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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】水銀蒸気の放出抑制方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20240725BHJP
   B01D 53/80 20060101ALI20240725BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20240725BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240725BHJP
   B09B 3/10 20220101ALI20240725BHJP
【FI】
B01D53/64 100
B01D53/80 ZAB
B01D53/81
B01J20/20 D
B09B3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504488
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022036865
(87)【国際公開番号】W WO2023009309
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,645
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピングリー,キム・セヘ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グー,ヂォンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ヂャオロン
(72)【発明者】
【氏名】ベルツ,ザッシャ
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
4G066
【Fターム(参考)】
4D002AA29
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA04
4D002BA12
4D002BA20
4D002CA01
4D002DA41
4D002DA42
4D002DA53
4D002GA01
4D002GB08
4D004AA31
4D004AA36
4D004AA41
4D004AB05
4D004CA47
4D004CC11
4G066AA05C
4G066AA08B
4G066AA12C
4G066AA22C
4G066AA43C
4G066AA61C
4G066AA63C
4G066AA64C
4G066CA47
4G066DA02
4G066EA13
4G066FA37
(57)【要約】
本発明は、蒸発性水銀を含む物質からの水銀蒸気の放出を抑制するプロセスを提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発性水銀を含む物質からの水銀蒸気の放出を抑制するプロセスであって、
ハロゲン含有吸着剤を前記物質に適用することであって、前記ハロゲンが、塩素、臭素、及びヨウ素から選択される1つ以上のハロゲンを含む、前記適用することと、
前記物質に摂動を与えて水銀を揮発させることと、
前記物質からの水銀蒸気の少なくとも一部の放出を抑制することとを含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記ハロゲン含有吸着剤が、1種以上の炭素質材料から選択される基材材料を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記炭素質材料が活性炭である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ハロゲン含有吸着剤が、1種以上の無機材料から選択される基材材料を含み、また、任意選択で、前記無機材料が、無機酸化物、天然ゼオライト、CaCO、及び粘土鉱物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記無機材料が、チャバザイト、シリカ、カオリナイト、及びベントナイトから選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ハロゲン含有吸着剤がハロゲン含有活性炭吸着剤である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ハロゲンが臭素及び/またはヨウ素である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ハロゲンが臭素である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ハロゲン含有吸着剤が、前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約0.1~約30重量%のハロゲン含有量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質に適用することは、
(a)前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質の表面に適用すること、及び/または
(b)前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質の表面の少なくとも一部と結合させること、及び/または
(c)前記ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、及び/または
(d)前記ハロゲン含有吸着剤を含有する反応性バリアを形成すること、及び/または
(e)前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質の表面下に導入することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ハロゲン含有吸着剤が、スラリーまたは懸濁液の形態で添加及び/または適用される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ハロゲン含有吸着剤が、前記スラリーまたは懸濁液の約5重量%~約45重量%である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ハロゲン含有吸着剤の懸濁液もしくはスラリーを噴霧することによって、前記ハロゲン含有吸着剤を含む乾燥固体を前記物質の前記表面に広げることによって、または前記
