(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】炭素質材料を生成するための反応器および方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/16 20170101AFI20240725BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C01B32/16
B01J8/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504955
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022038362
(87)【国際公開番号】W WO2023009532
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033412
【氏名又は名称】パクト ヒューエル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ジャンバワラ,ジュゼール
(72)【発明者】
【氏名】サーキッシャン,アラム
【テーマコード(参考)】
4G070
4G146
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB32
4G070CA03
4G070CA06
4G070CA16
4G070CA18
4G070CB07
4G070CB08
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4G070CC01
4G070CC11
4G070DA21
4G146AA11
4G146AB06
4G146BA12
4G146BC08
4G146BC22
4G146BC33B
4G146BC42
4G146DA03
4G146DA25
4G146DA50
(57)【要約】
本開示の実施形態において、静止または回転分配器を有する、ガス状炭化水素をナノファイバーおよび他の炭素質材料と水素に分解するための回転媒体流動床反応器は、ガス不透過性構造体の周囲に反応物ガス流のスリップ速度渦を生じるために、1つ以上の周辺ガス分配器と流体連通している実質的に中空のガス不透過性構造体を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有ガスの入口、
連続側壁および前記炭化水素含有ガスを受容するための中空内部容積を含むガス不透過性構造体、
前記ガス不透過性構造体の周辺部の周りに位置決めされ、前記中空内部容積と流体連通して、前記中空内部容積から前記炭化水素含有ガスの少なくとも大部分を受容し、前記ガス不透過性構造体の外部に位置する反応ゾーンに前記炭化水素含有ガスを排出して渦流体流を生じる複数のガス分配器であって、前記反応ゾーンが、前記炭化水素含有ガス中の炭化水素の分解を引き起こして炭素質材料を形成するための懸濁触媒粒子を含む、複数のガス分配器;および
実質的に前記渦流体流の軸に位置決めされる入口を有する、反応ガスを受容するための出口ガス導管
を含む、回転媒体流動床反応器システム。
【請求項2】
前記炭化水素含有ガス中の炭化水素がカーボンナノファイバーと水素ガスに触媒分解し、前記複数のガス分配器が実質的に静止しており、前記複数のガス分配器が、排出された前記炭化水素含有ガスを、前記反応器の中心軸に対して横方向の流路に沿って誘導するための角度付き傾斜面をそれぞれ含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項3】
前記連続側壁が円弧状であり、前記ガス不透過性構造体が、反応器円筒状側壁の長手方向軸を中心とする円錐を含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項4】
前記複数のガス分配器のそれぞれが、入口および出口、ならびに前記入口および出口を相互接続する通路を含み、前記出口が実質的に垂直な表面にあり、前記通路が円弧状の中心軸を含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項5】
前記炭化水素含有ガスの圧力が約50~約50,000Paの範囲であり、前記中空内部容積内の前記炭化水素含有ガスの第1の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記複数のガス分配器のそれぞれからの排出時の前記炭化水素含有ガスの第2の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記反応ゾーン内の前記炭化水素含有ガスの第3の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記反応ゾーンにおける前記炭化水素含有ガスの温度が約550~約850℃の範囲であり、粒子状触媒粒子のP
90径が約0.1~約5ミクロンの範囲であり、前記ガス不透過性構造体が円錐であり、前記円錐の高さ(H)対円錐の直径(D)の比が約1:1~約6:1の範囲である、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項6】
第1のモードにおいて、前記ガス不透過性構造体が、炭化水素の触媒分解を可能にするために気密封止された第1の位置にあり、第2のモードにおいて、前記ガス不透過性構造体が、前記反応ゾーンからの炭素質材料の除去を可能にするために気密封止されていない異なる第2の位置にある、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項7】
前記反応ガスの流れ方向に対して横方向の流れ方向にカーテンガスを排出して、前記反応ガスの速度を低下させ、同伴された触媒粒子の前記出口ガス導管への進入を実質的に抑制するために、前記出口ガス導管の前記入口に位置決めされたガスカーテン発生器をさらに含む、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項8】
炭化水素含有ガスを回転媒体流動床反応器の入口に導入するステップであって、前記回転媒体流動床反応器が、
連続側壁および前記炭化水素含有ガスを受容するための中空内部容積を含むガス不透過性構造体、および
前記ガス不透過性構造体の周辺部に位置決めされ、前記中空内部容積と流体連通し、前記中空内部容積から前記炭化水素含有ガスの少なくとも大部分を受容し、前記炭化水素含有ガスを前記ガス不透過性構造体の外部に位置する反応ゾーンに排出して渦流体流を生じるガス分配器であり、前記反応ゾーンが、前記炭化水素含有ガス中の炭化水素の分解を引き起こして炭素質材料を形成するための懸濁触媒粒子を含む、ガス分配器
を含む、ステップ、
前記反応器の出口ガス導管から反応ガスを除去するステップ、ならびに
炭素質生成物および触媒粒子を含む複合材料を前記反応器から除去するステップ
を含む、方法。
【請求項9】
