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特表2024-528810ペロブスカイト層を形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ペロブスカイト層を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/57 20230101AFI20240725BHJP
   C01G 21/00 20060101ALI20240725BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240725BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20240725BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20240725BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
H10K30/57
C01G21/00
B82Y40/00
B82Y30/00
H10K85/50
H10K71/16 164
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500595
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 KR2022006953
(87)【国際公開番号】W WO2023282457
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089488
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,クワン ウク
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107EE68
5F251AA01
5F251AA11
5F251BA18
5F251CB13
5F251CB14
5F251CB24
5F251DA15
5F251XA01
5F251XA61
(57)【要約】
本発明は、シリコン層の上部にペロブスカイト層を形成するための方法であって、気相蒸着工程によって前記シリコン層の上部にペロブスカイト無機物層を蒸着する段階;および溶液工程によって前記無機物層の上部にペロブスカイト有機物層をコートする段階;を含み、前記無機物層は、互いに異なるハロゲン元素を含む3種以上の無機ハロゲン化合物が順次にまたは同時に蒸着されて形成されることを特徴とするペロブスカイト層を形成するための方法に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン層の上部にペロブスカイト層を形成するための方法であって、
気相蒸着工程によって前記シリコン層の上部にペロブスカイト無機物層を蒸着する段階;および
溶液工程によって前記無機物層の上部にペロブスカイト有機物層をコートする段階;を含み、
前記無機物層は、互いに異なるハロゲン元素を含む3種以上の無機ハロゲン化合物が順次にまたは同時に蒸着されて形成されることを特徴とするペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項2】
前記コートする段階後に、前記無機物層と前記有機物層が反応して有機・無機ペロブスカイト薄膜を形成するように所定時間を待機する段階;および前記待機する段階後に、前記有機・無機ペロブスカイト薄膜を所定時間、所定温度で熱処理する段階;をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項3】
前記無機物層は、少なくとも1つ以上の2価の金属カチオンと3種以上のハロゲンアニオンを含むことを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項4】
前記無機物層は、少なくとも1つ以上の1価の金属カチオンをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項5】
前記1価の金属カチオンは、Li、Na、K、Rb、およびCsからなるアルカリ金属イオンの中から1つまたは2つ以上選択されることを特徴とする請求項4に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項6】
前記無機物層は、少なくとも第1無機ハロゲン化合物と第2無機ハロゲン化合物および第3無機ハロゲン化合物で構成され、
