(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】液化水素蒸発ガス制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575462
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2022009822
(87)【国際公開番号】W WO2024010114
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082529
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515282809
【氏名又は名称】コリア ガス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヨン ソン
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヘ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジン ヨン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172BD05
3E172EB02
3E172EB08
3E172EB19
3E172HA04
3E172HA08
(57)【要約】
本発明は、大容量の水素を液化状態で貯蔵する貯蔵設備又は液化水素を貯蔵及び運送する運送手段に適用され得る液化水素貯蔵タンクに対して、液化水素の蒸発ガス発生量を制御することができ、液化水素貯蔵タンクの圧力を低く維持できるシステム及び方法に関する。本発明に係る液化水素蒸発ガス制御方法は、液化水素を貯蔵し、少なくとも2台以上備えられ、高温モード又は低温モードで運転される貯蔵タンク;を含み、前記低温モードは、前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を高密化温度である第1温度に維持させる段階;を含み、前記高温モードは、前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の冷熱を回収し、液化水素の少なくとも一部を液化水素の三重点を超える温度である第2温度に維持させる段階;を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素を貯蔵し、少なくとも2台以上備えられ、高温モード又は低温モードで運転される貯蔵タンク;を含み、
前記低温モードは、
前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を高密化温度である第1温度に維持させる段階;を含み、
前記高温モードは、
前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の冷熱を回収し、液化水素の少なくとも一部を液化水素の三重点を超える温度である第2温度に維持させる段階;を含む、液化水素蒸発ガス制御方法。
【請求項2】
前記第2温度に維持させる段階では、液化水素の蒸発ガスが生成され、
前記高温モードは、
前記貯蔵タンクの内圧を真空状態まで低下させ、連鎖的な気化反応を中断させる段階;及び
前記生成された蒸発ガスを排気させ、電力を生産する段階;を含む、請求項1に記載の液化水素蒸発ガス制御方法。
【請求項3】
前記高温モードで回収した液化水素の冷熱は、前記第1温度に維持させる段階で供給する、請求項1に記載の液化水素蒸発ガス制御方法。
【請求項4】
前記第1温度に維持させる段階は、
前記低温モードで運転する貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を固体化させる段階;を含み、
前記低温モードで運転する貯蔵タンクには、水素を液体状態及び固体状態で貯蔵する、請求項1に記載の液化水素蒸発ガス制御方法。
【請求項5】
液化水素を貯蔵し、少なくとも2台以上備えられる貯蔵タンク;を含み、
前記貯蔵タンクの内部には、
前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の温度を第1温度に維持させる高密化部;及び第2温度に維持させるための温度維持部;が設置され、
前記貯蔵タンクは、
前記高密化部によって前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部が高密化温度である第1温度に維持される低温タンク;及び
前記温度維持部に前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部が液化水素の三重点を超える温度である第2温度に維持される高温タンク;を含む、液化水素蒸発ガス制御システム。
【請求項6】
前記貯蔵タンクから蒸発ガスを排気させ、前記貯蔵タンクの内圧を真空状態まで低下できる圧縮機;
前記圧縮機によって圧縮された蒸発ガスを貯蔵するバッファータンク;及び
前記バッファータンクに貯蔵された蒸発ガスを用いて電力を生産するエネルギー転換部;を含む、請求項5に記載の液化水素蒸発ガス制御システム。
【請求項7】
前記高温タンクの温度維持部で液化水素の冷熱を回収した低温の熱媒体を受け取り、前記低温の熱媒体を前記低温タンクの温度維持部に供給する熱媒体循環部;をさらに含み、
前記熱媒体循環部は、前記エネルギー転換部で生成された電力で駆動する、請求項6に記載の液化水素蒸発ガス制御システム。
【請求項8】
前記貯蔵タンクの温度維持部に低温の熱媒体を供給する熱媒体循環部;をさらに含み、
前記高密化部は、前記温度維持部に供給される低温の熱媒体の冷熱を1次的に回収し、貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を固体化させる、請求項5に記載の液化水素蒸発ガス制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量の水素を液化状態で貯蔵する貯蔵設備又は液化水素を貯蔵して運送する運送手段に適用され得る液化水素貯蔵タンクに関し、より詳細には、液化水素の蒸発ガス発生量を制御することができ、液化水素貯蔵タンクの圧力を低く維持できる液化水素蒸発ガス制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の運送は、内陸での運送と海上での運送とに大きく区分することができる。内陸での運送としては、パイプライン又は貯蔵設備が含まれた専用車両及び鉄道などを用いた運送が可能であり、海上での運送としては、貯蔵設備が含まれた船舶などの浮遊体を用いた運送が可能である。