前記連続側壁が円弧状であり、前記炭化水素含有ガス中の炭化水素がカーボンナノファイバーと水素ガスに触媒分解し、前記ガス分配器が、前記ガス不透過性構造体の周辺部の周りに実質的に均一に位置決めされた複数の実質的に静止したガス分配器を含み、前記ガス分配器が、排出された前記炭化水素含有ガスを、前記反応器の中心軸に対して横方向であり、前記ガス不透過性構造体の前記連続側壁に対して接線方向の流路に沿って誘導するための角度付き傾斜面を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス不透過性構造体が多角柱を含み、前記連続側壁が前記多角柱の表面であり、前記多角柱が実質的に反応器円筒状側壁の長手方向軸を中心とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス分配器が、前記ガス不透過性構造体の周辺部の周りに実質的に均一に位置決めされた複数の実質的に静止したガス分配器を含み、前記ガス分配器のそれぞれが、入口および出口、ならびに前記入口および出口を相互接続する通路を含み、前記通路が円弧状の中心軸を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素含有ガスの圧力が約50~約50,000Paの範囲であり、前記中空内部容積内の前記炭化水素含有ガスの第1の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記ガス分配器からの排出時の前記炭化水素含有ガスの第2の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記反応ゾーン内の前記炭化水素含有ガスの第3の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記反応ゾーンにおける前記炭化水素含有ガスの温度が約550~約850℃の範囲であり、粒子状触媒粒子のP
90径が約0.1~約5ミクロンの範囲であり、前記ガス不透過性構造体が円錐であり、前記円錐の高さ(H)対円錐の直径(D)の比が約1:1~約6:1の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記複合材料を除去する前記ステップが、
前記ガス不透過性構造体を、炭化水素の触媒分解を可能にするために気密封止された第1の位置から、前記反応ゾーンからの複合材料の除去を可能にするために気密封止されていない異なる第2の位置に移動させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
導入する前記ステップ中に、前記反応ガスの流れ方向に対して横方向の流れ方向にカーテンガスを排出して前記反応ガスの速度を低下させ、同伴された触媒粒子の前記出口ガス導管への進入を実質的に抑制すること、および
導入する前記ステップ中に、前記ガス分配器を前記ガス不透過性構造体の長手方向軸を中心に回転させること、
前記炭素質材料を前記触媒粒子から分離して炭素質生成物を形成すること、および
前記触媒粒子を、導入する前記ステップにリサイクルすること
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素含有ガスの入口、
連続側壁および前記炭化水素含有ガスを受容するための中空内部容積を含むガス不透過性構造体、
前記ガス不透過性構造体の周辺部付近に位置決めされ、前記中空内部容積と流体連通して、前記中空内部容積から前記炭化水素含有ガスの少なくとも大部分を受容し、前記ガス不透過性構造体の外部に位置する反応ゾーンに前記炭化水素含有ガスを排出して渦流体流を生じるガス分配器であって、前記反応ゾーンが、前記炭化水素含有ガス中の炭化水素の分解を引き起こして炭素質材料を形成するための懸濁触媒粒子を含む、ガス分配器、および
実質的に前記渦流体流の軸に位置決めされる入口を有する、反応ガスを受容するための出口ガス導管
を含む、回転媒体流動床反応器。
【請求項16】
前記ガス不透過性構造体が多角柱を含み、前記連続側壁が前記多角柱の表面であり、前記炭化水素含有ガス中の炭化水素がカーボンナノファイバーと水素ガスに触媒分解し、前記ガス分配器が前記ガス不透過性構造体の長手方向軸を中心に回転可能であり、前記ガス分配器が、排出された前記炭化水素含有ガスを前記反応器の中心軸に対して横方向の流路に沿って誘導する角度付き傾斜面を含む、請求項15に記載の反応器。
【請求項17】
前記連続側壁が円弧状であり、前記ガス不透過性構造体が、反応器円筒状側壁の長手方向軸を中心とする円錐を含む、請求項15に記載の反応器。
【請求項18】
前記ガス分配器が、前記ガス不透過性構造体の周辺部の周りに実質的に均一に位置決めされた複数の実質的に静止したガス分配器を含み、前記ガス分配器のそれぞれが、入口および出口、ならびに前記入口および出口を相互接続する通路を含み、前記出口が実質的に垂直な表面にあり、前記通路が円弧状の中心軸を含む、請求項15に記載の反応器。
【請求項19】
前記炭化水素含有ガスの圧力が約50~約50,000Paの範囲であり、前記中空内部容積内の前記炭化水素含有ガスの第1の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記複数のガス分配器のそれぞれからの排出時の前記炭化水素含有ガスの第2の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記反応ゾーン内の前記炭化水素含有ガスの第3の速度が約0.5~約20fpsの範囲であり、前記反応ゾーンにおける前記炭化水素含有ガスの温度が約550~約850℃の範囲であり、粒子状触媒粒子のP
90径が約0.1~約5.0ミクロンの範囲であり、前記ガス不透過性構造体が円錐であり、前記円錐の高さ(H)対円錐の直径(D)の比が約1:1~約6:1の範囲である、請求項1に記載の反応器。
【請求項20】
第1のモードにおいて、前記ガス不透過性構造体が、炭化水素の触媒分解を可能にするために気密封止された第1の位置にあり、第2のモードにおいて、前記ガス不透過性構造体が、前記反応ゾーンからの炭素質材料の除去を可能にするために気密封止されていない異なる第2の位置にある、請求項1に記載の反応器。
【請求項21】
前記反応ガスの流れ方向に対して横方向の流れ方向にカーテンガスを排出して前記反応ガスの速度を低下させ、同伴された触媒粒子の前記出口ガス導管への進入を実質的に抑制するために、前記出口ガス導管の前記入口に位置決めされたガスカーテン発生器をさらに含む、請求項1に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれる、「Reactor and Process for Producing Carbonaceous Materials」と題する、2021年7月26日に出願された米国仮出願第63/225,918号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、炭素質材料を生成するための反応器および方法、特にカーボンナノ材料、具体的にはカーボンナノファイバー材料を生成するための反応器および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
下記の反応スキーム(1)によって示されるメタンの炭素と水素ガスへの熱分解は、中程度の吸熱プロセスであるが、生成される炭素1モル当たりのそのエネルギー必要量(75.6kJ/mol)は、水蒸気改質プロセスによって要求されるもの(約190kJ/mol)よりも顕著に低い。さらに、水蒸気改質とは異なり、メタンの熱分解によって生成される水素は、酸素のない環境で生成することができ、水-ガスシフト反応を伴わないため、反応は高純度の炭素と一酸化炭素を含まない水素ガスストリームの両方を生成することができる。
CH4+75.6kJ/mol→C+2H2
【0004】
