(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】積層造形用の圧電粉末微粒子及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240725BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240725BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240725BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240725BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240725BHJP
C08J 3/16 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08L101/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y40/20
C08J3/16 CER
C08J3/16 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502045
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022037477
(87)【国際公開番号】W WO2023003814
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ サラ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシレイユ アレキサンドロス
(72)【発明者】
【氏名】ズー ユージエ
(72)【発明者】
【氏名】ズウォーツ エドワード ジー
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AA53
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4F070AC23
4F070AC92
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4J002AA001
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4J002GT00
(57)【要約】
積層造形によって作製された部品は、ポリマー又はその中に存在する他の構成成分によって伝達される機能的特性を有するのではなく、本質的に構造的である場合が多い。圧電特性を有する印刷部品は、熱可塑性ポリマーと圧電粒子とを含む粉末微粒子を使用して形成でき、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する。粉末微粒子の粉末床溶融結合などの積層造形プロセスを用いて、粉末微粒子から、様々な形状の印刷部品を形成できる。溶融乳化を、粉末微粒子の形成に使用してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子組成物であって、
熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含み、前記圧電粒子は(i)前記粉末微粒子の外側表面の前記熱可塑性ポリマー内、(ii)前記粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、微粒子組成物。
【請求項2】
前記複数の粉末微粒子の各々の外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、前記複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項3】
前記複数の酸化物ナノ粒子は、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項2に記載の微粒子組成物。
【請求項4】
前記圧電粒子は、実質的に非凝集である、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項5】
前記粉末微粒子から形成された単層薄膜は、APC International Wide-Range d
33メータで測定したときに、ポーリング後に、約200ミクロンの膜厚において約1pC/N以上のd
33値を有する、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項6】
前記圧電粒子は、約10ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項7】
前記粉末微粒子は、約5体積%~約85体積%の圧電粒子を含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(SBS)、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-ビニルアセテート)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(二フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項9】
前記圧電粒子は、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される圧電材料を含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項10】
前記粉末微粒子は、サイズが約1μm~約500μmの範囲である、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項11】
微粒子圧密によって形成された、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、
前記ポリマーマトリックス内に位置する複数の圧電粒子と、
を含む、印刷物。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックス内に位置する複数のナノ粒子を更に含み、前記複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の印刷物。
【請求項13】
前記複数の酸化物ナノ粒子は、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項12に記載の印刷物。
【請求項14】
前記圧電粒子は、実質的に非凝集である、請求項11に記載の印刷物。
【請求項15】
前記圧電粒子は、約10ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項11に記載の印刷物。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(SBS)、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-ビニルアセテート)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(二フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項11に記載の印刷物。
【請求項17】
前記圧電粒子は、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される圧電材料を含む、請求項11に記載の印刷物。
【請求項18】
熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に配置する工程であって、前記圧電粒子は(i)前記粉末微粒子の外側表面の前記熱可塑性ポリマー内、(ii)前記粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、配置する工程と;
前記複数の粉末微粒子の一部を前記粉末床内で圧密して印刷物を形成する工程と、
を含む、積層造形方法。
【請求項19】
前記複数の粉末微粒子は、前記複数の粉末微粒子の各々の前記外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、前記複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項20】
前記複数の酸化物ナノ粒子は、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項19に記載の積層造形方法。
【請求項21】
前記圧電粒子は、実質的に非凝集である、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項22】
前記圧電粒子は、約10ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項23】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(SBS)、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-ビニルアセテート)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(二フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項24】
前記圧電粒子は、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される圧電材料を含む、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項25】
前記印刷物の少なくとも一部をポーリングする工程を更に含む、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項26】
前記粉末微粒子は、サイズが約1μm~約500μmの範囲である、請求項18に記載の積層造形方法。
【請求項27】
粉末微粒子を形成する方法であって、
熱可塑性ポリマーと、前記熱可塑性ポリマー中に分布された複数の圧電粒子とを含む複合物を提供する工程と;
前記熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中に前記複合物を組み合わせる工程であって、
前記熱可塑性ポリマーと前記分散媒とは、前記加熱温度において実質的に不混和性である、組み合わせる工程と;
前記加熱温度において、前記熱可塑性ポリマーを、前記圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加する工程と;
液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、前記分散媒を冷却する工程であって、前記粉末微粒子は前記熱可塑性ポリマーと前記圧電粒子の少なくとも一部とを含み、前記圧電粒子は(i)前記粉末微粒子の外側表面の前記熱可塑性ポリマー内、(ii)前記粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、冷却する工程と;
前記粉末微粒子を前記分散媒から分離する工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
複数のナノ粒子を、前記分散媒中で前記複合物と組み合わせる工程を更に含み、
前記複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの組み合わせを含み、
前記ナノ粒子の少なくとも一部は、前記粉末微粒子の各々の前記外側表面上に配置される、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の酸化物ナノ粒子は、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記圧電粒子は、実質的に非凝集である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記圧電粒子は、約10ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(SBS)、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-ビニルアセテート)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(二フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記圧電粒子は、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される圧電材料を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記分散媒は、シリコーン油を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記粉末微粒子は、サイズが約1μm~約500μmの範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
粉末微粒子を形成する方法であって、
熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを、前記熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中で組み合わせる工程であって、
前記熱可塑性ポリマーと前記分散媒とは、前記加熱温度において実質的に不混和性である、組み合わせる工程と;
前記加熱温度において、前記熱可塑性ポリマーを、前記圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加する工程と;
液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、前記分散媒を冷却する工程であって、前記粉末微粒子は前記熱可塑性ポリマーと前記圧電粒子の少なくとも一部とを含み、前記圧電粒子は(i)前記粉末微粒子の外側表面の前記熱可塑性ポリマー内、(ii)前記粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、冷却する工程と;
前記粉末微粒子を前記分散媒から分離する工程と、
を含む、方法。
【請求項37】
複数のナノ粒子を、前記分散媒中で前記熱可塑性ポリマー及び前記圧電粒子と組み合わせる工程を更に含み、
前記複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの組み合わせを含み、
前記ナノ粒子の少なくとも一部は、前記粉末微粒子の各々の前記外側表面上に配置される、
