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特表2024-528696光遺伝学を用いた懸濁状態での幹細胞のスケーラブルな増殖および維持のための方法ならびにシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】光遺伝学を用いた懸濁状態での幹細胞のスケーラブルな増殖および維持のための方法ならびにシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240723BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240723BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20240723BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240723BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20240723BHJP
   C12M 3/02 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/0775
C12N5/02
C12M3/02
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503813
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022037854
(87)【国際公開番号】W WO2023004031
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,178
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】524026296
【氏名又は名称】プロリフィック マシーンズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケント,デニズ
(72)【発明者】
【氏名】ホイスマン,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,デクラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】フーリー,モニク
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】パトン,ウィリアム シー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029DG10
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065BC48
4B065BD39
(57)【要約】
懸濁状態で幹細胞を増殖および維持するための方法ならびにシステムが、本明細書中で提供される。場合によっては、方法およびシステムには、幹細胞の増殖および/または維持に関わる1つ以上の増殖因子シグナル伝達経路を活性化するための光スイッチの使用が含まれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞を懸濁状態で増殖および/または維持する方法であって、
(a)前記幹細胞を懸濁状態で培地中で培養する工程であって、前記幹細胞が、第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作され、前記第1の融合タンパク質が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む、工程、
(b)前記幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、前記幹細胞を光に曝露する工程であって、それにより前記第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記シグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、増殖因子受容体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培地は、前記幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の因子が、前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分のリガンドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の因子が、1つ以上の増殖因子を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の増殖因子が線維芽細胞増殖因子(FGF)である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、FGFR1、FGFR2、およびその両方からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記幹細胞が哺乳動物幹細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記幹細胞がウシである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞が、多能性幹細胞または複能性幹細胞である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記多能性幹細胞が少なくとも7日間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複能性幹細胞が少なくとも7日間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記幹細胞が少なくとも7日間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは増殖および/または維持される能力がある、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞が少なくとも7日間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままであることができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞が胚性幹細胞である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記幹細胞が、衛星細胞または筋肉幹細胞である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記幹細胞が脂肪幹細胞である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
懸濁培養物が少なくとも100ミリリットル(mL)の体積を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記懸濁培養物がバイオリアクター容器内に収容される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオリアクター容器が、少なくとも100ミリリットル(mL)の全容積を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光活性化可能ドメインが、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメインである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(b)の曝露する工程が、前記幹細胞を青色光に曝露することを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(b)の曝露する工程が、前記幹細胞を、1つ以上の照明パラメータを有する光に曝露することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の照明パラメータが光強度を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の照明パラメータが、照明の時間的パターンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記時間的パターンが、少なくとも約5分間の光刺激持続時間を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記時間的パターンが、約20分~約250分の刺激間持続時間を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の融合タンパク質が、(b)の光に曝露する工程の後に、ダイマー化またはオリゴマー化する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記下流シグナル伝達経路がERKシグナル伝達経路である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
懸濁培養物において、7日以上で、前記幹細胞が幹細胞性の1つ以上のマーカーを発現する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、
(a)培地を含むバイオリアクター容器、
(b)第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される、前記培地中の懸濁状態の複数の幹細胞、ならびに
(c)前記幹細胞を光に曝露して、前記第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分の下流シグナル伝達経路をもたらすための1つ以上の光源
を含む、幹細胞を増殖および/または維持するためのシステム。
【請求項34】
前記バイオリアクター容器が、少なくとも100ミリリットル(mL)の全容積を有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記1つ以上の光源が、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む、請求項33または34に記載のシステム。
【請求項36】
前記1つ以上のLEDが、少なくとも2つの異なるLEDを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記少なくとも2つの異なるLEDが、異なる波長で発光する、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記1つ以上の光源が、1つ以上のレーザーを含む、請求項33または34に記載のシステム。
【請求項39】
前記1つ以上の光源が白熱光源を含む、請求項33または34に記載のシステム。
【請求項40】
前記1つ以上の光源が、前記バイオリアクター容器の内部に位置するか、または前記バイオリアクター容器の内面に位置する、請求項33~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記1つ以上の光源が、前記バイオリアクター容器の外部に位置するか、または前記バイオリアクター容器の外面に位置する、請求項33~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記バイオリアクター容器が、少なくとも1つの光学的に透明な壁または表面を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記培地の温度を制御するための温度源をさらに含む、請求項33~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記培地を撹拌するための撹拌源をさらに含む、請求項33~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記システムが、前記1つ以上の光源から光をパターンで提供するように構成される、請求項33~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記パターンが、空間的パターン、時間的パターン、またはその両方である、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記時間的パターンが、光刺激持続時間および刺激間持続時間を含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記光刺激持続時間が、少なくとも約5分である、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記刺激間持続時間が、約20分~約250分である、請求項47または48に記載のシステム。
【請求項50】
前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体が増殖因子受容体である、請求項33~49のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項51】
細胞培地は、前記幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している、請求項33~50のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
前記1つ以上の因子が、前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分のリガンドである、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記1つ以上の因子が、1つ以上の増殖因子を含む、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記1つ以上の増殖因子が線維芽細胞増殖因子(FGF)である、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)である、請求項33~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、FGFR1、FGFR2、およびその両方からなる群から選択される、請求項33~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記幹細胞が哺乳動物幹細胞である、請求項33~56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記幹細胞がウシである、請求項33~57のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
前記幹細胞が、多能性幹細胞または複能性幹細胞である、請求項33~58のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記多能性幹細胞が少なくとも7日間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記複能性幹細胞が少なくとも7日間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある、請求項59に記載のシステム。
【請求項62】
前記幹細胞が少なくとも7日間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは増殖および/または維持される能力がある、請求項33~61のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記幹細胞が少なくとも7日間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままであることができる、請求項33~62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項64】
前記幹細胞が胚性幹細胞である、請求項33~63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項33~63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項66】
前記幹細胞が、衛星細胞または筋肉幹細胞である、請求項33~63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項67】
前記幹細胞が脂肪幹細胞である、請求項33~63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項68】
前記培地が少なくとも100ミリリットル(mL)の体積を有する、請求項33~67のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項69】
前記光活性化可能ドメインが、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメインである、請求項33~68のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項70】
前記第1の融合タンパク質が、(b)の光への曝露の後に、ダイマー化またはオリゴマー化する、請求項33~69のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記下流シグナル伝達経路がERKシグナル伝達経路である、請求項33~70のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項72】
前記光が青色光である、請求項33~71のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年7月21日に出願された米国仮特許出願第63/224,178号の利益を主張し、その出願全体は参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
細胞産生は、劇的に増加すると予想される需要に伴い、これまでには見られない規模で現在必要とされている。特に興味深いのは幹細胞の産生であるが、幹細胞性を維持するプロセスの制御は複雑である。幹細胞は、通常、増殖および/または(幹細胞性の)維持を促進するために、培地中に存在する1つ以上のタンパク質因子(例えば、増殖因子)を必要とする。これらの細胞の培養の成功には、厳密に制御された組合せおよび割合の増殖因子が必要とされる。しかしながら、これらの増殖因子を産生することは極めて高価であり、幹細胞の大規模な増殖および維持が法外に高価となる。加えて、幹細胞(例えば、組織培養プレート上で増殖した、例えば、接着性幹細胞)の二次元培養は、培養容器の表面積によって制限される。したがって、幹細胞のスケーラブルな増殖および維持は困難である。
【発明の概要】
【0003】
高価な増殖因子の使用を必要としない、懸濁状態での幹細胞の増殖および維持に対する満たされていないニーズがある。本明細書に開示される方法およびシステムは、幹細胞を増殖および維持するのに必要なシグナル伝達経路を活性化するために、光活性化可能ドメインを使用し、それによりこの満たされていないニーズに応える。
【0004】
