(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】細胞喪失を治療又は阻害するためのヒスタチンの組み合わせ及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240723BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240723BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240723BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20240723BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240723BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240723BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240723BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61P27/02
A61P17/00
A61P17/02
A61P43/00 105
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/00
A61P27/10
A61P27/06
A61K45/00
A61K38/20
C07K14/47
C07K14/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503860
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022038031
(87)【国際公開番号】W WO2023004124
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521539270
【氏名又は名称】ヴィーサス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】バーク ジェームズ アルバート
(72)【発明者】
【氏名】シフマン レット ミード
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA99
4C076BB24
4C076BB31
4C076CC10
4C076CC18
4C076CC19
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4C084ZB21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA01
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を回復する、外科手技、傷害、又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜創傷を治療する、皮膚又は眼科疾患、障害、及び/又は状態を治療する、あるいは生物学的サンプルを貯蔵するための方法及び組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を回復する、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法であって、それを必要とする対象の眼又は皮膚に、ヒスタチンもしくはその類似体、及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記ヒスタチン又はその類似体がヒスタチン-1(配列番号4)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドがペプチド6(配列番号34)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、約80μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記CNTFペプチド又はその類似体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、約100μMの濃度で前記CNTFペプチド又はその類似体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
約1μL~約100μLの前記組成物が、前記対象に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
約35μLの前記組成物が、前記対象に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、約7日間~約180日間にわたり毎日投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、約28日間にわたり毎日投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、一日あたり一、二、三、又は四回投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が一日あたり三回投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤として投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、眼インサート又はコンタクトレンズ中で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が哺乳動物である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物の投与が、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失における低減をもたらす、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失が、眼感染症、角膜傷害、眼手術、眼傷害、眼疾患、又は眼障害により引き起こされる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記眼手術が、緑内障手術、光屈折角膜切除(PRK)手術、又は角膜屈折手技である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記眼疾患がフックス角膜ジストロフィーである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記眼障害が円錐角膜である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失が、皮膚光損傷により引き起こされる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失が、化学療法により引き起こされる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を回復する、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法であって、それを必要とする対象の眼又は皮膚に、ヒスタチン又はその類似体と、第二の活性薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記ヒスタチン又はその類似体がヒスタチン-1(配列番号4)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、約80μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
約1μL~約100μLの前記組成物が、前記対象に投与される、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
約35μLの前記組成物が、前記対象に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、約7日~約180日間にわたり毎日投与される、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、約28日間にわたり毎日投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、一日あたり一、二、三、又は四回投与される、請求項24~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が一日あたり三回投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤として投与される、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、眼インサート又はコンタクトレンズ中で投与される、請求項24~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が哺乳動物である、請求項24~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物の投与が、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失における低減をもたらす、請求項24~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失が、眼感染症、角膜傷害、眼手術、眼傷害、眼疾患、又は眼障害により引き起こされる、請求項24~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記眼手術が、緑内障手術、光屈折角膜切除(PRK)手術、又は角膜屈折手技である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記眼疾患がフックス角膜ジストロフィーである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記眼障害が円錐角膜である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失が、皮膚光損傷により引き起こされる、請求項24~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失が、化学療法により引き起こされる、請求項24~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
皮膚又は眼科疾患、障害、又は状態を治療する又は予防的に治療する方法であって、それを必要とする対象の眼又は皮膚に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体を含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項45】
前記組成物が抗アポトーシス薬剤をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記皮膚疾患、障害、又は状態は、CO
2回復後、熱傷、褥瘡性潰瘍、脊髄傷害における自律神経反射異常、糖尿病性虚血性潰瘍、潰瘍予防、皮膚移植片回復、スキル喪失をもたらす外傷、低温/電気乾固後回復、又はモース/皮膚癌創傷治癒後である、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記眼科疾患、障害、又は状態が、光屈折角膜切除(PRK)手術後、緑内障手術、感染性角膜潰瘍、色素眼疾患、円錐角膜に対するコラーゲン架橋(CSX)後、神経栄養性角膜炎、フックス角膜ジストロフィー、コンタクトレンズ不耐性、ドライアイ疾患、角膜炎進行阻害、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、無水晶体又は偽水晶体性水疱性角膜症(ABK/PBK)、穿通性又は鈍的外傷により引き起こされる内皮機能障害、先天性遺伝性内皮ジストロフィー(CHED)、虹彩角膜内皮(ICE)症候群、難治性緑内障、以前の失敗した角膜移植片、又は単純ヘルペスウイルス内皮炎である、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項48】
前記眼科疾患、障害、又は状態が、光屈折角膜切除手術後、緑内障手術、又はフックス角膜ジストロフィーである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒスタチン又はその類似体がヒスタチン-1(配列番号4)である、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体がペプチド6(配列番号34)である、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項44~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物が、約80μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記CNTFペプチド又はその類似体を含む、請求項44~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物が、約100μMの濃度で前記CNTFペプチド又はその類似体を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
約1μL~約100μLの前記組成物が前記対象に投与される、請求項44~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
約35μLの前記組成物が前記対象に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が、約7日~約180日間にわたり毎日投与される、請求項44~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物が、約28日間にわたり毎日投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が、一日あたり一、二、三、又は四回投与される、請求項44~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が一日あたり三回投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤として投与される、請求項44~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が、眼インサート又はコンタクトレンズ中で投与される、請求項44~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射、又はテノン嚢下注射により投与される、請求項44~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記対象が哺乳動物である、請求項44~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
外科手技の前に生物学的サンプルを貯蔵する方法であって、
前記生物学的サンプルを、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物と接触させること、ならびに
前記生物学的サンプルを約-10°C~約25°Cの温度で貯蔵すること
を含む、方法。
【請求項66】
前記生物学的サンプルがドナー組織である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ドナー組織が角膜組織である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記生物学的サンプルが、約0.5日~約90日間にわたり生存可能なままである、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記外科手技が、光屈折角膜切除(PRK)手術、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
角膜内皮細胞の喪失を低減もしくは防止する、及び/又は角膜内皮細胞を回復する方法であって、それを必要とする対象の眼に、ヒスタチン又はその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項71】
前記ヒスタチン又はその類似体が、ヒスタチン-1(配列番号4)である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記組成物が、約80μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
約1μL~約100μLの前記組成物が前記対象に投与される、請求項70~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
