(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】制御された水分量を有するシートから、飲料用の堆肥化可能なポッドを形成するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504204
(86)(22)【出願日】2022-07-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022071485
(87)【国際公開番号】W WO2023007021
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【氏名又は名称】石塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ガラフ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ミッソーム, カリム
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーライター, ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィプレヒティガー, ハンス
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB10
2G059CC09
2G059DD12
2G059EE02
2G059EE11
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
本発明は、淹出製品用の堆肥化可能なポッド900を製造するためのシステム100に関する。ポッドは、生分解性セルロース系材料製のシート600から作製される。システムは、システムを通して移送方向TDに沿ってシートを移送するためのハンドリングユニット300を備える成形ライン200を備える。成形ラインは、シートの少なくとも片面を湿潤剤401で湿潤させるための加湿ユニット400と、湿潤されたシートの一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティ911を画定するポッド要素910を形成するための形成ユニット800と、を更に備える。成形ラインは、湿潤されたシートの湿度レベルを視覚的に検知するための湿度センサシステム500を更に備える。湿度センサシステムによって検知された湿度レベルに関連する値が、制御ユニット700によって受信され、制御ユニットは、同値に基づいて加湿ユニットを制御するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性セルロース系材料製のシート(600)から、淹出製品用の堆肥化可能なポッド(900)を製造するためのシステム(100)であって、前記システム(100)は、
前記シート(600)を、前記システム(100)を通して移送方向(TD)に沿って移送するためのハンドリングユニット(300)と、
前記シート(600)の少なくとも片面を湿潤剤(401)で湿潤させるための加湿ユニット(400)と、
前記湿潤されたシート(600)の一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティ(911)を画定するポッド要素(910)を形成するための形成ユニット(800)と、
を備える、少なくとも1つの成形ライン(200)を備えており、
前記少なくとも1つの成形ライン(200)が、
前記湿潤されたシート(600)の少なくとも一部分の湿度レベルを視覚的に検知するための湿度センサシステム(500)と、
前記湿度センサシステム(500)によって検知された前記湿度レベルに関連する値を受信し、前記値に基づいて前記加湿ユニット(400)を制御するように構成された制御ユニット(700)と、
を更に備えている、システム(100)。
【請求項2】
前記湿度センサシステム(500)は、前記湿度レベルを表す、前記湿潤されたシート(600)の少なくとも前記一部分の視覚画像を捕捉するために、光学機器(510)、好ましくはカメラ、より好ましくは高解像度カメラを備えており、好ましくは、前記視覚画像が複数の画素を備えており、より好ましくは、前記受信された値の各々が、前記画素のうちの1つ又はいくつかに関連している、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記湿度センサシステム(500)は、可視スペクトル内の1つ以上の規定された波長の光を放射するための光源(520)、好ましくはLED光源(521、522、523、524、525)を備えており、前記光源(520)は、前記放射された光(531)が、前記湿潤されたシート(600)の少なくとも前記一部分に向けられ、好ましくは、存在する場合には前記光学機器(510)に向かって、反射され、前記反射された光(532)が前記視覚画像として捕捉されるように、配置されている、請求項1又は2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記湿度センサシステム(500)が、好ましくは、存在する場合には少なくとも前記光学機器(510)が、前記シート(600)に関して、又は視覚的に検知される前記湿潤されたシート(600)の前記一部分に関して、前記加湿ユニット(400)とは反対側に配置され、かつ/又は
前記湿度センサシステム(500)が、好ましくは、存在する場合には少なくとも前記光学機器(510)が、前記移送方向(TD)に関して、前記加湿ユニット(400)の下流に、かつ、好ましくは前記形成ユニット(800)の上流に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記制御ユニット(700)が、前記受信された値を規定された基準値と比較し、前記受信された値と前記規定された基準値との前記比較に基づいて前記加湿ユニット(400)を制御するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記加湿ユニット(400)が、前記シート(600)が前記加湿ユニット(400)を通って水平に移送されるときに、前記シート(600)の片面のみ、好ましくは前記シート(600)の下面(601)のみを湿潤させるように配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記加湿ユニット(400)が、
前記シート(600)の前記少なくとも片面を前記湿潤剤(401)に浸漬するための浸漬ユニット、
前記シート(600)の前記少なくとも片面に前記湿潤剤(401)を噴霧するための噴霧ユニット、
前記シート(600)の前記少なくとも片面に前記湿潤剤(401)を適用するためのスチームユニット、好ましくは低温スチームユニット、
リザーバ(411)から前記シート(600)の前記少なくとも片面へと前記湿潤剤(401)を移送するためのロール移送ユニット(410)、
のうちの少なくとも1つを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記形成ユニット(800)に到達する前に前記シート(600)を乾燥させるための、好ましくは前記シート(600)の少なくとも一部を、より好ましくは前記少なくとも片面の少なくとも一部を乾燥させるための予備乾燥ユニットであって、前記制御ユニット(700)が、前記値に基づいて前記予備乾燥ユニットを制御するように更に構成されている、予備乾燥ユニット、
