(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】高速電気機械のための回転子
(51)【国際特許分類】
H02K 7/08 20060101AFI20240725BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20240725BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H02K7/08 A
F16C17/02 Z
F16C17/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500322
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022068663
(87)【国際公開番号】W WO2023280893
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370378
【氏名又は名称】セレロトン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】CELEROTON AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラザー,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ルーザー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ディエトマン,ファビアン
【テーマコード(参考)】
3J011
5H607
【Fターム(参考)】
3J011BA02
3J011JA02
3J011KA02
3J011KA03
3J011MA02
3J011SB01
5H607DD03
5H607GG01
5H607GG02
5H607GG14
5H607JJ04
(57)【要約】
気体軸受を有する高速電気機械のための回転子(1)は、少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)と、回転子側アキシャル軸受(31)と、少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)を備える回転子本体区画(29)と、回転子側アキシャル軸受を備える回転子端部区画(39)と、を備え、回転子の回転軸に沿って見たときに、ラジアル軸受区画(22)は、ラジアル軸受がそれに沿って延在する区画として画定される。その中で、外側回転子部分(27)は、回転子端部区画および回転子本体区画に沿って延在し、外側回転子部分(27)は、回転子本体区画(29)内に中空円筒体または軸受スリーブ(28)を形成するように成形され、少なくとも1つの回転子プラグ(5)が軸受スリーブ(28)の内側に配置され、少なくとも1つの回転子プラグ(5)の材料は、7E-6KA-1よりも低いCTEを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体軸受を有する高速電気機械のための回転子であって、
少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)と、
回転子側アキシャル軸受(31)と、
前記少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)を備える回転子本体区画(29)と、
前記回転子側アキシャル軸受を備える回転子端部区画(39)と、を備え、
前記回転子の回転軸に沿って見たときに、ラジアル軸受区画(22)は、ラジアル軸受がそれに沿って延在する区画として画定され、
外側回転子部分(27)は、前記回転子端部区画および前記回転子本体区画に沿って延在し、
前記外側回転子部分(27)は、前記回転子本体区画(29)内に中空円筒体または軸受スリーブ(28)を形成するように成形され、
少なくとも1つの回転子プラグ(5)が前記軸受スリーブ(28)の内側に配置され、前記少なくとも1つの回転子プラグ(5)の材料は、7E-6K^-1よりも低い、特に5E-6K^-1よりも低い、さらに特に4E-6K^-1よりも低いCTEを有することを特徴とする、回転子(1)。
【請求項2】
前記外側回転子部分(27)の材料は、金属または金属系材料、特に鋼である、請求項1に記載の回転子(1)。
【請求項3】
前記外側回転子部分(27)の前記材料は、40HRCより大きい、特に50HRCより大きい、さらに特に55HRCより大きいロックウェル硬度を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの回転子プラグ(5)の材料は、4500kg/m^3未満、特に3500kg/m^3未満の密度を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項5】
1つまたは複数のラジアル軸受区画(22)の少なくとも1つ、特にすべてにおいて、回転子プラグ(5)は、前記ラジアル軸受区画(22)のほとんど、特にすべてに沿って延在する、先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項6】
前記回転子は、第1および第2のラジアル軸受区画(22a、22b)にそれぞれ対応する第1および第2の回転子側ラジアル軸受(21)を備え、第1および第2の回転子プラグ(5a、5b)は、第1および第2のラジアル軸受区画(22a、22b)に沿って延在するようにそれぞれ配置されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項7】
前記回転子は、第1および第2のラジアル軸受区画(22a、22b)にそれぞれ対応する第1および第2の回転子側ラジアル軸受(21)を備え、単一の回転子プラグ(5)が、前記第1および第2のラジアル軸受区画(22)の両方に沿って延在するように配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項8】
前記軸受スリーブ(28)は、前記第2のラジアル軸受区画(22b)に沿ってではなく、前記第1のラジアル軸受区画(22a)に沿って延在する近位スリーブ(28a)であり、さらなるまたは遠位スリーブ(28b)が、前記第1のラジアル軸受区画(22a)に沿ってではなく、前記第2のラジアル軸受区画(22b)に沿って延在する、請求項7に記載の回転子(1)。
【請求項9】
前記遠位スリーブ(28b)は前記回転子プラグ(5)の遠位端上に延在し、前記永久磁石(4)は前記遠位スリーブ(28b)内に配置されている、請求項8に記載の回転子(1)。
【請求項10】
前記軸受スリーブ(28)は前記回転子プラグ(5)の遠位端(51b)上に延在し、前記永久磁石は前記軸受スリーブ(28)内に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項11】
前記永久磁石は磁石スリーブ(43)内に配置され、前記磁石スリーブ(43)は前記永久磁石上に延在し、遠位回転子プラグ端部(51b)との圧入を形成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの回転子プラグ(5)は、少なくとも、1つの回転子プラグ端部(51)、特に両端部がテーパ状であり、
