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特表2024-528901モノパイルコーティング方法、モノパイルおよびモノパイルコーティングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】モノパイルコーティング方法、モノパイルおよびモノパイルコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/18 20060101AFI20240725BHJP
   C23C 4/06 20160101ALI20240725BHJP
   C23C 4/16 20160101ALI20240725BHJP
【FI】
C23C4/18
C23C4/06
C23C4/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505235
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022067937
(87)【国際公開番号】W WO2023006327
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188527.2
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524036114
【氏名又は名称】エスアイエフ・ホールディング・エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SIF HOLDING N.V.
【住所又は居所原語表記】Mijnheerkensweg 33,6041 TA Roermond, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストワース、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】マッツォレーニ、マルツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デ・ロフト、ヨプ
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031AA01
4K031EA02
4K031FA03
4K031FA04
4K031FA07
(57)【要約】
モノパイルをローラー支持体に載置することであって、ローラー支持体が、モノパイルがローラー支持体に載置された際にモノパイルを回転させるための回転手段を備え、ローラーが、モノパイルを支持しており、モノパイルがローラー支持体に載置された際にモノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に位置付けられる、載置することと、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布することと、溶射された金属コーティングの少なくとも一部を、ローラー支持体を使用してモノパイルを回転させることによって圧縮することとを含む、モノパイルコーティング方法が開示される。モノパイルおよびモノパイルコーティングシステムも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
8m以上の直径を持つモノパイルをローラー支持体に載置することであって、前記ローラー支持体が、前記モノパイルが前記ローラー支持体に載置された際に、前記モノパイルを回転させるための回転手段を備え、前記ローラーが、前記モノパイルを支持しており、前記モノパイルが前記ローラー支持体に載置された際に前記モノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に位置付けられる、載置することと、
溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、前記1つ以上の位置に対応する前記モノパイルの円周外側表面の部分に塗布することと、
前記溶射された金属コーティングの少なくとも一部を、前記ローラー支持体を使用して前記モノパイルを回転させることによって圧縮することと
を含む、モノパイルコーティング方法。
【請求項2】
前記溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することが、前記コーティングの厚さを、15%乃至80%だけ、好ましくは20%乃至70%だけ、より好ましくは25%乃至60%だけ、最も好ましくは30%乃至50%だけ低減させるように、前記溶射された金属コーティングを圧縮することを含む、請求項1に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項3】
前記溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することが、前記モノパイルを、平均して少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも25、最も好ましくは少なくとも30回回転させることを含む、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項4】
前記溶射された金属コーティングを塗布することの後および前記溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することの前またはその最中に、保護材、たとえばポリマー発泡体またはゴムシートを、前記溶射された金属コーティングの上に適用することをさらに含む、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項5】
前記溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することの後に、シーラーを、前記溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項6】
前記溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することの後に、さらなるコーティングを、前記溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項7】
前記1つ以上の位置に対応する前記モノパイルの前記円周外側表面の部分が、何れのタイプのローラー支持体が使用されるかに基づき、0.2m乃至3m、好ましくは0.4m乃至2.5m、より好ましくは0.5m乃至2m、最も好ましくは0.7m乃至1.5mで変動する幅を有する、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項8】
前記1つ以上の位置に対応する前記モノパイルの前記円周外側表面の部分の前記幅が、前記ローラー支持体の前記幅と同じ大きさであるかまたはそれよりも大きい、請求項7に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項9】
前記圧縮することの最中に、接触点における前記溶射された金属コーティングへの圧縮応力が、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超える、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項10】
前記モノパイルが、長手方向のサブマージアーク溶接部を含み、前記モノパイルコーティング方法が、前記モノパイルを前記ローラー支持体に載置することの前に、長手方向のサブマージアーク溶接部をグラウンドフラッシュすることをさらに含む、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項11】
前記溶射された金属コーティングを塗布することの前に、前記1つ以上の位置に対応する前記モノパイルの前記円周外側表面の部分をブラストクリーニングすることをさらに含む、先行する請求項の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項12】
前記ブラストクリーニングすることを、好ましくはスチールもしくはミネラルグリット研磨材を用いるオープンジェットグリットブラスチングを使用して、または好ましくはスチールグリット研磨材を用いる自動タービンブラストクリーニングを使用して実施する、請求項11に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項13】
前記ブラストクリーニングすることが、40μm~150μm、好ましくは50μm~125μm、より好ましくは60μm~115μm、最も好ましくは80μm~105μmの範囲内の鋭角のプロファイルの深さを有するように前記表面を前処理することを含む、請求項11~12の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法を使用してコーティングされた、モノパイル。
【請求項15】
ローラー支持体および溶射機器を含むモノパイルコーティングシステムであって、前記ローラー支持体が、少なくとも8mの直径を持つモノパイルが前記ローラー支持体に載置された際に前記モノパイルを回転させるための回転手段を備え、前記ローラーが、前記モノパイルを支持するためのものであり、前記モノパイルを前記ローラー支持体に載置するために軸に沿って1つ以上の位置に位置付けられ、前記溶射機器が、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、前記1つ以上の位置に対応する前記モノパイルの前記円周外側表面の部分に塗布するように構成されている、モノパイルコーティングシステム。
【請求項16】
請求項2~13の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法を行うようにさらに構成されている、請求項14に記載のモノパイルコーティングシステム。
【請求項17】
溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、表面に塗布することと、
前記溶射された金属コーティングを圧縮することであって、前記圧縮することの最中に、接触点における前記溶射された金属コーティングへの圧縮応力が、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超える、圧縮することと
を含む、コーティング方法。
【請求項18】
前記溶射された金属コーティングを圧縮することが、前記コーティングの厚さを、15%乃至80%だけ、好ましくは20%乃至70%だけ、より好ましくは25%乃至60%だけ、最も好ましくは30%乃至50%だけ低減させるように、前記溶射された金属コーティングを圧縮することを含む、請求項17に記載のコーティング方法。
【請求項19】
前記溶射された金属コーティングを塗布することの後および前記溶射された金属コーティングを圧縮することの前またはその最中に、保護材、たとえばポリマー発泡体またはゴムシートを、前記溶射された金属コーティングの上に適用することをさらに含む、請求項17~18の何れかに記載のコーティング方法。
【請求項20】
前記溶射された金属コーティングを圧縮することの後に、シーラーを、前記溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む、請求項17~19の何れかに記載のコーティング方法。
【請求項21】
前記溶射された金属コーティングを圧縮することの後に、さらなるコーティングを、前記溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む、請求項17~20の何れかに記載のコーティング方法。
【請求項22】
前記溶射された金属コーティングを塗布することの前に、前記表面をブラストクリーニングすることをさらに含む、請求項17~21の何れかに記載のコーティング方法。
【請求項23】
前記ブラストクリーニングすることを、好ましくはスチールもしくはミネラルグリット研磨材を用いるオープンジェットグリットブラスチングを使用して、または好ましくはスチールグリット研磨材を用いる自動タービンブラストクリーニングを使用して実施する、請求項22に記載のコーティング方法。
【請求項24】
前記ブラストクリーニングすることが、40μm~150μm、好ましくは50μm~125μm、より好ましくは60μm~115μm、最も好ましくは80μm~105μmの範囲内の鋭角のプロファイルの深さを有するように前記表面を前処理することを含む、請求項22~23の何れかに記載のコーティング方法。
【請求項25】
請求項1~13の何れかに記載のモノパイルコーティング方法を使用することによって取得可能である、取得されるおよび/もしくは直接的に取得される、または請求項17~24の何れかに記載のコーティング方法を使用することによって取得可能である、取得されるおよび/もしくは直接的に取得される、コーティング。
