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特表2024-528891ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/68 20060101AFI20240725BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20240725BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20240725BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C07D307/68
B01J23/66 Z
B01J23/89 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505087
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 KR2021009831
(87)【国際公開番号】W WO2023008611
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ミ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ダ キョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,キ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC33B
4G169BC43B
4G169BC62B
4G169BC67B
4G169BC70B
4G169CB07
4G169CB74
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB43
4H039CA62
4H039CA66
4H039CC60
(57)【要約】
本発明は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造する方法およびそれから得られたジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物に関し、本発明によれば、バイオベースのヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物を不均一触媒下で酸化反応させ、収率と純度が改善された酸化物を製造する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヘテロ環化合物原料を不均一触媒の存在下で極性溶媒中で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造する方法であって、
前記芳香族ヘテロ環化合物原料は、下記化学式1で表される構造を有するヒドロキシルフリー化合物である、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法:
【化1】
(上記式中、R1およびR2のうちのいずれか1種はアルデヒドであり、残りは置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、アセトキシまたはアルデヒドであり、前記置換された炭素数1~20のアルキルは、臭素、塩素、フッ素およびヨウ素からなる群から選択される1種以上の官能基で置換されたものである。)
【請求項2】
前記ヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式2~4の中から選択される1種以上の構造を有する、請求項1に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【化2】
【請求項3】
前記化学式1で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式3で表される構造または下記化学式4で表される構造に改質した状態で使用される、請求項1に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法:
【化3】
【請求項4】
前記酸化反応は、
下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料をオニウム系化合物とイオン活性化剤の存在下で極性溶媒中で第4温度で酸化反応させ、下記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を生成する触媒フリー酸化段階と、
前記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を塩基性物質と不均一触媒の存在下で極性溶媒中で前記第4温度より高い第5温度で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成する酸化段階と、を含む、請求項3に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法:
【化4】
【請求項5】
前記第4温度は10℃~80℃の範囲内であり、第5温度は100℃~200℃の範囲である、請求項4に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項6】
前記触媒フリー酸化段階は1hr~10hr行い、前記酸化段階は3hr~24hr行う、請求項4に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項7】
前記酸化反応は、
下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料を極性溶媒中で第6温度で酸化反応させる1次触媒フリー酸化段階と、
前記極性溶媒を他の種類の極性溶媒で置換させ、前記第6温度より低い第7温度で酸化反応させ、下記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を生成する2次触媒フリー酸化段階と、
前記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を不均一触媒の存在下で前記第6温度より低い第8温度で極性溶媒中で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成する酸化段階と、を含む、請求項3に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法:
【化5】
【請求項8】
前記第6温度は100℃~200℃の範囲内であり、
前記第7温度は10℃~80℃の範囲内であり、
前記第8温度は10℃~80℃の範囲内である、請求項7に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項9】
前記1次触媒フリー酸化段階は8hr~24hr行い、
前記2次触媒フリー酸化段階は15hr~32hr行い、
前記酸化段階は1hr~10hr行う、請求項7に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項10】
前記オニウム系化合物は、炭素数4~10のアルキル基を有するオニウムカチオンとpKa値が3以下であるアニオンで構成された化合物を前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として0.4~1.0モルの比で使用する、請求項4に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項11】
前記極性溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、エタノール、メタノールおよび次亜塩素酸tert-ブチルの中から選択される1種以上を前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として2~5モルの比で使用する、請求項4または7に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項12】
前記イオン活性化剤は、NaOAcおよびKOAcの中から選択される1種以上を前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として1~10モルの比で使用する、請求項4に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項13】
前記塩基性化合物としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および二塩基性よび三塩基性ホスフェート緩衝溶液から選択される1種以上を、反応液のpHを7超過11以下に維持する範囲で前記反応液に連続して投入するか、または反応の前、途中または後に間欠的に投入する、請求項4に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法。
【請求項14】
芳香族ヘテロ環化合物を原料物質として製造されたジカルボン酸芳香族組成物であって、
