(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ボルチオキセチンパモ酸塩の凍結乾燥粉末注射剤およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/495 20060101AFI20240723BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240723BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240723BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K31/495
A61P25/24
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505399
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CN2021110851
(87)【国際公開番号】W WO2023010410
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516172134
【氏名又は名称】浙江華海薬業股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAHAI PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Xunqiao, Linhai Taizhou, Zhejiang 317024 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉騰飛
(72)【発明者】
【氏名】方佳磊
(72)【発明者】
【氏名】王亜南
(72)【発明者】
【氏名】倪賚一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD22D
4C076DD23D
4C076DD38D
4C076DD38F
4C076DD38Q
4C076DD41F
4C076DD67D
4C076DD67Q
4C076EE09F
4C076EE16F
4C076EE30F
4C076EE32F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF63
4C076GG08
4C086AA01
4C086BC50
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZA12
(57)【要約】
本発明は、ボルチオキセチンパモ酸塩の凍結乾燥粉末注射剤およびその調製方法を提供する。調製された粉末注射剤製品は、注射針通過性と安定性が良好であり、産業化に非常に適用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルチオキセチンパモ酸塩の粉末注射剤であって、
ボルチオキセチンパモ酸塩および医薬品添加物からなる組成物であることを特徴とする、粉末注射剤。
【請求項2】
前記医薬品添加物は、懸濁化剤を含み、
好ましくは、懸濁化剤は、グリセリン、アラビアガム、寒天、トラガカントガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、グルカン、カーボポールまたはモノステアリン酸アルミニウムから選択され、
さらに好ましくは、懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項3】
前記懸濁化剤は、粉末注射剤の総量に対して、2.3~13.8%(w/w)であり、さらに好ましくは6.9~10.8%(w/w)である、請求項2に記載の粉末注射剤。
【請求項4】
前記医薬品添加物は、凍結乾燥保護剤をさらに含み、
前記凍結乾燥保護剤は、スクロース、トレハロース、ラクトース、キシリトール、グルコースまたはマンニトールから選択され、
好ましくは、前記凍結乾燥保護剤は、マンニトールである、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項5】
前記凍結乾燥保護剤は、粉末注射剤の総量に対して、4.6~35.0%(w/w)であり、さらに好ましくは20.7~32.5%(w/w)である、請求項4に記載の粉末注射剤。
【請求項6】
前記医薬品添加物は、浸透圧調節剤をさらに含み、
前記浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グルコースまたはホウ砂から選択され、
好ましくは、前記浸透圧調節剤は、マンニトールである、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項7】
前記医薬品添加物は、凍結乾燥保護剤および浸透圧調節剤として好ましいマンニトールを含み、
前記マンニトールは、粉末注射剤の総量に対して、20.7~32.5%(w/w)である、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項8】