一態様では、懸濁状態で幹細胞を増殖および/または維持する方法が提供され、本方法は、(a)幹細胞を懸濁状態で培地中で培養する工程であって、幹細胞が、第1の融合タンパク質を発現するために遺伝子操作され、第1の融合タンパク質が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む、工程、および(b)幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、幹細胞を光に曝露することで、第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、第1のシグナル伝達タンパク質受容体の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす、工程を含む。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、増殖因子受容体である。場合によっては、培地は、幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している。場合によっては、1つ以上の因子は、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分のリガンドである。場合によっては、1つ以上の因子は、1つ以上の増殖因子を含む。場合によっては、1つ以上の増殖因子はトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)である。場合によっては、1つ以上の増殖因子は線維芽細胞増殖因子(FGF)である。場合によっては、FGFはFGF2である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)またはトランスフォーミング増殖因子受容体(TGFR)である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、TGFβR1、TGFβR2、FGFR1、FGFR2、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。場合によっては、幹細胞は哺乳動物幹細胞である。場合によっては、幹細胞は、ヒトまたはウシである。場合によっては、幹細胞は、多能性幹細胞または複能性幹細胞である。場合によっては、多能性幹細胞は少なくとも7日間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、多能性幹細胞は少なくとも1か月間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、複能性幹細胞は少なくとも7日間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、複能性幹細胞は少なくとも1か月間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある。場合によっては、幹細胞は胚性幹細胞である。場合によっては、幹細胞は間葉系幹細胞である。場合によっては、幹細胞は、衛星細胞または筋肉幹細胞である。場合によっては、幹細胞は脂肪幹細胞である。場合によっては、懸濁培養物は少なくとも100ミリリットル(mL)の体積を有する。場合によっては、懸濁培養物はバイオリアクター容器内に収容される。場合によっては、バイオリアクター容器は少なくとも100ミリリットル(mL)の全容積を有する。場合によっては、光活性化可能ドメインは、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメイン、LOV2光受容体ドメイン、クリプトクロム(CRY)光受容体ドメイン、FADを使用した青色光(BLUF)光受容体ドメイン、フィトクロム(PHY)光受容体ドメイン、CIBN(CIB1(クリプトクロム相互作用塩基性ヘリックスループヘリックスタンパク質1)のN末端ドメイン)ドメイン、PIF(フィトクロム相互作用因子)ドメイン、Dronpaドメイン、UVR8光受容体ドメイン、COP1ドメイン、BphP1ドメイン、QPAS-1ドメイン、コバラミン結合ドメイン(CBD)、またはそれらの組合せからなる群から選択される。場合によっては、第1の融合タンパク質は、(b)の光に曝露する工程の後に、ダイマー化またはオリゴマー化する。場合によっては、幹細胞は、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第2の光活性化可能ドメインとを含む、第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される。場合によっては、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分とは異なっている。場合によっては、第2の光活性化可能ドメインは、第1の光活性化可能ドメインとは異なっている。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、TFGβR1またはTGFβR2であり、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、FGFR1またはFGFR2である。場合によっては、下流シグナル伝達経路はSMAD2/3シグナル伝達経路である。場合によっては、下流シグナル伝達経路はERKシグナル伝達経路である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、あるいはその両方は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を含まない。場合によっては、(b)の曝露する工程は、幹細胞を、100nm~1mmの波長の光に曝露することを含む。場合によっては、(b)の曝露する工程は、幹細胞を、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、またはそれらの組合せに曝露することを含む。場合によっては、可視光線は、青色光、赤色光、緑色光、またはそれらの組合せである。場合によっては、(b)の曝露する工程は、幹細胞を、1つ以上の照明パラメータを有する光に曝露することを含む。場合によっては、1つ以上の照明パラメータは光強度を含む。場合によっては、1つ以上の照明パラメータは、照明の時間的パターンを含む。場合によっては、時間的パターンは、1秒の少なくとも約10分の1、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約30分、または少なくとも約1時間の光刺激持続時間を含む。場合によっては、時間的パターンは、少なくとも約5分間の光刺激持続時間を含む。場合によっては、光刺激持続時間は連続照明である。場合によっては、時間的パターンは、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、またはそれ以上の刺激間持続時間を含む。場合によっては、刺激間持続時間は、約20分~約250分である。場合によっては、幹細胞は、懸濁培養物において7日以上で、幹細胞性のマーカーの1つ以上を発現する。
【0005】
別の態様では、幹細胞を増殖および/または維持するためのシステムが提供され、本システムは、(a)培地を含むバイオリアクター容器、(b)第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される、培地中の懸濁状態の複数の幹細胞、ならびに(c)幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、幹細胞を光に曝露して、第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分の下流シグナル伝達経路をもたらすための1つ以上の光源を含む。場合によっては、バイオリアクター容器は少なくとも100ミリリットル(mL)の全容積を有する。場合によっては、1つ以上の光源は、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む。場合によっては、1つ以上のLEDは、少なくとも2つの異なるLEDを含む。場合によっては、少なくとも2つの異なるLEDは、異なる波長で光を発する。場合によっては、1つ以上の光源は、1つ以上のレーザーを含む。場合によっては、1つ以上の光源は白熱光源を含む。場合によっては、1つ以上の光源は、バイオリアクター容器の内部に位置するか、またはバイオリアクター容器の内面に位置する。場合によっては、1つ以上の光源は、バイオリアクター容器の外部に位置するか、またはバイオリアクター容器の外面に位置する。場合によっては、バイオリアクター容器は、少なくとも1つの光学的に透明な壁または表面を含む。場合によっては、システムは、培地の温度を制御するための温度源をさらに含む。場合によっては、システムは、培地を撹拌するための撹拌源をさらに含む。場合によっては、システムは、1つ以上の光源から光をパターンで提供するように構成される。場合によっては、パターンは、空間的パターン、時間的パターン、またはその両方である。場合によっては、時間的パターンは、光刺激持続時間および刺激間持続時間を含む。場合によっては、時間的パターンは、1秒の少なくとも約10分の1、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約30分、または少なくとも約1時間の光刺激持続時間を含む。場合によっては、光刺激持続時間は、少なくとも約5分である。場合によっては、時間的パターンは、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、またはそれ以上の刺激間持続時間を含む。場合によっては、刺激間持続時間は、約20分~約250分である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体は、増殖因子受容体である。場合によっては、細胞培地は、幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している。場合によっては、1つ以上の因子は、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分のリガンドである。場合によっては、1つ以上の因子は、1つ以上の増殖因子を含む。場合によっては、1つ以上の増殖因子はトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)である。場合によっては、1つ以上の増殖因子は線維芽細胞増殖因子(FGF)である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)またはトランスフォーミング増殖因子受容体(TGFR)である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、TGFβR1、TGFβR2、FGFR1、FGFR2、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。場合によっては、幹細胞は哺乳動物幹細胞である。場合によっては、幹細胞は、ヒトまたはウシである。場合によっては、幹細胞は、多能性幹細胞または複能性幹細胞である。場合によっては、多能性幹細胞は少なくとも7日間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、多能性幹細胞は少なくとも1か月間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、複能性幹細胞は少なくとも7日間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、複能性幹細胞は少なくとも1か月間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある。場合によっては、幹細胞は胚性幹細胞である。場合によっては、幹細胞は間葉系幹細胞である。場合によっては、幹細胞は、衛星細胞または筋肉幹細胞である。場合によっては、幹細胞は脂肪幹細胞である。場合によっては、培地は少なくとも100ミリリットル(mL)の体積を有する。場合によっては、光活性化可能ドメインは、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメイン、LOV2光受容体ドメイン、クリプトクロム(CRY)光受容体ドメイン、FADを使用した青色光(BLUF)光受容体ドメイン、フィトクロム(PHY)光受容体ドメイン、CIBN(CIB1(クリプトクロム相互作用塩基性ヘリックスループヘリックスタンパク質1)のN末端ドメイン)ドメイン、PIF(フィトクロム相互作用因子)ドメイン、Dronpaドメイン、UVR8光受容体ドメイン、COP1ドメイン、BphP1ドメイン、QPAS-1ドメイン、コバラミン結合ドメイン(CBD)、またはそれらの組合せからなる群から選択される。場合によっては、第1の融合タンパク質は、(b)の光への曝露の後に、ダイマー化またはオリゴマー化する。場合によっては、幹細胞は、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第2の光活性化可能ドメインとを含む、第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される。場合によっては、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分とは異なっている。場合によっては、第2の光活性化可能ドメインは、第1の光活性化可能ドメインとは異なっている。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、TFGbR1またはTGFβR2であり、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、FGFR1またはFGFR2である。場合によっては、シグナル伝達経路はSMAD2/3シグナル伝達経路である。場合によっては、下流シグナル伝達経路はERKシグナル伝達経路である。場合によっては、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、あるいはその両方は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を含まない。場合によっては、(b)の曝露は、幹細胞を、100nm~1mmの波長の光に曝露することを含む。場合によっては、(b)の曝露は、幹細胞を、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、またはそれらの組合せに曝露することを含む。場合によっては、可視光線は、青色光、赤色光、緑色光、またはそれらの組合せである。
【0006】
参照による援用
本明細書で言及される刊行物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により援用されるように具体的かつ個々に示されるのと同じ程度にまで、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の新規な特徴は、とりわけ添付の特許請求の範囲とともに説明される。本開示の特徴と利点についてのよりよい理解は、本開示の原則が用いられている例証的な実施形態と添付の図面を説明する以下の詳細な記載とを参照することによって得られる。
【0008】
図1A】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞中での光によるFGFシグナル伝達の活性化を実証する実験データを描く。
図1B】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞中での光によるFGFシグナル伝達の活性化を実証する実験データを描く。
図1C】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞中での光によるFGFシグナル伝達の活性化を実証する実験データを描く。
図1D】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞中での光によるFGFシグナル伝達の活性化を実証する実験データを描く。
図1E】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞中での光によるFGFシグナル伝達の活性化を実証する実験データを描く。
図2】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された脂肪幹細胞の、光により制御された増殖を実証する実験データを描く。
図3】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された脂肪幹細胞の、光により制御された増殖を実証する実験データを描く。
図4】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された脂肪幹細胞の、光により制御された幹細胞性の維持を実証する実験データを描く。
図5A】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された筋肉幹細胞の、光により制御された増殖を実証する実験データを描く。
図5B】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された筋肉幹細胞の、光により制御された増殖を実証する実験データを描く。
図6】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された筋肉幹細胞の、光により制御された増殖を実証する実験データを描く。
図7A】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞の、光により制御された維持を実証する実験データを描く。
図7B】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞の、光により制御された維持を実証する実験データを描く。
図7C】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞の、光により制御された維持を実証する実験データを描く。
図7D】本明細書中で提供される実施形態に従った、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された幹細胞の、光により制御された維持を実証する実験データを描く。
【発明を実施するための形態】
【0009】
幹細胞は、通常、増殖および/または(幹細胞性の)維持を促進するために、培地中に存在する1つ以上のタンパク質因子(例えば、増殖因子)を必要とする。しかしながら、これらのタンパク質を産生することは極めて高価であり、幹細胞の大規模な増殖および維持が法外に高価となる。さらに、(例えば、組織培養プレート上の)接着性幹細胞の二次元培養は、培養容器の表面積によって制限される。懸濁状態で幹細胞を増殖および/または維持するための方法ならびにシステムが、本明細書中で提供される。本明細書中で提供される方法およびシステムは、概して、懸濁状態で幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な下流シグナル伝達経路を活性化するための、シグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)に融合された光活性化可能ドメインの使用に関する。有利には、本明細書中で提供される方法およびシステムにより、培地中に存在する法外な費用がかかる増殖因子を必要とせずに、懸濁状態での幹細胞の増殖および維持が可能となる。したがって、本明細書中で提供される方法およびシステムは、幹細胞の増殖および維持の費用対効果ならびにスケーラビリティを改善する。
【0010】
