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特表2024-528874メタルオンガラスイオントラップのための電極製造およびダイ成形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】メタルオンガラスイオントラップのための電極製造およびダイ成形
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/40 20060101AFI20240725BHJP
   G06N 10/40 20220101ALI20240725BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20240725BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C03C17/40
G06N10/40
C03C15/00 Z
C03C23/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504560
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 US2022074320
(87)【国際公開番号】W WO2023081543
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/227,104
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/876,219
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520132894
【氏名又は名称】イオンキュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アミニ ジェイソン マジディ
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AB11
4G059AC30
4G059DA02
4G059DA07
4G059DB02
(57)【要約】
メタルオンガラスイオントラップ(400、500、600)を生成するための電極の製造技術およびガラスダイまたは基板(410)の成形技術が記載される。これらのイオントラップは、オープン光アクセスおよび電極のための高アスペクトトレンチを有するように構成される。例えば、ガラス基板は、角度を付けられたカットアウト(510)、高アスペクトトレンチを有する電極構造、電気接続のための角度を付けられたワイヤボンド(610、620)、1つもしくは複数のレーザビーム(520、630)によるさらなる明確なアクセスを提供する角度を付けられたワイヤボンド、またはそれらの特徴のいずれかの組み合わせを有することにより高開口数(NA)光アクセスを提供するように成形される。これらの特徴のいずれかを有するイオントラップ(270)を含む量子情報処理(QIP)システム(200)も記載される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子ベースの量子ビットを保持するためのメタルオンガラストラップを製造する方法であって、
ガラス基板を提供するステップと、
前記ガラス基板の上面を成形するステップであって、電極構造を形成するステップと、
成形された上面の前記電極構造上に1つまたは複数の金属層を堆積させるステップであって、前記メタルオンガラストラップの電極を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ガラス基板が溶融シリカ製である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の金属層を堆積させるステップは、金の層を蒸着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の金属層を堆積させるステップは、最初にクロムの層を蒸着させ、次に金の層を蒸着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス基板の上面を成形するステップは、1つまたは複数のエッチングプロセスによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラス基板の上面を成形するステップは、前記メタルオンガラストラップの両側にカットアウトを形成するステップであって、前記メタルオンガラストラップの動作中にレーザビームのためのオープンアクセスを提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カットアウトが、角度を付けられたカットアウトであり、前記メタルオンガラストラップの電極の少なくとも一部分が、前記角度を付けられたカットアウトの領域を通して配線されるか、または
前記カットアウトが平坦なカットアウトであり、前記メタルオンガラストラップの電極のいずれも前記平坦なカットアウトの領域を通して配線されない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の金属層を堆積させるステップは、異なる蒸着角度、異なる蒸着ステップ、連続運動蒸着、またはそれらの組み合わせを使用して前記1つまたは複数の金属層を蒸着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記メタルオンガラストラップの電極の一部分について、前記メタルオンガラストラップの遠位端付近の電極の端部が、電気配線基板への接続のために角度を付けられたワイヤボンドを可能にするように角度を付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電極の角度を付けられた端部が、15度から60度の間で角度を付けられている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
