(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】自動車の車載電気システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240725BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240725BHJP
【FI】
H02J7/00 S
B60L3/00 J
H02J7/00 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503995
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022070950
(87)【国際公開番号】W WO2023006751
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021003844.4
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アキン・キャンディール
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503FA06
5G503FA17
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125DD10
5H125FF03
(57)【要約】
本発明は、自動車の車載電気システム(1)に関し、正電位(H+)および負電位(H-)を供給するための少なくとも1つのHVバッテリ(2)と、少なくとも1つのHV消費装置(3、4)とを備え、車載電気システム(1)から電気的に切り離されている車両アース(PA)に対する絶縁抵抗(Riso_P、Riso_N)を監視するための絶縁モニタ(5)が設けられており、正電位(H+)と車両アース(PA)との間、および負電位(H-)と車両アース(PA)との間には、それぞれY静電容量(CY_P、CY_N)が設けられており、車載電気システム(1)内、または車載電気システム(1)のコンポーネント内にある、正電位(H+)と負電位(H-)との間の電圧センタータップ(6)は、オーミックなカップリング抵抗(RK)によって車両アース(PA)に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車載電気システム(1)であって、正電位(H+)および負電位(H-)を供給するための少なくとも1つのHVバッテリ(2)と、少なくとも1つのHV消費装置(3、4)とを備え、前記車載電気システム(1)から電気的に切り離されている車両アース(PA)に対する絶縁抵抗(R
iso_P、R
iso_N)を監視するための絶縁モニタ(5)が設けられており、前記正電位(H+)と前記車両アース(PA)との間、および前記負電位(H-)と前記車両アース(PA)との間には、それぞれY静電容量(C
Y_P、C
Y_N)が設けられている、前記車載電気システム(1)において、
前記車載電気システム(1)内、または前記車載電気システム(1)のコンポーネント内にある、前記正電位(H+)と前記負電位(H-)との間の電圧センタータップ(6)は、分圧器として接続された2つの抵抗の間に位置するか、または容量性分圧器によって形成されており、オーミックなカップリング抵抗(R
K)によって前記車両アース(PA)に接続されており、
前記カップリング抵抗(R
K)は、固定抵抗R
Fと可変抵抗R
Vからなる直列接続として構成されていることを特徴とする車載電気システム(1)。
【請求項2】
前記分圧器の前記抵抗は、直列接続されたHV消費装置(3、4)として、または少なくとも2つの直列接続されたHVバッテリ(2.1、2.2)の内部抵抗として構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車載電気システム(1)。
【請求項3】
前記分圧器の前記抵抗は、前記カップリング抵抗(R
K)および抵抗絶縁モニタとして構成されている前記絶縁モニタ(5)の測定抵抗(R
mess_p、R
mess_n)に比べて著しく小さいことを特徴とする、請求項2に記載の車載電気システム(1)。
【請求項4】
前記測定抵抗(R
mess_p、R
mess_n)および前記カップリング抵抗(R
K)は、100キロオームより大きい範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載の車載電気システム(1)。
