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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エネルギー生産システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240723BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240723BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20240723BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20240723BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20240723BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240723BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20240723BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240723BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240723BHJP
   C01C 1/04 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240723BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B15/02
H01M8/0656
H01M8/04007
H01M8/04537
H01M8/04694
H01M8/00 Z
H01M8/0606
C01C1/04 D
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522717
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022067762
(87)【国際公開番号】W WO2023275069
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182145.9
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524001101
【氏名又は名称】フォトンサイクル アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】PHOTONCYCLE AS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブランツェグ、ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォレスタッド、エイナル
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC11
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB11
5H127AB23
5H127AB27
5H127AB28
5H127AB29
5H127AC07
5H127BA01
5H127BA15
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB66
5H127DC50
(57)【要約】
本発明は、電力の貯蔵のためにアンモニアを利用するとともに、電力および熱の生成のためにアンモニアまたはHを利用する、単身世帯による使用または小規模の商業用建物における使用に適した、分散型で小型のエネルギー生産システムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の貯蔵および生産のためにアンモニアを利用するエネルギー生産システム(1)であって、前記システムは、
前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに電気分解モードで電力によって水素を生成するとともに、前記生産システムが電力生産モードで動作するときに燃料電池モードでアンモニアから電力を生産するように適合された可逆電気化学セルシステム(2)と、
少なくとも96%の純度のNを得るように適合された空気分離器(3)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときにアンモニア合成反応器(6)にNを提供するように配置された空気分離器(3)と、
触媒を含むアンモニア合成反応器(6)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに、前記可逆電気化学セルシステム(2)からHを受け取るとともに、前記空気分離器(3)からNを受け取るように配置されたアンモニア合成反応器(6)と、
およびHからアンモニアを分離する固体吸収材料を含むアンモニア分離反応器(7)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに、前記アンモニア合成反応器(6)からアンモニアならびに未反応のNおよびHを受け取るとともに、アンモニア貯蔵ユニット(8)にアンモニアを提供するように適合されたアンモニア分離反応器(7)と、
アンモニアを貯蔵するように適合された金属ハロゲン化物を含むアンモニア貯蔵ユニット(8)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに前記アンモニア合成反応器(6)および/または前記アンモニア分離反応器(7)からアンモニアを受け取るように配置されるとともに、前記エネルギー生産システム(1)が電力生産モードで動作するときに前記可逆電気化学セルシステム(2)にアンモニアを提供するように配置された、アンモニア貯蔵ユニット(8)と、
前記エネルギー生産システム(1)において生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器(16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g)を備える熱伝達システムと、を備えるエネルギー生産システム。
【請求項2】
電力の貯蔵のためにアンモニアを利用するとともに、電力の生産のために水素を利用するエネルギー生産システム(1)であって、前記システムは、
前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに電気分解モードで電力によって水素を生成するとともに、前記生産システムが電力生産モードで動作するときに燃料電池モードで水素から電力を生産するように適合された可逆電気化学セルシステム(2)と、
少なくとも96%の純度のNを得るように適合された空気分離器(3)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときにアンモニア合成反応器(6)にNを提供するように配置された空気分離器(3)と、
触媒を含むアンモニア合成およびアンモニア分解反応器であって、前記合成反応器は、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに、前記可逆電気化学セルシステム(2)からHを受け取るとともに、前記空気分離器(3)からNを受け取るように配置され、前記アンモニア分解器は、電力生産モードで前記アンモニアをNおよびHに分解することで、前記可逆電気化学セルシステム(2)にHガス流を提供する、アンモニア合成およびアンモニア分解反応器と、
およびHからアンモニアを分離する固体吸収材料を含むアンモニア分離反応器(7)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに、前記アンモニア合成およびアンモニア分解反応器からアンモニアならびに未反応のNおよびHを受け取るとともに、アンモニア貯蔵ユニット(8)にアンモニアを提供するように適合されたアンモニア分離反応器(7)と、
アンモニアを貯蔵するように適合された金属ハロゲン化物を含むアンモニア貯蔵ユニット(8)であって、前記エネルギー生産システム(1)が電力貯蔵モードで動作するときに前記アンモニア合成およびアンモニア分解反応器および/またはアンモニア分離反応器(7)からアンモニアを受け取るように配置されるとともに、前記エネルギー生産システム(1)が電力生産モードで動作するときに前記アンモニア合成およびアンモニア分解反応器にアンモニアを提供するように配置された、アンモニア貯蔵ユニット(8)と、
前記エネルギー生産システム(1)において生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器(16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g)を備える熱伝達システムと、を備えるエネルギー生産システム。
【請求項3】
前記可逆電気化学セルシステムは、400℃~800℃の温度範囲、好ましくは550℃~750℃の温度範囲で動作する、請求項1または2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項4】