方法
懸濁状態で幹細胞を増殖および/または維持するための方法およびが、本明細書中で提供される。様々な態様では、方法は、幹細胞を懸濁状態で培地中で培養する工程であって、幹細胞が第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作され、第1の融合タンパク質が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的ドメインもしくは機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む、工程、および(b)幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、幹細胞を光に曝露することで、第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、第1のシグナル伝達タンパク質の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす、工程を含む。
【0011】
様々な態様では、方法には、融合タンパク質を発現するように遺伝子操作された幹細胞の使用が含まれている。融合タンパク質は、シグナル伝達タンパク質受容体またはその一部に融合された光活性化可能ドメインを含み得る。用語「光活性化可能ドメイン」は、本明細書で使用されるとき、特定の波長の光に反応するタンパク質またはその一部を指す。場合によっては、光活性化可能ドメインは、特定の波長または特定のスペクトル範囲内の光で刺激されると、(例えば、別の光活性化可能ドメインと)ダイマー化またはオリゴマー化する。場合によっては、光活性化可能ドメインは、ホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成し得る(例えば、第2の異なる光活性化可能ドメインとダイマー化し得る)。場合によっては、光活性化可能ドメインは、(例えば、ホモまたはヘテロ)ダイマーまたは(例えば、ホモまたはヘテロ)オリゴマー中に(例えば、光の非存在下で)存在してもよく、光への曝露後にモノマーの形態へ解離してもよい。
【0012】
光活性化可能ドメインは、天然源(例えば、天然に存在するタンパク質)に由来してもよく、または合成的に産生されてもよい。光活性化可能ドメインは、単なる一例として、アラビドプシス属(Arabidopsis)クリプトクロム2のPHRドメインなどの、天然に存在するタンパク質の機能的ドメインまたは一部を含んでもよく、あるいは天然に存在するタンパク質の機能的ドメインまたは一部であってもよい。光活性化可能ドメインは、野生型タンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含んでもよく、または野生型タンパク質に対する1つ以上のバリアント(例えば、アミノ酸置換、欠失、挿入など)を含んでもよい。光活性化可能ドメインは、天然に存在するタンパク質に対して少なくとも約50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0013】
様々な態様では、光活性化可能ドメインの組合せ(例えば、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメイン)が使用されてもよい。この場合、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは、結合パートナーであり、特定の波長または特定のスペクトル範囲内の光で照明されると、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは、ヘテロダイマー化またはヘテロオリゴマー化する。第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは、この場合、別個のシグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)に融合され得る。場合によっては、別個のシグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)は、ヘテロダイマー化またはヘテロオリゴマー化する異なるシグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)である。他の場合では、別個のシグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)は、ホモダイマー化またはホモオリゴマー化する同じシグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)である。第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは、特定の波長または特定のスペクトル範囲内の光で照明されると、ヘテロダイマー化またはヘテロオリゴマー化し、それにより、対応する下流シグナル伝達経路が活性化されるように、シグナル伝達タンパク質受容体(またはその機能的ドメインもしくは機能的部分)を互いに密接させる。
【0014】
様々な態様では、光活性化可能ドメインは、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメイン、LOV2光受容体ドメイン、クリプトクロム(CRY)光受容体ドメイン、FADを使用した青色光(BLUF)光受容体ドメイン、フィトクロム(PHY)光受容体ドメイン、CIBN(CIB1(クリプトクロム相互作用塩基性ヘリックスループヘリックスタンパク質1)のN末端ドメイン)ドメイン、PIF(フィトクロム相互作用因子)ドメイン、Dronpaドメイン、UVR8光受容体ドメイン、COP1ドメイン、BphP1ドメイン、QPAS-1ドメイン、コバラミン結合ドメイン(CBD)、またはそれらの組合せを含む。一実施例では、光活性化可能ドメインは、LOVドメイン(例えば、フシナシミドロ(Vaucheria frigida)のオーレオクロム1に由来したLOVドメインなど)である。
【0015】
いくつかの例では、光活性化可能ドメインの組合せが使用され、ここで、第1の光活性化可能ドメインはクリプトクロム2(またはそのバリアントもしくは機能的部分)であり、第2の光活性化可能ドメインはCIBN(またはそのバリアントもしくは機能的部分)である。いくつかの例では、光活性化可能ドメインの組合せが使用され、ここで、第1の光活性化可能ドメインはBphP1(またはそのバリアントもしくは機能的部分)であり、第2の光活性化可能ドメインはQPAS1(またはそのバリアントもしくは機能的部分)である。場合によっては、光活性化可能ドメイン(または光活性化可能ドメインの組合せ)は、表1から選択される。場合によっては、光活性化可能ドメインは、表1に記載される光活性化可能ドメインのいずれか1つに対して、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0016】
【表1】
【0017】
様々な態様では、方法には、幹細胞(例えば、シグナル伝達タンパク質受容体と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作された)を、特定の波長の光または特定のスペクトル範囲内の光に曝露することが含まれる。光の波長は、光が光活性化可能ドメインを活性化できるように選択される。例えば、表1は、様々な光活性化可能ドメインシステムのための光パラメータの非限定的な例を提供する。光の波長は、赤外線、近赤外線、可視光線(例えば、赤、緑、青)、紫外線、またはそれらの組合せのうちの1つ以上であり得る。赤外線は、約780nm~1mmの波長の光を含み得る。近赤外線は、約740nm~約780nmの波長の光を含み得る。赤色光は、約620nm~750nm、600nm~690nm、または約650nmの波長の光を含み得る。緑色光は、約577nm~約492nmの波長の光を含み得る。青色光は、492~約455nm、または約440nm~約473nmの波長の光を含み得る。紫外線は、約10nm~400nm、または約280~315nmの光を含み得る。様々な態様では、光の波長は100nm~1mmである。
【0018】
様々な態様では、方法には、幹細胞を1つ以上の照明パラメータを有する光で照明することが含まれる。場合によっては、1つ以上の照明パラメータは、照明の光強度および/または時間的パターンを含む。場合によっては、時間的パターンは、刺激持続時間および刺激間持続時間を含み得る。場合によっては、時間的パターンは、1秒の少なくとも約10分の1、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約30分、または少なくとも約1時間の光刺激持続時間を含む。場合によっては、刺激持続時間は、少なくとも約5分であり得る。場合によっては、時間的パターンは、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、またはそれ以上の刺激間持続時間を含む。場合によっては、刺激間持続時間は、約20分~約250分であり得る。
【0019】
様々な態様では、光活性化可能ドメインは、シグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分に融合される。シグナル伝達タンパク質受容体は、通常、幹細胞の増殖および/または維持に必要な1つ以上の下流シグナル伝達経路の活性化に関わるタンパク質受容体である。シグナル伝達タンパク質受容体は、下流シグナル伝達経路を活性化するためにダイマー化またはオリゴマー化を必要とするタンパク質受容体であり得る。適切な波長の光によって幹細胞を照明すると、光活性化可能ドメインはダイマー化またはオリゴマー化し、それによりシグナル伝達タンパク質受容体のダイマー化またはオリゴマー化を引き起こし、下流シグナル伝達経路が活性化される。代替的な実施形態では、光活性化可能ドメインは、光の非存在下でダイマー化またはオリゴマー化する場合があり、光への曝露時に、(例えば、モノマーの形態へ)解離し得る。この場合、光への曝露は、下流シグナル伝達経路を(例えば、シグナル伝達タンパク質受容体の解離によって)スイッチオフし得る。
【0020】
いくつかの態様では、第1の光活性化可能ドメインは、第1のシグナル伝達タンパク質受容体に融合され、第2の光活性化可能ドメインは、第2のシグナル伝達タンパク質受容体に融合される。この場合、(例えば、本明細書に記載されるように)第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは結合パートナーであり、特定の波長または特定のスペクトル範囲内の光で照明されると、ダイマー化またはオリゴマー化する。さらに、第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体は、(第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインのダイマー化またはオリゴマー化の際に)ダイマー化またはオリゴマー化する。第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体が密接していると、これらのシグナル伝達タンパク質受容体に関連する下流シグナル伝達経路が活性化される。
【0021】
別の態様では、第1の光活性化可能ドメインは、第1のシグナル伝達タンパク質受容体に融合され、第2の光活性化可能ドメインは、第2のシグナル伝達タンパク質受容体に融合される。この場合、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは結合パートナーであり、光の非存在下で(例えば、本明細書に記載されるように)ダイマー化またはオリゴマー化する。さらに、第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体は、(第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインのダイマー化またはオリゴマー化の際に)ダイマー化またはオリゴマー化する。第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体が密接していると、これらのシグナル伝達タンパク質受容体に関連する下流シグナル伝達経路が活性化される。この場合、光への曝露は、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインの(モノマーの形態への)解離を引き起こし、それにより、第1のシグナル伝達タンパク質受容体と第2のシグナル伝達タンパク質受容体との間の接触が取り除かれ、下流シグナル伝達経路が非活性化される。
【0022】
インビトロで幹細胞を増殖および維持するために、様々な増殖因子が細胞培地中で使用されてもよい。これらの増殖因子としては、限定されないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、アクチビン、Nodal、およびLIFが挙げられる。様々な態様では、本明細書中で開示される方法は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、アクチビン、Nodal、およびLIFのうち1つ以上が存在しないか、または不足している培地中で幹細胞を増殖および/または維持することを提供する。様々な態様では、シグナル伝達タンパク質受容体は、これらの増殖因子のうち1つ以上によって活性化されるタンパク質受容体である。
【0023】
様々な態様では、シグナル伝達タンパク質受容体は、トランスフォーミング増殖因子ベータ受容体(TGFβR)である。場合によっては、TFGβRは、TGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3のうちの1つ以上であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、TGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3から選択される1つ以上のリガンドの結合時に、通常ダイマー化またはオリゴマー化するタンパク質受容体である。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、TGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3のバリアント(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失などを含む)であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、TGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3の機能的ドメインもしくは機能的部分であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、野生型のTGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3アミノ酸配列に対して、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0024】
本開示の様々な態様では、方法には、TGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3のうち1つ以上が存在しないか、もしくは不足している培地中での、(例えば、本明細書に開示されるように、例えば、TGFβRまたはその機能的部分と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質の使用による)幹細胞の増殖および/または維持が含まれている。様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、TGFβRまたはその機能的部分と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、TGFβRのダイマー化またはオリゴマー化をもたらす。様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、TGFβRまたはその機能的部分と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、TGFβRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす。場合によっては、TGFβRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路は、SMAD2/3シグナル伝達経路である。
【0025】
様々な態様では、シグナル伝達タンパク質受容体は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)である。場合によっては、FGFRは、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6のうちの1つ以上であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、またはFGF23から選択される1つ以上のリガンドの結合時に、通常ダイマー化またはオリゴマー化するタンパク質受容体である。本開示の様々な態様では、方法には、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、またはFGF23のうちの1つ以上が存在しないか、または不足している培地中での(例えば、本明細書に開示されるように、例えば、FGFRまたはその機能的部分と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質の使用による)幹細胞の増殖および/または維持が含まれている。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6のバリアント(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失などを含む)であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6の機能的ドメインもしくは機能的部分であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、野生型のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6アミノ酸配列に対して、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0026】
様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、FGFRまたはその機能的部分と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、FGFRのダイマー化またはオリゴマー化をもたらす。様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、FGFRまたはその機能的部分と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、FGFRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす。場合によっては、FGFRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路は、ERKシグナル伝達経路である。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体はFGFRを含まない。
