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特表2024-528764複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造、その製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造、その製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20240725BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H01L29/80 W
H01L29/80 H
H01L29/80 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548706
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2022117566
(87)【国際公開番号】W WO2024007443
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】202210808044.1
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523303622
【氏名又は名称】広東中科半導体微納制造技術研究院
(71)【出願人】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鍾 耀宗
(72)【発明者】
【氏名】孫 銭
(72)【発明者】
【氏名】高 宏偉
(72)【発明者】
【氏名】郭 小路
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 勇
(72)【発明者】
【氏名】楊 輝
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GC05
5F102GD01
5F102GD04
5F102GJ03
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GR12
5F102GT03
5F102HC01
5F102HC16
(57)【要約】
本出願は、複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT、その製造方法および用途を開示する。前記HEMT構造は、チャンネル層およびバリア層を含み、チャンネル層とバリア層間に2次元電子ガスが形成され、バリア層は少なくとも第1および第2ソース領域、第1および第2ゲート領域、および第1および第2ドレイン領域を有し、第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、第1HEMTユニットの閾値電圧は第2HEMTユニットの閾値電圧よりも高い。本出願は、高閾値および低閾値電圧のHEMTデバイスのウェハレベルを製造することができ、製造した複数の閾値電圧を有するHEMTは、高集積であり、キャリア移動度が高く、閾値電圧の均一性が良好であり、高閾値および低閾値の論理回路の応用要件を十分に満たすことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンネル層およびバリア層を含み、前記チャンネル層と前記バリア層間に2次元電子ガスが形成されるGaN系HEMT構造であって、前記バリア層は少なくとも第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域を有し、前記第1ソース領域、前記第1ゲート領域および前記第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2ソース領域、前記第2ゲート領域および前記第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い、ことを特徴とする複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項2】
前記バリア層は、第3ソース領域、第3ゲート領域および第3ドレイン領域をさらに有し、前記第3ソース領域、前記第3ゲート領域および前記第3ドレイン領域は互いに協働して第3HEMTユニットを形成し、前記第3HEMTユニットは第3閾値電圧を有し、前記バリア層の第2ゲート領域における厚さは第3ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧>第2閾値電圧>第3閾値電圧である、ことを特徴とする請求項1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項3】
P型層をさらに含み、前記P型層は、前記バリア層の複数のゲート領域に設けられ、前記バリア層の複数のゲート領域下方の2次元電子ガスを減少または枯渇させるために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項4】
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、このゲート領域に分布されているP型層は少なくとも一部が前記グルーブ構造に埋め込まれる、ことを特徴とする請求項3に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項5】
前記バリア層は、チャンネル層に順次設けられた複数のバリア層サブ層を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項6】
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部は1つのバリア層サブ層の内部、隣接する2つのバリア層サブ層の界面またはチャンネル層の表面に分布し、
または、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記バリア層は第1バリア層サブ層および第1バリア層サブ層に設けられた第2バリア層サブ層を含み、前記グルーブ構造は第1グルーブ構造および第2グルーブ構造を含み、前記第1グルーブ構造は第1バリア層サブ層内に設けられ、前記第2バリア層サブ層の一部の領域は窪んで第1グルーブ構造に埋め込まれ、前記第2グルーブ構造を形成し、
および/または、前記HEMT構造は、少なくとも1つの挿入層を含み、前記挿入層は2つのバリア層サブ層間に分布している、ことを特徴とする請求項5に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項7】
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部は1つの挿入層内部または1つの挿入層と隣接するバリア層サブ層の界面に分布している、ことを特徴とする請求項6に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項8】
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部はチャンネル層の表面に分布し、少なくとも前記グルーブ構造の内壁に連続のゲート誘電体層が被覆され、前記ゲート誘電体層は、ゲートとグルーブ構造内壁を分離するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項9】