前記可逆電気化学セルシステムは、前記システムが電力生産モードで動作するとき、前記アンモニア分解器から提供される前記Hガス流中の不純物を許容するように適合される、請求項2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項5】
前記可逆電気化学セルシステムは、前記Hガス流中の少なくとも0.15%のアンモニア、例えば0.05%~1%のアンモニアを許容するように適合される、請求項4に記載のエネルギー生産システム。
【請求項6】
前記可逆電気化学セルシステムは、H分離圧縮の反応器(4)に接続されるか、またはH分離圧縮の反応器(4)を備えるとともに、前記アンモニア合成反応器にHを提供するように配置され、前記エネルギー生産システムは、電力貯蔵モードでアンモニアを生成するように適合される、請求項1または2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項7】
前記アンモニア合成反応器は、250℃~500℃の範囲、好ましくは350℃~500℃の範囲の温度である低温で動作するように適合される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項8】
前記アンモニア合成反応器は、3MPa以下、好ましくは1.5MPa以下の圧力で動作するように適合される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項9】
前記触媒は、Fe系触媒、Ru系触媒、セラミック混合酸化物系触媒、または還元可能もしくは部分的に還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項10】
前記触媒は、還元可能または部分的に還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒から選択される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項11】
前記担体材料は、Mg、CeおよびLaまたはその組合せから選択される、請求項10に記載のエネルギー生産システム。
【請求項12】
前記アンモニア合成反応器は、約3MPa*リットル以下、好ましくは約2.5MPa*リットル以下の圧力×(*)体積で動作するように適合される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項13】
前記アンモニア貯蔵ユニットは、アンモニア分離材料を含む1つ以上のアンモニア分離反応器に接続されるか、またはアンモニア分離材料を含む1つ以上のアンモニア分離反応器を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項14】
前記アンモニア分離反応器の前記アンモニア分離材料は、金属ハロゲン化物である、請求項11に記載のエネルギー生産システム。
【請求項15】
前記システムは、未反応のHおよびNならびに未吸収のNHを前記アンモニア分離器から前記アンモニア合成反応器に戻すように適合された再循環ポンプを含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項16】
前記システムは中央システムコントローラおよびセンサを備え、前記中央システムコントローラは、現在の電力生産が電力生産閾値を上回るかまたは下回るかのいずれかであることを受信するとともに、前記電力生産率が前記電力生産閾値を上回る場合に、前記エネルギー生産システムを、前記可逆電気化学セルシステムが電気分解モードで動作するエネルギー貯蔵モードに切り替えるために、または、前記電力生産が前記電力生産閾値を下回る場合に、前記エネルギー生産システムを、前記可逆電気化学セルシステムが燃料電池モードで動作するエネルギー生産モードに切り替えるために、前記中央システムコントローラが信号を送信するように適合される、請求項1または2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項17】
前記熱伝達システムは、家庭または小規模の商業用建物における温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、前記エネルギー生産システムの1つまたは複数のユニットによって生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える、請求項1または2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項18】
前記熱伝達システムは、前記エネルギー生産システムの2つ以上の別個のユニット間で熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える、請求項1または2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項19】
前記可逆電気化学セルシステムは、家庭または小規模の商業用建物における温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、熱交換器に接続されている、請求項1または2に記載のエネルギー生産システム。
【請求項20】
前記システムは、断続的なエネルギー源を備えるか、または断続的なエネルギー源に接続される、請求項1乃至19のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項21】
前記断続的なエネルギー源は、ソーラーPVモジュール、風力タービン、水力タービン、またはその任意の組み合わせから選択される、請求項20に記載のエネルギー生産システム。
【請求項22】
前記システムは、10立方メートル未満の寸法を有する小型システムである、請求項1乃至20のいずれか一項に記載のエネルギー生産システム。
【請求項23】
家庭または小規模の商業用建物における電気エネルギーの貯蔵または生産のための、請求項1乃至22のいずれか一項に記載のエネルギー生産システムの使用。
【請求項24】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載のエネルギー生産システムによって生成された熱の、家庭または小規模の商業用建物における温水暖房システムにおける使用であって、前記温水暖房システムは、ラジエータ、床暖房システム、温水タンク、またはその任意の組み合わせのうちの1つ以上を備える、使用。
【請求項25】
中央システムコントローラを備える請求項1乃至16のいずれか一項に記載のエネルギー生産システムを動作させる方法であって、前記方法は、
a.前記中央システムコントローラが、現在の電力生産が電力生産閾値を上回るかまたは下回るかのいずれかであることを受信する工程と、
b.前記電力生産率が前記電力生産閾値を上回る場合に、前記エネルギー生産システムを、前記可逆電気化学セルシステムが電気分解モードで動作するエネルギー貯蔵モードに切り替えるために、または、前記電力生産が前記電力生産閾値を下回る場合に、前記エネルギー生産システムを、前記可逆電気化学セルシステムが燃料電池モードで動作するエネルギー生産モードに切り替えるために、前記中央システムコントローラが信号を送信する工程と、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の貯蔵のためにアンモニアを利用するとともに、電力および熱の生成のためにアンモニアまたはHを利用する、単身世帯による使用または小規模の商業用建物における使用に適合された、分散型で小型のエネルギー生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力網は、温室効果ガスの排出量を削減するために、化石燃料から生成される電気および熱を段階的に廃止しなければならない。これは、風力およびソーラーPV(太陽光発電)モジュールからの断続的な電力を段階的に供給することによって達成され得る。断続的な電力の使用は、電力供給と電力需要のバランスをリアルタイムでとるために、システム予備容量の増加を必要とする。バッテリは、時間毎の断続性の課題に対処し得る。しかしながら、現在、電池のエネルギー貯蔵密度は低く、貯蔵容量1kWh当たりの製造コストは高い。技術革新にもかかわらず、大量の電気を貯蔵することができる小型電池が今後数十年で出現する可能性は低い。
【0003】
暖房のために電気を使用する温暖な気候では、屋上ソーラーPVモジュールからの電気の供給と需要との間に著しい季節的なミスマッチが存在する。発電は主に晩春、夏、初秋の間に行われ、暖房を含む電力需要は主に秋、冬、春に存在する。
【0004】
バッテリを有さず、年間20000kWhを発電する大型のソーラーPVモジュールシステムでは、年間ベースで家庭における電力需要を完全に満たすことができる。緯度に応じて、生産された電力の30%のみが家庭で消費され、残りが電力網に送出される。家庭の供給と需要のバランスをとるために、必要な量の電気が電力網から取り込まれなければならない。14kWのバッテリを使うと、システムは、24時間の間に需要と供給を切り替えることができ、生成された電気の約50%の利用を可能にする。しかしながら、年間20000kWhの熱および電気を消費する住宅にとって、住宅が生産している電気を完全に利用するためには、最大10000kWhの季節的な貯蔵が必要とされる。
【0005】