天然ガスの熱分解は、カーボンブラックを生成するために長年使用されており、得られた水素ガスは、プロセスの補助燃料として使用されている。これらのプロセスは、通常、高い操作温度(典型的に約1,400℃)で2つのタンデム反応器を使用して半連続的に実施されるが、当業者は、触媒作用によってこれらの操作温度を下げることを試みてきた。アルミニウム、コバルト、クロム、鉄、ニッケル、白金、パラジウムおよびロジウム系触媒を使用したメタンの触媒分解に関するデータが文献に報告されている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Marina A. Ermakova et al,"Decomposition of methane over iron catalysts at the range of moderate temperatures: the influence of structure of the catalytic systems and the reaction conditions on the yield of carbon and morphology of carbon filaments", 201(2) Journal of Catalysis 183 (July 2001)を参照されたい。
【0005】
メタンの直接触媒分解は、熱分解に比べて2つの大きな利点をもたらす:(i)操作温度を約1,400℃から少なくとも約550℃の低さまで劇的に下げることができ、それによりプロセスのエネルギー入力必要量を大幅に低下させる、および(ii)触媒の公正な使用によって高価値の様々な人工カーボンナノ構造体も作り出され、それによりプロセスの商業的価値を高めることができる。天然ガスは広く大量に入手可能であるため、メタンを触媒分解して水素ガスおよび高価値のカーボンナノ構造体を工業規模で生成することは技術的に実行可能である。しかし、この分解プロセスが実用的(すなわち商業的かつ経済的)な意義を持つためには、これまで利用不可能であった非常に効果的な触媒が必要である。そのような触媒は、長期間にわたって高い活性を示し、高濃度の蓄積炭素の存在下で機能し続けるべきである。
【0006】
さらに、メタンの触媒分解は、金属粒子径に対する厳密な要件、および触媒の形態に有害な影響を及ぼす反応条件の傾向のために、変化しやすいプロセスであり得る。以前の研究では、触媒の平均粒子径が約30~40nmの場合に固体炭素の収率が最も高くなることが示されているが、ニッケル触媒粒子は、触媒がメタンと接触するとすぐに、望ましくなく凝集する可能性があることも示されている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、M. A. Ermakova et al., "XRD studies of evolution of catalytic nickel nanoparticles during synthesis of filamentous carbon from methane", 62(2) Catalysis Letters 93 (Oct. 1999)を参照されたい。この粒子のシンタリング挙動は、触媒活性を低下させる。したがって、メタンの触媒分解によって炭素および水素を作り出すという概念は強い関心を集め、技術的実行可能性を示したものの、所望される高品質の炭素質生成物を一貫して達成することは達成困難であった。当技術分野における多くの以前のアプローチは、生成される炭素ナノ材料の種類のいかなる程度の制御ももたらすことができず、結果として、これらのアプローチの炭素質生成物は、典型的に困難で、高価で、および/または時間のかかる化学的および物理的プロセスによって精製されなければならず、商業的用途には実用的ではない。
【0007】
さらに、メタンの接触分解および他の固体炭素生成反応器のほとんどは固定床型であり、多くの欠点がある:
a)吸熱反応は触媒の表面温度を低下させ、触媒の活性面上に炭素固体を緩徐から急速に形成させ、それにより触媒を不活性化する。これにより、最終的に収率が非常に低くなり、反応器の構成が固体炭素構造体の生成に適さなくなる。
b)静止した触媒粒子が固体カーボンナノ材料によって覆われ、炭素分子が触媒表面に化学吸着する駆動力が減少する。
【発明の概要】
【0008】
これらおよび他の必要性は、本開示の様々な態様、実施形態および構成によって対処される。
【0009】
本開示の一実施形態では、回転媒体流動床反応器は以下を含んでもよい:
a.炭化水素含有ガスの入口、
b.連続側壁および炭化水素含有ガスを受容するための中空内部容積を含むガス不透過性構造体、
c.ガス不透過性構造体の周辺部の周りに位置決めされ、中空内部と流体連通して、中空内部容積から炭化水素含有ガスの少なくとも大部分を受容し、ガス不透過性構造体の外部に位置する反応ゾーンに炭化水素含有ガスを排出して渦流体流を生じる複数のガス分配器であって、反応ゾーンが、炭化水素含有ガス中の炭化水素の分解を引き起こして炭素質材料を形成するための懸濁触媒粒子を含む、複数のガス分配器、および
d.実質的に渦流体流の軸に位置決めされる入口を有する、反応ガスを受容するための出口ガス導管。
【0010】
本開示の一実施形態では、方法は以下のステップを含んでもよい:
a.炭化水素含有ガスを回転媒体流動床反応器の入口に導入するステップであって、流動床反応器が、
b.連続側壁および炭化水素含有ガスを受容するための中空内部容積を含むガス不透過性構造体、および
c.ガス不透過性構造体の周辺部に位置決めされ、中空内部と流体連通し、中空内部容積から炭化水素含有ガスの少なくとも大部分を受容し、炭化水素含有ガスをガス不透過性構造体の外部に位置する反応ゾーンに排出して渦流体流を生じるガス分配器であり、反応ゾーンが、炭化水素含有ガス中の炭化水素の分解を引き起こして炭素質材料を形成するための懸濁触媒粒子を含む、ガス分配器
を含む、ステップ、
d.反応器の出口ガス導管から反応ガスを除去するステップ、ならびに
e.炭素質生成物および触媒粒子を含む複合材料を反応器から除去するステップ。
【0011】
本開示の一実施形態では、回転媒体流動床反応器は以下を含んでもよい:
a.炭化水素含有ガスの入口、
b.連続側壁および炭化水素含有ガスを受容するための中空内部容積を含むガス不透過性構造体、
c.ガス不透過性構造体の周辺部付近に位置決めされ、中空内部と流体連通して、中空内部容積から炭化水素含有ガスの少なくとも大部分を受容し、ガス不透過性構造体の外部に位置する反応ゾーンに炭化水素含有ガスを排出して渦流体流を生じるガス分配器であって、反応ゾーンが、炭化水素含有ガス中の炭化水素の分解を引き起こして炭素質材料を形成するための懸濁触媒粒子を含む、ガス分配器、および
d.実質的に渦流体流の軸に位置決めされる入口を有する、反応ガスを受容するための出口ガス導管。
【0012】
ガス不透過性構造体は、多数の三次元形状を有することができる。例えば、ガス不透過性構造体は多角柱を含んでもよく、ここで側壁は多角柱の表面である。ガス不透過性構造体は、円錐または円錐台状柱の側壁などの円弧状側壁を含んでもよい。
【0013】
反応器システム内ではあらゆる反応が起こり得るが、反応器および方法は通常、炭化水素含有ガス中の炭化水素をカーボンナノファイバーと水素ガスに触媒分解するために使用される。
【0014】
ガス分配器は静止していてもよく、ガス不透過性構造体の周辺部の周りに実質的に均一に位置決めされた複数のガス分配器を含んでもよい。
【0015】
ガス分配器は回転可能であり、反応器および/またはガス不透過性構造体の長手方向軸を中心に回転することができる。
