(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】埋め込み型電極リード用の編組支持螺旋状リード
(51)【国際特許分類】
A61N 1/05 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575361
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022072204
(87)【国際公開番号】W WO2023016973
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202021104261.3
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランプ、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】リヒター、ヤン ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】シュテークリヒ、カルステン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの電極極2と、少なくとも1つの電極極2に導電的に接続される少なくとも1つの導電体3、30と、少なくとも1つの長手方向に延在した電気絶縁体4、40と、を備える埋め込み型電極リード1に関する。本発明によれば、少なくとも1つの導電体3、30は、電極リード1の長手方向軸xを中心とした第1の回転方向に螺旋状に巻かれており、少なくとも1つの電気絶縁体4、40は、長手方向軸xを中心とした、第1の回転方向とは反対の、第2の回転方向に螺旋状に巻かれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極極(2)と、
前記少なくとも1つの電極極(2)に導電的に接続されている少なくとも1つの導電体(3、30)と、
少なくとも1つの長手方向に延在した電気絶縁体(4、40)と、を備える、埋め込み型電極リード(1)であって、
前記少なくとも1つの導電体(3、30)が、前記電極リード(1)の長手方向軸(x)を中心とした第1の回転方向に螺旋状に巻かれていること、及び前記少なくとも1つの電気絶縁体(4、40)が、前記長手方向軸(x)を中心とした、前記第1の回転方向とは反対の、第2の回転方向に螺旋状に巻かれている、埋め込み型電極リード(1)。
【請求項2】
前記埋め込み型電極リードが、前記長手方向軸(x)を中心とした前記第1の回転方向に螺旋状に巻かれた更なる導電体(30)を備える、請求項1に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項3】
前記更なる導電体(30)が、前記埋め込み型電極リード(1)の更なる電極極(2)に導電的に接続されている、請求項2に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項4】
前記埋め込み型電極リードが、前記長手方向軸を中心とした前記第2の回転方向に螺旋状に巻かれた更なる電気絶縁体(40)を備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項5】
それぞれの前記電極極(2)が、リング電極である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項6】
それぞれの導電体(3、3’、30)が、複数のストランド(10)を備えるロープである、埋め込み型電極リード。
【請求項7】
それぞれの前記ストランド(10)が、少なくとも1つのワイヤ(11)を備える、請求項6に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項8】
それぞれの前記ロープが、7個のストランド(10)を備え、それぞれの前記ストランド(10)が、7個の撚り合わせたワイヤ(11)を備える、請求項6又は7に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項9】
それぞれの前記ロープが、19個のストランド(10)を備え、それぞれの前記ストランド(10)が、1つのワイヤ(11)を備える、請求項6又は7に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項10】
それぞれの前記ロープが、7個のストランド(10)を備え、それぞれの前記ストランド(10)が、1つのワイヤ(11)を備える、請求項6又は7に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項11】
