(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ビンポセチンを用いる近視の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/439 20060101AFI20240723BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240723BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240723BHJP
A61L 17/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K31/439
A61P27/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/06
A61K9/08
A61K47/40
A61K47/38
A61K47/10
A61K9/12
A61K9/127
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K8/49
A61L17/00 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503795
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2022106704
(87)【国際公開番号】W WO2023001176
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110819425.5
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521510659
【氏名又は名称】温州医科大学附属眼視光医院
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】周 翔天
(72)【発明者】
【氏名】張 森
(72)【発明者】
【氏名】瞿 佳
(72)【発明者】
【氏名】鄭 欽元
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA71
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC10
4C076CC40
4C076DD38
4C076EE32
4C076EE39
4C076FF06
4C076FF70
4C081AC02
4C081BB06
4C081CE02
4C083AC851
4C083DD08
4C083DD12
4C083DD14
4C083DD15
4C083DD16
4C083DD39
4C083DD41
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
(57)【要約】
本願は、ビンポセチンを用いる近視の治療方法に関し、効果的に近視を予防し且つ/又は近視の進行を制御することができるだけでなく、安全で明らかな副作用はなく、臨床的には、良好な使用が見込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの用途であって、
(1)近視とその関連症状を予防及び/若しくは治療し、且つ/若しくは近視を矯正すること、又は
(2)近視の進行を抑制(制御)すること、又は
(3)近視を予防・制御し若しくは近視(眼)の発生・進行を先送りにするために用いること、又は
(4)近視の個体若しくは近視が発生する傾向のある個体の眼軸延長及び/若しくは眼の硝子体腔の長さ(深さ)の増加を抑制し、遅滞させること、又は
(5)視覚障害に関連する眼球の異常な発育を予防し、遅滞させ、軽減させ若しくは治療すること、又は
(6)個体は、メガネ(例えば、フレームメガネ若しくはオルソケラトロジーレンズ)を着用しなくても若しくは視力矯正手段(例えば、屈折矯正手術)に頼らなくてもこれらの物質若しくは手段を使用する前及び/若しくはこれらの物質若しくは手段を使用しない場合よりも明瞭な遠方視力を獲得するようにすること、又は
(7)近視の個体若しくは近視が発生する傾向のある個体の屈折度が負になるプロセス若しくは速度を抑制し、先送りにし若しくは遅滞させること、又は
(8)前述した(1)~(7)の少なくとも1つの用途を実現するための薬物、製剤、組成物若しくは装置を製造するために用いること、
上記のことのいずれかであり又は同時に2つ以上を満たしていることを特徴とする用途。
【請求項2】
全身投与(例えば、経口投与、点滴静注)、局所投与(点眼、眼内注射、眼内インプラント、皮膚軟膏/乳剤の眼の周囲塗布又は眼軟膏塗布)、非経口投与(例えば、経粘膜投与、経皮投与、マイクロニードル投与)、及び/又は非侵襲的投与(例えば、スプレー式目薬を用いる投与)の方式を用いる、請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記薬物、製剤又は組成物が、注射剤、錠剤、注射用凍結乾燥粉末、カプセル剤、発泡錠、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、顆粒剤、軟膏剤、シロップ剤、経口液、エーロゾル剤、点鼻剤、外用剤、経口製剤などであってもよく、好ましくは、点眼液(目薬)、眼軟膏、スプレー式目薬、インプラント、眼用ゲル、眼用パット、眼用ミクロスフェア、眼用徐放性製剤、眼周囲注射剤、眼内注射剤を含むが、それらに限らない眼用剤形であり、また、自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、塗り薬、洗剤、ローション剤、滴剤、散剤、スプレー剤、膏剤、パッチ剤、ペースト剤、丸剤、坐剤、乳剤と、セルロース(例えば、メチルセルロース)、多価アルコール、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、酸性共溶媒(例えば、クエン酸)、デンドリマー、ナノマテリアル、徐放性材料、リポソーム又はそれらの組み合わせを含有して調製された群であってもよい、請求項1又は2に記載の用途。
【請求項4】
近視の個体又は近視が発生する傾向のある個体が、小児及び/又は青少年であり、好ましくは、3~26歳の集団であり、より好ましくは、6~18歳の集団であり、又は、未成年者であり、好ましくは、眼部(眼球)がまだ成長、発育する段階にある集団であり、又は、学齢期集団であり、好ましくは、1~12年生の集団であり、又は、両親が強度近視である集団であり、又は、遠視の予備能が不十分な集団である、請求項1~3のいずれか一項に記載の用途。
【請求項5】
前記近視が、屈折性近視又は軸性近視と、先天性近視(生まれた時から又は学齢前にすでに近視である)、早発型近視(14歳以下)、遅発型近視(16~18歳)、晩発型近視(成年後)と、弱度近視(軽度近視)、中等度近視、強度近視(高度近視)と、仮性近視、真性近視と、小児及び/又は若年性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、未成年者近視、成人近視、高齢者近視と、単純近視、病的近視と、軸性単純近視、単純軸性近視と、小児及び/又は青少年軸性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)と、学齢及び学齢前集団の軸性近視と、原発性近視、続発性近視と、小児及び/又は青少年の原発性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)と、又は、小児及び/若しくは青少年の進行性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)と、曲率性近視、指数関数的近視、乱視性近視、位置性近視、湾曲性近視と、屈折度が持続的に負になる軸性近視と、長時間に近距離で眼を使うことで起きる近視、眼精疲労により起きる近視及び仮性近視、薬物有害事象により屈折度が負になること、近視眼、読書により起きる近視、携帯電話などの電子製品の使用で起きる近視、屈折媒体(成分)の不適合により起きる近視、屈折性近視、屈折系の発育異常により起きる近視、眼球の過度の成長により起きる近視、不衛生的な眼の使用により起きる近視、様々な原因で遠方の物の結像焦点が網膜の前方に位置すること、アトロピンでの治療効果が不良で又は無効である近視、屋外での運動不足により起きる近視、調節緊張性近視、小児近視、乳幼児近視、遺伝性近視、環境要因から起きる近視である、請求項1~4のいずれか一項に記載の用途。
【請求項6】
前記近視関連症状が、近視より起きる合併症を含み、例えば、強度近視の合併症であり、例えば、飛蚊症、緑内障、後部ぶどう腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑症、視野欠損、視力(特に近方視力)の進行性又は突然低下、眼部の腫れ及び/又は痛み、夜盲症、乱視、不同視、失明、硝子体液状化、硝子体混濁、斜視、頻繁な瞬き、頻繁に目をこすること、不同視、遠方の物を見る時に視界がぼやけること、遠方の物が明瞭に見えるよう目を細めたりまぶたを一部閉じる必要があること、眼の疲れより起きる頭痛、近視より起きる注意力散漫、運転時の、特に夜間の見えにくさ(夜間近視)、網膜の萎縮と変性(出血と裂孔)、網膜下新生血管、又は眼球萎縮である、請求項1~5のいずれか一項に記載の用途。
【請求項7】
前記薬物、製剤、組成物又は装置には、他の薬物又は眼科用製剤がさらに含まれ、前記薬物又は眼科用製剤は、近視治療薬(例えば、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、メトカルバモール(Robaxin)、インドラミン(Indoramine)、チモロールマレイン酸塩、アドレナリン、ピラジン、ペルラピン、メチルアミン、クロリソンダミン(chlorisondamine)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ドーパミン作動薬、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、トレチノイン、サリドロシド、ホルモノネチンなど)、M受容体遮断薬(例えば、M2又はM3受容体に対する遮断薬又は拮抗薬又は阻害薬)、ベンダザック及びその様々な塩の形態(ベンダザックL-リシン)、アトロピン、ベンダゾール、多価不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、プラゾシン、ホマトロピン、ラセアニソダミン、トロピカミド、7-メチルキサンチン、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、ベニバナ抽出物、魚油、ユウタン抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、平滑筋弛緩薬、血管けいれん予防薬、非選択的アデノシン拮抗薬、血管拡張薬、瞳孔散大成分、充血除去成分、眼筋(例えば、毛様体筋)調節成分、抗炎症剤成分、収斂剤成分、抗ヒスタミン剤成分、抗アレルギー剤成分、コラーゲン分解抑制成分、肝保護(肝毒性の回避又は弱化)成分、血液-網膜関門強化成分(化合物が当該生理的関門をより浸透しにくくする)、アミノ酸、抗菌成分、抗酸化成分(例えば、ビタミンC、茶ポリフェノール、グルタチオンなど)、糖質、ポリマー又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、弱視治療成分、緑内障治療成分、白内障治療成分、ホスホジエステラーゼI阻害薬(特異的又は非特異的)、miRNA及びその修飾物、眼科疾患治療成分、添加物などを含むが、それらに限らない、請求項1~6のいずれか一項に記載の用途。
【請求項8】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせと1種又は複数種の近視予防・制御薬及び/又は近視治療薬が連続投与の形態、又は同時投与の形態、又は逐次投与の形態、又は交互投与の形態、又は間隔投与の形態、又は単独投与の形態として製剤化又は設計される、請求項1~7のいずれか一項に記載の用途。
【請求項9】
前記ビンポセチン関連化合物又は抽出物が、ビンポセチンの代謝産物(例えば、アポビンカミン酸(apovincaminic acid)、ヒドロキシビンポセチン(hydroxyvinpocetine)、ヒドロキシアポビンカミン酸(hydroxyl-apovincaminic acid)及びジヒドロキシビンポセチン-グリシン酸塩(dihydroxy-vinpocetine-glycinate))、ビンカアルカロイド(Vinca alkaloid)、アポビンカミン(apovincamine)、ツルニチニチソウ抽出物(periwinkle)、ビンカミン(vincamine)、ボアカンガ・アフリカーナ抽出物(voacanga africana)、キョウチクトウ科植物抽出物、ビンクリスチン(vincristine)、タベルソニン(tabersonine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビンドリン(Vindoline)、アポビンカミン酸塩酸塩(Apovincaminic Acid Hydrochloride)、カタランチン(catharanthine)、ビンカミン酸エチル(ethyl vincaminate)、メトキシビンポセチン(methoxyvinpocetine)、ジヒドロビンポセチン(dihydrovinpocetine)から1種又は複数種の物質が選ばれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の用途。
【請求項10】
前記製剤が、健康食品、食品、栄養補助食品、栄養食品、飲み物などの経口製品又は化粧品であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の用途。
【請求項11】
前記装置が、薬物を放出できる又は薬物送達機能を有する又は潜在的な薬物送達能力を備える機器、デバイス、消耗品、システム、医療機器、健康製品又は眼部の外観を変える製品であってもよく、例えば、角膜コンタクトレンズ、メガネ、眼内レンズ、縫合糸、オルソケラトロジーレンズ洗浄(メンテナンス)システム、眼用パット、眼機能改善用アイパッチ、カラコン、マイクロニードル、眼部スプレーシステム、眼部マッサージ器、眼部燻蒸装置、眼表面薬物送達装置、眼内薬物送達装置、眼底薬物送達装置、埋め込み型ポンプ、ウェアラブルデバイス、ツボマッサージ器、眼部リラックスデバイス、近視治療機器又は近視を予防・制御するための薬物と機器の組み合わせであることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の用途。
【請求項12】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせが、唯一の活性成分又は主な活性成分又は直接活性成分として用いられ、又はビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの含有量又は薬効が前記用途における活性成分全体の1%以下、又は1%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%を占め、前記百分率(%)は、質量比、又はモル比、又は効力比、又は前記用途における薬効への寄与率であってもよいことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の用途。
【請求項13】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度が、0.001μM~100mMであり、好ましくは、0.005μM~50mMであり、好ましくは、0.01~1000μMであり、好ましくは、0.05~100μMであり、より好ましくは、0.1~25μMであり、より好ましくは、0.1~15μMであり、又は、前記それらの物質又はそれらの組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度又は割合が、25%未満であり、好ましくは、5%未満であり、好ましくは、1%未満であり、より好ましくは、0.01%未満であり、より好ましくは、0.001%未満であり、前記百分率(%)は、質量/体積濃度(g/100mL)又は質量百分率又はモル(数)比であってもよいことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の用途。
【請求項14】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度が、0.001μM~50mMであり、好ましくは、0.01~1000μMであり、好ましくは、0.05~100μMであり、より好ましくは、0.1~25μMであり、より好ましくは、0.1~15μMであり、又は、前記それらの物質又はそれらの組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度又は割合が、25%未満であり、好ましくは、5%未満であり、好ましくは、1%未満であり、より好ましくは、0.01%未満であり、より好ましくは、0.001%未満であり、前記百分率(%)は、質量/体積濃度(g/100mL)又は質量百分率又はモル(数)比であってもよいことを特徴とする近視を治療し又は近視の進行を制御するための局所投与薬物、製剤、組成物又は装置。
【請求項15】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせ及び他の近視治療活性物質を含むことを特徴とする少なくとも2つの活性物質を含む医薬組成物又は複方製剤。
【請求項16】
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの添加量、濃度及び/又は薬効は、いずれかの前記他の近視治療活性物質の添加量、濃度及び/又は薬効を下回らず、前記薬効は、近視の治療又は近視の進行の制御に対していうことを特徴とする請求項15に記載の医薬組成物又は複方製剤。
【請求項17】
眼用製剤であって、
前記製剤において、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせは、近視を治療する直接の、唯一の、又は主な活性成分として用いられ、ただし、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの濃度は、0.001μM~50mMであり、好ましくは、0.01~1000μMであり、好ましくは、0.05~100μMであり、より好ましくは、0.1~25μMであり、より好ましくは、0.1~15μMであり、又は、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの濃度又は割合は、25%未満であり、好ましくは、5%未満であり、好ましくは、1%未満であり、より好ましくは、0.01%未満であり、より好ましくは、0.001%未満であり、前記百分率(%)は、質量/体積濃度(g/100mL)又は質量百分率又はモル(数)比であってもよいことを特徴とする製剤。
【請求項18】
前記製剤が、点眼液(目薬)、眼軟膏、スプレー式目薬、インプラント、眼用ゲル、眼用パット、眼用ミクロスフェア、眼用徐放性製剤、眼周囲注射剤、又は眼内注射剤を含むが、それらに限らないことを特徴とする請求項17に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医学の分野に属し、ビンポセチンを用いる近視の治療方法に関し、特に、近視の進行を制御する方法及び用途に関し、対応する薬物又は製剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
近視は、最も一般的な屈折異常で、リラックスしている状態に調節した場合に、平行光線が眼の屈折系によって屈折された後、焦点が網膜の前に位置する屈折状態を指す。近視の場合は遠方の物がぼやけて見えるため、生活に多くの不便がある。フレームメガネなどの矯正手段によって近視患者の遠方視力を向上させることはできるが、このような技術又は方法は近視率が高く、近視の程度が高くなりつつあるという社会的現象を改善することはできない。したがって、世界的に近視者の数が年々増えており、特に東アジア諸国では強度近視患者の状況は楽観視できない。一方、近視には多くの種類があり且つその病因がまだ不明であり、現在のところ、治療効果が顕著で且つ安全的な、近視を治療し、特に近視の進行を制御する薬物はまだ欠如している。そのため、当該疾患に対する臨床上のニーズはまだ満たされていない。
【0003】
ビンポセチン(Vinpocetine)は、化学式がC
22H
26N
2O
2で、平均分子量が350.46であり、白色の結晶性粉末であり、クロロホルム又は96%のエタノールに可溶であるが、水には殆ど不溶であり、キョウチクトウ科ヒメツルニチニチソウから抽出されたインドールアルカロイドから誘導されている。その構造は、次のとおりである。
【化1】
(I)
【0004】
ビンポセチンの水における溶解性には酸性pH依存性があり、それは胃環境pH(1.2)及び腸内環境pH(6.8)により溶解しやすく、且つビンカミンよりも高い生物学的活性を有しており、毒性と副作用がより少ないということが見出された。ビンポセチンは脂溶性が高く、当該化合物が血液脳関門、血液網膜関門、胎盤及び乳汁に入ることができ、心臓と脳の血管及び中枢神経系の機能に対して高い薬理活性を有している。
【0005】
現在、ビンポセチンは、主に、脳血管関連疾患及び認知障害の治療に用いられており、対象集団は殆ど高齢者である。全身投与の場合は、ビンポセチンは脳血管系に選択的に作用して、脳内のホスホジエステラーゼ活性を抑制して(即ち、ホスホジエステラーゼ阻害薬として)、血管平滑筋を弛緩させ、脳への血液供給を増加させることができると報告されている。このような薬物には、体内での代謝が早く、半減期が短く、経口剤形のヒトでの生物学的利用能が低いなどの特徴がある。眼外用の場合に、ビンポセチンは角膜、水晶体などの物理的障壁を容易に通過できるため、ビンポセチンは多くの眼科薬の補助成分でもあり、それは、主に、眼部の血行などを促進する微小循環促進剤として用いられる。眼部の血液循環が促進されると眼部が一層快適になって、屈折異常患者の視力は向上するが、これは近視の治療と同じものではなく、ビンポセチンの投与はかえって、近視を引き起こす可能性があるとも報告されている(biosintez.com/en/catalog/product/283)。
【発明の概要】
【0006】
本願は、図らずも、ビンポセチンの新規な用途を見出しており、繰り返し試験することで、ビンポセチンは、近視を治療し近視の進行を制御することができるということを証明している。即ち、ビンポセチンは、サプリメント又は補助成分として、例えば、微小循環促進剤(ホスホジエステラーゼ活性の阻害)として、近視治療薬で他の近視治療活性物質に補助、随伴又は助力して当該活性物質の近視治療効果を向上させる(例えば、より多くの薬物主成分を、効果を発揮する標的細胞に到達させる)のではなく、近視を治療する直接活性成分として用いられる。
【0007】
本願は、また、ビンポセチンによる近視治療の機序について研究した。本願があるまでは、ビンポセチンはホスホジエステラーゼ阻害薬として血流を改善するために使用されているが、本願は、実験を行って、ビンポセチンで近視を治療し近視の進行を制御する場合に、脈絡膜血流の改善に依存しないということを見出した。言い換えれば、ビンポセチンは、血管を拡張させ又は血液循環を促進すること(即ち、ホスホジエステラーゼ阻害薬の既知の機能)により近視を治療し近視の進行を抑制するのではなく、固有ではあるが、まだ知られていない新規な薬理作用により依存しているという可能性がある。したがって、本願は、実際には、ビンポセチンの知られていない機能を利用しており、この発見は、本願を形成させる重要な基礎でもある。
【0008】
本願は、ビンポセチンは単独でも近視の進行に顕著な抑制効果があるということを初めて証明しており、これにより、ビンポセチンは、単純近視又は軸性近視(例えば、若年性近視)、軽度又は中等度の近視などを含む、様々な近視を効果的に治療することができるということを確認した。ビンポセチンを用いて高齢者近視、又は強度近視、又は高齢者の強度近視、又は病的近視を治療する場合と比べて、ビンポセチンを屈折度が持続的に低下する近視(例えば、単純近視、軸性近視、又は軸性単純近視、又は弱度及び中等度の近視、又は小児及び若年性近視、又は進行性近視など)の治療に用いる場合に効果は顕著により良い。
【0009】
また、ビンポセチンは、様々な近視の予防に用いることができ、例えば、近視の進行期にビンポセチンを用いる薬物介入で、高齢者近視、強度近視、高齢者の強度近視及び病的近視の発生を予防及び阻止することができる。
【0010】
本願は、さらに、近視を治療する薬物又は製剤におけるビンポセチンの濃度、比率、配合、及び関連薬物の投与頻度、併用治療などの投与方法を研究した。そのうち、局所(眼部)投与は、安全性が良好であるだけでなく治療効果が全身投与の効果を明らかに上回っている。
【0011】
本願は、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの用途を提供し、前記用途は、
(1)近視とその関連症状を予防及び/若しくは治療し、且つ/若しくは近視を矯正すること、又は
(2)近視の進行を抑制(制御)すること、又は
(3)近視を予防・制御し若しくは近視(眼)の発生・進行を先送りにするために用いること、又は
(4)近視の個体若しくは近視が発生する傾向のある個体の眼軸延長及び/若しくは眼の硝子体腔の長さ(深さ)の増加を抑制し、遅滞させること、又は
(5)視覚障害に関連する眼球の異常な発育を予防し、遅滞させ、軽減させ若しくは治療すること、又は
(6)個体は、メガネ(例えば、フレームメガネ若しくはオルソケラトロジーレンズ)を着用しなくても若しくは視力矯正手段(例えば、屈折矯正手術)に頼らなくてもこれらの物質若しくは手段を使用する前及び/若しくはこれらの物質若しくは手段を使用しない場合よりも明瞭な遠方視力を獲得するようにすること、又は
(7)近視の個体若しくは近視が発生する傾向のある個体の屈折度が負になるプロセス若しくは速度を抑制し、先送りにし若しくは遅滞させること、又は
(8)前述した(1)~(7)の少なくとも1つの用途を実現するための薬物、製剤、組成物若しくは装置を製造するために用いること、
上記のことのいずれかであり又は同時に2つ以上を満たしている。
【0012】
いくつかの実施形態では、全身投与(例えば、経口投与、点滴静注)、及び/又は局所投与(点眼、眼内注射、眼内インプラント、皮膚軟膏/乳剤の眼の周囲塗布又は眼軟膏塗布)、及び/又は非経口投与(例えば、経粘膜投与、経皮投与、マイクロニードル投与)、及び/又は非侵襲的投与(例えば、スプレー式目薬を用いる投与)の方式を用いる。
【0013】
いくつかの実施形態では、薬物、製剤又は組成物が、注射剤、錠剤、注射用凍結乾燥粉末、カプセル剤、発泡錠、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、顆粒剤、軟膏剤、シロップ剤、経口液、エーロゾル剤、点鼻剤、外用剤、経口製剤などであってもよく、好ましくは、点眼液(目薬)、眼軟膏、スプレー式目薬、インプラント、眼用ゲル、眼用パット、眼用ミクロスフェア、眼用徐放性製剤、眼周囲注射剤、眼内注射剤を含むが、それらに限らない眼用剤形であり、また、自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、塗り薬、洗剤、ローション剤、滴剤、散剤、スプレー剤、膏剤、パッチ剤、ペースト剤、丸剤、坐剤、乳剤と、セルロース(例えば、メチルセルロース)、多価アルコール、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、酸性共溶媒(例えば、クエン酸)、デンドリマー、ナノマテリアル、徐放性材料、リポソーム又はそれらの組み合わせを含有して調製された群であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、近視の個体又は近視が発生する傾向のある個体が、小児及び/又は青少年であり、好ましくは、3~26歳の集団であり、より好ましくは、6~18歳の集団であり、又は、未成年者であり、好ましくは、眼部(眼球)がまだ成長、発育する段階にある集団であり、又は、学齢期集団であり、好ましくは、1~12年生の集団であり、又は、両親が強度近視である集団であり、又は、遠視の予備能が不十分な者である。