請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の酸化物ナノ粒子は、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記圧電粒子は、実質的に非凝集である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記圧電粒子は、約10ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(SBS)、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-ビニルアセテート)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(二フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記圧電粒子は、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される圧電材料を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記分散媒は、シリコーン油を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記粉末微粒子は、サイズが約1μm~約500μmの範囲である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、積層造形、より具体的には、複雑な物体を製造するための、粉末床溶融結合(PBF)を用いた積層造形プロセス、及び類似の微粒子圧密(consolidation)プロセス、例えば選択的レーザー焼結を用いるプロセス、及び上記プロセスに有用な微粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形は、3次元(3D)印刷としても知られ、急速に成長している技術分野である。積層造形は従来ラピッドプロトタイピング作業に使用されてきたが、かなり多くの複雑な形状の商業用及び産業用部品(印刷物)の製造に用いられることが増えている。積層造形プロセスは、1)溶融印刷材料若しくは印刷材料の液体前駆体の流れ、又は2)印刷材料の粉末微粒子、のいずれかの積層堆積によって行われる。積層堆積は、通常、コンピュータの制御下で行われ、製造しようとする部品のデジタル3次元「設計図」(コンピュータ-支援設計モデル)に基づいて、印刷材料を正確な位置に堆積させ、圧密する。粉末微粒子の圧密は、積層堆積した粉末床において、レーザー又は電子ビームを用いて粉末床の正確な位置を加熱し、それによって特定の粉末微粒子を圧密して、所望の形状を有する部品を形成する3次元印刷システムを使用して行われてもよい。選択的レーザー焼結(SLS)は、レーザーを用いて局所加熱による粉末微粒子の圧密を促進する。局所加熱により粉末微粒子の圧密を促進するのに好適なその他の技術としては、例えば、粉末床溶融結合(PBF)、電子ビーム溶融(EBM)、バインダージェッティング、及びマルチジェットフュージョン(MJF)が挙げられる。
3次元印刷に有用な粉末微粒子には、熱可塑性ポリマーを含む粉末微粒子がある。多様な熱可塑性ポリマーが公知であるが、特に選択的レーザー焼結等の技術による微粒子圧密を実施する場合、現在の3次元印刷技術での使用に適合した特性を有するものは比較的少ない。選択的レーザー焼結による圧密に好適な熱可塑性ポリマーとしては、溶融の開始と結晶化の開始との間に大きな差があるものが挙げられ、これは良好な構造的及び機械的完全性を促進し得る。低い球形度と不十分な粉末流動特性は、現在3次元印刷プロセスで使用されている多くの熱可塑性粉末微粒子に関連する2つの制限事項である。
【0003】
様々な形状を有する幅広い部品が微粒子圧密によって製造され得る。多くの場合、使用される熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマー自体が生来の機能を有するのではなく、主に本質的に構造的な性質を有し得る。1つの例外は、導電性ポリマーの弱い導電性である。もう1つの例外は圧電機能であり、これはポーリング時に生来の圧電性を有するポリマーである、β型のポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)から形成された印刷物に存在し得る。圧電材料は、機械的歪みの下で電荷を発生するか、又は逆に、電圧が印加されたときに機械的歪みを受ける。圧電材料の潜在的な用途には、センシング(例えば、圧力センシング)、スイッチング、アクチュエーション、及びエネルギーハーベスティングが含まれる。
ポリ二フッ化ビニリデン以外では、圧電特性を有する印刷部品を任意のタイプの積層造形技術によって形成する選択肢は限られる。更に、ポリ二フッ化ビニリデンの圧電性は、他のタイプの圧電材料よりもかなり低い。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような、高い圧電性を有する多数のセラミック材料が利用可能であるが、セラミック材料は、それ自体は粉末微粒子として印刷可能ではなく、非常に脆い場合が多い。更に、主に圧電セラミックを堆積させた後、部品の圧密を促進するために、高い焼結温度(>300℃)が必要となり得る。これらの欠点は、現在の積層造形プロセスで得られる可能性のある圧電応答を有する印刷部品の範囲を制限し得る。
複合材料中のポリマーと圧電粒子との混和物は、まだ印刷部品で高い圧電性能を発揮していない。ポリマー中の圧電粒子の分散不良、圧電粒子凝集、及び圧電粒子とポリマーとの間の相互作用の制限が、多くの事例で原因となっている。理論に束縛されるものではないが、圧電粒子とポリマーとの間の相互作用が制限されることで、ポリマーから圧電粒子への荷重伝達が悪くなり、機械的歪みが印加されたときに得られる圧電応答が低下する。粒子凝集も、これに関して一因となる可能性がある。上記の課題は、ポリマー複合体を、粒子ベースの3次元印刷プロセスに適合する好適な微粒子形態に配合することが困難であることで、更に複雑になる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、積層造形に好適な粒子組成物を提供する。微粒子組成物は熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含み、上記圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する。
本開示は、上記微粒子組成物を使用して形成された印刷物も提供する。印刷物は、微粒子圧密によって形成された、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、当該ポリマーマトリックス内に位置する複数の圧電粒子とを含む。
【0005】
本開示は、選択的レーザー焼結等の粉末床溶融結合によって印刷物を形成する方法も提供する。本方法は、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積するステップであって、圧電粒子が(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;複数の粉末微粒子の一部を粉末床内で圧密して、印刷物を形成するステップと、を含む。
本開示は、積層造形に好適な粒子組成物の形成方法も提供する。当該方法は、熱可塑性ポリマーと、当該熱可塑性ポリマー中に分布された複数の圧電粒子とを含む複合体を提供するステップと;熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中で上記複合体を組み合わせるステップであって、上記熱可塑性ポリマーと分散媒とは、加熱温度において実質的に不混和性である、ステップと;上記加熱温度において、熱可塑性ポリマーを、圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加するステップと;液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、分散媒を冷却するステップであって、粉末微粒子は熱可塑性ポリマーと圧電粒子の少なくとも一部とを含み、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;粉末微粒子を分散媒から分離するステップと、を含む。
微積層造形に好適な微粒子組成物の形成方法は、代替的に、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中で組み合わせるステップであって、上記熱可塑性ポリマーと分散媒とは、加熱温度において実質的に不混和性である、ステップと;上記加熱温度において、熱可塑性ポリマーを、圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加するステップと;液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、分散媒を冷却するステップであって、粉末微粒子は熱可塑性ポリマーと圧電粒子の少なくとも一部とを含み、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;粉末微粒子を分散媒から分離するステップと、を含む。
【0006】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題には、その形態及び機能において、当業者が想到し、しかも本開示の利益を有するような、相当な修正、変更、組み合わせ、及び等価物を考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】例示的な本開示による粉末微粒子の断面図である。
【
図2】本開示による粉末微粒子の製造方法の非限定例のフローチャートである。
【
図3】
図3A~3Cは、PCL:PZT粉末微粒子の種々の倍率のSEM画像である。
【
図4】TPU:PZT粉末微粒子のSEM画像である。
【
図5】TPU:PZT粉末微粒子の断面SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、概して、積層造形、より具体的には、複雑な物体を製造するための、粉末床溶融結合(PBF)を用いた積層造形プロセス、及び類似の微粒子圧密プロセス、例えば選択的レーザー焼結を用いるプロセス、及び上記プロセスに有用な微粒子組成物に関する。
上記のように、積層造形プロセス、例えば、粉末床溶融結合を促進するために選択的レーザー焼結及びその他の微粒子圧密プロセスを用いるものは、広範な複雑形状の部品(印刷物)を製造することができる。現時点では、積層造形に使用される粉末微粒子中に存在するポリマーは、大部分は本質的に構造的であり、単独では印刷部分に機能的特性を伝達しない。β型のポリ二フッ化ビニリデンは注目すべき例外であり、ポーリング後に印刷部品に圧電性を伝達し得る。ポリ二フッ化ビニリデン以外では、印刷部品に圧電特性を導入するための選択肢はほとんどない。更に、ポリ二フッ化ビニリデンで達成可能な圧電効果の大きさは、意図する用途の一部にとっては十分に大きくない場合がある。
【0009】
上記の欠点に対応して、本開示は、ポーリング後に大きな圧電性を有する印刷部品を与えるための粉末床溶融結合及び類似の微粒子圧密プロセスの実施に好適となり得る粉末微粒子を提供する。すなわち、本明細書で開示される粉末微粒子は、熱可塑性ポリマーと、当該熱可塑性ポリマーに付随する圧電粒子とを含み、これらが集合的に、微細粒子形態の複合体を画定する。圧電粒子は、熱可塑性ポリマーと混合されてもよく、又は熱可塑性ポリマー内に位置してもよく、粉末微粒子の外側表面(すなわち、熱可塑性ポリマーと別の物質又は外部環境との間の界面)に局在するか、粉末微粒子のコア内に存在するか、又はこれらの組み合わせである。本明細書に開示される粉末微粒子への包含に好適な材料は、圧電性を与えることに加え、印刷ベッドから容易に分離できる部品を形成し、印刷後に十分な機械的強度を有し、且つ良好な層間接着を示すものが挙げられる。
本開示の粉末微粒子は、圧電粒子と熱可塑性ポリマーとを含む複合体を含み、これは本明細書で詳述する溶融乳化プロセスによって形成され得る。有利なことに、多数の熱可塑性ポリマーをこの目的に使用でき、これは圧電性を示す印刷部品に好適な使用条件の範囲を、ポリ二フッ化ビニリデンに適合する条件以外にまで拡げる可能性がある。熱可塑性ポリマーと圧電粒子とは、前処理によって溶融ブレンド複合材料とし、その後、溶融乳化によって粉末微粒子へと更に変換してもよい。好適な溶融ブレンドプロセスは、熱可塑性ポリマーと圧電粒子とを撹拌しながら溶融混合した後、得られた溶融ブレンドを押出して、又は二軸押出機での押出により直接混合して、溶融ブレンド複合体を形成することを含み得る。任意選択で、本明細書で更に述べるように、溶融ブレンド複合体を、その後、粉砕、微粉化、又は細断(例えば、凍結粉砕により)してもよく、得られた複合体残渣を、その後更に溶融乳化により粉末微粒子へと加工してもよい。あるいは、熱可塑性ポリマーと圧電粒子とを、最初に溶融ブレンド複合材料に混合することなく、溶融乳化によって直接加工して粉末微粒子にすることもできる。ボイド形成が極小~ゼロであり、圧電粒子の凝集が極小~ゼロである粉末微粒子を実現でき、これは、粉末微粒子から形成した印刷部品にポーリング後に改善された圧電性能を与え得る。粉末微粒子の熱可塑性ポリマーと混合された圧電粒子の均一分布は、場合により実現され、及び/又は圧電粒子の少なくとも一部は、粉末微粒子の外側表面上又は粉末微粒子のコア内に局在化し得る。つまり、圧電粒子の不均一な分布がいくつかの事例で発生する可能性がある。有利な点として、溶融ブレンド及び溶融乳化プロセスは、溶媒への曝露なしで実施でき、そうでなければ粉末微粒子内に残留する微量の有機溶媒が組み込まれる可能性がある。高負荷の圧電粒子を粉末微粒子の熱可塑性ポリマーに混合することも実現可能であり、これは、圧電粒子が実質的に非凝集のままであることと合わせて、ポーリング後に、ポリ二フッ化ビニリデン単独で達成可能な圧電性よりも高い圧電性を与え得る。
【0010】
更なる利点として、圧電複合体を含む粉末微粒子を形成する溶融乳化プロセスは、更にナノ粒子乳化安定剤(ピッカリング乳化剤)を組み込んで、当該プロセスから得られる粉末微粒子の更なる増強をもたらし得る。かかる溶融乳化プロセスは、カーボンブラック等のナノ粒子、及び/又はシリカナノ粒子若しくはその他の酸化物ナノ粒子を、粉末微粒子の形成媒体である溶融乳化媒体(分散媒)に組み込んでもよく、その際、ナノ粒子は液化熱可塑性ポリマー小滴の固化から生じた粉末微粒子の外側表面上に配置されるようになる。外側表面上へのナノ粒子のコーティング又は部分的コーティングは、粉末微粒子に狭い粒径分布と高い球形度を生じ、これは良好な粉末流動特性と、積層造形中の迅速な微粒子圧密とをもたらす。十分に小さい場合、圧電粒子はピッカリング乳化剤として機能し得る。粉末微粒子の合成中にその外側表面上に配置されるナノ粒子乳化安定剤は、ナノ粒子を欠く予め形成された粉末微粒子に添加される類似の流動助剤とは異なり得る。なぜなら、かかる流動助剤は、粉末微粒子の外側表面からの除去可能性を制限するほど当該表面と密接に会合しないからである。
溶融乳化プロセスは、積層造形による印刷部品の形成に有利な圧電粒子を含む粉末微粒子を与え得る。更に、微細な粉末微粒子形態の圧電複合体を形成することでもたらされる利点に加えて、種々の追加のアプローチを利用することで、印刷部品のポーリング後に得られる圧電応答が増加し得る。圧電応答を増加させるための追加のアプローチは、有利なことに、粉末微粒子を形成するための溶融乳化プロセスを大幅に変えないと考えられる。より具体的には、圧電応答の増加は、粉末微粒子を構成する熱可塑性ポリマーと圧電粒子との間の相溶性を増加することで実現でき、相溶性の増加は、熱可塑性ポリマーと圧電粒子との間に共有結合及び/又は非共有結合相互作用を導入することで実現できる。いかなる理論又は機序にも束縛されるものではないが、相溶化相互作用は、熱可塑性ポリマーからの荷重伝達を促進することで圧電効果(圧電性)を増強すると考えられる。荷重伝達の増大は、更に有利なことに、粉末微粒子から印刷部品を形成したときに機械的強度を増大する。相溶化相互作用の導入方法に応じて、相溶化は、本明細書の開示による圧電複合体を含む粉末微粒子を形成する前に起こっても後に起こってもよい。