【0016】
渦流パターンを支援し、より良好な触媒粒子懸濁を提供するために、各ガス分配器は、排出された炭化水素含有ガスを反応器の中心軸に対して横方向および/またはガス不透過性構造体の連続側壁に対して接線方向の流路に沿って上方に誘導するために、上方に角度付けられた傾斜面を含んでもよい。複数のガス分配器のそれぞれは、それぞれがオリフィスの閉塞を回避するために実質的に垂直な平面で配向され得る入口および出口、ならびに入口および出口を相互接続する通路を含み、通路は円弧状の中心軸を有してもよい。
【0017】
反応器システムの操作条件は、特定の実装形態に依存する。典型的に、操作条件は、約5000Pa~約50,000Paの範囲の炭化水素含有ガスの圧力、約0.5~約20fpsの範囲の中空内部における炭化水素含有ガスの第1の速度、約0.5~約20fpsの範囲の、ガス分配器からの排出時の炭化水素含有ガスの第2の速度、約0.5~約20fpsの範囲の反応ゾーンにおける炭化水素含有ガスの第3の速度、約550~約750℃の範囲の反応ゾーンにおける炭化水素含有ガスの温度、約0.1~約5.0ミクロンの範囲の粒子状触媒粒子のP90径、および約1:1~約6:1の範囲のガス不透過性構造体の高さ(H):ガス不透過性構造体の直径(D)または幅(W)の比を含む。
【0018】
反応器は、炭素質生成物を除去するためにバイモーダル技術を使用してもよい。第1のモードでは、ガス不透過性構造体は、炭化水素の触媒分解を可能にするために気密封止された第1の位置にあってもよく、第2のモードでは、ガス不透過性構造体は、反応ゾーンからの炭素質材料の除去を可能にするために気密封止されていない異なる第2の位置にあってもよい。
【0019】
反応器は、反応ガスの流れ方向に対して横方向の流れ方向にカーテンガスを排出して反応ガスの速度を低下させ、同伴された触媒粒子の出口ガス導管への進入を実質的に抑制するために、出口ガス導管の入口に位置決めされたガスカーテン発生器を含んでもよい。
【0020】
本開示は、特定の構成に応じて多くの利点を提供することができる。例えば、渦流はより高いスリップ速度を提供することができ、これはより良好な熱および物質移動を提供する。反応器システムは、バルク材料としてナノファイバーを安価に生成することができる。ナノファイバーの長さは、反応ゾーンにおけるガス速度を制御することによって制御することができる。すなわち、一般に、流動化ガス速度が高いほど、ガス乱流が増大するためにナノファイバー生成物の長さが短くなり、一方で流動化ガス速度が低いほど、ナノファイバー生成物の長さが長くなる。プロセスは、実装形態に応じて連続バッチプロセスまたは連続プロセスのいずれかであってもよい。
【0021】
これらおよび他の利点は、本明細書に含まれる態様、実施形態および構成の開示から明らかである。
【0022】
本明細書で使用される「少なくとも1つ」、「1つ以上」、ならびに「および/または」は、動作において接続的および離接的の両方であるオープンエンド表現である。例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」、「A、BおよびCのうちの1つ以上」、「A、BまたはCのうちの1つ以上」、「A、Bおよび/またはC」、ならびに「A、BまたはC」という表現のそれぞれは、A単独、B単独、C単独、AおよびB一緒、AおよびC一緒、BおよびC一緒、またはA、BおよびC一緒を意味する。上記の表現におけるA、BおよびCの各1つが、X、YおよびZなどの要素、またはX1~Xn、Y1~YmおよびZ1~Zoなどの要素のクラスを指す場合、語句は、X、YおよびZから選択される単一の要素、同じクラスから選択される要素の組合せ(例えば、X1およびX2)、ならびに2つ以上のクラスから選択される要素の組合せ(例えば、Y1およびZo)を指すことを意図する。
【0023】
用語「1つの(aまたはan)」実体は、1つ以上のその実体を指すことに留意されたい。したがって、用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書で互換的に使用されてもよい。また、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する」は、互換的に使用できることに留意されたい。
【0024】
本明細書で使用される用語「手段」は、米国特許法第112条(f)および/または第112条第6項に従い、その可能な限り最も広い解釈が与えられるものとする。したがって、用語「手段」を組み込んだ主張は、本明細書に規定されるすべての構造、材料、または行為、およびそれらの均等物のすべてを包含するものとする。さらに、構造、材料、または行為、およびそれらの均等物は、本開示の概要、図面の簡単な説明、詳細な説明、要約、および請求項自体に記載されているものをすべて含むものとする。
【0025】
別段断りのない限り、すべての成分または組成物のレベルは、その成分または組成物の活性部分に関するものであり、そのような成分または組成物の市販の供給源に存在し得る不純物、例えば、残留溶媒または副生成物を含まない。
【0026】
すべてのパーセンテージおよび比は、別段示されない限り、全組成重量によって計算される。
【0027】
本開示を通して与えられるすべての最大数値限定は、代替としてのあらゆるより低い数値限定を、あたかもそのようなより低い数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように含むとみなされることが理解されるべきである。本開示を通して与えられるすべての最小数値限定は、代替としてのあらゆるより高い数値限定を、あたかもそのようなより高い数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように含むとみなされる。本開示を通して与えられるすべての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲に入るあらゆるより狭い数値範囲を、あたかもそのようなより狭い数値範囲がすべて本明細書に明示的に記載されているかのように含むとみなされる。例として、約2~約4という語句は、約2~約3、約3~約4の自然数および/または整数の範囲、ならびに約2.1~約4.9、約2.1~約3.4などの実数(例えば、無理数および/または有理数)に基づく各可能な範囲を含む。
【0028】
前述は、本開示のいくつかの態様の理解を提供するための、本開示の簡略化された要約である。この要約は、本開示ならびにその様々な態様、実施形態、および構成の広範な概要でも網羅的な概要でもない。本開示の重要または重大な要素を特定することでも、本開示の範囲を画定することでもなく、以下に提示されるより詳細な説明への導入として、本開示の選択された概念を簡略化された形態で提示することが意図される。理解されるように、本開示の他の態様、実施形態および構成は、単独でまたは組み合わせて、上記で規定されたまたは以下で詳細に説明される特徴の1つ以上を利用することが可能である。また、本開示は、例示的な実施形態の観点から提示されるが、本開示の個々の態様は、別個に特許請求され得ることが理解されるべきである。
【0029】