下記化学式5で表される構造を有するジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を含む粗(crude)酸化物である、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物:
【化6】
【請求項15】
前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物は、下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、下記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、下記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、下記化学式6で示す構造を有する芳香族ヘテロ環化合物(FFCA)および下記化学式7で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の中から選択される1種以上をさらに含む、請求項14に記載のジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物:
【化7】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造のための原料物質としてヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物を使用する製造方法、およびそれから得られたジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
温室ガスの削減のために米国、欧州のような先進国は二酸化炭素排出規制を強化している。したがって、既存の化石原料資源への依存度を下げ、温室ガスを低減することができるバイオ化学産業に対する需要が増加している。つまり、化学産業が石油依存型からバイオ依存型へ変化している。
【0003】
一例として、飲料ボトルや食品保管容器として主に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)をバイオ-PET(bio-PET)に代替する技術が活発に研究中である。
【0004】
バイオ-PETの製造において単量体として有用なジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物は、通常5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化させて製造される誘導体である。前記5-ヒドロキシメチルフルフラールは糖から得られるため、自然で広範囲に利用可能な原料の誘導体である。
【0005】
参考として、5-HMFに対する酸化反応は、次の反応式からみられるように、2,5-フランジアニオン架橋剤(FDCA)、2,4-フランジアニオン架橋剤、および2-カルボキシ-5-ホルミルフラン(FFCA)を含むモノカルボン酸またはジカルボン酸の芳香族ヘテロ環化合物が主生成物として得られる。
【化1】
【0006】
前記モノカルボン酸またはジカルボン酸の芳香族ヘテロ環化合物が主生成物として得られるHMFの酸化工程は文献に公知されている。例えば、米国特許第4,977,283号(Hoechst)には、pH6.5~8の水性環境下で白金族に属する金属触媒により行われるHMFの酸化方法が開示されている。上記特許においては、pHを調節することで様々な酸化生成物および副産物の間の比率を調節できることが開示されている。上記特許に含まれている情報によれば、pHの調節は塩基、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基、酸または緩衝溶液により、通常、8未満のpHを維持して達成することができる。
【0007】
また、米国特許出願第2008/0103318号(Battelle)には、担持体に支持された白金によって促進されるHMFの酸化方法が開示されている。
【0008】
しかし、このようなHMFの酸化方法は製造原価が比較的高く、バッチ式(batch)反応で行われるが、このようなバッチ式反応においては原料の投入、反応温度までの加熱、反応生成物の排出など実質的に反応とは関係のない時間を必要とし、反応器の生産性が低下する問題がある。また、触媒を繰り返し使用するためには触媒と生成物との分離工程が必要であり、また、温度などの変化による触媒の早期活性低下が発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,977,283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の合成に用いられるバイオベースの新規ヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物を原料として使用して環境にやさしく、かつ製造効率が改善されたジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、連続工程により量産が可能で、生産効率が大きく向上したジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物、またはこれを含む粗(crude)ジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、芳香族ヘテロ環化合物原料を不均一触媒の存在下で極性溶媒中で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造する方法であって、前記芳香族ヘテロ環化合物原料は、下記化学式1で表される構造を有するヒドロキシルフリー化合物である、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法を提供する:
【0013】
【化2】
(上記式中、R1およびR2のうちのいずれか1種はアルデヒドであり、残りは置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、アセトキシまたはアルデヒドであり、前記置換された炭素数1~20のアルキルは、臭素、塩素、フッ素およびヨウ素からなる群から選択される1種以上の官能基で置換され得る。)
【0014】
また、前記ヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式2~4の中から選択される1種以上の構造を有する:
【0015】
【化3】
【0016】
また、前記化学式1で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式3で表される構造または下記化学式4で表される構造に改質した状態で使用され得る:
【0017】
【化4】
【0018】
このとき、前記酸化反応は、下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料をオニウム系化合物とイオン活性化剤の存在下で極性溶媒中で第4温度で酸化反応させ、下記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を生成する触媒フリー酸化段階と、前記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を塩基性物質と不均一触媒の存在下で極性溶媒中で前記第4温度より高い第5温度で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成する酸化段階と、を含むことができる。
【0019】
【化5】
【0020】
前記第4温度は10℃~80℃であり得る。
【0021】
前記触媒フリー酸化段階は1hr~10hr行うことができる。
【0022】
前記第5温度は100℃~200℃であり得る。
【0023】
前記酸化段階は3hr~24hr行うことができる。
【0024】
また、前記酸化反応は、下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料を極性溶媒中で第6温度で酸化反応させる1次触媒フリー酸化段階と、前記極性溶媒を他の種類の極性溶媒で置換させ、前記第6温度より低い第7温度で酸化反応させ、下記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を生成する2次触媒フリー酸化段階と、前記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を不均一触媒の存在下で前記第6温度より低い第8温度で極性溶媒中で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成する酸化段階と、を含むことができる。
【0025】
【化6】
【0026】
前記第6温度は100℃~200℃であり得る。
【0027】
前記1次触媒フリー酸化段階は8hr~24hr行うことができる。
【0028】
前記第7温度は10℃~80℃であり得る。
【0029】
前記2次触媒フリー酸化段階は15hr~32hr行うことができる。
【0030】
前記第8温度は10℃~80℃であり得る。
【0031】
前記酸化段階は1hr~10hr行うことができる。
【0032】