ハロゲン含有吸着剤を前記物質の表面下に導入することによって前記ハロゲン含有吸着剤が前記物質に適用される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
蒸発性水銀を含む前記物質が土壌、廃棄物、鉱業副産物、フライアッシュ、または建築材料である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
蒸発性水銀を含む前記物質が土壌である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記摂動が、前記物質の少なくとも一部を加熱または封入することであり、任意選択で、前記加熱が太陽熱加熱である、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤を用いた水銀蒸気の放出抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの汚染物質は、ヒトや環境に有毒であることが知られている。これらの既知の環境汚染物質の1つである水銀は、米国保健福祉省の有害物質・疾病登録局(ATSDR)によって優先有害性物質として分類されている。
【0003】
水銀種、特に元素水銀は、鉱業廃棄物、金属加工廃棄物、土壌、建築材料、内部汚染表面、及びバイオマス廃棄物などの様々な汚染物質から揮発する。汚染物質または表面が乱されると、汚染物質または表面から水銀が蒸発し、空気中の水銀レベルが増加し、多くの場合、米国労働安全衛生局(OSHA)が定めた安全な作業環境の基準を超える。周囲条件では、物質からの元素水銀の蒸発速度は、温度と空気量均等化パラメータによって制限されるため、周囲条件での水銀の蒸発量は、通常、利用可能な蒸発性水銀のごく一部にすぎない。
【0004】
建物及び/または敷地の土壌に水銀汚染が存在する場合の除染、解体、及び廃炉活動では、これらの活動により、屋内の水銀蒸気濃度が、OSHAが定めた空気1立方メートルあたり0.1ミリグラム(mg/m)の許容暴露限界(PEL)を超える可能性があり、この限界は、現在、8時間の時間加重平均として施行されている。更に、人口密集地域でのこうした活動は、大気汚染許可(air permit)によって制限されることが多く、この大気汚染許可は、活動場所のフェンスラインの外側で測定される空気中の水銀濃度限界を満たすことを必要とする。これらの問題により、活動中の水銀蒸発を抑制する手段なしでそのような活動を許可したり実施したりすると、コストが高くなる可能性がある。
【0005】
一部の工業用地の再開発中、土壌中の元素水銀の濃度が規制措置レベルを下回ると、その敷地に建設される新しい構造物に危険レベルの水銀蒸気が侵入する可能性がある。したがって、土壌中に蒸発性水銀が存在する場合、そのような敷地にある建物に水銀蒸気が侵入するのを防ぐために高価なシステムが必要となる可能性がある。
【0006】
場合によっては、水銀のTCLPまたはSPLP浸出試験に合格できないため、材料全体が有害と分類されることがある。米国EPAもこれを規制しており、水銀などの分析物の移動度を測定するために設計された試験である毒性特性浸出手順(TCLP)と、移動する水銀の量を測定するための合成沈殿浸出手順(SPLP)とを使用している。建物の周囲及び下の土壌も、Hg汚染のために有害と分類されることがある。有害として分類された廃棄物及び土壌の処分には費用がかかり、その場所での望ましい活動が妨げられる可能性がある。
【0007】
一部の場所で物質からの水銀蒸気の放出を抑制することは、蒸発性水銀を含む物質、物質の状態、及び存在する水銀の形態によっては技術的に困難な場合がある。
【0008】
一部の水銀処理のTCLPまたはSPLP浸出試験によって決定されるもう1つの要因は、水銀が処理媒体から移動する(または浸出する)傾向である。
【0009】
蒸発性水銀を含む実際の物質からの水銀蒸気放出を抑制する技術を選択する前に、その技術が適切か否かを判断するために、複雑なベンチスケール及びパイロットスケールの研
究及びスクリーニング試験を実施する必要がある。更に、処理すべき物質ごとにばらつきがあるため、水銀蒸気の抑制に費用と時間がかかる可能性がある。したがって、蒸発性水銀を含む物質からの水銀蒸気を抑制するための新規でより商業的に魅力的なプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、水銀蒸気の放出を抑制するプロセスを提供する。本発明のプロセスによってもたらされる利点は、蒸発性水銀を含む物質から水銀蒸気の放出を抑制することである。
【0011】
本発明のプロセスの別の利点は、酸性条件が水銀蒸気の放出抑制に悪影響を及ぼさないことである。本発明のプロセスの更に別の利点は、水銀が吸着剤から浸出できないことである。
【0012】
ハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有活性炭、より具体的には臭素含有活性炭は、蒸発性水銀を含む物質またはその表面に添加、散布、または噴霧して保護バリアを形成すると、揮発性水銀及び/または事前に揮発した水銀を吸着する。本発明で使用されるハロゲン含有吸着剤は、OSHA要件を満たすために水銀蒸気の放出を抑制する保護バリアを提供するだけでなく、処理された材料からの水銀の浸出性を低減することもでき、これにより、材料をより安価な手段で処分できるようになる。
【0013】
本発明の実施において使用されるハロゲン含有吸着剤によって捕捉された水銀は、TCLP法またはSPLP法のいずれかによって測定した場合、一般に非浸出性である。
【0014】
本発明のプロセスは、水銀蒸気の放出を抑制するための唯一の方法として使用することができ、または本発明のプロセスは、既存の技術によって達成される水銀蒸気の放出抑制を補完及び/または強化するために使用することができる。
【0015】
本発明の一実施形態は、蒸発性水銀を含む物質からの水銀蒸気の放出を抑制するプロセスである。このプロセスは、ハロゲン含有吸着剤を蒸発性水銀を含む物質に適用することと、物質に摂動を与えて水銀を揮発させることとを含む。ハロゲン含有吸着剤を物質に適用すると、物質からの水銀蒸気の少なくとも一部の放出が抑制される。
