(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】がん免疫療法を増強するための免疫原性細胞死誘導剤のナノ構築物及びナノ粒子媒介性送達
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20240723BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240723BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240723BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240723BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K45/00
A61K39/39
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/04
A61K9/127
A61K38/08
A61K31/337
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K31/706
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503926
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022037727
(87)【国際公開番号】W WO2023003957
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517417773
【氏名又は名称】パーデュー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヨー
(72)【発明者】
【氏名】スンブム・クォン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA65
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4C076BB15
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4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
免疫アジュバント(例えば、ATP)でコートされたナノ粒子を含み、その中にカプセル化された1種又は複数の治療剤(例えば、ICD誘導剤)を含むナノ構築物及び組成物;並びに、そのようなナノ構築物及び組成物、並びに併用免疫療法を使用して、対象におけるがんを治療するための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面を有するナノ粒子;
ナノ粒子内にカプセル化された1種又は複数の治療剤;及び
ナノ粒子の外面に結合した免疫アジュバント修飾ポリフェノール化合物
を含むナノ構築物。
【請求項2】
ポリフェノール化合物は、重合ドーパミン(pD)、タンニン酸、タンニン酸-鉄錯体、没食子酸、エラグ酸、ヒドロキシヒドロキノン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、及びピロガロールからなる群から選択される、請求項1に記載のナノ構築物。
【請求項3】
免疫アジュバントは、アデノシン三リン酸、カルレティキュリン、高移動度群ボックス1、デオキシリボ核酸、アネキシンA1、I型インターフェロン、熱ショックタンパク質70、及び熱ショックタンパク質90からなる群から選択される、請求項1に記載のナノ構築物。
【請求項4】
ナノ粒子は、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン、D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸-PLGAコンジュゲート、ポリ乳酸、PLGA-メトキシ-ポリエチレングリコール、エチレン酢酸ビニル、メソポーラスシリカ、リポソーム、ナノ結晶、及びポリフェノール凝集体からなる群から選択される、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項5】
ナノ粒子はPLGAである、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項6】
1種又は複数の治療剤は、1種又は複数の化学療法剤である、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項7】
1種又は複数の治療剤のうちの少なくとも1種は免疫原性細胞死誘導剤である、請求項1に記載のナノ構築物。
【請求項8】
1種又は複数の治療剤は、オキサリプラチン、カルフィルゾミブ、パクリタキセル、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シクロホスファミド、又は強心配糖体である、請求項1、2、3、又は7のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項9】
1種又は複数の治療剤はカルフィルゾミブである、請求項1、2、3、又は7のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項10】
1種又は複数の治療剤はパクリタキセルである、請求項1、2、3、又は7のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項11】
免疫アジュバントは、ナノ構築物の約10.5wt%~約12.5wt%である、請求項1、2、3、又は7のいずれか一項に記載のナノ構築物。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11に記載のナノ構築物、及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11に記載のナノ構築物、又は請求項12に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを治療するための方法。
【請求項14】
投与する工程は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、腫瘍内に、又は局所的に実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対象に免疫療法を投与する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤療法である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ナノ構築物の治療有効量は、対象への免疫療法の投与前に対象に投与される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
外面を有するナノ粒子、
ナノ粒子内にカプセル化された1種又は複数の治療剤、及び
ナノ粒子の外面に結合した免疫アジュバント修飾ポリフェノール化合物
を含むナノ構築物の治療有効量を含むプライミング用量
;並びに
免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍標的化抗体、又はがんワクチン
を対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを治療するための方法であって、プライミング用量は、標的部位で対象における抗腫瘍免疫応答を誘導する又は増強する、方法。
【請求項19】
免疫アジュバントは、アデノシン三リン酸、カルレティキュリン、高移動度群ボックス1、デオキシリボ核酸、アネキシンA1、I型インターフェロン、熱ショックタンパク質70、及び熱ショックタンパク質90からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1種又は複数の治療剤は、オキサリプラチン、カルフィルゾミブ、パクリタキセル、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シクロホスファミド、及び強心配糖体からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ナノ粒子は、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン、D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸-PLGAコンジュゲート、ポリ乳酸、PLGA-メトキシ-ポリエチレングリコール、エチレン酢酸ビニル、メソポーラスシリカ、リポソーム、ナノ結晶、及びポリフェノール凝集体からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ナノ粒子はPLGAである、請求項18、19、20、又は21に記載の方法。
【請求項23】
1種又は複数の治療剤は化学療法剤である、請求項18、19、20、又は21に記載の方法。
【請求項24】
治療剤の少なくとも1種は免疫原性細胞死誘導剤である、請求項18、19、20、又は21に記載の方法。
【請求項25】
ポリフェノール化合物は、重合ドーパミン(pD)、タンニン酸、タンニン酸-鉄錯体、没食子酸、エラグ酸、ヒドロキシヒドロキノン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、及びピロガロールからなる群から選択される、請求項18、19、20、又は21に記載の方法。
【請求項26】
プライミング用量は、免疫チェックポイント阻害剤の少なくとも4日前に投与され、それによって対象におけるがんが治療される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1(例えば、ニボルマブ又はペムブロリズマブ)若しくはPD-L1(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブ)、CTLA-4(例えば、トレメリムマブ又はイピリムマブ)を標的にする抗体若しくは抗体フラグメント、抗CD25抗体(例えば、バシリキシマブ)、又はデシタビン(例えば、T細胞疲弊を制御する脱メチル化剤)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
標的部位は固形腫瘍である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
標的部位はがん性組織又は細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11に記載のナノ構築物、又は請求項12に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む、対象における抗がん免疫応答を増強するための方法。
【請求項31】
対象における標的部位に1種又は複数の治療剤を送達する工程を含む、標的部位への免疫細胞の浸潤を増強する方法であって、送達は、標的部位にナノ構築物を送達する条件下で、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11に記載のナノ構築物、又は請求項12に記載の組成物の治療有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項32】
標的部位は固形腫瘍であり、ナノ構築物は、標的部位で抗腫瘍特異的免疫応答を増強する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ナノ構築物又は組成物の治療有効量を投与する工程は、標的部位で免疫原性細胞死を誘導する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
標的部位は固形腫瘍であり、ナノ構築物又は組成物の治療有効量の投与は、固形腫瘍の体積の減少をもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ナノ構築物又は組成物の治療有効量の投与は、腫瘍の寛解をもたらす、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
投与する工程は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、腫瘍内に、又は局所的に実施される、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年7月21日に出願された米国仮特許出願第63/224,009号に関連し且つその優先権の利益を主張するものであり、その内容は、本開示へのその全体としての参照により本明細書によって明示的に組み入れられる。
【0002】
政府権利
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたCA232419及びCA258737の下で政府支援により行われた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、概して、ナノ粒子、具体的にはアデノシン三リン酸で表面修飾されている、抗がん薬(例えば、免疫原性細胞死誘導剤)を担持したポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)ナノ粒子、及びそのようなナノ粒子を使用したがんの治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、米国において2番目に多い死亡の原因であり、毎年600,000人を上回る人々の命を奪う。2022年には、米国において、190万人を上回る患者ががんを有すると診断されると予測される。がん腫瘍の致死性は過去数年間にわたって下降傾向にあるものの、これは、治療効力の増加よりもむしろ、早期検出技法の開発及びライフスタイルの改善に起因する可能性が高い。がんを治療するために様々なタイプの抗腫瘍治療的処置が開発されているものの、患者変動性及び腫瘍不均一性に少なくとも部分的に起因して、限界がなおも存在する。
【0005】
患者自身の免疫系を利用することによって既存の限界を克服することを期待して、がん免疫療法が探索されており、様々な治療剤の開発につながっている。一般的に、免疫療法は、がん性腫瘍等の標的に対する宿主の免疫防御を選択的に活用することによって作用する。免疫チェックポイント遮断免疫療法は、T細胞陰性調節分子(例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)及び抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)等)を遮断する抗体及び他の化合物を使用する1種のそのようなタイプの免疫療法であり、一部の患者において肯定的な結果をもたらしている。しかしながら、進行性腫瘍に存在する免疫抑制性経路の複雑なネットワークに起因して、ごく少数の患者しかこの療法に応答しない。
【0006】
他のがん免疫療法は、免疫原性細胞死(ICD)誘導剤を利用することを伴う。ICDは、腫瘍特異的T細胞免疫につながる、樹状細胞を活性化し得るがん細胞死の形態である。細胞死は、アポトーシス及びネクローシスという2種の異なるタイプの細胞死のみに単に分けられ得ると長く考えられたが、最近の知見は、より多くの複雑性が存在することを示唆する。免疫原性アポトーシス細胞死は、宿主の免疫系に警報を発し、免疫学的応答のカスケードを引き起こすことから、第3のタイプの細胞死である免疫原性アポトーシス細胞死は、アポトーシスの十分に確立された概念(細胞の沈黙の除去)とは異なる。故に、ICD誘導剤は、腫瘍抗原を曝露するように腫瘍細胞死を誘導し、がん細胞において小胞体ストレス及び活性酸素種産生を伴い、それが今度は、ダメージ関連分子パターン(DAMP)として公知のシグナル伝達分子の排出を誘導する。
【0007】
DAMPは、T細胞に抗原を提示することに特化する免疫細胞である抗原提示細胞(APC)を活性化する免疫アジュバントとしての役割を果たす。DAMPの放出は宿主免疫系を誘発し得、それは、瀕死のがん細胞に堅牢なアジュバント性を付与し得る。ICD関連DAMPは、表面曝露されたカルレティキュリン(CRT)、並びに分泌されたアデノシン三リン酸(ATP)、アネキシンA1(ANXA1)、I型インターフェロン、及びクロマチン結合性高移動度群B1(HMGB1)を含み得る。ICDの付加的な特質は、真核生物翻訳開始因子2サブユニット-α(EIF2S1又はelF2α)のリン酸化、オートファジーの活性化、並びに転写及び翻訳の全体的停止を包含する。
【0008】
一部の化学療法剤(例えば、オキサリプラチン、ミトキサントロン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、及びシクロホスファミド)はICD誘導剤であり得る。これらの物質はICDの特徴を持ち、それにより、腫瘍を治療するために使用される場合、それらは、持続的な免疫細胞活性化に起因して付加的な治療効果を提供する。しかしながら、これまでのところ、化学療法剤は、腫瘍での保持不足に起因して、限定された治療効力を有している。更に、ICD誘導剤は高い免疫毒性を呈し、それは、単独で又は免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせで使用される場合、依然として重大な課題である。
【0009】
加えて、腫瘍微小環境(TME)は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、骨髄由来サプレッサー細胞、がん関連線維芽細胞、腫瘍関連好中球、及び調節性T細胞を含めた、複数の免疫抑制性細胞によって調節され得る。例えば、TAMは、固形腫瘍塊の最高50%を構成し得、がん細胞及び他の免疫細胞と相互作用して、血管新生、免疫抑制、及び炎症を促進することにより、腫瘍成長を促し得る。免疫抑制性TMEは、ICD誘導性化学療法の効力を更に複雑にし得る。
【0010】
上記を考慮して、本開示は、ICD誘導剤をカプセル化し得(すなわち、カーゴとして)、腫瘍細胞の抗原性を増加させ得、免疫細胞を動員し得、且つ/又は例えば免疫チェックポイント遮断療法等の他の免疫療法と併せて使用され得る、ナノ粒子又は化合物を提供することを追求する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yuら、Pharmacokinetics, biodistribution and in vivo efficacy of cisplatin loaded poly(L-glutamic acid)-g-methoxy poly(ethylene glycol) complex nanoparticles for tumor therapy、J Control Release 205:89~97 (2015)
【非特許文献2】Liら、Efficient delivery of docetaxel for the treatment of brain tumors by cyclic RGD-tagged polymeric micelles、Molecular Med Reports 11:3078~3086 (2015)
【非特許文献3】Parkら、Polydopamine-based simple and versatile surface modification of polymeric nano drug carriers、ACS Nano 8:3347~3356 (2014)
【非特許文献4】Raymondら、Oxaliplatin:mechanism of action and antineoplastic activity、Semin Oncol 25:4~12 (1998)
