IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリュノ・サングル-フェリエールの特許一覧

特表2024-528692もつれ光子を使用する量子通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】もつれ光子を使用する量子通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/70 20130101AFI20240723BHJP
   H04L 9/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H04B10/70
H04L9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503753
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022069959
(87)【国際公開番号】W WO2023001720
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2107958
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521365820
【氏名又は名称】ブリュノ・サングル-フェリエール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・サングル-フェリエール
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AB11
5K102PC11
5K102PH11
5K102PH21
5K102PH25
5K102PH31
5K102RB02
5K102RB07
(57)【要約】
量子通信システム(1)は、もつれ光子のエミッタ(2)であって、第1の伝播経路(D1)上で放出された第1の光子(P1)と、第1の伝播経路とは異なる第2の伝播経路(D2)上で放出された第2の光子(P2)とを同時に含む少なくとも1つのもつれ光子対を生成するように構成された光源を備えるもつれ光子のエミッタと、第1の伝播経路(D1)上に配置された第1の受信器(3)であって、少なくとも2つの異なる相補的偏光状態対の状態から選択される偏光状態における光子を吸収するように構成された複合吸収器(31)を備える第1の受信器と、第2の伝播経路(D2)上に配置された第2の受信器(4)であって、第2の光子(P2)の偏光を維持しながら第2の光子(P2)を増幅することを可能にする光学増幅器(40)と、増幅された光子(P20)の平均偏光を測定することを可能にする測定器(45)とを備える第2の受信器と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子通信システム(1)であって、
もつれ光子のエミッタ(2)であって、第1の伝播経路(D1)上で放出された第1の光子(P1)と、前記第1の伝播経路とは異なる第2の伝播経路(D2)上で放出された第2の光子とを同時に含む少なくとも1つのもつれ光子対を生成するように構成された光源を備えるエミッタと、
前記第1の伝播経路(D1)上に配置された第1の受信器(3)であって、一方の対の偏光が他方の対の偏光方向と45°をなす厳密に2つの垂直直線偏光対を除いて、少なくとも2つの異なる相補的偏光状態対の状態から選択される偏光状態の光子を吸収するように構成された複合吸収器(31)を備える第1の受信器と、
前記第2の伝播経路(D2)上に配置された第2の受信器(4)と、を備え、
前記第1の光子(P1)が前記第1の受信器(3)に到達した後に前記第2の光子(P2)が前記第2の受信器(4)に到達し、
前記第2の受信器(4)は、
前記第2の光子(P2)の偏光状態を維持しながら前記第2の光子(P2)を増幅する光学増幅器(40)と、
前記光学増幅器の下流に配置され、前記増幅された光子(P20)の平均偏光を測定することを可能にする測定器(45)と、を備える、システム。
【請求項2】
前記複合吸収器(31)は、少なくとも3つの異なる相補的偏光対の状態から選択される所定の偏光状態の光子を吸収するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複合吸収器(31)は、
2つの相補的偏光状態のうちの一方または他方の偏光状態の光子を吸収する少なくとも1つの機器(35)と、
前記機器(35)の上流に配置され、前記第1の光子(P1)の偏光状態を、前記機器(35)が光子を吸収するように選択された偏光状態に変換するように構成された偏光修正器(32)と、を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記偏光修正器(32)は、偏光位相修正器(32b)の上流に配置された偏光方向修正器(32a)を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記偏光方向修正器(32a)は、前記第1の光子(P1)の伝播経路上に連続的に配置された2つの四分の一波長板(310)を備え、前記2つの四分の一波長板のうち少なくとも一方の向きは可変である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記偏光方向修正器(32a)は、波が入射する位置に応じた角度だけ偏光の回転を誘発させるキラル材料または回転材料(316)製のプレートまたはプリズムを備え、特に前記キラル材料または回転材料は2つのポッケルスセルの間に配置される、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記偏光位相修正器(32b)は、一方が第1の軸に沿い他方が第2の軸に沿った直線偏光を伴う2つの電磁波にビームを分割する第1の複屈折板またはプリズムと、前記第2の軸上に配置された可変屈折率を有する遅延板と、を備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの機器(35)は、前記第1の光子を少なくとも1つの光子検出器(355)に向けて、特に前記第1の光子の偏光状態に応じて2つの光子検出器(355)のうちの一方または他方に向けて送る少なくとも1つのフィルタ(350、360)を備え、好ましくは前記フィルタは複屈折材料製のプリズムまたはプレートである、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の受信器(4)の測定器(45)は、前記第2の光子(P2)を増幅することによって得られる光(P20)の偏光を測定するように構成された少なくとも1つの光子検出器(455)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の受信器(4)の測定器(45)は、前記光学増幅器(40)の下流に配置された一連の半反射板を備え、前記半反射板は、増幅された光子の束(P20)を、2つの垂直軸に沿った前記束(P20)の強度および前記2つの垂直軸の間の光の位相シフトを測定するように構成された偏光測定器に向けて送る、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記光学増幅器(40)は、ドープファイバ増幅器である、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記エミッタ(2)は、複数のもつれ光子対を連続的に生成するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記エミッタ(2)と前記第1の受信器(3)と前記第2の受信器(4)との各々は、クロックを備え、前記エミッタのクロックと前記第1の受信器のクロックと前記第2の受信器のクロックとは、互いに同期される、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の受信器(4)は、前記光学増幅器(40)の前に配置され、前記第1の光子が所定の時間間隔内に前記第2の受信器に到達した後に光子を吸収または反射するように構成されたスイッチ(50)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
1つまたは複数のもつれ光子対を生成することができる第2のエミッタ(22)を備え、前記第2のエミッタは、前記第1の受信器(91)よりも前記第2の受信器(92)の近くに位置する、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のシステムを使用する量子通信方法であって、
前記エミッタ(2)からもつれ光子対を生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子(P1)が第1の受信器(3)に向かって放出されるのと同時に前記もつれ光子対の第2の光子(P2)が第2の受信器(4)に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子はもつれており、前記第2の受信器(4)が、前記エミッタ(2)から前記第1の受信器(3)よりも離れて前記第2の光子(P2)の第2の伝播経路(D2)上に位置することによって、前記第2の光子は前記第2の受信器により遅く到着する、ステップと、
偏光修正器(32)を使用することによって、前記第1の光子(P1)が前記第1の受信器(3)に到着するときの前記第1の光子(P1)の偏光状態を、伝送される情報に応じた偏光状態に修正するステップであって、該偏光状態が、一方の対の偏光方向が他方の対の偏光方向と45°をなす厳密に2つの垂直直線偏光対を除く、少なくとも2つの相補的吸収偏光対から選択される、ステップと、
吸収器(35)を使用することによって、選択された相補的吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において前記第1の光子を吸収するステップと、
前記第2の受信器(4)において、増幅デバイス(40)を使用することによって、前記第2の光子(P2)を複製して増幅された光子の束(P20)を形成するステップであって、前記光子の束(P20)は、前記第2の光子(P2)の偏光状態を維持している、ステップと、
前記光子の束(P20)の平均偏光状態を測定し、測定値に応じて前記第1の光子(P1)の偏光状態を決定し、前記第1の光子の偏光状態から、前記第1の受信器(3)によって伝送される情報を推定するステップと、を含む方法。
【請求項17】
前記相補的吸収偏光対は、少なくとも3つの異なる吸収偏光対から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記相補的吸収偏光対は、少なくとも210対の異なる吸収偏光、特に偏光の偏光方向において9°おきに離間され、9°おきに位相シフトされた偏光から選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記エミッタ(2)によって複数のもつれ光子対が連続的に生成され、各光子対は、前記第1の受信器(3)から前記第2の受信器(4)に情報を伝送する、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
光子の束によって前記エミッタ(2)から前記受信器(4)に伝送される情報が傍受されていないことが、
前記第2の受信器(4)が、前記情報を伝達した光子の受信日と、各光子が受信されたときの前記2つの相補的偏光の偏光状態を指定する相対偏光との第1のリストを作成するステップと、
前記第2の受信器(4)が、前記第1のリストを含むメッセージを生成し、前記第1のリストの電子シグネチャを作成し、前記第1のリストおよび前記電子シグネチャを前記第1の受信器(3)に伝送するステップと、
前記第1の受信器(3)が、前記第1のリストおよび前記電子シグネチャを受信し、次いで前記電子シグネチャを検証するステップと、
前記第1の受信器(3)が、前記第1の受信器(3)および前記第2の受信器(4)によって受信された光子の相対偏光が等しい場合、またはそれぞれ異なる相対偏光を有するもつれ光子対が前記第1の受信器(3)に到達していない場合について前記第1のリストの要素からなる第2のリストを作成するステップと、
各光子が各受信器に到達したときのもつれ光子対に限定した前記第2のリストの要素の数が、各光子が各受信器に到達したときのもつれ光子対に限定した前記第1のリストの要素のカウント数に所定の比を掛けた積よりも小さい場合、前記情報が傍受されずに伝送されたと宣言するステップと、
を実施することによって検証される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記情報が傍受されずに伝送されたと宣言された場合、次いで、前記第1の受信器(3)によって前記第2のリストが前記第2の受信器(4)に送られ、次いで、前記第1の受信器(3)によって第3のリストが作成され、前記第3のリストは、前記第1のリストには掲載されるが前記第2のリストには掲載されない光子の相対偏光からなり、
前記第2の受信器(4)によって前記第2のリストが受信され、前記電子シグネチャが検証された後、前記第2の受信器(4)において、前記第1のリストおよび前記第2のリストを使用して前記第3のリストが再作成され、次いで、前記第2のリストが首尾よく受信されたことを確認するサインされたメッセージが、前記第2の受信器(4)によって前記第1の受信器(3)に送られ、
前記第2の受信器(4)が、前記第3のリストを前記第1の受信器(3)との共有鍵として使用し、前記第2の受信器によって伝送された前記メッセージが前記第1の受信器(3)によって受信されると、前記第1の受信器(3)が、前記第2の受信器(4)とのやり取りにおいて前記第3のリストを共有鍵として使用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
偏光フィルタ(46)が、前記第2の受信器(4)の上流に配置される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から15のいずれか一項に記載のシステムを較正し、前記第2の受信器に到達する光子の偏光状態を、もつれ光子が前記第1の受信器によって吸収された偏光状態の関数として決定するための方法であって、
エミッタ(2)からもつれ光子対を生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子(P1)が第1の受信器(3)に向かって放出されるのと同時に、前記もつれ光子対の第2の光子(P2)が第2の受信器(4)に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子の偏光状態がもつれている、ステップと、
所定の偏光対における第1の光子を前記第1の受信器において吸収し、各光子が吸収されたときの2つの偏光状態のうちの一方を記憶し、それぞれ異なる偏光状態の各々について所定数の偏光状態が観測された直後に前記エミッタによって光子を送ることを停止するステップと、
前記第2の受信器(4)において、増幅デバイス(40)を使用することによって、前記第2の光子(P2)を複製して増幅された光子(P20)の束を形成するステップであって、増幅された各光子(P20)は、前記第2の光子(P2)の偏光状態を維持している、ステップと、
増幅された光子の各束の偏光状態として偏光方向および位相シフトを測定し、測定値および受信時間を記憶するステップと、
記憶された偏光状態および受信時間のリストを前記第1の受信器から前記第2の受信器に伝送するステップと、
前記第1の受信器において受信された光子に対応しない光子を前記第2の受信器において受信された光子のリストから削除し、前記第1の受信器において受信された光子のリストから、対応する光子が前記第2の受信器において受信されていない光子を削除するステップと、
前記第1の受信器において相補的偏光の光子として検出され且つもつれ光子が前記第2の受信器に到達している2つの光子の偏光状態の情報と、前記第2の受信器において受信された対応するもつれ光子の偏光状態の情報を用いて、前記第1の受信器において受信された光子の偏光状態から、前記第2の受信器において受信された光子の偏光状態を推定するジョーンズ行列を算出するステップと、を含む方法。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載のシステムを較正し、光子(P1)が前記エミッタから前記第1の受信器に移動する間に前記光子(P1)を失う確率を決定するための方法であって、
吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において前記第1の受信器(3)で受信された光子を吸収するように前記第1の受信器の複合吸収器(31)を構成するステップと、
複数のもつれ光子対をエミッタ(2)から連続的に生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子(P1)が、前記第1の受信器(3)に向かって放出されるのと同時に、前記もつれ光子対の第2の光子(P2)が第2の受信器(4)に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子の偏光状態がもつれている、ステップと、
各偏光状態において前記第2の受信器で受信された光子の数をカウントするステップであって、各偏光状態は、前記第2の受信器によって検出され、前記第1の受信器によって吸収されたもつれ光子の2つの偏光状態のうちの一方とは異なる、ステップと、を含む方法。
【請求項25】
請求項1から15のいずれか一項に記載のシステムを較正し、2つのジョーンズ行列を決定するための方法であって、前記2つのジョーンズ行列のうちの一方が、前記第2の受信器に到着する光子の偏光状態を前記第1の受信器において吸収される光子の偏光状態の関数として算出し、好ましくは、前記第2の受信器において観測されるそれぞれ異なる光子の量が、前記エミッタと前記第1の受信器との間の光子の伝送率の逆数の2倍よりも多く、
吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において前記第1の受信器で受信された光子を吸収するように前記第1の受信器の複合吸収器を構成するステップと、
エミッタ(2)から複数のもつれ光子対を連続的に生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子(P1)が、前記第1の受信器(3)に向かって放出されるのと同時に前記もつれ光子対の第2の光子(P2)が、第2の受信器(4)に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子の偏光状態がもつれている、ステップと、
前記第2の受信器において受信される光子の各偏光状態について、該偏光状態において前記第2の受信器に到達した光子の数をカウントするステップと、
前記第2の受信器において所定数の光子が受信されたときに光子を送るのを停止するステップと、
前記第2の受信器において最も受信された光子の2つの偏光状態を決定するステップであって、該2つの偏光状態は、前記第1の受信器における光子の吸収偏光に対応する偏光状態と見なされる、ステップと、
