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特表2024-528778少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも1つのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および車両
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  • 特表-少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも1つのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および車両 図1
  • 特表-少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも1つのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および車両 図2
  • 特表-少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも1つのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および車両 図3
  • 特表-少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも1つのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および車両 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも1つのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20240725BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240725BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240725BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240725BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240725BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/74 A
H02J9/06
H02J7/00 X
H02J7/00 P
H02J7/34 G
H02J7/34 B
G01R27/26 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574457
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 IB2022055181
(87)【国際公開番号】W WO2022254387
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021000014630
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】フレア, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ティオーネ, ロベルト
【テーマコード(参考)】
2G028
3D048
3D049
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
2G028BB06
2G028BE04
2G028CG07
2G028FK01
2G028FK02
3D048AA04
3D048BB03
3D048BB04
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048HH71
3D048HH72
3D048KK18
3D048PP03
3D048RR29
3D049AA04
3D049BB02
3D049CC07
3D049HH51
3D049HH52
3D049KK18
3D049PP02
3D049RR11
5G015FA18
5G015GB05
5G015HA12
5G015JA34
5G015JA35
5G015JA62
5G015KA12
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
電気機械式ブレーキシステム(102)の第1スーパーキャパシタ(100)の容量値を決定するための方法が記載されている。この電気機械式ブレーキシステム(102)は、第2のスーパーキャパシタ(101)をも備えている。この方法は、以下の工程a)-f)を含む。a)第2のスーパーキャパシタ(101)の端子部における第1の電圧値を測定する工程;b)第1の電圧値が所定の最小電圧値よりも大きい場合、第1のスーパーキャパシタの端子部を前記最小電圧値以上の第2の電圧値にするために、第1のスーパーキャパシタの充電または放電動作を実行する工程;c)第1のスーパーキャパシタ(100)の端子部における第1の電圧変動を決定する工程;d)第1の電圧変動レートを決定する工程;e)第1のスーパーキャパシタ(100)の端子部のうちの1つに流れる第1の電流値を測定する工程;f)測定された第1の電流値と第1の電圧変動レートとの比率により、第1のスーパーキャパシタ(100)の容量値を算出する工程。前記方法を用いた電気機械式ブレーキシステムおよび車両についても記載されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステム(102)の少なくとも第1のスーパーキャパシタ(100)の容量値を決定するための方法であって、前記電気機械式ブレーキシステム(102)は、さらに第2のスーパーキャパシタ(101)を備えており、前記第1のスーパーキャパシタ(100)は、前記電気機械式ブレーキシステム(102)に少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第1の量の電気エネルギーを蓄積するように構成されており、前記第2のスーパーキャパシタ(101)は、前記電気機械式ブレーキシステム(102)に前記少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第2の量の電気エネルギーを蓄積するように構成されており、
前記方法は、以下の工程a)-f)を含む:
a)前記第2のスーパーキャパシタ(101)の端子部における第1の電圧値を測定する工程;
b)前記第1の電圧値が所定の最小電圧値よりも大きい場合、第1の測定時間間隔の間、前記第1のスーパーキャパシタ(100)の充電または放電動作を実行する工程であって、前記充電または放電動作は、前記第1のスーパーキャパシタ(100)の前記端子部が第2の電圧値をとるように構成されている前記工程;
c)前記第1の測定時間間隔中の前記第1のスーパーキャパシタの前記端子部における第1の電圧変動を決定する工程;
d)前記工程c)において決定された前記第1のスーパーキャパシタ(100)の前記端子部における前記第1の電圧変動と、前記第1の測定時間間隔の持続時間とに基づいて、第1の電圧変動レートを決定する工程;
e)前記第1のスーパーキャパシタ(100)の前記端子部のうちの1つに流れる第1の電流値を、前記第1の測定時間間隔の第1の測定時点で測定する工程;
