(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】扁平柔軟性の複合材料の製造方法、および対応する扁平柔軟性の複合材料
(51)【国際特許分類】
B23K 26/364 20140101AFI20240725BHJP
B32B 21/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B23K26/364
B32B21/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023580695
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022068839
(87)【国際公開番号】W WO2023011834
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021120097.0
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523488860
【氏名又は名称】エヌユーオー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】アントネッリ,マルセロ
(72)【発明者】
【氏名】アントネッリ,マルタ
【テーマコード(参考)】
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168CB04
4E168CB07
4E168EA15
4E168HA01
4E168JA18
4F100AP02B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CC00C
4F100DD05B
4F100DG01A
4F100GB07
4F100GB33
4F100GB72
4F100GB81
4F100HB00
4F100JK17A
(57)【要約】
扁平柔軟性の複合材料(10)の製造方法が提案され、複合材料(10)は、繊維素材から成る支持体層と、これに接合された、木製ベニヤから成るカバー層とを有し、カバー層の木製ベニヤにはレーザ彫刻によって溝構造体が彫刻される。その際に、彫刻すべき構造体が作成され、レーザ彫刻装置(200)の制御装置に読み込まれ、複合材料(10)が作業台(202)の上に位置決めされ、制御装置に接続されたレーザヘッド(183a,183b)が作動され、これにより構造体がカバー層の木製ベニヤに彫刻される。レーザ彫刻装置(200)の制御装置に接続された少なくとも2つのレーザヘッド(183a,183b)が作動され、これによりそれぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビームによって構造体が、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた、カバー層の木製ベニヤの隣接する領域に彫刻され、この場合、レーザヘッド(183a,183b)は、複合材料(10)の隣接する2つの領域の重複部分において構造体が、それぞれ一方または他方のレーザヘッド(183a,183b)のレーザビームによりランダムにカバー層の木製ベニヤに彫刻されるように制御される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平柔軟性の複合材料(10)の製造方法であって、前記複合材料は、特に繊維素材の形態の柔軟性材料から成る支持体層(12)と、これに接合されこれより剛性である、木製ベニヤから成るカバー層とを有し、この場合、前記カバー層(11)の前記木製ベニヤにはレーザ彫刻によって複数の溝(265a,265b,265c,265d)の形態に構成された構造体が彫刻され、これにより前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの柔軟性を高めており、当該製造方法は、
-前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻すべき構造体(26,260)を作成し、当該構造体(26,260)をプログラム技術的に設計されたレーザ彫刻装置(200)の制御装置に読み込むステップ;
-前記複合材料(10)を前記レーザ彫刻装置(200)の作業台(202)の上に、前記複合材料の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤが前記作業台(202)とは反対の側に存在するように配置するステップ;および
-前記制御装置に接続された、前記レーザ彫刻装置(200)の少なくとも1つのレーザヘッド(18,183a,183b)を作動し、前記構造体(26,260)を前記複合材料(10)の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに、前記レーザヘッド(18,183a,183b)により形成されたレーザビーム(181a,181b)によって彫刻するステップ、を含む、製造方法において、
前記制御装置に接続された、前記レーザ彫刻装置(200)の少なくとも2つのレーザヘッド(183a,183b)を作動させて、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)によって前記構造体(26,260)を、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた、前記複合材料(10)の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの隣接する領域(B1,B2)に同時に彫刻し、この場合、前記レーザヘッド(18,183a,183b)は、プログラム技術的に、前記複合材料(10)の前記隣接する領域(B1,B2)の第1の重複部分(U1)において、前記構造体(26,260)が、前記レーザヘッド(183a,183b)の一方のレーザビーム(181a,181b)により部分的に、前記レーザヘッド(183a,183b)の他方のレーザビーム(181a,181b)により部分的にランダムに前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻されるように制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記構造体(26,260)は、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた、前記複合材料(10)の2つの隣接する領域(B1,B2)の間に少なくとも部分的に延びる溝(265a,265b,265c,265d)の形態で前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻され、この場合、一方のレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により形成された溝(265a,265b,265c,265d)の始点ないし終点(261,262,263,264)、並びに他方のレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により形成された溝(265a,265b,265c,265d)の終点ないし始点は、前記第1の重複部分(U1)においてランダムに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の溝(265a,265b,265c,265d)の形態で前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻される構造体(26,260)は、前記支持体層(12)が実質的に無傷のままであり、これに対して前記カバー層(11)の前記木