【請求項26】
前記コーティングが、モノパイルの表面において使用される、請求項25に記載のコーティング。
【請求項27】
溶射機器および溶射された金属コーティングを圧縮するための手段を含むコーティングシステムであって、前記溶射機器が、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを表面に塗布するように構成され、前記溶射された金属コーティングを圧縮するための前記手段が、前記溶射された金属コーティングを圧縮し、それにより、接触点における前記溶射された金属コーティングへの圧縮応力が、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超えるように構成されている、コーティングシステム。
【請求項28】
前記コーティングシステムが、請求項18~24の何れかに記載のモノパイルコーティング方法を行うようにさらに構成されている、請求項27に記載のコーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、モノパイルコーティング方法、モノパイルおよびモノパイルコーティングシステムの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]21世紀における重要な課題は、温室効果ガスの排出を如何にして低減させるかである。気候変動に対処するために、再生可能資源を使用してますます多くの電気を生成すべきであることが予見される。たとえば、電気は、風力タービン、好ましくは沖合風力タービンを使用して生成されてもよい。
【0003】
[0003]沖合風力タービンは、堅固で信頼できる基礎を必要とする。他の選択肢と比較して、モノパイル基礎は、それらの低い製造コスト、低い輸送および設置コスト、ならびにそれらの完璧な実績による低いリスクプロファイルにより、普遍的である。北海において現在設置されている風力タービンの80%超は、モノパイル基礎に基づいている。
【0004】
[0004]現在のところ、モノパイルの典型的な長さは50~90mであり、モノパイルの典型的な直径は8m以上であり、モノパイルの典型的な壁厚は60乃至120mmである。モノパイルの典型的な重量は、1000トン以上であることができる。
【0005】
[0005]モノパイルは、典型的には鋼でできており、複数のシェルを一緒に溶接することによって形成されうる。シェルは、円筒/円錐形状の1枚以上の鋼板を巻き、巻かれた板の接続側を溶接することによって形成されうる。そのような生産処理の利点は、大きい寸法の管状物が形成されてもよいことである。
【0006】
[0006]近年では、シェル直径を増大させること、シェルの鋼板の厚さを減少させること、およびモノパイル長さを増大させることに向けた開発が行われてきた。この開発は、少なくとも近い将来まで継続することが予想される。そのため、90mよりも長い、および/または8mより大きい直径を有する、および/または60mmより小さい壁厚を有する、モノパイルの将来的な必要性があることが予想される。
【0007】
[0007]海上の基礎は、非常に攻撃的な環境に曝露される。この環境は、ISO 12944-2:2017に従い、CX/lm4区分(沖合クラス、極度の腐食性)として分類される。これは、25年以上の最低耐用年数を実現するためには若干数の腐食保護対策をとる必要があることを意味する。
【0008】
[0008]腐食保護対策は、モノパイルをコーティングすることを含む。多数の異なるコーティングシステムがあり、何れのシステムもその利点および不利点を有する。コーティングシステムは、溶射された金属コーティングの(TSZA、溶射された亜鉛アルミニウム、またはTSA、溶射されたアルミニウム)および非常に強力な有機二成分コーティング(エポキシ)を含む。両方のシステムは、水および酸素に対する障壁として作用して、錆の発生を妨げ、金属システムは、追加のガルバニック(電気化学的)保護を提供する。
【0009】
[0009]モノパイルコーティング方法を、コーティングホール内で行ってもよい。そのようなコーティングホールにおいて、環境は、モノパイルをコーティングするために特に好適であるように制御されてもよく、コーティングホールには、モノパイルをコーティングするための特殊な機器が装備されていてもよい。
【0010】
[0010]コーティングホールの内部には爆発性雰囲気が存在しうる。すなわち、溶剤および/または液体揮発性粒子の存在により、爆発性ガスまたは粉塵雰囲気が存在しうる。そのため、コーティングホールにおいて使用される如何なる機器も、そのような環境のための安全性要件を満たすべきである。爆発性雰囲気において使用される機器についての安全性要件を記述している法律および/または規制、たとえばEU(欧州連合)のATEX(爆発性雰囲気における使用が意図される機器)指令がある。コーティングホールの内部で使用される如何なる機器も、これらの法律および/または規制に従うべきである。
【0011】
[0011]モノパイルコーティング方法において、コーティングのいくつかの部分を自動的に塗布してもよく、コーティングの他の部分を手動で塗布してもよい。
【0012】
[0012]コーティングを手動で塗布することの不利点は、コーティングを自動的に塗布するために装備されたコーティングホールが、コーティングを手動で塗布するために好適ではない場合があり、それにより、モノパイルをコーティングホール間に移動させることが必要となりうることである。モノパイルのサイズおよび重量により、モノパイルをコーティングホール間に移動させることは、高価な場合がある。
【0013】
[0013]コーティングを手動で塗布することのさらなる不利点は、自動コーティングおよび手動コーティングを順次に行うことが必要となりうることである。これは、コーティング方法全体を延長するという不利点を有し、より大きいコストおよびより低い生産性につながりうる。
【0014】
[0014]コーティングを手動で塗布することのまたさらなる不利点は、モノパイルのサイズおよび重量により、コーティング方法の手動適用の最中に作業現場での事故のリスクがあることである。作業現場での事故のリスクを種々の安全対策により低減させてもよいが、コーティングを自動的に塗布することが本来的により安全でありうる。
【0015】
[0015]US2004/062875A1(以後、D1と称する)は、ローラーおよび噴射ノズルの対を有するデバイス回転子を含む巻き取り型デバイスをコーティングするためのコーティング装置について記述している。噴射ノズルは、対のローラー間にある間隙に向けられているコーティング材料の噴射を生成する。コーティング方法の最中に巻き取り型デバイスに堆積しないあらゆる噴射の大半は、ローラー間の間隙を通過する。D1の段落13は、「コーティング方法は、小型巻き取り型デバイス、たとえば、円筒形状を有する小型医療デバイス、たとえばカテーテルおよびステントに特に好適である」と記述している。D1は、モノパイルに関するものではない。
【0016】
[0016]JP2020066773A(以後、D2と称する)は、チューブを回転させるための回転式ローラーと、チューブの横断面に関係する円の接線に実質的に垂直な方向から回転式ローラーによって回転させられるチューブに対して膜を形成するために溶射材料を貯蔵するための貯蔵タンクから放出された溶射材料を噴射するための噴射部分とを含む、膜形成デバイスについて記述している。段落20は、チューブT1が金属製であり、200mm以上および1000mm以下の直径を有することを記述している。チューブは、高圧または高引張力下で形成することによって典型的には生成される物体である。そのような生産処理の利点は、幾何学的精度(たとえば、円筒度および真直度)が、たとえばモノパイルの生産において、円筒および円錐部分を互いに追加することによって典型的には実現される幾何学的精度よりも高くなりうることである。チューブのための典型的な生産処理の不利点は、限られた寸法までのみ可能であることである。D2は、モノパイルに関するものではない。
【0017】
[0017]JP2017140597A(以後、D3と称する)は、基材上でブラスト加工を実行するためのブラスト部分と、フレーム溶射加工を実行するためのフレーム溶射部分と、基材を回転させるための回転式デバイスと、基材を下から回転自在に支持するためのローラーおよび制御部分を有する複数のローラーデバイスを含むことならびに基材の移動通路上にブラスト部分およびフレーム溶射部分を配置することによって基材を長さ方向に移動させるための運び台とを有する、フレーム溶射加工デバイスにおいて、ブラスト部分が、ブラストガンおよびブラスト材料を回収するためのブラストトレイを含み、フレーム溶射部分が、フレーム溶射ガンおよびフレーム溶射材料を回収するためのフレーム溶射トレイを含み、複数のローラーデバイスが、基材の長さ方向に直線形状に配置されており、それぞれのローラーが、基材に接するための支持位置と下に移動される退却位置との間で鉛直に移動可能であり、ローラーがブラストトレイおよびフレーム溶射トレイと衝突しないように、制御部分が、基材の移動に応答してローラーが移動する際にこれらのトレイの配置位置を通過する場合、ローラーを退却位置に連続的に移動させることを記述している。D3は、モノパイルに関するものではない。その上、D3がフレーム溶射加工デバイスに関するものであることから、デバイスは、爆発性雰囲気における使用には不適当である。これは、爆発性雰囲気において裸火を使用すべきではないからである。
【0018】
[0018]上記の情報は、本開示の理解を支援するためだけに背景情報として提示されている。上記の何れかが本開示に関して先行技術として適用可能でありうるか否かについて、如何なる決定も為されておらず、如何なる断言も為されない。
【発明の概要】
【0019】
技術的な問題
[0019]コーティングを自動的に塗布するのに好都合な、コーティングを手動で塗布する必要性が低減された、モノパイルコーティング方法の長年にわたる切実な必要性がある。自動コーティングに好都合な、必要とされる手動コーティングの量を低減させることは、より低いコストおよび/またはより高い生産性および/またはより安全な作業環境および/または他の利益を可能にする場合がある。
【0020】
[0020]この問題に対処するための種々の試みが為されてきた。自動化されたコーティング方法において、モノパイルを、制御環境、たとえばコーティングホールに置いてもよい。コーティングを塗布する前に、コーティングのために表面を前処理してもよい。次いで、コーティングをモノパイルの円周外側表面に自動的に噴射するためのデバイスを使用することによって、コーティングをモノパイルの円周外側表面に塗布してもよい。
【0021】
[0021]実際に、コーティングを噴射しながら、コーティングを自動的に噴射するためのデバイスをモノパイルの長手方向に沿って移動させることによって、およびモノパイルにその軸の周囲を回転させることによって、コーティングをモノパイルの円周外側表面に塗布することは、便利である。
【0022】
[0022]モノパイルは、典型的には、コーティングを自動的に噴射するためのデバイスよりもはるかに大きく重いことが述べられる。したがって、モノパイル自体を移動させることよりも、コーティングを自動的に噴射するためのデバイスをモノパイルの長手方向に沿って移動させることがより便利である。
【0023】
[0023]しかしながら、モノパイルのサイズのせいもあり、コーティングを自動的に噴射するためのデバイスをモノパイルの円周の周囲に移動させることは実現困難であり、何故なら、モノパイルの直径は8m以上でありうるからである。モノパイルの円周外側表面をコーティングするために、代わりにモノパイルを回転させることが好ましい。
【0024】
[0024]典型的には、モノパイルはエポキシコーティングでコーティングされる。これは、自動的にまたは手動で為されてもよい。
【0025】
[0025]モノパイルをコーティングする公知の方法では、コーティングのための前処理として、モノパイルの表面を最初に清潔にする。次いで、モノパイルを、コーティングを噴射するためのデバイスが装備されたコーティングホールに移動させる。このデバイスを使用して、コーティングを塗布する。コーティング方法の後、モノパイルを移動させ、さらなるコーティングを手で塗布する。次いで、品質管理手順を実施する。
【0026】
[0026]したがって、自動コーティングに好都合な、手動コーティングが少ないモノパイルコーティング方法の必要性が依然としてある。
技術的な解決策
[0027]しかしながら、上記でも論じた通り、モノパイル製造の分野では、モノパイル直径を増大させること、モノパイル壁厚を減少させること、およびモノパイル長さを増大させることに向けた開発が行われてきた。これは、モノパイルがより重く長くなってきているが、より剛性にはなっていないことを暗示している。モノパイル支持体およびモノパイルを回転させるためのデバイスが、モノパイルの端部の近位にのみ位置付けられている場合、支持体およびモノパイルを回転させるためのデバイスは、より重いモノパイルを支持するおよび回転させるためにも適合されているべきである。その上、長く重いモノパイルは、自重で湾曲する場合がある。そのため、モノパイル支持体およびモノパイルを回転させるためのデバイスが、モノパイルの長さに沿って複数の位置に位置付けられているモノパイルコーティング方法の必要性がある。
