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特表2024-528837照明、流体吸引及び光凝固のための硝子体網膜器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】照明、流体吸引及び光凝固のための硝子体網膜器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502633
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2022055603
(87)【国際公開番号】W WO2023012531
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,138
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ティー.チャールズ
(57)【要約】
本開示は、概して、外科的処置のための小ゲージ機器に関し、より具体的には、網膜修復及び再付着処置のための硝子体網膜器具並びに関連する使用方法に関する。本開示のある実施形態は、照明、流体吸引及び眼内光凝固を提供するように構成された湾曲又は関節式プローブを提供する。したがって、プローブは、最初の排出後及び眼内光凝固中に再蓄積する網膜下液の吸引を、外科用器具を交換するか又は眼内空間に追加の器具を挿入する必要なく可能にする。更に、プローブの複合機能は、外科医が、流体を吸引し、且つ/又は網膜眼内光凝固術を実施しながら、外科医の他方の手で強膜圧迫を同時に実施することを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼から網膜下液を除去するための器具であって、
ハンドルと、
前記ハンドルに結合されたカニューレであって、前記カニューレの遠位部は、前記眼の網膜の曲率に対応する曲率を有し、前記カニューレは、
前記カニューレを通して延びるルーメン、及び、
前記カニューレの遠位端に隣接する、前記眼から前記ルーメンに網膜下液を吸引するための少なくとも1つのポート、
を更に含む、カニューレと、
前記カニューレを通して延びる、前記カニューレの前記遠位端を通して照明光を伝搬するための第1の光ファイバーと、
前記カニューレを通して延びる、前記カニューレの前記遠位端を通してレーザ光を伝搬するための第2の光ファイバーと、
を具備する器具。
【請求項2】
前記カニューレは、超弾性合金を含む材料から形成される、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記超弾性合金は、ニチノールである、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記ハンドルの近位端は、前記網膜下液を吸引するための押出管に前記ハンドルを接続するためのルアーロック型コネクタを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記ルーメンは、前記押出管を介して真空源と流体連通する、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記第1の光ファイバー及び前記第2の光ファイバーは、約30ミクロン以下の直径を有するナノファイバーである、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記第1の光ファイバーは、前記ハンドル内に配置された第3の光ファイバーに接合され、前記第3の光ファイバーは、前記第3の光ファイバーの近位端から前記第3の光ファイバーの遠位端までテーパした直径を有する、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記第3の光ファイバーは、前記ハンドル内に少なくとも部分的に配置された第4の光ファイバーに接合される、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記第1の光ファイバーは、前記第1の光ファイバーの遠位端において、照明光の発散するビームを生成するためのマイクロレンズを含む、請求項6に記載の器具。
【請求項10】
前記第1の光ファイバーは、発光ダイオード(LED)照明源に光学的に結合される、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記第1の光ファイバーは、スーパールミネッセントダイオード(LED)照明源に光学的に結合される、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記第2の光ファイバーは、狭帯域又は広帯域のレーザ源に光学的に結合される、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記レーザ源は、スーパーコンティニュームレーザ源である、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記カニューレの前記遠位端内に配置された光学的にクリアな又は透明な窓であって、前記カニューレの前記遠位端を通した照明光及びレーザ光の前記伝搬を容易にする、光学的にクリアな又は透明な窓を更に含む、請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記第1の光ファイバー及び前記第2の光ファイバーは、前記少なくとも1つのポートに対向する前記ルーメンの内側側壁に結合される、請求項1に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がSteven T.Charlesである、2021年8月6日に出願された「VITREORETINAL INSTRUMENTS FOR ILLUMINATION,FLUID ASPIRATION,AND PHOTOCOAGULATION」という名称の米国仮特許出願第63/230,138号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