前記ポッド要素(910)を乾燥させるための最終乾燥ユニット、
ある量の淹出材料(990)を前記ポッド要素(910)の前記ポッドキャビティ(911)に入れるための充填ユニットであって、好ましくは、前記充填ユニットが、前記移送方向(TD)に関して、存在する場合には前記最終乾燥ユニットの下流に配置される、充填ユニット、
好ましくは前記ある量の淹出材料(990)の周囲で、前記ポッドキャビティ(911)を閉鎖する閉鎖要素(950)を前記ポッド要素(910)に接合するための接合ユニット、
のうちの少なくとも1つを更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記閉鎖要素(950)は、
蓋(951)である、あるいは
もう1つのポッド要素(910)であり、前記ポッド要素同士が、好ましくは、それらのキャビティが閉鎖されたポッドキャビティ(911)を一緒に形成するように接合される、
請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記システム(100)が、
各々がポッド要素を形成するための、2つの前記成形ライン(200)と、
前記ポッドキャビティ(911)を形成するために前記2つのポッド要素を接合するための前記接合ユニットと、
を備える、請求項9に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記シート(600)が、ガスバリア性を有し、
好ましくは、前記シート(600)が、前記ガスバリア性を有するセルロース系材料製の単層構造を有する、又は
好ましくは、前記シート(600)が、
セルロース系材料製の紙層(611)であって、前記紙層が、好ましくは前記シート(600)の前記少なくとも片面を形成する、かつ/又は前記シート(600)の前記下面(601)を形成する、紙層と、
前記ガスバリア性を有するバリア層(612)とを備える多層構造を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項12】
淹出製品用の堆肥化可能なポッド(900)を製造するための方法であって、
好ましくはガスバリア性を有する、生分解性セルロース系材料製のシート(600)を、前記システム(100)を通して移送方向(TD)に沿って移送することと、
前記シート(600)の少なくとも片面を湿潤剤(401)で湿潤させることと、
前記湿潤されたシート(600)の一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティ(911)を画定するポッド要素(910)を形成することと、
好ましくは、前記ポッド要素(910)を乾燥させることと、
を含む、方法において、
前記方法が、
前記湿潤されたシート(600)の少なくとも一部分の湿度レベルを視覚的に検知することと、
前記検知された湿度レベルに関連する値を受信することと、
前記値に基づいて前記シート(600)の前記少なくとも片面の前記湿潤を制御することと、
を更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記視覚的に検知する工程が、
前記湿度レベルを表す、前記湿潤されたシート(600)の少なくとも前記一部分の視覚画像を捕捉することと、
好ましくは、前記湿潤されたシート(600)の少なくとも前記一部分上に、可視スペクトル内の1つ以上の規定された波長の光(531)を放射することであって、反射された前記光(532)が前記視覚画像として捕捉される、ことと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記湿潤を制御する工程が、
前記受信された値を規定された基準値と比較することと、
前記受信された値と前記規定された基準値との前記比較に基づいて前記湿潤を制御することと、
を含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ある量の淹出材料(990)を前記ポッド要素(910)の前記キャビティ(911)に入れることと、
前記ポッドキャビティ(911)を閉鎖する閉鎖要素(950)を前記ポッド要素(910)に接合することであって、接合する工程が、好ましくは、
蓋(951)を前記閉鎖要素(950)として接合すること、又は
もう1つのポッド要素(910)を前記閉鎖要素として接合することであって、前記ポッド要素(910)同士が、好ましくは、それらのキャビティが閉鎖されたポッドキャビティ(911)を一緒に形成するように接合される、こと、
を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淹出製品用の堆肥化可能なポッドを製造するためのシステム及び方法に関し、ポッドは、生分解性セルロース系材料製のシートから製造される。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において、カプセル又はポッドなど、飲料調製マシン用の使い捨て飲料容器が知られている。これらの飲料容器は、一般に、コーヒー、茶又はホットチョコレートのような飲料の一杯ごとの注出に使用され、新鮮な味、風味の可変性、及び飲料調製の利便性に起因して人気を博している。
【0003】
典型的には、これらの既知の飲料容器は、特に飲料容器の使用後の再利用、リサイクル又は堆肥化に課題がある材料で作製されている。したがって、これらの確立された材料を、紙のようなセルロース系材料などの生分解性の又は堆肥化可能な材料で置き換える努力がなされており、使用済みの飲料容器を処分するプロセスの課題は、(例えば、堆肥化によって)小さくなっている。
【0004】
飲料容器に新しい材料を使用するには、新しい製造プロセスも求められている。例えば、工業生産において、セルロース系材料から作製された飲料容器は、生産ラインの異なるステーションを通って移動する紙材料のエンドレス(連続)シートから生産され得る。1つのステーションでは、シートの一部分がハーフシェルに形成され、その後、別のハーフシェル又は蓋で密閉される前に、コーヒーなどの飲料成分が入れられる。
【0005】
ここで、ハーフシェルを形成する前にシートを湿潤させることが、結果として生じる飲料容器の構造的完全性及び保存可能期間にとって有益であり得ることが分かった。例えば、成形プロセス中に、ハーフシェルが裂けること、ハーフシェルにしわ又は切れ目が生成されることは、成形工程の前に湿潤を実行することによって回避することができる。このような湿潤プロセスを伴う製造プロセスの例は、国際公開第2020/031096(A1)号に見出すことができる。
【0006】
また、成形プロセスの結果の品質は、シート材料によって取り込まれる液体の局所分布及び量に依存することが分かった。例えば、シート材料により取り込まれる液体が多いと、形成プロセス中又は生産ラインを通して移送される間に、シートが裂ける又はしわになるリスクが増大し得る。同様に、シート材料により取り込まれる液体が少ないと、形成プロセス中にハーフシェルに亀裂が生じるリスクが増大し得る。その結果、飲料容器の完全性を保証することができず、それによって、飲料容器内の製品の保存可能期間が制限される。
【0007】
