(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】酵素マスターバッチの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20240723BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240723BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20240723BHJP
C08L 3/04 20060101ALI20240723BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20240723BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240723BHJP
【FI】
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
C08L101/00 ZBP
C08L89/00
C08L3/04
C08L5/00
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503642
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022070302
(87)【国際公開番号】W WO2023001872
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524023594
【氏名又は名称】カーバイオライス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギローモン,クロエ
(72)【発明者】
【氏名】アルノー,クレメンティン
(72)【発明者】
【氏名】シャルパンティエ,ヤニック
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
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4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、多糖、酵素および低融点高分子を含むマスターバッチを混合機で調製する方法に関する。特に、このマスターバッチは、生分解性プラスチック材料から作製される物品の製造に使用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖、ポリエステルを分解できる酵素および支持体高分子を混合物として含むマスターバッチを混合機で調製する方法であって、
下記のステップを含むことを特徴とする、方法:
a)液体酵素配合物、多糖および支持体高分子を別々に、および同時に導入するステップ、
b)前記支持体高分子が部分的にまたは完全に融解する温度でそれらを混合するステップ、および
c)混合後、前記マスターバッチを回収するステップ。
【請求項2】
前記多糖が、デンプン誘導体、天然ゴム、可溶性大豆多糖、海洋抽出物ならびに微生物および動物多糖、またはこれらの任意の比率による混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多糖が、アラビアゴムからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素が、水溶液の形態で添加されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素配合物が、0.01~70重量%の酵素を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素が、デポリメラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボキシルエステラーゼ、プロテアーゼおよびポリエステラーゼから選択される前記ポリエステルを分解できる酵素から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持体高分子が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、およびそれらのコポリマーから選択され、好ましくは、ポリカプロラクトン(PCL)であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)での混合が、10~35秒の間、有利には、15~35秒の間、特に、約20秒間、約25秒間または約30秒間継続されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)で、鉱物充填剤、特に、炭酸カルシウム、を同時に添加することを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合機が、押出成形機であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記押出成形機が、下記のステップa)からc)により、少なくとも3つの領域、最初の成分が挿入されるヘッド領域、混合領域、およびマスターバッチが回収時に通過する出口領域、を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法:
a)酵素配合物、多糖および必要に応じ、鉱物充填剤を、前記ヘッド領域に別々に、および同時に導入し、前記支持体高分子の融点以下の温度でそれらを混合するステップ、
b)前記支持体高分子が部分的にまたは完全に融解する温度で、前記混合領域中で前記成分を混合するステップ、
c)前記マスターバッチを前記押出成形機の出口で回収するステップ。
【請求項12】
前記マスターバッチが、ステップc)で顆粒の形態で得られることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記マスターバッチ混合物が乾燥されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスターバッチの配合物が、下記を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法:
-60~90%の支持体高分子、
-10~20%の酵素溶液、
-2~15%の多糖、
-0~20%の鉱物充填剤。
【請求項15】
酵素により分解され得る高分子および前記高分子を分解できる酵素を含むプラスチック物品または予混合物の調製方法であって、請求項1~14のいずれか1項に記載のマスターバッチを調製するステップ、および以前に調製された前記マスターバッチを前記高分子と混合するステップを含み、前記マスターバッチの酵素が、前記プラスチック物品または前記予混合物の高分子を分解することが可能であることを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記プラスチック物品または前記予混合物の酵素により分解され得る前記高分子が、ポリ乳酸(PLA)であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多糖、酵素および低融点高分子を含むマスターバッチを混合機で調製する方法に関する。特に、このマスターバッチは、生分解性プラスチック材料から作製される物品の製造に使用される。
【背景技術】
【0002】
生態学的課題に対処するために、生分解性およびバイオ起源ポリエステルをベースにしたプラスチック材料を調製する方法が開発されている。デンプンまたはデンプン誘導体およびポリエステルから合成されるこれらのプラスチック製品は、プラスチックバッグ、食品包装材料、ボトル、包装フィルム、などの短寿命を有する物品の製造に使用される。
【0003】
一般に、これらのプラスチック組成物は、ポリエステルおよび種々の穀類由来の粉末を含む(米国特許第5,739,244号;同第6,176,915号;米国特許出願公開第2004/0167247号;国際公開第2004/113433号;フランス特許出願公開第FR2903042号;同第FR2856405号)。