該2つの偏光状態を変換する2つのジョーンズ行列を算出し、前記第1の受信器において受信された光子の偏光状態から前記第2の受信器において受信される光子の偏光状態を推定するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子通信方法に関し、より詳細にはもつれ光子対を使用する量子通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報の伝送は現在、光のように短い波長を有するか、それともVHF波のように長い波長を有するかにかかわらず、基本的に電磁波を使用して行われている。
【0003】
伝送波は、金属ケーブルもしくは光ファイバによって誘導されることも、または空間を通して伝送されることもある。
【0004】
これらの方法では、波の伝播を使用してエネルギー、したがって、物理的粒子を伝送し、これらの物理的粒子が受信器によって収集され、情報項目を推定することが可能になる。これらの情報項目は、たとえば、その波長によって符号化されるか、または波列の持続時間を変調することによって符号化される。
【0005】
近年、いわゆる「量子」通信方法が開発されている。
【0006】
たとえば、光子の偏光などの光子の物理的状態が、たとえば、光ファイバを介して情報を伝送するために使用されることがある。光子の方向または偏光モードには任意に、ビットの値が割り当てられる。偏光された光子のシーケンスは次いで、メッセージを形成するバイナリシーケンスを伝送するために送られ得る。
【0007】
量子暗号の分野では、特に、情報をセキュアに伝送するためにもつれ光子対を使用することが知られている。もつれ光子とは、量子状態、たとえば、偏光同士が光子間の距離にかかわらずに互いに依存する光子である。
【0008】
この量子もつれ現象は、たとえば、非特許文献1において、実験によって何度も観測され実証されている。
【0009】
特許文献1は、暗号化された情報を伝送するためのシステムについて説明しており、このシステムでは、もつれ光子が同時に放出され、各光子が、互いに通信することを望むそれぞれに異なる位置に位置決めされた2つの目標に向かって送られる。2つの目標によって受信された光子は、共役ビットのもつれランダムシーケンスを形成し、これらのシーケンスは、暗号鍵として使用される。このシステムでは、2つの異なる位置においてほとんど同時に乱数の同じシーケンスを受信することが可能になるが、情報を伝送することは可能にならない。
【0010】
非特許文献2は、互いに通信することを望む2つの受信器に向かって送られるもつれ光子対を使用することによって情報を超光速度で伝送することを可能にする量子通信システムを開示している。光子同士がもつれ、互いに45°をなす異なる方向に沿って第1の受信器に到達する光子について直線偏光が測定される。第2の受信器では、第2の光子が増幅され、第1の光子が測定された方向を決定するために増幅された束の平均偏光が測定される。
【0011】
しかしながら、光子の偏光は、必ずしも、スピンの偏極のように2極偏光ではなく、または場合によっては4極偏光である。光子の偏光は、特に、偏光の向きおよび楕円を特徴とするジョーンズ球上で表されることがあり、具体的には、偏光は、電場が常に光子の伝播方向に垂直な軸に平行である直線偏光であるか、または電場がこの軸の周りを回転する円偏光であるか、またはこの2つの間の何らかの偏光である場合があり、電場は、伝播軸の周りの楕円として表される。偏光が円偏光ではない場合、向きは、この軸の方向を示し、離心率は、楕円の扁平率を示す。
【0012】
前述のデバイスでは、偏光のすべての形態を利用することが可能になるとは限らず、伝送することが可能な情報項目の数および種類が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1003886号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0165914号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Shasi Prabkhar et al., “Two-photon quantum interference and entanglement at 2.1 μm”, (Sci Adv, 2020)
【非特許文献2】Wang, “Superluminal telecommunication: an observable contradiction between quantum entanglement and relativistic causality”
【非特許文献3】Anastasia Visheratina, Nicholas A. Kotov, “Inorganic nanostructures with strong chiroptical activity” (CCS Chemistry 2.3 (2020): 583-604)
【非特許文献4】Wending Mai et al., “Broadband transparent chiral mirrors: Design methodology and bandwidth analysis” (AIP Advances 9.4 (2019): 045305)
【非特許文献5】Amanti et al., “les sources integrees de photons intriques au coeur des technologies quantiques” [Integrated sources of entangled photons at the heart of quantum technologies] (Photoniques, No. 91, 2018)
【非特許文献6】Smith et al., “Photon pair generation in birefringent optical fibers”, (Optics Express, Vol. 17, Issue 26, 2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
量子通信システムおよび方法、詳細には、2つの地点の間で情報項目、特に連続波を高速に準瞬間的に、かつ伝送距離に起因する遅延なしに伝送することを可能にするシステムおよび方法をさらに改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、この要件を満たし、本発明の態様のうちの第1の態様によれば、量子通信システムを使用することによってこのことを実現する。この量子通信システムは、
もつれ光子のエミッタであって、第1の伝播経路上で放出された第1の光子と、第1の伝播経路とは異なる第2の伝播経路上で放出された第2の光子とを同時に含む少なくとも1つのもつれ光子対を生成するように構成された光源を備える、もつれ光子のエミッタと、
第1の伝播経路上に配置された第1の受信器であって、厳密に2つの垂直直線偏光対のうちの一方の対の偏光が他方の対の偏光方向と45°をなす厳密に2つの垂直直線偏光対を除いて、少なくとも2つの異なる相補的偏光状態対の状態から選択される偏光状態における光子を吸収するように構成された複合吸収器を備える、第1の受信器と、
第1の光子が第1の受信器に到達した後、第2の光子によって到達されるように第2の伝播経路上に配置された第2の受信器であって、
第2の光子の偏光を維持しながら第2の光子を増幅することを可能にする光学増幅器と、
増幅器の下流に配置され、増幅された光子の平均偏光を測定することを可能にする測定器とを備える、第2の受信器と、を備える。
【0017】
本発明によるシステムは、一連の連続した値または離散した値を2つの場所の間で準瞬間的に伝送するように構成される。
【0018】
第1の光子と第2の光子がもつれているので、第1の光子が第1の受信器に吸収されると、特に第1の光子が第2の受信器に到達する前に第2の光子の偏光が準瞬間的に決定される。
【0019】
第2の受信器における増幅された光子の平均偏光を測定すると、第1の光子が吸収された偏光状態を検出し、その偏光状態から、伝送された情報を推定することが可能になる。
【0020】
したがって、このシステムでは、通信することを望む2つの場所の間の距離にかかわらず、遅延時間なしに、かつほとんどエネルギーを必要としない光子のみを使用することによって、情報を伝送することが可能になる。
【0021】
システムは、たとえば、特に、衛星または宇宙船などの、地球から遠く離れたシステムと通信するために、地球上、空中、および/または宇宙空間内の通信ネットワークおよびコンピュータネットワークに使用される。
【0022】
ジョーンズ偏光
「相補的偏光状態」という用語は、以下では「相補的吸収偏光状態」とも呼ばれ、2つの偏光状態を意味するものであり、四分の一波長板を含む線形光学素子、特に鏡、複屈折板および/または複屈折プリズムによって光の偏光を修正することによって、一方の偏光状態では、第1の偏光フィルタによる光の吸収が可能になり、他方の偏光状態では、第1のフィルタが吸収することのできる偏光に直交する偏光に沿った第2の偏光フィルタによる光の吸収が可能になる。
【0023】
以下では、「偏光状態」という用語と「偏光」という用語が交換可能に使用される。
【0024】
第1の受信器は、有利には、第1の受信器のユーザが、ジョーンズ形式によって定義されるようなあり得る偏光のうちのいずれか、特に偏光の向きおよび楕円によって特徴付けられる楕円(elliptical)(「楕円体(ellipsoidal)」とも称される)偏光のセットから、光子が吸収される偏光状態を選択することができるように構成される。
【0025】
光子が第1の受信器によって吸収される偏光は、一連の情報項目を第2の受信器に伝送するように変化させられ得る。
【0026】
たとえば、たとえば、互いに9°の間隔おきに配置された10個の異なる偏光方向、および同じく互いに9°の間隔おきに配置された21個の異なる位相シフトを選択することによって、210個の異なる偏光状態が定義され得、したがって、210個の異なる信号が伝送され得る。
【0027】
たとえば、受信器に到達するもつれ光子対の各々について、大文字または小文字のアルファベット、数字、およびある数の他の特殊文字が伝送されてもよい。
【0028】
複合吸収器
「複合吸収器」という用語は、第1の光子によって到達され、ある数の相補的偏光対から相補的偏光対を決定し、所定の対の2つの偏光状態のうちの一方における第1の光子を吸収することを可能にするアセンブリを表す。
【0029】
好ましくは、第1の受信器の複合吸収器は、所定の相補的偏光対の一方の状態における光子を吸収するように構成され、この状態は、少なくとも3つの異なる相補的偏光対の状態、好ましくは、上記で説明したように、伝送されるそれぞれに異なる値の数に応じて選択されるいくつかの異なる相補的偏光対から選択される。
【0030】
好ましくは、複合吸収器は、
相補的偏光対、たとえば、2つの直交直線偏光の2つの状態のうちの一方または他方における光子を吸収することを可能にする少なくとも1つの吸収器と、
前記吸収器の上流に配置され、第1の光子の偏光を、前記吸収器が光子を吸収する選択された偏光に変換するように構成された偏光修正器とを備える。
【0031】
「選択された偏光」という用語は、伝送される情報に従って事前に決定された相補的偏光対を意味することが意図された語である。
【0032】
偏光修正器
光子の直線偏光は、第1に、光子の偏光の向きを直線偏光および既知の方向を用いて修正し、したがって、電場を軸xと軸xに垂直な軸yとの間に所定の方法で分散させ、次いで第2に、2つの垂直な方向のうちの一方、たとえば、軸yに沿って電場の位相を修正することによって、ジョーンズ形式によって表されるような楕円偏光に変換され得る。
【0033】
偏光修正器は、好ましくは、偏光位相修正器の上流に配置された偏光方向修正器を備える。
【0034】
たとえば、θが直線偏光の回転角であり、φが軸yに沿った位相シフトであり、が波の角周波数である場合、回転後の電場成分EおよびEは、
Ex = E cos (θ) cos (ωt)
Ey = E sin (θ) cos (ωt)によって表され、
位相シフト後の電場成分EおよびEは、
Ex = E cos (θ) cos (ωt)
Ey = E sin (θ) cos (ωt+φ)によって表される。
【0035】
偏光方向修正器
直線偏光方向は、様々な方法、たとえば、半波長板または代替として二重四分の一波長板によって修正されてもよい。
【0036】
偏光方向修正器は、第1の光子の伝播経路上に連続的に配置された2つの四分の一波長板を備えてもよく、2つのプレートの少なくとも一方の向きは可変である。
【0037】
第1の四分の一波長板は、たとえば、直線偏光を円偏光に修正し、第2の四分の一波長板は、たとえば、円偏光を、方向が第2の四分の一波長板の軸の方向に依存する軸に沿って向きを定められる直線偏光に変換する。
【0038】
したがって、この第2のプレートの軸の回転によって、光子の直線偏光の方向を修正することが可能になる。プレートが半波長板である場合、この前記半波長板の回転によって、光子の直線偏光の方向を修正することが可能になる。
【0039】
代替として、第1の四分の一波長板の向きが修正され、第2の四分の一波長板の向きが固定されてもよく、または両方の四分の一波長板の向きが修正されてもよい。
【0040】
四分の一波長板または半波長板の回転は、たとえば、センサセンサもしくは電気的に調整されたデバイスへの機械的な従動によって得られ、電気的に調整されたデバイスは、たとえば、圧電材料またはたとえば、直流電流で動作する電気モータデバイスによって運動するように設定された回転軸上の摩擦によって波長板を回転させることを可能にする。
【0041】
代替として、直線偏光を回転させるための複数のデバイスが使用されてもよく、各デバイスは、たとえば、固定されるが、修正可能である可能性が高い異なる回転角度を許容し、セレクタが、これらのデバイスのうちの1つに光子を送り、前記回転デバイスの出口において、前記光子を共通の導波管に向けて導くか、または共通の透過軸に導くことを可能にする。
【0042】
これらのセレクタは、ミラーを備えてもよく、ミラーの軸の方向は、たとえば、電気デバイスによって調整され、または代替として、セレクタは、屈折率が電場に依存する材料製のプリズムもしくはプレート、たとえば、ポッケルスセル、または非線形屈折率を有する透明材料、またはたとえば、横方向光束であり、好ましくは光子の波長とは異なる波長を有し、この光子の波長と同じ波長を有する光子を生成することができない別の光束からなってもよい。別の光束は、前記非線形材料の屈折率を変化させ、したがって、前記材料からの光子出射場所、場合によっては、前記材料からの光子の出射方向を調整する。四分の一波長板の回転慣性は高い場合があるので、光子は、たとえば、上記で説明した機械的回転デバイスのうちの1つによって方向が事前に調整されるそれぞれに異なる四分の一波長板に連続的に送られ得、したがって、2回の光子通過の合間にこれらの四分の一波長板の各々の方向を修正する時間が見込める。
【0043】
変形形態として、キラル材料または回転材料が、直線偏光方向を修正するために使用されてもよい。
【0044】
偏光方向修正器は、波がキラル材料もしくは回転材料に入射する位置に応じた角度だけ偏光の回転を誘発させる前記キラルまたは回転材料製のプレートまたはプリズムを備えてもよい。この材料は、特に、2つのポッケルスセルの間に配置されてもよい。
【0045】
第1の光子は、ポッケルスセルを形成する第1のプレートまたは第1のプリズム上に投射されてもよく、光子の屈折率は、光子が第1のプレートまたは第1のプリズムからそれぞれに異なる位置に出射し、特に、中間プレートまたはプリズム上に出射するように電場によって制御され、中間プレートまたはプリズムは、波が、ポッケルスセルを形成する第2のプレートまたは第2のプリズムに入射する前に中間プレートまたはプリズムに入射する位置に依存する角度だけ光子の電気分極軸を回転させるキラルまたは回転材料で少なくとも部分的には作られ、光子の屈折率は、光子が、第1のプレートまたはプリズムの屈折率と第2のプレートまたはプリズムの屈折率がどちらも固定値を有する場合と同じ方向に出射するように第1のプレートまたは第1のプリズムの屈折率に対して対称的に調整される。屈折率が同じく、たとえば電気的に調整され得る第3のプレートが有利には、プレートおよびプリズムのセットからの光子の出射位置を、第1のプレートまたはプリズムについて選択される屈折率から独立させるのを可能にするように第2のプレートまたはプリズムの後に配置される。
【0046】
中間材料製のプレートまたはプリズムはたとえば、同じ屈折率を有するが異なるキラルまたは回転力を有する2つの隣接した対称的なプリズムで構成され、2つのプリズムのうちの第1のプリズムは、たとえばキラルな力または回転力を有し、第2のプリズムは、キラルな力または回転力を有さず、または代替として、第1のプリズムによって課される回転と反対方向に電場を回転させる。
【0047】
2つの中間プリズムのうちの一方は、非特許文献3に記載されたように、キラル材料、たとえば、直径が約1.4~2.4nmのセレン化カドミウムのナノ粒子を含んでもよく、他方の中間プリズムは、好ましくはキラルではなく、または代替として、前記第1の中間プリズムのキラリティとは逆のキラリティを有する。キラル材料を通過する波の電場の回転が前記キラル材料を横切る厚さに比例するので、中間プレートを通過する電場の回転は、中間プレートを通過する光によって中間プレートが入射される場所に依存する。
【0048】
2つの中間プリズムのうちの一方はさらに、各層において所定の角度だけ増分される方向に互いに積み重ねられた偶数個の四分の一波長板の重畳体などの回転材料をさらに備えてもよく、それによって、材料の第1のスライスの軸に沿って直線偏光された波がスタックから出射し、偏光がスタックの厚さに比例する角度だけ回転させられる。
【0049】
偏光位相修正器
第2のデバイスは、「偏光位相修正器」と呼ばれ、また、2つの固定軸のうちの一方に沿って所定の角度だけ光子の電場の成分を移送シフトさせるために偏光方向修正器の下流に配置されてもよい。
【0050】
好ましくは、偏光位相修正器は、ビームを、一方が第1の軸に、他方が第2の軸に沿った、直線偏光を伴う2つの電磁波に分割するように配置された第1の複屈折板またはプリズムと、第2の軸上に配置された、可変屈折率を有する遅延板と、を備える。
【0051】
「ビーム」は、光の双対性方向において第1の光子からなる光波を意味することを意図された語である。
【0052】
遅延板は、偏光場が互いに垂直な、第1の軸に沿って向きを定められた波および第2の軸に沿って向きを定められた波を、同じ軸に沿って組み合わせることを可能にする新しい複屈折板またはプリズムによって再び、第2の軸に沿って向きを定められた波が第1の軸に沿って向きを定められた波と混合される前に、第2の軸に沿って向きを定められた波に、第1の軸に沿って向きを定められた波に対する所定の位相シフトを取得させる。
【0053】
遅延板は、ポッケルスセルまたは非線形材料を備えてもよい。可変屈折率によって、第2の軸に沿って向きを定められた波に課される位相シフトを選択することが可能になる。