また、前記オニウム系化合物は、炭素数4~10のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオンとpKa値が3以下であるアニオンで構成された化合物を前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として0.4~1.0モルの比で使用することができる。
【0033】
また、前記極性溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、エタノール、メタノールおよび次亜塩素酸tert-ブチル(t-BuOCl)の中から選択される1種以上を、前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として2~5モルの比で使用することができる。
【0034】
前記イオン活性化剤としては、NaOAcおよびKOAcの中から選択される1種以上を、前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として1~10モルの比で使用することができる。
【0035】
前記塩基性化合物としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および二塩基性よび三塩基性ホスフェート緩衝溶液などから選択される1種以上を、反応液のpHを7超過11以下に維持する範囲で前記反応液に連続して投入するか、または反応の前、途中または後に間欠的に投入することができる。
【0036】
本発明の他の実施形態によれば、芳香族ヘテロ環化合物を原料物質として製造されたジカルボン酸芳香族組成物として、下記化学式5で表される構造を有するジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を含む粗(crude)酸化物であるジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物を提供する:
【0037】
【化7】
【0038】
また、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物は、下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、下記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、下記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、下記化学式6で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物(FFCA)、および下記化学式7で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の中から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0039】
【化8】
【発明の効果】
【0040】
本発明の一側面によるバイオベースの新規原料物質は木質から転換された物質であることから環境にやさしく、かつ従来使用していた5-HMFに代えて芳香族ヘテロ環化合物の酸化反応に使用するのに適した効果がある。
【0041】
本発明の他の側面によるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物は、原料物質の合成反応を継続してcrude組成物中に95%以上の高い収率で提供することができる。
【0042】
本発明のさらに他の側面によるジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法は、連続的に高い収率の生成物質を合成することによって、従来の5-HMFを原料物質としてバッチ式で合成するための方法の短所を補完し、反応器内の圧力制御工程なしにエネルギー効率および生産性を高めて実施できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の芳香族ヘテロ環化合物を原料物質としてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造方法およびこれに使用される不均一触媒について詳細に説明する。
【0044】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0045】
本発明において「金属前駆体」とは、金属を反応させるために予め製造される化学物質を称する概念である。一例として、「遷移金属前駆体」とは、遷移金属を反応させるために予め製造される化学物質を称する概念である。
【0046】
<本発明の第1側面>
本発明の第1側面は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造するための原料物質であって、芳香族ヘテロ環とヒドロキシルフリー末端基とを含むヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物である。
【0047】
本発明においてヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式1で表される構造を有する:
【0048】
【化9】
(上記式中、R1およびR2のうちのいずれか1種はアルデヒドであり、残りは置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、アセトキシまたはアルデヒドであり、前記置換された炭素数1~20のアルキルは、臭素、塩素、フッ素およびヨウ素からなる群から選択される1種以上の官能基で置換され得る。)
【0049】
前記化学式1の化合物は木質から転換された化合物であって、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造時に最初に使用される化合物である。本明細書で特に明記しない限り、ハロゲンは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素である。
【0050】
本発明において「芳香族ヘテロ環」とは、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造時に骨格を提供する構造をいう。
【0051】
一例として、前記芳香族ヘテロ環は、フラン、チオフェンおよびピロールからなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0052】
また、前記ヒドロキシルフリー末端基は、アルデヒド基、アセトキシ基、および炭素数1~20のアルキル基からなる群から選択される1種以上を使用することができ、ここでアルキル基は、非置換またはハロゲンで置換されたものであり得る。
【0053】
前記化学式1中のR1がアルデヒドである場合、R2は水素、アルデヒド、アセトキシ、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルコキシから選択され、ここで炭素数1~20のアルキルまたは炭素数1~20のアルコキシは非置換であるか、1種以上のハロゲン原子で置換されたものであり得る。
【0054】
また、前記化学式1中のR1がアルデヒドである場合、R2はアセトキシまたは炭素数1~20のアルキルから選択され、ここで炭素数1~20のアルキルは1種以上のハロゲン原子で置換されたものであり得る。
【0055】
このとき、前記ヒドロキシルフリー芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式2~4の中から選択される1種以上の構造を有する。
【0056】
【化10】
【0057】
<本発明の第2側面>
本発明の第2側面は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造するための触媒であって、多孔性中心金属-有機骨格物質に金属触媒成分のカチオンが結合した構造を有する不均一触媒である。本発明において多孔性中心金属-有機骨格物質とは、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された多孔性有機-無機化合物を意味し、骨格構造内または表面に有機物と無機物とを含み、分子サイズまたはナノサイズの細孔構造を有する結晶性化合物を含み得る。
【0058】
また、本発明において金属触媒成分とは、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造時に上述した第1側面の原料物質を使用して生成物の収率向上に寄与する活性を有し、骨格物質の細孔構造に挿入される成分をいう。
【0059】
金属触媒としては、多様な酸化数を有するFe、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、AuおよびPtの中から選択される少なくとも1つ以上を使用することができ、特にRu、Pd、Pt、Auを使用することが好ましい。
【0060】
また、中心金属としては、Mg、Alなどの骨格支持物質、Mn、Coなどの活性金属、およびCeなどの活性促進金属の中から反応対象物の活性度により多様に1種以上を選択することができる。
【0061】
