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特表2024-528769建築システムの組み立てに使用するための木質耐荷重パネルを提供するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】建築システムの組み立てに使用するための木質耐荷重パネルを提供するための方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/10 20060101AFI20240725BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240725BHJP
   E04C 2/12 20060101ALI20240725BHJP
   E04C 2/42 20060101ALI20240725BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240725BHJP
   E04C 2/284 20060101ALI20240725BHJP
   E04C 2/38 20060101ALI20240725BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240725BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20240725BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20240725BHJP
   G06F 111/20 20200101ALN20240725BHJP
【FI】
E04B1/10 A ESW
G06F30/13
E04C2/12 E
E04C2/42 G
E04B2/56 605E
E04B2/56 604F
E04C2/284
E04C2/38 J
E04B2/56 643H
E04B2/56 643E
E04B2/56 645A
E04B1/76 500F
E04B1/82 A
G06F119:14
G06F111:20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558401
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2022057658
(87)【国際公開番号】W WO2022200446
(87)【国際公開日】2022-09-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523089184
【氏名又は名称】レコ ラブス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレメント,テレンス
(72)【発明者】
【氏名】コルディア,フランソワ-ザビエル
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
2E162
5B146
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DF01
2E001EA10
2E001FA03
2E001GA42
2E001GA45
2E002FA03
2E002FB16
2E002MA15
2E002MA18
2E002MA32
2E162BA05
5B146AA04
5B146BA04
5B146DL01
(57)【要約】
本発明は、建築システム(100)の組み立てに使用するための木質耐荷重パネル(113.1,114.1,115.1)を提供するための方法であって、位置がパネルに割り当てられ、パネルテンプレートが提供され、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションが、該バリエーションがパネルの位置で支持しなければならない所要垂直力の1倍から4倍の間にバリエーションの耐荷重能力が含まれるように、パラメータの変化に基づいて決定され、その後、バリエーションが選択され、選択されたバリエーションからパネルが製造される、方法に関する。また、本発明は、そのような方法で得られる木質耐荷重パネル(115.1)、及びそのようなパネル(115.1)を含む建築システム(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築システム(100)の組み立てに使用するための木質耐荷重パネル(113.1,114.1,115.1)を提供するための方法であって、前記建築システム(100)は、構造要素(111,112,113,114,115)を含むレベル(110,120,130)のセットを含み、前記方法は、
-前記建築システム(100)内の木質耐荷重パネル(115.1)に位置(P115.1)を割り当てるステップと、
-一連の少なくとも3つの重ね合わされるプライ(11,12,13,14,15)を含むパネルテンプレート(10)を提供するステップであって、前記プライのうちの少なくとも2つのプライ(11,12)が、プライ(11,12)に沿って分配される一連の木質ストリップ(11.1,11.2,11.3,12.1,12.2,12.3,12.4,12.5)を含み、少なくとも1つのプライ(11)の前記木質ストリップ(11.1,11.2,11.3)が前記建築システム(100)内で実質的に垂直に方向付けられる、ステップと、
-前記パネルテンプレート(10)の少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)を、前記パネルテンプレート(10)のプライの数及び断面、並びに前記パネルテンプレート(10)の各プライにおける木質ストリップの数及び分布のいずれかなどのパラメータの変化に基づいて、前記バリエーション(70)が前記建築システム(100)内の木質耐荷重パネル(115.1)の位置(P115.1)で支えなければならない所要垂直力(F170、F151、F152、F153...)の1倍から4倍の間に前記バリエーション(70)の耐荷重能力(F270、F251、F252、F253...)が含まれるように決定するステップと、
-前記少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)のうちの1つを選択するステップと、
-前記選択されたバリエーション(70)から前記パネル(115.1)を製造するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法がコンピュータ実装される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記建築システム(100)内の前記木質耐荷重パネル(115.1)の前記位置(P115.1)で前記パネルが支えなければならない所要垂直力(F170)を決定するステップを含み、前記パネルテンプレートは、前記所要垂直力及び前記割り当てられた位置に基づいて提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)を決定する前記ステップは、
-前記パネルテンプレート(10)から開始するステップと、
-プライ(11,12...)の数及び断面、並びに各プライにおける木質ストリップ(11.1,11.2...)の数、幅及び位置(11,12...)などの前記パネルテンプレート(10)のパラメータを変化させるステップと、
-前記パネルテンプレート(10)の前記パラメータの少なくとも1つの変化から前記パネルテンプレート(10)の前記少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)を決定するステップと、
-前記バリエーションの耐荷重能力(F270)を決定するステップと、
-その耐荷重能力(F270)を所要垂直力と比較するステップと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パネルテンプレートの前記パラメータの少なくとも2つの変化から前記パネルテンプレートの少なくとも2つのバリエーションを決定するステップと、前記少なくとも2つのバリエーションの前記耐荷重能力を決定するステップと、前記耐荷重能力を前記所要垂直力と比較するステップとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記パネルテンプレート(70,80,90)の少なくとも1つのバリエーションを決定する前記ステップは、
-実質的に垂直に方向付けられる木質ストリップ(11.1,11.2...)を一連のスタック(51,52,53...)へと収集するステップと、