【0054】
第1の例示的な実施形態では、上記で説明したように、位相修正器は、-45°~+36°にわたって9°の角度間隔おきに直線偏光を回転させ、位相を-90°~+90°にわたって9°の角度間隔おきに変化させ、したがって、210個のあり得る偏光状態を画定する。以下で説明するように、210個のあり得る偏光のうちの209個の偏光は、たとえば、データを符号化するために使用され、210番目の偏光は、データを符号化するために使用された光子を受信した後所定の時間に受信される任意のもつれ光子を吸収するために使用される。
【0055】
第2の例示的な実施形態では、位相修正器は、たとえば、0を伝送するために、光子が吸収される前に偏光軸を45°回転させ、たとえば、1を伝送するために、光子の偏光を円偏光に変換する。
【0056】
第1の光子の反射
本発明は、量子通信システムに関し、量子通信システムは、
もつれ光子のエミッタであって、第1の伝播経路上で放出された第1の光子と、第1の伝播経路とは異なる第2の伝播経路上で放出された第2の光子と、を同時に含む少なくとも1つのもつれ光子対を生成するように構成された光源を備える、エミッタと、
第1の伝播経路上に配置された第1の受信器であって、
相補的偏光対の2つの状態のうちの1つにおける第1の光子を吸収するように構成された少なくとも1つの第1の吸収器であって、偏光が、第1の吸収器が光子を吸収するための観測可能な基底において不確定である、第1の吸収器と、
前記少なくとも1つの第1の器の上流に配置され、第1の光子が前記少なくとも1つの第1の測定器に向かって通過するのを可能にするか、または第1の光子が測定されるのを阻止するように構成された光学セレクタと、を備える、第1の受信器と、
第1の光子が、光学セレクタに到達した後、および/または第1の受信器の測定器に到達することができた後に、第2の光子によって到達されるように第2の伝播経路上に配置された第2の受信器であって、第2の光子の偏光を維持しながら第2の光子を増幅することを可能にする光学増幅器と、増幅器の下流に配置され、増幅された光子の平均量子状態を測定するのを可能にする測定器とを備える、第2の受信器と、を備える。
【0057】
「観測可能な基底」は、2つの相補的偏光、たとえば、2つの直交直線偏光の基底を指す。
【0058】
「観測可能な基底において不確定な偏光」という用語は、観測可能な基底の2つの所定の偏光のうちの一方において観測された偏光が定義されておらず、すなわち、ランダムであり、たとえば、各偏光についての確率が等しい。
【0059】
第1の光子と第2の光子がもつれているので、第1の受信器において第1の光子が吸収されると、第2の光子が第2の受信器に到達する前に瞬間的に第2の光子の偏光が決定される。
【0060】
第2の受信器において増幅された光子の偏光を測定すると、第1の光子が吸収されたか否かを検出し、そのことから伝送された情報を推定することが可能になる。このシステムによって伝送される情報は、たとえばバイナリタイプの情報である。
【0061】
第1の受信器は、少なくとも1つの第2の吸収器を備えてもよく、光学セレクタは、第1の器および第2の器の上流に配置され、第1の光子が通過するのを可能にする一方で、第1の光子を器の一方または他方に向けて送るかまたは第1の光子が吸収されるのを阻止するように構成される。
【0062】
2つの器を使用すると、3つの異なる情報項目、たとえば、0、1、および2を伝送することが可能になり、値0は、たとえば、反射に割り当てられ、値1は、第1の器に割り当てられ、値2は、第2の器に割り当てられる。
【0063】
光学セレクタ
第1の受信器の光学セレクタは、様々なタイプであってもよい。光学セレクタは有利には、偶発的な光子が測定器に到達するのを阻止することが望まれる場合、阻止が可能になるように測定器の上流に配置される。
【0064】
この目的のために、セレクタは、好ましくは、第1の光子をその入射伝播経路とは異なる伝播経路、特に測定器を含まない伝播経路上で反射することを可能にする反射板、特に制御ミラーを備える。
【0065】
「制御ミラー」は、いくつかの特性、たとえば、屈折特性または反射方向が、ミラーに接続された補助デバイス、特に電子デバイス、たとえば、電場を生成する電子デバイスによって制御されるデバイスを指す。
【0066】
光学セレクタは、好ましくは、屈折率および/または反射方向が制御され、特に電場もしくは光束を使用することによって制御されるデバイスを備える。
【0067】
代替として、光学セレクタは、たとえば、ブラッグミラー、特に、反射方向が圧電材料によって調整されるブラッグミラーを備え、圧電材料自体は、電場によって制御される。
【0068】
変形形態として、光学セレクタは、プリズム、特に、屈折率が電場によって制御されるポッケルスセルを備え、電場を印加すると、光子を測定器もしくは測定器のうちの1つに向けて送るかまたはブラッグミラーに向けて送ることが可能になり、ブラッグミラーは有利には、それに到達する電磁波の入射方向に対して傾斜しており、それによって、前記波は、波がプリズムの出口に来るときの位置とは異なる位置に向かって反射される。
【0069】
別の変形形態では、光学セレクタは、1つのブラッグフィルタまたは連続したブラッグフィルタを備え、ブラッグフィルタのいくつかの層は、屈折率が電場によって制御されるポッケルスセルであり、前記ブラッグフィルタは、電場が印加されるか否かに応じて、光波を反射するか、または光波が通過するのを可能にする。
【0070】
代替として、上記で使用されるポッケルスセルは、光子が通過する媒体の屈折率を変化させる強力な光によって照明される非線形結晶で置き換えられてもよく、強力な光の波長は、好ましくは、光子の波長とは異なる。
【0071】
光学セレクタは、特に光子を3つに異なる方向に向きを定めることを可能にし、この1つの方向は、たとえば、光子が検出されないようにするのを可能にし、第2の方向は、光子の直線偏光を測定するのを可能にし、第3の方向は、円偏光を測定することを可能にする。
【0072】
保護デバイス
好ましくは、量子通信システムは、少なくとも1つの光子の量子状態を保護するためのデバイス、特に、少なくとも1つの光子の測定または吸収を阻止するデバイスをさらに備え、デバイスは、第1の光子が反射した後に第1の光子の量子状態を保護することを可能にするように第1の受信器に近接して配置され、第1の光子が1つまたは複数の測定器によって吸収または測定されるのを阻止し、第1の光子の前記量子状態は、少なくとも第2の光子が第2の受信器において増幅されるまで保護される。
【0073】
量子状態を保護するためのデバイスは、第1の光子が、観測されないように光学セレクタによって第1の光子の入射伝播経路から反射および/または逸らされるとき、すなわち、第1の光子が第1の受信器の測定器によって吸収されることが望ましくないときに、第1の光子の量子状態を保護するように第1の受信器の近くに配置される。
【0074】
好ましくは、量子状態を保護するためのデバイスは、透明な空間、特に透明な空間および少なくとも1つのミラーを備える。透明な空間は、空であっても、または気体もしくは液体で充填されてもよい。
【0075】
好ましくは、デバイスは、上記で説明したような適切な長さの経路上に、すなわち、第2の受信器に到達した第2の光子が第2の受信器において増幅されるのにかかる時間に対応する長さの経路上に、デバイスが受信した光子を捕捉するように透明な空間に対して配置された複数のブラッグミラーを備える。
【0076】
変形形態として、保護デバイスは、第1の光子が、第2の受信器に到達した第2の光子が第2の受信器において増幅されるのを待つ間第1の光子を光ファイバ内を循環させるのを可能にする長さを有する光ファイバを備える。
【0077】
別の変形形態では、デバイスは、空であるかまたは気体で充填された空間または大気の一部分であってもよく、光を反射または吸収する物体がこの部分を通過することはない。
【0078】
第1の光子を吸収するための器
第1の受信器において、第1の光子は、相補的偏光対の2つの状態のうちの一方において少なくとも1つの吸収器によって吸収され得る。
【0079】
好ましくは、吸収器は、第1の光子を少なくとも1つの光子検出器に向けて、特に第1の光子の偏光状態に応じて2つの光子検出器のうちの一方または他方に向けて、送ることを可能にする少なくとも1つのフィルタを備え、フィルタは、好ましくは、複屈折材料製のプリズムまたはプレートである。
【0080】
吸収器は、偏光フィルタと、前記偏光フィルタの後に位置する光子検出器とをさらに備えてもよい。
【0081】
吸収器は、非特許文献4に記載されたように、円偏光された光子が第1の光子検出器に向かって反射し、他の光子が第2の光子検出器に向かって通過することを可能にする半透明ミラーをさらに備えてもよい。
【0082】
光子の放出
光子対エミッタ
好ましくは、エミッタは、非特許文献5に記載されたように、自発的パラメトリック下方変換器(SPDC)によって、すなわち、「ポンプ」光子とも呼ばれる初期光子が、2つに分割され、その周波数が、非線形屈折率を有する光学媒体における四光波混合現象によって半分にされるプロセスに従ってもつれ光子対を生成する。
【0083】
この種の光子対エミッタは、もつれが比較的堅固な光子を生成することを可能にするが、場合によっては一度に2つ以上の光子対を生成する欠点を有し、このことは、制御されないので望ましくない。以下で説明するように、これらの「寄生性の」複数の対に対処するために補助デバイスが実装されてもよい。
【0084】
変形形態として、量子ドットを含むエミッタが、上記で引用した論文に記載されたようにもつれ光子対を生成するために使用されてもよく、それによって、対をより規則的に取得することが可能になる。それにもかかわらず、そのような方法を用いて取得される光子のもつれ特性は、安定しない場合がある。
【0085】
非特許文献6に記載されたように、複屈折結晶製の光ファイバが使用されてもよい。
【0086】
好ましくは、エミッタは、複数のもつれ光子対を連続的に生成するように構成される。
【0087】
もつれ光子は、エミッタの出口において第1の伝播経路および第2の伝播経路上で様々な方法で送られてもよい。
【0088】
所定の偏光における放出
光子は、好ましくは、所定の偏光において放出される。「所定の偏光」という用語は、所定の相補的偏光対の2つの状態のうちの一方、たとえば、特定の方向を有する直線偏光を意味することを意図している。複屈折板は、たとえば、2つのもつれ光子対の垂直または水平直線偏光に応じてもつれ光子を分離してもよい。
【0089】
受信器の各々に送られたもつれ光子の所定の偏光によって特に、任意の選択された相補的偏光対についての一方の偏光またはその補助偏光における状態の確率を知ることが可能になる。
【0090】
したがって、受信器によって前記光子の受信時に一連のランダムビットを生成することが可能である。前記一連のランダムビットは、2つの受信器において相補的であり、第2の受信器において受信される光子の偏光は、第1の受信器において観測される偏光と相補的な偏光である。
【0091】
所定の偏光はまた、第1の受信器において四分の一波長板を使用して第1の光子の偏光方向を回転させるときに必要である。
【0092】
所定の直線偏光に沿って光子を放出するには、光学指数が、2つの光子のうちの少なくとも一方が通過するための光偏光軸に依存する、光学的に透明な複屈折材料、たとえば、ニオブ酸リチウムまたはルチル(TiO)を含むプレートまたはプリズムが、たとえば、エミッタの出口に配置される。
【0093】
したがって、この光子は、直線偏光に応じて、プリズムから2つの異なる位置のうちの一方において出射する。
【0094】
もつれ光子の光源が2つの光子を同じ方向に、光学的に透明な複屈折材料の常軸に垂直な軸に沿って放出する場合、第1の光子は、第1の受信器に送られるように、電場が光学的に透明な複屈折材料の常軸に平行な電磁波が出射する位置におけるプリズムの出口において収集される。
【0095】
同様に、場が常軸に垂直である電磁波が出射する位置から出射する第2の光子は、第2の受信器に向けて送られるように収集される。
【0096】
2つのもつれ光子がエミッタからそれぞれに異なる位置および/またはそれぞれに異なる方向に生成される場合、2つの光子の各々を複屈折プリズムの各々の常軸に垂直な方向において複屈折プリズム上に投射し、各光子の方向をその光子を対象とする受信器に向かう方向に変更することが可能であり、プリズムのそれぞれに異なる位置から出射する光子は、好ましくは、吸収性表面上に投射されることによって失われるかまたは破壊される。
【0097】
たとえば、第1のもつれ光子には、第1の軸に平行な直線偏光を伴って第1の複屈折板または第1の複屈折結晶から出射する光子を使用し、第2のもつれ光子として、第2のプレートまたは第2のプリズムに使用される結晶の第1の軸に平行な直線偏光を伴って出射する光子を使用することが可能であり、第2のプレートまたは第2のプリズムは、第1の軸に平行な方向を伴って第1のプレートまたは第1の複屈折プリズムから出射する光子ともつれた光子の偏光に対応する所定の偏光に沿って光子が出射することを可能にするように調整されている。
【0098】
受信器に向かう前記光子の移送を容易にするために、前記光子の直線偏光を円偏光に変換する複屈折遅延板が好ましくは、光子がプリズムから出射する位置の出口に配置される。
【0099】
その場合、別の複屈折遅延板が好ましくは、光子の円偏光を直線偏光に再変換するために受信器の各々の入口に配置され、このように直線偏光に変換されることによって、偏光軸を厳密に調整することが可能になる。
【0100】
光子の伝送
光子は、空間を通し、大気、光ファイバ、またはこれらの手段の組合せを通じてエミッタから受信器に向かって伝送され得る。
【0101】
レンズが、光子の伝送、特に空間または大気を通した伝送に使用されてもよい。好ましくは、適切な反射防止層が前記レンズ上に配置される。使用されるレンズのサイズは、好ましくは、光子が空間または大気を通して伝送される長さに一致する。
【0102】
エミッタにおいて放出された光を反射する共役ミラーが、共役光子を空間または大気を通して伝送するための共役光子の放出方向を調整するために使用され得る。レーザ光エミッタはたとえば、空間内の受信器を検出するために空間を走査し、受信器が、放出された光をレーザ光エミッタに反射し、次いで、共役光子の方向が、共役ミラーによって反射された光の方向に平行になるかまたは光の方向と一致するように調整される。
【0103】
レーザ光エミッタによって放出される光は、もつれ光子の波長に近い波長を有してもよく、ダイクロイックプリズムを通して、光子によって使用される対物レンズに導入されてもよい。
【0104】
変形形態として、波長がもつれ光子の波長と同じである場合、光は、前記光子が直線偏光を有するときには複屈折プリズムを通して導入され、誘導に使用される光の偏光は、同じ受信器に向かって送られるもつれ光子対の偏光に垂直である。受信器の上流のポッケルスセルは、誘導光が到着したときに光を共役ミラーに向けて誘導するために使用され得る。
【0105】
別の変形形態では、観測に使用される光波は、もつれ光子に平行に放出されるが、共役ミラーによって反射されるように、たとえば、数センチメートルの距離だけ分離されてもよい。
【0106】
別の変形形態では、共役ミラーを使用せず、それにもかかわらず受信器または受信器の近くの目標を観測することが可能であり、目標の受信のために従う情報は、別の通信手段、たとえば、無線信号または量子伝送によって通信される。
【0107】
走査されるゾーンは、前記受信器が位置する可能性が高いゾーンのマッピング調査によって特定されてもよい。
【0108】
前述の位相修正器はさらに、特に地球または衛星の回転に起因して、受信器がエミッタに対して相対回転するときに、エミッタに対して固定方向に放出された光子が、受信器に対して決定された固定方向を伴って受信器の各々に入射するのを可能にするために使用されてもよい。
【0109】
較正方法
光子がその放出面から2つの受信器に至るときに通過する様々な媒体は、必ずしも必要とされず、また必ずしも予期されない光子の位相の修正を生じさせることがある。
【0110】
さらに、このような修正は、光子が第1の受信器に向かって送られるかそれとも第2の受信器に向かって送られるかに応じて異なる場合がある。最後に、これらの修正は、時間の経過につれて、特に、天候または材料の使用中の材料の温度の関数として変動することがある。
【0111】
本発明によるシステムは、第1の受信器によって、所定の相補的偏光対に属する偏光における光子を吸収させ、これらの対の各々について、もつれ光子が第2の受信器によって検出された2つのあり得る偏光のうちの一方を観測することによって周期的に較正される。
【0112】
したがって、本発明は、上記で定義されたシステムを較正し、第2の受信器に到達する光子の偏光状態を、その光子のもつれ光子が第1の受信器において吸収された偏光状態の関数として決定することを可能にするための方法にさらに関し、この方法は、
エミッタからもつれ光子対を生成するステップであって、対の第1の光子が、第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、第1の光子および第2の光子が、それらの偏光状態に関してもつれている、ステップと、
所定の偏光対における第1の光子を第1の受信器において吸収し、各光子が吸収された2つのあり得る偏光のうちの一方を記憶し、それぞれに異なる偏光の各々について所定数の偏光が観測された直後にエミッタによって光子を送ることを停止するステップと、
第2の受信器において、増幅デバイスを使用することによって、第2の光子を複製して増幅された光子の束を形成するステップであって、各増幅された光子が、第2の光子の偏光状態を維持している、ステップと、
増幅された光子の各束の偏光状態、すなわち、偏光方向および位相シフトを測定し、これらの測定値ならびにそれらの受信時間を記憶するステップと、
記憶された光子の偏光および受信時間のリストを第1の受信器から第2の受信器に伝送するステップと、
第1の受信器において受信された光子に対応しない光子を第2の受信器において受信された光子のリストから削除し、同様に、第1の受信器において受信された光子のリストから、対応する光子が第2の受信器において受信されていない光子を削除するステップと、
一方では、第1の受信器において相補的偏光における光子として検出され、もつれ光子が第2の受信器に到達している2つの光子の偏光状態の情報、他方では、第2の受信器において受信された対応するもつれ光子の偏光状態の情報を用いて、第1の受信器において受信された光子の偏光から、第2の受信器において受信された光子の偏光を推定することを可能にするジョーンズ行列を算出するステップと、
を含む。
【0113】
状態の記憶ならびにジョーンズ行列の算出は、任意の適切な電子デバイス、たとえばマイクロコントローラによって実施される。
【0114】
このように算出されたジョーンズ行列は、第1の受信器に位置する複合吸収器による第1の光子の吸収の偏光の関数として、第2の受信器において受信された第2のもつれ光子の偏光を算出することを可能にする。
【0115】