【0027】
様々な態様では、幹細胞は、第1のシグナル伝達タンパク質受容体と第1の光活性化可能ドメイン(第1の波長または第1のスペクトル範囲内の光によって活性化可能)とを含む第1の融合タンパク質、および第2のシグナル伝達タンパク質受容体と第2の光活性化可能ドメイン(第2の波長または第2のスペクトル範囲内の光によって活性化可能)とを含む第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作され得る。そのような場合、第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体は、それぞれが幹細胞を増殖および/または維持するのに重要もしくは必要である下流シグナル伝達経路を活性化する能力がある、異なるタンパク質受容体である。さらに、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは異なるものであり、異なる波長または異なるスペクトル範囲内の光により、活性化することができる。そのような場合、シグナル伝達経路活性化の正確な制御が可能となり、ユーザーは、他方に影響を与えずに1つのシグナル伝達経路を調節することが可能となる。非限定的な例では、第1のシグナル伝達タンパク質受容体はFGFRであり、第1の波長または第1のスペクトル範囲内の光の照明時に、FGFRがダイマー化またはオリゴマー化することで、第1のシグナル伝達経路(例えば、ERKシグナル伝達経路)が活性化され、また、第2のシグナル伝達タンパク質受容体はTGFβRであり、第2の異なる波長または第2の異なるスペクトル範囲内の光の照明時に、TGFβRがダイマー化またはオリゴマー化することで、第2のシグナル伝達経路(例えば、SMAD2/3シグナル伝達経路)が活性化される。
【0028】
本明細書中で提供される方法に使用される幹細胞は、任意の所望の幹細胞であり得る。いくつかの例では、幹細胞は多能性幹細胞である。いくつかの例では、幹細胞は複能性幹細胞である。場合によっては、幹細胞は胚性幹細胞である。場合によっては、幹細胞は間葉系幹細胞である。場合によっては、幹細胞は、衛星細胞または筋肉幹細胞である。場合によっては、幹細胞は脂肪幹細胞である。特定の実施形態では、本明細書に記載される幹細胞は哺乳動物幹細胞である。場合によっては、哺乳動物幹細胞は、ヒト幹細胞、ウシ(雌ウシ)幹細胞、ヒツジ(ovine)(ヒツジ(sheep))幹細胞、およびブタ(porcine)(ブタ(pig))幹細胞からなる群から選択される。一例では、哺乳動物幹細胞はウシ幹細胞である。場合によっては、ウシ幹細胞は、雄和牛またはアンガス雄牛に由来する。いくつかの実施形態では、幹細胞は、限定されないが、ニワトリ幹細胞などの鳥類幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、限定されないが、マグロ幹細胞などの魚類幹細胞である。
【0029】
有利には、本明細書中の方法は、幹細胞を(例えば、二次元の接着細胞培養物としてではなく)懸濁状態で増殖および/または維持することを提供する。場合によっては、本明細書中で提供される方法は、細胞の支持細胞層の使用を必要としない。場合によっては、本明細書中で提供される方法は、細胞外マトリックス成分の使用を必要としない。場合によっては、方法には、バイオリアクターで幹細胞を増殖または維持することが含まれている。場合によっては、本明細書中で提供される方法には、マイクロキャリア(例えば、ビーズ)の使用が含まれ得る。場合によっては、マイクロキャリアは、(例えば、幹細胞の付着を促進させるために)細胞外マトリックス成分で被覆され得る。
【0030】
様々な態様では、懸濁培養物は少なくとも約100ミリリットル(mL)の体積を有する。例えば、懸濁培養物は、少なくとも約150mL、少なくとも約200mL、少なくとも約250mL、少なくとも約300mL、少なくとも約350mL、少なくとも約400mL、少なくとも約450mL、少なくとも約500mL、少なくとも約550mL、少なくとも約600mL、少なくとも約650mL、少なくとも約700mL、少なくとも約750mL、少なくとも約800mL、少なくとも約850mL、少なくとも約900mL、少なくとも約950mL、少なくとも約1000mL、少なくとも約2000mL、少なくとも約3000mL、少なくとも約4000mL、または少なくとも約5000mLの体積を有し得る。場合によっては、懸濁培養物は約1000mL未満の体積を有する。場合によっては、懸濁培養物は約1000mLを超える体積を有する。
【0031】
幹細胞を増殖および/または維持するのに好適な任意の細胞培地が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞培地は、等張生理食塩水、緩衝液、アミノ酸、血清または血清代替品、糖類(例えば、グルコース)、および他の外因的に添加された因子のいずれかを適切な組合せで含む。いくつかの実施形態では、細胞培地は、血清の存在下または非存在下のいずれかで、DMEM、F12、aMEM、Hepatostim(商標)、RPMI、またはそれらの組合せを含む。好適な血清としては、仔ウシ血清、ウシ胎児血清、ウマ血清などが挙げられる。いくつかの実施形態では、血清サプリメントが使用される。
【0032】
いくつかの実施形態では、細胞培地は、幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している。いくつかの実施形態では、細胞培地は、FGF、TGFβ、またはその両方が不足している。いくつかの実施形態では、細胞培地は、FGF2、TGFβ1、アクチビン、Nodal、LIF、またはそれらの組合せが不足している。
【0033】
本明細書に記載される融合タンパク質は、核酸によってコードすることができる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質を含む核酸は、発現カセットであり得るか、または発現カセット内に含まれ得る。本明細書で使用されるとき、「発現カセット」は、本明細書に記載される1つ以上の核酸を含む組換え核酸構築物を意味し、組換え核酸構築物は、少なくとも1つの対照配列(例えば、プロモーター)と作動可能に関連付けられる。
【0034】
特定の実施形態では、核酸は、核酸を細胞に移入するために使用され得るベクターの成分である。本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を運ぶことができる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは、宿主細胞の染色体DNAに組み込むことができるゲノム組込みベクターまたは「組込みベクター」である。別のタイプのベクターは、「エピソーマル」ベクター、例えば、染色体外の複製が可能な核酸である。作動可能に連結される遺伝子の発現を方向付けることができるベクターは、本明細書中では「発現ベクター」と称される。好適なベクターとしては、プラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、ウイルスベクターなどが挙げられる。
【0035】
ベクターにおいて、転写の制御に使用するためのプロモーター、エンハンサー、およびポリアデニル化シグナルなどの調節要素は、哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫の遺伝子に由来し得る。通常、複製起点によって付与される宿主において複製する能力と、形質転換体の認識を容易にするための選択遺伝子とがさらに組み込まれ得る。レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルスに由来したベクターが採用されてもよい。プラスミドベクターは、染色体位置内への組込みのために線形化することができる。ベクターは、ゲノム中の規定された位置または部位の制限されたセット内への部位特異的組込み(例えば、AttP-AttB組換え)を方向付ける配列を含み得る。さらに、ベクターは転位因子に由来した配列を含み得る。
【0036】
いくつかの態様では、真核細胞へ導入される核酸は、当該技術分野において公知であるようにプロモーターおよび/またはポリAシグナルに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、5’末端および3’末端を有する核酸は、5’末端でプロモーターに、および3’末端でポリAシグナルに作動可能に連結される。いくつかの態様では、核酸は、2Aペプチド配列および/または内部リボソーム進入部位を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、発現カセットは、形質転換された宿主細胞を選択するために使用することができる選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書で使用されるとき、「選択可能なマーカー」は、発現されると、マーカーを発現する宿主細胞に別の表現型を付与することで、そのような形質転換細胞がマーカーを有していないものから識別されることを可能にする、ヌクレオチド配列を意味する。このようなヌクレオチド配列は、選択可能なマーカーまたはスクリーニング可能なマーカーのいずれかをコードし得、これは、マーカーが、選択剤(例えば、抗生物質など)を使用することなどによる化学的手段によって選択され得る形質を付与するかどうか、またはマーカーが、スクリーニング(例えば、蛍光)などによる観察もしくは試験によって同定され得る単なる形質であるかどうかに依存する。
【0038】
様々な態様では、本明細書に記載される方法により、幹細胞は長期間の間、多能性状態に維持されることが可能となる。多能性細胞は、体内のすべての細胞型を生じさせる能力がある。例えば、胚性幹細胞は、胎芽内のあらゆる細胞型に分化する能力がある。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、多能性状態に維持される能力がある。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、多能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、多能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、多能性状態に維持される。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の多能性のマーカーを発現する(例えば、OCT4)。
【0039】
様々な態様では、本明細書に記載される方法により、幹細胞は長期間の間複能性状態に維持されることが可能となる。複能性幹細胞は、いくつかの異なる細胞型を生じさせる能力がある。例えば、間葉系幹細胞は、骨、軟骨、筋細胞、脂肪細胞、および結合組織を含む複数の細胞型に分化する能力がある。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、複能性状態に維持される能力がある。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、複能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、複能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、複能性状態に維持される。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の複能性のマーカーを発現する。
【0040】
様々な態様では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、未分化状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、未分化状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、未分化状態に維持される能力がある。様々な態様では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、未分化状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、未分化状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、未分化状態に維持される。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の分化マーカーを発現しない。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の細胞型または組織型特異的マーカーを発現しない。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の幹細胞性のマーカーを発現する。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の未分化状態のマーカーを発現する。
【0041】
様々な態様では、本明細書中で提供される方法は、懸濁状態で幹細胞の増殖を促進する。場合によっては、幹細胞の増殖を促進することは、増殖速度を増加させることを含む。場合によっては、幹細胞の増殖を促進することは、増殖速度を維持することを含む。
【0042】
システム
懸濁状態で幹細胞を増殖および/または維持するためのシステムが、さらに本明細書に記載される。一態様では、システムは、(a)培地を含むバイオリアクター容器、(b)第1のシグナル伝達タンパク質またはその一部と、第1の光活性化可能ドメインとを含む第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される、培地中の懸濁状態の複数の幹細胞、ならびに(c)幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、幹細胞を光に曝露して、第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、第1のシグナル伝達タンパク質またはその一部の下流シグナル伝達経路をもたらすための1つ以上の光源を含む。
【0043】
バイオリアクターは、懸濁培養物中の細胞を増殖するのに好適な任意のタイプの培養容器であり得る。様々な態様では、バイオリアクターは、少なくとも約50mL、少なくとも約100mL、少なくとも約150mL、少なくとも約200mL、少なくとも約250mL、少なくとも約300mL、少なくとも約400mL、少なくとも約500mL、少なくとも約600mL、少なくとも約700mL、少なくとも約750mL、少なくとも約800mL、少なくとも約900mL、少なくとも約1000mL、少なくとも約2000mL、少なくとも約3000mL、少なくとも約5000mL、またはそれ以上の容積を含む。
【0044】
様々な態様では、バイオリアクターは、1つ以上の幹細胞を照明するように構成された1つ以上の光源を含む。光の波長は、赤外線、近赤外線、可視光線(例えば、赤、緑、青)、紫外線、またはそれらの組合せのうちの1つ以上であり得る。赤外線は、約780nm~1mmの波長の光を含み得る。近赤外線は、約740nm~約780nmの波長の光を含み得る。赤色光は、約620nm~750nm、600nm~690nm、または約650nmの波長の光を含み得る。緑色光は、約577nm~約492nmの波長の光を含み得る。青色光は、492~約455nm、または約440nm~約473nmの波長の光を含み得る。紫外線は、約10nm~400nm、または約280~315nmの光を含み得る。様々な態様では、光の波長は100nm~1mmである。
【0045】
特定の実施形態では、1つ以上の光源は、バイオリアクターの内部にある(例えば、1つ以上の光源は、バイオリアクターの内部の1つ以上構成要素に位置する)。場合によっては、1つ以上の光源はバイオリアクターの内面に位置する。特定の実施形態では、光源はバイオリアクターの外部に位置する。特定の実施形態では、バイオリアクターは光学的に透明な表面を含む。いくつかの例では、細胞懸濁液に光を送達するためにライトガイドが適用されてもよい。
【0046】
特定の実施形態では、1つ以上の光源は少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含む。特定の実施形態では、1つ以上の光源は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10個を超えるLEDを含む。特定の実施形態では、1つ以上の光源は少なくとも1つのレーザーを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の光源は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10個を超えるレーザーを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の光源は、少なくとも1、2、3、4、5、または5つを超える異なる波長の光を放出するように構成される。いくつかの実施形態では、1つ以上の光源は白熱光源を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の光源は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10個を超える白熱光源を含む。1つ以上の光源は、システムに光をパターン(例えば、空間的パターン、時間的パターン、またはその両方)で提供するように構成されてもよい。時間的パターンは、刺激持続時間および刺激間持続時間を含み得る。場合によっては、時間的パターンは、1秒の少なくとも約10分の1、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約30分、または少なくとも約1時間の光刺激持続時間を含む。場合によっては、刺激持続時間(例えば、細胞が光に曝露される時間の量)は、少なくとも約5分であり得る。場合によっては、時間的パターンは、少なくとも約1秒、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、またはそれ以上の刺激間持続時間を含む。場合によっては、刺激間持続時間(例えば、照明期間の間の時間の量)は、約20分~約250分であり得る。
【0047】
特定の実施形態では、バイオリアクターは、温度を調節するための(例えば、培地の温度を調節するための)システムを含む。温度は、幹細胞の培養に適するように選択され得る。特定の実施形態では、バイオリアクターは(例えば、培地を撹拌するための)撹拌器を含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターはセンサーを含む。いくつかの実施形態では、センサーには、光学密度、温度、CO2レベル、液位、pH、酸素レベル、色、(例えば、撹拌器の)回転速度、またはそれらの組合せを検出するセンサーが含まれる。
【0048】
様々な態様では、システムは、融合タンパク質を発現するように遺伝子操作された幹細胞を含む。融合タンパク質は、(例えば、本明細書に記載されるように)シグナル伝達タンパク質受容体またはその一部に融合される光活性化可能ドメインを含み得る。場合によっては、光活性化可能ドメインは、特定の波長の光で刺激されると、(例えば、別の光活性化可能ドメインと)ダイマー化またはオリゴマー化する。場合によっては、光活性化可能ドメインは、ホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成し得る(例えば、第2の異なる光活性化可能ドメインとダイマー化し得る)。
