IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョン・ウィリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図1
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図2
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図3
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図4A
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図4B
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図5A
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図5B
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図6
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図7A
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図7B
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図8A
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図8B
  • 特表-適応探索質量分析計スペクトル分析 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】適応探索質量分析計スペクトル分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240725BHJP
【FI】
G01N27/62 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505245
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022023485
(87)【国際公開番号】W WO2023009184
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/226,603
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524036457
【氏名又は名称】ジョン・ウィリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JOHN WILEY & SONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】ネドヴェト,カール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥソウサ,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】アブシア,タイ
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041EA04
2G041EA06
2G041GA01
2G041HA01
2G041LA03
2G041LA06
2G041MA02
(57)【要約】
スペクトルを分析する方法は、サンプルスペクトル内のサンプルピークのセットを特定することを含み、サンプルピークは、それぞれがサンプルフラグメント質量を有するサンプルのフラグメントに関連付けられる。リファレンススペクトルは、それぞれがリファレンスフラグメント質量を有する、リファレンスのフラグメントに対応する1以上のリファレンスピークを用いて選択される。選択されたサンプル及びリファレンスピーク間の質量差を決定でき、質量差に基づいて基交換を選択できる。例えば、基交換は、選択されたピークに関連付けられたサンプル又はリファレンスフラグメントの質量の変化を表す。選択されたピークは質量差によってシフトされ、リファレンススペクトルに対する適合値が決定される。適合値は、基交換及び対応するピークシフトに応答して、サンプル及びリファレンスピークの各セット間の類似性を特徴づける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルスペクトル内のサンプルピークのセットを特定すること、ここで、前記サンプルピークは、各々サンプルフラグメント質量を有するサンプルのフラグメントに関連付けられる;
各々リファレンスフラグメント質量を持つリファレンスのフラグメントに関連付けられるリファレンスピークのセットを持つリファレンススペクトルを選択すること;
前記リファレンススペクトル内の選択されたリファレンスピークと比較して、前記サンプルスペクトル内の選択されたサンプルピークの質量差を決定すること;
前記質量差に基づいて基交換を選択すること、ここで、前記基交換は、前記選択されたリファレンスピークに関連付けられた前記リファレンスフラグメント質量と比較した、前記選択されたサンプルピークに関連付けられた前記サンプルフラグメント質量の変化を表す;
前記選択されたサンプルピーク又は前記選択されたリファレンスピークを、前記質量差だけシフトすること;及び
前記リファレンススペクトルに関する前記サンプルスペクトル用の適合値を決定すること、ここで、前記適合値は、前記基交換に対応する前記シフトされたサンプル又はリファレンスピークを含むサンプル及びリファレンスピークのセットの間の類似度を特徴づける;
を含む、
方法。
【請求項2】
前記サンプルスペクトルと前記リファレンススペクトルの一方又は両方を、ユーザインタフェースに出力すること;及び
前記基交換に対応する前記ユーザインタフェース上の前記適合値を更新すること;
をさらに含む、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記サンプルスペクトルは、サンプル質量分光器スペクトルである、
請求項2の方法。
【請求項4】
総質量値をユーザインタフェースに出力すること、ここで、前記総質量値は、前記サンプルスペクトル内の前記サンプルピークに少なくとも一部は基づいて決定される;及び
前記総質量値に少なくとも一部は基づいて、前記ユーザインタフェース上の表示のために、前記リファレンススペクトル、前記質量差、又は、前記基交換のうちの1以上を選択すること;
をさらに含む、
請求項1の方法。
【請求項5】
前記ユーザインタフェースを通じて受け取ったユーザ入力に基づいて前記総質量値を更新すること、
をさらに含む、
請求項4の方法。
【請求項6】
1以上の提案された基交換のセットを前記ユーザインタフェースに出力すること、ここで、前記基交換は、前記ユーザインタフェースを通じて受け取ったユーザ入力に基づいて、提案された基交換の前記セットのなかから選択される;
をさらに含む、
請求項2の方法。
【請求項7】
前記基交換は、前記サンプルのフラグメントの一つのうちの原子団の、前記リファレンスのフラグメントの一つのうちの異なる原子団への交換を表す、
請求項1の方法。
【請求項8】
前記基交換は、前記選択されたサンプルピークに関連付けられた前記サンプルのフラグメントの一つのうちの一つ又は全ての原子の、前記選択されたリファレンスピークに関連付けられた前記リファレンスのフラグメントの一つのうちの一つ又は全ての原子への交換を表す、
請求項1の方法。
【請求項9】
前記サンプルスペクトル内の1以上の追加のサンプルピーク又は前記リファレンススペクトル内の1以上のリファレンスピークを、前記質量差だけシフトすること;
をさらに含み、
前記適合値は、前記1以上の追加のピークをシフトすることに対応した前記1以上の追加のシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含む前記サンプル及びリファレンススペクトルの間の類似性を特徴づける、
請求項1の方法。
【請求項10】
前記リファレンスピークに関連付けられた前記リファレンスフラグメント質量の1以上と比較した、前記サンプルピークに関連付けられた前記サンプルフラグメント質量の1以上の、1以上の追加の質量差を表す1以上の追加の基交換を選択すること;及び
1以上の追加のサンプルピーク又は1以上の追加のリファレンスピークを、前記1以上の追加の質量差だけシフトすること;
をさらに含み、
前記適合値は、前記1以上の追加の基交換に対応した前記1以上の追加のシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含む前記サンプル及びリファレンススペクトルの間の類似性を特徴づける、
請求項1の方法。
【請求項11】
請求項1の方法を実行するように構成されたプロセッサを有し、
複数の1以上の前記リファレンススペクトルを含むデータライブラリとデータ通信をする、
ユーザインタフェース。
【請求項12】
前記適合値に基づいて選択された前記特定されたリファレンススペクトルのサブセットを表示するために、さらに構成され、
ここで、以下の1以上を含む:
前記サブセットは、前記適合値に基づいてランク付け又はリストされた前記特定されたリファレンススペクトルの対話式のリストを含む;
前記ユーザインタフェースは、前記質量差に対応して前記適合値を更新するために構成される;
前記ユーザインタフェースは、前記適合値の更新に対応して前記サブセットを更新するために構成される;又は
前記ユーザインタフェースは、ユーザ入力に応答して前記サブセットを更新するために構成される、
請求項11のユーザインタフェース。
【請求項13】
コンピュータコードが格納され、
前記コンピュータコードは、コンピュータプロセッサにより実行可能であり、請求項1の方法を実行する、
非一時的機械可読データ記憶媒体。
【請求項14】
質量分光器からのサンプルスペクトルを、ライブラリからのリファレンススペクトルのセットと比較するために適応されるプロセッサ及びメモリと、
前記プロセッサと通信するユーザインタフェースと、
を備え、
前記サンプルスペクトル及びリファレンススペクトルの各々は、フラグメントのフラグメント質量を表す複数のピークを含み、
前記ユーザインタフェースは:
前記サンプルスペクトルを表示するため;
前記サンプルスペクトル及びリファレンススペクトル内の同一か類似するフラグメント質量を特定するために選択された類似度又は適合メトリックに基づいて前記ライブラリから前記リファレンススペクトルの1以上を特定するため;