前記回転子の回転軸に沿って見たときに、テーパ区画が、前記プラグがそれに沿ってテーパ状になる区画として規定され、
それによって、前記テーパ区画における前記回転子プラグ(5)と前記スリーブとの間の圧入力が漸進的に低減し、
特に、前記テーパ区画は、前記軸受区画と重ならない、先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項13】
前記永久磁石(4)は、前記第1の回転子プラグ(5a)と前記第2の回転子プラグ(5b)との間に配置される、請求項1~6のいずれか1項、または請求項1~6のいずれか1項に従属する請求項12に記載の回転子1。
【請求項14】
前記少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)を備える回転子本体(2)と、
前記回転子側アキシャル軸受を備える回転子エンドピース(3)と、を備え、
前記回転子エンドピース(3)と前記回転子本体(2)とは、別個に製造されて互いに接続される部品であり、
これは特に圧入によるものであり、より具体的には、前記回転子エンドピース(3)は、これらの2つの部品の接合面で前記回転子本体(2)を半径方向に取り囲む、先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項15】
前記回転子エンドピース(3)は中空区画を備え、前記中空区画は、少なくとも前記アキシャル軸受区画(32)に沿って、特に軸方向における前記回転子エンドピース(3)の長さの少なくとも50%または70%に沿って軸方向に延在し、
特に、
・前記中空区画は、前記回転子の周囲への流体接続を確立する換気ダクトを備えるか、または構成し、特に、前記換気ダクトは軸方向に延在する貫通孔であり、
・または、前記中空区画は、圧入補償容積部を含むかまたは構成し、気密に囲まれている、
先行する請求項のいずれか1項に記載の回転子(1)。
【請求項16】
特に先行する請求項のいずれか1項に記載の気体軸受を有する高速電気機械のための回転子(1)であって、
・少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)と、
・回転子側アキシャル軸受(31)と、
・少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受(21)と、を備え、
・前記回転子の回転軸に沿って見たときに、ラジアル軸受区画(22)が、それに沿ってラジアル軸受が延在する区画として画定され、
・前記回転子の回転軸に沿って見たときに、アキシャル軸受区画(32)は、前記回転子側アキシャル軸受(31)を含む区画であり、
・周方向溝(35)が、前記アキシャル軸受区画(32)とその最も近いラジアル軸受区画(22)との間に配置される、
回転子(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の分野に関する。本発明は、独立請求項の前文に記載されているような、気体軸受を有する高速電気機械のための回転子に関する。
【0002】
電気モータは、一般的に、回転子と固定子とを備え、固定子は、電気固定子および軸受を支持および収容する固定子本体を備える。軸受は、気体軸受である1つまたは複数のラジアル(ジャーナルとも呼ばれる)およびアキシャル(スラストとも呼ばれる)軸受を備える。多くの場合、2つのラジアル軸受が存在する。それらは、固定子の対向する両側に配置することができ、すなわち、回転子を駆動する電磁要素が2つのラジアル軸受の間に配置されるか、または固定子の同じ側に配置される。後者の配置は、オーバーハングモータ設計と呼ばれことが多い。オーバーハング設計により、2つのラジアル軸受を単一の部品に統合することができる。しかしながら、この手法の結果として、一般に回転子が長くなり、したがってより重大な回転体力学的挙動および回転子の製造労力の増大をもたらす。このため、回転子を短く保ち、製造の手間、したがってコストを単純化し、例えば回転体力学的挙動によって引き起こされる性能限界を上げるという要望によって、相反する要件が生じる。
【0003】
多くの場合、製造公差および材料要件は、回転子ラジアル軸受と回転子アキシャル軸受とで異なり、製造が単純で、種々のピース、材料、および接合面の数が少ない回転子構造を見出すことが困難になっている。
【0004】
国際公開第2018/041938号は、ラジアル空気軸受およびアキシャル空気軸受を有するターボ圧縮機シャフトを開示している。管状軸受部分の一端には、インペラおよびアキシャル軸受プレートを担持するためのシャフトが挿入され、他端には、電気モータの要素を担持するための駆動部分が挿入される。管状軸受部分は硬質材料からなり、インペラ部分および/または駆動部分は、管状軸受部分の硬質材料に比べて比較的軟質な材料からなる。
【0005】
米国特許第4063850号明細書は、部分的にセラミック材料から形成されたセラミックタービンホイールおよび回転子シャフトを有するガスタービン回転子を開示しており、ホイールおよび回転子の一部は一体形成されている。回転子のセラミックシャフト部分は、エンジンの冷却ゾーン内に延在し、そこで支持管を包含し、2つのシャフト部分を架橋する鋼シャフト部分に接続される。セラミックシャフト部分は、ラジアル空気軸受によって支持されている。セラミックアキシャル軸受ディスクは、セラミックシャフト部分と一体に形成される。
【0006】
米国特許第4585396号明細書、米国特許第4854025号明細書および米国特許第4639194号明細書は、鋼回転子シャフトに接続されたセラミックタービンホイールまたはインペラを開示している。
【0007】
国際公開第2014/175766号および国際公開第2017/200828号は、中空断面を有し、中空断面に熱を分散させるための熱伝導要素が配置された回転子シャフトを開示している。熱伝導要素は、回転子シャフトの材料よりも熱伝導率が高い材料から作成される。
【0008】
英国特許出願公開第962277号明細書は、熱伝導要素の内側に冷却リブを有する同様の構成を開示している。
【0009】
国際公開第2017202941号および国際公開第2020002509号は、ラジアル軸受およびアキシャル軸受が1つのピースおよび材料から作成される空気軸受を有する回転子を開示している。
【0010】
米国特許出願公開第2004/0051416号明細書は、永久磁石の周囲に取り付けられ、磁石の一方の側ではタービンシャフトの周りに、他方の側では軸受部材の周りに据え付けられた補強スリーブを有する回転子を示している。補強スリーブは、軸受区画を一切備えない。
【0011】
従来技術の回転子はすべて、製造が困難であり、および/または回転子の種々の部分および機能に最適な材料を使用することができない。
【0012】
したがって、本発明の目的は、従来技術に対する改善を提供する、気体軸受を有する高速電気機械のための回転子を作成することである。
【0013】
これらの目的は、請求項に記載の気体軸受を有する高速電気機械のための回転子によって達成される。