健康なヒトの眼において、網膜は、扁平部の後方で網膜色素上皮(「RPE」)を介して概ね周方向、例えば半球状に脈絡膜に物理的に付着している。眼球後区を満たす透明なゼリー状の物質である硝子体液は、脈絡膜に接することを促進するが、脈絡膜に物理的に付着させるわけではない。
【0003】
網膜の一部が裂隙又は裂孔を生じ、RPEから剥離することがある。ある例では、網膜剥離によって硝子体液及びときに房水が網膜とRPEとの間を流れ、網膜下液の蓄積を生じさせる。いずれの状態も患者の視力喪失をもたらす可能性がある。
【0004】
網膜の外科的修復又は再付着中、外科医は、強膜切開(扁平部における強膜の切開)を介して眼球後区に硝子体網膜器具を挿入し得る。外科医は、同様の切開を介してエンドイルミネータ及び潅流カニューレも眼内に挿入し得、ときに硝子体網膜器具の代わりに吸引プローブを用い得る。顕微鏡で後区を観察しながら、エンドイルミネータを用いて、外科医は、硝子体網膜器具を使用して硝子体液を切除及び吸引し、網膜剥離又は裂孔へのアクセスを得ることができる。処置のこの部分中、適切な眼圧を維持するために、潅流カニューレを介して生理食塩水が眼内に注入され得る。
【0005】
次に、外科医は、網膜下から流体を除去し、空気、空気ガス混合物又はパーフルオロカーボンを注入して、網膜の剥離した部分を適切な位置に修復し、網膜をRPE又は脈絡膜に対して平らにすることができる。そのような操作には、ソフトチップカニューレ、鉗子又は他の器具が用いられ得る。特定の場合、生理食塩水が眼球後区から移動及び除去される間、液体パーフルオロカーボンが網膜タンポナーデとして眼球後区に注入される。この処置は、「流体/パーフルオロカーボン交換」と呼ばれ得る。特定の場合、生理食塩水が吸引される間、空気が網膜タンポナーデ流体として注入される。この処置は、「流体/空気交換」と呼ばれ得る。他の特定の場合、生理食塩水が吸引される間、空気とSF、C又はCなどのガスとの混合物が網膜タンポナーデ流体として注入される。この処置は、「流体/ガス交換」と呼ばれ得る。本明細書で使用する場合、「流体」は、添加物を含むか若しくは含まない生理食塩水、シリコーンオイル、液体パーフルオロカーボン、空気又はパーフルオロカーボンガスが挙げられるが、これらに限定されない、眼内での使用に適した任意の液体又はガスを含み得る。
【0006】
上記の交換の1つを実施した後、外科医は、網膜と脈絡膜との間に存在する網膜下液を、網膜裂隙又はドレナージ網膜切開を通して、適切なカニューレ、金属カニューレ又はソフトチップカニューレを介して排出、例えば吸引し、その後、レーザプローブを使用して、眼内光凝固術によって網膜を修復又は再付着させ得る。修復を行うために、RPEがレーザプローブからレーザエネルギーを吸収するように、網膜がRPE又は脈絡膜に対して配置されなければならない。網膜と脈絡膜との間の網膜下液の存在により、網膜の修復中のレーザの吸収が妨げられ、このような処置中における非効率性を招き得る。したがって、レーザプローブによる眼内光凝固術前に手術部位から吸引プローブを介して網膜下液を排出することが有利である。
【0007】
特定の場合、網膜下液の最初の排出後、網膜下液が後方に流れることにより手術部位に再蓄積し得、それにより追加の排出が必要となる。従来の吸引プローブ及びレーザプローブを使用する場合、吸引プローブは、眼内光凝固中に眼球後区内に維持される(照明のためのシャンデリアが必要となる)か、又はレーザプローブと同じ若しくは新たな切開を通して再挿入されるかのいずれかでなければならない。しかしながら、吸引プローブとレーザプローブとを交換するために除去及び挿入を繰り返すことで、切開部位における眼の不必要な外傷又は器具交換中の網膜若しくは水晶体への衝突及び/又は網膜修復中の処置の遅延を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の実施形態によれば、眼から網膜下液を除去するための器具が提供される。本器具は、ハンドルと、ハンドルに結合されたカニューレであって、カニューレの遠位部は、眼の網膜の曲率に対応する曲率を有し、カニューレは、カニューレを通して延びるルーメンと、カニューレの遠位端に隣接する、眼からルーメンに網膜下液を吸引するための少なくとも1つのポートとを更に含む、カニューレと、カニューレを通して延びる、カニューレの遠位端を通して照明光を伝搬するための第1の光ファイバーと、カニューレを通して延びる、カニューレの遠位端を通してレーザ光を伝搬するための第2の光ファイバーとを含む。
【0009】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明を、実施形態を参照することによって得ることができ、そのいくつかを添付の図面に示す。しかしながら、添付図面は、例示的な実施形態を図示するにすぎないため、その範囲の限定であるとみなすべきではなく、他の同等に効果的な実施形態が認められ得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の特定の実施形態による例示的な外科用器具を示す。
図2図2は、本開示の特定の実施形態による、図1の外科用器具の例示的なカニューレが挿入されている眼の断面図を示す。
図3A図3Aは、本開示の特定の実施形態による、図1の外科用器具のカニューレの拡大側面図を示す。
図3B図3Bは、本開示の特定の実施形態による、図1の外科用器具のカニューレの拡大側断面図を示す。
図3C図3Cは、本開示の特定の実施形態による、図1の外科用器具のカニューレの拡大側断面図を示す。
図3D図3Dは、本開示の特定の実施形態による、図1の外科用器具のカニューレの拡大正面断面図を示す。
図4図4は、本開示の特定の実施形態による、図1の外科用器具の概略側断面図を示す。
図5A図5Aは、本開示の特定の実施形態による別の例示的な外科用器具の異なる構成を示す。