前記特定されたリファレンススペクトルの1以上を前記サンプルスペクトルとともに表示するため;
前記表示されたサンプル又はリファレンススペクトル内のピークの1以上を、前記フラグメント中の基交換に対応する質量値の変化だけシフトするため;及び
前記1以上のシフトされたピークに基づいて前記類似度又は適合メトリックを更新するため;
に構成される、
コンピュータベースの分光分析のシステム。
【請求項15】
前記ユーザインタフェースは、前記サンプル及びリファレンススペクトルを、それぞれの質量スケールに沿って並置するために構成される、
請求項14のシステム。
【請求項16】
前記ユーザインタフェースは、前記1以上のピークの元の及びシフトされた位置を、それぞれの質量スケールに沿って、1以上の印によって特定又はリンクされるように、表すために構成される、
請求項15のシステム。
【請求項17】
前記類似度又は適合メトリックは、フラグメント質量を表すピークの強度を操作する、ドット積、畳み込み、相互相関、尤度関数、及びアースムーバメトリックからなる群から選択される、
請求項14のシステム。
【請求項18】
前記ユーザインタフェースは、前記基交換に対応する質量値の変化を選択するため、又は、異なる基交換に対応する質量値の変化を更新するために、構成される、
請求項14のシステム。
【請求項19】
前記ユーザインタフェースは、選択又は更新された質量値の変化だけ前記1以上のピークをシフトするため、及び、それにしたがって前記類似度又は適合メトリックを更新するために、構成される、
請求項18のシステム。
【請求項20】
前記類似度又は適合メトリックは、さらに、前記サンプル及びリファレンススペクトル内のピークの1以上に関連付けられた同一又は類似の総質量を特定するために選択される、
請求項14のシステム。
【請求項21】
前記ユーザインタフェースは、前記総質量を選択又は更新するため、及び、前記選択又は更新された総質量に基づいて前記1以上のリファレンススペクトルを特定するために構成される、
請求項20のシステム。
【請求項22】
前記ユーザインタフェースは、質量値の変化を選択又は更新し、表示された前記サンプル又はリファレンススペクトル内のピークの1以上を前記選択又は更新された質量値の変化だけシフトし、それにしたがって前記類似度又は適合メトリックを更新するために、構成される、
請求項22のシステム。
【請求項23】
前記ユーザインタフェースは、前記類似度又は適合メトリックに基づいて選択された前記特定されたリファレンススペクトルのサブセットを表示するために構成され、
ここで、以下の1以上を含む:
前記サブセットは、前記適合値に基づいてランク付け又はリストされた前記特定されたリファレンススペクトルの対話式のリストを含む;
前記ユーザインタフェースは、質量値の変化に対応して前記類似度又は適合メトリックを更新するために構成される;
前記ユーザインタフェースは、前記類似度又は適合メトリックの更新に対応して前記サブセットを更新するために構成される;又は
前記ユーザインタフェースは、ユーザ入力に応答して前記サブセットを更新するために構成される、
請求項14のシステム。
【請求項24】
前記ユーザインタフェースは、シフト対象の前記ピークの1以上を選択するために構成される、
請求項14のシステム。
【請求項25】
前記ユーザインタフェースは、質量値の変化に対応する前記基交換を選択するために構成される、
請求項14のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、「適応探索質量分析計スペクトル分析(ADAPTIVE SEARCH MASS SPECTROMETER SPECTRAL ANALYSIS)」と題して2021年7月28日に出願された米国仮特許出願第63/226,603号の優先権を主張する。上述の特許出願の内容は、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
[著作権表示]
この特許文書の開示の一部には、著作権保護の対象となる内容が含まれている。著作権所有者は、特許庁の特許ファイル又は記録に記載されている特許文書又は特許開示の何人によるファクシミリ複製にも異議を唱えないが、それ以外の場合はすべての著作権を留保する。
【技術分野】
【0003】
本出願は、質量分析及び関連するスペクトル分析に関し、より一般的には、サンプルのマッチング及び未知の物質の同定のための分光データ分析に関する。本出願には、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)及び液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)システムを含む質量分析システムのスペクトル分析、及びその他の又はより一般化されたスペクトルデータ分析が含まれるが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0004】
スペクトル分析は、特定のサンプル中の未知の物質の化学組成の同定を含む、サンプルのマッチング及び物質の同定のための強力なツールである。ガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)システムでは、ガスクロマトグラフはキャピラリカラムを利用して、サイズ、重量、長さ、直径、膜厚、及び、その他の位相特性等の分子の物理的及び化学的特性に基づいて分子又は分子のフラグメント(成分)を分離する。これらの特性の違いにより、移動相ではなくカラム内の固定相に対するさまざまな分子の相対親和性が決まり、サンプルがカラムの長さを移動するときに保持時間に基づいて分離が促進される。
【0005】
目標は、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)システムにおいても同様であり、そこでは液体混合物の異なる分子フラグメント又は成分が固定相と移動相との間に分配され、次いでカラムの長さに沿って、又は、カラム内の保持時間に基づいて分離される。実際には、サンプルの液体組成に基づいて追加の技術的課題が存在する可能性があり、それに対してさまざまな技術が開発されている。これらには、吸着クロマトグラフィ、分配クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、又は非極性(疎水性等)固定相と極性移動相(水とその他の極性溶媒との混合物等)を利用した逆相(分配)クロマトグラフィが含まれる。
【0006】
異なる分子は、保持時間に基づいて異なる時間でGC又はLCステージから溶出し、保持時間はそれらの異なる分子(化学的及び物理的)特性に依存する。下流の質量分析計(MS)システムは、上流のGC又はLCシステムから分子又はそのフラグメントを捕捉し、異なる分子をイオン化するように選択されたエネルギと強度の電子ビームをそれらに照射するか、(より一般的には)それらをイオン化されたフラグメントに分解する。イオン化されたフラグメントは電磁的に加速され、質量分析装置で強力な磁場にさらされ、分子(存在する場合)とフラグメントの移動経路が、異なる質量電荷比に基づいて異なる経路に沿って曲げられる。
【0007】
磁場は、移動するイオン化フラグメントを質量ごとに分離し、検出器で識別されるサンプルのスペクトル特性を生成する。検出器は、分離されたフラグメントを質量によって識別し、それぞれの相対量又は存在量を計算するためのデータを提供する。一般に、異なる分子は異なる成分にフラグメント化する傾向があり、異なるスペクトルを照合して未知のサンプル中の未知の分子又はそのフラグメントを識別することができる。しかし、多くの物質には、非常に多くの異なる有機及び/又は無機フラグメントが存在する可能性があり、それぞれが同じ又は異なる質量の複数の共通の構成及びバリエーションを有する可能性がある。したがって、未知のサンプル(又はサンプルの重要なフラグメント)の元の分子組成を特定することは、スペクトルで観察される可能性のある多くの変動に基づいて、重大な技術的課題を引き起こす可能性がある。
【0008】
この問題に対する1つのアプローチは、リファレンススペクトルデータのライブラリを作成するために、一連の「既知の」物質に対して分光法を実行することを含む。各リファレンススペクトルでは、質量ピークの分布はさまざまなフラグメントの相対測定量を表し、これは分光法によりリファレンス分子から得られる可能性がある。未知のサンプルから得られたスペクトルデータは、質量ピークの類似性に基づいて一致するものを見つけるために、リファレンススペクトルのライブラリと比較されることができる。比較に使用するために、多数のこのようなリファレンススペクトルデータのライブラリが、例えば、ウィリー・サイエンス・ソリューションズ(Wiley Science Solutions)(ニュージャージー州ホーボーケンのJohn Wiley & Sons, Inc.)及びその他の情報源から利用可能である。
【0009】
残念ながら、特に類似の質量を有する場合も有さない場合もある複数の有機又は無機成分にフラグメント化する分子の場合、適切な「一致」を選択するための広範囲の異なるリファレンススペクトルが存在する可能性がある。化学組成に関係なく、異なるフラグメントも同様の質量を持つ場合がある。また、ベースラインのシフト及びその他の系統的な影響が存在する可能性があり、サンプル及びリファレンススペクトルが同一の機器で取得されない場合、質量ピーク分布に系統的な変動が現れる可能性がある。したがって、単一の質量分析スペクトルでは、分光分析の対象となるサンプル分子(又は複数の分子)及び関連するすべてのフラグメントの最終的な同定が得られない可能性がある。結果として、従来技術と全く同じ制限を受けない、改良された質量分析技術が望まれている。
【発明の概要】
【0010】
質量分析計分析で使用するための適応探索の方法は、サンプルスペクトル内のサンプルピークのセットを特定、そうでなければ確認することを含む。サンプルピークは、サンプルの分子フラグメント(又は成分)に関連付けられている。方法は、リファレンスの分子フラグメントに関連付けられたリファレンスピークのセットを有するリファレンススペクトルを選択することを含む。サンプルの分子フラグメントの各々は、サンプルフラグメント質量を有し、リファレンスの分子フラグメントの各々は、リファレンスフラグメント質量を有する。サンプルスペクトルとリファレンススペクトルの比較は、リファレンスを用いたサンプルの特定に役立つ1以上の適合値又は類似性メトリックを計算するための基礎を提供するために使用されることができる。視覚的な比較もまた、計算された類似性メトリックと同様に役立ちうる。類似の計算結果又は適合値のリストは、例えば類似性メトリックにしたがって結果をランク付けすることによって、又は他の方法で比較的高い類似性メトリックを持つリファレンススペクトルを特定することによって(例えば、類似性スコア)、リファレンススペクトルのライブラリ又はデータベース内の利用可能な多数のリファレンスに対して提供することができる。