従来技術において、これらの問題は、シート材料内に含まれる含水量の程度を評価することができるセンサシステムを生産ラインに沿って提供することによって対処されていた。例えば、既知の解決策は、マイクロ波X線撮影法又は赤外線の吸光度に基づいているセンサ技術に依拠しており、後者は、水が主に赤外線を吸収する一方で、可視スペクトル内の光の大部分の他の成分に対しては透明であるという状況を利用している。シート材料内に含まれる含水量の程度を判定するための他の既知のセンサによる解決策は破壊的であることがあり、あるいは、センサプローブがシート材料に物理的に接触することが求められることがある(例えば、重量測定センサ又は抵抗センサ)。
【0008】
既知のセンサシステムの欠点は、測定の結果が非常に局所化されており、したがって、シート材料内の含水量の判定が、シート材料の小さな局所化部分に対してしか確立できないことである。したがって、シート全体の含水量の局所的な変動を検出することができない。更に、既知のセンサシステムの測定の精度は、これらのシステムが周囲の放射ノイズの影響をより多く受けるので、製造プロセスの要件には低すぎることが多い。更に、飲料容器を製造するプロセスにおいて、シート材料は、赤外線技術又はマイクロ波技術の全ての利点を利用することが困難になる速度で生産ラインを通って移動する。比較すると、赤外線センサシステムは、典型的には、レンガ又は床材の含水量を判定するために、建築現場などの静的適用例で使用されており、測定の精度は、主に、対象物が動かないことに依拠する。更に、生産ラインを通るシートの移動により、測定の結果をシート材料の個別の部分に十分な精度で割り当てることが困難になる。したがって、シートの測定部分は、そのような位置合わせ不良に起因して、成形プロセスにほとんど又は全く関連しないことがある。既知のセンサシステムの別の欠点は、測定を行うことと、シート材料内に含まれる含水量の程度を判定することとの間の遅延である。したがって、ラグタイムを低減し、測定プロセスを製造プロセスと同期させるために、シートの輸送速度を低減することが必要になることがある。更に、センサプローブとシート材料との間の直接接触が求められる方法又はシートから切り出されたサンプルを破壊分析する必要がある方法は、一般に、工業規模での製造には好適でないと考えられる。
【0009】
その結果、シート材料内の含水量の測定を取り巻く上述の問題に起因して、湿潤プロセスの正確で最適化された制御を達成することは困難である。したがって、形成工程において水分量を正確に監視し、設定することができないので、形成工程中に飲料容器の構造的完全性が損なわれるリスクが増大する。したがって、そのように製造された飲料容器の保存可能期間及び品質を保証することができない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、堆肥化可能な材料から作製されたポッドを製造するためのシステム及び方法を提供することであり、生産されたポッドの構造的完全性及び保存可能期間を改善し、保証することができる。ここで、本発明の特定の目的は、シート材料に含まれる任意の液体の水分量を測定する速度、精度及び信頼性を改善すること、並びに製造システム及び製造プロセスにおける湿潤工程の制御を改善することである。
【0011】
説明を読むことで明らかとなるこれらの目的及び他の目的は、独立請求項の主題によって解決される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に言及する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様は、淹出製品用の堆肥化可能なポッドを製造するためのシステムに関する。本システムは、生分解性セルロース系材料製のシートから、ポッドを製造するためのものである(それに好適である、又はそのように構成されている)。
【0013】
ここで、「ポッド(pod)」という用語は、例えば、飲料生産マシンにおいて飲料を調製するための任意の(密閉)容器(例えば、カプセル)として理解され得る。飲料調製は、例えばコーヒー又は茶などの淹出製品を生産するためにポッド内に封入された物質を溶解させること、淹出すること、又は滲出させることを含み得る。
【0014】
「シート(sheet)」という用語は、例えば、大きくて薄い平坦な材料片として理解され得る。
【0015】
例えば、シートは、乾燥状態で、すなわち2%~8%の範囲内の、好ましくは4%又は5%の最大(相対)水分量又は最大(相対)湿度レベルを有する状態で供給され得る。
【0016】
更に、「堆肥化可能(compostable)」という用語は、材料を堆肥化するときに数週間又は数ヶ月以内に有機物へと実質的に分解され得ることを意味すると理解され得る。これは、工業的な堆肥化用地及び/又は家庭用コンポスタにおいて達成され得る。そのような場所には、風、日光、水はけ及び他の要因に関連する特定の条件が存在し得る。堆肥化プロセスの終わりに、材料が完全に分解されると、地面に栄養が供給され得る。EU 13432又はUS ASTM D6400などの国際規格は、材料の堆肥化可能性を判定するための技術的要件及び手順を特定するための法的枠組みを提供している。比較すると、「生分解性(biodegradable)」材料は、生物(微生物、例えば、細菌、真菌又は藻類など)(の作用)によって環境的に無害な生成物に分解され得る任意の材料として理解され得る。このプロセスは、酸素の存在(好気性/嫌気性)にかかわらず環境内で起こり得る。
【0017】
本システムは、シートを、システムを通して移送方向に沿って移送するためのハンドリングユニットを備える少なくとも1つの成形ラインを備えている。成形ラインは、シートの少なくとも片面を湿潤剤で湿潤させるための加湿ユニットを更に備える。
【0018】
ここで、「加湿ユニット(humidifying unit)」という用語は、例えば、湿潤剤(液体、溶液)をシート内又はシート上にもたらす(適用する又は導入する)ことが可能な(又は、そのように構成された)成形ラインの構成要素として理解され得る。このために、湿潤剤は、シート上に直接適用されてもよく、又は、シート上に水分を移送することができる担体媒体(例えば、周囲空気)に湿気を与える又はそれを湿らせる加湿ユニットによって適用されてもよい。
【0019】
成形ラインは、湿潤されたシートの一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティを画定するポッド要素を形成するための形成ユニットを備えている。
【0020】
ここで、「成形(shaping)」という用語は、例えば、(追加のツールのサポートの有無にかかわらず、かつ/又は、好ましくは熱の適用の有無にかかわらず)その(三次元)形状を変化するように形成可能である、可鍛性である、及び/又は柔軟である材料の特徴を使用するものとして理解され得る。更に、「湿潤された(moistened)」という用語は、例えば、シート材料が湿潤剤にさらされ、湿潤剤が材料中に存在することとして理解され得る。好ましくは、湿潤されたシート材料は、ある量の湿潤剤を担持してもよい。
【0021】
少なくとも1つの成形ラインは、湿潤されたシートの少なくとも一部分の湿度レベルを視覚的に検知するための湿度センサシステムを更に備えている。好ましくは、一部分は、成形対象の部分と少なくとも部分的に対応してもよい。
【0022】
ここで、「視覚的に検知(visually sensing)」という表現は、人間の目に類似した検知として理解され得る。例えば、光学的検知、すなわち、可視スペクトル内の光によって担持される情報に基づく検知として理解され得る。湿度センサシステムは、少なくとも二次元の(光学的、視覚的)画像を捕捉するのに好適であってもよく(そのように構成されていてもよく)、(規定された波長についての)光強度分布を検出することができる。
【0023】