約35μLの前記組成物が前記対象に投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記抗アポトーシス薬剤がMET12(配列番号37)である、請求項70~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記組成物が、約7日~約180日間にわたり毎日投与される、請求項70~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記組成物が、約28日間にわたり毎日投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記組成物が、一日あたり一、二、三、又は四回投与される、請求項70~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記組成物が一日あたり三回投与される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記組成物が、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤として投与される、請求項70~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記組成物が、眼インサート又はコンタクトレンズ中で投与される、請求項70~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記組成物が、局所投与、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射、又はテノン嚢下注射により投与される、請求項70~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記組成物が、局所投与により投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記対象が哺乳動物である、請求項70~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記組成物の投与が、治療なしと比較して、角膜内皮細胞の喪失における約20%~約80%の低減をもたらす、請求項70~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記角膜内皮細胞の喪失が、フックス角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー、無水晶体又は偽水晶体性水疱性角膜症、穿通性又は鈍的外傷により引き起こされる内皮機能障害、先天性遺伝性内皮ジストロフィー、虹彩角膜内皮症候群、難治性緑内障、以前の失敗した角膜移植片、手術外傷、又は単純ヘルペスウイルス内皮炎の一つ又は複数により引き起こされる、請求項70~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記角膜内皮細胞の喪失が、フックス角膜内皮ジストロフィーにより引き起こされる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記組成物が、外科手技前に投与される、請求項70~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記組成物が、外科手技中に投与される、請求項70~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記組成物が、外科手技後に投与される、請求項70~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記外科手技が、全層角膜形成術(PK)、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である、請求項70~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
角膜神経を回復する、再生する、又はその再生を促進する方法であって、それを必要とする対象の眼に、ヒスタチンもしくはその類似体、及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項94】
前記ヒスタチン又はその類似体が、ヒスタチン-1(配列番号4)である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドが、ペプチド6(配列番号34)である、請求項93又は94に記載の方法。
【請求項96】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項93~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記組成物が、約80μMの濃度で前記ヒスタチン又はその類似体を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記組成物が、約0.1μM~約150μMの濃度で前記CNTFペプチド又はその類似体を含む、請求項93~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記組成物が、約100μMの濃度で前記CNTFペプチド又はその類似体を含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
約1μL~約100μLの前記組成物が前記対象に投与される、請求項93~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
約35μLの前記組成物が前記対象に投与される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記組成物が、約7日~約180日間わたり毎日投与される、請求項93~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記組成物が、約28日間にわたり毎日投与される、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記組成物が、一日あたり1回、2回、3回、又は4回投与される、請求項93~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記組成物が一日あたり三回投与される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記組成物が、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤として投与される、請求項93~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記組成物が、眼インサート又はコンタクトレンズ中で投与される、請求項93~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記組成物が、局所投与、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射、又はテノン嚢下注射により投与される、請求項93~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記組成物が局所投与により投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記対象が哺乳動物である、請求項93~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記組成物の投与が、治療なしと比較して、角膜神経の喪失における約20%~約80%の低減をもたらす、請求項93~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記角膜神経の喪失が、神経栄養性角膜炎、ドライアイ疾患、ヘルペス性角膜炎、ハンセン病、糖尿病、乾性角結膜炎、又は円錐角膜の一つ又は複数により引き起こされる、請求項93~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記角膜神経の喪失が、外科手技により引き起こされる、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記組成物が、外科手技前に投与される、請求項93~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記組成物が、外科手技中に投与される、請求項93~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記組成物が、外科手技後に投与される、請求項93~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記外科手技が、全層角膜形成術(PK)、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、デスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)、光屈折角膜切除術(PRK)、放射状角膜切開術、又はレーザー角膜内切削形成術(LASIK)である、請求項113~116のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を回復する、外科手技、傷害、又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜創傷を治療する、皮膚又は眼科疾患、障害、及び/又は状態を治療する、あるいは生物学的サンプルを貯蔵するための、場合により、毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド及びその類似体との組み合わせにおける、ヒスタチン及びその類似体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒスタチンは、ヒト及び非ヒト霊長類により産生される天然由来の経口及び涙液ペプチドであり、直接的な抗感染活性を示し、強力な抗炎症特性を有し、いくつかの組織及び器官培養系において上皮創傷治癒を刺激する。技術が、この天然物質を単離するために開発されており、それを、創傷のための利用可能な局所治療にしている。
【0003】
毛様体神経栄養因子(CNTF)は、インターロイキン-6ファミリーのサイトカインであり、これは、成体グリア中に隔離され、その産生は損傷中に増加する。それは、黒質及び脊髄運動ニューロンのドーパミン作動性ニューロンの維持において必須であり;神経筋変性を伴うマウスに投与された場合、それは、神経保護効果を産生する。
【0004】
抗アポトーシス薬剤は、細胞死を阻害する化合物又はペプチドである。
【0005】
擦り傷からの、光屈折もしくは外科手技からの、又は疾患、例えば円錐角膜などからの角膜への傷害は、間質角膜実質細胞の喪失をもたらし得る。この点における細胞喪失は、アポトーシスのプロセスにより駆動されると考えられる。手術、傷害、又は疾患後の角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を防止又は低減するための治療を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
本開示は、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を回復する、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜実質細胞を動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法を提供し、それを必要とする対象の眼又は皮膚に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【0007】
一部の態様では、ヒスタチンはヒスタチン-1(配列番号4)である。
【0008】
一部の態様では、CNTFペプチドはペプチド6(配列番号34)である。
【0009】
一部の態様では、組成物は、約0.1μM~約150μMの濃度でヒスタチン又はその類似体を含む。
【0010】
一部の態様では、組成物は、約80μMの濃度でヒスタチン又はその類似体を含む。
【0011】
一部の態様では、組成物は、約0.1μM~約150μMの濃度でCNTFペプチド又はその類似体を含む。
【0012】
一部の態様では、組成物は、約100μMの濃度でCNTFペプチド又はその類似体を含む。
【0013】
一部の態様では、約1μL~約100μLの組成物が、対象の眼又は皮膚に投与される。
【0014】
一部の態様では、約35μLの組成物が、対象の眼又は皮膚に投与される。
【0015】
一部の態様では、組成物は、約1日~約180日間にわたり毎日投与される。
【0016】
一部の態様では、組成物は、約1~約28日間にわたり毎日投与される。
【0017】
一部の態様では、組成物は、一日あたり一、二、三、又は四回投与される。
【0018】
一部の態様では、組成物は、一日あたり三回投与される。
【0019】
一部の態様では、組成物は、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤として投与される。
【0020】
一部の態様では、組成物は、眼インサート又はコンタクトレンズ中で投与される。
【0021】
一部の態様では、対象は哺乳動物である。
【0022】
一部の態様では、組成物の投与は、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失における低減をもたらす。
【0023】
一部の態様では、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失は、眼感染症、角膜傷害、眼手術、眼傷害、眼感染症、眼疾患、又は眼障害により引き起こされる。
【0024】
一部の態様では、眼の手術は、緑内障手術、光屈折角膜切除(PRK)手術、又は角膜屈折手技である。
【0025】
一部の態様では、眼疾患はフックス角膜ジストロフィーである。
【0026】
一部の態様では、眼障害は円錐角膜である。
【0027】
一部の態様では、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失は、皮膚光損傷により引き起こされる。
【0028】
一部の態様では、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失は、化学療法により引き起こされる。
【0029】
本開示はまた、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を回復する、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞を動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法を提供し、それを必要とする対象の眼又は皮膚に、ヒスタチン又はその類似体と、第二の活性薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【0030】
本開示はまた、皮膚又は眼科疾患、障害、又は状態を治療又は予防的に治療する方法を提供し、それを必要とする対象の眼又は皮膚に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体を含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0031】
一部の態様では、組成物は、抗アポトーシス薬剤をさらに含む。
【0032】
一部の態様では、皮膚疾患、障害、又は状態は、CO2回復後、熱傷、褥瘡性潰瘍、脊髄傷害における自律神経反射異常、糖尿病性虚血性潰瘍、潰瘍予防、皮膚移植片回復、スキル喪失をもたらす外傷、低温/電気乾固後回復、又はモース/皮膚癌創傷治癒後である。
【0033】
一部の態様では、眼科疾患、障害、又は状態が、光屈折角膜切除(PRK)手術後、緑内障手術、感染性角膜潰瘍、色素眼疾患、円錐角膜に対するコラーゲン架橋(CSX)後、神経栄養性角膜炎、フックス角膜ジストロフィー、コンタクトレンズ不耐性、ドライアイ疾患、角膜炎進行阻害、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、無水晶体又は偽水晶体性水疱性角膜症(ABK/PBK)、穿通性又は鈍的外傷により引き起こされる内皮機能障害、先天性遺伝性内皮ジストロフィー(CHED)、虹彩角膜内皮(ICE)症候群、難治性緑内障、以前の失敗した角膜移植片、又は単純ヘルペスウイルス内皮炎である。
【0034】
一部の態様では、眼科疾患、障害、又は状態は、光屈折角膜切除手術後、緑内障手術、又はフックス角膜ジストロフィーである。
【0035】
一部の態様では、組成物が、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射、又はテノン嚢下注射により投与される。
【0036】
一部の態様では、組成物は、局所投与により投与される。
【0037】
本開示はまた、外科手技の前に生物学的サンプルを貯蔵する方法を提供し、生物学的サンプルを、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物と接触させること、及び生物学的サンプルを約-10°C~約25°Cの温度で貯蔵することを含む。
【0038】
一部の態様では、生物学的サンプルはドナー組織である。
【0039】
一部の態様では、ドナー組織は角膜組織である。
【0040】
一部の態様では、生物学的サンプルは、約0.5日~約90日間にわたり生存可能なままである。
【0041】
一部の態様では、外科手技は、光屈折角膜切除(PRK)手術、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である。
【0042】
本開示はまた、角膜内皮細胞の喪失を低減もしくは防止する、及び/又は角膜内皮細胞を回復させる方法を提供し、それを必要とする対象の眼に、ヒスタチン又はその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0043】
一部の態様では、抗アポトーシス薬剤はFas阻害剤である。一部の態様では、Fas阻害剤はMET12(配列番号37)である。一部の態様では、抗アポトーシス薬剤は、METバリアント(配列番号41)である。
【0044】
一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜内皮細胞の喪失における約20%~約80%の低減をもたらす。
【0045】
一部の態様では、角膜内皮細胞の喪失は、フックス角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー、無水晶体又は偽水晶体性水疱性角膜症、穿通性又は鈍的外傷により引き起こされる内皮機能障害、先天性遺伝性内皮ジストロフィー、虹彩角膜内皮症候群、難治性緑内障、以前の失敗した角膜移植片、手術外傷、又は単純ヘルペスウイルス内皮炎の一つ又は複数により引き起こされる。
【0046】
一部の態様では、角膜内皮細胞の喪失は、フックス角膜内皮ジストロフィーにより引き起こされる。
【0047】
一部の態様では、組成物は、外科手技前に投与される。
【0048】
一部の態様では、組成物は、外科手技中に投与される。
【0049】
一部の態様では、組成物は、外科手技後に投与される。
【0050】
一部の態様では、組成物は、外科手技前及び後に投与される。
【0051】
一部の態様では、組成物は、外科手技前、中、及び後に投与される。
【0052】
一部の態様では、外科手技は、全層角膜形成術(PK)、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である。
【0053】
本開示はまた、角膜神経を回復する、再生する、又はその再生を促進する方法を提供し、それを必要とする対象の眼に、ヒスタチン又はその類似体、及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0054】