-各スタック(51,52,53...)の局所耐荷重能力(F251、F252、F253...)を決定するステップと、
-各スタック(51,52,53...)が前記建築システム(100)内の前記木質耐荷重パネル(115.1)におけるその位置(P51,P52,P53...)で支えなければならない局所所要垂直力(F151,F152,F153...)を決定するステップと、
-それぞれのスタックごとに、局所耐荷重能力(F251,F252,F253...)と、スタックが支持しなければならない局所所要垂直力(F151,F152,F153...)とを比較するステップと、
を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記パネルテンプレートの前記少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)は、大部分のスタック(51,52,53...)に関して前記スタックが支持しなければならない局所所要垂直力(F151,F152,F153...)の1倍から4倍の間に前記スタックの局所耐荷重能力(F251,F252,F253...)が含まれるように決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パネルテンプレートの前記少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)は、前記スタックが全てのスタック(51,52,53...)に関して支持しなければならない局所所要垂直力(F151、F152、F153...)の1倍から4倍の間に前記スタックの局所耐荷重能力(F251、F252、F253...)が含まれるように決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)のうちの1つを選択する前記ステップは、
-それぞれのバリエーション(70,80,90)ごとに、前記バリエーションの耐荷重能力余剰を示す非効率関数(F)を生成するステップと、
-非効率関数(F)の最小値を有する前記バリエーションを選択するステップと、
を更に含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記パネルテンプレートの前記少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)は、所定のパネルデザイン(20,30,40,50)のセット内で、プライ(11,12...)の数及び断面、並びに各プライ(11,12...)における前記木質ストリップ(11.1,11.2...)の数、幅及び位置などのパラメータの範囲に基づいて決定される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーション(70,80,90)が支持しなければならない前記所要垂直力(F170)は、前記パネル(115.1)の真上の天井(112)に加えられる力のセットの分布に基づいて決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記パネルテンプレート(60)の少なくとも1つのプライ(11,12...)は、前記木質ストリップ(11.1,11.2...,12.1,12.2...)の少なくとも幾つかの間に交互配置された絶縁要素(22.1,22.2...,23.1,23.2...)のセットも含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記実質的に垂直に方向付けられる木質ストリップ(11.1,11.2...)間の距離(P1、P2)の値が、所与の長さ、特に利用可能な絶縁要素の公称幅の倍数である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各プライ(11)の前記木質ストリップ(11.1,11.2...)が互いに平行であり、各プライ(11)の前記木質ストリップ(11.1,11.2...)が隣り合うプライ(12)の前記木質ストリップ(12.1,12.2...)と平行でない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法で得られる木質耐荷重パネル(115.1)であって、前記パネル(115.1)が一連の少なくとも3つの重ね合わされたプライ(11,12,13,14,15)を含み、そのうちの少なくとも2つのプライ(11,12)は、前記プライ(11,12)に沿って分配された一連の木質ストリップ(11.1,11.2,11.3,12.1,12.2,12.3,12.4,12.5)を含み、少なくとも1つのプライ(11)の前記木質ストリップ(11.1,11.2,11.3)が前記建築システム(100)内で実質的に垂直に方向付けられる、木質耐荷重パネル(115.1)。
【請求項16】
前記パネル(115.1)の幅(W10)及び高さ(H10)が輸送及び保管の要件に依存する、請求項15に記載の木質耐荷重パネル(115.1)。
【請求項17】
前記スタックの前記ストリップが前記プライ間に不均一に分布される、請求項15又は16に記載の木質耐荷重パネル。
【請求項18】
前記スタックが前記パネル内に不均一に分布される、請求項15から17のいずれか一項に記載の木質耐荷重パネル。
【請求項19】
床(111)、天井(112)及び耐荷重壁(113,114,115)を含むレベル(110,120,130)のセットを備える建築システム(100)であって、前記耐荷重壁(115)の少なくとも1つが請求項15から18のいずれか一項に記載の木質耐荷重パネル(115.1)を含む、建築システム(100)。
【請求項20】
前記レベルのうちの1つ(11)の前記耐荷重壁(113,114,115)の全てが請求項15から18のいずれか一項に記載の木質耐荷重パネル(115.1)を含む、請求項19に記載の建築システム(1)。
【請求項21】
床(111)、天井(112)、及び耐荷重壁(113,114,115)を含むレベル(110,120,130)のセットを備える建築システム(100)であって、
-前記耐荷重壁の少なくとも1つ(115)は、第1の木質耐荷重パネル及び第2の木質耐荷重パネルを含み、
-前記第1のパネルが前記建築システムにおける第1の位置に位置され、
-前記第2のパネルが前記建築システムにおける第2の位置に位置され、
-前記第1の位置が前記第2の位置とは異なり、
-前記第1の位置は、前記第1のパネルによって支持されるべき第1の所要垂直力と関連付けられ、
-前記第2の位置は、前記第2のパネルによって支持されるべき第2の所要垂直力と関連付けられ、
-前記第1の垂直力が前記第2の垂直力とは異なり、
-前記第1及び第2のパネルのそれぞれが少なくとも3つの重ね合わされたプライを含み、そのうちの少なくとも2つのプライが前記プライに沿って分配された一連の木質ストリップを含み、少なくとも1つのプライの木質ストリップは、前記建築システム内で実質的に垂直に方向付けられ、
-前記第1のパネルの耐荷重能力が前記第1の所要垂直力の1倍から4倍の間に含まれ、
-前記第2のパネルの耐荷重能力が前記第2の所要垂直力の1倍から4倍の間に含まれる、
建築システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築システムを組み立てるために使用することができる木質パネルのセットを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層階建物などの建築システム用の木質パネルを設計及び製造するための様々な解決策が知られている。いずれの場合も、木質パネルのセットは、その上のレベル(又は階)の荷重に耐えなければならない。
【0003】
第1のタイプの木質パネルは、「ティンバーフレームウォール(Timber Frame Wall)」に関して「TFW」と呼ばれる。このパネルは、互いに組み立てられた木製マウント及びクロスビームを備えるフレームから成る。これらのフレーム要素は、所望の寸法に機械加工された木材から、手動及び/又は数値制御機械を用いて製造される。その後、フレームの組み立ては、筋交いパネル(一般に、「配向性ストランドボード(Oriented Strand Board)」に関して「OSB」と呼ばれる)が取り付けられる構造フレームを形成するようにマウントをクロスビームに接続するロッド型部材(チップ、ねじ、ボルト...)を使用することによって行なわれる。このようなユニットは、壁の「パネル」と呼ばれる。このフレームは幾つかの利点を有する。特に、パネルは軽量であり、その組み立ては、標準的な構成要素を用いて作業者によって現場で容易に完了することができる。更に、絶縁、防音、耐火機能、熱慣性、又は任意の他の相補的機能などの機能を果たすために、他の機能要素を挿入することができる。