それぞれの前記ワイヤが、銀、ニッケル及びコバルトを含む合金、MP35Nからなるリストから選択される材料を含むか、又はそれらから形成されている、請求項7から10までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項12】
それぞれの前記ワイヤが、第1の金属を備えるコアと、前記コアを囲むシースと、を備え、前記シースが、異なる第2の金属から形成されている、請求項7から11までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項13】
それぞれの前記ロープが、電気絶縁外装材(7)で覆われている、請求項6から12までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項14】
前記埋め込み型電極リードが、前記少なくとも1つの導電体(3、3’、30)及び前記少なくとも1つの電気絶縁体(4、40)を覆う電気絶縁層(6)を備える、請求項1から13までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【請求項15】
前記埋め込み型電極リード(1)が、ヒト又は動物の組織内にねじ込まれるように構成されており、前記螺旋状に巻かれた少なくとも1つの導電体(3、30)及び前記螺旋状に巻かれた少なくとも1つの電気絶縁体(4、40)を備える編組(9)が、前記埋め込み型電極リード(1)を前記組織内にねじ込む際に、トルクを伝達するように構成されている、請求項1から14までのいずれか一項に記載の埋め込み型電極リード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み型電極リードに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、埋め込み型電極には、電極への2つの異なるタイプのリード、すなわち、ワイヤ状導電体に基づく螺旋状リード、及びロープ状導電体に基づく相対的に直線状のリードが主に使用されている。
【0003】
ワイヤは、その塑性変形能により、相対的に簡単に螺旋状リードに巻き付けることができる。ただし、まさにワイヤの塑性変形能により、そのピッチは可能な限り最小に制限され、そうしないと疲労強度が低下する。一方、ロープ状リードは塑性変形能がわずかであるため疲労強度は高くなるが、コイル状に巻き付けることはできない。しかしながら、ロープ状リードの回転方向とは反対の回転方向に案内される付加的な電気リードを用いて、寸法的に安定した方式でロープ状リードを支持することによって、それらをコイルに形成することも可能である。
【0004】
特に、ショック療法のために高電圧パルスの送達が必要な頻脈の治療に使用される電極リードの場合、リード間のフラッシュオーバー電圧を避けるために、最小のリード間隔が重要であり、損なわれてはならない。しかし、リード・ワイヤを交差パターンに配置してこの最小間隔を確保することは、非常に困難であることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に基づくと、本発明によって解決されるべき問題は、螺旋状リードを備えた改良された埋め込み型電極リードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、請求項1に記載の特徴を有する埋め込み型電極リードによって解決される。本発明の有利な実施例は、対応する従属請求項に記載されており、以下に説明される。
【0007】
請求項1によれば、埋め込み型電極リードが開示されており、埋め込み型電極リードは、
- 少なくとも1つの電極極と、
- 少なくとも1つの電極極に導電様式で接続された少なくとも1つの導電体と、
- 少なくとも1つの長手方向に延在した電気絶縁体と、を備え、
ここで、本発明によれば、
少なくとも1つの導電体は、電極リードの長手方向軸を中心とした第1の回転方向に螺旋状に巻かれており、少なくとも1つの電気絶縁体は、第1の回転方向とは反対の長手方向軸を中心とした第2の回転方向に螺旋状に巻かれている。
【0008】
具体的には、前記回転方向は、導電体及び電気絶縁体の螺旋の種類(左巻き又は右巻き)にそれぞれ対応する。具体的には、第1の回転方向は、少なくとも1つの導電体が左巻き螺旋を形成することを意味し得る。少なくとも1つの電気絶縁体は、反対の回転方向を含むため、右巻き螺旋を形成する。同様に、今度は少なくとも1つの導電体が右巻き螺旋を形成する場合、少なくとも1つの電気絶縁体は、左巻き螺旋を形成する。したがって、反対の回転方向は、反対の対掌性を意味する(左巻き螺旋と右巻き螺旋)。これにより、近位端から遠位端まで、埋め込み型電極の長手方向軸に対して反対の回転方向が理解される。
【0009】
前記導電体と絶縁体とによって形成される構造、特に編組は、トルクを伝達できると同時に、堅牢で柔軟な電極リードを有するという特別な利点を有する。