【0011】
用途に応じて、方法は、リファレンススペクトル内の選択されたリファレンスピークと比較した、サンプルスペクトル内の選択されたサンプルピークのセットの質量差を決定することと、質量差に基づいて基交換を選択することとを含むこともできる。基交換は、選択されたリファレンスピークのセット内のフラグメントに関連付けられたリファレンスフラグメント質量と比較した、選択されたサンプルピークのセットの1以上に関連付けられたサンプルフラグメント質量の変化を表す。複数の交換も可能である。これらの候補基交換により、それぞれの類似性メトリックに基づいて、候補リファレンススペクトルのランク付けされた「ヒットリスト」(つまり、ランク付けされたリスト)の調整及び適応が可能になる。
【0012】
リファレンススペクトルにおける1以上のピークは、リファレンス分子と比較して未知のサンプルにおいて可能性が高い又は可能であると決定される候補基交換に関連付けられた質量差だけシフトすることができる。更新又は調整された適合値は、シフトされたリファレンススペクトルに関してサンプルスペクトルの類似性メトリックを再計算することによって決定され得る。ここで、適合値は、基交換に応答してサンプル及びシフトされたリファレンスピークのセット間の類似性を特徴づける。
【0013】
コンピュータベースのシステムも包含される。コンピュータベースのシステムは、これらの方法を実行し、サンプルスペクトルと元のリファレンススペクトル及びシフトされたリファレンススペクトルをそれぞれの適合値及び関連データとともにユーザインタフェース上に表示するように構成されたメモリ及びプロセッサコンポーネントを含む。非一時的媒体に格納された機械可読コードを備えたコンピュータ製品も含まれ、そのコードはコンピュータプロセッサによって実行可能であり、方法を実行するかシステムを動作させる。
【0014】
これらの例のいずれにおいても、サンプルスペクトルは、質量分析計システム、例えばガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)システム又は液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)システムから得ることができる。リファレンススペクトルは同様のシステムから取得し、ライブラリ又はデータベースに格納されることができる。サンプルスペクトルとリファレンススペクトルの一方又は両方は、1以上の提案された(システムによって特定された)又はユーザが選択した基交換及びシステムが計算した適合値とともに、ユーザインタフェース(UI)、例えばグラフィカルユーザインタフェース(GUI)に出力されることができる。入力はユーザインタフェースでも受け取ることができ、入力によって選択された基交換が決定される場合がある。提案された基交換のセットをユーザインタフェースに出力することもでき、例えば、入力は、提案された基交換のセットの中から選択された基交換を決定するために使用される。
【0015】
これらの例のいずれにおいても、サンプルの分子イオン質量を表す総質量値がユーザインタフェースで提供され得る。例えば、総質量値は、探索入力として提供されたサンプルスペクトル内のサンプルピークに基づく。総質量値は、リファレンススペクトルの選択、質量差の決定、又は、基交換の選択に使用されることができる。ユーザは、ユーザインタフェースで入力を行うこともでき、例えば総質量値を更新又は変更することもできる。これらの用途のいくつかでは、ヌル又はゼロの総質量値及び他のパラメータが、ユーザインタフェースに出力され、表示され、あるいはユーザインタフェースに提供されてもよく、ユーザインタフェースで受け取られた入力は、総質量値を決定するために使用され得る。
【0016】
これらの例のいずれにおいても、基交換は、選択されたサンプルピークに関連付けられた分子フラグメント内の原子団の、選択されたリファレンスピークに関連付けられた分子フラグメント内の異なる原子団への交換を表すことができる。基交換は、選択されたサンプルピークに関連付けられた分子フラグメント全体の、選択されたリファレンスピークに関連付けられた分子フラグメント全体への交換を表すこともできる。
【0017】
これらの例のいずれにおいても、サンプルピークに関連付けられたサンプルフラグメント質量とリファレンスピークに関連付けられたリファレンスフラグメント質量との間の1以上の追加の質量差を表す、1以上の追加の基交換を選択することができる。1以上の追加のサンプルピーク又はリファレンスピークは、1以上の追加の質量差によってシフトされることができ、例えば、適合値は、1以上の追加の基交換に応答した追加のシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含むサンプル及びリファレンススペクトル間の類似性を特徴づける。
【0018】
これらの例及び実施の形態のいずれにおいても、サンプルスペクトル及びリファレンススペクトルは、より一般化された分子又は原子スペクトルデータ分析システム、例えば、可視又は紫外(UV)分光法システム、赤外(IR)分光法システム、ラマン分光法システム、又は核磁気共鳴(NMR)分光法システムから得ることができる。これらの用途では、サンプルフラグメント質量とリファレンスフラグメント質量をサンプルフラグメントとリファレンスフラグメント、例えば、IR、可視、又はUV分光法の発光フラグメントの質量、ラマン分光法に応答する振動又は回転状態の分子フラグメントの質量、又は、NMR分光法の異なる核スピン応答を有する他の核又は分子フラグメントの質量に関連付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、適応探索分析プロセッサを備えた質量分析システムの概略図である。
図2図2は、適応探索質量分析計スペクトル分析のための方法のブロック図である。
図3図3は、質量分析計スペクトル分析のための適応システムのブロック図である。
図4A図4Aは、適応探索分析に適した代表的なスペクトルを示すユーザインタフェースの図である。
図4B図4Bは、代表的なサンプル及びリファレンススペクトル間の一致を示すユーザインタフェースの図である。
図5A図5Aは、代表的なサンプル及びリファレンススペクトル間の不一致を示すユーザインタフェースの図である。
図5B図5Bは、デルタ質量分析に基づいて、代表的なサンプル及びシフトされたリファレンススペクトル間の改善された一致を示すユーザインタフェースの図である。
図6図6は、代表的なサンプルスペクトル、シフトされたリファレンススペクトル、及びシフトされていないリファレンススペクトルを示すユーザインタフェースの図である。
図7A図7Aは、分子量が未知の代表的なサンプルスペクトルを示すユーザインタフェースの図である。
図7B図7Bは、図7Aのサンプルスペクトルと一致するリファレンススペクトルを示すユーザインタフェースの図である。
図8A図8Aは、図7Aのサンプルスペクトルと一致するシフトされたリファレンススペクトルを示すユーザインタフェースの図である。
図8B図8Bは、ユーザー入力に基づいて、選択されたリファレンススペクトルとともに代表的なサンプルスペクトルを示すユーザインタフェースの図である。
図9図9は、サンプルスペクトルから始まり、リファレンススペクトルのライブラリ内で一致する候補を探す適応探索におけるプロセスフローステップを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、本明細書に記載されるように、質量分析のためのスペクトル分析に関し、より一般的には、スペクトル分析のための適応探索技術に関する。用途に応じて、これらの技術により、一般的な未知のサンプル又は物質のサンプルスペクトル(又は「分子フィンガープリント」)の分析が可能になり、サンプルの正確な質量を決定し、質量閾値内にあるリファレンススペクトルを見つけ、特定又は選択することができる。サンプル質量を計算し、選択した同位体パターンをシフトして、リファレンススペクトルに基づいてサンプルスペクトルを生成するためにどのような構造フラグメントの置換(基交換)又は追加が必要になるかを決定する(又はその逆)。
[導入]
【0021】
この適応探索技術では、特定のフラグメントパターンのみをシフトすることができる。探索では、サンプル又は未知のスペクトルと比較して、リファレンススペクトルにおいてフラグメントグループが存在するか欠落している可能性がある類似の化合物を特定する。例えば、リファレンススペクトル内の特定の分子フラグメントの有無により、一部のリファレンスピーク位置が質量差又はデルタ質量(ΔM)だけ未知のサンプルのリファレンスピーク位置と異なる場合がある。質量と質量差は通常、原子質量単位(AMU)で定義されるが、スケールの選択は任意であり、質量分析ではu(AMU)又はm/z(単位電荷あたりの質量)を使用することも一般的であり、通常、電荷は1であると理解される。多重イオン化されたフラグメントは、より小さい曲げ半径を有し、それに基づいて捕捉することができ、当技術分野で知られているように、ノイズ抑制アルゴリズムを利用することもできる。
【0022】
適応分析を使用して、より良好な(改善された)マッチングスコア又は適合値(計算された類似性メトリック)を達成するために、1以上のリファレンスピークを質量差ΔMだけシフトすることができる。より良好なマッチングスコア又は適合値に基づいて、類似の化合物がヒットリスト(例えば、潜在的なマッチングのサブセットのランク付けされたリスト)としてユーザインタフェースに提示され得る。適応探索によって実行されるシフトを示すために、例えばグラフィカルユーザインタフェースのウィンドウ上にシフト前後のリファレンススペクトルを示すために、ユーザインタフェースのディスプレイ上で点線又は他の印を使用することができる。
【0023】