【0004】
これらのプラスチック製品の分解を制御するために、1種または複数の鉱物充填剤(国際公開第2010/041063号)および/またはポリエステル分解活性を有する生物学的物質(国際公開第2013/093355号;同第2016/198652号;同第2016/198650号/同第2016/146540号;同第2016/062695号)などの添加が提案されている。
【0005】
したがって、高分子中に分散された生物学的物質、より詳細には、酵素を含む生分解性プラスチック物品は、これらの酵素を含まないプラスチック製品と比較して、より良好な生分解性を有する。
【0006】
これらの酵素プラスチックを調製する方法は以前に報告されているが、しかし、均質性および粗さに関連する問題が現れることがあり、製品の物理特性に影響を及ぼし得る。例えば、酵素凝集体の存在は、より大きな粗さをもたらし、製品の美観を低下させ、物理的および機械的性質を変更する。
【0007】
最初の改善は、多糖および溶媒と単一液体配合物として事前に混合された酵素を支持体高分子に添加することにより行われた(国際公開第2019/043145号、同第2019/043134号)。
【0008】
本発明の目的は、特に、マスターバッチ調製方法の工業的実施に必要なツールを簡略化し、同時に、配合後の酵素の活性の保存、および最終物品の調製に使用される能力に関するそれらの性能を保存する、およびおそらく改善することにより、その実施を容易にし、確実にすることである。
【0009】
本発明は、高分子中に分散された酵素を含むプラスチック製品の製造に使用される場合に、最終複合物中の酵素の分散、ならびにプラスチック材料の生分解性のレベルの改善を可能とする、マスターバッチの調製方法について記述する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、多糖、酵素および支持体高分子を含むマスターバッチを混合機で調製する方法であって、および下記ステップを含む方法に関する:
a)a1)溶液中の酵素、a2)多糖、およびa3)支持体高分子を別々に、および同時に導入するステップ、
b)支持体高分子が部分的にまたは完全に融解する温度でそれらを混合するステップ、および
c)マスターバッチを回収するステップ。
【0011】
本発明はまた、こうして得られたマスターバッチ、およびマスターバッチをマスターバッチの酵素により分解することが可能な高分子、またはそのような高分子を含む高分子混合物と混合することにより得られるプラスチック物品にも関する。
【0012】
特に、本発明は、酵素により分解され得る高分子および前記高分子を分解することが可能な酵素を含むプラスチック物品の調製方法であって、本発明によるマスターバッチと、単独のまたは混合物としての前記高分子とを混合するステップを含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、多糖、ポリエステルを分解できる酵素および支持体高分子を含むマスターバッチを混合機で調製する方法に関し、前記方法は、下記ステップを含む:
a)酵素の液体配合物、多糖および支持体高分子を別々に、および同時に導入するステップ、
b)および支持体高分子が部分的にまたは完全に融解する温度でそれらを混合するステップ、および
c)マスターバッチを回収するステップ。
特に指示がない限り、パーセンテージは、言及される組成物の総重量に対する重量により与えられる。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「多糖」は、グリコシド結合によって共に結合した単糖単位の長鎖から構成される分子を意味する。多糖の構造は、直鎖から高分岐まであり得る。例としては、デンプンおよびグリコーゲンなどの貯蔵多糖、およびセルロースおよびキチンなどの構造多糖が挙げられる。多糖は、天然多糖または架橋、酸化、アセチル化、部分加水分解、などにより化学的に修飾されている多糖を含む。
【0015】
炭水化物高分子は、それらの起源(海洋、植物。微生物または動物)、構造(直鎖、分岐)および/または物理的挙動(例えば、温水または冷水中のこれらの多糖水和物が低いゴムまたはヒドロコロイド濃度で、粘性溶液または分散液を形成する性質を指すゴムまたはヒドロコロイドとしての呼称)にしたがって、分類され得る。
【0016】
本発明の場合、多糖は、“Technologies d’encapsulation pour ingredients actifs alimentaires et transformation alimentaire-Chapter 3-Materiaux pour encapsulation-by Christine Wandrey,Artur Bartkowiak and Stephen E.Harding” に記載の分類:
-デンプンおよび誘導体、例えば、アミロース、アミロペクチン、マルトデキストリン、グルコースシロップ、デキストリン、およびシクロデキストリン、
-セルロースおよび誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、など、
-植物滲出液および抽出物、植物ゴムまたは天然ゴムとも呼ばれ、限定されないが、アラビアゴム(またはアカシアゴム)、トラガカントゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤゴム、メスキートゴム、ガラクトマンナン、ペクチン、可溶性大豆多糖、を含む、
-海洋抽出物、例えば、カラギーナンおよびアルギネート、
-微生物および動物多糖、例えば、ゲラン、デキストランおよびキトサン、
に従って分類され得る。
【0017】
多糖は、それらの水での溶解度にしたがって分類され得る。特に、セルロースは、水中で可溶性ではない。本発明では、多糖は水中で可溶性である能力を有する。
【0018】
プラスチック組成物の配合物中で使用される多糖は、当業者には周知である。特に、それらは、アミロース、アミロペクチン、マルトデキストリン、グルコースシロップ、デキストリンおよびシクロデキストリンなどのデンプン誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤゴム、メスキートゴム、ガラクトマンナン、ペクチンまたは可溶性大豆多糖などの天然ゴム;カラギーナンおよびアルギネートなどの海洋抽出物;およびゲラン、デキストラン、キサンタンまたはキトサンなどの微生物のまたは動物多糖、ならびにこれらの混合物中から選択される。
多糖は、上述の多糖のいくつかの混合物であってもよい。
好ましい実施形態では、使用される多糖は、天然ゴム、より詳細には、アラビアゴムである。
【0019】
使用される酵素は、ポリエステル分解活性を有する酵素である。したがって、生分解性ポリエステルベースプラスチックから作製される製品中へのそれらの組み込みは、これらの製品の生分解性を改善する。
【0020】
ポリエステル分解活性を有する酵素の例は、当業者に周知であり、特に、デポリメラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボキシルエステラーゼ、プロテアーゼまたはポリエステラーゼである。
【0021】
特に、言及されるのは、本発明によるマスターバッチで調製された物品の生分解性を改善するためにポリエステルを分解することが可能な酵素である。本発明の特定の実施形態では、酵素は、PLAを分解することが可能である。このような酵素およびそれらを熱可塑性物品中に組み込む方法は、当業者には既知であり、特に、国際公開第2013/093355号、同第2016/198652号、同第2016/198650号、同第2016/146540号、および同第2016/062695号に記載されている。
【0022】
