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特表2024-528713エチレングリコールの生物学的生成を改善するための微生物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エチレングリコールの生物学的生成を改善するための微生物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240723BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20240723BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
C12P7/18
C12N15/53
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504214
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022074592
(87)【国際公開番号】W WO2023015285
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/260,054
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/261,185
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】カウデン,ザカリー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リァン,チング
(72)【発明者】
【氏名】ケプケ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,ラスムス オボァガード
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,アレクサンダー ポール
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC05
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA16
4B065AA02X
4B065AA23X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB02
4B065BC05
4B065BD50
4B065CA05
4B065CA44
4B065CA55
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、エチレングリコール及びエチレングリコールの前駆体の改善された生物学的生成のための遺伝子操作された微生物および方法を提供する。本開示の微生物は、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、オキサロ酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、及びグリシンのうちの1つ以上を介して、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する。本開示はさらに、エチレングリコール、又はポリエチレンテレフタレートなどのエチレングリコールのポリマーを含む組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオールデヒドラターゼをコードする遺伝子に破壊的変異を含む、ガス状基質からエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成することができる遺伝子操作された微生物。
【請求項2】
前記微生物が、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、オキサロ酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、及びグリシンからなる群から選択される1つ以上の中間体を介して、エチレングリコール又はエチレングリコールの前記前駆体を生成する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記微生物が、
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、
c.イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、及び
d.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素をコードする核酸のうちの1つ以上を含む、請求項1又は請求項2に記載の微生物。
【請求項4】
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる前記異種酵素が、EC番号2.3.3.1を有するクエン酸[Si]-シンターゼ、EC番号2.3.3.8を有するATPクエン酸シンターゼ、又はEC番号2.3.3.3を有するクエン酸(Re)-シンターゼであり、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる前記異種酵素が、EC番号2.6.1.44を有するアラニン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.45を有するセリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.51を有するセリン-ピルビン酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.35を有するグリシン-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.4を有するグリシントランスアミナーゼ、EC番号1.4.1.10を有するグリシンデヒドロゲナーゼ、EC番号1.4.1.1を有するアラニンデヒドロゲナーゼ、又はEC番号1.4.2.1を有するグリシンデヒドロゲナーゼであり、
c.イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる前記異種酵素が、EC番号4.1.3.1を有するイソクエン酸リアーゼであり、及び/又は
d.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる前記異種酵素が、EC番号1.2.1.21を有するグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.22を有するラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.24を有するコハク酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.26を有する2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.3/4/5を有するアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.8を有するベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ、又はEC番号1.2.7.5を有するアルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼである、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記異種酵素のうちの1つ以上が、Bacillus、Clostridium、Escherichia、Gluconobacter、Hyphomicrobium、Lysinibacillus、Paenibacillus、Pseudomonas、Sedimenticola、Sporosarcina、Strreptomyces、Thermithiobacillus、Thermotoga、Cupriavidus、及びZeaからなる群から選択される属に由来する、請求項3又は請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
前記異種酵素のうちの1つ以上が、前記微生物における発現のためにコドン最適化されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物が、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換することができる酵素、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換することができる酵素、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換することができる酵素、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換することができる酵素、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換することができる酵素、セリンをグリシンに変換することができる酵素、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる酵素、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる酵素、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる酵素、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる酵素、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる酵素のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項8】
前記微生物が、
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる前記異種酵素、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる前記異種酵素、及び/又は
c.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる前記異種酵素を過剰発現する、請求項3~7のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項9】
前記微生物が、
a.ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる前記酵素、
b.クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる前記酵素、
c.ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる前記酵素、
d.セリンをグリシンに変換することができる前記酵素、
e.5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる前記酵素、
f.グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる前記酵素、及び/又は
g.グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる前記酵素を過剰発現する、請求項7に記載の微生物。
【請求項10】
前記微生物が、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼのうちの1つ以上の酵素に破壊的変異をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項11】
前記微生物が、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Clostridium、Cupriavidus、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、及びThermoanaerobacterからなる群から選択される属のメンバーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項12】
前記微生物が、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Cupriavidus necator、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kiuviからなる群から選択される親微生物に由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項13】
前記微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiからなる群から選択される親細菌に由来する、請求項1~12のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項14】
前記微生物が、天然または異種のWood-Ljungdahl経路を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項15】
エチレングリコールの前記前駆体がグリオキシル酸塩またはグリコール酸塩である、請求項1~14のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の微生物を栄養培地中、ガス状基質の存在下で培養することを含み、それによって前記微生物がエチレングリコール又はエチレングリコールの前記前駆体を生成する、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する方法。
【請求項17】
前記ガス状基質が、CO、CO、およびHのうちの1つ以上を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エチレングリコールの前記前駆体がグリオキシル酸塩またはグリコール酸塩である、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エチレングリコール又はエチレングリコールの前記前駆体を前記栄養培地から分離することをさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が、エタノール、2,3-ブタンジオール、及びコハク酸塩のうちの1つ以上をさらに生成する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月6日に出願された米国仮特許出願第63/260,054号及び2021年9月14日に出願された第63/261,185号の利益を主張し、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、微生物発酵による、具体的には、ガス状基質の微生物発酵によるエチレングリコール及びエチレングリコール前駆体の生成のための、遺伝子操作された微生物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モノエチレングリコール(MEG)としても知られるエチレングリコールは、現在330億米ドルを超える市場価値を有し、多種多様な工業製品、医療製品、及び消費者製品の重要な構成要素である。エチレングリコールは現在、大量のエネルギー及び水を必要とし、多数の望ましくない副生成物を生成し、石油化学供給原料に依存する化学的触媒プロセスを使用して生成される。持続可能な材料に対する要求は、サトウキビ由来のエタノールからのエチレングリコールの触媒生成など、いくつかの技術的進歩をもたらしてきた。
【0004】
エチレングリコール前駆体も商業的に貴重である。例えば、グリコール酸塩は、スキンケア、パーソナルケア、染色、製革において、及び洗浄剤として使用される。グリオキシル酸塩は、バニリン、農業化学物質、抗生物質、アラントイン、及び錯化剤の中間体である。
【0005】
しかしながら、エチレングリコールを生物学的に生成する能力を有する微生物は知られておらず、エチレングリコールの生成への完全な生物学的経路は十分に確立されていない。エチレングリコールへのいくつかの生物学的経路は、糖からの文献に記載されている。例えば、Alkim et al., Microb Cell Fact , 14: 127, 2015は、E. coliにおける(D)-キシロースからのエチレングリコール留意されたい生成を示したが、高収率を達成するためには好気的条件が必要であったことに。同様に、Pereira et al., Metab Eng , 34: 80-87, 2016は、E. coliにおけるペントースからのエチレングリコール生成を達成した。ペントースからのエチレングリコール生成に関するいくつかの研究も、S.cerevisiaeにおいて実施されたが、一貫性のない結果を示した。例えば、Uranukul et al., Metab Eng, 51: 20-31, 2018を参照されたい。
【0006】
ガス発酵は、産業廃棄物ガス、合成ガス、又は改質メタンなどの、幅広い容易に入手可能な低コストのC1供給原料を化学物質及び燃料に使用する経路を提供する。ガス発酵代謝は糖発酵代謝と著しく異なるため、上述の経路の使用は、これらの経路がエネルギー陰性プロセスである糖新生を介した、ガスからの糖前駆体の生成を必要とすることになるため、実用的ではない。今日まで、ガス状基材からエチレングリコールを生成する経路は利用可能でない。
【0007】
探索的試行において、Islam et al.,Metab Eng,41: 173-181, 2017は、化学情報学ツールを使用して、M. thermoaceticaにおいて合成ガスからエチレングリコールを生成するための数百もの仮説経路を予測した。しかしながら、多くの経路は熱力学的又は他の制約のいずれかに起因して実現不可能であるため、当業者であってもこれらの経路をガス発酵生物に組み込むことは不可能である。例えば、2,000近い酸素又は酸素ラジカル依存性反応がIslam et al.に含まれ、これは厳密な嫌気系では実現可能ではないであろう。既知の反応を有するIslam et al.によって特定された唯一の仮説経路は、糖新生又は中間体としてエタノールを必要とする。したがって、ガス状基質から高収率のエチレングリコール及びエチレングリコール前駆体を生成できる、検証された、エネルギー的に好ましい組換え生産システムに対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、上記を背景に、従来技術に勝る特定の利点及び進歩を提供する。
【0009】
本明細書に開示される本開示は、特定の利点又は機能性に限定されないが、本開示は、ガス状基質からエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成することができる遺伝子操作された微生物を提供する。
【0010】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、ジオールデヒドラターゼをコードする遺伝子における破壊的変異を含む1つ以上の中間体を介して、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する。
【0011】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、オキサロ酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、及びグリシンからなる群から選択される1つ以上の中間体を介して、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する。
【0012】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素、グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素、及びグリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素のうちの1つ以上を含む。
【0013】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素は、クエン酸塩[Si]-シンターゼ[2.3.3.1]、ATPクエン酸シンターゼ[2.3.3.8]、又はクエン酸塩(Re)-シンターゼ[2.3.3.3]であり、グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素は、アラニン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ[2.6.1.44]、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ[2.6.1.45]、セリン-ピルビン酸トランスアミナーゼ[2.6.1.51]、グリシン-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ[2.6.1.35]、グリシントランスアミナーゼ[2.6.1.4]、グリシンデヒドロゲナーゼ[1.4.1.10]、アラニンデヒドロゲナーゼ[1.4.1.1]、又はグリシンデヒドロゲナーゼ[1.4.2.1]であり、イソクエン酸塩をグリオキシル酸に変換することができる異種酵素は、イソクエン酸リアーゼ[4.1.3.1]であり、及び/又はグリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素は、グリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.21]、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.22]、コハク酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.24]、2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ[1.2.1.26]、アルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.3/4/5]、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.8]、又はアルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ[1.2.7.5]である。
【0014】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、異種酵素は、Bacillus、Clostridium、Escherichia、Gluconobacter、Hyphomicrobium、Lysinibacillus、Paenibacillus、Pseudomonas、Sedimenticola、Sporosarcina、Streptomyces、Thermithiobacillus、Thermotoga、及びZeaからなる群から選択される属に由来する。
【0015】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、異種酵素のうちの1つ以上は、微生物における発現のためにコドン最適化される。
【0016】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換することができる酵素、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換することができる酵素、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換することができる酵素、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換することができる酵素、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換することができる酵素、セリンをグリシンに変換することができる酵素、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる酵素、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる酵素、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる酵素、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる酵素、及び/又はグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる酵素のうちの1つ以上をさらに含む。