大量のPV電気は、水素(H)または水素含有化学物質として貯蔵することができる。しかしながら、水素は、-253℃で液体になるので、大量に貯蔵することが困難である。水素はまた、非常に爆発性が高いので、家庭または小規模の商業用建物における貯蔵媒体としての使用には不適切である。
【0006】
アンモニアは有効な水素担体であり、-33℃または10×100000パスカル(10バール)の圧力で液体になるので、大量に貯蔵することが容易である。
現在、典型的な大規模の集中型アンモニウム合成プラントは、約400~500℃および100×100000パスカル(100バール)~150×100000パスカル(150バール)で動作する。しかしながら、アンモニア合成反応器が分散型小規模エネルギー生産システムでの使用に適しているためには、アンモニアの生産は、生産におけるエネルギーおよび空間要件、騒音を低減し、安全性の懸念を軽減するために、1~30×100000パスカル(1~30バール)の圧力で行われなければならない。
【0007】
アンモニアを利用する電力の生産および貯蔵のための大規模な集中エネルギー生産システムは、様々な処理工程中にシステム内で生成された余剰熱が長距離にわたってパイプで輸送されるときに失われ、効率的に捕捉される余剰熱も利用することが困難であるため、比較的エネルギー効率が悪い。したがって、アンモニアを利用して電力を生産および貯蔵するための大規模な集中型エネルギー生産システムを作ることは、アンモニアおよび電気の生産プロセスからの熱を捕捉し、温水暖房システムを介して効率的に利用することができる分散型システムよりもエネルギー効率が低い可能性がある。
【0008】
Mukelabai,M.D.他による、A novel integration of a green power-to-ammonia to power system: Reversible solid oxide fuel cell for hydrogen and power production coupled with an ammonia synthesis unit、2021年3月、Journal of hydrogen energy,vol.46,pp.18546-18556は、断続性に対処するための電力-アンモニア-電力システムの重要性を論じるとともに、燃料電池モード中にアンモニア合成のために窒素濃縮燃料極排出ガスを使用することを示唆している。しかしながら、Mukelabai他に開示されたシステムは、約3MWを供給するように設計されている。そのようなシステムを提供するために、システムは、Hの5段階コンプレッサおよびH圧縮貯蔵バッファタンクを備え、アンモニア合成のためにハーバーボッシュ法を利用する。
【0009】
本発明の目的は、貯蔵のためにアンモニアを利用するとともに、アンモニアおよび/または水素を電力の生産のために利用する、単身世帯による使用または小規模の商業用建物における使用に適した、小型の分散型エネルギー生産システムを提供することである。システムは、電力生産モードにおいて、1時間当たり10kW~40kWの範囲、好ましくは約30kWの電力を生産する。本発明のシステムはまた、家庭における暖房要件を満たすために生産プロセスにおける余剰熱を捕捉するので、効率的な分散型再生可能エネルギーシステムを可能にする。本発明のシステムは、アンモニア合成モード、すなわち電力貯蔵モードと電力生産モードとの間で迅速に切り替えることができるという利点を有する。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、電力の貯蔵および生産のためにアンモニアを利用するエネルギー生産システムであって、システムは、
エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときに電気分解モードで電力によって水素を生成するとともに、生産システムが電力生産モードで動作するときに燃料電池モードでアンモニアから電力を生産するように適合された可逆電気化学セルシステムと、
少なくとも96%の純度の窒素を得るように適合された空気分離器であって、エネルギー生産システム1が電力貯蔵モードで動作するときにアンモニア合成反応器に窒素を提供するように配置された空気分離器と、
触媒を含むアンモニア合成反応器であって、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときに、可逆電気化学セルシステムから水素を受け取るとともに、空気分離器から窒素を受け取るように配置されたアンモニア合成反応器と、
およびHからアンモニアを分離する固体吸収材料を含むアンモニア分離反応器であって、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときに、アンモニア合成反応器からアンモニアならびに未反応のNおよびHを受け取るとともに、アンモニア貯蔵ユニットにアンモニアを提供するように適合されたアンモニア分離反応器と、
アンモニアを貯蔵するように適合された金属ハロゲン化物を含むアンモニア貯蔵ユニットであって、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときにアンモニア合成反応器および/またはアンモニア分離反応器からアンモニアを受け取るように配置されるとともに、エネルギー生産システムが電力生産モードで動作するときに可逆電気化学セルシステムにアンモニアを提供するように配置された、アンモニア貯蔵ユニットと、
エネルギー生産システムにおいて生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える熱伝達システムと、を備えるエネルギー生産システム。
【0011】
第2の態様では、貯蔵のためにアンモニアを利用するとともに、電力の生産のために水素を利用するエネルギー生産システムであって、システムは、
エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときに電気分解モードで電力によって水素を生成するとともに、生産システムが電力生産モードで動作するときに燃料電池モードで水素から電力を生産するように適合された可逆電気化学セルシステムと、
少なくとも96%の純度のNを得るように適合された空気分離器であって、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときにアンモニア合成反応器にNを提供するように配置された空気分離器と、
触媒を含むアンモニア合成およびアンモニア分解反応器であって、合成反応器は、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときに、可逆電気化学セルシステムからHを受け取るとともに、空気分離器からNを受け取るように配置され、
およびHからアンモニアを分離する固体吸収材料を含むアンモニア分離反応器であって、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときに、アンモニア合成およびアンモニア分解反応器からアンモニアならびに未反応のNおよびHを受け取るとともに、アンモニア貯蔵ユニットにアンモニアを提供するように適合されたアンモニア分離反応器と、
アンモニアを貯蔵するように適合された金属ハロゲン化物を含むアンモニア貯蔵ユニットであって、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときにアンモニア合成およびアンモニア分解反応器および/またはアンモニア分離反応器からアンモニアを受け取るように配置されるとともに、エネルギー生産システムが電力生産モードで動作するときにアンモニア合成およびアンモニア分解反応器にアンモニアを提供するように配置された、アンモニア貯蔵ユニットと、
エネルギー生産システムにおいて生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える熱伝達システムと、を備えるエネルギー生産システム。
【0012】
第1または第2の態様による一実施形態では、可逆電気化学セルシステムは、400℃~800℃の温度範囲で動作する。
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、400℃~600℃の温度で動作する。
【0013】
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、550℃~750℃の温度で動作する。
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、550℃~850℃の温度で動作する。
【0014】
第1または第2の態様によるさらなる一実施形態では、電気化学セルシステムは、600℃~850℃の温度で動作する。
第1または第2の態様によるさらなる一実施形態では、電気化学セルシステムは、700℃~850℃の温度で動作する。
【0015】
さらなる一実施形態では、電気化学セルシステムは、700℃~800℃の温度で動作する。
好ましくは、電気化学セルシステムは、550℃~750℃の温度で動作する。
【0016】
可逆電気化学セルシステムは、エネルギー生産需要に応じてエネルギーシステムを迅速にランプアップおよびランプダウンすることができるように、低温で、すなわち850℃未満の温度で、好ましくは550℃~750℃の範囲の温度で動作するように適合される。
【0017】
第2の態様による一実施形態では、エネルギー生産システムの可逆電気化学セルシステムは、システムが電力生産モードで動作するとき、アンモニア分解器から提供されるHガス流中の不純物を許容するように適合される。
