(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-31
(54)【発明の名称】セレン残留物の真空精製装置および方法
(51)【国際特許分類】
B01D 1/00 20060101AFI20240724BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B01D1/00 Z
B01D5/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504242
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2022082642
(87)【国際公開番号】W WO2023142252
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210093041.4
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521285805
【氏名又は名称】昆明理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 宝強
(72)【発明者】
【氏名】羅 歓
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ 文龍
(72)【発明者】
【氏名】査 国正
(72)【発明者】
【氏名】劉 浪
(72)【発明者】
【氏名】楊 斌
(72)【発明者】
【氏名】甄 甜甜
(72)【発明者】
【氏名】熊 恒
(72)【発明者】
【氏名】田 陽
(72)【発明者】
【氏名】孔 令▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 一夫
(72)【発明者】
【氏名】王 飛
(72)【発明者】
【氏名】楊 佳
(72)【発明者】
【氏名】曲 濤
(72)【発明者】
【氏名】劉 大春
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA22
4D076BA01
4D076BC06
4D076CA11
4D076CA19
4D076CD22
4D076DA02
4D076EA01Z
4D076EA08Z
4D076EA11Z
4D076EA12Z
4D076EA14Z
4D076JA03
(57)【要約】
本発明は、粗セレン精製の技術分野に関し、セレン残留物の真空精製装置および方法を提供する。本発明が提供するセレン残留物の真空精製装置では、本発明における斜置凝縮板と平置凝縮板の配置により、粗セレン中のセレンとその他の不純物の分離度が向上し、得られるセレンの純度が向上する。同時に、本発明によって提供されるセレン残留物の真空精製装置は、単純な構造を有する。本発明の精製するセレン残留物は、加熱装置の加熱により水蒸気となり、その水蒸気中の不純物が斜置凝縮板と平置凝縮板を通過した後、凝縮して原料容器内に還流し、精製されたセレン蒸気は凝縮器の孔を通って冷却システムに入り、冷却カバーで凝縮してコレクションプレート内へ合流し、その後収集システムに収集される。本発明によって提供される方法は操作が簡単である。実施例のデータは、本発明によって提供される装置が質量分率60%のセレン残留物から純度99.995%のセレンを得ることができることを示している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料容器(1)と、
前記原料容器(1)の上側に位置する凝縮器(2)と、
前記凝縮器(2)の外部に嵌着される冷却システム(3)と、
前記冷却システム(3)と連通している収集システム(4)を含み、
前記原料容器(1)の外側には、当該原料容器(1)を加熱するための加熱装置(11)が配置され、
前記凝縮器(2)には、凝縮カバー(21)と、前記凝縮カバー(21)内に設置されたスタガド凝縮板(22)を含み、前記スタガド凝縮板(22)には、斜置凝縮板(221)と平置凝縮板(222)とを含み、前記斜置凝縮板(221)は前記平置凝縮板(222)の下側に位置し、前記凝縮カバー(21)の側壁には孔(23)が設けられ、前記孔(23)の高さは、垂直方向の高さで、前記平置凝縮板(222)の高さ以上であり、
前記凝縮器(2)は、孔(23)を介して前記冷却システム(3)と連通し、前記冷却システム(3)には、冷却カバー(31)と、前記冷却カバー(31)の下部に位置するコレクションプレート(32)を含み、
前記冷却システム(3)は、コレクションプレート(32)を介し前記収集システム(4)と連通していることを特徴とするセレン残留物の真空精製装置。