【請求項5】
前記カップリング抵抗(R
K)を介して、以下のリスト、
-制御基板用HV電圧供給の直列接続、
-ハーフブリッジおよび/またはHブリッジの直列接続、
-マルチレベルハーフブリッジ、
-インバータの直列接続、
-マルチレベルインバータ、
-2つまたはそれより多いヒータ要素の直列接続を備えるヒータ回路、
-バッテリモジュール直列接続の接続点のタップ、
のうち少なくとも1つが前記車両アース(PA)に接続されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の車載電気システム(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の車載電気システム(1)を備えた車両。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の作動方法であって、前記カップリング抵抗(R
K)が前記固定抵抗(R
F)と前記可変抵抗(R
V)からなる直列接続として構成されており、前記車両が直流充電スタンドに接続されていないときには、前記可変抵抗(R
V)が高く設定され、前記車両が直流充電スタンドに接続されているときには、前記可変抵抗(R
V)が低く設定されることを特徴とする、前記作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の自動車の車載電気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、自動車の車載電気システムが公知であり、車載電気システムの構成は、第1の高電圧電位と、第1の高電圧電位とは異なる第2の高電圧電位を提供するための高電圧エネルギー貯蔵装置を備え、それにより、第1と第2の高電圧電位の間で総電圧がタップ可能である。さらに、この車載電気システムの構成は、第1の高電圧電位と所定の電気アースとの間の第1の絶縁抵抗、ならびに第2の高電圧電位と所定の電気アースとの間の第2の絶縁抵抗、また第1および第2の絶縁抵抗を監視するために設計されている絶縁監視装置を有している。電気駆動を備える車両のHV(高電圧)車載電気システムは、通常、少なくともバッテリコンタクタ付きHVバッテリとHV消費装置(パルスインバータなど)とからなる。一般に、高電圧車載電気システムは、IT(Isole Terre)ネットワークとして実装されており、従って車両アースから電気的に完全に切り離されている。しかしながら、ケーブル、HV消費装置、バッテリなどの寄生抵抗により、正または負の高電圧電位と車両アースとの間の高インピーダンス接続、いわゆる絶縁抵抗、または上述した第1および第2の絶縁抵抗が発生する。この抵抗が高抵抗、すなわちメガオーム範囲にある限り、危険はない。安全上の理由から、絶縁監視装置(絶縁モニターとも呼ばれる)により、この絶縁抵抗は恒久的に監視される。定義された閾値を下回ると、警告が発動され、動作状態に応じてHV車載電気システムがバッテリコンタクタによってバッテリから切り離され、安全な状態を確立することができる。この絶縁抵抗の他に、すべてのHV車載電気システムには、HV接続部と車両アースの間に位置する、特に、いわゆるアース静電容量と呼ばれる静電容量が存在している。これらの静電容量は、寄生効果によって、例えばケーブルシールドなどに起因して生じ、EMC(電磁的両立性)挙動を改善するために、意図的に取り付けられることさえある。E=1/2×C×U
2の式によれば、静電容量Cのこれらのコンデンサには、電圧Uが印加されている場合、エネルギーEが貯蔵されている。次に、人が高電圧コンタクトと車両アースに同時に接触すると、これらのコンデンサは人体を介して放電または充電され、原理的に、すなわちこれらの電流が高すぎる場合、危険につながるおそれがある。従って、潜在的危険を低く抑えるために、さまざまな規格には、コンデンサに貯蔵される最大許容エネルギー、より正確に言うと有効エネルギーの制限値が存在している。このことは、直接的に、最大許容総静電容量がHV総電圧に依存して制限されることにつながる。さらに、安全上の理由から、最悪のケースを想定する必要があり、また最大限に非対称なHV車載電気システムを前提とする必要があり、これは、アースに対して測定されたHV極の電圧が、ほぼ全HV電圧に相当する場合に存在する。このことは、特に、耐用年数にわたる汚れ抵抗または漏れ電流によって発生する可能性がある。