f)前記第1の測定時点で測定された前記第1の電流値と前記第1の電圧変動レートとの比率によって、前記第1のスーパーキャパシタ(100)の容量値を算出する工程。
【請求項2】
前記工程a)は、前記第2のスーパーキャパシタ(101)が充電動作を受けていないときに実行される請求項1に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法。
【請求項3】
前記工程d)が、前記工程c)で決定された前記第1の電圧変動と前記第1の測定時間間隔の前記持続時間との間の比率によって前記第1の電圧変動レートを決定する工程を含む請求項1または2に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法であって、当該方法は、さらに、以下の工程a’)-f’)を含む:
a’)前記第1のスーパーキャパシタ(100)の端子部における第3の電圧値を測定する工程;
b’)前記第3の電圧値が前記所定の最小電圧値よりも大きい場合、第2の測定時間間隔の間、前記第2のスーパーキャパシタ(101)の充電または放電動作を実行する工程であって、前記充電または放電動作は、前記第2のスーパーキャパシタ(101)の前記端子部が第4の電圧値をとるように構成されている前記工程;
c’)前記第2の測定時間間隔中の前記第2のスーパーキャパシタ(101)の前記端子部における第2の電圧変動を決定する工程;
d’)前記工程c)において決定された前記第2のスーパーキャパシタ(101)の前記端子部における前記第2の電圧変動と、前記第2の測定時間間隔の持続時間とに基づいて、第2の電圧変動レートを決定する工程;
e’)前記第2のスーパーキャパシタ(101)の前記端子部のうちの1つに流れる第2の電流値を、前記第2の測定時間間隔の第2の測定時点で測定する工程;
f’)前記第2の測定時点で測定された前記第2の電流値と前記第2の電圧変動レートとの比率によって、前記第2のスーパーキャパシタ(101)の容量値を算出する工程。
【請求項5】
前記工程a’)は、前記第1のスーパーキャパシタ(100)が充電動作を受けていないときに実行される請求項4に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法。
【請求項6】
前記工程d’)が、前記工程c’)で決定された前記第2の電圧変動と前記第2の測定時間間隔の前記持続時間との間の比率によって前記第2の電圧変動レートを決定する工程を含む請求項4または5に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法。
【請求項7】
前記第1の測定時間間隔と前記第2の測定時間間隔は、等しいことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法。
【請求項8】
さらに、前記第1のスーパーキャパシタ(100)の算出された容量値を第1の所定の最小容量閾値と比較する工程を含む請求項1ないし7のいずれか一項に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法であって、前記比較が前記第1のスーパーキャパシタ(100)の算出された容量値が前記第1の所定の最小容量閾値未満であることを示す場合に、前記方法はさらに以下の工程を含むことを特徴とする:
- 第1の保守要求またはアラーム信号を遠隔制御ステーションに送信する工程、および/または
- 前記車両の制御室内に配置された第1の信号手段を動作させる工程、および/または
- 第1のエラーメッセージを前記車両の制御ユニットに送信する工程、および/または
- 前記電気機械式ブレーキシステム(102)によって生成される制動力の解除を防止する工程。
【請求項10】
さらに、前記第2のスーパーキャパシタ(101)の前記算出された容量値を第2の所定の最小容量閾値と比較する工程を含む請求項4ないし9のいずれか一項に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法。
【請求項11】
前記第1の所定の最小容量閾値と前記第2の所定の最小容量閾値は、等しいことを特徴とする請求項10に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法であって、前記比較が前記第2のスーパーキャパシタ(101)の算出された容量値が前記第2の所定の最小容量閾値未満であることを示す場合に、前記方法はさらに以下の工程を含むことを特徴とする:
- 第2の保守要求またはアラーム信号を前記遠隔制御ステーションに送信する工程、および/または
- 前記車両の前記制御室内に配置された前記第1の信号手段または前記車両の前記制御室内に配置された第2の信号手段を動作させる工程、および/または
- 第2のエラーメッセージを前記車両の前記制御ユニットに送信する工程、および/または
- 前記電気機械式ブレーキシステム(102)によって生成される制動力の解除を防止する工程。
【請求項13】
少なくとも1つの車両のための電気機械式ブレーキシステム(102)であって:
-前記電気機械式ブレーキシステム(102)に少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第1の量の電気エネルギーを蓄積するように構成された第1のスーパーキャパシタ(100)と;
-前記電気機械式ブレーキシステム(102)に前記少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第2の量の電気エネルギーを蓄積するように構成された第2のスーパーキャパシタ(101)と;
- 請求項1ないし12のいずれか一項に記載の少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法を実行する制御手段(104)と、を含む前記システム。
【請求項14】
請求項13に記載の少なくとも1つの車両のための電気機械式ブレーキシステム(102)であって、前記電気機械式ブレーキシステムは、前記車両の電気エネルギー供給手段(106)から電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部を受けるようになっているものにおいて、
前記電気機械式ブレーキシステム(102)は:
電気エネルギーを受け取り、それを制動力に変換するように配置された電気機械式アクチュエータ(108)と;
前記第1のスーパーキャパシタ(100)に蓄積された前記電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部と、前記第2のスーパーキャパシタ(101)に蓄積された前記電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部と、前記電気エネルギー供給手段(106)に蓄積された前記電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部とを受け取り、前記第1のスーパーキャパシタに蓄積された前記電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部または前記第2のスーパーキャパシタに蓄積された前記電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部あるいは前記電気エネルギー供給手段(106)に蓄積された前記電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部を、前記電気機械式アクチュエータ(108)に選択的に供給するように構成された少なくとも1つの選択手段(110)と、を有することを特徴とする前記システム。