具体的に、基板上に順次成長した遷移層、耐電圧層、チャンネル層およびバリア層を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【請求項10】
基板上にチャンネル層、バリア層を順次成長させ、
少なくとも前記バリア層上に、第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域が画定され、前記第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、
前記バリア層を成長させるとき、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、または、前記バリア層を成長させた後、前記バリア層の一部の領域を除去し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い、ことを特徴とする複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【請求項11】
具体的に、
前記バリア層を成長させた後、少なくとも前記第1ゲート領域をエッチングし、少なくとも前記第1ゲート領域にグルーブ構造を形成すること、
または、まず第1バリア層サブ層を成長させ、第1バリア層サブ層の選択領域をエッチングして第1グルーブ構造を形成し、前記選択領域は前記第1ゲート領域に対応し、第1バリア層サブ層上に第2バリア層サブ層を成長させ、第2バリア層サブ層の一部の領域が窪んで第1グルーブ構造に埋め込まれ、第2グルーブ構造を形成し、前記バリア層を形成すること、を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【請求項12】
具体的に、チャンネル層に複数のバリア層サブ層を順次成長させ、少なくとも2つのバリア層サブ層間に挿入層を成長させ、前記バリア層を形成することを含む、ことを特徴とする請求項10または11に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【請求項13】
具体的に、前記バリア層上にP型層を成長させ、前記P型層の一部の領域を前記グルーブ構造に埋め込み、その後前記P型層のゲート領域以外の領域をエッチングして除去し、前記バリア層の複数のゲート領域下方の2次元電子ガスを減少または枯渇させる、ことを特徴とする請求項11に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【請求項14】
具体的に、前記バリア層上にゲート誘電体層を成長させ、前記ゲート誘電体層が少なくとも前記グルーブ構造の内壁を連続的に被覆するようにすることを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の高閾値および低閾値の論理回路の製造における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2022年7月7日に提出された出願番号202210808044.1、発明名称「複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造、その製造方法および用途」に基づく中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本出願は、半導体の技術分野に属する高電子移動度トランジスタ(HEMT)デバイス構造に関し、具体的に複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0003】
GaNに代表されるIII族窒化物半導体は、第3世代半導体として知られ、禁制帯幅が大きく、化学的安定性が高く、耐圧が高いという利点を有する。AlGaN/GaNなどの異種混晶構造からなるGaN系HEMTは、高い電子集中度と移動度を有し、高周波、高耐圧、低オン抵抗などに優れており、各種電力変換システムやRFアンプシステムのコアデバイスとして、民生用電子機器、産業用電子機器、車載用電子機器など幅広い分野で応用が期待されている。
【0004】
パワーエレクトロニクスやRFエレクトロニクスの分野では、信号ノイズの低減やオペアンプなどの特定機能を実現するために、論理回路がチップ内部に集積されることが多い。シリコンをベースとする最新の大規模集積回路では、論理回路の基本単位はN-MOSFET(Nチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)とP-MOSFET(Pチャネル金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の2つのデバイス、すなわちC-MOS回路(相補論理回路)で構成され、低消費電力や高集積化などの利点がある。N-MOSFETはp型シリコン材料上に導回路として電子を逆タイピングして製造した電界効果トランジスタであり、P-MOSFETはn型シリコン材料上に導回路として正孔を逆タイピングして製造した電界効果トランジスタである。しかしながら、GaN系材料では、ノンドープGaNは欠陥準位が多いため弱いn型を示すことが多く、一方p型材料では主要不純物であるMgのイオン化が不完全であるため、より高濃度のMgドープが必要であり、GaN中の正孔のキャリア移動度は非常に低く、通常1~10cm/(V・s)である。したがって、GaN材料の禁制帯幅が大きく、信頼性の高いゲート絶縁膜材料がないため、半導体アンチパターンや強いアンチパターンを用いて電子や正孔を発生させる方法は困難であり、特に移動度の高い正孔の発生はほとんど不可能である。
【0005】
現在、GaNシステムでN-MOSFETを実装するための主な解決策は、AlGaN/GaNヘテロ接合分極効果によって誘起される2次元電子ガス(2DEG)を導電チャネルとして使用すること、ノッチゲート、pゲート、およびその他の技術的解決策を使用して、高レベルのターンオンと低レベルのターンオフというN-MOSFET特性を達成するために、正の閾値電圧を持つエンハンスドN-FETを実現することであり、P-MOSFETのようなソリューションは、主にp-GaN/AlGaNヘテロ接合の分極効果によって誘起される2次元キャビティガスを導電チャネルとして使用し、ノッチゲートやイオン注入ゲートなどのゲート技術を使用して負の閾値電圧を持つエンハンスドp-FETを実現し、低レベルのターンオン、高レベルのターンオフのP-MOSトランジスタ特性を実現する。そしてn-FETとp-FETを直列に接続して相補的な論理回路セルを構築し、最終的に関連する機能回路の設計と製造を可能にする。しかし、GaNn-FETとp-FETに基づく相補論理回路(0/1論理)の準備には、まだ多くの技術的困難がある。
【0006】
図1を参照すると、シリコン半導体技術における現在の論理回路の1つは、低閾値電圧と高閾値電圧のデバイス(1/2論理)に基づくものである。これは、閾値電圧の異なるエンハンスド・トランジスタ(n-FET1とn-FET2)を用いて論理回路の機能ユニットを作り、異なるゲート電圧におけるトランジスタのスイッチング状態の違いを信号の演算処理に利用するものである。この回路設計により、GaN系p-FETが不要となり、高速演算が可能な論理回路が実現できる。しかし、高閾値論理回路と低閾値論理回路では、少なくとも2つの異なる閾値電圧を持つデバイスを同一ウェハ内に、あるいは非常に小さな面積で安定かつ均一に実装する必要がある。