一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜神経の喪失及び/又は損傷における約20%~約80%の低減をもたらす。
【0055】
一部の態様では、角膜神経の喪失は、神経栄養性角膜炎、ドライアイ疾患、ヘルペス性角膜炎、ハンセン病、糖尿病、乾性角結膜炎、又は円錐角膜の一つ又は複数により引き起こされる。
【0056】
一部の態様では、角膜神経の喪失又は損傷は、外科手技により引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1A】
図1Aは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ヒスタチン-1(Hst-1)、又はヒスタチン-1及びペプチド6(P6)の組み合わせを一日あたり三回投与しながらの、0、7、10、14、及び21日後の外科的角膜切除後のニュージーランド白色ウサギにおける角膜実質細胞数を示す折れ線グラフである。
【0058】
【
図1B】
図1Bは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ヒスタチン-1(Hst-1)、又はヒスタチン-1及びペプチド6(P6)の組み合わせを一日あたり三回投与しながらの、0、7、10、14、21、及び28日後の外科的角膜切除後のニュージーランド白色ウサギにおける角膜実質細胞数を示す折れ線グラフである。
【0059】
【
図2】
図2は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一日あたり三回投与しながらの、0(ベースライン)、10、14、及び21日後の外科的角膜切除後のウサギ角膜の一連のインビボ共焦点顕微鏡画像である。
【0060】
【
図3】
図3は、ヒスタチン-1(Hst-1)を一日あたり三回投与しながらの、0(ベースライン)、10、14、及び21日後の外科的角膜切除後のウサギ角膜の一連のインビボ共焦点顕微鏡画像である。
【0061】
【
図4】
図4は、ヒスタチン-1(Hst-1)及びペプチド6(P6)を一日あたり三回投与しながらの、0(ベースライン)、10、14、及び21日後の外科的角膜切除後のウサギ角膜の一連のインビボ共焦点顕微鏡画像である。
【0062】
【
図5】
図5は、局所リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はヒスタチン-1(Hst-1)を一日あたり三回投与しながらの、0、7、10、14、21、及び28日後の外科的前方角膜切除後のニュージーランド白色ウサギにおける角膜内皮細胞密度を示す折れ線グラフである。
【0063】
【
図6】
図6は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ヒスタチン-1(Hst-1)、又はヒスタチン-1及びペプチド6(P6)の組み合わせを一日あたり三回投与しながらの、外科的前方角膜切除後の28日の初期病変の面積のパーセントにより測定された、ニュージーランド白色ウサギにおける角膜神経再生を示す棒グラフである。
【0064】
【
図7】
図7は、標準的な保存溶液中に貯蔵された角膜と、標準的な保存溶液中に貯蔵された角膜+ヒスタチン-1の間でのトリパンブルー(組織損傷を示している)で染色された角膜ボタンの面積パーセントを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明の詳細な説明
定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含む本出願が優先する。文脈上別段の定めがない限り、単数形の用語には複数形を含まれ、複数形の用語には単数形を含まれるものとする。本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及びその他の参考文献は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0066】
本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本開示の実践又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。本開示の他の特徴及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0067】
本開示をさらに定義するために、以下の用語及び定義が提供される。
【0068】
「同一性パーセント」は、二つの配列(例、アミノ酸配列又は核酸配列)間の同一性の程度を指す。同一性のパーセント(%)は、二つの配列を整列させ、配列間の同一性を最大化するためにギャップを導入することにより決定することができる。アライメントは、当技術分野において公知のプログラムを使用して生成することができる。本明細書中の目的のために、ヌクレオチド配列のアラインメントは、デフォルトパラメータで設定されたblastnプログラムを用いて実施することができ、アミノ酸配列のアラインメントは、デフォルトパラメータで設定されたblastpプログラムを用いて実施することができる(ワールドワイドウェブ上で、米国国立生物工学情報センター(NCBI)、ncbi.nlm.nih.govを参照のこと)。
【0069】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、製剤が投与され得る対象に対して許容不可能である毒性である追加成分を含まない調製物を指す。製剤は無菌であることができる。
【0070】
本明細書中で使用される用語「医薬的に許容可能な」は、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー反応も、他の問題又は合併症も伴わない、合理的な利益/リスク比率に見合った、ヒト及び動物の組織と接触しての使用のために適切な、健全な医学的判断の範囲内にある化合物、材料、組成物、製剤、及び/又は投薬形態を指す。
【0071】
用語「医薬的に許容可能な塩」は、当技術分野で認識され、化合物の比較的非毒性の無機及び有機酸付加塩、ならびに化合物の比較的非毒性の無機及び有機塩基付加塩を含む。
【0072】
医薬的に許容可能な塩を調製するために使用され得る無機酸は、限定されないが、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸及び同様のものを含む。医薬的に許容可能な塩を調製するために使用され得る有機酸は、限定されないが、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、例えば酒石酸、シュウ酸、炭酸、クエン酸、コハク酸、フェニルヘテロ原子置換アルカン酸、脂肪族及び芳香族硫酸、ならびに同様のものを含む。無機酸又は有機酸から調製される医薬的に許容可能な塩は、このように、限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、ヨウ化水素酸塩、フッ化水素酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、p-トルエンスル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びマレイン酸塩を含む。適切な医薬的に許容可能な塩はまた、活性薬剤を、有機塩基、例えばメチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン及び同様のものと反応させることにより形成され得る。医薬的に許容可能な塩は、一部の活性薬剤で見出され得るカルボン酸基又はスルホン酸基と、無機カチオン、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、もしくはカルシウムなど、又はイソプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、及びイミダゾリウムなどの有機カチオンの間で形成される塩を含む。これらの塩の全てが、例えば、適した酸又は塩基を活性薬剤と反応させることにより、活性薬剤から、従来的な手段により調製され得る。
【0073】
用語「賦形剤」は、それ自体が治療剤ではなく、対象への活性治療剤の送達のために組成物中で使用され得る、あるいはその取り扱いもしくは貯蔵特性を改善するために、又は組成物の用量単位の形成を許容もしくは促進するために活性治療剤と組み合わせられ得る(例、医薬組成物を作製するために)、任意の物質を指す。賦形剤は、限定されないが、溶媒、浸透促進剤、湿潤剤、抗酸化剤、潤滑剤、軟化剤、組成物の外観又は質感を改善するために加えられる物質、及びハイドロゲルを形成するために使用される物質を含む。任意のそのような賦形剤は、本開示に従った任意の投薬形態において使用することができる。前述のクラスの賦形剤は、網羅的であることを意味せず、しかし、当業者が、追加の種類及び賦形剤の組み合わせを使用して、薬物の送達のための所望の目標を達成することができ得ることを認識するであろうため、単に例証的である。賦形剤は、不活性(inert)物質、不活性(inactive)物質、及び/又は医薬的に活性でない物質であることができる。賦形剤は、様々な目的を果たすことができる。当業者は、ルーチン的な実験により、及び任意の過度の負担を伴うことなく、特定の所望の特性に関して一つ又は複数の賦形剤を選択することができる。使用される各賦形剤の量は、当技術分野における従来的な範囲内で変動し得る。投薬形態を製剤化するために使用され得る技術及び賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th edition,Rowe et al.,Eds.,American Pharmaceuticals Association and the Pharmaceutical Press,publications department of the Royal Pharmaceutical Society of Great Britain(2009);及びRemington:the Science and Practice of Pharmacy,21th edition,Gennaro,Ed.,Lippincott Williams & Wilkins(2005)において記載されている。
【0074】
本明細書中で使用される用語「単位投薬形態」又は「単位用量組成物」は、治療化合物の量を含むデバイスを指し、当該量は、一つ又は複数の所定の単位が、単一の治療的投与として提供され得るようにする。
【0075】
用語「投与する(administer)」、「投与している(administering)」、「投与(administration)」、及び同様のものは、本明細書中で使用される場合、薬物、例えば、ヒスタチンなどの、所望の生物学的作用部位への(例、眼又は皮膚への)送達を可能にするように使用され得る方法を指す。本明細書中に記載される薬剤及び方法と用いることができる投与技術は、例えば、Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,current edition,Pergamon;及びRemington’s,Pharmaceutical Sciences,current edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.において見出される。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、互換的に使用される。対象は動物であることができる。一部の態様では、対象は、哺乳動物、例えば非ヒト動物など(例、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、マウス、サル、又は他の霊長類など)である。一部の態様では、対象はヒトである。
【0077】
用語「治療有効量」は、対象において疾患又は障害を治療するのに有効な治療剤、例えば、ヒスタチンの量を指す。眼への障害又は傷害の場合では、治療有効量の治療剤によって、角膜実質細胞を動員する、角膜間質角膜実質細胞の喪失を防止又は回復させ、上皮又は間質の傷害及び疾患により引き起こされる角膜間質角膜実質細胞の喪失を防止及び回復させ、アポトーシスを阻害又は防止して、傷害又は疾患により引き起こされる眼及び皮膚における細胞の喪失を防止及び回復させ、ならびに/あるいは眼科状態又は障害、例えば、眼の手術又は疾患を伴う患者における症状を改善させることができる。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために有効な量を指す。望ましい予防的結果は、本発明の組成物の投与を伴わない、対象に生じることが予想される眼への全量の損傷(角膜損傷、神経損傷、細胞死などを含む)の防止を含む。効果的な予防的治療は、組成物が投与される対象が、眼の疾患もしくは障害、又は外科手技後の損傷の任意の否定的な転帰はないが、しかし、(未治療の対象と比較して)比較的健康な細胞及び/又は神経の量においていくらかの利益を示すであろう、ならびに/あるいは治療された対象が、未治療の対象と比較して低下した症状を有することを意味しない。外科手技前に生物学的サンプルの貯蔵に適用される予防有効量は、生物学的サンプルが、未治療サンプルよりも手術前のより長い期間にわたって効果的に貯蔵することができることを意味する。
【0078】
用語、例えば「治療する(treating)、「治療(treatment)」、「治療するため(to treat)」、「軽減する(alleviating)」、及び「軽減するため(for alleviate)」などは、病理学的状態又は障害を治癒する、遅らせる、その症状を減らす、及び/又はその進行の停止させる治療手段を指す。このように、治療を必要とする人々は、障害と既に診断された人々、又は障害を有する疑いがある人々を含む。特定の態様では、患者が、以下の一つ又は複数を示す場合、対象は、本発明の方法に従って、眼科及び/又は皮膚疾患又は障害について成功裏に「治療」される:角膜実質細胞の動員、角膜間質角膜実質細胞の喪失の防止又は回復、上皮又は間質の傷害及び疾患により引き起こされる角膜間質角膜実質細胞の喪失の防止及び回復、アポトーシスの阻害又は防止、眼及び皮膚における細胞の回復、ならびに/あるいは治療前に対象により発現される一つ又は複数の症状の改善。
【0079】
予防的又は防止的措置は、眼科及び/又は皮膚の状態又は障害の発生を防止する及び/又は遅らせる、あるいは、例えば、眼の手術、傷害、又は疾患からの眼科損傷に関連付けられる症状を軽くする措置を指す。このように、予防的又は防止的措置を必要とするものは、眼科及び/又は皮膚の状態又は障害を有する傾向があるもの、ならびに眼科及び/又は皮膚の状態又は障害が防止されるもの、あるいは眼手術を受ける対象を含む。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「前治療又は予防」は、角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失の実質的な非存在、あるいは3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、又は一年の経過にわたって測定された場合、少なくとも20%、好ましくは50%、より好ましくは80%だけ低減した角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を意味する。
【0081】
本開示及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他を明確に指示しない限り、複数の形態を含む。
【0082】
態様が、文言「を含む」を伴って本明細書中に記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」の観点において記載される、その他の点では類似の態様がまた提供されることが理解される。本開示では、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」、及び「有する(having)」ならびに同様のものは、米国特許法においてそれらに帰する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」、及び同様のものを意味することができ;「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「本質的になる(consists essentially)」は、同様に、米国特許法において帰する意味を有し、この用語は無制限であり、列挙されるものの基本的又は新規の特徴が、列挙されるものよりも多いものの存在により変化しない限り、列挙されるものよりも多いものの存在を可能にするが、しかし、先行技術の実施形態は除外する。
【0083】
文脈から具体的に記述される又は明らかでない限り、本明細書中で使用される場合、用語「又は」は包括的であると理解される。本明細書中の語句、例えば「A及び/又はB」などにおいて使用される用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」、ならびに「B」の両方を含むことが意図される。同様に、語句、例えば「A、B、及び/又はC」などにおいて使用される用語「及び/又は」は、以下の実施形態の各々を包含することが意図される。A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0084】
本明細書中で使用される場合、用語「約(about)」及び「約(approximately)」は、数値又は数値範囲を修正するために使用される場合、値又は範囲の5%~10%上方及び5%~10%下方の偏差が、列挙される値又は範囲の意図される意味内に留まることを示す。
【0085】
本明細書中に提供される任意の組成物又は方法は、本明細書中に提供される他の組成物及び方法のいずれかの一つ又は複数と組み合わせることができる。
【0086】
説明
本開示は、角膜実質細胞の喪失を低減又は防止する、角膜実質細胞を回復する、外科手技、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜実質細胞を動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、以下を含む組成物の治療有効量を投与することを含む:(1)ヒスタチンもしくはその類似体;(2)ヒスタチンもしくはその類似体及び毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体;(3)ヒスタチンもしくはその類似体及び抗アポトーシス薬剤;あるいは(4)ヒスタチンもしくはその類似体、CNTFペプチドもしくはその類似体、及び抗アポトーシス薬剤。
【0087】