【0018】
第2の態様による一実施形態では、エネルギー生産システムの可逆電気化学セルシステムは、Hガス流中の少なくとも0.15%のアンモニア、例えば0.05%~1%のアンモニアを許容するように適合される。
【0019】
可逆電気化学セルシステムは、アンモニア分解器から提供されるHガスを浄化するための追加の浄化ユニットの必要性を防止するために、NH不純物を許容するように適合される。
【0020】
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、1×100000パスカル(1バール)~30×100000パスカル(30バール)の圧力で動作する。
【0021】
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、1×100000パスカル(1バール)~20×100000パスカル(20バール)の圧力で動作する。
【0022】
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、1×100000パスカル(1バール)~10×100000パスカル(10バール)の圧力で動作する。
【0023】
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、1×100000パスカル(1バール)~5×100000パスカル(5バール)の圧力で動作する。
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、3×100000パスカル(3バール)~5×100000パスカル(5バール)~15×100000パスカル(15バール)の圧力で動作する。
【0024】
第1または第2の態様による一実施形態では、電気化学セルシステムは、15×100000パスカル(15バール)~30×100000パスカル(30バール)の圧力で動作する。
【0025】
第1または第2の態様による一実施形態では、可逆電気化学セルシステムは、可逆固体酸化物セルである。
好ましくは、可逆電気化学セルシステムは可逆固体酸化物セルである。
【0026】
第1または第2の態様による一実施形態では、可逆固体酸化物セルのセル材料は、金属またはセラミック支持セルである。
第1または第2の態様による一実施形態では、可逆電気化学セルシステムは、水素分離圧縮の反応器に接続されるか、または水素分離圧縮の反応器を備えるとともに、アンモニア合成反応器に水素を提供するように配置され、エネルギー生産システムは、電力貯蔵モードでアンモニアを生成するように適合される。
【0027】
第1または第2の態様による一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、高温電気化学水素ポンプである。
第1または第2の態様による一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、約400℃~約800℃の温度で動作するように適合される。
【0028】
第1または第2の態様による一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、400℃~600℃の温度で動作する。
第1または第2の態様による一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、550℃~750℃の温度で動作する。
【0029】
第1または第2の態様による一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、550℃~850℃の温度で動作する。
第1または第2の態様によるさらなる一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、600℃~850℃の温度で動作する。
【0030】
第1または第2の態様によるさらなる一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、700℃~850℃の温度で動作する。
第1または第2の態様によるさらなる一実施形態では、水素分離圧縮の反応器は、700℃~800℃の温度で動作する。
【0031】
第1または第2の態様による一実施形態では、分離圧縮反応器は、プロトン膜反応器に基づく高温電気化学水素ポンプでよい。
第1または第2の態様による一実施形態では、分離圧縮反応器は、水素の分離および圧縮時に熱を発生してよい。
【0032】
第1または第2の態様による一実施形態では、分離圧縮反応器は、低ノイズで電気化学的に水素を分離圧縮することができる反応器でよい。
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、少なくとも96%、例えば少なくとも97%または98%の純度のNを得るように適合される。
【0033】
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、少なくとも99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または少なくとも99.9%の純度のNを得るように適合される。
【0034】
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、1×100000パスカル(1バール)~20×100000パスカル(20バール)の圧力で動作する。
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、3×100000パスカル(3バール)~18×100000パスカル(18バール)の圧力で動作する。
【0035】
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、3×100000パスカル(3バール)~15×100000パスカル(15バール)の圧力で動作する。
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、3×100000パスカル(3バール)~10×100000パスカル(10バール)の圧力で動作する。
【0036】
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は、低温蒸留ユニット、PSA(圧力スイング吸着)ユニット、または膜ユニットである。
第1または第2の態様による一実施形態では、空気分離器は圧力スイング吸着ユニットである。
【0037】
第1または第2の態様による1つの好ましい実施形態では、空気分離器は、PSAユニットまたは膜ユニットであり、より好ましくはPSAユニットである。
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成反応器は、約250℃~約500℃の範囲の温度である低温で動作するように適合される。
【0038】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成反応器は、約350℃~約500℃の範囲の温度である低温で動作するように適合される。
好ましい実施形態では、アンモニア合成反応器は、約350℃~約500℃の範囲の温度で動作するように適合される。
【0039】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成反応器は、約3MPa以下の圧力で動作するように適合される。
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成反応器は、3MPa~1MPaの圧力で動作するように適合される。
【0040】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成は、2MPa~1MPaの圧力で動作するように適合される。
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成反応器は、1.5MPa~0.5MPaの圧力で動作するように適合される。
【0041】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア合成は、約1MPaの圧力で動作するように適合される。
第1の態様または第2の態様による1つの好ましい実施形態では、アンモニア合成反応器は、約1.5MPa以下の圧力で動作するように適合される。
【0042】
システムのノイズを70db~10db、例えば40db~30dbに低減するために、低圧、すなわちアンモニア合成反応器の約3MPa以下の圧力で動作することは、システムの利点であり、これは冷蔵庫からのノイズに匹敵する。一実施形態では、第1および第2の態様のアンモニア合成反応器の触媒ならびに第2の態様の分解器の可逆プロセスの触媒は、Fe系触媒、Ru系触媒、セラミック混合酸化物系触媒、または還元可能もしくは部分的に還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒から選択される。
【0043】
一実施形態では、第1の態様または第2の態様によるアンモニア合成反応器およびアンモニア分解器の触媒は、水素化物、窒化物および三元金属化合物から選択される。
1つの好ましい実施形態では、第1の態様または第2の態様によるアンモニア合成反応器およびアンモニア分解器の触媒は、還元可能または部分的に還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒である。