更に、表現「湿度レベル(level of humidity)」(水分量)は、例えば、シート材料内に含まれる主に液体物質(又は水分、及び/又は湿度)の数値定量化として理解され得る。例えば、湿度レベルは、紙の(液体及び/又はガス状の)含水量、及び/又は(紙の)シート材料の相対湿度の指標であり得ることが想到される。ここで、含水量(又は含水率)は、例えば、固体材料に含まれる(液体及び/又はガス状の)水の量(例えば、グラム単位の重量として測定される)として理解され得る。このことから、本明細書において、「水分(moisture)」及び「湿度(humidity)」という用語は、特に明記しない限り、互換的に使用され得ることが明らかになる。
【0024】
例えば、湿度レベル(水分量)は絶対湿度として表されてもよい。例えば、材料の液体(湿潤剤)含有量は、容積当たりの重量(g/m3)で測定され得る代替的又は追加的に、湿度レベル(水分量)は相対湿度として表されてもよい。例えば、液体含有量は、測定された湿潤剤含有量と材料中に吸収可能な液体含有量の最大量との比率(例えば、パーセンテージとして表される比率)として測定されてもよい。
【0025】
少なくとも1つの成形ラインは、湿度センサシステムによって検知された湿度レベルに関連する値を受信し、これらの値に基づいて加湿ユニットを制御するように構成された制御ユニットを更に備えている。
【0026】
換言すれば、本発明の構成を用いると、セルロース系シート材料から、淹出製品用の堆肥化可能なポッドを生産することができる製造システムを提供することが可能になる。このために、本システムは、ポッド生産(製造)プロセスに含まれる様々な機能又は動作を(順次)実行することができる成形ラインを備えており、これらの機能又は動作は、信頼性があり高い構造的完全性を有する堆肥化可能なポッドを達成することができるように連携される。例えば、本システムを通してシートを(直線的に)移送する(輸送する、移動させる、引っ張る、搬送する)のに好適なハンドリングユニットが提供される。更に、(液体及び/又はガス状の)湿潤剤をシートの少なくとも片面に適用するための加湿ユニットが提供される。ここで、例えば、湿潤剤は、好ましくは、成形工程のために、水、蒸留水又は任意の水溶液など、ポッドのシート材料固有の剛性を低減するのに好適であり得る任意の物質又は液体であってもよい。これにより、形成ユニットにおいて、成形プロセスは、シートの湿潤部分に関して実行され得るので、ポッド要素(又はポッド本体又はポッドの少なくとも一部)の形成プロセスがサポートされ、これは、成形プロセスから生じるポッドの完全性の不和を回避するために有益である。成形ラインは、湿度センサシステムを更に備えている。これにより、シート内の湿潤剤の量、位置及び程度を判定することが可能である。ここで、視覚検知は、短い測定時間、規定された領域の測定、並びにシート材料内の深部に光が入る能力を促進する。したがって、従来技術により既知のセンサ方法と比較して、測定領域のサイズ、測定速度及び測定の精度が改善され得る。これにより、制御ユニットは、加湿ユニットにおける湿潤プロセスをより迅速に、正確に、かつ高度に局所化された測定にあまり依存せずに適合させることができる。制御ユニットは、湿度レベルに関連する値を評価するように構成されており、これらの値は、センサによって判定された未加工の値(例えば、ある特定の波長の光の強度値)、計算された値、変換された値、又は重み付けされた値であってもよく、あるいは、湿度センサシステムによって実行される測定値の分析の最終結果であってもよい。これらの値に含まれる情報の精度、速度及び品質を改善することができるので、湿潤プロセスの制御を、従来技術の解決策において達成されたものよりも正確に適時に完了し、瞬間的な状況に適合させることができる。特に、製造プロセスをリアルタイムで監視し、制御することが可能になる(すなわち、シートの一部分が2つの連続するステーション間を移動するのに必要な時間の半分以内に反応するなど、指定された時間的制約内でのシステムの応答が保証され得る)。
【0027】
これにより、堆肥化可能な材料から作製されたポッドを製造することが可能であり、生産されたポッドの構造的完全性及び保存可能期間が改善され、保証される。したがって、本発明のシステムにより、従来技術の欠点が克服される。
【0028】
好ましい実施形態によれば、湿度センサシステムは、湿潤されたシートの少なくとも一部分の視覚画像を捕捉するために、光学機器を備え得る。視覚画像は、湿度レベルを表すことができる。例えば、光学機器は、(高解像度)カメラであってもよい。好ましくは、光学カメラの解像度は、500万画素~2000万画素の範囲内、好ましくは1200万画素であってもよい。視覚画像は、複数の画素を備え得る。好ましくは、受信された(湿度レベルに関連する)値の各々は、1つ又はいくつかの画素に関連し得る。好ましくは、視覚画像は、少なくとも100画素/インチ(PPI)、好ましくは少なくとも300PPI、より好ましくは約900PPI(又は、別様に表現すると、30マイクロメートル/画素)の解像度を有してもよい。
【0029】
これにより、シート内の水分分布の量及び品質の正確な表現を判定することができるように、少なくとも二次元で、かつ高解像度でシートの一部分を走査することが可能である。したがって、取得された測定データの改善された品質及び情報的価値に起因して、湿潤プロセスを形成プロセスの要件に対してより厳密に調整することが可能である。
【0030】
好ましい実施形態によれば、湿度センサシステムは、少なくとも1つの光源を備え得る。例えば、光源は、可視スペクトル内の1つ以上の規定された波長の光を放射するためのLED光源であってもよい。
【0031】
ここで、「光の可視スペクトル(visible spectrum of light)」という表現は、380ナノメートル(例えば紫色)から700ナノメートル(例えば赤色)の間、好ましくは380ナノメートル~900ナノメートルの波長を有する光(例えば近赤外線)として理解され得る。
【0032】
好ましくは、光源は、放射された光が、反射されるように、湿潤されたシートの少なくとも一部分に向けられるように配置されてもよい。例えば、光源は、放射された光が、光学機器に向かって反射され、反射された光が視覚画像として捕捉されるように配置されてもよい。
【0033】
これにより、規定された光を放射することができ、かつ、放射された光と材料の測定対象の部分に含まれる液体との間の応答(例えば、吸光度、反射率、位相シフト)を記録することができる、アクティブ光源を有する湿度センサシステムを提供することが可能である。このような構成により、測定の精度及び正当性に対する放射ノイズの影響を低減する、又は更には排除することが可能である。更に、様々な異なる波長の光を放射することによって、異なる波長に対する材料の反射強度を検出することが可能になる。これにより、湿潤剤の様々な組成物についての水分量を検出することが可能になる。例えば、湿潤剤は、ある特定の波長におけるシート材料の反射強度を、水のみによって湿潤されているシート材料とは異なるようにし得る界面活性剤又は界面活性成分を含んでもよい。加えて、(同じ材料内の)様々な水分量の基準シグネチャと比較することができる観察部分の反射プロファイル又は反射シグネチャを作成することが可能である。したがって、本システムを個別の適用例に合わせて調整し、異なる湿潤剤の使用を可能にすることが可能になる。ここで、湿潤剤は、放射された光のある特定の波長に特定の様式で応答することによって、反射測定又は吸光測定の精度を更に改善する物質を含み得ることも想到される。
