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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】コーティングされた紙物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240725BHJP
   C08F 218/08 20060101ALI20240725BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20240725BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240725BHJP
   C09D 131/04 20060101ALI20240725BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240725BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B32B27/10
C08F218/08
C08F8/12
B32B27/30 A
B32B27/30 Z
B32B27/30 102
C09D131/04
C09D133/04
C09D129/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579530
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022034205
(87)【国際公開番号】W WO2023009243
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,603
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シャンイー
(72)【発明者】
【氏名】ローパー ザ サード、ジョン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アインスラ、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】カーター、マシュー
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AJ11B
4F100AK21B
4F100AK22B
4F100AK25B
4F100AL01B
4F100CA02B
4F100CA13B
4F100CA18B
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100YY00B
4J038CF091
4J038NA04
4J038NA08
4J038PB04
4J038PC10
4J100AD02Q
4J100AG04P
4J100AL03R
4J100AL04R
4J100BA03H
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA31
4J100FA20
4J100HA09
4J100HB39
4J100HE12
4J100JA01
(57)【要約】
本発明は、1g/m~20g/mの範囲の乾燥コーティング重量を有するフィルムと重ね合わされた紙又は板紙基材を含む物品であって、フィルムが、ビニルエステル、ビニルアルコール、及びアクリレートモノマーの構造単位を含むコポリマーを含む、物品に関する。コーティングは、耐油性及び耐グリース性、鉱油バリア性能、並びにヒートシール性を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、1g/m~20g/mの範囲の乾燥コーティング重量を有するフィルムと重ね合わされた紙又は板紙基材を含み、
前記フィルムが、前記フィルムの重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの1つ以上のポリマーを含み、少なくとも50パーセントの前記1つ以上のポリマーが、40~96重量パーセントのビニルエステルの構造単位と、2~50重量パーセントのビニルアルコールの構造単位と、0.5~30重量パーセントのアクリレートモノマーの構造単位と、を含む、物品。
【請求項2】
~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマーが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートからなる群から選択され、前記ビニルエステルが、酢酸ビニルである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリマーが、前記ポリマーの重量に基づいて、8~50重量パーセントのビニルアルコールの構造単位と、1~25重量パーセントの前記C~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマーの構造単位と、を含む、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
