(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-30
(54)【発明の名称】抗線維化治療のためのペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240723BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240723BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240723BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240723BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240723BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240723BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240723BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240723BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240723BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240723BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20240723BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240723BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K45/06
A61K48/00
A61P3/10
A61P11/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P17/00
A61P1/16
A61P29/00
A61K39/395 N
A61K39/00 H
A61P7/00
C07K7/06
C07K7/08
C07K16/28
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527718
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 CA2022051139
(87)【国際公開番号】W WO2023000109
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508155077
【氏名又は名称】マクマスター・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】MCMASTER UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1280 MAIN STREET WEST,HAMILTON,ONTARIO L8S 4L8,CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】クレピンスキー,ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】トリンク,ジャッキー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA18
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZA59
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZC35
4C085AA02
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA17
4H045EA20
4H045EA27
(57)【要約】
対象において線維症を処置またはその発生を阻害する方法が提供される。方法は、活性化アルファ2-マクログロブリン(α2M*)と細胞表面78kDaグルコース制御性タンパク質csGRP78の間の相互作用を破壊する実体の治療的有効量を対象に投与することを含む。一実施形態において、活性化α2-マクログロブリン(α2M*)のcsGRP78との相互作用をブロックする新規なペプチドの投与が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化アルファ2-マクログロブリン(α2M
*)と細胞表面78kDaグルコース制御性タンパク質csGRP78の間の相互作用を破壊する実体の治療的有効量を対象に投与することを含む、哺乳動物対象において線維症を処置またはその発生を阻害する方法。
【請求項2】
前記実体が、ポリヌクレオチド、タンパク質、またはペプチドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記実体が、線維症と関連しているアルファ2-マクログロブリン(α2M)の上方制御を阻害するポリヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記実体が、α2M、α2M
*、またはcsGRP78と結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記実体が、csGRP78におけるα2M
*結合部位に由来したα2M
*/csGRP78抗線維化ペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドが、csGRP78ペプチド、LIGRTWNDPSVQQDIKFLに由来し、i)N末端システイン残基を含み、ii)前記csGRP78ペプチドの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含み、およびiii)前記csGRP78ペプチドの三次構造を保持する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗線維化ペプチドが、前記csGRP78ペプチドと少なくとも75%配列同一性を示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記線維症が、肺、腎臓、心臓、皮膚、または骨髄の線維症である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が糖尿病性もしくは非糖尿病性腎臓疾患、特発性肺線維症、またはNASH/肝線維症を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
csGRP78ペプチド、LIGRTWNDPSVQQDIKFLに由来する抗線維化ペプチドであって、i)N末端システイン残基を含み、ii)前記csGRP78ペプチドの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含み、iii)前記csGRP78ペプチドの三次構造を保持し、およびiv)前記csGRP78ペプチドへの少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または付加を含む、抗線維化ペプチド。
【請求項12】
1個または複数のアミノ酸が、α2M
*との共有結合を形成するように機能する反応基を組み入れるように改変されている、請求項11に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項13】
前記反応基が、アクリルアミド、エステル誘導体、α,β-不飽和カルボニル化合物、α,β-不飽和アミド、およびスルホニルフッ化物誘導体から選択される、請求項12に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項14】
リン酸化され、グリコシル化され、または脂質付加により改変されている、請求項11に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項15】
N末端および/またはC末端保護基を含む、請求項11に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項16】
csGRP78ペプチド、LIGRTWNDPSVQQDIKFLに由来する抗線維化ペプチドであって、i)N末端システイン残基を含み、ii)前記csGRP78ペプチドの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含み、iii)前記csGRP78ペプチドの三次構造を保持し、およびiv)α2M
*との共有結合を形成し、もしくは線維性組織をターゲットする1つもしくは複数の実体とコンジュゲートされ、または線維性組織をターゲットする送達系内にパッケージされている、抗線維化ペプチド。
【請求項17】
前記実体が、アクリルアミド、エステル誘導体、α,β-不飽和カルボニル化合物、α,β-不飽和アミド、およびスルホニルフッ化物誘導体からなる群から選択される反応基である、請求項16に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項18】
前記実体が、線維性組織により発現したタンパク質をターゲットする抗体またはその断片である、請求項16に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項19】
前記実体が、線維化器官の細胞をターゲットするリガンドである、請求項16に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項20】
前記リガンドが、線維化腎臓において発現したフィブロネクチンをターゲットする抗体またはその断片である、請求項19に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項21】
前記実体が、血清汎IgG抗体に結合するリガンドである、請求項16に記載の抗線維化ペプチド。
【請求項22】
請求項11から21のいずれか一項に記載の抗線維化ペプチドを、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、組成物。
【請求項23】
1)csGRP78ペプチド、LIGRTWNDPSVQQDIKFLに由来する抗線維化ペプチドであって、i)N末端システイン残基を含み、ii)前記csGRP78ペプチドの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含み、iii)前記csGRP78ペプチドの三次構造を保持する、抗線維化ペプチド、および
2)第2の治療剤
を含む、組成物。
【請求項24】
前記第2の治療剤が抗線維化剤である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記第2の治療剤が、糖尿病を処置するのに有用な作用物質である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2の治療剤が、インクレチンホルモン、メトホルミン、SGLT2阻害剤、スルホニルウレア、またはN-アセチル-セリル-アスパルチル-リジル-プロリンの群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、抗線維化治療に関し、より詳細には、線維症を処置および/または防止するのに有用であるペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性腎臓疾患(DKD)は、先進国において腎不全の主な原因であり、患者は、任意の腎不全患者群の中で最も高い罹患率および死亡率を占めている。現在、処置は、DKD進行を遅らせることができるだけである。したがって、この疾患についての新しい治療標的を同定するという重大な必要性がある。DKDの最も早期の病理学的特徴は、糸球体肥大および基底膜肥厚、続いて、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の沈着による糸球体硬化を含む。糸球体メサンギウム細胞(MC)は、DKDにおける糸球体硬化の発生において中心的割合を果たす。高グルコース(HG)に応答してのMCマトリックス合成に関与する分子機構への洞察は得られているが、臨床的に転換可能な標的の同定はまだ大いに必要とされている。