粉末注射剤の全質量に対して、前記ボルチオキセチンパモ酸塩は、質量百分率で、54.0~72.4%である、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項9】
約235.5~471.0mgのボルチオキセチンパモ酸塩一水和物を含み、
カルボキシメチルセルロースナトリウムの使用量は、6.9~10.8%(w/w)であり、
マンニトールの使用量は、20.7~32.5%(w/w)である、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項10】
前記医薬品添加物は、湿潤剤を含まない、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項11】
前記医薬品添加物は、ポリソルベートを含まない、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項12】
ボルチオキセチンパモ酸塩の粒子径は、1~40μm(D90)、好ましくは1~20μm(D90)、よりさらに好ましくは1~10μm(D90)である、請求項1に記載の粉末注射剤。
【請求項13】
ボルチオキセチンパモ酸塩の粉末注射剤の調製方法であって、
(1)注射用水を加熱し、撹拌条件下で、処方量の添加物を加え、完全に溶解するまで撹拌して濾過し、希釈液を得る、希釈液調製ステップと、
(2)処方量のボルチオキセチンパモ酸塩一水和物の粉末を秤量し、撹拌条件下でステップ(1)の希釈液にゆっくりと投入し、高速剪断して分散させる、一次混合ステップと、
(3)ステップ(2)で得られた一次混合液をホモジナイザーに投入して均一化し、目標粒子径が1~40μm(D90)の懸濁液を得て、前記懸濁液を充填した後に半打栓する、二次混合ステップと、
(4)ステップ(3)で得られた充填後のサンプルを乾燥ボックスに入れ、設定された凍結乾燥パラメータの条件下で凍結乾燥し、密栓する、凍結乾燥ステップと、
を含む調製方法。
【請求項14】
粒子径は、好ましくは1~20μm(D90)であり、よりさらに好ましくは1~10μm(D90)である、請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
ステップ(4)の凍結乾燥ステップは、
(1)充填済みのボルチオキセチンパモ酸塩の懸濁液を-40℃まで凍結するステップと、
(2)約0℃より低い温度、適切な真空度で一次乾燥を行うステップと、
(3)約0℃より高い温度で二次乾燥を行うステップと、
を含む、請求項13に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬研究開発分野に関し、具体的にはボルチオキセチンパモ酸塩の懸濁液の製造方法、およびボルチオキセチンパモ酸塩の凍結乾燥粉末注射剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルチオキセチン(vortioxetine、化学名:1-[2-(2,4-ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジン)は、武田薬品工業株式会社とルンドベック社によって共同開発されている抗うつ薬であり、その構造式は以下のとおりである。
【化1】
【0003】
ボルチオキセチンは、例えば体重増加、眠気および薬物鎮静などの有害反応などの一般的な抗うつ薬に存在する欠点のいくつかを効果的に克服することができ、かつ、複数の作用標的、低い有害反応率、低い再発率、および継続的治療中の良好な忍容性と安全性などの利点を有する。現在、ボルチオキセチン臭化水素酸塩錠は、市販されているが、体内で薬効の持続期間が短く、毎日1回服用する必要がある。
【0004】
WO2017167180A1は、初めてボルチオキセチンとパモ酸を一定の割合で塩に調製し、ボルチオキセチンの体内での滞留時間を延長させ、ボルチオキセチンの体内での徐放を実現する。ボルチオキセチンパモ酸塩を安定した長時間作用型製剤に製造すると、二週間ごと、または四週間ごとに患者に薬物を一回投与することを実現でき、これは患者にとって、大幅に薬物の使用効率を高め、薬物の治療効果を向上させ、患者のコンプライアンスを向上させ、有害反応の発生を減少させることができる。
【0005】
WO2017167180A1は、ボルチオキセチンパモ酸塩を懸濁液の形態で投与することに言及しており、ここで、薬学的に許容可能な担体は、好ましくは、注射可能な粘性担体であり、例えばその粘度は20℃で少なくとも20cpである。高粘度は臨床使用前の調製がより困難であり、且つシリンジの抽出力がより強力になるため、操作者への要求が高いことを意味する。なお、調製時にボルテックス(例えば2 minボルテックス)する必要があり、ボルテックスマシンなどの外部装置を利用する必要があり、調製難度および調製時間を増加させる。懸濁液の調製方式については、最終的に均一に混合された懸濁液を調製することができても、操作過程が複雑であり、時間と手間がかかり、且つAPI(Active pharmaceutical ingredient)が微細な凝集体になって分散しにくいというリスクを有する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、ボルチオキセチンパモ酸塩の粉末注射剤およびその調製方法を提供することである。本発明の目的は、以下の技術的解決策によって実現される。