原子ベースの量子ビットを保持するためのメタルオンガラストラップであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の上面を成形することによって形成された電極構造上に堆積した金属から作製された電極と
を備える、メタルオンガラストラップ。
【請求項12】
前記ガラス基板が溶融シリカ製である、請求項11に記載のトラップ。
【請求項13】
前記堆積した金属が金の層を含む、請求項11に記載のトラップ。
【請求項14】
前記堆積した金属が、最初にクロムの層を含み、次に金の層を含む、請求項11に記載のトラップ。
【請求項15】
前記ガラス基板の上面を成形するステップは、前記メタルオンガラストラップの動作中にレーザビームのためのオープンアクセスを提供するために前記メタルオンガラストラップの両側のカットアウトを含む、請求項11に記載のトラップ。
【請求項16】
前記カットアウトが、角度を付けられたカットアウトであり、前記メタルオンガラストラップの電極の少なくとも一部分が、前記角度を付けられたカットアウトの領域を通して配線される、請求項15に記載のトラップ。
【請求項17】
前記カットアウトが平坦なカットアウトであり、前記メタルオンガラストラップの電極のいずれも前記平坦なカットアウトの領域を通して配線されていない、請求項15に記載のトラップ。
【請求項18】
前記メタルオンガラストラップの電極の一部分について、前記メタルオンガラストラップの遠位端付近の電極の端部が、電気配線基板への接続のために角度を付けられたワイヤボンドを可能にするように角度を付けられている、請求項11に記載のトラップ。
【請求項19】
前記電極の角度を付けられた端部が、15度から60度の間で角度を付けられている、請求項18に記載のトラップ。
【請求項20】
チャンバと、
原子ベースの量子ビットを保持するためのメタルオンガラストラップであって、前記メタルオンガラストラップが前記チャンバ内にあり、前記メタルオンガラストラップが、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の上面を成形することによって形成された電極構造上に堆積した金属から作製された電極と
を備える、メタルオンガラストラップと、
前記メタルオンガラストラップの電極に印加される信号の生成を制御するように構成された光学およびトラップコントローラと
を備える、量子情報処理(QIP)システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年7月28日に出願された米国出願第17/876,219号、および2021年7月29日に出願された米国仮出願第63/227,104号に対する優先権および利益を主張し、これらの両方は「Electrode Fabrication and Die Shaping for Metal-on-Glass Ion Traps」という発明の名称である。それぞれの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示の態様は、概して、量子情報処理(QIP)システムの実装、動作、および/または使用の用途のためのトラッピングデバイスに関する。
【0003】
トラップされた原子は、量子情報処理または量子コンピューティングの主要な実装の1つである。原子ベースの量子ビットは、量子コンピュータおよびシミュレータにおける量子メモリ、量子ゲートとして使用され、量子通信ネットワークのためのノードとして機能する。トラップされた原子イオンに基づく量子ビットは、まれな属性の組み合わせを享受する。例えば、トラップされた原子イオンに基づく量子ビットは、非常に優れたコヒーレンス特性を有し、ほぼ100%の効率で準備および測定でき、光場またはマイクロ波場などの適切な外部制御場とのクーロン相互作用を変調することにより容易に相互に絡み合う。これらの属性により、原子ベースの量子ビットは、量子計算または量子シミュレーションなどの拡張量子演算にとって魅力的になる。
【0004】
したがって、量子コンピュータまたは量子シミュレータとして使用される様々なQIPシステムの設計、製造、実装、制御、および/または機能を改良する新たな技術を開発することが重要であり、特に、原子ベースの量子ビットに基づく動作を処理するQIPシステムにとって重要である。
【発明の概要】
【0005】
以下は、このような態様の基本的な理解を提供するために1つまたは複数の態様の簡略化された概要を提示する。この概要は、想定される全ての態様の広範な概要ではなく、全ての態様の主要または重要な要素を特定することも、いずれかまたは全ての態様の範囲を画定することも意図していない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前段階として、簡略化された形態で1つまたは複数の態様のいくつかの概念を提示することである。
【0006】
本開示は、QIPシステムで使用するためのメタルオンガラスイオントラップ(metal-on-glass ion trap)を生成するための電極の製造技術およびガラスダイまたは基板の成形技術の様々な態様を記載する。これらのイオントラップは、オープン光アクセスおよび高アスペクトトレンチを有する電極を有するように構成される。例えば、ガラス基板は、角度を付けられたカットアウト、高アスペクトトレンチを有する電極構造、電気接続のための角度を付けられたワイヤボンド、1つもしくは複数のレーザビームによるさらなる明確なアクセスを提供する角度を付けられたワイヤボンド、またはそれらの特徴のいずれかの組み合わせを有することにより高開口数(NA)光アクセスを提供するように成形される。これらの特徴のいずれかを有するイオントラップを含むQIPシステムも記載される。
【0007】