【0003】
近年まで、水素は、200bar以上に圧縮して特殊容器に貯蔵し、運送を通じて小規模供給及び活用を行ってきたが、炭素税などの環境にやさしいエネルギーの活用が浮き彫りになることによって大容量・長距離移送のための技術が必要である。特に、効率的な運送のためには、気体状態の水素を冷却及び加圧することによって液化させて得た液体状態の水素を貯蔵及び運送することを考慮しなければならない。
【0004】
液体状態の水素は、気体状態の水素を極低温状態(大気圧を基準にして約-253℃)で冷却させて得ることができ、極低温用特殊断熱貯蔵タンクに貯蔵することによって液体状態で運送することができる。
【0005】
液化水素(liquefied hydrogen)は、気体状態であるときよりも体積が約1/865に減少するので、同一の圧力で気体水素に比べて865倍の体積エネルギー密度を有している。このように水素を液体状態で貯蔵すると、気体状態の水素を高圧で貯蔵する場合に比べて高密度貯蔵が可能であり、貯蔵タンクの安全性の面でも有利であることはもちろん、貯蔵費用を減少させることができ、爆発の危険性が低いという長所がある。
【0006】
既存の液化ガス貯蔵技術は、LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)などを対象としている。常用化された液化ガス貯蔵技術のうちLNGの液化温度は、大気圧を基準にして約-163℃であって、既存の貯蔵技術を水素に適用するためには、水素の液化温度(或いは沸騰点)が遥かに低いので、貯蔵圧力が高くならざるを得ない。よって、既存の貯蔵技術を水素に適用するためには、断熱厚さを数倍から数十倍増加させなければならない。
【0007】
また、商用されているLNGと類似する断熱技術で液化水素を貯蔵する場合、三重点温度を基準にして、貯蔵タンクの設計圧力は3bar以上の高圧になる。すなわち、液化水素の貯蔵圧力が高くなるにつれて、貯蔵タンクの内壁の厚さが増加せざるを得なく、内壁の厚さが建設及び検査基準を超えてしまうので、実現が不可能になる。
【0008】
したがって、大量の液化水素を貯蔵及び運送するのにおいて、貯蔵圧力を低下させ、既存の液化ガス貯蔵技術で断熱及びエネルギー効率を改善する技術が非常に重要である。
【0009】
一方、液化ガスを貯蔵及び運送するにおいて、蒸発ガスの処理は必須的であり、LNGの蒸発ガスを処理する多様な方法が提示されており、また、実際に適用されている。
【0010】
ところが、LNGは、約0.36bar、約-163℃で安定状態が維持される一方で、液化水素は、LNGより約90℃低い-253℃で貯蔵され、LNGの貯蔵圧力である0.36barの数倍に達する2bar乃至6bar区間で貯蔵される。また、液化水素は、オルト-パラ(ortho-para)転換反応によって蒸発ガスが不規則に発生するという特性を有するので、実際にLNGの蒸発ガス処理技術を液化水素の蒸発ガスに適用するのにも限界を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、上述した問題を解決するためのものであって、液化水素を貯蔵及び運送するにおいて、液化水素の蒸発ガス発生量を制御できる蒸発ガス制御システム及び方法を提供する。
【0012】
また、水素は、オルト-パラ転換反応によって不規則に発生する蒸発ガスの発生量を制御し、液化水素貯蔵タンクの圧力を低く維持することができ、貯蔵タンクの大型化を実現できる液化水素蒸発ガス制御システム及び方法を提供することを目的とする。
【0013】
ここで、本発明が解決しようとする技術的課題及び目的は、上述した技術的課題及び目的に限定されなく、他の技術的課題及び目的は、下記の記載から通常の技術者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するための本発明の一側面によると、液化水素を貯蔵し、少なくとも2台以上備えられ、高温モード又は低温モードで運転される貯蔵タンク;を含み、前記低温モードは、前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を高密化温度である第1温度に維持させる段階;を含み、前記高温モードは、前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の冷熱を回収し、液化水素の少なくとも一部を液化水素の三重点を超える温度である第2温度に維持させる段階;を含む、液化水素蒸発ガス制御方法が提供される。
【0015】
好ましくは、前記第2温度に維持させる段階では、液化水素の蒸発ガスが生成され、前記高温モードは、前記貯蔵タンクの内圧を真空状態まで低下させ、連鎖的な気化反応を中断させる段階;及び前記生成された蒸発ガスを排気させ、電力を生産する段階;をさらに含むことができる。
【0016】
好ましくは、 前記高温モードで回収した液化水素の冷熱は、前記第1温度に維持させる段階で供給することができる。
【0017】
好ましくは、前記第1温度に維持させる段階は、前記低温モードで運転する貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を固体化させる段階;を含み、前記低温モードで運転する貯蔵タンクには、水素を液体状態及び固体状態で貯蔵することができる、
【0018】