【0016】
本発明のこれら及び他の実施形態並びに特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較例1において、時間の経過とともに普通粉末活性炭と砂との混合物を通過する水銀の量を示すグラフである。
図2】実施例2において、時間の経過とともに臭素化粉末活性炭と砂との混合物を通過する水銀の量を示すグラフである。
図3】実施例4で測定した非浸出性水銀の量を示すグラフである。
【0018】
図面は、本発明の特定の態様の実施形態を示しており、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
水銀蒸気の放出抑制とは、物質からの水銀の蒸発前、蒸発中、または蒸発後に水銀を捕捉することにより、水銀蒸気の量を減少させることを指す。
【0020】
本明細書全体を通じて、「捕捉」という用語は、水銀の安定化、固定化、固定、封入、
単離、封じ込め、破壊、無毒化、分解、及び腐敗、水銀の量の減少、水銀の移動度の低下、及び/または水銀の移動能力の低下を指す。
【0021】
本明細書を通して使用される場合、「処理された」、「接触された」、及び「改善された」などの用語は、ハロゲン含有吸着剤が、水銀蒸気の放出を抑制する形で蒸発性水銀を含む物質と相互作用することを示す。
【0022】
本発明の実施における水銀蒸気放出抑制剤は、ハロゲン含有吸着剤であり、本明細書では「ハロゲン化吸着剤」と呼ばれることもある。ハロゲン含有吸着剤は通常、1種以上のハロゲン含有化合物及び1種以上の基材材料から形成される。多くの基材材料、特に活性炭は、ナノメートルからセンチメートルまでの広範囲の粒径で利用可能または入手可能である。
【0023】
基材材料としては、炭素質材料及び無機材料が挙げられる。好適な炭素質材料としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、チャー、及びコークスが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい炭素質材料は活性炭であり、これは、例えば、限定されないが、粉末、顆粒、または押出成形を含む多くの形態で使用することができ、また高い比表面積を有する。粉末活性炭は、活性炭の特に好ましい形態である。
【0024】
好適な無機材料としては、無機酸化物(アルミナ(非結晶質及び結晶質)、シリカ、マグネシア及びチタニアなど)、天然ゼオライト(チャバザイト、クリノプチロライト、及びフォージャサイトなど)、合成ゼオライト(合成チャバザイト、Aゼオライト、ソーダライト、高いSi:Al比を有するゼオライト(ZSM-5、ベータゼオライト)、中程度のSi:Al比を有するゼオライト(Yゼオライト)、リン酸シリカアルミナ(SAPO)ゼオライト、イオン交換ゼオライト、未焼成ゼオライト、粘土鉱物(カオリン、カオリナイト、ベントナイト、及びモンモリロナイトなど)など)、水酸化鉄などの無機水酸化物、ハイドロタルサイト及び金属化二層粘土などの混合金属酸化物、珪藻土、セメント粉塵、水素化処理触媒(アルミナ、シリカ、またはチタニアなどの基材上の触媒が含まれる)、CaCO、並びに前述の任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。好ましい無機材料としては、無機酸化物(特に、シリカ)、天然ゼオライト(特に、チャバザイト)、及び粘土鉱物(特に、カオリナイト及びベントナイト)が挙げられ、CaCOも好ましい基材材料である。
【0025】
ハロゲン含有吸着剤中のハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素、またはこれらのハロゲンの任意の2つ以上の混合物であり得る。臭素及びヨウ素が好ましいハロゲンであり、臭素がより好ましいハロゲンである。好適なハロゲン含有化合物としては、例えば、元素ヨウ素及び/またはヨウ素化合物、元素臭素及び/または臭素化合物、元素塩素及び/または塩素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。ヨウ素含有化合物及び臭素含有化合物が好ましいハロゲン含有化合物であり、臭素含有化合物がより好ましい。
【0026】
使用できるハロゲン含有化合物の種類には、ハロゲン化水素酸、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、及びハロゲン化アンモニウムが含まれる。ハロゲン化水素酸としては、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられる。アルカリ金属ハロゲン化物としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムが挙げられる。アルカリ土類ハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化カルシウム、及び臭化カルシウムが挙げられる。ハロゲン化アンモニウムとしては、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、及びヨウ化アンモニウムが挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物としては、元素臭素、臭化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、及び臭化カルシウムが挙げられる。臭化水素及び元素臭素、特に元素臭素がより好ましい。
【0027】
ハロゲン含有吸着剤は、特に臭素含有吸着剤の場合、米国特許第6,953,494号及び同第9,101,907号、並びに国際特許公開第WO 2012/071206に記載されている基材材料及びハロゲン含有化合物から作製することができる。いくつかの実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤は臭素含有吸着剤である。いくつかの実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤はハロゲン含有活性炭である。他の実施形態では、好ましいハロゲン含有活性炭は、塩素含有活性炭、臭素含有活性炭、及びヨウ素含有活性炭である。好ましい実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は、ヨウ素含有活性炭及び臭素含有活性炭である。より好ましい実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は臭素含有活性炭である。臭素含有活性炭は、Albemarle Corporationから市販されている。