【0049】
光活性化可能ドメインは、天然源(例えば、天然に存在するタンパク質)に由来してもよく、または合成的に産生されてもよい。光活性化可能ドメインは、天然に存在するタンパク質の機能的ドメインまたはその部分を含み得るか、あるいはそれであり得る。光活性化可能ドメインは、野生型タンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含んでもよく、または野生型タンパク質に対する1つ以上のバリアント(例えば、アミノ酸置換、欠失、挿入など)を含んでもよい。光活性化可能ドメインは、天然に存在するタンパク質に対して少なくとも約50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0050】
様々な態様では、光活性化可能ドメインは、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメイン、LOV2光受容体ドメイン、クリプトクロム(CRY)ドメイン、FADを使用した青色光(BLUF)光受容体ドメイン、フィトクロム(PHY)ドメイン、CIBN(CIB1(クリプトクロム相互作用塩基性ヘリックスループヘリックスタンパク質1)のN末端ドメイン)ドメイン、PIF(フィトクロム相互作用因子)ドメイン、Dronpaドメイン、UVR8光受容体ドメイン、COP1ドメイン、BphP1ドメイン、QPAS-1ドメイン、コバラミン結合ドメイン(CBD)、またはそれらの組合せを含む。一例では、光活性化可能ドメインは、LOVドメイン(フシナシミドロ(Vaucheria frigida)のオーレオクロム1由来のLOVドメインなど)である。
【0051】
いくつかの例では、光活性化可能ドメインの組合せが使用され、ここで、第1の光活性化可能ドメインはクリプトクロム2(またはそのバリアントもしくは機能的部分)であり、第2の光活性化可能ドメインはCIBN(またはそのバリアントもしくは機能的部分)である。いくつかの例では、光活性化可能ドメインの組合せが使用され、ここで、第1の光活性化可能ドメインはBphP1(またはそのバリアントもしくは機能的部分)であり、第2の光活性化可能ドメインはQPAS1(またはそのバリアントもしくは機能的部分)である。場合によっては、光活性化可能ドメイン(または光活性化可能ドメインの組合せ)は、表1から選択される。場合によっては、光活性化可能ドメインは、表1に記載される光活性化可能ドメインのいずれか1つに対して、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0052】
様々な態様では、システムは、幹細胞(例えば、シグナル伝達タンパク質受容体と光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)を、特定の波長または特定のスペクトル範囲内の光に曝露するように構成される。光の波長またはスペクトル範囲は、光が光活性化可能ドメインを活性化できるように選択される。例えば、表1は、様々な光活性化可能ドメインシステムのための光パラメータの非限定的な例を提供する。光の波長は、赤外線、近赤外線、可視光線(例えば、赤、緑、青)、紫外線、またはそれらの組合せのうちの1つ以上であり得る。赤外線は、約780nm~1mmの波長の光を含み得る。近赤外線は、約740nm~約780nmの波長の光を含み得る。赤色光は、約620nm~750nm、600nm~690nm、または約650nmの波長の光を含み得る。緑色光は、約577nm~約492nmの波長の光を含み得る。青色光は、492~約455nm、または約440nm~約473nmの波長の光を含み得る。紫外線は、約10nm~400nm、または約280~315nmの光を含み得る。場合によっては、光の波長は100nm~1mmである。
【0053】
様々な態様では、光活性化可能ドメインは、シグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分に融合される。シグナル伝達タンパク質受容体は、通常、幹細胞の増殖および/または維持に必要な1つ以上の下流シグナル伝達経路の活性化に関わるタンパク質受容体である。シグナル伝達タンパク質受容体は、下流シグナル伝達経路を活性化するためにダイマー化またはオリゴマー化を必要とするタンパク質受容体であり得る。適切な波長の光によって幹細胞を照明すると、光活性化可能ドメインはダイマー化またはオリゴマー化し、それによりシグナル伝達タンパク質受容体のダイマー化またはオリゴマー化を引き起こし、下流のシグナル伝達経路が活性化される。
【0054】
いくつかの態様では、第1の光活性化可能ドメインは、第1のシグナル伝達タンパク質受容体に融合され、第2の光活性化可能ドメインは、第2のシグナル伝達タンパク質受容体に融合される。この場合、(例えば、本明細書に記載されるように)第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは結合パートナーであり、特定の波長または特定のスペクトル範囲内の光で照明されると、ダイマー化またはオリゴマー化する。さらに、第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体は、(第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインのダイマー化またはオリゴマー化の際に)ダイマー化またはオリゴマー化する。第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体が密接していると、これらのシグナル伝達タンパク質受容体に関連する下流シグナル伝達経路が活性化される。
【0055】
インビトロで幹細胞を増殖および維持するために、様々な増殖因子が細胞培地中で使用されてもよい。これらの増殖因子としては、限定されないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、アクチビン、Nodal、およびLIFが挙げられる。様々な態様では、本明細書に開示されるシステムは、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、アクチビン、Nodal、およびLIFのうち1つ以上が存在しないか、または不足している培地中で幹細胞を増殖および/または維持することを提供する。様々な態様では、シグナル伝達タンパク質受容体は、これらの増殖因子のうち1つ以上によって活性化されるタンパク質受容体である。
【0056】
様々な態様では、シグナル伝達タンパク質受容体は、トランスフォーミング増殖因子ベータ受容体(TGFβR)である。場合によっては、TFGβRは、TGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3のうちの1つ以上であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、TGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3から選択される1つ以上のリガンドの結合時に、通常ダイマー化またはオリゴマー化するタンパク質受容体である。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、TGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3のバリアント(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失などを含む)であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、TGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3の機能的ドメインもしくは機能的部分であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、野生型のTGFβR1、TGFβR2、またはTGFβR3アミノ酸配列に対して、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0057】
本開示の様々な態様では、方法には、TGFβ1、TGFβ2、またはTGFβ3のうち1つ以上が存在しないか、もしくは不足している培地中での、(例えば、本明細書に開示されるように、例えば、TGFβRまたはその機能的部分と、光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質の使用による)幹細胞の増殖および/または維持が含まれている。様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、TGFβRまたはその機能的部分と、光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、TGFβRのダイマー化またはオリゴマー化をもたらす。様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、TGFβRまたはその機能的部分と、光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、TGFβRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす。場合によっては、TGFβRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路は、SMAD2/3シグナル伝達経路である。
【0058】
様々な態様では、シグナル伝達タンパク質受容体は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)である。場合によっては、FGFRは、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6のうちの1つ以上であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、またはFGF23から選択される1つ以上のリガンドの結合時に、通常ダイマー化またはオリゴマー化するタンパク質受容体である。本開示の様々な態様では、方法には、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、またはFGF23のうちの1つ以上が存在しないか、または不足している培地中での(例えば、本明細書に開示されるように、例えば、FGFRまたはその機能的部分と、光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質の使用による)幹細胞の増殖および/または維持が含まれている。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6のバリアント(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失などを含む)であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6の機能的ドメインもしくは機能的部分であり得る。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体は、野生型のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、またはFGFR6アミノ酸配列に対して、少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0059】
様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、FGFRまたはその機能的部分と、光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、FGFRのダイマー化またはオリゴマー化をもたらす。様々な態様では、光を用いた幹細胞(例えば、FGFRまたはその機能的部分と、光活性化可能ドメインとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作されたもの)の照明は、FGFRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす。場合によっては、FGFRに関連する1つ以上の下流シグナル伝達経路は、ERKシグナル伝達経路である。場合によっては、シグナル伝達タンパク質受容体はFGFRを含まない。
【0060】
様々な態様では、幹細胞は、第1のシグナル伝達タンパク質受容体と第1の光活性化可能ドメイン(第1の波長または第1のスペクトル範囲内の光によって活性化可能)とを含む第1の融合タンパク質、および第2のシグナル伝達タンパク質受容体と第2の光活性化可能ドメイン(第2の波長または第2のスペクトル範囲内の光によって活性化可能)とを含む第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作され得る。そのような場合、第1のシグナル伝達タンパク質受容体および第2のシグナル伝達タンパク質受容体は、それぞれが幹細胞を増殖および/または維持するのに重要もしくは必要である下流シグナル伝達経路を活性化する能力がある、異なるタンパク質受容体である。さらに、第1の光活性化可能ドメインおよび第2の光活性化可能ドメインは異なるものであり、異なる波長または異なるスペクトル範囲内の光により、活性化することができる。そのような場合、シグナル伝達経路活性化の正確な制御が可能となり、ユーザーは、他方に影響を与えずに1つのシグナル伝達経路を調節することが可能となる。非限定的な例では、第1のシグナル伝達タンパク質受容体はFGFRであり、第1の波長または第1のスペクトル範囲内の光の照明時に、FGFRがダイマー化またはオリゴマー化することで、第1のシグナル伝達経路(例えば、ERKシグナル伝達経路)が活性化され、また、第2のシグナル伝達タンパク質受容体はTGFβRであり、第2の異なる波長または第2の異なるスペクトル範囲内の光の照明時に、TGFβRがダイマー化またはオリゴマー化することで、第2のシグナル伝達経路(例えば、SMAD2/3シグナル伝達経路)が活性化される。
【0061】
本明細書中で提供されるシステムと使用される幹細胞は、任意の所望の幹細胞であり得る。いくつかの例では、幹細胞は多能性幹細胞である。いくつかの例では、幹細胞は複能性幹細胞である。場合によっては、幹細胞は胚性幹細胞である。場合によっては、幹細胞は間葉系幹細胞である。場合によっては、幹細胞は、衛星細胞または筋肉幹細胞である。場合によっては、幹細胞は脂肪幹細胞である。特定の実施形態では、本明細書に記載される幹細胞は哺乳動物幹細胞である。場合によっては、哺乳動物幹細胞は、ヒト幹細胞、ウシ(雌ウシ)幹細胞、ヒツジ(ovine)(ヒツジ(sheep))幹細胞、およびブタ(porcine)(ブタ(pig))幹細胞からなる群から選択される。一例では、哺乳動物幹細胞はウシ細胞である。ウシ細胞は、場合によっては、雄和牛またはアンガス雄牛由来であり得る。いくつかの実施形態では、幹細胞は、限定されないが、ニワトリ幹細胞などの鳥類幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、限定されないが、マグロ幹細胞などの魚類幹細胞である。
【0062】
有利には、本明細書中のシステムは、幹細胞を(例えば、二次元の接着細胞培養物としてではなく)懸濁状態で増殖および/または維持することを提供する。場合によっては、本明細書中で提供されるシステムは、細胞の支持細胞層の使用を必要としない。場合によっては、本明細書中で提供されるシステムは、細胞外マトリックス成分の使用を必要としない。場合によっては、システムには、バイオリアクターで幹細胞を増殖または維持することが含まれている。場合によっては、本明細書中で提供されるシステムには、マイクロキャリア(例えば、ビーズ)の使用が含まれ得る。場合によっては、マイクロキャリアは、(例えば、幹細胞の付着を促進させるために)細胞外マトリックス成分で被覆され得る。
【0063】
様々な態様では、懸濁培養物は少なくとも約100ミリリットル(mL)の体積を有する。例えば、懸濁培養物は、少なくとも約150mL、少なくとも約200mL、少なくとも約250mL、少なくとも約300mL、少なくとも約350mL、少なくとも約400mL、少なくとも約450mL、少なくとも約500mL、少なくとも約550mL、少なくとも約600mL、少なくとも約650mL、少なくとも約700mL、少なくとも約750mL、少なくとも約800mL、少なくとも約850mL、少なくとも約900mL、少なくとも約950mL、少なくとも約1000mL、少なくとも約2000mL、少なくとも約3000mL、少なくとも約4000mL、少なくとも約5000mL、またはそれ以上の体積を有し得る。場合によっては、懸濁培養物は約1000mL未満の体積を有する。場合によっては、懸濁培養物は約1000mLを超える体積を有する。
【0064】
幹細胞を増殖/または維持するのに好適な任意の細胞培地が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞培地は、等張生理食塩水、緩衝液、アミノ酸、糖類(例えば、グルコース)、血清または血清代替品、および他の外因的に添加された因子のいずれかを適切な組合せで含む。いくつかの実施形態では、細胞培地は、血清の存在下または非存在下のいずれかで、DMEM、F12、aMEM、Hepatostim(商標)、RPMI、またはそれらの組合せを含む。好適な血清としては、仔ウシ血清、ウシ胎児血清、ウマ血清などが挙げられる。いくつかの実施形態では、血清サプリメントが使用される。
【0065】
いくつかの実施形態では、細胞培地は、幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している。いくつかの実施形態では、細胞培地は、FGF、TGFβ、またはその両方が不足している。いくつかの実施形態では、細胞培地は、FGF2、TGFβ1、アクチビン、Nodal、LIF、またはそれらの組合せが不足している。
【0066】
様々な態様では、本明細書に記載されるシステムにより、幹細胞は長期間の間多能性状態に維持されることが可能となる。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、多能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、多能性状態に維持される能力がある。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、多能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、多能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、多能性状態に維持される。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の多能性のマーカーを発現する(例えば、OCT4)。
【0067】
様々な態様では、本明細書に記載されたシステムにより、幹細胞は長期間の間、複能性状態に維持されることが可能となる。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、複能性状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、複能性状態に維持される能力がある。いくつかの実施形態では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、複能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、複能性状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、複能性状態に維持される。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の複能性のマーカーを発現する。