【0027】
[0028]モノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に位置付けられたローラー支持体上でモノパイルを支持することが可能である。そのようなローラー支持体は、たとえば、電気モーターを使用して動力を得ていてもよく、モノパイルを回転させるためのデバイスとして役立ってもよい。モノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に位置付けられたローラー支持体によって支持されるおよび回転させられるモノパイルに、コーティング、たとえばエポキシコーティングを自動的に塗布することが可能である。
【0028】
[0029]しかしながら、モノパイルの重量により、ローラー支持体とモノパイルとの間の接触点には大きい圧力がかかる。実際に、ローラー支持体とモノパイルとの間の接触点における圧力は、1GPaを超えると推定される場合がある。さらに、実際に、モノパイルの幾何学的精度、たとえば真直度および円筒度は、比較的低くてもよく、これは、回転中に軸方向に漂流力をもたらしうる。これにより、ローラーが位置付けられているモノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に対応する円周外側モノパイル表面の部分にコーティングが塗布されるならば、コーティングは大きい圧縮応力に供され、損傷することが予想される。そのため、ローラーが位置付けられているモノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に対応しない円周外側モノパイル表面の部分のみが自動的にコーティングされうるのに対し、ローラーが位置付けられているモノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に対応する円周外側モノパイル表面の部分は、手動でコーティングされる必要がある。実際に、ローラーが位置付けられているモノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に対応する円周外側モノパイル表面の部分は、全円周外側モノパイル表面のおよそ3分1を含んでもよい。手動コーティングはモノパイルがローラー支持体から離された後にのみ行うことができ、モノパイルを手動コーティング中に回転させることはできず、何故なら、モノパイルをローラー支持体に載置することおよびモノパイルを回転させることがコーティングを損傷させるであろうからであることがさらに述べられる。モノパイルはローラー支持体によって依然として支持されるが、ローラー支持体は異なる位置に位置付けられるようにモノパイルが移動させられるとしても、これらの異なる位置に自動的に塗布されたコーティングは、モノパイルが位置付けられているローラー支持体によって損傷するであろう。そのため、モノパイルを移動させることは、モノパイルの異なる部分に手動でコーティングされる必要があるように導くにすぎない。これは、ローラーが位置付けられているモノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に対応する円周外側モノパイル表面の部分をコーティングするために、静止支持体に載置されたローラー支持体からモノパイルを除去する必要があり、コーティングを塗布する人物にとって表面全体がアクセスしやすいように足場をモノパイルの周囲に構築する必要があり、次いで、コーティングを手動で塗布する必要があることを意味する。そのため、ローラーが位置付けられているモノパイルの軸に沿って少なくとも1つの位置に対応する円周外側モノパイル表面の部分にコーティングを手動で塗布することは、時間がかかるならびにコストがかかるの両方である。
【0029】
[0030]本開示の第1の側面では、モノパイルコーティング方法が提供される。モノパイルコーティング方法は、8m以上の直径を持つモノパイルをローラー支持体に載置することであって、ローラー支持体が、モノパイルがローラー支持体に載置された際に、モノパイルを回転させるための回転手段を備え、ローラーが、モノパイルを支持しており、モノパイルがローラー支持体に載置された際にモノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に位置付けられる、載置することと、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布することと、溶射された金属コーティングの少なくとも一部を、ローラーを使用してモノパイルを回転させることによって圧縮することとを含む。
【0030】
[0031]本発明者らは、驚くべきことに、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布すること、および溶射された金属コーティングを、ローラー支持体を使用してモノパイルを回転させることによって圧縮させることで、溶射された金属コーティングが溶射された金属コーティング上のローラー支持体によって加えられる圧力に供されるとしても、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分がコーティングされるのを可能にすることを見出した。溶射された金属コーティングは大きい圧縮応力に供されるが、この大きい圧縮応力が、溶射された金属コーティングの構造および特性を変化させても、溶射された金属コーティングは、モノパイルに接着性であり、圧縮後の腐食保護に好適なままである。
【0031】
[0032]溶射された金属コーティングが塗布される際、これは、延性および多孔質構造を有する。溶射された金属コーティングを圧縮することは、孔隙率を低減させる。驚くべきことに、溶射された金属コーティングの接着特性は残っている。溶射された金属コーティングの圧縮により、溶射された金属コーティングは透過性が低くなる。透過性が低いコーティングは、強化された腐食保護特性を有してもよい。
【0032】
[0033]溶射された金属コーティングが塗布されると、コーティングは急速に凝固することにさらに留意されたい。そのため、コーティングが凝固後に圧縮されるべきであっても、これはモノパイルコーティング方法を遅延させない。溶射された金属コーティングを塗布することおよび圧縮させることは、より慣例的なコーティング、たとえばエポキシコーティングを塗布するよりも短い時間を要しうる。また、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に溶射された金属コーティングの少なくとも一部を塗布および圧縮することと、モノパイルの他の部分にコーティングを塗布することとの間で、モノパイルを移動させる必要がないことから、モノパイルをコーティングするために必要とされる合計時間は、低減されうる。
【0033】
[0034]有利には、溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することは、コーティングの厚さを、15%乃至80%だけ、好ましくは20%乃至70%だけ、より好ましくは25%乃至60%だけ、最も好ましくは30%乃至50%だけ低減させるように、溶射された金属コーティングを圧縮することを含む。換言すれば、圧縮後、層は、元の層厚の20%乃至85%、好ましくは30%乃至80%、より好ましくは40%乃至75%、最も好ましくは50%乃至70%である厚さを有する。コーティングへの大きい圧力により、コーティングの厚さは有意に低減する。コーティングを圧縮することによってコーティングの厚さを低減させることは、コーティングの孔隙率を低下させ、それによって、コーティングの透過性を低減させ、コーティングの抗腐食特性を改良する。
【0034】
[0035]有利には、溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することは、モノパイルを、平均して少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも25、最も好ましくは少なくとも30回回転させることを含む。モノパイルを多数回回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮することが、溶射された金属コーティングの圧縮の量を増大させてもよい。実際に、モノパイルを、溶射された金属コーティングを塗布している最中に回転させてもよい。そのため、実際には、ローラー支持体が位置付けられている1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面のすべての部分が同じ回数圧縮されるとは限らないことが可能である。
【0035】
[0036]有利には、圧縮することの後、噴射された金属コーティングは、亀裂、積層、塊も他の可視欠陥もない、平滑な、光沢のあるおよび均一な外観を有する表面を含む。噴射された金属コーティングを圧縮することは、孔隙率を低減させ、表面を平坦にする。これを理由に、コーティングの表面は、圧縮することの後、圧縮されていない噴射された金属コーティングと比較して視覚的に異なって見える。平滑な表面のさらなる利点は、微生物が表面に付着するのが困難になることである。微生物は腐食を引き起こしうるため、平滑な表面が腐食保護に寄与してもよい。
【0036】
[0037]有利には、モノパイルコーティング方法は、溶射された金属コーティングを塗布することの後および溶射された金属コーティングの少なくとも一部を圧縮することの前またはその最中に、保護材、たとえばポリマー発泡体またはゴムシートを、溶射された金属コーティングの上に適用することをさらに含む。溶射された金属コーティングの少なくとも一部の圧縮前またはその最中に保護材を適用することが、コーティングをいくつかの形態の機械的損傷から保護し、表面を汚染から守るのを助けてもよい。
【0037】
[0038]有利には、モノパイルコーティング方法は、溶射された金属コーティングを圧縮することの後に、シーラーを、溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む。シーラーは、任意の表面に浸透しその孔隙率を充填する低体積固体液体コーティングである。圧縮することの後にシーラーを塗布することは、コーティングされたモノパイル表面の孔隙率をさらに低減させる。より低い孔隙率は、コーティングの抗腐食特性を改良することに寄与する。
【0038】
[0039]有利には、モノパイルコーティング方法は、溶射された金属コーティングを圧縮することの後に、さらなるコーティングを、溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む。たとえば、設置後に海面上に上昇するように意図されているモノパイルの部分に、高視認性コーティングを塗布するための要件があってもよい。実際に、圧縮した溶射された金属コーティングの上に追加のコーティングを塗布することが必要な他の理由があってもよい。
【0039】
[0040]有利には、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分は、何れのタイプのローラー支持体が使用されるかに基づき、0.2m乃至3m、好ましくは0.4m乃至2.5m、より好ましくは0.5m乃至2m、最も好ましくは0.7m乃至1.5mで変動する幅を有する。ローラー支持体が位置付けられている1つ以上の位置における金属コーティングの幅は、何れのタイプのローラー支持体が使用されているかによって決まる。金属コーティングの幅は、使用されているローラー支持体の幅と少なくとも同じ大きさであるべきである。しかしながら、金属コーティングの幅が、使用されているローラー支持体の幅よりも大きい場合に有利であってもよい。たとえば、ローラー支持体の幅がおよそ1mである場合、金属コーティングの幅が1.5mであれば有益となりうる。別の例として、ローラー支持体の幅がおよそ1.4mである場合、金属コーティングの幅がおよそ2mであれば有益となりうる。金属コーティングの幅が、使用されているローラー支持体の幅よりも大きい場合、これは、金属コーティングへの隣接するコーティングシステムの重複塗布の余地を可能にする。実際に、重複の若干の余地を残すことは、モノパイルの如何なる部分も未コーティングのまま残されないことを保証しながら、コーティング方法を単純化する。
【0040】
[0041]有利には、圧縮することの最中に、接触点における溶射された金属コーティングへの圧縮応力は、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超える。圧縮応力は、モノパイルの重量および使用されているローラー支持体によって決まる。より高い圧縮応力を印加することは、コーティング厚さのより強力な圧縮を可能にし、それによって、より低い孔隙率およびしたがって腐食保護の増大につながる。