【0003】
DKD患者のための現在の標準治療は、高血糖の、できる限り正常に近いレベルへの処置を含む。しかしながら、正常な血中グルコースレベルを維持することは、達成することも持続することも難しい場合が多く、正常なグルコースレベルをターゲットすることは、低い血中グルコースの合併症または低血糖症を伴う。ACE阻害剤およびARBの投与が、DKDの進行を遅らせるために用いられているが、それらの使用は、いくぶんか、合併症(高カリウム血症および腎機能の悪化)によって制限される。それらはまた、それらが追加として血圧を制御するため、非特異的処置と考えられ得る。最近、SGLT2阻害剤の使用が、DKD患者のための処方される処置として承認されたが、II型糖尿病を有する者に限定される。泌尿生殖器感染を含む有害作用もまた、いくぶんか、それらの使用を制限している。この現在の標準治療を以てしても、多くのDKD患者はまだなお、末期腎臓疾患へと進行し、それに達していることから、現在の処置選択肢の、疾患発症または進行を阻止するという成功から遠ざけられている。したがって、新しい治療介入が同定されなければならない。
【0004】
小胞体(ER)シャペロン78kDaグルコース制御性タンパク質(GRP78)は、細胞内で適切なタンパク質フォールディングおよびホメオスタシスを維持する。ERストレスなどの非ホメオスタシス状態において、GRP78はまた、細胞表面へトランスロケートして、細胞内シグナル伝達のための受容体として働き得ることは、現在、認識されている。細胞表面(cs)GRP78は、腫瘍細胞において最もよく研究されているが、PI3K/Aktシグナル伝達の活性化を通して、MCによるHG誘導性線維化促進性応答において役割を果たすことが最近示された。しかしながら、どのようにして、HGがcsGRP78を通して細胞内シグナル伝達を誘導するのかはまだ解明されていない。
【0005】
α2-マクログロブリン(α2M)は、様々なプロテイナーゼと結合しかつそれを阻害することができる豊富な血清タンパク質である。それは、720kDaの分子量に、4つの同一の180kDaサブユニットで構成されている。各サブユニットは、いったんプロテイナーゼによって結合されたならば、切断されるベイト領域を含有する。全ての4つのサブユニットの切断により、プロテイナーゼを捕捉する立体構造変化が起こる。その結果生じた複合体は、α2M*と名付けられた、α2Mの活性化型と考えられ、それにおいて、受容体認識部位は露出され、それの2つの同定された受容体、低密度リポタンパク質受容体様タンパク質(LRP1)およびcsGRP78との相互作用を可能にする。csGRP78に対する結合親和性は、主な役割がα2M*のエンドサイトーシスによるクリアランスであるLRP1に対する結合親和性のnMレンジでのKdと比較して、Kd 約100pMで、有意に高い。
【0006】
α2M*のcsGRP78との相互作用は、主に、様々な癌の発病に関与している。α2M*は、csGRP78のNH2末端ドメインにおける領域と結合して、ERK1/2、p38 MAPK、PI3K/Akt、およびNF-κBなどの、腫瘍細胞増殖および生存を促進するシグナル伝達経路を惹起する。MCにおけるHG誘導性PI3K/Akt活性化および下流マトリックス産生は、csGRP78を必要とすることが示されているが、csGRP78を活性化するリガンドはさらに同定されなければならない。
【0007】
糖尿病性腎臓、加えて他の器官における線維化疾患を処置するために有用であろう有効な抗線維化治療を開発することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
α2M*とcsGRP78の間の相互作用の破壊が、対象における線維症の発生を阻害するのに有効であることが現在、決定されている。
【0010】
したがって、本発明の一態様において、α2M*とcsGRP78の間の相互作用を破壊する実体の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象において線維症を処置またはその発生を阻害する方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様において、N末端システインを含むcsGRP78におけるα2M*結合部位に由来したペプチド、および薬学的に許容される担体を含む抗線維化組成物が提供される。
【0012】
さらなる態様において、csGRP78ペプチド、LIGRTWNDPSVQQDIKFLに由来した新規な抗線維化ペプチドであって、i)N末端システイン残基を含み、ii)csGRP78ペプチドの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含み、iii)csGRP78ペプチドの三次構造を保持し、およびiv)csGRP78ペプチドへの少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または付加を含む、抗線維化ペプチドが提供される。
【0013】
本発明の実施形態は、以下に載せられたそれらのそれぞれの図面の以下の説明によって、より深く示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1-1】α2Mが、メサンギウム細胞(MC)においてHGにより、および糖尿病性腎臓において、増加することを示す図である。HGは、MCにおいて、α2M mRNA(24時間)(A)およびタンパク質(48時間)(B)発現を増加させた。浸透圧対照マンニトール(M)に関して効果は見られなかった(A:n=11;B:n=9)(他に対して
*p<0.01)。(C)α2M発現は、10mMから30mMまでのHG(24時間)濃度に用量依存的に増加した(n=3、対照に対して
*p<0.01)。(D)ISHにより評価されたα2M転写産物発現は、週齢40週間の野生型(WT)マウスと比較して、1型糖尿病性Akita腎臓切片において有意に高かった(40×倍率、n=3)(対照に対して
*p<0.01)。(E)IHCにより評価された場合のα2Mタンパク質発現は、野生型マウスと比較して、週齢30週間および40週間の1型糖尿病性Akitaマウスの腎臓切片において有意に高かった(40×倍率、n=10)。(F)これはまた、野生型マウスと比較した、週齢40週間のAkita由来の腎臓溶解物のイムノブロッティングによっても見られた(n=3)(それぞれの対照に対して
*p<0.01または
**p<0.05)。
【
図2-1】活性化α2M(α2M
*)が、メサンギウム細胞においてHGにより、および糖尿病性腎臓メサンギウムにおいて、増加することを示す図である。(A)高グルコース(HG、48時間)は、非変性ゲルを用いて見られる、MCにおけるα2M(左)およびα2M
*(右)の培地発現を増加させた。活性化α2Mは、それの不活性型と比較して非変性ゲル上でより速く移動する。浸透圧対照マンニトール(M)は、効果を生じなかった(n=3)(それの自身の対照に対して
**p<0.05)。(B)α2M
*発現は、週齢30週間および40週間における野生型(WT)マウスと比較して、1型糖尿病性Akitaマウス由来の腎臓切片において有意に高かった(40×倍率、それぞれn=10、それぞれの対照に対して
**p<0.05)。(C)α2M
*発現はまた、それらの非糖尿病性対照と比較して、一側性腎摘出された1型糖尿病性CD1マウスにおいても有意に高かった(40×倍率、n=3、対照群に対して
*p<0.01)。(D)メサンギウム細胞のマーカーα8-インテグリンにより同定されたメサンギウム細胞とのα2M
*共局在は、週齢40週間における野生型マウスと比較して1型糖尿病性Akitaマウス由来の腎臓切片において有意に高かった(40×倍率、n=2、切片あたり20個の糸球体)。DAPIは核マーカーである(それぞれの対照に対して
**p<0.05)。(E)DKD患者由来のヒト生検試料におけるα2M
*発現は、対照腎臓と比較して、有意に高かった(40×倍率、n=4)(対照群に対して
**p<0.05)。
【
図3-1】α2Mノックダウンまたは中和がHG誘導性Akt活性化および下流ECM蓄積を阻害することを示す図である。(A、B)α2M siRNAが、高グルコース(HG、48時間、n=5)に応答して、対照siRNAと比較した場合、フィブロネクチン(FN)、コラーゲン(Col)IV、サイトカイン結合組織増殖因子(CTGF)の上方制御、およびAkt活性化(S473におけるpAkt)を阻害したことを示すイムノブロッティング(個々の群における他の全てに対して
*p<0.01)。(C)1-LN細胞におけるFura 2-AMカルシウムアッセイは、α2M
*(100pM、15分間)に応答しての細胞内カルシウム貯蔵の放出の増加が、中和抗体Fα2M(2μg/ml)の添加で阻害されるが、対照IgGでは阻害されないことを示している。群は、矢印によって示されている処理の時点から1分後に比較された(n=6、
*p<0.01または
**p<0.05)。(D、E)α2M
*の抗体中和は、非特異的IgGと比較して、高グルコース(HG、48時間)誘導性FN、Col IV、およびCTGFタンパク質上方制御ならびにAkt活性化(S473におけるpAkt)を抑止した(n=11)(対照およびHG+Fα2Mに対して
*p<0.01または
**p<0.05)。
【
図4】α2M
*ブロッキングペプチドが、HG誘導性線維化促進性応答を阻害することを示す図である。(A)csGRP78/α2M
*相互作用をブロックするペプチド(Pep)は、1-LN細胞においてα2M
*(100pM、15分間)に応答しての細胞内カルシウム貯蔵の放出を阻害したが、対照スクランブル(Scr)ペプチド(どちらも100nM)は阻害しなかった(n=6、
*p<0.01または
**p<0.05)。(B、C)MCは、(A)においてのようなペプチド有りまたは無しで、高グルコース(HG、48時間)で処理された。阻害性ペプチドは、Akt活性化(B)、ならびにマトリックスタンパク質 フィブロネクチン(FN)およびコラーゲン(Col)IV、および線維化促進性サイトカイン結合組織増殖因子(CTGF)の上方制御(C)を阻止したが、スクランブルペプチドは阻止しなかった(n=5、対照およびペプチド有りのHGに対して
*p<0.01)。
【
図5】LRP1ノックダウンが、Akt活性化にもECM産生にも影響を及ぼさなかったことを示す図である。(A、B)LRP1のsiRNAでのノックダウンは、高グルコース(HG、48時間)に応答して、対照siRNAと比較した場合、Akt活性化(S473におけるpAkt)、またはフィブロネクチン(FN)、コラーゲン(Col)IV、もしくは結合組織増殖因子(CTGF)の産生を減弱させなかった。LRP1ノックダウンの成功は示されている(n=5、個々の群における他の全てに対して
*p<0.01または
**p<0.05)。
【
図6-1】csGRP78過剰発現でのマトリックス合成の増加はα2M
*を必要とすることを示す図である。(A)α2M
*(100pM)は、MCにおいて3時間目および6時間目にGRP78の細胞表面発現を誘導した(n=3、
*p<0.01)(B)HG誘導性Akt活性化(S473におけるpAkt)は、α2M
*(100pM、24時間)の添加によって増大しなかった(n=6、対照に対して
**p<0.05または
*p<0.01)。(C)GRP78の細胞表面へのトランスロケートの増加は、MCにおいて、KDELを欠損するGRP78(ΔKDEL)の過剰発現により誘導された。(D)これは、基底Akt活性化(S473におけるpAkt)と高グルコース(HG、48時間)誘導性Akt活性化の両方を増加させた。(E)同様の所見は、HG(48時間)誘導性フィブロネクチン(FN)、コラーゲン(Col)IV、および結合組織増殖因子(CTGF)上方制御に関して見られた(C,D,Eについて:n=3、空ベクター(EV)対照に対して