ビニルアルコールの構造単位の濃度が、13~40重量パーセントの範囲である場合、前記C~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマーの構造単位の濃度が、3~20重量パーセントの範囲である、請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記C~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマーが、n-ブチルアクリレートである、請求項3に記載の物品。
【請求項6】
少なくとも65重量パーセントの1つ以上のポリマーが、酢酸ビニル、ビニルアルコール、及び前記C~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマーの構造単位を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記フィルムが、a)60~95重量パーセントの酢酸ビニル、ビニルアルコール、及び前記アクリレートモノマーの構造単位と、b)5~40重量パーセントの酢酸アニオンと、を含み、前記重量パーセント範囲が、前記酢酸アニオンと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、及び前記アクリレートモノマーの前記構造単位との重量に基づく、請求項2に記載の物品。
【請求項8】
~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマーが、n-ブチルアクリレートである、請求項4に記載の物品。
【請求項9】
前記コーティングが、界面活性剤、消泡剤、ワックス、分散剤、レオロジー調整剤、顔料、架橋剤、及び着色剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の材料と、前記フィルムの重量に基づいて、5重量パーセント未満の蛍光増白剤と、を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
組成物が、前記フィルムの重量に基づいて、1重量パーセント未満の蛍光増白剤を更に含む、請求項1に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、コーティングされた紙又は板紙物品に関し、より具体的には、部分的に加水分解されたポリ(ビニルエステル-co-アクリレート)でコーティングされた紙又は板紙に関する。紙及び板紙は、紙の再生可能性及び生分解性に起因して、プラスチック包装の持続可能な代替物として包装用途においてますます使用されている。多くの用途において、紙及び板紙は、これらの基材を通る油、グリース、湿気、及び酸素の浸透を低減させるために、バリア材料でコーティングされる必要がある。耐油性及び耐グリース性(oil and grease resistance、OGR)を達成することは、サンドウィッチのラップ、ポップコーンの袋、及びベーカリー用の箱などの食品サービス用途において使用される紙及び板紙包装体にとって不可欠である。これらの用途のために設計されたバリアコーティングは、典型的には、下層の紙基材に油が飽和しないように遮断するために使用され、これは、材料の外観を変化させ、包装の構造的完全性に悪影響を及ぼし得る。
【0002】
従来のOGR紙は、パーフルオロカーボン添加剤で処理されており、これは、非常に効果的なバリア材料であるが、規制上の厳しい監視下に置かれている。ポリエチレンなどの押出プラスチックフィルムもまた、紙及び板紙をコーティングするために使用されており、良好なバリア性能を示すことが見出されている。しかしながら、押出コーティングは、オフマシン塗布を必要とし、不必要に厚いフィルムを作製し、それによってコストを増加させ、これらのコーティングされた紙製品の再パルプ化性及びリサイクル性を制限する。
【0003】
水性分散液コーティングは、フルオロケミカル及びポリエチレンコーティングに対する環境に配慮した代替物であり、それらは、紙包装体の改善された再パルプ化性及びリサイクル性を可能にするために、低いコーティング重量で塗布され得る。アクリル、スチレン-アクリル(styrene-acrylic、SA)、及びスチレン-ブタジエン(styrene-butadiene、SB)ポリマーに基づく合成ラテックスは、バリアコーティング用途において最も一般的に使用される材料である。これらの組成物は、紙及び板紙基材に優れたOGRを提供し得るが、紙製品の生成及び用途に重要である他のコーティング特性、例えば可撓性(又は折り曲げ性)、耐ブロッキング性、及びヒートシール性が多くの場合不十分である。ポリ(酢酸ビニル)(poly(vinyl acetate)、PVAc)分散液は、紙産業においてコーティング組成物中で従来使用されてきた合成ラテックスの種類である。これらのラテックスは、SA及びSBタイプの結着剤よりも低コスト、熱及び光安定性、接着性、及び耐ブリスター性などの利点を提供する。しかしながら、PVAcは、包装用途に必要とされる良好なバリア特性を提供しない。したがって、許容可能な耐油性及び耐グリース性、並びにバリア特性を有する、費用効果が高く、環境に配慮した物品を開発することは、コーティングされた紙及び板紙物品の技術分野における進歩であろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、1g/m~20g/mの範囲の乾燥コーティング重量を有するフィルムと重ね合わされた紙又は板紙基材を含む物品であって、