【0007】
本発明は、まずボルチオキセチンパモ酸塩と医薬品添加物(pharmaceutical excipients)からなる粉末注射剤組成物を提供する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物の総質量に対して、前記ボルチオキセチンパモ酸塩は、質量百分率で、54.0~72.4%である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬品添加物は、懸濁化剤を含み、前記懸濁化剤は、低分子量懸濁化剤および高分子量懸濁化剤から選択され、前記懸濁化剤は、グリセリン、アラビアガム、寒天、トラガカントガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、グルカン、カーボポール、モノステアリン酸アルミニウムなどを含む。懸濁化剤は、粉末注射剤の総量に対し、2.3~13.8%(w/w)であり、好ましくは、懸濁化剤は粉末注射剤の総量に対し6.9~10.8%(w/w)である。懸濁化剤は、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウムであり、より好ましくは50~200cp(4%,w/v)の粘度を有するカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬品添加物はさらに凍結乾燥保護剤を含み、前記凍結乾燥保護剤は、糖類、多価アルコールから選択され、例えば、スクロース、トレハロース、ラクトース、キシリトール、グルコースまたはマンニトールから選択される。好ましくは、凍結乾燥保護剤は、粉末注射剤の総量に対し4.6~35.0%(w/w)である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬品添加物はさらに浸透圧調節剤を含み、前記浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グルコースまたはホウ砂などから選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明において、マンニトールは浸透圧調節剤および凍結乾燥保護剤であることが好ましく、注射用グレードのマンニトールを使用することがさらに好ましい。マンニトールの使用量は20.7~32.5%(w/w)である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、前記医薬品添加物は、例えばポリソルベート(Tweenとも呼ばれる)、ポロキサマーなどの湿潤剤(wetting agent)を添加しないことが好ましい。湿潤剤は処方において分散機能を果たし、懸濁液の混合均一性を促進することができるが、本発明者らは、意外にも、ポリソルベートなどの湿潤剤を本発明の処方に添加すると、調製された懸濁液の沈降が速くなることを発見した。
【0014】
本発明の好ましい処方組成は、ボルチオキセチンパモ酸塩一水和物、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マンニトール、注射用水である。
【0015】
本発明の好ましい製剤仕様は、140mg~280mgであり、約235.5mg~471.0mgのボルチオキセチンパモ酸塩一水和物に相当し、ここで、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウムの使用量は6.9~10.8%(w/w)であり、マンニトールの使用量は20.7~32.5%(w/w)である。
【0016】
本発明は、ボルチオキセチンパモ酸塩粉末注射剤であることが好ましく、その成分および含有量は、以下のとおりである。
【0017】
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、ボルチオキセチンパモ酸塩の粒子径が1~40μm(D90)である。好ましい粒子径は1~20μm(D90)である。よりさらに好ましい粒子径は1~10μm(D90)である。
【0019】
D90は、レーザー粒度計を用いて測定した試料の累積粒度分布の累積90%に対応する粒子径である。
【0020】
本発明はさらに、
(1)注射用水を加熱し、撹拌条件下で、処方量の添加物を加え、完全に溶解するまで撹拌して濾過し、希釈液を得る、希釈液調製ステップと、
(2)処方量のボルチオキセチンパモ酸塩一水和物粉末を秤量し、撹拌条件下でステップ(1)の希釈液にゆっくりと投入し、高速剪断して分散させる、一次混合ステップと、
(3)ステップ(2)で得られた一次混合液をホモジナイザーに投入して均一化し、目標粒子径が1~40μm(D90)の懸濁液を得て、前記懸濁液を充填した後に半打栓する、二次混合ステップと、
(4)ステップ(3)で得られた充填後のサンプルを乾燥ボックスに入れ、設定された凍結乾燥パラメータの条件下で凍結乾燥し、密栓する、凍結乾燥ステップと、
を含む、ボルチオキセチンパモ酸塩粉末注射剤の調製方法を提供する。