【0007】
要約すると、既存のGaN系p-FETの相補論理回路技術の性能要件と、既存の高閾値および低閾値論理回路の技術要件は、現在のGaN系HEMTデバイス製造に大きな課題を突きつけている。具体的には以下のとおりである。
【0008】
第1に、上記の相補論理回路技術におけるGaN系p-FETは、通常、p型GaN中のバルクホール、すなわちp-GaN/AlGaN界面における2次元ホールガスを利用しており、このホールガスは室温で10cm/(V・s)程度、最大でも50cm/(V・s)以下と非常に低い移動度を有し、典型的なAlGaN/GaN誘起の2次元電子ガスの1500cm/(V・s)の移動度とは大きな差がある。しかし、論理回路の究極的な演算速度は半導体材料中のキャリア移動度に強く依存し、キャリア移動度が高いほど回路の究極的な演算速度は速くなる。従って、GaN系p-FETとn-FETで構成される論理回路の限界演算速度は、2次元ホールガスの移動度によって制限されることになり、GaN材料系の利点を活かすことが難しくなる。
【0009】
第2に、上記の相補論理回路技術におけるGaN系p-FETは、高品質のp-GaNオーミックコンタクトを必要とする。しかし、現在のp-GaNオーミックコンタクトの調製には、p-GaN表面層を1020cm-3以上までMgで高濃度にドープする必要があり、また、Ni、Pdなどの高出力機能金属を使用する必要がある。また、より厳しい調製条件は、一般的に10-4Ω.cm以上の接触抵抗率をもたらし、接触抵抗率が高くなると電力損失が大きくなる。加えて、p-GaNオーミック・コンタクトの熱安定性も、その調製プロセスによって悪くなり、過酷な動作環境には適さない。
【0010】
第3に、上記の相補論理回路技術におけるp-FETゲートは、そのほとんどがエッチングやイオン注入プロセスによって製造されており、均一性や信頼性に問題がある。p-FETのゲート領域を薄くするためにGaNドライエッチングを用いたり、p-GaNを補填するためにイオン注入を用いたりする場合、GaN層の格子損傷や表面汚れを避けることが難しく、ゲート界面準位が導入され、閾値電圧のドリフトや大きなリークなどのデバイス性能の劣化を引き起こし、準備されたp-FETの性能は論理動作の要求を満たすことがほとんどできない。
【0011】
第4に、上記の高閾値及び低閾値論理回路技術では、閾値電圧の高いデバイスと低いデバイス(例えば、閾値電圧が1Vを超えるデバイスと2Vを超えるデバイス)を同一ウェハ上に実装する必要があり、極めて高い均一性と信頼性が要求されるが、GaN系デバイスについては完全な解決策がまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願の主な目的は、先行技術における欠点を克服するために、複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造及その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的を達成するために、本出願は以下の技術的解決策を採用している。
【0014】
本出願の一側面は、複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造を提供し、チャンネル層およびバリア層を含み、前記チャンネル層とバリア層間に2次元電子ガスが形成され、前記バリア層は少なくとも第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域を有し、前記第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い。
【0015】
本出願の別の側面は、複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法を提供し、この方法は、
基板上にチャンネル層、バリア層を順次成長させ、
少なくとも前記バリア層上に、第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域が画定され、前記第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、 前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、
前記バリア層を成長させるとき、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、または、前記バリア層を成長させた後、前記バリア層の一部の領域を除去し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い。
【0016】
本出願のもう1つの側面は、上記の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造、および前記HEMT構造と協働する複数のゲート、複数のソースと複数のドレインを含むGaN系HEMTデバイスを提供する。
【0017】
本出願のもう1つの側面は、上記の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の高閾値および低閾値の論理回路の製造における用途を提供する。
【0018】
先行技術と比較すると、まず、本願発明は、同一ウェハ上に2つ以上の閾値電圧を有するエンハンスドGaN系HEMT構造を実現することを可能にし、その製造プロセスは、従来のIII-V族半導体デバイス調製プロセスと互換性があり、工業生産に適し、次に、前記GaN系HEMTのポテンシャル層は、AlGaN/GaN/AlGaN複合構造とすることができ、前記GaN挿入層の導入は、前記第一ゲート領域のエッチングと熱分解の犠牲層として使用することができ、ゲート領域のAlGaNポテンシャル層の厚さを確保し、エッチングダメージを効果的に除去することができ、閾値電圧の均一性とデバイスの信頼性の良好な保証を形成し、さらに、本出願で実現した2つのしきい値電圧のエンハンスドGaN HEMTで形成された回路は、空乏/エンハンスドGaN HEMTで形成された回路よりも低消費電力で高い安全性を有し、最後に、本出願で実現した両方のエンハンスドGaN HEMTは、導電チャネルとして高移動度の2次元電子ガスを使用しており、高速スイッチング能力を有し、それと協働して作られた論理回路は、より速い計算速度とより強力な抗干渉能力を有するため、本出願は、高閾値および低閾値の論理回路のアプリケーション・ニーズを十分に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本願発明の実施例における技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施例の説明において使用する必要のある添付図面について簡単に説明するが、明らかに、以下の説明における添付図面は、本願発明の実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0020】
図1】先行技術における複数の閾値電圧を有するHEMTから構成される論理ユニットを示す模式図である。
図2】実施例1におけるGaN系HEMTデバイスのエピタキシャル構造を示す模式図である。
