(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】特注溶媒からの微多孔性ポリオレフィン膜
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20240725BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20240725BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240725BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20240725BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240725BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240725BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240725BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240725BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
B29C67/20 B
H01M50/417
H01M50/411
H01M50/403 B
H01M50/403 A
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576114
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2023060674
(87)【国際公開番号】W WO2023137456
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501328762
【氏名又は名称】アムテック リサーチ インターナショナル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ウェストン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スピッツ,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン,マシュー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,コリー エス
(72)【発明者】
【氏名】ペカラ,リチャード ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA98
4F074AB01
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4F214AA03
4F214AB16A
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5H021BB01
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5H021BB05
5H021CC03
5H021EE01
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5H021EE22
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H021HH07
(57)【要約】
本明細書中、ハロゲンを含まない微多孔性ポリオレフィン膜が開示される。ハロゲンを含まない微多孔性ポリオレフィン膜は、ポリマー-可塑剤混合物の押出成形、シート形成、及びハロゲンを含まない溶媒による可塑剤の抽出を含む、環境に優しい製造プロセスを用いて製造することができる。ハロゲンを含まない溶媒は、約23℃より高い引火点と、可塑剤の引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点とを有する。このプロセスはさらに、ハロゲンを含まない溶媒を再利用できる閉ループプロセスであることが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立性微多孔性ポリオレフィン膜であって、
ポリマーと、約215℃より高い引火点及び約70~140℃のアニリン点を有する可塑剤との相分離から得られる、機械的完全性を提供するためにポリエチレンを含む半結晶質ポリマーマトリックスと;
約23℃より高い引火点及び前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点を有するハロゲンを含まない溶媒で前記可塑剤を抽出し、その後蒸発させることによって得られる相互接続孔と
を含む、自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項2】
前記ハロゲンを含まない溶媒が約38℃より高い引火点を有する、請求項1に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが延伸又は二軸延伸される、請求項1又は2に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項4】
前記可塑剤の溶媒抽出前に、前記ポリマーマトリックスが延伸又は二軸延伸される、請求項1~3のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項5】
前記可塑剤の抽出及び前記溶媒の蒸発後に、前記ポリマーマトリックスがさらに延伸又は二軸延伸される、請求項4に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項6】
巻き取られる前にアニール処理又は熱安定化処理される、請求項1~5のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスが、前記ポリマーマトリックス全体に分散されたフィラーをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項8】
前記フィラーが、無機酸化物、カーボネート、水酸化物、若しくはそれらの混合物を含むか、又は前記フィラーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、若しくはそれらの混合物を含む、請求項7に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、少なくとも約50万g/モルの分子量を有するポリエチレンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項10】