もつれ光子が第1の検出器に移動する間に吸収されている、第2の受信器に到着する任意の光子が、第2の受信器によって検出可能または識別可能である相補的偏光対の各範囲に属する確率を決定することからなる第2の較正が実施されてもよく、偏光Pの範囲は、偏光測定器によって偏光Pを有する偏光として取り入れられる偏光のセットとして定義される。
【0116】
したがって、本発明は、上記で定義されたシステムを較正し、光子がエミッタから第1の受信器に移動する間に光子を失う確率を決定することを可能にするための方法に関し、この方法は、
吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において第1の受信器で受信された光子を吸収するように第1の受信器の複合吸収器を構成することと、
複数のもつれ光子対をエミッタから連続的に生成することであって、対の第1の光子が、第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、第1の光子および第2の光子が、それらの偏光状態に関してもつれている、生成することと、
偏光の範囲の各々において第2の受信器で受信された光子の数をカウントすることであって、偏光の範囲は、第2の受信器によって検出可能であり、第1の検出器によって吸収された光子のもつれ光子の偏光の2つの範囲のうちの一方とは異なる、カウントすることと、
からなる。
【0117】
したがって、伝送の過程において光子が第1の検出器に向かって移動する間に失われる光子のもつれ光子が優先的に到着するか、または到着する確率が最も高い偏光範囲を検出することが可能であり、したがって、好ましくは、データを第1の受信器から第2の受信器に伝送するために対応する吸収偏光を使用することを回避することが可能である。
【0118】
したがって、第1の受信器における2つの吸収偏光のうちの一方に対応する偏光のうちの一方を伴って第2の受信器において受信された光子の数の間の商をとり、エミッタと第2の受信器との間の光子の伝送比を算出することが可能である。
【0119】
第2の受信器の測定器
第2の受信器の測定器は、好ましくは、第2の光子を増幅することによって生じた光の偏光を測定するように構成された少なくとも1つの光子検出器を備える。
【0120】
第2の受信器の測定器は、たとえば、光学増幅器の下流に配置された一連の半反射板を備え、前記反射板は、増幅された光子の束、すなわち、光束を、たとえば、2つの垂直軸に沿った光束の強度および/またはこの2つの同じ軸の間の光の位相シフトを測定するように構成された偏光測定器に向けて送る。
【0121】
光はまた、光ビームの断面を拡大する1つのレンズまたは一連のレンズを通過した後に様々な偏光フィルタに向かって送られ得、したがって、複数のミラーまたはレンズが、この光ビームの各部分を様々な偏光測定器に向けて送ることが可能になる。
【0122】
様々な偏光測定器は、好ましくは、
第1の軸xに沿って光の電場の成分の強度を測定し、
第1の軸xに垂直な第2の軸yに沿って光の電場の成分の強度を測定し、
軸xに沿った光と光の軸yに沿った光の間の位相シフトを測定し、
好ましくは、xおよびyの二等分線である軸x’に沿った光と軸y’に沿った光との間の位相シフトを測定することを可能にする。
【0123】
2つの垂直軸に沿った光の強度の測定は、たとえば、2つの垂直軸に沿った光を複屈折板または複屈折プリズムと、それに続いて前記複屈折板または前記服プリズムの出口に配置された2つの光強度センサによって分離することによって実施される。2つの垂直成分間の位相シフトの測定は、たとえば、2つの垂直軸に沿った光を複屈折板または複屈折プリズムによって分離し、その後、2つの軸のうちの一方に沿って偏光された波について、たとえば、回転材料もしくはキラル材料を使用するかまたは一連の四分の一波長板によってこの偏光軸を90°回転させ、次いで、一方の波が電場の回転を受けるこの2つの波を、ヤングのスリットを通してスクリーン上に共投射することによって実施され、2つの光源の干渉によって、位置が前記位相シフトに依存する縞が形成される。
【0124】
光学増幅器
「光学増幅器」は、デバイスに導入された光子、特にもつれ光子対のうちの第2の光子を複製する一方、第2の光子の偏光状態を維持することを可能にするデバイスを指す。
【0125】
好ましくは、光学増幅器はドープファイバ増幅器である。
【0126】
たとえば、長さが4mのエルビウム増幅器(EDFA)が使用されてもよく、エルビウム増幅器内に、増幅される光子が、より短い波長を有する増幅波と同時に導入され、それによって、導入された光子に対応する波を増幅することが可能になり、利得は37dB/m程度になり得る。
【0127】
エルビウム以外のドーパントを使用するドープファイバ増幅器(DFA)を採用することも可能である。
【0128】
変形形態として、光学増幅器は、たとえば、垂直共振器増幅器(VCSOA)または半導体タイプの増幅器(SOA)である。
【0129】
反射防止層
光子の損失を回避するために、反射防止層が好ましくは、異なる屈折率を有し、光子が通過する、隣接する透明媒体間の界面に配置されるとともに、光子が通過する複屈折プリズムおよび複屈折板の界面に配置され、反射防止層は、好ましくは、材料の屈折率と整合され、通過することが意図されている光子の入射角および偏光方向ならびに波長と整合される。
【0130】
ダイクロイックフィルタ
第1の受信器および/または第2の受信器は、好ましくは、所与の波長を有する光子のみが通過することを可能にする1つまたは複数のダイクロイックフィルタ、特に分散透明材料からなるプリズムを備え、このようなフィルタは、好ましくは、第1の受信器については測定器の前または光学セレクタの前に配置され、このことは、特に、非線形材料の屈折率が強力な光束を適用することによって修正される場合に当てはまる。
【0131】
同期化されたクロックを用いた光子の情報への割当て
光子が第2の受信器に到着したときに、光子が伝送される情報に割り当てられるべきかどうか、数回伝送される情報項目であるかどうか、またはもつれ光子対上に符号化されていない情報項目であるかどうかを区別することができると有用である。
【0132】
これは、光子の放出が不規則になることがあり、たとえば、上記で説明したSPDSタイプのエミッタが、望まれていないにもかかわらず2つの光子対を放出する場合があるからである。
【0133】
エミッタおよび受信器の各々は、好ましくは、クロックを備え、エミッタおよび受信器のクロックは、互いに同期化される。
【0134】
このことと、エミッタと受信器の各々との間の光子の飛行時間の情報を組み合わせることによって、好ましくは反復的な符号化および受信期間を決定することが可能になり、この期間の間に、符号化期間中に第1の受信器において光子が符号化され得、受信期間中に光子のもつれ光子が第2の受信器に到達し得る。
【0135】
受信期間中に複数の光子が受信された場合、第1の受信器は、たとえば、受信期間の終了時後の非放出時間の四分の一と次の受信期間の前の非放出時間δt’の二分の一との間に存在する瞬間まで変わらない状態を維持する。
【0136】
第2の受信器は、好ましくは、各受信期間について受信されたビットを記録する。第2の受信器は次いで有利なことに、特に、デバイスが反射を使用してビットまたはトリットを伝送する場合に、周期的に、たとえば、光子を有しない3000反復間隔または100反復間隔おきに、第2の受信器が光子を受信しなかった受信期間のリストを第1の受信器に伝送し、この期間については、伝送された光子が、失われたかまたはエミッタが光子を放出しなかった可能性があり、特にデバイスが光子検出器を有しない場合、第1のエミッタには、これらの同じ期間中に光子を反射したかどうかがわからない。
【0137】
このリストの伝送は、以下に説明する本発明による方法を使用した瞬間通信によって実施されるか、または従来の通信手段によって実施されてもよい。このリストを受信すると、第1の受信器は次いで、光子が第2の受信器に到達しなかったこれらの伝送期間に対応するビットを伝送する。
【0138】
変形形態として、第1の受信器は、情報を伝送するために、一方が直線偏光を検出し、他方が円偏光を検出する2つの異なる測定器のみを使用する。
【0139】
第1の受信器は次いで、この伝送期間について第1の受信器が伝送するビットに適切な測定器を選択する間に各ビットを再送し、好ましくは第1の受信器が光子を受信する伝送期間の終了時点までセレクタを同じ状態に維持し、セレクタが次のビットの伝送に使用される測定器を選択することを可能にする。
【0140】
第2の受信器は、伝送期間中に光子を受信する際、光子の一部を受信した場合、各伝送期間について光子の偏光状態を測定し、受信されたビットのリストに追加すべきビットを偏光状態から推定する。
【0141】
エミッタと第1の受信器との間の伝送線が特定の不透明度を有し、伝送線を通過する光子のうちの特定の割合を吸収し得る場合、いくつかの光子は、受信期間中にランダム偏光を伴って第2の受信器に到着する場合がある。
【0142】
第2の受信器は、その場合、第1の受信器において吸収または反射されるもつれ光子の偏光状態ではあり得ない偏光状態で到着する光子の少なくともいくつかを認識するように構成されてもよい。
【0143】
クロックのずれ
好ましくは、システムの構成要素、すなわちエミッタおよび2つの受信器の構成要素であるクロックは、それぞれに異なる位置、特に各構成要素のそれぞれに異なる高度においてそれぞれに異なるように時間切れになる現象を考慮するように構成される。
【0144】
受信器間の伝送期間の同期
第1の受信器および第2の受信器がそれらのクロックを同期化することを可能にする方法が実装されてもよい。
【0145】
たとえば、第1の光子を測定する際、第1の受信器は、それ自体のクロックを使用して、前記光子が測定器に当たった時間を記録する。
【0146】
その後、記録された時間、ならびに伝送間隔の参考情報、特に開始時間、および場合によっては光子が到着することが予期された持続時間が、第2の受信器に伝送される。
【0147】
第2の受信器は、それ自体のクロックを調整するために第2の光子の受信時間を記録し、それによって、伝送期間の開始時点と第1の光子が第1の受信器の測定器に当たった時間との間のずれは、第2の受信器における第2の光子の受信期間の開始時点と第2の光子の受信についてクロックによって与えられる時間との間のずれと同じになる。
【0148】
エミッタと受信器の一方または他方との間の伝送線がいくつかの光子を吸収する場合、エミッタは、光子を所定数だけ、または所定の持続時間にわたって送ってもよく、2つの受信器の各々は、各光子の平均受信時間を記録してもよく、その場合、一方の受信器は、この前記平均時間を他方の受信器に通信してもよい。
【0149】
平均時間は、各光子の受信時間の平均または最初に受信された光子および最後に受信された光子のみの平均をとることによって算出されてもよい。送られる光子の所定数または光子を送る持続時間は、好ましくは、特にエミッタと受信器との間の2つのルート上の各ルート上の各光子の伝送/喪失比、および光子の平均送信周波数の関数として調整される。
【0150】
エミッタと受信器の各々との間の光子の移動時間は異なる場合があるので、各受信器間のクロックの同期は、一方向における情報の伝送が関与するか、それとも他方の方向における情報の伝送が関与するかに応じて異なる場合がある。その場合、各受信器は、他方の受信器から来る情報を受信するために同期化されるクロックの時間をクロック時間から推定するために、同期化中に調整される経過時間を用いて前記受信器のクロック時間を増分させるか、または逆にクロック時間から経過時間を減算するために使用される同期レジスタを有してもよい。
【0151】
エミッタと受信器との間の伝送
光子を受信器に送る期間と受信器における受信期間を同期化させることを可能にする方法が実装されてもよく、これらの期間は、光子がエミッタから離れるかまたは受信器に到達することができる時間間隔である。
【0152】
この目的のために、エミッタは、短い光信号を放出し、その後またはその前に、メッセージを形成する他の光信号を放出してもよく、これらの他の光信号は、好ましくは、信号を送った、エミッタのクロック上の厳密な時間を示すデジタルシグネチャによってサインされる。
【0153】
前記光信号を受信すると、受信器は、受信時間を記録し、次いで、信号の送信時間を読み取り、信号を送った時間と、信号が送られた光子の伝送期間の開始時間との間の差分をとるか、または信号が伝送期間外に送られた場合、先行する伝送期間の開始時点をとり、信号の受信時間および受信期間の開始時間にも同じことを行う。
【0154】
信号の放出日と伝送期間の開始時点との間の差分が、受信日と受信期間の開始時点との間の差分よりも大きい場合、受信器は、伝送期間の開始時点を進めてもよく、または逆の場合には伝送期間の開始時点を遅らせてもよい。
【0155】
この較正は有利には、数回繰り返され、結果が平均され、それによって、前記信号の送受信時間の不正確さよりも高い精度でクロックを調整することが可能になる。
【0156】
光信号に使用される波長は、好ましくは、もつれ光子の波長と同じであり、それによって、光信号をもつれ光子と同じ速度で伝送することができる。
【0157】
同期クロックを用いない光子の情報への割当て
同期化クロックの変形形態として、第1の受信器は、検出送信器と、待機要素、たとえば、検出送信器によって検出可能な偏光とは異なる所定の偏光を伴う第1の光子を反射するように構成された反射板、または代替として、検出送信器の偏光とは異なる所定の偏光における光子を吸収するように構成された要素とを備えてもよい。
【0158】
検出送信器の偏光は、好ましくは、吸収性待機要素に向かって送られる任意の光子が吸収されるように相補的である。
【0159】
検出送信器は、好ましくは、少なくとも4つの異なる偏光における光子の偏光を検出するように構成され、これらの偏光は、相補的対としてグループ分けされ、したがって、検出送信器に向かって送られたいずれの光子も、その初期偏光にかかわらず検出され吸収される。
【0160】
第1の受信器の検出送信器は、使用される送信器対を選択することによって情報を送るために使用される。
【0161】
情報項目を送るために使用された光子の受信後の、「休止期間」とも呼ばれる所定の期間の間に第1の受信器によって受信された各光子は、待機要素に送られ、この所定の期間の持続時間は、固定され、好ましくは、受信器のクロック不正確度の2倍よりも長く、この休止期間の開始時点は、センサまたは2つのセンサのうちの1つが、情報を送るために使用された光子を吸収することによって決定される。
【0162】
第2の受信器は、好ましくは、一方では、
待機要素に向かって送られた光子と対にされた光子を無視し、他方では、
待機要素に向かって送られた光子と対にされていない2つの連続する光子が、少なくとも、クロック不正確度が減算される休止期間から分離されている場合、これらの光子を連続ビットとして解釈し、最後に、
休止期間の四分の三以下の時間内に連続的に受信された2つの光子を、たとえば、同じビットを表す光子として解釈するように構成される。
【0163】
したがって、第2の受信器は、待機要素に向かって送られた光子と対にされていない、それぞれに異なる偏光を伴う2つの連続的な光子が、休止期間から受信器のクロック不正確度を減算した時間よりも短い時間内に受信された場合に情報の伝送におけるエラーを検出し得る。
【0164】
この方法は、もつれ光子の放出を制限するためにエミッタにスイッチを配置することも、クロック同期化も必要としないという利点を有する。
【0165】
したがって、第1の受信器の検出送信器は、特に、第1の受信器の検出送信器が光子を検出する偏光が、調整可能であり、したがって、光子を吸収するために待機要素によって使用される偏光に調整することができる場合には、待機要素と同時に使用されてもよい。
【0166】
ノイズ防止デバイス
光学増幅器には、増幅器媒体の分子または原子がポンプ信号によって励起された後の、信号を増幅する間、または信号が存在しないときのいずれかに、偏光信号と逆方法に光子を放出する傾向がある。
【0167】
第2の受信器は、たとえば、光学増幅器によってデバイスのもつれ光子源に向かって放出される光子の数を制限するために光学増幅器の前に配置されたスイッチを備える。
【0168】
第2の受信器のスイッチは、たとえば、第1の光子が所定の時間間隔内に前記第2の受信器に到達した後に光子を吸収または反射するように構成される。
【0169】
第2の受信器のスイッチは、第1の光子が到着した後、次の光子が到着することが予期される時間まで、または次の光子が到着することが予期される瞬間よりも前の所定の時間の間、たとえば、上記で定義された休止期間の二分の一の時間の間、光子が一方の方向または他方の方向にのみ通過するのを可能にするように第2の受信器の測定器に接続されてもよい。
【0170】
代替として、第2の受信器のスイッチは、光子が到着することが予期される期間の間、特に前述の光子の処理時間間隔の間にのみ通過することを可能にしてもよい。
【0171】
低透明度を有する光伝送手段を使用する、同期化クロックを用いない情報への光子の割当て
光ファイバは、透明であるが、光ファイバの入口において提供されるすべての光子を伝送するとは限らない。1キロメートル当たり0.20dBだけ喪失するのが一般的であり、たとえば、50kmにおいて10dB、すなわち、光子の90%を失う。
【0172】
しかし、光子がエミッタと第1の受信器との間を移動する際に光子を失うことの影響は、光子が第2の受信器に向かって移動する間に光子を失うことの影響とは異なり、エミッタと第1の受信器との間で失われる光子のもつれ光子は、第1の受信器に向かう回線において吸収されるもつれ光子の偏光に対応する任意の偏光を伴って第2の受信器に到着することができる一方、この回線において光子が喪失しても、第2の受信器は必ずしも、場合によっては情報を伝達する光子、すなわち、もつれ光子が第1の受信器に到達した光子を消失させるとは限らない。
【0173】
さらに、光子のもつれ光子が第1の受信器への移動時に吸収された後に第2の受信器に到着する光子の偏光は必ずしも、すべてのあり得る観測可能な偏光間で均等に配分されるとは限らない。
【0174】
情報の伝送については、第2の受信器において検出された光子のもつれ光子が第1の受信器に向かって移動する間に吸収されたときに、第2の受信器において観測される対応する偏光の数がより少ない相補的偏光対が使用されることが好ましい。
【0175】
本発明は、上記で定義されたシステムを較正し、2つのジョーンズ行列を決定することを可能にする方法であって、ジョーンズ行列のうちの一方が、第2の受信器に到着する光子の偏光を第1の受信器において吸収される光子の偏光の関数として算出することを可能にし、好ましくは、第2の受信器において観測可能なそれぞれに異なる光子の量が、エミッタと第1の受信器との間の光子の伝送率の逆数の2倍よりも多い、方法にさらに関し、この方法は、
吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において第1の受信器で受信された光子を吸収するように第1の受信器の複合吸収器を構成することと、