【0015】
いくつかの実施形態では、近視が、屈折性近視又は軸性近視と、先天性近視(生まれた時から又は学齢前にすでに近視である)、早発型近視(14歳以下)、遅発型近視(16~18歳)、晩発型近視(成年後)と、弱度近視(軽度近視)、中等度近視、強度近視(高度近視)と、仮性近視、真性近視と、小児及び/又は若年性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、未成年者近視、成人近視、高齢者近視と、単純近視、病的近視と、軸性単純近視、単純軸性近視と、小児及び/又は青少年軸性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)と、学齢及び学齢前集団の軸性近視と、原発性近視、続発性近視と、小児及び/又は青少年の原発性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)と、又は、小児及び/若しくは青少年の進行性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)と、曲率性近視、指数関数的近視、乱視性近視、位置性近視、湾曲性近視と、屈折度が持続的に負になる軸性近視と、長時間に近距離で眼を使うことで起きる近視、眼精疲労により起きる近視及び仮性近視、薬物有害事象により屈折度が負になること、近視眼、読書により起きる近視、携帯電話などの電子製品の使用で起きる近視、屈折媒体(成分)の不適合により起きる近視、屈折性近視、屈折系の発育異常により起きる近視、眼球の過度の成長により起きる近視、不衛生的な眼の使用により起きる近視、様々な原因で遠方の物の結像焦点が網膜の前方に位置すること、アトロピンでの治療効果が不良で又は無効である近視、屋外での運動不足により起きる近視、調節緊張性近視、小児近視、乳幼児近視、遺伝性近視、環境要因から起きる近視である。
【0016】
いくつかの実施形態では、近視関連症状が、近視より起きる合併症を含み、例えば、強度近視の合併症であり、例えば、飛蚊症、緑内障、後部ぶどう腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑症、視野欠損、視力(特に近方視力)の進行性又は突然低下、眼部の腫れ及び/又は痛み、夜盲症、乱視、不同視、失明、硝子体液状化、硝子体混濁、斜視、頻繁な瞬き、頻繁に目をこすること、不同視、遠方の物を見る時に視界がぼやけること、遠方の物が明瞭に見えるよう目を細めたりまぶたを一部閉じる必要があること、眼の疲れより起きる頭痛、近視より起きる注意力散漫、運転時の、特に夜間の見えにくさ(夜間近視)、網膜の萎縮と変性(出血と裂孔)、網膜下新生血管、又は眼球萎縮である。
【0017】
いくつかの実施形態では、薬物、製剤、組成物又は装置には、他の薬物又は眼科用製剤がさらに含まれ、前記薬物又は眼科用製剤は、近視治療薬(例えば、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、メトカルバモール(Robaxin)、インドラミン(Indoramine)、チモロールマレイン酸塩、アドレナリン、ピラジン、ペルラピン、メチルアミン、クロリソンダミン(chlorisondamine)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ドーパミン作動薬、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、トレチノイン、サリドロシド、ホルモノネチンなど)、M受容体遮断薬(例えば、M2又はM3受容体に対する遮断薬又は拮抗薬又は阻害薬)、ベンダザック及びその様々な塩の形態(ベンダザックL-リシン)、アトロピン、ベンダゾール、多価不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、プラゾシン、ホマトロピン、ラセアニソダミン、トロピカミド、7-メチルキサンチン、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、ベニバナ抽出物、魚油、ユウタン抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、平滑筋弛緩薬、血管けいれん予防薬、非選択的アデノシン拮抗薬、血管拡張薬、瞳孔散大成分、充血除去成分、眼筋(例えば、毛様体筋)調節成分、抗炎症剤成分、収斂剤成分、抗ヒスタミン剤成分、抗アレルギー剤成分、コラーゲン分解抑制成分、肝保護(肝毒性の回避又は弱化)成分、血液-網膜関門強化成分(化合物が当該生理的関門をより浸透しにくくする)、アミノ酸、抗菌成分、抗酸化成分、糖質、ポリマー又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、弱視治療成分、緑内障治療成分、白内障治療成分、ホスホジエステラーゼI阻害薬(特異的又は非特異的)、miRNA及びその修飾物、眼科疾患治療成分、添加物などを含むが、それらに限らない。
【0018】
いくつかの実施形態では、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせと1種又は複数種の近視予防・制御薬及び/又は近視治療薬が連続投与の形態、又は同時投与の形態、又は逐次投与の形態、又は交互投与の形態、又は間隔投与の形態、又は単独投与の形態として製剤化又は設計される。
【0019】
いくつかの実施形態では、ビンポセチン関連化合物又は抽出物が、ビンポセチンの代謝産物(例えば、アポビンカミン酸(apovincaminic acid)、ヒドロキシビンポセチン(hydroxyvinpocetine)、ヒドロキシアポビンカミン酸(hydroxyl-apovincaminic acid)及びジヒドロキシビンポセチン-グリシン酸塩(dihydroxy-vinpocetine-glycinate))、ビンカアルカロイド(Vinca alkaloid)、アポビンカミン(apovincamine)、ツルニチニチソウ抽出物(periwinkle)、ビンカミン(vincamine)、ボアカンガ・アフリカーナ抽出物(voacanga africana)、キョウチクトウ科植物抽出物、ビンクリスチン(vincristine)、タベルソニン(tabersonine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビンドリン(Vindoline)、アポビンカミン酸塩酸塩(Apovincaminic Acid Hydrochloride)、カタランチン(catharanthine)、ビンカミン酸エチル(ethyl vincaminate)、メトキシビンポセチン(methoxyvinpocetine)、ジヒドロビンポセチン(dihydrovinpocetine)から1種又は複数種の物質が選ばれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、製剤が、健康食品、食品、栄養補助食品、栄養食品、飲み物などの経口製品又は化粧品である。化粧品は、自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、塗り薬、洗剤、スプレー剤、ローション剤、滴剤、散剤、膏剤、ペースト剤、丸剤、坐剤、乳剤、パッチ剤の1種又は複数種の組み合わせであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置が、薬物を放出できる又は薬物送達機能を有する又は潜在的な薬物送達能力を備える機器、デバイス、消耗品、システム、医療機器、健康製品又は眼部の外観を変える製品であってもよく、例えば、角膜コンタクトレンズ、メガネ、眼内レンズ、縫合糸、オルソケラトロジーレンズ洗浄(メンテナンス)システム、眼用パット、眼機能改善用アイパッチ、カラコン、マイクロニードル、眼部スプレーシステム、眼部マッサージ器、眼部燻蒸装置、眼表面薬物送達装置、眼内薬物送達装置、眼底薬物送達装置、埋め込み型ポンプ、ウェアラブルデバイス、ツボマッサージ器、眼部リラックスデバイス、近視治療機器又は近視を予防・制御するための薬物と機器の組み合わせである。
【0022】
いくつかの実施形態では、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせが、唯一の活性成分又は主な活性成分又は直接活性成分として用いられ、又はビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの含有量又は薬効が前記用途における活性成分全体の1%以下、又は1%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%を占め、前記百分率(%)は、質量比又はモル比又は効力比であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度が、0.001μM~10mMであり、好ましくは、0.01~1000μMであり、好ましくは、0.05~100μMであり、より好ましくは、0.1~25μMであり、より好ましくは、0.1~15μMであり、又は、前記それらの物質又はそれらの組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度又は割合が、25%未満であり、好ましくは、5%未満であり、好ましくは、1%未満であり、より好ましくは、0.01%未満であり、より好ましくは、0.001%未満であり、前記百分率(%)は、質量/体積濃度(g/100mL)又は質量百分率又はモル(数)比であってもよい。
【0024】
本願は、眼部に投与する薬物、製剤、組成物又は装置を提供し、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度が、0.001μM~10mMであり、好ましくは、0.01~1000μMであり、好ましくは、0.05~100μMであり、より好ましくは、0.1~25μMであり、より好ましくは、0.1~15μMであり、又は、前記それらの物質又はそれらの組み合わせの前記薬物、製剤、組成物又は装置における濃度又は割合が、25%未満であり、好ましくは、5%未満であり、好ましくは、1%未満であり、より好ましくは、0.01%未満であり、より好ましくは、0.001%未満であり、前記百分率(%)は、質量/体積濃度(g/100mL)又は質量百分率又はモル(数)比であってもよい。
【0025】
本願は、また、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせ及び他の近視治療活性物質を含む、少なくとも2つの活性物質を含む医薬組成物又は複方製剤を提供する。好ましくは、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの添加量、濃度及び/又は薬効が、いずれかの他の近視治療活性物質を下回らず、前記薬効は、近視の治療又は近視の進行の制御に対していう。
【0026】
本願は、また、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせ及び他の近視治療活性物質を含む、医薬組成物又は複方製剤を提供し、前記他の近視治療活性物質は、長時間作用型βアドレナリン受容体作動薬、長時間作用型ムスカリン拮抗薬及び/又はムスカリン拮抗薬を含まない。
【0027】
本願は、さらに、眼部製剤又は薬物を提供し、前記製剤又は薬物において、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせは、直接の、唯一の、又は主な活性成分として用いられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記製剤又は薬物が、点眼液(目薬)、眼軟膏、スプレー式目薬、インプラント、眼用ゲル、眼用パット、眼用ミクロスフェア、眼用徐放性製剤、眼周囲注射剤、又は眼内注射剤を含むが、それらに限らない。
【0029】
いくつかの実施形態では、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの濃度が、0.001μM~10mMであり、好ましくは、0.01~1000μMであり、好ましくは、0.05~100μMであり、より好ましくは、0.1~25μMであり、より好ましくは、0.1~15μMであり、又は、ビンポセチンの濃度又は割合が、25%未満であり、好ましくは、5%未満であり、好ましくは、1%未満であり、より好ましくは、0.01%未満であり、より好ましくは、0.001%未満であり、前記百分率(%)は、質量/体積濃度(g/100mL)又は質量百分率又はモル(数)比であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、ホスホジエステラーゼI阻害薬が、PDE1-IN-2、LY1(Sherif Khedr et al.,Selective Phosphodiesterase 1 Inhibitor LY1 Reduces Blood Pressure in Spontaneously Hypertensive and Dahl Salt Sensitive Rats,The FASEB Journal,2020 April 1,Volume34,IssueS1,Pages1-1.)、Lu AF41228、Lu AF58027(Morten Laursen et al.,Novel selective PDE type 1 inhibitors cause vasodilatation and lower blood pressure in rats,Br J Pharmacol,2017 Aug;174(15):2563-2575.)、BTTQ(Asim B Dey et al.,elective Phosphodiesterase 1 Inhibitor BTTQ Reduces Blood Pressure in Spontaneously Hypertensive and Dahl Salt Sensitive Rats:Role of Peripheral Vasodilation,Front Physiol,2020 Sep 8;11:543727.)、ニモジピン(Nimodipine)、ザプリナスト(Zaprinast)、カフェイン(Caffeine)、デプレニル(Deprenyl)、アマンタジン(Amantadine)(Alexandre E Medina,Therapeutic utility of phosphodiesterase type I inhibitors in neurological conditions,Front Neurosci,.2011 Feb 18;5:21.)、KS505a、ベプリジル(bepril)、フルナリジン(flunarizine)、アミオダロン(amiodarone)、ザプリナスト(zaprinast)、8-メトキシメチル IPMX、SCH 51866、ニモジピン(Nimodipine)、IC224(Claire Lugnier,Cyclic nucleotide phosphodiesterase(PDE)superfamily:a new target for the development of specific therapeutic agents,Pharmacol Ther,2006 Mar;109(3):366-98.)、ITI-214(Peng Li et al.,Discovery of Potent and Selective Inhibitors of Phosphodiesterase 1 for the Treatment of Cognitive Impairment Associated with Neurodegenerative and Neuropsychiatric Diseases,J Med Chem,2016 Feb 11;59(3):1149-64.)などである。ビンポセチンは、ホスホジエステラーゼI阻害薬(PDE1阻害薬)に属し、他の出願日前に知られているホスホジエステラーゼI阻害薬(特異的かどうかを問わず)はビンポセチンと同じような未知の活性又は薬効を有する可能性があり、例えば、近視を予防及び/又は治療し及び近視の進行を制御することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、miRNA及びその修飾物が、MicroRNA-328又はMicroRNA-328ネガティブセンス組成物である。
【0032】
いくつかの実施形態では、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物のうちの2種以上の物質の組み合わせが同じ期間に投与され、例えば、特定の1回の投与(治療)過程において同時に又は逐次投与され、同じ日に投与され、同じ週に投与され、同じ月に投与され、同じ年に投与され、又は、間隔のある交互投与であり、例えば、4時間間隔の交互投与、12時間間隔の交互投与、隔日の交互投与、隔週の交互投与、隔月の交互投与、隔年の交互投与であり、あるいは、
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせと1種又は複数種の他の薬物が同じ期間に投与され、例えば、特定の1回の投与(治療)過程において同時に又は逐次投与され、同じ日に投与され、同じ週に投与され、同じ月に投与され、同じ年に投与され、又は、間隔のある交互投与であり、例えば、4時間間隔の交互投与、12時間間隔の交互投与、隔日の交互投与、隔週の交互投与、隔月の交互投与、隔年の交互投与であり、あるいは、
ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせと装置(例えば、角膜コンタクトレンズ)及び/又は手術(例えば、屈折矯正手術、近視レーザー角膜手術、水晶体手術)が併用される。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記1種又は複数種の他の薬物が、近視予防・制御薬及び/又は近視治療薬(例えば、ベンダザックL-リシン、アトロピン、ベンダゾール、多価不飽和脂肪酸、DHA、魚油、プラゾシン、M受容体遮断薬、ニコチン酸、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、メトカルバモール(Robaxin)、インドラミン(Indoramine)、チモロールマレイン酸塩、アドレナリン、ピラジン、ペルラピン、メチルアミン、クロリソンダミン(chlorisondamine)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ドーパミン作動薬、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、トレチノイン、サリドロシド、ホルモノネチンなど)、血管拡張薬、平滑筋弛緩薬、血管けいれん予防薬、コラーゲン代謝調節薬、ピラセタム(Piracetam)、抗アレルギー薬、肝保護薬、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はそれらの組み合わせなどである。
【0034】
いくつかの実施形態では、装置が、近視の進行を先送りにする様々なメガネ、オルソケラトロジーレンズ、フレームメガネ、眼用パット、(近視)ツボマッサージ器、眼部リラックスデバイス、近視治療機器など、視力保護機能又は近視治療(矯正)効果を有する機器、デバイス、消耗品、医療機器又は健康製品である。
【0035】
いくつかの実施形態では、薬物、1種又は複数種の他の薬物、近視予防・制御薬、近視治療薬、又は眼科用製剤が、長時間作用型βアドレナリン受容体作動薬(long-acting β-adrenoceptor agonist、LABA)、長時間作用型ムスカリン拮抗薬(long-acting muscarinic antagonists、LAMA)及び/又はムスカリン拮抗薬(muscarinic antagonists)でなくてもよく、例えば、サルメテロール及び/又はチオトロピウム臭化物ではない。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記用途を実現する過程で、全身投与剤形(例えば、経口錠剤)及び局所投与剤形(例えば、点眼液)を同時に使用し、又は併用し、又は交互に使用し、又は間隔を設けて使用し、又は単独に使用する。
【0037】
いくつかの実施形態では、眼球の異常な発育が、主に環境要因から誘発された、又は主に人的要因により起きる屈折系の発育異常(例えば、長時間の近距離閲読、電子スクリーンの頻繁な使用、持続的な近方視と遠方視の機会の欠如、屈折矯正メガネの不適切な使用、薬物の副作用、肥満、外傷、学習環境の照明不足、屋外での運動不足)であり、遺伝的要因に関係はなく、又は、遺伝的要因は、副次的要因、付随的要因、又は相乗要因であり、前記異常な発育は、例えば、小児及び青少年段階(例えば、3~26歳)の眼球の大きさの発育異常である。
【0038】
いくつかの実施形態では、異常な発育又は発育異常が、眼軸長が長すぎること又は眼軸の延長速度が屈折系に適合しないことを含み、これにより、平行光線は、眼部の正常又は異常な屈折系を通過した後に結像焦点が網膜の前方に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】FDM群における高、中、低の3つの濃度のビンポセチン投与の屈折(度)、硝子体腔の深さ及び眼軸長に対する影響である。ただし、Aは、実験眼と反対側眼の屈折度の差の図であり、Bは、実験眼と反対側眼の硝子体腔の深さの差の図であり、Cは、実験眼と反対側眼の眼軸長の差の図である。
【
図2】LIM群における高、中、低の3つの濃度のビンポセチンの投与の屈折(度)、硝子体腔の深さ及び眼軸長に対する影響である。ただし、Aは、実験眼と反対側眼の屈折度の差の図であり、Bは、実験眼と反対側眼の硝子体腔の深さの差の図であり、Cは、実験眼と反対側眼の眼軸長の差の図である。
【
図3】FDM群における高、中、低の3つの濃度のビンポセチンの投与の脈絡膜厚及び血流に対する影響である。ただし、Aは、ビンポセチンの眼の脈絡膜厚ChTに対する影響であり、Bは、ビンポセチンの脈絡膜血流ChBPに対する影響である。
【
図4】LIM群における高、中、低の3つの濃度のビンポセチンの投与の脈絡膜厚及び血流に対する影響である。ただし、Aは、ビンポセチンの眼の脈絡膜厚ChTに対する影響であり、Bは、ビンポセチンの脈絡膜血流ChBPに対する影響である。 注:*は、p<0.05を表し、**は、p<0.01を表し、***は、p<0.001を表す。 異なる期間(LIM群は、投与前、投与3日後及び投与7日後、又はFDM群は、投与前、投与1週間後及び投与2週間後)ごとに、5つの棒グラフで測定結果を表示する。
図1、
図3では、連続する5つの棒グラフのセットが、左から順にFDM+ビヒクル(Vehicle)、FDM+アトロピン(Atropine)(0.1%)、FDM+VPN(0.01μM)、FDM+VPN(0.1μM)、FDM+VPN(1μM)である。
図2、
図4では、連続する5つの棒グラフのセットが、左から順にLIM+ビヒクル(Vehicle)、LIM+アトロピン(Atropine)(0.1%)、LIM+VPN(0.01μM)、LIM+VPN(0.1μM)、LIM+VPN(1μM)である。VPN=ビンポセチン(vinpocetine)。
【
図5】近視の個体への異なる用量のビンポセチンの全身投与方式における屈折度及び眼軸パラメータの変化である。実験前、実験1週間後及び実験2週間後の被験個体の両眼の屈折度(A)、硝子体腔の深さ(B)及び眼軸長(C)の差を比較する。VPNは、ビンポセチンであり、Vehicleは、溶媒であり、Weekは、週であり、Refractionは、屈折度であり、VCDは、硝子体腔の深さであり、ALは、眼軸長であり、Nは、サンプルサイズである。反復測定分散分析(A~C)である。
【
図6】サルメテロール及びチオトロピウム臭化物による近視の治療である。実験前及び実験終了後の異なる薬物群に関する近視の個体の両眼の屈折度(A)、硝子体腔の深さ(B)、眼軸長(C)、前房の深さ(D)、水晶体の厚さ(E)及び角膜の曲率(F)の差の変化に対する影響を比較する。VPN=Vは、ビンポセチンであり、Tは、チオトロピウム臭化物であり、Sは、サルメテロールであり、Vehicleは、溶媒であり、Weekは、週であり、Refractionは、屈折度であり、VCDは、硝子体腔の深さであり、ALは、眼軸長であり、ACDは、前房の深さであり、LTは、水晶体の厚さであり、RCCは、角膜の曲率であり、Nは、サンプルサイズである。*は、p<0.05であり、**は、p<0.01であり、***は、p<0.001である。反復測定分散分析(A~F)である。
【
図7】ビンポセチン点眼液の近視の個体の屈折度、硝子体腔の深さ及び眼軸長に対する介入効果である。異なる投与群の実験前と投与2週間後の同じ被験個体の両眼の屈折度(A)、硝子体腔の深さ(B)、眼軸長(C)、前房の深さ(D)、水晶体の厚さ(E)及び角膜の曲率(F)の差の変化を比較する。VPNは、ビンポセチンであり、Vehicleは、溶媒であり、Refractionは、屈折度であり、VCDは、硝子体腔の深さであり、ALは、眼軸長であり、ACDは、前房の深さであり、LTは、水晶体の厚さであり、RCCは、角膜の曲率であり、Nは、サンプルサイズである。*は、p<0.05であり、**は、p<0.01であり、***は、p<0.001である。反復測定分散分析(A~F)である。
【
図8】ビンポセチンの代謝産物AVAの近視の個体の屈折度、硝子体腔の深さ及び眼軸長に対する介入効果である。実験前と実験投与1週間後の時の被験個体の両眼の屈折度(A)、硝子体腔の深さ(B)及び眼軸長(C)の差を比較する。AVAは、ビンポセチンの代謝産物アポビンカミン酸(Apovincaminic acid)であり、Vehicleは、溶媒であり、Weekは、週であり、Refractionは、屈折度であり、VCDは、硝子体腔の深さであり、ALは、眼軸長であり、Nは、サンプルサイズである。*は、p<0.05であり、**は、p<0.01であり、***は、p<0.001である。反復測定分散分析(A~C)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に本願の実施例を例示的に示す。それらの特定の実施形態を用いて本願を記述しているが、本願をこのような特定の実施形態に限定することは意図されないということが理解されたい。むしろ、本願には、特許請求の範囲によって限定される本願の趣旨と範囲に含まれてもよい代替物、修飾、置換、変形及び均等物までカバーすることが意図される。
【0041】
本願は、眼部にビンポセチン又はその関連化合物を局所投与することに関する、近視を予防、治療する方法を提供する。
【0042】
