IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上海博志研新薬物技術有限公司の特許一覧

特表2024-528736パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用
<>
  • 特表-パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20240723BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240723BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/44
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/28
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/22
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505618
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 CN2022108602
(87)【国際公開番号】W WO2023006029
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110871277.1
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SOLUPLUS
(71)【出願人】
【識別番号】521504049
【氏名又は名称】上海雲晟研新生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】郭▲ゼェン▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲シュアン▼
(72)【発明者】
【氏名】盧鵬程
(72)【発明者】
【氏名】付俊
(72)【発明者】
【氏名】王▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】応述歓
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD61
4C076DD67
4C076DD70
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE41
4C076EE53
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA11
4C086ZB26
(57)【要約】
パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用を提供する。式Iに示される5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド及びその塩である活性薬物、ポリマー担体、有機溶剤及び/又は水を含む、パゾパニブ経口医薬組成物を提供する。パゾパニブは溶液形態で分散され、パゾパニブの溶解度及び溶出速度を顕著に改善し、薬物の生物学的利用能を顕著に向上させると同時に、患者のコンプライアンスを向上させ、高齢患者における嚥下困難などの問題を解決することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示される5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド又はその塩である活性薬物、ポリマー担体、有機溶剤及び/又は水を含む、
ことを特徴とするパゾパニブ経口医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記パゾパニブ経口医薬組成物のpHは3.0~4.5であり、
好ましくは、前記ポリマー担体は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポロキサマー、ポリエチレングリコールビタミンEスクシナート、15-ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン40水添ヒマシ油、ポリオキシル35水添ヒマシ油、ポビドン、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、Tween80、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレングリコールのうちの1種又は複数種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項3】
前記活性薬物は、5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド塩酸塩であり、
及び/又は、
前記活性薬物と前記ポリマー担体との重量比は1:10~10:1であり、
及び/又は、
前記活性薬物の濃度は5~20 mg/mLである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤は、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコール-300、ポリエチレングリコール-400及びポリエチレングリコール-600のうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、
前記有機溶剤と前記パゾパニブ医薬組成物との体積比の値は0.3~0.9であり、前記体積比の値は有機溶剤の体積とパゾパニブ医薬組成物の総体積との比の値を指す、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項5】
前記パゾパニブ経口医薬組成物は、甘味料を更に含み、
好ましくは、前記甘味料は、アスパルテーム、スクラロース、フルクトース、スクロース、ステビオシド、グリチルリチン、エッセンス、香料、サッカリン、及びサッカリンナトリウムのうちの1種又は複数種を含み、
好ましくは、前記甘味料と前記活性薬物との質量比は1:5~5:1である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項6】
前記パゾパニブ経口医薬組成物は、
配合1:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、5 mg/mLのPVP、10%v/vのエタノール、20%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び70%v/vの水であり、
配合2:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、10 mg/mLのSoluplus、10 mg/mLのTPGS、20%v/vのエタノール、5%v/vのプロピレングリコール、25%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び50%v/vの水であり、