【0034】
更なる好ましい実施形態によれば、湿度センサシステムは、シートの上方に、又は視覚的に検知される湿潤されたシートの一部分の上方に配置され得る。例えば、少なくとも光学機器は、存在する場合には、このように配置されてもよい。ここで、「上方(above)」は、例えば、シート表面及び/又は移送方向に関して(例えば、重力に関して)垂直であると理解され得る。
【0035】
これにより、有利な様式でシートの関連部分からデータを取得することが可能である。
【0036】
好ましい実施形態によれば、湿度センサシステムは、移送方向に関して、加湿ユニットの下流に、かつ、好ましくは形成ユニットの上流に配置され得る。例えば、少なくとも光学機器は、このように配置されてもよい。
【0037】
これにより、湿潤工程の結果を(即座に)判定し、そのように取得されたデータに基づいて湿潤プロセスを適合させることが可能である。
【0038】
更なる好ましい実施形態によれば、制御ユニットは、受信された(湿度レベルに関連する)値を規定された基準値と比較するように構成され得る。代替的又は追加的に、制御ユニットは、受信された(湿度レベルに関連する)値と規定された基準値との比較に基づいて加湿ユニットを制御するように構成されてもよい。
【0039】
これにより、シート材料における所望の水分量と実際の(測定された)水分量との間の任意の差を判定することが可能である。例えば、主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)などの統計方法又は機械学習法を適用してもよい。
【0040】
好ましい実施形態によれば、本システム又は制御ユニットは、規定された基準値を記憶するためのデータ記憶ユニットを備え得る。代替的又は追加的に、本システム又は制御ユニットは、規定された基準値及び/又は受信された(湿度レベルに関連する)値を取り出すための通信ポートを備えてもよい。
【0041】
これにより、取得されたデータ及び適合された制御設定を記憶し、分析し、評価するためのデータネットワーク(例えば、インターネット)又はデータベースへの接続をシステムに提供することが可能である。これにより、制御ユニットにおいて使用される制御アルゴリズム及びシステム内で完了する全ての動作の継続的な改善が促進される。
【0042】
更に好ましい実施形態によれば、加湿ユニットは、シートの片面のみを湿潤させるように配置され得る。例えば、加湿ユニットは、シートが加湿ユニットを通って水平に(例えば、重力に関して)移送されるときに、シートの下面のみを湿潤させるように配置されてもよい。好ましくは、加湿ユニットは、シートの、湿度センサシステムとは反対側に配置されていてもよい。好ましくは、加湿ユニットは、シートから過剰な液体を除去するためのスクレーパ要素を備えてもよく、スクレーパ要素は、好ましくは、移送方向に関して、加湿ユニットの下流端部分に配置されてもよい。
【0043】
これにより、水滴が湿度センサシステムの検知部に落ちて、測定の精度及び正当性を変更するリスクを低減することができる。更に、センサの位置に関してシートとは反対側に湿潤剤を適用することによって、湿潤剤がシート材料に十分に染み込むことを保証することができ、それによって、測定の信頼性が改善され、かつ、データの外れ値につながる加湿ユニットにおける湿潤プロセスの結果として生じる液体濃度の局所的な変動を測定するリスクが低減される。
【0044】
好ましい実施形態によれば、加湿ユニットは、シートの少なくとも片面を湿潤剤に浸漬するための浸漬ユニットを備え得る。代替的に又は追加的に、加湿ユニットは、シートの少なくとも片面に湿潤剤を噴霧するための噴霧ユニットを備えてもよい。代替的又は追加的に、加湿ユニットは、シートの少なくとも片面に湿潤剤を適用するためのスチームユニット、好ましくは低温スチームユニットを備えてもよい。代替的に又は追加的に、加湿ユニットは、リザーバからシートの少なくとも片面へと湿潤剤を移送するためのロール移送ユニットを備えてもよい。
【0045】
これにより、様々な方法で湿潤剤をシート材料上に適用することができる。
【0046】
更なる好ましい実施形態によれば、本システムは、形成ユニットに到達する前にシートを乾燥させるための予備乾燥ユニットを更に備え得る。好ましくは、予備乾燥ユニットは、(少なくとも片面の)シートの少なくとも一部を乾燥させるのに好適であってもよく、かつ/又はそのように構成されていてもよい。好ましくは、制御ユニットは、これらの値に基づいて予備乾燥ユニットを制御するように更に構成されていてもよい。代替的又は追加的に、本システムは、ポッド要素を乾燥させるための最終乾燥ユニットを更に備えてもよい。好ましくは、ポッド要素は、成形されたシート(シートの成形された部分)であってもよい。制御ユニットは、これらの値に基づいて最終乾燥ユニットを制御するように更に構成されていてもよい。
【0047】
これにより、形成ユニットに到達する前に、シートの湿潤部分に含まれる水分量を低減することが可能である。ここで、湿度センサシステムが完了した測定の結果に基づいて、予備乾燥ユニットの制御を適合させることができる。これにより、シートの湿潤部分が、最適な水分量を有する形成ユニット内で成形され得ることを保証することができる。
【0048】
好ましい実施形態によれば、本システムは、ある量の淹出材料をポッド要素のポッドキャビティに入れるための充填ユニットを更に備え得る。例えば、充填ユニットは、移送方向に関して、最終乾燥ユニットの下流に配置されてもよい。
【0049】
ここで、淹出材料は、例えば、特定の又は明確な化学構造を有する、任意の種類の(固体、半固体又はゼリー状、少なくとも部分的に可溶性及び/又は滲出性の)物質であってもよい。そのような物質の例は、焙煎挽きコーヒー、インスタントコーヒー、茶葉、チョコレート製品、脱水食用物質、及び/又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
これにより、ポッドが乾燥状態で充填されるように、充填ユニットに到達する前にポッド要素を乾燥させることが可能であり、これは、結果として生じるポッドの保存可能期間にとって有益である。
【0051】
更なる好ましい実施形態によれば、本システムは、(好ましくは、ある量の淹出材料の周囲で)ポッドキャビティを閉鎖する閉鎖要素をポッド要素に接合するための接合ユニットを更に備え得る。例えば、閉鎖要素は、蓋又はもう1つのポッド要素であってもよい。好ましくは、ポッド要素同士は、それらのキャビティが閉鎖されたポッドキャビティを一緒に形成するように接合されてもよい。このために、本システムは、各々がポッド要素を形成するための、2つの成形ラインと、ポッドキャビティを形成するために2つのポッド要素を接合するための接合ユニットとを備えてもよい。
【0052】
これにより、ポッド要素と個別の閉鎖要素との間に物理的な接続(好ましくは封止接続)を提供することが可能である。接続は、ヒートシール又は超音波シールによって達成され得るしたがって、ポッドキャビティ内に淹出材料の気密エンクロージャ又はカプセル封入を提供することが可能である。これにより、ポッドの完全性及び保存可能期間を保証することができる。
【0053】
更に好ましい実施形態によれば、シートは、エンドレスシートであり得る。好ましくは、シートは、リールから提供されてもよい。このために、例えば、本システムは、シートを展開するための搬送ユニットを更に備えてもよい。
【0054】