特に、本発明の文脈で使用される酵素は、プロテアーゼおよびセリンプロテアーゼから選択される。セリンプロテアーゼの例には、トリチラチウム・アルブムのプロテイナーゼK、またはアミコラトプシス種(Amycolatopsis sp.)、アクチノマジュラ・ケラチニリチカ(Actinomadura keratinilytica)、ラセイエラ・サッカリ(Laceyella sacchari)LP175、テルムス種(Thermus sp.)、またはバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のPLA分解酵素、またはPLA分解性であることが既知の新剤型の市販の酵素、例えば、Savinase(登録商標)、Esperase(登録商標)、Everlase(登録商標)またはスブチリシンCAS[9014-01-1]のファミリー由来のいずれかの酵素またはいずれかの機能性バリアントが挙げられる。
【0023】
酵素は、それらの純粋な形態または濃縮形態で使用され、場合によっては、1種または複数の賦形剤と混合されて使用される。
【0024】
特に、酵素は、その製造工程でマスターバッチを用いて得られるプラスチック物品の少なくとも1種の高分子を分解することが可能であるように、選択される。
【0025】
酵素は、本発明による方法で液体溶液の形態で使用される。本発明による液体配合物は、溶媒中の酵素溶液および/または酵素の懸濁液、特に、室温で流動可能な濃厚な懸濁液である。液体配合物は、混合機中に液体処方を導入するための任意の通常の手段により混合機中への導入に適する形態でなければならない。したがって、配合物は、注入器または蠕動ポンプを介して導入され得る。当業者は、どの装置が配合物の添加に最適であるかを決定できるはずである。好ましい実施形態では、液体配合物は、蠕動ポンプを介して導入される。溶媒は、酵素を分解しない溶媒、より詳細には、水である。本発明の実施形態では、液体配合物は、酵素および溶媒、特に水から本質的になる。
【0026】
特に、配合物の形態は、酵素含量に依存する。酵素含量は、溶媒中でのこれらの溶解度閾値を越え、配合物は、酵素を懸濁状態で含み、濃厚な組成物に見えるが、まだ、流動可能であることを理解されたい。本発明の有利な実施形態では、液体酵素配合物は、酵素溶液である。
【0027】
一実施形態では、液体酵素配合物は、0.01~70重量%の酵素、特に0.3~60重量%の酵素、より詳細には、0.5~35重量%の酵素を含む。特に、酵素配合物、特に、酵素溶液は、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、またはそれ超の重量%の酵素含量を含み得る。
【0028】
支持体高分子は、低融点高分子であり、有利には、140℃未満の融点および/または70℃未満のガラス転移温度を有する高分子である。それはまた、酵素プラスチック物品の調製のために、マスターバッチで共に混合される1種または複数の高分子と相溶性でなければならない。
【0029】
このような支持体高分子は、当業者には周知である。特に、これらは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoate)(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、またはそれらのコポリマーからなる。これらはまた、汎用性があると記載される、換言すれば、EVAタイプコポリマーなどの広範囲の高分子と相溶性のあるデンプンまたは高分子などの天然コンジュゲート分子からなり得る。
【0030】
有利には、支持体高分子は、120℃未満の融点および/または30℃未満のガラス転移温度を有する。
一般に、支持体高分子は、上記で定義された単一の高分子である。それは、これらの支持体高分子の混合物からなり得る。
本発明の特定の実施形態では、支持体高分子はPCLである。
本発明の特定の実施形態では、マスターバッチの酵素は、支持体高分子を分解することが可能ではない。
【0031】
ステップa)は、多糖、液体配合物中の酵素および支持体高分子の混合機中への添加に対応する。多糖は、粉末形態であり、粉末に特異的な計量器を用いて混合機に導入される。液体配合物中の酵素は、溶液を混合機中に導入するための任意の一般的手段または蠕動ポンプもしくは注入器などの任意の他の工業的手段により添加される。一実施形態では、液体配合物中の酵素は、蠕動ポンプを介して添加される。支持体高分子は、顆粒の形態であり、顆粒に特異的な計量器を介して混合機に導入される。
【0032】
特定の実施形態では、マスターバッチは、下記を混合することにより調製される:
-60~90%の支持体高分子、特に、PCL、
-10~20%の液体酵素配合物、特に、酵素溶液、
-2~15%の多糖、特にアラビアゴム。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、マスターバッチは、最大で5%のポリエステル分解活性を有する酵素を含む。したがって、マスターバッチの製造に使用される液体酵素配合物、特に、酵素溶液の含量は、その液体配合物中の酵素含量に依存する。
【0034】
有利には、液体酵素配合物/多糖比率は、両方の混合物の30%~70%の乾燥質量(酵素および多糖)を有するように、計算される。
【0035】
多糖/酵素溶液比率は、少なくとも30%、最大55%、および場合により最大70%の乾燥質量を有するように決定される。
【0036】
当業者は、使用される成分(多糖、酵素および支持体高分子)に応じて、ステップa)を実行するために必要な工程の特性(温度および時間)を適合させる方法を承知している。
【0037】
ステップb)の混合は、支持体高分子が部分的にまたは完全に融解する温度で行われる。ステップb)の温度は、酵素を変更しないように、より詳細には、それらの支持体高分子分解酵素活性を実質的に低下させないように、当業者により決定されることを理解されたい。特定の実施形態では、ステップb)の温度は、支持体高分子の融点(Tm)以下の温度である。当業者は、その融点および本発明による方法において選択された酵素がこの温度に耐える能力に従って、支持体高分子を選択し得る。特定の実施形態では、ステップb)の温度は、支持体高分子のガラス転移温度(Tg)から融点(Tm)の間を含む。あるいは、ステップb)の温度は、支持体高分子のTm以上の温度に設定される。
【0038】
一般に、ステップb)の温度は、40~200℃の間を含み得る。一実施形態では、温度は、40℃より高い、または50℃より高い。好ましくは、温度は、55℃~175℃の間を含む。好ましい実施形態では、ステップb)の温度は、使用される高分子の性質に応じて調節される。したがって、ステップb)の温度は、使用される高分子の融点であるか、または通常その融点に対応する。典型的には、温度は、300℃を超えない、より詳細には、温度は、250℃を超えない。
ステップb)では、混合物の温度を、支持体高分子中の酵素および多糖の混合および均質分散を可能とする可能な限り低く維持することが求められている
特定の実施形態では、支持体高分子はPCLであり、ステップb)の混合温度は約60℃、55~65℃である。
【0039】
ステップb)で、多糖、酵素および支持体高分子成分の混合は、10~35秒の間持続する。特定の実施形態では、混合は、15~35秒間、特に、約20秒間、約25秒間または約30秒間継続される。
【0040】
マスターバッチを製造する工程全体を通じて、均質で、一定の混合を確実にし、同時に、各構成成分の特徴および特性を保存するために、温度を、徐々に増加させる。
【0041】
混合機内(ステップb)およびc))での100℃を超える温度での高分子中の多糖/酵素組成物の滞留時間は、可能な限り短いことが有利である。好ましくは、滞留時間は、5秒~10分の間を含む。しかし、5分未満の滞留時間が好ましい。好ましい実施形態では、後者は、3分未満であり、および場合によっては、2分未満である。
【0042】
ステップc)で得られるマスターバッチは、固形形態である。それを、顆粒の形態で回収されることが有利である。これらの顆粒は、それらの形状およびそれらの用途に関係なく、「最終製品」と呼ばれ得る、プラスチック製品または物品の製造で、貯蔵、輸送され、および組み込まれ得る。これらは、それらの使用に好適な形状および体積を有するフィルム、または可撓性もしくは固形部分からなり得る。
