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特表2024-528698ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20240723BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K36/65
A61P3/02
A61P7/00
A61P21/00
A61P29/00
A61P35/00
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503831
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2022009127
(87)【国際公開番号】W WO2023003193
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0095733
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523443021
【氏名又は名称】チュン アン ユニバーシティ インダストリ アカデミック コーポレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】CHUNG ANG University Industry Academic Cooperation Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ユシク
(72)【発明者】
【氏名】シム,インエ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョンキュ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヘミ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD48
4B018ME08
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA04
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC54
4C088AB58
4C088AC11
4C088BA08
4C088BA13
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZA94
4C088ZB11
4C088ZB26
4C088ZC21
4C088ZC54
(57)【要約】
本発明は、ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物に関する。ペオニフロリンを含む薬学的組成物を使用すれば、悪液質および筋損失を効果的に予防または治療することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるペオニフロリン(paeoniflorin)を含む悪液質(cachexia)および筋損失の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
【請求項2】
前記悪液質は、癌によって誘発されるものである、
請求項1に記載の悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記悪液質は、抗癌剤によって誘発されるものである、
請求項1に記載の悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物は、体重減少、筋肉量減少、筋力減少、持久力減少、筋肉調整能力の減少、および炎症性サイトカインの増加からなる群より選択される症状を改善するものである、
請求項1に記載の悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記悪液質および筋損失の予防または治療は、TNF-α、IL-6、IL-1βおよびGDF-15からなる群より選択されるいずれか1つの増加抑制によるものである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記ペオニフロリン(paeoniflorin)は、ボタン(Paeonia suffruticosa Andrews)、赤芍薬(Paeonia lactiflora Pall.)、参芍薬(Paeonia lactiflora var.trichocarpa(Bunge)Stern)、裸参芍薬(Paeonia lactiflora f.nuda Nakai)、胡芍薬(Paeonia lactiflora f.pilosella Nakai)、白芍薬(Paeonia japonica(Makino)Miyabe&Takeda)、毛白芍薬(Paeonia japonica var.pillosa Nakai)、山芍薬(Paeonia obovata Maxim)、千芍薬(Paeonia veitchii Lynch)、およびその他の同属近縁植物(芍薬科Paeoniaceae)からなる群より選択されたいずれか1つの植物種に由来するものである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
下記化学式1で表されるペオニフロリン(paeoniflorin)を含む悪液質および筋損失の予防または改善用食品組成物。
【化1】
【請求項8】
下記化学式1で表されるペオニフロリン(paeoniflorin)を含む抗癌補助剤。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペオニフロリン(paeoniflorin)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
悪液質(cachexia)とは、癌、結核、AIDS、慢性閉塞性肺疾患などのような慢性疾患でよく伴う症侯群であり、持続的な食欲不振と体重減少を示し、それによる栄養失調や代謝不均衡、筋肉や脂肪の減少を伴った体内代謝の異化状態(catabolic state)を意味するが、癌患者の場合、他の慢性疾患者とは異なり、悪液質のみならず癌の治療に用いられる多様な抗癌治療法の副作用まで伴う特性がある(Fearon K.ら、Lancet Oncol2011;12(5):489-495)。
【0003】
悪液質は消化器癌および肺癌を含む癌患者の50~80%で発生し、悪液質による死亡率は20~30%に達する。癌患者で発生する悪液質は、多様なサイトカインが起こす炎症反応および代謝変化による異化反応の増加で筋肉損失をもたらして体重減少が現れることが特徴である。このような変化は抗癌化学療法や放射線治療に対する反応率を低下させ、効果的な抗癌治療の進行を困難にし、患者の生活の質を低下させる。
【0004】
悪液質の発生機序は、神経内分泌系の活動度の変化、多様な炎症性サイトカイン(TNF-a、IL-6、IL-1β)およびGDF-15と癌特異悪液質因子の分泌、それらによる飲食摂取の減少および代謝の変化で知られている。サイトカインは、腫瘍から直接分泌したり腫瘍に反応して人体の免疫細胞で産生されるタンパクで免疫制御に重要な役割を果たし、炎症、食欲不振、筋肉減少、体重減少を起こして悪液質の発生に最も大きな役割を果たす(Argiles JMら、Curr.Opin.Clin.Nutr.Metab.Care1998;1:245-251)。TNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインは、食欲中枢と胃腸管機能の変化をもたらして食欲減少および体重減少を起こすことが知られている(Durham WJら、Curr Opin Clin Nutr Metab Care.2009;12:72-77)。