【0044】
1つの好ましい実施形態では、第1の態様または第2の態様によるアンモニア合成反応器およびアンモニア分解器の触媒は、還元可能または部分的に還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒であり、担体材料は、Mg、CeおよびLaまたはその組み合わせから選択される。
【0045】
本エネルギー生産システムのさらなる利点は、第1の態様または第2の態様によるアンモニア合成反応器の触媒が、エネルギー生産システムの可逆電気化学セルシステムからのHガス流中の不純物を許容するように適合されるので、Hガス流を浄化するための別個の高価で大型の浄化ユニットの必要性を克服することで、小型のシステムを提供することを可能にすることである。
【0046】
一実施形態では、第1の態様または第2の態様によるアンモニア合成反応器は、3MPa*リットル以下、好ましくは約2.5MPa*リットル以下の圧力×(*)体積で動作するように適合される。
【0047】
第2の態様による一実施形態では、NH合成の可逆プロセスであるアンモニア分解器は、1MPa以下、例えば0.5MPa以下の圧力で動作する。
第2の態様による一実施形態では、アンモニア分解器は、約700℃~約400℃、例えば約650℃~約450℃、好ましくは約600℃~約450℃の温度範囲で動作する。
【0048】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア貯蔵ユニットは、アンモニア分離材料を含む1つ以上のアンモニア分離反応器に接続されるか、またはアンモニア分離材料を含む1つ以上のアンモニア分離反応器を含む。
【0049】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、システムは、未反応のHおよびNならびに未吸収のNHをアンモニア分離器からアンモニア合成反応器に戻すように適合された再循環ポンプを含む。
【0050】
上記の実施形態によるポンプは、システムが十分な量のHおよびNを液体NHに変換して分離し、金属ハロゲン化物中に貯蔵するために、HおよびNならびに未吸収のNHをアンモニア分離器からアンモニア合成反応器に戻して再利用するように適合される。
【0051】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア貯蔵ユニットの金属ハロゲン化物は、一般式MaXzを有する。ここで、Mは、Mn及びMgから選択されるカチオンであり、Xは、塩化物及び臭化物から選択されるアニオンであり、aは、塩分子当たりのカチオンの数であり、zは、塩分子当たりのアニオンの数である。
【0052】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア貯蔵ユニットはアンモニア分離反応器を備える。
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア分離材料は金属ハロゲン化物である。
【0053】
第1の態様又は第2の態様による一実施形態では、アンモニア分離反応器の金属ハロゲン化物は、一般式MaXzを有する。ここで、Mは、Mn及びMgから選択されるカチオンであり、Xは、塩化物及び臭化物から選択されるアニオンであり、aは、塩分子当たりのカチオンの数であり、zは、塩分子当たりのアニオンの数である。
【0054】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、アンモニア分離反応器の金属ハロゲン化物は、アルミナ、シリカまたはゼオライトから選択される基材によって担持される。
【0055】
第1の態様または第2の態様による一実施形態では、システムは中央システムコントローラおよびセンサを備え、中央システムコントローラは、現在の電力生産が電力生産閾値を上回るかまたは下回るかのいずれかであることを受信するとともに、電力生産率が電力生産閾値を上回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルシステムが電気分解モードで動作するエネルギー貯蔵モードに切り替えるために、または、電力生産が電力生産閾値を下回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルシステムが燃料電池モードで動作するエネルギー生産モードに切り替えるために、中央システムコントローラが信号を送信するように適合される。
【0056】
一実施形態では、熱伝達システムは、家庭または小規模の商業用建物における温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、エネルギー生産システムの1つまたは複数のユニットによって生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える。
【0057】
一実施形態では、熱伝達システムは、エネルギー生産システムの2つ以上の別個のユニット間で熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える。
一実施形態では、可逆電気化学セルシステムは、家庭または小規模の商業用建物における温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、熱交換器に接続されている。
【0058】
一実施形態では、熱伝達システムは、家庭または小規模の商業用建物内の温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、エネルギー生産システムで生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える。
【0059】
一実施形態では、熱交換器は、エネルギー生産システム1の2つ以上の別個のユニット間で熱を伝達するように適合される。
本発明の一実施形態では、エネルギー生産システムが電力の貯蔵のために適合される場合、アンモニア合成反応器および/またはアンモニア分離反応器のうちの1つ以上において生成された熱は、熱交換器によって蒸気発生器に伝達されてよい。
【0060】
一実施形態では、可逆電気化学セルシステムは、アンモニア貯蔵ユニットに熱を伝達するために熱交換器に接続され、エネルギー生産システムは電力の生産に適合される。
一実施形態では、可逆電気化学セルシステムは、家庭または小規模の商業用建物における温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、熱交換器に接続されている。
【0061】
一実施形態では、熱伝達システムは、家庭または小規模の商業用建物内の温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、エネルギー生産システムで生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備える。
【0062】
一実施形態では、エネルギー生産システムは、断続的なエネルギー源を備えるか、または断続的なエネルギー源に接続される。
一実施形態では、断続的なエネルギー源は、ソーラーパネル、風力タービン、水力タービン、またはその任意の組合せから選択される。
【0063】
一実施形態では、エネルギー生産システムの電力は、ソーラーパネル、風力タービン、水力タービン、またはその任意の組み合わせのうちのいずれか1つから生成される。
一実施形態では、エネルギー生産システムの電力は、リチウム電池などの電池から生成される。
【0064】
一実施形態では、断続的なエネルギー源によって生成された余剰電力は、金属ハロゲン化物中のNHとしてエネルギー生産および貯蔵システムに貯蔵される。
一実施形態では、断続的なエネルギー源からのエネルギー生産がない場合、エネルギー生産システムは、金属ハロゲン化物貯蔵ユニットに貯蔵されたNHからのNHの放出によって電力を供給する。
【0065】
一実施形態では、システムは、10立方メートル以下の寸法を有する小型システムである。
一実施形態では、エネルギー生産システムの全寸法は約10m以下である。
【0066】
一実施形態では、エネルギー生産システムの全寸法は10m~4mである。
一実施形態では、エネルギー生産システムの全寸法は、8m~4.5mである。
一実施形態では、エネルギー生産システムの全体寸法は約5mであり、アンモニア貯蔵ユニット8は約3mである。
【0067】
一実施形態では、本発明によるエネルギー生産システムのノイズは、70db~10db、例えば40db~30dbであり、これは冷蔵庫からのノイズに匹敵する。
一実施形態では、システムは、家庭または小規模の商業用建物における電気エネルギーの貯蔵または生産のためのものである。
【0068】
一実施形態では、システムは電力網に接続される。
一実施形態では、システムは電力網に接続されない。
第3の態様では、本発明は、家庭または小規模の商業用建物における電気エネルギーの貯蔵または生産のための、第1もしくは第2の態様またはそのいずれかの実施形態によるエネルギー生産システムの使用を提供する。
【0069】
第4の態様では、本発明は、第1もしくは第2の態様またはそのいずれかの実施形態によるエネルギー生産システムによって生成された熱の、家庭または小規模商業用建物における温水暖房システムにおける使用を提供する。温水暖房システムは、ラジエータ、床暖房システム、温水タンク、またはその任意の組合せのうちの1つ以上を備える。
【0070】