配合3:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、10 mg/mLのTPGS、2.5 mg/mLのHPMC、15%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、30%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び40%v/vの水であり、
配合4:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、5 mg/mLのPVP、10%v/vのエタノール、60%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び30%v/vの水であり、
配合5:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、1 mg/mLのSoluplus、20%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、40%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び25%v/vの水であり、
配合6:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、5 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、50%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び25%v/vの水であり、
配合7:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、20%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び15%v/vの水であり、
配合8:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、40 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、60%v/vのグリセリン、及び15%v/vの水であり、
配合9:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、50 mg/mLのSoluplus、30%v/vのエタノール、10%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、及び10%v/vの水であり、
配合10:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、100 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、及び10%v/vの水である、
という配合の何れか1つから選ばれる、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項7】
(1)ポリマー担体及び甘味料を水と共に溶液Aを形成するステップと、
(2)有機溶剤をステップ(1)で得られた溶液Aと混合し、溶液Bを得るステップと、
(3)活性薬物をステップ(2)で得られた溶液Bと混合し、撹拌し、ろ過し、パゾパニブ医薬組成物を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のパゾパニブ経口医薬組成物の製造方法。
【請求項8】
腫瘍を治療及び/又は予防する薬物又は医薬製剤の製造における、請求項1~6の何れか1項に記載のパゾパニブ経口医薬組成物の応用であり、
好ましくは、前記腫瘍は腎臓癌又は軟部組織肉腫である、応用。
【請求項9】
請求項1~6の何れか1項に記載のパゾパニブ経口医薬組成物を含む、
ことを特徴とする医薬製剤。
【請求項10】
前記医薬製剤は経口液である、
ことを特徴とする請求項9に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2021年7月30日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202110871277.1であり、発明名称が「パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用」である先行出願の優先権を主張する。上記先行出願は全体として援用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
腎細胞癌は、腎臓癌と略称され、泌尿器系において最も一般的な腫瘍の1つであり、発症率は成人悪性腫瘍の2%を占める。中国では、腎細胞癌の発症率は、膀胱癌に次いで泌尿器系腫瘍の第2位にある。診断技術の継続的な進歩につれ、腎臓癌患者はより早い段階で治療され、腎臓癌の全体における5年生存率は74%に達したが、晩期転移のある患者では僅か12%である。
【0004】
VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor、血管内皮細胞増殖因子)は、腫瘍血管新生プロセスにおける血管新生因子であり、内皮細胞分化のホルモン調節剤であり、固形腫瘍の発展はVEGFの発現と密接に相関しており、VEGFは腫瘍新生血管の形成におけるキー属性血管増殖促進因子として、新生血管内皮細胞の表面で特異的に高発現するVEGF受容体チロシンキナーゼと結合し、チロシンキナーゼを活性化させることにより生物学的機能を発揮する。従って、VEGF受容体チロシンキナーゼを標的とする腫瘍血管標的化治療(VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の使用を指す)は、近年の腫瘍治療の新たな方法となっている。
【0005】
パゾパニブ(5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド、ヴォトリエントとも呼ばれる)は、グラクソ・スミスクライン社により開発された、頑固な腫瘍の生存及び増殖に必要な血管の新生を阻害できる新規な経口血管新生阻害剤であり、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的とし、腫瘍に供血する血管の新生を阻害することにより機能する。これは複数種の腫瘍を治療することができる薬物であり、軟部組織肉腫及び腎細胞癌患者に関与する大規模な臨床試験で積極的な結果を示している。
【0006】
パゾパニブはBCSクラスIIの薬物であり、難溶性・高浸透圧性薬物に属する。溶解度が低いことでその生物学的利用能が制限され、パゾパニブを快速に溶出させ、生物学的利用能を向上させ、副作用を低減するために、即放性を有する医薬組成物を研究することは重要な社会的及び経済的価値を有する。
【0007】
現在、製造プロセスが簡単で、生産の拡大が容易で、且つ用量の調整がより簡便で、患者のコンプライアンスが良いパゾパニブ製剤の開発が続いている。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、式Iに示される5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド又はその塩である活性薬物、ポリマー担体、有機溶剤及び/又は水を含む、パゾパニブ経口医薬組成物を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