【0028】
他の実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤は、ハロゲン含有チャバザイト、ハロゲン含有ベントナイト、ハロゲン含有カオリナイト、及びハロゲン含有シリカであり、より好ましいハロゲン含有吸着剤は、ヨウ素含有チャバザイト、臭素含有チャバザイト、ヨウ素含有ベントナイト、臭素含有ベントナイト、ヨウ素含有カオリナイト、臭素含有カオリナイト、ヨウ素含有シリカ、及び臭素含有シリカであり、更に好ましくは、臭素含有シリカ、臭素含有カオリナイト、及び臭素含有ベントナイトである。
【0029】
基材材料上のハロゲンの量(またはハロゲン含有量)は、典型的には、ハロゲン含有吸着剤の総重量を基準として、約0.1重量%~約30重量%の範囲の総臭素含有量(または臭素として計算)に等しく、好ましくは約0.1重量%~約25重量%、より好ましくは約0.1重量%~約20重量%、更により好ましくは約0.5重量%~約15重量%、更により好ましくは約2重量%~約12重量%、更により好ましくは約3重量%~約8重量%の範囲の総臭素含有量に等しい。
【0030】
本明細書を通して使用される場合、「臭素として」、「臭素として報告」、「臭素として計算」という語句、及びハロゲンに関する類似の語句は、ハロゲンの量を指し、特に断りのない限り、数値は臭素について計算される。例えば、元素フッ素を使用することができるが、ハロゲン含有吸着剤中のハロゲンの量は臭素の値として記載されている。
【0031】
本発明のプロセスでの使用に適したハロゲン含有活性炭は、ナノメートルからセンチメートルまでの広範囲の粒径及び分布を有することができ、また、限定されないが、例えば、粉末、顆粒、または押出成形を含む活性炭形態から形成することができ、そして、高い比表面積、様々な独特の細孔構造、及び当業者に周知の他の特徴を有する。
【0032】
ハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有炭素質吸着剤、特にヨウ素含有及び臭素含有吸着剤、より具体的には臭素含有炭素質吸着剤は、例えば酸化及び/または吸着を含むがこれらに限定されない手段を通じて、物質からの水銀蒸気の放出を抑制することができる。吸着は水銀の移動度を低下させることによって、水銀蒸気の放出を減少させることができる。本発明のプロセスにおいて、ハロゲン含有吸着剤によって吸着された水銀は、脱着(及び再放出)が実質的に最小限に抑えられるように安定化される。
【0033】
水銀は、ハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有活性炭、より具体的にはヨウ素含有及び臭素含有吸着剤、更に具体的には臭素含有炭素質吸着剤に吸着される。ハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有活性炭上では、様々な臭素種が形成される可能性がある。例えば、臭素種である臭素は、元素水銀を酸化して臭化第二水銀を形成することができ、これは活性炭の細孔に吸着される可能性があり、別の種である臭化物イオンは、イオン性水銀と化学的に結合して活性炭の表面に吸着することができ、別の成分は水銀の酸化を触媒し、吸着剤中の酸化水銀生成物の安定化または吸着を促進することができる。
【0034】
一部のハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有活性炭、特にヨウ素含有及び臭素含有吸着剤、より具体的には臭素含有炭素質吸着剤は、元素水銀、酸化水銀、及び有機水銀を含む様々な酸化状態の水銀を物理的及び化学的に吸着することができる。ハロゲン含有活性炭、特に臭素含有活性炭に吸着された水銀は、広範囲のpH値で安定しており、ここで「安定」とは、吸着後に水銀が吸着剤からかなりの量で分離しないことを意味する。
【0035】
本発明のプロセスで使用される吸着剤は、pH緩衝剤(例えば、限定されないが、炭酸塩及びリン酸塩を含む)、担体(例えば、限定されないが、砂及び泥を含む)、結合剤(例えば、限定されないが、泥、粘土、及びポリマーを含む)、及び/または他の添加剤(例えば、限定されないが、鉄化合物及び硫黄化合物を含む)などの他の任意の成分と組み合わせることができる。
【0036】
本発明の実施において、ハロゲン含有吸着剤は、乾燥吸着剤として単独で、または砂などの別の乾燥固体と混合して、あるいは、懸濁液またはスラリーなどの適切な流体と組み合わせてなど、様々な形態で使用することができる。本明細書で使用される場合、「適切な流体」という用語は、水及び他の流体などの流体を意味し、好ましくは、流体は水である。いくつかの実施形態では、蒸発性水銀を含む物質に噴霧することができる水中のハロゲン含有吸着剤のスラリーが好ましい。スラリーまたは懸濁液中で使用される場合、ハロゲン含有吸着剤は、スラリーまたは懸濁液の約0.1重量%~約45重量%、好ましくは約5重量%~約40重量%であり、ハロゲン含有吸着剤が45重量%を超えると、ペーストが形成される。乾燥固体として使用される場合、ハロゲン含有吸着剤は、単独で、または少なくとも1種の追加の乾燥成分と混合して使用することができる。
【0037】
いくつかの用途では、ハロゲン含有吸着剤は物質内にまたは物質とともに残ることがある。他の用途では、ハロゲン含有吸着剤は使用後に回収することができる。使用後にハロゲン含有吸着剤を回収する場合、吸着剤を廃棄したり、再生して再利用したりすることができる。
【0038】
ハロゲン含有吸着剤は、単独の処理として使用することも、他の処理方法を補完することもできる。本発明による他のプロセスでは、同じ処理手順において1種以上の他の水銀処理剤に加えてハロゲン含有吸着剤を使用することができる。
【0039】
ハロゲン含有吸着剤が蒸発性水銀を含む物質に添加される場合、ハロゲン含有吸着剤は蒸発前、蒸発中、及び/または蒸発後に水銀を吸着する可能性がある。いくつかの実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は物質とともにまたは物質内に残る。他の実施形態では、組み合わされたハロゲン含有吸着剤及び物質は、多くの場合、結合剤及び他の化合物とともに埋立地に配置される。