【非特許文献5】Rafiei及びHaddadi、Docetaxel-loaded PLGA and PLGA-PEG nanoparticles for intravenous application:pharmacokinetics and biodistribution profile、Int J Nanomedicine 12:935~947 (2017)
【非特許文献6】Liuら、Mixed Liposome Approach for Ratiometric and Sequential Delivery of Paclitaxel and Gemcitabine、AAPS PharmSciTech、19:693~699 (2018)
【非特許文献7】Park及びYeo、Albumin-coated nanocrystals for carrier-free delivery of paclitaxel、J. Controlled Release 263:90~101 (2017)
【非特許文献8】Parkら、A Comparative In Vivo Study of Albumin-Coated Paclitaxel Nanocrystals and Abraxane、Small 14:e1703670 (2018)
【非特許文献9】Jorgovanovicら、Roles of IFN-gamma in tumor progression and regression:a review、Biomark Res 8:49 (2020)
【非特許文献10】Hanら、Turning the Tide Against Regulatory T Cells、Front Oncol 9:279 (2019)
【非特許文献11】Yoshidaら、Anti-PD-1 antibody decreases tumour-infiltrating regulatory T cells、BMC Cancer 20:25 (2020)
【非特許文献12】Ravelliら、Immune-related strategies driving immunotherapy in breast cancer treatment:a real clinical opportunity、Expert Rev Anticancer Ther 15:689~702 (2015)
【非特許文献13】Messenheimerら、Timing of PD-1 Blockade Is Critical to Effective Combination Immunotherapy with Anti-OX40、Clin Cancer Res 23:6165~6177 (2017)
【非特許文献14】Kimら、Sequential and Timely Combination of a Cancer Nanovaccine with Immune Checkpoint Blockade Effectively Inhibits Tumor Growth and Relapse、Angew Chem Int Ed Engl 59:14628~14638 (2020)
【非特許文献15】Rajabnia及びMeshkini、Fabrication of adenosine 5'-triphosphate-capped silver nanoparticles:Enhanced cytotoxicity efficacy and targeting effect against tumor cells、Process Biochemistry 65:186~196 (2018)
【非特許文献16】Hyunら、Surface modification of polymer nanoparticles with native albumin for enhancing drug delivery to solid tumors、Biomaterials 180:206~224 (2018)
【非特許文献17】Xuら、Quinic Acid-Conjugated Nanoparticles Enhance Drug Delivery to Solid Tumors via Interactions with Endothelial Selectins、Small 14:e1803601 (2018)
【発明の概要】
【0012】
ナノ構築物が提供される。ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、外面を有するナノ粒子、ナノ粒子内にカプセル化された1種又は複数の治療剤、及びナノ粒子の外面に結合した免疫アジュバント修飾ポリフェノール化合物を含む。
【0013】
ポリフェノール化合物は、重合ドーパミン(pD)、タンニン酸、タンニン酸-鉄錯体、没食子酸、エラグ酸、ヒドロキシヒドロキノン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン(epigallocatechin galate)、及びピロガロールからなる群から選択され得る。ある特定の実施形態において、ポリフェノール化合物はpDである。
【0014】
免疫アジュバントは、アデノシン三リン酸(ATP)、カルレティキュリン、高移動度群ボックス1、デオキシリボ核酸、アネキシンA1、I型インターフェロン、熱ショックタンパク質70、及び熱ショックタンパク質90からなる群から選択され得る。ある特定の実施形態において、免疫アジュバントはATPである。ある特定の実施形態において、免疫アジュバントはカルレティキュリンである。ある特定の実施形態において、免疫アジュバントは高移動度群ボックス1である。免疫アジュバントは、例えばナノ構築物の約10.5wt%~約12.5wt%、又は望ましいと見なされる構築物の任意の他のwt%であり得る。
【0015】
ナノ粒子は、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン、D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸-PLGAコンジュゲート、ポリ乳酸、PLGA-メトキシ-ポリエチレングリコール、エチレン酢酸ビニル、メソポーラスシリカ、リポソーム、ナノ結晶、及びポリフェノール凝集体からなる群から選択され得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子はPLGAナノ粒子である。ある特定の実施形態において、ナノ粒子はPLGA-メトキシ-ポリエチレングリコールナノ粒子である。ある特定の実施形態において、ナノ粒子はリポソームである。ある特定の実施形態において、ナノ粒子はナノ結晶である。
【0016】
1種又は複数の治療剤は、1種又は複数の化学療法剤であり得る。ある特定の実施形態において、1種又は複数の治療剤のうちの少なくとも1種は、免疫原性細胞死(ICD)誘導剤である。ある特定の実施形態において、1種又は複数の治療剤は、オキサリプラチン、カルフィルゾミブ、パクリタキセル、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シクロホスファミド、又は強心配糖体(又は、前述のものの任意の組み合わせ)であり得る。ある特定の実施形態において、1種又は複数の治療剤はカルフィルゾミブである。ある特定の実施形態において、1種又は複数の治療剤はパクリタキセルである。
【0017】
ナノ構築物を含む組成物も提供される。ある特定の実施形態において、そのような組成物は、ナノ構築物及び薬学的に許容される担体を含む。
【0018】
更に、対象におけるがんを治療するための方法が提供される。ある特定の実施形態において、対象におけるがんを治療するための方法は、本明細書に記載されるナノ構築物又は本明細書に記載される組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む。投与する工程は、例えば皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、腫瘍内に、又は局所的に実施され得る。
【0019】
方法は、対象に免疫療法を投与する工程を更に含み得る(例えば、併用治療法)。ある特定の実施形態において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤療法である。ナノ構築物の治療有効量は、対象への免疫療法の投与前に対象に投与され得る。代替的に、ナノ構築物の治療有効量は、対象への免疫療法の投与後に対象に投与され得る。
【0020】
対象におけるがんを治療するための方法も提供され、そのような方法は、外面を有するナノ粒子、ナノ粒子内にカプセル化された1種又は複数の治療剤、及びナノ粒子の外面に結合した免疫アジュバント修飾ポリフェノール化合物を含むナノ構築物の治療有効量を含むプライミング用量;並びに免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍標的化抗体、又はがんワクチンを対象に投与する工程を含み、プライミング用量は、標的部位で対象における抗腫瘍免疫応答を誘導する又は増強する。標的部位は固形腫瘍であり得る。標的部位は、がん性組織又は細胞である。
【0021】
免疫アジュバントは、アデノシン三リン酸、カルレティキュリン、高移動度群ボックス1、デオキシリボ核酸、アネキシンA1、I型インターフェロン、熱ショックタンパク質70、及び熱ショックタンパク質90からなる群から選択され得る。ある特定の実施形態において、1種又は複数の治療剤は、オキサリプラチン、カルフィルゾミブ、パクリタキセル、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シクロホスファミド、及び強心配糖体からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、PLGA、ポリカプロラクトン、D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸-PLGAコンジュゲート、ポリ乳酸、PLGA-メトキシ-ポリエチレングリコール、エチレン酢酸ビニル、メソポーラスシリカ、リポソーム、ナノ結晶、及びポリフェノール凝集体からなる群から選択される。
【0022】
ナノ粒子はPLGAであり得る。1種又は複数の治療剤は化学療法剤であり得る。治療剤の少なくとも1種はICD誘導剤であり得る。方法のポリフェノール化合物は、pD、タンニン酸、タンニン酸-鉄錯体、没食子酸、エラグ酸、ヒドロキシヒドロキノン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、又はピロガロールであり得る。ある特定の実施形態において、方法のポリフェノール化合物は、pD、タンニン酸、タンニン酸-鉄錯体、没食子酸、エラグ酸、ヒドロキシヒドロキノン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、及びピロガロールからなる群から選択され得る。免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1(例えば、ニボルマブ又はペムブロリズマブ)若しくはPD-L1(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブ)、CTLA-4(例えば、トレメリムマブ又はイピリムマブ)を標的にする抗体若しくは抗体フラグメント、抗CD25抗体(例えば、バシリキシマブ)、又はデシタビン(例えば、T細胞疲弊を制御する脱メチル化剤)であり得る。
【0023】
ある特定の実施形態において、方法のプライミング用量は、免疫チェックポイント阻害剤の少なくとも4日前に投与され、それによって対象におけるがんが治療される。
【0024】
対象における抗がん免疫応答を増強するための方法も提供される。ある特定の実施形態において、そのような方法は、本明細書のナノ構築物又は本明細書の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む。
【0025】
なお更に、標的部位への免疫細胞の浸潤を増強する方法が提供され、そのような方法は、対象における標的部位に1種又は複数の治療剤を送達する工程を含み、送達は、標的部位にナノ構築物を送達する条件下でナノ構築物又は組成物の治療有効量を投与する工程を含む。ある特定の実施形態において、標的部位は固形腫瘍であり、ナノ構築物は、標的部位で免疫応答(例えば、抗腫瘍特異的免疫応答)を増強する。
【0026】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物又は組成物の治療有効量を投与する工程は、標的部位でICDを誘導する。ある特定の場合には、標的部位は固形腫瘍であり、ナノ構築物又は組成物の治療有効量の投与は、固形腫瘍の体積の減少をもたらす。
【0027】
ナノ構築物又は組成物の治療有効量の投与は、腫瘍の寛解をもたらし得る。ある特定の実施形態において、投与する工程は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、腫瘍内に、又は局所的に実施される。
【0028】
開示される実施形態、並びに本明細書に含有される他の特色、利点、及び態様、並びにそれらを実現する物は、本開示の様々な例示的な実施形態についての以下の詳細な説明を踏まえて明らかになるであろう。そのような詳細な説明は、添付の図面と合わせられた場合によりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】IC
50の細胞傷害剤で処理されたCT26細胞からのダメージ関連分子パターン(DAMP)の放出に関するデータを示した図である。
図1Aは、CT26細胞表面でのカルレティキュリン(CRT)曝露に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図1B】IC
50の細胞傷害剤で処理されたCT26細胞からのダメージ関連分子パターン(DAMP)の放出に関するデータを示した図である。
図1Bは、培地中で測定されたHMGB1に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図1C】IC
50の細胞傷害剤で処理されたCT26細胞からのダメージ関連分子パターン(DAMP)の放出に関するデータを示した図である。
図1Cは、培地中で測定されたアデノシン三リン酸(ATP)に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図2A】IC
50の細胞傷害剤で処理された4T1細胞からのDAMPの放出に関するデータを示した図であり、
図2Aは、4T1細胞表面でのCRT曝露に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図2B】IC
50の細胞傷害剤で処理された4T1細胞からのDAMPの放出に関するデータを示した図であり、
図2Bは、培地中で測定されたHMGB1に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図2C】IC
50の細胞傷害剤で処理された4T1細胞からのDAMPの放出に関するデータを示した図であり、
図2Cは、培地中で測定されたATPに関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図3A】IC
50の細胞傷害剤で処理されたB16F10細胞からのDAMPの放出に関するデータを示した図であり、
図3Aは、B16F10細胞表面でのCRT曝露に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図3B】IC
50の細胞傷害剤で処理されたB16F10細胞からのDAMPの放出に関するデータを示した図であり、
図3Bは、培地中で測定されたHMGB1に関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図3C】IC
50の細胞傷害剤で処理されたB16F10細胞からのDAMPの放出に関するデータを示した図であり、
図3Cは、培地中で測定されたATPに関するデータを示している。ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、ns:有意差なし。
【
図4】CFZ又はPTXを用いた6時間又は24時間の処理後の、JAWSII DCによって貪食されたCT26細胞のパーセントを示した図である(ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、***:p<0.001、****:p<0.0001、ns:有意差なし)。
【
図5】インビボワクチン接種調査からのデータを示した図であり、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は対照であり、ゲムシタビン(GEM)は陰性対照であり、オキサリプラチン(OXA)は陽性対照であり、パクリタキセル(PTX)及びカルフィルゾミブ(CFZ)は薬物候補である。
【
図6】CT26免疫優性MHCクラスI拘束性抗原であるAH1ペプチドを用いた刺激後の、脾細胞からのインターフェロンガンマ(IFN-γ)分泌データを示した図である。
【
図7A】10mMリン酸緩衝液、pH7.4中で測定されたNP-pD-ATPのサイズ及びゼータ電位についての棒グラフである。
【
図7B】ATP対ナノ粒子(NP)比(w/w)に基づく、ATPコンジュゲーションの変化についてのプロットである。
【
図7C】NP-pD-ATPの透過型電子顕微鏡写真(TEM)である(1%酢酸ウラニルを用いたネガティブ染色によって可視化された;スケールバー:100nm)。
【
図8A】NP-pD-ATP又はATPを用いたTranswell調査セットアップの略図である。
【
図8B】
図8Aの調査から回収されたデータのグラフであり、
図8Bは、Transwellをわたって移動したTHP-1細胞のパーセントを示している(ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、***:p<0.001、ns:有意差なし)。
【
図8C】
図8Aの調査から回収されたデータのグラフであり、
図8Cは、Transwellをわたって移動したJAWSII細胞のパーセントを示している(ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、***:p<0.001、ns:有意差なし)。
【
図8D】様々なインキュベーション時間後の、Transwellをわたって移動したJAWSII細胞のパーセントを示した図である。
【
図8E】各処理に応答してTranswellをわたって移動したJAWSII細胞のパーセンテージによって推定された、PLGA-pD-ATPの安定性を示した図である。上清&ペレット:ナノ粒子を10% FBS含有培地中で24時間プレインキュベートし、上清及びペレットに分離した(灰色の棒)。上清に応答したJAWSII細胞移動の欠如は、ATPがナノ粒子に結合したままであり、上清に放出されなかったことを示す。
【
図9A】アピラーゼの有無での、NP-pD-ATP又はATPを用いたTranswell調査セットアップの略図である。
【
図9B】
図9Aに示される調査から回収されたデータのグラフであり、
図9Bは、アピラーゼでの処理後の、Transwellをわたって移動したJAWSII細胞のパーセントを示している(ダネットの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、***:p<0.001、ns:有意差なし)。
【
図9C】アピラーゼとの共インキュベーション後の、ATP生物発光アッセイを使用して測定されたATPレベルについての棒グラフである。
【
図10】PLGAナノ粒子へのATPコンジュゲーションの略図である。PLGA-NPをpH8.5にてポリドーパミン(pD)層でコートしてPLGA-pDを産生した。ATPのアミン基を、pDのヒドロキシル基に更にコンジュゲートした。
【