**p<0.05(t検定により有意)またはΔKDELベクター対照に対して
*p<0.01)。(F)Akt活性化(S473におけるpAkt)およびコラーゲン(Col)IV上方制御を含む、GRP78 ΔKDEL過剰発現に関して見られたHGへの応答の増大は、α2M
*/csGRP78阻害性ペプチド(Pep)により阻止されたが、スクランブル(Scr)対照ペプチドによっては阻止されなかった(n=5、
**p<0.05または
*p<0.01)。(G)同様の阻害は、Fα2M(2μg/ml)を用いるα2M
*中和に関して見られた(n=4、
**p<0.05または
*p<0.01)。
【
図7】確定されたDKDを有する患者における尿TGFβ1/α2M
*の関連に関して、MCにおいてTGFβ1産生がα2M
*に依存することを示す図である。(A)α2M
*のFα2M(2μg/ml)での中和は、ELISAにより評価された場合、培地へのTGFβ1の高グルコース(HG、48時間)誘導性分泌を阻止した(n=4、
****p<0.0001)。対照IgGは効果を生じなかった。(B)確定されたDKDを有する患者において尿中のα2M
*とTGFβ1の間に関連があった(p=0.03、ピアソン相関)。
【
図8-1】後期DKDにおいて尿細管間質性線維症を促進する近位尿細管細胞および腎線維芽細胞に関して、(A)近位尿細管細胞および(B)腎線維芽細胞におけるHG誘導性csGRP78発現、(C)尿細管細胞におけるcsGRP78阻害によるHG誘導性FAK活性化(Tyr397のリン酸化)およびECM産生の減弱、(D)腎線維芽細胞におけるcsGRP78阻害がHG誘導性FAK活性化およびマトリックス産生を阻止したこと、ならびにcsGRP78とα2M
*との相互作用を阻止する阻害性ペプチドが、(E)近位尿細管細胞および(F)腎線維芽細胞の両方において、HG誘導性Akt活性化(Ser473におけるリン酸化)およびECM産生を減弱させたことを示す図である。
【
図9】非糖尿病性慢性腎臓疾患(CKD)のモデルである、5/6腎摘出された(Nx)マウスにおいてα2M
*が増加することを示す図である。CD-1マウスは、一側性腎摘出術、続いて、残りの腎臓の2/3の腎摘出術を受けた。腎臓α2M
*は、10週間後、IHCにより評価された。
【
図10】肺線維症のブレオマイシンモデルにおける、線維症が見てすぐにわかる21日目でのα2M
*染色により、α2M
*およびα2Mが肺線維症で増加することを示す図である。
【
図11-1】以下を示す図である:A)Leu
98~Leu
115においてN末端システイン残基を含まないペプチド(Pep woC)がカルシウムシグナル伝達を阻害しなかったことを示す、1LN細胞におけるカルシウムシグナル伝達アッセイの結果、B)Pep woCがMCにおいてHG誘導性線維化促進性応答を阻止しないことを示す結果、C)N末端システインの代わりにメチオニン(M Pep)、ペプチドダイマー(Dimer Pep)、および環状ペプチド(Cyclic Pep)が、カルシウムシグナル伝達を阻害しないことを示すカルシウムシグナル伝達の結果、D)MCにおいてこれらのペプチドがまた、HG誘導性線維化促進性応答を阻止しないことを示す結果。
【
図12】MCにおいてHG誘導性α2M
*/csGRP78の媒介による線維化促進性シグナル伝達について提案された経路を示す概略図である。HGは、α2Mの合成および活性化の増加、加えて、それの受容体GRP78の細胞表面へのトランスロケートをもたらす。α2M
*/csGRP78間の相互作用は、Aktの活性化ならびに下流の線維化促進性サイトカインおよび細胞外マトリックスタンパク質の合成をもたらす。
【
図13-1】ヒトα2Mのアミノ酸配列(A)および核酸コード配列(B)を提供する図である。
【
図14-1】ヒトcsGRP78のアミノ酸配列(A)および核酸コード配列(B)を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
活性化α2-マクログロブリン(α2M*)と細胞表面78kDaグルコース制御性タンパク質(csGRP78)の間の相互作用を破壊する実体の治療的有効量を対象に投与することを含む、対象において線維症を処置またはその発生を阻害する方法が提供される。
【0016】
本方法は、線維症を処置または防止するのに適用できる。本明細書で用いられる場合、線維性瘢痕としても知られる線維症という用語は、結合組織が正常な実質組織と置き換わって、細胞外マトリックスの過剰な蓄積、および、最終的には、永久的線維性瘢痕の形成をもたらす、病理学的状態を包含することが意図される。線維症は、様々な器官、例えば、肺(嚢胞性線維症または特発性肺線維症などの肺線維症)、肝臓(例えば、脂肪性肝炎または自己免疫疾患からの線維症)、腎臓(糖尿病性腎臓疾患を含む任意の原因の慢性腎臓疾患)、心臓(梗塞後などの心筋線維症)、加えて皮膚(例えば、強皮症、ケロイド、または腎性全身性線維症)、および骨髄(骨髄線維症)において起こり得る。
【0017】
アルファ2-マクログロブリン(アルファ2Mまたはα2M)は、様々なプロテイナーゼと結合しかつそれを阻害することができる豊富な血清タンパク質である。用語「アルファ2M」は、ヒトα2Mおよび他の哺乳動物種のα2M、加えてそれらの機能的に等価のバリアントおよびアイソフォームを含む、哺乳動物α2Mを包含する。アルファ2-マクログロブリンの活性化型(アルファ2M*またはα2M*)は、アルファ2Mの4つのサブユニットを含む。ヒトα2Mは、NCBI参照配列のアミノ酸配列:少なくとも遺伝子配列、NCBI参照、NM_000014.6(バリアント1)および遺伝子配列、NCBI参照、NM_001347423(バリアント2)によりコードされるNP_000005.3(アイソフォームa)を有する。アイソフォームbは、NCBI参照、NP_001334353のアミノ酸配列を有し、およびアイソフォームcは、NCBI参照 NP_001334354のアミノ酸配列を有する。
【0018】
結合性イムノグロブリンタンパク質(BiP)または熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)としても知られる、GRP78(78kDaグルコース制御性タンパク質)は、小胞体内に位置する分子シャペロンである。GRP78またはcsGRP78という用語は、ヒトおよび他の哺乳動物種のGRP78、加えてそれらの機能的に等価のバリアントおよびアイソフォームを含む、哺乳動物GRP78を包含する。ヒトGRP78は、少なくとも遺伝子配列、NCBI参照、NM_005347によりコードされるNCBI参照配列:NP_005338のアミノ酸配列を有する。
【0019】
本方法は、α2M*とcsGRP78の間の相互作用を破壊する実体を対象に投与するステップを含む。その実体は、α2M*とcsGRP78の間の相互作用を破壊し、阻止し、または最小にし、かつ生理学的に許容される任意の実体であり得る。その実体はタンパク質であり得、それには、α2MおよびcsGRP78のいずれかに対する抗体、α2MおよびcsGRP78のいずれかの結合部位(および、したがって、α2MとcsGRP78の結合)をブロックするペプチドなどのペプチド、α2MまたはcsGRP78の発現を阻止する核酸、ならびにα2MとcsGRP78との相互作用を阻止する小分子、ならびにその他同種類のものが挙げられる。
【0020】
一実施形態において、α2MまたはcsGRP78の遺伝子発現は、
図13Bおよび14B、それぞれに示された配列などのα2MまたはcsGRP78コード核酸配列に由来する、アンチセンスまたはRNA干渉阻害剤に基づいたポリヌクレオチド、例えば、siRNA、shRNA、およびその他同種類のものを利用して阻害され得る。一実施形態において、そのようなポリヌクレオチドは、線維症と関連しているα2Mの上方制御、例えば、線維症を発生する可能性がある、または発生している器官(例えば、腎臓)におけるα2Mの局所的上方制御を阻害するために用いられ得る。
【0021】
α2MおよびcsGRP78をコードする核酸配列の知識は、所望の阻害を生じるのに有効なアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製するために用いることができる。したがって、そのような配列は、α2MまたはcsGRP78核酸と結合し、かつその発現を阻害するのに有効なアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製するために用いられ得る。本明細書で用いられる場合、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的核酸配列の少なくとも一部分と相補的であるヌクレオチド配列を意味する。用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)連結からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのオリゴマーまたはポリマーを指す。その用語はまた、同様に機能する、天然に存在しないモノマーを含む修飾型または置換型オリゴマー、またはその一部分を含む。そのような修飾型または置換型オリゴヌクレオチドは、増強された細胞取込みまたはヌクレアーゼの存在下での増加した安定性などの性質の故に、天然に存在する型より好ましい場合がある。その用語はまた、2つ以上の化学的に異なる領域を含有するキメラオリゴヌクレオチドを含む。例えば、キメラオリゴヌクレオチドは、有益な性質(例えば、増加したヌクレアーゼ抵抗性、増加した細胞への取込み)を与える修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域、加えてアンチセンス結合領域を含有し得る。加えて、2つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドが連結されて、キメラオリゴヌクレオチドを形成してもよい。
【0022】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボ核酸またはデオキシリボ核酸であり得、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む天然に存在する塩基を含有し得る。オリゴヌクレオチドはまた、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、2-プロピル、および他のアルキルアデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザチミン、プソイドウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオールアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、および他の8-置換型アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオールアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、および他の8-置換型グアニン、他のアザおよびデアザウラシル、チミジン、シトシン、アデニン、またはグアニン、5-トリ-フルオロメチルウラシルおよび5-トリフルオロシトシンなどの修飾塩基を含有し得る。
【0023】
本発明の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾亜リン酸、リン酸骨格内における酸素ヘテロ原子、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間連結または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間連結を含有し得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、およびホスホロジチオエートを含有し得る。加えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、連結の組合せを含有し得、例えば、ホスホロチオエート結合は、4~6個の3’末端塩基だけを連結してもよいし、全部のヌクレオチドを連結してもよいし、または1ペアの塩基だけを連結してもよい。