【0040】
本発明のプロセスは、蒸発性水銀を含む物質中の水銀蒸気の少なくとも一部の放出を抑制するために提供される。
【0041】
本発明の実施において処理される物質は、典型的には固体である。いくつかの実施形態では、バルク物質の代わりに、またはバルク物質に加えて、物質の表面がハロゲン含有吸着剤で処理される。他の実施形態では、物質は、ハロゲン含有吸着剤を物質の表面下に導入することによって処理される。本明細書で使用される場合、「物質」及び/または「物質(複数形)」という用語には、壁、床、天井、設備、建築材料、土壌、がれき、廃棄物、鉱業副産物、フライアッシュ、セメント、及び他のそのような物質が含まれるが、これらに限定されない。廃棄物としては、鉱業廃棄物、金属加工廃棄物、及びバイオマス廃棄物が挙げられる。本発明の実施において処理するのに好ましい物質としては、土壌、廃棄
物、特に鉱業廃棄物、鉱業副産物、フライアッシュ、及び建築材料が挙げられる。
【0042】
ハロゲン含有吸着剤を物質に適用することは、
(a)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面に適用すること、及び/または
(b)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面の少なくとも一部と結合させること、及び/または
(c)ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、及び/または
(d)ハロゲン含有吸着剤を含有する反応性バリアを形成すること、及び/または
(e)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面下に導入することを含むことができる。
【0043】
上記(b)のように、ハロゲン含有吸着剤を物質の表面と結合させることは、ハロゲン含有吸着剤を物質の一部と結合させ、次に、吸着剤と物質部分との組み合わせを物質の表面に適用することによって、またはハロゲン含有吸着剤を物質の表面と結合させることによって行うことができる。
【0044】
ハロゲン含有吸着剤を固体に適用するためのいくつかの好ましい方法は、
(a)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面に適用すること、及び/または
(b)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面の少なくとも一部と結合させることである。
【0045】
水銀蒸気の放出を抑制するために、ハロゲン含有吸着剤を水性懸濁液またはスラリーとして水銀含有物質及びその表面に添加、散布、または噴霧することができる。
【0046】
ハロゲン含有吸着剤を適用するための好ましい方法は、ハロゲン含有吸着剤の懸濁液またはスラリーを噴霧して、特に物質の表面をコーティングまたは部分的にコーティングすること、またはハロゲン含有吸着剤を含む乾燥固体を物質の表面に広げることである。
【0047】
本発明の別の実施形態では、ハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有活性炭が水銀汚染土壌の処理剤であり、ハロゲン含有吸着剤は土壌の上に散布されることが好ましい。この方法では、ハロゲン含有吸着剤、特にハロゲン含有活性炭が土壌の最上層に存在し、土壌からの水銀の移動を阻止することによって水銀蒸気の放出を抑制する。地下処理は、土壌を処理するための別の好ましい方法である。
【0048】
ハロゲン含有吸着剤、特にヨウ素含有または臭素含有吸着剤、より具体的には臭素含有活性炭を別の薬剤と混合して、物質、特に土壌へのハロゲン含有吸着剤の浸透を改善する混合物を作製することができる。添加されるハロゲン含有吸着剤の量は土壌の最上層の10%未満であってもよく、土壌の最上層の厚さは最大10cmであってもよい。いくつかの実施形態では、pH調整剤も、ハロゲン含有吸着剤とは別に、またはハロゲン含有吸着剤と混合して、場合により物質へのハロゲン含有吸着剤の浸透を改善する薬剤と共に適用される。
【0049】
摂動は人為的なものでも自然発生的なものでもよく、蒸発性水銀の少なくとも一部を物質から蒸発させる物質の任意の適切な摂動(擾乱)を含む。典型的な摂動としては、加熱(特に土壌からの脱着を引き起こすため)、振動、光波、音波、物質の少なくとも一部の移動、及び物質の少なくとも一部の封入が挙げられる。物質または物質の一部を封入することは摂動とみなされる。例えば、封入すると、物質から放出される水銀蒸気が散逸しないため、及び/または封入された物質の表面が熱くなり、これにより物質の上方の密閉空間内の水銀蒸気の濃度が増加するため、物質の上方の密閉空間内の水銀蒸気の濃度が上昇する可能性がある。加熱は好ましい摂動である。別の好ましい摂動は、物質の少なくとも一部を封入することである。物質が摂動されると、臭素化吸着剤は水銀を吸収することができる。本発明で処理される物質は、典型的には、物質に摂動がなければ自然に水銀を放
出しない。
【0050】
物質を摂動させると、水銀は物質から揮発する。場合によっては、例えば自然に発生する摂動により、摂動を適用する必要がない場合もある。いくつかの実施形態では、自然に発生する摂動により、時間の経過とともに水銀が放出され、ハロゲン含有吸着剤は、水銀が物質から蒸発するにつれて水銀を捕捉する。いくつかの実施形態では、人為的な摂動が物質に適用される。
【0051】
ハロゲン含有吸着剤が添加及び/または適用された物質を加熱すると、通常、水銀の脱着が誘発される。自然に発生する加熱形態には太陽熱加熱が含まれ、太陽熱加熱は好ましい摂動である。熱による脱着の人為的な方法には、加熱脱着が含まれ、これは、通常、加熱すべき領域を覆い、少なくとも加熱中に覆われた領域の下の蒸気を除去することを含む。ハロゲン含有吸着剤は、加熱されている物質から水銀が出るときに水銀を捕捉することによって、水銀蒸気の放出を抑制することができる。
【0052】
本発明の実施における加熱摂動において、温度は通常、およそ周囲温度(約25℃)から約45℃であり、これは一般に物質から水銀を揮発させるのに十分な温度である。ガス流は通常、太陽熱加熱には適用されない。煙道ガス中の水銀放出制御は典型的には、はるかに高い温度(150℃~300℃)で、通常は高いガス流量を使用して行われる。