【0004】
しかしながら、「TFW」パネルの組み立てを完全に自動化することは、最も開発されたラインであっても、依然として人間のオペレータを必要とするため、困難であると思われる。したがって、「TFW」パネルを伴う建築システムの製造は、必要な労働力に起因して、製造コストの増大につながる。実際には、「TFW」パネルは、4階以上の建物には殆ど使用されない。
【0005】
第2のタイプの木質パネルは「CLT」と呼ばれ、これは「クロス・ラミネイティド・ティンバー(Cross-Laminated Timber)」の略である。要素は、現場で組み立てられる予め製造されたパネルである。主材料は、積層木材(又はラメラ)である。詳細には、主材料は互いに重ね合わされたプライ(又は層)のセットから成る。各プライは、互いに平行な木製構造ストリップのセットを備える。また、これらのストリップは、所与のプライのストリップが隣接するプライのストリップに直交するように、互いに配置される。このことは、所与のプライのストリップが実質的に水平であり得る一方で、その隣接するプライのストリップが実質的に垂直であり得ることを意味する。パネルは、プライのストリップの面の1つが隣接するプライのストリップの面の1つと接触することにより接触界面を画定するように、その時点で各プライを準備した後にプライを重ね合わせることによって製造される。ストリップ、したがってプライを互いに対して保持するために、接着剤が接触界面に配置される。
【0006】
CLTパネルは、強い機械的抵抗を与えるので、高層構造のための耐荷重壁として適している。しかしながら、ストリップが連続するとともに木材と接着剤との連続体を形成するという事実は、幾つかの欠点をもたらす。第1に、耐荷重パネルを提供するにはかなりの量の木材が必要であり、これは木材、接着剤、及びコストの点で非効率的である。第2に、絶縁要素を挿入するための空間がストリップ間に存在しない。第3に、同じプライのストリップの吸湿変形がストリップから別のストリップに伝達される場合があり、それにより、変形が蓄積される。
【0007】
更に、CLTパネルを製造するには、更なる切断ステップが必要になる場合がある。実際、予め製造されたパネルのサイズの中実層を形成するためにストリップがそれらの側で一緒に結合されるとき、開口が切断されなければならない。殆どの場合、切断された部品は、再利用することができず、リサイクルする必要がある。したがって、この切断ステップは、生産時間を増大させるだけでなく、無駄な木材片も生成した。
【0008】
第3の解決策は、特許文献1パンフレットに開示される。パネルは、重ね合わされたプライのセットから成り、各プライは、互いに平行な木製構造ストリップのセットを含む。しかし、「CLT」パネルとは対照的に、ここでは各プライのストリップが互いに離間される。ストリップ間のこの距離のおかげで、各プライにおいて、機能要素はストリップ間の隙間に配置され、したがって、各プライは構造要素(木製ストリップ)と機能要素とを交互に繰り返す。異なる機能を与えるために、広範囲の絶縁材料を同じパネル内で組み合わせることができる。また、「CLT」パネルのように、プライは「交差」され、すなわち、プライのストリップは隣接するプライのストリップに直交しているので、パネルは、プライを水平ストリップと交互にするとともに、プライを垂直ストリップと交互にする。更に、各プライのストリップは、互いに平行であるが、他のプライの平行なストリップとシフトされたストリップと同じ線上にはない。最後に、ストリップは、2つの隣接するプライのストリップの面間の接触界面に配置された接着剤によって互いに保持される。
【0009】
特許文献2は、同等のクロス・ラミネイティド・パネルを開示するが、今度は、接着剤がストリップの面に配置された一連の溝に置き換えられる。相互作用する面の溝は相補的であるため、面が接触しているとき、溝は、ストリップがストリップの平面内で互いに沿って摺動するのを防止する。更に、接触しているストリップの厚さと交差するように一組のねじが設けられ、それにより、ストリップは、ストリップの平面に直交する方向で互いに対して維持され得る。更に、水平ストリップのプライは、同一であり、すなわちシフトされない。同じことが垂直ストリップのプライにも当てはまるため、ストリップがプライを横切って積み重ねられ、それにより、同じ量の木材に関してパネルの強度及び剛性が向上する。
【0010】
いずれの場合にも、パネルは、木質ストリップと絶縁要素とを交互に配置する構造を有する。建築家は、通常、所与の壁にわたって厚さが同じであることを求め、このことは、パネルが同じ構造を有するべきであることを意味するとともに、より低い荷重に耐えることになっている特定のパネルの厚さを減少させることが通常は不可能であることを意味する。多層建築物において、このことは、建築基準に準拠するために必要なものと比較して、幾つかの重いレベルを潜在的に支えるために、全てのパネルが木材量に関して過大に寸法付けられなければならないことを意味する。これは、使用される木材片が多すぎて非効率的なパネルをもたらし、更なる絶縁要素のためのスペースが少なくなる。
【0011】
したがって、全体として、木材の量を減らすことができ、絶縁要素の量を増やすことができる耐荷重木質パネルを設計及び製造する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際出願第2013/150188号
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0249431号明細書
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、構造的木質ストリップと絶縁要素とを交互に配置するクロスラミネートパネルの利点を維持しつつ、木材の量が適合される、より効率的な木質パネル、及び木質パネルを製造するための方法を提供することである。
【0014】
この目的のために、本発明は、建築システムの組み立てに使用するための木質耐荷重パネルを提供するための方法であって、建築システムが、構造要素を含むレベルのセットを含み、方法が、
-建築システム内の木質耐荷重パネルに位置を割り当てるステップと、
-一連の少なくとも3つの重ね合わされるプライを含むパネルテンプレートを提供するステップであって、プライのうちの少なくとも2つのプライが、プライに沿って分配される一連の木質ストリップを含み、少なくとも1つのプライの木質ストリップが建築システム内で実質的に垂直に方向付けられる、ステップと、
-パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションを、パネルテンプレートのプライの数及び断面、並びにパネルテンプレートの各プライにおける木質ストリップの数及び分布のいずれかなどのパラメータの変化に基づいて、バリエーションが建築システム内の木質耐荷重パネルの位置で支えなければならない所要垂直力の1倍から4倍の間にバリエーションの耐荷重能力が含まれるように決定するステップと、
-少なくとも1つのバリエーションのうちの1つを選択するステップと、
-選択されたバリエーションからパネルを製造するステップと、
を含む方法に関する。
【0015】
本発明は、パネルテンプレート(既に知られているCLTパネルと同様)から始まって建築システムにおける各パネルの位置を考慮するパネルごとの手法をとる。具体的には、この手法は、構造環境全体に起因して各パネルに加えられる力を予測し、各パネルのパラメータをその力に適合させる。したがって、本発明は、必要とされる木材の量を減らし、それにより、木材を節約するとともに、従来技術よりも更に多くの絶縁材料でパネルを充填することを可能にする。
【0016】
これに関して、本発明者らは、パネルの耐荷重能力が、パネルが支持しなければならない所要垂直力の4倍以下であれば、一般に十分であることを見出した。この耐荷重マージンは、パネルを製造するための木材の体積を改善しながら、パネルの構造的能力を確保するのに十分であることが証明されている。
【0017】
したがって、本発明は、既知のCLTパネル、特に木質ストリップと絶縁要素との両方を有するパネルの利点を維持する。パネルは、他のCLTパネルと同様に、現場で組み立てられる前に依然として製造することができる。しかし、本発明のおかげで、これらのパネルには、より少ない木材、より良好な効率、及び改善された耐熱性が与えられる。
【0018】
方法は、コンピュータ実装されてもよい。位置の割り当ては、コンピュータへのユーザ入力を介して実行されてもよい。コンピュータは、割り当てられた位置を使用してパネルテンプレートを提供することができる。建築システム内のパネルの割り当てられた位置に基づいて、コンピュータは、パネルが(建築システム内のその位置で)支えなければならない所要垂直力を決定することができる。次いで、所要垂直力に基づいてパネルテンプレートを提供できる。