【0024】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、治療用または実験用試薬としてより良く適し得るヌクレオチド類似体を含み得る。オリゴヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)内のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格が、ペプチド内に見出されるものと類似しているポリアミド骨格と置き換えられているペプチド核酸(PNA)である(P.E.Nielsonら Science 1991、254、1497)。PNA類似体は、酵素による分解に対して抵抗性であること、ならびにインビボおよびインビトロでの寿命が長期であることが示されている。PNAはまた、PNA鎖とDNA鎖の間に電荷反発がないため、相補的DNA配列とのより強い結合を形成する。他のオリゴヌクレオチド類似体は、ポリマー骨格、環状骨格、または非環状骨格を有するヌクレオチドを含有し得る。例えば、ヌクレオチドは、モルホリノ骨格構造を有し得る(米国特許第5,034,506号)。オリゴヌクレオチド類似体はまた、レポーター基、保護基、およびオリゴヌクレオチドの薬物動態学的性質を向上させるための基などの基を含有し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、当業者により認識されるように、糖模倣体を組み込み得る。
【0025】
アンチセンス核酸分子は、本明細書に提供されたものなどの所定のα2MまたはcsGRP78核酸配列に基づいて、当技術分野において知られた手順を用いた化学合成および酵素ライゲーション反応を用いて構築され得る。本発明のアンチセンス核酸分子またはその断片は、天然に存在するヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増加させるように、もしくはmRNAもしくは天然遺伝子と形成された二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された様々に修飾されたヌクレオチド、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換型ヌクレオチドを用いて、化学合成され得る。アンチセンス配列はまた、生物学的に産生され得る。この場合、アンチセンスコード核酸は、発現ベクター内に組み込まれ、その後、その発現ベクターが、組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒ウイルスの形をとって細胞へ導入され、その細胞内で、アンチセンス配列が、高効率の制御領域の調節下で産生され、その制御領域の活性は、そのベクターが導入される細胞型により決定され得る。
【0026】
別の実施形態において、siRNA/shRNAテクノロジーが、α2MまたはcsGRP78の発現を阻害するために適用され得る。α2MまたはcsGRP78遺伝子における領域と対応し、かつその遺伝子を選択的にターゲットするsiRNA/shRNA断片などの核酸断片の適用が、α2MまたはcsGRP78発現をブロックするために用いられ得る。そのようなブロッキングは、siRNA/shRNA断片がその遺伝子と結合する時に起こり、それにより、機能性α2MまたはcsGRP78を生じ得るその遺伝子の翻訳を阻止する。
【0027】
α2MまたはcsGRP78に対応するsiRNA(低分子干渉RNA)およびshRNA(低分子ヘアピンRNA)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関して上記で概要が示されているように、核酸合成の十分確立された方法を用いて作製される。標的α2MまたはcsGRP78遺伝子の構造は知られているので、それと対応するRNAの断片は容易に作製することができる。
【0028】
本方法において有用なsiRNA/shRNA断片は、遺伝子発現のより効果的な阻害を提供し得るα2MまたはcsGRP78をコードする核酸の特定の領域に由来し得ることは当業者により認識される。加えて、当業者により認識されるように、有用なsiRNA断片は、α2MまたはcsGRP78標的遺伝子と正確に対応する必要はなく、配列改変、例えば、その中のヌクレオチド塩基のうちの1個または複数の付加、欠失、または置換を組み込んでもよく、ただし、その改変されたsiRNAが標的遺伝子と選択的に結合する能力を保持することを条件とする。選択されたsiRNA断片は、使用のためにより望ましい断片を生じるように、さらに改変されてもよい。例えば、siRNA断片は、アンチセンスオリゴヌクレオチドについて記載されたものと同様の方法で、増加した安定性を獲得するように改変され得る。
【0029】
α2MまたはcsGRP78活性をブロックする、選択されたポリヌクレオチドの効率は、細胞に基づいたアッセイを用いて、すなわち、α2MまたはcsGRP78を発現する細胞を用いて、確認することができる。簡単に述べれば、選択されたポリヌクレオチドを、適切な増殖条件下で細胞株とインキュベートし得る。十分な反応時間、すなわち、ポリヌクレオチドが、α2MまたはcsGRP78核酸(DNA/mRNA)と結合して、減少したレベルの遊離α2MまたはcsGRP78 mRNAを生じるための、十分な反応時間後、反応混合物を、そのような減少が起こったかどうかを決定するために試験する。適切なポリヌクレオチドは、機能性タンパク質を生じ得るα2MまたはcsGRP78遺伝子のプロセシングを阻止するだろう。これは、細胞に基づいたアッセイにおいて関連活性、すなわち、Akt活性化の阻害または細胞外マトリックスタンパク質発現の低下についてアッセイすることにより検出することができる。
【0030】
いったん調製されたならば、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAなどの、α2MまたはcsGRP78遺伝子発現を阻害するのに有用であると決定されたオリゴヌクレオチドは、α2MとcsGRP78との相互作用を阻止または最小にするための本治療方法に用いられ得る。適切なオリゴヌクレオチドは、ベクター(レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびDNAウイルスベクター)を含む当技術分野における技術を用いて、またはマイクロインジェクションなどの物理的技術を用いることにより、哺乳動物の組織または細胞へ導入され得る。
【0031】
α2M*とcsGRP78との相互作用はまた、タンパク質レベルにおいて、例えばα2M*またはcsGRP78の一方または他方の結合部位に基づいた、例えば、免疫学的阻害剤、合成小分子、またはペプチド模倣体を用いて、阻害され得る。
【0032】
α2Mと結合しかつα2M*の活性化を阻止するポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに/またはα2M*もしくはcsGRP78に結合し、かつその結果として、α2M*とcsGRP78の間の相互作用のブロッキングを生じる抗体などの免疫学的阻害剤は、KohlerおよびMilstein(Nature 256、495~497(1975))によって開発された、十分確立されたハイブリドーマテクノロジーを用いて調製され得る。ハイブリドーマ細胞は、相互作用に関与するα2M*またはcsGRP78の領域と特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、その後、その反応性モノクローナル抗体を単離することができる。アルファ-2MおよびGRP78抗体はまた、例えば、Abcam,ProteintechおよびThermoFisher Scientificから市販されている。本明細書で用いられる場合、用語「抗体」は、本発明によるα2M*またはcsGRP78と特異的に反応する能力を保持するその抗原性断片、加えて、抗原性キメラ抗体誘導体、すなわち、可変性の非ヒト動物ペプチド領域と定常のヒトペプチド領域の組合せから生じる抗体分子を含むことが意図される。
【0033】
ペプチド阻害剤はまた、α2M*とcsGRP78の間の相互作用をブロックするために用いられ得、例えば、ペプチドは、α2M*の結合領域またはcsGRP78の結合領域と相互作用するように設計される。α2M*の受容体結合ドメインは、α2MのC末端、ヒト配列における残基1314~1451にあり、それにおいて、1374位のリジン残基は、csGRP78との結合にとって重要であり、GRP78の受容体結合ドメインは、そのN末端領域のアミノ酸98から115までである。
【0034】
一実施形態において、ペプチド阻害剤は、天然のcsGRP78結合領域、すなわち、csGRP78の98位から115位までのアミノ酸を含む領域に基づいている。この領域に基づいた適切なペプチドは、残基97位にN末端システイン残基を含み、csGRP78におけるこの領域の三次構造を保持するだろう。好ましくは、そのペプチドは、この領域由来の少なくとも約10個の連続したアミノ酸残基を含み、約10~50アミノ酸長、例えば、10~25アミノ酸残基長であり得る。この領域に基づいたペプチド阻害剤の例はペプチド、CLIGRTWNDPSVQQDIKFL(配列番号1)である。当業者により認識されるように、そのペプチドは、α2M*とcsGRP78の間の相互作用をブロックするそれの機能に悪影響を及ぼさない配列改変を含んでもよい。配列改変は、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、または付加を含み得る。置換に関して、好ましくは、これらは、構造および電荷が類似しているアミノ酸との保存的アミノ酸置換である。好ましくは、ペプチド阻害剤は、天然csGRP78結合領域と少なくとも約75%配列同一性(すなわち、多くて5つのアミノ酸置換、付加、または欠失)、より好ましくは、少なくとも約80%、85%、90%、または95%配列同一性(すなわち、4つまたはそれ未満の配列改変を含む)を保持する。一実施形態において、アミノ酸の1個または複数は、D-アミノ酸類似体、ベータアミノ酸、環状/制御型アミノ酸、または他の非天然アミノ酸と置換されてもよい。アミノ酸側鎖修飾もまた、ペプチド内に組み入れられてもよく、例えば、共有結合性反応性弾頭、すなわち、標的(α2M*)を共有結合形成によって結合するように機能する反応基、例えば、アクリルアミド、エステル誘導体、α,β-不飽和カルボニル化合物、α,β-不飽和アミド、およびスルホニルフッ化物誘導体などの反応基の組入れである。
【0035】
ペプチドは、ペプチドを安定化し、プロテアーゼ抵抗性(例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、血清プロテアーゼ、または細胞内プロテアーゼの任意の1つまたは複数に対する)を与え、および/または有利には、ペプチドの薬物動態を改変する、1つまたは複数の化学修飾を含んでもよい。そのような修飾には、リン酸化、グリコシル化、ならびに/またはシステインプレニル化、N末端グリシンミリストイル化、システインパルミトイル化、およびセリンおよびリジン脂肪酸アシル化などの脂質付加が挙げられ得る。ペプチドは、望ましくない酵素的または化学的分解を防止するためにそれの末端で修飾され得、例えば、N末端および/またはC末端ブロッキング基が挙げられる。適切なN末端保護基には、例えば、式RC(O)-(式中、Rは直鎖状または分岐状C1~5アルキル鎖である)の低級アルカノイル基が挙げられる。本化合物のN末端を保護するための好ましい基は、アセチル基CH3-C(O)である。アミノ官能基を欠くアミノ酸類似体もまた、N末端保護基として適している。適切なC末端保護基には、C末端カルボキシルの炭素原子においてケトンもしくはアミドを形成する基、またはそのカルボキシルの酸素原子においてエステルを形成する基が挙げられる。ケトンおよびエステル形成基には、アルキル基、特に分岐状または非分岐状C1~5アルキル基、例えば、メチル、エチル、およびプロピル基が挙げられ、一方、アミド形成基には、一級アミン(-NH2)などのアミノ官能基、またはアルキルアミノ官能基、例えば、モノ-C1~5アルキルアミノ基およびジ-C1~5アルキルアミノ基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、およびその他同種類のものが挙げられる。アミノ酸類似体はまた、本化合物のC末端を保護するのにも適しており、例えば、アグマチンなどの脱炭酸アミノ酸類似体である。
