(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ラップアラウンド電極のためのマルチインク積層プリント電極
(51)【国際特許分類】
B22F 5/00 20060101AFI20240725BHJP
B22F 1/0545 20220101ALI20240725BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240725BHJP
B22F 9/30 20060101ALI20240725BHJP
B22F 9/24 20060101ALI20240725BHJP
C23C 24/08 20060101ALI20240725BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240725BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240725BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240725BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240725BHJP
G09F 9/40 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B22F5/00 J
B22F1/0545
B22F1/00 K
B22F9/30
B22F9/24
C23C24/08 B
C23C26/00 J
H01L33/62
G09F9/00 338
G09F9/33
G09F9/40 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501760
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022036486
(87)【国際公開番号】W WO2023287652
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー,ショーン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シジャン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,リチャード カーウッド
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジォン,イン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
4K044
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4K017BA02
4K017BA05
4K017EF05
4K017FB03
4K018AA02
4K018AA03
4K018BA01
4K018BA02
4K018BB05
4K018BD04
4K018DA21
4K018HA08
4K018KA37
4K044AA12
4K044AB02
4K044BA06
4K044BA08
4K044BB01
4K044BB03
4K044BC14
4K044CA42
4K044CA53
4K044CA62
5C094AA01
5C094BA25
5C094CA19
5C094DA01
5C094FB12
5F142AA35
5F142BA32
5F142CB11
5F142CD02
5F142CD45
5F142CD47
5F142FA30
5F142GA01
5G435AA01
5G435BB04
5G435CC09
5G435KK05
(57)【要約】
電極の製造方法は、金属前駆体インクを基板上の接触パッドに印刷する工程と、金属前駆体インクを乾燥させる工程と、ナノ粒子インクを金属前駆体インク上に印刷する工程と、金属前駆体インクおよびナノ粒子インクを固化させて、前駆体インクからの金属とナノ粒子インクからの金属を互いに融着させる工程とを含む。電極は、接触パッドに電気的に接触した金属前駆体インクと、接触パッド上の金属前駆体インクに電気的に接触したナノ粒子インクとを含む。アレイ基板は、電極を含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の製造方法において、
金属前駆体インクを、基板上の接触パッドに印刷する工程と、
前記金属前駆体インクを乾燥させる工程と、
ナノ粒子インクを前記金属前駆体インク上に印刷する工程と、