【0005】
これとともに、最近、サイトカインの一種であるGDF-15(growth differentiation factor15)が化学療法および腫瘍による食欲不振と体重減少の原因として作用し、GDF-15を抑制すれば食欲と体重が著しく改善されることが究明された(Breen DMら、Cell Metabolism.2020;32:938-950)。
【0006】
筋損失は悪液質の最も大きな特徴の一つであり、多様なサイトカインの過度の活性によるタンパク質異化作用の増加とタンパク質生成の減少によることが知られている。悪液質は筋損失(筋減少症)を含む症状で、互いに重なる部分が多い。悪液質を有する患者の大部分が筋損失(筋減少症)にさらされているが、筋損失を示すすべての患者が悪液質症状を示すわけではない。臨床的に表現すれば、筋損失(筋減少症)は、悪液質の前駆症状と言える。手術患者で体重減少を誘発する原因のうち、筋減少症(sarcopenia)と悪液質(cachexia)は高齢患者でよく発生し、2つの現象とも筋肉量(muscle mass)減少を示す特性がある(リュ・スンワン、J.Clin.Nutr.2017;9:2-6)。
【0007】
悪液質の治療には、現在、プロゲステロン製剤(megestrol acetate;megace)およびステロイド(dexamethasone、prednisone)などが使用されているが、ステロイドは、治療効果が持続的でなく、長期使用時、水分貯留、インスリン抵抗性、副腎機能低下などの副作用があるので、短期処方のみ可能である。プロゲステロン製剤(megestrol acetate)は、米FDAで食欲不振や体重減少を示すAIDS患者への使用が許可されており、現在、癌悪液質患者に最も多く処方されていて、本発明の比較薬物として使用された。しかし、筋肉より脂肪組織を増加させ、血栓塞栓症、浮腫、勃起不全、子宮出血、高血糖症、副腎機能低下などの副作用がある。
【0008】
悪液質が現れた患者は、抗癌治療に低い反応を示し、深刻な副作用を経験する。癌患者を対象とした抗癌治療方法には、大きく、外科手術(Operation)、化学療法(Chemotherapy)、放射線療法(Radiotherapy)などがある。外科手術は、病巣(すなわち、癌)を除去する治療方法であって、初期癌の場合は、外科手術だけでも完治が可能であるが、中期以後の癌の場合は、外科手術だけでは治療が不可能である。化学療法や放射線療法またはその併行療法は共通して細胞毒性作用によって癌細胞を除去するものであるが、これらは特異性が低いため、造血細胞や免疫細胞など急速に分裂および増殖する特性を有する正常細胞も損傷させる。したがって、嘔吐症状、食欲減退、口内炎、下痢、便秘、発熱、感染症、白血球減少症、血小板減少症、貧血、腹痛、腎毒性、肝毒性、心臓毒性、末梢神経毒性、中枢神経毒性、筋肉痛、骨痛、骨髄抑制などの副作用を誘発する。癌患者で高い頻度で発生する悪液質および筋損失は、抗癌治療に対する反応率を低下させ、効果的な抗癌治療の進行を困難にし、患者の生活の質を低下させる。
【0009】
ペオニフロリンの抗炎症、抗酸化(Tao Yら、Experimental and Therapeutic Medicine,2016;11:263-268)、不妊症に対する予防または治療効果(大韓民国特許公報第10-2016-0121023号)、記憶能力増進効果(大韓民国特許公報第10-2016-0089930号)および脂肪減少効果(大韓民国特許公報第10-2011-0138322号)については立証されたが、悪液質および筋損失の予防、改善または治療効果については明らかになっていない。
【0010】
したがって、癌およびその他の疾患で発生する悪液質および筋損失を治療するために、既存の治療剤より優れ、人体に安全な素材の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一態様は、ペオニフロリンを有効成分として含む悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0012】
他の態様は、ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0013】
さらに他の態様は、ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または治療用抗癌補助剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様は、ペオニフロリンを有効成分として含む悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
一具体例によれば、前記悪液質は、癌によって誘発されるものであってもよい。
【0016】
一具体例によれば、前記悪液質は、抗癌剤によって誘発されるものであってもよい。
【0017】
一具体例によれば、前記組成物は、体重減少、筋肉量減少、筋力減少、持久力減少、筋肉調整能力の減少、および炎症性サイトカインおよびGDF-15の増加からなる群より選択される症状を改善するものであってもよい。
【0018】
一具体例によれば、前記悪液質および筋損失の予防または治療は、TNF-α、IL-6、IL-1βおよびGDF-15からなる群より選択されるいずれか1つの増加抑制によるものであってもよい。
【0019】
一具体例によれば、前記ペオニフロリン(paeoniflorin)は、ボタン(Paeonia suffruticosa Andrews)、赤芍薬(Paeonia lactiflora Pall.)、参芍薬(Paeonia lactiflora var.trichocarpa(Bunge)Stern)、裸参芍薬(Paeonia lactiflora f.nuda Nakai)、胡芍薬(Paeonia lactiflora f.pilosella Nakai)、白芍薬(Paeonia japonica(Makino)Miyabe&Takeda)、毛白芍薬(Paeonia japonica var.pillosa Nakai)、山芍薬(Paeonia obovata Maxim)、千芍薬(Paeonia veitchii Lynch)、およびその他の同属近縁植物(芍薬科Paeoniaceae)からなる群より選択されたいずれか1つの植物種に由来するものであってもよい。
【0020】
他の態様は、ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0021】
さらに他の態様は、ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または治療用抗癌補助剤を提供する。
【発明の効果】
【0022】