上述した目的を達成するための本発明の他の一側面によると、液化水素を貯蔵し、少なくとも2台以上備えられる貯蔵タンク;を含み、前記貯蔵タンクの内部には、前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の温度を第1温度に維持させる高密化部;及び第2温度に維持させるための温度維持部;が設置され、前記貯蔵タンクは、前記高密化部によって前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部が高密化温度である第1温度に維持される低温タンク;及び前記温度維持部に前記貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部が液化水素の三重点を超える温度である第2温度に維持される高温タンク;を含む、 液化水素蒸発ガス制御システムが提供される。
【0019】
好ましくは、前記貯蔵タンクから蒸発ガスを排気させ、前記貯蔵タンクの内圧を真空状態まで低下できる圧縮機;前記圧縮機によって圧縮された蒸発ガスを貯蔵するバッファータンク;及び前記バッファータンクに貯蔵された蒸発ガスを用いて電力を生産するエネルギー転換部;をさらに含むことができる。
【0020】
好ましくは、前記高温タンクの温度維持部で液化水素の冷熱を回収した低温の熱媒体を受け取り、前記低温の熱媒体を前記低温タンクの温度維持部に供給する熱媒体循環部;をさらに含み、前記熱媒体循環部は、前記エネルギー転換部で生成された電力で駆動することができる。
【0021】
好ましくは、前記貯蔵タンクの温度維持部に低温の熱媒体を供給する熱媒体循環部;をさらに含み、前記高密化部は、前記温度維持部に供給される低温の熱媒体の冷熱を1次的に回収し、貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の少なくとも一部を固体化させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るシステム及び方法は、貯蔵タンクの内部を冷却させ、液化水素の一部を固体化させ、安定した状態で液化水素を貯蔵することによって、液化水素の貯蔵圧力を常圧水準に維持することができる。
【0023】
また、液化水素の一部を固体化させることによって、液体状態の水素から極低温の冷熱及び気化潜熱をさらに得ることができる。
【0024】
また、液化水素の運転圧力が低くなるので、貯蔵タンクの内壁の厚さが減少し、液化水素貯蔵タンクの大型化を実現することができる。
【0025】
液化水素貯蔵タンクと燃料電池とを連係し、液化水素蒸発ガスを燃料電池の燃料として使用するにおいて、外部温度と経過時間によって蒸発ガスの発生量が異なるという問題が既存していたが、本発明によると、液化水素貯蔵タンクの内部温度を制御することによって、不規則に発生していた水素蒸発ガスの発生量を一定に調節することができ、燃料電池に水素燃料を安定的に供給することができ、その結果、電力を安定的に生産して供給することができる。
【0026】
また、極低温の液化ガスを海上運送するときは、波高によるスロッシング(sloshing)が発生するようになり、貯蔵タンクの損傷を誘発するが、本発明によると、液化水素の一部を粘度の高い固体に相変化させることによってスロッシングに有利に対応することができ、運送の安全性を確保することができる。
【0027】
本発明によると、低温タンクと高温タンクとの間で液化水素の冷熱を最大限活用しながら蒸発ガスの発生量を制御することによって安定的に電力を生産し、生産された電力を液化水素の冷却に活用するなどの全体的な制御工程の効率性を高め、液化水素を超低温液体状態で長期間維持及び貯蔵できるようにする。
【0028】
また、エネルギー効率の高い蒸発ガス制御技術を液化水素の貯蔵及び運送中に適用できることはもちろん、液化水素の荷役が実施される液化水素供給基地及び引受基地などのターミナルでも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施例に係る液化水素蒸発ガス制御システムを説明するための系統図を簡略に示した図である。
【0030】
【
図2】本発明の第2実施例に係る液化水素蒸発ガス制御システムを説明するための系統図を簡略に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の動作上の利点及び本発明の実施によって達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好ましい実施例を例示する添付の図面、及び添付の図面に基づいた内容を参照しなければならない。
【0032】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例の構成及び作用を詳細に説明する。ここで、各図面の各構成要素に対して参照符号を付すにおいて、同一の構成要素に限っては、他の図面上に表示されたとしても、可能な限り同一の符号で表記されたことに留意しなければならない。また、下記の実施例は、多くの他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【0033】
後述する本発明の一実施例に係る液化水素蒸発ガス制御システム及び方法は、陸上(onshore)はもちろん、海上(offshore)の貯蔵設備及び運送手段に全て適用され得る。
【0034】
以下、本発明の一実施例は、海上に適用されることを基準にして説明し、液化水素貯蔵タンクが設けられる運送手段が船舶であることを例に挙げて説明する。
【0035】
本発明の一実施例を説明するにおいて、船舶は、液化水素を貯蔵する貯蔵設備が設けられた船舶であって、液化水素運搬船などの自己推進能力を有する船舶を始めとして、FPSO(Floating Production Storage Offloading)、FSRU(Floating Storage Regasification Unit)のように推進能力は有さないが、海上に浮遊している海上構造物を含むことができる。ただし、後述する各実施例において、船舶が液化水素運搬船であることを例に挙げて説明する。
【0036】
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施例に係る液化水素蒸発ガス制御システム及び方法を説明する。
【0037】
まず、
図1を参考にして、本発明の一実施例に係る液化水素貯蔵タンクにおいて、液化水素の蒸発ガスを制御できるシステム及び方法を説明する。
【0038】