これにより、ユーザはリファレンススペクトルをサンプル上に「マッピング」することができ、あるいはその逆も可能となり、最良の(又はより良い)適合を特定することができる。ユーザが入力を行うと(例えば、総質量値、質量差を入力するか、又は単に「ヒット」に関連付けられた特定のボタン又はリンクをクリックすることによって)、これはリファレンススペクトル又は基交換の選択を支援するため、又は、比較的高い適合値を持つ潜在的な一致を示すために使用される場合がある。この技術は、ガスクロマトグラフィ(GC)と液体クロマトグラフィ(LC)の両方の質量スペクトル(GC-MS又はLC-MS)分析、及び、リファレンス及びサンプルスペクトル間の組成の違いに基づく同様の適応探索アルゴリズムに適した質量ピーク又はその他のスペクトル特徴を備えた他の形式のスペクトル分析に適応できる。
[質量分光計システム概要]
【0024】
図1は、適応探索分析(ASA)プロセッサ170とデータ通信する質量分析システム(mass spectroscopy system)(又は質量分析計)100の概略図である。図1のガスクロマトグラフィ質量スペクトル(GC-MS)構成において、分光システム(spectroscopy system)100は、ガスクロマトグラフ又はクロマトグラフィ(GC)システム110と、質量分析計又は分光(MS)システム130とを含む。あるいは、分光システム(spectroscopy system)100は、質量分析計130に接続された液体クロマトグラフ又はクロマトグラフィ(LC)システム110を有する液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)構成を利用することができ、又は、別のスペクトル分析システム100を、サンプル分子の最初の分離に使用することができる。
【0025】
図1に示すように、ガスクロマトグラフ110は、キャリアガス流(例えば、水素、ヘリウム、窒素、アルゴン、又は移動相としての用途に適した他のキャリアガス)を受け入れるように構成されたキャリアガス入口112と、未知の物質又はサンプルをキャリアガス流に導入するように構成されたサンプルポート115とを含む。キャリアガス及びサンプルは、固定相を画定する液体の薄膜でコーティングすることができるカラム120(例えば、開放管状カラム又は毛細管カラム、又は固体の不活性担体材料を備えた充填カラム)を通って伝播する。
【0026】
サンプルの異なる分子成分は、カラム120内の保持時間に基づいて分離され、この保持時間は、移動相及び固定相に対するそれらの相対親和性に依存する。親和性は温度に依存し、温度はカラム120をオーブン又は同様の温度制御された筐体122内に置くことによって制御される。
【0027】
分離されたサンプル成分は、移送ライン125を介してカラム120を出て、質量分析計システム130に輸送される。質量分析計システム130は、フィラメント142及び電子トラップ145を備えたイオン化チャンバ140を含む。イオン化チャンバ140は、サンプル成分をイオン化してフラグメントに分離するのに十分なエネルギーを持ってフィラメント142から出た電子については、過剰な電子がトラップ145に捕らえられるように構成される。
【0028】
典型的には、電子エネルギはイオン化ポテンシャルを超えるように制御することができ、追加のエネルギを提供してサンプル成分をイオン化分子フラグメントに分解することができる。DC電位175を印加して、質量分析器150内を移動するイオン化フラグメントを加速し、そこで強力な磁場を印加して、フラグメントの異なる質量対電荷比に基づいて異なる経路に沿ってフラグメントを曲げる。フラグメントは、異なる経路に沿って空間的に分離され、分光システム100のデータ処理及び制御に適合したローカルプロセッサ又はコントローラ160に接続された検出器155によって計数される。
【0029】
異なる経路に沿って蓄積されたフラグメントを計数することにより、所定の時間枠にわたって蓄積された(統合された)サンプル分子中の各質量分離フラグメントの相対的な存在量の証拠が得られる。あるいは、リアルタイムのデータ蓄積と分析を適用することもできる。通常、スペクトル内で観察される最も高いピーク値が適応探索の焦点となるが、より少ないフラグメントに対応するより低い値もサンプル分子の代表的な成分である可能性があり、同一又は類似の分析の対象となる場合がある。
【0030】
動作中、分光システム100は、それぞれが特徴的なサンプルフラグメント質量を有する、サンプルの異なるフラグメントの存在量に関連するサンプルピークのセットを含む、未知の物質からのサンプルスペクトルを取得する。ローカル分光計コントローラ160は、例えば有線又は無線ネットワーク通信リンク165を介して、適応探索分析(ASA)プロセッサ170とデータ通信する。リンク165は、分光コントローラ160とASAプロセッサ170との間のリアルタイム通信又は非同期通信のいずれかに適合させることもできる。
【0031】
ASAプロセッサ170は、ユーザインタフェース180と通信して提供され、リファレンススペクトルライブラリ又はデータベース(DB)190にアクセスすることができる。適切なデータベース190には、限定されないが、質量スペクトル(MS)データベース、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)スペクトルデータベース、及び、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)スペクトルデータベースが含まれる。適切な例としては、例えば、ウィリー・レジストリ(WILEY REGISTRY)及び質量分析に関するその他の重要なコレクション、ノウイットオール(KNOWITALL)質量スペクトルデータベースコレクション、国立標準技術研究所(NIST)及び国立衛生研究所(NIH)の質量スペクトルライブラリ、生物学的及び環境学的に重要な有機化合物(ISIDOROV)のライブラリ、デザイナードラッグ、地球化学物質、石油化学物質及びバイオマーカ(SPECDATA)の質量スペクトル、薬物、毒物、農薬、汚染物質及びその代謝物の質量スペクトル、リピッズ(LIPIDS)質量スペクトルデータ、線形保持指数(LRI)等の農薬の質量スペクトルライブラリ、天然及び合成化合物のフレーバとフレグランスの質量スペクトル、脂肪酸メチルエステル(FAMES)質量スペクトルライブラリ、生理活性物質の質量スペクトル、食品中の揮発性物質の質量スペクトル(SPECDATA)が挙げられる。他の用途では、ここで説明する技術は、赤外(IR)スペクトルデータ(例えば、IR、フーリエ変換IR(FT-IR)、減衰全反射(ATR)IR分光法、及び サドラー(Sadtler)及びヒュンメル(Hummel)スペクトルを含む他のIRスペクトルライブラリ、水素又は陽子(HNMR)及び炭素(CNMR)スペクトル、及び、他の原子核のNMRスペクトルを含む核磁気共鳴(NMR)スペクトルデータベース、ラマンスペクトルデータベース(例えば、サドラー(Sadtler)データを特徴とするウィリー(WILEY)高品質ラマンスペクトル)、及び、紫外可視(UV-Vis)スペクトルデータベースにも適用できる。これら及び他の適切なスペクトルデータベースは、例えば、上述したように、ウィリー・サイエンス・ソリューションズ(Wiley Science Solutions)及び他の情報源から入手可能である。
【0032】
ASAプロセッサ170は、分光システム100によって得られるサンプルスペクトル内のサンプルピークのセットを確認するように構成することができ、各サンプルピークは、特徴的なサンプル分子又はフラグメント質量を有するサンプル分子又はそのフラグメントと関連付けられる。次いで、ASAプロセッサ170は、サンプルスペクトルと比較するために、データベース190から1以上のリファレンススペクトルを選択することができる。ユーザインタフェース180は、本明細書で説明されるように、ユーザインタフェース180A~180H又は180Jの特定の例のいずれか又はすべてを記述し得る。同様に、ユーザインタフェース180A~180H又は180Jの任意の例は、ユーザインタフェース180によって具現化され得る。
【0033】
分析のために捕捉及び選択された各サンプルスペクトルには、特定のリファレンス物質のフラグメントに関連付けられたリファレンスピークのセットが含まれる。各リファレンスフラグメントには独自の特徴的なリファレンスフラグメント質量があり、通常は原子質量単位(AMU又はu)又は単位電荷あたりの質量(m/z)のいずれかで測定される。一般に、分析のために選択されたサンプル及びリファレンススペクトルは、実質的に同様の分光システム、例えば、図1によるGC-MS又はLC-MS分光システム100を用いて取得されるべきである。広範囲の市販(及びカスタム設計)GC-MS及びLC-MSシステムが利用可能であることを考慮すると、たとえ有利な条件下であっても、ASAプロセッサ170は、サンプル及びリファレンススペクトル間の系統的な差異を考慮するように、例えば、スペクトルのピークを変調することによって質量に基づく感度の違い又は質量の系統的なシフトを考慮するように、適応することもできる。
【0034】
既存の技術に対する改良として、ASAプロセッサ170はまた、適応可能な基交換分析に基づいて、サンプル及びリファレンススペクトル間の化学組成の差異に適応し、考慮するように構成されている。これを達成するために、ASAプロセッサ170は、本明細書に記載されるように、質量差を調整するために、基交換を使用して、選択されたサンプル及びリファレンスピーク間の質量差を決定し、基交換に基づいてサンプル及びリファレンススペクトル間の適合を改善する。
【0035】
図1の質量分析システム100、ASAプロセッサ170、ユーザインタフェース180、及びデータベース190は単に代表的なものである。他の例では、光学、紫外、赤外、ラマン、又は核磁気共鳴分光システム100等の異なるスペクトル処理システム100を使用することができる。これらの例では、データベース190は、複数のタイプのシステムからのリファレンススペクトルへのアクセスを提供することができ、それによって、同様のタイプのリファレンスデータを分析に使用するために見つけることができ、それに応じてユーザインタフェース180への出力が適合される。
[ピークでの質量差を用いた分析]
【0036】
図2は、例えば図1に示すASAプロセッサ170によって実行される適応型質量分析計分析のための方法200のブロック図である。この特定の例では、方法200は、サンプルスペクトル内のサンプルピークのセットを特定又は確認すること(ステップ210)、リファレンス(REF)スペクトルを選択すること(ステップ220)、選択されたサンプル及びリファレンススペクトル間の質量差(ΔM)を決定すること(ステップ230)、質量差を考慮して少なくとも1つの基交換(XCHG)を選択すること(ステップ240)、質量差にしたがって選択されたピークをシフトすること(ステップ250)、及び、適合値が基交換に応答するように、シフトされたピークを含むサンプル及びリファレンススペクトルの適合値を決定すること(ステップ260)から選択される1以上の処理ステップを含む。