製ベニヤは少なくとも部分的に、または実質的に完全に切断されるように彫刻されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ彫刻装置(200)の前記作業台(202)は前記複合材料(10)と共に特に実施的に連続的にまたは半連続的に、前記構造体(26,260)を前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの隣接する領域(B1,B2)に連続的に彫刻するために、前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように移動され、この場合、前記作業台(202)の移動方向(V)は、前記レーザヘッド(183a,183b)の間の前記第1の重複部分(U1)の伸長方向に対して実質的に平行に選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記作業台(202)の移動は、前記レーザヘッド(183a,183b)の制御装置に接続された、前記作業台(202)の駆動部が前記作業台(202)を前記構造体(26,260)の加工状態に応じて移動させることにより、プログラム技術的に前記レーザヘッド(18,183a,183b)と同期させることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作業台(202)は、
-前記複合材料(10)を収容するのに適したキャリッジであって、電動駆動部により駆動されて、ガイド(201)に沿って前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように案内されるキャリッジを有するか、または
-前記複合材料(10)を収容するのに適した、特に周回するキャリヤベルト形態のベルトコンベヤであって、電動駆動部により駆動されて前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように案内されるベルトコンベヤを含むか、または
-前記複合材料(10)を収容するのに適した、平行に配置された複数のロールまたはドラムを備えるロールウェブであって、前記ロールまたはドラムのうちの幾つかが電動駆動部によって回転駆動されて、前記複合材料(10)が前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように案内される、ロールウェブを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
それぞれのレーザヘッド(183a,183b)は、前記作業台(202)の移動方向(V)に対して実質的に直角に延びる、それぞれ同じレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた複合材料(10)の隣接する領域(B1,B2)の第2の重複部分(U2)において、前記構造体(26,260)がそれぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビームにより、前記作業台(202)の移動工程の前に部分的に、前記作業台(202)の移動工程の後に部分的にランダムに前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻されるようにプログラム技術的に制御されることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記構造体(26,260)は、それぞれ同じレーザヘッド(18,183a,183b)に割り当てられた前記複合材料(10)の隣接する2つの領域(B1,B2)の間に少なくとも部分的に延びる溝(265a,265b,265c,265d)の形態で前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻され、この場合、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により、前記作業台(202)の移動工程の前に形成された溝(265a,265b、265c、265d)の始点ないし終点(261,262,263,264)、並びにそれぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により、前記作業台(202)の移動工程の後に形成された溝(265a,265b、265c、265d)の終点ないし始点(261,262,263,264)は、前記第2の重複部分(U2)においてランダムに設定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複合材料(10)は、少なくとも前記構造体(26,260)が前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻される間、前記作業台(202)に吸引されることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザ彫刻装置(200)は、少なくとも2つの定置のガルバノメトリックレーザヘッド(18,183a,183b)を有し、該ガルバノメトリックレーザヘッドは、前記制御装置に接続された少なくとも1つのミラー(19)および/またはレンズを有し、前記レーザヘッド(18,183a,183b)は前記制御装置によってプログラム技術的に、前記ミラー(19)および/またはレンズが前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻すべき構造体(26,260)に対応して移動されるように制御されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザヘッド(18,183a,183b)は、前記複合材料(10)の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの表面から、10cm~150cm、特に30cm~130cm、好適には50cm~110cmの間隔で配置されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カバー層(11)の前記木製ベニヤには、レーザ彫刻後に塗料層が施与されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
扁平柔軟性の複合材料(10)であって、特に繊維素材の形態の柔軟性の材料から成る支持体層(12)と、該支持体層に接合されておりこれよりも剛性の、木製ベニヤから成るカバー層(11)とを有し、前記カバー層(11)の前記木製ベニヤは、当該カバー層(11)の前記木製ベニヤの柔軟性を高めるために、複数の溝の形態に形成され、かつレーザ彫刻によって彫刻された構造体(26,260)を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に従って製造された複合材料。
【請求項14】
前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの前記構造体(26,260)は、前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの実質的に全表面にわたって均等に延びていることを特徴とする請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻された前記構造体(26,260)の前記複数の溝は、
-前記カバー層(11)の前記木製ベニヤを少なくとも部分的にまたは実質的に完全に切断し、これに対して前記支持体層(12)は特に実質的に無傷のままであり;および/または
-実質的に均等な幅;および/または