【0036】
ペプチドはまた、血清安定性およびペプチド循環時間を増強するために血清パネル反応性IgG抗体に結合するリガンドを組み入れるように改変され得る。そのようなリガンドは、ペプチド配列上のどこにでも位置し得る。リガンドは一般的に、白血球抗原(HLA)、ペプチジルグリシン アルファ-アミド化モノオキシゲナーゼ(PAM)、Fc-III、FcBP-1、FcBP-2、Fc-III-4c、およびFcRMなどの細胞表面抗原である。
【0037】
候補阻害剤は、阻害性ポリヌクレオチドの決定について上記のような細胞に基づいた系において関連活性についてアッセイすることにより阻害活性についてスクリーニングされ得る。この場合、細胞は、候補阻害剤とインキュベートされ、α2M*とcsGRP78の間の相互作用の直接的阻害についてモニターされる。この阻害は、同様に、細胞に基づいたアッセイにおいて関連活性、例えば、Akt活性化の阻害または細胞外マトリックスタンパク質発現の低下についてアッセイすることにより検出される。
【0038】
本抗線維化阻害剤は、線維化器官のターゲティングを増大するように改変され得る。例えば、阻害剤は、線維性組織をターゲットまたは特定の器官(例えば、肺、腎臓、または肝臓)をターゲットする実体、例えば、線維性組織により発現したタンパク質をターゲットする抗体またはその領域とコンジュゲートされ得る。そのような実体の例は、線維化腎臓において発現したフィブロネクチンEDAアイソフォーム(FnEDA)をターゲットする抗体またはその断片(可変ドメイン)である。特定の器官をターゲットする改変の例は、標的器官の細胞を選択的にターゲットするリガンドへの阻害剤のコンジュゲーションである。その例には以下が挙げられる:1)肝臓線維症の主因である、肝実質細胞をターゲットするためのガラクトースの阻害剤へのコンジュゲーション(ガラクトースは、肝実質細胞の表面上に主に位置するアシアロ糖タンパク質受容体(ASGP-R)に対する特異的なリガンドであるからである);2)腎臓におけるいくつかの細胞型をターゲットする腎臓ターゲティングペプチド(LPVAS(配列番号2));3)薬物を腎臓へ効率的に送達することが示された低分子量キトサン(LMWC)-亜鉛複合体へのコンジュゲーション。
【0039】
さらに、抗線維化阻害剤は、線維性組織をターゲットする薬物送達系にパッケージングされ得る。一実施形態において、マクロファージ媒介性薬物送達系は、抗線維化阻害剤の肺への送達用として提供される。マクロファージ媒介性薬物送達系は、阻害剤、または阻害剤を負荷されたナノ粒子、例えば、リポソーム、金および/もしくはシリカナノシェル、グラフェンナノクリスタル、キトサンアルブミン、もしくは他のポリマーナノシェルをマクロファージ、マクロファージ膜、またはマクロファージ由来ベシクルへ負荷することにより調製することができる。マクロファージは、骨髄由来マクロファージ、肺胞マクロファージ、もしくは腹腔マクロファージなどのプライマリーマクロファージ、または細胞バンクにおいて培養されたマクロファージであり得る。
【0040】
本発明による治療用抗線維化阻害剤は、対象において線維症を処置するために、α2M*とcsGRP78の間の相互作用をブロックするように対象へ投与され得る。用語「処置する」、「処置すること」、または「処置」は、病理学的線維性状態を良好に変化させる方法、例えば、対象において線維症の重症度を緩和し、逆転させ、低下させ、または線維症から保護する方法を指すように本明細書で用いられる。いかなる特定の理論にも限定されることを望まないが、α2M*とcsGRP78の間の相互作用をブロックすることが、線維化促進性Akt活性化を阻害して、結果として、下流マトリックスおよび線維化促進性サイトカイン産生の阻害を生じる。本明細書で用いられる場合、用語「対象」は、ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含む、哺乳動物対象を指す。阻害剤は、対象へ治療的有効量で投与される。用語「治療的有効量」は、線維症を処置する、例えば、細胞外マトリックスタンパク質の産生を少なくとも約10%またはそれ以上、例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上、低下させるために必要とされる阻害剤の量である。治療的有効量である抗線維化阻害剤の投薬量は、処置されるべき状態および状態の重症度、阻害剤の性質、加えて、処置される特定の個体を含む多くの因子によって変わる。ペプチドに基づいた阻害剤の適切な投薬量は、それの薬物動態学的性質に基づいて約1ng/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。抗体に基づいた阻害剤の投薬量は、10mgから1500mgまでの範囲であり得、または個別化された投薬は、抗体の濃度のポイントオブケア評価に基づいて設定され得る。
【0041】
核酸に基づいた阻害剤、タンパク質に基づいた阻害剤、および他の阻害剤を含む治療用抗線維化阻害剤は、適切な薬学的に許容される担体と組み合わせて投与され得る。表現「薬学的に許容される」とは、薬学的および獣医学的技術分野における使用に受け入れられること、すなわち、受け入れられない毒性がなく、またはその他の点で不適切でもないことを意味する。薬学的に許容される担体の例には、希釈剤、賦形剤、およびその他同種類のものが挙げられる。一般的に薬物製剤に関するガイダンスとして、「Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy」、第21版、Lippincott Williams & Wilkins、2005が参照され得る。補助剤の選択は、阻害剤の型、および組成物の意図される投与様式に依存する。本発明の一実施形態において、化合物は、注入による、または皮下に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、腹腔内に、髄腔内に、脊髄内に、皮膚上に、または人工マトリックスの一部としてのいずれかでの注射による投与のために製剤化され、それにしたがって、無菌かつパイロジェンフリーの形をとる水溶液として利用され、任意で、緩衝化されまたは等張性にされる。したがって、化合物は、蒸留水中で、またはより望ましくは、食塩水、リン酸緩衝食塩水、もしくは5%デキストロース溶液中で、投与され得る。錠剤、カプセル、または懸濁液による経口投与のための組成物は、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースを含む、その誘導体;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、およびコーン油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;寒天;アルギン酸;水;等張食塩水およびリン酸緩衝溶液を含む補助剤を用いて調製される。湿潤剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、安定剤、錠剤化剤、抗酸化剤、保存剤、着色剤、および香味剤もまた存在してもよい。例えば経鼻送達のための、適切な噴霧補助剤が用いられるエアロゾル製剤もまた、調製され得る。他の補助剤もまた、組成物へ、どのようにそれが投与されるかに関わらず、加えられる場合があり、例えば、抗微生物剤が、長期保存期間にわたって微生物増殖を防止するために組成物へ加えられ得る。
【0042】
本治療用阻害剤は、線維症の処置を増強するために1つまたは複数の治療剤と共に対象へ投与され得る。例えば、阻害剤は、線維症を処置するのに有用な別の薬物と、混合組成物においてか、または同じもしくは異なる時点で投与される別々の組成物においてかのいずれかで、共投与され得る。一実施形態において、腎臓線維症の処置のために、本抗線維化阻害剤は、膵臓からのインスリン放出を促進する、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストまたはグルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)などのインクレチンホルモンと共に用いられ得る。例には、エキセナチド、セマグルチド、およびデュラグルチドが挙げられ、それらは、注射により、または経口(セマグルチド)で投与される。
【0043】
別の実施形態において、経口で投与可能な抗線維化阻害剤は、経口で投与可能な抗糖尿病薬物、例えば、メトホルミン、SGLT2阻害剤、スルホニルウレア、または経口で生物学的に利用可能なペプチド、例えば、N-アセチル-セリル-アスパルチル-リジル-プロリンもしくはAcSDKP(配列番号3)と併用して投与され得る。
【0044】
I.定義
他に指示がない限り、このセクションおよび他のセクションに記載される定義および実施形態は、当業者により理解されるように、それらが適している本明細書に記載された本出願の全ての実施形態および態様に適用できることが意図される。
【0045】
本出願の範囲を理解することにおいて、本明細書で用いられる場合、用語「含む(comprising)」およびそれの派生語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を排除しない、オープンエンドな用語であることが意図される。前述はまた、用語「含む(including)」、「有する(having)」、およびそれらの派生語などの類似した意味をもつ語にも適用される。本明細書で用いられる場合、用語「からなる(consisting)」およびそれの派生語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定するが、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を排除する、クローズドな用語であることが意図される。本明細書で用いられる場合、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在、加えて、特徴、要素、成分、群、整数、および/またはステップの基本的かつ新規な特性に実質的に影響することがないものの存在を特定することが意図される。
【0046】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの程度の用語は、最終結果が有意には変化しないような、修飾された用語の合理的な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきであり、ただし、この偏差が、それが修飾する語の意味を無効にしないという条件においてである。
【0047】
追加または第2のペプチドなどの「追加の」または「第2の」成分を含む実施形態において、本明細書で用いられる場合、第2の成分は、他の成分または第1の成分とは化学的に異なる。「第3の」成分は、他の、第1の、および第2の成分とは異なり、さらに列挙されたまたは「追加の」成分は、同様に、異なる。
【0048】
本明細書で用いられる場合、用語「および/または」は、列挙された項目が、個々にまたは組み合わせて、存在する、または用いられることを意味する。事実上、この用語は、列挙された項目の「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」が用いられまたは存在することを意味する。
【0049】