【0011】
より具体的には、圧電複合体を含む粉末微粒子は、1)π-π結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用よりも強い静電相互作用、又はこれらの任意の組み合わせによって、熱可塑性ポリマーの少なくとも一部と非共有的に相互作用する、2)熱可塑性ポリマーの少なくとも一部と共有結合する、3)熱可塑性ポリマーの少なくとも一部と反応性であり、特定の条件下(例えば、印刷中若しくは印刷後、又は溶融乳化中若しくは溶融乳化後に生じる条件)で上記ポリマーと少なくとも1つの共有結合を形成する、又は4)これらの任意の組み合わせである、複数の圧電粒子を含み得る。このような相溶化相互作用は、熱可塑性ポリマーの全部又は一部と起こり得る。
有利なことに、圧電粒子との共有結合を形成できる官能性を有する様々な熱可塑性ポリマーが市販されている、又は親ポリマー主鎖の修飾によって容易に製造できる。更に、共有結合は、表面ヒドロキシ基等の、圧電粒子上に生来存在する表面官能基を通じて起こり得る。あるいは、圧電粒子は、非共有相互作用又は熱可塑性ポリマー上の相補的官能基との共有結合を形成する反応が可能な官能基を含有するリンカー部分で容易に官能化され得る。
【0012】
圧電応答を更に改善するために、カーボンナノ材料が、任意選択で粉末微粒子内に含まれてもよい。カーボンナノ材料は、印刷部品の剛性を増し、更に印刷部品内での圧電粒子から熱可塑性ポリマーへの荷重伝達を促進し、それにより、得られる圧電応答を増加し得る。更に、カーボンナノ材料の一部は、かなりの導電性を有し、所与の量の圧電粒子と組み合わせて存在したときに達成可能な圧電応答を増加させる可能性がある。少なくとも、導電性のカーボンナノ材料は、印刷部品に圧電性を誘発するために使用されるポーリングプロセスの効率を改善し、それにより達成される圧電応答を更に増強する。圧電粒子と同様に、カーボンナノ材料も、任意選択で、本明細書に開示される粉末微粒子内の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部と共有結合及び/又は非共有結合し得る。本明細書の開示での使用に好適な例示的カーボンナノ材料を、以下に更に記載する。カーボンナノ材料は、同様に、熱可塑性ポリマーの全部又は一部に分散されてもよく、又は粉末微粒子の特定の部分(例えば、微粒子表面及び/又は粉末微粒子のコア内)に集中してもよい。
導電性であり、粉末微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子乳化安定剤(例えば、カーボンナノチューブ及び/又はグラフェン)も、粉末微粒子から形成された印刷物のポーリングを促進する。有利なことに、導電性の好適なナノ粒子乳化安定剤は、カーボンナノ材料又は熱可塑性ポリマーとブレンドされた他の添加剤とは独立して導入されてもよい。
【0013】
本明細書及び請求項に使用される用語は、以下の段落で変更された場合を除き、その平易な通常の意味を有する。
本明細書で使用するとき、用語「不混和性」は、組み合わされたときに、大気圧及び室温において、又は室温で固体である場合は構成成分の融点において、互いに5質量%未満の溶解度を有する2つ以上の相を形成する構成成分の混合物を指す。例えば、10,000g/モルの分子量を有するポリエチレンオキシドは、室温で固体であり、65℃の融点を有する。従って、室温で液体である材料とポリエチレンオキシドが65℃及び室温において互いに5質量%未満の溶解度を有する場合、当該ポリエチレンオキシドは当該材料と不混和性である。
本明細書で使用するとき、用語「熱可塑性ポリマー」は、加熱及び冷却時に可逆的に軟化及び硬化するポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性エラストマーを包含する。
本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの粒径範囲を有する微粒子材料を指す。
本明細書で使用するとき、用語「マイクロ粒子」は、1ミクロン以上の粒径、例えば約1ミクロン~約1000ミクロン、又は約1ミクロン~約500ミクロンの粒径を有する微粒子材料を指す。
本明細書で使用するとき、用語「酸化物」は、金属酸化物と非金属酸化物との両方を指す。本開示の目的で、ケイ素は金属とみなされる。
本明細書で使用するとき、用語「酸化物ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有し、金属酸化物又は非金属酸化物を含む微粒子材料を指す。
本明細書で使用するとき、用語「会合した」は、表面、特にナノ粒子を含む乳化安定剤への、化学結合又は物理的接着を指す。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載されるポリマーと乳化安定剤との間の会合は、水素結合及び/又は他の機構を介した主に物理的な接着である。しかし、場合によっては、ある程度の化学的結合が生じ得る。粉末微粒子の外側表面と会合したとき、ナノ粒子は、物理的手段によって当該表面から容易に除去できるとは考えられない。
本明細書で使用するとき、用語「混和された」又は「混合された」は、第1の物質の第2の物質への溶解、又は固体としての第1の物質の第2の物質への分散を指し、ここで分散は均一又は不均一であり得る。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「D10」は、試料の10%(別途記載のない限り、体積基準で)が、当該直径値未満の直径を有する粒子で構成される、直径を指す。本明細書で使用するとき、用語「D50」は、試料の50%(別途記載のない限り、体積基準で)が、当該直径値未満の直径を有する粒子で構成される、直径を指す。D50は、「平均粒径」とも呼ばれる。本明細書で使用するとき、用語「D90」は、試料の90%(別途記載のない限り、体積基準で)が、当該直径値未満の直径を有する粒子で構成される、直径を指す。
本明細書で使用するとき、用語「直径スパン」、「スパンサイズ」及び「スパン」は、粒径分布の幅を指し、(D90-D10)/D50の関係により計算される。
本明細書で使用するとき、用語「剪断」は、流体中で機械的撹拌を誘発する撹拌又は類似のプロセスを指す。
本明細書で使用するとき、ナノ粒子と粉末微粒子の表面とに関する用語「埋め込む」は、ナノ粒子が少なくとも部分的に表面内部に延び、その結果、粉末微粒子を画定するポリマーが、ナノ粒子が粉末微粒子の表面上に単に置かれた場合よりも大きい程度までナノ粒子と接触し、それにより、表面と接線方向に接触していることを指す。
本明細書で使用するとき、用語「圧電粒子」は、通常はポーリング後に、圧電性を示す微粒子材料を指す。
本明細書で使用するとき、用語「コア」は、粉末微粒子のうち、粉末微粒子の表面層よりも下にある任意の部分を指す。ある物質が粉末微粒子のコア内にある場合、その物質は粉末微粒子を画定する熱可塑性ポリマー内にある。
【0015】
本明細書で使用するとき、分散媒の粘度は、特記のない限り、25℃における動粘度であり、ASTM D445-19に従って測定される。
熱可塑性ポリマーの融点は、特記のない限り、ASTM E794-06(2018)により、10℃/分の昇温及び冷却速度で測定される。
熱可塑性ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特記のない限り、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムの試料を使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定できる。
【0016】
本開示の微粒子組成物は、複数の粉末微粒子を含み得る。粉末微粒子は、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含んでもよく、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内の熱可塑性ポリマー内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する。粉末微粒子は、積層造形プロセス、特に微粒子圧密を促進するために選択的レーザー焼結又は類似のプロセスを用いる積層造形プロセスへの使用に好適となり得る。積層造形に好適な粉末微粒子は、印刷ヘッド又は類似のデバイスを使用した粉末床内の分配のための固体として良好な流動特性を示し得る。粉末微粒子と混合した外部流動助剤、及び粉末微粒子への修飾は、分配プロセスを促進し得る。好適な粉末微粒子は、所与の積層造形プロセスにおいて、特定の圧密技術に適合する溶融温度及び結晶化温度も示し得る。
【0017】
図1は、例示的な本開示の粉末微粒子の断面図である。
図1に示すように、粉末微粒子1は、コア2と外側表面3とを画定するポリマーマトリックスを含み、複数の圧電粒子4及び4’がポリマーマトリックス内にある。圧電粒子4及び4’は、ポリマーマトリックス中に均一又は不均一に分布し得る。更に、圧電粒子4及び4’は、コア2内に完全に局在してもよく、又はコア2から延びて少なくとも一部の圧電材料が外側表面3で露出していてもよい。例えば、粉末微粒子1において、圧電粒子4はコア2内に局在しているのに対し、圧電粒子4’は外側表面3まで延びながら、なおもポリマーマトリックス内に分布している。
図1に更に示すように、複数のナノ粒子5は、以下に記載のように、粉末微粒子1の外側表面3上に存在してもよい。ナノ粒子5は、粉末微粒子1の合成中に外側表面3上に導入されることによって、外側表面と会合する。ナノ粒子5は、この点で、粉末微粒子1の合成後に添加される外部流動助剤とは区別され得る。
【0018】
上述のように、本開示の粉末微粒子の一部は、粉末微粒子の外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み得る。任意選択で、少なくとも一部のナノ粒子は、熱可塑性ポリマーと混和され、その結果、ナノ粒子の第1の部分は粉末微粒子のコア内に位置し、ナノ粒子の第2の部分は粉末微粒子の外側表面上に配置される。粉末微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子は、少なくとも部分的に外側表面に埋め込まれており、当該表面と会合している。存在する場合、粉末微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子は、積層造形中に迅速な分配を促進する可能性がある。ナノ粒子は、溶融乳化中の乳化安定剤(ピッカリング乳化剤)として機能し得るだけでなく、粉末微粒子で印刷部品を形成するときに更なる利点を提供する。
存在する場合、複数のナノ粒子は複数の酸化物ナノ粒子を含み得る。本開示での使用に好適な酸化物ナノ粒子としては、例えば、シリカナノ粒子、チタニアナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、酸化スズナノ粒子、酸化ホウ素ナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子、酸化タリウムナノ粒子、酸化タングステンナノ粒子、ヒドロキシアパタイト等、又は任意のこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩等の混合酸化物も、「酸化物」という用語に包含される。粘土は、場合によっては酸化物ナノ粒子の好適な供給源となり得る。これに関連して、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、ニオブ酸ナトリウムカリウム等、及び本明細書に記載のその他の圧電材料のような、圧電材料を含むナノ粒子も使用できる。酸化物ナノ粒子は、親水性でも疎水性でもよく、親水性/疎水性はナノ粒子のネイティブのものでもナノ粒子の表面処理から生じたものであってもよい。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリル等のような疎水性表面処理を有するシリカナノ粒子が、親水性表面のヒドロキシ基を適切な官能化剤と反応させることで形成されてもよい。疎水官能化酸化物ナノ粒子が本開示で望ましい場合があるが、非官能化酸化物ナノ粒子又は親水変性酸化物ナノ粒子も使用に好適であり得る。
疎水性官能化されたフュームドシリカナノ粒子のようなシリカナノ粒子は、疎水官能化の種類及び粒径が異なる様々な官能化シリカが利用可能であることから、本明細書の開示への使用に特に好適となり得る。シラザン及びシラン疎水官能化は、本開示において使用され得る容易な疎水官能化である。従って、本明細書の開示において使用される複数の酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子、特に疎水官能化されたシリカナノ粒子を含んでもよく、又は当該シリカナノ粒子から本質的になってもよい。シリカナノ粒子は、他の種類の酸化物ナノ粒子又は非酸化物ナノ粒子と組み合わせて使用してもよく、その際、他の種類の酸化物又は非酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子のみを使用した場合には達成されない特性を、粉末微粒子又は当該微粒子から形成された物体に伝達し得る。
【0019】
カーボンブラックは、本明細書の開示の粉末微粒子上に存在し得る、別の種類のナノ粒子である。種々のグレードのカーボンブラックが当業者に周知であると考えられ、そのいずれも、本明細書の開示に使用できる。場合によっては、カーボンブラック、シリカ、及び他の種類の酸化物ナノ粒子が、互いとの組み合わせで存在し得る。
ポリマーナノ粒子は、本明細書の開示の粉末微粒子上に存在し得る、別の種類のナノ粒子である。好適なポリマーナノ粒子は、熱硬化性の及び/又は架橋された1種以上のポリマーを含み、その結果、ポリマーナノ粒子は溶融乳化又は類似の微粒子形成技術により本明細書の開示に従って加工されたときに溶融しない。融点又は分解点が高い高分子量熱可塑性ポリマーを含むナノ粒子は、同様に、本明細書の開示においてポリマーナノ粒子に好適なポリマーを表す。
カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせは、本明細書に開示される粉末微粒子の表面と会合したナノ粒子の全部又は一部も含み得る。カーボンナノチューブ、グラフェン又はその他の種類のカーボンナノ材料はまた、以下に記載のように、個々の粉末微粒子のコア内で混和されてもよい。
【0020】
粉末微粒子上のシリカナノ粒子、類似の酸化物ナノ粒子、又はポリマーナノ粒子の負荷及び粒径は、本明細書の開示において、広範にわたって変動し得る。ナノ粒子の負荷は、以下に更に記載するように、粉末微粒子の形成を促進するために使用した分散媒中のナノ粒子濃度によって決定され得る。非限定例では、分散媒中のナノ粒子の濃度は、熱可塑性ポリマーの質量に対して、約0.01質量%~約10質量%、又は約0.05質量%~約10質量%、又は約0.05質量%~約5質量%、又は約0.1質量%~約2質量%、又は約0.25質量%~約1.5質量%、又は約0.2質量%~約1.0質量%、又は約0.25質量%~約1質量%、又は約0.25質量%~約0.5質量%の範囲をとり得る。粉末微粒子の形成後、粉末微粒子内に同様の質量%のナノ粒子が存在し得る。ナノ粒子の粒径は、約1nm~約100nmの範囲をとり得るが、約500nmまでの粒径も許容可能となり得る。非限定例では、ナノ粒子の粒径は、約5nm~約75nm、又は約5nm~約50nm、又は約5nm~約10nm、又は約10nm~約20nm、又は約20nm~約30nm、又は約30nm~約40nm、又は約40nm~約50nm、又は約50nm~約60nmの範囲であり得る。ナノ粒子、特にシリカナノ粒子及び類似の酸化物ナノ粒子は、約10m2/g~約500m2/g、又は約10m2/g~約150m2/g、又は約25m2/g~約100m2/g、又は約100m2/g~約250m2/g、又は約250m2/g~約500m2/gのBET表面積を有し得る。