-実質的に均等な深さを有することを特徴とする請求項13または14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記カバー層(11)の前記木製ベニヤには、塗料層が施与されていることを特徴とする請求項13~15のいずれか一項に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平柔軟性の複合材料の製造方法に関するものであり、複合材料は、特に繊維素材の形態の柔軟性材料から成る支持体層と、これに接合されこれより剛性である、木製ベニヤから成るカバー層とを有する。この場合、カバー層の木製ベニヤにはレーザ彫刻によって複数の溝の形態に構成された構造体が彫刻され、これによりカバー層の木製ベニヤの柔軟性を高めている。当該製造方法は、
-カバー層の木製ベニヤに彫刻すべき構造体を作成し、その構造体をプログラム技術的に設計されたレーザ彫刻装置の制御装置に読み込むステップ;
-複合材料をレーザ彫刻装置の作業台の上に、複合材料のカバー層の木製ベニヤが作業台とは反対の側に存在するように配置するステップ;および
-制御装置に接続されたレーザ彫刻装置の少なくとも1つのレーザヘッドを作動し、構造体を複合材料のカバー層の木製ベニヤに、レーザヘッドにより形成されたレーザビームによって彫刻するステップ、を含む。
【0002】
本発明はさらに、このようにして製造された扁平柔軟性の複合材料に関するものであり、複合材料は、特に繊維素材の形態の柔軟性材料から成る支持体層と、これに接合されこれより剛性である、木製ベニヤから成るカバー層とを有する。この場合、カバー層の木製ベニヤは、複数の溝の形態に構成され、かつレーザ彫刻によって彫刻された構造体を有する。
【背景技術】
【0003】
この種の複合材料は公知であり、一方では、通常は織布、ニット、多軸織物、メリヤス、フリースなどの繊維素材から形成された柔軟性材料から成る支持体層を含む。より剛性のカバー層は装飾層として用いられ、主に木材、特に本物の木製ベニヤから成り、例えば約0.1mm~約1mm、特に約0.25mm~約0.75mmの厚さを有することができ、通常は支持体層に接着されている。ここで、カバー層は、例えば接着層を介装しながら支持体層上に積層される。カバー層の木製ベニヤには、複数の溝の形態に構成された構造体が設けられており、この構造体は、レーザ彫刻によって木製ベニヤに彫刻され、カバー層に一方では美的な全体印象を与え、他方ではカバー層の、特に繊維支持体層よりも剛性の木製ベニヤの柔軟性を向上させるために用いられる。微細なレーザ彫刻がカバー層の木製ベニヤに施され、それにより、複合材料全体に非常に高い、革または繊維素材に匹敵する柔軟性と、同時に非常に高い機械的強度が付与され、その結果、同種の複合材料が、多数の適用分野に、例えば衣類のために、装飾素材として家具、住宅または車両の内装部品の必ずしも平坦ではない可視面に、椅子家具のカバーに、天幕、カーテン、壁装飾、天井装飾、床装飾等のために提供される。
【0004】
特許文献1は、繊維組織およびこれに接着された木製のカバー層から成る支持体層を備える扁平柔軟性の複合材料の同種の製造方法を記述しており、ここでは、予め製造された複合材料のカバー層の木製ベニヤに、レーザ彫刻によって一体的溝パターンから成る所望の構造体が付与される。
【0005】
実際にはこれは、複数の溝の形態に形成された、カバー層の木製ベニヤの構造体をレーザ彫刻によって取り付けることが、非常に技術的な挑戦であることを示している。なぜなら、木製ベニヤに彫刻される構造体の溝は、美的な理由からも、複合材料の高い機械的安定性の観点でも、可及的に均等な、しかし好適には例えば約10μm~約100μmの範囲の非常に細い幅と、可及的に均等な深さとを有するべきだからである。これは、カバー層の木製ベニヤを少なくとも部分的に、またはほぼ完全に切断し、その一方で支持体層を実質的に無傷に留めるためである。さらに、溝構造体が、高精度でカバー層の木製ベニヤの全表面にわたって実質的に均等に延在し、製造技術に起因する欠陥個所が光学的に識別不能であることが望まれる。
【0006】
前述の要件は、特にカバー層の木製ベニヤの寸法が増加するにつれて、いくつかの理由から、これまで満足のいく形で満たされていない。したがって例えば、レーザヘッドをプログラム技術的に制御したやり方で、カバー層の木製ベニヤの幅にわたって微細機械的に変位させる試みがなされたが、このことは、構造的にも、エネルギーと時間が掛かる点でも非常に煩雑であることが判明した。その代わりに、溝構造体をガルバノメトリックレーザを用いてカバー層の木製ベニヤに彫刻することが試みられた。レーザは、複合材料を基準にして定置保持されるが、プログラム技術的に制御するやり方で変位可能なミラーを、レーザビームを所望の構造体に相応して偏向するために有する。このようなガルバノメトリックレーザヘッドは、従来の平面に沿って変位可能なレーザヘッドと比較して格段に高い効率を有し、それぞれの構造体を、特に約10~65倍も高速にカバー層の木製ベニヤに彫刻することができる一方で、この場合には、ガルバノメトリックレーザヘッドを、特にカバー層が比較的大面積である場合にはその縁領域においてレーザビームの非常に傾斜した入射角が生じるため、カバー層の木製ベニヤにあまり接近して配置することができないという問題が生じる。そのため、カバー層への侵入深さが小さいことにより構造体の幅が(過度に)広く不鮮明になってしまう。その結果、美的で高価値かつ一体的な構造体をカバー層の全表面にわたって得ることができず、さらに、カバー層の有機材料の局所的な蒸発によりレーザヘッドが汚染され、頻繁な洗浄が必要になるおそれも生じる。このことは、レーザ彫刻装置の定期的な停止時間につながる。他方では、ガルバノメトリックレーザヘッドを木製ベニヤから大きく離して配置することもできない。なぜならこの場合には、ビーム長が増大することに伴うエネルギー散逸を勘案するためにエネルギー消費が増大する他に、特に、構造体を非常に微細な溝の形態で精確にカバー層の木製ベニヤに取り付けることができないからである。なぜならレーザビームが、ビーム長が増大するにつれ、平坦化し、拡張するからである。
【0007】
さらに別の適用目的で複数のレーザヘッドを有するレーザ彫刻装置が公知である。例えば特許文献2には、2つのガルバノメトリックレーザヘッドを有するレーザ彫刻装置が記載されている。それらのレーザビームは、制御されて変位可能なミラーによって同時に、しかし互いに独立して、ワークピースに異なる個所で文字を付するためにワークピースの異なる作業領域に集束することができる。しかしながら十分に一体的な構造体を同種の複合体のカバー層の木製ベニヤに取り付けることは、このやり方ではせいぜい条件付きでしか可能でない。なぜなら、それぞれのレーザヘッドのレーザビームにより形成された構造体部分間の移行部が光学的に識別可能であり、そのため美的要求を満たすことができないからである。対応してこのことは、特許文献3から公知の、複数のラインから形成された構造体を作製するためのレーザ彫刻方法にも当てはまり、この方法は、それぞれのレーザに割り当てられたそれぞれの作業領域を有する2つのレーザの使用を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2776240号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19634190号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0272961号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基礎とする課題は、冒頭に述べた形式の扁平柔軟性の複合材料の製造方法を、前記の欠点を少なくとも十分に回避しつつ、簡単かつコスト的に有利なやり方で、一体的で均質な構造体をカバー層の木製ベニヤの全表面にわたって時間効率的かつエネルギー効率的に彫刻することが、複合材料のサイズが大きくても非常に高精度でもって可能であるようにさらに発展させることである。本発明はさらに、冒頭に述べた形式のそのようにして製造された複合材料を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