【0041】
[0042]有利には、モノパイルは、長手方向のサブマージアーク溶接部を含み、モノパイルコーティング方法は、モノパイルをローラー支持体に載置することの前に、長手方向のサブマージアーク溶接部をグラウンドフラッシュすることをさらに含む。モノパイルは、複数のシェルを一緒に溶接することによって形成されうる。シェルは、円筒/円錐形状の1枚以上の鋼板を巻き、巻かれた板の接続側を溶接することによって形成されうる。そのため、モノパイルが形成される場合、モノパイルは、長手方向のサブマージアーク溶接部を含む。コーティング方法のための前処理として、長手方向のサブマージアーク溶接部はグラウンドフラッシュされるべきである。これが、溶接時の応力集中を防止してもよい。溶接時の応力集中は、疲労亀裂を引き起こしうる。
【0042】
[0043]有利には、モノパイルコーティング方法は、溶射された金属コーティングを塗布することの前に、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分をブラストクリーニングすることをさらに含む。任意に、ブラストクリーニングは、好ましくはスチールもしくはミネラルグリット研磨材を用いるオープンジェットグリットブラスチングを使用して、または好ましくはスチールグリット研磨材を用いる自動タービンブラストクリーニングを使用して実施される。任意に、ブラストクリーニングは、ISO 8501-1 Sa 3(ホワイトメタル)規格またはISO 8501-1 Sa2 1/2規格またはSSPC-SP10/NACE No.2ニアホワイトブラストクリーニング規格(規格最終改訂2007年1月)またはSSPC-SP 5/NACE No.1、ホワイトメタルブラストクリーニング規格(最終改訂2007年1月)を満たすように、表面を前処理することを含む。任意に、ブラストクリーニングは、40μm~150μm、好ましくは50μm~125μm、より好ましくは60μm~115μm、最も好ましくは80μm~105μmの範囲内の鋭角のプロファイルの深さを有するように表面を前処理することを含む。溶射された金属コーティングを塗布することの前に、ブラストクリーニングを使用して1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分を前処理することは、表面が、溶射された金属コーティングを塗布するために特に好適であることを確実にする。表面を特によく前処理することにより、溶射された金属コーティングとの接着が改良される。
【0043】
[0044]本開示の第2の側面では、モノパイルが提供される。モノパイルは、請求項1~13の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法を使用してコーティングされる。
【0044】
[0045]本開示の第3の側面では、モノパイルコーティングシステムが提供される。モノパイルコーティングシステムは、ローラー支持体および溶射機器を含み、ローラー支持体は、少なくとも8mの直径を持つモノパイルがローラー支持体に載置された際にモノパイルを回転させるための回転手段を備え、ローラーは、モノパイルを支持するためのものであり、モノパイルをローラー支持体に載置するために軸に沿って1つ以上の位置に位置付けられ、溶射機器は、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布するように構成されている。有利には、モノパイルコーティングシステムは、請求項2~13の何れか1項に記載のモノパイルコーティング方法を行うようにさらに構成されている。
【0045】
[0046]本開示の第4の側面では、コーティング方法が提供される。コーティング方法は、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを、表面に塗布することと、溶射された金属コーティングを圧縮することとを含む。
【0046】
[0047]溶射された金属コーティングが塗布される際、これは、延性および多孔質構造を有する。溶射された金属コーティングを圧縮することは、孔隙率を低減させる。驚くべきことに、溶射された金属コーティングの接着特性は残っている。溶射された金属コーティングの圧縮により、溶射された金属コーティングは透過性が低くなる。透過性が低いコーティングは、強化された腐食保護特性を有してもよい。
【0047】
[0048]有利には、溶射された金属コーティングを圧縮することは、コーティングの厚さを、15%乃至80%だけ、好ましくは20%乃至70%だけ、より好ましくは25%乃至60%だけ、最も好ましくは30%乃至50%だけ低減させるように、溶射された金属コーティングを圧縮することを含む。換言すれば、圧縮後、層は、元の層厚の20%乃至85%、好ましくは30%乃至80%、より好ましくは40%乃至75%、最も好ましくは50%乃至70%である厚さを有する。コーティングを圧縮することによってコーティングの厚さを低減させることは、コーティングの孔隙率を低下させ、それによって、コーティングの透過性を低減させ、コーティングの抗腐食特性を改良する。
【0048】
[0049]有利には、圧縮することの後、噴射された金属コーティングは、亀裂、積層、塊も他の可視欠陥もない、平滑な、光沢のあるおよび均一な外観を有する表面を含む。噴射された金属コーティングを圧縮することは、孔隙率を低減させ、表面を平坦にする。これを理由に、コーティングの表面は、圧縮することの後、圧縮されていない噴射された金属コーティングと比較して視覚的に異なって見える。平滑な表面のさらなる利点は、微生物が表面に付着するのが困難になることである。微生物は腐食を引き起こしうるため、平滑な表面が腐食保護に寄与してもよい。
【0049】
[0050]有利には、コーティング方法は、溶射された金属コーティングを塗布することの後および溶射された金属コーティングを圧縮することの前またはその最中に、保護材、たとえばポリマー発泡体またはゴムシートを、溶射された金属コーティングの上に適用することをさらに含む。溶射された金属コーティングの圧縮前またはその最中に保護材を適用することが、コーティングをいくつかの形態の機械的損傷から保護し、表面を汚染から守るのを助けてもよい。
【0050】
[0051]有利には、コーティング方法は、溶射された金属コーティングを圧縮することの後に、シーラーを、溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む。シーラーは、任意の表面に浸透しその孔隙率を充填する低体積固体液体コーティングである。圧縮することの後にシーラーを塗布することは、コーティングされたモノパイル表面の孔隙率をさらに低減させる。より低い孔隙率は、コーティングの抗腐食特性を改良することに寄与する。
【0051】
[0052]有利には、コーティング方法は、溶射された金属コーティングを圧縮することの後に、さらなるコーティングを、溶射された金属コーティングの上に塗布することをさらに含む。
【0052】
[0053]有利には、圧縮することの最中に、溶射された金属コーティングへの圧縮応力は、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超える。より高い圧縮応力を印加することは、コーティング厚さのより強力な圧縮を可能にし、それによって、より低い孔隙率およびしたがって腐食保護の増大につながる。
【0053】
[0054]有利には、コーティング方法は、溶射された金属コーティングを塗布することの前に、表面をブラストクリーニングすることをさらに含む。任意に、ブラストクリーニングは、好ましくはスチールもしくはミネラルグリット研磨材を用いるオープンジェットグリットブラスチングを使用して、または好ましくはスチールグリット研磨材を用いる自動タービンブラストクリーニングを使用して実施される。任意に、ブラストクリーニングは、ISO 8501-1:2007 Sa 3(ホワイトメタル)規格またはISO 8501-1 Sa2 1/2規格またはSSPC-SP10/NACE No.2ニアホワイトブラストクリーニング規格(規格最終改訂2007年1月)またはSSPC-SP 5/NACE No.1、ホワイトメタルブラストクリーニング規格(最終改訂2007年1月)を満たすように、表面を前処理することを含む。任意に、ブラストクリーニングは、40μm~150μm、好ましくは50μm~125μm、より好ましくは60μm~115μm、最も好ましくは80μm~105μmの範囲内の鋭角のプロファイルの深さを有するように表面を前処理することを含む。溶射された金属コーティングを塗布することの前に、ブラストクリーニングを使用して表面を前処理することは、表面が、溶射された金属コーティングを塗布するために特に好適であることを確実にする。表面を特によく前処理することにより、溶射された金属コーティングとの接着が改良される。
【0054】
[0055]本開示の第5の側面では、コーティングが提供される。コーティングは、第1の側面のモノパイルコーティング方法を使用することによって取得可能である、取得されるおよび/もしくは直接的に取得される、または第4の側面のコーティング方法を使用することによって取得可能である、取得されるおよび/もしくは直接的に取得される。有利には、コーティングは、モノパイルにおいて使用されてもよい。
【0055】
[0056]本開示の第6の側面では、コーティングシステムが提供される。コーティングシステムは、溶射機器および溶射された金属コーティングを圧縮するための手段を含み、溶射機器は、溶射された金属コーティング、たとえばアルミニウムまたは亜鉛アルミニウムコーティングを表面に塗布するように構成され、溶射された金属コーティングを圧縮するための手段は、溶射された金属コーティングを圧縮するように構成されている。有利には、コーティングシステムは、第1の側面のモノパイルコーティング方法を行うようにまたは第4の側面のコーティング方法を行うようにさらに構成されている。
【0056】
[0057]以後、本発明の態様を、ほんの一例として、付随する図面を参照して説明し、これらは性質上概略的であり、したがって必ずしも正確な縮尺であるとは限らない。さらに、図面中の類似の参照符号は、類似の要素に関する。付属の図において、
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本開示の態様に従うモノパイルコーティング方法を概略的に示す。
図2図2は、本開示の態様に従うモノパイルコーティング方法を概略的に示す。
図3図3は、本開示の態様に従うローラー支持体上のモノパイルの側面図を概略的に示す。
図4図4は、本開示の態様に従うローラー支持体上のモノパイルの正面図を概略的に示す。
図5図5は、本開示の態様に従う、ローラー支持体が位置付けられているモノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分をブラストクリーニングすることを概略的に示す。
図6図6は、本開示の態様に従う、ローラー支持体が位置付けられているモノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に、溶射された金属を塗布することを概略的に示す。
図7図7は、本開示の態様に従う、ローラー支持体を使用してモノパイルを回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮することを概略的に示す。
図8図8は、本開示の態様に従うモノパイルを概略的に示す。
図9A図9Aは、本開示の態様に従う、溶射された金属コーティングを圧縮する前の溶射された金属コーティングの構造を概略的に示す。
図9B図9Bは、本開示の態様に従う、溶射された金属コーティングを圧縮した後の溶射された金属コーティングの構造を概略的に示す。
【詳細な説明】
【0058】
[0058]図1は、モノパイルコーティング方法が概略的に示されているフローチャートである。
【0059】
[0059]工程101において、モノパイル301はローラー支持体302~305に載置される。
【0060】
[0060]実際に、ローラー支持体302~305は、コーティングホール内に位置付けられてもよい。コーティングホール内の環境は、コーティングに特に好適であるように制御され、特殊なコーティング機器が装備されてもよい。コーティングホールは、ATEX作業現場であってもよい。コーティングホールの使用はコーティング方法に有益であり、高品質のコーティングの効率的な塗布を可能にしうるが、モノパイルコーティング方法は、如何なる好適な屋内または屋外の場所で行われてもよい。
【0061】
[0061]モノパイル301は、複数のシェルを一緒に溶接することによって取得されてもよい。シェルは、円筒/円錐形状の1枚以上の鋼板を巻き、巻かれた板の接続側を溶接することによって形成されうる。実際に、モノパイルを取得するための溶接は、コーティングホールの内部ではなく、たとえば、環境が溶接に特に好適であるように制御され、特殊な溶接機器が装備されている、溶接ホールの内部で行われる。この生産処理の利点は、大きい寸法を持つモノパイルが提供されうることである。しかしながら、たとえば、高圧または高引張力下で形成することにより生成されるチューブと比較して、幾何学的精度(たとえば、円筒度および真直度)ははるかに低くてもよい。