本明細書の開示での使用に好適な特定のシリカナノ粒子は、疎水官能化されていてもよい。かかる疎水官能化は、シリカナノ粒子の水との相溶性を、未官能化シリカナノ粒子よりも低下させる。更に、疎水官能化は、高疎水性であり得る分散媒中でのシリカナノ粒子の分散を改善し得る。疎水官能化は、シリカナノ粒子の表面に非共有結合しても共有結合してもよい。共有結合は、例えば、シリカナノ粒子の表面上の表面ヒドロキシ基の官能化によって起こる。非限定例では、シリカナノ粒子をヘキサメチルジシラザンで処理して、疎水変性の共有官能化が得られる。市販の疎水官能化シリカナノ粒子としては、例えば、AEROSIL RX50(Evonik、平均粒径=40nm)及びAEROSIL R812S(Evonik、平均粒径=7nm)が挙げられる。
【0021】
本開示の粉末微粒子は、ポーリング後に、高度の圧電性を、良好な機械的特性と共に有する印刷部品を与え得る。粉末微粒子から達成可能な圧電性の程度は、後でポーリングされる印刷薄膜のd33値によって決定され得る。APC International Wide-Range d33メータ又は類似のデバイスで測定したとき、ポーリング後に、約200~500ミクロン、好ましくは約200ミクロンの膜厚において約1pC/N以上のd33値を有する単層薄膜が、粉末微粒子から形成され得る。薄膜厚は、標準的な技術を使用して、d33測定とは別に測定される。より具体的な例では、粉末微粒子は、ポーリング後に、上記の条件下で(例えば、約200ミクロンの膜厚において)、約1pC/N~約400pC/N、又は約2pC/N~約200pC/N、又は約3pC/N~約100pC/N、又は約1pC/N~約75pC/N、又は約5pC/N~約50pC/N、又は約1pC/N~約10pC/N、又は約2pC/N~約8pC/N、又は約3pC/N~約10pC/N、又は約1pC/N~約5pC/N、又は約4pC/N~約7pC/Nのd33値を有する単層薄膜を形成することが可能となり得る。粉末微粒子で印刷可能であり得る単層膜厚は、約10μm~約500μmの厚さ、又は約25μm~約400μmの厚さの範囲であり得る。好適なポーリング条件を、本明細書に更に記載する。
【0022】
粉末微粒子内の圧電粒子は、所望の程度の圧電性を与えるように選択されてもよい。熱可塑性ポリマー又は圧電粒子は、粉末微粒子の主要構成成分を構成し得る。いくつかの実施形態では、圧電粒子は、粉末微粒子の少なくとも約1体積%、又は少なくとも約5体積%、又は少なくとも約10体積%、又は少なくとも少なくとも約20体積%、又は少なくとも約25体積%、又は少なくとも約60体積%、又は少なくとも約70体積%、又は少なくとも約80体積%、又は少なくとも約85体積%、又は少なくとも約90体積%、又は少なくとも約95体積%を構成し得る。より具体的な例では、圧電粒子は、粉末微粒子の約1体積%~約10体積%、又は約2体積%~約5体積%、又は約5体積%~約15体積%、又は約10体積%~約20体積%、又は約20体積%~約30体積%、又は約25体積%~約75体積%、又は約40体積%~約60体積%、又は約50体積%~約70体積%を構成し得る。一部の又は他の特定の実施形態では、圧電粒子は、粉末微粒子の約5体積%~約85体積%を構成し得る。圧電粒子の最大体積パーセントは、粉末微粒子が溶融乳化中になおも形成され、その結果粉末微粒子が熱可塑性ポリマーと圧電粒子との複合体を含むように、選択されてもよい。更に、圧電粒子の量は、選択した積層造形プロセスの間、粉末微粒子が印刷可能な状態を維持するように選択されてもよい。上記のように、圧電粒子は、熱可塑性ポリマー内に位置してもよく、且つ粉末微粒子の表面に存在してもよく、圧電粒子が互いに大きく凝集することなく個別粒子として実質的に分散したままである条件下で粉末微粒子のコア内の熱可塑性ポリマー内に位置してもよく、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。圧電粒子の体積%負荷率は、粉末微粒子内の所望の位置に圧電粒子を分布させるように選択されてもよい。圧電粒子の表面局在化及び/又は圧電粒子の凝集の程度も、得られる圧電性に影響し得る。
【0023】
圧電粒子が熱可塑性ポリマーと適切にブレンドされていれば、粉末微粒子内に存在し得る圧電粒子は、特に制限されないと考えられる。圧電粒子は、実質的に個別粒子(非凝集)として熱可塑性ポリマーとブレンドされてもよく、十分な範囲のブレンドを達成するために必ずしも熱可塑性ポリマーと共有結合する必要はない。しかし、このような共有結合は、本明細書に記載のように、他の利点をもたらし得る。熱可塑性ポリマーと溶融ブレンドされた圧電粒子の量は、圧電粒子が熱可塑性ポリマーに導入される前よりも多く凝集しないように選択されてもよい。本開示の粉末微粒子中に存在し得る圧電材料の例示としては、限定するものではないが、セラミック及び天然の圧電材料が挙げられる。圧電特性を示す好適な結晶性セラミックスとしては、限定するものではないが、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ニオブ酸カリウム、タングステン酸ナトリウム,Ba2NaNNb5O5、及びPb2KNb5O15が挙げられる。圧電特性を示すその他のセラミックスとしては、限定するものではないが、ニオブ酸ナトリウムカリウム、ビスマスフェライト、ニオブ酸ナトリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス、及びチタン酸ナトリウムビスマスが挙げられる。本明細書の開示での使用に特に好適な圧電粒子の例としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの任意の組み合わせを含有するものが挙げられる。ジルコン酸チタン酸鉛に好適なドーパントとしては、限定するものではないが、Ni、Bi、La、及びNdが挙げられる。
その他の好適な圧電粒子としては、天然の圧電材料、例えば、水晶、ショ糖、ロッシェル塩、トパーズ、骨、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
本明細書の開示に用いられる圧電粒子は、マイクロメートル(マイクロ粒子)又はナノメートル(ナノ粒子)の粒径範囲に平均粒径を有し得る。より具体的な例では、好適な圧電粒子は、約25ミクロン以下、又は約10ミクロン以下、例えば約1ミクロン~約10ミクロン、又は約2ミクロン~約8ミクロンの直径を有し得る。より小さい圧電粒子、例えば00nm未満の平均粒径、又は約10nm~約500nmの平均粒径、又は約100nm~約500nmの平均粒径、又は約500nm~約1ミクロンの平均粒径を有する圧電粒子も、本発明の開示に利用できる。
【0024】
凝集とは、物理的結合力を通じて一緒に緩く保持された複数の微粒子を含む集合を指す。凝集体は、物理的結合を断つために、超音波エネルギーの印加等のエネルギーのインプットを通じて分解され得る。解凝集によって生成された個々の圧電粒子は、熱可塑性ポリマーとのブレンドが行われた後に解凝集状態を保ち得る。すなわち、画定された凝集体は、溶融ブレンドによって複合体を形成した時、及び/又は当該凝集体から粉末微粒子を生成した時に、再形成しないと考えられる。2つ以上の圧電粒子は、所与の粉末微粒子又は粉末微粒子の複合前駆体において互いに接触し得るが、相互作用の程度は、凝集体で発生する相互作用よりも小さいことを理解されたい。非限定例では、圧電粒子の凝集体は、約100ミクロン~約200ミクロンの範囲のサイズを有する場合があり、再凝集後に得られる個別の圧電粒子は、約1ミクロン~約5ミクロン、又は約1ミクロン~約10ミクロン、又は約1ミクロン~約2ミクロン、又は上に開示された任意の他の圧電粒径範囲のサイズを有し得る。1ミクロン未満のサイズの粒子(ナノ粒子)も場合によっては得られる。解凝集した圧電粒子の粒径は、本開示による粉末微粒子の形成後に維持され得る。圧電粒子を脱凝集するためのその他の好適な技術としては、超音波浴、均質化、ボールミル等が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、圧電粒子は粉末微粒子内の熱可塑性ポリマーとの相溶化相互作用を起こし得る。圧電粒子は、圧電粒子上に存在するネイティブの官能基の反応、又はネイティブの官能基の非共有相互作用によって相溶化されてもよく、又は圧電粒子は、熱可塑性ポリマー上の相補的官能基との相溶化を共有又は非共有で達成し得る官能基に結合するリンカー部分で、更に官能化されてもよい。熱可塑性ポリマー内の両方の種類の官能基の好適な例を、以下に更に詳細に述べる。一例では、圧電粒子上の表面ヒドロキシ基は、熱可塑性ポリマー内に位置する相補的官能基と反応性であるか又は非共有相互作用する少なくとも1つの官能基を有するシラン部分で官能化されてもよい。圧電粒子の表面上のネイティブの官能基を反応させて、本明細書に開示される相溶化相互作用を促進するのに好適な官能基を導入するためのその他の官能化戦略を、当業者は想像し得る。上記の結合化学作用を通じるなどして、圧電粒子の表面に結合したリンカー部分も、熱可塑性ポリマーの相補的官能基との相溶化相互作用を起こすことが可能な官能基を導入するために利用できる。
圧電粒子と熱可塑性ポリマーとの間に形成され得る共有結合の種類の例としては、限定するものではないが、エーテル、エステル、アミド、イミド、炭素-炭素結合、金属-配位子結合等が挙げられる。他の好適な例は、当業者に周知であろう。圧電粒子上の表面官能基及び/又はリンカー部分を介して圧電粒子の表面に付加した官能基を、共有結合の形成に利用できる。
圧電粒子上の官能基は、共有結合形成を促進するのに適している場合がある。非限定例では、圧電粒子上の官能基は、1)求核基又は2)求電子基のうちの1つを含んでもよく、熱可塑性ポリマー上の相補的官能基は1)求核基又は2)求電子基のうちのもう一方を含んでもよい。圧電粒子上(粒子表面上又はリンカー部分を介して結合しているかのいずれか)又は熱可塑性ポリマー上に存在する好適な求核基としては、例えば、アルコール、チオール、アミン、カルボキシレート等が挙げられる。圧電粒子(粒子表面上にあるか又はリンカー部分を介して結合しているかのいずれか)又は熱可塑性ポリマーに存在し得る好適な求電子基としては、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、エポキシド、アシル基(例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸無水物(環状無水物を含む)、カルボン酸塩化物等)、α,β-不飽和カルボニル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート等が挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、圧電粒子は求核基を含んでもよく、熱可塑性ポリマーは、圧電粒子上の求核基と反応性である求電子基を含んでもよい。より具体的な例では、熱可塑性ポリマーは、圧電粒子上に位置する求核基と反応性であるカルボン酸又はカルボン酸誘導体を含む複数の反応基(例えば、側鎖上又は末端基として)を含み得る。更により具体的には、熱可塑性ポリマーは、無水物、カルボン酸、又はこれらの任意の組み合わせを含む複数の反応基を含んでもよく、圧電粒子は、複数の反応基の少なくとも一部の反応生成物として熱可塑性ポリマーと共有結合し得る。無水物基又はカルボン酸基と反応し得る好適な求核基としては、例えばアミン(例えば、第一級又は第二級アミン)又はアルコール基が挙げられる。圧電粒子上にアミンが存在する場合、反応生成物はアミドを含み得る。熱可塑性ポリマー上の環状無水物は、圧電粒子上のアミン求核基と反応すると環状イミドを形成し得る。圧電粒子上にアルコールが存在する場合、熱可塑性ポリマー上のカルボン酸又はカルボン酸誘導体と反応したときに、反応生成物はエステルを含み得る。
反応生成物を形成するために、熱可塑性ポリマー(又は圧電粒子)上の全ての反応基が必ずしも反応する必要はないことを認識する必要がある。従って、圧電粒子と共有結合した(又は圧電粒子と反応性の)熱可塑性ポリマーは、圧電粒子と反応していない未反応の反応基を更に複数含み得る。複合材料中の圧電粒子の負荷は、熱可塑性ポリマーで起こる反応の程度を決定する可能性がある。
【0027】
場合によっては、圧電粒子は、熱可塑性ポリマーと相溶化相互作用を起こすことに加えて、互いに共有結合する及び/又は互いに非共有的に相互作用する可能性がある。圧電粒子間の好適な非共有相互作用としては、π-π結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用よりも強い静電相互作用、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。この場合も、共有結合圧電粒子が互いに共有結合するとき、全ての反応性官能基が必ずしも反応する必要はないことを理解されたい。
【0028】
π-π結合から生じる非共有相互作用は、2つの芳香族基が互いに界面で相互作用する場合に生じ得る。従って、熱可塑性ポリマーと圧電粒子との間(又は圧電粒子間)にπ-π非共有相互作用を生じるために、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び圧電粒子上に少なくとも1つの芳香族基が存在し得る。π-π結合による非共有相互作用は、芳香環系の非局在化π電子雲が互いに界面相互作用したときに、好ましくは2つ以上の縮合芳香環を含有する拡張芳香環系で起こり得る。π-π結合を生じる圧電粒子上の芳香族基は、粒子の表面に直接結合していてもよく、又は粒子の表面に共有結合しているリンカー部分によって付加していてもよい。その表面にヒドロキシ基を有する圧電体に芳香族基を結合するのに好適なリンカー部分としては、例えば、シラン末端又はチオール末端のリンカー部分が挙げられる。圧電粒子の表面ヒドロキシ基との共有結合を形成できるシラン官能性の例としては、例えば、アルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、ジアルキルアルコキシシラン、アリールオキシシラン、ジアリールオキシシラン、トリアリールオキシシラン、シラノール、ジシラノール、トリシラノール、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。熱可塑性ポリマーと圧電粒子との間の非共有相互作用の促進に好適な芳香族基としては、例えば、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ピレニル、ベンゾ(a)アントラセニル、テトラセニル、ベンゾ[a]ピレニル、ベンゾ[e]ピレニル、ベンゾ(g,h,i)ペリレニル、クリセニル、及びジベンゾ(a,h)アントラセニルが挙げられる。所与の種類の熱可塑性ポリマーにまだ存在していない場合、芳香族基を含有するコモノマーを1つ以上の非芳香族モノマーと共重合して、又は既存のポリマー鎖(又は既存のポリマー鎖に付加した官能基)にグラフトして、π-π結合形成の促進に好適な熱可塑性ポリマーを生成してもよい。圧電粒子の表面に種々の官能性を導入するために当該表面に共有結合し得る基のその他の種類としては、例えば、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホン酸、ホスホニルエステル、カルボン酸、アルコール、及びアミンが挙げられる。