前述の目的および関連する目的を達成するために、1つまたは複数の態様は、以下に完全に記載され、特許請求の範囲において特に指摘される特徴を含む。以下の説明および付属の図面は、1つまたは複数の態様の特定の例示的な特徴を詳細に示す。しかしながら、これらの特徴は、様々な態様の原理が利用される様々な方法のほんの一部を示すものであり、この説明は、そのような全ての態様およびそれらの等価物を含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
開示された態様は、添付の図面と併せて以下に説明されるが、これは開示され態様を限定するものではなく例示するために提供され、図面において同様の符号は同様の要素を表す。
【0009】
図1】本開示の態様による原子イオン、線形結晶または鎖の図を示す。
図2】本開示の態様による量子情報処理(QIP)システムの例を示す。
図3】本開示の態様によるコンピュータデバイスの例を示す。
図4】本開示の態様に関連するメタルオンガラスイオントラップの例の等角図を示す。
図5】本開示の態様に関連する角度を付けられたカットアウトを使用することによる高開口数(NA)光アクセスを有するメタルオンガラスイオントラップの例を示す。
図6】本開示の態様に関連するメタルオンガラスイオントラップおよびイオントラップの電極への電気接続を行うために使用されるワイヤボンドの例の上面図を示す。
図7】本開示の態様に関連するメタルオンガラスイオントラップに使用される電極構造の例の断面図を示す。
図8】本開示の態様に関連するメタルオンガラストラップの製造のためのプロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成または実装の説明として意図されており、本明細書に記載される概念が実施される唯一の構成または実装を表すことを意図するものではない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供する目的のための具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの概念が、これらの具体的な詳細を伴わず、またはこれらの具体的な詳細の変形を伴って実施されることは、当業者には明らかであろう。一部の場合、周知のコンポーネントがブロック図の形式で示されているが、いくつかのブロックは1つまたは複数の周囲のコンポーネントを表す場合がある。
【0011】
QIPシステムで使用されるいくつかのトラップでは、1つまたは複数のレーザまたは光ビームによる関心領域(例えば、原子ベースの量子ビットが位置する場所)への良好なアクセスを可能にすると同時に、トラップの動作に使用される様々な電極間の良好な絶縁を提供する設計および製造技術を実装することが有用である。これは、トラップが形成されるガラス基板を適切に成形して、高NA光アクセスおよび高アスペクトトレンチを有する電極構造を生成することによって達成される。
【0012】
上記の問題に対する解決策は、図1~8に関連してより詳細に説明され、図1~3は、QIPシステムまたは量子コンピュータ、より具体的には、原子ベースのQIPシステムまたは量子コンピュータのバックグラウンドを提供する。
【0013】
図1は、トラップ(図示せず;トラップは、図2に示すように真空チャンバ内にある)を使用して線形結晶または鎖110にトラップされた複数の原子イオンまたはイオン106(例えば、イオン106a、106b、...、106c、および106d)を有する図100を示す。トラップはイオントラップと呼ばれることもある。示したイオントラップは、半導体基板、誘電体基板、またはガラスダイもしくはウェハ(ガラス基板とも呼ばれる)上に構築または製造することができる。本開示に関連するイオントラップのいくつかの特徴および製造技術は、図4~8に関連して以下に説明される。イオン106は、イオン化および鎖110への閉じ込めのために、原子種としてトラップに提供される。イオン106の一部または全部はQIPシステムにおける量子ビット(Qubit)として動作するように構成される。
【0014】
図1に示す例では、トラップは、ほぼ静止状態になるようにレーザ冷却された鎖110内に複数のイオンをトラップまたは閉じ込めるための電極を含む。トラップされるイオンの数は設定可能(configurable)であり、より多くまたはより少ないイオンをトラップすることができる。イオンは、例えば、イッテルビウムイオン(例えば、171Ybイオン)であってもよい。イオンは、171Ybの共鳴に調整されたレーザ(光)放射で照射され、イオンの蛍光は、カメラまたはいくつかの他のタイプの検出デバイス(例えば、光電子増倍管またはPMT)に結像される。この例では、イオンは互いに数ミクロン(μm)離れている場合があるが、分離は構造上の構成に基づいて異なる場合がある。イオンの分離は、外部閉じ込め力とクーロン反発力との間のバランスによって決定され、均一である必要はない。さらに、イッテルビウムイオンに加えて、バリウムイオン、中性原子、リュードベリ原子、または他のタイプの原子ベースの量子ビット技術を使用することもできる。さらに、同じ種のイオン、異なる種のイオン、および/または異なる同位体のイオンを使用することができる。トラップは線形RFポールトラップであってもよいが、光学的閉じ込めを含む他のタイプの閉じ込めデバイスを使用することもできる。したがって、閉じ込めデバイスは、異なる技術に基づいていてもよく、イオン、中性原子、またはリュードベリ原子を保持してもよく、例えば、イオントラップは、そのような閉じ込めデバイスの一例である。イオントラップは、例えば、表面トラップであってもよい。
【0015】
図2は、QIPシステム200の例を示すブロック図を示す。QIPシステム200は、量子コンピューティングシステム、量子コンピュータ、コンピュータデバイス、トラップイオンシステムなどとも呼ばれる。QIPシステム200は、QIPシステム200が量子計算(quantum computations)および量子演算(quantum operations)を実行するために使用され、ハイブリッドコンピューティングシステムが古典的計算および古典的演算を実行するための古典的コンピュータも含む、ハイブリッドコンピューティングシステムの一部である。このようなハイブリッドシステムでは、量子計算および量子演算と、古典的計算および古典的演算が相互作用する場合がある。