一具体例によるペオニフロリンを含む薬学的組成物は、体重減少、筋肉量減少、筋力減少、持久力減少、筋肉調整能力の減少を改善し、炎症性サイトカインの増加、GDF-15の増加を抑制するので、悪液質および筋損失の予防または治療用途に有用に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】シスプラチンで悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、(A)体重、(B)腓腹筋の重量、(C)大腿四頭筋の重量を測定したデータである。
図2】シスプラチンで悪液質を誘導したBalb/cマウスにペオニフロリンを投与した後、(A)体重、(B)腓腹筋の重量、(C)大腿四頭筋の重量を測定したデータである。
図3】シスプラチンで悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、骨格筋機能をテストした結果データであって、(A)筋力および(B)持久力および(C)筋肉調整能力を測定したものである。
図4】シスプラチンで悪液質を誘導したBalb/cマウスにペオニフロリンを投与した後、骨格筋機能をテストした結果データであって、(A)筋力および(B)持久力を測定したものである。
図5】シスプラチンで悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内のMuRF1およびMAFbxのmRNAレベルをrealtime PCRで測定したデータである。
図6】シスプラチンで悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内の(A)MuRF1、(B)MAFbx、(C)MyHC、(D)MyoD、(E)β-actinのタンパク質レベルをウェスタンブロッティングで測定したデータである。
図7】シスプラチンで悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内の(A)MyHC、(B)MyoDウェスタンブロッティングで観察されたタンパク質バンドの強度をImageJソフトウェア(NIH、Bethesda、MD、USA)を用いて定量化したものである。
図8】シスプラチンで悪液質を誘導したC57B/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内の(A)TNF-α、(B)IL-6、(C)IL-1β、(D)IL-1α、(E)CCL2、および(F)CCL5のmRNA発現量を測定して比較したデータである。
図9】シスプラチンで悪液質を誘導したBalb/cマウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内の(A)TNF-α、(B)IL-6、(C)IL-1βのタンパク質濃度を測定して比較したデータである。
図10】シスプラチンで悪液質を誘導したC57B/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内の(A)p-IKK(phospho-IKK)および(B)p-IκB(phospho-IκB)のレベルをウェスタンブロッティングタンパク質バンドのImageJソフトウェア分析で定量したものである。
図11】シスプラチンで悪液質を誘導したC57B/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内のIκBのレベルをウェスタンブロッティングタンパク質バンドのImageJソフトウェア分析で定量したものである。
図12】シスプラチンで悪液質を誘導したC57B/6マウスにペオニフロリンを投与した後、腓腹筋内の(A)細胞質におけるNF-κBのレベル、および(B)核におけるNF-κBのレベルをウェスタンブロッティングタンパク質バンドのImageJソフトウェア分析で定量したものである。また、腓腹筋内において(C)NF-κBのtarget DNA binding activityを定量したデータである。
図13】シスプラチンで悪液質を誘導したC57B/6マウスにペオニフロリンを投与した後、血漿中の(A)TNF-α、および(B)GDF-15の濃度をELISAで測定した結果を示したものである。
図14】ルイス肺癌腫(Lewis lung carcinoma)で悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、(A)体重、(B)腓腹筋の重量、(C)大腿四頭筋の重量を測定した結果を示す。
図15】C26大腸癌腫(Colon-26 carcinoma)で悪液質を誘導したBalb/cマウスにペオニフロリンを投与した後、(A)体重、(B)腓腹筋の重量、(C)大腿四頭筋の重量を測定した結果を示す。
図16】ルイス肺癌腫で悪液質を誘導したC57BL/6マウスにペオニフロリンを投与した後、(A)筋力および(B)持久力を測定した結果を示す。
図17】C26大腸癌腫(Colon-26 carcinoma)で悪液質を誘導したBalb/cマウスにペオニフロリンを投与した後、(A)筋力および(B)持久力を測定した結果を示す。
図18】ルイス肺癌腫で悪液質を誘導したマウスにペオニフロリンを投与した後、血漿中のGDF-15をELISAで測定した結果を示す。
図19】C2C12 myoblastの筋繊維(myotube)分化を促進させるペオニフロリンの効果を写真で観察したものである。
図20】C2C12 myoblastの筋繊維(myotube)分化を促進させるペオニフロリンの効果をImageJプログラムで定量分析したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、ペオニフロリンを含む悪液質および筋損失の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0025】
本明細書において、用語、「悪液質」は、癌、結核、糖尿病、後天性免疫不全症候群(Acquired immunodeficiency syndrome、AIDS)などの末期で見られる高度の全身衰弱症状をいい、胃癌や食道癌、大腸癌などの消化器癌患者と肺癌患者でよく現れる。食欲減少、体重および体力の減少、筋肉減少、貧血、無気力、消化不良などの症状を示し、特に食欲が減少して正常な飲食摂取が困難な状態を示したり、または正常に飲食を摂取しても体重および筋肉が減少する状態を示す。悪液質が発生すれば、抗癌化学療法や放射線治療に対して低い反応を示すので、患者の生活の質が低下し、期待余命の短縮をもたらし、全体癌患者の20~30%で悪液質による死亡を誘発する。
【0026】
本明細書において、用語、「筋損失(muscle loss)」は、体内筋肉が減少することをいい、例えば、筋肉を使わないことによって発生する筋肉組織の減少、筋肉自体の病気による筋肉組織の減少または筋肉を支配する神経の損傷による筋肉組織の減少であり、このような筋損失は、例えば、悪液質によって発生するものである。
【0027】
本発明の一具体例によれば、前記「ペオニフロリン」は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【化1】
【0028】
本発明の一具体例によれば、前記悪液質は、癌によって誘発され、一方、癌治療に用いられる抗癌剤によって誘発される。前記抗癌剤は、シスプラチン(cisplatin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、イリノテカン(irinotecan)、パクリタキセル(paclitaxel)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドセタキセル(docetaxel)、および5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)からなる群より選択されるが、これに限定されない。