図11A】37℃での一定の撹拌を有して、0.2% Tween 80を含有するPBS中で実施された、ナノ粒子からのPTX放出速度を示した折れ線グラフである。
【
図11B】37℃での一定の撹拌を有して、0.2% Tween 80を含有するPBS中で実施された、ナノ粒子からのCFZ放出速度を示した折れ線グラフである。
【
図12A】表示された乳酸対グリコール酸(LA:GA)比及び分子量(kDa)を用いたPLGAから作られた、本開示のナノ粒子からのCFZ放出速度についての折れ線グラフである。調査は、37℃での一定の撹拌を有して、0.2% Tween 80を含有するPBS中で実施された。
【
図12B】CFZを担持したPLGA/PLGA-mPEG-NPからのCFZ放出速度を示した図であり、PLGA/PLGA-mPEG-NPは種々のPLGA:PLGA-mPEG比を有する(例えば、PLGA:PLGA-mPEG-100:0、90:10、50:50、及び0:100)。
【
図12C】CFZを担持し、本明細書に記載されるように高圧ホモジナイザーにおいて種々の圧力(5000psi及び20000psiにおける圧力設定を有する)で産生されたリポソームからのCFZ放出速度を示した図である。
【
図12D】調査の様々な時間における、リポソームにカプセル化されたCFZ放出速度物質収支を示した図である。
【
図13A】2種の異なる細胞タイプ(
図13AではCT26)においてPTX(遊離でもあり、様々なカプセル化形態にもある)を査定した細胞傷害性調査からのデータプロットを示した図である。PTXは遊離薬物であり、PTX@NPは、コートされていないナノ粒子内にカプセル化されたPTXであり、PTX@NP-pDは、pDコートナノ粒子内にカプセル化されたPTXであり、PTX@NP-pD-ATPは、ATPで装飾されたpDコートナノ粒子内にカプセル化されたPTXである。
【
図13B】2種の異なる細胞タイプ(
図13BではJAWSII樹状細胞(DC))においてPTX(遊離でもあり、様々なカプセル化形態にもある)を査定した細胞傷害性調査からのデータプロットを示した図である。PTXは遊離薬物であり、PTX@NPは、コートされていないナノ粒子内にカプセル化されたPTXであり、PTX@NP-pDは、pDコートナノ粒子内にカプセル化されたPTXであり、PTX@NP-pD-ATPは、ATPで装飾されたpDコートナノ粒子内にカプセル化されたPTXである。
【
図14A】2種の異なる細胞タイプ(
図14AではCT26)においてCFZ(遊離でもあり、様々なカプセル化形態にもある)を査定した細胞傷害性調査からのデータプロットを示した図である。CFZは遊離薬物であり、CFZ@NPは、コートされていないナノ粒子内にカプセル化されたCFZであり、CFZ@NP-pDは、pDコートナノ粒子内にカプセル化されたCFZであり、CFZ@NP-pD-ATPは、ATPで装飾されたpDコートナノ粒子内にカプセル化されたCFZである。
【
図14B】2種の異なる細胞タイプ(
図14BではJAWSII DC)においてCFZ(遊離でもあり、様々なカプセル化形態にもある)を査定した細胞傷害性調査からのデータプロットを示した図である。CFZは遊離薬物であり、CFZ@NPは、コートされていないナノ粒子内にカプセル化されたCFZであり、CFZ@NP-pDは、pDコートナノ粒子内にカプセル化されたCFZであり、CFZ@NP-pD-ATPは、ATPで装飾されたpDコートナノ粒子内にカプセル化されたCFZである。
【
図15A】注射後80時間の期間にわたる様々な時点において行われた測定を用いた、各処置の腫瘍内注射後のCT26腫瘍サイズの変化についてのグラフである(PTX 100μgと等価;群あたりn=3)。
【
図15B】各処置の3日目の後の腫瘍におけるCD11c
+CD86
+ DCのパーセンテージ及び細胞の比を表した棒グラフである、テューキーの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、**:p<0.01。TME:腫瘍微小環境。
【
図16】各処置を用いた単回腫瘍内注射後の、経時的な腫瘍からのCy7の放射輝度の変化を示したデータプロットである(群あたりn=5)。
【
図17】経時的な腫瘍の放射輝度の変化を示す、Cy7色素の単回腫瘍内注射後の様々な時点における、AMI全身撮像装置(Spectral Instruments, Inc.社、Tuscon、Arizona)で撮影された画像である。
【
図18】経時的な腫瘍の放射輝度の変化を示す、NP-pD-Cy7の単回腫瘍内注射後の様々な時点における、AMI全身撮像装置で撮影された画像である。
【
図19A】どのようにCT26腫瘍が接種されたか、及び調査の処置が投与されたかに関する手順の略図である。
【
図19B】各群の静脈内注射後のCT26腫瘍サイズの変化についてのグラフである(群あたりn=8)。
【
図19C】処置後の経時的なマウスの生存率についてのグラフである。
【
図20A】どのようにB16F10腫瘍が接種されたか、及び調査の処置が投与されたかに関する手順の略図である。
【
図20B】各群の静脈内注射後の腫瘍サイズの変化についてのグラフである(群あたりn=8)。
【
図20C】処置後の経時的なマウスの生存率についてのグラフである。
【
図21A】どのようにCT26腫瘍が接種されたか、及び調査の処置が投与されたかに関する手順の略図である(アブクスタル(Abxtal)、及びアブクスタル+遊離ATPの付加的な対照群を含む)。
【
図21B】各処置群の静脈内注射後のCT26腫瘍サイズの変化についてのグラフである(群あたりn=5;CR=完全寛解)。
【
図21C】処置(又はその欠如)後のマウスの生存率パーセントについてのグラフである。
【
図22】どのようにCT26腫瘍が接種されたか、及び調査の処置が投与されたかについての略図である(免疫細胞を、各処置の腫瘍内(IT)注射の7日後に分析した)。
【
図23】処置後の7日目における、腫瘍における免疫細胞のパーセント及び細胞の比についての代表的なデータプロットである(
図22と関連させて記載される)、n=5;混合(Mix):PTX@NP-pD+ATP;ATP-NP:PTX@NP-pD-ATP;テューキーの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによる、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、及び****:p<0.0001;並びにns=有意差なし。
【
図24】処置後の7日目における、腫瘍流入リンパ節(TDLN)における免疫細胞のパーセント及び細胞の比についての代表的なデータプロットである(
図22と関連させて記載される)、n=5、混合(Mix)=PTX@NP-pD+ATP;ATP-NP:PTX@NP-pD-ATP、テューキーの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによって、*はp<0.05であり、**p<0.01;**はp<0.01であり、***はp<0.001であり、****はp<0.00001であり、ns=有意差なし。
【
図25】処置後の7日目における、脾臓における免疫細胞のパーセント及び細胞の比についての代表的なデータプロットである(
図22と関連させて記載される)、n=5;混合(Mix):PTX@NP-pD+ATP;ATP-NP:PTX@NP-pD-ATP;テューキーの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによって、*はp<0.05であり、**p<0.01;**はp<0.01であり、***はp<0.001であり、****はp<0.00001であり、ns=有意差なし。
【
図26A】各処置のIT注射後の25日目における、腫瘍における免疫細胞のパーセント及び細胞の比についての代表的なデータプロット、並びに腫瘍のサイズとのそれらの相関関係である。
【
図26B】各処置のIT注射後の25日目における、脾臓における免疫細胞のパーセント及び細胞の比についての代表的なデータプロット、並びに腫瘍のサイズとのそれらの相関関係である。
【
図26C】各処置のIT注射後の25日目における、脾臓における免疫細胞のパーセント及び細胞の比についての代表的なデータプロット、並びに腫瘍のサイズとのそれらの相関関係である。
【
図27】どのようにCT26腫瘍が接種されたか、及び調査の処置が投与されたかについての略図である(抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)抗体を、初回処置の7日後に与えた)。I.V.:静脈内注射;I.P.:腹腔内注射。
【
図28A】
図27のプロトコールに従った、抗PD-1抗体の腹腔内注射の有(群2及び4)又は無(群1及び3)での、PTX@NP-pD-ATPの静脈内注射後のCT26腫瘍サイズの変化についてのグラフである(群あたりn=8)。
【
図28B】
図27の処置プロトコールを実施した後の腫瘍についての個々の成長曲線である。
【
図29A】抗PD-1抗体の腹腔内注射後のCT26腫瘍サイズの変化についてのグラフである(群あたりn=8)(腫瘍が体積で約50~100mm
3である時点で処置を開始した)。
【
図29B】抗PD-1抗体での処置後の腫瘍についての個々の成長曲線であり、そのような処置は、腫瘍が小さなサイズの腫瘍(体積が約50~100mm
3)である時点で始まる。
【
図30】CT26腫瘍細胞での再負荷後の、腫瘍なしマウスパーセントについてのグラフである。この調査において試験されたマウスは、年齢を合わせた腫瘍ナイーブマウス(腫瘍ナイーブ)、並びに
図27~
図29Bの併用療法調査において、PTX@NP-pD-ATP及び抗PD-1抗体(NP+Abs)で処置され、完全寛解に達したマウスを含んだ。
【
図31A】ヌードマウスにおける、PBS、PTX@NP-pD+ATP、又はPTX@NP-pD-ATPの静脈内注射後のCT26腫瘍サイズの変化についてのグラフである(群あたりn=8)。
【
図31B】PBS(対照群)、混合処置(混合(MIX):PTX@NP-pD+ATP)、及びATPで修飾されたナノ粒子処置(NP-ATP:PTX@NP-pD-ATP)で処置された腫瘍の比成長速度(specific growth rate)についてのグラフである(ΔlogV/Δt)。
【
図31C】処置後の種々の処置群における腫瘍についての個々の成長曲線である(テューキーの多重比較検定と合わせた一元配置ANOVAによって、****はp<0.0001であり、ns=有意差なし)。
【
図32A】CT26細胞における、ポリエチレンイミン(PEI)又はATPでコートされたローダミンB標識ナノ粒子を突き止める共焦点顕微鏡画像である、緑色の標識:コムギ胚芽凝集素(細胞膜)、赤色の標識:ローダミンB標識ナノ粒子、及び青色の標識:DAPI(核);スケールバー:50μm。
【
図32B】B16F10細胞における、ポリエチレンイミン(PEI)又はATPでコートされたローダミンB標識ナノ粒子を突き止める共焦点顕微鏡画像である、緑色の標識:コムギ胚芽凝集素(細胞膜)、赤色の標識:ローダミンB標識ナノ粒子、及び青色の標識:DAPI(核);スケールバー:50μm。
【
図33】CT26及びB16F10細胞によって取り込まれる、PEI又はATPでコートされたローダミンB標識粒子の量を示す定量的測定のグラフである(フローサイトメトリーにより測定された)。
【
図34】PTX@NP-pD+ATP又はPTX@NP-pD-ATP(PTX当量20mg/kg)の24時間の単回静脈内注射後の、CT26腫瘍におけるPTX含有量についてプロットである(n=5;ns:スチューデントt検定によって有意差なし)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、様々な改変及び代替的な形態の影響を受けやすいものの、その例示的な実施形態が、図面において例として示され、本明細書において詳細に記載される。
【0031】
本開示の原理についての理解を促進する目的のために、図面に例示される実施形態への参照がここでなされ、具体的な言語を使用してそれを記載するであろう。それにもかかわらず、これらの実施形態の説明によって、範囲の限定が意図されるわけではないことが理解されるであろう。それどころか、添付の特許請求の範囲によって規定される本出願の精神及び範囲内に含まれ得るように、本開示は、代替物、改変、及び均等物を網羅することが意図される。以前に記されたように、本技術は、1つ又は複数の好ましい実施形態において例示され得且つ記載され得るものの、本明細書のナノ粒子、組成物、及び方法は、多くの異なる構成、形態、材料、及び付属物を含み得る。
【0032】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願公報、論文、教科書、及び他の刊行物は、本開示が関連する技術分野における当業者のレベルを指し示す。すべてのそのような刊行物は、あたかもそれぞれ個々の刊行物が、参照により組み入れられることを具体的に且つ個々に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0033】
ナノ構築物送達プラットフォーム及びそのようなナノ構築物を含む組成物が提供される。ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、1種又は複数の治療用化合物(例えば、薬物又は化学療法剤)の担体であり、免疫アジュバントでの表面修飾によって、そのような治療用化合物の保持及び安定性を増強し得、がん治療のために固形腫瘍を標的にし得、且つ/又は腫瘍への免疫細胞の浸潤を増強し得る(例えば、故に抗腫瘍特異的免疫応答の増加を引き出す)。従って、ナノ構築物を使用して、抗がん療法に対して腫瘍を感作し得る。
【0034】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、外面を有するナノ粒子、ナノ粒子内にカプセル化された1種又は複数の治療剤(例えば、カーゴ)、及びナノ粒子の外面に結合した免疫アジュバント修飾ポリフェノール化合物を含む。
【0035】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、免疫アジュバントで表面修飾されているポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)ナノ粒子を含み、1種又は複数の化学療法剤をカプセル化する(例えば、担持する)。そのような免疫アジュバントの例示的な実施形態は、アデノシン三リン酸(ATP)である。
【0036】
使用において、ナノ粒子を装飾する免疫アジュバント(例えば、ATP)は、標的部位に、抗原提示細胞(APC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びT細胞等の免疫細胞を動員し得る。従って、ナノ構築物の投与は、標的部位(例えば、固形腫瘍)への免疫細胞の浸潤の増強をもたらし得、それによって、免疫細胞活性化に起因した対象の特異的免疫応答を活性化する(又は高める)。
【0037】
対象におけるがんを治療するために使用される場合、そのようなナノ構築物は、腫瘍部位に化学療法剤を付加的に送達し得る。カプセル化される治療剤は、免疫原性細胞死(ICD)誘導剤であり得る。そこで、ICD誘導剤は、抗がん薬療法を送達し得るだけでなく、それは、標的部位で瀕死の腫瘍細胞の抗原性を増加もさせ得、故に他の療法(例えば、他の免疫療法)に対してそれらを感作する。ある特定の実施形態において、ナノ構築物を免疫チェックポイント阻害剤療法との組み合わせで投与して、抗腫瘍活性を増加させる。
【0038】
ナノ構築物
ナノ構築物は、ポリマー、標的化分子、標識、及び/又は小分子等の1種又は複数の物質でコートされたナノ粒子(NP)を含む。ナノ粒子のコートされた表面は、標的化分子、標識、免疫アジュバント、及び同様のもの(例えば、ATP)等の1種又は複数の物質で更に装飾され得る。1種又は複数の治療剤は、ナノ粒子内にカプセル化され得る。
【0039】
使用において、ナノ粒子は、標的部位(例えば、腫瘍)におけるカーゴ(例えば、薬物/治療剤)の保持を増加させ得、薬物動態の増強を呈し得、カーゴの送達を増強するために高い表面対質量比で表面修飾され得る。例えば、Yuら、Pharmacokinetics, biodistribution and in vivo efficacy of cisplatin loaded poly(L-glutamic acid)-g-methoxy poly(ethylene glycol) complex nanoparticles for tumor therapy、J Control Release 205:89~97 (2015);Liら、Efficient delivery of docetaxel for the treatment of brain tumors by cyclic RGD-tagged polymeric micelles、Molecular Med Reports 11:3078~3086 (2015);Parkら、Polydopamine-based simple and versatile surface modification of polymeric nano drug carriers、ACS Nano 8:3347~3356 (2014);Raymondら、Oxaliplatin:mechanism of action and antineoplastic activity、Semin Oncol 25:4~12 (1998)を参照されたい。
【0040】
ナノ粒子は、生分解性ポリマー等のポリマーを含み得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、PLGA-メトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)、D-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸(TPGS)-PLGAコンジュゲート、ポリ乳酸(PLA)、メソポーラスシリカ、及びエチレン酢酸ビニルのうちの1種又は複数を含む。ある特定の実施形態において、ナノ粒子はリポソームであり、且つ/又はポリフェノール凝集体を含む。ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、大部分が薬物分子から作られた薬物結晶又はナノ結晶である。
【0041】
ナノ粒子は、ビヒクル(すなわち、ナノ粒子)の表面官能化によって疎水性分子の送達を増強するように選択されたポリマーであり得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子はPLGAナノ粒子である。
【0042】
付加的に、ナノ粒子は、2種以上のタイプのポリマー、例えば約90:10、約85:15、約50:50、約35:65、約65:35、約15:85、又は約10:90のPLGA/PLGA-mPEGのw/w比でのPLGAとPLGA-mPEGとの組み合わせを含み得る。ポリマー成分の比は、関連技術分野において公知であるように、結果として生じるナノ粒子の放出速度を最適化するように調整され得る。
【0043】
ナノ粒子は、多孔質又は非多孔質であり得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子は多孔質である。ある特定の実施形態において、ナノ粒子は実質的に非多孔質であるが、経時的に多孔質になる(例えば、使用において、インビボで循環における場合)。ナノ粒子コアのサイズは、約5nm~約200nm、約5nm~約20nm、約30nm~約100nm、約30nm~約80nm、約30nm~約60nm、約40nm~約80nm、約70nm~約90nm、又は約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、若しくは約100nmであり得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子コアサイズは、対象への全身注射に適切である。一般的に、ナノ粒子コアは球状であるが、とはいえ、棒及び円盤等の他の形状も使用され得る。