第5の態様では、本発明は、第1または第2の態様およびそのいずれかの実施形態による、中央システムコントローラを備えるエネルギー生産システムを動作させる方法を提供する。方法は、
a.中央システムコントローラが、現在の電力生産が電力生産閾値を上回るかまたは下回るかのいずれかであることを受信する工程と、
b.電力生産率が電力生産閾値を上回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルが電気分解モードで動作するエネルギー貯蔵モードに切り替えるために、または、電力生産が電力生産閾値を下回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルが燃料電池モードで動作するエネルギー生産モードに切り替えるために、中央システムコントローラが信号を送信する工程と、を備える方法。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】ソーラーパネル、バッテリ、可逆電気化学セル、ならびにアンモニア合成および貯蔵の組み合わせを利用する、第1または第2の態様によるエネルギー生産システムの例示的実施形態の模式図。システムは、電力の貯蔵のためにアンモニアを利用するとともに、電力の生産のためにアンモニアまたはHを利用する。このシステムは、単身世帯による使用または小規模の商業用建物における使用に特に適している。
図2】エネルギー生産システムの一実施形態であって、エネルギー貯蔵モードの流れ方向を有するシステム設計を示す詳細図。
図3】第1の態様によるエネルギー生産システムの一実施形態であって、エネルギー生産モードの流れ方向を有するシステム設計を示す詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下の説明では、本発明のより完全な理解を当業者に提供するために、本発明の様々な例および実施形態が記載される。様々な実施形態の文脈において、および添付の図面を参照して説明される特定の詳細は、限定として解釈されることを意図していない。
【0073】
数値の限界または範囲が記載されている場合、端点が含まれる。また、数値限定または範囲内の全ての値および部分範囲は、明示的に書き出されているかのように具体的に含まれる。
【0074】
図1は、単身世帯または小規模の商業用建物における本発明によるエネルギー生産システムの使用例を示す。エネルギー生産システムは、電力の貯蔵および生産のためにアンモニアを利用する。
【0075】
図1を参照すると、エネルギー生産システムは、エネルギー生産システム1が電力貯蔵モードで動作するときに電気分解モードで電力によって水素を生産するとともに、生産システムが電力生産モードで動作するときに燃料電池モードでアンモニアから電力を生産するように適合された可逆電気化学セルシステム2を備える。
【0076】
電力は、バッテリ12および/またはソーラーPVモジュール11によってエネルギー生産システムの可逆電気化学セルシステム2に提供される。追加的または代替的には、電力は、風力タービンまたは水力タービンによってエネルギー生産システム1に供給される。ソーラーPVモジュールは、バッテリ12に接続される。
【0077】
エネルギー生産システムは、さらに、エネルギー生産システムが電力貯蔵モードで動作するときにアンモニアを貯蔵するように適合されるとともに、エネルギー生産システム1が電力生産モードで動作するときに可逆電気化学セルシステム2にアンモニアを供給するように構成されたアンモニア貯蔵ユニット8を備える。
【0078】
本エネルギー生産システムの利点の1つは、システムが、家庭または小規模の商業用建物内の温水暖房システムに対して熱を捕捉して提供するために、エネルギー生産システムで生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器を備えることである。
【0079】
図1に示すように、可逆電気化学セルシステム2において生成された余剰熱は、温水タンク13に熱を提供するように適合される。温水タンク13は、温水暖房システム18に温水を提供するように適合されてよい。
【0080】
本発明によるエネルギー生産システムは、単一の建物に配置され、その建物または近傍に位置する建物のために電力の生産および貯蔵を提供する目的を果たす、小型の分散型システムである。建物は、個人の家、別荘、小屋、または小規模の商業用建物である。
【0081】
本発明によるエネルギー生産システム1は、電力網に接続されてよい。
本発明によるエネルギー生産システム1は、オフグリッドシステムであってよい、すなわち電力網の一部でなくてよい。
【0082】
本発明によるエネルギー生産システムは、小型のシステムである。すなわち、エネルギー生産システム1は、単身世帯による使用または小規模の商業用建物における使用に適するように小型でなければならない。
【0083】
小型エネルギー生産システムの総寸法は、10立方メートル以下であってよい。
第1または第2の態様に係る小型エネルギー生産システムは、
本発明によるエネルギー生産システムにおける騒音低減およびエネルギー要件のため、電気貯蔵モード中のアンモニア合成反応器6におけるアンモニアの生産のためのプロセスは、典型的には10~15MPaで動作するほとんどのアンモニア生産プロセスとは異なり、3MPa、好ましくは1.5MPa以下の圧力で動作してよい。圧力の低減は、騒音を低減するために必要である。
【0084】
本発明によるシステムは、コストと柔軟性とのバランスをとるように適合される一方で、ピーク時の効率的なエネルギー生産および信頼性の高い電力供給を確保する。
本発明によるエネルギー生産システムは、電力貯蔵モードと電力生産モードとの間で容易に切り替えることができる動的システムであり、いくつかの実施形態では、中央システムコントローラおよびセンサを備える。中央システムコントローラは、現在の電力生産が電力生産閾値を上回るか下回るかのいずれかであることをセンサから受信するように適合される。また、中央システムコントローラは、電力生産率が電力生産閾値を上回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルシステムが電気分解モードで動作するエネルギー貯蔵モードに切り替えるために、中央システムコントローラから信号を送信するように適合される。また、中央システムコントローラは、電力生産が電力生産閾値を下回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルシステムが燃料電池モードで動作するエネルギー生産モードに切り替えるために、中央システムコントローラから信号を送信するように適合される。
【0085】
本発明によるエネルギー生産システムの実施形態の詳細な説明が図2に示される。
図2のシステムは、電力貯蔵モードで動作する。矢印は、電力が伝達される方向、ならびに質量および熱の流れを示す。
【0086】
エネルギー生産システム1は、
電気分解モードで電力によって水素を生成するように適合された可逆電気化学セルシステム2と、
アンモニア合成反応器6への清浄なNを得るように適合された空気分離器3と、
触媒を含むアンモニア合成反応器6であって、可逆電気化学セルシステム2からHを受け取るとともに、空気分離器3からNを受け取るように配置されたアンモニア合成反応器6と、
およびHからアンモニアを分離するアンモニア分離材料を含むアンモニア分離反応器7であって、アンモニア合成反応器6からアンモニアならびに未反応のNおよびHを受け取るとともに、アンモニア貯蔵ユニット8にアンモニアを提供するように適合されたアンモニア分離反応器7と、
アンモニアを貯蔵するように適合された金属ハロゲン化物を含むアンモニア貯蔵ユニット8であって、アンモニア合成反応器6および/またはアンモニア分離反応器7からアンモニアを受け取るように配置されたアンモニア貯蔵ユニット8と、
エネルギー生産システム1において生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器16a、16b、16c、16d、16e、16f、16gを備える熱伝達システムと、を備える。
【0087】
代替的には、エネルギー生産システムは、
電気分解モードで電力によって水素を生成するように適合された可逆電気化学セルシステム2と、
アンモニア合成反応器6への清浄なNを得るように適合された空気分離器3と、
触媒を含むアンモニア合成分解反応器であって、可逆電気化学セルシステム2からHを受け取るとともに、空気分離器3からNを受け取るように配置されたアンモニア合成分解反応器と、
およびHからアンモニアを分離するアンモニア分離材料を含むアンモニア分離反応器7であって、アンモニア合成分解反応器からアンモニアならびに未反応のNおよびHを受け取るとともに、アンモニア貯蔵ユニット8にアンモニアを提供するように適合されたアンモニア分離反応器7と、
アンモニアを貯蔵するように適合された金属ハロゲン化物を含むアンモニア貯蔵ユニット8であって、アンモニア合成分解反応器および/またはアンモニア分離反応器7からアンモニアを受け取るように配置されたアンモニア貯蔵ユニット8と、
エネルギー生産システム1において生成された熱を伝達するように適合された1つ以上の熱交換器16a、16b、16c、16d、16e、16f、16gを備える熱伝達システムと、を備える。
【0088】
エネルギー生産システム1は、断続的なエネルギー源を備えてよく、または断続的なエネルギー源に接続されてもよい。
断続的なエネルギー源は、ソーラーPVモジュール、風力タービンおよび/または水力タービンから選択される。