【0016】
図2に示されているのは、QIPシステム200の様々な制御動作を実行するように構成された汎用コントローラ205である。これらの制御動作は、オペレータによって実行されてもよく、自動化されてもよく、または両方の組み合わせであってもよい。制御動作の少なくとも一部についての命令は、汎用コントローラ205内のメモリ(図示せず)に記憶されてもよく、通信インターフェース(図示せず)を介して経時的に更新されてもよい。汎用コントローラ205は、QIPシステム200とは別個に示されているが、汎用コントローラ205は、QIPシステム200と統合されていてもよく、またはその一部であってもよい。汎用コントローラ205は、QIPシステム200に関連する様々な較正、検査、および自動化動作を実行するように構成された自動化および較正コントローラ280を含むことができる。これらの較正、検査、および自動化動作は、例えば、アルゴリズムコンポーネント210の全部もしくは一部、光学およびトラップコントローラ220の全部もしくは一部、ならびに/またはチャンバ250の全部もしくは一部を含む。
【0017】
QIPシステム200は、量子アルゴリズム、量子アプリケーション、または量子演算を実行(perform)または実装(implement)するために、QIPシステム200の他の部分と共に動作する、上述のアルゴリズムコンポーネント210を含む。アルゴリズムコンポーネント210は、拡張量子計算と同様に、単一量子ビット演算及び/又はマルチ量子ビット演算(例えば、2量子ビット演算)の組み合わせのスタック又はシーケンスを実行又は実装するために使用される。アルゴリズムコンポーネント210は、また、そのような実行または実装を機能させるソフトウェアツール(例えば、コンパイラ)を含む。このように、アルゴリズムコンポーネント210は、量子アルゴリズム、量子アプリケーション、または量子演算の実行または実装を可能にするために、QIPシステム200の様々なコンポーネント(例えば、光学およびトラップコントローラ220)に命令を直接的または間接的に提供することができる。アルゴリズムコンポーネント210は、量子アルゴリズム、量子アプリケーション、または量子演算の実行または実装から得られる情報を受信することができ、その情報を処理し、および/またはさらなる処理のためにその情報をQIPシステム200の別のコンポーネントもしくは別のデバイス(例えば、QIPシステム200に接続された外部デバイス)に転送することができる。
【0018】
QIPシステム200は、トラップ270を制御するためにトラップ270内の電極に印加される信号の生成を含む、チャンバ250内のトラップ270の様々な態様を制御する、上述の光学およびトラップコントローラ220を含む。例えば、光学およびトラップコントローラ220は、トラップ270内のRF電極に印加される無線周波数(RF)信号およびトラップ270内のDC電極に印加される直流(DC)信号の生成を制御するように構成される。トラップ270に使用される、本開示に関連するイオントラップのいくつかの特徴および製造技術は、図4~8に関連して以下に説明される。
【0019】
光学およびトラップコントローラ220は、トラップ内の原子またはイオンと相互作用するレーザまたは光ビームを提供するために使用されるレーザ、光学システム、および光学コンポーネントの動作も制御することができる。複数のコンポーネントを含む光学システムは、光学アセンブリと呼ばれることがある。光ビームは、イオンのセットアップ、イオンによる量子アルゴリズム、量子アプリケーション、または量子演算の実行または実装、およびイオンからの結果の読み取りに使用される。レーザ、光学システム、および光学コンポーネントの動作の制御は、電動マウントまたはホルダを使用した位置決めを制御することを含む、動作パラメータおよび/または構成を動的に変更することを含む。イオンを閉じ込めるまたはトラップするために使用される場合、トラップ270はイオントラップと呼ばれることがある。しかしながら、トラップ270は、中性原子、リュードベリ原子、および他のタイプの原子ベースの量子ビットをトラップするために使用することもできる。レーザ、光学システム、および光学コンポーネントは、光学およびトラップコントローラ220、イメージングシステム230、ならびに/またはチャンバ250に少なくとも部分的に配置される。
【0020】
QIPシステム200は、イメージングシステム230を含む。イメージングシステム230は、イオンがトラップ270に提供されている間、および/またはイオンがトラップ270に提供された後(例えば、結果を読み取るため)に、イオンをモニタリングするための高解像度イメージャ(例えば、CCDカメラ)または他のタイプの検出デバイス(例えば、PMT)を含む。一態様では、イメージングシステム230は、光学およびトラップコントローラ220とは別個に実装されるが、画像処理アルゴリズムを使用してイオンを検出、特定、および標識するための蛍光の使用は、光学およびトラップコントローラ220と調和させる必要がある。
【0021】
上記のコンポーネントに加えて、QIPシステム200は、トラップ270を有するチャンバ250に原子種(例えば、中性原子のプルームまたはフラックス)を提供するソース260を含む。原子イオンが量子演算の基礎である場合、そのトラップ270は、一旦イオン化された(例えば、光イオン化された)原子種を閉じ込める。トラップ270は、QIPシステム200のプロセッサまたは処理部分と呼ばれることがあるものの一部であってもよい。すなわち、トラップ270は、量子演算またはシミュレーションを実行または実装するために使用される原子ベースの量子ビットを保持するため、QIPシステム200の処理動作のコアにあると考えられる。ソース260の少なくとも一部分は、チャンバ250とは別個に実装されてもよい。