約25ミクロン以下、又は約20ミクロン以下のバックウェブ厚さを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項11】
約150ミクロン~約300ミクロンのバックウェブ厚さを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項12】
約10~25重量%の残留可塑剤、又は約12~22重量%の残留可塑剤を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項13】
約0~1重量%の残留可塑剤を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項14】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項15】
ハロゲン含有化合物を含まない、請求項1~14のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項16】
前記ハロゲンを含まない溶媒が食品グレードの溶媒である、請求項1~15のいずれか一項に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項17】
ポリオレフィンと可塑剤とを溶融ブレンドして混合物を形成することと;
前記混合物を注型成形又は押出成形して無孔性シートを作成することと;
前記無孔性シートを冷却して、前記ポリオレフィンと前記可塑剤との相分離を誘導することと;
ハロゲンを含まない溶媒によって前記無孔性シートから可塑剤を抽出し、前記溶媒を蒸発させて微多孔性ポリオレフィン膜を形成することと
を含む微多孔性ポリオレフィン膜の製造方法であって、前記ハロゲンを含まない溶媒が、約23℃以上の引火点を含み、前記可塑剤の引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点を有する、微多孔性ポリオレフィン膜の製造方法。
【請求項18】
前記ポリオレフィンが、少なくとも約50万g/モルの分子量を有するポリエチレンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記可塑剤が、約215℃より高い引火点及び約70~140℃のアニリン点を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
閉ループ、溶媒抽出、乾燥、及び炭素床回収システムを含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリオレフィンから前記可塑剤を溶媒抽出する前に、前記無孔性シートを延伸又は二軸延伸させることをさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記可塑剤の抽出及び溶媒蒸発の後に、前記微多孔性ポリオレフィン膜を延伸又は二軸延伸させることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
巻き取りの前に前記微多孔性ポリオレフィン膜をアニール又は熱安定化することをさらに含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記微多孔性ポリオレフィン膜がハロゲン含有化合物を含まない、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記微多孔性ポリオレフィン膜が、約25ミクロン以下、又は約20ミクロン以下のバックウェブ厚さを有する、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記微多孔性ポリオレフィン膜が、約150ミクロン~約300ミクロンのバックウェブ厚さを有する、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が、前記混合物全体に分散されたフィラーをさらに含む、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記フィラーが、無機酸化物、カーボネート、水酸化物、若しくはそれらの混合物を含むか、又は前記フィラーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、若しくはそれらの混合物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ハロゲンを含まない溶媒が食品グレード溶媒である、請求項17~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ポリオレフィンと、約215℃より高い引火点及び約70~140℃のアニリン点を有する可塑剤との注型成形又は押出成形混合物から得られる、注型成形又は押出成形されたポリオレフィンシートと;
前記ポリオレフィンシート内に装填されたハロゲンを含まない溶媒と
を含む、溶媒含有シート。
【請求項32】
前記ポリオレフィンが、少なくとも約50万g/モルの分子量を有するポリエチレンを含む、請求項31に記載の溶媒含有シート。
【請求項33】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、約23℃より高い引火点と、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点とを含む、請求項31又は32に記載の溶媒含有シート。
【請求項34】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を含む、請求項33に記載の溶媒含有シート。
【請求項35】
前記ハロゲンを含まない溶媒が食品グレード溶媒である、請求項31~34のいずれか一項に記載の溶媒含有シート。
【請求項36】
前記混合物が、前記混合物全体に分散されたフィラーをさらに含む、請求項31~35のいずれか一項に記載の溶媒含有シート。
【請求項37】
前記フィラーが、無機酸化物、カーボネート、水酸化物、若しくはそれらの混合物を含むか、又は前記フィラーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、若しくはそれらの混合物を含む、請求項36に記載の溶媒含有シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月14日出願の「Microporous Polyolefin Membranes from Bespoke Solvents」と題された米国仮特許出願第63/266,830号の優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
著作権表示
(著作権)Amtek Research International LLC。本特許文献の開示内容の一部は、著作権保護の対象となる資料を含む。著作権者は、特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されているように、本特許文献又は本特許開示の誰によるファクシミリ複製についても異議を持たないが、それ以外の全ての著作権を留保する。37CFR§1.71(D)。