図5B図5Bは、本開示の特定の実施形態による別の例示的な外科用器具の異なる構成を示す。
図5C図5Cは、本開示の特定の実施形態による、図5A図5Bの外科用器具のカニューレの拡大側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易にする目的で、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り同一の参照符号が使用される。1つの実施形態の要素及び特徴は、更なる説明を伴うことなく、他の実施形態に有益に組み込むことができると想定される。
【0012】
以下の説明では、開示する対象の理解を容易にするために、詳細が例として記載される。しかしながら、開示する実装形態が例であり、可能な全ての実装形態を網羅するものではないことは、当業者に明らかなはずである。したがって、説明する例への言及は、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。説明するデバイス、器具、方法に対する任意の変更形態及び更なる修正形態並びに本開示の原理の更なる任意の応用形態は、本開示が関連する技術分野の当業者が通常想到するであろうことが完全に想定される。特に、1つの実装形態に関して説明する特徴、構成要素及び/又はステップは、本開示の他の実装形態に関して説明する特徴、構成要素及び/又はステップと組み合わされ得ることが完全に想定される。
【0013】
本明細書に記載されるように、構成要素の遠位端、遠位セグメント又は遠位部は、その構成要素の使用中に患者の身体により近い端部、セグメント又は部分を指すことに留意されたい。一方、構成要素の近位端、近位セグメント又は近位部は、患者の身体からより遠く離れた端部、セグメント又は部分を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、公称値からの+/-10%の変動を指し得る。このような変動は、本明細書で提供するいずれの値にも含まれ得ることを理解されたい。
【0015】
本開示は、概して、外科的処置のための小ゲージ機器(例えば、23ゲージ、25ゲージ又は27ゲージ)に関し、より具体的には、網膜修復及び再付着処置のための硝子体網膜器具並びに関連する使用方法に関する。本開示のある実施形態は、照明、流体吸引及び眼内光凝固を提供するように構成された湾曲又は関節式プローブを提供する。したがって、プローブは、最初の排出後及び眼内光凝固中に再蓄積する網膜下液の吸引を、外科用器具を交換するか又は眼内空間に追加の器具を挿入する必要なく可能にする。更に、プローブの複合機能により、外科医が、流体を吸引及び/又は網膜眼内光凝固術を実施しながら、外科医の他方の手で強膜圧迫を同時に実施することを可能にする。その結果、上述のプローブの利用により、処置効率の向上及び患者の眼を損傷するリスクの低下を可能にする。
【0016】
図1は、特定の実施形態による例示的な外科用器具100を示す。外科用器具100は、可撓性カニューレ110を含み得る。図2に示されるように、眼科手術処置中、カニューレ110は、カニューレ110とは別の構成要素であるアクセスカニューレ204を介して、強膜切開として知られる切開202を通して眼200内に配置され得る。眼200内に存在する間、カニューレ110は、カニューレ110内に配置された1つ以上の光ファイバーを介して眼200内の眼内空間を照明し、カニューレ110内に配置された1つ以上の吸引ポートを通して眼200から物質を吸引し、眼200内の組織の眼内光凝固術のためのレーザビームを1つ以上の光ファイバーを介して伝搬するために使用され得る。ある例では、硝子体網膜手術処置中、カニューレ110の遠位端112は、網膜下腔212を照明し、そこから網膜下液を排出し、その後、光凝固により網膜210を封止するために、眼200内の網膜210の後方に挿入され得る。
【0017】
再度図1を参照すると、外科用器具100は、近位端122と遠位端124とを有するハンドル120も含み得る。ある実施形態では、ハンドル120は、使用者、例えば外科医によって把持されるように構成された外面を有するハンドピースである。したがって、ハンドル120は、使用者の手に実質的にフィットするように人間工学的な輪郭が与えられ得る。ある実施形態では、外面は、テクスチャ加工され得るか、又はそこに形成された1つ以上の把持特徴126、例えば1つ以上の溝及び/又は隆起を有し得る。ハンドル120は、そのような器具に一般的に使用され、眼科手術に適した任意の材料から作成され得る。例えば、ハンドル120は、軽量アルミニウム、金属合金、ポリマー又は他の適切な材料で形成され得る。ある実施形態では、ハンドル120は、滅菌されて2回以上の外科的処置に使用され得るか、又は単回使用のデバイスであり得る。
【0018】
ハンドル120は、近位端122に、複数のチューブ130(例えば、3つのチューブ130a~cが図1に示されている)と接続するための複数のポート128(例えば、3つのポート128a~cが図1に示されている)を更に含む。図1の例では、ポート128aは、ハンドル120及びカニューレ110(以下で説明する)の内部ルーメンとチューブ130aとの間に流体接続を提供し、チューブ130aは、眼200から例えば網膜下液を吸引するために外科用器具100を外科用コンソールの真空源132に流体結合するための押出チューブであり得る。ある実施形態では、ポート128aは、ハンドル120をチューブ130aに結合するためのルアーロック型コネクタを含む。ポート128bは、チューブ130bの接続を提供する。チューブ130bは、照明光を眼200に伝搬するためにハンドル120及びカニューレ110内の光ファイバーを外科用コンソールの照明光源134に結合するための光ファイバケーブルであり得る。ポート128cは、130cの接続を提供する。130cは、レーザ光を眼200に伝搬するためにハンドル120及びカニューレ110内の光ファイバーを外科用コンソールのレーザ光源136に結合するための光ファイバケーブルであり得る。外科用器具100を使用中、使用者は、ハンドル120上の1つ以上のトグル(例えば、ボタン、スイッチなど)、外科用器具100と連通する外科用コンソール又は外科用コンソール及び/若しくは外科用器具100と連通するフットペダルを介して真空源132、照明光源134及びレーザ光源136のいずれか1つを作動させることができる。