【0062】
[0062]コーティングの前に、未コーティングのモノパイル301はコーティングホールに輸送される。モノパイル301を輸送するために、モノパイル301の重量を運搬するように適合されているトレーラーを使用することが可能である。付加的にまたは代替的に、モノパイル301は、クレーンおよび/もしくはボートならびに/または他の好適なモノパイル輸送デバイスを使用して輸送されてもよい。モノパイル301の大きいサイズおよび重量により、モノパイルを輸送することにはコストがかかる場合があり、不必要なモノパイル輸送は回避されるべきである。
【0063】
[0063]しかしながら、溶接と同じ場所でモノパイルコーティング方法を行い、モノパイル301を別の場所へ輸送しないことも可能である。しかしながら、この場合、溶接およびコーティング機器が同じ場所に存在すべきであるか、またはコーティング方法が行われる際にコーティング機器が溶接場所に輸送および設置されるべきであるかの何れかである。合理化されたおよび効率的なモノパイル生産およびコーティング方法を実現するために、ホールと異なっているが近くでモノパイルの生産およびコーティングを実施することが好ましい場合があり、ホールのそれぞれには、適切な機器が装備されている。
【0064】
[0064]モノパイル301をローラー支持体302~305に載置するために、モノパイルがコーティングホールに輸送された後、クレーン等を使用してもよい。付加的にまたは代替的に、ローラー支持体302~305は、移動可能であってもよい。この場合、たとえばトレーラーを使用することによってモノパイル301をコーティングホールに輸送し、次いで、ローラー支持体302~305をモノパイル301の方へ移動させることが可能であってもよい。ローラー支持体302~305は、モノパイル301をトレーラーから持ち上げるために使用されてもよく、その後、トレーラーは除去されてもよい。付加的にまたは代替的に、ローラー支持体302~305を使用してモノパイル301を持ち上げる代わりに、モノパイル301をローラー支持体302~305に載置してもよく、その後、トレーラーベッドを下げてもよく、トレーラーを除去してもよい。当業者ならば、モノパイル301をローラー支持体302~305に載置する他の手法も可能であることが分かるであろう。
【0065】
[0065]モノパイル301は、ローラー支持体302~305がモノパイル301の軸に沿って1つ以上の位置に位置付けられるように、ローラー支持体302~305に載置される。モノパイル301がローラー支持体302~305に載置された後、ローラー支持体302~305は、モノパイル301の重量を支持する。
【0066】
[0066]ローラー支持体302~305は、モノパイル301を回転させるための回転手段を備えている。たとえば、ローラー支持体302~305は、電気エンジンを備えていてもよい。電気エンジンが作動している場合、モノパイル301が載っているローラーを、電気エンジンによって回転させてもよい。次いで、これは、モノパイル301にその軸の周囲を回転させる。
【0067】
[0067]101のモノパイル301をローラー支持体302~305に載置することについて、図3および4を参照して、以下でさらに詳細に記述する。
【0068】
[0068]工程102において、溶射された金属コーティングを塗布する。
【0069】
[0069]モノパイル301が回転させられると、モノパイル301の円周外側表面はローラー支持体302~305に対して相対的に移動する。モノパイル301の回転は、円周外側表面の異なる部分をローラー支持体302~305と接触させる。モノパイルの重量により、ローラー支持体302~305と接触している円周外側表面の部分に圧力が印加される。この圧力は主としてモノパイル表面に垂直に向けられるが、モノパイルの低い幾何学的精度は、モノパイルが回転させられると、漂流力をもたらす場合がある。そのため、ローラー支持体と接触している円周外側表面の部分は、直圧により表面に垂直ならびに漂流力により表面に平行の両方の方向に、圧縮応力を経験する場合がある。モノパイル301の回転後、モノパイル301とモノパイル301の周囲のそれぞれのローラー302~305との間の接触幅と同じ幅を持つ若干数のバンドが、ローラー支持体302~305のうちの少なくとも1つと接触することになる。ローラー支持体302~305は、たとえば、モノパイルに対して、2つのローラー支持体が同じ長手位置に位置付けられている場合、バンドが単一回転中に複数のローラー支持体と接触するように配向されてもよいことにさらに留意されたい。
【0070】
[0070]溶射された金属コーティングは、ローラー支持体の少なくとも1つと接触するモノパイル表面上のバンドに塗布されてもよい。溶射された金属コーティングは、ローラー支持体302~305が位置付けられている1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分501、502に塗布されてもよい。1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の前記部分501、502は、ローラー支持体302~305のうちの少なくとも1つと接触するモノパイル表面上のバンドを含んでもよく、好ましくは、前記バンドと直接的に隣接する円周外側表面の領域をさらに含んでもよい。
【0071】
[0071]たとえば、モノパイル301とそれぞれのローラー302~305のうちの少なくとも1つとの接触幅がおよそ1mである場合、それぞれのローラーの前記少なくとも1つの位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分501、502がおよそ1.5mの幅を有するのであれば有益となりうる。別の例として、モノパイル301とそれぞれのローラー302~305のうちの少なくとも1つとの間の接触幅がおよそ1.4mである場合、それぞれのローラーの前記少なくとも1つの位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分501、502がおよそ2mの幅を有するのであれば有益となりうる。
【0072】
[0072]溶射された金属コーティングは、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布される。溶射された金属コーティングは、たとえば、アルミニウムコーティングまたは亜鉛アルミニウムコーティングを含んでもよい。ISO 14919:2015は、溶射を活用して、とりわけアークおよびフレーム溶射によって加工される、金属および非金属ワイヤ(ソリッドおよびコア)、ロッド、コードの分類について要件を指定するものである。アルミニウムコーティングの一例は、ISO 14919:2015のタイプAl99.5である。亜鉛アルミニウムコーティングの一例は、ISO 14919:2015のタイプZnAl15である。しかしながら、他のタイプの溶射された金属コーティングが使用されてもよい。
【0073】
[0073]溶射された金属コーティングは、およそ300~1000マイクロメートル、好ましくはおよそ500~800マイクロメートル、より好ましくはおよそ600~700マイクロメートル、最も好ましくはおよそ650マイクロメートルの厚さまで塗布されてもよい。厚さを決定するために、電子厚さゲージが使用されてもよい。
【0074】
[0074]塗布後、溶射された金属コーティングは、延性および多孔質構造を有する。
【0075】
[0075]溶射された金属コーティングのさらなる特性について、図9Aを参照して、以下でさらに詳細に記述する。
【0076】
[0076]102の溶射された金属コーティングを塗布することについて、図6を参照して、以下でさらに詳細に記述する。
【0077】
[0077]工程103において、溶射された金属コーティングを圧縮する。この圧縮は、ローラー支持体302~305にかかるモノパイルの重量による。
【0078】
[0078]ローラー支持体302~305のうちの少なくとも1つと接触するモノパイル表面上のバンドに塗布された、溶射された金属コーティングは、モノパイル301を回転させることによって圧縮される。溶射された金属コーティングは、ローラー支持体302~305のうちの少なくとも1つと接触するモノパイル表面上のバンドの外側に塗布されてもよいため、溶射された金属コーティングの部分が、すべてとは限らないが圧縮されることが可能である。
【0079】
[0079]モノパイル301の重量により、ローラー支持体302~305とモノパイル301との間の接触点における溶射された金属コーティングへの圧縮応力は、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超えていてもよい。
【0080】
[0080]圧縮応力は、ローラー支持体に載っているモノパイルの重量によりモノパイル表面に垂直な成分、およびたとえば漂流力によりモノパイル表面に平行な1つ以上の成分を含んでいてもよいことに留意すべきである。漂流力は、幾何学的不正確を持つモノパイルを回転させることによって引き起こされてもよい。本開示では、圧縮応力は、モノパイル表面に垂直な成分を含むとして主に記述されることになるが、漂流力は、典型的には、実際に存在し、本開示において記述されている技術的効果の1つ以上に寄与してもよい。
【0081】
[0081]溶射された金属コーティングを圧縮するためには、モノパイル301を1回だけ回転させれば十分である。実際には、ローラー支持体の位置決めに応じて、単一回転中に、円周外側表面の一部がローラー支持体と複数回接触してもよい。圧縮のためには、円周外側表面の部分がローラー支持体と単回だけ接触すれば十分である。さらに、モノパイル周囲の完全なバンドを圧縮することは必要ではない場合があり、そのため、このようにして、モノパイルを1回未満の回転で回転させることでも十分となりうる。しかしながら、あるいは、モノパイル301を何度も回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮することが可能である。たとえば、モノパイル301を、少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも25、最も好ましくは少なくとも30回、回転させてもよい。モノパイル301を多数回回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮することが、溶射された金属コーティングの圧縮の量を増大させてもよい。実際に、モノパイル301を、溶射された金属コーティングを塗布している最中に回転させてもよい。そのため、実際には、ローラー支持体302~305が位置付けられている1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面のすべての部分が同じ回数圧縮されるとは限らないことが可能である。さらに、モノパイル301を、モノパイルの残りのその後のコーティング中にさらに回転させてもよく、溶射された金属コーティングが圧縮される回数をさらに増大させることに留意されたい。
【0082】
[0082]高い圧縮応力(これはモノパイル301の重量の結果である)および、任意に、モノパイル301の回転数により、溶射された金属コーティングの厚さは低減してもよい。コーティングの厚さは、15%乃至80%だけ、好ましくは20%乃至70%だけ、より好ましくは25%乃至60%だけ、最も好ましくは30%乃至50%だけ、低減してもよい。換言すれば、圧縮後、層は、元の層厚の20%乃至85%、好ましくは30%乃至80%、より好ましくは40%乃至75%、最も好ましくは50%乃至70%である厚さを有する。コーティングを圧縮することによって溶射された金属コーティングの厚さを低減させることが、溶射された金属コーティングの孔隙率を低下させてもよく、それによって、溶射された金属コーティングの透過性を低減させてもよく、それによって、溶射された金属コーティングの抗腐食特性を改良してもよい。
【0083】
[0083]たとえば、溶射されたアルミニウムコーティング(たとえば、ISO 14919:2015のタイプAl99.5)が700マイクロメートルの厚さに塗布され、モノパイルを25回回転させることによっておよそ1GPaの圧縮応力に供された場合、圧縮後の厚さは、350マイクロメートルに低減していてもよい。
【0084】
[0084]別の例として、溶射されたアルミニウム亜鉛コーティング(たとえば、ISO 14919:2015のタイプZnAl15)が700マイクロメートルの厚さに塗布され、モノパイルを25回回転させることによっておよそ1GPaの圧縮応力に供された場合、圧縮後の厚さは、450マイクロメートルに低減していてもよい。
【0085】
[0085]驚くべきことに、溶射された金属コーティングの接着特性は、圧縮により劣化しないことが分かった。