【0014】
回転子は、気体軸受を有する高速電気機械のためのものであり、回転子は、
少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受と、
回転子側アキシャル軸受と、
少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受を備える回転子本体区画と、
回転子側アキシャル軸受を備える回転子端部区画と、を備え、
回転子の回転軸に沿って見たときに、ラジアル軸受区画は、ラジアル軸受がそれに沿って延在する区画として画定される。
【0015】
その中で、外側回転子部分は、回転子端部区画および回転子本体区画に沿って延在し、
外側回転子部分は、回転子本体区画内に軸受スリーブとして機能する中空円筒体を形成するように成形され、
少なくとも1つの回転子プラグが軸受スリーブの内側に配置され、少なくとも1つの回転子プラグの材料は、7E-6K^-1よりも低い、特に5E-6K^-1よりも低い、さらに特に4E-6K^-1よりも低いCTEを有する。
【0016】
これにより、特に半径方向の回転子のCTEが、比較的低い回転子プラグのCTEによって統制されるようにすることができる。
【0017】
実施形態では、回転子プラグは、回転子の回転軸に沿って見たときに、アキシャル軸受区画まで延在しない。
【0018】
実施形態では、回転子プラグは別個の部品であり、回転子エンドピースと組み合わされない。
【0019】
実施形態では、回転子プラグは永久磁性材料を一切含まない。
実施形態では、回転子プラグは、回転子プラグを軸受スリーブに組み付けるときに軸受スリーブを変形させるように、より具体的には軸受スリーブに予張力を加えるように意図的に作成される。これは、回転子プラグが、軸受スリーブを変形させないことを目的として使用される軟質材料(弾性または塑性変形に対する抵抗が低い材料を意味する)から作り出される従来技術とは対照的である。
【0020】
実施形態では、外側回転子部分の材料は、金属または金属系材料、特に鋼である。
実施形態では、外側回転子部分の材料は、40HRCより大きい、特に50HRCより大きい、さらに特に55HRCより大きいロックウェル硬度を有する。
【0021】
実施形態では、少なくとも1つの回転子プラグの材料は、4500kg/m^3未満、特に3500kg/m^3未満の密度を有する。
【0022】
実施形態では、少なくとも1つの回転子プラグの材料は、7E-6K^-1未満、特に5E-6K^-1未満、さらに特に4E-6K^-1未満のCTEを有する。
【0023】
実施形態では、少なくとも1つの回転子プラグの材料が7E-6K^-1未満、特に5E-6K^-1未満、さらに特に4E-6K^-1未満のCTEを有し、外側回転子部分材料が金属または金属系材料、特に鋼であるという特徴を含む、第1の材料特徴セットが存在する。
【0024】
実施形態では、第1の材料特徴セットを含み、外側回転子部分の材料が40HRCより大きい、特に50HRCより大きい、さらにより特に55HRCより大きいロックウェル硬度を有するという特徴をさらに含む、第2の材料特徴セットが存在する。
【0025】
実施形態では、第2の材料特徴セットを含み、少なくとも1つの回転子プラグの材料が4500kg/m^3未満、特に3500kg/m^3未満の密度を有するという特徴をさらに含む、第3の材料特徴セットが存在する。
【0026】
実施形態では、第3の材料特徴セットを含み、少なくとも1つの回転子プラグの材料が250GPa/3100kg/m^3より大きい、特に350GPa/3100kg/m^3より大きいヤング率対密度比を有するという特徴をさらに含む、第4の材料特徴セットが存在する。
【0027】
実施形態によれば、回転子プラグおよび外側回転子部分を定義する上述の材料特性の優先事項の順位は、以下の通りである。
【0028】
・第1の優先事項:回転子プラグのCTE、
・第2の優先事項:外側回転子部分の材料、
・第3の優先事項:外側回転子部分のロックウェル硬度、
・第4の優先事項:回転子プラグの密度、
・第5の優先事項:回転子プラグのヤング率対密度比。
【0029】
・第6の優先事項:外側回転子部分の引張強度対密度比。
結果として、以下の利点のうちの1つまたは複数を実現することが可能になる。
【0030】
・1つまたは複数の回転子プラグは単純な円筒形であり得るため、回転子プラグのために第1の材料種類、例えばセラミックを有することにより、第1の種類の材料の部品の部品を製造するためのプロセスを単純にすることが可能になる。
【0031】
・軸受スリーブのために第2の種類の材料、例えば高性能鋼を有することにより、第1の種類の材料よりも機械加工が容易になる。これは、回転子スタブシャフトと一体的に成形される場合に特に有利である。
【0032】
・ラジアル軸受区画内に第2の種類の材料の軸受スリーブを有することは、それが比較的高いCTEを有することを意味するが、これは原則として、動作中に加熱されるため、不利である。しかしながら、第1の種類の材料のプラグが第2の種類の材料の回転子スリーブ内に押し込まれることにより、この組み合わせのCTEは、プラグのCTEに近づくように低下させることができる。
【0033】
・温度下での膨張と同様に、弾性率対密度比が比較的高いプラグと、弾性率対密度比が潜在的に低いスリーブとの圧入では、高い回転速度での遠心力によるこの組み合わせの膨張は、プラグの膨張に向かって低下する。速度が増大すると、軸受スリーブ内に予張力を生成する圧入は、最初に部分的に緩み、軸受スリーブが膨張し始める前に緊密さが低くなり始める。スリーブの膨張は、中空円筒体よりも固体の膨張に対応し、スリーブ材料パラメータよりもプラグ材料パラメータに対応する。実施形態では、スリーブの厚さは、プラグの半径の20%以下である。すなわち、スリーブの外側半径は、プラグの半径の120%未満である。
【0034】
・外側回転子部分の一部であるアキシャル軸受プレートは、第2の種類の材料から作成することができる。したがって、第1の種類の材料の部分よりも高い強度を有することができ、これは、最大直径を有すると、最も高い遠心力を受けるため、アキシャル軸受プレートにおいて有利である。
【0035】
回転子端部区画の外側回転子部分は、回転子スタブシャフトを形成することができる。回転子スタブシャフトおよび軸受スリーブは、別個の部品と同じ材料から作成し、次いで接合することができ、または一体的に、すなわち単一の部品として成形することができる。回転子プラグは、中実または中空円筒体とすることができる。
【0036】
実施形態では、回転子が中に使用されるように設計されている高速電気機械はターボ圧縮機であり、その場合、回転子エンドピースに取り付けられたインペラを駆動することができる。他の実施形態では、高速電気機械は、ビームチョッパまたは回転プリズムもしくはミラーまたは任意の他の負荷を駆動する。他の実施形態では、高速電気機械は、ターボ圧縮器インペラと組み合わされて、または組み合わされずに、タービンによって駆動される。
【0037】
別の態様によれば、回転子は、電気機械によって、または電気機械の一部によって駆動されない。
【0038】