【0022】
図2に記載されているQIPシステム200の様々なコンポーネントは、理解を容易にするために高レベルで記載されていることを理解されたい。このようなコンポーネントは、1つまたは複数のサブコンポーネントを含み、その詳細は、本開示の特定の態様をよりよく理解するために必要に応じて以下に提供される。
【0023】
本開示の態様は、トラップ270に少なくとも部分的に関連して実装される。
【0024】
ここで図3を参照すると、コンピュータシステムまたはデバイス300の例が示される。コンピュータデバイス300は、例えば、単一のコンピューティングデバイス、複数のコンピューティングデバイス、または分散コンピューティングシステムを表すことができる。コンピュータデバイス300は、量子コンピュータ(例えば、QIPシステム)として、古典的コンピュータとして構成されるか、またはハイブリッド機能もしくは動作と呼ばれることもある、量子コンピューティング機能(quantum computing function)と古典的コンピューティング機能の組み合わせを実行するように構成される。例えば、コンピュータデバイス300は、量子アルゴリズム、古典的コンピュータのデータ処理演算(data processing operation)、またはそれらの両方の組み合わせを使用して情報を処理するために使用することができる。場合によっては、あるセットの演算(例えば、量子アルゴリズム)からの結果は、別のセットの演算(例えば、古典的コンピュータデータ処理)と共有される。量子計算およびシミュレーションを実行可能なQIPシステムとして実装されたコンピュータデバイス300の一般的な例は、例えば、図2に示すQIPシステム200である。
【0025】
コンピュータデバイス300は、本明細書に記載される特徴の1つまたは複数に関連する処理機能を実行するためのプロセッサ310を含む。プロセッサ310は、単一のプロセッサ、複数のプロセッサのセット、または1つもしくは複数のマルチコアプロセッサを含む。さらに、プロセッサ310は、統合処理システムおよび/または分散処理システムとして実装される。プロセッサ310は、1つもしくは複数の中央処理装置(CPU)310a、1つもしくは複数のグラフィックス処理装置(GPU)310b、1つもしくは複数の量子処理装置(QPU)310c、1つもしくは複数の知能処理装置(IPU)310d(例えば、人工知能もしくはAlプロセッサ)、またはそれらのいくつかもしくは全てのタイプのプロセッサの組み合わせを含む。一態様では、プロセッサ310は、コンピュータデバイス300の汎用プロセッサを指す場合があり、それはまた、より特定の機能(例えば、コンピュータデバイス300の動作(operation、演算)を制御する機能を含む)を実行するための追加のプロセッサ310も含む。量子演算は、QPU310cによって実行される。QPU310cの一部または全部は、原子ベースの量子ビットを使用できるが、異なるQPUが異なる量子ビット技術に基づいている可能性もある。
【0026】
コンピュータデバイス300は、動作を実行するためにプロセッサ310によって実行可能な命令を記憶するためのメモリ320を含む。メモリ320はまた、プロセッサ310による処理のためのデータおよび/またはプロセッサ310による処理から得られたデータを記憶することもできる。ある実装では、例えば、メモリ320は、1つまたは複数の機能または動作を実行するためのコードまたは命令を記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に対応する。プロセッサ310と同様に、メモリ320は、コンピュータデバイス300の一般的なメモリを指す場合があり、これはまた、より特定の機能のための命令および/またはデータを記憶する追加のメモリ320も含む。
【0027】
プロセッサ310およびメモリ320は、計算、算出、シミュレーション、制御、較正、システム管理、および本明細書に記載される任意の方法またはプロセスを含むコンピュータデバイス300の他の動作を含むが、これらに限定されない、異なる動作に関連して使用されることを理解されたい。
【0028】
さらに、コンピュータデバイス300は、ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスを利用する1つまたは複数の当事者との通信の確立および維持を提供する通信コンポーネント330を含む。通信コンポーネント330はまた、コンピュータデバイス300上のコンポーネント間の通信、ならびにコンピュータデバイス300と、通信ネットワークを介して配置されたデバイスおよび/またはコンピュータデバイス300と連続的にまたはローカルに接続されたデバイスなどの外部デバイスとの間の通信を伝送するために使用される。例えば、通信コンポーネント330は、1つまたは複数のバスを含み、外部デバイスとインターフェースで接続するために動作可能な送信機および受信機にそれぞれ関連付けられた送信チェーンコンポーネントおよび受信チェーンコンポーネントをさらに含む。通信コンポーネント330は、コンピュータデバイス300の動作または機能に関する更新情報を受信するために使用されてもよい。
【0029】
加えて、コンピュータデバイス300は、データストア340を含むことができ、これは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の適切な組み合わせであってもよく、コンピュータデバイス300の動作および/または本明細書に記載される任意の方法もしくはプロセスに関連して利用される情報、データベース、およびプログラムの大容量記憶を提供する。例えば、データストア340は、オペレーティングシステム360(例えば、古典的OS、または量子OS、またはその両方)のためのデータリポジトリであってもよい。1つの実装では、データストア340はメモリ320を含む。ある実装では、プロセッサ310は、オペレーティングシステム360および/またはアプリケーションもしくはプログラムを実行することができ、メモリ320またはデータストア340はそれらを記憶することができる。