図3図2に示すエピタキシャル構造の第1ゲート領域に製造されたグルーブ構造を示す模式図である。
図4図3に示すエピタキシャル構造上の二次エピタキシャルP型層の模式図である。
図5図4に示すデバイス構造に製造されたP型ゲートの模式図である。
図6】実施例1におけるGaN系HEMTデバイスの構造を示す模式図である。
図7】実施例2におけるGaN系HEMTデバイスの構造を示す模式図である。
図8】実施例3におけるGaN系HEMTデバイスの構造を示す模式図である。
図9】実施例4におけるGaN系HEMTデバイスの構造を示す模式図である。
図10】実施例5におけるGaN系HEMTデバイスの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願のいくつかの実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造は、チャンネル層およびバリア層を含み、前記チャンネル層とバリア層間に2次元電子ガスが形成され、前記バリア層は少なくとも第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域を有し、前記第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い。
【0022】
一実施例では、前記バリア層は、第3ソース領域、第3ゲート領域および第3ドレイン領域をさらに有し、前記第3ソース領域、第3ゲート領域および第3ドレイン領域は互いに協働して第3HEMTユニットを形成し、前記第3HEMTユニットは第3閾値電圧を有し、前記バリア層の第2ゲート領域における厚さは第3ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧>第2閾値電圧>第3閾値電圧とする。
【0023】
本出願では、同様に、前記バリア層に第1および第2、第3ゲート領域以外の他のゲート領域を画定することができ、第1および第2、第3HEMTユニット以外の他のHEMTユニットを形成するために使用される。バリア層を異なるゲート領域で異なる厚さにすることにより、各HEMTユニットの閾値電圧の高・低を調整し、さらに同一ウェハ上に複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造を得ることができ、均一性が良好で信頼性が高い。
【0024】
一実施例では、前記HEMT構造は、P型層をさらに含み、前記P型層は前記バリア層の複数のゲート領域に設けられ、前記バリア層の複数のゲート領域下方の2次元電子ガスを減少または枯渇させるために使用される。
【0025】
さらに、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、このゲート領域に分布しているP型層は少なくとも一部が前記グルーブ構造に埋め込まれる。
【0026】
既存のGaN系p-FETと比較すると、本願発明のHEMT構造は、すべてn-FETであり、異なる閾値電圧を達成するために、異なる厚さのバリア層を有する前記グルーブ上にp型キャップ層をエピタキシャル成長させるだけであるため、p-FET用のp-GaNオーミックコンタクトの調製の困難さ、すなわち、p-GaN表面層のリドープ、高い仕事関数を有する金属の使用、過酷なプロセス条件に直面する必要がなく、また、p-GaN材料における高い欠陥状態濃度や低い正孔移動度などの問題に直面する必要もない。
【0027】
一実施例では、前記バリア層は、チャンネル層上に順次設けられた複数のバリア層サブ層を含む。
【0028】
さらに、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部は1つのバリア層サブ層内部、隣接する2つのバリア層サブ層の界面またはチャンネル層の表面に分布している。
【0029】
または、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記バリア層は第1バリア層サブ層、および第1バリア層サブ層に設けられた第2バリア層サブ層を含み、前記グルーブ構造は第1グルーブ構造および第2グルーブ構造を含み、前記第1グルーブ構造は第1バリア層サブ層内に設けられ、前記第2バリア層サブ層は一部の領域が窪んで第1グルーブ構造に埋め込まれ、前記第2グルーブ構造を形成する。
【0030】
一実施例では、前記HEMT構造は、少なくとも1つの挿入層をさらに含み、前記挿入層は2つのバリア層サブ層間に分布している。
【0031】
一実施例では、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部は1つの挿入層内部または1つの挿入層と隣接するバリア層サブ層の界面に分布している。
【0032】
例示的に、バリア層をエッチングしてゲートグルーブを形成するとき、GaN挿入層をエッチングおよび熱分解の犠牲層として使用することができ、格子損傷および表面汚れを効果的に除去し、熱分解を自動的に下方のAlGaNバリア層で終了させることができ、エッチングのゲート界面状態への導入に起因する閾値電圧ドリフト、大きなリークなどのデバイス性能の劣化という問題を回避し、第1ゲート領域または第1ゲート領域および第2ゲート領域バリアの厚さの均一性、ひいてはデバイス閾値電圧の均一性を向上させることができる。
【0033】
一実施例では、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部はチャンネル層の表面に分布し、少なくとも前記グルーブ構造の内壁に連続のゲート誘電体層が被覆され、前記ゲート誘電体層はゲートとグルーブ構造内壁を分離するために使用される。
【0034】
一実施例では、前記HEMT構造は、具体的に、基板上に順次成長した遷移層、耐電圧層、チャンネル層およびバリア層を含む。
【0035】
本出願のいくつかの実施例は、GaN系HEMTデバイスをさらに提供し、前記複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造およびそれと協働するゲート、ソース、ドレインなどを含む。各HEMTユニット内に、それぞれゲート、ソースおよびドレインがそれぞれ設けられる。前記ゲート、ドレイン、ドレインの材質、設定方法は、当業者に公知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0036】
また、前記GaN系HEMT構造または前記GaN系HEMTデバイスは、他の構造層、例えばパッシベーション層、複数のHEMTユニットを電気的に絶縁するための構造などを含んでもよく、同様にこれらも当業者に公知である。
【0037】
本出願のいくつかの実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法は以下のステップを含み、
基板上に順次チャンネル層、バリア層を成長させ、
少なくとも前記バリア層上に第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域を画定し、前記第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、
そして、前記バリア層を成長させるとき、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、または、前記バリア層を成長させた後、前記バリア層の一部の領域を除去し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い。