【0003】
技術分野
本発明は、ポリマー-可塑剤混合物の押出成形に続いてシートを形成し、可塑剤を溶媒で抽出し、溶媒を蒸発させて微孔を形成し、その後、製造プロセスで再利用するために活性炭から溶媒を吸着-脱着することを含む、環境に優しい閉ループプロセスで製造することができる、ハロゲンを含まない微多孔性ポリオレフィン膜に関する。特注溶媒は、ハロゲンを含まず、水溶性が低く、引火点が約23℃以上である。ハンセン(Hansen)の溶解性パラメーターに関しては、溶媒は低分散性(デルタD約15)、低極性(デルタP約0)、及び低水素結合性(デルタH約0)の特徴を有し、ナフテン系、パラフィン系、白色鉱油を含む可塑剤と混和性である場合もある。最後に、相対沸点は、(1)可塑剤及び特注溶媒の分離及び再利用のために重要である。
【背景技術】
【0004】
微多孔性膜は、その中を流体が流れるように設計された構造を有する。流体は液体又は気体のいずれであることも可能であり、一般に、膜の孔径は、所望の流束を達成するために流体の平均自由行程の少なくとも数倍でなければならない。微多孔性膜の孔径範囲は一般に約10ナノメートルから数ミクロンであり、平均孔径は約1マイクロメートル未満である。孔径及びポリマーマトリックスが可視光を散乱するのに十分なサイズであるため、このような膜は一般に不透明である。使用される「微多孔性膜」という用語は、「微多孔性フィルム」、「微多孔性シート」及び「微多孔性ウェブ」などの科学文献及び特許文献で使用される他の記載を包含する。微多孔性膜は、自立性を示し、膜全体に延在する相互接続孔を有することもできる。「自立性」とは、エネルギー貯蔵デバイスアセンブリに使用するために、シートの形態で巻いたり、解いたりするなどの操作を可能にする十分な機械的特性を有する膜を指す。
【0005】
微多孔性膜は、濾過、衣服又は医療用ガウン用途の通気性フィルム、電池セパレータ、合成印刷シート、及び外科用ドレッシングなどの多種多様な用途に利用されてきた。場合によっては、微多孔性膜は、付加的な機能性(例えば、耐引裂性、耐酸化性)を付与するために、他の物品(例えば、不織布)にラミネートされる。微多孔性膜はまた、製造プロセスの一部として、又は二次的なステップにおいて、機械的方向又は横方向の延伸を受けることもある。
【0006】
微多孔性膜の製造は、熱誘導相分離によって達成されることが多い。このプロセスでは、ポリマーを熱的に安定な可塑剤(例えば、パラフィンオイル)と高温でメルトブレンドし、次いで、無孔性フィルム又は物体に注型成形又は押出成形することによって均一な混合物を形成する。これは冷却され、ポリマー及び可塑剤の相分離が誘導される。その後、溶媒抽出及び乾燥によって可塑剤を除去し、微多孔性膜を形成する。溶媒及び可塑剤の分離と再利用を容易にするため、それらの初期沸点が約50℃以上離れていることが重要である(例えば、蒸留中に効率的に分離するため)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池セパレータは、熱誘導相分離プロセスを用いて一般的に製造され、その後、ヘキサン、トリクロロエチレン、塩化メチレン又は他の溶媒を用いて熱的に安定な可塑剤を抽出する。政府規制機関は、このような溶媒に関するリスク評価を継続的に実施しており、環境及び労働者の暴露に関する懸念を持って有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ほとんどの液式鉛-酸電池(flooded lead(Pb)-acid batteries)には、ポリエチレンセパレータが含まれる。これらの微多孔性セパレータが十分に酸湿潤性となるためには、沈殿シリカを大量に必要とするため、「ポリエチレンセパレータ」という用語は誤用である。セパレータ中の沈殿シリカの体積分率及びその分布は一般にその電気的(イオン的)特性を制御し、セパレータ中のポリエチレンの体積分率及び配向は一般にその機械的特性を制御する。鉛酸電池用の市販のポリエチレン製セパレータの多孔率は、一般に約50~65%である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による微多孔性膜の製造において使用される閉ループ溶媒抽出及び炭素床回収法を示す図である。
【
図2】別の実施形態による微多孔性膜の製造において使用される閉ループ溶媒抽出及び蒸気凝縮回収法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
Pb-酸セパレータの製造において、沈殿シリカをポリオレフィン、可塑剤(すなわち、プロセスオイル)、及び様々な副成分と組み合わせてセパレータ混合物を形成し、これをシートダイを通して高温で押出成形し、オイル充填シートを形成する。オイル充填シートを所望の厚さ及び形状までカレンダー処理し、プロセスオイルの大部分は有機溶媒で抽出されるが、最終セパレータには通常約10~25%、より好ましくは約12~22%のプロセスオイルが残留する。ナフテン系プロセスオイルが好ましく、残留オイルはPb-酸電池セパレータの耐酸化性を高めるためのものである。ヘキサン及びトリクロロエチレンは、Pb-酸セパレータ製造において最も一般的に使用される2種の溶媒である。溶媒含有シートを乾燥させ、微多孔性ポリオレフィンセパレータを形成し、特定の電池設計に適切な幅に切断される。
【0011】
ポリエチレンセパレータはロール状態で鉛酸電池製造業者に納入され、ここでセパレータは、電極を挿入して電極パッケージを形成することができるようにセパレータ材料を切断し、その端部を封着することによって「エンベロープ」を形成する機械へと供給される。電極パッケージは、セパレータが正極と負極との間の物理的なスペーサー及び電子絶縁体として機能するように積み重ねられる。その後、電極間のイオン伝導を促進するために、組み立てられた電池に硫酸が導入される。
【0012】
セパレータに含まれるポリオレフィンの主な目的は、(1)高速でセパレータを包囲することができるようにポリマーマトリックスに機械的完全性を与えること、及び(2)電池の組み立て中又は動作中にグリッドワイヤの穿孔を防止することである。したがって、疎水性ポリオレフィンは、好ましくは、高い耐穿孔性を有する微多孔性ウェブを形成するのに十分な分子鎖の絡み合いを提供する分子量を有する。親水性シリカの主な目的は、セパレータウェブの酸湿潤性を高め、それによってセパレータの電気抵抗率を下げることである。シリカがない場合、硫酸は疎水性ウェブを湿潤せず、イオン輸送が起こらないため、電池が作動しなくなる。その結果、セパレータのシリカ成分は、通常、セパレータの約55重量%~約80重量%を占め、すなわち、セパレータは、約2.0:1~約3.5:1のシリカ対ポリエチレンの重量比を有する。
【0013】