【請求項2】
前記斜置凝縮板(221)の個数は1~2であることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項3】
前記斜置凝縮板(221)は下向きに傾斜し、前記斜置凝縮板(221)と水平方向の夾角は1~5°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項4】
垂直方向の距離で、隣接する2つの斜置凝縮板(221)の間では、前記斜置凝縮板(221)と隣接する前記平置凝縮板(222)の間の距離は、独立して5~10cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項5】
前記孔(23)の孔径は0.5~1cmであり、前記孔(23)の密度は0.2~0.5個/cm
2であることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項6】
前記コレクションプレート(32)と前記収集システム(4)は溶融配管(5)を介して接続され、前記溶融配管(5)の外側には加熱システム(51)が設置されることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項7】
前記加熱装置(11)は前記原料容器(1)の底部および側壁に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項8】
前記冷却カバー(31)には、炉蓋(311)と冷却シェル(312)を含み、前記炉蓋(311)と冷却シェル(312)は接触していないことを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項9】
前記炉蓋(311)と前記冷却シェル(312)とによって形成される隙間には冷却剤(313)が充填されることを特徴とする請求項8に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項10】
精製する前のセレン残留物を原料容器(1)の中に入れ、加熱装置(11)を用いて精製するセレン残留物を加熱するステップと、
前記加熱により発生したガスは凝縮器(2)に入り、孔(23)を通って冷却システム(3)に入って冷却され、冷却されて得られた精製セレンはコレクションプレート(32)に収集されて収集システム(4)に入るステップを含むことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のセレン残留物の真空精製装置を使用してセレン残留物を精製する方法。
【請求項11】
前記加熱温度は550~700℃であり、前記加熱圧力は10~100Paであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2022年1月26日に中国専利局に提出した出願番号が202210093041.4、発明名称が「セレン残留物の真空精製装置および方法」の中国専利出願の優先権を主張し、その全ての内容は引用によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、粗セレン精製の技術分野に関し、特にセレン残留物の真空精製装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セレンはその優れた物理的および化学的特性により広く使用されている。金属添加剤として、金属の機械による加工特性を向上できる。セレン化物半導体は、生物医学、光触媒、セレン化銅インジウム薄膜太陽電池、熱電変換器などの分野で大きな応用価値を示し、ZnSeやCdSeなどの新世代光電子デバイスは、赤外線検出器、暗視装置または資源探査機器、赤外線ウィンドウレンズの製造に使用できる。ガラスに少量のセレンを添加すると、ガラスの光学特性と色を変えることができ、顔料の成分として、またゴム製造における加硫剤の代替品としても使用できる。セレンには重要な医学的価値もあり、金属水銀、カドミウム、鉛、砒素などの中毒作用を弱めることができる。セレン産業の活発な発展に伴い、冶金、材料、化学産業、医療およびその他の分野でセレンが果たす役割はますます重要になっている。
【0004】