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インクを固化させて、該前駆体インクからの金属と該ナノ粒子インクからの金属を互いに融着させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記金属前駆体インクを印刷する工程、および、前記ナノ粒子インクを印刷する工程は、エアロゾルプリンタ、パッドプリンタ、インクジェットプリンタ、および、スプレープリンタのいずれか1つによって行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インクを固化させる工程、および/または、該金属前駆体インクを乾燥させる工程は、250℃以下の温度で行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インクを固化させる工程は、レーザを用いて行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触パッドは、2つの接触パッドを含み、一方の接触パッドは、前記基板上のマイクロLEDアレイから延伸するディスプレイ接触パッドであり、他方の接触パッドは、該基板の該マイクロLEDアレイとは反対側の裏面接触パッドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ディスプレイ接触パッドと前記裏面接触パッドの両方に接触するラップアラウンド電極を備える工程を、
更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、ガラスである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銀または銅である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、異なるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アレイ基板において、
基板と、
前記基板の前面上で、ディスプレイ接触パッドを含むマイクロLEDアレイと、
前記ディスプレイ接触パッドに電気的に接触した金属前駆体インクと、
前記ディスプレイ接触パッド上の前記金属前駆体インクに電気的に接触したナノ粒子インクと
を含むアレイ基板。
【請求項11】
前記基板の前記前面の反対側の裏面上の裏面接触パッドと、
前記裏面接触パッドに電気的に接触した前記金属前駆体インクと、
前記裏面接触パッド上の前記金属前駆体インクに電気的に接触した前記ナノ粒子インクと
を更に含む、請求項10に記載のアレイ基板。
【請求項12】
前記ディスプレイ接触パッドおよび前記裏面接触パッド上の前記ナノ粒子インクと接触したラップアラウンド電極を、
更に含む、請求項11に記載のアレイ基板。
【請求項13】
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銀または銅である、請求項10に記載のアレイ基板。
【請求項14】
前記基板は、ガラスである、請求項10に記載のアレイ基板。
【請求項15】
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、異なるものである、請求項10に記載のアレイ基板。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2021年7月15日出願の米国仮特許出願第63/222,215号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、マイクロLED電子ディスプレイ用の縁部電極の技術に関する。特に、本開示は、ボーダーレス、ベゼルフリー、または、タイル状ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロLEDディスプレイは、個々の画素を画定するマイクロ発光ダイオード(LED)アレイからなる。トップエミッション型のマイクロLEDディスプレイは、基板最上面上のマイクロLEDを、基板の後方に位置するドライバーボードと電気的に相互接続する方法を必要とする。典型的には、これは、基板の最上面の縁部に取り付けられて、基板の周りに曲げられた可撓性接続部を用いることで実現される。ボーダーレス、ベゼルフリー、または、タイル状ディスプレイの場合には、基板最上面に取り付けられた可撓性接続部を用いるのは望ましくない。そのような構成において、可撓性接続部は、画面を見る人に見えてしまい、ベゼルで隠す必要があるか、または、可撓性接続部がタイル間の空間を広く占めすぎて、シームレスなタイル配置ができなくなる。両方の場合に、典型的な可撓性接続部は、タイトな組立てパッケージングを提供しながら、画面を見る人に見えないようにする要求を満たすには大きすぎる。マイクロLEDディスプレイ基板の最上面を後方のドライバーボードと電気的に接続するための1つの解決策は、ラップアラウンド電極を用いることである。
図1に例を示している。
【0004】