一例として、MnとCoの2種の活性金属を選択して中心金属として使用することができ、または活性酸素種(reactive oxygen species)に対する貯蔵能力および伝達能力に優れていることが知られているCeの活性促進金属を単独で使用して、中心金属として使用することができる。
【0062】
本発明で使用する中心金属骨格物質は、具体的な例として、下記化学式9で表される構造を含むことができる。
[化学式8]
(Mn)-(Co)-(Ce)-O
(上記式中、a、bおよびcは酸化数を示し、a、bおよびcの合計は1以上であり、aおよびcの合計は0より大きく、dはa+b+cより1が大きい整数である。)
【0063】
このような構造を有する中心金属骨格物質は細孔構造の結合サイトを有し、前記細孔構造の結合サイトに結合可能な元素を含む金属触媒成分を結合する場合、機能化された不均一触媒を提供することができる。
【0064】
このとき、前記有機骨格物質は、アニオン架橋剤を使用して提供することができる。本発明においてアニオン架橋剤とは、アニオンを提供し、多孔性中心金属と後に結合する金属触媒成分との間に架橋剤の役割を果たすことにより、前記多孔性中心金属の粒子上に前記金属触媒成分のカチオンが強く吸着された形態を提供する化合物である。
【0065】
アニオン架橋剤は、環構造のない脂肪族物質の場合、粒子が固まる前に揮発して気孔を作ることになり、それ自体が気孔誘導物質として作用するため、別途の界面活性剤を必要とせず、粒子が固まった後に粒子表面に改質を誘導して後続の吸着結合を誘導するリガンドを提供することができる。
【0066】
アニオン架橋剤は、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸および酒石酸からなる群より選択される1種以上の多価アニオンを提供する物質であり得る。
【0067】
本発明において不均一触媒は、上述した多孔性中心金属を担体として使用するか、または炭素など当該分野で公知の物質を使用することができる。
【0068】
このとき、担体の形状は多様であり得る。微細な気孔がある球型、円筒柱型など限定されない。
【0069】
前記触媒としてはRu-MnCo、Au-CeOなどを使用することができ、当該分野で不均一触媒として公知のPt/C、Pd/C、Rh/Cなどを組み合わせるか、または代替して使用することができる。
【0070】
触媒の使用量は特に限定されないが、一例として、前記化学式1で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料1モルに対して、触媒内中心金属と金属触媒成分を基準として600モルのモル比以下、または50~600モルのモル比で使用することができる。
【0071】
本発明による不均一触媒は、均一触媒を使用する場合、反応液内に溶融して分離することが難しいという短所を克服し、分離後、多数回再循環が可能な長所を提供し、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物の製造時の収率を高めることができる。
【0072】
前記触媒は、後述する酸化反応で1回以上、具体的な例として、4回以上循環させて使用することができる。
【0073】
また、前記不均一触媒は、下記化学式1で表される構造を有する芳香族ヘテロ環原料を酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成することができる:
【0074】
【化11】
【0075】
(上記式中、R1およびR2のうちのいずれか1種はアルデヒドであり、残りは置換または非置換の炭素数1~20のアルキル、アセトキシまたはアルデヒドであり、前記置換された炭素数1~20のアルキルは、臭素、塩素、フッ素およびヨウ素からなる群から選択される1種以上の官能基で置換され得る。)
【0076】
また、前記不均一触媒は、下記化学式2で表される構造を有する化合物、下記化学式3で表される構造を有する化合物および下記化学式4で表される構造を有する化合物の中から選択される1種以上の化合物を極性溶媒中で酸化反応させ、下記化学式5で表される構造を有する酸化物を生成することができる:
【0077】
【化12】
【0078】
また、前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式5で表される構造を有する:
【0079】
【化13】
【0080】
また、前記不均一触媒としてはRu/MnCo、Au/CeO、Ru/C、Pt/Cの中から選択される1種以上を化学式1で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として0.4~1.0モルの比で使用することができる。
【0081】
<本発明の第3側面>
本発明の第3側面は、上述した不均一触媒の製造方法である。
【0082】
不均一触媒は、多孔性中心金属酸化物を含む溶液をアニオン架橋剤と反応させて多孔性中心金属-有機骨格物質としてまず製造される。その後、多孔性中心金属-有機骨格物質を金属触媒成分前駆体に含浸させた後、これを熱分解して製造される。具体的には、製造方法は、第1段階、第2段階、および第3段階を含む。各段階の名称は、各段階を他の段階と区分するために付与した名称で、各段階の技術的な全ての意味を含むものではない。
【0083】
前記第1段階は、前記多孔性中心金属酸化物(以下、多孔性中心金属前駆体ともいう)を含む溶液を製造する段階である。
【0084】
前記多孔性中心金属酸化物は、例えば、遷移金属がマンガンである場合、ジメチルマンガン、ジエチルマンガン、酢酸マンガン、酢酸マンガン二水和物、マンガンアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート水和物、マンガンヨージド、マンガンブロミド、マンガンクロリド、フッ化マンガン、フッ化マンガン四水和物、マンガンカーボネート、マンガンシアン化物、硝酸マンガン、硝酸マンガン六水和物、酸化マンガン、マンガンパーオキサイド、過塩素酸マンガン、過塩素酸マンガン六水和物、硫酸マンガン、ジフェニルマンガン、マンガンナフタレート、マンガンオレートおよびマンガンステアレートからなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0085】
したがって、多孔性中心金属がマンガンではない場合も同様に適用され得る。
【0086】
上述した多孔性中心金属は分子サイズまたはナノサイズの細孔構造を有する形態で提供され、支持体、つまり、担体として提供することができる。
【0087】
前記多孔性中心金属は、Mn、Co、MgおよびCeからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0088】
前記第2段階は、前記第1段階の多孔性中心金属酸化物溶液をアニオン架橋剤と反応させて多孔性中心金属-有機骨格物質を製造する段階である。
【0089】
アニオン架橋剤は、アニオンを提供して多孔性中心金属と後続結合する金属触媒成分との間に架橋剤の役割を果たすことにより、前記多孔性中心金属の粒子上に前記金属触媒成分のカチオンが吸着した形態を提供するために必要であり、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸などを使用することができる。
【0090】
具体的には、前記第2段階は、第2-1段階、第2-2段階、および第2-3段階を含む。
【0091】
前記第2-1段階は、多孔性中心金属酸化物溶液とアニオン架橋剤とを混合する段階である。前記多孔性中心金属酸化物は、水、アルコール、およびこれらの混合物を使用して溶液形態で使用することができる。
【0092】
また、前記多孔性中心金属酸化物とアニオン架橋剤は、一例として、1:1~1:5のモル比で混合して混合溶液で製造することができる。
【0093】
第2-2段階は、前記第2-1段階後の混合溶液を第1温度に昇温した後、混合溶液を1次反応させる段階である。第1温度の範囲は、一例として40℃~200℃、最も好ましくは100℃~180℃の範囲内であり得る。このとき、圧力はそのまま維持する。
【0094】
第2-3段階は、前記第2-2段階後の混合溶液を第1温度より高い第2温度に昇温した後、混合溶液を2次反応させる段階である。第2温度の範囲は400℃~1000℃の範囲内であり、前記第1温度より高い温度であることが好ましい。このとき、圧力はそのまま維持する。また、このとき、反応時間は、一例として2~24時間、好ましくは3~12時間である。
【0095】
前記第3段階は、前記第2段階(具体的には、前記第2-3段階)後に製造された多孔性中心金属-有機骨格物質を金属触媒成分の前駆体溶液に含浸させ、金属触媒成分のカチオンが結合した構造を提供する段階である。
【0096】
具体的には、前記第3段階は、第3-1段階および第3-2段階を含む。
【0097】
前記第3-1段階は、前記第2段階(具体的には、前記第2-3段階)後の反応物を、金属触媒成分の前駆体を溶媒に溶解して得られた金属触媒成分の前駆体溶液に含浸させる段階である。前記第3-1段階は、40℃~80℃の範囲内で行うことができ、圧力は常圧を維持する。
【0098】
前記第3-2段階は、前記第3-1段階後の含浸物を第2温度より低い第3温度で焼成する段階である。前記第3温度の範囲は40~800℃あるいは100℃~600℃の範囲内であり、前記第1温度より高い温度であることが好ましい。このとき、圧力はそのまま維持する。
【0099】