これにより、工業生産に特に好適な様式でシートを提供することが可能である。特に、異なるステーションにおける順次処理が、連続シートとしてシートを提供することによって改善される。例えば、シートは、連続して長手方向に延出してもよい。特に、シートは、製造プロセスにおいて外見的に「エンドレス」シートを形成するために、端部部分で他のそのようなシートと接続されるのに好適であり得る。
【0055】
好ましい実施形態によれば、シートは、ガスバリア性を有し得る。
【0056】
ここで、ガスバリアは、例えば、シート(材料)を通過するガス状物質を低減又は排除する能力として理解され得る。例えば、シートは、5cm3/m2/日未満の酸素透過率(oxygen transmission rate、OTR)を有する酸素バリアを有してもよい。しかしながら、OTR値は、シートに使用される材料の詳細に従い得る。一般に、OTRは、規定された期間にわたって物質を通過する酸素ガス量の尺度であり得る。例えば、OTRは、DIN53380-3、ASTM D1434又はISO2872などの工業規格において定められている既知の方法を使用して測定され得る。
【0057】
この態様では、シート上への湿潤剤の適用が多すぎると、例えば、シート材料中の繊維の非可逆的膨潤に起因して、酸素バリアの有効性が低下する(したがって、OTRが増大する)ことにつながり得ることに留意されたい。したがって、湿度センサシステムは、好ましくは、酸素バリアが不可逆的に損傷又は変更され得る前に水分量が検知され得るように配置され得る。
【0058】
シートは、ガスバリア性を有するセルロース系材料製の単層構造を有してもよい。代替的には、シートが、セルロース系材料製の紙層及びガスバリア性を有するバリア層を備える多層構造を有し得ることも想到される。好ましくは、紙層は、シートの少なくとも片面及び/又は上述の下面を形成してもよい。
【0059】
シートにガスバリアを提供することによって、ポッドの保存可能期間を改善することができる。
【0060】
本発明の更なる態様は、堆肥化可能なポッドを製造するための方法であって、ポッドが、淹出製品用である(そのように構成されている、及び/又はそれに好適である)。本方法は、生分解性セルロース系材料製のシートを、上述のシステムを通して移送方向に沿って移送する工程を含む。例えば、生分解性セルロース系材料は、好ましくは、ガスバリア性を有する。シートの少なくとも片面を湿潤剤で湿潤させる。湿潤されたシートの一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティを画定するポッド要素を形成する。好ましくは、ポッド要素を乾燥してもよい。本方法は、湿潤されたシートの少なくとも一部分の湿度レベルを視覚的に検知する工程を更に含む。検知された湿度レベルに関連する値が受信される。これらの値に基づいて、シートの少なくとも片面の湿潤(湿潤工程、湿潤プロセス、湿潤結果、又は湿潤の効果)を制御する。
【0061】
本システムについて上述した全ての定義及び効果は、本発明の方法に等しく適用可能である。本システムは、本発明の方法を実行するのに好適である。
【0062】
本発明の方法の構成では、シート材料から、高くて信頼性がある構造的完全性及び保存可能期間を有する堆肥化可能なポッドを提供することが可能である。これは、本方法により、シートの液体含有量を測定し、適合させることが可能になり、それによって、ポッド形状へのシートの成形を改善することができるので可能である。
【0063】
好ましい実施形態によれば、視覚的に検知する工程は、湿度レベルを表す(湿度レベルを示す、又は湿度レベルを指示する)、湿潤されたシートの少なくとも一部分の視覚画像を捕捉する工程を含み得る。代替的又は追加的に、視覚的に検知する工程は、可視スペクトル内の1つ以上の規定された波長の光を、湿潤されたシートの少なくとも一部分上に放射する工程と、反射された光を視覚画像として捕捉する工程と、を含んでもよい。
【0064】
これにより、水分量に関する取得データの精度及び信頼性を向上させることができる一方で、測定時間を短縮することができる。特に、製造プロセスをリアルタイムで監視することが可能になる。
【0065】
更なる好ましい実施形態によれば、加湿(加湿工程、加湿プロセス、加湿結果、又は加湿の効果)を制御する工程は、受信された(湿度レベルに関連する)値を規定された基準値と比較する工程と、受信された(湿度レベルに関連する)値と規定された基準値との比較に基づいて湿潤を制御する(例えば、適合させる)工程とを含み得る。
【0066】
これにより、水分量の制御を改善することができる。特に、測定に起因して、製造プロセスをリアルタイムで制御することが可能になる。
【0067】
好ましい実施形態によれば、本方法は、ある量の淹出材料をポッド要素のキャビティに入れる工程を更に含み得る。代替的又は追加的に、本方法は、キャビティを閉鎖する閉鎖要素をポッド要素に接合する工程を更に含んでもよい。ここで、接合する工程は、好ましくは、蓋を閉鎖要素として接合する工程を含んでもよい。代替的に、接合する工程は、好ましくは、もう1つのポッド要素を閉鎖要素として接合する工程を含んでもよく、好ましくは、ポッド要素同士は、それらのキャビティが閉鎖されたポッドキャビティを一緒に形成するように接合されてもよい。
【0068】
これにより、ポッドに飲料成分を提供し、ポッドを外側から密封することが可能である。したがって、ポッドに比較的長い保存可能期間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明の更なる特徴、利点、及び目的は、添付の図面と併せて本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。数字が例えば明確にするために図から省略されている場合であっても、対応する特徴は依然として図に存在し得る。
【
図1】本発明の一実施形態による、ポッド製造システムの成形ラインの概略側面図である。
【
図2】
図1の成形ライン及びシステムの概略上面図である。
【
図3】本発明の更なる実施形態によるシステム及び方法を用いて製造されたポッドの概略側断面図を示す。
【
図4】本発明の更なる実施形態によるシステム及び方法を用いて製造されたポッドの概略側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1及び
図2は、本発明による淹出製品用の堆肥化可能なポッド900を製造するためのシステム100及び方法の一実施形態の異なる図及び態様を示している。
図3及び
図4は、本発明によるシステム100及び方法を用いて製造された堆肥化可能なポッド900の異なる実施形態の態様を示している。
【0071】
システム100は、シート600から堆肥化可能なポッド900を製造するように構成されている。
図1及び
図2は、システム100及び構成要素のうちのいくつかを例示的に示している。
図3及び
図4は、システム100を用いて生産可能なポッド900の例を示している。
【0072】
シート600は、生分解性のセルロース系材料で作製される。例えば、セルロース系材料は、セルロース繊維、紙、板紙、モールド成形用のセルロースパルプ、セルロースナノファイバーのシート若しくはフィルム、エアレイドセルロース、及び/又は脱リグニン木材を含み得る。例えば、シート600は、(他の)生分解性材料を含む紙で作製されてもよい。シート600の材料は、水分及び/又は気体に対するバリアを提供し得る。このために、シート600は、例えば、セルロース系材料の単層構造を有してもよく、この層は、ガスバリア性を提供するために十分に厚い、あるいはガスバリア性を提供するように構成される。