前記第1無機ハロゲン化合物と前記第2無機ハロゲン化合物は、BXの化学式構造を有し、且つ互いに異なる種類の化合物からなり、前記Bは、鉛(Pb2+)、スズ(Sn2+)、タングステン(W2+)、銅(Cu2+)、亜鉛(Zn2+)、ガリウム(Ga2+)、ゲルマニウム(Ge2+)、ヒ素(As2+)、セレニウム(Se2+)、ロジウム(Rh2+)、パラジウム(Pd2+)、銀(Ag2+)、カドミウム(Cd2+)、インジウム(In2+)、アンチモン(Sb2+)、オスミウム(Os2+)、イリジウム(Ir2+)、白金(Pt2+)、金(Au2+)、水銀(Hg2+)、タリウム(Tl2+)、ビスマス(Bi2+)、ポロニウム(Po2+)のうちいずれか1つのカチオンであり、前記Xは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)のうちいずれか1つのアニオンであり、前記第3無機ハロゲン化合物は、カチオンは、Li、Na、K、Rb、およびCsから成る群から選択されるいずれか1つの1価のアルカリ金属イオンであり、ハロゲンアニオンは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)の中から選択されるいずれか1つのアニオンからなることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項7】
前記無機物層は、PbIを240nmの厚さで蒸着し、PbBrを80nmの厚さで蒸着し、CsClを20nmの厚さで蒸着して形成されることを特徴とする請求項6に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【請求項8】
前記有機物層を形成する有機ハロゲン化合物は、MACl、MABr、およびMAIからなる群から選択されるいずれか1つのメチルアンモニウム(MA=CHNH3+)化合物であるか、またはFACl、FABr、およびFAIからなる群から選択されるいずれか1つのホルムアミジニウム(FA=HC(NH2+)化合物であることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト層を形成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム太陽電池に含まれるペロブスカイト物質からなる光感応体層を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光エネルギーを電気に変換する集合体であり、次世代エネルギーとして注目され、長期間研究されてきており、シリコン、CIGSおよびペロブスカイトなどの様々な物質をベースに高い光電効率が報告されている。現在、商業化されて最も多く使用されている太陽電池は、シリコンベースの太陽電池であり、太陽電池市場の90%以上を占めている。
【0003】
シリコン太陽電池には、結晶質シリコン太陽電池と非結晶質シリコン太陽電池が含まれていて、結晶質の場合は、製造コストが高い短所があるが、エネルギー効率が高いため、広く商用化されている。これに対し、非結晶質の場合、工程技術が難しく、装備依存度が高く、何よりも効率が低いため、現在は開発がほとんど進んでいない状況である。シリコン太陽電池を1世代に分類すると、最近、環境に優しい未来有望アイテムとして世界的に活発に研究中にある3世代太陽電池の代表として、ペロブスカイト系太陽電池がある。
【0004】
ペロブスカイト太陽電池は、無機物と有機物が結合してペロブスカイト結晶構造を有する素材を活用する。ペロブスカイトは、不導体・半導体・導体の性質と共に、超伝導現象を示す非常に特別な構造を有する。
【0005】
ペロブスカイト太陽電池に使用されるペロブスカイト光吸収層は、ABX(ここで、Aは、1価の有機アンモニウムカチオンまたは金属カチオン、Bは、2価の金属カチオン、Xは、ハロゲンアニオンを意味する)構造のペロブスカイト物質からなる。
【0006】
前記Aは、メチルアンモニウム(CHNH )またはエチルアンモニウム(CHCHNH )を示し、Bは、PbまたはSnを示し、Xは、I、BrまたはClを示す)の化学式を有するペロブスカイトを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0007】
ペロブスカイト化合物は、例えば、CHNHPbI、CHNHPbICl3-x、MAPbI、CHNHPbIBr3-x、CHNHPbClBr3-x、HC(NHPbI、HC(NHPbICl3-x、HC(NHPbIBr3-x、HC(NHPbClBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbI、(CHNH)(HC(NH1-yPbICl3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbIBr3-x、(CHNH)(HC(NH1-yPbClBr3-xなどが使用できる(0≦x、y≦1)。