【0019】
パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションを決定するステップは、
-パネルテンプレートから開始するステップと、
-プライの数及び断面、並びに各プライにおける木質ストリップの数、幅及び位置などのパネルテンプレートの1つ以上のパラメータを変化させるステップと、
-パネルテンプレートのバリエーション(複数可)の耐荷重能力を決定するステップと、
-その耐荷重能力を所要垂直力と比較するステップと、
を含むことができる。
【0020】
好ましくは、決定は一連のバリエーションに基づく。その場合、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションを決定するステップは、パネルテンプレートのパラメータの少なくとも2つの変化からパネルテンプレートの少なくとも2つのバリエーションを決定するステップと、それらのそれぞれの耐荷重能力を決定するステップと、それらの耐荷重能力を所要垂直力と比較するステップとを更に含む。
【0021】
コンピュータは、少なくとも1つのテンプレートバリエーションの選択を実行するためにユーザからの更なる入力を要求することができる。
【0022】
パネルの製造は、選択に応じ行なわれる。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つのバリエーションを決定するステップは「スタック」を使用し、これらの「スタック」は、プライ間で位置合わせされて互いに近接している垂直に方向付けられる木質ストリップから形成される。詳細には、方法は、
-実質的に垂直に方向付けられる木質ストリップを一連のスタックへと収集するステップと、
-各スタックの局所耐荷重能力を決定するステップと、
-各スタックが建築システム内の木質耐荷重パネルにおけるその位置で支えなければならない局所所要垂直力を決定するステップと、
-それぞれのスタックごとに、局所耐荷重能力と、スタックが支持しなければならない局所所要垂直力とを比較するステップと、
を更に含む。
【0024】
この好ましい実施形態は、力が主に垂直ストリップのスタックによって耐えられるという認識に基づいている。したがって、プライの数及び垂直ストリップの分布は、パネルの上方の構造を支える木材の全体的な寸法に影響を及ぼす。これらのパラメータを変えることにより、所望の耐荷重能力を満たすことができるが、必要な量の木材のみが使用されるようにすることができる。
【0025】
この実施形態において、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションは、好ましくは、大部分のスタックに関してスタックが支持しなければならない局所所要垂直力の1倍から4倍の間にスタックの局所耐荷重能力が含まれるように決定される。この基準により、パネルの全ての局所スタックが考慮されるため、所望の耐荷重能力をパネルの幅に沿って広げることができる。更により好ましくは、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションは、全てのスタック(スタックの大部分だけではない)に関してスタックが支持しなければならない局所所要垂直力の1倍から4倍の間にスタックの局所耐荷重能力が含まれるように決定される。この基準は、最も適切なパネルの1つを決定することを可能にする。
【0026】
バリエーションの選択は、好ましくは1つの数のみに基づく。そうするために、少なくとも1つのバリエーションのうちの1つを選択するステップは、
-それぞれのバリエーションごとに、バリエーションの耐荷重能力余剰を示す非効率関数を生成するステップと、
-最小値を有するバリエーションを選択するステップと、
を更に含む。
【0027】
或いは、バリエーションの選択は、1つのパネルだけでなく、同じレベル(又は階)に存在するパネルのセットで行なわれる。そのような全体的な手法は、1つのパネルの低い耐荷重能力を隣接するパネルのより高い耐荷重能力で潜在的に補償することを可能にする。そうするために、少なくとも1つのバリエーションのうちの1つを選択するステップは、
-同じレベルの少なくとも2つのパネルを考慮するステップと、
-少なくとも2つのパネルにおけるバリエーションを考慮するステップと、
-少なくとも2つのパネルのバリエーションのそれぞれのセットごとに、バリエーションのセットの全体的な耐荷重能力余剰を示す非効率関数を生成するステップと、
-最も低い非効率関数を有するバリエーションのセットを選択するステップと、
を更に含む。
【0028】
これらの全ての実施形態において、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションは、所定のパネルデザインのセット内で、プライの数、並びに各プライにおける木質ストリップの数、幅及び位置などのパラメータの範囲に基づいて決定され得る。そうすることによって、バリエーションは、調整されたデザインではなく、所定のパネルデザインの所与の範囲に基づいて決定され得る。その場合、そのような所与の範囲のパネルの製造はより容易で安価である。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つのプライの全ての木質ストリップは、同じ幅を有する。したがって、木質ストリップは同じであり得るため、製造プロセスの工業化はより簡単で安価である。
【0030】
パネルテンプレートのバリエーションが支えなければならない所要垂直力のより正確な決定を得るために、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションが支えなければならない所要垂直力は、パネルの真上の天井に加えられる力のセットの分布に基づいて決定される。実際、より多くの力がパネルの上方の天井に分配されるほど、パネルに作用する所要垂直力の決定がより正確になる。
【0031】
本発明の完全な利益、特に木材の削減を得るために、パネルテンプレートの少なくとも1つのプライは、木質ストリップの少なくとも幾つかの間に交互配置された絶縁要素のセットも含む。
【0032】
この場合、実質的に垂直に方向付けられる木質ストリップ間の距離の値は、所与の長さ、特に利用可能な絶縁要素の公称幅、特に利用可能な絶縁要素の公称幅の倍数であり得る。後者の場合、絶縁材料は、製造中に切断される必要がないため、無駄にならない。
【0033】
パネルのプライは「交差」させることができ、すなわち、各プライの木質ストリップは互いに平行であり、各プライの木質ストリップは、隣接するプライの木質ストリップと好ましくは90°で平行ではない。これは、特に、プライをねじによって容易に接続できるようにする。
【0034】
好ましくは、異なるプライの木質ストリップの少なくとも一部が位置合わせされる。位置合わせされた垂直ストリップはスタックの一部とすることができ、このスタックの底部で力を考慮することができるため、この構造は「スタック」の提供を容易にする。
【0035】
また、本発明は、前述の方法で得ることができる木質耐荷重パネルに関し、パネルは、一連の少なくとも3つの重ね合わされたプライを含み、その少なくとも2つのプライは、プライに沿って分配された一連の木質ストリップを含み、少なくとも1つのプライの木質ストリップは、建築システム内で実質的に垂直に方向付けられる。このパネルは、本発明の利点を有し、特に、木材の構造及び使用は、建物内のパネルの位置に適合される。これにより、木材を節約し、より多くの絶縁要素を交互配置することが可能になる。
【0036】
好ましくは、パネルの幅及び高さは、輸送及び貯蔵の要件に依存し、それにより、パネルの工業化を容易にする。
【0037】
好ましくは、少なくとも1つの開口がパネルに設けられる。そのような開口は、パネルにおいて軸受機能を有するとは考えられない。
【0038】
また、本発明は、床、天井及び耐荷重壁を含むレベルのセットを備える建築システムに関し、耐荷重壁の少なくとも1つは、本発明に係る木質耐荷重パネルを含む。したがって、パネルの構造は、その位置に適合される。
【0039】
好ましくは、1つのレベルの全ての耐荷重壁は、前述のパネルなどの木質耐荷重パネルを含む。この構成は、あるレベルで過剰な量の木材が使用されないようにする。また、この構成は、1つのパネルの劣った耐荷重能力を、その隣接するパネルの優れた耐荷重で潜在的に補償することを可能にする。
【0040】
また、本発明は、床、天井、及び耐荷重壁を含むレベルのセットを備える建築システムであって、