【0029】
本組成物の有効成分として使用された前記ペオニフロリンは、芍薬(Paeoniae Radix)から抽出した。芍薬(Paeoniae Radix)は、大韓民国薬局方の規格に相当し、芍薬科(Paeoniaceae)植物である芍薬(Paeonia lactiflora P all.)の根を薬剤として使用する。抗菌効能があって黄色ブドウ状球菌、異質菌の生長を抑制し、腹痛および下痢に効果があることが知られているが、筋肉損失抑制および悪液質改善効果については知られていない。
【0030】
一具体例によれば、前記ペオニフロリンは、赤芍薬(Paeonia lactiflora Pall.)の水またはエタノール抽出物から分離されたものであってもよい。
【0031】
前記ペオニフロリンは、ボタン(Paeonia suffruticosa Andrews)、赤芍薬(Paeonia lactiflora Pall.)、参芍薬(Paeonia lactiflora var.trichocarpa(Bunge)Stern)、裸参芍薬(Paeonia lactiflora f.nuda Nakai)、胡芍薬(Paeonia lactiflora f.pilosella Nakai)、白芍薬(Paeonia japonica(Makino)Miyabe&Takeda)、毛白芍薬(Paeonia japonica var.pillosa Nakai)、山芍薬(Paeonia obovata Maxim)、千芍薬(Paeonia veitchii Lynch)、およびその他の同属近縁植物(芍薬科Paeoniaceae)からなる群より選択されたいずれか1つの植物種から抽出した抽出物から分離されたものであってもよいし、好ましくは、赤芍薬の抽出物から分離されたものであってもよい。
【0032】
本発明の一具体例によれば、前記赤芍薬抽出物は、当業界で公知の通常の方法によって製造できる。例えば、芍薬を粉砕した後、抽出に通常使用される溶媒を添加し、適切な温度と圧力で抽出して芍薬抽出物を製造することができる。
【0033】
本発明の一具体例によれば、前記溶媒は、蒸留水、C~Cの低級アルコール、ヘキサン、エチルアセテート、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、アセトン、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0034】
一方、前記芍薬抽出物は、上述した溶媒抽出法による抽出物だけでなく、通常の精製過程を経た抽出物も含む。例えば、一定の分子量カットオフ値を有する限外濾過膜を用いた分離、多様なクロマトグラフィー(サイズ、電荷、疎水性または親和性による分離のために作製されたもの)による分離など、追加的に実施した多様な精製方法により得られた分画も本発明の芍薬抽出物に含まれる。また、前記芍薬抽出物は、減圧蒸留および凍結乾燥または噴霧乾燥などのような追加的な過程によって粉末状態で製造されてもよい。
【0035】
本発明の一具体例によれば、前記ペオニフロリンは、体重減少、筋肉量減少、筋力減少、筋繊維分化抑制、持久力減少、筋肉調整能力の減少、炎症性サイトカインおよびGDF-15の増加からなる群より選択される症状を改善できるので、悪液質および筋損失の予防、改善または治療用途に有用に使用可能である。また、前記ペオニフロリンは、最近、化学療法および腫瘍による食欲不振と体重減少の原因として作用することが明らかになったサイトカインの一種であるGDF-15の増加を抑制して食欲と体重を著しく改善することができ、筋繊維分化を促進させるので、悪液質および筋損失の予防、改善または治療用途に有用に使用可能である。
【0036】
前記薬学的組成物は、投与のために前記記載のペオニフロリンのほか、追加的に薬学的に許容可能な担体を1種以上含み、薬学的組成物に適するように製剤化することができる。
【0037】
前記薬学的組成物の製剤形態は、顆粒剤、散剤、錠剤、被覆錠、カプセル剤、坐剤、液剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤などになってもよい。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬学的に許容可能な不活性担体と結合可能である。また、所望したり、必要な場合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤および発色剤も混合物に含まれてもよい。好適な結合剤はこれに限定されるものではないが、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカントまたはソジウムオレートのような天然および合成ガム、ソジウムステアレート、マグネシウムステアレート、ソジウムベンゾエート、ソジウムアセテート、ソジウムクロライドなどを含む。崩壊剤はこれに限定されるものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。
【0038】
液状溶液で製剤化される組成物において許容可能な薬学的担体としては、滅菌および生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれら成分の1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、経口または非経口投与可能であり、非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与することができる。
【0040】
本発明の薬学的組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって決定可能である。
【0041】
本発明の一具体例によれば、本発明の薬学的組成物の1日投与量は、1~10000mg/kg、1~1000mg/kgまたは1~100mg/kgであってもよいし、好ましくは、10または20mg/kgである。ヒトの1日投与量は、これに人体等価用量(human equivalence dose factor、HED)の0.081を掛けて、0.081~810mg/kg、0.081~81mg/kg、または0.081~8.1mg/kgであってもよいし、好ましくは、0.81~1.62mg/kgである。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位用量形態に製造される、または多用量容器内に入れて製造されてもよい。
【0043】
本発明の他の態様は、ペオニフロリンを有効成分として含む悪液質および筋損失の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0044】
本発明による食品組成物は、前記薬学的組成物と同様の方式で製剤化して機能性食品として用いたり、各種食品に添加可能である。本発明の組成物を添加可能な食品としては、例えば、飲料類、菓子類、ダイエットバー、乳製品、肉類、チョコレート、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0045】