【0021】
ステップ(3)における目標粒子径は、1~20μm(D90)であることが好ましく、1~10μm(D90)であることがより好ましい。
【0022】
粒子径は、製品の性状、注射針通過性および生物学的利用能に大きな影響を与え、粒子径分布が広い場合や混合の均一性が悪い場合、凝集および沈降が発生し、針詰まりの問題を引き起こす。本発明の調製過程において、リファイナー(refiner)とホモジナイザーを用いて粒子径の大きさを目標粒子径の範囲に調整する。
【0023】
当該ステップは、ボルチオキセチンパモ酸塩の凍結乾燥製剤を製造する方法を提供し、当該方法は、
(1)充填済みのボルチオキセチンパモ酸塩の懸濁液を-40℃まで凍結するステップと、
(2)約0℃より低い温度、適切な真空度で一次乾燥を行うステップと、
(3)約0℃より高い温度で二次乾燥を行うステップと、
を含む。
【0024】
本発明のイノベーションは、主に以下のとおりである。
【0025】
1、製品の剤形および処方を最適化することにより、製品の凝集効果を低下させ、懸濁液を静置する時に顕著な沈降挙動が発生しないことを保証する。
【0026】
2、探索と研究により、均一化および高圧均質化のプロセスを決定し、粒子径が適切で且つ均一に懸濁した懸濁液を得る。
【0027】
3、重要な凍結乾燥パラメータに基づき、それぞれ予備凍結、一次乾燥および二次乾燥のプロセスを最適化し、最終的に外観や水分などの物理的および化学的性質が合格である粉末注射剤の調製に成功する。
【0028】
本発明が調製した粉末注射剤の粒子は、均一に分散し、外観が正常であり、バイアルを割って固形物を縦に切ると、内装構造が均一であり、へタリ現象がない。注射用水を加えた後に迅速に再溶解することができ(30s未満で軽く振って、均一に混合された懸濁液を得ることができる)、再溶解後の薬液は19~22Gの大きさの針を通過することができ、良好な注射針通過性を有する。当該剤形の開発は、産業化の実現可能性を向上させるだけでなく、薬物の輸送と貯蔵中の困難を軽減し、臨床精神疾患患者にとってより効果的で便利な治療手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施例および従来技術の技術的解決策をより明確に説明するために、以下では実施例および従来技術において使用する必要がある図面を簡単に紹介する。以下の図面は、本発明の若干の実施例に過ぎず、当業者にとって、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができることは明らかである。
【
図1】
図1は、サンプルの安定性への影響の研究を示す図である。
【
図2】
図2は、粒子径のサンプル安定性への影響の研究を示す図である。
【0030】
縦座標TSIは、安定性指数であり、TSIは分散系全体の安定性を評価するものであり、その数値が大きいほど、安定性が低い。
【発明を実施するための形態】
【0031】
当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるように、以下では実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨および範囲から逸脱しない任意の変更、修正および同等置換は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【実施例1】
【0032】
【0033】
備考:マンニトールは注射用グレードである。粘度が50~200cp(4%,w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウムであることが好ましい。
プロセス・ステップ:
【0034】
(1)80%の注射用水を取り、50℃の条件下で水浴に浸漬して、360rpmの回転速度で順にマンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80を加え、完全に溶解するまで撹拌し、室温まで冷却した後に秤量し、0.22μmの微孔濾過膜で濾過し、希釈液を得た。
【0035】
(2)リファイナーを使用し、回転速度を14000rpmに設定し、高速せん断下で希釈液に原薬をゆっくりと投入し、サンプルの投入が終了した後に10分間混合し、中間体溶液を得た。
【0036】
(3)高圧ホモジナイザーを使用し、排液流量を設定し、中間体溶液を投入し、100barまで徐々に加圧するサイクルを3回、さらに500barまで徐々に加圧するサイクルを2回行い、粒子径10μm(D90)の懸濁液を得た。充填し、半打栓した。
【0037】
(4)凍結乾燥:サンプルを乾燥ボックスに入れて凍結乾燥を行い、密栓し、乾燥ボックスから取り出し、キャッピングして、ボルチオキセチン粉末注射剤を得た。
【実施例2】
【0038】
【0039】
備考:マンニトールは注射用グレードである。粘度が50~200cp(4%,w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウムであることが好ましい。
プロセス・ステップ:
【0040】