図1は、基板10の前面上にマイクロLEDアレイ20を含む基板10の縁部を示している。マイクロLED電極30用の接触パッドは、マイクロLEDアレイ20から延伸して、裏面電極50用の接触パッドにラップアラウンド電極(WAE)40を介して接続する。図示したように、WAEは、マイクロLEDディスプレイ基板10の縁部の周りを包み込むように製作される。これにより、電極が物理的により小さい空間を占めて、視覚的に観察されにくくすることが可能になる。WAEは、ボーダーレス、ベゼルフリー、および、タイル状ディスプレイで用いられてきた。これらの電極は、様々な電極材料および製作方法で製作されてきた。そのような技術は、プリント線、真空成膜/パターン形成金属線、可撓性接続部、および、電気メッキ線を含む。機能的マイクロLEDディスプレイの実証には成功したが、示されたマイクロLEDディスプレイは、輝度および寿命が限られるものだった。このような限られた動作は、現在使用されているWAEの電気性能および信頼性によると推測される。WAEの電気性能および信頼性を改良する方法が、材料および処理の改良を通して行われいる。
【0005】
電極印刷は、導電性金属ナノ粒子インクをタイル状基板上に所定のパターンで成膜し、次に、それを穏やかな温度で固化して、金属粒子を焼結して導電性経路を提供することによって行いうる。焼結により、インク溶剤を除去し、ナノ粒子同士を隔てるように備えられた有機材料を粉砕して、隣接したナノ粒子の金属が互いに接触して接合しうる。
【0006】
電極印刷は、現行のスパッタリング技術と比べて、それは、厚さが比較的厚く、ラップアラウンド電極を生成するのに3Dパターン形成を要するものなので、低コストの3D解決策を提供する。例示的なプリント処理において、ナノ粒子インクは、インクを基板上に望ましいパターンで向けるノズルに送出される。成膜したインクは、次に、比較的低温、つまり、250℃以下で、乾燥されて、固化される。保護膜は、典型的にはポリマーであり、次に、基板に取り付けられて、機械的保護および電気的絶縁を電極に提供し、更に、基板の縁部の電極を光学的に隠す。
図2に、この種類の構成のマイクロLEDディスプレイを有する2つのタイル状基板の例を示している。
【0007】
図2は、
図1に示したものと同様の2つの隣接したマイクロLEDディスプレイを示している。図示したように、各マイクロLEDディスプレイは、基板10の前面にマイクロLEDアレイ20を含む基板10を含む。マイクロLED電極30は、マイクロLEDアレイ20から延伸して、裏面電極50にWAE40を介して接続される。保護膜60は、基板10の側面、前面および裏面で、WAE40を覆い保護するように含められる。
【0008】
プリント電極の電気抵抗は、バルク導電体材料の抵抗率の僅か2.5倍で、それは、用いられるナノ粒子のサイズ、固化条件、および、インクの有機組成に応じたものでありうる。具体的には、ナノ粒子の平均サイズが減少すると、プリント電極の抵抗率も低下する。その結果、より小さいナノ粒子が好ましいものとなる。しかしながら、ナノ粒子がインク懸濁液中で塊状になるのを防ぐには、ナノ粒子を有機膜で囲んで、ナノ粒子同士が互いに反発しないようにして、望ましくない析出を削減する。
【0009】
ナノ粒子の有機膜は、固化処理中に除去されないと、プリント電極について、いくつかの問題を生じうる。それらの問題は、(a)結果的に生じる多孔性が線抵抗および接触抵抗を高めるので、電気性能に悪影響を与えること、(b)完全に除去されない場合、プリント電極と接触パッドの間の接触抵抗が増加すること、(c)経時的に変化するトラップした有機材料、または、プリント線の孔空間にトラップされた水分により、プリント線の信頼性を低下させること、および、(d)焼結は、隣接したナノ粒子の金属同士が融着しうるように、これらの膜を破壊する必要があるので、固化速度および程度が低下することを含みうる。
【0010】
ナノ粒子インクの電極の導電性接触部に対する接触抵抗は、接触領域が広い場合には、あまり高くないが、表示画素のサイズが縮小すると、対応する接触領域も縮小する。その結果、WAEの全抵抗は、マイクロLEDディスプレイの接触抵抗に支配されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような問題を解決するために、本開示の好適な実施形態は、個々のマイクロLEDディスプレイ基板要素(タイル)をシートから個々に分けてタイルのサイズ/形状決め、縁部調製、電極印刷、および、保護膜の取付けといういくつかの工程を含む処理を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、ナノ粒子インクを用いたプリント電極の接触抵抗の限界に取り組みものである。接触抵抗の削減は、少なくとも1つの更なる層を組み込むことによって実現し、具体的には、印刷されたWAEと電極接触パッド間の電気接触を増加させる層である。個々のプリント層を単独で用いるだけでは、デバイスの電気的要求を満たさない。多層構造に組み合わされたプリント層であれば、そのような要求を満たす。
【0013】
接触抵抗を削減するように電極を印刷するための新しい方法および構成を開示する。方法は、2つ以上の導電性インクを成膜する工程を含む。少なくとも1つの層は、デバイスの電極とプリント電極の間で良好な電気的接触および低い接触抵抗を確立するように設計される。この層は、プリント電極とナノ粒子金属インクの間の接触を改良する金属化合物で構成された金属前駆体インクを含みうる。更なる層は、プリント電極同士の低い線抵抗を確立するように設計される。この層は、金属前駆体インクのみによって成膜しうるより厚く成膜しうる従来のナノ粒子導電性インクで構成されて、それにより、印刷スループットが増加しうる。