現在、セレンを精製する主な方法としては化学精製と物理精製があり、化学精製法は、主に粗セレンを酸化し、適切な化学試薬で還元して精製セレンを得ることであり、物理的精製方法は、粗セレン中の銅、鉛、鉄、金、銀などの不純物成分とセレンの蒸気圧の差を利用して、セレンの方の蒸気圧が高く、揮発しやすいため不純物と分離できる。特許文献1は、水銀を含む粗セレンから不純物を除去する装置および方法を開示し、前記装置には、酸化炉、晶析装置、分離器、スプレー塔、フィルター、イオン交換カラム及び還元槽が含まれる。当該装置は構造が比較的複雑であり、処理の流れには、水銀含有粗セレンを供給口より酸化炉に投入し、晶析装置を加熱した後、晶析装置の加熱を停止し、次に酸化炉を加熱し、酸素供給装置より酸化炉に酸素を供給し、同時に誘引通風ファンとスプレーポンプを起動し、酸化炉の保温反応後、酸化炉に対する加熱を停止し、酸化炉が冷却した後、晶析装置の排出ドアを開けて材料を排出し、同時に、スプレー塔の誘引通風ファンとスプレーポンプを閉じる、これと同時に酸化炉の保温反応中に、酸化炉内のガス状物質は誘引通風ファンの駆動により、酸化炉上部の空気出口から晶析装置上部の空気入口に流入し、酸化炉の底部には酸化残留物が濃縮され、二酸化セレンの結晶化生成物は晶析装置の底部に濃縮され、晶析装置内のガス状物質はさらに晶析装置上部の空気出口を通って分離器上部の空気入口に流入し、リワーク材の結晶は、分離器の底部に濃縮され、そして分離器の排出口を通って酸化炉に戻り、分離器内のガス状物質はさらに分離器の空気出口を通過し、ウォーターシーラーと誘引通風機を通ってスプレー塔下部の空気入口に流入し、スプレー塔の頂部を通って、分離器の空気出口における、ウォーターシーラーで洗浄された後に排出された排ガスに対してスプレーし、スプレー液は水槽の水出口からフィルターに入り、濾過され、濾液を静置し、pH値を調整した後、濾液はイオン交換カラムに流入して水銀除去処理され、最後に水銀除去処理後の水銀除去液は還元槽に流入して還元処理し、得られたセレン沈殿物を遠心分離し、水洗して塩を除去し、乾燥して水銀を含まない粗セレンが得られ、そして酸化炉に戻るが、処理プロセスが比較的長く、得られるセレン生成物の純度も低く、3Nレベルにしか達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを考慮して、本発明の目的は、セレン残留物の真空精製装置および方法を提供することである。本発明により提供されるセレン残留物の真空精製装置は、構造がシンプルで、処理工程も簡単であり、得られるセレン生成物は高純度である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
本発明は、セレン残留物の真空精製装置を提供し、原料容器1と、
前記原料容器1の上側に位置する凝縮器2と、
前記凝縮器2の外部に嵌着される冷却システム3と、
前記冷却システム3と連通している収集システム4を含み、
前記原料容器1の外側には、当該原料容器1を加熱するための加熱装置11が配置され、
前記凝縮器2には、凝縮カバー21と、前記凝縮カバー21内に設置されたスタガド凝縮板22を含み、前記スタガド凝縮板22には、斜置凝縮板221と平置凝縮板222とを含み、前記斜置凝縮板221は前記平置凝縮板222の下側に位置し、前記凝縮カバー21の側壁には孔23が設けられ、前記孔23の高さは、垂直方向の高さで、前記平置凝縮板222の高さ以上であり、前記凝縮器2は、孔23を介して前記冷却システム3と連通し、前記冷却システム3には、冷却カバー31と、前記冷却カバー31の下部に位置するコレクションプレート32を含み、前記冷却システム3は、コレクションプレート32を介し前記収集システム4と連通している。
【0008】
好ましくは、前記斜置凝縮板221の個数は1~2である。
【0009】
好ましくは、前記斜置凝縮板221は下向きに傾斜し、前記斜置凝縮板221と水平方向の夾角は1~5°である。
【0010】
好ましくは、垂直方向の距離で、隣接する2つの斜置凝縮板221の間では、前記斜置凝縮板221と隣接する前記平置凝縮板222の間の距離は、独立して5~10cmである。
【0011】
好ましくは、前記孔23の孔径は0.5~1cmであり、前記孔23の密度は0.2~0.5個/cm2である。
【0012】
好ましくは、前記コレクションプレート32と前記収集システム4は溶融配管5を介して接続され、前記溶融配管5の外側には加熱システム51が設置される。
【0013】
好ましくは、前記加熱装置11は前記原料容器1の底部および側壁に配置される。
【0014】
好ましくは、前記冷却カバー31には、炉蓋311と冷却シェル312とを含み、前記炉蓋311と冷却シェル312は接触していない。
【0015】
本発明は、更に上記の技術的解決策に記載されたセレン残留物の真空精製装置を使用してセレン残留物を精製する方法を提供し、
精製するセレン残留物を原料容器1の中に入れ、加熱装置11を用いて精製するセレン残留物を加熱するステップと、
前記加熱により発生したガスは凝縮器2に入り、孔23を通って冷却システム3に入って冷却され、冷却されて得られた精製セレンはコレクションプレート32に収集されて収集システム4に入るステップを含む。