本願は、さらに、眼部に局所投与される、ビンポセチンを唯一の、又は主な活性成分とする近視を治療し及び近視の進行を制御する薬物を提供する。従来技術において、ビンポセチンは、主に錠剤及び注射剤であり、全身投与される。ビンポセチンを近視の治療に用いる場合は、全身投与を行うと、必ず薬剤の初回通過効果、血液-網膜関門(blood-retinal barrier、BRB)などの影響を受けるため、高用量の薬物を投与しないと眼部に入るビンポセチン又はその代謝産物は治療濃度閾値に到達することは保証できず、このような治療方法には、全身有害事象が起きるという潜在的なリスクがあり、特に対象は若年層であり且つ長時間の連続投与が必要である場合はそうである。また、全身投与は個体差の影響がより大きいため、ビンポセチンによる近視の予防・制御の治療効果の不確実性は増す。したがって、本願は、有効性及び安全性がより良好で、眼部に局所投与されるビンポセチン薬を開発する。このような薬物の開発方法は、ビンポセチン及びその関連化合物(例えば、フッ化物)の小児、若年性近視の予防・制御における用途に対するものであり、利点は、患者に投与しやすく、服薬コンプライアンスが高く、長期投与(例えば、1か月、半年、1年、3年、5年、10年)が可能であり、若年個体の成長及び発育に対する影響が小さく、眼用剤形が安全で、信頼性があることである。
【0043】
本願は、また、方法を提供し、前記方法は、近視を治療し及び/又はその眼軸の延長を抑制するために、適切な対象に有効用量のビンポセチン又はその関連化合物を投与することである。
【0044】
本願の方法又は医薬組成物は、近視を顕著に抑制し、特に、小児及び/又は若年性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、又は早期、中期の近視、又は軽度若しくは中等度の近視、又は非病的近視、又は軸性単純近視、又は小児及び/若しくは青少年軸性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、又は、小児及び/若しくは青少年の進行性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、又は原発性近視、又は非加齢性近視、又は未成年者近視、又は進行性近視、又は非屈折性近視を抑制することができる。
【0045】
本願の方法又は医薬組成物は、近視の個体(まだ近視ではないが近視に進行する個体を含む)の眼軸延長及び/又は硝子体腔の長さの増加を顕著に抑制し、遅滞させることができる。好ましくは、本願の方法又は医薬組成物が適用される集団が、小児及び/又は若年性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、又は早期、中期の近視、又は軽度若しくは中等度の近視、又は非病的近視、又は軸性単純近視、又は小児及び/若しくは青少年軸性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、又は、小児及び/若しくは青少年の進行性近視(好ましくは、年齢層が3~26歳であり、より好ましくは、年齢層が6~18歳である)、又は原発性近視、又は非加齢性近視、又は未成年者近視、又は進行性近視、又は非屈折性近視のある者を含み、それらの近視の個体(まだ近視ではないが近視に進行する個体を含む)の眼軸延長及び/又は硝子体腔の長さの増加は、本願の方法又は医薬組成物によって抑制され、ないしは停止する。
【0046】
本願は、被験者に治療有効量のビンポセチン又は治療上許容されるその塩又はその関連化合物を投与することを含む、被験者の近視とその関連症状を治療、予防し又は遅滞させる方法を提供する。好ましくは、前記ビンポセチンが単独で投与され、好ましくは、前記ビンポセチンが他の薬物と同時に、順次又は間隔を設けて、交互に投与され、好ましくは、前記ビンポセチンが、医薬組成物の形態で投与され、好ましくは、前記医薬組成物が眼用製剤として製剤化され、好ましくは、前記眼用製剤が、薬学的に許容される担体をさらに含み、好ましくは、前記担体が、眼科で許容される担体である。
【0047】
本願は、また、近視とその関連症状を治療、予防し又は遅滞させるための医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、ビンポセチン又は治療上許容されるその塩又はその関連化合物を含む。好ましくは、前記医薬組成物が眼用製剤として製剤化され、好ましくは、前記眼用製剤が、薬学的に許容される担体をさらに含み、好ましくは、前記担体が、眼科で許容される担体である。
【0048】
本願は、また、化合物又は治療上許容されるその塩及びその誘導体の、近視とその関連症状を治療、予防し又は遅滞させるための医薬組成物の製造における用途を提供し、前記化合物は、ビンポセチンの代謝産物(例えば、アポビンカミン酸、apovincaminic acid)、ビンカアルカロイド(Vinca alkaloid)、アポビンカミン(apovincamine)、ツルニチニチソウ抽出物(periwinkle)、ビンカミン(vincamine)、ボアカンガ・アフリカーナ抽出物(voacanga africana)、キョウチクトウ科植物抽出物、ビンクリスチン(vincristine)、タベルソニン(tabersonine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビンドリン(Vindoline)、アポビンカミン酸塩酸塩(Apovincaminic Acid Hydrochloride)、カタランチン(catharanthine)、ビンカミン酸エチル(ethylvincaminate)などであってもよく、好ましくは、前記化合物が、ビンポセチン又は治療上許容されるその塩及びその誘導体である。好ましくは、前記医薬組成物が眼用製剤として製剤化され、好ましくは、前記眼用製剤が、薬学的に許容される担体をさらに含み、好ましくは、前記担体が、眼科で許容される担体である。
【0049】
前記近視関連症状は、飛蚊症、緑内障、後部ぶどう腫、網膜剥離、弱視、黄斑出血、視野欠損、視力(特に近方視力)の進行性又は突然低下、眼部の腫れ及び/又は痛み、夜盲症を含むが、それらに限らない。
【0050】
本願の一態様によれば、前記近視は、屈折性近視である。本願の別の態様によれば、前記近視は、軸性近視である。
【0051】
本願は、また、ビンポセチン又はその塩の形態が、近視を予防し、遅滞させ、治療する過程で、他の近視予防・制御薬(例えば、アトロピン)又は光学的な予防・制御手段(例えば、オルソケラトロジーレンズ)と併用され又は間隔を設けて使用され又は交互に使用される近視治療(近視の進行抑制)計画を提供する。
【0052】
本願は、また、ビンポセチン又はその塩の形態が、近視を予防し、遅滞させ、治療する過程で、全身投与剤形(例えば、経口錠剤)及び局所投与剤形(例えば、点眼液)と併用され又は交互に使用される近視治療(近視の進行抑制及び/又は眼軸延長)計画を提供する。
【0053】
用語と定義:
「近視」とは、リラックスしている状態に調節した場合に、平行光線が眼球の屈折系を通過した後に網膜の前に集まることを指す。近視は、一般的に、遠方視力は正常なレベル以下であるが近方視力は正常であるという形で現れる。近視の個体の臨床上の概念は、静的屈折が-0.25D以上の者である。臨床的には、遠方の物がぼやけて見え、近方視力は良好であるという形で現れ、近視の初期には遠方視力が常に変動し、近距離で見る時は調節が必要でなく又は少ないため、輻輳機能はこれに応じて弱まり、外斜位又は外斜視がよく起こる。本明細書のいくつかの段落で、単語「近視」及び単語「近視眼」の表す概念に違いはなく、両者を入れ替えてもよい。当分野の研究者は、それが現れる文脈から本特許で「近視」又は「近視眼」の表す意味を正しく理解すべきである。
【0054】
近視には、4つの通常のタイプがある。(1)屈折度の大きさに基づいて、軽度(300度以下)、中等度(300~600度)及び高度(600度又は-6D以上)に分けられる。(2)屈折成分が異常なのかどうかに基づいて、屈折性近視及び軸性近視に分けられる。(3)病的変化が生じたかどうかに基づいて、病的近視及び単純近視に分けられる。(4)原因から、原発性近視及び併発性/続発性近視に分けられる。
【0055】
「軽度又は中等度の近視」の場合は、患者には遠方の物がぼやけて見える他に、他の症状はなく、即ち、主に遠方視力が徐々に低下し、遠方の物がぼやけて見え、近方視力は正常であるということであり、一般的に、眼部には眼軸長の他に特別な変化がない。
【0056】
「強度近視」(例えば、-6D)の場合は、患者の眼は前房が深く、瞳孔が大きく、眼球は前後軸が長すぎるためやや突出しているように見える。視神経乳頭の側頭側には、近視性三日月斑と呼ばれる白色又は灰白色の三日月状の斑が見られ、これは、強膜が後方に伸展し、網膜色素上皮及び脈絡膜が視神経乳頭の側頭側の端から離脱して、強膜又は脈絡膜と強膜の一部が露出するためである。後極部強膜が後方に拡張し続けると黄斑部にはラッカークラック及び網膜下新生血管が現れることがあり、近くの網膜、脈絡膜に斑状の萎縮と変性が現れ、後部ぶどう腫が起こる。黄斑部には常に色素が沈着し、ないしは出血しているため、フェルスター・フックス斑(Forster-Fuchs spot)が形成される。このような患者は硝子体液状化、混濁を伴うことが多く、少ないながらも網膜剥離及び併発性白内障が起こることがある。また、強度近視の場合は、常に屈折媒体混濁及び網膜、脈絡膜の変性により、その遠方視力と近方視力がいずれも低下し、時には目の前に黒い影が浮かび上がって動く。このような病変が現れた場合は、このような近視はもはや単純近視ではない。
【0057】
「屈折性近視」は、主に、角膜又は水晶体の曲率が大きすぎるため、屈折力が正常な範囲を超えているが、眼軸長は正常な範囲にあることが原因である。
【0058】
「軸性近視」は、眼軸長が正常な範囲を超えているが、角膜及び水晶体の曲率は実質的に正常な範囲にあるものである。軸性近視は、小児及び若年性近視の主なタイプである。
【0059】
「病的近視」は、変性近視とも呼ばれ、眼底の退行性病変である。患者の近視屈折度数は一般に高く(例えば、600度以上)、視覚機能が明らかに損なわれ、遠方視力はさらに低下しており、また、視野、光覚、コントラスト感度などに異常が多く、夜間の視力低下(夜盲症)、飛蚊症、浮遊物体、閃輝暗点などを伴うことが多い。患者の眼底には、網膜色素上皮及び脈絡膜が薄くなったことが見られ、網膜色素上皮萎縮、脈絡膜新生血管、網膜剥離、黄斑変性などの症状を伴うことが多く、また、発育が停止しても眼底の病的変化が進行し続け、このタイプの近視は、深刻な場合は失明になる。
【0060】
「単純近視」とは、眼球の発育期に起きる近視を指し、発育が停止すると、近視も安定する傾向になる。例えば、学齢期に起きることが多く、近視の度数は600度以下であり、眼底には一般的に明らかな病的変化がない近視であり、後天性近視(眼)とも呼ばれる。このような近視は進行性に発展し、眼軸長も進行性に増加し、適切なレンズで視力を正常に矯正することができ、他の視覚機能指標は殆ど正常である。その反対は、非単純近視であり、非単純近視の例として、病的近視、強度近視、高齢者近視などがある。
【0061】
「原発性近視」は、近視の主なタイプである。「原発性」とは、従来の診断技術を用いて原因や病因などがまだ特定できない一連の原因不明な近視を指す。その発生・進行する過程で、先天性近視及び後天性単純近視を含む、近視に特有の病理学的又は生理学的機能-構造変化が現れる。
【0062】
「併発性/続発性近視」とは、内外の要因の作用で起きる眼の調節機能障害、又は屈折率の異常により起きる一時的な近視(例えば、中毒性近視、薬剤性近視、外傷性近視、糖尿病性近視、初期段階の白内障性近視)などを指し、このような近視の特徴は、明確な誘発要因があるものが多く、視力が繰り返し変動することである。このような近視は、高齢者に多発する。
【0063】
「軸性単純近視」は、単純軸性近視とも呼ばれ、単純近視に属し、眼軸の延長及び/又は硝子体腔の深さの増加により結像焦点が網膜の前方に位置する単純近視を特徴とする。このような近視では眼部の屈折組織(例えば、水晶体)が実質的に正常であり、小児及び青少年に最も一般的な近視のタイプであり、3~26歳、特に6~18歳の集団に多発する(Paul N Baird,Nat Rev Dis Primers.2020 Dec 17;6(1):99、A J Adams,Am J Optom Physiol Opt.1987 Feb;64(2):150-2、Seang-Mei Saw,Ophthalmic Physiol Opt.2005 Sep;25(5):381-91.)。
【0064】
「曲率性近視」は、角膜又は水晶体の曲率増加だけにより起きる近視である。
【0065】
「指数関数的近視」は、主に、房水及び水晶体の屈折率の増加により起きる屈折力の増加から引き起こされる近視であり、屈折性近視に属する。
【0066】
「進行性近視」とは、屈折度が時間の経過又は個体の年齢増加と共に持続的に低下する近視を指し、このような近視は、介入しなければ、一般的には最終に強度近視に進行する。
【0067】
「小児及び若年性近視」は、長時間に近距離で眼を使うことで起きる単純近視であり、このような近視の患者は殆ど病的近視に進行しない。小児又は青少年は眼球が成長・発育の段階にあるため、調節能力が強く、強膜の伸展性も高い。閲読、読み書きなど近距離で作業する場合は、眼球は焦点の合う位置がずれる状態にあり、時間が経つと、眼球の前後軸は長くなって、小児及び青少年軸性近視になりやすい。眼の使用習慣が変わらないか又は近視眼に対する医療介入が行われなければ、小児及び青少年の近視の程度は徐々に高くなり、それに応じて眼軸長もさらに増加する。したがって、このような近視では、小児又は青少年の成長・発育及び学習に伴って、眼軸長は常に動的であり、屈折度も持続的に負になり、即ち、進行性近視に属し、成人又は高齢者の近視のように殆ど静的状態にあるわけではない。したがって、臨床上、このような近視治療薬の薬効評価を行うのは近視の進行を制御し眼軸の延長を抑制することを主な指標とする。
【0068】
「高齢者近視」は一般的には複雑であり、体の器官の老化及び基礎疾患の影響を受けやすく、血糖変化、血管硬化、血液供給不足、眼部の微小循環障害などの症状を伴うことが多く、且つ殆ど強度近視である。成人又は高齢者の近視患者の1つの顕著な特徴は、近視の程度が一般的には年齢を重ねても高くならないことであり、その主な原因は、このような個体は眼部の成長及び発育が実質的に停止しており、眼軸長は長時間に近距離で物を見ることで変わらないことである。したがって、高齢者(成人を含む)の近視と小児及び青少年(未成年者)の近視は全く異なる2種類の疾患であり、近視の治療方法に関してはこの2つの適応症を明確に区別する必要がある。本願の薬物又は方法は、様々なタイプの近視の治療に適するが、単純近視が好ましく高齢者近視、強度近視、病的近視などの非単純近視は除外される。これらの近視患者に対する臨床的介入方法は眼軸の延長を抑制することではなく、眼部の深刻な病変により失明、例えば、網膜剥離により失明が起きるのを阻止することだからである。
【0069】
「近視関連症状」は、近視より起きる合併症を含み、例えば、強度近視の合併症であり、飛蚊症、緑内障、後部ぶどう腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑症、視野欠損、視力(特に近方視力)の進行性又は突然低下、眼部の腫れ及び/又は痛み、夜間の視力低下(例えば、夜盲症)、乱視、不同視、失明、硝子体液状化、硝子体混濁、斜視、頻繁な瞬き、閃輝暗点、頻繁に目をこすること、不同視、遠方の物を見る時に視界がぼやけること、遠方の物が明瞭に見えるよう目を細めたりまぶたを一部閉じる必要があること、眼の疲れより起きる頭痛、運転時の、特に夜間の見えにくさ(夜間近視)、網膜の萎縮と変性(出血と裂孔)、網膜下新生血管、及び眼球萎縮であり、また、程度の異なる眼底変化、近視性コーヌス、黄斑出血又は網膜下血管腫形成が起こり、形状が不規則な白色の斑状萎縮、又は色素の沈着のある円形の黒色斑(フックス(Fuchs)斑)、網膜の周辺部の格子状変性、嚢胞状変性が起こり、若年期に既に硝子体液状化、混濁、後部硝子体剥離などが起きており、網膜裂孔及び剥離が起きるリスクは健常者より高く、眼球の前後径が長くなるため、眼球が突出し、眼球の後極部が拡張することで、強膜ぶどう腫が起きることが多い。
【0070】
「調節緊張性近視」は、眼球の近方視の過負荷により、毛様体筋などの過剰な調節から、調節緊張又は調節けいれんが起きて生じる近視である。
【0071】
「乱視性近視」は、角膜が損なわれるか又は異なる程度の曲率により、外部の光が四方に拡散して、網膜に焦点を結ぶことができない近視である。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明に係る近視は、病的近視、強度近視、高齢者近視、乱視性近視を含んでもよいし又は含まなくてもよく、これらの近視は、ビンポセチンの血流改善機能により矯正することができ、また、ビンポセチンの未知の機序により、近視の進行を予防、治療し又は遅滞させる(制御する)ことができる。
【0073】
近視の介入手段は、近視の矯正及び近視の治療に分けられ、そのうち、近視の治療は、近視の進行を抑制(制御)することを主な特徴及び目的とする。
【0074】
「近視の矯正」は、光学的方法によって矯正し又は近視の度数を減少させることである。良く用いられる矯正手段は、フレームメガネの着用、超音波水晶体乳化吸引術、眼内レンズ移植、レーザー角膜手術などを含む。しかし、このような手段は個体の屈折度を矯正するが、近視の進行を先送りにし又は長すぎる眼軸を逆転させることはできない。言い換えれば、このような近視介入方法は、屈折度が持続的に負になるプロセスを停止又は遅滞させる役割を果たさず、近視の進行を抑制することができない。したがって、レーザー角膜手術などの近視矯正方法は、患者の屈折異常を補償し、その遠方視力を回復させることができ、病的近視、強度近視又は高齢者近視集団の視力向上には適するが、軸性近視又は単純近視、例えば、小児若しくは若年性近視、原発性近視、又は軽度、中等度近視などの治療には適さない。実際には、軸性近視の個体は、フレームメガネを着用すると遠方視力が一時的に回復されるが、当該矯正方式はその眼軸の更なる延長を抑制せず又はその近視進行の速度を制御せず、他の薬物治療がない場合は、結果的に、近視の度数はさらに増加し、患者は所定の期間ごとに、その視力の矯正を続けるために、度数のより大きいフレームメガネに交換する必要がある。
【0075】
「近視の進行の抑制(制御)」とは、様々な方法又は薬物で、近視の度数が増加し続けることを先送りにし(遅滞させ)、屈折度が負になる速度を低減させ、近視の進行を制御し眼軸が延長し続けることを抑制(制御)することを指し、病因学的な治療に属し、対象患者は殆どまだ眼部の発育段階にある未成年者である。小児又は若年性近視の治療については、その屈折度が持続的に負になることを遅滞させ、制御しないしは停止させ、対応する眼軸長の増加を抑制することが、近視治療薬の開発の最も重要な目的である。即ち、近視の治療は、小児又は若年性近視、軸性近視、単純近視などの近視のタイプに対し、近視の進行を制御又は抑制する効果を出すべきであり、単にこのような屈折異常の状態を逆転させ又は矯正するのではない。
【0076】
特に説明がない限り、本願で「(近視)の治療」とは、近視の進行を抑制(制御)することを指し、近視を矯正することではない。本明細書で使用される用語「治療」「遅滞」「先送りにする」「抑制」「制御」、又は「予防・制御」とは、目標病症又は障害を防止し又は遅滞(軽減)させる又は停止させることを目的とする、治療的処理措置及び予防又は防止措置を指す。例えば、本明細書に記載の方法による治療量のビンポセチン化合物又はそれを含有する医薬組成物を受けた後、対象には、眼科病症の1種又は複数種の症状及び症候が観察可能及び/又は測定可能に抑制され、先送りにされ、減少し若しくは消失し、又は病状の進行が遅滞され若しくは先送りにされることが示されると、対象の眼科病症の治療は成功している。また、本明細書に記述されている医学的病症を治療又は予防する様々なパターンに関して「顕著」であることは、特定の生物学的に関連する又は医学的に関連する結果が得られる、完全な治療又は予防及び完全未満の治療又は予防を含むということが理解されたい。いくつかの実施形態では、「治療」といっても、近視又は近視の症状を100%解消しなくてもよい。いくつかの実施形態では、本願の組成物又は方法がない時に(例えば、本願の組成物又は本願の方法に係る化合物の生物学的に適合する対照被験者又は標本に曝露されずに)観察されたレベルと比べて、本願の方法に基づいて近視又は近視関連症状を「治療」する場合は、近視の進行を例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%又は少なくとも約20%予防し、軽減させ、抑制し、阻止している。いくつかの実施形態では、本願の方法に係る化合物がない時の近視又は近視関連症状と比べて、近視又は近視関連症状は少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%若しくは少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又はそれ以上(約100%)治療される。したがって、当業者が理解できることだろうが、「治療」「遅滞」「先送りにする」「抑制」「制御」又は「予防・制御」とは、眼の保健作用又は補助的な治療効果など、間接的な方式によって近視の治療に役立つ手段、例えば、眼部の血液循環向上、眼部への投与時の快適性向上などを指すものではない。
【0077】
近視治療効果の評価は、例えば、サンプル集団の選択が科学的なのかどうか、客観的な対照を設けたかどうか、有効な用量を投与したかどうかなど、様々な要因に関わっている。具体的に言えば、サンプル集団が殆ど高齢者である(眼部の発育が停止し且つ動脈硬化などの基礎疾患がある可能性はある)場合は、ビンポセチンは近視に対して治療効果があることを証明しにくく、視力テストだけで薬効を評価し並行対照(例えば、プラセボ群)を一切設計しなければ、ビンポセチンは近視に治療効果があることを証明できない。本願では、実際の近視薬物の前臨床開発段階で一般的に使用される、眼部がまだ成長発育段階にあるモルモット形態覚遮断及びマイナスレンズ誘導の2つの古典的な近視疾患モデル、及び当分野の科学試験の基準を用いて化合物の近視を予防・制御し、特に、小児及び若年性近視及び/又は単純近視を予防・制御する薬効を評価する(D A Goss,Am J Optom Physiol Opt.1981 Oct;58(10):859-69.、Hao Wu,Proc Natl Acad Sci USA.2018 Jul 24;115(30):E7091-E7100.、Sen Zhang,Invest Ophthalmol Vis Sci.2019 Jul 1;60(8):3074-3083.)。
【0078】
「遠方視力」は、裸眼の遠方視力とも呼ばれ、医学的には、視力表に向き合う水平距離5メートルのところに、正常に目を開けて前方を注視し、メガネ又は視力を高める効果のあるいかなる補助デバイス(例えば、フレームメガネ、コンタクトレンズ、カラコン、ピンホールメガネなど)も着用せずに測定される視力を指す。
【0079】
「局所投与」とは、影響を与える体の部位に直接投与すること、又は局所的な効果発揮を満たすことができる投与方式を指し、表皮投与、吸入投与、浣腸投与、眼部投与、鼻腔内投与を含むが、それらに限らない。
【0080】
「全身投与」は、システム投与とも呼ばれ、静脈内投与、経口投与、筋肉注射、皮下注射などの投与方式を含み、薬物は体内で血液輸送によって全身に分布する。
【0081】
「改良された全身投与」とは、特定の薬物標的化技術などを利用して全身投与の薬物毒性を効果的に低減させると同時に眼におけるビンポセチン薬の生物濃縮などを安全に、効率的に、便利にすることができる全身投与方式を指す。
【0082】
「直接活性成分」は、「(薬物)活性成分(Active pharmaceutical ingredient)」とも呼ばれ、疾患(例えば、近視)に直接的な治療効果のある物質を指し、それは疾患を治療するための充分な条件であり又はその投与用量、投与方式などのパラメータが疾患の治療効果に直接影響を与え、当該成分の投与と疾患の治療効果の獲得との間に因果関係がある。
【0083】
「唯一の活性成分」とは、最終製品(例えば、薬物)で1つの成分だけが薬効を発揮して、直接近視に抑制、予防及び/又は治療の効果をもたらすことを指す。
【0084】
「主な活性成分」とは、最終製品(例えば、薬物)における他の活性成分(例えば、近視治療効果)と比べて、その添加量、割合、濃度又は発揮する薬効が、他の活性成分を下回らない活性成分を指す。
【0085】
「これらの物質」とは、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物を指す。
【0086】
本明細書及び特許請求の範囲において、文脈で他に明確な指示がなければ、単数形の「1種(a)」「1つ(an)」及び「当該/前記(the)」を含む単数形式は、特に、それらによって指示される用語の複数の指示対象をカバーしている。また、本明細書で使用される場合に、特に指定がない限り、用語「又は」は、「若しくは/又は」の「排他的」な意味ではなく、「及び/又は」の「包含的」な意味で使用される。
【0087】
本明細書で使用される場合に、変数の数値範囲に言及するのは、本願を当該範囲の任意の値に等しい変数で実施してもよいということを伝えるためである。したがって、本質的に非連続の変数については、前記変数は、前記数値範囲内(前記範囲の端点を含む)の任意の整数の値に等しくてもよい。同様に、本質的に連続的な変数については、前記変数は、前記数値範囲内(前記範囲の端点を含む)のいかなる実数の値に等しくてもよい。例えば、0~2の間の数値の変数と記述される場合は、本質的に非連続の変数の場合は、0、1又は2であってもよく、且つ、本質的に連続的な変数の場合は、0.0、0.1、0.01、0.001又はいかなる他の実数値であってもよい。
【0088】
本明細書で使用されている「約」は、それを使用する文脈によってある程度変わるものであると当業者は理解できるだろう。当該用語の使用が当業者にとって不明である場合は、当該用語が使用される文脈で、「約」は、記載された値のプラス10%又はマイナス10%の範囲内の数値を表す。
【0089】
本明細書で使用される場合に、化合物、製剤又は薬物を対象に「投与」することは、化合物を対象に導入又は送達してその予想される機能を実行するためのあらゆる経路を含む。「投与」は、経口投与、眼内、眼表面、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内若しくは皮下)又は局所投与(例えば、眼周囲などの部位皮膚での局所投与)を含むあらゆる適切な経路によって実行されてもよい。「投与」は、自己投与及び他人による投与を含む。眼部投与又は眼周囲投与の場合は、被験者の患眼、非患眼又は両者に投与してもよい。
【0090】
本明細書で使用される用語「有効量」とは、所望の治療及び/又は予防効果を得るのに十分であることを指し、例えば、眼科病症に関連する病症の予防又は軽減につながる量である。対象に投与される組成物の量は、疾患のタイプ及び重症度並びに個体の特性、例えば、普段の健康状況、年齢、性別、体重及び薬物に対する忍容性から決定される。前記量は、また、疾患の程度、重症度及びタイプから決定される。当業者は、これらの要因及び他の要因に基づいて適切な用量を決定することができる。また、前記組成物は、1種又は複数種の他の治療化合物と組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記述されている方法で、ビンポセチン化合物又はそれを含有する医薬組成物を、眼科病症の1種又は複数種の症状又は症候のある対象に投与してもよい。例えば、ビンポセチンの「治療有効量」とは、眼科病症を最低に軽減させる薬理作用の平均レベルを指す。
【0091】