方法技術的観点でこの課題は、本発明により冒頭に述べた形式の方法において、制御装置に接続されたレーザ彫刻装置の少なくとも2つのレーザヘッドが、それぞれのレーザヘッドのレーザビームによって構造体を、複合材料のカバー層の木製ベニヤの隣接するそれぞれのレーザヘッドに割り当てられた領域に同時に彫刻するために作動され、その際にレーザヘッドが、複合材料の隣接する領域の第1の重複部分において構造体を、一方のレーザヘッドのレーザビームにより部分的に、他方のレーザヘッドのレーザビームにより部分的にランダムにカバー層の木製ベニヤに彫刻するようにプログラム技術的に制御される、ことによって解決される。
【0011】
製造技術的観点で本発明はこの課題を解決するために、このような方法によって製造された扁平柔軟性の複合材料を企図し、この複合材料は、とりわけ繊維素材の形態の柔軟性の材料からなる支持体層と、これに接合され、これよりも剛性の、木製ベニヤから成るカバー層とを有し、カバー層の木製ベニヤは、レーザ彫刻によって複数の溝の形態に彫刻された構造体を有する。
【0012】
したがって本発明は、まず、繊維支持体層の扁平な複合体が例えば接着のような接合によって、装飾カバー層のまだ彫刻されていない木製ベニヤと接合された後に、所望の構造体を、例えば適切なCADプログラムによって作成し、プログラム技術的に設計されたレーザ彫刻装置の制御装置に、あるいはこれに割り当てられたメモリユニットに読み込むことを企図している。これは冒頭に引用した特許文献1から公知である同様にこの刊行物から、次に、このように予作製された複合材料をレーザ彫刻装置の作業台の上に、複合材料のカバー層の木製ベニヤが作業台とは反対の側に位置するように配置し、そしてレーザ彫刻装置の制御装置に接続されたレーザヘッドに曝すことも公知である。次に、レーザ彫刻装置のレーザヘッドを作動し、溝の形態のそれぞれの構造体を、それぞれのレーザヘッドにより形成されたレーザビームによって複合材料のカバー層の木製ベニヤに彫刻するのである。
【0013】
ここで本発明は、制御装置に接続された少なくとも2つのレーザヘッドが、それぞれのレーザヘッドのレーザビームによって構造体を、複合材料のカバー層の木製ベニヤのそれぞれのレーザヘッドに割り当てられた隣接する領域に同時に彫刻することを企図しており、レーザヘッドが2つの場合、一方のレーザヘッドがカバー層の左長手側の領域に構造体を彫刻し、同時に他方のレーザヘッドがカバー層の右長手側の領域に構造体を彫刻する。その結果、同時に高い精度を維持しつつ、構造体の時間効率的な彫刻が可能である。なぜなら、レーザヘッドを、カバー層の木製ベニヤからそれぞれ最適の間隔で配置することができ、両方のあるいは全てのレーザヘッドのレーザビームのビーム長と入射角の両者を非常に類似するよう選択することができ、その結果、一体的で均質な構造体が最高の精度で、大面積の扁平複合体であっても全表面上に得られるからである。
【0014】
カバー層の木製ベニヤの、異なるレーザヘッドにより彫刻された領域が、構造体が僅かに非連続であるためにこれら領域の移行領域において可視となり、そのため美的な全体的印象が損なわれ、および/または複合体の柔軟性が領域的に変化する原因となるのを阻止するために、本発明は特に、複合材料の隣接する領域の第1の重複部分において構造体が、一方のレーザヘッドのレーザビームにより部分的に、そして他方のレーザヘッドのレーザビームにより部分的にランダムにカバー層の木製ベニヤに彫刻されるようにレーザヘッドをプログラム技術的に制御することを企図する。したがってレーザ彫刻装置のそれぞれのレーザヘッドにより加工される複合体の領域が、本発明によれば、固定的かつ不変的に互いに接する、それぞれのレーザヘッドの一つの作業領域に割り当てられるのではなく、それぞれのレーザヘッドの隣接する作業領域は第1の重複部分において重なり合い、この重複部分では構造体が、一方のレーザヘッドのレーザビームにより部分的に、他方のレーザヘッドのレーザビームにより部分的にランダムにカバー層の木製ベニヤに彫刻される。このようにして鮮鋭な境界がレーザヘッドの作業領域の間に発生せず、したがって異なるレーザヘッドにより加工されたカバー層の領域の移行部も可視とならない。ここで第1の重複部分は、好適には例えば約2mmから約50cmの間の幅、特に約5mmから約25cmの間の幅を有することができる。
【0015】
第1の重複部分において構造体をカバー層の木製ベニヤに彫刻するための一方のレーザヘッドと他方のレーザヘッドとのランダムな割り当てのための適切なアルゴリズムは、好適にはレーザ彫刻装置の制御装置の制御ソフトウェアに格納することができ、第1の重複部分の幅は、例えばキーボード、タッチスクリーン等の通常の入力装置によって好適には調整可能にすることができ、これにより幅を、場合により所望の構造体のそれぞれの形態に適合することができる。
【0016】
上位概念の扁平複合体において通常のように、それぞれのレーザヘッドに割り当てられた複合体の2つの隣接する領域の間に少なくとも部分的に延びる溝の形態で、構造体がカバー層の木製ベニヤに彫刻される場合、一方のレーザヘッドのレーザビームによって形成される溝の始点ないし終点、並びに他方のレーザヘッドのレーザビームによって形成される溝の終点ないし始点を、第1の重複部分においてランダムに設定することができる。したがって、一方のレーザヘッドにより加工された領域から第1の重複部分を越えて他方のレーザヘッドにより加工された、カバー層の木製ベニヤの隣接する領域に延びる構造体の溝は、第1の重複部分においてランダムにずらして配置された始点ないし終点を有し、この始点ないし終点から一方のレーザヘッドのレーザビームが、あるいはこの始点ないし終点まで他方のレーザヘッドのレーザビームがそれぞれの溝をカバー層の木製ベニヤに彫刻している。
【0017】
すでに示したように、本発明の方法は、カバー層の木製ベニヤに作用するレーザヘッドのレーザビームの角度が非常に類似している点で高精度であるので、複数の溝の形態でカバー層の木製ベニヤに彫刻される構造体が、支持体層が実質的に無傷のまま彫刻され、これに対してカバー層の木製ベニヤが少なくとも部分的に、または実質的に完全に切断されることを可能にする。ここでカバー層の木製ベニヤは、有利には少なくとも大部分が、すなわちその厚さの少なくとも約70%までが、好適的には少なくとも約80%までが、非常に好適にはその厚さの少なくとも約90%までが、または実質的に完全に切断されるべきであり、その結果、複合材料には非常に高い柔軟性を、非常に高い機械的強度を同時に維持しつつ付与することができる。
【0018】
有利な形態によれば、レーザ彫刻装置の作業台が複合材料と共に、構造体をカバー層の木製ベニヤの隣接する領域に連続的に彫刻するために、特に実質的に連続的にまたは半連続的にレーザヘッドを通過して移動することをさらに企図することができ、この場合、作業台の移動方向は、レーザヘッド間にある第1の重複部分の伸長方向に実質的に平行に選択される。このようにして複合材料の非常に大面積のウェブを非常に時間効率良く実質的に連続的に加工することができ、装着ないし取り外し時間が最低限に抑えられる。ここで、複合材料は有利には、これがそれぞれのレーザヘッドに割り当てられた作業領域に連続的に供給されるように連続的に移動され、その後、カバー層の木製ベニヤのそれぞれの領域に構造体が彫刻された後、それぞれのレーザヘッドに割り当てられた次の作業領域を加工するために、さらに移動される。さらにこのようにして、例えば、繊維素材から成る支持体層をエンドレスウェブの形態で、後者を例えばロールに巻き付けることにより提供することが考えられる。その後、巻き付けられたエンドレスウェブが連続的にカバー層の木製ベニヤと接着され、このようにして実質的に連続的に予作製された扁平複合材料が連続的に移動する作業台によって、構造体をカバー層に彫刻するためにレーザヘッドに供給される。レーザ彫刻後の柔軟性の高い複合材料は、最終的に、所望の寸法に応じて切断されるか、またはエンドレス材料の形態でロールに再び巻き付けることができる。