【0037】
その後、適合値を、ユーザアクセス用に構成されたグラフィカルユーザインタフェースに出力することができる(ステップ270)。方法200は、例えば、改善された適合値、例えば前の反復よりも高い値、又は閾値を超える適合値、又は所定の適切な範囲内の適合値が得られるまで、異なる基交換をテストするために、反復的に実行することもできる。あるいは、方法200のステップは、本明細書に記載される追加のプロセスステップの有無にかかわらず、任意の順序又は組み合わせで実行することができる。
【0038】
サンプルスペクトルにおけるサンプルピークのセットを確認すること(ステップ210)は、ピークのセットを特定すること、及び、リファレンスピークをサンプル物質(例えば、未知の物質)の分子フラグメントと関連付けることを含む。各サンプルピークは、サンプルフラグメントの質量と関連付けられ、選択されたサンプリング期間中に質量分析計を通過するフラグメント化されたサンプル分子内のそのフラグメントの相対的な寄与又は存在量に関連付けられるピークの高さ又は大きさと関連付けられる。
【0039】
リファレンススペクトルを選択すること(ステップ220)は、そのようなスペクトルのデータベース、例えば、図1によるライブラリ又はデータベース190とのデータ通信を介して実行することができる。各サンプルスペクトルには、特定の(既知の)リファレンス物質のフラグメントに関連付けられたリファレンスピークのセットが含まれる。各リファレンスフラグメントには、独自の特徴的な(既知の)リファレンスフラグメント質量と、リファレンススペクトルを取得するために使用されるフラグメント化されたリファレンス分子におけるそのフラグメントの相対的な存在量を表すピークの大きさ又は高さがある。
【0040】
典型的には、リファレンス及びサンプルピークは、フラグメント質量(フラグメントの総原子又は分子量を表す)又は相対高さ(サンプル又はリファレンス物質の部分組成を表す)のいずれにおいても、すべて一致するわけではない。質量分析計スペクトル分析のためのこの適応方法では、選択されたリファレンススペクトル中の1以上の選択されたリファレンスピークと比較して、サンプルスペクトル中の1以上の選択されたサンプルピークの質量差を決定することができる(ステップ230)。
【0041】
1以上の基交換を特定及び選択するために質量差を分析する(ステップ240)。例えば、基交換は、選択されたサンプルピークに関連するサンプルフラグメントの化学組成の変化を表すことができ、これにより、選択されたリファレンスピークに関連するリファレンス成分と比較して、観察される質量差が得られる。
【0042】
いくつかの例では、基交換は、選択されたサンプルピークに関連付けられた分子フラグメント内の原子団の、選択されたリファレンスピークに関連付けられた分子フラグメント内の異なる原子団への交換を表す。あるいは、基交換は、基の除去、又は、選択されたサンプルピークに関連付けられた分子フラグメント全体の、選択されたリファレンスピークに関連する分子フラグメントへの交換を表すことがある。
【0043】
選択されたピークをシフトすること(ステップ250)は、選択された基交換に関連付けられた質量差だけ選択されたサンプルピークをシフトすることによって、又は、質量差によって選択されたリファレンスピークをシフトすることによって達成され得る。シフトは、選択した基交換によってそれぞれのフラグメント質量が増加するか減少するかに応じて、スペクトルの質量スケールに沿って正又は負のいずれかになる。
【0044】
適合値を決定すること(ステップ260)は、適合値が基交換に応答するように、シフトされたサンプル又はリファレンスピークを有するものを含む任意の選択されたリファレンススペクトルに関してサンプルスペクトルに対して実行され得る。適合値は、統計的尺度又は他のメトリック(metric)、例えば、それぞれのスペクトル関数の畳み込み、又は、サンプル及びリファレンススペクトルそれぞれのピークを表すベクトルのドット積にしたがって、サンプル及びリファレンススペクトル間の類似性を特徴付けるように定義され得る。あるいは、尤度関数又は類似性の代替尺度を使用することもできる。類似性メトリックの他の例は、例えば、ケー・エックス・ワンら(K.X. Wan et al.)、「類似スペクトルの比較:類似性指数からスペクトルコントラスト角まで(Comparing similar spectra: from similarity index to spectral contrast angle)」、J.Am.Soc 質量分析、Vol.13、No.1、85~88(2002)、及び、シー・ジェイ・ハグリーブスら(C.J. Hargreaves et al)、「無機組成物の空間のメトリックとしてのアースムーバの距離(The Earth Mover’s Distance as a Metric for the Space of Inorganic Compositions,)」、Chem.Mater.、2020、32、24 10610~10620(米国化学会、2020年12月2日)に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。
【0045】
サンプル及びリファレンススペクトルの一方又は両方を、グラフィカルユーザインタフェース、例えば図1に示すような画面を表示できるインタフェース180に出力することができる(ステップ270)。用途に応じて、適合値及び計算方法又は選択された基交換(又はその両方)をインタフェースに出力することもできる。入力も、ユーザインタフェースから受信でき(ステップ280)、例えば、入力により、選択された基交換が決定される。特定の例では、特定された質量差に基づいて、提案又は示唆された基交換のセットをユーザインタフェースに出力することができる。これらの用途では、入力により、例えばユーザの好み又はユーザの選択に基づいて、提案された基交換のセットの中から選択された基交換が決定される場合がある。したがって、ユーザは、ユーザインタフェースに表示されるサンプルスペクトル及び他の分析結果に基づいて、分析中の未知の分子の構造及び組成に関する仮説をテストするために開発された他の分析データの利用可能性に基づいて選択を行うことができる。
【0046】
いくつかの例では、サンプル又はリファレンススペクトルにおける1以上の追加のピークを、追加の基交換(ステップ240)を表す質量差(ステップ250)だけシフトさせることができる(ステップ250)。これらの例では、適合値(ステップ260)は、基交換の追加の例に応じて、追加のシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含むサンプル及びリファレンススペクトル間の類似性を特徴付けることができる。
【0047】
いくつかの例では、リファレンスピークに関連付けられたリファレンスピーク成分質量と比較した、サンプルピークに関連付けられたサンプル成分質量で決定された1以上の追加の質量差(ステップ230)を表す1以上の追加の基交換を選択することができる(ステップ240)。これらの例では、サンプル又はリファレンススペクトル内の1以上の追加のピークが追加の質量差によってシフトされるため、適合値は、追加の基交換に応答してサンプル及びリファレンススペクトル間の類似性を特徴付ける。
【0048】
いくつかの用途では、サンプル及びリファレンススペクトルは、質量分析システム、例えば上述したようなGC-MS又はLC-MSシステム100及びデータベース190から得られる。これらの例では、通常、サンプルピークはサンプルの分子フラグメントに関連付けられ、リファレンスピークはリファレンスの分子フラグメントに関連付けられる。他の例では、サンプル及びリファレンススペクトルは、光学、紫外、赤外、ラマン、又は核磁気共鳴分光分析システムから取得でき、スペクトル内容とユーザインタフェースへのその他の出力の両方をそれに応じて適合させることができる。
[分析システム概要]
【0049】
図3は、質量分析計スペクトル分析のための適応システム300のブロック図である。図3に示すように、システム300は、例えば図1に示す例のように、ユーザインタフェース180及びスペクトルライブラリ又はデータベース(DB)190と通信する適応探索分析(ASA)プロセッサ170を含む。
【0050】
ASAプロセッサ170は、メモリ310、コンピュータプロセッサ又はマイクロプロセッサ(μP)320、及び、ユーザインタフェース180及びスペクトルデータベース190とのデータ通信のためのインタフェース330を含む。メモリ310は、例えば図1のシステム100にしたがって、又は、図3の方法200にしたがって、適応探索分析を実行するために、プロセッサ320上で実行可能なコンピュータコードを格納するように構成される非一時的機械可読データ記憶媒体を含む。
【0051】
図4Aは、本明細書で説明する適応スペクトル分析に適した代表的なスペクトル410を示すユーザインタフェース180Aの図である。この特定の例では、未知のサンプルの正確な質量がピーク415のスペクトルに現れており、例えば、最高質量ピーク418によって示されるように、総質量値220質量単位(AMU又はu)を有するフラグメント化されていない未知の又はサンプル分子を表す。この値は、比較のためのリファレンススペクトルを選択するために、適応探索で使用される。
【0052】
図4Bは、代表的なサンプル及びリファレンススペクトル間の一致(又は潜在的な一致)を示すユーザインタフェース180Bの図である。図4Bは、同じベースライン又はx軸に沿って、サンプルスペクトル410を正立にし、リファレンススペクトル420を反転した「バタフライ」図である。ヒットリスト(又は類似のランク付けされたリスト)440は、(例えば、比較的高い)類似性メトリクスに基づいて選択される候補スペクトルのサブセットを識別するために提供され得る。
【0053】
インタフェース180Bは、選択された(又は候補の)リファレンス分子の化学構造を表す図、画像、又は、同様のグラフィック450を、化学名、化学式、分類、CAS(米国化学会)登録番号、及び/又は、その他のデータベース/ライブラリの名前又は識別子、ならびに、推定質量、公称質量、又は、正確な質量(既知の場合)、推定又は公称保持指数(例えば、推定されたコヴァッツ(Kovats)保持指数)、及び、リファレンス分子又は候補の一致を説明するその他の情報等の1以上の対応するデータフィールドを含む追加情報パネル又はウィンドウ455とともに表示することもできる。