合成印刷用途の微多孔性膜の製造は、Schwarzらによって米国特許第5,196,262号明細書に例示されている。この場合、ポリマーマトリックスは、約10dl/gより高い固有粘度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と、約50g/10分未満のメルトフローインデックス(ASTMD1238-86条件)を有する低分子量ポリエチレンとのブレンドから構成される。これらのポリマーは、高い割合の微細分割された水不溶性のケイ質フィラー、他の副成分、及び加工用可塑剤と組み合わされて混合物を形成し、この混合物は、その後、シートへと押出成形され、このシートから可塑剤の大部分が溶媒によって抽出される。残留可塑剤は、合成印刷シートの約3重量%未満、より好ましくは約1重量%未満である。適切な有機抽出液の例としては、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、塩化メチレン、ヘキサン、ヘプタン及びトルエンが挙げられる。得られた微多孔性膜は、PPG IndustriesからTeslin(登録商標)の商標で販売されている。
【0014】
Li-イオン電池、Li-金属電池、又は充電式Li-金属電池システム用に設計されたセパレータは、一般に、熱誘導相分離プロセスを用いて製造される。この場合、分子量約500,000g/モル~約1,000万g/モルの様々なグレードのポリエチレンが可塑剤と組み合わされ、次いでシートダイ又は環状ダイを通して押出成形され、オイル充填シートが形成される。このオイル充填シートは、その厚さを減少させ、機械方向及び横方向の両方の機械的特性を向上させるために、しばしば二軸配向される。次に、二軸配向されたシートを塩化メチレンの抽出浴に通して可塑剤を除去し、その後溶媒の蒸発に伴って孔が形成される。得られた電池セパレータは、典型的に、約3~25umの範囲の厚さを有し、約40~65%の間の多孔率を有し、約1%未満の残留可塑剤を有する。
【0015】
トリクロロエチレン(TCE)などの塩素系溶媒の場合、ポリエチレン物品の非晶質領域に吸収され、ポリエチレン粉末の表面に吸着することができることが示されている(例えば、ShuaiXieら、Very Low Concentration Adsorption Isotherms of Trichloroethylene on Common Building Materials,Building and Environment、Vol.179、2020年7月15日参照)。同一メカニズムは電池セパレータにも当てはまり、高温の乾燥オーブンを通過した後でも塩素系溶媒が材料内に残留する可能性がある。場合によっては、塩素化溶媒は、セパレータ前駆体を押出成形するために使用された残留可塑剤又はオイル中に残留する可能性がある。
【0016】
トリクロロエチレン、塩化メチレン及びヘキサンなどの有機溶媒に関連する環境圧力及び健康への懸念の高まりを受けて、潜在的に有害な化学物質への作業員の曝露を最小限に抑え、抽出溶媒及び可塑剤を閉ループで効率的にリサイクルするプロセスから、顧客の性能要件を満たすことができる微多孔性膜の製造に対する新たな持続可能なアプローチが必要とされている。本明細書で開示される微多孔性膜の成分は、その製造に使用される溶媒及び可塑剤を含め、環境に優しく取り扱いが安全である。また、溶媒は食品グレードとすることができ、その取り扱いに関する健康上の懸念を最小限に抑えることができる。
【0017】
熱誘導相分離を使用する微多孔性膜の製造において、溶媒選択の主な考慮事項には、物理的特性、化学的特性、装置適合性、安全性、リサイクル性、コスト、及び所望の製品特性(例えば、孔径分布)を達成する能力が含まれる。溶媒選択基準の概要を以下の表Iに示す。
【0018】
【0019】
健康及び環境リスクを最小限に抑えながら、全ての選択基準を満たすことができる単一の溶媒、特に不燃性の溶媒を特定することは困難である。電池セパレータとして使用される微多孔性膜を製造するための抽出溶媒としてのトリクロロエチレン及び塩化メチレンなどの塩素系溶媒を排除するようにREACH及びEPAから継続的な圧力がかかる中、新しいアプローチが必要とされている。トリクロロエチレン及び塩化メチレンの代替溶媒として、ある種の共沸物が提案されているが、それらは通常、トランス-ジクロロエチレン(すなわち塩素系溶媒)と、ペルフルオロアルキル物質(PFAS)の範疇に入るさまざまなフッ素化合物を組み合わせたものを含んでいる。ペルフルオロアルキル物質は、環境への残留性(すなわち、それらは分解しない)及び関連する健康リスクのため、監視が強化されている。
【0020】
溶媒の物理的及び化学的特性に関しては、可塑剤の特性との関連で考慮することが重要である。重要な検討事項には、溶媒及び可塑剤の引火点、沸点範囲、及びアニリン点が含まれる。例えば、可塑剤の引火点は押出成形に関して重要である。特に、可塑剤の引火点は、ポリオレフィン電池セパレータの製造中に一般的に約215℃より高い押出成形温度よりも高くなければならない。したがって、いくつかの実施形態において、可塑剤は、約215℃より高い引火点を有する。別の実施形態において、可塑剤は、約145℃より高い引火点を有する(例えば、約145℃~約350℃、又は約145℃~約300℃など)。抽出溶媒の場合、引火点が室温より高い(約23℃より高い)ことが賢明であり、これにより、十分な熱エネルギーを利用して、膜での蒸発及び孔形成を促進することができる一方で、火災の危険性が軽減される。したがって、いくつかの実施形態において、抽出溶媒の引火点は約23℃より高い。さらなる実施形態において、抽出溶媒の引火点は、特定のコード及び/又は消防法の要件(例えば、NFPA 30 Flammable and Combustible Liquids Code、NFPA 1 Fire Code;及び/又は2022~2023年に認識される国際消防法など)を満たすために、約38℃より高い。
【0021】
溶媒の蒸気圧及び揮発性は一般に沸点と相関するため、可能な限り低いエネルギー量で可塑剤から溶媒を分離する能力を最大化しつつ、潜在的な作業員の曝露を最小化するように温度範囲を選択することが重要である。さらに、いくつかの実施形態において、蒸留による分離をより容易に達成するために、溶媒が可塑剤の引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点を有することが重要である。さらなる実施形態において、溶媒は、可塑剤の引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を有する。可塑剤の初期沸点は、(可塑剤が引火点を有する限りにおいて)常にその引火点よりも高いことが理解されよう。したがって、別の言い方をすれば、初期沸点に関して、溶媒は、可塑剤の初期沸点よりも少なくとも約50℃、又は少なくとも約85℃低い初期沸点を有する。溶媒と可塑剤との間の初期沸点及び/又は引火点の差は、
図1及び