【0030】
コンピュータデバイス300はまた、コンピュータデバイス300のユーザから入力を受信するように構成され、ユーザに提示するため、または異なるシステムに(直接的または間接的に)提供するための出力を生成するようにさらに構成されたユーザインターフェースコンポーネント350を含む。ユーザインターフェースコンポーネント350は、キーボード、数字パッド、マウス、タッチセンサディスプレイ、デジタイザ、ナビゲーションキー、ファンクションキー、マイクロフォン、音声認識コンポーネント、ユーザから入力を受け取ることができる任意の他の機構、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の入力デバイスを含む。さらに、ユーザインターフェースコンポーネント350は、ディスプレイ、スピーカ、触覚フィードバック機構(haptic feedback mechanism)、プリンタ、ユーザに出力を提示することができる任意の他の機構、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の出力デバイスを含む。ある実装では、ユーザインターフェースコンポーネント350は、オペレーティングシステム360の動作に対応するメッセージを送信および/または受信することができる。コンピュータデバイス300がクラウドベースのインフラストラクチャソリューションの一部として実装される場合、ユーザインターフェースコンポーネント350は、クラウドベースのインフラストラクチャソリューションのユーザがコンピュータデバイス300とリモートでやりとりできるようにするために使用されてもよい。
【0031】
図1~3に記載されたシステムに関連して、イオントラップの動作を改良し、したがって、QIPシステムの全体的な動作を改良するために、オープン光アクセスおよび高アスペクトトレンチを有する電極を有するように構成されたイオントラップを設計および製造することは有用であろう。
【0032】
図4は、オープン光アクセスおよび高アスペクトトレンチを有する電極を提供するように構成されたメタルオンガラストラップの等角図を示すダイヤグラム400を示す。このメタルオンガラストラップの例は、イオンベースの量子ビットと共に使用するように構成されており、したがってイオントラップと呼ばれるが、上述したようにメタルオンガラストラップは異なるタイプの量子ビットと共に使用されてもよい。示されるイオントラップは、ガラス基板とも呼ばれるガラスダイまたはウェハ410上に構築または製造することができる。示されるように、ガラス基板410は、細長いデバイスであってもよく、1つの方向はデバイスの長さに沿った方向であってもよく、別の方向はデバイスの幅に沿った方向であってもよい。この例では矩形の形状を有するように示されているが、ガラス基板410はそのような形状に限定される必要はない。このようなガラス基板に使用される材料の例は、溶融シリカであるが、他のガラス状材料を使用することもできる。
【0033】
イオントラップは、ガラス基板410の表面(単数または複数)420上に金属層(単数または複数)425を蒸着、スパッタリング、またはその他の方法で堆積させることによって製造することができ、表面420は、金属層425によって形成された電極間の絶縁を提供する溝およびアンダーカットを生成するために適切にエッチングまたは成形される。表面420は、例えば、ガラス基板410の最上面である場合、上面と呼ばれることがある。この金属層425は単一の金属層であってもよいが、複数の金属層も使用してもよい。金属層425は、純金属製であってもよいか、または合金製であってもよい。表面420の上に形成される電極は、イオントラップの両端(例えば、イオントラップの遠位端)からイオントラップの中央または中間領域430まで配線される。示されるように、トラップの遠位端では、電極は、イオントラップ上の電極と、イオントラップが配置される基板またはインターポーザ上の電気トレースとの間のワイヤボンディングを容易にするために角度が付けられてもよい。電極の他端が終端し、図1に示される線形結晶または鎖110内のイオン106がトラップされる場所は領域430内である。本明細書に記載されるイオントラップが、金属層425の蒸着によって作製される場合、イオントラップは蒸着ガラストラップ(EGT)と呼ばれることがあるか、または上述のように、それらは、より一般的にはメタルオンガラストラップと呼ばれることがある。
【0034】
上述した構造の変形例として、金属425の層を使用する代わりに、非金属導電性コーティング425の層を使用することもできる。非金属導電性材料の例は、インジウムスズ酸化物(ITO)であるが、他のそのような材料も使用してもよい。メタルオンガラストラップという用語は、導電性電極がガラス基板上に使用されていることを示すために、これらのタイプの構造においても使用することができる。
【0035】
上述したように、図4のダイヤグラム400に示されるイオントラップは、金属化されたトレンチを有する電極およびオープン光アクセスを提供する特徴を含む。これらのイオントラップは、ガラス基板410を成形し(例えば、レーザ書き込みおよびエッチング技術を使用することによって)、次いで1つまたは複数の金属層425を上に蒸着させることによって製造することができる(例えば、図7に提供されるプロセスの詳細を参照のこと)。ガラス形状のオーバーハングによって影になった領域は、金属の領域間の切断を形成し、単一のデバイス上に多数の絶縁電極を形成することを可能にする。トラップのさらなる成形は、例えば、面取りされた、傾斜した、または角度を付けられたカットアウト領域を形成することによって達成することができ、これらは、平坦な表面よりも光アクセスの改善を提供することができる。例えば、集光レーザまたは光ビームを他の方法で干渉またはクリップする可能性のあるトラップの部分を除去することによって、集光レーザまたは光ビームによるより良好なアクセスをトラップされたイオンに提供することができる。電極を形成するための蒸着プロセスで使用される金属化は、単一の金属(例えば、金(Au))または異なる金属の層化(例えば、クロム(Cr)の後にAu)を含む。上述のように、適切な機械的および電気的特性を提供する金属合金も、金属蒸着プロセスで使用することができる。