【0008】
ペロブスカイトは、吸収係数が大きく(strong solar absorption)、低い非発光キャリア再結合率(low non-radiative carrier recombination rate)の特徴を有していて、キャリア移動度が大きく、非発光キャリア再結合を誘発する欠陥がバンドギャップ内にまたは深い準位(deep level)に形成されない特性によって変換効率を増加させることが知られている。
【0009】
このような有・無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池は、製造コストが安く、溶液工程で薄膜の製作が可能なので、現在、次世代薄膜太陽電池として脚光を浴びている。ペロブスカイト系太陽電池は、研究が始まってから10年ぶりに速い速度で効率が増加しており、高い光電効率が報告されている。
【0010】
溶液ベースののスピンコーティングによる薄膜の製作を超えて商業化を目的とするスロットダイ、インクジェットプリント、真空熱蒸着などの技術開発が進められている。
【0011】
このような単一接合のペロブスカイト系太陽電池の短所を補完するために、多種接合タンデム太陽電池の研究が続けられている。多種接合タンデム太陽電池は、大きなバンドギャップを有する上部セル(Cell)が低い波長帯の太陽エネルギーを吸収し、低いバンドギャップを有する下部セルが高い波長帯の太陽エネルギーを吸収することで、損失を低減し、広い波長帯の太陽エネルギーを運用することができ、単一接合では得られない30%以上の高効率が得られる。
【0012】
特に、ペロブスカイト-シリコンタンデム太陽電池は、それぞれ小さいバンドギャップと大きいバンドギャップを有していて、光の運用に有利で、研究が活発である。
【0013】
しかしながら、ペロブスカイトとシリコンを重なって効果的なタンデム構造を作ることは容易でない。シリコン表面は、一連のピラミッド構造からなり、光を閉じ込めることによって光が反射することを防止するが、シリコンのこのようなピラミッド構造の表面は、ペロブスカイトの均一なフィルムをコートしにくくする。
【0014】
ペロブスカイトが液体形態でコートされるとき、通常、シリコン表面のピラミッド構造間の谷に蓄積され、山頂が露出することによって、ペロブスカイトが正確にコートされない問題が発生する。
【0015】
このような問題を解決するために、ピラミッドをなくした平たいシリコンの上にペロブスカイトをコートすることがあるが、光の反射による効率利得を最大化するために、最近では、まず、真空熱蒸着のような気相蒸着方法を使用してペロブスカイトの無機物ベース層でシリコン表面のピラミッド構造を完全に覆った後、スピンコーティング(spin-coating)のような溶液蒸着技術(Solution deposition technique)を使用して無機物ベース層上に有機物層をコートして、タンデム太陽電池を製造する方法が用いられている。
【0016】
しかしながら、このような最近の技術において、ペロブスカイトの無機物ベース層としてPbI 240nm+CsBr 80nmを蒸着した場合、温度20℃未満、湿度20%未満、光遮断の条件で時間が経つにつれて、図1に示されたように、無機物ベース層の相が徐々に変化することが、吸光度の変化を通じて観測された。
【0017】
このように、ペロブスカイトの無機物ベース層が時間が経つにつれて変わる場合、無機物ベース層の相が不安定であるから、どんな状態で有機物層がコートされるか分からず、結局、シリコン層の上部に形成されるペロブスカイト層も不安定であり、不均一となる問題がある。特に、大面積のタンデム太陽電池を製造する場合には、同じペロブスカイト無機物層内で部分別/バッチ別に無機物層が形成される時間が変わることができ、これによって、部分別/バッチ別に有機物層のコート後、最終ペロブスカイト層の特性が変わることができるので、量産技術の導入時に収率の観点からさらに大きい問題になりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、前述のような問題点を解決するために案出されたものであって、タンデム太陽電池においてペロブスカイト層の前駆体である無機ハライド系の層の相(phase)が時間とともに変化することを防止し、均一度が高い大面積のペロブスカイト光吸収層を製造できるペロブスカイト層を形成するための装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した課題を解決するための手段として、本発明は、シリコン層の上部にペロブスカイト層を形成するための方法であって、気相蒸着工程によって前記シリコン層の上部にペロブスカイト無機物層を蒸着する段階;および溶液工程によって前記無機物層の上部にペロブスカイト有機物層をコートする段階;を含み、前記無機物層は、互いに異なるハロゲン元素を含む3種以上の無機ハロゲン化合物が順次にまたは同時に蒸着されて形成されることを特徴とするペロブスカイト層を形成するための方法を提供する。