エミッタから複数のもつれ光子対を連続的に生成することであって、対の第1の光子が、第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、第1の光子および第2の光子は、それらの偏光状態に関してもつれている、生成することと、
第2の受信器において光子が受信される各偏光について、この同じ偏光を伴って第2の受信器に到達した光子の数をカウントすることと、
第2の受信器において所定数の光子が受信されたときに光子を送るのを停止することと、
光子が第2の受信器において最も受信された2つの偏光を決定することであって、これらの偏光は、第1の受信器における光子の吸収偏光に対応する偏光と見なされる、決定することと、
偏光を変換する2つのあり得るジョーンズ行列を算出し、第1の受信器において受信された光子の偏光から第2の受信器において受信される光子の偏光を推定するのを可能にすることと、
からなる。
【0176】
第1の受信器において受信された少なくとも1つの光子の偏光および第2の受信器において受信された上記の光子のもつれ光子の偏光を、そのそれぞれの受信時間を使用することによって対応付けて記録すると、2つの算出されたジョーズ行列から、第2の受信器において受信される光子の偏光を、第1の受信器において受信される可能性のある上記の光子のもつれ光子の偏光の関数として算出することを可能にするジョーンズ行列を選択することができる。
【0177】
以下の方法はさらに、情報項目を第1の受信器から第2の受信器に伝送するために使用されてもよく、この方法は、
エミッタから複数のもつれ光子対を連続的に生成することであって、対の第1の光子が、第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、第1の光子および第2の光子が、それらの偏光状態に関してもつれている、ステップと、
伝送される各情報項目について、伝送される情報項目に対応する、「吸収偏光対」と呼ばれる所定の相補的偏光対におけるNPT個の伝送光子を吸収するように複合吸収器を構成し、次いで、次に伝送される情報項目がまだわからないか、または伝送されたばかりの情報項目と同じである場合、「待機偏光対」と呼ばれる偏光対において吸収器を構成し、前記情報項目が、伝送されたばかりの情報項目と同じである場合に、この「待機偏光対」において吸収される少なくともNPT個の光子をカウントするステップと、
第2の受信器において、相補的偏光対ごとに、信号の直前のあり得る受信以来前記偏光の2つの偏光のうちの一方において受信された光子の数をカウントするステップと、カウンタが対のうちの1つについて所定のしきい値数NSPを超えた直後に、相補的偏光対が直前に受信された信号の相補的偏光対とは異なる場合、この偏光対に対応する情報項目を新しい信号と見なし、この直前の情報項目が、待機偏光対に対応しない場合、この情報項目を受信された情報項目のリストに追加するステップと、を含む。
【0178】
代替として、第1の受信器において、偏光吸収器は、任意の情報を送った後に2つの待機偏光のうちの一方における少なくともNPT個の光子を吸収するように体系的に構成される。
【0179】
たとえば、情報項目を伝送するために以下のものが使用される。
減衰が10dBであり、すなわち、光子の90%が失われる、エミッタと受信器の各々との間の伝送線。
450個の相補的偏光対(450対の相補的偏光)における光子を吸収するように構成された複合吸収器同士の間の伝送線。これらの対は、光子のもつれ光子が第1の受信器に向かって移動する際に吸収される場合、第2の受信器において受信される光子の80%を表す。
NPTについては200個の光子が選択され、NSPについては6個の光子が選択されてもよく、発明者による計算によれば、10000分の1未満の伝送誤り率を取得することが可能になる。
【0180】
別の例では、誤り率が15dBの信号減衰に対応する97%である場合、450個の相補的偏光対(450対の相補的偏光)を使用し、各偏光および位相シフトを互いに約5°分離し、第1の受信器において1200個の光子を符号化し(すなわち、NPT=1200)、しきい値数NSPを14に固定することによって、発明者による計算によれば、第1の受信器に向かって移動する間に吸収された光子から第2の受信器において得られた光子がすべての観測可能な偏光にわたって均等に配分される場合には、150000分の1未満の誤り率を取得することが可能になる。
【0181】
同時に送られる光子対の処理
エミッタは、もつれ光子対同士を互いに非常に近付けて送る場合がある。したがって、第1の受信器に位置する光子検出器は、好ましくは、前記第1の受信器に対する光子衝撃の数だけでなく、吸収された光子の数もカウントする。このカウントは、たとえば、光子検出器に当たる電磁波の強度を考慮に入れることを可能にする。
【0182】
したがって、光子の各グループは第2の受信器にほとんど同時に到着し、第2の受信器は、光子の偏光を互いに区別することができない。偏光検出器が、「同時に」検出されたすべての光子の平均偏光、すなわち、同時に第2の受信器に到着する光子のグループ、すなわち、光子の生成される光強度が、たとえば、単一の光子によって生成される強度よりも50%高い光子の偏光を検出することができる場合、有利には、多様な偏光において受信された光子のカウンタは増分されない。しかしながら、複数の光子が第1の受信器に到達するが、それらのもつれ光子のうちの1つのみが第2の受信器に到達することがあり、その場合、これがカウントされることがある。
【0183】
デバイスの性能
エミッタと第1の受信器との間に損失が生じないかまたはエミッタと第1の受信器との間の損失が低い回線を使用すると、たとえば、光子が真空中を移動することが可能になり、ランダム偏光を伴って第2の検出器において受信される光子を低減させるかまたは回避することが可能になる。
【0184】
同様に、相補的偏光対の数を増やすか、またはランダム偏光を伴う多数の光子を無視することを可能にする厳密な測定器を第2の受信器において使用すると、
光子の伝送距離を延ばし、
伝送光子の数NPTを減らすことによってボーレートを高くすることが可能になる場合がある。
【0185】
第1の受信器の複合吸収器の偏光の切り替え速度を上げると、エミッタによって送られるもつれ光子の送信周波数を高くすることが可能になる。
【0186】
第2の受信器の偏光検出器の時間精度を高めると、時間的に非常に近く受信された多様な光子の寄生性を区別することが可能になり、また、上記で説明したように、もつれ光子のより高い束を使用するが、「同時に」受信される光子の受信数を減らすことが可能になる。
【0187】
この方法は、もつれ光子の放出を制限するためにエミッタにスイッチを配置することも、クロック同期化も必要としない利点を有する。
【0188】
光子をエミッタに向けて返す処理
光子は、受信器からエミッタに向かって反射されることがある。光子がエミッタによって受信器のうちの1つに向かって反射されることを阻止するために、もつれ光子が波動混合によって生成され、屈折率が非線形である、キャビティまたは材料は、好ましくは、もつれ光子の波長と等しい波長を有する光を吸収する材料に取り囲まれるかまたはそのような材料で覆われる。
【0189】
量子通信方法
本発明は、上記で定義されたシステムを使用する量子通信方法に関し、この方法は、
エミッタからもつれ光子対を生成することであって、対の第1の光子が、第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、第1の光子および第2の光子が、それらの偏光状態に関してもつれており、第2の受信器が、エミッタから第1の受信器よりも遠く離れて第2の光子の伝播経路上に位置し、それによって、第2の光子が第2の受信器により遅く到着する、ステップと、
偏光修正器を使用することによって、第1の光子が第1の受信器に到着するときの第1の光子の偏光状態を、伝送される情報に応じた偏光状態に修正するステップであって、この状態が、厳密に2つの垂直直線偏光対のうちの一方の対の偏光方向が他方の対の偏光方向と45°をなす前記厳密に2つの垂直直線偏光対を除く、少なくとも2つの相補的吸収偏光対から選択される、ステップと、
吸収器を使用することによって、選択された対の2つの相補的偏光のうちの一方における第1の光子を吸収するステップと、
第2の受信器において、増幅デバイスを使用することによって、第2の光子を複製して増幅された光子の束を形成するステップであって、生成された光が、第2の光子の偏光状態を維持している、ステップと、
光束の平均偏光状態を測定し、この測定値に応じて第1の光子の偏光状態を決定し、第1の光子の偏光状態から、第1の受信器によって伝送された情報を推定するステップと、を含む。
【0190】
相補的偏光対は、好ましくは、少なくとも3つの異なる相補的偏光対から選択される。
【0191】
相補的偏光対は、たとえば、210個の異なる吸収偏光対(210対の異なる吸収偏光)、特に、偏光の偏光方向において9°おきに離間され、9°おきに位相シフトされた偏光から選択される。
【0192】
本発明はさらに、上記で定義されたシステムを使用する量子通信方法に関し、この方法は、
エミッタからもつれ光子対を生成することであって、対の第1の光子が、第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、第1の光子および第2の光子がもつれており、第2の受信器が、エミッタから第1の受信器よりも遠く離れて第2の光子の伝播経路上に位置し、それによって、第2の光子が第2の受信器により遅く到着する、ステップと、
伝送される情報に応じて、第1の光子を機器に向けて送るかもしくは送らず、または複数の機器に向けて送るかもしくは送らない光学セレクタを使用することによって、第1の光子が第1の受信器に到着したときに2つの相補的偏光対のうちの一方における第1の光子を吸収するかそれとも吸収しないかを選択するステップと、
既定の偏光における光子を吸収しないことを選択した場合、少なくとも第2の光子が第2の受信器に到達していない限り、保護デバイス内に前記第1の光子を捕捉して第1の光子の吸収を回避することを可能にするするステップと、
第2の受信器において、増幅デバイスを使用することによって第2の光子を複製して増幅された光子の束を形成するステップであって、各増幅された光子が、第2の光子の量子状態を維持している、ステップと、
増幅された光子の束の平均偏光状態を測定し、この測定値に応じて、第1の光子が第1の受信器において吸収されたかどうかを決定し、かつ/またはこの機器を用いて、測定値から、第1の受信器によって伝送された情報を推定するステップと、を含む。
【0193】
好ましくは、もつれ光子対の偏光は、第1の受信器の機器がもつれ光子を吸収する相補的偏光対の偏光では不確定である。
【0194】
たとえば、もつれ光子対は、もつれ直線偏光を伴って受信器に到達し、2つの相補的吸収偏光のうちの一方は円偏光であり、第2の受信器は、増幅された光子の束の平均偏光が円偏光であるかそれとも直線偏光であるかを区別し、この区別に応じて、第1の光子が測定されたか否かを決定するように構成される。
【0195】
変形形態として、もつれ光子対は、もつれ円偏光を伴って受信器に到達し、光子の吸収量子状態は直線偏光であり、第2の受信器は、増幅された光子の束の平均偏光が円偏光であるかそれとも直線偏光であるかを区別し、この区別に応じて、第1の光子が測定されたか否かを決定するように構成される。
【0196】
変形形態として、もつれ光子対は、垂直直線偏光または水平直線偏光を伴って受信器に到達し、第1の受信器において測定される量子状態は、垂直または水平と45°または-45°をなす直線偏光であり、第2の受信器は、増幅された光子(P20)の束の平均直線偏光が45°または-45°であるか、それとも垂直または水平であるかを区別し、この区別に応じて、第1の光子が測定されたか否かを決定するように構成される。
【0197】
情報の伝送
本発明によるシステムおよび上記で説明した量子通信方法は、ビット形式のバイナリタイプの情報項目、または離散値もしくは連続値のいずれかを第1の受信器と第2の受信器との間で伝送することを可能にする。
【0198】
好ましくは、エミッタによって複数のもつれ光子対が連続的に生成され、各光子対は、たとえば、バイナリタイプの情報項目を第1の受信器から第2の受信器に伝送することを可能にする。
【0199】
たとえば、ビット1を伝送するには第1の受信器において第1の光子を吸収することを選択し、ビット0を伝送するには第1の光子を反射することを選択してもよい。第2の受信器において増幅された光子の束の平均量子状態を測定すると、第1の受信器から準瞬間的にビット1が伝送されているかそれともビット0が伝送されているかを決定することが可能である。
【0200】
通信を保護し、たとえば、2つの光子対が同時に放出されることに起因する伝送誤りを回避するためにいくつかの方法が実装され得る。
【0201】
たとえば、上記で説明したクロックを使用することによって事前に確立された時間間隔の間、好ましくは、受信器に最初に到達する光子のみが考慮され、以後の光子は無視される。
【0202】
上記で説明したように、光子は、偏光検出器に到着したときにカウントされてもよい。カウントによって、規定の時間間隔の間に2つ以上の光子が到着したことが示される場合、ビットは、この間隔の間には伝送されず、たとえば、次の時間間隔内に伝送され、または好ましくは同じビットが再送される。
【0203】
第2の受信器において、到着することが予期される時間間隔内に到着した光子をカウントすると、有利には、受信されないビットの一時リストを作成することが可能になる。
【0204】
双方向通信
双方向通信を可能にし、すなわち、2つの受信器の各々が他方の受信器に情報を伝送することを可能にするには、複数のエミッタが使用されてもよい。
【0205】
本発明によるシステムは、特に、1つまたは複数のもつれ光子対を生成することができる第2のエミッタを備えてもよく、第2のエミッタは、第1の受信器よりも第2の受信器の近くに位置する。
【0206】
変形形態として、光子の少なくともいくつかは、たとえば、光子を1つまたは複数の中間ミラー上で反射させるかまたは光子を高屈折率を有する媒体を通過させるか、または代替として、様々な長さを有する光ファイバ内を移動させることによって、受信器のうちの一方に向かう光子の移動時間を延ばすように間接経路を移動させられてもよい。
【0207】
この時間を延長した移動は、たとえば、要件の関数として一定または可変の割合で、時間を延長していない移動と交互に行われてもよく、それによって、場合によっては、情報をある点から別の点に伝送し、場合によっては、他の方向に伝送するためにもつれ光子を使用することができる。受信器の上流に位置し、エミッタに取り付けられたスイッチと同期化される光学スイッチは、時間を延長された経路上で光子を送ることを可能にし、上記で説明したように第1の受信器タイプの受信器または逆に第2の受信器タイプの受信器に向けて前記光子を送るように設置されてもよい。
【0208】
鍵を伝送し、この伝送が傍受されていないことを検証する方法。
【0209】
光子の束によってエミッタから第2の受信器に伝送される情報項目が傍受されていないことを、
第2の受信器が、情報項目を伝達した光子の受信日、および各光子が受信された2つの相補的偏光の相対偏光を指定する相対偏光の第1のリストを確立するステップと、
第2の受信器が、前のステップにおいて収集されたリストを含むメッセージを生成し、このリストの電子シグネチャを作成し、リストおよびシグネチャを受信器に伝送するステップと、
第1の受信器が、リストおよびシグネチャを受信し、次いでシグネチャを検証するステップと、
第1の受信器が、第1の受信器および第2の受信器によって受信された光子の相対偏光が等しいか、または実際に、もつれ光子が第1の受信器に到達していない第1のリストの要素からなる第2のリストを作成するステップであって、2つのもつれ光子が、それぞれに異なる相対偏光を有する、ステップと、
2つの光子の各々がそのそれぞれの受信器に到達したもつれ光子対に限定した第2のリストの要素の数が、2つの光子の各々がそのそれぞれの受信器に到達したもつれ光子対に限定した第1のリストの要素のカウント数に所定の比を掛けた積よりも小さい場合、情報項目が、傍受されずに伝送されたと宣言されるステップと、
を実施することによって検証することが可能である。
【0210】
次いで、
情報項目が傍受されずに伝送されたと宣言された場合、次いで、第1の受信器によってサインされた第2のリストが第2の受信器に送られ、次いで、第1の受信器によって第3のリストが作成されるステップであって、このリストが、第1のリストには掲載されるが第2のリストには掲載されない光子の相対偏光からなる、ステップと、
第2の受信器によって第2のリストが受信され、シグネチャが検証された後、第2の受信器において、第1のリストおよび第2のリストを使用して第3のリストが再作成され、次いで、第2のリストが首尾よく受信されたことを確認するサインされたメッセージが、第2の受信器によって第1の受信器に送られるステップと、
第2の受信器が、第3のリストを第1の受信器との共有鍵として使用し、前のステップにおいて第2の受信器によって伝送されたメッセージが第1の受信器によって受信されると、第1の受信器が、第2の受信器とのやり取りにおいて第3のリストを共有鍵として使用するステップと、
が実施されてもよい。
【0211】
偏光フィルタが第2の受信器の上流に配置されてもよい。
【0212】
本発明は、その非限定的な例示的な実施形態についての以下の詳細な説明を読み、添付の図面を検討するとより明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0213】
図1A】本発明による量子通信システムを部分的に概略的に表す図である。
図1B】本発明による別の量子通信システムを部分的に概略的に表す図である。
図2A】直線偏光された光子を部分的に概略的に表す図である。
図2B】円偏光された光子を部分的に概略的に表す図である。
図3】エミッタから受信器への光子の伝送の詳細を部分的に概略的に表す図である。
図4A】本発明による光学セレクタの一例を部分的に概略的に表す図である。
図4B図4Aのセレクタの変形形態を部分的に概略的に表す図である。
図4C】本発明による光学セレクタの別の例を部分的に概略的に表す図である。
図5A】四分の一波長板を備える偏光方向修正器の一例を概略的に表す図である。
図5B】四分の一波長板を備える偏光方向修正器の一例を概略的に表す図である。
図5C】キラル材料を備える偏光方向修正器の別の例を概略的に表す図である。
図6】偏光位相修正器の一例を概略的に表す図である。
図7】直線偏光された光子を吸収するための機器の一例を部分的に概略的に表す図である。
図8】直線偏光された光子を吸収するための機器の別の例を部分的に概略的に表す図である。
図9】ドープファイバ増幅器を備える第2の光子の受信器の一例を部分的に概略的に表す図である。
図10A】一連の半反射板を備える、第2の受信器の測定器の一例を部分的に概略的に表す図である。
図10B】第2の受信器の測定器に使用されるヤングの干渉計の一例を部分的に概略的に表す図である。
図11A】ビット0を伝送するための量子通信システムの動作の一例を部分的に示すブロック図である。
図11B】ビット1を伝送するための量子通信システムの動作の一例を部分的に示すブロック図である。