【0043】
マスターバッチの配合物は、鉱物充填剤を含み得る。この場合、鉱物複合物は、ステップa)の間に導入され、多糖を、液体酵素配合物および支持体高分子と共に混合機中に添加する。
【0044】
多くの鉱物を使用し得る。例としては、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸亜鉛、炭酸銅、白亜、ドロマイトなどの方解石、炭酸塩または金属炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、またはその混合物、例えば雲母、モンモリロナイトのようなスメクタイト、バーミキュライト、および海泡石-パリゴルスカイトなどの珪酸塩;硫酸バリウムまたは硫酸カルシウム(石膏)、雲母などの硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化カリウム(灰汁)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、ハイドロタルサイトのような水酸化物塩または金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅、粘土、アスベスト、シリカ、黒鉛、カーボンブラックのような金属酸化物または酸化物塩;金属繊維またはメタルペタル;ガラス繊維;磁性繊維;セラミック繊維ならびにその誘導体および/または混合物が挙げられる。
【0045】
好ましい実施形態では、使用される鉱物充填剤は、炭酸カルシウムである。
一般に、マスターバッチは、下記を配合される:
-60~90%の支持体高分子、特に、PCL、
-10~20%の液体酵素配合物、特に、酵素溶液、
-2~15%の多糖、特にアラビアゴム、および
-0~20%の充填剤、特に、炭酸カルシウム。
【0046】
マスターバッチはまた、1種または複数の複合物の存在を含み得る。特に、マスターバッチは、1種または複数の添加物を含み得る。一般に、添加物は、最終製品の特定の特性を改善するために使用される。例えば、添加物は、可塑剤、着色剤、加工助剤、レオロジー剤、帯電防止剤、抗UV剤、強化剤、相溶化剤、難燃剤、抗酸化剤、酸化促進物質、光安定化剤、酸素捕捉剤、接着剤、生成物、賦形剤、などから選択され得る。
【0047】
有利には、マスターバッチは、マスターバッチの総重量に対し、20重量%未満の添加物、好ましくは、10重量%未満の添加物を含む。一般に、マスターバッチの組成物は、マスターバッチの総重量に対し、0重量%~10重量%の添加物を含む。
【0048】
配合後のマスターバッチの組成物は、マスターバッチの総重量に対し、5重量%~30重量%の間の上記で定義の液体酵素配合物を含む。一実施形態では、酵素配合物は、組成物の総重量に対し、8重量%~22重量%の間を表す。好ましい実施形態では、マスターバッチは、その組成物の重量の10%~20%の間の酵素配合物を含む。
【0049】
マスターバッチの製造方法は、混合機で実施される。当業者は、これらの高分子マスターバッチの製造のために使用することができる異なるタイプの混合機を承知している。
好ましい実施形態では、混合機は、押出成形機である。これは、単軸スクリューまたは二軸スクリュー型であってもよい。好ましくは、それは、二軸スクリュー型である。
【0050】
特に、方法は、下記のステップa)からc)により、少なくとも3つの領域、最初の成分が挿入されるヘッド領域、混合領域、およびマスターバッチが回収時に通過する出口領域、を含む押出成形機内で実施される:
a)多糖および酵素配合物、ならびに適切な場合には、上記で定義の鉱物充填剤を別々に、および同時にヘッド領域に導入するステップ、
b)支持体高分子が部分的にまたは完全に融解する温度で、成分を混合領域で混合するステップ、
c)マスターバッチを押出成形機の出口で回収するステップ。
【0051】
当業者は、押出成形機の特性(即ち、1つまたは複数のスクリュー部の長さと直径、脱気領域、など)および多糖、酵素および支持体高分子の滞留時間を、本発明の方法の異なるステップの時間および温度の制約に従って、適合させる方法を解るであろう。
【0052】
特に、ヘッド領域の温度は、支持体高分子の融点より低く、混合領域の温度は、特に、上記で混合温度に対し定義されたように、ヘッド領域よりも高い。
【0053】
混合領域それ自体は、いくつかの領域を含み、当業者は、必要に応じ、特に、使用される酵素および支持体高分子に応じて、各領域の温度を適合させ得る。
【0054】
マスターバッチを、通常の技術により調製された顆粒の形態で得てもよい。これらの顆粒は、「最終物品」と呼び得る生分解性プラスチック材料から作製される物品の製造で、貯蔵、輸送、および使用され得る。
【0055】
それが顆粒の形態である場合、マスターバッチはその貯蔵のために乾燥され得る。乾燥法は、当業者に既知の通常の方法、特に、熱風炉、真空オーブン、デシケータ、マイクロ波または流動床による方法である。乾燥温度および時間は、一方では、マスターバッチの調製で酵素溶液によりもたらされる含水量に依存するが、使用される支持体高分子の融解温度およびガラス転移温度にも依存する。
乾燥されると、マスターバッチの組成物は、有利には、下記を含む:
-60%~95%の支持体高分子。
-0.5%~7%の酵素、
-2%~27%の多糖、および
-0%~30%の鉱物充填剤。
【0056】
一般に、含水量は、0.5%未満であり、好ましくは、0.3%未満である。
【0057】
得られた顆粒の形態のマスターバッチは、その後、生分解性プラスチック製品または「最終物品」の製造に使用され得る。これらは、それらの使用に好適な形状および体積を有するフィルム、または可撓性もしくは固形部分からなり得る。
【0058】
生分解性プラスチック物品は、酵素を含むマスターバッチを、前記酵素により分解され得る少なくとも1種の高分子と混合することにより得られる。
【0059】
したがって、本発明は、プラスチック材料または酵素により分解できる高分子および前記高分子を分解できる酵素を含む、以下で定義の予混合物から作製される物品を調製する方法であって、前記高分子を分解することが可能な酵素、多糖、および支持体高分子、ならびに場合により、鉱物充填剤を含むマスターバッチを調製するステップを含み、マスターバッチが、以下のステップ;
a)液体配合物としての酵素、多糖および支持体高分子、ならびに必要に応じて上記で定義の鉱物充填剤を混合機中に、別々におよび同時に導入するステップ、
b)成分を混合するステップ、および
c)マスターバッチを回収するステップ、
を含む方法により混合機中で調製され、その後、酵素により分解できる前記高分子をマスターバッチと混合する方法に関する。
【0060】
有利には、酵素により分解できる前記高分子は、生分解性ポリエステルである。これらのポリエステルは、当業者に周知であり、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、可塑化デンプン、およびそれらの混合物である。
【0061】
これらのポリエステルは、最終物品によるそれらの物理化学特性および追求される特性、特に、その機械的性質により選択されるが、それらの色およびそれらの透過性によっても同様に選択される。
【0062】
最終物品の調製に使用される生分解性ポリエステルは、本発明によるマスターバッチ中の支持体高分子として使用されるポリエステルと同一の、またはそれとは異なる物理化学的性質を有する。
【0063】
好ましい実施形態では、酵素により分解され得るポリエステルは、PLAを単独で、または別の上述のポリエステルと混合して、特にPLA/PBAT混合物として含む。
【0064】
したがって、生分解性プラスチック物品は、マスターバッチおよび生分解性高分子からなる。
【0065】
生分解性高分子に加えて、生分解性プラスチック物品の組成物は、0.5%~20%の酵素マスターバッチを含む。
【0066】