前記第2-1段階の多孔性中心金属酸化物溶液と前記第3-1段階の金属触媒成分の前駆体溶液を製造することに使用される溶媒は混合溶液の濃度を調節するためのもので、水、アルコール、およびこれらの組み合わせを使用することができる。
【0100】
<本発明の第4側面>
ジカルボン酸芳香族化合物の製造方法は、上述した芳香族ヘテロ環化合物原料を不均一触媒の存在下で極性溶媒中で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造する。原料物質については上述した第1側面において詳しく記載したので、繰り返し記載に対する具体的な説明は省略する。
【0101】
本発明の原料物質は上述の通り、前記化学式1で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物であり、一例として、化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物であり得る。
【0102】
このような化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式3で表される構造または下記化学式4で表される構造に改質した状態で用いられる。
【0103】
【化14】
【0104】
酸化反応で反応効率を高めるためには転換率を極大化しなければならず、反応する2つの官能基のモル比が1:1に近接しなければならない。転換率を極大化することは、反応時間を長くするか、反応温度を高めて達成できるが、反応する2つの官能基のモル数を1:1となるように調節することは容易ではなく、これがしばしば酸化反応で特定のジカルボン酸芳香族化合物(例えば、化学式5で表されるジカルボン酸芳香族化合物)を高収率で製造することに限界因子として作用する。このような理由で化学式5で表される構造を有するジカルボン酸芳香族化合物の製造時に化学式2で表される構造を有するジカルボン酸ヘテロ芳香族化合物を投入して酸化して製造することよりは、次のような2つの段階を経て高収率のジカルボン酸芳香族化合物を製造することが好ましい。つまり、まず、触媒酸化反応に先立ち、触媒フリー酸化反応させて一末端基が酸化された化合物を得、2段階で触媒下で酸化反応させて残りの末端基を酸化させる。
【0105】
具体的な例として、本発明による前記酸化反応は、前記改質構造により以下の2つの場合で表すことができる。
【0106】
一例として、酸化反応が触媒フリー酸化段階および酸化段階を含む場合、各段階の名称は、各段階を他の段階と区分するために付与した名称で、各段階の技術的な全ての意味を含むものではない。
【0107】
触媒フリー酸化段階は、下記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を生成する段階である。
【0108】
【化15】
【0109】
当該構造を有する芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料をオニウム系化合物とイオン活性化剤の存在下で極性溶媒中で第4温度で酸化反応させて製造される。前記第4温度は10℃~80℃、または30℃~50℃であり得る。前記圧力は常圧であり、反応は1hr~10hr、または2hr~6hr行うことができる。
【0110】
【化16】
【0111】
本発明で使用するオニウム系化合物は、オニウム系カチオンとpKa値が3以下であるアニオンで構成された化合物であり、オニウム系カチオンとは、広くIUPAC命名法に従い、代表的なものとして、炭素数4~10のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム、テトラアルキル(またはアリール)ホスホニウムカチオンなどがある。
【0112】
pKa値が3以下であるアニオンは多様に多いが、そのうちのハロゲン化物アニオンがオニウム系カチオンとの中和反応により形成されやすいので、好ましい。
【0113】
前記オニウム系化合物は、一例として、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラヘキシルアンモニウムクロリド(THAC)、テトラオクチルアンモニウムクロリド(TOAC)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)およびテトラブチルアンモニウムヨウ化物(TBAI)の中から選択される少なくとも1種であり得る。
【0114】
本発明で使用するオニウム系化合物は、前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として0.4~1.0モルの比で使用することができる。
【0115】
また、イオン活性化剤は、一例として、NaOAcおよびKOAcの中から選択される1種以上であり、前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として1~5モルの比で使用することができる。
【0116】
また、極性溶媒は、一例として、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、エタノール、メタノールおよび次亜塩素酸tert-ブチル(t-BuOCl)の中から選択される1種以上であり、前記化学式2で表される芳香族ヘテロ環化合物1モルを基準として1~5モルの比で使用することができる。
【0117】
酸化段階は、化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物から目的とするジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成する段階である。
【0118】
目的とする化合物は、塩基性物質と不均一触媒の存在下で極性溶媒中で前記第4温度より高い第5温度で酸化反応させて製造される。前記第5温度は80℃~200℃であり、前記第4温度より高い温度範囲で行うことが好ましい。圧力は常圧条件であり、当該反応は2~10時間行うことができる。
【0119】
本発明で使用する塩基性化合物は、一例として、1~15個の炭素原子を有する1~4個のアルキル基で置換されているナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムまたはアンモニウムの塩から選択することができ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルプロパンジオール、メチルグルカミン、これらの混合物から選択することもできる。
【0120】
具体的な例として、前記塩基性化合物としては重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および二塩基性よび三塩基性ホスフェート緩衝溶液などから選択される1種以上を使用することができる。
【0121】
前記塩基性化合物は弱塩基であって、前記反応液のpHを7超過11以下に維持する範囲であり、具体的な例として、前記反応液に連続して投入するか、または反応の前、途中または後に間欠的に投入することができる。
【0122】
前記不均一触媒は、一例として、Ru-MnCo、Au-CeOおよびPt/Cの中から1種以上を使用することができ、生成物の製造効率と1回以上、または4回以上の再循環可能な側面を考慮すると、Ru-MnCoを使用することが好ましい。
【0123】
このとき、極性溶媒は、公知の極性溶媒を使用することができ、一例として、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリルなどを使用することができる。極性溶媒は、前記化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の重量を基準として10~100wt%の含有量の範囲で使用することができるが、これに限定されない。
【0124】
他の例として、酸化反応が1次触媒フリー酸化段階、2次触媒フリー酸化段階および酸化段階を含む場合であって、各段階の名称は、各段階を他の段階と区分するために付与した名称で、各段階の技術的な全ての意味を含むものではない。
【0125】
1次触媒フリー酸化段階は、下記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の一部を生成する段階である。
【0126】
【化17】
【0127】
当該構造を有する芳香族ヘテロ環化合物は、下記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物原料を極性溶媒中で第6温度で酸化反応させて製造される。前記第6温度は100℃~200℃であり得る。前記圧力は常圧であり、反応は8hr~24hr行うことができる。
【0128】
このとき、極性溶媒は、公知の極性溶媒を使用することができ、一例として、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリルなどを使用することができる。極性溶媒は、前記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の重量を基準として10~100wt%の含有量の範囲で使用することができるが、これに限定されない。
【0129】
2次触媒フリー酸化段階は、化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物を最大限に生成する段階である。