-耐荷重壁の少なくとも1つは、第1の木質耐荷重パネル及び第2の木質耐荷重パネルを含み、
-第1のパネルが建築システムにおける第1の位置に位置され、
-第2のパネルが建築システムにおける第2の位置に位置され、
-第1の位置が第2の位置とは異なり、
-第1の位置は、第1のパネルによって支持されるべき第1の所要垂直力と関連付けられ、
-第2の位置は、第2のパネルによって支持されるべき第2の所要垂直力と関連付けられ、
-第1の垂直力が第2の垂直力とは異なり、
-第1及び第2のパネルのそれぞれが少なくとも3つの重ね合わされたプライを含み、そのうちの少なくとも2つのプライがプライに沿って分配された一連の木質ストリップを含み、少なくとも1つのプライの木質ストリップは、建築システム内で実質的に垂直に方向付けられる、
建築システムにも関連する。
【0041】
第1及び第2のパネルは、建築システムの互いに異なる階に位置されてもよい。各パネルは、そのそれぞれの階に関連する垂直力要件に適合され得る。
【0042】
第1のパネルの耐荷重能力は、第1の所要垂直力の1倍から4倍の間に含まれてもよい。これに加えて又は代えて、第2のパネルの耐荷重能力は、第2の所要垂直力の1倍から4倍の間に含まれてもよい。
【0043】
耐荷重壁の少なくとも1つは、建築システム内の第3の位置に位置された第3の木質耐荷重パネルを含むことができる。第3の位置は、第1及び第2の位置と異なっていてもよい。第3の位置は、第3のパネルによって支持されるべき第3の所要垂直力と関連付けられてもよい。第3の垂直力は、第1及び/又は第2の垂直力とは異なり得る。第3のパネルが少なくとも3つの重ね合わされたプライを含むことができ、そのうちの少なくとも2つは、プライに沿って分配された一連の木質ストリップを含み、少なくとも1つのプライの木質ストリップは、建築システム内で実質的に垂直に方向付けられる。
【0044】
第3のパネルの耐荷重能力は、第3の所要力の1倍から4倍の間に含まれてもよい。
【0045】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照することによって、例示目的で与えられる本発明の実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】本発明に係る木質耐荷重パネルの第1の例示的な例の異なる図である。
図1B】本発明に係る木質耐荷重パネルの第1の例示的な例の異なる図である。
図2A】本発明に係る木質耐荷重パネルの他の4つの例示的な例のうちの1つの図である。
図2B】本発明に係る木質耐荷重パネルの他の4つの例示的な例のうちの1つの図である。
図2C】本発明に係る木質耐荷重パネルの他の4つの例示的な例のうちの1つの図である。
図2D】本発明に係る木質耐荷重パネルの他の4つの例示的な例のうちの1つの図である。
図3A】絶縁要素のセットを含む、本発明に係る木質耐荷重パネルの別の例の異なる図である。
図3B】絶縁要素のセットを含む、本発明に係る木質耐荷重パネルの別の例の異なる図である。
図3C】絶縁要素のセットを含む、本発明に係る木質耐荷重パネルの別の例の異なる図である。
図3D】絶縁要素のセットを含む、本発明に係る木質耐荷重パネルの別の例の異なる図である。
図4】本発明に係る木質耐荷重パネルを提供するための方法の一例の図である。
図5】建築システムの一例の3次元図である。
図6】本発明に係る木質耐荷重パネルを提供するための方法の実施前の、図5の家屋の例における木質耐荷重パネルのセットの三次元図である。
図7】本発明に係る木質耐荷重パネルを提供するための方法の実施前の、図5の家屋の例における木質耐荷重パネルのセットの三次元図である。
図8】床、天井、及びパネルテンプレートのセットを含む、図5の家屋のレベル(又は階)の1つの3次元図である。
図9図8の1つのパネルテンプレートの3次元図である。
図10A図9のパネルテンプレートの異なるバリエーションの3次元図である。
図10B図9のパネルテンプレートの異なるバリエーションの3次元図である。
図10C図9のパネルテンプレートの異なるバリエーションの3次元図である。
図11図9のパネルテンプレートの異なるバリエーションに関して各スタックで計算された異なる力を示す表の例である。
図12】本発明に係る木質耐荷重パネルを提供するための方法の実施後の、図5の家屋における木質耐荷重パネルのセットの三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1A及び図1Bは、パネル10の第1の例を示す。本発明において、このパネルは、建物内の耐荷重パネルとして使用することができる。このパネルは、一連の木質ストリップを含むため、木質である。パネル10は、高さH10、幅W10、及び深さD10図9にも示されている)を有する。パネルは、一連の重ね合わされたプライ11、12、13、14及び15を含む。各プライは、木質ストリップのセットを含み、木質ストリップは、同じ幅を有していてもいなくてもよく、互いに隣接していてもよく、或いはある距離だけ離間していてもよい。
【0048】
図1A及び図1Bの例において、第1のプライ11は、実質的に垂直且つ互いに平行な3つの木質ストリップ11.1、11.2及び11.3を含む。これらは「ポスト」とも呼ばれる。ストリップ11.1及び11.2は距離P1だけ離れており、一方、ストリップ11.2及び11.3は距離P2(又は「ポストピッチ」)だけ離れている。第2のプライ12は、実質的に水平で互いに平行な5つの木質ストリップ12.1、12.2、12.3、12.4及び12.5を含む。それらは「トラバース」とも呼ばれる。2つの隣接するストリップ、例えば図1Aの12.2及び12.3は、距離P´(又は「トラバースピッチ」)だけ離れている。第3のプライ13及びプライ15は、第1のプライ11として構成され、すなわち、これらのプライは、3つの実質的に垂直な木質ストリップ13.1、13.2、13.3及び15.1、15.2、15.3を含む。プライ11、13及び15の木質ストリップは、全て互いに位置合わせされ、それにより、それらは一連の3つの垂直スタック51、52及び53を形成する。例えば、スタック51は、ストリップ11.1、13.1、及び15.1から構成される。スタック51,52間の距離はP1であり、スタック52,53間の距離はP2である。第4のプライ14は、第2のプライ12として構成され、すなわち、5つの実質的に水平な木質ストリップ14.1、14.2、14.3、14.4及び14.5を含む。したがって、ストリップの分布はパネルに沿って均一である。この例では、全てのストリップが同じ形状、すなわち同じ幅及び深さを有する。実質的に垂直なストリップは、実質的に水平なストリップも同じ長さを有するのと同様に、同じ長さを有する。したがって、パネルを製造するとき、ストリップを容易に交換することができ、時間及び費用を節約することができる。
【0049】
本発明によるパネルは、木質ストリップの別の分布を含んでもよい。特に、パネルは、他の数のプライ及び木質ストリップ、並びに木質ストリップの他の向き及びサイズを含み得る。方向の観点から、各プライの木質ストリップは、一方では互いに平行であり、各プライの木質ストリップは、隣接するプライの木質ストリップとは平行でないことが好ましい。更に、幾つかのストリップは(建築システムの向きと比較して)水平であり、また、幾つかの他のストリップが垂直であることが好ましいが、建築システムにおけるパネルの機能及び位置に応じて他の向きも可能である。
【0050】
一般に、本発明に係るパネルは、一連の少なくとも3つの重ね合わされたプライを含み、そのうちの少なくとも2つのプライは、プライに沿って分配された一連の木質ストリップを含み、少なくとも1つのプライの木質ストリップは、建築システムにおいて実質的に垂直に方向付けられる。次いで、実質的に垂直な木質ストリップは、パネル用のベアリングを装填するのに役立つスタックを形成することができる。以下に詳述するように、パネルの各プライにおけるプライの数並びに木質ストリップの数及び分布は、本発明に従って決定される。
【0051】
パネルの幅W10及び高さH10は、建物ごとに異なっていてもよい。特に、パネルの幅及び高さは各階の高さに依存し得る。また、パネルの幅及び高さは製造工具の能力にも依存し得る。とりわけ、パネルは輸送及び貯蔵の要件に依存するので、パネルをプラントから建築現場へ適切な方法で輸送及び仕分けすることができる。
【0052】
「スタック」における実質的に垂直な木質ストリップの分布は、本発明に係るパネルの決定に役立つ。したがって、異なるプライの木質ストリップの少なくとも一部が位置合わせされることが好ましい。
【0053】