【0017】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素、グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素、及び/又はグリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素を過剰発現する。
【0018】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、セリンをグリシンに変換することができる酵素、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる酵素、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる酵素、及び/又はグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる酵素を過剰発現する。
【0019】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼからなる群から選択される1つ以上の酵素に破壊的変異を含む。
【0020】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Clostridium、Cupriavidus、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、及びThermoanaerobacterからなる群から選択される属の一員である。
【0021】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Cupriavidus necator、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kiuviからなる群から選択される親微生物に由来する。
【0022】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiからなる群から選択される親細菌に由来する。
【0023】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、天然又は異種のWood-Ljungdahl経路を含む。
【0024】
本明細書に開示される微生物の一部の態様では、微生物は、エチレングリコールの前駆体としてグリオキシル酸塩又はグリコール酸塩を生成する。
【0025】
本開示は、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する方法をさらに提供し、方法は、本明細書に開示される微生物を栄養培地中、基質の存在下で培養することを含み、それによって微生物がエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する。
【0026】
本明細書に開示される方法の一部の態様では、基質は、CO、CO、及びHのうちの1つ以上を含む。
【0027】
本明細書に開示される方法の一部の態様では、基質の少なくとも一部分は、産業廃棄物ガス、産業オフガス、又は合成ガスである。
【0028】
本明細書に開示される方法の一部の態様では、微生物は、エチレングリコールの前駆体としてグリオキシル酸塩又はグリコール酸塩を生成する。
【0029】
本明細書に開示される方法の一部の態様では、方法は、エチレングリコール又はエチレングリコール前駆体を栄養培地から分離することをさらに含む。
【0030】
本明細書に開示される方法の一部の態様では、微生物は、エタノール、2,3-ブタンジオール、及びコハク酸塩のうちの1つ以上をさらに生成する。
【0031】
本開示は、本明細書に記載の方法によって生成されるエチレングリコールを含む組成物をさらに提供する。一部の態様では、組成物は、凍結防止剤、防腐剤、脱水剤、又は掘削流体である。
【0032】
本開示は、本明細書に記載の方法によって生成されるエチレングリコールを含むポリマーをさらに提供する。一部の態様では、ポリマーはホモポリマー又はコポリマーである。一部の態様では、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0033】
本開示はさらに、1)少なくとも1つのPET成分を形成することであって、少なくとも1つのPET成分がモノエチレングリコール、テレフタル酸(PTA)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、形成することと、2)少なくとも1つのPET成分をPETに加工することと、3)PETを重合させてPET樹脂を形成することと、4)PET樹脂をPET製品に加工することとを含む、ガス状基質からポリエチレンテレフタレート(PET)製品を製造するための方法を提供する。本開示は、PTAが、化石源から、又は直接的もしくは間接的にガス発酵から誘導され得ることを提供する。PET製品の例は、米国特許出願公開第2020/0048665A1号に開示されているものであってもよく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
本開示は、1)テレフタル酸化合物を含む少なくとも1つの二酸化合物を提供することと、2)モノエチレングリコールを含む少なくとも1つのジオール化合物を提供することと、3)二酸化合物とジオール化合物の混合物を共重合して、二酸成分及びジオール成分を含むPETポリマーを得ることとを含む、ガス状基質からPETポリマーを生成するための方法を提供する。
【0035】
本開示はさらに、本明細書に記載のポリマーを含む組成物を提供する。一部の態様では、組成物は、繊維、樹脂、フィルム、又はプラスチックである。
【0036】
本開示のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲とともに以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。特許請求の範囲の範囲が、その中の記述によって定義され、本明細書に記載された特徴及び利点の具体的な議論によって定義されないことに留意されたい。
【0037】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示された、以下の図面と共に読まれた時に最も良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、CO、CO、及び/又はH2を含むガス状基質からのエチレングリコール、グリコール酸塩、及びグリオキシル酸塩の生成経路を示す概略図である。
図2A図2A~2Eは、実施例1~4で使用されるプラスミドのマップである。図2Aは、実施例1に記載されるような、発現シャトルベクター、pIPL12のマップである。
図2B図2Bは、プラスミドpMEG042のマップであり、これは実施例1に記載されるような、B. subtilisクエン酸シンターゼ、E. coliイソクエン酸リアーゼ、及びG. oxydansグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む。
図2C図2Cは、プラスミドpMEG058のマップであり、これは実施例2に記載されるような、S. thiotauriniアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ及びP. fluorescensアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む。
図2D図2Dは、プラスミドpMEG059のマップであり、これは実施例3に記載されるような、S. thiotauriniアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ及びG. oxydansアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む。
図2E図2Eは、プラスミドpMEG061のマップであり、これは実施例4に記載されるような、C. aciduriciクラスVアミノトランスフェラーゼ及びP. fluorescensアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む。
図3A図3Aは、pMEG042を発現するC.autoethanogenum(クローン1~3)又はC.autoethanogenum野生型(陰性対照1又は陰性対照2)のバイオマスレベル(g乾燥細胞重量/L)を示す。
図3B図3Bは、野生型(陰性対照1又は陰性対照2)と比較して、独立栄養的に増殖し、発現ベクターpMEG042を担持するC.autoethanogenumにおいて経時的に生成されるエチレングリコールを示す。
図3C図3Cは、独立栄養的に増殖し、発現ベクターpMEG042を担持するC.autoethanogenumにおいて経時的に生成されるグリコール酸塩を示す。実施例1を参照されたい。
図4A図4Aは、pMEG058を発現するC.autoethanogenum(クローン1~2)又はC.autoethanogenum野生型(陰性対照)のバイオマスレベル(g乾燥細胞重量/L)を示す。
図4B図4Bは、野生型(陰性対照1)と比較して、独立栄養的に増殖し、発現ベクターpMEG058を担持するC.autoethanogenumにおいて経時的に生成されるエチレングリコールを示す。実施例2を参照されたい。
図5A図5Aは、pMEG059を発現するC.autoethanogenum(クローン1~3)又はC.autoethanogenum野生型(陰性対照)のバイオマスレベル(g乾燥細胞重量/L)を示す。
図5B図5Bは、野生型(陰性対照)と比較して、独立栄養的に増殖し、発現ベクターpMEG059を担持するC.autoethanogenumにおいて経時的に生成されるエチレングリコールを示す。実施例3を参照されたい。
図6A図6Aは、pMEG061を発現するC.autoethanogenum(クローン1)又はC.autoethanogenum野生型(陰性対照1)のバイオマスレベル(g乾燥細胞重量/L)を示す。
図6B図6Bは、野生型(陰性対照1)と比較して、独立栄養的に増殖し、発現ベクターpMEG061を担持するC.autoethanogenumにおいて経時的に生成されるエチレングリコールを示す。実施例4を参照されたい。
図7図7は、1つは、識別された天然ジオールデヒドラターゼ(ベース)を含有し、1つは、ジオールデヒドラターゼ遺伝子が欠失した(KO)、C.autoethanogenumの2つの異なる遺伝子型のバイオマスレベル(g乾燥細胞重量/L)を示す。各株は、2つのバリアントを有し、1つはpMEG042発現ベクターを担持し、1つはベクターを担持しない(陰性対照)。示される値は、3つの技術的複製の平均から計算される。エラーバーは標準偏差を示す。
図8A図8Aは、1つは、識別された天然ジオールデヒドラターゼを含有し(ベース)、1つは、ジオールデヒドラターゼ遺伝子が欠失した(KO)、C.autoethanogenumの2つの異なる遺伝子型において経時的に生成されるMEG(mg/L)を示す:。各株は、2つのバリアントを有し、1つはpMEG042発現ベクターを担持し、1つはベクターを担持しない(陰性対照)。示される値は、3つの技術的複製の平均から計算される。エラーバーは標準偏差を示す。
図8B図8Bは、1つは、識別された天然ジオールデヒドラターゼを含有し(ベース)、1つは、ジオールデヒドラターゼ遺伝子が欠失した(KO)、C.autoethanogenumの異なる遺伝子型において経時的に生成されるMEG(mg/g乾燥細胞重量)を示す。各株は、2つのバリアントを有し、1つはpMEG042発現ベクターを担持し、1つはベクターを担持しない(陰性対照)。示される値は、3つの技術的複製の平均から計算される。エラーバーは標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の実施形態の説明は、一般的な用語で示されている。本開示は、本明細書の以下の見出しの「実施例」の下に示される本開示から更に解明され、これは、本開示の裏付けとなる実験データ、本開示の様々な態様の具体的な実施例、及び本開示を行う手段を提供する。
【0040】
本発明者らは驚くべきことに、CO及び/又はCOを含む基質の発酵によってエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成するために、ジオールデヒドラターゼをコードする遺伝子に破壊的変異を含むカルボキシド栄養性アセトゲン性微生物を操作することができた。
【0041】
別段の定めがない限り、本明細書全体で使用される以下の用語は、以下のように定義される。
【0042】
本開示は、エチレングリコールの生物学的生成のための微生物を提供する。「微生物」は、顕微鏡生物、特に細菌、古細菌、ウイルス、又は真菌である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は細菌である。
【0043】
微生物に関して使用されるとき、「非自然発生」という用語は、微生物が、言及される種の野生型株を含む言及される種の自然発生株において見られない少なくとも1つの遺伝子修飾を有することを意味することが意図される。非自然発生微生物は、典型的には、実験室又は研究施設で開発される。本開示の微生物は、非自然発生型である。
【0044】
「遺伝子修飾」、「遺伝子改変」、又は「遺伝子操作」という用語は、微生物のゲノム又は核酸の人の手による操作を広く指す。同様に、「遺伝子修飾された」、「遺伝子改変された」、又は「遺伝子操作された」という用語は、そのような遺伝子修飾、遺伝子改変、又は遺伝子操作を含む微生物を指す。これらの用語は、実験室で生成された微生物と自然発生の微生物を区別するために使用され得る。遺伝子修飾の方法は、例えば、異種遺伝子発現、遺伝子又はプロモーターの挿入又は欠失、核酸変異、改変遺伝子発現又は不活性化、酵素工学、指向性進化、知識ベース設計、ランダム変異導入法、遺伝子シャフリング、及びコドン最適化を含む。本開示の微生物は、遺伝子操作されている。
【0045】
「組換え」は、核酸、タンパク質、又は微生物が、遺伝子修飾、操作、又は組換えの生成物であることを示す。一般に、「組換え」という用語は、微生物の2つ以上の異なる株又は種など、複数の源に由来する遺伝物質を含むか、又はそれによってコードされる核酸、タンパク質、又は微生物を指す。本開示の微生物は、一般的に組換えである。
【0046】
「野生型」は、変異体又はバリアント形態とは区別されるように天然に存在する、生物、株、遺伝子、又は特性の典型的な形態を指す。
【0047】
「内在性」は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物に存在又は発現される核酸又はタンパク質を指す。例えば、内在性遺伝子は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物に天然に存在する遺伝子である。一実施形態では、内在性遺伝子の発現は、外来性プロモーターなどの外来性調節エレメントによって制御され得る。
【0048】
「外来性」とは、本開示の微生物の外側に起源がある核酸又はタンパク質を指す。例えば、外来性遺伝子又は酵素は、人工的又は組換え的に作成され、本開示の微生物に導入されるか、又はそこに発現され得る。外来性遺伝子又は酵素はまた、異種微生物から単離され、本開示の微生物に導入されるか、又はそこに発現され得る。外来性核酸は、本開示の微生物のゲノムに組み入れるように、又は本開示の微生物、例えば、プラスミドにおける染色体外の状態で留まるように適合され得る。
【0049】
「異種」は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物に存在しない核酸又はタンパク質を指す。例えば、異種遺伝子又は酵素は、異なる株又は種に由来し、本開示の微生物に導入されるか、又は発現され得る。異種遺伝子又は酵素は、異なる株又は種で生じる形態で、本開示の微生物に導入されるか、又はそこに発現され得る。代替的に、異種遺伝子又は酵素は、いくつかの方法で、例えば、本開示の微生物における発現のためにそれをコドン最適化することによって、又は機能を変化させるように、例えば酵素活性の方向を逆転させるように、若しくは基質特異性を変化させるように、それを操作することによって修飾され得る。
【0050】
特に、本明細書に記載の微生物に発現される異種核酸又はタンパク質は、Bacillus、Clostridium、Cupriavidus、Escherichia、Gluconobacter、Hyphomicrobium、Lysinibacillus、Paenibacillus、Pseudomonas、Sedimenticola、Sporosarcina、Streptomyces、Thermithiobacillus、Thermotoga、Zea、Klebsiella、Mycobacterium、Salmonella、Mycobacteroides、Staphylococcus、Burkholderia、Listeria、Acinetobacter、Shigella、Neisseria、Bordetella、Streptococcus、Enterobacter、Vibrio、Legionella、Xanthomonas、Serratia、Cronobacter、Cupriavidus、Helicobacter、Yersinia、Cutibacterium、Francisella、Pectobacterium、Arcobacter、Lactobacillus、Shewanella、Erwinia、Sulfurospirillum、Peptococcaceae、Thermococcus、Saccharomyces、Pyrococcus、Glycine、Homo、Ralstonia、Brevibacterium、Methylobacterium、Geobacillus、bos、gallus、Anaerococcus、Xenopus、Amblyrhynchus、rattus、mus、sus、Rhodococcus、Rhizobium、Megasphaera、Mesorhizobium、Peptococcus、Agrobacterium、Campylobacter、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、Thermoanaerobacter、Schizosaccharomyces、Paenibacillus、Fictibacillus、Lysinibacillus、Ornithinibacillus、Halobacillus、Kurthia、Lentibacillus、Anoxybacillus、Solibacillus、Virgibacillus、Alicyclobacillus、Sporosarcina、Salimicrobium、Sporosarcina、Planococcus、Corynebacterium、Thermaerobacter、Sulfobacillus、又はSymbiobacteriumに由来し得る。
【0051】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。それらは、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得て、既知又は未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、連鎖解析から定義される座位、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体などの1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造の修飾は、ポリマーの組織化の前又は後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ポリヌクレオチドは、重合の後、例えば標識成分とのコンジュゲート化により、更に修飾され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(例えば、mRNA若しくは他のRNA転写物へ)転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNAが、続いて、ペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質へ翻訳されるプロセスを指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と称され得る。
【0053】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって割り込まれていてもよい。これらの用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分とのコンジュゲート化などの任意の他の操作によって、修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシン、D又はL光学異性体の両方、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸を含む。
【0054】
「酵素活性」又は単に「活性」は、広範には、酵素の活性、酵素の量、又は反応を触媒するための酵素の可用性を含むがこれらに限定されない、酵素的な活性を指す。したがって、酵素活性を「増加させること」は、酵素の活性を増加させること、酵素の量を増加させること、又は反応を触媒するための酵素の可用性を増加させることを含む。同様に、酵素活性を「低下させること」は、酵素の活性を低下させること、酵素の量を低下させること、又は反応を触媒するための酵素の可用性を低下させることを含む。
【0055】
「変異した」は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物と比較して、本開示の微生物において修飾されている核酸又はタンパク質を指す。一実施形態では、変異は、酵素をコードする遺伝子中の欠失、挿入、又は置換であってもよい。別の実施形態では、変異は、酵素中の1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、又は置換であってもよい。
【0056】
「破壊された遺伝子」とは、遺伝子の発現、遺伝子の調節活性、又はコードされたタンパク質もしくは酵素の活性を低減又は排除するために何らかの方法で修飾されている遺伝子を指す。破壊によって、遺伝子又は酵素を、部分的に不活化するか、完全に不活化するか、又は欠失させることができる。破壊は、遺伝子、タンパク質、又は酵素の発現又は活性を完全に排除するノックアウト(KO)突然変異であり得る。破壊はまた、遺伝子、タンパク質、又は酵素の発現又は活性を低減するが、完全に排除しないノックダウンでもあり得る。破壊は、酵素によって生成される生成物の生合成を低減、防止、又は遮断するものであり得る。破壊としては、例えば、タンパク質もしくは酵素をコードする遺伝子における突然変異、酵素をコードする遺伝子の発現に関与する遺伝子調節エレメントにおける突然変異、酵素の活性を低減もしくは阻害する、タンパク質を生成する核酸の導入、又はタンパク質もしくは酵素の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンスRNA、RNAi、TALEN、siRNA、CRISPR、CRISPRi)もしくはタンパク質の導入を挙げることができる。破壊は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して導入することができる。本開示の目的のために、破壊は、実験室で生成されたものであり、自然に発生するものではない。
【0057】
「親微生物」は、本開示の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、自然発生型の微生物(すなわち、野生型微生物)又は以前に修飾されたことのある微生物(すなわち、変異体又は組換え微生物)であり得る。本開示の微生物は、親微生物において発現又は過剰発現されなかった1つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように修飾され得る。同様に、本開示の微生物は、親微生物によって含まれなかった1つ以上の遺伝子を含むように修飾され得る。本開示の微生物は、親微生物において発現されたより少ない量の1つ以上の酵素を発現しないように、又は発現するようにも修飾され得る。
【0058】
本開示の微生物は、本質的に任意の親微生物に由来し得る。一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Escherichia coli、及びSaccharomyces cerevisiaeからなる群から選択される親微生物に由来し得る。他の実施形態では、微生物は、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia product、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択される親微生物に由来する。好ましい実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiである。特に好ましい実施形態では、親微生物は、ブダペスト条約の条項下で、2010年6月7日に、Inhoffenstraβe 7B,D-38124 Braunschweig,Germanyに所在するDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与された、Clostridium autoethanogenum LZ1561である。この株は、WO 2012/015317として公開されている国際特許出願第PCT/NZ2011/000144号に記載されている。