様々な改変が、本発明のペプチドになされ得ることは明らかである。前記改変には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、リジンまたはヒスチジンの側鎖上のo-アミノ基のメチル化、N末端アミノのアセチル化、C末端カルボキシルのアミド化、Dアミノ酸類似体での置き換え、ジスルフィド架橋ペプチドダイマーの生成、アミノ酸側鎖への共有結合性弾頭の付加、頭尾環化、らせん度を促進するためのアミノ酸キャッピング、構造活性相関分析に基づいた非天然アミノ酸の使用が挙げられるが、それらに限定されない。開示されたアミノ酸配列を含むこれらの改変ポリペプチドもまた、本発明の範囲内に包含される。
【0050】
以下の実施例は本発明の範囲を例証する。実施例の特定の要素は、説明のためだけであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。当業者は、本発明の範囲内にある、等価の方法を開発することができ、同等の材料を利用することができると思われる。
【実施例】
【0051】
細胞培養 - プライマリーメサンギウム細胞(MC)を、雄C57BL/6マウスから、糸球体ふるいにより取得し、20%ウシ胎仔血清、ストレプトマイシン(100μg/mL)、およびペニシリン(100μg/mL)を追加したダルベッコ改変イーグル培地(Sigma)において培養した。高レベルのcsGRP78を発現する1LN前立腺癌細胞(Hartら、J Biol Chem.2002;277(44):42082~42087に記載されているように)を、10%ウシ胎仔血清を追加したRPMI 1640(ThermoFisher)中で培養した。細胞を、37℃、95%O2および5%CO2で増殖した。不死化ヒト近位尿細管細胞株HK2(ATCC、Burlington、Canada)を、DMEM/F12培地中10%FBSにおいて培養した。プライマリーラット腎線維芽細胞(Cell Biologics、Burlington、Canada)を、DMEM/F12培地中10%FBSにおいて培養した。MCを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む培地において血清除去し、HG(30mM)、浸透圧対照としてマンニトール(24.4mM)、またはメチルアミン活性化α2M(100pM)での処理の24時間前に、HK2およびRF細胞を、0.5%FBSにおいて飢餓状態にさせた。α2M*が結合するGRP78におけるペプチド配列(CLIGRTWNDPSVQQDIKFL)(追加のN末端システインを有するLeu98~Leu115)を用いて、それらの相互作用をブロックした(Gopalら、J Biol Chem.2016;291(20):10904~10915)。スクランブルペプチド、GTNKSQDLWIPQLRDVFI(配列番号4)を、対照として用い、どちらのペプチドも100nMで用いた(Cedarlane)。以下のような追加のペプチドが、Biomatikによって合成された:1)N末端システインを欠くペプチド、2)システインがメチオニンにより置き換えられたペプチド、3)システインを介して二量体化されたペプチド(LFKIDQQVSPDNWTRGILC-----S-S-------CLIGRTWNDPSVQQDIKFL)(配列番号5)、システインが未変化のままであるアミドを介しての頭尾環化。
【0052】
タンパク質抽出およびイムノブロッティング - 細胞を、以前記載されているように溶解した(Krepinskyら、Nitric Oxide Inhibits Stretch-Induced MAPK Activation in Mesangial Cells Through RhoA Inactivation.2003年オンライン公開doi:10.1097/01.ASN.00000940.85.04161.A7)。タンパク質を、SDS-PAGEを用いて分離し、続いてイムノブロッティングを行った。用いられた抗体は以下であった:α2M(1:1000、Bioss)、以前記載されているように立体構造的に変化したα2M*のみを検出するマウスモノクローナルF-α2M(1:1000)、pAkt S473(1:1000、Cell Signaling)、全Akt(1:1000、Cell Signaling)、pSmad3 Ser423/425(1:4000、Novus)、全Smad3(1:1000、Abcam)、リン酸化接着斑キナーゼ(pFAK)Tyr-397(1:1000、Millipore、07-012)、FAK(1:1000、Santa Cruz Biotechnology、SC558)、LRP1(1:1000、Abcam)、GRP78(C20)(1:1000、Santa Cruz)、血小板由来増殖因子-β(PDGFR-β)(1:1000、Cedarlane)、コラーゲンIV(Col IV)(1:1000、Cell Signaling)、フィブロネクチン(FN)(1:1000、Abcam)、結合組織増殖因子(CTGF)(1:1000、Santa Cruz)、およびチューブリン(1:2000、Santa Cruz)。
【0053】
培地を、156kDaカラム(Amicon Ultra 4mL遠心フィルター)を用いて濃縮し、非変性ポリアクリルアミドゲル上に流した。転写後、膜を、不活性α2Mと、立体構造的に変化しかつより迅速に移動したα2M*の両方についてプローブした。Nativemark未染色タンパク質ラダー(ThermoFisher)およびメチルアミン活性化α2Mを用いて、バンド位置を確認した。
【0054】
qPCRを用いるRNA分析 - RNAを、Trizol(Invitrogen)を用いて抽出し、1μgを、qScript Supermix試薬(Quanta Biosciences)を用いて逆転写した。α2Mについてのプライマーは以下の通りであった:フォワード5’-CCAGGACACGAAGAAGG-3’(配列番号6)およびリバース5’-CACTTCACGATGAGCAT-3’(配列番号7)。定量的PCRを、Applied Biosystems Vii 7リアルタイムPCRシステムにおいてPower SYBR Green PCRマスターミックスを用いて実施した。mRNA発現の変化を、ΔΔCt方法を用いて、18Sに関して決定した。
【0055】
実験動物および組織処理 - 全ての研究は、McMaster Universityおよびカナダ動物愛護協議会ガイドラインに従って行われた。以下の2匹の1型糖尿病モデルが評価された:1)雄1型糖尿病C57BL/6-Ins2Akita/Jマウス(Jackson Laboratories)およびそれらの野生型対照が、週齢18週間、30週間、および40週間に屠殺された。2)雄CD1マウス(Charles River)が、腎摘出術を受け、その後、200μgストレプトゾトシンを注射され、12週間の糖尿病後、屠殺された。ヒト研究について、DKDと診断された腎臓生検試料を、入手した。切除された腎癌を囲む正常な腎臓組織を対照として用いた。地域研究倫理委員会(REB)による承認後、組織を入手した。db/db 2型糖尿病モデルもまた用いられ、週齢16週間の雄の糖尿病または対照のマウス由来の腎臓組織を協力者から入手した。非糖尿病性CKDモデルを作製するために、雄CD1マウス(Charles River)は、2段階で行われた5/6腎摘出術(Nx)(一側性腎摘出術、続いて、1週間後、反対側の腎臓の2/3切除)を受け、2回目の手術から9週間後、腎臓評価が行われた。最後に、IPFについてのマウスモデルを、麻酔下でのブレオマイシンの気管内注射により作製し、注射から21日後、肺を採取した。
【0056】
イムノブロッティングについて、試料を、1.4mmセラミックビーズ(Lysing Matrix D、MP Biomedicals)を用いるBead Millホモジナイザー(Bead Ruptor Elite、Omni International)において、プロテアーゼ阻害剤を含有する組織溶解バッファー(cOmplete Mini、Sigma、およびPhosSTOP、Sigma)中にホモジナイズした。溶解物の遠心分離による清澄後、タンパク質濃度を、DCタンパク質アッセイ(Bio-Rad)を用いて決定した。
【0057】
免疫組織化学法(IHC)について、パラフィン包埋腎臓切片を、4μmで切断し、脱パラフィンし、その後、α2M(Bioss、1:1000、抗原回復なし)またはα2M*(Fα2M抗体(上記参照、1:100、プロテイナーゼK、40μg/ml、5分間を用いる抗原回復)についてプローブした。画像を、20×および40×で取得し、Image Jソフトウェアを用いて定量化した。
【0058】
免疫蛍光(IF)について、OCT中に保存された腎臓切片を、10μmで切断し、3.7%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2%Triton X-100で透過処理した。内因性ビオチンをブロックしかつ高いバックグラウンド蛍光を低下させるために、アビジン/ビオチンブロッキングキット(Vector Labs)を用い(製造会社のプロトコール通り15分間)、続いて、Fα2M(1:200)およびメサンギウム細胞マーカーとしてのα8-インテグリン(1:100、Novus Biologicals)で共染色した。csGRP78とプラズマ細胞表面マーカー、コムギ胚芽凝集素(WGA)の細胞表面共局在については、組織を、染色前に固定も透過処理もしなかった。スライドを、csGRP78(1:50,000)と一晩、次の日、WGA(1:400)と20分間、インキュベートした。画像を、Olympus BX41顕微鏡を40×で用いて、取得した。Image J共局在プラグインを用いて、α8-インテグリンとFα2Mの両方を発現するエリアの共局在マスクを作成した。その後、これを、Image Jを用いて定量化した。
【0059】
インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)について、4μmパラフィン包埋切片を、キシレンおよびエタノールを用いて脱パラフィンし、4%パラホルムアルデヒドで固定し、プロテイナーゼK(20mg/mL、5分間)で消化した。スライドを、加熱加湿チャンバーにおいて、53℃で2時間、ハイブリダイゼーションバッファー(超高純度50%ホルムアミド formamide、20×SSC、10μg/μl酵母t-RNA、50×デンハルト液)中でプレハイブリダイズさせ、続いて、変性カスタムDIG標識α2Mプローブ(5’AAGTAGCTTCGTGTAGTCTCT3’(配列番号8)、Qiagen)と2日間、インキュベートした。その後、スライドを、室温において2×SSCで洗浄し、続いて、ハイブリダイゼーション温度で2×SSCおよび0.1×SSCで洗浄した。1×カゼイン中でのブロッキング後、スライドを、AP連結型抗DIG抗体(Abcam)と4℃で一晩、インキュベートし、その後、NBT/BCIP(Vector Laboratories)を用いて発色させた。その反応を、TEバッファー(Tris 10mM/EDTA 1mM、pH8.0)で停止し、その後、スライドを、脱水し、Faramount水溶性封入剤(Dakocytomation)を用いてマウントした。
【0060】
トランスフェクション - siRNA実験について、MCを、50~60%コンフルエンスでプレーティングし、100nmolのα2M、LRP1、または対照siRNA(Silencer Select、ThermoFisher)をトランスフェクトした。18時間後、培地を交換し、次の日、分析のための処理および収集前に、細胞を上記のように血清除去した。
【0061】
電気穿孔を用いて、細胞にpcDNA 3.1 GRP78 ΔKDEL(GRP78をERへ局在化させるKDELドメインを欠損するGRP78、したがって、GRP78の細胞表面への有意な局在化を可能にする、Jeffrey Dickhout博士(McMaster University、Canada)により好意で提供された)をトランスフェクトした。空ベクターを対照として用いた。MCを、100%コンフルエンシーまで増殖し、トリプシン処理し、抗生物質を含まない20%FBSを含む培地中で遠心分離した。その後、細胞(200μl、5×105/ml)を、10μgのプラスミドと共に4mmギャップの電気穿孔キュベットに入れ、ECM-830システム(ECM 399、BTX Harvard Apparatus)を用いて、250Vで1回30ミリ秒のパルスを用いて電気穿孔した。細胞を、回復するまで、抗生物質を含まない完全培地中にプレーティングした。次の日、培地を、抗生物質を含む完全培地に交換し、80%コンフルエンシーにおいて、処理前に、細胞を上記のように飢餓状態にした。