本発明の目的のために、ストリップは、任意の木質ストリップであってもよく、それにより、ストリップは、天然であろうと、木材-ポリマー複合材(例えば、木材要素に乳酸水性溶液を含浸させることによって)であろうと、任意の木材種に由来し得る。次いで、パネルの荷重容量を決定する際に、木材の機械的特性が考慮される。
【0054】
機械的観点から、そのようなパネルは3つの異なる力を受けると考えることができる。第1の力は、パネルに垂直に課される永久荷重(例えば、自重、居住、家具...)に相当する「垂直圧縮ライン荷重」である。第2の力は「風荷重」であり、パネルの平面に垂直である。第3の力は「ラッキング力」であり、水平である。
【0055】
図2A図2B図2C及び図2Dは、本発明に係るパネルの4つの他の例示的な例を示す。図2Aのパネル20は、図1A及び図1Bのパネル10と同様であり、すなわち、5つのプライを含み、「奇数」プライ(すなわち、プライ11、13、及び15)は、プライ11におけるストリップ11.1、11.2及び11.3などの3つの実質的に垂直な木質ストリップを有する。各プライの垂直ストリップは、パネル10と同じ3つのスタック51、52、及び53を形成するために位置合わせされる。パネル10との違いは、パネル20では、「偶数」プライ(すなわち、プライ12及び14)が、プライ12におけるストリップ12.1、12.2、12.3、12.4、12.5、12.6及び12.7などの7つの実質的に水平な木質ストリップを有することである。木質ストリップの分布は、パネルに沿って均一である。パネル10と同じ高さでは、水平ストリップの密度はパネル10よりも高い。
【0056】
図2Bのパネル30は、図1A及び図1Bのパネル10と同様であり、すなわち、5つのプライを含み、「偶数」プライ(12及び14)は、プライ12におけるストリップ12.1、12.2、12.3、12.4及び12.4などの5つの実質的に水平な木質ストリップを含む。パネル10との違いは、パネル30において、「奇数」プライ(すなわち、プライ11、13、及び13)が、プライ11におけるストリップ11.1、11.2、11.3、11.4及び11.5などの5つの実質的に垂直な木質ストリップを有することである。各プライの垂直ストリップは、5つの同じスタック51、52、53、54及び55を形成するために位置合わせされる。ここでも、木質ストリップの分布は、パネルに沿って均一である。パネル10と同じ幅の場合、垂直ストリップの密度はパネル10よりも高いため、パネル10により多くの重量及び荷重をかけることができる。
【0057】
図2Cのパネル40は、パネルに沿った木質ストリップの不均一な分布の一例である。これは依然として5つのプライを含み、「偶数」プライ(12及び14)は、プライ12におけるストリップ12.1、12.2、12.3、12.4及び12.4などの5つの実質的に水平な木質ストリップを含む。パネル40は、3つのスタック51、52、及び53を含むが、不均一な態様である。スタック51は、第1のプライからのストリップ11.1、次いで第3のプライの互いに隣り合う2つのストリップ、次いで第5のプライの互いに隣り合う2つのストリップからなる。スタック52は、第1のプライのストリップ11.2及び11.3と、第3のプライの2つのストリップと、第5のプライの2つのストリップとで構成され、各プライのストリップは互いに隣接している。スタック53は、(互いに隣り合う)第1のプライのストリップ11.4及び11.5と、第3のプライの一方のストリップと、第5のプライの一方のストリップとで構成されている。したがって、スタックはより多くの木材を有し、より多くの重量及び荷重に耐えることができる。端部スタック51及び53の形状は、隣接するパネルとの特定の接続を可能にする(隣接するパネルの端部スタックがスタック51及び53の形状と相補的な形状を有する場合)。
【0058】
図2Dのパネル50は、ここではパネルに開口16を設けるための、パネルに沿った木質ストリップの不均一な分布の別の例である。スタックは4つ存在する。スタック51は開口16の左側にあり、他の3つのスタック52、53、及び54は開口16の右側にある。スタック51、53、及び54は、「奇数」プライによる1つのストリップから構成され、スタック52は、「奇数」プライによって互いに隣接する2つのストリップから構成される。水平方向において、「偶数」プライ12及び14のそれぞれは、開口16の下方に1つの水平ストリップ(例えばストリップ12.5)を含み、開口16の上方に4つの水平ストリップ(ストリップ12.1、12.2、12.3及び12.4など)を含む。これらの4つの水平ストリップは、このパネル用のまぐさ17を形成する。
【0059】
図2C及び図2Dの例では、互いに隣接する2つのストリップを1つの大きな単一のストリップに置き換えることができる。しかし、前述したように、製造のために、全てのストリップが同じ幅を有し、全て交換することができることが好ましい。
【0060】
木質ストリップ間の空間は、絶縁材料で充填することができる。詳細には、プライの少なくとも1つは、木質ストリップの少なくとも幾つかの間に交互配置された絶縁要素を含む。図3A図3Dの例では、パネル60は絶縁要素で完全に満たされている。連続する図は、パネル60内の異なる絶縁要素を見ることを可能にする。図3A及び図3Dでは、外部絶縁要素21及び24がパネルの両側に配置されている。図3Bでは、水平ストリップ12.1、12.2、12.3、12.4及び12.5の間に交互配置された水平熱要素22.1、22.2、22.3及び22.4を見ることができる。図3Cでは、垂直ストリップ11.1、11.2、11.3、11.4及び11.5の間に交互配置された垂直防音ファイバ要素23.1、23.2、23.3及び23.4を見ることができる。
【0061】
製造上、同一種類の絶縁要素(熱又は防音要素)は全て同じ幅を有することが好ましい。したがって、ストリップ間の距離P1及びP2は、所与の長さ、好ましくは絶縁要素の公称幅の倍数であることが好ましい。これにより、製造時に絶縁素子を簡単に交換することができる。
【0062】
本発明は、図5の家屋100などの建築システムを設計及び製造するために使用することができる。この建築システムは、レベル(又は階)110,120及び130のセットを含む。図5及び図6に見られるように、建築システム100の各レベルは、幾つかの構造要素で構成されている。第1のレベル111は、床111と、天井112と、耐荷重壁113,114及び115とを含む。本発明において、耐荷重壁(ここでは、少なくとも壁113,114及び115)のうちの少なくとも1つは、本発明に従って決定される木質耐荷重パネルを含む。好ましくは、レベルのうちの1つ(ここでは、第1のレベル11)の全ての耐荷重壁(すなわち、壁113,114及び115並びに他の全ての壁)は、本発明に係る木質耐荷重パネルを含む。
【0063】
本発明に係る木質耐荷重パネルを提供するための方法の一例の図を示す図4を参照する。方法は、コンピュータ実装されてもよい。この方法のステップのいずれも、コンピュータによって、又はコンピュータの助けを借りて実行されると理解することができる。
【0064】
ステップ201において、建築システム100の耐荷重壁(壁113,114及び115を含む)は、木質耐荷重パネルのセットへと分割される。図6の例では、壁113,114及び115が小さい幅を有することを考えると、各壁に関して1つのパネルで十分である。より大きな壁は、パネルの幅及び高さが輸送及び保管要件(並びに任意選択で製造ツールの容量などの他の基準)を満たすように、パネルのセットへと分割することができる。建築システム100全体を一連のパネルに分割した結果は、建物の幾何学的モデリングである図7に見ることができる。壁113,114及び115に関して得られたパネル113.1、114.1及び115.1は図8に見ることができ、一方ではパネル113.1、114.1及び115.1と、他方では床111及び天井112との間の相互作用を見ることができる。
【0065】
ステップ202において、建築システム100内の木質耐荷重パネルに位置が割り当てられる。例えば、パネル115.1の位置は、P115.1で示すことができる。パネル115.1の構造は、建物内のその位置P115.1に従って以下で決定されるため、この位置は本発明にとって重要である。位置は、例えば、ユーザ入力としてコンピュータに提供することができる。
【0066】
ステップ203において、パネル10などのパネルテンプレートが(例えば、コンピュータによって)提供される。「テンプレート」とは、本発明に係る適切なパネルを決定するための開始点として使用することができるパネルの例を指す。
【0067】