本開示はまた、ケラチノサイトの喪失を低減又は防止する、ケラチノサイトを回復する、外科手技、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、ケラチノサイトを動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、以下を含む組成物の治療有効量を投与することを含む:(1)ヒスタチンもしくはその類似体;(2)ヒスタチンもしくはその類似体及び毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体;(3)ヒスタチンもしくはその類似体及び抗アポトーシス薬剤;あるいは(4)ヒスタチンもしくはその類似体、CNTFペプチドもしくはその類似体、及び抗アポトーシス薬剤。
【0088】
本開示は、角膜芽細胞の喪失を低減又は防止する、角膜芽細胞を回復する、外科手技、傷害又は疾患により引き起こされる眼又は皮膚における細胞の喪失を防止するためにアポトーシスを阻害する、屈折退行及び上皮下瘢痕を防止又は最小化する、角膜芽細胞を動員する、あるいは角膜創傷を治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、以下を含む組成物の治療有効量を投与することを含む:(1)ヒスタチンもしくはその類似体;(2)ヒスタチンもしくはその類似体及び毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体;(3)ヒスタチンもしくはその類似体及び抗アポトーシス薬剤;あるいは(4)ヒスタチンもしくはその類似体、CNTFペプチドもしくはその類似体、及び抗アポトーシス薬剤。
【0089】
本開示はまた、皮膚又は眼科疾患、障害、及び/又は状態を治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、以下を含む組成物の治療有効量を投与することを含む:(1)ヒスタチンもしくはその類似体;(2)ヒスタチンもしくはその類似体及び毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体;(3)ヒスタチンもしくはその類似体及び抗アポトーシス薬剤;あるいは(4)ヒスタチンもしくはその類似体、CNTFペプチドもしくはその類似体、及び抗アポトーシス薬剤。
【0090】
本開示はまた、外科手技の前に生物学的サンプルを貯蔵する方法を提供し、生物学的サンプルに、以下を含む組成物を接触させることを含む:(1)ヒスタチンもしくはその類似体;(2)ヒスタチンもしくはその類似体及び毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドもしくはその類似体;(3)ヒスタチンもしくはその類似体及び抗アポトーシス薬剤;あるいは(4)ヒスタチンもしくはその類似体、CNTFペプチドもしくはその類似体、及び抗アポトーシス薬剤。
【0091】
任意の特定の理論により拘束されることを望まないが、ヒスタチンもしくはその類似体及びCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤は、抗アポトーシス機構を通じて対象における角膜実質細胞、ケラチノサイト、及び/又は角膜芽細胞の喪失を防止する。この効果を説明し得る他の機構は、ヒスタチン-1及びCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、炎症性因子、例えば細胞外物質を分解するマトリックスメタロプロテイナーゼなどの阻害剤としての抗アポトーシス薬剤の公知の効果を含む。ヒスタチンもしくはその類似体及びCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤は、傷害後の角膜において支持環境を提供する。ヒスタチンもしくはその類似体及びCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤はまた、角膜縁幹細胞からの新たな角膜実質細胞の生成を促進することができる。CNTFペプチド又はその類似体、及び、場合により、抗アポトーシス薬剤は、角膜実質細胞回復を促進する。
【0092】
一部の態様では、ヒスタチン又はその類似体は、ヒスタチン-1であり、それは、以下の表1中の配列番号4により表される。一部の態様では、ヒスタチン又はその類似体は、ヒスタチン-2であり、それは、以下の表1中の配列番号5により表される。一部の態様では、ヒスタチン又はその類似体は、ヒスタチン-3であり、それは、以下の表1中の配列番号6により表される。一部の態様では、ヒスタチン又はその類似体は、ヒスタチン-5であり、それは、以下の表1中の配列番号30により表される。一部の態様では、ヒスタチン又はその類似体は、配列番号35により表されるペプチドである。
【0093】
一部の態様では、CNTFペプチドはペプチド6であり、それは、以下の表1中の配列番号34により表される。一部の態様では、CNTFペプチドはペプチド6cであり、それは、配列番号36により表される。
【0094】
一部の態様では、組成物は、約0.001μM~約100mMの濃度でヒスタチン又はその類似体を含む。一部の態様では、組成物は、約0.001μM~約0.01μM、約0.001μM~約0.1μM、約0.001μM~約1μM、約0.001μM~約10μM、約0.001μM~約100μM、約0.001μM~約1mM、約0.001μM~約100mM、約0.01μM~約0.1μM、約0.01μM~約1μM、約0.01μM~約10μM、約0.01μM~約100μM、約0.01μM~約1mM、約0.01μM~約10mM、約0.01μM~約100mM、約0.1μM~約1μM、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約100μM、約0.1μM~約1mM、約0.1μM~約10mM、約0.1μM~約100mM、約1μM~約10μM、約1μM~約100μM、約1μM~約1mM、約1μM~約10mM、約1μM~約100mM、約10μM~約100μM、約10μM~約1mM、約10μM~約10mM、約10μM~約100mM、約100μM~約1mM、約100μM~約10mM、約100μM~約100mM、約1mM~約10mM、約1mM~約100mM、又は約10mM~約100mMの濃度でヒスタチン又はその類似体を含む。
【0095】
一部の態様では、組成物は、約80μMの濃度でヒスタチン又はその類似体を含む。一部の態様では、組成物は、約0.001μM、約0.01μM、約0.1μM、約1μM、約10μM、約100μM、約1mM、約10mM、又は約100mMの濃度でヒスタチン又はその類似体を含む。
【0096】
一部の態様では、組成物は、約0.001μM~約100mMの濃度でCNTFペプチド又はその類似体を含む。一部の態様では、組成物は、約0.001μM~約0.01μM、約0.001μM~約0.1μM、約0.001μM~約1μM、約0.001μM~約10μM、約0.001μM~約100μM、約0.001μM~約1mM、約0.001μM~約100mM、約0.01μM~約0.1μM、約0.01μM~約1μM、約0.01μM~約10μM、約0.01μM~約100μM、約0.01μM~約1mM、約0.01μM~約10mM、約0.01μM~約100mM、約0.1μM~約1μM、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約100μM、約0.1μM~約1mM、約0.1μM~約10mM、約0.1μM~約100mM、約1μM~約10μM、約1μM~約100μM、約1μM~約1mM、約1μM~約10mM、約1μM~約100mM、約10μM~約100μM、約10μM~約1mM、約10μM~約10mM、約10μM~約100mM、約100μM~約1mM、約100μM~約10mM、約100μM~約100mM、約1mM~約10mM、約1mM~約100mM、又は約10mM~約100mMの濃度でCNTFペプチド又はその類似体を含む。
【0097】
一部の態様では、組成物は、約100μMの濃度でCNTFペプチド又はその類似体を含む。一部の態様では、組成物は、約0.001μM、約0.01μM、約0.1μM、約1μM、約10μM、約50μM、約500μM、約1mM、約10mM、又は約100mMの濃度でCNTFペプチド又はその類似体を含む。
【0098】
一部の態様では、組成物は、治療有効量の抗アポトーシス薬剤を含む。
【0099】
一部の態様では、組成物は、約0.001μM~約100mMの濃度で抗アポトーシス薬剤を含む。一部の態様では、組成物は、約0.001μM~約0.01μM、約0.001μM~約0.1μM、約0.001μM~約1μM、約0.001μM~約10μM、約0.001μM~約100μM、約0.001μM~約1mM、約0.001μM~約100mM、約0.01μM~約0.1μM、約0.01μM~約1μM、約0.01μM~約10μM、約0.01μM~約100μM、約0.01μM~約1mM、約0.01μM~約10mM、約0.01μM~約100mM、約0.1μM~約1μM、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約100μM、約0.1μM~約1mM、約0.1μM~約10mM、約0.1μM~約100mM、約1μM~約10μM、約1μM~約100μM、約1μM~約1mM、約1μM~約10mM、約1μM~約100mM、約10μM~約100μM、約10μM~約1mM、約10μM~約10mM、約10μM~約100mM、約100μM~約1mM、約100μM~約10mM、約100μM~約100mM、約1mM~約10mM、約1mM~約100mM、又は約10mM~約100mMの濃度で抗アポトーシス薬剤を含む。
【0100】
一部の態様では、組成物は、約80μMの濃度で抗アポトーシス薬剤を含む。一部の態様では、組成物は、約0.001μM、約0.01μM、約0.1μM、約1μM、約10μM、約100μM、約1mM、約10mM、又は約100mMの濃度で抗アポトーシス薬剤を含む。
【0101】
一部の態様では、約1μL~約100μLの組成物が対象に投与される。一部の態様では、組成物は、対象の一方又は両方の眼に投与される。一部の態様では、約1μL~約10μL、約1μL~約100μL、約1μL~約500μL、約1μL~約1000μL、約10μL~約100μL、約10μL~約500μL、約10μL~約1000μL、約100μL~約500μL、約100μL~約1000μL、又は約500μL~約1000μLの組成物が、対象の一方又は両方の眼に投与される。
【0102】
一部の態様では、約35μLの組成物が、対象の一方又は両方の眼に投与される。一部の態様では、組成物は、対象の眼又は皮膚に投与される。一部の態様では、約1μL、約10μL、約50μL、約100μL、約500μL、又は約1000μLの組成物が、対象の一方又は両方の眼に投与される。
【0103】
一部の態様では、約0.1mL~約10mLの組成物が、対象に投与される。一部の態様では、組成物は、対象の皮膚に投与される。一部の態様では、約0.1mL~約0.5mL、約0.1mL~約1mL、約0.1mL~約5mL、約0.5mL~約1mL、約0.5mL~約5mL、約0.5mL~約10mL、約1mL~約5mL、約1mL~約10mL、又は約5mL~約10mLの組成物が、対象の皮膚に投与される。
【0104】
一部の態様では、約1mLの組成物が、対象の皮膚に投与される。一部の態様では、約0.1mL、約0.5mL、約5mL、又は約10mLの組成物が、対象の皮膚に投与される。
【0105】
一部の態様では、組成物は、約1日~約6ヶ月間にわたり毎日、対象に投与される。一部の態様では、組成物は、約1日~約7日、約1日~約14日、約1日~約21日、約1日~約1ヶ月間、約1日~約2ヶ月間、約1日~約3ヶ月間、約1日~約4ヶ月間、約1日~約5ヶ月間、約7日~約14日、約7日~約21日、約7日~約1ヶ月間、約7日~約2ヶ月間、約7日~約3ヶ月間、約7日~約4ヶ月間、約7日~約5ヶ月間、約7日~約6ヶ月間、約14日~約21日、約14日~約1ヶ月間、約14日~約2ヶ月間、約14日~約3ヶ月間、約14日~約4ヶ月間、約14日~約5ヶ月間、約14日~約6ヶ月間、約21日~約1ヶ月間、約21日~約2ヶ月間、約21日~約3ヶ月間、約21日~約4ヶ月間、約21日~約5ヶ月間、約21日~約6ヶ月間、約1ヶ月間~約2ヶ月間、約1ヶ月間~約3ヶ月間、約1ヶ月間~約4ヶ月間、約1ヶ月間~約5ヶ月間、約1ヶ月間~約6ヶ月間、約2ヶ月間~約3ヶ月間、約2ヶ月間~約4ヶ月間、約2ヶ月間~約5ヶ月間、約2ヶ月間~約6ヶ月間、約3ヶ月間~約4ヶ月間、約3ヶ月間~約5ヶ月間、約3ヶ月間~約6ヶ月間、約4ヶ月間~約5ヶ月間、約4ヶ月間~約6ヶ月間、又は約5ヶ月間~約6ヶ月間にわたり毎日、対象に投与される。
【0106】
一部の態様では、組成物は、約7日間にわたり、毎日対象に投与される。一部の態様では、組成物は、約1日、約14日、約21日、約1ヶ月間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、又は約6ヶ月間にわたり、毎日対象に投与される。
【0107】
一部の態様では、組成物は、一日あたり三回、対象に投与される。一部の態様では、組成物は、一日あたり一回、二回、四回、五回、六回、七回、八回、九回、又は十回、対象に投与される。
【0108】
一部の態様では、組成物は、2時間間隔において、対象に投与される。一部の態様では、組成物は、1時間、3時間、4時間、5時間、又は6時間間隔において、対象に投与される。
【0109】
一部の態様では、第二の活性薬剤は、医薬組成物の単位用量が、それを必要とする対象に投与される場合、標的状態、疾患又は障害、例えば本明細書中に記載されるものなどの治療のために治療的に(臨床的に)有効であることが公知である量で存在する。一部の態様では、第二の活性薬剤は、CNTFペプチド又はその類似体である。他の態様では、第二の活性薬剤は、抗アポトーシス薬剤である。一部の態様では、一を上回る追加の活性薬剤が存在しており、例えばCNTFペプチド及び抗アポトーシス薬剤の両方などである。活性薬剤が、超加的又は相乗的な治療効果が、対象への投与時に観察されるような重量比で存在する場合、次に全体的な投与用量を低減させ、望ましくない副作用がより少なく生じるようにしてもよい。
【0110】
一部の態様では、医薬組成物は、ヒスタチンと一つ又は複数の他の活性薬剤の組み合わせを含み、過剰なヒスタチン、過剰な一つ又は複数の他の活性薬剤、あるいは等量のヒスタチン及び一つ又は複数の他の活性薬剤を含み得る。一部の態様では、一つ又は複数の活性薬剤は、CNTFペプチド又はその類似体である。一部の態様では、一つ又は複数の活性薬剤は、抗アポトーシス薬剤である。ヒスタチンと、一つ又は複数の他の活性薬剤との重量比は、約100:1~1:100の範囲とすることができる。一部の態様では、一つ又は複数の他の活性薬剤は、対象が、医薬組成物中のヒスタチンの用量及び別の投薬形態中の一つ又は複数の他の活性薬剤の用量を受けるように、別の投薬形態中で連続的に又は同時に対象に投与される。一つ又は複数の他の活性薬剤の投薬レジメンは、ヒスタチンについての投薬レジメンと同じであっても、異なっていてもよい。連続投与は、数秒、数分、数時間、又は数日以内に投与される活性薬剤を含む。
【0111】
一部の態様では、ヒスタチンと、一つ又は複数の他の活性薬剤との重量比は、約80:1~約1:100、約60:1~約1:100、約40:1~約1:100、約20:1~約1:100、約10:1~約1:100、約5:1~約1:100、約2:1~約1:100、約1:1~約1:100、約1:2~約1:100、約1:5~約1:100、約1:10~約1:100、約1:20~約1:100、約1:40~約1:100、約1:60~約1:100、約1:80~約1:100、約100:1~約1:80、約80:1~約1:80、約60:1~約1:80、約40:1~約1:80、約20:1~約1:80、約10:1~約1:80、約5:1~約1:80、約2:1~約1:80、約1:1~約1:80、約1:2~約1:80、約1:5~約1:80、約1:10~約1:80、約1:20~約1:80、約1:40~約1:80、約1:60~約1:80、約100:1~約1:60、約80:1~約1:60、約60:1~約1:60、約40:1~約1:60、約20:1~約1:60、約10:1~約1:60、約5:1~約1:60、約2:1~約1:60、約1:1~約1:60、約1:2~約1:60、約1:5~約1:60、約1:10~約1:60、約1:20~約1:60、約1:40~約1:60、約100:1~約1:40、約80:1~約1:40、約60:1~約1:40、約40:1~約1:40、約20:1~約1:40、約10:1~約1:40、約5:1~約1:40、約2:1~約1:40、約1:1~約1:40、約1:2~約1:40、約1:5~約1:40、約1:10~約1:40、約1:20~約1:40、約100:1~約1:20、約80:1~約1:20、約60:1~約1:20、約40:1~約1:20、約20:1~約1:20、約10:1~約1:20、約5:1~約1:20、約2:1~約1:20、約1:1~約1:20、約1:2~約1:20、約1:5~約1:20、約1:10~約1:20、約100:1~約1:10、約80:1~約1:10、約60:1~約1:10、約40:1~約1:10、約20:1~約1:10、約10:1~約1:10、約5:1~約1:10、約2:1~約1:10、約1:1~約1:10、約1:2~約1:10、約1:5~約1:10、約100:1~約1:5、約80:1~約1:5、約60:1~約1:5、約40:1~約1:5、約20:1~約1:5、約10:1~約1:5、約5:1~約1:5、約2:1~約1:5、約1:1~約1:5、約1:2~約1:5、約100:1~約1:2、約80:1~約1:2、約60:1~約1:2、約40:1~約1:2、約20:1~約1:2、約10:1~約1:2、約5:1~約1:2、約2:1~約1:2、約1:1~約1:2、約100:1~約1:1、約80:1~約1:1、約60:1~約1:1、約40:1~約1:1、約20:1~約1:1、約10:1~約1:1、約5:1~約1:1、約2:1~約1:1、約100:1~約2:1、約80:1~約2:1、約60:1~約2:1、約40:1~約2:1、約20:1~約2:1、約10:1~約2:1、約5:1~約2:1、約100:1~約5:1、約80:1~約5:1、約60:1~約5:1、約40:1~約5:1、約20:1~約5:1、約10:1~約5:1、約5:1~約5:1、約100:1~約5:1、約80:1~約5:1、約60:1~約5:1、約40:1~約5:1、約20:1~約5:1、約10:1~約5:1、約100:1~約10:1、約80:1~約10:1、約60:1~約10:1、約40:1~約10:1、約20:1~約10:1、約100:1~約20:1、約80:1~約20:1、約60:1~約20:1、約40:1~約20:1、約100:1~約40:1、約80:1~約40:1、約60:1~約40:1、約100:1~約60:1、約80:1~約60:1、又は約100:1~約80:1の範囲であることができる。