本発明の実施形態によれば、上記パゾパニブ経口医薬組成物は、式Iに示される5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド又はその塩である活性薬物、ポリマー担体、有機溶剤及び水を含み、上記パゾパニブ経口医薬組成物のpHは3.0~4.5である。
【0011】
【化2】
【0012】
本発明の実施形態によれば、上記ポリマー担体は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Soluplus)、ポロキサマー、ポリエチレングリコールビタミンEスクシナート(TPGS)、15-ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン40水添ヒマシ油、ポリオキシル35水添ヒマシ油、ポビドン、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、Tween80、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は複数種であり、例として、上記ポリマー担体は、SoluplusとPVPの組み合わせ、SoluplusとTPGSの組み合わせ、TPGSとHPMCの組み合わせ、又はSoluplusから選ばれる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記活性薬物と上記ポリマー担体との重量比は1:10~10:1、例えば3:10、3:8、3:5、2:5、10:1、2:1、1:2、5:16、1:4又は1:8である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記活性薬物は、好ましくは5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド塩酸塩(塩酸パゾパニブ)である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、上記活性薬物の濃度は5~20 mg/mL、例えば6~15 mg/mL、例示的な濃度としては7 mg/mL、7.5 mg/mL、8 mg/mL、9 mg/mL、10 mg/mL、11 mg/mL、12 mg/mL、12.5 mg/mL、13 mg/mL、14 mg/mLである。
【0016】
本発明の実施形態によれば、上記有機溶剤は、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール-300、ポリエチレングリコール-400及びポリエチレングリコール-600から選ばれる1種又は複数種であり、例として、上記有機溶剤は、エタノールとグリセリンの組み合わせ、又はエタノール、プロピレングリコールとグリセリンの組み合わせから選ばれる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、上記有機溶剤と上記パゾパニブ医薬組成物との体積比の値は0.3~0.9であり、上記体積比の値は有機溶剤の体積とパゾパニブ医薬組成物の総体積との比の値を指し、例として、上記体積比の値は0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、上記水と上記パゾパニブ医薬組成物との体積比の値は0.1~0.7であり、上記体積比の値は水の体積とパゾパニブ医薬組成物の総体積との比の値を指し、例として、上記体積比の値は0.1、0.15、0.2、0.25、0.3である。
【0019】
本発明の実施形態によれば、上記パゾパニブ経口医薬組成物は、甘味料を更に含んでもよい。
【0020】
本発明の実施形態によれば、上記甘味料は、アスパルテーム、スクラロース、フルクトース、スクロース、ステビオシド、グリチルリチン、エッセンス、香料、サッカリン、及びサッカリンナトリウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0021】
本発明の実施形態によれば、上記甘味料と上記活性薬物との質量比は1:5~5:1、例えば1:3、1:4又は2:1である。
【0022】
本発明の例示的な実施形態によれば、上記パゾパニブ経口医薬組成物は、
配合1:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、5 mg/mLのPVP、10%v/vのエタノール、20%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び70%v/vの水であり、
配合2:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、10 mg/mLのSoluplus、10 mg/mLのTPGS、20%v/vのエタノール、5%v/vのプロピレングリコール、25%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び50%v/vの水であり、
配合3:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、10 mg/mLのTPGS、2.5 mg/mLのHPMC、15%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、30%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び40%v/vの水であり、
配合4:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、5 mg/mLのPVP、10%v/vのエタノール、60%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び30%v/vの水であり、
配合5:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、1 mg/mLのSoluplus、20%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、40%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び25%v/vの水であり、
配合6:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、5 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、50%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び25%v/vの水であり、
配合7:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、20%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び15%v/vの水であり、