【0089】
エネルギー生産システム1は、バッテリに接続されてよい。
電力貯蔵モードでは、屋上ソーラーPVモジュール11または代替的には風力もしくは水力タービンによって生成された電力は、バッテリ12に貯蔵されるか、または可逆電気化学セルシステム2に直接提供される。
【0090】
可逆電気化学セルシステム2は、水素の非自発的生成を行うために電力を必要とする。
可逆電気化学セルシステム2は、400℃~800℃、例えば400℃~700℃、好ましくは550℃~750℃の温度範囲で動作するとともに、電気分解モードで電力によって水素(H)および熱を生成するように適合される。
【0091】
可逆電気化学セルシステム2は、電気分解モードにおいて化学反応を引き起こすために電力を使用することができ、燃料電池モードにおいて化学反応から電力を生産するために可逆プロセスを使用することができる電気化学セルシステムである。
【0092】
電気分解モードでは、可逆電気化学セルシステム2は、電力を使用して水から水素および酸素を生成する。水は、蒸気発生器9によって生成された蒸気の形態であり、蒸気は、水タンク10および蒸気発生器9によって電気化学セルシステム2に供給される。水タンクは、蒸気発生器に接続され、蒸気発生器は、さらに電気化学セルシステムに接続される。
【0093】
水の電気分解中、送風機14によって空気19aが電気化学セルシステム2に供給される。空気は、酸素を迅速に除去するのを助けるために、酸素が生成される場所の近傍でセルに供給される。出口20cは、酸素濃縮空気を排出する。したがって、空気は、生成された濃縮酸素の「キャリアガス」として利用される。
【0094】
可逆電気化学セルシステム2は、温水タンク13に接続されてもよい。これによって、電気化学セルシステム2は、電気分解モード中に発生した熱を熱交換器16dによって水タンク13に伝達するように適合される。
【0095】
電気分解モードの間、電気化学セルシステム2は、熱交換器16aによる熱の伝達によって水素分離圧縮反応器4から熱を受け取るように適合されてよい。
電気分解モードの間、蒸気発生器9は、熱交換器16b、16cによる熱の伝達によって、アンモニア合成反応器6におけるアンモニアの発熱合成反応から熱を受け取るように適合されてよい。
【0096】
電気分解モードの間、蒸気発生器9は、熱交換器16b、16cによる熱の伝達によって、アンモニア分離反応器7から熱を受け取るように適合されてよい。
可逆電気化学セルシステムは、清浄な水素を混合器5に提供するために、水素分離圧縮反応器4に接続されてもよい。
【0097】
あるいは、可逆電気化学セルシステム2は、H分離圧縮の反応器4を備えてよい。
可逆電気化学セルシステム2は、H分離圧縮の反応器4を備えるSOEC(可逆固体酸化物電気化学セル)であってよい。
【0098】
あるいは、可逆電気化学セルシステム2は、SOFC(可逆固体酸化物燃料電池)であってよい。
電気分解モードおよび電力の貯蔵の間、空気分離器3は、空気19bを空気分離ユニットに受け入れるように適合されるとともに、さらに空気19bから窒素を分離するように適合される。空気分離器3は、混合器5に接続されるとともに、Nを混合器5に移送するように適合される。酸素20aは空気分離器から排出される。
【0099】
電気分解モードの間、空気分離器3は、バッテリ12から電気を受け取るように適合されてよい。
電気分解モードの間、空気分離器3は、ソーラーPVモジュール11から電気を受け取るように適合されてよい。
【0100】
混合器5は、アンモニア合成反応器6に接続されるとともに、HおよびNをアンモニア合成反応器6に供給するように構成されている。
アンモニア合成反応器6またはアンモニア合成分解反応器は、アンモニアならびに未反応の水素および窒素を、アンモニアを分離するように適合された分離反応器7に移送するコンプレッサまたはポンプ15に接続される。分離反応器7からのアンモニアは、アンモニア貯蔵ユニット8に移送される。分離反応器7からの未反応の窒素および水素は、アンモニア合成反応器6に循環して戻される。
【0101】
電気分解モードの間、アンモニア合成反応器6またはアンモニア合成分解反応器は、バッテリ12から電気を受け取るように適合されてよい。
電気分解モードの間、アンモニア合成反応器6は、ソーラーPVモジュール11から電気を受け取るように適合されてよい。
【0102】
本発明によるエネルギー生産システムの実施形態の詳細な説明が図3に示される。
図3のシステムは、電力生産モードで動作する。矢印は、電力が伝達される方向、ならびに質量および熱の流れを示す。
【0103】
電力生産モード中、可逆電気化学セルシステム2は、燃料電池モードで動作する。
本発明の第1の態様による燃料電池モードでは、アンモニア貯蔵ユニット8は、アンモニアを窒素および水素に分解する可逆電気化学セルシステム2にアンモニアを供給するように適合される。
【0104】
燃料電池モード中、反応物として酸素を供給するために、吸気口19cを介して空気が燃料電池に入る。酸素は、燃料電池を通って輸送され、水素と反応し、したがって熱および電気を発生する。窒素濃縮空気は、出口19dを介して燃料電池から排出される。
【0105】
燃料電池モードでは、可逆電気化学セルシステム2によって生成された余剰熱は、熱交換器16eおよび/または16fによって温水タンクに伝達されてよい。
燃料電池モードでは、可逆電気化学セルシステム2によって生成された余剰熱は、熱交換器16gによってアンモニア貯蔵ユニットに伝達されてよい。
【0106】
燃料電池モードでは、アンモニアの分解により電力が生成される。この電力は、電気を必要とする家庭用電力系統17に送られる。
燃料電池モードでは、アンモニアの分解により電力が生成される。この電力はアンモニア貯蔵ユニット8に伝達されてよい。
【0107】
アンモニア貯蔵ユニット8からアンモニアを放出するために、アンモニア貯蔵ユニットは加熱を必要とする。
あるいは、システムがアンモニア合成分解反応器を含む第2の態様によれば、燃料電池モードにおいて、アンモニア貯蔵ユニット8は、アンモニアを窒素および水素に分解するアンモニア合成分解反応器にアンモニアを供給するように適合される。水素は、電力を生産するために燃料電池モードで動作する可逆電気化学セルシステム2に移送される。
【0108】
電気化学セルシステム2
可逆電気化学セルシステムは、電気分解モードにおいて化学反応を引き起こすために電力を使用することができ、燃料電池モードにおいて化学反応から電力を生産するために可逆プロセスを使用することができる電気化学セルシステムである。
【0109】
燃料電池モードでは、本発明の第1の態様による電気化学セルシステム2は、NH(アンモニア)で動作するように適合された燃料電池である。
アンモニアの分解は吸熱反応である。
【0110】
燃料電池モードでは、本発明の第2の態様による電気化学セルシステム2は、Hで動作するように適合された燃料電池である。
第1または第2の態様による可逆電気化学セルシステムは、電気分解モード中に水を水素と酸素に分解する電気化学セルであり、全体的な反応電位が負であるために反応が自発的ではないので、電力を必要とする。
【0111】
典型的には、水電解ユニットに適合された電気化学セルは、電解質で分離されたアノードおよびカソードからなる。
電解質は、イオンを含有する水溶液、PEM(プロトン交換膜)または酸素イオン交換セラミック膜から形成されてよい。
【0112】
第1または第2の態様による可逆電気化学セルシステムは、電気化学セルのスタックを形成する2つ以上の可逆電気化学セルを備える。
第1または第2の態様による可逆電気化学セルシステムは、400℃~850℃、好ましくは約550℃~750℃の温度範囲で動作する電気化学セルである。例えば400℃を超える温度の高温は、燃料電池動作中のアンモニアの分解に有益である。
【0113】
第1または第2の態様による可逆電気化学セルシステムは、400℃~850℃の温度範囲で動作する電気化学セルである。温度範囲は好ましくは約550℃~650℃であり、これは電気分解モードにおける水蒸気の水素への変換に必要な電気を減少させる。
【0114】
電気化学セルシステム2は、電気化学セル材料の劣化を最小限に抑える温度で動作してよい。
第1の態様による電気化学セル2のセルは、電気化学セルシステム2が燃料電池モードで動作するときに400℃~850℃の温度範囲でアンモニアをNおよびHに分解するように適合されるとともに、電気分解モード中に水をHおよびOに分解するように適合された金属またはセラミック支持セルであってよい。
【0115】
第2の態様による電気化学セル2のセルは、電気化学セルシステム2が燃料電池モードで動作するときに400℃~850℃の温度範囲で電力を生産するためにHを利用するように適合されるとともに、電気分解モード中に水をHおよびOに分解するように適合された金属またはセラミック支持セルであってよい。
【0116】
第1または第2の態様による電気化学セルシステムは、大気圧で動作するように適合されてよい。
第1または第2の態様による電気化学セルシステムは、1×100000パスカル(1バール)~30×100000パスカル(30バール)の範囲の大気圧を超える圧力で動作するように適合されてよい。
【0117】
第1または第2の態様による可逆電気化学セルシステム2は、可逆SOFC(固体酸化物燃料電池)であってよい。
SOFCは、第1の態様ではNH等の燃料を酸化することで直接的に電気を生産する電気化学セルシステムである。燃料電池は、その電解質材料によって特徴付けられる。SOFCは固体酸化物またはセラミック電解質を有する。