パネルテンプレート10のより詳細な図が図10で与えられる。図1A及び図1Bのものと同様に、開始点として使用されるパネルテンプレート10は、一連の5つの重ね合わされたプライから構成され、「奇数」プライは、異なるプライのストリップが互いに位置合わせされるように3つの垂直木質ストリップを含み、「偶数」プライは、5つの水平木質ストリップを含む。したがって、パネルテンプレートは、3つのスタック51、52、及び53を含む。
【0068】
次に、ステップ204からステップ209までのループが(例えば、コンピュータによって)実施される。このループの目的は、少なくとも1つのバリエーションを得ることであり、該バリエーションは、このバリエーションが支持しなければならない所要垂直力F1の1倍から4倍の間に含まれる耐荷重能力F2を有する。
【0069】
ステップ205(これは、例えば、コンピュータによって実行することができる)では、パネルテンプレートのプライの数、並びにパネルテンプレート10の各プライにおける木質ストリップの数及び分布を変化させることによって、パネルテンプレートのバリエーションが生成(又は決定)される。このバリエーションは、ステップ204に示すように、パネルテンプレートの少なくとも1つのパラメータを変えることによって実行することができる。
【0070】
バリエーション70、80及び90の例が図10A図10B及び図10Cに示される。バリエーション70,80,90の幅W10及び高さH10は、パネルテンプレート10の幅W10及び高さH10と等しい。バリエーション70は、1つのスタックを追加することによってパネルテンプレート10とは異なり、したがって、ここでは3つのスタックではなく4つのスタックを含む。このことは、より高密度のスタックが存在するが、同時により多くの木材が存在することを意味する。次に、バリエーション80は、5つのスタック、すなわち更に高密度のスタックを含む。バリエーション70及び80は両方とも、パネルに沿ってスタックの均一な分布を有する。バリエーション90は5つのスタックも含むが、ここではスタックは不均一に分布しており、第2及び第3のスタック、次いで第4及び第5のスタックは互いに近接している。そのようなバリエーションは、特に2つの近接スタックが存在するパネルの特定の領域においてパネルを強化することを可能にする。他のバリエーションも考えられ得る。例えば、壁の厚さが一定である必要がない場合、プライの数も変化し得る(プライが多いほど、より多くの荷重を支えることができる)。
【0071】
一実施形態において、バリエーション70、80、及び90は、パラメータの範囲に基づいて、デザイン20、30、40、及び50などの所定のパネルデザインのセット内で決定することができる。所定のデザインは、例えば、データベース又はカタログとしてコンピュータに利用可能にすることができる。これらのパラメータは、プライの数、並びに各プライにおける木質ストリップの数、幅及び位置とすることができる。この所定のパネルデザインのセットは、特により安価な工具を使用できるため、より費用効率の高い方法でパネルを製造することを可能にする。しかしながら、他の実施形態では、パネルの構造は、各状況に合わせて、すなわち所定のパネルデザインのセットを伴うことなく調整することができる。そのような場合、コンピュータは、自律的に及び/又はユーザ入力に従って構造を定義することができる。
【0072】
ステップ206において、バリエーション70などのバリエーションに関して、バリエーションが建築システム100内のパネル115.1の位置P115.1で支えなければならない所要垂直力F170が計算される(例えば、コンピュータによって)。
【0073】
別の実施形態において、垂直木質ストリップは、好ましくは一連のスタック(同様のスタック51、52...)へと収集され、力F1及びF2は、各スタックに関して(例えば、コンピュータによって)計算される。詳細には、各スタック51、52、53...に関して、このスタックが建築システム内のパネル内のその位置で支えなければならない局所所要垂直力F151,F152,F153...が計算される。また、それぞれのスタックごとに、このスタック51、52、53...の局所耐荷重能力F251,F252,F253...も計算される。
【0074】
バリエーション70が支えなければならない垂直力F170は、パネル115.1の真上の天井112に加えられる力のセットの分布に基づいて(例えば、コンピュータによって)決定することができる。パネル115.1、テンプレート10、及びバリエーション70、80、及び90におけるF1を計算するために、建物の要素、特にパネルの上の天井は、グリッドとして、すなわち天井に沿って分布する点のセットとしてモデル化され、そのそれぞれに垂直力が加えられる。グリッドの各点は力を受ける。値は、建物の構造環境に応じて、点ごとに異なる。
【0075】
垂直力F1は、建物内のパネルの位置に依存する。例えば、あるレベルから別のレベル、上から下へと、各壁に対する垂直力が増大する。より低いレベルはより高いレベルを建物の基礎に結合するので、また風力は高度と共に増大するので、水平荷重にも同じことが当てはまる。所与のレベル内の位置はまた、特に真上の構造の一部が存在しないか存在するため、又は局所的な特異性のために、垂直力に影響を及ぼす。
【0076】
垂直力F1は、パネルのそれぞれのバリエーションごとに、或いはパネルの各バリエーションのスタックごとに計算することができる。F1を計算するための原理は、パラメトリック設計及び有限要素解析(FEA)に基づいており、これらは当業者の共通の一般知識の一部である。
【0077】
「スタック」として集められたポストの例では、各スタックは同等の垂直ビームとしてモデル化することができ、その機械的特性はパネルの耐荷重部に依存する。各梁は、天井112に結合された一方の上端と、床111に結合された一方の下端とを含む。両端は、梁の構成要素、特にストリップ間の接続の種類及び数、木材種、ストリップの断面、並びにパネルの耐荷重断面の全体寸法によって与えられる、パネルの垂直面におけるせん断剛性にその一定の剛性が依存する機械的ばねによって回転可能にロックされる。
【0078】
計算がスタックごとの手法に基づく場合(図10におけるように)、F1の計算はスタックごとに実行することができる(F151,F152,F153...)。しかし、計算がパネルごとの手法に基づく場合、F1の計算はスタックごとに行うことができ、次いでパネル全体について全ての力F1の平均が計算される。
【0079】
ステップ207において、バリエーション70に関して、バリエーションの耐荷重能力F270も計算される。或いは、各スタックF251,F252,F253...のバリエーションの耐荷重能力を計算することができる。いずれの場合も、コンピュータは、耐荷重能力の関連する計算を実行することができる。耐荷重能力は、バリエーションの構造に依存する。耐荷重能力は、標準仕様及び/又は機械的実験に基づくことができるパネルの分析モデリングを用いて、バリエーションのパラメータの一部の関数として計算することができる。
【0080】
一例として、F1及びF2は、Eurocode EN1995-1-1、付属書C、「ビルドアップカラム」の設計規則を適用することによって計算することができる。構築されたカラムは、パネル(又はバリエーション)のスタックごとにモデル化することができる。Eurocode EN1995-1-1の内容は参照により組み込まれる。付属書Cは、この文書の6.3.2節「圧縮又は圧縮と曲げの組み合わせのいずれかを受けた柱」と組み合わせることができ、パネルの設計のための面内及び面外曲げ力の両方を更に考慮することを可能にする。特に、当業者は式6.23及び6.24を使用することができる。
式6.23において、第1のパラメータは、
である。
この第1のパラメータは、F1/F2に対応し、F1及びF2は、
である。
ここで、Aはビルドアップカラムの断面積であり、σc,0,dは垂直圧縮応力(又は表面Aに加えられる力)であり、fc,0,dは材料圧縮強度であり、kc,yは座屈荷重係数である。
【0081】
当業者は、Eurocode EN1995-1-1及び有限要素解析(FEA)に関する知識に基づいてF1及びF2を計算する方法を知っている。F1及びF2の同一又は類似の値を得るために他の方法を使用する方法も知っている。
【0082】
特に、当業者は、1つのパネルについてF1を計算する方法を知っている。各スタック上の(局所的な)垂直力F1S1、F1S2...を計算するために、当業者は、各スタックを垂直列としてモデル化する方法及び線形荷重を使用する方法を知っている。
【0083】
ステップ206及び207では、バリエーションの各スタック51、52、及び53に対して計算が行われ、したがって3つの力F1及びF2が計算される。別の実施形態では、パネルに対してグローバル計算が行われるため、1つの力F1及びF2のみが計算される。両方の場合において、関連する計算がコンピュータによって実行されてもよい。