本実施例に係る液化水素蒸発ガス制御システムは、液化水素を貯蔵する貯蔵タンク101、102と、貯蔵タンク101、102から蒸発ガスを排出させる圧縮機41と、貯蔵タンク101、102から排出された蒸発ガスを貯蔵するバッファータンク42と、貯蔵タンク101、102から排出された蒸発ガスを用いて電力を生産するエネルギー転換部47と、液化水素の熱エネルギーを回収する熱媒体循環部40とを含む。
【0039】
本実施例の貯蔵タンク101、102は、100m3以上の大容量貯蔵タンクであって、少なくとも2台以上備えられる。
【0040】
また、本実施例の貯蔵タンク101、102の運転圧力は、0.1bar乃至6barであってもよく、好ましくは、3bar以下、さらに好ましくは、1bar以下又は常圧に維持され得る。
【0041】
本実施例の貯蔵タンク101、102は、第1温度に維持させる低温モード、及び第1温度より高い温度である第2温度に維持させる高温モードのうちいずれか一つのモードで運転されてもよい。以下、本実施例を説明するにおいて、低温モードで運転される貯蔵タンクは低温タンク101と称し、高温モードで運転される貯蔵タンクは高温タンク102と称する。
【0042】
本実施例において、第1温度は、貯蔵された液化水素の密度を高める高密化温度であって、本実施例での高密化温度は、液化水素が固体及び液体の混合状態で存在する温度範囲であって、約14K乃至21Kであってもよい。
【0043】
本実施例において、貯蔵タンク101、102が低温モードで運転されると、貯蔵タンク101、102に貯蔵された液化水素は高密化温度に維持され、高密化温度範囲の液化水素は、少なくとも一部が液体状態であるときよりも密度が高い固体状態で存在し、液体と固体の混合状態、好ましくは、スラリー状態で存在するようになる。
【0044】
液化水素は、密度が1K当たり約1kg/m3ずつ変化するが、液化水素の温度が14Kであるときの密度は約77kg/m3で、液化水素の温度が21Kであるときの密度は77kg/m3である。
【0045】
本実施例において、第2温度は、液化水素の三重点温度であってもよく、例えば、21Kを超える温度であってもよい。貯蔵タンクが第2温度に維持されると、貯蔵タンク内の水素の温度は、21Kよりやや高い温度として約21Kの温度に維持され得る。
【0046】
本実施例において、2台の貯蔵タンク101、102が備えられる場合、1台は低温タンク101として運転され、残りの1台は高温タンク102として運転される。また、低温モードで運転されていた低温タンク101と、高温モードで運転されていた高温タンク102の運転モードが相互転換されながら運営されてもよい。
【0047】
すなわち、低温モードで運転された低温タンク101は、低温モードが完了すると、高温モードで運転される高温タンク102として運転され、高温モードで運転されていた高温タンク102は、高温モードが完了すると、低温モードで運転される低温タンク101として運転され得る。
【0048】
船舶の運航状態によって、2台以上の貯蔵タンク101、102のうち、低温モードで運転する貯蔵タンクの数、及び高温モードで運転する貯蔵タンクの数を調節することができる。
【0049】
一例として、船舶が液化水素を載せながら海上を運航するときは、2台以上の貯蔵タンク101、102を全て低温モードで運転する。
【0050】
また、本システムを液化水素貯蔵基地に適用するときは、少なくとも1台以上の貯蔵タンクは低温モードで運転し、少なくとも1台以上の貯蔵タンクは高温モードで運転する交差モードで運転することができる。貯蔵基地では、システム内で活用する電力を生産する燃料として水素の蒸発ガス(又は気化ガス)を活用する必要があるので、少なくとも1台以上の貯蔵タンクは高温モードで運転し、一定の量の水素蒸発ガスを持続的に発生させ、安定的に電力を生産及び供給することができる。
【0051】
液化水素貯蔵基地とは、陸上や海上に多数の液化水素貯蔵タンクを備えており、液化水素貯蔵タンクに液化水素を大容量で貯蔵し、運送手段又は需要先に液化水素を供給(荷役)する基地を意味する。
【0052】
一方、貯蔵された液化水素を運送手段や需要先に荷役するときは、多数の液化水素貯蔵タンクから順次又は連鎖重畳的に液化水素を供給するが、このときは、多数の液化水素貯蔵タンクを交差モード、すなわち、高温モードで運転する液化水素貯蔵タンクと低温モードで運転する液化水素貯蔵タンクをそれぞれ少なくとも一つ以上含むモードで運転し、液化水素を荷役する貯蔵タンクが一つ残っているときは、その一つの液化水素貯蔵タンクを高温モードで運転することができる。
【0053】
本実施例によると、貯蔵タンク101、102は、低温モード及び高温モードのうちいずれのモードで運転されたとしても、圧力が3bar以下、1bar以下又は常圧に維持され得る。
【0054】
図1は、圧縮機41、バッファータンク42及びエネルギー転換部47が高温タンク102にのみ連結されることを示しているが、圧縮機41、バッファータンク42及びエネルギー転換部47は低温タンク101とも連結され得る。又は、低温タンク101と連結される別途の圧縮機、バッファータンク及びエネルギー転換部を備えることもできる。
【0055】
本実施例では、低温タンク101と高温タンク102が、圧縮機41、バッファータンク42及びエネルギー転換部47を共有することを例に挙げて説明する。低温タンク101と圧縮機41は第1蒸発ガス供給ラインBL1によって連結され、高温タンク102と圧縮機41は第2蒸発ガス供給ラインBL2によって連結される。
【0056】
本実施例において、貯蔵タンク101、102の内部には、貯蔵タンク101、102の内部温度を各運転範囲に維持させるために熱媒体循環部40から移送された低温又は高温の熱媒体が流動する流路である温度維持部44、46と、温度維持部44、46よりも上端部に配置され、熱媒体循環部40から移送された低温の熱媒体が流動し、貯蔵タンク101、102内の液化水素の密度を高める高密化部43、45とが備えられる。
【0057】
本実施例においては、図面に示したように、高密化部43、45が温度維持部44、46の上端に配置されることを例に挙げて説明するが、高密化部43、45と温度維持部44、46は互いに平行な位置に配置されてもよく、その位置を限定しない。