【0016】
好ましくは、前記加熱温度は550~700℃であり、前記加熱圧力は10~100Paである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、セレン残留物の真空精製装置を提供し、原料容器1と、前記原料容器1の上側に位置する凝縮器2と、前記凝縮器2の外部に嵌着される冷却システム3と、前記冷却システム3と連通している収集システム4を含み、前記原料容器1の外側には、当該原料容器1を加熱するための加熱装置11が配置され、前記凝縮器2には、凝縮カバー21と、前記凝縮カバー21内に設置されたスタガド凝縮板22を含み、前記スタガド凝縮板22には、斜置凝縮板221と平置凝縮板222とを含み、前記斜置凝縮板221は前記平置凝縮板222の下側に位置し、前記凝縮カバー21の側壁には孔23が設けられ、前記孔23の高さは、垂直方向の高さで、前記平置凝縮板222の高さ以上であり、前記凝縮器2は、孔23を介して前記冷却システム3と連通し、前記冷却システム3には、冷却カバー31と、前記冷却カバー31の下部に位置するコレクションプレート32を含み、前記冷却システム3は、コレクションプレート32を介し前記収集システム4と連通している。本発明における斜置凝縮板と平置凝縮板の配置により、粗セレン中のセレンとその他の不純物の分離度が向上し、得られるセレンの純度が向上する。同時に、本発明によって提供されるセレン残留物の真空精製装置は、単純な構造を有する。実施例のデータは、本発明によって提供される装置が質量分率60%のセレン残留物から純度99.995%のセレンを得ることができることを示している。
【0018】
さらに、前記加熱装置11は、前記原料容器1の底部と側壁に配置され、従来の真空炉の底部加熱方式を変更することにより、セレンの溶解速度がはるかに速くなり、生産効率が向上し、生産コストが削減される。
【0019】
さらに、コレクションプレート32内に収集されたセレン生成物は、溶融配管を通って収集システムに直接入るため、冷却システムによる材料の洗浄が必要なく、簡単で便利であり、操作し易い。同時に、加熱システムを使用して溶融配管を加熱するため、材料の詰まりを回避し、生産効率をさらに向上させる。
【0020】
本発明は更に、上記技術的解決策に記載のセレン残留物の真空精製装置を使用してセレン残留物を精製する方法を提供し、
精製するセレン残留物を原料容器1の中に入れ、加熱装置11を用いて精製するセレン残留物を加熱するステップと、前記加熱により発生したガスは凝縮器2に入り、孔23を通って冷却システム3に入って冷却され、冷却されて得られた精製セレンはコレクションプレート32に収集されて収集システム4に入るステップを含む。本発明の精製するセレン残留物は、加熱装置の加熱により水蒸気となり、その水蒸気中の不純物が斜置凝縮板と平置凝縮板を通過した後、凝縮して原料容器内に還流し、精製されたセレン蒸気は凝縮器の孔を通って冷却システムに入り、冷却カバーで凝縮してコレクションプレート内へ合流し、その後収集システムに収集される。本発明によって提供される方法は操作が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明によって提供されるセレン残留物の真空精製装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、セレン残留物の真空精製装置を提供し、原料容器1と、
前記原料容器1の上側に位置する凝縮器2と、
前記凝縮器2の外部に嵌着される冷却システム3と、
前記冷却システム3と連通している収集システム4を含み、
前記原料容器1の外側には、当該原料容器1を加熱するための加熱装置11が配置され、
前記凝縮器2は、凝縮カバー21と、前記凝縮カバー21内に設置されたスタガド(staggered)凝縮板22を含み、前記スタガド凝縮板22は、斜置凝縮板221と平置凝縮板222とを含み、前記斜置凝縮板221は前記平置凝縮板222の下側に位置し、前記凝縮カバー21の側壁には孔23が設けられ、前記孔23の高さは、垂直方向の高さで、前記平置凝縮板222の高さ以上であり、
前記凝縮器2は、孔23を介して前記冷却システム3と連通し、
前記冷却システム3には、冷却カバー31と、前記冷却カバー31の下部に位置するコレクションプレート32を含み、
前記冷却システム3は、コレクションプレート32を介し前記収集システム4と連通している。
【0023】
本発明において、本発明で使用する原料は、特に断りのない限り、市販品を使用することが好ましい。
【0024】