【請求項15】
前記第1のスーパーキャパシタ(100)と前記第2のスーパーキャパシタは、お互い電気的に並列に配置されている請求項13または14に記載の少なくとも1つの車両用の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車両用の電気機械式ブレーキシステムであって、前記電気機械式ブレーキシステム(102)がブレーキを実行するためのリクエストを受信したとき、前記少なくとも1つの選択手段(100)は、前記電気エネルギー供給手段(106)の端子部における電圧が前記最小電圧値よりも大きい場合、前記電気エネルギー供給手段(106)に蓄積されている前記電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部を、前記電気機械式アクチュエータ(108)に供給するように構成されている前記システム。
【請求項17】
前記選択手段(110)は、少なくとも、以下の(1)または(2)を含む、
(1)前記電気エネルギー供給手段(106)と前記電気機械式アクチュエータとの間に接続された第1のダイオード(300)と、前記第1のスーパーキャパシタ(100)と前記電気機械式アクチュエータ(108)との間に接続された第2のダイオード(302)と、前記第2のスーパーキャパシタ(101)と前記電気機械式アクチュエータとの間に接続された第3のダイオード(304)、
または
(2)前記電気エネルギー供給手段(106)と前記電気機械式アクチュエータ(108)との間に接続された第1のスイッチング手段(400)と、前記スーパーキャパシタ(100)と前記電気機械式アクチュエータ(108)との間に接続された第2のスイッチング手段(402)と、前記第2のスーパーキャパシタ(101)と前記電気機械式アクチュエータ(108)との間に接続された第3のスイッチング手段(404)、
請求項14ないし16のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車両用の電気機械式ブレーキシステム。
【請求項18】
請求項13ないし17のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車両用の電気機械式ブレーキシステムであって、前記制御手段が請求項9または12の少なくとも1つの第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法を実行するようになっており、前記ブレーキシステムは、さらに、
前記第1の保守要求または警報信号を遠隔制御ステーションに、および/または前記第2の保守要求または警報信号を遠隔制御ステーションに、および/または前記第2のエラーメッセージを前記車両の前記制御ユニットに送信するようになっている通信手段と、および/または
前記車両の制御室に設けられた少なくとも1つの第1の信号手段と、および/または
前記電気機械式ブレーキシステムによって生成された制動力の解除を防止する手段と、を有することを特徴とする。
【請求項19】
前記制御部手段(104)が請求項14ないし18のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車両用の電気機械式ブレーキシステムであって、
前記制御手段は、前記電気エネルギー供給手段の端子部における前記電圧値を示す信号を受信するようになっており、
前記電気エネルギー供給手段の前記端子部における電圧値を示す信号が、前記最小電圧値未満である前記電気エネルギー供給手段(106)の前記端子部における電圧値を示している場合、前記制御手段は、前記選択手段を介して、
-自動緊急ブレーキを適用するために、前記第1のスーパーキャパシタに蓄積されている前記電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部を前記電気機械式アクチュエータに提供し、および/または
-自動緊急ブレーキを適用するために、前記第2スーパーキャパシタに蓄積されている前記電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部を前記電気機械式アクチュエータに提供することを特徴とする前記システム。
【請求項20】
電気エネルギー供給手段(106)と、
請求項13ないし19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの車両用の電気機械式ブレーキシステム(102)と、を含む車両。
【請求項21】
前記車両が少なくとも1つの鉄道車両を含む請求項20に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、車両のための方法およびブレーキシステムの分野に属し、特に、本発明は、少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステム(electro-mechanical braking system)の少なくとも1つのスーパーキャパシタ(super capacitor)の容量値(capacitance value)を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、およびこの電気機械式ブレーキシステムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、例えば鉄道用途のための、メカトロニクス技術に基づく新しい電気機械式ブレーキシステムが開発されている。それらの設計は、例えば鉄道用途のために、特に安全関連機能に関して、一般的な電空ブレーキ(electro-pneumatic brake)によって以前に提供されたものを機能的に再現しなければならない。
【0003】
したがって、これらの新しい電気機械式ブレーキシステムでは、以下のことを確実にする必要がある:
- 少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を確実にすることができるエネルギーの量が貯蔵される;
- 車両全体の緊急ブレーキが所定の最小安全レベルに達する。
【0004】
例えば、ブレーキシステムは、通常、電空ブレーキシステムに少なくとも1つの完全な緊急ブレーキ動作を実行させるのに充分なエネルギーを貯蔵するように構成されたエネルギー貯蔵手段を備える。
【0005】
ブレーキシステムの種類に応じて、エネルギー貯蔵手段は様々な形態をとることができる。
【0006】
空気式ブレーキシステムの場合、このエネルギー貯蔵手段は、従来、例えば補助タンクであってもよい。この場合、補助タンクに圧縮空気を貯蔵することによってエネルギーを貯蔵し、補助タンクの容積を一定かつ不変量とする。必要な安全要件を満たすために、補助タンク内の内圧は、通常、(任意の冗長性要件を満たすために)1つ以上の圧力センサによって連続的に測定される。
【0007】
補助タンク内の圧力を監視することによって、緊急ブレーキを実行するために必要とされる貯蔵エネルギーの損失を即座に識別することが可能であり、また任意選択的に、安全を回復するために迅速に介入することが可能である。
【0008】