【0112】
一部の態様では、ヒスタチンと、一つ又は複数の他の活性薬剤との重量比は、約1:1である。一部の態様では、ヒスタチンと、一つ又は複数の他の活性薬剤との重量比は、約100:1、約80:1、約60:1、約40:1、約20:1、約10:1、約5:1、約2:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:20、約1:40、約1:60、約1:80、又は約1:100である。
【0113】
一部の態様では、医薬組成物は、ヒスタチン類似体もしくは誘導体、及び一つ又は複数の他の活性薬剤の組み合わせを含み、過剰なヒスタチン類似体もしくは誘導体、過剰な一つ又は複数の他の活性薬剤、あるいは等量のヒスタチン類似体もしくは誘導体、及び一つ又は複数の他の活性薬剤を含み得る。一部の態様では、一つ又は複数の活性薬剤は、CNTFペプチド又はその類似体である。一部の態様では、一つ又は複数の活性薬剤は、抗アポトーシス薬剤である。ヒスタチン類似体又は誘導体と、一つ又は複数の他の活性薬剤との重量比は、約100:1~1:100の範囲であることができる。一部の態様では、一つ又は複数の他の活性薬剤は、対象が、医薬組成物中のヒスタチン類似体又は誘導体の用量及び別の投薬形態中の一つ又は複数の他の活性薬剤の用量を受けるように、別の投薬形態中で連続的に又は同時に対象に投与される。一つ又は複数の他の活性薬剤のための投与レジメンは、このように、ヒスタチン類似体又は誘導体の投与レジメンと同じであってもよく、又は異なっていてもよい。連続投与は、数秒、数分、数時間、又は数日以内に投与される活性薬剤を含む。
【0114】
一部の態様では、組成物は、点眼薬、ゲル、軟膏、又は組織接着剤の形態で、あるいは対象により着用される眼デバイス又はコンタクトレンズ中に組成物を組み入れることにより投与される。
【0115】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤を含む。
【0116】
一部の態様では、組成物は、患者の眼への局所投与のために適切な任意の様式において、即ち、眼科組成物として製剤化されてもよい。多数の適切な局所眼科薬物形態が、周知である(例、参照により本明細書中に組み入れられる、Baranowski et al.,The Scientific World Journal,Vol.2014,Article ID861904を参照のこと)。様々な例では、眼科組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、軟膏、クリーム、ゲル、コンタクトレンズ、眼インサート、デポー、マトリクス、埋め込み剤、薬物送達システム、綿球、涙点プラグ、又は制御もしくは持続放出媒体もしくはシステムの形態である。一部の態様では、眼科組成物は、米国特許第7,897,166号、米国特許第6,991,802号、米国特許第7,485,318号、米国特許第10,149,825号、米国特許第9,226,893号、米国特許公開2010/0119500、米国特許第9,949,922号、米国特許第10,172,792号、及び米国特許第10,548,843号において記載されている持続放出媒体又はシステムの形態であり、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書により組み入れられる。本明細書中で使用される場合、「局所投与」は、角膜の表面及び/又は結膜の表面への眼科組成物の投与を含む。局所投与はまた、眼の嚢中での眼科組成物の配置を含む。眼科組成物は、水性又は非水性(例、鉱油系)であってもよいが、一般的に水性である。
【0117】
一部の態様では、眼科製剤は、シリカゾルから紡糸された生分解性シリカ繊維中に組み入れられる。一部の態様では、シリカ繊維は、模擬体液中での、約0.2重量%/時間~約20重量%/時間の溶解率を有する。
【0118】
一部の態様では、眼科製剤は、ヒト及び/又は動物における医療用途のために適切な材料で作製されたデバイス中に組み入れられ、当該材料は、生物学的に活性な薬剤を担持する又は結合することが可能であり、当該材料は多層であり、以下を含む完成したデバイスの形状の本体中に形成される:
(a)本体中に、場合により、完成したデバイスの形状を有する本体中に形成される、コア材料、
(b)第一の層が、当該コア材料上に適用され、追加の層が、先行する層の当該コーティング材料上に適用されている、コーティング材料の二つ又はそれ以上の層、及び
(c)当該生物学的に活性な薬剤に結合することが可能なコーティング材料の少なくとも一つの層。
【0119】
一部の態様では、コーティング材料は、バイオポリマー、ゾルゲル産生シリカゲル、又は生物学的に活性な分子である。一部の態様では、コーティング材料の層は、異なる層が、コア材料の異なる部分を覆うように、異なる層が、異なる生物学的に活性な薬剤を含むように、又はその両方であるように、非対称である。
【0120】
一部の態様では、眼科組成物は生分解性担体を含む。一部の態様では、生分解性担体は、触媒として酸又は塩基を使用することにより、水及びシランを35~75の水:シラン比率範囲中で作製されるシリカキセロゲルである。一部の態様では、シランはテトラエトキシシランである。一部の態様では、生分解性担体は、モノリス、繊維、ネット、円錐体、多粒子、又はインプラント材料のための適切なコーティングの形態である。
【0121】
一部の態様では、眼科組成物は、テトラエトキシシランから調製された生体吸収性シロキサンを含む。一部の態様では、生体吸収性シロキサンはモノリスである。一部の態様では、生体吸収性シロキサンはコーティングである。一部の態様では、生体吸収性シロキサンは粒子である。
【0122】
一部の態様では、眼科組成物は、SiO2及び/又は加水分解SiO2からなる水溶性の未溶解シリカ系材料を含むインプラント又は送達デバイスの形態である。
【0123】
一部の態様では、組成物は、眼への活性薬剤の送達のために適切な任意の様式で投与され、一般的に「眼科投与」として言及される。眼への眼科投与は、限定されないが、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射(前房又は硝子体腔中を含む)、テノン嚢下注射又はインプラント、眼科溶液、眼科懸濁液、眼科軟膏、眼インプラント及び眼インサート、眼内溶液、イオン泳動の使用、外科的灌注溶液中での組み入れ、ならびにパック(例としてのみ、ホルミックス中に挿入された飽和綿球)を含む。
【0124】
一部の態様では、眼科組成物は、滅菌液体、例えば複数回使用又は単回使用の点眼薬分注ボトル又はバイアル内に含まれる溶液又は懸濁液などである。特定の実施例では、眼科組成物は、複数回使用の点眼薬分注ボトル又はバイアル内に含まれる滅菌液体として提供される。典型的には、点眼製剤は、水性の緩衝生理食塩水溶液、例えば約pH4~約8、典型的には約pH7.0~約8.0、より典型的には約pH7.2~約pH7.4のリン酸又はホウ酸緩衝生理食塩水などを含む。製剤のオスモル濃度は、典型的には、約200、250、又は270mOsm/kg~約310、350、又は400mOsm/kgまでの範囲中である。複数回使用の点眼薬分注ボトル中に包装された液体製剤は、加えられた保存剤、例えば塩化ベンザルコニウムなどを含み得る。しかし、一部の実施例では、眼科組成物は保存剤を含まなくてもよい。本明細書中で使用される場合、「保存剤を含まない」は、組成物が、ヒスタチン又はその類似体、CNTFペプチド又はその類似体、及び、場合により、抗アポトーシス薬剤に加えて、保存剤を含まないことを意味する。
【0125】
一部の態様では、組成物は、特に、液体、例えば点眼器により分注するための溶液又は懸濁液などとして製剤化される場合、組成物の用量が角膜と接触したままである期間を延長する賦形剤を含み得る。例えば、賦形剤は、粘度増加剤及び/又は粘膜接着剤であってもよい。そのような賦形剤の例は、限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボマー、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例、ポロキサマー407)、セルロース誘導体(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース)、天然多糖類(例、ヒアルロン酸、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム、トレハロース、及びタマリンド種子多糖類)を含む高分子量親水性ポリマーを含む。追加の粘膜接着性ポリマーが文献中に記載されている(例、Yadav et al.J.Chem.Pharm.Res.,2010,2(5):418-432を参照のこと。参照により本明細書中に組み入れられる)。前述のポリマーの二つ又はそれ以上の任意の組み合わせが、組成物中に含まれてもよい。本明細書中で使用される場合、高分子量ポリマーは、少なくとも100,000ダルトンの分子量を有する。別の実施例では、組成物は、シクロデキストリン(例、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)を含む。一実施例では、組成物は、持続放出液体として製剤化される。例えば、組成物は、ヒスタチン又はその類似体の放出を持続する粘膜接着性マイクロスフェアを含む眼科懸濁液の形態であり得る。マイクロスフェアは、粘膜接着性ポリマー及びヒスタチン又はその類似体を含む。眼科懸濁液用の粘膜接着性マイクロスフェアを作製する方法が、文献中に記載されている(例、Dandagi et al.,Sci Pharm(2013)81(1):259-280を参照のこと)。
【0126】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数の粘性薬剤を含む。粘性薬剤の非限定的な例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、及びヒアルロン酸ナトリウムを含む。他の許容可能な粘性薬剤は、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ブラダーラック(bladderwrack)、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボポール(Carbopol)、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、ツノマタ属(chondrus)、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガティガム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、ショ糖、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、アラヤゴム、ザンサンガム、トラガカントガム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゲラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン,プロピレンカーボネート、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、Splenda(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリン及びスクラロース)及びそれらの組み合わせを含む。
【0127】
一部の態様では、組成物は、約0.1重量%~約1重量%の一つ又は複数の粘性薬剤を含む。一部の態様では、組成物は、約0.1重量%~約0.25重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約0.75重量%、約0.25重量%~約0.5重量%、約0.25重量%~約0.75重量%、約0.25重量%~約1重量%、約0.5重量%~約0.75重量%、約0.5重量%~約1重量%、又は約0.75重量%~約1重量%の一つ又は複数の粘性薬剤を含む。
【0128】
一部の態様では、組成物の粘度は約10cP~約30cPである。一部の態様では、組成物の粘度は、約1cP~約5cP、約1cP~約10cP、約1cP~約15cP、約1cP~約20cP、約1cP~約30cP、約1cP~約40cP、約1cP~約50cP、約1cP~約60cP、約1cP~約80cP、約1cP~約100cP、約1cP~約125cP、約1cP~約150cP、約1cP~約175cP、約1cP~約200cP、約1cP~約400cP、約5cP~約10cP、約5cP~約15cP、約5cP~約20cP、約5cP~約30cP、約5cP~約40cP、約5cP~約50cP、約5cP~約60cP、約5cP~約80cP、約5cP~約100cP、約5cP~約125cP、約5cP~約150cP、約5cP~約175cP、約5cP~約200cP、約5cP~約400cP、約10cP~約15cP、約10cP~約20cP、約10cP~約30cP、約10cP~約40cP、約10cP~約50cP、約10cP~約60cP、約10cP~約80cP、約10cP~約100cP、約10cP~約125cP、約10cP~約150cP、約10cP~約175cP、約10cP~約200cP、約10cP~約400cP、約15cP~約20cP、約15cP~約30cP、約15cP~約40cP、約15cP~約50cP、約15cP~約60cP、約15cP~約80cP、約15cP~約100cP、約15cP~約125cP、約15cP~約150cP、約15cP~約175cP、約15cP~約200cP、約15cP~約400cP、約20cP~約30cP、約20cP~約40cP、約20cP~約50cP、約20cP~約60cP、約20cP~約80cP、約20cP~約100cP、約20cP~約125cP、約20cP~約150cP、約20cP~約175cP、約20cP~約200cP、約20cP~約400cP、約30cP~約40cP、約30cP~約50cP、約30cP~約60cP、約30cP~約80cP、約30cP~約100cP、約30cP~約125cP、約30cP~約150cP、約30cP~約175cP、約30cP~約200cP、約30cP~約400cP、約40cP~約50cP、約40cP~約60cP、約40cP~約80cP、約40cP~約100cP、約40cP~約125cP、約40cP~約150cP、約40cP~約175cP、約40cP~約200cP、約40cP~約400cP、約50cP~約60cP、約50cP~約80cP、約50cP~約100cP、約50cP~約125cP、約50cP~約150cP、約50cP~約175cP、約50cP~約200cP、約50cP~約400cP、約60cP~約80cP、約60cP~約100cP、約60cP~約125cP、約60cP~約150cP、約60cP~約175cP、約60cP~約200cP、約60cP~約400cP、約80cP~約100cP、約80cP~約125cP、約80cP~約150cP、約80cP~約175cP、約80cP~約200cP、約80cP~約400cP、約100cP~約125cP、約100cP~約150cP、約100cP~約175cP、約100cP~約200cP、約100cP~約400cP、約125cP~約150cP、約125cP~約175cP、約125cP~約200cP、約125cP~約400cP、約150cP~約175cP、約150cP~約200cP、約150cP~約400cP、約175cP~約200cP、約175cP~約400cP、又は約200cP~約400cPである。
【0129】
一部の態様では、組成物は約30cPの粘度を有する。一部の態様では、組成物は、約1cP、約5cP、約10cP、約15cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約80cP、約100cP、約125cP、約150cP、約175cP、約200cP、又は約400cPの粘度を有する。
【0130】
一部の態様では、組成物は、約0.1重量%の一つ又は複数の粘性薬剤を含む。一部の態様では、組成物は、約0.25重量%、約0.5重量%、約0.75重量%、又は約1重量%の一つ又は複数の粘性薬剤を含む。
【0131】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数の緩衝液を含む。緩衝液の非限定的な例は、酢酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、クエン酸ホウ酸塩緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、コハク酸塩緩衝液、ホウ酸塩-ポリオール複合体緩衝液、炭酸緩衝液、有機緩衝液、アミノ酸緩衝液、及びそれらの組み合わせを含む。
【0132】
有機緩衝液としては、限定されないが、グッドの緩衝液、例えば、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、N-(カルバモイルメチル)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、β-ヒドロキシ-4-モルホリンプロパンスルホン酸、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、コラミンクロリド、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、2-[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、アセトアミドグリシン、3-{[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-プロパニル]アミノ}-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(TAPSO)、ピペラジン-1,4,-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)水和物(HEPPSO)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)、トリシン、グリシンアミド、ビシン又はN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸ナトリウム(TAPS)、グリシン、ジエタノールアミン(DEA);及びそれらの組み合わせを含む。