気体軸受は、気体潤滑軸受、または気体状流体を有する流体膜軸受とも呼ばれる。気体軸受は空気軸受を含む。
【0039】
実施形態では、回転子プラグは、高速回転および高温の両方が高速回転子内に存在するため、a)回転およびb)温度の下で少なくともほぼ、可能な限り膨張しない材料から作成される。回転子と固定子の軸受ブッシングとの間の気体軸受間隙を小さく維持するために、理想的には膨張は最小限にすべきである。さらに、回転子プラグは、軸受性能を増大させる(すなわち、最大安定回転速度を増大させる)ために、軽量かつ剛性にすべきである。
【0040】
回転子プラグは機械加工が容易であることが好ましいが、上述の特性とのトレードオフにおいて、機械加工性の低下を許容することができる。これは、回転子プラグの形状を単純に保つことによって軽減することができ、外側回転子部分よりも容易な製造を可能にする。
【0041】
実施形態では、外側回転子部分は、特に回転子プラグと比較したときに、引張強度が高く、引張強度対密度比が高い材料から作成され、これにより、所与の回転速度に対して比較的高い周速度、したがってより大きいアキシャル軸受外径が可能になる。より大きいアキシャル軸受直径は、より大きい最大軸方向荷重を可能にし、これは、例えば回転子に搭載されたインペラから生じる振動および軸方向推力に耐えるのに有益である。さらに、回転子プラグよりも複雑な形状を有する外側回転子部分については、回転子プラグの材料よりも機械加工が容易な材料を使用することができ、機械加工のコストを低減することができる。さらに、回転子と固定子軸受との間に乾式摩擦がある気体軸受の始動-停止時の摩耗を最小限に抑えるために、外側回転子部分の材料は理想的には硬質にすべきである。
【0042】
外側回転子部分は、a)回転およびb)温度下で低い膨張を示すことが好ましいが、上記の特性とのトレードオフにおいて、より高い膨張を許容することができ、回転子プラグによって軽減される。
【0043】
結果として、外側回転子部分および回転子プラグの材料が異なる。これにより、回転子を2つの異なる材料から作成することができる2つの部分に分離することによって、
・外側回転子部分、特に、アキシャル軸受の強度、および外側回転子のより複雑な形態および公差の単純な機械加工、ならびに
・回転子プラグ、特にラジアル軸受の温度および回転下での低膨張
に対する異なる要件を満たすことが可能になる。ラジアル軸受の膨張は、圧入によって、より高い膨張を許容することができる材料の薄い軸受スリーブと、より低い膨張を有する厚い回転子プラグとを半径方向に組み合わせることによって制限することができる。圧入は、膨張が軸受スリーブではなく回転子プラグによって主に規定されるため、全体的に低い膨張をもたらす。アキシャル軸受および/または回転子スタブシャフトは、軸受スリーブと同じ材料の別個の部品として作製することができ、または軸受スリーブと一体的に成形することができ、回転子プラグの材料よりも機械加工が容易になる。
【0044】
実施形態では、回転子プラグと軸受スリーブとの間に圧入はないが、回転子プラグと軸受スリーブとは別の手段(溶接、接着、はんだ付けなど)によって剛直に接続され、その結果、回転子プラグは、潜在的に予張力なしに、軸受スリーブが温度または遠心力に起因して膨張するのを制約する。
【0045】
異なる材料の組み合わせが存在する従来技術では、高い熱膨張係数(CTE)を有する材料が内側にあるように配置され、低いCTEを有する材料が外側にあるが、本発明によれば、反対の構成を実現することができる。
【0046】
要約すると、回転子プラグには、セラミック系材料とも呼ばれ得る第1の種類の材料が使用される。いくつかの実施形態において、第1の種類の材料は、以下の特性のうちの1つ以上を有する。
【0047】
・低CTE:7E-6K^-1、または5E-6K^-1または4E-6K^-1未満。
・低密度(弾性率に依存しない):4500kg/m^3未満または3500kg/m^3未満。
【0048】
・高い弾性率密度比:250GPa/3100kg/m^3または350GPa/3100kg/m^3超。
【0049】
第1のタイプの典型的な材料:セラミック材料、より特定的にはSiN、SiC、AlO。さらなる代替物:鉄-ニッケル合金(Invarなど)、ガラス-セラミック、炭化タングステン、炭化金属。
【0050】
要約すると、金属系材料とも呼ばれ得る第2の種類の材料が、外側回転子部分28に使用される。実施形態において、第2の種類の材料は、良好な機械加工性を有し、以下の特性のうちの1つ以上を有する。
【0051】
・高硬度(ロックウェル硬度):40HRCまたは50HRCまたは55HRC超、
・高い強度対密度比:700MPa/7700kg/m^3または1500MPa/7700kg/m^3または2000MPa/7700kg/m^3超。
【0052】
典型的な材料:金属、より特定的には鋼、より具体的には高強度・高度鋼、特にEN 10027-2鋼番号1.4108、1.4125、1.4112。
【0053】
実施形態では、1つまたは複数のラジアル軸受区画の少なくとも1つ、特にすべてにおいて、回転子プラグは、ラジアル軸受区画のほとんど、特にすべてに沿って延在する。
【0054】
これにより、回転子プラグは、ラジアル軸受区画内の回転子本体の直径を画定し安定させることができる。ラジアル軸受区画の大部分に沿って延在する回転子プラグとは、ラジアル軸受区画の長さの少なくとも90%、特に少なくとも100%または105%に沿って延在することを意味する。
【0055】
実施形態では、1つまたは複数のラジアル軸受区画の少なくとも1つ、特にすべてにおいて、回転子プラグは、軸方向に沿って見て、ラジアル軸受区画のみに沿って延在し、それを超えては以上延在せず、またはラジアル軸受区画の長さに対して30%または40%だけさらに延在する。
【0056】
2つ以上のラジアル軸受区画に沿って延在する単一の回転子プラグが存在することができ、または対応するラジアル軸受区画に沿って各々が延在する、典型的には間隙によって分離された別個の回転子プラグが存在することができる。(軸方向に沿って見て)互いに対向してまたは互いに非常に近接して配置された、典型的には同じ半径を有する別個のプラグ要素から作成された回転子プラグは、単一の回転子プラグと機能的に同じであり得、したがって、単一の回転子プラグであると考えることができる。
【0057】
実施形態では、回転子は、第1および第2のラジアル軸受区画にそれぞれ対応する第1および第2の回転子側ラジアル軸受を備え、第1および第2の回転子プラグは、第1および第2のラジアル軸受区画に沿って延在するようにそれぞれ配置される。
【0058】
これにより、比較的軽量な構造が可能になる。第1の回転子プラグおよび第2の回転子プラグは、次々に組み立てることができ、単一のプラグよりも短いため、圧入の作成を単純にすることができる。
【0059】
実施形態では、回転子は、第1および第2のラジアル軸受区画にそれぞれ対応する第1および第2の回転子側ラジアル軸受を備え、単一の回転子プラグが、第1および第2のラジアル軸受区画の両方に沿って延在するように配置される。
【0060】