図2に関連してさらに後述するように、一方又は両方の成分をリサイクルして製造プロセスで再利用することができるように、成分を効率的に蒸留及び分離するために有用である。場合によっては、溶媒と可塑剤との間の初期沸点及び/又は引火点の差を可能な限り大きくすることが好ましい。
【0022】
次に、アニリン点は、炭化水素の溶解力を測定するための比較的簡単な試験である。アニリンは、ベンゼン環にアミノ基が結合した単純な芳香族アミンである。アニリン点は、溶媒又は可塑剤とアニリンの1:1混合物が透明溶液のままである最低温度である。値が低いほど溶解力が強く、値が高いほど溶解力が弱いことを示す。いくつかの実施形態において、残留可塑剤が残り、得られるセパレータに残留し得るPb-酸セパレータにおけるように、より低いアニリン点を有する溶媒が使用され得る。他の実施形態において、可塑剤の全て又は実質的に全てが得られるセパレータから除去されるLiセパレータのように、より低い又はより高いアニリン点のいずれかを有する溶媒が使用され得る。
【0023】
一般に、アニリン点が高いということは、溶存芳香族が比較的少ないことを意味する。このような違いは、炭素タイプ分析(ASTMD2140)で示されるように、ナフテン系可塑剤に対するパラフィン系可塑剤で明確に観察することができる。種々の可塑剤においてパラフィン系炭素は減少し、それに対してナフテン系炭素及び芳香族系炭素は増加し、アニリン点も減少する。引火点も同様の傾向を示すことに留意すべきである。
【0024】
炭化水素系溶媒の場合、アニリン点は一般に、アルカン鎖長が減少するか、又は芳香族度が高くなると低下する。上記の傾向及び関係は、表IIで見ることができる。
【0025】
【0026】
場合によっては、溶媒及び可塑剤のアニリン点の差が大きいほど抽出が速くなるが、閉ループプロセスで効率的にリサイクルするためには上記に概説される他の基準を満たす特注溶媒が必要である。いくつかの実施形態において、可塑剤のアニリン点は約70℃~約140℃、約75℃~約135℃、又は約80℃~約130℃である。別の実施形態において、可塑剤のアニリン点は約35℃~約140℃である。驚くべきことに、IsoPar-Gは、ナフテン系、パラフィン系、及び白色鉱油を含む可塑剤を使用する微多孔性膜製造のための次世代の溶媒抽出及び回収プロセスの要件を満たすことができることがわかった。表IIに特定される溶媒及び表IIに特定されない溶媒の両方を含む、上記に概説される基準を満たす他の溶媒もまた使用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、溶媒は、無孔性フィルムが延伸又は二軸延伸された後に可塑剤を抽出するために使用される。さらなる実施形態において、可塑剤を抽出した後、得られた微多孔性ポリオレフィン膜をさらに延伸及び/又は二軸延伸する。得られる微多孔性ポリオレフィン膜はまた、抽出溶媒がハロゲンを含まないため、いかなるハロゲン含有化合物(残留ハロゲン含有化合物など)も全く含まない。これは、微量の残留ハロゲン含有化合物を含む可能性がある、塩化メチレン又はトリクロロエチレンなどのハロゲン含有抽出溶媒を用いて製造された微多孔性ポリオレフィン膜とは対照的である。微量の残留ハロゲン含有化合物は、再充電可能なリチウムイオン電池又はリチウム金属ベースの電池の性能において、腐食又は他の問題を引き起こす可能性があることを認識すべきである。
【0028】
本明細書に開示される微多孔性ポリオレフィン膜は、様々なポリレフィンを用いて製造することができる。使用することができる例示的なポリオレフィンとしては、限定されないが、種々のグレードのポリエチレン、例えば、分子量が約50万g/モル~約1000万g/モルの範囲のポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、超高分子量ポリエチレン(VHMWPE)、高分子量、高密度ポリエチレン(HMW-HDPE)、及びそれらの混合物)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態において、ポリオレフィンには、約50万g/モル以上、又は約60万g/モル以上の分子量を有するポリエチレンが含まれる。
【0029】
微多孔性ポリオレフィン膜の厚さは変動可能である。いくつかの実施形態において、微多孔性ポリオレフィン膜は、約25ミクロン以下、又は約20ミクロン以下のバックウェブ厚さを含む。特定の実施形態において、微多孔性ポリオレフィン膜は、約5ミクロン~約25ミクロン、又は約5ミクロン~約20ミクロンのバックウェブ厚さを含む。約150ミクロン~約300ミクロンのバックウェブ厚さを有するものなど、より大きな厚さを有する微多孔性ポリオレフィン膜も製造することができる。本明細書で使用される場合、バックウェブ厚さは、リブ又は表面突起の高さを含まない微多孔性ポリオレフィン膜の厚さを指すことができる。
【0030】
微多孔性ポリオレフィン膜はまた、任意選択的にフィラーを含むことができる。使用可能な例示的なフィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、及びそれらの混合物などの無機酸化物、カーボネート、又は水酸化物が挙げられる。フィラーは、微多孔性ポリオレフィン膜全体に分布させることができる。いくつかの実施形態において、フィラーは微多孔性ポリオレフィン膜全体に均一に分布している。他の実施形態において、フィラーは均一に分布していない。
【0031】
微多孔性ポリオレフィン膜は、任意選択的に、製造プロセスの一部として、抽出プロセスの後、そしてその後の使用のためにロールに巻かれる前に、アニール又は熱安定化することもできる。
【0032】
以下の実施例は、本質的に例示的なものであり、いかなる様式においても限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0033】
実施例1
UHMWPE(Celanese GUR 4150)、沈殿シリカ(PPG WB-2085)、及び副成分(酸化防止剤、可塑剤、及びカーボンブラック)を水平ミキサー中で組み合わせ、低速撹拌でブレンドして均一混合物を形成した。次に、ホットナフテン系可塑剤(ENTEK 800オイル;Calumet)を乾燥成分上に噴霧した。この混合物は58重量%のオイルを含有し、次に215℃の溶融温度で作動する96mm逆回転二軸スクリュー押出機(ENTEK Manufacturing Inc)に供給された。押出機のスロートでインラインで追加のプロセスオイルを添加し、最終的なオイル含量を65重量%にした。得られた塊をシートダイを通してカレンダーにし、リブパターンで200~300umの厚さのエンボス加工を施した。2本の冷却ロール上を通過させた後、抽出のためにオイル充填シートを回収した。
【0034】