【0019】
図1の例では、照明光源134及びレーザ光源136は、別個の光ファイバー(例えば、照明光を伝搬するための1つの光ファイバーとレーザ光を伝搬するための別の光ファイバー)にそれぞれ結合し得る別個の光源として示されていることに留意されたい。そのような実施形態では、各光ファイバーは、別個の光ファイバケーブル、例えばチューブ130b及びチューブ130c内に収められ得る。しかしながら、他の実施形態では、単一の光源及び単一の光ファイバーは、それぞれ照明光及びレーザ光の両方を発生させ、伝搬するために用いられ得、これは、単一の光ファイバケーブル、例えばチューブ130b又はチューブ130cのみを更に必要とする。
【0020】
カニューレ110は、ハンドル120の遠位端124から軸方向に延び、ハンドル120の内部チャンバ内でハンドル120に直接的又は間接的に結合され得る。概して、カニューレ110は、外科的処置中に眼組織の操作を容易にするのに十分な剛性をなおも有し得る、例えば超弾性合金又は形状記憶合金などの可撓性又は弾性材料で形成される。適切な超弾性合金の例としては、ニッケルチタン(すなわちニチノール(Nickel Titanium Naval Ordinance Laboratory))及びばね鋼が挙げられる。しかしながら、他の可撓性金属も考えられる。ある実施形態では、カニューレ110は、近位直線部分114及び遠位曲線部分116を含む。図2を参照すると、曲線部分116がアクセスカニューレ204内に配置されるか又はそうでなければアクセスカニューレ204を通過するとき、曲線部分116は、超弾性材料で作成されていることから、曲がるか又は直線になって、アクセスカニューレ204を通したその通過を可能にする。
【0021】
図3Aは、カニューレ110の拡大側面図を示し、図3Bは、カニューレ110の様式化された側断面図を示す。図示のように、カニューレ110は、概して、直線部分114と曲線部分116とを含む細長い管状部材である。図3Bに示される長手方向軸線Mは、カニューレ110内に軸方向に延び、直線部分114を通る第1の部分340と曲線部分116を通る第2の部分342とを含む。ある実施形態では、カニューレ110は、約15mm(ミリメートル)~約45mmの(例えば、軸線Mに沿った)軸方向長さAを有するが、いくつかの実施形態ではより長い又は短い軸方向長さAを有し得る。更なる実施形態では、カニューレ110は、曲線部分116の曲率のために、軸方向長さAよりも短い線形長さL、例えば約15mm~約30mmの線形長さLを有するが、いくつかの実施形態ではより長い又は短い線形長さLを有し得る。
【0022】
カニューレ110は、概して、約20ゲージ未満の外径D、例えば約23ゲージ、25ゲージ、27ゲージ又は29ゲージ未満の外径Dを有し得る。ある実施形態では、図3A図3Bに示すように、カニューレ110は、軸線Mに沿って一定の又は均一な外径Dを有し得、他の実施形態では、カニューレ110は、軸線Mに沿って不均一な外径Dを有し得る。例えば、ある実施形態では、カニューレ110は、軸線Mに沿ってテーパした外径Dを有し得、外径Dは、軸線Mに沿って遠位に減少する。他の実施形態では、カニューレ110は、軸線Mに沿って区分化され、カニューレ110の異なるセグメントは、異なる外径Dを有し得る。例えば、カニューレ110のより遠位のセグメントは、カニューレ110のより近位のセグメントよりも小さい直径Dを有し得る。
【0023】
カニューレ110の曲線部分116は、直線部分114に対して遠位に配置され、外側曲面304及び内側曲面306によって画定される。ある実施形態では、曲線部分116又は少なくとも内側曲面306は、患者の眼の網膜、例えば図2の網膜210の曲率半径と同様の曲率半径を有する。例えば、図3Bに示すように、カニューレ110の長手方向軸線M又は内側曲面306は、網膜210の曲率半径に一致又は対応する半径344によって定義される曲率を有し得る。図3Bに更に示すように、曲線部分116は、軸線Mの部分340と部分342との間に角度αを画定するように湾曲し得る。ある実施形態では、角度αは、約90°~約180°の範囲内、例えば約110°~約160°、例えば約120°~約150°、例えば約120°~約140°である。
【0024】
曲線部分116は、その外側曲面304に沿って配置された1つ以上の吸引ポート302を更に含み、1つ以上の吸引ポート302は、内部ルーメン330を介して例えば真空源132に流体的に結合され得る。ルーメン330は、カニューレ110を通り、ハンドル120の内部チャンバ及び図1に示されるチューブ130aまでの吸引チャネルとして機能する。したがって、真空源132の作動時、例えば、眼200内の眼物質は、吸引ポート302を通してカニューレ110のルーメン330に且つチューブ130aを通して吸引され得る。吸引ポート302を外側曲面304に沿って配置することにより、外科用器具100を用いた網膜下液排出中に網膜を嵌頓させるリスクが低下する。なぜなら、網膜の裂孔を通して挿入された場合、例えば、網膜は、内側曲面306に近接して、外側曲面304とは反対側に位置するからである。概して、吸引ポート302は、例えば網膜下液を吸引するための任意の適切な形態を有し得、更に、外側曲面304に沿って任意の適切な配置で配置され得る。例えば、吸引ポート302は、図3A図3Cに示されるように、曲面304に沿って1つ以上の長手方向の行で配置され得る。曲線部分116の曲率のために、吸引ポート302は、カニューレ110の直線部分114から角度的に且つ側方にオフセットされ得る。
【0025】