添付の図面は、本開示のいくつかの例を例示するために本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本明細書と共に、本開示の原理を説明する。図面は、本開示がどのように作製および使用され得るかについて好ましい例および代替例を単に例示しており、本開示を例示および記載された例のみに限定すると解釈されるべきではない。さらなる特徴および利点は、以下で参照される図面によって例示される本開示の様々な態様、実施形態および構成の、以下のより詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】本開示の一実施形態による反応器システムのブロック図である。
【
図1B】本開示の一実施形態による反応器システムのブロック図である。
【
図2B】
図1の実施形態による反応器システムの正面図である。
【
図3】
図2Bの反応器システムの背面透視図である(反応器ハウジング側壁は省略されている)。
【
図4】
図2Bの反応器システムの上面透視図である(反応器ハウジング側壁は省略されている)。
【
図5】
図2Bの反応器システムの正面断面図である。
【
図6B】
図6Aに示される反応器システムの一部の組立図である。
【
図7】
図2Bの反応器システムの一部の断面図である。
【
図8】
図2Bの反応器システムのガス分配装置の側面図である。
【
図9】
図7に示される反応器システムの一部の解体図である。
【
図10】
図7に示される反応器システムの一部の透視解体図である。
【
図13】
図2Bの反応器システムのガス分配装置の平面図である。
【
図14】
図2Bの反応器システムのガス分配装置の一部の分解図である。
【
図15】
図2Bの反応器システムのガス分配装置の一部の分解図である。
【
図16】
図2Bの反応器システムのガス分配装置および反応器円錐の底面図である。
【
図18】
図2Bの反応器システムのガス分配装置および反応器円錐の一部の側面図である。
【
図19】
図18のガス分配装置および反応器円錐の一部の部分側断面図である。
【
図20】
図18のガス分配装置および反応器円錐の一部の側断面図である。
【
図21】
図18のガス分配装置および反応器円錐の一部の別の側断面図である。
【
図22】
図2Bの反応器システムのガスカーテン発生器の側面図である。
【
図27】生成物および触媒の除去を可能にする、
図2Bの反応器システムの反応器円錐装置の第1の空間位置を示す図である。
【
図28】生成物の触媒生成を可能にする、
図2Bの反応器システムの反応器円錐装置の第2の空間位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の実施形態では、ガス状炭化水素をナノファイバーおよび他の炭素質材料と水素に分解するための静止チャンバ回転媒体流動床反応器が記載される。反応器は、ガス不透過性円錐の周りに反応物ガス流のスリップ速度渦を生じるための角度付きスロットおよび/または精密オリフィスを含む静止または回転ガス分配器を有してもよい。「スリップ速度渦は、炭化水素ガスおよび粒子状触媒を含み、スリップ速度、または粒子状触媒の速度とガス相の速度との間の差を提供する渦流パターンを指す。流体力学において、渦は、流れが軸線を中心に回る流体中の領域であり、流れは直線であっても湾曲していてもよく、曲線であってもよい。以下で考察される実施形態は、静止ガス分配アセンブリを参照しているが、ガス分配アセンブリは、反応器内の中心に位置決めされた反応ガス出口配管の長手方向軸を中心に回転するように構成されてもよいことを理解されたい。
【0032】
図1Aを参照すると、本開示による炭化水素ガス分解反応器システム100の一実施形態が描写されている。反応器システム100は、導管105を介して粒子分離器122および熱交換器(HX)106と流体連通している、以下でより詳細に考察される反応器101を含む。新鮮な炭化水素フィード110は、HX106中で分離に適した温度まで予熱される。炭化水素ガス分解反応は、粒子状触媒123および炭化水素ガス110から第1の中間炭素質生成物および第2の中間炭素質生成物125および114を選択的に生成する。
【0033】
新鮮な炭化水素ガス110は、まずHX106内の生成物または反応ガス105からの廃熱によって予熱される。予熱されたガス110Aは混合タンク104に流れ、新しいメタンと回収されたメタンの混合物113として予熱器124に流れ込み、そこで圧力スイング吸着(PSA)からの回収された水素ストリーム111から部分的に迂回された水素111Aと共に加熱される。PSAは、業界で周知のガス分離デバイスであり、種の分子特性および吸着材料に対する親和性に応じて、加圧下でガスの混合物からガス種を分離する。圧力および温度を制御することにより、特定の露点を設定し、1種のガスが他のガスから移動するのを遅らせることができる。具体的には、本開示では、反応器からの生成物ガス105は、水素と未反応メタンの混合物である。PSAはメタンを混合タンク104に送り、そこで回収されたメタンは新鮮なメタンおよび水素と混合される。混合ガスは予熱器124によって反応温度まで予熱され、予熱混合ガスストリーム126として反応器にフィードされる。炭化水素ガスは、任意のガス状炭化水素であってもよく、より短鎖の炭化水素ガス、例えばアルカン群からのガス(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンおよびヘキサン)が典型的であり、メタンがより典型的である。炭化水素ガスはまた、アルケン基(炭素炭素二重結合)、アルキン基(炭素炭素三重結合)または芳香族基からの任意のガスであり得る。一実施形態では、炭化水素ガスは、少なくとも約50モルパーセント、より典型的には少なくとも約75モルパーセント、さらにより典型的には少なくとも約90モルパーセントのメタンを含み、残りは窒素、水素または二酸化炭素ガスである。粒子状触媒123上に形成される炭素質材料の酸化を回避するために、炭化水素ガス110を含む反応器システム100内のガスは、少なくとも実質的に分子状酸素および他の酸化剤を含まず、典型的に約0.01モル%以下の分子状酸素および他の酸化剤を含む。
【0034】
粒子状触媒123は、AL、NI、CU、Co、Cr、Fe、Ni、Pt、PdおよびRh系触媒ならびにこれらの金属の合金などの、任意の金属または金属間触媒であり得る。一実施形態では、触媒は、塩基性金属、遷移金属およびアルカリ土類金属の酸化物合金、例えば「Catalyst for the Generation of Graphitic Nonofibers and CO-Free Hydrogen」と題する、本明細書と同時に出願された米国出願_____に開示されている触媒である。粒子状触媒123は、典型的に約0.10~約5.0ミクロンの範囲のP90径を有する。
【0035】
粒子分離器122は、同伴された粒子状物質からガスを分離できる任意のデバイスであり得る。一実装形態では、粒子分離器122は、慣性の原理を使用して、同伴された粒子状物質を入力ガスストリームから除去するサイクロン分離器である。サイクロン分離器では、入力ガスは、螺旋状の渦を生じるチャンバにフィードされる。このガスのより軽質の成分は慣性がより小さいため、渦による影響を受けやすく、渦を上昇しやすい。反対に、粒子状物質のより大きな成分は、慣性がより大きく、渦による影響をそれほど容易に受けない。一実装形態では、粒子分離器122は遠心分離機である。サイクロンのように、遠心分離機は中心軸の周りで物体を回転させる。この回転は、密度が高い材料を密度がより低い材料よりも強く押し、物体をその密度によって分離する。
【0036】