本発明の食品組成物は、有効成分としてペオニフロリンを含むほか、食品の製造時に通常添加される成分を含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤および香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド(例えば、ブドウ糖、果糖など)、ジサッカライド(例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など)、およびポリサッカライド(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常の糖およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類に製造される場合は、本発明のペオニフロリンのほか、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、および各種植物抽出液などを追加的に含ませることができる。
【0046】
本発明のさらに他の態様は、ペオニフロリンを有効成分として含む抗癌補助剤を提供する。
【0047】
本明細書に使用された用語、「抗癌補助剤」は、抗癌治療中に抗癌剤の副作用を改善する効果を示す補助剤を意味し、前記抗癌剤の副作用には造血毒性、食欲減少、体重減少などが含まれる。
【0048】
前記抗癌補助剤は、有効成分としてペオニフロリンを含むほか、同一または類似の機能を示す有効成分を追加的に1種以上含むことができる。前記抗癌補助剤は、臨床投与時に経口または非経口投与が可能であり、非経口投与時、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射または胸部内注射によって投与されてもよく、一般的な医薬品製剤の形態に使用可能である。
【0049】
前記抗癌補助剤は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用可能である。
【0050】
前記抗癌補助剤の1日投与量は、約0.0001~1000mg/kg、0.001~100mg/kg、0.01~100mg/kg、0.1~100mg/kgまたは1~100mg/kgであってもよいし、好ましくは、10または20mg/kgである。
【0051】
ヒトの1日投与量は、これに人体等価用量(human equivalence dose factor、HED)の0.081を掛けて、8.1×10-6~81mg/kg、8.1×10-5~8.1mg/kg、または8.1×10-4~8.1mg/kgであってもよいし、好ましくは、0.81~1.62mg/kgである。
【0052】
1日1回から数回分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、規定食、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などに応じてその範囲が多様である。本発明の抗癌補助剤は、実際の臨床投与時に非経口の様々な剤形に投与できるが、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラテンなどが使用できる。
【0053】
本発明のさらに他の態様は、ペオニフロリンを含む薬学的組成物を投与して悪液質および筋損失を予防または治療する方法を提供する。
【0054】
本発明のペオニフロリンを含む薬学的組成物は、体重減少、筋肉損失および疲労度を改善するので、悪液質および筋損失の予防または治療に有用に活用できる。
【0055】
本発明のペオニフロリンを含む組成物は、TNF-α、IL-6、IL-1βおよびGDF-15からなる群より選択されるいずれか1つの増加を抑制するので、悪液質および筋損失の予防または治療に有用に活用できる。
【0056】
実施例
以下、一つ以上の具体例を下記の実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は一つ以上の具体例を例として説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるのではない。
【0057】
実施例1.材料の準備-ペオニフロリンの準備
1-1.芍薬抽出物の製造
赤芍薬(Paeonia lactiflora Pall.)の根を粉砕した後、粉砕物の5倍の体積の75%エタノールおよび水からなる抽出溶媒を加えて、毎回3時間ずつ、3回抽出した後、抽出物は濃縮した。濃縮液は残留エタノールを除去した後、同じ体積の水を加えて加熱溶解した。溶解物に同じ体積のエチルエーテル(ethyl ether)を加えて3回分画して、水層を得た後、濃縮した。濃縮液は200~300メッシュのシリカゲルカラムに注入し、流動相としてクロロホルム:アセトン(4:1)を用いて分離し、濃縮および乾燥した。
【0058】
1-2.ペオニフロリンの分離
前記乾燥物を再度水に懸濁し、これを直径10mm×長さ250mmの4μmのオクタデシルシリル化したシリカゲルが充填されたカラムに注入した。移動相は0.5%TFA(Trifluoroacetic acid)とメタノール(Methanol)とを75:25の体積比で混合した混合溶媒を使用した。ペオニフロリンの検出は紫外線検出器(UV detector、230nm)を用い、移動相を2.5ml/分の速度で作動して18分~20分に検出された主ピークを繰り返し分離し、得られた分画を減圧蒸留してペオニフロリンを得た。得られたペオニフロリンはLCQ質量スペクトロメーター(Mass spectrometer、Finnigan、USA)で質量を分析し、NMR(Bruker)で定性分析した。
【0059】
下記表1は質量分析の結果であり、下記表2はNMRの結果である。前記結果を通して、化学式1のペオニフロリン(分子式C232811)を分析することができた。
【表1】

【表2】
【0060】
ペオニフロリンの構造式は下記化学式1の通りである。
【化1】
【0061】
実施例2.抗癌剤による悪液質および筋損失改善効果の確認および作用機序(Mechanism of Action)の確認
【0062】
2-1.実験方法
2-1-1.試薬の準備
抗-IκB(cat#9242)、抗-ホスホ-IκB(Ser32/36)(cat#9246)、抗-ホスホ-IKK(cat#2694S)、IKK(cat#7218)および抗-NF-κB p65(cat#8242)一次抗体と抗-マウス(cat#7076S)および抗-ウサギ(cat#7074S)二次抗体は、Cell Signaling Technology(Danvers、MA、USA)から購入した。抗-MuRF1(cat#172479)および抗-MAFbx(cat#157596)抗体は、Abcam(Cambridge、UK)から購入した。抗-ミオシン重鎖(MyHC)抗体(cat# MAB4470)は、R&D Systems(Minneapolis、MN、USA)から購入した。
【0063】
抗-筋芽細胞決定タンパク質(MyoD)(cat#377460)、抗-β-アクチン(cat#47778)および抗-TATAボックス結合タンパク質(TBP、cat#204)抗体は、Santa Cruz Biotechnology,Inc(米カリフォルニア州Santaクルーズ)から購入し、Megestrol acetate(MA;Megace)は、東京化成工業(東京、日本)から購入した。