【0019】
ここで作業台の移動は、レーザヘッドの制御装置に接続された作業台駆動部が作業台を構造体の加工状態に応じて移動させることにより、好適にはプログラム技術的にレーザヘッドと同期させることができる。
【0020】
作業台は、この目的のために、例えば複合材料を収容するのに適したキャリッジを有することができ、このキャリッジは電動駆動部により駆動され、リニアガイドのようなガイドに沿ってレーザヘッドを通過するように案内される。その代わりに作業台は、例えば複合材料を収容するのに適した、例えば周回するキャリヤベルトの形態のベルトコンベヤを含むことができ、これは電動駆動部により駆動される。択一的に例えば、作業台が複合材料を収容するのに適した、平行に配置された複数のロールまたはドラムを備えるロールウェブを含むことが考えられ、これらロールまたはドラムのうちの少なくとも幾つかは電動駆動部により回転駆動される。
【0021】
実質的に連続的にまたは半連続的に複合材料をレーザヘッドに供給することに関連して、作業台の移動方向に対して実質的に垂直に延びる、複合材料のそれぞれ同じレーザヘッドに割り当てられた隣接する領域の第2の重複部分において、構造体がそれぞれのレーザヘッドのレーザビームによってランダムに、作業台の移動工程の前または後にカバー層の木製ベニヤに彫刻されるように、それぞれのレーザヘッドがプログラム技術的に制御されると有利であることがさらに判明した。作業台の移動方向に並んで配置され、それぞれ一つの同じレーザヘッドにより時間的に順番に彫刻されるカバー層の木製ベニヤの領域が、構造体がやはり僅かに非連続であるため、これらの領域の移行領域において可視となり、そのようにして美的な全体的印象が損なわれ、および/または複合体の柔軟性が領域的に変化する原因となるのを阻止するために、本発明は、隣接するレーザヘッドの作業領域間に形成される第1の重複部分に関連するのと同様に、作業台の移動方向に対して略垂直にそれぞれ延びる複合材料の隣接する領域の第2の重複部分において、構造体がそれぞれ(同じ)レーザヘッドのレーザビームによりランダムに、作業台の移動工程の前に部分的に、および作業台の移動工程の後に部分的に、カバー層の木製ベニヤに彫刻されるように、それぞれのレーザヘッドをプログラム技術的に制御することを企図するこのようにして鮮鋭な境界が、移動可能な作業台によってレーザヘッドに連続的に供給されるカバー層の木製ベニヤの領域間にも発生せず、したがってのそれぞれレーザヘッドにより連続的に加工されたカバー層の領域の移行部も可視とならない。ここで第2の重複部分は(第1の重複部分と同様に;上記参照)、好適には例えば約2mmから約50cmの間の幅、特に約5mmから約25cmの間の幅を有することができる。
【0022】
上に述べたように、構造体が少なくとも部分的に、それぞれ同じレーザヘッドに割り当てられた複合材料の隣接する2つの領域間に延びる溝の形態で彫刻される場合、上位概念の複合体では通常のようにここでも、それぞれのレーザヘッドのレーザビームにより作業台の移動工程の前に形成された溝の始点ないし終点、およびそれぞれのレーザヘッドのレーザビームにより作業台の移動工程の後に形成された溝の終点ないし始点は、第2の重複部分においてランダムに設定される。したがって、それぞれのレーザヘッドにより作業台の移動工程の前に加工された領域から第2の重複部分を越えて同じレーザヘッドにより移動工程の後に加工された、カバー層の木製ベニヤの領域に延びる構造体の溝は、第2の重複部分においてもランダムにずらして配置された始点ないし終点を有し、この始点ないし終点までそれぞれのレーザヘッドのレーザビームが、あるいはこの始点ないし終点から同じレーザヘッドのレーザビームがそれぞれの溝を、作業台のそれぞれの移動工程の前または後にカバー層の木製ベニヤに彫刻している。
【0023】
作業台の上に存在する複合材料を、レーザヘッドによる加工中に常に正確に平坦に配向するために、有利な発展形態では、複合材料が、少なくとも構造体の彫刻中に作業台に吸引されることを企図することができる。このことは、従来技術で公知の例えばポンプの形態の任意の負圧形成器によって行うことができ、これは複合材料を、負圧のため作業台に対して、例えばその表面に対して、そのキャリヤベルトに対して、またはそのロールウェブに対して押し付ける。
【0024】
すでに示したように、レーザ彫刻装置は、上に述べた理由から有利には、少なくとも2つの定置のガルバノメトリックレーザヘッドを有することができ、これらは制御装置に接続された少なくとも1つのミラーおよび/またはレンズを有し、レーザヘッドは制御装置によって、そのミラーおよび/またはレンズがカバー層の木製ベニヤに彫刻される構造体に応じて移動されるようにプログラム技術的に制御される。この種のガルバノメトリックレーザヘッドは、従来技術から、例えば冒頭に引用した特許文献2から公知であり、その利点は主に、レーザビームを制御して偏向するのに用いられるミラーおよび/またはレンズを可動にすれば良いだけであるので、レーザヘッド自体は定置して配置することができ、非常に時間効率およびコスト効率が良く、特にレーザヘッドを並進移動させるための面倒な機構が必要ない点にある。
【0025】
すでに述べたように、レーザヘッドが複数であるので、大面積の複合体の場合でも、カバー層の木製ベニヤとレーザヘッドとの間隔を最適の程度に調整することができ、その結果、一方では非常に狭い溝を備える構造体の形成のために強く集束された「短い」レーザビームが用意され、他方ではカバー層の有機物質の気相に移行する構成成分がレーザヘッドに堆積され、レーザヘッドの頻繁なクリーニングが必要となるのが阻止される。この場合、レーザヘッドは好適には、複合材料のカバー層の木製ベニヤから例えば約10cmから約150cmの間隔で、特に約30cmから約130cmの間隔で、好適には約50cmから約110cmの間隔で配置することができる。
【0026】
所望の場合には、カバー層の木製ベニヤにレーザ彫刻後にさらに塗料層を施与して、カバー層の木製ベニヤの一般的には多孔性の表面をシールし、扁平な複合材料の非常に高品質の美的な全体的印象を与えることができる。
【0027】
したがって本発明の方法によって作製された扁平柔軟性の複合材料は、特に比較的大きな寸法の場合、カバー層の木製ベニヤにレーザ彫刻によって形成された構造体を有することができ、この構造体は、カバー層の木製ベニヤの実質的に全表面にわたって均等に延在する。ここでカバー層の木製ベニヤに彫刻された構造体の複数の溝は、好適にはカバー層の木製ベニヤを少なくとも部分的にまたはほぼ完全に切断することができ、これに対して支持体層は特に実質的に無傷である。上の記載を参照されたい。さらに、カバー層の木製ベニヤに彫刻された構造体の複数の溝は、実質的に均等な幅および/または実質的に均等な深さを有することができ、その結果、非常に美的でありながら複合材料の全表面にわたって一律の柔軟性が得られ、この柔軟性は、従来の革または繊維素材の柔軟性に十分に相当する。さらにカバー層の木製ベニヤには、必要に応じて例えば塗料層を施与することができる。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照した実施例の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】複合材料のブランクを予作製する際の、本発明の複合材料の構成部分を形成する支持体層およびカバー層の概略的斜視図である。