【0044】
付加的な成分が、共有結合的に又は非共有結合的に、様々なメカニズムによってナノ粒子に付着され得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子の表面(又はコートされた表面)は、化学反応(例えば、マイケル付加又はシッフ塩基反応)により共有結合的に修飾される。代替的に、ナノ粒子の表面は、所望のとおりに、リガンド又は他の成分へのコンジュゲーションのために反応性部分を含むように変更され得る。
【0045】
ある特定の実施形態において、PLGAナノ粒子等のナノ粒子は、1種又は複数のポリマー又は他の化合物でコートされる。これは、官能化目的のために有用であり得る。
【0046】
ポリマーは、任意の適当な手段を使用して、ナノ粒子の表面に結合し得る。一部の実施形態において、ポリマーは、物理的又は化学的相互作用を介してナノ粒子に結合する。ポリマーは、限定されることなく、ポリエチレンイミン(polythylenimine)(PEI)等、正電荷を有するポリマーであり得る。一部の実施形態において、ポリマーはポリフェノール化合物である。一部の実施形態において、ポリマーは、重合ドーパミン(pD)、又はタンニン酸、タンニン酸-鉄錯体、没食子酸、エラグ酸、ヒドロキシヒドロキノン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、及びピロガロール等の他のポリフェノールである。ある特定の実施形態において、ポリマーは、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)である。
【0047】
一部の実施形態において、ナノ粒子はpDコーティングを含む。一部の実施形態において、ナノ粒子は、プライマーコーティングとしてのpDコーティングを含み、その上に後続のコーティングが適用される。
【0048】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、pDコーティングを有するPLGAナノ粒子である。
【0049】
ポリマーは、直鎖状又は分岐状であり得る。ポリマーは、ナノ構築物あたり約1wt.%~50wt.%又は1wt.%~約50wt.%のポリマー等、約1wt.%~約50wt.%、例えば5~40%、10~30%、20~30%、5~15%、5~20%、5~25%、5~30%、10~20%、10~25%、又は25~40%、例えば約5、約10、約15、約20、約25、約30、又は約35%存在し得る。
【0050】
ナノ構築物を、標的化部分、造影剤、免疫アジュバント、及び/又は別の部分で表面修飾(又は官能化)して、ナノ構築物に特定の特徴を与え得る。pDでコートされたナノ粒子は、特に、マイケル付加及び/又はシッフ塩基反応を介して、リガンドに求核性官能基を供給し得る。
【0051】
造影剤の例は、限定されることなく、FITC、Cy色素、及びアミン反応性Alexa Fluor色素等の蛍光色素を含む。ナノ粒子の表面を装飾するのに有用であり得る他の造影剤は、当業者に明らかであろう。
【0052】
ナノ構築物は、その中にカプセル化された治療剤の標的送達及び/又は制御放出のために構成され得る。ナノ構築物は、例えば、特定の細胞又は組織へのナノ構築物の標的送達のために標的化部分(例えば、細胞-ナノ粒子相互作用を促す細胞相互作用性リガンド)を含み得る。ある特定の例示的な実施形態において、ナノ構築物は、療法又は治療のために、固形腫瘍等の特異的部位への送達のために構成される。部位は、例えば対象に存在する固形腫瘍の場合には、インビボであり得る。標的化剤を使用して部位を標的にし得、任意で細胞への内在化を支援し得る又は誘導し得る。
【0053】
ナノ粒子は、免疫アジュバントで表面官能化され得る。ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、限定されることなく、ATP、[N-[N-(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルフェニルスルホニル)-L-アスパルチル]-D-[4-アミジノ-フェニルアラニル(phylalanyl)]-ピペリジン(CCR)、C-X-Cモチーフリガンド(CXCL)、及び[(1R,4S,6S)-4-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-6-ヒドロキシシクロヘキサ-2-エン-1-イル]メチル二水素ホスフェート(XCR)を含めた、樹状又は他の活性化免疫細胞を動員するのに有用な1種又は複数のサイトカインで修飾される。ある特定の実施形態において、免疫アジュバントは、ATP、カルレティキュリン(CRT)、高移動度群ボックス1(HMGB1)、デオキシリボ核酸(DNA)、アネキシンA1(ANXA1)、I型インターフェロン、熱ショックタンパク質70(HSP70)、及び熱ショックタンパク質90(HSP90)であり得る。
【0054】
免疫アジュバントがATPを含むある特定の実施形態において、ATPは、(例えば、走化活性のために)三リン酸基を保存する様式で配向され得る(例えば、実施例4~6を参照されたい)。
【0055】
ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、以下の構造:
【0056】
【0057】
を有するCCRで表面官能化される。
【0058】
ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、以下の構造:
【0059】
【0060】
を有するXCRで表面官能化される。
【0061】
ある特定の実施形態において、ナノ粒子は、以下の構造:
【0062】
【0063】
を有するATPで表面官能化される。
【0064】
ATPは、免疫細胞(例えば、樹状細胞及びマクロファージ)の化学誘引物質であり、他の機能の中でも、瀕死の細胞の食細胞クリアランスを促進する。ATPは、pDコートナノ粒子の表面にコンジュゲートされ得るアミン基を含有する。
【0065】
ATP装飾ナノ粒子は、遊離ATPよりも強い化学誘引活性を提供し(実施例16を参照されたい)、標的部位(例えば、腫瘍)に樹状細胞及びマクロファージを動員するATPの走化能を維持し(実施例5を参照されたい)、それは、適応免疫細胞のより強い活性化につながる。更に、ATPのコンジュゲーションは、アピラーゼに対するATPの安定性を有意に向上し(実施例6を参照されたい)、それは、免疫抑制性産物ADP、AMP、及びアデノシンへのATPの分解を阻止する。従って、ナノ粒子へのATPのコンジュゲーションは、ATPの活性化を維持するだけでなく、インビボでのその安定性を向上もする。
【0066】
ATPは、約1質量%~約15質量%(約1質量%~15質量%、1質量%~約15質量%、約9質量%~約11.5質量%、約9質量%~11.5質量%、又は9質量%~約11.5質量%等)存在し得る。例えば、PLGAあたりのATPは、結合過程の間、約10:1~約100:1(約10:1~100:1若しくは10:1~約100:1、又は約9:1~約99:1、又は約15:1~約95:1、又は約15:1~約105:1等)に及ぶ質量比で使用され得、完全な結合を達成する。
【0067】
ある特定の実施形態において、ナノ粒子上のコンジュゲートされたATPの量は、ナノ構築物の約10.5wt%~約11.2wt%(10.5%~11.2%等)である。ある特定の実施形態において、ナノ粒子上のコンジュゲートされたATPの量は、ナノ構築物の約10.5wt%~約12.5wt%(10.5%~12.5%等)である。ある特定の実施形態において、ATPあたりのPLGAは、結合過程の間、50:1等の約50:1の質量比で使用され得る。
【0068】
ナノ粒子は、1種又は複数の治療剤を担持し得る。そのような治療剤は、限定されることなく、ICD誘導剤(又は、ICD誘導剤の特徴を有する化合物)等の化学療法剤、安定剤、標的化剤、小分子若しくはタンパク質、標識、及び/又はオリゴヌクレオチドを含み得る。様々な付加的な物質の組み合わせも企図される。ナノ粒子は、1種を上回るタイプのポリマー、安定剤、標的化剤、小分子、タンパク質、標識、オリゴヌクレオチド、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シクロホスファミド、及び強心配糖体も含み得る。
【0069】
ナノ粒子は、ICD誘導剤を含む1種又は複数の治療剤を担持し得る。ICD誘導剤の非限定的な例は、カルフィルゾミブ、パクリタキセル、オキサリプラチン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シクロホスファミド、及び強心配糖体である。
【0070】
ICD誘導剤は、(i)CRTの表面曝露、(ii)受動放出されたクロマチン結合性HMGB1、及び(iii)細胞外に分泌されたATP等、免疫賦活性ダメージ関連分子パターン(DAMP)の放出を検出することによって特定され得る。これらの分子は、免疫系に対する「危険シグナル」としての役割を果たし、APCに抗原を認識させ且つプロセシングさせて適応免疫を引き出す。CRTは、小胞体に存在するタンパク質シャペロンである。CRTは、損傷があり次第膜へ移行し、樹状細胞への「私を食べて」シグナルとして作用する。HMGB1は、DNA修復、組み換え、及び転写を媒介する非ヒストンクロマチン結合性タンパク質である。細胞外HGMB1は、種々のタイプのパターン認識受容体に結合して、樹状細胞によるがん抗原プロセシング及びT細胞への提示を促進する。ATPは、アポトーシスの間に活発に分泌される、細胞における主要なエネルギー源である。それは、APCに対する「私を見つけて」シグナルとして働いて、瀕死の細胞の食細胞クリアランスを促進する。
【0071】
作用のメカニズムは、化合物のICD潜在性を決定しない。例えば、オキサリプラチンはICD誘導剤と思われるが、シスプラチンはそうではない。両方とも、同じ作用のメカニズム(DNAをアルキル化して、鎖内及び鎖間架橋を形成する)を有する白金化合物である。シスプラチンは、付加的な1,2-ジアミノシクロヘキサン担体リガンドを有することによって、オキサリプラチンとは異なる。ICD誘導剤の潜在的な特徴は、ICD誘導剤の主たる指標であり得る小胞体ストレスを誘導する能力である。更に、ICD誘導剤は、ある特定の場合には、ナノ粒子プラットフォームにおけるカプセル化により恩恵を受け得る疎水性薬物であり得る。
【0072】
カルフィルゾミブ(CFZ)及びパクリタキセル(PTX)は、2種のそのようなICD誘導剤である(少なくとも実施例1~3を参照されたい)。PTXは、低い水溶解度(8.5~17μg/mL)を有する微小管阻害剤であり、以下の構造:
【0073】
【0074】
を有する。
【0075】
PTXは、紡錘体形成への干渉によってG2/M期における細胞周期停止を引き起こし、それは、大規模な小胞体ストレスを伴い得る細胞死を誘導する。
【0076】
CFZは、低い水溶解度(0.7~3.6μg/mL)を有する第2世代エポキシケトンプロテアソーム阻害剤であり、以下の構造:
【0077】
【0078】
を有する。投与された場合、CFZは、がん細胞の20Sプロテアソームとの不可逆的で且つ共有結合性の相互作用を確立し得、それは、折り畳み不全タンパク質の産生につながり得、小胞体ストレスを引き起こす。
【0079】
ICD誘導性化学療法は、がん免疫療法を増強するやり方として最近関心を集めている。ICD誘導剤は、瀕死の腫瘍細胞の抗原性を増加させ、例えば免疫チェックポイント遮断療法に対してそれらを感作する。しかしながら、ICD誘導剤の免疫毒性(抗腫瘍免疫を開始する宿主の能力を損ない得る)及びそれらの不十分なアジュバント性は、従来、ICD誘導剤と免疫チェックポイント阻害剤との併用療法における依然として重大な課題である。ナノ構築物は、ナノ粒子内にICD誘導剤をカプセル化することによって、これらの問題を軽減し得る。
【0080】
ナノ構築物合成
ナノ構築物は、当業者によって実践される有機合成の従来の方法によって調製され得る。下の実施例において概説される大まかな反応順序は、ナノ構築物を調製するのに有用な大まかな方法であり、範囲又は実用性において限定的であることを意図されるわけではない。
【0081】
成分は、共有結合及び非共有結合を含めた任意の手段によってナノ粒子又は他の成分に結合され得る。様々なコンジュゲーション化学が当技術分野において公知であり、本明細書に記載される。一部の実施形態において、成分の1種又は複数は、ナノ粒子の表面(例えば、pD)に結合される。更なる実施形態において、成分の1種又は複数は互いに結合される。例えば、一部の実施形態において、標的化部分は安定剤に共有結合され得、それはポリマーに共有結合され(例えば、アミンを介して)、それは今度はナノ粒子の外部に静電的に結合され、治療剤は細孔の内面に結合される。
【0082】
PLGA等のナノ粒子は、商業的に入手され得る又は任意の方法によって創出され得るものの、一部の実施形態において、ナノ粒子は、ジクロロメタン(DCM)等の有機溶媒にポリマーを溶解することによって形成される。ポリマー溶液は、ポリビニルアルコール等の乳化剤を含有する水溶液に乳化され、それは、PLGA/DCM液滴のサイズを低下させる助けになる。粒径は、プローブ超音波破砕装置又は高圧ホモジナイザーの使用によって更に低下し得る。ある特定の実施形態において、PLGA/DCMナノ液滴を含有する乳濁液を撹拌蒸発(例えば、回転蒸発)に供してDCMを除去し、固化PLGAナノ粒子をもたらす。PLGAナノ粒子は、遠心分離によって単離され得、DI水で洗浄され得る。
【0083】
一部の実施形態において、ナノ粒子は、少なくともポリマーでコートされる。ナノ粒子を、例えば酸化条件化でドーパミンとインキュベートして、pDコートナノ粒子(ナノ粒子-pD)を産出し得る。
【0084】
一部の実施形態において、官能基、及び/又は限定されることなくATP等の他の成分は、必要に応じて、関心対象の成分(例えば、ATP)を有するコートされたナノ粒子と1種又は複数の試薬とを更にインキュベートすることによって、合成の間にナノ粒子に付加され得る。
【0085】
治療剤も、合成の間又は後に、ナノ粒子内にカプセル化され得る。ある特定の実施形態において、1種又は複数の治療剤は、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、若しくは50wt%、又は本明細書のナノ構築物を使用して達成可能で且つ/若しくは所望される任意の他のwt%の標的担持効率で、シングルエマルジョン法によって、コートされ且つ装飾されたナノ粒子内にカプセル化され得る。
【0086】
組成物、投与の経路、及び投薬
ナノ構築物は、治療用又は研究用の使用のために製剤化され得る。典型的に、療法のためのそのような製剤は、薬学的に許容される担体に懸濁されたナノ構築物を含む。
【0087】
ナノ構築物は、単位剤形で、且つ/又は1種若しくは複数の薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、賦形剤、及び/若しくはビヒクル、並びにその組み合わせを含有する組成物で投与され得る。本明細書において使用するとき、「投与すること」という用語及びその成語要素は、概して、静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下、経皮、及び同様の投与の経路を含むがそれらに限定されない、宿主対象に化合物を導入するありとあらゆる手段を指す。
【0088】
本明細書において使用するとき、「組成物」という用語は、概して、ナノ構築物を含めた1種を上回る成分を含む任意の産物を指す。
【0089】
ナノ構築物は医薬組成物として製剤化され得、選定された投与の経路に適合した多様な形態で、ヒト患者等の哺乳類宿主に投与され得る。例えば、医薬組成物は、経口若しくは非経口、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、硬膜外、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、腫瘍内、筋肉内、局所的、吸入、及び/又は皮下経路のために製剤化され得、それらを介して投与され得る。少なくとも1つの実施形態において、組成物の一部等のナノ構築物は、血流中に、筋肉内に、固形腫瘍内に、又は内臓に直接投与され得る。
【0090】
例えば、少なくとも1つの実施形態において、ナノ構築物は、薬学的に許容されるビヒクルとの組み合わせで全身投与され得る。組成物及び調製物の成分のパーセンテージは変動し得、約1~約99%質量の活性成分、並びに結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、及び/又は甘味剤であり得る(当技術分野において公知であるように)。そのような治療上有用な組成物における活性化合物(例えば、治療剤)の量は、有効な投薬量レベルが獲得され得るようなものである。
【0091】
例えば凍結乾燥による、無菌下での非経口ナノ構築物/組成物の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技法を使用して容易に遂行され得る。少なくとも1つの実施形態において、非経口組成物の調製において使用される化合物の溶解度は、溶解度増強剤の組み入れ等、適当な製剤化技法の使用によって増加し得る。
【0092】
以前に記されたように、ナノ構築物/組成物は、注入又は注射(例えば、針(微細針を含む)注射器及び/又は無針注射器を使用した)によっても投与され得る。活性組成物の溶液は、任意で非毒性界面活性剤と混合された水性であり得、且つ/又は塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくは、3~9のpHにおける)等の担体若しくは賦形剤を含有し得るが、一部の適用に関して、それらは、無菌の発熱物質不含水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の適切なビヒクルと併せて使用されるように、無菌の非水溶液として又は乾燥形態としてより適切に製剤化され得る。例えば、分散体は、グリセロール、液体PEG、トリアセチン、及びその混合物中に、並びに油中に調製され得る。保管及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微小生物の成長を阻止する防腐剤を更に含有し得る。
【0093】
注射又は注入に適切な薬学的剤形は、リポソーム、ナノ結晶、又はポリマーナノ粒子内に任意でカプセル化された、無菌の注射可能な又は注入可能な溶液又は分散体の即時調製に適合している、活性成分を含む無菌の水溶液若しくは分散体又は無菌の粉末を含み得る。すべての場合において、最終的な剤形は、無菌であり、流体であり、且つ製造及び保管の条件下で安定であるべきである。液体担体又はビヒクルは、例えば、限定されることなく、水、電解質、糖類、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体PEG等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及び/又はその適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒であり得る。少なくとも1つの実施形態において、適正な流動性は、リポソームの形成によって、分散体の場合には要求される粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0094】
無菌の注射可能な溶液は、要求に応じて、上で明記される他の成分の1種又は複数とともに、要求される量の適当な溶媒にナノ構築物及び/又は組成物を組み入れ、その後に濾過滅菌が続くことによって調製され得る。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、好ましい調製の方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液に存在する活性成分+任意の付加的な所望の成分の粉末を産出する、真空乾燥及びフリーズドライ技法である。