【0059】
「から誘導される」という用語は、新しい核酸、タンパク質、又は微生物を生成するように、核酸、タンパク質、又は微生物が異なる(例えば、親又は野生型)核酸、タンパク質、又は微生物から修飾又は適合されることを示す。そのような修飾又は適合は、典型的には、核酸又は遺伝子の挿入、欠失、変異、又は置換を含む。一般に、本開示の微生物は、親微生物に由来する。一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiに由来する。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、Clostridium autoethanogenum LZ1561に由来する。
【0060】
本開示の微生物は、官能的特性に基づいて更に分類され得る。例えば、本開示の微生物は、C1固定微生物、嫌気性生物、アセトゲン、エタノロゲン、カルボキシド栄養生物(carboxydotroph)、及び/又はメタン資化性菌(methanotroph)であり得るか、又はそれらに由来し得る。
【0061】
表1は、微生物の代表的なリストを提供し、微生物の機能特性を特定する。
【0062】
【表1】
【0063】
「Wood-Ljungdahl」とは、例えば、Ragsdale, Biochim Biophys Acta, 1784: 1873-1898, 2008に記載される炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljungdahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を含む微生物を指す。しばしば、本開示の微生物は、天然のWood-Ljungdahl経路を含む。本明細書において、Wood-Ljungdahl経路は、天然の未修飾のWood-Ljungdahl経路であり得るか、あるいはCO、CO、及び/又はH2をアセチル-CoAに変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝子修飾(例えば、過剰発現、異種発現、ノックアウトなど)を有するWood-Ljungdahl経路であり得る。
【0064】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO、CH、又はCHOHを指す。「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO、又はCHOHを指す。「C1炭素源」とは、本開示の微生物のための部分的又は唯一の炭素源として機能する1つの炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO、CH、CHOH、又はCHのうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、CO及びCOのうちの一方又は両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。しばしば、本開示の微生物は、C1固定細菌である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるC1固定微生物に由来する。
【0065】
「嫌気性生物」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性生物は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を示し得るか、又は死滅し得る。しかしながら、いくつかの嫌気性生物は、時に「マイクロオキシック条件」と呼ばれる、低レベルの酸素(例えば、0.000001~5%の酸素)に耐えることができる。しばしば、本開示の微生物は、嫌気性生物である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定される嫌気性生物に由来する。
【0066】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、並びにアセテートなどのアセチル-CoA及びアセチル-CoA由来の生成物の合成のためのその主要機構としてWood-Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。具体的には、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)COからのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)末端電子受容、エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCOの固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。全ての自然発生アセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、及び非メタン資化性である。しばしば、本開示の微生物は、アセトゲンである。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるアセトゲンに由来する。
【0067】
「エタノロゲン」は、エタノールを生成する、又は生成することが可能である微生物である。しばしば、本開示の微生物は、エタノロゲンである。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるエタノロゲンに由来する。
【0068】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下でも増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/又はCOなどの無機炭素源を使用する。しばしば、本開示の微生物は、独立栄養生物である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定される独立栄養生物に由来する。
【0069】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。しばしば、本開示の微生物は、カルボキシド栄養生物である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるカルボキシド栄養生物に由来する。
【0070】
「メタン資化性菌」は、炭素とエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用することが可能な微生物である。ある特定の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌であるか、又はメタン資化性菌に由来する。他の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌ではないか、又はメタン資化性菌に由来しない。
【0071】
好ましい実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum種、Clostridium ljungdahlii種、及びClostridium ragsdalei種を含むClostridiaのクラスターに由来する。これらの種は、Abrini, Arch Microbiol, 161: 345-351, 1994 (Clostridium autoethanogenum), Tanner, Int J System Bacteriol, 43: 232-236, 1993 (Clostridium ljungdahlii)、及びHuhnke, WO2008/028055 (Clostridium ragsdalei).によって最初に報告され、特徴付けられた。
【0072】
これらの3つの種は、多くの類似点を有する。特に、これらの種は全て、C1固定、嫌気性、アセトゲン性、エタノロゲン性、及びカルボキシド栄養性のClostridium属メンバーである。これらの種は、同様の遺伝子型及び表現型並びにエネルギー節約及び発酵代謝のモードを有する。更に、これらの種は、99%を超えて同一である16S rRNA DNAを有するクロストリジウムrRNAホモロジー群I内に群生し、約22~30mol%の含有量でDNA G+Cを有し、グラム陽性であり、同様の形態及びサイズを有し(0.5~0.7×3~5μmの対数増殖細胞)、中温性であり(30~37℃で最適に増殖する)、約4~7.5の同様のpH範囲を有し(約5.5~6の最適pH)、シトクロムを欠いており、Rnf複合体を介してエネルギーを節約する。また、カルボン酸のそれらの対応するアルコールへの還元が、これらの種において示されている(Perez, Biotechnol Bioeng, 110:1066-1077, 2012)。重要なことに、これらの種はまた、全て、CO含有ガスで強い独立栄養的な増殖を示し、主要な発酵生成物としてエタノール及び酢酸塩(又は酢酸)を生成し、ある特定の条件下で少量の2,3-ブタンジオール及び乳酸を生成する。
【0073】
しかしながら、これら3つの種は、いくつかの違いも有する。これらの種は、ウサギの腸からのClostridium autoethanogenum、養鶏場の廃棄物からのClostridium ljungdahlii、及び淡水堆積物からのClostridium ragsdaleiの、異なる源から単離された。これらの種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、及び他の基質(例えば、べタイン、ブタノール)の利用において異なる。更に、これらの種は、ある特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求性において異なる。これらの種は、Wood-Ljungdahl経路遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列に違いを有するが、これらの遺伝子及びタンパク質の一般的な組織及び数は、全ての種で同じであることがわかっている(Kopke, Curr Opin Biotechnol, 22: 320-325, 2011)。
【0074】
したがって、要約すると、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdalei aの特徴の多くは、その種に特有ではなく、むしろC1固定、嫌気性、アセトゲン性、エタノロゲン性、及びカルボキシド栄養性のClostridium属のメンバーのこのクラスターの一般的な特徴である。しかしながら、これらの種は、実際は、全く異なるため、これらの種のうちの1つの遺伝子修飾又は操作は、これらの種のうちの別のものにおいては同一の効果がない場合がある。例えば、増殖、性能、又は生成物生成における違いが観察され得る。
【0075】
本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiの分離株又は変異体にも由来し得る。Clostridium autoethanogenumの分離株及び突然変異体としては、JA1-1 (DSM10061) (Abrini, Arch Microbiol, 161: 345-351, 1994)、LBS1560 (DSM19630) (WO2009/064200)、及びLZ1561 (DSM23693) (WO 2012/015317)が挙げられる。Clostridium ljungdahliiの分離株及び変異体としては、ATCC 49587 (Tanner, Int J Syst Bacteriol, 43: 232-236, 1993)、PETCT (DSM13528, ATCC 55383)、ERI‐2 (ATCC 55380) (US5,593,886)、C‐01 (ATCC 55988) (US6,368,819)、O‐52 (ATCC 55989) (US6,368,819)、及びOTA‐1 (Tirado‐Acevedo, Production of bioethanol from synthesis gas using Clostridium ljungdahlii, PhD thesis, North Carolina State University, 2010)が挙げられる。Clostridium ragsdaleiの分離株及び変異体としては、PI 1 (ATCC BAA-622, ATCC PTA-7826) (WO2008/028055)が挙げられる。
【0076】
しかしながら、上述のように、本開示の微生物はまた、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Escherichia coli、及びSaccharomyces cerevisiaeからなる群から選択される親微生物などの、本質的に任意の微生物から由来し得る。
【0077】
本開示は、エチレングリコール、グリオキシル酸塩、及びグリコール酸塩を生成することができる微生物、ならびにエチレングリコール、グリオキシル酸塩、及びグリコール酸塩を生成する方法を提供し、方法は、本開示の微生物を基質の存在下で培養することを含み、それによって微生物がエチレングリコールを生成する。
【0078】
本開示の微生物は、Wood-Ljungdahl経路によって生成されるアセチル-CoAなどのアセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応1)。この酵素は、ピルビン酸シンターゼ(PFOR)[1.2.7.1]又はATP:ピルビン酸、オルトリン酸ホスホトランスフェラーゼ[1.2.7.1]であってもよい。一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。
【0079】
本開示の微生物は、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応2)。この酵素は、ピルビン酸:炭素-二酸素リガーゼ[ADP形成][6.4.1.1]であってもよい。一部の実施形態では、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。一部の実施形態では、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素は、過剰発現されている。
【0080】
本開示の微生物は、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応3)。この酵素は、シトリル-CoAリアーゼ[4.1.3.34]であってもよい。一部の実施形態では、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換する酵素は、内因性酵素である。
【0081】
本開示の微生物は、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応4)。この酵素は、クエン酸CoAトランスフェラーゼ[2.8.3.10]であってもよい。一部の実施形態では、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。
【0082】
本開示の微生物は、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応5)。この酵素は、クエン酸[Si]シンターゼ[2.3.3.1]、ATPクエン酸シンターゼ[2.3.3.8]、又はクエン酸(Re)シンターゼ[2.3.3.3]であってもよい。一部の実施形態では、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。他の実施形態では、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素は、異種酵素である。例えば、一部の実施形態では、本開示の微生物は、B.subtilisからのクエン酸シンターゼ1[EC 2.3.3.16]を含むので、微生物は、配列番号2に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号1に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. kluyveriからのクエン酸(Re)シンターゼを含むので、微生物は、配列番号4に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号3に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium sp.からのクエン酸(Si)シンターゼを含むので、微生物は、配列番号6に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号5に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、B.subtilisからのクエン酸シンターゼ2を含むので、微生物は、配列番号8に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号7に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素は、過剰発現されている。
【0083】
本開示の微生物は、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応6)。この酵素は、アコニット酸ヒドラターゼ[4.2.1.3]であってもよい。一部の実施形態では、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。一部の実施形態では、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素は、過剰発現されている。
【0084】
本開示の微生物は、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応7)。この酵素は、イソクエン酸リアーゼであってもよい[4.1.3.1]。一部の実施形態では、本開示の微生物は、Z. maysからのイソクエン酸リアーゼを含むので、微生物は、配列番号10に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号9に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、E. coliからのイソクエン酸リアーゼを含むので、微生物は、配列番号12に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号11に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、
【0085】
本開示の微生物は、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応8)。この酵素は、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.29]、グリオキシル酸レダクターゼ[1.1.1.26/79]、又はグリコール酸デヒドロゲナーゼ[1.1.99.14]であってもよい。一部の実施形態では、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。一部の実施形態では、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素は、過剰発現されている。
【0086】
本開示の微生物は、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応9)。この酵素は、グリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.21]、ラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.22]、コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.24]、2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ[1.2.1.26]、アルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.3/4/5]、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.8]、又はアルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ[1.2.7.5]であってもよい。一部の実施形態では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、内因性酵素である。他の実施形態では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、異種酵素である。例えば、一部の実施形態では、本開示の微生物は、E. coliからのガンマアミノブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼを含むので、微生物は、配列番号50に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号49に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、E. coliからのアルデヒドデヒドロゲナーゼを含むので、微生物は、配列番号52に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号51に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、E. coliからのNADP依存性コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼIを含むので、微生物は、配列番号54に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号53に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、G. oxydansからのラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ/グリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼを含むので、微生物は、配列番号56に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号55に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、P. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼAを含むので、微生物は、それぞれ配列番号58又は配列番号60に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号57又は配列番号59に規定されるヌクレオチド配列を含む。グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素の追加的な非限定的な例は、GenBank登録番号 WP_003202098、WP_003182567、ACT39044、ACT39074、WP_041112005、及びACT40170に見出すことができる。一部の実施形態では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、過剰発現されている。
【0087】