【0029】
水素結合から生じ得る非共有相互作用は、水素結合供与体と水素結合受容体とが互いに相互作用したときに生じる。水素結合供与体と水素結合受容体とは、本明細書に開示されている圧電粒子と熱可塑性ポリマーとの任意の組み合わせ上に位置し得る。水素結合供与体としては、例えば、ヒドロキシ基、アミン基、カルボン酸基等が挙げられる。水素結合受容体としては、任意の酸素原子又は酸素含有官能基、任意の窒素原子又は窒素含有官能基、又はフッ素原子が挙げられる。圧電粒子又は熱可塑性ポリマー上にまだ存在していない場合、好適な水素結合供与体又は水素結合受容体が、当業者によって導入されてもよい。任意選択で、水素結合供与体又は水素結合受容体は、上記と類似の付加化学反応を用いてリンカー部分を通じて圧電粒子上に導入されてもよい。
【0030】
静電相互作用から生じる非共有相互作用は、圧電粒子と熱可塑性ポリマーとの任意の組み合わせが、双極子内での誘起電荷相互作用等の、互いに相互作用(電荷対形成又は電荷-電荷相互作用)する反対の電荷を有する場合に起こり得る。圧電粒子又は熱可塑性ポリマーのいずれかの上に存在し得る正電荷基としては、例えば、プロトン化アミン及び第四級アンモニウム基が挙げられる。圧電粒子又は熱可塑性ポリマーのいずれかの上に存在し得る負電荷基としては、例えば、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート等が挙げられる。他の種類の非共有相互作用と同様に、電荷対を形成できる好適な基が、圧電粒子へのリンカー部分の結合等により、当業者によって圧電粒子又は熱可塑性ポリマー上に導入されてもよい。好適な静電相互作用のその他の種類としては、例えば、電荷-双極子、双極子-双極子、誘起双極子-双極子、電荷-誘起双極子等が挙げられる。
【0031】
本開示における使用に好適な熱可塑性ポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン-12等)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエテン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、ポリアリーレンエーテル(例えば、ポリフェニレンエーテル、すなわち、ポリフェニレンオキシド)、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド-イミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルブロックとポリアミドブロック(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)とを含むコポリマー、グラフト化又は非グラフト化熱可塑性ポリオレフィン、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/アルキル(メタ)アクリレート、官能化又は非官能化(メタ)アクリル酸ポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマー/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/カルボニルターポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コアシェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、PVDF-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-co-HFP)、ポリカプロラクトン(PCL)、フェノール樹脂、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記のうちの1つ以上を含むコポリマーも、本開示に使用できる。
【0032】
本明細書の開示での使用に特に好適な熱可塑性ポリマーの例としては、ナイロン6又はナイロン12等のポリアミド;アクリロニトリルブタジエンスチレン;ポリ乳酸;ポリウレタン;ポリ(アリーレンエーテル);ポリアリールエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド;ポリ(アリーレンスルホン);ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、又は等のポリエステル;及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0033】
好適なポリアミドのより具体的な例としては、限定するものではないが、ポリカプロアミド(ナイロン6、ポリアミド6、又はPA6)、ポリ(ヘキサメチレンスクシンアミド)(ナイロン46、ポリアミド46、又はPA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66、ポリアミド66、又はPA66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56、ポリアミド56、又はPA56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610、ポリアミド610、又はPA610)、ポリウンデカアミド(ナイロン11、ポリアミド11、又はPA11)、ポリドデカアミド(ナイロン12、ポリアミド12、又はPA12)、及びポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、ポリアミド6T、又はPA6T)、ナイロン10.10(ポリアミド10.10又はPA10.10)、ナイロン10.12(ポリアミド10.12又はPA10.12)、ナイロン10.14(ポリアミド10.14又はPA10.14)、ナイロン10.18(ポリアミド10.18又はPA10.18)、ナイロン6.10(ポリアミド6.10又はPA6.10)、ナイロン6.18(ポリアミド6.18又はPA6.18)、ナイロン6.12(ポリアミド6.12又はPA6.12)、ナイロン6.14(ポリアミド6.14又はPA6.14)、半芳香族ポリアミド等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。コポリアミドも使用できる。好適なコポリアミドの例としては、限定するものではないが、PA11/10.10、PA6/11、PA6.6/6、PA11/12、PA10.10/10.12、PA10.10/10.14、PA11/10.36、PA11/6.36、PA10.10/10.36等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリカーボネート-エステルアミド、及びポリエーテル-ブロック-アミド(エラストマーであってもよい)も使用できる。
【0034】
適切なポリウレタンの例としては、限定するものではないが、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、混合ポリエーテル・ポリエステルポリウレタン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。好適なポリウレタンの例としては、限定するものではないが、ポリ[4,4′-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ELASTOLLAN(登録商標)1190A(ポリエーテルポリウレタンエラストマー、BASFから入手可能)、ELASTOLLAN(登録商標)1190A10(ポリエーテルポリウレタンエラストマー、BASFから入手可能)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0035】
好適な熱可塑性ポリマーは、エラストマー性又は非エラストマー性でもよい。熱可塑性ポリマーの上記の例のいくつかは、ポリマーの具体的な組成に応じて、エラストマー性又は非エラストマー性となり得る。例えば、エチレンとプロピレンとのコポリマーであるポリエチレンは、ポリマー中に存在するプロピレンの量に応じて、エラストマー性又は非エラストマー性となり得る。
エラストマー性熱可塑性ポリマーは、概して、スチレン性ブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性加硫物(エラストマー性アロイとも呼ばれる)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、及び熱可塑性ポリアミド(典型的には、ポリアミドを含むブロックコポリマー)の6つの分類のうちの1つに該当し、これらのいずれも、本明細書の開示に使用できる。エラストマー性熱可塑性ポリマーの例は、B.M.Walker及びC.P.Rader編、Handbook of Thermoplastic Elastomers,2nd ed.、Van Nostrand Reinhold,New York,1988に見ることができる。エラストマー性熱可塑性ポリマーの例としては、限定するものではないが、エラストマー性ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロックとポリアミドブロック(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)とを有するコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブロックコポリマー、及びポリアクリロニトリル)、シリコーン等が挙げられる。エラストマー性スチレンブロックコポリマーは、イソプレン、イソブチレン、ブチレン、エチレン/ブチレン、エチレン-プロピレン、及びエチレン-エチレン/プロピレンからなる群から選択される少なくとも1つのブロックを含み得る。より具体的なエラストマー性スチレンブロックコポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン-プロピレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0036】
非限定例では、本明細書の開示の粉末微粒子は、溶融乳化により形成され得る。このような粉末微粒子製造方法は、熱可塑性ポリマーと、当該熱可塑性ポリマー中に分布された複数の圧電粒子とを含む複合物を提供するステップと;熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中に上記複合物を組み合わせる(例えば、ペレット、粉末、又は細断形態で)ステップであって、上記熱可塑性ポリマーと分散媒とは、加熱温度において実質的に不混和性である、ステップと;上記加熱温度において、熱可塑性ポリマーを、圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加するステップと;液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、分散媒を冷却するステップであって、粉末微粒子は熱可塑性ポリマーと圧電粒子の少なくとも一部とを含み、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内の熱可塑性ポリマー内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;粉末微粒子を分散媒から分離するステップと、を含み得る。任意選択で、ナノ粒子は、分散媒中の複合体と組み合わされてもよく、その結果、ナノ粒子の少なくとも一部は、粉末微粒子の各々の外側表面上に配置される。本明細書で指定されている熱可塑性ポリマー、圧電粒子、及び/又はナノ粒子のいずれも使用できる。
【0037】
粉末微粒子はまた、溶融乳化前に熱可塑性ポリマーと圧電微粒子の複合体を最初に形成することなく製造できる。従って、非限定例において、熱可塑性ポリマーと圧電粒子とを最初に複合体へと加工することなく、別々に分散媒と組み合わせてもよい。かかる方法は、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中で組み合わせるステップであって、上記熱可塑性ポリマーと分散媒とは、加熱温度において実質的に不混和性である、ステップと;上記加熱温度において、熱可塑性ポリマーを、圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加するステップと;液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、分散媒を冷却するステップであって、粉末微粒子は熱可塑性ポリマーと圧電粒子の少なくとも一部とを含み、ナノ粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内の熱可塑性ポリマー内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;粉末微粒子を分散媒から分離するステップと、を含む。任意選択で、ナノ粒子は、分散媒中の熱可塑性ポリマー及び圧電粒子と組み合わされてもよく、その結果、ナノ粒子の少なくとも一部は、粉末微粒子の各々の外側表面上に配置される。本明細書で指定されている熱可塑性ポリマー、圧電粒子、及び/又はナノ粒子のいずれも使用できる。
【0038】
図2は、本開示に従って粉末微粒子を製造するための非限定的な例示方法100のフローチャートであり、ここで粉末微粒子の生成はナノ粒子の存在下で起こる。図のように、熱可塑性ポリマー102、分散媒104、ナノ粒子106、及び圧電粒子107を組み合わせ108、混合物110を生成する。任意選択で、熱可塑性ポリマー102と圧電粒子107とを、分散媒104と組み合わせる前に、複合体として予め組み合わせてもよい。複合体は、本明細書に更に記載するように、溶融ブレンド又は溶融押出によって生成されてもよい。1種以上の界面活性剤、例えばスルホネート界面活性剤も、混合物110中に存在してもよい。熱可塑性ポリマー102、分散媒104、ナノ粒子106、及び金属前駆体107は、任意の順序で組み合わせ108てもよく、例えば、熱可塑性ポリマー102と圧電粒子107との複合体を、混合及び/又は加熱を実施しながら予め形成してもよい。
【0039】
分散媒104は、熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度を超えて加熱されてもよい。熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度を超える加熱は、溶融エマルション中の構成成分のいずれかの分解温度又は沸点もよりも低い任意の温度で行われてもよい。非限定例では、熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度よりも約1℃~約50℃、又は約1℃~約25℃、又は約5℃~約30℃、又は約20℃~約50℃高い温度で加熱を実施してよい。本明細書の開示において、融点は、ASTM E794-06(2018)により、10℃/分の昇温及び冷却速度で決定されてもよい。ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特記のない限り、ASTM D6090-17に従って決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムの試料を使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定できる。本開示における融点又は軟化温度は、約50℃~約400℃の範囲であり得る。