【0095】
局所投与に関しては、固体又は液体であり得る許容される担体との組み合わせでの組成物又は製剤として、腫瘍部位にナノ構築物を直接投与することが望ましくあり得る。例えば、ある特定の実施形態において、固体担体は、タルク、クレイ、微結晶セルロース、シリカ、アルミナ等の微粉固体を含み得る。同様に、有用な液体担体は、本化合物が、任意で非毒性界面活性剤の助けを借りて、有効なレベルで溶解され得る又は分散され得る、水、アルコール、若しくはグリコール、又は水-アルコール/グリコール混成物を含み得る。付加的に又は代替的に、抗微生物剤等のアジュバントを添加して、所与の使用に対して特性を最適化し得る。結果として生じた液体組成物は、吸収性パッドから適用され得る、帯具及び/若しくは他の包帯に含浸させるために使用され得る、ポンプ型若しくはエアロゾル噴霧器を使用して標的エリアに噴霧され得る、又は対象の所望のエリアに単に直接適用され得る。
【0096】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪族アルコール、変性セルロース、又は変性鉱物材料等の増粘剤も、液体担体とともに採用して、対象の皮膚への直接適用のための塗り広げられるペースト、ゲル、軟膏、石鹸等を形成し得る。
【0097】
本明細書において使用するとき、「治療上有効な」、「治療有効用量」、又は「治療有効量」という用語(別様に具体的に記述されない限り)は、1回で又は治療サイクルの経過にわたって投与された場合、対象の健康、幸福、又は死亡率に影響を及ぼす(例えば及び限定されることなく、がんと関連した症状の1つ又は複数の発生を遅延させ且つ/又はその重症度を低下させる)、ナノ構築物及び/又は化合物(例えば、治療剤)の分量を指す。ある特定の実施形態において、治療有効量は予防効果を提供し得る。ナノ構築物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性と、動物モデルにおけるそれらのインビボ活性とを比較することによって判定され得る。ヒト対象へのマウス及び他の動物における有効な投薬量の外挿の方法は、当技術分野において公知である。実際には、ナノ構築物の投薬量は、宿主対象の病状、治療されているがんタイプ、病態がどれだけ進行しているか、化合物の投与の経路及び組織分布、並びに他の治療的処置(併用療法における放射線療法又は付加的な薬物等)の共使用の可能性に応じて大幅に変動し得る。治療における使用に要求される組成物の量(例えば、治療有効量又は用量)は、特定の適用によってだけでなく、選択された塩(適用可能な場合)及び対象の特徴(例えば、年齢、病状、性別、対象の体表面積及び/又は体重、薬物への耐性等)によっても変動すると考えられ、最終的に主治医、臨床医、又はその他の方法の裁量によるであろう。治療有効量又は用量は、そのすべてが患者体重についてのkgである、0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、及び5.0mg/kgを含むがそれらに限定されない、例えば患者体重の約0.05mg/kg~患者体重の約30.0mg/kg、又は患者体重の約0.01mg/kg~患者体重の約5.0mg/kgに及び得る。ナノ構築物の総治療有効量は、単回又は分割用量で投与され得、実践者の裁量で、本明細書において与えられる典型的な域から外れ得る。
【0098】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物はPTXを担持し、静脈内投与のための医薬組成物に製剤化され、治療有効量は、約15mg/kg~約30mg/kg(15mg/kg~約30mg/kg又は約15mg/kg~30mg/kg等)である。ある特定の実施形態において、ナノ構築物はPTXを担持し、髄腔内投与のための医薬組成物に製剤化され、治療有効量は、約2mg/kg~約10mg/kg(2mg/kg~約10mg/kg又は約2mg/kg~10mg/kg等)である。ある特定の実施形態において、ナノ構築物はPTXを担持し、治療有効量は、静脈内投与に関して20mg/kg、及び髄腔内投与に関して5mg/kgである。
【0099】
別の実施形態において、ナノ構築物は、約0.5g/m~約500mg/m2、約0.5g/m2~約300mg/m2、又は約100g/m2~約200mg/m2の治療有効量で投与され得る。他の実施形態において、量は、約0.5mg/m2~約500mg/m2、約0.5mg/m2~約300mg/m2、約0.5mg/m2~約200mg/m2、約0.5mg/m2~約100mg/m2、約0.5mg/m2~約50mg/m2、約0.5mg/m2~約600mg/m2、約0.5mg/m2~約6.0mg/m2、約0.5mg/m2~約4.0mg/m2、又は約0.5mg/m2~約2.0mg/m2であり得る。総量は、単回又は分割用量で投与され得、医師の裁量で、本明細書において与えられる典型的な域から外れ得る。これらの量は、体表面積のメートルに基づく。
【0100】
これらの及び他の有効単位投薬量は、単回投薬で、又は例えば3週間サイクルの間、週あたり2回の投薬レジメンにおいて、1日に、週に、若しくは月に複数回投薬の形態で投与され得る。付加的な実施形態において、投薬量は、臨床的な及び患者特異的な因子に応じて、任意の適当な投薬量レジメンにおいて、他の治療レジメンと協調して投与され得る。ナノ構築物の疾患を治療する有効量(例えば、治療有効量)を含む組成物の量、タイミング、順序、及び送達の様態は、投与が予防的であるか治療的であるかどうかにかかわらず、個体の質量、年齢、性、及び病状、疾患の急性度、及び/又は関連する症状等の因子に応じて個人ベースで、並びに薬物送達、吸収、半減期を含めた薬物動態、及び効力をもたらすことが公知の他の因子に基づいて、ルーチン的に調整されるであろう。
【0101】
治療及び使用の方法
ナノ構築物を使用して、対象における部位に治療剤を送達するための方法が提供される。ある特定の実施形態において、方法は、標的部位にナノ構築物を送達する条件下で、対象にナノ構築物又はそれを含む組成物の実施形態のいずれかの治療有効量を投与する工程を含み、ナノ構築物が該条件下で投与された場合、ナノ構築物は細胞によって内在化される。標的部位は、固形腫瘍、がん、及び/又はがん性細胞若しくは組織であり得る。ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、標的部位において抗腫瘍特異的免疫応答の増強を引き出す。例えば、抗腫瘍特異的免疫応答の増強は、標的部位にAPC、NK細胞、及びT細胞を動員することであり得る。
【0102】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物は、標的部位で免疫細胞活性化を増強する。例えば、ナノ構築物の表面にコンジュゲートされたATPは、標的部位に腫瘍特異的細胞を動員し得、炎症性T細胞浸潤腫瘍微小環境(TME)を創出し得る。言い換えれば、ナノ構築物、組成物、及び方法は、抗がん応答を感作するのに、並びにTMEへのNK細胞、樹状細胞、及びエフェクターT細胞の浸潤を誘導することによって免疫抑制を克服するのに役立ち得る。
【0103】
一部の実施形態において、TMEにおける樹状及び他のエフェクター免疫細胞の蓄積は、樹状細胞等の抗原提示細胞(APC)による腫瘍抗原の取り込み及び提示をもたらす。腫瘍抗原を積んだ樹状細胞は、その後腫瘍流入リンパ節(TDLN)に移動し、そこで樹状細胞は腫瘍抗原を提示し続け、エフェクターT細胞活性化、増殖、及び発達を誘導する。
【0104】
ある特定の実施形態において、ナノ構築物の治療有効量を投与する工程は、標的部位においてICDを誘導する、又は標的部位においてICDを加速させる(ナノ構築物の投与なしのICDの速度と比較して)。
【0105】
標的部位が固形腫瘍である場合、ナノ構築物の治療有効量の投与は、固形腫瘍の体積/サイズの減少をもたらし得る。ある特定の実施形態において、投与は、腫瘍の寛解(例えば、がんの完全寛解)をもたらし得る。
【0106】
対象におけるがんを治療するための方法も提供される。ある特定の実施形態において、対象におけるがんを治療するための方法は、ナノ構築物又はそれを含む組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む。ある特定の実施形態において、投与は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、腫瘍内に、又は局所的に実施される。
【0107】
ナノ構築物及び/又はそれを含む組成物は、抗がん療法及び/又は他のがん治療に対して腫瘍を感作するための手段と併せて対象に送達され得る。ある特定の実施形態において、方法は、免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤療法等)を対象に投与する工程を更に含む。そのような免疫療法は、ナノ構築物又はそれを含む組成物の治療有効量の投与に続いて又はそれと併せて投与され得る。免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤療法であり得る。
【0108】
一般的に、免疫チェックポイント阻害剤療法は、CTLA-4及びPD-1等のT細胞陰性調節分子を遮断する抗体を使用する。しかしながら、進行性腫瘍及びTMEに存在する免疫抑制性経路の複雑なネットワークに起因して、そのような療法は、単独で使用された場合、課題に直面する。免疫チェックポイント阻害剤療法と併せたナノ構築物の使用は、少なくとも1回のナノ構築物投薬の後に投与される免疫チェックポイント阻害剤療法の抗腫瘍効力の増強に寄与する。実際、ナノ構築物の単回プライミング用量は、NK細胞、T細胞を活性化し得、標的部位にAPC及び樹状細胞を動員し得る。更に、これらの活性化された細胞は、サイトカインを放出して拡大し、標的部位に付加的な免疫細胞を更に動員し、それは、TMEにおける細胞傷害性Tリンパ球等の浸潤の増加をもたらし、その後、後に投与される免疫チェックポイント阻害剤療法又は他の抗がん療法と相乗作用を示す。
【0109】
従って、ある特定の実施形態において、対象におけるがんを治療するための組み合わせ方法が提供される。方法は、ナノ構築物又はそれを含む組成物の治療有効量を含むプライミング用量;並びに、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍標的化抗体、及びがんワクチンからなる群から選択される第2の療法を対象に投与する工程を含み、プライミング用量は、標的部位で対象における抗腫瘍免疫応答を誘導する又は増強する。第2の療法が免疫チェックポイント阻害剤療法を含む場合、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1(例えば、ニボルマブ又はペムブロリズマブ)若しくはPD-L1(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブ)、CTLA-4(例えば、トレメリムマブ又はイピリムマブ)を標的にする抗体若しくは抗体フラグメント、抗CD25抗体(例えば、バシリキシマブ)、又はデシタビン(例えば、T細胞疲弊を制御する脱メチル化剤)であり得る。ある特定の実施形態において、併用免疫療法のプライミング用量は、TDLNへのNK細胞及びDC細胞の動員を誘導する。
【0110】
対象における抗がん免疫応答を増強するための方法が提供される。方法は、ある特定の実施形態において、ナノ構築物又は組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む。
【0111】
標的部位への免疫細胞の浸潤を増強する方法も提供される。そのような方法は、例えば、標的部位にナノ構築物を送達する条件下で、ナノ構築物又はそれを含む組成物の治療有効量を投与することによって、対象における標的部位に1種又は複数の治療剤を送達する工程を含み得る。標的部位は、例えば固形腫瘍であり得、ナノ構築物は、標的部位において免疫応答(例えば、抗腫瘍特異的免疫応答)を増強し得る(例えば、免疫細胞を活性化し、部位に免疫細胞を動員することによって)。ある特定の実施形態において、ナノ構築物又は組成物の治療有効量を投与する工程は、標的部位においてICDを誘導する。投与は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、腫瘍内に、局所的に、又は別様に所望されるとおりに且つ/若しくは必要に応じて実施され得る。
【0112】
ナノ構築物又は組成物の治療有効量の投与(例えば、方法のいずれかにおける)は、がん(例えば、固形腫瘍)の体積の減少をもたらし得る。ある特定の実施形態において、ナノ構築物又は組成物の治療有効量の投与は、腫瘍の寛解をもたらす。
【0113】
ある特定の定義
別様に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、化学及び生物学の技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。付加的に、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈が別様にはっきりと述べていない限り、複数形の指示対象を含む。故に、例えば、化合物/組成物が「an」アルキル又はアリールで置換される場合、化合物/組成物は、任意で、少なくとも1個のアルキル及び/又は少なくとも1個のアリールで置換される。更に、別様に具体的に記述されない限り、「約」という用語は、パーセンテージに関しては値プラス又はマイナス10%の域、単位値に関してはプラス又はマイナス1.0単位を指し、例えば約1.0は、0.9~1.1の値の域を指す。
【0114】
本明細書において使用するとき、「塩」及び「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物が、その酸性又は塩基性塩を作ることによって改変されている、開示された化合物の誘導体を指す。「薬学的に」及び「治療的に」は、本明細書において互換可能に使用される。薬学的に許容される塩の例は、アミン等の塩基性基の無機塩又は有機酸塩;及びカルボン酸等の酸性基のアルカリ塩又は有機塩を含むが、それらに限定されるわけではない。薬学的に許容される塩は、例えば非毒性の無機又は有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性塩又は第4級アンモニウム塩を含む。例えば、そのような従来の非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸等の無機酸に由来するもの;並びに、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、及びイセチオン酸等の有機酸から調製される塩を含む。
【0115】
薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一部の場合には、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸性又は塩基性形態と適当な塩基又は酸の化学量論量とを、水中若しくは有機溶媒中で、又は2者の混合物中で反応させることによって調製され得;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、その開示が参照により本明細書によって組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences、第21編、Lippincott Williams & Wilkins、2006、例えば第38章に見出される。
【0116】
本明細書において使用される「治療すること」という用語は、治療的処置(例えば、治療されている疾患状態の兆候及び症状を有する対象)、及び/又は予防的処置を包含する。予防的処置は、疾患状態の進行の阻止及び阻害又は遅延を包含する。
【実施例】
【0117】
以下の実施例は、本開示を例示する役割を果たし、決してその範囲を限定することを意図されるわけではない。
【0118】
材料
アデノシン三リン酸(ATP)判定キット、Cell Tracker Green及びCell Tracker Deep Red、Transwell(登録商標)(8um細孔サイズ)、ATP、ドーパミンHCL、並びにアピラーゼをすべて、Thermo Fisher Scientific Inc.社(Waltham、MA)から購入した。
【0119】
ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)(Lactel B6006-1、LA:GA=85:15、エステル末端、MW 97kDA)を、Sigma Aldrich社(St. Louis、MO)から購入した。使用された他のすべてのPLGAを、Akina Inc.社(West Lafayette、IN)から購入した。
【0120】
(3-(4,5-ジメチルチアゾール(Dimenthylthiazol)-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を、Thermo Fisher Scientific Inc.社(Waltham、MA)から購入した。パクリタキセル(PTX)は、Samyang Biopharm Corporation社(Seoul、Korea)からの贈与であった。カルフィルゾミブ(CFZ)を、Shenzhen Chemical Co. Ltd.社(Shanghai、China)から購入した。オキサリプラチン(OXA)を、Thermo Fisher Scientific Inc.社(Waltham、MA)から購入した。ゲムシタビン(GEM)を、LC Laboratories社(Woburn、MA)から購入した。
【0121】
CT26、B16F10、4T1、JAWSII、THP-1細胞を、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)(Manassas、VA)から購入した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及びロズウェルパーク記念研究所(RPMI)を、Thermo Fisher Scientific Inc.社(Waltham、MA)から購入した。マウス顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を、Shenandoah Biotechnology, Inc.社(Warminster、PA)から購入した。
【0122】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)にコンジュゲートしたカルレティキュリン(CRT)抗体を、Abcam plc社(Cambridge、UK)から購入した。高移動度群B1(HMGB1)抗体を、Novus Biologicals社(Littleton、CO)から購入した。LEGEND MAX(商標)マウスIFN-γELISAキットを、BioLegend社(San Diego、CA)から購入した。
【0123】
精製ラット抗マウスCD16/CD32(Fcブロック)を、BioLegend社(San Diego、CA)から購入した。コラゲナーゼタイプ4、デオキシリボヌクレアーゼI、及びヒアルロニダーゼを、Worthington Biochemical Corporation社(Lakewood、NJ)から購入した。抗マウスCD16/32、CD45、CD11c、CD86、F4/80、CD206、NKp46、CD3、CD4、CD8、FOXp3、CD11b、及びGR1抗体を、BioLegend社(San Diego、CA)から購入した。抗マウスプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)抗体(CD279)を、Bio X Cell社(Lebanon、NH、USA)から購入した。雌Balb/cマウス(5~6週齢)、雄C57BL/6マウス(5~6週齢)、及び雌胸腺欠損ヌード(Foxn1nu)マウス(5~6週齢)を、Envigo社(Indianapolis、IN)から購入した。Cy7アミンを、Lumiprobe社(Cockeysville、MD)から購入した。
