質(複数可)の発現を可能にする、
核酸および/またはその一部および/または核酸誘導体による細胞または組織のインビトロトランスフェクションに使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子。
【請求項19】
医薬品として、特に遺伝子治療のために、好ましくは悪性腫瘍および/または遺伝性疾患の治療のために使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子。
【請求項20】
予防ワクチンとして、好ましくは感染症の予防のために使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子。
【請求項21】
有効成分を作用部位に送達するための化粧品製剤における、請求項1~10のいずれか1項に記載の一般式(I)のリピドイド、または請求項11、12もしくは13に記載のトランスフェクション剤、または請求項14に記載のトランスフェクション粒子の、使用方法。
【国際調査報告】