上述した最大許容総静電容量の制限によって、非対称な車載電気システムであっても、すなわち正の高電圧電位とアース間の電圧、ならびに負の高電圧電位とアース間の電圧が異なる場合でも、潜在的危険は存在しない。最大許容総静電容量の制限という欠点の他に、このケースでは、すなわち非対称な車載電気システムでは、さらに、例えばDC充電インターフェースを介して車両が充電スタンドに接続されたときに、充電スタンドと車両のアースに対する正電圧電位または負電圧電位が異なるということも起こり得る。このことは、充電スタンドがオンになったときに、好ましくない、不定義の均等化プロセスにつながるおそれがあり、最悪の場合、充電が妨げられる可能性がある。
【特許文献1】DE102019202892A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、自動車、特に電気で駆動される自動車のための改善された車載電気システムを提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明に基づき、請求項1による自動車の車載電気システムによって解決される。
【0005】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0006】
本発明に基づく自動車の車載電気システムは、正電位および負電位を供給するための少なくとも1つのHVバッテリと、少なくとも1つのHV消費装置とを備えており、車載電気システムから電気的に切り離されている車両アースに対する絶縁抵抗を監視するための絶縁モニタが設けられており、正電位と車両アースとの間、および負電位と車両アースとの間には、それぞれY静電容量が設けられている。本発明に基づき、車載電気システム内、または車載電気システムのコンポーネント内にある、正電位と負電位との間の電圧センタータップは、オーミックなカップリング抵抗によって車両アースに接続されている。絶縁モニタは、例えば抵抗絶縁モニタとして構成されていてよい。
【0007】
本発明に基づく解決策により、電位分布の対称分布からの逸脱は非常に小さくなる。従って、Y静電容量に貯蔵されるエネルギー量/電荷は、常に、達成可能な最小値に非常に近くなる。これにより、貯蔵エネルギー/電荷に関する法規制を満たしながら、車載電気システムにおいてより大きなY静電容量を許容することができる。すなわち、高電圧車載電気システムのコンポーネントにおいて、より有利な、および/またはより優れたEMCフィルタリングが可能になる。
【0008】
本発明に基づき、電圧センタータップは、分圧器として接続された2つの抵抗の間に位置するか、または容量性分圧器によって形成されている。
【0009】
本発明に基づき、カップリング抵抗は、固定抵抗と可変抵抗からなる直列接続として構成されている。
【0010】
1つの実施形態では、分圧器の抵抗は、直列接続されたHV消費装置として、または少なくとも2つの直列接続されたHVバッテリの内部抵抗として構成される。
【0011】
1つの実施形態では、分圧器の抵抗は、カップリング抵抗および抵抗絶縁モニタとして構成されている絶縁モニタの測定抵抗に比べて著しく小さい。
【0012】
1つの実施形態では、測定抵抗とカップリング抵抗が100キロオームよりも大きい範囲にある。
【0013】
1つの実施形態では、カップリング抵抗を介して、以下のリスト、
-制御基板用HV電圧供給の直列接続、
-ハーフブリッジおよび/またはHブリッジの直列接続、
-マルチレベルハーフブリッジ、
-インバータの直列接続、
-マルチレベルインバータ、
-2つまたはそれより多いヒータ要素の直列接続を備えるヒータ回路、
-バッテリモジュール直列接続の接続点のタップ、
のうち少なくとも1つが車両アースに接続されている。
【0014】
代替の実施形態では、カップリング抵抗が固定抵抗および/または可変抵抗からも形成されていてよい。
【0015】
車載電気システムは、自動車、特に電気で駆動される自動車の一部であってよい。
【0016】
カップリング抵抗が固定抵抗と可変抵抗からなる直列接続として構成されている場合、車両が直流充電スタンドに接続されていないときには、可変抵抗を高く設定し、一方、車両が直流充電スタンドに接続されているときには、可変抵抗を低く設定することができる。
【0017】
以下では、本発明の実施例を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】自動車の車載電気システムの実施形態の概略図である。