【0084】
ステップ208では、F1及びF2に応じたパラメータF3を生成する(例えば、コンピュータによって)。このパラメータF3は、F2とF1との差とすることができるため、「耐荷重余剰」を与える。或いは、F3は、F2とF1との間の比であるF4に置き換えることができるので、「耐荷重マージン」を与える。F3及び/又はF4は、力F2が力F1の1~4倍に含まれるかどうかを決定するのに役立つことができる。F3及び/又はF4はまた、最も適切なバリエーション、すなわちより良いF3値を有するバリエーションを選択するのに役立つ。
【0085】
スタックごとに計算が行われる実施形態において、方法は、スタックごとに、スタックの局所耐荷重能力F251、F252、F253...と、スタックが支持しなければならない局所所要垂直力F151、F152、F153...との間の差D51、D52、D53...を(例えば、コンピュータによって)生成するステップを含む。差Dは、スタックの耐荷重余剰を示す。その場合、力F1の1倍から4倍の間に含まれる基準F2が満たされているか否かが決定される。そうするために、スタック51、52...の大部分に関してスタックが支持しなければならない局所所要垂直力F151、F152、F153...の1倍から4倍の間に能力F251、F252、F253...が含まれるかどうかが決定される。別の実施形態では、全てのスタックに関してスタックが支えなければならない局所所要垂直力F151,F152,F153...の1倍から4倍の間に能力F251,F252,F253...が含まれるかどうかが決定される。全ての場合において、関連する計算(複数可)及び/又は決定(複数可)は、コンピュータによって実行されてもよい。
【0086】
ステップ209では、パネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションに関して力F1の1倍から4倍の間に含まれる力F2の基準を達成するためにパネルテンプレートの別のバリエーションを実施する必要があるかどうかが決定される(例えば、コンピュータによって)。答えが「はい」である場合、例えばバリエーション80又は90を生成するために、ループ204~209が別の時点で実行される。答えがいいえである場合、ループ204~209は終了している。
【0087】
異なる実施形態では、異なる基準を適用することができる。例えば、少なくとも1つのバリエーションがこの基準を満たす場合、ステップ209の答えは「いいえ」とすることができる。しかし、図4の例のような他の例では、この基準を満たす所与の数のバリエーションが生成された場合にのみ答えは「いいえ」になる。
【0088】
ループ204~209が終了すると、ここでは所与の数の適切なバリエーションが決定されているため、ステップ210において、バリエーションのうちの1つが選択される。
【0089】
コンピュータは、どのバリエーションを選択したいかをユーザに入力させることによって選択を実行することが考えられるが、コンピュータは、これに加えて又は代えて選択を自動的に実行してもよい。
【0090】
選択は、異なる基準に基づくことができる。一実施形態では、各バリエーション(又は各バリエーションの各スタック)の耐荷重余剰を示す値が生成される。次に、最小値を有するバリエーションが選択される。
【0091】
或いは、パネルの隣接環境を考慮に入れることができる。そうするために、パネル113.1、114.1、及び115.1などのレベル110の幾つかのパネルが考慮される。これらのパネルのそれぞれに関して、パネルテンプレート、次いで本発明によるこのパネルテンプレートの少なくとも1つのバリエーションが決定される。バリエーションのセットは、パネルごとの1つのバリエーションで構成することができる。バリエーションのセットの全体的な耐荷重能力余剰を示す「非効率関数」Fを生成することができる。例えば、Fは、考慮される全てのバリエーション(又は考慮される全てのバリエーションの全てのスタック)の全ての耐荷重能力余剰を合計するが、Fは、バリエーションのセットの全体的な耐荷重能力余剰を示す限り、異なる方法で定式化することもできる。
【0092】
図11は、図9のパネルテンプレートの異なるバリエーションに関して各スタックで計算された異なる力を示す表の一例である。最初の5つのライン(「69」から「73」)は、(5つのスタックを有する)バリエーションの5つのスタック80に関する。4つの最後のライン(「74」から「77」)は、(4つのスタックを有する)バリエーション70の4つのスタックに関する。第1の列301は、積層毎の垂直力F1の値を示す。第2の列302は、各スタックの耐荷重能力F2の値を与える。3番目の列303は、F2とF1との間の差の値F3を与えるので、各スタックの「耐荷重余剰」を示す。最後に、第4の列304は、ここではF2とF1との間の比であり、各スタックの「荷重マージン」を示す関数F4の値を与える。例えば、F4の値が5である場合、これは、スタックが必要よりも5倍抵抗性であることを意味する。マージンが高いほど、設計の効率が低下し、構造がより大きくなる。
【0093】
この例では、同じバリエーションのスタックごとにF2の値が同じであるため、スタックがバリエーション70及び80に沿って均一に分布していることが分かる。F2は、パネルテンプレートのバリエーションの構造のみに依存するからである。垂直力F1は、建物内のスタックの位置を考慮すると、スタックの真上の天井によって課される重量及び荷重のために、スタックごとに異なり得る。実際、F1は、建築システム内のスタック(及びパネル)の位置を考慮に入れる。
【0094】
ここでF1及びF2がスタックごとに計算されることを考えると、スタックの大部分が1から4の間に含まれる値F4を有するかどうか、又はそれらの全てが1から4の間に含まれるF4を有するかどうかに応じて、バリエーションが適切であると見なされ得る。その場合、1と4との間にバリエーション70のスタックが含まれていないことが分かるので、パネルテンプレートの適切なバリエーションとは見なされない。しかし、バリエーション80は、1から4の間のF4を有する4つのスタックのうちの3つを有するので、パネルテンプレートの適切なバリエーションと考えることができる。パネルテンプレートの最も適切なバリエーションを得るために、他のバリエーションについても同じ計算を行うことができる。
【0095】
ステップ211において、選択されたバリエーションは、(例えば、コンピュータによって)パネル115.1に帰属される。このことは、決定されたバリエーション70からパネル115.1を製造できることを意味する。次いで、パネルは、位置P115.1で建築システム100内の現場に配置される。
【0096】
ステップ212において、建築システム100の他のパネル、又は場合によっては全ての耐荷重パネルに関して方法を実施する可能性がある。答えが「いいえ」である場合、ステップ203~211が他のパネルに対して実行される(例えば、コンピュータによって)。答えが「はい」である場合、全てのパネルが決定されており、プロセスはステップ213で終了する。
【0097】
得られた建築システム100を図12に示す。図6と比較して、木材の量は、一方では標準的な要件に関して建築システムの安全性を確保し、廃木材及び全体的なコストの増大の両方をもたらす不要な量の木材の使用を回避するために、関連する量の木材が使用されるように、各パネルに適合されている。
【0098】
言い換えれば、建築システム100の耐荷重パネルはより効率的である。同時に、それらのCLT構造のために、それらは調整された連続的且つ容易な態様で予め製造することができるという利点を依然として提示する。
【0099】
上記は、2021年に有効であったように、Eurocode 5(Eurocode EN1995-1-1)に関して提示されているが、必要な力及び積載能力の計算のために、当業者は、本開示及び保護の範囲が、規格、新しい規格、又は領土要件の発展に起因して必要とされ得るような他の規格にも適用可能であることを理解する。
【0100】
上記は、所要垂直力の1倍から4倍の間の耐荷重能力を得ることに関して提示されているが、当業者の理解の範囲内で、開示された方法を適用して、所要垂直力に関して他の関係を有する耐荷重能力を得ることができると考えられる。例えば、耐荷重能力は、所要垂直力の1倍から3倍、所要垂直力の1倍から2倍、所要垂直力の1倍から1.5倍などの間に含まれ得る。
【0101】
添付の特許請求の範囲内を含む本明細書で使用される場合、「XとYとの間」という用語は、「X以上かつY以下」として当業者によって理解される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
【国際調査報告】