【0014】
多層の組合せは、それらが共に固化した時に、接触パッドへの低い接触抵抗、低い金属線抵抗、並びに、成膜された基板および接触パッド材料への高い接着性を有する独自の薄膜を生成する。
【0015】
本開示は、導電性電極を印刷する様々な構成、処理および方法を用いたいくつかの革新的アイデアを含む。これらの革新的アイデアは、ラップアラウンド電極の低い接触抵抗および低い線抵抗の両方を実現する。革新的アイデアは、以下を含むものである。
1)多層プリント電極
2)多数要素インク系処理フロー
3)成膜後に金属化する金属前駆体インクの使用
4)ナノ粒子インクの成膜処理および多層プリント電極の固化方法
5)マルチインク溶液が、どのようにナノ粒子のみのプリント電極および金属化合物のみのプリント電極より利点があるかの説明であり、以下を含む:
a)接触パッドとの接触増加、
b)プリント電極積層物の厚さを最大化し、それにより、コスト削減、
c)印刷された金属電極または接触パッド材料の酸化軽減。
【0016】
本開示の実施形態は、電極の製造方法において、金属前駆体インクを、基板上の接触パッドに印刷する工程と、金属前駆体インクを乾燥させる工程と、ナノ粒子インクを金属前駆体インク上に印刷する工程と、金属前駆体インクおよびナノ粒子インクを固化させて、前駆体インクからの金属とナノ粒子インクからの金属を互いに融着させる工程とを含む方法を含む。
【0017】
実施形態において、金属前駆体インクを印刷する工程、および、ナノ粒子インクを印刷する工程は、エアロゾルプリンタ、パッドプリンタ、インクジェットプリンタ、および、スプレープリンタのいずれか1つによって行われうる。
【0018】
実施形態において、金属前駆体インクを乾燥させる工程は、常温条件下で行われうる。
【0019】
実施形態において、金属前駆体インクおよびナノ粒子インクを固化させる工程は、250℃以下の温度で行われうる。
【0020】
実施形態において、接触パッドは、2つの接触パッドを含み、一方の接触パッドは、基板上のマイクロLEDアレイから延伸するディスプレイ接触パッドであり、他方の接触パッドは、基板のマイクロLEDアレイとは反対側の裏面接触パッドでありうる。
【0021】
方法は、ディスプレイ接触パッドと裏面接触パッドの両方に接触するラップアラウンド電極を備える工程を、更に含みうる。
【0022】
実施形態において、基板は、ガラスでありうる。
【0023】
実施形態において、金属前駆体インクおよびナノ粒子インク中の金属は、銀または銅でありうる。
【0024】
実施形態において、金属前駆体インク中の金属とナノ粒子インク中の金属は、同じでありうる。
【0025】
実施形態において、金属前駆体インク中の金属とナノ粒子インク中の金属は、異なるものでありうる。
【0026】
実施形態において、金属前駆体インクおよびナノ粒子インクを固化させる工程は、レーザを用いて行われうる。
【0027】
実施形態において、金属前駆体インクを乾燥させる工程は、150℃までの温度で行われうる。
【0028】
本開示の他の実施形態において、アレイ基板は、基板と、基板の前面上で、ディスプレイ接触パッドを含むマイクロLEDアレイと、ディスプレイ接触パッドに直に、かつ電気的に接触した金属前駆体インクと、ディスプレイ接触パッド上の金属前駆体インクに直に、かつ電気的に接触したナノ粒子インクとを含む。
【0029】
アレイ基板は、基板の前面の反対側の裏面上の裏面接触パッドと、裏面接触パッドに電気的に接触した金属前駆体インクと、裏面接触パッド上の金属前駆体インクに電気的に接触したナノ粒子インクとを更に含む。
【0030】
アレイ基板は、ディスプレイ接触パッドおよび裏面接触パッド上のナノ粒子インクと接触したラップアラウンド電極を、更に含みうる。
【0031】
本開示の他の実施形態において、電極は、接触パッドに電気的に接触した金属前駆体インクと、接触パッド上の金属前駆体インクに電気的に接触したナノ粒子インクとを含む。
【0032】
本開示のここまでの記載および他の特徴物、要素、特徴、工程、および、利点は、次の本開示の好適な実施形態の詳細な記載を、添付の図面を参照して読むことで、更に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】従来例のマイクロLEDディスプレイの断面図である
【
図2】従来例の2つの隣接したマイクロLEDディスプレイの断面図である
【
図4】本開示によるマイクロLEDディスプレイの断面図である
【発明を実施するための形態】
【0034】
図3は、本開示の実施形態による多層インク系を印刷する処理を示している。本実施形態において、1)少なくとも1つの層を最適化して、接触パッドとプリント電極の間で強い電気接触を確立し、2)少なくとも1つの層を最適化して、低い線抵抗を確立する。2層より多くが可能であるが、次の具体例では、最小の2層電極系に焦点を当てる。
【0035】