いくつかの実装形態では、粒子分離器は、反応ガスを濾過物として通過させるが、同伴された粒子を保持物として保持するカートリッジ型フィルター要素123を含むハウジングであり、予熱された水素ガス109によって促進される自動バックパルスが、カートリッジのフィルター媒体から保持物を除去させるために使用される。フィルター媒体は、バルブ108Bを開いてバルブ108Aを閉じ、反応器101と熱交換器106との間の流体接続を一時的に中断して、炭素質材料の生成中に定期的にバックパルスされてもよい。バックパルスからの最初の中間炭素質固体125(濾過された固体)は、誘導されて反応器チャンバに戻る。
【0037】
混合炭化水素ガス113および水素111Aは、予熱器124によって予熱され、反応器101にフィードされ、そこで粒子状触媒123と相互作用して、第1または第2の中間炭素質生成物125および114を形成する。炭化水素ガスは、典型的に約550~約850℃の範囲の温度に加熱され、約5,000~約50,000Paの範囲の圧力および約0.5~約20fpsの範囲のガス速度で入力される。炭化水素ガス113は、反応器内で実質的に拡散または分配され、渦流パターンを形成することによって粒子状触媒を懸濁または流動化させる。炭素質材料、典型的にはカーボンナノ材料、より典型的にはカーボンナノファイバー材料は、懸濁された粒子状触媒123上で成長し、材料が閾値サイズに達すると、材料は流動化ガスの力を受けて破断し、流動化ガスによって懸濁され、流動化ガスが停止されると、第2の中間炭素質生成物として反応器の底部に落下する。一実装形態では、プロセスは、材料の破断を実質的に最小化し、粒子状触媒123および付着した炭素質材料を流動化ガスによって反応器101から除去し、粒子分離器122に入れ、そこで第1の中間炭素質生成物125としてガスから分離させる条件下で操作される。水素109を使用したカートリッジ型フィルター要素123へのバックパルスにより、第1の中間生成物は反応器101に戻される。
【0038】
別の実施形態では、粒子分離器122(
図1B)のカートリッジ型フィルター要素123は反応器内に垂下され、バックパルスは第1の中間炭素質生成物を反応器101に単に落下させて戻す。この実施形態では、外部粒子分離器122は典型的に利用されない。
【0039】
反応器を出て粒子分離器122に入る粒子の体積を実質的に最小化する
図2Aを再び参照すると、粒子状触媒123および中間炭素質生成物が反応器101から出るのを抑制する機構が提供される。ガス流導管112を介して、カーテンガス158(例えば、水素ガスまたは希ガスなどの還元性ガス)が、導管112内でガスカーテンまたは逆ガス流を形成し、ガス速度の低下を引き起こす。以下で考察されるように、低下したガス速度は、粒子状触媒123および/または中間炭素質生成物を同伴するのに必要なガス速度未満であり、それにより粒子を反応器101内に残留させる。理解されるように、カーテンガス158の逆速度は、ガス流導管112内のガスの出口速度未満であり、より典型的には約75%以下であり、さらにより典型的には出口速度の約50%以下である。
【0040】
ここで
図2Aを参照すると、反応器システム200のより詳細な実施形態が描写される。
【0041】
入力ガス圧縮機またはブロワー108は、入力ガス流導管120を介して、典型的には約0.5~約20fpsの範囲のガス速度で、予熱された炭化水素ガス110を反応器にフィードする。炭化水素ガス110は、円錐212およびガス分配器システム216を含むガス分配器アセンブリ204を通して、第1の速度(典型的には約0.5~約20fpsの範囲)で押し出され、ガス流矢印220(これは典型的に円錐212の曲面に対して実質的に接線方向である)で示されるように、円錐212の周囲でより低い第2の速度(典型的には約0.5~約20fpsの範囲)で旋回する流入ガスから渦208を生じる。反応器円錐212は、ガス渦208が回転するための円錐形のガス不透過性構造体を提供する。
【0042】
円錐212のテーパー付き連続側壁は、円錐側壁と反応器101の内面との間の領域に対して異なる流れの断面積を提供する。円錐の基部から円錐の頂点へと漸増する変化する流れの断面積は、異なる速度ゾーンおよび異なるスリップ速度を提供することができる。多くの用途において、下方速度ゾーンは円錐の基部に近接し(典型的には円錐212の高さHの約10~約15%の範囲)、上方速度ゾーンは円錐の頂点付近にあり(典型的には円錐の高さHの約40%より上)、中間速度ゾーンはその間に位置する(典型的には円錐の高さHの約15%~約40%の範囲)。下方速度ゾーンのスリップ速度は、典型的に中間速度ゾーンのスリップ速度よりも小さく、上方速度ゾーンのスリップ速度は、典型的に中間および下方速度ゾーンのスリップ速度よりも大きい。円錐212の連続テーパー付き側壁が図に示されているが、同様の速度ゾーンを提供するために、側壁に不連続にテーパーを付けるか、または段差を付けてもよいことが理解されるべきである。
【0043】
粒子状触媒140は、起動前および/または操作中に反応器101に配置され、ガス分配器216によって生じた渦208は、円錐212の円周の周りに乱流領域の流れを有する反応ゾーンにおいて粒子状触媒140粒子を懸濁状態に保つ。炭化水素ガス110は、渦208内で懸濁している粒子状触媒140粒子と反応し、粒子状触媒140粒子は、グラファイトナノファイバーなどの炭素質材料を成長させ始め、それにより触媒粒子の重量を増加させる。カーテンガス158は、ガス流導管112内に位置決めされたトップダウンカーテンガス流導管224、およびガスカーテン発生器226を介して、炭化水素ガス110と対向する流れ方向で反応器101にフィードされ、第1および第2のガス流速よりも小さい第3のガス流速のガスカーテン228を形成する。カーテンガス158の下向きの流れは、粒子状触媒粒子140が渦208によって形成された乱流または反応ゾーンの上に上昇するのを防止するために、低いガス速度のカーテン(典型的に約1:3~約1:6の範囲のカーテン:フィード流量の比)を効果的に形成する。未反応炭化水素ガスおよびガス状副生成物(例えば、水素ガス)およびカーテンガスのガス状混合物210は、リサイクル流導管112を介して渦208から粒子不含ガスとして出る。
【0044】
反応器排出ビン232は、反応器101に流体連通している。断続的に、十分な量の炭素質材料がガス渦208内の粒子状触媒140上の乱流から破断されたとき、入力シャフト236は、排出ガイド240に沿うことによってガス分配器アセンブリ204のスライドを補助し、これらの機能の組合せは、ガス分配器アセンブリ204を傾けてビン232に炭素質材料を落下させ、ビン232は、酸素が炭素質材料と接触するのを防止するために気密封止される。
【0045】
炭素質材料は、モータ248によって駆動されるジャケット付き冷却オーガ244を使用して排出ビン232から排出される。第2の中間炭素質生成物136は、エアロック256およびモータ264によって駆動されるジャケット付き冷却オーガ260を介して生成物貯蔵タンク252に排出される。
【0046】
図2Bおよび3~5を参照すると、反応器システム200の特定の実装形態が描写されている。円筒形反応器101、粒子分離器122、および圧縮機またはブロワー108は、リサイクル流導管112および116、入力ガス流導管120、ならびにリサイクル流導管128を介して互いに流体連通して示されている。