【
図1b】
図1aによる複合材料のカバー層に形成される複数の溝から成る構造体を彫刻する際の、
図2から
図6によるレーザ彫刻装置のガルバノメトリックレーザヘッドの一実施形態の概略的斜視図である。
【
図1c】
図1bによるレーザ彫刻後の柔軟性複合材料の一実施形態の概略的斜視図である。
【
図2】本発明による方法を実施するのに適したレーザ彫刻装置の一実施形態の概略的斜視図である。
【
図4】
図2および
図3のレーザ彫刻装置の概略的側面図である。
【
図6】複合材料のカバー層に形成される複数の溝から成る構造体を同時に彫刻する際の、
図2から
図5によるレーザ彫刻装置の2つのガルバノメトリックレーザヘッドの概略的斜視図である。
【
図7】レーザ彫刻によって複数の溝により形成された構造体が設けられた複合材料のカバー層の木製ベニヤの概略的平面図であるが、それぞれのレーザヘッドによって加工された異なる領域間に重複部分は設けられていない。
【
図8】
図2から
図6によるレーザ彫刻装置を使用したレーザ彫刻によってカバー層の木製ベニヤに彫刻された構造体の4つの例示的な溝の概略的平面図であり、これら溝は、レーザ彫刻装置の異なるレーザヘッドによって形成された複合材料の2つの領域の間で第1の重複部分にわたって延びている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aには、全体に参照符号10が付された扁平複合材料のブランクを予作製する際の状況が示されている。複合材料10は、繊維素材のような柔軟性材料から成る支持体層12と、これよりも剛性の、装飾的木製ベニヤから成るカバー層11とを含む。複合材料10のブランクを予作製するために、支持体層12がカバー層11に接合され、これは例えば、支持体層12とカバー層11との間に配置された接着層13によって行うことができる。
【0031】
図1bには、さらに下で
図2から
図6を参照して詳細に説明するレーザ彫刻装置のガルバノメトリックレーザヘッド18の1つの一実施形態が概略的に示されており、このレーザヘッドは、複数の溝から形成された構造体26を
図1aの複合材料10のブランクのカバー層11の木製ベニヤに彫刻するために用いられ、これによりカバー層11の木製ベニヤの柔軟性を高め、美的で高品質の全体的印象を付与する。レーザヘッド18は、本例では定置して保持されたガルバノメトリックレーザヘッド18であり、これは、形成されたレーザビームを所望の方向に偏向するために、3次元空間内を十分に自由に移動可能なミラー19を有する。レーザヘッド18は、自身のミラー19の図示されない駆動部も含めて、レーザ彫刻装置(
図2から6参照)の同様に図示されない制御装置と作用接続しており、移動可能なミラー19が装備されたレーザヘッド18を、ミラー19がカバー層11の木製ベニヤに彫刻される構造体26に対応して移動されるように、制御装置によってプログラム技術的に制御することができる。ここでそれぞれ所望の構造体26は、予め設定されており、例えば適切なCADプログラムを使用して作成され、制御装置に読み込まれている。
【0032】
図1cは、本例では実質的に同形にカバー層11の実際の全表面にわたって延びる構造体26がそのカバー層11の木製ベニヤにレーザ彫刻によって彫刻された後の、周知の革または繊維素材に似て非常に柔軟な扁平複合材料10を示す。
【0033】
図2から
図6には、
図1cによる扁平柔軟性の複合材料10を製造するための本発明の方法を自動的に実施するプログラム技術的に設計されたレーザ彫刻装置の一実施形態が概略的に示されており、レーザ彫刻装置には、全体で参照符号200が付されている。レーザ彫刻装置200は、とりわけリニアガイドの形態のガイド201に沿って矢印Vの方向に制御されて特に略水平に移動可能な、本例では実質的にキャリッジの形式に構成された作業台202を含み、作業台202は、特に比較的大面積である、例えば実質的にウェブ状の加工すべき
図1aの複合材料を収容するために用いられ、複合材料10は、一方では連続的にレーザ加工領域203に供給することができ、他方では
図1cによる加工が完成した複合材料を取り出した後、再び反対方向に戻すよう移動することができ、これにより十分に連続的に、または半連続的に複数の複合材料を彫刻し、その際に効率的に大量生産することができる。複合材料10の収容に用いられる作業台202の表面は、好適には、図示しない負圧形成器に接続されており、複合材料10をレーザ彫刻中に作業台に対して押し付け、このようにして正確で常に同じで再現可能な複合材料の配向をレーザ加工領域203において行う。作業台202の駆動部は、レーザ彫刻装置200の同様に図示しない制御装置に接続されており、制御装置は、公知のように中央データ処理ユニットを含み、中央データ処理ユニットには、複合材料10のカバー層11に彫刻される所望の構造体、所望の加工プログラム等を入力および/または選択するために、本例では入力装置204が装備されている。さらにレーザ彫刻装置は、複数の、ここでは2つの、同様に制御装置に接続しており、レーザ彫刻領域203の上方に定置して配置された、しかし場合により高さ移動可能なガルバノメトリックレーザヘッド183a,183bを含み、これらレーザヘッドは、作業台202の移動方向Vに対して垂直に間隔を置いて互いに配置されており、その構造は
図1の構造に対応する。しかし完璧を期すために、レーザヘッド183a,183bは、必ずしも作業台202の移動方向Vに対して垂直に配置する必要はなく、場合により例えばずらして配置することもできることを述べておく。
【0034】
特に
図6から理解されるように、レーザヘッド183a,183bは、例えば作業台202から、あるいはこの上に位置決めされた複合材料10から約75cmの間隔をおいて配置されており、プログラム技術的に制御されるミラー19(
図1b参照)の移動により偏向可能なそれぞれのレーザビーム181a,181bによって構造体26(
図1c参照)を、それぞれのレーザヘッド183a,183bのそれぞれの作業領域182a,182bに割り当てられた複合材料10のカバー層11の木製ベニヤの隣接する領域B1,B2に同時に彫刻するために用いられる。この場合、レーザヘッド183a,183bは、本発明によりプログラム技術的に、複合材料10の隣接する領域B1,B2の第1の重複部分U1において、構造体26がレーザヘッド183a,183bの一方のレーザビーム181a,181bにより部分的に、レーザヘッド183b,183aの他方のレーザビーム181b,181aにより部分的にランダムにカバー層11の木製ベニヤに彫刻されるように制御可能である。したがってレーザヘッド183a,183bの作業領域182a,182bないし構造体26がカバー層11に彫刻される領域B1,B2は、本発明によれば定置されておらず、構造体26の一部が一方または他方のレーザヘッド183a,183bのレーザビーム181a,181bによりランダムにカバー層に彫刻される第1の重複部分U1において交差しており、これにより、一方のレーザヘッド183aの作業領域182aからあるいはカバー層11の一方の領域B1から、他方のレーザヘッド183bの作業領域182bへあるいは複合材料10のカバー層11の他方の領域B2へと延びる構造体26の溝において、滑らかで可視でなく、レーザ彫刻の完成した複合材料10の材料特性、例えばその柔軟性を局所的に損なわない移行部が形成されることが保証される。
【0035】
同様にレーザヘッド183a,183bは、好適には、作業台が複合材料10の連続的加工のために工程ごとに矢印Vの方向に移動される時の作業台202の移動方向Vに対して実質的に直角に延びる、それぞれ同じレーザヘッド183a,183bに割り当てられた複合材料10の隣接する領域の第2の重複部分U2(