配合8:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、40 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、60%v/vのグリセリン、及び15%v/vの水であり、
配合9:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、50 mg/mLのSoluplus、30%v/vのエタノール、10%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、及び10%v/vの水であり、
配合10:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、100 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、及び10%v/vの水である、
という配合の何れか1つであってもよい。
【0023】
本発明は、
(1)ポリマー担体及び甘味料を水と共に溶液Aを形成するステップと、
(2)有機溶剤をステップ(1)で得られた溶液Aと混合し、溶液Bを得るステップと、
(3)活性薬物をステップ(2)で得られた溶液Bと混合し、撹拌し、ろ過し、パゾパニブ医薬組成物を得るステップと、を含む、上記パゾパニブ医薬組成物の製造方法を更に提供する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ステップ3において、上記ろ過はろ過膜によるろ過であり、上記ろ過膜の孔径は0.01 μm~1.0 μmであってもよく、例えば0.45 μmである。
【0025】
本発明は、腫瘍を治療及び/又は予防する薬物の製造における、上記パゾパニブ経口医薬組成物の応用を更に提供する。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上記腫瘍は腎臓癌又は軟部組織肉腫であってもよい。
【0027】
本発明は、医薬製剤の製造における、上記パゾパニブ経口医薬組成物の応用を更に提供する。
【0028】
本発明は、上記パゾパニブ経口医薬組成物を含む医薬製剤を更に提供する。
例として、上記医薬製剤は経口液であってもよい。
【0029】
本発明は、治療有効量のパゾパニブ経口医薬組成物又は医薬製剤を、それを必要とする人衆に投与することにより、腫瘍を治療及び/又は予防する方法を更に提供する。
【0030】
本発明の有益な効果:
本発明は、従来技術におけるパゾパニブの溶解度が低く、生物学的利用能が低く、副作用が比較的大きく、患者のコンプライアンスが悪いなどの欠陥を克服するために、パゾパニブ経口医薬組成物、その製造方法及び応用を提供する。本発明の組成物又は製剤において、パゾパニブは溶液形態で分散され、パゾパニブの溶解度及び溶出速度を顕著に改善し、薬物の生物学的利用能を顕著に向上させることができ、溶解度が高く、溶出速度が速く、生物学的利用能が高いという利点を有すると同時に、患者のコンプライアンスを向上させ、高齢患者における嚥下困難などの問題を解決することができる。
【0031】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕実施例7の被験及び対照製剤をビーグル犬に経口投与した後のパゾパニブの平均薬物時間曲線図(N=3)である。
【0032】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0033】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0034】
実施例1~10
各実施例の配合は表1-1、1-2に示される通りである。
【0035】
【表1】
【0036】
製造プロセス:上記配合に従い、
1.ポリマー担体及び甘味料を適量の水に溶解し、均一に撹拌し、清澄透明な溶液Aを得、
2.有機溶液をステップ1で得られた溶液Aに加え、撹拌し続け、清澄透明な溶液Bを得、
3.活性薬物をステップ2で得られた溶液Bに加え、撹拌し続け、0.45 μmのろ過膜によりろ過し、パゾパニブ医薬組成物を得た。
【0037】
安定性の考察
上記10個の実施例で挙げられた医薬製剤の配合に従い、その溶液のpH値が何れも3.0~4.5の間に調整されたパゾパニブ経口溶液を製造し、褐色の瓶を用いて包装した。
考察項目:色相、清澄度、外観性状、含有量、分解生成物であり、結果は表2に示されている。
【0038】
【表2】
【0039】
本発明は、実施例7に従ってパゾパニブ経口溶液を製造し、そして影響因子高温(60℃)試験、高湿(90%RH±5%RH)試験、光照射(総照度:1.2×10^6 Lux・hr、総紫外線放射照度200 W・hr/m2)試験及び加速試験(40℃/75%RH)を行い、結果は下記表3に示されている。
【0040】
【表3】
【0041】
安定性の結果は、実施例7の安定性が良好であることを示した。
【0042】
動物PK試験
実施例7に従ってパゾパニブ経口溶液を製造して被験製剤とし、市販のパゾパニブ錠剤(VOTRIENT、200 mg/錠)を対照製剤とした。50 mg/匹/日及び100 mg/匹/日の用量でパゾパニブ経口溶液をBeagle犬にそれぞれ経口投与し、200 mg/匹/日の用量でVOTRIENTをBeagle犬に経口投与し、Beagle犬の体内における対照製剤及び異なる用量の被験製剤の薬物動態特性を考察し、薬物動態結果を表4、PK曲線は図1に示されている。
【0043】
試験の結果は、実施例7が対照用量より2倍及び4倍低い前提においても、APIの暴露量を顕著に向上させることができ、経口生物学的利用能が明らかに向上していることを示した。
【0044】
【表4】
【0045】
以上は、本発明のパゾパニブ経口溶液は安定性が良好であり、製剤の食感を改善することができ、対照製剤と比較して生物学的利用能が顕著に向上していることを示した。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則の範囲内でなされた何れの修正、同等置換、改良なども、本発明の請求範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】実施例7の被験及び対照製剤をビーグル犬に経口投与した後のパゾパニブの平均薬物時間曲線図(N=3)である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示される5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド又はその塩である活性薬物、ポリマー担体、有機溶剤及び/又は水を含む、
ことを特徴とするパゾパニブ経口医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
前記パゾパニブ経口医薬組成物のpHは3.0~4.5であり、