【0086】
[0086]圧縮することの後に、噴射された金属コーティングは、亀裂、積層、塊も他の可視欠陥もない、平滑な、光沢のあるおよび均一な外観を有する表面を含んでいてもよい。噴射された金属コーティングを圧縮することが、孔隙率を低減させてもよく、コーティングされたモノパイル301の表面を平坦にしてもよい。これを理由に、コーティングされたモノパイル301の表面は、圧縮することの後、圧縮されていない噴射された金属コーティング表面、たとえば圧縮前のモノパイル301の表面、または溶射された金属コーティングでコーティングされているが圧縮されていないモノパイル表面の部分、たとえばローラー支持体302~305のうちの少なくとも1つと接触するモノパイル表面上のバンドと直接的に隣接するモノパイル301の円周外側表面の領域と比較して、視覚的に異なって見える。平滑な表面のさらなる利点は、微生物が表面に付着するのが困難になることである。微生物は腐食を引き起こしうるため、平滑な表面が腐食保護に寄与してもよい。溶射された金属コーティングを圧縮することについて、図7を参照して、以下でさらに詳細に記述する。圧縮後の溶射された金属コーティングのさらなる特性について、図9Bを参照して、以下でさらに詳細に記述する。
【0087】
[0087]モノパイルを回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮する代わりに、溶射された金属コーティングを異なる手法で圧縮することも可能であることに留意されたい。たとえば、ローラー支持体302~305とは異なるローラーが、溶射された金属コーティングを圧縮するために使用されてもよい。そのようなローラーを経由して、圧力が印加されてもよい。付加的にまたは代替的に、溶射された金属コーティングは、プレス、たとえば油圧プレスまたは機械プレスを使用して圧縮されてもよい。付加的にまたは代替的に、溶射された金属コーティングは、溶射された金属コーティングを圧縮するための他の好適な手段を使用して圧縮されてもよい。
【0088】
[0088]溶射された金属コーティングをモノパイル表面に塗布する代わりに、溶射された金属コーティングを別の物体の表面に塗布することも可能であることにも留意されたい。溶射された金属コーティングを塗布した後、次いで、このコーティングは圧縮されてもよい。これは、他の物体の表面を、腐食保護に特に好適であるコーティングでコーティングすることを可能にする。
【0089】
[0089]そのため、コーティング方法は、溶射された金属コーティングを表面に塗布することと、コーティングを圧縮することとを含んでもよい。
【0090】
[0090]図2は、モノパイルコーティング方法が概略的に示されているフローチャートである。図2は、図1と同様であるが、いくつかの任意の工程の追加を伴う。図2における工程のいくつかは図1と同じであり、これらの工程の詳細な説明は省略される。
【0091】
[0091]モノパイルの製造中に、サブマージアーク溶接法を使用してモノパイル301を組み立てることができる。工程201において、モノパイルコーティング方法のための前処理として、サブマージアーク溶接部をグラウンドフラッシュしてもよい。サブマージアーク溶接部をグラウンドフラッシュすることが、ローラー上を通過する溶接時に応力集中または機械的瑕疵を除去するために役立ってもよい。
【0092】
[0092]図2の工程101は、図1における工程101と同じであってもよい。
【0093】
[0093]モノパイル301をローラー支持体302~305に載置した後であるが、溶射された金属コーティングを塗布する前に、モノパイル表面をコーティングのために前処理してもよい。
【0094】
[0094]コーティングのための前処理として、工程202においてブラストクリーニングを実施する。
【0095】
[0095]溶射された金属コーティングでコーティングされるモノパイル301の部分501、502を、ブラストクリーニングしてもよい。溶射された金属コーティングを塗布する前に、ブラストクリーニングを使用して表面を前処理することは、表面が、溶射された金属コーティングを塗布するために特に好適であることを確実にする。表面を特によく前処理することにより、溶射された金属コーティングとの接着が改良される。
【0096】
[0096]ブラストクリーニング202は、種々の手法で、たとえば、好ましくはスチールもしくはミネラルグリット研磨材を用いるオープンジェットグリットブラスチングを使用して、または好ましくはスチールグリット研磨材を用いる自動タービンブラストクリーニングを使用して実施されてもよい。ブラストクリーニングの一貫した高品質を確実にするために、ブラストクリーニングは、ISO 8501-1:2007 Sa 3(ホワイトメタル)規格またはISO 8501-1 Sa2 1/2規格またはSSPC-SP10/NACE No.2ニアホワイトブラストクリーニング規格(規格最終改訂2007年1月)またはSSPC-SP 5/NACE No.1、ホワイトメタルブラストクリーニング規格(最終改訂2007年1月)を満たすように実施されてもよい。溶射された金属コーティングを塗布するための表面を前処理するためには、表面が、40μm~150μm、好ましくは50μm~125μm、より好ましくは60μm~115μm、最も好ましくは80μm~105μmの範囲内の鋭角のプロファイルの深さを有することが有益である。
【0097】
[0097]ブラストクリーニング202について、図5を参照して、以下でさらに詳細に記述する。
【0098】
[0098]図2の工程102は、図1の工程102と同じであってもよい。
【0099】
[0099]溶射された金属コーティングの圧縮前および/またはその最中に、工程203において保護材をコーティングに適用してもよい。保護材を圧縮前に適用してもよい。保護材を、圧縮の最中に、圧縮が実施されている間中または圧縮工程の1つ以上の部分の最中の何れかに適用してもよい。同じ保護材を複数回適用することが可能である。異なる保護材を同時におよび/または順次に適用することも可能である。工程203を省き、如何なる保護材も適用しないことも可能である。
【0100】
[00100]溶射された金属コーティングを塗布した後、保護材をコーティングの上に適用してもよい。これらの保護材は、溶射された金属コーティングを圧縮する前および/またはその最中に適用してもよい。保護材は、プラスチック、人工ゴムおよび/または金属組成のものであってもよい。保護材は、発泡体、たとえばポリマー発泡体の形態、またはシートの形態であってもよい。ポリマー発泡体の例は、エチレン-酢酸ビニル発泡体、ポリエチレン発泡体、ニトリルゴム発泡体、ポリクロロプレン発泡体、ポリアミド発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体またはシリコーン発泡体である。しかしながら、他の種類のポリマー発泡体を使用してもよい。ゴムシートは、保護材として使用するために好適であってもよい。保護材を適用することが、コーティングをいくつかの形態の機械的損傷から保護し、表面を汚染から守るのを助けてもよい。
【0101】
[00101]図2の工程103は、図1の工程103と同じであってもよい。
【0102】
[00102]溶射された金属コーティングを圧縮した後、工程204において、シーリング材をコーティングの上に塗布してもよい。シーリング材は、表面に浸透しその孔隙率を充填してもよい、低体積固体液体コーティングである。
【0103】
[00103]シーリング材をコーティングの上に塗布することが、コーティングを守ることに寄与してもよい。シーリング材を塗布することが、圧縮されたコーティングの孔隙率を低減させることに寄与してもよい。コーティングの孔隙率を低減させることが、コーティングの抗腐食特性を改良することに寄与してもよい。
【0104】
[00104]シーリング材は、溶射された金属コーティング上への塗布に好適な低体積固体液体コーティング材料を含んでもよい。
【0105】
[00105]工程205において、コーティング上にさらなるコーティングを塗布してもよい。たとえば、設置後に海面上に上昇することになっているモノパイルの部分を、高視認性コーティング、たとえば黄色のコーティングでコーティングしてもよい。海面上に上昇することになっているモノパイル301の部分上のそのような高視認性コーティングは、たとえば、規制によって要求されてもよい。しかしながら、モノパイル301の特定部分またはさらには全体にさらなるコーティングの層を塗布するための他の理由もありうる。
【0106】
[00106]実際に、溶射された金属コーティングの少なくとも一部を、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布および圧縮する前に、ならびに/または、溶射された金属コーティングの少なくとも一部を、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布および圧縮した後に、ならびに/または、溶射された金属コーティングを、1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に塗布および圧縮するのと同時に、モノパイルの他の部分にコーティングを塗布することが可能であってもよい。
【0107】
[00107]図1にも図2にも指し示されていないが、コーティング方法の後に品質管理を実施して、コーティングが要求品質のものであることを確実にしてもよい。さらに、図1または図2の工程の何れかの最中または後に、中間品質管理を実施してもよい。方法の最中、たとえば特定の工程の後(たとえば、ブラストクリーニング後または圧縮後)に品質管理を実施することは、初期の工程における不完全な結果が後の工程においてさらなる問題につながるリスクを軽減する。
【0108】
[00108]図3は、本開示の態様に従うローラー支持体302~305上のモノパイル301の側面図を概略的に示し、図4は、本開示の態様に従うローラー支持体302、303上のモノパイル301の正面図を概略的に示す。
【0109】
[00109]モノパイル301が時計回りに回転させられることを図が示していても、モノパイル301を反時計回りに回転させることも可能であることに留意されたい。さらに、たとえば実践的な考慮事項に基づき時計回りおよび反時計回りの回転の組合せを使用して、モノパイル301を回転させることが可能である。
【0110】
[00110]図3および4は、ローラー支持体302~305を概略的に示す。モノパイル301を支持するおよび回転させるために、種々の種類のローラー支持体302~305が好適である。具体例として、Deuma Positionniersysteme GmbHによって生産されているDeumaターニングロールタイプZローラー支持体が、モノパイル301を支持するおよび回転させるために好適である。しかしながら、他の種類のローラー支持体302~305を使用してもよい。ローラー支持体302~305は、最大支持重量、ローラー幅、ローラー表面材料もしくは構造、回転速度、または他の特性に関して、互いに異なっていてもよい。
【0111】
[00111]1つのモノパイル301を異なる種類のローラー支持体302~305で支持することが可能である。たとえば、1つのモノパイル301を、1メートルの幅および100トンの最大支持重量を持つ少なくとも第1のローラー支持体、ならびに2メートルの幅および250トンの最大支持重量を持つ少なくとも第2のローラー支持体で支持することが可能である。
【0112】
[00112]当業者は、ローラー支持体302~305の正確な配置が、何れのローラー支持体が利用可能であるかならびにモノパイル301の寸法および重量によって決まってもよいことに気付いている。たとえば、モノパイル301の重量は、ローラー支持体302~305の合計最大支持重量を超えるべきではない。たとえば、ローラー支持体302~305は、何れかのローラー支持体によって支持される重量がそのローラー支持体の最大支持重量未満となるように配置されるべきである。
【0113】
[00113]好ましくは、複数のローラー支持体302~305が使用される場合、ローラー支持体302~305間の最大間隔は、モノパイル301が自重で感知できるほど湾曲しないようなものである。たとえば、モノパイル301の軸の方向に沿ったローラー支持体302~305間の最大間隔は、およそ5~10メートルであってもよい。
【0114】
[00114]好ましくは、ローラー支持体302~305は、対で配置される。好ましくは、ローラーの各対は、同じ種類の2つのローラー支持体を含む。ローラー支持体302~305を異なるように配置することは可能であるが、ローラー支持体302~305を同じ種類のローラー支持体の対で配置することは、モノパイル301を支持する特に安定した手法を提供するという利点を有する。
【0115】
[00115]好ましくは、ローラー支持体302~305は、ローラー支持体302~305とモノパイル301との間の接触点における圧力がほぼ等しくなるように配置される。そうすることで、圧縮工程103の間、溶射された金属コーティングのほぼ等しい圧力での圧縮を可能にする。