【0124】
すべての動物手順は、実験動物の管理及び使用に関する米国国立衛生研究所(NIH)ガイドラインに準拠して、パデュー動物実験委員会によって承認された。
【0125】
他のすべての材料を、Thermo Fisher Scientific Inc.社(Waltham、MA)から購入した。
【0126】
(実施例1)
PTX及びCFZの免疫原性細胞死(ICD)潜在性についてのインビトロ評価
ICD誘導剤は、(a)CRTの表面曝露、(b)受動放出されたクロマチン結合性HMGB1、及び(c)細胞外に分泌されたATP等、免疫賦活性ダメージ関連分子パターン(DAMP)の放出を検出することによって特定され得る。これらの分子は、免疫系に対する「危険シグナル」としての役割を果たし、抗原提示細胞(APC)に抗原を認識させ且つプロセシングさせて適応免疫を引き出す。
【0127】
治療剤(カルフィルゾミブ(CFZ)及びパクリタキセル(PTX))を、陽性対照(オキサリプラチン(OXA)、公知のICD誘導剤)及び陰性対照(ゲムシタビン(GEM)、公知の非ICD誘導剤)とともに、CT26マウス癌腫に対して試験した。次いで、処理された細胞からのDAMPの放出を分析した(例えば、CRT曝露をフローサイトメトリーによって測定し、HMGB1を、ウェスタンブロットを定量することによって測定し、ATPをATP判定キットによって測定した)。
【0128】
CRT曝露:CT26マウス癌腫、B16F10マウス癌腫、及び4T1乳癌細胞をそれぞれ、PBS(対照)、IC50の濃度(関連物質の最大半値阻害濃度)のゲムシタビン(GEM)、オキサリプラチン(OXA)、パクリタキセル(PTX)、又はカルフィルゾミブ(CFZ)のいずれかで6時間処理した。6時間後、細胞をPBSで洗浄し、4%パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)で固定した。固定された細胞を、FITC標識CRT抗体とインキュベートした。細胞をAccuri C6フローサイトメーターによって分析して、CRT陽性細胞の集団を判定した。
【0129】
GEMは、CRT曝露を誘導しなかった。対照群と比較した場合、PTX及びCFZの両方とも、CRTの曝露を誘導した(
図1A、
図2A、及び
図3Aを参照されたい)。
【0130】
HMGB1放出:CT26マウス癌腫、B16F10マウス癌腫、及び4T1乳癌細胞をそれぞれ、IC50の濃度のGEM、OXA、PTX、又はCFZで24時間処理した。24時間後、上清を回収し、ウェスタンブロットイムノアッセイを実施して、存在するHMGB1の量を判定した。
【0131】
HMGB1に関して、CRT曝露と同様の結果が獲得され、OXAはHMGB1の放出を誘導し、GEMはHMGB1分泌を誘導しなかった。PTX及びCFZの両方とも、HMGB1の放出を誘導した(
図1C、
図2C、及び
図3Cを参照されたい)。
【0132】
ATP分泌:CT26マウス癌腫、B16F10マウス癌腫、及び4T1乳癌細胞をそれぞれ、IC
50の濃度のGEM、OXA、PTX、又はCFZで24時間処理した。24時間後、上清を回収し、上清におけるATPの量をATP判定キットで測定した。PTX及びCFZの両方とも、ATPの分泌を引き起こした(
図1B、
図2B、及び
図3Bを参照されたい)。
【0133】
全体として、DAMPスクリーニングは、PTX及びCFZがICD誘導剤であることを支持し、CFZ及びPTXの両方とも同等のDAMP産生を誘導する。様々な細胞株をこの調査において使用して、ICD誘導が種々の細胞株において生じることを保証した。
【0134】
(実施例2)
PTX及びCFZは食作用を増強する
食作用アッセイを実施して、ICD誘導剤によって殺滅された細胞が、樹状細胞(DC)によって取り込まれるであろうかどうかを観察した。潜在的ICD誘導剤として、PTX及びCFZは、樹状細胞による瀕死の腫瘍細胞の取り込みを増強する可能性があった。
【0135】
CT26細胞をCell Tracker Greenで30分間染色し(0.5μM)、冷却した血清不含DMEMで1回洗浄した。CT26細胞を10% FBS培地中で一晩インキュベートして、任意の結合していない色素を不活性化させた。CT26細胞を回収し、6ウェルプレートに24時間播種した(150,000個細胞/ウェル)。JAWSII細胞を回収し、Cell Tracker Deep Redで30分間染色し(0.5μM)、冷却した血清不含RPMIで1回洗浄した。JAWSII細胞を10% FBS培地中で一晩インキュベートして、任意の結合していない色素を不活性化させた。24時間の播種の後、CT26細胞を、IC50のPTX(250nM)又はCFZ(15nM)で0又は6時間処理した。処理の後、CT26を含有する6ウェルプレートを500g×8分間で遠心分離した。上清を吸引して、任意の残存薬物を除去した。JAWSII細胞(150,000個細胞/ウェル)をCT26に添加し、細胞を24時間共培養した。共培養された細胞を回収し、染色緩衝液に再懸濁し、Accuri C6フローサイトメーターによって分析した。
【0136】
PTX又はCFZのいずれかを用いた処理は、樹状細胞へのCT26の取り込みを有意に増加させ(
図4を参照されたい)、これは、PTX及びCFZを用いた処理が、インビボで使用された場合、食作用を増強し得、強い抗腫瘍免疫応答につながり得ることを支持する。
【0137】
(実施例3)
インビボ腫瘍ワクチン接種調査
真正のICDを検証する標準的試験であるワクチン接種調査を、PTX及びCFZ(例えば、候補薬物)を用いてインビボで実施した。ワクチン接種調査は、腫瘍細胞を致死用量のICD誘導剤に曝露することによって、腫瘍抗原を作出することを伴った。潜在的ICD誘導剤で処理された細胞(すなわち、一次投薬)を、免疫能力のあるマウスに皮下注射した。1週間後、生きた腫瘍細胞を反対側に注射し(すなわち、再負荷)、腫瘍の成長をモニターして、薬物により殺滅された腫瘍細胞(すなわち、一次投薬)が、ワクチンとしての役割を果たし得、生きた細胞負荷の成長を阻止し得るかどうかを判定した。
【0138】
ここで、CT26細胞をT150フラスコにおいて30%コンフルエンシーまで培養し、100×IC50のOXA、GEM、PTX、又はCFZで24時間処理して、エクスビボワクチンを創出した。死細胞を回収し、PBSで2回洗浄して過剰量の薬物を除去した。
【0139】
300万個の死細胞を、CT26細胞の同系宿主である6週齢の免疫能力のある雌Balb/cマウスの右脇腹に注射した(すなわち、一次投薬)。9日後、500,000個の生きたCT26細胞(生きた腫瘍細胞)をマウスの反対側に皮下接種し(すなわち、再負荷)、腫瘍成長をモニターして、抗腫瘍免疫の発達を判定した。腫瘍は、PBS又はGEMで処理された細胞を受けたすべての動物において成長した(
図5)。対照的に、OXA、PTX、及びCFZで処理された細胞をワクチン接種された動物において、腫瘍は成長せず、薬物で処理された腫瘍細胞(すなわち、一次投薬)が、腫瘍ワクチンとしての役割を果たし、抗腫瘍免疫を確立することを支持した。
【0140】
抗腫瘍免疫が腫瘍特異的であるかどうかを試験するために、実施例2の調査の終わりに、ワクチン接種されたマウスから獲得された脾細胞に、CT26免疫優性MHCクラスI拘束性抗原であるAH1ペプチドを負荷し、インターフェロンガンマ(IFN-γ)産生に関して評価した(
図6)。
【0141】
簡潔には、脾臓を回収し、細かく刻み、100μmフィルターに通し、その後に40μmフィルターが続いた。単細胞懸濁液を塩化アンモニウム-カリウム(ACK)溶解緩衝液で処理し、次いで洗浄した。脾細胞を96ウェルプレートに播種し(ウェルあたり300,000個細胞)、20ng/mLのGM-CSFの存在下で、10μg/mLのAH1ペプチドで刺激した。細胞を72時間インキュベートし、次いで遠心分離で落として上清を回収した。回収された上清におけるIFN-γの濃度を、ELISAキットを使用して測定した。
【0142】
ワクチン接種調査は、PTX及びCFZがICD誘導剤であることを支持する。
【0143】
(実施例4)
ATPコートPLGAナノ粒子(NP-pD-ATP)特徴付け
ビヒクルの表面官能化によって疎水性分子の送達を増強するために利用され得る生分解性ポリマーであるPLGAを、ICD誘導剤のビヒクルに選定した。PLGAナノ粒子はポリドーパミン(pD)でコートされ得、例えば官能化されて、DCの動員を増加させ得る。ATPを、それは、pDコートナノ粒子の表面にコンジュゲートされ得るアミン基を含有するため、DCを動員するケモカインの潜在的候補として選択した。
【0144】
PLGAナノ粒子を、酸化条件下でドーパミンとインキュベートして、pDコートPLGAナノ粒子(ナノ粒子-pD)を産出した。NP-pDをATPと更にインキュベートして、ATPコートナノ粒子(NP-pD-ATP)を産生した(
図7A及び
図7Cを参照されたい)。NP-pD-ATP上のコンジュゲートされたATPの量をATP生物発光アッセイで測定し、ATPコンジュゲーションは10.5~11.2wt%であった。コンジュゲーションの最大量(12.5%w/w)は、50:1のATP対ナノ粒子w/w比で達成された(
図7B)。
【0145】
(実施例5)
NP-pD-ATPの免疫活性
ATPは、ナノ粒子へのコンジュゲーションの後、その化学誘引活性を維持することが重要である。ATPの走化能は三リン酸基と関連があり;故に、アミン基を介してATPをコンジュゲートすることは、ATPの走化機能に影響を及ぼさないと予想される。ATP又はNP-pD-ATPの走化能(すなわち、DCを動員するATP又はATP装飾ナノ粒子の能力)を、TranswellにおいてTHP-1ヒト単球又はJAWSIIマウスDCを使用して査定した。2種の細胞株は、免疫応答を始動することに関与する細胞集団であり;単球はDCの前駆体としての役割を果たし、それはT細胞に抗原を提示する。
【0146】
Transwell(8μm細孔サイズ)の上部ウェルにおいて、培地に懸濁された単球(100μLの2×105個のTHP-1細胞)又はDC(100μLの2×105個のJAWSII細胞(不死化未成熟DC株の免疫細胞))を添加した。10μM ATP又はATPコンジュゲートナノ粒子(NP-pD-ATP)を含有する600μLの培地を、下部ウェルに添加した。細胞を37℃において4時間インキュベートした。4時間のインキュベーションの後、下部培地を回収し、上部ウェルから下部ウェルに移動した単球又はDCの数を、Accuri C6フローサイトメトリーを使用して計数した。
【0147】
Transwellアッセイに基づき、NP-pD-ATPはATPの活性を維持し、化学誘引活性は遊離ATPのものと同等であった(
図9Aを参照されたい)。Transwellアッセイに基づき、NP-pD-ATPはATPの活性を維持し、化学誘引活性は遊離ATPのものと同等であった(
図9B及び
図9Cを参照されたい)。
【0148】
(実施例6)
NP-pD-ATPの安定性査定
NPに結合しているATPの安定性を、(i)血清含有培地中で、又は(ii)ATP分解酵素であるアピラーゼの存在下で、NP-pD-ATPをインキュベートすることによって査定した。
【0149】
NP-pD-ATPは血清含有培地中で安定である
1mg ATPと等価のNP-pD-ATPを、1mL 10%ウシ胎仔血清(FBS)及び90% DMEM中で最高72時間インキュベートした。インキュベーションの間の種々の時点(例えば、6時間、12時間、24時間、48時間、及び72時間)で、ナノ粒子を25000rcf×15分間の遠心分離によって上清から分離し、ナノ粒子及び上清を回収した。インキュベートされたナノ粒子及び血清含有培地(NP-pD-ATPを含有するために使用された)を、JAWSII DCとともに、Transwellアッセイに使用した。
【0150】
簡潔には、ナノ粒子を1mL PBSに再懸濁した。インキュベートされた培地からの得られた上清の10μM ATP当量のNP-pD-ATPを、Transwellの下部ウェルに添加した。NP-pD-ATPは、72時間のインキュベーションの後、ATPの活性をなおも維持し、一方で粒子条件付け上清は、JAWSII DCの移動を誘導しなかった。このことは、血清の存在下でさえ、ATPがナノ粒子に安定して結合していたことを支持する(
図8D)。
【0151】
図8Eは、10% FBS含有培地中で24時間プレインキュベートされたナノ粒子を含めた、各処理に応答してTranswellをわたって移動したJAWSII細胞のパーセンテージによって推定された、PLGA-pD-ATPの安定性を示している。具体的には、ナノ粒子を10% FBS含有培地中で24時間プレインキュベートし、上清及びペレットに分離した。上清に応答したJAWSII細胞移動の欠如は、ATPが上清に放出されなかったことを示す。更に、ナノ粒子ペレットは、新鮮なナノ粒子と同等の程度までJAWSII移動を誘導し、ATPの大多数がナノ粒子に結合したままであることを示した。
【0152】
NP-pD-ATPはアピラーゼにおいて安定である
ATPは、免疫系を刺激するケモカインとしての役割を果たし得るものの、その分解産物(すなわち、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、及びアデノシン)はそれぞれ、反対の役割を果たし、免疫抑制性環境を誘導する。このメカニズムは、不要な慢性炎症を阻止するために我々の身体において利用される。従って、結合しているATPが、ADP、AMP、又はアデノシンに加水分解した場合、DC動員は妨げられ、腫瘍成長を促進する免疫抑制性環境を創出するであろう。CD39及びCD73等のATP分解酵素は、腫瘍の表面に一般に発現され;それ故、ATPが該酵素の存在下でどのように挙動するかを理解することは決定的に重要である。
【0153】
ナノ粒子に結合しているATPに対する分解酵素の効果をスクリーニングするために、アピラーゼ(CD39等価物)をATP又はNP-pD-ATPと共インキュベートし、DC移動アッセイをTranswellにおいて実施した(
図9A)。移動アッセイに関しては、培地に懸濁された100μLの2×10
5個のJAWSII細胞を、Transwell(8μm細孔サイズ)の上部に添加した。10μM ATPコンジュゲートナノ粒子を含有する600μLの培地を、下部ウェルに添加した(0.5単位のアピラーゼの有無で)。細胞を37℃において4時間インキュベートした。下部培地を回収して、移動した細胞の数をフローサイトメトリーによって分析した。
【0154】
更に、ATPに対するアピラーゼの活性を確認するために、10μM ATPを、5単位/mLアピラーゼの有無で、37℃において10分間インキュベートした。インキュベーション後のATPレベルを、ATP生物発光アッセイによって測定した。
【0155】
Transwell移動アッセイにおいて、アピラーゼは、DCの有意に低下した移動によって示されるように、遊離ATPの走化活性を完全に無効にした(
図9B)。しかしながら、NP-pD-ATPはアピラーゼの分解に抵抗し、下部ウェルへのDCの移動を誘導した。表面結合しているATPは、アピラーゼ酵素に対する立体障害を誘導している可能性があり、ATPの分解を阻止する。
【0156】
加えて、ATPは、アピラーゼとの遊離ATPインキュベーションの後に検出不能であり、ADP、AMP、及び最終的にはアデノシンへのATPの逐次的加水分解を触媒して無機リン酸を放出するアピラーゼの活性を支持した(
図9C)。
【0157】
全体として、安定性実験の結果は、ATPがナノ粒子の表面に安定にコンジュゲートされ、そのようなコンジュゲーションが、ATPのその分解酵素に対する安定性を増加させたことを支持する。
【0158】
(実施例7)
ナノ粒子内でのICD誘導剤のカプセル化
NP-pD-ATPの開発後、ICD誘導剤をカプセル化した。PTX又はCFZを、5wt%の標的担持効率で、シングルエマルジョン法によってPLGAナノ粒子内にカプセル化した。PLGAナノ粒子を、疎水性薬物とのそれらの適合性、及び機能的リガンドのコンジュゲーションを促すそれらの高い表面積対質量比に起因して、調査に選定した。
【0159】
100mgのPLGA(MW 97kDa、LA:GA=85:15)及び10mgのPTX又はCFZを、1mLのジクロロメタンに溶解した。溶液を4mLの4%ポリビニルアルコール(PVA)に添加した。混合物を2分間の超音波処理(4秒間オン、2秒間オフ、40%振幅)によって乳化した。20mLのDI水を乳濁液に添加した。溶液を3時間撹拌し、次いで、ロタバポール(rotavapor)を用いて付加的な30分間更に蒸発させた。
【0160】
PTXカーゴを担持したナノ粒子又はCFZカーゴを担持したナノ粒子を、遠心分離(45k rcf×20分間)により回収し、pD層でコートして、マイケル付加及びシッフ塩基反応を介したpDへのATPの後続のコンジュゲーションを可能にした(
図11)。回収された粒子を脱イオン(DI)水で2回洗浄した。PTX担持PLGAナノ粒子(PTX@NP)を、0.5/1のドーパミンHCl対NP質量比で、Tris緩衝液(10mM、pH8.5)中ドーパミンHCl溶液中にて2時間インキュベートした。ナノ粒子が重合ドーパミンの暗色を示した時点で、ナノ粒子を遠心分離(20分間×25000rpm)によって回収し、DI水で2回洗浄して過剰なドーパミン及びpDを除去した。
【0161】
PTX担持NP-pD(PTX@NP-pD)を、Tris緩衝液(10mM、pH8.5)中にて、20:1のATP対ナノ粒子質量比でATPと1時間インキュベートした。ナノ粒子を4℃にて20分間の45k rcfでの遠心分離によって回収し、DI水で2回洗浄した。サイズをNS90ゼータサイザーによって測定し、ゼータ電位をNS90ゼータサイザーによって測定し、担持効率を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定し、ATP含有量をATP判定キットを使用して測定した。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)及びコレステロールを、Avanti Polar Lipids, Inc.社(Birmingham、AL)から購入した。
【0162】
薬物カプセル化ナノ粒子のサイズ及び表面電荷を、Malvern NS90ゼータサイザーによって測定した。担持効率を、ナノ粒子あたりの薬物(HPLCによって定量される)として定義した。PTX及びCFZは、それぞれ3.4及び4.4%の担持効率で、PLGAナノ粒子内にカプセル化された。薬物カプセル化ナノ粒子は、全身注射に適切な粒径を有した(Table 1(表1))。
【0163】
【0164】
(実施例8)
NP-pD-ATPからの放出速度
PTXを担持したPLGA-pD-ATP及びCFZを担持したPLGA-pD-ATPの放出速度を、シンク条件下で0.2% Tween 80/PBS中で測定した。0.2% Tween 80/PBSにおけるPTX及びCFZの飽和溶解度は、それぞれ13μg/mL及び9μg/mLであると判定された。上清を回収し、薬物の量を、
図11A及び
図11Bに表示される各時点においてHPLCで測定した。
【0165】
図11A及び
図11Bに示されるように、PTX@NP-pD-ATPは、96時間にわたって総担持薬物の82.5%を放出し、CFZ@PLGA-pD-ATPは46%を放出した。粒子の表面近くに位置する薬物及び容易く拡散する不十分に封入された薬物の漏出におそらく起因して、初回バースト放出が、両薬物に関して異なる程度に観察された。CFZ@PLGA-pD-ATPからのCFZの遅延した且つ不完全な放出は、以前に観察されたFBS含有培地における化合物の乏しい溶解度にたぶん起因する。