【
図3】自動車の車載電気システムのさらなる実施形態の概略図である。
【
図4】自動車の車載電気システムのさらなる実施形態の概略図である。
【
図5】自動車の車載電気システムのさらなる実施形態の概略図である。
【
図6】自動車の車載電気システムのさらなる実施形態の概略図である。
【
図7】自動車の車載電気システムのさらなる実施形態の概略図である。
【
図8】自動車の車載電気システムの実施形態のシミュレーション設定の概略図である。
【
図9】カップリング抵抗なしのシミュレーションのシミュレーション結果を示した模式図である。
【
図10】カップリング抵抗のあるシミュレーションのシミュレーション結果を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
いずれの図においても、相互に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0020】
図1は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の概略図である。
【0021】
車載電気システム1は、例えばHV(高電圧)車載電気システムであり、通常、少なくとも1つのHVバッテリ2ならびにHV消費装置3、4を備えている。基本的に、車載電気システム1は、電気的に車両アースPAから切り離されている。正電位H+と車両アースPAとの間、ならびに負電位H-と車両アースPAとの間には、寄生効果によってそれぞれ1つの絶縁抵抗Riso_P、Riso_Nがある。安全上の理由から、絶縁抵抗Riso_P、Riso_Nを監視する絶縁モニタ5が設けられている。さらに、正電位H+と車両アースPAとの間、ならびに負電位H-と車両アースPAとの間には、それぞれY静電容量CY_P、CY_Nが設けられている。
【0022】
特に抵抗絶縁モニタとして構成することのできる絶縁モニタ5によって引き起こされる、車載電気システム1内の変動は、車載電気システム1内、または車載電気システム1のコンポーネント内、例えば、
図1で分圧器として接続されている2つの消費装置抵抗R
VPおよびR
VNによって示されているHV消費装置3、4内にある電圧センタータップ6を使用することによって軽減することができる。このとき、この電圧センタータップ6は、固定抵抗R
Fと可変抵抗R
Vを備えることのできるカップリング抵抗R
Kを介して車両アースPAに接続される。図示されている実施形態では、カップリング抵抗R
Kが、固定抵抗R
Fと可変抵抗R
Vからなる直列接続として構成されている。
【0023】
別の実施形態では、電圧センタータップ6が容量性分圧器によって形成されていてもよい。
【0024】
カップリング抵抗RKによって電圧センタータップ6を車両アースPAに結合することにより、車両アースPAに関して、電位H+、H-のシフトに対する絶縁モニタ5の影響が軽減される。このとき、特にカップリング抵抗RKの値が絶縁モニタ5の測定中に変化しない場合、絶縁抵抗Riso_P、Riso_Nの絶縁値計算において、絶縁モニタ5はその機能に支障をきたすことはない。電位H+、H-のシフトが僅かしかないことにより、車載電気システム1のY静電容量CY_P、CY_Nに貯蔵されたエネルギー量を軽減させることができる。このことは、アクティブな、特に周期的HVコンポーネントのフィルタリングを改善するために、またより高い直流システム電圧(例えば800V)を備える車両にとって有利である。さらに、絶縁設計の異なるHVシステムを結合する際、弱く設計されたHVシステムの絶縁の過負荷を回避することも可能であり、例えば、800V車両を充電する場合は、500Vの充電スタンドの絶縁が、電気的に結合された充電システムによって保護される。
【0025】
絶縁モニタ5では、カップリング抵抗RKによって、充電プロセスがより迅速に行われることから、認識時間が大幅に短縮される。
【0026】
固定抵抗RFと可変抵抗RVの直列接続の使用により、HVシステムがより低いY静電容量CY_P、CY_Nを備えている場合、例えば車両が直流充電スタンドに接続されていない場合、より高い絶縁を許容することができる。Y静電容量CY_P、CY_Nがより高い場合、例えば車両が直流充電スタンドに接続されている場合、カップリング抵抗RKは、その可変抵抗RVによって軽減され、電位シフトは絶縁モニタ5によってより小さくなる。
【0027】