【0068】
様々な態様では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、未分化状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、未分化状態に維持される能力がある。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、未分化状態に維持される能力がある。様々な態様では、幹細胞は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、または6か月超の間、未分化状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも7日間、未分化状態に維持される。場合によっては、幹細胞は少なくとも1か月間、未分化状態に維持される。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の分化マーカーを発現しない。様々な態様では、幹細胞は1つ以上の細胞型または組織型特異的マーカーを発現しない。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の幹細胞性のマーカーを発現する。様々な態様では、幹細胞は、本明細書中で提供される方法を実施した後に、1つ以上の未分化状態のマーカーを発現する。
【0069】
様々な態様では、本明細書中で提供されるシステムは、懸濁状態で幹細胞の増殖を促進するために使用される。場合によっては、幹細胞の増殖を促進することは、増殖速度を増加させることを含む。場合によっては、幹細胞の増殖を促進することは、増殖速度を維持することを含む。
【0070】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての専門用語、表記、その他の技術的および科学的な用語は、主張された主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語が、明確化のため、および/または、すぐに参照できるように本明細書に定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当該技術分野で一般に理解されているものと実質的に異なることを示すと解釈されてはならない。
【0071】
本出願の全体にわたって、様々な実施形態が範囲フォーマットで提示されてもよい。範囲フォーマットにおける記載は利便性と簡潔さのためのものに過ぎず、本開示の範囲に対する確固たる制限として解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲と、その範囲内の個々の数値を具体的に開示したものであると考慮されなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6といった具体的に開示された部分範囲と、例えば、1、2、3、4、5、および6といった範囲内にある個々の数字を有するものとして考慮されなければならない。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0072】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるとき、「a」、「an」、および「the」は、内容が他に明確に示していない限り、複数の参照を含む。例えば、「試料」という用語は複数の試料を含み、その混合物も含む。
【0073】
本明細書で使用されるとき、用語「約」の付く数字は、その数字のプラスまたはマイナス10%の数字を指す。「約」という用語が付く範囲は、最低値のマイナス10%、および最大値のプラス10%の範囲を指す。
【0074】
一般に、「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列それぞれの正確なヌクレオチド間またはアミノ酸間の一致を指す。典型的に、配列同一性を判定するための技術は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を判定することおよび/またはそれによってコードされたアミノ酸配列を判定すること、およびこれらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを含む。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)はそれらの「パーセント同一性」を決定することにより比較できる。2つの配列のパーセント同一性は、核酸であろうとアミノ酸の配列であろうと、2つの整列された配列間の正確なマッチの数を、より長い配列の長さで割って100を掛けたものである。パーセント同一性はまた、例えば、国立衛生研究所から入手可能なバージョン2.2.9を含む高度BLASTコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することによって決定され得る。BLASTプログラムは、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268(1990)のアライメント方法に基づき、Altschul,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)とKarlin And Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(1993)とAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)に論じられている。簡潔に説明すると、BLASTプログラムは、同一性を、同一の整列した記号(一般にヌクレオチドまたはアミノ酸)の数として定義し、2つの配列のうちの短い方の記号の総数で割る。このプログラムを使用して、比較されるタンパク質の全長にわたる同一性パーセントを決定することができる。デフォルトパラメータは、例えばblastpプログラムを用いて、短いクエリ配列による検索を最適化するために提供される。さらに、プログラムにより、Wootton and Federhen,Computers and Chemistry 17:149-163(1993)のSEGプログラムによって決定されるように、クエリ配列のセグメントをマスクオフするためのSEGフィルタの使用が可能となる。
【0075】
本明細書に使用されるセクションの見出しは、単に構成上の目的のためであり、記載される主題を制限すると解釈されるものではない。
【0076】
番号付けした実施形態
以下の実施形態は、本明細書に開示される特徴の組合せの非限定的な順列を詳述する。特徴の組合せのその他の順列も考慮される。特に、これらの番号を付けた実施形態のそれぞれは、列挙されるような順序とは無関係に、前述のまたは以下の番号を付けた実施形態に従属または関連するものとして、考慮される。
【0077】
実施形態1:幹細胞を懸濁状態で増殖および/または維持する方法であって、(a)幹細胞を懸濁状態で培地中で培養する工程であって、幹細胞が、第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作され、第1の融合タンパク質が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む、工程、(b)幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、幹細胞を光に曝露することで、第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、第1のシグナル伝達タンパク質受容体の下流シグナル伝達経路の活性化をもたらす、工程を含む、方法。
【0078】
実施形態2:シグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、増殖因子受容体である、実施形態1に記載の方法。
【0079】
実施形態3:培地は、幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している、実施形態1または2に記載の方法。
【0080】
実施形態4:1つ以上の因子が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分のリガンドである、実施形態3に記載の方法。
【0081】
実施形態5:1つ以上の因子が、1つ以上の増殖因子を含む、実施形態4に記載の方法。
【0082】
実施形態6:1つ以上の増殖因子がトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)である、実施形態5に記載の方法。
【0083】
実施形態7:1つ以上の増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えばFGF2である、実施形態5または6に記載の方法。
【0084】
実施形態8:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)またはトランスフォーミング増殖因子受容体(TGFR)である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態9:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、TGFβR1、TGFβR2、FGFR1、FGFR2、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態10:幹細胞が哺乳動物幹細胞である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態11:幹細胞がヒトまたはウシの幹細胞である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態12:幹細胞が、多能性幹細胞または複能性幹細胞である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態13:多能性幹細胞が少なくとも7日間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある、実施形態12に記載の方法。
【0090】
実施形態14:多能性幹細胞が少なくとも1か月間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある、実施形態12に記載の方法。
【0091】
実施形態15:複能性幹細胞が少なくとも7日間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある、実施形態12に記載の方法。
【0092】
実施形態16:複能性幹細胞が少なくとも1か月間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある、実施形態12に記載の方法。
【0093】
実施形態17:幹細胞が少なくとも7日間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態18:幹細胞が少なくとも1か月間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態19:幹細胞が少なくとも7日間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態20:幹細胞が少なくとも1か月間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態21:幹細胞が胚性幹細胞である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態22:幹細胞が間葉系幹細胞である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態23:幹細胞が、衛星細胞または筋肉幹細胞である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態24:幹細胞が脂肪幹細胞である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態25:懸濁培養物が少なくとも100ミリリットル(mL)の体積を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態26:懸濁培養物がバイオリアクター容器内に収容される、1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態27:バイオリアクター容器が、少なくとも100ミリリットル(mL)の全容積を有する、実施形態26に記載の方法。
【0104】
実施形態28:光活性化可能ドメインが、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメイン、LOV2光受容体ドメイン、クリプトクロム(CRY)光受容体ドメイン、FADを使用した青色光(BLUF)光受容体ドメイン、フィトクロム(PHY)光受容体ドメイン、CIBN(CIB1(クリプトクロム相互作用塩基性ヘリックスループヘリックスタンパク質1)のN末端ドメイン)ドメイン、PIF(フィトクロム相互作用因子)ドメイン、Dronpaドメイン、UVR8光受容体ドメイン、COP1ドメイン、BphP1ドメイン、QPAS-1ドメイン、コバラミン結合ドメイン(CBD)、またはそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態29:(b)の曝露する工程が、幹細胞を、1つ以上の照明パラメータを有する光に曝露することを含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態30:1つ以上の照明パラメータが光強度を含む、実施形態29に記載の方法。
【0107】
実施形態31:1つ以上の照明パラメータが、照明の時間的パターンを含む、実施形態29に記載の方法。
【0108】
実施形態32:時間的パターンが、少なくとも約5分間の光刺激持続時間を含む、実施形態31に記載の方法。
【0109】
実施形態33:時間的パターンが、約20分~約250分の刺激間持続時間を含む、実施形態31または32に記載の方法。
【0110】
実施形態34:第1の融合タンパク質が、(b)の光に曝露する工程の後に、ダイマー化またはオリゴマー化する、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態35:幹細胞が、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第2の光活性化可能ドメインとを含む、第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態36:第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分とは異なっている、実施形態35に記載の方法。
【0113】
実施形態37:第2の光活性化可能ドメインは、第1の光活性化可能ドメインとは異なっている、実施形態35または36に記載の方法。
【0114】
実施形態38:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、TFGβR1またはTGFβR2であり、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、FGFR1またはFGFR2である、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態39:下流シグナル伝達経路がSMAD2/3シグナル伝達経路である、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態40:下流シグナル伝達経路がERKシグナル伝達経路である、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態41:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、あるいはその両方は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を含まない、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態42:(b)の曝露する工程が、幹細胞を100nm~1mmの波長の光に曝露することを含む、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態43:(b)の曝露する工程が、幹細胞を、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、またはそれらの組合せに曝露することを含む、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態44:可視光線が、青色光、赤色光、緑色光、またはそれらの組合せである、実施形態43に記載の方法。
【0121】
実施形態45:懸濁培養物において、7日以上で、幹細胞が幹細胞性のマーカーの1つ以上を発現する、1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態46:(a)培地を含むバイオリアクター容器、(b)第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第1の光活性化可能ドメインとを含む第1の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される、培地中の懸濁状態の複数の幹細胞、ならびに(c)幹細胞が懸濁状態で増殖および/または維持されるように、幹細胞を光に曝露して、第1の光活性化可能ドメインを活性化させ、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分の下流シグナル伝達経路をもたらすための1つ以上の光源を含む、幹細胞を増殖および/または維持するためのシステム。
【0123】
実施形態47:バイオリアクター容器が、少なくとも100ミリリットル(mL)の全容積を有する、実施形態46に記載のシステム。
【0124】
実施形態48:1つ以上の光源が、1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む、実施形態46または47に記載のシステム。
【0125】
実施形態49:1つ以上のLEDが、少なくとも2つの異なるLEDを含む、実施形態48に記載のシステム。
【0126】
実施形態50:少なくとも2つの異なるLEDが、異なる波長の光を放出する、実施形態49に記載のシステム。
【0127】
実施形態51:1つ以上の光源が、1つ以上のレーザーを含む、実施形態46または47に記載のシステム。
【0128】
実施形態52:1つ以上の光源が白熱光源を含む、実施形態46または47に記載のシステム。
【0129】
実施形態53:1つ以上の光源が、バイオリアクター容器の内部に位置するか、またはバイオリアクター容器の内面に位置する、実施形態46~52のいずれか1つに記載のシステム。
【0130】