本明細書で用語「製剤」と「組成物」は入れ替えて使用してもよく、2種又はそれ以上の化合物、元素又は分子の混合物を指す。いくつかの態様では、用語「製剤」と「組成物」は、1種又は複数種の活性剤と担体又は他の賦形剤の混合物を指してもよい。組成物は、固体、液体(例えば、溶液)又は気体を含むほぼ全ての物理的状態であってもよい。
【0092】
また、用語「剤形」には、被験者に投与する形態で提供される1種又は複数種の製剤又は組成物が含まれてもよい。例えば、注射用剤形は、注射投与に適する形態で製造される製剤又は組成物であってもよい。
【0093】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」とは、規制当局、例えば、CFDA(中国)、EMEA(欧州)及び/又はFDA(米国)及び/又はいずれの他の国の規制当局によって動物、好ましくはヒトへの使用が承認されている、例えば、薬物の担体、薬物の濃度、又は薬物の存在形態などを意味する。
【0094】
本明細書で使用される用語「同時に」治療に使用するとは、同じ経路によって且つ同じ時間又は実質的に同じ時間に少なくとも2種の活性成分(化合物)を投与することを指す。
【0095】
本明細書で使用される用語「単独に」治療に使用するとは、同じ時間又は実質的に同じ時間に異なる経路によって少なくとも2種の有効成分(化合物)を投与することを指す。
【0096】
本明細書で使用される用語「順次」治療に使用するとは、異なる時間に少なくとも2種の活性成分を投与し、投与経路は同じであり又は異なることを指す。より具体的には、順次使用するとは、他の活性成分の投与を開始する前に、前記活性成分のうちの1種の活性成分を完全に投与することを指す。したがって、他の活性成分の投与前の数分、数時間又は数日の前に、1種の活性成分を投与してもよい。このような状況において同時治療は行われない。
【0097】
本明細書で使用される用語、障害又は病症の「予防」とは、化合物は、統計サンプルにおいて、未治療の対照サンプルに対して治療サンプルにおける障害若しくは病症の発生を低減させ、又は未治療の対照サンプルに対して障害若しくは病症の1種若しくは複数種の症候の発生を遅延させ又は障害若しくは病症の1種若しくは複数種の症候の重症度を軽減させることを指す。
【0098】
本明細書で使用される用語「関連化合物」は、ビンポセチンの誘導体又は構造類似体を含むが、それらに限らない。
【0099】
本明細書で使用される用語化合物の「誘導体」又は「類似体」は、前記化合物の機能及び/又は構造に関連するあらゆる分子、例えば、当該化合物の酸、アミド、エステル、エーテル、アセチル化変異体、ヒドロキシ化変異体又はアルキル化変異体を含む。用語「誘導体」には、上記の1つ又は複数の置換基を失った構造に関連する化合物がさらに含まれる。化合物の好ましい誘導体は、例えば、既知の方法によって決定されるなど、前記化合物と顕著な類似性のある分子である。類似する化合物及びそれらの親分子との類似性指数は、大量のデータベース、例えば、PubChem(http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/search/)又はDrugBank(http://www.drugbank.ca/)から見つけることができる。より好ましい実施形態では、誘導体が、親薬物に対して0.4を超える、好ましくは0.5を超える、より好ましくは0.6を超える、さらに好ましくは0.7を超えるタニモト係数を有すべきである。タニモト係数は、2種の分子の構造的類似性の程度を計測するために幅広く用いられる。タニモト係数は、オンラインで利用可能なソフトウェア、例えば、Small Molecule Subgraph Detector(http://www.ebi.ac.uk/thornton-srv/software/SMSD/)によって計算してもよい。好ましい誘導体は、構造及び機能的にいずれも親化合物に関連しているべきであり、即ち、それらには親薬物の少なくとも一部の活性が保持されているべきである。また、用語「誘導体」は、さらに、薬物の代謝産物を含み、例えば、当該分子を生物体に投与した後に、一般的には、特定の触媒システムによって前記薬物の(生化学的)改質又は加工から生成され、且つ、それが薬物の生物学的活性を示し又は保持している。また、用語「誘導体」には、さらに、ビンポセチン又はその塩の形態のハロゲン化(例えば、フッ素化)、水素化、重水素化、三重水素化の化合物又はその組成物が含まれる。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書で使用される場合に、「代謝産物」とは、親薬物の少なくとも一部の活性を保持しており、好ましくは、ホスホジエステラーゼ活性には抑制効果がある又は近視及び関連症状には、治療、予防し又は遅滞させる効果がある改質又は加工された薬物を指す。
【0101】
「抽出物」又は「植物抽出物」(Plant Extracts)とは、適切な化学的又は物理的方法、例えば、溶媒抽出又は圧搾を用いて、植物(植物全体又はその部分)を原料として抽出又は加工した物質を指し、当該物質は、純粋なものであってもよいし、不純物を少量に含有してもよいし、混合物であってもよい。
【0102】
「眼科組成物」又は「眼用製剤」又は「眼科用製剤」とは、眼科用組成物、若しくは眼科用医薬組成物、若しくは眼科薬物製品、又は、眼部疾患を予防及び/若しくは治療し、視力を保護し、維持し、向上させ、視力低下を回避し、遅滞若しくは逆転させるための薬物、製剤、化粧品、健康食品、薬物と機器の組み合わせ若しくは装置を指し、又は、点眼液(目薬)、眼軟膏、スプレー式目薬、インプラント、眼用ゲル、眼用パット、眼用ミクロスフェア、眼用徐放性製剤、眼周囲注射剤、眼内注射剤などであってもよい。
【0103】
「魚油」とは、高等動物、特に、魚類(例えば、タラ、サケ)、イカ、アザラシに由来する脂質を指し、特に、そのうちの多価不飽和脂肪酸を指し、オメガ3(Omega-3)不飽和脂肪酸、DHA、EPA、DPA、ALA、ニシン酸(nisinic acid)、ステアリドン酸(stearidonic acid)、エイコサテトラエン酸(eicosatetraenoic acid)又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0104】
本願では、近視を緩和し又は近視を遅滞させる効果を向上させると同時に、有害な副作用、例えば、アトロピン療法で観察されたそれらの有害な副作用を回避し又は最大限に低減させるために、近視とその関連症状を治療し、予防し又は遅滞させるための化合物、即ち、ビンポセチンが同定される。
【0105】
本願は、個体、例えば、幼児、学齢児童、青少年又は若年成人において近視とその関連症状を治療、予防し又は遅滞させる医薬組成物又は方法に関する。いくつかの例では、近視とその関連症状を治療、予防し又は遅滞させることは、必要とする被験者に治療有効量の医薬組成物又は剤形を使用することを含んでもよい。
【0106】
前記医薬組成物には、治療有効量のビンポセチン化合物又はその塩又はその関連化合物が含まれる。
【0107】
別の態様では、本願は、医薬組成物を含有する眼科装置を提供し、前記医薬組成物は、ビンポセチン又は治療上許容されるその塩又はその誘導体を含み、好ましくは、前記眼科装置は徐放方式で前記医薬組成物を送達し、好ましくは、前記眼科装置は、パルス方式で前記医薬組成物を送達する。
【0108】
当方は、実験を行ったところ、ビンポセチンの単独使用は、形態覚遮断又はレンズ誘導性モルモット近視モデルの屈折度が負になるプロセスを顕著な遅滞させることができ、一部の個体で屈折度が負になるプロセスは完全に抑制され(停止し)、且つ、眼軸の延長を顕著に抑制することができるという予想外のことを見出し、これにより、ビンポセチン化合物は、動物、特にヒト、例えば、幼児、学齢児童、小児及び青少年、未成年者、3~26歳の集団又は若年成人の近視に対して、近視の進行を予防又は治療し、防止し又は制御する効果があるということが実証される。
【0109】
いくつかの実施形態では、本願の技術的解決手段の治療対象が、小児又は青少年であり、年齢範囲が、3~26歳であり、好ましくは、6~18歳、又は12~18歳である。いくつかの実施形態では、本願の技術的解決手段の治療対象が、成人であり、例えば、年齢が、16~65歳であり、好ましくは、16~26歳である。
【0110】
局所投与実験で、全ての被投与動物にはいかなる不快感又は眼部の異常現象も観察されておらず、体重減少、摂食減少などの毒性反応もなく、ビンポセチンのこれまでの臨床的使用から、当業者は、それを近視とその関連症状の治療、防止又は改善に用いる臨床的治療の過程で良好な薬物安全性があるということを予想できる。
【0111】
本願の医薬組成物は、近視とその関連症状を治療、予防し又は遅滞させることに関してアトロピンより顕著に優れる技術的効果があり、また、実験では眼部刺激、瞳孔散大、炎症又はアレルギーなどの有害事象が観察されなかった。
【0112】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記患者を約1か月~20年の期間、例えば、少なくとも6か月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年、少なくとも7年又は少なくとも9年の期間にわたって治療する。
【0113】
一実施形態では、本願の医薬組成物、眼科装置又は治療方法において、前記医薬組成物が、ビンポセチン及び治療上許容されるその塩又はその誘導体を含み、好ましくは、薬学的に許容される担体を含む。
【0114】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、水性組成物である。
【0115】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科製剤である。
【0116】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科水性製剤である。
【0117】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、点眼製剤である。
【0118】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼スプレー製剤である。他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、コンタクトレンズのブリスター包装内に含まれる眼部医薬組成物である。
【0119】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、局所製剤である。
【0120】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科組成物である。
【0121】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、局所用眼科組成物である。
【0122】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼用ゲル製剤である。
【0123】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科乳剤である。
【0124】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科リポソームである。
【0125】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、ナノディスクである。
【0126】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、ナノ粒子懸濁液である。
【0127】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、膏剤又は軟膏又は油性軟膏である。
【0128】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記薬物、組成物が、眼科軟膏剤(例えば、眼軟膏)である。
【0129】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記薬物、製剤、組成物が、経口製剤であり、例えば、錠剤又はカプセル剤又は散剤又はシロップ剤である。
【0130】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記薬物、製剤、組成物が、担体、安定剤、浸透圧調節剤、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、張度調節剤、増粘剤又は他の賦形剤を含む、1種又は複数種の他の眼科で使用可能な賦形剤及び添加剤をさらに含む。
【0131】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法が、多価アルコール及び/又は酸性共溶媒を含み、任意に、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びクエン酸又は酒石酸を含む。
【0132】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記担体は、水、水と水混和性溶媒の混合物、重量基準で0.01~5%のヒドロキシエチルセルロースを含む植物油又は鉱油、オレイン酸エチル、カルメロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、ペクチン、アルギン酸塩、デンプン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリエチレンオキサイド、架橋ポリアクリル酸、カーボポール、レシチン、ポリエチレングリコールステアレート、多価アルコール、酸性共溶媒、へプタデカノエチレンオキシセチルアルコールオキシド又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートから選ばれるが、それらに限定されない。
【0133】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記浸透圧調節剤が、塩化ナトリウムである。
【0134】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、セトリモニウム、過ホウ酸ナトリウム、安定的なオキシ塩素複合体、ソフィア、ポリクオタニウム-1、クロロブタノール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ポリヘキサメチレンビグアナイド又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0135】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記緩衝剤は、ホウ酸塩、ホウ酸塩-ポリオール複合体、リン酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、有機緩衝剤、アミノ酸緩衝剤又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0136】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の薬物、製剤、組成物、装置又は治療方法によれば、前記張度調節剤は、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、スクロース、尿素、プロピレングリコール、グリセリン又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0137】
他の実施形態では、本願の用途に関しては、ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの近視に対する予防・制御(治療)効果又は眼軸長に対する抑制は、投与対象の性別、年齢、近視の種類、近視の進行速度及び近視の重症度に関係ない。
【0138】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、徐放性製剤又は結膜下デポである。
【0139】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、徐放性製剤である。
【0140】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科装置に含まれている徐放性製剤である。
【0141】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科装置内に、例えば、眼用パット、縫合糸、角膜コンタクトレンズに含まれる。
【0142】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科組成物であり、且つ、前記眼科組成物が眼科装置に含まれる。
【0143】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、コンタクトレンズ、眼用インサート、角膜被覆物、角膜インレー、ナノディスク、リポソーム、ナノ粒子、涙点プラグ又はマイクロ流体リザーバーを有するヒドロゲル基剤である。
【0144】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、コンタクトレンズである。
【0145】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、眼用インサートである。
【0146】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、角膜被覆物である。
【0147】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、角膜インレーである。
【0148】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、ナノディスクである。
【0149】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、リポソームである。
【0150】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、ナノ粒子である。
【0151】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、涙点プラグである。
【0152】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、マイクロ流体リザーバーを有するヒドロゲル基剤である。
【0153】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置は、徐放方式で前記医薬組成物を送達する。
【0154】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物を眼科の病症又は病状を治療するための眼科組成物として製造する。
【0155】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物を近視の前の段階、近視、真性近視、仮性近視又は近視の進行を治療するための眼科組成物として製造する。
【0156】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物を強度近視、中等度近視又は弱度近視を治療するための眼科組成物として製造する。
【0157】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物を近視の前の段階と診断された(又は、近視になるリスクのある)患者を治療するための眼科組成物として製造する。
【0158】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、眼科装置全体に実質的に均一に分布する。
【0159】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記眼科装置が、コンタクトレンズのブリスター包装に含まれる。
【0160】
他の実施形態では、上記の実施形態のいずれか及び本明細書の他の実施形態のいずれか1つ又は複数に記載の医薬組成物、眼科装置又は治療方法によれば、前記医薬組成物が、コンタクトレンズのブリスター包装内の眼科装置に浸漬される。
【0161】
薬物製剤の形態、投与パターン及び用量については、当業者に知られているあらゆる方法で細胞、器官又は組織をビンポセチン化合物と接触させてもよい。適切な方法は、インビトロ法、エクスビボ法又はインビボ法を含む。インビボ法は、一般的に、本願のビンポセチン化合物又はそれを含有する医薬組成物を哺乳動物に投与し、好ましくはヒトに投与することを含む。治療のために体内に用いる場合は、ビンポセチン化合物又はそれを含有する医薬組成物を有効な量(即ち、所望の治療効果が得られる量)で対象に投与してもよい。用量及び投与計画は、対象における眼科病症の程度、当該対象及び当該対象の病歴から決定される。
【0162】
本明細書に開示されている化合物は、プロドラッグとして存在してもよい。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学変化が起きてビンポセチン又はその関連化合物の修飾形態が得られやすい。また、プロドラッグを、化学的又は生化学的方法によってエクスビボ環境で当該化合物に変換できる。例えば、適切な酵素又は化学試薬のある経皮パッチ剤リザーバー(reservoir)に置かれている場合は、プロドラッグが徐々に化合物に変換し得る。プロドラッグは、場合によっては、化合物又は親薬物よりも投与しやすいため、一般的に有用である。例えば、それらを経口投与すると生物利用性があるが、親薬物はそうにならない。プロドラッグの医薬組成物における溶解度は親薬物よりも高い。プロドラッグ誘導体の多く、例えば、プロドラッグの加水分解による切断又は酸化による活性化に依存するプロドラッグ誘導体は当分野で知られている。プロドラッグの1つの非限定的な例は、エステル(「プロドラッグ」)として投与されたが後に代謝によりカルボン酸(活性物質)に加水分解される化合物である。
【0163】
本明細書に開示されている化合物は、治療上許容される塩として存在してもよい。本願は、酸付加塩を含む上記の化合物の塩の形態を含む。適切な塩は、有機酸及び無機酸と形成された塩を含む。このような酸付加塩は、一般的には薬学的に許容される。一方で、薬学的に許容されない塩は、問題のある化合物を製造及び精製するために用いることができる。塩基付加塩を形成させてもよく、これは薬学的に許容される。
【0164】
本明細書で使用される場合に、用語「治療上許容される塩」は、本明細書に開示されている化合物の塩又は両性イオンの形態を表し、それは、本明細書で定義されるような、水溶性又は油溶性のものであり又は治療上許容される分散性のものである。塩は、化合物の最終的な分離及び精製の期間に製造してもよいし、又は適切な遊離塩基形態の化合物と適切な酸を反応させて単独に製造してもよい。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate、besylate)、硫酸水素塩、酪酸塩、(±)-10-カンファースルホン酸塩、dl-カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、エナント酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、L-ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、DL-グルタミン酸塩、炭酸水素塩、p-トルエンスルホン酸塩(para-toluenesulfonate、p-tosylate)及びウンデカン酸塩を含む。また、本明細書に開示されている化合物における塩基性基は、次の物質、即ち、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基の塩化物、臭化物及びヨウ化物、硫酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル及びジペンチルエステル、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基及びステリル基の塩化物、臭化物及びヨウ化物、ベンジル基及びフェネチル基の臭化物を用いて四級化してもよい。治療上許容される付加塩を形成させるために利用可能な酸の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸)及び有機酸(例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸)を含む。また、化合物とアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンの配位作用によって塩を形成させてもよい。したがって、本願は、本明細書に開示されている化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などを含む。
【0165】
ビンポセチンの結晶形は、既知の全ての種類、例えば、Samuel Golobによる文献に記述されている結晶形(Samuel Golob,Improving Biopharmaceutical Properties of Vinpocetine Through Cocrystallization,J Pharm Sci.2016 Dec;105(12):3626-3633.)を含む。
【0166】
化合物の最終的な分離及び精製の期間において、カルボキシ基と適切な塩基(例えば、金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは炭酸水素塩)又はアンモニア若しくは有機第一級、第二級若しくは第三級のアミンと反応させて塩基付加塩を製造してもよい。治療上許容される塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム及び非毒性の第四級アンモニウムのカチオン、例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェニルエチルアミン、1-ジフェニルヒドロキシメタンアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミンを含む。塩基付加塩を形成させるのに適する他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン及びピペラジンを含む。
【0167】
本願の化合物は粗化学品の形態で投与されてもよいが、それらは薬物製剤として提供されてもよい。そのため、本明細書は、1種若しくは複数種の本明細書に開示されているいくつかの化合物又は1種若しくは複数種の薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、アミド若しくは溶媒和物と、1種若しくは複数種の薬学的に許容されるその担体及び任意に1種若しくは複数種の他の治療成分を含む、薬物製剤を提供する。担体が「許容される」ことの意味は、製剤の他の成分に適合し、且つその対象者に害がないことである。適切な製剤は、選ばれた投与経路から決定される。適切で且つ当分野では理解されているあらゆる公知の技術、担体及び賦形剤を用いてもよく、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照する。当分野で既知のあらゆる方式で本明細書に開示されている医薬組成物を生産してもよく、例えば、通常の混合、溶解、造粒、糖衣被覆、研磨、乳化、カプセル化、包埋又は圧縮処理を利用し、また、薬物と機器の組み合わせとして製造してもよい。