【0058】
以下、本実施例を説明するにおいて、低温タンク101の高密化部を第1高密化部43と命名し、低温タンク101の温度維持部を第1温度維持部44と命名することにし、高温タンク102の高密化部を第2高密化部45と命名し、高温タンク102の温度維持部を第2温度維持部46と命名することにする。
【0059】
第1高密化部43、第1温度維持部44及び熱媒体循環部40は第1熱媒体ラインML1によって連結され、第2高密化部45、第2温度維持部46及び熱媒体循環部40は第2熱媒体ラインML2によって連結される。
【0060】
低温モードで運転される低温タンク101は、第1熱媒体ラインML1を介して低温熱媒体を受け取り、第1温度として高密化温度である13K乃至21K、20K以下、又は13K乃至14Kに維持され得る。
【0061】
低温モードで運転される低温タンク101内部の水素は、液体状態、液体と固体の2相混合状態、又は、液体、固体及び気体の3相混合状態で存在し得る。
【0062】
高温モードで運転される高温タンク102は、第2熱媒体ラインML2を介して高温熱媒体を受け取り、三重点温度よりやや高い温度、例えば、約21Kの運転温度に維持され得る。
【0063】
高温モードで運転される高温タンク102内部の水素は、液体状態、気体状態又は液体と気体の2相混合状態で存在し得る。
【0064】
本実施例の熱媒体循環部40は、高温タンク102に高温の熱媒体を供給し、高温タンク102から液化水素の冷熱を回収することによって低温の熱媒体を受け取る。
【0065】
また、熱媒体循環部40は、低温タンク101に低温の熱媒体を供給し、低温タンク101に貯蔵された水素に冷熱を伝達することによって高温の熱媒体を受け取る。
【0066】
本実施例の熱媒体循環部40は、ヘリウムを冷媒として使用する冷凍サイクルであってもよい。
【0067】
熱媒体ラインML1、ML2を介して移送される流体は、ヘリウム、又はヘリウムと貯蔵タンク101、102に貯蔵された水素との間に熱エネルギーを間接的に伝達する中間熱媒体であってもよい。
【0068】
本実施例において、低温モードは、貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の反応性を抑制させ、安定的に水素が液体状態を維持しながら貯蔵できるようにする目的で実施される。
【0069】
また、本実施例において、高温モードは、貯蔵タンクに貯蔵された液化水素の一部を気化させ、一定の量の蒸発ガスの生成を誘導することによって、エネルギー転換部47で電力を生産するための燃料を供給する目的で実施される。また、高温モードで運転される高温タンク102の液化水素から低温モードで運転される低温タンク101の液化水素に供給する冷熱を回収することもできる。
【0070】
本実施例において、高密化部43、45は低温モードで作動し、温度維持部44、46は、高温モードで作動し、必要によっては低温モードでも作動し得る。
【0071】
すなわち、高密化部43、45が作動すると、高密化部43、45周辺の液化水素の温度が第1温度に維持され、温度維持部44、46が作動すると、温度維持部44、46周辺の液化水素温度が第2温度に維持される。
【0072】
本実施例の低温モードでは、熱媒体循環部40から第1熱媒体ラインML1を介して低温の熱媒体を低温タンク101の第1高密化部43に供給し、第1高密化部43で1次的に冷熱が回収された中温の熱媒体が第1温度維持部44に移送され得る。
【0073】
第1高密化部43は、貯蔵された液化水素の一部を冷却によって固体化させることによって、液化水素の反応性を抑制させる。液化水素の一部が固体化されはじめると、液化水素のオルト-パラ転換反応が抑制されることによって、液化水素が気体に相変化すること、及び気化の拡散を防止して安定化させる。第1高密化部43によって低温タンク101に貯蔵された液化水素の一部、例えば、液化水素の表面層はスラリー状態で存在し得る。
【0074】
第1高密化部43は、低温タンク101に貯蔵された液化水素のうち一部、具体的には、第1高密化部43が配置される周辺の液化水素を固体化させる。本実施例の第1高密化部43は、低温タンク101に貯蔵された液化水素の反応性が基準値より増加するとき、又は特定温度以下で選択的に稼動することもできる。
【0075】
本実施例によると、液化水素を固体状態に相変化させる固体化装置である高密化部43、45が大型タンクである本実施例の貯蔵タンク101、102の内部に設けられながら液化水素を固体化させ、貯蔵された液化水素を全体でなく部分的に固体化させ、部分的に冷熱をさらに多く保有している固体状態で水素を貯蔵することによって保有潜熱を最大化し、安定的に水素を貯蔵することができる。
【0076】
また、第1温度維持部44は、低温タンク101に貯蔵された液化水素の一部、例えば、第1温度維持部44が配置される周辺の液化水素の温度を20K以下に維持させることができる。
【0077】
第1温度維持部44で液化水素を冷却させながら温度が上昇した高温熱媒体は、第1熱媒体ラインML1を介して熱媒体循環部40に回収される。
【0078】
本実施例において、低温モードで運転される低温タンク101の内部温度は20K以下に維持され、液化水素の少なくとも一部は、固体状態で存在することによって遮蔽役割をするようになり、液化水素の気化を抑制させ、このような作動により、低温タンク101の内部圧力が1bar以下に維持される。
【0079】
一方、本実施例の高温モードでは、熱媒体循環部40から第2熱媒体ラインML2を介して高温の熱媒体を高温タンク102の第2温度維持部46に供給する。
【0080】
第2温度維持部46により、高温タンク102の内部温度は、三重点を超える温度、すなわち、21K以上に維持され、高温タンク102に高温の熱媒体が供給されると気化反応が起こりはじめる。
【0081】
第2温度維持部46で液化水素の冷熱を回収しながら温度が低くなった低温熱媒体は、第2熱媒体ラインML2を介して熱媒体循環部40に回収される。
【0082】