【0064】
2-1-2.動物実験の準備
動物実験は、実験室動物の使用および管理について国際的に認められた原則によって行われ、当該研究プロトコルは、韓国の中央大学の機関動物管理および使用委員会(IACUC)から検討および承認された(承認番号2021-00022)。4週齢の雌としてC57BL/6マウスとBalb/cマウスは、ラオンバイオ(韓国、龍仁)から購入して中央大学動物施設で標準実験室の食餌および水を自由に供給させた。マウスの種類別に、各実験グループは下記表3および表4のように10匹のマウスで構成した。1週間の順応後、200μLの食塩水に懸濁された3mg/kg/dayのシスプラチンを隔日で3回マウスに腹腔内注射した。対照グループマウス(Sham-treated mice)には同一の療法下で同じ体積の食塩水を注射した。シスプラチン処理群(Cisplatin-treated group)は、ペオニフロリン(paeoniflorin;Pae)またはMegestrol acetate(MA)を200μLの蒸留水に懸濁して、安楽死するまで毎日経口投与した。
【0065】
具体的には、シスプラチン処理群は、実施例1で製造したペオニフロリンを5(Pae5群)、10(Pae10群)、または20(Pae20群)mg/kgで毎日1回ずつ、9日間経口投与した。比較薬物投与群として、現在、臨床で癌悪液質患者に最も多く処方されているMegestrol acetate(MA)160mg/kg(=800mg(1日のヒト用量)/60kg(ヒト平均体重)×12(ヒトに対するマウス体表面積対比のdose equivalent factor))を毎日1回ずつ、9日間経口投与した。
【0066】
また、同じ体積の蒸留水を経口投与したシスプラチン処理マウスを陰性対照群グループ(Vehicle group)に指定した。各グループのマウスは薬物を処理した後、10mg/kgアルファキサロン(Jurox、Rutherford、Australia)で安楽死した。血液をEDTAを含む試験管に採取して遠心分離した後、血漿を分離した。腓腹筋および大腿四頭筋の骨格筋を切開し、重量を測定した。骨格筋は、RT-qPCR、ウエスタンブロットおよびELISAに使用するために液体窒素で急速凍結した。
【0067】
【表3】

【表4】
【0068】
2-1-3.骨格筋機能検査(Skeletal muscle function test)
安楽死を実行する1日前に骨格筋機能を測定した。マウスの筋力は、前肢の握力で測定し、持久力は、くたびれるまでランニングマシンを走る時間で測定した。筋肉調整能力は、直径3cmの回転する円筒上で滞留できる時間で測定した(Castro and Kuang、2017)。各マウスの握力は、握力測定器(Bio-GS3、Bioseb、Vitrolles、France)を用いて測定した。各マウスのランニングマシン実行時間は、トレッドミル(Exer-3/6、Columbus Instruments、Baltimore、MD、USA)を用いて測定した。各マウスの回転円筒で滞留する能力は、rotarod apparatus(Panlab、Barcelona、Spain)を用いて測定した。
【0069】
2-1-4.骨格筋内mRNAレベルの測定
骨格筋でQiazol(Qiagen、Genrmany)を用いて全体RNAを分離した後、realtime PCR方法で炎症性サイトカインおよび筋肉特異的ユビキチンE3リガーゼ(MuRF1およびMAFbx)のmRNAレベルを測定した。
【0070】
2-1-5.タンパク質濃度の測定
TNF-αおよびインターロイキン(IL)-6の濃度は、それぞれのELISAキット(Invitrogen、Waltham、MA、USA)を用いて測定した。IL-1βおよびGDF-15の濃度は、それぞれのQuantikine ELISAキット(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を用いて測定した。
【0071】
2-1-6.ウェスタンブロット
NucleoSpinキット(Macherey-Nagel、Duren、Germany)を用いて骨格筋からタンパク質を抽出し、BCAタンパク質分析キット(Pierce、Rockford、IL、USA)を用いて定量化した。タンパク質ローディングを定量するために抗-β-アクチン抗体を使用した。ミオシンタンパク質(MyHC、myosin heavy chain)、筋肉生成因子(MyoD)およびNF-κBシグナル伝達系(p-IKK、IKK、p-IκB、IkB)に対してウェスタンブロット方法で腓腹筋内のタンパク質レベルを測定した。バンドの強度は、ImageJソフトウェア(NIH、Bethesda、MD、SUA)を用いて定量化した。
【0072】
2-1-7.核および細胞質のNF-κBのレベルおよびtarget DNA binding activityの測定
核抽出キット(Active Motif、Carlsbad、CA、USA)を用いて骨格筋から核および細胞質溶解物を準備した。2つの溶解物のタンパク質濃度は、BAタンパク質分析キット(Pierce)を用いて測定した。抗-NF-κB p65を一次抗体として使用し、溶解物の糖タンパク質10ugをウェスタンブロッティングで分析した。TBP(TATA box-binding proteinおよびβ-アクチンはそれぞれ、核および細胞質の溶解物に対する対照群として使用した。NF-κBのtarget DNA binding activity TransAM NF-κB ELISA kit(Active Motif、米国)を用いて測定した。
【0073】
2-1-8.統計的分析
すべてのデータは最小3回の繰り返し実験により取得し、平均±標準偏差で表示した。実験グループ間の統計的に有意な差は対をなしていないt-検定を用いて評価した。p-値<0.05は統計的に有意なものと見なした。すべての分析は、SPSSバージョン18.0ソフトウェア(SPSS Inc.、Chicago、IL、USA)を用いて行った。
【0074】
2-2.ペオニフロリンのシスプラチン処理されたマウスの体重と筋肉量回復効果の確認
図1(A)に示すように、C57BL/6マウス実験において陰性対照グループ(Vehicle)(ビヒクル)は、対照グループ(Control)より体重が有意にさらに低かった。しかし、ペオニフロリンを投与したグループであるPae10、Pae20グループの結果を比較した時、シスプラチンによる体重減少はペオニフロリン処理によって抑制されることを確認した。
【0075】
図1(B)および図1(C)に示すように、腓腹筋と大腿四頭筋の重量で測定した骨格筋の質量は、対照群マウスグループよりシスプラチンを投与したマウスグループで有意に低かった。しかし、シスプラチンを投与したマウスにペオニフロリンを経口投与した結果、骨格筋量が回復することを確認した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(以下、同一)。
【0076】
このような結果は、Balb/cマウスで実験したグループでも類似の結果を確認した。図2(A)、図2(B)、および図2(C)に示すように、陰性対照群に比べて、ペオニフロリンを投与したグループであるPae5、Pae10、Pae20グループのマウスの体重、腓腹筋および大腿四頭筋の重量が増加したことを確認した。