【0036】
図5は、角度を付けられたウィングまたはカットアウト510を有することにより、高開口数(NA)の光アクセスを有するメタルオンガラストラップの例を示すダイヤグラム(diagram)500を示す。ガラス基板410の表面420は、ガラス基板410にカットアウト510を形成するために、(例えば、エッチング技術によって)切断または成形することができ、これにより、強く集光されたレーザビーム520が、レーザビーム520をクリッピングすることなく、メタルオンガラストラップの中心に到達することができる。この例では、カットアウト510がガラス基板410の一方の側に作製され、別のカットアウト510が反対側に作製される。このように、メタルオンガラストラップの構造は、レーザビーム520が、ガラス基板410の両側でクリップされることなく、イオン106が閉じ込められるメタルオンガラストラップの領域で最小のビームウエストまで絞られることを可能にすることによって、上述したオープン光アクセスを提供する。これにより、レーザビーム520の集光が良好になり、全体的な性能が向上する。
【0037】
さらに、カットアウト510に角度を付けることによって、電極を形成する特徴(例えば、図7において以下でより詳細に説明されるシャドーイング構造を介する)は、イオントラップの全体的な電気接続性を改良するために、これらの領域上に拡張することができる。すなわち、カットアウト510の傾斜または角度は、メタルオンガラスの不動産(real estate)のより大きな部分が配線に使用されるので、良好な全体的な接続性を提供するカットアウト510の領域上に電極が配線されることを依然として可能にする。
【0038】
代替的なある実装では、カットアウト510に角度を付けるのではなく、より優れた機械的強度を提供するために、代わりにウィングを平坦(例えば、鋭利な/段差のある側壁を有する平坦なカットアウト)にすることができる。しかしながら、このアプローチは、平坦なウィングの鋭利なエッジが、電極がカットアウト510の領域を通って拡張することができない場合があるので、全体的な電気接続性を制限する場合がある。このアプローチでは、メタルオンガラスの不動産のより小さな部分が配線に使用され、達成される全体的な接続性が低下する場合がある。
【0039】
図6は、メタルオンガラストラップの上面図、およびトラップの電極への電気接続を行うために使用されるワイヤボンドを示すダイヤグラム600を示す。この例では、上面420に形成された電極は簡略化のために示されていない。示されているのは、電極の端部に接続されたワイヤボンド610および620であり、ワイヤボンド610および620の外側端部は、メタルオンガラストラップが配置される電気配線基板(例えば、インターポーザ)に接続される(図示せず)。ワイヤボンド620は、メタルオンガラストラップの両端からまっすぐに延びているが、ワイヤボンド610は、レーザビーム630のための追加の明確なアクセスを提供するために角度が付けられている。この例はワイヤボンド610を45度で示しているが、ワイヤボンド610は45度とは異なる角度、例えば15度以下の角度から60度以上の角度までの範囲で設定することができる。
【0040】
したがって、図5のダイヤグラム500に示されるカットアウト510によって提供されるオープンアクセスに加えて、メタルオンガラストラップのための提案される構造はまた、図6のダイヤグラム600に示されるように、レーザまたは光ビームが印加される角度でより多くの柔軟性を可能にする。
【0041】
図7は、トラップの電極を生成するために形成される異なるタイプの電極またはシャドウ構造を有するメタルオンガラストラップの断面を示すダイヤグラム700を示す。示される構造の各々は、図4~6のダイヤグラム400、500、および600に関連して上述された電極の形成および電極配線を含む、特定の用途のためのトラップ製造において使用される。
【0042】
ガラス基板410は、上面を適切に成形することによって処理される。例えば、上面は、異なる電極またはシャドウ構造を生成するために、1つまたは複数の異なるタイプのエッチング技術を使用することによって成形される。ガラス基板410は最初に成形され、次に金属コーティング(例えば、金属層425)がガラス基板410上に蒸着される。上述したように、金属コーティングは、単一の金属(例えば、Au)または異なる金属の層化(例えば、Crの後にAu)を含む。
【0043】
金属コーティングは、上面、露出した底面、側壁、および上面の成形から生じる角度を付けられたウィングまたは傾斜した壁をコーティングするために、様々な個別の角度(例えば、異なる蒸着角度EVAP1、EVAP2、およびEVAP3を参照のこと)で(例えば、蒸着により)堆積させることができる。コーティングは、堆積源に対して個別の角度で段階的に行われるか、堆積プロセス中の連続的な動きによって行われるか、または両方の技術の組み合わせによって行われる。例えば、ガラス基板410を移動させながらある角度で蒸着が適用され、ガラス基板410を移動させながら異なる角度で後続の動作が実施される。本明細書に記載されるアプローチは、例えば、以下の特徴:アンダーカット710、両側のアンダーカット720、片側のアンダーカット730、アンダーカットなし740、および傾斜壁750のうちの1つまたは複数を実装することによって、絶縁トラップ電極を形成することができる。場合によっては、2つのアンダーカットの特徴により、電極の一部分または周囲の構造の完全なアンダーカットを得ることができ、その部分が完全なアンダーカットの上に結合して連続した電極を形成する。
【0044】