水素分子は、原子核のスピン方向によってオルト水素(ortho-hydrogen)とパラ水素(para-hydrogen)とに区別される。オルト水素とパラ水素の存在比率は温度依存性であって、常温、常圧条件で水素が気体状態で存在し、このときは、オルト水素とパラ水素の存在比が3:1で構成される。しかし、温度が20Kに低くなると、水素は液体状態で存在するようになるが、このときは、パラ水素が99.8%と圧倒的に多くなる。
【0083】
ところが、水素分子は、一方向にスピン運動をしながら温度が低くなると、一つの分子が逆に回り、スピン運動を両側で行いながら熱を出し、自ら気化する特性を有する。すなわち、水素を長時間貯蔵すると、自然にパラ水素への転換が起こるようになり、オルト水素からパラ水素への転換反応時には転換熱が発生するようになる。
【0084】
オルト-パラ水素転換反応時に発生する転換熱は、液化水素の蒸発潜熱より大きいので、貯蔵された液化水素が蒸発するようになる。
【0085】
このような水素の特性により、水素蒸発ガスは、瞬間的に連鎖発生しながら気化が停止し、発生量が急激に減少することによって不規則的に発生するようになるが、本実施例によると、貯蔵タンクを高温モード及び低温モードで運転し、蒸発ガスの発生量を一定に調節することができる。
【0086】
一方、本実施例において、貯蔵タンク101、102内の蒸発ガスを排出させる時点になると、圧縮機41を稼働させ、蒸発ガスを排出させる。
【0087】
本実施例の圧縮機41は、貯蔵タンク101、102内の蒸発ガスを圧縮させて排出させるが、貯蔵タンク101、102内の蒸発ガスが爆発的に発生する時点では、蒸発ガスを給・排気させ、貯蔵タンク101、102の内部が中真空状態になるように作動することができる。
【0088】
特に、圧縮機41は、貯蔵タンク101、102が低温モードで運転されるときは、蒸発ガスを排出させる手段として使用され、高温モードで運転されるときは、貯蔵タンク101、102を中真空状態にする手段として使用される。
【0089】
圧縮機41が稼動し、貯蔵タンク101、102が中真空状態になると、貯蔵タンク101、102内でオルト-パラ転換反応が起こるようになり、パラ水素の比率が高くなると、圧縮機41の作動を停止し、貯蔵タンク101、102内の真空を解除させることによって貯蔵タンク101、102を安定化させる。
【0090】
圧縮機41は、100m3の大型液化水素貯蔵タンクに対して真空状態にすることができる圧縮機であって、運転範囲によって1台以上が直列に連結される多段圧縮機であってもよく、又は多数台の圧縮機が並列に備えられてもよい。
【0091】
圧縮機41が稼動し、第2蒸発ガス供給ラインBL2を介して貯蔵タンク101、102から排出された蒸発ガスは、第1蒸発ガス分配ラインCL1を介してバッファータンク42に移送されてバッファータンク42に貯蔵され得る。
【0092】
また、貯蔵タンク101、102から排出された蒸発ガスは、第2蒸発ガス分配ラインCL2を介してエネルギー転換部47に移送されてもよい。
【0093】
本実施例において、エネルギー転換部47は、水素を燃料として使用して電気化学反応によって電力を生産する燃料電池(fuel cell)、及び水素気体を作動流体として使用してタービンを駆動させ、タービンの駆動エネルギーを電力に変換することによって電力を生産するタービン発電機のうちいずれか一つ以上を含むことができる。
【0094】
本実施例のエネルギー転換部47で生成された電力は、熱媒体循環部40で使用されてもよく、図示していないスイッチボードなどの電力分配手段(図示せず)によって船内電力需要先で分配・供給されてもよい。
【0095】
気体状態の窒素やメタンを圧縮した後、ジュール-トムソン膨張させると、温度が減少して液化するが、気体状態の水素やヘリウムは、常温より逆転温度(inversion temperature)が低いので、常温でジュール-トムソン膨張時、却って温度が上昇するようになる。よって、水素は、逆転温度以下で膨張させると温度が低くなる。
【0096】
本実施例において、高温モードで運転される高温タンク102の内部温度は、20Kより高い温度でありながら逆転温度よりは低い温度に維持され、高温タンク102の内部に真空を付与し、パラ水素への転換を促進させると同時に、蒸発ガスを給・排気し、高温タンク102の圧力及び蒸発ガスの発生量を制御することができる。このような作動により、高温タンク102の内部圧力が3bar以下に維持される。
【0097】
次に、
図2を参照して、本発明の第2実施例に係る液化水素蒸発ガス制御システム及び方法を説明する。
【0098】
本実施例は、上述した第1実施例の変形例であって、第1実施例に係る液化水素蒸発水素制御システム及び方法が適用される液化ガス貯蔵タンクと運送手段(液化水素需要先51、52)との間で液化水素を荷役する荷役モードで、液化水素を需要先に供給しながら液化水素の蒸発ガスを制御するシステム及び方法に関する。
【0099】
よって、本実施例は、上述した第1実施例に係る液化水素貯蔵タンク、液化水素蒸発ガス制御システム及び方法が同一に適用されながらも、上述した第1実施例が適用される貯蔵設備又は運送手段を、液化水素貯蔵タンクから液化水素需要先に液化水素を荷役する荷役モードで運転し、液化水素を供給する液化水素供給システム及び方法に関する。
【0100】
本実施例によると、多数の液化水素貯蔵タンク101、102は、交互モードで運転される。また、本実施例によると、多数の液化水素貯蔵タンク101、102は、少なくとも一つ以上の低温タンク101と、少なくとも一つ以上の高温タンク102とを含んで運転する。ただし、荷役を実施する最後の一つの液化水素貯蔵タンクは、高温タンク102になるように運転することができる。
【0101】
本実施例によると、上記の第1の実施形態において、貯蔵タンク101、102より小容量のタンクでありながら貯蔵タンク101、102より高圧で運転され、液化水素需要先51、52に供給する液化水素を貯蔵する2台以上の圧力タンク100と、圧力タンク100と液化水素需要先51、52とを連結し、圧力タンク100から液化水素需要先51、52に液化水素を移送する液化水素供給ラインSL1、SL2と、圧力タンク100及び液化水素需要先51、52から蒸発ガスを回収する回収ラインRL1、RL2、RL3、RL4、RL5とをさらに含む。