(1)80%の注射用水を取り、50℃の条件下で水浴に浸漬して、360rpmの回転速度で順にマンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に溶解するまで撹拌し、室温まで冷却した後に秤量し、0.22μmの微孔濾過膜で濾過し、希釈液を得た。
【0041】
(2)リファイナーを使用し、回転速度を14000rpmに設定し、高速せん断下で希釈液に原薬をゆっくりと投入し、サンプルの投入が終了した後に10分間混合し、中間体溶液を得た。
【0042】
(3)高圧ホモジナイザーを使用し、排液流量を設定し、中間体溶液を投入し、100barまで徐々に加圧するサイクルを3回、さらに500barまで徐々に加圧するサイクルを2回行い、粒子径10μm(D90)の懸濁液を得た。充填し、半打栓した。
【0043】
(4)凍結乾燥:サンプルを乾燥ボックスに入れて凍結乾燥を行い、密栓し、乾燥ボックスから取り出し、キャッピングして、ボルチオキセチン粉末注射剤を得た。
【実施例3】
【0044】
【0045】
備考:マンニトールは注射用グレードである。粘度が50~200cp(4%,w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウムであることが好ましい。
プロセス・ステップ:
【0046】
(1)80%の注射用水を取り、50℃の条件下で水浴に浸漬して、360rpmの回転速度で順にマンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に溶解するまで撹拌し、室温まで冷却した後に秤量し、0.22μmの微孔濾過膜で濾過し、希釈液を得た。
【0047】
(2)リファイナーを使用し、回転速度を14000rpmに設定し、高速せん断下で希釈液に原薬をゆっくりと投入し、サンプルの投入が終了した後に10分間混合し、中間体溶液を得た。
【0048】
(3)高圧ホモジナイザーを使用し、排液流量を設定し、中間体溶液を投入し、100barまで徐々に加圧するサイクルを3回、さらに500barまで徐々に加圧するサイクルを2回行い、粒子径10μm(D90)の懸濁液を得た。充填し、半打栓した。
【0049】
(4)凍結乾燥:サンプルを乾燥ボックスに入れて凍結乾燥を行い、密栓し、乾燥ボックスから取り出し、キャッピングして、ボルチオキセチン粉末注射剤を得た。
【実施例4】
【0050】
サンプルの安定性への影響の研究
実施例1で得られた製品(ポリソルベート80を含み、TW80と略称する)および実施例2で得られた製品(TW80を含まない)について、安定性分析装置(型番:TURBISCAN Lab)を用いて時間と沈降との関係を分析した。その結果を
図1に示した。
【0051】
実験結果は、ポリソルベート80を含まない系では、原薬粒子の沈降速度が遅いことを示した。ポリソルベート80の導入に伴い、原薬粒子の沈降速度が速くなり、層化現象が顕著であった。これは、2種の異なる系の懸濁液の性質は比較的大きい差異を有し、かつポリソルベート80を添加しない薬液はポリソルベート80を添加する薬液より優れることを示した。
【実施例5】
【0052】
粒子径のサンプルの安定性への影響の研究
実施例2を参照し、ステップ(3)の高圧ホモジナイザーの動作圧力を変更し、異なる粒子径のサンプルを取得した。安定性分析装置によって時間と沈降との関係を分析し、結果は
図2に示すとおりであった。
【0053】
図2において、低圧力:動作圧力は100barであり、3回サイクル処理し、懸濁液の粒子径は35μm(D90)である。中圧力:動作初期圧力は100barであり、3回サイクル処理し、300barに加圧し、2回サイクル処理し、懸濁液の粒子径は20μm(D90)である。高圧力:動作初期圧力100barであり、3回サイクル処理し、500barに加圧し、2回サイクル処理し、懸濁液の粒子径は10μm(D90)である。
【0054】
実験結果は、高圧ホモジナイザーの動作圧力が高いほど、得られる原薬粒子の粒子径が小さくなり、沈降速度が遅くなり、安定性が向上することを示した。
[測定実施例]
【0055】
粒度分布は、レーザー粒度計によって測定された。例えば、光散乱またはレーザー回折技術によって粒度分布を測定した。粒子径は、例えば、粉末を分散ユニットを介してレーザー回折分光計に装填した。測定方法を以下に詳細に説明する。
装置:Mastersizerレーザー粒度計
製品屈折率:1.59
吸収係数:0.1
分散媒屈折率:1.33
分析モード:汎用型
測定時間:10s
遮光率:10~20%
【0056】
装置を上記のパラメータに従って設定した。1本のサンプルを取り、1~3mlの水で再溶解して懸濁液を調製した。次に精製水を加えて元の溶液体積の10~50倍に希釈した。適量の処理されたサンプルをサンプル注入プールに加えた。サンプルを加える時に均一に撹拌し且つ撹拌しながらサンプルを加えた。1 minサイクルして安定した後、3回サイクル測定し、平均値を取得した。
【0057】
以上は、本発明のより優れた実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の主旨と原則の範囲内で行われるすべての変更、同等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】