約160mm×約160mmのオイル充填試料を、IsoPar-Gを含むビーカーに入れ、室温で約10分間撹拌しながら抽出した。その後、溶媒含有試料を循環式オーブン中105℃で一晩乾燥させた。得られたセパレータは多孔質であり、良好な機械的特性を有し、16重量%の残留オイル(すなわち可塑剤)を含んでいた。溶媒がハロゲン含有化合物を含まないため、得られたセパレータも残留ハロゲン含有化合物を含まない。
【0035】
実施例2
ナフテン系可塑剤(140kg;ENTEK 800オイル;Calumet)をロス(Ross)ミキサー中に分注し、そこで撹拌し、脱気した。次に、以下を添加し、オイルと混合した:
64kg UHMWPE(分子量約500万g/モル)
32kg VHMWPE(分子量約100万g/モル)
32kg HMW-HDPE(分子量約60万g/モル)
1.2kg ステアリン酸Li
1.2kg 酸化防止剤
【0036】
この混合物を約40℃で、均一な47重量%のポリマースラリーが形成されるまでブレンドした。次に、このポリマースラリーを、直径73mmの共回転二軸スクリュー押出機に輸送し、約215℃の溶融温度を維持した。2.75mmのギャップを有する直径257mmの環状ダイに供給するメルトポンプに押出物を通した。ダイを通る処理量は135kg/時間であり、押出物を空気で膨張させ、直径約2000mmの二軸延伸オイル充填フィルムを作製し、次いで20m/分で上部ニップを通過させて気泡を崩壊させ、二重層を形成し、この二重層をその後サイドスリットし、2つの個別層を作成した。
【0037】
次に、オイル充填層は、IsoPar-Gが層の方向と逆流する抽出器を通過した。抽出器の第1の領域中のオイル/IsoPar-Gの混合物を蒸留ユニットに輸送し、再利用のために分離させた。次に、溶媒含有層は、エアーナイフを備えたオーブンを通過し、IsoPar-G溶媒が蒸発し、蒸気は炭素床システムに送られて吸着され、その後、蒸気によって回収される。このような例示的な閉ループ製造法を
図1に示す。別の例示的な閉ループ製造法を
図2に示すが、これは炭素床回収システムではなく蒸気凝縮器システムを利用するものである。最後に、抽出された層は、ロール温度80℃のMDO(縦方向延伸(Machine Direction Orientation))で1.5倍延伸され、続いて128℃のTDO(横方向延伸(Transverse Direction Orientation))で2.0倍延伸された。MDOは、機械方向、又は材料が供給される方向に沿った延伸を意味し、TDOは、横方向、又は機械方向に対して90度の方向に沿った延伸を意味する。
【0038】
その後、ニップを通過して微多孔性層を分離し、デュアルタレット巻取機上で個々のロールとして巻き取られた。得られたバッテリーセパレータの厚さは約20μmであり、Gurleyの平均透気度は150秒/100ccであった。残留可塑剤は、熱重量分析から0.6%であると決定された。溶媒がハロゲン含有化合物を含まないので、得られたセパレータも残留ハロゲン含有化合物を含まない。
【0039】
図1及び
図2を参照すると、注型成形又は押出成形されたポリマー-可塑剤混合物20から形成された無孔性可塑剤充填フィルムは向流抽出器22に通される。溶媒貯蔵タンク24から供給され、流体弁26によって流量制御された溶媒は、フィルムの方向とは反対方向に向流抽出器22に流入する。抽出器22は第1の内部ゾーンで可塑剤-溶媒混合物を生成し、この混合物は蒸留ユニット28に輸送され、ここで可塑剤及び溶媒は再利用のために分離される。蒸留ユニット28は、精製された状態の溶媒凝縮物を生成する。精製された溶媒は、溶媒貯蔵タンク24から供給される溶媒と組み合わせて再利用するために、向流抽出器22の第2の内部ゾーンに戻される。溶媒を含むフィルムは向流抽出器22を出て、そして溶媒を蒸発させ、それによって溶媒蒸気を発生させるエアーナイフを備えた熱源である加熱乾燥器30に通される。加熱乾燥器30からは微多孔性膜32が出てくる。微多孔性膜は、ロール状に巻き取られる前に、さらに延伸又はアニールすることができる。
【0040】
図1の溶媒回収システムの実施形態では、加熱乾燥器30の運転によって生成された溶媒蒸気は、炭素床システム34を用いた吸着-脱着によって回収される。溶媒蒸気は活性炭上に蒸発し、活性炭は溶媒を吸着する。その後、蒸気を使って活性炭から溶媒を熱脱着し、これは貯蔵タンク24に送られる。
【0041】
図2の溶媒回収システムの実施形態では、加熱乾燥器30の運転によって生成された溶媒蒸気は、蒸気凝縮器システム36により回収される。溶媒蒸気は、溶媒蒸気から気化潜熱を抽出するために蒸気凝縮器システム36に入り、それによって溶媒を冷却及び凝縮させる。回収された溶媒は貯蔵タンク24に送られる。
【0042】
図1及び
図2は、流体弁26を通して向流抽出器22に接続された溶媒貯蔵タンク24の出口を示している。この構成は、回収された溶媒が可塑剤充填フィルム上を洗浄し、向流抽出器22を通過するシートからの可塑剤除去を継続する閉ループ溶媒回収システムの実施形態を実施する。
【0043】
場合によっては、溶媒の効率的な回収及び再利用のために、活性炭及び蒸気凝縮器溶媒回収システムを組み合わせて使用することが有利となり得る。蒸気が熱源として利用される場合、溶媒/水液相分離が回収プロセスの必要な部分となり得ることを当業者は理解するであろう。
【0044】
実施例3
ナフテン系可塑剤(140kg;ENTEK 800オイル;Calumet)をロスミキサー中に分注し、そこで撹拌し、脱気した。次に、以下を添加し、オイルと混合した:
64kg UHMWPE(分子量約500万g/モル)
32kg VHMWPE(分子量約100万g/モル)
32kg HMW-HDPE(分子量約60万g/モル)
1.2kg ステアリン酸Li
1.2kg 酸化防止剤
【0045】
この混合物を約40℃で、均一な47重量%のポリマースラリーが形成されるまでブレンドした。次に、このポリマースラリーを、直径103mmの共回転二軸スクリュー押出機に輸送し、約215℃の溶融温度を維持した。同時に、ヒュームドアルミナ/HDPE/オイルペレットを押出機に供給した。2.75mmのギャップを有する直径257mmの環状ダイに供給するメルトポンプに押出物を通した。ダイを通る処理量は230kg/時間であり、押出物を空気で膨張させ、直径約2250mmの二軸延伸オイル充填フィルムを作製し、次いで20m/分で上部ニップを通過させて気泡を崩壊させ、二重層を形成し、この二重層をその後サイドスリットし、2つの個別層を作成した。
【0046】
その後、個々のオイル充填層(厚さ約44um)をクランプで固定した金属フレームに保持した。次いで、オイル充填層の約200mm×約200mmの領域を、過剰量のIsoPar-Gに、溶媒を撹拌しながら室温で約15分間暴露した。その後、溶媒含有アルミニウム充填PEフィルムを循環空気オーブン中105℃で約10分間乾燥させた。その後、膜をフレームから取り外し、厚さ12um、平均ガーレー(Gurley)透気度約50秒/100ccであることを確認した。残留可塑剤は、熱重量分析によって0.8重量%であると決定された。溶媒がハロゲン含有化合物を含まないので、膜も残留ハロゲン含有化合物を含まない。