【0062】
細胞内カルシウムアッセイ - ILN細胞を、96黒色壁面クリア底のプレートにプレーティングし、2日間かけてコンフルエンスまで増殖させた。HBSS中のカルシウム指示薬Fura-2AM(5μM、Abcam)を暗所中、37℃で45分間、負荷した後、ベースライン蛍光読み取りを、340nmおよび380nm励起ならびに510nm発光に設定された温度制御蛍光マイクロプレートリーダー(Gemini EM Spectra Max、Molecular Devices)を用いて、5分間、1分ごとに行った。抗体(Fα2Mまたは対照IgG、2μg)の有りまたは無し、およびペプチドまたはスクランブルペプチド(100nM)の有りまたは無しのメチルアミン活性化α2M(100pM)での処理後、読み取りを15分間、1分ごとに行った。細胞内カルシウム濃度を、蛍光シグナルの比(340/380nm)を計算することにより決定した。
【0063】
細胞表面タンパク質単離のためのビオチン化 - 処理後、細胞を、冷たいリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、その後、1mg/mL EZ連結型スルホ-ビオチン(Pierce)と30分間、インキュベートした。その後、それらを、PBS中0.1Mグリシンで洗浄して、過剰なスルホ-ビオチンを除去し、上記で用いられたタンパク質溶解バッファー中に溶解し、清澄化し、等量のタンパク質を50%Neutravidinスラリー(Fisher)中で一晩、インキュベートして、ビオチンタグ化タンパク質を捕獲した。その後ビーズを、溶解バッファーで5回、洗浄し、結合したタンパク質を、2×PSB中で10分間、煮沸することにより切断した。試料を、イムノブロッティングの前に、SDS-PAGEを用いて分離した。
【0064】
TGFβ1 ELISA - MC培地を、処理後、収集し、総分泌TGFβ1を、TGFβ1 Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を用いて定量化した。
【0065】
患者コホート - 尿α2M*と尿TGFβ1の間の関係を、以前、縦断的バイオマーカー研究(Verhaveら、Diabetes Res Clin Pract.2013;101(3):333~340)に参加した明白なDKDを有する2型糖尿病患者の公表されたコホートからの試料を用いて研究した。全ての患者の参加は、臨床倫理委員会によって承認されており、各患者は、彼らの疾患に関連した新しい仮説を試験するため後に使用するバイオバンク尿検体に対するインフォームドコンセントを供与した。第一に、尿α2M*が、<0.5g/gクレアチニンのタンパク尿を有する4人の対象および>2g/gクレアチニンのタンパク尿を有する4人の対象由来の試料において、総タンパク尿に関連しているかどうかを探索した。第二に、α2M*と尿TGFβ1の間の関連を、またやはり尿TGFβ1と相関することが知られているタンパク尿の影響を弱めるためにタンパク尿<2g/gを有する18人の患者において検証した。患者は、彼らのフォローアップ中、複数の尿検体を提供し、α2M*を、各入手可能な試料について決定した。尿TGFβ1は、以前、ELISA(Millipore)により評価された26。尿α2M*を、以前記載されているように23、Fα2M抗体を用いるELISAにより検出した。値を、尿クレアチニンに対して標準化した。
【0066】
統計解析 - スチューデントt検定または一元配置ANOVAを用いて、2つまたはそれ以上の群の間でそれぞれ、平均値を比較した。カルシウムアッセイ定量化について、処理(6分間)の時点における倍数変化を、一元配置ANOVAを用いて群間で比較した。複数群の間での有意差(事後)を、チューキーのHSDを用いて解析し、p≦0.05を有意と考えた。データは、平均値±SEMとして示されている。DKDを有する患者における尿バイオマーカー間の関係を評価するために、本発明者らは、データが傾斜分布を有するか正規分布を有するかに応じて、スピアマンのロー相関またはピアソンの相関を用いた。
【0067】
結果
α2Mは、HGによりMCにおいて、および糖尿病性腎臓において、増加し、活性化される - 以前の報告は、α2Mが糖尿病患者の唾液および血清において増加し、転写産物のレベルが、糖尿病性腎臓において上昇したことを示している。ここでは、HGが、MCにおいてα2M転写産物およびタンパク質発現を増加させるかどうかがまず、決定された。
図1AおよびBは、HGがα2M mRNAとタンパク質発現の両方をそれぞれ、増加させたが、浸透圧対照マンニトールは増加させなかったことを示し、しかも、これは用量依存性であった(
図1C)。次に、1型糖尿病Akita腎臓におけるISHによるα2M発現の増加が確認された(
図1D)。
図1Eにおいて、α2Mタンパク質レベルの増加もまた、糸球体、加えていくつかの尿細管においてIHCにより見られた。これは、腎臓溶解物のイムノブロッティングにより確認された(
図1F)。
【0068】
その後、α2MがHGにおいても活性化され、それにより、csGRP78に対する結合部位を曝露するかどうかが決定された。活性化は立体構造変化を伴うので、α2M
*三次構造を保存するために非変性ゲルを用いた。α2M
*は、α2M
*における曝露された受容体結合ドメインを特異的に認識する抗体であるFα2Mで検出された
23。
図2Aは、α2Mとα2M
*の両方が、HGにより培地において有意に増加し、α2M
*がマンニトールによって影響されないことを示している。予想通り、α2M
*は、不活性型よりゲルの中をより遠くへ移動した。その後、α2M
*が糖尿病性腎臓において増加するかどうかが決定された。α2Mについて以前、見られたように、α2M
*もまた、IHCにより示されているように、Akita糖尿病性腎臓において、糸球体といくつかの尿細管の両方で上昇した(
図2B)。これは、1型DKDの第2のモデル(ストレプトゾトシン処理された、一側性腎摘出されたCD1マウス)においても見られた。MCへの局在化を確認するために、二重染色でのIFを、Akita糖尿病性腎臓においてα2M
*およびMCマーカーα8-インテグリンについて実施した。共局在マスクを用いて、α2M
*の増加が、メサンギウムにおいて見られる(
図2D)。最後に、α2M
*がヒトDKDにおいても増加するかどうかを決定するために、それの発現を、IHCにより、腎癌切除の時点に採取された正常な腎臓組織と比較して、DKD診断を受けた腎臓生検において評価した。
図2Eは、α2M
*が糖尿病性糸球体において見られるが、対照腎臓においては見られないことを示している。総合すれば、これらのデータは、α2M発現および活性化がHGにより誘導されることを確認している。
【0069】
α2M/α2M
*の阻害がMCによるHG誘導性線維化促進応答を阻害する - 以前の研究は、HGに応答してのMCによるECMタンパク質産生におけるPI3K/Aktシグナル伝達の重要性を同定した。csGRP78がこのシグナル伝達経路を媒介することは以前に示されているため、本発明者らは、α2M
*が、それの活性化をもたらすリガンドであり得るかどうかを決定することを望んだ。したがって、本発明者らはまず、siRNAを用いたα2M下方制御の、HG誘導性PI3K/Akt活性化への効果を調べた。
図3Aに見られるように、α2Mノックダウンは、HGに応答しての、AktのS473上のリン酸化により評価される、Aktの活性化を阻止した。ノックダウンはまた、ECMタンパク質発現(フィブロネクチン、コラーゲンIV)、ならびにDKDにおいてメサンギウム増殖および腎臓線維症に寄与することが知られた
29、線維化促進性サイトカインCTGFのタンパク質発現を有意に低下させた(
図3B)。
【0070】
その後、α2M活性化のための必要条件を、Fα2M抗体を用いて評価した。活性化後に露出され、それを通して、α2MがcsGRP78と結合する、α2M受容体結合ドメインにその抗体は結合するため、ここでは、それが、α2M
*を機能的に中和するために用いられた(Biltoftら、Clin Biochem.2017;50(18):1203~1208)。それの中和能力を確認するために、csGRP78の高発現を有しかつα2M
*が細胞内カルシウムの急速な増加を誘導することが示された、1LN前立腺癌細胞が用いられた。
図3Cは、Fα2Mがこのカルシウム上昇を阻止したが、対照IgGは阻止しなかったことを示し、それの中和能力を確認している。その後、本発明者らは、HGにおけるそれの効果を試験した。
図3DおよびEに見られるように、α2M
*中和は、α2Mノックダウンに関して観察されたものと同様に、Akt活性化およびECM/CTGF上方制御を阻害した。
【0071】
以前の研究は、α2M
*の受容体結合ドメインがGRP78における配列Cys-Leu
98~Leu
115と結合することを示した(Gopalら J Biol Chem. 2016;291(20):10904~10915)。α2M
*により誘導される1LN細胞におけるカルシウムシグナル伝達は、これらの残基を含むペプチドによって消失した。
図4Aは、このペプチドが、1LN細胞におけるα2M
*に誘導される細胞内カルシウムの増加を阻害するが、スクランブル対照ペプチドは阻害しないことを確認している。このペプチドは、α2M
*がMCにおいてHG誘導性線維化促進性応答を媒介することを確認するために用いられた。
図4BおよびCに見られるように、このペプチドは、HG誘導性Akt活性化およびマトリックスタンパク質/CTGF上方制御を抑止した。スクランブルペプチドは効果を生じなかった。総合すると、これらのデータは、おそらくcsGRP78を通しての、HGに応答した線維化促進性応答を媒介することにおけるα2Mおよびそれの活性化の重要性を裏付けている。
【0072】
LRP1はMCにおけるHG誘導性線維化促進性応答に関与しない - 上記のように、LRP1とcsGRP78の両方はα2M
*に対する受容体であるが、それの親和性は、csGRP78について有意に、より高い。LRP1がHG応答を媒介することに関与するかどうかを決定するために、siRNAを用いたLRP1ノックダウンの効果を評価した。
図5AおよびBに見られるように、これは、HG誘導性Akt活性化にもマトリックス/CTGF上方制御にも影響を及ぼさず、LRP1よりむしろcsGRP78が、HGにおけるα2M
*線維化促進性シグナルを媒介することを示した。
【0073】
csGRP78過剰発現でのマトリックス合成の増加はα2M
*を必要とする - 前立腺癌細胞において、α2M
*はcsGRP78を増加させた。本発明者らは、このポジティブフィードバックループがMCにおいても起こるかどうかを、csGRP78を検出するためのビオチン化アッセイを用いて、試験した。
図6Aに示されているように、α2M
*は、HGの非存在下でcsGRP78を増加させた。本発明者らはさらに、HG誘導性Akt活性化がα2M
*同時処理により増大し得るかどうかを評価した(
図6B)。しかしながら、相加効果は見られず、利用可能なcsGRP78を占有するのに十分なリガンドを生成するのに、α2M
*のHG誘導性増加が十分であることを示唆した。
【0074】
さらに、細胞表面への強制されたGRP78トランスロケートが、シグナル伝達を惹起する、またはHG応答を増大させることができるかどうかを評価した。したがって、ER保持シグナルKDELを欠損するGRP78(GRP78ΔKDEL)を過剰発現させた。まず、それの過剰発現がcsGRP78を増加させることが、細胞表面タンパク質のビオチン化およびプルダウンによって確認された(
図6C)。興味深いことに、HGに関して、さらなる増加が見られた。次に、それのAkt活性化への効果を調べた。
図6Dに見られるように、過剰発現それ自体がAkt活性化をもたらし、これは、HGの添加によりさらに増大された(