図12】一連の離散値を伝送するための量子通信システムの動作の一例を部分的に示すブロック図である。
図13】光子が受信器に到着したことを示すタイムスタンプを付与する方法の一例を部分的に示すブロック図である。
図14】増幅器の前に「ノイズ防止」デバイスを配置する可能性を部分的に概略的に示す図である。
図15】本発明によるシステムを使用して2つの位置の間に双方向通信を確立する可能性を部分的に概略的に表す図である。
図16】本発明の実装形態の変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0214】
図1Aは、本発明による量子通信システム1を示す。システムは、もつれ光子対(P1、P2)を放出するエミッタ2を備え、第1の光子P1は、伝播経路D1上を伝播し、第2の光子P2は、経路D1とは異なる伝播経路D2上を伝播する。光子P1およびP2は同時に放出される。
【0215】
光の性質および光子の粒子と波動の二重性に起因して、以下では、「波」、「光子」、および「粒子」という用語は、エミッタ2によって放出される生成物を示すために交換可能に使用される。
【0216】
「測定器」および「吸収器」という用語は、特定の偏光に応じて光子を吸収する機器を示すために交換可能に使用される。
【0217】
システム1は、第1の光子P1の伝播経路D1上に位置する第1の受信器3と、第2の光子P2の伝播経路D2上に位置する第2の受信器4とを備える。
【0218】
受信器3は、受信器4よりもエミッタ2に近く、それによって、光子P1は、光子P2が受信器4に到達する前に受信器3に到達する。
【0219】
考えられる例では、受信器3は、偏光修正器32と吸収器35とを備える複合吸収器31を備える。
【0220】
複合吸収器31は、それぞれに異なる相補的偏光の複数の対、好ましくは少なくとも3つの対から選択される偏光状態における光子を吸収するように構成される。
【0221】
偏光修正器32は、選択された相補的偏光対に応じて光子P1を伝送するように構成され、吸収器35は、光子P1が対の2つの状態のうちのどちらにあるかを決定することを可能にする。吸収器35に入射する前には、光子P1の偏光状態対は、選択された対の2つの状態が、特定の確率、たとえば、等しい確率で重み付けされた重ね合わせである。
【0222】
図1Bは、本発明による量子通信システム1の別の例を示す。この例では、受信器3は、第1の光子P1の量子状態を測定するように構成された2つの測定器35と、測定器35の上流に配置され、経路D1’またはD1”上で、第1の光子P1の偏光の線形方向に応じて、第1の光子P1を導く複屈折プリズム36に向けて第1の光子P1を送るか、またはたとえば、第1の光子P1を経路D1とは異なる伝播経路D3上に反射することによって第1の光子P1が測定されるのを阻止するように構成された光学セレクタ30とを備える。
【0223】
方向D3は、特に、光子P1のもつれ光子が第2の受信器4において増幅される前に光子P1が吸収されないように選択される。
【0224】
システム1は、好ましくは、図示のように、光子の量子状態を保護するためのデバイス5を備え、デバイス5は、受信器3に近接して配置され、特に考えられる例では伝播経路D3上に配置される。
【0225】
このデバイスは、たとえば、少なくとも第2の光子P2が第2の受信器4に到達するまで光子P1が測定または吸収されるのを阻止するために、光子P1が光学セレクタ30によって経路D3上に反射された場合に光子P1を「捕捉する」ことが可能である。デバイス5に捕捉された光子を、そのような光子のもつれ光子が第2の受信器に到達した後に検出するために、5D光子検出器(図示せず)が、デバイス5の端部に配置されてもよい。
【0226】
第2の受信器4は、第2の光子P2の偏光を維持しながら第2の光子P2を増幅させることを可能にする光学増幅器40と、増幅された光子の平均偏光を測定するのを可能にする測定器45とを備える。
【0227】
光子P1および光子P2の伝送は、様々な方法で、かつ様々な媒体において行われてもよい。光子は、たとえば、光ファイバまたは導波管内を伝播するか、または何も存在しないかもしくは気体で充填された空間内を自由に伝播する。
【0228】
光子は、それぞれに異なる屈折率を有する複数の媒体を通過し得る。たとえば、望ましくない光学現象、特にエミッタ2によって放出された波のフレネル反射を阻止するために、通過される2つの媒体の間に適宜、反射防止板が挿入されてもよい。
【0229】
エミッタ2は、たとえば、光子がほとんど回折なしで光子のそれぞれの受信器に到達し、たとえば、放出された波の少なくとも99.99%が受信器に到達することを可能にするのに十分なサイズを有するように選択された1つまたは複数のレンズを備える。
【0230】
エミッタ2は、光子P1および光子P2がそれぞれ放出される初期方向を調整することを可能にするシステム、特に電子デバイスをさらに備えてもよい。
【0231】
この調整は、特に、通過される媒体のそれぞれに異なる屈折率、および調整の結果として行われ得る光子の軌跡の修正、たとえば、空間から放出され大気に入射する光子についての軌跡の修正を考慮に入れてもよい。
【0232】
放出される波の波長は、たとえば、通過される媒体に応じて選択され、たとえば、光子が大気または空気中を移動する必要があるときには赤外領域における光子が使用される。
【0233】
エミッタ2は、たとえば、自発的パラメトリック下方変換(SPDC)の方法を使用することによってもつれ光子対を生成する。エミッタは、たとえば、平均で、光子伝送周波数1GHzに相当する単位時間当たり1つ未満の対、たとえば、ナノ秒当たり1対を放出するように構成される。
【0234】
光子Pは、放出されると、たとえば、直線偏光され、すなわち、対応する電磁波は、方向が電磁波の伝播方向Dに垂直な電場を有する。必要に応じて、光子の偏光は、図2Aに示すように、垂直Vであっても、または水平Hであってもよい。
【0235】
光子の偏光に対応する量子状態は、光子が測定されずかつ吸収されない限り中間であることがある。したがって、測定される前には、光子の量子状態は、あり得る状態の重ね合わせと見なされることがあり、すなわち、この例では、角度が45°の偏光と角度が-45°の偏光の重ね合わせと見なされる.
【0236】
図2Bに示す変形形態では、光子Pは、放出されるときに円偏光され、すなわち、対応する電場の方向は、回転運動しながら変化し、一方で、電場のノルムは一定に維持される。
【0237】
必要に応じて、光子の偏光は、電場の回転の方向によって、時計回り方向C1または反時計回り方向C2のいずれかに定義される。測定される前には、直線偏光された光子は、互いに逆の回転方向を有する2つの円偏光状態の重ね合わせと見なされる中間量子状態にある。
【0238】
特定の場合に、図3に示すように、2つの四分の一波長板6および8が、エミッタ2と受信器3および/または4との間の光子の伝播経路上に導入されてもよい。
【0239】
波長板6は、その向きに応じて、たとえば、結晶の常軸に垂直な軸に沿って伝播する電磁波を、同じ軸に垂直な電場を用いて、前記常軸に平行な電場を有する波に対して進めるかまたは遅らせることによって光子の直線偏光を円偏光に変換する。
【0240】
波長板6から出射する光子は、たとえば、光ファイバ7によって別の四分の一波長板に向かって伝送され、この四分の一波長板は、円偏光された場を、受信器3または受信器4に向かって伝播する前に直線偏光された場に変換する。
【0241】
放出された光子の偏光をこのように変換すると、特にエミッタによって放出された光子の偏光方向を受信器において考慮する必要をなくすることが可能になる。
【0242】
光学セレクタ30は、いくつかの例が図4A図4Dに示す様々な方法で作製されてもよい。
【0243】
光学セレクタ30は、たとえば、図4Aに示すような制御液晶ミラーを備え、制御液晶ミラーは、液晶を密閉したプレート310を備える。たとえば、電極315および320は、液晶に電場を加え、液晶の屈折率nを制御することを可能にするためにプレート310の両側に配置される。
【0244】
入射光子P1は、屈折率nに応じて、伝播経路D3上に反射され得るか、またはプレート310を通過して、経路D1と同一であることもまたは異なることもある伝播経路D1’上を測定器35に向かって伝送され得る。
【0245】
図4Bに示す変形形態では、光子P1は、液晶板310を通過し、D3またはD1’に沿って出射し、方向D1、D1’、およびD3は、考えられる例では互いに平行である。
【0246】
別の方向の光子を、たとえば保護デバイス5に向けて反射するために、ミラー325、特にブラッグミラーが、伝播軸D3上に配置されてもよい。
【0247】
有利には、反射防止板が、プレート310の各面上に配置され、光子がプレート310を通過する際の光子の出射角度および入射角度に応じて調整されてもよい。
【0248】
図4Cに示す変形形態では、光学セレクタ30は、非線形ファイバによって制御されるミラーである。光学セレクタ30は、2つの光ファイバ330および335を備える。ファイバ335は、たとえば、非線形材料から形成される。
【0249】
第1の光子P1は、第1の受信器に到着すると、ファイバ330に入射する。「制御信号」とも呼ばれる光信号Fを用いてファイバ335を同時に照明するように選択が行われてもよい。
【0250】
信号Fは、高強度光波であり、たとえば、レーザによって放出され、光子P1の波長とは異なる波長を有する。
【0251】
ファイバ335が信号Fによって照明される場合、光子P1は、伝播経路D3上に配置されたプリズム345を、ファイバ出口において通過する前にファイバ330内に留まる。上記で説明したのと同様に、ミラー325、特にブラッグミラーが、所望の位置の光子を、たとえば、保護デバイス5に向かって反射するか、または真っすぐファイバ330に反射するために伝播軸D3上に配置されてもよい。
【0252】
ファイバ335が信号Fによって照明されない場合、光子P1は、ファイバ330からファイバ335に伝送される。光子P1は、ファイバ335から出射し、たとえば、プリズム340を通過し、その後たとえば、測定器35に向かって伝送される。プリズム340は、好ましくは、分散材料からなり、照明光を異なる位置を通して光子の方向とは異なる方向に出射させることを可能にする。前記照明光のみを返し、光子が通過することを可能にするブラッグミラー(図示せず)が、照明光をプリズム340に向かう方向以外の方向に反射するか、または場合によってはファイバ内に反射するためにファイバ335とプリズム340との間に配置されてもよい。
【0253】
反射防止板(図示せず)が、プリズム340およびプリズム345の入口および出口に配置され、光子P1の波長に調整されてもよい。
【0254】
ここで、図1Bのシステムの偏光修正器32を作製する様々な方法について説明する。
【0255】
偏光修正器32は、好ましくは、位相修正器32bの上流に配置された偏光方向修正器32aを備える。
【0256】
偏光方向修正の第1の例示的な実施形態では、偏光方向修正器32aは、図5Aに示すように、互いに異なるように向きを定められたプレート510、特に四分の一波長板のスタックを備え、それによって、これらの四分の一波長板のうちの1つに入射した円形波508は、前記プレートに関連付けられた方向に沿って直線偏光された波511として出射する。
【0257】
これらのプレートは、プレートの縁部521および522の二等分線に平行な方向を伴ってプレートに入射する波508を用いて動作するように設計されてもよい。これらのプレートは、好ましくは、一軸複屈折結晶、たとえばルチルで構成される。この複屈折結晶は、プレートの全体的な質量を形成してもよく、またはこの複屈折結晶をスライス上に集中させ、たとえば、図5Aに示すように波508が通過する縁部523のうちの1つに集中させてもよい。
【0258】
これらのプレートは、図5Bに示すように、互いに並置されて構造524を形成してもよく、それによって、出射する波511または512は、電場方向が、円偏光されかつ縁部521および522の二等分線に平行な方向を伴って偏光された2つの波508または509のアセンブリへの入射場所に依存する直線偏光を有する。
【0259】
したがって、決定された方向および四分の一波長板501に入射する直線偏光を有する波505は、方向507に沿って四分の一波長板501を通過し、四分の一波長板501内で円偏光され、その後、屈折率がたとえば電極516によって生成される電場の影響下で調整可能な結晶502に入射し、次いで好ましくは、屈折率がたとえば電極517によって生成される電場の影響下で調整可能な別の結晶503に入射し、電極517は、電極516によって生成される電場に垂直な電場を生成する。
【0260】
円偏光された波508および509は次いで、結晶503から出射し、結晶503に課される屈折率の選択に応じてアセンブリ524に異なる場所で入射する。光線の方向は、これらのプレートに応じて異なり、縁部520および521の方向は、好ましくは、アセンブリ524の要素510ごとに異なる。
【0261】
したがって、図5Bに示された図では、波511および512は、光線がアセンブリ524を通過する2つの可能性である。これらの波は、それぞれに異なる方向に沿って直線偏光され、同じ伝播方向を有するが、アセンブリ524の境界514上のそれぞれに異なる場所においてアセンブリ524から出射する。波は、屈折率が電極518によって電気的に調整可能な別の結晶504に入射し、次いで好ましくは、屈折率が同じく、電極519によって調整可能なさらに別の結晶505に入射し、電極519は、電極518によって生成される電場に垂直な電場を生成し、電極518の電圧は、結晶502および503について選択される屈折率の関数として調整され、それによって、すべての光波は、同じ方向を有する波513として結晶505から同じ位置515において出射する。
【0262】
結晶502、503、504、および505は、たとえば、メルクE7液晶であり、この液晶の末端において、たとえば、各対の電極同士の間の距離が5mmである場合に電極が0~5000Vの電圧を印加し、液晶の屈折率が1.5~1.67で変化することが可能になる。電極は、好ましくは、誘電体膜で覆われる。電場によって修正されるこのような屈折率は、光の電場の相対方向および電場の方向に応じて異なることがあり、連続的な垂直電圧を印加すると、前記光の2つの成分の各々について屈折率を修正することが可能になり、この光は、電場が図5Bに対して垂直な波と電場が伝播方向に対して垂直でありかつ図5Bの平面において垂直な波との重ね合わせである。
【0263】
偏光方向の修正の第2の例示的な実施形態(図示せず)では、決定された方向に沿って直線偏光された波が、波の偏光を円偏光に変換する第1の四分の一波長板に入射し、次いで、第2の四分の一波長板に入射し、第2の四分の一波長板が、この円偏光をこの第2の四分の一波長板の向きに応じた調整可能な方向に沿って直線偏光に変換する。第2の四分の一波長板の向きは、たとえば、センサまたは電気的に調整されたデバイスに機械的に従動することによって得られ、電気的に調整されたデバイスは、たとえば、圧電材料、またはたとえば、直流電流で動作する電気モータデバイスによって運動するように設定された回転軸上の摩擦によって、四分の一波長板を回転させることを可能にする。
【0264】
図5Cに示す第3の例では、同じ偏光方向に沿って直線偏光された入射光子526の線形電場の回転を制御するために液晶が使用され、これらの光子はまず、たとえば、面528のうちの一方が、前記面528に隣接する液晶粒子529の向きを入射光子526の偏光方向に定める材料でコーティングされた、2つの透明な0.2μm電極527のうちの一方を好ましくは垂直に通過し、次いで2μmにわたって液晶529を通過し、その後、好ましくは第1の電極に平行な面528が同じく、液晶を整列させるのを可能にする材料でコーティングされた第2の透明電極527を、この場合は第1の電極のコーティングによって課される方向に垂直な方向に通過する。したがって、2つの電極間の液晶の方向は、液晶の初期の向きに対して0°から、たとえば60°まで徐々に修正される。たとえば、0~1Vの電圧を印加すると、液晶の向きが徐々に変更されて、光子の伝播方向の軸における方向が液晶に課され、したがって、光子の移動およびデバイスの回転力に垂直な2つの偏光間の液晶の屈折率差が徐々に小さくなる。したがって、このデバイスは、入射光子の偏光の出射方向を0~60°において連続的に選択することを可能にする。
【0265】
図5Bに示すようなデバイスは、有利には、上記で説明され図5Aに示されるデバイスと同様なデバイスにおいて使用され、たとえば、プレート524とプレート504との間に配置され、たとえば、4つの要素510の各々が、入射光子の直線偏光を4つの厳密な方向、たとえば、-90°、-45°、0°、および45°のうちの1つに配置することを可能にし、次いで、続けて配置され、好ましくは、先行するデバイス510から出射する光子の伝播方向に整列された、図5Bにおいて説明したデバイスの各々が、この回転に、たとえば0~45°の任意の角度の回転を追加することを可能にする。
【0266】
図6は、本発明による偏光位相修正器32bを示す。位相修正器32bは、偏光場Eを有する入射光子を2つの異なる軸xおよびx上の直線偏光EおよびEを有する2つの電磁波に分割するように構成された第1の複屈折プレートまたはプリズム310を備える。
【0267】
たとえば、電極322または線形材料によって調整されるニオブ酸リチウムなどのポッケルスセルを備える、可変屈折率を有する遅延板321が、第2の軸xに沿って向きを定められた波Eに、第1の軸xに沿って向きを定められた波Eに対する所定の位相シフトを取得させるように第2の軸x上に配置される。
【0268】
たとえば、パラテルライトからなる別の複屈折板310が、位相修正器32bの出口に配置され、この複屈折板310は、偏光場EおよびEが互いに垂直な2つの波を、場Eに対する位相シフトを取得した場E’を有する1つの波または光子P1に同じx軸上で結合することを可能にする。代替として、屈折率を修正する電場の方向に対する光の電場の方向に応じた結晶の屈折率の異なる修正を有効に使用するために、単純なポッケルスセル321を、プレート310なしで、電極322とともに使用してもよい。
【0269】
第1の受信器3の測定器35は、様々なタイプの測定器であり、様々な要素を備えてもよい。測定器35は、光子P1がエミッタ2によって放出されるときの光子P1の偏光の特質に依存する。いくつかの例が図7および図8に示されており、これらの例について以下で説明する。
【0270】
図7に示す例では、測定器35は、光子P1の伝播経路D1上に配置された偏光フィルタ350と、フィルタ350の下流において同じ伝播経路上に配置された光子検出器355とを備える。
【0271】
偏光フィルタ350は、特定の直線偏光を有する光子のみが通過することを可能にし、偏光が特定の直線偏光に垂直な光子を吸収する。したがって、偏光フィルタ350は、特定の方向を有する直線偏光を有する光子を選択することを可能にする。
【0272】
考えられる例では、偏光フィルタ350は、縦型線、たとえば、金属線によって形成されたグリルである。偏光フィルタ350は、垂直直線偏光Hを有する光子のみが通過することを可能にする。
【0273】