【0118】
SOFCは、第2の態様ではHから直接的に電気を生産する電気化学セルシステムである。燃料電池は、その電解質材料によって特徴付けられる。SOFCは固体酸化物またはセラミック電解質を有する。
【0119】
代替的には、可逆電気化学セルシステム2は、可逆SOEC(固体酸化物電解セル)である。
SOECは、余剰熱を提供するために発熱モードで動作してよい。
【0120】
市販のSOECおよびSOFCが市場で入手可能である。
【0121】
【表1】
【0122】
SOCスタックの商業的供給業者の例は、Ceres Power、Sunfire、SOLIDpower、Haldor Topsoe、またはElcogenである。
分離圧縮反応器4
分離圧縮反応器4は、高温膜反応器であってよい。
【0123】
分離圧縮反応器4は、高温電気化学水素ポンプでよい。
分離圧縮反応器4は、プロトン膜反応器に基づく高温電気化学水素ポンプでよい。
分離圧縮反応器4は、低ノイズで電気化学的に水素を分離圧縮できる反応器であってよい。
【0124】
分離圧縮反応器4は、水素の分離及び圧縮時に熱を発生してよい。
分離圧縮反応器4は、500℃~800℃の温度で動作してよい。
空気分離器3
空気分離反応器3は、高純度の窒素(N)を得ることができる空気分離反応器である。
【0125】
空気分離反応器3は、低圧で動作してよい。
空気分離反応器3は、混合器5への少なくとも96%の純度のNを得るように適合されてよい。
【0126】
空気分離反応器3は、混合器5への少なくとも97%または98%の純度のNを得るように適合されてよい。
空気分離反応器3は、混合器5への少なくとも99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または少なくとも99.9%の純度のNを得るように適合されてよい。
【0127】
空気分離器は、低温蒸留ユニット、PSA(圧力スイング吸着)ユニット、または膜ユニットであってよい。好ましくは、空気分離器は、PSAユニットまたは膜ユニットである。より好ましくは、PSAユニットである。
【0128】
当業者は、本発明によるエネルギー生産システムでの使用に適した市販の窒素空気分離器を理解できる。
低温蒸留分離器の供給業者の例は、The Linde Group、Immatec、Compressed Gas Technology Inc、Air Products (PRISM3030)である。
【0129】
アンモニア合成反応器6およびアンモニア合成分解反応器
アンモニアは、ハーバーボッシュ法によって商業的に製造される。
プロセス反応は可逆的であり、アンモニアの生成は発熱反応である。
【0130】
【化1】
【0131】
従来のハーバーボッシュ法は、典型的には、10MPa/100×100000パスカル(100バール)を超える圧力かつ400℃~500℃で行われる。
小型のエネルギー生産システムのために、アンモニア合成反応器またはアンモニア合成分解反応器は、低温、例えば250℃~550℃の範囲、例えば250℃~350℃の範囲、好ましくは350℃~500℃の範囲の温度で動作するように適合される。
【0132】
さらに、アンモニア合成反応器またはアンモニア合成分解反応器は、3MPa以下、好ましくは約1.5MPa以下の圧力で動作するように適合される。
アンモニア合成反応器またはアンモニア合成分解反応器は、動的動作条件下で動作してよい。
【0133】
アンモニア合成反応器またはアンモニア合成分解反応器は、電力の貯蔵が必要とされない条件下で、アンモニア合成生成を増加させるために必要とされる時間を減少させるために、全容量の10~20%で依然として稼働していてよい。
【0134】
アンモニア分解器は、可逆プロセス下の電力生産モードにおいて、1MPa以下、例えば0.5MPa以下の圧力で動作してよい。
アンモニア分解器は、可逆プロセス下の電力生産モードで、約700℃~約400℃、例えば約650℃~約450℃、好ましくは約600℃~約45℃の温度範囲で動作してよい。
【0135】
アンモニア合成反応器またはアンモニア合成分解反応器の触媒は、Fe系触媒、Ru系触媒、セラミック混合酸化物系触媒またはこれらの任意の組み合わせであってよい。
周知の触媒の例は、Cs-Ru/MgOおよびRu/AC(金属間合金)または水素化物もしくは窒化物もしくは代替的には三元金属化合物に基づく触媒である。
【0136】
水素化物の例は、水素と、アルカリ水素化物およびBaTiOxHyまたはペロブスカイト酸窒化物-水素化物触媒(Ru/BaCeO3-xNyHz)上に担持された金属等の金属または半金属との組み合わせである。
【0137】
低温および低圧で高い活性を有する窒化物の例は、特にNi/LaN7およびLaNで促進されたRu/ZrH2である。
好ましくは、触媒は、還元可能または部分的に還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒である。
【0138】
担体材料は、Mg、Ce、Laおよびその任意の組合せから選択されてよい。
還元可能な混合酸化物担体材料上の促進金属触媒の主な利点は、原料ガス中のOまたはHOなどの不純物に対する耐性が増大する点である。原料浄化の必要性が減少することにより、より小型のシステム設計が可能になる。触媒はまた、プロセス停止またはランプダウン中の酸化および不活性化による影響が少ないので、プロセスランプアップ中の性能のより速い回復を可能にする。これは、断続的なエネルギー源と共に使用するのに適した小型のシステム設計にとって非常に重要である。
【0139】
アンモニア合成反応器の供給業者および技術の例は、Siemens Green Ammmonia、Starfire Energy、Solar Hydrogen System、Iowaである。
【0140】
アンモニア分離反応器7
従来のハーバーボッシュ法では、アンモニア凝縮によって未反応原料(NおよびH)からアンモニアが除去されるが、これは約10m未満の小型システムには適していない。本エネルギー生産システムは、分離器7およびアンモニア貯蔵ユニット8の両方において、未反応原料からNHを分離するために固体吸収材を使用する。分離反応器7はまた、貯蔵ユニット8の一体化された部分であってもよい。これは、小型のシステムおよび製造コストの低下にとって有利である。
【0141】
選択的な固体吸収材は、合成温度付近で動作する、金属ハロゲン化物、例えば塩化カルシウムなどのアンモニア分離材料を含有してよい。この反応および吸収プロセスを用いて、アンモニアを15~30×100000パスカル(15~30バール)で合成することができる。速度は100~300×100000パスカル(100~300バール)で動作する従来のプロセスと同等である。反応-吸収プロセスにおいて、アンモニア合成の速度は、化学反応によってではなく、未反応ガスを再利用するために使用されるポンプによってより多く制御される。吸収性材料は、NHが少量しか存在しない場合であっても、環境条件よりも上でガス流からNHを捕捉することができる。
【0142】
アンモニア分離材料は金属ハロゲン化物であってよい。
アンモニア分離反応器の金属ハロゲン化物は、一般式MaXzを有してよい。ここで、Mは、MnおよびMgから選択されるカチオンであり、Xは、塩化物および臭化物から選択されるアニオンであり、aは、塩分子当たりのカチオンの数であり、zは、塩分子当たりのアニオンの数である。
【0143】
アンモニア分離反応器の金属ハロゲン化物は、アルミナ、シリカまたはゼオライトから選択される基材によって担持されてよい。
アンモニア貯蔵ユニット8
アンモニアは、液体アンモニアと理論的に同じ体積密度で金属ハロゲン化物中に効率的に貯蔵されてよい。金属ハロゲン化物はまた、水素と窒素が結合してアンモニアを生成する反応器からアンモニアを吸収するために効果的に使用されてよい。
【0144】
アンモニア貯蔵ユニットの金属ハロゲン化物は、一般式MaXzを有してよい。ここで、Mは、MnおよびMgから選択されるカチオンであり、Xは、塩化物および臭化物から選択されるアニオンであり、aは、塩分子当たりのカチオンの数であり、zは、塩分子当たりのアニオンの数である。
【0145】
アンモニア貯蔵ユニット8は、アンモニア分離反応器7を含んでよい。
アンモニアは、分離されて金属ハロゲン化物中に貯蔵されてよい。ハロゲン化物中のアンモニアの分離および貯蔵の例は、Kale他による、ACS Appl. Energy Mater.,February 7,2020,vo.3,no.3,pp.2576-2584に開示されている。
【0146】
アンモニアは、加熱によって吸収剤から放出される。
制御システム
中央システムコントローラを備えるエネルギー生産システムを動作させる方法であって、
a.中央システムコントローラが、現在の電力生産が電力生産閾値を上回るかまたは下回るかのいずれかであることを受信する工程と
b.電力生産率が電力生産閾値を上回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルシステムが電気分解モードで動作するエネルギー貯蔵モードに切り替えるために、または、電力生産が電力生産閾値を下回る場合に、エネルギー生産システムを、可逆電気化学セルシステムが燃料電池モードで動作するエネルギー生産モードに切り替えるために、中央システムコントローラが信号を送信する工程と、を備える方法。
【0147】
【表2】
図1
図2
図3
【国際調査報告】