【0077】
2-3.ペオニフロリンシスプラチン処理されたマウスの骨格筋機能回復効果の確認
C57BL/6マウスにおいて骨格筋機能は、握力およびトレッドミルランニング時間およびロータロッド上での維持時間で筋力、持久力、および筋肉調整能力により測定した。
【0078】
図3に示すように、骨格筋機能は、シスプラチンの投与によって有意に減少した。しかし、シスプラチンを投与したマウスにおいてペオニフロリンの経口投与によって骨格筋機能が有意に回復した。
【0079】
また、図4に示すように、ペオニフロリンは、Balb/cマウスでも筋力と持久力を類似して回復させることを確認した。
【0080】
2-4.ペオニフロリンの筋肉特異的ユビキチンE3リガーゼ抑制および骨格筋収縮と分化関連タンパク質回復効果の確認
筋肉損失、筋肉収縮、筋肉形成に関連する主要因子のmRNAおよびタンパク質レベルを測定するために、C57BL/6マウスの骨格筋組織内のmRNAおよびタンパク質レベルをrealtime PCRおよびウェスタンブロッティングで測定した。
【0081】
図5に示すように、筋肉特異的ユビキチンE3リガーゼ(MuRF1およびMAFbx)のmRNAレベルは、陰性対照グループ(Vehicle)で増加したが、ペニオフロリンを投与したグループ(Pae10およびPae20)では減少することを確認した。図6(A)と図6(B)に示すように、MuRF1およびMAFbxのタンパク質レベルも陰性対照グループ(Vehicle)で増加したが、ペニオフロリンを投与したグループ(Pae10およびPae20)では減少することを確認した。
【0082】
MuRF1とMAFbxは、筋肉収縮に重要な役割を果たすミオシン重鎖(MyHC、myosin heavy chain)および筋肉形成に関連する主要転写因子である筋芽細胞決定タンパク質(MyoD)のユビキチン化およびタンパク質分解を起こすことが知られている(Bodine&Baehr,Am J Physiol Endocrinol Metab,307:E469-E484,2014)。
【0083】
図6(C)と図6(D)のウェスタンブロットおよび図7に示すように、MyHCおよびMyoDのタンパク質レベルは、対照グループ(Control)に比べて、陰性対照グループ(Vehicle)の骨格筋で減少することを確認した。これに対し、ペニオフロリンを処理グループ(Pae10、Pae20)では、陰性対照グループ(Vehicle)に比べて、MyHおよびMyoDのタンパク質レベルが増加することを確認した。
【0084】
前記MyHCの筋肉内レベルの増加は、ペオニフロリンによって増加した握力およびトレッドミルランニング時間のような筋肉機能の増進に直接的な原因になり、MyoDの筋肉内レベルの増加は、ペオニフロリンによって増加した筋肉量の増進に直接的な原因になり得る。
【0085】
前記結果は、MuRF1およびMAFbxの減少およびMyoDおよびMyHCの増加がペオニフロリンの筋肉量および筋肉機能に対する改善効果のメカニズムに関与することを示すことを示唆する。
【0086】
2-5.ペオニフロリンの骨格筋内炎症性サイトカインおよびケモカインレベル減少効果の確認
Realtime PCRにより、骨格筋においてTNF-α、IL-6、IL-1β、IL-1αなどの前炎症性サイトカインとCCL2、CCL5のようなケモカインのmRNAレベルを測定した。
【0087】
図8に示すように、C57BL/6マウスで実験した結果では、陰性対照グループ(Vehicle)は筋肉内炎症性サイトカインとケモカインの発現レベルが増加したが、ペオニフロリンを投与したグループ(Pae10、Pae20)の場合は、筋肉内炎症性サイトカインとケモカインの発現レベルがシスプラチン処理グループに比べて減少することを確認した。
【0088】
また、図9に示すように、Balb/cマウスで実験した結果も、炎症性サイトカインの発現に対する効果が類似して導出されることを確認した。
【0089】
2-6.ペオニフロリンの骨格筋内NF-κBシグナル伝達抑制効果の確認
NF-κBシグナル伝達の有無を確認するために、C57BL/6マウス骨格筋から抽出した全体抽出物と細胞質および核分画物をウェスタンブロッティングで分析した。
【0090】
図10に示すように、対照グループ(Control)に比べて、陰性対照グループ(Vehicle)でp-IKK(phospho-IKK)およびp-IκB(phospho-IκB)のレベルが著しく増加したが、ペオニフロリンを投与したグループ(Pae10、Pae20)では再度p-IKK(phospho-IKK)およびp-IκB(phospho-IκB)のレベルが減少することを確認した。
【0091】
図11に示すように、対照グループ(Control)に比べて、陰性対照グループ(Vehicle)でIκBのレベルが減少し、ペオニフロリン投与グループ(Pae10、Pae20)ではIκBのレベルが増加することを確認した。
【0092】
また、図12(A)および図12(B)に示すように、対照グループに比べて、陰性対照グループにおいて細胞質ではNF-κBのレベルが減少し、核ではNF-κBのレベルが増加することを確認した。これに対し、ペオニフロリン投与グループ(Pae10、Pae20)では細胞質でNF-κBのレベルが増加し、核ではNF-κBのレベルが減少することを確認した。
【0093】
図12(C)に示すように、陰性対照グループで増加したNF-κBのtarget DNA binding activityも、ペオニフロリン投与グループ(Pae10、Pae20)では減少することを確認した。
【0094】
したがって、このような結果は、シスプラチンによってNF-κBシグナルが活性化されるので、筋肉が消耗し、ペオニフロリンがシスプラチンによって誘導されたNF-κBシグナルを有意に弱化させることを示唆する。
【0095】
2-7.ペオニフロリンの血漿内TNF-α減少効果
マウスの血漿内炎症性サイトカインTNF-αのタンパク質濃度をELISA方法で確認した。その結果、図13(A)に開示されているように、対照群と比較して、悪液質誘発群では血漿内TNF-αが著しく増加したことを確認した。これに対し、悪液質誘発群の中でシスプラチン投与群と比較して、シスプラチンおよびペオニフロリン投与群では血漿内TNF-αが有意に減少したことが確認された。
【0096】
2-8.ペオニフロリンの血漿内GDF-15減少効果
血漿内GDF-15のタンパク質濃度をELISA方法で確認した。その結果、図13(B)に開示されているように、対照群と比較して、悪液質誘発群では血漿内GDF-15が著しく増加したことを確認した。これに対し、悪液質誘発群の中でシスプラチン投与群と比較して、シスプラチンおよびペオニフロリン投与群では血漿内GDF-15が有意に減少したことが確認された。
【0097】
実施例3.腫瘍による悪液質および筋損失改善効果の確認
3-1.実験動物および実験方法
実験動物は4週齢の18g~20g雌C57BL/6マウスおよびBalb/cマウスで、ラオンバイオ(韓国、龍仁)から供給されて実験動物飼育場で1週間適応させた後、実験に使用した。実験期間中に固形飼料と水は自由に摂取させ、飼育室の温度20℃~24℃、相対湿度55%~65%に維持し、明暗は12時間の周期を維持した。
【0098】