図8に示す一変形形態では、測定器35は、異方性パネル360、たとえば、複屈折板、複屈折プリズム、または互いに取り付けられた2つの複屈折プリズムを備える。パネルは、たとえば、β-ホウ酸バリウム(BaB、BBO)で作られる。
【0274】
量子状態が測定対象である光子P1は、入射伝播経路D1上でパネル360に到達し、たとえば、偏光がプレート360の平面内にある(すなわち、図8の平面に垂直である)か、それともプレート360の平面に垂直であるかに応じて2つの伝播経路のうちの一方D11またはD12上で伝送される。
【0275】
測定器35は、2つの検出器355をさらに備え、各検出器355は、光子P1の伝播経路D11またはD12上に配置される。
【0276】
この例では、偏光フィルタとは異なり、すべての光子が、その偏光にかかわらず検出器355によって検出され得る。
【0277】
いくつかの実施形態では、光子の円偏光を直線偏光に変換し、したがって、円偏光された光子の回転方向を検出するために、異方性プレート360の上流に四分の一波長板が配置される。
【0278】
第2の受信器4は、様々なタイプの光学増幅器40と測定器45とを備えてもよい。
【0279】
たとえば、図9に示すようなドープファイバ増幅器が使用される。
【0280】
この例では、増幅器40は、ファイバ400、特に非線形材料製のファイバを備え、このファイバに、第2の光子P2が、受信器4に到達したときにダイクロイックプリズム401を通過した後に導入される。
【0281】
エネルギーを供給し光子P2を増幅させるために使用される制御電磁波Fが、ファイバ410を通って同じダイクロイックプリズム401内に、光子P2と同様にファイバ400から出射するような点においてかつそのような方向を伴って導入され、光子P2と制御波Fは、異なる波長を有する。
【0282】
制御波Fは、好ましくは、高光度を有し、好ましくは、光子P2よりも短い波長を有する。
【0283】
光子P2は、ファイバ400を通過する間、光束Fの影響下で、増幅されてN個の光子P20になり、次いで、これらのN個の光子および光束Fは第2のダイクロイックプリズム402を通過し、第2のダイクロイックプリズム402からそれぞれに異なる方向に出射する。N個の光子は次いで、有利には、測定器45に向かって送られ、光束の偏光を決定することが可能になり、この例示的な実施形態は、図10Aおよび図10Bに示されている。
【0284】
デバイス40によって光子P2を増幅すると光子P2の偏光が維持されるので、第1の受信器によって送信された情報は測定器45の測定値から推定され得る。
【0285】
特に、光子P2が、第1の受信器に知られている2つの相補的偏光対のうちの一方に吸収される光子P1のもつれ光子である場合、上記で説明したように較正の間に算出されたジョーンズ行列を使用することによって光子P1の吸収偏光から推定することができる偏光を伴って、N個の増幅された光子P20が測定される。
【0286】
測定器45は、図10Aに示すように、一連の半反射板452とミラー453とを備えてもよい。プレート452およびミラーは、光束を形成する増幅された光子P20を、好ましくは等しい強度を伴って、複屈折材料製のプリズムに向かって送る。フィルタ350は、光束を2つの直交偏光された光束に分割し、それによって、検出器455は、直交方向の各々に沿って前記光束の強度を決定するか、またはたとえば、マイケルソン干渉計もしくはヤングのスリット干渉計によって光束の2つの直交成分間の位相シフトを決定することができる。
【0287】
干渉計は、好ましくは、2つの直交成分の光路が同一になるように構成され、単一の光子を増幅させることによって生じる光束は、非常に短い。たとえば、互いに45°ずれた複数の直交方向対を使用すると、有利なことに、偏光を測定すること、すなわち、偏光の方向ならびに2つの方向間の位相シフトを数回測定することが可能になり、したがって、測定における精度を高めることができる。
【0288】
図10Bは、ヤングのスリット干渉計の一例を表す。2つの波460および463がプリズム350から得られる。波460は、たとえば、プリズム461を通過し、プリズム461は、波460の伝播方向を復元し、それによって、462において、波460は波463に平行になる。波463は、たとえば、前記波465の電場を波462の電場に整列させることを可能にする半波長板を通過する。波462および465は次いで、スクリーン466に設けられた穴を通過し、その後、スクリーン467上に縞を形成するように互いに干渉し、このことは、前記スクリーン467上の最も明るい縞の位置を決定することを可能にする感光センサを備えるカメラによって観測される。
【0289】
情報項目、特にバイナリタイプの情報項目が、たとえば、図11Aおよび図11Bに示すステップに従うことによって、図1Bにおいて説明したようなシステム1の受信器3と受信器4との間で送信され得る。
【0290】
伝送される情報項目間の対応プロトコル、たとえば、ビット「0」またはビット「1」を送ることと第1の光子P1の測定値または測定値の欠如との間の対応プロトコルは、伝送を開始する前に決定される。
【0291】
一例として、以下では、「0」を伝送するには第1の光子P1を測定しないことが選択され、「1」を伝送するには第1の光子P1を測定することが選択される。もちろん、逆の選択または任意の他の適切な対応も有効である。
【0292】
ステップ10では、2つのもつれ光子P1およびP2がエミッタ2からそれぞれ受信器3および4に向かって放出される。上記で説明したように、受信器3は、受信器4よりもエミッタ2の近くに配置される。
【0293】
放出された光子P1およびP2は、所定の相補的偏光対における不確定な量子状態を有し、たとえば、光子P1およびP2が直線偏光される場合には45°の偏光を有する(相補的偏光は0°および90°である)。
【0294】
ステップ11において、光子P1が受信器3の光学セレクタ30に到達する。
【0295】
ビット「0」が伝送されることが意図されている場合、光子P1はたとえば、図11Aに示す例では光学セレクタによって垂直経路上に反射され(ただし、任意の他の経路もあり得る)、それによって、光子P1は測定器35に到達できなくなる。光子P1は、特に、ステップ12において、少なくとも第2の光子P2が第2の受信器4に到達しない限り、光子P1の吸収を回避するために、光子P1の量子状態を保護するためのデバイス5に捕捉されてもよい。
【0296】
たとえば、光子P1はその偏光を45°に維持する。
【0297】
ビット「1」が伝送されることが意図されている場合、光子P1は、たとえば、図11Bに示すように測定器35に向かって送られるように光学セレクタ30を通過する。
【0298】
次いで、ステップ13において、光子P1の量子状態が測定器35によって測定される。
【0299】
ここで、光子P1は、決定された量子状態、たとえば、垂直偏光(90°)または水平偏光(0°)を有する。瞬時に、ステップ13において実施された測定によって、もつれ光子が、決定された状態に投射される。
【0300】
ステップ15において、伝送される情報項目にかかわらず、光子P2が、第2の受信器4の光学増幅器40に到達し、複製されて、増幅された光子P20の光束を形成する。各光子P20は、光子P2の偏光を維持している。
【0301】
ステップ16において、光子P20の光束の偏光が測定器45によって測定される。
【0302】
平均して中間的な結果、たとえば、45°の偏光が得られた場合、そこから第1の光子P1が測定されていないことが推定され、ビット「0」が受信される。
【0303】
第1の受信器3における測定に対応する量子状態、たとえば、垂直偏光(90°)または水平偏光(0°)が得られた場合、第1の光子P1は測定されていると推定され、ビット「1」が受信される。
【0304】
さらに、たとえば、図12に示すステップに従うことによって、図1Aにおいて説明したようなシステム1の受信器3と受信器4との間で一連の離散値が伝送されてもよい。
【0305】
ステップ10において、2つのもつれ光子P1およびP2が同時に、エミッタ2からそれぞれ受信器3および4に向かって、たとえば直線偏光を伴って放出される。
【0306】
ステップ17において、光子P1が偏光修正器32に到達し、偏光修正器32が光子P1の直線偏光を選択された相補的偏光対に変換する。相補的偏光対は、ジョーンズ行列に従って選択されており、伝送される離散値に対応する。
【0307】
ステップ13において、光子P1が、選択された対の2つの相補的偏光のうちの一方において機器35によって吸収され、それによって、もつれ光子P2がその相補状態に投射される。
【0308】
以後のステップ15および17は、上記で説明したステップと同様であり、光子P2の偏光が増幅、次いで吸収によって測定され、伝送された離散値が推定される。
【0309】
本発明は、光子の直線偏光の測定に限定されない。他のタイプの量子状態が測定されてもよく、かつ/または他の測定手段、特に他の観測可能なベースにおける測定が使用されてもよい。
【0310】
光子P1およびP2は、たとえば、もつれ円偏光を伴って放出され、測定器35は、直線偏光基底において、直線偏光を測定することによって光子P1を投射し、もつれによって光子P2を投射する。
【0311】
変形形態として、光子P1およびP2は、もつれ直線偏光を伴って放出され、測定器35は、この観測可能な基底に応じて、円偏光を測定することによって光子P1を投射し、もつれによって光子P2を投射する。
【0312】
別の例では、光子P1およびP2は、垂直または垂直もつれ円偏光を伴って放出され、測定器35は、垂直または水平に対する45°または-45°の偏光を測定する。
【0313】
一変形形態では、受信器3は、2つの測定器35を備え、一方の測定器35は直線偏光を測定し、他方の測定器35は円偏光を測定する。たとえば、光学セレクタは、ビット「1」が伝送されることが意図される場合には光子P1を第1の測定器に向けて送り、ビット「2」が伝送されることが意図される場合には光子P1を第2の測定器に向けて送り、ビット「0」が伝送されることが意図される場合には光子P1が測定されるのを阻止する。
【0314】
上記の例の各々では、第2の受信器4の測定器45は、第1の光子P1が測定されたか否かを検出し、かつ適宜、第1の受信器において光子が測定された偏光を検出するように構成されてもよい。
【0315】
光子P1およびP2が放出され、直線偏光を伴って受信器に向かって放出される場合に光子P1およびP2の偏光方向を決定するために、エミッタ2ならびに受信器3および4においてジャイロスコープが使用されてもよい。
【0316】
上述のように、受信器3および4ならびにデバイス5は、光子が吸収される間、および場合によっては、光子のもつれ光子が吸収され、それに伴って、図13に示すように、もつれ光子が到着したことを示すタイムスタンプが付与されるのを待った後に光子をカウントするためのデバイスを備えてもよい。これによって、たとえば、もつれ光子対と伝送されたビットとの間の対応を制御することを可能にすることができる。
【0317】
たとえば、各光子は、ステップ80において受信器に到着することにより、特に、測定器35または5Dのうちの一方に到達することによってタイムスタンプ付与プロセスをトリガする。このトリガイベントに続いて、ステップ82において、受信器3は、たとえば、待機デバイス5における光子の移動時間を5D検出器における到着時間から減算した後、たとえば、レジスタRに書き込まれた前記受信器のクロック上の現在の時間Hを自由メモリレジスタM上にコピーする。
【0318】
同様のデバイス(図示せず)が第2の受信器4に配置されてもよい。
【0319】
好ましくは、上記で説明したタイムスタンプ付与を可能にするクロックは、2つの受信器3および4について同期化され、場合によっては、2つの受信器に共通する光子処理時間間隔を画定し、エミッタ2によって放出された「複数の」二重光子対を処理することが可能になる。
【0320】
第2の受信器4はさらに、光学増幅器40の前に配置されたスイッチ50を備えてもよく、スイッチ50は、図14に表されているように同じ処理時間間隔内に光子P2の後に受信器4に到達するあり得る望ましくない光子PE2を吸収または反射するように構成される。
【0321】
スイッチ50はさらに、信号が増幅される間、または増幅器媒体の分子もしくは原子が緩和される間に増幅器40によってエミッタ2に向かって放出されるあり得る光子PA2を吸収してもよい。
【0322】
スイッチ50は、たとえば、電子機構(図示せず)によって調整され、電子機構自体は、測定器45または測定器45のうちの1つが光子を検出したときに測定器45によって制御される。
【0323】
いくつかの実施形態では、本発明によるシステムは、特に双方向通信を確立するために受信器に対して異なるように配置された複数のエミッタを備えてもよい。
【0324】
図15に示す例では、システム1は、2つのエミッタ21および22を備え、エミッタ21および22の各々は、2つの受信器91および92に向けてもつれ光子対を放出する。
【0325】
エミッタ21は、受信器92よりも受信器91に近く、エミッタ22は、受信器91よりも受信器92に近い。この配置は、受信器91および92が、双方向に通信することを可能にし、エミッタ21によって放出された光子P11はまず受信器91に到着し、受信器91は次いで、第1の受信器3として働いてもよく、すなわち、受信器91は、情報項目を受信器92に向けて伝送してもよく、受信器92は、光子P11のもつれ光子P12を受信し、第2の受信器4として働く。
【0326】
逆に、エミッタ22によって放出された光子P21はまず受信器92に到達し、受信器92は、今度は、情報項目を受信器91に向けて伝送することを可能にし、受信器91は、もつれ光子P22を受信する。情報、特にバイナリ情報を伝送する機構は、たとえば、図11および図12を参照して上記で説明した機構と同様である。
【0327】
反射デバイス93および94は、それぞれ、場合によっては受信器91および92によって反射される光子を反射するために受信器91および92に近接して配置されてもよい。
【0328】
次に、図16を参照しながら、本発明の実装形態の変形形態について説明する。この変形形態は、エミッタ2によって伝送される情報が傍受されていないことを検証し、適宜、傍受されていないことがわかっている情報の転送に基づいて受信器3と受信器4との間で情報を交換するための共有鍵を生成することを目的としている。
【0329】
図16のシステムは、受信器4の入口の前に少なくとも1つの偏光フィルタ46を追加することによって修正されており、このフィルタは、エミッタから受信器4まで移動した光子について予期される偏光方向に対応する偏光方向を有する。したがって、偏光フィルタ46は、受信器3が受信器4に情報を送ることによって開始される光子偏光の変化の上流に配置される。
【0330】
フィルタ46は、不正な受信器が真正な受信器4に取って代わり、前記光子の増幅後にもつれ光子の正確な偏光を観測し、次いで真正な光子の代わりに不正な光子を真正な受信器4に送るのを阻止する。不正な光子は、必然的に受信器4によって真正な光子と同じ相対偏光を有するものと見なされる。その理由は、一方では、前記光子が別の光子ともつれていない場合、前記光子の偏光は、フィルタ46を通過した後に変化せず、したがって、前記光子は、真正な光子の偏光ではなく、フィルタ46によって課された偏光を有し、他方では、不正な光子が第2の不正な光子と呼ばれる別の光子ともつれている場合、これらの不正な光子の相対偏光を設定することが不可能であり、さらに、前記不正な光子の相対偏光が、第3の装置によって不適切であることが検証された場合に、前記不正な光子がフィルタ46を通過した後に前記不正な光子を破壊または停止することも不可能であるからである。
【0331】
したがって、受信器3と受信器4の両方によって観測されるもつれ光子群のうちの光子の全部または一部の相対光子が依然として異なる場合、それらの光子が他の場所で観測されている可能性は極めて低い。
【0332】
2つの受信器3および4の各々に到達する情報項目を伝送するために使用される光子の量子状態の均等性を統計的に検証し、その均等性から、以下の方法を適用することによって、光子の一部が観測されている確率が低いことを推定することが可能である。
【0333】
受信器3および4の各々によって格子が受信されると、受信器は、光子検出器を使用することによって、光子が属する相補的偏光対だけでなく、受信の時間および光子の正確な偏光を記録する。しかしながら、互いに近すぎて光子の偏光または到着時間を独立に測定させることができない検出された光子の時間および偏光は、好ましくは、記録されず、2つの受信器3および4は、好ましくは、同期化されたクロックを有する。
【0334】
情報Iを保持した決定された数の光子が受信された後、第2の受信器4は、光子の各々の厳密な検出時間および偏光を含むメッセージを生成し、光子のこれらの属性は、記録されており、情報を伝送すると見なされており、したがって、所与の偏光を有するか、もしくは実際にはこの偏光の相補的偏光を有するNSP個以上の光子のグループに属すると見なされている。NSPは、情報の受信を識別することを可能にする所与の偏光またはその相補的偏光を伴って受信される光子の所定のしきい値数として上記で定義されている。
【0335】
このメッセージは、好ましくは特許文献2に記載されたランダムハッシュ技法を使用して、受信器4によってサインされ、次いで、好ましくは上記で説明したような量子伝送手段を使用して、前記シグネチャを伴って受信器3に送られ、次いで、2つの光子がどちらも受信器に到達した光子対について、2つの受信器によって受信された光子の相対偏光が対応することと同様に、受信されたメッセージのシグネチャが検証される。この情報Iは、シグネチャの検証によって、シグネチャが真正であることが示され、対応しない偏光の割合が所与のしきい値よりも低く、たとえば、450個の異なる偏光対(450対の異なる偏光)が使用される場合には1%よりも低く、または異なるもつれ光子の2つの対が受信器では識別できない時間に放出される確率の2などの倍数よりも低い場合、2つの受信器の間で伝送される間に傍受されていないことが宣言されてもよい。
【0336】
さらに、情報Iを伝送すると見なされた光子の各偏光対の1つの相対偏光が、受信器の各々に到達した光子の各々について異なることが検証された場合、この相対偏光が、受信器の各々にのみ知られているランダムに生成された鍵を形成するビットのシーケンスを形成するために使用されてもよく、相対偏光が共存することを検証した受信器3は、サインされたメッセージを他方の受信器4に送り、このメッセージは、好ましくは、ランダムハッシュ技法を使用してサインされており、相対偏光が対応しなかったか、またはもつれ光子が受信器3によって受信されなかった光子の受信日のリストによって形成される。
【0337】
したがって、一例では、以下のステップが実施される。
【0338】
ステップ1
受信器4は、情報を伝達する光束をエミッタ2から受信し、この情報を画定する働きをした光子の受信日および光子が受信された2つの相補的偏光の相対偏光を指定する相対偏光の第1のリストを確立する。
【0339】
ステップ2