図5を参照すると、リサイクル流導管128およびリサイクル流導管112はそれぞれ、第1および第2のリサイクル導管セグメント500および504によってそれぞれ示されるように、反応器の内部へと延びる。第1のリサイクル導管セグメント500の第1の入口508は、第2のリサイクル導管セグメント504の第2の入口512よりも短い距離で反応器内部に延びる。すなわち、第1の入口508は、粒子状触媒粒子140が反応ゾーンから早期に除去されるのを防止するために、第2の入口512の上方に位置決めされる。第2の入口512は、円錐212の頂点516に空間的に近接して位置決めされ、いくつかの実装形態では、第2の入口512および第2のリサイクル導管セグメント内に位置決めされる。円錐212、リサイクル流導管112、および第2の入口512は、反応器101の長手方向軸272を中心とする。
【0047】
図2Bおよび3~5の実施形態は、第1の中間炭素質生成物125を受容するために、粒子分離器122の下に位置決めされた第2の反応器排出ビン520を含む。二重反応器排出ビン232および520の使用は、粒子状触媒140およびより軽量の炭素質材料(例えば、より短いカーボンナノファイバーの長さ)を含むより軽い複合粒子を、複合粒子を第1の入口508に吹き込み、第2の反応器排出ビン520内の第1の中間炭素質生成物125として収集するためのガス流速(第2のガス流速よりも高い)を使用することによって除去し、粒子状触媒140およびより重量の炭素質材料(例えば、より長いカーボンナノファイバーの長さ)を含むより重い複合粒子を、ガス分配器アセンブリ204の空間的移動によって除去することを可能にする。
【0048】
図6A、6B、9~10、12および27~28を参照して、反応器排出ビン232への第2の中間炭素質生成物125の排出について説明する。図から分かるように、ガス分配器アセンブリ204は、複数の締結具606を介して反応器101の基部に締結され、フランジ600および相互接続された導管セグメント604を含むフランジアセンブリを介してガス分配システム216の内部1004に締結される。導管セグメント604の入口は、エルボ608の出口に接続され、エルボ608の入口は、入力ガス流導管120の出口に移動可能に係合する。エルボ608と入力ガス流導管120との間の気密封止を維持するために、エルボ608の入口はガスケットアセンブリ1000を含む。
【0049】
第2の中間炭素質生成物125を反応器排出ビン232に排出するために、反応器アセンブリ100は、第1および第2のモードで動作する。
【0050】
図28に示される第1のモードでは、円錐212およびガス分配器216を含むガス分配器アセンブリ204は、気密封止によって反応器101と係合し、エルボ608の入口上のガスケットアセンブリ1000は、入力ガス流導管120の出口と係合して気密封止を形成する。ガス分配器アセンブリ204および導管セグメント604は、排出ガイド240の長さに対して第1の空間位置にある。この構成では、反応器101は炭化水素ガス110で流動化され、グラファイトまたはカーボンナノファイバーが粒子状触媒140上に形成される。
【0051】
図27に示される第2のモードでは、ガス分配器アセンブリは反応器101から外されて(もはや反応器101と気密封止を形成せず)、エルボ608の入口上のガスケットアセンブリ1000は、入力ガス流導管120の出口から外される(もはや入力ガス流導管120の出口と気密封止を形成しない)。ガス分配器アセンブリ204および導管セグメント604は、排出ガイド240の長さに対して第2の空間位置(第1の空間位置とは異なる)にある。この構成では、反応器101は炭化水素ガス110で流動化されず、反応器101内の複合粒子は反応器排出ビン232に排出され得る。
【0052】
任意の変位機構を使用して、反応器アセンブリを第1または第2のモードのいずれかで選択的に配置することができる。例えば、入力シャフト236は、入力シャフトを上下に移動させるために回転されるカムに係合してもよい。別の例では、入力シャフトは空気圧または油圧で変位する。
【0053】
排出ガイド240は、ガイド部材2700(例えば、突出ピンまたはホイール)に移動可能に係合するガイドレールとして示されているが、シャフトに沿って移動するボールベアリングを含むリニアスライド機構など、任意のガイドまたはリンク機構を使用することができる。
【0054】
図7~8および13~21を参照して、ガス分配器アセンブリ204を説明する。ガス分配器アセンブリ204は、ガス分配器アセンブリ204の内部1004の円周の周囲に実質的に均一に離間した位置に位置決めされた複数のガス注入器1416を含む。入口704の周囲に実質的に均一に離間した位置に位置決めされた穴1300は、フランジ600の穴と整列し、締結具606を受容するように構成される。
【0055】
円錐212の内部容積700は少なくとも実質的に中空であり、円錐側壁はガス流に対して不透過性であり、入口704を介して進入する炭化水素ガスのためのマニホールドとして作用し、したがって中空内部が流入炭化水素ガス圧力を実質的に均等化し、その後ガスが複数の入口オリフィス708を通過し、それぞれの内部通路1400を通って流れ、実質的に垂直な表面1406のそれぞれの出力オリフィス1404を通って外向きに流れ、反応器内部容積に入る。より円滑なガス流およびガス圧力損失の低減をもたらすために、通路1400は典型的に湾曲しており(例えば、円弧状、または場合によっては丸みを帯びている)、鋭角ではない。流出ガスは、傾斜路1408により、傾斜勾配(典型的に水平面に対して約1~約75度、より典型的には約1~約45度の範囲である)に実質的に平行な流路に沿って反応器内部へと誘導される。複数のガス注入器1416の各々の曲面縁部1412は、反応器内部への円滑なガス出口を提供する。
【0056】
典型的に、各ガス注入器1416およびすべてのガス注入器1416の入口および出力オリフィス708および1404、ならびに各介在通路1400は、実質的に同じ直径である。直径は、粒子の同伴を維持し、出力オリフィス1404の実質的に平坦な表面1416における粒子収集およびガス注入器の詰まりを抑制するために、少なくとも粒子状触媒粒子の終端速度である出力ガス速度を提供するように選択される。通常、出力ガス速度は、約0.5~約20fpsの範囲である。
【0057】
円錐側壁と水平面との間に形成される円錐角度θ2000(
図20)は、反応ゾーンにおけるガス流のスピード、および生成される炭素質材料(例えば、グラファイトナノファイバー)のサイズを決定する。例えば、より長いグラファイトナノファイバーを生成するためには、角度θを小さくして反応ゾーンにおけるガス速度をより低くし、より短いグラファイトナノファイバーを生成するためには、角度θを大きくして反応ゾーンにおけるガス速度をより高くする。別の言い方をすれば、より長いグラファイトナノファイバーの角度θは、より短いグラファイトナノファイバーの角度θよりも小さい。典型的に、角度θ2000は約1~約45度の範囲であり、円錐の高さ(H)対円錐の直径(D)の比(
図8)は約1:1~約6:1の範囲である。
【0058】
図11および22~26を参照して、カーテンガスカーテンを放出するガスカーテン発生器1100について説明する。ガスカーテン発生器1100は、発生器1100の継手1108に接続し、それと気密封止を形成するカーテンガス供給導管1104と流体連通している。カーテンガスは、入口2500を通り、通路2504を通って環状空間2508に流入し、環状リング1112を通って放出され、ガスカーテンを形成する。