しかしながら、電気機械式ブレーキシステムでは、エネルギー貯蔵手段は、例えば機械的ポテンシャルエネルギーを貯蔵するための機械的手段であってもよい。機械的手段は例えば、螺旋ばねであってもよい。機械的ポテンシャルエネルギーを貯蔵するための機械的手段は、少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を適用するのに必要なエネルギーを貯蔵するもので、上述した補助タンクによって実行されるものと同じ機能を明らかに実行することができる。
【0009】
この場合もやはり、所要の安全要求を満たすために、好適なセンサによって、機械的ポテンシャルエネルギーを貯蔵するために機械的手段に貯蔵された機械的エネルギーを監視することができる。
【0010】
この場合も、機械的ポテンシャルエネルギーを貯蔵するために機械的手段に貯蔵されたエネルギーを監視することによって、緊急ブレーキを実行するために必要とされる貯蔵されたエネルギーの何らかの喪失を即座に識別することができ、任意選択的に、安全を回復するために迅速に介入することができる。
【0011】
力の伝達が並進ではなく回転である場合には、非排他的な例として、平らな螺旋ばねのような、他の形態の機械的エネルギー貯蔵もまた明らかに使用され得る。
【0012】
さらなる例では、貯蔵されたエネルギーは、運動エネルギーであってもよく、電気モータによって適切な回転を維持されるフライホイールに貯蔵されてもよい。この場合も、安全要求を満たすために、好適なセンサによって、貯蔵された運動エネルギーを監視することができる。運動エネルギーを貯蔵するために機械手段に貯蔵された運動エネルギーを監視することによって、緊急ブレーキを実行するために必要とされる貯蔵された運動エネルギーのいかなる喪失も即座に識別することができ、任意選択的に、安全を回復するために迅速に介入することができる。
【0013】
さらに別の実施形態では、電気機械式ブレーキシステムのエネルギー貯蔵手段が電気エネルギー蓄積装置、例えばスーパーキャパシタであってもよい。この場合、エネルギー充電器は、エネルギーを供給源からスーパーキャパシタに伝達することができる。上述したことによれば、スーパーキャパシタは補助タンクによって実行されるものと同じ機能を実行し、スーパーキャパシタは、少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を適用するために必要とされる電気エネルギーを蓄積する(蓄える)。
【0014】
スーパーキャパシタに蓄積されるエネルギーは:
エネルギー = 1/2×C×V2であり、
ここで、Cは容量であり、Vは電位である。
【0015】
したがって、ブレーキに十分なエネルギーの実際の存在を監視することができるようにするために、キャパシタ(コンデンサ)の両端の電圧およびその容量を監視することが必要である。
【0016】
しかしながら、容量に関して、スーパーキャパシタは、通常、その中に蓄積できる電気エネルギーの量を示す公称容量値(nominal capacitance value)を有する。不都合なことに、スーパーキャパシタは、摩耗を受け、その使用の過程で、その容量が徐々に減少する。この摩耗は、完全な緊急ブレーキを実行させるのに十分な量の電気エネルギーをスーパーキャパシタがもはや蓄えることができないレベルに達することさえある。
【0017】
スーパーキャパシタの容量を測定するために、従来技術は、スーパーキャパシタに蓄積されたエネルギーの利用可能性を変更することを必要とし、緊急安全ブレーキを実行する能力を一時的に損なうシステムおよび方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、緊急安全ブレーキを実行する能力を一時的に損なうことなく、少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムのスーパーキャパシタの残存容量を監視することを可能にし、電気機械式ブレーキシステムの安全レベルをさらに高める解決策を提供することである。
【0019】
上記および他の目的および利点は、本発明の一態様によれば、少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムのス少なくとも1つのーパーキャパシタの容量値を決定するための方法によって達成され、この方法は、請求項1に規定される特徴を有する。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、上記および他の目的および利点は、少なくとも1つの車両のための電気機械式ブレーキシステムによって達成され、このシステムは請求項13に規定される特徴を有する。
【0021】
上記および他の目的および利点は、本発明のさらなる態様によれば、請求項20に規定された特徴を有する車両によって達成される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項において定義され、その内容は本明細書の不可欠な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法、電気機械式ブレーキシステム、および本発明による車両のいくつかの好ましい実施形態の機能的および構造的特徴が、ここで説明される。添付の図面を参照する。
【0024】
図1図1は、本発明による少なくとも1つの鉄道車両の電気機械式ブレーキシステムの少なくとも第1の緊急用スーパーキャパシタの残存容量値を決定するための方法の実施形態を示す第1のフローチャートである。
図2図2は、第1のスーパーキャパシタと第2のスーパーキャパシタとを備える電気機械式ブレーキシステムの第1の実施形態を示す。
図3図3は、第1のスーパーキャパシタと第2のスーパーキャパシタとを備える電気機械式ブレーキシステムの第2の実施形態を示す。
図4図4は、第1のスーパーキャパシタと第2のスーパーキャパシタとを備える電気機械式ブレーキシステムの第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その出願において、以下の説明に提示されるか、または図面に示される構成要素の設計詳細および構成に限定されないことを明らかにすべきである。本発明は他の実施形態を想定することができ、異なる方法で実際に実施または構築されることができる。また、表現および用語は記述的な目的を有し、限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。「含む(include)」および「備える(comprise)」の使用およびその変形は、以下に記載される要素およびそれらの均等物、ならびに追加の要素およびそれらの均等物を包含することを意図する。
【0026】
例として、図1を参照して、以下は、少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステム102の少なくとも第1のスーパーキャパシタ100の容量値を決定するための方法の第1の実施形態を説明する。前記電気機械式ブレーキシステム102は、さらに第2のスーパーキャパシタ101を備えている。特に、前記第1のスーパーキャパシ100タは、前記電気機械式ブレーキシステム102に少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第1の量の電気エネルギーを蓄積するように構成されており、前記第2のスーパーキャパシタ101は、前記電気機械式ブレーキシステム102に前記少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第2の量の電気エネルギーを蓄積するように構成されている。