これらの最終物品を調製する方法は、当業者に周知であり、特に、インフレーション押出成形、押出ブロー成形、キャストフィルム押出、カレンダ加工および熱成形、射出成形、圧縮成形、回転成形、コーティング、層形成、発泡成形、引抜成形および圧縮造粒などの通常のプラスチック技術を含む。このような操作は、当業者には周知であり、当業者は、考慮されているタイプのプラスチック物品に従って、工程の条件(例えば、温度、滞留時間、など)を容易に適合させるであろう。
【0067】
生分解性プラスチック物品の調製の場合、マスターバッチをその成形のために、組成物の他の成分と混合することができる。マスターバッチおよび少なくとも生分解性高分子を含む予混合物または「複合物」を調製することも可能である。固形形態、特に、顆粒形態のこの予混合物は、貯蔵してもよく、その後、輸送後に、最終物品の最終組成に従って、単独で、または他の成分と組み合わせて、最終物品を形成するために使用してもよい。
有利には、予混合物は、下記を含む:
-8重量%~99重量%の生分解性高分子、好ましくはPLA、
-0.01重量%~5重量%の多糖、好ましくは、アラビアゴムなどの天然ゴム、
-0.1重量%~20重量%の上記で定義の支持体高分子、特に、PCL、および
-0.01重量%~2重量%の、生分解性高分子分解活性を有する、より詳細には、PLA分解活性を有する酵素、および適切な場合には、
-0重量%~35重量%の鉱物充填剤。
【0068】
最終物品は、それらの使用に好適な形状および体積を有するフィルム、可撓性または固形部分からなり得る。本発明に関連する生分解性プラスチック物品の例には、フィルム、マルチングフィルム、包装フィルム、食品または非食品フィルム;包装ブリスター、トレーなどの包装材料;カップ、皿または洋食器類などの使い捨て型食卓用食器類;栓および蓋;飲料カプセル;および園芸物品が挙げられる。
【0069】
有利には、プラスチック物品の組成は、以下の通りである:
-60重量%~98重量%の高分子または生分解性高分子の混合物、
-0.01重量%~5重量%の多糖、好ましくは、アラビアゴムなどの天然ゴム、
-0.01重量%~20重量%の上記で定義の支持体高分子、
-0.01重量%~2重量%の、生分解性高分子分解活性を有する酵素、
-0重量%~35重量%の鉱物充填剤、
-0重量%~5重量%の添加剤。
【0070】
酵素マスターバッチで得られる生分解性プラスチック物品は、可撓性および/または剛性であり得る。
【0071】
可撓性物品の場合には、酵素により分解され得るポリエステルは、PLAを含む。一実施形態では、生分解性ポリエステルは、PBAT/PLA混合物であり、その重量比は、好ましくは、10/90~20/80、より好ましくは、13/87~15/85の範囲である。
【0072】
別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、PBAT/PLA混合物であり、その重量比は、10/90~30/70、10/90~40/60、10/90~50/50、10/90~60/40、10/90~70/30、10/90~80/20、10/90~90/10の範囲である。
【0073】
別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、PBAT/PLA混合物であり、その重量比は、10/90未満、9/91以下、8/92以下、7/93以下、6/94以下、5/95以下、4/96以下、3/97以下、2/98以下、1/99以下である。
【0074】
別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、PLAである。
【0075】
可撓性生分解性プラスチック物品は、250μm未満の厚さ、好ましくは、200μm未満の厚さを特徴とする。好ましい実施形態では、フィルムは、100μm未満の厚さ、より有利には、50μm、40μmまたは30μm未満、好ましくは、10~20μmの間の厚さを有する。より好ましくは、可撓性物品の厚さは、15μmである。例としては、食品フィルム、包装フィルム、工業用フィルムまたはマルチングフィルムなどのフィルムおよびバッグが挙げられる。
有利には、可撓性物品の組成物は、下記を含む:
-70重量%~98重量%の高分子または生分解性高分子の混合物、
-0.01重量%~5重量%の多糖、好ましくは、アラビアゴムなどの天然ゴム、
-0.1重量%~20重量%の上記で定義の支持体高分子、および
-0.01重量%~2重量%の、生分解性高分子分解活性を有する酵素、
-0重量%~5重量%、特に、0.01重量%~5重量%、特に、0.05重量%~5重量%の鉱物充填剤、
-0重量%~5重量%の添加剤。
【0076】
本発明による組成物は、プラスチックフィルムを作製するために特に好適である。本発明によるフィルムは、通常の技術的方法、特に、インフレーション押出成形により製造され得る。フィルムは、本発明による組成物を有する顆粒から調製され、これは、通常の技術、特に、押出成形により、溶解される。
【0077】
酵素を含む以前に定義された組成物を有するフィルムは、単層または多層フィルムからなり得る。多層フィルムの場合では、層の少なくとも1つは、以前に定義された組成物を有する。以前に定義された組成物を有する単層および多層フィルムは、高いPLA含量を有し、特に、食品および非食品包装用の生分解性およびバイオ起源フィルムの調製のために望ましい機械的特性を保持する。この目的のために、本発明による組成物の成分は、食品での使用と適合性である製品から選択されるのが好ましい。
【0078】
多層フィルムは、層A、BおよびCが異なる組成物を有する、ABA、ABCAまたはACBCAタイプの少なくとも3相を含むフィルムであり得る。好ましい実施形態では、多層フィルムは、ABAまたはACBCAタイプである。
【0079】
一般に、層AおよびBは、有利には、本発明による組成物、PLAおよび/またはポリエステルを含む。層Cは、存在する場合、本発明による物品に特定の性質を付与するために、より詳細には、ガス、特に酸素、バリヤー特性を付与するために存在する。このようなバリヤー材料は、当業者に周知であり、特に、PVOH(ポリビニルアルコール)、PVCD(ポリ塩化ビニル)、PGA(ポリグリコール酸)、セルロースおよびその誘導体、乳タンパク質または多糖およびこれらの混合物およびこれらの全ての割合の混合物である。
【0080】
上記で定義の多層フィルムの場合、特に、ABA、ABCAまたはACBCAタイプのフィルムの場合、酵素は、全ての層中に、または1つの層中のみに、例えば、層AおよびB中に、または層Aもしくは層B中のみに、存在する。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、2つの層Aは、酵素を含まない、PLA、ポリエステルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(PPGDGE)を含む本発明の組成物からなる。酵素は層B、上記で定義の酵素を含む本発明の組成物中、または特定の組成物、特に、上記で定義の低融点高分子中の酵素組成物中に存在する。
【0082】
いくつかの実施形態では、(単層または多層酵素層)の可撓性物品の酵素層の組成物は、最大95重量%の生分解性高分子、好ましくはPLAを含み得る。したがって、酵素層は、8重量%~50重量%、8重量%~60重量%、8重量%~70重量%、8重量%~80重量%、または8重量%~90重量%の生分解性高分子を含み得る。
【0083】
有利には、(単相または多層)の可撓性物品の酵素層の組成物は、下記を含む:
-8重量%~95重量%、特に、8重量%~70重量%、8重量%~60重量%、8重量%~50重量%、または8重量%~40重量%の生分解性高分子、好ましくはPLA、
-0.02重量%~4重量%の多糖、好ましくは、アラビアゴムなどの天然ゴム、
-0.1重量%~19重量%の上記で定義の支持体高分子、および
-0.05重量%~2重量%の、生分解性高分子分解活性を有する、より詳細には、PLA分解活性を有する酵素、および適切な場合には、
-0重量%~5重量%、特に、0.01重量%~5重量%、特に、0.05重量%~5重量%の鉱物充填剤。
【0084】