車両アースPAに対する電圧センタータップ6のオーミック結合の可能な使用例として、
-制御基板用HV電圧供給の直列接続、
-ハーフブリッジおよびHブリッジの直列接続、
-マルチレベルのハーフブリッジ、
-インバータの直列接続、
-マルチレベルインバータ、
-2つまたはそれより多いヒータ要素の直列接続を備えるヒータ回路、
-バッテリモジュール直列接続の接続点のタップ、
が挙げられる。
【0028】
好ましくは、HV消費装置3、4またはHV源からなる直列接続のインピーダンスは、カップリング抵抗RKおよび絶縁モニタ5の測定抵抗に比べ大幅に小さい。測定抵抗Rmess_p、Rmess_nおよびカップリング抵抗RKは、数100キロオームの範囲またはメガオームの範囲にすることができるので、極めて小さいインピーダンスを示すために、HV消費装置3、4またはHV源からなる直列接続では、大きな消費電力は不要である。この限りにおいて、補助電圧供給もこの使用に適している。HV源の場合、電源インピーダンスおよび/または内部抵抗を考慮しなければならない。これは、通常、メガオーム範囲にあり、従ってこの要件も満たしている。
【0029】
以下の図には、固定抵抗RFと可変抵抗RVの直列接続に代わって、唯一のカップリング抵抗RKだけが示されている。しかし、すべてのケースにおいて、固定抵抗RFおよび可変抵抗RVの直列接続が設けられていてもよい。
【0030】
図2は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態の概略図である。
図2による実施形態は、
図1による実施形態とほぼ一致している。しかし、電圧センタータップ6は、消費装置抵抗の代わりに、2つの静電容量C
x_P、C
x_Nからなる容量性分圧器によって形成される。
【0031】
さらに、車載電気システム1は、力率改善回路(3レベルPFC、例えばウィーン整流器)付き整流器8を介して三相交流電圧接続7に接続されている。
【0032】
図3は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態の概略図である。
図3による実施形態は、
図1による実施形態とほぼ一致している。しかし、電圧センタータップ6は、消費装置抵抗の代わりに、2つの静電容量C
x_P、C
x_Nからなる容量性分圧器によって形成される。
【0033】
さらに、車載電気システム1は、車内の3レベルDC昇圧コンバータ11を介して、車載電気システム1と同様のY静電容量Cy_P1、Cy_N1、絶縁抵抗Riso_P1、Riso_N1および出力容量Cとともに示されている直流充電スタンド9に接続されており、2つの静電容量Cx_P、Cx_Nからなるi容量性分圧器は3レベルDC昇圧コンバータ11の中に配置されている。さらに、車両アースPAは、アースケーブル12を介して充電スタンド9のアースPA‘に接続されている。
【0034】
図4は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態の概略図である。
図4による実施形態は、
図1による実施形態とほぼ一致している。しかし、電圧センタータップ6は、消費装置抵抗の代わりに、2つの静電容量C
x_P、C
x_Nからなる容量性分圧器によって形成される。
【0035】
さらに、車載電気システム1は、例えば車載用充電器のLV-DCDCコンバータまたは絶縁型DCDCコンバータのHブリッジ13、14の直列接続に接続されている。
【0036】
図5は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態の概略図である。
【0037】
車載電気システム1は、直列に接続された2つのHVバッテリ2.1、2.2またはバッテリストリング、ならびに1つのHV消費装置3を備えている。この車載電気システム1は、電気的に車両アースPAから分離されている。正電位H+と車両アースPAとの間、ならびに負電位H-と車両アースPAとの間には、寄生効果によってそれぞれ1つの絶縁抵抗Riso_P、Riso_Nがある。安全上の理由から、絶縁抵抗Riso_P、Riso_Nを監視する絶縁モニタ5が設けられている。
【0038】
さらに、正電位H+と車両アースPAとの間、ならびに負電位H-と車両アースPAとの間には、それぞれY静電容量CY_P、CY_Nが設けられている。HV消費装置3は、正電位H+と負電位H-との間に接続されている。
【0039】