図22に示すように、発生器1100の直径は、導管セグメント504に係合する第1のより大きな直径の入口2200から、より小さな直径を有する第2の直径の出口2204へとステップダウンする。ステップダウンは、第1の直径から第2の直径へと徐々に直径を小さくする中間セクション2208を使用して行われる。
【0059】
実験
以下の実施例は、本開示の特定の態様、実施形態および構成を例示するために提供され、添付の特許請求の範囲に規定される本開示に対する限定として解釈されるものではない。すべての部およびパーセンテージは、別段明記しない限り重量によるものである。
【実施例】
【0060】
[実施例1]
粒子状触媒を5’’石英管に入れ、これをThermacraftラップアラウンド電気ヒーターによって加熱した。メタンを1分当たり1、2または3立方フィート(CFM)の速度で石英管の一端に流して触媒の流動床を形成し、ヒーターを作動させて700℃の石英管内のすべての領域/ゾーンの一定温度を維持した。生成物ガスは、反応器の生成物ガス部分を冷水浴に浸漬させることによって冷却した。生成物ガスは、5、10、15、30および60分後に水素(H2)およびメタン(CH4)ガス含有量について分析し、反応器の表面積と従来の流動床の流量との関係を決定した。結果を以下の表1に示す。
【0061】
【0062】
本開示の多くの変形および修正が使用されてもよい。他の特徴を提供することなく、本開示のいくつかの特徴を提供することができる。
【0063】
例えば、1つの代替実施形態では、不活性ガスカーテンは、導管512の周辺部の周りに位置決めされた複数の放出器などの他のノズルまたはガス分配システム構成によって提供される。
【0064】
別の代替実施形態では、ガス分配アセンブリは、1つ以上のガス分配器を含み、反応器および/またはガス不透過性構造体の長手方向軸を中心に回転する。
【0065】
別の代替実施形態では、反応器アセンブリは、石油および化学処理産業におけるような他の化学プロセスおよび反応のための流動床反応器として使用される。例えば、流動床反応器は、炭化水素(油)の分解および改質、石炭の炭化およびガス化、鉱石の焙焼、フィッシャー・トロプシュ合成、ポリエチレン製造、石灰石焼成、無水アルミニウム生成、造粒、塩化ビニル生成、廃棄物の燃焼、核燃料調製、固体、液体およびガス状燃料の燃焼、種々の粒子状固体材料の乾燥、吸着、冷却、加熱、凍結、搬送、貯蔵および熱処理に使用されてもよい。
【0066】
別の代替実施形態では、円錐は他の幾何学的構成を有してもよい。例としては、円錐台形、三角柱、長方形ベースの角錐、四面体、円筒柱、球体、四角柱、五角柱、六角柱、八角柱、他の多角柱、および渦ガス流を提供するように構成された他の容積形状が挙げられる。角柱または他の容積形状の側壁は、より乱流の渦ガス流を提供するためにテーパーを付けることができる。
【0067】
様々な態様、実施形態および構成における本開示は、それらの様々な態様、実施形態、構成、サブコンビネーションおよびサブセットを含む、本明細書に描写および記載される構成要素、方法、プロセス、システム、および/または装置を実質的に含む。当業者であれば、本開示を理解した後に、様々な態様、態様、実施形態および構成を作製および使用する方法を理解する。様々な態様、実施形態および構成における本開示は、例えば、性能を改善するため、容易性を達成するため、および/または実装コストを削減するために、以前のデバイスもしくはプロセスで使用されていた場合があるような項目の非存在下を含め、本明細書または本明細書の様々な態様、実施形態および構成に描写および/または記載されていない項目の非存在下で、デバイスおよびプロセスを提供することを含む。
【0068】
本開示の前述の考察は、例示および説明の目的で提示されている。前述は、本開示を本明細書に開示される1つ以上の形態に限定することを意図しない。例えば、前述の詳細な説明において、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で、1つ以上の態様、実施形態および構成にまとめられている。本開示の態様、実施形態および構成の特徴は、上記で考察されたもの以外の代替の態様、実施形態および構成で組み合わされてもよい。本開示の方法は、本開示が各請求項に明示的に記載されている以上の特徴を必要とする意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の態様は、単一の前述の開示された態様、実施形態および構成のすべての特徴よりも少ない範囲にある。したがって、以下の請求項は、これによりこの詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、本開示の別個の好ましい実施形態としてそれ自体で成り立つ。
【0069】
さらに、本開示の説明を通して、1つ以上の態様、実施形態または構成、ならびに特定の変形例および改変例の説明が含まれているが、他の変形例、組合せおよび改変例は、例えば、本開示を理解した後に、当業者の技術および知識の範囲内にあり得るように、本開示の範囲内にある。代替の、互換的なおよび/または同等の構造、機能、範囲またはステップが本明細書に開示されているか否かにかかわらず、また、特許可能な主題を公に捧げることを意図することなく、特許請求されるものに対するそのような代替の、互換的なおよび/または同等の構造、機能、範囲またはステップを含む代替の態様、実施形態および構成を許容される範囲で含む権利を得ることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
100 反応器システム
101 反応器
104 混合タンク
105 導管、反応ガス
106 熱交換器
108 圧縮機またはブロワー
108A バルブ
108B バルブ
109 水素ガス、水素
110 炭化水素フィード、炭化水素ガス
110A 予熱されたガス
111 水素ストリーム
111A 水素
112 ガス流導管
113 混合物、混合炭化水素ガス、炭化水素ガス
114 第2の中間炭素質生成物
120 入力ガス流導管
122 粒子分離器
123 粒子状触媒、カートリッジ型フィルター要素
124 予熱器
125 第1の中間炭素質生成物
126 予熱混合ガスストリーム
158 カーテンガス
200 反応器システム
204 ガス分配器アセンブリ
208 渦
210 ガス状混合物
212 円錐
216 ガス分配器システム、ガス分配器、ガス分配システム
220 ガス流矢印
224 カーテンガス流導管
226 ガスカーテン発生器
228 ガスカーテン
232 反応器排出ビン
236 入力シャフト
240 排出ガイド
244 冷却オーガ
248 モータ
252 生成物貯蔵タンク
256 エアロック
260 ジャケット付き冷却オーガ
264 モータ
272 長手方向軸
500 第1のリサイクル導管セグメント
504 第2のリサイクル導管セグメント
508 第1の入口
512 第2の入口
516 頂点
520 第2の反応器排出ビン
600 フランジ
604 導管セグメント
606 締結具
608 エルボ
700 内部容積
704 入口
708 入口オリフィス
1000 ガスケットアセンブリ
1004 内部
1100 ガスカーテン発生器
1108 継手
1112 環状リング
1300 穴
1400 内部通路
1404 出力オリフィス
1406 実質的に垂直な表面
1408 傾斜路
1412 曲面縁部
1416 ガス注入器
2000 円錐角度
2200 入口
2204 出口
2208 中間セクション
2500 入口
2504 通路
2508 環状空間
2700 ガイド部材
【国際調査報告】