【0053】
ハロゲン含有粉末活性炭によって吸着された水銀は、コンクリートの製造及び硬化中に安定であり、例えば、米国特許第8,404,038号及び同第8,420,033号を参照のこと。これは、フライアッシュ及びセメント、並びにフライアッシュ及び/またはセメントを含む物質を処理する場合に有利である。
【0054】
いくつかの実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は、除染、解体、及び廃炉活動で使用され、水銀蒸気を抑制し、すべての廃棄物を無害なものとして分類できるようにするために、ハロゲン含有吸着剤は、例えば解体前及び/または解体中に建物の内部及び/または外部に適用される。これにより、除染、解体、及び廃炉活動のコストが削減され、作業員の安全性が高まり、場合によっては、以前に除染、解体、及び廃炉活動を実施できなかった汚染場所での除染、解体、廃炉活動が可能になる。
【0055】
他の実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は、多くの場合作業環境で、ハロゲン含有吸着剤を壁、天井、及び設備に適用(好ましくは噴霧)することによって、除染プロセスで使用される。除染する場所の一例は、非鉄金属加工工場の炭素吸着床建物である。
【0056】
更に他の実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は、囲い(例えば、テント)の下で作業されている土壌に懸濁液またはスラリーとして噴霧され、土壌からの水銀蒸気の放出を抑制し、その結果、囲い内の水銀濃度は、安全作業濃度(OSHAが定めた)未満のままである。土壌には特定の修復を保証するのに十分な水銀が含まれていない可能性があるが、作業領域の上に囲いが設置されると、囲いの内部に水銀が集中する可能性がある。
【0057】
他の実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は、緩く結合した水銀を含むフライアッシュまたは他の物質に添加または適用することができ、フライアッシュまたは他の物質中の緩く結合した水銀を蒸発させ、ハロゲン含有吸着剤によって吸収させることができ、好ましくは、ハロゲン含有吸着剤はフライアッシュもしくは他の物質に混合されるか、またはフライアッシュもしくは他の物質上に噴霧される。
【0058】
以下の実施例は、例示の目的のために提示されるものであり、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【実施例
【0059】
実験装置及び手順
吸着試験用の床として使用する高さ12インチ(30.5cm)、直径2インチ(5.1cm)の2つのガラスカラムの各カラムの底部に約1インチ(2.5cm)のグラスウールを挿入した。砂の含水率を測定し、含水率が3%を超えたとき、砂をオーブン中で比較的低い温度(50℃)で乾燥させた。各カラムについて、一定量の砂(26mL、カラムに詰めたときの高さは約2インチ(5cm))を秤量した。混合物については、所望の量の粉末活性炭(PAC)または臭素化粉末活性炭(Br-PAC)を乾燥砂の量に対して秤量し、乾燥砂と混合して混合物を均質化した。次に、含水率を約8重量%に増加させるのに十分な水を混合物及び砂のみのサンプルに添加した。各カラムにはグラスウールの上に砂または砂混合物を充填して床を形成し、その後カラムを密閉した。密閉したカラムをオーブン内のスタンドに取り付け、チューブをカラムに接続した。
【0060】
元素水銀蒸気を供給する水銀発生器を油浴内の拡散管に接続した。トラブルシューティングを可能にするために、また追加の制御流として、カラムの周りに水銀蒸気用のバイパスラインを設置した。
【0061】
バルブ(ペルフルオロアルコキシ(PFA)、Swagelok Company)の設定を調整して、水銀発生器及びカラムをバイパスさせた。圧縮空気流をオンにし、必要に応じて調整器とロータメーターのニードルバルブを使用して空気流の流量を約5L/minに調整した。水銀発生器を含むオイルを、拡散管を通過する空気流中に所望の濃度の水銀蒸気(約50μg/m)が生成される温度(70℃)まで加熱した。カラムを含むオーブンを35℃に加熱し、カラムの試験期間中この温度に維持した。
【0062】
次に、バルブ設定を調整して、空気流が水銀発生器を通過するが、カラムをバイパスするように誘導した。サンプルバルブを水銀蒸気分析装置(原子蛍光分光法、Jerome(登録商標)J505)に向けて開き、空気流の分析を開始した。所望の水銀蒸気濃度を達成するために、必要に応じて水銀発生器の温度及び/または空気流量を調整した。空気流中で安定した水銀濃度が達成されると、バルブを設定して、水銀含有空気流の流れがカラムの底部からカラムを通って各カラム内の材料を通って上に流れるように誘導した。各カラムの頂部から出る空気流を、水銀蒸気の存在について分析した。
【0063】
試験完了後、バルブを調整してカラムをバイパスさせ、空気流中の水銀蒸気を測定し、それが先に測定したベースライン濃度と一致することを確認した。次に、各カラムを、水銀を含まない空気の別個の流れ(水銀発生器をバイパスする)でフラッシュした。カラムから出る空気を分析して、カラムから水銀が放出されていないことを確認した。カラムをオーブンから取り出し、各カラム内の材料を別のガラス製サンプル瓶に注ぎ、グラスウールをカラムから押し出して、サンプル瓶中のそれぞれのカラムからすべての材料を確実に収集した。総水銀及び浸出性水銀について各サンプル瓶内の材料を分析した。
【0064】
実施例1-比較
第1の試験では、湿った砂(水8重量%)をカラムに添加し、水銀蒸気をカラムに通過させ、砂が有意な量の水銀蒸気を吸着しないことを確認した。時間制限のある試験を行うために、清浄な乾燥砂を、粉末活性炭(PAC、1重量%)及び脱イオン(DI)水(8重量%)と混合し、量は、砂の乾燥重量に対するものである。PAC/湿った砂混合物をカラムに添加した。
【0065】
水銀発生器を始動させ、PAC/湿った砂カラムをバイパスするガスを1回サンプリングし、PAC/湿った砂カラムから出るガスを様々な時間間隔でサンプリングし、ガスサ