【0027】
第1実施形態においては、前記方法は、以下の工程a)-f)を含む:
a)前記第2のスーパーキャパシタ101の端子部における第1の電圧値を測定する工程;
b)前記第1の電圧値が所定の最小電圧値よりも大きい場合、第1の測定時間間隔(first measurement time period)の間、前記第1のスーパーキャパシタ100の充電または放電動作を実行する工程であって、前記充電または放電動作は、前記第1のスーパーキャパシタ100の前記端子部が第2の電圧値をとるように構成されている前記工程;
c)前記第1の測定時間間隔中の前記第1のスーパーキャパシタの前記端子部における第1の電圧変動を決定する工程;
d)前記工程c)において決定された前記第1のスーパーキャパシタ100の前記端子部における前記第1の電圧変動と、前記第1の測定時間間隔の持続時間とに基づいて、第1の電圧変動レート(first voltage variation rate)を決定する工程;
e)前記第1のスーパーキャパシタ100の前記端子部のうちの1つに流れる第1の電流値を、前記第1の測定時間間隔の第1の測定時点(at a first measurement instant)で測定する工程;
f)前記第1の測定時点で測定された前記第1の電流値と前記第1の電圧変動レートとの比率によって、前記第1のスーパーキャパシタ100の容量値を算出する工程。
【0028】
言い換えれば、電圧が所定の最小電圧値よりも大きいことを検証するために、第2のスーパーキャパシタ101の両端の電圧を監視することが可能である。この最小電圧値は、第2のスーパーキャパシタ101に蓄積されたエネルギーが必要に応じて緊急ブレーキを実行するのに十分であるという事実を示す値として決定されてもよい。第2のスーパーキャパシタ101が、緊急ブレーキ動作を実行することができるように十分に充電されていることが検証されると、測定時間間隔の間、第1のスーパーキャパシタ100を充電または放電することが可能である。この充電または放電動作は、前記スーパーキャパシタの端子部が第2の電圧値をとることができるように構成される。必要であれば、緊急ブレーキを実行するためのバックアップとして十分に充電された第2のスパーキャパシタを備えれば、この第2の電圧値は、第2のスパーキャパシタ101の端子部における最小電圧値以上かあるいは未満のいずれかであってもよい。充電または放電動作が行われる前記測定時間間隔中に、例えば、測定によって、第1のスーパーキャパシタ100の端子部における電圧変動を決定することができる。例えば、最初に、第1のスーパーキャパシタの両端の電圧が50Vであり、放電動作の終わりに、スーパーキャパシタの両端の電圧が40Vである場合、第1のスーパーキャパシタの端子部における電圧変動は10Vである。しかしながら、例えば最初に、第1のスーパーキャパシタの両端の電圧が50Vであり、充電動作の終わりに、第1のスーパーキャパシタの両端の電圧が55Vである場合、スーパーキャパシタの端子部における電圧変動は5Vである。
【0029】
第1のスーパーキャパシタ100の端子部における電圧変動が決定されると、第1のスーパーキャパシタの端子部における電圧変動および測定時間間隔の持続時間に基づいて、電圧変動速度としても知られる電圧変動レートを決定することができる。また、測定時間間隔の測定時点において(at a measurement instant)、第1のスーパーキャパシタの1つの端子部に流れる電流値を測定することもできる。第1のスーパーキャパシタの端子の1つに流れる測定された電流値は、スーパーキャパシタによって経験される充電動作中に、スーパーキャパシタの端子に入る吸収電流(absorption current)であってもよく、またはスーパーキャパシタによって経験される放電動作中に、スーパーキャパシタの端子から出る電流であってもよい。
【0030】
例えば、測定時点は、測定時間間隔の開始時点の直後の瞬間であってもよく、または測定時間間隔の終了時点の直前の瞬間であってもよく、あるいは測定時間間隔の開始時点の直後の瞬間と測定時間間隔の終了時点の直前の瞬間との間におけるある瞬間であってもよい。スーパーキャパシタの端子のうちの1つに流れる電流値は、測定時間間隔の複数の測定時点で測定されてもよい。
【0031】
最後に、前記測定時点で測定された前記第1の電流値と前記第1の電圧変動レートとの比率によって、第1のスーパーキャパシタの容量値を算出することができる。例えば、以下の式を適用することが可能である:
i = c*dv/dt
-> c = i/(dv/dt)
式中、iは測定時間間隔の測定時点おいて第1のスーパーキャパシタの端子のうちの1つに流れる第1の電流値であり、cは第1のスーパーキャパシタの容量であり、dv/dtは電圧変動レート(すなわち、第1のスーパーキャパシタの両端間の電圧の経時的な導関数(derivative over time of the voltage))である。これは、同様に、第2のスーパーキャパシタに適用できる。
【0032】
例えば、鉄道車両の分野に関して、緊急ブレーキは、少なくとも1つの鉄道車両が停止するか歩行ペースに減速するブレーキ動作である。緊急ブレーキは、例えば、潜在的な危険の状況が鉄道車両の少なくとも1つのシステムによって検出された場合、自動的に作動されてもよい。従来技術は、鉄道車両の分野を特に参照して分析される。
【0033】
鉄道セクター内では、以下の欧州規格を参照することができる:
-EN50126 [鉄道用途。信頼性、可用性、保守性、安全性(RAMS)の明細書(specification)と実証(demonstration)]
-EN50128[「鉄道用途。通信、信号および処理システム。鉄道制御および保護システム用ソフトウェア」]
-EN50129[「鉄道用途。通信、信号および処理システム。信号用安全関連電子システム」]。
-EN50159[「鉄道用途。通信、信号および処理システム。伝送システムにおける安全関連通信」]。
【0034】
特に、規格EN50126は安全解析の結果に基づいて、システムを構成するサブシステムに安全レベルSIL0/1/2/3/4(安全レベルSIL4が最大安全レベルを示す)を割り当てるための方法論を定義し、規格EN50128およびEN50129は、前記安全解析結果に基づいて割り当てられたSILレベルに基づいて、それぞれソフトウェアおよびハードウェアコンポーネントに適用される設計基準を定義する。ブレーキに関与するシステムは、通常、安全レベルSIL=4を有することが要求される。
【0035】
道路車両(road vehicle)の分野を代わりに参照すると、緊急ブレーキは緊急ブレーキに関連する必要なNCAPsに従ってブレーキをかけることができ、これは、歩行者を保護するため、または車両による差し迫った事故を防止するために、道路車両を停止または減速させることを可能にする。
【0036】
工程a)、すなわち、第2のスーパーキャパシタ101の端子部における第1の電圧値を測定することは、第2のスーパーキャパシタ101が充電作用を受けていないときに実行されることが好ましい。そうすることで、測定は、充電するために第2のスーパーキャパシタの端子部に印加される充電電圧によって影響されずに行える。
【0037】
工程d)、すなわち、工程c)で決定された前記第1のスーパーキャパシタの端子部における第1の電圧変動と、前記第1の測定時間間隔の持続時間とに基づいて第1の電圧変動レートを決定することは、好ましくは:
- 工程c)において決定された第1の電圧変動と前記第1の測定時間間隔の前記持続時間との間の比率によって第1の電圧変動レートを決定する工程を含む。