上記のように、外科用器具100は、カニューレ110内に配置された1つ以上の光ファイバーを介して眼200に照明光及びレーザ光の両方を伝搬及び送達するように構成される。図3C図3Dは、組み立てられた外科用器具100内のカニューレ110の一例を示し、カニューレ110は、その中に配置された2つの光ファイバーを有し、各光ファイバーは、照明光又はレーザ光のいずれかを伝搬するように構成される。図3C図3Dの例は、2つの光ファイバーを有するものと説明されているが、ある実施形態では、照明光及びレーザ光の両方を伝搬するように構成された単一の光ファイバーも用いられ得ることに留意されたい。
【0026】
図3Cは、第1の光ファイバー310及び第2の光ファイバー320がその中に収容されたカニューレ110の様式化された長手方向断面図を示す。図示のように、カニューレ110は、ルーメン330を含む。ルーメン330は、眼物質、例えば網膜下液のための吸引チャネルを設けることに加えて、第1及び第2の光ファイバー310、320がカニューレ110を通して遠位端112まで延びるための導管も提供する。カニューレ110の遠位端112は、保護窓350を更に含み、保護窓350は、外科的処置中、レーザ光及び/又は照明光が透過し得る光学的にクリア又は透明な遮断物を提供する。したがって、窓350は、サファイア、溶融石英又は高い転移温度を有する他のガラス材料若しくはセラミックス材料などの光学的にクリア又は透明な材料を含む。特定の態様では、透明材料は、屈折力を有し、特定の他の態様では、透明材料は、屈折力を有しない。屈折力(屈折度数、屈折力(refractive power)、集束力又は収束力とも呼ばれる)は、レンズ、ミラー又は他の光学系が光を収束又は発散させる度合いである。したがって、窓350自体が、凹面若しくは凸面を有する球面レンズ又は非球面レンズなどのレンズであり得る。
【0027】
第1の光ファイバー310は、光導波路として動作するように設計され、照明光源134(例えばライトエンジン)によって生成された照明光312をカニューレ110の遠位端112を通して伝搬させ、眼内空間内の手術部位、例えば、部位又は網膜裂孔又は剥離を照明し得る。ある実施形態では、第1の光ファイバー310は、約30μm(マイクロメートル)未満の直径、例えば約20μm~約30μmの直径を有する光ナノファイバーである。そのような実施形態では、第1の光ファイバー310の全体的な断面フットプリント(すなわち占有面積)の低減により、ルーメン330内の非占有断面積の量が増加し、それにより、より広い流体流路が提供され、ルーメン330を通る吸引された眼物質の流れが向上する。更に、光ナノファイバーは、より大きいより従来の光ファイバーと比較して低減された剛性を有し得、したがって、カニューレ110の比較的より大きい可撓性(例えば、より大きい角度範囲にわたって曲がること)を可能にする。
【0028】
図3Cに示されるように、第1の光ファイバー310は、その末端314に配置された、発散する広範囲の照明ビームを生成するためのマイクロレンズ316を更に含み得る。したがって、マイクロレンズ316は、凹面若しくは凸面を有する球面レンズ(例えばボールレンズ)又は非球面レンズ(例えば弾丸レンズ)であり得る。ある実施形態では、末端314は、ルーメン330内の窓350に当接するが、他の実施形態では、図3Cに示されるように、末端314は、窓350から間隔を空けて配置される。
【0029】
ある実施形態では、照明光源134を使用して、照明光312を第1の光ファイバー310に連続的又はパルス的に提供し得、照明光312は、その後、第1の光ファイバー310によってカニューレ110の遠位端112を通して様々な手法の1つで伝搬され得る。照明光源134は、発光ダイオード(LED)ベースの光源又はスーパールミネッセントダイオード(SLED)ベースの光源などの任意の適切なタイプの光源であり得る。しかしながら、キセノン又はハロゲンベースの光源、UV(紫外線)光源、白色光源等などの他のタイプの光源も更に企図される。上記のように、照明光源134は、外科用コンソール内の照明モジュールの一部であり得るか、又は別個の独立したライトエンジンであり得る。
【0030】
第1の光ファイバー310と同様に、第2の光ファイバー320は、光導波路として動作するように設計され、レーザ光源136(例えばレーザエンジン)によって生成されたレーザ光322をカニューレ110の遠位端112を通して伝搬させ、眼200内の網膜組織(図2において210の符号が付されている)を眼内光凝固術によって修復し得る。ある実施形態では、第2の光ファイバー320の末端324は、ルーメン330内の窓350に当接するが、他の実施形態では、図3Cに示されるように、末端314は、窓350から間隔を空けて配置される。ある実施形態では、第2の光ファイバー320は、約30μm未満の直径、例えば約20μm~約30μmの直径を有する光ナノファイバーであり得る。上記のように、そのような実施形態では、光ファイバー320の全体的な断面の低減により、カニューレ110内のより広い流体流路が促進され、ルーメン330を通る吸引された眼物質の流れが向上する可能性がある。更に、より大きいより従来の光ファイバーと比較して、ナノファイバーの低減された剛性により、カニューレ110の比較的より大きい可撓性を可能にし得る。
【0031】