本開示の微生物は、グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応10)。この酵素は、ラクトアルデヒドレダクターゼ[1.1.1.77]、アルコールデヒドロゲナーゼ[1.1.1.1]、アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)[1.1.1.2]、グリセロールデヒドロゲナーゼ[1.1.1.72]、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.8]、又はアルデヒドレダクターゼ[1.1.1.21]であってもよい。一部の実施形態では、グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素は、内因性酵素である。一部の実施形態では、グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する内因性酵素が過剰発現されている。他の実施形態では、グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素は、異種酵素である。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. saccharoperbutylacetonicumからのラクトアルデヒドレダクターゼを含むので、微生物は、配列番号62に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号61に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. ljungdahliiからのラクトアルデヒドレダクターゼを含むので、微生物は、配列番号64に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号63に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、E. coliからのラクトアルデヒドレダクターゼを含むので、微生物は、配列番号66に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号65に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. beijerinckiiからのラクトアルデヒドレダクターゼを含むので、微生物は、配列番号68に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号67に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する異種酵素が過剰発現されている。
【0088】
本開示の微生物は、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応11)。この酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.37]、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(オキサロ酢酸塩-脱炭酸)[1.1.1.38]、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱炭酸)[1.1.1.39]、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(オキサロ酢酸塩-脱炭酸)(NADP+)[1.1.1.40]、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NADP+)[1.1.1.82]、D-リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱炭酸)[1.1.1.83]、ジメチルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.84]、3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.85]、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ[NAD(P)+][1.1.1.299]、又はリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(キノン)[1.1.5.4]であってもよい。一部の実施形態では、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。他の実施形態では、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換する酵素は異種酵素である。例えば、一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. autoethanogenumからのリンゴ酸デヒドロゲナーゼを含むので、微生物は、配列番号24に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号23に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. autoethanogenumからのNAD依存性リンゴ酸酵素を含むので、微生物は、配列番号26に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号25に規定されるヌクレオチド配列を含む。
【0089】
本開示の微生物は、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応12)。この酵素は、リンゴ酸シンターゼ[2.3.3.9]又はイソクエン酸リアーゼ[4.1.3.1]であってもよい。一部の実施形態では、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素は、異種酵素である。例えば、一部の実施形態では、本開示の微生物は、Sporosarcina sp.からのリンゴ酸シンターゼGを含むので、微生物は、それぞれ、配列番号28又は配列番号34に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号27又は配列番号33に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、Bacillus sp.からのリンゴ酸シンターゼGを含むので、微生物は、それぞれ、配列番号30又は配列番号36に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号29又は配列番号35に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、S. coelicolorからのリンゴ酸シンターゼを含むので、微生物は、配列番号32に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号31に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、B. infantisからのリンゴ酸シンターゼGを含むので、微生物は、配列番号38に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号37に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. cochleariumからのリンゴ酸シンターゼを含むので、微生物は、配列番号40に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号39に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、B. megateriumからのリンゴ酸シンターゼGを含むので、微生物は、配列番号42に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号41に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、Paenibacillus sp.からのリンゴ酸シンターゼを含むので、微生物は、配列番号44に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号43に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、Lysinibacillus sp.からのリンゴ酸シンターゼを含むので、微生物は、配列番号46に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号45に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、B. cereusからのリンゴ酸シンターゼを含むので、微生物は、配列番号48に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号47に規定されるヌクレオチド配列を含む。
【0090】
本開示の微生物は、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応13)。この酵素は、ピルビン酸キナーゼ[2.7.1.40]、ピルビン酸、リン酸ジキナーゼ[2.7.9.1]、又はピルビン酸、水ジキナーゼ[2.7.9.2]であってもよい。一部の実施形態では、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。
【0091】
本開示の微生物は、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応14)。この酵素はホスホピルビン酸ヒドラターゼ[4.2.1.11]であってもよい。一部の実施形態では、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。
【0092】
本開示の微生物は、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応15)。この酵素はホスホグリセリン酸ムターゼ[5.4.2.11/12]であってもよい。一部の実施形態では、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。
【0093】
本開示の微生物は、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応16)。この酵素はホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.95]であってもよい。一部の実施形態では、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。
【0094】
本開示の微生物は、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応17)。この酵素はホスホセリントランスアミナーゼ[2.6.1.52]であってもよい。一部の実施形態では、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換する酵素は、内因性酵素である。
【0095】
本開示の微生物は、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応18)。この酵素はホスホセリンホスファターゼ[3.1.3.3]であってもよい。一部の実施形態では、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換する酵素は、内因性酵素である。
【0096】
本開示の微生物は、セリンをグリシンに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応19)。この酵素は、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ[2.1.2.1]であってもよい。一部の実施形態では、セリンをグリシンに変換する酵素は、内因性酵素である。一部の実施形態では、セリンをグリシンに変換する酵素は過剰発現されている。
【0097】
本開示の微生物は、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応20)。この酵素は、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ[2.6.1.44]、セリン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ[2.6.1.45]、セリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ[2.6.1.51]、グリシン-オキサロ酢酸アミノトランスフェラーゼ/トランスアミナーゼ[2.6.1.35]、グリシントランスアミナーゼ[2.6.1.4]、グリシンデヒドロゲナーゼ[1.4.1.10]、アラニンデヒドロゲナーゼ[1.4.1.1]、又はグリシンデヒドロゲナーゼ[1.4.2.1]であってもよい。一部の実施形態では、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。他の実施形態では、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素は、異種酵素である。例えば、一部の実施形態では、本開示の微生物は、H. methylovorumからのセリン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼを含むので、微生物は、配列番号14に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号13に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、S. thiotauriniからのアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼを含むので、微生物は、配列番号16に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号15に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、T. tepidariusからのアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼを含むので、微生物は、配列番号18に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号17に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、C. aciduriciからのクラスVアミノトランスフェラーゼを含むので、微生物は、配列番号20に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号19に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、本開示の微生物は、T. maritimaからのセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼを含むので、微生物は、配列番号22に規定されるアミノ酸配列をコードする配列番号21に規定されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素は、過剰発現されている。
【0098】
本開示の微生物は、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応21)。この酵素は、セリン-ピルビン酸トランスアミナーゼ[2.6.1.51]、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ[2.6.1.45]、アラニンデヒドロゲナーゼ[1.4.1.1]、L-アミノ酸デヒドロゲナーゼ[1.4.1.5]、セリン2-デヒドロゲナーゼ[1.4.1.7]、アラニントランスアミナーゼ[2.6.1.2]、グルタミン-ピルビン酸トランスアミナーゼ[2.6.1.15]、D-アミノ酸トランスアミナーゼ[2.6.1.21]、アラニン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ[2.6.1.44]、又はセリン-ピルビン酸トランスアミナーゼ[2.6.1.51]であってもよい。一部の実施形態では、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。他の実施形態では、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素は、異種酵素である。セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素の非限定的な例は、GenBank登録番号 WP_009989311及びNP_511062.1に見出すことができる。一部の実施形態では、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素は過剰発現されている。
【0099】
本開示の微生物は、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素を含んでもよい(図1の反応22)。この酵素は、ヒドロキシピルビン酸デカルボキシラーゼ[4.1.1.40]又はピルビン酸デカルボキシラーゼ[4.1.1.1]であってもよい。この酵素はまた、任意の他のデカルボキシラーゼ[4.1.1.-]であってもよい。一部の実施形態では、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、異種酵素である。ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる酵素の非限定的な例は、GenBank登録番号CCG28866、SVF98953、PA0096、CAA54522、KRU13460、及びKLA26356に見出すことができる。
【0100】
本開示の微生物は、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応23)。この酵素は、グリオキシル酸レダクターゼ[EC 1.1.1.26]、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ[EC 1.1.1.29]、又はヒドロキシピルビン酸レダクターゼ[EC 1.1.1.81]であってもよい。一部の実施形態では、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素は、異種酵素である。D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素の非限定的な例は、GenBank登録番号SUK16841、RPK22618、KPA02240、AGW90762、CAC11987、Q9CA90、及びQ9UBQ7に見出すことができる。
【0101】
本開示の微生物は、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸塩をグリシンに変換する酵素の複合体を含んでもよい(図1の反応24)。5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、Wood-Ljungdahl経路の還元分岐における補因子であり、アセチル-CoAの生成における足場として作用する。この複合体は、グリシンデヒドロゲナーゼ[1.4.4.2]、ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ[1.8.1.4]、及びアミノメチルトランスフェラーゼ(グリシンシンターゼ)[2.1.2.10]を含むグリシン開裂系であってもよい。一部の実施形態では、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換する複合体の酵素は、内因性酵素である。一部の実施形態では、グリシン開裂系の酵素は過剰発現されている。
【0102】
本開示の微生物は、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素を含んでもよい(図1の反応25)。この酵素は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(ATP)[4.1.1.49]又は(GTP)[4.1.1.32]であってもよい。一部の実施形態では、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素は、内因性酵素である。他の実施形態では、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素は、異種酵素である。一部の実施形態では、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素は過剰発現されている。
【0103】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素(図1の反応2)、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応5)、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応6)、イソクエン酸塩をグリオキル酸塩に変換する酵素(図1の反応7)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素は、B.subtilisからのクエン酸シンターゼ(配列番号1~2)であってもよい。非限定的な例では、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素は、E. coliからのイソクエン酸リアーゼ(配列番号11~12)であってもよい。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。図1に示すように、反応2、5、6、8、9、及び10を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。例えば、実施例1及び図3Bを参照されたい。
【0104】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応13)、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素(図1の反応14)、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素(図1の反応15)、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応16)、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換する酵素(図1の反応17)、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換する酵素(図1の反応18)、セリンをグリシンに変換する酵素(図1の反応19)、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素(図1の反応20)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素は、S. thiotauriniからのアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(配列番号15~16)又はC. aciduriciからのクラスVアミノトランスフェラーゼ(配列番号19~20)であってもよい。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。図1に示すように、工程19、20、8、9、及び10の反応を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。例えば、実施例2~4、ならびに図4B、5B、及び6Bを参照されたい。
【0105】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素(図1の反応2)、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換する酵素(図1の反応3)、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応4)、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応6)、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素(図1の反応7)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素は、E. coliからのイソクエン酸リアーゼ(配列番号11~12)であってもよい。非限定的な例では、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素は、E. coliからのイソクエン酸リアーゼ(配列番号11~12)であってもよい。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。図1に示すように、反応2、6、8、9、及び10を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。