フィルムが、フィルムの重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの1つ以上のポリマーを含み、少なくとも50パーセントの1つ以上のポリマーが、40~96重量パーセントのビニルエステルの構造単位と、2~50重量パーセントのビニルアルコールの構造単位と、0.5~30重量パーセントのアクリレートモノマーの構造単位と、を含む、物品を提供することによって、当該技術分野におけるニーズに対処する。
【0005】
本発明の物品は、耐油性及び耐グリース性、鉱油バリア性能、並びにヒートシール性を有することが示された。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、1g/m~20g/mの範囲の乾燥コーティング重量を有するフィルムと重ね合わされた紙又は板紙基材を含む物品であって、
フィルムが、フィルムの重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの1つ以上のポリマーを含み、少なくとも50パーセントの1つ以上のポリマーが、40~96重量パーセントのビニルエステルの構造単位と、2~50重量パーセントのビニルアルコールの構造単位と、0.5~30重量パーセントのアクリレートモノマーの構造単位と、を含む、物品である。
【0007】
本明細書で使用される場合、指定のモノマーの「構造単位」という用語は、重合後のモノマーの残存物を指す。例えば、ビニルアルコールの構造単位は、図示のとおりであり、
【0008】
【化1】

式中、点線は、構造単位のポリマー骨格への結合点を表す。
【0009】
重ね合わされたフィルムは、ビニルエステル、ビニルアルコール、及びC~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートの構造単位を含むポリマー粒子の水性分散液から形成される。水性分散液は、有利なことには、2つの工程において調整される。第1の工程では、ビニルエステル及びC~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートが、乳化重合条件下で共重合して、ポリ(ビニルエステル-co-アクリレート)コポリマー粒子の分散液を形成し、次いで、コポリマーが、塩基で部分的に加水分解されて、ビニルエステル、ビニルアルコール、及びアクリレートの構造単位を含むポリマー粒子の分散液を形成する。したがって、ビニルアルコールの構造単位は、出発物質としてビニルアルコールを必要としない。
【0010】
カルボン酸モノマー及びスルホン酸モノマー又はこれらの塩を含む追加のモノマーが、重合反応において使用され得る。好適なカルボン酸モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、及びマレイン酸が挙げられ、好適なスルホン酸モノマーの例としては、2-スルホエチルアクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、2-スルホプロピルアクリレート、2-スルホプロピルメタクリレート、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及び2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、並びにこれらの塩が挙げられる。カルボン酸モノマーの構造単位の濃度は、典型的には、ポリマー粒子の重量に基づいて、0.1~5重量パーセントの範囲であり、スルホン酸モノマーの構造単位の濃度もまた、典型的には、ポリマー粒子の重量に基づいて、0.1~5重量パーセントの範囲である。
【0011】
多エチレン性不飽和モノマーも、乳化重合反応において使用され得、その濃度は、典型的には、モノマーの重量に基づいて、0.1~5重量パーセントの範囲である。好適な多エチレン性不飽和モノマーの例としては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、及びジアリルフタレートが挙げられる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「アクリレートモノマー」という用語は、アクリレート又はメタクリレートモノマーを指す。好適なC~C直鎖又は分岐アルキルアクリレートモノマー(アルキルアクリレートモノマー)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0013】
ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルが挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。フィルム中のビニルエステルの構造単位の濃度は、コポリマーの混合物であるポリマーの重量に基づいて、40~96重量パーセントの範囲であり、ビニルアルコールの構造単位の濃度は、ポリマーの重量に基づいて、2重量パーセントから、又は5重量パーセントから、又は8重量パーセントから、50重量パーセントまで、又は40重量パーセントまでの範囲である。アルキルアクリレートモノマーの構造単位の濃度は、0.5重量パーセントから、又は1重量パーセントから、30重量パーセントまで、又は25重量パーセントまでの範囲であるが、ビニルアルコールの構造単位のより高い濃度でのより狭い範囲にわたって最適であることが見出されており、より具体的には、アルキルアクリレートモノマーの構造単位の濃度は、ビニルアルコールの構造単位の濃度が、13重量パーセントから、又は20重量パーセントから、40重量パーセントまでの範囲である場合、ポリマーの重量に基づいて、3重量パーセントから、又は4重量パーセントから、20重量パーセントまでの範囲である。