実施形態54:1つ以上の光源が、バイオリアクター容器の外部に位置するか、またはバイオリアクター容器の外面に位置する、実施形態46~52のいずれか1つに記載のシステム。
【0131】
実施形態55:バイオリアクター容器が、少なくとも1つの光学的に透明な壁または表面を含む、実施形態54に記載のシステム。
【0132】
実施形態56:培地の温度を制御するための温度源をさらに含む、実施形態46~55のいずれか1つに記載のシステム。
【0133】
実施形態57:培地を撹拌するための撹拌源をさらに含む、実施形態46~56のいずれか1つに記載のシステム。
【0134】
実施形態58:システムが、1つ以上の光源から光をパターンで提供するように構成される、実施形態46~57のいずれか1つに記載のシステム。
【0135】
実施形態59:パターンが、空間的パターン、時間的パターン、またはその両方である、実施形態58に記載のシステム。
【0136】
実施形態60:時間的パターンが、光刺激持続時間および刺激間持続時間を含む、実施形態59に記載のシステム。
【0137】
実施形態61:光刺激持続時間が、少なくとも約5分である、実施形態60に記載のシステム。
【0138】
実施形態62:刺激間持続時間が、約20分~約250分である、実施形態60または61に記載のシステム。
【0139】
実施形態63:第1のシグナル伝達タンパク質受容体が増殖因子受容体である、実施形態46~62のいずれか1つに記載のシステム。
【0140】
実施形態64:細胞培養培地は、幹細胞を増殖および/または維持するのに必要な1つ以上の因子が不足している、実施形態46~63のいずれか1つに記載のシステム。
【0141】
実施形態65:1つ以上の因子が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分のリガンドである、実施形態64に記載のシステム。
【0142】
実施形態66:1つ以上の因子が、1つ以上の増殖因子を含む、実施形態65に記載のシステム。
【0143】
実施形態67:1つ以上の増殖因子がトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)である、実施形態66に記載のシステム。
【0144】
実施形態68:1つ以上の増殖因子が、線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えばFGF2である、実施形態66または67に記載のシステム。
【0145】
実施形態69:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)またはトランスフォーミング増殖因子受容体(TGFR)である、実施形態46~68のいずれか1つに記載のシステム。
【0146】
実施形態70:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、TGFβR1、TGFβR2、FGFR1、FGFR2、およびそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、実施形態46~69のいずれか1つに記載のシステム。
【0147】
実施形態71:幹細胞が哺乳動物幹細胞である、実施形態46~70のいずれか1つに記載のシステム。
【0148】
実施形態72:幹細胞がヒトまたはウシの幹細胞である、実施形態46~71のいずれか1つに記載のシステム。
【0149】
実施形態73:幹細胞が、多能性幹細胞または複能性幹細胞である、実施形態46~72のいずれか1つに記載のシステム。
【0150】
実施形態74:多能性幹細胞が少なくとも7日間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある、実施形態73に記載のシステム。
【0151】
実施形態75:多能性幹細胞が少なくとも1か月間、多能性状態に維持されるか、または多能性状態に維持される能力がある、実施形態73に記載のシステム。
【0152】
実施形態76:複能性幹細胞が少なくとも7日間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある、実施形態73に記載のシステム。
【0153】
実施形態77:複能性幹細胞が少なくとも1か月間、複能性状態に維持されるか、または複能性状態に維持される能力がある、実施形態73に記載のシステム。
【0154】
実施形態78:幹細胞が少なくとも7日間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある、実施形態46~77のいずれか1つに記載のシステム。
【0155】
実施形態79:幹細胞が少なくとも1か月間、懸濁状態で増殖および/または維持されるか、あるいは懸濁状態で増殖および/または維持される能力がある、実施形態46~78のいずれか1つに記載のシステム。
【0156】
実施形態80:幹細胞が少なくとも7日間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある、実施形態46~79のいずれか1つに記載のシステム。
【0157】
実施形態81:幹細胞が少なくとも1か月間、未分化状態のままであるか、または未分化状態のままである能力がある、実施形態46~80のいずれか1つに記載のシステム。
【0158】
実施形態82:幹細胞が胚性幹細胞である、実施形態46~81のいずれか1つに記載のシステム。
【0159】
実施形態83:幹細胞が間葉系幹細胞である、実施形態46~81のいずれか1つに記載のシステム。
【0160】
実施形態84:幹細胞が、衛星細胞または筋肉幹細胞である、実施形態46~81のいずれか1つに記載のシステム。
【0161】
実施形態85:幹細胞が脂肪幹細胞である、実施形態46~81のいずれか1つに記載のシステム。
【0162】
実施形態86:培地が少なくとも100ミリリットル(mL)の体積を有する、実施形態46~85のいずれか1つに記載のシステム。
【0163】
実施形態87:光活性化可能ドメインが、光-酸素-電圧(LOV)光受容体ドメイン、LOV2光受容体ドメイン、クリプトクロム(CRY)光受容体ドメイン、FADを使用した青色光(BLUF)光受容体ドメイン、フィトクロム(PHY)光受容体ドメイン、CIBN(CIB1(クリプトクロム相互作用塩基性ヘリックスループヘリックスタンパク質1)のN末端ドメイン)ドメイン、PIF(フィトクロム相互作用因子)ドメイン、Dronpaドメイン、UVR8光受容体ドメイン、COP1ドメイン、BphP1ドメイン、QPAS-1ドメイン、コバラミン結合ドメイン(CBD)、またはそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態46~86のいずれか1つに記載のシステム。
【0164】
実施形態88:第1の融合タンパク質が、(b)の光への曝露の後に、ダイマー化またはオリゴマー化する、実施形態46~87のいずれか1つに記載のシステム。
【0165】
実施形態89:幹細胞が、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分と、第2の光活性化可能ドメインとを含む、第2の融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される、実施形態46~88のいずれか1つに記載のシステム。
【0166】
実施形態90:第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分とは異なっている、実施形態89に記載のシステム。
【0167】
実施形態91:第2の光活性化可能ドメインは、第1の光活性化可能ドメインとは異なっている、実施形態89または90に記載のシステム。
【0168】
実施形態92:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分が、TFGbR1またはTGFβR2であり、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分は、FGFR1またはFGFR2である、実施形態89~91のいずれか1つに記載のシステム。
【0169】
実施形態93:下流シグナル伝達経路がSMAD2/3シグナル伝達経路である、実施形態46~92のいずれか1つに記載のシステム。
【0170】
実施形態94:下流シグナル伝達経路がERKシグナル伝達経路である、実施形態46~92のいずれか1つに記載のシステム。
【0171】
実施形態95:第1のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、第2のシグナル伝達タンパク質受容体またはその機能的部分、あるいはその両方は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を含まない、実施形態46~94のいずれか1つに記載のシステム。
【0172】
実施形態96:(b)の曝露が、幹細胞を100nm~1mmの波長の光に曝露することを含む、実施形態46~95のいずれか1つに記載のシステム。
【0173】
実施形態97:(b)の曝露が、幹細胞を、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、またはそれらの組合せに曝露することを含む、実施形態46~96のいずれか1つに記載のシステム。
【0174】
実施形態98:可視光線が、青色光、赤色光、緑色光、またはそれらの組合せである、実施形態97に記載のシステム。
【実施例
【0175】
実施例1.光活性化可能ドメインおよびシグナル伝達タンパク質受容体を含有する融合タンパク質を発現するための幹細胞の操作。
【0176】
脂肪幹細胞を、成体の雄和牛の新鮮な脂肪組織試料から抽出した。簡潔に説明すると、脂肪組織を滅菌メスで刻み、25mlの消化溶液(2mg/mlコラゲナーゼII(Sigma、C2-BIOC)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アムホテリシンB(Lonza、17-745E)、10μM ROCK阻害剤Y-27632(Tocris、1 254))に添加して総体積を50mlの遠心分離管中で40mlとして、2分毎に反転させながら37℃で60分間インキュベートした。管を300×gで5分間遠心分離機にかけると、底部にペレット、上部に脂肪の塊(plug)が生じ、後者を上清と共に廃棄した。ペレットを25mlの増殖培地(10%ウシ胎児血清(Avantor、89510-186)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アムホテリシンBを有するDMEM(Sigma、SLM-021))で洗浄し、次いで10mlの増殖培地に再懸濁し、T75組織培養フラスコに移した。細胞を、37℃および5%COで24時間、そのままでインキュベートし、その後、2日毎に増殖培地を交換して多数の継代に拡大した。
【0177】
筋原幹細胞を、成体アンガス雄牛の新鮮な大腿二頭筋から抽出した。簡潔に説明すると、2.5グラムの筋組織を解剖はさみで刻み、次いで7000UコラゲナーゼII中、37℃で1時間インキュベートした。その後、コラゲナーゼ溶液を取り除き、1000UコラゲナーゼIIおよび11Uディスパーゼ(Corning、354235)と交換した。試料を消化酵素中、37℃でさらに30分間インキュベートした。30分間の酵素消化の後、20ゲージ針を用いたトリチュレーションを繰り返すことによって試料を機械的に消化させた。その後、酵素を取り除き、試料を順次40μmおよび35μmの細胞ストレーナーに流すことにより濾過した。その後、試料を10mLの洗浄培地(Ham’s F10(Cytiva、SH30025.01)、10%ウマ血清(Cytiva、SH30074.04IR2540)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アムホテリシンB)中で再懸濁し、プレプレーティングによるバルク組織調製から筋肉幹細胞をさらに濃縮した。簡潔に説明すると、10mLのバルク組織単離物10cmの非コーティングポリスチレン皿の上に置き、37℃および5%COで30分間インキュベートした。30分後、上清中の浮遊細胞をすべて取り除き、接着が急速な非幹細胞画分を残して、新しい皿に再び置いた。これを計4回のプレプレーティング工程で繰り返した。最後に、筋肉常在幹細胞が濃縮された接着の遅い画分を、10cmのコラーゲン(Sigma、C8919-20ML)コーティング皿の上に置き、37℃および5%COで一晩中インキュベートした。翌日、洗浄培地を増殖培地(DMEM、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アムホテリシンB、2.5ng/mL FGFb(Fisher Scientific、2099-FB-025)と交換し、細胞を多数の継代に拡大した。
【0178】
和牛の脂肪幹細胞およびアンガス牛の筋原幹細胞を操作して、シグナル伝達受容体タンパク質に融合された光活性化可能ドメインを含む融合タンパク質を発現させた。フシナシミドロ(Vaucheria frigida)のオーレオクロム1(Uniprot A8QW55の残基204~348)由来のLOVドメインに融合されたウシ線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)(Uniprot A0A3Q1LUE0の残基463~886)の細胞質ドメインをコードする核酸配列を含有しているプラスミドを、構成的プロモーターの制御下で構築した。LOVドメインは青色光に反応してホモダイマー化し、FGFR1の細胞質ドメインに融合されると、FGFRシグナル伝達は、青色光での照明後に活性化する。FGFR-LOVタンパク質もFLAGエピトープに融合され、抗FLAG抗体による検出が可能となった。プラスミドはまた、選択のためにピューロマイシン耐性遺伝子および膜局在化赤色蛍光タンパク質の両方を含有していた。これらの成分を含む全ヌクレオチド配列は、piggyBacトランスポゾンの5’および3’ITR配列に隣接していた。5’ITRから3’ITRまでを含む各プラスミドの挿入配列を、pUC57-Kan骨格(GenScript)にクローニングした。
【0179】
プラスミドを0.01EU/μg未満のエンドトキシンで調製した。piggyBacトランスポゾンシステムを使用して、pFGFR-LOVプラスミドの挿入カセットをゲノムに組み込んだ。4D-Nucleofector X Unit(Lonza)を使用してヌクレオフェクションを実施した。計140,000個の細胞、1μgのドナープラスミド、および0.2μgのpiggyBacトランスポザーゼヘルパープラスミドを、サプリメント1を含む20μLのP2初代細胞Nucleofector溶液(Lonza)に再懸濁してから、Nucleocuvetteストリップ中のウェルに移した。プログラムEN150を使用して、Nucleocuvetteストリップの2つのウェル中で各条件を二通りに実施した。その後、細胞を、1mLの予熱した増殖培地中でやさしく再懸濁して、6ウェルプレートに移し、37℃および5%COで一晩かけて増殖させた。ヌクレオフェクションの24時間後、培地を新しいものにした。ヌクレオフェクションの48時間後に開始して7日間操作された細胞の選択のために、ピューロマイシン(1.1μg/ml)を培地に含めた。カセットの安定した組込みを、遺伝子型決定PCRと、トランスフェクションの数週間後のウェスタンブロットによる融合タンパク質の発現とによって確認した。
【0180】
単一細胞からクローンを拡大するために、細胞をインキュベーター中、37℃で5分間トリプシン処理して、表面からそれらを剥離させた。10回のトリチュレーションによって細胞集塊を分離して単一細胞懸濁液とした。10%ウシ胎児血清(Avantor、89510-186)を含有している増殖培地(DMEM/F-12(Cytiva、SH30023.FS)を用いて細胞を希釈した後、トリプシンを取り除くために遠心分離を行い、600細胞/mlの懸濁液を増殖培地中で調製した。100μL(60細胞)をSmart Aliquotor CE(iBioChips)の入口アダプターにロードした。細胞をSmart Aliquotorに通して徐々にピペッティングし、細胞をロードした後に入口アダプターを取り外した。単一細胞を含有していたウェルを同定するためにSmart Aliquotor中の各ウェルを細胞単離の直後に調査した。その後、10mLの予熱した増殖培地をSmart Aliquotorsに添加してから、それらを37℃および5%CO下のインキュベーターに戻した。各ウェル中の単一細胞を毎日モニタリングして、それらの増殖を追跡した。Smart Aliquotorにおいて50%の培養密度に達したら、96ウェルプレートへの単一細胞由来のコロニーの拡大を実施し、その後、組織培養フラスコ中でさらなる拡大を行った。カセットの安定した組込みを、遺伝子型決定PCRと、トランスフェクションの数週間後のウェスタンブロットによるタンパク質の発現とによって確認した。
【0181】
実施例2.FGFシグナル伝達はFGFR-LOV融合タンパク質を発現する幹細胞中で光によって活性化される。
【0182】
本実施例は、実施例1に記載されるように、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを含む融合タンパク質(FGFR-LOV)を発現するように操作された幹細胞が、下流シグナル伝達成分ERK1/2のリン酸化によって測定されるように、光を用いた照明に反応してFGFシグナル伝達を活性化することを実証する。
【0183】
簡潔に説明すると、96ウェルガラスボトムプレート(Cellvis、P96-1.5H-N)を、1.5μg/cmで切断したビトロネクチン(ThermoFisher Scientific、A14700)で被覆した。プレートを室温で2時間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Cytiva、SH30256.FS)で洗浄した。野生型細胞および操作された細胞を、グルタミン(Cytiva、SH30271.FS)、10%ウシ胎児血清(Avantor、89510-186)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アムホテリシンBを有するDMEM F-12を含有する培地中で、3000細胞/ウェルで播種した。翌日、細胞をPBSで洗浄し、FGFを含まない無血清培地をすべてのウェルに添加し、24時間のFGF飢餓化を開始した。24時間後、50ng/mlのFGF2(Fisher Scientific、2099-FB-025)を添加してウェルを選択した。プレートは、470nmの波長、5μW/mmでの10分間の選択ウェルの照明のために照明器に配置した。次いで、プレートを照明器から取り出し、培地を取り除き、ウェルをPBSで洗浄し、細胞を4%パラホルムアルデヒド(Boster Bio、AR1068)で室温で20分間固定した。固定後、細胞をPBSで洗浄し、PBSおよび0.2%Triton-X100(Sigma、93418)を含有する緩衝液を使用して室温で10分間透過処理した。細胞を再度PBSで洗浄し、PBS、2%ウシ血清アルブミン(Sigma、A6003-5G)、および0.1%Tween-20(Sigma、P7949-100ML)を含有するブロッキング緩衝液を細胞に適用した。細胞を室温で1時間、プレートロッカー上で保持した。ERK1/2のリン酸化形態に特異的に結合する抗ERK1(ホスホT202)+ERK2(ホスホT185)抗体(abcam、ab21403)をブロッキング緩衝液で400倍に希釈し、細胞に添加し、4℃で一晩維持した。翌日、抗体溶液を取り除き、0.1%Tween-20を含有するPBSで洗浄した。ヤギ抗ウサギIgG Alexa Fluor 488(ThermoFisher Scientific、A27034)をブロッキング緩衝液で1000倍に希釈し、室温で1時間プレートシェーカー上に配置した。細胞をPBSで洗浄し、Hoechst(ThermoFisher Scientific、62249)を10μg/mlで添加し、室温で20分間プレートロッカー上に配置した。細胞をPBSで洗浄し、Leica DMi8 Thunder蛍光顕微鏡で画像化した。