【0038】
例えば、第1のスーパーキャパシタの端子部における電圧変動が10Vであり、測定時間間隔が2s続く場合、第1の電圧変動レートは5V/sである。
【0039】
少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法は、好ましくは以下の工程a’)-f’)を含む:
a’)前記第1のスーパーキャパシタ100の端子部における第3の電圧値を測定する工程;
b’)前記第3の電圧値が前記所定の最小電圧値よりも大きい場合、第2の測定時間間隔の間、前記第2のスーパーキャパシタ101の充電または放電動作を実行する工程であって、前記充電または放電動作は、前記第2のスーパーキャパシタ101の前記端子部が第4の電圧値をとるように構成されている前記工程;
c’)前記第2の測定時間間隔中の前記第2のスーパーキャパシタ101の前記端子部における第2の電圧変動を決定する工程;
d’)前記工程c)において決定された前記第2のスーパーキャパシタ101の前記端子部における前記第2の電圧変動と、前記第2の測定時間間隔の持続時間とに基づいて、第2の電圧変動レートを決定する工程;
e’)前記第2のスーパーキャパシタ101の前記端子部のうちの1つに流れる第2の電流値を、前記第2の測定時間間隔の第2の測定時点で測定する工程;
f’)前記第2の測定時点で測定された前記第2の電流値と前記第2の電圧変動レートとの比率によって、前記第2のスーパーキャパシタ101の容量値を算出する工程。
【0040】
換言すれば、第1のスパーキャパシタの容量値を測定することができるだけでなく、第2のスーパーキャパシタの容量値を測定することもできる。
【0041】
前記工程a‘)は、第1のスパーキャパシタが充電作用を受けていないときに実行されることが好ましい。そうすることで、測定は、第1のスーパーキャパシタを充電するためにその端子部に印加される充電電圧によって影響されずに行える。
【0042】
前記工程d‘)は、好ましくは:
- 工程c)において決定された第2の電圧変動と前記第2の測定時間間隔の前記持続時間との間の比率によって第2の電圧変動レートを決定する工程を含む。
例えば、第2のスーパーキャパシタの端子部における電圧変動が10Vであり、測定時間間隔が2s続く場合、第2の電圧変動レートは5V/sである。
【0043】
第1の測定時間間隔と第2の測定時間間隔は、好ましくは等しい。換言すれば、第1のスーパーキャパシタの容量値を測定するために適用される測定時間と第2のスーパーキャパシタの容量値を測定するために適用される測定時間は同じであってもよい。
【0044】
少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法は、好ましくは
- 前記第1のスーパーキャパシタ100の算出された容量値を第1の所定の最小容量閾値と比較する工程を含む。
【0045】
例えば、最小容量閾値は、最大許容摩耗値(maximum allowed wear value)に基づいて決定されてもよく、それを超えると、第1のスーパーキャパシタは緊急ブレーキを実行するのに十分なエネルギーをもはや蓄積することができない。
【0046】
前記比較が前記第1のスーパーキャパシタ100の算出された容量値が前記所定の最小容量閾値未満であることを示すとき、本方法は、好ましくは:
- 第1の保守要求またはアラーム信号を遠隔制御ステーションに送信する工程、および/または
- 車両の制御室内に配置された第1の信号手段を動作させる工程、および/または
- 第1のエラーメッセージを車両の制御ユニットに送信する工程、および/または
- 電気機械式ブレーキシステムによって発生する制動力の解除を防止する工程、を含む。
【0047】
鉄道セクタにおいて、例えば、制御手段、すなわち列車制御ユニット(BCU)は、車両の制御部、中央列車制御ユニット(TCMS)と通信することができる。通信は様々な手段の通信、例えば、ハードウェアネットワークまたはバスネットワーク(イーサネット(登録商標)、CAN、MVBなど)を介して行うことができる。
【0048】
換言すれば、第1のスーパーキャパシタの過剰な消費が検出された場合、例えば、第1の保守要求または警報信号を遠隔制御ステーションに送信することによって、および/または車両の制御室に配置された第1の信号手段を操作することによって、および/またはエラーメッセージを車両の制御ユニットに送信することによって、および/または電気機械式ブレーキシステムによって生成される制動力の解除を防止することによって、介入することができる。
【0049】
例えば、第1の信号手段は視覚的または聴覚的であってもよく、例えば、表示灯、LED、ディスプレイ、スピーカなどであってもよい。
【0050】
少なくとも第1のスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法は、好ましくは
- 前記第2のスーパーキャパシタ101の算出された容量値を第2の所定の最小容量閾値と比較する工程を含む。
【0051】
第1の所定の最小容量閾値と第2の所定の最小容量閾値は、好ましくは、等しくてもよい。
【0052】
前記比較が前記第2のスーパーキャパシタ101の算出された容量値が前記第2の所定の最小容量閾値未満であることを示すとき、本方法は、好ましくは:
- 第2の保守要求またはアラーム信号を遠隔制御ステーションに送信する工程、および/または
- 車両の制御室内に配置された前記第1の信号手段を動作させる工程、または車両の制御室内に配置された第2の信号手段を動作させる工程、および/または
- 第2のエラーメッセージを車両の制御ユニットに送信する工程、および/または
- 電気機械式ブレーキシステムによって発生する制動力の解除を防止する工程、を含む。
【0053】
例えば、第2の信号手段は視覚的または聴覚的であってもよく、例えば、表示灯、LED、ディスプレイ、スピーカなどであってもよい。
【0054】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの車両のための電気機械式ブレーキシステムに関する。
【0055】
例として、図2を参照して、以下において電気機械式ブレーキシステムの第1の実施形態を説明する。
【0056】
この第1の実施形態では、電気機械式ブレーキシステムは:
- ブレーキシステム102に少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第1の量の電気エネルギーを蓄積するように構成された第1のスーパーキャパシタと;
- ブレーキシステム102に少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに十分な第2の量の電気エネルギーを蓄積するように構成された第2のスーパーキャパシタと;
- 上述したいずれかの実施形態に係る第1のスーパーキャパシタの容量値を決定する方法を実行するように構成された制御手段 104と、を備える。
【0057】
例えば、制御手段 104は、コントローラー、マイクロコントローラー、電子制御ユニット、制御ユニット、制御モジュール、PLCなどであってもよい。
【0058】