これにより、比較的単純な構造、より剛性の高い回転子本体、したがってより良好な動的挙動が可能になる。さらに、軸受スリーブは、2つの別個の離間した回転子プラグが存在する場合よりも薄くすることができる。
【0061】
実施形態では、軸受スリーブは、回転子プラグ、または回転子プラグの一部をコーティングすることによって製造される。このようにして、非常に薄い軸受スリーブを製造することができる。コーティングは、良好なトライボロジー特性を有する硬質材料、例えば硬質クロムもしくは炭化タングステン、またはダイヤモンド様炭素(DLC)であり得る。
【0062】
実施形態では、回転子プラグは回転子エンドピースと組み合わされ、すなわち、回転子プラグおよび回転子エンドピースは、単一の部品として同じ材料で製造される。これは、セラミック系材料とすることができる。このような回転子プラグに配置される軸受スリーブは、上述したように、回転子プラグをコーティングすることによって製造することができる。
【0063】
実施形態では、軸受スリーブは、第2のラジアル軸受区画に沿ってではなく、第1のラジアル軸受区画に沿って延在する近位スリーブであり、さらなるまたは遠位スリーブ(28b)は、第1のラジアル軸受区画に沿ってではなく、第2のラジアル軸受区画に沿って延在する。
【0064】
これにより、回転子本体の総重量が低減される。スリーブは、回転子プラグ上で反対側から押圧することができ、回転子本体をより容易に組み立てることができるようになる。
【0065】
実施形態では、遠位スリーブは回転子プラグの遠位端上に延在し、永久磁石は遠位スリーブ内に配置される。
【0066】
これは、2つの別個のスリーブを有する実施形態について、追加の部品なしで永久磁石の単純な取り付けおよび支持を実現する。
【0067】
実施形態では、軸受スリーブは回転子プラグの遠位端上に延在し、永久磁石は軸受スリーブ内に配置される。
【0068】
これは、単一の軸受スリーブを有する実施形態について、追加の部品なしで永久磁石の単純な取り付けおよび支持を実現する。
【0069】
実施形態では、永久磁石は磁石スリーブ内に配置され、磁石スリーブは永久磁石上に延在し、遠位回転子プラグ端部との圧入を形成する。
【0070】
これは、単一の回転子プラグを有する実施形態または2つ以上の別個の回転子プラグを有する実施形態の両方のための追加の部品を用いて、永久磁石の単純な取り付けおよび支持を実装する。これにより、軸受スリーブとは異なる材料から磁石スリーブを製造することができ、および/または磁石スリーブを、軸受スリーブまたは遠位スリーブとは異なる直径および/または厚さを有するように容易に製造することができる。さらに、ラジアル軸受区画内の圧入は、永久磁石への接続の影響を受けず、および/または軸受スリーブを永久磁石から離間することができ、磁場への影響を低減する。実施形態では、磁石スリーブは非磁性材料から作成される。実施形態では、磁石スリーブは磁性材料から作成され、すなわち、透磁率が1よりも大きく、永久磁石の磁場を損なわないように比較的薄く作成される。例えば、磁石スリーブの厚さは、磁石の直径の5%未満である。
【0071】
実施形態では、少なくとも1つの回転子プラグは、少なくとも、1つの回転子プラグ端部、特に両端部がテーパ状であり、
回転子の回転軸に沿って見たときに、テーパ区画が、プラグがそれに沿ってテーパ状になる区画として規定され、
それによって、テーパ区画における回転子プラグとスリーブとの間の圧入力が漸進的に低減し、
特に、テーパ区画は、軸受区画と重ならない。
【0072】
これにより、軸受スリーブおよび軸受スリーブに圧入された回転子プラグの端部にある回転子プラグにおける過度の応力を回避することができる。
【0073】
実施形態では、テーパ区画は、限られた範囲までのみテーパ状であり、圧入の力は、1つまたは複数の回転子プラグと軸受スリーブとの間の圧入が、少なくともラジアル軸受の軸方向長さ全体に沿って存在するようなものである。
【0074】
実施形態では、テーパ区画は、回転子プラグの長さの10分の1未満、または5ミリメートル未満の軸方向長さを有する。回転子プラグのそれぞれの端部におけるプラグの半径の最大減少は、プラグの直径の1000分の1未満、または10マイクロメートル未満であり得る。
【0075】
実施形態では、永久磁石は、第1の回転子プラグと第2の回転子プラグとの間に配置される。
【0076】
これは、電気機械の電磁要素を、軸方向に見て、ラジアル軸受区画の間に配置することを可能にし、回転子および機械の構造が短くなる。
【0077】
実施形態では、回転子は、
少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受を備える回転子本体と、
回転子側アキシャル軸受を備える回転子エンドピースと、を備え、
回転子エンドピースと回転子本体とは、別個に製造されて互いに接続される部品であり、
これは特に圧入によるものであり、より具体的には、回転子エンドピースは、これらの2つの部品の接合面で回転子本体を半径方向に取り囲む。
【0078】
したがって、この実施形態では、回転子本体および回転子エンドピースは、別個に製造された部品であり、回転子を製造するときに組み立てられる。
【0079】
実施形態では、回転子エンドピースは回転子プラグに接続され、軸受スリーブは回転子プラグに接続され、両方の接続部は特に圧入である。
【0080】
実施形態では、回転子エンドピースは単一の回転子プラグに接続され、軸受スリーブはその単一のプラグに接続され、両方の接続部は特に圧入である。
【0081】
実施形態では、回転子エンドピースは、圧入補償容積として作用し、圧入を確立するときに変位したガスを受け入れることができる中空区画を備える。これにより、圧縮ガスが圧入を強制的に離すという問題を排除することができる。さらに、それは、外側回転子部分をより弾性にし、外側回転子部分と回転子プラグとの圧入を改善することができる。さらに、中空である張り出した回転子エンドピースは、その重量を減少させ、回転子の動的挙動および軸受の安定性を改善する。
【0082】
実施形態では、回転子エンドピースは中空区画を備え、中空区画は、少なくともアキシャル軸受区画に沿って、特に軸方向における回転子エンドピースの長さの少なくとも50%または70%に沿って軸方向に延在し、
特に、
・中空区画は、回転子の周囲への流体接続を確立する換気ダクトを備えるか、または構成し、特に、換気ダクトは軸方向に延在する貫通孔であり、
・または、中空区画は、圧入補償容積部を含むかまたは構成し、気密に囲まれている。
【0083】
実施形態では、中空区画の内径は、軸方向スタブまたは回転子スタブシャフトの中央プラグの直径の10%~60%である。回転子スタブシャフトは、典型的には、回転子によって駆動されるかまたは回転子を駆動する部品を担持するように設計される。
【0084】
実施形態では、回転子エンドピースのアキシャル軸受区画以外の領域において、中空区画が存在する場所の回転子エンドピースの壁厚は、最小で、同じ軸方向ロケーションにおける回転子エンドピースの半径の50%である。
【0085】
中空区画および/または圧入補償容積部が換気ダクトを備えるかまたは構成する場合、上述のガスの圧縮を排除することに加えて、プロセスガスを低速に漏出して汚染する可能性があるガスポケットの存在も排除される。