【0047】
実施例4
UHMWPE(37.4kg、約500万g/モル)、ステアリン酸リチウム(0.43kg)、酸化防止剤(0.37kg)、及びナフテン系可塑剤(132.6kg、100℃で約12cP;ENTEK 800オイル;Calumet)をロスミキサー中でブレンドして、22重量%ポリマースラリーを形成した。溶融温度を200℃以上に維持しながら、このスラリーを毎時170kgで二軸スクリュー押出機に輸送した。押出物はメルトポンプを通過し、2.75mmのギャップを有する直径257mmの環状ダイに供給された。押出物を空気で膨張させ、直径2000mmの二軸延伸フィルムを製造し、次いでこれを14.5m/分の速度で上部ニップを通過させて気泡を崩壊させ、二重層を形成した。崩壊した二層シートは両端でスリット開放し、IsoPar-Gを充填した抽出タンクに搬送して可塑剤を除去した。次に、抽出されたシートを100℃で機械方向(1.83倍)及び横方向(2.9倍)に順次延伸し(約1%弛緩)、28.5m/分で段ボール芯にロール状に巻き取った。残留可塑剤は熱重量分析によって0.4重量%であることが決定された。溶媒がハロゲン含有化合物を含まないため、抽出されたシートも残留ハロゲン含有化合物を含まなかった。
【0048】
製造されたセパレータの物理的特性を表IIIに示す。
【0049】
【0050】
実施例5
ポリマー粉末AからCを個々にアルミニウムパンに秤量し、次いで約0.5リットルのジクロロメチレン(DCM)中に懸濁させたガラス容器中のトレイに入れた。容器をガラス蓋で密閉し、ポリマー粉末を室温(19℃)で24時間、塩化メチレン蒸気を吸着/吸収させた。その後、容器から取り出した粉末試料を直ちに秤量し、重量増加を計算した。ヒュームフード内で30分間静置した後、再度重量を測定した。そのデータを以下の表IVに示す。
【0051】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立性微多孔性ポリオレフィン膜であって、
ポリマーと、約215℃より高い引火点及び約70~140℃のアニリン点を有する可塑剤との相分離から得られる、機械的完全性を提供するためにポリエチレンを含む半結晶質ポリマーマトリックスと;
約23℃より高い引火点及び前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点を有するハロゲンを含まない溶媒で前記可塑剤を抽出し、その後蒸発させることによって得られる相互接続孔と
を含む、自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項2】
前記ハロゲンを含まない溶媒が約38℃より高い引火点を有する、請求項1に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが延伸又は二軸延伸される、請求項1又は2に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項4】
前記可塑剤の溶媒抽出前に、前記ポリマーマトリックスが延伸又は二軸延伸される、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項5】
前記可塑剤の抽出及び前記溶媒の蒸発後に、前記ポリマーマトリックスがさらに延伸又は二軸延伸される、請求項4に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項6】
巻き取られる前にアニール処理又は熱安定化処理される、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスが、前記ポリマーマトリックス全体に分散されたフィラーをさらに含む、
請求項1又は2に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項8】
前記フィラーが、無機酸化物、カーボネート、水酸化物、若しくはそれらの混合物を含むか、又は前記フィラーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、若しくはそれらの混合物を含む、請求項7に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、少なくとも約50万g/モルの分子量を有するポリエチレンを含む、
請求項1又は2に記載の自立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項10】
約25ミクロン以下、又は約20ミクロン以下のバックウェブ厚さを含む、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項11】
約150ミクロン~約300ミクロンのバックウェブ厚さを含む、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項12】
約10~25重量%の残留可塑剤、又は約12~22重量%の残留可塑剤を含有する、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項13】
約0~1重量%の残留可塑剤を含有する、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項14】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を含む、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項15】
ハロゲン含有化合物を含まない、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項16】
前記ハロゲンを含まない溶媒が食品グレードの溶媒である、
請求項1又は2に記載の独立性微多孔性ポリオレフィン膜。
【請求項17】
ポリオレフィンと可塑剤とを溶融ブレンドして混合物を形成することと;
前記混合物を注型成形又は押出成形して無孔性シートを作成することと;
前記無孔性シートを冷却して、前記ポリオレフィンと前記可塑剤との相分離を誘導することと;
ハロゲンを含まない溶媒によって前記無孔性シートから可塑剤を抽出し、前記溶媒を蒸発させて微多孔性ポリオレフィン膜を形成することと
を含む微多孔性ポリオレフィン膜の製造方法であって、前記ハロゲンを含まない溶媒が、約23℃以上の引火点を含み、前記可塑剤の引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点を有する、微多孔性ポリオレフィン膜の製造方法。
【請求項18】
前記ポリオレフィンが、少なくとも約50万g/モルの分子量を有するポリエチレンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記可塑剤が、約215℃より高い引火点及び約70~140℃のアニリン点を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を含む、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