【0166】
(実施例9)
カプセル化された治療剤の放出を増強する
様々な調査を実施して、ATP装飾ナノ粒子の放出速度に対する変数の効果を査定した。第一に、PLGA内にカプセル化されたCFZは、担持されたカーゴの50%を上回る割合の放出を提供しなかったため、完全な放出を提供するために更なる検討を実施した。
【0167】
乳酸対グリコール酸(LA:GA)比又は分子量(MW)の変更
まず、LA:GA比又はPLGAポリマーのMWを変えて、CFZに対して疎水性又は親水性環境のいずれかを提供した。CFZは疎水性であり、PLGAマトリックス中に分子状に分散し得ることから、疎水性を増加させることは、放出速度を改善する潜在性を有する。分子分散の結果として、CFZは結晶化され得ず、それによって放出を増加させる。他方、LA:GA比を変更することによって疎水性を減少させることは、水浸潤を増加させることによってCFZを放出する助けになり得る。様々なLA:GA比及びMWを用いて、ナノ粒子を産生した(Table 2(表2))。
【0168】
【0169】
産生された(コートされていない)ナノ粒子(CFZ@NP)におけるCFZの放出を、3μg/mLのCFZと等価の濃度で調製し、シンク条件下で15mLの0.2% Tween80/PBS中にて測定し(シンク条件-低濃度洗剤溶液を有する0.2% PBS溶液(PBST)におけるCFZの最大溶解度:9μg/mL)、放出培地におけるCFZの濃度を種々の時点で測定した(
図12A)。200μLの試料を、
図12Aに表示される各時点で回収し、次いで、16000rcfで20分間遠心分離した。150μLの上清を回収し、次いで分析した。150μLの0.2% PBSTを、回収された試料に添加し、次いで元の試料に戻し添加した。製剤にかかわらず、放出の有意な変化は観察されなかった。
【0170】
PLGA組成の変更:
別の手法は、ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲートPLGAを利用することによって放出を改善することであり、それは、水路を形成することによってポリマーの多孔性を増加させ得る。PEGの湿潤能は、薬物の拡散及び放出を促進し得る。以前の調査は、PLGAポリマーへのPEGの組み入れが、ドセタキセル(doxetaxel)の放出を改善していることを示している(Rafiei及びHaddadi、Docetaxel-loaded PLGA and PLGA-PEG nanoparticles for intravenous application:pharmacokinetics and biodistribution profile、Int J Nanomedicine 12:935~947 (2017)を参照されたい)。それ故、カプセル化されたCFZの放出を改善しようと、PLGAをPEGコンジュゲートPLGAで様々な程度置き換えることによって、PEGコンジュゲートPLGAを査定した。
【0171】
簡潔には、種々の比のPLGA対PLGA-メトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)を混合して、CFZをカプセル化した。より具体的には、PLGA(LA:GA=85:15、97kDA)を、PLGA-mPEG(MW約5,000:55,000Da LA:GA=50:50)と1mLジクロロメタン(DCM)中で混合して、PLGAの10%、50%、又は100%を置き換えた。5mg CFZを、DCMに溶解した1mLのPLGA/PLGA-mPEGに添加した(10%質量比で)。
【0172】
CFZ+PLGA/PLGA-mPEG溶液を5mLの4% PVAに添加した。混合物を2分間の超音波処理(2秒間オン、2秒間オフ、40%振幅)によって乳化した。乳化を25mLのDI水に添加した。溶液を3時間撹拌し、次いで20mbarで付加的な30分間ロタバップ(rotavap)した。CFZを担持したPLGA/PLGA-mPEG-NPを、20分間、43400rcfの遠心分離を使用して回収した。次いで、CFZを担持したPLGA/PLGA-mPEG-NPをDI水で洗浄し、超音波処理し(10秒間、20%振幅)、15分間、43400rcfで2回遠心分離した。ペレットを回収し、4℃で保管した。
【0173】
PEGの置き換えは、粒子の物理的特徴に影響を及ぼさなかった(Table 3(表3))。
【0174】
【0175】
上で記されるように、産生されたナノ粒子におけるCFZの放出を、シンク条件下で0.2% Tween 80/PBS中にて測定した。試料を種々の時点で取り出し、CFZ放出の量を測定した(
図12B)。予想どおり、より多くのPLGAがPEGコンジュゲートPLGAで置き換えられるほど、より多くのCFZ放出が観察された。
【0176】
代替的な送達ビヒクル:
CFZの放出を増強するための代替的な手法を、PLGAの代わりにリポソームにCFZをカプセル化することによっても探索した。リポソームは、PTXの持続的放出を提供することが示されている(例えば、Liuら、Mixed Liposome Approach for Ratiometric and Sequential Delivery of Paclitaxel and Gemcitabine、AAPS PharmSciTech、19:693~699 (2018)を参照されたい)。それ故、リポソームをCFZの送達に関してスクリーニングした。
【0177】
CFZを含有するリポソームを、5,000psi又は20,000psiで高圧ホモジナイザーを用いて産生した(Table 4(表4))。
【0178】
【0179】
簡潔には、DPPCを3mLクロロホルムの混合物に溶解した。CFZを脂質の2.1wt%でこの溶液に添加し、CFZ/脂質溶液を丸底フラスコに移し、45℃で30分間真空下で回転式蒸発装置で回転させて溶媒を除去し、薄い脂質フィルムを形成した。リポソーム懸濁液を超音波プローブを用いて短時間超音波処理した。リポソームを、5,000~20,000psiの高圧ホモジナイザーを通して押し出した。リポソームを175,000rcf×20分間での遠心分離により回収した。CFZを担持したリポソームを、15mL 0.2% Tween 80/PBS中に、3μg/mLのCFZと等価の濃度で調製した(シンク条件-0.2% PBSTにおけるCFZの最大溶解度:9μg/mL)。200μLの試料を、
図12Cに表示される各時点で回収し、175,000rcfで20分間遠心分離した。150μLの上清を回収し、次いで分析した。150μLの0.2% PBSTを、回収された試料に添加し、次いで元の試料に戻し添加した。
【0180】
ナノ粒子を産生するために使用された圧力にかかわらず、ナノ粒子は、同様のサイズ及び薬物担持を示した。CFZの放出を、他の調査と同様のやり方で試験した。リポソーム製剤は、産生に使用された圧力に関係なく、経時的に同様の放出プロファイルを示し(
図12C)、担持されたCFZの70%が144時間にわたって放出された。
【0181】
図12Dは、リポソームにカプセル化されたCFZ放出速度物質収支を示しており、カプセル化されたCFZの大多数は、6日以内に放出された(例えば、経時的に直線的に放出された)ことを示す。
【0182】
(実施例10)
PTX又はCFZカプセル化PLGAナノ粒子の細胞毒性
PTX及びCFZの細胞毒性を、CT26マウス癌腫及びJAWSII DCに対して試験した。本明細書のナノ粒子を使用してICD誘導剤を送達して、APCによって取り込まれる必要がある腫瘍抗原を創出し得ることから、ある特定の実施形態において、製剤は腫瘍細胞を殺滅し、一方で宿主免疫細胞を守ることが重要である。
【0183】
細胞毒性をMTTアッセイによって査定した。CT26細胞を3,000個細胞/ウェルで96ウェルに播種し、30%コンフルエンシーまで培養した。細胞を、様々な濃度の薬物、薬物@NP、薬物@NP-pD、薬物@NP-pD-ATPで24時間処理した。24時間後、培地を置き換え、細胞を付加的な24時間インキュベートし、MTTアッセイを実施して、存在する生存細胞の数を測定した(
図13A及び
図14Aを参照されたい)。
【0184】
JAWSII細胞に関しては、JAWSII細胞を20,000個細胞/ウェルで96ウェルに播種した。細胞を様々な濃度のPTXで96時間処理し、MTTアッセイを実施して、存在する生存細胞の数を測定した(
図13B及び
図14Bを参照されたい)。
【0185】
PTXナノ粒子製剤は、JAWSII DCに対する最小の毒性で、CT26腫瘍細胞に対して細胞毒性を示した(
図13A~
図13B)。細胞増殖抑制性化学療法であるPTXは、DC等、腫瘍細胞ほど迅速に増殖しない細胞に影響を及ぼさないことから、PTXは、一般的にがん細胞よりも免疫細胞によって良好な忍容性を示される。本発明者らは、30μM以上におけるDC生存率の突然の減少が、遊離PTXの結晶化と関係があり得、それは細胞膜への物理的ダメージを誘導している可能性があるのではないかと疑う(がん細胞は、高い感受性に起因して、30μM以上には曝露されていない)。
【0186】
CFZナノ粒子製剤は、CT26腫瘍細胞及びJAWSII樹状細胞の両方に対して毒性があった(
図14A~
図14B)。そのような違いは、作用のメカニズムの違いにおそらく起因し:CFZは、p53タンパク質等のアポトーシス促進性因子の分解を阻止し得るプロテアソーム阻害剤であり、細胞タイプにかかわらず、プログラム細胞死の活性化を可能にする。これらの知見から、PTXを、免疫毒性の潜在性を最小限に抑えるために、将来の調査のリード候補として選定した。
【0187】
(実施例11)
免疫細胞プロファイリングのための腫瘍プロセシング
以下のプロトコールを、本明細書に記載されるインビボ調査のための、腫瘍をプロセシングする工程に使用した。
【0188】
腫瘍を収集し、小片に細かく刻み、1.5mg/mLコラゲナーゼタイプ4、0.2mg/mL DNase I、及び0.2mg/mLヒアルロニダーゼを含有する培地によって37℃で2時間消化した。細胞懸濁液を、100μm、それに続く40μmセルストレーナーに通してフィルターにかけた。細胞を500gで8分間遠心分離した。ペレットを5mLのACK溶解緩衝液に再懸濁し、次いで5分前インキュベートした。50mL PBSを添加して溶解を止め、500gで8分間遠心分離した。細胞を、FBS及び防腐剤としてのアジ化ナトリウム(0.09%)を含有する緩衝生理食塩溶液である染色緩衝液に再懸濁した。細胞を抗マウスCD16/32抗体で4℃にて10分間染色して、Fc受容体への免疫グロブリンの非特異的結合を遮断し、その後に4℃にて20~30分間の染色抗体が続き、500gで8分間遠心分離した。
【0189】
細胞を1mLの4% PFAで室温にて20分間固定し、その後、500gで8分間遠心分離した。細胞を回収し、フローサイトメーターのために300μLのPBSに4℃で懸濁した。
【0190】
(実施例12)
NP-pD-ATPは腫瘍にDCを動員する
APCは、ICD誘導剤によって産生された腫瘍抗原をT細胞に提示することによって、抗腫瘍免疫応答を始動し得る。上記のインビトロTranswell調査によって示唆されるように、NP-pD-ATPがAPCを誘引し得るかどうか試験するために、PTX@NP-pD-ATPを、CT26腫瘍を持つマウスに腫瘍内注射し、腫瘍微小環境(TME)内のDCの数及び腫瘍成長を、注射の3日後に分析した(
図15A及び
図15B)。
【0191】
より具体的には、雌BALB/cマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×105個のCT26細胞を皮下接種した。腫瘍が約50~100mm3まで成長した時点で、マウスを3つの群に無作為に割り振り(群あたりn=3)、100μLのPBS、PTX@NP-pD、又はPTX@NP+ATP混合物の腫瘍内注射で処置した。腫瘍成長をモニターし、72時間の注射の後、腫瘍を回収して、腫瘍における樹状細胞の数を評価した。腫瘍を単細胞懸濁液に調製し(実施例11に記載されるように)、免疫表現型検査のために抗体で染色した。DC(CD45+CD86+CD11c+)のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定した。
【0192】
腫瘍体積は、PBS、PTX@NP-pD、又はPTX@NP-pDと可溶性ATPとの混合物と比較して、3日間でPTX@NP-pD-ATPを用いて最良に抑制された。PTX@NP-pD-ATPは、他の群と比較した場合、腫瘍内のDCの数を有意に増加させた。可溶性ATPの添加は、腫瘍内へのDC浸潤を増加させず、むしろPTX@NP-pD-ATPと比較してそれを減少させた。そのような効果は、腫瘍細胞の表面に一般に発現される分解酵素(CD73及びCD39)の存在に起因したATPの不安定性によって推進され得る。そのような分解酵素は、ATPをAMP又はアデノシンに変換し得、それは、DC動員を妨げ得る免疫抑制性環境を誘導し得る。
【0193】
PTX@NP-pDと遊離ATPとの混合物とは異なり、PTX@NP-pD-ATPは、TMEにおいて局部注射を行うと、TMEにDCを動員する助けになり(
図15B)、最初の3日間腫瘍成長を抑制した(
図15A)。このことは、NP-pD-ATPがATPの安定性を保ち、腫瘍内へのDCの浸潤を増加させる助けになり得、それによって抗腫瘍免疫を誘導することを支持する。
【0194】
(実施例13)
ナノ粒子製剤は腫瘍におけるナノ粒子の保持を増強する
ATP結合ナノ粒子が、腫瘍におけるATPの保持を延ばすかどうかを試験するために、腫瘍を持つマウスを、蛍光色素結合ナノ粒子で処置し、経時的に撮像した。ATP又はNP-pD-ATPの注射後に、腫瘍におけるATPの量を単に測定することは可能であるものの、ATPは体内における共通のエネルギー源であることから、外因性ATP(例えば、ナノ粒子由来)と内因性ATP(例えば、細胞に由来する)とを区別するのは困難であろう。更に、注射由来のATPは、ADP又はAMPに分解され得る。従って、アミン終端色素をATPの代わりに使用して、可溶性ATP及びナノ粒子結合ATPの挙動をシミュレーションした。より具体的には、アミンコンジュゲートCy7色素を、その水溶解度がATPのものと同様であり、アミンコンジュゲートCy7色素の蛍光(florescent)スペクトルは、マウス身体由来の自家蛍光(auto florescence)と重複しないことから、使用した。
【0195】
Cy7コートナノ粒子(NP-pD-Cy7)を、wt%を除いて、NP-pD-ATPと同じ様式で産生した。PLGAナノ粒子を、0.5/1のドーパミンHCl対NP質量比で、ビシン緩衝液(10mM、pH8.5)中ドーパミンHCl溶液中にて1時間インキュベートした。ナノ粒子が重合ドーパミンの暗色を示した時点で、ナノ粒子を遠心分離(20分間×25000rpm)によって回収し、DI水で2回洗浄して過剰なドーパミン及びpDを除去した。
【0196】
20mg PLGA-pDを、5mLビシン緩衝液(10mM、pH8.5)中で50μgのCy7-アミン(0.25% Cy7-アミン対ナノ粒子質量比)と1時間インキュベートした。ナノ粒子を、4Cにて20分間の25000rpmでの遠心分離によって回収し、DI水で2回洗浄した。
【0197】
結果として生じたNP-pD-Cy7を、CT26を持つマウスに腫瘍内注射し、Cy7の蛍光強度をAMI撮像装置で経時的に測定した(
図16)。対照的に、遊離Cy7由来のCy7シグナルは急速に弱まり、注射の3日後に検出不能になり始めた(
図16及び
図17)。他方、Cy7コンジュゲートナノ粒子のシグナルは8.2日後でさえ持続し(
図16及び
図18)、ナノ粒子に安定に結合しているATPは、可溶性ATPと比較して、腫瘍内により長くとどまり得ることを示唆した。
【0198】
(実施例14)
静脈内送達によるPTXカプセル化NP-pD-ATPの抗腫瘍効力
PTX@NP-pD-ATPの全身性抗腫瘍効力を、腫瘍を持つマウスの様々なモデル(CT26同系モデル及びB16F10同系モデル)を用いて査定した。腫瘍が50mm3の体積に達し次第、マウスを20mg/kgのPTX当量で3日ごとに4回静脈内に処置した。腫瘍成長を毎日観察した。
【0199】
CT26同系モデル
雌BALB/cマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×10
5個のCT26細胞を皮下接種した(
図19A)。腫瘍が約50~100mm
3まで成長した時点で、マウスを3つの群に無作為に割り振り、3日ごとに合計4回の150μLのPBS、PTX@NP-pD、又はPTX@NP+ATP混合物、及びPTX@NP-pD-ATPの静脈内注射で処置した。PTX用量は、PTXを受けたすべての群に対して20mg/kg当量であった。腫瘍成長をモニターした。
【0200】
PTX@NP-pD-ATPは、PBS又は混合物群を用いた処置と比較して、より良好な抗腫瘍効力を示し、5匹のマウスのうち1匹のマウスにおいて完全退縮をもたらした(
図19B及び
図29C)。しかしながら、腫瘍は、マウスの大部分においてなおも成長した。処置が施された間は腫瘍は初めに抑制されたが、4回後に処置が中断すると、腫瘍は再成長し始めた。
【0201】
B16F10同系モデル
雄C57BL/6マウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において5×10
5個のB16F10細胞を皮下接種した(
図20A)。腫瘍が約50~100mm
3まで成長した時点で、マウスを3つの群に無作為に割り振り、3日ごとに合計4回の150μLのPBS、PTX@NP-pD、PTX@NP+ATP混合物、及びPTX@NP-pD-ATPの静脈内注射で処置した。PTX用量は、PTXを受けたすべての群に対して20mg/kg当量であった。腫瘍成長をモニターした。
図20Bは、各群の静脈内注射後の腫瘍サイズのグラフを示している。
図20Cは、処置(又は、その欠如)後のマウスの生存率パーセントについてのグラフを示している。
【0202】
CT26同系モデルにおける以前の観察結果と一致して、PTX@NP-pD-ATP群は、PBS及びPTX@NP-pD+ATP群と比較して、優れた抗腫瘍効力を示した。しかしながら、B16F10腫瘍の腫瘍成長は、たぶん腫瘍におけるより少ない数の免疫細胞及びより急速な倍加時間のせいで、CT26腫瘍のものよりも早かった。
【0203】
それにもかかわらず、PTX@NP-pD-ATP製剤の有効性は、種々の腫瘍モデルにわたって一貫しており、ナノ粒子の表面にコンジュゲートされた場合のATPの増強した効力を支持した。この増強した効力は、コーティング及びナノ粒子製剤からのATPの安定性及び保持の増加により生じ得、それは、付近の免疫細胞の動員につながり、所望の免疫応答を引き出す。
【0204】
(実施例15)
腫瘍内送達によるCT26モデルにおけるPTXカプセル化NP-pD-ATPの抗腫瘍効力
静脈内注射に関しては、注射された量と比較して、異なる量のPTXが腫瘍に送達され得る可能性がある。ATP結合ナノ粒子が、腫瘍へのPTX送達を固定する抗腫瘍効果を増加させるかどうかを試験するために、マウスを腫瘍内処置する別のセットの動物調査を実施した。静脈内注射とは異なり、腫瘍内注射は、腫瘍内に直接1回のみ行われ、腫瘍成長をモニターした(
図21A)。処置は腫瘍内に送達されたことから、腫瘍に送達されたPTX量は、群間で同じであると予想された。付加的な対照群も調査に含まれ、PTX担体不含ナノ結晶製剤であるアブクスタルを、アブクスタルはアブラキサンと同じくらい有効であるため、アブラキサン(PTX療法の現在の標準)の代わりに使用した。(Park及びYeo、Albumin-coated nanocrystals for carrier-free delivery of paclitaxel、J. Controlled Release 263:90~101 (2017)を参照されたい;Parkら、A Comparative In Vivo Study of Albumin-Coated Paclitaxel Nanocrystals and Abraxane、Small 14:e1703670 (2018)も参照されたい)。