【0010】
言い換えれば、本発明は、導電性リードが一方向にのみ螺旋状に各々形成され、その反対方向に巻かれた絶縁体によって専ら螺旋状形態に支持されるように、編組状構造を設計することによって、冒頭で述べた問題を免れる。
【0011】
したがって、導電体間の最小距離は、導電体間に交差ポイントを設けることなく、導電体間に絶縁体を平行に走行させることによって、簡素化された方式で達成することができる。言い換えれば、導電体は平行に走行し、互いに交差しない。導電体は絶縁体によってのみ交差させられる。これにより、導電体の交差が回避されると同時に、編組が確立される。
【0012】
原理的には、この概念は、頻脈治療用の電極リードに限定されるものではなく、他の電極リード又はカテーテル、具体的には、例えば、鎖骨下挫滅症候群を避けるために、交差配置された導体が望ましくなく、トルクを伝達できる構造が望ましい場合にも、適用可能である。
【0013】
特に、説明した方法はリードの数を変えることができ、非常に小さいスペースに多数の電極リードが必要とされる電気生理学におけるカテーテルに使用することができる。ここでは、単一のワイヤを用いた従来のリードの概念は、例えば、単発手順で線状病変を認識するために、高解像度のマッピング及び異なる温度モニタリングが多くの位置でアブレーション中に同時に行われることになる場合、すぐに限界に達する。
【0014】
本発明の好ましい実施例によれば、埋め込み型電極は、前記長手方向軸に沿って延在する電気絶縁管を備える。少なくとも1つの導電体及び少なくとも1つの電気絶縁体は、管上に配置される(すなわち、管上で前記反対の回転方向に螺旋状に巻かれる)。埋め込み型電極リードが複数の導電体及び複数の電気絶縁体を備える場合、これらの導体及び絶縁体も管上に配置される(すなわち、管上でそれぞれの回転方向に螺旋状に巻かれる)。
【0015】
本発明の一実施例によれば、電気絶縁体は、半径方向に弾性であるように構成されている。この実施例は、埋め込み型リードのより小さい全体直径を提供する。絶縁体は、導体との交差ポイントで半径方向に圧縮される可能性がある。
【0016】
本発明の好ましい実施例によれば、埋め込み型電極リードは、長手方向軸を中心とした第1の回転方向に螺旋状に巻かれた更なる導電体を備える。
【0017】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、更なる導電体は、埋め込み型電極リードの更なる電極極に導電的に接続されている。
【0018】
更に、本発明の好ましい実施例では、埋め込み型電極リードは、長手方向軸を中心とした第2の回転方向に螺旋状に巻かれた更なる電気絶縁体を備える。
【0019】
更に、好ましい実施例によれば、導電体は、第1の回転方向に螺旋状に巻かれるが、交差する電気絶縁体(例えば、フィラメント)は、反対の第2の回転方向に螺旋状に巻かれる。このようにして、好ましくは、導体は所定の位置に固定されるが、編組内で重なり合うことなく完全に平行に走行することができる。更なる実施例では、平行に走行する導電体は、更に絶縁体と交互になっていてもよい。しかし、本発明の好ましい実施例によれば、導電体と電気絶縁体によって形成される編組では、導電体は互いに交差しない。
【0020】
本発明の好ましい実施例によれば、それぞれの電極極は、リング電極である。
【0021】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、それぞれの導電体は、複数のストランド、好ましくは、複数の撚り合わせた又は編組されたストランドを備えるロープである。好ましくは、一実施例によれば、それぞれのストランドは、少なくとも1つのワイヤを備える(また、単一のワイヤのみを備えてもよい)。更に、好ましい実施例によれば、それぞれのストランドは、複数のワイヤ、特に撚り合わせたワイヤを備える。
【0022】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、それぞれのロープは、7個のストランド、好ましくは、少なくとも7個のストランド、より好ましくは、正確に7個のストランドを備え、それぞれのストランドは、7個の撚り合わせたワイヤ、具体的には、正確に7個の撚り合わせたワイヤを備える。
【0023】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、それぞれのロープは、19個のストランド、好ましくは、少なくとも19個のストランド、より好ましくは、正確に19個のストランドを備え、それぞれのストランドは、1つのワイヤ、具体的には、正確に1つのワイヤ(すなわち、単一のワイヤ)を備える。
【0024】