第2の光ファイバー320を通して伝搬されるレーザ光322の特性は、レーザ光322がレーザ光322の経路内の網膜組織を熱エネルギーによって凝固させ、その後、この網膜組織が治癒して網膜210を封止するというようなものである。焼灼がレーザ光322によって行われ、50℃(摂氏)を上回るが100℃未満の温度まで組織を加熱する。この時点で、組織内のタンバク質が変性し、血小板が凝固を開始する。したがって、レーザ光源136は、(例えば、網膜復位術を実施するために)網膜組織を処置することが可能な光凝固レーザ光を生成するための任意の適切なタイプの眼科用レーザ光源を含み得る。例えば、レーザ光源136は、青緑色レーザ光源(例えば、488nm)、緑色レーザ光源(例えば、514nm)、高出力緑色ダイオードレーザ光源又は赤色レーザ光源(例えば、647nm)など、約440nm(ナノメートル)~約830nmの波長を有するレーザ光を生成するように構成され得る。ある実施形態では、レーザ光源136は、Nd:YAGレーザ光源(例えば、532nm)又は周波数倍増CW Nd:YAGレーザ光源(例えば、1064nm)である。ある実施形態では、レーザ光源136は、網膜の加熱を効果的に提供することができる約1キロヘルツ(kHz)~約500kHzの範囲内のパルスレートを有するレーザ光322を生成するが、他のパルスレート範囲も企図される。ある実施形態では、レーザ光源136は、連続波レーザ光322を生成する。例えば、レーザ光源136は、低出力で連続波レーザ光322を生成し得る。
【0032】
図3Dは、本開示の特定の実施形態による、第1の光ファイバー310及び第2の光ファイバー320がその中に収容されたカニューレ110の正面断面図を示す。図示のように、第1の光ファイバー310と第2の光ファイバー320とは、並んで吸引ポート302の反対側にカニューレ110の内側側壁352の長手方向部分に沿って配置される(例えば、結合される)。光ファイバー310、320は、任意の適切な接着剤又は結合機構によって内側側壁352に結合又は接合され得る。例えば、ある実施形態では、光ファイバー310、320は、エポキシ又はアクリル系接着剤によって内側側壁352に接合され得る。しかしながら、他の適切な接着剤又は結合剤も企図される。両方の光ファイバー310、320を内側側壁352に、吸引ポート302の反対側に結合することで、ルーメン330の中央部及び/又は吸引ポート302の近傍における流路閉塞の量を低減することにより、吸引ポート302及びルーメン330を通して吸引される眼物質の流れを向上させる可能性がある。
【0033】
図4は、本開示の特定の実施形態による、外科用器具400の概略側断面図を示す。より具体的には、図4は、外科用器具400内に配置され、これに結合された光ファイバーの例示的な配置を示し、カニューレ110内で光ナノファイバー、例えば約30μm以下の直径を有する光ファイバーを用いる本明細書中に記載される特定の実施形態を表す。
【0034】
図4に示すように、外科用器具400は、カニューレ110内に延びる光ナノファイバー410を含む。光ナノファイバー410は、図3C図3Dの第1の光ファイバー310及び/又は第2の光ファイバー320を表すものであり、光ファイバー310及び/又は光ファイバー320は光ナノファイバーである。1つの光ナノファイバー410のみが示されているが、本配置は、第1の光ファイバー310及び第2の光ファイバー320の両方に適用され得ることに留意されたい。上記のように、外科用器具400による眼物質の吸引を向上させるために、光ナノファイバー410の利用により、ルーメン330内の非占有断面積を増加させる。しかしながら、従来の外科用コンソール及び/又は照明光源若しくはレーザ光源は、例えば約120μmのより大きい直径を有する標準的な84インチ長の光ファイバーにのみ準拠する場合がある。したがって、従来の外科用コンソール並びに/又は照明光源及びレーザ光源との外科用器具400の互換性を可能にするために、光ナノファイバー410は、直列に接合(すなわち結合)された1つ以上の追加の光ファイバーを介して外科用コンソール及び/又は照明光源若しくはレーザ光源に光学的に結合され得る。
【0035】
図4の配置では、光ナノファイバー410は、ハンドル120のルーメン421内の接合部440でテーパ付き光ファイバー420に近位に接合され、テーパ付き光ファイバー420は、ルーメン421内の接合部442で送達ファイバー430に近位に接合される。テーパ付き光ファイバー420は、概して、光ナノファイバー410と標準的なサイズの光ファイバーであり得る送達ファイバー430との光結合を可能にするために近位に増加する、テーパした(例えば一定でない)直径を有する。したがって、テーパ付き光ファイバー420は、光ナノファイバー410の近位端414と結合するように構成されたより小さい遠位端422と、送達ファイバー430の遠位端432と結合するように構成されたより大きい近位端424とを含む。送達ファイバー430は、チューブ130内に少なくとも部分的に配置される。チューブ130は、外科用コンソール及び/又は照明光源134若しくはレーザ光源136などの照明光源若しくはレーザ光源に外科用器具400を物理的に結合するためにハンドル120のポート128内に延びる光ファイバケーブルであり得る。
【0036】
ある実施形態では、光ナノファイバー410とテーパ付き光ファイバー420及び/又はテーパ付き光ファイバー420と送達ファイバー430とは、融着接続又は機械的接続により接合部440、442で突き合わせ接合される。例えば、ある実施形態では、光ナノファイバー410とテーパ付き光ファイバー420及び/又はテーパ付き光ファイバー420と送達ファイバー430とは、エポキシ又は機械的なクランプ機構を使用して接合部440、442で機械的に接続される。更なる実施形態では、直線嵌合スリーブ又はテーパ状/双円錐形の嵌合スリーブなどのコネクタは、光ナノファイバー410とテーパ付き光ファイバー420とを接合部440において、且つ/又はテーパ付き光ファイバー420と送達ファイバー430とを接合部442において突き合わせ接合するために用いられる。
【0037】
ある実施形態では、光ナノファイバー410は、約0.66の開口数(NA)、約41.3°の臨界角及び82.6°の発射円錐角を有する。他の特定の実施形態では、光ナノファイバー410は、約0.86の開口数(NA)、約59.32°の臨界角及び118.6°の発射円錐角を有する。コア径、NA、屈折率プロファイルなどの変動の結果、さもなければ悪影響を受ける可能性がある光ナノファイバー410とテーパ付き光ファイバー420との間及び/又はテーパ付き光ファイバー420と送達ファイバー430との間の結合効率を最適化するために、テーパ付き光ファイバー420は、光ナノファイバー410の光学特性に基づいて選択することができ、送達ファイバー430は、テーパ付き光ファイバー420の光学特性に基づいて選択することができる。例えば、上記の光ナノファイバー410の特性(例えば、NA、臨界角、発射円錐角など)に基づいて、選択された送達ファイバー430は、NAは低いが大きい直径を有し得る。