【0086】
圧入補償容積部が気密に囲まれている場合、これは、製造中にまたはプロセスガス中に現れる可能性がある粒子または塵芥などの固体材料が回転子に入るのを防ぎ、動作中にプロセスガスの望ましくない摩耗もしくは不均衡、または望ましくない汚染をもたらすという利点を有する。実施形態では、中空区画および/または圧入補償容積を構成する中央孔が、回転子プラグとの圧入の反対側の端部で閉じられるように機械加工される。他の実施形態では、中央孔は、貫通孔として製造され、キャップまたはプラグ要素で閉じられる。そのようなプラグはまた、中央孔を大きく充填するために使用することができ、回転子本体内のプラグによる回転子エンドピースの変形を補償する。
【0087】
上述の特徴と組み合わせて、またはそれらとは独立して実装することができる本発明の一態様によれば、以下の特徴を有する回転子が提供される。
【0088】
特に先行する請求項のいずれか1項に記載の気体軸受を有する高速電気機械のための回転子であって、
・少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受と、
・回転子側アキシャル軸受と、
・少なくとも1つの回転子側ラジアル軸受と、を備え、
・回転子の回転軸に沿って見たときに、ラジアル軸受区画が、それに沿ってラジアル軸受が延在する区画として画定され、
・回転子の回転軸に沿って見たときに、アキシャル軸受区画は、回転子側アキシャル軸受を含む区画であり、
・周方向溝が、アキシャル軸受区画とその最も近いラジアル軸受区画との間に配置される、回転子。
【0089】
これは、風損によって加熱されるアキシャル軸受またはスラスト軸受と、同じく温度変化に敏感なラジアル軸受との間に熱障壁を作り出す。さらなる利点は、周方向溝が、ラジアル軸受区画内の圧入から生じる応力に起因するアキシャル軸受区画内のスラスト軸受領域の変形を低減することができることである。
【0090】
実施形態では、周方向溝の半径方向深さは、最も近いラジアル軸受区画内の軸受スリーブの半径の少なくとも10%、特に少なくとも20%、特に少なくとも30%である。
【0091】
本発明の一態様によれば、気体軸受の非回転部分を形成する固定子ブッシングが提供される。
【0092】
第1の実施形態によれば、固定子ブッシングは、空気軸受を有する高速電気機械の固定子に使用するためのものであり、固定子ブッシングは、
・少なくとも1つの固定子側ラジアル軸受を備える、中空円筒体の形態の少なくとも1つのスリーブと、
・環状プレートの形態の固定子側アキシャル軸受プレートと、を備え、
フランジがスリーブに取り付けられ、フランジは、固定子側アキシャル軸受プレートをスリーブと位置合わせするために、半径方向に、すなわち回転軸に垂直な方向に延在する位置合わせ面を備える、固定子ブッシング。
【0093】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の固定子ブッシングにおいて、フランジは、金属系材料から作成される。
【0094】
第3の実施形態によれば、第1または第2の実施形態の固定子ブッシングにおいて、スリーブは、セラミック系材料から作成される。
【0095】
第4の実施形態によれば、第1、第2または第3の実施形態の固定子ブッシングにおいて、固定子側アキシャル軸受プレートは、金属材料から作成される。
【0096】
第5の実施形態によれば、固定子ブッシングは、空気軸受を有する高速電気機械の固定子に使用するためのものであり、固定子ブッシングは、
・少なくとも1つの固定子側ラジアル軸受を備える、中空円筒体の形態の少なくとも1つのスリーブと、
・環状プレートの形態の固定子側アキシャル軸受プレートと、を備え、
固定子側アキシャル軸受プレートとスリーブとは、別個に製造され、互いに接合されている、固定子ブッシング。
【0097】
いくつかの実施形態において、接合は、例えば、接着、溶接、はんだ付けとすることができる。
【0098】
第6の実施形態によれば、第5の実施形態の固定子ブッシングにおいて、フランジは、金属系材料から作成される。
【0099】
第7の実施形態によれば、第5または第6の実施形態の固定子ブッシングにおいて、固定子側アキシャル軸受プレートは、金属材料から作成される。
【0100】
第8の実施形態によれば、固定子ブッシングは、空気軸受を有する高速電気機械の固定子に使用するためのものであり、固定子ブッシングは、
・少なくとも1つの固定子側ラジアル軸受を備える、中空円筒体の形態の少なくとも1つのスリーブと、
スリーブは、異なる材料から作成された内側スリーブおよび外側スリーブを備え、すなわち、内側スリーブは、内側スリーブ型材料および外側スリーブ型材料から作成されている、固定子ブッシング。
【0101】
実施形態では、内側スリーブ型材料は、以下の特性を有する。
・それは、本明細書で定義される金属系材料または第2の種類の材料である。
【0102】
実施形態では、外側スリーブ型材料は、以下の特性を有する。
低CTE:7E-6K^-1未満、特に5E-6K^-1未満、さらに特に4E-6K^-1未満。
【0103】
・外側スリーブ型の典型的な材料:セラミック材料、より特定的にはSiN、SiC、AlO。他の代替物:鉄-ニッケル合金(Invarなど)、ガラス-セラミック、炭化タングステン、炭化金属。
【0104】
第9の実施形態によれば、第8の実施形態の固定子ブッシングにおいて、外側スリーブは、外側スリーブと一体的に成形されたフランジを備える。
【0105】
実施形態では、スリーブの材料が7E-6K^-1よりも低い、特に5E-6K^-1よりも低い、さらに特に4E-6K^-1よりもさらに低いCTEを有し、フランジが金属、特に鋼から作成されるという特徴を含む、第5の材料特徴セットが存在する。
【0106】
実施形態では、第5の材料特徴セットを含み、スリーブが10GPaより大きい、特に15GPaより大きい、さらにより特に20GPaより大きいHK5またはビッカース硬度を有するという特徴をさらに含む、第6の材料特徴セットが存在する。
【0107】
実施形態では、第6の材料特徴セットを含み、固定子側アキシャル軸受プレートが金属、特に鋼から作成されているという特徴をさらに含む、第7の材料特徴セットが存在する。
【0108】
実施形態によれば、スリーブ、フランジ、および固定子側アキシャル軸受プレートを定義する上述の材料特性の優先事項の順位は、以下の通りである。
【0109】
・第1の優先事項:スリーブのCTEおよびフランジの材料、
・第2優先:スリーブのビッカース硬度、
・第3優先:固定子側アキシャル軸受プレートの材料。
【0110】
さらなる実施形態は、従属請求項から明らかである。
本発明の主題は、以下を概略的に示す、添付の図面に例示される例示的な実施形態を参照して、以下の本文においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】2つの別個の回転子プラグを有する回転子を示す図である。
【
図2】2つの別個の回転子プラグを有する回転子を示す図である。
【
図3】単一の回転子プラグを有する回転子を示す図である。
【
図4】単一の回転子プラグを有する回転子を示す図である。