本発明の更に別の好ましい実施例によれば、それぞれのロープは、7個のストランド、好ましくは、少なくとも7個のストランド、より好ましくは、正確に7個のストランドを備え、それぞれのストランドは、1つのワイヤ、具体的には、正確に1つのワイヤ(すなわち、単一のワイヤ)を備える。
【0025】
更に、本発明の好ましい実施例では、それぞれのワイヤは、銀、ニッケル及びコバルトを含む合金、MP35Nからなるリストから選択される材料を含むか、又はそれらから形成されている。
【0026】
ここで、MP35Nは、約35重量%のニッケル、35重量%のコバルト、20重量%のクロム、及び10重量%のモリブデンを含む合金である。
【0027】
本発明の好ましい実施例によれば、それぞれのワイヤは、第1の金属を備えるコアと、コアを囲むシースと、を備え、シースは、異なる第2の金属から形成されている。好ましい実施例では、第1の金属は、銀であり、第2の金属は、ニッケル及びコバルトを含む合金、好ましくは、MP35Nである(上記を参照)。
【0028】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、それぞれのロープは、好ましくは、電気絶縁被膜材の形態の電気絶縁外装材で覆われている。好ましい実施例では、それぞれのロープを覆う外装材(具体的には、被膜材)は、以下の材料、つまり、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシポリマー)、ポリウレタン(PU)、ポリエステルウレタン(PEU)、ポリエーテルウレタン(PEEU)、ポリカーボネートウレタン(PCU)、シリコーンベースのポリカーボネートウレタン(PCU)、ポリカーボネートポリウレアウレタン(PCHU)、ポリジメチルシロキサンウレタン(PSU)、ポリイソブチレンウレタン(PIU)、ポリイソブチレンベースのコポリマー(PIC)、ポリエーテルブロックアミド、PEBA、PEBAX、ポリイミド(PI)、フッ素化炭化水素、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン(PSU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、シリコーン、ポリイミド(PI)、フッ素化炭化水素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ペルフルオロ(エチレンプロピレン)(FEP)、PEEKからなるリストから選択される材料から形成されるか、又はそれらを含む。
【0029】
更に、本発明の好ましい実施例では、埋め込み型電極リードは、少なくとも1つの導電体及び少なくとも1つの電気絶縁体、特に、編組のすべての導電体及び絶縁体を覆う電気絶縁層を備える。
【0030】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、埋め込み型電極リードは、好ましくは、左束枝(LBB)の近傍を感知及び/又は刺激するために、好ましくは、中隔の形態の、ヒト又は動物の組織内にねじ込まれるように構成されており、螺旋状に巻かれた少なくとも1つの導電体及び螺旋状に巻かれた少なくとも1つの電気絶縁体は、埋め込み型電極リードを前記組織内にねじ込む際に、トルクを伝達するように構成されている。
【0031】
本発明の更に別の好ましい実施例によれば、それぞれの電気絶縁体は、プラスチック糸として形成されている。
【0032】
以下では、本発明の実施例並びに更なる特徴及び利点について、手近に図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による埋め込み型電極リードの一実施例の部分を示す。
【
図2】
図1に示された部分を示すが、外側絶縁管及び電極極は示されていないため、下にある導電体又は絶縁体が見えている。
【
図3】本発明による埋め込み型電極リードの更なる実施例の部分を示しており、導体及び絶縁体を覆う外側電気絶縁層は示されていない。
【
図4】本発明による埋め込み型電極リードの一実施例のロープの形態の導電体の断面図を示す。
【
図5】本発明による埋め込み型電極リードの一実施例のロープの形態の導電体の断面図を示す。
【
図6】本発明による埋め込み型電極リードの一実施例のロープの形態の導電体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、
図2と関連して、例えば、本発明による頻脈の治療のための埋め込み型電極リード1の一実施例を示しており、リード1は、少なくとも1つの電極極2と、少なくとも1つの電極極2に導電的に接続されている、少なくとも1つの導電体3と、を備え、少なくとも1つの長手方向に延在した電気絶縁体4を備える。本発明によれば、少なくとも1つの導電体3は、電極リード1の長手方向軸xを中心とした第1の回転方向に螺旋状に巻かれており、少なくとも1つの電気絶縁体4は、長手方向軸xを中心とした第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に螺旋状に巻かれている。