【0054】
例えば、適切なフィールドグループF0は、次のようにウィンドウ455内に表すことができる。
名前/CS登録番号/分類/DB名/コヴァッツ(推定)/質量/式 [F0]
各データフィールドには、関連付けられた名前と値を指定できる。ユーザは、これら(又はこれらすべて)の代表的なプロパティの中から選択するのではなく、データフィールドを、元のデータファイル、添付ファイルの別の(好ましい)プロパティのセットから、又は、分子部分構造の選択したセットから(例えば、候補のΔM置換を特定するために)、選択することができる。
【0055】
サンプル化合物がリファレンスデータベース内で(例えば、総質量及び/又は他のサンプルピークに基づいて)見つかった場合、図4Bに示すように、最初の(最も類似性が高い)ヒットは通常、化合物それ自身となる。この場合、サンプルスペクトル410とリファレンススペクトル420は、同じ最高(総質量)ピーク418/428を示し、スペクトルの残りの部分に同様のピーク415/425を示し、質量値(サンプル及びリファレンススペクトルの異なるフラグメントを表す)及び振幅(同じ相対組成を表す)の両方が一致する。
【0056】
一致の質は、サンプル及びリファレンススペクトル間の一致(又は類似性)の数値評価を提供する適合値によって説明することもできる。例えば、各スペクトル(サンプルとリファレンス)のピークを表す正規化ベクトルのドット積を使用して、最大適合値が1で最小適合値0から1までの範囲のヒット品質指数(HQI)を生成できる。あるいは、スペクトル関数の畳み込み、尤度関数、又はその他の類似性の数学的尺度を使用することもできる。
【0057】
リスト440は、それぞれの類似性メトリクスに基づいて、又はユーザ入力に基づいて、選択又はランク付け(又はその両方)できる候補スペクトルのサブセットを表示する。スペクトルは、それぞれの列の特定の値、例えばヒット品質インデックス(HQI)又はその他の類似性メトリック、ユーザ選択又はシステム生成のタグ(TAG)、及び、データベース内で候補スペクトルをカタログ化する識別(ID)番号を有するデータベース(DB)識別子のための列フィールドに関連付けられる。サンプルスペクトルと比較するために、候補分子の名前を、正確な(又は既知の)質量、及び、候補スペクトル自体のグラフ表示とともに、適切な業界標準形式で表示することもできる。例えば、以下に、適切なフィールドグループF1を示す。
HQI/TAG/DB/ID/名前/[スペクトル] [F1]
【0058】
これらのフィールド表現において、角括弧は、グラフィックデータを含む可能性のあるフィールドを示す。基置換が選択されると、リファレンススペクトルの選択されたサブセットのリスト440は、追加フィールド、例えば、残差又は調整されたヒット品質指数(R.HQI)(例えば、選択された置換後に再計算される)、関連付けられたΔM値、及び、置換基の説明(例えば、別の原子への塩素の置換、又は他の原子団の交換、グラフィック形式又はテキスト形式の一方又はその両方)を含むこともできる。特定のスペクトルにターゲット分子イオン質量が含まれている場合は、その質量を関連付けられたフィールド(例えば、分子質量又はμ/zボックス等)に、例えば、下記の適切なフィールドグループF2における(グラフィカルな)スペクトルフィールド内の対応する位置を示す黒三角形又はその他のマーカとともに、表示することができる。
HQI/TAG/R.HQI/DB/ID/名前/[スペクトル]/ΔM/[ΔM]/置換 [F2]
【0059】
図5Aは、代表的なサンプル及びリファレンススペクトル間の部分的な一致(及び、逆に、部分的な不一致)を示すユーザインタフェース180Cの図である。サンプル化合物がリファレンスデータベースに見つからない場合、スペクトルの類似性が低下する可能性があるため、適合値は変化し得る。例えば、サンプルスペクトル410及びリファレンススペクトル420は、それぞれピーク418及び428において同様の総質量値を示す可能性があるが、振幅は変化する可能性があり、図5Aに示すように、他のサンプルピーク415及びリファレンスピーク425はそれほど類似しない可能性がある。
【0060】
適合値とユーザインタフェース上で比較され表示されるサンプル及びリファレンススペクトルに応じて、適応探索結果は、(未知の)サンプル物質と、例えば、表示ウィンドウ455内の総分子量及び他の識別情報とともにグラフィック455によって示される(既知の)リファレンス物質との間に良好な一致があると確信できる場合もあれば、そうでない場合もある。そのような場合、ユーザインタフェースは、別のリファレンススペクトルを選択するため、又は、デルタ質量/基交換分析に適した、選択したサンプル及びリファレンスピーク間の質量差を決定するために、例えば、ユーザからの入力として、総質量値を受け入れるように構成することもできる。
【0061】
未知の物質の代表的なサンプルと1以上のリファレンススペクトルとが部分的に一致する状況では、ユーザインタフェースにより、ユーザは適応探索を実行して、適合値が改善されたmより良い一致を見つけることができる。この適応探索コンポーネントは、未知のサンプルのスペクトルと比較して、分子団が存在、欠落、又は交換されている可能性がある類似の化合物を見つけるように構成される。基の存在、非存在、又は交換により、質量又は「デルタ質量」(ΔM)の変化により、リファレンススペクトル内のいくつかのピーク位置が未知の物質のスペクトルに対して異なる。
【0062】
適応探索機能により、ユーザは、選択されたΔMだけいくつかのピークをシフトして、より良好なマッチングスコア又は適合値を達成することができる。これらの変更により、異なる類似化合物がヒットリスト(ランク付けされたサブセット又はリスト)440の先頭に表示され、最も高い類似性スコアが特定される場合がある。適応探索によって実行されたシフトをマークするには、ユーザインタフェースのウィンドウで、シフト処理の前後でのリファレンススペクトル内のリファレンスフラグメント質量のシフトを示すために、点線又はその他の印が使用される。これらの点線又は他の印は、インタフェース上で探索結果の表示を構成するために、ユーザがヒットリスト440内の指定されたボタン又はアイコンをクリック又は選択することに応答して、又は同様の入力に応答して、選択的に表示することもできる。印には、色分け、平行ラベル、表形式の表示又は他の同様のマーク、シフトされた質量ピークとシフトされていない質量ピークの間の関連性を識別又は示す指標又は印、又は他のスペクトルデータが含まれてもよい。
【0063】
図5Bは、デルタ質量/基交換分析に基づいて、代表サンプルスペクトル410とシフトされたリファレンススペクトル430との間の改善された一致を示すユーザインタフェース180Dの図である。図5Bに示すように、質量差(例えば、ΔMが26u、又は他の表示値)がサンプル及びリファレンススペクトルの選択されたピークの間で決定され、質量差に対応する欠落基又は基交換を選択又は示唆するために使用される。交換後(ある特定のケースでは、シクロヘキシル環がブチル基を置換する)、適合値は実質的に増加し、サンプルとシフトされたリファレンスピーク415,435間それぞれのより良好な適合(適合の改善)、及び、より類似した総質量ピーク418,438を反映する。
【0064】
これは、適応探索技術を代表する、適切なΔM交換の例である。他の例では、交換ΔMだけでなく、サンプルとシフトされたリファレンスピーク間の結果の一致も、ヒット品質指数(HQI)又はインタフェースによって決定される適合値又は類似性メトリック(例えば、ランク付けされたリスト440を生成するために使用されるもの)とは関係なく、例えば視覚的又はグラフィカルな比較で一致品質の指標を提供することができる。
【0065】
以下の追加の例も参照すべきである。用途に応じて、ユーザインタフェース180A~180D、180E又は180F~180H及び180J(下記)への適切な出力には、選択されたピーク間の質量差(ΔM)、質量差が決定された選択されたサンプル及びリファレンスピークを特定する情報、及び、選択されたピークを質量差によってシフトした後、差(例えば、より高い適合値)が得られる提案された基交換又は置換が含まれることができる。
【0066】
図6は、代表的なサンプル(未知の)スペクトル410、シフトされたリファレンススペクトル430、及び、シフトされていないリファレンススペクトル420を示すユーザインタフェース180Eの図である。図6に示されるように、サンプルピーク415とシフトされていないリファレンスピーク425との間の質量差が、例えばΔM=26uで決定される。この質量差は、(未知の)サンプルと(既知の)リファレンスの異なる分子フラグメントを表す基交換に対応する。交換を行った後、リファレンスピーク425は新しい値435にシフトされ、サンプルピーク415によりよく適合する。リファレンススペクトル内の総質量ピーク428も同じ量だけ新しい値438にシフトされ、サンプルの総質量ピーク418と一致する。
【0067】
図6に示されるように、リファレンススペクトル420のリファレンスピーク425,428は、サンプルピーク415,418によりよく一致し、サンプルスペクトル410と比較してより高い適合値をもたらす、シフトされたピーク435,438を有するシフトされたリファレンススペクトル430を生成するために、質量差ΔMだけシフトされる。便宜上の理由から、通常、リファレンスはサンプルに一致するようにシフトされる場合がある。同様に、サンプルスペクトル410のサンプルピーク415,418は、質量差ΔM及び同じ対応する基交換に基づいて、(シフトされていない)リファレンススペクトル420の(シフトされていない又は補正されていない)ピーク425,428と一致するようにシフトされ得る。したがって、この技術は、用途とユーザの好みに応じて、どちらのベースでも(サンプル又はリファレンススペクトルの一方をシフトして)実行できる。
【0068】
図7Aは、未知の分子(総)質量を有する代表的なサンプルスペクトル410を示すユーザインタフェース180Fの図である。図7Aに示されるように、このサンプルスペクトル410は、(未知の)分子イオン質量を示す明確な総質量ピークを含まない。これは、例えば、フラグメント化せずに検出器に到達するサンプル分子がほとんど又はまったくない場合に発生する可能性がある。それにもかかわらず、総質量は、サンプルスペクトル410内の他のピーク415から推定することができ(例えば、異なるフラグメントの質量を組み合わせ、分布内のピークを探すことによって)、推定された質量を使用してデルタ質量/基交換分析用のリファレンススペクトルを選択することができる。