【0020】
前記コートする段階後に、前記無機物層と前記有機物層が反応し、有機・無機ペロブスカイト薄膜を形成するように所定時間を待機する段階;および前記待機する段階後に前記有機・無機ペロブスカイト薄膜を所定時間、所定温度で熱処理する段階;をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
前記無機物層は、少なくとも1つ以上の2価の金属カチオンと3種以上のハロゲンアニオンを含むことを特徴とする。前記無機物層は、少なくとも1つ以上の1価の金属カチオンをさらに含むことを特徴とする。
【0022】
前記1価の金属カチオンは、Li、Na、K、Rb、およびCsからなるアルカリ金属イオンの中から1つまたは2つ以上選択されることを特徴とする。
【0023】
前記無機物層は、少なくとも第1無機ハロゲン化合物と第2無機ハロゲン化合物および第3無機ハロゲン化合物で構成され、前記第1無機ハロゲン化合物と前記第2無機ハロゲン化合物は、BXの化学式構造を有し、且つ互いに異なる種類の化合物からなり、前記Bは、鉛(Pb2+)、スズ(Sn2+)、タングステン(W2+)、銅(Cu+)、亜鉛(Zn2+)、ガリウム(Ga2+)、ゲルマニウム(Ge2+)、ヒ素(As2+)、セレニウム(Se2+)、ロジウム(Rh2+)、パラジウム(Pd2+)、銀(Ag2+)、カドミウム(Cd2+)、インジウム(In2+)、アンチモン(Sb2+)、オスミウム(Os2+)、イリジウム(Ir2+)、白金(Pt2+)、金(Au2+)、水銀(Hg2+)、タリウム(Tl2+)、ビスマス(Bi2+)、ポロニウム(Po2+)のうちいずれか1つのカチオンであり、前記Xは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)のうちいずれか1つのアニオンであり、前記第3無機ハロゲン化合物は、カチオンは、Li、Na、K、Rb、およびCsから成る群から選択されるいずれか1つの1価のアルカリ金属イオンであり、ハロゲンアニオンは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)の中から選択されるいずれか1つのアニオンからなることを特徴とする。
【0024】
前記無機物層は、PbIを240nmの厚さで蒸着し、PbBrを80nmの厚さで蒸着し、CsClを20nmの厚さで蒸着して形成されることを特徴とする。
【0025】
前記有機物層を形成する有機ハロゲン化合物は、MACl、MABr、およびMAIからなる群から選択されるいずれか1つのメチルアンモニウム(MA=CHNH3+)化合物であるか、またはFACl、FABr、およびFAIからなる群から選択されるいずれか1つのホルムアミジニウム(FA=HC(NH2+)化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態によるペロブスカイト層を形成するための方法によれば、タンデム太陽電池においてペロブスカイト層の前駆体である無機ハライド系の層の相が時間とともに変化することを防止し、均一度が高い大面積のペロブスカイト光吸収層を製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来技術によって生成されたペロブスカイトの無機物ベース層の経時的な吸光度の変化を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態によるペロブスカイト層を形成する方法のフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態によって生成されたペロブスカイトの無機物ベース層の経時的な吸光度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、添付の図面を参照して実施形態を詳細に説明する。しかしながら、実施形態には、多様な変更が加えられることができ、特許出願の権利範囲がこのような実施形態によって制限または限定されるものではない。実施形態に対するすべての変更、均等物や代替物が権利範囲に含まれるものと理解すべきである。
【0029】