【0035】
埋め込み型電極リード1は、例えば0.83mmの内径、及び例えば1.13mmの外径を有する、例えばシリコーンから作られた絶縁管5を更に備えてよい。ホース5の内側管腔には、コイル状のワイヤリードが配置されてよく(図示せず)、コイル状のワイヤリードは、遠位端にある螺旋固定部に接続されてよい。少なくとも1つの導体3及び少なくとも1つの絶縁体4は、ホース5上に配置される。
【0036】
好ましくは、
図1及び
図2を参照して以下に説明するように、複数の導体3及び絶縁体4が設けられている。
【0037】
好ましくは、各々、例えば0.36mmの直径を有するロープ状絶縁電気リード線の形態の少なくとも2つの導電体3が、例えば0.15mm、又は少なくとも0.15mmの直径を有する例えばポリウレタン(PU)の2つの糸状絶縁体4’とともに、絶縁管5の上に平行に巻かれており、2つ導電体3は、1つの回転方向に平行に編組されており、各々の場合において、少なくとも1つのPU糸4’が、導体3間に位置しており、少なくとも4つのPU糸が、例えば反対の回転方向に編組されている(
図2では、一実例として、6つのPU糸又は絶縁体4が反対の回転方向に敷設されている)。
【0038】
導電体3は、例えば、ある場合には、電気的活動を検出するために使用され得る電極線1の具体的にはリング電極2と電気接続され得る、高インピーダンス導体3(例えば、MP3SN)、及び例えばショック・コイル(図示せず)と電気接続された、例えば銀コアを有するDFTロープの形態の低インピーダンス導体3である。
【0039】
電気絶縁層6、具体的には、例えば少なくとも2.15mmの内径を有し、例えば2.5mmの外径を有する絶縁ホース6(例えばシリコーン又はPU)が、好ましくは、導体3及び絶縁体4、4’の編組部上に取り付けられる。更に、シリコーン・ホースの上にPUホースを取り付けることもできる。
【0040】
他のタイプの頻脈電極の場合、例えば、2つのショック・コイルを備えた電極、又は心房内に2つの付加的な感知電極(DX電極)を備えた電極の場合、それに応じて導電体3の数を増やすことができる。
【0041】
編組導電体3と外側電極極2又はショック・コイルとの接触を簡素化するために、導電体3は、編組プロセスの前に、例えば導電性タブの形態で、適切な接触面を設けることができ、タブは、電極極2に直接溶接することができる。それに応じて、その後の剥離が不要になる。
【0042】
導電性リード・ワイヤ3の直径を、電気抵抗を同程度に増加させずに低減する場合には、1つのロープ状リード・ワイヤの代わりに、2つ以上のより細いロープ状リード・ワイヤを同じ回転方向で平行に編組し、合わせて電極極2に接続することができる。
【0043】
編組の一部としてフィラメント状の絶縁繊維4を使用する代わりに、絶縁管を使用することができ、これにより、電極の全体直径の増加が少なくなるが、同時に、楕円形の変形により、導電体3間の間隔が増加することが確実になる。
【0044】
図3は、本発明による埋め込み型リード1の更なる実施例を示しており、第1の回転方向(例えば、電気絶縁担体、例えば管5上)に螺旋様式で平行に巻かれた少なくとも2つの導電体3、30の編組9を備え、そこでは、少なくとも2つの電気絶縁体4、40が、反対の第2の回転方向に(同じく平行に)螺旋状に巻かれている。言い換えれば、導体3、30と絶縁体4、40とは、反対の対掌性を有する。
【0045】
好ましくは、平行に走行している編組9に使用される導体3、30はロープであり、
図4~
図6に示される実施例のうちの1つに従って形成することができる。具体的には、特に低抵抗が必要な場合には、電極リードに導電性ロープが使用される。これは、非常に高い電流を伝送する必要がある頻脈電極の場合に特に当てはまる。頻脈電極の抵抗は、わずか1~10オームである。抵抗がこれより大きいと、ショック中に電極が発熱することになる。更に、線内で電圧降下が非常に大きくなるため、デバイスはかなり高い電圧を提供しなければならなくなる。
【0046】
長期的な埋め込みの場合、特に低抵抗の金属である銅は、生体適合性の理由から除外される。代わりに、銀がワイヤ材料として使用されることが好ましいが、その機械的弱点のため、安定と耐食性に優れたMP35N(ニッケル35重量%、コバルト35重量%、クロム20重量%、及びモリブデン10重量%)で支持されるのが好ましい。MP35Nで作られた機械的に安定したワイヤには銀のコアが含まれる場合があり、これにより伝導率が大幅に低下する。ワイヤは、電極における機械的負荷のために、いずれかの螺旋状に巻くことができる。直線状のワイヤは、電極内ですぐに切れてしまう。巻線には、リードの長さが長くなり、このため抵抗が相対的に高くなるという欠点がある。或いは、ワイヤ11を非常に細く引き、多数のワイヤ11を組み合わせてロープにすることもできる。このようなロープは、曲げ荷重の変化に対して機械的に極めて安定しており(場合によっては、螺旋よりも更に安定している)、導体を最短経路で接続できるため、抵抗が極めて低い。