【0205】
雌BALB/cマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×105個のCT26細胞を皮下接種した。腫瘍成長をモニターし、腫瘍が約50~100mm3まで成長した時点で、マウスを5つの群に無作為に割り振り、100μLのPBS、PBS、PTX(アブクスタル)、PTX(アブクスタル)+ATP、PTX@NP-pD、PTX@PLGA-pD+ATP、及びPTX@PLGA-pD-ATPの腫瘍内注射で処置した。PTX用量は、PTXを受けたすべての群に対して5mg/kg当量であった。腫瘍成長を再度モニターした。
【0206】
処置群の間で、PTX@NP-pD-ATPは最良の抗腫瘍効力を示し、5匹のうち2匹のマウスにおいて完全寛解をもたらした(
図21B及び
図21C)。腫瘍成長曲線及び生存曲線によって実証されるように、アブクスタル又はPTX@NP-pDのいずれかと併せた可溶性ATPの付加的な送達は、腫瘍を有意に抑制しなかった(
図21B及び
図21C)。このことは、Cy7調査において以前に見られたように(実施例13)、NP-pD-ATPがATPの保持を増強し得、それによって腫瘍への免疫細胞の浸潤を増加させることを支持する。
【0207】
(実施例16)
PTX担持NP-pD-ATPの腫瘍内送達後のCT26腫瘍の免疫細胞プロファイリング
TMEにおける免疫細胞の変化をよりよく理解するために、腫瘍内注射の7日後に免疫細胞分析を実施した(
図22)。7日間は、自然及び適応免疫系の両方とも、この時点までに活性であろうことから、免疫細胞の数を調査するための適当な時点として判定された。
【0208】
雌BALB/cマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×10
5個のCT26細胞を皮下接種した。腫瘍が約50~100mm
3まで成長した時点で、マウスを3つの群に無作為に割り振り、100μLのPBS、PTX@PLGA-pD+ATP、又はPTX@PLGA-pD-ATPの注射で腫瘍内処置した。PTX用量は、PTXを受けたすべての群に対して5mg/kg当量であった。注射の7日又は20日後、腫瘍、脾臓、及び腫瘍流入リンパ節を収集し、免疫細胞の数をフローサイトメトリーによって測定した(
図23~
図25)。アブクスタル、アブクスタル+ATP、PTX@NP-pD、及びPTX@NP-pD+ATPは、互いに同様の抗腫瘍効力を示したことから(実施例15を参照されたい)、PTX@NP-pD+ATPを代表的な対照として選定した。それ故、3つの処置群のみを比較した(PBS、PTX@NP-pD+ATP、及びPTX@NP-pD-ATP)。
【0209】
TMEにおいて(
図23)、PTX@NP-pD-ATPで処置されたマウスにおけるDCの数は、PTX@NP-pD+ATP(混合物)処置群又はPBS対照群のものよりも有意に高かった。M1マクロファージ(抗腫瘍様マクロファージ)の数は、PBS(対照群)と比較した場合、PTX@NP-pD-ATP及び混合物群の両方において増加したが;しかしながら、混合物群は、M2マクロファージ(腫瘍促進様マクロファージ)の増加も有した。腫瘍におけるM1/M2比は、PTX@NP-pD-ATP処置群においてのみ増加した。ナチュラルキラー(NK)細胞は、PBS(対照群)と比較して、PTX@NP-pD-ATP及び混合物処置群の両方において増加した。全体として、自然免疫細胞集団は、PTXの処置で有意に増加したが;しかしながら、可溶性ATPの添加は免疫細胞集団を更には増加させず、一方でナノ粒子にコンジュゲートされたATPの使用は増加させた。
【0210】
PTX@NP-pD-ATPは、混合物又はPBSと比較して、腫瘍内のCD8+ T細胞の量を有意に増加させた。CD4+ T細胞の有意な増加は観察されなかった。しかしながら、PTX@NP-pD-ATP処置は、PBS(対照)群と比較して、腫瘍におけるTreg細胞の量を増加させた。そのような効果は、腫瘍におけるDC及びCD8+ T細胞によって引き起こされる連続的炎症におそらく起因し、それはTreg細胞の動員を促進して、樹状細胞及びCD8+ T細胞の活性に対抗する。PTX@NP-pD-ATP及び混合物処置群の両方とも、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)集団の見かけの増加を呈したが、混合物処置群のみが、対照群と比較して有意な差を示した。
【0211】
腫瘍に隣接した免疫器官である腫瘍流入リンパ節(TDLN)も、腫瘍と同様の様式で分析した。
図24に示されるように、有意なDC及びM1マクロファージ集団が、混合物及びPTX@NP-pD-ATP処置群において観察された(より大きな増加がPTX@NP-pD-ATP処置群において観察された)。全体として、TDLNにおける自然免疫細胞傾向は、腫瘍のものを映し出した。しかしながら、T細胞は、有意な傾向を示さなかった。付加的に、TDLNにおけるTreg細胞の集団は、処置群(PTX@NP-pD-ATP又は混合物)に関して減少した。PTX@NP-pD-ATP及び混合物処置群の両方とも、TDLNにおいてMDSCの有意な増加を示したが;しかしながら、PTX@NP-pD-ATP処置群は、混合物処置と比較して、TDLNにおいて有意により低い数のMDSCを有した。
【0212】
脾臓における免疫細胞の集団も分析した(
図25)。脾臓は、様々なタイプの免疫細胞(1.5% DC、5%のマクロファージ、23%のT細胞、1.2%のTreg、64%のB細胞)を有し、自然及び適応免疫の発達を調節する。DC及びM1マクロファージ集団の両方とも、PBS(対照)群と比較して、PTX@NP-pD-ATP又は混合物処置群において増加し、増加の程度は、混合物処置群と比較して、PTX@NP-pD-ATP処置群において有意に高かった。CD4+ T細胞のわずかな増加と併せて、CD8+ T細胞の有意な増加が、PTX@NP-pD-ATP処置群においてのみ観察された。Treg細胞集団は比較され得なかった。MDSC集団は、腫瘍における観察結果とは対照的に、PTX@NP-pD-ATPの処置で有意に減少した。
【0213】
全体として、サンプリング位置(すなわち、腫瘍、TDLN、脾臓)にかかわらず、DC集団は、PTX@NP-pD-ATP又は混合物の処置で、一貫した増加を示した。しかしながら、観察された増加の程度は、混合物処置よりもPTX@NP-pD-ATP処置に関して高かった。また、M1集団及びM1/M2マクロファージ比は、PBS対照群又は混合物処置群よりも、PTX@NP-pD-ATP処置群において有意に高かった。このことは、ナノ粒子のATPコンジュゲーションが、DC及びマクロファージの動員を増強し、自然免疫細胞動員のそのような増強は、腫瘍及び脾臓におけるより高いCD8+ T細胞集団によって実証されるように、適応免疫細胞のより強い活性化につながったことを支持する。腫瘍及びTDLNにおいて観察されたTreg及びMDSCの増加は、後期における腫瘍の成長を潜在的に説明し得た。
【0214】
(実施例17)
腫瘍内注射後の腫瘍サイズに対する、CT26腫瘍における免疫細胞集団の変化
PTX@NP-pD-ATPは、混合物処置群(PTX@NP-pD+ATP)よりも腫瘍成長を良好に抑制したものの、様々な程度の初期抑制の後に腫瘍は成長した。腫瘍のその後の再発における免疫細胞の潜在的役割を調べるために、CT26腫瘍をPTX@NP-pD-ATPで腫瘍内処置し、その後、腫瘍内注射の25日後に、腫瘍(
図26A)、リンパ節(
図26B)、及び脾臓(
図26C)由来の免疫細胞の分析が続いた(前述の調査において以前に記載されるように実施された)。
【0215】
抗腫瘍免疫細胞の数は、腫瘍のサイズと高度に相関した。腫瘍が成長するにつれて、Treg集団は、MDSCの集団とともに増加し、抗腫瘍免疫細胞(例えば、DC、マクロファージ、及びT細胞)の数は減少した。脾臓及びTDLNは必ずしも腫瘍と同じ結果を示さなかったものの(例えば、M1マクロファージ集団は腫瘍において低下したが、脾臓及びTLDNにおいて増加した)、全体的傾向は、抗腫瘍免疫細胞の欠如が、腫瘍の遅発性再発に関与することを支持する。
【0216】
(実施例18)
抗PD-1抗体及びPTX@NP-pD-ATPを用いた併用療法
腫瘍は、T細胞の活性に対抗するフィードバックメカニズムを有することから、実施例17において観察された、腫瘍における免疫抑制性細胞の増加が予想された。腫瘍におけるT細胞の数の増加が以前の調査において観察されたものの、T細胞から放出されるIFNガンマは、腫瘍においてPD-L1発現の上方調節を誘導し得、それは、CD8 T細胞の疲弊及びTregの動員をもたらし得る。例えば、Jorgovanovicら、Roles of IFN-gamma in tumor progression and regression:a review、Biomark Res 8:49 (2020)を参照されたい。動員されたTregは、腫瘍にあるCD8 T細胞及びDCの活性化を下方調節し得、適応免疫の活性化を更に軽減する。
【0217】
Tregの存在は、がん免疫療法の転帰不良と高度に相関していることから、Tregの増殖を阻止するために又はTregと他の免疫細胞との相互作用を妨害するために、療法が開発されている。Hanら、Turning the Tide Against Regulatory T Cells、Front Oncol 9:279 (2019)を参照されたい。各ストラテジーに関する作用のメカニズムは互いに異なるものの、(i)抗がん薬、(ii)Treg細胞枯渇剤、及び/又は(iii)免疫刺激細胞へのTreg細胞の変換、という3つのストラテジーを使用して、Treg細胞の活性化を阻止し得る又はそれを枯渇させ得る。Han (2019)、上記。
【0218】
Treg細胞を下方調節するための考え得る治療選択肢のうち、更に調査するための付加的な治療剤として、抗PD-1抗体を特定した。これは、抗PD-1抗体が細胞傷害性CD8 T細胞の抑制を緩和し得、Tregを下方調節し得、一方で他の免疫抑制性細胞とのT細胞の相互作用を阻止するためである。Yoshidaら、Anti-PD-1 antibody decreases tumour-infiltrating regulatory T cells、BMC Cancer 20:25 (2020)、及びRavelliら、Immune-related strategies driving immunotherapy in breast cancer treatment:a real clinical opportunity、Expert Rev Anticancer Ther 15:689~702 (2015)を参照されたい。
【0219】
抗PD-1抗体との組み合わせで投与されるPTX@NP-pD-ATPの全身性抗腫瘍効力を、CT26腫瘍を持つマウスを用いて査定した。腫瘍が50mm
3の体積に達した時点で開始して、マウスを20mg/kgのPTX当量で3日ごとに4回静脈内に処置した。マウスは、抗PD-1抗体の逐次的注射を3日ごとに4回腹腔内に付加的に受けた(
図27)。
【0220】
より具体的には、雌BALB/cマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×105個のCT26細胞を皮下接種した。腫瘍が50~100mm3まで成長した時点で、マウスを4つの群に無作為に割り振り、PBS、PBS+抗PD-1抗体、PTX@NP-pD-ATP、PTX@NP-pD-ATP+抗PD-1抗体で処置した。PBS又はPTX@NP-pD-ATP(PTX当量20mg/kg)を、3日ごとに最高4回静脈内に与えた。
【0221】
腫瘍における免疫抑制性Treg細胞を下方調節するように調査を設計したことから、抗原提示後にT細胞が活性化される時点の、PTXの初回注射の7日後に抗体を注射した。実際、逐次的注射を提供することは、他の併用療法においてより高い抗腫瘍効力を示している。例えば、Messenheimerら、Timing of PD-1 Blockade Is Critical to Effective Combination Immunotherapy with Anti-OX40、Clin Cancer Res 23:6165~6177 (2017)、及びKimら、Sequential and Timely Combination of a Cancer Nanovaccine with Immune Checkpoint Blockade Effectively Inhibits Tumor Growth and Relapse、Angew Chem Int Ed Engl 59:14628~14638 (2020)を参照されたい。従って、PBS又はPTX@NP-pD-ATPの初回注射の7日後に始めて、抗PD-1抗体(投薬あたり150μg)を3日ごとに最高4回腹腔内投与した。腫瘍成長をモニターした。
【0222】
PTX@PLGA-pD-ATPと抗PD-1抗体との組み合わせは、腫瘍を持つマウスの転帰を有意に向上し、マウスの75%(6/8)において腫瘍の完全退縮をもたらし、他の2匹のマウスにおいて腫瘍成長を遅延させた(
図28A及び
図28B)。
【0223】
抗PD-1抗体は、腫瘍が500mm
3よりも大きい体積に既に達している時点である、PBS処置の7日後に与えられたことから、大きな腫瘍は、強い免疫抑制性TMEを既に呈し得るため、抗PD-1抗体は働いていないかもしれない可能性がある。抗PD-1抗体が、小さなサイズの腫瘍(体積が約50~100mm
3)に対してどのように作用するかを観察するために、付加的な動物に、上で記載されるようにCT26腫瘍を接種し、腫瘍体積が体積で50~100mm
3前後である時点で、抗PD-1抗体を最初に与えた。抗PD-1抗体は、対照群と比較して腫瘍の成長を抑制したものの(
図29A及び
図20B)、それらは併用療法ほど有効ではなく、腫瘍の完全退縮を有しなかった。
【0224】
併用療法を生き延びたマウスが、CT26腫瘍に対する適応免疫を発達させていたかどうかを調べるために、完全寛解に達したマウスに、反対脇腹にCT26細胞を再負荷し(以前のプロトコールによる)、腫瘍成長を観察した(
図30)。生き延びたマウスにおいて腫瘍は成長しなかったが;しかしながら、接種の7日後にはもう、年齢を合わせたナイーブマウスにおいて腫瘍は成長し始め、併用処置群からの腫瘍なしマウスが、CT26に対する抗腫瘍免疫を発達させたことを支持した。
【0225】
(実施例19)
免疫不全マウスにおけるCT26に対する抗腫瘍効力
抗腫瘍応答の向上が適応免疫に依存していることを確認するために、成熟T細胞集団を欠如するヌードマウスも、PTX@NP-pD-ATPを用いて試験した。
【0226】
第一に、雌ヌードマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×105個のCT26細胞を皮下接種した。腫瘍が50mm3の体積に達し次第、マウスを3つの群に無作為に割り振り、3日ごとに合計4回の150μLのPBS、PTX@NP-pD-ATP、又はPTX@NP+ATP混合物の静脈内注射で処置した。PTX用量は、PTXを受けたすべての群に対して20mg/kg当量であった。腫瘍成長をモニターした。
【0227】
免疫能力のあるモデルとは異なり、PTX@NP-pD-ATPは、混合物群との腫瘍成長(比腫瘍成長速度)の差を示さず(
図31A~
図31C)、ATPコートナノ粒子の活性がT細胞活性化に依存することを支持した。
【0228】
(実施例20)
ATPは腫瘍におけるPTXの蓄積に影響を及ぼさない
がん細胞上でのP2X7受容体の過剰発現に基づき、ATPは、カーゴの送達を増強するための腫瘍標的化リガンドとしてこれまで利用されている。例えば、Rajabnia及びMeshkini、Fabrication of adenosine 5'-triphosphate-capped silver nanoparticles:Enhanced cytotoxicity efficacy and targeting effect against tumor cells、Process Biochemistry 65:186~196 (2018)を参照されたい。ヌードマウスにおける試験(実施例19)は、ATP装飾ナノ粒子による抗腫瘍免疫の活性化を示唆するが、PLGAナノ粒子にコンジュゲートされたATPも、腫瘍を標的にすることによって、CT26又はB16F10腫瘍へのPTXの送達を増強し得た(標的にされない、コートされていないナノ粒子と比較して)。
【0229】
ATP装飾ナノ粒子が、P2X7受容体相互作用を介してナノ粒子の取り込みを増強するかどうかをスクリーニングするために、ローダミンB標識PLGAを利用してナノ粒子を形成し、ローダミンB標識PLGAナノ粒子の表面をコートしなかった(すなわち、装飾しなかった)、ポリエチレンイミン(PEI)でコートした、又はATPでコートした。PEIを、細胞取り込みを非特異的に促進するその公知の能力に起因して、陽性対照として使用した。腫瘍細胞によるナノ粒子の取り込みを、共焦点顕微鏡法及びフローサイトメトリーにより分析した。
【0230】
共焦点顕微鏡法から、ATPコートナノ粒子は、CT26細胞又はB16F10細胞によって活発に取り込まれず、一方でPEIコートナノ粒子は腫瘍細胞によって取り込まれた(
図32A及び
図32B)。フローサイトメトリー結果は、一貫した傾向を示した(
図33)。インビトロ結果は、ATPコンジュゲーションが、腫瘍へのナノ粒子の取り込みを増強し得ないことを支持する。
【0231】
インビボにおける標的化効果を評価するために、CT26腫瘍を持つマウスを、PTX@NP-pD+ATP混合物(すなわち、混合物又は混合物処置群)又はPTX@NP-pD-ATPのいずれかで処置し、腫瘍におけるPTX蓄積の量を、最初の処置の24時間後に測定した。腫瘍におけるナノ粒子の最も高い蓄積が注射の24時間後に生じるであろうことを示唆する文献の知見に基づいて、24時間の時点を選定した。Hyunら、Surface modification of polymer nanoparticles with native albumin for enhancing drug delivery to solid tumors、Biomaterials 180:206~224 (2018)、及びXuら、Quinic Acid-Conjugated Nanoparticles Enhance Drug Delivery to Solid Tumors via Interactions with Endothelial Selectins、Small 14:e1803601 (2018)を参照されたい。
【0232】
雌BALB/cマウス(4~6週齢)に、右後肢の上方側面において3×105個のCT26細胞を皮下接種した。腫瘍が100~150mm3まで成長した時点で、マウスを3つの群に無作為に割り振り、PBS、PTX@NP-pD+ATP、又はPTX@NP-pD-ATP(PTX当量20mg/kg)で1回処置した。24時間後、腫瘍を収集し、腫瘍におけるPTXの量を、抽出後に測定した。
【0233】
腫瘍におけるPTXの量を、内部標準物質としてカルバマゼピン(carbamezapine)を用いたHPLCによって測定した。腫瘍内のPTXの蓄積は、混合物及びPTX@NP-pD-ATP群の間で異ならなかった(
図34)。この結果は、ATPコートナノ粒子が、CT26腫瘍モデルにおいてPTXの蓄積を増強しなかったことを示す。それ故、PTX@NP-pD又はPTX@NP-pD+ATP混合物と比較したPTX@NP-pD-ATPの抗腫瘍活性の向上は、腫瘍へのPTXの送達の変更ではなく、その代わりに、DCを動員し、次いでT細胞を活性化する、表面結合しているATPを介した抗腫瘍免疫の増強に起因した。
【国際調査報告】