特に抵抗絶縁モニタとして構成することのできる絶縁モニタ5によって引き起こされる車載電気システム1内の変動は、車載電気システム1内、または車載電気システム1のコンポーネント内、例えば、
図5で直列に接続され、従って内部抵抗が分圧器を形成するHVバッテリ2.1、2.2内にある電圧センタータップ6を使用することによって軽減することができる。このとき、この電圧センタータップ6は、固定抵抗R
Fおよび/または可変抵抗R
Vを備えることのできるカップリング抵抗R
Kを介して車両アースPAに接続される。
【0040】
図6は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態の概略図である。
図6による実施形態は、
図1による実施形態とほぼ一致している。しかし、電圧センタータップ6は、消費装置抵抗の代わりに、2つの静電容量C
x_P、C
x_Nからなる容量性分圧器によって形成される。
【0041】
さらに、車載電気システム1は、電気機械16の3レベルインバータ15に接続されている。この3レベルインバータ15は、例えば3レベルNPCインバータ、T型インバータまたはフライングインバータとして構成されていてよい。
【0042】
図7は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態の概略図である。
図7による実施形態は、
図1による実施形態とほぼ一致している。しかし、電圧センタータップ6は、消費装置抵抗の代わりに、2つの静電容量C
x_P、C
x_Nからなる容量性分圧器によって形成される。
【0043】
さらに、車載電気システム1は、2つの電気機械16の2つのB&ブリッジインバータ17からなる直列接続に接続されている。
【0044】
図8は、自動車、例えば電気で駆動される自動車の車載電気システム1の実施形態のシミュレーション設定の概略図である。
図8による実施形態は、
図1による実施形態とほぼ一致している。さらに、正電位H+と車両アースPAとの間、ならびに負電位H-と車両アースPAとの間には、絶縁モニタ5の2つの測定抵抗R
mess_p、R
mess_nがそれぞれのスイッチS1、S2によって切換え可能に配置されている。さらに、Y静電容量C
Y_P、C
Y_Nと直列に接続されたケーブル抵抗R
Lが示されており、これらは実際の構成要素において必然的に存在しているものであることから、シミュレーションでは、例えば0.01オームの非常に低い抵抗値であっても考慮する必要がある。
【0045】
以下のシミュレーションパラメータを使用した。
Riso_p=108オーム
Riso_n=108オーム
Rmess_p=Rmess_n=2*106オーム
周波数f=1/20Hz
電圧U=800V
RVP=U*U/1000
RVN=U*U/1000
【0046】
図9は、カップリング抵抗R
Kなしでシミュレーションした場合の、スイッチS1、S2のスイッチング位置U
S1、U
S2、電位H+、H-および算出された絶縁抵抗R
iso_P、R
iso_Nを時間tにわたって示したものである。
【0047】
HV車載電気システム1が十分に絶縁されていることにより、絶縁モニタ5、特に抵抗絶縁モニタは、電位H+、H-の明らかなシフトを引き起こす。従って、Y静電容量CY_P、CY_Nは、HVバッテリ2の電圧にほぼ相当する電圧を受ける。そのため、エネルギー量は非常に高い。充電時間は、高インピーダンスの抵抗によってかなり遅く、この例では、絶縁モニタ5のサイクル時間内にまだ充電が終了していない。
【0048】
図10は、10
6オームのカップリング抵抗R
Kでシミュレーションした場合の、スイッチS1、S2のスイッチング位置U
S1、U
S2、電位H+、H-および算出された絶縁抵抗R
iso_P、R
iso_Nを時間tにわたって示したものである。
【0049】
このシミュレーションでは、電圧センタータップ6のカップリング抵抗RKがないシステムよりも、電位H+、H-の変動は明らかに少ないことがはっきりと分かる。H+、H-の最大電位は531Vであり、H+、H-の最小電位は269Vである。従って、Y静電容量CY_P、CY_Nのエネルギー量は明らかに低下している。絶縁抵抗Riso_P、Riso_Nと比較して少ないカップリング抵抗RKにより、大幅に速く充電を行うことができる。従って、絶縁モニタ5はより短時間で絶縁不良を検知することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 車載電気システム