【0102】
本実施例の圧力タンク100の運転圧力は、3bar以下で運転される貯蔵タンク101、102の運転圧力より高い高圧に維持され得る。本実施例の圧力タンク100は、6bar以上、10bar以上で運転されてもよい。
【0103】
一方、圧力タンク100の運転圧力が貯蔵タンク101、102の運転圧力より高いので、貯蔵タンク101、102と圧力タンク100とを連結する液化水素排出ラインLLには、貯蔵タンク101、102から圧力タンク100に液化水素を昇圧させて供給するための供給ポンプ50が設けられてもよい。このとき、液化水素は、供給ポンプ50によって加圧されながら圧力タンク100に移送される。
【0104】
本実施例の供給ポンプ50は、選択的構成として省略が可能であり、供給ポンプ50などの追加動力を提供しなかったとしても、 圧力タンク100の配置高さは貯蔵タンク101、102の配置高さよりも低くてもよい。 その後、液化水素は、高さの差によって貯蔵タンク101、102から圧力タンク100に移送され得る。
【0105】
本実施例によると、貯蔵タンク102から圧力タンク100に液化水素を移送する前に、貯蔵タンク102と圧力タンク100とを連結する液化水素排出ラインLLを介して貯蔵タンク102から排出された液化水素を用いて予冷することができる。
【0106】
供給ポンプ50が配置される場合、液化水素排出ラインLLと供給ポンプ50を共に予冷することによって、供給ポンプ50のキャビテーション現象を防止することができる。
【0107】
液化水素排出ラインLLを予冷するための手段として、圧力タンク100又は圧力タンク100と液化水素排出ラインLLとが接する部位、すなわち、ヘッダーの上流から分岐され、供給ポンプ50の上流又は貯蔵タンク101、102と液化水素排出ラインLLとが接する部位、すなわち、ヘッダーの下流に合流され、液化水素排出ラインLLを予冷しながら温度が上昇した液化水素を液化水素排出ラインLLの上流に再循環させる液化水素回収ラインLL1をさらに含むことができる。
【0108】
本実施例において、圧力タンク100の内圧は10bar以上に維持され、液化水素需要先51、52の運転圧力は、10bar以下に維持される。
【0109】
圧力タンク100の内圧は、貯蔵タンク101、102から排出された蒸発ガスを圧縮しながら圧力タンク100に供給することによって維持させることができる。
【0110】
本実施例によると、 圧力タンク100の内部圧力を作動圧力に維持するために、 多数の貯蔵タンク101、102のうち少なくとも一つの貯蔵タンク102を高温モードで運転し、高温タンク102から排出される蒸発ガスを圧縮機41を用いて圧力タンク100に供給することができる。
【0111】
よって、
図2は、高温タンク102と圧力タンク100との連結関係のみを示しており、高温タンク102から圧力タンク100に液化水素を供給することを例に挙げて説明するが、低温タンク101に対しても同一に適用され得ることは当然である。
【0112】
高温タンク102から排出され、圧縮機41によって圧縮された高圧蒸発ガスのうち、圧力タンク100で要求する蒸発ガス量を超える量の蒸発ガスは、バッファータンク42に貯蔵されたり、エネルギー転換部47に供給され、電力を生産するのに使用されてもよく、バッファータンク42に貯蔵されてからエネルギー転換部47に供給されてもよい。
【0113】
また、圧力タンク100の圧力が運転圧力より低くなることを防止するために、バッファータンク42に貯蔵された高圧蒸発ガスを優先的に圧力タンク100に供給することができる。
【0114】
本実施例において、圧縮機41は多段圧縮機であって、高温タンク102から蒸発ガスを排気させ、高温タンク102の内部を真空状態に減圧させる第1圧縮機と、蒸発ガスを圧力タンク100で要求圧力まで圧縮する第2圧縮機とを含むことができる。第1圧縮機と第2圧縮機は、直列又は並列に連結されてもよい。
【0115】
圧力タンク100から液化水素需要先51、52への液化水素の荷役は、圧力差又は高さの差によって液化水素排出ラインLLに沿って貯蔵タンク101、102から圧力タンク100に移送された液化水素の圧力、及びバッファータンク42から第3蒸発ガス分配ラインCL3を介して移送される高圧蒸発ガスの自己圧力により、圧力タンク100から液化水素が第1液化水素供給ラインSL1及び第2液化水素供給ラインSL2に送出されることによって行われ得る。
【0116】
第3蒸発ガス分配ラインCL3は、バッファータンク42と圧力タンク100とを連結する高圧蒸発ガスの流路であって、圧力タンク100の内圧を維持させるための手段である。圧縮機41で圧縮された高圧蒸発ガス、又は圧縮機41で圧縮された後、バッファータンク42に貯蔵されている高圧蒸発ガスは、第3蒸発ガス分配ラインCL3を介して圧力タンク100に移送される。
【0117】
本実施例において、圧力タンク100の内圧を維持させるにおいて、第3蒸発ガス分配ラインCL3を介して移送された高圧蒸発ガスのみでは不足する場合は、圧力タンク100に貯蔵された液化水素を気化させて供給することによって、圧力タンク100の内圧を維持することができる。
【0118】
圧力タンク100の内圧を維持させる手段として、圧力タンク100と熱媒体循環部40とを連結する第3熱媒体ラインML3と、圧力タンク100と圧縮機41の上流とを連結する第5回収ラインRL5とをさらに含むことができる。
【0119】
第3熱媒体ラインML3を介して熱媒体循環部40から高温の熱媒体が圧力タンク100に移送され、圧力タンク100に貯蔵された液化水素を気化させながら冷熱を回収した低温の熱媒体が、第3熱媒体ラインML3を介して熱媒体循環部40に再度回収される。
【0120】
第3熱媒体ラインML3によって熱媒体が循環しながら圧力タンク100で蒸発ガスが生成されると、圧力タンク100の内圧が上昇することによって圧力タンク100の運転圧力が維持され得る。また、第5回収ラインRLを介して蒸発ガスを排出させた後で圧縮機41の上流に供給し、蒸発ガスを圧縮機41で圧縮しながら高圧蒸発ガスの状態で圧力タンク100に供給することによって、圧力タンク100の運転圧力を維持させることもできる。