マウスを対照群(control)と悪液質誘発群とに分けて、悪液質誘発群は再度、腫瘍細胞注入群、腫瘍細胞注入および既存の薬物(MA、Megestrol acetate)投与群、そして腫瘍細胞注入およびペオニフロリン(Pae)投与群に、群あたり10匹ずつ、分けた。
【0099】
対照群には食塩水を100μlずつ皮下注射し、悪液質誘発群にはルイス肺癌腫細胞(C57BL/6マウス)またはC26大腸癌腫細胞(Balb/cマウス)を106cell/100μl/mouseの用量でマウスの側面部位に皮下注射した。2週後、腫瘍が著しく形成されれば、腫瘍細胞注入群には蒸留水を、腫瘍細胞注入および既存の薬物投与群には現在の臨床で癌悪液質患者に最も多く処方されているMegestrol acetate(MA)160mg/kg(=800mg(1日のヒト用量)/60kg(ヒト平均体重)×12(ヒトに対するマウス体表面積対比のdose equivalent factor))を毎日1回ずつ、9日間経口投与し、腫瘍細胞注入およびペオニフロリン投与群には、実施例1で製造したペオニフロリンを5(Pae5群)、10(Pae10群)および20(Pae20群)mg/kgで毎日1回ずつ、9日間経口投与した。9日間の投与を終えた後、マウスの筋力を握力試験機器(Bioseb、米国)で測定し、トレッドミル機器(Columbus Instrument、米国)を用いてマウスの持久力を測定した。
【0100】
実験終了後、マウスを犠牲にして採血した後、腫瘍を除いた体重、後肢腓腹筋および大腿四頭筋の重量を測定し、ELISA方法で血清内のGDF-15を定量した。
【0101】
3-2.ペオニフロリンの体重および筋肉量改善効果
ルイス肺癌腫で悪液質を誘発したC57BL/6マウスにペオニフロリンを経口投与した後、マウスの体重を測定した。その結果、図14(A)に開示されているように、対照群(Control)に比べて、悪液質誘発群で体重が有意に減少し、悪液質誘発群の中ではルイス肺癌腫注入群に比べて、ルイス肺癌腫注入およびペオニフロリン(Pae)投与群で有意に体重が増加したことを確認することができた。
【0102】
ルイス肺癌腫で悪液質を誘発したC57BL/6マウスにペオニフロリンを経口投与した後、マウスを犠牲にして後肢筋肉のうち腓腹筋および大腿四頭筋の重量を確認した。その結果、図14(B)、図14(C)に開示されているように、ルイス肺癌腫注入群に比べて、ルイス肺癌腫注入およびペオニフロリン投与群で腓腹筋および大腿四頭筋の重量が有意に増加したことが確認された。本研究の陽性対照群は、比較薬物としてメゲストロールアセテート(MA)を使用し、ペオニフロリン10~20mg/kg/dayの投与は、メゲストロールアセテート(MA)160mg/kg/dayの投与より優れた効果を示した。
【0103】
C26大腸癌腫で悪液質を誘発したBalb/cマウスにペオニフロリンを経口投与した後、マウスの体重を測定した。その結果、図15(A)に開示されているように、対照群(Control)に比べて、悪液質誘発群で体重が有意に減少し、悪液質誘発群の中ではC26大腸癌腫注入群に比べて、C26大腸癌腫注入およびペオニフロリン(Pae)投与群で有意に体重が増加したことを確認することができた。
【0104】
C26大腸癌腫で悪液質を誘発したBalb/cマウスにペオニフロリンを経口投与した後、マウスを犠牲にして後肢筋肉のうち腓腹筋および大腿四頭筋の重量を確認した。その結果、図15(B)、図15(C)に開示されているように、C26大腸癌腫注入群に比べて、C26大腸癌腫注入およびペオニフロリン投与群で腓腹筋および大腿四頭筋の重量が有意に増加したことが確認された。
【0105】
3-3.ペオニフロリンの筋肉機能改善効果
ルイス肺癌腫を注入したC57BL/6マウスにペオニフロリンを9日間経口投与した後、筋肉機能を筋力(strength)、持久力(endurance)に分けて測定した。測定結果、図16(A)、16(B)に示されるように、対照群と比較して、ルイス肺癌腫注入群では筋力および持久力が著しく減少したことを確認した。これに対し、ルイス肺癌腫注入およびペオニフロリン投与群では筋力および持久力が有意に増加したことが確認された。本研究の陽性対照群は、比較薬物としてメゲストロールアセテート(MA)を使用し、ペオニフロリン10~20mg/kg/dayの投与は、メゲストロールアセテート(MA)160mg/kg/dayの投与より優れた効果を示した。
【0106】
C26大腸癌腫を注入したBalb/cマウスにペオニフロリンを9日間経口投与した後、筋肉機能を筋力(strength)、持久力(endurance)に分けて測定した。測定結果、図17(A)および図17(B)に示されるように、対照群と比較して、C26大腸癌腫注入群では筋力および持久力が著しく減少したことを確認した。これに対し、C26大腸癌腫注入およびペオニフロリン投与群では筋力および持久力が有意に増加したことが確認された。
【0107】
3-4.ペオニフロリンの血漿内GDF-15減少効果
腫瘍を誘発したマウスにペオニフロリンを9日間経口投与した後、マウスから血液を採取し、血漿内GDF-15のタンパク質濃度をELISA方法で確認した。その結果、図18に示すように、対照群と比較して、ルイス肺癌腫注入群では血漿内GDF-15が著しく増加したことを確認した。これに対し、ルイス肺癌腫注入およびペオニフロリン投与群では血清内GDF-15が有意に減少したことが確認された。
【0108】
実施例4.Myoblastの筋繊維(myotube)分化促進効果の確認
4-1.細胞および実験方法
C2C12 myoblastは、ATCC(Manassas、Virginia、USA)から購入して10%ウシ胎児血清が含まれているDMEM培地を用いて培養した。細胞が70%満たされた後に、2%ウマ血清を含むDMEM培地で2日に1回ずつ入れ替えながら筋繊維分化を誘導した。
【0109】
陰性対照群として、筋繊維分化を抑制するTNF-aを100μg/mlで処理した。TNF-aとともに50~200μMの濃度のペオニフロリンを処理しながら筋繊維分化の程度を観察し、Image Jプログラムで分化された筋繊維の長さを測定した。
【0110】
4-2.ペオニフロリンの筋繊維分化促進効果
図19に示すように、対照群(Control)に比べて、陰性対照群(TNF-α+Pae0μM)は筋繊維分化が明らかに抑制されることを確認した。これに対し、TNF-aとともに50~200μMの濃度のペオニフロリンを処理した場合、筋繊維の分化が促進されることを確認した。
【0111】
図20に示すように、ペオニフロリンを処理した場合は、陰性対照群(TNF-α+Pae0μM)に比べて、筋繊維の長さが著しく増加したことを確認した。したがって、ペオニフロリンが筋繊維分化を促進することを確認した。
【0112】
以上、本発明について好ましい実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で変形された形態で実現できることを理解するであろう。そのため、開示された実施例は限定的な観点ではなく説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は上述した説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等範囲内にあるすべての差異は本発明に含まれていると解釈されなければならない。
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【国際調査報告】