【
図5】回転子プラグのテーパ状端部を誇張して示す図である。
【
図6】2つの回転子プラグの間に永久磁石を有する回転子を示す図である。
【
図7】回転子本体に接合された回転子エンドピースを有する回転子を示す図である。
【
図11】フランジを有する固定子ブッシングの実施形態を示す図である。
【
図12】フランジを有する固定子ブッシングの実施形態を示す図である。
【
図13】フランジを有する固定子ブッシングの実施形態を示す図である。
【
図14】フランジを有する固定子ブッシングの実施形態を示す図である。
【
図15】同心スリーブから作成された固定子ブッシングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
原則的に、図面において同一の部品には同じ参照符号が付されている。
図1は、回転子本体2および回転子エンドピース3を有する回転子1を概略的に示す。回転子本体2は、2つの回転子側ラジアル軸受21を有する。回転子エンドピース3は、回転子側スラスト軸受プレートまたは回転子側アキシャル軸受31を備える。回転子の回転軸に沿って見たときに、各回転子側ラジアル軸受21について、対応するラジアル軸受区画22は、ラジアル軸受21がそれに沿って延在する区画として画定される。これは、気体軸受が半径方向力を生成する区画である。通常、ラジアル軸受区画は、少なくともほぼ一定のラジアル軸受間隙を有する。同様に、アキシャル軸受区画32は、回転子側アキシャル軸受31がそれに沿って延在する部分として画定される。回転子エンドピース3は、回転子1によって駆動されるかまたは回転子1を駆動する部品、例えばインペラ、タービン、ビームチョッパ、回転プリズムなどを担持するための軸方向スタブまたは回転子スタブシャフト38を備える。
【0113】
回転子スタブシャフト38および回転子側アキシャル軸受31を有する回転子エンドピース3は、回転子本体2の第1の端部または近位端に配置される。その反対側の第2の端部または遠位端において、永久磁石4が回転子本体2に接合されている。回転子の回転軸に沿って見たときに、回転子本体区画29、回転子端部区画39、および磁石区画42は、回転子本体2、回転子エンドピース3、および永久磁石4がそれぞれ延在する区画として画定される。
【0114】
回転子エンドピース3には軸受スリーブ28が一体成形されている。これらはともに外側回転子部分27を形成する。軸受スリーブ28は、中空円筒体であり、軸受スリーブ28の内側に、軸受スリーブ28と同心円状に1つまたは複数の回転子プラグ5が配置される。回転子側ラジアル軸受21は、回転子側ラジアル軸受21の領域でわずかに大きい直径を有する軸受スリーブ28によって実装することができるが、他の実施形態では、
図1に示すように、軸受スリーブ28は、回転子側ラジアル軸受21およびそれらの間の区画に沿って同じ直径を有することができる。
【0115】
回転子プラグ5は、圧入によって軸受スリーブ28内に着座する。圧入は、締まり嵌め、圧縮嵌めなどとも呼ばれる。軸受スリーブ28は比較的薄く、回転子プラグ5に対して予張力をかけて保持され、軸受スリーブ28の熱膨張は回転子プラグ5の膨張に適応する。これにより、機械加工がより容易であり、回転子側ラジアル軸受21に適しているが、比較的高いCTE(熱膨張係数)を有する金属系材料の軸受スリーブ28を製造することができ、このCTEは、このCTEが有効であり、予張力下でプラグ(複数可)との組み合わせによって低下しない場合、回転子側ラジアル軸受21には適していない。回転子プラグ5は、比較的低いCTE、またはさらにはゼロまたは負のCTEを有するセラミック系材料から製造される。結果として、2つの材料の組み合わせが、半径方向において比較的低いCTEを有する、回転子本体2全体、特にラジアル軸受区画22をもたらす。
【0116】
永久磁石4が、永久磁石4に沿って延在する同心磁石スリーブ43および遠位回転子プラグ端51bの接続スタブによって回転子プラグ5の遠位回転子プラグ端51bに取り付けられている。回転子プラグ5は、近位回転子プラグ端51aを有する。2つの回転子プラグ5が存在する場合、それらの各々が、近位回転子プラグ端51aおよび遠位回転子プラグ端51bを有する。
【0117】
明確にするために、
図1に示すすべての参照番号が以下の図で繰り返されるわけではない。
【0118】
要素をさらに区別するために、2つの別個の回転子プラグ5が、第1の回転子プラグ5aおよび第2の回転子プラグ5bとしてラベル付けされる。各プラグは、1つ、2つ、またはより多くの回転子側ラジアル軸受21に対応し、これらは、
図2に示すように、第1のラジアル軸受区画22aおよび第2のラジアル軸受区画22bとラベル付けされたラジアル軸受区画22に対応する。
【0119】
図2は、回転子1の設計に対する変形例を示しており、回転子エンドピース3が、中央孔33を備えている。これは、回転子プラグ5を軸受スリーブ28に押し込むときに換気ダクトとして機能することができる。張り出した回転子エンドピース3の重量を低減することにより、中央孔33はまた、回転子1の動的特性を改善することができる。孔の外端には、第1のセンタリングシート25を配置することができ、第2のセンタリングシート26が、第2の回転子プラグの遠位回転子プラグ端51bにある。これらのセンタリングシートを使用して、回転子スタブシャフト38、回転子側アキシャル軸受31、および回転子側ラジアル軸受21を組み立てて部分アセンブリを形成することができ、ともに機械加工することができ、これは回転子1の機械加工品質にとって有利である。
【0120】
図示されていない他の実施形態では、中央孔33は、インペラ7、または回転子1によって駆動される別の要素、または別個の要素であり得るか、外側回転子部分27と一体に機械加工され、中央孔33の端部を気密に覆うことができるエンドキャップによって閉じられる。これにより、固体材料またはガスが中央孔33に出入りすることが防止される。回転子スタブシャフト38の直径は、軸方向に沿って見たときに、例えば外径および内径の段階的な変化によって変化する。
【0121】
図3は、軸受スリーブ28が永久磁石4を支持するように延在し、それによって前述の実施形態の磁石スリーブ43に取って代わる回転子1を示す。さらに、両方の回転子側ラジアル軸受21に沿って延在する単一の回転子プラグ5が存在する。このような単一の回転子プラグ5はまた、磁石スリーブ43と組み合わせて実装することもできる。
【0122】
図4は、単一の回転子プラグ5を有し、軸受スリーブ28が近位スリーブ28aと遠位スリーブ28bとに分割されている回転子1を示す。これら2つのスリーブは、回転子プラグ5の両端に押し付けられる。近位スリーブ28aは、回転子エンドピース3と一体的に成形することができる。遠位スリーブ28bは、永久磁石4を支持するスリーブと一体的に成形することができ、または図示のように、すでに導入された磁石スリーブ43が存在することができる。
【0123】