上記の製造の変形例として、コーティングは、インジウムスズ酸化物(ITO)などの非金属導電性コーティングであってもよい。
【0045】
図8は、メタルオンガラストラップを製造するための方法またはプロセス800のフローチャートを示す。810において、ガラス基板(例えば、ガラス基板410)がメタルオンガラストラップの製造のために提供される。820において、ガラス基板の上面(例えば、表面420または最上面420)は、電極構造(例えば、電極構造710、720、730、740、および750)を形成するように成形される。830において、1つまたは複数の金属層(例えば、金属層425)が、メタルオンガラストラップの電極を生成するために成形された上面の電極構造上に堆積(例えば、蒸着、スパッタリング)される。ガラス基板を成形することによって作製された構造は、電極に必要な電気的絶縁を提供する。
【0046】
方法800の別の態様では、ガラス基板は溶融シリカ製である。
【0047】
方法800の別の態様では、1つまたは複数の金属層の堆積は、金の層の堆積を含む。
【0048】
方法800の別の態様では、1つまたは複数の金属層の堆積は、最初にクロムの層の堆積を含み、次にクロムの層の上に金の層の堆積を含む。
【0049】
方法800の別の態様では、ガラス基板の上面の成形は、1つまたは複数のエッチングプロセス(例えば、化学エッチング、レーザエッチング、またはそれらの組み合わせ)によって実施される。
【0050】
方法800の別の態様では、ガラス基板の上面の成形は、メタルオンガラストラップの動作中にレーザビームのためのオープンアクセスを提供するために、メタルオンガラストラップの片側または両側にカットアウト(例えば、カットアウト510)を形成することを含む。カットアウトは角度を付けられたカットアウトであってもよく、電極の少なくとも一部分は角度を付けられたカットアウトの領域を通して配線されるか、またはカットアウトは平坦なカットアウトであってもよく、電極のいずれも平坦なカットアウトの領域を通して配線されなくてもよい。
【0051】
方法800の別の態様では、1つまたは複数の金属層の堆積は、異なる蒸着角度、異なる蒸着ステップ、連続運動、またはそれらの組み合わせを使用して蒸着させることを含む。異なる蒸着ステップ/角度の例は、図7のダイヤグラム700においてEVAP1、EVAP2、およびEVAP3で示されている。例えば、複数の蒸着角度が同時に適用されるか、またはいくつかの蒸着角度が連続して適用される。いずれの場合も、ガラス基板は固定位置に保持されてもよいか、または蒸着プロセス中に蒸着源に対して移動されてもよい。
【0052】
方法800の別の態様では、メタルオンガラストラップの電極の一部分について、イオントラップの遠位端に近い電極の端部は、電気配線基板への角度を付けられたワイヤボンドを可能にするように角度を付けられる。電極の角度を付けられた端部は、15度から60度の間で角度が付けられ、45度が典型的な角度である。
【0053】
メタルオンガラストラップを製造するための図8の方法またはプロセス800に関連して、ガラス基板と、ガラス基板の上面を成形することによって形成された電極構造上に堆積した金属から作製された電極とを含む、原子ベースの量子ビットを保持するためのメタルオンガラストラップも記載される。ガラス基板は、例えば、溶融シリカ製であってもよい。さらに、堆積した(例えば、蒸着、スパッタリングされた)金属は、金の層を含んでもよいか、またはクロムの第1の層を含み、次にクロムの第1の層の上に金の層を含んでもよい。
【0054】
メタルオンガラストラップに関して、ガラス基板の上面(または最上面)の成形は、メタルオンガラストラップの動作中にレーザビームのためのオープンアクセスを提供するためにメタルオンガラストラップの両側にカットアウトを含む。カットアウトは角度を付けられたカットアウトであってもよく、メタルオンガラストラップの電極の少なくとも一部分は角度を付けられたカットアウトの領域を通して配線される。あるいは、カットアウトは、平坦なカットアウトであってもよく、メタルオンガラストラップの電極のいずれも平坦なカットアウトの領域を通して配線されない。
【0055】
メタルオンガラストラップの電極の一部分に関して、メタルオンガラストラップの遠位端(例えば、メタルオンガラストラップの長さの遠端)に近い電極の端部は、電気配線基板(例えば、キャリアまたはインターポーザ)への接続のための角度が付けられたワイヤボンドを可能にするように角度が付けられている。電極は15度から60度の間で角度が付けられてもよい。
【0056】
例えば、図2のQIPシステム200などのQIPシステムは、チャンバと、原子ベースの量子ビットを保持するためのメタルオンガラストラップとを含むことができ、メタルオンガラストラップはチャンバ内にある。メタルオンガラストラップは本明細書に記載されている通りである。例えば、メタルオンガラストラップは、ガラス基板と、ガラス基板の上面を成形することによって形成された電極構造上に堆積した金属から作製された電極とを含むことができる。QIPシステムはまた、メタルオンガラストラップの電極に印加される信号の生成を制御するように構成された光学およびトラップコントローラを含むことができる。
【0057】
本開示の上記の説明は、当業者が本開示を行うかまたは使用できるようにするために提供される。本開示の様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に定義される共通の原理は、本開示の範囲から逸脱することなく他の変形に適用される。さらに、記載された態様の要素は単数形で記載または特許請求される場合があるが、単数形への限定が明示的に示されていない限り、複数形が企図される。さらに、別段の記載がない限り、いずれかの態様の全部または一部分は、いずれかの他の態様の全部または一部分と共に利用されてもよい。したがって、本開示は、本明細書に記載された例および設計に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】