実施形態において使用した用語は、単に説明を目的に使用されるものであり、限定しようとする意図と解すべきものではない。単数の表現は、門脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「具備する」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0030】
別途定義されない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使用されるすべての用語は、実施形態の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の門脈上有する意味と一致する意味を有するものと解すべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味と解しない。
【0031】
構成要素(element)または層が他の要素または層「上に(on)」、「上部に」、「に連結された(connected to)」、または「に結合した(coupled to)」もので示すとき、これが直接的に他の構成要素または層にあってもよく、連結されてもよく、結合されてもよく、または干渉構成要素または層(intervening elements and layer)が存在してもよいものと理解すべきである。
【0032】
以下、本発明のペロブスカイト層を形成するための装置および方法について実施形態および図面を参照して具体的に説明する。しかしながら、本発明がこのような実施形態および図面に制限されるものではない。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態によるペロブスカイト層を形成する方法のフローチャートであり、図3は、本発明の一実施形態によって生成されたペロブスカイトの無機物ベース層の経時的な吸光度の変化を示すグラフである。
【0034】
図2に示されたように、本発明の一実施形態によるペロブスカイト層を形成する方法は、ペロブスカイトの無機物層を気相蒸着する段階(S10)、ペロブスカイトの有機物層を溶液コーティングする段階(S20)、および所定時間を待機する段階(S30)、熱処理する段階(S40)を含んでもよい。
【0035】
ペロブスカイトの無機物層を気相蒸着する段階(S10)は、タンデム太陽電池を構成するシリコン層の上部に無機ハロゲン化合物を気相蒸着工程で蒸着する段階である。1つまたは多数の実施形態において、気相蒸着工程としては、真空熱蒸着工程が用いられてもよい。
【0036】
真空熱蒸着工程は、例えば、超高真空(ultra-high vacuum)状態に維持されるチャンバーと、チャンバーの内部に設置される蒸発器を用いて行われ得る。チャンバーの天井部には、シリコン層が固定され得るホルダーが配置されてもよく、チャンバーの下部に蒸発器が配置され、無機ハロゲン化合物を蒸発させて、ホルダーに固定されたシリコン層に無機ハロゲン化合物を所定の厚さで蒸着させることができる。精密な蒸着のために、チャンバーには、残留ガス分析器(residual gas analyser)やQCM(quartz crystal microbalance,QCM)センサーなどが設置されてもよい。
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記気相蒸着段階(S10)で、シリコン層に蒸着されるペロブスカイト無機物層は、3種以上の互いに異なるハロゲン元素を含む。
【0038】
本発明の実施形態によれば、互いに異なるハロゲン元素を含む3種以上の無機ハロゲン化合物が順次にまたは同時に蒸着され、本発明のペロブスカイト無機物層を形成することができる。
【0039】
1つまたは多数の実施形態において、前記ペロブスカイト無機物層は、第1無機ハロゲン化合物100と第2無機ハロゲン化合物200および第3無機ハロゲン化合物300が真空熱蒸着工程によって順次にまたは同時にシリコン層上に蒸着されて形成されてもよく、第1無機ハロゲン化合物100と第2無機ハロゲン化合物200および第3無機ハロゲン化合物300にそれぞれ含まれているハロゲン元素は、互いに異なる元素からなる。
【0040】
第1無機ハロゲン化合物100は、BX(Bは、2価の金属金属カチオンであり、Xは、ハロゲンアニオンである)の化学式構造を有することができる。Bは、鉛(Pb2+)、スズ(Sn2+)、タングステン(W2+)、銅(Cu2+)、亜鉛(Zn2+)、ガリウム(Ga2+)、ゲルマニウム(Ge2+)、ヒ素(As2+)、セレニウム(Se2+)、ロジウム(Rh2+)、パラジウム(Pd2+)、銀(Ag2+)、カドミウム(Cd2+)、インジウム(In2+)、アンチモン(Sb2+)、オスミウム(Os2+)、イリジウム(Ir2+)、白金(Pt2+)、金(Au2+)、水銀(Hg2+)、タリウム(Tl2+)、ビスマス(Bi2+)、ポロニウム(Po2+)のうち1つのカチオンであり、Xは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)のうちいずれか1つのアニオンであってもよい。例えば、前記金属ハロゲン化合物は、PbCl、PbBr、PbI、SnCl、SnBr、およびSnI等が挙げられる。