図5は、各回転子プラグ端51a、51bにテーパ区画を有する回転子プラグ5を示す。上の図のテーパ区画は、連続的に減少する直径を有し、下の図のテーパ区画は、回転軸の方向に見て、最初に第1の区画において連続的に減少し、次に第2の区画において一定のままである直径を有する。回転子プラグ5がテーパ状にされる程度は比較的小さく、図面では非常に誇張されている。例えば、テーパ区画は、回転軸の方向に2ミリメートルに沿って延在し、回転子プラグ5のそれぞれの端部におけるプラグの半径の4マイクロメートルの最大減少をもたらすことができる。テーパは、軸受スリーブ28の内部応力の漸進的な減少をもたらし、回転子プラグ5のそれぞれの端部の近くにおける過度の応力を回避する。
【0124】
図6は、軸受スリーブ28の内側、2つの別個の回転子プラグ5の間、したがってまた回転子側ラジアル軸受21の間に配置された永久磁石4を示す。これにより、回転子1の構造が短くなる。
【0125】
図7は、外側回転子部分27が別個の部品から製造されている実施形態を示し、これらは軸受スリーブ28、および、回転子側アキシャル軸受31を有する回転子スタブシャフト38である。軸受スリーブ28および1つまたは複数の回転子プラグ5は回転子本体2を構成し、回転子スタブシャフト38および回転子側アキシャル軸受31は回転子エンドピース3を構成する。回転子本体2および回転子エンドピース3は、特に、これらの2つの部品の接合面において回転子本体2を半径方向に取り囲む回転子エンドピース3によって、特に圧入によって接合される。回転子エンドピース3および軸受スリーブ28の両方を金属系材料から作成することができ、回転子プラグ5よりも機械加工が容易になる。図示されていない代替の実施形態では、回転子本体2は、これらの2つの部分の接合面において回転子エンドピース3を半径方向に取り囲む。
【0126】
図8は、
図2の実施形態に対応するが、分割軸受スリーブ28を有する。回転子エンドピース3は、分割軸受スリーブ28の近位区画によって回転子プラグ5aに接続され、分割軸受スリーブ28の遠位区画は回転子プラグ5aに接続され、両方の接続は特に圧入である。
【0127】
図9は、
図8の実施形態に対応するが、2つの回転子プラグの代わりに1つの回転子プラグを有する。
【0128】
図10は、回転子エンドピース3(回転子スタブシャフト38および回転子側アキシャル軸受31を有する)と軸受スリーブ28との間に円周方向溝35を有する実施形態を示す。周方向溝35は、回転子エンドピース3と軸受スリーブ28とを互いに熱的および/または機械的に切り離すことができる。
【0129】
実施形態では、外側回転子部分27の少なくとも一部、特に軸受スリーブ28は、回転子プラグ5または回転子プラグ5の一部をコーティングすることによって製造される。コーティングは、例えば、硬質クロムもしくは炭化タングステン、またはダイヤモンド様炭素(DLC)であり得る。これにより、非常に薄い軸受スリーブ28を作成することができる。その熱膨張は、軸受プラグ5の熱膨張によって統制される。
【0130】
軸受スリーブを構成するそのようなコーティングは、例えば、
図4の実施形態(遠位スリーブ28bとして)または
図9の実施形態(軸受スリーブ28として)に存在することができる。
【0131】
図11~
図15は、固定子側アキシャル軸受プレート131をスリーブ101と位置合わせするためのスリーブ101およびフランジ102を備える固定子ブッシング100の実施形態を示す。
【0132】
図11は、実質的に円筒形であるスリーブ101と、環状固定子フランジ102とを備える固定子ブッシング100を示し、フランジ102は位置合わせ面103を備える。固定子ブッシング100は、本明細書に提示されている種類のジャーナル軸受を有する回転子1のための軸受ブッシングとして機能するように設計されているが、これに限定されない。スリーブ101は、内側円筒面上に、1つまたは複数の固定子側ラジアル軸受121を構成する。位置合わせ面103は、固定子ブッシング100の長手方向軸と一致する回転軸に垂直である。位置合わせ面103は、固定子側アキシャル軸受プレート131(
図10には示さず)をスリーブ101と位置合わせする役割を果たす。この固定子側アキシャル軸受プレート131は、第2の固定子側アキシャル軸受プレートとともに、回転子のアキシャル軸受プレートが中で回転するスラスト軸受を構成する。フランジ102を固定子ブッシング100とは別個の部品として製造し、次いでそれらを互いに接合することによって、機械加工が単純な部品としてそれらの各々を製造することが可能であり、および/またはそれらは異なる材料から作成することができる。スリーブ101とフランジ102との接合は、圧入、接着、溶接、またははんだ付けによって行うことができる。
【0133】
このようにしてスリーブ101と位置合わせされた固定子側アキシャル軸受プレート131は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/202941号にあるような軸受構成で使用することができる。
【0134】
図12は、スリーブ101と同軸に配置され、固定的に取り付けられた略円筒形状のフランジ102を示す。フランジ102は、国際公開第2017/202941号に開示されているように、軸方向補償要素132によってアキシャル軸受プレート131に押し付けられる。軸方向補償要素132は、板ばね(円錐ばね座金)またはばね座金またはOリングとすることができる。それは、そのフランジ102に対して軸方向力を加えることによって、ブッシングスリーブ101を、アキシャル軸受プレート131または固定子ディスクに対して固定子本体(図示せず)から離れるように軸方向に押すように構成される。アキシャル軸受プレート131または固定子ディスクは、次に、締結具(図示せず)によって固定子本体に押し付けられて保持される。
【0135】
図13は、例えば、接着、溶接、はんだ付けによって固定されるようにスリーブ101に取り付けられたアキシャル軸受プレート131を示す。
【0136】
図14は、スリーブ101に固定されるように取り付けられたアキシャル軸受プレート131を示しており、1つまたは複数の換気開口部104が、アキシャル軸受プレート131および/またはスリーブ101を、それらが互いに接合されている領域において貫通している。
【0137】
図15は、同軸に配置された内側スリーブ101aおよび外側スリーブ101bを備えるスリーブ101を示す。それらは、圧入、または、例えば、接着、溶接、はんだ付けなどの別の接続手段によって組み立てることができる。独自の様式で、それらは別個の材料から作成することができる。さらに、外側スリーブ101bは、一体成形フランジ105を備える。このようにして、外側スリーブ101bは、内側スリーブ101aよりも厚くなるように選択することができ、それによって、2つの材料の組み合わせから生じる総CTEを統制する。これは、軸受スリーブ28と組み合わされた回転子プラグ5のCTEが回転子本体2の全CTEを統制する回転子実施形態と同じ原理である。内側スリーブ101aの材料は、1つまたは複数のラジアル軸受121に対する要件に従って選択することができる。
【0138】
本発明を本実施形態において説明したが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲内で他の様態でさまざまに具体化及び実践されてもよいことを明確に理解されたい。
【国際調査報告】