【0069】
推定質量は、ユーザ入力の形で、ユーザインタフェース180Fに出力するか、インタフェース180Fを介して更新することもできる。サンプルスペクトルから総質量が決定されない場合、システムは、少なくとも1つの質量差ΔMを提案するサンプルスペクトルのピークの(例えば、反復的な)シフト、及び、ピークシフトによって調整されたサンプル及びリファレンススペクトル間の一致(又は類似性)の数値評価の展開に基づいて、最も一致するリファレンススペクトルから1つを決定できる。
【0070】
図7Bは、図7Aのサンプルスペクトル410と一致するシフトされていないリファレンススペクトル420を示すユーザインタフェース180Gの図である。総質量ピーク418,428は、サンプルスペクトル410又はリファレンススペクトル420のいずれにおいても明確である場合もあればそうでない場合もあるが、推定された質量値は正確であるように見える。選択されたリファレンススペクトル420のリファレンスピーク425は、サンプルスペクトル410内の対応するサンプルピーク415との良好な(適切な又は改善された)一致を提供し、ヒット品質指数(HQI)の高い値又は他の適合値に反映される。
【0071】
図7Bはまた、例えば、(HQI又はその他の適合値に基づいて)比較的高い又は低い類似性メトリックを用いて多数の追加のサンプルスペクトル「ヒット」442,443,444,445を含むランク付けされたリスト440とともに、441(直立)でのリファレンススペクトル420の比較を提供する。これらのサンプルスペクトルは、サンプルスペクトルの質量ピーク、並びに、推定又は公称総質量(又は既知の場合は正確な値)に少なくとも部分的に基づいて、又は、ユーザがユーザインタフェースに入力した総質量に基づいて、選択できる。選択されたリファレンススペクトルは、適応技術をテストし、例えばリファレンススペクトルの1つがサンプルと一致することが事前にわかっている場合、又は2つの同一のリファレンススペクトル、又は、既知のΔMに関連付けられた、既知の基交換を伴う2つのリファレンススペクトルを比較することによって、結果の信頼性を実証するために使用することもできる。
【0072】
図8Aは、図7Aのサンプルスペクトル410と一致するシフトされたリファレンススペクトル430を示すユーザインタフェース180Hの図である。この特定の例では、シフトされたリファレンススペクトル430は、リファレンススペクトルの選択されたサブセット又はランク付けされたリスト440のうちの1つから導出され得、例えば、ピーク435が20uの代表的な質量差ΔMだけシフトしている図7Bの2番目の「ヒット」リファレンススペクトル442である。これは、シフトされたリファレンススペクトル430内の塩素をメチル基に置き換える基交換に対応し、図7Bの未知のサンプルスペクトル410と既知の(シフトされていない)リファレンススペクトル420の両方に一致し、これは、同じ交換値だけシフトされたリファレンスとは異なる。したがって、質量差シフト技術は、未知のサンプル物質を識別するためだけでなく、既知のリファレンススペクトル間の質量差の決定の検証にも使用できる。
【0073】
図8Bは、選択されたリファレンススペクトル420及び441(直立)とともに代表的なサンプルスペクトル410に加えて、例えば、類似性メトリック、ユーザ入力、又はそれらの組み合わせに基づく追加の候補又は「ヒット」442、443、444、445の選択されたサブセット又はリスト440を示すユーザインタフェース180Jの図である。例えば、インタフェースは、サンプルスペクトルを識別する、又は、インタフェースがサンプルスペクトルにアクセスできるようにする情報を含むユーザー入力のために構成することができる。適合品質に応じて、追加のユーザ入力には、サンプルスペクトルに関連する推定又は公称総質量、又は、サンプルスペクトルのピークとの比較のためにリファレンススペクトルのピークをシフトするときに使用される候補基交換に関連付けられた質量差(ΔM)を含めることができる。このインタフェースは、例えば、化学名、CAS登録番号、又は、他のライブラリ又はデータベースリファレンスによって特定されるような、適応探索の候補リファレンスを受け入れるように構成することもできる。
【0074】
図8Bの例では、確な総質量ピーク418がある場合もあれば、ない場合もある。ユーザインタフェース180Jは、ユーザが、例えば水素イオン(H/H)又は金属イオン(NA)置換に基づいて、先験的に、又は提案されたリストから基交換を選択できるように構成される。
【0075】
図8Bの特定の場合では、適応分析は、ユーザ入力に応答して、比較的高い適合値(例えば、HQI)とともに単一の選択されたリファレンススペクトル420及び441(直立)を返すことができる。多数の追加の異なる選択された「ヒット」リファレンススペクトル442,443,444,445を、比較的高い又は低い適合値とともに提供することもできる。いずれの場合も、サンプルスペクトル441,442,443,444,445がリファレンススペクトル410内の1以上のリファレンスピーク415と一致する、比較的正確な質量「ヒット」が多数存在する。次いで、ユーザは、例えば、それぞれが異なる基交換に対応する異なるリファレンススペクトル441,442,443,444,445の中から選択することができる。
[改善された探索及び分析]
【0076】
上記の説明及び以下に示す実施例からわかるように、本開示は、さまざまな質量分析システムによって生成されるスペクトルの分析のための改良された方法を教示する。この方法は、総質量及びフラグメント質量値の分布を示し、サンプルスペクトル及びインタフェースのユーザにより簡単に比較される選択されたリファレンススペクトルのピークに現れるこれらの質量値に関連する存在量又は大きさを表すバタフライタイプのディスプレイを含む。さらに、ユーザインタフェースでは、サンプル及びリファレンススペクトルそれぞれのピークを表す正規化ベクトルのドット積、又は、対応するスペクトル関数の畳み込み、又は、アースムーバの距離メトリック等の別のメトリック等の、選択したサンプル及びリファレンススペクトルのさまざまな表現間の「適合」度を計算するためのさまざまな類似性メトリックの使用が容易になる。さまざまな類似性メトリックを使用して「適合」度を計算した結果得られる値は、ユーザインタフェースの一部として表示でき、オプションとして、使用される特定の適合メトリックの識別も表示できる。
【0077】
さらに、ユーザインタフェースにより、ユーザは、サンプル物質の総質量の候補値、及び、スペクトル内の選択されたピーク間の質量差(ΔM)を見て選択し、ΔM値に基づいていずれかのスペクトルに加算又は減算調整を適用したことを反映する修正されたサンプルスペクトル又は選択されたリファレンススペクトルを表示することができる。ユーザインタフェースに向けて提供されるこれらの操作の使用によって適合性の向上が見られるかどうか(例えば、質量分析によってテストされたサンプル内の1以上の標的分子を特定する適合、又は単に部分的又は厳密な一致)、適合度の値及びΔM調整されたスペクトルの表示により、ユーザは、さらなる適応探索又は他の分析技術のためにフラグメントを特定することができ、これにより、関心のあるサンプル分子又はサンプル分子のフラグメントの特定を改善することができる。
[ユーザインタフェース]
【0078】
図9は、適応探索方法1000におけるプロセスフローステップを示すチャートであり、サンプルスペクトルから開始してリファレンススペクトルのライブラリ内で一致候補を探す。図9に示すように、プロセス又は方法1000は、以下を含むがこれらに限定されない1以上のステップを含む。これらのステップには、特定のユーザ入力アクションと探索結果の表示が含まれており、追加の分析ステップの有無にかかわらず、コンピュータベースのシステム又はユーザインタフェース上で又はそれらによって任意の順序又は組み合わせで実行できる。
【0079】
適応探索方法(1000)の対象として、サンプルスペクトルを提供する(ステップ1010)。例えば、ユーザインタフェースは、サンプルスペクトルを受信し、サンプルスペクトルを、ユーザインタフェース(UI)、例えば、本明細書で説明するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)180上に表示するように構成できる。
【0080】
適応探索を開始する(ステップ1020)。利用可能な場合、適応探索の開始は、サンプルスペクトルから決定されるかサンプルスペクトルから提供される分子イオン質量に基づいて行うことができる(ステップ1025)。分子イオン質量がサンプルスペクトルから決定されない又はサンプルスペクトルから提供されない場合、適応探索の開始は、サンプルスペクトルピークのセットから決定又は提供される分子イオン質量又は質量範囲、又は、ユーザ定義の分子イオン質量に基づいて行うことができる。
【0081】
リファレンススペクトル(又は別のリファレンススペクトル)を選択する(ステップ1030)。例えば、サンプルスペクトルと比較するために、ライブラリ、データベース、又はリファレンススペクトルの別のセットから1以上の候補リファレンススペクトルを選択することができる。この方法を連続的に繰り返すと、すべての候補が考慮されるまで、セットから別のリファレンススペクトルを選択できる。
【0082】
デルタ質量(ΔM)値を反復する(ステップ1040)。ユーザインタフェースは、最小から最大(min-max)の範囲にわたって可能性のあるΔM値を反復するか、-200~+200AMU等の事前定義された範囲を使用するように構成できる。あるいは、ΔM値は、±1AMUから±100AMUまで、±1AMUから±200AMUまで、あるいはそれ以上の範囲であってもよい。あるいは、インタフェースは、サンプル及びリファレンススペクトル内のフラグメント質量を表す選択されたピークに基づいて、可能性があるΔM値を計算、推定、又はその他の方法で決定することができる。
【0083】
シフト対象のピークを選択する(ステップ1050)。例えば、シフトされたリファレンススペクトルと元のスペクトルの間の重複に基づいてピークを選択できる。重複がある場合、これは、選択したピークをシフトすることで適合値が改善される可能性があることを示している可能性がある。用途に応じて、ΔM値は、1以上のリファレンスピークを、サンプルピークに向けて又はサンプルピーク上にシフトする、及び/又は、リファレンススペクトルの1以上に、サンプルスペクトルと比較してより良い適合(より高い適合値)を提供させるように、交換される2つの原子又は分子団間の質量の差を表すことができる。