【0038】
ある実施形態では、テーパ付き光ファイバー420及び/又は送達ファイバー430は、以下の式:
A*Ω(細いファイバーの近位端)=
A*Ω(太いファイバーの遠位端)
に基づいて選択され得る。
【0039】
ここで、「A」は、対応するファイバー端部の断面積、「Ω」は、対応するファイバー端部の光円錐の立体角である。したがって、例えば光ナノファイバー410とテーパ付き光ファイバー420との間の結合効率を最適化するために、光ナノファイバー410のA*Ωの積を、テーパ付き光ファイバー420の遠位端422のA*Ωの積に一致させることができる。ある実施形態では、光ナノファイバー410の光学特性に基づいてテーパ付き光ファイバー420及びそれに続いて送達ファイバー430を選択することで、カニューレ110及び/又はハンドル120から、そこで増加する望ましくない熱形成をさもなければもたらす可能性のある結合損を取り除くという追加的な利点がもたらされる可能性がある。
【0040】
図5A図5Bは、本開示の特定の実施形態による、別の例示的な外科用器具500の異なる構成を概略的に示し、図5Cは、外科用器具500のカニューレ510の拡大側面図を示す。外科用器具500は、上記の外科用器具100、400に実質的に類似しているが、関節式遠位先端部516を備えたカニューレ510を含む。したがって、照明、吸引及び眼内光凝固の複合機能によって提供される利点に加えて、外科用器具500は、1つ以上の選択された方向にある程度の制御可能な関節運動を更に提供する。
【0041】
図示のように、関節式遠位先端部516に加えて、カニューレ510は、ハンドル120の遠位端124から軸方向に延び、ハンドル120に直接的又は間接的に結合され得る近位部514を含む。近位部514は、概して、約20ゲージ未満の外径D、例えば約23ゲージ、25ゲージ、27ゲージ又は29ゲージ未満の外径D図5Cに示される)を有し得る。ある実施形態では、近位部514は、ステンレス鋼又は他の適切な剛性金属合金などの剛性及び生体適合性材料で形成される。これに対して、遠位先端部516は、外科的処置中に眼組織の操作を容易にするのに十分な剛性をなおも有し得る、例えば超弾性合金又は形状記憶合金などの可撓性材料又は弾性材料で形成される。適切な超弾性合金の例としては、ニチノール及びばね鋼が挙げられる。しかしながら、遠位先端部516には他の可撓性金属も企図される。ある実施形態では、遠位先端部516は、近位部514の外径Dと実質的に同じ又はこれよりも小さい外径Dを有する。例えば、ある実施形態では、遠位先端部516は、約20ゲージ、23ゲージ、25ゲージ、27ゲージ又は29ゲージ未満の外径Dを有する。
【0042】
遠位先端部516は、カニューレ510内に固定された制御機構に張力を加えることにより、選択された方向に制御可能な手法で関節運動し得る。ある実施形態では、制御機構は、遠位先端部516及び近位部514内に延びるプルワイヤ又は類似のデバイスを含み、プルワイヤ又は類似のデバイスは、ハンドル120上のボタン、ピニオン、スライドピン、レバー等などのトグル528を介して、それに張力を加えることによって制御され得る。ある実施形態では、遠位先端部516は、図5Aに示される直線姿勢560と図5Bに示される曲線姿勢562との間で関節運動され得る。ある実施形態では、遠位先端部516が曲線姿勢562にあるとき、遠位先端部516は、照合、患者の眼の網膜、例えば図2の網膜210の曲率半径に一致するか又はそれと同様の曲率半径を有し得る。したがって、曲線姿勢562に配置されるとき、遠位先端部516は、網膜、例えば網膜210の裂孔を通して挿入され、網膜下腔、例えば網膜下腔212にアクセスし得る。ここで、遠位先端部516の曲率は、網膜嵌頓を低減した状態で網膜下液の吸引を向上させるために、網膜の曲率と実質的に適合する。そのような実施形態は、網膜の嵌頓を伴わない網膜下腔へのアクセスが困難な場合があることでそのような硝子体網膜器具を網膜裂隙又は裂孔の境界の位置に限定する直線且つ剛性の硝子体網膜器具に勝る利点を提供する。
【0043】
カニューレ110の曲線部分116と同様に、遠位先端部516は、その壁内に配置された1つ以上の吸引ポート502(図5Cに示される)を含み、1つ以上の吸引ポート502は、カニューレ510の内部ルーメンを介して真空源、例えば真空源132に流体的に結合し得る。カニューレ510の内部ルーメンは、カニューレ510を通る、ハンドル120の内部チャンバ及び例えばチューブ130aまでの吸引チャネルとして機能する。ある実施形態では、遠位先端部516が曲線姿勢562にあるとき、吸引ポート502は、遠位先端部516の外側曲面を形成する表面504に沿って形成される。吸引ポート502を表面504に沿って配置することにより、外科用器具500を用いた網膜下液排出中に網膜を嵌頓させるリスクが低下する。なぜなら、曲線姿勢562において網膜の裂孔を通して挿入された場合、例えば、網膜は、表面506に近接して、表面504とは反対側に位置するからである。外科用器具100と同様に、吸引ポート502は、例えば、網膜下液を吸引するための任意の適切な形態を有し得、更に表面504に沿って任意の適切な配置で配置され得る。例えば、吸引ポート502は、図5Cに示されるように、表面504に沿って1つ以上の長手方向の行で配置され得る。遠位先端部516が曲線姿勢562にあるとき、吸引ポート502は、カニューレ510の近位部514から角度的に且つ側方にオフセットされ得る。
【0044】