図3に示した処理によれば、まず、タイル状基板をプリンタの台にセットして位置合わせする。プリンタは、エアロゾルジェット、インクジェット、スプレー、スクリーン、ローラ、スロット、スタンプ、パッド、ブレード、または、任意の他の適した技術を用いて、望ましいインクを基板上に成膜しうる。更に、異なる溶液の被膜または印刷方法も用いて、特定のインク物性並びに望ましい層構造および寸法に適するように異なるインク層も成膜しうる。次に、金属前駆体インクを望ましいパターンで印刷して、電極を確立する。金属前駆体インクは、溶液に可溶性の金属化合物で構成され、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケルまたは他の金属などのカチオン性金属、並びに、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、または、溶液中に塩を形成し易い任意の他の種などのアニオン種を含みうる。塩は、水溶液または有機溶剤に分散しうる。溶剤系は、二成分、三成分または更に多成分の溶剤混合物で構成されて、印刷に望ましい物理的および化学的物性を生じるのが望ましい。
【0036】
次に、金属前駆体インクを乾燥させる。用いた金属前駆体インクに応じて、乾燥を、常温条件で行うか、加熱して促進させうる。基板および/またはインクの150℃までの加熱を用いて、溶剤蒸発速度を変えて、線幅および厚さなど、プリント電極の寸法を制御しうる。金属前駆体線が十分に乾燥すると、更なる層を、同じインクまたは異なるインクで印刷して、望ましい電気的および物理的特性を実現しうる。
【0037】
金属前駆体インクが印刷される時に、溶剤は蒸発し、金属塩の濃度が高まる。この結果、金属が還元されて、大きさが成長する金属核を形成し、溶液から析出して固体金属膜を形成する金属化反応を生じる。この反応の副生成物は、概して気体状または揮発性である。熱を用いて、金属化処理を開始または促進させて、プリント電極から酸化還元反応の副生成物を除去しうる。この処理は、選択した金属に応じて、空気、不活性、または、還元雰囲気下(還元雰囲気は、水素気体などの還元剤を含み、接触パッドおよび/またはプリント電極が酸化しないようにするもの)で行って、酸化を最小にしうる。金属前駆体インクは、マイクロLEDディスプレイ電極および裏面電極の接触パッド上の表面酸化物を還元させるように反応しうる酸性および/または塩基性成分で構成されて、更に、導電性接触部の間で低い接触抵抗を得るのを助けうる。結果的に得られる薄膜は、粒子状モーフォロジー、前駆体の中で融着した金属のウェブ状またはストランド状構造物で構成された固体金属電極である。成膜した金属電極は、基板および下の電気的構造物と共形で、結果的に、プリント電極と前側および裏側接触パッドとの電気接触を改良する。ここでは、特にマイクロLEDディスプレイを記載しているが、この低い接触抵抗と低い線抵抗の両方を実現するマルチインク電極を、概して、他の電子および光電子利用に適用しうる。これらの利用例におけるデバイスは、このマルチインク電極を、記載したような表面導電体またはWAEのいずれかとして用いうる。これらの利用例は、ディスプレイ技術(LCDおよびOLED)、光起電、照明、センサ、および、可撓性電子機器を含みうる。
【0038】
金属前駆体の「接触抵抗層」を生成した後に、低い線抵抗を生じる更なる層を画定する。金属前駆体インクを乾燥させた後に、ナノ粒子金属インクを、部分的または完全に金属化した前駆体インクの最上部に成膜して、望ましいプリント電極寸法を実現する。処理条件に応じては、金属前駆体インクは完全に焼結されずに、全ての金属が融着しうる。
【0039】
次に、2層からなるプリント電極を、熱、レーザ、UV、IR、または、任意の他の適した機構を250℃以下の温度で用いて固化する。固化を、異なる雰囲気下で行いうるもので、それは、印刷に用いたインクの金属の選択によって支配されて、酸化を防ぎうる。例えば、固化を、温度、圧力、および、気体の任意の適した組合せで行いうる。この固化工程は、いくつかの機能を果たす。ナノ粒子インクにおいて、固化は、溶剤を除去し、ナノ粒子を囲んで焼結を抑制するバインダーを粉砕し、更に、ナノ粒子を十分に焼結して、ナノ粒子層内で電気的連続性を生成する。金属化した前駆体層において、固化処理は、金属前駆体インクの任意の更なる金属化を完了しうる。更に、固化は、焼結、および、金属前駆体層とナノ粒子層の間の金属の融着も提供する。固化の前に、前駆体インクとナノ粒子インクは、別々の層であるが、固化の間に、層同士が組み合わされて、単一の導電性構造になる。固化条件およびインク成分に応じて、結果的に得られる多数の層は、異なる多孔性および微細構造を有しうるか、または、多数の層を組み合わせて、結果的に、はっきりとした境界のない単一の導電体構造になる。2層からなるプリント電極が好ましいが、任意の量の層を備えて、望ましい性能特性を実現しうる。更に、インク層は、パターン領域内で連続する必要はない。例えば、「接触抵抗層」または他の層は、デバイスの電極接触パッドの上で不連続のアイランド状でありうる。