【0116】
[00116]図5は、本開示の態様に従う、ローラー支持体が位置付けられているモノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分をブラストクリーニングすることを概略的に示す。
【0117】
[00117]102の溶射された金属コーティングを塗布することの前に、ローラー支持体302~305が位置付けられているモノパイル301の軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイル301の円周外側表面の部分501、502を、ブラストクリーニング202を使用して前処理してもよい。ブラストクリーニングは、自動機械を用いておよび/または手動で実施してもよい。
【0118】
[00118]ブラストクリーニング202のための前処理として、高圧水クリーニングを使用してブラストクリーニングされるように部分501、502を前処理することがさらに可能である。
【0119】
[00119]ローラー支持体302~305が位置付けられているモノパイル301の軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイル301の円周外側表面の部分501、502は、対応するローラー支持体の幅以上である幅を有していてもよい。たとえば、特定のローラー支持体が0.8メートルの幅を有する場合、対応する部分は0.8メートルの幅を有してもよい。たとえば、特定のローラー支持体が1メートルの幅を有する場合、対応する部分は1.5メートルの幅を有してもよい。たとえば、特定のローラー支持体が1.2メートルの幅を有する場合、対応する部分は2メートルの幅を有してもよい。円周外側表面の部分の幅が対応するローラーの幅よりもわずかに大きいのであれば好ましく、何故なら、これは、金属コーティングへの隣接するコーティングシステムの重複塗布の余地を残すからである。実際に、重複の若干の余地を残すことは、モノパイル301の如何なる部分も未コーティングのまま残されないことを保証しながら、コーティング方法を単純化する。
【0120】
[00120]101のモノパイル301をローラー支持体302~305に載置することの後に、ブラストクリーニング202を実施することが好ましい。そうすることで、ブラストクリーニング202の最中にモノパイル301を回転させることを可能にする。モノパイル301をブラストクリーニング202の最中に回転させる場合、ブラストクリーニング機器503を鉛直に移動させる必要はない。ブラストクリーニング機器503を鉛直に移動させる必要性を回避することが、ブラストクリーニング処理の自動化を単純化してもよい。たとえば、ブラストクリーニング機器503を取り付け、モノパイル301の軸の方向に沿って伸長する水平レールに沿って移動させてもよい。ブラストクリーニング202が手動で行われるとしても、ブラストクリーニング機器503を鉛直に移動させる必要性を回避することで、ブラストクリーニング202を高所で実施しなくてはならないことを回避し、それによって、作業現場の安全性を改良する。
【0121】
[00121]図6は、本開示の態様に従う、ローラー支持体が位置付けられているモノパイルの軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイルの円周外側表面の部分に、溶射された金属を塗布することを概略的に示す。
【0122】
[00122]溶射された金属は、溶射機器601、602を使用して塗布される。そのような機器は市販されており、当業者ならば、何れの機器が好適であるか、ならびに何れの利点および不利点が異なる種類の市販の溶射機器601、602のものであるかを知っている。特に、爆発性雰囲気における使用に好適な溶射機器が市販されていることに留意されたい。
【0123】
[00123]溶射された金属、たとえば溶射されたアルミニウムまたは溶射された亜鉛アルミニウムは、ローラー支持体302~305が位置付けられているモノパイル301の軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイル301の円周外側表面の部分501、502に塗布される。
【0124】
[00124]好ましくは、モノパイル301を、102の溶射された金属コーティングを塗布することの最中に回転させる。モノパイル301を102の溶射された金属コーティングを塗布することの最中に回転させる場合、溶射機器601、602を鉛直に移動させる必要はない。溶射機器601、602を鉛直に移動させる必要性を回避することが、溶射処理の自動化を単純化してもよい。たとえば、溶射機器601、602を取り付け、モノパイル301の軸の方向に沿って伸長する水平レールに沿って移動させてもよい。102の溶射された金属コーティングを塗布することが手動で行われるとしても、溶射機器601、602を鉛直に移動させる必要性を回避することで、102の溶射された金属コーティングを塗布することを高所で実施しなくてはならないことを回避し、それによって、作業現場の安全性を改良する。
【0125】
[00125]溶射された金属は、急速に凝固する。そのため、溶射された金属を回転しているモノパイル301に塗布する場合であっても、溶射機器およびモノパイルの回転速度および方向は、溶射された金属が凝固した後に溶射された金属がローラーと接触するように配置されうる。実際に、溶射された金属は、瞬時に凝固しうる。溶射された金属が凝固した後に溶射された金属コーティングがローラー表面と接触することが好ましく、何故なら、液体金属のモノパイル表面との接着は、ローラーを使用する圧縮の最中および後にモノパイル表面上に残るのに不十分な場合があるからである。さらに、溶射された金属が凝固した後に溶射された金属コーティングがローラー表面と接触する場合、溶射された金属コーティングの均一性を確実にすることがより簡単になる。
【0126】
[00126]図7は、本開示の態様に従う、ローラー支持体を使用してモノパイルを回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮することを概略的に示す。
【0127】
[00127]モノパイル301の重量により、溶射された金属コーティングには大きい圧縮応力が印加される。モノパイル301の重量およびローラー支持体302~305の分布に応じて、接触点における溶射された金属コーティングへの圧縮応力は、500MPa、好ましくは750MPa、より好ましくは1GPa、最も好ましくは1.5GPaを超えていてもよい。
【0128】
[00128]モノパイルを回転させる場合、各ローラー支持体および各回転について、圧縮応力は、モノパイルの外側表面の周囲の対応するローラー支持体の幅を持つバンドに印加される。ローラー支持体の対を使用する場合、圧縮応力は、1回転につき2倍印加される。
【0129】
[00129]溶射された金属コーティングの十分な圧縮は、溶射された金属コーティングを1回圧縮した際に実現することができ、そのために、ローラー支持体の位置決めに応じて、1回未満の回転が必要とされてもよい。しかしながら、実際には、モノパイル301を何度も回転させて、圧縮応力を溶射された金属コーティングに前記何度も印加することが有益な場合がある。たとえば、モノパイル301を、少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも25、最も好ましくは少なくとも30回、回転させてもよい。
【0130】
[00130]モノパイル301を回転させながら、溶射された金属コーティングを塗布することが可能である。この場合、ローラー支持体302~305が位置付けられているモノパイル301の軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイル301の円周外側表面の部分501、502のすべてを同時にコーティングしてもよいとは限らない。部分501、502のすべての部分が同時にコーティングされるのではない場合、先にコーティングされる部分501、502のいくつかは、後にコーティングされる部分501、502のいくつかがコーティングされるよりも前に、既に圧縮されていてもよい。そのため、部分501、502のそれぞれが圧縮される合計回数は、部分501、502間で異なっていてもよい。
【0131】
[00131]実際には、ローラー支持体302~305が位置付けられているモノパイル301の軸に沿って1つ以上の位置に対応するモノパイル301の円周外側表面の部分501、502だけがコーティングされるのではなく、モノパイル301の残りもコーティングされることに留意されたい。コーティング方法の詳細に応じて、部分501、502がコーティングおよび圧縮された後に、モノパイル301を何度も回転させることが可能である。たとえば、部分501、502が圧縮された後にモノパイル301の残りをコーティングする場合、モノパイル301の残りのコーティングの最中に、モノパイル301を回転させて、モノパイルの残りのコーティングの最中にも部分501、502に圧縮応力を印加するように導いてもよい。
【0132】
[00132]ローラー支持体302~305を使用してモノパイル301を回転させることによって、溶射された金属コーティングを圧縮することが、溶射された金属コーティングの構造における変化につながってもよい。上記で注記した通り、圧縮することは、モノパイルの重量およびローラー支持体の位置の結果である。実際に、圧縮応力は、モノパイルの直径によって決定される。たとえば、圧縮は、溶射された金属コーティングの厚さおよび/または孔隙率を低減させてもよい。さらに、圧縮は、溶射された金属コーティングの視覚的外観を変化させてもよい。たとえば、圧縮後、コーティングは、亀裂、積層、塊も他の可視欠陥もない、平滑な、光沢のあるおよび均一な外観を有する表面を含んでもよい。圧縮により、構造、視覚的外観または他の特性における他の変化も可能である。
【0133】
[00133]モノパイル301を回転させることによって圧力を印加する利点は、ローラー支持体302~305にかかるモノパイル301の重量が、溶射された金属コーティングを圧縮するために十分な圧力を引き起こすことである。これは、溶射された金属コーティングを圧縮するために圧力を印加する特に効率的な手法を可能にする。しかしながら、溶射された金属コーティングを圧縮するための異なる方法も可能であることに留意されたい。たとえば、圧力は、ローラー支持体とは異なるローラーを経由して印加されてもよい。付加的にまたは代替的に、圧力は、プレス、たとえば機械プレスまたは油圧プレスを経由して印加されてもよい。圧力を印加する代替手法を使用して、モノパイルの円周外側表面以外の表面上に圧縮した溶射された金属コーティングを取得してもよい。
【0134】
[00134]図8は、本開示の態様に従うモノパイルを概略的に示す。
【0135】
[00135]モノパイル301の外部表面を、完全にコーティングしてもよい。モノパイル301の外部表面の異なる部分を、同じまたは異なるコーティングシステムを使用してコーティングしてもよい。
【0136】
[00136]たとえば、部分501および502を、圧縮した溶射された金属コーティングでコーティングしてもよい。部分801、802、803を、圧縮した溶射された金属コーティングまたは1種以上の他のコーティングでコーティングしてもよい。
【0137】
[00137]たとえば、部分501および502を、圧縮した溶射された金属コーティングでコーティングしてもよい。溶射された金属コーティングがローラー幅よりも広く塗布される部分、この場合には部分501および502を、圧縮した溶射された金属コーティングで部分的にコーティングし、圧縮していない溶射された金属コーティングで部分的にコーティングし、ここで、圧縮した溶射された金属コーティングが、部分501および502内にバンドを形成し、ここで、バンドが、コーティングを圧縮するために使用されたローラー支持体の幅に等しい幅を有することが可能である。部分801、802、803を、エポキシコーティングおよび/または非圧縮の溶射された金属コーティングおよび/または圧縮した金属コーティングを使用してコーティングしてもよい。部分801、802、803を、同じまたは異なるコーティングでコーティングしてもよく、特定の部分内で、複数の異なるコーティングを使用してもよい。複数の異なるコーティングは、重複していても重複していなくてもよい。
【0138】