【0014】
ビニルエステル、ビニルアルコール、及びアクリレートの構造単位を含むポリマー粒子の分散液が、酢酸ビニルとアクリレートモノマーとのコポリマーを塩基性条件下で加水分解することによって調製される場合、フィルムは、加水分解副生成物として形成されるカルボン酸の塩を更に含み得る。必要に応じて、塩は、組成物から除去され得る。ビニルエステルが酢酸ビニルである場合、フィルムは、酢酸アニオンと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリレートモノマーの構造単位との重量に基づいて、5重量パーセントから、又は8重量パーセントから、40重量パーセントまで、又は35重量パーセントまでの範囲の濃度で酢酸アニオンを含み得る。酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、及び酢酸アンモニウムは、酢酸の塩の例であり、酢酸ナトリウムが、最も一般的である。
【0015】
フィルムは、界面活性剤、消泡剤、ワックス、分散剤、レオロジー調整剤、顔料、架橋剤、及び着色剤などの追加の材料を含み得る。フィルム中に蛍光増白剤を含めることは可能であるが、コーティングされた紙又は板紙物品の最終使用用途は、食品包装の分野において最も一般的であるので、このような薬剤を使用しないことが最良である。したがって、蛍光増白剤の濃度は、フィルムの重量に基づいて、好ましくは5重量パーセント未満、より好ましくは1重量パーセント未満、最も好ましくは0重量パーセントである。
【0016】
本発明の物品は、有利なことには、水性組成物を紙又は板紙基材に所望のコーティング重量を達成するのに十分な量で塗布し、次いで、水分が除去されるまで組成物を高温で乾燥させることによって調製される。フィルムは、フィルムの重量に基づいて、少なくとも50重量パーセント、又は少なくとも65重量パーセント、又は少なくとも75重量パーセント、又は少なくとも85重量パーセント、又は少なくとも95重量パーセントの1つ以上のポリマーが、ビニルエステル、ビニルアルコール、及びアクリレートモノマーの構造単位を含む、1つ以上のポリマーを含む。フィルムは、アクリル、スチレン-ブタジエン、及びスチレン-アクリルポリマーなどの他のポリマーを含み得る。あるいは、フィルムは、酢酸アニオンと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、及びアクリレートモノマーの構造単位との重量に基づいて、60重量パーセントから、又は65重量パーセントから、95重量パーセントまで、又は92重量パーセントまでの好ましくは酢酸ビニル、ビニルアルコール、及びアクリレートモノマーの構造単位と、5重量パーセントから、又は8重量パーセントから、40重量パーセントまで、又は35重量パーセントまでの酢酸アニオンと、を含む。コーティングされた紙又は板紙物品は、耐油バリア性及び耐グリースバリア性を示すことが示されている。
【実施例
【0017】
中間体実施例1-酢酸ビニル-ブチルアクリレートラテックスの調製
脱イオン水(783.0g)を5Lの4つ口丸底フラスコに充填し、N下で60℃に加熱した。別個の容器内で、脱イオン水(451.0g)、ビニルスルホン酸ナトリウム(32.0g、水中25%)、酢酸ナトリウム(4.0g)、TERGITOL(商標)15-S-40界面活性剤(The Dow Chemical Company又はその関連会社の商標、22.9g、水中70%)、Disponil FES 993乳化剤(106.6g、水中30%)、氷アクリル酸(8.0g)、ブチルアクリレート(32.0g)、及び酢酸ビニル(1552.0g)を含有するモノマーエマルションを調製した。モノマーエマルションの一部(44.2g)を、すすぎ(16.0gの水)とともに反応器に添加し、続いて、過硫酸アンモニウム(8.0gの水中1.5g)を、すすぎ(8.0gの水)とともに添加し、続いて、亜硫酸水素ナトリウム(0.3g)、硫酸第一鉄七水和物(17mg)、及び亜ジチオン酸ナトリウム(0.6g)を、すすぎ(8.0gの水)とともに8.0gの水中で溶解した。2分間保持した後、モノマーエマルションの残部を120分間かけて反応器に供給した。過硫酸アンモニウム(4.9g)及びt-ブチルヒドロペルオキシド(2.0g)の120.0gの水中溶液、並びに重亜硫酸ナトリウムの溶液(120.0gの水中3.2g)を、64~66℃の範囲の温度で130分間にわたって反応器に同時に供給した。全ての供給及びすすぎが完了したら、反応器を60℃に冷却し、その後、過硫酸アンモニウム(0.5g)及びt-ブチルヒドロペルオキシド(1.7g)の48.0gの水中溶液、並びに重亜硫酸ナトリウムの溶液(48.0gの水中2.7g)を、30分間にわたって同時に供給した。次いで、反応器を室温に冷却し、水酸化アンモニウム(6.9g、28重量%)を滴下添加して、pHを6.5~7.5に上昇させた。固形分含有量は、48重量%であることが判明した。
【0018】
中間体実施例2-酢酸ビニルとブチルアクリレートとのコポリマーの部分加水分解