【0041】
図3に示されたように、本発明の一実施形態において使用された第1無機ハロゲン化合物100は、PbIであってもよい。
【0042】
第2無機ハロゲン化合物200は、第1無機ハロゲン化合物100と種類が異なっているが、第1無機ハロゲン化合物と同様に、BX(Bは、2価の金属金属カチオンであり、Xは、ハロゲンアニオンである)の化学式構造を有することができる。Bは、鉛(Pb2+)、スズ(Sn2+)、タングステン(W2+)、銅(Cu2++)、亜鉛(Zn2+)、ガリウム(Ga2+)、ゲルマニウム(Ge2+)、ヒ素(As2+)、セレニウム(Se2+)、ロジウム(Rh2+)、パラジウム(Pd2+)、銀(Ag2+)、カドミウム(Cd2+)、インジウム(In2+)、アンチモン(Sb2+)、オスミウム(Os2+)、イリジウム(Ir2+)、白金(Pt2+)、金(Au2+)、水銀(Hg2+)、タリウム(Tl2+)、ビスマス(Bi2+)、ポロニウム(Po2+)のうち1つのカチオンであり、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)のうちいずれか1つのアニオンであってもよい。例えば、前記金属ハロゲン化合物は、PbCl、PbBr、PbI、SnCl、SnBr、およびSnI等が挙げられる。
【0043】
図3に示されたように、本発明の一実施形態において使用された第2無機ハロゲン化合物200は、PbBrであってもよい。
【0044】
第3無機ハロゲン化合物300は、カチオンは、Li、Na、K、Rb、およびCsから成る群から選択される1価のアルカリ金属イオンであってもよく、ハロゲンアニオンは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)の中から選択されるいずれか1つのアニオンであってもよい。
【0045】
図3に示されたように、本発明の一実施形態において使用された第3無機ハロゲン化合物300は、CsClであってもよい。
【0046】
本発明の実施形態によれば、真空熱蒸着工程によって第1無機ハロゲン化合物100(PbI)を240nmの厚さで蒸着し、第2無機ハロゲン化合物200(PbBr)を80nmの厚さで蒸着し、第3無機ハロゲン化合物300(CsCl)を20nmの厚さで蒸着し、ペロブスカイト無機物層をシリコン層の上部に形成する。
【0047】
このように生成されたペロブスカイト無機物層に対して時間を異ならせて吸光度を測定した結果、図3に示されたように、無機物層の吸光度が最初にペロブスカイト無機物層をシリコン層に蒸着した時点(as-deposited)の吸光度からほとんど変化しないことが分かった。
【0048】
すなわち、図3に示された吸光度の測定によって現れるペロブスカイト無機物層をシリコン層に蒸着した時点から1時間が経過した時点(1 hour)の無機物層の相とペロブスカイト無機物層をシリコン層に蒸着した時点から24時間が経過した時点(overnight)の無機物層の相が、最初にペロブスカイト無機物層をシリコン層に蒸着した時点の無機物層の相(as-deposited)とほぼ同一に維持されていることが分かる。
【0049】
これを図1に示された従来の方法で形成されたペロブスカイト無機物層(PbI+CsBr)と比較してみると、従来の方法で形成されたペロブスカイト無機物層(PbI+CsBr)は、450nm~650nmの波長の領域で時間が経つにつれて吸光度が顕著に減少しているが、本発明の方法で形成されたペロブスカイト無機物層(PbI+PbBr+CsCl)は、時間が経過しても測定された全体波長領域(450nm~800nm)でほぼ同一に吸光度が維持されていることが分かる。
【0050】
したがって、本発明の実施形態によるペロブスカイトを形成する方法によれば、時間が経過しても、ペロブスカイト無機物層の相が安定的に維持されるので、無機物層の相を正確に把握した状態でペロブスカイト有機物層を無機物層の上部にコートすることができる。したがって、有機物層と無機物層の反応によって形成される有機・無機ペロブスカイト層も安定かつ均一に形成することができる。
【0051】
特に、大面積のタンデム太陽電池を製造する場合には、部分別/バッチ別にペロブスカイト無機物層が形成される時間が変わっても、各部分の無機物層の状態が時間とともに変化しないので、全体面積にわたって均一にペロブスカイト無機物層を形成することができ、これによって、均一度が高い大面積のペロブスカイト光吸収層を製造することができるという効果がある。