図7参照)において、構造体26がそれぞれのレーザヘッド183a,183bのレーザビーム181a,181bによりランダムに、作業台202の移動工程の前に部分的に、作業台202の移動工程の後に部分的にカバー層11の木製ベニヤに彫刻されるようにプログラム技術的に制御可能である。作業台202の移動方向Vに互いに接するそれぞれのレーザヘッドの作業領域182a,182b、ないし作業台202の移動方向Vに互いに接する、構造体26がカバー層11に彫刻される領域B1,B2も同様に、好適には定置されておらず、構造体26の一部が作業台202のそれぞれの移動工程の前または後でランダムに、それぞれのレーザヘッド183a,183bのレーザビーム181a,181bによりカバー層に彫刻される第2の重複部分U2において交差しており、これにより、特に作業台202の少なくとも2つの移動工程にわたって延びる構造体26の溝にも、滑らかで可視でなく、レーザ彫刻の完成した複合材料10の材料特性、特にその柔軟性を局所的に損なわない移行部が形成されることが保証される。
【0036】
図7には、複合材料10のカバー層11の木製ベニヤの構造体250の概略的平面図が示されており、この構造体は、作業台の工程ごとの移動方向Vに対して2つのレーザヘッドを使用するレーザ彫刻によって形成されたものであり、しかしそれぞれのレーザヘッドにより加工された異なる領域251a,251b,251c,251dの間に重複部分U1,U2は設けられていない。
図7から分かるように、それぞれのレーザヘッドのこのような離散的な作業領域の場合では、異なるレーザヘッドにより加工された隣接する領域251a,251cと251b,251dとの間にも、それぞれ同じレーザヘッドにより、しかし作業台の異なる移動位置で加工された隣接する領域251a,251bと251c,251dとの間にも、彫刻された構造体250の可視となる移行部ないし不規則性252a,252b,252c,252dが発生しておらず、これらは本発明により防止されたものである。
【0037】
図8には複合材料10のカバー層11の木製ベニヤに彫刻された構造体260の例示的な溝265a,265b,265c,265dの平面図が示されている。これらの溝は、例えば、レーザ彫刻装置200の異なるレーザヘッド183a,183bにより、
図2から
図6にしたがって形成された複合材料10の2つの領域B1,B2の間に、第1の重複部分U1にわたって延びている。構造体260の少なくとも一部は、ここでも、それぞれのレーザヘッド183a,183bに割り当てられた複合材料10の隣接する2つの領域B1,B2の間に少なくとも部分的に延びる溝265a,265b,265c,265dの形態でカバー層11の木製ベニヤに彫刻されている。この場合、一方のレーザヘッド183a,183bのレーザビーム181a,181bにより形成された溝265a,265b,265c,265dの始点ないし終点261,262,263,264並びに他方のレーザヘッド183b,183aのレーザビーム181b,181aにより形成された溝265a,265b,265c,265dの終点ないし始点261,262,263,264は、第1の重複部分U1においてランダムに設定されている。すなわち溝265a,265b,265c,265dは、
図7に示されている場合のように、それぞれのレーザヘッド183a,183bのそれぞれの離散的な作業領域の境界で始まったりし終端したりせず、溝265a,265b,265c,265dの始点ないし終点261,262,263,264は、第1の重複部分U1内でランダムに、したがって互いにずらされて設定されており、これによりレーザヘッド183a,183bの作業領域182a,182b(
図6も参照)間の移行部が「ぼかされて」いる。
【0038】
同じようにして有利には、構造体260が、それぞれ同じレーザヘッド183a,183bに割り当てられた複合材料10の隣接する2つの領域B1,B2の間に少なくとも部分的に延びる溝265a,265b,265c,265dの形態でカバー層11の木製ベニヤに彫刻されることを企図することができる。この場合、それぞれのレーザヘッド183a,183bのレーザビーム181a,181bにより、作業台202の移動工程の前に形成された溝265a,265b,265c,265dの始点ないし終点261,262,263,264、並びにそれぞれのレーザヘッド183a,183bのレーザビーム181a,181bにより、作業台202の移動工程の後に形成された溝265a,265b,265c,265dの終点ないし始点261,262,263,264は、第2の重複部分U2においてランダムに設定されている。
【0039】
望む場合には、最後に、複合材料10のカバー層11の木製ベニヤに、レーザ彫刻の上記作業工程の後に塗料層(図示せず)を施与することを企図することもできる。このことは手作業で、または彫刻の完成した複合材料10を、例えば作業台202を用いて部材ごとにまたは部分的に、レーザ彫刻装置200のレーザ加工領域203に後置された塗装装置(同様に図示せず)に供給することによって特に同様に自動化して行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平柔軟性の複合材料(10)の製造方法であって、前記複合材料は、特に繊維素材の形態の柔軟性材料から成る支持体層(12)と、これに接合されこれより剛性である、木製ベニヤから成るカバー層とを有し、この場合、前記カバー層(11)の前記木製ベニヤにはレーザ彫刻によって複数の溝(265a,265b,265c,265d)の形態に構成された構造体が彫刻され、これにより前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの柔軟性を高めており、当該製造方法は、
-前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻すべき構造体(26,260)を作成し、当該構造体(26,260)をプログラム技術的に設計されたレーザ彫刻装置(200)の制御装置に読み込むステップ;
-前記複合材料(10)を前記レーザ彫刻装置(200)の作業台(202)の上に、前記複合材料の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤが前記作業台(202)とは反対の側に存在するように配置するステップ;および
-前記制御装置に接続された、前記レーザ彫刻装置(200)の少なくとも1つのレーザヘッド(18,183a,183b)を作動し、前記構造体(26,260)を前記複合材料(10)の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに、前記レーザヘッド(18,183a,183b)により形成されたレーザビーム(181a,181b)によって彫刻するステップ、を含む、製造方法において、