【0038】
一実施例では、前記製造方法は具体的に、前記バリア層を成長させた後、少なくとも前記第1ゲート領域をエッチングして、少なくとも前記第1ゲート領域にグルーブ構造を形成するステップを含む。
【0039】
一実施例では、前記製造方法は具体的に、まず第1バリア層サブ層を成長させ、第1バリア層サブ層の選択領域をエッチングして第1グルーブ構造を形成し、前記選択領域は前記第1ゲート領域に対応し、次に第1バリア層サブ層上に第2バリア層サブ層を成長させ、第2バリア層サブ層の一部の領域が窪んで第1グルーブ構造に埋め込まれ、第2グルーブ構造を形成し、前記バリア層を形成するステップを含む。
【0040】
一実施例では、前記製造方法は具体的に、チャンネル層に複数のバリア層サブ層を順次成長させ、少なくとも2つのバリア層サブ層間に挿入層を成長させ、前記バリア層を形成するステップを含む。
【0041】
一実施例では、前記製造方法は具体的に、前記バリア層上にP型層を成長させ、前記P型層の一部の領域を前記グルーブ構造に充填した後、前記P型層除ゲート領域以外の他の領域をエッチングして除去し、前記バリア層の複数のゲート領域下方の2次元電子ガスを減少または枯渇させるステップを含む。
【0042】
一実施例では、前記製造方法は具体的に、前記バリア層上にゲート誘電体層を成長させ、前記ゲート誘電体層を少なくとも前記グルーブ構造の内壁を連続的に被覆させるステップを含む。
【0043】
本出願では、本分野でよく使用されるドライエッチングまたはウェットエッチイングプロセスを用いてバリア層をエッチングして前記グルーブ構造を形成する。
【0044】
本出願では、前記チャンネル層、バリア層、P型層、挿入層などは、主にIII-V族半導体化合物、すなわちGaN系材料から形成され、特にIII族窒化物から形成される。例えば、前記チャンネル層の材料はGaNなどであり得、バリア層の材料は、AlGaN、AlInGaNなどであり得、P型層の材料はGaN、AlGaNなどであり得、挿入層の材料はGaNなどであり得るが、ここで限定されない。前記ゲート誘電体層の材料は窒化シリコンまたは酸化シリコンなどであってもよく、ここで限定されない。
【0045】
本出願では、前記遷移層、耐電圧層、チャンネル層およびバリア層などは、本分野でよく使用されるHVPE(ハイドライド気相成長法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、PECVD(プラズマエンハンスト化学気相成長法)などを用いて形成されるが、ここに限定されない。
【0046】
さらに、前記製造方法は、本分野で公知の他のデバイス加工工程を含んでもよく、例えばデバイス構造上に表面パッシベーション層、および誘電体層を堆積した後、ゲート、ソース、ドレインを製造し、および各電極上に金属製フィールドプレート構造を製造して、最終的なGaN系HEMTデバイスを形成する。
【0047】
例示的に、本出願の1つの典型的な実施形態では、前記GaN系HEMT構造は、AlGaN/GaNヘテロ接合を含み、グルーブ付きおよびグルーブなしのAlGaNバリア層またはGaNチャンネル層上に二次エピタキシャルp-GaNまたはAlGaN/p-GaN層を成長させる方法を用いてパターニングして、2つ以上のp-GaNゲートを製造し、同一ウェハ上で高閾値および低閾値電圧のエンハンスドデバイスを実現する。
【0048】
具体的に、AlGaNバリア層のゲートグルーブ領域については、この領域のバリア層の厚さが小さいため、そのAlGaN/GaNヘテロ接合で誘起された2次元電子ガス(2DEG)の濃度が低く、二次エピタキシャルp-GaNまたはAlGaN/p-GaNの後、ゲート下方の2DEGが容易に枯渇し、エネルギーバンドが高くなるため、高い閾値電圧を有するHEMTユニットが形成されるが、AlGaNバリア層のグルーブなしのゲート領域について、この領域のバリア層の厚さが大きく、二次エピタキシャルで製造したp-GaNゲートはバリア層が厚いため、低い閾値電圧を有するHEMTユニットが形成される。2つのHEMTユニットのAlGaNバリア層の厚さは、高精度のMOCVDなどの加工装置などにより制御され、閾値電圧の均一性が保証される。
【0049】
本出願のプロセスにより、同一ウェハ上で2つ以上の閾値電圧を有するエンハンスドGaN系HEMT構造を実現することができ、通常のIII-V族半導体デバイス製造プロセスと互換性があり、工業生産に適し、前記GaN系HEMT構造の閾値電圧の均一性およびデバイスの信頼性などを効果的に保証することができる。
【0050】
特に、AlGaN/GaN/AlGaN複合構造を前記GaN系HEMTのバリア層として使用する場合、導入されたGaN挿入層を第1ゲート領域におけるエッチングおよび熱分解の犠牲層として使用することができ、ゲート領域におけるAlGaNバリア層の厚さを保証し、エッチング損傷を効果的に除去することができ、デバイス閾値電圧の均一性およびデバイスの信頼性をより効果的に保証することができる。
【0051】
本出願のいくつかの実施例は、前記の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造を含む、高閾値および低閾値の論理回路をさらに提供する。この複数の閾値電圧のエンハンスドGaN HEMTからなる回路は、空乏型/エンハンスドGaN HEMTからなる回路よりも、エネルギー消費が低く、安全性が高い。同時に、各種のエンハンスドGaN HEMTはいずれも高移動度の2次元電子ガスを導電チャンネルとして使用し、高速スイッチングが可能であり、これらを用いた論理回路は、演算速度が速く、耐干渉能力が強い。
【0052】
以上のことから、本出願は、GaN系ウェハ上で高い均一性の高閾値および低閾値電圧エンハンスドHEMTを同時に実現することができ、1/2論理回路のベースデバイス要件に応える。同時に、既存のp-FETと比較すると、本出願のGaN系HEMT構造はより高い信頼性を有する。既存の相補型論理回路と比較すると、本出願のGaN系HEMT構造を利用して実現した論理回路は、高移動度の2次元電子ガスを導電チャンネルとして使用し、スイッチング速度が速く、集積度が高い党委特徴を有する。
【0053】
以下、添付図面およびいくつかの実施例を参照しながら本出願の技術的解決策をより詳細に説明するが、以下の実施例は技術的解決策の説明および説明の簡略化の目的でのみ使用され、本出願の範囲を限定するものとして理解されない。さらに、特に指定しない限り、以下の実施例で使用される様々な原料、反応装置、検出装置および方法などは、すべて本分野で公知である。
【0054】
(実施例1)
図2図6を参照すると、本実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMTデバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
【0055】
S1:図2に示すように、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、Si<111>基板101上に厚さ約300nmのAlN/AlGaN遷移層102、厚さ約4μmのCドープのAl0.07Ga0.93N高抵抗層103、厚さ約150nmの非意図的ドープGaN層104、厚さ約12nmの第1AlGaNバリア層サブ層105A、厚さ約4nmのGaN挿入層106A、厚さ約4nmの第2AlGaNバリア層サブ層105Bを順次成長させる。第1AlGaNバリア層サブ層105Aおよび第2AlGaNバリア層サブ層105Bはバリア層を形成する。