【0168】
製剤は、経口投与、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、経直腸及び局所(皮膚、口腔、舌下、眼部、鼻腔内及び眼内を含む)投与に適する製剤を含み、最適な経路は、例えば、対象者の病状及び病症から決定されてもよい。製剤は単位剤形で便利に提供されてもよく、且つ、薬学分野で公知のあらゆる方法で製造されてもよい。一般的には、これらの方法は、本願の化合物又は薬学的に許容されるその塩、エステル、アミド、プロドラッグ若しくは溶媒和物(「活性成分」)と1種又は複数種の補助成分を構成する担体を結合させるステップを含む。一般的には、活性成分と液体担体又は微粉状の固体担体又は両者を均一かつ緊密に結合させ、次に必要ならば、製品を所望の製剤として成形させることにより、製剤を製造する。
【0169】
本明細書に開示されている経口投与に適する化合物の製剤は、それぞれ所定量の活性成分を含有する、分離している単位、例えば、カプセル剤、カシェ剤又は錠剤として提供されてもよく、粉剤又は顆粒として提供され、水性液体又は非水性液体における溶液剤又は懸濁液剤として提供され、又は水中油型エマルション若しくは油中水型エマルションとして提供される。また、活性成分は、大型の丸剤、舐剤又はペースト剤として提供されてもよい。
【0170】
経口投与に使用可能な薬物製剤は、錠剤、ゼラチン製のプッシュフィット型カプセル、及びゼラチンと可塑剤(例えば、グリセリン又はソルビトール)で作られた密封型ソフトカプセルを含む。錠剤は、任意に1種又は複数種の補助成分と圧縮又は成形を行って製造されてもよい。圧縮錠剤は、適切な機械において任意に結合剤、不活性希釈剤又は潤滑剤、界面活性剤又は分散剤と混合された自由流動の形態の活性成分(例えば、粉末又は顆粒)を圧縮して製造されてもよい。成形錠剤は、適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿潤した粉末化合物の混合物を成形させて製造されてもよい。錠剤は、任意にコーティングされ又は刻み目を付けられてもよく、且つ、その活性成分が徐放され又は制御放出されるように、製剤化されてもよい。経口投与用のあらゆる製剤の用量は、このような投与で達成する近視の予防、治療の目的に適合すべきである。プッシュフィット型カプセルは、充填剤(例えば、乳糖)、結合剤(例えば、デンプン)及び/又は潤滑剤(例えば、タルク又はステアリン酸マグネシウム)そして任意に安定剤と混合された活性成分を含有してもよい。ソフトカプセルでは、活性化合物が適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコール)に溶解又は懸濁されてもよい。また、安定剤が添加されてもよい。適切なコーティングを有する糖衣コアが提供される。その目的のために、任意にアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含有する濃縮糖溶液が使用されてもよい。活性化合物の用量の異なる組み合わせを認識又は表示するよう、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0171】
経口投与薬物製剤(例えば、カプセル、錠剤)に用いる充填剤又は希釈剤の例は、乳糖、マンニトール、キシリトール、D-グルコース、スクロース、ソルビトール、圧縮糖、微結晶セルロース(MCC)、粉末セルロース、コーンスターチ、糊化デンプン、デキストレート(dextrate)、デキストラン、デキストリン、D-グルコース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポロキサマー(例えば、ポリエチレンオキサイド)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むが、それらに限らず。充填剤は、使用する乳糖は一水乳糖である場合のように、複合溶媒分子を備えてもよい。
【0172】
経口投与薬物製剤(例えば、カプセル、錠剤)に用いる崩壊剤の例は、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメルロースナトリウム、ポリビトン、クロスポリビトン(ポリビニルポリピロリドン)、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、糊化デンプン、アルギン酸ナトリウムを含むが、それらに限らない。
【0173】
また、経口投与薬物製剤には、混合の時に賦形剤が均一にブレンドすることを保証するよう、流動促進剤及び潤滑剤を使用してもよい。潤滑剤の例は、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ジステアロイルパルミトイルグリセロール、水添植物油、軽質性鉱物油、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアロイルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸亜鉛を含むが、それらに限らない。流動促進剤の例は、シリカ(SiO2)、タルクコーンスターチ、ポロキサマーを含むが、それらに限らない。ポロキサマー(又はBASF Corporationから提供されてもよい)は、A-B-Aブロックコポリマーであり、そのうち、Aブロックは、親水性ポリエチレングリコールホモポリマーであり、Bブロックは、疎水性ポリプロピレングリコールホモポリマーである。
【0174】
錠剤結合剤の例は、アラビアガム、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水添植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポリビトン(copolyvidone)、メチルセルロース、液状グルコース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリビトン、糊化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、スクロース、トラガカントゴム、ゼインを含むが、それらに限らない。
【0175】
化合物は、例えば、ボーラス投与又は連続注入など、注射により非経口投与するように製剤化されてもよい。注射用製剤は、例えば、防腐剤が添加されたアンプル又は複数回用量の容器で単位剤形として提供されてもよい。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルションの形態であってもよく、且つ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの配合剤を含有してもよい。製剤は、単位用量又は複数回用量の容器で、例えば、密封されたアンプル、バイアルで提供されてもよく、且つ粉末の形態又は凍結乾燥状態で保存されてもよく、使用直前に無菌液体担体、例えば、生理食塩水又は発熱物質を含まない無菌水を添加するだけでよい。上述したタイプの無菌粉末、顆粒及び錠剤ですぐに使用できる注射溶液及び懸濁液を製造してもよい。好ましい実施形態では、本願の医薬組成物が、注射剤、特に注射器の形態である。医薬組成物は、好ましくは眼内注射、より好ましくは硝子体への硝子体内注射によって投与される。
【0176】
非経口投与用の製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、制菌剤及び製剤を対象者の血液と等張にする溶質を含有してもよい、活性化合物の水性及び非水性(油性)の無菌注射溶液、及び、懸濁剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の無菌懸濁液を含むが、それらに限らない。適切な親油性溶媒又は媒体は、脂肪油(例えば、ゴマ油)又は合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル又はトリグリセリド)又はリポソームを含む。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を向上させる物質、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランを含有してもよい。任意に、例えば、オレイン酸エチル又はトリグリセリド、又はリポソームである。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を向上させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランを含有してもよい。任意に、懸濁液は、高濃度の溶液を製造できるように、適切な安定剤又は化合物の溶解度を向上させる試薬をさらに含有してもよい。
【0177】
前述した製剤に加え、ビンポセチンなどの本特許で言及されている化合物を保存製剤として製剤化してもよい。このような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)若しくはイオン交換樹脂で製剤化されてもよく、又は微溶性の誘導体、例えば、微溶性の塩として製剤化されてもよい。
【0178】
口腔又は舌下投与の場合に、組成物は、通常の方式で製剤化された錠剤、トローチ、錠剤又はゲルの形態であってもよい。このような組成物は、風味付けされた基剤(例えば、スクロース、アラビアガム又はトラガカントゴム)に活性成分、例えば、本特許で言及されているビンポセチンなどの化合物を含んでもよい。
【0179】
また、化合物は、直腸用組成物(例えば、坐剤又は停留浣腸剤、例えば、通常の坐剤基剤、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール又は他のグリセリンの脂肪酸エステルを含有するもの)として製剤化されてもよい。
【0180】
前述した製剤に加え、ビンポセチンなどの本特許で言及されている化合物は、局所投与用の使い捨て製剤、装置、眼部の外観を変える製品又は医療消耗品、例えば、1回のみ使用する点眼液(各パッケージは1つの治療有効用量だけを含有している)、個別に包装されている眼用パット、カラコン、1日使い捨てコンタクトレンズとして製剤化されてもよい。
【0181】
本明細書に開示されているビンポセチンなどの言及されている化合物は、局所投与、即ち、非全身投与されてもよい。これには、化合物が明らかに血液に入らないよう、本明細書に開示されている化合物を眼部、表皮又は口腔の外部に付与すること、及びこのような化合物を耳、眼及び鼻に滴注することが含まれる。反対に、全身投与とは、経口投与、静脈内、腹腔内及び筋肉内投与を指す。
【0182】
局所投与に適する製剤は、皮膚を浸透して効果発揮部位に到達するのに適する液体又は半液体の製剤(例えば、ゲル、塗り薬、洗剤、ローション剤、膏剤又はペースト剤)、及び、眼、耳又は鼻への投与に適する製剤、例えば、滴剤、スプレー剤を含む。近視治療用の活性成分は、製剤の総含有量の、例えば、0.0000001~99%w/w(重量基準)を占めてもよい。いくつかの実施形態では、活性成分が、50%w/w以上まで占めてもよい。他の実施形態では、それが1%w/w未満を占めてもよい。いくつかの実施形態では、活性成分が、0.01~1%w/wを占めてもよい。他の実施形態では、それが製剤の0.00001~0.001%w/wを占めてもよく、又は、局所投与用の活性成分が、製剤の例えば、0.0000001~100%w/v(質量対体積基準)を占めてもよく、又は、いくつかの実施形態では、活性成分が50%w/v以上まで占めてもよい。他の実施形態では、それが1%w/v未満を占めてもよい。いくつかの実施形態では、活性成分が0.01~1%w/vを占めてもよい。他の実施形態では、それが製剤の0.00001~0.001%w/vを占めてもよい。
【0183】
前記ゲル製剤形態は、ビンポセチン又はそのプロドラッグ又はその関連化合物にヒドロゲルが結合して形成された製剤を含み、好ましくは、ヒドロゲルが結合されたビンポセチン又はそのプロドラッグのヒドロゲルが、生分解性ヒドロゲルである。
【0184】
前記ヒドロゲルは、少なくとも1種のポリマーを含み、好ましくは、少なくとも1種のポリマーからなり、前記ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルコキシ)ポリマー、ポリ(アミド)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(酪酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エチレン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)(poly(hydroxyethyl acrylate))、ポリ(ヒドロキシエチルオキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(poly(hydroxypropylmethacrylamide))、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)(poly(hydroxypropyl methacrylate))、ポリ(ヒドロキシプロピルオキサゾリン)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコールフマル酸エステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、シロキサン、リボ核酸、デオキシリボ核酸、アルブミン、抗体及そのフラグメント、血漿タンパク質、コラーゲン、エラスチン、ファスシン(fascin)、フィブリン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、プロラミン(prolamin)、トランスフェリン、シトクロム、フラボタンパク質、糖タンパク質、ヘモグロビン、リポタンパク質、金属タンパク質、フィトクロム、リンタンパク質、オプシン、寒天、アガロース、アルギン酸塩、アラバン、アラビノガラクタン、カラギーナン、セルロース、カルボキシメチルセルロース(carbomethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他の炭水化物ベースのポリマー、キトサン、デキストラン、デキストリン、ゼラチン、ヒアルロン酸及びその誘導体、マンナン、ペクチン、ラムノガラクツロナン、デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、キシラン、及びそのコポリマーと官能化誘導体から選ばれることが好ましい。
【0185】
好ましくは、前記ヒドロゲルが、生分解性ポリエチレングリコール(PEG)ベースのヒドロゲルである。
【0186】
好ましくは、前記ポリエチレングリコール(PEG)が、単一の分子量のもの又は異なる分子量のものを所定の比率で混合してできたグループである。
【0187】
前記ヒドロゲルは、成形品であり、好ましくは、微粒子の形状である。より好ましくは、前記ヒドロゲルが、マイクロビーズの形状である。さらに好ましくは、前記マイクロビーズが、1~1000μm、より好ましくは5~500μm、より好ましくは10~100μm、さらに好ましくは20~80μmの直径を有する。ビーズの直径は、マイクロビーズを等張水性緩衝液に懸濁させて測定される。好ましい実施形態では、前記ヒドロゲルが結合されたビンポセチン又はそのプロドラッグが、マイクロビーズの形状である。より好ましくは、前記ヒドロゲルが結合されたビンポセチン又はそのプロドラッグが、ビーズの形状である。さらに好ましくは、前記マイクロビーズが、1~1000μm、より好ましくは5~500μm、より好ましくは10~100μm、さらに好ましくは20~80μmの直径を有する。ビーズの直径は、マイクロビーズを等張水性緩衝液に懸濁させて測定される。このようなヒドロゲルは、様々な方式で重合させてもよく、例えば、フリーラジカル重合、イオン重合又は錯体形成反応で重合させてもよい。
【0188】
ヒドロゲルがフリーラジカル重合又はイオン重合によって加工された場合に、少なくとも2種の原料は、架橋マクロマー又は架橋モノマー(架橋試薬と呼ばれる)及び多官能性マクロマー(骨格試薬と呼ばれる)である。架橋試薬は、少なくとも2つの互いに結合できる官能基を備え、骨格試薬は、少なくとも1種の互いに結合できる官能基と、少なくとも1種の重合ステップに関与するために用いられない化学官能基を備える。他にも希釈剤モノマーが存在してもよいし、存在しなくてもよい。有用な互いに結合できる官能基は、フリーラジカル重合できる基、例えば、ビニル基、ビニルベンゼン、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、メタクリルアミド、及び、イオン重合できる基、例えば、オキセタン、アゼチジン及びエチレンオキシドを含むが、それらに限らない。代替的な任意の製造方法では、前記ヒドロゲルが化学錯体形成反応によって生成される。このような反応では、原料が、縮合又は付加反応などの反応を行うための相補的な官能基(complementary functionality)を有する少なくとも1種の高分子原料である。一実施形態では、1種の高分子原料だけを使用し、それは、同じでも異なってもよい重合可能な官能基を大量に含むヘテロ多官能性(heteromultifunctional)骨格試薬である。
【0189】
ビンポセチンなどの活性成分に加え、本願の局所用の眼用、耳用及び鼻用の製剤は、賦形剤をさらに含んでもよい。このような製剤でよく使用される賦形剤は、等張剤、防腐剤、キレート剤、緩衝剤、界面活性剤を含むが、それらに限らない。他の賦形剤は、可溶化剤、安定剤、快適性向上剤、ポリマー、緩和剤、pH調整剤及び/又は潤滑剤を含む。水、水と水混和性溶媒(例えば、C1~C7アルカノール)の混合物、0.5~5%の非毒性の水溶性ポリマーを含む植物油又は鉱油、天然物(例えば、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカントゴム、カラヤガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、寒天、アラビアガム)、デンプン誘導体(例えば、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン)及び他の合成品(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、好ましくは、架橋ポリアクリル酸及びこれらの生成物の混合物)を含む、様々な賦形剤のいずれかも、本願の製剤に用いられてもよい。賦形剤の濃度は、一般的には、活性成分の濃度の1~10万倍である。好ましい実施形態では、製剤に含める賦形剤が、一般的には、製剤の活性成分の組成に対するそれらの不活性によって選択される。
【0190】
眼用、耳用及び鼻用の製剤に関して、適切な等張調整剤は、マンニトール、D-グルコース、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトールなどを含むが、それらに限らない。適切な緩衝剤は、リン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩などを含むが、それらに限らない。適切な界面活性剤は、イオン性及び非イオン性の界面活性剤(ただし、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80、RLM100、POE20セチルステアリルエーテル(例えば、CS20)及びポロキサマー(例えば、F68)が好ましい)を含むが、それらに限らない。製剤は、溶液又は懸濁液の粘度を向上させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒプロメロース、微結晶セルロース、ソルビトール又はデキストランを含有してもよい。任意に、製剤は、高濃度の溶液を製造できるように、適切な安定剤又は化合物の溶解度を向上させる試薬をさらに含有してもよく、これは、エタノール、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、フェネチルアルコール、グリセリンを含むが、それらに限らない。
【0191】
本明細書に記載の製剤は、1種又は複数種の防腐剤を含んでもよい。このような防腐剤の例は、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸エステル、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール(例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコール又はフェネチルアルコール)、グアニジン誘導体(例えば、ポリヘキサメチレンビグアナイド)、過ホウ酸ナトリウム、ポリクオタニウム-1、アミノアルコール(例えば、AMP-95)又はソルビン酸を含む。いくつかの実施形態では、製剤自体が防腐性のものであってもよいため、防腐剤はいらない。いくつかの実施形態では、製剤自体が防腐性のものではないが、包装材料又は包装設計を利用して薬物の劣化(例えば、物理的と化学的性質の変化及び/又は生物学的効果の変化)を避けることができるため、防腐剤はいらない。
【0192】
眼、耳又は鼻への投与の場合に、製剤は、溶液、懸濁液又はゲルであってもよい。好ましい態様では、水溶液又は懸濁液中の眼又は耳への局所投与用の製剤が滴剤の形態である。水溶液又は懸濁液中の鼻への局所投与用の製剤は、滴剤、スプレー剤又はエアロゾルの形態である。用語「水性」は、一般的には、重量基準で、製剤の含水量が20%より大きく、50%より大きく、より好ましくは75%より大きく且つ特に90%より大きい水性製剤を表す。これらの滴剤は、単回用量の点眼瓶によって送達されてもよく、前記単回用量の点眼瓶は、無菌であることが好ましいため、製剤の制菌成分が不要になる。又は、滴剤は、複数回用量の点眼瓶によって送達されてもよく、前記複数回用量瓶は、製剤を送達する時にその中からいずれの防腐剤を取り出すデバイスを含むことが好ましく、このようなデバイスは、当分野で知られている。溶液及び懸濁液製剤はネブライザーを使用して経鼻投与してもよい。溶液、懸濁液又は乾燥粉末剤の鼻腔内送達は、推進剤ベースのエアロゾルシステムによって促進されてもよく、前記推進剤は、ハイドロフルオロアルカンベースの推進剤を含むが、それらに限らず、又は乾燥粉末剤の形態で活性薬物成分を送達してもよい。
【0193】
眼部の病症については、本願の成分は、濃縮されたゲル又は類似する媒体として又はまぶたの下方に置く可溶性インサートとして眼部に送達されてもよい。
【0194】
特定の実施形態では、本願の製剤が毎日1回投与される。しかし、製剤は、週1回、5日に1回、3日に1回、2日に1回、毎日2回、毎日3回、毎日4回、毎日5回、毎日6回、毎日8回、1時間ごとに投与又はそれ以上の投与頻度を含むあらゆる投与頻度で投与するように製剤化されてもよい。治療計画によって、このような投与頻度は、長さが異なる持続期間に保たれる。特定の治療計画で持続期間は、1回の投与から数か月又は数年にわたる計画などに延長してもよい。製剤は異なる用量で投与されるが、典型的な用量は、1回に1~2滴、又は相当な量のゲル又は他の製剤(例えば、錠剤、眼軟膏)を投与する。当業者は、具体的な適応症に対して治療計画を決定することを熟知する。
【0195】
局所又は経皮投与用のゲルは、一般的には、揮発性溶媒、不揮発性溶媒及び水の混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、緩衝溶媒系の揮発性溶媒成分が、低級(C1~C6)アルキルアルコール、低級アルキルグリコール及び低級グリコールポリマーを含んでもよい。更なる実施形態では、揮発性溶媒が、エタノールである。揮発性溶媒成分は、浸透促進剤として働くと同時に、それが蒸発するのに伴い、皮膚に冷却効果をもたらすと考えられる。緩衝溶媒系の不揮発性溶媒の部分は、低級アルキレングリコール及び低級グリコールポリマーから選ばれる。いくつかの実施形態では、プロピレングリコールが使用される。不揮発性溶媒は、揮発性溶媒の蒸発を先送りにするとともに緩衝溶媒系の蒸気圧を低減させる。この不揮発性溶媒成分の量は、揮発性溶媒と同じように、用いられる薬物化合物又は薬物によって決定される。システムで不揮発性溶媒が少なすぎる場合は、薬物化合物は揮発性溶媒の蒸発によって結晶化する可能性があり、多すぎる場合は薬物が溶媒混合物から放出しにくいため生物学的利用能が欠如する可能性がある。緩衝溶媒系の緩衝成分は、当分野でよく使用されるいずれの緩衝剤から選ばれてもよく、いくつかの実施形態では、水が使用される。一般的に成分比は、約20%の不揮発性溶媒、約40%の揮発性溶媒及び約40%の水である。いくつかの任意の成分を局所用組成物に添加してもよい。これらは、キレート剤、ゲル化剤を含むが、それらに限らない。適切なゲル化剤は、半合成セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)及び合成ポリマー、ガラクトマンナンポリマー(例えば、グアーガム及びその誘導体)及び化粧剤を含んでもよいが、それらに限らない。
【0196】
洗剤は、皮膚又は眼に付与するのに適する洗剤を含む。眼用洗剤は、任意に殺菌剤を含有する無菌水溶液を含んでもよく、且つ、滴剤と同じような製造方法で製造されてもよい。皮膚に付与する洗剤又は塗り薬は、皮膚の乾燥又は冷却を加速させるための試薬(例えば、アルコール又はアセトン)及び/又は保湿剤(例えば、グリセリン)又は油(例えば、ヒマシ油又はピーナッツオイル)をさらに含んでもよい。
【0197】
本願の医薬組成物は、ローション剤、膏剤(例えば、3%の油性軟膏、軟膏)又はペースト剤であってもよく、外用の活性成分として用いる半固形製剤である。それらは、適切な機械を利用して、微粉状の若しくは粉末の形態の活性成分を単独で又は水性若しくは非水性流体の溶液若しくは懸濁液で油脂性又は非油脂性基剤と混合して製造されてもよい。前記基剤は、炭化水素、例えば、ワセリン、硬パラフィン、軟パラフィン又は流動パラフィン、グリセリン、蜜蝋、金属石鹸と、漿剤と、天然由来の油、例えば、魚油、アーモンド油、コーン油、ピーナッツオイル、ヒマシ油又はオリーブ油と、ラノリン又はその誘導体又は脂肪酸(例えば、ステアリン酸又はオレイン酸)とアルコール(例えば、プロピレングリコール)又はマクロゲル又はラノステロール又はジヒドロラノステロールを含んでもよい。製剤には、あらゆる適切な界面活性剤、例えば、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の界面活性剤、例えば、無水ソルビトールエステル又はそのポリオキシエチレン誘導体が混入されてもよい。懸濁剤、例えば、天然ガム、セルロース誘導体、又は無機材料、例えば、珪質、及び、他の成分、例えば、ラノリン、ラノステロールをさらに含んでもよい。
【0198】
滴剤又はスプレー剤は、無菌の水性又は油性の溶液又は懸濁液を含んでもよく、また、活性成分を適切な殺菌剤及び/又は抗真菌薬及び/又はいずれの他の適切な防腐剤に、またいくつかの実施形態では界面活性剤を含む水溶液に溶解して製造してもよい。次に、濾過して得られた溶液を清澄にし、適切な容器に移し、次に、それを密封し、高圧滅菌法又は98~100℃で30分間保持して滅菌してもよい。又は、溶液を濾過によって滅菌し、無菌技術によって容器に移してもよい。滴剤に含めるのに適する殺菌剤及び抗真菌薬の例としては、アゾール化合物(例えば、エコナゾール)、硝酸フェニル水銀又は酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及び酢酸クロルヘキシジン(0.01%)がある。油性溶液を製造するのに適する適切な溶媒は、グリセリン、希アルコール、プロピレングリコールを含む。