【0106】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換する酵素(図1の反応11)、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素(図1の反応12)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。図1に示すように、工程8、9、及び10の反応を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。
【0107】
一部の実施形態では、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換する酵素(図1の反応24)、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素(図1の反応20)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む複合体を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、グリシンをグリオキシル酸塩に変換する酵素は、S. thiotauriniからのアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(配列番号15~16)又はC. aciduriciからのクラスVアミノトランスフェラーゼ(配列番号19~20)であってもよい。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。工程8、9、10、20、及び24の反応を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。
【0108】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応13)、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素(図1の反応25)、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換する酵素(図1の反応3)、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応4)、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応6)、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素(図1の反応7)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素は、E. coliからのイソクエン酸リアーゼ(配列番号11~12)であってもよい。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。図1に示すように、反応2、6、8、9、10、及び25を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。
【0109】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応13)、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換する酵素(図1の反応25)、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応5)、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換する酵素(図1の反応6)、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素(図1の反応7)、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する酵素(図1の反応8)、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応9)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。非限定的な例では、オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換する酵素は、B.subtilisからのクエン酸シンターゼ(配列番号1~2)であってもよい。非限定的な例では、イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換する酵素は、E. coliからのイソクエン酸リアーゼ(配列番号11~12)であってもよい。非限定的な例では、グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素は、G. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号55~56)又はP. fluorescensからのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(配列番号57~58)であってもよい。図1に示すように、反応5、6、8、9、10、及び25を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。
【0110】
一部の実施形態では、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応1)、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応13)、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素(図1の反応14)、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換する酵素(図1の反応15)、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応16)、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換する酵素(図1の反応17)、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換する酵素(図1の反応18)、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応21)、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応22)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。グリコールアルデヒドからエチレングリコールへの変換を触媒する酵素は、過剰発現されていてもよい。
【0111】
一部の実施形態では、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換する酵素(図1の反応23)、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換する酵素(図1の反応22)、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換する酵素(図1の反応10)を含む微生物は、エチレングリコールを生成する。グリコールアルデヒドからエチレングリコールへの変換を触媒する酵素は、過剰発現されていてもよい。
【0112】
本開示の酵素は、本開示の微生物における発現のために最適化されたコドンであってもよい。「コドン最適化」とは、特定の株又は種における核酸の最適化又は改善された翻訳のための、遺伝子などの核酸の変異を指す。コドン最適化は、より速い翻訳速度、又はより高い翻訳精度をもたらし得る。好ましい実施形態では、本開示の遺伝子は、本開示の微生物における発現のために最適化されたコドンである。コドン最適化は、根底にある遺伝子配列を指すが、コドン最適化は、翻訳の改善、ひいては酵素発現の改善をもたらすことがよくある。したがって、本開示の酵素は、コドン最適化されているとも記述され得る。
【0113】
本開示の酵素のうちの1つ以上が、過剰発現されていてもよい。「過剰発現した」とは、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物と比較して、本開示の微生物における核酸又はタンパク質の発現の増加を指す。過剰発現は、遺伝子コピー数、遺伝子転写速度、遺伝子翻訳速度、又は酵素分解速度の変更を含む、当該技術分野において既知の任意の手段によって達成することができる。上述のように、図1の反応2、5、6、8、9、10、19、20、24、又は25を触媒する酵素のうちの1つ以上が過剰発現されていてもよい。
【0114】
本開示の酵素は、破壊的変異を含んでもよい。「破壊的変異」は、遺伝子又は酵素の発現又は活性を低減又は排除する(すなわち、「破壊する」)変異である。破壊的変異は、遺伝子又は酵素を、部分的に不活性化し得るか、完全に不活性化し得るか、又は欠失し得る。破壊的変異は、ノックアウト(knockout、KO)変異であり得る。破壊的変異は、酵素によって生成される生成物の生合成を低減、防止、又は阻害する任意の変異であり得る。破壊的変異は、例えば、酵素をコードする遺伝子における変異、酵素をコードする遺伝子の発現に関与する遺伝子調節エレメントにおける変異、酵素の活性を低下又は阻害するタンパク質を生成する核酸の導入、又は酵素の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンスRNA、siRNA、CRISPR)若しくはタンパク質の導入を含み得る。破壊的変異は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して導入されてもよい。
【0115】
一実施形態では、本開示の微生物は、ジオールデヒドラターゼをコードする遺伝子に破壊的変異を含む。
【0116】
一部の実施形態では、本開示の微生物は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.41]に破壊的変異を含む。イソクエン酸デヒドロゲナーゼは、イソクエン酸塩を2-オキソグルタル酸塩に変換する。イソクエン酸デヒドロゲナーゼの欠失によるなど、イソクエン酸デヒドロゲナーゼの破壊は、イソクエン酸塩のレベルの増加をもたらす。
【0117】
一部の実施形態では、本開示の微生物は、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ[1.1.1.29]に破壊的変異を含む。グリセリン酸デヒドロゲナーゼはグリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する。イソクエン酸デヒドロゲナーゼの欠失によるなど、グリセリン酸デヒドロゲナーゼの破壊は、グリオキシル酸塩のレベルの増加をもたらす。
【0118】
一部の実施形態では、本開示の微生物は、グリコール酸デヒドロゲナーゼ[1.1.99.14]に破壊的変異を含む。グリコール酸デヒドロゲナーゼは、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換する。グリコール酸デヒドロゲナーゼの欠失によるなど、グリコール酸デヒドロゲナーゼの破壊は、グリオキシル酸塩のレベルの増加をもたらす。
【0119】
一部の実施形態では、本開示の微生物は、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ[1.2.7.5]に破壊的変異を含む。アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼはグリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する。アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼの欠失によるなど、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼの破壊は、グリコール酸塩のレベルの増加をもたらす。
【0120】
一部の実施形態では、本開示の微生物は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ[1.2.1.3/1.2.3.4/1.2.3.5]に破壊的変異を含む。アルデヒドデヒドロゲナーゼはグリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換する。アルデヒドデヒドロゲナーゼの欠失によるなど、アルデヒドデヒドロゲナーゼの破壊は、グリコール酸塩のレベルの増加をもたらす。
【0121】
破壊的変異の導入は、本開示の微生物が由来する親微生物と比較して、標的生成物を生成しないか、又は生成物を実質的に生成しないか、又は標的生成物の量を減少させる、本開示の微生物をもたらす。例えば、本開示の微生物は、標的生成物を生成しないか、又は親微生物よりも、少なくとも約1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%少ない標的生成物を生成し得る。例えば、本開示の微生物は、約0.001、0.01、0.10、0.30、0.50、又は1.0g/L未満の生成物を生成し得る。
【0122】
酵素の例示的な配列及び供給源が本明細書に提供されているが、本開示は、決してこれらの配列及び供給源に限定されず、バリアントも包含する。「バリアント」という用語は、核酸及びタンパク質の配列が、従来技術分野において開示されるか又は本明細書に例示される参照核酸及びタンパク質の配列などの、参照核酸及びタンパク質の配列から変化する、核酸及びタンパク質を含む。本開示は、参照核酸又はタンパク質と実質的に同じ機能を実行するバリアント核酸又はタンパク質を使用して実践され得る。例えば、バリアントタンパク質は、参照タンパク質と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ反応を触媒する場合がある。バリアント遺伝子は、参照遺伝子と同じ、又は実質的に同じタンパク質をコードしてもよい。バリアントプロモーターは、参照プロモーターと実質的に同じ、1つ以上の遺伝子の発現を促進するための能力を有してもよい。
【0123】
そのような核酸又はタンパク質は、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等のバリアントには、対立遺伝子バリアント、遺伝子の断片、変異した遺伝子、多型などが含まれ得る。他の微生物からの相同遺伝子も、機能的に同等なバリアントの例である。これらとしては、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、又はClostridium ljungdahliiなどの種の相同遺伝子が挙げられ、それらの詳細は、Genbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されており入手可能である。機能的に同等なバリアントとしてはまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化している核酸が挙げられる。核酸の機能的に同等なバリアントは、好ましくは、参照核酸と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又はそれを超える核酸配列同一性(相同性パーセント)を有する。タンパク質の機能的に同等なバリアントは、好ましくは、参照タンパク質と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又はそれを超えるアミノ酸同一性(相同性パーセント)を有する。バリアントの核酸又はタンパク質の機能的同等性は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して評価することができる。
【0124】
「相補性」とは、従来のワトソン-クリック型又は他の非従来型のいずれかによって、核酸が別の核酸配列と水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子内の残基の割合(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%の相補的である、10のうちの5、6、7、8、9、10)を示す。「完全に相補的」とは、核酸配列の全ての隣接する残基が、第2の核酸配列の同数の隣接する残基と水素結合するであろうことを意味する。本明細書で使用される場合、「実質的に相補的」とは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、又はそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%。97%、98%、99%、又は100%である相補性の程度を指すか、又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0125】
「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化されている複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対合、フーグスティーン結合、又は任意の他の配列に特異的な様式で起こり得る。複合体は、二重構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、又は酵素によるポリヌクレオチドの切断など、より広範なプロセスにおけるステップを構成し得る。所与の配列とハイブリダイズ可能な配列は、所与の配列の「補体」と称される。
【0126】
核酸は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、本開示の微生物に送達され得る。例えば、核酸は、裸の核酸として送達されてもよく、リポソームなどの1つ以上の薬剤とともに配合されてもよい。核酸は、必要に応じて、DNA、RNA、cDNA、又はそれらの組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態では、制限阻害剤を使用してもよい。追加のベクターには、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、及び人工染色体が含まれ得る。好ましい実施形態では、核酸は、プラスミドを使用して本開示の微生物に送達される。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的又は自然のコンピテンス、プロトプラスト形質転換、プロファージ誘発、又はコンジュゲート化によって達成され得る。活性制限酵素系を有するある特定の実施形態では、核酸を微生物に導入する前に核酸をメチル化する必要があり得る。
【0127】
更に、核酸は、特定の核酸の発現を増加又は別の方法で制御するために、プロモーターなどの調節エレメントを含むように設計されてもよい。プロモーターは、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターであり得る。理想的には、プロモーターは、Wood-Ljungdahl経路プロモーター、フェレドキシンプロモーター、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素プロモーター、Rnf複合オペロンプロモーター、ATPシンターゼオペロンプロモーター、又はホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーターである。
【0128】
本開示は、配列が実質的に同じ機能を果たすという条件で、その配列が本明細書に具体的に例示される配列から変化する核酸を使用して実施され得ることが理解されるべきである。タンパク質又はペプチドをコードする核酸配列については、これは、コードされたタンパク質又はペプチドが実質的に同じ機能を有することを意味する。プロモーター配列を表す核酸配列については、バリアント配列は、1つ以上の遺伝子の発現を促進する能力を有する。そのような核酸、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等のバリアントには、対立遺伝子バリアント、遺伝子の断片、変異(欠失、挿入、ヌクレオチド置換など)を含む遺伝子、及び/又は多型などが含まれる。他の微生物由来の相同遺伝子も、本明細書に具体的に例示される配列の機能的に同等のバリアントの例として考慮され得る。
【0129】
これらには、Clostridium ljungdahlii、Chloroflexus aurantiacus、Metallosphaera、又はSulfolobus sppなどの種における相同遺伝子が含まれ、その詳細はGenbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されている。「機能的に同等のバリアント」という語句はまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化する核酸を含むように取られるべきである。本明細書の核酸の「機能的に同等のバリアント」は、好ましくは、特定された核酸と少なくとも約70%、好ましくは約80%、より好ましくは約85%、好ましくは約90%、好ましくは約95%、又はそれ以上の核酸配列同一性を有するであろう。
【0130】
本開示は、その配列が本明細書に具体的に例示されるアミノ酸配列から変化するポリペプチドを使用して実施され得ることも理解されるべきである。これらのバリアントは、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。タンパク質又はペプチドの機能的に同等のバリアントは、特定されたタンパク質又はペプチドと少なくとも40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、好ましくは95%、又はそれ以上のアミノ酸同一性を共有し、かつ目的のペプチド又はタンパク質と実質的に同じ機能を有する、それらのタンパク質又はペプチドを含む。そのようなバリアントは、その範囲内のタンパク質又はペプチドの断片を含み、断片は、ポリペプチドの切断型を含み、欠失は、1~5、10、15、20、25個のアミノ酸でもよく、ポリペプチドの末端のいずれかで残基1から25まで延在してもよく、欠失は、領域内の任意の長さでもよく、又は内部位置であってもよい。本明細書の特定のポリペプチドの機能的に同等のバリアントは、例えば、前段落で例示されるように、細菌の他の種において相同遺伝子によって発現されるポリペプチドを含むようにも取られるべきである。
【0131】
本開示の微生物は、組換え微生物を生成するための当該技術分野で既知の任意の数の技術を使用して、親微生物及び1つ以上の外来性核酸から調製され得る。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的若しくは自然のコンピテンス、又はコンジュゲート化によって達成され得る。好適な形質転換技術は、例えば、Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T: Molecular Cloning: A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989に記載されている。
【0132】
ある特定の実施形態では、形質転換される微生物中で活性である制限系により、微生物に導入される核酸をメチル化する必要がある。これは、以下に記載されるものを含む様々な技術を使用して行うことができ、後に本明細書の実施例の項で更に例示される。
【0133】
例として、一実施形態では、本開示の組換え微生物は、以下の工程を含む方法によって生成される:本明細書に記載の発現構築物/ベクターの(i)及び(ii)メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むメチル化構築物/ベクターのシャトル微生物への導入;メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現;シャトル微生物からの1つ以上の構築物/ベクターの分離;並びに1つ以上の構築物/ベクターの、目的地の微生物への導入。
【0134】
一実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子は、構成的に発現される。別の実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現が誘導される。
【0135】
シャトル微生物は微生物であり、好ましくは、発現構築物/ベクターを構成する核酸配列のメチル化を促進する制限陰性微生物である。特定の実施形態では、シャトル微生物は、制限陰性E.coli、Bacillus subtilis、又はLactococcus lactisである。
【0136】
メチル化構築物/ベクターは、メチルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む。
【0137】