【0056】
S2:図3に示すように、フォトレジストをマスクとして、フォトリソグラフィパターニング後、ICPエッチング法により第2AlGaNバリア層サブ層105Bの第1ゲート領域を厚さ方向に沿って約6nmエッチング除去し、グルーブ構造を形成する。図4に示すように、ウェット表面処理、MOCVD高温熱分解処理後、グルーブ構造を第1AlGaNバリア層サブ層105Aの表面で終端し、その後、Mgドープ濃度2~5×1019/cmのp型GaN層を約80nmの厚さで二次エピタキシャル成膜する。
【0057】
S3:図5に示すように、フォトレジストをマスクとして使用し、フォトリソグラフィパターニング後、ドライエッチング法を用いて非ゲート領域のp-GaN層を除去し、エッチングを第1AlGaNバリア層サブ層105Aの表面で終端し、第1ゲート領域に第1p-GaN層107A(第1P型ゲートとも呼ばれる)を製造し、第2AlGaNバリア層サブ層105Bの第2ゲート領域に第2p-GaN層107B(第2P型ゲートとも呼ばれる)を製造する。
【0058】
S4:アセトンなどの有機洗浄法を用いてフォトレジストを除去し、2つのP型ゲートの高さが約80nmになるように試験した。その後、フッ化水素酸(HF)などでバリア層の表面酸化層を除去し、500℃、N雰囲気下で急速アニールしてAlGaN/GaNヘテロ接合の2次元電子ガスを回復させる。次に、2つのP型ゲート上にTi/Auを堆積し、アニール後、第1ショットキーグリッドコンタクト金属108A、第2ショットキーグリッドコンタクト金属108Bを形成し、バリア層の各ソース領域、ドレイン領域にそれぞれTi/Al/Ti/Auを堆積し、第1ソース接触金属109A、第2ソース接触金属109B、第1ドレイン接触金属110A、第2ドレイン接触金属110Bをそれぞれ形成し、アニール後、オーミック接触を製造した。さらに、第1ショットキーグリッドコンタクト金属108A、第1ソース接触金属109Aおよび第1ドレイン接触金属110Aが協働して高閾値電圧のトランジスタユニットAを形成し、第2ショットキーグリッドコンタクト金属108B、第2ソース接触金属109Bおよび第2ドレイン接触金属110Bから低閾値電圧のトランジスタユニットBを形成する。
【0059】
本実施例で最終的に製造したGaN系HEMTデバイスの構造は図6に示される。
【0060】
I-Vなどの方法で前記GaN系HEMTデバイスのゲート伝達特性を試験したところ、トランジスタユニットAの閾値電圧の平均値は約2.1Vであり、トランジスタユニットBの閾値電圧の平均値は約1.3Vであった。試験の結果から分かるように、本実施例によれば、同一ウェハ上に高閾値および低閾値電圧のp型ゲートエンハンスドHEMTを製造することができる。
【0061】
(実施例2)
本実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMTデバイスの製造方法は以下のステップを含む。
【0062】
S1:実施例1のステップS1を参照し、MOCVD法で基板201上にAlN/AlGaN遷移層202、CドープのAl0.07Ga0.93N高抵抗層203、非意図的ドープGaN層204、厚さ約18~25nmのAlGaNバリア層205Aを順次成長させた。
【0063】
S2:実施例1のステップS2を参照し、フォトレジストをマスクとして使用し、フォトリソグラフィパターニング後、ICPエッチング法でAlGaNバリア層205Aの第1ゲート領域を厚さ方向に沿って一部(例えば約6nm)をエッチング除去してグルーブ構造を形成する。ウェット表面処理、MOCVD高温熱分解処理後、グルーブ構造をAlGaNバリア層205A内の一定深度(グルーブ底面がチャンネル層から8~20nm)で終端し、その後p型GaN層またはp型AlGaN層(p型キャップ層と略称する)を二次エピタキシャル成膜する。
【0064】
S3:実施例1のステップS3を参照し、フォトレジストをマスクとして使用し、フォトリソグラフィパターニング後、ドライエッチング法で非ゲート領域のp型キャップ層を除去し、エッチングをAlGaNバリア層205Aの表面で終端し、第1ゲート領域に第1p型キャップ層207A(第1P型ゲートとも呼ばれる)を製造し、AlGaNバリア層205Aの第2ゲート領域に第2p型キャップ層207B(第2P型ゲートとも呼ばれる)を製造した。
【0065】
S4:実施例1のステップS4を参照し、アセトンなどの有機洗浄法でフォトレジストを除去し、その後フッ化水素酸(HF)などでバリア層の表面酸化層を除去し、その後急速アニールによりAlGaN/GaNヘテロ接合の2次元電子ガスを回復させた。次に、2つのP型ゲート上にTi/Auを堆積し、アニール後、第1ショットキーグリッドコンタクト金属208A、第2ショットキーグリッドコンタクト金属208Bを製造し、バリア層の各ソース領域、ドレイン領域にそれぞれTi/Al/Ti/Auを堆積し、第1ソース接触金属209A、第2ソース接触金属209B、第1ドレイン接触金属210A、第2ドレイン接触金属210Bをそれぞれ形成し、アニール後、オーミック接触を製造した。さらに、第1ショットキーグリッドコンタクト金属208A、第1ソース接触金属209Aおよび第1ドレイン接触金属210Aが協働して、高閾値電圧のトランジスタユニットAを形成し、第2ショットキーグリッドコンタクト金属208B、第2ソース接触金属209Bおよび第2ドレイン接触金属210Bから低閾値電圧のトランジスタユニットBを構成した。
【0066】
本実施例が最終的に製造したGaN系HEMTデバイスの構造は図7に示される。
【0067】
本実施例のGaN系HEMTデバイスのゲート伝達特性を試験したところ、トランジスタユニットAの閾値電圧の平均値は約2.3Vであり、トランジスタユニットBの閾値電圧の平均値は約1.1Vであった。
【0068】
(実施例3)
本実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMTデバイスの製造方法は以下のステップを含む。
【0069】
S1:実施例1のステップS1を参照し、MOCVD法で基板301上にAlN/AlGaN遷移層302、CドープのAl0.07Ga0.93N高抵抗層303、非意図的ドープGaN層304および厚さ約2~10nmの第1AlGaNバリア層サブ層305Aを順次成長させ、パターニングエッチングにより第1AlGaNバリア層サブ層305Aの左側ゲート領域全体を除去し、その後厚さ約0~10nmのGaN層、厚さ約5~15nmのAlGaN層および厚さ約70nmのp-(Al)GaN層を二次エピタキシャル成膜し、積層構造305Bを形成した(好ましくは、GaN層の厚さが約5nm、AlGaNの厚さが約10nmである)。
【0070】
S2:実施例1のステップS2~S3を参照し、積層構造305Bの第1ゲート領域に第1p型層307B(第1P型ゲートとも呼ばれる)を製造し、積層構造305Bの第2ゲート領域に第2p型層307B(第2P型ゲートとも呼ばれる)を製造した。
【0071】