受信器4は、前のステップにおいて収集された情報のリストからなるメッセージを形成し、このリストの電子シグネチャを作成し、前記リストおよびシグネチャを受信器3に伝送する。
【0340】
ステップ3
受信器3は、リストおよびシグネチャを受信し、次いで、前記シグネチャを検証する。
【0341】
ステップ4
受信器3は、受信器3および4によって受信された光子の相対偏光が同じであるか、またはもつれ光子が受信器3に到達しなかった第1のリストの要素からなる第2のリストを作り、前記受信器3は、情報を伝送する働きをした各光子の相対偏光および相対偏光の受信日をレジスタに記憶している。受信器3は、もつれ光子がエミッタ2と2つの受信器3および4の各々との間の経路を移動するのにかかる時間、すなわち、経路時間の差を知ることによって、第1のリストの各光子について、受信器3が受信器4による光子の受信日から経路時間を減算した時間に受信した光子の相対偏光を決定し得る。この第2のリストは、好ましくは、2つの別個の部分で構成され、これらの部分のうちの第1の部分は、もつれ光子が第1の受信器3に到達しなかった光子を含み、これらの部分のうちの第2の部分は、両方のもつれ光子がそれぞれの受信器に到達したが、等しい相対偏光を有する光子を含む。
【0342】
ステップ5
2つの光子の各々がそれぞれの受信器に到達したもつれ光子対に限定した第2のリストの要素の数が、2つの光子の各々がそれぞれの受信器に到達したもつれ光子対に限定した第1のリストの要素のカウント数に所定の比を掛けた積よりも小さい場合、情報は、傍受されずに伝送されたと宣言される。
【0343】
ステップ6
情報が傍受されずに伝送されたと宣言された場合、受信器3によってサインされた第2のリストが受信器4に送られ、次いで、受信器3によって第3のリストが作成される。このリストは、第1のリストに掲載されているが、第2のリストには掲載されていない光子の相対偏光からなり、すなわち、相対偏光が異なると見なされた光子に関するリストである。
【0344】
逆のケースでは、すなわち、前述の積が前記しきい値よりも大きい場合、伝送が傍受された可能性が高いことを示すメッセージが受信器3によって受信器4に送られる。
【0345】
ステップ7
受信器4によって第2のリストが受信され、シグネチャが検証された後、第1のリストおよび第2のリストを使用して受信器4において第3のリストが再作成され、次いで、第2のリストが首尾よく受信されたことを確認するメッセージが、受信器4によって受信器3に送られる。
【0346】
ステップ8
受信器4は、第3のリストを受信器3との共有鍵として使用してもよく、ステップ7において伝送されたメッセージが受信器3によって受信されると、受信器3は、第3のリストを受信器4との共有鍵として使用してもよい。
【符号の説明】
【0347】
1 量子通信システム
2 エミッタ
3 第1の受信器
4 第2の受信器
5 保護デバイス
6 四分の一波長板
7 光ファイバ
8 四分の一波長板
21、22 エミッタ
30 光学セレクタ
31 複合吸収器
32 偏光修正器
32a 偏光方向修正器
32b 偏光位相修正器
35 吸収器、測定器
36 複屈折プリズム
40 光学増幅器
45 測定器
46 偏光フィルタ
50 スイッチ
91、92 受信器
93、94 反射デバイス
310 プレート、複屈折板
315、320 電極
321 遅延板、ポッケルスセル
322 電極
325 ミラー
330、335 光ファイバ
340、345 プリズム
350 偏光フィルタ、プリズム
355 光子検出器
360 異方性パネル、異方性プレート
400 ファイバ
401 ダイクロイックプリズム
402 第2のダイクロイックプリズム
410 ファイバ
452 半反射板
453 ミラー
455 検出器
460、462、463、465 波
461 プリズム
466、467 スクリーン
501 四分の一波長板
502、503、504 結晶
505 結晶、波
507 方向
508 円形波
509 波
510 プレート
511、512 出射する波
513 波
514 境界
515 位置
516、517、518、519 電極
520、521、523 縁部
524 構造、アセンブリ、プレート
526 入射光子
527 第2の透明電極
528 面
529 液晶粒子、液晶
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子通信システムであって、
もつれ光子のエミッタであって、第1の伝播経路上で放出された第1の光子と、前記第1の伝播経路とは異なる第2の伝播経路上で放出された第2の光子とを同時に含む少なくとも1つのもつれ光子対を生成するように構成された光源を備えるエミッタと、
前記第1の伝播経路上に配置された第1の受信器であって、一方の対の偏光が他方の対の偏光方向と45°をなす厳密に2つの垂直直線偏光対を除いて、少なくとも2つの異なる相補的偏光状態対の状態から選択される偏光状態の光子を吸収するように構成された複合吸収器を備える第1の受信器と、
前記第2の伝播経路上に配置された第2の受信器と、を備え、
前記第1の光子が前記第1の受信器に到達した後に前記第2の光子が前記第2の受信器に到達し、
前記第2の受信器は、
前記第2の光子の偏光状態を維持しながら前記第2の光子を増幅する光学増幅器と、
前記光学増幅器の下流に配置され、前記増幅された光子の平均偏光を測定することを可能にする測定器と、を備える、システム。
【請求項2】
前記複合吸収器は、少なくとも3つの異なる相補的偏光対の状態から選択される所定の偏光状態の光子を吸収するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複合吸収器は、
2つの相補的偏光状態のうちの一方または他方の偏光状態の光子を吸収する少なくとも1つの機器と、
前記機器の上流に配置され、前記第1の光子の偏光状態を、前記機器が光子を吸収するように選択された偏光状態に変換するように構成された偏光修正器と、を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記偏光修正器は、偏光位相修正器の上流に配置された偏光方向修正器を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記偏光方向修正器は、前記第1の光子の伝播経路上に連続的に配置された2つの四分の一波長板を備え、前記2つの四分の一波長板のうち少なくとも一方の向きは可変である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記偏光方向修正器は、波が入射する位置に応じた角度だけ偏光の回転を誘発させるキラル材料または回転材料製のプレートまたはプリズムを備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記偏光位相修正器は、一方が第1の軸に沿い他方が第2の軸に沿った直線偏光を伴う2つの電磁波にビームを分割する第1の複屈折板またはプリズムと、前記第2の軸上に配置された可変屈折率を有する遅延板と、を備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの機器は、前記第1の光子の偏光状態に応じて2つの光子検出器のうちの一方または他方に向けて送る少なくとも1つのフィルタを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の受信器の測定器は、前記第2の光子を増幅することによって得られる光の偏光を測定するように構成された少なくとも1つの光子検出器を備える、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の受信器の測定器は、前記光学増幅器の下流に配置された一連の半反射板を備え、前記半反射板は、増幅された光子の束を、2つの垂直軸に沿った前記束の強度および前記2つの垂直軸の間の光の位相シフトを測定するように構成された偏光測定器に向けて送る、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記光学増幅器は、ドープファイバ増幅器である、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記エミッタは、複数のもつれ光子対を連続的に生成するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記エミッタと前記第1の受信器と前記第2の受信器との各々は、クロックを備え、前記エミッタのクロックと前記第1の受信器のクロックと前記第2の受信器のクロックとは、互いに同期される、請求項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の受信器は、前記光学増幅器の前に配置され、前記第1の光子が所定の時間間隔内に前記第2の受信器に到達した後に光子を吸収または反射するように構成されたスイッチを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項15】
1つまたは複数のもつれ光子対を生成することができる第2のエミッタを備え、前記第2のエミッタは、前記第1の受信器よりも前記第2の受信器の近くに位置する、請求項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項に記載のシステムを使用する量子通信方法であって、
前記エミッタからもつれ光子対を生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子が第1の受信器に向かって放出されるのと同時に前記もつれ光子対の第2の光子が第2の受信器に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子はもつれており、前記第2の受信器が、前記エミッタから前記第1の受信器よりも離れて前記第2の光子の第2の伝播経路上に位置することによって、前記第2の光子は前記第2の受信器により遅く到着する、ステップと、
偏光修正器を使用することによって、前記第1の光子が前記第1の受信器に到着するときの前記第1の光子の偏光状態を、伝送される情報に応じた偏光状態に修正するステップであって、該偏光状態が、一方の対の偏光方向が他方の対の偏光方向と45°をなす厳密に2つの垂直直線偏光対を除く、少なくとも2つの相補的吸収偏光対から選択される、ステップと、
吸収器を使用することによって、選択された相補的吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において前記第1の光子を吸収するステップと、
前記第2の受信器において、増幅デバイスを使用することによって、前記第2の光子を複製して増幅された光子の束を形成するステップであって、前記光子の束は、前記第2の光子の偏光状態を維持している、ステップと、
前記光子の束の平均偏光状態を測定し、測定値に応じて前記第1の光子の偏光状態を決定し、前記第1の光子の偏光状態から、前記第1の受信器によって伝送される情報を推定するステップと、を含む方法。
【請求項17】
前記相補的吸収偏光対は、少なくとも3つの異なる吸収偏光対から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記相補的吸収偏光対は、少なくとも210対の異なる吸収偏光から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記エミッタによって複数のもつれ光子対が連続的に生成され、各光子対は、前記第1の受信器から前記第2の受信器に情報を伝送する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
光子の束によって前記エミッタから前記受信器に伝送される情報が傍受されていないことが、
前記第2の受信器が、前記情報を伝達した光子の受信日と、各光子が受信されたときの前記2つの相補的偏光の偏光状態を指定する相対偏光との第1のリストを作成するステップと、
前記第2の受信器が、前記第1のリストを含むメッセージを生成し、前記第1のリストの電子シグネチャを作成し、前記第1のリストおよび前記電子シグネチャを前記第1の受信器に伝送するステップと、
前記第1の受信器が、前記第1のリストおよび前記電子シグネチャを受信し、次いで前記電子シグネチャを検証するステップと、
前記第1の受信器が、前記第1の受信器および前記第2の受信器によって受信された光子の相対偏光が等しい場合、またはそれぞれ異なる相対偏光を有するもつれ光子対が前記第1の受信器に到達していない場合について前記第1のリストの要素からなる第2のリストを作成するステップと、
各光子が各受信器に到達したときのもつれ光子対に限定した前記第2のリストの要素の数が、各光子が各受信器に到達したときのもつれ光子対に限定した前記第1のリストの要素のカウント数に所定の比を掛けた積よりも小さい場合、前記情報が傍受されずに伝送されたと宣言するステップと、
を実施することによって検証される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記情報が傍受されずに伝送されたと宣言された場合、次いで、前記第1の受信器によって前記第2のリストが前記第2の受信器に送られ、次いで、前記第1の受信器によって第3のリストが作成され、前記第3のリストは、前記第1のリストには掲載されるが前記第2のリストには掲載されない光子の相対偏光からなり、
前記第2の受信器によって前記第2のリストが受信され、前記電子シグネチャが検証された後、前記第2の受信器において、前記第1のリストおよび前記第2のリストを使用して前記第3のリストが再作成され、次いで、前記第2のリストが首尾よく受信されたことを確認するサインされたメッセージが、前記第2の受信器によって前記第1の受信器に送られ、
前記第2の受信器が、前記第3のリストを前記第1の受信器との共有鍵として使用し、前記第2の受信器によって伝送された前記メッセージが前記第1の受信器によって受信されると、前記第1の受信器が、前記第2の受信器とのやり取りにおいて前記第3のリストを共有鍵として使用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
偏光フィルタが、前記第2の受信器の上流に配置される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項に記載のシステムを較正し、前記第2の受信器に到達する光子の偏光状態を、もつれ光子が前記第1の受信器によって吸収された偏光状態の関数として決定するための方法であって、
エミッタからもつれ光子対を生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子が第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、前記もつれ光子対の第2の光子が第2の受信器に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子の偏光状態がもつれている、ステップと、
所定の偏光対における第1の光子を前記第1の受信器において吸収し、各光子が吸収されたときの2つの偏光状態のうちの一方を記憶し、それぞれ異なる偏光状態の各々について所定数の偏光状態が観測された直後に前記エミッタによって光子を送ることを停止するステップと、
前記第2の受信器において、増幅デバイスを使用することによって、前記第2の光子を複製して増幅された光子の束を形成するステップであって、増幅された各光子は、前記第2の光子の偏光状態を維持している、ステップと、
増幅された光子の各束の偏光状態として偏光方向および位相シフトを測定し、測定値および受信時間を記憶するステップと、
記憶された偏光状態および受信時間のリストを前記第1の受信器から前記第2の受信器に伝送するステップと、
前記第1の受信器において受信された光子に対応しない光子を前記第2の受信器において受信された光子のリストから削除し、前記第1の受信器において受信された光子のリストから、対応する光子が前記第2の受信器において受信されていない光子を削除するステップと、
前記第1の受信器において相補的偏光の光子として検出され且つもつれ光子が前記第2の受信器に到達している2つの光子の偏光状態の情報と、前記第2の受信器において受信された対応するもつれ光子の偏光状態の情報を用いて、前記第1の受信器において受信された光子の偏光状態から、前記第2の受信器において受信された光子の偏光状態を推定するジョーンズ行列を算出するステップと、を含む方法。
【請求項24】
請求項に記載のシステムを較正し、光子が前記エミッタから前記第1の受信器に移動する間に前記光子を失う確率を決定するための方法であって、
吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において前記第1の受信器で受信された光子を吸収するように前記第1の受信器の複合吸収器を構成するステップと、
複数のもつれ光子対をエミッタから連続的に生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子が前記第1の受信器に向かって放出されるのと同時に、前記もつれ光子対の第2の光子が第2の受信器に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子の偏光状態がもつれている、ステップと、
各偏光状態において前記第2の受信器で受信された光子の数をカウントするステップであって、各偏光状態は、前記第2の受信器によって検出され、前記第1の受信器によって吸収されたもつれ光子の2つの偏光状態のうちの一方とは異なる、ステップと、を含む方法。
【請求項25】
請求項に記載のシステムを較正し、2つのジョーンズ行列を決定するための方法であって、前記2つのジョーンズ行列のうちの一方が、前記第2の受信器に到着する光子の偏光状態を前記第1の受信器において吸収される光子の偏光状態の関数として算出し、好ましくは、前記第2の受信器において観測されるそれぞれ異なる光子の量が、前記エミッタと前記第1の受信器との間の光子の伝送率の逆数の2倍よりも多く、
吸収偏光対の2つの相補的偏光のうちの一方において前記第1の受信器で受信された光子を吸収するように前記第1の受信器の複合吸収器を構成するステップと、
エミッタから複数のもつれ光子対を連続的に生成するステップであって、前記もつれ光子対の第1の光子が、前記第1の受信器に向かって放出されるのと同時に前記もつれ光子対の第2の光子が、第2の受信器に向かって放出され、前記第1の光子および前記第2の光子の偏光状態がもつれている、ステップと、
前記第2の受信器において受信される光子の各偏光状態について、該偏光状態において前記第2の受信器に到達した光子の数をカウントするステップと、
前記第2の受信器において所定数の光子が受信されたときに光子を送るのを停止するステップと、
前記第2の受信器において最も受信された光子の2つの偏光状態を決定するステップであって、該2つの偏光状態は、前記第1の受信器における光子の吸収偏光に対応する偏光状態と見なされる、ステップと、
該2つの偏光状態を変換する2つのジョーンズ行列を算出し、前記第1の受信器において受信された光子の偏光状態から前記第2の受信器において受信される光子の偏光状態を推定するステップと、を含む方法。
【国際調査報告】