【0133】
アミノ酸緩衝液は、限定されないが、タウリン、アスパラギン酸及びその塩(例、カリウム塩など)、ε-アミノカプロン酸、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0134】
一部の態様では、眼科製剤のpHは、強酸又は強塩基により調整される。強酸及び強塩基の例は、当技術分野において周知であり、限定されないが、NaOH、KOH、HCl、及びH2SO4を含む。一部の態様では、強酸又は強塩基はHCl又はNaOHである。
【0135】
一部の態様では、組成物は、約0.05重量%~約1重量%の一つ又は複数の緩衝液を含む。一部の態様では、組成物は、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.05重量%~約0.25重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.05重量%~約0.75重量%、約0.1重量%~約0.25重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約0.75重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.25重量%~約0.5重量%、約0.25重量%~約0.75重量%、約0.25重量%~約1重量%、約0.5重量%~約0.75重量%、約0.5重量%~約1重量%、又は約0.75重量%~約1重量%の一つ又は複数の緩衝液を含む。
【0136】
一部の態様では、組成物は、約0.5重量%の一つ又は複数の緩衝液を含む。一部の態様では、組成物は、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.25重量%、約0.75重量%、又は約1重量%の一つ又は複数の緩衝液を含む。
【0137】
一部の態様では、組成物は、約7~約7.6のpHを有する。一部の態様では、組成物は、約6~約6.5、約6~約7、約6~約7.2、約6~約7.4、約6~約7.6、約6~約7.8、約6~約8、約6.5~約7、約6.5~約7.2、約6.5~約7.4、約6.5~約7.6、約6.5~約7.8、約6.5~約8、約7~約7.2、約7~約7.4、約7~約7.8、約7~約8、約7.2~約7.4、約7.2~約7.6、約7.2~約7.8、約7.2~約8、約7.4~約7.6、約7.4~約7.8、約7.4~約8、又は約7.6~約7.8のpHを有する。
【0138】
一部の態様では、組成物は、約7.4のpHを有する。一部の態様では、組成物は、約6、約6.5、約7、約7.2、約7.6、又は約8のpHを有する。
【0139】
一部の態様では、組成物は保存剤を含む。保存剤の非限定的な例は、塩化ベンザルコニウム、安定化オキシクロロ複合体(Purite(登録商標))、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ベンジルアルコール、パラベン、及びチメロサールを含む。一部の態様では、組成物は塩化ベンザルコニウムを含む。
【0140】
一部の態様では、組成物は、約0.0075重量%~約0.0125重量%の塩化ベンザルコニウムを含む。一部の態様では、組成物は、約0.0025重量%~約0.005重量%、約0.0025重量%~約0.0075重量%、約0.0025重量%~約0.01重量%、約0.0025重量%~約0.0125重量%、約0.0025重量%~約0.02重量%、約0.005重量%~約0.0075重量%、約0.005重量%~約0.01重量%、約0.005重量%~約0.0125重量%、約0.005重量%~約0.02重量%、約0.0075重量%~約0.01重量%、約0.0075重量%~約0.02重量%、約0.01重量%~約0.0125重量%、約0.01重量%~約0.02重量%、又は約0.0125重量%~約0.02重量%の塩化ベンザルコニウムを含む。
【0141】
一部の態様では、組成物は、約0.01重量%の塩化ベンザルコニウムを含む。一部の態様では、組成物は、約0.0025重量%、約0.005重量%、約0.0075重量%、約0.0125重量%、又は約0.02重量%の塩化ベンザルコニウムを含む。
【0142】
一部の態様では、組成物は保存剤を含まない。
【0143】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数の安定化剤を含む。安定化剤は、限定されないが、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、及びそれらの組み合わせを含む。一部の態様では、安定化剤のアミド類似体がまた使用される。一部の態様では、選ばれた安定化剤は、組成物の疎水性を変化させ、組成物中の様々な成分の混合を改善させ、組成物中の水分レベルを制御し、又は相の移動性を制御する。
【0144】
一部の態様では、組成物は、活性薬剤の分解を阻害するのに十分な量において一つ又は複数の安定化剤を含む。そのような安定化剤の例は、限定されないが、グリセロール、メチオニン、モノチオグリセロール、EDTA、アスコルビン酸、ポリソルベート80、ポリソルベート20、アルギニン、ヘパリン、デキストラン硫酸、シクロデキストリン、ペントサン多硫酸塩及び他のヘパリン類似物質、二価カチオン、例えばマグネシウム及び亜鉛など、又はそれらの組み合わせを含む。
【0145】
一部の態様では、組成物の成分の溶解度は、組成物中の界面活性薬剤又は他の適した共溶媒により増強され得る。そのような共溶媒は、ポリソルベート20、60、及び80、プルロニックF68、F-84及びP-103、シクロデキストリン、又は当業者に公知の他の薬剤を含む。一部の態様では、共溶媒の濃度は、0.01重量%~約2重量%である。
【0146】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数のポリオールを含む。本明細書中で使用される場合、用語「ポリオール」は、互いに対してトランス配置中にない二つの隣接する炭素原子の各々に少なくとも一つのヒドロキシル基を有する任意の化合物を含む。ポリオールは、結果としての複合体が水溶性であり、医薬的に許容可能である限り、直鎖状又は環状の、置換又は非置換の、又はそれらの混合物であり得る。そのような化合物の例は、糖、糖アルコール、糖酸、及びウロン酸を含む。好ましいポリオールは、限定されないが、マンニトール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、及びプロピレングリコールを含む、糖、糖アルコール、及び糖酸である。ポリオールは、二つ又はそれ以上の異なるポリオールで構成され得ることが企図される。
【0147】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数の抗凝集添加剤を含む。抗凝集添加剤は、タンパク質凝集の速度を低下させることにより、組成物の安定性を増強する。抗凝集添加剤は、限定されないが、尿素、塩化グアニジニウム、単純アミノ酸、例えばグリシン又はアルギニンなど、糖、ポリアルコール、ポリソルベート、ポリマー、例えばポリエチレングリコール及びデキストランスなど、アルキル糖類、例えばアルキルグリコシドなど、及び界面活性剤を含む。
【0148】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数の抗酸化剤を含む。抗酸化剤は、限定されないが、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、メタビス硫酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせを含む。金属キレート剤、チオール含有化合物、及び他の一般的な安定化剤は、許容可能な抗酸化剤であり得る。
【0149】
一部の態様では、組成物は、一つ又は複数のオスモル濃度薬剤(osmolality agent)を含む。オスモル濃度薬剤は、限定されないが、塩、特に塩化ナトリウム又は塩化カリウム、有機化合物、例えばプロピレングリコール、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、及びグリセリンなどを含む。
【0150】
一部の態様では、組成物は、約260~約365mOsm/kgのオスモル濃度を有する。一部の態様では、組成物は、約285mOsm/kg~約295mOsm/kg、約285mOsm/kg~約305mOsm/kg、約285mOsm/kg~約315mOsm/kg、約285mOsm/kg~約325mOsm/kg、約285mOsm/kg~約335mOsm/kg、約285mOsm/kg~約345mOsm/kg、約285mOsm/kg~約355mOsm/kg、約285mOsm/kg~約365mOsm/kg、約295mOsm/kg~約305mOsm/kg、約295mOsm/kg~約315mOsm/kg、約295mOsm/kg~約325mOsm/kg、約295mOsm/kg~約335mOsm/kg、約295mOsm/kg~約345mOsm/kg、約295mOsm/kg~約355mOsm/kg、約295mOsm/kg~約365mOsm/kg、約305mOsm/kg~約315mOsm/kg、約305mOsm/kg~約325mOsm/kg、約305mOsm/kg~約335mOsm/kg、約305mOsm/kg~約345mOsm/kg、約305mOsm/kg~約355mOsm/kg、約305mOsm/kg~約365mOsm/kg、約315mOsm/kg~約325mOsm/kg、約315mOsm/kg~約335mOsm/kg、約315mOsm/kg~約345mOsm/kg、約315mOsm/kg~約355mOsm/kg、約315mOsm/kg~約365mOsm/kg、約325mOsm/kg~約335mOsm/kg、約325mOsm/kg~約345mOsm/kg、約325mOsm/kg~約355mOsm/kg、約325mOsm/kg~約365mOsm/kg、約335mOsm/kg~約345mOsm/kg、約335mOsm/kg~約355mOsm/kg、約335mOsm/kg~約365mOsm/kg、約345mOsm/kg~約355mOsm/kg、約345mOsm/kg~約365mOsm/kg、約355mOsm/kg~約365mOsm/kg、約260mOsm/kg~約265mOsm/kg、約260mOsm/kg~約275mOsm/kg、約260mOsm/kg~約285mOsm/kg、約260mOsm/kg~約295mOsm/kg、約260mOsm/kg~約305mOsm/kg、約260mOsm/kg~約315mOsm/kg、約260mOsm/kg~約325mOsm/kg、約260mOsm/kg~約335mOsm/kg、約260mOsm/kg~約345mOsm/kg、約260mOsm/kg~約355mOsm/kg、約260mOsm/kg~約365mOsm/kg、約265mOsm/kg~約275mOsm/kg、約265mOsm/kg~約285mOsm/kg、約265mOsm/kg~約295mOsm/kg、約265mOsm/kg~約305mOsm/kg、約265mOsm/kg~約315mOsm/kg、約265mOsm/kg~約325mOsm/kg、約265mOsm/kg~約335mOsm/kg、約265mOsm/kg~約345mOsm/kg、約265mOsm/kg~約355mOsm/kg、約265mOsm/kg~約365mOsm/kg、約275mOsm/kg~約285mOsm/kg、約275mOsm/kg~約295mOsm/kg、約275mOsm/kg~約305mOsm/kg、約275mOsm/kg~約315mOsm/kg、約275mOsm/kg~約325mOsm/kg、約275mOsm/kg~約335mOsm/kg、約275mOsm/kg~約345mOsm/kg、約275mOsm/kg~約355mOsm/kg、約275mOsm/kg~約365mOsm/kgのオスモル濃度を有する。
【0151】
一部の態様では、組成物は、約260mOsm/kg、約265mOsm/kg、約275mOsm/kg、約285mOsm/kg、約295mOsm/kg、約305mOsm/kg、約315mOsm/kg、約325mOsm/kg、約335mOsm/kg、約345mOsm/kg、約355mOsm/kg、約365mOsm/kg、約370mOsm/kg、又は約375mOsm/kgのオスモル濃度を有する。
【0152】
一部の態様では、組成物は等張性である。一部の態様では、組成物は低張性である。一部の態様では、組成物は高張性である。
【0153】
一部の態様では、眼科組成物は、眼の嚢中に配置するための単位用量の眼インサートとして製剤化される。眼インサートを作製する方法が、文献中に記載されている(例、米国特許第4,730,013号、米国特許第7,749,970号、及び米国特許第2012/0215184を参照のこと。これらは参照により本明細書中に組み入れられる)。眼インサートは、活性薬剤を含む生分解性マトリクスを含む固体単位投薬形態であり、それは、本眼科組成物の場合では、ヒスタチン又はその類似体、CNTFペプチド又はその類似体、及び、場合により、抗アポトーシス薬剤である。マトリクスは、典型的には、高分子量ポリマー又は高分子量ポリマーの組み合わせ、例えば眼インサートを記載する前述の特許公開において開示される前述の親水性ポリマー及び追加のポリマーなどから作製される。眼インサートは、快適さを増強するために潤滑剤を追加的に含んでもよい。眼中への配置時に、眼インサートは数時間から一日の期間にわたって、及び、一部の場合では、数日にわたって溶解又は浸食する。
【0154】
一部の態様では、本開示は、患者における眼感染症を治療する方法を提供し、有効量のヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤を含む眼科組成物を患者の眼に局所投与することを含む。様々な特定の例では、患者はヒトもしくは獣医患者であり、及び/又は眼感染症は細菌性結膜炎もしくは細菌性角膜炎であり、及び/又は眼感染症はMRSAにより引き起こされる。
【0155】
一部の態様では、眼科組成物中のヒスタチン及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤の量は、眼の手術、傷害、感染症、疾患、又は障害の治療又は予防のために有効である。特定の例では、眼科組成物中のヒスタチン及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤の量は、眼の手術、傷害、感染症、疾患、又は障害の治療のために有効である。別の例では、眼科組成物中のヒスタチン及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体、ならびに、場合により、抗アポトーシス薬剤の量は、眼の手術、傷害、感染症、疾患、又は障害の前治療又は予防のために有効である。本明細書中で使用される場合、「前治療又は予防」は、眼の手術、傷害、感染症、疾患又は障害が、眼に眼科組成物を(眼手術、傷害、感染症、疾患又は障害の前又は後のいずれかに)投与する場合、角膜実質細胞の喪失に導かず、又は低減した角膜実質細胞の喪失をもたらすのに対して、眼科組成物が投与されていない(又はヒスタチンを欠くが、しかし、他の点では同一である対照組成物で治療された)眼は、統計的に有意な角膜実質細胞の喪失をもたらす。
【0156】
予防は、例えば、手術、例えば、光屈折角膜切除手術又は他の眼の手術後の感染症又は傷害、あるいは傷害、感染症、疾患、又は障害からの予防であり得る。
【0157】
一部の態様では、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物が、対象が手術を受ける前に対象に投与される。一部の態様では、手術は光屈折角膜切除(PRK)手術である。一部の態様では、手術は全層角膜形成術(PK)である。一部の態様では、手術は、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である。
【0158】
一部の態様では、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物は、対象が手術を受けた後に対象に投与される。一部の態様では、手術は光屈折角膜切除(PRK)手術である。一部の態様では、手術は全層角膜形成術(PK)である。一部の態様では、手術は、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である。
【0159】
一部の態様では、対象は哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ウサギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、又はヒツジである。一部の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0160】
一部の態様では、組成物の投与は、傷害又は手術後の角膜実質細胞の喪失における低減をもたらす。
【0161】
一部の態様では、組成物の投与は、傷害又は手術後に喪失された角膜実質細胞の回復をもたらす。
【0162】
一部の態様では、対象における角膜実質細胞の喪失は、光屈折角膜切除、フックス角膜ジストロフィー、又は円錐角膜により引き起こされる。一部の態様では、対象における角膜実質細胞の喪失は、皮膚への光損傷により引き起こされる。一部の態様では、対象における角膜実質細胞の喪失は、化学療法により引き起こされる。
【0163】
一態様では、ヒスタチンは、8~44のアミノ酸を含むペプチドである。一部の態様では、ペプチドはL-ペプチドである。他の態様では、ペプチドは環状ペプチドである。
【0164】
一部の態様では、ヒスタチンペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1~33、及び配列番号38~40の一つ又は複数、又はこれらの配列の任意の組み合わせである。一部の態様では、アミノ酸配列の一つ又は複数は、3つまでのアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有する。一部の態様では、アミノ酸配列の一つ又は複数は、二つ又はそれ以下のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有する。他の態様では、アミノ酸配列の一つ又は複数は、一つのアミノ酸における置換、欠失、及び/又は挿入を有する。
【0165】