2 HVバッテリ
2.1、2.2 HVバッテリ
3 HV消費装置
4 HV消費装置
5 絶縁モニタ
6 電圧センタータップ
7 三相交流電圧接続
8 整流器
9 DC充電スタンド
11 3レベルDC昇圧コンバータ
12 アースケーブル
13 Hブリッジ
14 Hブリッジ
15 3レベルインバータ
16 電気機械
17 B&ブリッジインバータ
C 出力容量
Cx_P、Cx_N 静電容量
CY_P、CY_N Y静電容量
Cy_P1、Cy_N1 Y静電容量
H+、H- 電位
PA 車両アース
PA‘ アース
RF 固定抵抗
Riso_P、Riso_N 絶縁抵抗
RK カップリング抵抗
RL ケーブル抵抗
Rmess_p、Rmess_n 測定抵抗
RV 可変抵抗
RVP,RVN 消費装置抵抗
Riso_P1、Riso_N1 絶縁抵抗
S1、S2 スイッチ
t 時間
US1、US2 スイッチング位置
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車載電気システム(1)であって、正電位(H+)および負電位(H-)を供給するための少なくとも1つのHVバッテリ(2)と、少なくとも1つのHV消費装置(3、4)とを備え、前記車載電気システム(1)から電気的に切り離されている車両アース(PA)に対する絶縁抵抗(R
iso_P、R
iso_N)を監視するための絶縁モニタ(5)が設けられており、前記正電位(H+)と前記車両アース(PA)との間、および前記負電位(H-)と前記車両アース(PA)との間には、それぞれY静電容量(C
Y_P、C
Y_N)が設けられている、前記車載電気システム(1)において、
前記車載電気システム(1)内、または前記車載電気システム(1)のコンポーネント内にある、前記正電位(H+)と前記負電位(H-)との間の電圧センタータップ(6)は、分圧器として接続された2つの抵抗の間に位置するか、または容量性分圧器によって形成されており、オーミックなカップリング抵抗(R
K)によって前記車両アース(PA)に接続されており、
前記カップリング抵抗(R
K)は、固定抵抗R
Fと可変抵抗R
Vからなる直列接続として構成されていることを特徴とする車載電気システム(1)。
【請求項2】
前記分圧器の前記抵抗は、直列接続されたHV消費装置(3、4)として、または少なくとも2つの直列接続されたHVバッテリ(2.1、2.2)の内部抵抗として構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車載電気システム(1)。
【請求項3】
前記分圧器の前記抵抗は、前記カップリング抵抗(R
K)および抵抗絶縁モニタとして構成されている前記絶縁モニタ(5)の測定抵抗(R
mess_p、R
mess_n)に比べ
て小さいことを特徴とする、請求項2に記載の車載電気システム(1)。
【請求項4】
前記測定抵抗(R
mess_p、R
mess_n)および前記カップリング抵抗(R
K)は、100キロオームより大きい範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載の車載電気システム(1)。
【請求項5】
前記カップリング抵抗(R
K)を介して、以下のリスト、
-制御基板用HV電圧供給の直列接続、
-ハーフブリッジおよび/またはHブリッジの直列接続、
-マルチレベルハーフブリッジ、
-インバータの直列接続、
-マルチレベルインバータ、
-2つまたはそれより多いヒータ要素の直列接続を備えるヒータ回路、
-バッテリモジュール直列接続の接続点のタップ、
のうち少なくとも1つが前記車両アース(PA)に接続されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の車載電気システム(1)。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の車載電気システム(1)を備えた車両。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の作動方法であって、前記カップリング抵抗(R
K)が前記固定抵抗(R
F)と前記可変抵抗(R
V)からなる直列接続として構成されており、前記車両が直流充電スタンドに接続されていないときには、前記可変抵抗(R
V)が高く設定され、前記車両が直流充電スタンドに接続されているときには、前記可変抵抗(R
V)が低く設定されることを特徴とする、前記作動方法。
【国際調査報告】