図1、
図2及び
図4は、単一層を有するシート600の使用を例示的に示している。代替的には、シート600は、セルロース系材料製の紙層611及びガスバリア性を有するバリア層612を備える多層構造を有してもよい。
図3に、シート600のそのような材料構成の使用が例示的に示されている。
【0073】
ポッド900を工業的に製造することを目的として、シート600は、例えば、エンドレスシートとして提供されてもよい。この種類のシート600は、リールから提供されてもよく、システム100は、シート600をリールから展開し、シート600をシステム100に導入するための搬送ユニット(図示せず)を備え得る。ただし、シート600を個々のブランクシートとして提供することも想到される。好ましくは、シート600は、50マイクロメートル~200マイクロメートル、より好ましくは120マイクロメートル~130マイクロメートルの厚さを有してもよい。
【0074】
システム100は、少なくとも1つの成形ライン200を備えている。
図1及び
図2は、成形ライン200の一実施形態を例示的に示している。例えば、成形ライン200は、ポッド900を製造するために求められる機能を各々が提供する一連のステーションを備えてもよい。例えば、シート600の一部分は、ステーションの各々を順番に通過し得る。システム100は、成形ライン200のうちの1つ以上を備え得る。
【0075】
成形ライン200は、シート600を、システム100を通して移送方向TDに沿って移送するためのハンドリングユニット300を備えている。
図1及び
図2では、ハンドリングユニット300は、シート600に関して互いに対向して配置され得る2つのローラー461、462として例示的に示されている。ただし、ハンドリングユニット300が、コンベヤバンド、プッシャ、又は移動クランプによって提供され得ることも想到される。更に、システム100を通るシート600の連続輸送を保証するために、移送方向TDに沿った様々な位置に、ハンドリングユニット300の追加のハンドリング要素(例えば、ローラー)を提供してもよい。好ましくは、移送方向TDに沿って、シート600を直線的に移動させてもよい。シート600は、システム100内で(
図1及び
図2に例示的に示されるように)水平に搬送されても、あるいは垂直に(図示せず)搬送されてもよい。
【0076】
成形ライン200は、シート600の少なくとも片面を湿潤剤401で湿潤させるための加湿ユニット400を更に備える。
図1及び
図2は、加湿ユニット400の例示的な実施形態を示している。
【0077】
図1及び
図2に示すように、加湿ユニット400は、リザーバ411からシート600の少なくとも片面へと湿潤剤401を移送するためのロール移送ユニット410を備え得る。例えば、ローラー461によって、湿潤剤401をシート600の下面601に適用してもよく、好ましくは、ローラー461を、湿潤剤401に少なくとも部分的に浸漬してもよい。次いで、ローラー461は、シート600と接触してもよく、それによって、シート600の湿潤部分640と呼ばれ得るシート600の規定された部分内で、湿潤剤401をシート材料にもたらし得る(
図2)。例えば、湿潤部分640の含水量は、シート600の残りの部分(例えば、ローラー461の前方の部分)よりも高くなり得る。好ましくは、加湿ユニット400は、シート600の片面のみを湿潤させるように配置されてもよい。これは、
図1及び
図2に例示的に示されており、シート600の下面601のみが加湿ユニット400によって加湿され得る。これにより、過剰な液体は、下面601を出て、リザーバ411内に戻され得る。ただし、シート600の上面602及び下面601が湿潤され得ることも想到される。
【0078】
更に、加湿ユニット400の他の実施形態も想到され、以下に簡単に説明する。例えば、加湿ユニット400は、シート600の少なくとも片面を湿潤剤401に浸漬するための浸漬ユニットを備え得る。代替的に又は追加的に、加湿ユニット400は、シート600の少なくとも片面に湿潤剤401を噴霧するための噴霧ユニットを備えてもよい。代替的に又は追加的に、加湿ユニット400は、シート600の少なくとも片面に湿潤剤401を適用するための(低温)スチームユニットを備えてもよい。
【0079】
好ましくは、シート600は、例えば、湿潤プロセス中に湿潤剤401の十分な取り込みを促進するために、加湿ユニット400とは反対側にバリア層612を配置し得るように提供されてもよい。換言すれば、紙層611は、好ましくは、シート600の少なくとも片面及び/又は下面601であり得る。
【0080】
湿潤剤401は、例えば水(蒸留水)又は水溶液であってもよい。
【0081】
成形ライン200は、湿潤されたシート600の一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティ911を画定するポッド要素910を形成するための形成ユニット800を更に備えている。ここで、好ましくは、シート600の湿潤部分640は、成形用の部分であってもよく、したがって、成形プロセスを受けてもよい。
図1は、形成ユニット800の一実施形態を例示的に示している。この例では、形成ユニット800は、成形ダイ810及び移動可能な対応するスタンプ820など、ポッドキャビティ911を有するポッド要素910を形成するための形成ツールを備え得る。
【0082】
ポッド900の本体は、例えば、ポッド要素910によって形成され得る。
図3及び
図4に例示的に示すように、ポッド要素910は、ポッドキャビティ911を有するポッド内部を画定することができる。
【0083】
成形ライン200は更に、湿潤されたシート600の少なくとも一部分の湿度レベルを視覚的に検知するための湿度センサシステム500を備えている。
図1及び
図2は、湿度センサシステム500の一実施形態を例示的に示している。好ましくは、湿度センサシステム500は、形成ユニット800内に成形される部分に少なくとも部分的に対応し得るシート600の一部分における湿度レベルを検知してもよい。これは、
図1及び
図2に例示的に示されており、それによって、湿潤部分640は、湿度センサシステム500によって(時間的及び空間的に連続して)検査される。
【0084】
例えば、湿度センサシステム500は、湿度レベルを表す、湿潤されたシート600の少なくとも一部分の視覚画像を捕捉するために、(高解像度)カメラなどの光学機器510を備えてもよい。これは、
図1及び
図2に例示的に示されている。そのように捕捉された視覚画像は、複数の画素を備え得る。受信された(湿度レベルに関連する)値の各々は、1つ以上の画素に関連し得る。
【0085】
湿度センサシステム500は、可視スペクトル内の光を放射するための光源520を備え得る。このために、単一の光源520が提供され得る。
図1は、湿度センサシステム500が、可視スペクトル内の1つ以上の規定された波長の光を放射するために各々が提供されている複数のLED光源521、522、523、524、525も備え得ることを例示的に示している。例えば、380ナノメートル、450ナノメートル、520ナノメートル、590ナノメートル、660ナノメートル、及び/又は700ナノメートル程度の波長を使用してもよい。代替的に又は追加的に、光源520(1つ又は複数の光源を有する)は、可視スペクトル内の連続スペクトル(すなわち、連続掃引)を有する光を放射してもよい。光源520は、放射された光531が、湿潤されたシート600の少なくとも一部分に向けられ、光学機器510に向かって反射され、反射された光532が視覚画像として捕捉されるように、配置され得る。これは、