本発明により提供されるセレン残留物の真空精製装置は、原料容器1を備える。本発明において、前記原料容器1は好ましくは、るつぼを含み、前記るつぼの材質は黒鉛またはステンレス鋼であることが好ましい。本発明では、前記原料容器1の外側に原料容器を加熱するための加熱装置11が設置されている。本発明において、前記加熱装置11は、前記原料容器1の底部および側壁に設置されることが好ましい。本発明は、原料容器1の外側に設置された加熱装置11を用いて原料容器1を加熱することにより、従来の真空炉の底部加熱方式を変更してセレンの溶解速度を大幅に向上させ、それによって生産効率を向上させ、生産コストを削減する。
【0025】
本発明により提供されるセレン残留物の真空精製装置は、凝縮器2を含む。本発明において、前記凝縮器2は、凝縮カバー21と、前記凝縮カバー21内に設置されたスタガド凝縮板22を含む。本発明において、前記スタガド凝縮板22は斜置凝縮板221と平置凝縮板222とを含み、前記斜置凝縮板221は前記平置凝縮板222の下側に位置する。本発明において、前記斜置凝縮板221の枚数は1枚~2枚であることが好ましい。本発明において、前記斜置凝縮板221は下向きに傾斜していることが好ましく、前記斜置凝縮板221と水平方向とのなす角度は1~5°であることが好ましい。本発明において、隣接する2つの前記斜置凝縮板221の間、及び前記斜置凝縮板221と隣接する前記平置凝縮板222の間の距離は、垂直方向の距離として、それぞれ5~10cmであることが好ましい。本発明において、前記斜置凝縮板221および前記平置凝縮板222の面積は、前記凝縮カバー21の断面積の1/2~2/3であることが好ましい。本発明においては、前記冷却カバーの内径が前記原料容器の内径と一致していることが好ましい。
【0026】
本発明では、凝縮カバー21の側壁には孔23が設けられ、孔23の高さは、鉛直方向の高さが前記平置凝縮板222の高さ以上である。本発明において、前記孔23の直径は0.5~1cmであることが好ましく、前記孔23の密度は0.2~0.5個/cm2であることが好ましい。
【0027】
本発明では、前記凝縮カバーとスタガド凝縮板の材質は、好ましくは、それぞれ独立してステンレス鋼である。
【0028】
本発明では、斜置凝縮板と平置凝縮板を配置することにより、粗セレン中のセレンとその他の不純物の分離度が向上し、得られるセレンの純度が向上する。
【0029】
本発明では、前記原料容器1と凝縮器2の接触部分は、ガスが漏れない密閉状態にある。
【0030】
本発明によって提供されるセレン残留物の真空精製装置は、冷却システム3を含む。本発明において、前記冷却システム3は、冷却カバー31と、冷却カバーの下部に位置するコレクションプレート32とを含む。本発明において、前記冷却カバー31は、炉蓋311と冷却シェル312とを含み、前記炉蓋311と前記冷却シェル312とは接触していないことが好ましい。本発明では、前記炉蓋311と前記冷却シェル312とによって形成される隙間には冷却剤313が充填される。本発明において、前記冷却剤は、水および/または油を含むことが好ましく、水であることがさらに好ましい。本発明において、前記炉蓋、冷却シェル、コレクションプレートの材質はステンレス鋼であることが好ましい。
【0031】
本発明では、前記凝縮器2は孔23を介して前記冷却システム3と連通する。
【0032】
本発明によって提供されるセレン残留物の真空精製装置は、収集システム4を含む。本発明において、前記収集システム4は、内径50~70cmの円筒形ドラムであることが好ましい。本発明において、前記収集システムの材質は、好ましくはステンレス鋼である。本発明では、収集システム4の片側には、好ましくは開口部41を設け、前記開口部41は、好ましくは、真空ポンプに接続し、前記真空ポンプ、収集システム、溶融配管、冷却システム、凝縮器、およびるつぼが真空システムを形成する。
【0033】
本発明では、前記冷却システム3のコレクションプレート32と前記収集システム4は溶融配管5を介して連通されている。本発明においては、前記溶融配管5の外側には、好ましくは、加熱システム51を設置する。本発明において、前記溶融配管5の材質は好ましくはステンレス鋼を含む。本発明の特定の実施形態では、前記溶融配管の直径は好ましくは6cmである。
【0034】
本発明は、更に上記の技術的解決策に記載されたセレン残留物の真空精製装置を使用してセレン残留物を精製する方法を提供し、
精製するセレン残留物を原料容器1の中に入れ、加熱装置11を用いて精製するセレン残留物を加熱するステップと、
前記加熱により発生したガスは凝縮器2に入り、孔23を通って冷却システム3に入って冷却され、冷却されて得られた精製セレンはコレクションプレート32に収集されて収集システム4に入るステップを含む。