ンプル中の水銀の量を測定して、カラムを通過した水銀量を測定した。結果を表1にまとめ、図1にグラフで示す。図1は、時間の経過とともに粉末活性炭/湿った砂混合物を通過する水銀の量を示す。サンプル1は、カラムをバイパスしたガスからのもので、水銀発生器内で生成された水銀蒸気の全量を含み(ベースライン)、サンプル2~23は、湿った砂と1重量%の粉末活性炭の混合物を含むカラムからのものである。すべての実験は比較である。
【表1】
【0066】
上記のデータは、PACと砂の混合物がカラムを通過する水銀の一部を捕捉するが、かなりの量の水銀蒸気がPAC/砂混合物を通過し、捕捉されなかったことを示す。このデータは、PAC/砂混合物を通過する水銀の量が50分後に増加したため、試験開始から約50分後にかなりの量のPACが水銀蒸気で飽和したことを示唆している。
【0067】
実施例2
第1の試験では、湿った砂(水8重量%)をカラムに添加し、水銀蒸気をカラムに通過させ、砂が有意な量の水銀蒸気を吸着しないことを確認した。時間制限のある試験を行うために、清浄な乾燥砂を、臭素化粉末活性炭(Br-PAC、1重量%)及び脱イオン(DI)水(8重量%)と混合し、量は、砂の乾燥重量に対するものである。Br-PAC/湿った砂混合物をカラムに添加した。
【0068】
水銀発生器を始動させ、Br-PAC/湿った砂カラムをバイパスするガスを1回サンプリングし、Br-PAC/湿った砂カラムから出るガスを様々な時間間隔でサンプリングし、ガスサンプル中の水銀の量を測定して、各カラムを通過した水銀量を測定した。結果を表2にまとめ、図2にグラフで示す。図2は、時間の経過とともにBr-PAC/湿った砂混合物を通過する水銀の量を示す。サンプル1は、カラムをバイパスしたガスからのもので、水銀発生器内で生成された水銀蒸気の全量を含み(ベースライン)、比較用である。サンプル2~20は、湿った砂と1重量%のBr-PACの混合物を含むカラムからのものである。Br-PACの臭素含有量は8重量%であった。
【表2】
【0069】
上記のデータが示すように、Br-PACと砂の混合物は水銀蒸気の大部分を迅速に捕捉し、水銀がカラムを通過するのを防止した。更に、この水銀蒸気の抑制は5時間の試験全体にわたって持続した。
【0070】
実施例3
上記の実施例で使用したPAC/砂混合物及びBr-PAC/砂混合物を分析して、混合物によって吸着された総水銀を測定し、水銀の吸着を確認した。これらの結果を表3にまとめる。Br-PAC/砂混合物中の総水銀は、PAC/砂混合物と比較して、5時間後には有意に高かった。
【表3】
【0071】
実施例4
合成沈殿浸出手順(SPLP)を使用して、上記の実施例からのPAC/砂混合物及びBr-PAC/砂混合物に対して浸出試験を実施した。浸出試験を行った後に各サンプルに残る総水銀は、非浸出性水銀であると考えられる。結果を表4にまとめ、図3にグラフで示す。1時間でのデータは、PAC/砂混合物と比較して、Br-PAC/砂混合物の非浸出性水銀が163%増加したことを示し、5時間でのデータは、PAC/砂混合物と比較して、Br-PAC/砂混合物の非浸出性水銀が229%増加したことを示す。
【表4】
【0072】
本発明の更なる実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
A)蒸発性水銀を含む物質からの水銀蒸気の放出を抑制するプロセスであって、
ハロゲン含有吸着剤を前記物質に適用することであって、前記ハロゲンが、塩素、臭素、及びヨウ素から選択される1つ以上のハロゲンを含む、前記適用することと、
前記物質に摂動を与えて水銀を揮発させることと、
前記物質からの水銀蒸気の少なくとも一部の放出を抑制することとを含む、前記プロセス。
【0074】
B)前記ハロゲン含有吸着剤が、1種以上の炭素質材料から選択される基材材料を含む、A)に記載のプロセス。
【0075】
C)前記炭素質材料が活性炭である、B)に記載のプロセス。
【0076】
D)前記ハロゲン含有吸着剤が、1種以上の無機材料から選択される基材材料を含む、A)に記載のプロセス。
【0077】
E)前記無機材料が、無機酸化物、天然ゼオライト、CaCO、及び粘土鉱物から選択される、D)に記載のプロセス。
【0078】
F)前記無機材料が、チャバザイト、シリカ、カオリナイト、及びベントナイトから選択される、E)に記載のプロセス。
【0079】
G)前記ハロゲン含有吸着剤がハロゲン含有活性炭吸着剤、ハロゲン含有チャバザイト、ハロゲン含有ベントナイト、ハロゲン含有カオリナイト、またはハロゲン含有シリカである、A)に記載のプロセス。
【0080】
H)前記ハロゲン含有吸着剤がハロゲン含有活性炭吸着剤である、A)に記載のプロセス。
【0081】
I)前記ハロゲンが臭素及び/またはヨウ素である、A)~H)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0082】
J)前記ハロゲンが臭素である、A)~H)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0083】
K)前記ハロゲン含有吸着剤が、
前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約0.1重量%~約30重量%のハロゲン含有量、または
前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約0.1重量%~約25重量%のハロゲン含有量、または
前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約0.1重量%~約20重量%のハロゲン含有量、または
前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約3重量%~約8重量%のハロゲン含有量を有する、A)~J)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0084】
L)前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質に適用することは、
(a)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面に適用すること、及び/または
(b)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面の少なくとも一部と結合させること、及び/または