前記制御装置に接続された、前記レーザ彫刻装置(200)の少なくとも2つのレーザヘッド(183a,183b)を作動させて、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)によって前記構造体(26,260)を、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた、前記複合材料(10)の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの隣接する領域(B1,B2)に同時に彫刻し、この場合、前記レーザヘッド(18,183a,183b)は、プログラム技術的に、前記複合材料(10)の前記隣接する領域(B1,B2)の第1の重複部分(U1)において、前記構造体(26,260)が、前記レーザヘッド(183a,183b)の一方のレーザビーム(181a,181b)により部分的に、前記レーザヘッド(183a,183b)の他方のレーザビーム(181a,181b)により部分的にランダムに前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻されるように制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記構造体(26,260)は、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた、前記複合材料(10)の2つの隣接する領域(B1,B2)の間に少なくとも部分的に延びる溝(265a,265b,265c,265d)の形態で前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻され、この場合、一方のレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により形成された溝(265a,265b,265c,265d)の始点ないし終点(261,262,263,264)、並びに他方のレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により形成された溝(265a,265b,265c,265d)の終点ないし始点は、前記第1の重複部分(U1)においてランダムに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の溝(265a,265b,265c,265d)の形態で前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻される構造体(26,260)は、前記支持体層(12)が実質的に無傷のままであり、これに対して前記カバー層(11)の前記木製ベニヤは少なくとも部分的に、または実質的に完全に切断されるように彫刻されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ彫刻装置(200)の前記作業台(202)は前記複合材料(10)と共に特に実施的に連続的にまたは半連続的に、前記構造体(26,260)を前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの隣接する領域(B1,B2)に連続的に彫刻するために、前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように移動され、この場合、前記作業台(202)の移動方向(V)は、前記レーザヘッド(183a,183b)の間の前記第1の重複部分(U1)の伸長方向に対して実質的に平行に選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記作業台(202)の移動は、前記レーザヘッド(183a,183b)の制御装置に接続された、前記作業台(202)の駆動部が前記作業台(202)を前記構造体(26,260)の加工状態に応じて移動させることにより、プログラム技術的に前記レーザヘッド(18,183a,183b)と同期させることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作業台(202)は、
-前記複合材料(10)を収容するのに適したキャリッジであって、電動駆動部により駆動されて、ガイド(201)に沿って前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように案内されるキャリッジを有するか、または
-前記複合材料(10)を収容するのに適した、特に周回するキャリヤベルト形態のベルトコンベヤであって、電動駆動部により駆動されて前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように案内されるベルトコンベヤを含むか、または
-前記複合材料(10)を収容するのに適した、平行に配置された複数のロールまたはドラムを備えるロールウェブであって、前記ロールまたはドラムのうちの幾つかが電動駆動部によって回転駆動されて、前記複合材料(10)が前記レーザヘッド(183a,183b)を通過するように案内される、ロールウェブを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
それぞれのレーザヘッド(183a,183b)は、前記作業台(202)の移動方向(V)に対して実質的に直角に延びる、それぞれ同じレーザヘッド(183a,183b)に割り当てられた複合材料(10)の隣接する領域(B1,B2)の第2の重複部分(U2)において、前記構造体(26,260)がそれぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビームにより、前記作業台(202)の移動工程の前に部分的に、前記作業台(202)の移動工程の後に部分的にランダムに前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻されるようにプログラム技術的に制御されることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記構造体(26,260)は、それぞれ同じレーザヘッド(18,183a,183b)に割り当てられた前記複合材料(10)の隣接する2つの領域(B1,B2)の間に少なくとも部分的に延びる溝(265a,265b,265c,265d)の形態で前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻され、この場合、それぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により、前記作業台(202)の移動工程の前に形成された溝(265a,265b、265c、265d)の始点ないし終点(261,262,263,264)、並びにそれぞれのレーザヘッド(183a,183b)のレーザビーム(181a,181b)により、前記作業台(202)の移動工程の後に形成された溝(265a,265b、265c、265d)の終点ないし始点(261,262,263,264)は、前記第2の重複部分(U2)においてランダムに設定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複合材料(10)は、少なくとも前記構造体(26,260)が前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻される間、前記作業台(202)に吸引されることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザ彫刻装置(200)は、少なくとも2つの定置のガルバノメトリックレーザヘッド(18,183a,183b)を有し、該ガルバノメトリックレーザヘッドは、前記制御装置に接続された少なくとも1つのミラー(19)および/またはレンズを有し、前記レーザヘッド(18,183a,183b)は前記制御装置によってプログラム技術的に、前記ミラー(19)および/またはレンズが前記カバー層(11)の前記木製ベニヤに彫刻すべき構造体(26,260)に対応して移動されるように制御されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザヘッド(18,183a,183b)は、前記複合材料(10)の前記カバー層(11)の前記木製ベニヤの表面から、10cm~150cm、特に30cm~130cm、好適には50cm~110cmの間隔で配置されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カバー層(11)の前記木製ベニヤには、レーザ彫刻後に塗料層が施与されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】