【0130】
当該構造を有する芳香族ヘテロ環化合物は、前記1次触媒フリー酸化段階で使用した極性溶媒を他の種類の極性溶媒で置換させ、前記第6温度より低い第7温度でさらに酸化反応させて製造される。
【0131】
このとき、置換する極性溶媒は、公知の極性溶媒を使用することができ、一例として、置換前の溶媒より改善された溶解度を有するt-BuOClを使用することができる。当該極性溶媒は、前記化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の重量を基準として10~100wt%の含有量の範囲で使用することができるが、これに限定されない。
【0132】
前記第7温度は10℃~80℃の範囲内であり、前記第6温度より減温されることが好ましい。このとき、圧力は常圧であり、反応は1hr~10hr行うことができる。
【0133】
酸化段階は、表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物から目的とするジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を生成する段階である。
【0134】
目的とする化合物は、不均一触媒の存在下で前記第6温度と第7温度との間の第8温度で極性溶媒中に酸化反応させて製造される。前記第8温度は10℃~80℃の範囲内であり、前記第6温度より減温されることが好ましい。このとき、圧力は常圧であり、当該反応は2~15時間行うことができる。
【0135】
前記不均一触媒は、一例として、Ru-MnCo、Au-CeO、Ru/CおよびPt/Cの中で1種以上を使用することができ、生成物の製造効率と1回以上、または4回以上の再循環可能な側面を考慮すると、Ru-MnCoまたはAu-CeOを使用することが好ましい。
【0136】
このとき、使用する極性溶媒は、公知の極性溶媒を使用することができ、一例として、エタノールを使用することができる。当該極性溶媒は、前記化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物の重量を基準として10~100wt%の含有量の範囲で使用することができるが、これに限定されない。
【0137】
<本発明の第5側面>
本発明の第5側面は、第1側面による芳香族ヘテロ環化合物原料物質と第2側面による不均一触媒を利用して製造された粗(crude)組成物である。
【0138】
第5側面の組成物は、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を含む。
【0139】
前記ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物として目的とする化合物は、下記化学式5で表される構造を有する化合物である。
【0140】
【化18】
【0141】
このとき、組成物はやむを得ず原料物質(化学式2で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物に該当)、改質物質(化学式3で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物、または化学式4で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物)、追加の酸化物(下記化学式6で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物(FFCA)または下記化学式7で表される構造を有する芳香族ヘテロ環化合物)を含むことができる。
【0142】
【化19】
【0143】
参考として、本発明が対象とする反応は、上述した原料物質を使用して不均一触媒の存在下での酸化反応であって、具体的には、下記化学式1で表される芳香族ヘテロ環化合物を不均一触媒の存在下で酸化剤(酸素ガスなど)と接触させてバックボーンに含まれている不飽和基を酸化する反応である。
【0144】
これら反応で得られる芳香族ヘテロ環化合物の酸化物(以下、ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物または反応生成物という)としては、バックボーンに含まれている不飽和基が酸化され、次の反応式で表されるように、2,5-フランジアニオン架橋剤(FDCAに該当)、2,4-フランジアニオン架橋剤、2-カルボキシ-5-ホルミルフラン(FFCAに該当)またはレブリン酸(levulinic acid)などが挙げられる。
【0145】
これら生成物は、一般に原料である芳香族ヘテロ環化合物よりも融点が高いため、溶融状態で反応器から取り出しにくいので、精製または結晶化などの後処理を必要とする。例えば、芳香族ヘテロ環化合物として5-クロロメチルフルフラールの融点は37℃である反面、2,5-フランジアニオン架橋剤の融点は342℃に相当する。
【0146】
また、これら生成物の効率的な分離のために、できる限り前記化学式5で表される構造を有するジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物が最大限に得られることが好ましい。
【0147】
一例として、本発明の第5側面による組成物は、前記化学式5で表される構造を有するジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物が95wt%以上であり、残部を残りの物質が含まれて得られる。
【0148】
<本発明の第6側面>
本発明の第6側面は、芳香族ヘテロ環化合物原料を不均一触媒の存在下で極性溶媒中で酸化反応させてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を製造する装置である。
【0149】
第6側面の製造装置は、反応器、芳香族ヘテロ環化合物原料の貯蔵タンク、および酸化剤の供給装置を含む。このとき、反応器は、活性触媒が担持された担持体が内部に充填されたシリンダー型カラム反応器であり得るが、これに限定されない。
【0150】
また、前記酸化剤の供給装置は、前記芳香族ヘテロ環化合物原料の貯蔵タンクと前記反応器を連結する配管に連結された構造を有し、前記原料を加圧された状態で前記反応器内に供給することができる。
【0151】
これら酸化剤の供給装置の配置構造は、原料物質が加圧された状態で反応器内に移送され、反応器内の加圧条件を別途あるいはさらに制御する必要がないだけでなく、原料物質により反応活性化の程度を高めることができるので、好ましい。
【0152】
前記反応器の圧力は、前記酸化剤の供給装置により供給される酸化剤によって1~5気圧の範囲内に制御され、前記反応器の温度は40℃~200℃の範囲内に制御することができる。
【0153】
前記酸化剤は、酸素および空気からなる群担体は炭素、アルミニウム、セリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムからなる群から独立して選択される1種以上であり得る。
【0154】
このとき、芳香族ヘテロ環化合物原料は、前記化学式1で表される構造を有する。
【0155】
前記シリンダー型カラム反応器は、上述した不均一触媒が内部に充填されたものであり得る。不均一触媒については上述の通りであるので、具体的な記載を省略する。
【0156】
前記反応器から排出された気相ジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物は、精製反応器または結晶化反応器から分離され、前記精製反応器または前記結晶化反応器の下部にジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物収集部を含むことができる。
【0157】
前記反応器は、第1酸化反応器および第2酸化反応器を含むことができ、この場合、第1酸化反応器が触媒フリー酸化反応用反応器として使用され、第2酸化反応器が触媒酸化反応用反応器として使用される。
【0158】
必要に応じて、前記反応器は、第1酸化反応器が1次触媒フリー酸化反応用および2次触媒フリー酸化反応用反応器として使用され、第2酸化反応器が触媒酸化反応用反応器として使用される。
【0159】
一例として、前記芳香族ヘテロ環化合物を極性溶媒に溶解した溶液は、反応器と芳香族ヘテロ環化合物原料の貯蔵タンクの圧力差によって供給され、バルブを利用して流量を調節して反応時間(滞留時間)を調節する。
【0160】
また、反応器として不均一触媒が固定充填されたカラム(例えばシリンダー型カラム)を通過して反応が終了した溶液は後処理反応器に移送され、精製および/または結晶化工程により収集容器に貯蔵される。
【0161】
前記収集容器に貯蔵されたジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物転換溶液は、下部から排出して溶媒、不均一触媒およびジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を分離して反応生成物としてジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物を回収する。
【0162】
本発明によれば、芳香族ヘテロ環化合物溶液が充填された貯蔵タンクを酸化剤(酸素または空気)で加圧するので、酸素が溶媒に溶解して反応性向上を示すことができ、前記反応器内の反応圧力を制御することもできる。