発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターがシャトル微生物内に導入されると、メチル化構築物/ベクター上に存在するメチルトランスフェラーゼ遺伝子が誘導される。誘導は、任意の好適なプロモーター系による場合があるが、本開示の特定の一実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、誘導性lacプロモーターを含み、ラクトース又はその類似体、より好ましくはイソプロピル-β-D-チオ-ガラクトシド(IPTG)の添加によって誘導される。他の好適なプロモーターには、ara、tet、又はT7系が含まれる。本開示の更なる実施形態では、メチル化構築物/ベクタープロモーターは、構成的プロモーターである。
【0138】
特定の実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、メチル化構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が、シャトル微生物中で発現されるように、シャトル微生物の同一性に特異的な複製の起源を有する。好ましくは、発現構築物/ベクターは、発現構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が目的地の微生物で発現されるように、目的地の微生物の同一性に特異的な複製の起源を有する。
【0139】
メチルトランスフェラーゼ酵素の発現は、発現構築物/ベクター上に存在する遺伝子のメチル化をもたらす。次いで、発現構築物/ベクターは、いくつかの既知の方法のうちのいずれか1つに従って、シャトル微生物から単離されてもよい。例としてのみ、以下に説明される実施例の項に記載される方法論を使用して、発現構築物/ベクターを単離してもよい。
【0140】
1つの特定の実施形態では、構築物/ベクターの両方が同時に単離される。
【0141】
発現構築物/ベクターは、任意の数の既知の方法を使用して、目的地の微生物に導入されてもよい。しかしながら、例として、以下の実施例の項に記載される方法論が使用されてもよい。発現構築物/ベクターはメチル化されているため、発現構築物/ベクター上に存在する核酸配列は、目的地の微生物に組み込まれ、うまく発現することができる。
【0142】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子は、シャトル微生物に導入され、過剰発現され得ることが想定される。したがって、一実施形態では、得られたメチルトランスフェラーゼ酵素は、既知の方法を使用して収集されてもよく、インビトロで使用して発現プラスミドをメチル化してもよい。次いで、発現構築物/ベクターは、発現のために目的地の微生物に導入されてもよい。別の実施形態では、メチルトランスフェラーゼ遺伝子は、シャトル微生物のゲノム内に導入され、続いて、発現構築物/ベクターがシャトル微生物に導入され、1つ以上の構築物/ベクターがシャトル微生物から単離され、次いで、発現構築物/ベクターが目的地の微生物に導入される。
【0143】
上で定義される発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターを組み合わせて、組成物を提供し得ることが想定される。そのような組成物は、本開示の組換え微生物を生成するための制限バリア機構を回避することにおいて特に有用性を有する。
【0144】
1つの特定の実施形態では、発現構築物/ベクター及び/又はメチル化構築物/ベクターは、プラスミドである。
【0145】
当業者であれば、本開示の微生物の生成におけるいくつかの好適なメチルトランスフェラーゼの使用を理解するであろう。しかしながら、一例として、後の本明細書の実施例に記載されるBacillus subtilisファージΦT1メチルトランスフェラーゼ及びメチルトランスフェラーゼを使用してもよい。好適なメチルトランスフェラーゼをコードする核酸は、所望のメチルトランスフェラーゼの配列及び遺伝コードを考慮すると、容易に理解されるであろう。
【0146】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を可能にするように適合された任意の数の構築物/ベクターを使用して、メチル化構築物/ベクターを生成してもよい。
【0147】
一実施形態では、基質は、COを含む。一実施形態では、基質は、CO2及びCOを含む。別の実施形態では、基質は、CO2及びH2を含む。別の実施形態では、基質は、CO2及びCO及びH2を含む。
【0148】
「基質」とは、本開示の微生物のための炭素及び/又はエネルギー源を指す。しばしば、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO、及び/又はCHを含む。好ましくは、基質は、CO又はCO+COのC1炭素源を含む。基質は、H、N、又は電子などの他の非炭素成分をさらに含み得る。しかしながら、他の実施形態では、基質は、糖、デンプン、繊維、リグニン、セルロース、もしくはヘミセルロース、又はそれらの組み合わせなどの炭水化物であってもよい。例えば、炭水化物は、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロース、キシロース、又はそれらのいくつかの組み合わせであってもよい。一部の実施形態では、基質は、(D)-キシロースを含まない(Alkim, Microb Cell Fact, 14:127, 2015)。一部の実施形態では、基質は、キシロースなどのペントースを含まない(Pereira, Metab Eng, 34: 80-87, 2016)。一部の実施形態では、基質は、ガス状及び炭水化物基質の両方を含み得る。(混合栄養発酵)基質は、H、N、又は電子などの他の非炭素成分をさらに含み得る。
【0149】
ガス状基質は、概して、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mol%のCOなどの少なくともいくらかの量のCOを含む。ガス状基質は、約20~80、30~70、又は40~60mol%のCOなど、ある範囲のCOを含み得る。好ましくは、ガス状基質は、約40~70mol%のCO(例えば、製鋼所又は高炉ガス)、約20~30mol%のCO(例えば、塩基性酸素転炉ガス)、又は約15~45mol%のCO(例えば、合成ガス)を含む。一部の実施形態では、ガス状基質は、約1~10又は1~20mol%のCOなどの比較的低い量のCOを含み得る。本開示の微生物は、典型的には、ガス状基質中のCOの少なくとも一部分を生成物に変換する。一部の実施形態では、ガス状基質は、COを含まないか、又は実質的に含まない(<1mol%)。
【0150】
ガス状基質は、いくらかの量のHを含み得る。例えば、ガス状基質は、約1、2、5、10、15、20、又は30mol%のHを含み得る。一部の実施形態では、ガス状基質は、約60、70、80、又は90mol%のHなどの比較的多量のHを含み得る。更なる実施形態では、ガス状基質は、Hを含まないか、又は実質的に含まない(<1mol%)。
【0151】
ガス状基質は、いくらかの量のCOを含み得る。例えば、ガス状基質は、約1~80又は1~30mol%のCOを含み得る。一部の実施形態では、ガス状基質は、約20、15、10、又は5mol%未満のCOを含み得る。別の実施形態では、ガス状基質は、COを含まないか、又は実質的に含まない(<1モル%)。
【0152】
ガス状基質はまた、代替的な形態で提供されてもよい。例えば、ガス状基質は、液体中に溶解されてもよく、又は固体支持体上に吸着されてもよい。
【0153】
ガス状基質及び/又はC1炭素源は、自動車の排出ガス又はバイオマスガス化からなど、工業プロセスの副産物として得られる、又は何らかの他の源からの廃ガス又はオフガスであってもよい。ある特定の実施形態では、工業プロセスは、製鋼所製造などの鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、ガス状基質及び/又はC1炭素源は、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に工業プロセスから捕捉されてもよい。
【0154】
ガス状基質及び/又はC1炭素源は、石炭若しくは精製所残渣のガス化、バイオマス若しくはリグノセルロース物質のガス化、又は天然ガスの改質によって得られる合成ガスなど、合成ガスであってもよい。別の実施形態では、合成ガスは、公共固形廃棄物又は産業固形廃棄物のガス化から得てもよい。
【0155】
基質及び/又はC1炭素源は、工業プロセスの副産物として得られる排ガス、もしくは自動車の排出ガス、バイオガス、埋立地ガス、直接空気回収からなど、別の源からの排ガス、又は電気分解からの排ガスであってもよい。基質及び/又はC1炭素源は、熱分解、焙焼、又はガス化によって生成される合成ガスであってもよい。言い換えれば、廃棄物中の炭素は、熱分解、焙焼、又はガス化によって再循環されて、基質及び/又はC1炭素源として使用される合成ガスを生成してもよい。基質及び/又はC1炭素源は、メタンを含むガスであってもよい。
【0156】
特定の実施形態において、工業プロセスは、鋼材製造などの鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製、電力生産、カーボンブラック生産、紙・パルプ製造、アンモニア生産、メタノール生産、コークス製造、石油化学生産、炭水化物発酵、セメント製造、好気性消化、嫌気性消化、触媒プロセス、天然ガスの抽出、セルロース発酵、オイル抽出、地質学的貯留層、天然ガス、石炭及び石油などの化石資源からのガス、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。工業プロセス内の特定の処理工程の例としては、触媒再生、流動接触分解、及び触媒再生が挙げられる。空気分離及び直接空気回収は、他の適切な工業プロセスである。鋼材及び合金鉄製造における具体的な例には、高炉ガス、塩基性酸素転炉ガス、コークス炉ガス、鉄炉頂ガスの直接還元、及び製錬鉄からの残留ガスが含まれる。これらの実施形態では、基質及び/又はC1炭素源は、任意の公知の方法を使用して、それが大気中に放出される前に工業プロセスから捕捉されてもよい。
【0157】
基質及び/又はC1炭素源は、合成ガスとして知られる合成用ガスであってもよく、これは、改質、部分酸化、又はガス化プロセスから取得されてもよい。ガス化プロセスの例としては、石炭のガス化、精製所残渣のガス化、石油コークスのガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース物質のガス化、廃木材のガス化、黒液のガス化、公共固形廃棄物のガス化、公共液状廃棄物のガス化、産業固形廃棄物のガス化、産業液体廃棄物のガス化、廃燃料のガス化、下水のガス化、下水汚泥のガス化、廃水処理からの汚泥のガス化、バイオガスのガス化が含まれる。改質プロセスの例としては、水蒸気メタン改質、水蒸気ナフサ改質、天然ガスの改質、バイオガスの改質、埋立地ガスの改質、ナフサ改質、及び乾式メタン改質が挙げられる。部分酸化プロセスの例としては、熱及び触媒部分酸化プロセス、天然ガスの触媒部分酸化、炭化水素の部分酸化が挙げられる。公共固形廃棄物の例としては、タイヤ、プラスチック、靴、アパレル、及び布地に含まれる繊維などがある。公共固形廃棄物は、単に埋立地タイプの廃棄物であってもよい。公共固形廃棄物は、選別されてもよく、又は選別されなくてもよい。バイオマスの例としては、リグノセルロース物質が挙げられてもよく、また微生物バイオマスが挙げられてもよい。リグノセルロース物質は、農業廃棄物及び森林廃棄物を含み得る。
【0158】
基質及び/又はC1炭素源は、メタンを含むガス流であってもよい。こうしたメタン含有ガスは、フラッキング中などの化石メタンの排出、廃水処理、家畜、農業、及び公共固形廃棄物の埋め立てから取得されてもよい。また、メタンは、電気又は熱を生成するために燃焼されてもよく、C1副生成物は、基質又は炭素源として使用されてもよいことも想定される。
【0159】
ガス状基質の組成は、反応の効率及び/又は費用に著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、又は濾過して、毒素、望ましくない成分、又はちり粒子などのいかなる望ましくない不純物も除去すること、及び/又は所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0160】
特定の実施形態では、発酵は、糖、デンプン、繊維、リグニン、セルロース、又はヘミセルロースなどの炭水化物基質の不在下で実施される。
【0161】
一部の実施形態では、以下に示されるように、エチレングリコール(MEG)に対するCO及びHの全体的なエネルギー論は、グルコースからエチレングリコールへのものよりも好ましく、CO及びHのより負のギブズ自由エネルギーΔrG’m値は、エチレングリコールに対するより大きな駆動力を示す。基質としてのグルコースとCOの比較のための全体的な反応デルタGの計算を、equilibrator(http://equilibrator.weizmann.ac.il/)を使用して実施したが、equilibratorは、生物系の経路における経路又は個々の工程の全体的な実現可能性を評価するための標準的な方法である(Flamholz, E. Noor, A. Bar-Even, R. Milo (2012) eQuilibrator - the biochemical thermodynamics calculator Nucleic Acids Res 40:D770-5; Noor, A. Bar-Even, A. Flamholz, Y. Lubling, D. Davidi, R. Milo (2012) An integrated open framework for thermodynamics of reactions that combines accuracy and coverageBioinformatics 28:2037-2044; Noor, H.S. Haraldsdottir, R. Milo, R.M.T. Fleming (2013) Consistent Estimation of Gibbs Energy Using Component Contributions PLoS Comput Biol 9(7): e1003098; Noor, A. Bar-Even, A. Flamholz, E. Reznik, W. Liebermeister, R. Milo (2014) Pathway Thermodynamics Highlights Kinetic Obstacles in Central Metabolism PLoS Comput Biol 10(2):e1003483)。計算は以下の通りである。
グルコース(水溶液) + 3 NADH(水溶液) ⇔ 3 MEG(水溶液) + 3 NAD(水溶液) ΔrG’m -104 kJ/mol
6 CO(水溶液) + 3 H(水溶液) + 6 NADH(水溶液) ⇔ 3 MEG(水溶液) + 6 NAD(水溶液) ΔrG’m -192 kJ/mol
生理学的条件:
グルコース(水溶液) + 3 NADH(水溶液) ⇔ 3 MEG(水溶液) + 3 NAD(水溶液) ΔrG’m -70 kJ/mol
6 CO(水溶液) + 3 H(水溶液) + 6 NADH(水溶液) ⇔ 3 MEG(水溶液) + 6 NAD(水溶液)ΔrG’m -295 kJ/mol
【0162】
エチレングリコール、グリオキシル酸塩、及び/又はグリコール酸塩に加えて、本開示の微生物を培養して、1つ以上の共生成物を生成してもよい。例えば、本開示の微生物は、2-フェニルエタノールに加えて、エタノール(国際公開第2007/117157号)、アセテート(国際公開第2007/117157号)、1-ブタノール(国際公開第2008/115080号、国際公開第2012/053905号、及び国際公開第2017/066498号)、ブチレート(国際公開第2008/115080号)、2,3-ブタンジオール(国際公開第2009/151342号及び国際公開第2016/094334号)、ラクテート(国際公開第2011/112103号)、ブテン(国際公開第2012/024522号)、ブタジエン(国際公開第2012/024522号)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(国際公開第2012/024522号及び国際公開第2013/185123号)、エチレン(国際公開第2012/026833号)、アセトン(国際公開第2012/115527号)、イソプロパノール(国際公開第2012/115527号)、脂質(国際公開第2013/036147号)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(国際公開第2013/180581号)、イソプレンを含むテルペン(国際公開第2013/180584号)、脂肪酸(国際公開第2013/191567号)、2-ブタノール(国際公開第2013/185123号)、1,2-プロパンジオール(国際公開第2014/036152号)、1-プロパノール(国際公開第2017/066498号)、1-ヘキサノール(国際公開第2017/066498号)、1-オクタノール(国際公開第2017/066498号)、コリスマート由来の生成物(国際公開第2016/191625号)、3-ヒドロキシブチレート(国際公開第2017/066498号)、1,3-ブタンジオール(国際公開第2017/066498号)、2-ヒドロキシイソブチレート又は2-ヒドロキシイソブチル酸(国際公開第2017/066498号)、イソブチレン(国際公開第2017/066498号)、アジピン酸(国際公開第2017/066498号)、1,3-ヘキサンジオール(国際公開第2017/066498号)、3-メチル-2-ブタノール(国際公開第2017/066498号)、2-ブテン-1-オール(国際公開第2017/066498号)、イソバレレート(国際公開第2017/066498号)、イソアミルアルコール(国際公開第2017/066498号)、及び/又はモノエチレングリコール(国際公開第2019/126400号)を生成することがきるか、又はこれらを生成するように操作され得る。一部の実施形態では、エチレングリコールに加えて、本開示の微生物はまた、エタノール、2,3-ブタンジオール、及び/又はコハク酸塩を生成する。ある特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が生成物とみなされ得る。これらの生成物は、更に変換されて、ディーゼル、ジェット燃料、及び/又はガソリンのうちの少なくとも1つの成分を生成し得る。ある特定の実施形態では、2-フェニルエタノールは、芳香剤、精油、香味剤、及び石鹸の原料として使用され得る。加えて、微生物バイオマスは、当該技術分野で既知の任意の方法又は方法の組み合わせによって、単一細胞タンパク質(SCP)を生成するように更に処理され得る。1つ以上の標的生成物に加えて、本開示の微生物はまた、エタノール、アセテート、及び/又は2,3-ブタンジオールも生成し得る。
【0163】
「天然生成物」は、遺伝子修飾されていない微生物によって生成される生成物である。例えば、エタノール、アセテート、及び2,3-ブタンジオールは、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiの天然生成物である。「非天然生成物」は、遺伝子組換えされた微生物によって生成されるが、遺伝子組換えされた微生物が由来する遺伝子組換えされていない微生物によって生成されない生成物である。エチレングリコールは、いかなる天然微生物によっても生成されることが知られていないので、全ての微生物の非天然生成物である。
【0164】
「選択性」は、微生物によって生成される全発酵生成物の生成に対する標的生成物の生成の比率を指す。本開示の微生物は、ある特定の選択性で、又は最小の選択性で生成物を生成するように操作され得る。一実施形態では、エチレングリコールなどの標的生成物は、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、又は75%を占める。一実施形態では、エチレングリコールは、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも10%を占めるので、本開示の微生物は少なくとも10%のエチレングリコールに対して選択性を有する。別の実施形態では、エチレングリコールは、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも30%を占めるので、本開示の微生物は少なくとも30%のエチレングリコールに対して選択性を有する。
【0165】
1つ以上の発酵生成物のうちの少なくとも1つは、培養によって生成されるバイオマスであってもよい。微生物バイオマスの少なくとも一部分は、単一細胞タンパク質(SCP)に変換され得る。単一細胞タンパク質の少なくとも一部分は、動物用飼料の成分として利用され得る。
【0166】
一実施形態では、本開示は、微生物バイオマス及び少なくとも1つの賦形剤を含む動物用飼料を提供し、微生物バイオマスは、CO、CO2、及びH2のうちの1つ以上を含むガス状基質上で増殖した微生物を含む。
【0167】
「単一細胞タンパク質」(SCP)は、タンパク質が豊富なヒト及び/又は動物用飼料に使用され得る微生物バイオマスを指し、多くの場合、大豆又は魚粉などの従来のタンパク質補給源に取って代わる。単一細胞タンパク質又は他の生成物を生成するために、プロセスは、追加の分離、加工、又は処理の工程を含み得る。例えば、本方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、及び/又は微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。ある特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥又はパドル乾燥を使用して乾燥される。核酸含有量の高い食事を摂取すると、核酸分解生成物の蓄積及び/又は胃腸障害が生じ得るため、本方法は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量を低減させることも含み得る。単一細胞タンパク質は、家畜又はペットなどの動物への給餌に好適であり得る。具体的には、動物用飼料は、1頭以上の肉牛、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、シカ、バッファロー/バイソン、ラマ、アルパカ、トナカイ、ラクダ、バンテン、ガヤル、ヤク、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ホロホロチョウ、ひなバト/ハト、魚、エビ、甲殻類、ネコ、イヌ、及びげっ歯類に給餌するのに好適であり得る。動物用飼料の組成は、異なる動物の栄養要件に合わせて調整され得る。更に、プロセスは、微生物バイオマスを1つ以上の賦形剤と混合すること又は組み合わせることを含み得る。
【0168】
「微生物バイオマス」は、微生物細胞を含む生物学的材料を指す。例えば、微生物バイオマスは、細菌、古細菌、ウイルス、又は真菌の純粋な、又は実質的に純粋な培養物を含み得るか、又はそれからなり得る。発酵ブロスから最初に分離された場合、微生物バイオマスは一般に、大量の水を含有する。この水は、微生物バイオマスを乾燥させるか又は処理することによって除去又は低減され得る。
【0169】
「賦形剤」は、動物用飼料の形態、特性、又は栄養含有量を強化又は変更するために、微生物バイオマスに添加され得る任意の物質を指し得る。例えば、賦形剤は、炭水化物、繊維、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水、香料、甘味料、酸化防止剤、酵素、防腐剤、プロバイオティクス、又は抗生物質のうちの1つ以上を含み得る。一部の実施形態では、賦形剤は、干し草、わら、貯蔵生牧草、穀物、油若しくは脂肪、又は他の植物材料であってもよい。賦形剤は、Chiba,Section 18: Diet Formulation and Common Feed Ingredients,Animal Nutrition Handbook,3rd revision,pages 575-633, 2014で特定される任意の飼料成分であってもよい。
【0170】
「バイオポリマー」は、生きている生物の細胞によって生成される天然ポリマーを指す。特定の実施形態では、バイオポリマーは、PHAである。特定の実施形態では、バイオポリマーは、PHBである。
【0171】
「バイオプラスチック」は、再生可能なバイオマス源から生成されたプラスチック材料を指す。バイオプラスチックは、植物性脂肪及び油、トウモロコシデンプン、わら、木くず、おがくず、又は再生食品廃棄物などの再生可能源から生成され得る。
【0172】
本明細書において、酸(例えば、酢酸又は2-ヒドロキシイソ酪酸)についての言及は、対応する塩(例えば、アセテート又は2-ヒドロキシイソブチレート)も含むと解釈されるべきである。
【0173】