次いで、混合物110を、熱可塑性ポリマー102の融点又は軟化温度を超える温度において、熱可塑性ポリマー102の液化小滴を生成するのに十分な剪断を印加することにより加工112することで、溶融エマルション114を形成する。液化小滴は、圧電粒子107を含有し得る。理論に束縛されるものではないが、全ての他の要因が同じである場合、剪断を増やすと、分散媒104中の液化小滴のサイズが減少し得ると考えられる。しかしながら、ある点においては、剪断の増加と小滴サイズの減少に対する収穫逓減、及び/又は高い剪断速度における小滴内容物の破壊が存在し得ることは理解されるべきである。溶融エマルション114の生成に好適な混合装置の例としては、限定するものではないが、押出機(例えば、連続押出機、バッチ押出機等)、撹拌反応器、ブレンダ、インラインホモジナイザシステムを備える反応器等、及びこれらから派生する装置が挙げられ得る。
【0040】
非限定例では、液化小滴は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約10μm~約150μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。固化後に形成される粉末微粒子は、同様のサイズ範囲内に存在し得る。すなわち、本開示の粉末微粒子は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約1μm~約200μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。粒径測定は又は光学画像の分析又は、Malvern Mastersizer3000 Aero装置の搭載ソフトウェアを用いて実施されてもよく、上記装置は粒径測定に光散乱技術を使用する。
光散乱技術については、商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)でMalvern Analytical Ltd.から入手した、15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズの対照試料を使用してもよい。試料は、Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して、空気中に分散された乾燥粉末として分析できる。粒径は、上記装置ソフトウェアを使用して、サイズの関数としての体積密度のプロットから導出できる。
【0041】
次いで、溶融エマルション114を冷却116して、液化小滴を固化して、固化状態の粉末微粒子にする。冷却速度は、約100℃/秒~約10℃/時、又は約10℃/秒~約10℃/時でよく、上記の間の任意の冷却速度を含む。剪断は冷却中に中断されてもよく、又は冷却中同じ速度で維持されても異なる速度であってもよい。冷却された混合物118を、次いで、他の構成成分124(例えば、分散媒104、過剰なナノ粒子106、圧電粒子107等)から粉末微粒子122を単離するために処理120できる。この段階で、粉末微粒子122を更に精製するために洗浄、濾過等を実施してもよく、その際粉末微粒子122は熱可塑性ポリマー102を含み、ナノ粒子106の少なくとも一部は粉末微粒子122の外側表面をコーティングし、圧電粒子107の少なくとも一部は粉末微粒子122を画定するポリマーマトリックス内で混和される。温度(冷却速度を含む)、熱可塑性ポリマー102の種類、並びにナノ粒子106の種類及びサイズ等の非限定的な要因に応じて、ナノ粒子106は、粉末微粒子122の外側表面上に配置される過程で、当該表面内に少なくとも部分的に埋め込まれるようになり得る。埋め込みが起こらない場合でも、ナノ粒子106は粉末微粒子122と強固に会合したままであり、その更なる使用を容易にし得る。圧電粒子107は、熱可塑性ポリマー102中で混合され、粉末微粒子122の外側表面に位置するか、粉末微粒子122のコア内に位置するか、又はこれらの組み合わせであり得る。
上記において、熱可塑性ポリマー102及び分散媒104は、種々の加工温度(例えば、室温から、液化小滴が形成されて2つ以上の相として維持される温度まで)において、これらの構成成分が不混和性又は実質的に不混和性(<5質量%の溶解度)、特に<1質量%の溶解度であるように選択される。
粉末微粒子122を他の構成成分124から分離した後、粉末微粒子122の更なる加工126を実施してもよい。非限定例では、更なる加工126としては、例えば、粉末微粒子122の篩分け及び/又は粉末微粒子122と他の物質とのブレンドによる加工粉末微粒子128の形成が挙げられる。例えば、粉末微粒子122を、場合によっては外部流動助剤と組み合わせてもよい。加工粉末微粒子128は、非限定例において、積層造形等の所望の用途で使用するために配合されてもよい。
【0042】
本開示の粉末微粒子は、約0.2g/cm3~約10g/cm3、又は約0.3g/cm3~約8g/cm3、又は約0.7g/cm3~約7g/cm3、又は約1g/cm3~約6g/cm3、又は約0.3g/cm3~約3.5g/cm3、又は約0.3g/cm3~約4g/cm3、又は約0.3g/cm3~約5g/cm3、又は約0.3g/cm3~約6g/cm3、又は約0.4g/cm3~約0.7g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.8g/cm3、又は約1.0g/cm3~約1.2g/cm3、又は約1.2g/cm3~約1.5g/cm3、又は約1.5g/cm3~約1.8g/cm3、又は約1.8g/cm3~約2g/cm3、又は約2g/cm3~約2.5g/cm3、又は約2.5g/cm3~約3g/cm3のかさ密度を有し得る。更に他の粉末微粒子は、約3g/cm3~約4g/cm3、又は約4g/cm3~約5g/cm3、又は約5g/cm3~約6g/cm3、又は約6g/cm3~約7g/cm3、又は約6g/cm3~約8g/cm3、又は約8g/cm3~約10g/cm3のかさ密度を有し得る。
【0043】
本開示における分散媒を撹拌しながら、液化小滴の形成に十分な剪断を印加してもよい。非限定例では、撹拌速度は、約50回転/分(RPM)~約1500RPM、又は約250RPM~約1000RPM、又は約225RPM~約500RPMの範囲であってもよい。熱可塑性ポリマーの溶融中の撹拌速度は、液化小滴が形成した後、使用した撹拌速度と同じであっても異なっていてもよい。液化小滴は、約30秒~約18時間以上、又は約1分~約180分、又は約1分~約60分、又は約5分~約6分、又は約5分~約30分、又は約10分~約30分、又は約30分~約60分の撹拌時間にわたって撹拌され得る。
【0044】
分散媒中の熱可塑性ポリマーの負荷(濃度)は、広範囲にわたって変動し得る。非限定例では、分散媒中の熱可塑性ポリマーの負荷は、分散媒の質量に対して約1質量%~約99質量%の範囲であり得る。より具体的な例では、熱可塑性ポリマーの負荷は、約5質量%~約75質量%、又は約10質量%~約60質量%、又は約20質量%~約50質量%、又は約20質量%~約30質量%、又は約30質量%~約40質量%、又は約40質量%~約50質量%、又は約50質量%~約60質量%の範囲であり得る。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーと分散媒との合計量に対して、約5質量%~約60質量%、又は約5質量%~約25質量%、又は約10質量%~約30質量%、又は約20質量%~約45質量%、又は約25質量%~約50質量%、又は約40質量%~約60質量%の範囲の量で存在し得る。
【0045】
本明細書の開示によるナノ粒子の存在下での粉末微粒子の形成時に、シリカナノ粒子又はその他の酸化物ナノ粒子等のナノ粒子の少なくとも一部は、粉末微粒子の外側表面上のコーティング又は部分的コーティングとして配置されてもよい。コーティングは、外側表面上に実質的に均一に配置され得る。コーティングに関して本明細書で使用するとき、「実質的に均一」という用語は、外側表面全体を含めた、ナノ粒子によって被覆される表面位置における、均一なコーティング厚さを指す。粉末微粒子上の被覆率は、粉末微粒子の表面積の約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%の範囲をとり得る。被覆率は、SEM顕微鏡写真の画像分析により決定され得る。
【0046】
本明細書の開示における使用に好適な分散媒としては、熱可塑性ポリマーが分散媒と実質的に不混和性であるもの、分散媒が熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度を超える沸点を有するもの、及びその中で熱可塑性ポリマーが溶融したときに分散媒が実質的に球形の液化小滴を形成するのに十分な粘度を有するものが挙げられる。好適な分散媒としては、例えば、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、全フッ素化シリコーン油、ポリエチレングリコール、アルキル末端ポリエチレングリコール(例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TDG)のようなC1~C4末端アルキル基)、パラフィン、流動ワセリン、ミンク油、タートル油、ダイズ油、ペルヒドロスクアレン、スイートアーモンド油、カロフィラム油、パーム油、パールリーム油、グレープシード油、ゴマ油、トウウモロコシ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、アンズ油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、オリーブ油、穀物胚芽油、ラノリン酸のエステル、オレイン酸のエステル、ラウリン酸のエステル、ステアリン酸のエステル、脂肪酸エステル、高級脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸変性ポリシロキサン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
好適な分散媒は、約0.6g/cm3~約1.5g/cm3の密度を有し、熱可塑性ポリマーのみでは約0.7g/cm3~約1.8g/cm3の密度を有し、熱可塑性ポリマーは、分散媒の密度に近い、より低い、又はより高い密度を有し得る。
特に好適なシリコーン油はポリシロキサンである。本明細書の開示での使用に好適なシリコーン油の例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
非限定例では、分散媒及び熱可塑性ポリマーは、約100℃以上、又は約120℃以上、又は約140℃以上、又は約160℃以上、又は約180℃以上、又は約200℃以上、又は約220℃以上、又は約240℃以上の温度で加熱されてもよい。好適な加熱温度は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度及び分散媒の沸点に基づいて選択されてもよい。液化小滴の形成後の冷却速度は、必要に応じて変動し得る。場合によっては、加熱が中断されたときに自然な(未制御の)速度での周囲環境への熱放散により、冷却が起こることがある。他の場合には、制御された速度での冷却(例えば、加熱温度を徐々に下げること、及び/又はジャケット温度制御を使用して冷却速度を上昇又は低下させることによって)を用い得る。
PDMSを含むポリシロキサン等の好適な分散媒は、25℃において約1,000cSt~約150,000cSt、又は約1,000cSt~約60,000cSt、又は約40,000cSt~約100,000cSt、又は約75,000cSt~約150,000cStの粘度を有し得る。分散媒の粘度は、市販供給業者から得てもよく、又は必要に応じて、当業者に公知の技術により測定されてもよい。
【0048】
分散媒からの粉末微粒子の分離は、様々な公知の分離技術のいずれかによって実施してもよい。粉末微粒子を分散媒から分離するために、重力沈降及び濾過、デカンテーション、遠心分離等のいずれかを使用できる。粉末微粒子を、その後、分離プロセス中に分散媒が可溶且つ粉末微粒子が不溶な溶媒で洗浄してもよい。更に、最初に粉末微粒子を分散媒から分離する前に、分散媒が可溶且つ粉末微粒子が不溶な溶媒を分散媒及び粉末微粒子と混合してもよい。
粉末微粒子の洗浄又は分散媒との混合に好適な溶媒としては、限定するものではないが、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及び/又はキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、n-ヘキサン、及び/又はn-オクタン)、環状炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、及び/又はシクロオクタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、及び/又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム及び/又は四塩化炭素)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はn-プロパノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン及び/又はアセトン);エステル(例えば、酢酸エチル等)、水等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。粉末微粒子の洗浄後、加熱、真空乾燥、空気乾燥、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかを実施してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書の開示に従って得られた粉末微粒子の少なくとも大部分は、実質的に球形であり得る。より典型的には、本開示の溶融乳化によって生成される粉末微粒子の約90%以上、又は約95%以上、又は約99%以上が実質的に球形であり得る。ただし、特に明記されていない限り、場合によってはそれよりも少ない球形粒子が生成され、なおも本明細書に記載の用途に好適な状態を維持し得る。他の非限定例では、本開示の粉末微粒子は、約0.9以上、例えば約0.90~約1.0、又は約0.93~約0.99、又は約0.95~約0.99、又は約0.97~約0.99、又は約0.98~1.0の球形度(円形度)を有し得る。球形度(円形度)は、Sysmex FPIA-2100流動粒子画像分析器を使用して測定できる。円形度を決定するために、粉末微粒子の光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内の微粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)を(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能なSYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器を使用して)計算する。微粒子の円形度はCEA/Pであり、ここでCEAは、実際の粒子の面積(A)に相当する面積を有する円の円周である。