中間体1ラテックスのラテックスの一部(300g、48%固形分)を室温でジャーに入れ、その後、水酸化ナトリウム溶液(水中10重量%)を撹拌したラテックスに1時間にわたって滴下添加して、目標加水分解レベルを達成した。部分的に加水分解されたラテックスのpHは、9.0~10.0の範囲であり、固形分は、加水分解度に応じて27%~46%の範囲であった。試料を室温で保存し、加水分解度を、以下の節に記載されるように、アセテート基の開裂を介して生成された酢酸のHPLC分析によって決定した。
【0019】
酢酸の高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatographic、HPLC)分析
Phenomenex Rezex ROA Organic Acid H+ 240×4.6mmカラム(8μm粒子径、8%架橋スルホン化スチレンジビニルベンゼン)、Phenomenex Carbo-H4カラムガード、及び210nmの波長で動作するUV検出器を装備したAgilent 1100 Series HPLCを使用して、HPLC分析を実行した。加水分解されたラテックス試料を10倍に希釈し、100,000rpmで15分間遠心分離した後、上清を0.45μmのPVDFシリンジフィルターを通してろ過した。試料注入量は、5μLであり、0.4mL/分の流量及び35℃のカラム温度で2.5mMのリン酸を用いて分離を実行した。酢酸を使用して、装置を、50~10,000ppmで外部較正した。
【0020】
加水分解されたラテックスの安定性を評価し、表1に示した。酢酸ビニル(vinyl acetate、VA)、ブチルアクリレート(butyl acrylate、BA)、及びビニルアルコールの構造単位の重量パーセンテージは、ポリマーの重量に基づき、酢酸アニオン(AcO)の重量パーセンテージは、加水分解されたコポリマー及びAcOの総固形分の重量に基づく。6ヶ月後に未固化のままであった試料は、安定性試験に合格し、3ヶ月以内に固化した試料は、試験に不合格であった。
【0021】
【表1】
【0022】
データは、ラテックスコロイド安定性を達成するためにアクリレートを含めることの重要性を示す。
【0023】
コーティングされた基材の調製
実施例1~7のラテックスをUPM Brilliant Pro紙(坪量:62g/m)に、5±0.3g/mの乾燥コーティング重量を達成するように、様々な巻線ロッドを装備した自動コーター(K Control Coater)を使用して機械方向に塗布した。試料を100℃で2分間乾燥させた。コーティングされた紙を、TAPPI 402標準に従って、温度制御された部屋内で少なくとも1時間コンディショニングした。
【0024】
3Mキット試験
コーティングされた紙試料を、TAPPI法T559-cm-12を使用して、キットスコアの拡大範囲を用いて、耐油性及び耐グリース性について試験した。様々な比のヒマシ油、トルエン、及びヘプタンから構成されたキット溶液を、コーティングされた基材に滴下塗布し、15秒間放置し、次いで拭き取った。溶媒ブレークスルー又は基材変色のいずれの発生も、そのKit溶液について不合格として分類した。所与の試料についてのキットスコアを、そのコーティングされた基材上を通過した最も高い(最もアグレッシブな)キット溶液の数を使用して割り当てた。TAPPI法において、キットスコアは、キット溶液の組成物について1~12の範囲である。加えて、以下の表2に示されるように、16までのキット値を割り当てるために、よりアグレッシブな溶液を調製した。各試料を二重に試験した。
【0025】
【表2】
【0026】
ヘキサン蒸気透過率(Hexane Vapor Transmission Rate、HVTR)
実験を実行する前に、コーティングされた紙試料をドラフト内で一晩コンディショニングした。コーティングされた紙基材を2.5インチの円に裁断した。試薬グレードのn-ヘキサン(5g)を、ピペットを使用して透過性カップに入れた。試料のコーティング側を下にしてゴムガスケットの上に置き、蓋を締めて、試料を透過性カップに固定した。試料が取り付けられた透過性カップの初期質量を記録し、24時間後にカップを再び秤量した。ヘキサン蒸気透過率を計算するために、24時間後の重量を初期重量から差し引き、次いで0.000212(曝露された試料の面積)で割った。計算は、g/m・日の単位でヘキサン蒸気透過率を提供する。
【0027】
ヒートシール性
コーティングされた紙をヒートシールする能力を、単相Sentinel Laboratory Heat Sealerを使用して評価した。コーティングされた試料を2インチ×4インチの長方形に裁断し、190℃の温度及び100psiの圧力で0.5秒間、ヒートシーラーのクランプ内にコーティングされた側をコーティングされた側に置いた。基材を室温まで冷却した後、2枚のシートを分離した。繊維断裂を伴って分離した試料を合格とみなし、一方、繊維断裂を伴わずに分離した試料を不合格とみなした。試料を二重に試験した。表3は、様々なコーティングのバリア性能を示す。
【0028】
【表3】
【0029】
データは、部分的に加水分解されていないラテックス組成物から調製されたコーティングと比較して、部分的に加水分解されたコポリマーから調製されたコーティングについて、改善された耐油性及び耐グリース性、鉱油バリア(より低いHVTR)、並びにヒートシール性を示す。
【国際調査報告】