好ましくは、前記ポリマー担体は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポロキサマー、ポリエチレングリコールビタミンEスクシナート、15-ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレン40水添ヒマシ油、ポリオキシル35水添ヒマシ油、ポビドン、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、Tween80、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレングリコールのうちの1種又は複数種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項3】
前記活性薬物は、5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド塩酸塩であり、
及び/又は、
前記活性薬物と前記ポリマー担体との重量比は1:10~10:1であり、
及び/又は、
前記活性薬物の濃度は5~20 mg/mLである、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤は、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコール-300、ポリエチレングリコール-400及びポリエチレングリコール-600のうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、
前記有機溶剤と前記パゾパニブ医薬組成物との体積比の値は0.3~0.9であり、前記体積比の値は有機溶剤の体積とパゾパニブ医薬組成物の総体積との比の値を指す、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項5】
前記パゾパニブ経口医薬組成物は、甘味料を更に含み、
好ましくは、前記甘味料は、アスパルテーム、スクラロース、フルクトース、スクロース、ステビオシド、グリチルリチン、エッセンス、香料、サッカリン、及びサッカリンナトリウムのうちの1種又は複数種を含み、
好ましくは、前記甘味料と前記活性薬物との質量比は1:5~5:1である、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項6】
前記パゾパニブ経口医薬組成物は、
配合1:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、5 mg/mLのPVP、10%v/vのエタノール、20%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び70%v/vの水であり、
配合2:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、10 mg/mLのSoluplus、10 mg/mLのTPGS、20%v/vのエタノール、5%v/vのプロピレングリコール、25%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び50%v/vの水であり、
配合3:7.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、10 mg/mLのTPGS、2.5 mg/mLのHPMC、15%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、30%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び40%v/vの水であり、
配合4:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、5 mg/mLのPVP、10%v/vのエタノール、60%v/vのグリセリン、2.5 mg/mLのエッセンス、及び30%v/vの水であり、
配合5:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、1 mg/mLのSoluplus、20%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、40%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び25%v/vの水であり、
配合6:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、5 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、50%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び25%v/vの水であり、
配合7:10 mg/mLの塩酸パゾパニブ、20 mg/mLのSoluplus、20%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、5 mg/mLのステビオシド、及び15%v/vの水であり、
配合8:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、40 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、60%v/vのグリセリン、及び15%v/vの水であり、
配合9:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、50 mg/mLのSoluplus、30%v/vのエタノール、10%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、及び10%v/vの水であり、
配合10:12.5 mg/mLの塩酸パゾパニブ、100 mg/mLのSoluplus、25%v/vのエタノール、15%v/vのプロピレングリコール、50%v/vのグリセリン、及び10%v/vの水である、
という配合の何れか1つから選ばれる、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物。
【請求項7】
(1)ポリマー担体及び甘味料を水と共に溶液Aを形成するステップと、
(2)有機溶剤をステップ(1)で得られた溶液Aと混合し、溶液Bを得るステップと、
(3)活性薬物をステップ(2)で得られた溶液Bと混合し、撹拌し、ろ過し、パゾパニブ医薬組成物を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物の製造方法。
【請求項8】
腫瘍を治療及び/又は予防する薬物又は医薬製剤の製造における、請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物の応用であり、
好ましくは、前記腫瘍は腎臓癌又は軟部組織肉腫である、応用。
【請求項9】
請求項1に記載のパゾパニブ経口医薬組成物を含む、
ことを特徴とする医薬製剤。
【請求項10】
前記医薬製剤は経口液である、
ことを特徴とする請求項9に記載の医薬製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
【化1】

【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
【化2】



【国際調査報告】