本開示の粉末微粒子は、約25°~約45°、又は約25°~約35°、又は約30°~約40°、又は約35°~約45°の安息角を有し得る。安息角は、ASTM D6393-14「Standard Test Method for Bulk Solids Characterized by Carr Indices」を使用するホソカワミクロンの粉体特性評価装置PT-Rを使用して決定されてもよい。
【0050】
上記開示に従って分散媒から単離された粉末微粒子を、意図する用途に好適な粉末微粒子を作製するために更に加工してもよい。一例として、粉末微粒子を、粉末微粒子の平均粒径よりも大きい有効スクリーニングサイズを有する篩又は類似の構造に通してもよい。例えば、3次元印刷での使用に好適な粉末微粒子を加工するためのスクリーニングサイズの例は、約150μmの有効スクリーニングサイズを有する。篩に言及するとき、孔/スクリーンサイズは、U.S.A.Standard Sieve(ASTM E11-17)に従って記載されている。他のスクリーニングサイズは、より大きいサイズ又はより小さいサイズのいずれも、他の用途で使用する熱可塑性微粒子にとって、より好適であり得る。篩分けは、溶融乳化プロセス中に形成され得る大きな微粒子を除去し得る、及び/又は不十分な流動特性を有し得る凝集微粒子を除去し得る。使用する場合、約10μm~約250μmの範囲の有効スクリーニングサイズを有する篩が使用され得る。
加えて、粉末微粒子は、篩分けした粉末微粒子を含めて、意図される用途のために粉末微粒子の特性を調整することを意図した、流動助剤、充填剤又は他の物質等の1つ以上の追加の構成成分と混合されてもよい。追加の構成成分と粉末微粒子との混合は、乾式ブレンド技術によって実施され得る。流動助剤(例えば、カーボンブラック、グラファイト、シリカ等)及び類似物質の好適な例は、当業者に周知であろう。カーボンナノチューブ、グラフェン等は、印刷物の形成及びポーリングの後に得られる圧電応答を増加させるために、粉末微粒子内に充填剤として存在し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される粉末微粒子は、溶媒フリー、流動助剤フリー、且つ界面活性剤フリーであり得る。
【0052】
本明細書に開示される粉末微粒子は、積層造形プロセス、特に微粒子圧密を促進するために選択的レーザー焼結又はその他の粉末床溶融結合プロセスを用いるものに利用されてもよい。上記微粒子から形成された印刷物は、複合体を含んでもよく、印刷物内のポリマーマトリックスは熱可塑性ポリマーを含み、圧電粒子はポリマーマトリックス内に位置する。上術の粉末微粒子と同様に、印刷物内の圧電粒子は実質的に非凝集であり得る。更に、圧電粒子は、印刷物を画定するポリマーマトリックス内に存在してもよく、且つ印刷物の表面に位置してもよく、印刷物の内部に全部が位置してもよく、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
ポリマーフィラメントから得られる溶融ポリマーの層ごとの圧密によって形成される(例えば、フィラメント溶融積層又は類似のプロセスの間に)印刷物と、粉末微粒子の圧密によって調製される(例えば、粉末床溶融結合プロセスの間に)印刷物とは、粒界の存在又は不在及びその種類によって区別され得る。粉末床溶融結合及び類似の微粒子圧密プロセスによって形成された印刷物には、不完全に溶融した粉末微粒子の間に粒界が残っている場合があるのに対し、フィラメント溶融積層又は類似のプロセスによって形成された印刷物は、隣接する印刷線と層との間の境界の形跡を特徴とし得る。ポリマーフィラメント又は粉末微粒子から形成された印刷物は、顕微鏡レベルではおそらく区別可能であるが、マクロスケールでは実質的に互いに区別できない場合がある。
【0053】
圧電特性は、ポーリング後に、印刷物に得られる場合がある。ポーリングは、物体に非常に高い電界を印加することで、圧電材料の双極子が印加された電界の方向に整列するように自身を配向させることを含む。好適なポーリング条件は当業者に周知であろう。非限定的例では、ポーリングは、コロナポーリング、電極ポーリング、又はこれらの任意の組み合わせによって行われ得る。コロナポーリングでは、圧電材料は、荷電イオンが発生して表面上に収集されるコロナ放電で処理される。電界は、表面上の荷電イオンと表面の反対側の接地面との間に発生する。接地面は、ポーリングを受ける物体に直接接着されていてもよく、又は接地プレートとして別に存在してもよい。電極ポーリング(接触ポーリング)では、2つの電極が圧電材料の両側に配置され、材料は2つの電極間に発生する高い電界を受ける。ポーリングは、印刷物の形成中に別個のステップとして行われ得るが、ポーリングは、積層造形プロセスと協調して、粉末床内で粉末微粒子を圧密するとき等にも行われてもよい。非限定例では、粉末微粒子を供給する印刷ヘッドと微粒子圧密によって印刷部品が形成される接地面との間に高電圧が印加され得る。
従って、本開示の積層造形プロセスは、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積するステップであって、圧電粒子が、(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内の熱可塑性ポリマー内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと、例えば選択的レーザー焼結を実施することにより、複数の粉末微粒子の一部を粉末床内で圧密して、印刷物を形成するステップと、を含む。積層造形プロセスは、印刷物の形成後に、その少なくとも一部をポーリングするステップを更に含み得る。より具体的な例では、ナノ粒子は粉末微粒子の上に存在してもよく、その結果ナノ粒子も印刷物の中に組み込まれる。ナノ粒子は、印刷物内の圧電粒子の位置と同じ場所及び/又は異なる場所に存在し得る。
【0054】
本明細書に開示される微粒子組成物を使用して形成可能な印刷物の例は、特に限定されないと考えられ、容器(例えば、食品、飲料、化粧品、パーソナルケア組成物、医薬品等)、靴底、玩具、家具部品、家庭用装飾品、プラスチックギア、スクリュー、ナット、ボルト、ケーブルタイ、医療品、プロテーゼ、整形外科用インプラント、教育学習を支援するアーチファクトの生成、手術を支援するための3D解剖学的モデル、ロボット、生物医学的装置(装具)、家電、歯科用具、自動車及び航空宇宙/航空機関連部品、電子機器、スポーツ用品、センサー(例えば、圧力センサー、歪みセンサー等)、バルブ及びアクチュエータ、エネルギーハーベスティングデバイスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0055】
本明細書に開示されている実施形態は、以下のものを含む:
【0056】
A.粉末微粒子を含む微粒子組成物。 微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含み、上記圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する。
B.印刷物。 印刷物は、微粒子圧密によって形成された、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、当該ポリマーマトリックス内に位置する複数の圧電粒子とを含む。
C.微粒子圧密によって印刷物を形成する方法。 当該方法は、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを含む複数の粉末微粒子を含む微粒子組成物を粉末床に堆積するステップであって、圧電粒子が、(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;複数の粉末微粒子の一部を粉末床内で圧密して、印刷物を形成するステップと、を含む。
D.粉末微粒子を形成する方法。 当該方法は、熱可塑性ポリマーと、当該熱可塑性ポリマー中に分布された複数の圧電粒子とを含む複合物を提供するステップと;熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中に上記複合物を組み合わせるステップであって、上記熱可塑性ポリマーと分散媒とは、加熱温度において実質的に不混和性である、ステップと;上記加熱温度において、熱可塑性ポリマーを、圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加するステップと;液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、分散媒を冷却するステップであって、粉末微粒子は熱可塑性ポリマーと圧電粒子の少なくとも一部とを含み、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;粉末微粒子を分散媒から分離するステップと、を含む。
E.粉末微粒子を形成する方法。 当該方法は、熱可塑性ポリマーと複数の圧電粒子とを、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度において、分散媒中で組み合わせるステップであって、上記熱可塑性ポリマーと分散媒とは、加熱温度において実質的に不混和性である、ステップと;上記加熱温度において、熱可塑性ポリマーを、圧電粒子を含有する液化小滴として分散させるのに十分な剪断を印加するステップと;液化小滴が形成された後、少なくとも、固化状態の粉末微粒子が生成する温度まで、分散媒を冷却するステップであって、粉末微粒子は熱可塑性ポリマーと圧電粒子の少なくとも一部とを含み、圧電粒子は(i)粉末微粒子の外側表面の熱可塑性ポリマー内、(ii)粉末微粒子のコア内、又は(iii)これらの組み合わせに位置する、ステップと;粉末微粒子を分散媒から分離するステップと、を含む。
【0057】
実施形態A、B、C、D、及びEの各々は、任意の組み合わせで以下の追加要素の1つ以上を有してもよい。
【0058】
要素1:微粒子組成物は、複数の粉末微粒子の各々の外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、当該複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む;及び/又は複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
要素1A:印刷物は、ポリマーマトリックス内に位置する複数のナノ粒子を更に含み、当該複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む;及び/又は複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
要素1B:複数の粉末微粒子は、複数の粉末微粒子の各々の外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、当該複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの任意の組み合わせを含む;及び/又は複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0059】
要素2:複数の酸化物ナノ粒子は、複数のシリカナノ粒子を含む;及び/又は複数のシリカナノ粒子は、粉末微粒子の各々の外側表面上に配置されている。
要素3:圧電粒子は、実質的に非凝集である。
要素4:粉末微粒子から形成された単層薄膜は、APC International Wide-Range d33メータで測定したときに、ポーリング後に、約200ミクロンの膜厚において約1pC/N以上のd33値を有する。
要素5:圧電粒子は、約10ミクロン以下の平均粒径を有する。
要素6:粉末微粒子は、約5体積%~約70体積%の圧電粒子を含む。
要素7:熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(SBS)、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-ビニルアセテート)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルアリールケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン)、ポリ(二フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、これらの任意のコポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。
要素8:圧電粒子は、ジルコン酸チタン酸鉛、ドープジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛、ニオブ酸マグネシウム鉛-チタン酸鉛、ニオブ酸ナトリウムカリウム、チタン酸カルシウム銅、チタン酸ビスマスナトリウム、リン酸ガリウム、石英、トルマリン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される圧電材料を含む。
要素9:粉末微粒子は、サイズが約1μm~約500μmの範囲である。
要素10:方法は、印刷物の少なくとも一部をポーリングするステップを更に含む。
要素11:方法は、複数のナノ粒子を、分散媒中で複合体と組み合わせるステップであって、複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、又はこれらの任意の組み合わせを含む、ステップを更に含み;ナノ粒子の少なくとも一部は、粉末微粒子の各々の外側表面上に配置される。
要素12:分散媒は、シリコーン油を含む。
【0060】
非限定例として、A、B、C、D及びEに適用可能な組み合わせの例には、限定するものではないが、1、1A又は1B、及び2;1、1A又は1B、及び3;1、1A又は1B、及び2及び3;1、1A又は1B、及び2及び4;1、1A又は1B、及び2及び5;1、1A又は1B、及び5;1、1A又は1B、及び2及び6;1、1A又は1B、及び6;1、1A又は1B、及び7;1、1A又は1B、及び8;1、1A又は1B、及び9;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;3及び9;4及び9;5及び6;5及び7;5及び8;5及び9;6及び7;6及び9;6及び10;7及び9;8及び9;及び7~9が挙げられる。
【0061】
本開示の更なる理解を本開示のより良好な理解を促進するために、以下の好ましい又は代表的な実施形態の例が与えられる。以下の実施例は、決して、本発明の範囲を制限するか、又は定義するように読解されるべきではない。
【実施例】
【0062】
平均粒径測定及び粒径分布は、Malvern Mastersizer 3000 Aero S粒径分析器を使用して、光散乱により決定した。光散乱技術については、商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)でMalvern Analytical Ltd.から入手した、15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズの対照試料を使用してもよい。試料は、Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して、空気中に分散された乾燥粉末として分析できる。粒径は、上記装置ソフトウェアを使用して、サイズの関数としての体積密度のプロットから導出できる。