【0047】
図4に示される実施例によれば、(例えば、
図1~
図3の実施例において)使用されるのが好ましいロープ3、3’、30は、7×7個のロープ、すなわち、上述の材料から形成され得る7個のワイヤ11が、ストランド10に撚り合わされている。7個のそのようなストランド10が、順にロープ3、3’、30に撚り合わされる。
【0048】
もう少し単純なのは、
図5に示すような1×19個のロープである。ここで、ロープ3、3’、30は、各々、単一のワイヤ11を備える19個のストランド10から形成することができる。このようなロープは、頻脈電極及び神経電極にも使用することができる。
【0049】
最後に、
図6は、細い神経電極に適したロープ3、3’、30の一実施例を示しており、ここでロープは、7個のストランドを備え、各ストランド10は、単一のワイヤ11から形成されている。
【0050】
一実施例によれば、これらのロープ3、3’、30は、固体MP35Nワイヤから作られ、感知及び刺激に十分な相対的に高い抵抗を有するか、又は銀コアを有するワイヤを含んで、非常に低い抵抗を有するかのいずれかである。銀の含有量は変化する可能性があり、低抵抗と機械的安定性の間の妥協点を決定する。銀コアのワイヤは、特に、頻脈プローブ及び神経プローブに使用される。神経プローブにとって、銀コアは高エネルギーのためにより重要ではなく、なぜなら、これらのロープは非常に細く、それでも伝導性である必要があるためである。
【0051】
好ましくは、
図4~
図6に示されるそれぞれのロープ3、3’、30は、好ましくは、電気絶縁されている、すなわち、電気絶縁外装材7によって囲まれている。この外装材7は、被膜材であり得る。外装材/被膜材7の対応する材料は、通常は、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)又はPFA(ペルフルオロアルコキシポリマー)で作られている。他の外装材/被膜材、つまり、ポリウレタン(PU)、ポリエステルウレタン(PEU)、ポリエーテルウレタン(PEEU)、ポリカーボネートウレタン(PCU)、押出成形時にシリコーンとの接着性が向上するシリコーンベースのポリカーボネートウレタン(PCU)、ポリカーボネートポリウレアウレタン(PCHU)、ポリジメチルシロキサンウレタン(PSU)、ポリイソブチレンウレタン(PIU)、ポリイソブチレンベースのコポリマー(PIC)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えばPEBAX)、ポリイミド(PI)、フッ素化炭化水素、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン(PSU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、シリコーン、ポリイミド(PI)、フッ素化炭化水素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ペルフルオロ(エチレンプロピレン)(FEP)、PEEKもまた考えられる。
【0052】
外装材7による前記電気絶縁により、体液が進入したときに導体3、30間の電解質ブリッジが形成されるのを防ぐことができる。
【0053】
本発明による概念は、従来の頻脈電極とは異なり、LBB(左束枝)の近くを感知し、刺激するために、中隔にねじ込まれることを目的とした頻脈電極に特に使用される。通常、組織内に能動的に固定される電極は、固定のために螺旋を使用する。この螺旋の長さは、例えば2mmである。より長い螺旋も考えられる。ただし、例えば8mmの深さでLBBに達する必要がある場合、刺激中に全長にわたって電流が不必要に散逸(浪費)しないように、螺旋を部分的に絶縁する必要がある。螺旋を短いままにしておき、螺旋がLBBに達するまで、電極本体を螺旋に沿って中隔に入れる方が簡単だろう。従来の螺旋電極は、コネクタピンでの回転を内側導体螺旋を介して螺旋に伝達することによって固定され、そして螺旋は、螺旋本体から延在して組織内に係留される。この技法は、心臓組織の潜在的な穿孔を防ぐので、従来の電極の用途に役立つ。内側導体のトルクは制限されているため、電極ヘッド(ハウジング)が組織に接触するまで、螺旋を組織に非常に簡単にねじ込むことができる。正常なRA又はRVの埋め込みの場合、これは穿孔を防ぐのに有効であり、なぜなら、心臓自由壁が穿孔されると、電極の先端が心膜を貫通し、タンポナーデを起こす一方、刺激することができなくなるからである。