【0035】
本発明において、前記加熱温度は550~700℃が好ましく、加熱温度までの昇温速度は2~5℃/分が好ましい。本発明において、前記加熱温度は加熱装置11により達成される。本発明において、前記加熱圧力は10~100Paであることが好ましい。本発明では、前記加熱圧力は真空システムを通じて達成される。本発明において、前記加熱時間は6~10時間が好ましい。
【0036】
本発明の方法では、精製する前のセレン残留物は、加熱装置の加熱により水蒸気を形成し、その水蒸気中の不純物は、斜置凝縮板と平置凝縮板を通過した後、凝縮して原料容器内に還流し、精製されたセレン蒸気は凝縮器の孔を通って冷却システムに入り、冷却カバーで凝縮してコレクションプレート内へ合流し、その後溶融配管を通って収集システムに収集される。
【0037】
以下、本発明のセレン残留物の真空精製装置および方法を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
次の実施例では
図1に示す装置を使用し、
図1では、斜置凝縮板の数は2枚、平置凝縮板の数は1枚であり、斜置凝縮板は下向きに傾斜し、且つ斜置凝縮板は水平方向に対して5°の角度を持ち、垂直方向の距離で、隣接する2つの斜置凝縮板の間では、斜置凝縮板と隣接する平置凝縮板の間の距離は5cmであり、原料容器は黒鉛るつぼであり、黒鉛るつぼの内径は55cmであり、平置凝縮板と斜置凝縮板の面積はるつぼの断面積の2/3であり、孔径は1cmであり、孔の密度は0.5個/cm
2である。溶融配管の直径は6cmであり、凝縮器、冷却システム、溶融配管、収集システムはステンレス鋼製で、冷却剤は冷却水である。
【実施例1】
【0039】
質量分率60%のセレン残留物150kgを溶融した後、るつぼに入れ、電動ホイストを使用して加熱装置に落とし込み、加熱装置を始動させ、セレンの精製条件は、昇温速度を5℃/分、蒸留温度を550℃、蒸留時間を6時間とし、真空システムを開き、圧力を20Paに制御し、加熱プロセス中に、るつぼ内のセレンが蒸発して蒸気になり、斜置凝縮板と平置凝縮板を通って、孔を通り、冷却システムに入って、冷却システムの冷却カバー内で凝縮して液体セレンとなり、コレクションプレートに集まり、溶融配管を通じて収集システムに輸送され、溶融配管は加熱システムによって230℃まで加熱され、最終的に128.3kgのセレン生成物が得られ、揮発率は87.3%に達した。
【0040】
得られた高品質セレンを、中華人民共和国の非鉄金属工業標準であるYS/T223-2007およびYS/T226.13-2009を参考に、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により検査した結果、精製セレンの純度は99.992%であった。
【実施例2】
【0041】
質量分率60%のセレン残留物200kgを溶融した後、るつぼに入れ、電動ホイストを使用して加熱装置に落とし込み、加熱装置を始動させ、セレンの精製条件は、昇温速度を10℃/分、蒸留温度を680℃、蒸留時間を8時間とし、真空システムを開き、圧力を10Paに制御し、加熱プロセス中に、るつぼ内のセレンが蒸発して蒸気になり、斜置凝縮板と平置凝縮板を通って、孔を通り、冷却システムに入って、冷却システムの冷却カバー内で凝縮して液体セレンとなり、コレクションプレートに集まり、溶融配管を通じて収集システムに輸送され、溶融配管は加熱システムによって230℃まで加熱され、最終的に199kgのセレン生成物が得られ、揮発率は99.5%に達した。
【0042】
得られた高品質セレンを、中華人民共和国の非鉄金属工業標準であるYS/T223-2007およびYS/T226.13-2009を参考に、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により検査した結果、精製セレンの純度は99.995%であった。
【実施例3】
【0043】
質量分率60%のセレン残留物300kgを溶融した後、るつぼに入れ、電動ホイストを使用して加熱装置に落とし込み、加熱装置を始動させ、セレンの精製条件は、昇温速度を10℃/分、蒸留温度を700℃、蒸留時間を10時間とし、真空システムを開き、圧力を50Paに制御し、加熱プロセス中に、るつぼ内のセレンが蒸発して蒸気になり、斜置凝縮板と平置凝縮板を通って、孔を通り、冷却システムに入って、冷却システムの冷却カバー内で凝縮して液体セレンとなり、コレクションプレートに集まり、溶融配管を通じて収集システムに輸送され、溶融配管は加熱システムによって230℃まで加熱され、最終的に294kgのセレン生成物が得られ、揮発率は98.0%に達した。
【0044】