【0199】
口内(例えば、口腔又は舌下)局所投与用の製剤は、風味付けされた基剤(例えば、スクロース、アラビアガム又はトラガカントゴム)に活性成分が含まれているトローチ、及び、ゼラチン、グリセリン又はスクロース、アラビアガムなどの基剤に活性成分が含まれている錠剤を含む。
【0200】
吸入投与の場合は、吹送器、ネブライザーの加圧パック、又はエアロゾルスプレー剤を送達するための他の便利な装置で、本特許で言及されているビンポセチンなどの化合物を便利に送達してもよい。加圧パックは、適切な推進剤、例えば、ハイドロフルオロアルカン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを含んでもよい。エアロゾルを加圧する場合は、用量単位は、バルブを利用して計量量を送達するように決定されてもよい。又は、吸入若しくは吹送投与の場合は、本願に係る化合物は、乾燥粉末組成物の形態であってもよく、例えば、化合物と適切な粉末基剤(例えば、乳糖又はデンプン)の粉末混合物である。粉末組成物は、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン又はブリスター包装で単位剤形として提供されてもよく、吸入器又は吹送器を利用してそこから粉末を投与してもよい。
【0201】
好ましい単位用量製剤は、本明細書に記載の有効用量又はその適切な量の活性成分を含有する製剤である。
【0202】
なお、上記で特に言及されている成分に加え、上記の製剤は、当分野では対象となる製剤のタイプにとって一般的な他の試薬をさらに含んでもよく、例えば、マイクロニードル剤、経口投与又は鼻腔内投与に適する製剤である(矯味剤を含んでもよい)。
【0203】
化合物は、毎日0.001~300mg/kgの用量で経口投与又は注射投与されてもよい。成人及び高齢者の用量範囲は、一般的に5~100mg/日であり、小児又は青少年の場合は、減少か又は変えずに維持すべきである。分離している単位として提供された錠剤又は他の形態は、所定の量の1種又は複数種の化合物を便利に含有してもよく、それはこのような用量又は複数のこの用量の場合に有効であり、例えば、0.1~1000mg、一般的には、約1~10mgの単位を含有してもよく、好ましくは、5mgである。
【0204】
本特許で言及されているビンポセチンなどの化合物は、様々な方式、例えば、経口投与、局所投与若しくは注射投与、又は同時に全身投与と局所投与、又は交互に全身投与と局所投与で投与されてもよい。患者に投与される化合物の正確な量は、主治医が定める。特定の患者の具体的な用量レベルについては、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、普段の健康状況、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療される特定の病症及び治療される適応症又は病状の重症度を含む、様々な要因から決定される。また、投与経路は、病状及びその重症度によって、異なってもよい。
【0205】
場合によっては、少なくとも1種の本明細書に記載の化合物(又は薬学的に許容されるその塩、エステル又はプロドラッグ)と別の治療薬の組み合わせを投与することが適切なのかもしれない。一例として、患者が本明細書の1種の化合物を受けて生じた副作用の1つが低血圧である場合は、抗低血圧薬と最初の治療薬の組み合わせを投与することが適切なのかもしれない。又は一例として、抗アレルギー薬を投与することによって本明細書に記載の化合物の1つの治療の効果を増強させてよい(即ち、抗アレルギー薬自体は、最小限の治療の有効性しか持たないかもしれないが、本明細書で言及されている治療薬と組み合わせる時に、患者に対する治療の総有効性が向上する)。又は一例として、本明細書に記載の化合物の1つと、治療の有効性を持つ別の治療薬(さらに治療計画を含む)を投与することによって患者における有効性を向上させることができる。一例として、本明細書に記載の化合物の1つの投与が関わる近視治療では、また、患者に別の近視治療薬を提供することによって治療の有効性を向上させることができる。いずれによせ、治療される疾患、病症又は病状に関わらず、患者における総有効性は、2種の治療薬の単純な加算でもよければ、又は患者における有効性の相乗であってもよい。
【0206】
乾燥された又は液体の形態の医薬組成物は、単回用量又は複数回用量の医薬組成物の形態で提供されてもよい。
【0207】
本願の一実施形態では、液体の又は乾燥された医薬組成物が単回の用量で提供されるのは、それを提供する容器が1つの薬物用量を含有することを意味する。又は、液体の又は乾燥された医薬組成物が複数回用量の医薬組成物であり、これは、それを提供する容器が1つ以上の治療用量を含有することを意味し、即ち、複数回用量の組成物は、少なくとも2つの用量を含有する。このような複数回用量の組成物は、それを必要とする異なる患者に用いてもよいし、又は1人の患者に用いてもよく、ただし、最初の用量を用いた後に残りの用量を、必要な時までに保存しておく。
【0208】
本願の別の態様では、医薬組成物が容器にある。液体の又は乾燥された医薬組成物用の容器としては、例えば、点眼瓶、注射器、バイアル、栓と密封物を有するバイアル、アンプル、カートリッジがある。特には、液体の又は乾燥された医薬組成物は、注射器で提供される。医薬組成物が乾燥医薬組成物である場合に、容器は、デュアルチャンバー型注射器であることが好ましい。当該実施形態では、前記乾燥医薬組成物がデュアルチャンバー型注射器の1つ目のチャンバーにおいて提供され、再構成溶液がデュアルチャンバー型注射器の2つ目のチャンバーにおいて提供される。
【0209】
乾燥組成物を、それを必要とする患者に用いる前に、乾燥組成物を再構成する。再構成は、前記乾燥組成物を提供する容器で、例えば、点眼瓶、注射器、デュアルチャンバー型注射器、アンプル、カートリッジで行われてもよい。乾燥組成物に所定量の再構成溶液を加えることによって再構成する。再構成溶液は、無菌液体、例えば、水又は緩衝液であり、他の添加剤、例えば、防腐剤及び/又は抗微生物薬、例えば、ベンジルアルコール、クレゾールを含有してもよい。好ましくは、再構成溶液が無菌水である。乾燥組成物が再構成される場合に、それは、「再構成薬物組成物」又は「再構成医薬組成物」又は「再構成組成物」と呼ばれる。
【0210】
眼用製剤に関しては、本願の医薬組成物は、眼用製剤の形態で投与されてもよく、本願の眼用製剤は、眼科で許容される担体を含む。
【0211】
担体材料と組み合わせて単一の剤形を得ることができる活性成分の量は、異なってもよく、これは治療の対象及び具体的な投与方式から決定される。
【0212】
本明細書で使用される場合に、「眼科で許容される担体」は、医薬組成物を被験者の眼部に適用するための眼科で許容される溶媒、懸濁液剤又は媒体である。前記担体は、固体又は液体であってもよい。前記担体は、ある意味で「眼科で許容される」ものであり、即ち、担体は、いかなる大きな副作用も引き起こすことなく、眼部に投与することに適する。
【0213】
一般的には、眼科で許容される担体は、水であり又は水を含む。一般的には、眼用製剤の形態は、眼部に付与する点眼剤又はゲル剤である。一般的には、製剤の大部分が水である。一般的には、製剤は、50重量%を超える(例えば、60重量%を超える、65重量%を超える、70重量%を超える、75重量%を超える、80重量%を超える、85重量%を超える又は90重量%を超える)、より一般的には、95重量%を超える(例えば、96重量%を超える、97重量%を超える、98重量%を超える又は99重量%を超える)水を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、眼科で許容される担体が、水中油型エマルション又は油である。このような実施形態では、眼用製剤の形態が、眼部に付与するクリーム剤であってもよい。このような実施形態では、製剤が、10重量%を超える、より一般的に20重量%を超える油性成分を含んでもよい。
【0215】
他の実施形態では、担体が、生分解性ポリマーであってもよく、例えば、本願の化合物及び任意に他の化合物を徐放させるための生分解性ポリマー眼内インプラントである。例えば、生分解性の生体適合性ポリマー基剤である。一実施形態では、化合物は、構造的完全性を維持しつつ、ポリマー基剤に埋め込まれてもよい。前記ポリマーは、天然物であってもよく、例えば、ポリペプチド、タンパク質又は多糖であり、又は、合成物であってもよく、例えば、ポリ(アルファヒドロキシ酸)である。その例は、例えば、次の物質、即ち、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、多糖、フィブリン、ゼラチン及びそれらの組み合わせから製造された担体を含む。一実施形態では、前記ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)又はポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PGLA)である。ポリマー基剤は、ミクロスフェア、ナノスフェアを含む様々な形式及びサイズで、製造及び分離されてもよい。
【0216】
いくつかの実施形態では、治療的化合物が、前記治療化合物を保護して体から早く排出されるのを防ぐ担体と共に製剤化され、前記担体が、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む放出制御剤である。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、膠原質、ポリオルトエステル、ポリ乳酸が使用されてもよい。このような製剤は、既知の技術を用いて製造されてもよい。
【0217】
賦形剤に関しては、本願の眼用製剤に適する賦形剤は、例えば、緩和剤、軟化剤、張力亢進剤、防腐剤、緩衝剤又はpH調整剤を含む。適切な賦形剤の例は、以下を含む。
A.緩和剤:合成された高分子量架橋アクリルポリマー(例えば、カルボマー974、カルボマー980)と、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」又は「ヒプロメロース」)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース))又はカルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム))と、グルカン(例えば、グルカン70)と、ゼラチンと、ポリオール(例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール)と、ポリビニルアルコールと、ポリビトン(ポリビニルピロリドン)と、ポロキサマーと、ヒアルロン酸(二糖類のポリマー)又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩。
【0218】
B.軟化剤:ラノリン(例えば、無水ラノリン)と、油性成分(例えば、軽質性鉱油、鉱油、パラフィン、ワセリン、流動パラフィン、白色軟膏、白色ワセリン、白蝋、黄蝋)と、魚油、ヒマシ油。
【0219】
C.防腐剤:塩化ベンザルコニウムと、過ホウ酸ナトリウムと、Oxyd(亜塩素酸ナトリウム0.05%、過酸化水素0.01%)と、ポリクオタニウム-1(2,2’,2”-ニトリロトリエタノールと1,4-ジクロロ-2-ブテンとN,N,N’,N’-テトラメチル-2-ブテン-1,4-ジアミンのポリマー)と、塩化ナトリウムと、ヘキサメチレンビグアナイドと、オキシホウ酸塩と、(亜塩素酸ナトリウム0.005%m/v)。
【0220】
D.眼用張力亢進剤:塩化ナトリウム。
【0221】
E.本願の眼用製剤は、微生物の成長を抑制し製剤の使用期限を延長させる防腐剤をさらに含有してもよい。本願の眼用製剤に用いることができる防腐剤は、例えば、塩化ベンザルコニウム、過ホウ酸ナトリウム、Oxyd(亜塩素酸ナトリウム0.05%、過酸化水素0.01%)、ポリクオタニウム-1(2,2’,2”-ニトリロトリエタノールと1,4-ジクロロ-2-ブテンとN,N,N’,N’-テトラメチル-2-ブテン-1,4-ジアミンのポリマー)、塩化ナトリウム、ヘキサメチレンビグアナイド、オキシホウ酸塩を含む。亜塩素酸ナトリウム(0.005%m/v)は、広域スペクトルの抗微生物活性を有し且つ哺乳動物細胞に毒性が非常に低い殺菌剤であり、それは保存期間に製剤を保護するがさらされると最終的には水、ナトリウムイオン、塩素イオン、酸素に解離する。天然の涙液からもそれらが発見されているため、防腐剤によって誘導された眼部刺激のリスク及び角膜の損傷は最小になる。長期的には、亜塩素酸ナトリウムの使用が安全で且つ効果的である。このような防腐剤は、インビトロ又はインビボで上皮細胞に副作用がなく、且つ使用されている他の多くの防腐剤よりも細胞の完全性に対する損傷が少ない。
【0222】
本願の眼用製剤は、適切ないかなる眼用製剤の製造方法で製造されてもよい。眼用製剤は、一般的には無菌であり、そのために前記方法は、眼用製剤を滅菌するステップを含んでもよい。好ましくは、眼用製剤が、透明であり、且つ、深刻な角膜刺激を回避し微生物を予防するよう、涙液と同じような反射率、適切なpH(一般的に約pH7.5に緩衝されている)を有する。眼部への局所投与に適する本願の製剤は、蒸発及び/又は疾患により起きる涙液の高張性に対抗するように、等張性又はわずかに低張性であることが好ましい。これは、製剤のモル浸透圧濃度が210~320ミリオスモル/キログラム(mOsm/kg)のレベルに到達し又はそのあたりになるよう、等張化剤が必要である。本願の製剤は、一般的に、220~320mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有し、好ましくは、235~300mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する。観察された涙液膜の表面張力値に近い又はそれ未満の表面張力値は一般的に好ましい。一般的には、眼用製剤は、無菌水溶液として製剤化される。
【0223】
いくつかの眼用実施形態では、本願の組成物が1種又は複数種の涙液代替物と共に製剤化される。様々な涙液代替物は、当分野で知られているもので、モノマーポリオール、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールと、ポリマーポリオール、例えば、ポリエチレングリコールと、セルロースエステル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースと、デキストラン、例えば、デキストラン70と、ビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコールと、カルボマー、例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974Pを含むが、それらに限らない。本願の製剤又は医薬組成物は、コンタクトレンズ、角膜コンタクトレンズ又は他の眼科製品(例えば、フレームメガネ、近視治療機器)と共に使用されてもよい。
【0224】
好ましい製剤は、製剤のpHを約4.5~約8に維持する緩衝系を使用して製造される。最も好ましい製剤のpHは、5.5~7.5である。任意の緩衝剤は、pHを所望の範囲に維持する生理学的に許容される緩衝剤であり、例えば、リン酸ナトリウム、炭酸水素塩、コハク酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩及び酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、ピルビン酸塩である。制酸剤、例えば、Mg(OH)2又はZnCO3は使用されてもよい。pH安定性に最も敏感な条件に適合するように、緩衝液の量を調整してもよい。
【0225】
本願の眼用製剤は、清涼剤、例えば、メントール、カンファー、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールなどをさらに含んでもよい。清涼剤を混合する時に、清涼剤の濃度は、0.0001~0.1w/v%であることが好ましい。
【0226】
本願の眼用製剤は、他の眼科でよく使用される治療的成分、例えば、ベンダザック及びその塩の形態(例えば、ベンダザックL-リシン)、充血除去成分(例えば、アドレナリン、DL-アドレナリン塩酸塩、エフェドリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩など)、消炎/収斂剤(例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、塩酸ベルベリン水和物、硫酸ベルベリン水和物、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩など)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、マレイン酸クロルフェニラミンなど)、水溶性ビタミン(フラビンアデニンジヌクレオチド二ナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなど)、アミノ酸(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等混合)、アミノエチルスルホン酸など)、眼精疲労及び/又はドライアイ緩和成分(例えば、タウリン、ビタミンA、ヒプロメロース、ビタミンE)、多価不飽和脂肪酸(例えば、魚油、オメガ-3不飽和脂肪酸、DHA、EPA)、ピラセタム(Piracetam)、スルファニルアミド薬、ニコチン酸、トレチノイン及びルテイン、サリドロシド、ホルモノネチン、アトロピン、ベンダゾール、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体に対する遮断薬又は拮抗薬又は阻害薬)などをさらに含んでもよい。
【0227】
本願の医薬組成物の活性物質含有量に関しては、薬物を混合する時に、治療活性化合物の濃度は、各物質の有効な適切な量を選択してもよく、眼に対する刺激性、製剤の安定性などの面から考えると、医薬組成物において治療活性化合物(例えば、ビンポセチン)は、高濃度、中濃度又は低濃度で存在してもよく、例えば、医薬組成物の総量に約0.0000001~100%、約0.00001~10%、約0.001~20%、約0.1~30%、約1~40%、約10~50%、約20~60%、約30~70%、約40~80%、約50~90%(w/v)、例えば、約1μM、約0.1μM、約0.01μM、約5μM、約10μM、約15μM、約25μM、約50μMを占め、又は、医薬組成物の総量に約0.0000001%、約0.000001%、約0.00001%、約0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約10%(w/v)を占める。
【0228】
眼用製剤の送達に関しては、本願の眼用製剤は、点眼剤(単回用量又は複数回用量のスポイトの形態)、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤又は生分解性ポリマー眼内インプラント(徐放するように設計される)の形態又は眼増湿(例えば、複数回用量のスプレー)によって患者に送達されてもよい。
【0229】
眼用製剤の包装は、溶液の保持又は非保持の性質に関連付ける必要がある。包装方法、例えば、ブロー成形、無菌充填及び密封を1つのプロセスに組み合わせるフォーム-フィル-パッケージ技術は、特に、防腐剤を含まない製剤を単位用量容器に包装するために用いることができる。一般的には、これらの単回用量容器は、低密度のポリエチレン又はポリプロピレンからなり、且つ、ツイスト・オフ・キャップを含む。
【0230】
本願の製剤及び方法は、既に、本願の製剤及び方法から利益を得ることができるあらゆる被験者に用いられている。被験者は、一般的には、哺乳動物であり、より一般的にはヒトである。しかし、本願は、ヒトの治療に限らず、獣医学的用途にも適する。したがって、本願によれば、用語「被験者」「患者」又は「必要とする被験者」は、ヒト及びヒト以外の動物を含み、例えば、農場の動物、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマと、ペット、例えば、イヌ、ネコと、実験室の動物、例えば、マウス、ラット、ウサギを含む。好ましい実施形態では、前記哺乳動物が、ヒトである。
【0231】
別の態様では、本願は、医薬組成物を含有する眼科装置を提供し、前記医薬組成物は、ビンポセチン又は治療上許容されるその塩又はその誘導体又はそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記眼科装置は、徐放方式で前記医薬組成物を送達する。
【0232】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物が、徐放性製剤又は結膜下デポ(depot)である。
【0233】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物が、眼科装置に含まれている徐放性製剤である。
【0234】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記眼科装置が、コンタクトレンズ、角膜コンタクトレンズ、眼用インサート、角膜被覆物、角膜インレー、ナノディスク、リポソーム、ナノ粒子、涙点プラグ又はマイクロ流体リザーバーを有するヒドロゲル基剤である。
【0235】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記眼科装置は、徐放方式で前記医薬組成物を送達する。
【0236】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を眼科組成物として製造し、例えば、眼科の病症又は病状を治療するための眼科組成物として製造する。
【0237】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を近視の前の段階、近視又は近視の進行を治療するための眼科組成物として製造する。
【0238】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を強度近視、中等度近視又は弱度近視を治療するための眼科組成物として製造する。
【0239】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を近視の前の段階と診断された(又は、近視になるリスクのある)患者を治療するための眼科組成物として製造する。
【0240】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物が、眼科装置全体に実質的に均一に分布する。
【0241】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記眼科装置が、コンタクトレンズ又は角膜コンタクトレンズのブリスター包装を含む。
【0242】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物が、コンタクトレンズ又は角膜コンタクトレンズのブリスター包装内に浸漬される。
【0243】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を前記患者の眼に投与する。
【0244】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を局所投与する。
【0245】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を点眼製剤、眼スプレー製剤又は眼用ゲル製剤の形態で眼に投与する。
【0246】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を眼科乳剤、眼科リポソーム、ナノディスク、ナノ粒子懸濁液又は眼科軟膏剤の形態で眼に投与する。
【0247】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、眼科装置によって前記医薬組成物を患者の眼に眼科的に投与する。
【0248】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物を毎日1回、2回、3回、4回又は5回投与する。
【0249】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている医薬組成物が、眼科水性製剤であってもよく、例えば、点眼剤の形態である。例えば、本明細書に記載の眼科水性製剤は、点眼瓶に包装されて滴剤として投与されてもよい。いくつかの実施形態では、眼科水性製剤が、単回投与用(即ち、単回用量)として投与されてもよく、患者の眼に滴加する1滴、2滴、3滴又はより多い滴を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の眼科水性製剤の1つの用量が、前記点眼瓶の1滴の水性組成物から提供される。
【0250】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている医薬組成物が、眼科ゲル製剤であってもよい。例えば、前記眼科ゲル製剤は、点眼瓶に包装されて滴剤として投与されてもよい。いくつかの実施形態では、眼科ゲル製剤が、単回投与用(即ち、単回用量)として投与されてもよく、患者の眼に滴加する1滴、2滴、3滴又はより多い滴を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の眼科ゲルの1つの用量が、前記点眼瓶の1滴のゲル組成物から提供される。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている医薬組成物が、眼科軟膏製剤であってもよい。例えば、前記眼科軟膏製剤は、管又は他の押圧可能な容器内に包装されてもよく、前記管又は他の押圧可能容器は、軟膏剤のストリップを送達するための配分管口を有する。いくつかの実施形態では、眼科軟膏製剤が、単回投与用(即ち、単回用量)として投与されてもよく、患者の眼に入る1つのストリップ又は複数のストリップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、眼科軟膏剤の1つの用量が、分散管の管口によって配分された軟膏剤組成物の1つのストリップである。
【0252】
本明細書に記述されている治療有効量の治療組成物又は製剤を利用して対象を治療するのは、単回の治療又は一連の治療を含んでもよい。
【0253】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の近視の進行を予防する。
【0254】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の近視の進行を制御する。
【0255】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の近視の進行を軽減させる。
【0256】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の近視の進行を遅滞又は低減させる。
【0257】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、被治療患者の近視の進行を、未治療の場合と比べて、次の範囲に、即ち、約5~95%の間に、約5~90%の間に、約5~80%の間に、約5~70%の間に、約5~60%の間に、約5~50%の間に、約5~40%の間に、約5~30%の間に、約5~20%、約10~100%の間に、約20~90%の間に、約30~90%の間に、約40~90%の間に、約50~90%の間に、又は約75~90%の間に制御し、遅滞させ、低減させ、遅延させ及び/又は軽減させる。