閉ループ、溶媒抽出、乾燥、及び炭素床回収システムを含む、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリオレフィンから前記可塑剤を溶媒抽出する前に、前記無孔性シートを延伸又は二軸延伸させることをさらに含む、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項23】
前記可塑剤の抽出及び溶媒蒸発の後に、前記微多孔性ポリオレフィン膜を延伸又は二軸延伸させることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
巻き取りの前に前記微多孔性ポリオレフィン膜をアニール又は熱安定化することをさらに含む、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項25】
前記微多孔性ポリオレフィン膜がハロゲン含有化合物を含まない、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項26】
前記微多孔性ポリオレフィン膜が、約25ミクロン以下、又は約20ミクロン以下のバックウェブ厚さを有する、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項27】
前記微多孔性ポリオレフィン膜が、約150ミクロン~約300ミクロンのバックウェブ厚さを有する、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が、前記混合物全体に分散されたフィラーをさらに含む、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項29】
前記フィラーが、無機酸化物、カーボネート、水酸化物、若しくはそれらの混合物を含むか、又は前記フィラーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、若しくはそれらの混合物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ハロゲンを含まない溶媒が食品グレード溶媒である、
請求項17又は18に記載の方法。
【請求項31】
ポリオレフィンと、約215℃より高い引火点及び約70~140℃のアニリン点を有する可塑剤との注型成形又は押出成形混合物から得られる、注型成形又は押出成形されたポリオレフィンシートと;
前記ポリオレフィンシート内に装填されたハロゲンを含まない溶媒と
を含む、溶媒含有シート。
【請求項32】
前記ポリオレフィンが、少なくとも約50万g/モルの分子量を有するポリエチレンを含む、請求項31に記載の溶媒含有シート。
【請求項33】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、約23℃より高い引火点と、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約50℃低い初期沸点とを含む、請求項31又は32に記載の溶媒含有シート。
【請求項34】
前記ハロゲンを含まない溶媒が、前記可塑剤の前記引火点よりも少なくとも約85℃低い初期沸点を含む、請求項33に記載の溶媒含有シート。
【請求項35】
前記ハロゲンを含まない溶媒が食品グレード溶媒である、
請求項31又は32に記載の溶媒含有シート。
【請求項36】
前記混合物が、前記混合物全体に分散されたフィラーをさらに含む、
請求項31又は32に記載の溶媒含有シート。
【請求項37】
前記フィラーが、無機酸化物、カーボネート、水酸化物、若しくはそれらの混合物を含むか、又は前記フィラーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マイカ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、若しくはそれらの混合物を含む、請求項36に記載の溶媒含有シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
Li-イオン電池、Li-金属電池、又は充電式Li-金属電池システム用に設計されたセパレータは、一般に、熱誘導相分離プロセスを用いて製造される。この場合、分子量約500,000g/モル~約1,000万g/モルの様々なグレードのポリエチレンが可塑剤と組み合わされ、次いでシートダイ又は環状ダイを通して押出成形され、オイル充填シートが形成される。このオイル充填シートは、その厚さを減少させ、機械方向及び横方向の両方の機械的特性を向上させるために、しばしば二軸配向される。次に、二軸配向されたシートを塩化メチレンの抽出浴に通して可塑剤を除去し、その後溶媒の蒸発に伴って孔が形成される。得られた電池セパレータは、典型的に、約3~25μmの範囲の厚さを有し、約40~65%の間の多孔率を有し、約1%未満の残留可塑剤を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
実施例1
UHMWPE(Celanese GUR 4150)、沈殿シリカ(PPG WB-2085)、及び副成分(酸化防止剤、可塑剤、及びカーボンブラック)を水平ミキサー中で組み合わせ、低速撹拌でブレンドして均一混合物を形成した。次に、ホットナフテン系可塑剤(ENTEK 800オイル;Calumet)を乾燥成分上に噴霧した。この混合物は58重量%のオイルを含有し、次に215℃の溶融温度で作動する96mm逆回転二軸スクリュー押出機(ENTEK Manufacturing Inc)に供給された。押出機のスロートでインラインで追加のプロセスオイルを添加し、最終的なオイル含量を65重量%にした。得られた塊をシートダイを通してカレンダーにし、リブパターンで200~300μmの厚さのエンボス加工を施した。2本の冷却ロール上を通過させた後、抽出のためにオイル充填シートを回収した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
その後、個々のオイル充填層(厚さ約44μm)をクランプで固定した金属フレームに保持した。次いで、オイル充填層の約200mm×約200mmの領域を、過剰量のIsoPar-Gに、溶媒を撹拌しながら室温で約15分間暴露した。その後、溶媒含有アルミニウム充填PEフィルムを循環空気オーブン中105℃で約10分間乾燥させた。その後、膜をフレームから取り外し、厚さ12μm、平均ガーレー(Gurley)透気度約50秒/100ccであることを確認した。残留可塑剤は、熱重量分析によって0.8重量%であると決定された。溶媒がハロゲン含有化合物を含まないので、膜も残留ハロゲン含有化合物を含まない。
【国際調査報告】