配列番号4ペプチドはまた、ヒスタチン1(Hst-1)として公知である。一部の態様では、このアミノ酸配列中の第一のセリンは、ホスホセリンであってもよい。配列番号5ペプチドはまた、ヒスタチン2(Hst-2、また、Hst-1のアミノ酸12~38と等価である)として公知である。配列番号6ペプチドはまた、ヒスタチン3(Hst-3)として公知である。配列番号30ペプチドはまた、ヒスタチン5(Hst-5)として公知である。これらのアミノ酸配列の各々の部分及び断片は、単独で又は組み合わせにおいて使用されてもよく、限定されないが、配列番号1~3、及び7~29(ヒスタチン1、ヒスタチン2、及びヒスタチン3について)及び配列番号32(ヒスタチン5について)を含み、本明細書中に記載される開示において創傷閉鎖を促進させる。アミノ酸のL立体異性体は、本明細書中に記載されるアミノ酸配列について好ましい一方で、D立体異性体は、代替的に使用されてもよい。あるいは、これらのヒスタチン及び他のアミノ酸を含むアミノ酸配列、例えば、ソーターゼ環化ヒスタチン(ヒスタチン1の全てを含む)である配列番号33を使用してもよい。任意のヒスタチン配列を環化して使用することができる。
【0166】
一部の態様では、本明細書中に記載されるヒスタチンは、ヒスタチン1~5を含むことができる。ヒスタチンの例は、限定されないが、配列番号4において示されるアミノ酸配列を有するヒトヒスタチン-1を含む。一部の態様では、ヒスタチン類似体、誘導体、断片、又は融合物も企図される。一部の態様では、配列番号1~33又は配列番号38~40において示されるヒスタチン1~5のヒスタチン類似体、誘導体、断片、又は融合物も企図される。一部の態様では、リンカーにより接続された、配列番号1~33又は配列番号38~40において示されるヒスタチン1~5の二つ又はそれ以上のヒスタチン類似体、誘導体、断片、又は融合物も企図される。一部の態様では、ヒスタチンは、配列番号1~33又は配列番号38~40と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0167】
一部の態様では、本明細書中に記載される毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド、ペプチド6は、配列番号34において示されるアミノ酸配列を有する。一部の態様では、毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド、ペプチド6誘導体も企図される。一部の態様では、配列番号34において示されるCNTFペプチドのCNTFペプチド類似体、誘導体、断片、又は融合物も企図される。一部の態様では、リンカーにより接続された、配列番号34において示されるCNTFペプチドの二つ又はそれ以上のCNTFペプチド又は類似体、誘導体、断片、もしくは融合物も企図される。一部の態様では、毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチドの誘導体、ペプチド6は、配列番号34と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0168】
ヒスタチン及びCNTFペプチドの配列は、US2013/0310327、WO2021/108482、及びUS2020/0108117において記載されており、それらは、参照により、それらの全体において本明細書中に組み入れられる。
【0169】
本開示は、以下の表1中の配列を提供する:
(表1)
【0170】
一部の態様では、本開示は、皮膚又は眼科疾患、障害、又は状態を治療又は予防的に治療する方法を提供し、それを必要とする対象に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物を投与することを含む。
【0171】
一部の態様では、皮膚疾患、障害、又は状態は、CO2回復後、熱傷、褥瘡性潰瘍、脊髄傷害における自律神経反射異常、糖尿病性虚血性潰瘍、潰瘍予防、皮膚移植片回復、スキル喪失をもたらす外傷、低温/電気乾固後回復、又はモース/皮膚癌創傷治癒後である。一部の態様では、眼科疾患、障害、又は状態は、光屈折角膜切除(PRK)手術後、緑内障手術、感染性角膜潰瘍、色素眼疾患、円錐角膜に対するコラーゲン架橋(CSX)後、神経栄養性角膜炎、フックス角膜ジストロフィー、コンタクトレンズ不耐性、ドライアイ疾患、又は角膜炎進行阻害である。一部の態様では、眼科疾患、障害、又は状態は、後部多形性角膜ジストロフィー(PPCD)、無水晶体又は偽水晶体性水疱性角膜症(ABK/PBK)、穿通性又は鈍的外傷により引き起こされる内皮機能障害、先天性遺伝性内皮ジストロフィー(CHED)、虹彩角膜内皮(ICE)症候群、難治性緑内障、以前の失敗した角膜移植片、又は単純ヘルペスウイルス内皮炎である。
【0172】
一部の態様では、本開示は、外科手技の前に生物学的サンプルを処理、保存、及び/又は貯蔵する方法を提供し、当該生物学的サンプルを、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物と接触させることを含む。一部の態様では、生物学的サンプルはドナー組織である。一部の態様では、ドナー組織は角膜組織である。一部の態様では、ドナー組織は、哺乳動物対象中への移植のために適切である。一部の態様では、ドナー組織は、ヒト対象中への移植のために適切である。一部の態様では、方法は、組成物と接触した生物学的サンプルを約-10℃~約25℃の温度で貯蔵することをさらに含む。
【0173】
一部の態様では、生物学的サンプルは、約0.5日、約1日、約2日、約3日、約7日、約14日、約21日、約30日、約60日、又は約90日間にわたり、生存可能なままである。一部の態様では、生物学的サンプルは、約0.5日~約1日、約0.5日~約2日、約0.5日~約3日、約0.5日~約7日、約0.5日~約14日、約0.5日~約21日、約0.5日~約30日、約0.5日~約60日、約0.5日~約90日、約1日~約2日、約1日~約3日、約1日~約7日、約1日~約14日、約1日~約21日、約1日~約30日、約1日~約60日、約1日~約90日、約2日~約3日、約2日~約7日、約2日~約14日、約2日~約21日、約2日~約30日、約2日~約60日、約2日~約90日、約3日~約7日、約3日~約14日、約3日~約21日、約3日~約30日、約3日~約60日、約3日~約90日、約7日~約14日、約7日~約21日、約7日~約30日、約7日~約60日、約7日~約90日、約14日~約21日、約14日~約30日、約14日~約60日、約14日~約90日、約21日~約30日、約21日~約60日、約21日~約90日、約30日~約60日、約30日~約90日、及び約60日~約90日間にわたり、生存可能なままである。
【0174】
一部の態様では、外科手技は、光屈折角膜切除(PRK)手術、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である。
【0175】
一部の態様では、本開示は、角膜内皮細胞の喪失を低減もしくは防止する、及び/又は角膜内皮細胞を回復させる方法であって、それを必要とする対象の眼に、ヒスタチン又はその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0176】
一部の態様では、抗アポトーシス薬剤はMET12(配列番号37)である。一部の態様では、抗アポトーシス薬剤は、METバリアント(配列番号41)である。一部の態様では、抗アポトーシス薬剤は、配列番号37又は配列番号41と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。MET12の配列は、米国特許第8,343,931号において記載されており、それは、その全体において参照により本明細書中に組み入れられる。
【0177】
一部の態様では、組成物は、局所投与、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射、又はテノン嚢下注射により投与される。
【0178】
一部の態様では、角膜内皮細胞の喪失は、フックス角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー、無水晶体又は偽水晶体性水疱性角膜症、穿通性又は鈍的外傷により引き起こされる内皮機能障害、先天性遺伝性内皮ジストロフィー、虹彩角膜内皮症候群、難治性緑内障、以前の失敗した角膜移植片、又は単純ヘルペスウイルス内皮炎により引き起こされる。
【0179】
一部の態様では、角膜内皮細胞の喪失は、フックス角膜内皮ジストロフィーにより引き起こされる。
【0180】
一部の態様では、組成物は、外科手技前に投与される。一部の態様では、組成物は、外科手技中に投与される。一部の態様では、組成物は、外科手技後に投与される。一部の態様では、外科手技は、全層角膜形成術(PK)、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、又はデスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)である。
【0181】
一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜内皮細胞の喪失において約20%の低減をもたらす。一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜内皮細胞の喪失において約1%、約5%、約10%、約15%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%の低減をもたらす。一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜内皮細胞の喪失において約1%~約5%、約1%~約10%、約1%~約15%、約1%~約20%、約1%~約30%、約1%~約40%、約1%~約50%、約1%~約60%、約1%~約70%、約1%~約80%、約1%~約90%、約1%~約100%、約5%~約10%、約5%~約15%、約5%~約20%、約5%~約30%、約5%~約40%、約5%~約50%、約5%~約60%、約5%~約70%、約5%~約80%、約5%~約90%、約5%~約100%、約10%~約15%、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約10%~約90%、約10%~約100%、約15%~約20%、約15%~約30%、約15%~約40%、約15%~約50%、約15%~約60%、約15%~約70%、約15%~約80%、約15%~約90%、約15%~約100%、約20%~約30%、約20%~約40%、約20%~約50%、約20%~約60%、約20%~約70%、約20%~約80%、約20%~約90%、約20%~約100%、約30%~約40%、約30%~約50%、約30%~約60%、約30%~約70%、約30%~約80%、約30%~約90%、約30%~約100%、約40%~約50%、約40%~約60%、約40%~約70%、約40%~約80%、約40%~約90%、約40%~約100%、約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約50%~約100%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約60%~約100%、約70%~約80%、約70%~約90%、約70%~約100%、約80%~約90%、約80%~約100%、又は約90%~約100%の低減をもたらす。一部の態様では、角膜内皮細胞の喪失における低減は、角膜断層撮影を使用して角膜内皮細胞密度を測定することにより決定される。
【0182】
一部の態様では、本開示はまた、角膜神経を回復する、再生する、又はその再生を促進する方法を提供し、それを必要とする対象の眼に、ヒスタチン又はその類似体、及び/又は毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0183】
一部の態様では、組成物は、ヒスタチン又はその類似体を含む。
【0184】
一部の態様では、組成物は、ヒスタチン又はその類似体、及び毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体を含む。
【0185】
一部の態様では、組成物は、ヒスタチン又はその類似体、毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体、及び抗アポトーシス薬剤を含む。
【0186】
一部の態様では、組成物は、ヒスタチン又はその類似体及び抗アポトーシス薬剤を含む。
【0187】
一部の態様では、組成物は、毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体及び抗アポトーシス薬剤を含む。
【0188】
一部の態様では、組成物は、毛様体神経栄養因子(CNTF)ペプチド又はその類似体を含む。
【0189】
一部の態様では、組成物は、局所投与、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、脈絡膜上注射、球後注射、前房内注射、又はテノン嚢下注射により投与される。
【0190】
一部の態様では、角膜神経の喪失は、神経栄養性角膜炎、ドライアイ疾患、ヘルペス性角膜炎、ハンセン病、糖尿病、乾性角結膜炎、又は円錐角膜により引き起こされる。
【0191】
一部の態様では、角膜神経の喪失は、外科手技により引き起こされる。一部の態様では、外科手技は、全層角膜形成術(PK)、デスメ膜ストリッピング自動内皮角膜形成術(DSAEK)、デスメ膜内皮角膜形成術(DMEK)、光屈折角膜切除術(PRK)、放射状角膜切開術、又はレーザー角膜内切削形成術(LASIK)である。
【0192】
一部の態様では、組成物は、外科手技前に投与される。一部の態様では、組成物は、外科手技中に投与される。一部の態様では、組成物は、外科手技後に投与される。
【0193】
一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜神経の喪失における約50%の低減をもたらす。一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜神経の喪失における約1%、約5%、約10%、約15%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%の低減をもたらす。一部の態様では、組成物の投与は、治療なしと比較して、角膜神経の喪失における約1%~約5%、約1%~約10%、約1%~約15%、約1%~約20%、約1%~約30%、約1%~約40%、約1%~約50%、約1%~約60%、約1%~約70%、約1%~約80%、約1%~約90%、約1%~約100%、約5%~約10%、約5%~約15%、約5%~約20%、約5%~約30%、約5%~約40%、約5%~約50%、約5%~約60%、約5%~約70%、約5%~約80%、約5%~約90%、約5%~約100%、約10%~約15%、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約10%~約90%、約10%~約100%、約15%~約20%、約15%~約30%、約15%~約40%、約15%~約50%、約15%~約60%、約15%~約70%、約15%~約80%、約15%~約90%、約15%~約100%、約20%~約30%、約20%~約40%、約20%~約50%、約20%~約60%、約20%~約70%、約20%~約80%、約20%~約90%、約20%~約100%、約30%~約40%、約30%~約50%、約30%~約60%、約30%~約70%、約30%~約80%、約30%~約90%、約30%~約100%、約40%~約50%、約40%~約60%、約40%~約70%、約40%~約80%、約40%~約90%、約40%~約100%、約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約50%~約100%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約60%~約100%、約70%~約80%、約70%~約90%、約70%~約100%、約80%~約90%、約80%~約100%、又は約90%~約100%の低減をもたらす。一部の態様では、角膜神経の喪失における低減は、角膜病変又は創傷の面積における変化を測定することにより決定される。
【0194】
本開示はまた、皮膚の老化、セルライト、乾燥皮膚、開裂、又は創傷を治療又は防止する方法を提供し、それを必要とする対象に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物を投与することを含む。一部の態様では、創傷は、内部創傷、口腔創傷、皮膚創傷、外部創傷、潰瘍、及び/又は褥瘡創傷である。一部の態様では、創傷は、眼への損傷、例えば、結膜への損傷を含む。
【0195】
本開示はまた、口腔内潰瘍、口腔内アフタ性病変、口腔内灼熱症候群、舌灼熱感、乾癬、湿疹、及び脱毛を治療又は防止する方法を提供し、それを必要とする対象に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物を投与することを含む。
【0196】
これらの種類の皮膚損傷及び創傷は、当業者に公知である。内部創傷は、例えば、外科的切開に起因して、身体において存在する創傷である。口腔創傷は、口腔において存在する創傷である。皮膚創傷は、皮膚において存在する創傷である。外部創傷は、身体の外側から見ることができ、アクセス可能である創傷として理解されるべきである。潰瘍は、皮膚の表面又は粘膜表面上の病変である。褥瘡性創傷は、一つの位置において長期間にわたり留まる、例えば床に横たわるなどの場合での皮膚及び組織への長時間の圧力により引き起こされる創傷又は潰瘍形成である。身体の骨領域は、最も頻繁に影響を受ける部位であり、それは、持続的な及び一定の圧力下で虚血になる。皮膚の老化は、時間又は環境への曝露又は個人の健康状態に起因する皮膚の外観における変化である。セルライトは、皮膚の膨らみ又は窪みの外観に関連する化粧品において使用される定義である。
【0197】
一部の態様では、本明細書中に開示される方法は、皮膚創傷の治療のために使用される。皮膚創傷は、皮膚の表皮又は真皮における創傷であり得る。皮膚又は組織が修復を必要とし得るいくつかの種類の創傷がある:擦過傷、裂傷、切開、穿刺、ならびに剥離及び熱傷。本明細書中に開示される組成物の使用によって、皮膚の一般的な健康状態を改善させることができる。別の態様では、本明細書中に開示される方法は、口腔創傷の治療において使用される。経口創傷は、口腔粘膜が損傷している口腔の任意の部分における創傷である。別の態様では、本明細書中に記載される方法は、内部創傷の治療において使用される。内部創傷は、内胚葉又は中胚葉起源の細胞層が損傷している創傷である。例は、動脈又は静脈、腹膜又は心膜における創傷である。
【0198】