剛性物品に関しては、生分解性ポリエステルはPLA、好ましくは、PLA/炭酸カルシウム混合物であり、その重量比は、100/0~25/75の範囲、好ましくは、95/5~45/55、より好ましくは、90/10~50/50の範囲である。別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、PBAT/PLA混合物であり、その重量比は、好ましくは、10/90~80/20、より好ましくは、20/80~60/40の範囲である。
【0085】
剛性物品は、200μm~5mmの間、150μm~5mmの間、好ましくは200μm~3mmの間、または150μm~3mmの間を含む厚さを有する。一実施形態では、物品は、200μm~1mmの間、150μm~1mmの間、好ましくは200μm~750μmの間、または150μm~750μmの間を含む厚さを有する。別の実施形態では、厚さは450μmである。
【0086】
このような生分解性プラスチック物品の例には、カップ、皿、洋食器類、トレー、飲み物カプセルおよび包装ブリスター、より一般的には、食品、化粧品または園芸製品用の梱包材料が挙げられる。
【0087】
有利には、剛性物品の組成物は、下記を含む:
-60重量%~95重量%の高分子または生分解性高分子の混合物、
-0.01重量%~5重量%の多糖、好ましくは、アラビアゴムなどの天然ゴム、
-0.1重量%~20重量%の上記で定義の支持体高分子、
-0.01重量%~2重量%の、生分解性高分子分解活性を有する酵素、
-0重量%~35重量%、特に、0.01重量%~35重量%の鉱物充填剤、
-0重量%~5重量%の添加剤。
【0088】
別の実施形態では、剛性物品の組成物は、下記を含む:
-60重量%~80重量%の高分子または生分解性高分子の混合物、
-0.01重量%~5重量%の多糖、好ましくは、アラビアゴムなどの天然ゴム、
-0.1重量%~20重量%の上記で定義の支持体高分子、および
-0.01重量%~2重量%の、生分解性高分子分解活性を有する酵素、
-8重量%~35重量%の鉱物充填剤、
-0重量%~5重量%の添加剤。
【0089】
したがって、剛性物品の組成物は、60重量%を超える、または70重量%を超える、または80重量%を超える、または90重量%を超える、生分解性高分子または高分子の混合物を含む。
【0090】
剛性物品中の鉱物充填剤含量は、鉱物充填剤の性質に応じて、0.01重量%~35重量%の間を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、したがって剛性物品は、0.01重量%を超える、0.1重量%を超える、1重量%を超える、または2重量%を超える、または3重量%を超える、鉱物充填剤を含む。
【0092】
他の実施形態では、鉱物充填剤の重量による量は、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、または8%以上である。
【0093】
さらに他の実施形態では、剛性物品中の鉱物充填剤は、10重量%~35重量%、15重量%~30重量%、または20重量%~28重量%である。
【0094】
可撓性または剛性であるかどうかに関わらず、最終物品はまた、プラスチック材料の組成物に含まれる、可塑剤、相溶化剤および他の一般的添加物、例えば、顔料または色素、剥離剤、耐衝撃性改良剤、抗遮断薬、なども含み得る。
【0095】
可塑剤の例としては、クエン酸エステルおよび乳酸オリゴマー(LAO)が挙げられる。
クエン酸エステルは、特に、バイオ起源材料として当業者に公知の可塑剤である。特に、クエン酸トリエチル(TEC)、アセチルクエン酸トリエチル(TEAC)、クエン酸トリブチル(TBC)およびアセチルクエン酸トリブチル(TBAC)が挙げられる。好ましくは、本発明による組成物中の可塑剤として使用されるクエン酸エステルは、TBACである。
【0096】
LAOはまた、当業者には、特に、生物由来材料として既知の可塑剤である。これらは、1,500g/モル未満の分子量を有する乳酸オリゴマーからなる。好ましくは、それらは、乳酸オリゴマーのエステルであり、カルボン酸末端は、アルコール、特に、C1-C10直鎖または分岐アルコール、有利には、C6-C10アルコール、またはこれらの混合物によるエステル化によりブロックされている。特に、特許出願第EP2256149号においてその調製法と共に記載されるLAO、およびCondensia Quimicaにより商標Glyplast(登録商標)として販売されているLAO、特に、500~600g/モルの分子量を有する参照番号Glyplast(登録商標)OLA 2、および1,000~1,100g/モルの分子量を有するGlyplast(登録商標)OLA 8が挙げられ得る。本発明の好ましい実施形態では、LAOは、少なくとも900g/モル、好ましくは1,000~1,400g/モル、より好ましくは、1,000~1,100g/モルの分子量を有する。
【0097】
ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテルはまた、グリシジルエーテルとも呼ばれ、特に、国際公開第2013/104743号では「反応性可塑剤」と称され、PLAおよびPBATとのブロックコポリマーの調製に使用される。それらはまた、DOW社では液体エポキシ樹脂として同定され、参照番号「D.E.R.(商標)732P」として販売され、またはHEXION社から脂肪族エポキシ樹脂として参照番号「Epikote(商標)樹脂877」として販売された。
【0098】
必要に応じ、本発明による組成物は、PPGDGEに関連する他のPLA/ポリエステル相溶化剤を含み得る。このようなPLA/ポリエステル相溶化剤は、当業者に周知であり、特に、ポリアクリレート、エチレンターポリマー、アクリル酸エステルおよびグリシジルメタクリレート(例えば、Arkema社によりLotader(登録商標)の商標で販売されている)、トリブロックコポリマーPLA-PBAT-PLA、無水マレイン酸でグラフト化したPLA(PLA-g-AM)または無水マレイン酸でグラフト化PBAT(PBAT-g-AM)、特に、Dong & al.(International Journal of Molecular Sciences,2013,14,20189-20203)and Ojijo & al.(Polymer 2015,80,1-17)により記載されるポリ(エチレン-co-メチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)、より詳細には、BASF社によりJONCRYL(登録商標)の名称で販売された、好ましくはADR 4468グレード、から選択される。
【0099】
実施例
実施例1:可撓性物品におけるマスターバッチの使用
I.支持体高分子および酵素混合物の調製
1.先行技術の条件下でのマスターバッチの調製
支持体高分子および酵素混合物A1は、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖(アラビアゴム)、鉱物充填剤(炭酸カルシウム、CaCO3)および溶液中の酵素の顆粒から調製される。支持体高分子および酵素混合物は、温度が独立に監視および調節される11個の領域を備えた共回転二軸スクリュー押出成形機Clextral Evolum 25 HTで製造されている。25℃~50℃の間を含む漸増温度プロファイルに従って混合を実施するために、溶液中の酵素、アラビアゴムおよび炭酸カルシウムは、押出成形機の入口で同時に導入されている。溶液中の酵素は、蠕動ポンプを用いて2.6kg/時間で導入される。次に、アラビアゴムは、1.4kg/時間で、および炭酸カルシウムは、2kg/時間で、粉末に特異的な計量器を用いて導入される。支持体高分子とも呼ばれるPCLは、押出成形機の領域5と領域6の間に、75℃の温度で、部分的にまたは完全に溶融状態で、14kg/時間で導入される。
【0100】
混合物A2を、異なる日に、混合物A1と同じ条件下で作製する。