【0040】
インクの金属成分(金属前駆体およびナノ粒子)は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、スズなど、同じでありうるが、印刷されたマルチインク積層電極の性能属性(つまり、電気性能、接着、信頼性など)を更に拡大するには異なるものでありうる。望ましい性能を生成するには、金属選択および固化処理は十分に適合する必要がある。
【0041】
図4は、結果的に得られる2インク電極構成を示している。
図4は、マイクロLEDアレイ420を示し、基板410の前面上に電極430を含む。基板410は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、ポリマー、複合材、金属、合金、それらの任意の組合せ、または、任意の他の適した材料でありうる。裏面電極450は、基板410の裏面上でありうる。
図3を参照して記載した上記処理により生成した金属前駆体インクおよびナノ粒子インクの2つのインク電極480、490を画定する固化した層は、各々、マイクロLED電極430と裏面電極450の上に備えられうる。図示したように、従来のWAE440を用いて、2つのインク電極480、490同士を接続する。その代わりに、ナノ粒子インク層を延伸させて、連続したWAE440を画定しうる。
【0042】
2インク印刷系は、ラップアラウンド電極利用について、更なる利点を有する。単一の金属化合物系前駆体のプリント電極系を用いて、低い接触抵抗を有する同様の幾何学形状の電極を製造しうるが、金属化合物インクは、一回の処理動作で成膜しうる厚さが限られる。これは、溶剤系での銀化合物の溶解度が限られることによって、このインクの金属部分が限られるからである。市販の金属ナノ粒子インクは、50~70質量%の金属を含みうるが、ほとんどの市販の金属化合物インクは、20質量%未満の金属を含み、非常に流動性が高く、その結果、印刷されたパターンは、幅が広く短くなる。結果的に、ナノ粒子インクの1回の処理動作で実現しうる厚さと同じ厚さを生成するのに、20層までもの金属化合物インクを印刷する必要がありうる。更に、成膜された金属化合物インクは、ナノ粒子のインクより粗く、ナノ粒子インクの方が高い多孔率を有する場合でさえ、ナノ粒子インクより低い導電性を示すことが多い。したがって、2つの種類の金属インクを組み合わせることで、個々の成分より優れた性能を生じる。表1に、異なる電極材料の性能を示している。
【0043】
【0044】
表1は、Ti/Cu/ITO接触材料上の銀系ナノ粒子インク(NP)のみの抵抗率は、100,000~500,000Ω・μm2であることを示している。一方、銀系前駆体の上に銀系ナノ粒子インクの場合、14,000Ω・μm2という非常に低い抵抗率を有する。
【0045】
マルチインク層プリント電極を用いるアプローチは、異なる金属インクを異なる電極パターンで印刷するのを可能にし、望ましい局所性能の要求を満たそうとするものである。金属前駆体インクを、接触パッドの上だけに印刷するか、または、全プリント電極パターンに亘って印刷しうる。同様に、金属ナノ粒子インクを、金属前駆体インクの上に局所的に印刷するか、または、全プリント電極パターンに亘って印刷しうる。金属化合物インクについての印刷パターンの選択は、パターンを形成すべき正確な寸法、印刷機器の性能、更に、接触パッド材料の段差高さなどの他の検討材料に応じたものである。例えば、金属前駆体インクパターン(または、他のインク層)は、金属化合物インクパターン(または、他の層)によって完全に覆われうる。その代わりに、金属前駆体インクまたは任意の他の下層が、金属化合物インクまたは上層の下から外に延伸して、覆われないようにしうる。このようにして、任意の個々の層は、互いに重なり電気的に接続する限りは、異なる幅、長さ、および、厚さを有しうる。
【0046】
ここまでの記載は、本開示の例にすぎないと理解すべきである。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更および変形を考えうる。したがって、本開示は、そのような変更、変形および違いも添付の請求項の範囲である限りは、全て包含することを意図する。
【0047】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0048】
実施形態1
電極の製造方法において、
金属前駆体インクを、基板上の接触パッドに印刷する工程と、
前記金属前駆体インクを乾燥させる工程と、
ナノ粒子インクを前記金属前駆体インク上に印刷する工程と、
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インクを固化させて、該前駆体インクからの金属と該ナノ粒子インクからの金属を互いに融着させる工程と
を含む方法。
【0049】
実施形態2
前記金属前駆体インクを印刷する工程、および、前記ナノ粒子インクを印刷する工程は、エアロゾルプリンタ、パッドプリンタ、インクジェットプリンタ、および、スプレープリンタのいずれか1つによって行われるものである、実施形態1に記載の方法。