【0163】
具体的な例として、溶媒と混合した原料である芳香族ヘテロ環化合物は、移送途中で酸素の供給タンクまたは反応器から排出した酸素ガスで加圧し、反応器内の圧力条件に当たって原料の全量が反応生成物を含む溶媒に溶解する濃度に調整する。
【0164】
前記反応器において反応器から排出した酸素ガスで加圧する場合、コントロールバルブなどを用いて流量などを調節することができる。酸素の供給位置はそれ以外に反応器、原料である芳香族ヘテロ環化合物溶液を酸素で加圧する原料の供給タンクまたは原料溶液を反応器に供給する原料供給ラインなどであり得る。
【0165】
原料である芳香族ヘテロ環化合物の供給位置は、反応器の上端部であることが反応速度を極大化するので好ましいが、これに限定されない。
【0166】
前記反応器で原料である芳香族ヘテロ環化合物溶液が、固定相触媒と酸素と接触して酸化反応が起こり、このとき、反応器の上端部に設けられた液体質量供給装置およびコントロールバルブにより反応器内に自動または半自動で投入される原料芳香族ヘテロ環化合物溶液の含有量、酸素の投入量および速度などを制御することができる。
【0167】
通常、芳香族ヘテロ環化合物の酸化反応速度は、反応液内に溶解した酸素ガスの量に影響を受ける。本発明の方法では酸素が加圧された芳香族ヘテロ環化合物原料を自動または半自動で反応器に投入することで触媒の酸素吸着量を増加させることもできる。したがって、反応を有利に行うことができる。
【0168】
また、原料芳香族ヘテロ環化合物の貯蔵タンクには、一例として、0.5~5.0wt%、あるいは0.5~2.0wt%の濃度で芳香族ヘテロ環化合物を上述した極性溶媒に溶解して充填するか、あるいは芳香族ヘテロ環化合物を単独で充填する。
【0169】
芳香族ヘテロ環化合物を単独で充填する場合、前記芳香族ヘテロ環化合物の貯蔵タンクと前記反応器を連結する配管に極性溶媒供給タンクから供給された極性溶媒を供給することで上述した濃度に調整することができる。
【0170】
以上のように準備された原料物質は、前記配管に酸化剤の貯蔵タンクから供給された酸化剤(酸素ガス)で100bar以下に加圧する。このとき、加圧圧力は、原料物質溶液に溶解する酸素の量に比例するため、高圧を使用することで反応速度を向上させることができる。
【0171】
前記反応器に充填される不均一触媒としては、上述した第2側面の触媒を含み、多様な貴金属または金属前駆体を取り、多様な極性溶媒に溶解して貴金属または金属前駆体溶液を準備する。酸素に対する選択度が非常に高く、前記貴金属触媒に対する担体として選択される炭素は比表面積が大きいものを使用するために活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブなどを使用する。
【0172】
前記炭素担体は、硝酸溶液を使用して洗浄し、これを精製水で3回以上さらに洗浄したものを乾燥させた後に使用することが好ましい。前記貴金属担持は、過剰溶液含浸法でも高い分散度を得ることができる。
【0173】
一例として、白金前駆体溶液を準備し、比表面積の高い炭素担体に含浸させた後、洗浄乾燥することができる。
【0174】
他の例として、Ru、Mn、Coの三元系酸化物触媒を製造するためにMn前駆体とCo前駆体溶液をそれぞれ準備し、アニオン架橋剤を使用して表面改質を行った後、Ru前駆体(必要な場合、Ru前駆体溶液)に含浸させた後、洗浄乾燥することができる。
【0175】
さらに他の例として、Au、Ceの二元系酸化物触媒を製造するためにCe前駆体溶液を準備し、アニオン架橋剤を使用して表面改質を行った後、Au前駆体溶液に含浸させた後、洗浄乾燥することができる。
【0176】
これらの洗浄乾燥された炭素担体(例えば、活性炭)または上述した化学式9で表される構造を有する担体を丸形フラスコに入れた後、回転蒸発乾燥装置を使用して混合および担持を行う。精製水が蒸発して除去された後、炭素体または上述した化学式9で表される構造を有する担体を乾燥機で乾燥する。乾燥された炭素体または上述した化学式9で表される構造を有する担体は、電気炉で水素雰囲気下で400~500℃に加熱して還元させ、貴金属担持された炭素体または金属触媒成分が担持された不均一触媒を完成することができる。このとき、還元温度は、通常の還元反応温度を使用することができる。
【0177】
製造された触媒成分が担持された炭素体または上述した化学式9で表される構造を有する触媒を垂直に設けられた管型反応器に充填する。このとき、触媒フリー酸化反応器と酸化反応器が存在する場合、当該触媒は、前記酸化反応器用管型反応器に充填する。
【0178】
充填後、反応器の温度を100~500℃で真空を維持して吸着した不純物を除去して反応器の触媒充填を行う。
【0179】
前記反応器(触媒が充填された塔に該当)は、酸素ガスなどの酸化剤を使用して1~10barの範囲で調節し、1bar以下では酸素の吸着による反応速度の低下が発生し、10bar以上では反応速度の上昇が非常に微小である。したがって、前記圧力は2~4barであることが好ましい。
【0180】
また、反応器の酸化反応温度は40~200℃の範囲で行う。40℃以下では反応速度が遅く、200℃以上では酸素の触媒表面吸着が減少して反応性が減少する。最も好ましくは40~180℃の範囲である。
【0181】
酸化反応用反応器(触媒充填塔)の上部に液体質量供給装置を用いて芳香族ヘテロ環化合物が溶解した溶液またはその改質された化合物が溶解した溶液を供給する。供給された芳香族ヘテロ環化合物溶液または改質された化合物が溶解した溶液は、重力によって反応器の下部に流れ、触媒と反応して酸化反応を行う。
【0182】
前記反応生成物と溶媒との分離は、通常の化学製品の製造工程で使用する方法を使用することができる。例えば、反応生成物を加熱または冷却させた後、溶媒を蒸留除去するかまたは反応生成物の結晶を生成した後、生成物を回収または生成物の結晶を回収することができる。
【0183】
本発明の方法によれば、目的とする生成物質を提供するために、最適の原料物質と不均一触媒を使用して適切な反応条件で連続反応で行うことができるので、効率的に目的とする反応生成物を製造することができる。
【実施例
【0184】
以下、本発明の実施例を参照して説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範疇がこれらにのみ限定されるものではない。
【0185】
製造例1:化学式1で表される構造を有する原料物質1の準備
原料物質として、下記化学式1で表される構造を有する化合物中のR1=アルデヒド、R2=ChHClである化合物(化学式2で表される構造を有する化合物に該当)を木質から転換させて準備した。
【0186】
製造例2:化学式1で表される構造を有する原料物質2の準備
原料物質として、下記化学式1で表される構造を有する化合物中のR1=R2=アルデヒドである化合物(化学式1の但し書きに適合しない5-hydroxymethyl furfuralに該当)を糖類から転換させて準備した。
【0187】
製造例3:不均一触媒(4wt%Ru-MnCo4)の製造
Mn前駆体(Mn(CHCOO))およびCo前駆体(Co(CHCOO))を1:1の重量比水準を取り、溶媒DIWに各前駆体溶液の50倍重量に溶解し、Mn前駆体溶液とCo前駆体溶液を準備した。
【0188】
準備された前駆体溶液を混合した後、アニオン架橋剤としてクエン酸溶液と混合して多孔性中心金属-有機骨格物質を製造した。
【0189】
前記多孔性中心金属-有機骨格物質を球状の形態を有するように活性化処理を行い、結合サイトを発生させた骨格物質として、球形状のRu-MnCoを得た。
【0190】
その後、金属触媒成分としてRu前駆体(RuCl*3HO)と前記MnCoを12hrs、N雰囲気下で攪拌し、そこにNaBHを前記Ru前駆体の10倍水準を滴下し、500rpm速度の攪拌をN雰囲気で常温で24時間反応して4%Ru/MnCoを得た。
【0191】
製造例4:不均一触媒(2wt%Au-CeO)の製造
Ce前駆体(Ce(CHCOO))を取り、溶媒HO 20gと0.01モルのNaOH水溶液に溶解してCe前駆体溶液を準備した。常温で窒素雰囲気で12時間攪拌して球形状のCeO支持体を得た。
【0192】
不活性触媒成分として、Au前駆体(AuCl*3HO)と前記CeO支持体を12hr、N雰囲気下で攪拌し、そこにNaNHを前記Au前駆体の10倍水準を滴下し、500rpm速度の攪拌をN雰囲気で常温で24時間反応して2wt%Au-CeO触媒を得た。
【0193】
製造例5:不均一触媒(4wt%Ru-MnCo)の製造
Mn前駆体(Mn(CHCOO))およびCo前駆体(Co(CHCOO))を1:1の重量比水準をとり、溶媒DIWに各前駆体溶液の50倍の重量に溶解し、Mn前駆体溶液とCo前駆体溶液を準備した。
【0194】
準備された前駆体溶液を混合し、常温でN雰囲気下で12時間攪拌して骨格物質を得た。
【0195】
その後、金属触媒成分として、Ru前駆体(RuCl*3HO)と前記MnCoを12hrs、N雰囲気下で攪拌し、そこにNaBHを前記Ru前駆体の10倍水準を滴下し、500rpm速度の攪拌をN雰囲気で常温で24時間反応して4% Ru/MnCoを得た。
【0196】
<実施例1:酸化反応実験>