支持体高分子および酵素混合物A3を、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖(アラビアゴム)、鉱物充填剤(炭酸カルシウム、CaCO3)および溶液中の酵素の顆粒から調製する。支持体高分子および酵素混合物を、温度を独立してモニターおよび調節する11個の領域を備えた共回転二軸スクリュー押出成形機Clextral Evolum 25 HTで製造した。25℃~50℃の間で次第に増加する温度プロファイルに従って実施するために、溶液中の酵素、アラビアゴムおよび炭酸カルシウムは、押出成形機の入口に同時に導入された。溶液中の酵素は、蠕動ポンプを用いて2.2kg/時間で導入される。次に、アラビアゴムは、1.8kg/時間で、および炭酸カルシウムは、2kg/時間で、粉末に特異的な計量器を用いて導入される。支持体高分子とも呼ばれるPCLは、押出成形機の領域5と領域6の間に、75℃の温度で、部分的にまたは完全に溶融状態で、14kg/時間で導入される。
【0101】
各混合物の顆粒化を、水中での切断により行う。顆粒を、0.3%の水分になるまで45℃で乾燥する。
【0102】
2.本発明の方法によるマスターバッチの調製
支持体高分子および酵素混合物B1を、本発明の方法に従って、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖(アラビアゴム)および溶液中の酵素の顆粒から調製する。
【0103】
支持体高分子および酵素混合物は、25℃~50℃の範囲で次第に増加する温度プロファイルに従って、温度が独立に監視および調節される11個の領域を備えた共回転二軸スクリュー押出成形機CLEXTRAL EV25HTで製造されている。PCL、溶液中の酵素およびアラビアゴムは、二軸スクリューのヘッドに別々におよび同時に導入される。PCLは16kg/時間で、溶液中の酵素は2.2kg/時間で、蠕動ポンプを用いて導入され、アラビアゴムは1.8kg/時間で粉末に特異的な計量器を用いて導入される。
混合物B2を、異なる日に、混合物B1と同じ条件下で作製する。
【0104】
支持体高分子および酵素混合物B3を、本発明の方法に従って、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖(アラビアゴム)、鉱物充填剤(炭酸カルシウム、CaCO3)および溶液中の酵素の顆粒から調製する。
【0105】
支持体高分子および酵素混合物は、25℃~60℃の範囲で次第に増加する温度プロファイルに従って、温度が独立に監視および調節される11個の領域を備えた共回転二軸スクリュー押出成形機CLEXTRAL EV25HTで製造されている。PCL、溶液中の酵素、アラビアゴムおよび炭酸カルシウムは、二軸スクリューのヘッドに別々におよび同時に導入される。PCLは14kg/時間で導入され、溶液中の酵素は2.2kg/時間で、蠕動ポンプを用いて導入され、アラビアゴムは1.8kg/時間で粉末に特異的な計量器を用いて導入され、および炭酸カルシウムは2kg/時間で導入される。
【0106】
II.市販品
これらの例では、Perstorp社により参照番号Capa(商標)6500として販売されているPCL、Omya社により参照番号OMYAFILM 707-OGとして販売されている炭酸カルシウム、Nexira社により参照番号InstantGum AAとして販売されたアラビアゴムが使用されている。
参照番号ECOVIO F2223でBASF社により販売されているPLA/PBAT混合物を使用した。
【0107】
III.フィルムの製造インフレーション押出成形のために、LBE20-30/Cタイプ 30L/Dスクリューを備えたラボベンチLabtech LF-250、幅20mmを使用した。スクリュー速度は、50~60rpmであり、高および低成形速度は、4.3~5.7m/分である。
インフレーション押出成形温度を、表1a、1bおよび1cに詳細に記載する。
【表1】
【表2】
【表3】
【0108】
フィルムは、15μmの平均厚さを有する。厚さは、Positector電子マイクロメーターを用いて測定されている。
【0109】
これらのフィルムは透明で、粗さおよび貫通欠陥は認められていない。全てのインフレーション押出成形で気泡は安定であった。インフレーション押出成形後のフィルムの穿孔は、難なく標準的であると記載されている。
【0110】
IV.分析方法
50Nセンサーまたは5kNセンサーを備えたZwickまたはLlyodタイプ装置を使用して、引張および引裂機械的特性を測定してもよい。特性を、2つの異なる方向:長手方向および横方向で測定する。引張および引裂機械的性質を、それぞれ、標準EN ISO 527-3およびISO 6383-1に従って測定する。
【0111】
穿孔に対する抵抗に関しては、これを標準NF EN ISO 7765-1に従って、Dart-Testを使って測定する。
【0112】
フィルムの生分解性の評価を、次のプロトコルに従って実施される解重合試験を用いて評価した:100mgの各試料を、pH8の50mLの緩衝液を含むプラスチックバイアル中に導入した。インキュベーター中で、各試料を45℃、150RPMで撹拌して、インキュベーションすることにより解重合を開始する。1mLの分取量の緩衝液を定期的にサンプリングし、0.2μmのフィルターシリンジを用いて濾過し、Aminex HPX-87Hカラムを使って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析して、乳酸(LA)およびその二量体の放出を測定する。使用されるクロマトグラフィーシステムは、ポンプ、自動サンプラー、50℃で恒温に保持されたカラムおよび220nm紫外検出器を備えたHPLC Nexan Series、SHIMADZU装置である。溶出液は、5mMのH2SO4溶液である。注入量は、20μLの試料となる。乳酸を、市販の乳酸から作成した標準曲線に基づいて測定する。
【0113】
プラスチックフィルムの加水分解を、放出された乳酸および乳酸二量体に基づいて計算する。解重合パーセンテージを、試料中のPLA割合に対して計算する。
【0114】
V.分析結果
比重びん法による顆粒密度
段落I.1で記載の先行技術の調製方法により得られたマスターバッチA1は、段落I.2で記載の本発明の調製方法により得られたマスターバッチB1と等価の密度、即ち、平均で1.03g/cm3、を有する。
【0115】
段落I.1で記載の先行技術の調製方法により得られたマスターバッチA2は、段落I.2で記載の本発明の調製方法により得られたマスターバッチB2と等価の密度、即ち、平均で1.05g/cm3、を有する。
【0116】
段落I.1で記載の先行技術の調製方法により得られたマスターバッチA3は、段落I.2で記載の本発明の調製方法により得られたマスターバッチB3と等価の密度、即ち、平均で1.1g/cm3、を有する。
【0117】
支持体高分子および酵素マスターバッチの調製方法は、最終複合物の密度に影響を与えない。
【0118】
メルトフローインデックス(MFI)測定
マスターバッチA1は、160℃および2.16kgで実施された分析の場合、マスターバッチB1と等価のメルトフローインデックス、即ち、10~10.5を有する。
【0119】
マスターバッチA3は、160℃および2.16kgで実施された分析の場合、マスターバッチB3と等価のメルトフローインデックス、即ち、10~10.5を有する。
【0120】
支持体高分子および酵素マスターバッチの調製方法は、最終複合物の流動性に影響を与えない。
【0121】
熱重量分析
段落Iで調製した2種の混合物に対し実施した熱重量分析は、配合物中の全ての成分が、等価の分解温度であることを示す。
【表4】
【0122】
段落I.1(先行技術)およびI.2(本発明)に記載のマスターバッチの配合物は、複合物A1とB1;A2とB2;ならびにA3とB3の間の組成差異を特徴とする。これらの差異は、熱重量分析時の質量損失に関して観察される。
【0123】
マスターバッチA3およびB3のみが同じ組成を有し、質量損失は、使用される方法による有意差を特徴としない。
【0124】
フィルムの組成