例えば、制御手段は、直接的に、タイミング手段(例えば、タイマ)および/または電流を測定するための手段(例えば、電流センサ)および/または電圧を測定するための手段(例えば、電圧センサ)を含むことができる。また、制御手段は、少なくとも、第2のスーパーキャパシタの端子における第1の電圧値、第1のスーパーキャパシタの端子における第2の電圧値、第1の電圧変動、第1の測定時間間隔の持続時間、第1のスーパーキャパシタの前記端子のうちの1つに流れる第1の電流値などのスーパーキャパシタの容量値を決定するための方法を実行するための様々な電圧、電流および時間データを利用可能にするために、当該制御手段の外部にあり、電気機械式ブレーキシステムのそれぞれの要素に結合されたタイミング手段および/または電流を測定するための手段および/または電圧を測定するための手段からデータを受信することができる。
【0059】
また、電気機械式ブレーキシステムは、好ましくは、前記車両の電気エネルギー供給手段106から第3のエネルギー量の少なくとも一部を受け取るように構成されてもよい。例えば、電気エネルギー供給手段 106は、車両のバッテリであってもよい。
【0060】
電気機械式ブレーキシステムは、好ましくは:
- 電気エネルギーを受け取り、それを制動力に変換するように配置された電気機械式アクチュエータ108と;
- 前記第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部と、前記第2のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部と、前記供給手段に蓄積された電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部とを受け取り、前記第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部または前記第2のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部あるいは前記電気エネルギー供給手段106に蓄積された電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部を前記電気機械式アクチュエータ108に選択的に供給するように構成された少なくとも1つの選択手段110と、を備える。
【0061】
言い換えれば、例えば、選択手段110は、電気機械式アクチュエータにエネルギーを選択的に送るために、前記第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部と、前記第2のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部と、車両のバッテリに蓄積された電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部とを受けとることができる。
【0062】
第1のスーパーキャパシタ100と第2のスーパーキャパシタ101は、好ましくは、電気的に並列に配置されてもよい。
【0063】
ブレーキシステムがブレーキ動作を実行するリクエストを受信すると、少なくとも1つの選択手段は、好ましくは、以下の作業を選択可能になっている:
- 前記供給手段の端子における電圧が前記最小電圧値よりも高い場合、前記電気エネルギー供給手段106に蓄積された電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部を前記電気機械式アクチュエータに供給する。
【0064】
言い換えれば、ブレーキシステムがブレーキ動作を実行するためのリクエストを受信すると、少なくとも1つの選択手段は、好ましくは、以下の条件を満たす場合、第1のスパーキャパシタに蓄積されている電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部を電気機械式アクチュエータに提供するようにしてもよい。すなわち、前記電源手段(例えば、車両のバッテリ)の端子における電圧(バッテリに蓄積されたエネルギーを示す)が前記最小電圧値未満の場合、すなわち緊急ブレーキを実行できない場合ではあるが、第1のスーパーキャパシタの端子における電圧(第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーを示す)が前記最小電圧値より大きい場合。
【0065】
代替的に、ブレーキシステムがブレーキ動作を実行するためのリクエストを受信すると、少なくとも1つの選択手段は、好ましくは、以下の条件を満たす場合、第2のスパーキャパシタに蓄積されている電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部を電気機械式アクチュエータに提供するようにしてもよい。すなわち、前記電源手段(例えば、車両のバッテリ)の端子における電圧(バッテリに蓄積されたエネルギーを示す)が前記最小電圧値未満の場合、すなわち緊急ブレーキを実行できない場合であって、かつ第1のスーパーキャパシタの端子における電圧(第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーを示す)が前記最小電圧値より小さい場合、すなわち緊急ブレーキを実行できない場合。
【0066】
さらに、代替的に、ブレーキシステムがブレーキ動作を実行するためのリクエストを受信すると、少なくとも1つの選択手段は、好ましくは、以下の条件を満たす場合、電気エネルギー供給手段106(例えば、車両のバッテリ)に蓄積された電気エネルギーの第3の量の少なくとも一部を電気機械式アクチュエータに提供するようにしてもよい。すなわち、前記供給手段106の端子における電圧が前記最小電圧値より大きい場合、すなわち緊急ブレーキを実行できる場合。
【0067】
制御手段は、好ましくは、前記電気エネルギー供給手段106(例えば、車両のバッテリ)の端子部における電圧値を示す信号を受信するように構成されてもよい。前記電気エネルギー供給手段106の端子部における電圧値を示す信号が、前記最小電圧値未満である場合、前記制御部手段は、選択手段を介して:
- 前記電気機械式アクチュエータに、前記第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部を提供する、および/または
- 前記電気機械式アクチュエータに、前記第2のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部を提供する。
【0068】
換言すれば、制御手段が車両のバッテリが故障したことを検出したとき、または車両のバッテリが過度に使用されたかあるいは損傷したとき、前記制御手段は、選択手段を作動させ、第1のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第1の量の少なくとも一部を、および/または第2のスーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーの第2の量の少なくとも一部を、電気機械式アクチュエータに提供することができる。
【0069】
図3に関して、選択手段は、好ましくは、少なくとも:
- 前記電気エネルギー供給手段106と前記電気機械式アクチュエータとの間に接続された第1のダイオード300と、前記第1のスーパーキャパシタ100と前記電気機械式アクチュエータ108との間に接続された第2のダイオード302と、前記第2のスーパーキャパシタ101と前記電気機械式アクチュエータ108との間に接続された第3のダイオード304と、を備えていてもよい。
【0070】
代替的に、図4に関して、選択手段は、少なくとも:
- 前記電気エネルギー供給手段106と前記電気機械式アクチュエータとの間に接続された第1のスイッチング手段400と、前記第1のスーパーキャパシタ100と前記電気機械式アクチュエータ108との間に接続された第2のスイッチング手段402と、前記第2のスーパーキャパシタ101と前記電気機械式アクチュエータ108との間に接続された第3のスイッチング手段404と、を備えていてもよい。
【0071】
例えば、それぞれのスイッチング手段は、前記制御手段によって切り替え可能に配置されたスイッチであってもよい。
【0072】
電気機械式ブレーキシステムは、好ましくは:
- 第1の保守要求またはアラーム信号を遠隔制御ステーションに、および/または第2の保守要求またはアラーム信号を遠隔制御ステーションに、および/または第1のエラーメッセージを車両の制御ユニットに、および/または第2のエラーメッセージを車両の制御ユニットに送るように構成された通信手段と、
- 車両の制御室に配置された少なくとも1つの第1の信号手段と、
- 電気機械式ブレーキシステムによって発生する制動力の解除を防止するための手段、とを備えていてもよい。
【0073】
以下は、電気機械式ブレーキシステムのいくつかの実施形態である。
【0074】
以下において、第1のスーパーキャパシタおよび第2のスーパーキャパシタを備える電気機械式ブレーキシステムの可能な実施形態を説明する。例えば、電気機械式ブレーキシステムは、少なくとも1つの鉄道車両に設置されるように構成される。この電気機械式ブレーキシステムは、少なくとも、第1の電気エネルギーを蓄積するように構成された第1の緊急用スーパーキャパシタと、第2の電気エネルギーを蓄積するように構成された第2の緊急用スーパーキャパシタとを備える。この場合、第1のスーパーキャパシタに蓄積された第1の電気エネルギーと第2のスーパーキャパシタに蓄積された第2の電気エネルギーは、ブレーキシステムの電気機械式アセンブリに提供されるとき、電気機械式アセンブリを作動させて、ブレーキシステムに少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに適した制動力を生成するのに十分なものである。
【0075】
例えば、電気機械式アセンブリは、電気モータを含む。この電気モータを作動させることにより、電気機械式アセンブリによって生成される制動力を調整することができる。また、ブレーキシステムは、制御手段と、第1の接続手段と、第2の接続手段と、を含むことができる。
【0076】
制御手段は、第1の緊急用スーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーを電気モータに選択的に供給するように、第1の緊急用スーパーキャパシタを前記第1の接続手段を介して選択的に電気モータに接続するかまたは電気モータから切り離すように構成されてもよい。
【0077】
また、制御手段は、第2の緊急用スーパーキャパシタに蓄積された電気エネルギーを電気モータに選択的に供給するように、第2の緊急用スーパーキャパシタを前記第2の接続手段を介して選択的に電気モータに接続するかまたは電気モータから切り離すように構成されてもよい。
【0078】
電気モータは、第1のスーパーキャパシタからまたは第2のスーパーキャパシタから前記電気エネルギーを受け取ったときに作動し、電気機械式アセンブリが、ブレーキシステムに少なくとも1つの緊急ブレーキ動作を実行させるのに適した制動力を発生させるように構成することができる。
【0079】
例えば、第1の緊急用スーパーキャパシタが電気エネルギーを蓄積しなければならないとき、制御手段は、第1のスーパーキャパシタを少なくとも1つの鉄道車両のバッテリに接続するように構成されてもよい。代替として、または加えて、制御手段は、第1の緊急用スーパーキャパシタを、ブレーキシステム内に含まれるか、またはブレーキシステムに関連する電気エネルギー回収システムに接続するように構成されてもよい。電気エネルギー回収システムは、電気機械式アセンブリが制動力を加えている間に電気エネルギーを回収するように構成されてもよい。
【0080】
例えば、代わりに、第2の緊急用スーパーキャパシタが電気エネルギーを蓄積しなければならないとき、制御手段は、第2のスーパーキャパシタを少なくとも1つの鉄道車両のバッテリに接続するように構成されてもよい。代替として、または加えて、制御手段は、第2の緊急用スーパーキャパシタを、ブレーキシステム内に含まれるか、またはブレーキシステムに関連する電気エネルギー回収システムに接続するように構成されてもよい。
【0081】
例えば、電気機械式アセンブリは:
- 電気モータに回転可能に連結されたトランスミッションシャフトと;
- リニアアクチュエータの2つの端部が第1の距離dis1にある後退位置から、リニアアクチュエータの前記端部が第1の距離dis1よりも大きい第2の距離dis2にある延伸位置まで延びることができるリニアアクチュエータと;
- トランスミッションシャフトとリニアアクチュエータとの間に配置されたトランスミッション機構であって、トランスミッションシャフトの回転運動をリニアアクチュエータの直線運動に変換するように配置されるトランスミッション機構と、を備えてもよい。
【0082】
例えば、電気モータは:
- トランスミッションシャフトを第1の方向d1に回転させ、トランスミッションシャフトを第1の方向d1に回転させることにより、リニアアクチュエータの2つの端部間の距離を増加させる;
- トランスミッションシャフトを前記第1の方向d1とは反対の第2の方向d2に回転させ、トランスミッションシャフトを第2の方向d2に回転させることにより、リニアアクチュエータの2つの端部間の距離を減少させるようにしてもよい。
【0083】
一例では、ブレーキシステムによって生成される制動力はリニアアクチュエータが第1の後退位置から延伸位置に向かって移動するときに増加し、またはブレーキシステムによって生成される制動力はリニアアクチュエータが第1の後退位置から延伸位置に向かって移動するときに減少するようにしてもよい。
【0084】
さらなる態様において、本発明は車両に関する。この車両は、以下の要素を備える:
- 電気エネルギー供給手段106;
- 上述の実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの車両のための電気機械式ブレーキシステム102。
【0085】
車両は、好ましくは少なくとも1つの鉄道車両である。
【0086】
車両は、好ましくは鉄道列車である。
【0087】
したがって、結果として得られる利点は、緊急安全ブレーキを実行する能力を一時的に損なうことなく、少なくとも一つの車両の電気機械式ブレーキシステムの第1のスーパーキャパシタの残存容量を監視することを可能にする解決策を提供することである。
【0088】
本発明は、任意のタイプの車両に適用可能であることが好ましい。これは例えば、鉄道車両/列車、自動車、トラック(例えば、高速道路セミトレーラトラック、鉱山トラック、木材を輸送するためのトラックなど)などを含むことができ、ルートは軌道、道路、または軌道であることができる。
【0089】
少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムのスーパーキャパシタ、電気機械式ブレーキシステム、および本発明によるこの電気機械式ブレーキシステムを備える車両の様々な態様および実施形態について説明した。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。さらに、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】