図1に例示的に示されている。
【0086】
好ましくは、光学機器510は、規定された測定窓560内のデータを取得することが可能であってもよい。これは、
図1及び
図2に例示的に示されている。好ましくは、測定窓560は、任意の形状又は形態を有してもよい。例えば、測定窓560は、2cm~20cmの直径を有してもよい。
【0087】
湿度センサシステム500又は少なくとも光学機器510は、シート600の上方に、又は視覚的に検知される湿潤されたシート600の一部分の上方に配置されてもよい。これは、
図1及び
図2に例示的に示されている。代替的に又は追加的に、湿度センサシステム500又は少なくとも光学機器510は、移送方向TDに関して、加湿ユニット400の下流に、かつ、好ましくは形成ユニット800の上流に配置されてもよい。
図1及び
図2が、これを例示的に示している。好ましくは、加湿ユニット400及び湿度センサシステム500は、シート600に関して反対側に配置されてもよい。これは、
図1及び
図2に例示的に示されている。
【0088】
成形ライン200は、湿度センサシステム500によって検知された湿度レベルに関連する値を受信し、これらの値に基づいて加湿ユニット400を制御するように構成された制御ユニット700を更に備えている。ここで、制御ユニット700は、受信された値を規定された基準値と比較し、受信された値と規定された基準値との比較に基づいて加湿ユニット400を制御するように構成され得る。
【0089】
例えば、シート600は、シート材料の(相対的な)水分量又は湿度レベルが9%~40%、好ましくは12%~18%、より好ましくは12%~16%の範囲内である良好な水分量であると考えられ得る。しかし、本発明はこれらの特定の値に限定されるものではなく、それぞれのシート材料に依存して変動し得る。
【0090】
好ましくは、制御ユニット700は、成形ライン200のいくつかの異なるパラメータ及び構成要素を制御する及び/又は適合させるように構成されてもよい。例えば、制御ユニット700は、シート600の移動速度、湿潤剤401の組成物、ローラー461、462の回転速度、及び/又は形成ユニット800内に提供された形成ツール810、820の温度を適合させるように構成されてもよい。このために、システム100又は制御ユニット700は、規定された基準値を記憶するためのデータ記憶ユニット701を備え得る。代替的又は追加的に、システム100又は制御ユニット700は、規定された基準値及び/又は受信された値を外部ソースから取り出すための通信ポート702を備えてもよい。制御ユニット700は、好ましくは、成形ライン200の全ての要素、特に、ハンドリングユニット300、加湿ユニット400、形成ユニット800、湿度センサシステム500、及び/又は以下に説明する他の構成要素と接続され得る。それぞれの構成要素間の情報リンク(接続)は、制御ユニット700とハンドリングユニット300との間のデータ接続及び制御ユニット700と湿度センサシステム500との間のデータ接続を例示的に示す、矢印730及び570によって例示的に示されている。
【0091】
例えば、システム100は、形成ユニット800に到達する前にシート600を乾燥させるための予備乾燥ユニットを更に備えてもよい。好ましくは、予備乾燥ユニットによって、シート600の少なくとも湿潤された部分を乾燥してもよい。代替的又は追加的に、システム100は、ポッド要素910を乾燥させるための最終乾燥ユニットを更に備えてもよい。代替的又は追加的に、システム100は、ある量の淹出材料990をポッド要素910のポッドキャビティ911に入れるための充填ユニットを更に備え得る。ここで、充填ユニットは、例えば、移送方向TDに関して、最終乾燥ユニットの下流に配置されてもよい。ただし、充填ユニットが形成ユニット800の一部であり得ることも想到される。代替的又は追加的に、システム100は、ある量の淹出材料990の周囲で、ポッドキャビティ911を閉鎖する閉鎖要素950をポッド要素910に接合するための接合ユニットを備えてもよい。
【0092】
図3及び
図4は、閉鎖要素950の実施形態の異なる例を示している。例えば、閉鎖要素950は、
図3に例示的に示すような蓋951であってもよい。代替的に、閉鎖要素950は、もう1つのポッド要素910であってもよく、ポッド要素同士は、好ましくは、それらのキャビティ911が閉鎖されたポッドキャビティ911を一緒に形成するように接合されてもよい。このために、システム100が、各々がポッド要素910を形成するための2つの成形ライン200と、2つのポッド要素910を接合するための接合ユニットとを備え得ることが想到される。
【0093】
本発明の更なる態様は、上述のポッド900などの堆肥化可能なポッドを製造するための方法に関する。
図1及び
図2は、この方法の工程を示す。
【0094】
例えば、この方法では、上述したシート600のような、生分解性セルロース系材料から作製され、好ましくは、ガスバリア性を有し得るシートを、システム100を通して移送方向TDに沿って移送する。
【0095】
シート600の少なくとも片面を、上述の湿潤剤401などの湿潤剤で湿潤させる。
【0096】
湿潤部分640など、湿潤されたシート600の少なくとも一部分の湿度レベルを視覚的に検知し、それによって、検知された湿度レベルに関連する値を受信することができる。ここで、視覚的に検知する工程は、湿度レベルを表す、湿潤されたシート600の少なくとも一部分の視覚画像を捕捉する工程を含み得る。代替的に、視覚的に検知する工程は、湿潤されたシート600の少なくとも一部分に、可視スペクトル内の1つ以上の規定された波長の光531を放射する工程と、反射された光532を視覚画像として捕捉する工程と、を含んでもよい。
【0097】
湿潤されたシート600の一部を三次元形状に成形して、ポッドキャビティ911を有する上述のポッド要素910など、ポッドキャビティを画定するポッド要素を形成する。成形後にポッド要素910を乾燥させることが想到される。しかしながら、製造プロセス全体を通して様々な他の段階で、ポッド要素910を乾燥させてもよい。
【0098】
シート600の少なくとも片面を湿潤させるプロセス(工程)は、視覚的に検知する工程において取得された値に基づいて制御される。ここで、湿潤を制御する工程は、受信された値を規定された基準値と比較することと、受信された値と規定された基準値との比較に基づいて湿潤を制御することとを含んでもよい。
【0099】
この方法は、上述の淹出材料990など、ある量の淹出材料をポッド要素910のキャビティ911に入れる工程を更に含み得る。この方法は、上述した閉鎖要素950など、キャビティ911を閉鎖する閉鎖要素をポッド要素910に接合する工程を更に含み得る。これは、
図3及び
図4に例示的に示されている。例えば、接合する工程は、蓋951を閉鎖要素950としてポッド要素910に接合することを含んでもよい。代替的に、もう1つのポッド要素910は、閉鎖要素950として接合されてもよい。これにより、ポッド要素910同士は、それらのキャビティ911が閉鎖されている(1つの)ポッドキャビティ911を一緒に形成するように接合されてもよい。
【0100】
本発明は、添付の特許請求の範囲によって包含される限り、上述した実施形態によって限定されない。上述した実施形態の全ての特徴は、任意の可能な方法で組み合わせることができ、交換可能に提供することができる。
【国際調査報告】