S3:実施例1のステップS4を参照し、第1ショットキーグリッドコンタクト金属308A、第2ショットキーグリッドコンタクト金属308B、第1ソース接触金属309A、第2ソース接触金属309B、第1ドレイン接触金属310A、第2ドレイン接触金属310Bなどをそれぞれ製造した。さらに、第1ショットキーグリッドコンタクト金属308A、第1ソース接触金属309Aおよび第1ドレイン接触金属310Aが協働して、高閾値電圧のトランジスタユニットAを形成し、第2ショットキーグリッドコンタクト金属308B、第2ソース接触金属309Bおよび第2ドレイン接触金属310Bから低閾値電圧のトランジスタユニットBを構成した。
【0072】
本実施例が最終的に製造したGaN系HEMTデバイスの構造は図8に示される。
【0073】
本実施例のGaN系HEMTデバイスのゲート伝達特性を試験したところ、トランジスタユニットAの閾値電圧の平均値は約2.3Vであり、トランジスタユニットBの閾値電圧の平均値は約1.3Vであった。
【0074】
(実施例4)
本実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMTデバイスの製造方法は以下のステップを含む。
【0075】
S1:実施例1のステップS1を参照し、MOCVD法で基板401上にAlN/AlGaN遷移層402、CドープのAl0.07Ga0.93N高抵抗層403、非意図的ドープGaN層404、第1AlGaNバリア層サブ層405A、第1GaN挿入層406A、第2AlGaNバリア層サブ層405B、第2GaN挿入層406B、第3AlGaNバリア層サブ層405Cを順次成長させた。
【0076】
S2:実施例1のステップS2を参照し、フォトレジストをマスクとして使用し、フォトリソグラフィパターニング後、ICPエッチング法でAlGaNバリア層の第1ゲート領域、第2ゲート領域を厚さ方向に沿って一部をエッチング除去して、第1グルーブ構造、第2グルーブ構造をそれぞれ形成し、第1グルーブ構造のグルーブ底面が第1AlGaNバリア層サブ層405Aの表面に位置し、第2グルーブ構造のグルーブ底面が第2AlGaNバリア層サブ層405Bの表面に位置し、AlGaNバリア層の第3ゲート領域がエッチングされない。
【0077】
S3:AlGaNバリア層上に厚さ約0~10nmのGaN層、厚さ約0~10nmのAlGaN層および厚さ約70nmのp-(Al)GaN層を二次エピタキシャル成膜し、積層構造(P型層ともいう)を形成した。好ましくは、積層構造中のGaN層の厚さは約5nmであり、AlGaNの厚さは約5nmであった。
【0078】
S4:実施例1のステップS3を参照し、第1ゲート領域、第2ゲート領域、第3ゲート領域に第1p型層407A、第2p型層407B、第3p型層407Cをそれぞれ製造した。
【0079】
S5:実施例1のステップS4を参照し、第1ショットキーグリッドコンタクト金属408A、第2ショットキーグリッドコンタクト金属408B、第3ショットキーグリッドコンタクト金属408C、第1ソース接触金属409A、第2ソース接触金属409B、第3ソース接触金属409C、第1ドレイン接触金属310A、第2ドレイン接触金属310B、第3ドレイン接触金属310Cなどをそれぞれ製造した。さらに、第1ショットキーグリッドコンタクト金属308A、第1ソース接触金属309Aおよび第1ドレイン接触金属310Aが協働して、トランジスタユニットAを形成し、第2ショットキーグリッドコンタクト金属308B、第2ソース接触金属309Bおよび第2ドレイン接触金属310BからトランジスタユニットBを構成し、第3ショットキーグリッドコンタクト金属308C、第3ソース接触金属309Cおよび第3ドレイン接触金属310CからトランジスタユニットCを構成した。
【0080】
本実施例が最終的に製造したGaN系HEMTデバイスの構造は図9に示される。
【0081】
本実施例のGaN系HEMTデバイスのゲート伝達特性を試験したところ、トランジスタユニットAの閾値電圧の平均値は約2.4Vであり、トランジスタユニットBの閾値電圧の平均値は約1.3Vであり、トランジスタユニットCの閾値電圧の平均値は約-2.0Vであった。
【0082】
(実施例5)
本実施例が提供する複数の閾値電圧を有するGaN系HEMTデバイスの製造方法は以下のステップを含む。
【0083】
S1:実施例1のステップS1を参照し、MOCVD法で基板501上にAlN/AlGaN遷移層502、高抵抗(Al)GaN耐電圧層503、(Al)GaN導電チャンネル層504、AlGaNバリア層505を順次成長させた。
【0084】
S2:実施例1のステップS2を参照し、フォトレジストをマスクとして使用し、フォトリソグラフィパターニング後、ICPエッチング法でAlGaNバリア層505の第1ゲート領域を厚さ方向に沿ってエッチング除去してグルーブ構造を形成し、グルーブ構造を(Al)GaN導電チャンネル層504の表面で終端し、AlGaNバリア層505の第2ゲート領域はエッチングされない。
【0085】
S3:AlGaNバリア層505の表面に窒化アルミニウムなどの絶縁ゲート誘電体層506(厚さ約1~20nm)を堆積し、その後実施例1のステップS4を参照し、第1ショットキーグリッドコンタクト金属508A、第2ショットキーグリッドコンタクト金属508B、第1ソース接触金属509A、第2ソース接触金属509B、第1ドレイン接触金属510A、第2ドレイン接触金属510Bなどをそれぞれ製造した。第1および第2ショットキーグリッドコンタクト金属はNi、Pdなどの仕事関数の高い金属であることが好ましい。さらに、第1ショットキーグリッドコンタクト金属508A、第1ソース接触金属509Aおよび第1ドレイン接触金属510Aが協働して、高閾値電圧のトランジスタユニットAを形成し、第2ショットキーグリッドコンタクト金属508B、第2ソース接触金属509Bおよび第2ドレイン接触金属510Bから低閾値電圧のトランジスタユニットBを構成した。
【0086】
本実施例で最終的に製造したGaN系HEMTデバイスの構造は図10に示される。
【0087】
本出願の以上の実施例は、デバイスゲート領域におけるバリア層または誘電体層の厚さを精密に制御することにより、高閾値および低閾値電圧デバイスのウェハレベルを製造することができ、製造した複数の閾値電圧を有するHEMTは高集積で、キャリア移動度が高く、閾値電圧の均一性が良好であり、1/2論理に基づく機能回路の実装に使用することができる。
【0088】
なお、以上の説明は本出願の好ましい実施例に過ぎず、本出願を限定するものではなく、前記実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者であれば、前記各実施例に記載の技術的解決策を修正し、または一部の技術的特徴を等価置換することができ、本出願の精神および原則内でなされた任意の修正、等価置換、改良などは、すべて本出願の保護範囲に含まれるものとする。
【0089】
(付記)
(付記1)
チャンネル層およびバリア層を含み、前記チャンネル層と前記バリア層間に2次元電子ガスが形成されるGaN系HEMT構造であって、前記バリア層は少なくとも第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域を有し、前記第1ソース領域、前記第1ゲート領域および前記第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2ソース領域、前記第2ゲート領域および前記第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い、ことを特徴とする複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0090】