吸引の提供に加えて、外科用器具500は、カニューレ510内に配置された1つ以上の光ファイバーを介して、眼、例えば眼200に照明光及びレーザ光の両方を伝搬及び送達するようにも構成される。したがって、外科用器具100及び外科用器具400を参照して説明したように、外科用器具500は、その中に1つ以上の光ファイバーの同じ又は実質的に類似の配置を有し得、したがって、簡潔にするために、対応する詳細は省略する。例えば、外科用器具500は、その中に配置された2つの光ファイバーを含み得、各光ファイバーは、照明光又はレーザ光のいずれかを伝搬するように構成されるか、又は外科用器具500は、単一の光ファイバーを含み得、単一の光ファイバーは、照明光及びレーザ光の両方を伝搬するように構成される。遠位先端部516からの照明光及び/又はレーザ光の伝搬を可能にするために、遠位先端部516は、その遠位端512に保護窓550を含み得、保護窓550は、外科的処置中、レーザ光及び/又は照明光が透過し得る光学的にクリア又は透明な遮断物を提供する。窓350と同様に、窓550は、サファイア、溶融石英又は高い転移温度を有する他のガラス材料若しくはセラミックス材料などの光学的にクリア又は透明な材料を含み得る。ある態様では、透明材料は、屈折力を有し得、特定の他の態様では、透明材料は、屈折力を有しなくてもよい。したがって、窓550自体が凹面若しくは凸面を有する球面レンズ又は非球面レンズなどのレンズであり得る。
【0045】
上記のように、本開示の実施形態は、照明、流体吸引及び眼内光凝固を提供するように構成された湾曲又は関節式プローブを提供する。したがって、プローブは、眼内光凝固中及び最初の排出後、後方への移動により再蓄積する網膜下液の吸引を、外科用器具を複数回交換するか又は眼内空間に追加の器具を挿入する必要なく可能にする。更に、プローブの複合機能により、外科医が、流体を吸引及び/又は網膜眼内光凝固術を実施しながら、外科医の他方の手で強膜圧迫を同時に実施することを可能にする。その結果、上述のプローブの利用により、処置効率の向上及び患者の眼を損傷するリスクの低下を可能にする。
【0046】
例示的な実施形態
実施形態1:眼から網膜下液を除去するための器具であって、ハンドルと、ハンドルに結合された関節式カニューレであって、関節式カニューレは、直線的な構成と曲線的な構成との間で構成可能あり、関節式カニューレは、カニューレを通して延びるルーメンと、カニューレの遠位端に隣接する少なくとも1つのポートであって、ポートは、眼からルーメンに網膜下液を吸引するためのものである、少なくとも1つのポートとを含む、関節式カニューレと、関節式カニューレを通して延びる第1の光ファイバーであって、第1の光ファイバーは、カニューレの遠位端を通して照明光を伝搬するためのものである、第1の光ファイバーと、関節式カニューレを通して延びる第2の光ファイバーであって、第2の光ファイバーは、カニューレの遠位端を通してレーザ光を伝搬するためのものである、第2の光ファイバーとを含む器具。
【0047】
実施形態2:カニューレは、超弾性合金を含む材料から形成される、上記実施形態1の器具。
【0048】
実施形態3:超弾性合金は、ニチノールである、上記実施形態2の器具。
【0049】
実施形態4:ハンドルの近位端は、網膜下液を吸引するための押出管に接続するためのルアーロック型コネクタを含む、上記実施形態1の器具。
【0050】
実施形態5:ルーメンは、押出管を介して真空源と流体連通する、上記実施形態4の器具。
【0051】
実施形態6:第1の光ファイバー及び第2の光ファイバーは、約30ミクロン以下の直径を有するナノファイバーである、上記実施形態1の器具。
【0052】
実施形態7:第1の光ファイバーは、ハンドル内に配置された第3の光ファイバーに接合され、第3の光ファイバーは、第3の光ファイバーの近位端から第3の光ファイバーの遠位端までテーパした直径を有する、上記実施形態6の器具。
【0053】
実施形態8:第3の光ファイバーは、ハンドル内に少なくとも部分的に配置された第4の光ファイバーに接合される、上記実施形態7の器具。
【0054】
実施形態9:第1の光ファイバーは、第1の光ファイバーの遠位端において、照明光の発散するビームを生成するためのマイクロレンズを含む、上記実施形態6の器具。
【0055】
実施形態10:第1の光ファイバーは、発光ダイオード(LED)照明源に光学的に結合される、上記実施形態1の器具。
【0056】
実施形態11:第1の光ファイバーは、スーパールミネッセントダイオード(LED)照明源に光学的に結合される、上記実施形態1の器具。
【0057】
実施形態12:第2の光ファイバーは、狭帯域又は広帯域レーザ源に光学的に結合される、上記実施形態1の器具。
【0058】
実施形態13:レーザ源は、スーパーコンティニュームレーザ源である、上記実施形態12の器具。
【0059】
実施形態14:カニューレの遠位端内に配置された光学的にクリアな又は透明な窓であって、窓は、カニューレの遠位端を通した照明光及びレーザ光の伝搬を容易にする、光学的にクリアな又は透明な窓を更に含む、上記実施形態1の器具。
【0060】
実施形態15:第1の光ファイバー及び第2の光ファイバーは、少なくとも1つのポートに対向するルーメンの内側側壁に結合される、上記実施形態1の器具。
【0061】
上記で開示した主題は、限定的ではなく、例示的なものとみなされ、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲に該当する全てのそのような修正形態、改良形態及び他の実施形態に及ぶことが意図される。したがって、法律で認められる最大限の範囲で、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定され、上述の詳細な説明によって制限又は限定されないものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図3C-3D】
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】