【0054】
しかしながら、本出願では、好ましくは、深いLBBに達するように、中隔は、電極によって意図的に貫通されることになる。電極を貫通させるためには非常に多くの回転が必要となるため、内側導体(例えば、管5内に配置される)を介したトルク伝搬は、中程度にのみ適切である。このため、多くの場合、ねじ切りすることができるねじは省かれ、電極リード1を掴んで電極リード1を回すことによって回転させる固定ねじが使用される。編組9により、内側螺旋を用いるよりも高いトルクを適用することができる。しかしながら、コネクタピンを用いて螺旋を緩め、コネクタピンをきつく締めることによって内側導体に予荷重を加え、その後電極リード1を回すことによって埋め込むことも考えられる。
【0055】
頻脈電極は、電極本体として多腔管を用いて構築されるのが一般的である。多腔管であっても、柔らかい管材料(シリコーン又はポリウレタン)は簡単にねじれるため、多くのトルクを伝搬することはできない。
【0056】
しかしながら、反対方向に配置された導体3、30と絶縁体4、40との編組9は、トルクを非常によく伝搬する。編組の欠点は、フィラメントが互いに交差する可能性があることである。フィラメントが給電導体からなる場合、交差ポイントで絶縁体が圧縮される危険性がある。導体が接触していない場合でも、特に頻脈用途では、衝撃が適用されると絶縁破壊する危険性がある。
【0057】
したがって、本実施例では、伝導ロープ3、30は、1つの回転方向(対掌性)に案内されるが、交差絶縁体4、40(例えば、プラスチック・フィラメント)は、絶縁材料からなり、反対の回転方向(反対の対掌性)に案内される。このようにして、導体3、30は、所定の位置に固定されるが、編組9内で重なり合うことなく完全に平行に走行する(例えば、
図3を参照)。更なる実施例では、平行に走行する導体3、30は、更に絶縁体と交互になってもよい。しかしながら、この実施例の有利な特徴のうちの1つは、導体3、30が、編組9内で交差しないことである。
【0058】
更に、例えば、血液に直接さらされるのを防ぐために、電気絶縁層6が編組9に適用されるのが好ましい(
図3では、導体3、30/絶縁体4、40が見えるように図示されていない)。未加工の編組構造9は、心臓及び血管にまで大きく成長することになる。これにより、電極の外植が非常に困難になる。管(例えば、ポリウレタン、シリコーン、又はコポリマー)6を被覆部6として使用することができる。一実施例では、この管6は、編組9に非常にしっかりと接続されている。これには、電極リード1が特に手で握りやすく回転しやすいという利点がある。指によって適用されたトルクは、編組9に直接伝搬される。この条件は、例えば、ポリウレタン、コポリマー、又はシリコーンで作られた絶縁層6を過剰に押し出すことによって達成することができる。
【0059】
更なる実施例によれば、リフロー・プロセスを利用することができる。このプロセスでは、熱可塑性物質で作られた管6が編組9の上に押し付けられ、熱プロセスで収縮し、編組構造9内に溶ける。導電体3、30は、編組内で連続的に配線され、これは例えば、接続ポイント33でリング電極2(
図3を参照)に接続されるリング電極2の導体3は、ショック・コイル(高電圧エネルギーを送達するように構成されたコイルの形態に配置された頻脈電極)の下にも走行することを意味する。これにより、走行時に短絡につながる可能性がある。
【0060】
一実施例によれば、導体3は、例えば、対応する隙間12を示す
図3に示すように、1メッシュのサイズだけ中断することができ、その結果、この導体3は、ショック・コイルの下方では電気的に不活性になるが、実際の編組は、接続されたままであり、その機械的特性はほとんど影響を受けない。
【0061】
好ましくは、プラスチックの糸を絶縁体4、40として使用することができ、これらは、導電体3、30とは反対の回転方向(対掌性)で編組9を形成する。交差ポイントでは、糸の構造と糸の張力により、糸は非常に平らになる。絶縁体4、40として使用されるプラスチック糸は、半径方向に弾性であるように構成されている。
【0062】
これには、導電体3、30の断面(例えば、ケーブルの直径であって、フィラメントの直径ではない)のみが編組9の意図された壁厚に含まれるため、内径及び外径を小さく保つことができるという大きな利点を有する。
【0063】
本発明は、埋め込み型電極リードの製造を簡素化し、様々なタイプの電極リードに有利に適用でき、導体の交差ポイントを避け、これにより高電圧フラッシュオーバーに対する安全性を高める。更に、リードの数を増やすこともできる。更に、同時に、導電体と電気絶縁体の交差から形成された編組により、有利な様式でトルクを伝達することができる。
【国際調査報告】