【0121】
圧力タンク100と熱媒体循環部40とを連結する第3熱媒体ラインML3、第3熱媒体ラインML3が圧力タンク100及び熱媒体循環部40と連結される部位、すなわち、ヘッダー及び第3熱媒体ラインML3に設置され得る熱交換器及びバルブなどの各種装置は、コールドボックス(cold box)に設置することによって1次的に真空断熱することができる。コールドボックスには、水素の漏れを感知する水素感知装置が設置されてもよい。
【0122】
また、コールドボックスの外部に断熱材を設置し、2次的にさらに断熱することもできる。
【0123】
本実施例の液化水素需要先51、52は、第1需要先として液化水素ターミナルなどの液化水素貯蔵基地51、及び第2需要先として液化水素を気化させて気体水素需要先に供給する気化器52のうちいずれか一つ以上を含むことができる。
【0124】
また、本実施例において、液化水素貯蔵基地51は、陸上のターミナルはもちろん、ターミナルで液化水素を受け取る船舶又は陸上用トレーラーまでも含む概念である。
【0125】
第1需要先51は、圧力タンク100と第1需要先51とを連結する第1液化水素供給ラインSL1を介して液化水素を受け取り、第2需要先52は、圧力タンク100と第2需要先52とを連結する第2液化水素供給ラインSL2を介して液化水素を受け取ることができる。
【0126】
一方、液化水素需要先51、52に液化水素を移送する前に、圧力タンク100又は貯蔵タンク102に貯蔵された液化水素を用いて液化水素供給ラインSL1、SL2を予冷することができる。
【0127】
液化水素供給ラインSL1、SL2を予冷しながら気化された蒸発ガスは、圧力タンク100に連結される第3回収ラインRL3を介して圧力タンク100に回収されたり、圧縮機41に連結される第4回収ラインRL4を介して圧縮機41に回収され得る。
【0128】
第1液化水素供給ラインSL1を予冷しながら気化された蒸発ガスは、第1回収ラインRL1を介して第3回収ラインRL3及び第4回収ラインRL4に回収され、第2液化水素供給ラインSL2を予冷しながら気化された蒸発ガスは、第2回収ラインRL2を介して第3回収ラインRL3及び第4回収ラインRL4に回収される。
【0129】
一方、液化ガス需要先51、52に液化水素を供給しながら液化水素需要先51、52で発生し、液化水素需要先51、52の許容圧力を超える蒸発ガスも、第1乃至第4回収ラインRL1~RL4を介して圧縮機41に回収され得る。
【0130】
第4回収ラインRL4及び第5回収ラインRL5を介して圧縮機41の上流に回収された蒸発ガスは、圧縮機41によって圧縮された後でバッファータンク42に貯蔵されたり、圧力タンク100に回収され、圧力タンク100の内圧を維持するのに使用されてもよい。
【0131】
また、第4回収ラインRL4及び第5回収ラインRL5を介して液化水素需要先51、52から回収された蒸発ガスは、エネルギー転換部47に連結される第2蒸発ガス分配ラインCL2を介してエネルギー転換部47に供給され、電力生産に活用されてもよい。
【0132】
一方、本実施例の第2需要先52は気化器であってもよいが、気化器で液化水素が気化されながら発生する気化熱は、熱媒体循環部40と第2需要先52とを連結する第4熱媒体ラインML4を介して回収され得る。
【0133】
熱媒体循環部40から高温の熱媒体が第4熱媒体ラインML4を介して気化器52に供給され、気化器52で液化水素を気化させながら冷熱を回収した低温の熱媒体は、第4熱媒体ラインML4を介して熱媒体循環部40に回収される。
【0134】
また、気化器52は、エネルギー転換部47と気化器52とを連結する廃熱供給ラインELを介してエネルギー転換部47で電力を生産しながら発生する廃熱を受け取り、この廃熱を、液化水素を気化させる熱エネルギーとして活用することもできる。
【0135】
廃熱供給ラインELを介して移送される熱エネルギーの温度は、約500℃乃至600℃であってもよい。
【0136】
本実施例に係るシステム及び方法は、液化水素を荷役する過程で発生する蒸発ガスを、圧力タンク100の圧力を維持し、液化水素需要先への送出圧力を生成するのに使用することができる。また、液化水素を荷役する過程で液化水素の冷熱及び廃熱を効果的に最大に活用しながら、圧力タンク100の圧力を維持することができる。
【0137】
第2実施例によると、貯蔵タンク101、102から圧力タンク100に液化水素を供給し、圧力タンク100から液化水素需要先51、52に液化水素を荷役することを例示として説明した。しかし、本実施例は、液化水素引受基地から圧力タンク100に直接荷役すると同時に、圧力タンク100から液化水素需要先51、52に液化水素を荷役する場合にも同一に適用され得る。このとき、陸上の液化水素引受基地に設けられる貯蔵設備は、本実施例の貯蔵タンク101、102を含むことができる。
【0138】
本発明は、前記実施例に限定されなく、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で多様に修正又は変形して実施可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【符号の説明】
【0139】
100 圧力タンク
【0140】
101 低温タンク
【0141】
102 高温タンク
【0142】
40 熱媒体循環部
【0143】
41 圧縮機
【0144】
42 バッファータンク
【0145】
47 エネルギー転換部
【0146】
43、45 高密化部
【0147】
44、46 温度維持部
【0148】
51、52 液化水素需要先
【0149】
BL1、BL2 蒸発ガス供給ライン
【0150】
CL1、CL2、CL3 蒸発ガス分配ライン
【0151】
ML1、ML2、ML3、ML4、ML5 熱媒体ライン
【0152】
RL1、RL2、RL3、RL4、RL5 回収ライン
【0153】
SL1、SL2 液化水素供給ライン
【0154】
LL 液化水素排出ライン
【0155】
LL1 液化水素回収ライン
【0156】
EL 廃熱供給ライン
【国際調査報告】