[00138]たとえば、溶射された金属を部分501および502に塗布し、モノパイルを回転させて、部分501および502における溶射された金属の少なくとも一部を圧縮することによって、モノパイル301をコーティングしてもよく、次いで、モノパイルの他の部分801、802、803を、エポキシコーティングを使用してコーティングしてもよい。たとえば、エポキシコーティングの1つ、2つ、3つまたはそれ以上の層を、モノパイルに塗布してもよい。エポキシコーティングを塗布しながらモノパイル301を回転させることが可能であり、これにより、エポキシコーティングの効率的な塗布を可能にする。実践的な理由のために、たとえば、モノパイルが完全にコーティングされることを確実にするために、部分501および502において存在してもよい少なくとも若干の非圧縮の溶射された金属コーティング上に、エポキシコーティングを塗布してもよい。部分501および502において存在する圧縮した溶射された金属コーティング上にエポキシコーティングを塗布することはできるが、ローラー支持体302~305のうちの少なくとも1つと接触する何れかのエポキシコーティングは損傷するであろう。そのため、モノパイルを回転させながらコーティング方法を行う場合、ローラー支持体302~305が接触するモノパイルの部分上にエポキシコーティングは残っていない。溶射された金属を部分501および502に塗布すること、モノパイルを回転させて、部分501および502における溶射された金属の少なくとも一部を圧縮すること、次いで、エポキシコーティングの1つ、2つ、3つまたはそれ以上の層を、モノパイル301の他の部分801、802、803に塗布することは、モノパイルをコーティングするコスト対効果の高い手法である。モノパイル301をコーティングの最中に回転させて、コーティング方法の自動化を可能にしてもよいことから、このコーティング方法はコスト対効果が高い。モノパイルの大部分をエポキシコーティングでコーティングすることから、方法はコスト対効果が高い場合があり、何故なら、エポキシコーティングは溶射された金属コーティングよりも安価な場合があるからである。
【0139】
[00139]たとえば、溶射された金属を外部表面全体に塗布することによって、モノパイル301をコーティングしてもよい。溶射された金属を塗布することの最中に、ローラー支持体302~305を使用して、モノパイル301を回転させてもよい。コーティング方法の後に、コーティング方法の最中のローラー支持体302~305の位置に対応するモノパイル301の外部表面の部分を、圧縮した溶射された金属でコーティングしておき、一方で、モノパイル301の外部表面の他の部分を、非圧縮の溶射された金属でコーティングしておく。このように、モノパイル301をコーティングするために1つの材料のみの使用が必要とされてもよく、これが、コーティング方法の自動化に寄与してもよい。モノパイル301をこのように特に急速にコーティングしてもよく、何故なら、一層のコーティングのみを塗布すれば十分であってもよいからであり、溶射された金属は、たとえばエポキシコーティングとは対照的に急速に凝固し、複数の層で塗布することが必要な場合があり、層の塗布の間に最大24時間乾燥させることが必要な場合もあるからでもある。
【0140】
[00140]たとえば、溶射された金属を本質的に外部表面全体に塗布し、溶射された金属コーティングを圧縮することによって、モノパイル301をコーティングしてもよい。この目的のために、モノパイル301を何度も回転させてもよく、その後、モノパイル301および/またはローラー支持体302~305を、未だ圧縮されていない溶射された金属コーティングの部分に圧力が印加されうるように移動させてもよい。モノパイル301および/またはローラー支持体302~305を移動させることによって、外部表面の大部分またはさらには全体を、圧縮した溶射された金属コーティングでコーティングしてもよい。このようにして、特に耐食性コーティングを含むモノパイル301を取得してもよい。
【0141】
[00141]モノパイル301を異なる手法でコーティングしてもよく、圧縮した溶射された金属コーティング、非圧縮の溶射された金属コーティング、エポキシコーティングおよび他のコーティングならびにこれらの何れかの組合せを、モノパイル301の何れかの部分に塗布してもよいことを強調すべきである。何れかのコーティングまたはコーティングの組合せの1つ、2つ、3つまたはそれ以上の層を、モノパイル301の何れかの部分に塗布してもよい。コーティングの選択は、実践的な考慮事項によって決まってもよい。
【0142】
[00142]コーティングの選択に影響を及ぼしうる実践的な考慮事項は、たとえば、コーティングを塗布するために必要とされるコストおよび/もしくは時間、ならびに/またはコーティングを乾燥させるために必要とされる時間、ならびに/またはコーティングの最中にモノパイル301を支持する必要性、ならびに/またはコーティングがカソード防食を提供するか否か、ならびに/またはコーティングが高視認性である必要性、ならびに/または他の考慮事項を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0143】
[00143]好ましくは、コーティング方法において、ローラー支持体302~305は、ローラー位置が、圧縮した溶射された金属コーティングが所望されるまたは少なくとも許容されるモノパイル301の部分と一致するように配置される。好ましくは、コーティング方法において、ローラー支持体302~305は、ローラー位置が、圧縮した溶射された金属コーティングとは異なるコーティングが所望される、たとえばエポキシコーティングまたは非圧縮の溶射された金属コーティングが所望されるモノパイル301の部分と一致しないように配置される。そのような手法のローラー支持体302~305が可能である場合、コーティング方法を完全に自動化してもよい。
【0144】
[00144]図9Aは、本開示の態様に従う、溶射された金属コーティングを圧縮する前の溶射された金属コーティングの構造を概略的に示す。図9Bは、本開示の態様に従う、溶射された金属コーティングを圧縮した後の溶射された金属コーティングの構造を概略的に示す。
【0145】
[00145]コーティング材料の溶融した液滴を表面上に噴射することによって、溶射された金属コーティングを塗布する。コーティングが凝固する前に、溶融した液滴が飛び散ってもよい。凝固後、溶射された金属コーティングは、コーティング材料のプレートレットを含む構造を有してもよく、ここで、プレートレットは、ランダムな方向に配向されていてもよい。そのような構造は、プレートレットのランダム配向により、多孔質および延性であってもよい。
【0146】
[00146]溶射された金属コーティングの圧縮が、コーティングの構造を変化させてもよい。圧力下、プレートレットを、圧力に垂直な方向に沿って整列させてもよい。この整列により、プレートレット間の開放空間が低減する。これが、コーティングの厚さを減少させてもよく、孔隙率および延性における減少を引き起こしてもよい。これらの効果を実現するために、十分に大きい圧縮応力を印加すべきである。たとえば、そのような十分に大きい圧縮応力は、モノパイルの重量により、ローラーによって印加されてもよい。実際に、ローラーとモノパイル表面との間の圧力は、モノパイルの直径によって決定される。これらの効果は、十分に大きい圧縮応力を1回印加することによって既に実現されていてもよいが、大きい圧縮応力を複数回印加することも可能である。
【0147】
[00147]圧縮による孔隙率の低減を検査するために、実験を行った。TSAコーティングされた鋼基板の7つのサンプルおよびTSZAコーティングされた鋼基板の9つのサンプルは、サンプルをモノパイル表面にタック溶接し、モノパイルを回転させることによりサンプルを圧縮することによって調製した。
【0148】
[00148]詳細には、サンプルを、73mの長さ、8mの直径および62mmの壁厚でモノパイルにタック溶接した。次いで、図2を参照して記述されている方法を適用した。モノパイルをローラー支持体に載置し、それにより、回転させている最中に、サンプルがローラー支持体と接触するようにした。ブラストクリーニングを種々の手法で実施した。たとえば、手動と自動の両方のブラストクリーニングを実施し、スチールとミネラルグリットの両方の研磨材を使用した。しかしながら、ブラストクリーニングを実施する手法は、実験結果に対して有意な効果を有さなかったことが分かった。実験では、ブラストクリーニングすることおよび溶射されたコーティングを塗布することのみをサンプルに適用した。保護材はコーティングに適用しなかった。モノパイルを少なくとも25回回転させることによって、サンプルを圧縮した。しかしながら、初回の圧縮後、サンプルのさらなる視覚的変化は観察されなかった。シーリング材もさらなるコーティングもサンプルに塗布しなかった。圧縮後、後述する通りのさらなる分析のために、サンプルをモノパイルから除去した。
【0149】
[00149]ASTM E1920-03(2014)溶射コーティングの金属組織学的調製に関する標準ガイドに従って、サンプルを取り付け、研磨した。孔隙率測定のための切片は、各サンプルのより反射性の高い部分(圧縮が最も大きい領域に対応する)に位置付けられており、サンプルの湾曲が明らかである場合、切片は湾曲と平行に位置付けられた。
【0150】
[00150]各サンプルについて、孔隙率測定のために各切片の20の画像を捕捉した。光学顕微鏡法を孔隙率測定に好適な倍率で使用して、画像を捕捉した。孔隙率測定は、ASTM E2109:2007に準拠する方法を使用して行った。
【0151】
[00151]測定された孔隙率のすべての値は、非圧縮の溶射された金属コーティングについて予想されるであろうものを有意に下回る。非圧縮のTSAまたは非圧縮のTSZAについて、典型的な孔隙率は、5%乃至15%である。サンプルについての測定された孔隙率を以下で提供する。
【0152】
[00152]
【0153】
【表1】
【0154】
[00153]いくつかのサンプルの光学顕微鏡写真例を、図10Aおよび10Bにおいて以下で示す。比較のために、図10Cは、圧縮されていない典型的な溶射コーティングを示す。図10Aは、圧縮後のTSAコーティングを示す。図10Bは、圧縮後のTSZAコーティングを示す。比較のために、図10Cは、圧縮されていないTSAコーティングを示す。図10A~10Cに示されているすべてのコーティングについて、アーク溶射が溶射技術として用いられた。図10Aおよび10Bの図10Cとの比較から、図10Aおよび10Bに示されている圧縮されたコーティングが、図10Cに示されている非圧縮のTSAコーティングと比較して、より平滑である表面および低減された孔隙率を有することが分かる。
【0155】
[00154]コーティングのより低い孔隙率は、その腐食保護特性を強化および/または他の利益を提供してもよいことに留意されたい。
【0156】
[00155]圧縮後、溶射された金属コーティングの視覚的特性は、圧縮前の溶射された金属コーティングの視覚的特性と異なっていてもよい。特に、圧縮後、コーティングは、亀裂、積層、塊も他の可視欠陥もない、平滑な、光沢のあるおよび均一な外観を有する表面を含んでもよい。
【0157】
[00156]驚くべきことに、溶射された金属コーティングの圧縮は、コーティングの接着性を有意に減少させなくてもよい。比較的非多孔質および十分に接着性であるコーティングは、腐食保護に特に好適でありうる。
【0158】
[00157]付加的にまたは代替的に、溶射された金属コーティングの圧縮は、さらなるおよび/または他の効果を有してもよい。溶射された金属コーティングの圧縮ならびに/またはそれによって実現される何れかのさらなるおよび/もしくは何れかの他の効果は、上述した利益の少なくともいくつかを実現してもよく、または他の利益を実現してもよい。
【0159】
[00158]前述の図の説明において、本発明についてその具体的な態様を参照して記述してきた。しかしながら、添付の請求項においてまとめられている通りの本発明の範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更が為されてもよいことが明白となるであろう。
【0160】
[00159]加えて、その必須範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況または材料を適合させるための多くの修正が為されてもよい。したがって、本発明は開示されている特定の態様に限定されるのではなく、本発明は添付の請求項の範囲内に収まるすべての態様を含むことが意図されている。
【0161】
[00160]特に、本発明の種々の側面の具体的な特色の組合せが為されてもよい。本発明の側面は、本発明の別の側面に関係して記述された特色を追加することによって、さらに有利に強化されてもよい。
【0162】
[00161]本発明は、添付の請求項によってのみ限定されることを理解されたい。この文書においておよびその請求項において、動詞「を含む」およびその活用は、具体的に言及されていない品目を除外することなく、その語に続く品目が含まれることを意味するそれらの非限定的な意味で使用される。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、唯一の該要素があることを文脈上明らかに要求しているのでない限り、1つを超える該要素が存在する可能性を除外しない。故に、不定冠詞「a」または「an」は通常、「少なくとも1つ」を意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】