反応器は反応部を含み、直径20cm、高さ100cmのSUS材質からなるカラムを2種連結し、前段のカラムを触媒フリー酸化反応器として使用し、後段のカラムを酸化反応器として使用しながら、後段の反応部を不均一系触媒であるRu-MnCo 1.5kgで充填した。
【0197】
ここで前記Ru-MnCoは、製造例3で準備したものを使用して充填した。充填後の反応器の温度を150℃で真空を維持して吸着した不純物を除去した。
【0198】
前記原料芳香族ヘテロ環化合物の貯蔵タンクには1wt%の濃度で芳香族ヘテロ環化合物(式1の化合物、R1=アルデヒド、R2=CHCl、製造例1で準備した物質に該当)を極性溶媒としてアセトニトリルに溶解して5リットル充填した。充填後、酸素ガスで3barで加圧した。このとき、加圧圧力は、芳香族ヘテロ環化合物に溶解する酸素の量に比例するので、高圧を使用することで反応速度を向上させることができる。
【0199】
前記前段のカラムを液体質量供給装置を用いて前記原料物質を酸素に加圧された溶液状態でカラムの上部に供給し、カラム内部の圧力を1~5barの範囲で調整した。供給された芳香族ヘテロ環化合物溶液は重力によってカラムの下部に流れ、このとき、前記前段のカラムにはオニウム系化合物としてテトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)15g、イオン活性化剤としてNaOAc 10gを一緒に投入した。
【0200】
このとき、反応物中の一部を抽出して構造を確認した結果、下記化学式3で表される構造を有する化合物であることを確認した。
【0201】
【化20】
【0202】
その後、反応物を後段のカラムに移送させてカラム内の触媒と接触させ、NaHCOを反応液pH7~11の範囲を満たすように間欠的に投入しながら、酸化反応を3wt% NaHCO(in DIW solution)を反応物の3倍の量で3回洗浄し、酸化物を含むcrude組成物を得た。
【0203】
<実施例2:酸化反応実験>
前記実施例1と同様の方法で、製造例3の4wt% Ru-MnCoに製造例4の2wt% Au-CeOを使用したことを除いては、実施例1と同様の装置を用いて酸化反応を行った。
【0204】
具体的には、反応器は反応部を含み、直径20cm、高さ100cmのSUS材質からなるカラムを2種連結し、前段のカラムを触媒フリー酸化反応器として使用し、後段のカラムを酸化反応器として使用しながら、後段の反応部を不均一系触媒であるAu-CeO 1.5kgで充填した。
【0205】
ここで前記Au-CeOは製造例4で準備したものを使用して充填した。充填後の反応器の温度を150℃で真空を維持して吸着した不純物を除去した。
【0206】
前記原料芳香族ヘテロ環化合物の貯蔵タンクには1wt%の濃度で芳香族ヘテロ環化合物(式1の化合物、R1=アルデヒド、R2=CHCl、製造例1で準備した物質に該当)を極性溶媒としてDMSOに溶解して5リットル充填した。充填後、酸素ガスで3barで加圧した。このとき、加圧圧力は、芳香族ヘテロ環化合物に溶解する酸素の量に比例するので、高圧を使用することで反応速度を向上させることができる。
【0207】
前記前段のカラムを液体質量供給装置を用いて前記原料物質を酸素に加圧された溶液状態でカラムの上部に供給し、カラム内部の圧力を1~5barの範囲で調整した。供給された芳香族ヘテロ環化合物溶液は重力によってカラムの下部に流れ、このとき、触媒フリー酸化反応物中の一部を抽出して構造を確認した結果、下記化学式4で表される構造を有する化合物であることを確認した。
【0208】
【化21】
【0209】
その後、前記前段のカラム内溶媒(DMSO)を次亜塩素酸tert-ブチル(Tert-BUTYL HYPOCHLORITE)で置換し、常温で24時間反応させた。
【0210】
さらに、反応物中の一部を抽出して構造を確認した結果、また前記化学式4で表される構造を有する化合物であることを確認した。
【0211】
次いで、得られた反応物を後段のカラムに移送させてカラム内の触媒と接触させ、NaHCOを反応液pH7~11の範囲を満たすように間欠的に投入しながら、酸化反応を3wt% NaHCO in DIW solitionを反応物の3倍の量で洗浄し、酸化物を含むcrude組成物を得た。
【0212】
<比較例1:酸化反応実験>
実施例1で使用した製造例1の原料物質を製造例2の原料物質に変更したことを除いては、同様の工程を繰り返し酸化物を含むcrude組成物を得た。
【0213】
<比較例2:酸化反応実験>
前記実施例1と同様の方法で、製造例3の1wt% Ru-MnCoの代わりに製造例5の4wt% Ru-MnCoを使用したことを除いては、実施例1と同様の装置を使用して酸化反応を行った。
【0214】
具体的には、反応器は反応部を含み、直径20cm、高さ100cmのSUS材質からなるカラムを2種連結し、前段のカラムを触媒フリー酸化反応器として使用し、後段のカラムを酸化反応器として使用しながら、後段の反応部を不均一系触媒であるRu-MnCo 1.5kgで充填した。
【0215】
ここで前記Ru-MnCoは、製造例5で準備したものを使用して充填した。充填後の反応器の温度を150℃で真空を維持して吸着した不純物を除去した。
【0216】
前記原料芳香族ヘテロ環化合物の貯蔵タンクには1wt%の濃度で芳香族ヘテロ環化合物(式1の化合物、R1=アルデヒド、R2=CHCl、製造例1で準備した物質に該当)を極性溶媒としてアセトニトリルに溶解して5リットル充填した。充填後、酸素ガスで3barで加圧した。このとき、加圧圧力は、芳香族ヘテロ環化合物に溶解する酸素の量に比例するので、高圧を使用することで反応速度を向上させることができる。
【0217】
前記前段のカラムを液体質量供給装置を用いて前記原料物質を酸素に加圧された溶液状態でカラムの上部に供給し、カラム内部の圧力を1~5barの範囲で調整した。供給された芳香族ヘテロ環化合物溶液は重力によってカラムの下部に流れ、このとき、前記前段のカラムにはオニウム系化合物としてテトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)15g、イオン活性化剤としてNaOAc 10gを一緒に投入した。
【0218】
このとき、反応物中の一部を抽出して構造を確認した結果、下記化学式3で表される構造を有する化合物であることを確認した。
【0219】
【化22】
【0220】
その後、反応物を後段のカラムに移送させてカラム内の触媒と接触させ、NaHCOを反応液pH7~11の範囲を満たすように間欠的に投入しながら、酸化反応を3wt% NaHCO in DIW solutionを反応物の3倍の量で3回洗浄し、酸化物を含むcrude組成物を得た。
【0221】
<評価>
1)収率評価
前記実施例1および2と比較例1および2で提示された方法で合成されたcrude組成物の成分分析により、下記化学式5で表される構造を有する化合物、下記化学式6で表される構造を有する化合物、および下記化学式7で表される構造を有する化合物の含有量を測定し、下記表1に示す。
【0222】
【表1】
【0223】
上記表1に示すように、本発明で提示した製造例1の原料物質を使用した場合、製造例3および4の不均一触媒全てに対して98wt%以上の収率を確認した。
【0224】
これに対し、比較例1の原料物質を使用した場合、製造例3~5の不均一触媒それぞれに対して65.5%の不良な収率を確認した。
【0225】
また、比較例2の適切な架橋剤を使用せずに製造された製造例5の触媒を使用した場合、73.5%の不良な収率を確認した。
【0226】
2)純度評価
前記収率評価で確認された化学式5で表される構造を有する化合物の純度を実施例1で得られたサンプルと当該分野で標準物質として使用されるアルドリッチ社(米国)製の標準品を対照例として使用してHPLCで測定し、純度を比較分析した結果を下記表2に示す。
【0227】
【表2】
【0228】
上記表2に示すように、本発明が提供する原料物質を使用してより過剰に合成された当該化合物が高純度を示すことを確認することができた。
【0229】
3)転換率評価
実施例1および2で得られたcrude組成物の酸化反応途中の温度と反応圧力に応じた転換率を測定した結果、100℃~180℃の範囲で前記化学式5で表される構造を有する化合物が1~4気圧の圧力単位で優れた転換率を示すことを確認した。
【0230】
4)圧力の影響評価
前記3)項目の転換率評価の途中の同一温度での圧力の影響を評価した。当該圧力は炭素および白金の酸素に対する吸着力、または中心金属、遷移金属および金属触媒成分の酸素に対する吸着力に影響を与え、1~5気圧、特に、2気圧程度で優れた転換率を示すことを確認することができた。
【0231】
上述した各実施例で例示した特徴、構造、効果などは実施例が属する分野の通常の知識を有するものによって他の実施例に対しても組み合わせまたは変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせと変形に関する内容は本発明の範囲に含まれると解釈されなければならないだろう。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明は、連続工程により量産が可能で、生産効率が大きく向上したジカルボン酸芳香族ヘテロ環化合物、またはこれを含む粗(crude)ジカルボン酸芳香族ヘテロ環組成物を提供することができる。
【国際調査報告】