典型的には、培養は、バイオリアクター中で実施される。「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、固定化細胞反応器(immobilized cell reactor、ICR)、トリクルベッド反応器(trickle bed reactor、TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、又はガス-液体接触に適した他の容器若しくは他のデバイスなどの1つ以上の容器、塔、又は配管配置からなる培養/発酵デバイスを含む。一部の実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の培養/発酵反応器を含み得る。基質は、これらの反応器のうちの1つ又は両方に提供され得る。本明細書で使用される場合、「培養」及び「発酵」という用語は、同じ意味で使用される。これらの用語は、培養/発酵プロセスの増殖期及び生成物生合成期の両方を包含する。
【0174】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/又は無機物を含む水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物培地である。好適な培地は、当該技術分野において既知である。
【0175】
培養/発酵は、望ましくは、エチレングリコールの生成に適した条件下で実施されるべきである。必要な場合、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(又は分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。具体的には、基質の導入速度は、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0176】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、及びその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。これは、バイオリアクター中の液体体積を投入ガス流量で除算したものとして定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに低減され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクターの必要な体積を更に示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。
【0177】
ある特定の実施形態では、発酵は、光の不在下で、又は光合成微生物のエネルギー要求を満たすには不十分な量の光の存在下で行われる。ある特定の実施形態では、本開示の微生物は、非光合成微生物である。
【0178】
標的生成物は、例えば、分留蒸留、蒸発、パーベーパレイション、ガスストリッピング、相分離、及び例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、任意の方法又は当該技術分野において既知の方法の組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離又は精製することができる。ある特定の実施形態では、標的生成物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、一つ以上の標的生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール及び/又はアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、好ましくは、バイオリアクターに戻される。標的生成物が取り出された後に残存している無細胞透過液も、好ましくは、バイオリアクターに戻される。追加の栄養素(ビタミンBなど)が、無細胞透過液に添加されて、培地を補充した後に、バイオリアクターに戻され得る。精製技術には、アフィニティタグ精製(例えば、His、Soz-Strep、及びFLAG)、ビーズベースのシステム、チップベースのアプローチ、及びより大きなスケールの自動精製のためのFPLCシステムが含まれ得る。アフィニティタグに依存しない精製方法(例えば、塩析、イオン交換、及びサイズ排除)も開示されている。
【0179】
本開示の方法は、エチレングリコールを発酵ブロスから分離することをさらに含み得る。エチレングリコールは、例えば、蒸留、擬似移動床プロセス、膜処理、パーベーパレイション、ガスストリッピング、相分離、イオン交換、又は例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、当該技術分野において既知の任意の方法又は方法の組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離又は精製することができる。一実施形態では、エチレングリコールは、逆浸透及び/又はパーベーパレイションを使用して発酵ブロスから濃縮されてもよい(米国特許第5,552,023号)。水は蒸留によって除去されてもよく、次いで、底部(高い割合のエチレングリコールを含有する)が、蒸留又は真空蒸留を使用して回収されて、高純度のエチレングリコール流を生成してもよい。あるいは、逆浸透及び/又はパーベーパレイションによる濃縮を伴って、又は伴わずに、エチレングリコールは、アルデヒドを用いた反応蒸留(Atul,Chem Eng Sci,59:2881-2890, 2004)、又は炭化水素を使用した共沸蒸留(米国第2,218,234号)によってさらに精製されてもよい。別のアプローチでは、エチレングリコールは、(逆浸透及び/又はパーベーパレイションを伴って、又は伴わずに)水溶液から活性炭又はポリマー吸収体上に捕捉され、低沸点有機溶媒を使用して回収されてもよい(Chinn, Recovery of Glycols, Sugars, and Related Multiple -OH Compounds from Dilute-Aqueous Solution by Regenerable Adsorption onto Activated Carbons, University of California Berkeley, 1999)。次いで、エチレングリコールを蒸留によって有機溶媒から回収することができる。ある特定の実施形態では、エチレングリコールは、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、エチレングリコールをブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール又は酸などの共生成物も、ブロスから分離又は精製されてもよい。アルコールは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、特定の実施形態では、バイオリアクターに戻されてもよい。標的生成物が取り出された後に残存している無細胞透過液も、好ましくは、全部又は一部がバイオリアクターに戻される。追加の栄養素(ビタミンBなど)が、無細胞透過液に添加されて、培地を補充した後に、バイオリアクターに戻され得る。
【0180】
水性培地からのジオールの回収は、多くの方法が示されてきた。エタノール及び関連する酸素化物の水性混合物から2,3-ブタエンジオールを回収するために、擬似移動床(SMB)技術が使用されてきた(米国特許第8,658.845号)。反応分離も、効果的なジオール回収を実証している。一部の実施形態では、エチレングリコールの回収は、ジオール含有流をアルデヒドと反応させ、ジオールの分画及び再生、最終分画を行い、濃縮ジオール流を回収することによって行われる。例えば、米国特許第7,951,980号を参照されたい。
【0181】
本開示は、微生物によって、本明細書に記載される方法に従って生成されるエチレングリコールを含む組成物を提供する。例えば、エチレングリコールを含む組成物は、凍結防止剤、防腐剤、脱水剤、又は掘削流体であってもよい。
【0182】
本開示はまた、微生物によって、本明細書に記載される方法に従って生成されるエチレングリコールを含むポリマーを提供する。こうしたポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールなどのホモポリマー、又はポリエチレンテレフタレートなどのコポリマーであってもよい。これらのポリマーの合成方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Herzberger et al ., Chem Rev., 116(4): 2170-2243 (2016)及びXiao et al ., Ind Eng Chem Res. 54(22): 5862-5869(2015)を参照されたい。
【0183】
本開示はさらに、微生物によって、本明細書に記載される方法に従って生成されるエチレングリコールを含むポリマーを含む組成物を提供する。例えば、組成物は、繊維、樹脂、フィルム、又はプラスチックであってもよい。
【0184】
一実施形態は、ジオールデヒドラターゼをコードする遺伝子に破壊的変異を含む、ガス状基質からエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成することができる遺伝子操作された微生物を対象とする。
【0185】
微生物が、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、オキサロ酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、及びグリシンからなる群から選択される1つ以上の中間体を介して、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する、実施形態に記載の微生物。
【0186】
微生物が、
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、
c.イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、及び
d.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素をコードする核酸のうちの1つ以上を含む、実施形態に記載の微生物。
【0187】
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素が、EC番号2.3.3.1を有するクエン酸[Si]-シンターゼ、EC番号2.3.3.8を有するATPクエン酸シンターゼ、又はEC番号2.3.3.3を有するクエン酸(Re)-シンターゼであり、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素が、EC番号2.6.1.44を有するアラニン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.45を有するセリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.51を有するセリン-ピルビン酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.35を有するグリシン-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.4を有するグリシントランスアミナーゼ、EC番号1.4.1.10を有するグリシンデヒドロゲナーゼ、EC番号1.4.1.1を有するアラニンデヒドロゲナーゼ、又はEC番号1.4.2.1を有するグリシンデヒドロゲナーゼであり、
c.イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素が、EC番号4.1.3.1を有するイソクエン酸リアーゼであり、及び/又は
d.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素が、EC番号1.2.1.21を有するグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.22を有するラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.24を有するコハク酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.26を有する2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.3/4/5を有するアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.8を有するベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ、又はEC番号1.2.7.5を有するアルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼである、実施形態に記載の微生物。
【0188】
異種酵素のうちの1つ以上が、Bacillus、Clostridium、Escherichia、Gluconobacter、Hyphomicrobium、Lysinibacillus、Paenibacillus、Pseudomonas、Sedimenticola、Sporosarcina、Strreptomyces、Thermithiobacillus、Thermotoga、Cupriavidus、及びZeaからなる群から選択される属に由来する、実施形態に記載の微生物。
【0189】
異種酵素のうちの1つ以上が、微生物における発現のためにコドン最適化されている、実施形態に記載の微生物。
【0190】
微生物が、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換することができる酵素、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換することができる酵素、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換することができる酵素、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換することができる酵素、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換することができる酵素、セリンをグリシンに変換することができる酵素、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる酵素、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる酵素、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる酵素、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる酵素、及び/又はグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる酵素のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態に記載の微生物。
【0191】
微生物が、
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素、及び/又は
c.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素を過剰発現する、実施形態に記載の微生物。
【0192】
微生物が、
a.ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、
b.クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる酵素、
c.ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、
d.セリンをグリシンに変換することができる酵素、
e.5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる酵素、
f.グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる酵素、及び/又は
g.グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる酵素を過剰発現する、実施形態に記載の微生物。
【0193】
微生物が、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼのうちの1つ以上の酵素に破壊的変異をさらに含む、実施形態に記載の微生物。
【0194】
微生物が、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Clostridium、Cupriavidus、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、及びThermoanaerobacterからなる群から選択される属のメンバーである、実施形態に記載の微生物。
【0195】
微生物が、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Cupriavidus necator、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kiuviからなる群から選択される親微生物に由来する、実施形態に記載の微生物。
【0196】
微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiからなる群から選択される親細菌に由来する、実施形態に記載の微生物。
【0197】
微生物が、天然または異種のWood-Ljungdahl経路を含む、実施形態に記載の微生物。
【0198】
エチレングリコールの前駆体がグリオキシル酸塩またはグリコール酸塩である、実施形態に記載の微生物。
【0199】
別の実施形態は、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する方法を対象とし、方法は、請求項1に記載の微生物を栄養培地中、ガス状基質の存在下で培養することを含み、それによって微生物がエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する。
【0200】
ガス状基質が、CO、CO、およびHのうちの1つ以上を含む、一実施形態に記載の方法。
【0201】
エチレングリコールの前駆体がグリオキシル酸塩またはグリコール酸塩である、一実施形態に記載の方法。
【0202】
方法が、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を栄養培地から分離することをさらに含む、一実施形態に記載の方法。
【0203】
微生物が、エタノール、2,3-ブタンジオール、及びコハク酸塩のうちの1つ以上をさらに生成する、一実施形態に記載の方法。
【0204】
別の実施形態は、1)少なくとも1つのPET成分を形成することであって、少なくとも1つのPET成分がモノエチレングリコール(MEG)、テレフタル酸(PTA)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、形成することと、2)少なくとも1つのPET成分をPETに加工することと、3)PETを重合させてPET樹脂を形成することと、4)PET樹脂をPET製品に加工することとを含む、ガス状基質からポリエチレンテレフタレート(PET)製品を製造する方法を対象とする。
【実施例
【0205】
以下の実施例は、本開示を更に例示するが、当然のことながら、いかなる方法によってもその範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0206】
実施例1:C. autoethanogenumにおいてCO及び/又はCO及びHからエチレングリコールを生成するための、B.subtilisクエン酸シンターゼ、E. coliイソクエン酸リアーゼ、及びG. oxydansグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む異種発現ベクターの構築。
B.subtilisからのクエン酸シンターゼ(citZ、配列番号1~2)、E.coliからのイソクエン酸リアーゼ(icl、配列番号11~12)、及びG.oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldA1、配列番号55~56)をコードする遺伝子をコドン適合させ、C.autoethanogenumにおける発現のために合成した。適合遺伝子を、標準的なBsaIゴールデンゲートクローニングキット(New England Biolabs、マサチューセッツ州イプスウィッチ)を使用して、発現シャトルベクターpIPL12にクローニングした。pIPL12は、E.coli及びC.autoethanogenumの両方の複製起源を含み、それを複製し、両方の種で維持することを可能にし、pIPL12は、ほとんどのClostridiaにおいても機能する。pIPL12は、ポジティブセレクションに対してエリスロマイシン/クラリスロマイシン耐性を付与する23S rRNA(アデニン(2058)-N(6))-メチルトランスフェラーゼErm(B)、E.coliからの接合伝達のためのTraJ、及び異種遺伝子の発現のためのプロモーターをさらに含む。図2Aを参照されたい。citZ、icl、及びaldA1のpIPL12へのクローニング時に作製された発現ベクターは、本明細書においてpMEG042と称される(図2B)。
【0207】
【表2】
【0208】
pMEG042構築物を、接合を介してC. autoethanogenumに変換した。発現ベクターを、標準的なヒートショック形質転換を使用して、最初に接合ドナー株、E.coli HB101+R702(CA434)(Williams et al.1990)(ドナー)に導入した。ドナー細胞をSOC培地中37℃で1時間回収し、その後、100μg/mLのスペクチノマイシン及び500μg/mLのエリスロマイシンを含むLB培地プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、100μg/mLのスペクチノマイシン及び500μg/mLのエリスロマイシンを含む5mLのLBアリコートに、いくつかのドナーコロニーを接種し、37℃でインキュベートし、約4時間、又は培養物が目に見えて高密度であるが、固定相にまだ入っていない状態になるまで振盪した。1.5mLのドナー培養物を、4000rpm及び20~25℃で2分間遠心分離することによって採取し、上清を廃棄した。ドナー細胞を500μLの滅菌PBS緩衝液中に穏やかに再懸濁し、4000rpmで2分間遠心分離し、PBS上清を廃棄した。
【0209】
ペレットを嫌気性チャンバーに導入し、C. autoethanogenum培養物(レシピエント)の後期指数増殖期の間に200μL中に穏やかに再懸濁した。C.autoethanogenum DSM10061及びDSM23693(DSM10061の派生物)は、DSMZ(The German Collection of Microorganisms and Cell Cultures,Inhoffenstraβe 7B,38124 Braunschweig,Germany)から供給された。株は、標準的な嫌気性技術(Hungate 1969; Wolfe 1971)を使用し、pH 5.6のPETC培地中、37℃で増殖させた(米国特許第9,738,875号)。
【0210】
接合混合物(ドナー細胞とレシピエント細胞の混合物)をPETC-MES+フルクトース寒天プレート上にスポットし、乾燥させた。スポットがもう目に見えて濡れていなくなったとき、プレートを圧力ジャーに導入し、合成ガス(50%CO、10%N、30%CO、10%H)で25~30psiまで加圧し、37℃で約24時間インキュベートした。次いで、10μLの接種ループを使用して優しく掻き取ることによって、接合混合物をプレートから取り出した。取り出した混合物を200~300μLのPETC培地中に懸濁した。接合混合物の100μLのアリコートを、5μg/mLのクラリスロマイシンを補充したPETC培地寒天プレート上に播種して、プラスミドを有する形質転換体を選択した。
【0211】
pMEG042プラスミドを有するC. autoethanogenumの3つの別個のコロニーを、5μg/mLのクラリスロマイシンを含む2mLのPETC-MES培地に接種し、50%CO、10%N、30%CO、10%H、および100rpmのオービタルシェーキングを用いて37℃で3日間、独立栄養的に増殖させた。培養物を、血清ボトル中の5μg/mLのクラリスロマイシンを含む10mLのPETC-MES培地中で0.05のOD00に希釈し、50%CO、10%N、30%CO、10%H、及び100rpmのオービタルシェーキングを用いて37℃で最大20日間、独立栄養的に増殖させ、バイオマス及び代謝物を測定するために毎日サンプリングした(図3A及び3B)。エチレングリコールの生成を、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を使用して測定し、他の代謝物を、以下に記載されるように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定した。