ジルコン酸チタン酸鉛(PZT、APC International,Ltd.)を、Bransonデジタルプローブ超音波処理装置を使用して、振幅25%、水中で、30分間超音波処理して、粒子凝集を破壊した。もとのPZT凝集体サイズが約100ミクロンの場合、超音波処理後に1~5ミクロンのサイズ範囲のPZT粒子が得られ、このPZT粒子の大部分は1~2ミクロンのサイズ範囲にある。
【0063】
実施例1: 1:1(質量:質量)ポリアミド:PZT複合体の形成。ポリアミド-12をRTP Companyから入手し、600P Haakeバッチミキサーを使用して、1:1ポリアミド(ポリアミド-12):PZT複合体に加工した。3つのプレート全てについて温度を230℃に設定し、作動させたときにロータ速度を約200rpmに設定した。30gのポリアミド(PA)ペレットを、空転中の230℃のミキサーに添加し、ポリアミドを溶融させた(約5分)。溶融が生じた後、ロータを始動させ、スパチュラを使用してPZT(30g)をミキサーにゆっくりと供給した。PZTの添加が完了したら、ミキサーの上部をそのラム装置で閉鎖し、更に30分間、撹拌しながら混合を継続した。30分後、ロータを停止し、得られた溶融複合体ブレンドをアルミニウム製パイ皿に排出し、周囲条件下で冷却した。完全に冷却及び固化した後、工業用プレスを使用して、押出物の大きな塊を粉砕した。固化した押出物を小型携帯IKAミルで凍結粉砕することによって、粒径の更なる低減を達成した。凍結粉砕は、固化した押出物の小片を液体窒素に約1分間浸漬し、続いて約15~20秒間粉砕することによって実施した。
実施例1A: 1:3(質量:質量)ポリアミド:PZT複合体の形成。1:3ポリアミド:PZT複合体を、39gのポリアミド-12及び117gのPZTを使用したことを除いて、実施例1の1:1のポリアミド:PZT複合体と同様に調製した。
実施例1B: 1:3(質量:質量)ポリカプロラクトン:PZT複合体の形成。 ポリカプロラクトン(PCL)をHappy Wire Dog,LLCから入手し、600P Haakeバッチミキサーを使用して、1:3ポリカプロラクトン:PZT複合体に加工した。3つのプレート全てについて温度を最初に80℃に設定し、作動させたときにロータ速度を約200rpmに設定した。30gのポリカプロラクトンのペレットを、空転中の80℃のミキサーに添加した。次いで、温度を約250℃まで上昇させ、ポリカプロラクトンを溶融させた(約5分)。溶融が生じた後、ロータを始動させて、スパチュラを使用してPZT(90g)をミキサーにゆっくりと供給した。PZTの添加が完了したら、ミキサーの上部をそのラム装置で閉鎖し、更に30分間、撹拌しながら混合を継続した。30分後、ロータを停止し、得られた溶融複合体ブレンドをアルミニウム製パイ皿に排出し、周囲条件下で冷却した。完全に冷却及び固化した後、押出物の大きな塊を、3devo Shred-itポリマー粉砕機を使用して顆粒化した。
実施例1C: 1:1.8(質量:質量)ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン:PZT複合体の形成。ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(PVDF-co-HFP、KYNAR FLEX2800-20、Arkema)を、600P Haakeバッチミキサーを使用して、1:1.8PVDF:PZT複合体に加工した。3つのプレート全てについて温度を最初に230℃に設定し、作動させたときにロータ速度を約200rpmに設定した。56gのPVDFを、空転中の230℃のミキサーに添加し、ポリマーを溶融させた(約5分)。溶融が生じた後、ロータを始動させて、スパチュラを使用してPZT(103.4g)をミキサーにゆっくりと供給した。PZTの添加中に、粘度の増加により、ロータ速度が徐々に低下した。PZTの添加が完了したら、ミキサーの上部をそのラム装置で閉鎖し、更に30分間、撹拌しながら混合を継続した。溶融温度は、実行中に設定温度よりも約10℃上昇した。30分後、ロータを停止し、得られた溶融複合体ブレンドをアルミニウム製パイ皿に排出し、周囲条件下で冷却した。完全に冷却及び固化した後、押出物の大きな塊を、3devo Shred-itポリマー粉砕機を使用して顆粒化した。
実施例1D: スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン:PZT複合体。上記のHaakeミキサーで、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS、Kraton G1657)中でPZTの複合体を調製して、SEBS中で30体積%、40体積%、50体積%、及び60体積%のPZT負荷を有する複合体を得た(各々実施例1D-a、1D-b、1D-c、及び1D-d)。PZT負荷以外は同様の手順を使用して、各複合体を以下の方法で調製した。SEBSポリマーペレットを最初にミキサーに添加し、以下の表1に指定された条件下で約2分間混合及び溶融した。これらの実験では窒素パージを使用せず、ミキサー供給ポートは開放したままであった。次いで、PZT粒子をゆっくりと添加した。全てのPZTを添加した後、材料を15分以上混合し、次いでスチールパンに排出し、周囲条件下で冷却した。冷却及び固化した後、この押出物を粉砕ミル内で粉砕し、真空オーブンに入れて乾燥を保持した。
【表1】
【0064】
実施例1E. 実施例1E 熱可塑性ポリウレタン(TPU):PZT複合体。上記のHaakeミキサーで、熱可塑性ポリウレタン(TPU、BASF ELASTOLLAN 1190A10)中でPZTの複合体を調製して、40体積%のPZT負荷を有する複合体を得た。Haakeミキサー温度は190℃に設定した。TPUポリマーペレット(34.4g)を最初にミキサーに添加し、約2分間混合及び溶融させた。次いで、PZT粒子(153.4g)をゆっくりと添加した。全てのPZTを添加した後、材料を10分以上混合し、次いでアルミニウムパンに排出し、周囲条件下で冷却した。
【0065】
実施例2: ポリマー:PZT複合体の圧電特性。2cm
2の正方形試料の圧電特性を、APC International Wide-Range d
33メータを使用してd
33値を測定することによって評価した。このd
33メータは、110Hzの動作周波数及び0.25Nの振幅で1~2000pC/Nのd
33値を測定することができる。d
33値は、圧電材料が設定された印加力(振幅)を受けたときに発生する電荷の量を表す。試験試料を、射出成形又は熱プレスによって形成した。射出成形試料は、Minijector 45とアルミニウム金型とを使用して形成した。試料及びその圧電特性の更なる説明を以下の表2に提供する。d
33測定を行う前に、全ての試料を、2~10分の範囲の時間コロナ放電に試料を曝露するコロナポーリング法によってポーリングした。コロナポーリング法では、試料の片側を銀塗料でコーティングし、ワイヤで発生した(wire-generated)コロナに曝露した。約300μm
2の表面積が所与の時間コロナに曝露されることから、コロナへの曝露によって表面全体をポーリングするように試料を移動させた。ポーリングプロセスにおけるばらつきと、通常の試料間の厚さの非一貫性とが、以下の表2に示すd
33値の変動の原因となり得る。更に、ポーリングプロセスは最適化されていなかった。
【表2】
【0066】
各試料について測定可能な圧電応答を得た。
【0067】
実施例3. PZTを含有するPCL粉末微粒子の形成。500mLガラスケトル反応器に、300gの30kポリジメチルシロキサン(PDMS)油(Clearco、30,000cStの粘度)、200gの圧電複合体(PCL中に40体積%のPZTを含有)(上記実施例1Bと同様の方法で調製)、及び1.0gのAEROSIL RX50シリカ(疎水変性表面、平均粒径=40nm及び比表面積25~45m
2/g、Evonik)を入れた。得られた混合物(固体40質量%)を、300rpmの初期撹拌で140℃に加熱し、温度が140℃の設定点に達したら、500rpmで更に1時間撹拌した。その後、加熱と撹拌を中止し、スラリーを室温まで自然冷却した。反応混合物をヘプタンで3:1(体積)に希釈し、1時間撹拌した。粉末を濾過により回収し、ヘプタン中に再分散し、更に30分間撹拌した。ヘプタン中に再分散し、2回目の濾過を実施した後、粉末微粒子を回収した。
得られたPCL:PZT粉末微粒子のD
50値は88μmであり、直径スパンは1.28であった。150μmの篩に通した後、粉末微粒子の90%は150μm以下のサイズであった。
図3A~3Cは、PCL:PZT粉末微粒子の種々の倍率のSEM画像である。
図3Cに示すように、シリカナノ粒子は粉末微粒子の表面に局在した。
【0068】
実施例4. PZTを含有するTPU粉末微粒子の形成。500mLガラスケトル反応器に、280gの60kポリジメチルシロキサン(PDMS)油(Clearco、60,000cStの粘度)、120gの圧電複合体(TPU(熱可塑性ポリウレタン)中に40体積%のPZTを含有)(上記実施例1Eと同様の方法で調製)、及び1.2gのAEROSIL RX50シリカ(疎水変性表面、平均粒径=40nm及び比表面積25~45m
2/g、Evonik)を入れた。得られた混合物(固体30質量%)を、300rpmの初期撹拌で240℃に加熱し、温度が240℃の設定点に達したら、500rpmで更に30分間撹拌した。その後、加熱と撹拌を中止し、スラリーを室温まで自然冷却した。反応混合物をヘプタンで3:1(体積)に希釈し、1時間撹拌した。粉末を濾過により回収し、ヘプタン中に再分散し、更に30分間撹拌した。ヘプタン中に再分散し、2回目の濾過を実施した後、粉末微粒子を回収した。
得られたTPU:PZT粉末微粒子のD
50値は144μmであり、直径スパンは0.88であった。150μmの篩に通した後、粉末微粒子の53.6%は150μm以下のサイズであった。
図4は、TPU:PZT粉末微粒子のSEM画像である。この事例で球形度がわずかに低下しているのは、最適ではないプロセス条件に起因すると考えられる。
図5は、TPU:PZT粉末微粒子の断面SEM画像である。
図5に示すように、PZT粒子は、粉末微粒子の内部(コア)内に位置する。
【0069】
実施例5: 粉末微粒子の3D印刷。微粒子圧密を、Sharebot SnowWhite SLSプリンターを用いた選択的レーザー焼結により実施した。PCL:PZT粉末微粒子には、レーザー焼結を、60%のレーザー出力、40,000のスキャン速度、及び108℃のプラテン温度にて実施した。TPU:PZT粉末微粒子には、レーザー焼結を、70%のレーザー出力、20,000のスキャン速度、及び108℃のプラテン温度にて実施した。両方の種類の粉末微粒子を、約60ミクロンの厚さを有する30mm×30mmの正方形として印刷した。
PCL:PZT及びTPU:PZTの両方の焼結層を、粉末床から取り除いた後に一緒に保持した。顕著な空隙を示さなかった。表面粗さは、PCL:PZTについては14.9±0.6ミクロン、TPU:PZTについては52±2ミクロンであった。印刷層のエッジプル(edge pull)も反り(wraping)も観察されなかった。光学画像(表示されていない)は、3D印刷条件下で粒子焼結が起こることを実証した。
【0070】
実施例6: 3D印刷試料の圧電特性。実施例5で得られた印刷層を、5kVの電圧を用い、電極距離1mm、80℃で、30分間ポーリングした。試料が室温まで冷却される間、30分間電界を維持した。次いで、圧電特性を、PM300ピエゾメータ(Piezotest)を用いて測定した。PCL:PZT印刷層は、8.7±0.2pC/Nのd33値を示し、TPU:PZT印刷層は、3.2±0.1pC/Nのd33値を示した。
【0071】
本明細書に記載される全ての文書は、そのような実施が許可される全ての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。従って、本開示がそれにより限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載される組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の構成成分、又は組成物を含まなくてもよい。任意の方法は、本明細書に列挙又は開示されていないいかなる工程を欠いてもよい。同様に、用語「備える、含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義であると考えられる方法、組成物、要素又は要素の群の前に移行句「備える、含む(comprising)」がある場合はいつでも、本発明者らが、その組成物、要素、又は複数の要素の列挙の前に移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」がある場合と同じ組成物又は要素の群も企図していること、及びその逆もまた同様であることが理解される。
別途指示のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される構成成分、分子量等の特性、反応条件等の量を表す全ての数は、全ての事例において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。従って、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られると考えられる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、且つ特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、且つ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0072】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。具体的には、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値の全ての範囲は、より広範な値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、特許請求の範囲で使用するとき、不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ以上を意味するように定義される。
【0073】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装の全ての特徴が本出願に記載又は表示されているわけではない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンス等、実装によって及び随時に変化する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
従って、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上述の具体的な実施形態は例示的なものに過ぎず、本開示は、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかな、異なるが同等の様式で修正及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細を限定することを意図するものではない。従って、上記に開示された具体的な例示的実施形態が、変更され、組み合わされ、又は修正されてもよく、全てのそのような変形が、本開示の範囲及び精神内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択の要素の不在下で実施されてもよい。
【国際調査報告】