【0084】
選択されたピークをシフトする(ステップ1060)。例えば、ユーザインタフェースは、リファレンススペクトル内の選択されたピークの1以上をデルタ質量(ΔM)値だけシフトするように構成できる。
【0085】
適合値を計算する(ステップ1070)。例えば、ユーザインタフェースは、現在の反復で使用される特定のΔM値によってシフトされた選択されたピークのセットを使用して、サンプルスペクトルと選択されたリファレンススペクトルとの間の数値比較に基づいて適合値を計算するように構成することができる。
【0086】
最良の適合値を有するデルタ質量(ΔM)を選択する(ステップ1080)。例えば、ユーザインタフェースは、最良の(例えば、最高の)適合値を有するΔM値を選択し、それをサンプルスペクトルと選択されたリファレンススペクトルとの間の最良の一致として使用するように構成することができる。ユーザインタフェースは、計算された最良の適合値を持つΔMを表示し、デルタ質量(ΔM)値に関連付けられた分子団を特定又は表示するように構成することもできる。
【0087】
すべてのスペクトルにわたって反復する(ステップ1090)。例えば、プロセス又は方法1000は、セット内のすべてのリファレンススペクトルが分析されるまで、候補セットから別のリファレンススペクトルを選択するために繰り返すことができる(ステップ1030)。連続する反復では、異なるデルタ質量(ΔM)を使用するか、シフト対象に異なるピークを選択するか、あるいはその両方によって、適合値を再計算するようにユーザインタフェースを構成することもできる。
【0088】
探索結果の適応表示(ステップ1100)。例えば、ユーザインタフェースは、サンプルスペクトルと1以上の候補リファレンススペクトルを含む探索結果を、例えば、適合値によってランク付けされたヒットリスト(又は選択されたリファレンススペクトルの類似のサブセット)内で表示するように構成できる。ユーザインタフェースは、1以上の選択されたリファレンススペクトルを、例えば、適応探索結果に基づいてピークがシフトされた状態で、表示するように構成することもできる。ユーザインタフェースは、シフトされたピークを特定するために、点線又は他の印を使用してサンプル及びリファレンススペクトルを表示するように構成することもできる。インタフェースは、本明細書で説明するように、ユーザ入力に適合させることもでき、また、ユーザ入力に基づいて、探索結果、サンプルスペクトル、候補リファレンススペクトル、ヒットリスト、又は、シフトされたピークのいずれかを更新するために適合させることもできる。
【0089】
用途に応じて、例えば、ランク付けされたリスト(「ヒットリスト」)内のリファレンススペクトルの1以上が、シフトされたピークの有無にかかわらず、サンプルスペクトルに適合するものとして特定され得る。リファレンススペクトルの1以上が、良い適合ではないとして拒否されることもあり(例えば、ユーザによって、又はユーザインタフェース自体によって)、及び/又は、1以上の追加のリファレンススペクトルが対応する適合値に基づいてヒットリスト(又は類似のランク付けされたサブセット)に追加される場合がある。
【0090】
プロセス又は方法1000は、分析用の新しいサンプルスペクトルを提供し(ステップ1010)、その後方法を再度実行して新しい結果又は更新された結果を表示する(1100)ことによって繰り返すことができる。あるいは、結果の表示(ステップ1100)は、方法(1000)中の任意の時点で実行することができ、又は、方法は、すべてのスペクトルにわたって反復する前に(ステップ1090)、結果の表示(ステップ1100)から、適応探索の開始(ステップ1020)と最良の適合値を有するΔMの選択(ステップ1080)との間の任意のステップに進むこともできる。
【0091】
コンピュータベースのユーザインタフェース(例えば、図1のインタフェース180)又はシステム(例えば、図1のシステム100又は図3のシステム300)は、本明細書に記載されているように、未知の組成のサンプルスペクトルと同一又はよく一致する可能性のある候補リファレンススペクトルを見つけようとしているユーザとの対話を含む方法又はプロセス1000を実行するために提供され得る。ユーザインタフェースは、ユーザに、サンプルスペクトルを入力し、サンプルスペクトルをライブラリに収集された既知の分子のリファレンススペクトルと比較することにより、一致するリファレンススペクトルの候補を見つけるためのさまざまなシステムアクションを制御することを可能にする。サンプルスペクトルの形式で入力が利用できるため、ユーザは類似性に基づいてリファレンススペクトルの探索を開始でき、一致又はほぼ一致の候補であるリファレンススペクトルのランク付けされたサブセットを含む出力がユーザインタフェースのディスプレイに返される。
【0092】
ユーザインタフェースプロセス又は方法は、適応探索質量分析計スペクトル分析用に、図2の方法200と組み合わせて実行することもできる。特定の化学基を含むリファレンススペクトルに現れるフラグメントに関する情報を含む、適応探索から返された候補に基づいて、ユーザは、候補リファレンススペクトル内の質量ピークで表されるフラグメントの質量シフト(ΔM)を達成することにより、探索戦略を適応させることができる。スペクトル内のシフトされたピークは、サンプルスペクトルに対する適合値の計算又は反復再計算の基礎となることができる。適合値は再計算で改善される可能性があり、特に、シフトされたリファレンススペクトルがサンプルスペクトルの未知の組成を特定するための強力な候補となるように十分に改善される可能性がある。
[例]
【0093】
方法は、サンプルスペクトル内のサンプルピークのセットを特定又は確認することを含み、ここで、例えば、サンプルピークは、各々サンプルフラグメント質量を有するサンプルのフラグメントに関連付けられる。この方法は、リファレンススペクトルの選択されたリファレンスピークと比較してサンプルスペクトルの選択されたサンプルピークの質量差を決定するリファレンスフラグメント質量を各々有するリファレンスのフラグメントに関連付けられたリファレンスピークのセットを有するリファレンススペクトルを選択することを含む。この方法はまた、質量差に基づいて基交換を選択することを含むことができ、ここで、基交換は、選択されたリファレンスピークに関連付けられたリファレンスフラグメント質量と比較した、選択されたサンプルピークに関連付けられたサンプルフラグメント質量の変化を表す。この方法はまた、選択されたサンプルピーク又は選択されたリファレンスピークを質量差だけシフトすることを含む。この方法はまた、リファレンススペクトルに関するサンプルスペクトルの適合値を決定することを含む。例えば、適合値は、基交換に応答してシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含む、サンプル及びリファレンスピークのセット間の類似性を特徴づける。
【0094】
サンプルスペクトルが質量分析計システムから得られる方法であって、例えば、サンプルスペクトル及びリファレンススペクトルの一方又は両方をユーザインタフェースに出力するステップをさらに含む。
【0095】
方法は、総質量値をユーザインタフェースに出力するステップをさらに含む。ここで、総質量値は、サンプルスペクトル内のサンプルピークに基づいて決定される。例えば、総質量値は、リファレンススペクトルの選択、質量差の決定、又は、基交換の選択に用いられる。
【0096】
方法は、ユーザインタフェースから入力を受け取るステップをさらに含む。例えば、ユーザ入力は、総質量値を更新又は変更するために使用される。
【0097】
方法は、適合値と選択された基交換との1以上をユーザインタフェースに出力すること、及び、ユーザインタフェースから入力を受け取ることをさらに含む。例えば、入力は、選択された基交換を決定する。
【0098】
方法は、1以上の提案された基交換のセットをユーザインタフェースに出力することをさらに含む。例えば、入力は、提案された基交換のセットの中から選択された基交換を決定する。
【0099】
基交換が、選択されたサンプルピークに関連付けられた分子フラグメント内の原子団の、選択されたリファレンスピークに関連付けられた分子フラグメント内の異なる原子団への交換を表す方法。
【0100】
基交換は、選択されたサンプルピークに関連付けられた分子フラグメントの、選択されたリファレンスピークに関連付けられた分子フラグメントへの交換を表す方法。
【0101】
方法は、サンプルスペクトル内の1以上の追加のサンプルピーク、又は、リファレンススペクトル内の1以上のリファレンスピークを質量差によってシフトすることをさらに含む。例えば、適合値は、基交換の追加の例に応答して、1以上の追加のシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含むサンプル及びリファレンススペクトル間の類似性を特徴づける。
【0102】
方法は、リファレンスピークに関連付けられたリファレンスフラグメント質量と比較した、サンプルピークに関連付けられたサンプルフラグメント質量の1以上の追加の質量差を表す1以上の追加の基交換を選択することをさらに含む。方法は、1以上の追加のサンプルピーク又は1以上の追加のリファレンスピークを1以上の追加の質量差だけシフトすることをさらに含む。適合値は、1以上の追加の基交換に応答して1以上の追加のシフトされたサンプル又はリファレンスピークを含むサンプル及びリファレンススペクトル間の類似性を特徴づける。
【0103】
サンプルピークはサンプルの分子フラグメントに関連付けられ、リファレンスピークはリファレンスの分子フラグメントに関連付けられる方法。
【0104】
システムは、メモリ、コンピュータプロセッサ、及びリファレンススペクトルのライブラリとデータ通信するインタフェースを備える。メモリは、コンピュータコードが記憶された非一時的機械可読データ記憶媒体を備えることができ、コンピュータコードはプロセッサによって実行可能であり、上記の例のいずれかによる方法を実行する。
【0105】
本発明を例示的な実施の形態に関して説明してきた。本発明の範囲内に留まりながら、これらの開示を異なる材料及び状況に適合させるために、変更を加えたり、等価物を置き換えたりできることが理解される。したがって、本発明は、開示された特定の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれるすべての実施の形態を包含する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】