(c)ハロゲン含有吸着剤を反応性バリアに添加すること、及び/または
(d)ハロゲン含有吸着剤を含有する反応性バリアを形成すること、及び/または
(e)ハロゲン含有吸着剤を物質の表面下に導入することを含む、A)―K)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0085】
M)前記ハロゲン含有吸着剤が、スラリーまたは懸濁液の形態で添加及び/または適用される、L)に記載のプロセス。
【0086】
N)前記ハロゲン含有吸着剤が、前記スラリーまたは懸濁液の約5重量%~約45重量%である、M)に記載のプロセス。
【0087】
O)前記ハロゲン含有吸着剤の懸濁液もしくはスラリーを噴霧することによって、前記ハロゲン含有吸着剤を含む乾燥固体を前記物質の前記表面に広げることによって、または前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質の表面下に導入することによって前記ハロゲン含有吸着剤が前記物質に適用される、L)に記載のプロセス。
【0088】
P)前記ハロゲン含有吸着剤を前記物質の表面下に導入することによって前記ハロゲン
含有吸着剤が前記物質に適用される、L)に記載のプロセス。
【0089】
Q)蒸発性水銀を含む前記物質が土壌、廃棄物、鉱業副産物、フライアッシュ、または建築材料である、A)~P)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0090】
R)前記物質が土壌、廃棄物、または鉱業副産物である、A)~P)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0091】
S)前記物質がフライアッシュまたは建築材料である、A)~P)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0092】
T)蒸発性水銀を含む前記物質が土壌である、S)に記載のプロセス。
【0093】
U)前記摂動が、前記物質の少なくとも一部を加熱または封入することである、A)~T)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0094】
V)前記加熱が太陽熱加熱である、U)に記載のプロセス。
【0095】
W)前記吸着剤はハロゲン含有活性炭であり、前記ハロゲン含有量が、前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約0.1重量%~約30重量%であり、前記物質が土壌、廃棄物、鉱業副産物、フライアッシュ、または建築材料である、A)に記載のプロセス。
【0096】
X)前記ハロゲン含有量が、前記ハロゲン含有吸着剤の総重量に基づいて臭素として計算して約0.1重量%~約25重量%、好ましくは約0.1重量%~約20重量%、より好ましくは約0.5重量%~約15重量%である、W)に記載のプロセス。
【0097】
Y)前記ハロゲンが臭素及び/またはヨウ素である、A)~X)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0098】
Z)前記ハロゲンが臭素である、A)~X)のいずれか一項に記載のプロセス。
【0099】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかの場所で化学名または化学式によって言及される成分は、単数形で言及されるか複数形で言及されるかにかかわらず、化学名または化学型によって言及される別の物質(例えば、別の成分、溶媒など)と接触する前に存在するものとして特定される。得られた混合物または溶液でどのような化学変化、変換、及び/または反応(もしあれば)が起こるかは問題ではない。なぜなら、そのような変化、変換、及び/または反応は、本開示に従って要求される条件下で特定の成分を一緒にすることの自然な結果であるからである。したがって、成分は、所望の操作を行うことに関連して、または所望の組成物を形成することにおいて一緒にされる成分として特定される。また、たとえ本明細書の特許請求の範囲が、現在形(「含む」、「である」など)で物質、構成要素、及び/または成分に言及する場合があるとしても、その言及は、本開示に従って1種以上の他の物質、構成要素及び/または成分と最初に接触、ブレンドまたは混合される直前に存在していた物質、構成要素または成分を指す。したがって、物質、構成要素、または成分が、本開示に従って化学者の通常の技術で行われる場合、接触、ブレンド、または混合操作の過程での化学反応または化学変化によって元の同一性を失った可能性があるという事実は、実際上問題ではない。
【0100】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含んでもよいし、それらからなってもよいし、または本質的にそれらからなってもよい。
【0101】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物中のまたは本発明の方法で使用される成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実世界で濃縮物または使用溶液を製造するために使用される典型的な測定手順及び液体取扱い手順、これらの手順における不注意による誤り、組成物の製造または方法の実施に使用される成分の製造、供給源、または純度の相違によって起こり得る数値量の変動を指す。約という用語はまた、特定の初期混合物から得られる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲にはその量と等価なものが含まれる。
【0102】
明示的に別段の指示がある場合を除き、本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、説明または特許請求の範囲を、その冠詞が指す単一の要素に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本明細書で使用される場合、冠詞「a」または「an」とは、本文に明示的に別段の指示がない限り、1つ以上のそのような要素を網羅することを意図している。
【0103】
本発明は、その実施においてかなりの変動の影響を受けやすい。したがって、前述の説明は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】