【0184】
核マスクは、Thunder Instant Computational Clearing、自動コントラスト、およびsigma 1.5によるガウシアンぼかしを適用し、次いでOtsuグローバル閾値法およびフィルホール法を使用して細胞核をセグメント化することによって、Hoechstチャネルで生成した。物体をLasXソフトウェア測定モジュールで測定し、サイズ、真円度、および強度に基づいて外れ値をフィルタリングした。リン酸化ERK1/2(pERK)強度を測定するために、Thunder Instant Computational ClearingをAlexaFluor488チャネルに適用した。セグメント化Hoechstチャネルをバイナリマスクとして使用し、各細胞の核におけるAlexaFluor488の平均強度をLasXを用いて測定した。各細胞をデータ点としてウェルごとにグループ分けしたpythonにおけるggplot2を用いて、値を幾何学的密度分布としてプロットし、各集団の核におけるpERKの平均強度の分布シフトを観察した。
【0185】
図1A~1Cは、これらの実施例に記載されるものなどのいくつかの条件下で、混合脂肪幹細胞集団(図1A、「脂肪_FGFR-LOV_混合」)、クローン脂肪幹細胞集団(図1B、「脂肪_FGFR-LOV_クローン」)、および筋肉幹細胞集団(図1C、「Myo_FGFR-LOV」)を含む、青色光に反応してFGFR-LOV活性化FGFシグナル伝達を発現するように操作された様々な幹細胞集団を実証する。対照的に、野生型脂肪幹細胞(例えば、FGFR-LOVを発現しない)は、青色光に反応してFGFシグナル伝達を活性化しなかった(図1D)。陽性対照として、野生型脂肪幹細胞(例えば、FGFR-LOVを発現しない)は、FGF2の外因性添加に反応してFGFシグナル伝達を活性化し(図1E)、アッセイがFGFシグナル伝達を測定できることを実証した。
【0186】
実施例3.シグナル伝達タンパク質受容体に融合した光活性化可能ドメインを発現する脂肪幹細胞は、光で照明されると、外因性増殖因子の非存在下で懸濁培養物中で増殖および維持される。
【0187】
本実施例は、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された脂肪幹細胞が、外因性増殖因子の添加なしに、光を用いた懸濁培養において増殖および維持され得ることを実証する。
【0188】
バイオリアクター中での接種の前に、幹細胞を、37℃に保ち5%COを補充した加湿インキュベーター中のポリスチレン組織培養フラスコ中で培養した。細胞を、L-グルタミンおよびHEPES(Cytiva、SH30023.FS)を含み、かつ10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンB、および2.5mM Glutamaxを補充したDMEM/F-12細胞培地中で培養した。細胞をコンフルエンシーに達する前に継代し、TrypLE(ThermoFisher Scientific、12604013)を使用してフラスコから解離させた。
【0189】
DASbox 250mLバイオリアクターシステム(Eppendorf)をすべての懸濁細胞培養に使用した。すべての実験について、BioBLU 0.3c単回使用容器(Eppendorf)を使用した。細胞をバイオリアクター中、Cytodex 1マイクロキャリア(Cytiva)上で培養した。バイオリアクター容器当たり833mgの乾燥マイクロキャリアをアリコートすることによってマイクロキャリアを調製した。マイクロキャリアアリコートを、遠心管中でPBSで水和し、オートクレーブ中で滅菌した。PBSを取り除き、細胞を無血清細胞培地に再懸濁した。各容器が833mg(乾燥重量)のマイクロキャリアおよび90mLの無血清培地を含むまで、マイクロキャリアおよび培地をバイオリアクター容器に添加した。次いで、容器をDASboxユニットに入れ、システムを以下の設定点:37℃、pH7.3、60rpm反時計回りの撹拌、3.0sL/時間のオーバーレイ空気およびスパージしたCOによるガス処理に設定した。容器をこれらの設定点に平衡化させた。
【0190】
TrypLEを用いて細胞を組織培養フラスコから解離させ、無血清培地中で7.5×10細胞/mLに希釈した。10mLのこの細胞懸濁液を各バイオリアクター容器に、バイオリアクター当たり合計7.5×10細胞で添加し、体積をバイオリアクター当たり100mLとした。接種後、容器を30分毎に30秒間、その後4時間にわたり撹拌した。次いで、撹拌を一晩停止させて、細胞をマイクロキャリアに付着させた。翌日、150mLの新しい培地を各バイオリアクターに添加して、全作業体積を250mLとした。5日目に、各容器中の培地の80%(200mL)を新しい培地と交換した。
【0191】
BioBLU容器のサンプリングラインに接続されたシリンジを使用して、定量化のために試料3mLを毎日収集した。全細胞/mLを、Chemometec Technical note No.0221 Rev.1.2に記載のプロトコルに従って定量化した。簡潔に説明すると、マイクロキャリアに付着した細胞を溶解して核を放出させた。次いで、核を安定化させて溶解を防止した。核をVia1-Cassetteに引き込み、その中でHoechstで染色した。次いで、核をNC-200細胞カウンター(Chemometec)で計数した。青色光(約470nm)を、以下の表2に記載される強度およびタイミングで透明なバイオリアクター壁を通して送達した。
【0192】
【表2】
【0193】
図2は、これらの実施例に記載されるものなどのいくつかの条件下で、FGFR-LOVを発現するように操作された幹細胞が、青色光に曝露されると、外因性FGFの非存在下で懸濁状態で少なくとも7日間増殖することを実証する。図2は、FGFR-LOVを発現する脂肪幹細胞の混合集団(「脂肪_FGFR-LOV_混合-FGF light1」)およびFGFR-LOVを発現する脂肪幹細胞のクローン集団(「脂肪_FGFR-LOV_クローン-FGF light2」)の両方が、異なる照射パラメータで青色光を照射すると、外因性FGFの非存在下で懸濁状態で少なくとも7日間増殖したことを示す。野生型脂肪幹細胞(例えば、FGFR-LOVを発現しないもの)もまた、外因性FGF(「脂肪_WT+FGF dark」)に曝露されると、懸濁状態で少なくとも7日間増殖した。対照的に、外因性FGFに曝露されていない野生型脂肪幹細胞(例えば、FGFR-LOVを発現しないもの)は増殖しなかった(「脂肪_WT-FGF dark」)。このデータは、シグナル伝達タンパク質受容体に融合した光活性化可能ドメインを含む融合タンパク質(例えば、FGFR-LOV)を発現する幹細胞が、外因性増殖因子(例えば、FGF)を添加する必要なしに、様々な照射パラメータ下で光に反応して懸濁状態で増殖する能力があることを実証する。
【0194】
FGFR-LOVを発現する幹細胞が光に反応して懸濁状態で増殖することをさらに実証するために、マイクロキャリアの画像を撮影した。培養7日目に50μLのマイクロキャリア懸濁液をバイオリアクターから取り出し、96ウェルガラスボトムプレート(Cellvis、P96-1.5H-N)のウェルに移し、マイクロキャリアをウェルの底に沈降させた。マイクロキャリアを、明視野照明および5×対物レンズを用いてLeica DM18 Thunder顕微鏡で画像化した。図3は、FGFR-LOVを発現するように操作された脂肪幹細胞が、外因性FGFの非存在下で光に反応して懸濁状態で少なくとも7日間増殖したことを示す(「脂肪_FGFR-LOV_混合-FGF light1」および「脂肪_FGFR-LOV_クローン-FGF light2」)。データはさらに、外因性FGFに曝露された陽性対照野生型脂肪幹細胞も懸濁状態で少なくとも7日間増殖したが(「脂肪_WT+FGF dark」)、外因性FGFに曝露されていない野生型脂肪幹細胞は増殖しなかった(「脂肪_WT-FGF dark」)ことを実証する。
【0195】
幹細胞性の維持もこれらの細胞株において評価した。懸濁状態での増殖の7日後、トリプシンを使用して細胞をマイクロキャリアから剥離し、15,000細胞/cmの密度でプレーティングし、増殖培地(10%FBSを含有するDMEM-F12)中で37℃および5%COで一晩インキュベートした。翌日、細胞を冷4%PFA中で20分間固定し、0.2%Triton X-100を使用して透過処理し、1%BSA、10%FBS中でブロッキングした。ブロッキング後、脂肪由来幹細胞に富む細胞表面抗原であるCD29(Biolegend 303007、5pg/mL)(PMID:19995482、27133085、28582278)について、細胞を4℃で一晩染色した。次いで、一次抗体を洗い流し、細胞をロバ抗マウス555抗体(ThermoFisher Scientific、A32773、1μg/mL)およびHoechst 33342を用いて室温で1時間染色した。1時間後、二次抗体を洗い流し、Leica DMi8 Thunder蛍光顕微鏡を使用して細胞を画像化した。
【0196】
図4は、FGFR-LOVを発現する脂肪幹細胞のクローン集団(「脂肪_FGFR-LOV_クローン」)が、外因性FGFの非存在下で光を用いた懸濁培養で7日後に脂肪幹細胞マーカーCD29を発現したことを示す。このデータは、これらの細胞が脂肪幹細胞上で濃縮された少なくとも1つの細胞表面マーカーを発現したことを実証し、光を用いた懸濁培養において7日後に幹細胞性が維持されたことを示唆する。
【0197】
実施例4.シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現する筋肉幹細胞は、光を照明されると外因性増殖因子の非存在下で懸濁培養で増殖および維持することができる。
【0198】
本実施例は、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを発現するように操作された筋肉幹細胞が、外因性増殖因子の添加なしに、光を用いた懸濁培養において増殖および維持できることを実証する。
【0199】
バイオリアクター中での接種の前に、細胞を、37℃に保ち5%COを補充した加湿インキュベーター中のコラーゲンコーティングしたポリスチレン組織培養フラスコ中で培養した。細胞を、L-グルタミンおよびHEPES(Cytiva、SH30023.FS)を含む高グルコースDMEM細胞培地中で培養し、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンB、および2.5ng/mL FGF2を補充した。細胞をコンフルエンシーに達する前に継代し、0.25%トリプシンを使用してフラスコから解離させた。
【0200】
DASbox 250mLバイオリアクターシステム(Eppendorf)を、すべての懸濁細胞培養に使用した。すべての実験について、BioBLU 0.3c単回使用容器(Eppendorf)を使用した。細胞をバイオリアクター中のCytodex 1マイクロキャリア(Cytiva)上で培養した。バイオリアクター容器当たり833mgの乾燥マイクロキャリアをアリコートすることによってマイクロキャリアを調製した。マイクロキャリアアリコートを、遠心管中でPBSで水和し、オートクレーブ中で滅菌した。PBSを取り除き、細胞を無血清細胞培地に再懸濁した。各容器が833mg(乾燥重量)のマイクロキャリアおよび90mLの無血清培地を含むまで、マイクロキャリアおよび培地をバイオリアクター容器に添加した。次いで、容器をDASboxユニットに入れ、システムを以下の設定点:37℃、pH7.3、40rpm反時計回りの撹拌、3.0sL/時間のオーバーレイ空気およびスパージしたCOによるガス処理に設定した。容器をこれらの設定点に平衡化させた。
【0201】
0.25%トリプシンを用いて、組織培養フラスコから細胞を解離させた。野生型細胞を無血清培地中で4.82×10細胞/mLに希釈した。14mLのこの細胞懸濁液を、バイオリアクター当たり計6.75×10細胞となるように各バイオリアクター容器に添加し、体積をバイオリアクター当たり104mLとした。FGFR-LOV発現細胞を無血清培地中で7.5×10細胞/mLに希釈した。10mLのこの細胞懸濁液を各バイオリアクター容器に、バイオリアクター当たり計7.5×10細胞で添加し、体積をバイオリアクター当たり100mLとした。接種後、容器を30分毎に30秒間、その後4時間にわたり撹拌した。次いで、撹拌を一晩停止させて、細胞をマイクロキャリアに付着させた。翌日、適切な体積の新しい培地を各バイオリアクターに添加して、全作業体積を容器当たり250mLとした。5日目に、各容器中の培地の80%(200mL)を新しい培地と交換した。試料を収集し、実施例3に記載されるものと同様に分析した。青色光(約470nm)を、以下の表3に記載される強度およびタイミングで透明なバイオリアクター壁を通して送達した。
【0202】
【表3】
【0203】
図5Aおよび5Bは、FGFR-LOVを発現するように操作された筋肉幹細胞が、様々な照明パラメータ下で青色光に曝露されると、外因性FGFの非存在下で懸濁状態で少なくとも7日間増殖したことを実証する。図5Aおよび5Bに示す結果は、同じ実験からのものであり、同じ対照を使用した。図5Aは、高強度の光による照明を使用した結果を示し、図5Bは、低強度の光による照明を使用した同じ実験の結果を示す。図5Aおよび5Bは、FGFR-LOVを発現するように操作された筋肉幹細胞(「Myo_FGFR-LOV」)が、様々な異なる光パルスプロトコル(light1およびlight4=5分間の刺激持続時間、25分間の刺激間持続時間;light2およびlight5=5分間の刺激持続時間、115分間の刺激間持続時間;light3およびlight6=5分間の刺激持続時間、235分間の刺激間持続時間)を用いて、高強度および低強度(図5A:高強度=5μW/mmの照明中の容器内の平均光強度;図5B:低強度=0.5mW/mmの照射中の容器内の平均光強度)の青色光で照射すると、外因性FGFの非存在下で、懸濁状態で少なくとも7日間増殖したことを実証する。概して、高強度光に曝露された操作された幹細胞は、低強度光に曝露された操作された幹細胞よりも高い速度で増殖した。特に、高強度または低強度の光に曝露されたMyo_FGFR-LOV細胞は、懸濁状態で7日間で、外因性FGFに曝露された野生型筋肉幹細胞(「Myo_WT+FGF dark」)よりも高い速度で増殖した。予想通り、外因性FGFに曝露されていない野生型筋肉幹細胞(例えば、FGFR-LOVを発現しないもの)は増殖しなかった(「Myo_WT-FGF dark」)。このデータは、シグナル伝達タンパク質受容体に融合された光活性化可能ドメインを含む融合タンパク質(例えば、FGFR-LOV)を発現する筋肉幹細胞が、外因性増殖因子(例えば、FGF)の添加なしに、様々な照射パラメータ下で光に反応して懸濁状態で増殖する能力があることを実証する。
【0204】
FGFR-LOVを発現する筋肉幹細胞が光に反応して懸濁状態で増殖することをさらに実証するために、マイクロキャリアの画像を撮影した。培養7日目に50μLのマイクロキャリア懸濁液をバイオリアクターから取り出し、96ウェルガラスボトムプレート(Cellvis、P96-1.5H-N)のウェルに移し、マイクロキャリアをウェルの底に沈降させた。マイクロキャリアを、明視野照明および5×対物レンズを用いてLeica DM18 Thunder顕微鏡で画像化した。図6は、FGFR-LOVを発現するように操作された筋肉幹細胞が、外因性FGFの非存在下で様々な照射パラメータを使用して、光に反応して懸濁状態で少なくとも7日間増殖したことを示す(「Myo_FGFR-LOV-FGF light1」、「Myo_FGFR-LOV-FGF light2」、「Myo_FGFR-LOV-FGF light3」、「Myo_FGFR-LOV-FGF light4」、「Myo_FGFR-LOV-FGF light5」、および「Myo_FGFR-LOV-FGF light6」)。データはさらに、外因性FGFに曝露された陽性対照野生型筋肉幹細胞も懸濁状態で少なくとも7日間増殖したが(「Myo_WT+FGF dark」)、外因性FGFに曝露されていない野生型筋肉幹細胞は増殖しなかった(「Myo_WT-FGF dark」)ことを実証する。
【0205】
幹細胞性の維持もこれらの細胞株において評価した。懸濁状態での増殖の7日後、トリプシンを使用して細胞をマイクロキャリアから剥離し、15,000細胞/cmの密度でプレーティングし、DMEM-F12、10%FBS、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンBを含有する増殖培地中で37℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を冷4%PFA中で20分間固定し、0.2%Triton X-100を使用して透過処理し、1%BSA(Sigma、A6003-5G)および10%FBS中でブロッキングした。ブロッキング後、細胞を、Pax7(DSHB、AB528428)、Pax3(DSHB、AB 528426)、およびCD29(Biolegend、303007)、ならびに一次抗体を含まない対照を含む、幹細胞同一性を評価するために通常使用される転写因子および表面抗原に対する抗体のパネルで4℃で一晩染色した。すべての一次抗体を5μg/mLの最終濃度で使用した。一晩インキュベートした後、一次抗体を洗い流し、細胞をAlexa Fluor555結合二次抗体(ThermoFisher A32773、1μg/mL)およびHoechst 33342で室温で1時間染色した。1時間後、二次抗体を洗い流し、Leica DMi8 Thunder蛍光顕微鏡を使用して細胞を画像化した。シグナル定量化および正規化のために、細胞核を、Otsuグローバル閾値法を用いてHoechstチャネル中でセグメント化した。555チャネルにおける総強度を測定し、一次抗体なし対照の総強度を差し引き、残りをセグメント化細胞数に対して正規化した。
【0206】
図7A~7Cは、FGFR-LOVを発現する筋肉幹細胞(「Myo_FGFR-LOV」)が、外因性FGFの非存在下で様々な照明パラメータを使用して、光を用いた懸濁培養において7日後に幹細胞マーカーCD29(図7A)、Pax3(図7B)、およびPax7(図7C)を発現したことを示す。このデータは、これらの細胞が複数の幹細胞マーカーを発現したことを実証し、光を用いた懸濁培養で7日後、これらの細胞において幹細胞性が維持されたことを示唆する。図7Dは、図7A~7Cの画像におけるシグナルの定量化を示す。抗体チャネル中の総シグナルを細胞数に対して正規化し、「一次抗体なし」条件からの正規化シグナルを差し引いた。
【0207】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることが当業者には明らかであろう。当業者であれば、多くの変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明の実施に際して利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、この特許請求の範囲内の方法および構造体、ならびにその均等物がそれによって包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
【国際調査報告】