本開示はまた、眼表面疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、ヒスタチンもしくはその類似体及び/又はCNTFペプチドもしくはその類似体と、場合により、抗アポトーシス薬剤とを含む組成物を投与することを含む。眼表面疾患は、限定されないが、ドライアイ、角膜潰瘍及びびらん、炎症性及び感染性角膜炎及び結膜炎、外科的介入、ならびに外傷を含み得る。
【0199】
以下の実施例は例証的であり、特許請求される態様の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0200】
実施例1
間質角膜実質細胞の喪失に対するヒスタチン-1の効果。
方法
動物
約4~6ヶ月齢及び体重2~3kgの24匹のニュージーランド白色ウサギを、8匹の動物の3群に分けて、片側の外科的角膜切除手技後に、35μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、35μlの80uMヒスタチン-1(Hst-1)、又は35μlの80uMヒスタチン-1+100μMペプチド6(P6)の組み合わせのいずれかを用いて、28日間にわたり一日あたり三回(TID)局所投与した。
【0201】
外科的角膜切除術
動物には、手技直前に疼痛管理のためにブプレノルフィン(0.01~0.05mg/kg、SC)を投与した。ブプレノルフィンの第二用量(0.01~0.05mg/kg、SC)を夕方に投与し、次に、必要に応じて投与した。動物を、ケタミン/キシラジンカクテル(50mg/kgケタミン及び10mg/kgキシラジンIM)を用いた手術のために誘発し、麻酔を、必要に応じてマスクを通して酸素中に送達されたイソフルランを用いて維持した。麻酔の誘発後、5%のベタジン溶液をオートクレーブ滅菌ガーゼ上で使用して、術後の眼の眼周囲(眼瞼)領域を清掃した。ベタジンを次に使用して、眼表面及び結膜円蓋を灌注し、それを次に、滅菌洗眼液で完全に灌注した。0.5%プロパラカインHCl及び10%フェニルエフリンHClの各々一滴を次に、それぞれ眼麻酔及び散瞳のために眼表面に適用した。ウサギを手術顕微鏡下に位置付け、開瞼器を取り付けた。調整可能な8mm角膜真空トレフィン(Moria Surgical、フランス、アントニー)を使用して、約10~25%の間質深さ(約100μm)の中央角膜欠損を作製した。角膜の穿孔された切片を除去し、創傷を開いたままにした。手術直後に、局所抗生物質(ネオマイシンポリミキシンB硫酸グラミシン眼科溶液)の単回用量を適用した。
【0202】
角膜断層撮影
麻酔された動物の角膜を、Rostock Corneal Module(HRT III RCM)を備えたHeidelberg Retinal Tomographで撮像した。このコンパクトな眼科デバイスは、共焦点走査レーザー顕微鏡を使用して、角膜実質細胞亜集団及び角膜基底下神経叢を含む、角膜細胞及び構造の高解像度表面画像を提供する。上皮から内皮への中心角膜共焦点走査を行い、400μm×400μm及び2μm厚の光学スタックを生成し、分析のために電子的に貯蔵した。
【0203】
サンプリングプロトコル及びデータ分析。
内皮の上の約150μmに対応する光走査のスタックのサンプリング領域を選択した。これは、内皮から上の75の画像を計数し、複製物としての役割を果たす5つの隣接画像を選択することにより行われた。反射的に別個の不規則な形状の物体として提示された角膜実質細胞。5つの画像からのカウントを次に平均化し、カウント/視野として表現し、平均値±標準偏差(SD)としてグラフで表示した。対応のないスチューデントT検定を使用して、ヒスタチン-1群とヒスタチン-1+ペプチド6群を比較した;p<0.05を統計的に有意とみなした。
【0204】
結果
図1Aは、実験の結果を示す。外科的角膜切除術は、10日目にピークに達し、21日目まで比較的不変のままである間質角膜実質細胞の漸進的な喪失を誘発した。7日目、10日目、14日目、及び21日目についてのPBS群中のベースラインからの低減パーセント(平均値±SD)は、それぞれ、35.7±3、58.6±5.5、54.6±3.7、及び52±2.6であった。7日目のヒスタチン-1及びヒスタチン-1+ペプチド6の組み合わせ群における応答は、PBS群と同様であり、それぞれ、40.2±3.3及び42.4±14.2の角膜実質細胞の低減パーセントを伴った。両方の薬物群は、10日目、14日目、及び21日目に角膜実質細胞の喪失において有意な低減を示した。10日目、14日目、及び21日目についてのヒスタチン-1のみの群についての低減パーセントは、それぞれ、37.5±2.4、32.7±15.3、及び26.5±6.0であったが;併用群については、低減パーセントは、32.7±9.5、28.1±13.7、及び3.7±4.4であった。興味深いことに、ヒスタチン-1群とヒスタチン-1+ペプチド6併用群の間での21日目の結果の比較は、局所用製剤中でのペプチド6の包含が、角膜実質細胞の回復の速度を増加させたように見えることを示す統計的に有意な(p=0.0009)及び意味のある差を示す。
【0205】
図1Bは、28日目までの実験の結果を示す。28日目についてのPBS群におけるベースラインからの低減パーセント(平均値±SD)は、39.9±4.2であった。ヒスタチン-1群及びヒスタチン-1+ペプチド6併用群の両方が、28日目に角膜実質細胞の喪失における有意な低減を示した。28日目についてのヒスタチン-1のみの群についての低減パーセントは、2.7±13であったが;併用群については、低減パーセントは-8.8±4.3であった。これらのデータは、28日目までにヒスタチン-1のみの群において及び21日目までに併用群において完全な回復を示し、ペプチド6の補助的使用が、約7日までの回復までの時間の改善を提供したことを示唆する。
【0206】
実施例2
角膜内皮細胞密度に対するヒスタチン-1の効果。
方法
動物
約4~6ヶ月齢で体重2~3kgの16匹のニュージーランド白色ウサギを、8匹の動物の2群に分け、片側外科的角膜切除処置後に35μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は35μlの80μMのヒスタチン-1のいずれかを28日間にわたり一日あたり三回(TID)局所投与した。
【0207】
外科的角膜切除術
動物には、手技直前に疼痛管理のためにブプレノルフィン(0.01~0.05mg/kg、SC)を投与した。ブプレノルフィンの第二用量(0.01~0.05mg/kg、SC)を夕方に投与し、次に、必要に応じて投与した。動物を、ケタミン/キシラジンカクテル(50mg/kgケタミン及び10mg/kgキシラジンIM)を用いて手術のために誘発した;麻酔を、必要に応じてマスクを通して酸素中に送達されたイソフルランを用いて維持した。麻酔の誘発後、5%のベタジン溶液をオートクレーブ滅菌ガーゼ上で使用して、術後の眼の眼周囲(眼瞼)領域を清掃した。ベタジンを次に使用して、眼表面及び結膜円蓋を灌注し、それを次に、滅菌洗眼液で完全に灌注した。0.5%プロパラカインHCl及び10%フェニルエフリンHClの各々一滴を次に、それぞれ眼麻酔及び散瞳のために眼表面に適用した。ウサギを手術顕微鏡下に位置付け、開瞼器を取り付けた。調整可能な8mm角膜真空トレフィン(Moria Surgical、フランス、アントニー)を使用して、約10~25%の間質深さ(約100μm)の中央角膜欠損を作製した。角膜の穿孔された切片を除去し、創傷を開いたままにした。手術直後に、局所抗生物質(ネオマイシンポリミキシンB硫酸グラミシン眼科溶液)の単回用量を適用した。
【0208】
角膜断層撮影
麻酔された動物の角膜を、Rostock Corneal Module(HRT III RCM)を備えたHeidelberg Retinal Tomographで撮像した。このコンパクトな眼科デバイスは、共焦点走査レーザー顕微鏡を使用して、角膜基底下神経叢、角膜実質細胞亜集団、及び角膜内皮細胞層を含む、角膜細胞及び構造の高解像度表面画像を提供する。上皮から内皮への中心角膜共焦点走査を行い、400×400μm及び2μm厚の光学スタックを生成し、分析のために電子的に貯蔵した。
【0209】
サンプリングプロトコル及びデータ分析
最良の解像度及び最大被覆度を有する内皮層を伴う光学スライスを選択した。試験中の16匹の動物のうち、14匹の動物のみが、1つ又は複数の時間点で使用可能な内皮細胞層を伴うスキャン、及び任意の単一の時間点で最高4つだけの使用可能なスキャンを有した。HRT III細胞計数ソフトウェアを使用して、画像のコントラスト及び輝度を調整し、選択された関心領域(ROI)内の手動細胞計数を増強した。ROIは>0.005mm2であった。ROI内の細胞数は、118~287の範囲であった。ROIの縁での部分細胞(>1/2)を、直角の2つの側のみで計数した。ソフトウェアによって、選択されたROIにおける手動計数に基づいて、内皮細胞密度を細胞/mm2として計算した。データは、平均値±標準偏差細胞/mm2として提示される。対応のないスチューデントT検定を使用して、各追跡時間点でPBS群とヒスタチン-1群を比較した;p<0.05を統計的に有意とみなした。
【0210】
結果
図5は、実験の結果を示す。外科的前方角膜切除術によって、内皮細胞密度の喪失が誘発され、それは14日目にピークに達し、28日目まで抑制されたままであった。7日目、10日目、14日目、21日目、及び28日目についてのPBS群におけるベースラインからの低減パーセント(平均値±SD)は、それぞれ、13.8±2.6、19.5±9.6、21.9±3.4、22.5±8.4、及び20.2±5.0であった。7日目でのヒスタチン-1群における応答は、PBS群と同様であり、内皮細胞密度の低減パーセントは15.1±2.8(p>0.05)であった。10日目、14日目、21日目、及び28日目についてのヒスタチン-1群についての低減パーセントは、それぞれ、1.1±9.1、-0.2±5.9、4.5±7.8、及び7.4±2.8であった。ヒスタチン-1応答は、14日目、21日目、及び28日目にPBS(P<0.05)とは有意に異なっていた。これらのデータは、10日目までに開始されたヒスタチン-1群における回復及び明らかな正常化を示す。
【0211】
実施例3
角膜神経再生に対するヒスタチン-1及びペプチド6の効果。
方法
動物
約4~6ヶ月齢で体重2~3kgのニュージーランド白色ウサギ12匹を、4匹の動物の3群に分け、片側外科的角膜切除手技後に、35μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、35μlの80μMヒスタチン-1、又は35μlの80μMヒスタチン-1+100μMペプチド6のいずれかを28日間にわたり一日あたり三回(TID)局所投与した。
【0212】
外科的前方角膜切除術
動物には、手技直前に疼痛管理のためにブプレノルフィン(0.01~0.05mg/kg、SC)を投与した。ブプレノルフィンの第二用量(0.01~0.05mg/kg、SC)を夕方に投与し、次に、必要に応じて投与した。動物を、ケタミン/キシラジンカクテル(50mg/kgケタミン及び10mg/kgキシラジンIM)を用いて手術のために誘発した;麻酔を、必要に応じてマスクを通して酸素中に送達されたイソフルランを用いて維持した。麻酔の誘発後、5%のベタジン溶液をオートクレーブ滅菌ガーゼ上で使用して、術後の眼の眼周囲(眼瞼)領域を清掃した。ベタジンを次に使用して、眼表面及び結膜円蓋を灌注し、それを次に、滅菌洗眼液で完全に灌注した。0.5%プロパラカインHCl及び10%フェニルエフリンHClの各々一滴を次に、それぞれ眼麻酔及び散瞳のために眼表面に適用した。ウサギを手術顕微鏡下に位置付け、開瞼器を取り付けた。調整可能な8mm角膜真空トレフィン(Moria Surgical、フランス、アントニー)を使用して、約10~25%の間質深さ(約100μm)の中央角膜欠損を作製した。角膜の穿孔された切片を除去し、創傷を開いたままにした。手術直後に、局所抗生物質(ネオマイシンポリミキシンB硫酸グラミシン眼科溶液)の単回用量を適用した。
【0213】
角膜の全載免疫組織化学
眼の調製
免疫組織化学用に指定された眼を、室温(RT)でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に置いて、角膜縁に小さな切開を作製するために#10メスを使用して2~3mmの強膜辺縁を伴って角膜を切除して、湾曲はさみで各角膜を分離した。二対の鉗子を使用して、虹彩及びレンズを注意深く剥がし、廃棄した。デスメ膜(DM)を、透明な角膜/強膜とメスの交点の近くに0.5~1mmの切開を作製することにより除去した。逆Terry-Sinskeyフックを次に使用して、DMの皮弁を掻爬させ、遊離させた。角膜を次に、PBSを含むディッシュに移し、DM皮弁を掴んで剥がした。
【0214】
固定
角膜を、0.1Mリン酸緩衝液、pH7.4中で製剤化された2%パラホルムアルデヒド中で2時間にわたり固定した。固定後、角膜を、1%正常ロバ血清及び0.15%トリトンx-100を含む0.1M PBS中の1/1,000マウス抗TUJ1抗体(BioLegendカタログ番号801213)及び1/300ヤギ抗Iba1中で、48時間にわたり4°Cでインキュベートした。角膜を次に、PBS中で5×5分間洗浄し、1%正常ロバ血清及び0.15%トリトンx-100を含む0.1M PBS中の1/500ロバ抗マウスCy2、1/500ロバ抗ヤギCy3、及び1/5,000 DAPIを用いて、15時間にわたり4°Cでインキュベートし、その後に、角膜をPBS中で5×5分間洗浄し、以下に記載されるように取り付けた。
【0215】
スライドの調製
角膜をそれらの最終洗浄液中でインキュベートした一方で、撮像スペーサーを伴うスライドを調製した。0.36、0.6mm、又は二つの接着撮像スペーサーの組み合わせ(Grace Biolabsカタログ番号SA-S-3L;楕円形の窓切り抜きを伴う22×40mm長方形にカスタムカット)をガラススライドに接着させて;スペーサーの厚さを、処置した眼についての剖検の日に測定された角膜の厚さにより決定して;対照角膜は0.36mmスペーサーを利用した。
【0216】
取り付け
最終洗浄後、湾曲はさみを使用して、強膜辺縁のほぼ全てを除去した。次に、#10メスブレードを使用して、4~6の小さな切開を、外周周囲に作製して角膜を平坦化した。角膜を次に、スペーサーウィンドウ内に注意深く置き、内皮側を下向きにし、3~4滴の封入培地(90%グリセロール、0.5%没食子酸N-プロピル、20mMトリスpH8)を、2mLトランスファーピペットを使用して適用した。スライドに、次に、穏やかにカバースリップして、気泡を避けるように注意した。スライドを、4X蛍光体対物レンズを使用してOlympus Bx63直立蛍光顕微鏡で撮像し、画像を、Olympus CellSensソフトウェアを使用して取得した。中央の角膜領域を、タイリングにより撮像し、手術領域全体の合成画像を作製した。
【0217】
データ分析
Olympus CellSensソフトウェアからのグレースケールTuj1画像を、Fuji ImageJソフトウェア(NIH)中にインポートした。システムを画像上のmmスケールに較正した。8mm円を次に作製し、画像上の中心に置き、最初の傷害を伴う領域を捕捉した。8mm円の外部領域を除去した。画像をシャープにして、神経をより良好に可視化し、分析を簡単にするために四分円に分割した。フリーハンド選択ツールを次に使用して、再生神経を含む傷害領域中の領域をマッピングした。測定ツールを使用して、面積をmm2で読み取った。データを、50.3mm2の初期8mm病変面積のパーセントとして表し、平均値±標準偏差として提示する。
【0218】
結果
図6は、実験の結果を示す。外科的角膜切除術は、28日目に角膜神経により覆われた領域の約70%の低減をもたらした。PBSで処置された動物における神経再生の面積は16.3±7mm
2であり、それは初期病変面積の32.4±14%である。ヒスタチン-1で処置された眼における神経再生の面積は26.1±7mm
2であり、それは病変面積の51.9±14%に相当する。ペプチド6の補助的使用は、最も強い効果を産生した:神経再生の面積は、病変面積の63.4±11%に相当する31.4±12mm
2であった。これらのデータは、以下のランク付けされた効力の順序を伴って、病変領域におけるより良好な神経再生を示す:ヒスタチン-1+ペプチド6>ヒスタチン-1。
【0219】
実施例4
角膜ボタン保存に対するヒスタチン-1の効果。
方法
Life4o C(商標)又はOptisol(商標)Corneal Storage Medium中で製剤化された1μMヒスタチン-1の効果を、ストレス条件下で貯蔵された9対のヒト非外科的角膜ボタンにおける内皮細胞の保存に対して評価した。4°Cで3日間にわたり貯蔵した後、組織を、室温(24±2°C)で6~14日間にわたり、20mLのBausch & Lomb(商標)Cornea Tissue Viewingチャンバー中に個別に貯蔵した。全てのドナーが白人/コーカサス人であった。年齢の中央値は64歳であり、14~73の範囲であった。死亡の時間から角膜の保存までの時間の量は、4時間15分~20時間48分の範囲であった。組織収集の時間での内皮細胞数は、2222±240細胞/mm2であった。ヒスタチン-1を、1μMの濃度を維持するのに十分な量における200μLの容量で、一日毎に右目(OD)に加えた。左眼(OS)に等容量のPBSを与えた。内皮細胞の生存率を、中央の角膜の80%のパーセンテージとして表現される生育不能な領域としてトリパンブルー染色により評価した。簡単には、角膜ボタンを貯蔵チャンバーから観察ウェル(バロンパンチカッティングブロック)に、内皮側を上にして移し、内皮層の角膜縁から角膜縁までを覆うのに十分な容量で0.06%トリパンブルーを適用して90秒間にわたり放置し、次にPBSで二回洗浄した。トリパンブルー染色の取り込みは、上皮細胞死を示したが、そのため、より少ない染色の程度が、より生存可能な組織と相関している。角膜を次に、Zeissアイピースカメラモデル# AXIOCCM 208を備えたZeiss Surgical Scope、モデル# STMI 508で撮像した。「Weka Segmentation」ソフトウェアを用いたImage J (NIH)を使用して、データを分析した。
【0220】
結果
PBS群及びヒスタチン-1群において染色された面積は、それぞれ、22.0±5.8%及び12.1±2.9%であった;平均値±SEM(
図7を参照のこと)。このように、角膜ボタンへのヒスタチン-1の添加は、内皮領域中の染色領域の45%の低減をもたらした。これらのデータは、ストレス条件下で、例えば室温などで、標準的な角膜貯蔵培地中で1μMヒスタチン-1とインキュベートされたヒト角膜ボタンが、内皮細胞の喪失の有意な保存、及び、このように、貯蔵中の角膜組織の増強された保存をもたらすことを示唆する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】