フィルムは、支持体高分子ならびにI.1およびI.2で調製された酵素混合物A1-A2-A3-B1-B2-B3、ならびにBASF社による参照番号ECOVIO F2223として販売され、本明細書の以降の実施例で、「複合物1」と呼ばれるPLAおよびPBATベースグレードを用いて調製されている。
これらの異なるフィルムの組成物は、表3に報告されている。
【表5】
フィルム1は、本発明のフィルム4に対する先行技術の基準として機能する。
フィルム2は、本発明のフィルム5に対する先行技術の基準として機能する。
フィルム3は、本発明のフィルム6に対する先行技術の基準として機能する。
【0125】
マスターバッチの製造方法は、インフレーション押出成形工程に対して影響を与えない。インフレーション押出成形のパラメーターは、先行技術と本発明のフィルム間で同一のままである。使用される製造工程に関係なく、フィルムの外観は同一である。
【0126】
フィルム3(先行技術)および6(本発明)の機械的性質
同一の組成物を有するマスターバッチで得られたフィルム3および6の機械的性質を測定した。結果を表4に示す。示した値は、全ての測定値の平均値である。
【表6】
【0127】
このように測定された機械的性質は、本発明によるフィルム6が、先行技術によるフィルム3以上の機械的性質を有することを示す。
【0128】
フィルムのPLAの解重合
従来の条件下および同じ酵素含量で製造された、支持体高分子および酵素混合物を含むフィルム1および2は、28℃で20日後に34%~38%の間を含む解重合結果を有する。本発明で記載の方法により、および同じ酵素含量であるがフィルム1および2より少ない含量で製造された、支持体高分子および酵素混合物を含むフィルム4および5は、28%~31%の間の解重合結果を有する。
【0129】
同一の酵素含量および2つの工程により製造されたMBを有するフィルム3および6は、45℃で5日後に65~77%の間を含む解重合率を有する。
【0130】
支持体高分子および酵素混合物の組成物中への炭酸カルシウムの添加は、PLAの解重合を促進する。さらには、マスターバッチの調製方法は、マスターバッチ中の酵素の性能に悪い影響を与えない。本発明に記載の混合物の調製方法は、より少ない酵素で、従来の方法に近い解重合率に到達可能にする。
【0131】
実施例2:可撓性物品におけるマスターバッチの使用
I.支持体高分子および酵素混合物の調製
1.先行技術(配合された酵素溶液を有する)の条件下でのマスターバッチの調製
支持体高分子および酵素混合物A4は、ポリカプロラクトン(PCL)および多糖(アラビアゴム)と共に配合された溶液中の酵素の顆粒から調製される。支持体高分子および酵素混合物A5は、ポリカプロラクトン(PCL)、鉱物充填剤(炭酸カルシウム、CaCO3)および多糖(アラビアゴム)と共に配合された溶液中の酵素の顆粒から調製する。マスターバッチA4およびA5は、30~65℃の次第に増加する温度プロファイルを含む実施例1.I.1の手順により調製される。
【0132】
混合物A4の場合、PCLは17kg/時間で二軸スクリューのヘッドに導入され、アラビアゴムと共に配合された溶液中の酵素は3kg/時間で、蠕動ポンプを用いて導入される。
【0133】
混合物A5の場合、PCLは17kg/時間で二軸スクリューのヘッドに導入され、アラビアゴムと共に配合された溶液中の酵素は3kg/時間で、蠕動ポンプを用いて導入される。炭酸カルシウムは、2kg/時間で、粉末に特異的な計量器を用いて導入される。
【0134】
2.本発明の方法(非配合酵素溶液を有する)によるマスターバッチの調製
支持体高分子および酵素混合物B4は、ポリカプロラクトン(PCL)および多糖(アラビアゴム)および溶液中の酵素の顆粒から調製される。
【0135】
支持体高分子および酵素混合物B5は、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖(アラビアゴム)、鉱物充填剤(炭酸カルシウム、CaCO3)および溶液中の酵素の顆粒から調製される。
【0136】
マスターバッチB4およびB5は、30~65℃の次第に増加する温度プロファイルを含む実施例1.I.2の手順により調製される。
【0137】
混合物B4の場合、溶液中の酵素は、2.2kg/時間で蠕動ポンプを用いて導入され、アラビアゴムは0.8kg/時間で粉末に特異的な計量器を用いて導入され、およびPCLは、17kg/時間で二軸スクリューのヘッドに導入される。
【0138】
混合物B5の場合、溶液中の酵素は、2.2kg/時間で蠕動ポンプを用いて導入され、アラビアゴムは0.8kg/時間で粉末に特異的な計量器を用いて導入され、炭酸カルシウムは、2kg/時間で導入され、およびPCLは、15kg/時間で二軸スクリューのヘッドに導入される。
【0139】
各混合物の顆粒化は、水中での切断により行われる。顆粒は、0.3%の水分になるまで45℃で乾燥される。
【0140】
II.市販品
マスターバッチおよびフィルムの調製に使用された市販品は、実施例1に対し使用されたものである。
【0141】
III.フィルムの製造
マスターバッチA4(先行技術)およびB4(本発明によるにより得られた)でそれぞれ調製されたフィルム7および8は、実施例1.IIIのフィルムに対して記述された方法により調製される。
【0142】
IV.分析方法
分析方法は、実施例1.IV.に記載されたものである。
【0143】
V.分析結果
比重びん法による顆粒密度
マスターバッチA4は、本発明により得られたマスターバッチB4と等価の密度、即ち、平均で1.06g/cm3、を有する。
マスターバッチA5は、本発明により得られたマスターバッチB5と等価の密度、即ち、平均で1.4g/cm3、を有する。
支持体高分子および酵素マスターバッチの調製方法は、最終複合物の密度に影響を与えない。
【0144】
メルトフローインデックス(MFI)測定
マスターバッチA4は、160℃および2.16kgで実施した分析の場合、本発明の調製方法で得られたマスターバッチB4と等価のメルトフローインデックス、即ち、それぞれ、15.6および14.1g/10分を有する。
【0145】
マスターバッチA5は、160℃および2.16kgで実施した分析の場合、本発明の調製方法で得られたマスターバッチB5と等価のメルトフローインデックス、即ち、それぞれ、18.3および18.9g/10分を有する。
【0146】
支持体高分子および酵素マスターバッチの調製方法は、最終複合物の流動性に影響を与えない。
【0147】
熱重量分析
段落2.Iで調製されたマスターバッチに対し実施された熱重量分析は、配合物中の全ての成分は、等価の分解温度であることを示す。
【表7】
【0148】
マスターバッチA4およびA5(先行技術)は、本発明により得られたマスターバッチB4およびB5と類似の温度で等価の質量損失を有する。
【0149】
先行技術により配合された酵素溶液の使用またはマスターバッチの調製中の本発明による非配合酵素の使用は、熱重量分析の間の質量損失に対し影響を与えない。
【0150】
フィルムの組成
フィルムは、高分子支持体および酵素マスターバッチA4およびB4ならびに、BASF社により参照番号ECOVIO F2223として販売され、以降の実施例で、「複合物1」と呼ばれるPLAおよびPBATベースグレードを用いて調製されている。
これらの異なるフィルムの組成を、表9に報告する。
【表8】
【0151】
フィルム7は、本発明のフィルム8に対する先行技術の基準として機能する。
【0152】
混合物の製造方法は、インフレーション押出成形工程に対して影響を与えない。インフレーション押出成形工程のパラメーターは、先行技術と本発明のフィルム間で同一のままである。使用される製造工程に関係なく、フィルムの外観は同一である。
【0153】
フィルム7および8の機械的性質
測定した機械的性質を表7に示す。示した値は、全ての測定値の平均値である。
【表9】
【0154】
測定された機械的性質は、本発明によるマスターバッチB4で得られたフィルム8は、先行技術によるマスターバッチA4で得られたフィルム7よりも優れた機械的特性を有することを示す。
【国際調査報告】