図6D)。同様の効果は、ECMタンパク質蓄積およびCTGF発現について見られた(
図6E)。これらのデータは、HGの非存在下で、α2M
*の基底レベル(
図2Aに見られるような)がcsGRP78を通してシグナル伝達を誘導することを示唆している。これを試験するために、α2M
*ブロッキングペプチドを用いた。
図6Fに示されているように、これは、csGRP78過剰発現により誘導されるAkt活性化およびマトリックス合成をブロックした。同様の結果は、Fα2M抗体を用いるα2M
*中和に関して見られた(
図6G)。総合すると、これらのデータは、MC線維化促進性シグナル伝達におけるα2M
*についての重要な役割を裏付けている。
【0075】
α2M
*はMCにおいてHGによるTGFβ1産生を制御する - TGFβ1は、DKDにおける線維化促進過程およびMCにおけるHG誘導性マトリックス上方制御の主要なメディエーターである。AktはHGに応答してそれの合成を制御することが知られているので、α2M
*の阻害は、TGFβ1産生を阻害する可能性が高い。これの確認は、
図7Aに示されており、ELISAにより評価された、TGFβ1の培地へのHG誘導性分泌が、Fα2Mでのα2M
*中和によりブロックされた。
【0076】
明白なDKDを有する個体において、尿α2M*は尿TGFβ1に関連している - 確定されたDKDを有する患者のコホートにおいて、尿TGFβ1が腎臓疾患進行の予測に寄与することが以前、示された(Verhaveら、2013)。したがって、α2M*とTGFβ1の間の関連に取り組むために、これらの患者のサブセットの尿を分析した。まず、方法に記載されているように、低いおよび高いタンパク尿を有する個体のサブセットにおいて、尿α2M*が総尿タンパク質と強く関連していることが見出された(スピアマンのロー 0.76、p=0.03、n=8)。α2M*とTGFβ1の両方へのタンパク尿の影響を弱めるために、フォローアップ中2g/gクレアチニン未満のタンパク尿中央値を有する18人の患者のサブセットを分析した。患者の臨床特性は表1に示されている。
【0077】
【0078】
α2M
*は、56個の試料において決定された。
図7Bに示されているように、各個体についての尿α2M
*の中央値は、尿TGFβ1の中央値と関連していた。α2M
*とタンパク尿の間の関連は、この低タンパク尿サブグループにおいて有意ではなかった(p=0.16、ピアソン相関)。
【0079】
細胞表面GRP78/α2M
*は、後期DKDに見られる尿細管間質性線維症に関与する細胞型において重要である - DKDの後期における線維症は、尿細管細胞と腎線維芽細胞の両方によるシグナル伝達および線維化促進性応答に関与し、尿細管間質エリアに見られる。尿細管間質性線維症は、腎臓疾患の末期腎臓疾患への進行と強く相関するため
35、本発明者らは、α2M
*/csGRP78シグナル伝達がまた、尿細管細胞および線維芽細胞における線維化促進性応答を制御できるかどうかを決定した。本発明者らは、ヒト近位尿細管細胞株HK2およびラット腎線維芽細胞を用いた。
図8A~Bは、csGRP78が、両方の細胞型においてHGにより強く増加することを示している。本発明者らは次に、癌細胞におけるcsGRP78のα2M
*との相互作用および下流シグナル伝達を阻止することが示された、C38と名付けられたGRP78のC末端に対する抗体
36を用いた。これは、両方の細胞型において、HG誘導性線維化促進性シグナル伝達(Akt活性化の上流のFAKの活性化
7、加えて、マトリックス上方制御)を阻止した(
図8C~D)。重要なことには、阻害性ペプチドはまた、主に間質マトリックス沈着を担う細胞である、線維芽細胞、近位尿細管細胞、および腎線維芽細胞におけるシグナル伝達(Akt活性化)およびマトリックス上方制御も阻止した(
図8E/F)。
【0080】
これらの所見のインビボでの関連性を調べるために、本発明者らは、糖尿病性腎臓の尿細管間質においてα2M*が増加するかどうかを決定した。1型および2型DKDモデル、それぞれからの画像、ならびにヒトDKD生検試料を分析した。画像の焦点を尿細管間質エリアに合わせ、糖尿病に関してα2M*の明らかな増加が示され、1型Akitaモデルにおいて糖尿病の持続と共に次第に増加した。α2M*の増加はまた、2型DKDのモデルである、db/dbマウスの腎臓におけるこの領域でも見られた。次に、透過処理されていない腎臓組織切片における免疫蛍光を用いて、本発明者らは、週齢40週間の1型糖尿病Akitaマウスの尿細管におけるcsGRP78の有意な増加を示した。細胞表面局在は、オーバーレイの領域を示したマスクに見られるように、細胞膜マーカーWGAとの共局在により確認された。
【0081】
α2MはCKD、肺線維症、および肝線維症において増加する - α2M
*発現が、線維症の他のモデルにおいて増加するかどうかを調べようと試みた。まず、本発明者らは、マウスが腎臓質量の5/6の切除(5/6腎摘出術、Nx)を受ける、非糖尿病性CKDモデルを評価した。ニセ手術されたマウスと比較して、本発明者らは、5/6 Nxモデルにおいてα2M
*発現の有意な増加を観察した(
図9)。次に、本発明者らは、特発性肺線維症(IPF)のブレオマイシン誘導性マウスモデルを評価した。
図10において、α2M
*の有意に増加した発現が、21日目に、ブレオマイシン処理マウスにおいてのみ見出された。本発明者らはさらに、対照患者と比較して、IPFのscRNA-seqデータセットの分析を通してIPFにおけるα2Mの役割を評価した。α2M発現はIPF患者において増加している。この増加は、線維化過程にとって重要である細胞の、マクロファージおよび筋線維芽細胞に局在している。最後に、本発明者らは、対照患者と比較して、ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/肝線維症を有する患者からの公的に入手可能なscRNA-seqデータセットにおいてα2M発現を調べた。本発明者らは、線維症に寄与する細胞集団:中皮細胞(線維芽細胞前駆体)、瘢痕関連マクロファージおよび樹状細胞に局在した、NASHを有する患者におけるα2M発現の有意な増加を観察した。
【0082】
まとめると、これらのデータは、インビトロでグルコース誘導性TGFβ1上方制御を媒介することにおけるα2M*についての重要な役割を同定し、この所見の臨床的関連性を示唆している。さらに、他の腎性および非腎性線維化モデルにおけるデータは、線維症を媒介することにおけるα2M*についてのより幅広い役割、および有望な抗線維化治療標的としてのそれの阻害を裏付けている。
【0083】
N末端システインはペプチド阻害機能にとって重要である - 阻害性ペプチドにおけるN末端システインの重要性は、以前、知られていなかった。これを試験するために、このアミノ酸を欠くペプチドを作製し、それの阻害活性について試験した。
図11A~Bは、このペプチドが、α2M
*(矢印はそれの添加を示す)により誘導された1LN細胞におけるカルシウムシグナル伝達を阻害せず、またそれは、MCにおけるHG誘導性線維化促進性応答を阻止しなかったことを示している。カルシウムアッセイにおいて(
図11A)、2つの濃度、100pMおよび100nMのペプチドを試験した。次に、システインがいくらかの還元機能を与えることを考慮して、メチオニンがN末端システインに取って代わり得るかどうかを試験するために、本発明者らは、システインがメチオニンによって置き換えられたペプチドを試験した。
図11C~Dは、用いられた2つのアッセイのいずれにおいても、メチオニンはシステインを機能的に取って代わることができないことを示している。インビボ安定性を潜在的に増加させるための2つの改変もまた試験し、その改変は、システインを通しての二量体化、およびシステインが未変化のままであるアミドを介しての頭尾環化を含む。これらのペプチドのいずれも機能しなかった(
図11C~D)。総合すると、N末端システインおよび三次構造は、csGRP78を介してのα2M
*シグナル伝達およびHG誘導性線維化促進性応答を阻害することにおけるペプチドの機能性にとって重要である。
【0084】
考察
csGRP78が糖尿病性腎臓において増加することが最近、実証され、MCでHG誘導性線維化促進性シグナル伝達を媒介することにおけるそれの重要性を示した(Van Kriekenら Cell surface expression of 78-kDa glucose-regulated protein(GRP78)mediates diabetic nephropathy.オンライン公開2019年doi:10.1074/jbc.RA118.006939)。しかしながら、csGRP78がこの設定において活性化される機構は知られていなかった。本発明者らは現在、csGRP78についての既知のリガンドであるα2M*を、MCにおけるこのシグナル伝達の重要なメディエーターとして同定している。α2M発現は、HGによりMCにおいて、ならびに糖尿病マウスおよびヒト腎臓において、増加するだけでなく、より重要なことには、それの活性化が、csGRP78へのシグナル伝達リガンドとしてのそれの機能を可能にする。α2Mノックダウンまたはα2M*中和は、線維化促進性Akt活性化ならびに下流マトリックスおよび線維化促進性サイトカイン産生を阻害する。これらのデータは、DKDの初期特徴である、糖尿病性糸球体硬化症の発生におけるα2M*についての重要な役割を裏付けている。
【0085】
ビオチン化結果は、α2M*自体がcsGRP78を増加させることを示した。これは、HGに応答しての局所的に増加したα2M*が、それのリガンドとしての役割に加えて、GRP78の細胞表面上での提示を促進し得ること、およびα2M*が、ポジティブフィードバックループに関与して、csGRP78シグナル伝達の増大および、したがって、線維化促進性シグナル伝達の増強をもたらすことを示している。興味深いことに、強制された細胞表面GRP78発現は、Akt活性化およびECMタンパク質/CTGFの上方制御を増加させるのに十分であり、かつHGにより増大されることが観察された。これは、α2M*阻害によってブロックされ、csGRP78を通しての、基底シグナル伝達とHG誘導性シグナル伝達の両方におけるα2M*の関与を裏付けている。
【0086】
総合すると、α2M/α2M
*は、HGによりMCにおいて、および糖尿病性糸球体において増加すること、ならびにα2M
*が、それのcsGRP78との相互作用を通してMC線維化促進性応答を制御することがここで示されている(
図12)。これらのデータは、α2M
*/csGRP78相互作用をブロックすることが、DKDなどの線維化状態についての新規な治療選択肢であることを示している。データはまた、α2M
*/csGRP78相互作用を特異的にブロックするペプチドの治療的使用を裏付けている。このペプチドは、機能を与えるためのN末端システインの絶対的な必要性を含む、独特な特性を有する。
【0087】
α2M*が他の線維性疾患についての役立つ標的であるという証拠もまた提供され、その疾患には、非糖尿病性CKD、IPF、またはNASH/肝臓線維症が挙げられるが、それらに限定されない。これらの線維化障害におけるα2Mおよび/またはα2M*発現の観察された有意な増加は、α2M*が、線維化疾患/状態において一般的な病原性制御因子であることを裏付けている。
【0088】
本発明の異なる実施形態は、上記の実施例により示されている。当業者は、本発明および定義された特許請求の範囲の範囲内にある、上記で述べられた方法の代替物を開発することができると思われる。
【0089】
全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、全体として参照により組み入れられているように具体的に、かつ個々に示される場合と同じ程度で、全体として参照により本明細書に組み入れられている。本出願における用語が、参照により本明細書に組み入れられた文書と異なって定義されていることが見出された場合、本明細書にて提供された定義がその用語についての定義としての役割を果たすこととする。
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