【0052】
本発明の実施形態では、互いに異なるハロゲン元素を有する3種の無機ハロゲン化合物を蒸着し、ペロブスカイト無機物層を形成したが、これに限定されるものではなく、PbI+CsBr+PbCl、PbI+CsBr+CsCl+PbBrなど3種、4種、5種それ以上の前駆体の多様な組み合わせを通じて無機物層を形成することができる。
【0053】
次に、このように形成されたペロブスカイト無機物層の上部に溶液工程によってペロブスカイト有機物層をコートする段階(S20)を実施する。1つまたは多数の実施形態において有機物層をコートする段階(S20)前に、熱処理過程が追加されてもよい。
【0054】
溶液工程には、多様な方法(スピンコーティング法、ドクターブレードコーティング法、ドロップキャスト法、インクジェットプリント法、電界スプレー法、スロットダイコーティング法、スプレーコーティング法など)が可能である。溶液工程は、元素比(Stoichiometry)が一定のペロブスカイト薄膜の形成が容易であるという長所がある。
【0055】
1つまたは多数の実施形態において前記溶液工程でスピンコーティング工程を実施することができる。スピンコーティング工程は、基板の上に形成されたペロブスカイト無機物層の上部にペロブスカイト有機物層の前駆体溶液を滴下した後、基板を回転させて、遠心力によって過量のペロブスカイト有機物層前駆体溶液が捨てられ、ペロブスカイト無機物層上に均一な湿潤膜(Wetted Film)を形成する方法である。
【0056】
前記有機物層を形成する有機ハロゲン化合物は、AX(Aは、1価の有機アンモニウム カチオンまたは金属カチオンであり、Xは、ハロゲンアニオンである)の化学式構造を有することができる。ここで、Aは、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、アミド基、アミジノ基またはアルカリ族のうちいずれか1つのカチオンであり、Xは、塩素(Cl)、ブロム(Br)、ヨード(I)、チオシアン酸基(NCS)、シアン基(CN)、オキシシアン(NCO)のうちいずれか1つのアニオンであってもよい。有機ハロゲン化合物は、メチルアンモニウム(MA=CHNH3+)化合物(例えば、MACl、MABr、MAIなど)、ホルムアミジニウム(FA=HC(NH2+)化合物(例えば、FACl、FABr、FAIなど)であってもよい。
【0057】
1つまたは多数の実施形態において、有機ハロゲン化合物であるFAIとFABrをイソプロピルアルコール(iso-propanol,IPA)に溶解した後、該溶液でスピンコーティング工程を実施して、ペロブスカイト有機物層を形成することができる。
【0058】
次に、ペロブスカイト無機物層上にペロブスカイト有機物層がコートされた状態で所定の時間を待機し、ペロブスカイト無機物層とペロブスカイト有機物層が互いに反応して有機・無機ペロブスカイト化合物からなる薄膜を形成する(S30)。
【0059】
有機・無機ペロブスカイト薄膜を形成するように待機する時間は、別名、焼き入れ時間(quenching time)とも言い、1つまたは多数の実施形態において、焼き入れ時間は、略5~20秒程度であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、使用される溶媒の浸透力によって焼き入れをしなくてもよい。
【0060】
次に、有機・無機ペロブスカイト薄膜を所定時間、所定温度で熱処理し、有機・無機ペロブスカイト薄膜を硬化させることによって、有機・無機ペロブスカイト層を形成する(S40)。1つまたは多数の実施形態において、前記有機・無機ペロブスカイト薄膜は、100~150℃の温度で10~30分間熱処理することができる。
【0061】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を持った者は、本発明の技術的思想でも必須の特徴を変更しなくて他の具体的な形態で容易に変形が可能だということを理解できるは、ずである。したがって以上で記述した実施形態は、すべてのメンで例示的なものであり限定的では、ないことに理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもできて、同じように分散したことで説明されている構成要素も結びついた形態で実施されることができる。本発明の範囲は、後述する特許請求範囲によって示されて、特許請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、太陽電池の製造分野に用いられ得る。
図1
図2
図3
【国際調査報告】