【0212】
エチレングリコール濃度を、Agilent VF-WAXmsカラム(15m×0.25μm×0.25μm)及びRSHオートサンプラーを備えたThermo Scientific ISQ LT GCMSを用いて測定した。試料は、200μLのメタノールで200μLのブロスを希釈することによって調製した。試料をボルテックスし、次いで14,000rpmで3分間遠心分離し、200μLの上清を、インサートを備えたガラスバイアルに移した。試料を、1.0μLの注入、5対1の分割比、および240℃の入口温度を使用して、分析のためにオートサンプラーに移した。クロマトグラフィーは、80℃で0.5分保持して、10℃/分の傾斜で150℃まで上昇させ、25℃/分の傾斜で220℃まで上昇させてから3分間最終保持するオーブンプログラムを用いて行った。カラム流量は、キャリアガスとしてヘリウムを使用して、0.5分間の保持では4.0mL/分であり、次いで、100ml/分/分の速度で1.5ml/分まで低下させた。MSイオン源を260℃に維持し、移送ラインを240℃に設定した。定量は、定量ピークとして33.0 m/z、確認ピークとして31.0 + 62.0 m/zを使用した線形外部標準較正を用いて実施した。
【0213】
エタノール、酢酸塩、2,3-ブタンジオール、グリオキシル酸塩、およびグリコール酸塩の濃度を、35℃で屈折率(RI)検出を用いたAgilent 1260 Infinity LCでのHPLCによって測定した。試料を、80℃で5分間加熱し、続いて14,000rpmで3分間遠心分離することによって調製し、上清を、分析のためにガラスバイアルに移した。Phenomenex Rezex(商標)ROA-Organic Acid H+(8%)カラム(300mm×7.8mm×8μm)への10μLの注入を用いて、5mM硫酸移動相を使用して、イソクラティック条件下で0.7mL/分および35℃で分離を行った。
【0214】
約3日間の独立栄養的な増殖後、エチレングリコール前駆体グリコール酸塩が観察され、10日後、エチレングリコールの生成が観察された(図3B)。グリコール酸塩は、独立栄養的に増殖し、発現ベクターpMEG042を担持するC. autoethanogenumにおいて、経時的に生成された(図3C)。
【0215】
実施例2:C. autoethanogenumにおいてCO及び/又はCOおよびHからエチレングリコールを生成するための、S. thiotauriniアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ及びP. fluorescensアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む異種発現ベクターの構築。
S. thiotauriniからのアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(pucG、配列番号15~16)及びP. fluorescens Q8r1-96からのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldA1、配列番号57~58)をコードする遺伝子をコドン適合させ、C. autoethanogenumでの発現のために合成した。コドン適合遺伝子をpIPL12にクローニングし(図2A)、得られた発現ベクターpMEG058を、実施例1に記載されるように、C. autoethanogenumに導入した。図2Cを参照されたい。
【0216】
【表3】
【0217】
pMEG058プラスミドを有するC. autoethanogenumの2つの別個のコロニーを、5μg/mLのクラリスロマイシンを含む2mLのPETC-MES培地に接種し、実施例1に記載されるように独立栄養的に増殖させた。図4Aを参照されたい。約3日間の独立栄養的な増殖後、グリコール酸塩が観察され、8日後、エチレングリコールの生成が観察された(図4B)。
【0218】
実施例3:C. autoethanogenumにおいてCO及び/又はCOおよびHからエチレングリコールを生成するための、S. thiotauriniアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ及びG. oxydansグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む異種発現ベクターの構築。
S. thiotauriniからのアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(pucG、配列番号15~16)およびG. oxydansからのグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldA1、配列番号55~56)をコードする遺伝子をコドン適合させ、C. autoethanogenumでの発現のために合成した。コドン適合遺伝子をpIPL12にクローニングし(図2A)、得られた発現ベクターpMEG059を、実施例1に記載されるように、C. autoethanogenumに導入した。図2Dを参照されたい。
【0219】
【表4】
【0220】
pMEG059プラスミドを有するC. autoethanogenumの2つの別個のコロニーを、5μg/mLのクラリスロマイシンを含む2mLのPETC-MES培地に接種し、実施例1に記載されるように独立栄養的に増殖させた。図5Aを参照されたい。約3日間の独立栄養的な増殖後、グリコール酸塩が観察され、10日後、エチレングリコールの生成が観察された(図5B)。
【0221】
実施例4:C. autoethanogenumにおいてCO及び/又はCOおよびHからエチレングリコールを生成するための、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ及びアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む異種発現ベクターの構築。
C. aciduriciからのクラスVアミノトランスフェラーゼ(SgA、配列番号19、20)、及びP. fluorescens Q8r1-96からのアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldA1、配列番号57~58)をコードする遺伝子をコドン適合させ、C. autoethanogenumでの発現のために合成した。コドン適合遺伝子をpIPL12にクローニングし(図2A)、得られたベクターpMEG061を、実施例1に記載されるように、C. autoethanogenumに導入した。図2Eを参照されたい。
【0222】
【表5】
【0223】
pMEG061プラスミドを有するC. autoethanogenumの3つの別個のコロニーを、5μg/mLのクラリスロマイシンを含む2mLのPETC-MES培地に接種し、実施例1に記載されるように独立栄養的に増殖させた。図6Aを参照されたい。約3日間の独立栄養的な増殖後、グリコール酸塩が観察され、16日後、エチレングリコールの生成が観察された(図6B)。
【0224】
実施例5:エチレングリコールへの異なる経路の最大収率のモデル化
Marcellin, Green Chem , 18: 3020-3028, 2016に記載されるものと同様のClostridium autoethanogenumのゲノムスケール代謝モデルを利用して、エチレングリコールへの異なる経路の最大収率を予測した。異種代謝反応を野生型Clostridium autoethanogenumモデル構造に加えて、非天然化合物生成経路の組み込みを表した。本明細書に記載される実験的作業に使用されるモデルは、Clostridium autoethanogenumに基づくが、代謝の類似性を考慮すると、結果は他のWood-Ljungdahl微生物にも当てはまると合理的に予想され得る。
【0225】
制約ベースの計算モデリング技術フラックスバランス解析(FBA)および代謝調整の線形最小化(LMOMA)(Maia、Proceedings of the Genetic and Evolutionary Computation Conference Companion on - GECCO ’17,ニューヨーク州ニューヨーク、ACM Press、1661-1668、2017)を使用し、cobrapyバージョン0.8.2(Ebrahim., COBRApy: COnstraints-Based Reconstruction and Analysis for Python, BMC Syst Biol, 7: 74, 2013)を、optlangバージョン1.2.3(Jensen, Optlang: An Algebraic Modeling Language for Mathematical Optimization,” The Journal of Open Source Software, 2, doi:10.21105/joss.00139, 2017)と共に、ソルバーインターフェースとして、Gurobi Optimizerバージョン7.0.2を、最適化ソルバーとして使用して、エチレングリコール生成をシミュレーションした。
モデル化により、実施例1~4で本明細書に記載の経路によって、エチレングリコール0.37mol/mol COの予測収率が明らかになった。これは、糖新生を必要とする、Islam et al. Metab Eng, 41: 173-181, 2017によって記述された仮説経路による予測収率の二倍以上であり、最も高い予測収率は、エチレングリコール約0.44g/g COであり、これはエチレングリコール約0.18mol/mol COに等しいことが見出された。
【0226】
実施例6:エチレングリコール生成及びジオールデヒドラターゼノックアウト
1つは、識別された天然ジオールデヒドラターゼ(ベース)を含有し、1つは、ジオールデヒドラターゼ遺伝子が欠失した(KO)、C.autoethanogenumの2つの異なる遺伝子型のバイオマスレベル(g乾燥細胞重量/L)。各株は、2つのバリアントを有し、1つはpMEG042発現ベクターを担持し、1つはベクターを担持しない(陰性対照)。示される値は、3つの技術的複製の平均から計算される。図7を参照されたい。1つは、識別された天然ジオールデヒドラターゼを含有し(ベース)、1つは、ジオールデヒドラターゼ遺伝子が欠失した(KO)、C.autoethanogenumの2つの異なる遺伝子型において経時的に生成されるエチレングリコール(mg/L)。各株は、2つのバリアントを有し、1つはpMEG042発現ベクターを担持し、1つはベクターを担持しない(陰性対照)。示される値は、3つの技術的複製の平均から計算される。図8Aを参照されたい。1つは、識別された天然ジオールデヒドラターゼを含有し(ベース)、1つは、ジオールデヒドラターゼ遺伝子が欠失した(KO)、C.autoethanogenumの2つの異なる遺伝子型において経時的に生成されるエチレングリコール(mg/L/g乾燥細胞重量)。各株は、2つのバリアントを有し、1つはpMEG042発現ベクターを担持し、1つはベクターを担持しない(陰性対照)。示される値は、3つの技術的複製の平均から計算される。図8Bを参照されたい。
【0227】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、あたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという認識ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0228】
本開示を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、別段の断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」ことを意味する)と解釈されるものとする。「から本質的になる」という用語は、組成物、プロセス、又は方法の範囲を、特定の材料、又は工程、又は組成物、プロセス若しくは方法の基本的及び新規の特性に実質的に影響しないものに限定する。選択肢の使用(例えば、「又は」)は、選択肢の1つ、両方、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、示される範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0229】
本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各個々の値を個々に言及する省略法としての役割を果たすことを単に意図し、各個々の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、又は厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1、及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0230】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実践に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0231】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本開示が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実践されることを意図する。したがって、本開示は、適用法によって許可されたとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正物及び同等物を含む。さらに、その全ての考えられる変化形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、本開示によって包含される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
【配列表】
2024528713000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオールデヒドラターゼをコードする遺伝子に破壊的変異を含む、ガス状基質からエチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成することができる遺伝子操作されたC1固定微生物。
【請求項2】
前記微生物が、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、オキサロ酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、及びグリシンからなる群から選択される1つ以上の中間体を介して、エチレングリコール又はエチレングリコールの前記前駆体を生成する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記微生物が、
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、
c.イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる異種酵素をコードする核酸、及び
d.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる異種酵素をコードする核酸のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる前記異種酵素が、EC番号2.3.3.1を有するクエン酸[Si]-シンターゼ、EC番号2.3.3.8を有するATPクエン酸シンターゼ、又はEC番号2.3.3.3を有するクエン酸(Re)-シンターゼであり、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる前記異種酵素が、EC番号2.6.1.44を有するアラニン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.45を有するセリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.51を有するセリン-ピルビン酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.35を有するグリシン-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、EC番号2.6.1.4を有するグリシントランスアミナーゼ、EC番号1.4.1.10を有するグリシンデヒドロゲナーゼ、EC番号1.4.1.1を有するアラニンデヒドロゲナーゼ、又はEC番号1.4.2.1を有するグリシンデヒドロゲナーゼであり、
c.イソクエン酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる前記異種酵素が、EC番号4.1.3.1を有するイソクエン酸リアーゼであり、又は
d.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる前記異種酵素が、EC番号1.2.1.21を有するグリコールアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.22を有するラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.24を有するコハク酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.26を有する2,5-ジオキソ吉草酸デヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.3/4/5を有するアルデヒドデヒドロゲナーゼ、EC番号1.2.1.8を有するベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ、又はEC番号1.2.7.5を有するアルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼである、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記異種酵素のうちの1つ以上が、Bacillus、Clostridium、Escherichia、Gluconobacter、Hyphomicrobium、Lysinibacillus、Paenibacillus、Pseudomonas、Sedimenticola、Sporosarcina、Strreptomyces、Thermithiobacillus、Thermotoga、Cupriavidus、及びZeaからなる群から選択される属に由来する、請求項3に記載の微生物。
【請求項6】
前記異種酵素のうちの1つ以上が、前記微生物における発現のためにコドン最適化されている、請求項3に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物が、アセチル-CoAをピルビン酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をリンゴ酸塩に変換することができる酵素、ピルビン酸塩をホスホエノールピルビン酸塩に変換することができる酵素、オキサロ酢酸塩をシトリル-CoAに変換することができる酵素、シトリル-CoAをクエン酸塩に変換することができる酵素、クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる酵素、ホスホエノールピルビン酸塩を2-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、2-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホ-D-グリセリン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホ-D-グリセリン酸塩を3-ホスホノオキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、3-ホスホノオキシピルビン酸塩を3-ホスホ-L-セリンに変換することができる酵素、3-ホスホ-L-セリンをセリンに変換することができる酵素、セリンをグリシンに変換することができる酵素、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる酵素、セリンをヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、D-グリセリン酸塩をヒドロキシピルビン酸塩に変換することができる酵素、リンゴ酸塩をグリオキシル酸塩に変換することができる酵素、グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる酵素、ヒドロキシピルビン酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる酵素、及びグリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる酵素のうちの1つ以上をさらに含む、請求項3に記載の微生物。
【請求項8】
前記微生物が、
a.オキサロ酢酸塩をクエン酸塩に変換することができる前記異種酵素、
b.グリシンをグリオキシル酸塩に変換することができる前記異種酵素、及び/又は
c.グリコール酸塩をグリコールアルデヒドに変換することができる前記異種酵素を過剰発現する、請求項3に記載の微生物。
【請求項9】
前記微生物が、
a.ピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる前記酵素、
b.クエン酸塩をアコニット酸塩に変換し、アコニット酸塩をイソクエン酸塩に変換することができる前記酵素、
c.ホスホエノールピルビン酸塩をオキサロ酢酸塩に変換することができる前記酵素、
d.セリンをグリシンに変換することができる前記酵素、
e.5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をグリシンに変換することができる前記酵素、
f.グリオキシル酸塩をグリコール酸塩に変換することができる前記酵素、又は
g.グリコールアルデヒドをエチレングリコールに変換することができる前記酵素を過剰発現する、請求項7に記載の微生物。
【請求項10】
前記微生物が、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、グリセリン酸デヒドロゲナーゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼのうちの1つ以上の酵素に破壊的変異をさらに含む、請求項1に記載の微生物。
【請求項11】
前記微生物が、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Clostridium、Cupriavidus、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、及びThermoanaerobacterからなる群から選択される属のメンバーである、請求項1に記載の微生物。
【請求項12】
前記微生物が、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Cupriavidus necator、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kiuviからなる群から選択される親微生物に由来する、請求項1に記載の微生物。
【請求項13】
前記微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiからなる群から選択される親細菌に由来する、請求項12に記載の微生物。
【請求項14】
前記微生物が、天然または異種のWood-Ljungdahl経路を含む、請求項1に記載の微生物。
【請求項15】
エチレングリコールの前記前駆体がグリオキシル酸塩またはグリコール酸塩である、請求項1に記載の微生物。
【請求項16】
請求項1に記載の微生物を栄養培地中、ガス状基質の存在下で培養することを含み、それによって前記微生物がエチレングリコール又はエチレングリコールの前記前駆体を生成する、エチレングリコール又はエチレングリコールの前駆体を生成する方法。
【請求項17】
前記ガス状基質が、CO、CO、およびHのうちの1つ以上を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エチレングリコールの前記前駆体がグリオキシル酸塩またはグリコール酸塩である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
エチレングリコール又はエチレングリコールの前記前駆体を前記栄養培地から分離することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が、エタノール、2,3-ブタンジオール、及びコハク酸塩のうちの1つ以上をさらに生成する、請求項16に記載の方法。

【国際調査報告】