得られた高品質セレンを、中華人民共和国の非鉄金属工業標準であるYS/T223-2007およびYS/T226.13-2009を参考に、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により検査した結果、精製セレンの純度は99.991%であった。
【0045】
上記の実施例から、本発明によって提供される方法は、最終直接セレン回収率が99.5%を超え、セレン純度が99.995%を超えることが分かる。本発明の生産規模は300キログラム以上に達することができ、生産効率が高く、生成物の純度が高く、テルル、銅、鉛などの不純物元素が富化される。
【0046】
上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改良および修正を行うことができ、これらの改良および修正も本発明の保護範囲とみなすべきであることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0047】
1原料容器
11加熱装置
2凝縮器
21凝縮カバー
22スタガド凝縮板
221斜置凝縮板
222平置凝縮板
23孔
3冷却システム
31冷却カバー
311炉蓋
312冷却シェル
313冷却剤
32コレクションプレート
4収集システム
41開口部
5溶融配管
51加熱システム
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料容器と、
前記原料容器の上側に位置する凝縮器と、
前記凝縮器の外部に嵌着される冷却システムと、
前記冷却システムと連通している収集システムを含み、
前記原料容器の外側には、当該原料容器を加熱するための加熱装置が配置され、
前記凝縮器には、凝縮カバーと、前記凝縮カバー内に設置されたスタガド凝縮板を含み、前記スタガド凝縮板には、斜置凝縮板と平置凝縮板とを含み、前記斜置凝縮板は前記平置凝縮板の下側に位置し、前記凝縮カバーの側壁には孔が設けられ、前記孔の高さは、垂直方向の高さで、前記平置凝縮板の高さ以上であり、
前記凝縮器は、孔を介して前記冷却システムと連通し、前記冷却システムには、冷却カバーと、前記冷却カバーの下部に位置するコレクションプレートを含み、
前記冷却システムは、コレクションプレートを介し前記収集システムと連通していることを特徴とするセレン残留物の真空精製装置。
【請求項2】
前記斜置凝縮板の個数は1~2であることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項3】
前記斜置凝縮板は下向きに傾斜し、前記斜置凝縮板と水平方向の夾角は1~5°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項4】
垂直方向の距離で、隣接する2つの斜置凝縮板の間では、前記斜置凝縮板と隣接する前記平置凝縮板の間の距離は、独立して5~10cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項5】
前記孔の孔径は0.5~1cmであり、前記孔の密度は0.2~0.5個/cm
2であることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項6】
前記コレクションプレートと前記収集システムは溶融配管を介して接続され、前記溶融配管の外側には加熱システムが設置されることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項7】
前記加熱装置は前記原料容器の底部および側壁に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項8】
前記冷却カバーには、炉蓋と冷却シェルを含み、前記炉蓋と冷却シェルは接触していないことを特徴とする請求項1に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項9】
前記炉蓋と前記冷却シェルとによって形成される隙間には冷却剤が充填されることを特徴とする請求項8に記載のセレン残留物の真空精製装置。
【請求項10】
精製する前のセレン残留物を原料容器の中に入れ、加熱装置を用いて精製するセレン残留物を加熱するステップと、
前記加熱により発生したガスは凝縮器に入り、孔を通って冷却システムに入って冷却され、冷却されて得られた精製セレンはコレクションプレートに収集されて収集システムに入るステップを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載のセレン残留物の真空精製装置を使用してセレン残留物を精製する方法。
【国際調査報告】