【0050】
実施形態3
前記金属前駆体インクを乾燥させる工程は、常温条件下で行われるものである、実施形態1に記載の方法。
【0051】
実施形態4
前記金属前駆体インクを乾燥させる工程は、150℃までの温度で行われるものである、実施形態1に記載の方法。
【0052】
実施形態5
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インクを固化させる工程は、250℃以下の温度で行われるものである、実施形態1に記載の方法。
【0053】
実施形態6
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インクを固化させる工程は、レーザを用いて行われるものである、実施形態1に記載の方法。
【0054】
実施形態7
前記接触パッドは、2つの接触パッドを含み、一方の接触パッドは、前記基板上のマイクロLEDアレイから延伸するディスプレイ接触パッドであり、他方の接触パッドは、該基板の該マイクロLEDアレイとは反対側の裏面接触パッドである、実施形態1に記載の方法。
【0055】
実施形態8
前記ディスプレイ接触パッドと前記裏面接触パッドの両方に接触するラップアラウンド電極を備える工程を、
更に含む、実施形態7に記載の方法。
【0056】
実施形態9
前記基板は、ガラスである、実施形態1に記載の方法。
【0057】
実施形態10
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銀である、実施形態1に記載の方法。
【0058】
実施形態11
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銅である、実施形態1に記載の方法。
【0059】
実施形態12
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、同じである、実施形態1に記載の方法。
【0060】
実施形態13
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、異なるものである、実施形態1に記載の方法。
【0061】
実施形態14
アレイ基板において、
基板と、
前記基板の前面上で、ディスプレイ接触パッドを含むマイクロLEDアレイと、
前記ディスプレイ接触パッドに電気的に接触した金属前駆体インクと、
前記ディスプレイ接触パッド上の前記金属前駆体インクに電気的に接触したナノ粒子インクと
を含むアレイ基板。
【0062】
実施形態15
前記基板の前記前面の反対側の裏面上の裏面接触パッドと、
前記裏面接触パッドに電気的に接触した前記金属前駆体インクと、
前記裏面接触パッド上の前記金属前駆体インクに電気的に接触した前記ナノ粒子インクと
を更に含む、実施形態14に記載のアレイ基板。
【0063】
実施形態16
前記ディスプレイ接触パッドおよび前記裏面接触パッド上の前記ナノ粒子インクと接触したラップアラウンド電極を、
更に含む、実施形態15に記載のアレイ基板。
【0064】
実施形態17
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銀である、実施形態14に記載のアレイ基板。
【0065】
実施形態18
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銅である、実施形態14に記載のアレイ基板。
【0066】
実施形態19
前記基板は、ガラスである、実施形態14に記載のアレイ基板。
【0067】
実施形態20
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、同じである、実施形態14に記載のアレイ基板。
【0068】
実施形態21
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、異なるものである、実施形態14に記載のアレイ基板。
【0069】
実施形態22
電極において、
接触パッドに電気的に接触した金属前駆体インクと、
前記接触パッド上の前記金属前駆体インクに電気的に接触したナノ粒子インクと
を含む電極。
【0070】
実施形態23
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銀である、実施形態22に記載の電極。
【0071】
実施形態24
前記金属前駆体インクおよび前記ナノ粒子インク中の金属は、銅である、実施形態22に記載の電極。
【0072】
実施形態25
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、同じである、実施形態22に記載の電極。
【0073】
実施形態26
前記金属前駆体インク中の金属と前記ナノ粒子インク中の金属は、異なるものである、実施形態22に記載の電極。
【符号の説明】
【0074】
410 基板
420 マイクロLEDアレイ
430 マイクロLED電極
440 ラップアラウンド電極
450 裏面電極
【国際調査報告】