【0258】
本明細書に開示されている医薬組成物、製剤、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物、製剤、眼科装置又は治療方法の使用により被投与対象の眼の屈折度が負になる大きさが、約1.0~6.0D、約1.0~5.0D、約1.0~4.0D、約1.0~3.0D、約1.0~2.0D、約6.0D未満、約5.0D未満、約4.0D未満、約3.0D未満、約2.0D未満、約1.0D未満に制限される。
【0259】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の近視の進行を逆転させている。
【0260】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記患者には強度近視、中等度近視又は弱度近視がある。
【0261】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記患者が、近視の前の段階である(又は近視に進行するリスクがある)。
【0262】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の眼の軸方向(又は縦方向)の成長、即ち、眼軸延長及び/又は硝子体腔の長さの増加を予防し、制御し、遅滞させ、低減させ、軽減させ、遅延させ及び/又は逆転させている。
【0263】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物、眼科装置又は治療方法が、被治療患者(例えば、軽度近視、小児又は若年性近視)の眼軸延長及び/又は硝子体腔の長さの増加を、未治療の場合と比べて、次の範囲に、即ち、約5~95%の間に、約5~90%の間に、約5~80%の間に、約5~70%の間に、約5~60%の間に、約5~50%の間に、約5~40%の間に、約5~30%の間に、約5~20%、約10~100%の間に、約20~90%の間に、約30~90%の間に、約40~90%の間に、約50~90%の間に、又は約75~90%の間に制御し、遅滞させ、軽減させ、低減させ、遅延させ及び/又は逆転させる。
【0264】
本明細書に開示されている薬物、製剤、組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、近視と診断された又は近視に進行するリスクのある患者の近視の発生、進行を制御し、停止させ、遅滞させ、低減させ、遅延させ及び/又は軽減させており、前記患者の眼(例えば、近視眼、近視眼の前の段階又は近視になるリスクのある眼)の脈絡膜厚を増加させ及び/又は前記患者の眼(例えば、近視眼、近視眼の前の段階又は近視になるリスクのある眼)の軸方向(又は縦方向)の成長速度を低減させており、即ち、眼軸延長及び/又は硝子体腔の長さの増加は抑制される。
【0265】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記方法が、被治療患者の眼の軸方向(又は縦方向)の成長を、未治療の場合と比べて、約5~95%の間に、約5~90%の間に、約5~80%の間に、約5~70%の間に、約5~60%の間に、約5~50%の間に、約5~40%の間に、約5~30%の間に、約5~20%の間に、約10~100%の間に、約20~90%の間に、約30~90%の間に、約40~90%の間に、約50~90%の間に又は約75~90%の間に制御し、遅滞させ、低減させ、遅延させ及び/又は軽減させている。
【0266】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物、眼科装置又は治療方法が、被治療患者の眼の近視の屈折度について予防し、制御し、遅滞させ、低減させ、軽減させ、変化させ、遅延させ及び/又は逆転させている。
【0267】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物、眼科装置又は治療方法が、アトロピン単独療法と比べて、さほど深刻でない有害事象を引き起こしている。
【0268】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物、眼科装置又は治療方法が、アトロピン単独療法と比べて、瞳孔サイズの増加が小さく又は瞳孔の大きさに影響がない。
【0269】
本明細書に開示されている医薬組成物、眼科装置又は治療方法のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物、眼科装置又は治療方法が、アトロピン単独療法と比べて、正常な眼の眼軸又は屈折度の近視眼に進行する程度を抑制している。
【0270】
実施例1:近視動物モデル及び投与実験
形態覚遮断及びレンズ誘導モルモット近視モデルは、当分野で古典的なかつ一般に認められる近視動物モデルであり、近視治療薬の治療効果及び安全性の評価に用いることができ、その構築方法は当業者が熟知する。本願の動物モデルの作成及び投与方式は、本研究グループが以前に発表した科学文献(Sen Zhang,Invest Ophthalmol Vis Sci.2019 Jul 1;60(8):3074-3083.、Miaozhen Pan,Exp Eye Res.2021 Jan;202:108332.)を参照し、具体的には、本願で用いる例示的な形態覚遮断及びレンズ誘導モルモット近視モデルの構築方法は次のとおりである。
3週齢のトリコロールモルモット(オスとメスの両方を使用して、3~26歳のヒトをシミュレートする)を用い、温州医科大学の実験動物室で飼育し、12時間の明期(400~500lux)/12時間の暗期の環境であり、自由に飲水し、摂食する。近視モデルは、片目形態覚遮断(FD)及びレンズ誘導(LI)のモデル作成方式を用いる。形態覚遮断では、光透過率が1%で、自ずと脱落しない特製のアイマスクを使用して動物の右目を完全に覆い、もう片方の目(左目)は正常な視覚を獲得する。レンズ誘導群では、-4Dのレンズを動物の右目の前に固定し、左目は正常な視覚を獲得し、動物は、レンズのぼやけを防ぐために、レンズを毎日2回洗浄する。実験群動物は、毎日午前9:00~9:30に投与する。投与時は、陰性、陽性対照群及び実験群の動物は、それぞれ赤色光下でアイマスク又はレンズを外し、右目に0.1mLの溶媒対照、又は被験薬物(異なる濃度のビンポセチン)、又は陽性対照(0.1%のアトロピン)を眼球周囲に注射し、注射後に動物への投与が成功し外傷はないことを確認すると直ちにアイマスク又はレンズを戻す。各動物への投与の過程を約10秒に制限する。モデル作成の当日に投与を開始し、形態覚遮断群は2週間連続投与し、レンズ誘導群は1週間連続投与する。本実験は、温州医科大学実験動物倫理委員会が審査済みである。
【0271】
実験群で用いるビンポセチン点眼液の調製方法は、次のとおりである。
ビンポセチン(VPN)の室温での水への溶解度は2.4μg/mLであると報告されているため、発明者は、5μM(即ち、1.75μg/mL)のビンポセチン原液を調製し、溶媒は、生理食塩水であり、-80℃で保存し、投与実験前に生理食塩水を用いてそれぞれ1μM、0.1μM、0.01μMに希釈する。ビンポセチン点眼液の調製過程で加熱、撹拌などの通常の物理的溶解性向上方法を用いてもよいし、酸を使用してpHを調整して溶解度を高めてもよく、最後にpHを7.31に調整すればよい。上記のビンポセチン点眼液は、常温では透明で、安定的である。
【0272】
動物の群分けは次のとおりである。
1.形態覚遮断群(FDM)
(1)形態覚遮断+溶媒注射群:片目は、アイマスクを着用し、着用眼に生理食塩水溶媒を2週間注射し、サンプルサイズ=20である。
【0273】
(2)形態覚遮断+薬物注射群:
片目は、アイマスクを着用し、着用眼にビンポセチン(0.01μM:0.1mL/日)を2週間注射し、サンプルサイズ=15である。
片目は、アイマスクを着用し、着用眼にビンポセチン(0.1μM:0.1mL/日)を2週間注射し、サンプルサイズ=20である。
片目は、アイマスクを着用し、着用眼にビンポセチン(1.00μM:0.1mL/日)を2週間注射し、サンプルサイズ=22である。
(3)形態覚遮断+陽性対照群:片目は、アイマスクを着用し、着用眼にアトロピン(0.1%:0.1mL/日)を2週間注射し、サンプルサイズ=15である。
【0274】
2.レンズ誘導群(LIM):
(1)レンズ誘導+溶媒注射群:片目は、-4Dのレンズを着用し、着用眼に生理食塩水溶媒を1週間注射し、サンプルサイズ=10である。
【0275】
(2)レンズ誘導+薬物注射群:
片目は、-4Dのレンズを着用し、着用眼にビンポセチン(0.01μM:0.1mL/日)を1週間注射し、サンプルサイズ=12である。
片目は、-4Dのレンズを着用し、着用眼にビンポセチン(0.1μM:0.1mL/日)を1週間注射し、サンプルサイズ=12である。
片目は、-4Dのレンズを着用し、着用眼にビンポセチン(1.00μM:0.1mL/日)を1週間注射し、サンプルサイズ=13である。
(3)レンズ誘導+陽性対照群:片目は、アイマスクを着用し、着用眼にアトロピン(0.1%:0.1mL/日)を1週間注射し、サンプルサイズ=11である。
【0276】
ただし、溶媒対照群の実験群との違いは、活性成分を含まないことである。
【0277】
組み入れ動物の屈折度及び眼球パラメータの計測:
同じモデルの薬効実験は全ての動物は同じ時間帯に計測し、1回目の計測時間は3週齢であり、即ち、投与前である。上記のFDM群の動物に対して、実験前、実験1週間投与後及び実験2週間投与後に、LIM群の動物に対して、実験前、実験3日投与後及び実験7日投与後にそれぞれ屈折度、眼軸パラメータを測定する。屈折度の計測では、当実験室によって構成された偏心赤外線フォトレチノスコープ(eccentricinfraredphotoretinoscope、EIR)を用い、各眼は3回の測定で平均して最終の結果とする。モルモットの眼軸パラメータの計測は、CinescanA/B超音波診断装置(仏QuantelMedical社、型番Aviso)のAモードプローブを用いて計測し、超音波周波数は11MHzであり、眼球の異なる屈折媒体の超音波伝播速度は、それぞれ、前房1557.5m/s、水晶体1723.3m/s、硝子体1540m/sと設定する。測定内容は、硝子体腔の深さ(vitrous chamber depth、VCD)及び眼軸長(axial length、AL)を含む。測定前約2分間に0.5%のプロパラカイン塩酸塩点眼液(Alcon社、ベルギー)を用いてモルモットの測定眼に眼表面麻酔を行い、各眼は6回計測し、平均して最終の結果とする。
【0278】
脈絡膜血流及び厚さの計測:
上記のFDM群の動物に対して1週間の連続投与及び2週間の投与で実験終了後に、LIM群の動物に対して7日間の投与で実験終了後に、それぞれ、脈絡膜血流パラメータ及び脈絡膜厚を測定する。脈絡膜血流パラメータ及び厚さの測定では、動物の眼球により適合するように改良された、市販されているOCTA(Spectralis HRA+OCT、OCTA、ドイツ・ハイデルベルク)を用いる。測定前にモルモットを充分に麻酔し(ケタミン塩酸塩60mg/kgとキシラジン塩酸塩9mg/kgの混合物、腹腔内注射)、後にモルモットのOCTA画像を得て、自作のプログラム(MatLab R2017a、MathWorks)によって計測結果を定量化することにより、モルモットの脈絡膜の血流量及び厚さに対するリアルタイムな定量的検出を実現する(Sen Zhang,Invest Ophthalmol Vis Sci.2019 Jul 1;60(8):3074-3083)。
【0279】
実施例2:眼部へのビンポセチン局所投与の効果実験
実験方法は、実施例1と同じである。FDM群は、投与前、投与1週間後及び投与2週間後に、それぞれ、全ての被験動物の両眼の屈折、硝子体腔及び眼軸を測定し、LIM群は、投与前、投与3日後及び投与7日後に、それぞれ、全ての被験動物の両眼の屈折、硝子体腔及び眼軸を測定する。全てのデータは、反復測定分散分析を用いて分析し、p値<0.05は、有意差があり、p<0.01は、非常に有意差がある。
【0280】
実験結果:
1.ビンポセチンの単独投与だけでFDM誘導近視の発生・進行(F
3,73=14.66、p<0.001)を効果的に抑制することができる。FDM群の投与1週間後に、生理食塩水注射群では誘導近視が-4.94±2.35Dであり、2週間後に当該群では誘導近視が-6.74±1.90Dであり、硝子体腔の深さ及び眼軸長がいずれもそれに応じて延長しており、モデル作成が成功したことが示されている。1μMのビンポセチンの1週間連続投与後に、FDMの近視及びそれに応じた眼軸、硝子体腔の深さの延長が効果的に抑制され、具体的には、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は-4.94±2.35対-2.44±1.88Dで、p<0.01であり、屈折抑制率は、50.5%であり、硝子体腔の深さもそれに応じて抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は0.11±0.04対0.06±0.05mmで、p<0.01であり、硝子体腔の深さの抑制率は45.0%であり、眼軸長も抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は0.11±0.05対0.07±0.05mmで、p=0.09であり、眼軸長の抑制率は39.8%である。他に中濃度ビンポセチン投与群による近視治療の対応する指標及び結果も、ビンポセチン及びその関連化合物は、近視の治療に用いることができるということを示唆している。また、発明者は、低濃度ビンポセチン投与群(0.01μMだけ)の2つの薬効測定時点に、統計学的有意差はないが、屈折度が負になるプロセス及び硝子体腔の深さの延長は陰性対照群と比べて抑制された傾向があるということを見出した。陽性対照群の近視治療結果を比較すると、投与1週間後に0.1%のアトロピン群のモデル誘導近視は-3.20±1.73Dであり、屈折抑制率は35.2%であり、硝子体腔の深さは0.08±0.05mmであり、硝子体腔の深さの抑制率は31.5%であり、眼軸長は0.08±0.05であり、眼軸長の抑制率は32.1%である。上記の結果から、高濃度のビンポセチンは、近視の予防・制御に関する薬効が、アトロピンより優れており、中濃度のビンポセチンによる近視治療はアトロピンの治療効果と似ているということが分かる(
図1のA~C)。
【0281】
ビンポセチンの2週間連続投与後にも、FDMモデルの近視が効果的に抑制される。FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は-6.74±1.90対-3.36±2.21Dで、p<0.001であり、屈折抑制率は50.1%であり、数匹の動物は屈折度が前回の測定と比べてほぼ変わらず、硝子体腔の深さもそれに応じて抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は0.16±0.07対0.09±0.05mmで、p<0.001であり、硝子体腔の深さの抑制率は43.4%であり、眼軸長もそれに応じて抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は0.16±0.06対0.08±0.05mmで、p<0.001であり、眼軸長の抑制率は48.2%であり、この場合に0.1%のアトロピンによって誘導された近視は-3.38±2.79Dであり、屈折抑制率は49.8%であり、硝子体腔の深さは0.10±0.05mmであり、硝子体腔の深さの抑制率は38.2%であり、眼軸長は0.10±0.05mmであり、眼軸長の抑制率は41.0%であり(図の1A~C)、アトロピンを使用する過程で動物に瞳孔散大の現象が観察されている。
【0282】
また、
図1から分かるように、ビンポセチンは形態覚遮断近視モデルの治療で正の相関の用量反応関係があり、投与量が増加するにつれて、近視治療効果は高まり、眼軸長及び硝子体腔の深さにも同じような抑制効果が示されている。対照群と比べて、ビンポセチンは、形態覚遮断性近視の屈折度の負になることを明らかに抑制し、形態覚遮断性近視の眼軸長の延長、そして硝子体腔の深さの延長を明らかに抑制することができる。同時に、ビンポセチンはFDMモデルの近視治療に関する総合的なパフォーマンスもアトロピンより優れており、特に屈折度が負になるプロセスに対する抑制効果はそうである。
【0283】
2.ビンポセチンは、LIM誘導近視の発生・進行を効果的に抑制することができる(F
3,43=4.073、p=0.012)。LIM群の実験3日後に、生理食塩水注射群では誘導近視が-3.25±1.20Dであり、7日後に誘導近視が-3.93±1.26Dであり、硝子体腔の深さ及び眼軸長がいずれもそれに応じて増加又は延長している。1μMのビンポセチンの投与3日後に、LIMモデルの近視が効果的に抑制され、LIM+ビヒクル(Vehicle)対LIM+VPN(1μM)は-3.25±1.20対-2.00±0.82Dで、p<0.05であり、屈折抑制率は38.5%であり、硝子体腔の深さもそれに応じて抑制され、LIM+ビヒクル(Vehicle)対LIM+VPN(1μM)は0.07±0.03対0.03±0.03mmで、p<0.01であり、硝子体腔の深さの抑制率は58.8%であり、眼軸長もそれに応じて抑制され、LIM+ビヒクル(Vehicle)対LIM+VPN(1μM)は0.08±0.02対0.04±0.02mmで、p<0.001であり、眼軸長の抑制率は55.5%であり、この場合に0.1%のアトロピンによって誘導された近視は-2.34±0.73Dであり、屈折抑制率は30.0%であり、硝子体腔の深さは0.04±0.03mmであり、硝子体腔の深さの抑制率は47.3%であり、眼軸長は0.04±0.02mmであり、眼軸長の抑制率は47.4%である。これにより、高濃度(1μM)ビンポセチン群の全ての近視治療指標はいずれもアトロピンより良いということが分かる。陰性対照群と比べて、高、中、低の3つの濃度のビンポセチン投与群は、いずれも近視治療効果を示している(
図2のA~C)。
【0284】
ビンポセチンの投与7日後に、LIMモデル近視も効果的に抑制される。投与期間全体内の異なる実験群の屈折度が負になるプロセスの変化傾向を比較することにより、ビンポセチンはレンズ誘導近視モデルで近視が重くなる速度を顕著に遅滞させることができるということを見出している。屈折度の結果は、LIM+ビヒクル(Vehicle)対LIM+VPN(1μM)は-3.93±1.26対-2.61±1.17Dで、p<0.05であり、屈折抑制率は36.3%であり、硝子体腔の深さもそれに応じて抑制され、LIM+ビヒクル(Vehicle)対LIM+VPN(1μM)は0.09±0.04対0.05±0.02mmで、p<0.001であり、硝子体腔の深さの抑制率は49.8%で、眼軸長もそれに応じて抑制され、LIM+ビヒクル(Vehicle)対LIM+VPN(1μM)は0.10±0.04対0.05±0.02mmで、p<0.001であり、眼軸長の抑制率は53.8%であり、この場合に0.1%のアトロピンによって誘導された近視は-2.61±1.17Dであり、屈折抑制率は33.4%であり、硝子体腔の深さは0.05±0.03mmであり、硝子体腔の深さの抑制率は45.7%であり、眼軸長は0.06±0.03mmであり、眼軸長の抑制率は41.8%であり(
図2のA~C)、アトロピンを使用する過程で動物に瞳孔散大の現象が観察されている。これにより、高濃度ビンポセチンのLIMモデル近視の治療に関する総合的なパフォーマンスはいずれも(高濃度)アトロピンより優れており、特に薬物安全性及び有効性の面から両者の創薬可能性を評価する場合はそうであるということが分かる。
【0285】
また、
図2から分かるように、異なる濃度のビンポセチンはレンズ誘導近視モデルの治療で正の相関の用量反応関係がある。同時に、ビンポセチンは近視の早期に非常に高い抑制効果を果たすことができ、且つ、このような抑制効果を維持し続けることができ、即ち、ビンポセチンの表している優れた近視予防・制御の薬効は近視の重症度又は屈折度が負になる速度に関係がない。また、生理食塩水群と比べて、全てのビンポセチン治療群は投与期間全体において殆どレンズ誘導性近視の屈折度の負になるプロセスが明らかに抑制され、近視の発生・進行が先送りにされ、レンズ誘導性近視の眼軸長の延長、及び硝子体腔の深さの増加が明らかに抑制されている。
【0286】
2つの一般に認められる近視薬効評価動物モデルのデータから、ビンポセチンはいずれも優れた近視治療効果を表しており、屈折度が負になるプロセスを抑制し遅滞させる程度は、対応する眼軸の延長に対する抑制及び硝子体腔の深さの増加に対する抑制と一致していることから、ビンポセチンは主に眼軸の延長及び硝子体腔の深さの増加を制御することにより近視を治療するということが証明されている。発明者は、図らずも、ビンポセチンを単独に使用する場合に、近視、特に軸性近視の治療で、ビンポセチンの表す薬効は高濃度のアトロピン(0.1%のアトロピン)よりも優れるということを見出している。特筆すべきなのは、ビンポセチンの近視に対する上記の治療効果は、投与対象の性別、年齢、近視の種類、近視の進行速度及び近視の重症度に関係ないことである。
【0287】
全てのビンポセチン群の被験動物への投与期間中に眼部の異常が観察されず、若年モルモットに対するビンポセチンの局所投与期間中に被験眼の瞳孔の大きさの明らかな変化が観察されず、アレルギー現象もない。同時に、全てのビンポセチン群の被験動物への投与期間中にビンポセチンの一般的な臨床有害事象又は体重減少などの毒性反応が現れた個体が見られない。
【0288】
薬力学結果評価及び長期連続投与の安全性の面から考えると、ビンポセチンは、近視を予防、治療及び制御し、特に小児及び若年性近視を予防・制御するために用いることができる。
【0289】
実施例3:ビンポセチンによる近視治療の機序
ビンポセチンは血液循環改善の効果を有することは熟知されている。発明者は、実施例1の方法を用いて、投与期間内の異なる時刻にFDM(投与1週間後及び2週間後)及びLIM(投与1週間後)の脈絡膜厚ChT及び脈絡膜血流ChBP指標の信号変化の状況を測定する。溶媒注射群と比べて、治療有効量のビンポセチンは、脈絡膜厚の増加及び脈絡膜血流灌流をわずかなだけ高めており、統計学的意味がないということを見出している(FDMモデルでは、ChBP:F
3,59=1.294、p=0.285で、
図3のA、Bであり、LIMモデルでは、ChBP:F
3,44=0.383、p=0.766で、
図4のA、Bである)。また、屈折度、眼軸長などの近視治療指標に対する薬物の抑制状況及び対応する時点での脈絡膜厚の増加及び脈絡膜血流灌流に対するビンポセチンの影響を総合的に検討したところ、次のことを見出している。その近視を治療し及び近視の進行を制御する実際の薬効と血管拡張(脈絡膜血流の増加)の想定される作用機序の両者は、論理的に対応している関係になく、投与1週間後の形態覚遮断群の関連する測定データが矛盾しており、即ち、異なる濃度のビンポセチンはいずれも屈折度が負になること、硝子体腔の深さの増加などの指標を効果的に抑制できることから、顕著な近視治療効果が示され且つ正の相関の用量反応関係があるが、ビンポセチンの脈絡膜血流灌流に対する影響は負の相関の用量反応関係を表し、且つ各濃度のビンポセチンの脈絡膜血流灌流に対する影響は、アトロピン群と比べて、いずれも陰性対照群の傾向に近い。特に高濃度ビンポセチン群(1μM)は、脈絡膜血流の改善効果が最悪であるが、近視の屈折度が負になるプロセスに対する抑制については薬効が最高であり(
図1のA、B及び
図3のB)、また、2週間の時に、形態覚遮断群の中濃度(0.1μM)ビンポセチンの表す眼軸パラメータに関する近視治療効果はアトロピンと似ているが、その脈絡膜血管の拡張効果はアトロピンに及ばない(
図1のB、C及び
図3のB)。
【0290】
以上をまとめると、ビンポセチンによる近視治療の作用機序は、眼部血管の拡張又は眼部の血液循環改善又は脈絡膜の血流量増加によらず、まだ知られていない(眼部の)機能の方により依存しているという可能性があり、当該機能に対応する生物学的標的は、ビンポセチンの既知の血管拡張作用標的と競合的結合の関係にある可能性さえある。
【0291】
実施例4:ビンポセチンの全身投与による近視の進行の制御効果
本実験の目的は、ビンポセチンの全身投与(例えば、点滴静注又は胃内投与)による近視の治療、特に近視の進行に対する制御効果を評価し、屈折度、眼軸長、硝子体腔の深さ、体重などの指標に基づいて薬物の有効性及び安全性を総合的に分析することである。ラットで、ビンポセチンの経口投与の生物学的利用能は、52%であり(Vereczkey et al.,1979a)、胃内投与のLD
50値は約500mg/kgである(
FDAが発表した齧歯動物に関するビンポセチンの安全性評価データによると、妊娠適齢期動物に胃内投与したところ、ラットに毎日20mg/kg投与した場合に明らかな異常がなく、40mg/kg以上投与した場合に体重減少、摂食量の減少の毒性反応があり、ウサギに毎日75mg/kg投与した場合に明らかな異常がなく、150mg/kg投与した場合に体重減少、摂食量の減少の毒性反応が現れ始める。現在、中国で販売されているビンポセチン製剤の剤形は、錠剤、注射剤があり、発明者は、モルモットの正常な生活習慣、形態覚遮断モデルの作成要件及び近視治療のための将来の臨床的使用の服薬コンプライアンスの原則を考慮して、胃内投与の投与方式でビンポセチン全身投与の近視治療における薬効を評価するのは、点滴静注の投与方式とほぼ同じであるか又はそれより優れると考えている。モルモットの胃内投与の単回投与量は、ビンポセチンの近縁種における経口投与の生物学的利用能及び対応する齧歯動物への胃内投与の毒性用量を同時に参照して設定し、当該投与量は、実質的にモルモットの正常な生理状態を保持させるべきであり、且つ、運動失調又は間代性けいれんなどの深刻な毒性反応が生じない。
【0292】