(付記2)
前記バリア層は、第3ソース領域、第3ゲート領域および第3ドレイン領域をさらに有し、前記第3ソース領域、前記第3ゲート領域および前記第3ドレイン領域は互いに協働して第3HEMTユニットを形成し、前記第3HEMTユニットは第3閾値電圧を有し、前記バリア層の第2ゲート領域における厚さは第3ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧>第2閾値電圧>第3閾値電圧である、ことを特徴とする付記1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0091】
(付記3)
P型層をさらに含み、前記P型層は、前記バリア層の複数のゲート領域に設けられ、前記バリア層の複数のゲート領域下方の2次元電子ガスを減少または枯渇させるために使用される、ことを特徴とする付記1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0092】
(付記4)
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、このゲート領域に分布されているP型層は少なくとも一部が前記グルーブ構造に埋め込まれる、ことを特徴とする付記3に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0093】
(付記5)
前記バリア層は、チャンネル層に順次設けられた複数のバリア層サブ層を含む、ことを特徴とする付記1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0094】
(付記6)
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部は1つのバリア層サブ層の内部、隣接する2つのバリア層サブ層の界面またはチャンネル層の表面に分布し、
または、少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記バリア層は第1バリア層サブ層および第1バリア層サブ層に設けられた第2バリア層サブ層を含み、前記グルーブ構造は第1グルーブ構造および第2グルーブ構造を含み、前記第1グルーブ構造は第1バリア層サブ層内に設けられ、前記第2バリア層サブ層の一部の領域は窪んで第1グルーブ構造に埋め込まれ、前記第2グルーブ構造を形成し、
および/または、前記HEMT構造は、少なくとも1つの挿入層を含み、前記挿入層は2つのバリア層サブ層間に分布している、ことを特徴とする付記5に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0095】
(付記7)
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部は1つの挿入層内部または1つの挿入層と隣接するバリア層サブ層の界面に分布している、ことを特徴とする付記6に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0096】
(付記8)
少なくとも前記バリア層の1つのゲート領域にグルーブ構造が形成され、前記グルーブ構造のノッチはバリア層の表面に分布し、グルーブ底部はチャンネル層の表面に分布し、少なくとも前記グルーブ構造の内壁に連続のゲート誘電体層が被覆され、前記ゲート誘電体層は、ゲートとグルーブ構造内壁を分離するために使用される、ことを特徴とする付記1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0097】
(付記9)
具体的に、基板上に順次成長した遷移層、耐電圧層、チャンネル層およびバリア層を含む、ことを特徴とする付記1に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造。
【0098】
(付記10)
基板上にチャンネル層、バリア層を順次成長させ、
少なくとも前記バリア層上に、第1ソース領域および第2ソース領域、第1ゲート領域および第2ゲート領域、第1ドレイン領域および第2ドレイン領域が画定され、前記第1ソース領域、第1ゲート領域および第1ドレイン領域は互いに協働して第1HEMTユニットを形成し、前記第2ソース領域、第2ゲート領域および第2ドレイン領域は互いに協働して第2HEMTユニットを形成し、前記第1HEMTユニットは第1閾値電圧を有し、前記第2HEMTユニットは第2閾値電圧を有し、
前記バリア層を成長させるとき、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、または、前記バリア層を成長させた後、前記バリア層の一部の領域を除去し、前記バリア層の第1ゲート領域における厚さは第2ゲート領域における厚さよりも小さく、前記第1閾値電圧は第2閾値電圧よりも高い、ことを特徴とする複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【0099】
(付記11)
具体的に、
前記バリア層を成長させた後、少なくとも前記第1ゲート領域をエッチングし、少なくとも前記第1ゲート領域にグルーブ構造を形成すること、
または、まず第1バリア層サブ層を成長させ、第1バリア層サブ層の選択領域をエッチングして第1グルーブ構造を形成し、前記選択領域は前記第1ゲート領域に対応し、第1バリア層サブ層上に第2バリア層サブ層を成長させ、第2バリア層サブ層の一部の領域が窪んで第1グルーブ構造に埋め込まれ、第2グルーブ構造を形成し、前記バリア層を形成すること、を含む、ことを特徴とする付記10に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【0100】
(付記12)
具体的に、チャンネル層に複数のバリア層サブ層を順次成長させ、少なくとも2つのバリア層サブ層間に挿入層を成長させ、前記バリア層を形成することを含む、ことを特徴とする付記10または11に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【0101】
(付記13)
具体的に、前記バリア層上にP型層を成長させ、前記P型層の一部の領域を前記グルーブ構造に埋め込み、その後前記P型層のゲート領域以外の領域をエッチングして除去し、前記バリア層の複数のゲート領域下方の2次元電子ガスを減少または枯渇させる、ことを特徴とする付記11に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【0102】
(付記14)
具体的に、前記バリア層上にゲート誘電体層を成長させ、前記ゲート誘電体層が少なくとも前記グルーブ構造の内壁を連続的に被覆するようにすることを含む、ことを特徴とする付記11に記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の製造方法。
【0103】
(付記15)
付記1~9のいずれか一つに記載の複数の閾値電圧を有するGaN系HEMT構造の高閾値および低閾値の論理回路の製造における用途。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】