毎日連続投与で近視の進行に対するビンポセチンの全身投与の方式の抑制効果を評価し、同時に用量の毒性反応を観察する。本実験で用いる形態覚遮断近視動物モデル及びビンポセチンによる近視治療の薬効評価方法は本願の他の関連する実施例(局所投与)と同じであり、そのうち、モルモット形態覚遮断近視モデル(FDM)のモデル作成及び胃内投与はいずれも発明者の所属する実験室によって発表された文献を参照して操作及び実行する(Pan Miaozhen,Proc Natl Acad Sci USA.2021 Oct 26;118(43):e2104689118)。具体的には、健康な3週齢のトリコロールモルモット(オスかメスかは問わず)から、明らかに眼部疾患又は異常のある個体を取り除いた後に、屈折度(偏心赤外線フォトレチノスコープ)及び眼軸(Aモード)を測定して、屈折力が3~8ディオプトリ(diopter、D)の間であり且つ両眼の不同視が2Dを超えない動物を選択し、それをランダムに次の3群、即ち、形態覚遮断(FDM)+溶媒対照(ビヒクル(Vehicle))群、FDM+低用量ビンポセチン群(VPN)及びFDM+高用量VPN群に分け、3群動物の投与前の平均体重は実質的に同じであり且つ互いに統計学的有意差がない。実験初日の午前8時にモルモットの形態覚遮断(FD)近視モデル作成を開始する。形態覚遮断近視モデルはマスク法を用い、フードは発明者が10インチの乳白色の非毒性ラテックスバルーンを利用して製作し、モルモットのモデル作成個体は右目をフードで覆い(実験眼)、左目はフードを覆わない(反対側眼)。FD誘導はビンポセチン胃内投与の薬効実験期間全体で持続的に行われ、眼部測定(例えば、屈折度測定)の時だけに一時的にフードを外す。薬効実験が開始した後の毎日午前8時、12時、午後7時及び投与前にフードの位置をチェックし、フードが3回以上脱落した個体を外す。モデル作成の当日から毎日午前9~10時の間にFDMモデルに対応する溶媒又は薬物を投与し、投与方式は胃内投与であり、投与量は、それぞれ、50mg/kg/d(低用量)、100mg/kg/d(高用量)であり、実際の投与は各群の動物の平均体重に基づいて計算され、溶媒群の胃内投与量は5mL/kg/dである。毎日1回の投与で2週間連続投与する。当該モデルの薬効実験の開始時、1週間及び2週間の時に被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータの収集及び処理方式はいずれも発明者の所属する実験室が発表した文献と同じであり(Sen Zhang,Invest Ophthalmol Vis Sci.2019 Jul 1;60(8):3074-3083;Pan Miaozhen,Proc Natl Acad Sci USA.2021 Oct 26;118(43):e2104689118)、統計は同じ被験個体の実験眼と反対側眼の差に基づき、同時に実験期間内に全ての被験個体の体重を記録する。当実施例で発明者が使用するビンポセチン胃内投与液の調製方法は次のとおりである。ビンポセチンの室温での0.5%のメチルセルロースにおける溶解度は200mg/mLに達していると報告されている(Waidyanatha S et al,Systemic exposure of vinpocetine in pregnant Sprague Dawley rats following repeated oral exposure:An investigation of fetal transfer,Toxicol Appl Pharmacol,338:83-92,15 Nov 2017)。他の医薬添加物又は他の化合物を添加していない条件下で、発明者はビンポセチン化合物の粉剤を直接0.5%のメチルセルロース溶媒(無菌水+メチルセルロース)に完全に溶解して、それぞれ10mg/mL及び20mg/mLのビンポセチン製剤(胃内投与液)として製剤化する。室温で当該製剤は全体の外観が清澄で、透明で、均一であり且つ目視できる浮遊物質がない。前記製剤の製造過程では場合によって、加熱、撹拌、pH調整などの通常の物理的及び化学的溶解性向上手段を利用してもよく、前記製剤の投与前に化合物が析出することがない。
【0293】
実験結果から、陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化はいずれも近視モデルへの予想に適合することが分かり、今回の実験で形態覚遮断近視モデルのモデル作成が成功し、被験薬物の薬効評価に用いることができることが証明されている。
図5に示すように、治療期間全体において、屈折度それとも眼軸パラメータのどちらから判断しても、ビンポセチン全身投与群は、溶媒対照群と比べて近視を治療し近視の進行を抑制する傾向がある。同時に、ビンポセチン群の体重増加が明らかに抑制される。低濃度胃内投与群を例として説明する。投与1週間の時に、50mg/kg群のビンポセチン投与群の体重は明らかに溶媒群未満であり、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(50mg/kg)は208.5±14.9対188.0±22.9mgで、p<0.05であり、平均体重は9.9%低減し、投与2週間の時に、50mg/kg群のビンポセチン投与群の体重増加は明らかに抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(50mg/kg)は229.6±21.4対210.2±21.9mgで、p<0.05であり、平均体重は8.4%減少し、これにより、毎日の投与用量が50mg/kgである時に既に実験動物に実質的な毒性が生じており、ビンポセチンの用量をさらに増加させると被験個体に対する毒性のリスクは増すということが分かる。しかし、強調すべきなのは、発明者は、ビンポセチンの胃内投与が近視の治療、特に近視の進行抑制に対して確定した用量反応関係があるということを見出している。即ち、胃内投与量が増加するにつれて、ビンポセチンの全身投与による近視治療の薬効は一層明らかになる。50mg/kg用量の投与と比べて、100mg/kgの用量で胃内投与する場合に、被験個体の屈折度の負になる程度及び眼軸長の延長がさらに抑制される。投与治療終了時の3群の動物の屈折度及び眼軸パラメータで説明すると、屈折度は、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(50mg/kg)対FDM+VPN(100mg/kg)が-6.59±1.42対-5.71±2.41対-5.223±2.20Dであり、硝子体腔の深さは、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(50mg/kg)対FDM+VPN(100mg/kg)が0.12±0.05対0.13±0.07対0.10±0.06mmであり、眼軸長は、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(50mg/kg)対FDM+VPN(100mg/kg)が0.14±0.05対0.13±0.05対0.11±0.05mmである。上記の結果から次の結論が得られる。ビンポセチンを全身投与する場合は、同じく近視の進行を抑制し顕著な近視治療効果を得る可能性があるが、局所投与と比べて、全身投与の場合は、より大きい用量又はより長い投与治療時間とすべきである。安全性評価に関しては、近視を治療するためにビンポセチンの直接全身投与(例えば、直接点滴静注又は経口錠剤)を用いる計画は、ある程度の副作用(例えば、体重減少又は流産のリスクの増大)をもたらすため、局所投与の方式を用いる方がより推奨され、これは、経口投与などの全身投与方式でビンポセチンを利用して患者の近視を治療すると更なる臨床リスクがかかるためである。
【0294】
これにより、全身投与であれ局所投与であれ、いずれもの場合もビンポセチンは近視の予防及び治療に用いることができるということが分かる。全身投与と比べて、ビンポセチンの局所投与は近視の進行の予防・制御にとってより良い選択である。当実施例の結果は本願の結論と矛盾せず、しかも次のことを示唆するものだということが理解されたい。ビンポセチンの直接投与で近視を予防・制御及び治療する場合に、より安全で、効率的で、便利な局所投与方式(好ましくは眼部投与)を利用することが好ましいが、全身投与経路、例えば、特定の薬物標的化技術などを利用して全身投与の薬物毒性を効果的に低減すると同時に眼部でビンポセチン薬を生物濃縮などして安全で、効率的で、便利な全身投与方式を実現することで近視を治療又は抑制することは除外しない。
【0295】
実施例5:サルメテロール及びチオトロピウム臭化物による近視の治療
本発明に記述されているモルモット形態覚遮断近視モデルを利用して薬効を評価し、全ての個体に対して屈折度及び眼軸を測定し、条件に適合しない動物を除去した後、ランダムに、次の5群、即ち、ビンポセチン単独使用治療群、サルメテロール+チオトロピウム臭化物+ビンポセチン併用治療群、サルメテロール+チオトロピウム臭化物併用治療群、陰性対照群(溶媒群)及び0.1%のアトロピン群(陽性対照群)に分け、そのうち、サルメテロール(salmeterol、S)及びチオトロピウム臭化物(tiotropium、T)の使用濃度は、それぞれ、1×10-5M及び1×10-6Mであり、ビンポセチンの使用濃度は、単独投与でも併用投与でも1μMである。実験初日の午前8時にモルモットの形態覚遮断を行い、マスク法を用いて、右目は覆い(実験眼)、左目は覆わない(反対側眼)。モデル作成当日から毎日午前9~10時に実験眼に対応する群の溶媒又は薬物を投与し、眼球近傍で結膜下注射し、注射量は100μLであり、毎日1回で2週間連続投与する。薬効実験開始前及び実験終了時に動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータの収集及び処理方式はいずれも本発明の他の実施例と同じであり、統計は同じ被験個体の実験眼と反対側眼の差に基づく。
【0296】
実験結果は、陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化が近視モデルへの予想に適合し、且つ、陽性対照薬物のアトロピンは実験であるべき薬効を表すということを示し、これらのことが今回の実験で近視モデルのモデル作成が成功し、被験薬物の薬効評価に用いることができるということを証明している。投与介入後に、屈折度であれ眼軸パラメータであれ、サルメテロール+チオトロピウム臭化物併用治療群は陰性対照群と比べていずれも統計学的有意差がなく、具体的なデータは、投与2週間後に、屈折度はFDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+S+T(salmeterol、10
-5M+tiotropium、10
-6M)が-6.00±1.61対-5.09±1.80Dで、p>0.05であり、硝子体腔の深さはFDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+S+T(salmeterol、10
-5M+tiotropium、10
-6M)が0.12±0.05対0.12±0.06mmで、p>0.05であり、眼軸長はFDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+S+T(salmeterol、10
-5M+tiotropium、10
-6M)が0.13±0.04対0.13±0.08mmで、p>0.05である。上記の結果は、サルメテロール及びチオトロピウム臭化物が近視の個体にいかなる治療効果もなく、近視の進行を効果的に制御できないということを充分に証明できる。陰性対照群と比べて、2週間の投与終了時にビンポセチン単独使用(1μM)治療群及び0.1%のアトロピン群は本発明の他の実施例の近視治療結果と一致しており、両者は、いずれも、近視の個体の屈折度の負になること、眼軸長の延長及び硝子体腔の深さの増加を顕著に抑制している(例えば、
図6に示すように、ビンポセチン(1μM)治療群と溶媒対照群に統計学的有意差がある)。ビンポセチン治療群では眼部に異常が見られず、アトロピン群では瞳孔散大の現象があり、当該2群の被験動物の角膜の曲率(RCC)、前房の深さ(ACD)及び水晶体の厚さ(LT)である関連指標は薬物の影響を受けていない(
図6参照)。したがって、若年個体への投与の眼部安全性を同時に満たすという前提の下で、ビンポセチンは、唯一の活性成分又は主な活性成分又は直接活性成分として近視を効果的に予防・制御し、近視の進行を顕著に抑制し、制御し遅滞させることができる。
【0297】
さらに、サルメテロール+チオトロピウム臭化物+ビンポセチン併用治療群とビンポセチン単独使用(1μM)の治療効果は近く、投与期間全体において両者はモルモット近視モデルの屈折度、眼軸長及び硝子体腔の深さの指標にいずれも統計学的有意差がないことから、サルメテロール及びチオトロピウム臭化物はいずれもビンポセチンによる近視治療に相乗効果又は促進効果を表していないということが示唆されている。サルメテロール+チオトロピウム臭化物+ビンポセチン三者併用投与は有効性に関してビンポセチン単独使用による近視治療と有意差がないことを総合的に分析し、サルメテロール+チオトロピウム臭化物治療群が近視に対して顕著な薬効作用がないことと結び付けて、サルメテロール+チオトロピウム臭化物+ビンポセチン併用投与では、ビンポセチンだけが近視治療効果を発揮し、即ち、ビンポセチンは唯一の活性成分又は主な活性成分又は直接活性成分として近視の予防・制御に用いることができ、近視の進行を効果的に制御できるということが分かる。ビンポセチンの単独使用による近視治療は、安全性、有効性及び創薬可能性に関していずれも当実施例の薬物併用治療群より優れている。
【0298】
実施例6:非侵襲的投与(点眼液剤形)の場合にビンポセチンが近視を効果的に予防・制御することができる
本実験の目的は、非侵襲的投与経路でのビンポセチンの近視に対する影響を評価し、被験薬物は全て点眼液剤形として作製される。本発明に記述されているモルモット形態覚遮断近視モデルを利用して薬効を評価し、全ての個体に対して屈折度及び眼軸を測定し、条件に適合しない動物を除去した後、ランダムに、次の4群、即ち、ビンポセチン低濃度(1μM)群、ビンポセチン高濃度(5μM)群、陰性対照群(溶媒群)及び0.1%のアトロピン群(陽性対照群)に分ける。実験初日の午前8時にモルモットの形態覚遮断を行い、マスク法を用いて、右目は覆い(実験眼)、左目は覆わない(反対側眼)。モデル作成当日から毎日午前9~10時及び午後14~15時に全ての実験眼に対応する群の溶媒又は薬物を投与し、直接点眼投与し、単回の点眼液投与量はいずれも25μLであり、毎日2回で2週間連続投与する。薬効実験開始前及び実験終了時に動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータの収集及び処理方式はいずれも本発明の他の実施例と同じであり、統計は同じ被験個体の実験眼と反対側眼の差に基づく。当実施例で使用するビンポセチン点眼液及びアトロピン点眼液は、いずれも、発明者が0.9%の生理食塩水を利用して自ら調製したものであり、上記の点眼液には他の活性物質又は添加物が添加されていない。
【0299】
実験結果は、陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化が近視モデルへの予想に適合し、且つ、陽性対照薬物のアトロピンは実験であるべき薬効を表すということを示し、これらのことが今回の実験で近視モデルのモデル作成が成功し、ビンポセチン(点眼液剤形)の薬効評価に用いることができるということを証明している。
【0300】
非侵襲的投与の方式では、ビンポセチン目薬が、近視の発生・進行を効果的に抑制することができ(屈折は、F
2,42=9.115で、p<0.001であり、硝子体腔は、F
2,42=6.243で、p=0.04であり、眼軸は、F
2,42=8.986で、p<0.001である)、且つ、用量反応関係があり、即ち、投与濃度が高いほど、近視(眼)の治療効果が良く、且つ、異なる濃度のビンポセチン薬物群の間で近視治療中の眼軸パラメータ指標に統計学的有意差がある。モデルの作成方式、モルモットの眼部構造(眼球は、ヒトと比べてより突出しておりかつ自ずと目を閉じることはない)、そして動物が普通に瞬きをするため、各被験眼の点眼投与で実際に獲得した薬物の有効な治療用量はいずれも同じ量での眼部の眼球周囲注射の投与量未満であり、且つ、被験動物への毎日の点眼液の投与総量も実施例2の注射投与量より少ない。したがって、当実施例では低濃度ビンポセチン点眼液群であれ0.1%のアトロピン群であれ、点眼液直接点眼投与の薬効(屈折度指標)はいずれも眼球周囲注射投与の近視に対する治療効果に劣り、具体的な結果は、
図7に示すように、高濃度群では、5μMのビンポセチンの連続投与2週間後に、FDM近視の度数の増加及びそれに応じた眼軸、硝子体腔の深さの延長が効果的に抑制され、具体的には、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(5μM)は-6.56±1.70対-3.80±1.16Dで、p<0.001であり、屈折抑制率は42.1%であり、硝子体腔の深さもそれに応じて抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(5μM)は0.14±0.05対0.09±0.04mm(実際の数値は0.0869±0.0448mm、四捨五入済み)で、p<0.01であり、硝子体腔の深さの抑制率は38.6%であり、眼軸長も抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(5μM)は0.16±0.04対0.09±0.04mm(実際の数値は0.0925±0.0406mm、四捨五入済み)で、p<0.001であり、眼軸長の抑制率は41.4%である。低濃度1μMビンポセチン投与群も同様に近視の進行を効果的に制御することができ、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+VPN(1μM)は-6.56±1.70対-4.81±1.72Dで、p<0.05であり、屈折抑制率は26.7%である。陰性対照群の近視の進行を比較すると、投与2週間後に0.1%のアトロピン点眼液群のモデル誘導近視は-3.93±1.75Dであり、屈折抑制率は40.0%であり、硝子体腔の深さは0.11±0.05mm(実際の数値は0.1107±0.0502mm、四捨五入済み)で、硝子体腔の深さの抑制率は21.8%であり、眼軸長は0.11±0.05mm(実際の数値は0.1093±0.0530mm、四捨五入済み)で、眼軸長の抑制率は30.7%である。アトロピン群の投与期間中に瞳孔散大の有害事象が生じるがビンポセチン群では明らかな眼部異常が見られない。アトロピンであれビンポセチンによる近視介入であれ、被験個体の角膜の曲率、前房、水晶体である関連指標はいずれも影響を受けていない(
図7参照)。発明者の所属する実験室では、現在臨床試験濃度として多用されている0.01%のアトロピン点眼液に対して、当実施例と同じ投与条件下で(近視モデル、投与方式、投与頻度、投与量などが一致する)、当該濃度のアトロピンでモルモット近視モデルにいかなる治療効果も観察されず、屈折度指標であれ眼軸パラメータ指標であれ、いずれも0.01%のアトロピンは顕著な介入効果を持たず、これは、点眼液剤形の動物への点眼投与後に眼球表面での停留時間が短いことに関係しているかもしれない。したがって、薬効及び安全性の面から評価すると、近視の個体に対するビンポセチンでの治療の投与リスク-ベネフィット比はアトロピンより優れており(例えば、昼間にビンポセチンを使用すると近視の治療と同時にアトロピンによる瞳孔散大で起きる羞明のような現象はない)、特に、小児及び青少年集団の近視治療及び学齢段階集団の近視の予防・制御に適する。
【0301】
当実施例は、ビンポセチン目薬の点眼投与方式を採用する場合に眼球近傍の結膜下注射投与と同じように近視の屈折度の負になることを明らかに抑制し、近視の眼軸長の延長、及び硝子体腔の深さの増加を明らかに抑制することができるということを証明している。このような投与方式には同様に正の相関の用量反応関係があり、即ち、ビンポセチンの投与量が高いほど、近視治療効果が明らかである。同時に、非侵襲的投与で行う場合に、ビンポセチンの近視治療に関する総合的なパフォーマンスは、陽性対照のアトロピンより優れており、特に近視の進行に対する制御効果はそうである。
【0302】
実施例7:ビンポセチンの代謝産物アポビンカミン酸(Apovincaminic acid、AVA)は近視を効果的に予防・制御できる
本発明に記述されているモルモット形態覚遮断近視モデルを利用して薬効を評価し、全ての個体に対して屈折度及び眼軸を測定し、条件に適合しない動物を除去した後、ランダムに、3群、即ち、アポビンカミン酸単独使用群、陰性対照群(溶媒群)及び0.1%のアトロピン群(陽性対照群)に分け、そのうち、アポビンカミン酸(AVA)の使用濃度は1μMである。近視の個体のモデル作成方法は本発明の他の実施例と同じであり、全ての群では眼球近傍の結膜下注射投与を採用し、注射量は100μLであり、毎日1回で1週間連続投与する。薬効実験開始前及び実験終了時に動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータの収集及び処理方式はいずれも本発明の他の実施例と同じであり、統計は同じ被験個体の実験眼と反対側眼の差に基づく。当実施例で使用するAVA注射剤及びアトロピン注射剤はいずれも発明者が0.9%の生理食塩水を利用して自ら調製したものであり、他の活性物質又は添加物が添加されていない。
【0303】
実験結果は、陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化が近視モデルへの予想に適合し、且つ、陽性対照薬物のアトロピンは実験であるべき薬効を表すということを示し、これらのことが今回の実験で近視モデルのモデル作成が成功し、AVAの薬効評価に用いることができるということを証明している。実験結果は、ビンポセチンの代謝産物AVAはFDM誘導近視の発生・進行を効果的に抑制できるということを証明している(屈折は、F
2,36=7.914で、p=0.001であり、硝子体腔は、F
2,36=3.904で、p=0.029であり、眼軸は、F
2,36=4.539で、p=0.017である)。1μMのAVAの1週間連続投与後に、近視の度数の増加及びそれに応じた眼軸、硝子体腔の深さの延長が効果的に抑制され(
図8参照)、具体的には、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+AVA(1μM)は-4.39±1.73対-2.65±1.18Dで、p<0.01であり、屈折抑制率は39.6%であり、硝子体腔の深さもそれに応じて抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+AVA(1μM)は0.09±0.04対0.06±0.02mmで、p<0.05であり、硝子体腔の深さの抑制率は34.7%であり、眼軸長も抑制され、FDM+ビヒクル(Vehicle)対FDM+AVA(1μM)は0.10±0.04対0.07±0.03mmで、p<0.01であり、眼軸長の抑制率は36.4%である。アトロピン群では投与期間中に瞳孔散大の現象が生じるがAVA群では眼部の異常が観察されていない。上記の結果から、ビンポセチンの代謝産物AVAは、近視の予防・制御及び治療でも顕著な治療効果があるということが分かる。
【0304】
以上をまとめると、ビンポセチンは、近視の個体又は近視が発生する傾向のある個体の屈折度が負になるプロセスを顕著に遅滞させることができるだけでなく、その硝子体腔の深さの増加及び眼軸の延長を顕著に抑制することができ、近視疾患の関連症状を顕著に改善して、近視を予防、治療し及び近視の進行を制御する効果を得ることができ、且つ、全ての被験個体には、投与期間中に眼部の異常が観察されておらず、投与期間中に被験眼の瞳孔の大きさには明らかな変化が観察されていない。したがって、ビンポセチンは、近視を予防・制御及び治療し、近視の発生・進行を先送りにし、近視の進行を制御するために用いることができ、特に、小児及び若年性近視又は単純軸性近視又は進行性近視又は原発性近視及びこれらの近視関連症状の治療、予防・制御又は改善に用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視及び近視関連症状を予防又は治療する薬物又は製剤の製造における有効量のビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの用途であって、前記近視は、高齢者近視又は病的近視を含まず、且つ、前記近視及び近視関連症状の予防又は治療でβ-アドレナリン受容体作動薬LABAを同時に使用しないことを特徴とする、前記用途。
【請求項2】
前記ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせを前記薬物又は製剤の主な活性成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの含有量又は薬効が、前記薬物又は製剤の活性成分全体の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%を占め、前記百分率は、質量比、又はモル比、又は効力比、又は前記用途における薬効への寄与率であることを特徴とする、請求項2に記載の用途。
【請求項4】
前記近視が、屈折性近視、軸性近視、先天性近視、早発型近視、遅発型近視、晩発型近視、弱度近視、中等度近視、強度近視、仮性近視、真性近視、乳幼児近視、未成年者近視、成人近視、単純近視、原発性近視、続発性近視、進行性近視、軸性単純近視、小児及び若年性近視、曲率性近視、指数関数的近視、乱視性近視、位置性近視、湾曲性近視、長時間に近距離で眼を使うことで起きる近視、眼精疲労により起きる近視、薬物有害事象により起きる近視、読書により起きる近視、電子製品の使用で起きる近視、屈折媒体の不適合により起きる近視、屈折系の発育異常により起きる近視、眼球の過度の成長により起きる近視、不衛生的な眼の使用により起きる近視、アトロピンでの治療効果が不良で又は無効である近視、屋外での運動不足により起きる近視、調節緊張性近視、遺伝性近視、主に環境要因により起きる近視であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の用途。
【請求項5】
前記ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの前記薬物又は製剤における濃度が、0.001μM~100mMであることを特徴とする、請求項4に記載の用途。
【請求項6】
前記ビンポセチン、又はその光学異性体若しくはそのラセミ体、又はその溶媒和物、又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝産物、又はその関連化合物若しくは抽出物、又はその結晶性化合物、又はこれらの物質の組み合わせの前記薬物又は製剤における割合が、25%未満であり、前記百分率は、質量/体積、又は質量比、又はモル比であることを特徴とする、請求項4に記載の用途。
【請求項7】
前記薬物又は製剤は、全身投与、局所投与、非経口投与、及び/又は非侵襲的投与の方式を用いることを特徴とする、請求項4に記載の用途。
【請求項8】
前記薬物又は製剤は、ムスカリン拮抗薬、メトカルバモール(Robaxin)、インドラミン(Indoramine)、チモロールマレイン酸塩、アドレナリン、ピレンゼピン、ピラジン、ペルラピン、メチルアミン、クロリソンダミン(chlorisondamine)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ドーパミン作動薬、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、トレチノイン、M受容体遮断薬、ベンダゾール、多価不飽和脂肪酸、ホマトロピン、7-メチルキサンチン、ニコチン酸、ピラセタム、タンジン抽出物、ベニバナ抽出物、魚油、ユウタン抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸、平滑筋弛緩薬、血管けいれん予防薬、非選択的アデノシン拮抗薬、血管拡張薬、瞳孔散大成分、充血除去成分、眼筋調節成分、抗炎症剤成分、収斂剤成分、抗ヒスタミン剤成分、抗アレルギー剤成分、コラーゲン分解抑制成分、肝保護成分、血液-網膜関門強化成分、アミノ酸、抗菌成分、抗酸化成分、糖質、ポリマー又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、弱視治療成分、緑内障治療成分、白内障治療成分、ホスホジエステラーゼI阻害薬、又はmiRNA及びその修飾物を同時に含有するが、それらに限らないことを特徴とする、請求項4に記載の用途。
【請求項9】
前記ビンポセチンの代謝産物は、アポビンカミン酸であることを特徴とする、請求項4に記載の用途。
【請求項10】
前記近視を予防又は治療することは、近視の進行を制御し、又は近視の個体若しくは近視が発生する傾向のある個体の屈折度が負になるプロセス若しくは速度を遅滞させることであることを特徴とする、請求項4に記載の用途。
【請求項11】
前記薬物又は製剤が、注射剤、錠剤、注射用凍結乾燥粉末、カプセル剤、顆粒剤、エーロゾル剤、塗り薬、洗剤、ローション剤、滴剤、散剤、スプレー剤、膏剤、パッチ剤、シロップ剤、経口製剤、眼用製剤、油水混合液、懸濁液、ペースト剤、丸剤、坐剤、乳剤,眼軟膏、目薬、又は眼用ゲルであることを特徴とする、請求項5~10のいずれか一項に記載の用途。
【国際調査報告】